照「髪、だいぶ伸びたね」咲「そうかな」 (196)

よくあるもしも的な日常。
咲も照といっしょに暮らして白糸台に通ってて、テッルが怒るようなことは何もなかったしなんならちょっと過保護なお姉ちゃんという優しい世界。
咲ちゃんではなく咲さんであり、髪が長いという設定。具体的には肩の辺りでゆったり纏めてる感じ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440621188

照「切らないの?」

咲「切っていいの?」

照「だめ」

咲「なにそれ」

照「こうして咲の髪を梳くのが生きがいだから」

咲「もっとまともな生きがい見つけなよ」

照「冗談。はい、いいよ」

咲「ありがと」

照「ん。寝よっか」

咲「自分の部屋に戻ってね」

照「…残念」

咲「おやすみ、お姉ちゃん」

照「うん。おやすみ、咲」

 パチッ


 白糸台・一年教室

咲「…」ペラ…

菫「失礼する。宮永はいるか」

女生徒「あ、えと…宮永さーん」

咲「…」チラ

菫「ありがとう」

女生徒「い、いえっ」

菫「いや。前回と同じ」

咲「お断りします」ペラ

菫「まだ本題に入ってないんだが」

咲「はぁ…」パタン

咲「弘世先輩、暇なんですか?」

菫「これでもそれなりに忙しい身だが」

咲「忙しい人はたかだか一年生一人を勧誘するためにしつこく教室まで何度も来ないと思います」

菫「そうは言うがなキミ。そのたかだか一年生を我が麻雀部に引き込むことは以後三年間の部の更なる躍進を確たるものにすることに等しいんだぞ?」

菫「そうとなれば何度でも、キミが頷くまで赴くさ」

咲「これ以上躍進するつもりなんですか。二年連続インターハイ団体戦優勝校の部長さん」

菫「三年連続…いや、五年連続も夢じゃないさ」

咲「とにかく、お断りします」

菫「そうか。ではまた明日にでも来よう」

咲「…」ジト

菫「明日になれば心変わりしているかもしれないだろ?」

咲「…好きにしてください」ハァ

咲「…」ペラ

菫「…」ジッ

咲「…」

菫「…」ジッ

咲「…あの」

菫「ん?」

咲「まだなにか用が?」

菫「いや?今日の用件はもう済んだ」

咲「ではお帰りになられては」

菫「休憩の時間をどこでどう過ごそうが私の勝手だろう?」

咲「…目の前でそう凝視されては気が散るんですが」

菫「それはすまない。さりげなく眺めるよう努めよう」

咲「そうではなく…。それに、その席の主が困っていますし」

菫「そうだな。すまない、あと十分ほど席を借りてもいいだろうか」

女生徒「は、はひ…」

菫「よし、これで問題はないな」ニッコリ

咲「…」

菫「どうした?」

咲「…お姉ちゃんに言いつけますよ」

菫「照?照ならあそこにいるが」

照「…」コソコソ ジー

咲「…」ハァ

菫「まぁそう気にするな」

咲「…」ジロリ

菫「怖いな。そう睨まないでくれ」

咲「なんなんですか、もう…」

淡「サキー!」

咲「お帰り下さい」

淡「なんで!?」

咲「…なに?なんか用?」

淡「今日こそ勝負を受けてもらうよ!」

咲「やだよ。大星さん、負けると喚くし」

淡「今度は負けないからだいじょうぶだよ!」

咲「じゃあ条件次第で受けるよ」

淡「ホント!?」

咲「駅前の和菓子屋さんの特製抹茶プリンを二個買ってきてくれたら勝負してあげる」

淡「むっ!この私をパシるつもり?」

咲「べつに強制はしないよ」

淡「プライドが邪魔してできないとでも思った?ザンネン!勝ってきたらちゃんと約束守ってよね!」

咲「いいよ」

淡「ホエヅラかかせてやるんだからっ!」

咲「がんばって」


 一週間後

淡「サキー!」

淡「よくよく考えたらあのプリン昼前には売り切れるジャン!平日は学校あるし土曜は部活あるし日曜日はプリンやってないし、どう考えても無理でしょ!しかもおひとり様一つまでだし!」

咲(気付くまでに一週間か…大星さんにしては早かったな)

咲「なに言ってるの?」

淡「はえ?」

咲「学校はさすがにマズイけど、部活くらいなら午前はフケて並ぶくらいしたらいいでしょ?一度で買えるのが一つまでだったら二回行けばいいでしょ?」

咲「そんなことも出来ないくらいじゃ勝負なんて挑まないでよね」

淡「ぐぬぬ…一理ある」

咲(ないよ)

