【ドラえもん】?「願い事はあるかい?」 のび太「え?」【箱マリ】 (49)


「空ろの箱と零のマリア」と「ドラえもん」のクロスSSです。
箱マリの時系列は、6巻と7巻の間です。

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side:野比のび太


「ううっ……ぐすっ……」

もううんざりだ。
今日も学校で先生に怒られた上に廊下に立たされた。
今日もジャイアンとスネ夫にいじめられた。
今日も家でママにお説教された。

もういやだ。
もうこんな毎日はいやだ。

「ドラえも~ん!!」

ぼくは自分の部屋に入ると、22世紀からぼくを助けにやってきた、蒼く丸いねこ型ロボットに泣き付いた。

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「もうやだよぉ! こんな誰も彼も厳しい世界はうんざりだよぉ!!」

ドラえもんなら、ぼくの苦しみを分かってくれるはずだ。
そうだ、いつもドラえもんはぼくを助けてくれた。
今回だって、きっとぼくを助けてくれるはずだ。

「のび太くん、いい加減にしなよ」

だがドラえもんは厳しい顔でぼくを見据えて突き放した。

「いいかい。どうせまた学校で先生に怒られて、ジャイアンたちにいじめられて、ママにお説教されたからそんなこと言っているんだろう?」
「ど、どうしてわかったの?」
「毎日同じこと言われていたらわかるよ!!」

ドラえもんはぼくを怒鳴りつけた。

「全くもう、君ときたら毎日毎日同じことで僕に泣き付いて来るんだから。うんざりなのはこっちの方だよ」
「で、でもみんなが……」
「でもじゃない! 先生やママに怒られたのは君が原因だし、ジャイアンたちには君一人で立ち向かわなくちゃいけないんだ!」
「うう……」

いつになく取りつく島もないドラえもんの態度に、ぼくもたじろいてしまう。

「君は僕に甘え過ぎなんだよ。ちょっと僕はしばらく留守にするから、その間に頭を冷やしてよく考えるんだね」

そう言ったドラえもんは、ぼくの机の引き出しを開けてタイムマシンに乗り込む。

「ま、待ってよドラえ……」

止める暇もなく、ドラえもんは出かけてしまった。

「うう……ドラえもんまでぼくを見捨てるなんて……」

一番の友達だと思っていたドラえもん。だが彼もぼくを助けてくれなかった。

「おしまいだぁ!! ぼくはもうおしまいなんだぁ!!」

ドラえもんに見捨てられたらぼくはもう生きていられない。こんな厳しい世界では生きていられない。
心を絶望が埋め尽くそうとしていたその時だった。

「……あれ?」

突然引き出しがひとりでに開き、中から蒼く丸いものが出てきた。
間違いない。この姿は間違いない。

「ドラえもん! 戻ってきてくれたんだね!!」

ドラえもんは思い直してくれたんだ。ぼくを助けに戻ってきてくれたんだ。
引き出しから出て後ろを向いているドラえもんに再び抱き着こうとした。

――だが。

「……ああそうだよ、のび太くん」

こちらに振り向いたその顔を見て、ぼくは固まってしまった。
その顔は確かにドラえもんだ。見慣れたドラえもんの顔だ。
だけど、その表情は。

まるでぼくのために用意されたかのような、すごい魅力的な微笑みだった。

……ちがう。
ドラえもんはこんな表情はしない。ぼくにこういった表情を向けては欲しかったけど、そんな都合よくしてくれるロボットじゃない。
でも、なんだろう。

今のぼくは、『それでもいいか』と考えてしまいそうだ。

「……君は、ドラえもんじゃないね?」
「ほう?」

相変わらず、目の前の『ドラえもん』は魅力的な表情を崩さない。
まるでぼくの言ったことが予想通りとでも言わんばかりだ。

「なるほど、さすがの君でもよく知っている親友の表情くらいは判別できるか。それとも、私がロボットの表情を作るのが不得手なのかな?」

『ドラえもん』は正体を隠すことをぱったりと止めたかのように、本来のドラえもんとは似ても似つかない喋り方になった。

「き、君は、誰? ドラえもんはどうしたの?」
「心配せずとも、君の親友は予定通り未来の世界に到着したさ。私は君に会いに来たのだよ」
「ぼ、ぼくに?」

わからない。さっぱりわからない。

「そう怖がらなくてもいいさ。さて、君に聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」

そして、『ドラえもん』はぼくが求めていた言葉を言う。

「願い事はあるかい?」

「え?」
「私は君の願いを叶えることが出来る。正確には願いを叶えるための道具を与えることが出来る。もし君が求めるのであれば、それを君に与えようと思う」
「願いを、叶える?」

願い事。
もちろんある。ぼくはこの厳しい世界に生きていたくない。もっと優しい世界で生きたい。
そして、目の前にいるこの人(人かな?)はそれを叶えてくれるの?

