楯無「安価で一夏くんにミッションインポッシブル!」一夏「」(1000)

~生徒会室~

楯無「はーい! というわけで! 始まりましたー!
   『第一回一夏くんに無茶振りなミッションを完遂してもらう大会ー!』
    イエー!!」ドンドン パフパフ

一夏「…何やってんですか楯無先輩」

楯無「はーい! それじゃあこのコーナーの説明をさせていただきまーす!
   司会進行は私、更識楯無と!」

簪「あ、あの…か、解説の更識簪です…よろしくお願いします」

楯無「うん! 頑張ろうね! さてさて! このコーナーでは、全校生徒職員、
   事務員の方々に送っていただいた無茶振りなミッションを、
   一夏くんに遂行してもらおうというコーナーでーす!」

一夏「当事者置いてけぼりで進めないでください! 簪だって困ってるじゃないですか!」

楯無「えー。一夏くんつまんないー。主役なんだからもっとノリノリでやってよー」

一夏「急にisで拉致られて訳も分からないイベント組まされる身にもなってください!」

楯無「いやー。実はね。私、ある漫画に影響されてね。目安箱置いてみたの」

一夏「目安箱? ええと…確か、生徒が生徒会に要望があったときに使われるアレですか?」

楯無「そうそうソレソレー! でね。予想以上に目安箱の反響があってさー」

一夏「いいことじゃないですか」

楯無「9割くらいは一夏くん関係なんだけど」

一夏「」ブーッ

楯無「『目安箱は批判も希望も、果たし状からお悩み相談に至るまで幅広くお受付してまーす!』
   という触れ込みのもと、集まった葉書の1つがこちらです」スッ


『幼馴染の唐変朴さを矯正したいのですが、どうしたらいいでしょうか?』


一夏「え? これのどこが俺の事なんですか?」

楯無「(チッ)はーい! では次のお便りですー!」

一夏(え? 舌打ちされた?)

『ある殿方に私の手料理を食べていただけません。精一杯作っているのですが…』


一夏「ひでぇな。男なら女の手料理ぐらい食べてやればいいのに」

楯無「…あのね。一夏くん。ここがどこだか分かってる?」

一夏「え? 生徒会室でしょ?」

楯無「じゃなくてね。この学園の話」

一夏「いや、何言ってんですか」

楯無「あーうん。まどろっこしいのは無しね。で、is学園にいる男性は君一人。ね?」

一夏「いや、だからってこの葉書の男性が俺ってことにはならないでしょう?
   彼氏とか、家族とか…あ、いや一応あの用務員の人も男性だよな…」

楯無「はぁ…まぁいいや。次いこ」

一夏「ちょ、やめてくださいよ。なんですかその汚らしいものを見るような眼差しは」

楯無「もうメンドイので、こっからは一気にいくねー」


『幼馴染の鈍感さは叩けば直るのですか?』
『色々とアプローチしているのに相手が全然その気になりません。僕って魅力ないのでしょうか?』
『嫁にプリンを買ってもらった』
『気になる人がいるんですが、競争率が高すぎて諦めかけてます。諦めた方がいいのでしょうか?』
『おねーちゃーん! げんきー!?』
『織斑くんに話しかけるタイミングがつかめません』
『織斑くんの写真ありますか? 即金でも可』
『何で私の名前って上から読んでも下から読んでも同じなんですか』
『織斑くん抱いて!』
『織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん
織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん
織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん
織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん
織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん』
織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑くん織斑く…

楯無「とまぁ、こんな感じです!」

一夏「おい最後2つ」

一夏「ええと…これが今回のイベントとどう関係が?」

楯無「よくぞ聞いてくれました! じゃあ解説さん! お願いします!」

簪「あ、うん…。ええと、目安箱に投書されていたほとんどが、一夏の事に関するもので…」

簪「簡潔にまとめと…一夏にちゃんと気づいてもらいたいというか、その…」

一夏「?」

簪「ええと、ううん…つまり……」

一夏「なんだよ。言いづらいことなのか?」

簪「…一夏はどん…」

簪「……」モジモジ

一夏「いや、無理に言わなくてもいいぞ?」

簪「だから…一夏の、その…」

一夏「……」

簪「み…皆、仲良くしたいってこと」

一夏「…はぁ?」

楯無(我が妹ながら…なんと優しいことか)

楯無「はーい! 解説ありがとね! というわけで、今回はいまいちニブチンな一夏くんを懲らしめ(ゲフンゲフン
   一夏くんと触れ合える機会を、生徒会の方で設けてみました!」

一夏「いや、意味分かりませんから! だいたい、こんなふざけたイベント千冬姉が許すはずが――」

楯無「打診したら、面白そうだからいいって言われたよ? 二つ返事で」

一夏「え?」

楯無「『やれ』って」

一夏「二つ返事どころか二文字ってどういうこった!」ツクエバン!

楯無「そういうわけなので、取り出しましたのはこのクジです!」ドン!

楯無「この中には、is学園関係者から募った数々の無茶振りなミッションを入れてます!
   その中からランダムに引いて、一夏くんに遂行してもらおうというコーナーです!」

一夏「…ちなみに俺に拒否権はないんですね?」

楯無「大人しくやるか、今ここでミストルテインの槍をお見舞いされるかくらいは選ばせてあげるよ?」

一夏「やればいいんでしょ! というか、先輩の本気は洒落にならないですから本当にやめてください!」

楯無「というわけで! 記念すべき最初のミッションは―――」

ゴソゴソ

>>11>>14する、です!!』パンパカパーン!

きたーー


確かにちょっと無理があったな

ショッピング

『鈴とショッピング』する

一夏「ほっ…」

楯無「えっとー…鈴って、あの中国代表の専用機持ちのことだっけ」

簪「…そう」

一夏「無茶ぶりなミッションというから、どんな無理難題かと思えば…。
   よかった。これなら楽勝だな」

楯無「ふっふーん…果たして、そうかなぁ…?」

一夏「え?」

楯無「何でもないよー☆ じゃあはりきって! いってみよーか!」

一夏「…?」

一夏「…まぁいいや。じゃあ、鈴を探さないとな」

~廊下~

鈴「いーちかッ!」

一夏「おお鈴。ちょうど良かった。探してたんだ」

鈴「うん! 知ってるわ! えへへっ!」

一夏「やけに嬉しそうだな…って、え? 知ってた?」

鈴「うん!」

一夏「なんで?」

鈴「何でって…アンタ、何もきいてないの?」

一夏「何を?」

鈴「このイベントはね。全校に向けて発信されてるのよ? あたしたちが知らないわけないじゃん」

鈴「アンタがちゃんとミッションを遂行できているかどうか、アンタの行動は逐一放映されてるわよ。全校放送で」

一夏「…予想はしてたけど俺のプライバシーまで無視ですかそうですか」

鈴「まぁいいじゃない! ミッションは絶対よ! さぁ! 行きましょうか!」

一夏「まぁいいけどさ…」


箒「……」ギロッ

セシリア「ぐぎぎ…」ハンカチカム

シャル「…チッ」

ラウラ「おい嫁。私という伴侶がいるんだ。あまり出過ぎた真似はするなよ」

その他大勢『……』ギリリ…


一夏「な、なんで皆あんなに殺気立ってんだ…?」

鈴「細かいことはいいから! さぁ、早くいきましょ!」ダキッ

一夏「お、おい…あまりひっつくなよ…」

鈴「えっへへー♪」


女生徒達『………』ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

~モノレール内~

一夏「はぁー…なんでこんなことになるんだ…」

鈴「なーによー。あたしが相手じゃ不満なの?」

一夏「いや、だっていきなり連れてこられてコレだぜ? 俺が何をしたってんだよ…」

鈴「…アンタって本当にいっぺん医者に診てもらった方がいいんじゃないかって本気で思えてくるわ。主に耳鼻科に」

一夏「何でお前にそんなこと言われなきゃならないんだよ?」

鈴「知ーらない。はぁ…シャルロットと一緒に行ったときはもっと和気藹々としていたくせに」

一夏「え? なんでお前そんなこと知ってんだよ?」

鈴「(あ、やっば!?)う、うわー! 見て一夏ー! 学園がもうあんなに遠くにー!(棒)」

鈴(もう! 何でこういう時だけ耳が達者なのよ!)

一夏「ん…? あぁ、そうだな…」

鈴「あ! 着いたみたいよ! ほら、早く行くわよ!」

一夏「わかったから引っ張るなって…」

~ショッピング・モール~

鈴「久しぶりに来たけど、やっぱりあまり変わらないわねー」

一夏「そういや、お前と二人きりってのは初めてかもしれないな」

鈴「え? あ、そう言えばそうね!」

鈴(うわぁ…何でこういう時にそんなこと言うのよ…変に意識しちゃうじゃない…)ドギマギ

一夏「うーん…でも、ショッピングって具体的に何すればいいんだ? 鈴は買いたいものとかあるのか?」

鈴「え!? そ、そうねぇ…ええと……」


蘭「あれ…い、一夏さん!?」

一夏「あれ? もしかして、蘭か?」

鈴「…!」

蘭「と、鈴………さん」

蘭「ど、どうしたんですか。こんなところで…?」

一夏「蘭こそ。弾は一緒じゃないのか?」

蘭「お兄…いえ、兄さんは別行動中で…」

一夏「そっかー。あいつも来てんのか。久しぶりに会いたいな」

鈴(もう~! 何でこういう時っていつも邪魔がはいるの~! 弾のバカならまだしも、よりによって蘭だなんて~!)

蘭「そ、それより二人して…どうしたんですか?」

鈴(ん…? 待てよ…? 見方を変えれば、これはチャンスかも…)

一夏「あー、これは―――」

鈴「な、何してるように見えるかしらー!?」ダキッ

一夏「うおッ!」

蘭「……!」

一夏「お、おい鈴…だからいきなり抱きつくなって…」

鈴「なーによー。いいじゃん、今さら」

一夏「そうかもしれないけどさ…」

蘭(い、今さら…!? 何、私の知らないところで…二人って、そういう関係になったの!?)ガーン

鈴(ふっふっふ…いい感じに勘違いしてくれてるわね…)ニヤッ

蘭「え、ええと、その…」

一夏「ん?」

蘭「も、もしかして二人して…デ、デートとか?」

一夏「はぁ? そんなわk」

鈴「そうなのよ! ねぇ、一夏!」

一夏「え?」

蘭「え……」

一夏(お、おい鈴! 何てこと言うんだ!)コソコソ

鈴(いいから! ここは口裏合わせて!)ゴニョゴニョ

一夏(はぁ!? 何でそんなことする必要があるんだよ!?)ボソボソ

鈴(あとでこれは嘘でも罰ゲームとでも、説明してあげればいいでしょ! お願いだから今は合わせて!)コショコショ

一夏(え、えぇー…)

蘭「あ…え……嘘…」

一夏(うーん…まぁ、罰ゲームっていうのはある意味本当だしな…)

一夏(…というか、蘭のやつ、顔色悪いぞ? どうしたんだ?)

一夏(…まぁいいか)

一夏「あ、あー。そうなんだよー。はっはっはー(棒)」

蘭「!!」

鈴「も、もう一夏ったらー☆」

一夏「あ、あははー…そ、そうなんだよなー(棒)」

蘭「」

鈴「そそ、そうなのよー! ねー、一夏ー?」ニコッ

一夏「あっ、ははー。そ、そう、なんだよなー! あっははー(棒)」

蘭「」

鈴(よし! 一夏の辻褄合わせははっきり言って大根だけど、蘭はそれどこじゃない! いける!)

鈴「じゃ、じゃあそういうわけだから、あたし達はこの辺で―――」

一夏「あっははー。お、俺がこいつとデートなんてー。わわ、笑っちゃうよなー(棒)」

蘭「」

蘭「え?」


鈴(一夏のアフォー!!)

蘭「え? な、何を言ってんですか?」

一夏「へ? だ、だってさ。俺が鈴とだなんて――ごふぅ!?」

蘭「ひやっ!?」

一夏(お、お前! いきなり何すんだ!)ボソボソ

鈴(こんのバカ! どんな頭してたらあの場面でああいう台詞が出るのよ!?)コショコショ

一夏(な、何だよ! 俺が何か間違ったとでもいうのか!?)コソコソ

鈴(あぁ、もう! もういいわよ! あんたは黙って―――)

蘭「……」ジィー…

鈴(うッ…)

蘭(…怪しい)

鈴(ヤバイ! めっちゃ見られてる! 疑われてる!)

蘭「…あの」

鈴「ひゃ、ひゃい!? 何!?」

蘭「…確認しておきたいんですけど」

鈴「な、何かしら…?」

蘭「…お二人って、付き合っているんですか?」

一夏「はぁ? そんなわk―――」

 ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

一夏「いででででででででででででででででででででで!!」

蘭「!?」

鈴「も、勿論そうよー! ねっ、一夏!」

蘭「…!?」

一夏「いや、お前…いくらなんでもそれは…」

鈴「イ チ カ ?」

一夏「ひぃッ!?」

鈴「……」

一夏(や、ヤバイ…! 鈴の目が、『ここで話を合わせなければ甲龍の新装備のフルコースをお見舞いしてやる』と言ってる…!)

鈴(もしも話を合わせなかったら、チャイニーズマフィアに頼んであんたのはらわた掻っ捌いて、脳漿ぶちまけて、臓器をホルマリンに漬けたあと、
  闇市に叩き売ってやるわ…)

一夏「……」

鈴「……」

蘭「……」

一夏「は、はい…そうです」

蘭「ッ!?」

鈴「もうー! 照れ屋さんなんだからー!」ツンツン

一夏「……」

蘭「」

鈴(よしっ! 何とかごまかせたわね! あとはこの場を立ち去るのみよ!)

一夏(何で俺がこんな目に…俺が一体何したってんだ…)

蘭「」

鈴「そ、そろそろいいかしら! あたしたち、行くところがあるのよ!」

蘭「!!」

鈴「じゃあ、この辺で――」

蘭「ま、待ってください!」

鈴「ッ…!」

一夏「…?」

蘭「そ、その…二人が、本当に付き合っているっていうんなら…」

一夏鈴「「…?」」

蘭「しょ、証拠見せてください!」

一夏「はぁ?」

鈴「しょ、証拠って…必要あるの? 宣言したし、腕だって組んでるじゃない! ほら、今だって!」グイッ

一夏「お、おい…」

蘭「…確かにそうですけど、でも…」

一夏「?」

蘭「…もし、本当に付き合っているなら!」

鈴「…?」


蘭「…キスしてください! 今、ここで!」


一夏鈴「「はぁ!?」」

一夏「な、何でそうなる!?」

蘭「…付き合っているなら、それくらいのことはできるはずです! さぁ、見せてください!」

鈴「い、意味わかんないわよ! 大体、そういうのってこんな往来でするもんじゃないでしょ! キ、キキキキキス、なんて!」

蘭「…出来ないんですか?」

鈴「そう言ってんじゃないわ! もっと、ムードってもんがあるでしょうが!」

蘭「出来ないんですね!」

鈴「だから、そういう訳じゃないって言ってるでしょ!」

蘭「関係ないです! だって、恋人同士なら…あ、愛を確かめるくらい出来るはずです!」

鈴「あ、愛、だなんて……///」プシュー…

一夏「…なぁ蘭。お前は勘違いしてるぞ。俺とこいつは今日、ばt――」

 ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

一夏(ぎゃああああああああああああああああああ!! お、お前!
   部分展開したisで抓るのはよせ! 本当に肉がちぎれるだろうが!!)

蘭「…そんなことも出来ないで」

一夏「いてて…ん?」

蘭「…キスも出来ないで、恋人を気取らないでください!」

一夏「お、おい…蘭…?」

鈴「…アンタに何がわかるのよ。あたしよりも年下で、一夏と過ごした時間だって短いくせにさ」

蘭「年も、過ごした時間も…そんなの、関係ないです!」

蘭「キスくらいもできないで恋人だなんて…そんなの間違ってます! 私なら、それ以上のことだってしてあげられます!」

蘭「だって…わ、私だって…一夏さんのこと…」

一夏「蘭…?」

鈴「!!(これ以上はまずいわ!)」

鈴「わ、分かったわよ!」

一夏蘭「「へ…?」」

鈴「お、お望みならやったろーじゃない!  今ここで! 混じりっけなしのマウストゥマウスで!」

すまん。今は時間の関係上ここまで。続きは深夜になりそう。

一夏「え…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

蘭「………」

鈴「い、一夏。ちょっと屈んでくれるかしら」

一夏(お、お前! 本気なのか!?)

鈴(本気に決まってるでしょ! ここまで言ったら引き下がれないわよ!)

一夏(いや、こればっかりは本当に洒落にならないぞ!)

鈴(いいの! そ、それにあたし…)ゴニョゴニョ

一夏(ん…?)

鈴(あ、あたし! アンタだったら―――)

蘭「…また相談ですか?」

鈴(―――!)

鈴「……」

ズイッ

一夏「――!?」

鈴「……///」

一夏「え…ちょ…り、鈴…?」

鈴「……///」

蘭「…さぁ。鈴さんは待ってますよ。いいんですか?」

一夏「え…いや……えぇ!?」

鈴「……」

一夏(り、鈴の顔がこんな近くに…)

一夏(ギュッと目をつむって、顔を耳まで真っ赤にしながら…待ってやがる…)

一夏(ほ、本当にやるのか!? やらなきゃならないのか!?)

鈴「……///」

一夏(い、いいのかよ…鈴はただの幼馴染だし、俺のことどう思ってるか分かったもんじゃないし、済んだら済んだでまた殴られそうだし…)

一夏(鈴の奴、いい匂いがするな…。香水とかスプレーとか、飾りっ気のない石鹸のいい匂い…唇もすごく柔らかそうで…)

一夏(――って、俺のバカ!! 何考えてんだ!?)

鈴「……ぃ///」

一夏(あぁもう! やるのか!? やるしかないのか!? どうなんだよ、俺!)

鈴「…ぃち、…か……はや、く……」

一夏「り、り―――」

一夏「―――」


プル…プル…

一夏(…鈴の奴。震えているじゃないか)

一夏「……」チラッ

蘭「……?」ドキドキ

一夏(…蘭の奴も不安そうに見つめてやがる)

一夏(…何やってんだ俺。こんなに鈴に無理させるなんて)


鈴「ぃ、一夏ぁ……はやく、して……これ、恥ずかし――」

一夏「鈴。もういい。やめろ」

鈴「え………」

蘭「え…?」

一夏「…ごめんな、蘭。からかいすぎたよ」

蘭「へ…? か、からかう? どういう、ことですか?」

一夏「全部嘘だったんだよ。俺と鈴が付き合ってるってのも、今日がデートだってのも」

蘭「え…?」

鈴「……」

一夏「…ごめんな蘭。騙すような真似して」

蘭「な、何だ…じゃあ、付き合ってるわけじゃ、なかったんですね。良かったぁ…」ホッ

一夏「? 何でそこでほっとするんだよ?」

蘭「え? あ、いや! べべ、別に何でもないですよ!?」ブンブン


鈴「……バカ一夏」ボソッ


一夏「ほら鈴。お前も謝れよ」

鈴「うっさい」プイ

一夏「おい! お前、その態度はないだろ!」

鈴「うっさいって言ってんでしょ! このバカ一夏!」

一夏「はぁ!? どうしてお前にそう言われる筋合いがあるんだよ!」

蘭「あ、あのぅ…」

一夏「大体今日のお前、おかしいぞ!? 変に意固地張ったり、無理して顔赤くしたり! 本当に何なんだよ!」

鈴「あんたには何の関係もないでしょ! ほっといてよ!」

一夏「なッ…こ、のぉ…!」

蘭「あ、あのぉ!!」

一夏鈴「「…?」」

蘭「ええと…じゃあ今日は、二人で仲良く買い物、って感じですかね?
  なら、こんなとこで喧嘩は、その…良くないと思いますよ?」


一夏「…別に喧嘩じゃねぇよ。こんなのも、ただの罰ゲームだしな」

鈴「……!」

蘭「……え」

蘭「罰、ゲーム…?」

一夏「ああ。うちの会長の余興でさ。何だか訳のわからないままにイベントに引っ張り出されて、
   流れのままにこいつと買い物をすることになったんだ」

一夏「本当に面倒な厄介ごとが大好きだからなうちの会長…こっちは溜まったもんじゃねぇよ…」

一夏「悪かったな、蘭。お前まで巻き込むことになって――」

蘭「…一夏さん」

一夏「ごめん。鈴には俺からちゃんと言っておくから。俺はさっさと――」

蘭「あ、あの…」

一夏「ん?」

蘭「後ろ…」

一夏「後ろ?」クルッ


鈴「……ぁの」

一夏「は?」


 ドッゴォォォォォォ!!


鈴「一夏の…バカァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

鈴「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん…!!」

 タッタッタッタッタ…

蘭「え、ええと…大丈夫、ですか…? 後頭部にモロ入ってましたけど…」

一夏「いてて…なんか目の前に星が見えら…まぁ、isじゃなかった分だけ幸いと思うことにしよう」

蘭「え? 今、なんて言いました? isで…?」

一夏「ああ。なんか知らんけど鈴のやつ、キレるとisで俺に殴り掛かるんだよ」

蘭「えぇ!? それって、下手したら死ぬじゃないですか!」

一夏「そうなんだよな…ったく、あいつってば昔から加減というものが下手だったからなぁ…いてて」

蘭(鈴さん…久しぶりに会って丸くなったと思ったら、さらに悪化してるだけのような気が…)

一夏「はぁ…ったく。まぁこんなことは毎度毎度のことだけど、今回のはいくら俺でも愛想が尽きるぞ」

蘭「え…?」

一夏「まったく、今日のあいつはいつもに増して変だったなぁ…。
   最初はやたらウキウキしてるかと思えば、最後はキレてどっか行っちまうし…」

蘭「い、一夏さん…?」

一夏「んー?」

蘭「あ、あの…鈴さんが何で怒っているか、本当に分からないんですか?」

一夏「…分からないし、分かりたくもないね。人にろくに謝りもしない奴の気持ちなんか知りたくもないな」

蘭「……!」

一夏「ったく、そうは言っても、ミッションはやらなきゃな…あぁ、憂鬱だ…」

蘭「い、一夏さん!」

一夏「ん? なんだよ。俺、鈴のバカを探しに行ってやらないと…」

蘭「…あの」

一夏「…?」

蘭「その、ええと……」




蘭「…ごめんなさい!!」



 パシーン!!

一夏「いってぇ…! な、何すんだよ蘭! 鈴ならともかく、お前まで暴力を振るうような奴だなn――」

蘭「一夏さん! 鈴さんが怒ったの、本気で自分のせいじゃないと思ってるんですか!?
  もしそうだとしたらあなた、最低ですよ!」

一夏「はぁ!? お前にまでそんなこと言われるなんて…本ッ当に、訳が分からねぇよ!!」

蘭「……!!」

蘭「…もういいです。私が間違ってました。鈴さんが全面的に正しいですね。
  私は年端もいかなくて、乳臭い世間知らずの中学生ですよ」

蘭「でもね! だからこそ、好きに言わせてもらいますよ! えぇ、そりゃもう好き勝手に言わせてもらいます!」

一夏「?……?」




蘭「アンタね!! ふざけんのもいい加減にしなさいよ!!」

一夏「え…? お、おい…蘭……?」

蘭「正直いってここまで鈍感だなんて思いもしなかった! 何よあの態度! 鈴の気持ちだって1%も理解してないくせにさ!」

蘭「鈴があの時、どんな気持ちだったか本気で考えたの!? 本当にしょうもない理由で人に謝れないようなヒネくれた奴だと本気で思ってるの!?
  それでよく鈴のこと、知ったような態度ができるわね!」

一夏「……」

蘭「たとえフリだとしてもね! 女の子がデートを頼むのってどんな気持ちか考えたことある!?
  売店でアイスクリームを頼むくらいの気軽さで頼んでいると思ってんの!?
  ふざけんな! 女の子を何だと思ってんのよ!!」

蘭「もし、そうなら病院に行った方がいいよ! 何なら私が今ココで呼んであげる!」

一夏「……」

蘭「ましてや、あの鈴がだよ!? 素直になれなくて、口よりも先に手が出るようなあの子が、あんなに勇気出したんだよ!?
  なのにアンタのしたことって何よ!? 友達気取っていい面見せてるだけじゃない!
  バカにすんのも大概にしろ! ふっざけんじゃないわよ!!」

一夏「……!」

蘭「女の子がキスを許す相手くらい、アンタにだってわかりそうなもんじゃない!?
  そんな単純なこともわからないの!? ねぇ、本当に呼ぶ!?
  救急車をさ! 本当はすぐにでも呼んであげたいくらいだよ!!」

蘭「ねぇ、本当にアンタはアイツの何なのよ! 答えなさいよ! 自称鳳鈴音の友達の、織斑一夏さん!!」

一夏「……」

一夏「……」

一夏(そっか…)

一夏(俺は、あいつのこと…表面的なところでしか、見てなかったんだな…)

一夏「…そう、だよな。あいつが、詰まらない理由であんな態度とるわけないよな…」

一夏「…友達のつもりで、分かってやっていたつもりでいたんだ俺…」

一夏「…ごめんな、蘭。本当にごめ――」

蘭「~~~~~~~~!!」

蘭「あぁもう!! 私に謝ってどうすんのよこのバカ!!」

一夏「……!」

蘭「悪いと思ってんだったら、気の1つくらいは意地でも利かせてあげなさいよ! 男でしょうが!」

一夏「……」

一夏「…そう、だな」

一夏「悪い! 俺、鈴を捜しに行ってくる!!」ダッ

一夏「蘭! ありがとう! 本当にありがとう!!」



 タッタッタッタッタッ…



蘭「はぁ…何やってんだろ、私…」

弾「よっ。お疲れさん」

蘭「ゲッ…お兄…いたの?」

弾「いたのって…あんなに大声で喚き散らしていれば、そりゃ誰だって駆けつけるっつーの」

蘭「あ…」


ざわざわ…


蘭「うわ、やば…お兄! 早く逃げよ!」

弾「あいよ、お姫さん」

~休憩所~

蘭「はぁぁ…私…一夏さんに嫌われちゃったかなぁ…」

弾「何だよ。てっきり、愛想つかせたのかと思ったぜ」

蘭「そんなわけないでしょ。…まぁ、あんだけ言ってすっとぼけていたら、流石にドン引くけどね」

弾「…いいのかよ。お前、鈴の奴に塩を送ったことになるんじゃないか?」

蘭「それとこれとは別よ。…流石に見てられないわ。鈴は恋敵である以前に、友達だもの」

弾「…そっか」

蘭「まぁそれでもやっぱり、一夏さんのことは諦めないけどね。今はあっちにアドバンテージがあるけど、絶対に巻き返してやるんだから」

弾(誇りに思うべきか、心配すべきか…)

蘭「はー。怒鳴ったら喉渇いちゃった。お兄。なんかジュースでも買ってよ」

弾(…いや、誇りに思うべきだな。それでこそ、俺の妹だ)

弾「よっしゃ。今日は太っ腹だ。アイスを買ってやろう」

蘭「えっいいの!? 私、3段食べたい!」

弾「おう! 3段だろうと5段だろうと、好きなのを選べ!」

蘭「やった♪」

~モール屋上:児童遊園地広場~

鈴「う…ぐす……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…えっぐ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

鈴(バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!!)

鈴(一夏のバカ! 何よ何よ!)

鈴(…バッカみたい! 一人だけ舞い上がって、浮かれて、喜んでいたのがバカみたい!)

鈴(一夏は結局…私のこと幼馴染以上には見てくれない! いや、今日のことでもっと嫌われた! 絶対そうだ!)

鈴(何よ情けない! 偉そうに! 私の気持ちに気付いてくれないくせに! 酢豚の約束も…忘れていたくせに!)

鈴(そんで…そんで…素直になれないくせに…意固地になって…結局、迷惑をかけることしかできない…)

鈴(こんな…こんな自分が、大嫌い!)

鈴「いぢ、がぁ……うぅ、ぅあ…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

鈴(…そういえば、前にもこんなことあったっけ)

鈴(パパとママが喧嘩して…あの日はすごい険悪で…我慢できずに、家を飛び出して…)

鈴(あの日は、凍えるように寒い日で…)

鈴(…でも、一夏が見つけてくれて…その頃からあたし…あいつのこと…)

鈴(でも…でも、今は……)

鈴「うッ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」







一夏「鈴!!」

鈴「――!!」

一夏「はぁ…はぁ…はぁ…さ、探したぞ……ここにいたのか…」

鈴「いち、か…?」

一夏「鈴…ごめんな。俺、お前のこと誤解してた。お前の気持ち…考えてやれなかった…」

一夏「そんなんで、友達面してた俺…最低だよな。本当にゴメン、鈴」

鈴「~~~~~~~!!」

鈴「……!」ズッ ゴシゴシ

鈴「何よ! 今更、何しに来たっていうのよ! 帰りなさいよ!」

一夏「いやだ! 俺は、まだお前にちゃんと謝ってない!」

鈴「余計なお世話よ! いいわよ! どうせこんな罰ゲーム、あんただって不本意じゃない!
  適当に済ませて、さっさと帰りなさいよこのバカ!」

一夏「…お前がどう思ったって…俺は、お前と一緒に帰る!」

鈴「うっさいバカ! こっち来るな! 帰りなさいよ!」

一夏「鈴……」

鈴「……ぐす」

鈴(あぁ…私、また意地になってる…本当に、反吐が出るわ…)

鈴(本当は嬉しいのに…ありがとう、って言いたいのに…)

鈴(何で…何でこんな不器用にしかできないんだろ……)

鈴「うッ…うぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

一夏「鈴…」

スッ…

鈴「…?」

一夏「…とりあえず、これ使ってくれよ。泣いてるお前…見たく、ないから」

鈴「……」ヒョイ

フキフキ

鈴「……」

一夏「その、さ…。悪かったな。あんなこと言って」

鈴「…何よ。本当に分かってるの?」

一夏「…ごめん。正直、俺はお前が何で怒っているのかは、よく分からない」

鈴「―――!!」

一夏「でもな…お前があれだけ怒っているってことは、よほどの事情がないかぎりあり得ない。
   その…少なくとも、俺のせいだってことくらいは分かる」

一夏「だから、その…俺のせいなのに有耶無耶になったまま、お前と喧嘩するのは…嫌だ」

鈴「……」

一夏「なぁ、教えてくれないか? お前、何であんなに怒っていたんだよ。俺のどこが、気に食わないんだよ」

鈴「…だからアンタってやつは」

一夏「え?」

鈴「そう! そうやって聞き返すところ! 何でアンタっていつも、
  そうやって狙いすましたかのようにそういう態度ができるの!?」

一夏「鈴…?」

鈴「そうやって思わせぶりな態度とられるの、本当に腹が立つの! それとも何!?
  ひょっとしてわざとやってるの!? あたしを、あたしたちを弄んで楽しいの!?」

一夏「…何のことだよ」

鈴「また出た! 自分は何も関係してない、そういう風に装われる気持ち、考えたことあるの!?
  アンタのそういう優柔不断でフラフラしているところ見るの、イライラするのよ!」

一夏「……」

鈴「…自分だけが舞い上がってさ。本当に虚しくなるのよ。アンタ、何がしたいのよ…。
  何でそんなに優しくできるの…。やめてよ…迷惑、なのよ」

一夏「……ごめん」

鈴「…謝らないでよ、バカ」

一夏「…おい何なんだよ。お前、さっきから言ってること滅茶苦茶だぞ?」

鈴「誰のせいだと思ってんのよ! このバカ!」

一夏「ッ……」

鈴「…どうせあたしのこと、ただの幼馴染だとしか思ってないくせに…。今日だって、本当は迷惑してるくせに」

一夏「……!」

一夏「そんなこと、あるわけねぇだろ!」

鈴「何よ! またそうやって思わせぶりな態度とって! いいわよ! 取り繕ってくれなくても!」

一夏「嘘じゃねぇ!!」

鈴「ッ……!」ビクッ

一夏「…確かに会長の人を引っ掻き回す癖には頭を抱えるよ。正直、本気で参ってるくらいだ」

一夏「でも…こういうイベントで最初にお前とやれるってわかった時、すごくホッしたんだ」

鈴「…うそ」

一夏「嘘じゃない。本当に、俺はお前とこういうことやれて…良かったと思ってる。お前なら気兼ねとかそういうのなしでやっていけると思ったからな」

鈴「何よ、それ……」

一夏「…お前の手癖の悪さは確かに困りもんだよ。isを身に着けてからは、命の危険さえも感じているからな」

一夏「でもさ。それを含めて、お前は全力で俺に向かってくれているってことだろ? 俺に、本気でぶつかってくれてるってことだろ?」

一夏「俺にはそれが心地よくてさ…バカみたいに楽しい」

一夏「俺、お前といると…そういう気分になるから。資格はないと思っても、お前の友達だって信じてるから」

一夏「だから…そんな奴とこんなことするの…楽しくないわけ、ないじゃないか」

鈴「……」

鈴「…本当にさ」

一夏「…ああ」

鈴「あんたって、バカで、無茶苦茶で、気持ち悪いくらい愚直でさ…」

鈴「そんでもって…すごく、気の利かないバカ。大馬鹿。もう超ど級天元突破にバカ」

一夏「……」

鈴「…でも」

一夏「…?」

鈴「あたしも…あんたとそうやっているの…すごく楽しい。」

一夏「……」

鈴「あたしも大馬鹿ね…」

一夏「…かもな」

鈴「うっさい。アンタの方がバカよ」

一夏「ははは、そうかもな」

鈴「ふふっ」

鈴「もう少し、気の利いた台詞でもないの?」

一夏「…すまん。これが…俺の精一杯の本心だ」

鈴「ハァ…ったく」

一夏「……」

鈴「…ギリギリ」

一夏「…?」

鈴「赤点ね」

一夏「は…?」

鈴「だから、クレープ奢ってくれたら許す」

一夏「え」

鈴「それでチャラにしてやるって言ってんの。ここの名物、超ゴージャスデリシャスファベラスマックスクレープ。あんたの奢りで」

一夏「え…いや、あれ…1000円くらいすんだけど…」

鈴「何よ。文句あるの?」

一夏「…いや。分かった。10個でも100個でも買ってやる」

鈴「いいわね。じゃあ土産含めて1000個ね」

一夏「おい」

鈴「あっはは。冗談よ。1つでいいわ」

一夏「…ったく」

鈴「…ねぇ一夏」

一夏「なんだ、鈴」

鈴「あたしさ…このままで、いいんだよね?」

一夏「…真っ直ぐ突っ走ってくれた方が、俺は安心する。それが鈴だからな」

鈴「何それ。褒められてる気がしないわ」

一夏「そうか?」

鈴「そうよ」

一夏「ははっ、そうかもな」

鈴「って、おいコラ」

一夏「あははは」





鈴「ありがと、一夏…」ボソッ

~飲食街~

鈴「んー♪ 他人の財布で食べるデザートはやっぱ格別ねー!」

一夏「なけなしの英世が3人も…トッピングその他でここまでにするなんて…こいつ鬼だ…」

鈴「んー? なんかどっかの甲斐性なしが怨嗟の声を漏らしてる気がするけど…気のせいだよね!」

一夏「ったくこいつは…」


蘭「お兄! これ持ってて! 溶ける!」

弾「お前…一体いくつ食うんだよ…」

蘭「何よ! 好きなだけ食えって言ったのお兄じゃん!」

弾「いや、そうだけどさ…あぁ、おれの一葉が……」


弾「おっ」

蘭「えっ」

鈴「あっ」

一夏「ん?」

弾「おー。なんだ、一夏と鈴じゃないか。奇遇だな」

一夏「そういう弾こそ。会えて嬉しいぜ」

蘭「あ、あの、一夏さん…」

一夏「ん?」

蘭「その…さ、さっきはごめんなさい…私、偉そうなことを…」

一夏「何言ってんだよ。むしろ、感謝してもしたりない位だぜ」

蘭「あ……」

一夏「…情けないよな。年下の蘭に言われるまで、気付いてやれなかったよ俺…。でも、本当の気持ちに気づけた気がするよ」

一夏「それもこれも、蘭のおかげだ。本当にありがとう、蘭」

蘭「い、いえ……」

蘭(ん…? ちょっと待って…一夏さん、鈴の気持ちに気づいたってことは…)

蘭(そして、この2人の和気藹々とした雰囲気…! ま、まさか私…やっちゃった!?)

