男「新生活を始めるのでいい物件を教えてください」(67)

2月某日 不動産店

男「―――以下の条件でいい感じの物件あります?」

店員「そうですね……。これなんてどうですか?」

男「どれですか?」

店員「7階建てマンションの最上階。2ldk。駅から徒歩3分。家賃、管理費、共益費、修繕費、その他諸々込み込みで月3万5000円です」

男「安いですね……」

店員「はい。じゃあ、ここでご契約ということでよろしいですか?」

男「いや、安過ぎて怪しいんですけど……」

店員「曰く付物件ですからね。じゃあ、ここにご氏名と印鑑を」

男「あの、そのマンション見せてください。部屋とか場所を直に見たいですし」

店員「ちっ」

男(感じ悪いなぁ)

マンション前

店員「ここです」

男「割と綺麗ですね」

店員「半年前に改装しましたので」

男「へー」

男(周りも閑静だし、すごくいいところだ)

店員「では、7階に行きましょう」

男「はい」

店員「……」スタスタ

男「あの自殺があったとかで安いんですか?」

店員「いいえ。人が亡くなった事例はありません」

男「そうなんですか」

男(じゃあ、なんだ……?)

部屋

店員「どうぞ」

男「広いですねー」

店員「はい。リフォームも行ったばかりです」

男「築年数は?」

店員「5年です」

男「新しいじゃないですか」

店員「オススメです。さ、ご契約を」スッ

男「壁が薄いとか?」トントン

店員「防音は完璧です」

男「……」

店員「拇印でもいいですよ?」

男「なんで安いんですか?」

店員「……」

男「こっちには知る権利があります。教えてください」

店員「ここ最上階にはここを含め4部屋あります」

男「はい」

店員「簡単に言えば他のご契約様に問題があるわけです」

男「部屋の値段を下げるほどですか?」

店員「はい。この部屋には過去に5人ほど住んでおられましたが、全員1年を待たずお引越しされました」

男(近隣住人に問題があるのか……)

店員「でもオススメですから、ご契約を」

男「鍵を貸してもらえますか?」

店員「何するんですか?やめてください」

男「夜にもう一度来てみますから」

店員「そんなことしないで契約して」

男「お願いします。どんな人が住んでいるか知りたいんです」

店員「ちっ」

男(やっぱり感じ悪いなぁ)

夜 マンション

男「……」ガチャ

男(夜でも静かだな……)

男(暴走族が走ってるわけでもないみたいだし……)

男(どんな住人がいるんだろう?)

男(すごくうるさいとかか?)

男「……」

男(何もないなぁ……)


―――数時間後

男「……」

男(もう日付が変わった)

男(1日だけじゃ分からないか)

男(明日も来てみよう)

数日後 不動産店

店員「契約してくれるんですか!?」

男「ええ。そこまで問題があるようには思えなかったので」

店員「ああああ、ありがとうございます!!!」

男「……」

男(不安になってきた)

店員「では、ここにご記入を!!!」スッ

男「はい……」カキカキ

店員「……」ニコニコ

男「―――はい、書けました」

店員「ありがとうございます。これでご契約は完了です」

男(割と簡単だったな)

店員「……」ニヤニヤ

3月某日 マンション

業者「じゃあ、失礼します」

男「ありがとうございました」

男「さてと、荷物の整理するか」

男「えっと」ガサガサ

ピンポーン

男「え?」

男「お隣さんか……?」

男「はーい?」ガチャ

少女「こんにちは。右隣に住んでる者です」

男「あ、ああ、はい。どうも」

少女「これから、よろしくお願いします」ペコッ

男「はい。お願いします」

少女「ちなみに私はアンドロイドなので引越し蕎麦とか食べれません」

男「……え?」

少女「なにか?」

男「アンドロイド?」

少女「そうです。アンドロイドです」

男「どう見ても人間にしか……」

少女「すごいと思いませんか?このテクノロジー。博士は天才なのです」エッヘン

男「……そう」

少女「あ、はかせー!こっちこっち」

男「ん?」

博士「どうした?」スタスタ

男「こんにちは」

博士「おお。新しい人か。よろしく。この子の生みの親です」

男「あの、アンドロイドとか言ってますけど」

博士「そうですよ?この子は我がスーパーテクノロジーが生んだ最高傑作です」

男「……」

男(なるほど。これは上手く付き合わないと頭がおかしくなるかもしれない)

少女「それでは」

博士「困ったことがあればいつでも言ってください」

男「分かりました」

博士「さ、帰ろう」

少女「はーい」

男「……」

バタン

男(でも、無視していればなんとかなるよな。あれぐらいなら)

男「さ、荷物を片付けないと」

ピンポーン

男「……?」

ピンポピピピピンポーン!!!

