女「やだっ! まって、行かないでよぉ!」(52)

女「まって! 置いてかないで」ギュ

男「離してくれよ……」

女「お願いだから、一緒に居てよ!」

男「……一生会えなくなるわけじゃないんだから」

女「何でもするから! だから、だから……」

男「だーっ! もう離してくれって!」ブンッ

女「きゃっ! ま、まって……まってってばぁ!」



 「お化け怖いよぉおおぉぉぉ!!!!」

ちょっと前

女「さぁあ! やってきました、今週の金曜ロードショー!」

 「本日の作品は! こち……え?」

 「ほ、ほら~……ですか? え、えっ」ガクガク

 「しかも? みんなが選ぶホラー映画最恐賞?」

 「ひ、ぃ……」

 「い、いや……でも毎週金曜ロードショー観るって決めてるし」

 「観るしかない! ……よね」

tv「ギャアアァアァァァアアアァァ」

女「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」ガタガタ

 「お、オワッタ……やっとオワッタ」ビクビク

 「…………」

 「怖くて……動けない」

 「後ろに何もいないよね……いないよね」

 「その廊下の角とか」

 「ソファーの裏とか」

 「……ねぇ、いないよね」

 「………………」

 「うごけないよぉ」ブルブル

カチカチカチカチ

女「時計の音はいつもより大きい気がするし」

ぱきっ

女「なんか天井とか夜になると鳴るし」

 「あ、カーテンしめなき……ゃ、っ!」

 「なんか、出そう」

 「むり、動けない」

 「……ふぇえん、誰か助けてぇ」

女「そうだ! メールで誰か呼んで」

 「えっと、友ちゃんは……旅行中」

 「幼ちゃんは……彼氏さんのお家」

 「ツンちゃんは……バイト中」

 「……」

 「うぁぁぁぁ、だれかぁ! だれかぁーーーーーー」

 「……男君」

 「そうだ、男君!」

ぴぽぱぽ、ぷるるるるぷるるるる……

女「……ってことで来てもらったのに! 離れないでよぉ」

男「ちょっとトイレ行くだけだって」

女「トイレの中でおばけに連れてかれちゃったらどうするの!」

男「平気だって」

女「男がいなくなったら……わたし、わたし」ジワ

男「っ! ……分かったから、すぐ戻ってくるから!」カァァ

女「ほんとだね! ずっと一緒に居てくれるよね」

男「そ、そうだから! ちょっと待ってろ」ドキドキ


男(さっきからセリフが破壊力ありすぎだっつーの)

その後

女「う、ぁ……」カタカタ

男「ちょっとくっつきすぎじゃ……」

女「ダメだもん! なんか来たら男に守ってもらうもん」

男「……幼児退行してないか?」

女「……」ギュゥ

男「いたいいたい、ツメ喰い込んでるって」

女「……」フルフル

女「あ、そうだお風呂はいんなきゃ」

男「入ってなかったんだ」

女「でも、お風呂怖い」

男「いやいや、さすがに夏だし入んないとね」

女「……わかった、行くよ男」

男「……………………へ?」

女「え? 一緒にはいってくれるんじゃないの?」

男「……さすがにそれはぁ」

女「そんな! 無理だよ一人で入るなんて」

男「おれ、男だよ? 正真正銘のボーイですよ?」

女「怖いもん」

男「……おほぃ、なんか俺も怖いよ?! お前の言動が」

女「だってだって! お化けが出るかもしれないじゃん!」

男「無理無理無理無理」

女「ほらいくよ!」ズリズリ

男「ちょ、まっ……あーれー」

脱衣所

男「すとーーーーっぷ! これ以上は! これ以上は」

女「やだやだやだぁ!」

男「えっと、じゃぁドアのまえで待ってるから!」

女「……分かった、いなくならないでよ」

男(うん、それでもすでに拷問なんですが)