蘭(どどどどどど、どうしよぉぉぉ!? 塩を送るだけのつもりがキューピッドになるなんて、笑い話にもなりゃしないわ!)アタフタ

鈴「あー蘭。動揺しているとこなんだけど、多分アンタの思ってる通りにはなってないから安心して」

蘭「へ……?」

一夏「…何のこと言ってんだ?」

弾「…お前は相変わらずブレねぇな」

一夏「?」


蘭弾((ホッと胸を撫で下ろしていいのか、ますます不安になればいいのか…))


一夏「っていうか蘭、どんだけ食うんだよー。鈴も大概だけど、お前も大食いだなー」

蘭「なッ!? い、いやこれはその! これ、全部お兄のですから!」

弾「え…? あぁ、うん…実はそうなんだよ…ははは…」

鈴「ちょっとアンタ…あたしが大食いって何よ…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

一夏「え…いや、その…アハハハハハハハハ…」



弾蘭((はぁ…先が思いやられるや、コリャ……))タメイキ×2

鈴「…ねえ蘭」

蘭「なんですか?」

鈴「ちょっとこっちきて」チョイチョイ

蘭「…はい」



鈴「その…ありがとね。なんか、気を使わせたみたいでさ」

蘭「…いえ。気にしないでくださいよ」

鈴「ううん…あたし、嘘ついてまでアンタを出し抜こうとしたのにさ…なのにアンタはここまでしてくれて…」

鈴「ごめんね。そして、本当にありがとう」

蘭「…気にしないでいいですから」

鈴「そっか。じゃ、アンタもそんな気を使ったしゃべり、やめていいわよ」

蘭「そういうわけにもいきません。一夏さんが近くにいますから♪」

鈴「ぐ…精根逞しいわね、ホント…」

蘭「…ねぇ鈴さん」

鈴「なに?」

蘭「…確かに、過ごした年月じゃ鈴さんや、前にあった箒さんには負けるかもしれませんけど…」

蘭「でも私、追いついてみせます! 一夏さん、絶対に諦めませんから!」

鈴「…宣戦布告ってわけね」

蘭「あ、でも友達のよしみで鈴さんなら2号にしてもいいですよ?」

鈴「ぐっ、この…一夏にアンタが猫かぶってるの、バラすわよ?」

蘭「んー? できるんですかー? ほんとにー?」

鈴「きぃぃぃぃ! このガキャァ…!」

蘭「うふふ♪」

鈴「…分かったわよ。黙っててあげるわ。これで借り貸し0ね」

蘭「そうしてください。余計な負い目持ってもらっても、迷惑ですから」

鈴「ったく…」

蘭「ふふっ♪」

鈴「…じゃあせめてものお礼って言うのも何だけど」

蘭「はい?」

鈴「その…一緒にまわらない?」

蘭「…はい!」

鈴「…よかったわ」

蘭「でも、いいんですか?」

鈴「いいのよ。だってこれじゃあ、フェアじゃないもの」

蘭「そうですか。じゃあ、遠慮なく――」


ダキッ



一夏「うわ!?」

蘭「一夏さん! 一緒に回りましょ! 私、買いたい服があるんです! 一夏さんに見てもらいたくて!」

鈴「ちょ、ちょっと! さすがにそこまでは許してないわよ!」

蘭「自分だって散々したくせに~ねっ、一夏さ~ん」スリスリ

一夏「うぉ!? お、おいやめろ、蘭!」

鈴「きぃぃぃぃぃ! やっぱアンタは、ここで排除すべきね!」

蘭「え…いや、ちょっと…ここでisは反則ですよ~!!」

鈴「問答無用よ! 覚悟~!」

蘭「ひぇ~~~~~~~~~~~~!!」


一夏「…何なんだよ、いったい…」

弾「…なぁ友よ」

一夏「ん?」

弾「もし妹泣かせるような真似したら…お前といえどタダじゃおかないからな」

一夏「はぁ…? んんまぁ、俺だって許さないけどな。蘭を泣かす奴がいたら、ぶっとばしてやるよ」

弾「いや、だから…あぁもう、いいや…」

一夏「?」

~レディース・カジュアルコーナー~

鈴「うわぁ! これ、可愛い!」

蘭「こっちもいいですよ! 着合わせしてみましょうよ!」

鈴「いいわね! あ、このリストバンド、これに合いそう!」

蘭「こっちのサンバイザーとも合いそうですよ!」

鈴「う~ん…じゃあ、全部やっちゃいましょう!」

蘭「はい!!」



弾「…なぁ一夏」

一夏「なんだ、弾」

弾「俺、一つ法則を発見したんだ…」

一夏「奇遇だな、俺もだ」

弾「…じゃあ、せーので言ってみるか」

一夏「いいな。せーのっ」


「「女2人の買い物は、1人の時より10倍疲れる…」」

蘭「ふぅ~。買いましたね~。じゃあ次は、これに合う下着を買わないと」

弾「ま、まだあるのかよ!?」

鈴「それもいいけど、靴も合わせないとね。あと、小物店とかも一通り見たいし…」

蘭「もういっそ、全部のフロア回っちゃいません?」

一夏「うっ…このモール…8割は女物だぞ…」

弾「…俺、今初めて女尊男卑を本気で恨みそうになったわ」

一夏「はぁ…これ以上はこっちの身がもたな―――」

一夏「ん…?」

弾「おい一夏。何やってんだよ。次はアロマコーナーだってよ」

一夏「…わり、弾。先に行っててくれ」ダッ

弾「え…いや、ちょっとまて! 勝手に行くなよ! お前がいないと、荷物は俺が全部…」

蘭「お兄! ボサっとしない!」

弾「ひっ!?」

鈴「ちなみにその小物入れ、落として割ったりしたら龍砲だからね!」

弾「ひぇ~~~~~~~~~!?」

~何やかんやで帰りのモノレール~

一夏「はぁ…つ、疲れた…」

鈴「んー…たくさん買ったけど、やっぱり季節モノとかは定期的にチェック入れるべきね。また行きましょ!」

一夏「ま、また行くのか…」

鈴「何よー? 嫌なのー?」

一夏「い、いやいいんだけどさ…次からは手加減してくれ…」

鈴「はぁ?」

一夏「あ、そうだ。鈴、これやるよ」スッ

鈴「え?」

一夏「さっきの買い物のついでに買ったんだ。お前にやる」

鈴「え…。一夏が、あたしに?」

一夏「ああ。お前に似合うと思ってさ」

鈴「そ、そうなんだ…。開けていい?」

一夏「ああ、もちろんだ」

鈴「じゃあ、遠慮なく」


パカッ


鈴「これは……髪留め?」

一夏「ああ。お前、いつも同じリボンしてるからさ。たまには、そういうのもいいかなって」

鈴「…ありがと。大切にするわ」

鈴(…レモン色の、ビーズの入った髪留め…とても綺麗…)

鈴(…ふふっ。何だか、あたしみたい。元気いっぱいなのに、素直になれない刺激がある感じが)

鈴(…でも本当はちゃんと甘い部分もあるんだよね。気付いているのかな、一夏)

鈴「ねえ。付けてみていい?」

一夏「ああ。もちろんだ」

鈴「じゃあ、早速」シュルッ

一夏「おぉ…」

鈴「これをこうして、と…」キュッ キュッ

鈴「…どうかな?」

一夏「…似合ってると思うぜ、すごく」

鈴「そっか…えへへ」

鈴「ありがと。絶対に大切にする」

一夏「ああ。よろしく頼む」

鈴「えっへへ…」

~生徒会室~

楯無「おっつかれさーん! ミッションコンプリート、おめでとー!」パーン!!

一夏「うお、びっくりしたぁ…! って、え? 見てたんですか?」

楯無「そりゃぁモチのロンよー! 一夏くんと鈴ちゃんの恥ずかしいあんな姿や、こんな姿まで!」

楯無「というわけで、二人の輝かしい青春の1ページを、プレイバーック!!」ピッ


『俺、お前といると…そういう気分になるから。資格はないと思っても、お前の友達だって信じてるから』


一夏「う、うわ―――――――ッ!! やめてください! 恥ずかしいです!!///」

楯無「いやー、いいねー…お姉さん、こういうのって好きだよ!」

簪「絶賛…放映中…」

一夏「もういっそ殺してくれ…! い、いつ…というかまさか、つけてきていたんですか!? 
   ずっと!? え、でも、あそこには学園の誰も…」

楯無「そりゃーすぐ見つかるようなヘマはしないさー。光学迷彩を使っているからねー」

簪「篠ノ之博士の…お手製…」

一夏「いや、それスレ違いですから! 別スレのネタを当たり前に流用しないでください!」

楯無「さぁーて…次なる一夏くんの鬼畜ミッションは…」

一夏「ま、まだやるんですか…正直、すごくヘトヘトなんですけど…」

楯無「ショッピングだと嘗めてかかったツケだねー」

楯無「でも残念! 会長の手は急には止まりません!」スッポーン

一夏「あぁぁ…もう俺には、安息の日々は戻らないのだろうか…」

楯無「ふむふむなるほど…では発表します!」

楯無「次のミッションは…『>>95』です!!」

というように、こんな感じで1つの安価をじっくりまったり消化していくスレでございます。
気の続く限りではとりあえず1000を目指すけど、果たしていつ埋まるやら…。
>>95は誰々と、何々するまで、ちゃんと明記してくださいな。まぁワンサマ一人でできる安価なら行動のみで記入でオナシャス。

今日はこれで終わり。続きは多分明後日。
つかれた…じゃあの

安価キツそうだな

セシリアに料理教える


そしてじゃあのに既視感

今のvipじゃisスレ立てにくいからこっちでのんびりやってくれ

一夏の鈍感は病気どころの話じゃないけど
ブツブツいうくらいなら素直に明確な言葉で告白すればいいじゃんと
ハーレム系のものみるたび思うよね
まあ、そうしたらその時点で物語終わっちゃうんだけども

ういっす。ちょっと時間の都合上途中で抜けてしまうけど、とりあえず書けるとこまで書く

>>96
「じゃあの」は確かに好んでよく使ってるけど、元々どっかの書き手のを真似しただけだしそう珍しいものでもないと思われ

>>97
その辺の匙加減が本当にメンドイ

『セシリアに料理教える』

楯無「セシリア…あー知ってる知ってる! 確か入学試験を首席で合格した才女さんだよねー!」

一夏「」

楯無「あれー? なんか意外だね。これは本当に楽勝じゃない? どうなの、簪ちゃん」

簪「…私は、よく知らない…。けど…」

楯無「けど?」

簪「なんか一夏…すごく、落ち込んでる……」

一夏「」

楯無「え? どうかしたの、一夏くん?」

一夏「え? あぁ、いえ…別に……」

一夏(言えない…セシリアに料理を教えるなんて…正直言ってネッシーに半田付けを教えるようなもんだって言えない…)

一夏(でも確かこれ、全校放送だったよなぁ…言うとなんかセシリアに悪い感じがするし…)

一夏「はぁ…」

簪「一夏、大丈夫? 脂汗、すごいよ?」

楯無「何だかよくわからないけど、とりあえずお悔やみを申し上げておくね。でも、ミッションは絶対だからね! 残念でした!」

楯無「というわけで、今回は『料理を教える』というミッションですが…教えてあげてハーイ、オシマーイ!
   っていうんじゃいくらなんでも詰まらないよねー」

楯無「そこで! こちらから作っていただく料理を出させていただきます! それを私が食べてokだせばクリアー!ということでオナシャス!」

楯無「はたして一夏くんは、私の舌を唸らせることができるか!? さーて、気になるお題ですがー…」


楯無「これぞ家庭の味! 『肉じゃが』です!!」


簪「…定番と言えば、定番だね」

楯無「そうだね! でも、中々いいと思うんだ! 煮物って家庭の味をよく表すしね!」

一夏「はぁ…」

楯無「さぁーて、じゃあチャッチャと始めてくださいな!」

一夏「はぁーい…」トボトボ

~廊下~

セシリア「一夏さーん!」タッタッタ…

一夏「おぉ…セシリア」

セシリア「何ですの、そのやる気のない…というより、生気のない表情は」

一夏「え、ええ…。そ、そんなことないぜ! ははは…」

セシリア「まったく…せっかくこの私がお相手に授かれたというのですから、もっと光栄に思ってくださいまし」

一夏「は、はぁ…」

セシリア「何なんですのホント…でもまぁそんな落ち込まれていても、
     私の肉じゃがを召し上がっていただければ、辛気臭さなんて吹き飛んでしまいますわ!」

一夏(前々から思っていたけど、なんでセシリアって料理の腕の悪さの自覚ないんだろ…)

セシリア「それでは参りましょう、一夏さん!」イソイソ

一夏「あ、ああ…そうだな」トボトボ

セシリア「で、どこで料理をなさいますの?」

一夏「うーん…そうだなぁ…学校の家庭科室でもある程度材料は揃っているだろうけど…家で使っている
   調味料と違うから、匙加減が狂うんだよなぁ…」

一夏「出来れば食材選びから行きたいんだけど、ちょっと遠いし…」

セシリア「ふむ…なるほど……」

セシリア(むむむ…? ちょっとお待ちくださいまし…)

セシリア「―――!」ピコーン!

セシリア「あ、あの…材料から選ぶというのであれば、
     一夏さんが普段からご贔屓になされているお店に伺うのがよろしいのではなくて?」

一夏「へ? まぁ、そうなるけど…でも、ここからだとかなり遠くなるぜ?」

セシリア「何もここに戻る必要はありませんわ。もっと近くで調理しても問題ないでしょう?」

一夏「そりゃそうだけど…でも、一体どこで…」

セシリア「い、一夏さんのお宅じゃいけませんの?」

一夏「え」

一夏「お、俺の家で?」

セシリア「え、ええ…そうすれば、時間の短縮も出来ますし、一夏さんも自宅のモノを使われた方が、教えやすいでしょう?」

一夏「うーん、まぁ確かに」

セシリア(ふっふっふ…我ながらナイスアイデアですわ!)

セシリア(こうすれば、ごく自然に二人きりの環境を作り出すことができ…
     尚且つ、今日という今日は誰の邪魔も入りません! それは生徒会長のお墨付きですわ!)

セシリア(鈴さんの失敗は、公共性の強い場所を選んでしまったせいで知人と会ってしまった点ですけど…
     あいにく、私は同じ轍は踏みませんわ! ふふふ…私の頭脳が末恐ろしいですわ!)

一夏「よしっ。じゃあ、そうすっか」

セシリア「は、はい!(やりましたわ!)」

~行きのモノレール~

一夏「…何だか嬉しそうだな」

セシリア「ふっふーん♪ そうですかー?」

一夏「…まぁいいけどな(出来はともかくとして、料理を楽しんでくれるってのは悪い気がしないしな)」

セシリア(ああ、久しぶりに一夏さんと二人きり…もう、夢見心地ですわ!)

一夏(おっと。俺はとりあえず買い物の算段を考えなければ)

一夏「うーん…家に何があったかなぁ…とりあえず肉はあったかもしれないけど、作り直すのを考えると多めに買った方がいいし…」

一夏「…いっそ調味料以外は全部買っちまうか」

セシリア「今日はどちらに行かれるんですか?」

一夏「いつも行くスーパーだよ。今日は確か卵が安かったはずだ。余っていたら買っておこう」

セシリア(スーパー? 聞いたことないブランド名ですわね)

~とあるスーパーマーケット~

一夏「ふぅー。平日のこの時間だから、だいぶ空いてるな」

セシリア「スーパーと聞いて何かと思えば…マルシェの事でしたのね」

一夏「じゃあボチボチいくか。まずは野菜コーナーから」

セシリア「はい!」



一夏「まずはじゃがいもだろー。うーん…2人分なら1袋もあれば十分だろうけど…」

一夏「……」チラッ

セシリア「……?」

一夏「…1箱買っておくか」

セシリア「一夏さん…このジャガイモ、1個で39ポンドもするのですの? 随分と著名な農夫がお作りになったのですね?」

一夏「いや、セシリア…それ、1つ39円だからな…」

セシリア「え? 39円…?」

一夏(うわぉ…ポカンとしていらっしゃる…流石はお嬢様…)

一夏(きっと『何ということですの! そんな些末な値段で、こんなものを購入できるのですの! 信じられませんわ!』とか思ってんのかな?)

一夏(…って、幾らなんでも失礼か)

セシリア「あ、あの…一夏さん?」

一夏「ん? なんだ、セシリア」

セシリア「は、恥ずかしい話ですが…39円というのはどれくらいですの?」

一夏「は?」

セシリア「私、基本的に買い物はカードで済ましますので…現金にしても、紙幣以外あまり見たことないのでよくわからなくて…」

一夏「」



一夏(予想斜め上だった…)

一夏「とりあえず、アスパラガスと人参、あとはほうれん草と大根もいいかもな。一通り買っておくか」

セシリア「一夏さん。このルッコラなんかも良くては?」

一夏「んー…そういう洋食の葉菜ってよく分からないけど…まぁ買ってみるか」

一夏「ええと、あとは白滝と、豆腐と、豚のバラ肉と…あとは調理酒も切れかかってるから買っておくか」

セシリア「一夏さーん。お酒なら、ワインなどどうでしょうか?」

一夏「いや、和食には合わないから勘弁してくれ…豚肉とも相性良くないし」

セシリア「そ、そうですか…」

一夏(…何だか)

セシリア(…こうしてると)


((夫婦みたいだな(ですわね)))


一夏「……」

セシリア「……」

一夏(な、何考えてんだ俺は…///)

セシリア(一夏さんと夫婦…あぁ、なんて素敵な響きですの…考えただけで幸せですわぁ…♥)

セシリア「あ、ケーキなども置いてありますのね!」

一夏「おいおい…まさか買う気じゃないだろうな…」

セシリア「うーん…興味はありますが、あまりいい出来栄えではないですわね。クリームの伸びは悪いし、苺も随分と貧相ですわ」

パートのおばちゃん「……」ギロッ

一夏「お、おい…セシリア…行くぞ」

セシリア「へ?」

一夏「いいから…」グイッ

セシリア「ああ、ちょっと一夏さん!」トテトテ

一夏(あ、危ねぇー…隣のパートのおばちゃん、すげぇ睨んでたぞ…)



パートのおばちゃん「チッ…新婚バカップルが…昼間からイチャつきやがって…」ボソッ



一夏セシリア「「――――!!??」」

一夏「……」

セシリア「……」

一夏「え、ええと…」

セシリア「は、はい…」

一夏「今のって…俺たちのことかな…?」

セシリア「え、えぇ…そのよう、ですわね…」

一夏「そ、そっか…アハハ……」

セシリア「……」

一夏(うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!? 何聞いてんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁ!?)

セシリア(はわわわわわわわわわわわわ…どどどどど、どうしましょう!?
     不意打ち過ぎて、どう返せばいいか分からなくなってしまいましたわ!)

一夏(や、やばい…さっき変なことを考えたせいで、セシリアの顔をまともに見られない…)

セシリア(今、一夏さんに顔を見せるわけにはいきませんわ…だだだ、だって…絶対に赤面してますわ、私…)

一夏「……」

セシリア「……」

一夏(まずいぞ…すごく気まずくなってしまった…)

セシリア(…だ、駄目ですわ! ここで黙ってしまったら…!)

セシリア(これは…ある意味、チャンスなのかもしれませんし…! 勇気を奮い起こしなさい! セシリア・オルコット!)

一夏(とりあえず…話題を変えなければ!)

一夏「な、なぁ…ところで―――」

セシリア「あ、あの! 一夏さん!」

一夏「うぉぅ!? …な、何だ?」

セシリア「えっと…さ、さっきのおばさまの仰られていたことですが…」

一夏「…!?」

すごくキリが悪いが一旦ここで切ります…スマヌ…スマヌ…
続きは明日

セシリア「あの…つまり、私たちはその…周りから見た場合は…」

一夏「あ、ああ…」

セシリア「ええと…そ、そういう風に見えていた、ということ…ですわよね?」

一夏「~~~~!!」

一夏「そそそ、そういうことに、なるかな! ハハハっ!」

セシリア「///」

一夏(何でこういう時にそんなことを訊くんだぁぁぁぁ!? せっかく話を逸らそうかと思っていたのにぃぃぃぃ!)

一夏(…い、いや! まだ諦めるな! 今からでも充分修正は可能だ! とにかく、この気まずい雰囲気から脱却しなければ!)

一夏「おおお、おかしい話だよな! 俺たちまだ未成年だってのにさ!」

セシリア「……」

一夏「それだけ俺とセシリアが老けて見られていたってことかな!? ハハハ、それって―――」

セシリア「一夏さんは…」

一夏「へ?」

セシリア「…私とそのような関係に見られるのは…抵抗がありますの?」

一夏「え…」

セシリア「……」

一夏「な、何でそんなこと言うんだよ…?」

セシリア「だって一夏さん…さっきから歯切れも悪いですし…話も逸らそうとなっさていらっしゃるようですし…」

一夏「あ…」

セシリア「……」

一夏「いや、別にそんな気は…」

セシリア「…そんな気丈に振る舞われなくても構いませんわ。もしそう思われるのが迷惑でしたら、私…」

一夏「セシリア…」

一夏「―――!」

セシリア「……」

一夏(セシリア…さっき鈴に見せられた時と、同じような顔してるじゃないか…)

一夏(くっ…また俺は知らない内に傷つけしまったのか!? 鈴のときみたいに!)

一夏(…そんなの絶対に認めねぇ! 俺のせいでまた誰かが傷つくなんて絶対にいやだ!)

一夏(考えろ…! 何でセシリアはあんなことを言ったのか! もっと内面的に考えるんだ!)

セシリア「……」

一夏(…だめだ、イマイチわからん。というか、俺も俺でテンパっちまってるせいでまともに考えられない)

一夏(あぁもう! そもそも変に煙に巻こうとするから泥沼なんだ! 別にやましいこと考えてるわけ
   じゃ…………ない! 多分!)

一夏(だからここは素直に…思ったことを言っちまえ!!)

セシリア「…一夏さん。私――」

一夏「セシリアと夫婦に見られるのってその…わ、悪くないかもしれないな!」

セシリア「……」

セシリア「……」

セシリア「え…?」

一夏「恥ずかしい話さ…俺もさっきふと思ったんだ。こうしていると、何だか夫婦みたいだな、って」

セシリア「――!!」

一夏「その…他人にそういう風に見られてるって知られた時はビックリしたけど…
   でも、セシリアと夫婦やってれば…やっぱ楽しいと思う」

一夏「こうやって夕飯の材料のことで藹々と話しながら見て回ったり…何だか、温かい家庭って感じがしてさ」

一夏「何かそう考えていたのがすごく恥ずかしくなって…それで、言葉に詰まっちまっただけなんだ。
   別に嫌だとか、そういう風には思ってないからな」

セシリア「……」

セシリア「そう、でしたの」フフッ

一夏(あ、笑ってくれた…良かった)

セシリア(一夏さんも…私と同じことを考えていらしたなんて…)

セシリア(…ふふふ。何だか、こそばゆいですわ。一夏さんったら…)

セシリア(…あれ? ということは…)

セシリア(い、一夏さんは…無意識ながらも私と結ばれたいと!? もしかして私たち…相思相愛!?)

セシリア(きゃぁぁぁぁぁ!/// どどど、どうしましょう! はッ…!? しかもこの後は二人きり! わわ、私、まだ心の準備というものが――)

一夏「ま、まぁだからセシリアの旦那さんは幸せになると思うぜ! うん、間違いない!」

セシリア「」


セシリア「……」スタスタ

一夏「ん? おーい、セシリアー? 次は会計だぞー? 何でそんな早く歩くんだよー?」

セシリア「知りませんわ」ツカツカ

一夏「え?」



セシリア(…でも、一夏さんは私との結婚生活も満更嫌というわけでもありませんのね)

セシリア(それが分かっていれば…よろしいですわ)

セシリア(先行きは不安になりますが…)ハァ

~レジ~

ピッ


レジのおばちゃん「合計で5’735円でーす」

一夏「う…やっぱり結構値が張ったな…。多めに買いすぎたか?」

セシリア「一夏さん。よろしければ、私に出させてくださいな」

一夏「いや、いいよ。こういう時は男が出さないとカッコつかないだろ?」

セシリア(はぅ…! 女性に負担をかけようとはさせまい気遣い…! 何て優しいんですの!)キャー///

一夏(…? 何故か嬉しそうだな)

セシリア(ハッ…いけません、浮かれてはいられませんわ! 今回の出費は私のせいですのに! それすら清算出来ないようなら、オルコット家の恥ですわ!)

セシリア「で、でも…私に料理を教えていただくための費用でしょう? なら、私が出すのも筋ではありませんこと?」

一夏「んー…まぁ確かにそうかもしれないけどさ」

セシリア「それに、一夏さんの家計を圧迫してしまってるようですし…ここは私が持ちますわ」

一夏「…分かった。じゃあ、一つ借りってことで。いつか何かの形で返すよ」

セシリア「は、はい!(やりましたわ!)」

セシリア「では…」ギラリン★



『――――!!??』




セシリア「お勘定はこちらでお願いしますわ」ニコッ

一夏「ブ、ブラックカード!? 本当に存在するのか!? は、初めて見たぞ!?」

レジのおばちゃん「」

セシリア「どうかされまして?」

レジのおばちゃん「え、えぇ!? い、いえ! でででででは! おおおおおおお預かりいたします!!」

セシリア「?」


後日、近所ではこの場末のスーパーに超大物vipが買い物に来たという噂がしばらく流行った。
その効果かどうかは定かではないが、このスーパーの売り上げが今期は6割ほど上昇したらしい。
目撃者の証言によると、その客は金髪碧眼の外人でチョココロネのような大胆な巻き毛だったという。

ちなみにその日、レジでその客の相手をしていたおばちゃんがなんとなしにその日の帰りに宝くじを購入したところ。
3等の100万円が当たったという話は全く関係ない話。

~スーパー入口~

一夏「うへぇー…周りからの視線がすごかったなぁ…」

セシリア「何かごめんなさい…私のせいで変に注目浴びてしまいまして…」

一夏「いや、別にいいけどさ。しかし、やっぱ買いすぎたな…これ持って家までって結構骨だぞ…」

セシリア「タクシーでもお呼びいたしますか?」

一夏「いや、そこまで大した距離じゃないからいいけど―――」


「お待ちくださーい!!」


一夏「ん?」

セシリア「へ?」

???「そこのご夫婦方! お待ちください!」

一夏「えっと…どちら様で?」

セシリア(い、いやですわ/// やっぱり私たちって…そういう運命ですのね///)キャー///

支店長「このスーパーの支店長です!」

一夏「え」

セシリア「あら、支店長さんでしたの。私たちに何用ですか?」

一夏(うっそだろ!? 何で全く動じてないんだ!?)

支店長「はい! その荷物では、帰路が険しいかと思いまして! よろしければこちらをお使いください!」ササッ

一夏「あ、台車だ! 助かるなぁ…ありがとうございます! 明日返せばいいですk――」

支店長「めっそうもない! 差し上げます!」

一夏「え」

支店長「その代わりと言ってしまっては何ですが…今後とも、我がスーパーマーケットをご愛用ください! 奥様! 旦那様!」

セシリア「―――!!」

一夏「あ、あの…俺たち、別に夫婦ってわけじゃ――」

セシリア「ええ! そりゃもう、また通いますわ!!」

支店長「はい! それはもう、是非!! 貴女のようなお美しい奥様に通っていただければ、幸いでございます!」

セシリア「いやだもう! お上手ですことね! オーッホッホッホ!」

一夏(…何なんだよ一体)

~帰り道~

キュル…キュル…

一夏「これ、業務用のけっこういい台車じゃないか…。本当に貰っちまっていいのかな…」

セシリア「一夏さん! またあのマルシェに来ましょう! 今度も二人で!!」

一夏「え? …うん、まぁいいけど」

セシリア「約束ですわよ!」

一夏「おう、分かった。じゃあさっきの借りもチャラでいいか?」

セシリア「はい!」

一夏(何かよく知らんけど、楽しんでくれたようで良かった。そんなに綺麗だって褒められたのが嬉しいのかな?)

セシリア(一夏さんと公認で夫婦と認めて頂けるなんて…何て素晴らしいところですの!)

一夏「ん? あ…」

セシリア「どうしましたの?」

一夏「いや、調理酒を買うのを忘れた…」

セシリア「あら…」

セシリア「戻りますの?」

一夏「それでもいいんけど、またレジに並ぶのは面倒だなぁ…(というか微妙に行きづらくなったし…あのスーパー…)」

セシリア「そうですわよねぇ…あ!」

一夏「ん?」

セシリア「あんなところに酒屋さんが! あそこで済ませませんこと!?」

一夏「ん? でも、俺たち未成年なんだけど…売ってくれるのか?」

セシリア「大丈夫ですわ! 私にお任せくださいませ!」タッタッタ

一夏「え? ちょっと、セシリア!?」

セシリア(うふふ…! いいお酒を見繕って、出来る奥さんをアピールいたしますわ!)

~酒屋店内~

セシリア「ごめんくださーい」

店主「いらっしゃー…おー! こりゃ外人の別嬪さんだ!」

セシリア「ど、どうも…」

店主「いいねぇいいねぇ! 前で待たせている人は彼氏かい!?」

セシリア「か、彼氏だなんて…そんな///」

店主「がっはっは! そうだな! なんか買い物帰りみたいだしよぉ! 新婚さんかい!? 初々しいねぇ!」

セシリア「え!? や、やっぱりそう見えますの!?」

店主「ん? 違うのかい? もしかして学生さん? だとしたら酒は売れな――」

セシリア「い、いえいえいえ! そそ、そりゃもう! 今日は初めての会食ですの! 『夫婦』の!」

店主「なんだそうかい! じゃあ気合い入れて選ばないとなぁ! 新しい『夫婦』の門出に乾杯、ってねぇ!」

セシリア(さっきのマルシェといい…この商店街、最高ですわ!)

店主「で、何だい? 今日はどういったのをお探しで?」

セシリア「え、ええと…料理用のお酒などを…」

店主「あいよぉ! そういうこったら、この日本酒なんてどうだい!? キリッとしたコク、爽やかな喉越し、晩酌にも料理にもいける優れモンだぜぇ!」

セシリア「え? あの、その……」

店主「んー? 口に合わないのかい? まぁ外人さんにはキツいかもなぁ…」

セシリア「いえ、そういうわけではなくて……あ! ワインなどはありませんの!?」

店主「おうともさ! もちろんあるぜぇ! ウチはチンケな酒屋だが、品揃えだけは自信あるんでぃ!
   ボジョレーからメイドインジャパン、フレヴァードからスパークリングまで、数々の掘り出し物だって置いてるよ!」

セシリア「あ、あははは……」

店主「何だい、旦那さんシラフかい? 酒にあまり強くないから、果汁酒なんかもいいよ! この季節は杏子酒なんかいいねぇ!」

セシリア「え、えぇ…」

セシリア(どうしましょう…まったくついていけませんわ…)

店主「さぁさぁさぁ! 何になさいますか! どれもオススメですよ!」

セシリア(どうすればいいんですの…数が多すぎて何が何やらサッパリですわ…)チラッ


一夏「……」


セシリア(はッ!? い、いけませんわ! 表で一夏さんを待たせているのに、醜態を晒すことなんて出来ません!)

セシリア(ここは優雅に買い物を済ませて…ちゃんとアピールしなくてはなりませんわ!
     …でも、やっぱりお酒なんてよくわかりませんし…)

セシリア(…こうなれば、最後の手段ですわ!)










セシリア「…面倒なのでいっそのこと、全部のお酒を一本ずつくださいな」ギラリン★

店主「」

店主「」

セシリア「あ、あの…どうかなされましたか?」

おばさん「おんやー、トーチャン? お客さんかい?」

店主「…カーチャン。今日は店じまいだ。裏の軽トラ回してくれ。
   それと上で寝てる倅を叩き起こしてこい。2人ともだ」

おばさん「はぁ? アンタ、何言ってんだ―――」

店主「いいから黙って言うこと聞けぃ!!」

セシリア「?」


店主「ウチの店によぉ…福の女神さまが来たんだよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


こうしてとある酒屋店主の粋な計らいにより、多種多様な酒の山々が織斑邸に運ばれていった。
ちなみにこれは完全な余談であるが、次の日曜日に酒屋の店主が競馬で大穴を当てて家族に寿司を振る舞っ

たり。
店主の妻が美容院を変えたところ大当たりし、急にモテ期が到来したり(それでも不倫や浮気は全然しなか

ったらしいが)
長男が長年付き合っていた彼女と結婚し、そのまま孫を授かることができたり。
二男が見事に第一希望の大学に合格出来たりと、幸せが怒涛のように押し寄せたが…。

それもやはり全く関係ない話なのだろう…多分。

~織斑邸~

一夏「…確かに俺もよく分からないけどさ。いくらなんでも買いすぎだぞセシリア」

セシリア「も、申し訳ありません…」

一夏「玄関一杯の酒瓶…これは中々壮観だが…どうすればいいんだ、これ…」

セシリア「返す言葉もございません…」

一夏「あ、いやすまん…。別に責めてるわけじゃないんだ。酒は千冬姉が飲むからいいし、
   何故だか知らんが酒屋の店主さんがワインクーラーまでくれたしな」

セシリア「の、飲めない分は本国に送り返しますので…どうかご勘弁くださいませ」

一夏「うーん…まぁ反省してくれてるようだし、俺だって最初から怒ってるわけじゃないから」

セシリア「あの…本当に怒ってませんの?」

一夏「怒ってないって。ちょっと感性の違いに驚いてただけだ」

一夏「それよりさ。材料は申し分ないし、早く料理しようぜ。俺、そろそろ腹減ってきたんだ」

セシリア「は、はい!」

一夏「まぁ取りあえず、この日本酒一本だけ持って、っと…。じゃあ、始めるか」

セシリア「…はい!」

ちょっと親父にpcジャックされるのでしばらく抜ける…
この安価は意地でも今日中に終わらす

~台所~

一夏「じゃあやるか。せーのっ…」


一夏「というわけで『織斑家の肉じゃが』を作ってみよー!」

セシリア「イエー!ですわー!」ヤイノヤイノ


一夏「では早速ですがセシリアさん。準備はお済ですか?」

セシリア「はい! うがい手洗いは済ませましたわ! 除菌用石鹸で念入りに!」

一夏「いいですねー。では、まずは材料の下準備から始めましょうか」

セシリア「はい!」

一夏「まぁ俺が隣で実演するので、セシリアはそれに倣う形で調理してください。
   多分それなら余程のことがない限りは失敗することはないでしょう」

セシリア「はい! 宜しくお願いします、一夏先生!」

一夏(おぉ、いいなぁ…先生…うんうん…いい響きだ…)

セシリア(本当はもっと近しい関係が望ましいのですが、これはこれで悪くありませんわ!)

一夏「ではまずはジャガイモを水で良く洗い、皮をむきます」ジャー キュッキュ

セシリア「わかりましたわ!」グイッ

一夏「セシリアさん。食器用洗剤は置いてください」



セシリア「すべて洗い終えました!」

一夏「ここまでは順調ですね。では皮をむきましょう」

セシリア「皮は残した方がいいのではありませんの?」

一夏「確かに一理ありますが、今回は皮をむきます。皮を剥いたのであれば失敗しにくいですし」

セシリア「わかりました…って、一夏さん! 随分と器用ですのね!?」

一夏「え? あー、もう慣れちまったからな」スルスル

セシリア「すごいですわ! まるでロール紙のようにスルスルと…これは負けてられませんわね!」ギラッ

一夏「セシリアさん。初心者がいきなり桂剥に挑戦しないでください。ほら、こちらのピーラーを使ってください」

セシリア「……」

セシリア「……」

一夏(ピーラーを使ったはずなのになんで皮の方が果肉よりも身厚に剥けるんだ…)

一夏「き、気を取り直してー…ではジャガイモを一口大に切りましょう。切り方はお好みで」

一夏「俺は極一般な乱切りで」トントン

セシリア(何て鮮やかな包丁さばき…まるでitamaeですわ!)

