島村卯月「シンデレラ冒険譚」 (67)

アイドルマスターシンデレラガールズのキャラクターをファンタジー世界で活躍させてみた。

アイドル達をイメージしたキャラクターがファンタジー世界で活躍している、
というボイスドラマを演じるアイドル達、のお話です。

現行作の方とは異なり明確な劇中劇の設定になっています。

現行スレよりストーリーに影響しない程度の、本文の微妙な修正が入っています。
※モブ台詞の極力撤廃など
※説明不足と感じた部分の台詞追加

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440449733

~ 第1-1幕 ~

 おとぎ話の始まりって、どういった内容が多かったでしょうか?
私は、こんな勇者が冒険するみたいなお話をあまり見たことが無かったので、
今回のお仕事も皆と違ってうまく出来るか心配だったのですが……

 私は、実際に冒険する勇者じゃなくて、勇者となる人を導く人、だそうです。
この企画、私達が私達をモデルにした人物を声で演じる、と聞いています。
ラジオ……とは、また違いますか? とにかく、これから物語が始まります。
こうやって合間に、私達が少し喋ったりもしますので、愉しんでくださいね……♪

 さて、ストーリーは……これから始まるので、ぜひ見てください。
物語の中心となる三人の、他で言う勇者さん?
そんな勇者を演じるのは――

● 十時 愛梨

 険しい山々に囲まれた、外部から孤立している大きな地域があった。
いや、地域というよりも隔離されたひとつの世界といっても差し支えがないほどの大きさ、
さまざまな種族や国、文化や技術が入り乱れた空間ではありとあらゆる意志が生まれ、
それぞれが自身や仲間と共に信念を貫くための行動を起こす。
……結果、競争が生まれ、徐々に平和が乱される。

今は小さい、国全土には広がらない抗争、しかし確実に波紋は広がる。

 ――――とある、才に優れた一人の人物が居た。
その力を持って、数少ない仲間と共に争いを抑えた。
しかし活動できる範囲には限界があり、隙間から漏れ出す火種を全て消すことはできない。
やがて、その人物は全ての力を使い“願いを叶える経典”を作り上げ、その番人となる。

 全ての人物が使いこなせるわけではない、厳しい制約をくぐり抜けられる人物を探さなければならない。
『今の世界』の現状を、良くも悪くも変えられる人物の手に経典を授ける、それが番人の役目。

 次に経典を授けられる人物は、誰か?



――駄目、この世界線の住人は……閉塞状態を破る事は出来なかった。

次は誰に、この経典“シンデレラ”を授けよう……?

正義に手渡せば平和に向かう。悪に手渡せば、それはそれで多くの正義が目を覚ます。

大事なのはズルズルと衰退を続ける現状を大きく変える風、それが必要……!

強い、願いを求める意志と、実際にそれを遂行できる人物……

……この世界線から、感じる。

凛「…………」

卯月「見張り、疲れたでしょ? 代わるよ?」

凛「ありがとう。でも、私達が何か村のために出来る事って、これぐらいだから」

卯月「だからって、一人でずーっと見てるわけにもいかないでしょ? 私とミオちゃんもいるんだから交代交代!」

凛「……分かった、肝心な時に体調崩したら、それこそ本末転倒だもんね。休んでくるよ」

卯月「うんうん、しばらくは私に任せて!」



卯月「……はぁ。とは言ったものの、これからどうなるんだろう?」

卯月「今は対応できても、そのうち抵抗もできない相手が攻めてきたら……」

卯月「私じゃ、守りきれないかな?」

――…………

愛梨「……こんにちは」

卯月「え? だ、誰……!?」

愛梨「私はアイリ。……この経典を授けるに値する人物を探して旅をしています」

卯月「……何かの組織への勧誘ならお断りします」

愛梨「勧誘……あながち間違ってはいないかもしれませんが、これは重要な事です。……そちらに行っても?」

卯月「駄目です! これ以上近づくなら私が相手を――――」

愛梨「では、この場で構いません」

卯月「……へ?」

愛梨「私は侵略者ではありません。……それに、そう遠くない未来、この地は戦火に堕ちるでしょう」

卯月「そ、そんな事、私がさせません!」

愛梨「私から見て、あなたには実力と経験が足りない」

卯月「っ……!」

愛梨「……しかし、環境には恵まれています。いい師と友に会えたようですね」

――ドサッ

愛梨「この経典は、あなたの力になるでしょう、うまく使って下さいね……?」

フッ……

卯月「え、ちょっと! ――――消えちゃった……本、置いて行っちゃったけど何だろう、罠……とか?」

未央「やっほー! しぶりんからしまむーが一人と聞いてお邪魔しに来ちゃった!」

卯月「あ、ミオちゃん……あっ!」

未央「ん? 何この分厚い本、しまむーこんなの読むの? へー、ペラペラと……」

卯月「読んで大丈夫なの!? 変な罠とかない!?」

未央「だって普通の本だよ?」

卯月「かもしれないけど……ああ、ちょっと説明するから一旦閉じて!」



・・

・・・


未央「誰か知らない人が置いていった?」

卯月「うん……なんだか『この経典が力になる』とかなんとか言ってたような」

未央「なにそれ、怪しい宗教?」

卯月「には見えなかった……とも言い切れないような」

未央「じゃ、気にしない気にしない! 貰っておけばいいんじゃないかな、呪いの道具とかだと困るけど……
   お金の請求するつもりならこんなへんぴな村に来ないって!」

卯月「の、呪いとかやめてよ! 何か変な言葉でも書いてあったの!?」

未央「いんや、なーんにも書いてない、真っ新……お?」



―― ~ Cinderella ~



未央「しん……で、れら?」

卯月「何か書いてたの?」

未央「シンデレラ、だって。聞いた事ある?」

卯月「童話?」

未央「だよねぇ」

未央「でもこれ以外何も書いてないみたい」

卯月「……置いていったものを捨てるのも嫌かな」

未央「じゃあ持って帰っちゃおう!」

卯月「そうするしかない、かな」

~ 第1-2幕 ~

 ……はいっ、島村卯月です!
どうでしたか? って、まだまだ続くんですけどね、えへへ♪

 物語は、私と凛ちゃんと未央ちゃんが演じる三人の村の子供、子供?
ウヅキ、リン、ミオを中心に展開されます。
ひょんなことからアイリという人物から託された“願いを叶える”お宝を手にした三人が
これからどのようなお話を描くのか。

●島村 卯月

凛「あれ、帰ってきたの?」

未央「ちょっとトラブルというか、どうしたもんかなー、って事案が発生してね」

卯月「リンちゃんって、これが何か分かる?」

凛「その分厚い本? ……やめてよ、私がそんな辞書みたいな話の本知ってるわけないじゃん」

卯月「本……なのかな、これ。見て欲しいんだけど、何も書いてないんだよ?」

未央「ただ、シンデレラって文字だけ、それ以外はなーんにもない」

凛「シンデレラって、童話?」

未央「それしか思い当たる節はないけど、でもそれだけじゃないみたいなんだよ」

卯月「うん、さっき村の入り口で――」

――…………

凛「怪しい」

未央「でしょー?」

卯月「ちょ、ちょっと! 持って帰ろうって言ったのはミオちゃんで……」

凛「もっと警戒しなきゃ駄目だよ、ただでさえこんな状況なのに」

卯月「……ごめん」

凛「この村を狙う誰かの策略の可能性があるなら、この本は村長さんに管理して貰おうよ」

未央「捨てるのも嫌だし!」

凛「ミオ、一応そっちも怒った方がいい? 私」

未央「なんで!?」

凛「なんでじゃないよ! 本を開けたのはミオでしょ? 危ない事をして……!」

未央「ごめんごめんしぶりんー! 肘で小突かないで!」



・・

・・・


??「……あなた達、これをどこで!?」

卯月「えっ……?」

未央「も、もしかして誰かの私物だった!? ちちち違いますって! 私達盗んでなんか――」

??「……言い方が悪かったわね。誰かの物とかじゃないの、いや……誰かの物なんて代物じゃないのよ」

凛「この本が何か、既に知ってるんですか?」

??「そうね、こんな辺境の村で教えても仕方がない知識だったから言う時期を逃したけど……
   モノを知っている人なら候補としてすぐに挙がるほどの代物よ」

卯月「そんなに!? でも、すごいお宝かもしれないそれを私は人から貰ったっていうのは変じゃないですか……?」

??「実はそこがこの本、いや、経典を本物である確証なの」

??「経典に書かれたシンデレラ、正式名称“灰姫の経典”は、この世界で作られた確かな物資、
   でも技術、魔法、科学も、全てを用いても説明がつかない謎の力が込められている物なのよ」