男「なんだ……?」

男「……はい?」ガチャ

おっさん「ヘロー。ニューフェイスが来るって聞いて飛んできたぜ!!」

男「はぁ……」

おっさん「ユーの左隣に住んでいる地上最強のヒーロー、沙羅・リーマンだ。よろしく」

男「……はい」

おっさん「もし悪の怪人に教われるようなことがあったら、いつでもミーを訊ねてくれ。24時間いつでもレスキューするぜ」

男「はい。あの、忙しいのでそろそろ……」

おっさん「おっと、それはソーリー。では、またな、ブラザー!」ニカッ

男「はい……」

バタン

男「はぁ……」

男「無視したらいける……。大丈夫だ」

男「……あと一部屋あるんだよな」

男「どんな人が住んでるんだ……?」

男「怖いな……」

男「でも部屋の割りには格安だし、大丈夫だろ……きっと……」



男「ふー。こんなもんかな」

男「……もうこんな時間か。明日には市役所とか警察署に行かなきゃな」

ピンポーン

男「……」

ピンポピピピポーン!!

男「はい?」ガチャ

おっさん「ヘロー、ブラザー!!」

男「なんですか?」

おっさん「引越し祝いをしようと思って、ベリーナイスな酒を用意したぜ」

男「いや、結構です。明日、用事があるんで」

おっさん「そんなこといわずに。この辺りを支配している悪の組織についても説明しなきゃいけないからよ」

男「あの、本当にいいですから」

おっさん「あ、おい!こら!!まて―――」

バタン!!

翌日

男「―――手続きは一通り終わったな。さてと、あとは周辺を探索してみようかな」

女「……」フラフラ

男(目があったけど、無視無視)

女「あの……」

男「……」スタスタ

女「無視しないで……」ガシッ

男「な、なんですか!?」

女「貴方、あのマンションに引っ越してきたかたですよね?」

男「はい。そうですけど?」

女「私、同じ階に住んでいる者で魔女です」

男「魔女?」

女「はい。主に黒魔術を―――」

男「さよなら」

女「まって。ホントだから」ガシッ

男「いや、そういうことは公言しないほうがいいですよ?」

女「いいんですか?呪いますよ?」ユラーッ

男「勝手にしてください」

女「はんひゃらひひゃらにゃ……はー!!」

男「……」

女「貴方は今から5秒後に転ぶ」

男「……」スタスタ

女「ふふふ……」

男「……」スタスタ

女「……」

男「……」スタスタ

女「ま、まさか!!貴方は魔を弾く能力を……!?ひぃ?!私の天敵ぃ!!」

男(この人が一番危ないな……)

女「なんまいだぶなんまいだぶ。我が神、金剛菩薩よ。私の身を守りたまえ~」

男「……」

男(早く立ち去らないと)スタスタ

女「……おお!!我が主、イシュタルが守護してくれたのですねー!!」

男「……」スタスタ

男(あんな人たちに囲まれてたら、確かに1年が限界かもしれないな)

男(無視しても近づいてくるような輩が一番厄介だし)

男(どうしよう……)

男「まぁ、曰く付きって分かってて契約したんだし、いけるところまで行くか」

男「……」チラッ

女「モーゼよ!私に正しい道を切り開きたまえー!!」

男「……」

男(完全に頭がおかしい人だな……)

夜 マンション

男(結構、駅前が栄えてていいな)

男(立地条件だけみれば、最高なんだけどな)

少女「ウィーン、ガシャン。ウィーン、ガシャン」

男「……」

少女「ア、コンニチハ」

男「こんばんは」

少女「ドウデスカ?シンジュウキョ ニ ハ ナレマシタカ?」

男「うん」

少女「ソレハ ヨカッタ デス。ウィーン、ガシャン。ウィーン、ガシャン」

男「……」

博士「すいません」

男「え?」

博士「今、ちょっとメンテナンス中でosを変えたんですよ。びっくりしましたか?」

男「いえ……別に」

部屋

男「やばいなー……。引越し考えるか……?」

ピンポピピピポーン!!

男「?!」ビクッ

男「はい?」ガチャ

おっさん「ヘロー、ブラザー!!元気してたか?!」

男「なんですか?」

おっさん「いやな、ニューフェイスのユーにちゃんと説明だけはしておいたほうがいいと思ってな」

男「何をですか?」

おっさん「この町内には世界征服を企てている悪の組織がいる。ミーはそいつらを殲滅させるために活動しているんだ」

男「それで?」

おっさん「できるだけのフォローはするが、時にはユーが危険に晒されるときがあるかもしれない。気をつけろよ!!」

男「ご忠告ありがとうございます」

おっさん「あと、ここだけの話だが、ユーにもスーパーヒーローになれる素質があるぞ」

男「は?」

おっさん「ミーと一緒に世界をレスキューするか?!」

男「間に合ってます」

おっさん「えぇ!?どゆこと!?」

男「俺、そういうのは小学生で卒業したんで」

おっさん「バァカなぁ!!ユーはそんな幼少期にヒーローとしての自覚があったのかい!?」

男「もういいですか?」

おっさん「もっと詳しく教えろ!!」

男「そう言う話は隣にいる博士にでしたらどうですか!?」

おっさん「あのマッドサイエンティストか」

男「マッド……?」

おっさん「自分の娘を改造してアンドロイドにしたんだ。あいつが悪の組織なら真っ先に片付けてるというのに」

男(そういう設定なのか)

おっさん「全く、口惜しい。で、ユーがヒーローだった頃の話を―――」

男「失礼します!!」

バタン!!