「で、でも、待ってよ」
「何かな?」
「そういうのって、願い事の代わりに何か取られたりしないの?」

そうだ。今までのドラえもんの秘密道具だってそうだった。
お金を貰える代わりに身長が縮んだり。
ただの紙をお札に変える代わりにアルバイトをさせられたり。
願いを叶えた代わりに誰かが不幸になったり。
そんなうまい話があるはずないじゃないか。


「ああ、その心配はいらないよ」

だが目の前の人は、いつもドラえもんが秘密道具を取り出すかのように、ポケットの中からそれを取り出した。

「あ、あ……」

すごく形が整って、とてつもなくきれいな“箱”を。

「この“箱”はどんな願いも正確に叶えてくれるものだ。そして、願いを叶えた結果……わかりやすく言うと、君にとって何かいやなことが起こることはない」
「ほ、本当!?」
「ああ。この“箱”はただ、願いを叶えるだけだ。正しく願う。それだけで君の願いは叶う」
「ほ、本当にそれをくれるの!?」
「本当だとも、さあ、どうする?」

ぼくはその“箱”をひったくるように受け取った。

「ふふふ、さて君はどんな願いを願うのかな?」
「決まってる。ぼくは……」

『みんなが優しい世界で生きたい』

そうだ、ぼくはその世界で生きたいんだ。
こんな厳しい世界は、いらない。

それを心で願った瞬間――

「う、わ……」

ぼくの体は光に包まれた。

「まあ、こんなものだろうね」

遥か遠くから聞こえた『ドラえもん』の声は、まるでぼくをバカにしたような声だった。

とりあえず、今日はここまで

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side:ドラえもん

「ちょっと言い過ぎたかなあ……」

こんにちは、ぼくドラえもんです。
今日もまたのび太くんが同じようなことで泣き付いてきたので、僕もうんざりしてしまった。
だからつい、のび太くんにきついことを言ってしまったのだ。
しかし……
僕が言ったこと自体は間違っていないとは思う。問題はそれを言うタイミングと相手だった。
確かにのび太くんは怠け者で弱虫でいくじなしだ。だからこそ慎重に言葉を選ばなければならなかった。
いきなりあんなことを言っても、のび太くんが受け入れられるはずがないのだ。

「仕方ない。さっきのことを謝ってからもう一度説得してみよう」

勢いで22世紀に帰ってしまった僕だったが、自分の言葉を反省し、のび太くんの家に戻ることにした。

「まだ泣いているかなあ……」

タイムマシンを操縦しながら、のび太くんの泣き顔を想像する。
何度も見た顔ではあるが、正直言って、あまり見て気分のいいものではなかった。

「ただいま……あれ?」

のび太くんの部屋に戻ったが、部屋の主は不在だった。

「やれやれ、また家出かな? まあ、お腹が空いたら帰ってくるでしょ」

のび太くんとしても頭を冷やす時間が必要だろう。僕は漫画を読みながら、彼の帰りを待つことにした。



その夜。

「おかしいなあ、まだ帰ってこない」

もうすぐ夕ご飯だというのに、のび太くんが帰ってくる気配は無かった。
仕方がなく、一人で台所に向かう。こりゃあ、パパもママもカンカンだろうなあ。

だが僕の目に映ったものは、意外な光景だった。

「あらドラちゃん、晩御飯出来てるわよ」
「よし、みんな揃ったな。じゃあ、いただきます」

パパとママは朗らかな笑顔を浮かべて、食卓を囲んでいた。その顔には微塵も怒りが感じられない。
さらに驚くべきなのは、その食卓だ。

――食卓の上に、三人分のご飯しか置かれていない。


「マ、ママ……?」
「どうしたのドラちゃん? 早く食べないと冷めちゃうわよ?」

ママは何を言っているんだ? ご飯が冷めるとかそういう問題じゃない。

のび太くんが、いないんだぞ?

