夜叉姫「桃太郎さん、仲間にしてもらえますか?」桃太郎「いいえ」(22)

夜叉姫の塔

夜叉姫「うっ……これが人間の強さ……」

桃太郎「……」

夜叉姫「私は閻魔様に人間は弱い生き物だと教わってきました」

夜叉姫「だけど、桃太郎さんとこうして刃を交えてみて、分からなくなりました」

桃太郎「……」

夜叉姫「……今更、こんなことを言うのは気が咎めるのですが……私をお供に加えていただけませんか?」

夜叉姫「閻魔様が言っていたことが正しいのか、それとも人間の強さが正しいのかこの目で確かめてみたいのです」

夜叉姫「どうでしょう?お供に加えていただけますか?」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「よかった……やはり桃太郎さんは優し―――え?」

夜叉姫「あの……今、なんと?」

桃太郎「……」

夜叉姫「……私をお供に加えていただけますか?」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「……」

桃太郎「……」スタスタ

イヌ「……」

キジ「……」

サル「……」

夜叉姫「まって!!桃太郎さん!!」

桃太郎「……?」

夜叉姫「ど、どうしてダメなのですか?!」

桃太郎「……」

夜叉姫「お願いします!!どうかお供に加えてください!!」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「あの……理由を!!」

桃太郎「……」

夜叉姫「どうして……何も言ってくれないのですか?」

桃太郎「……」

夜叉姫「……」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「桃太郎さぁん!!」

イヌ「桃太郎さん、確かに鬼の姫ではありますが……」

キジ「お供に加えてあげてもいいんじゃないでしょうか?」

サル「そう思います」

桃太郎「……」

夜叉姫「みなさん……」ウルウル

桃太郎「……」

夜叉姫「桃太郎さん、お願いします」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「な、何故……!?」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「桃太郎さん!!待ってください!!」ガシッ

桃太郎「……」

夜叉姫「私のことがお嫌いですか?あ、いえ、確か人間を苦しめてきました。それは批難されて然るべきです」

夜叉姫「でも、私は心を入れ替えました。お願いします。お供に加えてください」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「……」

桃太郎「……」スタスタ

イヌ「あの、どうやら桃太郎さんは貴女をお供にしたくはないようですね」

夜叉姫「やはり……鬼だからでしょうか……」

キジ「そうかもしれませんね」

サル「今回は縁がなかったということで……」

夜叉姫「そんな……」

夜叉姫「あの!!お料理できます!!」トコトコ

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「お洗濯もできます!!」トコトコ

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「鬼ですから戦えます!!」トコトコ

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「それから……えーと……」オロオロ

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「と、とにかく!!なんでもしますから!!お供に加えてください!!」

イヌ「桃太郎さん、あそこまで言ってますよ?」

キジ「私としては凄まじい戦力アップになるので、加えてもいいかと」

サル「俺もそう思います」

夜叉姫「桃太郎さん……お供に加えてください」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「ふぇぇ……どうしてですかぁ……」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「待ってください!!」バッ

桃太郎「……」

夜叉姫「わかりました。もう一度、私と戦ってくれますか?」

桃太郎「……」

夜叉姫「それで私が勝てばお供に加えてください」

桃太郎「はい」

夜叉姫「ほ、本当ですか?!」

桃太郎「……」コクッ

夜叉姫「ふふ……では!!尋常に……!!」グッ

桃太郎「……」グッ

イヌ「ウゥゥゥ……!!」

キジ「……」バサバサ

サル「グルル……!!」

夜叉姫「……あの……どうしてお友達まで……構えているのですか……?」ガタガタ

イヌ「桃太郎さんと戦うのなら、無論、僕たちも戦います」

夜叉姫「それでは先ほどの焼き直しです!!」

キジ「夜叉姫様が勝てばいいのです」

サル「ウキッキ」

夜叉姫「……わ、わかりました」

夜叉姫「では……いきます!!」

桃太郎「……!」

夜叉姫「やぁぁぁ!!!!」

桃太郎「……!!」

イヌ「ガァァァウ!!!!」ガブッ

夜叉姫「いたっ!?」

キジ「……っ」トトトトッ

夜叉姫「いたい!!いたい!!突かないで!!!」

サル「ウッキー!!!」ザンッ

夜叉姫「きゃー!!きゃー!!!」

夜叉姫「うぅ……ひどい……」ボロッ

桃太郎「……」

イヌ「勝っちゃいましたね」

キジ「まあ、先ほども勝ちましたし」

サル「夜叉姫さん……」

夜叉姫「負けた……二度も……。やはり、桃太郎さんはお強いですね……。なので、お供に―――」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「……桃太郎さんは卑怯です!!!」

桃太郎「……?」

夜叉姫「桃太郎さんにはお供が三匹もいるではありませんか!!」

桃太郎「……」

夜叉姫「正々堂々、一対一で戦いましょう!!真の実力が測れないではないですかっ!」

イヌ(夜叉姫さん必死だなぁ)

夜叉姫「もう一度!次は一体一で戦ってください!!」

桃太郎「……」コクッ

夜叉姫「やったぁ」

桃太郎「……」カモンッ

夜叉姫(よし……桃太郎さんだけなら……私でも……)

桃太郎「……」

夜叉姫「……」ジリジリ

桃太郎「……」

夜叉姫「―――でぁぁぁ!!!!」ダダダッ

桃太郎「……っ」

―――ギィィィン!!

