理樹「睡眠導入CD?」佳奈多「ええ」 (51)

寮長室

ペラッ

理樹(俗に言う犬とオオカミの時間。2人しかいない室内では紙をめくる音だけが反響していた)

理樹「………はぁ……」

佳奈多「……なに?仕事が嫌なら出て行ってもらっても私は構わないけど」

理樹(2人のうちの1人が毒舌を吐く。この人に慣れていない人が聞いたらどんな印象を受けるんだろうか)

理樹「いや、そうじゃないんだけどさ…最近何故かよく眠れないんだ…」

理樹(不眠症といったところか…眠り病を抱えているのにおかしな話だけど眠たくならないものはしょうがない)

佳奈多「ふうん…確かによく見たら顔がやつれてるわね」

理樹「野球の練習も中断してるし疲れるような事はしてないつもりなんだけどね…ホットミルクを飲むとか僕なりに色々試してるんだけどなあ」

佳奈多「元々貧弱な身体してるからじゃない?あなたの腕は細すぎだわ」

理樹「うーん……」

理樹(今度は保健室で相談を受けようかと考えていると二木さんが呟いた)

佳奈多「……そういえば、いつか睡眠導入CDっていうの聞いた事があったわ」

理樹「睡眠導入CD?」

佳奈多「ええ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1441020004

佳奈多「なんでもそのCDでは人が眠れるように語りかけてくれるらしいわ」

理樹「子守唄みたいな?」

佳奈多「詳しくは知らないわよ。そこからはあなたが調べてみたら?」

理樹「まったくだね。そうするよ、ありがとう」

佳奈多「別にお礼を言われるような事じゃないわ」

ガラッ

理樹(ちょうど会話が切れたところでドアが開いた)

あーちゃん「たっだいまー!ふたりとも仲良くしてた?」

佳奈多「ご冗談が上手くなりましたね」

あーちゃん「相変わらずなやっちゃなー!それじゃあ今日はあがってもいいわよ。お疲れ様!」



佳奈多・クド部屋

カチカチ

クド「わふー?佳奈多さん、何をお調べしているんですか?」

佳奈多「ちょっとね……なるほど、睡眠導入にも種類があるのね……」

カチカチ

佳奈多「ん…何かしらこのページ?………こ、これは!」




理樹部屋

カチカチ

真人「なんだ理樹。一生懸命携帯いじって…また眠れなくなっちまうぜ?」

理樹「ちょっと調べ物するだけだから…」

理樹(ふむふむ…CDでは語り部が聴いてる人に囁いて眠りに入りやすいリラックス状態を作ってくれるのか…なんだか怪しげなものもあるけどちょうどお試しCDがあるからダウンロードしてみよう。ダメならそれまでさ)

理樹「よし。真人、もう電気消していいよ」

真人「そうかい。そんじゃおやすみ」

理樹(電気が消えると同時にスタートボタンを押した)

ポチッ

理樹(……………)

『お疲れのようですね。最近眠れないんじゃありませんか?』

理樹(聴こえたのは低くて落ち着いた男性の声だった)

『しかしその悩みも今日限りです。さあ、久々の深い眠りにつきましょう』

理樹(安心感を与える口調でなおも続ける)

『ではまずベッドに仰向けで寝てください。まずは肩の力を抜きましょう……』

理樹(ほうほう…)





………………………

……………



チュンチュン

真人「理樹…起きろ理樹!」

理樹「ううん…あと5分だけ……」

真人「そんな事してたらマジに遅刻しちまうぜ!…ったく、睡眠不足だって言ってたからちょっとは安心したがこうもぐっすり眠られるとねえ…」

理樹(そうか…僕はあのCDを聴きながら……)

理樹「二木さんに感謝だな…」

真人「えっ?二木がどうしたって?」

理樹「いや、なんでも」

寮長室

理樹(二木さんに戦果を報告した)

理樹「凄いよ二木さん!あのCDを試してみたんだけどおかげで夢さえ見ないくらい眠れる事が出来たよっ」

佳奈多「あらそう。それは良かったわね」

理樹(本当に素っ気ないな…まあいいけど)

