魔王「人間の幼馴染がいる」(66)

シュィィィィィン…

ゴゴゴゴゴゴゴゴ


魔王「ついに…閉ざされた人間界へのゲートが開かれようとしているのか」

ガシャン、ガシャン

バァン!!

ゴブリン「うおぉ!!やった開いたぜ!」

オーク「これでやっと人間界に行けるぜ!豚がたらふく食える!!」

側近「やりましたね、二度と開通することがないと言われた人間界へのゲートがついに」

魔王「側近よ、俺の王冠を持ってこい。今すぐにだ」

側近「あの枯れ果てた花の王冠でしょうか…。そろそろ王冠を新調なされてはどうでしょうか」

魔王「ならん。あれは俺の宝であり王である証なのだ」

側近「…魔王様の命であるならば」

魔王「…今行くぞ、幼馴染よ」

ザッザッザッ

幼馴染『占めた占めた、村の大人たちからは誰にも見つからず森へ入れたわ』

幼馴染『一昨日新しい道を見つけたの。こんなの好奇心旺盛な私がそれを見逃すわけないじゃない』ニシシ

幼馴染『ん?』

魔王『うぅ…!!』

イノシシ『ブルッ…』

幼馴染『あら大変、大きなイノシシ!もっと大変なのは小さい子供がそれと対峙していると言う事!』

幼馴染『しかしあの子供、何故か小さいながら角が生えているわね。きっと人工物じゃない何かだわ』

幼馴染『ただの人間ってワケじゃなさそう…魔族?』

幼馴染『だからと言って同類ってワケじゃなさそう。あの子供震えてるし』

イノシシ『』ジャリジャリ

幼馴染『まずい、威嚇行動を始めたわね…。仕方ない…イチかバチか』

幼馴染『煙玉!!』ボンッ

魔王『わわっ!!ゲホッゲホッ』

幼馴染『こっち!!』ガシッ

魔王『ハァッハァッ…』

幼馴染『撒けるとは思ってなかったけど運が良かったぁ…何とかなったわ』

幼馴染『君子供なのにどうして森なんかに入ったの?森の怖さをしらないのね』

魔王『…そういうお前だって子供のクセに森へ入ってるじゃないか』

幼馴染『森の事は良く知ってるわ。だけど私怖いもの知らずなの』

魔王『なんだそりゃ…』

幼馴染『君のその角って…』

魔王『やっべ、王冠どっかに落としちまった!どうしよ…親父に怒られちまう!』

幼馴染『王冠?君もしかして王族なの?城下町から来たのかな』

魔王『いや…俺は、魔界の王の息子だ』

幼馴染『魔界の王!?』

魔王『そうだ』

幼馴染『すっご~い!!魔界の王なんて恰好いい!!』

魔王『よせよ…』

幼馴染『でもそれでイノシシに勝てないなんて恰好悪い!』

魔王『仕方ねぇだろ、魔族とはいえ俺は子供なんだから』

魔王『ていうかこんなことしてる場合じゃねぇ!落とした王冠探さねぇと…勝手に持ち出したのに親父に怒られちまう!』

幼馴染『ふーん…』

幼馴染『』キョロキョロ

幼馴染『綺麗な花発見』ブチッ

魔王『何やってんだ?いきなり花なんて摘みだして』

幼馴染『君の落とした王冠の代わりを作っているのよ』

幼馴染『はい完成!これあげるね!』

魔王『わっ!こんなダセェもんかぶせんなよ!!』

幼馴染『似合ってる似合ってる!』

魔王『』ドキッ

魔王『そうかよ…』

幼馴染『てのは冗談で…、王冠探すの手伝ってあげるよ!暇だし!』

魔王『いやもういい…』

幼馴染『いいの?お父さんに怒られないの?』

魔王『王冠なんて宝物庫にゴロゴロ転がってるだろ…そんなの一つや二つなくなったところでどうって事ねーや。大して怒られねぇだろ多分』

幼馴染『すっごい王族って、やっぱりお金持ちって偉大だなぁ。私なんて家の壺割っただけで外に三日くらい放り出されちゃうんだもん』

魔王『まぁそういう事だ、だから気にすんな。それじゃ俺はこれで…』ザッ

幼馴染『んー、じゃああそぼ!!私行きたいところいあるから一緒に行こうよ!』ガシッ

魔王『え、ちょっ…!手引っ張んな!!』

幼馴染『私幼馴染っていうの!!君の名前は?』

魔王『えっ…、俺はーーーー

幼馴染「ん…」

親父「ほら、幼馴染。いつまで机に突っ伏して寝てんだ。とっくに夕方だ、厨房へ入りな」

幼馴染「嘘、寝ちゃってた」シュルシュル

親父「っと、材料足りねぇな。まだ時間があるから急いで材料買ってきてくれや幼馴染」

親父「」サラサラ

親父「ほら、買い出しメモ」

幼馴染「はいはい」

幼馴染「何か懐かしい夢を見た気がするけど、覚えてないなぁ」

幼馴染「ま、どうでもいいや。買い出し買い出し」

男「おい聞いたかよ。最近魔物らしきものが外をを徘徊しているって噂だぜ」

女「聞いたわ…魔物って討伐隊が一掃したはずなのに。まだ生き残りがいたのかしら」

幼馴染「魔物…」

幼馴染(そういえば昔はゴロゴロいたって聞いたけど、魔族と人間が仲違いを初めて戦争になっていなくなったんだっけ)

幼馴染(魔界っていう魔族もとい魔物の巣みたいなとこと人間の住むこの世界を繋ぐ門が閉ざされて、お互いの関係は完全に消滅したとか)

