王様「ガチャで戦力を上げて魔王討伐」(126)

側近「チュートリアルの進行役を務めさせていただきます、側近です」

王様「待て側近よ。ガチャとは何なのだ、何が目的でそれを行うのだ」

側近「魔王がこの世界を侵略するために人間側に攻撃を仕掛けて来てますよね」

王様「そうだ」

側近「そして非常に劣勢ですよね?被害が大きく軍力も著しく減って来てますよね?」

王様「そうなのだ…ううむ困った。このままでは人類は敗北してしまう」

側近「そこでガチャです。半年かけて作りました」

王様「側近よ、そのガチャというのは何なのだ。説明してくれないか」

側近「はいはい、チュートリアルを進めさせてもらいますねー」

側近「まずガチャというのは兵士を召喚する装置と考えてください」

王様「兵士を…?」

側近「そうです。この魔法陣から特定の資材とを引き換えに1人兵士を呼び寄せることが出来ます」

王様「なんてすごい装置だ!でかしたぞ側近!」

側近「喜ぶのはまだ早いです。呼び寄せられる兵士にはレア度というものがあります」

王様「レア度?」

側近「簡単に言えば強さです。レア度は一から五まであります」

側近「しかしどのレア度の兵士が出るかはランダムで同じ資材をつぎ込んでもピンキリというわけです」

側近「ですから要は費用は一定のくじ引きというわけです。わかりましたか?」

王様「で、その特定の資材とは何なのだ?」

側近「この魔石です。五個魔法陣に入れることで兵士を召喚することが出来ます」

王様「なるほど」

側近「こんなこともあろうかとたくさん魔石を取っておきました。大体15個です」

王様「うーむ…少なくないか?」

側近「仕方ないですよ、魔石というのは希少価値が高いのです」

側近「ですが安心してください。初回は無料で引けますので早速引いてみてください」

王様「む、それはありがたいな」

フォンフォンフォン

パーーーン!

☆☆☆★★

戦士「っしゃーーー!!」

王様「レア度3か…」

側近「王様、悪くない引きですよ。十分戦力になります」

側近「ちなみに言っておきます。一人の兵士あたりにつき戦力が1とすると」

側近「レア度1の戦力は平均的に100なのです」

王様「強い!!」

側近「この戦士の戦力は大体320ぐらいですねー」

戦士「契約により参上したぜ!よろしくな!」

側近「コミニュケーションを取ることで特性などを知ることができます。是非話してみてください」

側近「性格などは重要なファクターです。これによりパーティーの信頼度などが変動します」

側近「呼び出した兵士同士の信頼度が上がると共同技を覚えたり、個体のステータス値は変わらなくともパーティーでのステータス値が上がったりします」

側近「ですから仲良くなりそうな兵士を組ませるのがいいでしょう」

王様「ふむ」

戦士「よろしく頼むぜマスター!俺は闘う事が大好きなんだぜ!!」

戦士「あー、筋トレしてねぇと落ち着かねぇ!強くなってもっと強い奴と闘いてぇんだ!」

側近「向上心がある戦闘狂と言った感じですね、アドバイスですが無気力な相手と組むと喧嘩する恐れがあります。お気を付けください」

王様「中々難しいな…」

王様「では次。資材を投入するぞ」

フォンフォンフォン

パーーーーン!

☆☆☆☆★

賢者「あ、あぅ…」

側近「賢者ですね。魔法のエキスパートですからパーティーの調子を整えるのに最適です、強力な攻撃魔法も使えます」

側近「戦闘力は大体450と言ったところですね」

王様「こりゃ当たりを引いたの」

賢者「よ…よろしく、お願いします」ボソッ

王様「え、なんて?」

賢者「あぅ…」

側近「恥ずかしがり屋ですね。パーティーで浮いてしまう可能性があります、コミュニケーションの訓練をさせましょう」

王様「では次引くぞ!」

☆☆☆☆☆

狂剣士「グオォォォォォォ!!」

王様「レア度5!!大物じゃ!」

側近「危ない王様!」

狂剣士「グルァ!!」ズガン

王様「あぶなっ!!いきなり斬りつけてきたぞこいつ!」

側近「賢者を使って魔法で眠らせるのです!」

王様「賢者!こいつを大人しくさせてくれ!!」

賢者「わ、わかり…ました!」

賢者「ら、ラリホー…」ボソッ

狂剣士「グルッ…」ズルッ

側近「戦力は560、しかし理性などないのでパーティーを組ませて闘うのは相当困難です。よく使い道を考えましょう」

王様「怖いなぁ…。地下牢に繋いでおけ」

側近「はい。頑丈なもので固定しておきましょう」

王様「いよいよ最後だな…」

側近「一つ言っておきます」

王様「何だ側近」

側近「実はガチャの目的は勇者という兵士を呼び出すことです」

側近「勇者の戦力は軽く5桁を超えており、引けば我が国の勝利は目前でしょう」

王様「そ、そんな者が…。よし」

王様「てやっ!」

フォンフォンフォンフォン

☆☆☆☆☆☆☆☆☆…

勇者「…」ピコピコ

側近「王様!やりました!レア度測定不能…。間違いなく勇者でございます!」

王様「おお!!」

勇者「んー。中々レアアイテムが出ない」

王様「時に側近よ。この勇者何故兵装をしていないのだ?すごくラフな格好に見えるが…」

側近「一応このガチャは異世界から兵士を呼び出す仕組みなのですが…。多分平和な世界にいたんでしょう」

王様「あのー勇者さーん」

勇者「」ピコピコ

王様「全然答えてくれないのだが…。あれは一体何をしておるのだ」

側近「電脳遊戯[こんぴゅーたーげぇむ]です。ある世界では科学と言う技術が進歩しており、それのおかげでゲームという娯楽道具が開発されたとか」

王様「ふむ…」

王様「勇者さーん!!」

勇者「」ピコピコ

王様「こら!いつまでも遊ぶな!!」

勇者「あ、返せよ!!」

勇者「私を怒らせると痛い目見るぞ!将来的に!」バチバチ…

王様(ま、まずいんじゃないか!?勇者を怒らせるとワシが消されるのでは!?)

勇者「てや!」ボスッ

王様「あれ、痛くない」

勇者「このっ、このっ」ボスッボスッ

側近「王様、残念なお知らせがあります」

王様「何だ側近」

側近「その勇者の戦力は0.7です」

王様「よわっ!!なんでこれでレア度吹っ切れてんの!?」

側近「ガチャで引いた兵士は訓練や戦闘経験を積むことでレベル、つまりステータス値が高くなります」

側近「レベルは1から始まり100が上限なのですが」

側近「勇者だけ規格外のようで10000まで上限があります」

王様「…つまり」

側近「伸びしろがある子…という事ですかね」ハハ

王様「勝ったと思ったのに…」

側近「あきらめないで頑張りましょう!やり方次第でいくらでも勝ち目はあります!」

王様「うぅむ…」

側近「さて、無事資材を使い切って兵士の召喚に成功しましたね」

側近「今後の身の振り方でも考えましょうか」

王様「ふーむ。まずはお互い仲を深めさせるために自己紹介でもさせるか…」

側近「いいですね」

王様「えーコホン、君たちを召喚したのは魔王を討伐するためだ。それは…伝わってるのかな」

戦士「そりゃわかってるぜ!契約要綱に書いてあったからな!」

賢者「はい…ちゃんと読みました。承諾もしました」

勇者「えー!私そんなの聞いてないんだけど!あのババァ勝手に飛ばしやがったな…返せ私のニート生活!」

王様(勇者だけ非協力的…。勝利のカギでもあるのにこれは先行き不安だな…)

王様「にしても契約要綱とかあるのか」

側近「はい。一応同意を得てから来てもらってますよ」

王様(狂剣士がどういう過程で来たのか気になる…)

王様「ワシはまだ君たちのことを良く知らない、そして君たちもお互いの事を良く知らないはずだ」

王様「1人足りないけど自己紹介をしてもらおう、では左から順に」

戦士「俺は戦士!趣味は筋トレ!嫌いなものはマイナス思考と無気力!よろしくな!」

勇者「」ピコピコ

王様(うわ、絶対勇者と相性悪いわ間違いないわ)

賢者「け、賢者です…。趣味は読書です…、よろしくお願いします」

戦士「ほら肩の力抜けよ!声張らねぇと元気でねぇぞ!!」バシッバシッ

賢者「あ、あぅ…」

王様(なんか案外微妙な人間関係になりそうだったけどこの二人はまだマシになりそうかな…?賢者の思い方次第だけど)

