八幡「何故?・・俺が高校の入学式に出ているんだ?」 (118)




八幡「(はっ!)」

八幡「(た、体育館?・・・卒業式はもう終わったはずだ。俺はその帰り道に・・・)」

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眠ってでもいたのだろうか?
目をさますような感覚とともに、目の前が明るくなった時、俺は体育館のパイプ椅子に座っていた
ああ、そういえば今日は卒業式だった、退屈な式典に眠ってしまったのだろう
起立するところが来る前に目を覚ましてよかった

まだぼんやりとしたまま、あくびをしようと手で口元を覆った時、意識がはっきりと戻ってきた
いや、卒業式はさっき終わったはずだ
俺は・・中学の時と同じように、誰から誘われるでもなくすぐに家路についたはずだ

だが中学の時とはっきりと違うところがあった
俺の胸の中には大きな後悔が残っていたことだ
高2の、もう春も近い冬、俺は間違えた
結局俺は雪ノ下を助けることも、由比ヶ浜に応える事もできなかった
もう一度高校生活をやり直すことができれば
後悔とともにそんなできるはずがない事を頭のなかで繰り返し考えながら重い足を家に向かって進めていた

そんな考え事にまわりなど何も見えていなかったのだろう
俺が飛び出したのか?信号に気が付かなかったのか?原因は全く覚えていない
危険を知らせる声に顔を上げた時には、もう目の前に車のバンパーがあった
俺は車にひかれた・・・轢かれそうになった・・・はずだ
あれは、あるいはその前の卒業式は夢だったのだろうか?
そして視線を舞台に上げた時目に飛び込んできた文字を見て思わず声を上げそうになった



[平成○○年度 千葉県立総武高等学校 入学式]

入学式だって!?
夢でも見ているのだろうか?
たしかに俺はもう一度高校生活をやり直せたらと強く願った
だが・・、バカバカしい
事故のショックでタイムスリップ?
今更漫画のシナリオにしたってベタすぎる
そんな事が実際に起こるはずがない
だいたい俺は入学式には出れなかったのだ
由比ヶ浜の犬を庇い、雪ノ下の乗った車に轢かれて、あの時は病院にいたのだ

だがこの夢は一向に覚める様子がない
こっそりとポケットから取り出したスマホのカレンダーも確かに俺が入学した年を示していた
粛々と式典は進行していく

雪ノ下は、由比ヶ浜は何処にいるのだろうか?
雪ノ下は国際教養科だ。多分席はかなり離れているだろう
由比ヶ浜も見当たらない
あいつの一年の時のクラスを俺は知らないが、あの特徴のある髪型だ
見える範囲にいるならわからないはずはないだろう
他に知っている奴はいるだろうか?
とはいえ、俺は一年の時に同じクラスだった奴らを殆ど覚えていない
もっともそれは向こうも同じだと思うが・・・などと自虐的な笑みを浮かべたところに知った名前が呼ばれるのが聞こえた


教師A「新入生代表、葉山隼人」
葉山「ハイ」

葉山はいるのか
真っ先に彼女ら二人を探していたことに苦笑をしつつも、それならばとまわりを見渡すと
わりと近くに三浦と戸部がいることに気がついた
それにしても入学式では葉山が代表あいさつをしたのか
あれはたいてい入試試験の得点トップが務めるものだと聞いたことがある
であれば、雪ノ下がやってもおかしくないのかもしれないが葉山も常時学年2位の成績だったはずだ
一発勝負ならば雪ノ下に勝つことがあってもおかしくはないだろう

ありきたりの挨拶をぼんやりと聞きながら、他に知っている顔は無いかとあたりを見回すが
海老名さんは地味だし、大岡とかは元々印象が薄い
それ以上は見つけることが出来なかった

やはり夢を見ているわけでは無いらしい
式が終わり、教室への移動を促される
俺のクラスは変わっていなかった
だが教室には1年の時にはいなかったはずの奴らがいた
三浦と戸部、そして海老名さん、大岡と大和も同じクラスにいる
俺はこいつらと同じクラスだったのは2年の時だ

