少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」 (1000)


-主な登場人物
※現行未読の方にはネタバレ含


 勇者<ユッカ>
15歳。天真爛漫で正義感溢れる少女。
栗色の髪に元気な跳ねっ毛と明るい笑顔が特徴。
魔王の復活を阻止すべく仲間と共に旅に出る。
淫魔の呪いを受け、性的行為をしなければ経験値があがらない体質。
また朔の夜には淫魔の力が強まり、理性が崩壊し発情してしまう。
幼いころの記憶が一部欠落している。
主な装備:【太陽の兜】【兵士の剣】【太陽の指輪】

 僧侶<ヒーラ>
16歳。大聖堂に務める大神官の一人娘。
輝くような金髪と豊満な身体をもつ、育ちのよい少女。
ユッカの幼馴染で彼女のことを心から愛している。
高貴な身分でありながらも親しみやすい性格。
聖魔法、防御魔法が得意。パーティの家事担当。
主な装備:【蒼珠の腕輪】【海鳴りの杖】

 魔女<マナ>
15歳。ユッカの昔馴染み。
透き通るような銀髪と色白の肌をした美しい少女。喜怒哀楽がやや希薄。
黒魔術と薬術が得意。
近くにいる相手の魔力を吸い取ってしまう生まれ持った体質に苛まれている。
人に忌避された過去があり人付き合いが苦手であるが、ユッカたちには心をひらいている。
魔力を持たないソルとの出会いに運命を感じ、仲を深めようと熱を上げる毎日。
主な装備:【闇珠の首飾り】【魔導の杖】

 傭兵<ソル>
25歳。勇者のガードを務める青年。元・王国騎士。
体には歴戦の勲章が多く残っている。
剣術体術といった武芸に秀でているが、ある事件をきっかけにユッカに全ての魔力を譲り、今は自身で魔力を一切操る事ができない。
想い人の忘れ形見であるユッカの事を人一倍気にかけている。
長く戦いに身をおいてきたため、女性の扱いを心得ておらず、デリカシーを欠く事が多い。
時には少女たちに翻弄されながらも、今の暮らしを気に入っている。
主な装備:【騎士の剣】


-敵①


 淫魔<サキュバス>
ユッカに呪いを与えた張本人。呪いを通して心を交信させることが出来る。
呪術・占星術・黒魔術の扱いに長けている。
子を宿しづらい自らの肉体を憂い、一族の再興のために勇者の体を手に入れる。
朔の夜に淫魔としての力を増す。

 闇の魔剣士<レヴァン>
三魔人の1人として魔王復活の野望を果たすべく暗躍する魔剣士。ソルの好敵手。
仮面には大きな十字傷が刻まれており、普段外すことはない。
銀色の長髪に整った顔つきの色男。しかし本人の女の趣味は悪い。
生まれたてのマントルドラゴンを使役する。

 闇の呪術師<クロノ(弟)>
三魔人の1人として魔王復活の野望を果たすべく暗躍する魔法使い。
古の賢者の一族クロノ家の血を引く人間であったが、闇魔術にのめり込み邪道に堕ち人間を憎む。
現代では禁忌とされる時魔術を扱う。
戦いの中でユッカの炎に魂を浄化され、最期は姉に見送られて静かに天へと昇っていった。

 闇武将<オーグ>
三魔人の1人。
表向きは魔王復活に協力しているが、裏では自身が魔界の頂点に立つために暗躍している。
現在の実質的な魔界の支配者。
レヴァンの実力を認めているがゆえに邪魔な存在だと忌み嫌っている。
 
 幼竜<マントルドラゴン>
本来は火山帯に生息し灼熱を操る翼竜種。
街の中で孵化し人々を恐怖に陥れるも、ユッカたちの手によって撃退された。
その際にユッカから分け与えられた魔力の味をいまでもはっきりと覚えている。


-敵②


 狼魔人
ソルの因縁の相手である魔獣。
7年前に起きた聖地侵攻事件の際、太陽の村に現れてユッカの母親の命を奪った。
戦闘で右腕を失ってからは呪術師により竜の腕を移植されている。
時が経ち力を手に入れたソルと再戦し敗れ去った。

 館の少女<アリス>
薄暗い森で古びた宿屋を営むブロンドヘアーの美しい少女。
その正体は100年以上生きる魔法使いの老婆で、訪れた旅人の魔力を吸い殺し、魂を人形へと閉じ込めていた。
ユッカ達一行を襲撃するも、マナ1人に返り討ちにあい全ての力を奪われた。

 大蛸<クラーケン>
オクトピア近海に現れた大蛸の魔物。
闇の呪術師の邪悪な魔力を受けて、心を闇に染めて暴走してしまう。
超大な体躯で船を襲い、人々に甚大な被害を与えていた。
最後はヒーラの聖なる魔法陣で浄化され、心おだやかに棲家へと戻っていった。

 蟲魔人
オーグの忠実な部下の魔物。単独での飛行能力、転移術を有しているエリート。
魔界蟲を召喚し相手を攻撃する。
麻痺効果のある毒粉でヒーラを苦しめた。


-その他の人物①


 獣の商人<マオ>
商業の街バザで薬店を営む獣人の少女(猫)
業突く張りであるが、ゆえにいつも明るく楽しく生きている。
馬車の故障で立ち往生しているところをユッカたちに助けられる。
一行に宿泊する部屋を貸し与え、マナに薬術を伝授し笑顔で新しい旅立ちを見送った。

 妖狐<キュウ>
遥か遠い島国より湯治の旅に出た獣人の少女(狐)
子供のような容姿でありながらも、老獪で古めかしい喋り方。
その正体は魔力を得た狐であり、古の災厄の一つを身に宿すと自称する。
秘術の暴走により巨大な神獣へと変化したが、マナのドレイン能力によりその力を失った。
別れ際にユッカたち一人ひとりに虹の珠と呼ばれる希少な魔宝石を与え、旅の無事を祈った。
 
 宿屋の少女<ローレ>
港町オクトピアにて潰れかけの宿屋『ローレライ』を営む少女。
おっちょこちょいではあるが何事も一生懸命。
その正体は邪気の蔓延る魔物の世界から逃げ延びてきた美しい人魚。
魔物仲間のサキュバスとは古くからの知り合いで、一方的に友達だと思っている。
ユッカたちに宿を貸し与え、ヒーラのクラーケン対峙の際にも尽力した。

 蛸娘<スキュラ>
オクトピアで語り草となっていた下半身が蛸足の女型の魔物。
知能が低くあまり人間の言うことを理解していない様子。
繁殖相手にヒーラを選び、巣である入江の洞窟へとさらっていった。
ヒーラの活躍により、暴れていた友達の大蛸クラーケンが正気にもどり、
最後はヒーラとの友情を確かめ海のなかに姿を消した。

 時の魔術師<クロノ(姉)>
歯車の街ピニオンの大時計台の管理人を務める女性。
古の賢者の一族クロノ家の血を引く。闇の呪術師の姉。
瞑想によって高めた膨大な魔力を用いて、毎年行われる魂流しの儀式において天への道を架ける役目を果たしている。
ユッカの手によって、邪道に堕ちた弟の魂が浄化されたことを深く感謝した。

 女剣士<サマンサ>
魔法大国グリモワで剣士として賞金を稼いで暮らしている女性。
祖父が太陽の国出身の人物と接点があり、協力者としてユッカたちを匿う。
長年伴侶に恵まれず、異性にモテないのは鍛え上げた筋肉のせいだと思って悩んでいる。
武闘大会でベスト16に入る程の実力者。

 魔法国王
魔法大国グリモワを統める若き王。
古の大魔導師の血を引き、秘術である魔法障壁を用いて国を護っている。
魔術に関して天才的な才能をもち、鋭い魔覚で瞬時にマナの本性を見抜き拘束した。
普段は底意地が悪く昼行灯であるが、その圧倒的な能力ゆえ有事の際に国民は王のことを信用している。
古より続く知の継承者であり、魔術の管理者を自称し、この世の秘術を収集するのが趣味。



-その他の人物②


 母親<ユイ>
勇者ユッカの母親。故人。
優しくも気丈で芯の通った性格。
体格にはあまり恵まれていない上に幼い顔つきで、年齢より若くみられる。
太陽の村で普通の女としてうまれ育ち、成人してから王宮でメイドとして働いているところを第一王子と出会い、のちにユッカを授かる。
王子とは身分不相応ゆえ王宮を追放されたが、その後も女手ひとつで娘を育ててきた。
ある雪の日、森のなかで倒れている傭兵ソルを見つけ家に連れ帰り、幼いユッカのガードとして働くよう新しい人生を与えた。
その翌年起きた聖地侵攻事件で魔物の手にかかり死亡。
最期は恋仲であったソルにユッカの未来を託した。
現在は魂だけの状態でマナの中に宿っている。

 司祭
勇者ユッカの祖父。
太陽の村で司祭兼村長を務めている。
聖地侵攻事件で最愛の娘を失い深く悲しんだが、その後はユッカの親代わりとなり旅立ちを見届けている。

 魔導師
魔女マナの後見人で元・王宮付きの大魔導師。
マナの呪われた体質を不憫に思い、王宮を離れ人里離れた深い森へと共に身を隠した。
幼少期のユッカの魔法の師であり、忌まわしい過去の記憶を封印した張本人。

 大神官<ホーリィ>
僧侶ヒーラの父親。
誰にでも心優しく、聖職者の規範となる良き神官。
娘のこととなると立場を忘れて取り乱すことがある。
聖地侵攻事件の際、重症を負ったソルを手厚く看護した。

 王子<グレイス>
太陽の国の王子。
古の勇者の直系であるが、次代の勇者としての資質である魔覚には恵まれず、幼い頃より兄に対して劣等感を抱いていた。
スマートな痩身から繰り出される剣撃はすさまじく、武芸者として国内でも突出した力を持っている。
嫌味な性格からソルと激突するが引き分けに終わり、以降は彼の実力を認めている。
後に王位を継承し、ソルを直属の騎士として王宮に迎え入れている。

 傭兵<ソラ>
ソルが素性を隠すために女装した姿。
ピチピチの服と露出した筋肉が街行く人々に気味悪がられているが、本人は様になっていると自画自賛気味。
そのたくましさから魔剣士レヴァンに見初められた。

次回更新明日22時~(予定)



第31話<因縁>



僧侶「……ついに闘いがはじまりましたね」ゴクリ

僧侶「…ユッカ様大丈夫かな…頑張ってください」モグモグ

僧侶「あぁっ! 早速脱落者が……」


大男「くそっ、なんだこいつら! 剣が効かねぇ」

岩石兵「……」ゴゴゴ

武芸者「剣士しか出られない大会で、こりゃねぇぜ陛下!」



傭兵(…硬い。切れないことはないが、剣へのダメージが大きすぎる)

女剣士「ソル! どんどん囲まれていくよ」

傭兵「わかってる」

勇者「どこを攻撃したらいいの!」


勇者「魔法で攻撃してる人もいるけど、ちっとも効いてないよ!」

傭兵「……岩石の兵隊か」

傭兵「こいつのほうがよっぽど魔物じゃねぇか」

女剣士「全身が岩石なんて、まともにやりあったら剣士は不利だ! あの性悪陛下!」

傭兵「全身か…」

傭兵「いや、だとしたらあの関節はどうやって動いてる」

勇者「見てくる!」ピョン

傭兵「おいっ」

女剣士「ユッカはりきってるね」

傭兵「まぁ…気持ちはわからねーでもないが、飛ばし過ぎるとバテるぞ」


勇者「泥だ! 関節の部分は泥になってて、自由に動かせるんだ!」

勇者「でも泥だから切断できない!」

傭兵「……ッ」


魔法国王「どうした。まだ一体も倒せてないじゃないか。みな他力本願はよくない」

魔法国王「ちなみに時間経過と共にさらに数が増えていくからね」

魔法国王「防戦一方じゃ、首を絞めるだけだよ」


参加者「ひぃぃ! 俺は嫌だぁ!! ここから出してくれぇ!!」

大男「逃げられるわけねぇだろ!! 戦って生き延びるしかねぇ!」

傭兵(阿鼻叫喚地獄だな。まともな神経じゃ突如現れたバケモンの大軍とやり合うなんて無理か)

傭兵(そういやあいつは何してる。どこ行きやがった)


闇剣士「国王の傀儡か。だがこんなものこけおどしにすぎん」

闇剣士「魔力でつくられた生命体ならば、その動力をすべて食らうのみ!」

岩石兵「グォォォ…――」

闇剣士「たいした量も込められていなかったか」


魔法国王「最初に攻略したのはやはりきみだったか」


闇剣士(この程度、私一人で掃討できないこともないが)

闇剣士(ソル。貴様達はどう出る)


女剣士「くっ! こいつら、元から命なんてないから切っても手応えがなさすぎる!」

傭兵「あぁ、毛ほどもダメージになっちゃいない」

傭兵「どうにかして動きを止める手段を考えねーとな」

女剣士「なにか考えある?」

傭兵「例えば…魔力を吸い尽くすとか、魔力の流れを断ち切るとか」

勇者「……それボクらの能力じゃできないよ」

傭兵「……なら、少々危険だが。ユッカに頼みたいことがある」

勇者「うん?」

傭兵「あいつの腕と足の関節部分の泥を、固めることはできないか」

勇者「あっ、炎で? けど、分厚い岩の装甲に包まれてて、ファイアボールを当てるのは無理だよ」

傭兵「剣に炎をまとって、装甲の隙間から突き刺せばいい。できるか」

勇者「……わかった。やる」


傭兵「接近するまで俺が援護する。まずは一体仕留めるぞ」

勇者「うん!」


俺たちは岩石兵の大軍の中めがけて跳躍した。

全長ゆうに2mを越える化け物は、分厚い岩の装甲を全身に纏い、手にはご丁寧に剣とシールドを持っている。
動きは緩慢で武芸の素人以下だが、単純に手足を振り回すだけでもかなりの威力がでるだろう。
攻略法が見つからない現在、参加者はみな及び腰になって回避や防御に専念していた。


傭兵「いいか、正面から受けるなよ。攻撃は全部流せ!」

勇者「わかってる…この一週間、ずっと特訓したんだ!!」

勇者「はぁぁぁ!」

ユッカの剣が熱を帯びて真っ赤に染まっていく。
ユッカは小柄な体で敵の懐に潜り込み、膝に突き刺した。

勇者「これでどうだ!!」

岩石兵「!!」ゴゴゴ


勇者「はぁぁあ!」


そして真横に振りぬいた。
岩の破片をまき散らしながら岩石兵は崩れ落ちて動きを止めた。

勇者「やった! 泥が固まって動きがとまったよ!」

傭兵「まだそいつの上半身は動く! 油断するな!」

勇者「…!!」

岩石兵「グォォォ」

勇者「火が効くってわかれば…こんなやつに負けるもんか!!」

勇者「マナを返してもらうんだあ!!!」

▼勇者は全身に炎をまとった。


傭兵「ユッカ…」


岩石兵の巨大な拳がユッカに迫る。
ユッカはとっさに剣を放り出し、両手で上から敵の拳をおさえつけ、勢いを利用して宙へ跳んだ。

勇者「はぁ!!」

そして燃え盛る足に魔力を集め、岩石兵の頭を鋭い踵落としで蹴り砕いた。


岩石兵「ゴ…ゴ――」

勇者「どうだ!」


女剣士「あの子…すごい」

傭兵「前々から身体能力が高いのはわかっていたが…あれほどとはな…」

傭兵(生き物じゃない岩石兵には、手加減無用というわけか)

傭兵(お前は優しいやつだな)


僧侶「きゃーーユッカ様ーー!!♥」


その後もユッカは鬼神の如く暴れまわった。
四方八方から襲いかかる岩石兵を華麗な身のこなしでさばき、的確に剣を突き刺し関節部を破壊していく。

5体。10体。20体と機能を停止した岩の塊が増えてゆく。

俺とサマンサは専ら動けない岩石兵の破壊を任されるだけだった。

勇者「来い!! 全部ボクが相手だ!!」


僧侶「すごい……旅立ちの日、私を助けてくれたときのこと思い出しちゃいました…」

僧侶「ユッカ様…あの時よりさらにたくましくなられましたね」モグモグ

サキュバス「ふあーー、なによぉ。もうはじまってるじゃない」

サキュバス「ねー隣空いてる?」

僧侶「え? どうぞ空いてますよ……って。ゲッ! サキュさん…」

サキュバス「ゲッって何よ。グッモーニン」

僧侶「…隣すわるんですか」

サキュバス「空いてますよって言ったのあんたでしょ」



サキュバス「あら、勇者のチビちゃんがんばってるじゃない」

僧侶「すごいでしょ!? ユッカ様が本気だすと強いんですからね!」

サキュバス「あの力がいずれあたしの物に…!」

僧侶「ぜっっったいダメです!」

サキュバス「うふふ。ま、もうただの保険になっちゃいそうなんだけどねー」ニコニコ

僧侶「どういうことです?」

サキュバス「内緒♪」チョイッ パク

僧侶「あっ私のポップコーン!」

サキュバス「いいじゃない。朝食べずにすぐ来たもの」モグモグ

サキュバス「乳、あんたキャラメル派?」

僧侶「勝手にたべないでください! 乳って呼ばないでください」

取り巻きの男A「アネさん! アネさんのご友人の分もいますぐ買ってきやす!」ダダッ

取り巻きの男B「飲み物なににいたしましょう!! コーラですね!!」ダダッ


僧侶「ゆ、友人……ないですないです」ブンブン

サキュバス「何アレ。あんたの性奴隷達?」


僧侶「知りません…。ホテル通りでたまたま出会って、正しい道へ導いたらなぜか皆さんこうなってしまって」

サキュバス「ホテル通りって、あんたついに売春でもしてたの?」

僧侶「な゛っ!!」

サキュバス「勇者とあいつがラブラブ真っ盛りだからこの淫らな体をもてあましちゃったのね~」ムニュリ

バチバチッ

サキュバス「あいたたっ! あいかわらずあんたの体さわると痛いわ……」

僧侶「別に持て余してなんていません」

サキュバス「そう? 一週間指くわえてみてたんじゃないの?」

僧侶「ソル様はこころの広いお方なので、私にも良くしてくださいます!」

僧侶「あなたの妄想でいい加減な事いわないでください」

サキュバス「そういやあんた、呪い薄まってるわねぇ」

サキュバス「そっか、毒に冒された時に結構出しちゃったからだ!」


僧侶「もっ、もうあんな呪いかけちゃイヤですよ!」

僧侶「ほんとに迷惑してたんですからね!」

僧侶「毎日毎日、余計な洗濯物が増えて…」ブツブツ

サキュバス「えーせっかくあいつとラブラブできるきっかけ与えてあげたのに何よその言い草」

サキュバス「それにあたしの呪いがなければあんた蟲の毒で死んでたわよ」

僧侶「そ、それは…その節はどうも」

サキュバス「サキュ様ありがとうございました。是非このいやらしい身体をした私を淫魔の仲間に加えてください。でしょ?」

僧侶「……」モグモグ

サキュバス(無視なのね)

サキュバス「さーて彼はどこにいるのかなー」

僧侶「ソル様とサマンサさんなら近くにいますよ。ほらあそこ」

サキュバス「あーそいつらじゃなくって」


サキュバス「あっ、いたいた。がんばれーー」

僧侶「?」

僧侶「誰に手ふってるんですか」

サキュバス「ダーリンよ」

僧侶「……は」

サキュバス「ダーリン」

僧侶「あの、もしかして魔剣士の人ですか…?」

サキュバス「うん。そうよ」

僧侶「じゃ、じゃああの時ホテルに入っていったのは、せ、せせ、セック――」

僧侶「はっ、むぐ…私ったらなんてはしたない言葉を」

サキュバス「くすくす。セックスしたけど」

僧侶「!!? やっぱりそういう関係なんですね!?」

サキュバス「何びっくりしてんのよ」


僧侶「知らなかったです。いつのまに相思相愛の仲になってたんですか!」

サキュバス「なってないけど?」

僧侶「え……じゃあただれた関係ってやつですか」

サキュバス「どっちかっていうと、利害一致なのかなーあいつ的には。愛なんてこれからこれから♪」

僧侶「???」

僧侶「ど、どういうことですかー。またなにか悪い事企んでるんでしょ!」ゆさゆさ

バチバチッ

サキュバス「痛い痛い痛いっ! バチバチするから触んないで!」

サキュバス「だいたい敵であるあんたに説明する必要ないし!」

僧侶「敵だからこそ気になってしかたないですよ!!」

サキュバス「ほら、勇者応援しなくていいの?」

僧侶「っ!! ゆ、ユッカ様がんばってー! ソル様ー! サマンサさーん」

サキュバス「レヴァン! 倒した数で勇者達に負けたら承知しないわよー!」


取り巻きの男A「ポップコーン買って来ました! いやぁしかしアネさんにこんな仲いいお友達がいたなんて」

僧侶「よくないです!!」

サキュバス「くすくす」




第31話<因縁>つづく


  

更新終わり
次回明日22時~

第31話<因縁>つづき



実況「1時間が経過し闘いは佳境に入りました! 参加者達は疲労の色を隠せなくなってきています」

実況「しかし8人に絞られるまで決して終わることはありません」

実況「撃破されてはまた1体また1体と岩石兵は姿を現します」

実況「さぁフィールドの戦士達はこの状況をどう打開するのか!」


傭兵「ユッカ大丈夫か」

勇者「とばしすぎたぁ…まだ魔力は平気だけど体力が…」

傭兵「もうひっこんでろ」

勇者「だってぇ、あの人達あんな闘い方じゃ危なっかしいよ」

女剣士「参加者はみんな危険は承知の上さ。やられるのは自己責任!」

女剣士「それよりもこの闘いの真の意図」

傭兵「あぁ。あの野郎、ゴーレムが参加者をぶちのめすとは微塵も考えてねぇ」

傭兵「残り8人に入りたきゃ、乱戦にまぎれて参加者同士潰し合えってことだ」



魔法国王(そう。ある程度の実力者が揃えばぼくの創りだした玩具なんて相手にならない)

魔法国王(さぁ。8人になるまで殺しあうんだ)

魔法国王「そのフィールドは強者だけが立つことが許される死地」

魔法国王(金魚の糞はいらないんだよ)


武芸者「くそ、どうする」

大男「こうなったら、あっちのガキと女連れのやつらをやろうぜ」

武芸者「まじかよ。あのガキさっき1人で無双してたの見てなかったのか」

大男「だがもうガス欠だろうよ」

大男「オレらだって、仮面野郎の後ろでこそこそするの限界があるぜ」

武芸者「確かにあいつもいつまで戦ってくれるかわかったもんじゃないしな」

大男「勝ち抜けるためにはやるしかねぇ!!」


闇剣士「……」



武芸者「おっと、兄ちゃんあぶねぇ!」ブォン

傭兵「うおっ、どこ狙ってやがる」

武芸者「へへ。わりぃな手元が狂っちまった」

傭兵「…!」

勇者「参加者同士で戦うしかないの…?」


女剣士「うっ、こいつら!!」

大男「へっへ! こんな美人さんとヤレるなんて光栄だぜ!」ガギィン

女剣士「気絶じゃすまないよ」

大男「そりゃこっちのセリフだぜ! ここはルール無用だ!」

大男「てめぇをボコったあとガンガンに犯したってかまわねぇんだぜ!」

女剣士「ふざけるな下衆が!」



血みどろの乱戦は激しさをましてゆく。
背を預け合っていた参加者同士でついに争いがはじまり、その隙をついて岩石兵の巨体が猛威を振るった。

俺は消耗気味のユッカをかばいながら、目の前の狂気に染まった男たちと対峙する。


勇者「ソル! 死なせたらだめだよ!?」

傭兵「わかってるが、戦闘不能にしたところで結局ゴーレムにやられちまうぞ」

勇者「ゴーレムの手の届かないトコ…応援席に投げ飛ばしてよ!」

傭兵「無茶言うな」

勇者「だってぇ…やだよこんなの」

武芸者「へへっ、敵の心配とは優しいねぇお嬢ちゃん!!」

傭兵「よけろっ!」

勇者「ううぐっ! …敵…敵なの?」




僧侶「な、なんで人間同士で戦っているんですか!!」

サキュバス「試合が長引いてるからじゃないの」もぐもぐ


僧侶「あの人たち、さっきユッカ様に助けられていたくせに!」

サキュバス「くふふ。趣味悪いけどおもしろい余興ね」

僧侶「こんなのひどいです…」

コツコツ

魔法国王「特別招待席はお気に召さなかったかな」

僧侶「!」

魔法国王「まさか一般客のスタンドにいるとはおもわなかったよ」

僧侶「あ、あなた…」

取り巻きの男A「うおっ陛下だ」

取り巻きの男B「なんでこんなところに…」


魔法国王「よく見ていたまえ。これが人間のもつ浅ましさだよ」

魔法国王「ひとびとは彼らの闘いをみて、日頃の自分の行動を振り返り、自戒するんだ」

魔法国王「あのような醜い人間になりたくないからね」


僧侶「浅ましさですって! そうなるように、すべてあなたが仕組んだことでしょう!」

僧侶「いますぐ闘いを止めてください!!」

僧侶「死傷者がたくさん出ているんですよ!」

魔法国王「ふふ…あたりまえじゃないか、お気楽なスポーツ観戦じゃないんだからね」

魔法国王「目の前で人が全力で闘い、血を流し死んでいく……この平和なグリモワではめったに見られる光景じゃない」

魔法国王「だからこそ、代々この大会は人気の興行として存続しているんだよ」

僧侶「…!」ギリッ

魔法国王「柔和な顔つきをして、気の強い娘だ」

サキュバス「そうなのよねぇ。乳って案外闘争心あるのよ」

僧侶「……私がとめてきます」

魔法国王「ほう。どうやって。観戦席とフィールドの間には強固な結界が貼ってある」

魔法国王「きみの攻撃力じゃ、破って中に入ることはできないよ」

僧侶「……」



僧侶「サキュさん。ポップコーンとジュースあずかってください」

サキュバス「う、うん…どこいくのよ」

僧侶「特別席とやらに行ってきます。チケットはいただいてるので問題ありませんよね?」

魔法国王「まぁね」

僧侶「お高い場所はさぞや見晴らしがよいのでしょうね!!」ダッダッ

魔法国王「……やれやれ」



岩石兵「グォォオ!!」

傭兵「ちぃっ、ユッカなしじゃどうしても後手に回るな」

勇者「ご、ごめん。そろそろ反撃するよ」

傭兵「いや、いい。まだしのげるから俺から離れるな」

武芸者「きゃっほぅ!! その隙もらったぁ」

ザシュッ――

武芸者「がっ…っ!?」

闇剣士「邪魔だ」


傭兵「レヴァン!」

闇剣士「何をしている。敵を切ることに躊躇は必要ない」

傭兵「てめぇと俺で立場も物の見方もちげぇだろ」

闇剣士「貴様にくだらんことで敗退してもらいたくはない」

傭兵「そのときゃそこまでの奴だったってことでいいぜ」

闇剣士「ふ…そうか」

傭兵「余裕ぶっこきやがって。その仮面の下じゃ汗ひとつかいてないのか」

闇剣士「女2人を同時にかばいながらでは、貴様は重いハンディを背負うことになるな」

闇剣士「フェアではない。私のプライドが許さん」

傭兵「は…」

闇剣士「そこの筋肉の女。私に付け」

女剣士「えっ! レヴァンさん!」

傭兵「まわりくどいやつ…」



闇剣士「ソラさんのご友人の危機を見過ごすわけにもいかんのでな」

女剣士「…え、えっと。ありがとう」

闇剣士「ソラさんは参加していないか。あれからしばらく探しているのだが」

女剣士「うーうん、参加して……ないね、あはは」

闇剣士「そうか……行くぞ。私から離れるな」

女剣士「はい!」


勇者「ソル、あいつに任せて大丈夫なの?」

傭兵「心底むかつく野郎だが、約束はやぶらねぇ」

傭兵(俺と決着をつける時を待っている…そうだろレヴァン)

傭兵(だがここは俺たちの決戦の舞台にはなりえない。お前はそれをわかっているはずだ)

傭兵(なぜ俺に協力するような真似をする)


大男「ひぃっ」

岩石兵「グォォォ」

参加者「もうだめだぁあ! 殺される!!」



参加者「た、たすけて。神様女神さま…っ」

勇者「だめだっ! あの人やられる!! ソル!!」

傭兵「無茶言うな…ここからじゃ…」


ザァァァ…


傭兵「…!」

雨粒が頬を打つ。
突如、雲ひとつない晴天から大粒の雨が降り始めた。

雨が岩石兵の岩肌を濡らし、またたく間に体内へと染み渡り、動きを鈍らせていた。
そして1体また1体と、崩れ落ちるように動きを停止させていった。

岩石兵「…ゴ…ゴ」ズシャ

参加者「…? た、助かった…」

大男「岩石兵が壊れていく…」

傭兵「これは…」

勇者「雨じゃないよ。ヒーラの魔力を感じる」

傭兵「ま、まさか…」


魔法国王「……やってくれるねぇ」

魔法国王「なるほど。結界は攻撃魔法は通さなくても、害意のない自然物なら通す」

僧侶「はい。この身をもって経験したことです」

魔法国王「これほどまでの海神の力を宿していたか…」

僧侶「関節部の泥が流れ落ちてしまったら、あなたの岩石兵は動くことはできません」

僧侶「おわりです」

魔法国王「大会に勝手に横槍をいれてどうなるかわかってるのかい」

僧侶「大雨がふっただけです」

魔法国王「くく…ははは。いいだろう、きみの勝ちだ」

魔法国王「天に立ち上る、美しい水流だよ」


僧侶(ホーリーシャワー…これがみなさんの癒やしとなりますように)



参加者「不思議だ…身体の傷がすこしずつ癒えてやがる…」

武芸者「げほっ…げほっ…俺、生きてる…生きのびたのか…」

大男「おぉい無事か」

武芸者「あぁ…まるで神の救いだ…」


闇剣士「戦いは終わった。ひとびとの狂気と戦意が失われてゆく…」

女剣士「まだ結構参加者残ってるけど」

勇者「…どうなるんだろ?」

傭兵「さぁな。あいつの性格考えりゃ、8人になるまで仕切りなおしとか平気で言いだしそうだがな…」


魔法国王「………ということにしておいてくれ」

司会者「わかりました」

司会者「予選競技終了!!! 参加者の皆様お疲れ様でした!!」

傭兵「…!」


魔法国王「諸君。熱い戦いだった」

魔法国王「とんだハプニングで戦いは中断されたが、諸君の勇姿はみなの目に焼き付いたことだろう」

魔法国王「ではこれより、決勝トーナメント進出者を発表する」

司会者「生存者25名のうち、決勝トーナメントにすすめるのはたった8名!」

司会者「その選出方法は……陛下おねがいします」

魔法国王「ゴーレムソルジャーの討伐数だ」

魔法国王「大会記録員からすでに個々の結果を受け取っている」

司会者「では私から発表いたします!」

司会者「栄えある第1位。なんと1人で28体討伐!エントリーNo.29番の勇者ユッカちゃん15歳です」

勇者「! ぼ、ボク!?」


僧侶「きゃーユッカ様ー♥」

観客「うおおおお!!!」


魔法国王「見事な戦いぶりだった。弱き者を助け、決して折れぬ心の強さを我々に見せてくれた」

魔法国王「おめでとう」

勇者「……」

傭兵「気持ちはわかるがここは素直に喜んどけ」


司会者「続きまして第2位! 25体討伐! エントリーNo.30番、不屈の傭兵ソル!」

女剣士「す、すごいじゃん! 二人して予選1位2位突破だよ!」ゴスゴス

傭兵「俺に関しちゃユッカのおこぼれみたいなもんだけどな…」

司会者「第3位! 誰と協力することもなく、悠々と21体討伐! エントリーNo.9番! 謎の大剣使い、仮面のレヴァン!」

闇剣士「…そうか」

傭兵「惜しかったなぁ。本気出しておけば俺を抜けたのに!」

闇剣士「…貴様」



こうして、決勝トーナメントへ進む8人と組み合わせの山が決まった。


①━┓              ┏━②
   ┣━┓        ┏━┫
⑤━┛  ┃   ☆    ┃  ┗━⑥
      ┣━━┻━━┫

③━┓  ┃        ┃  ┏━④
   ┣━┛        ┗━┫
⑦━┛              ┗━⑧


①勇者ユッカ
②傭兵ソル
③剣士レヴァン
④元王国騎士A
⑤ローブの男
⑥元王国騎士B
⑦女剣士サマンサ
⑧武芸者


勇者「…なるほど、上位の人はわかれるんだ」

女剣士「…あう。どうしよ」


傭兵「サマンサ。悪いことはいわねぇ。仮面野郎相手はリタイアしろ」

女剣士「で、でも…マナを取り戻すために少しでも協力したいんだ」

傭兵「あいつは敵に対して容赦しねぇぞ」

女剣士「……」


闇剣士「ソル…貴様とあたるのは決勝か」

傭兵「あぁ」

闇剣士「勝ち抜いてこい」

勇者「待て! その前にボクが準決勝でお前を倒す!」

闇剣士「貴様が?」

勇者「負けないんだからね…決勝にいくのはボクとソルだ!!」

勇者「それでっ、マナと聖剣を両方手に入れる!!」

闇剣士「そうか。ならば1位突破の貴様に敬意を表して、全力で挑もう」

勇者「ひうっ」

傭兵「ほらな…」

女剣士「はぁ…」


僧侶「みなさん!! ご無事でしたか」

サキュバス「組み合わせきいたわよー」

勇者「あ、ヒーラ! さっきはありがとう。みんな助かったよ」

僧侶「いえいえ。私にできることをしたまでです」

サキュバス「あ、そうだ。いーぃレヴァン?勇者のこと殺しちゃだめだからね?」

闇剣士「貴様に指図される覚えはない」

サキュバス「嫁の言う事が聞けないの?」

闇剣士「…ッ貴様」

傭兵「…は? は?」

勇者「?」

僧侶「それがですね」

闇剣士「ええいっ、戦いは明日だ。今夜は養生し、万全を期して臨むがいい!」


サキュバス「逃げた」

僧侶「逃げましたね」

勇者「なんかヒーラとサキュっていつの間にか仲良くなった?」

サキュバス「同じポップコーンを分け合う仲よ。ねー?」

僧侶「そーですねーー」

傭兵「おい淫魔!! 嫁がどうたらって話詳しくきかせろ!!」ガシッ

女剣士「レヴァンさん……さよならあたしの恋」ブワッ



第31話<因縁>つづく

更新おわり
次回明日

帰り遅れたので更新明日にします
少しだけ書き溜めて寝ますスマソ



第31話<因縁>つづき



<事情説明中>


サキュバス「――というわけなのよ。だからレヴァンとしばらく子作りするの」

勇者「そっかぁ…」

女剣士「ふ、不純だ。恋愛関係ですらない相手と、交尾だと…」

女剣士(レヴァンさんと交尾…ってことは生で…裸!?!)

サキュバス「不純かしら。むしろ生物的に正しいんじゃないの? ねぇ」

僧侶「軽々しく私に同意をもとめないでください…」

傭兵「~~っひっ、ひっ、ひひゃはは」バンバン

勇者「さっきから笑いすぎ…」

傭兵「だ、だってよぉ…ひひひゃ、あいつがコレを嫁にとるって、あひゃははっ」

僧侶「なにがそんなにおかしいんですか」


勇者「人の恋路を茶化しちゃだめだよ!! そんなやつスレイプニルに蹴られて死ぬといいよ!」

傭兵「あぁ心配するな。わざわざ邪魔はしない、好き勝手やってくれ」

傭兵「にしても…ぷぷ、はははっ、あのむっつり仮面が淫魔にあっさり籠絡されるなんてよぉ!」バンバン

サキュバス「むしろー、堕とされたのはあたしっていうか」

勇者「え?」

傭兵「は?」

サキュバス「あんたの名刀も所詮は人間サイズってことね…ふぅ」

サキュバス「それに比べてレヴァンってば、超激しくてぇ超魔力たっぷりでぇ♥」

傭兵「……え」

傭兵「ま、まじ…? あいつそんなだったっけ」

勇者「……ねぇソル」クイクイ

傭兵「なんだ」

勇者「サキュとエッチしたの?」

僧侶「うそ!? しちゃったんですか!!?」

傭兵「してねーーよ!!」バンッ

女剣士(すごくここに居づらい…)


傭兵「淫魔! こいつらに誤解させること言うな!」

サキュバス「はいはい、そうね」

サキュバス「じゃ、あたしそろそろ帰るわね」

勇者「まって」ガシッ

僧侶「まちなさい」ガシッ

サキュバス「まだ用があるの?」

勇者「サキュは自分の目的の目処がたったんだよね?」

サキュバス「うん。まぁまだわかんないけど、子孫が残せるとしたらあいつが最有力かなーって」

勇者「じゃあ… ボ ク の 呪 い も う い ら な い よ ね?」ギリギリ

僧侶「解いてもらえませんかね」バチバチ

サキュバス「…っ、そ、それとこれとは別よ!!」

勇者「別じゃないでしょ! サキュが子孫を残すためにボクに呪いをかけたってさっき言ったじゃん!」

傭兵「言ったな」

勇者「子供は自分で産みなよ!!」


サキュバス「……」

勇者「なにその嫌そうな顔! 早く解いて!」

僧侶「迷惑してるんですよ!」

傭兵「そうだぞ」

サキュバス(っていうか、厳密には呪いじゃなくて悪魔の最上級契約だし…)

サキュバス(人間一人の命を救うほどの契約を…)

傭兵「…なんだよ。いますぐユッカの呪いを解け」

サキュバス(そんな簡単に解除できるかっての!!)

勇者「ねぇサキュ???」

勇者「ボクがサキュの代わりに淫魔にならなくても、サキュならきっと元気な赤ちゃんうめるよ」

サキュバス「……」

サキュバス(実はあたしが無事野望を達成するまで解けません♪)

サキュバス(…っていったら殺されそー……)

勇者「ねぇ聞いてんの」ミシミシ

女剣士「机は壊しちゃだめだ」


勇者「これでやっと解き放たれる…」

僧侶「よかったですねぇ」

女剣士「そんなに長く…呪いってやつに苦しめられていたの?」

勇者「そうだよ。呪いを解こうにもヒーラの魔法陣でもダメ、マナでも無理」

勇者「もうほんと参っちゃったよ…月のない日には身体の自由がきかないし」

勇者「突然うずうずきて修行も手に付かないし…

サキュバス「楽しんでたくせに」

勇者「はあ?」

サキュバス「くすくす。ごめんなさい、あんたのことはまだ利用させてもらうから」

サキュバス「呪いは解いてあげ…ない♪」

勇者「な゙っ!」

サキュバス「忘れたの? あたしたちは敵同士。慣れ合いなんてしないわよ」

サキュバス「勘違いしちゃだめよ!!」ビシッ

僧侶「はい。してませんよ」

サキュバス「ということで」パチンッ

勇者「ひぅっ!?」ゾク

勇者「や、やめ…ひぇ」

サキュバス「グッナーイ♪」パチンッ パチンッ パチンッ

勇者「やだぁぁぁぁあ♥♥」


傭兵「ぐっ、あんにゃろう」

勇者「はー♥ ハァー♥ たすけ…たしゅけてぇ」

僧侶「いつにもまして最低な逃げ方ですね」

傭兵「期待だけさせやがって…」

僧侶「はぁ、やっぱり直接サキュさんを打ち倒すしかないんでしょうか」

傭兵「だがそうなると厄介だな。淫魔の話を要約すると、あいつはレヴァンと完全に手を組んだってことだ」

傭兵「淫魔を殺ろうにもガードに出てくるレヴァンを倒す必要がある」

僧侶「ですが仮面の人と戦うとしたら、サキュさんがユッカ様を苦しめる…」

傭兵「くそっ、まさかこんな形で先手を打たれるとは思わなかった」

僧侶「どうしましょう…」

傭兵「いや、いまはマナが最優先だ。余計なことは考えない…後回しでいい」

僧侶「いえ、これ…」

勇者「おちんぽぉ、おちんぽちょうらい♥ はぁーハぁー♥」ペロペロ

傭兵「試合明日だよな?」

僧侶「はい…」

傭兵「今夜眠れるといいが…」

勇者「ベッドきてぇ♥♥♥」グイグイ



腰をふりながらユッカのことを考えた。
なぜこいつはこんなに根の深い呪いをかけられてしまったのか。
滅亡の危機に瀕する程度の淫魔に、そのような呪いをかける能力があるのだろうか。

誰も彼もが簡単にそれをできるなら、滅亡なんてしないはずだ。

傭兵(俺は何かを見落としているのか?)

勇者「んっ、んぅっ♥」

勇者「そ、そるぅ…」

傭兵「わかんねぇよなぁ」なでなで

勇者「うん? えへへ、ボク淫魔になって一生ソルとエッチするんだぁあ…えへへへ♥」

勇者「エッチだいすき、もうエッチのためにいきるよぉ♥」

傭兵「こらっ、しっかりと意識を保て!」

 ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ

ユッカは日を追うごとに淫乱になってゆく。
もはや何をしても歯止めがきかないことは明白だった。


傭兵(なにか状況を打開する術があればいいが…)

 ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ


勇者「ああぁう♥ そこっ、奥っ、ずんずんしてっ♥」

勇者「あああんっ♥ しゅき、すきなのぉ」

傭兵(エロいしかわいいから、男としては悪くないんだがな…)

傭兵(って俺もだいぶ毒されてるな…呪いが感染したりしないよな…?)