一夏「とまぁ、こんな感じです」

セシリア「はい! では、私も!」ギラッ

一夏(正直セシリアのは包丁を入れる必要がないくらい身が薄いけど…やっぱり包丁には慣れておいてもらわないと)

セシリア「ぐっ、ぐぅ…か、硬いですわ!」

一夏「そういう時は、包丁の背を左手で押しながら、体重をかければ―――」

セシリア「かくなる上は! ざく切れにして差し上げますわ!」ギュィィィィン…

一夏「セシリアさん。ジャガイモ相手にショートブレードを展開させないでください。
   ウチのキッチンまでざく切りです」

一夏「ではジャガイモを切り終えたところで。いよいよジャガイモを火にかけます」

一夏「鍋にジャガイモが隠れるくらいの水を入れ、ジャガイモを投入。そして火をかけます」

セシリア「え? 水のうちから煮立たせますの?」

一夏「こうすることで芯まで火が通るんだよ」

セシリア「なるほど」

一夏「煮立ったら火を弱めて、柔らかくなるまでしばらく待ちます」

セシリア「ふむふむ…むむむ……思ったように温度のノリが悪いですわね…」

一夏「焦らないでください。煮物料理は焦りが禁物です」

セシリア「いいこと思いつきましたわ! レーザーで加熱すれば、料理時間を短縮できますわ!」ジャキッ

一夏「セシリアさん。ブルーティアーズしまってください。こう言っちゃなんですけど、イギリス人は
   食材相手に戦闘兵器を向けないと気が済まない病気か何かですか」

セシリア「」

一夏「あと、お願いですから人の話は聞いてください」

セシリア「…はい」

一夏「ではジャガイモが煮立ってきたので、一旦引き揚げます」

セシリア「はい……熱ッ!」バシャァ

一夏「あ、大丈夫か!? 熱湯には注意してくれ!」

セシリア「も、申し訳ありません…ジャガイモが…」

一夏「そんなのはいいから! お前、大丈夫か!? 手が赤くなってるぞ!」

セシリア「い、一夏さん…そこまで私のことを…///」キュン

一夏「今、氷嚢を作ってくるから! セシリアは患部をよく冷水ですすいでいてくれ!」

セシリア「は、はい///」



一夏「ふぅー…やれやれ。まぁジャガイモは洗えば全然使えるな(何個かは既に崩れてきているけど…)」

セシリア「そ、そうですわね…///」

一夏「大丈夫か? 続けられそうか?」

セシリア「え、えぇ! 問題ありませんわ!」

一夏「そっか。じゃあ気を取り直して、次に行こう」

セシリア(うふふ…♪ 一夏さんと料理♪ 無難にデートにしようか迷いましたが、やはりこっちを書いて正解でしたわね!)

一夏「ここからはちょっと自己流です」

セシリア「はい!」

一夏「では空になった鍋をよく洗い、ごま油をしきます」

セシリア「ふむふむ」

一夏「よく熱したら、豚のバラ肉を入れて炒めます」ジュー

セシリア「え? 炒めますの? 確か煮物ですわよね?」

一夏「そうなんだけど、サッと焼いた方が肉が柔らかくなるんだ」ジュージュー

セシリア「そうでしたの」

一夏「半焼けくらいになったらバラ肉に砂糖をまぶし…そこに水と酒と醤油を適量加えていきます」ジュー

セシリア「いい香りですわね…」

一夏「じゃあこれを真似してみてください」

セシリア「はい!」
………
……

セシリア「焦がしすぎました…」

一夏「ま、まぁまだギリギリなので…(多分)次に移りましょう」

一夏「では先ほどのジャガイモをまず投入し、火加減を見ながら残りの材料を放り込みます」

セシリア「これなら失敗しませんわね!」

一夏「今回の残りの具材は白滝と豆腐と椎茸にしましょう。では予め水で戻しておいた椎茸から」ポトッ

セシリア「はい!」ドバァ

一夏「…何でそんな豪快に入れるんですか」

セシリア「え? 一気に入れてはいけませんの?」

一夏「いや、まぁいいけど…(めっちゃ煮汁が飛び跳ねたけど…)」

一夏「白滝も予め下ゆでが終わっているので、こちらは豆腐と一緒に最後に入れます」

一夏「というわけで、今煮込んでいるのに蓋をして待ちましょう」カパッ

セシリア「くすっ…一夏さん。蓋のサイズを間違えてますわ。小さすぎて鍋の中に収まってますわよ?」

一夏「これは『落し蓋』と言われるれっきとした調理方法です」

セシリア「え…そうなんですの…? うーむ…ジパング料理は侮れませんわ…」

一夏「…というわけで十分煮立たせたのを小皿に取り分けて…」

セシリア「完成ですわね!」バーン

一夏「そうなんですが…」

セシリア「……」



一夏セシリア((何だこの違い……))




一夏(…俺のは極一般的な肉じゃがだけど…)

セシリア(わ、私のは色々な食材がドロドロになっているせいで…ただのポトフみたいになってますわ…)

一夏(灰汁も取りきれてないから変なの浮いてるし…)


一夏「と、とりあえず試食してみましょう…」

セシリア「そ、そうですわね! 見た目はあまり良くないかもしれませんが、味には自信ありますわ!」

一夏(お願いだから試食くらいはしてから言ってください…そんな根拠のない自信を目の前で様々と見せられても…)

一夏「では俺のから」

セシリア「いただきます!」

パクッ×2

一夏「まぁこんなもんだな」

セシリア「ん~! 美味しいですわ! 食材すべてに味が染みてて、噛めば噛むほど味わい深いですわ!」

一夏「ははは。ありがとな」



一夏「では次はセシリアのを」

セシリア「…はい」

パクッ×2

一夏「う……」

セシリア「うぅ……」

一夏(これは…)

セシリア(何というか……)


((形容しづらい絶妙なまずさ……))

一夏(…まずは肉は焦げてるし、ジャガイモはドロドロだ…コーンスープみたいに…)

セシリア(うぅ…お酒の配分を多くしすぎましたかしら…舌がヒリヒリしますの…)

一夏(白滝も豆腐も煮立ちすぎてブヨブヨのドロドロだ…変な味が染みてるせいで舌触りがさらに不快になる…)


セシリア(こ、こんなに差が出るものなんですの…!? 同じ食材と調理法のはずですのに!?)

一夏(しかし正直言って…初めて食べたサンドイッチよりは遥かにマシなんだよなぁ…。
   横で教えてコレなら、あのサンドイッチはどんだけ無茶苦茶に作ったんだ…)


一夏「ま、まぁ…初めてだからこんなもん―――」

セシリア「………」

一夏「…セシリア?」

セシリア「―――」


ポタ…ポタ…


セシリア「う、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」

一夏「セシ…リア?」

セシリア「こんなの…あんまりです、わぁ……」

一夏「……」

セシリア「薄々…ひっぐ、感じて、ましたの……うぅ、何で、一夏さんは、私の料理を…食べて下さらないの、かって…」

一夏「……」

セシリア「でも、そうです、わよね……ぐす、こんな酷い料理で…食べてもらえる訳…ありません、わよね…。
     私…どうか、してましたわ……えっぐ…」

一夏「……」

セシリア「でも私…認めたく、なくて…だから、今日のイベントで…一夏さんを、見返して、やろうと…グスン……」

一夏「セシリア…」

セシリア「それでも…今日のことで、思い、知らされましたわ…。私には、ひっぐ、料理する才能も…資格も、ありませんのね…」

セシリア「こんなの…あんまりですわぁ…私は、ただ…一夏さんに…ひっぐ…喜んで、もらいたい、と…うぁぁ…」

一夏「……」

夏「…セシリア」

セシリア「ぐす…」

一夏「…正直言って、お前の料理はお世辞にも旨いとは言えない。でも、お前の料理に対する姿勢は、絶対に間違ってない」

セシリア「そんな、こと…」

一夏「本当だ。俺を想ってくれて作ったのなら…それは絶対に間違っていない。ただ、使い所を少し間違えただけだ」

セシリア「そんな、こと…私のは、それ以前の問題でして、よ……うぅ…」

一夏「…セシリア」

セシリア「料理で一番大切なものって…何だか知ってるか?」

セシリア「え……」

一夏「お前は、それを知っている」

セシリア「そんな、こと…ええと、技術、ですか?」

一夏「違う。確かに商業的には必要だけど、俺が言いたいのはそういうことじゃない」

セシリア「では…ちゃんとした食材や器具ですか?」

一夏「それはただの前提だ。確かに不可欠なものだが、大切なもんじゃない」

セシリア「…わかりませんわ」

一夏「いや、お前なら分かってるはずなんだ。絶対に」

セシリア「……」




一夏「愛だよ。セシリア」

セシリア「へ?」

セシリア「愛…ですの?」

一夏「そうだ」

セシリア「た、確かに…愛は最高のスパイスだと、喜劇でも言われているような台詞ですが…」

一夏「そういうのは俺も聞いたことあるな。でもな、セシリア。俺の場合はちょっと違う」

一夏「愛は、料理にとって最高のスパイスじゃない。俺は、料理そのものが愛なんだと思ってる」

セシリア「え…?」

一夏「いいか。誰でも、料理をするときは食べる相手のことを考えるはずだ。それが自分であれ、家族であれ、友達であれだ」

一夏「そういう時ってな。食べてる奴が『美味しい!』って言ってくれるのを想像しながら作るんだよ。
   笑ってさ、自分の料理を美味そうに食べてくれてる光景を浮かべながらな」

セシリア「……」

一夏「そして、どうすれば本当に美味しく食ってくれるか、本気で考えるんだ」

一夏「味付けはこれでいいか。相性のいい食材は何か。切った食材の大きさはちょうどいいか。
   煮加減は間違ってないか。飾り付けはどうすれば美味しそうか。」

一夏「全部、そいつのためを思っていたら自然と考えることなんだ。食べてくれる人のことを考えたら、
   頭と手は勝手に動くように出来てるんだよ」

一夏「…恥ずかしこと言うけど。これが愛って呼ばずしてなんだ? 俺はこれ以上、料理に大切なものを
   知らない。食材や技術なんて、あればいいやくらいのものだ。愛に比べたら何の価値もありゃしねぇ」

セシリア「……!」

一夏「…だからさ。俺のこと考えてくれたって言うなら間違えてないよ。それは俺が保証する」

セシリア「……」

セシリア(…いえ)

セシリア(私は…本当の意味で…今まで料理をしてませんでしたのね…)


セシリア(私…今の今まで…一夏さんと一緒に居られることに浮かれて…食材に目を向けてませんでしたわ)

セシリア(この間だって…ただ、私の自己顕示の手段として…料理を作ったにすぎません…)

セシリア(本当に…私は、料理をする資格を持ってませんでしたのね…)

セシリア(…でも)


セシリア「…一夏さん」

一夏「…何だ」

セシリア「もう一度…やらせてください!」

一夏「……!」

一夏「…ああ! もちろんだ、セシリア!」

セシリア(焦らず、落ち着いて皮を向いて…果肉を痛めないように……)

セシリア(水も慎重に…ml単位でちゃんと計量して……)

セシリア(火の通りも…定期的に菜箸でジャガイモを突ついてみて…)

セシリア(味付けは一番慎重に…調味料や食材を加えるたびに味を見て、その度に調整を…)


一夏(セシリア…さっきまでとは…目つきが全然違うぜ…!)


セシリア(はぁ…はぁ…煮ている時も油断はできませんわ…こまめに確認しないと…)

セシリア(ふぅ…立ちっぱなしと湯気で……何て疲れますの…。でも、負けられません…!)



一夏(頑張れ…! セシリア、頑張れ!)

セシリア(もう少し…もう少しですわ…!)






セシリア「…できました!」

一夏「…見た目は普通だな」

セシリア「…はい」

一夏「…でも、問題は」

セシリア「えぇ…分かってます」

一夏「…じゃあ、いただきます」

セシリア「……」ドキドキ

パクッ

一夏「……!」

セシリア「……」ゴクリ

一夏(…味付けはまだ荒い。ジャガイモの火の通りも足りなくて、芯が残っちまってる…)

一夏(…でも)





一夏「…美味しい。美味しいよセシリア!」

セシリア「―――!!」

セシリア「ほ、ホントですの…!?」

一夏「あぁ! 肉もジャガイモも、味が染みてて美味しい! ここまで出来るなんて…すげぇよお前!!」

セシリア「あ…あぁ……」

一夏「セシリア?」

セシリア「う、嘘ではございませんわよね…一夏さんが…私の食べたものを…美味しい、だなんて…」

一夏「…この場限りでは、俺は料理について一切妥協はしない」


一夏「セシリア! お前の料理…本当に美味しいよ! ありがとな!」


セシリア「――――!!」

セシリア「あ…あぁぁぁぁぁぁ…」ドサッ

一夏「お、おい! セシリア!?」

セシリア「う…うぅぅぅぅぅぅ…」ポロポロ

一夏「…おいおい泣くなよ。せっかくの料理が塩辛くなるぜ?」

セシリア「だ、だってぇ…わたくし…こ、こんなに…むくわれたのって…はじめて、でぇ…」

セシリア「こんなの…うれし、すぎますわ…しあわせで…なにが、なんだか…う、うぅ…うぁぁぁぁぁ…」

一夏「…セシリア」

ポン

セシリア「あ…」

一夏「お前が作ってくれた料理…マジで旨かったよ。ちゃんと残さず食べるからな」ナデナデ

セシリア「えへ、えへへ……は、はい///」
―――――――――
―――――
―――
~生徒会室~

簪「…どうやら、問題ないみたいね」

楯無「ふっふーん…いやぁ、つくづく一夏くんって罪作りな男だねぇー」

簪「……」ムスッ

簪「…まぁ、ミッションはこれで大丈夫でしょ。あとは、お姉ちゃんが食べてokだせば」

楯無「うーん…まぁ確かにあの出来栄えなら、私でも及第点出してもいいねー」

楯無「でもぉ…そうそう上手くいくかなぁ?」

簪「…? どういう、こと?」

楯無「簪ちゃんも一夏くんも…決定的なところを見落としてるよ。
   二人の間には、どうしようもない『溝』があるってことをさ…」

~織斑邸:ダイニング~

一夏「落ち着いたか?」

セシリア「…ええ。お恥ずかしいところを見られましたわ」

一夏「気持ちはわかるよ。俺も初めて作った料理を千冬姉に食べたもらった時、嬉しかったからな」

セシリア「…ええ。そうですわね。痛いほど、よくわかりますわ…」

一夏「でも本当に美味しいよ。あ、おかわり」

セシリア「!」

セシリア「はい! 喜んで!」



セシリア「お待たせいたしました♪」

一夏「おう…って、二人分?」

セシリア「せっかくですから、私も試食を」

一夏「え……まさか、試食しなかったのか!?」

セシリア「え…い、いえ…調理中はこまめにしてましたが…そういえば、盛り付けの際の最終確認のは忘れてましたわ…」

セシリア「す、すみません…」

一夏「い、いや! 美味しかったから、結果オーライだ!」

セシリア「うふふ♥ 本当にお気に召していただいたようで…光栄ですわ」

一夏「いや、本当だって。これなら会長もokだすだろ。セシリアも食ってみろよ」

セシリア「はい! では…」


パクッ


セシリア「………」

セシリア「……」

セシリア「…」

セシリア「…一夏さん」

一夏「んー?」パクパク

セシリア「これ…本当に美味しいのですの?」

一夏「……」
一夏「…」

一夏「え」

―――――――――
―――――
―――

~生徒会室~

簪「え…何…? 何が、起きたの…?」

楯無「そう…一夏くんの言うことは正しいよ。ちょっと臭い部分はあったけど、私も概ね同意する」

楯無「…でもね。たとえ一夏くんの言うことが正論でも…キチンとした食材があっても…
   料理の腕が桁違いに上がっても…。出来た料理が一夏くんにとって本当に美味しいものであっても…」




楯無「『味覚の違い』はね…どうしようもないんだよ……」

~織斑邸:ダイニング~

一夏「お、おいセシリア…それは、冗談だよな…?」

セシリア「冗談などではありませんわ…何か、味があまりしませんの…」

一夏「えぇ!? い、いや! 出汁が普通に効いてて、ジャガイモや豆腐によく染みてて美味いぞ!?」

セシリア「…本当ですの?」

一夏「本当だ! 俺は料理に関しては妥協しないって言っただろ!」

セシリア「でも…初めて私の手料理を食べた時も…何だか遠慮してましたし…」

一夏(う…! 変に前科があるから言い返せない…!)

セシリア「…やっぱり気を遣っていただいて―――」

一夏「い、いや違う! 本当に美味しいんだ! 信じてくれ!」

セシリア「………」

セシリア「……」

セシリア「…」

セシリア「―――!!」

セシリア「い、一夏さん! 分かりましたわ!」ガタッ

一夏「な、何がだ…? セシリア」

セシリア「一夏さんは仰っていましたわよね…料理に一番大切なのは、『愛』であると…」

一夏「あ、あぁ…それがどうした?」

セシリア「でも私…気づきましたの! 確かに『愛』は相手を思い遣る心遣いもあります…。
     しかし、それだけが『愛』ではありません!」

一夏「え」

セシリア「時に激しく! 烈火のように! 燃え盛るような感情をぶつけるのも、『愛』の形なのですわ!」

一夏「あ、あの…セシリアさん……俺が言いたかったのはそういうことではなくてだな…?」

セシリア「そう! 自分の思いの丈を、表現するのも愛情表現! それを忘れてましたの!」

セシリア「というわけで…この料理に、更なる愛を注ぎこみますわ!」

一夏「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ!! 余計なことはしないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
   それじゃいつも通りじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」



セシリア「一夏さん…私の『愛』を…受け止めてくださいまし……!」


一夏「だからisはしまえって言ったろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

―――――――――
―――――
―――
~生徒会室~

楯無「あーあやっちゃったねぇ。うわ、今度は豪勢な味付けだね。赤ワインをボトルまるまる入れてるよ…
   ん? 今度は赤さを出したいって言い出したよ? って、うわぁ…チリペッパーの瓶をまるごと…」

簪「…大惨事、だね」

楯無「あっはっはっは! 一夏くんも災難だねー!」

簪「…なんで?」

楯無「いや、だってさーアレ、一夏くんが試食することになるじゃん。アレじゃ命の危険だってあるんじゃないかなー…」

楯無「あっはっは! こりゃ落ち込むわけだよ! クジひかれた時の一夏くんの気持ちも分かる!」

簪「…お姉ちゃん。肝心なこと忘れてない?」

楯無「んー? 何がー?」

簪「…あれ、お姉ちゃんも食べるんだよ?」

楯無「………」
楯無「……」
楯無「…」

楯無「え」

楯無「え…?」

簪「…ミッションの内容は、お姉ちゃんがok出すまで。忘れたの?」

楯無「い、いや…確かにそうだけど…でも、あんなの食べられるわけないじゃん!」

簪「でも、このままだと確実に一夏、気を失う…。そしたら、きっとお姉ちゃんの方に行く。セシリア」

楯無「え、えぇ……」

簪「……」

楯無「ね、ねぇ簪ちゃん…? お腹減ってない? 実は私…ダイエット中なんだ」

簪「うそつき…お姉ちゃん、ダイエットなんてしたことないくせに…」

楯無「う……」

簪「…ミッションは絶対、でしょ? 会長が、二言を許すの?」

楯無「ぎくっ……」

楯無「いや…でも、これは、ねぇ……」

楯無「ちょ、ちょちょちょ! あの子何考えてんの! あれで更に酒を加えるって!?
   しかも手に持ってんの、スピリタスじゃん!?」

簪「hotだね」

楯無「やめてよ! 工業用アルコールをがぶ飲みするようなもんだよ!?」

簪「ドンマイ」

楯無「そんなこと言わないで簪ちゃん!」

楯無「え…今度は火力が足りない!? ちょ! やめてよレーザーで熱するのは!
   あ……う、嘘でしょ…ステンレス性の鍋が溶け出して…中と混ざってるんだけど…」

簪「…頑張って」

楯無「いや、流石に学園最強でもアレは無理だから…私はカネゴンじゃないよ…?
   一応一般的な人間の範疇で最強なだけの、ただの女子高生だよ…?」

簪「自業自得…」

楯無「い、いやああああああああああああああああああああああああああ!!」

~織斑邸:キッチン~

セシリア「オッホッホッホ!! いい感じに気分が乗ってまいりましたわー!!」

一夏「あはははは…もうダメだぁ…何もかも…おしまいだぁ…」

pipipipipi...

一夏「ん…? こんなときにコアネットワークの通信…? 一体誰が…」ピッ




楯無『一夏くん、ミッションコンプリートおめでとー!!』パンパカパーン!



一夏「…え」

セシリア「え?」

―――――――――
―――――
―――

簪「…逃げた」

楯無「ち、違うわよ! 生徒の努力を認めてあげるのも生徒会長の役目だから!」

一夏「え…? ミッション、コンプリートですか?」

楯無『そそそそそ、そうそう! いやー、一夏くんの料理にたいする姿勢と、それに心を打たれたセシリアちゃん…。
   もう私、感動しちゃったよ! だから特別に! ミッション・コンプリート認定しちゃう!』

一夏「そ、そうですか…(何はともあれ…助かった、のか…?)」

セシリア「もう…これからがいい所でしたのに…残念ですわ」




グツグツグツグツ…

フランペという調理方法をご存じだろうか?
よくテレビなどで、達人やシェフなどが、熱したフライパンに酒を入れて、フライパン内で発火現象を起こさせるアレである。
こうすることでアルコールを燃やしつつ、肉などに焦げ目を微妙に加えることでコクを引き出したり、旨みを閉じ込めたりするのだ。

フランペでは、純度の高いブランデーやラム酒などが愛用される。
そして先ほど、セシリア嬢が手にしていたのはスピリタス。アルコール度数90度以上という強烈な酒だ。
この酒を飲んでいる時はタバコも許されないほどの超危険物である。

その火気厳禁、取扱い要注意物は現在…煮沸によって大気中に気化している…。
そして鍋の下には未だ轟々と燃え盛るバーナー…。


導き出せる結末は―――もはや決まっていた…。



ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ…………


一夏「え」

セシリア「え」

楯無『え』

簪『え』


織斑邸………半焼

~生徒会室~

セシリア「本ッッ当に…申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!」ドゲザ

一夏「は、ははは…俺の、家が………」

セシリア「今回の不始末は…オルコット家で全面的に補填させていただきます!!」

セシリア「だからどうか…お許しくださいまし!!」

一夏「へ、へへへ……千冬姉に…殺される……アハハ………」


簪「……お姉ちゃんのせいじゃない?」

楯無「ごめん…結構反省してる…そしてそれ以上に同情してる……」

楯無「あー、そのことなんだけど…」

セシリア「へ?」

楯無「いや…今回のは私の方にも責任はあるから…ほら、このイベントの立案者だし…」

楯無「だから、一夏くんの家の修繕費は、更識家が受け持つということで―――」

セシリア「そ、そんなことできませんわ! 今回の不始末は100%私にあります!
     ですから、それくらいの誠意を見せることくらいはお許しください!」

楯無「いや、そうだけどさぁ……はぁ、じゃあ家の方はそれでいいよ」

楯無「じゃあ一夏くんは、しばらくウチに泊まっていってね」

簪「え」

セシリア「え」

楯無「だってさ。やっぱり責任の一端は私にあるわけだし。何らかの形で償わなきゃ気が済まないよ。
   家の補填をそっちにまかせるから、一夏くんの衣食住はこちらで保証する。どう?」

セシリア「そ、そういうわけにも参りません! 一夏さんの身の回りの世話も、私が受け持つ責任が―――」

一夏「二人とも…やめてくれ……」

セシリア「え…?」

楯無「ちょっと…一夏くん…?」

一夏「それより会長…次のミッションを…早く」

楯無「い、いやいやいやいや! 流石に私もそこまで空気読めないキャラじゃないよ!?
   今はそんなことより、一夏くんの今後を考えないと―――」

一夏「家の修理は…そちらで勝手に決めてください…直るのだったらどっちでもいいですから…」

セシリア楯無「「う……」」

一夏「住まいの方も、しばらくは寮生活になるだけだし…」

一夏「というか正直、どちらの世話になるのもごめんです…」

セシリア楯無「「うぅ…は、はい……」」

一夏「ふふふ…こうなりゃヤケだ…俺にはもう失うものはない…」

一夏「だから続けましょうよ…さぁ、さぁ!」

楯無「(ヤバイ…目が修羅だ…)は、はい! じゃあ次のミッション! 張り切っていってみよー!」

簪(せめて次は一夏が報われるやつでありますように…)


楯無「次のミッションは…『>>176』です!!」

家半焼したし千冬姉と過ごそうぜ

といわけで今日はここまで。ちなみに料理の描写は結構適当。
最近忙しいから、次書くとしたら結構間が開くかも…。スマヌ

安価把握。捉え様が広くて逆にやりづれぇ…。まぁがんばっけど。
ちなみに、相手が誰か一回出したキャラ(鈴とか)でも可だけど、その場合は個別ルートに突入すっかもだから次からはその点留意してね。

今日は以上。じゃあの

説明が足りんなコレじゃ…
個別√突入はそのキャラの好感度がある程度満たされたとき。
その匙加減は結構適当だけど、少なくとも2回安価とったら即突入ってわけじゃなか。

現時点好感度指数(参考)
鈴    ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□

結構数値パラメータとか適当…
とりあえず眠い…寝る…ではでは

再開の前に前回の修正から

>>157
セシリア「う、嘘ではございませんわよね…一夏さんが…私の食べたものを…美味しい、だなんて…」

セシリア「う、嘘ではございませんわよね…一夏さんが…私の作ったものを…美味しい、だなんて…」


>>171
フランペ→フランベ

また途中でちょっと抜けるが、短いし上手くいけば今日中に終わるかも

『家族と過ごす』

楯無「うわぉ! こりゃサービスミッションだね!」

簪(良かった…これで少しは気が休まればいいけど)

一夏「」

楯無「あ、あっれー…? 何かまた固まってるような気がするのは気のせい、かな…?」

セシリア「あの…一夏さんのご家族は……」

楯無「え? あー…そういえば……織斑先生だけなんだっけか…ハハハ……」

一夏「よりによって今一番会いたくな人に…ハハハハハ…何だこれ…」

簪(一夏…)

一夏「へへへ…早速制裁の時間がやってきたようだな…遺書でも書いた方がいいかなー…」

セシリア「は、早まってはいけませんわ!」

楯無「そそそそ、そうだよ! 何か私たちが言うのも変な話だけど!」

一夏「ふふふ…あはははは……あー、絶対殺されるわコレ……」

簪(神様…どうして一夏ばっかり虐めるんですか……)

楯無「じゃ、じゃあミッションも決まったことだし! 細かい内容を説明するよ!」

楯無「今回は一夏くんのためのサービスミッション! 過酷なミッションの合間に設けられるものだよ!
   要するに完全なハーフタイムみたいな物と考えてくれればok!」

楯無「ゆっくり休養してもらうのが目的だから、今回のミッションにカメラさんは同行しません!
   その間のプライベートはこちらで徹底的に守るから安心してね!」

楯無「具体的な時間制限やクリア条件はありません! 一夏くんがゆっくり休んで、
   この生徒会室に戻ってくれば自動的にミッション・コンプリート扱いになります!」

楯無「というわけでー! 今まで過酷なミッションお疲れ様! 今回は君に与えられたボーナスタイムだから、有意義に過ごしてね!」キュピン☆

一夏「………」

楯無「あ、あのー…一応少しでもリアクションしてくれないと、流石にキツいんだけど…」

簪「お姉ちゃん」

楯無「うぅ…」

簪「一夏…色々とごめんね…」

一夏「簪…。いや、お前だってある意味被害者じゃないか。無理やり連れてこられてさ」

簪「私は…いい。今は、一夏のことが大事」

一夏「簪…」

簪「…ゆっくり、休んでね」ニコッ

一夏「か、簪ぃ…お前だけだよぉ…」オイオイ

簪「うん…一夏は、よく頑張った…」ナデナデ



楯無「」

セシリア「」

一夏「じゃあ、行って来るわ。ちょっと元気出たよ。ありがとう、簪」

簪「いい…頑張って、きてね」

一夏「ははは…ちょっと不安だけど…まぁ頑張るぜ」

簪「いってらっしゃい…」

一夏「はぁーい…」トボトボ



楯無「」

簪「…もう戻ってこないかもね。いろんな意味で」

楯無「そそそ、そんな悲しいこと言わないで、簪ちゃん!」

セシリア(一夏さん…もう、私のもとには戻ってきていただけませんの…?)オロオロ

セシリア(もし一夏さんに嫌われてしまったら私…わたくしぃ……)ウルウル

~廊下~

一夏「あー…気が滅入るなぁ……何で次が千冬姉なんだよ…」

千冬「私がなんだって?」ズイッ

一夏「うわ、ビックリした!? 急に現れるなよ千冬ね――」

ゴスッ

一夏「いてぇ!?」

千冬「学校では織斑先生と呼べと、何度も言っているだろうが莫迦者」

一夏「うぅ…はい、すいません織斑先生…」

千冬「ふんっ。そこまで私に会うのが嫌だったのか」

一夏「い、いえ…別にそういうわけでは」

千冬「お前は本当に莫迦だな。この催しは全校放送だと言っていただろう。
   さっきの生徒会室の模様もすでに放映されていたぞ。まぁ流石に今はないだろうがな」

一夏「」

一夏「……」

千冬「…ふん。まぁいい。許可を出した以上は私もこの莫迦げた催物に責任を持たねばならん」

千冬「不本意であるがのってやるとしよう。で、任務の内容は何だ織斑?」

一夏「あ、はい……家族と一緒に過ごすことです」

千冬「ふむ。特に場所の指定も過ごし方の指定もなかったわけだな」

一夏「はい…」

千冬「なるほど。本当は家でゆっくりと過ごしたいところだが、生憎だしな」

一夏「……」

千冬「…そんな露骨に気落ちするな莫迦者」

千冬「はぁ…仕方ない。職員用の寮へ招待してやる。というわけで同行しろ、織斑」

一夏「え? あ、はい……」

~織斑千冬の部屋~

千冬「適当にかけてくれ、一夏」

一夏(う……結構汚いな…)

一夏「って、あれ?」

千冬「どうした?」

一夏「いや…呼び方が…」

千冬「あぁ。学内とは言え、寮の個室内ではある程度のプライベートは保証されてしかるべきだ。
   故にこの部屋は教員としてではなく、私個人の領域だ。お前も言葉遣いなどは普段通りで構わんぞ」

一夏「そ、そっか…助かるよ千冬姉」

千冬「うむ。この部屋に招いた男は貴様が初めてだ。光栄に思えよ一夏?」

一夏「何言ってんだよ千冬姉。この学園には男子は俺だけ…って、だからあの用務員さんも一応おと――」

ゴスッ

一夏「いってぇ!? 何でいきなり殴るんだよ!?」

千冬「だから貴様は莫迦なのだこのたわけが」

千冬「まったくお前ときたら…」

一夏「……」

千冬「どうした? かけないのか?」

一夏「い、いや…」

千冬「何だ。早く座れ。私が落ち着かん」

一夏「あ、うん…」イソイソ

千冬「何か飲むか? 流石に酒は持ち込めないから、麦茶かミネラルウォーターくらいしかないが」ゴソゴソ

一夏「いや、いいよ…」

千冬「? さっきから何を他人行儀にしている」

一夏「だってさ、その…怒らないのかよ?」

千冬「は?」

千冬「何だお前。わざわざ怒られたかったのか?」

一夏「え? いや、そういうわけじゃないけどさ…」

千冬「…確かにお前の監督不行き届きかもしれんが、あの惨状はオルコットの方に非があると思うぞ?」

一夏「そ、そうかな…?」

千冬「そうだと言っているだろう。私は一部始終を見ていたのだぞ?
   まぁ、お前の責任が皆無というわけではないが」

一夏「うぅ…」

千冬「かといって、そこまで参ってる弟を叱咤するほど私は鬼ではないさ」

一夏「そっかぁ…ははは。何だか安心したよ」



千冬「まったく…家で済んでよかったが、お前まで失ってしまったらどうしようかと思ったぞ…」ボソッ

一夏「ん? 何か言ったか千冬姉」

千冬「何でもない」

千冬「まぁ家の修繕はオルコットか更識がやってくれるらしいではないか。オルコット家か更識家に、家屋の修繕費を請求できる奴などなかなかいないぞ?」

一夏「まったく…呑気なもんだな。心配して損したよ」

千冬「少なくとも貴様に言われる筋合いはないぞ」

一夏「え?」

千冬「むしろお前の方が意外だ。お前…自分の家を灰にされそうになったのに、何故オルコットを責めない?
   この企画の発案者の更識にしたってそうだ」

一夏「いや、だって…あれは不慮の事故みたいなもんだし…セシリアも悪気があったわけじゃないだろ?」

一夏「先輩だって何考えてるか分からないけど、取りあえず俺のことを汲んでの企画ってことだからさ…何か悪く言えないよ」

千冬「…お前は筋金入りのお人よしだな」

一夏「というかそれよりも、千冬姉に殺されることばっかり心配していたから…。
  その不安がなくなっちまったら、何だかどうでもよくなっちゃった」

千冬「お前…本当に私をなんだと思ってるんだ…」

千冬「まぁそういうわけだ。こんな部屋で良ければ、くつろいでいってくれ」

一夏「あー、それなんだけどさ。片づけていい?」

千冬「…言ってる意味が分からん。何故休養を求められてるのにわざわざ労働する必要がある」

一夏「いや、だってこの部屋…」

千冬「気にしないで休めばいいだろう」

一夏「ごめん、逆に落ち着かないんだよ…。ちょっと片づけさせてくれ」スクッ

千冬「…まぁお前の気が済むなら別に構わんが」

一夏「じゃあそういうわけだから、ビニール袋何枚か借りるよ」

千冬「ああ。そこの棚の一番下の奥に入ってる」

一夏「オッケー」

一夏「…半分は書類と、半分は弁当のパックとかペットボトルか」

千冬「書類は一か所に纏めておいてくれ。あとで私が整理しておく」

一夏「ったく…こんな部屋、千冬姉に憧れている女子が見たらどう思うかな?」

千冬「…ほう。この私を脅すとは、いい身分になったじゃないか一夏」

一夏「そんなわけないだろ。呆れてるっていうか、普段とのギャップに戸惑っているんだよ」

千冬「ふん。普段をどう振る舞おうが私の勝手だ。プライベートに干渉するな」

一夏「だからって整理整頓くらいはしようよ…これはいくらなんでもだらしないぜ?」

千冬「まったく…男のくせに一々煩い奴だ」

一夏「いや、これくらいは普通で…って、下着まで落ちてる…しかもだいぶ前のだなコレ…」

千冬「―――!」

一夏「仕方ないなぁ…あとでまとめて洗濯―――」

千冬「返せこの莫迦!!」ババッ

一夏「うわぁ!? い、いきなり何すんだ!」

千冬「女性の下着を何の抵抗もなく回収するな! いくら家族でもその辺は弁えろ!」

一夏「はいはい、分かったよ…(黒のレース…千冬姉ってやっぱ大人っぽい下着履いてんだな…)」

千冬(くっ…やはり下着くらいは自分で管理すべきか…!
   ボクサーパンツやプリントの下着などは落ちてないだろうな…?)キョロキョロ

一夏「何か探し物? 手伝おうか?」

千冬「黙れ! さっさと手を動かせ!」

一夏「え、えぇ…何なんだよ一体…」ブツブツ

~30分後~

一夏「あー…何とか終わった」ドサッ

千冬「おぉー大分片付いたな」

一夏「いや、これでかよ…部屋の半分は教材やら書類やらが山積みになってんだけど…」

千冬「それでも足の踏み場が増えたことは喜ばしいことだ。礼を言うぞ一夏」

一夏「いいよこれくらい…でも、ちょっと疲れたから横にさせてくれ…」コテッ

千冬「…ふむ」

一夏「どうかしたのか、千冬姉?」

千冬「いや、部屋を掃除してくれたせめてもの礼だ。たまには私からマッサージでもしてやろうかと思ってな」

一夏「おー助かるなぁ。じゃあ、お願いしようかな」

千冬「うむ。いつもはお前に頼んでいるが、やはりされっぱなしは性に合わん。というわけで、上着を脱いでうつ伏せになれ」

一夏「うん。お手柔らかにね」ヌギヌギ

一夏「千冬姉、マッサージなんてしたことあるの?」

千冬「自分からはしたことないが、まぁお前にされ慣れてるから何とかなるだろう」

一夏「うーん、そうかもな。じゃあお願いするよ」

千冬「ああ。まずは足からだな」


ギュゥゥゥゥゥゥゥ…


一夏「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!?
   い、痛い!! 痛いよ千冬姉いたたたたたたたたたたたたたた!!」