幼馴染(それで人間界に残っている魔物が食物連鎖に影響するってのと魔族は悪魔で人間にとって害という信仰の理由で討伐されることになったと)

幼馴染(私が子供のときは遠くまで言った事ないし会う事なかったから魔族の存在なんて信じられなかったけど)

幼馴染(私、村っていう閉鎖空間にいるせいで全く外の事に関心を示さないわねー…保身に走ってしまうと言うか問題に首突っ込みたくないと言うか、子供の頃とは私も変わってしまったわね)

ザワザワ

幼馴染「あれ、村の入り口の所が騒がしいわね」

男「ゆ、勇者様だ!!」

女「嘘!?」

勇者「いかにも、私は勇者だ!魔族を根絶やしにするため選定の元、勇者となりてこの地へ参上した!」

勇者「怖がらずに聞いてほしい。数年前人間界に残っている魔族の討伐にすべて成功したが」

勇者「最近目撃される魔族の数が増えている。それも数年前より格段にだ」

勇者「生き残り同士が生殖して増えたとも考えられるが…それならまだいい」

勇者「我々は最悪のケースを考えている。封印した魔界へのゲートが再び開かれているという事だ」

ザワザワ

勇者「しかし安心してくれ!必ずや原因を調査し問題を解決した上で、君たち国民の平和を保障する!」

男「魔族が襲ってくるのは怖いが…、勇者様がいてくれるなら」

女「そうね。前回の魔族との戦争に勝てたのも勇者様のおかげだもの、きっと私達を救ってくださるわ!」

ユウシャユウシャ!

幼馴染「あらら…、なんかえらい事になってるなぁ。もしかして私のお店でおもてなししなくちゃならないんじゃないかな」

親父「何?勇者様が!?たしかに外で騒ぎになっていたが…」

幼馴染「そうなんだよ!ご馳走作らないとやばいよ!ウチすっごく質素な定食屋なんだから!」

幼馴染「人気メニューが一汁三菜の素朴なもののウチの店が勇者様をおもてなしできるのかな!」

親父「うるさい!伝統ある料理なんだ!まぁ勇者様をそれでおもてなしできるのかと言われると少々疑問だが」

親父「しかしこの村にはここしか料理屋がないんだ!気合入れろ!」

幼馴染「ん~!仕方ないなぁ…」

ガチャ

男「さぁさぁお上がりくださいませ勇者様、汚い定食屋ですが味は悪くありません」

親父「悪かったな…」

勇者「ふむ…歴史を感じさせる良い所だな。気に入った」

親父「い、今料理を作りますんで!少々お待ちを!!」

勇者「すまないな。そんなに急いでくれなくてもいい」

親父「ほら、お前も手伝え!!大根切ってくれ!」

幼馴染「はいはい…」

勇者「むっ…」キラン

勇者「あの、厨房の娘」

幼馴染「はい?」

勇者「手持無沙汰でな。少し話し相手をしてくれないか?」

女「勇者様、話相手なら私が…」

勇者「よい。お前たちはそれぞれの持ち場に戻ってくれて結構だ、普段通り生活してくれ」

勇者「歓迎感謝する。適当な宿で身を休め明日出発する」

マァユウシャサマガソウイウナラ…ゾロゾロ

勇者「ふむ、私のせいで騒ぎになってすまなかった。しかし使命を果たす意思表示をできるだけしなくてはと思ってな」

勇者「いずれ国が世界全体に広報するがな…できるだけ騒ぎを大きくしないためにな」

親父「いえいえかまいませんよ。私も料理人の身。勇者様に料理をふるえるなんて感激でございますよ」

親父「ほら、話し相手をしてやれ。厨房は俺一人で大丈夫だからよ」ヒソヒソ

幼馴染「…わかった」

幼馴染「失礼します」ガタッ

勇者「君、趣味は?」

幼馴染「趣味?」

幼馴染(なんかお見合いみたいね…。まぁやったことないけど)

幼馴染「特にこれと言ってないですけど…強いて言うなら家業の手伝い、料理ですかね」

勇者「ほう、料理…。しかも家業の手伝いとは優しくて家庭的なんだな君は」

幼馴染「いえいえ、他にやることがないだけですよ」

親父「本当言ってやってくださいよ、さっさと男探して結婚して出て行けってな!」ハハハ

幼馴染「もー!私そんなつもりないっ…」

勇者「では私の所に嫁に来ないか?」

幼馴染「へっ?」

カランカラン…

親父「」ポカーン

幼馴染「えっとそれはどういう意味でしょうか?」オホホ

勇者「結婚しないかと言ってるんだ」

幼馴染「えーっと、お父様…これはどうしたらいいのやら判断が」

親父「ほ、本当にこんな娘でよろしいのですか勇者様!?」

勇者「とんでもない、美人で気品があって家庭的で嫁に来てくれるには申し分ない女性だ」

親父「よ、よかったなぁ~!勇者様の嫁に選ばれるなんてウチの生活も安泰、孫の顔も見れて幸せじゃ~!」

幼馴染「ちょ、待ってよ!そんな事いきなり言われても…」

勇者「もしかしてダメか?」

幼馴染「えっと…」

幼馴染(お父さんは喜んでるけど貴賎結婚とか大丈夫かしら…でも断ったらそれはそれで問題になりそうだし…)

幼馴染「そ、そんなに焦らなくてもいいんじゃないですか?ほらじっくり仲を深めて行きたいですし」

勇者「そうか?私は今すぐにでもいいのだが…」

勇者「まぁ君の意向に従おう。婚約なぞいつだって交わせるのだからな」

幼馴染「あはっ、あはは…そうですね」

勇者「職業柄いつでも会えるとは限らないができるだけ会える時間を増やすようにしよう」

勇者「これからよろしく頼む」

親父「やったなぁ!!くーっ!こりゃめでてぇや!魚追加だ!!酒も開けちまおう!」

幼馴染(うわー…結婚を前提に話進んじゃってるよ…。なんで勝手に決められてんのさ)