王様「次、勇者」

勇者「…」ピコピコ

王様「勇者!」

勇者「あーはいはい。勇者でぇーすよろしくー」ピコピコ

戦士「」イライラ

戦士「おいてめぇ!やる気あんのか!」

勇者「あるわけないじゃん。私勝手にここに連れてこられたんだし」

勇者「ていうか暑苦しいから近づかないで。暑いの苦手だから」ピコピコ

戦士「こ、こんのクソガキ…!」ピクピク

賢者「え、あ…うぅ」

王様「こらやめんか!!」

戦士「チッ」

勇者「」ピコピコ

王様「ま、まぁそういうわけだ。それぞれの部屋を用意しよう、任務は後日課す」

王様「側近、メイドを呼んでそれぞれの部屋に案内するよう伝えてこい」

側近「御意」

王様「今日はご苦労だったな。明日に備えてゆっくりと休んでくれ」ハハハ

側近「何とか一段落つきましたね」

王様「あぁ…。側近よ、あの面子で本当に大丈夫なのか?」

側近「戦力は申し分ないでしょう。魔石のある炭鉱をいくつかピックアップしてあるので戦力はこれからも増える予定です」

側近「それに彼女らの戦力は固定ではありません。育成の仕方次第で戦力は大幅に伸びることでしょう」

王様「なるほど」

側近「さてさてこれからどうしましょうかね、普通の軍は戦力に換算して残り1000あたり」

側近「他国も魔王に進軍されて制圧されています。今生きてる国と同盟を結び兵士を強化する時間を作りましょう」

側近「魔石発掘に割り当てる時間も欲しいですね、魔石入手ルートの拡張にも努めましょう」

王様「まだこちらまで進軍してきていないな……。まずは近くの国に使いの者を送るようにしよう」

王様「ちなみに魔石の価値というのは敵側に知られているのか?」

側近「別名召喚石と言われる魔石は戦力を上げるのに打ってつけですからね、知られているというケースもあるでしょう」

王様「モンスターは拠点を作るのにダンジョンを作るらしいな。地下や洞窟に拠点を作ってるあたり怪しいな」

王様「拠点を叩きたいが…、はてさてどうしたものか」

王様「そういえば敵側もガチャらしきものを作っている可能性はあるのか?」

側近「それはわかりません。あるにはあるでしょう」

側近「どちらにしろ魔石はキーアイテムです。これを確保することが勝利につながります」

王様「まぁそうだな…」

側近「こことここ…。山には岩で堤防を作り槍兵と弓兵を配置します」

側近「浜辺にも艦隊を配置して防御に徹する事にしましょう。海辺のモンスターの警戒も怠らず」

王様「あとは森か…。他のルートを閉ざしてここだけ開けて誘導するか、森を燃やして焼殺を狙うか?」

側近「それも選択肢の一つとして考えておきますか。基本的にはブービートラップなどで対処しましょう」

王様「では今の事をそれぞれの部門の隊長に伝えてくれ」

側近「了解」

側近「では、兵士の育成方針を考えましょうか」

側近「さっきの策はあくまで時間稼ぎ、要は防御策です」

側近「兵士を育てる事によって着実に戦力を上げていきましょう」

王様「その…レベルというのはどう上げればよいのだ?」

側近「基本的に二つです。戦闘経験と訓練」

側近「戦闘経験は進軍する事によって積めるでしょうね。とりあえずは訓練の方針を決めましょう」

王様「訓練…といわれても何をさせたらよいのやら」

側近「職業によって変わりますね。戦士ならひたすら筋トレさせて栄養バランスを考えて戦闘経験を積ませればストレートに成長するでしょう」

王様「即戦力だな」

側近「賢者は…。ひたすら教養を積ませましょう、そして研究を怠らせない事です」

側近「研究は時間が掛かる事が多いです。ですので基本的な魔法を覚えさせてから戦力を一旦上げましょう」

側近「伸びは遅いですがレベルを上げればかなりの戦力になります。モチベーションを上げてあげましょう」

王様「わかった」

王様「狂剣士は…、訓練は難しそうだな」

側近「たしかに扱いが難しいですね…。戦闘経験を積ませましょう、最前線で闘ってもらいます」

側近「狂剣士がやられた場合はあきらめましょう。運が悪いです」

王様「うぅむ…、たしかに訓練だとパーティー間での演習しか思いつかないし、怪我するからよくないしなぁ」

王様「では最前線に立たせよう」

側近「上手く行けば領地を拡大できますね。相手のモンスターのタイプを考慮しながらそこへ向かわせましょう」

王様「問題は…勇者か」

側近「はっきり言って今じゃ戦力になりません。戦闘経験を積ませるにはまだ早すぎます」

王様「つまり訓練でじっくり育てていくしかないな…」

側近「ええ、そうなんですが。如何せんモチベーションが低いです、最悪です」

王様「どうしたものかな…」

側近「まずは話し合いが必要です。王様は彼女のエコグラムでも取って性格を分析し対処してやる気を出させてください」

側近「まぁ最悪薬を使うのもありですが…」

王様「善処しよう…」

側近「そして信頼度…」

側近「今の所希望があるのは戦士と賢者ですね。タイプは違いますがまだマシな関係になれそうです」

側近「勇者はあの腐った根性を叩き直すまで干渉はなるべく避けさせましょう。信頼度がマイナスになるのはダメです」

王様「ではそうするか…」

王様「毎度朝と夜に号令をかけるか、もちろん狂剣士抜きで」

王様「そのことを兵士たちに伝えておいてくれ」

王様「ガチャの事は軍に伝えてあるか?」

側近「話してあります」

王様「まぁこんな所か…。明日の仕事は兵士達と仲良くなってモチベーションを上げる事だな」

王様「今日はご苦労だった、下がってよいぞ側近」

側近「はい」

コケコッコー!

側近「王様朝でございます、起きてください」

王様「もう朝か…」

側近「朝食の準備ができております。こちらは着替えでございます、そしてこれは歯ブラシ」

王様「うむうむ」シャカシャカヌギヌギ

側近「先ほどA国と協定を結ぶことに成功したと使いの者から報告が上がりました」

側近「この調子だと他の国との同盟も同じように望めそうです。まぁ人類全体が脅威に脅かされているのですから当然と言えば当然ですが」

王様「そうだな。しかし国一つ一つが独立して闘う必要はあるまい、ネットワークは深めておいて損はないのだ」

側近「軍も予定通りそれぞれの場所へ配置しました」

王様「ご苦労、ところで昨日呼び寄せた兵は?」

側近「号令をかけると申してましたので食堂へ呼んでおきましたよ。今頃朝食を食べている事でしょう」

王様「ふむ、では私も向かおうか」

ギィィ

王様「おはよう諸君、昨日はよく眠れたかね?」

戦士「おはよう!今日も朝からプロテインと白身がうまいぜ!」

賢者「…おはようございます」モグモグ

ドォーンドォーン

王様「側近…下から聞こえてくるこの音は?」

側近「狂剣士です。まだ戦場へ離していませんので地下で暴れています」

王様「今日中にあいつをどこに配置するか決めるか…」

王様「あれ、勇者がいないがどういう事だ」

側近「おかしいですね。呼びかけたはずですが…」

戦士「あの野郎マスターが呼んでるのに来ねぇとはどういう了見だ…!?」

王様「むぅ…私が直々に呼んで来よう、着いて来い側近」

側近「御意」

ドンドンドン

王様「おーい!もう朝だぞ!集まるよう側近に伝えられただろう!」

王様「返事がないな…開けるか」ガチャ

グッチャ~~~……

側近「そんなバカな…何も置いてなかった空き部屋がもう足場のないほどに散らかっている…!?」

側近「やはり勇者ともなれば空き部屋のエントロピーを一日で膨大に高める事を可能にするのか…!」

王様「側近、勇者に与えたのは家具だけか?」

側近「えぇ…着替え用のクローゼットにベッドと枕、テーブルに姿見だけですね」

王様「…のわりにはコミックやら電脳遊戯やらお菓子の袋やらが乱雑に置いてあるのだが」

モゾモゾ

王様「ゴミの山がモゾモゾ動いているがまさか勇者か」

側近「でしょうね十中八九」

王様「」ポイポイッ

王様「」ガッ

勇者「うわっ!って何だ昨日のオッサンか…」

勇者「ていうか開けるときはノックしてよ。私のプライベート空間なんだから」

王様「した、というか昨日集まるように言われていただろ。何故来ない」

勇者「んー…忘れてた」ピコピコ

王様「…どうやら反省していないようだな。罰として朝飯抜きだ!」

勇者「あーそう」ガサゴソ

勇者「」ポリポリ

王様「お前そのお菓子どこから持って来た」

勇者「もってた、私いつも懐に大事なものいれておくの」

王様「ぐぬぬ…没収だ!お菓子全部没収だ!!」

勇者「ちょっと私のものに触らないで!!」

ギャースカピーピー!