佳奈多「…………………そういえばそのCDを今日持ってきたわよ」

理樹「えっ?」

佳奈多「だからCDよ。あなたの言ってるものじゃないだろうけど」

理樹(そういうとカバンから一枚のCDケースを取り出した)

理樹「あ、ありがとう!…でもなんで二木さんが持っていたの?」

佳奈多「それは…拾ったの」

理樹「拾った!?凄い偶然だよそれっ!」

佳奈多「そうは言っても拾ったものは拾ったの。で、使うの?」

理樹「うん。ありがたく使わせてもらうよ」

理樹(あっちを聴いてもいいけど数少ない二木さんの好意は受け取っておきたい)

佳奈多「………」





理樹(さっそくプレイヤーにダウンロードした)

理樹「それじゃあお休み」

真人「あいよ」

パチッ

理樹(再生スタート…)

『こんばんわ。今日も聴きにきたのね…いいわ、また私が眠りの世界に誘ってあげる……』

理樹(今度は女の人の声だ。優しい声だった)





『それじゃあ深呼吸……あなたの肉体は水のように溶けているわ……』

理樹(心地いい眠りが僕を襲う…いや、引っ張ってくれるというべきか……)

理樹(…………)

…………………

…………



ジリリリリリリ

理樹「ふぁぁ……」

理樹(このCDも効果は抜群だったようだ。もはやいつ眠ってしまったのかも分からないくらい気持ち良かったんだろう)

理樹「とりあえず着替えるか」

ジャリッ

理樹「ん?」

理樹(手に違和感が走った。指を見ると何故か砂が付いていた。触った部分もよく見ると同じく砂がこびりついていた…これはいったい…?)

真人「どうした理樹。自分の服じっと見て」

理樹(真人も起きたらしい)

理樹「いやあ、何故だか知らないけどパジャマが汚れているんだ」

真人「洗濯機の故障か?」

理樹「いや…着た時は付いてなかった気がするんだけど」

真人「そうなのか?俺はベッドの上にその砂なんかが付きそうなものなんて置いてないけどな」

理樹「まあ払ったらおしまいだし気にはしてないけどね…」

寮長室

佳奈多「ど、どうだった?」

理樹(二木さんが何故か緊張している。何かあったんだろうか)

理樹「どうって何が?」

理樹(僕が聞き返すと安堵の表情が見てとれた)

佳奈多「いえ…CDはどうだったかと思って」

理樹「ああ!あれもぐっすり眠れたよ。しばらく使わせてもらうね」

佳奈多「ええ。もちろんよ」

理樹(そのセリフを言った時、少し口角が上がっていたように感じた)



真人「雲で星が見えねえな…こりゃ明日は雨になるかもな」

理樹(そうなれば明日の仕事が少し心配だな…花壇の点検もする予定なのに)

真人「にしても理樹は最近やけに元気いいよな」

理樹「えっ、そう?」

理樹(それも睡眠を十分にとっているからだろうか。睡眠の重要性をひしひしと感じる)




理樹「それじゃあおやすみ真人」

真人「おう」

パチッ

理樹(さてと…)

ポチッ

『……こんばんわ。今日も聴きにきたのね…いいわ、また私が眠りの世界に誘ってあげる……』




……………………

…………








理樹「な、なんだこれ!」

理樹(朝起きるとパジャマが濡れていた!)

真人「ん?…うおっ!?なんじゃそりゃっ」

理樹(流石にお漏らしではなかった。匂いを嗅いで見たけど無臭で色も特にはない…いったい何の液体なんだこれは…)

真人「なんで濡れたにしてもよく起きなかったな…!」

理樹「まったくだよ。これじゃ眠れ過ぎだ」

理樹(とにかく気持ち悪いので脱ぐとすぐにシャワーを浴びた)

理樹(うう…なんだこの怪奇現象は…怪談話にしては少し遅い気がするぞ…一応恭介に相談してみよう)




恭介「へえ。そんなことが」

理樹「別に身体にこれといった異常はなかったんだけど…」

恭介「俺でもそんな話は初めて聞いたぜ…昨日は何か変わったことはあったか?」

理樹「いや特には…」

恭介「じゃあ誰かに恨まれたりしたことは?もしかするとそいつが部屋に忍び込んで水をぶっかけたのかも…」

理樹「いや、そんなこともないはずだけど」

理樹(だいたい犯人が居たとして僕にぶっかけた時点で気付くと想う人がほとんどだと思うんだけど…いったいどうしてこんな事に…)