幼馴染(結婚なんて興味ないし…。大体この人そんなにタイプじゃないっていうか…)

勇者「ん?」ニコッ

幼馴染「はぁ…どうしよ」



勇者「いや美味かった、レストランのものは味が主張しすぎるからな、あそこの料理は素朴で食べやすくよかった」

幼馴染「き、気に入っていただいて何より」

幼馴染「あ、あと村のみんなには例の話はまだ内密に…」

勇者「わかっている、まだ心の準備ができていないのだろう」

幼馴染「そうですねぇ…あはは」

幼馴染(時間稼ぎ半分、みんなに知られたくないって言うのが半分)

幼馴染(とりあえず言いふらさせないためにお父さんは泥酔させて口封じしたけど…時間の問題よね)

勇者「この森はいいな。虫の鳴き声もきれいで食後の散歩をするのに絶好の場所だ」

幼馴染「そうですか…あはは」

幼馴染(森なんて久しく入ってなかったな、勇者様が入りたいって言ったから入ったけど)

幼馴染「小さい頃よく無断でここに入って怒られましたよ」

勇者「まぁ森は子供がはいるのは危険だからな、楽しい場所ではあるが」ハハ

勇者「何をして遊んでいたんだ君は、探検か?花摘みか?」

幼馴染「そういえば鬼ごっことかかくれんぼとか…」

幼馴染(あれ、誰としてたんだっけ)

勇者「村の子供は揃いも揃ってやんちゃなのが多かったんだな、しかし子供はそれでいい」

幼馴染「は、ははっ。今ではいい思い出です」

幼馴染(たしか角が生えてるのが特徴の…)

ブルルッ…

勇者「…イノシシか?基本的に昼行性のはずだが…塒にでも入ってしまったか」

幼馴染「そういえばこの辺りはよくイノシシが出るんでした。すいませんうっかりしてて」

勇者「まぁ安心してくれ、イノシシくらいならば難なく討伐が…」

オーク「おい見ろよ、人間だぞ!」

ガーゴイル「ん、あれって例の奴じゃねぇか!!」

オーク「本当だ!!匂いもたしかだ間違いねぇ!」

勇者「魔物だと…!!この辺りまで来ていたのか、完全に慢心していた!」

勇者「しかも私が勇者だと感づいたか…、やむを得ん!戦闘だ!」

勇者「私の後ろに下がっていろ」

幼馴染「は、はい…」

幼馴染(魔物ってあれ!?二足歩行してる豚と鳥のような怪物が剣を持ってる…)

勇者「てぇや!!」ジャキンジャキン

オーク「敵対関係は続いてやがったか。なるべく穏便に済ませたいんだけどな!」カキン

勇者「くっ…」

カキンカキン

幼馴染(踏み込みが甘いなぁ…、相手は槍なんだから隙を見て飛び込めばいいのに)

幼馴染(あーあ、そっちに回り込んじゃったら槍を薙がれちゃうって…そこは剣で受け流して…)

幼馴染「って何考えてるんだ私…。なんかボーッとしちゃってた」

ガーゴイル「捕まえた!!」

幼馴染「きゃっ!!」

勇者「しまった!!」

ガーゴイル「余計な戦闘をする必要はねぇ!さっさと魔界へこいつを運ぶぜ!!」

オーク「んじゃあな!それとそんな剣の腕じゃ俺を倒せねぇぜ小僧!」

勇者「あっ!こら待て!!」

勇者「まずい…!このまま幼馴染をさらわれては勇者の示しがつかん!」

勇者「追わなくては!!」

ガーゴイル「ひーっひーっ!!オーク持つの変わってくれよ!俺よりでかい奴運ぶとか無理!」

オーク「ったく非力な野郎だな…。ほら渡せ」

幼馴染「ちょっと離しなさいよ!私をどうするつもり!!」

ガーゴイル「魔王様のところまで運んでるんだが?」

幼馴染「はぁ…魔王?」

オーク「おめー婚約者の事も忘れてんのか?俺ら聞いただけでよく知らねぇが昔に誓いを果たしたらしいじゃねぇか」

幼馴染「そんな覚えないんだけど」

ガーゴイル「はぁ?おいオーク。もしかして例の奴と似てるだけで人違いじゃねぇのか」

オーク「いや間違いねぇ。匂いはたしかに教えられたものと同じだぞ」

幼馴染(全く話が見えてこないわ…。とりあえず物騒なところに運ばれるなんてまっぴらごめんだし…)

幼馴染「ガーゴイルだっけ、ちょっとこっち来て」

ガーゴイル「あん?何だよ…」

幼馴染「剣もらうわよ!」バシッ

ガーゴイル「あ、こらっ!」

幼馴染「ふんっ!」ブスッ

オーク「ぐおっ!!」

幼馴染「よし離れた!!」

ガーゴイル「こらっ!お前剣返しやがれ!」

幼馴染「嫌よ!返したらまた捕まるじゃない!言っておくけど得体のしれないところに連れていかれて死ぬなんてごめんだから!」

ガーゴイル「はぁ?いや別に悪いようにはしねーって…」

オーク「ほら来いよ、逆らうようなら痛い目見るぞ」

幼馴染「…」ゴクリ

オーク「おいガーゴイル。この嬢ちゃんやる気だぞ」

ガーゴイル「昔話でよく聞いてたがやんちゃだったとか…。うわめんどくせーな…」

オーク「こういう奴にはお灸をすえてわからせるのが一番だ」

オーク「おらっ!!」ブンッ

幼馴染「…な、なんとか躱せたわね」

オーク「…」

オーク(こいつの動き…。どっかで見た事あるぞ…昔だ、昔に見た事が…)