淡「わ、私が甘かったよ。認めてあげる。ようし…今度こそ!」

 週末、堂々と部活に遅刻した淡は滅茶苦茶菫に絞られた。プリンは咲の計画通り照が食べた。


 図書館

咲「…」ペラ

尭深「…」

咲「…」

尭深「…」

咲「…」ペラ

尭深「…宮永さん」

咲「なんですか」

尭深「耳寄り情報があるんだけど」

咲「へえ」

尭深「実は白糸台は、部活のかけもちが許されてるって、知ってた?」

咲「そうなんですか」

尭深「うん。各部から許可さえ下りれば。だから私は茶道部にも籍を置いてるし、弘世先輩も弓道部に出入りしてる」

咲「それで?」

尭深「つまり、宮永さんが麻雀部に入ったとしても、文芸部をやめる必要はないということだよ。やったね」

咲「はぁ。ひとついいですか?」

尭深「うん」

咲「べつに私、文芸部とか入ってませんが」

尭深「!!!!」

咲「はい」

尭深「……ごめんなさい、ちょっと出直してきます」

咲「はい」

 トコトコトコトコ

<失礼しました…
 
 ガラッ

咲「…なにがしたかったんだろ」

菫「やあやあ」

咲「こんにちは」

菫「こんにちは。どうだろう、気持ちは変わったりしてないか?」

咲「生憎ですが」

菫「これは手強いな」

咲「ちょっと聞きたいんですが」

菫「うむ?」

咲「チーム虎姫?でしたっけ。大星さんが入って完成されてますよね、レギュラーチームは。私が入ったってどうしようもないでしょう?」

菫「そうだな…順当にいけば尭深か亦野が落ちることになるか」

咲「そこまでするんですか」

菫「まぁそこまではいかなくても、対局させて戦績の良いものから序列をつければ決まるだろう」

咲「はぁ」

菫「そういうのはいやか?」

咲「いやです」

菫「やさしいんだな」クス

咲「はぁ?」

菫「急にキレ気味になるのやめないか?すこし、いやかなり怖い」

咲「勘違いしないでくださいよ。実力主義も過ぎれば色々と蟠りを作るでしょう?私は大星さんみたいに図太くないので」

菫「力のあるものが力を発揮せずしてチームの発展はないだろ」

咲「そもそもチームとやらの為に力を揮うつもりはないです」

菫「なら個人戦にだけ焦点を絞ればいい。それなら誰も文句は言えまい。あれこそ、まさしく実力ですべてが決まるのだから」

咲「そういう問題じゃないんですが」

菫「それか、別のチームで下剋上を図ってもいいんだぞ?暫定では虎姫がレギュラーチームだが、予選前の最終校内戦次第で覆ることもある」

咲「それこそ冗談でしょう」

菫「そうか?」

咲「話になりませんよ」

菫「それは、白糸台レギュラーチームを相手にしても余裕で勝てるということか?それも、一人で」

咲「…」

菫「…」

咲「…邪推しないでくださいよ」フッ

菫「邪推、邪推か…そうなのかね」

咲「そうですよ。私一人なんかが歯向かったって敵うわけないでしょう」

菫「ずいぶん謙虚なんだな」

咲「事実ですから。もうこんな時間ですし、失礼します」

菫「気が変わったらいつでも来い」

咲「では、また」

菫「…フゥ」

照「珍しく固執するね」

菫「盗み聞きとは趣味が悪いぞ」

照「たまたま聞こえてきただけ」

菫「たまたま、か」

照「そう。たまたま」

菫「まぁ、あれだけの逸材を見るとな」

照「ふぅん」

菫「淡にもずいぶん驚かされたが、お前の妹は次元が違うよ」

菫「さすがはお前の妹だけある」

照「…」

菫「照れるな気持ち悪い」

照「ひどくない?」

菫「照なだけにってか」

照「は?」

菫「すまん、いまのは私が悪かった」

照「反省してね」

菫「…うん」

菫「それにしても想像以上に頑なだ。さすがに心が折れそうだよ」

照「よく言う」

菫「ハハ、誰かさんが説得してくれたらすぐだと思うんだがな」

照「私は一切関与しないよ」

菫「頼む」

照「やだ」

菫「けち」

照「なんとでも」

菫「おかし狂い。変なツモ。シスコン。断崖絶壁」

照「言い残すことはそれだけ?」

菫「落ち着け」

照「どの口がほざくか」

菫「まぁまぁ」

照「…私は何があろうと咲の気持ちを最優先する。咲がいやがることは絶対に強いたりしない」

菫「…」

照「それだけ」

菫「そうか」

菫「それはそうと照」

照「なに?まだなにか?」

菫「もうこんな時間だが。はやく帰らなくていいのか?」
 
照「」

菫「たしかお前、部活がない日は門限があって破ると妹が怒るんじゃなかったっけ」

照「あ、ああ…あああ…」

菫「達者でな」

照「菫、迎えが来てるんだよね。ついでに私も送ってほしい」

菫「誰かさんが説得に参加してくれたらなぁ…」

照「くっ…」

 宮永家


照「…咲。髪、だいぶ伸びたね」

咲「それ、ちょっと前にも聞いたよ」

照「…」

咲「どうかしたの?お姉ちゃん」

照「…咲は、さ」

咲「んー?」

照「…麻雀は、嫌い?」

咲「…」

照「…」

咲「好きだよ」

照「!!!」

咲「麻雀部に入れって?」

照「え、あ、うん…入れ、とまでは言わないけど。入りたくない理由があるのかと思って」

咲「…お姉ちゃんは、私に麻雀部に入ってほしい?」

照「…」

咲「どう?」

照「我儘を…本音を言えば」

咲「うん」

照「入ってほしい」

咲「そっか」

照「私も今年で最後だし、咲といっしょに全国にいきたいっていうのはある」

咲「ん」

照「でも」

咲「でも?」

照「咲が麻雀部に入りたくないのなら…咲がいやなら、強制はしたくない」

咲「そっか」

照「だから、菫の行動に関してはちょっと複雑だった。ごめんね、咲のことを本当に思うなら程々にさせておくべきだった」

咲「本当にね。あの先輩だけはちゃんと止めてよね」

照「まかせて。次からはなにがなんでも行かせない」

咲「…でも、まぁ…次はないかも」

照「?」

咲「お姉ちゃんって、あんまり私に対して我儘とか言わないよね」

照「お姉ちゃんだし」

咲「そだね。お姉ちゃんだもんね…」

咲「私、麻雀部、入るよ」

照「え…?」

咲「お姉ちゃんの我儘を聞いてあげる機会なんてそうそうないからね」

照「咲…」

咲「よかったねお姉ちゃん。いっしょに全国にいこうね」

照「うん…咲、大好き」

咲「おおげさだなぁ」

照「今日はいい夢が見られそう」

咲「あ、寝るなら自分の部屋に戻ってね」

照「…ちぇ」

咲「おやすみ、お姉ちゃん」

照「うん。おやすみ、咲」


 白糸台・麻雀部

菫「…ここに自らやってきたということは、そういうことだと捉えてかまわないんだな?」

咲「どうぞ」ペラッ

菫「入部届、【宮永咲】…よし」

咲「これからよろしくお願いします、弘世先輩」ニコッ

菫「いい笑顔じゃないか。クラッときそうだよ」

淡「サキー!」

咲「愛想笑いですよ」

菫「よく言う」

淡「ちょっとー!?聞こえてるー?」

照「呼んだ?」

淡「テルーじゃなくて!」

咲「ちょっと邪魔」グイ

淡「うわぁーん!」

照「…ようこそ、咲」

咲「よろしくね、お姉ちゃん」

淡「私の扱いヒドくない!?」

 カン

続くかどうかはわからない

>>4の前にこれ挟んどいてくらはい


菫「やあ」

咲「こんにちは、弘世先輩」フッ ペラ

菫「キミもつくづく本の虫なんだな。そうやって文庫本のページを繰る姿は照そっくりだ」

咲「今日の用件は雑談ですか」

(日常系なんで麻雀とかそういうのはあんま)ないです

淡「サーキ!」

咲「…」ペラ

淡「あれ…?」

咲「…」

淡「あ、ごめんなさい…人違いでした…?」

咲「なんでさ…」ハァ

淡「あ、やっぱりサキ…?」

咲「大星さんはいったいどこで私を認識してるの」

淡「だってぇ…眼鏡かけてるし」

咲「眼鏡かけてたら私かどうかわからないの…?」

淡「どうして眼鏡かけてるの?」

咲「悪い?」

淡「そうは言ってないケド」

咲「ちょっと視力がね。授業中と本を読む時はかけてるんだ」

淡「ぷっ。おばあちゃんみたい」

咲「…」イラ

淡「あっ、もしかしてたかみーの!?」

咲「違うけど…自分のだよ」

淡「貸して貸してー!」ズズイ

咲「ちょ、やだよ。やめて」

淡「えーいーじゃーん。ちょっとだけ!」グイグイ

咲「ちょっと…いい加減にして」ズアッ

淡「ひっ」

咲「やめてって言ってるのがわからないの?」ジロ

淡「こ、こわいよサキ…ちょっとしたスキンシップじゃん?」

咲「やめてって、言ってるのが、わからないの?」

淡「…ごめんなさい」

咲「まったく…」

淡「えっと…なに読んでるの?」

咲「ん」スッ

淡「なになに…………ウン、ワカッタ」

咲(わかってないんだろうなぁ)