「ねえ、もしかして怒っているの?」
「え?」
「どうしたドラえもん。具合が悪いのか?」
「パパもさ、のび太くんが帰ってこないから怒っているの?」

「のび太?」

僕の発言に、二人は顔を見合わせた。


「のび太って誰だい。ドラえもんのお友達かな?」
「え!?」

パパは僕に問いかける。
何を言っているんだ本当に。冗談にしても質が悪すぎる。

「ひ、ひどいよパパ。いくらのび太くんが帰ってこないからって、自分の子供でしょ!?」
「自分の、子供?」

ママが首を傾げ、パパが真剣な眼差しになる。

よんでるよ!

>>21
ありがとう!

俺も読んでるぞ

>>23
ありがたい


「ドラえもん、もしかして本当に具合が悪いのか? どこか故障でもしたのか?」
「ドラちゃん、具合が悪いのなら遠慮なく言ってくれていいのよ。ママもパパもドラちゃんを本当の息子みたいに思っているんだから」

なんだ、なんだ、なんだ!?
今、ここで何が起こっているんだ!? 二人に何が起こっているんだ!?
僕は恐る恐る、質問をぶつけてみた。

俺だって読んでるぞ

>>26
良かった……
割と見てくれる人いた……


「あ、あのさ、僕がこの時代に来た理由ってなんだっけ?」

すると二人は、当然のように言った。

「そりゃあ子供がいない僕たちのために、未来の世界から養子として来てくれたんだろ?」
「ドラちゃんには本当に感謝しているのよ? 私たちが子供を持てるなんて夢みたいなんだから」

…………
嘘じゃ、ない。
道具を使わなくてもわかる。二人は嘘を言っていない。
これは事実なんだ。

二人にとって、これは事実なんだ。

大変なことが起こってしまった。おそらくのび太くんは何かの事件に巻き込まれた。
そしてその事件を起こした何者かは、既にパパとママ……いや、おそらくのび太くんの周囲の人間全員の記憶を書き換えている。
ジャイアンも、スネ夫も、しずかちゃんも。
今回の事件の犯人は、それが出来る。

「さあドラちゃん、一緒に晩御飯をいただきましょう」
「……っ!!」
「あっ、ドラちゃん!?」

この場にいるのが耐え切れなくなった僕は、家を飛び出してしまった。


「大変なことになっちゃった……」

夜の空き地で土管に座った僕は、頭を抱えて考え込む。
まさかのび太くんとケンカした直後に、こんなことになってしまうなんて。
僕のせいだ。僕がのび太くんを守らなければならなかったのに。
あんな、あんなくだらないことで、のび太くんを……

…………

後悔している場合じゃない。のび太くんを探すんだ。
そして、助け出すんだ。

「とにかくのび太くんを探さなきゃ、えーと、たずね人ステッキ~!!」

つい、いつもの癖で道具の名前を叫んでしまったが、誰も聞いていなかった。
そんなことはどうでもいい。ステッキを立てて……


「こっちか!」

僕は何回かステッキが倒れた方向に向かうことを繰り返した。
そして、意外な場所にたどりついた。

「が、学校!?」

そこはのび太くんが通う小学校だった。夜なので当然のことながら、門は閉まっている。
ステッキは学校の中を示している。とりあえず入るしかない。

「おじゃましま~す……」

再びステッキを立てては倒すを繰り返す。そして、のび太くんの教室の前まで来た。

「ここにのび太くんが……?」

何が中にいるかわからないが、恐る恐る扉に手をかける。
そして扉を開けると……

「……え?」
「……なに、君は?」

学生服を着た、大人しそうな男子高校生がいた。

とりあえず今日はここまで

おやすみ

読んでくださったみなさんありがとうございます
箱マリ原作は凄い面白いので読んでほしいです

箱マリ原作最終巻だけ読んだよ!
面白かったよ!