??「そして、同じような“人類を越えた技術”が使われている道具は、この世に十あると言われている」

卯月「……あっ! そのお話なら聞いたことがあるような」

凛「この本の事、知ってたの?」

卯月「本じゃなくて……でも言われてみれば、この本は確かに――」

卯月「十大秘宝、でしたっけ?」

??「正解。十大と言われながら、正確な用途含む詳細が完全に判明しているのは、たったの三つ」

卯月「十個のうち、一つは名称すら分からないとか……」

未央「それって九大秘宝でいいんじゃないの?」

卯月「存在はしているらしいよ」

??「ま、それに関してのお勉強は今度ってことで……肝心の“灰姫の経典”、これなんだけど」

凛「ウヅキ、名前が分かったって事は詳細も分かるの?」

卯月「いや……ちょっと」

未央「でもでも、秘宝とか言われてるなら凄い力があるんじゃないの?」

??「ええ、あるわよ。この経典が持つ力は……ずばり、願いを叶える力」

未央「ええええええ!? こ、この本にそんな力が!?」

凛「とてもそうには見えないけど……」

??「偽物じゃない理由も一緒に説明するわ。この経典は誰かの手に渡った後、常に消滅する。
   そして、新たな人へと“届けられる”、ある人物の手によって……」

未央「それがさっき言ってた変な人?」

卯月「変な人、って言っちゃったけど……」

??「……届けに来るのは、かつて世界の抗争を終息させようと動いた、英雄と呼ばれたうちの一人」

??「そのリーダー格、アイリ」

凛「アイリ……ああ、あの。 ……ウヅキ、会ったんだ?」

卯月「そうみたい……」

凛「過去の偉人を、知らないのはどうかと思うな」

卯月「ご、ごめん」

??「……とにかく、本人から手渡されたなら本物。で、問題はどうしてあなたに渡されたか、よ」

未央「しまむーが貰ったなら好きに使っていいんじゃない? 大金持ちの最強になれるよ!」

??「あ、駄目よ? この経典は預かるから」

未央「へっ?」

??「別に私が使うわけじゃないのよ、この経典にも謎が多いから」

凛「謎が多いと、どうして私達が持ってはいけないって事になるの?」

??「願いが叶う、それは紛れもなく人知を超えた力よ。何の代償も無しに使える訳がない」

凛「前例は?」

??「無いわね、でも代償が無いと考える方が変じゃないかしら? そういう意味で、私は誰にもこれを使わせない」

卯月「無条件で願いが叶うなら……もっとこの本を巡って争いが起きるよね」

未央「じゃあ何か要求されちゃうんだ、よかったー、変に願い事してなくて……危険察知能力あるかもね、私!」

卯月「私が何か言う前に本開いたじゃん」

未央「あは、あはは……」

――…………

卯月(結局、あの経典は村長さんが預かっちゃいました)

卯月「願い……って言っても、特に叶えたいものなんて無いし」

卯月「最後までミオは『この自己流派を世に広めるんだー』って経典に噛り付いてたけど」

卯月「さっきの人がアイリさんか……」

卯月(私もそのうち、英雄なんて呼ばれるくらい有名になれるかな……いや、私だけじゃなくて、三人で)

~ 第1-3幕 ~

 ウヅキが見つけてきた秘宝、灰姫の経典は当人は何のことか分かってなかったみたい。
調べてみたところ、この世界では『十大秘宝』と呼ばれてる、すごいものの一つらしい、
そりゃあ、願いを叶えるなんて、そんな凄いものだったら当然かも。

 でも、だったらどうしてそんなものが、彼女たちの元に?
どうやら、ウヅキにこの経典を授けたアイリは、同じくらい有名な人物。
つまり、三人はそんな人たちに、選ばれた?

 ……ふふっ、なんだか勇者みたい。
え? これは勇者のお話、だって? ……そうだったっけ。
願いを叶える本、そんなものがあったら、何を願う?
私は……なんだろうね。

●渋谷 凛

卯月「陽が沈んできたね……夜遅くに森を出歩く人なんていないし、そろそろ引き上げようかな……うん?」

――ザッ

卯月「……!」

卯月(何か、聞こえた!)

卯月「アイリ……じゃないよね。獣でもない、慎重に近づいてる……?」

卯月(まさか……敵襲?)

――ガサッ

卯月「――そこっ!」

――バシュン!

――…………

卯月「……反応は無い? 魔力は打ち込んだはずだけど」

凛「どうしたの? 声が聞こえたけど」

卯月「あっ、リンちゃん……気を付けて、誰かがいるかもしれない」

凛「動物じゃなくて、人?」

卯月「たぶん……そんな気配がする」

凛「ミオも呼んできた方がいい?」

卯月「いや、大丈夫……かな? 襲撃、って時間帯じゃないし」

凛「夜に森を出歩くのは危ないから、確かにそうかも。だとすると、何?」

卯月「森で迷った人?」

凛「かもしれないね――」

――ドシュッ!

凛「危ない!」

卯月「あっ!?」

――キィン!

卯月「あ、ありがとう」

凛「弓矢。完全に人だね、それも……」

卯月「攻撃してきた……!」

凛「ウヅキ、私がここで相手をするから村に報告してきて」

卯月「駄目! 相手が一人とは限らないから危ないよ!」

凛「でも連絡はしなきゃ、その方が危険だよ」

卯月「じゃあ私が残るからリンちゃんが!」

凛「だからそれだと一人になって危ないから――」

――ザッ

未央「しぶりんおっそーい、しまむーの様子見てくるって言っていつまで喋ってるのさー」

凛「ミオ! いいところに来た……けど、その前にここは危ない! 気を付けて!」

未央「危ない? それってどういう――」

――ドシュッ!

凛「しまっ……!」

卯月「ミオちゃん避けて!」

未央「ん? ……げっ!?」

――パシィッ!

未央「っ~……危ない危ない。何これ、矢?」

未央「って、ああっ! とっさに使っちゃったよリング……今日はそんなに作ってないのにー!」

卯月「いや、今使わなかったら直撃だったよ?」

未央「むー、誰だ! 出てこい! このミオ=ホンダが成敗してくれるっ!」

――ガサッ

卯月(あれは……!)

凛「……近くの抗争の兵隊みたいだね」

卯月「はぐれた、って事は……幸い、戦火が目の前に来てるって事じゃないみたいだけど」

凛「どのみち逃がしちゃ駄目……この村の存在が知られたら、もっと大きな部隊が来る可能性もある」

未央「じゃあやっつけないとね! 村長さんに私たちの実力を評価してもらうチャンスだよ!」

――ダッ!