傭兵「ユッカ。出すぞ」
 
 ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ
  ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ


勇者「きてぇ、きてぇっ♥ 中出しがほしいのっ」

勇者「ボクの赤ちゃんのお部屋にいっぱいだしてぇっ♥ なかだししてっ」

傭兵「ぐっ…うあっ」


今日もユッカの幼い膣内を汚した。
激戦のあとで疲労は残っている。おそらくユッカもだろう。
俺たちはくちづけを交わし、抱き合って泥のように眠った。




<翌朝>


【闘技場】


実況「さぁついに決勝トーナメントの開幕です」

実況「残された8名のうち、栄光を手に入れるのは誰だ!」

実況「場内実況は私、マイクがお届けします」

実況「戦闘解説には、なんと陛下直属の騎士様がおいでになりました」

実況「7年前の大会で見事優勝し、その実力を買われて騎士として登用されました」

実況「皆さんご存知、我が国のエースです!!」

観客「うおおおお!!!」

騎士「よろしくお願いします」


僧侶「この席見やすそうですね」

傭兵「じゃあここでいいか」

僧侶「ソル様お時間は大丈夫ですか?」

傭兵「あぁ。俺は第3試合だから、サマンサの第2試合が始まる前くらいに控室に移動するよ」

傭兵「いまいくと第2試合のあいつと鉢合わせしちまうからな」

僧侶「ではしばらくふたりっきりですね!」

傭兵「おう」


僧侶「うふふ」

傭兵(なんだかウキウキしてるな)

傭兵「こういうの観戦するの好き?」

僧侶「い、いえそういうわけじゃないですけど…」

傭兵「ヒーラちゃんと来るなら、戦いじゃなくてスポーツがよかったかな」

傭兵「しかし、ここからの眺めは圧巻だな」

傭兵「この何万もの観衆の前で1対1で戦うのか…王宮でやってた演習試合どころじゃないな」

僧侶「ソル様ほどの方でもやっぱり緊張しますか?」

傭兵「いや…むしろ雑音が多いほうが冷静になれる」

傭兵「必ずマナを取り戻す。俺にできるのはそれだけだ」

僧侶「…。あっ、そうだポップコーンどうぞ! いっぱいあるので!」

傭兵「おう悪いな」もぐ

僧侶「ソル様…」ピト

僧侶「信じてますからね」

傭兵「あぁ…まかせろ」なでなで

傭兵「まずはユッカを応援しよう」



騎士A「いいですねぇこの割れんばかりの大歓声」

騎士A「私が大会に出た時のことを思い出しますよ」

騎士A「あの時もいまと変わらず、たくさんのお客さんが戦いを見につめかけてくれました」

実況「古くから伝わる伝統ある競技でございます」

実況「ところでkしい様、その包帯はどうなさいましたか」

騎士A「いえ…これは先日、賊が城内に侵入したときに、戦闘で受けた傷です」

騎士A「なぁに浅いですよ心配はご無用」

騎士A「賊は我々が全力を持って排除いたしました。現在民衆への危険はありません」

実況「さすがグリモワの誇る精鋭です。どのような敵に対してもひるむことなく立ち向かいます」

実況「そして今年はなんとその騎士級の兵士が2人決勝トーナメントへと勝ち進んでおります」

歓声「うおおお!!!!」

騎士A「彼らは私の元同僚ですが、退役するにはまだ惜しい逸材でしたよ」

騎士A「実力は現役とかわらず申し分ないので、勝ち進むのは当然です」

実況「しかし予選では更にその上を行く戦果をあげた謎の3人がおります」


実況「これは波乱の予感ですね?」

騎士A「そうですね。今年は良い戦いがたくさんみられそうです」

実況「えー、また現在グリモワ騎士団は一般団員募集中です。実力と気概のある方は是非騎士団兵舎へと足をお運びください」

騎士A「人材不足ゆえ、よろしくお願いします」

魔法国王(使えない雑魚をぼくがクビにしてるだけなんだけどね)


実況「フィールド整備が終わり次第、第一試合を開始いたします」


僧侶「きゃーユッカ様きましたーー!! がんばってー!!」

傭兵「ユッカ、遠慮なくやっちまえ!!」


実況「フィールドの左右の門から2人の戦士が入場します!!」

勇者「…」

ローブの男「…ククク」



審判「両者、前へ」


ローブの男「ふぅはははは! 小娘が相手とはな。シードのようなものか!」

勇者「ボクをなめるな」

ローブの男「予選で動きは見させてもらった」

ローブの男「剣の腕はそこそこのようだが、ガキのお前は誰かに護ってもらわないとまともに戦うことはできない」

勇者「!」

ローブの男「肉体!腕力!脚力!体力! すべてにおいて俺に劣っているからだ!」

ローブの男「そう、この俺の! 鍛え上げた肉体の前には多少のすばしっこさなどもはや無意味!」

実況「おおっとここでついにローブを脱ぎ捨てた!!」

実況「中からはなんと! すさまじい筋肉です!!」


僧侶「きゃっ、あの人パンツ一枚ですよ…」

傭兵「このギャラリーの中であの姿…あいつ、なかなかの強者だ…」


実況「あまりもの体格差! 身長150cm程度の少女と、ゆうに2m20cmを越える巨漢との不釣合いなデスマッチ!」

騎士A「ローブの裏側に暗器をたくさん装備していますね」

騎士A「あれほどの種類を扱えるということは、相当な剣術家でもあるのでしょう」

実況「彼はあのローブを身にまといながら、予選を5位で通過しています! さぁ勝負の行方は如何に!?」


半裸漢「どうだ? 俺の全身凶器は!」ミキミキ

勇者「ボク、男の人と1対1でも負けないよ」

半裸漢「ふぅはははは! ぬかしおる!」

半裸漢「だがわかっているのだろうな。試合が始まればフィールド内はルール無用」

半裸漢「貴様が降参を口にしないかぎり戦いは続く!!」

半裸漢「喉笛を切り裂き、素っ裸にひんむいて、この大観衆の面前で陵辱の限りを尽くすことも可能なのだ!!」

観客「うおおおお!! やれやれぇえ!!」

観客「チビガキ! さっさと降参しねぇとしらねぇぞ!!」


僧侶「さ、最低ですっ…」


傭兵「にしてもでっけぇな。あの筋肉の塊でうごけんのか?」

僧侶「な、なんだか悠長ですね…ユッカ様の心配してないんですか」

傭兵「ユッカは負けない。俺が一番よくわかる」

傭兵「ヒーラちゃんも昨日見てたろ。吹っ切れた時のあいつの強さは尋常じゃない」

傭兵「おそらく、全盛期の俺ですら…」

傭兵(あれが、昔グレイスの言っていた選ばれた勇者の才能ってやつか)

傭兵(ユッカの親父は病弱じゃなければとてつもなく強かったのだろうか)


半裸漢「恐怖で言葉もでねぇかガキ」

勇者「……好きに言いなよ。ボクは降参なんて絶対にしない」

勇者「必ず勝ち取らなきゃいけないんだ」

半裸漢「ほぅ。いい目をしている。たいした覚悟だ」

半裸漢「貴様に敬意を表して、先手をくれてやろう」

半裸漢「俺はこう見えても紳士だからな。2倍も体格差がある相手を早々にいたぶるような真似はせん」

半裸漢「さぁどこからでもこい!」

実況「いま審判の宣言とともに試合開始ぃー!!」


勇者「先制させてくれるの?」

半裸漢「おう、ワンサイドゲームじゃ観衆が冷えちまうからなぁ」

勇者「…じゃあ遠慮なくいくよ」スタスタ

半裸漢「小娘の細腕から繰り出される攻撃など、俺の鋼のような筋肉を前に――」

勇者「えいっ」

ズジョメキョッ

▼勇者は目の前のもっこりとしたふくらみを蹴飛ばした。

半裸漢「!? が――ぁ」

半裸漢「  」

実況「会心の一撃がきまったぁあああ!!」ガタッ

騎士A「すさまじい音が響きましたね」

実況「これは相当なダメージでしょう!!!」

騎士A「予選では蹴りだけでゴーレムソルジャーの頭を砕いてましたからね…」


傭兵「あ゙ああああ!!あいつなんてことをおぉぉ」キュン

僧侶「そうです! あんなとこキックしたらばっちぃですよ!!」

傭兵「そういう話じゃなあああい」ゾワワッ



実況「半裸漢立ち上がることができません」

騎士A「これは痛いですよ」

実況「審判が側にかけよります」

審判「×」

実況「あーーっとここで意識不明のサインができました! 半裸漢選手、戦闘不能です」

実況「試合終了! 勝者は勇者ユッカ!」

実況「小柄な身体でありながらも一撃で勝負を決めました!」

観客「……」

実況「しかし、スタンドからは当然のごとく拍手も歓声もありません」

実況「あぁっと、あろうことか男性客からの激しいブーイングだ! フィールド内に物を投げ込まないでください!!」

騎士A「躊躇なく蹴飛ばしましたからねぇ。人間としての良心が欠如しているかもしれませんね」

実況「予選に加えてのこの戦い様、勝利のみに執心するその姿はまさに鬼神です」

実況「いま360度のブーイングに笑顔で手をふりながらフィールドをあとにしました」


魔法国王(ぼくはとんでもない子を敵にまわしちゃったのかもねぇ)


傭兵「…」ブルルッ

僧侶「ソル様、おしっこですか? どうしたんですか?」

傭兵(…あいつとエッチするのやめよかな)



第31話<因縁>つづく


 

更新終わり
次回明日(予定)

第31話<因縁>つづき



【応援席】


勇者「やっほー。ソル、ボクと席かわって」

傭兵「……」

勇者「どうしたの。第3試合の出場者はそろそろ控室いったほうがいいよ」

傭兵「お前はやっちゃいけないことをした…」

勇者「? あっ、キックのこと?」

勇者「あのね、蹴った瞬間なにかが弾ける感触が――」

傭兵「いやぁぁぁあやめろやめろやめろ!!」

僧侶「弱点が外側についてるほうが悪いんです」もぐもぐ

傭兵「ヒーラちゃんまでそんなこという」

サキュバス「ねぇねぇ」

僧侶「わっ、びっくりしました。どうしてここにいるんですか」

サキュバス「もちろんレヴァンの応援に来たのよ」

サキュバス「隣いいでしょ?」

僧侶「そういう意味じゃなくてですね…はぁ、いいですけど」

傭兵(昨日慣れ合いなんてしないって豪語したのはどいつだよ)


勇者「むー、サキュは別のとこ座ればいいじゃん」

サキュバス「あたしってほら、どう見ても絶世の美女でしょ?」

僧侶「……」

傭兵「あぁ」

僧侶「!?」

サキュバス「あたしが1人でポツンと座ってたら目立ってしかたないのよ。ナンパがすごくってさー」

勇者「聞いてないよ」

傭兵「うちのヒーラちゃんほどじゃないな」

取り巻きの男達「アネさんが最高です!!」

傭兵「ほら、行く先々でこうして舎弟を増やして」

僧侶「もういいですっ! その話はしないでください」

サキュバス「乳は見た目"は"いいからね」

僧侶「…」イライライラ

勇者(この2人仲いいのか悪いのかどっちなのぉ…)


サキュバス「ところでさ」ツンツン

勇者「?  ボク?」

サキュバス「さっきの戦いみてたわよ」

勇者「あー、うんありがと。楽勝だったー」

勇者「ボクさ、これでようやく男の人の攻略方法がわかったような気がす――」

サキュバス「うちのダーリンにあれしたら殺すわよ」ぐにっ

勇者「うぎゅ…しませんっ、しま゙せんっ、苦しぃよ」

サキュバス「そうね。正々堂々剣をとって戦いなさいね?」

傭兵(同意だ。俺はあんな外道教育をした覚えはない、悲しいぞユッカ…)

勇者「けほっ」コクコク

傭兵「よし、俺はそろそろ」

僧侶「もしあの状況でもしキックじゃなくて剣をつきさしてたらどうなってたんでしょう」

傭兵「い゙っ!? ぃ、いってくるからな!!」

僧侶「はい! 応援してますがんばってくださいね!!」

勇者「がんばれ!!」



【選手控室】


女剣士「あっ、ソル。やっときたんだ」

傭兵「お前の試合いまからだな」

女剣士「うん…行ってくるよ」

傭兵「いいか、無茶はするな」

女剣士「大丈夫さ。あたしはあなたたちほどの無茶はしない」

傭兵「奴はあれでも武人だ。定められたルールには従うはずだ」

傭兵「やばくなったらすぐに降参しろ。命を取られはしないだろう」

女剣士「レヴァンさんのことよく知ってるんだね」

傭兵「…あぁ。クソムカつく、因縁の相手さ」

女剣士(む……)

女剣士「もしかしてソルあなた、あたしが勝てるってちっとも思ってないでしょ!」

傭兵「えっ、あ、いや」

女剣士「見ててよ。こう見えても今年は大会にあわせて調子がいいんだからね」


女剣士「あなたたちの決勝戦、無いかもね!」

傭兵(それならそれでいいんだがな)

傭兵(俺と奴が決勝にすすんでも、剣を交えることは決してない)

傭兵「サマンサ」

女剣士「ん?」

傭兵「ファイト。自分のためにもな」

女剣士「あぁ! あたしがソラなんかより強くてイケてる剣士だってレヴァンさんに教えてやるんだ」



勇者「サマンサ来たよ!」

僧侶「サマンサさーーん!」

勇者「がんばれー! やっつけろー!」

観客「うおおお! 殺れ! つぶせ!! ぶちのめせ!!」

勇者「やれ!! つぶせー!! ぶちのめせー!!」

僧侶「影響されちゃダメですよ」


実況「それでは第2試合、両選手向い合って…」

実況「試合開始!!」


女剣士「よろしくお願いします」

闇剣士「あなたが相手でも手加減はしない」

闇剣士「この戦い、必ずソラさんが見ているはずだ」

闇剣士「私はあなたを切ることで、私自身の強さを彼女に証明しよう」

女剣士「…! やってみなよ!!」

実況「サマンサ選手、果敢にも先制攻撃を仕掛けました!」

女剣士(幼いころからずっと剣技を磨いてきたんだ!!)

女剣士(相手がどんな人でも負けるわけにはいかない!!)


実況「激しいラッシュ! 土煙の向こう側では一体なにが起きているのでしょうか!」


僧侶「やった!?」

勇者「ううんダメ、あいつの魔力がどんどんみなぎっていく…」

サキュバス「あんなへなちょこ剣技でレヴァンを倒せるわけないじゃない」


女剣士「うそ……全力で叩き込んだのに」

闇剣士「人間という種族の限界をしるがいい」


実況「全くの無傷! すさまじい防御力です

騎士A「いえ、あれはおそらく、受け流したのでしょう」

騎士A「彼は開始地点から一歩も動いていませんよ」

実況「なんということだ。サマンサ選手の渾身の一撃をすべて微動だにせずいなしてしまった」


女剣士「…レヴァンさん。くっ」

女剣士「反撃される前にっ! ミドルレンジで行く!」

女剣士「サンダービュレット!」

▼女剣士は無数の雷撃の弾丸を放った。



実況「出た! サマンサ選手必殺の雷撃魔法!!」

騎士A「…だが」


女剣士「あたった!!」

闇剣士「……」バチバチ

女剣士「えっ」

女剣士「うそ…剣でガード!? あ、ありえない」

女剣士「例えガードしたとしても、雷撃属性なら感電するはず」

闇剣士「ガードしたのではない」


騎士A「あの大剣で、吸い尽くしたのでしょうね」

実況「どういうことでしょうか」

騎士A「グリモワでは当たり前となった魔法具の中には、相手の魔力を吸う能力のある物も存在します」

騎士A「あれはその一種でしょう。使い手の力と合わさって、効力は数倍にも増しているようですが…」

騎士A(やはり奴はあのときの賊か…!)


実況「なるほど、遠距離の魔法攻撃を無効化するわけですね」

騎士A「いえそれだけではありません」

騎士A「おそらくある程度は自身の魔力に還元できるはずです」

騎士A「使い手が限界値をひきだせば、あれはまさしく魔剣と呼べる代物です…」

実況「サマンサ選手、遠近共に早くも手詰まりか!?」

騎士A「彼の前に小細工は通用しない」

騎士A「倒す方法はただひとつ、彼を剣技で圧倒することです」

騎士A(そしてそのような人物はおそらくこの世にいない…)


女剣士「魔法攻撃が効かない……レベルはあがっているのに!」

闇剣士「私を失望させないでくれ」

女剣士「!」

▼闇剣士のカウンター。

▼女剣士の剣は砕け散った。



女剣士「魔法剣がっ」

闇剣士「終わりだ」

女剣士「…くっ、くそ」

女剣士「まだだよ! 剣が折れてもあたしの心は折れていない!」

女剣士「ソルやユッカ達役に立つんだ。無様に降参なんてできない!」

女剣士「サンダービュレット!!」

▼女剣士は無数の雷撃の弾丸を放った。

闇剣士「…!」

▼闇剣士の大剣はすべての攻撃を吸い尽くした。

女剣士「なんて奴!」

闇剣士「…私は、このようなまがい物の力しか持っていない。才能なき戦士だ」

闇剣士「私に彼女の力が備わっていれば、どれほど良かったか」

闇剣士「彼女を苦しませずに…済んだというのに」

女剣士「…え」

闇剣士「ゆえに、一族の悲願! もはや誰にも邪魔はさせん!」

女剣士「!」

▼闇剣士は薙ぎ払った。



女剣士「うくっ、ああああああっ」

実況「あぁぁっとサマンサ選手、大剣の直撃で簡単に吹き飛ばされた!」

実況「そのまま勢いおさまらず内壁へと一直線!!」

女剣士「ぁぁああ!!」

バチッ バチバチ


実況「おや空中で跳ね返りましたね」

騎士A「観客席を護る魔法障壁にぶつかりましたね。あれは触ると痛いんですよ」

女剣士「ああああああっ」バチバチ


実況「サマンサ選手、たちあがれません」


勇者「そんな…」

サキュバス「あちゃー、あれ死んだんじゃないの…」

僧侶「わたしっ、治療にいってきます!!」


闇剣士「…」

女剣士「…ぁ…ぅ」

闇剣士「私の一撃をうけて息があるか」

闇剣士「それでこそ、ソラさんの友人にふさわしい」

女剣士「…ぅ」パタリ

審判「×」

実況「サマンサ選手戦闘不能! 第2試合勝者は剣士レヴァン!」

実況「担架がフィールド内に運ばれます」

騎士A「しかし、面による攻撃だったので吹き飛ぶだけですみましたが」

騎士A「あれが刃だったらとおもうと…」



【場内・通路】

傭兵「…手を抜いたな」

闇剣士「胴体真っ二つをご所望だったか」

傭兵「いや…サマンサを見逃してくれて感謝する」


闇剣士「不必要に命を摘み取ることはしない」

闇剣士「私の目指す理想の世界に、強者は必要なのだ」

闇剣士「彼女はそうであると信じている」

傭兵「…」

闇剣士「次は貴様の試合だな」

傭兵「さっくり終わらせてくるぜ。こんな茶番はよ」 コツ コツ


勇者「…ボク、次はあいつと戦うんだよね」

サキュバス「そうよ。あらら怖気づいちゃった?」

勇者「ううん。怖くないよ」

勇者「でも、戦いづらい相手だよ」

僧侶「どうしてですか」

勇者「はっきりとはわからないけど、あいつ…誰かのために戦ってるんじゃないかなって時々思うんだ」

勇者「だからあんなに強いんだよ」


サキュバス(そうよ)

サキュバス(ソルが8年間あなたのために戦い続けたのと同じく)

サキュバス(レヴァンもマナのために8年間ずっと1人で戦い続けた…)

サキュバス(思いの強さは同じ。いえ、マナに関してはレヴァンのほうがずっと上)

サキュバス(だからあたし、悲しいんだ)

サキュバス(だってレヴァンは、勝っても負けてもマナを失っちゃうんだもの)

サキュバス(レヴァン、あなたにとって魔王って何?)

サキュバス(そんなに大切なものなの?)


<8年前>


【魔族領】

サキュバス「ちょっと。そろそろ出撃よ」

青年「あぁ」

サキュバス「あれ、そのちっこいの」

魔女「…」ジー

青年「妹だ」

サキュバス「連れて行く気!? いまから聖地に攻め込むっていうのに何やってんのよ」


サキュバス「や、やばいって! 大事な器巫女なんでしょ? なにかあったらどうする気よ」

青年「……あぁ」

サキュバス「あぁって…いいレヴァン。あたしたちの目的は何」

青年「魔王様復活に先駆けた、勇者の一族の根絶だ」

サキュバス「わかってるのに戦場に妹を連れていくなんて感心しないわね」

青年「戦場に連れて行くわけではない」

サキュバス「え……」

サキュバス「ま、まさかあんた…逃がす気!?」

魔女「?」

青年「魔族領内は人間界以上の動乱が起きている」

青年「魔王様の器巫女であるマナの存在を抹消しようとするものも出てくる」

青年「ふがいない私のこの手で、この子を守り切ることが出来ない」

青年「だから…せめてマナが独り立ちできる時がくるまで、最も安全な場所へ逃す」

サキュバス「それが人間界だって言うの!?」


青年「このことは黙っていてもらおう」

サキュバス「…もらおうって…もー」

サキュバス「ま、あたしは今回の作戦で獲物をゲットしたらしばらく魔族領とはお別れだから」

サキュバス「べっつにいいんじゃない? 聞かなかったことにしてあげるー」

青年「すまない」

青年「行くぞマナ」

魔女「お兄様?」


狼魔人「おい、出撃すんぞ。飛行型に乗れ」

狼魔人「っとレヴァンよぉ、いま誰かとしゃべってなかったか?」

青年「いや。私しかいない」

狼魔人「次の作戦でどっちがより多くの人間を狩るか勝負しようぜぇ」

青年「あいにくだが、無用な血を流す気はない」

狼魔人「けっ、あめーやつ。人間なんざ狩ってなんぼだろうがよ」


狼魔人「オレやオーグ様が王になったら、人間食い放題にするんだがね」

青年「……」

狼魔人「オメェがいくら古くから続く血統でも、いまの世の中力がすべてだ。小賢しいこと考えてっとぶっ殺すからな」

青年「ならばいずれ貴様を従わせるほどの力を手に入れてみせよう」

狼魔人「おうやってみろ半端モン。そんときゃ這いつくばって靴でもなめてやるっての」

闇の呪術師「なにをしている」

闇の呪術師「おや剣士殿も一緒でしたか。私の部下が無礼を」

狼魔人「行きましょうぜ。いいかレヴァン、オメェを三魔人の座からひきずりおろすのは俺だ。覚えとけ」


魔女「お兄様」

サキュバス「しーー! この陣から出ちゃだめよ」

魔女「…」コク


青年「行ったか。出撃するぞ」

サキュバス「はいはい。どこまでも従うわよ、時期魔王の片腕様」

青年「片腕ではない。剣であり盾だ」


青年「私たち一族の命は魔王様のためだけにある」

サキュバス「そんなつまんない生き方やめときなってー」パシパシ

青年「貴様ほど単細胞ではないのでな」



サキュバス(そしてレヴァンはマナを手放した…)

サキュバス(そのマナが、奇しくも後のライバルの手にわたるなんて)

サキュバス(思いもしなかったでしょうね)

勇者「やったーソル勝ったー!!」

勇者「いえーい。これで準決勝だ!!」

女剣士「さすがだな…」

僧侶「まだおきちゃだめですよ」

女剣士「この大歓声で寝てろっていうのは無理だ」

実況「さぁこれで初戦は全試合終了!」

実況「準決勝進出者はこの4人だ!!」


①━┓              ┏━②
   ①━┓        ┏━②
⑤━┛  ┃   ☆    ┃  ┗━⑥
      ┣━━┻━━┫

③━┓  ┃        ┃  ┏━④
   ③━┛        ┗━④
⑦━┛              ┗━⑧

①勇者ユッカ
②傭兵ソル
③剣士レヴァン
④元王国騎士A


騎士A「順当に予選上位4人が勝ちあがりましたね」

実況「えぇ。しかし次からはわかりませんよ」

実況「準決勝第1試合、勇者ユッカvs剣士レヴァン!」

実況「観客のボルテージがあがってまいりました!!」

実況「両者、東西のゲートから割れんばかりの歓声あふれるフィールドへ!!」


勇者「……お前なんかにマナも聖剣も渡さない」

闇剣士「…貴様が真の勇者であるなら、武をもって私を制してみせろ!」

勇者「いくよ!!」



実況「試合開始!!」



第31話<因縁>つづく


 

更新終わり
次回日曜日予定


第31話<因縁>つづき




両者の戦いは熾烈を極めた。
ユッカの素早い反応からくりだされる猛撃をレヴァンはしのぎつつ反撃を加える。
しかしユッカはそれを軽い身のこなしで回避し、さらに追撃を加えた。

弾かれた斬撃が地面を切りつけ土煙をあげる。


勇者「はあああああっ!!」

闇剣士「…!」

まだお互いにまともなヒットは出ていない。
だがレヴァンはサマンサ戦にくらべると遥かに余裕がなさそうに受け身に回っていた。


傭兵「ユッカ。お前はいつの間にそこまで…」

スタンドから眺める目の前の光景に息を呑んだ。
ユッカは間違いなく稽古以上の実力を引き出している。
ごうごうと燃え盛る真っ赤な魔力を身にまとい、ユッカは鬼神のごとくフィールドを縦横無尽に駆けた。


実況「なんとも激しい攻撃!! ユッカ選手全く止まることなく、攻撃を繰り出し続けています!」

騎士A「すさまじいスタミナですね」

実況「さすがのレヴァン選手もこれには防戦一方か!」

騎士A「ときどき反撃を繰り出そうとしているんですが、予備モーションの段階でつぶされていますね」

騎士A「つまり攻撃のための魔力を練ることが非常に難しいというわけです」

騎士A「あのユッカという少女、反応速度が人間じゃないですよ」

実況「なるほど、しかし前試合でみせた大剣による魔力の吸引はどうなのでしょうか」

実況「あれほど近接して刃を交えていると、サマンサ選手の比でないほどに吸われてしまうのではないですか?」

騎士A「それは…」



傭兵「…」

魔法国王「まるで底なしの貯水槽だ」

傭兵「グリモワ王…」

魔法国王「こんなところで1人で見てないで、控室にいったらどうだい」


傭兵「この試合、てめぇはどうみる」

魔法国王「言うまでもない。勇者くんの圧勝だろう」

魔法国王「感じるかい…見ているだけで全身を焼きつくされそうな彼女の放つ熱気」

魔法国王「あれが覚醒した勇者のちからだよ」

魔法国王「まさに…天賦の才能だね」

傭兵「才能か…」

傭兵(資質を受け継がないグレイスが旅に出ることを許されなかった理由がわかる気がする)

傭兵(動きも魔力の扱いもなにもかも比較にならない…)

傭兵(圧倒的な戦いの才能…)

傭兵「あいつは誰かに学ばなくても、すべて本能で理解している…ということか」

魔法国王「そう。自らの力を余すこと無く全て、彼女は引き出すことができる」

魔法国王「ま。ぼくもだけどね」

魔法国王「惜しむらくは彼女は体が小さいことかな」


魔法国王「これでわかったろう。凡夫が世の中を動かす力など、持つことは許されない」

魔法国王「あの仮面の魔物は、試合の後で秘密裏にぼくが処分しておこう」

傭兵「…!」

傭兵「凡夫だと…あいつがか…」

魔法国王「なにか? 本当のことじゃないか」

魔法国王「天に選ばれた才を前に、半端な力しか持たない彼がこれ以上どう太刀打ちする」

傭兵「……」

魔法国王「なにか言いたげだが、これでよかったじゃないか」

魔法国王「このまま君たちふたりが決勝にすすめば、マナの支配権は必ずどちらかが手に入れることができる」

魔法国王「おめでとう、言っておくよ」

傭兵「あ、あぁ…」


傭兵(確かに状況的に見てユッカの優位は揺るがない)

傭兵(あれほどの猛攻をいつまでも紙一重でガードできるわけもない)

傭兵(だがなんだ、この釈然としない気持ちは)

傭兵(俺は奴と戦いたがっているのか…?)ギリ

傭兵(それともユッカの力に嫉妬を…?)

傭兵「まさかな…」

傭兵「ユッカ!! たたみかけろ!!!」


勇者「はあああああっ!!」

闇剣士「…ッ!!」


実況「血しぶきが徐々にフィールドを赤く染めていきます!」

騎士A「ユッカ選手の攻撃を完璧には防ぎきれなくなってますね」

実況「レヴァン選手ついにスタミナ切れか!?」



僧侶「ユッカ様ーー!!」

サキュバス「レヴァン…なんでずっと受けてばっかりなのよ」

サキュバス「もっと反撃しなさいよ! やられちゃうわよ!!」


勇者「はあああっ! これでえ!!」

闇剣士「…!」

勇者「終わりだ!!」

▼勇者は激しく切りつけた。


ピキ…


勇者「え…」

闇剣士「ここまでよくやったが、根比べは私の勝ちだ」

闇剣士「次はより優秀な武器を手に取るといい」

勇者「う…そ…」

勇者「ボクの剣が…ッ」

闇剣士「はぁ!」

▼勇者の剣は砕け散った。



魔法国王「なに!」

傭兵「ユッカ!!」


実況「あぁっと! これはどうしたことか」

実況「さきに悲鳴をあげたのはユッカ選手の剣でした」

騎士A「ゴーレム戦の消耗に加え、あの激しい攻撃。無理もないですね」

騎士A「むしろここまでよくもったとおもいます」

実況「ユッカ選手、攻撃の手をとめて呆然としています」


勇者「……ぁ、ぁ」

闇剣士「私にこれほどの手傷を負わせたのは貴様がひさしぶりだ」ゆらり

勇者「そんな…ボクの剣…」


傭兵「逃げろユッカ!」

勇者「!!」

闇剣士「ここで貴様を仕留め、後顧の憂いを断っておく!!」


勇者「剣がなくったって!!」

勇者「ファイアボール!!」

▼勇者は炎の弾丸を放った。

闇剣士「魔法は効かん!」

勇者「そ、そうだった…」

勇者「だったら素手ででもー!」


ドゴッ

▼闇の魔剣士は大剣をおおきく振り払い、勇者の腹部を殴りつけた。

勇者「きゅう~~!?」



僧侶「あ…。あー…」

女剣士「あれは痛いな」

サキュバス「ちょっとレヴァン! いちおうあたしの保険なんだから殺しちゃだめよ!」



観客「いいぞ仮面野郎! 外道なメスガキに報復しちまえ!!」

観客「犯せ! 犯せー!」

観客「半裸漢の仇をとってくれー!!」

観客「悪魔に制裁を!!」


勇者「…う…ぅ」よろり

闇剣士「降参はしないというのか」

勇者「だれが諦めるもんか…マナを取り返すんだ!」

闇剣士「…」

闇剣士(あるいは、貴様と共にいればマナは幸せなのだろうな)

勇者「ボクは負けない!!!」

闇剣士(許せ)


実況「あーっと、これはひどいタコ殴りだ」

実況「ユッカ選手、おきあがっては殴り飛ばされて吹き飛んでいきます」

実況「体勢を立て直す間もなく、完全にレヴァン選手のペースになってしまいました」



傭兵「ユッカーーー!!」

傭兵「やめさせろ!!」

魔法国王「降参しないのは勇者くんの意思じゃないか」

魔法国王「きっと反撃の機会をうかがっているんだろう」

傭兵「んなわけあるか!」

傭兵「死んでしまうぞ」

魔法国王「…はぁ、まったく。ぼくの誤算だったよ」

魔法国王「彼女の能力に武具がついていけないなんてね」



勇者「…ぅ、あぅ」

闇剣士「まだ立ち上がるか」

勇者「はぁ…はぁ、マナを」

闇剣士「次は平打ちではすまんぞ」

闇剣士「私はいつでも刃で貴様を両断することができる」

闇剣士(なぜためらう必要がある。この娘はいまや私にとって最大の脅威であるというのに)

勇者「……」



勇者「…」よろっ

勇者「マナ…」

勇者(ごめんね…ボク、負けちゃったよ…)

勇者「悔し…――」

どさりっ


審判「×」

実況「試合終了!! ユッカ選手前半の猛攻実らず! しのぎきったレヴァン選手が最後は見事逆転勝利をおさめました!」

実況「決勝進出です!!」

騎士A「見どころのある試合でした」



傭兵「ユッカ!!」

勇者「ごめ…ん、ね…」

傭兵「しゃべるな」

僧侶「いま治療します…ぐすっ。ユッカ様ぁっぁぁ」



サキュバス「おつかれ。でもさ」

サキュバス「あそこまですることなかったんじゃないの」

闇剣士「…」

サキュバス「聞いてるの?」

闇剣士「折れなかった」

サキュバス「ポッキリ砕け散ったじゃん」

闇剣士「奴の心のことだ。私ごときでは、勇者の真の強さには届かないということか」

闇剣士「惨めだ…武道とは程遠い、あまりに惨めな戦いを見せた」

サキュバス「…届いてたよ」ギュ

闇剣士「…」

サキュバス(マナを想う気持ちであんたが少しだけ勝った。お兄ちゃんだもんね…)

サキュバス(どんな泥臭くても、こんなに血みどろになってでも、確実に勝ちたかった…そうでしょ?)

サキュバス(こんなの、いつもスカしてクールなあんたのやることじゃないよ…)

闇剣士「サキュ…」

サキュバス「よし、傷の手当してあげる! こっち来なさい」



僧侶「ソル様、試合の時間が迫ってます。行ってください」

傭兵「…あぁ。大丈夫だユッカ。マナは俺が取り返す。お前は休んでいろ」

勇者「…うん」

傭兵「よくがんばったな。強くなった」なでなで

勇者「…えへへ。ソルのおかげだよ」

傭兵「俺の? いや、これはお前の才能が飛び抜けているから」

勇者「ううん…ずっとソルがボクに教えてくれたから」

勇者「ずっとちっちゃいころから……あれ…ボクなに言ってんだろ…」

勇者「あたま…いたい」

勇者「ごめんね、ちょっと…つかれちゃって眠たいんだ……zzz」

傭兵「……」なでなで


 
   ・   ・   ・


実況「ソル選手! 元・騎士級を2者連続で圧倒です!!」

実況「この男は一体何ものなんだ!?」

傭兵「…」ジャキ



実況「さぁこれで準決勝戦が終了!」

実況「はれて決勝へと進むのはこの2人だ!!」


①━┓              ┏━②
   ①━┓        ┏━②
⑤━┛  ┃   ☆    ┃  ┗━⑥
      ③━━┻━━②

③━┓  ┃        ┃  ┏━④
   ③━┛        ┗━④
⑦━┛              ┗━⑧

②傭兵ソル
③剣士レヴァン


騎士A「波乱はありましたが、順当とも言えますね」

騎士A「しかし私の同僚があっけなくやられるとは」

実況「はい、まるでお伝えするところがありませんでした」

騎士A「…」

実況「運命の決勝戦は午後5時から開始します」

実況「観客はみなさんはお手洗いや休憩をすませておいてください」


【控室】


サキュバス「レーヴァンッ♪ 売店でお弁当かってきたけど食べる?」

サキュバス「あれ…」

闇剣士「……」

サキュバス「ねー、ねーってば聞いてる?」

サキュバス「…おやおや? まさかこの仮面の下は」パカッ

闇剣士「――」

サキュバス「わぁお。ぐっすり寝てる…珍しー」

サキュバス「あんたといえど、さすがに疲れちゃったのかぁ」

サキュバス「くすくす。なんか描いちゃおうかなー」

サキュバス「…」

サキュバス「…この仮面…ボロボロね」

サキュバス「あんたも澄ました顔して苦労してきたのね」つんつん

闇剣士「…ぐ」

サキュバス(やばっ、起こしちゃう…退散退散♪)




  ・    ・    ・



マナを手放して幾年かが経った。
私はたびたび政務を放り出して、魔族領を抜けだし、彼女を放した太陽の国を内密に訪れていた。



青年(マナ、いまどうしている)

青年(マナ…お前の無事な姿がひと目でもいいから見たい)

青年(誰かに拾われたのか…自らの力で生きているのか)

青年(…監禁されてはいないだろうか)

青年(私の選択は正しかったのだろうか)



傭兵「よぉ、そこのあぶねー気配ビンビンの野郎」

傭兵「てめぇ…なにもんだ」

青年「……」

傭兵「わりぃがここから先は太陽の国。俺たちは国境守備隊だ」

青年「……そうか」


兵士「およそ2年前、我が国は魔物の大軍の襲撃をうけてこのように国境を固めることになった」

兵士「不審者はお引取り願おう。入国は正規の手続きを踏むといい」

傭兵「つーわけだ。はい、回れ右」

青年「私は…正面からこの国に入ることはできない」

青年(マナ、どこにいる。情報を得なくては…)

傭兵「なに」

青年「…私は」

闇剣士「魔族だからだ」ズズッ

闇剣士「邪魔立てをするな!」

傭兵「ッ全員戦闘態勢!」

兵士「はっ!」

傭兵「…なんて殺気だ。こんなドス黒い殺意ひさしぶりだぜ」

闇剣士「通してもらおう」

傭兵「バカ言え。なんの用があって魔物がこんな田舎くんだりまで来やがる」

兵士「勇者様は私達が護る!」ジャキン



傭兵「かかってきやがれ!!」

闇剣士「…参る!!」ジャキ


私はその日、1人の戦士に出会った。
奴とは数年に渡り、幾度も衝突し、しのぎを削った。
体は傷だらけになった。
同じ魔族から正体を隠すためにつけていた仮面には、いつのまにか巨大な傷跡ができていた。

だがそこまでしても、ついに私は太陽の国の地を踏むこと無く、マナの行方もつかめずに―――



【とある渓谷】


傭兵「――――とどめだ!! あああっ!!」

闇剣士「――…ッ! がはっ」


太陽の騎士A「やったぞソル! 谷底へ真っ逆さまだ」

太陽の騎士B「これで仲間の仇をうてた…」

傭兵「あばよ仮面野郎…」

太陽の騎士A「とりあえず勇者様が旅立つ前の不安の種を一つ解消することができたな」

傭兵「あぁ……これで終わってりゃな」




 
    ・   ・   ・



闇剣士(マナ……どこにいる…)


神か悪魔のしわざか。それとも野望への執心か。
深手を負いながらも私は一命を取り留めた。



また数年が経ち、

次に奴と邂逅した時、私の求めていた少女の姿が側にあった。




【商業の街バザ・広場上空】


闇剣士(マナ…そこにいるのか)

傭兵「闇の魔剣士…! 生きていたのか」

闇剣士「久々の再開だな」

傭兵「なぜだ。お前は俺たちが葬ったはず」

闇剣士「つくづく詰めの甘い男だ」

勇者「し、知り合い…? って雰囲気じゃなさそうだね…」

魔女「誰」

闇剣士(そうか。まだ施した封印は解けていないか。己が誰かもわからないのだろう)

闇剣士(お前の目からまるで邪な気を感じない。1人の人間としてまっとうに育てられたか…)

闇剣士(ならばマナ。お前はもはや私の妹ではない)

闇剣士(成熟した魔王様の器として、その生命、我が野望のために正しく使わせてもらう)

闇剣士「……」

闇剣士「お初にお目にかかります」

闇剣士「私は闇の魔剣士。先祖代々魔王様に仕える剣」

闇剣士「以後お見しりおきを」



   ・   ・   ・



【控室】


闇剣士「……」

サキュバス「あ、起きた? まだ少しだけ試合まで時間あるわよ」

闇剣士「なぜここにいる」

サキュバス「なぜって…側にいちゃダメ?」

サキュバス「お腹すいてない? なにがあるかわからないんだから、コンディションばっちりで挑まないとだめよ」

サキュバス「あいてはあいつなんだから」

サキュバス「はい、あーん」

闇剣士「…」

サキュバス「は? 食べなさいよ。あーんは?」

闇剣士「私を何歳だとおもっている」

サキュバス「えっと…もうっ、いいじゃない。肉体の年齢はともかく、あたしと魂齢はそんなかわんないでしょ」

サキュバス「あんたのこと…ず~っと昔からしってるけど」

サキュバス「思ったより、いい男じゃん♪」

闇剣士「…」

サキュバス「あれれー、試合前の元気づけは、ご飯じゃなくてエッチがよかった? くすくす」

闇剣士「貴様。いいかげんに…おいっ傷の上に乗るな」

サキュバス「うふふ。いただきま~す♥」




第31話<因縁>おわり

 

更新終わり
次回32話 明日22時~




第32話<目醒め>


【大闘技場】

<午後5時>



勇者「……はじまる」ゴクゴク

僧侶「ソル様…」もぐもぐ

勇者「ついに…ソルとあいつの決戦なんだよね」ゴクゴク

僧侶「え、ええ……ゴクッ」もぐもぐ

女剣士「…あなたたちを見てると、いまいち緊張感がわかないな」

勇者「サマンサさんも食べるならいまのうちだよ!」

女剣士「えぇ!?」

勇者「…きっと、試合がはじまると目を離す暇もないから…」

サキュバス「そうねぇ。あたしももらっとこ」ひょいっ もぐもぐ

僧侶「あっ」

女剣士「それよりユッカ、傷は大丈夫?」

勇者「うん。まだすこし頭がくらくらするけど、怪我は平気」



実況「さぁいよいよ決戦の時がやってきました」

実況「引き続き解説席にはグリモワ騎士団のエース騎士様にお越しいただいています」

騎士A「よろしくお願いします」

実況「いやぁついにですね」

騎士A「好カードですね。気分が高揚してきました」

実況「しかし前試合で剣士レヴァン選手にはユッカ選手相手に相当なダメージが残っていると思いますが」

騎士A「えぇその点を鑑みると、ほとんど負傷なく2試合を突破してきたソル選手のほうが優位です」

実況「なんにせよ見ものですね」

騎士A「彼らが私の仲間となり、陛下を共に護ってくれるならどれだけ頼もしいことでしょうか」

実況「しかし聖剣は1本! 勝者は1人!」

実況「東西のゲートが開かれ、いま入場です!」


勇者「きた!」

僧侶「ソルさまーーー!」



審判「両者、礼。構え」

傭兵「……」

闇剣士「……」


実況「両者向かいあって…いま、世紀の決勝戦!」

実況「試合開始ぃーーー!!ああああっと!!」

実況「どうしたことか両者剣を足元に突き刺してしまった!!」

実況「そしてなんと…降参! 降参の合図です!!」

騎士A「これは…一体どういうことでしょうね」

実況「なぜ戦意をみせない!!」


 ざわざわ

観客A「なにやってんだあいつら…」

観客B「あれだよ、どっちも聖剣じゃなくて2位ねらいの少女性愛者なんだろ」

観客A「うえーまじかよ…しかも相手は魔物だぜ…けしからんな」

観客C「おい戦えよ! なんのためにチケットとったと思ってんだ!!」

実況「場内から激しいブーイングが沸き起こります…」


勇者「…やっぱり、あいつも降参しちゃったね」

女剣士「レヴァンさんもマナが目的なの? どうして…」

僧侶「自らマナちゃんを助けだしたいのでしょうか…」

サキュバス(やっぱりさ、そう簡単には行かないわよねぇ)



傭兵「いまてめぇは何を考えてる」

闇剣士「…貴様と同じだ」

傭兵「仲間でもないてめぇがそこまでマナに執着する意味は何だ?」

闇剣士「仲間か…たしかに私はマナの仲間でも親友でも、恋人でもない」

傭兵「てめぇほどの野郎がなりふり構わず武道を捨ててまでこんなことを……もはやただの同族のよしみとも思えねぇな」


実況「聞き取れませんがなにやら話し合いをしています」

実況「このまま話し合いで勝者をきめてしまうのでしょうか!」


闇剣士「……」

傭兵(この反応。まさか、ローレや陰気呪術師の言っていた…)

傭兵「……ッ…"器"ってやつか!」

闇剣士「…気付いていたか」

傭兵「バカでもここまで露骨にされると薄々はな。もう隠す必要もないってことかよ!」

傭兵「だが、だとしたら俺はてめぇを許せない」

闇剣士「許しを請うた覚えはない」

傭兵「マナを利用しようっていうんだろうが! 俺の怒りに触れるには十分だ!!」

闇剣士「あぁ。私は野心のためならもはや恥も外聞も無い」

傭兵「…子供だぞッ!」

闇剣士「誰のおかげとはいわんが、いまや立派な大人だ。大きくなった」

傭兵「器となってしまったら、マナは…どうなる」

闇剣士「……少女の魂は上書きされて、消えてなくなる……ッ失われるのだ!」

傭兵「……!」


勇者「なに…? 2人はなにを口論してるの」

僧侶「ソル様…」


傭兵「させるかよ…」

闇剣士「私とて、貴様に邪魔立てはさせん」

闇剣士「ここまで、長い…………時を待ったのだ!!」

傭兵「……ッ」

闇剣士「ソル。貴様との戯れも今日で終わりだ!!」ガコン

傭兵「レヴァン!!!」ジャキン


魔法国王「そう、ぼくたちが見たいのはその闘志さ」

実況「へ、陛下。なぜこちらに」

魔法国王「席をかわりたまえ」

実況「はいっ」

魔法国王「あー、ゴホン」

魔法国王「聞こえているかい。きみたちは報酬と引き換えに、よりよい死合をここのみなに見せる義務がある」

魔法国王「ぼくは無償で賞品を提供しているわけではない。これは興行なんだよ」

魔法国王「憎しみ、殺し合え。大会の規程はかわった」

魔法国王「生き残った勝者のみが、聖剣とマナの支配権両方を手に入れることができる!」


観客「うおおおおお!! やっちまええええ!!」 

実況「陛下のお言葉により場内はヒートアップ! やはり戦うことでしか勝負はつきません!!」

実況「それが戦士の宿命なのでしょう!!」


勇者「…戦うしかないんだね」

サキュバス「運命よ」

僧侶「ソル様…負けないで」

勇者(信じてるよ…ボクに代わってマナをお願い)


傭兵「…マナは俺の仲間だ」

闇剣士「来い」


周囲360度からの地鳴りのような大歓声。
戦いが避けられないだろうことは予期していた。
こいつやグリモワ王を相手にそう簡単に事が運ぶわけがない。

審判の試合再開の合図も聞かず、俺達は瞬く間に刃を交えた。


重撃が腕に伝わる。
このびりびりとした、血沸き立つ興奮にも似た感情。

傭兵(間違いない、お前は俺の生涯の好敵手)

闇剣士(ソル…! 貴様は私のッ!!!)


長年しのぎを削り、殺しあうことでお互い高め合い、数多の血を流してきた。


横薙ぎに襲い来る大剣をこするようにうけとめる。
重い金属音が響いて激しい火花が散る。

奴は次々と攻撃を繰りだし、俺もそれを受けつつ隙を突いて対抗した。


時間にしてはわずか一瞬でしかない一進一退の攻防が、無限に引き伸ばされていくような感覚。


傭兵(レヴァン…)

この満たされていく気持ちは何だ。

今俺たちは、なんのために戦っている。マナか、世界の未来か、己の命か。

何もわからない。ただあの時から変わらずやることは同じ、目の前の敵を全力で倒すだけだ。

それだけでいい。何も考えなくていい。
俺達は、生まれながらに戦士だからだ。



実況「……」

騎士A「……はっ、実況は」

実況「! も、もうしわけありません、つい…いえしかしですね」

実況(こんな戦い、どうやって実況したらいいんだ…)

観客「……ゴクリ」


勇者「いま一発入った」

僧侶「嘘!? どっちにですか」

勇者「ソルに…たぶん今のでどこか負傷したとおもう…」

勇者「でもソルも着実にあいつにダメージを与えてる」

女剣士「ユッカ目で追えるのか?」

勇者「うん…あいつの魔力の流れもたどってなんとかね」

勇者「ソルはすごいや…剣士としての経験値がボクとは比べ物にならないよ」

女剣士「決勝がこんな静かな戦いになるなんて…」

勇者「……ゴクッ」

勇者(どうして…ボクはあそこにいないんだッ! ソル…ッ! がんばって!!)




闇剣士「…ぬ」

傭兵「…クッ」

一時お互いに距離を取った。

会場はしんと静まりかえっている。
この場にいる全ての人間が、俺達の戦いを片時も目を離すことなく静観していた。
野次や拍手ひとつ聞こえてこない。
心臓の鼓動だけが体を伝わってクリアに聞こえた。


闇剣士「私は…バザで貴様が弱くなったと謗ったが、今この話で訂正しておく」

闇剣士「ソル。貴様、どこまで強くなる気だ」

傭兵「こっちのセリフだぜ。てめぇを谷に突き落としてかれこれ数年…」

傭兵「剣の道を極めて魔王にでもなる気かよ…」

闇剣士「魔王になるのは私ではない」

傭兵「そりゃ残念だな! てめぇが魔王なら遠慮なくぶっ殺せるんだがよ!!」

闇剣士「魔王になるのは彼女だ!!」

傭兵「マナだけは譲れねぇんだよ!!」

闇剣士「私とて、貴様にマナを奪われるわけにはいかんのだ!」


影が交錯する。
遅れて聞こえてくる金属のぶつかりあう重音。
瞬く間にお互いの血飛沫が飛びちって、赤黒く大地を染めていく。


鋭い痛みが全身を走った。

傭兵(なぜだ…追いつけない)

傭兵(レヴァンッ)


実況「これは…どちらの血が飛び散っているのでしょうか」

騎士A「2人ともダメージは相当なものです。レヴァン選手は前試合の傷もふさがっていませんからね」

騎士A「ですが…」

魔法国王「魔力の差でソルのほうが不利か。それでもよく対抗できているけどね」


ギィンッ

傭兵「かはっ…―――」

実況「ああっとここでソル選手、ついに剣を手放して天を仰いだ!!」

闇剣士「…がはっ…ッ、一閃!!」

▼闇の魔剣士は勢いよく薙ぎ払った。

傭兵「が、ああああああっ!!!」


勇者「!! ああああっ!!」

僧侶「ソル様ああああああああっ!!」

女剣士「あああ…そんな」

勇者「魔力の差だ…」

サキュバス(……)

勇者「ボクのせいだ…」

勇者「こんなことになる前に、試合前にソルに魔力を貸すべきだったんだ」

勇者「なのにボクが自分のちからに自惚れて…勝手にあいつと戦いつづけたせいで……」

勇者「ううっ、ごめんソルっ! いまいくよ!!」

女剣士「だめだユッカ。客席とフィールドとの間に魔法障壁がある」

勇者「うぎゅっ、痛っ」バチバチ

勇者「じゃあ1階から回りこむ! 行くよヒーラ」

僧侶「は、はいっ!」



傭兵「――」


なんだ…この血の量は…。
血…俺のかよ。

全身が痺れて言うことを聞かねぇ…。


傭兵「がは…」

傭兵「れ、れ…ヴァ」

闇剣士「…渓谷での借りは返したぞ」

闇剣士「ソル、貴様と最後に差がでた」


霞む視界に映るレヴァンは、一瞬スタンドの方向を顧みた。

傭兵(……そう…か…淫魔にちからをかりたのか…)

傭兵(そこまでするとは…お前)

傭兵(マナを…そこまで…――)


ゆらりと目の前で大剣が振りかざされる。


―ギィン!


闇剣士「…」

勇者「フーッ!フーッ! やらせるもんか…ッ!」

闇剣士「邪魔を」

傭兵(ユッカ……――)


勇者「ソルはボクが護る!」

勇者「これ以上手は出させない!!」

僧侶「…!」キッ

闇剣士「…ならばいい」ガキン


実況「ああっと決着がついたかに見えたが、おもわぬ乱入者です」

騎士A「……しかし、これでよいのでしょう」

観客A「…よかった。あの赤髪死なずに済んだぜ」

観客B「あ、ああ…あんないい試合するやつ、また来年もみたいもんな」

観客C「もしかしたら騎士団の次世代エースになるかもしれねぇぜ!」


審判「×」

実況「ここでソル選手戦闘不能を確認! 試合終了!!!」

実況「栄えある聖剣争奪杯優勝者は、仮面の剣士レヴァン選手となりました!!」


魔法国王「……ふぅ」

魔法国王「ま、こうなる予感はしてたけどね…クク、ククク、はははは」


実況「戦いぬいた両者に地鳴りのような歓声と大喝采が鳴り響きます!!」

実況「レヴァン選手本当に優勝おめでとうございます!!」


闇剣士「…マナ」

サキュバス(…やるじゃん)ヒラヒラ

闇剣士(サキュ、貴様には手を焼かせたな。助かった)


実況「それではしばし休憩の後、授賞式と閉会式にプログラムを移行します」

騎士A「陛下。ご準備をおねがいします」

魔法国王「あぁ。アレと聖剣をもってこなきゃねぇ」



勇者「うわあああああん、あああああっ」

僧侶「ソル様ぁ…マナちゃん…」

傭兵(負けた……俺は…負けた、のか…)

傭兵(マ、ナ…すまない――――お前を助け―――)



第32話<目醒め>つづく



 
 

更新終わり
次回明日22時~

第32話<目醒め>つづき



実況「フィールドでは授賞式が執り行われております」

実況「賞品の魔物を封じた檻が騎士団の手によって運びこまれました!」

観客A「ほんきでアレが賞品かよ…」

観客B「かー俺もほしかったなぁ。あの白い肌にイタズラしてぇ」



魔法国王「まずは、優勝おめでとうといっておこうか」

闇剣士「…」

魔法国王「きみには新しい大会規程の通り、1位と2位の賞品を2つ共にあたえよう」

魔法国王「準優勝でありながら何も手に入らない彼はいささか不憫だが、元はと言えばきみたちのせいだ」


傭兵「――」

勇者「ソルっ、おきてっ! ううう…」

僧侶「マナちゃんが奪われちゃいます…私たちどうしたら!」



闇剣士「さきに檻の魔法障壁を解除してもらおう」

魔法国王「あぁ、そうだね」パチン

魔法国王「外に出してやれ」

騎士B「はっ」

魔女「……命令を…――」


勇者「マナっ! マナ!!」

衛兵「敗者が賞品に近づくことは許さん」

勇者「くぅ…」


魔法国王「さぁこの鍵で魔物の少女の首輪をはずしてやるといい、それでぼくの施した洗脳術は解ける」

魔法国王「そしてきみが魔力をこめて、もう一度首輪をつけ直す」

魔法国王「すると彼女はきみの思うがままさ。うけとれ」ピンッ

闇剣士「…」パシ


魔法国王「そして…優勝賞品の聖剣だ!! おおい、持ってきたまえ」

騎士C「こちらの包みの中に」

魔法国王「どうだいこの細部までこだわられた美匠、まばゆいほどに輝く直刃」ジャキン

魔法国王「遥か遠方にある太陽の国の王家の紋章が刻んであるまごうことなき本物さ」

魔法国王「武器としての性能だけじゃなく、コレクションとしても一級品だ」

闇剣士「これが…」

闇剣士(我が主を闇へと葬った忌まわしき聖剣か)

魔法国王「今この瞬間からきみの物だ」


魔法国王(ククク…さぁ触れるがいい。魔物である貴様が、聖剣の秘めた聖力に耐えられるかな?)