王様「なぁ側近。こいつ放っておいてワシ朝食食べて来ていいか?もう朝から疲れるなんてのはごめんじゃ」

側近「王様、それはいけません。貴方が躾を怠ったら勇者の育成に失敗してしまいます」

側近「もしこのまま強くなったとしてもそれは余計にタチが悪いです。命令を聞かなくなるという事態が発生します」

側近「将来を考えて今は心を鬼にして勇者を心変わりさせるのです!」

王様「…ぐ、ぐぬぬぬ…」

王様「ぬわああああ!!ゲーム没収お菓子没収コミック没収じゃーーーー!!」

勇者「あー!ちょっとやめてってば!!」

王様「この部屋暗いんじゃ!カーテンと窓開ける!」シャッガラッ

勇者「あー溶ける溶ける!!溶けてしまう…」グググ…

側近「勇者というよりかはまるでゾンビですね…」

王様「ゴミは片付けろ!不衛生じゃ!!」サッサッ

勇者「私の牙城が…マイスイートホームが…一日で作った要塞が…!!」

勇者「やめてって言ってんでしょ!!ガルルルルルル!」ズシャー

王様「いって引っ掻かれた!側近そいつ抑えといて!」

側近「ほら大人しくねー」

勇者「あーーーー!!やめてー!!やめてーーー!!」

……

王様「大分片付いたの…」

勇者「ゲーム…漫画…お菓子…そして部屋を満たしていたオブジェクトの数々…」

勇者「あれないと死んじゃう…死んじゃう…」

王様「なぁ側近、大丈夫か…?勇者相当ショックを受けているが…」

側近「王様は甘すぎます、このくらい性根の腐った奴にはこれでもかというくらいの躾が必要ですよ」

側近「訓練を課し、それをクリアさせて褒美を与えるというオーソドックスな心理学的手法を取ればよいのです」

王様「そうだな…」

王様「勇者よ。このお前の私物は毎日の訓練をこなしたら返してやろう」

王様「ただし制限時間を設けるがな、そうではないとお前は一度やって怠けてしま…」

王様「お前さっきから目を瞑って黙っているが話を聞いとるか?」

勇者「…黙ってて、今頭の中でテトリスしてるから」

王様「」ブチッ

王様「勇者ーーーーーーッ!!」

王様「…よし、みんな朝食は摂ったな」

戦士「おう!遅かったからついでに朝の筋トレも済ませといたぜ!」

賢者「お、おいしかったです…」

ドォーンドォーン

勇者「」モムモム

勇者「なんで私だけ朝食カンパンなの…ポテチ食べたい」

王様「うるさい、言う事聞かない罰だ。嫌ならちゃんと言う事を聞け」

勇者「別に来たくて来たわけじゃないもん…親が勝手に決めたんだもん」ブツブツ

王様「なぁ側近…、呼んだ兵士を還す事ってできるのか?」

側近「使命を果たすまで無理です、あきらめなさい勇者」

側近「王様また甘い事を考えていたんでしょう、さっさと気持ちを切り替えて強化を徹底的にしてあげてください!」

王様「むぅ…といっても本人のやる気が」

側近「そこをやる気にさせるのが王様の役目でしょう!!」

王様「ぬ、ぬぅ…そう言われるとなぁ」

王様「えーっと…これからお前達の訓練の内容を言い渡す!」

王様「お前達はわかっていると思うが魔王を倒すためにここへ来てもらった」

王様「我が軍力は魔王軍に押されて著しく減少している!そこでお前たちが頼りなのだ!」

王様「訓練によって己を磨き、魔王を打ちとる力をつけ見事人類の栄光を勝ち取ってほしい!」

戦士「おっけー!さぁ燃えて来たぜやる気が出るぜ熱血のスクワット15回5本セットだぜ!!」フンフン

賢者「その…訓練とは」

王様「戦士は兵士との演習と体力筋力作りのトレーニング、食事メニューも一人だけ工夫する」

王様「城を出て西の方に騎士訓練所がある、今日はそこへ向かってくれ」

戦士「オッケー!」

王様「賢者は…そうだな、魔法はどのくらい使えるんだ?一応聞いておきたい」

賢者「えっと…回復魔法少しと攻撃呪文は一応初等のものなら全て使えます。強化・援護魔法はレパートリーが少ないです…すいません」

王様「思ってたより少ないな…」ヒソヒソ

側近「魔法のエキスパートとはいえまだヒヨッ子のようなものです。焦らずじっくりと育ててください」

王様「では魔法学校で集中講義を受けるがいい。学習の出来は後日テストで測る」

王様「城を出て南へ真っ直ぐ行った所に魔法学校がある。行くべき教室はここに書き記してある」

王様「独学用に教科書も用意してある。羽ペンとインク…ノート、筆記用具はそろえてある」

王様「魔法は学ぶことが大事だ。まずは戦闘の事を考えず勉学に励め」

賢者「学校ですか…」

王様「何か不満か?」

賢者「い。いえ頑張ります!」

王様「では行け!存分に自分を磨いて来い!!」

ハイ!シュタタタタタ!

王様「さてと…」

勇者「」モムモム

王様「はぁ…」

王様「なぁ側近よ…こいつには訓練を課すべきなのか?」

側近「とりあえず個人でやらせるのは大変危険ですね。確実に怠けてやらないです」

側近「厳しい教官の元、集団で訓練をさせるのが得策だと思いますよ」

王様「やっぱそうかな?」

側近「それと色々な分野を叩きこまなくてはなりませんね」

側近「勇者ってのはとにかくオールマイティで天才です、何でも覚えます」

側近「剣術、武術、弓術、魔法、錬金術、etc…」

側近「まぁどういう勇者に育て上げるかで切る分野もできるでしょうが」

王様「まずは武術と剣術と魔法を重点的に学ばせるか。基礎体力と学力もつけさせねばなるまいし…」

側近「そうですね」

側近「とりあえずアメとムチを使い分けて上手に育成してください…勇者は人類の希望なのですから」

王様「う、うむ」ゴクリ

王様「勇者。学校に行け」

勇者「イヤ」

王様「ゲーム返して欲しいだろうほれほれ」

勇者「…」

王様「ほっほっほ。ゲーム楽しいな楽しいな」ピコピコ

王様(やっべー、全然やり方わかんね)

勇者「」ツーン

王様「ムムム…」

王様「お前!自分の元いた世界に帰れなくてもよいというのか!」

勇者「ふーん…じゃあこの国が滅びてもいいの?」

王様「ぬっ!?」

勇者「結局私だけが頼りなんでしょ?私が動かないとどうしようもないんでしょ?」

王様「ぐぬぬ…」

側近「まずいですよ王様。この勇者自分の立場を理解して権力をふりかざしています…」

王様「もういい!自分の部屋に戻っておれ!」

勇者「はいはい」スタスタ

王様「……」

側近「王様!」

王様「えぇ…だってぇ。どうしようもないじゃん」

側近「まぁ…そうですけど」

王様「どうしろ言うんじゃい…あいつ頼みなのは事実だし」

側近「娯楽がないのならそのうち自分で動き出すんじゃないでしょうか…時間はかかるでしょうけど」

王様「どうじゃろな…頭の中でテトリスし出す奴じゃし…」

側近「むぅ…」

ガラガラ

騎士「側近殿!魔石が5個発掘されました!」

側近「お、ご苦労だったな。君たち騎士団の功績はでかいぞ、下がっていい」

騎士「ありがたきお言葉!失礼いたします!」

側近「……」

王様「……」

側近「……王様、ここに魔石が5個あります」

王様「うむ…」

側近「実は引ける勇者の数に限りはないのです…要は代わりは出ます」

王様「ぬっ!?」

側近「ここで勇者を出せば…あの意識が底辺の勇者に頼らず済みます」

王様「その確率とは…」

側近「その確率%にして0.000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000…」

王様「待てもういい」

側近「はい」

王様「ワシらそれ引き当てたの?すごくない?」

側近「だから血眼になって育成してくださいと申しておるのです」

王様「むぅ…マジか」

側近「マジです」

王様「…」

側近「ガチャの準備が出来ました」

王様「ワシは引くなんて言っておらんぞ」

側近「期待はしていません。ともかく戦力は必要ですし引いてください、勿体ぶる必要などありません」

王様「では引くか…」

王様・側近(絶対ないだろうけど勇者来てほしい!!)