これでは2年の時と同じではないのか?とも思ったが、どうやら葉山は違うクラスらしい
他にも戸塚も川崎も、相模やその取り巻きもいないようだ
由比ヶ浜は同じクラスでは無いのだろうか?
まだ姿は見えない
教室の隅に一つ誰も座っていない席が有るのが気になった



平塚「あー、私がこのクラスの担任の平塚静だ」

まただ
一年の時、平塚先生は俺のクラスの担任ではなかった
平塚先生が生活指導担当として俺を気にかけてくれるようになるのはまだしばらく先だ
もし俺が本当に過去に跳んでいたとしても、どうやら単なるタイムスリップでは無いようだ
俺の体験した過去と色々と相違点が多すぎる
だとすると・・・
雪ノ下や由比ヶ浜はこの学校にいるのだろうか?

そういえば先生は、この時期から面識が合ったかどうかは分からないが、陽乃さんを通して雪ノ下の事を知っていたはずだ
だが俺が彼女らと知り合うのは2年になってからだ
雪ノ下が校内で有名になるのももう少し先のことだ
今の俺が聞いてもいいものなのだろうか?
らしいというか、独身のアピールを忘れなかった平塚先生にクラスの連中は大げさに笑い声をあげていた

平塚「さて、最後に皆への連絡と注意なのだが・・・、知っているものもいるかもしれないが今朝校門前で交通事故があった。うちの新入生で、今日このクラスの仲間になるはずだったのだが怪我をして・・・しばらく入院することになった」

なんだって!
挨拶の最後に真剣な声で告げた先生の言葉に声を上げそうになった
それは俺が巻き込まれるはずだった事故じゃないのか?

平塚「皆に合流するのは・・・・、まあ・・・しばらく・・・先になると思うが、元気になったら仲良く色々教えてあげてくれ。いいか、知っての通りうちの学校の前は交通量が多い。皆も登下校の際には気をつけてくれ」

事故にあって入院をしたのは俺だったはずだ
一体誰が・・・誰に・・・
まさか・・・
俺は普段こう言う目立つ事をするタイプでは無い
だが、クラス中の注目を集めることになろうとも、聞かずにはいられなかった

八幡「あ、あのー、先生」

平塚「ん?あー君は・・」

八幡「比企谷です。えっと、その事故にあった生徒って・・名前は・・」

平塚「ああ、すまんすまん。由比ヶ浜さんという女子だ」

再開

由比ヶ浜が・・・
それは俺だったはずだ・・・怪我をするのは俺の役割だったはずだ
俺が庇って・・
庇って?
由比ヶ浜も誰かを庇って怪我をしたのだろうか
彼女たち二人と共にあの部室で過ごすことになる誰かがいるのだろうか
いたとしたら、俺は・・・
もうこれは、時間を遡っただけとは考えられない
此処は俺がいた世界とは別の世界だ

八幡「せ、先生」

平塚「なんだね?まだ何か?」

八幡「そ、その事故ってどういう状況・・だったんですか?」

平塚「状況?」

八幡「由比・・そいつが飛び出した理由とか、相手の車とか、乗ってた生徒とか・・・あ!誰か助けられた奴はいませんでしたか?」

平塚「・・・?比企谷、何か見ていたのかね?」

八幡「あい、いえ、そういうわけでは・・」

平塚「ふむ、比企谷くん、すまないが職員室に来てもらえるかな」

随分目立ってしまっているようだった
不審に思われただろうか?
あの事故は早朝だった
俺の場合は、少なくとも生徒には間近で目撃したものはいなかったはずだ
取り乱して、まくしたててしまったのは失敗だったかもしれない
それでも情報がほしい
教室を出て行く俺に多くのクラスメイトが訝しげな視線を向けていた
戸部や三浦達も・・・