魔法国王(いまはぼくが押さえつけてあるが、ぼくの手を離れた瞬間に聖力は解放される)

魔法国王(掴んだ指先から貴様は弾け飛び、跡形もなく消え去る…のさ)

魔法国王(残念だったね。魔物ごときがこれを手に入れることは、決して叶わないんだよ)

魔法国王(もちろんマナもね…ククク)

魔法国王(全てはぼくのシナリオ通り…)

魔法国王(災厄を管理するのは、貴様ら魔物ではなく…ぼくなのさ!!)

闇剣士「……」


勇者「聖剣までとられちゃうなんて……くそっ、くそ!!」


魔法国王「おめでとう。きみが誰であれぼくは強者に対してわけ隔てはない。人のできた国王だからね」

魔法国王「さあ、その手で優勝賞品をつかみ取り給え!」

魔法国王「きみが…グリモワ…いや、世界最強の剣士だ!!」

魔法国王(握れ…低俗な魔物め)

闇剣士「…」ガシッ 

魔法国王(やった…!弾け飛―――)


▼闇の魔剣士は聖剣で魔法国王を切りつけた。


魔法国王「べ――……?」

闇剣士「私にとっては少々切れ味のよいただの剣でしかないな」

魔法国王「なっ…――ぜ――」

闇剣士「だが、目の前の邪悪を斬るには十分な働きをした」



魔法国王(ぼくは…あれ…斬られた?? なぜお前は弾け飛ばない?)

魔法国王(わからない…聖力はどうした…間違いなく発動している…)

闇剣士「…」

バチッ バチチッ…

闇剣士「この体も捨てたものではないな」

魔法国王「がふっ、がはっ…」

魔法国王(そうか…才能なき貴様は…半魔だったか…)



実況「えっと…目の前の状況は幻でしょうか…」

実況「陛下が血をながして…倒れ…――?」

観客A「うわあああああああっ!」

観客B「陛下が斬られたぞ!!!」

勇者「!!」

傭兵「ぅ……く」

勇者「ソルっ!」

傭兵「ユッ…カ…ここから、離れる準備を…しろ…」


騎士A「陛下!!」

騎士B「貴様ァ!!」

闇剣士「それでも我が手には馴染まんか!!!」

▼闇の魔剣士は聖剣を放り投げて騎士Aの胸元に突き刺した。

騎士A「がはっ」

▼闇の魔剣士は大剣で騎士B騎士Cを斬り伏せた。

騎士B「がぁっ!?」

騎士C「ぐお!」

闇剣士「…邪魔者は全て排除した」

コツコツ


闇剣士「……マナ」

魔女「マスター…命令を…――」

闇剣士「お前を解き放ってやろう」カチャカチャ 

カチャン…


魔法国王「よ…よせ…グフッ…それに触るな」


魔女「…う、あ…」フルフル

魔女「あなたは…。ユッカは…? ソル…ヒーラ…」

闇剣士「……使命を思いだせ」

魔女「わた、し…――使、命…」

魔女(なに…?)

闇剣士「記憶の封印の檻を破り、目醒めよ」

▼闇の魔剣士はマナの額に触れて魔力を注ぎ込んだ。

魔女「う、あああっああああああ!!」

勇者「マナ!!!」


魔女「あ、ああ…あ゙っ」

魔女「…わ、わたし――は……器の巫女」

闇剣士「そうです。我が身の肉親でありながら、あなた様は誉れ高き、魔王様の器」

魔女「……! 頭が、いっ、痛…ああッ」

闇剣士「マナ…」

闇剣士「恐れることはない。解放せよ!!」

魔女「!!!! あああああああああっ」

魔女(私は…わたしは…ッ…助けて)


マナの体から真っ黒な闇の炎が吹き出し、天に立ち昇った。


魔法国王「まずい…まずいぞ」

勇者「なに…この真っ黒な魔力」

僧侶「これがマナちゃんから…?」

傭兵「ユッカ、ヒーラちゃん…逃げろ」

勇者「なにをいってるのマナを取り戻さなきゃ!」

傭兵「…ぐ、あ…いますぐ逃げろッ!」


闇剣士「マナ、ここから脱出する。私の命令が聞けるな?」

魔女「……わかった」

魔女「…障害は取り除く」

勇者「…!」

傭兵「やっ…やめろぉぉおーーーーー!!」

魔女「災厄:生命吸収【マナドレイン】」

▼魔女は腕をふりあげた。

▼魔女の手のひらから暗黒の渦が現れた。

▼渦は周囲のあらゆる魔力を飲み込み奪い尽くしていく。


勇者「こ、これ…うぐあああっ、魔力がッ」

僧侶「いやああああっ、なんですかこれは!」

傭兵「くそっ…止められなかった」


実況「いったいどうなっているのでしょう! 陛下のご容態は!?」

実況「騎士様おきあがってください!!」

観客A「なんだあの黒い渦……う、何故か気分悪くなってきた」

観客B「お、おい…俺たちの目の前の空間が歪んでいるような…なんだこりゃ」

女剣士「…これは…ヒビ!? みんな逃げろ!! 客席を護る魔法障壁が壊れる!!」


僧侶「聖守護結界! 私達を護って!」

僧侶「ユッカ様、私の後ろに!! ここは危険すぎます!!」

僧侶「みなさんもいますぐこの闘技場から退避を!! 」

取り巻きの男達「アネさーん! そっちは大丈夫ですかい」

僧侶「あなたたちは客席のお客さん達を逃してください!! 急いで!! そこはもう持ちません!」

取り巻きの男達「了解しました!!」

僧侶「こ、こんなことって…」

勇者「マナ…やめてよ…そんなことしちゃだめ…みんな死んじゃうよ…」

勇者「やめ…てよ」

僧侶(ユッカ様とソル様は私が守らないと!!)


魔法国王「っ…せ、聖剣を…」

魔法国王「勇者くん…きみがつかえ…そこの悪魔を斬り殺せ!!」

勇者「王様!!?」

魔法国王「倒れた騎士にささっている。さぁ急げッ、このままでは死者数万人じゃすまないぞ」

勇者「…くっ」

客席ではつぎつぎに人がたおれていった。
あの渦に魔力という生命の源を吸われて…。
ボクはヒーラの結界を抜けだしてフィールドを走った。

その間も魔力はすさまじい速度で吸われていく。
この距離がありながらも、普段マナに抱きついた時とは比べ物にならない吸収力だ。

勇者(こんなの、普通の人だと一瞬で吸われつくして即死だ!!)

勇者(これが王様の言っていた災厄…)

勇者「…借ります」

騎士の男の人にささった剣を引き抜いた。
胸を貫かれ、魔力を吸われ続けた彼はもう息をしていなかった。

聖剣がボクの手の中で輝きを放つ。
力尽きかけていたボクの体は炎に包まれて、マナドレインの脅威から護られた。

勇者「すごい…これが聖剣」


マナは表情一つかえることなく吸い続ける。
どんどんと魔力がふくれあがっていく。

勇者(…羽?)

一瞬、マナの背後に黒い翼のようなものが見えた気がした。


勇者「マナ! もうやめるんだ! 渦を閉じて!!」

魔女「……ユッカ」

勇者「ボクのことがわかるんだね! だったらどうしてそんなことをするの」

魔女「ごめんなさい。でも、これが私の使命だから」

勇者「何を言ってるのかわからない…わからないよ」

魔女「魔力がたくさん必要…私は、器の巫女だから」

勇者「そんなの知らない!」

魔女「あなたと一緒…わたし、うまれながらにそうあるだけ。あなたもうまれながらにしての勇者」

勇者「なにを…言ってるんだよ」


闇剣士「これくらいで十分だろう」

魔女「……」コク

闇剣士「マナ、準備は出来たか」

魔女「うん。いつでもいい」

闇剣士「帰るぞ」

闇剣士「サキュ。貴様はどうする」

サキュバス「……あなたについて行くわ」

闇剣士「ならば来い。貴様の力もこの先必要になるかもしれん」

僧侶「サキュさん…!!」

勇者「サキュ!!!」

サキュバス(じゃあね…せいぜい生き延びるのよ)

サキュバス(ばいばいユッカ…ばいばい…)


マナは魔剣士の手を引いて、大きな黒い翼で羽ばたいた。


勇者「やだ…行かないで…行っちゃだめ!!」

傭兵「…ッ」

魔女「…みんなさようなら」バサッ バサッ

魔法国王「グ…魔物どもめ。だが…無駄だよ…ぼくらは先祖代々、この国を半球状に囲うようにグリモワプリズンを施してある」

魔法国王「そんな場所から貴様たちが脱出することなど不可能なのさ…ッ」


魔女「術式:ダークブラスター」

▼魔女は闇の波動を放った。

▼放たれた闇の波動は、上空で見えない壁にぶつかり拡散していく。

魔法国王「は、はははっ、不可能だと言ったろ…! どんな攻撃をも通すことはない」

魔女「……。災厄:マナドレイン」ズズッ

▼魔女の手のひらから闇の渦が現れた。


魔法国王「1000年の時をかけて増強されてきた世界一堅牢な魔法障壁だぞ」

魔法国王「災厄として覚醒しきっていないきみひとりの力で吸えるはずが…」


 ピシッ

魔法国王「あ……」



みんなが天を見上げる中、とても静かに、夜空に巨大な亀裂が走った。
そしてその直後、まるで巨大なガラスの欠片がばらまかれるように、世界一堅牢で巨大な結界はあっけなく崩壊した。

砕け散った魔法障壁の輝きが空を満たす。
しかしそれらはすべて、暗黒の渦にむかって吸い寄せられていった。


観客A「な、なんだあれ…」

観客B「空が…割れてる?」

観客C「うそ…だろ…」

魔法国王「……終焉…だというのか」



マナは吸い続ける。
渦は消えること無くすべての魔力を飲み込んでいく。


勇者「もう…やめて…」

勇者(命の輝きが消えていく…)

そしてゾワリとした悪寒がボクをおそった。
それと同時に街中にたくさんの激しいサイレンが鳴り響いた。

勇者「!」

騎士D「陛下、大変です!! グリモワプリズンの消失とともに、魔物の群れがあらゆる方角から国土へと侵軍を開始しました!!」

騎士D「街ではすでに住民に被害が…」

騎士D「へ、陛下…このお姿はッ!? いかがなさいましたか!」

魔法国王「ぐ…がは、ぼくは大丈夫だ。万民へ知らせよ、至急武器を手に取り立ち向かえ」

魔法国王「魔物の侵入など…がはっ、許せるものか!」

魔法国王「あいつめぇぇ…この時をまっていたのか」ギロッ


闇剣士(オーグの派遣した後発隊が壁外に控えていたか)

闇剣士(これで街は混沌へ堕ちる…)

<ギュルルル

闇剣士「来たか」

核竜「ギュルルル…」ばさっ ばさっ

勇者「ぎゅるちゃん…だよね…。なんておっきい…」


騎士C「竜…っ!? うわああああっ」

騎士D「バケモンだ!!」

観客A「食われるぞ逃げろー!!」


闇剣士「マントルドラゴンは成長しコアドラゴンへと進化した。もはや貴様のしってる幼竜ではない」

傭兵「…コア、ドラゴン…」

傭兵(成体になってしまったのか…まずい、いますぐ逃げないと…)

闇剣士「マナ。背に乗れ」

魔女「うん」

闇剣士「奴らにもう未練はないな」

魔女「……ない」

闇剣士「焼き払え」

核竜「グルルルっ」

▼核竜は激しい灼熱の熱線を勇者たちにむかって放射した。


勇者「……!!」


その日、およそ1000年続く魔法大国グリモワは一夜にして崩壊した。



第32話<目醒め>つづく



 

更新終わり
次回明日(予定)

第32話<目醒め>つづき



<2日後>

【グリモワ城・謁見の間】


魔法国王「ご覧の有り様だ」

魔法国王「きみたちの尽力に感謝する」

魔法国王「侵入した魔物はおおかた撃退できた。街の火の手も収まった」

魔法国王「…だが、この2日間であまりにたくさんのものをうしなった」

勇者「……うん」


魔法国王「依然国境では交戦状態が続いている」

魔法国王「窓の外の景色は…もうぼくの知っているグリモワじゃない」

大臣「陛下、お疲れでしょう。お怪我も癒えておりません。どうかご静養を」

魔法国王「さがっていろ。ぼくが用あって勇者くんたちを呼んだんだ」


魔法国王「アレが危険な存在だということは重々承知していた…」

魔法国王「それでもただの魔族の少女だ。制御できる自信があった」

魔法国王「だが、最後で詰めを誤った」

魔法国王「あの銀髪の魔人が唯一、ぼくにとってのイレギュラーだった……」


傭兵「俺たちを呼んだ理由はなんだ」

傭兵「捕らえて縛り首にでもしようっていうのか」

魔法国王「広場での捕り物を知っている者達からは、きみたちが災厄をこの街に運んできたと囁かれている」

勇者「…そんなっ」

僧侶「あんまりです!」

傭兵「ユッカは魔物の掃討に力を貸したし、ヒーラちゃんは人々を護って街の鎮火までした。なのに…貴様はッ!」

魔法国王「だから、いますぐ国をでるんだ」

勇者「え…」


魔法国王「きみたちに…いや、人間にもはや時間は残されていないぞ」

魔法国王「言っただろう。あの能力が真価を発揮すれば、地平の果てからでもあらゆる命を吸い付くせると」

魔法国王「決して誇張した話ではないと、体感したはずだ」

傭兵「…」

魔法国王「魔族領に近いグリモワは、一瞬で死地となるだろうな」

僧侶「…そんなの、ダメです…」

魔法国王「どの口が言うんだと思うかもしれない、あつかましい願いかもしれない…けど」

魔法国王「グリモワには罪のない民が大勢いる!」

魔法国王「彼らを…救ってほしい。一縷の望みがあるとしたら、もはやきみたちしかいない」


傭兵「…ユッカ」

勇者「どんな人であっても、困っている人を助けるのがボクの使命だよ」

勇者「でもボクがいま一番助けたいのは、マナなんだ」


勇者「マナを…助けることが、みんなの平和につながると思う」

魔法国王「アレを助けるだと。無駄だよ。彼女は自らの意思であの場を去った」

傭兵「どうみてもレヴァンに命令されているように見えたが…」

魔法国王「いや、違う。2位の賞品に彼女の支配権を与えただろう」

魔法国王「一度解除した首輪をつけなおすことで、再び洗脳することが可能だったんだ」

魔法国王「だがあの剣士はそれをしなかった」

魔法国王「つまりマナは彼の命令で動いているわけではない」

傭兵(…マナ。なぜだ)


勇者「マナのあの顔…」

勇者「マナはボクたちの助けを求めてる」

魔法国王「…ぼくには世にもおぞましいものバケモノとしか思えなかった…」

魔法国王「それでも勇者くんの魔覚は…彼女の心の内に触れることができたんだね」

勇者「魔覚じゃないよ! ボクはマナのことならなんだってわかる!!」


魔法国王「な、なぜ…。しかし、それはきみの魔覚が極めて優秀だからで――」

勇者「そんなのっボクとマナが友達だからに決まってるじゃないか!」

魔法国王「…!」

勇者「マナのことを信じてる! マナもボクのことを信じてる!!」

傭兵「…ユッカ」

勇者「マナは小さい頃から自分の力に怯えてた…」

勇者「一度は引き離されちゃったけど…また出会うことができた」

勇者「マナは、いつも幸せそうに笑っていたんだ!」

勇者「そのマナが…自分の意思であんなことするわけないんだ!」

勇者「マナを化け物になんてさせないよ」

勇者「不幸をふりまくなら、ボクが絶対に止める」

僧侶「私もです」

傭兵「俺もだ。まだあいつとやり残したことはたくさんある」

傭兵「一度敵対したからって、簡単に諦められるか」


魔法国王「あの残虐で絶望的な魔力を肌で感じて…まだ仲間だと思えるのか」

魔法国王「恐れを…抱かないのか」

傭兵「あいにく、てめぇのような壁の中で暮らす温室育ちとは違うんでな」

勇者「怖いといえば嘘になるよ。…けど、みんなが勇気を与えてくれるから、ボクは戦える」

僧侶「どこまでもユッカ様のお供をします」

魔法国王「……」

魔法国王(きみたちは…折れない剣だ)

魔法国王(ぼくの先祖もきみたちのような強い心で、魔王という災厄に立ち向かったのだろうか…)


魔法国王「倒すのではなく、取り戻しにいくんだね」

魔法国王「ならば、この先は本当の意味での魔境だぞ」

魔法国王「正しき道があるとも限らない…それでもかい」

勇者「行くよ」

勇者「マナが待ってるから。どんなに怖くても行かなきゃいけない」


魔法国王「…ぼくは…魔物という存在を侮っていたのかな」

魔法国王「きみたちはどうしてそこまで信用できる…」

魔法国王「どうやって…彼女と仲良くなれたんだい」

勇者「魔物だとか、人間だとか関係ない」

勇者「マナと一緒に過ごせばわかることだよ」

勇者「マナは無表情だけど、ホントはいろんな事考えてて」

勇者「いたずらもするし、やり返すと怒るし、変な事ばっかり言うし…でも一緒に居ると時々笑ってて、ぐすっ」

僧侶「ユッカ様…」ぎゅ

勇者「ボクたちの中で一番頭がよくて…魔法の研究が大好きで…」

勇者「だから…マナは……」

勇者「この国に…グリモワに来るのを、ずっと楽しみにしてたんだ…」

魔法国王「……!!」


勇者「ボクたちまた来るよ」

勇者「世界が平和になって、みんなで笑えるようになったら必ずここにマナを連れてくるから」

勇者「だからその時は…マナを…魔物じゃなくて、ボクたちの仲間として迎えてほしいな…」

魔法国王「……だ、だが」

勇者「この国のいろんな楽しいものを、もっとマナに…見せてあげたかったんだ!!」

勇者「一緒にって…約束したんだよ…」


魔法国王(……ぁ…ッ…そう…か)

魔法国王(ぼくは…なんてことを…)

魔法国王(人間じゃないのは…ぼくのほうだった…)

魔法国王「…あぁ」



グリモワ王は泣き崩れるように顔を伏した。
失った物を嘆いているのか、犯した罪に苛まれているのか。肩を震わせながら嗚咽を漏らしていた。

だが、決してユッカの魔力が彼に入りこんで、心を直接浄化したわけではなかった。

ユッカは、優しい子だから。
自然と彼のほうからユッカの心に触れたのだろう。

魔法国王(すまなかった…)


勇者「王様…?」


魔法国王「…最大限の旅の支援をしよう」

魔法国王「聖剣も持って行くといい。きみたちの物だ」

傭兵「グリモワ王…」

僧侶(ユッカ様のお気持ちをわかってくださったのですね)




   ・   ・   ・



魔法国王「この先の道はわかるかい」

傭兵「あぁ。魔王の場所を指し示す闇のコンパスが…ってあれはマナが持ってるんだったか」

勇者「ボクのも似たような方向を指してたはずだよね」

僧侶「そうですね。北西です」

魔法国王「なるほど。魔族領へまっしぐらというわけだ」

魔法国王「だが魔族領と人間界を隔てる巨大な山脈は、知性無き化け物の巣窟だ」

魔法国王「ま、決して山から出ることもないんだけどね」

魔法国王「ゆえに彼らを番人と呼ぶ」

魔法国王「魔人族ですら彼らを支配できず、もはやだれも近づこうとしない」

魔法国王「そもそも標高5000m級の山脈を徒歩で越えるのは現実的ではない」


僧侶「海を回りこむとか?」

魔法国王「海もダメだ。常に嵐が吹き荒れ、大波で船舶なんてあっという間に沈められる」



傭兵「陸も海もダメとなると、古の勇者達はどうやって魔族領に入ったんだ」

魔法国王「…」

傭兵「なんか知ってんだろ」

魔法国王「選ばれし勇者達は巨大な鳥の背にのって空を飛んだらしい」

傭兵「空を……」

勇者「でも人が3人乗れるような大きな鳥いないよ」

勇者「それってぎゅるちゃんみたいな魔物じゃないの?」

傭兵「ドラゴンの背中は夢があるが…乗り心地は悪そうだ」

魔法国王「いや、手持ちの文献ではたしかに紅蓮の火の鳥だと…」

魔法国王「待っていてくれ。取ってこよう」



大臣「その本を持ちだして良いのですか」

大臣「大魔導師の一族に伝わる機密事項ですぞ」

魔法国王「彼らは勇者だ。問題はない」


魔法国王「げほっ…くそ、少し手を貸せ」

大臣「陛下、やはりご気分が優れないようで」ガシッ

魔法国王「ぼくにできることはもうこれくらいしかない。すでに崩壊した国の機密など知った事か」

魔法国王「あとは利用するだけさ。彼らをうまく誘導すれば…グリモワの生き残る未来がわずかでも生まれるだろ」

魔法国王「あいにく、仲間の奪還という修羅の道を行くようだがね…」

魔法国王「だったらもう伝承でも神話でもなんだっていい、なりふり構っていられないじゃないか!」



   ・   ・   ・



魔法国王「待たせたね」

傭兵「血でてるぞ」

魔法国王「気にしないでいい」


魔法国王「文献に描かれたこの絵をみたまえ」

勇者「この鳥、燃えてるの?」

魔法国王「紅蓮の炎を纏う鳥と古い言葉で書かれている」

魔法国王「背に3人の人間が乗っているだろう」

勇者「ほんとだ…」

魔法国王「おそらく古の勇者たちはこの鳥にのって魔族領へと侵入した」

傭兵「火の鳥か…何がいたっておかしくねぇが」

傭兵「燃えてたら乗れないだろうがよ」

勇者「あ、そっか。じゃあ嘘だ」

僧侶「そうですよ。ではこの大きな鳥さんを見つけたら私が消火すればいいんですね」

勇者「そういう話?」

傭兵(火の鳥…熱くない炎…)

傭兵(…いや、まて。そんなはずは…)



傭兵「他にはなんて書いてある」

魔法国王「不死なる炎鳥は悠久の時の中で浄化と再生を繰り返し、また眠りにつく」

魔法国王「その炎あらゆる邪悪を焼き払い、焼け跡にはこころ清き者のみが立ち尽くすだろう」

傭兵(浄化の炎と同じだ)

傭兵(この鳥がいまでも存在するなら…俺のルーツがわかるかもしれないな)


勇者「いこう。どこにいるの」

魔法国王「…あいにくだが、聖なる火山としか書いていない」

魔法国王「正確な場所はわからないな。近くに魔力を帯びた火山帯があるから、そこが有力だけどね」

勇者「……」

魔法国王「きみたちならきっと出会うことができる」

魔法国王「鳥を探して、彼女を迎えに行くといい」

魔法国王「信じているよ」

勇者「……いってきます」




【魔族領・神殿】


闇武将「……作戦は成功したようだな」

闇剣士「あぁ。問題はない。万事順調に進んでいる」

闇武将「おう、さすがにてめぇもお疲れか。だったら詳しい話は明日にするか」

闇武将「んで、持ち帰ったそれが器のガキか」

魔女「…」

闇武将「はーっはは、予想はしてたが、まさかこんなちんちくりんだとはなぁ」

魔女「…」

闇剣士「マナ、行くぞ。部屋に戻る」

闇武将「おう! ここからが正念場だ。魔王復活にむけてしっかり英気を養えや!」

 
  ・   ・   ・
 

蟲魔人「オーグ様…では計画どおり、あの娘の暗殺ヲ」

闇武将「…ぐふ、いやぶっ壊すのはやめだ」

蟲魔人「ム?」

闇武将「オレはあのメスガキを嫁に迎え入れるぞ!! ここに連れて来られて怯みもしねぇ、ありゃたいしたタマだぜ」

闇武将「ぶっ殺すのはレヴァンの方だ!!」




第32話<目醒め>おわり


  

更新終わり
次回明日か明後日

今日ないですスマソ
更新明日22時頃~



33話<求道者達>



【古びた屋敷】



女剣士「そっか…もう行くんだね」

傭兵「あぁ、グリモワ王に地図をもらった」

傭兵「俺たちはこれから聖なる火山とやらに向かう」

女剣士「なにかあるの?」

僧侶「伝説の火の鳥さんがいらっしゃるそうです」

女剣士「そう…鳥さんが……鳥?」

勇者「ひとが乗れるくらいおっきい鳥だよ!」

傭兵「眉唾ものだが、魔族領に乗り込むためには今はそれにすがるしかねぇ」

傭兵「それくらい俺たちの戦力は不足している」

僧侶「マナちゃん1人でかなりの戦力を占めていましたからね…」

女剣士「あたしがついていけたら…。って戦力にはならないか」

傭兵いいんだ。お前にはお前の暮らしがある」

傭兵「じいさんの世話だってしなきゃいけないだろ」

女剣士「うん……ごめん」


傭兵「なにからなにまでずいぶん世話になった」

勇者「お世話になりました」

僧侶「サマンサさん、ありがとうございました」

女剣士「あたしこそありがと。みんなと過ごした時間は短ったけど、楽しかったよ」


傭兵「でもよ、なんで俺たちの協力者だったんだ…」

女剣士「ボケる前のおじいちゃんが言ってたの」

女剣士「いずれ世界に暗黒が満ちようとも、炎の意思を受け継ぐ者が現れ闇を晴らす…ってね」

女剣士「あたしは全然なんのことかわかんなくてさ」

女剣士「最初あなたたちに近づいたのは、見覚えのあったこの紋章の意味がしりたかっただけなんだ」つんつん

勇者「…太陽?」 

女剣士「箱を渡しておしまいのはずだったんだけど、あなたたちいい人だからつい入れ込んじゃったよ」

女剣士「晴れるといいね。みんなが笑顔でいられる世界を、頼んだよ」


老人「これ待たんかグレン!」ビシッ

傭兵「げっ、じいさん。見送りにきてくれたのか?」

老人「また修行をほっぽり出してしばらく女のとこへ行く気か! そうだろう!」

傭兵「だから俺はグレンじゃねぇってば…」

老人「なにを言っておる…ふがふが」

老人「貴様指輪はどうした! 今日はつけとらんのか!!」

老人「女のところに遊びにいく証拠じゃな!」

傭兵「指輪?」

勇者「ボクがつけちゃってるこれだよ。箱に入ってたでしょ」

傭兵「あぁそれか」

老人「なんじゃ…年端もいかぬ小娘に与えたのか、気の多いやつじゃの」

傭兵「いやいや…俺の私物じゃねーし」

老人「将来破滅してもしらんぞ! いい年をしていい加減腰を落ち着けようともおもわんのか!」


僧侶「プレゼント用に買ったものでしょうか?」

僧侶「それとも本当に太陽の国の国宝だったりして…」

勇者「ごめんなさい。おじいさんに返したほうがいいのかな、グレンって人の師匠なんだし」

傭兵「もらっとけ。あの箱をあけられたってことは、俺たちにゆかりのある物には違いねぇんだ」

女剣士「そうだよ」

傭兵「それに女性用サイズじゃないんだろ。女へのプレゼントでもないさ」

勇者「たしかに緩いよ」スポスポ

女剣士「ほら、そろそろ行きな。時間は待ってくれないよ」

勇者「…うん」

勇者「本当にありがとうサマンサさん」

女剣士「絶対…マナのこと取り返すんだよ。いいね?」

勇者「うん。またみんなで泊まりに来る」

女剣士「その時は街をゆっくり案内してあげるよ。楽しみにしてる」

女剣士「だからさようならは言わないよ」

女剣士「またね…道中気をつけて」なでなで



【魔族領・闇の神殿】


闇武将「首尾はどうだ」

蟲魔人「魔界蟲に手紙を持たせて魔族領全域にさしむけました」

蟲魔人「魔王復活に向けて、各地の有力な豪族達がこの島へと向かってくることでしょう」

闇剣士「それでいい」

魔女「島…」

闇剣士「ここへ来た時に見ただろう」

魔女「霧が濃くてわからなかった」

闇剣士「この闇の神殿は巨大な湖の真ん中にある浮き島の上に建っている」

闇剣士「陸路では到達できん」

サキュバス「辺鄙な場所につくったわよねぇ」

闇剣士「これもあらゆる対策のためだ」


闇剣士「サキュ。私はオーグとしばらく儀式に向けた打ち合わせがある。マナを案内してやってくれ」

サキュバス「はぁーい」

サキュバス「ほらおチビ行くよ」

魔女「…」コク



闇武将「おおい、レヴァンてめぇよぉ。オレたちの堕天使サキュちゃんと一体どういう関係だァ?」

闇武将「一緒に戻ってきたことといい、ずいぶんと仲がよさそうじゃねぇかぁ」

闇剣士「なんでもない」

闇武将「ならいいがよ」

闇剣士「利害一致の上、ただの夫婦関係にしか過ぎない」

闇武将「ブヒュッ」

蟲魔人(汚ェ…)

闇武将「てめぇいまなんていった!!」

闇剣士「めおと、だ。子を宿してもらわねばならんのでな」

闇武将(こいつぁ~、いつにも増してカチンと来たぜ)


闇武将「チッ、すました顔して、てめぇも跡取り作りに必死だってだけだ」

闇剣士「貴様こそどうなっている」

闇武将「オレははらませるならもっと色を知らねぇ無垢なメスがいい」

闇武将「背はこれくらいで、髪の毛はさらさらでよぉ。魔力が強いとなおさら良いぜ」

闇武将「俺様のイチモツをぶちこんだら、真っ赤な血を流しながら泣きわめくんだ」

闇武将「そんで抵抗する中に思いっきりぶちまけてやる。即ボテ腹よ」

闇剣士「何を言っているかわからんな」

蟲魔人「ククク、私はデスネェ、まずは淫蟲を体中に這わせて媚薬漬けとし」

闇武将「てめぇの気持ちわりぃ話は聞いてねぇよ」メキョ

蟲魔人「……」

闇武将「おっと、打ち合わせをするんだったな」

闇剣士「あぁ」



  ・   ・   ・



サキュバス「はぁいここが大食堂~、四季折々の素敵な魔界食が食べられるわよ」

サキュバス「あー、でも人間界育ちのおチビの口に合うかどうかは微妙ね」

魔女「……」


サキュバス「それでぇ、こっちが大浴場♪ 時間帯でオスメスを一応分けてあるから」

サキュバス「あとで一緒に入りましょ?」

魔女「……」


サキュバス「ここはおチビの部屋! レヴァンったら心配症で、寝る時は同室がいいなんて過保護よねぇ」

サキュバス「あたしってものがありながらさぁ。妹を選ぶなんてひどくない?」

魔女「昨日きた。もういい」

サキュバス(このガキ! 案内しがいがないじゃない!!)


サキュバス「つーかあんた全然おぼえてないのね」

魔女「…」

サキュバス「えっとぉ…何年前だっけ」

サキュバス「そっかぁ、まだ7~8のガキんちょだったか」

サキュバス「ま、向こうじゃいろいろあったからねぇ」



サキュバス「そしてここが、闇の石を祀ってある祭壇よ」

サキュバス「っと…あんたは近づいちゃダメだからね」

魔女「…」コク

魔女「あんまり近づきたくない。はやく行こ」

サキュバス「えぇ。じゃあ次は…屋上の天空広場にいきましょ」

魔女「屋上?」

サキュバス「そこに生えてる、ながーーい塔の天辺よ」


魔女「こんなの登りたくない。拒否」

サキュバス「……ふふふ」

サキュバス「まぁついてきなさいって」

魔女「いや。もう歩くの無理」

サキュバス「いいからいいから!」


【天空塔前】

魔女「階段いっぱいついてる、吐きそう」

サキュバス「ッて思うじゃん? けどねー、この大きな扉をあけたらすぐなのよ」

魔女「?」

サキュバス「じゃーん、なんと中は魔動式の自動昇降機になってまーす」

サキュバス「これに乗って、ボタン一つでらくらく頂上まで上がれるわ」ポチッ


サキュバス「……あれ?」ポチッポチッ

サキュバス「あによこれ! 壊れてるの!?」ガンガン!

下っ端魔物「あぁお止めください。それいま止まってるんですよ…」

サキュバス「はぁ?」

下っ端魔物「実は、闇の石の活動が活発化してからというもの」

下っ端魔物「神殿内に備え付けた魔道式器具への魔力供給がうまくいってないのです」

サキュバス「なによそれ、なんとかしなさいよ」

サキュバス「最高の見晴らしが見られないじゃないの!」

下っ端魔物「といわれましても…魔動昇降機を動かすために必要な魔力が足りないので」

サキュバス「はぁーつっかえないわねぇ…」

魔女「…これ、動くの?」

サキュバス「動かないっていってんの」

魔女「…」ジッ


魔女「魔力…注いでみる」

サキュバス「はっ? ちょっと、ダメよ!」

サキュバス「あんたの魔力浪費させたらレヴァンに怒られちゃうじゃない」

魔女「……」ズズッ

ウォォーーン…ゴゴゴ!

下っ端魔物「おおおっ! なんとすばらしい…こんな短時間で稼働するとは!!」

下っ端魔物「これで私も仕事ができます! ありがとうございます小さなお方」

サキュバス「あちゃー…」

魔女「動いた。早速乗ってみたい」

サキュバス「あんたそういうの好きよね」

魔女「…」コク

サキュバス「…はぁ仕方ないか。じゃ、行きましょ」

下っ端魔物「上へご案内~」




   ・   ・   ・



サキュバス「どう? まるで空に立ってるみたいでしょ」

魔女「…」

サキュバス「この塔は見張り塔も兼ねてるのよ」

サキュバス「それと、この屋上広場は式典にもつかわれるわ」

サキュバス「きっと魔王が復活したらここにみんなあつまって祝賀会するんでしょうね」

サキュバス(その時…あんたはどうなってるかわからないけどね…)

サキュバス(あんた…ほんとにこのままでいいの?)

サキュバス(うまれもった運命に身体を支配されるって、どんな気持ちなの…)

魔女「…空が、近い」

サキュバス「もうすぐ満月ねーー」

魔女「…満月。満月」



闇剣士「満月の夜だ。魔力の高まるその夜が、最も魂が癒着しやすいと考える」

闇武将「いいぜ」

闇剣士「では魔王様復活の儀は、満月の夜に執り行う」

闇剣士「豪族共の集結を急がせろ」

闇剣士「我々魔族にとっての、始まりの日だ」

蟲魔人「御意」

闇武将(ククッ…てめぇはその日までにゃ死んでるがなぁ…クハハハッ)

闇武将(せいぜい残り数日の命を満喫しろや)



  ・   ・   ・



【闇の魔剣士の部屋】


サキュバス「あーいたいた」

サキュバス「もう先に戻ってたんだ。探しちゃったわよ」

闇剣士「……」

サキュバス「なによー、妻になる女の帰りに振り返ってもくれないわけ?」



サキュバス「なにを真剣に…おぅい」

サキュバス(まさか壁に向かってシコシコしてたりしないわよね?)ゴクリ

サキュバス(やば…激レアシーン見れちゃうかも!?)

サキュバス「いい…声たてちゃダメよ」そろー

魔女「…」コク


サキュバス「ダ~リン?」ピョコッ

サキュバス「って…絵かいてただけね。あんたも趣味あったのね」

闇剣士「……サキュか。マナの案内は済んだか」

サキュバス「うん」

魔女「いろいろあった。それなに」

闇剣士「…む。これは下手な物を見せたな」

サキュバス「絵なんて書くんだー……ん? なにこれ…人物…画よね?」

サキュバス「赤毛のゴリラ?」

闇剣士「貴様…!」ガタッ


サキュバス「だ、だってぇ」

魔女「…」ジー

闇剣士「他人に見せるようなものではない。片付けよう」

サキュバス「ちょ、ちょいちょい! ゴリラじゃなきゃ何の絵なのよ!」

闇剣士「……この世で最も美しい存在だ」

サキュバス「…はぁ…???」

魔女(…ソル)ぺたっ

闇剣士「まだ乾いていない。さわらないほうがいいぞ」

サキュバス「あーあ、赤い絵の具ついちゃったじゃん」

魔女「……」

魔女(私の血に染まった手じゃ…もうあなたに触れることはできない)

魔女(どうして、私はここにいるの…)


魔女(お願い、だれかおしえて…私は誰。どこへむかって、どうなるの)

魔女(ごめんなさい…みんな)


闇剣士「まだ、心身への負担が大きいようだな」

サキュバス「そりゃ人間として育てられてきたものをさ、いきなり本能を呼び起こされたらこうもなるわよ」

サキュバス「ほらおチビ、お風呂いってすっきりしましょ。溜まってんのよ色々」

魔女「……」

闇剣士「すまない…こういう時私はどうしたらいいのかわからない…」

闇剣士「貴様がいてくれて助かる」

サキュバス「…ま、最後まで付き合うわよ」

サキュバス「じゃあ、今晩がんばりましょうねダーリン?」

闇剣士「…私は休憩の後、再び政務がある。近頃出撃ばかりだったのでな」

サキュバス「なんてツレない男!」


魔女「…」

闇剣士「マナ、グリモワでのことを悔やむ必要はない」

闇剣士「奴らは必ず障害となる。お前は間違ったことはしていない」

魔女「……うん。お風呂いく…」とぼとぼ


闇剣士(人間と魔族の間で揺れているのか…)

闇剣士(しかし、お前は私などとは違い、完璧なる器としてこの世に生を受けた)

闇剣士(マナという人格がもし魔王様復活の邪魔をするならば…私は…)

闇剣士「…我ながら外道だな。人間の血が流れているとは思えん」

闇剣士「だがどんな犠牲を払ってでも、1000年に渡る一族の悲願…果たさせてもらう」

闇剣士「ソル…止めてみるなら止めてみろ!」

闇剣士「私は想いを全て断ち切り、覇道を往く!」

▼闇の魔剣士は女の描かれたキャンバスを真っ二つに切り払った。


闇剣士(さようならだ…ソラさん)



第33話<求道者達>つづく


  

更新終わり
次回明日か明後日



第33話<求道者達>つづき



<山間の道>

【荷馬車】


傭兵「今日はこの辺りでキャンプだ」

勇者「もう少し進めるよ!」

傭兵「駄目だ。暗くなってからは危険だ」

勇者「……」

傭兵「気持ちはわかるが、焦ってどうする」

傭兵「今日は休め」

僧侶「ユッカ様、そうしましょ? スレイプニルちゃんにも休憩は必要ですよ」

馬「ヒヒン…」

勇者「…うん。お風呂沸かしてくる」


僧侶「ユッカ様、王様やサマンサさんの前では気丈に振舞っていましたが、やはり落ち込んでいますね…」

傭兵「あいつが焦るのも無理はない」

僧侶「こういう時に私達が支えてあげなきゃいけませんね…」

僧侶「マナちゃん…いまごろ寂しがってないでしょうか」

僧侶「ちゃんとご飯食べてるでしょうか…」

僧侶「ずっと私達と離れ離れになって、ようやく取り戻せると思ったら…あんなことになってしまって」

僧侶「…マナちゃん、ぐすっ、どうして…どうして行っちゃったんですか」

傭兵「ヒーラちゃん」

僧侶「…はい?」

傭兵「君もゆっくりやすめ。ヒーラちゃんだって、俺にとっては支えてやる対象だ」

僧侶「ありがとうございます…」キュッ


傭兵「マナは大丈夫だ。少なくとも丁重な扱いはされているはず」

僧侶「そうでしょうね…」

僧侶「でも、魔王の器…でしたよね…。もし、すでにそうなってしまっていたら」

傭兵「それもまだ大丈夫だよ」

僧侶「どうしてわかるんですか」

傭兵「…月が、欠けているからだ」


ゆるやかに暮れていく空を眺めると、霧と薄い雲の向こうにぼうっとした月が昇っていた。


傭兵「満月まであと4日ある」

僧侶「…やっぱりなにか起きるとしたら満月の夜でしょうか」

傭兵「俺がレヴァンの立場なら、魔力の高まる満月の夜を選ぶ」

傭兵(4日以内になんとか炎の鳥を見つけないとな)




  ・   ・   ・



ちゃぷん…


勇者「ん…あつっ、あちちっ」

勇者「あれっ、熱く炊きすぎちゃった!?」

勇者「ふーふー…ってこんなことしてもダメか。なにやってるんだろ…」

勇者「マナはそつなくお風呂炊いてたんだなぁ…」

勇者「ボクはマナに比べたら炎の魔法がへたっぴだ…」

勇者「…えいっ、我慢!」じゃぷん

勇者「~~~~っ! あつつっ、がまんがまん」

勇者「はぁーー……」

勇者「マナお風呂入ってるかなぁ…」

勇者「うっ、うぅ…泣いちゃダメ。ボクは勇者なんだ」


傭兵「よぉ」

勇者「うあっ! そ、ソル!?」


傭兵「たまには一緒に入ろうぜ」

勇者「狭いよ」

傭兵「良いだろ。狭いほうが」

勇者「…えっち。なにしに来たの」

傭兵「…お前が心配で。泣いてるんじゃないかって」

勇者「な、泣いてないもん」

傭兵「いいから入らせてくれ、寒い」

勇者「う、うん」


じゃぷ

傭兵「おーー、もうちょい詰めろ」

勇者「ええっ、くっつきすぎ…ヒーラと入るのでも狭いのに」

傭兵「ヒーラちゃんは出っ張ってるからなぁ」

傭兵「見ろ。すっげぇお湯こぼれてく」


傭兵「熱くねーか?」

勇者「うん…ちょっと火炊きすぎた…」

傭兵「ヒーラちゃんを呼んで水を足せばよかったのに」

勇者「そっか!」

傭兵「すこし抱いていいか」

勇者「え…あぐっ、ひゃっ、何?」

傭兵「肌すべすべだなお前。尻がとくに」

勇者「なんなのー。ほんとにエッチな事しにきたの?」

傭兵「こうしてればすこしでもお前の気が紛れると思ってな」

傭兵「あんまり思いつめてると、いざって時に最高のパフォーマンスが発揮できないぞ」

勇者「そんなんじゃないもん」ぷいっ

傭兵「ほらこっち向け」

勇者「んっ…♥ ちゅぅ…んぅ、ううっ」


勇者「馬鹿…こんなときに」

傭兵「こんなときだからこそ少しでも強くなっておかなきゃいけないって約束しただろ」

勇者「そうだけど…こんな、外のお風呂で…むっ、ちゅっ…むぅ~~っ」

勇者「ぷはっ…チューされるとアソコうずうずしちゃうってばぁ」

傭兵「触ってやろうか」

勇者「やだっ、このあとヒーラがこのお湯使うんだからね!」

傭兵(ヒーラちゃんならむしろ喜びそうだ)

傭兵「ならたまには自分でしてみるか。ちゃんとすっきりするまで出るの禁止な」ガシッ

傭兵「ほらのぼせるぞ早くしろ」

勇者「えっ…」

勇者「もうっ、すけべ変態エッチ! 自分がむらむらしてたから来ただけでしょ」

傭兵「はぁ~? ならお前が風呂入ってるあいだにヒーラちゃんとしっぽり」

ガブッ

傭兵「あ゙っコラ、狩猟犬かお前は」


傭兵「とりあえず1回すっきりしてあたまを切り替えろ」

傭兵「な?」

勇者「…ぅうゔ。わかったよぉ、オナニーしたらいいんでしょ」

傭兵「そうそう」なでなで

勇者「んっ…」

狭いドラム缶風呂の中でユッカはおそるおそる自慰を始めた。
ユッカが腕を動かすたびに水面が揺らぐ。

素肌を密着させた状態なので手の動きや恥部を見ることはできなかったので
俺はだんだんと耳まで真っ赤に染まっていく少女の顔をじっと眺めつづけた。

勇者「んっ…んぅ」

傭兵「いまどこさわってる」

勇者「おまんこっ」

傭兵「の、どこらへん? 教えて」

勇者「クリ。クリトリス…指ですりすりしてる…っんっ♥」


傭兵「クリトリスきもちいいのか?」

勇者「うんっ、中がうずうずしてるんだけど、中に指いれると一緒にお湯もいっぱい入っちゃうから」

勇者「お湯入ると、ひりひりっていうか…ぬるぬるが剥がれちゃうみたいな感じがして」

勇者「だからクリ触ってる…んっ、んぅ…あっ♥」

勇者「クリ…きもちいいっ、ボク…クリ触るだけでイッちゃいそ…♥」

ちゃぷちゃぷ…ちゃぷちゃぷ…


ユッカは蕩けた顔で一心不乱に恥部をこすり続けた。
だらしなく唾液が垂れ、お湯に溶ける。
きっち膣からの分泌液もすでにたくさん混じっているだろう。


傭兵「お前…どういう気持ちでいまオナニーしてるんだ」

勇者「えっ…う、うーん…? ソルの腕が太くて…ぎゅってされると嬉しいなぁとか」

勇者「ソルにこのあともっとエッチなことされるのかなぁ…とか♥」


傭兵「なるほど。ユッカのおかずは俺に犯される妄想か」

勇者「そ、そういうわけじゃな…くはないけど」

勇者「誰だって抱っこされると嬉しいもん」

傭兵「手止まってるぞ」

勇者「う、うん…」

ちゃぷちゃぷ…

勇者「はぁっ、はっ♥ クリが…かたくて、きゅうってしてて」

勇者「ボクのクリえっちだよぉ、なんでこんなに触るだけできもちいいの」

傭兵「そんなにいいのか。これからはもっと触ってやるからな」

勇者「触って♥ いま触ってぇ♥」

勇者「ああっ、あんっ、だめだめっ、イッちゃう…クリでイッちゃう♥」

勇者「イッていい? イッていいよね!?♥」

傭兵「いいぞ」



勇者「ああっ! あああっ~~~っ♥♥」

▼勇者は138の経験値を手に入れた。

勇者「イっれ…♥ んむぅ!?」

背筋をピンと伸ばし絶頂に達するユッカの口を強引に塞いだ。
逃げようとする舌を追いかけて、小さな口内を陵辱すると、ユッカは諦めて舌をさしだしてからめてくる。

そのまましばらくお互いの唾液を交換するほどの深いキスを俺たちは続けた。


傭兵「あーユッカの味がする…」

傭兵(できることなら一生舐めていたいな)

勇者「ねー挿れて…♥」

勇者「ソルのここカチカチだよ? ボクのクリよりきっとカチカチ」

傭兵「あぁ、そうだな。けどここじゃ出来ない」

傭兵「肌が縁に触れると熱いからな」

勇者「じゃあ早く頭洗って戻ろ!」



僧侶「あら、意外と早かったですね。もっとお風呂で楽しんで来るかと」

傭兵「熱かったからな」

勇者「…ほかほかー」

傭兵「ヒーラちゃん入ってきて」

僧侶「はい」

僧侶「あの…戻るときは声かけたほうがいいですか?」

僧侶「もしかしたらお邪魔しちゃうかもしれないので…」

傭兵「え? あー、いや…」

勇者「ヒーラは身体拭いて裸のままもどってきたら? なんちゃって」

僧侶「ではそうさせてもらいます…なんちゃって」

傭兵(2人ともどこまで本気なんだか)

傭兵(マナなら真に受けて本当に裸で乱入してくるんだろうな)



   ・   ・   ・


僧侶「ユッカ様とソル様が同時に入ったお風呂…」

僧侶「色々まじってたりして…いえ絶対そうですよね!?」ゴクリ

僧侶「…」ジー

僧侶「白いのは浮いて無い…ですね」

僧侶「だけどいつもソル様は最後なので…ちょっとレア気分♪」

僧侶「…♪」

ちゃぷ

僧侶「あ……」

僧侶(お湯少ない……)くしゅん


< ああっ、イグっ、ああああ♥

< もっと突いてぇ♥ ボクのおまんこずんずんしてぇ♥


僧侶「……っ♥」

僧侶「ユッカ様元気になってよかった」

僧侶「…」キョロキョロ

僧侶「って誰もいませんよね……んっ、んぅ♥」

ちゃぷちゃぷ


 


僧侶「これ…お湯最後の人の特権…ですっ♥」


< イグッあああっ♥ あああっ♥


僧侶「ユッカ様の…エッチなお声を盗み聞きしながら…なんて」

僧侶「背徳的すぎて…んっ♥ んっ♥」

僧侶「手が…とまり…ませっんっ♥」

僧侶「ソル様も声だしましょうよぉ、聞きたいですよぉ…」


< ぐっ…ユッカ!! ああっ

僧侶「それです♥ もっと声だして……もっと…」

ちゃぷちゃぷ

僧侶「私っ…なにしてるんでしょうっ、でもこんなきもちいいのやめられませんっ」

僧侶「だめっ、おっぱいもでちゃうっ♥ あああう♥」


僧侶「はぁー…はぁー…♥」

僧侶(私ってやっぱりエッチ…ですよね…)