翌日

男「―――よし。ネットもできるようになったし。早速やってみようかな」

男「いい物件ないかな……」カタカタ

ピンポーン

男「……」

男「居留守するか」カタカタ

ピンポーン

男「……あのおっさんじゃないみたいだな」

男「―――はい?」ガチャ

少女「どうもこんにちはー」

男「こんにちは。どうかした?」

少女「実はお話が……」

男「話?」

少女「上がってもいいですか?」

男「え、あ、うん……どうぞ」

男「はい。お茶」

少女「どうも」ズズッ

男(アンドロイドでもお茶、飲むんだな)

少女「……あの、人類が滅亡するんです」

男「……は?」

少女「驚かれるのも無理はありません。でも、本当です」

男「あの、何言ってるの?」

少女「西暦2012年4月末、世界は終焉を迎えます。そのために貴方の力が必要なのです」

男「……そうなんだ」

少女「はい。何を隠そう、私はその終焉を食い止めるために生み出されたアンドロイドなのです」

男「うん。で?」

少女「ですが、未だに男性型のアンドロイドは完成していません。このままでは人類の種が消えてしまう」

男「……」

少女「そこで貴方がアンドロイドとなり、人類の種を残しましょう。私と貴方、アダムとイヴです」

男(ダメだ……。ついていけない)

男「終焉を食い止めるって、人類の滅亡を俺と君で阻止するってこと?」

少女「はい」

男「……」

少女「ダメでしょうか?今はこのような少女の姿ですが、ご希望とあればナイスバディな体にもなれます」

男「そう……」

少女「でも、博士はできるだけ若いボディのほうが受けがいいと言っていました。貴方もそうですか?」

男「いや、別にそんな好みはないけど」

少女「そうですか。で、どうでしょうか?!今のうちに準備をしておかなくてはなりませんよ!!」

男「いや……」

少女「突然のことで困惑されるお気持ちは分かります。でも、人類が生き残るためなのです!!」

男「ちょっと考えさせて」

少女「そうですね。それがいいでしょう」

男「……」

少女「では、また日を改めます」

男(もうこないで欲しいな……)



男「なんか疲れた……」

男(正義のヒーロー、マッドサイエンティスト、アンドロイド、魔女……)

男(なんだそりゃ……)

男(そりゃ普通の人は逃げ出すよな)

コンコン

男「え……?」

コンコン

男(誰だ……?チャイムを鳴らせばいいのに……)

男「―――はい?」

女「たたり~!!」

男「……」

女「黒魔術のたたりですよ~!!」

男「今、仕事から帰ってきたんですか?」

女「はい。立ち仕事は疲れますよ~」ユラーッ

男「お疲れ様です」

女「どうも」

男「で、なんですか?」

女「貴方は魔を弾く力があるようなので、こうやって毎日呪っておこうかと」

男「なんでですか?」

女「もし、貴方が敵になったとき、私が困るので」

男「……」

女「のろわれろ~のろわれろ~」ユラーッ

男(こわっ……)

女「ほ~ら、だんだん気持ちよくなってきたでしょ~」

男「別に」

女「そ、そんなぁ!?」

男「もう早く休んだほうがいいですよ?」

女「今日のところは諦めますが、また来ますからね~、ひっひっひ~」

男「おやすみなさい」

翌日

男「今日は少し都市部まで出てみるか~」

ピンポーン

男「……?」

ピンポーン

男「―――なに?」

少女「どうも」

男「おはよう。どうかした?」

少女「昨日のお返事を」

男「これから出かけるから、また今度ね」

少女「そうなんですか?どこまで?」

男「ちょっと電車に乗って都市部を歩こうかなって」

少女「じゃあ、私もご一緒していいですか?!」

男「なんで?!」

少女「ちょうど買いたい物もありましたので!!」

ショッピングモール

男「……」スタスタ

少女「こっちです!こっちー!!」

男「なに?」

少女「この電池、かわいくないですかー?」

男「……」

少女「この白い肌、肌触り、フォルム……どれをとってもエネループは最高の電池ですね」

男「エコだしな」

少女「これ買ってきます!少し待っててください!!」

男(アンドロイドって電池が好きなのか)

男「はぁ……普通の女の子なら嬉しかったけどなぁ……」

男「……」

男(自分がアンドロイドっていう設定でいつも過ごしてるのか?)

男(それとも本当にそう思いこんでいるのか……)

男(普通、あんな電波な住人ばっかりが集まるか……?もしかしたら入居者をいじめてるだけとか?)