凛「相手は二人だけど、はぐれたのが二人とは限らない……地の利はこっちにある、逃がさない!」

――シュッ

卯月「あっ! 待って二人共!」

――タタッ

凛「逃げられると」

未央「思わないでね!」

卯月「早いよ二人共ー!」

――ブンッ!

未央「うわっち!?」

凛(相手は数人、それなりの実力には見えるけど)

未央「やる気? 私強いよ?」

凛「こっちだって十分に力をつけてきた!」

未央「その他大勢は男の雑兵の役目? でもっ!!」

――ブンッ!

未央「国のトップは女性のが多いんだよっと!」

――バシィッ!

未央「あれ、防がれちゃった」

凛「ミオ、もっと真面目に! いつものはどうしたの?」

未央「私も出来ることなら使いたくないんだー、補充が面倒だし」

凛「余裕見てたら痛い目見るよ、っと!」

――ヒュンッ!

未央「おっと危ない!」

凛「いつまで避けられるか、よりも――」

未央「避けるのは得意じゃないからね……勿体ないけど、行くぞぉぉ!!」

カッ――バキィッ!!

未央「おー、飛んだ飛んだ! 私の正拳も絶好調!」

凛「……いつ見ても、その威力は羨ましいよ」

未央「ふぅー……爽快爽快」

凛(拳だけで鉄製の剣を折る、ミオは……私達の中で一番の攻撃力を持ってる)

未央「……これで遠距離攻撃の相手が消えたから、これから温存できるね」

――スチャッ

未央「え、次は短刀とか卑怯じゃーん!」

凛「ミオ! 来てるよ!」

未央「分かってる! また折らなくちゃ……いいや、面倒だし、直接行っちゃうよ!」

――ダッ

未央「吹っ飛べぇぇええ!!」

――キィン!!

未央「加速ッ!!」

未央(そして、ただ単純に、思いっきり振り抜く!!)

――ドッ……バキィッ!!

未央「一丁上がり! ……って、わぁ、まっすぐ凄いところまで飛んで行っちゃった」

未央「やりすぎたかなぁ。でも一個ぶんしか使ってないんだけど」

――チャリン

未央「一見か弱い女の子だけど、ミオちゃんは代々伝わるこの輪っか『パワーリング』を使って爆発的な力を発揮するのだ!
   弓矢も掴み取れるほど繊細な動きとスピード、木ごとなぎ倒すパワー!」

未央「消耗品だから自分で補充しないといけないのが欠点だけど……って、聞いてないよね」

未央「私は終わったけど、もう一人はどこに言ったんだろう?」

――…………

凛「また会ったね、さっきの人」

凛(数は一人……先回りしていたおかげで、余裕を持って待ち構えられた)

凛「ウヅキは撒いたみたいだけど、私から簡単には逃げられないと思って――」

――ドシュッ! キィン!

凛「遅いよ」

凛「今の、弓矢? ……そう、ボウガンって言うんだ。確かに弓とは少し違うみたいだけど……でも、関係ない!」

――ダンッ!

凛「倒す」

――ダッ!

凛「退くの? でも、逃がさない!」

凛(逃げる相手に追いつくのは得意、なぜならこれが私の武器……一見ブーツに見える靴を使って)

凛「ただ接近して、蹴り抜くだけ!!」

――ガァンッ!!

凛「……今のは真下から突き上げただけ、でも」

――タンッ!

凛「空中なんて不慣れでしょ、その弓も構えてる暇は無さそうだね」

凛「大抵の相手は、無理矢理浮かせると無力化するから……その動き、私を弓で狙ってる?」

凛「私に言われてからじゃ、遅いよ!」

――ガッ!!

凛「バイバイ」

――グシャッ!

凛「…………動かないってことは、私の勝ち」

凛「地面に向かって叩きつけただけだから、死んでないとは思うけど」

凛「蹴りだけでも、弓矢に対抗できるでしょ?」

~ 第1-4幕 ~

 さてさて迫真の夜襲、なんでもかんでもバトルって盛り上がるよね? 思わない?
ここで本格的に動いたのはしぶりんと私ことミオちゃん、
襲ってきた雑魚二人を華麗に撃退!

 しぶりんは、他のお仕事で蒼の剣士なんて壮大な役だったけど、
ここでそんな大役を最初から持ってるわけもなく……と、いうよりこっちの企画のが
例のアレより先に作られてたらしいんだよねぇ、メタ発言?
とにかく、特殊な武器、モデルを見せてもらったけどすっごいかっこいいブーツ!
これで相手をバッタバッタ、なぎ倒すんだって!

 一方私は登場してすぐ、反射神経で弓矢をキャッチ! 凄くない?
で、その神業を可能にしたのが、身体能力が強化されるリングのおかげ、だって。
いるいる、こんな感じの道具で戦う人! 私、もしかしてインテリ系?

 さーってと、冒頭導入の顔見世が終わったところで私たちの快進撃が――え、違う?
そういえば、まだ一人目立った活躍をしてない人が?

●本田 未央

卯月「誰もいない……!」

卯月「追いかけてた人も見失うし、私全然活躍してない……」

卯月「……いったん戻ろうかな」

――タッタッタッ……

卯月「入口に帰ってきたけど……二人は帰って来てないみたい」

卯月「本格的に何もなく終わっちゃうよ……で、でも丁度いい機会だし、村に報告を……
   いやいやいや、相手が二人とも限らないしリンちゃんとミオちゃんから逃れて帰ってくる相手もいるかも」

卯月「そうと決まれば私はここから動かないよ!」

卯月「……」

卯月(……)

卯月「…………んっ?」

――ガサガサッ

卯月「……このまま誰も来なくてオチ担当なんて予感がしてましたけど、誰かが来たようです!」

卯月「私がいる限り、村への侵略は許しませ……ん……?」

――ガサガサガサガサ

卯月(気配が……多い……!)

――サッ

卯月(か、隠れてどうするのウヅキ! 入口で見張っておかないと――)

卯月(…………いや、あまりにも気配が多すぎる!?)

――ザザザザッ

卯月(二人、三人……いや、十人以上……!?)

卯月(人数は決して多くない、でもさすがに私一人じゃ……)

卯月(村に戻らなきゃ――)

――パキッ

卯月「しまっ……!」

卯月(音のせいで、何人か気づいた! こ、こうなったら……)

――キィン!

卯月(私はリンちゃんやミオちゃんみたいに、思いっきり近づいて戦うのは向いてない、なら……ここから!)

卯月「纏めて……飛んでけー!!」

――ピキィン! ガガガガ……!

卯月(地面に沿って衝撃波! 物理も魔法も得意じゃないけど、勢いがあればなんとか……!)

卯月「魔力を地面に打ち付けて、その衝撃波で纏めて吹き飛ばす……!
   村を守るのはこれからの私達、この技、名付けて『ジェネレーションウェイブ』!」

――ドドドド!!

卯月「よ、よかった、上手くいった!」

卯月「……技名とか恥ずかしい、かな。カッコいいと思ったんだけど、ちょっと……次からやめておこう、かな」

卯月(でも、全員に標準は向けられなかった、まだ残っている敵がいるはず――)

――ガサッ!

卯月「っ! すぐ近く! でも!!」

――ザッ

卯月「毎日リンちゃんとミオちゃんの戦い方を見てるから、私にも真似できる!」

――ドガッ!

卯月「えいっ! やあ! ……あ!?」

卯月(弓! 遠くから狙われている……そう分かっても、さすがに受け止めたり弾いたりするのは――)

――ヒュンッ

卯月「撃たれ……じゃない、あの影は!」

??「うちの切り込み隊長の蹴りだよ、侵入者の皆さん、よっと!!」

――ドガァッ!!