ちゃぷん…


僧侶「はー気持ちよかった…」

勇者「なにがきもちよかったの」

僧侶「ひゃあ! ゆ、ユッカ様!」

勇者「汗かいちゃったからもう1回入ろうかなって」

勇者「お風呂きもちよかった? 大自然の中は良いよね」

僧侶「そ、そ、そうですね…」

勇者「どうしたのヒーラ…むふふ、まさか」

傭兵「お湯白いな…ミルクっぽい匂いする」

僧侶「きゃー! ソル様まで!! お風呂のぞきは禁止ですよ!!」

傭兵「聞き耳たてておいてなにいってるんだ」

僧侶「ええ!? な、なんで…私の声聞かれてました?」

傭兵「背徳的すぎて手が止まりません――」

僧侶「いやあああっ」ボカッ

僧侶(ソル様ってすっごい地獄耳なの忘れてました…)


勇者「ヒーラはエッチだね!」

僧侶「そんな笑顔で言わないでください…」シュン

僧侶「それより…お風呂に入ってる私を取り囲むのやめてくれませんか」

僧侶「見られてたら出るに出られないじゃないですか」

傭兵「あぁ悪い。いいよあがって」

僧侶「外で裸見られるの恥ずかしいって言ってるんです!」

傭兵「なぁに、俺たちしかいないから平気だって」

勇者「そうだ、今度は3人で入ってみよっか!」

傭兵「それは無理だろ…常識的に考えろ2人でも結構きついんだぞ」

勇者「なんでも試してみなきゃ!!」

僧侶「…無茶ですよ。だけど…楽しそうですね!」



  ・   ・   ・



勇者「ひっかかって出られないよぉ…」しくしく

僧侶「どうするんですかこれ…」

傭兵「ヒーラちゃんおっぱいつぶれてる…」

僧侶「ううっ! せまいのにアソコおっきくしないでください!」



第33話<求道者達>つづく


 

更新終わり
次回明日22時~

帰り遅れたので更新は明日にスマソ

第33話<求道者達>つづき



【闇の神殿・魔女の部屋】


くちゅ…くちゅ…

魔女「…んっ、ん…ぅ」

魔女「ハァ…はぁ…っ♥」

魔女「指…止ま…ら、なっ」

魔女「ぅ…ッ! あっ♥」

魔女「ハァー……♥ あんまりよくなかった」

魔女「刺激不足…40点」

魔女「だけど使えるものもない……」キョロキョロ


サキュバス「はぁい、お困りのようね」

魔女「!! な!」

サキュバス「そんなびっくりしなくていいじゃない。お義姉さんよお義姉さん」

魔女「誰が」

サキュバス「あたし」ニコッ


魔女「いつからいたの」

サキュバス「んーっとねぇ」

サキュバス「あんっ、ソル…ソルぅ。くねくね」

サキュバス「ってあたりからかなー」

魔女「言ってない」

サキュバス「えーそう? あたしには聞こえたけど」

魔女「…」ジトッ

サキュバス「き、気にしなくていいじゃない女同士なんだから!」

魔女「気にする」

サキュバス「どうせあんたたちのセックスライフなんていつも見てたし」

魔女「……術式…」

サキュバス「あーはいはいストップ! 魔力の無駄遣いしなーい」

サキュバス「健やかな性活支援! はい、プレゼント」

魔女「この箱何」


サキュバス「開けてみてー」

魔女「…」パカ

魔女「…!! 1号達…!」

魔女「どうしてここにあるの。置いてきたはず」

サキュバス「元はと言えばあたしがあんたに売りつけたんじゃない。在庫くらいあるわよ」

サキュバス「…さぁてと。欲求不満で不完全燃焼なおチビのためにひと肌ぬぎますか」

魔女「ぃ、いい。遠慮する」

サキュバス「ダメよ。あなたは心身ともに健やかに過ごさなきゃいけないの」

サキュバス「ってレヴァンに言われてるのよ! あたしの言うこと聞きなさい!」

魔女「あなたとセックスしたくない」

サキュバス「そう? じゃあこうするしかないわね。えいっ」

▼サキュバスは幻淫魔法を唱えた。

魔女「…!」クラッ

サキュバス「はいおやすみ~。エッチな夢みてすっきりするのよ~」


魔女「う…ぐ、ぐ」クラクラ

サキュバス「おお!? た、倒れない…ですって!」

サキュバス(なるほど、魔法をかけようとしても吸われちゃって、威力が減衰してるのね)

サキュバス「じゃあ直接かけてあげる」

魔女「…!」

ちゅむ

サキュバス「んふふ~」

魔女「~~っ!!」バシバシ

サキュバス「ぷは…ああん、すっごい吸われちゃった♥」

魔女「…ぅ……ぅ…zzz」

サキュバス「さぁておチビはどんな夢みるのかな~」

魔女「…はっ♥ はぁ…♥ …zzz」

サキュバス「ぐっすり眠りなさい」

 

  ・   ・   ・


傭兵「おーい、マナ。おーい」

魔女「…ん、う…?」

傭兵「大丈夫か? ふらふらして、日射病にでもなったのかとおもったぞ」

魔女「…ここは」キョロキョロ

傭兵「ほんとに大丈夫か?」

傭兵「はー、やっぱ調子悪そうだし宿もどったほうがいいか」

魔女「ここどこ」

傭兵「どこって…オクトピアに決まってるだろ」

魔女「……そう」

傭兵「疲れてんのかなー」なでなで

魔女「はうっ…!」

傭兵「お、いい反応。珍しいな」ぽんぽん



魔女「いまなにしてた」

傭兵「…このやろう。せっかくのデート日和だってのに、目的を忘れるなんてひでぇな」

魔女「デート…? そ、そう…そっか」キュッ

傭兵「よぉし、買い物もおわったし次はなにするかなー」

魔女「…」もじもじ

傭兵「……くくっ、わかってるって。シたいんだろ。日中からエロいことばっかり考えやがって」

魔女「…うん」

傭兵「じゃあそこの宿で休憩でもするか」

傭兵「いくだろ?」

魔女「いく!」



傭兵「すいません1時間休憩……やっぱ2時間で」

宿屋「あいよ。そっちは妹さんかい。うちは公序良俗に反することは禁止だよ」

傭兵「ま、まぁな。ちょっと疲れてるみたいだから昼寝するだけだ」

 


傭兵「ほら、脱げよ」

魔女「…脱がして」

傭兵「いいのか? よし、一度このワンピースの肩紐をさげてみたかったんだよなぁ」

するっ

魔女「…!」

傭兵「マナの乳首でちゃったな。下までおろすぞ」


傭兵「マナ…綺麗だ。ちょっと日焼けしたな」

魔女「…」コク

傭兵「俺のここわかるか。こんなにおっきくなって、マナのせいだぞ」

傭兵「今から挿れるから、一緒に気持ちよくなろうな」



ずちゅっ…

傭兵「おー今日はするっと入ったなぁ。もうこんなに濡れてるのかよ」

魔女「んっ…♥ んー♥」

 


傭兵「ほしかったんだろ?」

傭兵「俺のペニスでマナの膣ん中かきまわして、めちゃくちゃにしてやるよ」

傭兵「俺の子種をぶちまけて、マナのこの白いお腹をぱんぱんにするからな」

魔女「はっ♥ はぁ♥」

傭兵「こんなに興奮してどうした。マナらしくないけど、かわいい…」

 ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ
   ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ


魔女「あぁぁあっ~~♥♥」

傭兵「うおっ、マナ…すげぇ締め付け…ッ」

傭兵「エロい汁撒き散らして、顔もトロトロになってるぞ」

傭兵「お前こんなにエロい女だったんだな」

魔女「うんっ♥ そう…! エッチ、だから…っ♥ 犯して…♥」

魔女「もっとセックスしたいっ♥♥」



傭兵「素直でよろしい」

傭兵「おらっ、奥わかるか! お前のちっこい子宮のいりぐちを」

傭兵「おもいっきり引っ掻き回してやる!」


  ずちゅっ ずちゅっ ずちゅっ  
    ぐりぐりぐりぐりぐり


魔女「あぁぁぁ~~~っ♥」

傭兵「なんだぁ…止まんねぇ、腰がっ、ああっ」

傭兵「マナ、赤ちゃんつくろうな。お前の中に全部だすからな」

傭兵「妊娠して…結婚して…ずっと一緒に…――」

魔女「ずっと一緒♥ 結婚するっ! 赤ちゃんうむっ♥♥」

魔女「あああっ♥ いぐっ、イク♥ イクッ♥」




   ・   ・   ・



魔女「…イ…ク…あ♥ あ…ああっ……zzz」

サキュバス「わぁーお、すっごい淫れてる…効果てきめんね!」

サキュバス「ショーツびしょびしょじゃない。ぬがしちゃおーっと」するする

魔女「…ん」

魔女「…ソル…あ、んっ…♥」

サキュバス「…」

サキュバス「あんたさ…やっぱりアイツの事忘れられないんじゃん」

サキュバス「血に刻まれた意思に肉体を支配されても、あんたの心と体はあいつのこと覚えてる」

サキュバス「ねぇ、これでほんとによかったの?」

サキュバス「マナ…」さわっ

魔女「んっ♥ あっ…ソル」

サキュバス「やば…おもしろ。はいはーい愛しのソル様だぞ~」こちょこちょ

サキュバス「ククク。おチビのチビまんこにはどのサイズがぴったりかな~」

サキュバス「3号だっけ? 4号だっけ、5号いっちゃう? くすくす」

魔女「んっ、んっ…ぅ♥」


サキュバス「まずは3号からね~~」ウキウキ


コンコン

闇剣士「マナ、サキュ。いるか」


サキュバス「! は、はぁ~い。まって入っちゃダメ! いま着替え中~」

サキュバス(やっばぁ…あっぶな)

サキュバス「んじゃおチビ、グッナーイ。今夜はいっぱいエロい夢みてリフレッシュよ!」


ガチャ

サキュバス「ダーリンどうしたの?もう寝る?」

闇剣士「風呂に入るために着替えを取りに来た」

サキュバス「そ、そうねー。じゃああたしが取ってあげる。ここで待ってて」

闇剣士「いや、自分で」

サキュバス「いやいやそこは私が働き者の妻として~」

闇剣士「まだ婚儀は終えていない。そこをどけ」

サキュバス(おチビのあんなエロい姿見せられないってば!!)

 


サキュバス「はいどうぞ」

闇剣士「……中になにかあるのか」

サキュバス「なんでもないわよ~、さあお風呂いきましょー」

サキュバス「あたしが背中ながしてあげるわ~」

闇剣士「必要ない。お前はマナといろ」

サキュバス「部屋には結界を念のためかけておけば誰も入らないってば」

サキュバス「知ってたけど心配症ねぇ。あんまり気にかけてたらブラコンって呼ばれるわよ?」

闇剣士「ぶら…? わかった。マナも常に監視の中にいては気が休まらないだろう」

サキュバス「そうそう。女の子だもの」

闇剣士「最高の状態で儀式の夜を迎えねばならんからな」

闇剣士「マナにも調整の時間が必要だ」

サキュバス「うっわー、そういう発言、あたし的に超マイナスだわー」

サキュバス「戦場上がりの男ってみんなデリカシーに欠けるわよね」

闇剣士「何を言っている。行くぞ」

サキュバス「あ、お風呂はついて行って良いんだ?」

闇剣士「どうせついてくるだろう」

サキュバス「うん♪」



蟲魔人「レヴァン様とサキュ様が対象より離れマシタ」

闇武将「おっと、おもったより早くチャンスが来たな」

闇武将「んじゃ、ちと俺様の花嫁の様子でも見に行くか」

蟲魔人「おそらく扉に貼られているであろう結界はどうしマス」

闇武将「んなもん、気合だ! くそいてぇのを我慢すれば突破できる」

蟲魔人「まさか。壁をつきやぶったほうが速いのデハ?」

闇武将「まぁ見てろや。俺様の力って奴をよ」



【魔女の部屋】


魔女「……」むくり

魔女「いい夢みた…気がする…」

魔女「…! な、どうして何も着ていないの…」ごそごそ

魔女「お兄様が帰ってきたら怒られる」


バチッ バチッ バチチッ

< ぐぇあ…


魔女「…?」



ガチャッ


闇武将「はぁ…ぜぇ…ぜぇ。どうだ、俺様の生み出した秘儀、強行突破(気合)」

蟲魔人「お見事」

闇武将「てめぇは来れねぇか」

蟲魔人「無理デス」


魔女「…」ジッ


闇武将「お、おおすまねぇ。起こしちまったか、ぐへへ」

魔女「…」

闇武将「…すんすん。この部屋はなんとも芳しい香りがするな」

闇武将「…どきどきしてきたぜ」

魔女(誰だっけ…)

闇武将「チッ、レヴァンの野郎。こんな美少女と一緒の部屋で暮らすなんて許せねぇ」

蟲魔人「兄妹なので当然なのデハ?」

闇武将「あぁあん!? 長く生き別れたの兄妹ってのはよぉ、もはや他人も同然なんだよ!」

闇武将「禁断のアヴァンチュールが起きてしまってもおかしかねぇんだよ!!」

魔女(この人くさい)



闇武将「…っと、げへへ。そうなる前にお手つきとさせてもらうぜ」

魔女「…!」

闇武将「そう怖がるなよ。どうだ、俺のようなナイスガイとオメェは結婚できるんだぜ」

闇武将「オメェは幸せもんだよ。この国の支配者の第一夫人なんだからなぁ」

蟲魔人(相手の意思を完全無視。さすがデス)

魔女「なんのことかわからない」

闇武将「おーおーそうだろうそうだろう。オメェはまだちっこいもんなぁ。何歳だ?ん?」

魔女「……」

闇武将「なぁに心配しやがるな、俺様が手取り足取り、じっくりお前の身体に花嫁がなんたるかを教え込んでやるからな」

闇武将「ぐはははっ!」

魔女「…不快」

闇武将「…あぁん? いまなんつった?」

魔女「あなたの全てが不快。いますぐ消えてほしい」

闇武将「…おうメスガキ、あんまり調子にのってると、ヒデェ目にあっても知らねぇぜ?」


闇武将「俺様の機嫌を損ねるとどうなるかわかってんのか?」

闇武将「そのチビっ子ボディに俺様の超凶悪なイチモツを激しくぶちこんで!」

闇武将「内蔵かきまわして! あひあひよがらせて! ちんぽ狂いの肉便器にしてやってもいいんだぜぇ!!?」

魔女「……?」

闇武将「って、ピュアな子供にはわからねぇか」

闇武将「だったら教えてやるぜ…ぐふふ」

魔女「…どうでもいい。きもい」

闇武将「!!」プチッ

闇武将「コケにしやがって…愛想よくしてりゃ痛い思いはしないのによぉ」


闇武将「おらぁ!!」ズルリッ

闇武将「俺様のこれを見やがれ!」ビンビン

魔女「…」


闇武将「この世界一凶悪な! イチモツで! てめぇをかきまわ――」

魔女「3号…? そんな小さい物でなにするの。カエルとでも交尾するの」

闇武将「は…?」

魔女「…聞こえなかった? そんな小さい物が」

闇武将「何がちいせぇんだよおおおお!!」

4号「…」

5号「…」

魔女「…」にぎにぎ

闇武将「な、なんだその両手のバケモン共は…ッ!!」

魔女「ただの玩具だけど」

闇武将「そ、それの用途は…まさか」

魔女「……あなたで満足できる人はいないとおもう」ボソッ

闇武将「……!」シナッ


蟲魔人「帰りマスカ」

闇武将「おじゃましました…」

魔女「おやすみなさい」



サキュバス「はー、いいお湯だったわねぇ」

サキュバス「ねーレヴァンもそう思うでしょ?」

闇剣士「魔人種にあった入浴剤を使っているからな」

サキュバス「そうなんだぁ。どおりで高まるとおもったぁ。ねぇねぇ今夜さー」


闇武将「…」とぼとぼ

サキュバス「あら、デブッチョの大将じゃん」

闇武将「…」とぼとぼ

闇剣士「貴様…! 私の部屋のほうから現れなかったか」

闇武将「……れ、レヴァンか」

闇剣士「どうした」

蟲魔人「放っておいてあげてくだサーイ」

闇剣士「…なにがあったかはわからんが、精進せよ」

闇武将「お、おうところで…オメェのサイズは…」

闇剣士「何のだ」

闇武将「オスのシンボルに決まってんだろ! でけぇのかちっちぇのか!!」

闇剣士「貴様気でも狂ったか」


サキュバス「おっきいわよ」

闇武将「……どれくらい」

サキュバス「んーっと…これくらい」くいっくいっ

サキュバス「あたしが見た中では最高レベル! この世で双璧をなすサイズね!」

闇剣士「やめてくれ」

闇武将「……!! おおおおおん!!」ドタドタッ

蟲魔人「お、お待ちくだサイイイ!!」パタパタ


サキュバス「なにあれ。でっかいのは図体と態度だけ?」

闇剣士「マナが心配だ戻るぞ」

サキュバス「へーきでしょあの様子じゃ。きっと歯に衣着せないおチビにめっためたにうちのめされたのよ」

サキュバス「ねー、ところでさっき言いかけてことなんだけどー今夜さー」

闇剣士「……わかっている。私の精気が欲しいのだろう」

サキュバス「話が早くて助かる~」

サキュバス「やっぱ人間の血が入ってるとおっきくて素敵よね~」

サキュバス「魔族ってなかなかいいのいなくってさぁ」

闇剣士「私が常々気にしていることを」

サキュバス「あたしにとっては最高だも~ん♪」ギュ




第33話<求道者達>つづく


  

更新終わり
次回明日22時~予定
台風で電車ダイヤ乱れたら無いですスマソ

第33話<求道者達>つづき




【とある山の中】


傭兵「ここが…聖なる火山…?」

僧侶「…ずいぶんと…その、寂れていますね」

傭兵「どうだユッカ。なにかいる気配はあるか」

勇者「ううん。魔力をほとんど感じない」

勇者「まるで…死んでるみたいだよ」

傭兵「ほんとにここであってるんだよなぁ?」

勇者「地図だとそうなんでしょ?」

傭兵「グリモワ王があの状況で嘘をつくとは考えにくいが…」

僧侶「どうしますか?」

傭兵「……あてもなく山のなかを探しまわっても、時間の浪費にしかならないな」

傭兵(近辺までくればあとはユッカの魔覚でさぐれるものだとおもったが…アテが外れた)

傭兵(もう時間は限られている…どうする)


勇者「間に合わないよ」

勇者「馬車を走らせて、魔族領へ向かおう」

僧侶「ですが、そうなると番人と呼ばれる魔物たちとの戦闘は避けられません」

勇者「全部倒して、山を越える!」

傭兵「本気でいってんのか」

勇者「うん。無謀かもしれないけど、ここで立ち止まっているわけにはいかないよ」

僧侶「だとすると、一度道をひきかえさなければいけませんね」

勇者「魔族領の方角はっと…」


ユッカは太陽の冠を脱ぎ、取り付けられた魔宝石にむかって魔力を込めた。
ゆっかりと珠は輝きはじめ、やがて光が道筋となって俺たちの行く先を指し示す。


傭兵「!」

勇者「あ、あれ…?」


赤い光はこの山の頂きにむかって伸びていた。


勇者「おかしいな。闇の神殿がある方向を指すはずなんだけど…」

勇者「ここにあるってこと!?」

傭兵「違う」

僧侶「…もしかしたら」

勇者「なにかわかるの?」

僧侶「マナちゃんとユッカ様の光の道はわずかに行く先がずれていました」

僧侶「あの時は遥か遠方でしたので、その差異を気に留めることはありませんでしたが」

僧侶「おそらく、この地は最初からユッカ様が訪れるべきだった場所」

僧侶「ここを訪れたことは決して時間の無駄ではなかったのかもしれません」

傭兵「つまり…俺たちは手招きされていたということだ」

傭兵「ここにいる、炎の鳥ってやつにな」

勇者「でも…なにも感じないよ」

傭兵「登ってみよう。なにかあるかもしれない」




【山頂・火口】


傭兵「やっぱりただの火山にしか思えないな」

勇者「辺りにおっきい鳥なんていないよ」

僧侶「もう一度、珠に光を込めてみてくれませんか」

勇者「…うん」ズズッ


傭兵「あ…火口に…」

僧侶「やはり、ここが私達の終着点」

勇者「…! あのマグマの中にいるの!?」

勇者「ど、どうしよう。いまごろ黒焦げになって死んじゃってるよ!」

傭兵「不死鳥ってくらいだから大丈夫なんじゃないか?」

勇者「でも…なにも感じないんだ。魔力の一欠片も」

傭兵「参ったな。会いたくても相手がマグマの中じゃどうしようもない」


その時だった。

勇者「あつっ、あつっ」

ユッカが左手の指を抑えて悶えていた。


傭兵「どうした」

勇者「指輪がっ…急に熱くなって、なんでだろ」

傭兵「火口の気温で熱されたのか?」

僧侶「お水かけましょうか」

勇者「平気…一瞬あつかったけどもうそんなに熱くない」

ユッカは指輪をとりはずし、不思議そうな表情でまじまじと見つめる。
リングに嵌めこまれた宝石が、ユッカの冠の珠と同じように真っ赤に燃え盛っていた。

勇者「見て。小さいけど中に火が灯ってる…」

僧侶「ほんとですね。綺麗…」

傭兵「お前が魔力を注いだのか?」

勇者「ううんなにもしてない…」

勇者「きっと、なにかに反応してるんだ」

傭兵「だとしたら、この火口の主だろう」

傭兵「貸してくれ」

勇者「うん。どうするの?」


俺はユッカから指輪を受け取り、手のひらの上でころころと遊ばせた後、勢い良く火口の中心に向かって放り投げた。


傭兵「訪問客を待たせるんじゃねぇ! こっちは時間がないんだ」

傭兵「さっさと姿を現しやがれ!」

勇者「あーーーー!!」

僧侶「な、なにしてるんですかー!」

勇者「もらった指輪が~~っ!」

傭兵「…おい、見ろ!」


指輪が煮えたぎる炎の中に消えた瞬間、
火口から真っ赤な火柱がいくつも立ちのぼった。


勇者「うああっ! な、なっ」

僧侶「きゃーーっ、ふ、噴火しちゃいますよ!」

傭兵「ま、まずったか…?」

僧侶「私のうしろに! 聖守護結界!!」



火口から大量の輝くマグマが吹き出て俺たちに降りかかる。
マグマはヒーラちゃんの結界を容易に突き破り、あっという間に目の前が灼熱の炎に覆われた。


勇者「…ソルのバカ」


それが俺が最期に聞いた言葉だった。



   ・   ・   ・



傭兵「う……」

傭兵「あ…れ…」

傭兵「生きてる…黒焦げ…にもなってない」

僧侶「うう…一体何が…」

勇者「たしか…火山がブワーって怒って……はっ!」

勇者「な、なんだ…この魔力」

ユッカは目を見開いて夜空を見上げた。

雲ひとつなく真っ黒に染まる空で煌めく一体の巨大な姿。
燃え盛る炎を鱗粉のように撒き散らし、悠然と大空を駆けるそれは、間違いなく古文書に描かれる炎の鳥そのものだった。



傭兵「あれが…炎の鳥…」

僧侶「不死鳥…なんて、なんて神々しいのでしょう」

勇者「…あれに乗れたら。マナに会える…」

勇者「鳥! ボクたちを乗せて! 行きたい場所があるんだ!」

傭兵「鳥って呼び方はないだろ…もっとこう、あるだろ!!」

炎鳥「……!」


炎の鳥は俺たちを値踏みするかのように空の上で旋回をつづけている。


僧侶「警戒…されているのでしょうか」

勇者「お願いします! ボクたちは勇者の一族の末裔です!」

勇者「魔王の復活をとめるために、あなたの力を借りにきました!」

勇者「どうかボクたちに力を貸してください!!」

僧侶「お願いします…」


傭兵「あの鳥の炎…」

傭兵「おい鳥!! 鳥ぃ!」

僧侶「ちょっと! ダメですってば」

勇者「結局それしか呼びようがないよね」

傭兵「時間がねぇんだ! 高いところから偉そうにしてないで、さっさと下りてきやがれ」

炎鳥「…!!」バサッ バサッ

僧侶「だ、だめですってばそんな言い方。絶対怒ってますよ! 今度こそ黒焦げの消し炭にされちゃいますよぉ」

僧侶「もっと頭を低くしてお願いしましょうっ」

傭兵「なんで下りてこないんだ…」

僧侶「神獣と呼ばれる生き物は、人間と相まみえることはめったにないそうです」

勇者「でもボクたちはあの鳥が必要なんだ…なんとか仲間になってもらわないと」

傭兵「…ユッカ、あいつを叩き落とすぞ」

僧侶「ダメですってばぁ!」ギュー


勇者「どうやって」

傭兵「お前がまず牽制であいつにむかって炎でもなんでもいいから攻撃魔法を飛ばせ」

傭兵「ヒーラちゃんもだ」

僧侶「しません。お断りします」

傭兵「怒って向かってきた所を押さえつける」

勇者「…ほんとはこんなことしたくないけど、相手が話の通じない鳥ならしかたないよね」

勇者「いくよソル!!」

傭兵「おう!」

俺とユッカが剣に手をかけた瞬間。
炎の鳥は旋回を止め、俺にむかって真っ直ぐに突進してきた。

傭兵「…! 速ッ」


あっという間に巨体が俺の視界を埋め尽くす。


傭兵「くっ――」


炎鳥『ああっ、ソル…ようやく会いにきてくれたのですね』



傭兵「ああっ熱――燃え…てない」

炎鳥「…♥」バサバサ

傭兵「な、なんだ…?」

傭兵「おおいユッカ。俺はいまどうなってる…何も見えん」


勇者「……と、鳥にハグされてる。大丈夫…?」

僧侶「…あ、あの。神鳥様」

炎鳥『ソル…こんなに大きくなって』

傭兵「何の声だ」

炎鳥『私がわかりませんか。母のこのぬくもりを覚えていないなんて…ぐすん』

傭兵「…は?」

炎鳥『魔力はどこへ行ったのです。あなたに託した力はいずこへ…ぐすん』

傭兵「あ…? 喋ってる…? お前は一体…」

炎鳥『はっ! この姿では分からないのも無理はありませんね』


視界を塞いでいたまばゆい光が散って、唐突に視界が開かれる。

目の前には一糸まとわぬ姿をした、一人の女性が俺をじっと見つめて嬉しそうに立ち尽くしていた。


炎鳥「…グレンとそっくり♥ たくましくなりましたね、ソル」




第33話<求道者達>つづく


 

更新おわり
次回明日

第33話<求道者達>つづき



傭兵「だ、だれだ…」

僧侶「もしかして…伝説の不死鳥様が人でいらしたなんて」

勇者「違うよヒーラ。人間が鳥に変化したんじゃなくて、キュウちゃんと同じで動物が人間の姿になってるんだ」

炎鳥「…」ニコニコ

傭兵「……ま、まさか、あんた」

炎鳥「はい! あなたの母ですよソル!」

傭兵「……」

勇者「……え? 母? ママ?」

僧侶「…はい? えっと、今なんとおっしゃいましたか」

炎鳥「はじめまして。ソルの産みの母のニクスです」

僧侶「お母様……」

傭兵(頭がいてぇよ)

傭兵「冗談だって言ってくれ」

炎鳥「むぅ…」ギュ

傭兵「ひっ」

炎鳥「ほら、母のぬくもりですよ~」

勇者「わわわっ、そんなのエッチだよソル」

傭兵「ギャー服を着ろっ! たのむからっ」



 
  ・   ・   ・



炎鳥「…ぴったり!」

僧侶「薄着ですけど、よかったです」

炎鳥「ありがとう」

勇者「あの、ほんとにソルのママさんなんですか? そんなに若いのに?」

炎鳥「そうですよ。私は不死鳥ですから」

勇者「ボクのママじゃなくて…?」

炎鳥「え…?」

勇者「だって、ボクと持ってる魔力が…似ているような気がして」

炎鳥「あら…そういえばあなたの中に」

傭兵「まてまてまて」ガシッ

傭兵「ニクスって言ったな。いいから先にあんたの事情を説明しろ」

炎鳥「ソル…まさか母のことを信じていないのですか」

傭兵「当たり前だろ! 何が母だ! だれが自分が鳥の卵からうまれてきたって信じられるんだ」

炎鳥「あなたは卵生じゃないですよ」

傭兵「いいから! 知ってること全部洗いざらい話せ! 旦那についてもだ!」

炎鳥(怖い…反抗期ってやつかな…)



炎鳥「そうですね…遡ればあれは…何年…」

炎鳥「あなたいくつになりました?」

傭兵「25…もうすぐ6だ」イライライライラ

炎鳥「まぁ! もうそんなに!? どうりでグレンに似るはずですね」なでなで

傭兵「…早く話せ」イライライライラ

勇者「ソル、まぁまぁ座って。お茶でも飲みながら聞こうよ」

僧侶「そうですよ。せっかくお母様に会えたのですから」

傭兵「俺は絶対信じねーぞ…」


炎鳥「そうですね…ではあまり長い話ではありませんが、私とあなたのお父さんの馴れ初めについて…♥」

炎鳥「あぁあ、いまでも思い出すだけで顔から火が出そうなほど嬉し恥ずかしです」

傭兵(掻っ捌いて晩飯にでもするかこのアホ鳥)

炎鳥「あれは30年近く前。まだソルが生まれる前の話です」






【聖なる火山】



男「ったく! 何が山ごもりの修行だ!」

男「あの頑固ジジイ…俺をこんなところに寄越しやがって」

男「娯楽もない! 女もいない! ここで魔力を高めろだぁ!?」

男「殺す…グリモワに戻ったらあいつまじで髪の毛むしりとってやる」

男「…はぁ」

男「くそあちぃんだよ…何しろってんだよ…」

炎鳥「…クルルル」

男「あ? 何見てんだよ」

炎鳥「…クルルルル」

男「…でっけぇ鳥だなぁ。食料何日分だ」

炎鳥「?」

男「よく見りゃ美人な鳥だ…。この場合美鳥というのか?」



炎鳥「クルルル…」

男「あ、いや悪いな。ここはお前の巣だったか」

男「すまねぇ…すぐに荷物をまとめて立ち去る」

炎鳥「クルルル!」

▼炎の鳥は男にむかって灼熱を放った。

男「うわっ、あっつ――…くねぇ。熱くねぇ…」

男「何しやがった」

炎鳥「…クルルル♪」

男「か、からかってやがんのかお前…!」

男「あぁそうか。あのジジイ、この馬鹿でかい鳥をぶっ倒す実力を手に入れて帰ってこいってことかよ!」

男「来いよ! 俺の生まれのお国柄、炎の魔法にはちょっと縁があってな。鳥なんかには負けねぇぜ」

男「俺はグレン。王になる男だ!」

炎鳥「…クルルル?」


その日から私とグレンのお付き合いがはじまりました。



<数ヶ月後>


男「だめだ…力の差を感じる」

男「負け負け、昨日も負け今日も負け…はぁー…」

男「くそ…俺ではお前に勝てないのか? 鳥のくせに…」

炎鳥「クルルル♪」ぴたっ

男「な、なんだよ…。そろそろ飯にすっか」

男「にしても、だんだん寒くなってきたな。ここ火山だよな?」

炎鳥「…クルル」

男「お前となにか関係があるのか?」

炎鳥「…クルル」

男「…そうか。って、別にお前の言ってることがわかったってわけじゃないからな!」

男「ただなんとなくそう思っただけだよ」

男「お前、もうすぐ死ぬのか…? お前はこの山にとっての生命の源なんだな」

男「…」なでなで

男「なぁ、俺と交尾してみないか」
 



炎鳥「?」

男「交尾だよ交尾。ほら、虫も動物もそこら中でやってんだろ」

炎鳥「クルルル…?」

男「鳥ってどこでするんだろ」さわさわ

男「挿れる穴ある? 人間の精子で妊娠すんのかな」

炎鳥「!!」ベシッ

男「うわっ、すまん…尻穴みられたくらいでそんな怒るなよ」

男「その様子だとお前だって跡取りが必要なんだろ?」

炎鳥「クルルル…」

男「ん。いいこと思いついたぞ」

男「確か荷物の中にグリモワ城から盗みだした、魔術書が…」

男「…あった」

男「うまくいくかはわからねーけど…」

男「この魔法陣に乗れ」ゴリゴリ

男「秘術:神人変化――――」


男「おお…なんたる美しい少女…」

男「それがお前の人間の姿か…」

炎鳥「…? わっ」

男「ま、まていますぐなにか羽織る物を…さすがに目の毒だぜ」

炎鳥「グレン…グレン!」

炎鳥「交尾? 交尾をしてくれるのですか」

炎鳥「ああっ♥ この姿なら本当に私と交尾ができるのですね」ギュッ

男「おわっ…に、ニクス…」

炎鳥「はい、あなたのニクスです♥」



  ・   ・   ・



炎鳥「それ以降グレンと私はオスとメスの関係になったのです…♥」

傭兵「すまん…話がぜんぜん頭に入ってこねぇ…」

勇者「じゃあほんとにソルママさん!?」

僧侶「ソル様のお母様なのですね!!」

炎鳥「はい。この子は私がお腹を痛めて産んだ子ですよ!」



僧侶「ということは、サマンサさんの家に残っていたグレン様はやはり…」

炎鳥「グレンは私の夫でこの子の父です♥」

傭兵「……そっちはそんな気がしてたが」

傭兵(ってことは、グレンがヒーラちゃんの言っていたとおり、太陽の国の王族なら)

傭兵(グレイスやユッカの親父は俺の従兄弟にあたるわけか…)

傭兵「ちょっと待て! じゃあ親父だとして、グレンは今どこでなにしてる!」

傭兵「俺はなんでガキの頃から傭兵なんてやってんだ!」

炎鳥「そ、それは…」

炎鳥「あなたを産んでからというもの、私はグレンとはもうずっと会っていないのです」

傭兵「どうして」

炎鳥「私達不死鳥は生と死、再生と破滅を炎の中で繰り返します」

炎鳥「グレンと出会った時、ちょうど私は破滅期だったので、次なる再生のために私は火口の中で長い眠りにつきました」

勇者「ご、ごめんなさい。寝てたのにボクたちの都合で起こしちゃいました」

炎鳥「いえ、いいんですよ。こうしてかわいい我が子の顔をみられたのですから」

傭兵「不死鳥ってのはほんとなんだな」

炎鳥「いままでの話は全部本当ですよ!?」



俺はいままでの経緯をおおざっぱに話した。


炎鳥「そうですか…グレンはもういないのですね」

傭兵「生きてるかどうかはわからねーが、俺を捨てたことは間違いない」

炎鳥「グレン…」

傭兵「だいたいなぁ、いろいろ話を聞く限り人の風上にも置けねぇ野郎だぞ」

炎鳥「そんなことありませんよ!」

炎鳥「私のような鳥にも優しい、とっても…素敵な方でした」

傭兵「メスだからだな。こんな山に放り出されてメスならなんでもよくなっちまったんだろうよ」

勇者(ソルと一緒じゃん)チラッ

傭兵「あん?」グリグリ

勇者「ぎゃうっ! 何も言ってない!」

僧侶「うふふ。ソル様きっとお母様に会えて照れくさいのですよ」

傭兵「あのなぁ…もっと俺に鳥の血が混じっているっていう事実を深刻に受け止めようぜ」


勇者「でもソルはソルでしょ?」

僧侶「そうですよ!」

傭兵「…そりゃそうだが」

炎鳥「あらら? うふふ、もしかしてソル。その子たちは」

勇者「ご挨拶が遅れてごめんなさい」

勇者「ボクはユッカって言います。勇者やってます」

勇者「よろしくお願いしますソルママさん!」

炎鳥「まぁ勇者!」

傭兵「さっき俺の経緯ついでにちらっと話したが、こいつのガードをしながら旅をしてる」

僧侶「私はヒーラです。はじめましてソル様のお母様」

傭兵「同じくユッカのガードの1人だ」

炎鳥「な、なるほど…しかしソル」

傭兵「なんだ」

炎鳥「どれだけ素敵なかわいい子に囲まれても、お嫁さんは1人にしなさいね?」

傭兵「は? そんな紹介じゃなかっただろ」

炎鳥「わかってるんですよ。私に見せに来るほどにその子たちを愛してるのでしょう?」


炎鳥「しかしいけませんよ。1組のつがいとなってから存分に愛しなさい」

炎鳥「そもそも、複数の女の子に手を出すなんて不道徳だとおもいませんか?」

僧侶(思います)

勇者「そうなのかなーそうかもなー、うーん」

傭兵「鳥に人間の道徳を説かれたくねぇな」

炎鳥「グレンは私に人の世の理をたくさん教えてくれました」

炎鳥「ゆえに私は未来永劫、あの人の女なのです…♥」

傭兵「それは糞親父があんたを独占したかっただけだと思うぞ…」

傭兵「浮気症のくせに独占欲は強いって…最低な男だな」

勇者「ほんとにソルと一緒じゃん」

傭兵「あ゙!?」グリグリ

勇者「あ゙ーやめてよ゙ぉ!」

炎鳥「まぁまぁ。いずれ時がきたらその2人の子のうちのどちらかに」

傭兵「2人じゃないんだ」

炎鳥「!? ま、まだ他にも」

傭兵「そいつがいま大変なことになってて」

傭兵「俺たちはそいつを助けるための力を求めてここへ来た」

傭兵「ここからが本題だ。頼む。不死鳥の力とやらを貸してくれ」


炎鳥「力…ですか」

勇者「昔のボクのご先祖様は、ソルママさんの背中にのって魔族領に入ったと言われてるんです」

勇者「それってほんとなんですか?」

炎鳥「うーーん…乗せたような乗せてないような」

炎鳥「悠久の時を生きる私にとって、あまりに些細な事なので…記憶が…」

炎鳥「グレンとの濃密な年月は深くこの身に刻まれていますが♥」

傭兵「過去はどうでもいい。いまあんたの背中に乗れるのかどうかだ」

炎鳥「……っ」

傭兵「なんで暗い顔するんだ」

炎鳥「ごめんなさいソル。結論から言うと不可能です」

傭兵「何」

炎鳥「私は現在は再生期にあたり、力を徐々に取り戻していく段階なのです」

炎鳥「全盛期のような力をもってあなたたちを助けることはできません」

炎鳥「この山を見てください…この山は私の命に呼応します」

炎鳥「私はまた眠りにつかなくてはなりません…」


傭兵「あとどれくらい待てばいい」

炎鳥「短く見積もって100年くらい…」

傭兵「待てるか!!」バシッ

勇者「そんなの待ってたらボクたちよぼよぼになっちゃうよ」

傭兵「そんなに生きるか!」バシッ


傭兵「頼む。世界の危機が訪れようとしているんだ」

傭兵「あんたのことをいまさっき母親だと知ったような不肖の息子だが、なんとか力を貸してほしい…」

炎鳥「あなたが生まれた時、私はありったけの力を託しました…」

炎鳥「ですがあなたはその力を譲渡した。違いますか」

傭兵「……そうだ。わけあって、俺は全ての力を失った」

勇者「え……」

僧侶「…ソル様」

傭兵「これも…自業自得なのか…? 俺の独りよがりのもたらした結末なんだろうか」

傭兵「……マナ、俺たちはお前の所へ…行けない」



炎鳥「…ソル」

炎鳥「ですが大丈夫ですよ」

炎鳥「あなたの想いの力はこの子にしっかりと宿っています」


炎鳥「そして、全ての因子はこの瞬間に――」

勇者「…?」

炎鳥「ユッカ。あなたが持っていたのですね」


ニクスはユッカにむかって微笑みかけた。

その途端、ユッカの肩から下げたポーチが光りはじめた。


勇者「え……なにか光ってる」

ユッカは慌ててポーチを開いて中身をとりだす。
光の正体は、小さな卵だった。


僧侶「それ…霊泉山で盗賊さんにもらった…」

傭兵「お前まだ持ってたのか」

勇者「う、うん…なんで光ってるの」



傭兵「コレは一体なんだ」

炎鳥「それは私が遥か昔に各地で産み落とした卵です」

炎鳥「私の魔力がつまっています」

傭兵「なに?」

炎鳥「もともとはなにかあった時のための保険のようなものですが」

炎鳥「あなたが拾うなんて、運命とはおもしろいものですね」

炎鳥「ユッカ。それを飲みなさい」

炎鳥「あなたの力を引き出してくれるでしょう」

勇者「飲むって…! 卵を!?」

炎鳥「殻がだんだんやわらかくなってきているでしょう?」

炎鳥「大丈夫。中は白身と黄身だけですよ」

炎鳥「一口でどうぞ」

勇者「う、うん…い、いただきます?」


ユッカはとけはじめた金色の卵を口いっぱいにほおばった。
ゴクンと喉を鳴らし、喉を通って胃の中へと滑り落ちていく。

勇者「んっ、んぅ~!」


俺たちが見守る中、ユッカは天を仰いだ。
その直後、全身が真っ赤な浄化の炎に包まれはじめた。


傭兵「ユッカ!!」



第33話<求道者達>つづく


   

更新終わり
次回明日

第33話<求道者達>つづき



ユッカを包む火柱は激しさを増し、雲を切り裂き、空高く立ちのぼった。
そのあまりの神々しいまばゆさに気圧され、俺とヒーラちゃんは固唾を飲んで見守る。

傭兵「ユッカ…」

僧侶「ユッカ様…これは一体なにが起きているのですか」

炎鳥「…目醒めの時が来たのです」

傭兵「目醒め…?」

炎鳥「彼女のもつ全ての力を解き放つために」

炎鳥「彼女が失われた自身を取り戻すために。ユッカはいまあの輝きの中でひとときの夢を見ています」

炎鳥「それは決して失ってはいけないあの子の大切な思い出達」

傭兵(ユイさん…)

傭兵「あんたには…ユッカのことが全てわかるのか」

炎鳥「…はい。ですが、あなた方のしたことを咎めているわけではありませんよ」
  
炎鳥「だから心配しないで」

炎鳥「この天をも貫く巨大な火柱は彼女の心の強さ……ユッカはこの先なにがあっても折れることはありません」

傭兵「だが…ユッカは母親を失って…」

炎鳥「どんなに忌まわしい思い出であっても、ずっとあなたが側にいてあげたから…」

炎鳥「それだけであの子は大丈夫」




  ・    ・    ・




ボクの中に熱いものがたくさん流れ込んでくる。

流れ込んできた魔力が、ボクの魔力と同調して、溶け合って。

熱い…だけど痛くない。不思議な感覚。

あたたかくて、優しくて…嬉しい…。

こんなことが、前にもあった気がするんだ。
  
どうしてだろう。まるで、ソルに抱かれてるみたい…――




夢を見ているんだ。

ちっちゃなボクはお姫様で、ソルが王子様なんだ。
ふかふかのベッドの上で泣き虫なボクはソルにぎゅーって痛いくらいに抱っこされてる。


傭兵『これが、お前がどんな悪い奴にも立ち向かえるような、力と勇気になりますように』

傭兵『ユッカ…お前のことを、離れていても護るから』

傭兵『だから強く生きて…立派な勇者になってくれ』

ソル、どうして君も泣いているの。大丈夫?

傭兵『俺の想いが、お前をどんな災厄からも護るから…』

傭兵「愛してるよ…ユッカ」 

そんな顔しないで…どこへ行くの…行っちゃやだ!




  ・    ・    ・



勇者「ソル!」

傭兵「ユッカ…起きたか…よかった」

傭兵「はぁ…本当によかった…火柱が消えたと思ったら急に倒れたからびっくりした」

傭兵「なんともないのか? 意識はしっかりしてるな?」

勇者「うん……たくさん、夢を見たよ」

傭兵「ユッカ…?」


ソルの安堵した顔をみた瞬間、
幼いころから頭の中にもやもやと立ち込めていた霧が晴れていった。

そうだったんだ…ボクのこの魔力の正体は君だったんだね。

道理で――心地が良いわけだよ。


ボクの頬を伝う涙をぬぐおうとするソルの手を握った。
なんの魔力も感じられない、だけどたくましい傷だらけの腕。

勇者「ずっと、護ってくれたんだね」

傭兵「ここは大丈夫だ…周囲に敵はいない」

勇者「…」ふるふる

勇者「もう、ソルったら」



勇者「全部終わったら、キミとお話したいことがあるんだ」

勇者「たくさん…たくさんね、えへへ」

傭兵「ユッカ…? お前…まさか本当に記憶が」

僧侶「ユッカ様…平気なのですか」

勇者「…うん、心配してくれてありがと!」

勇者「ソルママさん。ボクたちもう行くよ!」


炎鳥「…ユッカ、覚醒の時です」

炎鳥「あなたも、人を超え、森羅万象の極地へとたどり着いた」

勇者「マナも…あの時こんな気持ちだったのかな」

勇者(いまならわかる。力の振れ方が少しかわるだけで、なにもかもを滅ぼしてしまう)

僧侶「ユッカ様…すごい魔力…」

僧侶「信じられません…一体私の何十…いえ、何百倍」

勇者「尖りすぎた力がいずれ災厄となる…グリモワの王様の言っていた通りだ」

勇者「だけどボクはこの力の使い方を間違えないよ。マナを取り戻すことだけに全力を注ぐ」


炎鳥「行き先はわかりますか」

勇者「うん。マナが呼んでいる方向でしょ」

傭兵「呼んでるって…声なんて」

勇者「あっち」ピッ

勇者「同時に嫌な感覚もする。きっと大勢の魔物だよ」

傭兵「…」

傭兵(まるで万里を見通しているかのような…神がかり的な魔覚だ)

傭兵(これが真の勇者の才能……覚醒か…)

傭兵(ユッカなら…世界で唯一災厄に打ち勝てるかもしれない)

僧侶「すごいです…私なんかじゃ何も感じ取れませんよ」

炎鳥「いまユッカの魔覚は以前より遥かに研ぎ澄まされて、人の心の機微さえも敏感に捉えることができるでしょう」

傭兵(今のお前なら、何もかもが手に取るようにわかるというのか…)

勇者「行こう」

傭兵「だがどうやって。手段がない」

勇者「ソルママさん、一度鳥の姿にもどってくれませんか」

勇者「見よう見まねだけど、作り出せるかもしれない」




▼勇者は大きく腕をふりあげた。

▼激しい地響きと共に火口から灼熱が吹き出し、炎や溶岩が空中で巨大な鳥の姿へと形作られてゆく。


傭兵「なっ…」

僧侶「鳥!」

勇者「こんな感じかな。もうちょっと翼おっきいほうがいいかな」ズズズッ

炎鳥「形は多少違っても大丈夫だとおもいますよ」

傭兵「まてまて、これはなんだ」

勇者「この創りだした鳥に乗っていこう」

傭兵「創りだしたって…これほんとに乗れるのか…?」

勇者「うん」ぴょん

勇者「ほらね。速度がでるかどうかはわからないけど、飛べるよ」

勇者「ふたりとも早く乗って」

僧侶「それ、熱くないですか…? 私炎の属性じゃないので…」

傭兵「なら…大丈夫だ。ユッカの炎は善人を焼くことはない」

傭兵「そうだよな?」

炎鳥「それが私があなたに与えた力、あなたが彼女に託した力」

炎鳥「行ってらっしゃいソル。そしてまたママに会いに戻ってきてね」



僧侶「わぁ…あったかい…ユッカ様に抱っこされてるみたいです」

僧侶「不思議な乗り心地ですね」

僧侶「雲の上にのったらこんな心地でしょうか?」

傭兵「ヒーラちゃん、言っとくが雲は乗れないぞ」

僧侶「え、そうなんですか…? 夢が壊れました」

傭兵「俺もこの炎はなつかしい感覚だ」

勇者「いくよ。ボクの体につかまっててね」

勇者「ソルママさん。行ってきます」

僧侶「ありがとうございました」

傭兵「…元気でな」

炎鳥「いってらっしゃい。今度あうときはお嫁さんをひとり選んでつれてくるのですよ」

傭兵「いやぁそれはなぁ…」チラッ

勇者「えへへ。終わった後が大変そうだね」

僧侶「はい!」



勇者「そうだ。少しだけ待ってて」ぴょん

勇者「もうしばらく戻って来られないかもしれないから」

勇者「スレイプニル…いままでありがとう」

馬「ヒヒン!」

勇者「今日から自由だよ…」なでなで

勇者「でもまたボクたちに会いたくなったら呼んでみて。いつでもボクが迎えにくるから」

勇者「元気で過ごしなよ」なでなで

馬「ヒヒン」ぺろっ

勇者「うん。わかった。マナのことはボク達にまかせて…じゃあねスレイプニル」


勇者「行こう!」




【大空】


僧侶「すごい…ほんとにほんとに空の上ですよ! 」

僧侶「この高さから落ちちゃったら間違いなく死んじゃいますね…」ハラハラ

勇者「怖い?」

僧侶「いえ…ユッカ様を信じてます」ギュ


傭兵「もう火山があんなに小さく…」

僧侶「前方見てください! 雲の切れ間に巨大な山脈が見えます」

傭兵「あれを越えればいよいよ魔族領へ突入か」

勇者「この鳥、夜は目立ちすぎるかもしれないね」

勇者「だけど朝を待ってはいられないボクたちに時間はないんだ」

傭兵「あぁ」

勇者「何が出ても強行突破! いいね?」

僧侶「はい!」

傭兵「ここまで来たんだ。お前に全部委ねたぞ」

勇者「任せて! 飛べ、もっと速く…!」



【魔族領】


魔女「……!」ピクッ

魔女「…いま、ユッカの気配がした」

魔女「まだ遠い…けど、こっちに来てる」

サキュバス(そう…やっぱり来ちゃうのね)

闇剣士「奴は諦めていなかったか」



闇武将「神殿島上空の守りを固めろだぁ?」

闇武将「何がくるってんだよ」

闇剣士「勇者だ」

闇武将「勇者って…あのなぁレヴァンよぉ、ここは隔絶された世界だぜ」

闇武将「人間共がどうやって……あーはいはい、やりゃいいんだろ」

闇武将「どっちの方角かわかってるなら教えろ。俺の空戦部隊を迎撃に出す」

サキュバス「あら、なんだか素直じゃない」

闇武将「う、うるせいやい…」

闇剣士「恩に着る。少しでも足止めせねばならんのでな」

闇武将「なぁに明日の今頃には魔王は蘇ってるんだろ。一日でたどり着けるかよ」

闇剣士「そうかもしれんな」

闇剣士「準備を急ぐぞ。各地の豪族達の集結は」

サキュバス「おおかた8割は到着済み」



【番人の山・上空】



傭兵「山脈の上にでるぞ」

勇者「う…ッ」

傭兵「どうした」

勇者「なにか…嫌な感じがする」

勇者「人でもない…魔人でもないざわざわした嫌な気配」

勇者「何…この得体のしれない恐怖…」

僧侶「私…これ以上近づきたくないです…」

勇者「大丈夫ヒーラ。ボクがついてる」

傭兵「尋常じゃない殺気…俺も肌がピリピリしてきた」

勇者「山の中からじっとボクたちを見てる。こんなに距離があるのに」

傭兵「グリモア王は魔族ですら彼らを支配出来ないと言っていたな」

傭兵「本当にそんなやつらがひしめいているのか…」

僧侶「馬車で行かなくてよかったですね…」

勇者「山に降り立ったら間違いなく死んじゃうだろうね」

傭兵「ユッカ。前方、雲の中に何か影が。敵だ!」

勇者「…うん。でもこいつらは普通の魔物だよ」

勇者「ボクが撃退する! しっかりつかまって!」



竜騎兵A「うおお! 魔族領へは立ち入らせん!」

竜騎兵B「包囲して叩き落とすぞ!」

竜騎兵C「そしたらあとは番人共が勝手に殺ってくれるぜ!」


傭兵「ユッカ、避けられるか!」

勇者「…遅い!」

勇者「浄化の炎…ボクの敵を撃て!」

▼紅蓮の鳥は激しい熱線を吐き出した。

竜騎兵「なっ…なんだこの魔力―――うわあああっ」


勇者(マナ。待ってて)

勇者(すぐに迎えに行くから!)