寝る
睡眠導入CDについては適当なところもあるからあくまでフィクションの存在として扱ってくれ

中庭

理樹(芝生の発育状況を観察している際に話してみた)

佳奈多「……ふーん…直枝ってそんな歳になってもまだ」

理樹「うん、どうせそんな答えが出てくるって分かってた」

佳奈多「………それで、結局分からず終いってこと?」

理樹(ボケが遮られたのが癪だったのか少し不機嫌になった)

理樹「うん…まあ別に部屋の物が盗まれたりとかいった被害は受けてないし今後何もなければそれで良いと思ってるんだけどね」

佳奈多「そ…まあ、あなたの好きにするといいわ」

理樹「あれっ。てっきり『危機感がない』って怒られるかと思ったんだけどな」

佳奈多「怒られたかったの?やっぱり直枝ってマゾだったのかしら」

理樹「いやいやいや…」

「あっ、佳奈多さん、それにリキ!」

理樹(振り返ればクドがいた)

クド「今日もお仕事お疲れ様ですっ!」

理樹「今日はヴェルカたちとお散歩?」

クド「はいなのです。昨日の夜は小雨だったので滑りやすいのですが最近遊べず終いだったので今日は思いっきり……わふっ!?」

ズルッ

理樹「わわっ」

理樹(歩み寄ってきた拍子に足を滑らせたクドをなんとかキャッチした)

佳奈多「もう…言ってるそばからこれなんだから」

理樹(クドや葉留佳さんといる時は顔も柔らかいんだけどなあ…)

クド「わ、わふ…ありがとうございました」

理樹「いいよ。でも気をつけてね」

クド「はい…あまりに私が不甲斐ないせいで2人はまるでお父さんとお母さんみたいなのです……」

佳奈多「クドのお姉さんならいいけど直枝と夫婦は嫌よ!」

理樹「いや何もそんな意味で言った訳じゃないんじゃないかな…」

夕方

理樹「確か今日はここを見たら解散してもよかったよね」

佳奈多「私はまだあっちに仕事やり残してるから残るわ。あなたはもう帰りなさい」

理樹「うん。お疲れ様」

佳奈多「お疲れ様」

クド「あっ、理樹はもう帰るんですか?」

理樹(中庭を出ようとするとクドが駆けつけていた。ヴェルカとストレルカはまだ遊び足りないのかクドを中心にグルグルと回っている)

理樹「そうだよ?」

クド「もしお時間があれば少し相談しても良いですか?その…」

理樹(後ろをちらりと見て小声で言った)

クド「佳奈多さんのことで…」

理樹「えっ?」

裏庭

理樹(なにやら普通の相談ではないようなので彼らには帰ってもらって2人でベンチに腰けることにした)

理樹「それで二木さんがどうしたって?」

クド「実は…一昨日から佳奈多さんと別居しているんです」

理樹「別居!?」

クド「はい。今は西園さんのお部屋に泊まらせて頂いています…」

理樹「まさか喧嘩したの?でもそんな雰囲気じゃ…」

クド「いえいえ、別に佳奈多さんとは何もありませんでした。ですが、突然私に一週間ほど一人にさせてもらえないかとお願いされたのです…それも理由は聞くなと」

理樹(想像がつかない…いったい何で二木さんはそんなことを……)

理樹「それは怪しいね…」

クド「私自身は全然構いませんっ。西園さんはお話も弾みますし、久々にお布団で寝るのも非常にえきさいてぃんぐですから!」

理樹(興奮して寝つけるのだろうか)