男「……」

少女「買ってきましたー」テテテッ

男「おかえり」

少女「この子の名前はシロちゃんにします」

男「あ、そう」

少女「シロちゃーん」ナデナデ

男(電池を撫でる子、初めて見たな……)

少女「かわいいかわいい」

男「ねえ、こんなこと言ったら失礼かもしれないけど」

少女「なんでしょうか?」

男「俺に出て行って欲しいの?」

少女「は?」

男「みんなして俺に変な話をして、暗にここに住むなって言ってるようにも思えるんだけど」

少女「そんなことありません!!貴方がいなければ人類がバーン!!です!!」

男「でも、君は人間だよね?」

少女「とんでもない!!正真正銘のアンドロイドです!!」

男「じゃあ、証明できる?」

少女「証明?」

男「君がアンドロイドだっていう証明。皮膚を剥がせば機械の体とかなんだろ?」

少女「な、なんて恐ろしいことを?!あなた、鬼ですか!?」

男「だって、信じられないからさ」

少女「早く決断してください!!でないと本当に地球は滅んでしまいます!!」

男(真性か……。どうしよう……)

少女「どうしたら信じてくれるんですか?」

男「ロケットパンチとかしてくれたら」

少女「日本の約5割が消し飛びますよ?」

男「……」

少女「それでもいいなら使いますが」

男「使ってみて」

少女「……ダメです。博士からの承認が必要で使用は不可でした」

夕方 自室

男「さてと、自炊でもしてみようかな」

ピンポピピピポーン!!

男「……無視無視」

ピンポピピピポーン!!ピンポピピピポーン!!ピンポピピピポーン!!

男「―――なんですか?!」

おっさん「ヘロー、ブラザー!!素敵なライフをエンジョイしてるか!!」ニカッ

男「まぁ、それなりに……」

おっさん「悪の組織に襲われたりはしなかったか?アハーン?」

男「ええ。これから夕食なんでもういいですか?」

おっさん「そいつはいい考えだ!!どれ、ミーに任せてもらおうか」

男「ちょっと!?」

おっさん「同じ正義の味方同士だ、遠慮はいらんだろ?」ニカッ

男「迷惑ですから!!」

おっさん「ディナーを共に食せば、そのような壁も打ち消せる。ミーとユーの仲をもっと親密にしようぜ!」ニカッ

おっさん「ベストなキッチンだ。好感が持てる」

男「帰ってもらえますか?」

おっさん「まぁまぁ。ちょっと、まて……。これがユーの冷蔵庫か」ガチャ

男「あの……」

おっさん「これだけの材料ではフランス料理のフルコースしか作れないな。オッケーかい?」

男「は?そんな材料でフランス料理なんて……」

おっさん「ふんふーん」トントン

男「え……?」

おっさん「やぁ!!とう!!」ジュージュー

男(手際がいい……なんだ、この人……?)

おっさん「―――前菜はできた!!さぁ!食せ!!」サッ

男「は、はい……」

おっさん「どんどん、作るからな!!アッハッハッハ!!」

男「うまい……」

男(コックでもしてるのか……?)

おっさん「―――食後のデザートだ」スッ

男「……ありがとうございます」

おっさん「なんのなんの」

男「あの、料理の経験が?」

おっさん「地上最強のヒーローに不可能はないのさ!」ニカッ

男「なるほど……」

おっさん「まぁ、ディナーならミーに任せろ!!」

男「悪の組織の殲滅は?」

おっさん「それも俺の仕事だ」

男「そうですか」

おっさん「明日用にも作っておいたから、オーブンレンジでチンしてくれ」

男「ど、どうも」

おっさん「じゃ、悪の組織が現れたら大声でミーを呼べ。いいな!!」

男「わ、わかりました」

男(何なんだよ……この人たち……)



男「結構作ってくれたんだな」

男「食いきれないぞ」

男(それにしても、あのアンドロイドにしてもヒーローにしても、やっぱり単なる嫌がらせ……?)

男(いや、単なる嫌がらせなら鍵穴にボンドを流し込むとか、汚物をまくとかするだろうな)

男(かといって、真性でこれだけの料理ができるのも不思議だな……)

男「うーん……」

コンコン

男「……はい?」ガチャ

女「えいやー!えいやー!!のろわれろー!!」ブンブン

男「お疲れ様です」

女「はい」

男(この人はどうなんだろう……?)

男「あの、ちょっとお話があるんですけど」

女「え?!なに!?デーモンの召喚!?」

男「お仕事はなにを?立ち仕事っていってましたけど」

女「看護師です」

男(割と普通だな……)

女「それが何か?はっ!?私の素性を調べ上げて、呪い殺す気ですね!?ひぃ!!こわいこわい!!」

男「違います。休日はなにをしてるんですか?」

女「え?もちろん黒魔術の技術向上のために修行をしていますが?」

男「部屋でですか?」

女「色々です。部屋でもやるし公園でも」

男「ふーん」

女「ふっ。今は呪詛防壁を展開中ですから、どのような魔術も私には通じません。残念でしたね」

男「ご飯はまだですが?」

女「これから食べます」

男「これ、よろしかったら。量が多くて食べられないんです」

女「その手には乗らない!!これには魔力を奪う薬が盛られている!!」

男(やっぱり付き合うの面倒だな……。話を合わせばつけ上がりそうだし)