淡「んー…ひまぁー」

淡「んんー…」ゴロゴロ

咲「…」チラ

淡「」スースー

咲「器用に眠るなぁ…」


 とある書店

咲「んー…あんまりめぼしいものはないなぁ」

咲(あ、あのタイトルはじめて見るな…)スッ

 ピトッ

咲「あ」

 「あ」



咲「多治比さん」

多治比真佑子「」

咲「おひさしぶりですね。地区予選の決勝ぶりですか」

真佑子「そ、そうですね…あはは」

咲「あの時はお世話になりました」

真佑子「いえ…じゃあ私はこれで」

咲「ちょっと待ってください」ガシッ

真佑子(ひぃ~…)

咲「急ぎでなければちょっと一緒にどうですか?」

真佑子「ご、ごめんなさい。いまちょっと急ぎで」

咲「本当ですか…?」

真佑子「う…」

咲「…」ジー

真佑子「…ち、ちょっとだけ、なら」

咲「ありがとうございます」ニコッ

真佑子(出掛けようとか思わないでおうちでじっとしてればよかった…)

咲「多治比さんはおうち近いんですか?」

真佑子「え…まぁ、はい」

咲「へえ…多治比さんもよく本を読むんですか?」

真佑子「そこまででもないですけど。たまにふらっと来て適当に見繕って買っていくって感じです」

咲「いいですね」

真佑子(結構…話してみるとふつうな子っぽいかも)

咲「どんなのを読んだりします?」

真佑子「えーと、これとか、こっちのこれとかも」

咲「結構見境ないんですね」

真佑子「本当に適当に買ってるから…ちょっと読んでみるだけでも面白かったりするし」

咲「なかなか面白い楽しみ方だと思います」

真佑子「そうかな」

咲「はい。で、これ、買います?」

真佑子「うーん…宮永さんもこれを取ろうとしてたよね」

咲「私はとりあえず知らないタイトルだったので手に取ってみようと思っただけです」

真佑子「そうなんだ」

咲「どうしますか?」

真佑子「…いいの?」

咲「ええ」

真佑子「それじゃせっかくだし…」

咲「私の方は特に欲しいものはないですね」

真佑子「え?」

咲「お時間取らせちゃってすみませんでした。それじゃ私は行きます。また会えたらいいですね」

真佑子「え、あ、はい」

咲「それじゃまた」

真佑子「また…」

真佑子「…」

真佑子(また来たりするのかなぁ)

咲「あ、亦野先輩…」

誠子「宮永…」バッタリ

咲「…」

誠子「…」

咲(きまずい…)

誠子「宮永」

咲「はい?」

誠子「あまり気にするな。私は先輩だが、卓の上では歳なんて関係ないからな」

咲「はぁ…」

誠子「私の力不足だった。それだけだ。それについてお前が気に掛けることはないよ」

咲「そうですか」

誠子「それに、私だってこのまま終わるつもりもない」

咲「そうですね」

誠子「え?」

咲「目を見ればわかりますよ。目を背けたり逸らしたりせず、私の目をまっすぐ見つめてきてる」

誠子「そ、そうか」

咲「普通自分を負かした後輩相手にそこまでひたむきになれませんよ」

誠子「なんだか気恥ずかしいな…」

咲「偉そうな言い方になっちゃいますけど、誇っていいと思います。私は誇りに思いますよ、亦野先輩のこと」

誠子「…」

咲「どうしましたか?」

誠子「いや…淡みたいに生意気というか、淡とは別ベクトルでふてぶてしいやつだと思っていたから」

咲「心外ですね」

誠子「うん。すまなかった。さすがに淡と比べたら宮永が可哀想だよな」

誠子「…」

誠子「なあ」

咲「はい?」

誠子「ほら、宮永照先輩も宮永だし、紛らわしいから咲って呼んでいいか?」

咲「え…さすがにそれは」

誠子「そ、そうか」

誠子(…後輩との親密度が足りない)

咲「そう思い詰めた顔されなくても。私、亦野先輩は比較的好感が持てますよ。真面目ですし」

誠子「そ、そうか?」 

咲「はい」

誠子「こ、今度いっしょに釣りでもいくか?」

咲「それはちょっと…遠慮したいです」

誠子「…そうか」

誠子(もっとフランクに後輩と接していこうかな…)

 カン
 

続くかどうかはわからない


淡「ヘイヘーイ」

咲「…」

淡「ヘーイ!」

咲「…」

淡「もうっ!サキーぃ」

咲「なに?」

淡「どうしてそんな隅っこで座ってるのさ!体育だよ?クラス合同だよ!?あそぼーよー!」

咲「やだよ…」

淡「ヘイヘーイ!」キュッキュ ダムダム

咲「…」

淡「ヘーイ!」ダムキュッ

咲「…」

淡「ヘイヘイヘイ!」キュッキュキュキュキュキュ

咲「うっとうしい」ベシッ

淡「あうっ」

ボール「」ポーン コロコロ

淡「痛いじゃん!」

咲「…ひとの周りをうろちょろしてる大星さんが悪いよ」

淡「ねーねー、いまのもしかしてボール取ろうとした?ボール取ろうと手を出したけど私の手を叩いちゃったの?」

咲「…べつに」

淡「ぷっ。もしかしてサキって運動オンチ?」

咲「…」

淡「だいじょうぶだよっ。べつにそんなの気にしないから!あーそぼ!」

咲「…」

淡「あれ?サキー?怒った?ねーねー…ごめ、ちょっと待ってよー!」

咲「…」スタスタ



生徒A「大星さんくらいだよね。宮永さんにあんなに絡んでいくの」

生徒B「うん」

生徒A「あと宮永さんにあんなにキツくあたられてるのも」

生徒B「うん」

照「一年生の話してる声がちょっと聞こえちゃったんだけど」

菫「なんだ藪から棒に」 

照「『宮永さんってちょっと距離感じるよね』『うんうん、話かけたら応じてはくれるんだけどあんまり会話が続かないかな』『ずっと本読んでるよね。なに読んでるのかなぁー』…だって」