クド「ですが…佳奈多さんはいったいどうしたのか心配でなりません…この間から二木さんに何か変なところってありませんでしたか?」

理樹「いやぁ、特には感じなかったかな…ごめん役に立てなくて」

クド「いいえ!そんな謝らないでくださいっ」

理樹「でも確かにそれは変だよね。今度僕なりにそれとなく聞いてみようか?」

クド「はい…そうしてもらえるとありがたいです」



真人「うし。窓とドアの鍵は閉めたぜ!」

理樹「ありがとう真人」

真人「誰かがいたら遠慮なく俺の名を呼んでくれ。颯爽とこの筋肉が敵を締め上げるぜ!うぉおお…考えるだけで血と肉が湧きまくってそこらじゅうを踊りまくるぜ!」

理樹「いや怖いから…」



パチッ

『こんばんわ。今日も聴きにきたのね…いいわ、また私が眠りの世界に誘ってあげる……』

理樹(そういえばこのCDいつも途中で寝てて最後まで聴けていないな…今日はちょっと意識して起きてみようかな)

『あなたは海にぷかぷか浮かんでいるわ。辺りには浜辺もなく、魚一匹いない。でも怖がらなくていい…夢の世界では絶対に溺れることがないから…』

理樹(……………)

……………………

……………

チュンチュン

理樹「………はっ!」

理樹(寝ていた!少し悔しい……)

ギシ…

真人「……んが…」

理樹(真人はまだ寝ているらしい。時計を見るとまだ5時30分だった)

理樹「今日は…濡れてないや……どっこいしょっと」

理樹(早起きは三文の徳と言うし起きて支度しようか)

ムクッ

理樹「………ん?」

理樹(また何か違和感がした。しかし気付いた瞬間血の気が引いた。今度のそれは到底スルー出来ないことである)

理樹「しゃ、シャツが…僕のシャツが無い!?」

理樹(パジャマの下に着ていたシャツが無い!いつの間に脱いだんだ僕はっ!)

真人「どうした!本当に敵が現れやがったのか!?」

理樹(寝ぼけ眼で真人が起き上がる)

理樹「いや、敵は現れてない……とは言い切れないかも…」

理樹(僕は完全に意識はなかった。なら誰かがやったとしか思えない…でも流石の僕でもこんなことされて起きないわけが…!)



来ヶ谷「寝ている間にどこまでされても起きないか…だと?」

理樹「うん。来ヶ谷さんの意見が聞きたいんだ」

理樹(もしかしたら僕は眠りが深い部類なのかもしれない。だったらちょっとやそっとじゃ起きなくても不思議ではないのかも…)

来ヶ谷「まずどうしてそう考えたのか経緯を教えてくれないか?誰かを夜這いするにしても結局は起こさないといけないが…」

理樹「やんないよ!」

理樹(この際来ヶ谷さんに協力してもらえるなら解決するかもしれないし、変な予想を立てられるのも嫌なので相談してみた)







来ヶ谷「ふむ。そんなことが……」

理樹「何故かシャツだけがなくなってるんだよ。戸締りはしっかりしてたし人が進入出来るとは思えないんだけどな…」

来ヶ谷「なかなか興味を唆ることに巻き込まれているな理樹君は」

理樹「巻き込まれてる側としちゃたまったものじゃないよ…」

来ヶ谷「さて、ちなみにさっきの疑問だが私は寝ている小毬君をアクロバティックなポーズに出来たことはある…が、君の想像するような不審者にはとても出来ることとは思えないからあまりヒントを与えることも出来なさそうだな。すまない」

理樹(そのことも色々つっこみたかったけど今は僕のことだ)

理樹「いやいや…別にいいよ」

寝ぼけながら描いたから>>20が色々おかしなことになってるので少し訂正



カフェテラス

来ヶ谷「寝ている間にどこまでされたら起きるかだと?」

理樹「うん。来ヶ谷さんの意見が聞きたいんだ」

理樹(もしかしたら僕は元から眠りが深い部類だったのかもしれない。それならちょっとやそっとじゃ起きなくても不思議ではないのかも…)

来ヶ谷「まずそう考えるに至った経緯が気になるな…誰かを夜這いするにしても結局は起こさないといけないが」

理樹「やんないよ!」

理樹(この不可解な現象を人に言って回るのは抵抗があるけどもし来ヶ谷さんに協力してもらえるならもしかすると解決するかもしれない。それに来ヶ谷さんの中で変態にされるのも嫌なので、思い切って相談してみた)