オーク「ちょいと本気を出させてもらうぞ」

オーク「ふんっ!!」ブンッブンッ

カキンカキャン

幼馴染「…」

ガーゴイル「もういい!手加減すんな!お前が負傷したら逃がしちまう可能性がある!!」

オーク「あ、ああ…そうだな」

オーク(普通に戦ってるつもりなんだが…)

オーク「おらおらおらおらおら!!」ブンッブンッブンッ

幼馴染「」サッサッサッ

オーク「」ゾワッ

オーク(当たらねぇ…。本気で槍を扱ってみたがまるで当たらねぇ…)

オーク(当たったらどうしようかとは思った…。しかし当たらなかった…、これは喜んでいいのかわからねぇ)

オーク(でもやってみて分かったことは…。この娘が俺より各上だと言う事…!)

幼馴染「」ザシュ

オーク「ぐおお…」

ガーゴイル「畜生…!背中を刺された傷のせいか」

幼馴染(今のうちに逃げよう!!)ザッ

ガーゴイル「あ、待て!!」

オーク「追うな、どうせ捕まえられねぇよ」

ガーゴイル「はぁ?だけど…」

オーク(恐ろしいぜ…。自分より各上の人間と死闘することがこんなにも怖いなんてよ…)

幼馴染「よし…。なんとか逃げ切れたわね」

幼馴染「あー怖かった。初めて魔物に会ったかと思ったらいきなり襲われるんだもの」

幼馴染「しかもあいつら私を魔王のとこまで連れて行くとか言ってたし…」

幼馴染「大体婚約者って何なのよ…。人違いなんじゃないの」

幼馴染「勇者も勇者で勝手に結婚とか決めてくるし、お父さんもそれにノリ気だし」

幼馴染「結婚なんて興味ないのに…。本当迷惑な話だわ」

幼馴染「私は普通にあの店を継いで料理人になるのが夢だったのに」

幼馴染「はーあ、いっそこのまま村に戻らず遠くへ行っちゃおうかしら」

幼馴染「なーんて思ったり…」ズルッ

幼馴染「えっ」

幼馴染「きゃーーーーーーー!!!」

幼馴染「いったた…。誰よこんな所に穴なんて掘ったのは…」

幼馴染「あら、梯子あるじゃない…よかった、結構深いからどうしようかと」

幼馴染「」キョロキョロ

幼馴染「向こうに道が続いてるわね…、もしかして避難経路かしら」

幼馴染「随分前のものみたいだけど…、まぁ私が使う訳じゃないし関係ないか」

幼馴染「さっさと村に戻りましょう。リスクは高いけど勇者との婚約ははっきり断って…」

幼馴染「そしたらきっといつもの生活が遅れるわ。なんだ簡単な事じゃない」

幼馴染「そうよ。私の人生は私のものなんだから。人にとやかく言われて決められるものじゃないわ、うんうん」

幼馴染「さてと、この梯子をのぼって村へ…」ボキッ

幼馴染「…」

ボキッボキッ

幼馴染「…腐ってる」

幼馴染「これじゃ登れないよぉ……」

幼馴染「大声出してさっきの魔物が来たら困るし…」

幼馴染「こっちの通路に進むにも真っ暗で危険だし…」

幼馴染「どうしよう、八方塞がりだよ…」

ボッ

幼馴染「あれ…、誰か向こうから歩いてくる」

ヒョコヒョコ

いたずらもぐら「おや?」

幼馴染(も、モグラ?なんかメガネかけてるし……)

いたずらもぐら「困りましたね。人間、しかも剣には血糊がベッタリ」

いたずらもぐら「何とか外では逃げ切れましたが、完全に仲が安心だと慢心していました。大人しく殺されましょう。南無三」

幼馴染(魔物っぽいけど全然敵意ない…。むしろ何か悟って座ってるし)