>>36
心から箱マリがあのラストを迎えられてよかったと思う

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side:野比のび太

今日も一日が始まる。
楽しい楽しい、一日が。

「ああ!! 寝坊したぁ!!」

ぼくはいつも通り寝坊して、急いで一階に降りる。そして朝ごはんを食べる。

「いいのよのびちゃん、そんな焦らなくても。のびちゃんはちょっとお寝坊さんなだけなのよ」

そして、『いつも通り』優しいママがぼくに優しいほほえみを向ける。


「そうだよのび太。お前は何も気にする必要はないんだ」

既にスーツに着替えていたパパも、僕の寝坊を怒ったりはしない。

「そうだね。ぼくはちょっと寝坊しただけだもんね」

そうだ。焦らなくてもいいんだ。
ゆっくり行こう。ゆっくり。


そして僕は焦ることなく、のんびり歩いて登校する。
たっぷりと時間をかけて、ようやく学校に到着した。
特に引け目を感じることなく、教室の扉を開く。

「おお野比くん。大丈夫だったか? 怪我は無かったか?」

先生が心配しながらぼくに話しかける。
先生だけじゃない、クラスのみんなもぼくを心配そうに見ていた。


「大丈夫です先生。遅刻してごめんなさい」
「いいんだよ野比くん。君は悪くない、学校が早く始まりすぎるんだ」

先生の言うとおりだ、学校は始まるのが早すぎる。
今度学校に、もっと遅く始まるように頼み込んでみよう。


休み時間。

「おーいのび太、校庭で遊ぼうぜ」

ジャイアンが僕を遊びに誘う。しかし外でかぁ……もっと安全な遊びがしたいなあ。

「ねえジャイアン、外での遊びは危ないから教室で遊ばない?」
「そうだな、のび太が怪我したら危ないもんな」

ジャイアンは快く、僕の頼みを聞いてくれた。

「じゃあみんなであやとりしようよ」
「そうだな、そうしよう」
「さんせ~い!!」

僕の提案で、クラス全員であやとりをすることになった。

「のび太さん、それはどうやってやるの?」
「これはね、こうやって……こうだよ」
「わぁ、のび太さんすご~い!!」

しずかちゃんがぼくのあやとりの技をほめてくれる。
いやあ、幸せだなあ。この世界は幸せなことばかりだ。

ずっと、この幸せな世界で生きていくんだろうなあ。

――――

なんだろう。
何か足りない気がする。いや、誰かが足りない気がする。
でも、ぼくは知らない。

■■■■■のことなんて。


途中で変なことを考えてしまったが、いよいよ授業が終わり放課後になった。
もういつ帰ってもいいんだ、これから何をして遊ぼうか。
誰もぼくを怒ったりはしないんだ。ゆっくり考えよう。

「のび太、帰ろうぜ」
「うん」

ゆっくり考えているとスネ夫に声をかけられた。
まあいいや、帰ってから考えよう。
ジャイアンとしずかちゃんも加わり、四人で校門に出る。
さあ、これから楽しく遊ぶぞ。

しかし、そんなぼくたちの前にその人は現れた。

「野比のび太だな?」


ぼくに声をかけたのは、すごい綺麗な女の人だった。
学生服を着ているから、たぶん中学生か高校生だろう。
でもぼくはこんな人は知らない。知るはずもない。

「おい、のび太に何の用だよ?」

ジャイアンが女の人に詰め寄る。どうやらこの人を知っているようだ。

「野比のび太以外に用はない。引っ込んでいてもらおうか」
「そうはいかねえよ。のび太は大事な心の友だ」

なんだこれ? 女の人はぼくをじっと見ている。
その目はちっとも優しくない。その人だけはちっとも優しくない。
おかしい。こんなはずはないのに。

「野比のび太。私はお前の“箱”を破壊する。そのためにここにいる」

……え?
この人は何を言っているのだろう。

こんな素晴らしい世界を壊すって言ってるの?


「ちょっとお姉さん、わけのわからないことを言ってのび太を困らせちゃだめだよ」
「そうですよ、のび太さんが怖がってます」

スネ夫としずかちゃんもぼくの前に立ってぼくを守ってくれる。
そうだ、こんな素晴らしい世界を何で壊されなくちゃいけないんだ。

「……まあいい。まだこの“箱”の特性がわかっていない以上、無用な手出しはしない。だが、覚えておけ」

そして女の人は、

「お前の“揺り籠の中の憂鬱”は永遠ではない」

明らかにぼくの敵であるような発言をして去っていった。


「……」

女の人が遠ざかった後、ぼくは震え上がる。
なんでだ。みんなが優しいこの世界に、なんであんな人がいるんだ。
こんなこと、あってはいけないよ。

「大丈夫かのび太?」

震えるぼくを心配したジャイアンが声をかけてきた。

「ジャイアン、あの人知っているの?」
「ああ、最近この町に引っ越してきた怖いお姉さんだ。確か名前は……」

そしてジャイアンは言った。

「音無彩矢」

それが、ぼくの敵の名前。

すみません、いったん練り直して立て直します……

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