菫「お、おう…いや待て。なんだいまの迫真の声真似は」

照「一年の会話にあがる『宮永さん』って、やっぱり咲のことだよね」

菫「無視か。…まぁそうだろうな」

照「あの子、ちょっと内向的なきらいがあるから、周りに馴染めてないのかも…」

菫「そうか?考えすぎじゃないのか」

照「菫にはわかんないかもね」

菫「それむかつくなぁ。なんだいまの顔」

照「とにかく。もしも咲に友達がいないなんてことがあっては一大事だよ。どうにかしないと」

菫「淡がいるだろ」

照「淡だけしか友達がいないなんてそれこそ一大事でしょ」

菫「そうだな」

照「どうしたら…咲の教室に言ってみんなにお願いしようか」

菫「やめとけ。妹に嫌われるのがオチだ。それにお前が言ったら一年の教室が騒ぎになるだろ」

照「うーん」

菫「お前がレクチャーしてやったらどうだ?お前、外面だけはいいんだから」

照「いま貶された?」

菫「いや、褒めたつもりだが」

照「…まぁいまはそれどころじゃないか。そうだね、それがいいかも」

菫(過保護にも程があると思うがなぁ)


 翌日

菫「で、どうだったんだ?手応えはあったか?」

照「なにが?」

菫「しらばっくれるなよ。昨日言ってたやつだ」

照「あぁ…昨日寝る前にね」

菫「ああ」

照「遠回しにクラスメートと仲良くなれてるか聞いて、愛想笑いは大事だと外行きの笑顔を見せてあげた」

菫「えげつないな」

照「案の定ちょっと怒られた」

菫「おいおい…」

照「追い出されるようにして部屋を出た後、しばらく咲の様子を盗み見ていたんだけど」

菫「異様な光景だな…で?」

照「床に就く直前、姿見の前に立って『笑顔かぁ』って呟きながら鏡に向かってぎこちなくはにかんでた」

菫「なんだそれ、かわいいな」

照「うん」

菫「なかなか年相応なかわいげがあるんだな」

照「いままで咲のことをどう見ていたのさ」

菫「お前の妹」

照「…なにか含みがない?」

菫「さて、どうだろうな」

淡「ねーねー」

咲「またきたんだ」

淡「またきたよ。なんか転校生がいるんだって?」

咲「ん」クイ

淡「へえ…あれが」

咲「変な気起こしちゃだめだよ」

淡「ヘンな気ってなにさ?それより知ってる?あの人、中学の時すごかったんだって」

咲「どうすごかったのさ」

淡「決まってるでしょ?――麻雀!」

咲「…」ピク

淡「んじゃちょっくらテーサツにいってきまーす!」タタタ

咲「…こっちに面倒なことは持ってこないでよ」

 ワイワイ

咲「…」

咲(この時期に転校…麻雀ですごかった子、かぁ)

淡「ただいまー」

咲「あれ?ずいぶん早かったね」

淡「うん!連れてきた!」

和「はじめまして」

咲「…あのさぁ」ハァ

 カン

ここまでは事前にネタ出ししてたけどそれもここまでなんでここからはガチで続くかどうかはわからない

咲「じゃあ、原村さんはお父さんの都合でこっちに越してきたんだ」

和「はい」

淡「ねーねー!ノドカって中学の麻雀の大会で優勝したんでしょ?」

和「…インターミドルですか」

淡「それそれ!もちろんうちの麻雀部に入るんでしょ?」

和「…いえ。私は部活には入りません。父との約束もありますし、高校では勉学第一でいこうと思ってますから」

淡「えー!なにそれつまんなーい!」

咲「大星さん。ちょっとは配慮というものを覚えようよ」

淡「なにがハイリョさ!牌慮しろよってカンジ!」

咲「何言ってるの?意味わからないよ」

和「…」クスッ

和(大星さん…はなんだか優希みたいです。奔放で爛漫で、どこか幼さがあるところとか)

和(…優希、元気でしょうか。清澄のみんなも…、叶うことなら、もう一度あの頃に戻りたい…)ハァ

淡「中学生最強ということは、それはもう超学生だよ?サキだって超学生の相手となら遊びたいでしょ?」

咲「さっきから何言ってるのかまったくわからないよ。勉強だって大切だし、そこは原村さんの自由でしょ」

淡「頭が固いなぁー」

咲「はいはい」

和「…」

和(宮永さんは常識的な人みたい。そこは助かりますね)

和「お二人は麻雀部の方なんですか?」

咲「はい、そうですよ」

淡「あれ、知らない?ご存じない?この王者白糸台が誇る超新星タッグを!」ドヤァ

咲「私は知らなかったなぁ。大星さんと一括りにされてるのかぁ…」

淡「なんでそこで残念そうな顔するのぉ!?」

和「すみません…存じ上げないです」

淡「あっ、そう…」

咲「意外と知名度ないんだね」

淡「そうみたい…」ションボリ

淡「そうだ!スーパーノヴァに改名しよう!そうしよう!ね、ね?」

咲「どうして私に振るの?大星スーパーノヴァになるの?」

淡「究極的にダサイっ!ちがくて、私たちのコンビ名だよう!」

咲「やだよ…自称とか恥ずかしすぎるよ。意味的には変わってないし」

淡「お願い!一生のお願いだからぁっ!」

咲「先週勝負挑んできた時も言ってたよね。なんなら昨日もおやつの時に言ってたし」

淡「あれは一生のお願いパートワンとかツー!これはスリー!」

咲「意味わかんない。ごめんなさい原村さん。こんな調子で」

和「いえ。仲がよろしいんですね。お二人は麻雀お強いんですか?」

淡「おっ、興味湧いてきた?」

和「まぁ…はい」

淡「そりゃもうっ!仮にも白糸台の夏の三連覇に貢献しただけあるよ!」

咲「自分で言うことじゃないと思うけど」

和「それじゃ…お二人はレギュラーで全国へ?」

淡「私たちのすごさがわかってきたかね?」エッヘン

咲「すぐ調子に乗るんだから…」

淡「ノドカはインハイ出なかったの?」

和「私は………はい。出られませんでした」

淡「ふーん?テレビとかも見なかったんだ?」

和「はい。ちょうど転校や引っ越しの準備で忙しかったですし…」

和(それに…)フッ

咲「…大星さん?」

淡「んー?あっ、えー…そっ、そゆこともあるよねっ」アセアセ

咲「あ、もう次の授業始まるよ。はやく戻らないと」

淡「やばっ」

和「…」

和(それに…みんなと行きたかった全国を、画面の前で指を咥えて観ているだけなんて…とてもじゃないけど耐えられなかったから…)