平塚「さて、君は何か見ていたのかね?」

八幡「い、いえ、そうじゃないんですけど・・気になって。知っているやつかもしれないというか・・・」

平塚「由比ヶ浜さんと知り合いなのかね?」

八幡「い、いや、なんていいますか・・・」

平塚「君は飛び出しただとか、相手がどうだのとか言っていたな・・・事故の瞬間を見ていたのではないかと思ったのだが」

八幡「ほ、本当に何も・・・」

平塚「まあ緊張をするな。呼んだのはもし現場にいたのなら証言をして欲しいと思ってな」

八幡「証言?」

平塚「まあ、人身事故だ。警察も車の運転手には事情聴取をしているが、被害者側にも証言があればと言っていたのでな」

八幡「被害者側の証言が・・・取れないんですか?」

平塚「ああ、ちょっと大きい事故だったそうでな、一命は取りとめたが意識がまだ戻らないらしい」

八幡「!」

平塚「医者はもう命に別状はないと言っているらしいから、彼女からは意識が回復して、落ち着いてから話を聞くことになるだろうが、まあ、こういう事故は時間がたつほど実際の状況がわからなくなってくるものだ。第三者の目撃証言があれば助かる・・・と言うことらしい」

大怪我?
意識不明?
あれは3週間もあれば治る軽い骨折だったはずだ
そういえば教室で由比ヶ浜の復学時期について語った時、平塚先生にしては歯切れが悪かった
いったいどれ程度の怪我をしたんだ?
いや、今さっき命に別条はないと言っていたではないか

平塚「まあドライブレコーダーの録画は残っているらしいが、機械的なやり取りだけというのも双方のご両親同士の心情も有ると思う。私としてもなるべく彼女らが険悪な関係にならないよう配慮したいと考えているのでな」

「ご両親同士?、彼女らの関係?」

「し、しまった、私としたことが。君は何というか、鋭いのだな」

「そ、それじゃあやっぱり車の方にはうちの生徒が乗っていたんですね」

「はー、他言無用だぞ。今日新入生代表の挨拶をするはずだった生徒だ。取り乱していたのでな、挨拶は別の生徒に代理を頼んで今日は帰らせたと言うわけだ」

「・・・」

「もちろん雪ノ・・車に乗っていた生徒が悪いわけでは無いのだが、由比ヶ浜さんの回復後も被害者側と加害者側の立場で彼女らは3年間この学校で過ごさねばならん。さっきのは私のミスだが、比企谷くん、くれぐれも憶測で人に話したりしないように頼む。わかったね?」

「・・・はい」

「では教室に戻り給え」

確定だ
先生、名前も漏らしてましたよ
やはり車に乗っていたのは雪ノ下だ
そしてここも違っている
本来俺たち3人が実際に顔を合わすのは一年以上先の話だ
だが後になって知ったことだが、実際は入学式の朝の時点で接触はしていた
そしてそれは、少々の誤解も産みはしたが、後に彼女たちとの関係を深めるきっかけになった
俺にとってあの事故は、彼女らと出会うために絶対に必要な事だったのだ

俺が出れなかったはずの入学式には、此処では彼女ら2人が出ることができなかった
そして雪ノ下と由比ヶ浜は、この世界では最悪の出会いをしたといえる
由比ヶ浜の誕生日を祝った時に雪ノ下が言った言葉が思いだされる
俺と由比ヶ浜が出会いからしてまちがっていたと
この世界の彼女達の出会いはどうなのだろう
始め直す事はできるのだろうか?
そしてまだ出会えてもいない俺は?
そういえば・・、確か何かもう一つ大切な事が・・・聞かねばならないことが・・・

八幡「そうだ!平塚先生」

平塚「まだ何か?」

八幡「由比ヶ浜・・さんは、その事故の時誰かを助けたとかしてませんか?」

平塚「いや?、そういった話は聞いていないが」

八幡「そうですか」

それを聞いてホッとした
もし彼女ら以外にこの事故の関係者がいたら?
役割は変わってしまったが、例えば由比ヶ浜に助けられた・・男・・・いや、誰かがいたとしたら
この世界での俺は彼女らと関わることを許されていないのではないか?
今は由比ヶ浜の回復を願わなければならないのに、そんな心配をしていた自分が嫌になった

再開

教室に戻ると、まだほとんどの生徒が教室に残っていた
まあ当たり前だろう
ここからは進学・進級の際にのみ催される社交の場だ
互いを値踏みして、お互いが自分に相応しいと思える人間同士の集団を作る為の儀式だ
こんな日にすぐに帰るのはボッチくらいだ
すでにいくつかの輪ができている
当然のように戸部達5人は同じ輪の中にいる
俺はどうやらまた乗り遅れたらしい
由比ヶ浜、やっぱり俺は事故がなくてもボッチのままみたいだぜ

