男「やっべ湖に落としちまった」(22)

男「やべーよマジやべーよ、っつーかパネェよ」

男「どうしよ、取りに潜るか?そんなに汚い湖でもないし」

ズモモモモ

男「ん?いきなり水面に不穏な渦が・・・」

バシャァ

女神「どうも」

男「うわっ何か出た!」

女神「あなたが落としたのは」

男「何か出た!やべぇ何か出てきた!」

女神「あなたが落としたのは…」

男「河童か、半漁人か、はたまたネプチューンマンか、やべぇ!殺られる!?」

女神「あの、聞いてくれます?」

男「アレだろ、水の底に引きずり込んで食べる気だろ!」

女神「食べませんて」

男「マジで?」

女神「マジですよ」

男「そうか、陸で食べる気か」

女神「まず食べませんって」

男「マジで?」

女神「マジですよ」

男「性的な意味でも?」

女神「おい」

男「流石に初体験の相手が半漁人はちょっと…。ごめんなさい一瞬相手が誰だろうが童貞捨てられるなら何でもいいんじゃないかとも思ったんですけどよくよく考えるとこちらにも選ぶ自由ってあるじゃないですかすいません無理です」

女神「何で私がフラれてるんですか」

女神「あと湖の女神です。半漁人でも河童でもないです」

女神「そもそもネプチューンマンって男じゃないですか。私のどこが男に見えますか、超人に見えますか」

男「本当に食べたりしません?」

女神「しません」

男「マスク剥ぎとか?」

女神「ネプチューンマンから離れなさい、まず」

男「じゃあ何の用ですか?こっちは取り込み中なんですけど」

女神「あなたのせいで本題に入れなかったんですけどね」

男「めんご」

女神「こほん、では気を取り直して・・・」

男「何か出た!湖から何か出てきた!」

女神「そこから取り直さなくてもいいです」

女神「とりあえず、少し黙っていてもらえます?」

男「はーい」

女神「あら良い返事」

女神「あなたが落としたのはこの金の斧ですか?」

男「…」

女神「それとも、銀の斧ですか?」

男「…」

女神「さあ、どちらですか?」

男「…」

女神「…ああ、もう喋っていいですからね?」

男「なんだ、早く言ってくださいよ河童さん」

女神「女神やっちゅーに」

男「え、両手に斧構えてやっぱり俺食べる気なんじゃないですかヤダー、騙したんだこの自称女神」

女神「食べませんってば」

男「湖の底から突然現れた挙句両手に凶悪な凶器携えた不審者に説得力ってあると思います?」

女神「…あんまりないですね」

女神「それで、あなたが落としたのはどちらですか?」

男「どっちも落としてないんですけど」

女神「正直者のあなたにはこの金の斧と銀の斧をあげましょう」

男「もしかして純金純銀ですか?」

女神「そうですよ?」

男「そんな斧、強度的に斧として役に立たないじゃないですか」

女神「女神としてこんなこと言うのもアレですけど、売ってしまえばいいのでは?」

男「人から貰ったものを売り飛ばすとかクズじゃないですか」

女神「あれ、意外と真面目?」

男「第一、湖の底から這いずり出てきた不審者から貰ったものなんて手にした瞬間呪われそうですし」

女神「うーん、そんな力はないんですけど」

男「そもそも斧なんて落としてないし。斧なんて生まれて手にした事もないですよ」

女神「え、そうなんですか?」

男「今時斧とか…チェーンソー一択でしょ、普通」

女神「時代かぁ」

女神「あれぇ…チェーンソーなんて落ちてきてたっけ…」

女神「ちょっと待っててくださいね。最近この湖に不法投棄とかされるようになって、ゴチャゴチャしてるので…」

男「時代ですねぇ」

女神「ああ、ちょっと時間かかりそうなんで少し待っていてもらえますか?」

男「わかりましたー」

女神「お返事は凄く良いですよねえ」


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女神「お待たせしました」ザバッ

男「あ、ちょっと待って。ナルガクルガ倒せそう」カチカチ

女神「湖のほとりでここまでくつろいでる人は初めてです」

男「よっしゃ討伐…うわ、ロクなドロップ無いな。…ああ、おかえりなさい」

女神「ただいまです。ありましたよチェーンソー」ヨイショット

女神「こほん、では改めまして」

女神「あなたが落としたのはこの金のチェーンソーですか、それともこの銀のチェーンソーですか?」

男「湖に落とされたモノ全部純金純銀の複製作ってんですか?」

女神「ご心配なく。そこはまあ、ファンタジー特有のフワフワとした設定と言いますか女神パワーみたいな都合のいいモノで」

男「いや、そうじゃなくて」

男「暇なのかな、と」

女神「純金チェーンソーの切れ味試して見ます?」ギュイーン

男「やめてくださいしんでしまいます」

女神「冗談です」

男「純金でちゃんと稼動するチェーンソーとか、もはや匠の技ですね」

男「はっ、貴女はかつてこの森で伝説になった伝説の職人?」

女神「女神です」

男「湖の底でせっせと落し物の複製作ってる女神様」