男「じゃあ、もういいです。ありがとうございました」

女「……」ガシッ

男「……」

女「……今、調べたら、盛られてはいなかった。貰います」

男「どうぞ」

女「……さよならっ!!」ダダッ

男「おやすみなさい」

バタン

男「はぁ……やっぱり引越しを考えたほうがいいのか……?」

ピリリリ

男「ん?―――もしもし?」

友『よう!もう引越したのか?』

男「ああ。ごめん、連絡してなかったな。無事、終わったよ』

友『今度、遊びにいってもいいか?」

男「え……」

友『どうした?』

男「いや、来ないほうがいいと思って」

友『確か曰く付きなんだよな?やっぱり、幽霊とかいるのか?』

男「もっと怖いのがいる」

友『なんだよそれ?』

男「正義のヒーローと魔女とアンドロイドとマッドサイエンティストがいるっぽい」

友『はぁ?あれか?隣人がやばいのか?』

男「そう。きっと来たら巻き込まれると思う」

友『それは嫌だな……。大丈夫か?』

男「もう引越しを考えてる」

友『そうなるわな』

男「やっぱり曰く付きは失敗だった」

友『でも格安で駅近だろ?なんとかして住めないか?』

男「できれば長くいたいけどな」

友『大変そうだな。ま、がんばれよ』

4月某日 マンション

男「……」ガチャ

男「誰もいないな」

男「よし」

博士「これはこれは。ご出勤ですかな?」

男「は、はい」

少女「博士!!いってきますねー!!」

博士「いってらっしゃい」

男「……あの子はどこに?」

博士「学校ですが?」

男「アンドロイドなのに?」

博士「ほっほ、人間生活に溶け込ませ、人工知能をより完璧なものにするためですよ」

男「そうですか」

博士「それはそうと駅までご一緒しますか?私も今からでかけますので」

男「え?は、はい」

男「貴方も今から仕事ですか?」

博士「はい」

男「ご職業は?」

博士「大学で教鞭を振るっとります」

男(大学教授……?)

男「機械工学とか?」

博士「臨床心理学を少々」

男(心理学……?)

博士「なにか?」

男「あの……。貴方の娘さんって……その……」

博士「最高傑作です。ほっほっほ」

男(大学の教授がこんな変なことを言ってて勤められるわけない……。なんか理由でもあるのか……?)

博士「なにか?」

男「あの、どこの大学に?」

博士「ふふ、実は―――」

駅 ホーム

男(あの人の言っていた大学、携帯で調べてみるか……)

男(ここが大学のホームページだな)

男(あの人の名前を検索したら何か分かるか……?)ピッ

男(やっぱり教授だ……。しかも著名人っぽいな)

男(狂ってるフリをしてるのか……?)

男(俺を……新入居者を立ち退かすため……)

男(そうだとしても回りくどすぎるし)

男「……」

男(そうだ)

男「……」ピッ

店員『―――はい、なんでしょうか?』

男「もしもし?あの、聞きたいことがあるんですけど」

店員『え?やめてください』

男「俺の前にいた入居者ってどういう理由で退居したんでしょうか?」

店員『そんなのプライバシー保護のために言えませんし』

男「別にそれで個人が特定されるわけじゃないでしょう」

店員『貴方が超能力者という可能性も否定できませんし』

男「教えてください」

店員『……勿論、隣人の挙動、言動に耐え切れずです』

男「魔女とかヒーローとかアンドロイドとか妄言を言ってますね」

店員『こっちも困ってるんですよ。再三、そのような嫌がらせはやめるように言っていますが』

男「やっぱり嫌がらせなんですか?」

店員『ただ、実害は出ないんですよね……』

男「え?あれで?」

店員『退去した人もあの人たちを訴えることはありませんし。でも、住人に問題があるのは確かなので物件の値段を下げざるを得ないんですよ』

男「あの人たちには何か理由があるんですか?」

店員『そんなの分かりませんよ。ただ、皆さんきちんと仕事をしてますし、人格に問題があるとは思えないのです……』

男「……」

店員『はぁ……。あの人たちさえいなければ、あの部屋を格安にしなくて住むんですけどね……』

夜 マンション 廊下

男「つかれた……」スタスタ

男「ん?誰か扉の前にいる

女「……」コンコン

女「あれ……もしもーし……」コンコン

男「……」

女「いないのー?」コンコン

男「こんばんは」

女「ひぃぃ!?瞬間移動?!テレポーテーション?!」

男「今、帰ってきたんです」

女「ああ、そうですか」

男「また、呪いかけるんですか?」

女「当然です。ほれほれ~」ユラーッ

男「―――あの、出て行って欲しいならはっきりそういってください」

女「え?なんの話?こわい」

男「そういう嫌がらせして、俺を立ち退かそうとしてるんですよね?」

女「違うますけど」

男「じゃあ、なんでそんなことをするんですか?」

女「だから、貴方が私の敵になったら怖いからで」

男「……これ以上、何かするなら訴えますから」

女「デーモンに?」

男「法的機関にです」

女「それは貴方の世界でいう魔術協会みたいなものなの?」

男「なんでそんな演技してるんですか?」

女「なんでって……」

おっさん「おおー!!マイブラザー!!ホームに帰っていたのか!!」

男「え、ええ……」

女「はっ!?沙羅・リーマン!!」

おっさん「ほう?稀代の魔女も一緒か。これはこれは」

男「……あの、お二人ともいい加減にしてくれません?」

おっさん「なんのことだ?」

女「この新参者が演技というの。なんと言ってくれない?」

おっさん「演技?どういうこと?」

男「だって、魔術とか悪の組織とかそんなのありえないじゃないですか!!」

おっさん「笑えないジョークだな、ブラザー?同じ釜の飯を食った仲なのに、ミーのトークがビリーブできないと?」

男「当たり前でしょう。現に悪の組織には襲われてませんし、呪いだって効いてません」

女「それは貴方の対魔術が高いからで」

男「俺にそんな力はありません」

おっさん「悪の組織はミーがいつもバウトしてダウンさせているからな。ユーに危害が及ばないように」

男(なんだ……どうしてここまで徹底してるんだ……?)

