高森藍子「隠されてしまったらいいのに……!」 (57)

――事務所――

安部菜々「脱げやコラアアアアアアアアア――っ!!」

高森藍子「ひゃああああああああああああ――っ!?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440144654

――注意事項――
安部菜々「いつか来る試練……!」の続編です。

北条加蓮→安部菜々の呼称を変えさせていただいています。

藍子「なっ、ななっ、菜々さんっ! しーっ、しーっ! 今、加蓮ちゃんがおひるねしているところなんですからっ!」

菜々「どーせ今ので起きてそこで狸寝入りしてるだけでしょ加蓮ちゃんなら!」

北条加蓮(…………ばれてるし)

菜々「そんなことより! モバP(以下「P」)さんが自慢気に言ってた次の企画! 聞きましたよ!」

菜々「なんですか『撮影時には水着の上にシャツを着用』『敢えて脱がずに"水着を着ていることを想像させる"という効果を狙う』『必要ならシャツを脱いで水着姿も撮影』って! どーせ脱がんパターンでしょうがこれ!」

加蓮(…………また微妙になまなましいことを……)

藍子「え、ええっとぉ、それは、ぴ、Pさんの指示でぇ……」メソラシ

菜々「ああん!? アイドルがそんな甘いことでやっていけると思ってるんかァ!」

藍子「ひゃあっ」

菜々「だいたい藍子ちゃん、ナナが水着に悩んで悩んで悩みまくってた時に加蓮ちゃんと一緒になって無理強いしてきましたよね! ビキニをこれでもかと勧めてきたことまだ忘れていませんよ!?」