幼馴染「えーっと。誤解だわ、この剣はやむを得なかったことなの。警戒しないで本当だから」

幼馴染「私に敵意はないからどうか安心して?ほらこの通り剣だって捨てるわ」カランカラン

いたずらもぐら「…ほう。珍しいタイプの人間もいたものですな、まさか殺されずに済むとはなんとまぁ運がありましたな」

幼馴染「私魔物ってよくわからなくって。襲ってこない限り抗わないから」

いたずらもぐら「ふむふむ、本当に安心して良さそうですね」

いたずらもぐら「ところでこんな所で何をしていらっしゃるのですか?」

幼馴染「実は上で魔物に襲われちゃって…逃げてたら落っこちちゃったんです」

いたずらもぐら「上に魔物?おかしいいですな…外に出ている魔物なんてもういないはずですが」

幼馴染「…もしかして貴方ってゲートが閉ざされた時の生き残り?」

いたずらもぐら「いかにも。10年はこの地下で暮らしています」

いたずらもぐら「戦争は勇者の手によりわが軍が劣勢になり、そして魔界への進軍を阻止するためゲートの閉鎖を余儀なくされたのです」

いたずらもぐら「しかしそれは急な事で私たちは間に合わず人間界へ取り残されてしまいました」

いたずらもぐら「私たちは害獣や害虫、残兵として見なされ無慈悲にも次々仲間が狩られました」

いたずらもぐら「辛かったですねぇ…。逃げる途中で親友が弓で射られるのを見たのは」

いたずらもぐら「残りの仲間と命からがら逃げてきましたよ。今はここを住処にして何とかやっています」

幼馴染「…ごめんなさい。私達人間が貴方達を追いつめてしまったのね」

いたずらもぐら「謝る事はないですぞお若いお嬢さん。何も私は人間がすべて悪いだなんて思っていません」

いたずらもぐら「戦争前、私は大学で教授をしてましてね。数多くの良き友人に囲まれていましたから善い人間と悪い人間の区別はつくのです」

幼馴染「人間と魔物って戦争前はちゃんと交流していたんだ…」

いたずらもぐら「ええ…。けどやはり食糧問題や環境汚染などが原因で共存が難しくなったんです、それで人間の不満が高まり戦争にまで至りました」

幼馴染「その…ごめんなさい。私村の外ってあまり出たことなくて…外の事全然知らないんです。商人が噂しているのを聞くくらいで」

幼馴染「無知って罪ですよね…残酷な事を思い出させてすいませんでした」

いたずらもぐら「いいのだよ。別に気にしていないから安心しなさい」

いたずらもぐら「それに無知を反省する子と素直に謝れる子は大成するよ。もっと精進なさい」ナデナデ

幼馴染「は、はい」

幼馴染(モグラに撫でられた…なんか変な気分)

いたずらもぐら「ところで困っているんじゃないかい?その梯子壊れているんだろ?」

幼馴染「はい。腐ってて」

いたずらもぐら「ははっ。それで途方に暮れていたのかね」

幼馴染「お恥ずかしながら…」

いたずらもぐら「私たちの寝どこまで案内しよう。君の名前は?」

幼馴染「幼馴染です」

いたずらもぐら「私はいたずらもぐらだ。では着いてきたまえ」

幼馴染(魔物の寝床…。まぁこの魔物は優しいし別に着いて行っても大丈夫だよね)

スライムナイト「」カーンカーン

メタルスライム「おーい。いたずらもぐらー、ミミズ結構捕れたよ。今晩飯の心配はなさそう…」

スライムナイト「お、戻ってきたか…一体どこで油を…」

幼馴染「あ、どうもー…」

メタルスライム「」ガクブル

スライムナイト「てめぇいたずらもぐら!人間に脅されて俺らを売ったか!?」

いたずらもぐら「違う違う誤解だ。この子は敵じゃない、ただの迷子さ」

スライムナイト「ふん。どんな奴だろうが人間はお断りだね」

メタルスライム「に、人間…ヤダヤダヤダヤダ…」ガクブル

幼馴染「えーっと…私いなくなった方がよろしいのでは」

いたずらもぐら「大丈夫だと言っているだろう。なんでもかんでも差別するのは良くないぞ」

スライムナイト「知るか。こいつら人間のせいで俺達がどれだけ辛い思いをしたか、人間なんてみんな同じだ」

いたずらもぐら「」フーッ

いたずらもぐら「ではできるだけ目の届かない場所で保護しよう。それなら構わないな」

スライムナイト「勝手にしやがれ。できるだけ早く追い出せよな、そんな奴の顔見たくねぇから」

いたずらもぐら「こっちだ。着いてきなさい」

幼馴染「…」

いたずらもぐら「済まないな。友人は見境がなくて必要以上に人を警戒してしまうのだ」

幼馴染「は、はい…」

幼馴染(やっぱりみんながみんないたずらもぐらみたいな魔物ばかりじゃないんだ…)

いたずらもぐら「あいつらはいい奴だからそんなに気を悪くしてやらないでくれ」

いたずらもぐら「何とか君に普通に接するように説得してみよう」

いたずらもぐら「あー好きに掛けてくれ。はしたない椅子ですまないが」

幼馴染「失礼します…」

幼馴染(机の横に分厚い本が重ねられてる…)

いたずらもぐら「暇なら読んでいいよ。大学で読んでいた頃の本さ」

幼馴染「魔法…」パラッ

いたずらもぐら「火系の呪文を専攻していたんだ。といっても理論を構築するばかりで私は使えなかったがね」

いたずらもぐら「自分の研究の軌跡と勉学に使った本はどうしても持っておきたくてね。逃げながら持って来たのさ」

いたずらもぐら「本当ならあと5000冊は持って来たかったけど、私の身体じゃ運べなかったなぁ」

幼馴染「…」

幼馴染(スラスラ頭の中に入ってくる…。料理の本を読むときはものすごい時間掛かるのに…)

いたずらもぐら「熱中してるね。もしかして魔法に興味があるのかい?」

幼馴染「いえいえとんでもない。私興味あるのは料理ぐらいのものです、魔法なんて無縁のものだったので」

いたずらもぐら「そうかね。退屈なら読んでみるといい、初学者が読むのは難しいと思うが」ハハ

幼馴染「ははは…」パラッ

いたずらもぐら「…」

いたずらもぐら「おっと寝てしまっていた。もうこんな時間かね、食事の準備をしなくては」

ドサッ

幼馴染「」パラッ

いたずらもぐら「…幼馴染君。もしかして左に積んである本は読んだものかい?」

幼馴染「はい…」パラッ

いたずらもぐら(あの量をほんの2時間で…?まぁ興味本位でナナメ読みしたらそんなところか)

いたずらもぐら「食事の用意をしよう。といっても人間が食べられるものはイモぐらいしかないが…」

幼馴染「あ、いただきます…」パラッ

いたずらもぐら「では調理しよう」

いたずらもぐら「できたよ」

ドサッ

幼馴染「ふぅ…お腹減りました」

いたずらもぐら「ものすごく熱中してたね。どう?魔法に興味湧いてきた?」コト

幼馴染「はい!けど少し不満がありましたね…」

いたずらもぐら「不満?」

幼馴染「詠唱の長さです。この二行目のこの部分は火系の呪文とは関係ないと思うので省くと省略できると思います」

幼馴染「あと火力です。画数を増やした魔法陣を掌に描けば安定した呪文が発動できるはず…」

いたずらもぐら「…」ポカーン

いたずらもぐら「君本当に村で済んでいたのかい?村にはそんな高度な魔法学校があったのかい?」

幼馴染「いえ…。父に読み書きと四則演算を習ったくらいですが…」

いたずらもぐら(たった一度魔術書を見た初学者に自分の研究を指摘されてしまった…。しかも的確な指示だ、こんな事があっていいのか?)