ガラガラ


男「……」

女「おとこ?」

男「……いるよ」

女「おとこぉ?」

男「いるって」

女「……おとこーーーーーー!!!!」

男「いるっつってんだろーが!」

女「……むり、からだあらっておとこ」

男「…………は?」

女「こわくて、からだあらえない」

男「……むりっす」

女「……う、ぁ……ふぁぁん、うぁぁああん」ポロポロ

男「わかった! わかったから!」

 (頼むぞ俺の理性! 全てお前にかかってるんだ)

ゴシゴシ

男「理性よ、たえろ、たえるんだ」

ゴシゴシ

女「おとこがいれば、なんとかこわくない」

ゴシゴシ

男「うん、おれはヤバいんだけどね」

ゴシゴシ

女「でも、めをつぶるといなくなっちゃいそうでこわい」

ゴシゴシ

男「平気だって……ほら、流すぞ」

ざぱぁ

男「よく、持ちこたえてくれた理性よ!」

 「んじゃぁ俺は外で待ってるから」

女「だめ、いっしょにはいって」

男「」

女「あったかい」ギュ

男「」

女「……」ギュ

男(あたってる、ちっちゃいあれがあたってる)

女「……」ギュ

男(当たってる当たってる、当ててんのよ……ってバカ! 俺のバカ!)

女「……ねぇ」

男「ナンデショウカ、オンナサン」

女「あがりたいけど、ひとりはこわくてでられない」

男「いやな予感が……」

女「つれてって」

男「」

男「目をつぶらないといろいろ見える」

 「さっき洗ってる時は見えにくかったが」

 「いまやばーい」

女「ううう」ギュ

男「早く服着ろ――!」

女「うう、」

ごそごそ

その後

男「いろいろ危なかった」

女「はをみがこう」

男「どうぞ」

女「こわくておとこからてがはなせない」

男「どうやってみがくの?」

女「みがいて」

男「」

 (どんどんマニアックなプレイになってきたーーーー!)

ねむーい

かくのめんどくさくなってきたー

過疎ってるー

おやすみー

男「怖くて鏡が見られない女……」

女「……うぅ」ギュウ

男「くっつき過ぎだって」

女「……はみがき」

男「ホントに俺がやるの?」

女「……うん」

男「心頭滅却、落ち着け俺、頑張れ理性」

男「……」プルプル

女「……あーん」ギュ

男(目をギュッと閉じ、口を開けた女の子が前に)

 (……ゴクリ)

 (はっ! 今俺は何をしようとしていた!)

 (落ち着けー、落ち着け~)

 (大丈夫だ! いつも妹の歯磨きをしているから)

女「……ぁ、あーん」ビクビク

男「じゃあ……いくぞ?」

女「……ん」

しゃこしゃこ

女「……ん、」

しゃかしゃか

女「……あ」

しゃっしゃっ

女「んぁ……ふぅ」

男「はい、ぺってして」

女「ぺっ」

男「じゃ、じゃぁ……いーってして」

女「……いー」

しゃかしゃか

女「……あ、ん」

しゃしゃしゃしゃ

女「んあん……」

男「はい、口ゆすいで」

女「ぐじゅぐじゅ……ぺー」

男「……ふぅ」

男「なぁ、幼児退行しすぎじゃないか?」

女「こわいんだもん」ギュ

男「俺の理性もいたわってほしいんだが」

女「こわいんだもん」

男「はぁ……」

女「もう一時」ガタガタ

男「寝ないとな」

ぽふん

男「じゃぁ、俺はこれで」

女「なにいってるの」

男「へ?」

女「いっしょにねる」

男「」

男「い、いやさ寝るまでいてあげるとかじゃ……」

女「よなかおきたときねむれなくなる」

男「まじっすか」

女「……だめ?」ジワァ

男「理性持つかなぁ」

男「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」

女「なにそれ」

男「般若心経」

女「なんかこわい」

男「はよ寝ろ」

女「……うん」

俺も寝る


おやすみ

男「さーぁ、状況の説明だぁ」(小声)