来ヶ谷「ふむ。そんなことが……」

理樹「何故かそれだけがなくなってるんだよ。戸締りはしっかりしてたし人が進入出来るとは思えないんだけどな…」

来ヶ谷「なかなか興味を唆ることに巻き込まれているな君は」

理樹「巻き込まれてる側としちゃたまったものじゃないよ…」

来ヶ谷「さっきの疑問だが、私は以前、寝ている小毬君をアクロバティックなポーズにしたことはある…が、並みの不審者にはとても出来ることとは思えない。この件に関してはあまりヒントを与えることも出来なさそうだな。すまない」

理樹(そのことも色々つっこみたかったけど今は僕のことだ)

理樹「そんなことないよ。相談に乗ってくれてありがとう」

夕方

理樹「………」

理樹(3日連続でこんなことが起きるなんて…それもちょうど僕が熟睡出来ている時に。今日はいっそ寝たふりをして部屋を見張ってみようか)

佳奈多「直枝!聞いてるの?」

理樹「あ、ごめん!なんて?」

佳奈多「だからこの紙全部シュレッダーにかけておいてって言ってるじゃないっ」

理樹(そういえば部屋のことでクドに相談されていたな…聞いてみよう)

理樹「ねえ二木さん。最近クドと別々に寝てるんだって?」

佳奈多「……なんであなたがそれを?」

理樹「本人から聞いたんだよ。二木さんのこと気にかけてたよ?」

佳奈多「……クドリャフカに言わなくてあなたに言うことなんかない」

理樹「いや、その通りだけどさ…クドはああ言ってたけど寂しがってるようだったし」

佳奈多「…そ、そうなの…?」

理樹「うん。訳がわからない分余計に」

理樹(少し考える仕草をしてから言った)

佳奈多「………じゃあ、今日限りって伝えておくわ…」

理樹(よく分からないけど渋々の判断だったようだ)



理樹部屋

理樹「と言う訳で絶対に今日は寝ない!」

真人「よしゃあ!それなら恭介と謙吾も起こして朝まで遊び倒すか!?」

理樹「いやいやいや!それじゃあ意味無いよ。だって騒いでたら犯人が来ないじゃないか!」

真人「じゃあなんだ?寝たふりしてずっと起きてるのかよ?」

理樹「そういうことになるね。ちょっと自信ないけど…」

真人「ならこいつを試してみるかい?」

理樹(たぷんと青色の液体を渡される)

理樹「これは?」

真人「マッスルエクササイザー・トリニティーだ!徹夜の夜に聞くぜ?」

理樹「ありがとう真人!これで一夜を過ごすよ!」

×聞く
○聴く

×聴く
○効く

真人「じゃあお休み。健闘を祈るぜ」

理樹「うん!」

パチッ

理樹(さっそく飲んでみる)

ゴクッ

ドクンッ…

理樹「あっ……ああ!」

理樹(みるみるうちに体が火照ってきた…!飲むたび喉が乾き、更に次の一口を欲する!やめられない止められない!)

ゴクッゴクッ



カランッ…

理樹「ふう…」

理樹(あっという間に飲み干した…ここまで目が冴えるとむしろこれからの事を考えると暇すぎて仕方がない!)

理樹「そうだ、暇潰しに今度こそあのCDを最後まで聴いておこう。なんだかんだでいつも寝てしまうし」

ポチッ

『こんばんわ。今日も聴きにきたのね…いいわ、また私が眠りの世界に誘ってあげる……』

理樹「果たしてそれはどうかな?今日の僕は一味違うぞ!」

30分後

『悩み事も関係のない隔離された世界にあなたは漂っている……』

理樹(まだ終わらないのかと思っていたちょうどその時だった)

『さあ…そろそろ眠ったかしら…?』

理樹「ん、終わりかな」

『……あなたは今、意識のずっと奥の奥にいるわ…自分ではどうしようもない無意識の領域…私はそこに入り込んで話しているの……』

理樹「……ん?」

『あなたは、それはもう自分の意思ではどうする事もできない。何を命令されてもそれに抵抗する事はできない。助けを呼ぶ事も、頭でなにかを考える事も、なにもかも』

理樹(口調が変わった。優しい言い方が事務的な、無情の口調に)