幼馴染「す、すいません!私何言ってるんだろ…あーやだやだ…たまに変な事言っちゃうのよね」

いたずらもぐら「君魔法使えるんじゃないか?」

幼馴染「へ?」

いたずらもぐら「そこまで理論を熟知しているなら可能性はあるよ」

幼馴染「…」

幼馴染(まさかね…。たしかに頭に理論は入ってるけど…)

幼馴染「メラ!」テレレレン

ヴォオオオ!!

いたずらもぐら「すごい!しかも申し分ない火力だ!魔法を使えるものでも始めはボヤくらいのものなのに!」

幼馴染「すごい…本当に使えた」

いたずらもぐら「君すごい素質だよ…。こんな才能のある子は初めて見た」

幼馴染「いやいやそんな事は…」

先代勇者『魔法は自分の手足のように扱ってモノになるの。詠唱してるようじゃマダマダね』

いたずらもぐら「ハッ!」

幼馴染「えっ…どうしました?」

いたずらもぐら「似ている…、君先代の勇者とそっくりだ」

幼馴染「え?」

いたずらもぐら「いやなんでもない気のせいだ多分、うん」

いたずらもぐら「さて私は仲間にご飯を持っていってるから適当に休んでいてくれ」

幼馴染「はい」

幼馴染「なんだか眠くなってきちゃった…。今日は色んな事があったからなぁ…」

幼馴染「…」

ガチャ

先代勇者『あっ…』

親父『このクサレビッチま○こ!お前浮気してやがったな!!』

親父『しかも相手は魔王だ!魔族の王と性交するなんて何考えてやがる!』

先代魔王『それほど貴様に魅力がなかったわけだ。女は強い者に魅かれる』

幼馴染『パパ…ママ、このおじちゃん誰?』

先代勇者『えーと…この方は私の友人でね…?』

親父『行くぞ幼馴染。この人はお前のママじゃなくなったんだ、さぁ父さんとおばあちゃんの所に帰ろうな』

幼馴染『え、なんで?私ママに渡したいものがあったのに…待ってママ、ママー!』

先代勇者『…』

魔王『』ヒョコッ

幼馴染「」ハッ

幼馴染「夢か…。嫌な夢見ちゃったなぁ…」

幼馴染「ママ、今頃何してるんだろ…。ちゃんとご飯食べてるのかな」

ニンゲンダー!

幼馴染「なんか外が騒がしいわね…」

幼馴染「どうしたんですか…」ガチャ

スライムナイト「な、なんでこんな所にいやがる!!」

メタルスライム「」ガクガクガクガクガク

いたずらもぐら「ムム…これは予想外ですな」

先代勇者「いや掘るの疲れたわ…。村にいると思ったらいないんだもの」

幼馴染「どっかで見た事あるような…」

スライムナイト「先代勇者…通称kusare bitch manko」

先代勇者「あー…下町でつけられたあだ名か…。完全に風評被害よね」

スライムナイト「てめぇ残党を殺しに来やがったか!」

先代勇者「んー?あーそんな警戒しないで。あんた達みたいな雑魚に用ないし」アハハ

いたずらもぐら「では一体何の御用で?こんな錆びれた炭鉱に先代勇者が来る用事なぞあるのですか?」ゴクリ

先代勇者「私、用があるのそっち。娘の方よ」

幼馴染「娘…」

幼馴染「もしかしてお母さん!?」

先代勇者「ハロー!娘よ、約10年ぶりの再会ね」

幼馴染(嘘…。再会するなんて思ってなかった…、今日は驚く事が多すぎるわ…)

コトッ

いたずらもぐら「粗茶ですが…」

先代勇者「サンキュー!」ズズ

いたずらもぐら「しかし本当に勇者の娘だったとは…、人類の英雄の子とあらばあの才能も納得できる」

先代勇者「まぁ私の娘だしねー。いやー私に似て可愛いわー」

幼馴染「ねぇお母さん…。私聞きたいこといっぱいあるんだけど」

先代勇者「んー?なんでそんなに若く見えるんですかって?そりゃ若い子と付き合っていくのが秘訣ねー」

幼馴染「違う!父さんと別れた理由!!なんで別れたの!不倫でしょ!」

先代勇者「あー…。ソーネ、私も若かったからねぇ…」

先代勇者「魔王とセックスしちゃって子供作っちゃったの。てへぺろ」

幼馴染「なっ…魔王!?」

いたずらもぐら「何と…!!」

先代勇者「いやー、私魔界の王と子供作ったらどうなるんだろって好奇心湧いてさー」

先代勇者「そしたら半魔半人の子供ができちゃってさー。もう私びっくりよ」

幼馴染「お、お母さん…」

先代勇者「結局国と魔王の間でいざ御座が始まって私は魔王を打ちとる羽目になったけどね、イヤー体の関係を持つと斬るの辛いわよねー」

先代勇者「まぁゲート閉じられて逃げられちゃったけどね。逃げたんなら追う必要ないかって事で終戦」

いたずらもぐら「…」

先代勇者「あーごめんね?戦争中だったからアンタたちの仲間殺しちゃったけど、今は敵意とかないから気にしないで?ネ?」

いたずらもぐら「複雑な気持ちなのは否めませんが…。過ぎた事は仕方ありませんね」

先代勇者「ところで一代目ハニーは元気にしてるかしら?一度ハニーの定食食ってみたいわ」

幼馴染「元気にしてるけど…」

先代勇者「貴方彼氏できた?」

幼馴染「できて…ないけど」

先代勇者「何かあるわね…話してごらんなさいよー」

幼馴染「実は昨日勇者が来て…、結婚申し込まれた」

先代勇者「wao!勇者って事は…、武力を競う儀式で決めた勇者かしら」

先代勇者「それでなんて返したの?