夜叉姫「ふっ……!!」

桃太郎「……」

夜叉姫(このまま力で押せば……!)

桃太郎「……」ザシュッ

夜叉姫「あぁん」バタッ

キジ「桃太郎さんの勝ち」

夜叉姫「いたい……」

桃太郎「……」

夜叉姫(考えてみたら……桃太郎さんだって一度勝った相手に負けるわけにはいかないし……)

夜叉姫(鬼に対して生かす以上の情けをかけるわけがない……)

夜叉姫「完敗です……」

桃太郎「……」

夜叉姫「分かりました……私はここに残ります」

桃太郎「……」

夜叉姫「でも、気が向いたらいつでもお供に誘って―――」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「……」

イヌ「では、失礼します」

キジ「さようなら」

サル「ウキッキ」

夜叉姫「うぅ……」ウルウル

桃太郎「……」スタスタ

イヌ「桃太郎さん、お腹がすきました」

桃太郎「……」サッ

イヌ「わおーん!!」

キジ「私にもきびだんごを!!」

サル「俺にもお願いします!!」

桃太郎「……」サッ

キジ「やっぱり、おいしいですねー」

サル「うんうん」

夜叉姫「……」グゥ~

桃太郎「……」

夜叉姫「あの……」

桃太郎「……」サッ

夜叉姫「え?私もいいのですか!?」

桃太郎「はい」

夜叉姫「ありがとうございます!!」

桃太郎「……」

夜叉姫「はむっ……はむ……」モグモグ

桃太郎「……」スタスタ

イヌ「では行きましょう」

桃太郎「……」コクッ

夜叉姫「はいっ♪」

桃太郎「……」

夜叉姫「……え?」

キジ「夜叉姫様、どうしてしれっとついてこようとしているのですか?」

夜叉姫「いえ……きびだんごを頂いたので……」

サル「だから?」

夜叉姫「……お供にしてもらえたわけじゃないんですか?」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「では、どうしてきびだんごをくれたのですか!!酷いです!!桃太郎さん!!」

イヌ「それは夜叉姫さんが物欲しそうにしていたからですよ」

サル「うんうん」

夜叉姫「わ、私は鬼の姫ですよ!そんな卑しい顔をするわけないではないですか!!」

桃太郎「……」

夜叉姫「それにこのきびだんごはお供の証だと聞いています。食べたからにはついていきます!!」

桃太郎「いいえ」

夜叉姫「いいえ!!ついていきます!!鬼のプライドにかけて!!」

桃太郎「……」

キジ「あの夜叉姫様、桃太郎さんが困惑してますから」

夜叉姫「絶対についていきます!!いきます!!いきます!!」ジタバタ

イヌ「うわーお」

キジ「夜叉姫様、着崩れしてしまいますよ」

サル「桃太郎さん、どうする?」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「待ってください!!」タタタッ

街道

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「実はあまり外に出たことないんですよね。少し緊張してます」

イヌ「夜叉姫さん、桃太郎さんはお供として迎え入れてはいないようですよ?」

キジ「はい。ここは大人しく塔に残っておいたほうが」

サル「無視されるって辛いですよ?」

夜叉姫「今はまだ私と桃太郎さんの間に深い溝はありますが、それは人間と鬼の関係の縮図です」

イヌ「はぁ……」

夜叉姫「私と桃太郎さんが理解しあい、将来的には人間と鬼が友好関係を結ぶ架け橋になればと思っています」

イヌ「もうそんなことまで」

キジ「しかし、同族とも戦うことになるのですよ?」

夜叉姫「覚悟の上です」

サル「桃太郎さん、いいんですかー?」

桃太郎「……」スタスタ

夜叉姫「なんと言われても私はついていきますから!!」



イヌ「今日はここで野宿ですね」

桃太郎「……」コクッ

夜叉姫「桃太郎さん!!夕食は私が作ります!!」

桃太郎「……」

夜叉姫「これでも鬼の王族として恥ずかしくない技量は持ち合わせていますから」

サル「やったー!!」

キジ「では、お願いします」

夜叉姫「はいっ。任せてください」

桃太郎「……」

夜叉姫「桃太郎さん、何がいいですか?ご注文がどうぞ」

桃太郎「……」

夜叉姫「……」

桃太郎「……」

夜叉姫「あの……何か言ってもらえないでしょうか?」

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