凛「ごめん、遅れた」

未央「ひーふーみー、こりゃあいっぱい居るね……もう、またリングが減っちゃうよ」

卯月「二人とも!」

凛「思っていたよりも多いね」

未央「でーもー? 私たち三人なら?」

卯月「……だ、大丈夫!」

――ザザッ

未央「あっ、バラけた!」

卯月「あっちにもこっちにも!」

凛「通さないけどね」

――ヒュッ!

卯月「どうしてこんな大部隊に、急にこの村が?!」

凛「さぁね、それだけ戦火が近いって事かな……!」

未央「ぜー……ぜー……それにしても――」

――ザザザッ

卯月「本気で頑張ってるのに数が減らないなんてっ……!」

凛「これが実戦かな……私達は経験不足ってこと……」

卯月(普段の練習と違う、休憩なんて無い戦い!)

凛「一気に向かってきたかも、大丈夫?」

未央「オッケー! それじゃあ!」

卯月「行きます……あっ?!」

――ガクン

凛「ウヅキ!?」

卯月(膝がっ……!? 体力が尽きてた……?)

未央「危ない!」

――キィン!

未央「防御っ――」

凛「そっちからも来てる!」

未央「えっ!?」

――バシッ!

未央「うわわっ!?」

凛「ミオ!」

卯月「リンちゃん! そっちにもっ!」

凛「しまっ……!」

――ガスッ!

凛「っう!?」

卯月「リンちゃん! ミオちゃん! ……くっ、私が――」

未央「しまむっ、うしろにも……!!」

――ドゴッ!

卯月「あっ……ぐぅ!?」

卯月(一人、ふた……駄目、止められない――――)

凛「い、行かせない……待って!」

――バキッ!

凛「っあぅ!?」

卯月「二人共っ! そ、それに……村の方にも残党が向かって……」

卯月「うっ……くっ、私が……止めなきゃ…………えっ?」

卯月(攻撃が、来ない……静か……)

卯月(……!?)

卯月「そう、か……私には、誰も……」

卯月(止めるまでもない、って事……?)



――ドォン



卯月(村の方角から……!?)

卯月「立たなきゃ……立って、止めに行かなきゃ……っあ」

――ドサッ

卯月「はぁっ、はぁっ……!」

卯月(こんな所で、私は一人で何を……? リンちゃんと、ミオちゃんも助けに行かないと駄目なのに)

――バタッ

卯月「っ……村長さん……私は……!」

ドガッ! ガタン

卯月「ひっ!? ……あっ、あれは…………」

卯月(村長が保管するって言ってた……経典…………あれ、なんでこんなトコに……?)



――無償で願いが叶うはずがない、代償を求められる。



卯月(そんなことは……もう、どうでもいい)

卯月(これが目の前にあって、この現状……)

卯月「私は、どうなってもいいから……願いを叶える経典さん…………この村と、私の仲間を救って――――」

~ 第1-5幕 ~


 ……はい。
私、じゃなくてウヅキが一人、村の入口に戻ってきたのですが残念なことに
その場で更なる増援と遭遇してしまって、さらに運悪く見つかってしまって、ピンチです!

 が、そこに割って入ってきたのが我らが仲間のリンちゃんとミオちゃんです。
慌ててうまく応戦できてないウヅキに協力して、なんとか撃退を試みて――
残念ながら、主役とはいってもまだ冒険にも出ていない三人、世界は広くて、
うまく足止めも出来ずに敗れてしまいます。

 そんな時、ウヅキの目の前には村へ置いてきたはずの、例の経典が。
あの場では“代償無しに願いなんて叶えられない”として、危険なものだと隔離しましたが
そうも言っていられない状況に、ウヅキは決心しました。

●島村 卯月

卯月「…………えっ!?」



――ようこそ、シンデレラの館……ではなく、空間へ。



卯月「あなたは……!」

愛梨「二度目ですね、ウヅキさん」

卯月「あっ、あの、あのっ、ここは……?! 皆は……?!」

愛梨「落ち着いて、まだ時間は経過していませんし場所も変わっていません」

卯月「変わってないって……こんな、変な色のふわふわした……ええっ?」

愛梨「言い方を変えましょうか、ここは……場所は変わっていません、あなたの村です」

愛梨「ですが、あなたの持っていた経典により作られた空間、と言いましょうか」

卯月「あの本……!」

愛梨「普段はこの場所へ人を招く事はありませんが、あなたの願いは返答に急を要する」

卯月「私の願い……もしかして」

愛梨「あれ、自分で言っていたじゃありませんか。……この村と、私の仲間を救って、と」

卯月「叶えてくれるんですか!?」

愛梨「ウヅキさん次第、としか言いようがありません」

卯月「っ……だ、大丈夫です。覚悟は出来てます! 私はどうなっても――」

愛梨「あ、えっと、そういう意味ではありません。私が何かするではなく、ウヅキさんの頑張り次第、ということです」

卯月「それは……どういうことですか?」

愛梨「……この経典の名前、他で聞いたことはありませんか?」

卯月「それは、童話です。魔女によって綺麗なお姫様になって、王子様と結ばれる話です……でも、それとどういう関係が?」

愛梨「願いを叶える、確かそう説明されていましたね?」

卯月「はっ、はい、村長さんからはそう……願いを叶えるという大きすぎる力は簡単に使えるはずがない、
   絶対に何か大きなリスクを支払う羽目になる、だから軽々しく使うなって」

愛梨「そこが少し違います」

愛梨「もう一つ、童話の解釈も私とは異なりますね」

卯月「えっ……?」

愛梨「魔女は確かに主人公を姫に飾り立てましたが、魔法が切れた彼女を探した王子は、
   その後の普段の彼女を見て幻滅しましたか?」

愛梨「見事、結ばれました。これは彼女自身の魅力が元からあったから、です」

卯月「……やっぱり、世界は才能で決まるんですか?」

愛梨「こういう考え方も出来ませんか? 彼女は確かに魅力はあった、でもそれに気づいていなかっただけ。
   どんな境遇の人でも、磨けば光る才能があると」

卯月「ですけど……」

愛梨「きっかけは必要です、それが童話では魔女だっただけ。
   ……この経典は、願いを叶えると言われていますが、実はそんな万能の力はありません」

愛梨「所有者の『才能』を見抜き、提示された『願い』を叶えるために必要な『手順』を教えるだけです」

愛梨「だからこそ、願いを叶える障害が高い、代償を支払う……などと言われてきました」

卯月「……」

愛梨「可能な願いしか叶えられない。ね? 十大秘宝なんて言われているけど、そんなに凄い経典じゃないでしょ?」

卯月「可能な……お願いしか叶えられない?」

愛梨「そう」

卯月「じゃあ、私が今、この不思議な空間にいるということは?」

愛梨「あなたの思っている通りです。村を守りたい、みんなを救いたい、あなたなら経典に頼らなくても可能です」

愛梨「……ですが、可能なだけで、実際にどう動けばいいか、何をすればいいか、それが分からない」

愛梨「経典に、もう一度願ってください……『あなたは村を、仲間を救いたい』ですか?」

卯月「…………はい!」

愛梨「承りました……経典は、あなたにシンデレラとなるための願いを叶えましょう……!」

~ 第1-6幕 ~


 アイリは、ウヅキに才能を見抜き、力を与えるために経典を授けました。
この状況下で、それに応じたウヅキさんは、ついに願いを――窮地に追い込まれている仲間と村を救いたいと願ったのです。

 ……これって、台本を読んでいた時から思っていたんですが、
私もかなり重要な役なんじゃないですか?
というよりむしろ、もっと大事な主役みたいな……だ、大丈夫なんでしょうか?