千冬「痛いのか。ということは、凝っている証拠だな。もっと念入りにしてやろう」グィィィィ

一夏「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!?
   いや、違うから! 関節が逆に曲がってんだよこれ!!」

千冬「男のくせにこれくらいで情けない声をあげるな。案外終わってみれば凝りが取れてるかもしれんぞ?」ゴキッ

一夏「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!
   ゴキッていった!? 何かとれた音したよね今!?」

千冬「ふむ、意外に難しいな…按摩というものは」

一夏「はぁ…はぁ……(ヤバイ…5倍は疲れた…)」

千冬「すまん。いつもの癖で、揉むというよりは捻る動作を無意識に加えてしまうらしい」

一夏「い、いいよ…流石はラウラの師匠だな」

千冬「次からはその点を留意しよう。これでも凝りのツボは熟知しているつもりだからな」

一夏「うんうん。基本的には押す、叩く、揉むだからね。まずは押すところからお願いします」

千冬「ふっ…元世界最強のマッサージを堪能できるとはな。これほど贅沢なことはあるまい」

一夏「今はただの俺の姉なので」

千冬「はははっ違いない。では、いくぞ。確か、足の凝りに効くツボは…ココだな」


ギュゥゥゥ


一夏「ほっきゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

千冬「ん!? 間違ったかな…」

一夏「」チーン

千冬「す、すまん…どうやら私には荷が勝ちすぎていたらしい…」

一夏「い、いいよ…誰にだって得手不得手はあるもんだから…」

千冬「すまん…どうにも力加減が難しい……」

一夏「いいって。じゃあ次はお返しに俺がやるから、千冬姉は横になってよ」スクッ

千冬「な、何を言っている…お前、まだ関節が傷んでいるんだろ? わざわざ無理をさせられるわけないだろ」

一夏「うーん…無理しているっていうか…やっぱいつも通りでいるなら、こっちの方がいいかな、って」

千冬「?」

一夏「何か俺もさ…千冬姉にされるよりも、している方が落ち着くんだよ。
   いつも千冬にやっていることすれば、気が紛れるかな、って」

千冬「…つくづくお前はお人好しだな」

一夏「そういうのじゃないって。じゃ千冬姉。上着脱いで横になってよ」

千冬「分かった。何かすまないな一夏」スルルッ

一夏「気にしないでいいってば」

すまん…眠気がちょっとやばくなってきたから一旦切るお…
朝か昼に続き書いて終わらす…

一夏「じゃあ失礼して」

千冬「ああ」

グィィィ

千冬「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」

一夏(親父くせぇ…)

千冬「ふわぁぁぁぁぁぁ…やはりお前のマッサージは効くな…」

一夏「大分凝ってるね」ギュゥゥ

千冬「はふぅ…♥ あぁ、ソコだソコ…効くぅぅぅぅ…」

一夏「いきなり変な声出すなよ千冬姉…」

千冬「何だ貴様。実の姉に欲情でもするのか」

一夏「いや、何言ってんだよ…ビックリするからやめて欲しいだけだ」

千冬「知らん。お前が的確にツボを刺激するのが悪―――あぁん♥」

一夏「はぁ…まぁ喜んでくれてるみたいだし、別にいいけどさ」

千冬「ふふふ…情けないものだな。もう体中至る所、お前に開発されてしまっているからな…。
   もはや私はお前なしでは生きていけんかもしれんぞ」

一夏「変な言い方はやめてくれ…」

千冬「何だつまらん奴め。もっと慌てふためいて見せろ」

一夏「普段から散々振り回されているからね(こっちは別の意味でだけど…)」

千冬「……」

一夏「…? 千冬姉?」

千冬「ん、何だすまん…」

一夏「どうかした?」

千冬「へ、変なことを訊くな。どうもしないわ莫迦者」

一夏「…何か気にしてるの?」

千冬「何?」

一夏「いや、何となくだけど」

千冬「…何故そう思う?」

一夏「だからなんとなくだって。まぁ強いて言えば…姉弟だからかな」

千冬「…そうか」

千冬「…なぁ一夏」

一夏「なに?」

千冬「私が…疎ましいか?」

一夏「はぁ?」

千冬「いや、な…たまに不安になる。私はちゃんとお前の姉として、家族としての役割を果たせているのかどうか、な」

一夏「何だそんなことか」

千冬「そんなこととは何だ莫迦者」

一夏「だって…そんな下らない理由で悩んでいたなんてな。千冬姉らしくない」

千冬「く、下らないだと貴様…」

一夏「誰がどう言ったって…千冬姉は俺が胸を張って誇れる、世界で一番の自慢の姉ちゃんだよ」

千冬「―――」

千冬「…そうか?」

一夏「そうだって。どうしたんだよ。本当にらしくないぜ?」

千冬「いや、な…確かに私は世界的にはそこそこ実績があるかもしれん…。これでも元世界最強だしな」

千冬「だがな一夏…私はその称号を背負うと同時に、無用な責任まで持ち込んでしまったのかもしれん。
   その肩書きの名に恥じぬようにしてきたつもりが、代わりにお前の事を蔑ろにしてきたように思う」

一夏「立派だよ…千冬姉は」

千冬「…確かに立派かもしれん。だが、それで家族の事を顧みない生き方をしていたなら本末転倒だ」

一夏「そんな…俺は気にしてないのに」

千冬「いや、この学校に赴任してきたことを黙っていたのは流石にやりすぎた。
   …もっとも、まさかお前がこの学校に入学する羽目になるとは夢にも思わなかったが」

一夏「あはは…そりゃ、まぁ」

千冬「正直、お前が来たときは不安の方が強かったが…嬉しくもあったぞ」

一夏「うん。ありがと、千冬姉」

千冬「本当だぞ?」

一夏「分かってるよ。普段辛く当たるのも、俺の事を想ってのことだろ?」

千冬「…ああ」

一夏「…千冬姉」

千冬「何だ一夏…」

一夏「千冬姉にはさ…すごく感謝してるよ、俺」

千冬「……」

一夏「俺に剣道を教えてくれた時も、あの時のモンド・グロッソの時も、普段の学校生活の時も…」

一夏「普段行先を言わないのも、俺を巻き込みたくなかったからだろ?」

千冬「……」

一夏「そんな優しくて立派な姉のことを、疎ましくなんか思えるわけないだろ」

一夏「だからさ…そんないい方しないでくれよ。あんなにカッコイイ千冬姉が、俺のせいで負い目を感じているって…何か嫌だよ」

千冬「……」

千冬「本当にお前というやつは…」

一夏「お人好し、って?」

千冬「ああ。もう矯正不可能なほどな。正直ここまで軟弱だとは思わなかったぞ」

一夏「ひどいなぁ…」


千冬(…ありがとう一夏)

一夏「そういえばさ」

千冬「ん?」

一夏「何で引退したんだよ? 勿体ないな」

千冬「何を言っている?」

一夏「だって…千冬姉ならあの後出場したって、間違いなく優勝できたろ?」

千冬「別に興味ない」

一夏「そうなの?」

千冬「ああ。私は別に世界最強を目指していたわけではなかったからな」

一夏「え?」

千冬「…ただどうしても守りたいものがあったから、強くなろうとした。
   そしたらたまたま世界で一番強くなっていた。それだけだ」

千冬「…まぁその手段がisとなっているのは、半分以上が束の阿呆に振り回されている結果だが」

一夏「あはは…」

千冬「お前はどうなんだ、一夏」

一夏「ん?」

千冬「お前は何のために、isを纏っている?」

一夏「それは…千冬姉と一緒だよ」

千冬「一緒だと?」

一夏「大切な人を守りたい。そのための、力が欲しかっただけだ」

千冬「ふむ、奇妙なものだな。私と同じか…まぁ、当たり障りのない理由と言えばそうかもしれんが」

千冬「で、誰を守りたいんだ?」

一夏「へ?」

千冬「だからお前は、誰のために戦っているのだと聞いている」

一夏「誰ってそりゃ…だから、大切な人のため―――」

千冬「そういうことを訊いているのではない。もっと具体的な、個人のために戦っているのかと訊いている」

一夏「具体的に? ええと…皆、かな?」

千冬「はぁ?」

一夏「いや、だからさ。友達とか、家族とか…」

一夏「うまくは言えないけど…そういった俺の周りの人間を、全部守れるだけの力が欲しい」

千冬「…それがお前の理由か?」

一夏「まぁ…そう、なるな」

千冬「ではお前は別に個人的に誰かのためではなく、不特定多数の人間たちのために自分は強くなりたい、そう思っているわけだな?」

一夏「え……あぁ、うん…」

千冬「……」





千冬「くだらんな」

一夏「え?」

千冬「聞こえなかったのか莫迦者。くだらない、そう言ったのだ」

一夏「くだらない…?」

千冬「ああ、くだらんな。お前はそんな不確かな物のために力を振るうのか」

一夏「ふ、不確かってなんだよ! 皆を守りたいと思って何が悪いんだよ!」

千冬「…出来るだけ多くの人間を救いたいという想いは立派だ。それは強くなろうとする者なら
   誰だって憧れるし、少数よりも多数を助けられる方がいいに決まっている」

千冬「だがな一夏。一番に守りたいものもなく、ただ漠然と誰かを守りたいなんてお前の考え方はな…
   はっきり言って甘っちょろい。そして、薄っぺらい」

一夏「なん、だと……」

千冬「事実を言ったまでだ」

一夏「な、なんだよ! 守りたいって思って何が悪いんだよ!?」

千冬「…それも分からないところが餓鬼だな」

一夏「子供扱いすんな! そんな達観した素振りなんて見せないで…もっときちんと説明してみろよ!!」

千冬「…分かった」

千冬「例を出そう一夏。例えばお前の目の前に断崖絶壁の崖があり、篠ノ之とオルコットの2人が崖から落ちそうだったとする」

千冬「isなどの装備はなく、助けを求めることもなく、2人の体力も限界だ。
   しかし。2人の位置とお前の力では、どちらか一方しか助けることしかできない」

千冬「さあ一夏。どちらを助ける?」

一夏「な、何言ってんだよ千冬姉……そんなの、選べるわけないだろ…」

千冬「…だろうな。お前ならそう答えるだろうよ」

一夏「俺なら…どうにかして、2人とも助けられる方法を考えるよ」

千冬「確かに時間に猶予があるならそれを考えるのが最善だろう。しかし、そうした余裕もなく、
   僅かなロスも許されない、抜き差しならない状況だったらどうする?
   お前はそれでもまだ、2人を救える悠長に手段を考えるのか?」

一夏「……」

千冬「それがお前の答えだ。そうやってどちらを助けるかも考えられず、ウジウジした結果、
   結局二人は崖下に叩きつけられて死ぬ。お前はそういうことを平然とやろうとしている男だ」

修正
お前はそれでもまだ、2人を救える悠長に手段を考えるのか?

お前はそれでもまだ、2人を救える手段を悠長に考えるのか?

一夏「そんな…どっちか一方を犠牲にしろって言いたいのかよ…」

千冬「…別に非情になれと言いたいわけではない。確かにな、一夏。
   私だってもしそんな状況になったら、2人とも最善の救える手段をギリギリまで考えるさ」

千冬「…だがな。どちらも助かって誰も傷つかない、人生はそんな甘い選択肢ばかり出してこない。
   時にはどちらかを犠牲にし、あるいは全てを投げ打たなければならない状況も確実に存在する」

一夏「……」

千冬「そういった場合、お前はどうする? お前はやはり優柔不断に決断できないまま、
   何もできずに立ち尽くしてしまうのか?」

千冬「そんなことでは結局誰も救えないぞ。だからお前の考えは甘くて薄いんだ」

一夏「……」

千冬「誰彼も助けたいだと? 自惚れるのも大概にしておけ。
   お前は神にでもなったつもりか。お前の手は…二本しかないんだぞ」

一夏「……」

千冬「…事実、私でさえも一人守れるだけが精一杯だ」

げ。まただ…寝ぼけてんのかな…
2人とも最善の救える手段をギリギリまで考えるさ

2人とも救える最善の手段をギリギリまで考えるさ

一夏「……」

千冬「…だからな、一夏。せめて一人くらいは、大切な人を決めろ」

千冬「こいつだけは何に変えても、自分の命だって賭けても全然惜しくない、そんな人を決めるんだ」

千冬「それが…強くなるためのコツだ。強さとは元来、皆のためではなく、誰かのため、だ」

一夏「誰か、か…」

千冬「そういった意味では、この更識が立案したイベントはそう悪いものではない。
   これを機に、自分の心と向き合うのも悪くないだろう」

千冬「お前は誰のために力を欲し、誰のためにお前でありたいのか…。それを決める、いい契機になる」

千冬「惑うな一夏。お前は…お前の一番大切な人のために強くなれ。そう、あるべきだと私は思う」

一夏「……」

一夏「それでも俺は、最終的には皆を守りたいと思う」

千冬「……」

一夏「でも…なら、一番大切な…一人を守れるくらいは、強くなくっちゃ駄目だよな」

千冬「…ようやく分かったか莫迦者め」

一夏「うん…分かったよ。ありがとう、千冬姉」

一夏「ちなみにさ」

千冬「ん?」

一夏「千冬姉の一番大切な人って誰?」

千冬「…は?」

一夏「ん?」

千冬「いや、お前…今までの会話の流れで分からなかったのか?」

一夏「あれ? 名前なんか出したっけ? 聞いていないと思うけど」

千冬「いや、確かに出してないかもしれんが…」

一夏「じゃあ分かるわけないだろ。俺はエスパーじゃないんだから」

千冬「」



千冬(こいつ…ありえん!)

一夏「で、誰なんだよ?」

千冬「え? そ、そうだな…強いて言えば……」

千冬「んー…結構厄介な奴だな」

一夏「厄介?」

千冬「ああ。目を離すとフラフラとどっか行ってしまいそうだし、何かと厄介ごとには巻き込まれるし、
   最近では変な虫もついてきてるからな…本当に不安になる」

千冬「しかもこいつは自分のことなどお構いなしのくせに、他人に構わずにはいられないお人好しでな。
   にも関わらず唐変朴と朴念仁がそのまま顕現したような奴で、おまけにドが付くほどの莫迦ときたもんだ」

一夏「何だよそれ…でも、それほど想われてるんだな。ちょっと羨ましいな、なんて…」

千冬「」

千冬「……」スクッ


ピトッ


一夏「うわぁ!? い、いきなりおでこをくっ付けて何してんだよ!?」

千冬「あ、いやスマン…本当に熱でもあるんじゃないかと思ってな」

一夏「はぁ?」

千冬(本当にこいつ…無意識でやっているのか? 新種の病気かなんかじゃないだろうな…?)

千冬「やれやれ…さぁ、もういいだろ。お前はそろそろ戻れ」

一夏「え?」

千冬「戻っていってやれと言っている。オルコットも更識も、お前の事で気にしていたようだからな」

一夏「あー、そう言えば…」

千冬「…一夏」

一夏「なに?」

千冬「…ちゃんと決めておけよ」

一夏「…うん」

千冬「…今のお前は不安定で、見ていて少し不安だ」

一夏「分かってるって。心配かけてゴメンな」

千冬「まったくだ、莫迦者」



千冬(しかし…守りたい者が誰か、か…)

千冬(そこにせめて、私の名前が―――)

千冬(…何を世迷言を。私も相当莫迦だな)

一夏「…千冬姉」

千冬「なんだ」

一夏「まだ俺には、誰が一番かだなんて決められないけど…」

千冬「……」

一夏「でも、守りたいって人の中には千冬姉も入ってんだぜ?」

千冬「―――!!」

一夏「ハハハ…まぁ、これはちょっと自惚れかもしれないけどな」

一夏「でも…きっと、千冬姉も守れるくらい、それで皆も余裕で守れるくらい、強くなってみせるよ」

千冬「……」

一夏「あはは…ま、その前に決めることを決めてからだな」

千冬「…一夏」

一夏「んー?」

千冬「言ったな?」

一夏「え?」

千冬「男なら、二言はなしだぞ?」

一夏「…ああ」

千冬「ふふふっ…期待してるぞ、一夏。これからはビシバシ扱くからな。覚悟しておけ」

一夏「げ……」

千冬「ほら。そう決めたのなら、とっとと行け」

一夏「はーい…やれやれ……」


ガララッ ピシャ…



千冬「…まったく。これだからあいつからは目が離せんのだ」

一夏(俺の一番大切な人、か……)

一夏(確かに、今日のイベントを通じて結構皆の新たな一面を見たよな…)

一夏(鈴は意外と繊細で…それで、掛け替えのない親友みたいな奴だってこと)

一夏(…そういや、蘭と会った時にあいつと恋人のフリをしていたっけ)

一夏(鈴と恋人か…何だか想像つかないや。でも、想像してみると……)

一夏(……)

一夏(あ、あれ…? 意外に悪くない、のか……? 少なくとも悪い気はしないぞ…)



一夏(それにセシリア…あいつって基本的に何でもできるけど、やっぱり苦手なものとかはあって…)

一夏(それで…努力家なんだよな、あいつ…見ていて清々しいくらい頑張り屋だ)

一夏(セシリアと夫婦になったら、やっぱり楽しいだろうな。料理の腕も、絶対に上手くなるだろうし)

一夏(もし相手が俺だったら……)

一夏(……)

一夏(いや、何考えてんだ俺……)


一夏(他の皆は…いまいち想像できないな。もっとこのイベントで関わる必要があるかもしれない)

~生徒会室~

楯無「はぁ…」

セシリア「」

簪(…何度目の溜息だろ。セシリアはもうすっかり生気抜けちゃってるし…)

楯無(あぁ…今回のことで一夏くんに完全に愛想つかされたかもしれない…流石に悪ノリが過ぎたわ…)

セシリア(ふ、ふふふふふ…一夏さんに…嫌われましたわぁ……もうこの世のすべてがどうでもよくなってきましたわ…)


ガララッ


楯無「!」

セシリア「!!」

簪「…!」

一夏「ただいま戻りましたー」

楯無「い、一夏くん!」

一夏「ど、どうしたんですか先輩?」

楯無「え、ええと、その…もう、いいの?」

一夏「ええ。もうすっかり休みましたから」

楯無「そそ、そっか…。今日は、その…ごめんなさい!」

一夏「は?」

楯無「だって…流石にちょっとこれは自重できていなかったというか…その、反省してるから! ごめん!」

一夏「あぁ、いえ…別にいいですよ」

楯無「本当にもう、許してくれるなんて思っていないけど――――って、え?」

一夏「いや、いいですから」

楯無「へ…? だ、だって…結構、洒落にならないことしたよ私…」

一夏「まぁ確かにちょっと取り返しのつかないことかもしれませんが、今回は物の弾みみたいなものですよ。
   …これを機に反省してくれるなら、俺だって願ったりです」

楯無「一夏くぅん…」キュン

セシリア「あ、あの…一夏さん……」

一夏「ん?」

セシリア「その…わ、私ぃ……」

一夏「…別に怒ってないから安心してくれ」

セシリア「へ?」

一夏「セシリアだって反省してくれてるし…俺とお前が無事だったんなら、それでいいよ」

セシリア「い、一夏さん…///」キュゥン

一夏「ちょっと今回は悪い結果にはなったものの、セシリアに悪気はなかったことは俺が一番よく知ってるからな」

一夏「だから気にすんな。またあのスーパー行く約束しただろ? 今度も美味い肉じゃが作ってくれよ」

セシリア「―――!」

セシリア「は、はい! 喜んで!!」

楯無「え、ええと…じゃあイベントはどうする? 正直言って、無理そうならこの辺でお開きにしてもいいよ?」

一夏「いや、何言ってんですか。こうして戻ってきたんだから続けましょうよ」

楯無「へ?」

一夏「…どうかしたんですか?」

楯無「い、いや…嬉しいけど、やけに心境の変化が激しいなぁ、と思って…」

一夏「…まぁ色々とありましたから」

一夏「でも俺にとって、このイベントをやる意味が見つかりました。だから、俺自身が続けたいんですよ」

一夏「だからお願いします。続けさせてください」

楯無「へ? あ、あぁそうなんだ…うん……」

簪(…織斑先生。何を一夏に言ったんだろ…?)

簪(…でも、元気になって良かった)

楯無「で、ではではー! 一夏くんも復活したことだしー! 張り切って再開したいと思いまーす!!」


ゴソゴソ


楯無「出ました! 次なるミッションは…『>>238』です!!」

というわけで今日はここまで
次回はちょっとvipの方にどうしても投下したい奴があるから、それが終わってからにする
じゃあの

このレスが安価なら安価↓

『楯無会長と散歩』

楯無「あ…あれぇー?」

一夏「ん? これ、入れたの楯無さんですか? としたら意外ですね。
    てっきりもっと無茶振りなモンを要求されると思ったのに」

楯無(いや、これは…)チラッ

簪「……」

楯無(うーむ…私としては簪ちゃんとデートするとか簪ちゃんとアニメ鑑賞するとか、
    そういうのばっか入れたんだけどなー…)

簪(お姉ちゃん…私に変な気、使ったでしょ…? 知ってるんだからね…)

楯無(あはは…やっぱり姉妹か。嬉しいような複雑な気持ちだね、コリャ)

楯無(でも、散歩で済ます辺りが可愛いねぇ。そんなに一夏くんのことが好きなのかな?)

簪(……///)

楯無(あはははっ♪ まぁまぁそんな顔しないで。別に取って食おうってんじゃないんだからさ)

一夏(二人とも見つめあって何してんだ…?)


※この姉妹のやりとり、およそ2秒間


楯無「はーい☆ じゃあまさかのご指名ということなので、今回のミッションは私自らが出撃しちゃいまーす♪」

一夏「あれ? ご指名ということは、これ書いたのは楯無さんじゃないんですか?」

楯無「んなわけないじゃん。私のは『一夏くんを永久的に私の下僕にする』とか
    『一夏くんを更識家の使用人として生涯こき使う』とかだよ?(まぁ嘘だけど)」

一夏「……」スッ

楯無「ん? どうしたのかな、そんな白式を掲げて臨戦態勢なんかとったりして」

一夏「…マジでそのミッションが出たら全力で抵抗しますからね」

楯無「あらあら、血気盛んだこと。そういうのは嫌いじゃなくってよ。
    ところで一夏くん…この部屋、湿 っ ぽ い と は 思 わ な い ?」

一夏(うッ…!? ま、まさかもうこの部屋に清き熱情(クリア・パッション)を!?)

楯無「にゃははは☆ まぁそん時はそん時ということで! せっかくやる気出してくれたんだしね!」

一夏(やっぱやめたい…この人の前で迂闊な発言するんじゃなかった…)

楯無「ほらほら落ち込まないの! ミッションは絶対なんだからね!」グイッ

一夏「うわぁ!? い、いきなり引っ張らないで下さい~!」

簪「頑張っ、て…」フリフリ


~行きのモノレール~

楯無「ふっふーん♪ 何だかんだでこういうのって初めだから新鮮!」

一夏「そうですか…」

楯無「なーによその不満げな顔は。私、男の人と2人きりでどっか行くのって初めてなんだからね?」

一夏「さいですか…」

楯無「むっすー何よその顔は。こんな美少女をはべらせて散歩できるなんて名誉だとは思わないのかい?」プクー

一夏「寝食を共にしといて今更何言ってんですか…」

楯無「いや、だからそういう問題じゃなくて…あぁもう、こんなんだから…」

一夏「?」

楯無「なーんでもなーいよっと…ほら、行くよ」

一夏(…? なんか珍しく不機嫌だ)

~とある海沿いの街道~

一夏「おぉー。学園の近くにこんなところが」

楯無「中々いいとこでしょー。気に入ってるんだよ、ここ」

一夏「いいですよね。学園が見渡せて」

楯無「うんうん♪ 分かってくれて嬉しいよ!」

一夏「しかし見てみると…」チラッ


カップル「キャッキャ」

アベック「ウフフ」


一夏「…なんかカップルばっかですね」

楯無「まぁ知る人ぞ知るデートコースでもあるからね、ここは」

一夏「あれ? お気に入りなんですよね? 誰か彼氏さんとと来たことあるんですか?」

楯無「んなわけなーいじゃん。虚ちゃんとか本音ちゃんとかと、よく並んで歩いたりするの」

一夏「あーなるほど」

一夏(…何かアレだな。弾が昔言ってたな。『吉祥寺の井の頭公園に間違っても男1人で行くな。
    マジ死ねるから』って…。何となく意味が分かった気がする…)


一夏「ええと、この辺りを軽く散策して終わりですか?」

楯無「そうだねー。ミッション・コンプリート条件はさっきと一緒で、生徒会室に帰ったらでいいじゃない?」

一夏「え?」

楯無「ん、何? 不満なの?」

一夏「いや、不満というか…やけにアサッリしてるなと思って」

楯無「一夏くん、何か勘違いしてない?」

一夏「え?」

楯無「逆に言えばね。このミッションは生徒会室に戻らない限り終わらないんだよ?」

一夏「ん?」

一夏「……」

一夏「んん?」

楯無「つまりね。散歩にかこつけて私が一夏くんにどうしようが関係ないということ」

一夏「……」

楯無「たとえ私が一夏くんを拉致ってあんなことやこんなことを強制しようが、このまま2人で失楽園に逃避行と
洒落こもうが、生徒会室に戻らない限りは半永久的に終わらないんだよ?」

一夏「…」

楯無「つまりはこの時間は会長権限をフルに職権乱用した私個人のお楽しみターイム!
    一夏くんはそれを甘んじて受け入れるしかないのだッ! きゃっ///」

一夏「」


ダッ!


楯無「お、逃げるの? いいねー。海辺の追いかけっこ、ちょっとやってみたかったのよね!」ダッ!

一夏「勘弁してください~!!」


~2分後~

一夏「ぜぇ…ぜぇ…」

楯無「あっはは! だらしないぞ高校男子!」バサッ<扇子『青春』

一夏(う、嘘だろ…なんで息1つ切らしてないんだこの人…)ハァ…ハァ…

楯無「まーまー冗談だよ冗談。流石の私も、本人の同意なくそこまでしたりはしないって」

一夏「俺の意向が今まで貴女に何度無視されたか覚えていますか…?」

楯無「君は今まで食べたパンの枚数を覚えているのかい?」

一夏「したり顔でそんな返し方やめてください!!」

楯無「にゃははっ! ジョークジョークっ! ある程度の線引きくらいはしてるからさッ!」

一夏(まぁやること為す事ムチャクチャではあるけど、嘘は言わないからなこの人)

楯無「ん~? なーにそんな息を切らしてお姉さんの方なんか見て…?
    そんなに食べたいならど・う・ぞ☆ きゃはっ///」

一夏(…本当のことも言わないけどな)


一夏「あくまで普通に散歩ですからね…?」

楯無「分かってるって」ムギュッ

一夏「うわぁ!? な、何ひっついてんですか!」

楯無「何って。せっかくのデェトなんだし」

一夏「いや、デートっておかしいでしょ!? 普通に散歩って言ったばかりじゃないですか!」

楯無「え」

一夏「え?」

楯無「…ねぇ一夏くん。まさかとは思うけど、これを額面通りに受け取っていたりしないよね?」

一夏「はい?」

楯無「あのね。男の子と女の子が2人きりで仲睦まじく散歩。これを世間的にはどういう風に見えるか分かってる?」

一夏「いや何言ってんですか…。ただの散歩でしょ。それ以上もそれ以下もないでしょ」

楯無「」

楯無「…ちなみに訊くけど、さっきの買い物とか料理とかも?」

一夏「買い物付き合うくらいは普通に友人たちとの付き合いの範疇でしょ?
   (まぁ鈴にはデートだと口裏合わせられそうになったけど)」

一夏「料理にしたって、友達に教えるくらいは別に何ともないし…それをデートっていうのは違うでしょ?」

楯無「…oh」

一夏「というかそもそも、そういうのってちゃんとした彼氏彼女の関係が前提じゃないですか。
    楯無さんと俺なんてとてもとても…」

楯無「」

一夏「…楯無さん?」

楯無「…フン!」ゴキッ

一夏「ぎゃああああああああああああ!? い、いきなり腕を捻らないでください!!」


楯無「貴様は…嘗めたッッ!! 乙女の純情を…辱めたッッ!!」

一夏「言ってる意味がわからなだだだだだだだだだだだだだだだ!?」

楯無「問答無用! これは鈴ちゃんの分!!」ゴキッ

一夏「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? は、外れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

楯無「そしてこれはセシリアちゃんの分!!」ゴリッ

一夏「あぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? は、はまったけどいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

楯無「織斑先生は、まぁ念のため」ガコッガコッ

一夏「ぎゃああああああああああああああ!? は、外してすぐはめないでくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!?」

楯無「まだ私のバトルフェイズは終了してないぜ!!

    そしてこれは私の分だァーッ!!
    これもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれも!!」


ゴキッ ゴリュッ ゴキッ ゴリュッゴキッ ゴリュッゴキッ ゴリュッゴキッ ゴリュッゴキッ ゴリュッゴキッ ゴリュッゴキッ ゴリュッ


一夏「あいいいいいいいいいいいいいいいいいむぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!??」


※ちなみに同時刻のis学園では、会長に対する拍手と織斑一夏に対する敬礼が同時に巻き起こっていた


~10分後~

楯無「ふッ…悪は、去ったか…」バサッ<扇子『成敗』

一夏(い、いてぇよぉ…絶対これ、間接炎起こしてるよぉ…)シクシク

楯無「ふぅーちょっとスッキリした。やっぱ一夏くんからかうのって面白いやー♪」

一夏「いや、マジで洒落にならないんですけど…腕が薩摩芋みたいな色してるし…」

楯無「大げさだねー。ちゃんときっかしはめてあげたから血行はすぐに回復するわよ。
    それに白式には生体回復機能もついてるんでしょ?」

一夏「治りが早いってだけで痛いもんは痛いんです!!」

楯無「まーまー自業自得ということで。気を取り直してミッション再開ー☆」

一夏(俺が一体何したって言うんだ…)


楯無「てりゃッ」ピトッ

一夏「痛ってえええええええええええええええええええええええええええ!!
    だから腕はやめてくだしああああああああああああああああああああ!!」

楯無「男の子がこんなことくらいで音をあげなーいの♪
    ほーら、腕越しにふくよかな感触が伝わるで・しょ…?」ムニュッ

一夏「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!
    い、今だけは! 今だけは僅かな刺激でも与えないでくださぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

楯無「おやおや。学園の女生徒ばかりだけではなく、今度は全国男子までも敵にまわすつもりかい。
    そんな悪い子はこーだ!」グニグニ

一夏「あぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」


~5分後~

楯無「~♪」

一夏(うぅ…治ってきているとは言え、未だに楯無さんが腕にひっついてくるから痛みがまだ響く…)

一夏(というか何か、絶妙な加減で腕を締めてくるからジワジワくるんだよぉ…完全に一種の拷問だよ…)

一夏(…しかし今度抵抗したら、捻られるどころか腕をちぎられそうだ。
    ここは話しかけて気を紛らわせるくらいしかないな…あぁ痛い…)

一夏「あ、あの…楯無、さん…?」

楯無「んー? 何かな、一夏くん。せっかくの散歩なんだからそう固くなさんな」ギュゥ

一夏「まぅあ!? ま、前から気になっていたんですけど…
    なん、で、楯無さんは会長に、なろうとしたんですか…?」ギチギチ…

楯無「最強ですから」

一夏「いや、そんな少年漫画のラストみたいな理由じゃなくて…」

楯無「んー? 何で会長になったか、か。それはちょっと違うかもしれない」

一夏「え?」

楯無「別に私は会長になりたかったわけじゃなくて、何か面白そうなのが会長だっただけかな」


一夏「え? そんな理由ですか?」

楯無「そんな理由って…酷い言い方もあったもんだ」

一夏「いやだって…てっきり、どうしてもやりたいことがあったから会長を目指したとか、そうとばっかり」

楯無「やりたい、ことかぁ。まぁ色々あるけどこれといって決めてないね。

    ただやったらすごく楽しいだろうなぁ、って思ったポジションが生徒会長で、
    それで私がたまたま最強だったから。なった経緯はだいたいそんな感じだよ」

一夏「か、軽ッ…!」

楯無「お家の事情で腕っ節には自信があったからね。というか会長にとって、最強の看板はただの飾りだよ」

一夏「え?」

楯無「確かに学園最強の証は学園の生徒会長だけど、最強だからといって即会長ってわけにはならないよ。
    役職の譲渡なんて自由だし、いざとなったらわざと負ければいいんだから」

一夏「強いのにそんな真似、わざわざしますかね? 会長になったら色々と融通が利いて便利でしょ?」

楯無「んー…私はただ強さを求める人が会長になりたがるとは思えないなー。むしろ重荷に感じそう」


一夏「そういうもんですかね」

楯無「本当のことはよく分からないよ。ただ、私としてはやりたいことがあったというよりは、
    やっててすごく楽しそうだったからかな。だって権限を利用して学園を改造できるなんて魅力的じゃん!」

一夏(うわー…すげぇ納得できる)

楯無「まー確かにそんな理由、って言っちゃうのも分かるね。自分でもけっこうしょうもないと思うし」

楯無「でもね、私はこの決断に後悔はしてないよ。虚ちゃんに本音ちゃん、そして一夏くん。
    生徒会のメンバーと知り合えて仲良くできるのは、私がこの道を選んだおかげだし」

楯無「それでね。今となっては学園の皆のために命を賭ける覚悟もあるよ。大切な生徒だからね。
    そういった意味では、会長になって学んだことが山ほどあるかな」

一夏(なんか…格好いいな)

楯無「んー…でもそう言うとやっぱり『会長になりたかった』ってことになるのかな。
    動機の具体化って難しいね」

楯無「皆を引っ張っていく学園のスーパーヒーローって感じでさ。ちょっとそういうのに憧れていたのかも」

一夏「へぇー。なるほど」

一夏(ん? ヒーロー?)

楯無(あ、ちょっと言い過ぎたかもしれない)


一夏「それってやっぱり…あれですか? かんざ――」

楯無「ところで一夏くんさ、ところてんって好き?」
   『一夏くん、ちょっとそれは待って』

一夏「ん?」

楯無「私はとことてんには断然ポン酢派なんだけど、わさび醤油もいいよね。一夏くんはどっち派?」
   『ちょっとここからはプライベートな会話になるから』

一夏(ちょ、なんだこれ…!? 会長の声がダブって聞こえるぞ!?)

楯無「どうしたの? そんなに難しい質問だったかな? まぁ両方とも甲乙つけがたいからね」
   『落ち着いて。これはプライベートチャンネルだよ』

一夏(プ、プライベト・チャンネル!?)

楯無「まぁーそんな深く考えないでよ。目玉焼きには醤油かソースかくらいのノリでいいからさ」

   『一応これは全校放送だからね。こっからの会話はあまり知られたくないことだからさ。
    更識家直伝の暗号術とisのマニュアル制御を応用させた高等技術だよ』

一夏(何ですかその無駄に洗練された技術は!? 一体どうやって声出してるんですか!?)