 ――

 夜・原村家新居

和「…」カリカリ

和「…」ペラペラ

和「…」カリカリカリ

和「…」

和「…」チラッ

 スッ カチッ ブゥン…



 ―終局―

 1 のどっち +21
 2  :
 3  :
 4  :

和「…」フゥ

和(そういえば…大星さんと宮永さんの話…)カチカチ

和「…!」

和「これは…」

淡「サーキっ!数学の教科書とノート貸ーしてっ」

咲「教科書はわかるけどどうして毎回ノートまで持って行くの?」

淡「サキのノートわかりやすくまとめてあるから。ないとまるっきり内容が入ってこないレベル」

咲「…今日は持ってきてないよ」

淡「ウソ。今日数学あったでしょ?このクラスの時間割ぜんぶ覚えてるからムダだよ!」

咲「その努力を数式を覚える方向に使いなよ…」

和「…」

和(この二人が…新道寺、千里山、臨海、永水と名だたる強豪校の副将・大将を相手に大活躍してたなんて…)

和「あの」

淡「んー?」

咲「はい?」

和「麻雀部…すこしだけ、見学させてもらってもかまいませんか?」


 ――

菫「まさかあの二人が元インターミドルチャンプを連れてくるとはな」

照「…」

菫「入部するかはまだ決めていないと言っていたが…あの子は大星と宮永を見つめるあの目。見たか?あれは絶対入部届を持ってくるぞ」

照「…」

菫「…どうした?」

照「なんでもないよ」

菫「胸か」

照「なんでもない」

菫「お前のもかわいげがあっていいじゃないか」クスクス

照「…」

菫「お前たち姉妹は本当怒らせたら怖いな…」イテテ

菫「でもまぁ妹に友達が増えそうでよかったじゃないか」

照「あまり多くても、姉としては寂しいところではあるけど」

菫「全国の頂を望む最強高校生雀士も妹の前ではただの姉か」

照「当然」

菫「即答なんだな」

照「当然」


 ――

誠子「あ、宮永」

咲「はい?」

誠子「これから尭深のお茶選びに付き合うんだが、いっしょにどうだ?」

咲「私はちょっと…」

誠子「そ、そっか…」


尭深「…」

尭深「今日行くところはおいしい甘味も取り扱ってるよ」

咲「…」ピク

尭深「休憩処もあるし、いっしょにどうかな?」

誠子「そ、そうだな。来るなら奢ってやるぞ」

咲「…そこまで言うなら、お付き合いします」

誠子「よし。決まりだな」

淡「んじゃれっつらごー!」

誠子「淡、お前も来るのか」

淡「そりゃもう!おごりならいくしかない!」

誠子「うっ…二人分かぁ」

尭深「淡ちゃんの分は私が出すよ」フフ

誠子「すまない…」

淡「ほらほらはやくー!」

咲「引っ張らないでよ…」

照「…私も」

菫「だめだ。この後部内ミーティングがあるだろ」

照「菫だけでいいじゃん…」

菫「ほほう?お前は面倒なことをすべて私に押し付けて自分は文字通り甘い時間を過ごすと、そう言いたいんだな?」

照「…敵意剥き出しの人たちと長時間にらめっこするより、後輩たちと楽しくティータイムしたい」

菫「そう言うな。私だって同じ気分なんだ」

照「はぁぁ…」


咲「渋谷先輩がお茶を買いにくるお店って聞いてたので日本茶とか和菓子ばかりなのかと思ってましたけど、紅茶や洋菓子もあるんですね」

渋谷「それなりに大きなお店だから」

淡「ノドカも来れたらよかったのにねー」

誠子「家が厳しいみたいだな。まぁあそこまででないにしろ、うちはそういうの多いだろ」

淡「亦野先輩のおいしそー」ヒョイパク

誠子「あ、コラ!」

淡「んー…こっちのがおいしいかなぁ」

誠子「ならそっちもよこせ!」

淡「だめですー」

咲「…」ジー

尭深「?」

咲「…」モグモグ

尭深「…あぁ。ひとつ食べる?」

咲「いいんですか?」

尭深「うん。はい」スッ

咲「ありがとうございます」パク

誠子「う…なんだあのキラキラした空間…」

淡「ずるーい!私にも私にもっ」

咲「いやだよ」

淡「私のもあげるからぁ!」

咲「はい」スッ

淡「やたっ!あーん」

誠子「わ、私もいいか?」

咲「いいですよ。どうぞ」

誠子「…私だけあーんしてくれないのか…」

咲「冗談ですよ。拗ねないでください」

誠子「そ、そうか。それじゃ」

咲「どうぞ」スッ

誠子「あーん…」

誠子(なんだか胸がじんわりあったかいぞ…!)

尭深(ふふ…誠子ちゃん楽しそう)

咲(本当に美味しいなぁ。お姉ちゃんへのお土産どれにしようかな)

淡(あれ…?私のやつ、まだ半分以上なかったっけ…?)

 カン

たぶん続く

淡「こうしてー…こんなのどう?」

和「アリですね」

咲「…」ペラッ

菫「おつかれ…なにやっているんだおまえたち」

咲「おつかれさまです」

菫「どうしたんだその髪は。イメチェンというやつか」

咲「いえ…」

淡「サキの髪で遊んでたんだよ」

和「私とおそろいですね」

菫「ほう…宮永、おまえがそういうことを他人にさせるとはな。嫌がりそうだが」

咲「嫌ですよ。ただ、二人がかりだと勝ち目がないので。抵抗して無駄に疲れるより好きにさせておいた方がまだマシですね」

菫「そ、そうか」

淡「照れちゃってーこのこのー」

咲「うざ…」

淡「マジトーンはさすがに傷付くよぅ…」

和「おそろいですね」

咲「そうだね」ペラッ

淡「じゃーあー…次はサイドにー」

和「あっ、もったいない…」

淡「ジャーン」

和「アリですね」

菫「…」ウズ

誠子「おつかれさまです」

尭深「おつかれさまです」

菫「ちょっとやらせてみろ。こうして…こうしてこうだ」

淡「三つ編みかぁ!」

菫「これを前に垂らす」

和「アリですね」

誠子「…なにこれ?」

尭深「さあ?」

和「膝掛けとかどうです?」

菫「いいな。宮永、これ掛けてくれ」

咲「…」チッ

菫「おお、なかなかいいじゃないか」

誠子「…」ウズ

尭深「…」ウズ

菫「あとは…」

誠子「ヘアピンありますよ。前髪を留めてみましょう」

菫「小物でアクセントをつける、か。なかなかやるな」

誠子「恐縮です」

尭深「スツールとサイドテーブル、紅茶を用意しました」ガタッ

菫「いいぞ。セッティングだ」

和「手伝います」

咲(なにがしたいのこの人たちは…)