傭兵「数が多い!」

勇者「突破する!! ヒーラは結界を球状に展開」

勇者「このまま振り切るよ!」

僧侶「はい!」


傭兵(なんてやつだ。いまや俺なんてなんの役にもたたないじゃないか)


傭兵(間違いなく、ユッカは人類の希望だ)

全人類の希望をのせて、紅蓮の鳥は闇夜を切り裂いて飛んだ。

背後をふり返って、空の上からみた地表にはポツポツと小さな灯りが見えた。

遠くのあの少し大きな灯りはグリモワだろうか。


傭兵「…人の命の光だ」

傭兵「この世界には命が絶えることなくずっと続いている」


親父が国を捨てたこと、俺が親父に捨てられた事、ユイさんに拾われた事も、ヒーラちゃんとの出会いだってそうだ。

全てが今この瞬間に集約される。ユッカにまつわる全てがだ。

傭兵(今わかった。すべてはユッカのためにあったんだ)

傭兵(俺はユッカという存在を真の勇者へと仕立てあげるための因子の一つにしか過ぎない…)

傭兵(だが…俺の命には確実に、意味があった!!)

傭兵(そうだよな、ユッカ? ユイさん…)



<翌日>



【闇の神殿・天空広場】


闇剣士「いつの時代も世界を作ってきたのは一握りの求道者だ」

闇剣士「理想だけではなく、時には武勇と叡智をもって光の道を示す」

闇剣士「人間どもはその存在を勇者と呼ぶ」

闇剣士「だが我々は違う。我々魔族にとって、輝かしい光の道など必要ない」

闇剣士「隔絶されたこの地に追いやられ、肩身を狭く暗闇に生きてきた我々に必要なのは何だ」

闇剣士「それは恐怖という生命が決して抗えぬ感情。絶対的な支配の力だ」


闇剣士「今宵、我らが恐怖の王は1000年の時を越え、再びこの世に降臨する」

闇剣士「我々はその存在を魔王と呼ぶだろう」

闇剣士「魔人どもよ立ち上がれ! 魔族が世界を支配する時が来たのだ」

魔人達「ウオオオオ!!」


魔女「…」

闇の石「…」カタカタ

魔女「間に合わなかったね、ユッカ」



第33話<求道者達>おわり

更新終わり
次回明日か明後日





第34話<満月の夜に>




使い魔「報告! 勇者の進撃が止まりません!」

使い魔「いまもなおこの神殿島を目指し、まっすぐ魔族領上空を飛行中の模様」

闇武将「おいおい、龍騎の一個小隊が全滅かよ…たまんねぇな」

蟲魔人「私も迎撃に出マス。お任せください」

闇武将「そうなるよなぁ」

闇武将「レヴァンが出てくれたらあのバカでけぇドラゴンで手っ取り早く片付けてくれそうなんだが、あいつが祭事を仕切ってるからな」

蟲魔人「もうレヴァン様を始末する計画はよいのデスカ?」

闇武将「やめだ。色々あいつのでかさにゃ参ったぜ」

闇武将「いまあいつを殺っちまうと、いざって時に勇者を足止めする駒もねぇからな」


蟲魔人「マナ様を花嫁にするというノハ?」

闇武将「…オレにゃ無理だ。もっとでかい男として生まれ変われたら、そん時は本気でアタックしてみるぜ」

蟲魔人「そうですカ。では出撃しまス」

闇武将「おう。武勲を上げろ」

蟲魔人「御意」

蟲魔人「ところでオーグ様は戦闘なさらないノデ?」

闇武将「オレ様は自分の手を汚したくねぇんだよ」

蟲魔人「それでこそ次代の王で御座いマス」

闇武将「バカ言え。んなもん魔王っての譲ってやるよ」

闇武将「そいつがどんだけやり手の支配者かはしらねーけどな」

闇武将「ま、いざとなったら白兵戦でもなんでもやってやるって…」



【魔女の部屋】


サキュバス「ねぇねぇ。勇者達来ちゃうわよ」

魔女「…いまの速度だと間に合わない」

サキュバス「そうなの? よくわかるわね」

魔女「お互いの距離を感じとれる…ユッカもきっとわかってる。だから少し焦ってるような気配」

サキュバス「ふーん」

魔女「あなたはユッカとつながってるんじゃないの」

サキュバス「それがさぁ、さっぱりあの子のことがわからなくなったのよね」

サキュバス「こうやって指をパッチンして、妨害してみても」パチンッ

サキュバス「なーんの反応も無し」

サキュバス「まるで…あの子生まれ変わっちゃったみたい」

サキュバス「あたしの呪い…解けちゃったのかな…?」

魔女「…そう」



サキュバス「ねぇほんとにやるの?」

魔女「私はそういう運命の下に生まれてきた」

魔女「血に抗うことはできない。それはあなたも同じでしょ」

魔女「あなたも、血を護るためにユッカを利用した」

サキュバス「でもおチビ、あんた死ぬのよ? 命より大切な使命なんてあるっていうの」

魔女「…」コク

魔女「私の命は魔族の未来のために捧げられる。それだけ」

サキュバス(でもあんたは、人間として育ったでしょ…)

闇剣士「ここにいたか」

サキュバス「あ、レヴァン」

闇剣士「間もなく儀式がはじまる。封印の間で闇の石を使い、マナに魔王様の魂を憑依させる」

サキュバス「復活は封印の間で行うのね?」

闇剣士「台座より闇の石を動かせないものでな」

闇剣士「その後天空広場に移り、魔王様のお言葉をもって再臨の儀とする」

闇剣士「上空の雲はぎゅる…コアドラゴンが散らしている」

サキュバス「満月の夜…」


闇剣士「マナ、心の準備はできているか」

魔女「…」コク

闇剣士「兄を非道だと恨むか」

魔女「別に……それが私の使命。器の巫女として生まれた意味」

闇剣士「最後にお前の願いをなんでも聞こう。言ってみろ」

魔女「……無い」

闇剣士「…」

魔女「けど、もう誰も傷つかない世界がいいな…」

闇剣士「…!」

闇剣士「安心しろ。人間は魔王様という絶対的恐怖に屈し、二度と我々を迫害することはない」

闇剣士「世界の統治は全て魔王様に任せればいい。あの方ならより良い世界を創ってくださる」

魔女「…魔王」

闇剣士「お前の魂が、安らかにあらんことを祈る……」

闇剣士「……ッ、マナ…」ガシッ

闇剣士「ぐ…ぅ…まだ、わずかな時間はある。や、やり残したことをやっておけ」フラッ

ガチャッ



サキュバス「頭痛いの?」

闇剣士「時々だ…マナのことを考えると途端に痛み始めることがある」

闇剣士「サキュ。お前には伝えておかねばならんことだが、私はレヴァンであるがレヴァンではない」

サキュバス「…」

闇剣士「レヴァンというのは私の魂に刻まれた真名だ」

サキュバス「あたしも似たようなもんだから知ってるわよ」

闇剣士「いまのこの肉体は、古の私の血を脈々と受け継いでいるが、それも時代と共に薄まった」

闇剣士「所詮は赤の他人。マナと腹違いの兄の物でしかない」

闇剣士「私の魂がこの肉体に完全に憑依した時…元々あった彼の魂は消失した…だが」

闇剣士「…なぜだ。私はマナに情のひとつも抱いていなかったはずなのに」

サキュバス「それ、消えたんじゃなくて」

サキュバス「2つの魂が混ざっちゃったんじゃない?」

闇剣士「! 混ざり合った…?」

サキュバス「だからいまのあんたは魔王の忠実な家臣レヴァンであると同時に」

サキュバス「ただの妹想いのお兄ちゃん。それでいいじゃない」

闇剣士「……」



闇剣士「…妹想い…か」

闇剣士「その兄である私が、マナの魂をこの世から消し去ろうとしているのだ」

闇剣士「我が主である魔王様と引き換えに…」

闇剣士「赦される…ことか…?」

サキュバス「……」

闇剣士「ぐ…ああっ、魔王さま…いまお側に…」よろっ

闇剣士「なんとしても…あなた様を…現世に…」

闇剣士「先に…戻る…ッ」ふらっ

サキュバス「レヴァン……あなた」



サキュバス「ああ…満月の夜が来るわ…」

サキュバス(もうあの戦いから1000年も経ったのね)

サキュバス(どちらが勝つにしても…世界は新たな節目を迎える)

サキュバス「ユッカ…あんたのことも少しは応援してあげる」

サキュバス「世界が欲しいなら、挑んできなさい」





【闇の神殿・封印の間】



闇剣士「私とマナだけで入る。お前たちは外で待っていろ」

サキュバス「ええ。わかったわ」

闇武将「おいおい魔王爆誕の世紀の瞬間を拝ませてくれないのかよ」

サキュバス「いいから、あんたはあたしとここにいなさい!」

サキュバス「最後くらい2人にしてあげなきゃ」

闇武将「お、おう…頼んだぜレヴァン」

闇武将(あばよオレの花嫁ちゃん…残念でたまらねぇが…)

闇剣士「サキュ。すまないな」

サキュバス「はいよダーリン。グッドラック」

サキュバス「じゃあね。おチビ……」

魔女「…」ギュ

サキュバス「おチビ?」

魔女「お兄様をよろしく」

サキュバス「…! 任せて」

闇剣士「行くぞマナ」

魔女「…」コク




  ・   ・   ・



闇の石「…」カタカタ


魔女「…これに触ればいいの」

闇剣士「怖いなら、一度お前を眠らせる。全てが終わり、目覚めることはない」

闇剣士「せめてお前を安らかに――」

魔女「…いい。自分の最期の瞬間くらい、どうなるかこの目で見ておきたい」

魔女「きっとあの世でのいい土産話になる」

闇剣士「お前がそんなことを言うなど、少々面食らった」

闇剣士「強いのだな…お前は…」

闇剣士「私が知らぬ間に…強くなった」

闇剣士「何がお前をそこまで強い子にした」

魔女「仲間」

闇剣士「…ッ」

魔女「ユッカ達がいたから、私は私という自我を得た」

魔女「だから…短くても…とても、素晴らしい人生だった…」


闇剣士「最後に教えてくれ! 私は…間違っていたか」

魔女「迷ってはダメ。あなたは私にかわってこの世界の未来を背負う義務がある」

闇剣士「…あぁ」

魔女「行ってきますお兄様」

闇剣士「…マナ。また輪廻の果てで会おう」

魔女「………」コク

魔女(1号ちゃん…逝くときは一緒だよ)ポゥ

魔女(ずっと一緒にいてくれてありがとう)

魔女(さようならおじいちゃん)

魔女(さようならヒーラ)

魔女(さようなら…ソル)

魔女「…ユッカ」

▼魔女は闇の石に触れた。

▼闇の石は輝きを放ち、マナを闇に包み込んだ。

魔女「…!」



  
   ・   ・   ・



 『汝、其の体、我の為に捧げよ』


魔女「ここ…は…」

魔女「暗い…真っ暗な海…」

魔女「ここは私の意識の底…?」


 『汝、其の命、我の為に捧げよ』


魔女「この声…あなたが…魔王…?」


 『汝、其の魂、我の為に捧げよ』


魔女「私は…死ぬんじゃないの? あなたに追い出されて…消えてなくなるはず…」 


 『汝、其の全てヲ――――我に――』

  ズズ……


魔女「……!!」

魔女「なに…このドロドロ…」

魔女「は、離して……!!」

魔女「こんなに黒い意識……違うッあなたは違うッ!」

魔女「あなたは世界を導かない!」

魔女『あなたは全てを壊――――




魔女「…!」

闇剣士「おかえりなさいませ、ご気分はいかがですか」

魔女「…魔が満ちる。今宵は満月…か」

闇剣士「…! おお、魔王様…心より貴方様の再臨をお待ちしておりました」

闇剣士「どうかその偉大なるお力で我が一族をお導きください」

闇剣士「起き上がれますか」

魔女「肉がよく馴染む」

魔女「だがこの脆弱で貧相な肉体」

▼魔王は闇の魔剣士の顔面を殴りつけた。

闇剣士「…!」

魔女「汝のその醜い仮面を拳で割ることもかなわぬ」

闇剣士「申し訳ございません」

闇剣士「しかしその少女の持つ特異性はまさに王たる器」

闇剣士「まごうこと無く貴方様の血統でございます」

魔女「魔族の血は…幾千年の時を経て薄まるか」

魔女「汝とてその仮面の下は、混じり気のある下等種でしかない」

闇剣士「…滅相もございません」



闇剣士「私の魂は貴方様の忠実な眷属。代を経て様変わりしても、この忠誠心だけは変わりません」

闇剣士「あちらに書室を用意してございます」

闇剣士「儀式までの束の間の時間ではございますが、なにとぞ現世の理をお修めください」

魔女「無用」

魔女「この器の集積した数多の智」

魔女「器の記憶を辿り、既に世の理は掌握している」

闇剣士「さすがでございます」

魔女「月光の下に我が眷属共を一堂に会せよ」

魔女「我が復活を存分に祝うが良い」


闇武将「出てきたぜ。魔王様!」

サキュバス「はぁーい。魔王様、1000年ぶり?」

サキュバス「……無視かい」

闇剣士「まだ再臨なされたばかりだ。控えろ」

闇剣士「こちらです魔王様」



闇武将「あれが魔王…か、格がちげぇ…」へたっ

サキュバス「…ぐすっ、ぐすっ」

闇武将「な、何泣いてやがる。いやわかるぜ、近くにいたら泣きたくなるほどの荘厳さだ」



<同刻>



【魔族領・上空】


勇者「…そんな…」

傭兵「どうした」

勇者「マナの意識が感じ取れなくなった」

勇者「それと…とてもぞわぞわする嫌な感じ…」

傭兵「何ッ! まさか」

僧侶「間に合わなかった……マナちゃんが…」

傭兵「マナが…魔王に…?」

勇者「急げ、急がなきゃ!!」

勇者(マナ…嘘だよね…キミが魔王なんかになるわけがない!)

勇者(お願いだよマナ…返事をして)

勇者「応えてマナ!!」



バサッ バサッ


蟲魔人「ククク…祈ってももう間に合わんゾ!」

傭兵「野郎。迎撃に来やがった」

勇者「突っ切る! そこを退け! 道を譲らないなら…!」

蟲魔人「一度負けた貴様らごときが勝てるとおもうなアアアア!!」

勇者「叩き落とす!」

▼勇者は光の熱線を両手から同時に放った。

▼放たれた熱線は瞬時に蟲魔人の両翼を焼ききった。

蟲魔人「なに…ッ! ぎあああああ!!」

蟲魔人「マ、魔界蟲ども、私を支えるノダ!」

僧侶「いい加減に墜ちなさい! 」

▼僧侶は水流を蟲魔人に叩きつけた。


蟲魔人「貴様ラアアアァァァァ――」

蟲魔人「だが手遅れダ! ハハ、ハハハ!!! ガフッ」





【闇の神殿・天空広場】




闇武将「野郎ども! 整列!」

魔人A「オオオ…遂にこの時が」

魔人B「魔王様か…? どこにいる?」


闇武将「魔王様の御出座である!」


コツ コツ

魔女「……」

魔人A「オイオイあれが魔王様の現世での器かよ。ちんちくりんだぜ」

魔人B「お前しらなかったのか?」

魔人C「ほら、聖地侵攻の少し前、一時期魔界が大騒乱になってたろ」

魔人A「器とやらをめぐって。豪族たちが血で血を洗う争いをしたってアレか」

魔人B「まさか本当にあの小娘が魔王様の器だとはな」

魔人C「危うく俺たちの手で壊しちまうところだったぜ」



ざわざわ…


魔女「者共…面を上げよ」

魔女「我、魔王なり」


魔人A「こ、この気迫…本物だ…」

魔人B「にわかには信じがたかったが、魔王様がこの世に再臨なされた!」

魔人達「ウオオオオオオ!!」


闇剣士「静まれ!」

闇武将「ええい静まれクソ共!」

闇武将「偉大なる魔王様の神言である。みな心して拝聴せよ」

闇剣士「お願い致します」

闇剣士「我ら魔族にお導きを。新たなる指導者として、世界を手中にお収めください」

魔女「……」



魔女「古の争いより、千に及ぶ時を数え、我、此処にいずる」

魔人A「…」ゴクリ

魔人B「魔王様ー! 俺たちに未来をー!」

魔人C「魔族による世界制覇だああ!」

闇武将(あの野郎ども…)

闇剣士(待てオーグ、魔王様のおとなしくお言葉を聞け)


魔女「我、太陽の勇者に敗れたり」


魔人A「次は勝てます!」

魔人B「今度の勇者はちんちくりだそうですぜ! ハハハ!」

魔人C「俺たちに力を!」


魔女「我が前世での唯一の過ち……」

魔女「其れは種による支配を目差した事」

闇剣士「…!」


魔人A「あらぬる種の垣根を超えて、全土を治めてくれるということですか」

魔人B「魔族も人間も…或いはあの恐ろしい番人共でさえも!?」

魔女「基より、種など不要」

闇武将「……は?」

魔女「我以外不要。我、全能なる王にして、唯一の神なり」

闇剣士「な…」

魔女「汝ら、其の命、全て我が神充の為に捧げよ」

闇剣士(何を……)

魔女「災厄:マナドレイン」

▼魔女の手のひらから暗黒の渦が現れた。

▼渦は周囲のあらゆる魔力を飲み込み奪い尽くしていく。


魔人A「うぐあああああっ!!」

魔人B「ギャアアア」


闇剣士「……!!」


魔人C「助け…俺の魔力が…助――ケ――」


闇剣士「何…が…」

サキュバス「レヴァンこっち!」ガシッ バサッ

闇剣士「一体なにが起きている…私は悪夢でもみているのか」

サキュバス「勇者に敗れたあいつは、もうあんたの知ってる魔王じゃないってことよ!」

サキュバス「再びこの世に現れた今、あいつはこ滅びだけを目論む破滅の使徒! 逃げるわよ!」

闇剣士「魔…王…様………」

サキュバス「魔王ですって! アレはもはや生き物ですら無いのよ! ただ生命を憎むだけの怨念!」

闇剣士「バカな…私は…一体……なんのために」

闇剣士「魔族の…未来は…」


サキュバス(魔王は、封印される間際にレヴァンの魂に深く刻みつけた)

サキュバス(何千年かかっても自分を蘇生させろって!)

サキュバス(それは決して抗えない呪怨…!)

サキュバス(なんてこと…あんな化け物にまんまと利用されてしまった!?)



魔女「骸と化せ。我が世界に、生命の輝きなど不要」

魔女「全て、闇へ消えよ。我に捧げよ」

闇武将「て、てめぇええ! 新世界の俺様の部下共に何しやがる!!」

闇武将「魔王とて許せねぇ!!」

闇剣士「オーグ!」

闇剣士「そんなガキのやわな肉体、一撃でぶち壊してやろうじゃねぇか!!! おらぁ!!」

▼闇武将は鋼の拳を勢い良く振りぬいた!

▼しかし魔女に拳の先が触れた瞬間、ボロボロと土塊となって肉体の崩壊が始まった。


闇武将「ウガ…ああ…ッ」

闇剣士「オーグ!」

サキュバス「だめぇ! 近づいたらあんただって只じゃすまない!」

サキュバス「う…力が入らな……嘘……この距離があってもだめ…なの」

サキュバス(満月の夜…ほんとサイテーな日だわ)

闇剣士「サキュ…!」

核竜「ギュルルル…!」

闇剣士「飛んで一度離脱する。サキュ、乗れるか」

サキュバス「なんとか…」




魔人G「嫌だぁ…しにたくな―――」

魔人H「助け―――」ボロッ

魔人I「レヴァン様ああああああ」ドロッ

闇武将「――」


あまりにおぞましく、凄惨な光景であった。
天空広場に集ったおよそ数千もの豪傑達は、為す術もなく闇の渦に命を吸われ土塊となってゆく。
魔人たちの阿鼻叫喚が脳裏に焼き付いた。

魔族の再興という私の悲願は、奇しくも私の最も敬愛する魔王様自身の手によって潰えた。

ものの一瞬にして、潰えたのだ。


闇剣士「私は…なんのために戦ってきた…」

闇剣士「クロノ…オーグ…魔族の皆よ…」

闇剣士「マナ…ッ」


マナは死んだ。私が殺した――



核竜「ギュルルルッ」

サキュバス「威嚇しちゃだめ。とにかく離れなさい!」

サキュバス(いえ…どれだけ逃げても無駄なのかもしれない)

サキュバス(覚醒した災厄は…地平の果てをも飲み込む…)

サキュバス(世界が…終わる…?)

サキュバス(どうして…あたしたちは世界を創りたかった…それだけなのに)


魔女「未だ足りぬ。我に命を捧げよ」


闇剣士「これ以上何をする気だというのです!」

闇剣士「何故魔族を…皆殺しにした」

闇剣士「彼らは次なる世代を創っていく者達…! 私達の、希望なのです」


魔女「希望…? 其れ故に…我には不要」

魔女「汎ゆる希望は、絶望へ」

魔女「汝、其の命、我に捧げよ」


闇剣士「すぐにでも捧げるおつもりでした…いえ、今までどれだけ身が滅んでもあなた様の意思を頑なに守ってきた」

闇剣士「魔族の血を絶やすこと無く、護り通してきました!」

闇剣士「その仕打ちが…! これだというのか!!」

闇剣士「貴様は!! この日の為に私に餌を用意させていたというのか!!」

闇剣士「我が妹さえも糧にして!!!」



闇剣士「下降しろ。奴を斬らねばならぬ!」

核竜「ギュルルル!」

サキュバス「ダメよ! 近づいたらどうなるかわかってるでしょ」


魔女「術式:ダークブラスター」

▼魔女は闇の波動を放った。


闇剣士「…!! はやい!」


核竜「ギャウウウウ!!」

闇剣士「グッ…つかまれサキュ」

サキュバス「ちょっとこの子大丈夫なの!?」

核竜「ギュルル…」

闇剣士「コアドラゴンの鋼殻に一撃でここまでのダメージを与えるとは…」

闇剣士「それにあの術式の速度……このままでは到底近づけんな」


魔女「天…」


サキュバス「まずいわよ。あいつ羽生やせるんでしょ! 追ってくるわよ!」

闇剣士「いや…」

闇剣士「奴はなにをしている…」


災厄の化身はただ手のひらを虚空に掲げていた。
そして直後、私達は驚愕の光景を目にすることとなる。



闇の神殿は周囲からの防衛のため、湖の島の上に建てられている。
いまこの瞬間、激しい唸りと共に湖の水面は割れ、巨大な島そのものが浮遊をはじめた。


サキュバス「うそ…神殿島が…」

闇剣士「バカな…!」

サキュバス「あ、ありえないわよ…あんなおっきい島が浮くなんて…冗談じゃないわ!」


魔女「我が城は天より、地在る輝き全てを奪い」

魔女「世界にとこしえの闇をばらまかん」



【上空】


傭兵「な、何だあれ…!」

僧侶「し…島が浮き始めてます!」

勇者「…何が起きてるの。さっきまでたくさん感じてた魔物たちの気配が一斉に消えた!」

傭兵「ッ! レヴァンの野郎…次は何をしようってんだ」

勇者「魔剣士が? いや…違うよ! これはきっと…魔王の仕業だ!」




東の彼方より、紅蓮に燃え盛る怪鳥が勇者達を乗せて現れた。
その背後には私のよく見知った炎髪の男も抜刀してこちらを見据えていた。


闇剣士「ソル…!」

サキュバス「…来たのね。でももうなにもかも手遅れよ…」


傭兵「レヴァン! マナを返してもらうぞ!!」

僧侶「サキュさんもいるのですか! 一体何があったのです!」

勇者「マナ! 迎えに来た! 返事をして!!」


傭兵「おい塔の上! あのちっこい銀髪頭見えるか! あれマナじゃないか!?」

僧侶「マナちゃん…よかった生きてました! ユッカ様いますぐ迎えにいきましょう!」

勇者「…………」

魔女「…」ズズッ

勇者「違う…ッ!」

魔女「……太陽の勇者よ」

勇者「…お前が…ッ…魔王か!!」

魔女「滅せよ」


▼魔女は闇の波動を放った。

▼勇者は光の熱線を放った。





第34話<満月の夜に>つづく



  

更新終わり
次回月曜日22時~(予定)

乙、怒濤のクライマックス期待してるよ、けど……



闇武将「魔王とて許せねぇ!!」

闇剣士「オーグ!」

闇剣士「そんなガキのやわな肉体、一撃でぶち壊してやろうじゃねぇか!!! おらぁ!!」

これは反則過ぎるわwww
いきなりご乱心したのかと思ったw

とても遅くなったので更新は明日にスマソ

第34話<満月の夜に>つづき




放たれた熱線と波動は正面から衝突した。

両者ゆずらずに魔翌力を放出し続ける。


勇者「く…」

傭兵「…互角の威力か!」

勇者「ううん…あっちは完全に力を抑えた状態だよ」

勇者「…だめっ、押し戻される! ヒーラ!」

僧侶「はい! 聖守護結界!」

熱線が弾け飛び、闇の波動が瞬く間に眼前まで迫った。
しかし直撃を確信した瞬間、それはヒーラちゃんの結界によって阻まれた。


僧侶「う…すごい威力です」

僧侶「こんな膨大な魔翌力…私の結界でも何秒も耐えられません!」


勇者「一度離れてから、広場におりよう」

傭兵「あぁ。遠距離戦じゃ勝ち目はなさそうだな」



サキュバス「ちょっと…あの子たち、接近戦をするつもり!?」

闇剣士「…」

サキュバス「無茶よ! あんな広場で戦ったら全部吸い尽くされて死んでしまうわ!」

サキュバス「レヴァン止めなきゃ! …レヴァン?」

闇剣士「私の信仰は崩れ去った…」

闇剣士「私は…いまの奴を前にあまりに無力だ…」

核竜「ギュルル…」

サキュバス「…」

サキュバス(さっきの一撃で心が折れてしまったの…?)

サキュバス(それとも…マナを失ったから…?)

サキュバス(あなたは絶望に屈してしまうの…?)


魔女「太陽の勇者。汝、忌まわしい聖者の剣を手に、我に歯向かうか」

勇者「1000年前、ボクのご先祖様はこの剣でお前を滅ぼした」

勇者「だったら今度はボクの番だ」

勇者「お前の好き勝手はやらせない」

勇者「お前を浄化して、マナを取り戻す」

魔女「すでに器の魂は虚ろにして、闇のみが我を満たす」

魔女「汝の所業は全て徒に終わる」

傭兵「そりゃやってみなきゃわかんねぇだろ」

僧侶「そうです! まだ無駄だって決まったわけじゃありません」

勇者「マナは生きてる」

勇者「感じ取れなくても、ボクは信じる」

傭兵「とりあえず全員でマナの体を押さえつけて確保する」

傭兵「そうしたらお前が浄化の炎で魔王の魂を焼きつくせ」

勇者「うん」


魔女「無益」

魔女「我、万能にして至高の存在」

傭兵「驕るなよ闇の王」

傭兵「てめぇがいくら膨大な魔力をもっていても、体はぷにぷにのマナだ!」

傭兵「白兵戦で分があると思うな!」


俺とユッカは抜刀し、左右から同時に攻撃をしかえるため駈け出した。


傭兵(マナドレインを使われる前に一瞬で距離をつめる)

傭兵(仮にどちらかが魔法攻撃で吹き飛ばされても)

傭兵(片方残れば丸腰のお前を確保するには十分だ!)


魔女「術式:ダークブラスター」

▼魔女は闇の波動を放った。

傭兵「…速い!」



俺は敵の魔法攻撃をガードすることが出来ない。
そのためいままでの人生、ズタボロになりながらも回避力を身につけてきた。
だが…

傭兵(これほどでかくて速い魔力波はさすがに無理だな)


覚悟をきめて突き進むと目の前に真っ暗な闇に飲み込まれた。
波動を全身に浴びた俺の体はものすごい勢いで吹き飛ばされ、周囲の壁に背中から直撃した。

傭兵「ぐあああああっ」

僧侶「ソル様!」


傭兵(ターゲットになっただけでもいい…ユッカ、マナを抑えろ)


勇者「…魔王!」

魔女「…」


勇者(この距離なら!)

勇者「マナを返してもらう!」

勇者(ごめんねマナ、目覚めたら痛いかもしれない)

勇者(でもこいつをおとなしくさせるには攻撃をくわえるしかない!)

勇者「はぁぁ!!」

魔女「術式:ダークサイズ」

▼魔女は魔力で怨霊の大鎌を生み出した。

勇者「え…!」

魔女「愚かなり。我、万能にて汎ゆる力を簒奪せし者」

ザシュッ

勇者「あぐああっ」

勇者「まずいっ、なんで」


サキュバス「あんな魔法もってたっけ!」

闇剣士「…私の部下達、数千に及ぶ魔人達の全ての能力をあの瞬間奪いとったのだ」

闇剣士「奴はいまや…万にも及ぶ術を操る魔神となった…」



魔女「秘術:マリオネット」

▼無数の魔法の光糸が勇者に向かって伸びた。

▼糸は強度を増し、勇者の魔力を奪いながら全身を拘束した。

勇者「う、うああっ、あが、…あ゙」


僧侶「ユッカ様! 今助けます」

傭兵(く、クソ…)

傭兵「…ユッカ、いまいくぞ」


勇者「は、放せ!」

勇者(千切れない…! なんて強さだ)



魔女「愚かなり。敗北を認めよ」

勇者「そんなわけには行くか…むしろこのまま」

勇者「焼きつくしてやる! 浄化の炎…!」

魔女「!」


ユッカは光糸を握りしめ。魔力を込めた。
激しい炎が糸を伝い、魔王の腕に引火した。

魔女「…!」

勇者「どうだ! このまま全身を」

魔女「太陽の勇者…」

魔女「即刻闇に消えよ」


ベキッ


勇者「えっ…」

何かの折れる嫌な音とともに、拘束されたユッカの手足がひしゃげた。
さらに伸びた数本の分厚い光糸が先端を尖らせ、ユッカの腹部や肩、腕を貫き、遥か後方へと吹き飛ばした。


勇者「う…ぁ…」

勇者「――」


僧侶「ユッカ様あああああ!!」

傭兵「ユッカのバックアップに回れ!」

傭兵「容赦なしか…」

魔女「……」

傭兵「マナ、本当に…お前の魂は残っていないのか」

傭兵「…」ミシ

傭兵「ぐ…」

先ほどのダメージで体が思うように動かない。
魔力の直撃は魔力を持たない俺には通常の何倍もの威力になってしまう。

傭兵(だがユッカがいま受けたダメージにくらべれば、我慢できないほどじゃない)

傭兵(ユッカ…生きてるんだろうな)


一瞥すると、ユッカはぼんやりとした炎にまとわれていた。
炎は次第に勢いを増し、繭のようにユッカを包み込んだ。



傭兵「あの炎の繭は…」


それは俺が過去に狼魔人と対決し、死の間際に発動したものと同じに見えた。


傭兵(ニクスののこしてくれた不死鳥の力…?)

傭兵(本人の意思に関係なく自動で発動していたのか…)


僧侶「ユッカ様…ひどい怪我…」

僧侶「あれ…傷口が光って…る」

勇者「――」


傭兵「ユッカは放っておけば大丈夫なはずだ」

傭兵「ヒーラちゃんはそこで結界を貼ってユッカを護ってくれ」

僧侶「は、はい!」



魔女「再生の炎……小癪な」

傭兵「俺たちはしぶといぜ。マナを返すまで、何度でもてめぇに挑んでやる」

魔女「もはや、生者ともつかぬ汝に何ができる」

傭兵「俺に魔力が宿ってねぇのが気になるか」

魔女「…」

傭兵「お得意の災厄を発動しても俺の命は獲れねーぞ」

魔女「…!」

傭兵「ようやく感情あらわしてきやがったか」

傭兵「てめぇは万能な神なんかじゃない、生き方歪んだ一匹の生物の怨霊だ」

傭兵「さっさとひきずりだして、あの世に召させてやるよ」

魔女「何故、汝…その身で立つ」

傭兵「てめぇの懐にもぐりこんで、熱い一発くれてやるためだ」



傭兵(勝負は一瞬。マナドレインがなくても、闇の波動の軌道に乗っただけで瞬殺される)

傭兵(おそらく次は耐え切れない)

傭兵(例えどれだけ魔術や秘術を持っていても、扱う体はマナ、発動は1つ!)


傭兵「…」ミシ

傭兵「行くぞ!」

魔女「来るがよい」

魔女「汝にも絶望を与えよう」



闇剣士「…ソル。なぜ立ち向かえる」

闇剣士「貴様には、恐れという感情が無いのか」

サキュバス「それ以上に燃え上がるのが、あの子たちを守りたいという想い」

闇剣士「想い…マナ、私を許してくれ」

 

 
傭兵「うおおお!」

傭兵「ゼロ距離、もらったぞ!」

魔女「術式:ダークサイズ」

傭兵「ぐっ」

傭兵「がっ…なんだ」グラッ

傭兵(剣を交えただけで…体が…重い)

魔女「あまねく怨霊達よ。彼奴の肉体に寄り縋れ」

傭兵(怨霊…! 俺の体を乗っ取ろうとしてるのか!)

傭兵「くそっ」

ガキンッ

魔女「脆い」

ザシュッ――

傭兵「ぐああっ」

傭兵(あの鎌…なんて厄介な)


魔女「逃がしはせぬ」


弾き飛ばされた俺に体制を立て直す間すら与えず、魔王は黒い翼で宙を駆け突撃してきた。

魔王の拳が不気味に光っている。
錯覚だろうか、何倍もの大きさに膨らんで見えた。


傭兵「…まずい!」

回避不可能と考えとっさに剣を差し出してガードした。

闇剣士「あれはオーグの鋼拳…!」

闇剣士「ソル…! ガードを解け! 受けるな!」


重撃とともに鐘を叩いたような低い金属音が鳴り響き、
攻撃を受け止めた剣の刀身は破砕した。

そのまま鉄拳は俺の腹部につきささり、広場の硬い土の上を俺は塵屑のように転がった。

傭兵「…!」


傭兵「……痛ぅ…」

傭兵「…がはっ、頭が痺れるぜ」

傭兵「ついに折れちまったか…グレイス、すまん」

傭兵「マナの腕力じゃなかったらあのまま突き破られて即死だったな」


サキュバス「もう無理よ!」

サキュバス「レヴァン…!」

闇剣士「私とて、奴に敵う道理は無い」

サキュバス「本当に…終わりなの?」



魔女「頑強な男」

傭兵「それしか取り柄がなくてな」

傭兵「ユッカ、借りるぜ」


側に突き刺さっていた聖剣を引き抜く。

傭兵「…よく手に馴染む」ブォン



聖剣の中で炎がくすぶっているような気がした。
おそらくユッカが込めた魔力の残滓だろう。

傭兵「…使えるか?」

魔女「悟るが良い。汝らの所業、全て徒に帰するもの」

傭兵「まだ約束に一発をぶちこんでないんでな」

傭兵「やられっぱなしで引けるかよ!!」

傭兵「…!!」


これが最後の攻防になるとおもった。
しかし全力で駆け出したはずが、俺の体はもう限界を迎えていた。

魔女「術式:ダークブラスター」

▼魔女は闇の波動を放った。


視界が真っ暗に染まる。


傭兵(終わった…すまんユッカ…マナ)

そう感じた刹那、目の前を影が横切り、迫り来る波動を全て受け止めていた。



爆風の中はためく銀色の長髪。

巨大な剣を真横に構え、レヴァンが一身に攻撃をうけとめていた。


傭兵「お前…」

闇剣士「渓谷での一戦。グリモワでの一戦。これで貴様とは1勝1敗」

闇剣士「まだ私達の生涯に決着はついていない」

闇剣士「ここで、貴様が討たれることは武人としての私の矜持に傷がつく!」

闇剣士「魔王やマナのことはいまは関係ない! いずれ私が貴様を…正々堂々討つ!」

サキュバス(バカ…)


闇剣士「がはっ…ッ、長くは持たん!」

闇剣士「はあぁあ一閃! 一瞬道を作る! 行け!」

傭兵「…あぁ!」



レヴァンが作った隙。おそらく後何秒ももたない、最後のチャンス。

あれほど膨大な魔力を放出しながらでは、魔王は近接戦において鎌や鋼拳の生成は出来ない。
いまの魔王は完全な丸腰だ。


傭兵「覚悟しやがれ!」

魔女「…!」

傭兵「今度こそもらったぞ! マナ!!」

ガシッ

傭兵「いい加減、目を覚ましやがれ!」

そして驚きを隠せないマナの体を押さえつけた俺は、
少女の薄い唇に強引にくちづけた。


魔女「…ん、むぅ!」

闇剣士「…! 貴様何を」

魔女「……!?」

傭兵「お前の弱点に…一発、くれてやったぜ」




第34話<満月の夜に>つづく

   

更新終わり
次回明日か明後日

第34話<満月の夜に>つづき



魔女「弱点…?」

傭兵「……」

魔女「秘術:鋼剛拳」

傭兵(またこの拳か!)

ズンッ 

ガキン――

傭兵「…う、ぐあっ」

傭兵「そんなへなちょこパンチ…聖剣ガードなら折れねぇ…!」

魔女「忌々しき太陽の剣…」

傭兵「がはっ」

傭兵(体のダメージはとっくに限界か…ッ。あと何分戦える)

魔女「汝の思考…理解不能」

闇剣士「私が死ぬ物狂いで作った好機にソル貴様という奴は…!!」


傭兵「へ。唇かまれちまった」

傭兵「だがこれで…1つはっきりしたぜ」

闇剣士「何」

 

傭兵「一瞬、ほんの一瞬だが」

傭兵「魔王…てめぇの中にマナを感じた」

魔女「…」

傭兵「何度もくちづけてきた…マナのぬくもりがあった。瞳が揺らめいた気がしたんだ」

闇剣士「何度もだと…ッ! いや、それよりも、マナの魂はまだ残っていると貴様は言うのか」

傭兵「確信はある」

サキュバス(あんた…ユッカの魔覚でも探り当てられなかったことを…なんて奴)

傭兵「レヴァン。まだ全てが手遅れなわけじゃねぇ」

傭兵「取り戻す。俺たちはそれだけのためにここへ来たんだ!」


僧侶「ソル様…」

勇者「――zzz」


魔女「汝によって、器の肉体に残る忌憶を…呼び覚まされたか」

傭兵「覚悟しやがれ」

傭兵「次は舌の根っこまで絡みつくような、濃厚なお目醒キッスでお姫様を叩き起こしてやる」

魔女「…!」

 

魔女「……汝、我の脅威となりし者……即ち、太陽の系譜」

魔女「ならば」

魔女「我が器に眠る、更なる絶望を目醒めさせん」

魔女「汝らに滅びを。あまねく世界に、終焉を」

傭兵「…!?」

魔王が手を振り上げる。
それと同時に少女の体が一瞬溶けて歪んだように見えた。
足元から沸き立つ黒いざわざわとした魔力が、その小さな全身を包み、姿を隠していく。


勇者「……! ソル、そこから離れて!」

僧侶「ユッカ様、お怪我は大丈夫ですか」

傭兵「ユッカ、お前―――」


魔女「災厄:神獣変化」


勇者「早くこっちに!! 」

ユッカが起き上がり、声を発したその瞬間、
突如巻き起こったまるで爆風のような真っ黒な激しい衝撃波と共に、俺たちは弾き飛ばされて宙へと放り出された。

 

傭兵「ぐああああっ」

闇剣士「これは…ッ!」

傭兵(まずいこのままじゃ全員海に真っ逆さまだ…)

闇剣士「…ッ…来い!」

核竜「ギュルルル!」

勇者「出ろぉ紅蓮鳥!」

▼勇者は紅蓮の鳥を召喚した。

勇者「ハァ…ハァッ、う、みんな…いま拾うから!」


パシッ

勇者「乗って!」

傭兵「お前大丈夫なのか…怪我は?」

勇者「痛む所はあるけど、動くくらいなら大丈夫」


その後落ちていくヒーラちゃんをすぐさま拾った。
レヴァン達はコアドラゴンにまたがり、一様に塔の天辺の広場で起きる異変を伺っている。

 

僧侶「見てください! な、なんですかこれ…」

傭兵「!」

グリモワでマナが覚醒した時よりもさらに膨大な黒い魔力が、塔の広場全体を埋め尽くし、天へと昇っていく。
満月の輝く快晴の夜空に、またたく間に暗雲が立ち込め雷鳴が轟き始めた。



 『とこしえの闇へと消えよ――』



勇者「う、うあああっ」

傭兵「…!」

僧侶「あ…ぁ…」

マナの声とは似ても似つかない、地獄の底から響くような悪魔の声がどこからか聞こえた。
ただならぬ悪寒が全身をかけめぐる。
それは、魔覚が殆ど働かない今の俺でもはっきりと感じ取れる、絶望。


傭兵(あの衝撃波の前に…あいつは何て言った…?)