理樹「な、なにを言ってるんだ…?」

『『あなたは次の人に絶対服従するわ』』

理樹「次の人…?」

佳奈多『…あ…あー……えっと、これでいいのかしら?』

理樹「は?」

理樹(先ほどの女の人から切り替わって、録音された声がした。よく聞き慣れた声だった)

佳奈多『ゴホン…マニュアル通りならあなたはもう私の声に抵抗出来ないわ。まずはそのまま扉を出なさい。そして靴を履いて女子寮まで来るのよ。これはこのCDを夜に聞く間ずっと続けるわ…そして最後には何事もなかったようにベッドにお戻りなさい』

理樹「ま、まさかさっきまで聴いていたCDは…さ、催眠術だったのか…!?」

理樹(催眠術!そんなもの聴かせて二木さんはなにがしたいんだ!)

理樹「いや、しかしその予想が本当だったとして二木さんの言う事を聴かなければならないとするなら……僕は3日前からずっと女子寮に行っていたという事に………ああ!!」


真人『雲で星が見えねえな…こりゃ明日は雨になるかもな』

クド『昨日の夜は小雨だったので滑りやすいのですが……』

理樹「そういうことだったのか!僕は馬鹿だっ…なんでこんなことに気付かなかった…!それならあの砂も、雨も…女子寮に行くまでに…もしくは帰る時に付着したものだったということか…」

理樹(だとするとこれの黒幕は……)

『そろそろ門の前に着いたかしら?安心しなさい。女子寮から私の部屋まではセンサーにも引っかからないルートがあるから。それはまず門の横の……』

理樹(これはむしろチャンスだ。このまま操られたふりをしていれば直接問い詰めることが出来るぞ…)





佳奈多・クド部屋前

佳奈多『鍵は開けてあるから入りなさい。そしてイヤホンを外して本物の私の言うことを引き続き聴くのよ』

理樹「……………」

ガチャッ

佳奈多「……今日も来たわね。直枝」

理樹「……………」

バタンッ

理樹(扉が閉まった瞬間、二木さんの口角が不気味に上がる)

佳奈多「ふっ……ふふふふ…」

理樹(怖い)

佳奈多「さあ、最初はいつも通り私の頭を撫でなさい」

理樹「!?」

理樹(思わず聞き返すところだった。なんだ、今僕に頭を撫でろと言ったのか?普段僕に触れられることすら嫌う二木さんが?)

佳奈多「ど、どうしたの?撫でてよ」

理樹(不安げに聞いてくる。ここでバレたら元も子もない。今は従わないと…)

理樹「……………」

ナデナデ

理樹(恐る恐る二木さんの頭を撫でた。少し震えていたかもしれない)

佳奈多「~~♪」

理樹(良かった、気付いていないようだ。…というか今気付いたけどクドを西園さんのところに遣ったのはこういう事だったのか……)

理樹(でもいったい何が目的なんだ…どうしていきなり頭なんか…)

佳奈多「良い子ね直枝は…さあ、次はベッドに腰掛けて…」

理樹(言われるがままに座った)

ゴロンッ

佳奈多「んふふ…」

理樹「!」

理樹(寝転がられた。二木さんが僕の膝を枕代わりに!)

佳奈多「………直枝の匂い…」

理樹(そうか分かったぞ!日頃のストレスが溜まってるから僕をこうやって誇りの欠片もない行為をさせる事で発散させてるのか!)

佳奈多「………」

ゴロンゴロン

理樹(その後二、三回寝返りを打つと突然起き上がった)

佳奈多「………こっちを見なさい」

理樹「………?」

理樹(僕の隣に座ると手をそばへ近づけた)

佳奈多「手…ほら…」

理樹(もう一方の手で僕の腕を掴むと強引に握手させた。なんて強情なんだ)

佳奈多「えへ…」

理樹(その笑いは完全に僕を馬鹿にしているようにしか聞こえなかった。前々から神経を疑っていたが、まさかここまでとは……)

佳奈多「本当は一週間続けるつもりだったんだけどクドリャフカも心配してるらしかったし…しょうがないわよね…これが最後の夜だなんて」

理樹(おっ……)