でもそれはどうでもいい
今この世界で俺がすることは雪ノ下と由比ヶ浜に出会い直すことだ
再びちゃんと始めるために
・・・俺に・・・できるのだろうか・・・
そうだ!
なにもないのはわかっている。けれど見て置かなければいけない場所がある
そして、早く帰って頭の中を整理したい
鞄を掴んで帰ろうとすると、背中から声をかけられた
戸部だった

戸部「ねーねー、あー、えー」

八幡「な、な?、あ、ああ、名前か。比企谷だけど」

戸部「あー、そうそう。ヒキガヤ君だ。ねえー、さっきの事故った娘って知り合いなん?」

八幡「あ、い、いや、違った・・・みたいだ」

三浦「ふーん。でー結局なんだったの?あんた何か知ってんの?」

八幡「い、いやホントになんも。そうだ!お前らこそ・・・知らないか?同じ中学とか?」

三浦「えーと、ユイガハマだっけ?あーしは知らない。あんたらは?」

戸部「いやー、同中にはいなかったと思うけど」

八幡「そうか」

戸部「でもさー、ほら、女子が事故とかやべーし、やっぱ気になるでしょー。ヒキ・・」

八幡「あー、比企谷だ」

戸部「わりーわりー、珍しい名前だしー」

もしかして、この世界ではこいつらと由比ヶ浜はもう知り合いなのかもしれない
そう期待して聞いてみたが、やはりそう都合良くはいかないらしい
それにしてもこいつらが俺に話しかけてくるとは
だが、『ヒキガヤくん』・・・か
俺はこいつらにとっては『ヒキガヤ』では無い
そもそもこの学校で俺を、『ヒキガヤ』呼ぶ人間は少ない
平塚先生を始め教師達
あえて使い分けているが葉山がそうだ
後は廻先輩にも何度かそう呼ばれた気がする

そして当然、この学校で一番『ヒキガヤ』という言葉を発したのは雪ノ下だ
自分の名前を正しく呼んでもらえない人間なんて言うのはほとんどいないだろう
この世界では俺は誰からも正しい名前で呼ばれるのだろうか
たとえ何人が俺を『ヒキガヤ』と呼んだとしても、雪ノ下が俺の名を呼ぶ声を聞き間違う事は絶対にないと断言できる
それでも、なにか面白くない
『ヒキガヤ』という響きは特別なものに思えた
そして、『ヒッキー』と言う呼び名はこの世界で聞くことができるのだろうか

八幡「あ、あのー」

戸部「なに?ヒキ・・・あー、なんだっけ」

八幡「あ、ああ、覚え難かったらヒキタニでも、漢字で見たらそう読めるし」

大岡「おいおい、名前だろ。そんなんでいいのか?」

八幡「あ、ああ。中学の時もそう呼ばれてたし、ソッチのほうが・・・」

三浦「は?なに?あんたいじめられてた系?」

八幡「いや、いじめになるほど知り合いがいなかったっつーか」

三浦「ぷっ!、なにそれ」

戸部「いやー、面白いわー。そんじゃヒキタニくんでー」

八幡「あ、ああ」

此処でもこいつらにとって、俺は『ヒキタニ』で良い
俺を『ヒキガヤ』と呼ぶ人間は少なくていい
少なければ少ないほどより貴重だと思うことができる
簡単な自己紹介が終わると戸部たちはクラスメイトの集まりに俺を誘った
十数人程度で飯を食いに行くらしい
まさかこいつらが俺を誘うとは思わなかった
だが俺はこいつらが根本的にはいい奴らだということを知っている
この入学早々教師に呼び出され、この社交の場に遅刻した俺を気を使っているのかもしれない
いや、単に事故で此処に来れなかった女生徒に興味があるだけなのかもしれない

誘われた事自体にはありがたいとは思う
だが、今の俺には由比ヶ浜を知らないこいつらと親交を深める理由はない
そして実際、俺は1年の時はボッチだった
そもそもそんな集まりに行ったとし俺がこいつらのグループに入れるとも思わない
そして本来はそこにいたのは由比ヶ浜だ
だが用事を理由に一度断ったが、それでもと誘われた