幼馴染「まぁ茶を濁しちゃったけど…」

先代勇者「あちゃー。好みじゃなかったか」

先代勇者「まずは体を重ねたら?愛着湧くかもよ?」

幼馴染「お母さんと一緒にしないで!!私お母さんの事すっごく軽蔑してるんだから!」

先代勇者「あらら」

幼馴染「私お母さんの事親だって思ってないから」ツーン

先代勇者「嫌われちゃったかぁ…」アハハ

先代勇者「私ね、貴方と世間話するために貴方を追ってきたんじゃないの」

幼馴染「え…?」

先代勇者「次期勇者になりなさい。幼馴染」

幼馴染「え、えぇ!?」

先代勇者「貴方聞くとすごいらしいじゃない?ねぇモグラくん」

いたずらもぐら「そうですね…、火系の呪文を私の魔術書を読んだだけでマスターしましたし」

先代勇者「さっすがー!私の娘ね」

幼馴染「ちょっとちょっと展開早すぎてついていけない!どういう事なのよ!」

先代勇者「ゲートが開いたのよ、魔界へのゲートが」

幼馴染「えっ…?」

いたずらもぐら「まさか。ゲートが再び開くことになるとは」

先代勇者「自分からゲートを開いたって事は、力をつけて人類に反撃する可能性があるって事」

先代勇者「今若い女の子が魔物にさらわれるっていう事態が派生してるの、しかも多数の件で」

先代勇者「今攻め込まれたらまずいわよ。勇者が人間なんだもの」

先代勇者「きっと勝ち目がないわ…ダメダメね」

幼馴染「勝ち目ないの!?」

先代勇者「まぁ人間がただ強い人間を選んだだけだからね。そりゃそうよ」

先代勇者「勇者は神の子じゃないとねー…」ニッ

幼馴染「それって…、お母さん」

先代勇者「あー私神の子なの」

幼馴染「」ポカーン

幼馴染「じゃあお母さんが行けばいいんじゃ…」

先代勇者「実はさー。神って子を産むときにその子に力を分け与えちゃうのよね」

先代勇者「私16人くらい子供産んでるんだけど、貴方と魔王の子に力を全部あげちゃったのよね」

幼馴染「えーっ!」

先代勇者「だから今の私は強い人間。貴方の方が強くなれるのよ」

幼馴染「なんじゃそりゃ…」

先代勇者「というわけで貴方。国まで私と一緒に来なさい」

幼馴染「い、いやだよ!私今の生活が気に入ってるの!お父さんと一緒に料理を作ってるのが幸せなの!」

先代勇者「んー…といわれてもね。その幸せを続けられるかは貴方が行動するかしないかに関わってるからねー…」

先代勇者「そして私のセックスライフも…」

幼馴染「黙ってて!」

先代勇者「はーい…」

幼馴染(何でいきなり私ばっかりこんな責任背負わされなくちゃならないの…!)