☆☆☆☆☆☆

聖騎士「」ゴゴゴゴゴゴ

王様「勇者じゃな…いけどレア度6!?何か一つ多くない!?」

側近「やりましたよ王様!勇者より戦力初期値をはるかに上回っています!」

側近「聖騎士は勇者の次に強力兵士です!…まさか5回目で引き当てるなんて」

王様「全然レア度5までじゃなくない?結構上限突き抜けてるの出てるよ?」

側近「だってこんなの出る確率0.00000000000000000000000000000000000000000000…」

王様「そうだな、普通そんなの考慮しないわな」

聖騎士「聖騎士だ、魔王討伐をすべくこの地に参上した」

聖騎士「魔王を倒せるのはこの私のみ、どうぞご期待を」

王様「お、おう」

王様「すごく従順だぞ側近…そして何て綺麗な女性だ。もうこれ勇者でいいんじゃないか?」

側近「いや…育成した時のステータス値が大きく差が尽きますので到底勇者には…あと」

側近「……」

王様「何かすごい苦い顔していないか?」

側近「この聖騎士、元々勇者志望だったのになりきれず相当コンプレックスを持っています」ヒソヒソ

王様「そ、そうなのか…?でも特に触れなければ問題ないのでは」

側近「わからないのですか!?あの怠惰でゴミのような性格の勇者の存在がバレたら!」

王様「おっと!それはやばーーい!」

王様「たしかにプライド崩壊するかもしれんの…せっかくの戦力なのに」

側近「そしてかなり神経質な模様…最悪バレたら自害する可能性もあります」

王様「絶対に知られてはならんな…」

聖騎士「今すぐにでも魔王の首をここに持って来ましょう」

聖騎士「なぜならば…それが私にしかできない務めなのですから」

王様「側近…どうする?戦力は申し分ないのだから行かせても…」

側近「行けませんね王様。この聖騎士プライドが高く魔王城まで直行してしまうでしょう」

側近「聖騎士を失ってしまう可能性があります…ここは慎重に指示を与えましょう」

王様「じゃ、じゃあ相手軍の拠点を制圧…」

側近「だからプライドが高いのです。自分は料理一流で上手いのに皿洗いだけさせられる気分になるでしょう」

王様「難しすぎるじゃろ!扱いにくいわ!」

王様「まぁそう焦らずとも良い。ワシもお前が来て安心したわい」キリッ

聖騎士「」パァァ…

聖騎士「そ、そうですか……自分も信頼されて歓喜しています」

側近(いい返しです王様…あとは聖騎士が納得のいく訓練を課せば課題はこなしたも同然です)

王様「お前には訓練を課したい」

聖騎士「いえ、訓練なんて必要ありません。私はこれまで絶えず鍛錬を重ねてきました…今日この日のために」

側近(努力してきたんでしょう、だって☆一つ上ですもん)

側近(しかしだからと言って自分を過信しすぎです。学力がもう一つだけどいっぱい勉強したから安堵してる受験生みたいになっています)

王様「聖騎士よ。私は訓練と言ったが…実は試練と言った方が正しいかもしれん」

聖騎士「えっ…?」

王様「おぬし…まだ勇者ではないな?」

聖騎士「そ、それは!!!」

王様「お前を待っていたのだ…誰も成したことがないこの勇者の試練をこなせるのはお前だけだと信じて…」

聖騎士「なっ…」

聖騎士(まさか私が勇者になれなかったのはこの試練をなしていなかったからなのか…?それならば道理が行く)

聖騎士「その試練とは!?」

王様「うおっ!」

側近「めっちゃ食いついてきましたよ王様!!一瞬傷口えぐって何やってんだコイツと思いましたが好手です!」ヒソヒソ

側近「そして勇者の試練とは?」ヒソヒソ

王様「考えてるわけないじゃろがーい」

側近「ですよねー」

王様「実はその試練は3か月後にあるのじゃ…」

聖騎士「さ、三か月後…」

王様「それまでは訓練と戦闘経験を積んでおくのじゃ…」

王様「苦しい闘いを乗り切り…絶え間ない厳しい訓練を乗り越えたものだけが」

王様「試練をクリアし、魔王を倒す勇者の資格を手にいれられるのじゃ…」

聖騎士「なるほど…すいません。私が浅はかでした…まだ魔王に挑むのは早かったのですね」

聖騎士「必ずや勇者となり魔王の首を打ちとって見せましょう!!」キラキラ

王様(相当勇者になりたかったんだな…)

王様「では早速戦闘で済まないのだが魔王軍の拠点を叩いてほしいのだ」

聖騎士「はっ!」

側近「平原の方の拠点を叩いてもらいましょう。広く見晴らしのいい拠点を奪い返したいので」

側近「後ほど詳しく指示を出します。今から貴方の部屋を指定しますのでそこで待機していてください」

聖騎士「はっ!」



王様「な、何とかごまかせた…」

側近「あんなホラ吹いて大丈夫だったんですか…まぁ場は乗り切りましたけど」

王様「それっぽい試練考えとかないとな…」

側近「とりあえずまぁ勇者(仮)になれば勇者の事がバレても多少はマシになるでしょう…多少ですけど」

王様「ハハ…なるべくバレないようにしよう」

側近「戦場になるべく出すようにしますかね?もちろん魔王の所までは行かせないですけど」

王様「訓練で覚えさせないといけないものとかないのか?」

側近「特にないんじゃないですかね…魔法も中等のものなら全て使え剣術も申し分ない」

側近「自分で訓練のやり方も知っているようですし、とりあえずはなるべく帰還させる程度に戦闘経験を積ませましょう」

王様「うむ」

側近「まぁ侵略されるリスクはこれで減少したでしょう。奪還できる拠点も増えたかもです」

王様「しかし本丸を叩く戦力が…と?」

側近「はい…未だわが軍は魔王城に到達していません…魔王城近くは相当強力なモンスターや兵器が配置されているのでしょう」

側近「もう中なんてどうなっているのかと…考えただけでゾッとします」

王様「でもなー…肝心の勇者が」

側近「む…」

側近「聖騎士を上手く餌に使えば更生できるんじゃないですかね?」

王様「ほう?」

側近「聖騎士を勇者候補と仕立てあげる事で勇者の権力を剥奪するのです」

側近「あの勇者は自分の価値を知りいつまでも保護されるものと思っていますからきっと危機感を覚えるでしょう」

王様「聖騎士を利用するというのは少々気が引けるが今思いつく中で有効な策だな…試してみるのも悪くない」

パタパタ…

側近「おっと、これは平原拠点奪還班の連絡鳥…。至急増援、物資の補給を求むと書いてあります」

側近「開いた場所ですので大型モンスターが多数出現しているようです」

王様「待機している軍は残り少ない、すぐに聖騎士を向かわせよう」

側近「狂剣士もすでに別の場所へ配置したのでやむを得ませんね」

側近「すぐに命令を下します」

王様「これで無事鎮圧させることが出来るとよいのだが…大丈夫かな」

側近「馬と必要最低限の物資を用意しろ!それも飛び切り早いのをだ!強力な兵士が出る!」

ハッ

聖騎士「」パカラッパカラッ

ヒヒーン

側近「頼んだぞ聖騎士よ。迅速に平原へと向かい場を収めてくるのだ」

側近「一度穴が開くとそこから魔物に攻め込まれるからな…」

側近「一応他国へ救援の手紙を出したが間に合うかどうかはわからん。お前が頼りだ」

聖騎士「お任せください。この聖騎士が邪悪で禍々しい魔物どもに粛清を下してきます」

側近「うむ。健闘を祈っているぞ、現時点で一番実力を持っている兵士はお前だからな」

聖騎士「」パァァ

聖騎士「はっ!まだ候補とはいえ勇者となる身!このくらいの敵を倒せぬようではなりませぬ!」

側近(めっちゃ嬉しそう)

聖騎士「では行って参ります!」

ヒヒーン

聖騎士「」パカラッパカラッ

聖騎士「」パカラッパカラッ

聖騎士「止まれ」ズササ

側近「?」

聖騎士「」パカラッパカラッ

ズササ

側近「何故戻ってきた?」

聖騎士「いえ…この馬遅くてですね。じれったく思いまして」

側近「え…一番速い馬を出させたつもりだが」

聖騎士「え?そうなんですか」

側近「おっかしいな…」

聖騎士「!」

聖騎士「」フフン

聖騎士「その馬はお返し致します」

側近「え?」

聖騎士「では行って参ります!」ビュン

ズザザザザザザザ

側近「はやっ!!すっごい素早さ!!」

側近(勇者に見劣りするとは言えど二番目に最強の兵士…これはいいカードを引き当てましたよ王様)