女「のろわれろ~」

男「やめてください!」

おっさん「わかった。わかった。落ち着けよ、ブラザー。ここは腹を割って話すか」

男「は?」

おっさん「ミーの家にくるんだ。そこでゆっくり話そう」

おっさんの部屋

おっさん「ようこそ!!我が秘密基地へ!!!」

男(割と普通の独身宅って感じだけど……)

おっさん「酒はなにがいい?なんでもあるぜ?」

男「俺、あんまり飲めないんで」

おっさん「そうか。じゃあ、ミーだけが飲む!!アッハッハッハ」

男「悪の組織の殲滅以外に貴方は何をしているんですか?」

おっさん「世を忍ぶために今はとある小さな企業でサラリーマンをしている」ニカッ

男「そうですか」

おっさん「それがどうかしたか?」

男「……ヒーローの秘密基地にしては殺風景ですね」

おっさん「客を呼ぶときは普通の住居スペースへ案内するに決まってるだろ?」

男「そうですか……」

おっさん「ところで、もう逃げ出す算段でも立てているか?ブラザー?」

男「え?」

おっさん「大体の奴はワンマンスでそういう考えに至るからなぁ」

男「そりゃ、当然でしょう」

おっさん「パワーとスタミナが不足してるな」

男「聞かせてください。貴方はどこで悪の組織と戦ってるんですか?」

おっさん「その辺だ」

男「……じゃあ、俺が悪の組織の一員だとしたらどうするんですか?」

おっさん「燃える展開だな!ブラザーはエネミーだったなんて!!アッハッハッハ」

男「もう迷惑です。俺に構わないでくださいよ」

おっさん「迷惑?」

男「こんな嫌がらせして、なにになるんですか!!」

おっさん「オーライ。わかった」

男「え?」

おっさん「ブラザーの安眠や平穏を妨げるのはヒーローの流儀に反するからな。これ以上、ユーには関わらない」

男「……本当ですか?」

おっさん「ああ。約束する。魔女とマッドサイエンティストにもその旨は伝えておくし、ミーがちゃんと管理する。ドゥーユーアンダスタン?」

翌日

男(昨日、あの人はああいってたけど……本当なのか……?)

男「……」ガチャ

少女「はかせー!!いってきまーす!!」

博士「ああ、いってらっしゃい」

男「……」

博士「ああ、おはようございます」ペコッ

男「おはようございます」

博士「……」スタスタ

男「……」

女「……」フラフラ

男「おぉ!?」

女「おはようございます……」フラフラ

男「お、おはようございます……」

男(本当だ……。よかった。なんだ、言えば分かってくれるんじゃないか)

5月某日 自室

友「おーっす」

男「上がってくれ」

友「へえ、こんないい部屋が込みこみで3万ちょいなのか?信じられないな」

男「今、飲み物だすよ」

友「サンキュー。で、隣人問題は本当に改善したのか?」

男「ああ。ちゃんと言ったら分かってくれた。もう挨拶する程度だ」

友「よかったじゃん」

男「うん」

友「でも、それなら今までの人は文句の一つも言わなかったってことか?」

男「そうじゃないかな?」

友「もったいねえ。こんな立地条件完璧で格安のマンションの一室なんてそうそうないぞ」

男「やっぱり頭がおかしいと思って無視を決め込んでたんだと思う」

友「なるほどな。まあ、俺も直接話そうなんて思わないかも。お前の根性勝ちだな」

男「そうかな」

6月某日 夜 マンション 廊下

男「疲れた……」

おっさん「……」

男「……あ、どうも」

おっさん「よっ」

男「……?」

おっさん「じゃあな」

男「何してたんですか?」

おっさん「ん?気にするな。ブラザーに実害はない」

男「そうですか」

おっさん「そろそろ部屋に戻るか。おやすみ」

男「おやすみなさい」

男(何してたんだろう……?)

男「どうでもいいか」

数日後

男「……」ガチャ

少女「はかせー!!いってきまーす!!」

博士「気をつけてな」

少女「はぁーい!!」

男「……おはようございます」

博士「おはようございます」

男(いい加減、博士って呼ばせるのやめたらいいのに)

博士「なにか?」

男「いえ。なんでも」

博士「そうですか」

男「……」

男(なんかこだわりでもあるのかな……?)

数日後 マンション

男(久々に周辺の散策してみるか)

女「……」ユラーッ

男「おでかけですか?」

女「レレレのレ?」

男「いや、普通に聞いたんですけど」

女「これから魔術のトレーニングに行きます」

男「そのキャラもうやめたらどうですか?」

女「キャラ?いいえ。私の日課ですから」

男「日課って……」

女「それでは」

男「あ……ちょっと」

女「……」フラフラ

男「……」

男(やっぱり頭がおかしいのか……?)