幼馴染「もしかして…。勇者の子供だから魔物に狙われたのかしら…」

先代勇者「狙われた?貴方魔物に襲われたの?」

幼馴染「うん…。なんか魔王様の所に連れて行くって…」

先代勇者「ふーん…」

幼馴染「何か…、昔に結婚の誓いを果たしたとか言いがかりつけられて…私ワケわかんなくって」

幼馴染「もしかしてお母さんの事と勘違いしてるんじゃないかな」

先代勇者「仕留めるじゃなくて連れて行く…ねぇ。こりゃ戦争をただ仕掛けに来てるってわけじゃなさそうね」

先代勇者「ますます貴方にはきてもらわなくちゃならなくなったわ。支度なさい、城に行くわよ」

幼馴染「ちょっと!私まだ行くなんて言ってない!」ガタッ

先代勇者「ダメよ。貴方のその力はもはや貴方だけのものじゃないの、行使する義務があるわ」

先代勇者「そして私は貴方を説得する義務があるの、わかってちょうだい」

幼馴染「…そんな」チラッ

いたずらもぐら「…」

幼馴染「私いたずらもぐらさん達みたいに魔物を追いつめたくない…。きっと共存が合わないだけで魔物って悪い者じゃないと思うもの」

幼馴染「話し合えるし趣味だって共有できる!環境が合わないだけで方法を考えれば共存だって可能だし…和解だってできるはず!」

いたずらもぐら「幼馴染君…」

先代勇者「…まぁ言うだけなら簡単ね」

幼馴染「そう…だけど」

先代勇者「でも幼馴染。あんたはそれを実現させる力がある」

幼馴染「母さん…」

先代勇者「私は遊びたかったし平和な生活を取り戻したかったから武力行使で鎮圧させただけ、つまり反感を買うやり方をしたけど」

先代勇者「貴方は丸く収まる方法を選びたいならそれを選びなさい。私はそれに大賛成だわ」

先代勇者「…理不尽だろうが何だろうが、責任を負わされたらちゃんと果たしなさい」

先代勇者「私から言えるのはこれだけね、もし魔物側がただ反撃してきただけなら平和な生活は保障されないから堪忍なさい」

先代勇者「閉鎖的な村に住んでいても国から莫大な税を取られたり、戦場に行かされたりするわ。もう黙ってられないの」

先代勇者「貴方それだけの力を持ってそれを使って平和になるならそれを行使した方が賢い選択じゃない?」

幼馴染「…」

幼馴染「私行く」

先代勇者「おお、いいね!そうこなくっちゃ」

幼馴染「言っておくけどお母さんのためじゃないから。そこの所はよろしくね」ツーン

先代勇者「あはは…ホントに嫌われちゃったなぁ」

幼馴染「いたずらもぐらさん、私行きます」

いたずらもぐら「あぁ…、そうだね。君が決めたのなら私に止める事は出来ないが…」

幼馴染「私は魔族を討伐するために出向くのではありません」

幼馴染「平和な世界を、勝ち取るために外に出たいと思います!」

いたずらもぐら「…君ならできるかもしれないな」

いたずらもぐら「私は気長に地下で待ってるよ。外に出れる楽しみは老生まで取っておこうかな」

幼馴染「はい!」

スライムナイト「…」

メタルスライム「…」

幼馴染「村のみんなに伝えてこないと…」

先代勇者「じゃあ送ってあげるわ。かぎ爪ロープあるから上まで上れるわよ」

幼馴染「うん…」

スライムナイト「…おい。本気なのかよ」

幼馴染「あ、どうも…」

幼馴染「私決めましたから。言った事は曲げない性格なので」

スライムナイト「その…、すまんかった。変に毛嫌いして…人間って悪い奴ばかりでもないんだな」

先代勇者「でしょ?」

スライムナイト「お前ははっきり俺の中で悪だがな」ギロッ

先代勇者「あはは…私って色んな人に恨み買いすぎ?」

幼馴染「私の夢が実現したならば迎えにきます、それまでどうか待っていてください」

スライムナイト「…」

スライムナイト「期待裏切るんじゃねぇぞ」

メタルスライム「…」

幼馴染「あっ…」

メタルスライム「行ってらっしゃい…」

幼馴染「はい、行ってきます!!」

先代勇者「…」ニッ

先代勇者「じゃあ行くわよ!落っこちるんじゃないわよ!」

幼馴染「んしょ、んしょ」

先代勇者(白か…硬派だね)ジロジロ

ーーーーーーーーーーーーーー

サキュバス「魔王様~ん!」ダキッ

魔王「なんだ鬱陶しい」

サキュバス「実は例の女の子。見つかったらしいんだけどぉ…」

魔王「ほう!」キラキラ

サキュバス「逃げられちゃったみたい。ホントウチのモンスター共って無能ばかりよねー」

魔王「…なんだ。しかし生存を確認できた功績はでかいぞ」

サキュバス「じゃあさー。その子を連れてくるまで私とイチャイチャしましょー?」

魔王「触るな、私は幼馴染以外の女に触られるのは受け付けんのだ」ザッザッ

サキュバス「…むー。こんな女のどこがいいのかしら」ピラッ

魔王(なんか待ってられないな…。直々にオレが行くか…?)ソワソワ

親父「あーーーー!!幼馴染!!どこへ行ってしまったんだ!!」

親父「妻とは離婚、娘は行方不明。俺は何を生きがいに余生をたのしめばいいのだーーーー!!」ウワーン

勇者「すいません…私が不甲斐ないばかりに、幼馴染が…」

親父「うわーーーーーん!!幼馴染ーーーーーー!!」

幼馴染「うるさいお父さん。黙ってて」

親父「へ?」

勇者「幼馴染、無事だったのか!よかった」

幼馴染「んー、何とか魔物撒けたから」

親父「よかった…よかったぁーーー!!わーーーーん!」ダキッ

幼馴染「暑苦しいってば…」

親父「今日は一緒に添い寝して寝てやるぞ!!」

幼馴染「いらんわ!」

幼馴染「それに。私ゆっくりしている暇ないの」

親父「へ?」

幼馴染「私勇者の力があるらしいから。城に行かなくちゃいけないの」

親父「へ…へ?ちょっとお父さん意味わからない」

幼馴染「お母さんの血と力を引き継いでるらしいからそれを行使しなくちゃならないの、だからしばらく家を出るね」

親父「ななななな、父さんそんな事許さないぞ!」

勇者「勇者ってどういう事だい…!?勇者ならここに…」

幼馴染「私先代勇者の娘で力を引き継いでるの。貴方は貴方で頑張って」

幼馴染「それと結婚の件断れせていただくわ。はっきり言ってタイプじゃないから」

勇者「えー!」ガーン

幼馴染「じゃあそういう事で、村をよろしくね!」バタン

親父「…」ポカーン

勇者「…」ポカーン

幼馴染(権力持ったからか私バッサリ行くようになったわねー…ま、気が軽くなったからいいか)

先代勇者「あら早かったわね」

幼馴染「まぁさっさと別れを言い渡してきたからね」

先代勇者「私も行きたかったなぁー。ハニーとコミニュケーションとりたかったしー」モジモジ

幼馴染「ダメ、変にお父さんのメンタルエグりそうだから」

幼馴染「それより、私外の事なんて全然知らないんだから案内してよ。義務なんでしょ」

先代勇者「本当、自分の正体がわかった瞬間偉くなっちゃうなんて私にそっくりだわ」

先代勇者「まぁ自分の長所をとことん活かすところは私の良い所よ、喜びなさい」

幼馴染「お母さんと一緒…」

先代勇者「今露骨に嫌な顔したわね」

先代勇者「さぁ行くわよ、この森を抜けて平原を南に歩いていけば目的の場所に着くわ」

幼馴染「わかったわ」

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