藍子「私は無理強いなんてしてな――」

菜々「ああん!?」

藍子「ご、ごめんなさい」

菜々「それで藍子ちゃんは脱がなくて終わりって、それってちょおっとおかしくありませんかねぇ~~~?」

藍子「うぅ、その、あの、え、えへ」

菜々「えへ、で誤魔化せると思ったら大きな間違いですよ!」

藍子「だ、だって、やっぱり水着って照れちゃって……」

菜々「未央ちゃんと茜ちゃんはとっくに済ませた後ですよね? 後は藍子ちゃんだけですよ!?」

藍子「あっ、あのおふたりは水着のお仕事が似合うから……私は、だって、その……た、助けて加蓮ちゃんっ」

菜々「!」ギロッ

加蓮「……ふぁ……おはよー。菜々、いい目覚まし時計をありがと」

菜々「おはようございます加蓮ちゃん! さて藍子ちゃんが水着のお仕事に困っている訳ですが!」

藍子「…………」コマリワライ

加蓮「んっ……ねむ……」セノビ

藍子「…………」メソラシニガワライ

加蓮「なに? みず着のはなし? 藍子がだよね……」

菜々「そーですよ加蓮ちゃん! さあ、あの時ナナにしつこくしつこく迫ってきたみたいに! 加蓮ちゃんのその話術で藍子ちゃんを説得してください!」

藍子「…………!」プルプル

加蓮「ひとを何だとおもってるのよ……あふ…………」

菜々「……って、なんかガチで眠たそうですねぇ」

藍子「顔、洗ってきますか? 私、ついていきますよっ」

菜々「ならナナもついていきましょうかね! 誰かさんが逃げ出さないように」ギロッ

藍子「ひゃぁ」

加蓮「ん、いいよ……ちょっと待って…………すぅー……はぁー……よし」

加蓮「藍子の水着の話でしょ? 別にいいんじゃない? 見せなくても……」

菜々「なんですと!?」

加蓮「……なんで菜々が驚くの」

菜々「アンタあんだけナナを煽っておいてそれですか!? 藍子ちゃんにちょおっと甘すぎやしませんかねぇ!?」

加蓮「藍子に厳しくできる人間が地球上にいるの?」

菜々「それはっ……まあ、そうですけど」

加蓮「菜々だって……例えばPさんがさ、菜々にやらせるようなこと藍子に回してきたら、全力で止めるでしょ」

菜々「それはもちろんそうですが! でもほら、アイドル的には!? ファンのみなさんはきっと、藍子ちゃんの水着姿を望んでいますよ!」

藍子「あうぅ……」モジモジ

加蓮「迫真だねー。自分がそうだったから?」

菜々「うっさいわ!」

加蓮「まあ、菜々の場合はネタになったし面白かったし」

菜々「ネタって言うなやー!」

加蓮「なんでもかんでも水着になればいいって訳じゃないよ。藍子はさー…………だって、ほら」

加蓮「水着になって何を見せるのよ」

藍子「」グサッ

菜々「ああっ藍子ちゃんが"く"の字に! 加蓮ちゃん!? いくら加蓮ちゃんでも言っていいことと悪いことが!」

加蓮「菜々って確か、私より小さいのに私より胸あったよね」

藍子「」グサッグサッ

菜々「藍子ちゃぁぁぁん!」

加蓮「自分は水着になっても見せる物があるからっていう余裕?」

菜々「違いますー! ナナはあくまで藍子ちゃんのアイドル像を思って! それにほら、ナナのところにも何通か来たんですよファンレター」

加蓮「ああ、ダンボールにぎっしりでトラックが3台必要になったアレ」

菜々「……通行人の方々、何事かと足を止めてましたよねぇ……ナナお向かいのお蕎麦屋さんに引っ越し祝いをもらっちゃいましたよ」

加蓮「美味しかったよね手打ちそば。で、ファンレターって?」

菜々「ああそうですよ、藍子ちゃんと加蓮ちゃんの水着はまだか! 脱がせろ! って」

加蓮「うわぉ」

菜々「なのにこの企画! 水着を着てシャツを着用して流れで脱ぐ? 脱ぐなら最初から脱げばいいじゃないですかナナみたいに!」

加蓮「最初の撮影が始まるまで何時間かかったんだっけ?」

菜々「………………」

加蓮「んー?」

菜々「3時間」

加蓮「でしょー? Pさんが困り果ててたって聞いたよ」

菜々「それは悪いことをしましたが……だがしかし、ナナは例え30時間かかっても諦めませんよ……!」

加蓮「すごいね。30時間かかって道連れを作ろうとしている人なんて初めて見たよ」

藍子「…………」ヨロヨロ

加蓮「あ、復活した」

藍子「は、はい、大丈夫です……その、でも、加蓮ちゃんの言う通りで……」

藍子「私が水着になっても、あの、見せる物がないと言いますか……あはは…………あははは………………」

菜々「……」

加蓮「なんかゴメン」

菜々「ま、まあ、そこはほら、恥じらいとか、弾ける笑顔とか! ファンが見たい物ならなんでもありますよ!」

藍子「うぅ…………わかってますっ、わかってますけどっ」

菜々「けど?」

藍子「…………うぅ」

加蓮「ま、本人もここまで嫌がってるんだしさ。それに、夏だからって見せれる物は水着だけじゃないでしょ」

加蓮「夏だからノースリーブ、夏だから麦わら帽子。そういうのもアリだと思うけどな」

菜々「…………前に全力で嫌がってるナナに押し付けまくりでしたよね、加蓮ちゃん」

加蓮「(・ω<)」

菜々「オラァ!」ガシッ

加蓮「だ、だって、ね? 菜々ってなんかこうネタで済ませられそうで」

菜々「だからネタって言うなや!」ユッサユッサ

加蓮「やめてやめて頭が揺れる」グラグラ

加蓮「……ゴホンっ。そう言わないでよ。私は、それだけ菜々のことを信用してるってことだよ」

菜々「加蓮ちゃん……?」

加蓮「ネタで済ませられるっていうのは、後腐れがないってこと。ほら、私、あんまりいい性格じゃないけど、でもグダグダネチネチするのは好きじゃないからさ」

加蓮「それに、陰口とか大っ嫌いだし。愚痴もそんなに好きじゃないけど、でも菜々が相手なら、なんだって言える」

加蓮「そういう関係って、大切だと思わない?」

加蓮「……私は、菜々とそんな関係でいたいな?」

菜々「加蓮ちゃん……!」

藍子「…………加蓮ちゃん、前に、どれくらいやったら菜々さんから着信拒否されるだろうってお話をしていました。すっごく楽しそうに」

加蓮「」

藍子「一応、私が止めましたけど……」

菜々「加蓮ちゃん」

加蓮「…………」メソラシ

菜々「加蓮ちゃん」

加蓮「……………………」

加蓮「よし菜々。どうやって藍子をひん剥くか作戦会議しよう」

藍子「!?」

加蓮「裏切り者に慈悲はなし」

藍子「あ、あわわ…………ごめんなさい~~~~っ!」ダッ

加蓮「あっコラ逃げるな!」バッ!