菫「できたぞ」

尭深「この辺りの角度がベストアングルですかね」

菫「そうだな」

淡「…」パシャッ

和「…」パシャッ

菫「…」パシャッ

誠子「…」パシャッ

尭深「…」パシャッ

淡「なにこの芸術作品」

和「アートですねもはや」

菫「よし、この画像を照に送信」ピ

照「これは一体どういうこと?」バン

誠子「はやっ」

照「咲…咲?」

咲「お姉ちゃん…」ハァ

照「…」パシャッ

咲「あのね、お姉ちゃん」ジロリ

照「ごめん…つい反射で…」

咲「別にいいけどさ…」ハァ


 ピンポーン

咲「はいはい」

咲「どちらさまですか?」ガチャ

智葉「こんにちは」

憩「どーもーぅ」

洋榎「なーんでオマエが来とんねんボケコラ」

セーラ「そりゃこっちのセリフやっちゅーに。どっかいけハゲ」

洋榎「ハゲとらんわハゲ。こっちはチャンプのお誘いやぞハゲ」

セーラ「ウソつけやハゲ。こっちかてチャンプに招かれてんねんぞ」

竜華「実際招かれたんは怜でうちらは付添いやけどな」

怜「セーラ、みっともない」

セーラ「ぐぬっ…」

洋榎「みっともなー」プスス

咲「…」あんぐり


 ゾロゾロ

智葉「宮永…照さんはいますか?」

咲「少々お待ちください」バタン

咲「…」

咲「お姉ちゃーん」

照「なに?」ヒョコ

咲「なんか…なんかすごいことになってるんだけど」

照「え?」

咲「ちょっと…見てみて」

照「どういう…」トテトテ ガチャ

智葉「よう」

照「」バタン

照「さ、咲…?これはどういう…?」アセ

咲「私が聞きたいよ…」

照「…智葉?」ガチャ

智葉「いきなり閉めるな、危ないだろうが」

照「あ、はい」

智葉「とりあえず、来たぞ」

照「あ、はい。…じゃなくて。これはいったいなんの集まり…?」

智葉「は?お前が適当に呼べって言ったんだろ?」

照「んー?」

智葉「ほら、ちょっと前に、そんなに白黒つけたかったらいつでも来い、的なことを言ったろ」

照「…言った。…かな?」

智葉「それで、それなら何人かで集まったら色々できるなって話になって、お前が私に任せるから適当に面子集めろって」

照「…言った。…いや、言っ…うーん」

智葉「といっても向こうの面子に声をかけたのは憩だがな。こっちが当たったのは憩以外全滅だった」

照「ええ…下手したらもっといたかもしれなかったってこと…?」

智葉「そうだな。立ち話もなんだし、とりあえず上がらせてもらっていいだろうか?」

照「えーと…」チラッ

咲「さすがにこのままは失礼じゃない?上がってもらったら?」

照「…どうぞ」

 「おじゃましまーす」

照「えっと…改めまして…なにしにきたの?」

智葉「なんという言い草だよ…お前が招待したようなもんだろうに」

照「その時点でうろ覚えだからどうにも」

智葉「いい加減なやつめ」

咲「お茶です。どうぞ」

憩「あ、ありがとーぅ」

洋榎「どもどもー」

咲「それじゃごゆっくりどうぞ」ニコッ スッ

照「待って咲」ガシッ

咲「…なに?」

照「ここにいて」

咲「…えー」

照「お願い」

咲「…もう」

照「ありがと」

咲「しょうがないんだから…」

洋榎「なんや甘ったるい匂いせえへんか?」

セーラ「確かに…」

咲「お菓子です。どうぞ」ドンッ

竜華「え、なにこの量」

怜「こんだけ人数いても余らせそうやな」

照「いただきます」ガサガサ

洋榎「ってアンタがいっと最初に手ェつけるんかい!」

セーラ「アカン…すでに胸焼けしてきた」

憩「せや!はい、あーん」スッ

照「」パクッ

洋榎「おっ」

照「…はっ。つい反射的に」

智葉「じゃあ私はこっちに」スッ

咲「…はい?」

智葉「ほれ」

咲「…」パク

セーラ「なんやこれ、餌付けか?」

怜「なんや微笑ましいなぁ」

竜華「ホンマにこれがあの白糸台の宮永姉妹なんか?大会中と違いすぎひん?」

怜「確かに」

智葉「しかし、姉の方はともかくとして、妹の方は随分とラフな格好をしているんだな」

咲「そうですか?」

洋榎「せやな。もうちょいもっさいカッコしてる印象やったわ」

憩「かわええよーぅ」

咲「はぁ…」

洋榎「反応悪いなぁー。もっと愛想振りまいときや」

咲「はい」ニコッ

洋榎「…はい?」

セーラ「おいちょっと、いまのだれや」

咲「なにがですか?」

セーラ「いやいや。おかしいやろいまの」

洋榎「…はい?」

咲「だから、なにがですか」

セーラ「…俺の目が悪うなったんか?」

洋榎「…かもな」

照「園城寺さん、身体は大丈夫なの?」

怜「んー?あー、ま、おかげさまでな」

竜華「だれかさんのせいで危ないとこやったけどなー」ツーン

怜「竜華…こら」ペシッ

竜華「事実やろ」

怜「そうやって言わんでもええやろ。ほら、チャンプがへこんでしもた」

照「…」シュン

竜華「…ふーん」ツン

咲「…」ジトッ

竜華「…なに?」

咲「べつに。随分過保護なんだな、と」

竜華「当たり前田のクラッカーや!怜は病弱なんやで!」

怜「あんまアピールせんといて…自分以外にされるとはずいわ…」

咲「うちのお姉ちゃんだってメンタルが意外に弱いんですから、そう責めないでもらえますか?」

照「咲…」ウル

智葉「…いや、フォローになってなくないか?」

憩「美しき姉妹愛やねぇ」ホロリ

洋榎「いやそれはおかしい」

セーラ「竜華、あんま熱くなんなって」

咲「…もういいです」フイ

照「あ、咲…」

咲「ごめんねお姉ちゃん。私、部屋に戻るね」

竜華「ちょい待ちーや!話はまだ終わっとらんやろ!」

怜「竜華!…あかん、行ってもうた」

照「…」スッ

智葉「放っておけ。そんな大したことはせんだろ」

照「でも」

憩「変に止めてわだかまりを作るよりいっぺん気ぃ済むまで言い合った方がええんちゃうかな?」

セーラ「竜華やってそこまでアホやないし、大事にはせえへんやろ」

洋榎「しっかしきな臭い話やな。当人たちはおいてけぼりで保護者同士の争いかいな」

照「咲は保護者じゃないよ。妹」

怜「竜華は親友や」

洋榎(…せやろか)

竜華「…」スタスタ スッ

セーラ「お。早かったな」

怜「竜華、なにもしてへんやろな」

竜華「うちはなんもしてへんよ。咲ちゃんが勝手に謝ってきただけや」

セーラ「年下に頭下げさせたんか…大人げな」

竜華「歳なんか関係ないやろ」ツーン

怜「ホンマしゃーないなぁ…」

「「……」」

((ん…?『咲ちゃん』…?))