王様「」ドンドン

王様「開けるぞ」ガチャリ

勇者「何、言っておくけど私従う気なんてないから」

王様「そのことについて話がある、聞いてくれ」

勇者「だから…」ハァ

王様「勇者がもう一人現れた」

勇者「えっ!?」

王様「聞こえなかったか?勇者がもう一人現れたのだよ」

勇者「そ、そんな事って…」

王様「あったんだよ…今戦場に向かわせたがな」

王様「相当な手練れでな、ワシも安心してるのじゃよ」

王様「これでやっと魔王に勝てるかもしれんと…」

勇者「そ、そう…よかったじゃん。それで私にそんな事話してどうしたいの?」

王様「いや、それでな。ここにお前を置いておく必要はないと思ってな」

勇者「なっ!?」

王様「待望の勇者は来たものの戦力にならんし鍛錬もサボるタダ飯喰らい」

王様「物資の不足が著しい我が国にそんな不労者を置いておく余裕などない」

勇者「そそそ、そんな…いきなり」オロオロ

王様(ふん、自分がいくら特別だからっていつまでも保護されると思ったら大間違いじゃぞニート勇者)

勇者「…本当に勇者が現れたの?」

王様「あ、現れたゾイ。まぁ今日は帰って来んかもしれないから会えるかはわからんがの」

勇者「ふーん」ジトー

王様「なんじゃその目は…」

勇者「必要ないなら殺せば?だって物資を喰らう寄生虫みたいな扱いなんでしょ今の私」

王様「えぇ!?」

王様「い、いや…ワシ人とか殺したくないし…」

勇者「じゃあ軍人にでも殺させればいいんだよ。それじゃ自分の手も汚さずに済むジャン?」

王様「ぐぬぬ…」

王様(こいつワシの嘘を見抜いておる…いくら殺されないからと言って余裕をかましおって)

勇者「やっぱり嘘なんだ。私が必要じゃなかったらこんな失礼な奴すぐ打ち首だもんね」

王様「ぬぬぅ!」

王様「そんな事では娯楽は一生没収だぞ!いいのか!」

勇者「いいよー、別に死んでほしいなら」

王様「ぐぬぬぬぬぬぬ…」

王様「うわぁーん!もう知らん!勝手にせぇーーい!!」ドンガラガッシャーン

勇者「ラッキー、ゲーム落として行ったし♪」

勇者(私を動かそうなんて百年早いのよ…オッサン)ピコピコ

王様「という訳なのじゃ!助けてくれ側近!」スリスリ

側近「抱き付かないでください気色が悪い。本当に情けないですね、それでも一国を治める王ですか」

王様「だってぐぅの音も出ないんじゃもん…」

側近「本当に薬や拷問の事も考えないと行けなくなってきましたね…やはり物理的に調教しなくては」ビシバシ

王様「それなるべく考えたくなかったんだがな…やるしかないか」

戦士「お疲れ!気合のうさぎ跳びで城まで帰ってきたぜ!そして腹が減ったぜ!」

賢者「ただいま戻りました」

王様「他の兵士が帰って来たようじゃの。側近よ、食事の準備をするよう厨房へ伝えてこい」

側近「御意」

王様「」パクパクムシャムシャ

賢者「」カチャカチャ

戦士「」バクバクバクバクバクバク

ドドドドドド

側近「何やら廊下が騒がしいですね」

聖騎士「マスター!平原の拠点奪還の任務完了致しました!」バンッ

王様「ゲホッ!はやっ!ていうかもう帰ってきたの!?」

聖騎士「はい!夕方にはすべて片付く予定でしたが予想以上に大型モンスターの体力が多く手こずりました」

王様「す、すごくね…?まだ半日も戦場に向かわせてないよ?ていうか馬使っても着くのに半日使うよ?」

側近「さすがのレア度6と言ったところですよ王様。ちなみに彼女は走って向かいました」

王様「す、すげっ!…これは拠点奪還が容易にできそうじゃの」

側近「ええ…あまりの都合のよさに参謀の私としては少々困惑しています。経験値も稼げて尚且つ拠点も奪還できる効率の良さと来ました」

側近「多少訓練でステータスを補強してチミチミと拠点を奪還していく予定だったのですが、あまりの強さに逆に予定が狂いそうです」

戦士「おいおい。こいつは誰だ?新人か?」

王様「あぁ…今日から仲間の聖騎士だ。よろしくしてやっとくれ」

聖騎士「…お仲間の方達ですか」

戦士「お前すげぇな!大型モンスターをいっぱい倒すなんて相当強いんだな!」

聖騎士「えぇ…どうも」

聖騎士(なんて品のない、なんだかしゃべってるとバカが移りそう)

賢者「ど、どうも…」ボソッ

聖騎士「ええどうも」

聖騎士(声が小さい、暗い方なのか話しにくい。この汗だく戦士よりマシだけど事務的な話しかしないな)

聖騎士「皆さん頼もしそうです。魔王討伐、力を合わせて頑張りましょう!」

戦士「おー!お前とは何だか仲良くなれそうだぜ!勇者とは大違いだな!」ハッハッハ

聖騎士「…勇者?」ピクッ

側近「」パシィン

王様「なんじゃい側近」

側近「他の兵士に勇者の事を口止めしなかったのですか!?」

王様「いやもう必要ないかなと思って…」

側近「多少バレてもいいとは言いましたが面倒事は避けられませんよ…何とかしてください」

聖騎士「マスター、勇者というのはまだ現れていなかったのでは?」ギロッ

王様「えぇ…それはじゃのう」

戦士「はぁ?勇者はとっくに現れているぜ?まぁ全然弱いし勇者っぽくねぇし嫌いだけどな!」

王様(おのれ脳筋!気を遣うとかちょっとはせんか!口止めしなかったワシが悪かったけど!」

聖騎士「どういう事か説明してもらえますよね?」

王様「…はい」

勇者「ふあ~あ…話って何」ポリポリ

側近「身だしなみくらい整えろ!王様の呼び出しだ!」

側近「後、王様の言葉にお前はうなずくだけでいい!いいか?余計な事は一切しゃべるな!」

勇者「一体何があるってのさ」ギィィィ

聖騎士「…」

王様「おぉ…来たか」

聖騎士「王様、お言葉ですが勇者はまだ来ておられないのですか?」

王様「いや、あれが勇者だが」

聖騎士「!!?」

聖騎士「」カシャンカシャン

勇者(うわ変なのが近づいてきた)

聖騎士(嘘…こんな髪がボサボサで兵装もせずTシャツ一枚にハーフパンツ一丁のちんちくりんが…勇者!?)ジロジロ

聖騎士「この者は勇者の試練に合格したのですか?」

王様「そ、そうじゃ…。見事試練に合格したよのう勇者」

勇者「は?」

側近「『はい』だバカ者!」ポカッ

勇者「いったーーー!!何すんのよ!」

側近「ただ王の言葉に肯定していればいいだけなのだお前は!わかったか!」

勇者「はいはい…めんどくさいな。合格しましたよー」

聖騎士「……にわかに信じられません。こんな無能そうな者が勇者になれるだなんて」

勇者「はぁ?」イラッ

側近「はぁ?ではないバカ者!そこは謙遜の意でもあらわせ!」ポカッ

勇者「いったー…さっきから意味わかんないんだけど」

王様「容姿で判断するのは行かんぞ聖騎士よ。敵に対してもそのような判断を下し慢心するのか?」

聖騎士「いえ…これは失礼」

聖騎士「しかし納得行かないのも事実、たとえマスターが認めてもこの私が認められません」

聖騎士「仲間がどのような者かも、勇者がどのような者かも私は知りたい」

王様「ぬっ、それもそうだな…」

王様「しかしな聖騎士よ。勇者は今とんでもない呪いにかけられているのだ」

聖騎士「なんと!呪いに!?」

王様「著しく知能が衰退しており『あうー』とかしかしゃべれなくなってるんじゃ」

勇者「はぁぁぁ?」

側近「そこは『あうー』だバカ者!!」

勇者「なんで私がそんな事言わなくちゃダメなの…」

勇者「あうー」

聖騎士「本当だ…よく見るとなんと品のない顔だ…」

勇者「」イラッ

聖騎士「相当ひどい呪いをかけられたのだな…勇者といえどこれでは戦えまい」

聖騎士「事情がわかりました。勇者がこのような状況なのでこの私を次期勇者にと期待したのですね?」

王様「そうじゃそうじゃ。お前ならわかってくれると思っておった」

王様「お前もそう思うじゃろ?勇者」

勇者「あ、あうー」ピクピク

聖騎士「これは私が全力で責任を負わなければ…プッ」チラッ

勇者「」ブチッ

勇者「だーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

王様・側近「!?」

勇者「さっきから何なの!?人の事障害者扱いするしこいつはバカにしてくるし!」

側近「落ち着くのだ勇者!扱いに関しては謝るがやむを得んのだ!」

聖騎士「…マスター、普通に言語をしゃべっているのですが」

王様「も、文句だけは言えるらしい!」

側近(王様!もう嘘が見てて痛々しいです!)