加蓮「ああそうだ菜々」クルッ

加蓮「私、"冗談"は好きだけど"嘘"は大っ嫌いだから!」

菜々「え?」

加蓮「コラ待て藍子~~~っ!」

<ごめんなさい~~~! 水着だけは、水着だけは勘弁してください~~~!
<許さんっ! ひん剥くまで今日は追いかけ続けるわよ!
<ひゃああああああ~~~~!(ドタドタ)
<待てえええええええ~~~~~!(ドタド……)
<……あ、あれ?
<ぜぇ、ぜぇ、ご、ごめん、ぎぶ
<ええ!?

菜々「……ああもう、あの2人は!」




藍子「た、ただいま戻りました…………」アハハ

加蓮「」グッタリ

菜々「お帰りなさいませお嬢様っ! おおっとついメイドの癖が」

菜々「……で、そこで伸びているのはどうしたんですかね」

藍子「それが加蓮ちゃん、途中で体力切れになっちゃったみたいで……」

藍子「ここまで運ぶの、ちょっぴり大変でした……よいしょ」(ソファに寝かす)

加蓮「」グッタリ

菜々「……まあクーラーの効いた部屋から暑い外に飛び出て、なりふり構わず走ったらそうなりますよねぇ」

菜々「ナナ、何か飲み物を持ってきますね」スタッ

藍子「あっ、お願いします!」

藍子「……あの、加蓮ちゃん、大丈夫ですか?」

加蓮「……いきてるー」

藍子「ほっ……」

藍子「……さっきはごめんなさい。加蓮ちゃんにとっては、内緒のお話だったんですよね」

加蓮「別にいいよ……」

藍子「…………」

加蓮「…………」

藍子「……あの、私」

藍子「やっぱり、水着の撮影、ちゃんと受けた方がいいんでしょうか。今からでも、Pさんにお話した方が……?」

加蓮「…………」

藍子「…………」


加蓮「……私は別にいいけど……そんなカチコチな笑顔で、何を撮ってもらうの?」

加蓮「藍子だって、カメラ向けられて固まってる子を撮っても、面白くないでしょ?」

藍子「あっ……」

加蓮「その辺も考慮して、流れでって決めたんじゃないのかな、Pさんは…………あぁ、暑い」

藍子「……クーラーの温度、下げてきますね?」

加蓮「それより扇風機持ってきてぇ」

藍子「はいっ」パタパタ

菜々「グッドアイディアを思いつきましたよ!」

加蓮「あ゛ー?」(ソファの上にて扇風機に当てられている)

藍子「わっ」(加蓮の隣に座っている)