女神「順銀製のチェーンソーの切れ味はどうでしょう?」キュイーン

男「やめろ、その攻撃はわたしに効く」

男「一ついいですか?」

女神「どうぞ」

男「チェーンソーなんか落ちてきて、湖の中で危なく無かったですか?」

女神「そうですねえ・・・切れた、って事は無かったんですが」

男「ほうほう」

女神「思いっきり稼動中のチェーンソーが放り込まれたので、めっちゃ漏電しました」

男「よく生きてますね」

女神「女神ですから」

女神「流石に死ぬかと思いましたけど」

男「女神なのに」

女神「それで、金のチェーンソーと銀のチェーンソー、どちらを落としたのですか?」

男「どっちも違います」

女神「正直者ですね、そんなあなたには」

男「左右の手にチェーンソー構えてるとさっきより凶悪に見えますね」

女神「お望みどおりバラバラにしてやろうか」

男「っつーかチェーンソーなんて落としてないです」

男「そもそも俺、木こりじゃないし。月給手取り17万のシステムエンジニアですよ」

女神「うわぁ、思い切りデスクワーク」

女神「ではどうしてこんな森の中に?」

男「甥っ子の夏休みの宿題の手伝いで、クワガタ取りに」

女神「うわぁ」

男「しかし、この森クワガタいませんね」

女神「時代ですかね・・・」

男「カブトはめっちゃ取れるんですけど」ウジャッ

女神「ヒィッ!虫かごギュウギュウ詰めのカブト虫!」

カブト虫「だしてくれ」

男「この虫かご湖に放り込んだら金銀のカブト虫が出来上がります?」

カブト虫「ちょっ待てよ」

女神「ナマモノは不可です!命は大事に!」

カブト虫「せやな」

女神「ああもう、では一体あなたは何を落としたんですか?」

男「その前に一つ。ナマモノはダメなんですか?」

女神「ダメですよ。魚はいざ知らず、普通の生物は水の中では生きられないでしょう?」

女神「落とした相手がすぐ取りに来るとは限らないですし、ナマモノは取り置きできません」

男「宅急便みたいなシステムですね」

女神「それで、何を落としたのですか?」

男「甥っ子」

女神「ナマモノぉぉぉおお!!」

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女神「ぜぇ、ぜぇ…よかった、まだ生きていてくれて…」

甥「死ぬかと思った」

男「俺も死んだと思った」

男「あれ、甥っ子の純金純銀複製は?」

女神「ナマモノは不可だって言ったでしょう!」

甥っ子「なあなあおじちゃん」

男「んー、どうした甥っ子。おじちゃんちゃうぞー、まだ20代だ」

甥っ子「湖の底なー、めっちゃ汚かったー」

女神「不法投棄でゴチャゴチャしてるだけです!私がだらしないみたいに言わないで下さい!」

男「女神なのにゴミまみれの湖で暮らしてるとか、若干引きますね」

甥っ子「黙ってたら美人さんなのになー」

女神「甥っ子さんも黙っていたら可愛いですよ」

男「おい、甥っ子の事は何て言ってもいいけど俺を悪く言うのは許さないぞ」

女神「あなたには何も言ってないじゃないですか。あと普通逆です、逆」

甥っ子「だからおじちゃん、カノジョできんねんなー」

男「ハハッ、今度おじちゃんって言ったらウルトラマンタロウみたいな髪形にしてやるからな」

甥っ子「ヒィィ」ジョワー

男「いかん甥っ子が漏らした。湖でパンツを洗わねば」

女神「せめて私の見ていないところでやってください」

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後日

ボチャーン

女神「…また不法投棄ですかね…この前みたいに大量のHな本とかじゃなければいいんですけど…」

男「やあ」

女神「」

男「うわ、本当だ湖の底超絶汚ぇ」

女神「ちょっ、ちょちょちょちょ!」

女神「何してるんですかあなた!」

男「スキューバダイビングを」

女神「そのものすごく本格的な格好を見たら分かりますよ。海でやって下さい、海で!」

男「と、言うのは半分の半分冗談で」

女神「75%も本気ですか」

男「先日は可愛くもない甥っ子を助けてもらったのにお礼も言えなかったので」

女神「そこは素直に可愛い甥っ子でいいのでは」

男「とまあ、用事というのはこれだけなんですけど。…あ」

女神「どうしました?」

男「うっかり湖に入っちゃったんですけど、俺も純金純銀の複製作られちゃいます?」

男「その場合肖像権ってどうなるんでしょう」

女神「ナマモノは不可だって言ったでしょう」

女神「…それと、ご自分が落ちるのではなく、今度はもっとちゃんと落としてください」

男「貴女の心を?」

女神「…いいえ」



女神「この話を」

思いつき行き当たりばったりその場のテンションで書いたぞこのヤロウ!
あ、ちなみに昨日誕生日でした。ハムスターからも祝福の噛み付きを貰いました。

オツカーレ

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