傭兵(確か…神獣変化…って)

 




世界中の魔力を持つ生命が、この悪意の塊の誕生を肌身で感じ取っただろう。

目を凝らす。
血をながしすぎてすでに視界は霞んでいたが、
黒雲に飲み込まれた浮島の背後に蠢く巨大な黒い影を見た。



サキュバス「何…何なの…アレ」

闇剣士「わからん…」

僧侶「…天使…様」

勇者「悪魔…?」

傭兵「いや…巨大な…」

稲光が瞬き、一瞬その姿を照らし出した。

傭兵「……邪龍だ」



  ・  ・  ・



 




【太陽の村】


子供「司祭さまー。城下町の郵便屋さんからお手紙きたよ」

司祭「おお、なんだいたくさん来たな」

司祭「むお! ユッカからじゃないか…!」

子供「ユッカおねえちゃん? わーい読みたいな」

司祭「どれ、村のみんなを集めておいで」

子供「はーい!」



司祭「…『拝啓おじいちゃんへ』…ははは、あいかわらず下手な字だ」

司祭「ええと。ふむ。『ボクはいまバザという商業で栄えるおっきな町に来ています』」

司祭「『バザはとても賑やかな町で、マオにゃんに毎日服をきせかえさせられて楽しいです』」

司祭「……?」

町女「なんだいそれ」


 

子供達「つづきはーぜんぶよんでー」

司祭「お、おお…」

司祭「『なんとマナと再会することができました。今マナはボクの仲間として一緒に旅をしています』」

司祭「『もちろんソルとヒーラも一緒です! みんな仲良しです』」

司祭(ほぉ…そりゃ良かった)

司祭「『それと、ボクの注意不足である呪いにかかってしまって。エッチなことをしないとレベルがあが――」ブー

司祭「!?」

司祭「老眼のせいじゃ…きっと読み違えたのじゃな!」

司祭「『なので毎晩ソルとエッチなことを――」ブーーー

司祭「ごほっごほっ。何を書いとるんじゃい!」

子供「なにをするってー? えっちなことってなにー?」


司祭「あんの小僧…! こともあろうにユッカにまで手をだしよってからに!!」

司祭「こりゃ帰ってきたら説教ではすまんぞ。吊るしあげてくれる」

村女「昔ユイちゃんにつくったドレス、無駄にならなくてすむかもね」

司祭「お、おいおい…ユイならまだしも、ユッカとは何歳差じゃとおもっておるのだ」


村女「いいじゃないのさ。ユッカちゃん若いんだから、産めや増やせで村が賑やかになるよ」

子供「ユッカおねえちゃん赤ちゃんうむの?」

村女「そうだねぇ。魔王っていうこわーい奴の復活を阻止して英雄になってもどってくるんだ」

村娘「立派な血を残すためにいっぱい産まなきゃね」

司祭「な、ならんぞ! ユッカにはもっとふさわしい男が…!」

村女「いるのかい」

司祭「…お、おらん…じゃがあいつ相手はのぅ」ポリポリ

子供「ねー司祭さまー。もっとお手紙よんでー」

司祭「たくさんまとめて来ておるのぉ。これはオクトピア…。ほぉ、船の上からも書いとるんだな」ペラッ

司祭「まぁ元気でやっとるようでなによりだな」


  『とこしえの闇へと消えよ――』


子供「…」ブルルッ

子供「ねー…司祭さま…いまあっちのお空の方からへんな感じした」

司祭「む……?」

村女「あらやだ、いきなり天気が怪しくなってきたわね」




司祭「……ッ! こ、子どもたちを家のなかへ」

村女「なんだいこの黒い雲。どこからきたんだい、おかしな天気だねぇ」ブルルッ

司祭(雲だと…? 太陽の国にこんな分厚い黒い雲など…わしは生まれてはじめてみたぞ)

司祭「おお、この身の毛もよだつ気配…なんてことだ…」

司祭「恐れていたことがおきてしまったというのか」

司祭「ユッカ……頼む、生きて帰ってきてくれ…。わしをひとりにせんでくれ」

司祭(ユイ…。天国で見ていたら、ユッカたちを護ってやってくれ)



   ・   ・   ・



【魔族領上空】



ただでさえ巨大な浮島を包む込みようにとぐろを巻く、言葉で形容できないほど超大な魔龍。

漆黒の鱗に全身を包まれ、背には天使のような白銀の翼。
頭部には魔族と思わしき、僅かに少女の名残を残した金色の角がそびえていた。



勇者「なに……これがマナ、なの…?」

傭兵「キュウが使った術と同じだ…」

勇者「そんな…」




もはや遠近感すら失ってしまうようなその桁外れの大きさにはまるで現実味などなく、
圧倒された俺たちはただ目を見開いて呆然と眺めているだけだった。


闇剣士「なんという巨躯…」

サキュバス「嘘でしょ……」

核竜「ギュルル…」ブルブル

僧侶「ありえないです…」

傭兵「……現実…なのか?」


思わず息を呑んだ。

しかしそれは夢や幻ではなく、まちがいなく生物だった。
しばらくの静観ののち、ついに邪龍は動き始め、大気の振動とともに耳をつんざくような轟音が鳴りわたる。
とっさに耳をふさいだ俺たちはそれが奴の咆哮だと理解するまでに数十秒もの時を要した。


勇者「うあっ…うぐ。何」


小さな村一つくらいなら飲み込んでしまうのではないかというほどに巨大な邪龍の口。
今ゆっくりと大きく開かれて、嵐の巻き起こる夜空に光の粒が集まっていく。




僧侶「なんでしょう…あの光…魔力…? う、魔力が…ッ吸わてます」

勇者「マナドレインと同じだ…。あの口からボクたちだけじゃなくて、この地球の命を吸い上げているんだ」


魔力の吸収とともに、轟々とした暴風雨と稲光が緩やかにおさまり、辺りが静けさを取り戻した。
しかしそこに穏やかさなどなく、空気は以前にも増してピンと張り詰める。
邪龍の胸元の水晶のような紫色の珠がトクントクンと脈打つように輝いた。


そして、それは突然放たれた。

勇者「!」


視界を全て奪うほどのまばゆい光が火柱となって、真っ直ぐに闇夜を切り裂きながら東へ伸びていった。

光線は瞬く間に湖面を吹き飛ばし、霞んで見える巨大な山脈を消し飛ばして、魔族領を一直線に貫いた。
遥か彼方で起きた爆音と轟音が入り混じって、空気を伝わって耳に届いた。

 
http://i.imgur.com/5w1xRhc.png

 


勇者「~~~~!!!」

ユッカが耳元で声になっていないような金切り声を上げる。
頭と耳をかばうように体を縮こまらせて、大粒の涙を流していた。

ユッカはいま一瞬のうちに消えていった無数の命を魔覚で感じ取ったのかもしれない。
他人より鋭敏な魔覚が、残虐な魔力の塊に余すこと無く蹂躙されていた。

ユッカは震える手で俺の裾をきゅっと掴んだ。

傭兵「…ユッカ」


まさに空前絶後の天災とも言える悪夢を前に、心が折れてしまったのか。
俺自身、いま起きたことがいまだに頭では理解できずにいる。
だが生の本能は危険を瞬く間に察知し、全身を駆け巡る悪寒がいつまでも治まることはなかった。



傭兵「ユッカ…」

僧侶「…ユッカ…様…私…もう立てません…」

ヒーラちゃんは放心して、鳥の背の上でへたり込んでいる。

勇者「もう…だめ」

ユッカは震える声を喉から絞りだすようにつぶやいた。


傭兵(そうだ。あれを見て……俺たちに何ができる)

傭兵(剣技、魔術、レベル…。そんなものに…一体何の意味がある)

傭兵(世界中の戦士が一斉に剣を構えても、勝てやしない…)



しかし、振り返ってのぞき込んだユッカの目には強い意思の炎が灯っていた。


勇者「だめだよ…」

勇者「これ以上…あんなの撃たせちゃだめだ」

勇者「ボクたちが止めなきゃ…!」

 

僧侶「ユッカ様…」

勇者「ボクのこの能力は、こんな恐怖を全身で味わうため?」

勇者「…ううん違うよ…ボクの魔覚はね」

勇者「きっと暗い闇の中で苦しんでいる人を照らして見つけだすために、神様がくれた力なんだ」

傭兵「お前…」

勇者「……マナの、マナの気配がしたよ。どこからかボクたちのことを呼んでる」

傭兵「本当か!」

勇者「マナを、助けよう!」


大きな瞳から溢れる涙はとまってはいなかった。
しかし少女は絶望的な現実から目を背けることをせず、しっかりと両目を見開き災厄の元凶を見据えていた。

間違いなく、ユッカは世界でただ一人の勇者だった。




第34話<満月の夜に>おわり


 

更新終わり
次回最終話 明日夜予定



最終話<太陽>







【太陽の国】


王「皆の者、感じるか」

大神官「…ええ。世界の破滅です…このようなおぞましい魔力がこの世にあってよいものか」

王「遥か彼方より伝わる、この身を貫くような邪気…間違いないだろう」

王「ソル…ユッカ…間に合わなかったというのかッ」

大神官「ヒーラ…。神よ…彼女たちを守りたまえ」



【深い森近くの町】


魔導師「ソルよ。これでは約束が違うではないか…」

魔導師「……。じゃが、まだすべてが終わったわけではない」

魔導師「おぬしは今までどんな困難をも切り拓いてきた」

魔導師「わしのかわいいマナを頼んだぞ。勇者達」



【商業の街バザ】


獣の商人「なんや? 急にえらい肌がぴりぴりするなぁ」

獣の商人「みてみてー、めっちゃ毛逆立ってるやろ」

隊長「…この天気は一体」

獣の商人「あー気持ち悪いっなんやこれ」ゾゾッ

客「わりぃなマオちゃん。今日は帰るぜ、うーさぶいさぶい。大雨も降り出しそうだ」

獣の商人「あっ、ちょい待ちぃや!!」

隊長「大雨が降る恐れがあります。厳重な戸締まりをお願いします」

隊長「マオさんも。私は町の見回りに出ます」

獣の商人「あんたこんな時やのに忙しいなぁ。休憩中ちゃうの」

隊長「こんな時だからです。さぁ急いで」

獣の商人「まだ閉店時間ちゃうのに。あー…商売あがったりや」

獣の商人(ユッカはん達…なんかあったんか?)

獣の商人(無事に帰ってくるって約束したやんか……守らなあかんで)ギュッ




【霊泉山脈】


妖狐「…!! この忌まわしい邪気…!」ザバッ

妖狐(ワシの九尾解放の其れと同一の物!! …じゃが、ゆうに超越しておる!)

妖狐「マナ…おぬしも闇に飲まれてしもうたか……ッ」

妖狐「……やれやれじゃな。こうなった以上、この世の運命は天のみぞ知る」ザプン…

妖狐「あー湯はきもちええのに肝心の酒がまずい」グビグビ


妖狐「…さてマナよ。おぬしの大切なもののことを忘れるでないぞ」

妖狐「深い闇の中にも一筋の光明は差す」

妖狐「手を伸ばし、掴みとるのじゃ。おぬしはワシと違ってひとりではない」

妖狐「おぬしの太陽は、すぐ近くにおるのじゃから…」ゴクゴク


 





【港町オクトピア】


宿屋の少女「…海が…震えてます」ギュッ

宿屋の少女「結局、世界中のどこにも…逃げ場などないのですね」

蛸娘「スキュこわい…ローレも怖い?」

宿屋の少女「はい…。ですが私は信じています」

蛸娘「スキュもしんじる。ヒーラ強い。ヒーラ負けないよ」

宿屋の少女「みなさん…どうか壊れ行く世界を救ってください」

宿屋の少女「そして、必ずみんな揃って笑顔で帰ってきてください…っ」




【歯車の街ピニオン】


時の魔術師「…あぁなんてことに」

時の魔術師「この世の理が歪んでいく。破滅の序章とでも言うのでしょうか」

町民「クロノ様…わしらはどうしたら…先程から悪寒がとまりませんのじゃ」

時の魔術師「あまりに破壊的で暴虐的な魔力…私達人間が生身で触れて長く耐えられるものではありません」

時の魔術師「気休めですが時計塔に結界を貼ってあります。どうぞこちらへ」

時の魔術師(…勇者様。信じています)

時の魔術師(どうか無事でいてください)

 

   

 


【魔法大国グリモワ】


魔法国王「動ける魔術師は魔法障壁をただちに展開せよ」

魔法国王「このおぞましい魔力に長く触れてはならない。心身が壊れてしまう!!」

魔法国王「障壁の行き届かない者は避難所として、臨時に王宮と闘技場を解放する」

魔法国王「速やかに民衆の避難誘導を」

衛兵「はっ!」

衛兵「陛下もどうかご避難を」

魔法国王「ぼくはこの国の守護者として、最後まで責務を果たさねばならない」

魔法国王「逃げ出すのはみなの避難がおわってからさ」


魔法国王(…勇者くん、これはまがりなりにもきみたちの選んだ未来だ)

魔法国王(どこまで抗えるか、見させてもらうよ)

魔法国王「急げ! 女こどもを優先しろ!」



 

 

【聖なる火山】



炎鳥「…終焉のはじまりです」

炎鳥「海は枯れ、地平は焼かれ、あまねく命は滅びを迎えるでしょう」

炎鳥「それは、一つの星のさだめなのかもしれません」

馬「ヒヒン! ヒヒン!」

炎鳥「うふふ…あなたは仲間のことを一片も疑うこと無く信じているのですね」

炎鳥「…そう。いままでもそんな事が……」なでなで

炎鳥「…ずっと、苦楽を共に旅を続けてきたのですね」なでなで

馬「ヒヒン」

炎鳥「ええ、大丈夫。私も信じていますよ」

炎鳥「あの子たちは古より続く人々の意思を受け継いでいるのですもの」


炎鳥「絶えることなく燃え続ける、世界で唯ひとつの希望の火。其の名はユッカ」

炎鳥「太陽の子らよ。闇を彷徨う孤独へと手を差しのべなさい」

炎鳥「あなたたちの求める答えはきっとそこに――」

 

 


  ・   ・   ・



咆哮による極大の熱線の際に一時は静寂を取り戻した夜空に、嵐が再び吹き荒れはじめた。
俺たちを寄せ付けまいとばかりにけたたましく雷鳴が轟き、稲光が雲を走る。


傭兵「なんだこの地獄は…」

傭兵「天変地異を引き起こして…それを力にしている…?」

勇者「そうかもしれない」

勇者「ああやって竜巻や雷雲を纏うのは、きっとボクたちに近づいてほしくない理由があるんだ」

傭兵「マナはどこだ。どこから感じる」

傭兵「どんだけ分厚い鱗かしらねぇが、必ずぶったぎって中から取り出してやる」

勇者「…待って」


ユッカは五感を塞ぎ、魔覚を研ぎすませた。
そして目をつぶったまま、ある方向をゆっくりと指さした。

そこは邪龍の胴体の中心部。
まるでマナのつけていた闇珠の首飾りが肥大化したかのような
大きな水晶がギラギラと禍々しい輝きを放って嵌めこまれていた。


傭兵「あの水晶の中に…?」

勇者「あそこからほんのすこしだけどマナの気配を感じる」

僧侶「すごいですユッカ様」

勇者「行こう」

傭兵「行こうって、どうやって近づく。それにあんな水晶、斬りつけるために立つ場所すら…いや」


闇の神殿の塔の天辺に備えられた広場が、胴体に押しつぶされてひしゃげるように隣接していた。
先ほどまで俺たちが剣を構えて戦っていた場所だ。

傭兵「まだ完全には崩れ去っていない!」

勇者「あそこに降りる!」

傭兵「…あぁ! それしかないな!」


紅蓮の鳥は、マナに向かって暴風雨の中を滑るように飛んだ。

稲光走る黒雲の切れ間を見事にかいくぐり、広場へと降り立つ。
紅蓮の鳥は消え去った。


勇者「う…もう出す魔力は残ってない」

勇者「もう飛ぶことは出来ない。絶対にふり落とされないで」

傭兵「あぁ、マナを救いだしたらあとは天に任せる」


僧侶「ここまで大きいと…近づけばただの壁ですね」

僧侶「怖くありません」

勇者「うん…でも魔力を吸われ続けているから時間をかけたらボクたちの負けだ」



目の前にそびえる巨大な水晶。
中では深い闇が渦巻き、その奥に、膝を抱えて目を閉じる一人の少女の影をみつけた。
その銀髪の少女は、まぎれもなく俺たちのよく知るマナそのものであった。


勇者「いた…! マナだ!!」

僧侶「マナちゃん…生きてるんでしょうか」

勇者「死んでたらこの竜は動いてないよ」

傭兵「すぐにこのドデカイ水晶ぶち割るぞ。ユッカ、剣は借りるぜ」

勇者「うん!」


勇者「ファイアブラスター!」

僧侶「ホーリーウォータースピア!」

傭兵「はぁぁあ!」

水晶めがけて三人同時攻撃。
しかし――

バチチッ

攻撃が当たった瞬間俺たちは後方へと弾き飛ばされた。


傭兵「ぐあっ」

僧侶「う…くぅ…カウンター結界!?」

勇者「うあう…攻撃したぶんだけ……ダメージが返ってくる」

僧侶「この水晶は、マナちゃんを護る障壁の役目を果たしているのかもしれません」

僧侶「おそらく私の結界や、グリモア王の障壁と同じく…いえそれ以上の強度です」

勇者「そんな…」


その後しばらく攻撃を加えるも、
一方的に俺たちの体がずたずたになるだけで、禍々しい水晶には傷一つとして付かなかった。



勇者「こいつ。これだけ攻撃してるのに、何もしてこない…」

勇者「図体はでかいけど、これといって小さなボクたちに対する攻撃手段はないのかも?」

傭兵「ドラゴンとレヴァンが飛び回って気を引いてくれているからかもな」

僧侶「攻撃してこないのではありません。おそらく…出来ないのです」

僧侶「私達がこの水晶の目の前にいる限り!」

傭兵「つまり、ここがむき出しの急所というわけか」

勇者「…うん! これさえ潰せば!」

傭兵「だがこの硬度じゃ、とても急所とは呼べねぇぞ…鉄壁の心臓だ」

勇者「くそぅ! マナが目の前にいるのに!!」ダンッ



もはや満身創痍だった。
何度カウンターを浴びるも、成果は得られない。ヒビすら入らない。
3人とも決して心は折れていないが、すでに体と魔力が限界を迎えていた。

そんな中、再び周囲の嵐がおさまって闇夜が静まりかえる。

傭兵「これは…」

 



勇者「魔力が集まっていく…まただ…あれを撃つ気だ!!」

傭兵「この方向…東……くそ、やめろ! そっちにはグリモワが…!!」

僧侶「…!」

僧侶「ソル様、ユッカ様。どうかご無事で」

僧侶「マナちゃんのこと、あとはおふたりに委ねます!」


ヒーラちゃんは唐突に俺たちの手をにぎって別れを告げた。
青海のように蒼い瞳には強い意思が灯っていて、
何をするのかはわからないが、もう彼女を止めることはできないのだろうと察した。


僧侶「水よ…私に力を」


ヒーラちゃんが海鳴りの杖を振る。
杖先から激しい水流が噴射し、彼女はそれを推力にして不気味な静けさ漂う暗闇の空へと跳躍した。

ヒーラちゃんは真っ暗な空へと自ら放りだされていった。
そして宙で再び杖を操って、湖面から呼び寄せた水柱の上に着地し立ち上がり、邪龍に向かって両腕を大きく広げた。

その姿はまるで天女のようであった。




僧侶(これだけ大きいと、もはや何なのかもわからないですね)



いよいよ邪龍の口元いっぱいに光の粒が集まって、俺たちの視界は目を開けないほどの輝きに満ちていく。


勇者「嘘でしょ…無茶だよヒーラ…! 一人で受け止める気なの!?」

傭兵「やめろ…逃げてくれ…山を軽々と吹き飛ばす威力だぞ…」


僧侶(すこしでも威力を軽減できれば…それでいいんです)

僧侶「…来る…タイミングを間違えちゃだめ…まだ…あと少し…」


僧侶(怖い…)

僧侶(でもみんなを…護らなくちゃ)

僧侶(マナちゃん…きっと水晶の中で苦しんでいるでしょう)

僧侶(優しいあなたはこれ以上誰も傷つけたくないはず。きっと私たちに助けを求めているでしょう)

僧侶(でも大丈夫。あなたを蝕む悪意の咆哮、私が全て受け止めます)

僧侶(…これが最後ですから。あなたは心配しなくていいんですよ)

僧侶(だって、あなたの太陽はすぐ側に――――)

僧侶「…すぅ」

僧侶「ユッカ様ソル様、マナちゃんをお願いします!!」



僧侶「水の力よ! 私に、最後の力を! 私の全てをいまこの瞬間に捧げます!」

僧侶「神様……ッ! ホーリーシールド!」


▼僧侶は水神の大盾をつくりだした。


轟音とともに湖の水が空へと巻き上がる。
膨大な量の水が分厚い盾となってヒーラちゃんと邪龍の間に立ちはだかった。


闇剣士「これは…!」

核竜「ギュルル…!」

サキュバス「すごい…これがあの子の力!? でもまずいって!」ばさっばさっ



▼邪龍は破滅の熱線を放った。

目の潰れるような極光とともに邪龍の咆哮波が
俺たちの遥か頭上に位置する長い竜首の先から再び放たれた。


傭兵「…!」

勇者「~~っ! ヒーラぁあああ!!」


放射された邪龍の熱線が水の塊である大盾に直撃し、激しい爆発を引き起こした。



僧侶「…ッ!! これ以上の滅びは許しません!」


勇者「防いでる…すごい…。ヒーラ…」

傭兵「…! 駄目だ、徐々に水流の勢いが弱まってきている」


僧侶「…うううッ!」

僧侶「……だめ! 突き破られる…! 海ではないから…!? 私じゃだめなんですか!!」

僧侶「くっ…」


闇剣士「あれほどの水量で防ぎきれん威力だというのか!」


勇者「ヒーラ…! 逃げて!」

傭兵「ヒーラちゃん…。もういい! 逃げてくれ!」


僧侶(引くことはできません…これ以上、みんなを悲しませたくないんです)

僧侶(マナちゃんを苦しませたくない)

僧侶「……ぁ」


▼水神の大盾は爆散し消失した。

▼破滅の熱線が僧侶へと襲いかかる。


僧侶「まだです! 神聖守護結界!!」


ヒーラちゃんを中心に神々しい光の球が生まれた。
光の球は大きく広がって行く。

水の盾を貫きやや威力の弱まった熱線がヒーラちゃんに直撃した。


傭兵「…!」



僧侶(サキュさん…これが、あなたの言っていた運命の選択肢…?)

僧侶(ならば私は…全てを受け入れます)

僧侶(この身の滅び、あまつさえ魂の消滅さえも…)

僧侶(それで世界中の人々が救われるなら…)

僧侶(私は…厭うことはありません)

僧侶(あぁ…眩しいです…ユッカ様…)


ヒーラちゃんの立っていた水の柱が消え、彼女の居た場所から小さな爆発の光が見えた。
それとともに超大な熱線の放射がついに途切れ、邪龍は禍々しい大口を閉じて沈黙した。
周囲では嵐が再び巻き起こり、次弾への魔力の補給が始まったようだ。


勇者「ヒーラは…?」

傭兵「ヒーラちゃん……」


焼け焦げた聖衣を羽織った金髪の少女が1人、暗闇の湖へと真っ逆さまに落ちていった。



最終話<太陽>つづく


  

更新おわり
次回明日21時~

最終話<太陽>つづき





闇剣士「奴の第二波を一人で防いだ…」

闇剣士「信じられん…神憑っているのは勇者だけではなかったのか…」

核竜「ギュルル…」

闇剣士「少女もまた…神の御遣いだとでもいうのか」

闇剣士「だが何故だ…なぜ貴様たちはそこまで抗える。己が命さえ投げ出して…」

闇剣士「使命…人類の希望をせおっているから…?」

闇剣士「それとも……仲間の…」

闇剣士「マナのため…だとでもいうのか…」

核竜「ギュルルル」

闇剣士「サキュ? どこへ行った…?」



勇者「ヒーラ…嘘だよね…?」

傭兵「……落ちたのか。いや、アレを見ろ!」



僧侶(このまま…まっさかさまにおっこちて…死んじゃうのでしょうか)

僧侶「最期くらい…大好きな、あなたのう腕のなかで……ソル…さま」

がしっ

サキュバス「あっぶなっ! あたしってばナイスキャッチ!!」ばさっばさっ

僧侶「…ぁ」

サキュバス「大っ嫌いなあたしの腕の中で悪かったわね。でもまだ看取ってやんないから!」

僧侶「サキュ……さん」

サキュバス「乳、あんた見なおしたよ」ばさっばさっ

僧侶「……ぅ」

サキュバス「お疲れ様…ヒーラ」ぎゅ

サキュバス「にしても…重いっ! あんた何食べたらそんな無駄なお肉つくのよ!」

僧侶「――…ぅ、うるさい…です。重いなら捨てていいですよ」むす

サキュバス「あはっ、無駄な頑丈さだけがあんたの取り柄ね」

サキュバス「このまま湖畔まで連れて行くわ。もうちょっとの辛抱よ」

僧侶「ありがとう…サキュさん…」

僧侶「ユッカ様…必ずマナちゃん…を…」クテッ




勇者「…生きてる。みてソル! 生きてる…!」

傭兵「…あぁ。俺たちのヒーラちゃんが簡単に死ぬわけない」

勇者「うん! どんなピンチもヒーラは乗り越えてきたんだ!」

傭兵「ヒーラちゃんが命を賭けて時間を稼いでくれた。次の咆哮波までに…マナを救いだして魔王を止める」

勇者「でも…どうやって…」

勇者「この水晶…残されたボクたちの力で壊す方法はあるのかな…」




【上空】


ばさっ ばさっ


核竜「ギュルルル…ギュルル!」

闇剣士「……そうか。貴様もまた、勇者の仲間でありたいか」

闇剣士「…さすがは、勇者の魔力を母乳代わりに飲んだ竜だ」

核竜「ギュルルル!」


闇剣士「向かうは死地。覚悟はできているのだな」

闇剣士「貴様の体の頑強さとて、どうなるやわからん」

闇剣士「それでも行きたいと言うのか」

核竜「ギュルルル!」

闇剣士「何…? 主である私の妹を救いたい…だと?」

闇剣士「ふ、このような私をいまだ主と呼ぶか…」

闇剣士(ぎゅる…すまない)

闇剣士「……。ならば翔べ!! 竜巻よりも強く! 稲妻よりも疾く!」

闇剣士「我らが命を賭して、光明を開いてみせよう!」



勇者「もう、時間がない…!」

勇者「魔力が…本当に尽きちゃう」

傭兵「…マナ。聞こえているんだろう…起きてくれ…頼む」


魔女「――」


願いも虚しく、再び周囲の嵐は穏やかに終息してゆく。
次はもう破滅の咆哮を防ぐ手段はない。


傭兵「本当に…終わりなのか…?」

傭兵「ここまで来たのに…」

絶望が膨れ上がり、心を支配していく。

ふと静まりかえった空を見上げると、残された黒雲の切れ間に何かが閃光のようにきらめいていた。


闇剣士「ソル! そこをどけぇ!!」


頭上から響く掛け声と共に、猛烈な勢いでコアドラゴンが闇夜を切り裂いて突撃してきた。
背の上では仮面の剣士が銀色の髪をはためかせ、稲妻と火炎をまとった大剣を振りかざしていた。



闇剣士「邪龍よ!」

闇剣士「我が生涯、我が武道の全てを駆けた、全身全霊の神撃を受けよ!!」

傭兵「よせ! 水晶にはカウンター結界が貼られている! 死ぬぞ!」

勇者「ぎゅるちゃん!」


闇剣士「死せるとも本望! 奪われた同胞たち、マナの苦しみにくらべれば」

闇剣士「もはや恐れるものなどない!」

核竜「ギュルルル!」

闇剣士「返してもらうぞ…! その少女は、たった一人の私の肉親だ!」

闇剣士「魔王よ…貴様のような邪悪の権化が…ッ」

闇剣士「触れることすらおこがましいのだ!!」

傭兵(レヴァン…)


闇剣士「一閃!!」


▼闇の魔剣士は邪龍の水晶に大剣を突き立てた。



天空から舞い降りたレヴァンの閃光のような一撃。
長年対峙してきた俺には分かる。
それはかつて無いほど、命を削り魂を込めた一撃であったことは明白であった。


傭兵「…!」

傭兵「駄目だ…壊れない…嘘だろ」

勇者「そんな…」

闇剣士「……だが、一矢報わせてもらったぞ」

闇剣士「私の武道も、捨てたものではなかったな…」


レヴァンの口元は笑っていた。
『マナを頼んだ』
そうつぶやいたような気がした。

水晶に施されたカウンターがいよいよ彼らの身を襲う。
十字傷の仮面がゆるやかに砕け散った。

そして1人と1頭の戦士は紙切れのように吹き飛ばされ、激しい血しぶきをあげながら虚空へと落ちていった。

傭兵「レヴァン……」

直後、俺たちの背後でピシリと何かの破砕音がした。
振り返ると、鉄壁以上の硬度を誇る水晶が、音をたててひび割れ始めていた。


勇者「そんな…ぎゅるちゃん…レヴァン」

勇者「落ちてく…死んじゃったの…?」

傭兵「ユッカ。振り返ってみろ」

勇者「…! ひび…!」

傭兵「お前の武道。見届けさせてもらった」

傭兵「この好機は逃さない!」


亀裂に聖剣を突き刺す。
俺自身も体を突き刺されたような痛みが走った。

しかし聖剣は確実に表層を砕きながら突き破り、刃先が粘度の高い泥に埋もれたような手応えを感じた。

砕けた隙間から、ドロリとした黒い液体が染み出してくる。


傭兵「これは…この邪龍の血だろうか」


ひび割れはじわじわと広がってゆくが、小さなひび割れから完全な決壊に至るには、この水晶はあまりにも巨大だった。
おそらくはまだ邪龍にとって針に刺された程度でしかないだろう。


一度聖剣を引き抜くと、ユッカは腕に魔力を集め、
迷うことなく開いた穴の中に思い切り手を突き刺した。

勇者「うぐ…ッ! このドロドロが…魔王の魔力…」

傭兵「マナを包み込んでる…。くそ、こんな汚ねぇもんにマナをさらしやがって」

勇者「浄…化を……ボクの炎を注ぎ込めばッ」ズズ

傭兵「やれそうか」

勇者「だめ…もう魔力を流せるほどの力が残ってない…あと少し、あと少しなのに!」


傭兵(魔力切れ…ここにきて…)

それもそのはずだった。
ユッカは火山で覚醒してから一切魔力の回復をしていない。
一体どれほどの魔力を使ってきたのか、見当もつかなかった。
こうしている今も魔力を邪龍に吸収されている。



ユッカは絶えず腕をのばして、マナをたぐりよせようとする。

しかしおよそ腕一本分、マナに届きそうにない。

ユッカ自身、いまごろカウンターによって心臓をつかまれたような痛みが体を駆け巡っているだろう。

無慈悲にも、破滅の咆哮波へのカウントダウンは進んでいく。

次の一撃は魔族領だけでなく、俺たちの世界をも容赦なく焼き払う。


勇者「起きて…手を伸ばしてよマナ…もう、すぐそこなんだ!!」

傭兵「少しでも穴を広げる! 耐えろユッカ」

勇者「マナ! ボクの声が聞こえたらおきるんだ! マナ!!」

勇者「このボクの炎をみて! ボクはここにいる!!」

勇者「キミをそこから助けたいんだ! マナーー!!」





  ・  ・  ・





魔女「……」


わたしの魂は、まるで暗い海の中を漂っているようだった。

息苦しくて、冷たくて、真っ暗で…何も見えない。

足元からは地獄からの叫びのような、恐ろしい魔王の呼び声。
なす術もなく膝を抱えて肩を震わせて沈んでゆくわたしを、今か今かと手招きする。

わかる。
わたしはもうすぐ溶けてなくなるの。
この身と魂が、どこまでも広がる漆黒の闇に溶けて、なくなってしまう。

魔王に取り込まれて、跡形もなく消滅する。


 

 
 


『――ナ! ――マナ』


どこからか小さな声が聞こえる。

暗闇の海。遥か遠くの水面から、たった一筋のかすかな光が差し込んでいた。

わかる、ユッカがそこにいる。わたしを迎えにきた。


勇者『マナ!! お願いだ! 目をあけて!!』

勇者『あと少しっ、あと少しで届くのにっ!!』

傭兵『マナ、帰ろう。みんなお前を待っている』


そう……あなたもいるのね、ソル。


傭兵『心を強くもて! のまれるな!!』

勇者『魔王なんかに負けるなッ!!』



だけどユッカ。ごめんなさい。
私はもう力尽きて、そこまで泳ぐことはできない。

私の魂は、手繰り寄せられるがままにどこまでも沈んでいく。


『―――マナ』

『――ナ』

もう二度とあなたたちに触れることはできない…。


魔女(さようなら…ユッカ……)

魔女(ごめんなさい……)

 

魔王『汝、其の魂、我の為に捧げよ』

魔王『我と一つに成れ』

魔王『汝に永遠の闇を与えよう』


魔女(永遠の…闇…)


それは、どんな心地だろう。
ここよりずっと、暗いのかな。


沈んでいく――――
沈んでいく――

差し込む光が…だんだんと遠くなっていく。ユッカが遠くなっていく。

沈んでいく――

やがて何も聞こえなくなって…もうあなたたちの声すら届かない、深い闇の底へと。

沈んでいく――

魔女(わたしは――)

魔女(いやだ…)ふるふる

魔女(わたし…死にたくない…っ)

 ぐっ

魔女(…?)



ふいに、背中に何かが触れた。
暗い海の底へ沈んでいくわたしを、力強く押し返した。

魔女(温かい…手)


 『ダメだよ。そっちに行っちゃだめ』


魔女(…だれ?)

声の主がわたしを抱きしめて、震える手を握った。
その人はちから強くわたしを引っ張って、暗闇の海の中を光を目指して泳いだ。


魔女(……?)

わずかに光の指す方へとわたしは手を引かれて導かれていく。


 『帰ろう。キミの仲間が待ってるでしょ』


心が暖かくなる、優しい声だった。



わたしは、この人を知っている。
とてもユッカに似ていて、どこまでも優しい、太陽のような笑顔の人。


 『えへへ。ほら、私と一緒なら怖くない』

 『いままでずっと一緒だった…でしょ?』


魔女(魂1号ちゃん……)

魔女「ユ…イ…?」


母親『…マナちゃん』

母親『キミの人生は、キミだけのもの』

母親『キミしか切り拓くことはできないんだよ』


魔王『させぬ…汝の魂、我が元へ』

深い暗闇の底から、無数の黒い手が伸びてきて私の足を掴んだ。

魔王『我と一つに成れ』

魔王『完全なる同化…あらゆる生命を超越し…森羅万象の極みへ』

魔女「…! い、いやっ! 嫌ッ!」


魔王『何故拒む…汝、古より宿命付けられた我が器なり』

魔王『其の身も魂も、我が神充の為に存在する』

魔王『我が元へと……同化せよ』


魔女「離して…ッ! 私は、まだ死にたくない」


魔王『汝、自ら手放した命、尚も求めるか』


魔女「あなたなんかと一つになりたくない!」


魔王『我と共に…闇へ堕ちよ。マナ』


おそろしい呼び声。
私の魂に焼き付いた恐怖が、私の心をかき乱す。


魔女「あ、あぁ…っ」

母親『ダメッ! マナちゃんを離して!』

魔女「ユイ…」



母親『心を強く持ちなさい』

母親『帰らなきゃダメ。キミを待ってる人たちがいるんだから!』

母親『キミは誰? 魔王の器!? ちがうよね』

母親『キミはマナちゃん! ユッカとヒーラちゃんの友達で…ソル君にとって大切な人…』

母親『魔王じゃないよ。マナという一人の女の子なんでしょ!』

魔女「……! …うん。私…帰る」

魔女「帰りたい…!! こんな暗い場所はもう嫌」

魔女「ユッカ達に会いたい!」


魔王『汝、其の魂我へ捧げよ。我と同化せよ』


魔女「…ッ…消えろ!!」


魔王『何―故―――』


私は絡みついてくる真っ黒な手をがむしゃらに引きちぎった。
手足を目一杯ばたつかせて、なんとか逃げ出そうと試みる。



 



魔王『逃げられはせぬ。ここは我が魂の海牢』

魔王『汝、すでに闇に染まり、我と一体と成り――――』


母親『そんなことはさせない!』

母親『マナちゃんは渡さないんだから!』


魔王『不純物よ…闇に飲まれ消え失せよ』


母親『闇闇って…ここが世界の闇だっていうなら、私が晴らしてみせる』


魔王『何…?』


母親『すこしだけあなたの事を抑えるくらい…!!』


魔王『この…魂の光……』

魔王『ヴオ゙オ゙オォ。何も映さぬ…見えぬ…ッ』

魔王『汝、一体…何者…』


母親『私だって太陽の村でうまれたんだ!』

母親『勇者の…ママなんだから!!』


魔王『勇者……太陽の御遣いの…母…親…?』

魔王『オ゙オ、なんてことだ…我の中に…』

魔王『我の中に太陽の火がアア……ヴオオオ゙』

魔王『熱イィ…ヤメロ…。其の忌まわしき光ヲ…放…つ…ナ』

魔王『失…ウ…? 我が、器なる汝を……新たなる天地創造の神となる……我、ガ―――』


  



魔女「ユイ…!」

母親『いまのうち! 行って! 生きなさい!』

魔女「ユイ! でもあなたを置いてなんて――」

母親『…ううん』

母親『私はもうとっくの昔に死者』

母親『これ以上は、未練がましいって、ソル君に笑われちゃうよ』

魔女「……ユイ」

母親『マナちゃん…』

母親『私の魂を救ってくれてありがとう』ぎゅ

母親『…ユッカの友達になってくれてありがとう』

母親『もう一度ソル君に会わせてくれてありがとう…』

母親『ユッカとソル君のこと、これからもよろしくね。キミはふたりより、しっかりしてるから』


魔女「ユイ…!」

母親『着いたよ。ね?』

母親『さぁ、いってらっしゃい…! 光に向かっておもいっきり手を伸ばして』

母親『太陽はほら、いつもあなたの目の前に――』


 ぐっ

ユイの柔らかい手が、もう一度わたしを押し上げる。
そして、わたしの意識は目覚めた。



   ・    ・    ・


 





魔女「…! ユッカ!!」

魔女「ユッカ助けてっ!」

勇者「マナ!!」

傭兵「気がついたか! そうだっ、いいぞ手を伸ばせ!!」

魔女「いやだっ、魔王になりたくないっ」

魔女「魔王が…私をひっぱって…嫌ッ!!」

魔女「もう暗いのは嫌!!」

傭兵「あぁっ! させるものか。絶対にお前を見捨てない!!」

勇者「マナ! 手を!!」


ソルとユッカが私にむかって必死に手を伸ばす。

指先がかすかに触れ、そのまま絡めとるように、手をつなぎ、
私の世界は、また再び彼らとつながった。


傭兵「掴んだ!」

勇者「ひっぱる!」

勇者「マナ…帰っておいで!」

勇者「ボクの…家族なんだ!!」


 



私を封印していた水晶が一気に崩壊をはじめた。
ドロドロとした黒い液体が大量に吹き出す。
それでもソルとユッカは私の手を離さなかった。

そして、私はドロドロした液体の中からようやくぬけ出すことが出来た。
同時にユッカとソルに強く抱きしめられる。


勇者「マナ…生きてる。生きてる…」

傭兵「…お前が無事で良かった」

勇者「マナ!! マナ!!」

魔女「ユッカ…痛い…」

勇者「魔王になってない…マナなんだね」ぎゅ

魔女(暖かい…やっぱりあなた達は太陽…)

魔女「…ねぇヒーラは」

勇者「大丈夫…ヒーラも無事だよ。地上でボクたちの帰りを待ってる!」

傭兵「おいなんだこの揺れ…咆哮波がくるのか…?」

魔女「…! こうしている場合じゃない」

魔女「私を失ったこの神獣は崩壊する。逃げなきゃ」

 


魔王『オ゙オオオオオオオ!!』


直後、私がいた場所から闇が溢れだした。

神獣変化が解け、足元がボロボロとくずれさって支えを失い、
激しい揺れとともに私達は手をつないだまま宙へと放り出される。




僧侶「見てください…邪龍が」

サキュバス「滅びを迎えたというの…」

闇剣士「――」

核竜「――ギュル…?」

僧侶「光につつまれて消えていきます…! 勝った…倒したんですよ!!」

サキュバス「……!」

僧侶「ユッカ様たちは…? ユッカ様~~!」




    ・   ・   ・



【上空】



勇者「あっ」

勇者「みて。邪龍が崩壊していく。浮島も落ちていくよ」

傭兵「あぁ…魔王の最期だ」

魔女「私という肉体がなければ何もできない、魂だけの死者」

魔女(ユイ…ありがとう)

魔女(あなたは魂だけになっても、最期まで強く輝いてあらがった…さすがはユッカのお母さんだね)

魔女(本当に…ありがとう…ユイ)

勇者「ようやく終わったんだ…よね?」

傭兵「三枚おろしには出来なかったが、マナを奪い返した俺たちの勝ちだ!」

傭兵「そうだよな?」

魔女「…うんっ」ぎゅ

勇者「あたりまえじゃん!」ぎゅっ

傭兵「…へへ」



傭兵「見ろ…朝日だ」


邪龍の消失と共に、空を包んでいた闇と暗雲が散り、
白みはじめた空の向こうから朝日が顔を出していた。


魔女「太陽…」

傭兵「よく見ておけ。新しい世界の夜明けさ」

勇者「綺麗だねー」

魔女「私の太陽は…あなたたち」

魔女「ありがとう…ユッカ。ソル、ヒーラ」

傭兵「何言ってんだよ。助けるのは当たり前だろ」

勇者「ボク達仲間で家族なんだから! みんなでヒーラの元へ帰ろう!」

魔女「…うん」


傭兵「…でもよ、俺たちおもいっきり落ちてるけどどうする…。ユッカ、鳥だせ鳥召喚!」

勇者「…魔力…ありましぇん」

傭兵「……えっと、それはつまり…?」

勇者「………ぐすっ、どうしよおぉおぉぉ~~~――ぁぁぁ゙」

魔女「…いつも考え無し」

 


僧侶「サキュさんあそこ! 落下してるのユッカ様達じゃありませんか!?」

サキュバス「…! あ、あぁ…ユッカ」

僧侶「マナちゃん…無事だったんですね」

僧侶「サキュさんやりましたよー! 私達の大勝利です!」ギュッ

サキュバス「……うん。ぐすっ」

僧侶「サキュさん?」

サキュバス「…ううん、なんでも」

サキュバス(よかったね…おチビ…。よかったねユッカ)

僧侶「ユッカ様どうして鳥さんを出さないのでしょう…落ちちゃいますよ」

サキュバス「ゲ。もしかして…魔力切れ? だったり」

僧侶「えっ、た、たいへんですっ!」

僧侶「サキュさんお願いします! 飛んで飛んで! キャッチしましょう」

サキュバス「全員を抱えるのは無理よ!! あんた1人ですらやっとなんだから!」

僧侶「ユッカ様ぁ…! ソル様…マナちゃん…」

闇剣士「――」



勇者「だめだ。ちっとも魔力が練られないや」

魔女「私も。神獣とともに全部弾け飛んだみたい」

傭兵「…そうか」

傭兵「わりぃなヒーラちゃん。君のもとへ帰れそうにない」

勇者「でも、最後にマナを救えたよ」

勇者「ボクたちの世界を、魔王の恐怖から守ったんだ」

勇者「ボクはそれだけで、生きてきた意味があった」

魔女「…私も。最後にあなたたちに会えて…幸せ…ヒーラにも会いたかったけど」

勇者「ヒーラ…ごめん」


傭兵「…生きる意味」

傭兵「…駄目だ。まだ死ねるか」

傭兵「俺はまだ、務めを果たしていない」

勇者「……ソル」

 



傭兵「お前たちをずっと幸せにする…生涯をかけて護り通すって誓ったんだ」


傭兵「ユッカ。搾りかすでもいい、残っている魔力を俺に与えてくれ」

勇者「…うん」

傭兵「マナもおいで」

魔女「…」コク


俺は2人の少女の頭を抱き寄せて、交互にくちづけを交わした。
魔力貸与でもらえた魔力はほんの僅かではあったが、2人の気持ちを存分に受け取った。
それだけで心臓にトクンと小さな火が灯ったような気がした。


傭兵(ユイさん、いまもマナの中にいるのか?)

傭兵(どこでもいい、いまも俺のことを見守っていてくれるのなら…)

傭兵(最後に、力を貸してください)

傭兵(母さん…俺が生まれて来た意味を、いま見つけたよ)



  男『なんて名前にしようか』
  
  炎鳥『うーん…私、人間の名付けはよくわからなくて』

  男『なら、生まれて来る子に将来どんな子になってほしい』
  
  炎鳥『そうですねぇ……太陽!』

  炎鳥『私たちの太陽!』

  男『ハハ。そりゃ、大仰だな』

  炎鳥『良いではないですか。太陽の国で生まれたあなたと、不死鳥である私の子なんですから』

  炎鳥『この子は、例えどんな小さな火種からでも、再び太陽のように燃え上がることのできる子』
  
  炎鳥『何度でも何度でもたちあがる、強い子』

  炎鳥『私の力をその身に受け継ぐ……太陽の…ソル』


 


体が芯から熱く燃え上がった。
灼熱が体中を駆け巡る。


傭兵「紅蓮鳥、出ろ!!」


炎の翼が、大空へと舞い上がった。



勇者「わぁああ! ソル…一体どうやったの!」

魔女「すごい…あんな少ない魔力で…」

傭兵「見よう見まねだが、なんとか…なったな」

魔女「魔法は、見よう見まねでは真似できない」

魔女「きっとあなたの想いが実を結んだ」

勇者「ボクに魔力をくれたときと同じだね…。えへへ」

勇者「キミはいつも、無茶なことをやり遂げてきたんだ。やっぱりソルはすごいね!」

傭兵「なによりお前たちがいてくれたからだよ…」なでなで

勇者「えへへ」

魔女「…ふふ」




僧侶「やったー! サキュさん! やりましたよー!!」ぎゅ

サキュバス「痛い痛い痛いってば! わかったから!」

僧侶「きゃーユッカ様ーソル様ーマナちゃーーん」ぶんぶん

サキュバス「でも、アレなんだか落ちてってない?」

僧侶「え…?」



勇者「へたっぴ! ちがうちがうちがう!」

魔女「結局おちそう…」ぐらぐら

傭兵「な、なんでうまく飛べねーんだ。おい鳥! ちゃんと飛べぇ! おらぁ!」バシバシ

勇者「そんなんだからダメなんだよぉ! ソルキミ実は自分の魔力を信用してないでしょ!」

傭兵「うるせー半信半疑で悪いか! 俺はなぁ、ここ数年ずっと魔力無しで生きてきたんだよ」

傭兵「い、いきなり魔力でつくった鳥のコントロールなんてできるか! お前みたいな天才じゃねーの!」

勇者「う…それってボクが悪いみたいじゃん…バカバカバカ!」

傭兵「やべぇよ…あああ、心なしか背中が薄くなってきたぞ。しっかりしろよ鳥」なでなでなでなで

魔女「きえそう…」ぐらぐら

勇者「ソル自分を信じて! 君ならでき…あ゙ああああっ消えりゅ―――」


ぱしっ


闇剣士「何をしている」

核竜「ギュルルル」

傭兵「…! レヴァン」

闇剣士「無様だな。墜落死など笑えんぞ」

勇者「ぎゅるちゃん!」ぎゅっ

核竜「ギュルルル♥」ぺろぺろ

魔女「お兄様…」

闇剣士「…マナ」

傭兵「おい消えそうだ! そっち乗せてくれ!」

闇剣士「……成長の早いこいつに感謝するんだな。幼体なら定員オーバーだ」

闇剣士(それも…勇者の魔力を食らったおかげか…つくづく私とこいつは彼女らの運命に巻き込まれているらしい)