菜々「ええグッドアイディアですとも! これなら加蓮ちゃんも納得してくれるハズです! そして藍子ちゃんも!」

加蓮「ずい分と強きだねー……ん、よいしょ」オキアガリ

加蓮「うん、大丈夫だよ、藍子。で、アイディアって?」

菜々「それは――」

藍子「それは?」

菜々「プールへ行きましょう!」

加蓮「…………はい?」

藍子「プール……ですか?」

菜々「よく考えてみれば、いきなりぶっつけ本番なんて藍子ちゃんにはハードルが高すぎるんです!」

菜々「未央ちゃん曰く、前にプールに行った時もずっと上を羽織っていたらしいですし」

藍子「あ、あれは……Pさんとお話していたり、お昼ごはんを食べていたりしたら、いつの間にか帰る時間になっていてっ」

菜々「お、おおう。それはそれで恐いですよ」

加蓮「ゆるふわオーラ恐るべし」

菜々「それはともかく! つまり藍子ちゃんは人前で水着になったことがほとんどないってことです!」

藍子「うーん……言われてみれば、そうかもしれません」

加蓮「未央や茜ちゃんが相手なら、のらりくらりとかわせそうだよね」

藍子「そ、そんなことありませんよ? ………………たぶん」

菜々「ナナの時も、誘っても忙しいからって断られましたし」

加蓮「ごめん、あれは撮影の日に先約が入ってたんだ」

菜々「おっとそうでしたか。え、加蓮ちゃんがなぜそれを?」

加蓮「だってその日、藍子は私と遊園地に行ってたもん」

菜々「…………」ジトー

藍子「ま、前々からの約束だったので……あうぅ、許して~」

菜々「まあいいでしょう」ゴホン

菜々「とにかくプールです! みんなで騒いで遊べば、藍子ちゃんだって照れずに済むハズ!」

加蓮「……ま、言ってることは間違えてなさそうだね。それでいつ行くの?」

菜々「え? 今からですけど」

加蓮「…………はぁ?」

菜々「だって藍子ちゃんの撮影って、もう数日後でしたよね?」

藍子「3日後です。明日までなら、修正もまだ効くって、Pさんは言っていました」

菜々「じゃあもう今日行くしかないでしょ! 加蓮ちゃんも藍子ちゃんも、この後は暇ですよね?」

加蓮「まあ、暇だけど……」

藍子「午前中に営業が終わっちゃったから、ゆっくりしていたんですよね」

菜々「なら善は急げ! 光陰矢のごとし! 思い立ったが吉日、ですよ!」

加蓮「ウサミン星なのに地球のことわざに詳しいね……」

菜々「ぬぐっ……べ、勉強しましたからね、地球の文明」

菜々「さあさあ早速、着替えを用意して出発です!」グイグイ

藍子「わ、わっ」

加蓮「ちょ、引っ張らないでっ」




――わりと広めの屋内プール――

菜々「……………………」(例のスク水)

加蓮「……………………」(私服っぽい地味な水着)

藍子「……………………」(今回の[放課後サマー]のアレ)


藍子「……これじゃ私バカみたいじゃないですかぁぁぁぁ!」

菜々「いや、意外とこれ気に入っちゃって」

藍子「こ、こんなんじゃ私が目立ちたがりみたいで……! 加蓮ちゃんっ、どうして今日に限ってそんな大人しい水着なんですか!?」

加蓮「だって私の水着姿をお披露目する必要ないじゃん」グタァ

藍子「……そもそも、それ水着なんですか?」

加蓮「ん? 水着だよ。パッと見はボーダーシャツに膝上デニムだけど、これ濡れてもへっちゃらなヤツだもん」グタァ

藍子「うぅぅぅぅぅぅぅ~~~!」

菜々「まあまあ行きましょうっ! ほら、あっちの流れるプールとか面白そうですよ!」グイグイ

藍子「ひゃあっ。まま、待って菜々さん、まだ心の準備が……っ!」

加蓮「あー……私、その辺でちゃぷちゃぷしてていい? 外が思ったより暑くてさぁ……ってかどっかで休みたぃ」グタァ

菜々「むむ。……あ! 加蓮ちゃん、あっちで浮き輪をレンタルしているみたいですから、借りてきたらどうでしょうか! 浮くだけなら体力も使いませんし!」

加蓮「え? そんなのあるんだ、ふうん……ちょっと行ってくるね」スタスタ

加蓮「…………」グタァ

加蓮「…………」ブンブンッ

加蓮「…………」スタスタ

菜々「???」

藍子「…………」クイクイ

菜々「なんですか藍子ちゃん?」

藍子「…………」ウルウル

菜々「うわぉ。藍子ちゃん藍子ちゃん、その目はやめて、ナナに効く」

藍子「だってぇ……」ウルウル

菜々「はーっ……まあまあ。回りにもいっぱい水着の人はいるじゃないですか! ほら、あっちの人なんて、藍子ちゃんより派手な水着ですよ。さすが都会ですねぇ」

藍子「…………」モジモジ

菜々「今日は誰もカメラを向けてきませんし、遊ぶだけでいいんですから。そうだっ、ナナとっておきのプール遊びを教えちゃいますね! 学生時代はみんなでやって盛り上がって……ハッ、い、今も学生ですが!」