竜華「あ、このお菓子おいしー」

 カン

つづく


 とある日・白糸台

照「まずい」サクサク

菫「どうした?それ、前に美味しいってべた褒めだったやつじゃないのか?」

照「そうじゃなくて…お菓子が切れる」サクサク

菫「は?」

照「これでラスト」

菫「そうか」


照「…」ピタッ

菫「どうした?」

照「いまこれを食べきったら後がない…でも手が止まらない…どうしたら」

菫「なに言ってんだお前」

咲「私、購買に行ってなにか買ってくるよ」

照「だいじょうぶ?」

咲「だいじょうぶだよ」

菫「すまんな。ついていこうか?」

咲「いえ。だいじょうぶです」

淡「サキー!私の分もー!」

咲「はいはい」

淡「ダッシュでな!」

咲「いまので大星さんの分はなくなったよ」

淡「じょ、じょーだんだってばーっ!」


菫「あの宮永が使い走られてくれるのもお前くらいのものだろうな」

照「咲はやさしい子だから」

菫「そうだな」クス

和「すみません、遅れました」

淡「おそーい!」

菫「気にするな」

和「あれ?宮永さんは?」

菫「ああ。宮永はな」

淡「あれー?無視ー?イジメよくないと思うなー」

和「購買に、ですか…?ですが、たしか購買は今日はもう閉まっていたと思いますが」

菫「なに?そうだったか?」


照「まずい」

菫「それはもうわかったから」

照「いや…そうじゃなくて」

菫「?」

照「たぶん…咲の性格からして、購買が閉まっていたらそのまま別の場所を当たると思う。たとえば…校外の、コンビニとか」

菫「そうかもしれないが、それが?」

照「咲は、慣れない場所だと迷子癖がある…通学は私といっしょだから問題ないけど…一人だと、この辺は」

菫「おいおい…それ本当か」

照「ちょっと探しに行ってくる」バッ

菫「あ、おい!しょうがない、亦野と尭深はここに残ってくれ。淡、原村、私たちも行くぞ」

淡「しょーがないなぁ」

和「もうちょっと緊張感を持ちましょうよ」

 コンビニと正反対の住宅街で発見・保護された模様。


真佑子「…」プラプラ

真佑子「あ」

真佑子「…違うか」

真佑子(あれから全然会わないなぁ…あんまりこっちにはこないのかなぁ)

真佑子「…宮永さん」ポツリ

咲「はい」


真佑子「…え?」

咲「こんにちは、多治比さん」

真佑子「あ、はいこんにちは…ってええっ!?」

咲「どうしたんですか?」

真佑子「い、いいいえっ」バックンバックン

真佑子(え?え?み、宮永さん?いつから?というか本物?)

「そんなに見つめられると照れます」

真佑子「あ、ご、ごめんなさい…」

咲「冗談ですよ」

真佑子(それはそれで…)シュン

咲「おひさしぶりですね」

真佑子「そうですね。なかなか見かけないのでもうここには来ないのかと思ってました」

咲「私が来るのを待ってらしたんですか?」

真佑子「…ほあっ!?いっ、いえそういうわけではっ」

>>157
咲「そんなに見つめられると照れます」

真佑子「あ、ご、ごめんなさい…」

咲「冗談ですよ」

真佑子(それはそれで…)シュン

咲「おひさしぶりですね」

真佑子「そうですね。なかなか見かけないのでもうここには来ないのかと思ってました」

咲「私が来るのを待ってらしたんですか?」

真佑子「…ほあっ!?いっ、いえそういうわけではっ」


咲「さっきも本というより誰かを探してうろついてるみたいな様子でしたし」

真佑子「…み、見てたんですか?」

咲「はい」

真佑子(穴があったら埋まりたい…)