 確かに事務所の宣伝と広告のコンテンツとは聞きましたけど、それってつまり主役という主役は固定せずに
順番に出番があるって事ですけど……で、出番に差が出ちゃうんじゃ……

●十時 愛梨

卯月「……はっ!?」

卯月(今のは何だったんだろう……本当に、願いが叶うの?)

卯月「…………そうだ! 二人を探さないと!」

――タッタッタッ

卯月「ふっ……ふっ……」

卯月(私、まだ……走れる……! 落ち込んだ気持ちがいけなかったんだ……!)

卯月「前を向けば、走れる!」

――ダンッ

凛「っく、けほっ……」

凛(こんなに神経と体力を削るなんて……本当の勝負が……!)

――ダッ!

凛「く……!」

卯月「させないっ!!」

――キィン!

凛「う、ウヅキ!?」

卯月「大丈夫!? 私はもう、大丈夫だから!」

凛(ウヅキ、もう復活して……!)

卯月「私は! みんなを! 守る!!」

――ゴォオッ!!

卯月「魔力を手に……振りぬく! はぁあああ!!」

――ズガァンッ!!

卯月「はああっ! ……よ、よしっ!」

凛(いつも見ているものより……強い!?)

卯月「まだまだ、今の感じで何度も!」

凛(何度も……? まさか、今のは決死の一撃でも何でもなく……)

卯月「たあああっ!!」

凛(ウヅキにとって“頑張った一撃”に過ぎないの?!)

――ドオンッ!!

卯月「はぁ、はぁ……やった……!」

凛「ウヅキ……今のは……」

卯月「リンちゃんを、守りたかったから!」

凛(……ウヅキらしいかな)

卯月「……はっ、こうしちゃいられない! ミオちゃんの方にも行かなきゃ!」

凛「それは急がないと……!」

――…………

未央「無い!」

――ヒュッ!

未央(攻撃は大丈夫だけど……このリングを今日だけで使いすぎた……)

未央「というより、長期戦に向いてないなぁ私っ!」

――ゴッ!

未央(っー……といっても、どうにかしなきゃね!)

――ドドドド

未央「んっ?」

――ズドドドドドド!!!

未央(これはしまむーの……って、どこから――デカっ!?)

未央「あわわっ! 回避!」

――ドガァン!!

――…………

未央「いつものより……大きい……?」

卯月「ご、ごめん! 巻き込む所だったっ!」

未央(あんなに遠くからこの大きさの衝撃波を……!?)

卯月「……怒ってる?」

未央「え? あ、いやいや! 助けてくれてすっごいありがと! もうリング残ってなくてね……明日いっぱい作っておかなきゃ……」

凛「……個々の課題は見つかったね」

卯月「まだまだ力不足だったよ、私たちは……」

凛「そうかな……ウヅキは真の力、出せたんじゃない?」

卯月「えっ?」

卯月(アイリさんの……お願いのおかげかな? ……お願い、はっ!)

卯月「そ、そうだ! まだ何人かが村に向かってるんだよ! 早く追いかけなきゃ!」

未央「まずい、そうだったね……」

凛「早く戻ろう、私たちがなんとかしなきゃ――」

凛「到着した……でも、静か……?」

未央「誰も来てない、はずはないのに……」

卯月「……? 待って、何か声が――」

――ィィィィ

凛「ちょっ!?」

未央「いっ!?」

――ドシャァッ!!

未央「っ……あれ、何? なにが飛んできたの?」

凛「これ……人、しかも――」

卯月「さっきの、村の方に逃がしちゃった人……! どういう事? 村は静かで戦ってる様子なんて無いのに――」

??「おかえり、まぁそんなボロボロになっちゃて……無理せず任せてくれてもいいのに」

凛「村長!」

??「ウヅキ、リン、ミオ。……無事だったからよかったけど、反省はあるわよね」

卯月「う……は、はい」

??「ならよろしい、それが次のステップアップにもなるからね。でも無茶は駄目よ?それと――」

??「夜盗はこれで全員?」

未央「は、はいっ! 私たちが見たのはこれで全員!」

凛「村の外で二人、ここに四人なら全員」

??「じゃあ……変ね。もしかして……私の保管していた経典が消えたのだけど、正直に言ってね?」

??「誰か、持ち出して……使った?」

凛「まさか、盗まれた?」

未央「私は使ってないよ!?」

卯月「…………はい」

未央「ほら、私たち三人は――――えっ?」



卯月「私が、村を守って……皆を助けたい、って」

凛「ウヅキ!?」

未央「そんな、一人で背負い込むことないんだよ!」

??「…………何か、他に大事なことは?」

卯月「ありません! これ以外は、本当にないんです! 何かを要求されることも、失うことも……!」

卯月「この経典は、何でも願いが叶うものじゃなかったんです……努力の方向を、教えてくれるものです!」

凛「努力の……」

未央「方向?」

??「……じゃあ、その願いを叶える途中、ってこと?」

卯月「そう、なります」

??「あら、じゃあ……私が保管するのはよろしくないわね。次の指示があるんでしょう?
   仲間と共に、成長するまでのシンデレラストーリーが」

卯月「えっ、と、確認していないので……!」

??「じゃあ今すぐ確認しなさい、そして……村を守れるほどになったら、帰ってきなさい」

卯月「えっ?」

??「この村の中だけで一人前には慣れない、おそらく他の地に向かえと指示があるはずよ、あなたの言う通りなら」

未央「しまむー! 早く確認! 本は?」

卯月「そ、それが私は持ってなくて……あっ!」

――ガサッ

凛「経典……? あんな草陰に、さっきまであったっけ?」

卯月「きっとアイリさんだ……必要な時だけ、指示がある時だけ出てきてくれるんだ」

未央「ところで、願ったのは自分の強さだけかなしまむー?」

凛「私たちは、ただ守られるだけ?」

卯月「え、えええ? だ、だってあの時は緊急だったし……!」

??「心配ないと思うわよ? とりあえず指示を見てみなさい、私の予想が当たってたら、最初の支持はすぐに達成できる」

卯月「……? あ、開けるよ」



~ ウヅキ=シマムラ、リン=シブヤ、ミオ=ホンダと共に行動しろ ~



卯月「本当だ……」

凛「ふふ、これで三人一緒に行けるね?」

未央「ああっ、でも村の守りは……」

??「私がいるじゃない、心配される程ヤワじゃないわよ?」

卯月「絶対、すぐに帰ってきますからね!」

??「遅くてもいいから、必ず帰ってきてね? じゃないと心配して眠れないから、ね?」

凛「次の指示が……来たみたいだよ」

未央「おおっ? 次が、私たちの冒険の始まりの一歩なんだね!?」

卯月「出てきた……次の指示は……!」



~ かつての中心、現在でも物流や技術の中心を担う、魔法の栄える地区『旧都区』へ向かえ ~

~ 最先端の科学技術が揃う、近未来の建物で囲まれた地区『未来区』へ向かえ ~

~ 広大な森、山、湖などの大自然に覆われた様々な文明の集う地区『発祥区』へ向かえ ~



未央「三つ?」

凛「要するに、全ての地域を周ってこい、ってこと?」

卯月「いや、他にも解釈があるよ? たとえば、一人ずつバラバラに一斉に出発するとか……」

未央「嫌だよ!? さっそくバラバラとか! 確かに効率的だけど!」

卯月「じゃあこれは『とにかく全ての地域を見て回れ』ってことかな」

??「先に言っておくけど、この村は旧都区にある。そして発祥区とそれなりに近い位置だよ」

卯月「ということは近い順に、旧都区の探索を進めるべき? 行って何をするかも分からないから近い方が……」

未央「いやいや、これは私達の経験のためなんだから行った事のない場所に行くべきだよ? 幸い、発祥区の方は少し近いし!」

凛「行った事のない、なら一番遠い代わりに一番ここの文化と違う未来区に行くべきだと私は思うな、経験って点から見てもそれがベスト」

卯月「うーん……どこに行く?」

~ 第1-7幕 ~


 はい、これにて終了です!
一回目ということで、私もうまく分かってなくて……解説どころか
普通のお話もうまく出来ていませんでしたけど……

 とにかくお話は、経典の中の人であるアイリさんに励まされた私が、
リンちゃんとミオちゃんを助けに参上して、なんとか追い払うんです!
……でも、実際は村長さんがとっても強くて、むしろ経典を使っちゃった事を心配してくれるのですが
これも修業だってことで、私達が外の世界へ旅することを了承してくれるんです。