藍子「…………」フルフル

菜々「……き、今日は帰りに晩ご飯を奢りますからね? いっぱい泳いだ後の焼きそばはもう最高で! ビールを飲む手も緩むってもん……って! 事務所の誰かが言ってました! ナナじゃなくて!」

藍子「…………」ウルウル

菜々「もおおおおお~~~! こういうのは加蓮ちゃんの役目なんですよ! まだ帰ってきませんかね加蓮ちゃんは!」

加蓮「ただいまーっ」

菜々「いいタイミング! 加蓮ちゃん、藍子ちゃんが今になって怖気づいているんですよどうにかしてくださ……いよ……?」

加蓮「みてみてっ。浮き輪と一緒にビーチボールも借りちゃった。こういうとこっていろいろ貸し出してるんだね。知らなかったな……。ねね、後でイルカの浮き輪、あれ借りて一緒に乗ろうよ!」

菜々「……や、あれは1人乗り用なので厳しいと言いますか……っていうか加蓮ちゃん、あの、もしかして」

加蓮「んー?」

菜々「……つかぬことをおうかがいしますがプールに来たことは」

加蓮「ちっちゃい頃に何回かだけ」

菜々「ああ、それで……」

加蓮「疲れたからもう帰りたいって思ってたけど、浮き輪とかビート板とか見たらなんだか元気が出ちゃった。それに、よく考えたらここって涼しいね!」

加蓮「でも体は熱いままだから……ほらほら、藍子。なに突っ立ってんの。早く行こうよ!」グイッ

藍子「加蓮ちゃん!? ま、待ってください私は――」

加蓮「えいっ」ドッボーン

藍子「きゃああああ!」ドッボーン

<ぴぴーっ
<こらそこ! 飛び込まないように!
<ごめんなさーい!

菜々「ああ、新しい物を見てスイッチが入ったんですか……」

菜々「…………」

菜々「あっ、待ってくださいよぉナナを置いていかないでください!」ドッボーン

<ぴぴーっ
<こらそこも! 飛び込み禁止ですよ!
<キャハっ☆
<いい歳して何がきゃはっですか! 次やったら追い出しますからね!




菜々「ナナ必殺~、のしかかり!」ガバッ

藍子「きゃっ、っと、っと……」

菜々「む、今度は沈みませんか」

藍子「ふふっ。菜々さん、その攻撃はもう慣れちゃいました! 次は私から行きますからっ」

菜々「ばっちこーい!」

藍子「ひっさつ、えっと……えっと……と、とりあえず、えいっ」パシャッ

菜々「わぷ。やりますね藍子ちゃん!」

加蓮「…………」グテー(力尽きて浮き輪に身を預けている)