咲「でもまぁ、こうして会えたわけですし、またいっしょに回りますか?」

真佑子「えっと、よろしければ…はい」

咲「時間があったら、そのあとでお茶でも」

真佑子「は、はいっ!」

 この後そこそこ仲良くなりました。


 白糸台

照「今日は咲がお菓子を作って持ってきました」

淡「本当っ!?」ガタッ

菫「どうしてそれをお前が得意げに言う」

照「自慢の妹だからね」

菫「…そうか」


咲「お姉ちゃんのせいで大星さんが犬みたいに私の鞄を漁ってるんだけど」

照「残念、咲のお菓子はこっち」ガサ

淡「リップクリームはっけーん!」

照「おい」

和「おやめなさい」チョップ

淡「あたっ!じょ、冗談だよー…」

和「まったく…。……」ジッ

咲「原村さん?」

和「はい!?」

咲「えっと…それ返してくれる?」

和「あ、そうですね。すみません」

咲「ありがとう」


照「淡の分は私が食べる」

淡「だめだめだめー!ちょ、いくらテルでもそれやったら許さないからね!」

照「私はもうすでに淡が許せないよ」

咲「お姉ちゃん」

照「…しかたない」

咲「もう…はい、大星さん」

淡「あーん」

咲「袋ごと突っ込んでいいの?」

淡「あーん!」

咲「…はぁ」


淡「『淡ちゃん、はいあーん』でお願い!」

咲「嫌」

淡「おーねーがーいーっ」

咲「…」チッ

咲「淡ちゃん、はいあーん」ニコッ

淡「あーん…おいしー!」

咲「よかったね」シラー


咲「…なんですか?この行列は」

菫「菫先輩で頼む」

和「和ちゃんでお願いします」

誠子「私は誠子さんで…」

尭深「尭深お姉さん」
 
咲「…」

菫「そんな心底嫌そうな顔しなくても」


咲「お姉ちゃん、はいどうぞ」

照「あーん」

菫「こいつら家ではわりと普通にやってそうだから困る」

和「馴染んでますもんね」

淡「ズルいなぁ」


誠子「しかたないですよね。これでもだいぶ私たちに打ち解けてくれた方じゃないですか?」

菫「そうだな」

誠子「最初なんて、こういうちょっとしたおふざけのやりとりでさえ考えられなかったですし」

菫「ふむ…ちょっとここらで確認してみるか」

尭深「?」

菫「ホワイトボードとポジション発表時に使うこのマグネットネームプレートを使ってだな」

誠子「はぁ」

菫「全員集合!」

 ゾロゾロ

菫「これより意識調査を行うぞ」

和「意識調査、ですか?」


菫「そうだ。そうだな…照」

照「なに?」

菫「ホワイトボードに数字を書く」

照「で?」

菫「あとはお前にとって親しいと思う順に、このネームプレートを貼っていけ。一番だと思う者は1の横にな」

照「ふーん。こうかな」サッサッ

誠子「迷いがない…」


菫「1:宮永咲、2:弘世菫、3:亦野誠子、4:渋谷尭深、5:大星淡、6:原村和 か」

淡「うえっ…結構低い…」

誠子「宮永先輩…!」キラキラ

照「まず一番は不動だとして、後は付き合いの長さで決めた。ちなみに3、4は順不同」

誠子「あ、そうなんですね…」


菫「とまあ、こんな感じだ。じゃあ次は妹いくか」

咲「私ですか…うーん、結構悩みますね」

和「こうして悩まれると、その間こちらまでドキドキしてきます」

菫「平たく言えば自分がどう思われているかがわかるわけだしな。順位が低ければ思われていないというわけでもないが、高いとそれだけ嬉しいだろうし」

淡「咲にとってはもちろん私が一番でしょ!」フフン

菫(それはないな)

和(たぶんそれはないのでは)

誠子(なさそう)

尭深(ない)

照「ないよ」


淡「えー?どうして言い切れるの?」

照「姉としての自負」

咲「こうかな」

菫「…えっと、宮永?」

咲「はい?」

菫「その、1のはるか上にある宮永照は一体?」

咲「とりあえずお姉ちゃんはこの辺で」

菫「…そうか」

菫(姉より妹のほうが重症なのかもしれんな…)

照「ほらね」フフン

淡「ま、まーあれはね?いわばランク外の特例ってカンジでしょ?」

照「咲にとって私は特別ってことだね」

淡「ぐぬぬ…」


淡「まだ一番があるもん!」

菫「1:亦野誠子 …ほう」

淡「えぇーウソぉー!?」

誠子「宮永ぁー!」パァ

咲「まぁ一番親しみというか、好感が持てるのは亦野先輩ですね」

誠子「嬉しい…私は嬉しいぞぉ…」グスン

咲「こういうところもかわいいですし」

誠子「えっ…?」

咲「それで次は」

誠子「ちょ、ま」


菫「2:渋谷尭深、3:原村和」

咲「ここはちょっと悩みましたね」

尭深「素直に嬉しい」

和「3位ですか…」

咲「順位はね。でも原村さんのことは好感持てるよ」

和「…」テレッ


咲「ここからはちょっとアレですが」

菫「そうなのか… 4:大星淡、5:…弘世菫」

淡「ええー…なんでー?」

咲「ちょっとうっとうしい」

淡「ぐさっ」

咲「馴れ馴れしいのもちょっと」

淡「ぐささーっ!」

咲「…まぁそこが大星さんのいいところでもあるのかな」

淡「サキぃ…」クスン

咲「はい、淡ちゃんあーん」ニコッ

淡「うぅー…」モグモグ


菫「泣いていいか」

咲「泣かないでください」

菫「淡以下か。なにがいけなかったんだ」

咲「最初の頃の勧誘の仕方がちょっと…」

菫「案外根に持つな…」

咲「あとベルトとか、意外と悪ノリするところとか」

菫「容赦ないなぁ!」


咲「頼りになるところは結構好感持てますけどね」

菫「…」

咲「こんなところですか。私は以上です」

菫「このツンデレちゃんめ」

咲「…」ススッ

菫「こらこら。無言で私のプレートをホワイトボードの脚まで落とすな」


淡「じゃあ次私ね!こうかなー」

和「私はこうですかね…」

誠子「ええっと…こんな感じですか」

菫「宮永大人気じゃないか。一番固定か」

菫(というか…私ってあんまり人望ないんだな…ちょっと傷付いたぞ)


淡「テルのマネー」ギュオッ

照「甘い。そんなんじゃ物まねにも届いてないよ」

和「一体このツモにどんな意味が…」

咲「…」ペラッ

菫「宮永」

咲「はい?」

菫「横、いいか?」

咲「はあ」


菫「…お前さ、丸くなったな」

咲「えっ…本当ですか…」ペタペタ

菫「顔の話じゃなくてな」

咲「紛らわしいことを言わないでください」

菫「すまんすまん…いやなに。ここにきた当初と比べるとやはりな、今日一日を見ても、そう思えてしまうんだよ」

咲「…そうですか」


菫「ああ。いいことだ」

咲「…」

菫「お前の姉もそうだが、どこか人を惹きつけるものがあるんだな。似た者姉妹といったところか」

咲「…」

菫「実に頼もしいよ」

咲(…そう、だったんだ…)


 宮永家

照「…咲。髪、またちょっと伸びたね」

咲「そう?」

照「うん」

咲「そろそろ切ろうかなぁ」

照「だめ」

咲「やっぱり?」

照「うん」


咲「…」

照「咲の髪は宮永家の宝だからね」

咲「お姉ちゃん」

照「うん?」

咲「私ね」

照「うん」

咲「お姉ちゃんのために麻雀部に入ったつもりでいたけど」

照「けど?」

咲「いまは、麻雀部に入ってよかったなって、すこしだけ思ってる」


照「そっか」

咲「うん」

照「それなら、私も嬉しい」

咲「うん…ありがとね、お姉ちゃん」

照「どういたしまして。私のほうこそ、いつもありがとう」

咲「ん…照れくさいなぁ」

照「むずがゆいね」

咲「みんなには内緒だよ?」

照「どうしよっかな」

咲「お姉ちゃん?」

照「冗談だって」

咲「それならいいけど」


照「はい、おしまい」

咲「ありがと。ねえ、お姉ちゃん」

照「ん?」

咲「今日は、いっしょに寝よっか」

照「いいの?」

咲「うん。今日はなんだかそういう気分」

照「抱き枕にしちゃっても?」

咲「いいよ。むしろ私からお姉ちゃんの腕のなかに潜り込むかもね」

照「それはそれは」

咲「冗談だよ」

照「なぁんだ」

咲「冗談」

照「どっちなの?」

咲「どっちかな」

照「なにそれ」

咲「照れ隠し」

照「かわいいやつめ」

咲「はいはい。それじゃ、おやすみ、お姉ちゃん」

照「うん。おやすみ、咲」

 パチッ


 カン

つづかない

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