公園

男「こんなところに大きい公園があったんだ……」

男「……あ」

女「はんにゃらひー、ふんにゃらへー」ユラユラ

男(なんかしてる……)

女「きえー!!!!」

男「……」

女「ふぅ……今日はこの辺にしておきましょう」

男(俺を追い出すための演技じゃなかったのか……?)

女「はぁ……」

男「……あの」

女「あん?」

男「黒魔術の特訓ですか?」

女「見たら分かるでしょ?」

男「そ、そうですね」

男「黒魔術なんて迷信みたいなものじゃないんですか?」

女「ふっ。そう思うのは浅はかな人間である証拠よ」

男「……」

女「いつかかならず、何年かかっても私は黒魔術を習得してみせる……」グッ

男(意味わかんねえ)

女「意味なんてない」

男「え?!」

女「来るべき日のために準備をしているだけなの」

男「来るべき日……?」

女「予言にはこうあるわ。日明ける刻、世界は闇に染まり、絶望と混沌が支配すると」

男「はぁ……?」

女「それを阻止できるのは選ばれた者たちだけ」

男「……」

女「私は選ばれた。だから、こうして習得に励んでいる。それ以上の意味なんてないの」

男(何言ってんだ……?)

マンション

男「なんか疲れた。やっぱり関わらないほうがいいな」

おっさん「よう。ブラザー」

男「どうも。今から出かけるんですか?」

おっさん「悪の組織が跋扈しているからな!!」

男「そうですか」

おっさん「まぁ、ユーの安全はミーがガードする。まかせとけ」

男「……」

おっさん「アーッハッハッハ!!!」

男(見てるだけで頭が痛い……)

少女「はかせー、はやくー」

博士「はいはい」

少女「今日はどこで性能実験するのー?」

博士「そうだなぁ」

男(やっぱり引っ越そうかな……。いや、知らないふりをしとけばいい。こんな物件ほかにはないんだし)

八月某日 自室

男「休みもらってもやることないなぁ……」

テレビ『では、今日のお天気です。今日も雨の心配は終日ありません』

男「はぁ……」

男(あれから、何度もあの人たちが変なことをしているところを見かけたなぁ)

男(新入居者をいびる目的でしていることじゃなさそうだった)

男(じゃあ……なんのために……?)

男(まさか本当に……世界征服を目論む組織とか人類が滅亡するのか……?)

男「……」

男「ないない。―――暇だし、でかけよう」

男「……」ガチャ

女「あ」

男「どうも」

女「今日は最悪の天気だから、傘がいりますよ?」ユラーッ

男「え?いや……そんなわけ……」



ザァァァ……

男「……」

「もうさいあくー」

「天気予報はずれてんじゃん!!」

男(あの人の言ったとおりだ)

男(これって……)

男「いやいや……そんなのあり得ないだろ」

男「でも……」

ザァァ……

男「……」

男(でも……もしかしたら……)

男「俺が知らないだけで……そういうこともあるのか……?」

マンション 廊下

男「はぁ、ずぶぬれだ」

女「傘、持っていかなかったの?」

男「え、ええ」

女「折角、忠告したのに」

男「あの、黒魔術で今日は雨だって知ったんですか?」

女「正確には雨を降らせたの」

男「え……」

女「ようやく、天候を操れるようになったのよ」

男「そんなこと……」

女「ふふ」

男「あの……」

女「では、失礼します」

男「……」

少女「はかせー、今日はいい結果がでたねー」

男「ん?」

博士「うむ。まさか100m.を5秒フラットで走れるようになるとはな」

少女「えへへ~」

男「……」

博士「これはこれは。こんにちは」

少女「こんにちは」

男「あの、なんの話を?」

博士「この子の運動テストですよ。今日は調整に上手くいきましてね」

少女「エッヘン」

男「この雨の中ですか?」

博士「秘密の地下研究施設でですよ。この子の双肩には人類の未来がかかっていますからね」

少女「早く男性アンドロイドを作ってよー」

博士「分かっているよ。だが、いい素体がなくてな」

男(アダムとイヴとか言ってたやつか……)

自室

男(ちゃんと仕事をしているから、狂ってるわけじゃないんだろうな)

男(それでいて俺への嫌がらせをするわけじゃなく、まるで当然のことかのように……)