菜々「ならこっちは……水鉄砲ーっ!」ピュッ

藍子「わぁっ! 水鉄砲、ちっちゃい頃に何度かやってみて、でもぜんぜんうまくできなかったんです」

菜々「ほうほう。どういう風にやってました?」

藍子「えっと、手を……こう、だったかな? それから、こうっ。……あはっ、やっぱりうまくいきません」

菜々「ふふふ……」

藍子「菜々さん?」

菜々「いち、にの……さんっ!」ピュッ

藍子「!」

加蓮「あぅ」ペチャッ

藍子「すごい……! 菜々さん菜々さん、今のどうやったんですか!?」

菜々「簡単なコツですよ。ここの指に力を入れたら、ほら、水がこぼれ落ちなくなって、そうしたらうまく飛んでいくんです!」

藍子「えっと、ここの指に力を入れて……えいっ」ピュッ

加蓮「んぺ」ペチャッ

藍子「できました!」

菜々「さすが藍子ちゃんです!」

藍子「長年の疑問が1つ解けちゃいましたっ。えいっ、えいっ♪」

加蓮「あぷ、くぇ」ペチャッペチャッ

菜々「よし、ナナも負けませんよ!」

加蓮「――さて、そろそろ人を的にしてくれた言い訳をしてみよっか」

菜々「あ」

藍子「あ」

加蓮「…………」

菜々「…………」ガクガク

藍子「…………」ブルブル

加蓮「……冗談だって。もう。藍子、ほら、浮き輪を貸してあげる。ぷかーって浮いてみてよ、ぷかーって。気持ちいいよ?」

藍子「え、あ……はいっ。じゃあ、お借りちゃいます。よいしょ……」プカー

藍子「…………」プカー

藍子「ホントだ、これすっごく気持ちいいっ!」

加蓮「でしょー。さてその間に私は菜々から」

菜々「な、ナナから?」ガクガクブルブル

加蓮「…………」ズイ

菜々「あわわわわわ」


加蓮「…………さっきのってさ、どうやったの? ほら、水鉄砲。私も……その、ちっちゃい頃からできなくて……」


菜々「わ? ……ああ、そういうことでしたか! それはですね、こーやって」

加蓮「こうやって」

菜々「こうです!」ピュッ

藍子「わ」ペチャッ

加蓮「こう!」ピュッ

藍子「きゃ」ペチャッ

加蓮「……できた!」

菜々「加蓮ちゃんもスッキリできましたか? いいですよね長いこと不思議だったことが解明されるのは!」

菜々「……でも人生には逆に、知りたくなかったことだっていっぱいあるんですよねぇ……」トオイメ

加蓮「ふふっ、人生の先輩からの助言?」

菜々「ハッ! ま、まあ、加蓮ちゃんより1年長く生きてますからね、1年!」

加蓮「1年、ね」ニヤリ

菜々「1年です!」

藍子「えいっ」ピュッピュッ

加蓮「ぃ」ペチャ

菜々「ぉわ」ペチャ

藍子「…………ううんっ。仕返しなら、これくらいーっ!」ザバッ

加蓮「わぶぶぶ!?」

菜々「おおっと!?」

藍子「む~、菜々さんに避けられてしまいましたっ」

菜々「あ、藍子ちゃんがかつてないほど獰猛な目を……!? 加蓮ちゃん逃げましょう! 藍子ちゃんが覚醒する前に!」

加蓮「あ~い~こ~? いい度胸だね~……その気なら、私も手を考えてるよ~?」

藍子「のぞむところですっ」

菜々「ああ、なんかまた変なスイッチ入ってる」

菜々「それならナナは藍子ちゃん側につきましょうか!」

加蓮「んなっ。ウサレン同盟はどうしたのよ!」

菜々「不平等条約は差し止めです! いきますよーっ!」ザバァ

加蓮「やったなっ、このっ」ザバァ

藍子「あ、ずるいっ。私も、えいっ!」ザバァ




――しばらく経過してからのプールサイド――

藍子「ふうっ……クタクタですっ」

加蓮「結局、落ち着いてからは菜々に泳ぎ方を教えてもらっちゃったね」

菜々「ぜーっ、ぜーっ、も、もう手本は見せられませんからね……!」

加蓮「菜々までグッタリしちゃってる」

藍子「でも、すっごく楽しかったです……あはっ、加蓮ちゃんが迷子センターにいるって放送を聞いた時のこと、思い出しちゃいましたっ」

菜々「キャハッ☆ まったく、誰なんですかねぇ『安部藍子』って」

加蓮「…………手っ取り早いって思っただけだし、迷子って訳じゃなくて、私は菜々と藍子を呼んでもらっただけだよ」

加蓮「私が休憩している間に菜々と藍子が泳ぎの練習してるの、あまりに楽しそうだったから、邪魔したくなかっただけだし」

加蓮「フラフラしてたらいつの間にかどっか行っちゃって。だから2人が悪いんだよ」

菜々「そういうことにしちゃいましょうか」

藍子「ごめんなさいっ、加蓮ちゃん。ほったらかしにしちゃって」

加蓮「いいっていいって。すごく楽しそうだったもん、藍子」

藍子「あはは……」

藍子「……最初は、水着ってすごく恥ずかしいなって思っちゃって。でも、一緒に遊んでたら、すぐに忘れちゃいました!」

菜々「そーいうもんですよ。どうですか? 水着のお仕事。受ける気になりましたかね?」

藍子「うぅ……お仕事は、やっぱり、ちょっと別っていうか……お恥ずかしいっていうか……」

訂正……
誤:水着のお仕事。受ける気になりましたかね?
正:水着のお仕事。ちゃんと水着姿を見せる気になりましたかね?