俺は基本的に押しに弱い
それが好意的なものにならばなおさら
大体俺は好んで人を遠ざけていたわけではない
むしろ暗黒の中学時代を終え、新しい新たに始まる生活に期待をしていた
本当に地味な高校デビューを・・・
これは本来俺が高校生活に望んでいた事のなのかもしれない
だが、すでに俺は一度高校生活を終えている
そして、一時ではあったが、元々望んでた以上の光に満ちた高校生活を送ることが出来た
苦い思い出となってしまったが・・・
やり直したいのは、こいつらと友達になることではない
さて、今度はどんな理由で断ろうかと考えていた時、ふと思いついた

俺の時よりも時間はかかるだろうが、由比ヶ浜はこのクラスに戻ってくる
あいつは俺とは違う
この時期はまだ自分の性格に悩んではいたはずだが
それでも俺ほどには、遅れてクラスに合流することはハンデにはならないだろう
しばらくもすればこのクラスに溶け込むに違いないとは思う
三浦ならば、また由比ヶ浜を引き込むかもしれない
だが確実ではない
もし由比ヶ浜がボッチになりそうであっても
俺が戸部や三浦たちと距離が近いところにいれば、確実に由比ヶ浜をこいつらと結びつける事ができるのではないか?

もっともついて行ったとしても、俺がこいつらと友だちになれる保証はない
この後もう一つ、選別の儀式が控えているのだ
俺には苦行ともいえるが、参加するだけはしてみようと決めた
だが用事があるのは本当だ
意味は無いとはわかっていても、どうしても見ておかなければならない場所がある
場所は学校帰りのサイゼリアであるという
俺は遅れて合流することを伝え、教室を後にした

向かった先は、当然奉仕部の部室だ
雪ノ下も由比ヶ浜もそこにはいないことは分かっている
そもそも今日は学校にすら来ていない
奉仕部ができるのもだいぶ先の事の・・・はずだ
教室名を示すプレートには何も書かれてはいなかった
良かった、どうやら空き教室らしい
もし此処が何かの特別教室だったり、すでに俺達の上の学年の問題児が活動する奉仕部があったりする訳では無いようだ

誰もいないのは分かっているがノックをしてみる
あの冬の、初めて此処を依頼者として訪れた時のように
当然返事はなく、扉には鍵がかかっている
少しホッとした
だが、再び此処で雪ノ下の紅茶を飲むことはあるのだろうか?

サイゼリアでたっぷり2時間は話し込むことになった
もっとも俺はほとんど喋らなかったが・・
これは、先ほどおおまかに分けられたグループ内で、互いが互いに相応しいと思うものを更に絞り込む場だ
我ながらひねくれた物の考え方だが、言い方の問題だけだ。決して間違いではないだろう
ほぼ始めて顔を合わせた者同士に、こんなに長く話すことがあるのか不思議でたまらない
参加したことに半ば後悔をしながら、それでも先に帰る事もできず居心地が悪い
どうしても考えが彼女たちのことに及んでしまうが、そうでなくともこういう場で俺にできることは上の空で相槌を打つことぐらいだ
時折話しかけるクラスメイト達に、やはりキョドった対応をしてしまう

それでも三浦たちの会話には耳を傾ける
葉山のいない此処でも、やはりこいつらはつるむ事になるらしい
互いに席も近く、会話の量も5人同士のものが増えていくように感じた
元々こいつらの事についてはそう詳しいわけでは無いがどうやら俺の知っている通りのこいつらになっていくことは間違いないらしい
三浦はほぼ初対面の相手たちの中ですでに女王様のポジションを確立させつつ合ったし
海老名さんは徐々にオタク・腐女子をアピールしている。受けいれられるラインを確かめているのだろう
たまに向けられる質問に適当に答えを返すが、特に大したことは出来なかった
三浦グループ、いや、何処のグループに入るというのも難しそうだ
やはりこういうことは、たとえ2周目であったとしても俺にはハードルが高いようだ
それでも俺のスマホには十数件、こちらの世界に来る前に3年間で知ったものより多くの連絡先が登録された

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