楯無「…ちょっとー。聞いてるのー?」
   『落ち着いて、プライベートチャンネルの方に耳を傾けて。口頭の台詞には適当に相槌打つだけでいいから』

一夏(えぇー…ちょっと頭が混乱してるんですけど…)


今日中に終わらせたかったけど明日も早いので一旦ここで切るお…すまぬ
続きは明後日かな

楯無『さて、と…おおまかな見当はついてると思うんだけど…まぁその通りだよ。

    私が会長になったのには、簪ちゃんのことも絡んでる。
    知っての通り、かつて妹の簪ちゃんは私に対して苦手意識があってね』

一夏「……」

楯無『自分で言ってて何だけど、この歳で代表操縦者で更識家の正式継承者だもん。
   そりゃ頑張ったことで親族や皆の期待に応えられた事は嬉しかったし、それなりに誇りにも思ってたよ』

楯無『でもね…やっぱり姉妹ってさ。どんな人間関係よりも身近なモノに感じるんだ。
    その自分に一番近しい妹に避けられているって言うのは…ちょっと寂しかった』

楯無『あはは。今にして思えばそういうことだったのかもね。
   私、けっこう行き当たりばったりで行動しちゃうから。こういう風に考えたことなかったよ』

一夏「……」

楯無『簪ちゃんがヒーローアニメにはまったのは、私の影響でもあると思うんだ。
   私という脅威から、いつか誰かが助けてくれる。あるいは自分自身が打ち破れる。
   そんな期待をアニメを見ることで昇華していたのかもしれないね』

楯無『だからさ。私がそうなれば、少しは私のに懐いてくれるかなって思った。

    簪ちゃんの好きなヒーローになれば、引け目無しで私を見てくれると思っていた。
    多分、そういう想いも少なからずあったんだと思う』

一夏「……」


楯無『…でも、そうはならなかった。むしろ姉妹の距離は広がっちゃった。
    うん、今にして分かったよ。私は結局、簪ちゃんにとってはヒーローじゃなくて悪の親玉にしかなれなかったんだ』

楯無『そんな人が力だけでなく権威まで手に入れちゃったら、そりゃ怖いに決まってるよね。
    ははは…バカだったなぁ、自分』

一夏「…後悔、してないでしょ?」

楯無「ん? 後悔? 今は湯葉豆腐の新しい食べ方についての考察についての話だったんだけど?」

   『もちろんしてないよ。さっきも言ったとおり、会長になって学んだことはたくさんあったから。
    家族以外のちゃんとした繋がりを持てたことは、私自身の誇りでもある』

楯無『でもさ…妹の気持ちを無視して私が一人で突っ走っちゃった事実は変わらないよ。
    結局は簪ちゃんとそれ以外を天秤にかけたみたいで…何だかやっぱり悲しい』

一夏「関係ないですよ…今となっては」

楯無「えぇー…一夏くんって湯葉豆腐あまり好きじゃないの? 勿体ないなぁ…」
   『うん、そうだね。だからね。そういった意味では、一夏くんには本当に感謝してる』

楯無『確かにもう終わったことだけど…忘れちゃいけないことだよ。
    簪ちゃんは本当に大切な家族だから。それを蔑ろにしたことは、絶対に否定したくない』

一夏「……」


楯無「うーん。じゃあ話題を変えようか。納豆に合いそうな食べ物とかどう? ちなみに私はきざみ葱と卵派ね」
   『湿っぽい話になっちゃったね。この話はここまでにしようか』
   
一夏「……」

楯無「一夏くんは? 男の子だからキムチとか好きそうだけど―――」

一夏「そんな悲しいこと…言わないでくださいよ」

楯無「え?」

一夏「…楯無さんがあいつのために頑張ったことは、俺なんかよりもあいつの方がよく知ってますよ」

一夏「確かに俺は手助けしたのかもしれないけど…でも、俺なんかいなくたって
    きっと時間をかければあいつは分かってくれたはずです」

一夏「俺のしたことは、それを少し早めるのを手伝っただけです。

    楯無さんは…昔から、あいつのことが大好きだったじゃないですか。
    そのために頑張ったこと…否定しちゃダメですよ」

楯無「……」

一夏「だからあいつのために一生懸命だった自分を…卑下しないでください。
    そんなの、悲しすぎますよ」

楯無「……」


楯無「…一夏くん」

一夏「はい」

楯無「一体何の話してるのかな?」

一夏「え」

楯無「私は色々な食べ物の食べ合わせや付け合わせについて話していたんだけど?」

一夏「え…(あーそう言えばそういうことになってったっけ…全然聴いてなかったけど)」

楯無「もしかして一夏くん、話、聴いてくれてなかったんだね…」メソメソ

一夏(え!? ガチ泣き!?)

楯無「私が、せっかく…ひっぐ、一夏くんの、好みとか、訊きたかったのに…ぐす…
    一夏くんは、私のことなんか…、どうでもいいんだぁ…うわぁぁん…」

一夏「え、いや、ちょっと楯無さんマジやめてくださいよお願いですから変な誤解受けますからマジで」



楯無『…一夏くん』

一夏「いや、そんなことないですってちゃんと聴いてましたってだから早く泣き止んでくださいよ」

楯無『ありがとね』

一夏「えぇーなんでまだ泣くんですかいや本当に勘弁してください俺が悪かったですから…」


楯無「うーん、喋ってばっかだったからちょっと疲れちゃった」

一夏「そ、そうですか…(あぁ、帰ったら箒たちになんて弁明しよう…)」

楯無「あ、ちょうどあそこにベンチがあるよ。ちょっと休憩しようか」

一夏「は、はい…」


ポスッ


楯無「はいどーぞ」

一夏「へ? あぁ、じゃあ遠慮なく」ストン

楯無「こらこら。何でナチャラルに隣座ってんのよ」

一夏「え?」

楯無「ほら、ここどーぞ」ペチペチ

一夏「いや、膝叩いてそんな事いわれても」

一夏「…まさかとは思いますけど」

楯無「んー?」ペチペチ

一夏「膝枕ですか…?」

楯無「オフコース」

一夏「えぇ…何でですか…」

楯無「はーやーくー」ポスポス

一夏「いや、嫌ですよ。恥ずかしいですし」

楯無「え」

一夏「何故驚く」

楯無「一夏くんてばシスコンの気があるから、私のようなお姉さんの膝枕とくれば
    ルパンダイブさながらに飛び込んでくれると」

一夏「あんた本当に普段、どんな目で俺を見てるんですか…」


楯無「も~しょうがないなぁ~一夏くんは~」

一夏「え(何故ここで大山信代口調…? ていうか声真似うまッ!?)」

楯無「そんな聞き分けの悪い子には~ゴソゴソ~」<ポケポーン

楯無「じゃじゃーん! 蒼流旋(ソウリュウセン)でーす!」

一夏「ちょ!? ナチュラルにis展開させないでください!」

楯無「悪い後輩を蜂の巣にしたっていいじゃない。会長だもの」ウィィィン…

一夏「うわぁぁぁぁ!? ガトリングの砲門こっちに向けないでください!
    ていうか学外で勝手にisなんて使ったら怒られますよ!?」

楯無「お生憎様。国の代表操縦者だからisの使用には多少の融通は利くんだよ、私は」

一夏「え」

楯無「どうする? 一夏くんも抵抗してみる? まぁ織斑先生のことだから反省文を用紙1メートル分
    積み重ねるか、半日アリーナをランニングするぐらいで済むんじゃない?」

一夏「単位が色々おかしいんですけど!?」

楯無「まぁ抵抗したって無駄だけどね。このままかち合って地獄の懲罰を受けるか、
    それとも甘美なるお姉さんの膝元を堪能するか、2つに1つだ!」

一夏「あぁーもう! 寝ればいいんでしょドチクショウ!!」


楯無「ふふーん♪ どうかな、寝心地は」

一夏(あぁー…なんでこんなことに…)

楯無「男の子の髪って以外にゴワゴワするねー。一夏くん、トリートメントとか使った方がいいよ。
    せっかく綺麗な髪してるのに勿体ないよ」

一夏「さいですか…」

楯無「やれやれ。大分お疲れのようだね」

一夏「誰の所為ですか、誰の」

楯無「あはは、ごめんごめん。だからこうして休ませてあげてるんじゃない」

一夏「はぁ…まぁいいですけど」

楯無「ほら。体の力を抜いてごらん」ピトッ

一夏(あ、あれ…? 目、隠されてるのか…?)

楯無「目をつぶって見て。すごく休まるからさ」


一夏(あぁ…これは確かに…)

楯無「……」

一夏(目をつぶっているからかな…風の音とか潮の匂いとか、そういうのが全部心地いいや…)

一夏(しかも何か会長の膝って柔らかくて…すごいいい匂いがして…すげぇ落ち着く)

楯無「……」

一夏(あぁ、これは本当に中々…いいかもしれない)

スッ

一夏(ん…? 手をどけてくれたのかな?)

スゥー…

一夏(あれ? 手をどけてくれたのに…何だか影が迫っているのを感じるぞ?)パチッ

楯無「」チュゥゥ

一夏「どわぁ!?」ガバッ

楯無「むぅ。起きてしまったか」

一夏「な、何してんですか!?」

楯無「あまりにも無防備だったからつい♪」バサッ<扇子『てへぺろ☆(ゝω・)』

一夏「ま、まったく…油断も隙もないというのはまさにこの事だ…」

楯無「まぁまぁ反省するので☆ さ、気を取り直して」ポンポン

一夏「全力でお断りします」

楯無「あれあれ? まだそんな悲しいこと言うの…お姉さん、泣いちゃうなぁ…」スッ

一夏(うッ…またis持ち出されたら厄介だぞ…!?)

楯無「ふっふっふ…言ったよね? これは私の権限をフルに職権乱用できるスーパープライベートタイムだって…
   一夏くんは甘んじてそれを受けるしかないんだよ…?」ニコッ

一夏(くッ…!? 何か手立てはないか!? この窮地を脱出するのにベストな対抗手段は!?)

一夏(―――そ、そうだ!!)

一夏「お、俺! 何か飲み物買ってきます!!」ダッ

楯無「え」


タッタッタ…


楯無「あぁー…」

楯無「…上手く煙に巻かれちゃったなぁ。まぁ三十六計逃げるに如かずって言うしね」

楯無「それにしても、一夏くんてば本当に面白いなぁー。一緒に居てこんなに楽しいのなんて初めてかもしれない」

楯無(簪ちゃんや他の子も本気になるのも分かるなぁ…。まぁ私としては簪ちゃんを全力でプッシュしたいけど、
    一夏くんてば競争率高いし…うーむ、どうしたものだろう…)

楯無(…というか、私が個人的に興味をここまでそそられるのは初めてかもしれないなぁ。
    男性経験なんてなかったことを引いてもさ)

楯無(…もし仮に、一夏くんが選んでくれたのが私だったら、なんて…あはは。何考えて―――)


???「ひゅーっ! あそこの彼女、マジマブくね!?」

???「うっは超イケてんじゃん! こりゃお持ち帰りコース直行だな!」


楯無「ん?」

dqn1「ねぇねぇそこの彼女! 俺たちとo☆chaしなーい?」

dqn2「君、超可愛いね! 今暇? 暇だよね?」

楯無(うわぉ。何という絵に描いたようなチャラ男。ここまでテンプレだと最早絶滅危惧種だよ)


楯無(いるんだよねぇー…自分がちょっと顔が良くて女の子に少しもてるからって、自分が特別だと勘違いする奴…)

dqn1「こんな所で1人でいるなんて勿体無いよ! 俺たちと遊ぼうぜ!」

dqn2「さぁ…俺たちが夢の国に連れてってあげるからさ…ほら、いこっ」キラリン☆

楯無(うわぁ無駄にいい笑顔だ…下心透け透けなのが逆に潔いくらい)

楯無「あ、すいません。私、連れがいるので」

dqn1「おっ…もしかして彼氏?」

楯無「はい」

dqn2「oh! 即答!? 首輪付きかよ!?」

楯無(首輪付きって何よ。まぁコレで諦めてくれるでしょ)

dqn1「ふっ…そんな事は関係ないね。俺、逆に彼氏とか居てくれた方が燃えるからな」

楯無「え?」

dqn2「うっひょー! 流石は寝取りのto★shiの異名を持つだけのことはあるぜぇー!
     こいつは臭ぇー! ゲロ以下の匂いがプンプンしやがるッ!」

dqn1「ふッ…褒めるなよ、相棒…」

楯無(何こいつら…)

dqn1「ふ…俺の如意棒で泣かせた女の数は苺の種の数ほどあるぜ…☆」

dqn2「しかも守備範囲は下は小学生、上は年金受給手前の婆さんまで幅広い!
     女関係で言えばこいつは下衆中の下衆です! まごうことなく!!」

dqn2「ふッ…そう持て囃すなよ…勃っちまうぜ…★」

楯無(うげぇ…女子の前で最低な会話繰り広げてるくせに決め台詞は全然決まってない…)

dqn1「まぁまぁそういう訳だから! 俺たちと行こうよ! その方が絶対楽しいからさ!」


ガシッ


楯無「―――」ピクッ

dqn2「はーい! 1名様、パラダイスへご招待でーす!」

dqn1「ヒャッハー! 久々のjkだぜぇー! すぐにヒィヒィアヘアヘ言わせて――」

楯無「ねぇ。汚い手で触らないでくれる?」

dqn1「え?」


グルン…ゴキッ


dqn1「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!??」

dqn2「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ma★saの腕が振り子時計のように!?」

dqn1「俺はto★shiだっつーの!! いてええええええええええ!?」

dqn2「あ、そうだっけ。だ、大丈夫かte★ruぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

楯無「ねぇーそこの三流漫才コンビ。そっちの突っ込みの方は早く病院行った方がいいよ。
    格闘家に診てもらう方がいいかもしれないけどね。どっちにしろ、カラスが鳴く前には診てもらいなさい」

dqn1「こ、この女ぁ…!」ギラッ

dqn2「お、おいk☆e★n! 光り物出すのはマズイって!!」

dqn1「うっせぇ! 下手に出てりゃ付け上がってこのアマぁ! 女は黙って股開いてりゃいいんだよ!」

楯無「…随分とこの時世に珍しい男子もいたもんだ。まぁ私としては願い下げだけどね」

dqn1「ガタガタ言ってとマジブッ刺すぞてめぇ!!」

楯無「あのさぁ…刃物抜いたってことは、命賭ける覚悟は出来てるってことだよね…?」スッ…

dqn2「え…」

dqn1「上ッ等だこのボケェ!! かかってこいやぁ!!」

dqn2「お、おいやめろって田中小太郎…こいつ、なんかやばいぞ」

dqn1「ちょ、おま。ここで本名とかマジ有り得んし」


楯無「さてさて。骨を折られたい? 内臓破裂させたい? どっちかくらいは選ばせてあげるよ?」

dqn1「チッ…付け上がる女はマジ嫌いだ…泣き叫ぶくらいが一番可愛いってのによぉ…」ギラッ!

dqn2「お、おい!! やめろって!!」

dqn1「うっせぇ!! 死―――」


ガツン!!


dqn1「ふべぇ!?」

dqn2[!?]

楯無「!?」


一夏「わり。手元が狂っちまったぜ」

dqn1「ば、ばんだでめぇば!?」

dqn2「落ち着け田中! まだ缶コーヒーが顔面にめり込んでるぞ!?」

dqn1「うっぜぇ! そ、そうがわがっだぞ…でめぇが、ごのあまのがれしか…?」

楯無「あ」

一夏「何かフゴフゴ言ってて分からないけど、俺の連れに何かしようってんなら容赦しないぜ?」

楯無(ふぅ…危ない危ない。まぁちょっと残念な気もするけど)

dqn1「で、でめぇ…ぶっごろじてやる!!」ギラッ!!

一夏「やめておけ。そんなもんじゃ俺は刺せないぞ?」スッ…


<白式―――展開>


dqn1「うば!?」

dqn2「お、男でisを使えるだと………あッ!?」

dqn1「ば、ばんだでめぇ…ぞんなの、ばんそくだろうがぁ!?」

dqn2「おい、逃げるぞ! こいつ、織斑一夏だ!!」

dqn1「え…? だれ?」

dqn2「知らねぇのかよ!? ニュースにだって散々なったじゃねぇか!!
     世界で唯一男性でisを使える高校生だよ!!」

dqn1「けっ! isつかえでも、じょせんはガキじゃべぇか!! ぶっころしてやる!!」

一夏「…別に俺は素手のタイマンでもいいぜ?」<is解除>

dqn1「おぉ!? いいぜぇ!? かぐごじろこのやろ――」

dqn2「バカやめとけ!! こいつ、政府の保護管理下にある奴だ! 手を出したら色々と面倒なんだよ!」

一夏「大人しく引いてくれるなら別にそれでも構わないけどな」

dqn1「あぁ!? ふざべんな、だべがでめぇなんが―――」

dqn2「だぁーもう!! いいから行くぞ!! すいませんでした!! 通報とかマジ勘弁してください!!」ガシッ

dqn1「うばぁ!? で、でめぇ~! おぼえでろよ~!」ズリ…ズリ…

一夏「…やれやれ。結局は名前で勝っちまったか。ちょっと格好つかないな」

楯無「……」

一夏「大丈夫…でしょうね、楯無さんなら」

楯無「どういうつもり?」

一夏「ん?」

楯無「私があいつ等程度に遅れを取るなんて思ってないでしょ?」

一夏「まぁ、そりゃ…」

楯無「助けてくれたのは一応感謝するけどね。でも正直言ってちょっと余計だったよ」

一夏「え?」

楯無「私の女としてのプライドまで莫迦にされたからさ。
    少しは痛い目に合わせないと気がすまなかったよ。どういうつもり?」

一夏(えぇー…助けなかったら助けなかったで絶対文句言うだろうに…)


一夏「まぁ、確かに楯無さんがアイツラに負けるなんて微塵も思ってませんでしたけど…
    それでも、楯無さんには手を出さないで欲しかったんですよ」

楯無「…どういうこと?」

一夏「何というか…あいつ等が汚い手を使ったからってこっちから手を出したら、
    結局は楯無さんも同類になっちゃいますよ?」

楯無「…ッ」

一夏「相手が汚い手を使ったからって、何もこっちも相手に合わせる必要はないでしょ?
    それに楯無さんは…楯無さんだけは、絶対にそんなことさせちゃいけない気がしたんです」

楯無「…ただいい様に言われて、ヘラヘラ笑ってればいいって言うの?」

一夏「そんなんじゃないですよ。だって…ヒーローって、もっと格好いいものでしょ?」

楯無「―――ッ!」

一夏「これからも楯無さんには、あいつにとってのヒーローであって欲しいですから。
    だからそんな暴力に頼らせるようなこと、させたくなかったんですよ」

一夏「あいつだけじゃなくて…楯無さんは俺たち生徒にとっての、スーパーヒーローなんですから」

一夏「そんな格好悪い真似…見過ごせませんよ。やっぱり」

楯無「……」


一夏「だから、汚れ役とかは全部俺でいいんです」

楯無「…それも納得できないよ。それだと、一夏くんばっかりが悪者みたいになっちゃうじゃん」

一夏「俺はいいんですよ。だって男ですから」

楯無「え?」

一夏「男なんてちょっとバカで、泥ひっ被って、暴れまくるくらいが丁度いいんですよ。
    ま、それを差し引いても女の子が危なそうだったら、助けるのが男ってモンでしょ?」

楯無「……」

一夏「あはは。何だか自分で言ってて恥ずかしいですね。お待たせしました、コーヒーです」

楯無「…ありがと。なんか、ごめんね」

一夏「いいですよ、これくらい」

楯無「ううん。あれ? 1つだけ…って、あ、そうか…」

一夏「まぁ俺のはいいですって。後で適当に買いますから」

楯無「……」ゴクッ

楯無「ぷはっ。はい、あとはどうぞ」スッ

一夏「え…あぁ、どうも…」ゴクッ

楯無「……」


~帰り道~

一夏「じゃあそろそろ帰りましょうか」

楯無「そうだね。あ、そうだ一夏くん」

一夏「はい?」

楯無「さっきのお礼、ちゃんと言ってなかったね。ありがと。とっても格好良かったよ」

一夏「別にいいですって」

楯無「それともう1つ」

一夏「え?」

楯無「私、嬉しかったよ。私が、一夏くんやあの子を含めた、皆のスーパーヒーローだって言ってくれてさ」

一夏「そんな。事実を言ったまでですよ」

楯無「ううん、本当に嬉しかったの。でもね…」

一夏「ん?」

楯無「さっきの一夏くん、本当に格好良かった。本物のヒーローみたいだったよ」

一夏「あはは…照れますね」

楯無「実はね。憧れていたのはヒーローだけじゃないの。悪い怪人に囚われたヒロインってのにも…
   ちょっとだけ憧れてた。そして、一夏くんに救われた」

一夏「え?」

楯無「だからね…これは、そのお礼」

一夏「へ?」


chu♥


一夏「!!??」

楯無「あっはは!! 一夏くんってば油断大敵だよ!」

一夏「い、いきなり何すんですか!?」

楯無「ただのほっぺにチューじゃん。そんなんで赤くなっちゃって可愛いなぁ~」

一夏(い、いきなりしおらしくなったかと思えばこの人は…!)

楯無「あはははははは!」

楯無「一夏くん…♪」

一夏「な、何ですか…?」

楯無「今日は私からほっぺにチューだったけど…」

一夏「?」

楯無「こっちのチューは、一夏くんからお願いね!」チョコン☆

一夏「…ッ///」

一夏(やべぇ…ちょっとキュンときた…)

楯無「あっはは! 一夏くん、顔がトマトみたいだよ! ちょっと撃ってみてもいい!?
    面白い具合に破裂しそう!!」ジャキッ

一夏「どぅえ!? なんでまたここでisを展開させるんですか!? ちょ、やめて~~~!!」



楯無『…待ってるからね、一夏くん?』

一夏「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? 今、ちょっと掠ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」


~生徒会室~

楯無「たっだいまーアーンド、一夏くんミッション・コンプリートおめでとー!」パンパカパーン

簪「……」

楯無「え、えぇー…何、簪ちゃん…そのジト目は…。『おかえり』の一言もなし?」

簪「…抜け駆けした」

楯無「え、えぇー!? そそ、そんな! だってほっぺにチューなんて挨拶の範疇じゃん!
    それくらい見逃してよ!?」

簪「いや」プイッ

楯無「そんな露骨に避けないで! お姉さん泣いちゃうから!!」

一夏「おぉ、簪。ただい――」

簪「……」キッ

一夏「うッ…」

簪「…ふん」プイッ

一夏(…なんで不機嫌なんだよ)


楯無「か、簪ちゃ~ん…機嫌直してよぉ~」

簪「…ふんだ」

楯無「そ、そんなぁ~。私だって本気じゃなかったんだよ?」

簪「…どうだか」

楯無「え?」

簪「お姉ちゃん…いつも、おいしいとこばっか持って行くから…」

楯無「うッ…そ、それは…ええと…」

一夏「あ、あの…何かあったんですか?」

楯無「なんにもなーい…なーんにもないですよー…」

一夏(うわ…ここまで露骨に落ち込んでいる楯無さん、珍しいな…)

楯無「まぁいいけどねー…このブルーな気持ちは一夏くんを痛みつけることで発散させるからー」ゴソゴソ

一夏(うげぇ!? 鬱憤の矛先を俺に向けやがったぁぁぁぁぁぁ!!??)


楯無「はーいはーい…次なるミッションは…『>>304』でーす」

つーわけで今日はここまで~
次回更新は最近忙しいのでまた間が空きます
久しぶりなので安価おさらい
安価は『○○と~~する』までちゃんと書いてね~

現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■□□□□□□□
楯無   ■■□□□□□□

このレスが安価ならkskst


楯無さんと裸エプロンプレイ

『楯無会長と裸エプロンプレイ by楯無』

一夏「」

楯無「」

簪「……」

一夏「楯無さん、あんたって人は…」

楯無「い、いやいやいやいや!! 私じゃないよ! 完璧に濡れ衣だから!!」

簪「お姉ちゃん…!」ギリッ


<打鉄弐式―――展開>


一夏「うわわわわ! な、何is展開してんだよ簪! 落ち着け!!」

簪「お姉ちゃんの名前…書いてあった…。やっぱりお姉ちゃん、一夏を…!」ゴゴゴゴゴ

楯無「ちょ、ちょっと! このクジって匿名記入じゃん!? 会長の私がそんなこと間違うはずないでしょ!?」

簪「お姉ちゃんばっかり…ずるい!!」ゴゴゴゴゴゴ

楯無「はわわわわわ簪ちゃん! 山嵐はヤバイって!! それってまだ調整が済んでないでしょ!?」
―――――――――
―――――
―――

~とある運動部員の部室塔~

主将「こ、これは一体…!?」

キャプテン「ふふふふふ…まんまと引っかかったようだね憎き会長め!!」

主将「はッ…!? お、お前は! かつて会長にコテンパンにされたバスケ部キャプテン!」

キャプテン「そういうお前は私と同じく会長に辛酸を舐めさせられた空手部主将。ふふふ…見てくれたかい?」

主将「その口ぶり…織斑くんにあのミッションを振ったのはアンタなのね!?」

キャプテン「くくく…! まさにその通りよ! これも作戦のうち!!」

キャップ「聞かせてもらおうかしら!!」

主将「ソフトボール部のキャップまで…詳しく話を聴こう、バスケ部キャプテン!」

キャプテン「おほほほほ…! いいでしょう、聞かせてあげようじゃない!
       そうよ! あのミッションを仕組んだのは、この私!」ビシィ

キャプテン「織斑くんを暫定的に借りれるとはいえ、我がスポーツ部の立場は未だ弱いまま…。
       かつて私たちが会長に歯向かってしまったツケもあるけど、元を言えば
       生徒会で織斑くんを独占している会長の所為であることは間違いない!!」

キャプテン「この状況を打破するには、やることは1つ! 織斑くんには生徒会を辞めてもらい、
       改めて運動部に勧誘すればいい!そのためにどうずればいいか、私は考えたわ!」

キャプテン「織斑くんが日頃から会長に振り回されているのは事実…。本人は流されやすい性格からか、
       いつも不本意ながらも渋々と会長の要望に応えていったわ…」

キャプテン「だけど! ここで限度が過ぎた要望がきたとなれば話は別! しかも体の関係を迫った
       下ネタミッションというのなら尚更!! これを要求されれば、さすがの織斑くんもドン引き間違いなし!!」

キャプテン「こうして幻滅した織斑くんは生徒会を去り、心の安らぎを求めて
       晴れて我がバスケットボールに入部する!! まさに完璧な作戦よ!!」

主将「……」

キャップ「……」

キャプテン「ん? どうしたの2人とも? あまりにも頭脳的過ぎる私の働きに嫉妬―――」

主将「正中線連撃!!」ガッガッガッ

キャップ「ウインドミル!!」ドゴォ

キャプテン「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

キャプテン「なななな何すんのよ!? 嫉妬に狂った凶行なんて女として最低よ!」

主将「お前は阿呆か!! なんてタイミングであんなミッションを仕組んだのよ!!」

キャプテン「へ?」

主将「さっきのミッション、ずっと見てたでしょ!? 織斑くんと会長、すっごくいい雰囲気だったじゃない!」

キャップ「フラグがビンビン建ってるのよ!! そんな状態で織斑くんに体を許してみなさいよ!
      織斑くんが靡いてカップルになっちゃったらどうするのよ!?」

キャプテン「………」

キャプテン「…は!? わ、私は何てことを~~~!!??」

主将「我が運動部の希望をよくも…! ここでお前の夢を潰してやるッッ!!」

キャプテン「ぐッ…!? だが私は諦めないぞ! ディーフェンス、ディーフェンス!!」キュッキュ

主将「甘い!! 音速拳!!」ドビュゥ!!

キャプテン「ぐばぁッッ!?」

キャップ「ウイインドミル砲丸投げバージョン!!」ビュンビュン ドッゴォォォ!!

キャプテン「そげぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

―――――――――
―――――
―――


~生徒会室~

簪「はぁ…はぁ…はぁ…」シュゥゥゥゥゥ…

楯無(あ、危ない危ない…私のisで簪ちゃんの装備の火薬を湿気らせるのが遅かったら、
   ここにいる全員がタダじゃすまなかったわ…)

簪「お姉ちゃんの…ばか…!」ジワッ

楯無「はぅわ!? お、落ち着いてってば簪ちゃん! 本当に私じゃないってば!」

簪「うそ…!」

楯無「本当だってば! だって見てよこの字! 私のとじゃ、見ても似つかないでしょ!?」

簪「更識家当主なら…筆跡の改竄なんてお手の物…! そんなの、証明にならない…!」

楯無「うッ…!? こ、このままじゃ拉致が明かないわ! ちょっと待ってて!」

楯無「ちょっとー!? 虚ちゃーん、本音ちゃーん、いるー!?」ツカツカ

一夏「あれ? 生徒会控え室の方に…?」

本音「はいは~い。お呼ばれました~」ヒョコヒョコ

虚「何ですかお嬢様。こんなところに呼び出して。まだ仕事が残ってるんですけど?」

楯無「いや、それは申し訳ないけど…って、今はそんな場合じゃないよ! これ見て!」バサッ

一夏(ずっと姿が見えないと思っていたら、控え室の方で生徒会の仕事を押し付けられていたのか…)

虚「…何ですかこれ」

楯無「箱に入っていたミッションの1つよ!
   確か虚ちゃんと本音ちゃんもミッションの選定には関わっていたよね!? これに見覚えない!?」

虚「いや、私は特には…。だって倫理的にダメなものや教育上よろしくないのはngと言われたので…」

本音「あ~これ、私が見かけた奴だ~」ピョンピョン

一夏「」

虚「あー…なんとなく予想はしてたけど…」

楯無「え、えぇ!? ちょっと本音ちゃん!? これの意味、分かってるの!?」

本音「何って~。コスチュームプレイの一環でしょ~? 私としては全然okなんですけど~」ヒョコッ

楯無「いや、完全にコスプレの範疇超えてるよ!? 第一このプレイって所謂エッ―――」

本音「な に い っ て ん で す か ?」

楯無「え?」

一夏「え」

虚「あぁー…」

本音「あのね~。コスチュームっていうのはね~? とっても楽しいものなんだよ~?」

本音「いつもとは違う自分、違う内面に向き合える~素晴らしい行為なんだよ~?」

本音「…まさか神聖なコスチュームプレイを、そんな邪なことに~使いませんよね~?」ニゴッ

一夏「え…ちょ、ちょっとのほほんさん…? 何か、笑顔がすごく怖いんですけど…?」

虚「ごめん、一夏くん…妹はコスプレのことには結構こだわりがあるから…」

楯無(あの着ぐるみって伊達じゃなかったの!?)

本音「だから~そのミッションも~まさかエッチなことに~使いませんよね~?」

楯無「い、いや…だから、そういう問題じゃなくて…」

簪「…もういいよお姉ちゃん」

楯無「え?」

簪「…確かにムチャクチャかもしれないけど、ここまで釘を刺されればお姉ちゃんだって出過ぎたことはしないでしょ?」

楯無「う、うんまぁ…(主に簪ちゃんに釘を刺されっぱなしだけど…)」

簪「だけどお姉ちゃんが仕組んだものじゃない…とは言い切れないけど」

楯無「いや、本当に私じゃないからね!?」

簪「ともかく…これだけ言ってミッションをふいにするもの…なんか嫌」

簪「わ、私の出したミッションの時に言われても困るし…///」ボソッ

楯無(か、簪ちゃん…意外に自分には大胆なミッションを組んだのかしら…?)

一夏(簪、今何か言ったのか?)

楯無「え、えっとぉ…じゃあちょっと腑に落ちない点もあるけど、またご指名ということで私が行きま~す…」

楯無「今回のミッションのコンプリート条件は…まぁエプロン着用ということで、私が料理を振舞って
   一夏くんがそれを完食すればok、でいいよね?」チラッ

簪「…いい」

楯無「ほっ…。で、今回はちょっとr15指定の画も含まれているので、カメラさんは同行しますが模様は
    撮影できません。音声のみで勘弁してね。15歳未満の学生だっているから」

楯無「で、ではとういうわけで…ミッション開始で~す…場所は一夏くんの部屋でいいかな…?」

一夏「い、いいですけど…」

楯無「何…?」

一夏「…また燃やしたりしませんよね?」

楯無「し、しないから! 本当に!」

―――――――――
―――――
―――


~is学園寮:織斑一夏の部屋~

楯無「おぉ~こ、ここも懐かしいね…」ドギマギ

一夏「そうですね。そういえばこの部屋での初対面も似たような格好でしたね」

楯無「あ、あれは違うわよ! ちゃんと水着を下に着てたじゃない!!」

一夏「いや、あんな際どいビキニ着てたんですからそんな大差ない…」

楯無「全然違うわよこのアンポンタン!!」

一夏「ひゃ、ひゃい!?」

楯無(あぁもう…さっきの件で余計に意識しちゃってる分、すごくテンパってるわ私…)

一夏(あれ…? 緊張してる楯無さんなんて初めて見たな…。まぁそうか。
   いくらこの人でも裸エプロンは恥ずかしいか)

楯無(どうせ一夏くんのことだから、私がこんな思いをしているのは恥ずかしい格好をさせられるから、
    とくらいにしか思ってないんでしょうねこの唐変朴は!!)


楯無「じゃ、じゃあ着替えてくるけど…取りあえずシャワー借りるね」

一夏「え? あぁはい」

一夏(着替えるのにシャワー浴びる必要あるのか? と聞くと何か言われそうだからやめておこう)

―――――――――
―――――
―――

ジャー…

楯無(うぅ…死ぬのど恥ずかしいけど…やるしかない…!)

楯無(何が起こるのがわからないのがこの企画だから…保険は多い方がいいしね!)

楯無(ちょっとの間の辛抱だから…! 我慢するのよ、更識楯無!!)

楯無(いざ…!)


…ジョリ

―――――――――
―――――
―――

キィ…

一夏(お、出たようだ…ぶはぁ!?)

楯無「お、おまたせぇ…///」

一夏(あ、相変わらずのボリューム…! エプロンが体にギリギリ収まるかくらいのピッチリとした大きさだから
   ボディラインが満遍なく強調されている…!)

楯無(しまった…サイズがあの時のままだったわ…なんという不覚…)モジモジ

一夏(しかも今回は水着ではなく、あのエプロンの下は紛れもなく裸…!
   それ故に流石の楯無さんも羞恥心を堪えきれない…!
   薄く体を朱に染まらせながら、体を縮こませてモジモジと小刻みに揺れる姿は…圧巻だ!)

一夏(こ、これは予想以上にヤバイ…! 素の本人があれなだけに、更になんかこう…グッとくる!)ビシッ

楯無「…じ」

一夏「ん?」

楯無「ジロジロ見るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴ…

一夏「ぎゃああああああああああああ!!?? あ、isしまってください!!
   ここを焼かれたら本当に住む場所なくなりますから、俺!!」

楯無「ご、ごめん…なんか、つい…(うぅ…平常心を保てない…予想以上に恥ずかしいわコレ…)」

一夏「あ、いえ…(余裕のない楯無さんって…本当になんか新鮮だ…)」

楯無「じゃ、じゃあチャッチャと料理しちゃうから…何かリクエストでもある?」

一夏「え、ええと…何でもいいですよ(正直食事どころの問題じゃなくなってきた気が…)」

楯無「そ、そっか…じゃあ適当に作るね。コロッケとかでいい?」

一夏「え?」

楯無「どうかした? 何でもいいんでしょ?」

一夏「いや、その格好で揚げ物はやめたほうが…」

楯無「え? あ、そっかー…確かにね。じゃあ無難にカレーでいいかな」

一夏「お、いいですね」

楯無「決まりね。じゃあちょっと待ってて。虚ちゃんに材料と器具とか持ってこさせるから」ピッ

―――――――――
―――――
―――

楯無「よしっ。じゃあ始めますか」

一夏「ミニサイズの寸胴鍋に大型ガスコンロって…何か本格的ですね」

楯無「流石にこの格好で外は出歩きたくないしね。寮室にキッチンでも付けてくれるよう打診してみようかしら」

一夏「いやぁ…そこまでしなくても…。学食があるんですから、いいじゃないですか」

楯無「うーん。(一夏くんの部屋なら特例で降りるかもしれないなぁ。今度言ってみようかしら。色々と融通利くし)」

楯無(…って、何の融通を利かせるのよ。アホらし)

楯無「じゃあ適当に作るから、一夏くんは座って待っててよ」

一夏「はーい」

楯無「まずはサイコロ状に切った牛肉を、油を敷いて暖めたフライパンで軽く炒めて…」ジュー…

一夏(おぉー…やっぱり手馴れてるなぁ)

楯無「あ、下味付け忘れた…って、調味料ないじゃん! 失敗したなぁ…」

一夏「あ、簡単な調味料ならそこの棚にありますよ?」

楯無「え? そんなもの持ってるの?」

一夏「あると便利なので」

楯無「そうなんだ。じゃあちょっと借りるね」スクッ

楯無「うーん、どこー?」ゴソゴソ

一夏「ええと、そこの下のぉ!?」

楯無「ん、あぁーこれかぁ」

一夏「あ…あぁ…」

楯無「まずは塩コショウにー、ケチャップとマヨネーズ、おぉーポン酢とラー油とかもあるじゃない」

一夏(う、後姿が…簡単な紐でしか覆われてない背面部が、丸見え…!!)

一夏(し、しかも屈んでいるから…うぉぉぉぉぉぉ見てない! 俺は何も見てないぞぉぉぉぉぉぉ!!)ブンブン

楯無「まぁこんなもんで――ん、どうしたの一夏くん。必死に顔を逸らして…」

一夏「……」

楯無「……」

楯無「は…!」ババッ

一夏「……」

楯無「…見た?」

一夏「え…?」

楯無「見た…?」

一夏「うッ…」

楯無「……」

一夏(言い訳したいけど…したら何されるかわからないな…)

一夏(というか正直に言っても楯無さんなら大丈夫だろう。
    きっと笑いながら俺をおちょくってくるぐらいで許してくれるはずだ。まぁそれはそれで困るけど…)

一夏「え、ええと…チラッと…」

楯無「…!」

一夏「で、でも少しだけ…いや、というか全然見てないっていうか!」ブンブン

楯無「……///」

一夏(あ、あれ…? 何だこの間は…?)