勇者「勝手に変な世界へ飛ばされたと思ったら働けだの言われるし!しかも罵倒とか何なのよ!」

勇者「しかも試練って何!?勇者の試練なんか聞いたことないんだけど!」

聖騎士「マスター」ギロッ

王様「oh…」

側近「王様…もう正直に話すしかありません。さすがに無理がありすぎました」

王様「仕方あるまい…」

王様「実は勇者の試練なんかないんじゃよ…」

聖騎士「嘘をついたのですか?」

王様「はい。ごめんなさい」

聖騎士「それは何故」

王様「せ、聖騎士がこんなのを見てショック受けないかなーって思って…」

聖騎士「ショック…?フフそれはないです。というより私は喜んでいます」

王様「へ?」

聖騎士「自分の憧れた姿がこれだと知ったからです。たどり着けないと思っていましたがもういいです」

聖騎士「こんなのにはなりたくないですから」

聖騎士「では失礼します」カシャンカシャン

王様「あー…行っちゃった」

側近「とにかくこれで場は丸く収まっ」

勇者「」ワナワナ

側近「てないようです」

勇者「何あいつ!人の事見下し過ぎじゃない!?すっごく腹立つんだけど!」ダンダン

王様「落ち着くのだ勇者よ。とりあえず色々無礼をしたのはワシが代わりに謝る」

勇者「オッサンも結構失礼な仕打ちしたけどね!」

王様「すまぬ!」

勇者「結局何なの?動かない私をここに呼んでいじめたかったの?言っとくけど効いてないから」イライラ

王様(いや相当効いとるような…)

王様「聖騎士がの…勇者に会いたいと言ったから面会させたのじゃが…別に他の意図はない」

勇者「ふーん…」イライラ

勇者「私さー…ゲームでも負けるのすっごく嫌いなんだよね」

勇者「あんな奴に負けるのってなんかすっごくイライラするんだよね…特にめちゃくちゃ見下してくる奴」

側近「王様、勇者は相当の負けず嫌いの様子です」

側近「もしや聖騎士に刺激されて動くかもしれませんよ。儲けものです」

王様「今まではワシがいくら頑張っても動かなかったのに…」

側近「そりゃプライドが保管されてたからですよ」

側近「どうせ『私に頼る事しか能がないんだろこの無能王は』とでも思っていたんでしょう」

王様「なるほど…少し癪だけど」

側近「とにかくプライドが聖騎士と同じく高いようです。ニートのプライドなど滑稽ですが」

側近「圧倒的な実力を前に見下されて歯がゆい気持ちなのでしょう。ククク…いい気味でございます」

勇者「ちょっとあんた達!」

王様「はい!」

勇者「私って一番強いのよね」

側近「まぁ理論上は一番強くなります」

勇者「わかったわ。訓練でも何でもかしなさいよ」

王様「おぉ!やる気になってくれたか勇者!これで魔王も楽々討伐できるのう!」

勇者「はぁ?言っとくけど魔王なんて興味ないから」

王様「へ?」

勇者「私はあいつを殺すために頑張るの…ここまで見下しといて生きて帰れるとは思ってないわよね…」

勇者「ほら早く!鍛えるとか何でもやって見せるから!」

王様「なぁ側近…これは良い事なのか?」

側近「努力の意思表示はしています。しかしこれは一定期間のものでしかも自軍の戦力を減らすのが目的」

側近「う、うまく聖騎士と実力を均衡させるのが最善手ですかね…」

勇者「絶対殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…」ブツブツ

王様「」

王様「ふぅ…勇者は寝たか?」

側近「はい」

王様「…これからどうする?」

側近「まぁ勇者は動機は物騒ですがやる気になりましたし、聖騎士は拠点を奪還できる実力がありますし」

側近「現状かなり良好です」

王様「もしさ…勇者が聖騎士を殺したりなんかしたら…」

側近「成長はそこでストップ。勇者に並ぶライバルは当然現れず元の怠惰な生活に」

側近「聖騎士に勝てたからと言って魔王に勝てるわけはありませんしやる気ありませんし、ちょっとまずいですね」

王様「どうしよう…その時が来るのが怖い」

側近「まぁ…上手く標的を魔王に変えるよう策を練りますかね。聖騎士と競争させるとか」

王様「でもなんか殺すことしか考えてなかったからのうあの勇者…そう上手くいくものか…」

側近「大丈夫ですよ、多分…」

側近「まぁそれは大分後の事ですし考えるのはもう少し先でいいでしょう」

側近「ところで王様。狂剣士が山の拠点を奪還したので色々資材が手に入ったのですよ」ニヤニヤ

王様「おお!」

側近「何と魔石が15個でございます!」ジャラ

王様「おお!」

側近「早速引きましょう。これで勇者を引けば今のうちにあいつを殺せばいいのです」

王様「君無慈悲じゃの…」

王様「とりあえず早速引くか…」

シュイイイイン

パァーーーン!

☆★★★★

盗賊「へへっ!」

王様・側近(えぇ……)

盗賊「そりゃ待ってたって顔だな!?」

王様「側近。こういう時どういう反応したらいいかわかんないの…」

側近「さっさと次のガチャを引けばいいんですよ」

王様「無慈悲!」

側近「レア度1を見くびりすぎです。1でも兵が100人分の戦力です」

側近「まぁ相対的に見ればゴミですけどね」

王様「上げて落としたの…まぁ戦力になるのは間違いないが」

王様「これからよろしく頼む。はい次ー」

盗賊「何か素気なくない!?」

シュイイイン

パァーン!

★★★★★

キモオタ「デ…デュフ」

王様「…側近よ、これは何だ」

側近「レア度0、正真正銘のゴミです」

王様「えぇ…」

側近「しかし何かの役に立つかもしれません…多分」

キモオタ「ここはどこでござるかwwwwwむむwwwまさか異世界トリップでござるかwwww」

王様「地下牢」

側近「御意」

王様「さてと…次だ」

シュイイイイン

パァーン!

☆☆☆☆★

技術士「技術士だ。仕事ならくれ、材料と要望があれば何でも作ってやる」

王様「レア度4とは!これは当たりを引いたの!」

側近「いいですね。しかし戦力が5ですね…」

王様「えっ!?よわくね!?」

側近「特殊タイプと言えます、兵器などを作れるので結果的に戦力が400くらいなのですね」

側近「物資をたくさん集めましょう、装備や兵器を作ると有利に戦いが進められると思いますので」

王様「頼もしいな、よろしく頼んだぞ」

技術士「おう、仕事なら任せてくれや」



側近「今後の戦略についてです。今の所山と平原の拠点を奪還しました」

側近「開けた場所は襲撃を受けやすいでしょうがそれほど置けるものも多いと言うものです、兵器や物資などを貯蔵しましょう」

側近「山は資材も豊富で高さに位を取れるので敵の位置を確認できます。司令部を作りましょう」

側近「実は技術士がさっき通信手段を迅速に取れる機器を作れると言ったのでそれを設置しましょう」

王様「あと周りにあるのは海と森か…、この調子で拠点を奪還してもらうか」

側近「そうですね。できるだけ漏れのないように拠点を奪還していきましょう」

側近「兵士のレベルが上がるまでは未知の場所への進軍はせず現状維持で」

側近「あとモンスター図鑑をまとめました。地図にそれぞれ分布していると思われるモンスターを書き込んでおきます」サラサラ

王様「ふむ…それぞれの場所に対応した生態系のモンスターがいるんじゃの」

側近「今後は戦場と詳しく連絡を取りモンスターの動向や特性を随時分析していきます。敵を知るのは大事ですから」

王様「何とかわが軍も持ち直してきたな…、よし!この調子で進むぞ!」

側近「ええ」

シュイイイイン

パァーン!