 あ、ここの村長さんは……まだ名前が掲載されていないようですけど……
もちろん、私達の事務所のアイドルの人が担当しています♪
またの登場機会を、私も頑張ります!

●島村 卯月




・・

・・・


~ 第2-1幕 ~

 旧都区、未来区、発祥区、この三つで形成されるこの世界、
どれも回らなきゃいけないって指示は出たけど、一度じゃなくて順番に回るべきだって提案、当然だね。
翌日、進路を決めた三人が村を出て、目指すのは最も近い、とされている『イスカ』という村。

 おはよう、こんにちは、こんばんは。
今日は、昨日の続き、リン達が冒険に出発した部分から話が始まるよ。
三つの地区の名前はうちの事務所のキュート、クール、パッションをイメージしてるって聞いたけど……
こんな感じの裏話とか、話せばいいのかな?

●渋谷 凛

~ 旧都区『イスカ』 ~



卯月「だ、大冒険だった……ね」

凛「まだ一区間歩いただけのはずなのに、これは予想以上……」

未央「しぶりんの案で未来区まで行ってたら、きっと今頃死んでるね私は」

卯月「……まず、どうする?」

凛「どうするもなにも、経典を見ないと」

卯月「あ、そうだね……」

――ペラッ

未央「割と大きい本だからね、荷物が邪魔なら私が持ってあげてもいいよ?」

卯月「いいや、これは私が持たないと……んしょ。……何も増えてないね」

凛「進展なし、か。もしかして村を出ただけじゃ駄目なんじゃない?」

未央「え、そりゃそうじゃない? 村を出ただけで強くなれるわけないよ」

凛「そうじゃなくて……指示に従った瞬間に次の指針を出してくれると思ってたんだけど」

卯月「確かに、旧都区に向かえって条件? は満たしたはずなのに」

未央「……全部回れ、ってことじゃないよね?」

凛「だとしたら……一度に条件として提示されると思うな」

未央「よかったぁー……もしそうだったら私は倒れるー……」

卯月「じゃあ、何をするかは自分達で見つけなきゃダメなのかな」

凛「他の可能性としては……実は『もう何かが起き始めている』かもね」

卯月「どういうこと?」

凛「あまり詳細に何が起きるかを書くと、私達の特訓にならない。
  じゃあ何かが起きる最低ラインの事が書いてあるとして、つまりそういうこと」

未央「おぉう……なんだかよくわかんないけど、ひとまずその何かが起きるまで待機?」

凛「……かもね。どうする? 初めての村以外の場所、いろいろしたい事は、あるよね」

未央「おっ! 冒険っぽくなってきたね! じゃあ早速探検だ!」

卯月「私もいろいろ見て回りたいよ!」

――…………

卯月「――でも、その前に、お腹が減ったかも……」

未央「……目標変更! 私も同意! ご飯食べるところを探そう!」



・・

・・・


未央「食べた」

卯月「のはいいんだけど……」

凛「これ、どうする?」

――ジャラジャラ

卯月「外では食べるのも道を通るのにも“お金”がいる、って聞いて」

凛「一文無しを避けるために村長から貰ってきたコレだけど」



――ああ、お金? 確かに失念していたわね。これを持って行きなさい、役に立つから



未央「お金そのものとは言ってなかったねぇ……これ、綺麗だけど」

卯月「宝石でいいのかな」

凛「確かにお金にはなるけど、お金そのものが最初から欲しかったね……これ、どこでお金に替えられるの?」

未央「さぁ……お店、とか?」

凛「それがどこかって話なんだけど」

未央「分かんないよっ! じゃあ私探してくるよ!? いつ帰ってくるか分からないけどね!?」

凛「そんな言い方ないでしょ!?」

卯月「わーわー! こんなところで喧嘩しないでっ!」

??「あのっ!」

卯月「あわわ! す、すいません! ご迷惑おかけします! もしかしたら後でもう一回かけるかもしれません!」

??「あ、いえ、他にお客は今はいないので構いませんが」

??「……そのアゲート、どこで手に入れましたか!?」

卯月「あげ……えと? ど、どれですか?」

??「それです! ちょっと見せてもらっても?」

卯月「あ、ど、どうぞ……」

??「うん……こんな純度、大きさ、簡単に見つからないのに……」

凛「……?」

未央「えっと、店員さん?」

??「あ、失礼しました、私物なのに申し訳ないです!」

??「アタシはトモカ。トモカ=ワカバヤシ、以前は鉱石や宝石のハンターだったけど、今では用心棒の店員だよ」

卯月「は、初めまして……私はウヅキ=シマムラです、近くの村から初めて出てきたもので……
   こっちの二人はリンちゃんとミオちゃんです」

凛「……どうも」

未央「よろしく……?」

智香「じゃあ修行って事かな?」

卯月「平たく言えば……そうなりますね」

未央(あれ? そうだっけ?)

凛(違うけど本当の事を言うわけにもいかないでしょ?)

智香「ふーん……アタシも昔はそんな感じだったよ! って言っても、ここ数年の話だけどね!」

卯月「好きなんですか? こんな、鉱石とか」

智香「特別好き……ってわけではないけど、身近に冒険心をくすぐられた物がこれだったからかな、思い入れはあるよ!」

智香「とにかく旅に出る切っ掛けだったからね、あの時は元気だったよ……」

凛「今はそうじゃない?」

智香「そんな事はないよ? ただ力の入れる方向を変えたってだけ!」

卯月(……切り出す?)

未央(――しかないよね?)