楯無「……」

一夏「あ、あの…楯無、さん…?」

楯無「い…」

一夏「い?」

楯無「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


<ミステリアス・レイディ―――展開>


一夏「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? な、何で本気モード!?」

楯無「わあああすぅぅぅぅれぇぇぇなぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッッ!!」


<蒼流旋>


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!


一夏「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」

楯無「みぃぃぃなぁぁぁいぃぃぃぃぃでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」ダダダダダダダダダ!!

一夏「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」

一夏「」チーン

楯無「はぁ…はぁ…はぁ……」

一夏「」

楯無「思わずisをぶっ放してしまった…念のため実弾装備を全部空砲に代えておいてよかったわ…」

楯無「ほ、本当に見てないんでしょうね…///」ドキドキ

楯無「……」

一夏「」

楯無「はぁ…何か今日は一夏くんに振り回されるわ…普段は私からからかってばっかだから、変な感じ…」

一夏「」

楯無「……///」

楯無「と、とりあえず一夏くんは都合よくのびてるし、この隙に作っちゃいましょう、うん」

―――――――――
―――――
―――

楯無「一夏くん、一夏くん」ユサユサ

一夏「う、ん……?」パチ

楯無「ほら、起きて。カレーできたから」

一夏「ん…? おぉ、本当だ…いい匂いがしますね」

楯無「一夏くんってば、急に寝ちゃうんだもん。お姉さんちょっとビックリしたよ」

一夏「あれ? そういえば、俺は何で――」

楯無「一 夏 く ん ?」ギロッ

一夏「ひぃ!?」

楯無「一夏くんは今までのミッションの疲れが溜まっていたせいで、寝ちゃったんだよ?」

楯無「だからさっき何が起こったか見てないし、覚えてもいない。そうだよね?」

一夏「は、はい! その通りであります!!」

楯無「もぉー☆ 頑張ってる先輩を尻目に寝ちゃうなんて…このお茶目さんめ♪」ツンツン

一夏「は、はは…(何だかただ事ならない事が起きたような気がするけど、詮索するなと俺の勘が告げている…)」

一夏(…そしてカレー以外にも香る硝煙の匂いにも、深くは突っ込んではいけないのだろう、多分…)ダラダラ

楯無「はい。じゃあもうよそってあるから、召し上がれ」サッ

一夏「おぉー…これは美味しそうだ。いただきます」パクッ

楯無「どうかな。といっても、市販のルーだから味はあまり保証できないけど」

一夏「いや、美味しいですよ! 何というか、コクもあるんですけど、それ以上に後味がすごくいいです!
   仄かな酸味が出てて、コクと相まってすごく爽やかで…! 何入れたんですか?」

楯無「そうだねー。私はカレーはどっちかっていうと甘めが好きだからね。
    甘さはトマトケチャップを多めにいれたからかな。とは隠し味にポン酢を入れてみたの」

一夏「へぇ…あまり思いつかない味付けですね」

楯無「まぁカレーなんて何入れても合うしね」

一夏「それでも調整が丁寧ですから、こんな味わい深くなるんですよ。本当に美味しいです。ありがとうございます」

楯無「そ、そうかな…///ありがと」テレテレ

一夏「あ、おかわり貰ってもいいですか?」サッ

楯無「うわ、食べるの早ッ!? いいよ、任せなさい♪」

一夏「?(何か前に料理を褒めたときよりずっと喜んでいる気が…)」


一夏「ふぅーごちそうさまでした」

楯無「お粗末様でした。まさか本当に全部食べてくれるなんてね」

一夏「いや、本当に美味しかったですよ。量もそんなになかったですから」

楯無「あはは、ありがとっ。それと、ミッション・コンプリートおめでとっ!」パチパチ

一夏「え、あぁどうも…(結局何もしてない気がするけど…)」

楯無「じゃあ頑張ったご褒美に、お姉さんが皿洗いをしてあげよう」スクッ

一夏「え? いや、いいですよ。こういうのって、振舞ってもらった方がやるもんでしょ?」

楯無「年上の親切は素直に受け取りなさい。まぁすぐ済むから大丈夫よ」

一夏「うーん…」

楯無「そこまで喜んでもらえたから、こっちだって嬉しいの。だからこれはささやかなお礼のつもりってことで」

一夏「まぁ、そこまで言うなら」

楯無「はーい。じゃあ流し借りるね」ガチャガチャ

一夏「あ、食器用洗剤はないんですけど、予備のスポンジならシャワー室の横に―――」クルッ

一夏「ぶッ!!??」

楯無「~♪」フリフリ

一夏(ま、また見えてる! また見えちゃってますから!!)

一夏(どどどどうしよう…! 注意したいけど、よく分からんがここで何か言えば更に墓穴を掘る気がする…!)

一夏(な、ならばここは素知らぬ顔をして、やり過ごすのがおそらくはベストな選択…のはず!)

楯無「一夏くん、さっき何か言いかけてなかった? スポンジがどうとか―――」クルッ

一夏「あ…」

楯無「……」

一夏「……」

楯無「…あ!」ササッ

一夏(ぎゃあああああああああああ!? き、気付かれたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

楯無「(わ、私ってばまた…! 本当に注意力が散漫になってるわ!!)み、見るなこのへんた――」グルン

ズルッ

楯無「え?」

ズテッ…ガラガラガッシャン

楯無「きゃぁっ!?」

一夏「―――!!」

楯無「い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

更識楯無が足を滑らせたのは、足元に何かが転がっていたわけではない。
ただ彼女の足元の床には、最初に牛肉を炒めた際に飛び散った油が僅かながら付着していただけであった。
パッと見た感じでは、それに気付かないのは仕方ない。故に彼女が足を取られたのは無理からぬことかもしれない。
それでも普段であれば、彼女にとって受身を取ることくらいなど造作もないはずであった。
しかし裸エプロンを着用しているという羞恥と、二度も失態を見せてしまったことに対する動揺が、彼女の足を絡め取ったのである。

そして彼女は背中を向けた状態から、振り向きざまに尻餅をついた形になる。
鍋にこびり付いたカレーと砕けた食器の一片が彼女の肌を掠めたが、今はそれどころではない。
彼女の最大の不幸は、己の不完全な姿勢ではなく完全無防備の服装にあった。
今自分は、足を曲げ、膝を開き、不恰好な受身を一夏の前に晒している。
そして、目の前には自分の下腹部を凝視している健全な男子高校生の姿が。

かくして彼女は、嘗てないほどの恥辱の限りを味わい、そして織斑一夏に降りかかるのはそれ以上の厄災であることは…。
もはや疑いようもない末路だったのであった…




楯無(…と、一般的な読者ならそう思うでしょうね!!)

楯無(ふふふ…お生憎様! これくらい想定済みなのよ!)

楯無(何が起こっても不思議じゃないのがこのミッション…私はそれを立案し、それに参加しているのであれば
    いかなるアクシデントにも対処できるように努めなければならない…!)

楯無(まさかテンパって転んでしまうとも、一夏くんがスケベ心丸出しで覗くとも限らない…!)

楯無(この生徒会長の更識楯無は、すでにあらゆる不測の事態を考慮しているッ!)

楯無(故に…その事前対策も既に講じてあるのよ…)

楯無(そう…さっきシャワーを使ったと時に…私は―――)




楯無(筋を絆創膏で覆い隠していたのだッッ!!)


楯無(ミッションの内容は裸エプロンプレイ…それ故に、エプロン以外のあらゆる衣類は許されない…!
    下着は勿論のこと、アクセサリーや下着の類も許されないでしょう…)

楯無(でも医療器具というのなら話は別!

    しかもデリケートな肌を保護するという目的だから使用目的からも逸脱してない!
    だから絆創膏を使ってもそれは自然な行為に他ならない!)

楯無(とはいえ、この保険にはそれ相応のリスクがあった…。
    名目は守られているとはいえ、いつか剥がれてしまうのではないかという危機感があったから…!)

楯無(そして何より…剥がすときの事を考えると…ちょっと嫌だったわ。だって痛そうだし)

楯無(だから私は決心したのさ…! この奥の手を使うために、自分の身体に科した代償…ッ!)




楯無(それはパイパン! そうよ、剃ったのよ! もうツルッツルにね!!)ドーン


一夏「……」

楯無(足元はすごくスースーするし、なんかムズムズするし、何よりも死ぬほど恥ずかしかったけど…
    とにかくこれで、最低最悪の結末だけは回避できたわ!)

楯無(前は勿論のこと、後ろの方まで完全に保護している! そしてまだ粘着性は死んでない!!)

一夏「……」

楯無(…って、余裕かまわしてる暇はないわ。見られてるもんは恥ずかしいんだから隠さないと///)ササッ

一夏「……」

楯無「ざ、残念だったね一夏くん! 見えちゃったと思った?
    そこまで簡単にラッキースケベを許すほど、私の身体は安くは――」


プッチーン


一夏「―――」

楯無(え…な、何…? いま、なんか切れちゃいけない決定的な何かが切れた音がしたんだけど…?)


一夏「……」ツカツカ

楯無「へ? い、一夏くんどうしたの…? なんか、怖いんだけど…」

ガシッ

楯無「へ?」

ヒョイッ

楯無「きゃぁ!?」

ドドドド

楯無「ちょ、ちょっと一夏くん! いきなり持ち上げるのはやめ…って、どこ触ってんのよ!!」グィィィ

一夏「ふぅぅぅぅ…ふしゅぅぅぅぅ…」

楯無「な、何コレ…すごく目が血走っているんだけど…?」

ポスッ

楯無「ひゃっ…!?」

一夏「……」

楯無「ちょ、ちょっと落ち着いてよ一夏くん…そんな、ベッドに連れてきて…何を…!?」

一夏「……」

ガバッ

楯無「きゃぁぁッ!?」

一夏「ぐぅぅ…うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」

楯無(な、何この状況…!? 一夏くんが獣みたいな唸り声をあげながら、私を抱きしめてる…!?)

楯無(もしかしなくても、一夏くんめっちゃ興奮してるの…!?)

楯無(ま、まさか…! 世の中には秘部を絆創膏で覆い隠しているシチュエーションに萌える、という奇異な
    趣向を持った男子がいるときくけど…!? え、まさか一夏くん、ドストライクだったの!?)


一夏「ふぅぅぅぅぅ…ふしゅぅぅぅぅぅぅう」ハァ…ハァ…

楯無(そ、そりゃ男子禁制の学園に1人放り込まれたんだから、そりゃそれなりに性欲は溜まるんだろうけど…
   まさかよりにもよって今、タガが外れるなんて…!?)

楯無(ええい、とにかくこのままでは貞操の危機よ! 一夏くんには悪いけど、ちょっと眠ってもらって…!)


ギュゥゥゥゥ…


楯無(はぅッ!? こ、こんな締め付け、全然甘いわ! すぐに振りほどいて…)

楯無(―――!!??)

楯無(あ、あれ!? 振りほどけない! え、何で!?)

一夏「……」グィィ…

楯無(力が入らない…!? 余裕で抜け出せるのに、身体がいうことをきかない…!?)

楯無(な、なんで、私…え…?)

一夏「……」グググ…

楯無(ま、まさか私…)

楯無(受け入れちゃって…る…?)ドキドキ…

一夏「……」

楯無(一夏くんに抱きしめられて…ていうか、私で興奮してくれてるってことが分かって…)ドキドキ

楯無(それで襲われてるのに…私を求めてくれてるって事を…嬉しいって感じてる…///)バクバク


ドクンドクンドクンドクン…


楯無(…一夏くんの胸、すごい鳴ってる。本当に、私で…)

楯無(私の…身体で……)

楯無(……)


ぎゅっ


楯無(……///)

楯無(一夏くんなら…)

楯無(いい………かな)

楯無「あ、あの…!」

一夏「……」

楯無「え、ええと、その、今回は、あの、つまり…」

一夏「……」

楯無「だから、うんと、いきなりこんな事するなんてちょっとアレだけど、わ、私も、わ、悪い、わけ、だし…」

一夏「……」

楯無「だ、だから、ね…?」

一夏「……」

楯無「や…」

一夏「……」

楯無「…優しくしてくれなきゃ、怒る、から…///」

一夏「……」

楯無「お、おーい…? 一世一代の告白に、無反応は流石に堪えるんだけどぉ…?」

一夏「……」

楯無「い、一夏くーん? 聞こえてますかー?」

一夏「……」

楯無「…へんじがない。ただのしかばねのようだ…って、そういう場合じゃなくて」

楯無「というか、さっきからずっと動いてないけど、どうかしたの…?」


ヌルッ


楯無「ん? 何か髪にぬるっとしたものが…何だろ?」ゴソゴソ

楯無「―――って!!」

一夏「」ドクドク

楯無「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!??」

その当日、たまたま廊下を歩いていた相川清香は、当時の状況をこう述べている。


相川「ええ、もう一瞬でしたね。会長が、私の前を全力疾走していたんですよ」

相川「ハンドボール部であるので動体視力は一般の人以上には自信があるんですけど、それでも目で終えないほどの速さで」

相川「…なんで、あの時の状況を鮮明の覚えていたか、ですか? そりゃそうですよ」

相川「だって…裸エプロンの生徒会長が、顔面血だらけの織斑くんをお姫様だっこしながら廊下を駆けていたんですから」

相川「あれは忘れられませんよ…。あの一瞬のうちの出来事は…衝撃の一言では言い表せません」

相川「…その後ですか? 織斑くんは無事だったそうですよ。
   ただの貧血だけですんだそうです。明日から、ミッションを再開するようです」

相川「しかし、一体あの部屋で何が行われていたのか、私には知る由もないですね…。音声を聞く限りでは、
   織斑くんが会長を襲ってそれに返り討ちにされた、とくらいしか考えられないんですけど…」

相川「まさかあの織斑くんが、と一時は誰もが嘆いてましたけど、あの後すぐ会長から弁明があって」

相川「詳細は省かれましたが、とにかく警察沙汰になる内容はしてないようです。ええ、思わず胸を撫で下ろしました」

相川「しかし結局、真実は闇の中ですが…いやはや、嫌な事件でしたね」

相川「あぁそうそう。私、そのとき妙なもの拾ったんですよ。これですこれ」サッ

相川「…何ですかコレって、見たまんまですよ。絆創膏です。何の変哲もない」

相川「…気付きませんか? これ、きっと織斑くんの負傷を治す時に使ったと思うんですけど…。
   でもコレ…どこにも血が着いてないんですよ」

相川「…ええ。保護フィルムも剥がされてるし、未使用であるわけでもありません」

相川「あの後、会長の絶叫が学園じゅうに木霊したのと、何か関係あるんでしょうか…?」

相川「…不思議ですよね。私にも、何が何だか…」

―――――――――
―――――
―――

~生徒会室~

楯無「しくしくしく…」

簪「……」

楯無「もう、お嫁にいけない…」

簪「…元気、だして」

楯無「だってぇ…」

簪「大丈夫。見られてない、から」

楯無「ほんとぉ…?」

簪「…多分」

楯無「うぇぇぇぇん…」メソメソ

簪(…なんかお姉ちゃん、可愛い)

簪「い、一夏が無事で…良かった、よね」

楯無「え? あぁ、うん、そうだね…」

簪「…なんで残念そうな顔してるの?」

楯無「え?」

簪「ただの鼻血で済んで、良かったじゃない」

楯無「そ、そりゃそうだけど…何もあのタイミングで気絶しなくても…」ブツブツ

簪「……」

楯無「え、ちょ、ちょっと簪ちゃん…? なんか、目が据わってるんだけど…?」

簪「…お姉ちゃん、本当にあの部屋で何があったか、言う気はないの…?」ゴゴゴゴゴゴ

楯無「だ、だめだめだめだめ! いくら血を分けた妹でも、これを言うのは無理!!」ブンブンブン!!

簪「……」

楯無「……///」

簪(…すごく気になるけど、何か顔を真っ赤にして隠したがるお姉ちゃんが可愛いから訊かないでおいてあげよう)

簪「一夏、明日には戻ってこれるって」

楯無「そ、そう…。じゃあ、明日のミッションも、今のうちに決めておこうか」

簪「…またお姉ちゃんじゃないよね?」

楯無「い、いやぁ…流石に三度続けてはないでしょ」

簪「二度あることは三度ある、とも言う…」

楯無「まぁまぁ。次はきっと簪ちゃんにスポット当たるって!(割と切実なお願いだよ、これは!)」

楯無「じゃ、じゃあ一夏くんが不在だけど…今ここで次のミッションを決めちゃいま~す!!」

ゴソゴソ

楯無「はいッ! 出ました! 次のミッションは…『>>356』です!!」

はい今日はここまで
次回更新は未定
じゃあの

現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■□□□□□□□
楯無   ■■■■■□□□


簪と互いの親類に挨拶に行く

『簪ちゃんと互いの両親に挨拶に行く☆』


楯無(きた! やっときたよコレ!)

簪(…裸エプロン、本当に書いたのお姉ちゃんじゃなかったんだね。字体が分かりやすすぎ…)

楯無「ほら、お姉さんの言ったとおりじゃん! 次は簪ちゃんでした! 良かったね!」

簪「…うん」

楯無(…本当はもっとイチャラブ満載のミッションとか拾いたかったのに)

楯無(それらをあらかた消化し終えてから極めつけに入れたんだけど…まぁクジ運に頼った時点で間違いかな)


楯無「はいさーい☆ ではでは次のミッションも決まったことで! あとは一夏くんの到着を待つだけです!」

楯無「今日のところはここまで! 皆さん、お疲れ様でしたー♪」バイバーイ

簪「……」

楯無(…ほら、簪ちゃん。カメラに向かって挨拶、挨拶)コソコソ

簪「え、え…? あああの…お、お疲れ様でした…///」フリフリ

―――――――――
―――――
―――

~次の日~


楯無「復ッッッ活!! 一夏くん、完全復活!!」

一夏「ど、どうも…」

簪「…おかえり」

一夏「あ、あぁ…」

簪「…大丈夫?」

一夏「まぁな。でも、何か昨日、カレー食ってからの記憶が曖昧なんだよ」

簪「そ、それは…」

楯無「いやー実はカレーにちょっと香辛料きつく入れすぎちゃったみたいでねー。
   辛さがキツすぎて一夏くんが気絶しちゃったときはビックリしたよ」

一夏「え?」

簪(お姉ちゃん…)

一夏「あれ…? そうだったっけ?」

簪「え、ええと…」

楯無「なーに言ってんのよ。実際貧血だったじゃん。
   辛いもんを食べるとね、血行が舌の方に行くから貧血を起こすんだよ(嘘だけど)」

一夏「え? そうなんですか?」

楯無「そうそう♪」

一夏「うーん…でもなんか、よく分かんないけどすごいモンを見たような気がするんだよなぁ」

楯無「え」

簪(一夏…どうしてそういうとこばっか覚えているの…)

一夏「ええと、確かあの時は撮影…はしてなかったけど録音はしているんだよな?
   簪。ちょっと聞かせてもらってもいいか?」

簪「え…?」

楯無「その必要はないよ」

一夏「へ?」

楯無「どうしても思い出したいのなら…たっぷりと思い出させてあげるよ…。
   その身に刻ませてあげよぉかぁ…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

一夏「ひぃッ!? い、いや、やっぱりいいです! 遠慮しておきます!!」

楯無「やーれやれ。ともかく、一夏くんは何も見てないし何も覚えてない。
   だから私の言うことを信じるしかないの。お分かり?」

一夏「は、はい…(なんかこのやり取り、前にもやった覚えがあるんだが…)」

楯無「はいとーゆーわけでー。次のミッションはこちらですー」サッ

一夏「あ、やっぱりまだ続いていたんですね…ええと何々…」

簪「…///」

一夏「…なんですかこれ?」

簪「え…?」

一夏「いや、意味が分からないんですけども。何で両親に挨拶に行くんですか?」

簪「」

一夏「別に見知らぬ間柄でもないのに…でもそういうもんなのかな? 親なんていなかったから分からねぇや」

簪「……」プルプル

楯無「簪ちゃん抑えて抑えて。私はもうとっくに諦めたから」ポン

一夏「ええと…俺には両親がいないから千冬姉の所に行くとして」

楯無「その後は私たちの実家で父さんと母さんに会うことになるね」

簪「…///」

一夏「更識家当主のご両親か…なんか緊張するな」

楯無「そー緊張しないでよ。実際、楯無は私が襲名した時点で、父さんも母さんもあまりお家柄とは関係なくなってるし」

一夏「え? そうなんですか?」

楯無「まー細かいところはあんまし言えないけどね。とにかく、そんなに構えなくても大丈夫だよ」

一夏「そうは言われても…」

楯無「さてさて…まぁ一夏くんに挨拶行かせても、きっと当たり障りのないことを行って終わりになるだろうしなぁ…」

楯無(今の時点では簪ちゃんの押しの弱さ的にも、あまり仲が進展するとは考えづらいし…)

楯無「そこで! 今日のミッションは…」

一夏「ん?」

楯無「一夏くんには私たちの両親に…『>>370』と言ってもらいます!!」

私達に愛の告白

一夏「」

簪「え、あ、えぇ…!?」

楯無「きゃっ…///」

一夏「…すいませんもう一度言ってもらえますか?」

楯無「だーかーらー。一夏くんには私たちの両親に…私たちに愛の告白をしてもらいます!!」

一夏「いやいやいやいやいや! おかしいでしょ!? 挨拶に行くのに何でそんなことを!?」

楯無「はぁ…本当にどうしようもないね君は」

一夏「え」

楯無「鈴ちゃんも言ってたけどね。本当にどうしてそんな風に振舞えるの?
   何でそこまでバカで鈍感で唐変朴で朴念仁で無神経なの? 何、君ってサメ脳?」

一夏「あ、あ、いや、あの」

楯無「本当にさぁ…何かの病気かって勘繰りたくもなるよ。どうしてここまでさせといて気付かないかなぁ…。
   そうやって何も分かってない体をされていたら、いつか刺されても何の文句も言えないからね?」

一夏(な、なんでこんな酷い言われ様されなきゃならないんだ…?)

簪「お、お姉ちゃん…許して、あげて…」

楯無「…はぁ。まあいいや。じゃあちゃんと説明してあげるから、耳かっぽじってよーく聴きなさい」

楯無「いいかい一夏くん。一組の男女がご両親に挨拶に伺うっていう意味…分かる?」

一夏「え…ええと……」

簪「……」

一夏「あー…ド、ドラマとかでよくある展開だと…『お嫁さんを僕にください!』、みたいな…」

楯無「……」

簪「…///」

一夏「な、なーんて…まさかそんなこと

楯無「どぅぁいっ! 正解でーす! やればできるじゃーん!!」パンパカパーン

一夏「え」

楯無「いやー危ない危ない。ここで空気読まずに『友達としていつもお世話になってます』とか
   見当ハズレの事を言い出したら、ミストルテインの槍が火を噴くとこだったよ♪」

一夏「さらっとマジで怖いこと言わないでください! っていうかおかしいでしょ!?
   簪とはただの友達ですよ!? 何でそういうことになるんですか!!」

簪「……」ズキッ

楯無「…勘違いしないでね。何もとっとと恋人になって結婚の許しを貰えって言ってるわけじゃないよ?」

一夏「え?」

楯無「あくまでやって欲しいのは事前演習。ようは、予行練習みたいなもんだよ」

楯無「『ご両親に挨拶に伺う』っていう意味の重さを一夏くんが履き違えているようだから、それを正したかっただけだから」

一夏「えぇ…でもそれ、尚更嘘を言うのは良くないんじゃ…」

楯無「だから嘘を言いに行くんじゃないんだってば。ご両親に挨拶に伺うって言うことはそういう意味なの。
   その意味をちゃんと理解して欲しいだけ。そのパートナーとして、簪ちゃんを同行させたいの」

一夏(えぇー…何かいい様に言いくるめられてる気がしてならないんだけど…)

簪「……」

楯無「ともかく私が言いたいのはそういうこと。ほら、分かったらとっとと行った!」

一夏「えぇー…。はぁ…言い出したら聞かないからな、この人…わかりましたよ、やればいんでしょ」

楯無「うんうん♪ そーこなくっちゃね!」

一夏「そういうわけだから…ごめんな簪。こんなことにつき合わせて…しかも相手が俺でさ」

簪「…いいよ」

一夏「そ、そうか…」

簪「い、一夏となら…!」

一夏「ん?」

簪「あ、あの…だから、一、夏となら、ええと、本当、に…」

一夏「え?」

簪「だ、だから、その…ほ、本当に、そういう、かん、けい、に……」ボソボソ

一夏「おーい簪ー?」

簪「あ、あぅ…///」プシュー

一夏「?」

一夏「簪ー? どうしたー? 何言ってんだか聞こえないぞー?」

簪「ひゃぅぅ…」カァァァ

楯無「……」

ゲシッ

一夏「いて!?」

楯無「ほらほら。一夏くんはとっとと織斑先生を探しに行く」

一夏「え?」

楯無「早く行きなさい!!」

一夏「は、はいぃぃ!?」タッタッタ…

楯無「…はぁやれやれ。本当に困ったもんだ」

簪「…お姉ちゃん」

楯無「んー?」

簪「…なんで、『私たちに告白』、なの?」

楯無「あ…」

簪「……」

楯無「え、ええと…それは、そのぉ…あはははは…」

簪「……」

楯無「…なんでかなぁ。実は私にもよく分からないんだよね。気が付いたら言ってた」

簪「…そう」

楯無「…怒った?」

簪「ううん」

楯無「え?」

簪「だって…選ぶのは、一夏だから」

楯無「…そうだね」

簪「…でも」

楯無「ん?」

簪「…お姉ちゃんには、今まで一個も勝てなかったけど」

楯無「……」

簪「…これだけは絶対に負けない。負けたく、ない…!」

楯無「…うん」

簪「…///」

楯無「頑張ってね、簪ちゃん」

簪「お姉ちゃんも…」

楯無「へ?」

簪「…早く、素直になって」

楯無「…ッ」

簪「…それだけ、だから。じゃあ」ステステ

楯無「……」

楯無「やれやれ…敵わないなぁ。簪ちゃんにも、一夏くんにも」

お嫁さん?むすm…まぁいいか
支援

思ったのだが。
一つのミッションが終わったら次の安価は
以前(or直前)のミッションの対象者は指定不可とかにしたほうがいいんじゃないか?
このままだと更識姉妹無双になりそうな予感がするのだが

>>379
……うん
>>372
お嫁さんを僕にください→娘さんを僕にください

>>380
それはしないかなぁ
このまま1000いくかあっさり終わるかカオスになるか糞スレになるか
そんなとこも予測できないのが安価スレのいいところだからね
無双がアレなら他党員のスナイピングでも期待してくれよ

~廊下~

一夏「おぉ簪。遅かったな」

簪「ご、ごめん一夏…」

一夏「まぁいいけどな。こっちはもう千冬ね

ゴスッ

一夏「…じゃなくて、織斑先生には来てもらってるし」

千冬「元気そうだな更識妹。いつぞやはウチのバカが世話になったな」

簪「いえ…」

一夏「ええと、じゃあ面会も挨拶も済ませたしこんなところか?」

簪「え…?」

千冬「またこのバカは…」ハァ…

一夏「今更仰々しく接するまでもないだろ。ちふ…織斑先生もそれでいいですよね?」

簪「え、いや、ええと…」オロオロ

千冬「…未だに世話をかけているようで申し訳ないな」

一夏「じゃあそういうことですので、俺たちは失礼します。次行こうぜ、簪」

簪「ま、まって一夏!」

一夏「ん?」

千冬(お?)

簪「い、一夏が…お父さんたちに、言うなら…」

一夏「え?」

簪「わ、私も…言わなきゃ、ダメ、だと、思う、の…///」

一夏「はい?」

簪「だ、だから、その…」クルッ

千冬「……」

簪「…///」

一夏「お、おい簪? お前、何を言って

千冬「黙ってろバカ者」

一夏「え…」

簪(は、恥ずかしいし…怖いけど…)

簪(でも…)

簪「…一夏」

一夏「ん?」

簪「手…出して」

一夏「え? こうか」スッ


ギュッ


一夏「え…?」

簪(一夏と一緒なら…大丈夫!)

簪「お、織斑先生!!」

千冬「何だ。更識いも…いや、更識簪」

簪「あ、あの…!」

千冬「……」

簪「え、ええと、その…あぅ…」

千冬「……」

一夏「…?」

簪「わ、私に…いや…」

一夏「?」



簪「わ、私を…一夏の、お嫁さんに、して、くださ……ぃ…///」カァァァァァァ

一夏「え…」

簪「///」プシュゥゥゥゥゥゥ…

一夏「か、簪? お前、何言って


ドゴスッ


一夏「いってぇぇ!?」ズキズキ

千冬「…更識簪」

簪「は、はぃぃ…」バックンバックン

千冬「…その、なんだ」

簪「え…?」ドキドキ

千冬「こんな不良債権でよければ、遠慮なく貰っていってくれ」

簪「あ…」ドクン

一夏「ひ、ひでぇ…不良債権て…俺が何をしたっていうんだよぉ…」ヒリヒリ…

簪「あ、ありがとうございます! お、おお織斑先生!」

千冬「違うな」

簪「え?」

千冬「…私のことは、『千冬義姉さん』と呼んで貰おうか」

簪「え!?」

一夏「はぁ!?」

千冬「まぁ冗談だが…しかし何だ。一度呼んでみてくれないだろうか?」

一夏「ちょ、ちょっと何言ってんだよ千冬ね

ドギャスッ

一夏「」ポテ…

千冬「…こんな呼ばれ方くらいしかされないもんでな」

簪「じゃ、じゃあ…ち、千冬…義姉……」

千冬「……」

簪「…ちゃん///」

千冬「…!」ズッキューン

簪「ご、ごめんなさい…最近、お姉ちゃんのこと、こう呼んでばかりだから、その…」オロオロ

千冬「…いや、いい。いいぞ。よくやってくれた」ガシッ

簪「え…?」

千冬「お前ならいつでも歓迎する。その時が来れば、いつでも来い」

簪「は、はい!」

千冬「ほら織斑。いつまで横になっている。さっさと更識妹を送り出せ」ゲシッ

一夏「ぐへ!?」

簪「だ、大丈夫、一夏…?」

一夏「な、何とかな…(福音戦で死にかけた時にみた女の子がまた見えたけど…)」

千冬「とっとと油売ってないで行って来いバカ者。ご両親に挨拶してこい」

一夏「へいへーい…じゃあ行こっか、簪」

簪「あ、うん…///」

千冬「私に恥をかかせるなよ」

一夏「そんなプレッシャーかけないでくれよ…。じゃあちょっと行って来る」

千冬「…お姉ちゃん、か。いい響きだな…」

千冬「簪…中々いい娘じゃないか…あの5人は少々アクが強いからな…」

千冬「やはり義妹として持つとしたら、ああいった大人しい娘に限るな…うんうん」

千冬「……」

千冬「待てよ…?」

千冬「もし一夏があの娘と結婚したら…姉の方も私の義妹ということになるな…」

千冬「…ないな」

千冬「あいつは…束のバカと同じ匂いがする…妹だなんてまっぴらゴメンだ…」

千冬「うーむ、どうしたものか…」

―――――――――
―――――
―――

~行きのモノレール~

一夏「…さっきは何であんなことを言ったんだよ? ちょっとビックリしたぞ」

簪「い、いや、ええと…///」

一夏「…律儀な奴だな」

簪「ふぇ!?(う、嘘!? 一夏、もしかして、きき、気付いて…!?)」ドキドキ

一夏「真似事でも俺がお前の両親に言うからって…お前まで合わせる必要ないんだぞ?」

簪「」

一夏「あっはは。まぁいいけどな。だってこれは予行演習みたいなもん

ベシッ

一夏「いってぇ!? あ、頭はたくなよ! さっき殴られた腫れ、まだひいてないんだからな!?」

簪「…ふんだ」プイ

一夏「な、何なんだよもう…」

一夏(というかこういう反応もやっぱ姉妹だな…やっぱり何で怒ってるのかは分からないけど)

~更識邸前~

一夏「で、でっけぇ…なんて門構えなんだ…」

簪「うん…」

一夏「うぅ…なんか今更ながら、すごく緊張してきたぞ…」

簪「う、うん…///」

一夏「と、取りあえず挨拶しないとな」スッ

簪「い、一夏! インターフォン鳴らしちゃダメ!!」

一夏「え?」ポチッ


ドスドスドス


一夏「ひぃぃぃぃ!?(ど、どこからともなく竹槍が降ってきたぁぁぁ!?)」

簪「ご、ごめん…ウチ、暗殺部隊を相手にしている家業だから…。
  侵入者用のトラップが、家の至る所に施されていて…」

一夏「何そのビックリ忍者ハウスみたいな仕様は!?」

簪「…ちょっと待ってて。ちゃんとした入り方があるから」

コン…コンコン…コツーン…

一夏「モ、モールス信号か? よく分からないけど」

簪「それもある。それと、トンツーとかを組み合わせた、更識家のトーンシグナル。
  これがないと、家に入れない」


『…簪か』


一夏(門の向こうに誰かいる?)

簪「…ただいま、帰りました」

『その隣の男は?』

簪「織斑一夏くんです。前に話した、私を助けてくれた人です」

『…そうか』

一夏「ちょ、ちょっと簪…この人、まさか…」ヒソヒソ

簪「うん…お父さん」

一夏「えぇ…い、いきなりかよ…」

『織斑一夏くん、だったね?』

一夏「は、はい! 織斑一夏です! タッグマッチの時、娘の簪さんにはお世話になりました!」

『…礼儀正しいな。この頃の男子にしては好感が持てる』

一夏「は、はい…」

『門を隔てた会話というのも失礼だ。あがってきなさい』


ギィィィ…


一夏「おぉ…」

更識父「紹介が遅れたね。簪と…楯無の父だ。いつも娘たちが世話になっている」

一夏「い、いえ! こちらこそ、世話になりっぱなしです!」

更識父「…聞いたとおり面白い子だ。何も準備してないが、あがっていきなさい」

一夏「はい! あ、ありがとうございます!」

一夏(…箒のお父さんみたいに厳格だけど…何となく柔らかい物腰の人だな)

~更識邸:客間~

一夏「すげぇな…客間だけで何畳あるんだよ…林間学校の時の食堂くらいはあるぞ…」

簪「う、うん…」


ガララッ


更識父「…待たせてしまったね」

更識母「あらあら、この人が簪ちゃんの彼氏さぁん? いい男ね!」ポヨヨン

更識父「か、母さん…」

一夏「か、彼氏って…」

更識母「はじめまして~簪ちゃんたちの母で~す♪ 今はこの人の、妻をやってま~す☆」キュピッ

一夏(に、似てる…! 楯無さんに…すごく似てる!! 色んなところが…!)