火の四天王「クク」

風の四天王「クク」

水の四天王「クク」

コケコッコー

王様「ふあ~あ、おはよう」

側近「おはようございます王様、今日は兵器の開発・設置に気合を入れるつもりですよ」

側近「何て言ったって技術士が手元に来たんですから、可能性は無限大なのです」

側近「ある程度要望を聞いてくれています。作るモノとして候補に挙がってるのが」

側近「すぐに連絡できる無線機、高い破壊力を持つ大砲、鉄砲と言う遠距離型武器も作る予定らしいです」

側近「楽しみですね楽しみですね、技術士のおかげで軍全体が強化されるのですよー!」ピョンピョン

側近「参謀の私としては大助かりです!はいこれ着替えと歯ブラシ!」

王様「それはよかったな……」シャカシャカヌギヌギ

王様「ま、とりあえず朝食でも摂るか」

側近「はい!」

王様「おはよう諸君」

戦士「おはよう!今日も朝プロテイン!」

賢者「お、おはようございます」

盗賊「うっすおはようございまーす!今日からよろしくッス!」

王様「うむうむ、皆の元気な顔を見れて安心したわい」

聖騎士「おはようございますマスター」

聖騎士「どうぞ、お座りになられてはいかがですか?」

王様「お、おう……」

王様(ちょっとご機嫌ナナメ……やっぱりワシのせいなんじゃろな)

聖騎士「私そろそろ行くので、ごゆっくり朝食をどうぞ」

聖騎士「側近殿、命令通り未踏の地へ偵察に向かいます」

側近「頼んだぞ、あまり奥には行かないようにな。危険を感じたらすぐに撤収するのだぞ」

王様「気を付けるのじゃぞ~何が起こるかわからんからのー」

聖騎士「わかってますよマスターに言われなくても」

王様(怖い)

戦士「お前機嫌わりぃーなー、もしかして生理か?」

王様「ブッ!」

賢者「せ、戦士さん…」アセアセ

聖騎士「違います、余計なお気遣いどうも。それでは」

戦士「あいつ態度わりぃーわー、やっぱ生理だろうな」

賢者「戦士さん…ここ食事の場ですよ…、しかも殿方もいらっしゃるのにそのような話題は…」

キモオタ「んほおおおおおおおおwwwwwwwwwwwww」

賢者「!?」

キモオタ「コミュ障賢者たんの赤面キタコレwwww拙者的に萌えポイント高しでござるwwwwwww」

王様「おい!!キモオタが脱獄したぞ!!」

側近「憲兵は何をやっている!早くそいつを捕まえろ!独房行きだ!!」

ドゴスカバキグシャ!

キモオタ「拙者何もやってないのに監禁とか理不尽極まりないでござるwwwww顔が犯罪者とか言うなしwwwww」

戦士「何だ今のは?」

王様「ただの不審者じゃよ。あーあ朝飯がまずくなるわい」

賢者(こ、こわかった…、けどなんか可哀想…)

側近「さてと、賢者も戦士もそれぞれの訓練の場に行きましたね」

王様「ところで側近、今日もまた勇者は起きてないのか?」

王様「全く毎朝毎朝……昨日は訓練するーとか言っといて結局せんのかい…これだと色々ワシの杞憂に終わりそうじゃの」

側近「いえそうではないのです。勇者は今風邪をひいているのです」

王様「風邪ェ!?あの勇者がか!?」

側近「えぇ。一応メイドにお粥と薬を持っていかせましたが」

王様「お前様子は見に行ったのか?」

側近「いえ行っていませんよ、うつって病気になったら参謀としての務めを果たせませんし」

側近「というわけで王様ご様子を見に行かれてはどうです?」

王様「何その『お前風邪ひいてもやる事ないんだから平気だろ』みたいな感じは?」

側近「兵士の様子を見るのは王の仕事のはずです、体調管理させるのも本来ならば王の仕事なんですよ?」

王様「何かワシ勇者の保護者みたいになっとるの…まぁ別にいいけど」

側近「では頼みましたよ、私は現場で指示を下さなければならないので」

王様「はいはい」

コンコン

王様「失礼するぞい」

勇者「ゴホッゴホッ……何」

王様「本当に風邪ひいとるの……意外じゃわい」

勇者「何よ。バカは風邪ひかないはずなのにって言いたいわけ?」

王様「いやいやそんな事言ってないじゃろ!それより具合はどうだ?」

勇者「最悪……さっき熱計ってみたけど38.6℃あったし…」

王様「どれどれ」ピトッ

勇者「……!!」カァーーー

バチン!