佳奈多「いいえ、3日だけでも私にはもったいないご褒美だったわ。そう、あれはあなたに睡眠導入CDを勧めたあとのこと…」




カチカチ

佳奈多『ん…何かしらこのページ?………こ、これは!』

『完売ごめん!催眠導入CD!これで気になるあの人もあなたのもの!』

佳奈多『なになに…眠りに落ちた深層心理を操って最後に自分の声を当てるとその後は思いのままですって…!?』

クド『わふ?なにを見ているんですか佳奈多さん?』

佳奈多『あ!いや、なんでもないわ!』

カチカチッ

『ご購入ありがとうございました』

佳奈多『あっ………』



佳奈多「どうせ買っちゃったし物は試しにってね…本当にあなたが来た時はそれはもうびっくりしたわ」

理樹(ということはやはりこの3日間知らない間に操られていたのか…それでいて昼間は知らん振り…なんという厚顔無恥!見てくれは美人でも中身は悪魔のような人間だったのか!)

佳奈多「うふっ…でもこうして普段のあなたには出来ないことが出来るっていうこんな機会はもう一生訪れないだろうし、今のうちに散々甘えておくわ」

理樹(腕に手を回し始めた。それはさしずめ蛇が体を僕に絡みつけて捕食するかのような恐怖だった)

佳奈多「はぁ……」

理樹(吐息が聴こえてきた…やめろ、これ以上僕に近付いて何をする気だ!)

佳奈多「や、やっぱり緊張するわね…こういうのは……」

理樹(………?)

佳奈多「ね、直枝。キス…しようかしら」

理樹「……………」

理樹(……………)





理樹(…………うん?)

佳奈多「な、なんて!うっ…嘘に決まってるじゃない!…それに、いくらなんでもそういうのはまだ早いわよね……というかなんでカカシ同然の直枝に向かって言い訳してるのかしら私は!」

理樹(なんだ嘘かっ!一瞬思考停止したけどやはり二木さんは二木さんだよ!頭にきた!今回ばかりは僕もだんだん怒りが湧いてきたぞ……っ!)

佳奈多「あ、そうだわ。この間シャツをあなたに借りちゃったわよね…ごめんなさい。別れるのが惜しくてつい……気付いていないようで良かったけど」

理樹(なっ!それも二木さんだったのか!くそぅ…もうイジメって言っても過言じゃないよこれ…仮にも風紀委員長だっていうのに!本当…君には失望したよ…)

佳奈多「そうそう、まだあなたに言わせてなかったわね。ほら、昨日私に言ったでしょう?……正確には言わせたんだけど」

理樹「………!?」

理樹(昨日の夜に言わせたことってなんだ…?そうか、操られている間の記憶は起きている時は忘れてしまうのか!)

佳奈多「もう忘れたの?ほら…『二木さん好きだよ』は?」

理樹「~~~~!?」

理樹(なんてことを言わせていたんだ!そこまで僕をコケにしたいのかっっ)

佳奈多「あれ…おかしいな……」

理樹(くっ…)

理樹「ふ、二木さん…」

佳奈多「!」

理樹「す…好きだよ」

佳奈多「キャーッ!」

理樹(小声で叫ぶとベッドに顔を埋めて足をジタバタさせた。屈辱だ……)

佳奈多「も、もう一回言ってくれないかしら?録音するから!」

理樹(もう泣きそうだ…助けて真人…恭介…!)




佳奈多「ハァハァ…次はそうね……」

理樹(この地獄のような時間はいつまで続くんだ…こんな仕打ちを受けるならいっそ最初から操られたままのほうが良かった!)

佳奈多「………わっ私を抱きしめなさい!前からじゃないわよ…?後ろから…」

理樹(えっ………ええーーーっ!?)

理樹(だ、だ、だ、だ、抱きしめるだって!?いや待て冷静に考えろ直枝理樹!きっとこれは二木さんの罠かもしれないぞ!そ、そうさ…どうせ最初から起きていることを知っててわざと試すようなマネをしているに違いない!)

佳奈多「……………」

理樹(でも…これは明らかに僕を待っている…どうする…どうするよ僕!?)

佳奈多「…………」

・いく
・いかない

理樹(どうする…どうすんの……どうするよ僕っ!)