核竜「ギュルルル!」




【魔族領・湖畔の平原】


ばさっ ばさっ


僧侶「こっちですよーー」

勇者「ヒーラ~~」

勇者「…ヒーラ!」

ぴょんっ

僧侶「ユッカ様ぁ~~」がばっ

僧侶「おかえりなさいませ」すりすり

勇者「えへへ…ヒーラぁ…」

僧侶「おかえりなさい…マナちゃん!」

魔女「ありがとうヒーラ」

僧侶「もっと喜んでいいんですよ~~♪」ツンツンツン

魔女「…ぅ、うん。嬉しい」


僧侶「ソル様もおかえりなさい。お疲れ様でした」

傭兵「あぁただいま。ヒーラちゃんもな、よくやった」なでなで

僧侶「すぐにみんなの怪我の手当をいたします」

勇者「うん」

僧侶「……。ぐすっ、ああああん」

傭兵「ありゃ、お、おいヒーラちゃん…?」

勇者「あー泣いちゃった。ごめんね心配ばっかりさせちゃって」なでなで

魔女「ごめんなさい。ヒーラ、ただいま」

僧侶「良かった…みんな良かった…うわあああん」

傭兵「ヒーラちゃんが1人で飛び出したときは俺たちのほうがよっぽど心配したぞ…」

僧侶「ごめんなさぁぁあい、あああん、わあああん」

勇者「もうっ、ボクよりお姉さんのくせに泣き虫なんだから…ぐすっ」

魔女「またみんな一緒…ずっと一緒」

僧侶「うわあああああん」





サキュバス「怪我平気?」

闇剣士「問題ない。いささか死にかけているだけだ」

サキュバス「だめじゃん…」

傭兵「よぉ」

サキュバス「あんたたち…やるじゃん。さすがあたしが見込んだだけあるわ」

傭兵「うるせぃっ。ヒーラちゃん助けてくれたんだってな。礼を言っておくぜ」

サキュバス「ま、あの子には色々まもってもらっちゃったしさ。それでチャラってことで」

闇剣士「ソル。貴様達には1つ借りが出来た」

傭兵「1つだけか? いくらでも思い浮かぶから一生かけて返しやがれ」

闇剣士「……ふ」

傭兵「お前たち、これからどうするんだ」

闇剣士「……彼方に霞む山脈を見よ。もはや山脈と呼べるのかはわからんがな」

傭兵「あーあ。ものの見事にぽっかり穴空いちまったなぁ」

傭兵「地上からみてはじめて威力のほどをおもいしらされるな」



闇剣士「魔界と人間界を隔てる壁はなくなった」

傭兵「そうか…あれは番人の山脈…」

闇剣士「いまはまだ焼け跡として炎がくすぶっているだろうが、いずれ誰しもが自由に行き来ができるようになる」

闇剣士「そうなれば邪な者がこの地へ出入りを始めるだろう。逆もまたしかりだ」

傭兵「ちょうど境界線だしな……お互いに領土を求めて戦争になるのか?」

闇剣士「…わからん。だが私はあの荒れた野に、国を興そうと思う」

闇剣士「魔族と人間の血の流れる、半端者である私がだ」

傭兵「レヴァン…責任を感じているのか」

闇剣士「数多の贖罪をせねばならぬ。だがこの命ひとつ天に返しても、洗い流せる罪ではない」

闇剣士「ならば私は、新しい世界と秩序のための礎となろう」

闇剣士「この澄み切った空のように、世界は今ひとつながりとなったのだ」

サキュバス「国かぁ…じゃああたしって女王様!?」

サキュバス「ねぇねぇ、サキュランドってどう?」

闇剣士「名前はすでに考えた」

サキュバス「一応聞いてあげる」

闇剣士「果てしない空に境界はない…私のつくる国もしかり、あらゆる種族の垣根を越えて平穏に暮らせる国となることを願う」

闇剣士「ゆえに…ソラの国だ」

サキュバス「却下!」


傭兵「…そうか。まだお前の戦いは終わってないんだな」

闇剣士「心配無用。誰よりも強くたくましく、私たちは生き延びてみせる」

傭兵「もう、魔王の野郎の支配からは脱却したんだな」

闇剣士「我が主の魂は、輝きと共に雲散霧消し、私の魂もまた戒めの楔から解き放たれた」

闇剣士「ソル。最後のあの光は、勇者の放ったものか?」

傭兵「……さぁな」

傭兵「お前の妹が、魔王なんかよりずっと強かった。ってことさ」

闇剣士「……ふ」


トコトコ

魔女「…お兄様。私…」

闇剣士「何も言うな。お前は自由だ」

闇剣士「勇者たちと末永く幸せにな」

魔女「…うん。ありがとう」

魔女「お兄様の声…届いたよ。お兄様も、私を照らしてくれた光の一人」

闇剣士「…」

魔女「あの日から、ううん私が生まれた時から…ずっと私のことを…想い続けて、護ってくれて」

魔女「だから…ありがとう。お兄様」

闇剣士「……ッ。ソル、マナを任せる」

闇剣士「散々たぶらかした責任はとってもらうぞ」ガシッ

傭兵「…あぁ! 任せろ!」ガシッ



勇者「サキュ…」

サキュバス「なによそのへの字眉。そんなにあたしとおわかれるするのが寂しいの?」

勇者「うん…」

サキュバス「あんた…いい勇者になったわね」

勇者「ありがとうサキュ…昔、ソルのこと助けてくれたんだよね」

傭兵「こいつが…?」

サキュバス「…えー、そんなことあったけぇ?」

勇者「ボク、忘れてたこと全部思い出したよ。だから今までいろいろひどいこと言ってごめん」

サキュバス「んふふ~、なんだか素直になられるとこっちが恥ずかしくなっちゃう」つんつん

サキュバス「せっかく助かった命なんだから、いっぱいセックスしていっぱい子供産みなさいね」

勇者「うん……がんばるよ…うん?」

傭兵「…」


勇者「あのねぇ…ボクもうエッチな体じゃないんだからね!」

傭兵「その通り!」

勇者「キミの呪い…火山で覚醒した時に解けちゃってるもん!」

傭兵「言ってやれ言ってやれ」

サキュバス「あ、やっぱり!? どうりでねぇ」パチンッ パチンッ

勇者「きかないもーん。くふふ」

サキュバス「なーんだ残念。せっかくエロエロ子作りさせて子供増やしてあげようと思ったのに」

勇者「……」ジトー

傭兵「余計なお世話だ! 俺の身にもなってみろ」

サキュバス「んーー……オスの本能的に超うれしい?」

傭兵「…ぐ、殴りてぇ…。が、ヒーラちゃんの命の恩人だから見逃してやる」

僧侶「…こほん。サキュさん、あなたって人はこんな時でも空気を読めないんですか」

サキュバス「ま、いいわ。あたしはあたしで子孫繁栄頑張ることに決めたから」

僧侶「マナちゃんのお兄様を支えてあげてください」

魔女「お兄様をよろしく」

サキュバス「うん。男の手綱をひくのはおまかせあれ」

勇者「いつか…またみんなで会いに来るよ」



サキュバス「ユッカ、ヒーラ、マナ。最後にすこしだけいい?」

勇者「?」

サキュバス「こっちいらっしゃい」ぎゅ

勇者「んぅ? きゃふっ、なに? くすぐったいよ、えへへ」ぎゅー

僧侶「サキュさん…助けてくれた恩義、忘れません」ぎゅ

魔女「サキュ…ありがとう。これからは私のお義姉ちゃん」ぎゅ

サキュバス「うふふ。あたしから頑張ったあんたたちに感謝の気持ち」

サキュバス「ささやかなお礼を受け取ってね」

サキュバス「えいっ」ぽわ~ん


▼勇者は呪われてしまった。

▼僧侶は呪われてしまった。

▼魔女は呪われてしまった。


勇者「……へ?」

僧侶「は…?」

魔女「……」

サキュバス「あはははっ、ひっかかったぁ」

サキュバス「じゃあね! 楽しく励みなさいよ~」

パチンッ パチンッ パチンッ♪

勇者「ひぐっ…!?♥」ビク

僧侶「ひゃうっ!? ちょっとサキュさん~~~っ、んぅッ♥」ゾゾッ

魔女「んっ…♥ あっ♥」ゾクゾク


 

 
 


闇剣士「…なにをしてきた」

サキュバス「ぎゅるちゃん出して出して! 逃げるわよ!」

核竜「ギュルルル?」

闇剣士「…別れは済んだのだな」

サキュバス「うん♪ とっておきのプレゼントしてきちゃった♪」

勇者「ま、まて~~!!」

核竜「ギュルル! ギュルル!」

勇者「あっ! ば、ばいばい…ぎゅるちゃ…っあっ、あっ♥」

核竜「…ギュルル」ペロペロ

勇者「ひゃめっぺろぺろしないで、あひゅっ♥ くすぐっらくれ♥」

サキュバス「くふふふ。やっぱあんたはあんあん言ってるのがお似合いのへっぽこ勇者ね」


闇剣士(ソル。貴様との決着はいずれつけよう…)

闇剣士(マナ。幸せにな)

闇剣士「さらばだ、太陽の戦士たち…!」

サキュバス「じゃあね~、ばいば~~い!!」

勇者「こら~~ッ!! 解いてけ~!!」


ばさっ ばさっ


傭兵「あ、あの女…!!」

勇者「はぁ…ハァ、ソルぅ…♥」

傭兵「げッ…」


僧侶「ソル様…たすけてください…♥ おまたと胸が熱くて…♥」ドキドキ

魔女「…はぁ♥ う…んっ…♥ 我慢できない」

勇者「ハァ…はぁ♥」

傭兵「…ひッ!」よろっ


傭兵「俺、怪我人だし…疲れてるし…」

傭兵「お前たちも戦いで疲れてるだろ…?」

勇者「うん。けどエッチしたらそんなの吹っ飛んじゃうよ♥」ガシッ

傭兵「んなわけあるか!! ぐお、なんて馬鹿力…まだこんなに余ってんのか」

僧侶「ソル様♥ どうか私達の火照りをしずめてください…」

魔女「ずっと我慢していたから…もう限界…♥ 一度すっきりしたい」

傭兵(母さんユイさん、俺は遅かれ早かれ干からびて息絶えます)


勇者「みんな、逃がしちゃだめだよ! ソル~~~♥」がばっ

僧侶「ソル様!♥」ぴょんっ

魔女「逃げちゃだめソル♥」ぐいっ

傭兵「3対1なんて卑怯だぞ!」


傭兵「あ゙あああああああっやめてぇええ!!」


びゅくっ

 

  
   ・   ・   ・



【魔族領・上空】



核竜「ギュルルル…?」

闇剣士「どうした。なにか見つけたのか」

核竜「ギュルルル……」ツンツン

 ふよふよ

サキュバス「…あら、これって」

闇剣士「さまよう魂か…おそらく魔王に取り込まれた者の1つだろう」

闇剣士「四散した時に解放されたのか…?」

闇剣士「む。この感じ…どうやら魔族ではないな…」

核竜「ギュルルル♪」ペロペロ

闇剣士「誰ともわからぬ魂をなぜ気に入るのだ…」

サキュバス「…むふふ、あたしこの子つれていこーっと」

闇剣士「何…」

サキュバス「いいじゃない。きっと役に立つ日がくるわよ」

闇剣士「…? 好きにしろ」

 ふよふよ…

核竜「ギュルル♪」ばさっ ばさっ




最終話<太陽>おわり
 

 
  

更新終わり
本編おわりです長い間ありがとうございました

次の投下日の告知は連休中にします 
連休は更新休みますスマソ
後日譚全5話+番外編1~2話分ほどを予定

後日譚明日22時~
またしばらく宜しくお願いします



後日譚第1話<故郷へ>




【聖なる火山】



勇者「スレイプニル~♪」ぎゅ

馬「ヒヒン…!」

勇者「あぁ元気してた久しぶり、ただいまぁ」

傭兵「久しぶりって程でもないだろ」

勇者「なんだかすごく長かった気がするんだぁ」

傭兵「はは、わからなくはないけどな」

僧侶「荷物番して私たちのこと待っててくれたんですね。偉いですね」なでなで

勇者「マナもなでてあげて。マナのこと心配してたんだよ」

魔女「う、うん」

魔女「なでていい?」

馬「ヒヒン」

魔女「…ただいま」なでなで

 べろっ

魔女「……」

勇者「えへへ。マナが戻ってきて嬉しいってさ」



炎鳥「おかえりなさい」

勇者「あっ! ソルママさん。ただいま戻りました」

魔女「ママ…? この大きな鳥が…?」

勇者「うん、正真正銘ソルのママだよ」

魔女「鳥…なんだけど」

勇者「言ってなかったっけ」

魔女「うん」

炎鳥「うふふ。あなたがマナちゃんね」

魔女「…」コク

魔女「はじめまして。世界に迷惑をかけた悪女です」

傭兵「こいつまだ言ってんのか」グリグリ

魔女「あうっ」

勇者「マナは悪くないもん」

炎鳥「…本当に無事で良かった。あなたたちは運命に打ち勝ったのですね」

傭兵「あんたの残してくれた力のおかげだよ」

傭兵「俺たちだけじゃ何もできなかった」


炎鳥「もうすぐ日が落ちます。なにもありませんが今夜はゆっくりしていきなさい」

僧侶「はい、お言葉に甘えさせていただきます」

勇者「はー、お風呂お風呂」

魔女「私も入りたい」

僧侶「すぐドラム缶にお水注ぎますね」スチャ

僧侶「水の力よ…」

▼僧侶は水流魔法を唱えた。

僧侶「……」

僧侶「……あれ? おかしいですね、水が出ません。ちょっとまってくださいね」

僧侶「えい! ……??? あれ」

傭兵「ヒーラちゃん魔力切れてる?」

僧侶「そんなはずは…魔力がなくなっていたら、へとへとなはずですし」

勇者「もっと集中して!」

僧侶「してますよぉ」

魔女「……もしかしたら、あの時に力を解き放ったせいかもしれない」

僧侶「え…?」


魔女「あなたは1人であれだけの水の盾を作り出したから」

僧侶「海鳴りの杖に負担がかかったということでしょうか」

炎鳥「すべての人、物には生まれながらに役目があります」

炎鳥「あなたの中に存在する海神の力は、役目を終えて眠りについたのかもしれません」

炎鳥「遥か古の時代、勇者の手助けをして眠りについた私のように…」

僧侶「…!」

僧侶「では…私はもう水の力は使えない…のでしょうか」

炎鳥「いつか必要に迫られれば、その時は必ず力を貸してくれますよ」

僧侶「そうですか…」

傭兵「いつかって今だろ。俺たち風呂入りてぇし」

炎鳥「山には綺麗な川がいくつもありますので、バケツを持って汲んできなさい」

傭兵「はぁ。俺つかれてるんだけどな」

炎鳥「ソル。それは男の子の務めでしょう! 行って来なさい」

傭兵「…っ、あーもうわかった。仕方ないいってくるか」

勇者「ボクもいく!」

傭兵「お前は元気だなぁ」


炎鳥「では、魔族領で起きた話を2人が水を汲みに行っているあいだ聞かせてもらいましょうか」

僧侶「はい。私とマナちゃんでよければお話致します」

魔女「…」コク

魔女「その前に…とても気になることが1つある、教えて」

炎鳥「なんですか」

魔女「…ソルは卵から生まれたの?」

傭兵「…」ズルッ

傭兵「んなわけないだろ。ややこしい姿してないで、さっさと人型になれ」

炎鳥「うふふ。昔はひな鳥だったんですよ」

傭兵「嘘だろ!?」

勇者「ソルもぴよぴよ言ってた頃があったんだね」なでなで

傭兵「なんでお前は受け入れられる!? どうやったらひよこがこんなんになるんだ言ってみろ!」

僧侶「ソル様がひよこ…うふふ」

傭兵「ちがうっ、絶対嘘だぞ…卵から人間が生まれるか」

勇者「だから生まれた時はひよこなんだってば」なでなで

傭兵「やめろっ! そんなの嫌だ! 前に卵生じゃないって言っただろ!!」

炎鳥(冗談がわからない子ね)

炎鳥「はやくいってらっしゃい」



   ・   ・   ・


【近くの川】



勇者「魚もとっていこっか」

傭兵「そうだな。俺は薪と食えそうなものも探す」

馬「ヒヒン」

勇者「よしよしいい子いい子。待ってる間は何食べてたのかな」

馬「ヒヒン」

勇者「そうだ、ところでピヨ…じゃなくてソル」

傭兵「あ゙!? いまピヨって言ったろ」ガシッ

勇者「いだだっ、いだい」

傭兵「お前つぎその話したらひどい目にあわすぞ」グリグリ

勇者「はいっ、もう言わないから許してっ!」

傭兵「はぁ…ったく。あんなのニクスの冗談にきまってるだろ」

勇者「夢があるとおもうけどなぁ」

傭兵「鳥なら自力で飛ぶっての…で、何言おうとしたんだ」

勇者「えっとね、マナとヒーラの事なんだけどさ」


勇者「ふたりとも、普通の女の子になっちゃったね」

傭兵「ヒーラちゃんは水の力を失った。まぁそうだよな、あんなすごい熱線をうけとめたんだ」

傭兵「内なる力を使い果たしても不思議じゃない」

傭兵「おい。ふたりともってことはマナも…?」

勇者「うん。マナのドレイン能力…もう残ってないみたい」

傭兵「ほ、ほんとか!?」

勇者「側にいてもあんまり魔力を吸われてる感じがしないんだ」

傭兵「そうか…それは良いことなんじゃないか?」

勇者「うん、あんな力無い方がいい…マナが幸せになれるなら、ボクは良かったと思う」

傭兵「…ユッカ、お前は何も変化はないんだな?」

勇者「……」

勇者「…」ふるふる

傭兵「どうした」

勇者「魔覚が、すごく鈍いんだ。もう全然わかんない」

傭兵「え……」



勇者「ボクの魔覚もきっと、役目を終えたんだね」

勇者「深い闇の中で助けを求めてるマナを見つけるために…神様が授けてくれた力だったんだよ」

傭兵「ユッカ…」


ユッカは満足そうに目をとじて笑っていた。
だけどその姿が少しさみしそうに見えた俺は、思わず彼女を強く抱きしめていた。


傭兵「……がんばったな」

勇者「うん、ありがとう」

勇者「魔覚がなくても、ボクはソルのことをこうやって感じていられる」

勇者「だから大丈夫だよ。幸せ」

勇者「あの力は、平和の代償。ずっとしまっておいたほうがいいんだ」

傭兵「…そうなのかもしれないな」

傭兵(神憑った超常的な力は、こんな小さな女の子がひとりで抱えていくには重たすぎるのかもしれない)


勇者「…」うず

勇者「ねー、抱っこされるとうずうずしちゃう…」

傭兵「わ、わるいっ!」

傭兵「でも…もうちょっとだけこうしていたい」


勇者「言っとくけど、なくなったって言っても」

勇者「まだまだヒーラたちよりには敏感だとおもうよ?」

傭兵「そうなのか」

勇者「お魚あの岩場の辺りにいるよ! 獲ってくるね。ソルは水!」

傭兵「……十分だな。前がおかしすぎただけか」

傭兵「でも、なにがあってもこうしてお前たちが元気そうなのがなによりだ」

なでなで

勇者「えへへ。ボクだけこんなことしてもらってずるっ子だね」

勇者「ちゃんとヒーラやマナもなでなでしてあげてね」

傭兵「わかった」



   ・   ・   ・



僧侶「ではお料理の準備はじめますね」

僧侶「ごちそうとまではいきませんが、マナちゃん復帰の最初のお祝いです」

傭兵「楽しみだな」

魔女「…ヒーラの手料理久しぶり」ゴク


傭兵「ニクス。マナたちから事の顛末は聞いたんだな」

炎鳥「ええ大方。やはり私が感じ取った通り、魔王の魂はこの世から消え去ったのですね」

傭兵「だが激戦で魔族領一帯はめちゃくちゃだ」

炎鳥「番人の山脈が消え去り、人と魔族の世がまじわって、果たしてこの先の世界はどうなるのでしょうか」

傭兵「そこは頼れる奴にまかせてきた」

傭兵「あいつならなんとかやり遂げてくれるさ」

傭兵「俺が世界で唯一認めた好敵手だからな」

炎鳥「ソル…その人のことをとても信頼し、想っているのですね」

傭兵「……は? なんでそういう話になる」

炎鳥「よもやあなた、あの3人の少女だけで飽きたらず、他にも…現地妻というものを」

傭兵「いやっ、違う! お前は思考が偏ってるんだよ誰のせいだ、クソ親父のせいか…」

傭兵「あいつとはなぁ、そういう関係じゃねぇ」

傭兵「もっとこう…(血にまみれた)ドロドロした関係だ」


僧侶「…」チラ

傭兵「…ヒーラちゃん。なんだよその視線」

僧侶「い、いえ……。なんでもありませんヨ」

僧侶(間違ってもソラ様にはならないでくださいね…)

僧侶「いたっ、指ちょっときっちゃいましたぁ…」

勇者「大丈夫!?」




   ・   ・   ・



魔女「ごちそうさま」

勇者「ごちそうさま~♪ お風呂~」スルッ

傭兵「うがっ、そこで脱ぐな!」

勇者「ねー、一緒に入る…?くふふ」

傭兵「入れないことは実証済みだろ」

魔女「…! 私、その話知らない。ずるい……」

魔女「あなた、ユッカと一緒にお風呂に入った…? この狭いドラム缶に…肌を密着させて」

傭兵「あ…」

勇者「ヒーラも入ったよ」

僧侶「あう…あれは、恥ずかしかったですね」

傭兵「暴露していくのやめろ」

魔女「…」ぐいっ

傭兵「ほら、こうなるだろ!」

魔女「…!」ぐいっぐいっ

傭兵「わかりました。入ってやるから、ユッカの後でいいか」

勇者「せっかくだし4人で入ろうよぉ」

傭兵「一生抜け出せなくなるぞ」


炎鳥「まぁ…ソル、あなたはやはり3人の子達と必要以上に仲睦まじくしているのですね」

傭兵「…また耳が痛い話か」

炎鳥「そういえば、今度会う時はお嫁さんをひとり選んでおきなさい。と言ったはずですが」

傭兵「きゅ、急すぎるだろ。だいたいなぁ…嫁をひとりっていわれても…」チラ

勇者「…!」

僧侶「…っ」

魔女「…」

傭兵(困った…)

炎鳥「まさかあなた、子を残さないというのですか…ぐすっ」

炎鳥「それとも他に思いを寄せる人が…? 魔族領に残してきたという人ですか」

傭兵「あー違う違う…うるせぇこっちにもいろいろあるんだよ!」

炎鳥「…?」

勇者「ソルママさん。ソルはね、ボクのせいで赤ちゃんつくれない体になっちゃったんだ…」

傭兵「聞く人間によったらすげー語弊があるなそれ」


炎鳥「なるほど…つまり、不能なのですね」

炎鳥「なんとも嘆かわしい」

傭兵「違う」

炎鳥「わかりました。そういうことでしたらソル、こっちにきなさい」グイッ

炎鳥「母のちからを今一度託しましょう」

傭兵「え…」

 ぐいっ


傭兵「あつ……な、なんだ…腹が…熱いッ」きゅんっ

傭兵「や、やめろ…一体何が…」

炎鳥「終わりましたよ。はぁ…どっと疲れました、これはまた眠りにつく時間が伸びるかもしれませんね…」

傭兵「何を…した…熱い、股間が熱いんだが」

勇者「…! そ、ソル…それ」

僧侶「…ソル様っ」

傭兵「なんだ…?」

魔女「テントおっきくなってる。いつもよりずっと」

傭兵「…は?」

炎鳥「不能障害を治しておきました。これであなたは不死鳥のごとく、燃え上がることができるでしょう」


傭兵「不能障害じゃないんだが…」


ビリリッ

傭兵「ぎゃああっ!」

魔女「!」

僧侶「きゃあああああ、出ちゃってますよぉ!」

勇者「うわわ……嘘…怖いくらいおっきいけど大丈夫…?」

炎鳥「良かったじゃないですか。これで完治しましたよ」

勇者「ソルママさん…ソルは魔力がなくて、妊娠させられない体ってだけで」

勇者「おちんちんは別に問題なかったよ…」

炎鳥「え……?」

傭兵「ふざけんなこれどうしてくれるんだ! くっそっ、ムラムラする…助けて」

傭兵「しかも魔力もどってねぇじゃねぇか!」

炎鳥「……あれ」

勇者「はぁ…ハァ、すごい反り返ってるね…♥」

僧侶「私たちにそんなの見せてどうする気ですか♥」

魔女「びんびん5号」ピトッ

傭兵「はぐあっ」


炎鳥「もしかして、余計なことしました?」おろおろ

傭兵「息子の息子をまじまじと見るんじゃねぇ!」

炎鳥「あぁソル、ごめんなさい…良かれと思ってしたことが…」

炎鳥「ですが男子として、強い性を持つことは決して困ることではないとおもうのです」

炎鳥「性とは生。血を後世に伝えるには必要不可欠。子孫繁栄です」

傭兵「先に魔力のほうを解決してくれよ…ふざけやがって、こんなの何回出したらおさまるってんだ」

勇者「か、数えてみよっか…♥」じりっ

傭兵「ひ…」

僧侶「ソル様のみてると…あそこが…きゅんきゅんって…サキュさんの呪いが…ああっ♥」

魔女「お風呂入れる温度になるまでセックスしよ」

炎鳥「うふふ、この際体の相性がよさそうな子を嫁に決めるのも良いかもしれませんね」

傭兵「いけしゃあしゃあとこのアホ鳥…」

傭兵「わかった! とりあえず馬車の中に来い!」

勇者「わーい♥」

僧侶「ソル様がさそってくださるなんて…相当溜まってらっしゃるんですね」

魔女「第2回聖剣争奪杯?」

勇者「うん!」




後日譚第1話<故郷へ>つづく


 

更新おわり
次回明日22時~予定

帰宅遅れたスマソ
更新は明日です書き溜めて寝ます

後日譚第1話<故郷へ>つづき



勇者「久しぶりだけど、ルール覚えてる?」

魔女「うん」

傭兵「ルールなんてあったか」

勇者「持ち時間は1人3分で、交代交代にソルをきもちよくして、一番最後にソルをイカせた人の勝ち!」

勇者「今夜一緒に寝る権利を手に入れまーす」

魔女「…欲しい」

傭兵「最後にイカせた人…? 最初じゃなかったか」

勇者「だってそれだとじゃんけんで順番きめた時にきまっちゃうようなもんでしょ」

勇者「ってヒーラが前に言ったから」チラ

僧侶「うう…」

勇者「だから、最後にイカせた人の勝ち! みんなチャンスは平等にね!」

傭兵「……」

勇者「あ、そうそう。2巡目からは体のどこを使ってもいいよ」

勇者「もちろん…アソコも…えへへ♥」

勇者「じゃあ今回はお風呂が入れる熱さになるまでだからね」

僧侶「はい、持ち時間をどう使うかが鍵になりそうですね」


傭兵「お前らそのルール言ってて恥ずかしくならない?」

勇者「……う、ううるさいっ!」ぼかっ

勇者「賞品はね、だまって寝てて!」

傭兵「はいはい」

勇者「おちんちん丸出しのくせに! どっちが恥ずかしいの!」

魔女「ぷふ」

傭兵「うるせー! いきなりこんなでかくなったらそりゃ破れるわ!」

僧侶「あとで縫っておきますからね」

勇者「じゃあ誰から攻撃するか順番きめるよ」

勇者「ジャンケンポン」

勇者「…あ」パー

魔女「…負けた」パー

僧侶「…やった! 私からです」チョキチョキ

勇者「ちぇ~、まぁいっか、ヒーラが寸止めでタイムアップになってくれたら次の人が有利だもん!」

僧侶「うふふ。手加減しませんからね」


勇者「よーしマナ。ボクとジャンケンだよ」

魔女「うんジャンケンポン」

勇者「わわっ」グー

魔女「…私の勝ち」

勇者「いま早かったよ! ボクもっと出す手を考えたかったのに」

魔女「知らない。私の勝ち。私が2番目」

勇者「ずるいよ~~っ」ぐにっ

魔女「知らないから…うぎぎ、ひっぱらないで」

魔女「反射的にグーしか出さない単純なあなたがわるい」

勇者「やっぱずるじゃんか~~」ぐにぐに

魔女「いひゃい…ユッカ」ぐに

傭兵(くだらねーことで何喧嘩してんだ…)


つんつん

傭兵「?」

僧侶「時計、もう計りはじめていいですか?」

僧侶「うふふ、いきますよ」



ヒーラちゃんは時計を切りの良い時間になるまで見つめた後、そっと床に置き、
うれしそうに俺の上に飛び乗って豊満な体を押し付けてきた。

僧侶「私の攻撃ですっ」ぎゅ

顔をちかづけて、くすくすと笑って、やわらかい吐息が首元や顔をくすぐった。
そしてすでにむき出しとなった俺の陰茎を細長くてひんやりとした指先でからめとるように握る。


僧侶「あら…おっきいですね」

僧侶「それにマグマみたいにあつあつ…♥」

僧侶「これが本当のソル様? うふふ…」

傭兵「ヒーラちゃん…近い」

僧侶「どきどきしますか?」

僧侶「おちんちんこんなに硬くしてるってことは、エッチな気分になっているんですよね」

僧侶「一周目なので、手で我慢してくださいね」

ヒーラちゃんはしなやかな指で輪っかをつくり、剛直をゆっくりとこすりはじめた。

 すりすり…
  すりすり

僧侶「…ぴくぴくって、してますね」

僧侶「さきっちょからぬるぬるのお汁が出ちゃってますね…」


僧侶「とっても硬い…こんな大きさで女の子の中に入るんでしょうか」

傭兵「さ、さぁ…」

僧侶「うふふ、想像しちゃってます? 楽しみですか?」

僧侶「でもまだだめなんですよ一周目ですからね」


 すりすり すりすり
  すりすり すりすり

僧侶「ソル様、もっと私の顔を見てください」

ヒーラちゃんは紅潮してうっとりとした顔で、俺のことをみつめていた。
ぴったりとくっつかれて彼女の香りがふわっと鼻孔をくすぐった。

僧侶「あっ、お風呂まだなので変な匂いだったらごめんなさい」

傭兵「いや、ヒーラちゃんはいつも良い香りしかしないよ。それよりも俺のほうが臭うんじゃないか」

僧侶「大好きな匂いなので、ずっと側で嗅いでいたいです」

僧侶「あは、またすこしぴくぴくってなりましたね」


 すりすり すりすり
  すりすり  すりすりすりすり


僧侶「♪」


僧侶「まだ出そうにないですか?」

僧侶「ソル様はこうやってみんなに見られていると意外と恥ずかしがり屋さんですからね」

僧侶「我慢しちゃうんですね」

  すりすりすりすり

僧侶「私の手を汚してもいいんですよ」

僧侶「しこしこ、ぴゅっぴゅっ…ってしましょうね」  

僧侶「だんだん顔がきもちよさそうになってきましたね、うふふ」

傭兵「ひ、ヒーラちゃん…吐息がくすぐったい…」

僧侶「こうやって側でこそこそ囁かれるのがお好きですよね」

僧侶「おちんちん、おっきくなっちゃいますよね。ふぅーーーっ、くすくす」

傭兵「う…っ、あああ」

僧侶「まだダメですよ? 制限時間ギリギリまで使いたいんです」

傭兵「イキ…そ」

僧侶「はい、ストップです」

根本できゅっと指をしめて、射精欲を封じられてしまう。

傭兵「こらぁ」


どうもこのヒーラちゃん、ユッカやマナ一緒にいると小悪魔になるようで、
俺をもてあそんで楽しんでいるように見える。
年上をからかうのがそんなに楽しいのだろうか。

僧侶「こんな簡単に射精しちゃったら、男の人として恥ずかしいんじゃないですか」

傭兵「そ、それはだな。でも気持ちいいからしかたない」

僧侶「もうすこし、気持ちよさを溜めてからのほうがより良い射精にいたれると思いますよ」

僧侶「うふふ、しこしこ再開しますね」

  
  すりすりすりすり
   すりすりすりすり♪


次はリズミカルにヒーラちゃんは手を動かしはじめた。
そして少しだけ身を起こし、空いた手でぷちぷちと前のボタンを外していく。

ふっくらとした白い乳房が目の前に現れた。


僧侶「おっぱい。好きですよね?」

僧侶「うん、そうなんですね。いまおちんちんがお返事してくれました♥」


胸の先端からはふつりと白い液体が一滴滲んでいた。
それはいままで何度も味わってきた聖乳。
俺の鼓動はドクンと跳ね上がり、途端にのどの渇きに襲われる。


僧侶「あれ…や、やだ。どうしてまたおっぱいが…」

勇者「呪いでしょ」

僧侶「今回は胸をつかまれたわけじゃなかったんですよ?」

勇者「しらないよぉ。文句はサキュに!」

魔女「ヒーラの体がもう母乳の作り方をおぼえちゃっているのかもしれない」

僧侶「う……」

僧侶「ソル様、なめとってくれませんか」

僧侶「…は」

僧侶「お好きですよね? あんなにいつも飲んでいたんですから、ひさしぶりにどうぞ」


ヒーラちゃんの誘いにのって、ゆっくりと蕾に吸い付いた。
そのはずみにぴゅっと母乳が吹き出して、口内を甘い香りが満たしていく。

僧侶「やんっ…あぁちょっとソル様、あんまり強く吸わないでくださいね」

僧侶「一応…私のあかちゃんのためにある部分なので…」

僧侶「それにしてもソル様はお好きですね」

僧侶「こうして、おちんちんをさすられながらおっぱい飲むのはどんなご気分ですか」

傭兵(…俺が自発的にやってるみたいな言い方はよせ)


ヒーラちゃんのミルクは甘くておいしい。
優しい声、ふくよかな胸の触り心地とあわせて、余りある興奮から脳みそがとろけるような夢心地だ。
さらにいまはいきりたった陰茎まで、優しくこすられている。

傭兵(俺はあの母親の母乳で育ったのかなぁ)


そんなことを考えているうちに快感はピークに達した。

巨大化した陰茎はいつもにくらべて快感に弱く、
ヒーラちゃんのゆったりとした刺激のすくない手淫にあっというまに崩壊して、
遠慮なく白い液体をぶちまけてしまう。

僧侶「あは…なんだかいっぱい元気よく出ちゃってますよ」

僧侶「ぴゅ~~って、うふふ。えへへ…」

僧侶「私のミルクよりおおいんじゃないですか? きもちよかったですね」なでなで


勇者「噴火みたい」

魔女「…ヒーラすごい」

僧侶「エッチなソル様が敏感なだけですよ。あら、まだおっきい…♥」

 すりすり

傭兵「う、うお…っ、ま、待って」

勇者「あーダメだよヒーラ! 射精させたらヒーラの番はおしまいだからね!」

僧侶「…残念。まだ少しだけ時間ありましたのに」

僧侶「では交代しましょう。ソル様、またのちほど」

僧侶「次は、ソル様のお望みの場所でご奉仕いたしますね♥ ちゅ」

傭兵(君はあいかわらず反則技ばっかりだな)


魔女「次は私」

傭兵「おう…もう好きにしてくれ」

正座してヒーラちゃんのターンを見守っていたマナがぴょこんと跳ね上がって手を挙げた。
すかさず俺の股の間に座りこんで、じっと凝視する。


魔女「とりあえずこの汚れているのを掃除しないと」

魔女「はむ…」

傭兵「うおっ」


マナは精液で汚れたペニスを小さな口でほおばった。
舌を這わせてどろどろの白濁液をすするように飲み込んでいく。
チラリと横をみると、ヒーラちゃんも自身の手に付着した精液を舐めとって満足気に微笑んでいた。


魔女「お掃除…っ、はむ、ずるっ…」

魔女「5号サイズ…ほんとうにおっきい…入らない、ちゅむ」

魔女「口でもいっぱい…あむ、ちゅるるっ」


魔女「2巡目でセックスできなかったらどうしよう…勃起状態で4号サイズに戻して」

傭兵「無茶いうな」

勇者「たしかに…おっきすぎだよね」

僧侶「ユッカ様やマナちゃんにはきついかもしれませんね」

勇者「ヒーラなにその余裕の顔」

僧侶「え? してませんよ」

魔女「このペニス…まるで性欲の魔王」

傭兵「うるせー、俺のせいじゃないぞ…あふんっ」

マナは丁寧になめとった後も、つけ根を両手で押さえてしごきながらフェラを続けた。
小さい舌がちろちろと裏筋や亀頭をなめまわし、温かい口の中で何度も剛直がびくびくと震えた。

魔女「…むぅ、射精しない。ヒーラのをみてて簡単だとおもったけど」

傭兵「いま出したばかりだからな」

魔女「じゃあこうする…」

マナは鈴口を舌先で蹂躙するようにつつきはじめた。
ふいに出口の穴を執拗にほじられて、俺は思わず素っ頓狂な声をあげる。


傭兵「ひゃ、やめ…」

魔女「ずずずっ、じゅっるるる、れろ」

傭兵「マナ…マナやめろ…そこに舌をつっこむな」

魔女「ずずうず、ずず」

傭兵「やばいやばい、やめろ、うあああっああ」

勇者「何が起きてるの?」

僧侶「さ、さぁ…。悶絶してますね」


 ちろちろ ちろちろ
  ちろちろ ちろちろ

傭兵「はぁぁぁう、お前…っ」


マナは容赦なく俺の尿道を責め立てる。
ときどき吸ったり変化を加えながら、射精したばかりの特に敏感な亀頭を中心に攻撃を加えてきた。

俺の表情をうかがう度に何度か視線がぶつかる。
マナはニヤリと口元を歪めて、さらに攻撃を続けた。

次第に睾丸があつくなり、ふつふつと射精欲がこみ上げる。



魔女「はむ…ちゅっ、じゅる…ちゅるる」

 ちろちろちろちろ
  こしこし こしこし


傭兵「うああっ、駄目だッ…!」

傭兵「マナ…顔にかかったらすまんっ、ああっ」


手と舌の合わせ技で、あえなく2度目の射精。それもたった3分もたたないうちにだ。

魔女「むぐ…っ!? んんんっ♥ んぅ…♥」


マナはくわえこんだ口を離さなかった。

精液は1滴も漏れることなく全て口内に注がれ、
マナはやや呼吸に苦しみながらも、それらを一生懸命に飲み干し、得意気な表情をうかべて鼻を鳴らした。

飲み込むまでの間も竿の根本をこする手を休めることはなく、まさに搾り尽くすように、俺は精を吸い取られてしまった。


傭兵(そういえば…今回はマナにも淫魔の呪いがかかってんだよな…)

傭兵(ほんと余計なことしてくれたなあのアホ淫魔)

傭兵(まずい…毎日こんなことされたら本気で干からびるかもしれない)


魔女「あふ……ごちそうさま、ぺろ」

魔女「ねばねばする。でもあなたのだからおいしい」

傭兵「そ、そうか…俺がお前の立場なら絶対ごめんだが」

僧侶「それが飲めちゃうんですよね~?」

魔女「うん。好きだから飲めるし、飲みたい」

傭兵「…や、やめろよ恥ずかしいだろ」


勇者「…むー、やっぱり見てるだけじゃおもしろくない!」

魔女「ユッカ。もう残ってないよ。空っぽにした」

勇者「そそ、そんな~~」

勇者「ねぇソルうそでしょ!」ゆさゆさ

傭兵「目の前で見ただろ。2回も大量にだしたんだぞ」

勇者「うわーーっ、ずるいよぉ! こうなったら!!」


ユッカは駄々をこねながらマナを押しのけて、股ぐらに入り込んだ。
そして恐ろしいことに、睾丸つまり男にとって最も大切でデリケートな玉袋をわしづかみした。



傭兵「…ひっ」

勇者「…絶対あるはずだもん」

むにむにといじくりはじめた。
よもや潰されるとは思ってはいないものの、相手はユッカだ。
りんごすら握りつぶせない握力のマナとはちがって、ユッカはやろうと思えば鉄すら歪めてしまうくらいの力を持っている。

そんな手がいま不機嫌そうに俺の玉を触っている。

勇者「…やわらかいね」

傭兵「やめろ…まじで触るな。お前は特にだめ」

勇者「…む。なんでボクはダメなの」ぐにっ

傭兵「ひぃぃ、すまん、そういうわけじゃなくて…ッ!」

傭兵「大事に…してください」

勇者「この玉の中でつくられるんだよね?」

 ぐにっ ぐにっ

傭兵「や、やめろぉ…」

勇者「ボクの分は? ほんとに空っぽ? ねぇソルぅ…」


 ぐにっ ぐにっ…ぐにゅ

 


傭兵「ひっ、ぃいい。あるっ! あるから!」

傭兵「ユッカ様の分もございますっ! だから間違っても握りつぶすんじゃねーぞ!」

生命の危機を感じて体の中の不死鳥の力が反応する。
熱くぐつぐつと燃え上がり、俺の全身を力で満たしていった。

もちろん、2つの玉にもその力は及ぶ。

精力を取り戻した俺の愚息は復活の狼煙をあげて勇ましく立ち上がった。


勇者「わぁああ! そっかぁ、ここがスイッチなんだ!」

 ぐにゅ

傭兵「やめろっていってんだろ! もう握るな!」

勇者「…? う、うん…やっぱりこっちが好きー♥」

ユッカは愛おしそうに大きくなった陰茎に頬をよせて、ぎゅっと握りしめた。

勇者「れろ…っ♥ はむ、ちゅ…♥」

勇者「えへへー、いい匂い…はぁ、挿れたいなぁ」

勇者「2巡目がまちどおしいよぉ、ボクも気持ちよくなりたい」

 すりすり すりすり



これで1つわかったことがある。
俺はどうやらニクスのせいで本当に底なしになったようだ。

淫魔に呪われた少女たちと人生を共に歩むなら、これはありがたいことなのかもしれない。

しかし…。


傭兵(体や頭のほうが先に変になりそうだ)

傭兵(一日に何回も射精するのって、絶対体にわるいだろ…)

勇者「……んぅ? ふぁに?」


ユッカは頬をいっぱいにふくらませてペニスをくわえこんだまま返事をした。
うっとりとした目つきが実に幸せそうだった。

これがどこまで淫魔の呪いに依るものなのかはわからない。
だが俺もここまで喜んでもらえたら男としてまんざらではない。

若いうちは当面、気合で頑張るしかなさそうだ。


傭兵(さて、さっさとぶちまけて2巡目に移るか)

傭兵(早くお前たちを抱いてやりたい。愛し合いたい)

勇者「んぅ…♥ あはぁ、おいしいよぉ、れろぉ♥」




後日譚第1話<故郷へ>つづく


 

更新終わり
次回月曜日夜22時~

後日譚第1話<故郷へ>つづき



 びゅくっ、びゅるるっ…ッ


勇者「あはっ、出た出た」

勇者「もう…ちゃんとお口の中で出して欲しかったなぁ」

傭兵「…くそ、耐え切れなかった」

勇者「ボクだけ1巡目で脱落なんてやだもーん」

勇者「じゃ、つぎはまたヒーラから2巡目スタートだよ」

傭兵「勘弁してくれ」

傭兵(いくら底なしにちかい状態でも、負担はかかるんだぞ…)

勇者「えー。ルールはまもらなきゃ」

傭兵「お前らが勝手に決めたことじゃねーか!」

傭兵「ふ、風呂だ風呂に入ろう!」

勇者「だめ。寝ててよ」グイッ


傭兵「どうしてもしなきゃだめか?」

勇者「うん。ソルママさんも体の相性の良い子と結婚したら良いって言ってたでしょ」

勇者「3人と順番にエッチできるのになにが嫌なの? くふふ、ソルって羨ましいなぁ」

僧侶「体の相性……わ、わたしっ、どうでしょうか!」

魔女「私はいいはず?」

傭兵「…う」

傭兵(ひとりずつならまだしも、こんな風に三人に襲われると俺の威厳ってものが無い)

傭兵(これはこの先のことを考えて、ガツンと言っておくべきか)

傭兵「あのなユッカ」

勇者「ヒーラ、ゴー」とんっ

僧侶「きゃっ」

一言物申すために起き上がろうとすると、ヒーラちゃんが背中をおされて勢い良く飛び込んできた。
顔にふれるふにゅりと柔らかくて温かい感触。おおきな胸が押し付けられた。


勇者「あはは、じゃあ3分ね!」

傭兵「ま、待て…」

僧侶「ソル様おとなしくしてくださいね」

傭兵「ヒーラちゃんまで…」

勇者「あーソルまた勃ってるよ。ヒーラのおっぱい好きなんだぁ」

魔女「ヒーラずるい欲しいちょっとだけ頂戴」

僧侶「時間が少ないので、いいですか?」

傭兵(そんな顔でお願いされると…断れないな)

僧侶「入れたいです」

傭兵「なんだかヒーラちゃん、スケベだな」

僧侶「だって、ほんとにうずうずするんですもの…ユッカ様のあのお気持ちがよくわかります」

僧侶「目の前に好きな人がいるのに、我慢できるわけありません…」

勇者「そうそう、ボクもマナだっていまギリギリのところで我慢してるんだからね」


傭兵(仮に我慢が効かなくなったとしたら俺はどうなってしまうんだ…)

傭兵(3人同時に…? だが一本しかないぞ)

傭兵(朔の日が怖い…それまでに呪い解けますように)


そんなことを考えていると、下半身の上ではすでにヒーラちゃんがおそるおそる腰を下ろそうとしていた。

 
 ずちゅ…♥

僧侶「んっ……ぅ」

僧侶「あぁ…♥ おっきぃ…です」

ヒーラちゃんの温かい膣内に包まれてとかれてゆく。
しかし心なしかいつもよりきつく感じる。
これは俺のモノのサイズがあがったせいだろう。
ヒーラちゃんの膣壁をかきわけて押し広げながら、5号に匹敵するサイズになった新生ペニスは飲み込まれていった。


僧侶「あああぁっ♥ ソル様…つながっちゃいました、おっきいの入ってきました」

傭兵(ある意味2度目の脱童貞といっていいのかもしれないな)


傭兵「どう?」

僧侶「すごくおっきいです♥」

僧侶「どうしましょう、う、うごいて大丈夫ですか?」

僧侶「こんなおっきいのが出入りするなんて…わたし、私耐えられるかわかりません」

傭兵「きもちいい?」

僧侶「ええ…すごく熱いです、あそこがきゅんきゅんしちゃいます。わかりますよね?」

僧侶「でも…なんだかソル様のおちんちんじゃないみたいで不安もあるんです…」


ヒーラちゃんははじめての感触に戸惑っているようだった。
サイズアップは必ずしも男にとって良いことではない。
変化によっていままで安定していた体の相性がかわってしまう。

俺は彼女の手を握って指をからませた。

傭兵「ちゃんと俺のだから大丈夫だよ」

僧侶「ソル様…♥」



勇者「時間ないよー」

僧侶「…! がんばります。ちゃんと…出してくださいね?」


手を握り合ったまま、ヒーラちゃんはかわいらしく首をかたむけて微笑んだ。
それだけでまたすこしペニスが反応してしまい、彼女の中を圧迫する。

僧侶「ん…っ、あぁ♥」

僧侶「いきますよ」


大きな胸が目の前でゆさゆさと跳ねる。
ヒーラちゃんはくねくねとおしつけるように、小さく緩やかな動きで、騎乗をくりかえした。
結合部からじゅぶりじゅぶりと水音が漏れ、溢れた愛液が剛直の根本へと垂れていく。

僧侶「あっ…あっ♥」

僧侶「これ…もうちょっと激しいほうがいいですか? っん♥」 


傭兵「ゆっくりでいいよ。あんまり激しくすると痛いかも」

僧侶「はい…♥ 気をつけます」


  じゅっぷ じゅっぷ…
    じゅっぷ  じゅっぷ

僧侶「……んっ♥  …はぁー♥」

僧侶「う…♥  あぁあっ…はぁー♥」


なじませるようにゆっくりと、ヒーラちゃんは腰を動かして新しいペニスの快感を確かめているようだった。
短く声を漏らしながら腰をおろして、引き抜くときには決まって長めの吐息を吐いた。

だんだんと手をにぎる力が強くなっている。

傭兵「気持ちいいんだ?」

僧侶「そ、そうですね…はい、きもちいいです…んぅっ♥」

僧侶「はぁーーっ♥ あああっ♥」

僧侶「ずぶずぶするたびに、背中がぴんってなっちゃうくらい、きもちいいのが来るんです」



  じゅっぷ じゅっぷ…
    じゅっぷ  じゅっぷ


僧侶「あまりのきもちよさに…本気で腰ふったら…頭がへんになっちゃうかもって」

僧侶「こ、こわいくらいです♥」

傭兵「そうだな…俺もすこし違う気持ちよさを感じてるよ」


魔女「それは当たり前。大きくなった分ふたりが絡みあう面積が増えた」

魔女「以前より気持ちよくて当然。はやく終わって」

勇者「ま、まぁまぁ。あと20秒まってあげようよ」


僧侶「に、20秒!? うあっ、どうしましょう」

ヒーラちゃんは慌てて腰をすばやく動かそうとした。
しかし焦りからか、うまくストロークができていない。


僧侶「ううう~~っ、い、いそがなきゃ」

傭兵ちょ…ヒーラちゃん落ち着け。腰使いがめちゃくちゃだぞ」

僧侶「はう…」


勇者「ぴっぴー。はい時間だよ~」

僧侶「う…」

勇者「残念だねヒーラ! くふふ、ゆっくり味わいすぎちゃったんじゃない?」

僧侶「だ、だってほんとに…新感覚だったんですから!」

勇者「怖気づいたの?」

僧侶「ユッカ様だって、ソル様のを入れてみたらわかりますよ…全然ちがうんですから」

勇者「ボクは勇者だからどんな敵がきても怖くないもん」

傭兵(俺って敵なのか!?)