藍子「でも、撮影の時には未央ちゃんと茜ちゃんがついてきてくれますから」

藍子「今日を思い出して、勢いでやっちゃったら、きっと、大丈夫ですっ♪」

藍子「私、これでもパッショングループですから!」ムンッ

加蓮「……ふふっ、そっか」

菜々「ミッションクリア、ですね! キャハッ☆」

加蓮「あとで未央と茜ちゃんに言っておかないとね。背中をぐいっとしてやって、って」

菜々「その必要はないんじゃないですか?」チラッ

加蓮「え?」チラッ

藍子「明日、Pさんにお話して……もう1度、水着のこと考えなくちゃ。せっかくだから……未央ちゃんと茜ちゃんと、おそろいっぽくしてっ。3人でなら、きっと大丈夫だよね……?」

菜々「……ね?」

加蓮「みたいだね。余計なお世話だったか」

菜々「いえいえ、加蓮ちゃんらしい優しさですよ」

加蓮「えー、私らしいって何」

菜々「どうせそれ、藍子ちゃんに内緒でやるつもりだったんでしょ。そーいうところが加蓮ちゃんらしいってことですよ!」

加蓮「何それー、褒めてんのー? 嫌味っぽく聞こえるなー」

菜々「それは加蓮ちゃんにやましいところがあるからですね」

加蓮「私の何がやましいって?」

菜々「普段のナナへの態度を思い返してみろやァ!」

加蓮「だからそれは菜々が相手なら言いたいことを言えるって話だよ、もうっ」

菜々「とてもそうは思えませんけどね!?」

加蓮「菜々こそやましいことがあるんじゃないの? ほら、ファンのみんなに隠し事とか」

菜々「分かってて言うのやめろォ!」

加蓮「ふふっ」

藍子「はっ。あの、おふたりとも、今日は――って、ええっ。け、喧嘩しちゃだめですっ、もうっ。加蓮ちゃん!」

加蓮「え、私?」

藍子「菜々さんが怒っていたら、だいたい加蓮ちゃんのせいですっ」

加蓮「わーお私ってば信頼されてるー。で、何よ藍子。今、何か言いかけたでしょ」

藍子「あ、はいっ。あの、おふたりとも、今日はありがとうございました! そのっ……まだ、自信まんまんに、って感じにはできないけれど……」

藍子「ちょっとずつ、頑張ってみますっ。私だって、アイドルですから!」

加蓮「どーいたしまして」

菜々「こっちこそ! また来ましょうね!」




――帰り道――

藍子「~~~~♪」

菜々「……で、加蓮ちゃんは水着の撮影をしないんですか?」

加蓮「さあ。Pさんに聞いてよ」

加蓮「ってか私の水着姿こそ何の需要があるのよ。いかにも引きこもってるような真っ白いもやしがビキニ着てて面白い?」

菜々「……その自虐、いえネタなんでしょうけど、藍子ちゃんに言ったらまたモメるからやめてくださいよ?」

加蓮「え、何を揉むって? 菜々ってばセクハラだー」ニタニタ

菜々「少しは真面目な話をさせろォ!」



おしまい。クリスマスメモリーズばんざーい!



過去作品ですよ~。順番は少し前後しているかも。



<単発>

道明寺歌鈴「もしも藍子ちゃんと加蓮ちゃんが逆だったら」

モバP「Y.Oちゃん談義」相葉夕美「岡崎泰葉ちゃんだよね?」

北条加蓮「菜々ちゃん、ちょっと学校の宿題を教えてよ」

北条加蓮「マイアイドル?」

高森藍子「蓮の華と鈴の音が、小さな小さな花へと届く」

高森藍子「お酒が飲める歳になって」

道明寺歌鈴「藍色!」北条加蓮「思い出達」相葉夕美「お花っ」


<単発:続き物>

安部菜々「いつか来る試練……!」


<イメージソングシリーズ>

北条加蓮「一番の宝物」


<カフェテラスシリーズ>

北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」

高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」

高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」

北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

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