・いかない←

理樹「…………」

佳奈多「……どうしたの?」

理樹「…君の思い通りにはならないよ…」

佳奈多「え……?」

理樹(何が起こったのか分かっていないらしい)

理樹「さっきから黙って騙されたふりしてればいい気になって!僕は自分の誇りを守る。誰が君なんか抱きしめるもんかっ!!」

佳奈多「え……な………」

理樹(段々自分を取り巻く状況を理解し始めたのか震えている)

理樹「ばーかばーか!あの仕事だって二度と手伝ってやるもんかっ!頼んだって許してやらないからね!」

佳奈多「うっ……」

理樹「?」

理樹(顔を伏せた…なんだ…何が……)

佳奈多「うっ…うぇぇぇえんっ!」

理樹「なっ…」

理樹(何故か突然大声で泣きじゃくった。手で顔を隠そうともず、腕もだらんと垂らしてわんわん泣かれた)

理樹「え、いやあの二木さん…お、落ち着いて…!」

佳奈多「ぜ、全部聞かれた…それより…それより直枝に嫌われ……ふえぇぇええん!」

理樹「ほ、ほら!抱きしめるから!ねっ!?」

理樹(必死の慰めも無駄に終わり、もはやなす術はなくなった)

バンッ

「風紀委員長の部屋から悲鳴が!!」

「どうされたんですか二木さん!?」

理樹「あっ……」

「「………………」」

「「キャーーーーッ!!」」


直枝理樹、なんやかんやあって

退 学




終わり

末尾が違う

せめて文似せるとかさあ

佳奈多「…………」

・いく
・いかない

理樹(どうする…どうすんの……どうするよ僕っ!)




・いく←


理樹(ええい、ままよ!)

ギューーッ

佳奈多「わっ……」

理樹(もしも罠だったとしても女の子を抱きしめられるんならもうそれでいいや!)

佳奈多「う、うあ……あぅ……」

理樹(女の子はいい匂いがすると聞いたことがあったけどまさかここまでとは…)


5分後

佳奈多「……も、もういいわ…」

理樹「…………」

スッ

理樹(す、凄くドキドキした…)

佳奈多「そ、それじゃあもう帰りなさい………また明日」

理樹「…………」

理樹(また……明日…)

次の日

夕方

カリカリカリ…

理樹「……ふぅ…」

佳奈多「よし…」

理樹「あ、二木さんも終わったんだ」

佳奈多「ええ。もうあなたも帰っていいわよ」

理樹「じゃあ今日は一緒に帰らない?」

佳奈多「……はあ、仕方がないわね」

理樹(……………)

佳奈多「どうしたの?行かないなら放っていくわよ」

理樹「ごめん!今行くよ」

佳奈多「あいかわらずトロいわね…これだから直枝は」

理樹「あ、そうだ二木さん」

佳奈多「なに?」

理樹「……そういえばシャツ、まだ返してもらってなかったね」

佳奈多「………………」

佳奈多「…嫌………う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

バンッ

ダダダッ

あーちゃん「たっだいまー!……ってうぉおう!今の何!?なんでかなちゃん悲鳴なんかあげて…」

理樹「いや…なんでもないです」


二木佳奈多、次の日
欠 席



本当に終わり

おまけ



理樹「今日はいろんな意味でよく寝られそうだよ…」

真人「なんだよ、事件は解決したのか?」

理樹「まあそんなところ…おやすみなさい……」

真人「おう!おやすみ。」

パチッ

真人「………ん?なんだ…俺のベッドに音楽プレイヤーが……おい理樹ー?これお前のか?」

理樹「なにがー?」

真人「音楽プレイヤー」

理樹「ああ僕のだよ…でも今日は聴く気分じゃないからいいや。真人たまには使ってみたら?」

真人「いや俺は普段音楽は聞かねえし…ん、睡眠導入CD…?……よし、試しにこれ聴いてみっか!」

ポチッ

『……こんばんわ。今日も聴きにきたのね…いいわ、また私が眠りの世界に誘ってあげる……』




……………………

…………






おわりんこ

>>46
>>47
マジに俺だわ
ルーター調子悪かったからそのままにしてて今LAN繋いだ
混乱させてすまんな

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