一夏(な、何よりも…その圧倒的なボリュームとか…)ゴクリ

簪「……」ムスッ

バシッ

一夏「いってぇ!? だから叩くなよ簪!」

更識父「こらこら簪。行儀が悪いぞ」

更識母「あらあらウフフ…男の子ねぇ…でも残念でした☆ 私にはこの人しかいないから!」ムギュッ

更識父「お、おいおい母さん…///」

一夏「あ、あはは…」

簪「……」ジィー

更識母「うふふ~照れちゃって~フゥっ♥」プニュプニュ

更識父「うわぁ!? や、やめなさい、こら!」

簪「……」チンマリ

簪「…大きくなるもん」グス

一夏「?」

更識父「か、母さん。客の前だぞ…」

更識母「もぉ~ダーリンったらつまんな~い。いいじゃな~い、将来の義理の息子さんの前だし~」クネクネ

更識父「ば、バカいっちゃいかん! 学生のうちは、健全な付き合いをだな!」

一夏「…いつもこんな感じなのか?」

簪「だいたい…今日はお母さん、とくに機嫌いいみたいだけど」

更識父「す、すまない一夏くん…。見苦しいところを」

一夏「い、いえ…仲がいいのは、いいことですから」

更識父「面目ない…で、今日はよく来てくれたね」

一夏「え?」

更識父「聞いたよ。学園に襲撃してきたisから、娘たちを守ってくれたのだろ?」

一夏「そ、そんな…。だって、最終的には追っ払ったのは、楯無さんの方ですよ?」

更識父「それは君が果敢に先陣を切って、敵の注意を惹きつけてくれたからだとあの子が言っていた。
    娘たちを、身を挺して庇ってくれた…。本当に、親として感謝してもしきれない」

更識父「だからこの場を借りて…正式にお礼を言わせてくれ。ありがとう、織斑一夏くん」フカブカ

一夏「い、いや…そんな…あはは…」テレテレ

更識母「もぉ~ダーリンてば相変わらず堅物ね~」

更識父「…お前が柔らかすぎるんだ」

更識母「あっはは♪ …でもまぁ、私だって一夏くんには感謝してるわよ」

一夏「え?」

更識母「君のおかげで…娘たちの関係が明るくなったわ。母親として、やっぱり姉妹には仲良くして欲しいもの」

更識母「簪も、前よりもっと笑うようになった。本当にありがとうね、一夏くん」ニコッ

一夏「あ…(本当に親子だなぁ…言動とか、笑顔とか…まんま楯無さんだ…)」

簪「……」

更識母「だから、そんな一夏くんが我が家に来てくれて本当に嬉しいわ!
    簪ちゃん、いい男を彼氏に持ったわね! 流石は私の娘!」

一夏「い、いや、あの…」

簪「…お母さん、違うの」

更識母「へ?」

更識父「む?」

簪「私と一夏は…友達。…まだ」

一夏「あ、あぁ…そう、なんですよ…ははは…」

更識父「な、なんだそうだったのか…恥ずかしい早とちりをしてしまったな」

一夏「えぇ、まぁ…あはは…」

更識母「…うふふ♪」

一夏「ん?」

更識父「どうかしたのか、母さん?」

更識母「べっつにぃ~♪」ジィ

簪「…///」プイッ

更識父「?」

一夏「?」

更識母(まだ、かぁ…可愛いわねぇ)

更識母(母としてはちょっと残念だけど…でも、男を見る目はあるようで安心したわ)チラッ

一夏「ん?」

更識母「…ふふっ」パチッ☆

一夏「??」

更識父「…そうだったのか。では、何で今日は家に? 勿論、来てくれただけでも嬉しいが」

一夏「え…い、いや、なんと言いますか、その…」ダラダラ

更識父「?」

更識母「?」

一夏(ど、どうしよう…友達だと公言した後で愛の告白なんて…おかしすぎるだろ…)

一夏(い、いや待て待て…楯無さんも言ってたじゃないか…これはあくまで練習みたいなものだって)

一夏(というか、楯無さんの実家なんだから…あとで楯無さんから事情は言ってくれるだろう、うん)

一夏(よしっ…そうと分かれば…)

一夏「あ、あの! 今日は大事な話があって来ました!」

更識父「む」

更識母「あら?」

簪「…///」

一夏「え、ええと…友達だと言った後でこんなこと言うのって、変かもしれませんけど…。
でも俺、2人の娘さんには…本当にお世話になってて…!」

一夏「簪も、何だかんだあったけど俺を信じてくれて…戦ってくれて…。
   俺自身も、すっごくその姿に勇気付けられて…」

簪「…///」

一夏「楯無さんもその…色々と振り回されてばかりだけど、でもやっぱり助けられたりもして…。
   すごく強くて凛々しい姿勢に、憧れとかあって…」

更識父「……」

更識母「……」

一夏「ええと、その…つ、つまり俺が言いたいのは…」


一夏「お、お2人の事は(友人としても先輩としても)本当に好きですから!!」


更識母「…!!」

簪「…///」

更識「……」

一夏「そ、そういう(設定な)感じでして…はい」

更識母「……」

更識父「……」

一夏「と、突然こう言ってすみません…いくらまねg

ガタッ

一夏「え…」

更識母「…使用人たち、集合!! すぐに宴の準備を!!」パンパン

一夏「え、あの、ちょ

更識母「もちろん料理は満漢全席だからね! 和洋中際限なくじゃんじゃん持ってきなさい!
    あ、赤飯は忘れちゃだめだからね!!」

一夏「え、ええと…これは、その

更識母「今日はとことん盛り上がるわよ! 蔵に引っ込んでるお酒、全部引っ張り出しちゃいなさいな!!」

一夏「え、えぇ…!?」

~しばらくして~

ワイワイガヤガヤ

更識母「あっひゃっひゃっひゃ!! 今日は何ていい日なのかひら! ほら、もっほ飲んで///」

更識父「母さんみっともないぞ…昼間から」

更識母「あぁ~ん? あたいの酒が~飲めねぇってぇのかぁぁぁん? そんな奴はぁ…こぉだぁ!」ベロン

更識父「ひぃ!? や、やめなさい!!」

一夏「な、なんだこの状況…」

簪「一夏…」

一夏「も、もしかして…勘違いされてる!?」

簪「バカ…」

一夏「ど、どうしよう…いまさら間違いでした、なんて言える状況じゃないし…」

簪「…ふふっ」

一夏(な、何で嬉しそうなんだよ簪…)

更識父「あぁ~一夏くん、ちょっと来なさい」クイクイ

一夏「え?(顔真っ赤だ…)」

更識父「話したいことがある」ヒック

一夏「ひぃ!?(やばい…! まさか、バレた…!?)」

更識母「あぁ~ん…ダーリンのいけずぅ~! もっとお酒注いでよ~!」プンプン

更識父「使用人にやってもらいなさい。ああ簪。あまり母さんが飲み過ぎないように見張っていなさい」

簪「…はい」

更識父「私は一夏くんと話がある。ちょっと廊下で悪いが、出てもらえないだろうか」

一夏「は、はい…(怖ぇー…)」

―――――――――
―――――
―――

更識父「さて…分かっているとは思うが、話というのはさっき君が言っていたことだ」

一夏「あ、あの…あれは、その…」ドギマギ

更識父「…楯無の差し金か?」

一夏「え…?」キョトン

更識父「…やっぱりな」

一夏「な、なんでその事を…?」

更識父「あの子には…昔から手を焼いていたからな」

一夏(く、苦労人だったんだこの人…!)

一夏(考えてみればそうだよな…普段から2人の楯無さんを相手にしていたようなもんだから…。
   その心労は、俺なんかの非じゃないはずだ…!)

更識父「君も大変だね…気持ちは分かるよ」ポン

一夏「あ、ありがとぉございますぅぅ…」オイオイ



※織斑一夏が本当の意味で理解者に出会えた瞬間である

更識父「なんとなく予想はついたが…やはりだったか。母さんには私から言っておくから、安心したまえ」

一夏「は、はい…何だかすいません…俺の所為で」

更識父「ははは。気にするな」

一夏「あははは…」

更識父「…しかし」

一夏「ん?」

更識父「私は君になら…2人を本当の意味で任せてもいいと思ってる」

一夏「え…?」

更識父「簪のことは勿論だ。君には色々な意味で救われた。
     姉との蟠りも完全に氷解して…本当の意味で家族の一員になれて良かった」

更識父「内気ではあるが、あれはあれで芯の強い立派な娘だ。
     でも…だからこそ、誰かが傍で支えてあげた方がいい」

更識父「傍で誰かが手を引いて守ってやれれば…あの子は姉に負けないくらい、強い子になれるはずだ」

一夏「……」

更識父「対して楯無の方だが…こっちは簪とは反対だ」

一夏「え…?」

更識父「大胆そうに見えてあの子は意外に繊細だ。それを他人に悟らせないほどの器用さは持ち合わせているが…」

更識父「だがあの子は…何もかも背負いすぎる。名前も、実力も、期待も、すべてを請け負いすぎている。
     それをやり込めてしまうのはあの子の才能と努力の成果だが…やはり親としては不安は大きい」

更識父「あの子の傍にいられるのは…同じ土俵に立ち、渡り合え、信頼できるものだけだ。
     それが出来る男子は…君を置いて他にいないだろう」

一夏「そ、そんな…買いかぶりすぎですよ。俺なんて、まだ」

更識父「いいや。実際、あの子は君に一目も二目も置いている。本当だとも。自信を持ちなさい」

一夏「……」

更識父「…親として不甲斐ないばかりだが、それでもやはり、君にはこれからも2人を支えて欲しい」

一夏「……」

一夏(両親と挨拶するって…本当に大切なんだな)

一夏(ちょっとだけ分かったよ、楯無さん…)

更識父「…お願いできるかな?」

一夏「…はい! もちろんです!」

一夏「まだまだ俺は未熟ですが…それでも、2人は大切であることには変わりませんから」

一夏「だから全力で…これからも守らせてください!!」

更識父「…ああ。こちらこそ、不肖な娘たちを頼む」

更識父「…やはり今日はいい日だ。君に会えてよかった」

一夏「…はい。俺もです」

更識父「ふふっ…姉妹を堂々と任してしまうとは…二股を許してるみたいで気が引けるが、
     君ならいいと思えるから不思議だ」

一夏「え、ええ!? だ、だからあれは、その…」

更識父「はははは、冗談だとも」

一夏(や、やっぱりちょっと酒入ってるな…)

更識父「ああそうだ。君に大事なことを1つ教えてあげよう」

一夏「え?」

更識父「本来こういうのは門外不出なんだが…是非君には知って欲しい」

一夏「な、何ですか?」

更識父「名前だよ。あの子の…今の更識楯無の、本当の名前だ」

一夏「え…?」

更識父「もし君にその気があるのなら…ありのままのあの子を、受け入れて欲しい」

更識父「更識家当主でもない、楯無という看板ではない…ただ1人の少女であるあの子を…見てやってくれ」

更識父「あの子には…もっと年頃の恋をしながら、己の道を歩んでいってもらいたいんだ」

一夏「俺でいいんですか?」

更識「…君でなければだめだ。もちろん強要はしないが」

一夏「…分かりました。お願いします」

更識「ありがとう…では教えよう。あの子の本当の名は…

―――――――――
―――――
―――

~しばらくして、更識邸前~

更識母「うわ~ん…もぉ帰っちゃうのぉ…」ベロンベロン

更識父「まったくみっともない…着物ずれてるぞ」クイッ

更識母「きゃっ…♥ もぉん…ダーリンのえっちぃ☆」

更識父「何を言っとるんだお前は…」

一夏「あ、あはは…」

簪「お母さん…」ハァ…

更識父「こんな見送りですまないね」

一夏「い、いえ…ご馳走になっちゃってすみません」

更識父「ははは。いつでも来なさい。歓迎するよ」

一夏「は、はい!」

更識母「次くるときは、孫の顔も見せてね~♪」フリフリ

更識父「こ、こら母さん!!」

一夏「あははは…」
―――――――――
―――――
―――

~帰りのモノレール~

簪「…うちの両親(主に母)が、ごめんなさい」

一夏「いや…ちょっと羨ましいよ」

簪「…ねぇ一夏」

一夏「んー?」

簪「一夏の親の事、同情するわけじゃないけど…」

一夏「……」

簪「でも、一夏なら…きっと、いい家庭を築ける」

一夏「……」

簪「そう、思える。一夏なら」

一夏「…ありがとな、簪」

簪「…うん///」

簪「…ねえ一夏」

一夏「ん?」

簪「ちょっとだけ、目をつぶってて」

一夏「へ? ああ、分かった」スッ

簪「…///」


チュッ


一夏「!!??」

簪「…お、お礼」

一夏「へ…?」

簪「お、お礼、だから…」

一夏「あ、あぁ……そっか」

一夏(頬にキスとは言え…簪、大胆なことするなぁ…楯無さんにもやられたけど…てか何のお礼なんだ?)

簪(う、うぅ…お姉ちゃんに対抗してやってみたけど…これ、死ぬほど恥ずかしい…///)グツグツ

~生徒会室~

楯無「お、戻ってきたね」

一夏「ただいま戻りました」

簪「…///」

楯無「…ふむふむ。その様子だとミッションは達成されたようだね。じゃ。コンプリートおめでとー!」パンパカパーン

一夏「へ? カメラを通して見てたんじゃないですか?」

楯無「いやーそれがさー。撮影班の子が家のトラップに引っかかっちゃって…途中から収録できなかったの」

一夏「あぁー…」

楯無「かといってミッション中に水を差すような真似をしたくないしね。ま、何はともあれお疲れさん!」チラッ

簪「…!」ババッ

楯無(ふむふむ…何だかんだで積極的にいけたみたいね。良かった良かった)

楯無(…まぁ、私としてはちょっと複雑だけどね。もっと素直になってね、か…)

楯無「さてさて! では張り切って次のミッションに行きましょー!」ゴソゴソ



楯無「パンパカパーン! 発表します…! 次のミッションは…『>>417』です!!」

オリキャラ無双で今日はここまで
次回更新は近日中
じゃあの

現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■□□□□□□□
楯無   ■■■■■□□□
簪     ■■□□□□□□


再安価
安価↓

『シャルロットと一緒にお風呂に入る』


一夏「」

簪「」

楯無「…うわぉ」

一夏「ま、マジかよ…」

簪「い、意義あり…!」

一夏「え…?」

楯無「お、珍しいね簪ちゃん。そこまで必死になるなんて」

簪「こ、こんなの、ダメ…! 絶対に、ダメ…!」

楯無「何でかな、簪ちゃん」

簪「だ、だって…え、えええっちぃのは…ダメ、なんでしょ…?」

楯無「まぁそうだね」

簪「だから…! このミッションは、無効…!」

楯無「うーん…なんかそれもぉ…つまらないよね」

簪「なッ…!?」

楯無「まぁ確かにーこのイベントは健全であることがもっともだけど。

    だからといって即無効、っていうのは面白みに欠けるよ。
    せっかくの生徒からの要望に、あまり制限を設けたくないし」

簪「な、何言ってるの…! だ、だって! いいいい一緒に、お風呂、なんて…!」

一夏「うぅ…///」

楯無「…一夏くん。なに鼻の下伸ばしてんの」

一夏「いぃ!?」

簪「一夏…!」キッ!

楯無「まぁまぁ簪ちゃん。こういうミッションもね。捉え方だよ」

簪「え…?」

楯無「任務の指定は一緒に入浴するまで、でしょ? 何も裸の付き合いしろって言うんじゃないんだから」

簪「あ…」

一夏「お、おぉ…」

楯無「というわけで、一夏くんと…ええと、シャルロットちゃんだったね。
    お2人には水着の着用を義務付けまーす。これは絶対でーす♪」


楯無「じゃあミッションの内容はねー。身体を洗ったあと、湯銭に浸かって100までカウントしたら終了!」

楯無「ミッション・コンプリート宣言はこっちの方でしてあげるから! ゆっくり暖まってね!」

楯無「じゃあ、レッツ☆スタート!」

一夏「……」ホォ…

簪「…一夏」

一夏「な、何だよ…?」

簪「もしかして…残念がってない?」

一夏「いぃ!? そ、そんなわけあるか! ホッとしてただけだ!」

簪「……」ジトー

一夏「な、何だよ簪その冷めた目は…」

簪「…変態」

一夏「うぅ…(簪に言われると…なんかショックだ…)」

―――――――――
―――――
―――

~廊下~

シャル「いーちかっ♪」

一夏「おぉシャル…って、もう準備してたのか」

シャル「うん! やっと僕の番が巡ってきたからね!」

一夏「そ、そうか…(何でそんなに嬉しそうなんだ…?)」

シャル「あれ? 一夏、まだ準備してないね」

一夏「あぁ。先にお前を探しておこうと思ってな」

シャル「そ、そっか…僕を優先してくれて…えへへ///」

一夏「?」

シャル「な、何でもないよ! じゃあ一夏の部屋に行こっ! 準備しなきゃね!」

一夏「え? いや、いいよ。お前は先に浴場に―――」

シャル「いいから行くの!」

一夏「お、おう…」

―――――――――
―――――
―――

~男子大浴場~

シャル「うわぁ…ここに来るのも久しぶりだね」

一夏「あぁ、そういやお前は一度入ったきりだっけ」

シャル「そうだねぇ。向こうの方はこっちよりも広いかな」

一夏「そりゃそうか(男1人が入るにしても広すぎるからなぁ…ここは)」

シャル「じゃあ準備しようか」ヌギヌギ

一夏「いぃ!? シャ、シャル! ここで脱ぐなよ」

シャル「え?」

一夏「あ、あれ…?(制服の下に既に水着…どんだけ準備いいんだよ…)」

シャル「…一夏。ひょっとして、期待してた?」

一夏「そ、そんなわけないだろ! いきなりだったらビックリしただけだ!」

シャル「…ふぅん」

一夏「な、何だよ…」

シャル「…一夏のえっち」

一夏「う、ぐッ…(チクショウ…簪といい、何でそんな風に言われなきゃならないんだ…)」

シャル「どうしたの一夏? 脱ぎなよ」

一夏「い、いや、その…」

シャル「?」

一夏「…シャル。先に入っててくれよ」

シャル「え? あ、そうか。一夏はまだ着替えてないのか」

一夏「そういうことだ」

シャル「でも、ここで着替えるの?」

一夏「あぁ。そのつもりだけど?」

シャル「いいの? だって、撮られてるんでしょ?」

一夏「あ…!」

シャル「もう。だからあらかじめ着替えておけばよかったのに」

一夏「ト、トイレで着替えてくる…」

シャル「うん。先に入ってるね~」

シャル「久しぶりに来たけど、やっぱり変わってないなぁ」

シャル「…できれば、ここはもう一度来たかったんだよね。色々と思い出があるから」

シャル「一夏に…初めて、本当の名前で呼んでもらった場所だから」

シャル「一夏…///」

シャル「……」

シャル「本当は、一夏になら…僕の裸、見せても良かったのに…」

シャル「って、何言ってんだろ僕は―――

一夏「うぃーっす。お待たせー」ガララッ

シャル「うわぁ!? い、いきなり驚かさないでよ一夏!」

一夏「え? あ、あぁ…すまん」

シャル「もぅ…ビックリしたんだからね!」

一夏「お、おぅ。ところで、さっきなんか言ってなかったか?」

シャル「へ!? なななななななな何も言ってないよ! 一夏のえっち!」ブンブン

一夏「えぇー…なんかひでぇなぁ…」

一夏「うっし。まずは体を洗うか」

シャル「そうだね」

一夏「じゃあシャルはそっちで洗ってくれ。俺はこっち使うから」

シャル「…一夏」

一夏「ん?」

シャル「ええと…背中、流そうか?」

一夏「え?」

シャル「洗いっこ…しない?」

一夏「あぁー…別にいいけど」

シャル「ほんと!?」

一夏「あぁ。それくらいなら」

シャル(やった♪)

一夏(洗いっこかぁ…いつ以来かなぁ。懐かしいや)

シャル「じゃあまずは僕が洗ってあげるね」

一夏「あぁ。頼む」

シャル「一夏…背中、広いね」

一夏「そうか? 普通だと思うけどな」

シャル「ううん。何だかガッチリしてて…ゴツゴツしてる」

一夏「それ…褒めてるのか?」

シャル「もちろんだよ。男らしくて、かっこいい」

一夏「あはは。まぁ普段から鍛えられてるからな」

シャル(本当に…かっこいいなぁ…)ポー

一夏「シャル?」

シャル「え…? あ、ごめん! 今洗うから!」

一夏「お、おぅ…」

シャル「どうかな、一夏?」キュッキュッ

一夏「うーん…もう少し強くできないか?」

シャル「えぇー…これでも結構力入れてるんだけどなぁ…えい!」ゴシッ

一夏「うぉぅ…まぁ、それくらいで頼む」

シャル「これ…意外に疲れるね」

一夏「あははは、そんなものかな。まぁ無理はしないでいいよ」

シャル「ダメだよ。ちゃんと垢を落さなきゃ」

一夏「別に気にしないけどな」

シャル「ダーメ。ここには女の子しかいないんだから、もっと清潔感に気を使わなきゃ。
     病気の原因にもなるしね」

一夏「わかった。頼む」

シャル「うん!(うふふ…♪ なんだか、奥さんみたいだなぁ…)」ゴシゴシ

一夏(さっきから同じところを擦られて…痛くなってきた)ジンジン

一夏「…なぁシャル」

シャル「なーにー?」ゴシゴシ

一夏「え、ええと…そろそろ、別のところ洗ってくれると嬉しいんだが」

シャル「へ? あ、ごめん! 赤くなってるよ!」

一夏「あはは…頑張りすぎだぞ、シャル」

シャル「ごめんね…痛くない?」

一夏「おおげさだな。ほっとけば大丈夫だよ」

シャル(浮かれすぎちゃった…ごめんね、一夏…)

シャル「……」


ペロッ


一夏「いぃ!?」

シャル「ん…んん…」チロチロ

一夏「シャ、シャル!? 何やってんだよ!?」バババッ

シャル「うわ!? ご、ごめん…日本じゃ、怪我をしたら舐めて治す風習があるってきいたから…」

一夏「いや、それって大昔の話だぞ…?」

シャル「へ…? そ、そうなの!?」

一夏「まったく…驚かせるなよ」

シャル「ご、ごめん…」

一夏(うぅ…前の風呂場のときもそうだけど、シャルって変なところで大胆だからなぁ…///)

シャル(ちょっとだけ間違っちゃったけど…一夏、何だか僕のこと意識してるみたい)

シャル(なんだか嬉しいかも、だなんて…えへへ///)

一夏「じゃあ、続き頼む」

シャル「あ、うん。そうだね」

シャル「どうかな」ゴシゴシ

一夏「あぁ。気持ちいいよ」

シャル「ふふふっ。良かった」

一夏(人に洗われるのって…意外に気持ちいいんだな。久しぶりだったから分からなかったよ)

シャル「痒いところ、ありませんか~?」ゴシゴシ

一夏「あははは。それって、頭洗う時の台詞じゃないのか?」

シャル「細かいところはいいんだよっ」

一夏「うーん。今は特にないかな」

シャル「そっかぁ。残念」

一夏「背中はそれくらいでいいんじゃないか」

シャル「あ、本当だ。じゃあ流すね」


バシャァ


シャル「はい、おしまい」

一夏「よしっ。じゃあ次は俺か」

シャル「じゃあお願いね」

一夏「力加減とかよくわからないから、言ってくれな」

シャル「うん!」

一夏「ええと…これくらいか?」ギュッ

シャル「ちょ、ちょっと強いかなぁ…」

一夏「えぇ…だいぶ抑えたつもりなんだけどなぁ…」

シャル「だめだよー女の子の肌はデリケートなんだからね?」

一夏「うーん…じゃあ、これくらいか」スッスッ

シャル「うーん…ちょっと弱いかな」

一夏「む、難しいな…」キュッキュッ

シャル「あ、それちょうどいい」

一夏「本当か? 良かった」

一夏(うーむ…女って、体洗うのも大変なんだな)

シャル(お風呂で体洗われるのって…いいなぁ。一夏が、僕のことを気遣ってくれるのがよくわかるもん)

シャル(…なんだか嬉しい♪)

一夏「よしっ。だいぶコツを掴んできたぞ」キュッキュッ

シャル「うん、上手いよ」

一夏「痒いとこ、ありませんかー?」キュッキュッ

シャル「あはは。何それ」

一夏「シャルの真似」

シャル「うーん…そこより左上が、ちょっと痒いかも」

一夏「了解。左上だな」

グイッ

一夏「え!?」

シャル「うわ!?」

一夏(ま、まずい! 指に、水着の結び目が引っかかった!)


ハラッ


シャル「あ…///」

一夏「ご、ごめん!」プイッ

シャル「も、もぉ…一夏のえっち」

一夏「わ、わざとじゃないんだ! 本当にごめん!」

シャル(…そんなに目を背けなくてもいいじゃん)プクー

一夏「と、とりあえず俺は向こう見てるから…お前、早く直してくれよ」

シャル「……」

一夏「シャ、ル…?」

シャル「ねぇ一夏」

一夏「な、なんだ?」

シャル「一夏に、直してもらいたいな」

一夏「えぇ!?」

シャル「外しちゃったのは一夏だし」

一夏「え、えぇ…それは、そうだけど…」

シャル「じゃあお願い」

一夏「う…(なんでノリノリなんだよ…)」

シャル「はい、どうぞ」

一夏「お、おぅ…(シャルの背中…綺麗だな)」

シャル(背中だけとはいえ…裸を見られるのは恥ずかしいな///)

一夏「じゃ、じゃあ、いくぞ?」ドキドキ

シャル「う、うん…」バクバク

一夏「……」ゴクリ


スッ…ピトッ


シャル「ひゃっ!?」

一夏「うぉ!? い、いきなり声を出すなよ…」

シャル「ご、ごめん…続けて」

一夏「ええと…じっとしててくれ」クイッ

シャル「…うん///」

キュッ

一夏「ふぅ…終わった(なんかドッと疲れた…)」

一夏「シャル、終わったぞ」

シャル「///」ポー

一夏「…シャル?」

シャル「えぇ、あ、ごめん! お、終わった!?」

一夏「あ、あぁ…」

シャル「そ、そっかありがと…じゃあ、続きお願い」

一夏「わ、分かった…」キュッキュッ

一夏(シャルの奴…なんであんなにボーっとしてたんだろう?)

シャル(うぅ…さっき、一夏が僕の水着を直してくれた時に…)

シャル(まるで…お、お姫様に、ネックレスをかけてくれる王子様みたい、って想像してたなんて…)

シャル(あぅぅぅ…! は、恥ずかしいよぉぉ…!)ブンブン

一夏「?」

一夏「流すぞー」

シャル「う、うん…」


バシャァ


一夏「おっし。だいぶ綺麗になったな」

シャル「そ、そうだね…(途中から、それどこじゃなくなってたけど…)」

一夏「じゃあ、入るか?」

シャル「え? 頭は?」

一夏「あ…うーん…別によくないか?」

シャル「えぇー…僕はやっぱり洗ってから入りたいかも」

一夏「そっか?」

シャル「うん。どうせなら、また洗いっこする?」

一夏「え、ええと…できれば遠慮したいな…今、頭腫れてるしな」

シャル「そ、そっか…織斑先生に殴られたんだよね」

一夏(それもあるんだが…なんか、恥ずかしいんだよな…)

一夏「そういうわけだから、ちょっと待っててくれよ」

シャル「うーん…分かった」

一夏「よし。ちゃっちゃと洗っちまうか」



一夏「ふぅ。さっぱり」

シャル「うわ…! 一夏、もう終わったの!?」

一夏「え? いつもこれくらいだけど?」

シャル「し、信じられない…。水で流しただけじゃないの?」

一夏「失礼なこというな。ちゃんとリンス入りのシャンプーで洗ったさ」

シャル「……」

一夏「シャルも早く洗っちまえよ」

シャル「…やっぱダメ」

一夏「え?」

シャル「僕が洗います」

一夏「えぇ!?」

シャル「じゃあじっとしててねー」

一夏「は、はい…(何でこんなことに…)」

シャル「ちゃんと頭を洗わなきゃだめだよー。毛穴に詰まった皮脂を落さないと」

一夏「えぇ…メンドウなんだよなぁ…」

シャル「だめだよー。匂うし、抜け毛の原因になるよ?」

一夏「うッ…そ、それは洒落にならないな…」

シャル「というわけで、僕が徹底的に洗い方を教えます」

一夏「へーい…」

シャル「まずは髪にシャンプーを全体的になじませて…軽く泡立てます」ワシャワシャ

一夏「お、おぉ…(手馴れてるなぁ…)」

シャル「それで…下の生え際から頭頂に向かう感じで…指の腹で小刻みに擦るように」ワシャワシャ

一夏「おぉぉぉ…気持ちいいな」

シャル「うふふーん♪ そうでしょー♪」

一夏「すごいな。美容師さんみたいだ」

シャル「ラウラので慣れているからね」

一夏「ラウラに?」

シャル「軍人さんだからかなぁ…『必要最低限だけ汚れを落せればそれでいい。

     戦場では1ヶ月風呂に入れないのは当たり前だからな』って、苦労したよ。
     せっかく綺麗な髪しているのに勿体ないんだもん」

一夏「あぁー…」

シャル「痒いところ、ありませんかー?」

一夏「あはははは。じゃあ右耳の上を頼む」ワシャワシャ

シャル「了解ーわしゃわしゃ♪」

一夏「お、おぉ…ちょっとくすぐったい…」

シャル「えへへへへ。楽しいね、これ」

一夏「ああ。気持ちいいよ、シャル」

シャル(一夏が喜んでくれてる…嬉しいなぁ…♪)


シャル「五分間念入りに洗ったあとは、ぬるめのお湯で流せば…」


バシャァ


シャル「はい、おしまい」

一夏「お、おぉぉぉぉぉぉぉ! すげぇ! なんか、頭がすごく気持ちいい!」

シャル「ね? ちゃんと頭を洗ったときの爽快感は違うでしょ?」

一夏「すげぇなぁ…なんか、クセになりそうだ」

シャル「……」

一夏「ありがとうな、シャル! 生まれ変わったみたいだ!」

シャル「ね、ねぇ一夏!」

一夏「ん?」

シャル「その…よければ、たまに洗おうか?」

一夏「え…?」

シャル「ご、ごめん…ちょっとした冗談…///」

一夏「そ、そっか…あはは…」

一夏「じゃ、じゃあシャルも早く洗っちまえよ。俺、先に入って待ってるから」

シャル「……」

一夏「ふぅ…やっと風呂に入れ―――

シャル「い、一夏!」

一夏「ん?」

シャル「ええと…ぼ、僕のも洗ってくれない?」

一夏「へ?」

シャル「だ、だめ…かなぁ?」

一夏「え、ええと…いいのか? よく分からないけど、女って、髪洗うのすごく大変なんだろ?」

シャル「そうだけど…一夏に、洗って欲しい」

一夏「え…?」

シャル「お願い…」

一夏「わ、分かったよ。そこまで言うなら、お返しに洗うよ」

シャル「う、うん…///」

一夏「シャルの髪…改めてみると、長いなぁ…」

シャル「うーん…でも、癖っ毛なんだよねぇ」

一夏「そんなこと気にするなよ。綺麗だと思うぜ?」

シャル「はぅぅ…///」キュゥン

一夏「?」

シャル(も、もぉ…! どうしてそういうことをサラリと言うのかなぁ!)

一夏「じゃあ始めるぞ?」

シャル「あ、うん…。本当は一度湯に浸かってから洗うんだけどね。毛穴が開ききるから」

一夏「え? じゃあ何でさっきは?」

シャル「だって…見ていられなかったんだもん」

一夏「えぇ…そんなにひどかったのか?」

シャル「ま、まぁね…あはは」

一夏「じゃあシャルのも、ちょっと入ってからやるか?」

シャル「ううん。今お願い」

シャル(お風呂に入っちゃったら…勇気が萎んじゃいそうだもん…)

一夏「え、ええと…まずはシャンプーを全体に馴染ませて、軽く泡立てるんだよな?」

シャル「ううん。長い髪のときは、予め手でシャンプーを泡立てるんだよ」

一夏「そうなのか。じゃあ」ゴシュゴシュ

シャル「泡立てたら、薄く馴染ませるように塗って」

一夏「おう」ヌリヌリ

シャル「塗り終わったら、生え際から毛先にかけて、小刻みに洗うように。
    このとき、爪を立てたり毛流に逆らわないように気をつけて。髪を傷めるから」

一夏「お、おう…慎重にやらないとな」ワサワサ

シャル「うん。そんな感じだよ」

一夏「ええと…小刻みに…指の腹を使うようにか?」ゴシゴシ

シャル「あぁ、ダメだよ! 髪の毛どうしを擦り合わせちゃ!」

一夏「えぇ!? ど、どうすればいいんだよ…」

シャル「ううん…本当は髪を持ち上げるようにして洗うんだけど、馴れてないと難しいだろうし…」

一夏「うぅ…本当に大変なんだな」

シャル「ええと、じゃあね。両の手の平で髪を挟むようにして、それで滑らせてみて。根元から毛先の方向に」

一夏「え? そんなんでいいのか?」

シャル「うん。その代わり、あまり強く挟みすぎないでね。それと、何度もやらないとダメだよ」

一夏「わ、分かった。いくぞ?」ピト


ツーッ


シャル「い、痛い痛い! 強く挟みすぎ!」グィィ…

一夏「うわぁ!? ご、ごめん!」

シャル「もぉ…そんなんじゃダメだよ。髪は女の命なんだからね」

一夏「す、すまん…」

シャル「…一夏?」

一夏「んん?」

シャル「女の子が他の人に髪を洗ってもらうのって…相当なんだよ?」

一夏「あ、ああ…悪い。もっと慎重に洗うよ」

シャル「そうじゃなくて…はぁ…」

一夏「?」

シャル(大事だからとか、そんな理由じゃないのに…)

シャル(女の子が髪の毛を触らせるほどの異性って意味…分かって欲しいなぁ…)

シャル「はぁ…」

一夏「??」

―――――――――
―――――
―――

シャル「うーん…とりあえずはこんなところかな。じゃあ、流して」

一夏「へ、へーい…(まさかこんなに時間かかるとは思わなかった)」ガシッ

シャル「一夏。ちょっとストップ。まさか、桶で流そうとしてない?」

一夏「へ?」

シャル「やっぱりね…。シャワーで丁寧に、優しく流さなきゃダメだよ?」

一夏「お、おぉ…ごめん」


ジャー


シャル「濯ぎが一番重要なんだ。ちょっとでもシャンプーが残ってたら痛むし匂うから。
    だからもう、これでもかってくらい流しちゃって」

一夏「へーい…(やべぇ…これ、思った以上に重労働だ…命賭けるのもわかる…)」

―――――――――
―――――
―――

シャル「ふぅ…さっぱりした。ありがと、一夏」

一夏「い、いや…良かった―――へっくち!」

シャル「あ…すっかり冷めちゃったね。ごめんね…?」

一夏「気にするなよ。それより、早く入っちまおうぜ」

シャル「そ、そうだね」


チャポン…


一夏「ふぁぁぁぁ…生き返るー…」

シャル「あはは。一夏、おじいちゃんみたい」

一夏「いい湯だのぁ~」

シャル「あはははは。まったく…そんな一夏には…こうだ!」バシャッ

一夏「うぉ!? やったな…この!」ザバッ

シャル「きゃぁ! あはははははは!」

―――――――――
―――――
―――

一夏「やれやれ…高校生にもなって、柄にもなくはしゃいじまったな…」

シャル「そ、そうだね…あはは(ちょっと浜辺の恋人みたいで楽しかった…なんて言えない…)」

一夏「肩まで浸かって、ゆっくり数えようぜ。それで終わりだ」

シャル「あ…」

一夏「ん?」

シャル(このままいけば…ミッションが終わっちゃう…)

シャル(…もっと、一緒にいたかったな)


ピトッ


一夏「!?」

シャル「ごめん、疲れちゃった。このままでいい?」

一夏「あ、あぁ…(背中合わせ…水着とはいえ、あの時を思い出しちまうな…)」

シャル「…ねぇ一夏。覚えてる? 僕がここで、あの時に言った事」

一夏「え…? ええと、お前の、自分自身のあり方のこと、だろ?」

シャル「うん。覚えててくれてありがとう。あの時から僕は…デュノア社の傀儡であることを辞めて…
     本当の僕であろうと…シャルロット・デュノアであることを決めた」

一夏「ああ。立派だと思う」

シャル「ううん違うの。あれは…一夏のおかげだよ」

一夏「え?」

シャル「あの時も言ったけど…一夏がここにいろ、って言ってくれたから」

シャル「そんな一夏がいてくれたから、僕だってここにいよう、って決心がついたんだよ?」

一夏「……」

シャル「…一夏。あの時、庇ってくれて本当にありがとう」

一夏「…うん。なんか…ほっとけなかったからな」

シャル「ルームメイトだったから?」

一夏「それもあるけど…何ていうのかなぁ…やっぱ、シャルだったからかな?」

シャル「へ…?」


一夏「何ていうかさ…あの頃から俺は、お前のことをずっと友達だと思ってたからな」

シャル「……」

一夏「すごく穏やかで、優しくて、気配りが上手なお前といるの…楽しかった。
   勉強やisの面でもすごく助けられたし、一緒にいる大切なものになったよ」

シャル「…///」

一夏「だから…そんなお前がいなくなっちまうのは…
    なんか、すごく嫌だったよ。絶対に助けたいって思ったんだ」

シャル「…そっか」

シャル(友達、かぁ…やっぱりちょっと残念かな)ザブン

シャル(でも…やっぱり僕の事、大切に想ってくれていたんだ…///)ブクブク

シャル(ありがとう一夏。そんな君が…僕は、大好きだよ)


シャル「…ねぇ一夏。君は言ってくれたよね。いつか、僕の会社のことも、何とかしてみせるって」

一夏「…あぁ。情けないことに、今は解決の糸口すら見えてないけどな」

シャル「しょうがないよ。亡国機業のこととか…大変なことが増えたし」

一夏「ごめんな…でも、お前のことも絶対に何とかしてみせるよ」

シャル「…うん。信じてるよ、一夏のこと」

シャル「…でもね」


ギュッ


一夏「いぃ!?(だ、抱きつかれてる!?)」

シャル「きっと一夏なら…何とかしてくれると思う。絶対に僕を助けてくれると思う」

シャル「でも…でもね、一夏。僕…わがままかもしれないけど…」

一夏「…?」



シャル「僕……できるなら、その後も、一夏とずっと一緒にいたい…!」

一夏「へ…?」ドキッ

シャル「出来るならこれからも…ずっと、一夏の傍にいたい…!」

一夏「と、当然だろ…俺と、お前は…と、とも―――

シャル「違う!」

一夏「え…!?」

シャル「あ、あのね…つまり…ぼ、僕が、言いたいのは…!」ドッキンドッキン

一夏(な、なんだこれ…俺、すごく緊張してる!? いや、この動機は…シャルのなのか!?)バックンバックン

シャル「い、一夏!」

一夏「は、はい!」ビクッ


シャル「あ、あの! 僕と、一緒に、いて…ここ、こいb―――



ビ―――――――――――――ッ!!!