勇者「これで勝者はマナかボクだね」

勇者「ボクたちがあっという間にやっつけちゃうよ!」


魔女「次私。ヒーラこっちと交代」

僧侶「はい。がんばってくださいね」

狭い荷馬車内で2人は場所を入れ替える。
次は二番手のマナが股の間にすわった。
すぐさま挿入を試みるかとおもったが、マナはペニスを握ったままじっと何か考えるように見つめ続けている。


魔女「……」ジー

傭兵「…な、なんだよ」

魔女「……」ジー

傭兵「…あ…ん? おーいマナ」

傭兵「…おいユッカ、視姦は時間のカウントしないのか」

勇者「うーん、じゃあスタート!」

魔女「…これ」

魔女(どう考えても入らない…)


魔女「ねぇユッカ」

勇者「なぁに? 時間すすんでるよー」

魔女「…いや、なんでもない」

勇者「んぅ?」

魔女(これは、私たちにとって試練かもしれない……)

魔女(まずヒーラと同じスタートラインに立てるのかどうか)

傭兵「ふ、ふふ……ふふ」

魔女「…! なにがおかしいの」

傭兵「ようやく気づいたかマナ。俺のコレはお前のようなおこちゃまにはまだまだ早いってこったな」

魔女「ぐ…」ぎゅっ

傭兵「おっとそうやって強く握ってもノーダメージだぜ、ハハハ!」

勇者「へーそうだっけ」ノソリ

傭兵「お前はノータッチで頼む!」


魔女「一応…挑戦してみる」

傭兵「おう」


マナは不安とも怯えともつかないどんよりとした表情で剛直の上にまたがった。
毛の一本も生えてない真っ白な深い縦筋が亀頭の先に触れる。

腰を下ろして恥裂を押し広げるとおそらく血を見ることになるだろう。
だがマナはそれを理解しているようだ。
今更無茶なことはしない。
浅い呼吸をしながら、困ったように俺の表情を伺っていた。


魔女「…ぐ…やっぱり熱した鉄の棒みたい」

僧侶「マナちゃん…無理しないほうがいいですよ」

勇者「入らないのを無理しちゃだめだよ」

魔女「でもこれは入りたがってる。現にこんなにカチカチ」



確かに今の生まれ変わったペニスでマナの狭いキツキツの膣内を味わったらどれほどの快楽が待っているだろうか。
マナは苦しい思いをするだろうが、待ち受ける官能をおもうと自然と血があつまる。

傭兵(つるつるしててまた違った感じがして気持ちいいんだよなぁ)


魔女「……棄権する」

勇者「ほんと?」

傭兵「お?」

魔女「…こ、これは、すこし時間が必要。太さに慣らさないと絶対痛い」

勇者「うん。ボクもそう思うな」

僧侶「大事なところですからね。お互いに無茶はいけません」

勇者「そうそう。ルールをまもって楽しく安全にセックスしないとね」

勇者「がんばれマナ! ボクたちにできることがあったら協力するからね」

魔女「…」コク

魔女「悔しいけど、今日のところはユッカにターンを譲ることにする」


かくしてマナとの肉体関係は振り出しにもどった。
更なる拡張の日々が訪れることになりそうだ。

だがうまく噛み合った時に得られる快感は大きく増えるわけで、俺はマナとの行為を楽しみに待つことにした。

傭兵(帰りの道中はどうせ暇だしな…)

すでに破瓜を経験した彼女が以前のように焦って求めてくることはないだろう。
俺はマナの頭をなでて、持ち時間いっぱいまで抱きしめたあとキスをひとつ与えた。

魔女「んっ♥ ふふ、機会があったらどんどん挑戦するから待ってて」

傭兵「おう」

勇者「いいなぁ。なんだかボクが今からエッチしていい雰囲気じゃないじゃん」

勇者「ずるーい」

傭兵「いいんだぞユッカ。ほらおいで」



勇者「…♥」

勇者「ボクは挿れても平気かな?」

傭兵「よく濡らしておけよ」

勇者「もうぬれてる♥ えへへ」


ユッカは下着をずりおろし中身をみせつけた。
布地の性器にふれる部位はどろりとしたユッカの汁をたっぷりと吸い込んですでに変色している。

まだお風呂に入っていないので、かすかにツンとした匂いがした。

勇者「ヒーラ時間みててね」

僧侶「はい」

勇者「いただきまーす」

ユッカが腰をおろす。縦筋だけをみるとマナとそうかわらないような未発達さだが、ユッカのほうが中はやや広い。
あれだけ何度もセックスを繰り返したこともあって、挿れること自体は特に問題はなさそうだった。


 ぎちぎち…


勇者「いっ…♥ ひぅっ♥」

勇者「こ、これ…ほんと、おっっき♥ い…♥」

いつも以上にぎゅうぎゅうに締め付けられる。
寸分の隙間もなく柔襞がぴったりと吸い付いて、ぷにぷにとした感触に包まれた。


傭兵「お、おお…」

勇者「なぁに、挿れただけで声だすなんて珍しいね」

勇者「えへへ、きもちいね。なんだか…ボクがソルになっちゃったみたい」


その発言に一瞬何のことだと思ったが、どうやらあまりにぴったりすぎて俺と一体化してしまったような感覚を得たようだ。

勇者「あついよぉ♥ こんなあつあつでカチカチのおちんちんがボクの中に…はいってるんだね」

勇者「もう少し腰おろしていい? えへへ、おろすよ……んぅ♥ んあぁう♥」


 じゅぶ… じゅぶ…


ユッカは口元を抑えながら、腰をおろしていった。
きっと人に見せられないような情けない顔をしているのだろう。
2人きりだと存分に見せてくれるのだが、ヒーラちゃんやマナの前ではまだわずかに羞恥心は残っているようだ。

勇者「はぁ…♥ ハァ…♥」

勇者「こ、これ…やば」

勇者「やばい…かも♥」

勇者「こんなのでじゅぽじゅぽしたら…ボクおかしくなっちゃう♥ うん…絶対なる♥」

傭兵「俺もだ。こんなぎちぎちのユッカのおまんこに食べられたら、あっという間に出ちゃうだろうな」

勇者「うごく…ね? はぁ、はぁ♥ はーー♥」

  じゅぷぷっ じゅぷぷっ

勇者「はぁぁうッ♥ これっ、ほんとやばいよぉ♥♥」


先ほどのヒーラちゃんと同じく、とりあえず探りで腰を動かしているだけでユッカはとびそうになっていた。

傭兵(もしここで俺がひっくり返して腰を全力でふったらどうなるんだろう)


ふと意地悪な考えが頭に浮かんだ。
だが後がこわいのでいまはただ動かぬ一本の剣となっておくことにした。

傭兵(大丈夫。まだ俺たちの旅にたくさん時間はある)

傭兵(セックスは何度でもできる)

傭兵(結婚したら…もっともっとできる)

傭兵(結婚か…)

そう遠くない未来に思いを馳せそうになるところを、快感が無理やり現実へと押し戻した。
ユッカが俺の腹にぺたんと手をつき、ゆっくりゆっくりと腰を上下させている。
きつきつの襞がペニスを優しくなであげて、ドロドロの液をまぶしながら何度も出入りを繰り返した。



傭兵(やばいな…確かに快感は増してる)

傭兵(油断したらあっという間だな)


勇者「ああっ、ああっ♥ これ、やばいよぉ」

勇者「ボク…絶対おかしくなる、もっと腰はやくしたらおかしくなっちゃうんだ♥」

僧侶「ほら言ったでしょ。何も恐れないんじゃなかったんですか」

勇者「ら、らってぇ♥ これは…えへへへこれはほんとダメ♥」

僧侶「わかってくれました?」

勇者「…♥」コクコクコク

僧侶「でも勇者様は怖くないとおっしゃりましたので」


そう言うとヒーラちゃんはユッカのお尻の上をつかんで、ぐっと押し下げた。
ぐちゅぐちゅの膣内を勢いよくペニスが突き進み、あっという間に膣奥にまでとどいて、
少女の子宮の入り口に亀頭がぶちあたった。


勇者「あぎゅ~~っ♥♥」

傭兵(なんて声だしてんだ!)


勇者「……」ピクピク

その一突きでどうやらユッカは天に召されてしまったようで、
挿入したままぐったりと俺にもたれかかって、壊れたように笑っていた。

僧侶「あ…ごめんなさい」

勇者「ひどいよぉ…♥ えへ…、あはは…これ、やばい♥ えへへ…♥」

勇者「こんなので本気エッチしたら…ボクどうなっちゃう、えへへ♥」

傭兵「……廃人にだけはならないでくれよ」

勇者「こんなおちんぽあっていいの…」すりすり

傭兵「お互いさまだ。俺だってこんなエッチな娘が3人もいていいのかって思ってる」

勇者「これは…大変な旅になりそうだね。えへへ」

僧侶「ですね。私も…次はがんばります。ぜひふたりっきりでお願いします!」

魔女「ずるい。わたしも約束とりつけたい」

勇者「えへへ…分身してよぉ。それか三つ首おちんちんになってー」

傭兵「無茶言うな」


そんなこんなで俺たちの夜は甘く楽しく更けていった。
結局争奪杯の決着はつかなかったので、3人を狭い馬車で抱きしめて眠った。

故郷へ続く新たな旅路はまだはじまったばかり。


後日譚第1話<故郷へ>おわり



 

更新終わり
次回後日譚第2話 明日予定
たぶんHシーンとデートばっかりになるます

明日更新スマソ



後日譚第2話<陽気>



炎鳥「では行ってらっしゃい。よき旅を」ヒラヒラ

傭兵「おう」

魔女(本当に人間に化けた…)チラ

傭兵「なんだよ」

魔女「あなたが一応卵生じゃないのはわかった」

傭兵「まだ言ってんのか」

勇者「ソルママさん。また来ます」

勇者「それとスレイプニルのことありがとうございました」

僧侶「お世話になりました」

炎鳥「うふふ。ソルがこの中の誰を連れて会いに来てくれるか楽しみです」

勇者「え……」


炎鳥「良いですかソル。私はしばしの眠りにつきますが、次に会うまでにお嫁さんは必ず選んで置くのですよ」

炎鳥「1人ですからね! 1人!」

傭兵「…うぐ」

勇者(やっぱり結婚できるのは1人だけなんだよね…そうだよね…)

僧侶(ソル様のお母様がそうおっしゃるなら…仕方ありませんね)

傭兵「わかったわかった…考えとくから」

炎鳥「しかし気立てのよくかわいい子がこれだけ回りにいると安心できます」

炎鳥「ソルをよろしくお願いします」

勇者「はい! まかせて!」

魔女「この人は私達が立派な人間に育てる」

傭兵「どっちかというと俺が面倒みてるんだが…」

傭兵「じゃあな」

炎鳥「さようなら」



【平原】


僧侶「帰路はどうなさいますか?」

傭兵「行きに通ったルートでいいんじゃないかな」

勇者「じゃあ最初はグリモワかな?」

傭兵「そうだな。マナが行きたくないなら迂回も考えるが。どうする」

魔女「……」

魔女「大丈夫。行く」

傭兵「無理してないか?」

勇者「ボクあの王様苦手だよ。マナが悪者にされてたらどうしよう」

僧侶「入国できるでしょうか」

傭兵「うーん。なら近くまで行って積み荷の補給をするだけにしておくか」

傭兵「サマンサには悪いがな…」

 

<数日後>


【魔法大国グリモワ・入り口】


番兵「すまぬが旅人の入国を禁じている」

傭兵「…やっぱりか」

番兵「辺境の国々では既に噂になっているようなのでいまさら通し隠しはせんが、現在グリモワは復興作業に明け暮れている」

番兵「魔物の大軍の襲撃にあってな。この通り、ボロボロだ」

番兵「物資も枯渇している。何も売れるものはない」

勇者「え~~」

傭兵「やっぱそうか…」

魔女「……」

僧侶「パンや水だけでも手に入れることはできませんか?」

番兵「申し訳ない。お引き取り願おう。数日道なりに進めばピニオンという街がある」

番兵「補給ならそちらに立ち寄るといいだろう」


傭兵「この手紙をこの住所に届けてほしい」

番兵「わかった。届けておこう」

傭兵「それじゃ」



傭兵「あんなことがあったんだ。もう少し状況が落ち着いて観光客が自由に出入りできるようになったらまた来よう」

勇者「そうだね」

魔女「…うん」

僧侶「マナちゃん落ち込んじゃだめですよ」ぎゅ

魔女「ありがとう。大丈夫」

僧侶「うふふ。今度来るときはたくさん楽しい思い出つくりましょうね」

魔女「うん」

 ぐ~~

魔女「ぐぅ?」

僧侶「……ぅ」

僧侶「お腹すきましたね…」

勇者「お腹へったーー」バタン


傭兵「森にでも入れば野生動物を狩れるんだがな。こうも平原が続いてると…」

勇者「ふぁ」

勇者「お腹すいたってばー」ガバッ

傭兵「うるせぇな。わかってるよ。ないもんは仕方ないだろ」

僧侶「困りましたねぇ。非常食を用意しておくべきでした」

傭兵「しゃーねぇ。ユッカでも食べるか」

僧侶「そうですね」

魔女「火おこしてくる」

勇者「えーやだやだやだ! やだよなにいってるの!!」ガシッ

傭兵「お前は食べる部分すくなそうだが…背に腹は代えられない。すまん」

勇者「あ゙ーーボクたべてもおいしくないよぉ」

僧侶「おいしいですよぉきっと」

勇者「それならヒーラのほうがきっとおいしいよ!」


勇者「ヒーラのほうがお肉あるし…」

僧侶「え…」

勇者「おっぱい出るし…」

魔女「!」

勇者「だからボクのこと食べないでぇ…まだやりのこしたことがあるんだよぉ」シクシク

僧侶(私を食べるのはいいんですか?)

傭兵「いやぁ冗談だぞ。さすがにそこまで腹減る前になんとかするさ」

勇者「なーんだ。じゃあなんとかして! ご飯! ご飯!」

傭兵「こいつ…だいたいお前が考えもなしにばくばく食うからだぞ」

勇者「だってエッチな事するのに体力つかうもん!」

傭兵「しなくていいんだよ! ちょっとは欲求を我慢しろ」

勇者「うるさいなぁ! ソルのおちんちんが悪いんだからね!」

勇者「おちんちんの無駄なお肉ちょっと削ったほうがいいんじゃないの、ボクがかじってあげるよ」

傭兵「こら…離れろ…」ググ

僧侶「喧嘩しないで…」

魔女「思い出した」


僧侶「どうしたんですかマナちゃん」

魔女「この箱のなかに確か…」ゴソゴソ

魔女「あった」

傭兵「なんだその大量の白い瓶……あっ」

勇者「ミルク? いつの間に買ったの」

僧侶「そ、それって……もしかして」

魔女「ヒーラのミルク」

僧侶「いやーーーっ、なんでそんなの取ってあるんですか!!」

傭兵(あぁやっぱり。毒に冒された時に大量に絞ったやつか…)

魔女「もしものためにと思って…あとこれでお菓子つくってほしかった」

僧侶「自分のお乳でつくるわけないじゃないですか! それにもうとっくに腐っちゃってますよ! いつの話だとおもってるんですか」

魔女「腐ってない」

僧侶「そんなわけないです!」

勇者「ほんとだー…甘くていい匂い。のんでみよーっと」

僧侶「だ、だめですってばぁ! お腹こわしますよ!」


魔女「…」コク

勇者「…」ゴクゴク


魔女「少しだけドロっとしてるけど腐ってなかった」

勇者「おいしーー!」

僧侶「そ、そんな…ことって」ヨロリ

傭兵「常温で置いてたんだぞ…」

魔女「おそらくヒーラのミルクだから。聖魔力をたくさん帯びてる、悪い菌が繁殖しない」

魔女「このままずっと放置すれば安全にチーズも作れる」

傭兵「おお!」

僧侶「おおじゃないですよ…おかしいですよ」

傭兵「ヒーラちゃんもどうだ!」

僧侶「飲むわけないじゃないですか……」


魔女「栄養もある…素敵な食品」

勇者「非常食はやっぱりヒーラだったね!

僧侶「恥ずかしくて死にそうです…」

傭兵「まぁまぁ。おかげで助かった。あーうめーー。やっぱこの味だよなぁ」

僧侶「ほんとに飲んで大丈夫なんですか…蟲の毒絞り出した時のものですよね」

魔女「見て。この輝かしい白」

魔女「あなたの魔力で浄化されている」

勇者「さすがヒーラ!」

魔女「これを飲めばきっと淫魔の呪いも治まってくるはず」

勇者「そんな効果まで!?」

魔女「だから、空き瓶ができたらどんどん補充していく。わかった?」

僧侶「わかりません」

勇者「ぺろーん。はい胸だしてねー」

僧侶「きゃあっ! ユッカ様~~っ!」



<その夜>


【荷台・屋根】


僧侶「散々な目に会いました…」ブツブツ

傭兵「おう、ヒーラちゃん。夜風にでも当たりに来たか」ゴクゴク

僧侶「少し眠れなくて……ってまたミルク飲んでますし」

傭兵「酒も残り少なくてさ、飲み物がないんだよ」

僧侶「すこしくらいならありますけど」

傭兵「なるべく頑張ってるヒーラちゃんにたくさん栄養とってほしいんだ。というわけでこっちは飲んでいいよ」

僧侶「えっと…頂きます」

傭兵「乾杯」

コツン

僧侶「ソル様が甘いミルクで私がお酒ってやっぱりおかしいですよね」



傭兵「良い夜だなぁ」

僧侶「平和ですね」

傭兵「あとはのんびり帰るだけか。使命を終えて達成感はあるが、少し物寂しいような気もするな」

僧侶「そうですか? 平和なことは良いことですよ」

傭兵「俺この先どうなるかな」

僧侶「あ……そういえば、もう騎士様ではないのですよね」

傭兵「…国に帰るとただの浪人だな。最悪だ」ゴク

僧侶「あう…そんなことおっしゃらないでください」

傭兵「ヒーラちゃん養ってくれるか」

僧侶「え!?」

傭兵「いや冗だ――」

僧侶「は、はい! 私でよければずっとソル様のお世話をいたします!」

傭兵「っ!! え、えっと…大神官を継ぐんだよな?」

僧侶「そうです。お父様の御役目を私が引き継ごうかと思っています。旅はそのための修業の一環でもあったのです」


傭兵「いやぁ立派だ…うんめでたい」

僧侶「…私にできることをやるだけなのでそんなことないです」

僧侶「ほんと…神官のお勤めくらいしかできませんし…」

僧侶「大神官になると忙しくなるかもしれません」

僧侶「なのでソル様、家庭をお願いします」

僧侶「でもずっと家にいるからってお酒は飲み過ぎないでくださいね!」

僧侶「たまには外に出て体を動かしてくださいね!」

僧侶「それと、子供のお世話は……って、私なにいってるんでしょうね…あはは」

傭兵「結婚か…」

僧侶「! ごめんなさい私ったらソル様のお気持ちも考えずに恥ずかしい妄想ばっかり言って」

僧侶「ああぅ忘れてくださいっ! ごめんなさいほんとにごめんなさい」

僧侶「そうですよね。冗談ですよね…ソル様にはユッカ様がいらっしゃいますし…」



僧侶「…」ゴクゴク ゴクゴク

僧侶「マナちゃんもソル様と結婚したいって言ってますし…」ずーん

僧侶「あぁそういえば…マオさんやサマンサさんとも仲いいですよね…」

僧侶「バザの隊長さんとも親しげですし…」

僧侶「クロノ様もソル様に気があるのでしょうか…」

僧侶「あとレヴァンさんって方向も…あぁぁぁ」

僧侶「意外と幅広い好みをお持ちなんですね……ヒック」

傭兵「いや…おーい」

僧侶「うわああん、私ソル様と結婚できなかったらどうしたらいいんですかー」

僧侶「だれがもらってくれるんですかー」

僧侶「いやですー、ソル様以外考えられません!!」ぎゅ

僧侶「お願いです…妾でもなんでもいいのでお側にいさせてください…」ギュウウ


傭兵(飲ませなきゃ良かった…)



後日譚第2話<陽気>つづく


 


 

更新終わり次回明日!

後日譚第2話<陽気>つづき



傭兵「参った…」

俺はヒーラちゃんを幸せにしてあげたいとおもっている。
こんなに気配りの出来て優しい良い子はいない。
だれもがうらやむ素敵なお嫁さんになってくれるだろう。
妾だなんてとんでもない。

僧侶「…? だめ…ですか…?」

傭兵「いやいや」


しかし、婚姻には越えなくてはいけない障害がいくつかつきまとう。

その1つが身分の違いだ。
俺は国に帰っても所詮浪人。よくて再び守備隊の一般兵。
最上位である騎士級はすでに返上しているので再任することは敵わない。おそらく宮殿への出入りすら許されない。
そもそもこの旅は俺のわがままで傭兵としてついて行っているだけだ。
根回ししてくれたグレイスに感謝しなくてはならない程だ。


そんな俺に対してヒーラちゃんは大聖堂を継ぐ高官だ。
今回の旅の功績が認められて跡継ぎ問題は滞りなく進むはず。
そうなると、側にいられるのかどうかも怪しい。
かといって大切な職務を放りだして主婦になれと言うわけにもいかない。

俺とヒーラちゃんの立場は、全く吊り合っていないと周りに咎められるだろう。


もう1つはヒーラちゃんの父親。
やや頭のかたい大神官だ。
過保護といっていいくらいに娘を溺愛している。

騎士時代に幼いヒーラちゃんにひざまくらしてもらっただけで、俺は半日追い回されて地獄をみた。
いまこうした関係になっていることを知ったら、どうなるか背筋が凍る。

頭に雷撃が降り注ぐだけですめばいいが…。


僧侶「ソル様は私が嫌いですか…? 迷惑ですか…?」

傭兵「そんなことないよ」なでなで

僧侶「あ…ぅ…うふふ」



最後一番気がかりなのはユッカとマナ。
ありがたいことにふたりとも俺に好意を寄せ、将来を共に歩みたいと思ってくれている。

傭兵(やっぱり三股ってことになるんだよなこれ…)

当たり前だが、太陽の国の法律では、庶民が妻を3人も迎え入れることはできない。
俺が例え王族だとしてもだ。正室と側室という扱いにしかできない。
そもそも親父が消息不明なため、証明する術が無い。俺自身いまだに半分疑っている。


僧侶「ねえソル様、どうか捨てないでください…」

ヒーラちゃんは瞳をうるませて抱きついていた。
あわてて頭をなでて機嫌を取った。
彼女は酔った顔でうれしそうに笑っていた。

傭兵「捨てるわけないだろ…」

僧侶「!」

そう。たかが障害がいくつかあるだけで、別れたくない。
ヒーラちゃんが他の男と一緒になることなど考えられない。
考えるだけで気持ちが張り裂けそうだ。

この子は俺が幸せにしたい。
俺はゆっくりと彼女の肩をつかんでこちらを向かせた。


僧侶「? うふふ、ソル様」

そのままどちらからともなく深く口付けて、
しばらくミルクとお酒の香りを交換しながら、俺たちは長い時間舌をからめあった。

僧侶「んっ…はむ、んぅ♥」

僧侶「ちゅ…ちゅる、ちゅるぅ…ちゅっ♥ あ…んぅ…ぁ♥」


僧侶「エッチ…なキスしちゃいましたね」

傭兵「おいしかった」

僧侶「…えへへ」

月明かりのもとに真っ赤に染まった彼女の顔はとっくに蕩けきっていて、
ヒーラちゃんはさらにせがむように小さく舌をつきだした。

吸い付いてもう一度味わう。
今度はもっとねぶるように、求めるように、
可憐な唇から口内の隅々まで、いたるところを味わった。

僧侶「んんっ、ふぅ…♥ はぁ…ん、ちゅむ、ちゅる♥」

とても甘い香り。
アルコールもほどよく香って、脳がとろけるような心地がする。

僧侶「ぷは…♥」

僧侶「は、はげし…すぎですっ♥」

傭兵(久しぶりに濃厚なキスしたな…)

もう理性ははじけ飛ぶ寸前だろう。
ヒーラちゃんは太物の付け根をすりあわせるようにもぞもぞと動かながら、期待した目で俺をみつめた。


傭兵「どうしたのその太もも」

僧侶「え…えーっと…えへへ」

傭兵「もう準備できてるんだ?」

僧侶「……えへへ、はい」

はにかみながら彼女はいそいそと衣服を脱ぎはじめた。
俺は手首を軽くつかんでそれを制止し、自分の手でゆっくりとボタンをはずしていく。

僧侶「……ぁ♥」

傭兵「いいよ。今夜は俺が全部するから、任せて」

僧侶「は、はいっ」


パジャマの前をすっかりはだけさせると、白い大きな胸の谷間が露出した。
パジャマの内側はじっとりと湿っていて、すでに母乳がたっぷり垂れていることがわかる。

ばさりと全部取り払うと、たゆんとした形の良いおっぱいが跳ねた。

僧侶「…あっ」


僧侶「あ…ぅ…」

傭兵「はずかしい?」

僧侶「やっぱり…何度みられても恥ずかしいです」

僧侶「とくにふたりきりでこうまじまじと…なんて」

傭兵「でも俺はこうして触れるのが好きだな」

ゆっくりと膨らみに手をかけ、力をこめていく。
胸の肉が形をかえて、指がしずんでいく。
ぴゅうっと一筋、白いの細糸のようなミルクが飛び出した。

僧侶「はう…」

傭兵「気持ちいい?」

僧侶「は、はいっ…たくさんおっぱい出ると頭がまっしろになりそうです…」


つまり噴乳にはかなりの刺激が伴うようで、その快楽は男の射精に近いほどのようだ。
過去に母乳を何度も吸ったりしているが、その度にヒーラちゃんは失神してしまうのではないかというくらいに淫れていた。
母乳が出るのは淫魔の呪いのせいではあるが、彼女自身胸が感じやすいのは元からだ。

傭兵「エッチなんだな」

僧侶「ちっ…ちがいますよぉ!」


傭兵「そうかな? じゃあちょっと試してみようか」

両胸の先端をちょんとつまんで、赤い実をすりすりと指先で擦って刺激与える。

僧侶「やぁぁあっ♥」

それだけで彼女は逃げるように、身体を縮めた。
しかし胸はつまんだままなので、身体を引っ込めるとみょんと胸が伸びる。

傭兵「逃げちゃダメ」

そして更に擦る。

僧侶「う…うぁ♥ だ、だめっ、ですったらぁ♥」

指に白い汁がたくさん付着し、ぴゅっぴゅと俺の身体めがけて飛んできた。
それでもやめること無くつまんだり擦ったりを繰り返すと、ヒーラちゃんの吐息は目に見えて荒くなった。

僧侶「はぁ…ハァッ♥ だ、だめっ、だめなんですっ今日は」

傭兵「…?」


傭兵「なるほど。あんまり無駄に絞るともったいないな」

僧侶「そんなことないですケド…」

傭兵「ええと、ヒーラちゃん今日はおっぱいじゃなくて、こっちで気持ちよくなりたいって事だろ?」

そう言って、乳首から手を離して、次は彼女の恥部に向かって伸ばす。
下着の中にもぐりこんで、秘裂を直接さわると案の定すでに湿っていた。
指先にひちゅりとした生暖かい感触があった。

傭兵「ほら。こんなに濡れてる」

僧侶「…!」

手をとりだして、目の前で指を開いてみせつける。
指の間につぅーっといやらしい粘液の糸が伸びて、ぷつんと途切れた。
ヒーラちゃんはバツの悪そうな顔で俺をじっと睨んだが、瞳から期待の色は消えていなかった。

傭兵「したい?」

僧侶「うう…いじわるです」

傭兵「胸がいい? どっち?」

僧侶「したい…です。しましょ…」

傭兵「ちゃんと言ってご覧」

僧侶「おまんこで…えっち…したいです♥」


手持ちの毛布を敷いて、その上に彼女をゆっくりと仰向けに寝かせた。

長い脚から下着をするりと抜いて、そのまま左右に開いて、彼女の一糸まとわぬ裸体を上からまじまじと観察した。

僧侶「あ……」

傭兵「やらしい体してるな」

しみひとつない肌は月明かりに照らされてまるで輝いているようだ。
肉付きの良いふとももは撫でるとさらさらしていて触り心地が良い。
感度もよく、全身のどこに触れてもいつもかわいらしい反応を返してくれる。

胸は年齢の割にはおおきく、ふっくらとしていて優しさや母性を感じさせる。
もちろん触ると指を吸い込むようにやわらかく、なのに手に馴染むような弾力もある。
胸の先端からは白いしずくがつぅと垂れ、丸い胸を伝って落ちていく様がいやらしかった。
そしてきゅっと締まった腰がさらに彼女のスタイルの良さを引き立てている。

顔にはまだ歳相応のあどけなさが残るが、それゆえにとても美人であり可愛らしくも見える絶妙な顔つきだ。
蒼海のような澄んだ瞳は期待に満ちて潤んでいる。白い頬や鼻先が真っ赤に染まっていた。
ぷにっとしたやわらかい薄桃色の唇。とても味わい深くて美味しい。
流れるような美しい金髪は癖のひとつもなく、さらりと床にひろがって、月の光を反射して明るく周囲を照らしているようだった。

最後に、女の子の大切な部分。
毛がさらりと生えそろってはいるが、色素が薄いため神秘的に思えた。
さきほど下着の中に手を差し込んだ時、毛にも愛液が付着してしまい、いまはきらきらと光っている。
恥裂からも滴って、いまかいまかと俺を誘って求めている。


僧侶「ソル…様…うふふ、いつまで見てるんですか。恥ずかしいですよぉ…」

甘く優しくて、心の落ち着く声。
ヒーラちゃんは少し呆れたように、いたずらっぽく笑って、ふとももをつかむ俺の汗ばんだ手にちょこんと触れた。
俺はこの子の全てが大好きだ。


傭兵「挿れるよ」

僧侶「…♥」


とっくに怒張しきったペニスの先を、やや大人な恥裂にぴたりと当てる。
むっちりとした脚を掴んで、そのまま少しずつ腰を前につきだすと、
ヒーラちゃんの濡れた膣穴はずるずると俺を飲み込んでいった。

僧侶「ぁぁ…っ、ああっ♥」

傭兵「う…ッ」

僧侶「ああんっ、あ‥ソル…様が♥」

ヒーラちゃんのドロドロの温かい淫肉の中に包まれる。
突き入れただけでじゅくじゅくと汁がこぼれて、空気の押しだされる恥ずかしい音がした。

僧侶「奥…までっ♥」

ひだをかきわけて、あっという間に膣奥まで到達し、子宮口の入り口に先端をくっつけた。
まるでキスをしているような心地に俺はほぅっと息をつく。

僧侶「んっ♥♥」

僧侶「ああっ、そこ…好きっ♥」


僧侶「や、やっぱり…おっき…ぃ…♥ ですっ

僧侶「「はっ、はぁ…♥」

傭兵「ヒーラちゃんきつきつだ。全部吸われてるみたい」

僧侶「…っ、は、はい…ぎゅってしめると…ソル様の硬いのがすごくわかります」

傭兵「動いていい? もう限界だ。前はヒーラちゃんの中で出せなくて、ショックだった」

僧侶「ご、ごめんなさい…うう、私へたっぴで…」

僧侶「あのときは…あまりに気持ちよくて、あれ以上したらどうにかなっちゃいそうで怖くて…っ」

傭兵「大丈夫だよ。エッチに淫れるのは悪いことじゃない」

傭兵「今日は俺ががんばるから、一緒にきもちよくなろうな。たくさん声だしてね」

僧侶「はいっ」


そうしてゆっくり腰を前後に動かし始めた。

雄の精を授けるための行為。
硬い肉棒で彼女のやわらかい膣の中をかきまわして、襞をこすって、何度も何度もすり合わせる。


 ぱちゅっぱちゅっぱちゅっ

気持ちが高まって、自然と律動が早くなり、手に入る快楽を前に腰が止まらなくなった。

俺も少女の淫靡さに理性を失い、もはや彼女を貪ることしか考えられない。
ヒーラちゃんとセックスして、おまんこに延々とペニスをすりつけて膣内に思い切り精液を吐き出したい。
全身を俺に染めてしまって、未来永劫俺だけのものにしたい。


傭兵(もう俺たちは我慢しなくていいんだ)

傭兵(たくさん体を重ねて、既成事実でもなんでもいい、周りが俺たちを引き離すのを反対するくらいに)

傭兵(愛し合えばいいんだ)

 ぱちゅっぱちゅっぱちゅっ
   ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ
    ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ

僧侶「~~~っ♥♥」


虫の音と静寂が交互に訪れる草原に、膣を犯す水音が鳴り続ける。
柔襞をこじあけて、肉棒が何度も少女の濡れた膣を出入りしていた。


僧侶「ふぁう♥ ああぅ♥ あああっ♥」

僧侶「あああっ、あんっ♥ ソルさまぁ♥ ああっ」

僧侶「はげひ…っですっはああっ♥」

僧侶「おまんこが…おまんこ、めくれちゃ…あああっ♥ めくれちゃいますよぉ」

僧侶「ああまた奥ぅっ♥ あああぁん奥ぅッ♥」

僧侶「こわれましゅ♥ ああっ、んああ゙っはげしす…ぎ…♥」

僧侶「こんな、おっきいおちんちんっ♥ わたひっ、あああっん♥」

僧侶「たえらりぇ♥ あああお、ああっ♥」

僧侶「あああっ~~~~っ♥♥」


彼女の中で激しい収縮が起きる。
痙攣したようにびくびくと跳ねて、俺をしぼりとろうとしてくる。
俺は我慢することなく一度目の射精を迎えた。


ぴったり隙間の無い膣内に容赦なく欲望を吐き出していく。


僧侶「きてっ、あああっ♥ きてますっっ♥」

僧侶「~~~~っ♥♥♥」

僧侶「ああああああああ♥♥」

僧侶「ソル様の…あかちゃんのお汁っ♥ あぁぁああっ♥」

僧侶「私の中に…いっぱい…♥ はぁ、はぁーハァ♥」

僧侶「ああイクッ! イクッ♥ ふぁぁあああ゙♥♥」

注ぎ込んだ精液は彼女の赤ちゃんを作る大事な場所に流れ込み、
それでも収まりきらなかったものが結合部からじわりと溢れてきた。

たくさんの愛液と精液でまじったねばっこい汁が毛布に垂れる。
ヒーラちゃんは激しい絶頂に肩で息をしながら、俺の手をまた握った。

僧侶「これ…すごいです♥」

僧侶「ソル様…好きです」

僧侶「きもちよくなれましたか…? うふふ…えへへ♥」

そんな彼女のいやらしいすがたを見て、射精したばかりの俺のモノはまた再び膨らんでいった。

 

  ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ
   ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ
    ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ♥


僧侶「ああっ、ああっ♥ あああもうだめですってばぁあ♥」

僧侶「イグッ、まだ、いっちゃっれ…♥ あああっ♥」

僧侶「わたひ、おかひく、なりますってばダメぇ♥」


しばらく経って、2人はいろんな汁でぐちゃぐちゃになっていた。
ヒーラちゃんはミルクをふきだしながら何度も繰り返し絶頂して、
普段の楚々とした態度は消えうせて、1人のメスとして淫れに淫れて肉欲に堕ちていた。
だらしない蕩けた顔をして、口ではダメダメ言いつつも身体は執拗に俺を求めてくる。

何度も膣をぎゅうっとしめつけ、いやらしい体で俺をしぼりとった。
俺もそれに答えて何度でも欲しがる場所に出してやった。

顔に、口に、胸に、お腹に、膣内に。何度もかけた。
なのでお互いがお互いの汁にまみれ、もう臭ってしまうほどにベタベタだ。


傭兵「もういちどっ…うぁっ」


  びゅるっ、びゅく…びゅっ…びゅく


僧侶「んぁあぁあ♥♥」



僧侶「も…もうだめっ、ですっ♥ ハァ…はぁ」

傭兵「うお…俺も出しすぎた…」

僧侶「ソル様ぁ…すき、好きです♥ 抱っこしてください」

傭兵「おう、おいで」


ベタベタの身体をおこして抱きしめる。
もちろんアソコはつながったまま。
またキスをしたら、ヒーラちゃんは容赦なく舌をからめてきて俺を求めた。

傭兵「んっ…積極的だな」

僧侶「…! ま、またおっきくなってます…どうなってるんですかソル様」

傭兵「このままもう少ししよっか。ヒーラちゃんのかわいい顔とエッチな匂いのせいで興奮してきた」

僧侶「…っ♥」

傭兵「だめ? 俺はまだし足りない。ヒーラちゃんは?」

僧侶「立て続けにずっとエッチしてるせいで…アソコのうずうず止まんないですよぉ」

傭兵「はは、困った呪いだな」

僧侶「ソル様のせいですからね…っ」ぎゅ

傭兵「責任とるから、朝まで付き合って。ヒーラちゃん独り占めしたい」

僧侶「……はい♥ 私も独り占めしちゃいます♥」ぎゅううう



翌朝になって、枯れたようにぶっ倒れた俺たちが屋根の上でみつかったそうだ。


後日譚第2話<陽気>つづく



  

更新終わり
次回明日22時~(予定)

また帰り遅れちゃったスマソ
書き溜めて寝ますおやすみ

後日譚第2話<陽気>つづき




荷馬車は揺れる。
数日の食糧難をなんとか解決した俺達は歯車の街ピニオンへと辿り着いた。



時の魔術師「よくぞご無事で…おかえりなさいませ勇者様方」

勇者「クロノさん!」ぎゅ

時の魔術師「勇者様…よく頑張りましたね」

僧侶「クロノ様のご支援のおかげです。ありがとうございました」

時の魔術師「いえいえ、あなたたちの勇気と絆がもたらした未来ですよ」

勇者「えへへ照れちゃうなあ」

時の魔術師「なにもない街ですが、ゆっくりと戦いの疲れを癒やして行ってください」

時の魔術師「それとも、またすぐに発たれるのでしょうか。今後の旅のご予定は?」

傭兵「一応、故郷の太陽の国めざして旅を続けるつもりだ」

傭兵「けど補給も兼ねて数日滞在させてもらうよ。前回はバタバタしててあまり街の見学ができなかったしな」

勇者「ソルはお子様になってたもんねー」

傭兵「あ、あぁ…そうだったな」

時の魔術師「では宿泊はぜひ大時計塔へいらしてください」

傭兵「また世話になるよ」

時の魔術師「はい」




  ・   ・   ・



勇者「ふぁ~~、ひさしぶりのベッドだぁ」ぼふん

僧侶「やっぱり疲れがたまってますねぇ」

勇者「馬車旅はつかれるよぉ」ごろごろ

魔女「空を飛べたら楽」

勇者「でももうみんなが乗れるほどの火の鳥は出せないなぁ…スレイプニルと荷物も置いていけないし」

勇者「なにか良い方法ないかなぁ」

傭兵「ゆっくり疲れをとりながらゴトゴト帰るしか無いさ」

僧侶「私はいまの旅がたのしいので少々時間がかかってもへっちゃらですよ」

傭兵「はは、そうだな。さてと~、夜まで一眠りするか」

勇者「うん!」

時の魔術師「ではお夕飯の時間になったら起こしに参ります。おやすみなさい」

傭兵「あぁ、ありがとう」


勇者「スピー…zzz」ぎゅ

傭兵「は、はや……おい離せ、一緒に寝る気はないぞ」

傭兵「おーいユッカ…」

勇者「…zzz」

僧侶「うふふ。こうしてユッカ様のだらしないお顔を見れるのは幸せですね」

魔女「別人みたい」

傭兵「覚醒してたときのこいつは鬼気迫るものがあったなー、先日の事なのにいまとなっては懐かしい」ツンツン

勇者「…zzz」ニヘラ

傭兵(そういやこの街……)

傭兵(あとでマナに聞いてみるか)



<夜>


勇者「…zzz」 げしっ

ドタッ

傭兵「あいてっ…あ~、いた…」

勇者「zzz」

傭兵「どうなってんだこのわけわからねぇ寝相…」

傭兵「おいユッカ起き――やめとくか」

傭兵「ふぁ、中途半端だと逆に疲れたぞ」コキッ

傭兵「あれ? マナどこ行った…? いねぇな」




【大時計塔・展望台】




傭兵「あ、こんな所にいた。マナ」


魔女「……」


傭兵「……あれ?」

どうやら俺の呼びかけに気づく気配はない。
マナはひざをつき、両手をあわせて、満天の星空に向かって熱心に祈りを捧げていた。


傭兵(こいつがこんなことしてるの珍しいな)

傭兵「マナ?」

魔女「……ユイ」


祈りの中、マナがかすかにつぶやいた名前は俺のよく知るものだった。
驚いておもわず側に駆け寄ると、マナはゆっくりと顔を上げて振り向いた。


傭兵「もしかして…ひとりで魂流しをしていたのか?」

傭兵「光の道は開いていないが…クロノさん無しで送ることなんてできるのか!?」

魔女「…」フルフル

マナは小さく首を振る。
白い頬には一筋の涙の跡が見えたような気がした。

傭兵「マナ…?」

魔女「ユイの事を想っていた」

傭兵「え…」

魔女「ユイは、もういない」

傭兵「!」

魔女「ユイはもう…いない」

魔女「ここなら空に近いから…声がとどくかもしれないって思った…」


マナはぼそりぼそりと、あの時自身の身に起きた事を語りはじめる。

魔王の復活で肉体を奪われてしまったこと。
暗闇の海に魂を封じられたこと。
ユイさんの魂が導いてくれたこと。
共に魔王と戦ったこと。
そして、彼女の魂が永遠に側を離れてしまったこと。

俺は黙ってそれを聞いていた。


傭兵「…そうか、ユイさん。最後まで俺たちのことを導いてくれたんだな」

泣き出しそうなマナを抱きしめて、幼子をあやすように出来る限り優しく銀色の頭を撫でた。
マナは消え入りそうな声でごめんなさいと繰り返し、俺の腕の中で小さく嗚咽を漏らす。


傭兵「お前のせいじゃない…泣いてちゃユイさんに笑われちゃうぞ」

魔女「でも…あなたは…ユイのことを…好きだった」

魔女「あなたに…会わせてあげたかった」

傭兵「ずっと1人で抱え込んで辛かったな。教えてくれてありがとう」

魔女「ううん…」

傭兵「ここにいる間、毎日一緒に祈りをささげよう。な?」

傭兵「お前のいうとおり、きっと届くはずだ」

魔女「…うん。それが私にできる償い」

傭兵「ありがとうマナ。お前のおかげで俺はここで奇跡的な体験をできたよ」

傭兵「最後にもう一度話せて幸せだった」

傭兵「ユイさんもずっとマナの側にいて幸せだったよ」

傭兵「あの人ならそう言って笑ってくれるんじゃないかな」


魔女「……ソル」ぎゅ

魔女「ごめんなさい…どう切り出せばいいかわからなかった」

魔女「すぐにあなたたちに伝えるのがどうしても怖かった」

魔女「また、なにかが壊れてしまうような気がして…怖くて」

魔女「あなたたちがいなくなってしまうんじゃないかって思った…」

傭兵「マナ。俺たちは何があってももうお前を離さないよ。この手で守るから…」

魔女「……ごめんなさい」

傭兵「いいんだ。お前が今ここにこうして居てくれる事が、俺たちにとって何よりの幸せだ」

傭兵「帰ってきてくれてありがとう。ユッカにはまた落ち着いてから話そうな」


一層強く抱きしめるとマナは細い腕で俺を抱き返し、しばらく声もなく泣いていた。


傭兵(お前は人のために泣くことのできる優しい子だよ)

傭兵(そんなマナだからきっと、ユイさんもお前についていくことを選んだんだろう)

傭兵(ユイさん…いままでマナをまもってくれてありがとう)



<翌朝>


魔女「…」ぎゅ

傭兵「……あー、頭いてぇ飲み過ぎた」

僧侶「あうー…ふらふらします。もう朝なんですか…」

勇者「ふたりともちょっとは加減しなよ。特にヒーラ、最近体重増えてるよ…」ジトー

僧侶「え…」

時の魔術師「たくさん召し上がってもらえて嬉しいです」

時の魔術師「必死の花嫁修業の甲斐がありました」

勇者「誰の花嫁さんになるの?」

時の魔術師「え…それは……うーん、未定です」

傭兵「そういや…グリモワ王がクロノさんのことを随分気に入っていたな」

時の魔術師「あぁ…あのお方はちょっと…ご遠慮願いたいです」

勇者「あれはだめ!」

僧侶「ダメです!」

傭兵「わかってるうるさい! 頭に響くからでかい声ださないでくれ」

魔女「…」なでなで


勇者「ところでなんでマナずっとソルにくっついてるの」

魔女「…? 別に」

勇者「別にってことないでしょ…なんか怪しいな」

傭兵「あぁそうだ。今日俺日中はマナと出かけるから」

勇者「えっ、そうなの?」

魔女「デート」

勇者「えぇ~~! なにそれずるい」

僧侶「はっきりとデートと言うなんて珍しいですね。お弁当つくりましょうか…アイタタタ、立つと頭が」ふらっ

勇者「あーあーもうヒーラったら。ゆっくりしてなよ」

傭兵「昼は適当にその辺で食べるよ」

傭兵「じゃユッカ、ヒーラちゃんをよろしく」

勇者「ゔ……ボクもデートしたい」

傭兵「俺はひとりしかいないから先着順だ。また今度な」なでなで

僧侶「私とお部屋デートしましょう」ぴとっ

勇者「二日酔いのお世話なんて嫌だよぉ!」

魔女「行ってきます。お土産買ってくる」



【街中】



傭兵「さて、どこ行くか」

魔女「どこにでもついていく。連れて行って」

傭兵「といってもこの街詳しいわけじゃないから、どこに連れていったらいいもんやら」

魔女「一緒ならそれだけでいい」

傭兵「そう言われると恥ずかしいな…」

魔女「…ぎゅ」

傭兵「…人前だぞ」

魔女「ユッカならこういう時遠慮せずにくっつくと思った」

傭兵「そ、そうだな……いいけどな」

傭兵「よし、時計がすこし傷入ってるから修理したいな」

魔女「うん」

傭兵「その後はぶらぶらして、飯でも食うか」

魔女「楽しみ」



時計屋「ベルトの取り換えなら早いが、ケースにちとひびが入ってるな。無茶な使い方しただろ」

傭兵「まぁ…そうだな」

時計屋「こりゃ2~3日かかるがかまわねぇか?」

傭兵「わかった。後日取りに来る」

時計屋「あいよまいどあり」

時計屋「ところでそっちのお嬢ちゃんに腕時計のプレゼントでもどうだい」

時計屋「アクセサリーとしても大変人気だよ」

魔女「!」

傭兵「あ、あー…何か見ていくか。お前首飾りなくなっちゃったもんな」

魔女「買ってくれる?」

傭兵「気に入るのがあって、値段が手頃なら…」

魔女「…」コクコク

時計屋「優しいパパでよかったなーお嬢ちゃん」

傭兵「パ…っ…誰がパパだ!」

魔女「…」

魔女「…パパこれかって」

傭兵「うるさいっ」




   ・   ・   ・



魔女「~♪」

魔女「似合う?」

傭兵「あぁ、細めのだからお前の手首にはよく似合うよ」

魔女「ありがとう。大事にする」

傭兵(いきなり手持ちが心細いな…あと幾ら使えるやら)

傭兵「はぁ…ヒーラちゃんにお小遣い増やしてもらわねぇと…」

魔女「ヒーラはケチだからおねだりしてもあまりくれない」

傭兵「ユッカならとにかくお前のおねだりってどんなのか想像つかねぇな」

魔女「……」ジッ

魔女「お金…」ジー

傭兵「…脅してるようにしか見えないな…」

魔女「そもそもどうしてヒーラがお金の管理をしているのか謎」

傭兵「俺もだ。ぼけっとしてるからそのうちどこかに落っことすんじゃないか心配だ」

傭兵「こうなったら俺が財政を握って」

魔女「あなたは好き勝手お酒を買うからだめ。お酒は体に良くないから今後のため控えて欲しい」

傭兵「喉乾いたな…酒場に」

魔女「ダメ。喫茶店にして」グイグイ



【喫茶店】


傭兵「さって、何にするか。昼飯も軽くすませるぞ」

魔女「…アイスティーのパンケーキセット。これがいい」

傭兵「…ん、そうか」

傭兵「じゃあ俺は…水で」

魔女「…? そんなにお金ない? 時計返したほうがいい?」

傭兵「あることはあるが、この後もぶらぶらするなら節約しておこうかなと思ってな」

傭兵(明日はユッカにねだられそうだしな…)

魔女「ダメ…そんなの私が気を使う」

魔女「私が全部お金だす。お小遣いもってるから」ジャラ

傭兵「いやっ、そういうわけにはいかないだろ」

店員「あのーお決まりですかー」

傭兵「あ、あぁすいません…えっと…」

店員「よろしければ、こちらのカップルセットなんていかがですか。お値段の割にボリュームがあってお得ですよ」

魔女「じゃあそれで」

傭兵「お、おい…まぁいいか。お願いします」



どんっ


傭兵「なんだこの巨大なジュース…」

魔女「1つしか無い…私の分はどこ」

店員「カップルセットですので…こちらのラブラブストローでご一緒にどうぞ…」

傭兵「らぶらぶて…お姉さん、ストローつながってるじゃないか」

魔女「え…」

店員「…」ニコッ

傭兵「周りの席みて予想はしてたが…これだったのか…!」

店員「ピザとサラダは取り分けてお召し上がりください」

店員「食後にサンドイッチと紅茶をお持ちいたします。ごゆっくりどうぞ」


傭兵「…と、とりあえず…飲むか」

魔女「…うん。いただきます」

 ちゅー…

傭兵(…公衆の面前でこんなことするのはさすがにちょっと恥ずかしいな)


傭兵(気まずいぞ……俺だけか?)

魔女「…」チュー

傭兵(顔近い…何度もキスしてるのに、こうして外で一緒にいると不思議な気分になるな)

魔女「…」チュー

傭兵(やっぱマナは綺麗だな。造り物みたいだ…魔族ってみんなこうなのか?)

魔女「…? 私とあなた、恋人同士に見えてるとおもう?」

傭兵「さ、さぁな…ッ」チュー

魔女「…街にはいろんなものがあって楽しい」

魔女「あなたと一緒にいると楽しい。もっと外の世界でいろんな経験したい」

魔女「おじいちゃんへのお土産話にする」

傭兵「…お、おう…今日一日任せろ。何も決めてないけどな」

魔女「ねぇ、ちょっとだけ目つぶって」

傭兵「…ん?」

魔女「…ちゅ」

傭兵「! お、おい…人前だって言ってるだろ」

魔女「…むふ、今日は独り占め♥」



後日譚第2話<陽気>つづく


 

更新終わり
次回新スレ 月曜日22時~

少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」
少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」 - SSまとめ速報
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