王様「痛いのぅ!何するんだ!!」

勇者「いきなり額くっつけてこないでよ!立派なセクハラよセクハラ!」

王様「セクハラって……別にワシはお前をそんな目で見てないわい。お前まだまだ子供じゃろが」

勇者「はぁ?本当最低、デリカシーってのがないわね。だから無能なのよ」

王様「ちょ、そこまで言わなくてもいいんじゃ…」

王様「ってワシの事はどうでもいいの。お前毎日夜更かしなんかしてるからそんな事になるんじゃぞ」

勇者「ほうっておきなさいよ、別に私の責任なんだし」

王様「お前がだらしないとワシが側近に怒られちゃうの、おわかり?」

勇者「アンタ本当情けないわね……一番上の立場なのに怒られるとか最悪よ?地位逆転した方がいいんじゃない?」

王様「うっさい!お前がしっかりしたら丸く収まる話じゃろがい!」

勇者「ふーんだ、知らないもん」

王様「こいつ……」

勇者「……」

王様「……」

勇者「アンタいつまでここにいる気なの?さっさと帰れば?」

王様「お前って本当に愛想ないの……側近にお前を見守るよう頼まれたんじゃ、だから務めを果たしてるの」

勇者「どうせ他にやる事ないんでしょ」

王様「一々一言多い!さっさと寝てしまえ!治ったら訓練だからな!」

勇者「アンタに言われなくてもやる、私あいつをのめしたいし」

王様「……まぁどんな形であれ努力するようになったのはいい事じゃ」

勇者「はぁ?アンタ何様のつもり?」

王様「王様じゃよ!!」

勇者「あーそーだったわね」

勇者「……」

王様「……」

勇者「ねぇ、暇だから何か一発芸やってよ」

王様「はい?」

勇者「やってっつってんのよ、アンタ王様のクセにそんな事もできないわけ?」

王様「お前は王様を何だと思ってるんだ……」

勇者「やらないと風邪治らないから……」ゴホッゴホッ

王様「どんな風邪じゃよ全く……」キュッキュ

王様「ほら腹踊りじゃ!」ポンポン

勇者「……」

王様「いやの?このヘソが口での?さっきペンで目と鼻を…」

勇者「いつまでここにいんの?さっさと帰ってオッサン臭いから」

王様「本当お前扱いひどいの!」

勇者「……」ピコピコ

王様「おい、身体を悪くしてるのにゲームなんてするな」

勇者「別にゲームくらいできるわよ」

勇者「アンタもやってみる?」

王様「は?ワシ?なんでまたいきなり」

勇者「いや……聞いてみただけだから、よく考えたらゲームに加齢臭うつるからパス」

王様「何じゃい、からかいおって…」

王様「でもちょっと興味あるけど」チラッ

勇者「加齢臭うつるからイヤって言ってるでしょ」

王様「本当ワシの心を弄ぶのが好きじゃの!」

勇者「…ったく年甲斐にもなくうるさいわね、ほらやらしたげるから」

王様「ほっほっほ」

勇者「笑い方キモいからやっぱやめ…」

王様「えぇ!?」

王様「」ピコピコ

勇者「あーダメダメ、そこ上に行ってアイテムとらなきゃボス倒すのキツいから」

王様「あ、ボスの所についてしまった」

勇者「何やってんのよ……」

王様「あ!やられちゃった!」デデーン

勇者「アンタゲームすらできないのね……」

王様「何その憐れみの目!やめて!」

勇者「ちょっと貸しなさい?いい?ここはこうやるの」グイッ

王様「うおっ…」

勇者「」カァーー

勇者「近いのよ!!」バチン

王様「ワシのせいなの!?」

ゴォーン…ゴォーン…

王様「おっ……もう昼飯時か」

勇者「食べてくれば?」

王様「お前も食うじゃろ?」

勇者「私基本的に朝と夜しか食べないから、メイドにもそう言いつけてあるの」

王様「そんなんだから風邪ひくんじゃよ……」

王様「仕方ない、ワシが作ってやろう」

勇者「えー……」

王様「なんじゃい、ワシが作ったもんだからイヤとか言うのか?」

勇者「…まぁ別に食ってあげてもいいけど、朝お粥しか食べてないからお腹空いてるし」

王様「うむ、では少し待っておれ」

コック「陛下!厨房に何の御用で?」

王様「ワシ、ご飯作りたいんじゃが」

コック「陛下ご自身がですか?」

王様「まぁの、久しぶりに作りたいなーって」

コック「……大丈夫ですか?無理をせずとも私たちが作りますけど」

王様「ワシが自分で作る言うとるんじゃい!黙って厨房を開けい!」

コック「わ、わかりました!ご健闘を祈ります!」

王様「まったく、どいつもこいつもワシをバカにしおって…いつも椅子に座ってるだけじゃないわい」

王様「よし!作るぞ!!」

バァーンバァーン

ゴゴゴゴゴゴゴ…

勇者「爆発!?まさか魔物がここに襲撃してきたんじゃないでしょうね…!?」

コンコン

王様「で、できたぞ…」ボロッ

勇者「……アンタ紛争地にでも行ってきたの?」

王様「厨房じゃよ厨房!できたからさっさと食え!」

勇者「うどんって……なんでこれ作るのに爆発音が聞こえてくるのよ」

勇者「」ズルズル

勇者「ん」

王様「どうじゃ?」

勇者「案外美味しいじゃない……どこのコックに作らせたのかしら?」

王様「ワシが作ったの!」

勇者「にわかに信じがたいわね……けど温かくておいしいわよ」

王様「そ、そうか……」

勇者「点数をつけると…そうね、80点と言ったところじゃないかしら」

王様「ほう、結構…」

勇者「まぁ1000点中だけどね」ズルズル

王様「それ12点くらいしかないじゃん!」

勇者「へっへへー、私の舌を満足させたいならもーっと上質なもの作らないとね」

王様「ホント無駄に舌が肥えておるの…」

勇者「」ズルズル

王様「……」

勇者「ねぇ」

王様「何じゃい」

勇者「アンタ私の事嫌いじゃないの?」

王様「は?いきなりなんじゃよ脈絡のない」

勇者「いつまで経っても部屋から出ないからさ」

王様「……む」

勇者「側近に頼まれたからなの?」チラッ

王様「そりゃここに来たくせにロクに働かんし、口悪いし」

王様「やる気出したかと思ったら物騒な事ぬかしてワシの事脅かすし」

勇者「何それ私の悪口ばっかりじゃない…」

王様「けどまぁ嫌いではないの、お前といると不思議と心地よい」

勇者「はぁ?アンタ罵倒されてるだけじゃん、ドMなの?」

王様「そういう事を言っておるんじゃないわい!!」

王様「ワシこういう身分だから対等に気さくに話できる奴が少ないんじゃよ…父上も母上も他界しとるし」

王様「側近は小さいときから一緒だけど忙しいからの……結局一人の時間の方が多いんじゃ」

勇者「ふーん……」

勇者「なら……私と話してればいいんじゃない?」

王様「えっ?」

勇者「私といるのがいいんだったら私と話せばいいっていってんのよ!二度も言わせるんじゃないわよこんなこと!」

王様「ほっ?お前ワシが嫌いじゃないのか?」

勇者「いつ嫌いだなんて言ったのよ、キモいって言っただけ」

王様「それほとんど嫌いと同義じゃないのか…」

勇者「違うっていってんでしょ!もうこの話終わり!!私寝る!」

王様「あっ」

王様(なんじゃい、案外優しい所もあるんじゃの……)

勇者「……聖騎士も半殺しに止めといてあげるわ」

王様「何もしない選択肢はないのか…」

側近「帰ってきましたー」

王様「あーおかえりー」

勇者「ちょっと待って!タイム!ビショップそこ置くのナシだから!」

側近「……」ポカーン

王様「どうした?」

側近「いえ…いつからそんな親密に?」

勇者「オッサンが1人ボッチで寂しいから遊んでって言うから付き合ってあげてるの」

王様「本当トゲのあるいい方しかできんのかお前は…」

側近「へぇ…」

側近(何だかわからないですけど打ち解けたようですね……)

側近「なるほど。今日そんなことが」

側近「いやはや半殺しとはやりましたよ、出世しました」

王様「え?そうかの」

側近「まぁお互い初めてのお友達ができてよかったじゃないですか」

王様「え、初めて?」

側近「勇者はあの性格ですからきっと友達はいないでしょう、いたとしたらそれは買ってるでしょう」

側近「だから勇者も王様と友達になりたかったんじゃないですか?」

王様「え、ワシと?」

側近「ほらこんな現象ありません?自分より下な奴を見ると安心するじゃないですか」

王様「おのれ!バカにしおって!!」

側近「まぁ形はどうあれ勇者と親密になれてよかったじゃないですか。これで駒としてやっと融通が利くようになるやもしれません」

王様「まぁ……の」

勇者「次はどんなゲームやろうかしら」ワクワク

勇者「人生ゲームとか面白そう!けどオッサン幸薄そうだからなぁ…」

勇者「じゃあやっぱりレースゲームとかかしら…」

勇者「……」

勇者(何頬緩ませて盛り上がってんのよ私!あんなオッサンと一緒にいて何が面白いのよ!)

勇者「あーやだやだ!もう寝る!!別に楽しいなんて思ってないし!!」

……

側近「今日の報告です、無線機ができましたので王様に支給しておきます」

王様「これが無線機……」

側近「あーっあーっ、聞こえます?」

王様「おお!聞こえるわい!」

側近「これで遠くの相手ともすぐに通信することができます、持っておいてください」

側近「後大砲も設置完了、平原などに多数地雷をしかけました」

側近「容易に前線を突破することは困難になったと思います」

側近「あとセンサーも設置、これで敵が来たかどうかを察知することが出来ます」

側近「山には司令部を設置したのですがモニターを開発しデジタルの地図を作りました、これで敵の位置を確認できます」

王様「技術士のおかげで早くに手を打てるようになったの」

側近「鉄砲も作ったので鉄砲隊を養成して編成するつもりです」

側近「現在魔王城を囲うように罠を設置、および壁をつくり上には大砲・鉄砲隊・弓兵を配置する予定です」

側近「今日聖騎士に偵察に向かわせたのですがやはり魔物が多いらしいです、それも未知の魔物ばかりと」

側近「魔王城の近くには枯れ木ばかりの森があり基本的に荒れている様子ですね」

王様「不気味じゃの……」

側近「準備が完了次第もっと調査を進めていく予定です」

側近「今無人の偵察機を開発させていますから犠牲者を出さないように工夫しているつもりです」

側近「以上ですかね」

王様「何か順調すぎて怖いくらいじゃの……ここで強敵がいきなり出てきたりせんとよいが…」

側近「油断なりません、最近鉱石が多い山に魔物たちが襲撃しに来るように思えます」

側近「恐らくですが魔石を狙っているのではないでしょうか…やはり敵側もしもべを召喚する術を持っていると考えるのが妥当です」

王様「気を引き締めんといかんな……」

側近「ところで魔王様、魔石が10個あります」

側近「あの盗賊にダウジングの特技がありまして効率よく掘り出す事ができました、下郎にも使い道はありますね」

王様「最近思ったけど側近って中々口悪いの…」

側近「では引いてください」

王様「うむ、そら!」

シュイイイン!

パァーン!

☆☆☆★★

占い師「クックック……ヒーッヒッヒッヒ……」

側近「占い師です!よかったですね!これは未来を予言できるほうの占い師です!」

王様「それ以外のっているのか?」

側近「たまにコールドリーディングという詐欺的な特技しか使えないエセ占い師ってのがいますから…」

王様「ワシらって魔王に勝てるの?」

側近「えらく直球で来ましたね」

占い師「少し待っておれ……」

占い師「水晶よ!!」

ファーン……

占い師「むむっ!!」

王様「ど、どうなんだ?」

占い師「結果は2か月後に出るようじゃ……」

王様「それもう勝敗ついてるんじゃ……」

占い師「すまないのぅ…占いは占いたい未来が遠い場合時間がかかるんじゃよ…」

側近「だからレア度が3なのですか…王様、この占い師は上手に使いましょう」

王様「うむ…」

王様「では次に来る敵はどんな奴か占ってくれるか?」

占い師「わかった…むむっ!」

占い師「次は今までよりも強い敵が来るぞ!警戒せねばならぬ!!」

王様「占いが早いって事は…」

側近「もうすぐにでも来ると言う事ですね…」

占い師「風を操る者…火を操る者…水を操る者…」

占い師「名を四天王と呼ぶ…!」

王様「あれ3人しかいないような…」

側近「そんな事はどうでもいいです!とりあえず警戒態勢に入らねば」

王様「うむ」

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