男「なんなんだよ……」

ピリリリ

男「……もしもし?」

友『元気かー?』

男「おう」

友『元気ないな。どうかしたのか?』

男「お前さ、この世に人間そっくりのロボットっていると思うか?」

友『なんだよ、いきなり』

男「なんとなく」

友『あのアシモとかいうのが現代の限界じゃねーの?あれでも結構いい動きしてるぜ?』

男「だよな……ありえないよな……」

友『なんかあったのか?』

男「いや……」

友『もしかして、隣人トラブルか?』

男「そういうことじゃないけど」

友『なんだよ、いいから話せって』

男「……前に言ったよな。魔女とかアンドロイドとか正義のヒーローとか」

友『ああ。で、呪われろとか一緒にヒーローしようとか、2012年に人類が滅亡するだの言われたんだろ?』

男「でも、その人たちまだ続けてるんだ。俺への嫌がらせじゃなくて、なんか職務みたいな感じで」

友『頭がいかれてるだけだろ?気にすんなよ』

男「そうだけどさ」

友『なんだよ、世界の破滅が本当に起こりそうとか思ってるのか?』

男「うーん……信じてはいないけどな」

友『そんなのありえないから』

男「分かってるよ」

友『本当かよ』

男「当たり前だろ」

友『その三人は揃って『世界が大変なことになる』っていってるんだよな』

男「そうそう。悪の組織が世界を征服、人類が滅亡、闇に染まるって」

友『ふーん……。それってあれかな、三人は共通の敵と戦ってるとかそんな設定なのか?』

男「え?」

友『闇に染まるって悪の組織に支配さてるって意味にもとれるし、悪の組織が世界を征服したら人類滅亡に繋がるかもしれないだろ?』

男「おぉ!」

友『感心するなよ。ただの冗談だから』

男「あ、ああ……そっか」

友『無視していれば無害なんだろ?なら、ほっとけって』

男「そうする」

友『でも、引越ししたほうがいいかもなぁ』

男「やっぱりそうだよな」

友『今度は俺の住んでるマンションにするか?』

男「あはは、考えとく」

友『んじゃな』

9月某日 夜 マンション 廊下

男「今日もつかれた……」スタスタ

少女「はー!!!」バキィ

おっさん「ぐっ?!」

男「え……?」

おっさん「性能が確実にアップしてるな」

少女「今は博士がロックかけてるから出力絞ってますけどね」ムフー

おっさん「なるほど。だが、ミーはやはりユーのドクターを好きにはなれそうにない」

少女「博士は人類の未来のために私を改造しただけですから」

おっさん「それでももっとやりようはあっただろうに」

少女「ですから、致し方なく―――」

男「あの……なにをしているんですか?」

おっさん「おお!ブラザー。すまない、ちょっとこのメタリックガールがパワー試ししたいっていうから付き合っていた」

少女「はいっ!」

男「そ、そうですか」

少女「あ、ここは邪魔ですね。ごめんなさい」

男「えっと……性能の確認って……君は人類の種を残すために作られた設定だろ?」

少女「人類の種を守る為に外敵を制圧するための力は必要ですから」

男「な、なるほど」

おっさん「まあ、ミーがいる限りそんなことにはナッシングだ。アッハッハッハ!!」

少女「だといいですけど……」

男「あの……それが2012年に?」

おっさん「魔女の予言ではそうなっているが、悪の組織は最近活発に活動しているからな。計画が前倒しになっているかもしれない」

少女「博士の造る男性アンドロイドが間に合えばいいんですけどね」

男「……」

男(ありえないのに……そんなこと……)

おっさん「大丈夫。この地上最強のヒーロー、沙羅・リーマンがいる限りこの世に悪は栄えない!!」

少女「もし直接本拠地に乗り込むんだったら、私もいきますよ?」

おっさん「いや。ユーは戦う為に造られたのではないんだろう?なら、大人しくしておくべきだ」

男(なんでこんな真っ直ぐなんだよ……この人たち……)

10月某日 自室

男「……なんかやってるかな」ピッ

テレビ『―――速報!!2012年に人類は滅亡する!!』

男「……!?」ガタッ

テレビ『人類は2012年に滅亡するという説があるのを貴方はご存知でしょうか?』

男「……」

テレビ『実はマヤ文明に、そのような記述があるとのことですが』

テレビ『ええ、そうです。どのようにして人類が滅亡してしまうのか、これから詳しく解説していこうと思います』

テレビ『はい。よろしくおねがいします』

男「……」

男(おいおい……本当なのか……?)

男(いや……1999年にもそんなことあったし……)

男「あるわけ……」

テレビ『では、vtrから』

男「……」ジーッ

翌日 夜 マンション 廊下

男「……」スタスタ

女「……あら。こんばんは」

男「こんばんは」

女「最近、冷えてきましたね?」

男「え、ええ……」

女「では、おやすみなさい」

男「……あの」

女「なに?」

男「2012年に人類が滅亡するって話を聞いたんですけど」

女「……それが?」

男「三人はその予言を信じているってことですか?」

女「信じる?いいえ、必ず起こる」

男「……」

女「既定事項だからこそ、私たちは必死になって来るべき日に向けて備えているだけなの」

男「そんなのありえませんよ」

女「貴方、魔術師?」

男「は?」

女「それとも悪の組織と戦うヒーロー?過去の文献を読み漁った科学者?」

男「違いますけど」

女「なら、貴方には起こり得る未来を否定することはできないはずです」

男「それは……」

女「私たちは偶然にも早い段階でそのことを知ることができた。だから、世界の破滅を防ぐために努力しているの」

男「……」

女「もしかしたら貴方も選ばれた者かもしれない。そう思ったから、私たちは多少強引でも貴方に近づこうとした」

女「結果的に違っていたけれど」

男「そうなんですか」

女「大丈夫。心配しないで。きっと世界は守ってみせるから」

男「え……」

女「貴方はその日が来てもいつも通り過ごせるはずだから」

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