卯月「えっと……トモカさん、でした?」

智香「うん、何かな?」




・・

・・・

卯月「――というわけで……この石で、なんとか立て替えて貰えませんか!」

智香「ちょ、ちょちょちょ、ちょーっと待ってね、落ち着いて聞いて」

未央「あー、やっぱり駄目かぁ……どうしようしぶりん、私達の旅路が早くも崖っぷちだよ」

凛「最悪、誰か一人置いて換金するところを探さなくちゃ――」

智香「違う違う! 受け取るのは是非受け取りたいんですけど、ただ……全然アタシの所持金と釣り合わなくて」

卯月「どういうことです?」

智香「このお食事代どころか、けっこうなお釣りが返ってきますよ! それをアタシが払えません」

凛「じゃあ……別に、いいよね?」

卯月「うん、お金が必要なわけでもないし……あるぶんだけで構わないよ」

智香「い、いや、それもとっても魅力的ですが商人も兼任していた過去の良心が……!」

未央「いいですって! 受け取ってくださいって!」

智香「あー! さすがにそれは受け取れませんよー!」

??「では、お店がお代金の代わりに少し援助しましょうか?」

卯月「……?」

智香「あっ、ツバキさん?」

椿「ふふっ、綺麗な宝石ね。トモカちゃん、これはここのお店の何回分のお食事になるかしら?」

智香「ええ? それは……もう、けっこうな回数になっちゃいますよ?」

椿「あら、すぐに数えられる回数じゃない?」

智香「そりゃあもう……特に、ツバキさんはお食事代なんてほとんど取らないから……」

椿「他の人とお喋り出来るだけで充分ですよ?」

卯月「あの、ツバキさん……ですか? 私達本当に大丈夫なんで……!」

椿「そう? じゃあ……さっきの話だと、しばらく修行で村を出ているって、言ってたみたいだけど」

未央「そ、そうそう! そうだよ!」

椿「じゃあ、ここにしばらく滞在するつもりならお店、いつでも来てくれて構わないですよ。サービスしてあげるからね?
  何百回分のお食事でも差し上げちゃいますから」

凛「えっ、それも何だか悪いよ……」

椿「その代わり、お話いっぱい聞かせてくれるかしら、これからとこれまで?」

~ 第2-2幕 ~

 『イスカ』に辿り着いた三人は、なにはともあれ新しい指示も無い以上、ご飯を先に食べるそうです。
そこで初めて遭遇する、外国のお金の話、確かにアタシも旅行とか行った時は戸惑ったかも。
村の村長さんに持って行けと言われていたお金は、なんと宝石、これじゃあ価値はあっても支払えない……

 その時ですっ! 自己紹介が遅れたね?
お店で働いていた、元宝石ハンターのアタシ演じるトモカちゃんが、同じく従業員で店長の椿さん演じるツバキちゃんと遭遇。
結局、今後のお食事代も先払い、って形で妥協……したのかな? とにかく、解決解決。

 ところで、てっきりチアゲールとか応援団とか、そんな役でここに出ると思ってたんだけど、
それにこんなに早く出ることになるとも思ってなかった、かな?
アタシも驚く“意外”が詰まってる物語、まだまだ続くよ☆

●若林 智香

卯月「――というわけで。……これ、さっきも言ったような気はしますが、つまりそういうことなんです」

椿「それでこの村の方へ?」

凛「いえ、どこへ向かっても良かったんだけど……成り行きかな」

椿「そう、じゃあ……あまり向いていなかったかもね、この村には」

未央「えっ? こんな平和な場所なのに? 静かで、争いなんて起きそうにないけど……」

凛「修行には平和すぎる、って事?」

智香「そういうわけではないんだよね、はい紅茶」

椿「あら、ありがとうね」

智香「ツバキさんも少しは仕事してください!」

椿「ごめんね、これが私の仕事なの」

智香「はいはい、そうでしたねーっと」

椿「あらあら…………それで、静かな場所って言ったけど、本当はもっと賑やかな村だったのよ、ここは」

椿「少し前まで、それはもう賑やかで、お喋りもたくさん、楽しかった」

椿「でも、聞いたことがあるかもしれないけど世界中で起きている戦火はこんなところまで影響があって、ね」

卯月(こんなに、すぐ近くまで……!)

椿「皆はここは危ない、って隣の村へ避難した。でも私はこのお店を続けたかったの、なぜでしょうね……
  ここにいても、私の楽しみはほとんど残っていないのに」

凛「…………」

未央「……戦火は、国を巻き込むほど大きいもの?」

椿「いいえ、幸い本当の戦火の波にアテられた程度の、小さな小さな争い……でも、いつ火が大きくなるかは一触即発」

椿「この機に、大きな侵略を企てている地区があるみたい……聞いた事は?」

卯月「いや、全然……」

椿「『発祥区の飛び地』、これは聞いたことが?」

未央「んっ? なーんかどこかで聞いたような……」

凛「ミオが? 気のせいだよきっと」

未央「んなっ! 失礼だなー、私だって二人が知らない事を知ってる可能性あるじゃん?」

卯月「それ……村長さんから『気をつけておけ』って聞かされたような」

未央「ほら! 多数決! 知らない方が変なんだよわーい!」

凛「……外行こうか」

未央「おっけー」

卯月「じゃないよ!? 座って二人とも!」

椿「『発祥区の飛び地』っていうのは、発祥区のエリアから離れた場所にあるにも関わらず、発祥区に該当する地域の事」

智香「普通はちゃんと分けられてるんだけどね、発祥区は『未開の地』って意味も含まれているから、こうやってバラけちゃうこともあるんだよ」

卯月「あっ、トモカさん……」

智香「他にお客もいないし、アタシも混ぜてね」

椿「つまり、発祥区は旧都区でも未来区でもない場所、って言った方が正しい……そうだったよね」

智香「そうそう。で、実はその発祥区の飛び地がこの近辺にあるって噂でね」

凛「噂?」

智香「そう! それが不思議なところ! この近くにあるのはあるらしいんだけど、なーぜか見つからないんだって!」

未央「本当にあるのかなー、そんな場所なんて」

椿「明確な証拠はない。でも、可能性は極めて高いって発表だった」

智香「例えば、アタシの知識の観点から言うと、その地域にあるはずのない鉱石が大量に見つかったとか、
   周囲の町や村に一切目撃証言がないまま消えた住人とか、一種のオカルトだよこんなの」

椿「仮に、その場所を見つけたら……見つけて侵略した人のものになる」

卯月「それが、さっきの大きな侵略……?」

智香「ご名答、しかも聞いて驚き、侵略を企ててるのは未来区のトップクラスのグループって噂!」

凛「そんな集団が、この村の近くにあるかもしれない飛び地を見つけたら……」

未央「そりゃあ…………逃げるね。いつ“ついでに”とかで攻め込まれてもおかしくないよ」

卯月「…………」

――ガサ ドサッ

卯月「あっ、荷物が……!」

凛「ちょっと、話の途中なのに何やって……ウヅキ、それ」

卯月「えっ? あっ!」

――バサバサバサッ

未央「本が……新しい文字!?」

~ 『イスカ』近辺の飛び地に迫る戦火を止めろ ~



卯月「……新しい情報を手に入れたら、増えたってこと?」

凛「そう考えるのが普通かな。それにしても、出来る事しか提示しないと言いつつ……これは……」

未央「今の私たちに出来るの?」

卯月「アイリさんの言葉を信じなきゃ! 私達は、絶対に出来るんだから!」

未央「そ、そうだね! そのための願いだもんね!」



椿「……えっと、それは?」

卯月「あっ」

智香「本にしては古そうな、しかもどこかで見たような……もしよかったら見せてもらっても――」

未央「あああーっ! 大丈夫です! 人に見せられるものはあまり書いてないので! だよね!?」

卯月「え、あ、う、うん! 修行の日記帳みたいなものです! 私達だけの!」

智香「あー、じゃあ調べるのは無粋だよねっ、ごめんごめん」

凛(危ない……)

未央(でもどうするのしぶりん、この指示に従うにしても手がかりが――)