 「現在時刻は1:30ちょうど」

 「女の家の、女の部屋の、女のベッドの、女の布団の中に居て」

 「なんとお隣には女ご本人」

 「ちなみに、女は怯えているため俺にひしっとくっついている」

 「とてつもなく、無防備な状態です」

女「…………う」ガタガタ

男「……ゴクリ」

男「なんか女、今なら『お化けを追い払う儀式』って言えば何でもやってくれそう……」

 「……はぁ、はぁ」ソローリ

 「……はっ!?!?」

 「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい」

 「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい」

 「もう、理性のhpが残っていないようだ……危険すぎる」

 「このまま、一緒に寝るのはヤバい、いろいろと」

 「夜のうちに大人の階段を駆け上がりそうだ」

女「……ねぇ」

男「ん? ごめんうるさかったか?」

女「ギュってして、こわくてねらんないから」

男「追い打ちかかったぁーーーーーーーーーーー」

男「落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け餅つけ落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け」

 「ここで襲ったら、一巻の終わりだ」

 「そう、抱き枕だ」

 「抱き枕を抱くと思ってやれば」

 「すー、はー、すー、はー」

ギュゥゥ

女「……っ!」

男「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「」

 「……はっ!」

男「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」(小声)

 「今、意識とんでた」

 「危険、危険」

 「このまま、アレしちゃった可能性大……」

 「…………ていうか」

 「女はこの状況理解してるのか?」

女「……はふぅ」

男「な、なぁ女」

女「なに?」

男「えっと、今日さ……いろいろしたけど」

 「あー、その俺でよかったの?」

女「……どういうこと?」

男「……」

 「素で分かってなかったぁああぁぁぁぁぁああ!!」

 「ただ単純に本気でビビってたから気にもしてねぇ!」

男「あ、のだな……えっと、今日したこともう一度振り返ってみ」

女「ほらーみて」

 「おとこよんで」

 「おとことお風呂はいって」

 「おとこに歯を磨いてもらって」

 「男と一緒に寝てる」

男「よし、もう一度聞こう」

 「俺でよかったの?」

女「……」ポク

 「……」ポク

 「……」ポク

 「……あ」チーン

 「あ、ぁぁぁああぁぁ」カァァ

男「やっと理解したか」

女「お、おおお、男! これはその! えっと!」

男「落ち着け」

え?事後なの?

女「違うの! えうぅうっぅぅぅぅぅ! あーーーーーーーー」アワアワ

 「そのえっと、ね? そういうんじゃないから!」

 「前から気になってた男に怖いって理由つけて呼び寄せたんじゃないから!」

 「この際だから既成事実を作っちゃおうとか思ってないから!」

 「ちょっとマニアックなプレイやりたいとか考え付いたんじゃないから!」

 「男と寝るとドキドキするとかじゃないから!」

男「あ、あそこに血まみれの女の人が」

女「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

>>43

そういう意味ではなく

お風呂とか歯磨きをしたってこと

女「……」ガタガタビクビク

男「嘘です、ごめんなさい」

女「……」ギュ

男「いたいいたい、ツメ! いたい!」

女「えっと、さっきのは」

男「え? あー、あれね……でも違うんでしょ? 何度も言ってたじゃん」

女「……まじっすかー?」

 (本気でそうじゃないって思ってる? この人鈍感?)

男「で、どうするの? このまま一緒に寝るの?」

女「……私は……男となら……」ボソボソ

男「え? 聞こえなかった、何?」

女「う、うるさい! 怖いからもう寝る!」ギュ

男「と言いつつも手は離さないんだな」

翌日の夜

男「ふぃー、昨日は大変だったな」

 「それにしても良く耐えたな俺の理性」

 「さて、寝るとするかな……」

ぴりりりりり、ぴりりりりりり

男「お? 女から電話」



男「もしもし」

女「……おとこぉ?」

 「昨日の映画思い出しちゃってね……」


 「お化け怖いよぉぉおおぉぉおおぉ!」


男「またかよ!!」

終わりです!

御閲覧有難うございました

ホラー映画は苦手な作者でした!

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