椿「……あら、もうこんな時間」

智香「本当ですね。じゃあ一旦……そうだ、三人とも少し時間があったりする?」

凛「時間? 特に予定は無いけど」

智香「じゃあ少し、アタシのお仕事のお手伝いをしてくれてもいい?」

卯月「見回り?」

智香「そう。一人もいないってわけじゃないけど、この村から皆が避難したせいで、誰もいない家とかがそれなりにあってね」

智香「そんな村を狙う、火事場泥棒みたいな輩もいるんだよ」

卯月「パトロールですか? 不審者が居ないかどうかの」

智香「だいたいそんな感じかな。普段は一人だからその間ツバキさんを一人にするし、時間もかかるんだけどせっかくだからね」

卯月「大丈夫です! 一緒に頑張りましょう!」

智香「よし、じゃあアタシはこっちから見て回るから!」

卯月「それじゃあ私はこっちから……」

~ 第2-3幕 ~

 この村の活気が無い理由は、すぐ近くで戦火が広がっていたから……
『発祥区の飛び地』と呼ばれる、この世界で言う小さな独立部分を巡っての争いだそうです。
その場所を狙うグループもまた大きい組織、隣国の巨大勢力。
これでは、人が少なくなるのも頷けます、ね。

 そんな現状を知ったウヅキさん達三人に、
最終的に願いを叶えるための試練を課す経典は“戦火を止めろ”と命じます。
まだ具体的な指示が出ない三人は、ひとまずトモカやツバキが日課にしていた周辺の警備、パトロールに同行します。

 ……自分でも、意外です。
私も、お仕事の存在は知っていましたが、こんなに早くとは――
ですが、せっかくの珍しいお話なので、小さな機会でも精一杯、させていただきますね?

●江上 椿

卯月「……人は、居ないわけじゃないね。でも、トモカさんが言うには普段はもっと多いって」

卯月「どの地域も、戦火の影響はあるんだ」

卯月(それにしても……最初の明確な指令が他の地区を救うことなんて、私に出来るのかな?)

卯月(ううん、弱気になっちゃ駄目。リンちゃんやミオちゃんみたいに、私も強くなって――)

――タッタッタッ

卯月「んっ?」

??「うわっ!」

――ドンッ! ガシャッ

卯月「きゃっ……あ、ごめんなさい!」

??「いたたた……ち、ちゃんと前見て歩けよなっ!」

卯月(……すごい格好)

??「聞いてるのかっ!?」

卯月「へ? あ、ごめん……あわわ、荷物が」

??「……ほら」

卯月「あっ、ありがとう……」

卯月(口調は攻撃的だけど、ちゃんと拾ってくれるんだ)

??「その……ウチもちゃんと見てなかったし、おあいこだからな!」

卯月「私も、考え事してたから……名前は?」

??「うん?」

卯月「私はウヅキ=シマムラ、この村の出身じゃないんだけど、あなたもだよね?」

??「そ、そうだけど。別にいいじゃん……な、なんか文句あるのかっ!」

卯月「いやいや! 今も荷物拾ってくれてるし、手伝ってくれた人の名前は知っておきたいだけかな、って」

??「…………ウチの名前は、ミレイだよ」

卯月「ミレイちゃんって言うんだ」

美玲「ち、ちゃん……ウチはそれなりに長生きしてるんだぞっ! 引っ掻くぞ!?」

卯月(かわいい。……特徴的な装いとか、今の発言からすると、人間族じゃない?)

美玲「ほら、盛大に散らかしちゃったからなっ……早く片付けるんだよっ!」

卯月「分かってるよ。ところで、ミレイちゃんはこの村に何の用事で?」

美玲「別に、この村に用事があるわけじゃないよ。隣の地区に行くのがウチの目的」

卯月「隣……発祥区か未来区?」

美玲「え? 隣は未来区と……あっ、そ、そうだぞ未来区ってところに行くのが目的!」

卯月「ここからだとかなり遠いよ?」

美玲「大丈夫! 体力には自信があるんだぞ、これでも村で二番目!」

卯月「元気なのはいいことだよ」

美玲「やっぱり子供扱いしてるだろっ!? ウチは長く続く集落の…………」

卯月「……? どうしたの?」

美玲「……いや、なんでもないぞ。じゃあウチは先を急ぐから」

卯月(なんだろう、雰囲気が変わったような)

卯月「うん、じゃあ気を付けてミレイちゃ――はうっ!」

――ビターン

美玲「ドジとか、よく言われてないのか?」

卯月「……そんなはずは、ないです」

美玲「せっかく直した荷物が、またバラバラに落ちてるこの状態でもそう言うの?」

卯月「はい、大丈夫です。でも、拾うのを手伝ってください……」

美玲「特別だからなっ、これはウチのせいじゃないからな!」

美玲「これと、これと。……んっ?」

――バサッ

美玲「……!?」

卯月「よいしょ……あ、ミレイちゃん、散らばった荷物はここに入れてくれていいから……あっ」

卯月(ミレイちゃんが持ってるのは……経典! また落としたんだ私)

卯月(返してもらわないと――)

美玲「おいっ!!」

卯月「え?」

美玲「こ、これっ……どこで手に入れたんだっ!?」

美玲(願いが叶うお宝、見た目は本だけど凄い力があるって、ウチが知ってる情報だ……!)

美玲(頼りにはしてなかったけど、こんな簡単に見つかるならこの力を借りるんだっ!)

美玲「この本……ウチに譲ってくれないか!?」

卯月「……そんな、真っ白の本を? メモなら代わりの物があるよ」

卯月(この反応……もしかして)

美玲「ああ、そんな用途じゃなくて……とにかく、必要ないなら譲ってほしいんだよっ!」

卯月「何に使うの?」

美玲「それは……べ、別にいいじゃんか!」

卯月「何を隠してるの? ……これは本だから、読む以外に使わないでしょ?」

卯月「私が“使う”と聞いて、読む以外に答えなかった……ミレイちゃん、この本の正体、知ってるでしょ?」

美玲「ぅう!……じゃあ、これはホンモノなんだなっ?」

卯月「……本物だよ、それは。だから、渡せない!」

美玲「だと思った……ただ一つ、ウチの願いを叶えさせてくれるだけでも――」

卯月「それは無理だよ、この本は……願いを無条件に叶えてくれるものじゃなかった」

美玲「ウチは覚悟出来てるっ!」

卯月「いいや、覚悟なんて必要ない……必要なのは、時間と努力」

美玲「はぁ……? いや、でもウチだって大切な……!」

卯月「私も一緒。故郷を守るために、今願いを叶えている途中」

美玲「途中って、すぐに叶うものじゃないのか!?」

卯月「そこを説明すると長いんだけど――」




・・

・・・

卯月「……願いは叶うけど、道を示してくれるだけ。代わりに、道は私が折れない限り、正しく導いてくれる」

卯月「まだ始まったばかりの旅だけど、ね」

美玲「……でも、叶うのは叶うんだな?」

卯月「そう、だね」

美玲「じゃあ……やっぱりウチが貰う……!」

――ブンッ!

卯月「っく!」

美玲「ウチは覚悟出来てる! ……ひ、人の大事な願いより、もっと大事な願いがあるんだっ!」

美玲「さぁ、かかってこい! ウチの爪で引っ掻いてやる!!」

~ 第2-4幕 ~

 オマエらも、道を歩く時はちゃんと前と下を見ないとダメだぞ!
じゃないと、こうやってトラブルの元だからな……!

 話は簡単に言うと、ウチがウヅキのお宝を奪って、自分のものにしようとしてるんだぞ。
……完全に悪い奴じゃないかッ! い、いや、でもこれはお芝居、お芝居だからなッ!?

 ところで、ウチは幾つかこの話を聞いた時に気になった事があるんだ!
なんかヘンじゃないか!? みんなまともに人間してるのに、ウチだけ本当に人間か
怪しいぞッ!? なんなら既に年齢が妙だぞ!
……そ、そういう種族? だったらちゃんと説明してくれてもいいじゃないかッ、
いきなり楽屋に『お願いします』って駆け込んでくるのはその、よくないと思うぞ!

●早坂 美玲

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