シャル「あ…」

楯無『終了ォー!! 一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!』パンパカパーン

一夏「あ…い、いつの間にか…100秒経ってたのか…あはは…」

シャル「……」

シャル(もぉ~~~~!! なんてタイミングで~~!! 一夏のバカ~~~!!!)

一夏「シャ、シャル…。さっき、言いかけたことは…」

シャル「…ふんだ」プイッ

一夏「お、おい…何で怒ってるんだよ…?」

シャル「怒ってない」フンダ

一夏「えぇー…(絶対に怒ってる…)」

シャル(何でそういうのは分かるのに…僕の気持ちは分からないかなぁ…はぁ…)

一夏「シャル…」

シャル「ん?」

一夏「お前が心配しなくても…俺はずっと、お前の味方だ。だから、大丈夫だ」

シャル「――ッ!」

一夏「会社のこととか解決して、卒業しても…お前が困っていたら、助けてやるから。
    だから俺たちは…ずっと一緒だ」

シャル「…うん///」


一夏「そ、そろそろあがろうぜ。湯冷めしちまう」

シャル「あ、ちょっと待って一夏」ザバン

一夏「え?」

シャル「えっとね…約束、してくれたから」

一夏「ん?」

シャル「僕と、ずっと一緒にいてくれるって」

一夏「あ、あぁ…」

シャル「だから…これはそのお礼と、誓いの証」

一夏「へ―――


チュッ


一夏「!?」

シャル「…えへへっ。ちょっと恥ずかしいな///」

一夏「お、おぉ…(額に…キスされた…///)」

シャル「あ、あがろ! 次のミッション、あるんでしょ!」

一夏「あ、ああ…そうだな」

シャル「…一夏」

一夏「ん?」

シャル「僕、負けないから!」

一夏「お、おぉ…何だか知らんが、頑張ってくれ」

シャル「うん! 一夏かもね! 待ってるから! じゃあね!」タッタッタ…

一夏「あ、あれ…シャルの奴、行っちまった…水着のまま…」

一夏「うーむ…楯無さんといい、簪といい…最近、女子の間ではお礼をキスで返す習慣でもあるのだろうか…」

―――――――――
―――――
―――

シャル(は、はぅぅぅぅぅ…! 恥ずかしかった~!)

シャル(で、でも…生徒会長も、あの簪って子も…これくらいはやったんだし…!)

シャル(…絶対に負けないから!)

~生徒会室~

楯無「おぉ…やっぱシャルロットちゃん、大胆だね~」

簪「……」

楯無「簪ちゃんも、少しは見習った方がいいよ?」

簪「…ふん。一夏ってば…デレデレしちゃって…」

楯無「あらあら…ご立腹だ」

ガラガラ

一夏「ふぅー。いいお湯だったー。さっぱりしました」

楯無「おかえりなさーい。お疲れさーん」

簪「……」キッ

一夏「うッ…(だ、だから何で睨むんだよ…)」

楯無「はいはい簪ちゃん。一夏くんへの鬱憤は、ミッションで発散させよーね。さてさて…
   体も心もリフレッシュできたことだし、次なるミッションに移りましょう!」ガサガサ

一夏「あぁ…そういやまだ続いてたんだ…日を跨いだから忘れそうだったけど…」


楯無「はい出ました! 次なるミッションは…『>>468』です!!」

今日はほのぼのだったね。とりあえずここまで。
残念だけど、あまり過激なエロはしないようにしてるのよ…
次回更新はまたあきます…最近また忙しいの
じゃあの

現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■□□□□□□□
楯無   ■■■■■□□□
簪     ■■□□□□□□
シャル  ■■■□□□□□


千冬への日頃の感謝の気持ちを作文にして、クラスメイト全員の前で読む

『織斑先生への日頃の感謝の気持ちを作文にして、クラスメイト全員の前で読む』


一夏「」

簪「……」

楯無「あっはっはっはっは!! これは罰ゲームミッションだね!!」

一夏「な、何だよコレ…どんな羞恥プレイだよ…」

簪「しかもクラスメイト全員の前で読むって…模様は全校放映しなきゃ、だから…」

一夏「実質全校生徒の前で音読…うわぁ、死にてぇ…」

楯無「あー大丈夫だよー。そこはミッションの内容に倣って、発表は1組の教室だけにしておいてあげるから」

一夏「そ、そうですか…まぁ恥ずかしいことには変わりないんだけど…」

楯無(まぁ…結果はあまり変わらないと思うけどね…♪)ニシシッ

簪(お姉ちゃん…また悪い顔してる…良からぬ事が起きるのを知ってて黙ってる顔だ…)

楯無「はい☆ というわけで、じゃあ今回のミッションを具体的な内容ね!」

楯無「これから一夏くんには作文執筆作業に移ってもらいまーす♪
   存分に織斑先生に思いの丈をぶつけてもらえるように、ライティング環境は整えるからね!」

楯無「とりあえず、寮に篭って書いてもらおうか。もちろんその間は放映しません! 
   納得する原稿が出来上がるまで存分に書き上げてね!
   どこぞの鬼編集のように締め切りの催促はしないけど、あんまり遅いとお姉さん怒っちゃうぞ☆」

楯無「無事脱稿したらそのまま教室へ直行! 最後まで音読できたら終了!
   あ、ちなみに原稿の文字制限とかはないよ! 思い思いに書いてね!
   説明は以上! さぁ、文豪の時間だ!」

一夏「へーい…」トボトボ…


ガララッ…ピシャッ…


楯無「…まぁ織斑先生なら安心かな」ボソッ

簪「ん? 何か言ったお姉ちゃん?」

楯無「え? えええええええいやいやいやいや!! 何も言ってないよ! うん!」ブンブン

簪「……」

―――――――――
―――――
―――

~廊下~

一夏「はぁ…なんでこんな…これって完璧に罰ゲームじゃねぇか…。
   あのミッション入れた人、何考えてんだよ…」

一夏「…まぁ『好きな女の子の名前をカミングアウトする』とかじゃないだけマシか。
   いないから言いようがないけど」

一夏「はぁ…作文の音読なんて小学校の時以来だよ…どうやって―――」

千冬「よぉ織斑」

一夏「どわっ!? ち、ちふゆ―――」


バギャスッ


一夏「」

千冬「まったく何度目だ。学校では織斑先生と呼べと言っているだろうが莫迦者」

一夏「いてて…せっかく引いた腫れがまた…」

千冬「学習しないお前が悪い。それよりも織斑、面白いことになっているじゃないか、えぇ?」ニヤッ

一夏「うッ…」

千冬「ははははは。気兼ねなく存分に書いていいからな。別に内容で罰則など設けようとは思わんから安心しろ」

千冬「だがまぁ…あまり私に恥をかかせるなよ。言いたいことはそれだけだ」

一夏「は、はい…」

千冬「ふははははは。ではな。しっかりと書け。誤字脱字のチェックも怠るなよ」ツカツカ

一夏「はーい…」

一夏「…暗に釘を刺されたのか、今のは?」

一夏「はぁ…気が重い」

―――――――――
―――――
―――

千冬「……」ツカツカ

千冬「……」スタスタ

千冬「……」カツカツ

千冬「……」

ダッ!!

―――――――――
―――――
―――

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

山田「ほぇ?」

千冬「やぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ダダダダダダダダダダダ

山田「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

山田「おおおおおおおおお織斑先生!? い、いったい―――」

ガシッ

山田「ひぃえ!?」

千冬「正直に答えろ山田先生…何故あんなものを投函した!?」

山田「あ…や、やっぱり、分かっちゃいました?」

千冬「何年一緒にいると思っているんだ! お前の筆跡くらいすぐに分かるぞ!!」

山田「お、織斑先生…落ち着いてください…痛いですぅ…」ギリギリ

千冬「あ…」

パッ

千冬「す、すみません山田先生…公私混同してしまいました」

山田「い、いえ…(ああ、研修時代のトラウマが…)」

千冬「…しかし山田先生といえども感心しません。あれは何ですか? 私をからかっているんですか?」

山田「い、いえ! そんなことは全然!」

千冬「では何故!?」クワッ

山田「ひぃ!? だ、だって…織斑先生…弟のことで、相当悩んでいらっしゃったようですので…」

千冬「はい?」

山田「ほら、前にバーで飲みに行った時も、自分は織斑くんに執着しすぎているような節があるとか」

千冬「む…」

山田「それに…普段自分が織斑くんからどう思われているのかも、気になさっていたようですから…」

千冬(あぁそうか。山田先生たちは、私の部屋の一夏とのやりとりを知らないんだったな)

山田「…でも、私には織斑くんは貴女のことを邪険にしているようには思えません。
   むしろとても尊敬していると思います」

千冬「……」

山田「確かに織斑くんは危なっかしくて、座学も…正直いっていい成績とは言えませんが…
   でも、とてもいい子だってことくらいは分かります」

山田「そんな立派な弟さんが、貴女の事を悪く思うなんて考えられないんですよ」

山田「だからここは、正直に織斑くんに言ってもらえば分かってくれるんじゃないかなぁ、って…」

千冬「…それならわざわざクラスで発表させることもないのではないですか?」

山田「え…? あ、ははははは…そうかもしれませんね…。きっと作文にすれば織斑くんも考えがまとまると
   思って…どうせなら発表させた方がいいかなぁ、なんて…あははは…」

千冬「まったく…余計なお世話も程々にしてください。人の家庭の事情に節介とは何を考えているんですか」

山田「あ、はははは…すみません」

千冬「…まぁ悪気がないのはよく分かりました。しかし、今後はこういうことは謹んでください」

山田「は、はい…」

千冬(気持ちはありがたく受け取っておくが…しかしやはり恥ずかしいことには変わりない…!)

千冬(くぅ…! 頼むから余計なことは書くなよ、一夏…!)

―――――――――
―――――
―――

~is学園寮:織斑一夏の部屋~

一夏「ふむ…まぁというわけで鉛筆と作文用紙(400字詰め)を用意したわけだが」

一夏「…しかし何を書いていいのか分からん。作文なんて得意じゃないしな」

一夏「とりあえず思いつく限り書いてみるか。えーと…昨日は千冬姉に殴られて、部屋の掃除して、
   マッサージして、色々話して、そんで今日もまた殴られて…」カキカキ

一夏「……」グシャグシャ

一夏「だめだ…これじゃただの日記だ…」

一夏「というか下手なことは書けないな。そうだ、思い切って褒めちぎってみるか」

一夏「ええと…俺の姉は容姿端麗、頭脳明晰、才色兼備、文武両道を兼ね備えた超人であり、
   モンド・グロッソで優勝したこともあり、林間学校のときの水着姿もそれはそれは麗しく…」カキカキ

一夏「……」ビリビリ

一夏「あからさまな賛美は逆効果だな…絶対に千冬姉に嘘だってばれる…」

一夏「はぁ、どうすればいいんだ…」

一夏「……」

一夏「取りあえず千冬姉について整理してみよう」

一夏「まずは俺の姉。まぁここまではいい。それで…モンド・グロッソで一回優勝したんだけど、
   次の大会は決勝戦を放棄して…」カキカキ

一夏「…これって俺のせいなんだよな。そういえばラウラも最初はこのことで怒っていたっけ」

一夏「そのあとはドイツに1年ほど赴任して、その後は知らなかったけどis学園に教師として働いていた。
   箒のときもそうだったけど、再会してすごくビックリしたっけ」

一夏「それで、学校生活ではいつも怒られて、殴られて…。たまに帰ってきてもマッサージと飯を作るくらいで…」

一夏「……」

一夏「あれ? もしかして俺、千冬姉の事、あまり知らない?」

一夏「千冬姉のこと、確かにあまり知らないよな…学園で働いている時も何も言われなかったし」

一夏「うーむ…となると、千冬姉をよく知る人にきいてみるか?
   候補はラウラ、山田先生、あと叶うなら束さんくらいだけど…」

一夏「……」

一夏「何言ってんだよ俺…自分の姉のことなのに、人に訊かなきゃ分からないなんて…みっともなさ過ぎるだろ」

一夏「はぁ…」

一夏「…別に千冬姉の情報が全てじゃない。こんなの、俺が千冬姉をどう思ってるかが重要なんだ」

一夏「そこのところを意識して、もう一度思い返してみよう」

一夏「まずは千冬姉に対するイメージは…うん、とにかく厳しい。やたら殴るし」

一夏「それで…やけに女生徒たちに人気がある。『ブリュンヒルデ』とか呼ばれてるんだっけか。
   本人はあまり好きじゃないみたいだけど…弟の俺からしても複雑だけど…」

一夏「…なんてこった。碌な思い出がないぞ」

一夏「……」

一夏「いや、違うな…一番印象に残っているのは…やっぱアレだな。俺が小学生の時、剣道を教えてくれた時だ」

一夏「あの時の千冬姉の言葉は…今でも印象に残っているなぁ」

一夏「きっとあれが…俺の原点なんだと思う」

一夏「俺も千冬姉みたいになりたくて…」

一夏「守られてばかりじゃなくて、今度は俺の方から守ってあげたくて…」

一夏「……」

一夏「そっか…」

一夏「俺って昔から…ずっと千冬姉に守られていたんだな」

一夏「俺に剣を握らせてくれたのも、結局は俺自身が俺を守れるように。
   それを教えてくれたのは、俺を守るためだもんな」

一夏「千冬姉…本当にありがとう」

一夏(俺もいつか…千冬姉みたいに)

一夏「……」

一夏「よし! 書くべきことは大体決まったな! 筆がなるぜ!」カキカキ

一夏(うーむ…そういえば千冬姉が守りたい人って誰なんだろうな?
   学園の生徒たちかな? いや、一人しかいないような口ぶりだったけど)

一夏(っと…。いかんいかん。原稿に集中せねば)カキカキ

―――――――――
―――――
―――

すまんぬ。明日もまたアホみたいに早いから一旦切るお…
続きは明日か明後日になると思われ…
やっぱ現実逃避なんてやるもんじゃないね

~1時間後、1組教室前廊下~

一夏「…で。書きあがったからいざ来てみたら…」

わいわい
がやがや
ざわざわ

一夏「何だよこの人の多さは…教室の後方や廊下にまではみ出しているじゃねぇか…」

楯無「あっはっはっは! 一夏くん、大人気だね!」

一夏「た、楯無さん! どういうことですかこの状況は!?」

楯無「何か問題でも?」

一夏「だ、だって! 発表は俺のクラスだけにしてくれるって!」

楯無「うん、その約束は守ってるじゃない。でも、それでも寄ってくる生徒に対しては保証しきれませーん。
    イベントを楽しみにしてくれてる娘たちを追い返すのも悪いじゃない?」

簪「こういう、ことだったのね…お姉ちゃん」

一夏「か、簪…何でお前までいるんだよ…」

簪「ご、ごめん…やっぱり、気になって…」

鈴(…フォローしてあげたいけど、あたしも出刃亀でここにいる以上は何も言えないわ…)


「あ、織斑くんよ!」「きゃー! ついに織斑お姉さまの赤裸々な事情をきけるのね!」
「弟からしたら、お姉さまってどう見えるのかしら!? 気になるわー!」

一夏「…なんかギャラリーのほとんどは俺目当てじゃなくて、千冬姉のおっかけみたいだな」

楯無「そーいうこと。だから一夏くんは気にしなくていいのよっ♪」

一夏(いや、逆にプレッシャーですよ…余計逃げ出したくなってきたし…)

楯無「はいはい! いつまでもこんな廊下で油売ってないで、とっとと入っちゃいなさい!」ドン!

一夏「うわぁ!? …ったく。分かりましたよ、はぁ…」ガララッ

ラウラ「……」キッ!

箒「……」ムスッ

セシリア「……」プイッ

シャル「あは、はははは…」

一夏(な、何だよ…何で専用機持ちの皆はシャル以外は不機嫌そうなんだよ…)

一夏(いや、ていうか…)


千冬「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


一夏(黒板の隣で仁王立ちしている俺の姉が怖いです、はい…)

ラウラ(一夏め…! 私の嫁という自覚が足りないばかりか、よりにもよってあの女に振り回されおって…!)

箒(クソッ…! 何故いつまで経っても私の番が回ってこないのだ…!)

セシリア(私の肉じゃがを食べてくださる約束をしましたのに…! 他のレディの料理を褒めるなんて…!)

シャル(み、皆荒れてるなぁ…でも僕は僕で色々やっちゃったから、フォローしても火に油だし…)

のほほん「おりむーだー! 待ってたよー!」ピョコンピョコン

一夏「あはは…のほほんさん…」

相川「織斑くーん! 早く早くー!」
谷本「織斑先生の秘密、知りたいー!」
鷹月「ま、まったく皆ってば…」

一夏「いや、秘密とかそんな大したもんじゃないけど…」


千冬「……」ギロッ!!


女生徒たち『』ビクッ

一夏「?」

シャル(…流石一夏。織斑先生の視線に全く気付いてない)

山田(あぅぅぅぅぅ…織斑先生の隣、怖いですぅぅぅぅ…)ヒィィン…

千冬「…さて、静かになったところで織斑。とっとと原稿を読み上げろ」

一夏「は、はい」スタスタ

一夏(うおぅ…き、緊張する…高校生にもなってまさか作文の読み上げするとは…)

一夏「えー…コホン。では、始めます。タイトルは…『僕の姉さん』」


箒(普通だ)

セシリア(普通ですわね)

ラウラ(シンプルでいいな)

シャル(僕って…)


一夏「僕の姉さんは、怖いです」


女生徒たち『』

千冬「」

山田(…織斑先生の絶句が、怖いです)

一夏「普段は眉間に皺が寄っていることが多いです。怒ると口よりも手が先に出ます」

一夏「僕が失敗すると、大抵は拳骨されてから二言めくらいに『莫迦もの』と呼ばれます」

一夏「正直おっかないです」

箒「」

セシリア「」

シャル「」

ラウラ「ふむふむ」


鈴「」

簪「」

楯無「ぷっ…くくく…」プルプル



千冬「……」ツカツカ ガララッ

山田「ちょ、織斑先生、どこへ、え、何で空き教室の方に―――」

ドガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

山田「」

千冬「ふぅ…やれやれ。柄にもなく取り乱してしまった」ツカツカ

山田「」

千冬「…放心している山田先生は放っておいて、と。まったく一夏め…また余計なこと喋っていないだろうな」


ガララッ


一夏「家に帰ると下着姿で放浪してます」

千冬「」

箒セシ『』

ラウラ「ほう…なるほど、半裸健康法か。私も今度隊に戻ったら実践してみるか」メモメモ

一夏「しかもお酒を飲みまくります。飲んだくれというほどではありませんが、年齢的にもちょっと控えて欲しいです」

女生徒たち『』


山田(か、帰ってきてみたら…何ですかこの空気は…)←立ち直った

千冬「……」ドドドドドドドドドドド…

山田(…織斑先生の背後からただならぬ瘴気が)

一夏「家での家事は基本的に僕の仕事です。姉は家事をあまりしないようです」

一夏「掃除、洗濯、料理とこなしていく内に、僕も一通りの生活の術を身に付けられました」

一夏「その辺は感謝してます」

箒(それは遠まわしに馬鹿にしているぞ…)

一夏「ちなみに姉のお気に入りは、僕の作ったコーヒーゼリーです」

一夏「しかし、やはり身の回りのことはもう少し気を付けて欲しいと思います。さっき寮の部屋に入った時も――」

千冬「―――!!」ビュッ!!

山田(あ! いつのまにチョークを!? ライフル弾のごとく織斑くんの方に!?)


パァン!!
パラパラ…


千冬「!?」

楯無(ふふふ…させませんよ、織斑先生…今、面白いところなんですから)<is部分展開>

千冬(ぐ…! おのれ、更識姉の方…! だがまぁいい…余計な部分はシャットアウトできた…)

一夏(? なんか一瞬変な音がしたけどまぁいいか)

シャル(一夏、何で気付いてないの!?)

一夏「と、まぁこのように、普段のイメージとは違った一面もあり、皆さんも驚いているかもしれません」

セシリア(驚いている以前に織斑先生の株価がストップ安な気が…)

一夏「姉はよく僕の事を『放っておけない奴だ』とよく言いますが」

シャル(一夏やめてあげて…多分このクラス全員がとばっちり受ける羽目になるから…)

一夏「僕としては姉の振る舞いも、少し見ていて心配な部分があります」

谷本「…なんだかなぁ」ヒソヒソ

相川「イメージと違うというか…そういうのじゃなくて…」コソコソ

鷹月「これ以上は聴いちゃいけない気がしてきた…」ボソボソ

箒(…何だか同情の念が湧いてきた)

ラウラ(実に興味深い)

千冬「…山田先生。今度の実習ですが、いい場所があります。富士の樹海などはどうでしょうか?」

山田「織斑先生…さらっとクラス全員と心中する算段をたてないでください…」

一夏「でも…それでも僕の命を賭けて言えることが1つだけあります」

全員『……?』


一夏「僕の姉の織斑千冬先生は、世界一の女性です」

女生徒たち『…!』

千冬「……」

一夏「実力の意味でももちろんそうです。僕の姉がモンド・グロッソで優勝した経験があるのは、皆さんも知っていると思います」

一夏「そして…2回目の大会で突如試合を放棄してしまったこともご存じでしょう。
   あれは…僕のせいなんです」

一夏「僕はあの時、亡国機業誘拐されていました。そしてそれを助けてくれたのが、姉なんです」


ざわざわ…


ラウラ(…一夏。言ってしまうのか、あれを)

千冬(莫迦者が…また余計なことを…)

一夏「あの時の不安は…今でも忘れられません。わけも分からないまま連れてこられて、
   何をされるかも分からないまま怯えていました」

一夏「そんな時に駆けつけてくれた姉は…本当に格好良かったです。僕は、姉に命を救われました」

「そんな事情があったのね…」
「いい話だわ…」
「織斑先生も…やっぱり人間なのね」

千冬「…ふん」

一夏「僕の姉は、世界最強という称号を投げ捨ててまで僕を助けてくれました。
   それは決して、誰にでも真似できることではないと思います」

一夏「家族の存在のありがたさを、僕が身を以て一番体感した瞬間でした」

「まぁ確かに…」
「でも、仕方ないことじゃない?」
「確かにねぇ…トロフィーか家族かって言われたら、誰だって家族を選ぶと思うけど…」

千冬「……」

一夏「僕はそのとき、『守られる』ということがどういうことかを思い知りました」

一夏「自分のために駆けつけてくれる人がいる。そんな人がいるということは…とても素晴らしいことです」


『……』


一夏「…でも、それだけではありません。
   僕の姉は…『守る』ということがどういうことかも教えてくれました」


千冬「――!!」

一夏「最初は僕が小学校の時…初めて剣道を習った時です。
   自分が剣を振るうその意味を…その大切さを最初に教えてくれた人が…他でもない千冬姉です」

一夏「あの言葉は僕の原点であり、そして僕の道標でもあります」

一夏「そして…強さとは何のためにあるのか、そういう大切なことも…本当に色々なことを教えてくれました」

箒「……」

セシリア「……」

シャル「……」

ラウラ「……」

千冬「……」

一夏「思えば、僕には千冬姉しかいなかったように、千冬姉にも僕しかいませんでした。
   でも僕とは違い、寂しがったり悲しがったりもせず…ただ直向きに、前を走っていました」

一夏「今でも僕は、その背中を追うのに必死です。でも、僕の姉はとても優しい。
   僕が転んでも、起き上がるまで待ってくれるような人です。」

千冬「……」

一夏「普段僕にも、皆にも辛く当たるのはそういう理由なんだと思います。
   誰だって生きていくには力が要ります。一人で立ち上がるくらいの力は必要です」

一夏「だから姉は手を引っ張っていくよりも、ちゃんと自分自身で立てるように促せる人間なんです」

一夏「僕の姉は、そういうことがよく分かってるんだと思います。
   誰よりも強さというものは何かを理解し、力が何のためにあるのかを知っている人ですから」


鈴「……」

簪「……」

楯無「……」

山田「……」


千冬「……」

一夏「自分の都合よりも、皆のことを誰よりも思っている」

一夏「そしてたった一人の家族の僕に、『守られることの温かさ』と『守ることの大切さ』を同時に教えてくれました」

一夏「だから姉は僕のたった一人の家族であり、教師であり、目標であり…」

一夏「僕を守ってくれる人であり…そしてこれから僕が、守ってあげたい女性の一人です」

千冬「……!」カァァァ…

一夏「厳しくて怖い所もあるけど、でも色々知ってて、格好良くて、何よりも強い姉を、僕は尊敬してます」

一夏「だから僕の姉は世界一です。たった一人の、大好きな姉です」

千冬「~~~~~~~///」

一夏「ですから皆さん、これからもどうか…僕の姉の織斑千冬先生を、宜しくお願いします」

一夏「…拙い文章で申し訳ありませんでした。最後にこの場を借りて、一言だけ言わせて下さい」

全員『……?』



一夏「…千冬姉、いつもありがとう。俺、千冬姉の弟で本当に良かった」ニコッ



千冬「―――!!」ドクン!!

一夏「以上です。ありがとうございました」ペコッ

全員『……』


パチパチパチパチパチパチパチ


箒(…敵わないな)

セシリア(本当に…大切ですのね)

ラウラ(教官の言っていたこと…ほんの少しだけ分かった気がします)

シャル(やっぱり…織斑先生は強いなぁ…色々な意味で)


鈴(まったく…見せつけてくれちゃって)

楯無「ブラボー! ハラショー!!」パチパチ

簪「お、お姉ちゃん…」

千冬「……」

山田「…本当に、いい弟さんをお持ちになりましたね(一時はどうなることかと思いましたが…)」

千冬「……」

山田「…織斑先生?」

千冬「……」

千冬(な、何を考えているんだ私は…!? ぐ、愚弟のあんな三文作文で…)ドキドキ

千冬(どうかしている…! あ、あんな言葉で…あんな台詞でここまで…私が嬉しがっているだと!?)バクバク

千冬(こ、こんなはずでは…! あんな…あんな、一夏の笑顔などで…!)ドッキンドッキン

千冬「……///」

山田「あ、あのぉ…」

千冬「…山田先生、あとは頼みます」

山田「へ?」

千冬「どうやら私は…少し腑抜けてしまったようです。少し鍛えなおしてきます」

山田「え」

千冬「取りあえず、頭を冷やしてくる意味も込めて、アリーナを100周ほどランニングしてきます。
   何かありましたら…呼んでください。では」ズカズカ

山田「あ、ちょっと……」

山田「…気のせい、かしら。織斑先生、笑っていたような…」

―――――――――
―――――
―――

~生徒会室~

楯無「はーい! というわけで無事一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!」パンパカパーン

一夏「もうこれには馴れてきたけど…今回のはマジで精神的にきつい…」

簪「お、お疲れ様…」

楯無「ひっひっひ☆ 想像以上だったよ! まさか織斑先生のあんな一面見れちゃうなんてね!」

一夏「あぁそういえば…あれから千冬姉の姿が見えないんだよな…見れないだけに後々どうされるのか怖い…」

楯無「…まぁ悪いようにはしないと思うよ。精々がis装備でフルマラソンくらいじゃない?」

一夏「それって千冬姉がマジギレした時に課すデスマーチを覚悟しておけってことですか…はぁ…」

楯無(迂闊だったわ…肉親はないかと思っていたけど、思わぬ伏兵がいたものだわ…)

簪(織斑先生…手ごわいけど、やっぱり負けたくない…!)

楯無「さてさてー…一夏くんも大分慣れてきたことだし、次のミッションに移りますかね!」


ゴソゴソ


楯無「なになにー…次のミッションは…『>>544』だー!!」

箒、簪、鷹月さんと行く一泊温泉旅行。

というわけで今日は以上。久しぶりすぎてすまん…
そして次回更新はおそらく次の日曜っす


現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□
簪     ■■□□□□□□
シャル  ■■■□□□□□

※千冬姉は姉という立場上、パラメーターは上がりにくいよ。
 根気よくスナイピングしてれば個別√もあるかもしれないけど

そして安価把握。ようやく箒ちゃん書けそうでホクホクするお
じゃあの



>>1が良いなら仕方ないが連投はいいのか?

:::::::〉::: ̄: 1ィトヽ::::v/∠::   ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ     ミ:::〃::::::::::::〈{::::|l__
:::〃::::::::: く:::::::::::∠      {::{/≧===≦v:/     .ミ: :::{[::::::::::::::::::〉::: ̄:>
:::{[:::::::::::>/:::::::::::::::      >:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ〃}ハ「ヾ:::v/∠::::∠:::〃:::::::::、::
v/∠::::∠l_::::-:=-:    γ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈{::::|l__   ≦:::::::{[:::::::::::>::ヽ
  ≦:::::: √´:::::::::::: _//:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ ヾ     ミ:::〃::::::::::::〈{::::|l
1ィトヽ:::::::     ミ| ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i ヾ     .ミ: :::{[::::::::::::::::::〉:::
く:::::::::::∠    .ミ: 、ヾ|:::::::::|:::/`ト-:::::/ _,x:j:::/:::l ヾ〃}ハ「ヾ:::v/∠::::∠:::〃::::

/:::::::::::::::::〃}ハ「ヾ:::  ヾ:::::::::|v(◯),!v、(◯)/::::/〃 :::〈{::::|l__   ≦:::::::{[::::::::
l_::::-:=-::::〈{::::|l__    ∧::::ト “  ,rェェェ、 “ ノ:::/!〃:::::::〉::: ̄:〃::::::::::::〈{::::|l__
√´::::::::::::::::::〉::: ̄::   /:::::\ト ,_|,r-r-|ィ::/::|  :::〃::::::::::::{[:::::::::::>    ミ::


今回ちょっと長いと思うから今日中には終わらない
あと、3箇所ほど安価だすからよろしくー

>>553
グレーゾーンだね。連投しても10秒ほどスパンがあるはずだから、阻止することは不可能じゃない
まぁ続くようならちょっと考えるけど

『ランダムに選ばれた3人と一緒に一泊の温泉旅行に行く』

一夏「温泉?」

簪「旅行?」

楯無「…ふむ」

一夏「何だか結構ほのぼのとしてるなぁ。まぁ前のミッションよりは全然マシだからいいけど」

楯無(これは…きっと一夏くんとあんまり面識のないけど好意を寄せてる子が入れた奴ね。
   任意に一夏くんが相手を選んじゃえば、専用気持ちの誰かに決まってるから…)

一夏「しかし相手選べないのかー。全然知らない人だったらどうしようかな」

楯無「まーまーミッションだからしょうがないよ。ちょっと待っててねー。今アミダ作ってくるから」

楯無「ランダムってことだから徹底して作ってくるよ。
   学年もクラスも教員も生徒も用務員も全部ごちゃ混ぜにするから」

楯無(ふっふっふ…アミダに細工して私も同行メンバーにあやかろう―――

簪「……」ジロッ

楯無(…と思ったけどなしなし。最近読んだマンガでも公平こそパワーとか言ってたし。
   意味はよく分からないけど)

―――――――――
―――――
―――

楯無「…なんとまぁ」

一夏「相手は箒と簪と鷹月さんか。面識がない相手じゃなくて良かったぜ」

簪「……」←見えないところでちょっとガッツポーズしてる

楯無(アトランダムに選んだのに3人中2人が専用気持ちって…。
   何だか一夏くん、is関係ではいい意味でも悪い意味でも妙な縁を持ってるわね…)

一夏「でも温泉か。林間学校の時に行ったところとかになるのかな」

楯無「あーそこでいいかな。ちょうどいいし。領収書貰って来てくれれば費用は生徒会でもつから安心してね」

楯無「じゃあ今回も特筆すべき内容はないね。一泊温泉旅行に行って、翌日に一夏くんは
   この生徒会室に戻ってくればミッション・クリアということで」

楯無「まぁ模様は絶賛放映しているから、あまり気を抜き過ぎないようにねー。
   じゃ、ミッション☆スタート!」

一夏「おっし。簪、行こうぜ」

簪「う、うん…///」トテトテ

楯無(ふっふっふ…1日待ちぼうけを食らうんだから…ちょっとくらいちょっかい出してもいいよね…?)

楯無(さて…どうやってかき回そうかなぁ…今から悪知恵が冴えるわぁ…)ニヤリ

―――――――――
―――――
―――

~廊下~

一夏「お、箒と鷹月さん。探していたんだ」

鷹月「お、織斑くん…」

箒「……」

一夏「ちょうどいいな。2人して見つかるなんて」

鷹月「い、いや…篠ノ之さんと私は同室だから…」

一夏「そういやそうだっけ。あ、そうだ。鷹月さんは会うのは初めてだよな。4組の専用気持ちの更識簪だ」

簪「……」ペコッ

鷹月「ど、どうも…」

箒「……」ムスッ

一夏(…心なしか箒が何故か荒れている)

箒(ぐ…! やっと私の番が回ってきたかと思えば…! 何故同伴者がいるんだ! これではいつもと同じではないか!)

鷹月(何で私がここにいるんだろう…完全に場違いな気がしてならないんだけど…)

一夏「とりあえず、バスの手配は楯無さんがしておいてくれたんだってさ」

鷹月「えぇ!? じゃあ、今から行くの?」

一夏「そうだな。とりあえず寮の部屋に戻って準備しようぜ。出来たらモノレールに集合で」

簪「…分かった」

鷹月「う、うん…ほら、行こうよ篠ノ之さん」

箒「ああ。すぐ行く」

一夏「しかしこうしてみると、クラス旅行みたいでワクワクするな。林間学校も色々あったから楽しめなかったしな」

箒「たるんでいる。あれだって遊びに行ったわけではないんだぞ」

一夏「あ、はははは…(何で不機嫌なんだろう…)」

―――――――――
―――――
―――

~行きのモノレール~

鷹月「で、その時アナウンスで言ってたのよ。『じゃあ今から離陸しますよ』って。
   そうしたら機内はパニックになったそうよ」

一夏「ははははは。相変わらず鷹月さんは面白い話をするな」

鷹月「あ、ありがとう…雑誌の受け売りだけど」

箒「……」

簪「……」

鷹月(ていうか気まずい…篠ノ之さんは相変わらず不機嫌だし、会長の妹は全然喋らないし…)

鷹月(そ、そりゃあ…私だって織斑くんはちょっといいな、とか思ってたけど…。
   私なんて全然地味だし、織斑くんって競争率高いし半ば諦めてるのに…)

鷹月(というか明らかに篠ノ之さんが一途だから気まずいわ…)

一夏「簪も箒もさっきから黙ってどうした? 緊張してるのか?」

簪「…別に(ちょっとしてるけど…)」

箒「お前に気を使われるまでもない」プイッ

一夏「そ、そうか」

鷹月(織斑くんは平常運転だし…)

~モノレール終着駅前~

一夏「おぉー。本当に来てたな」

簪「…小っちゃい」

一夏「まぁ4人だしな。大型バス借りるのも勿体なかったんだろう」

一夏「席は2人掛けが2列か。席順はどうしようか?」

鷹月「私はどこでもいいわ」

箒「私もだ」

簪「わ、私は…い…」

一夏「2人はそっか。簪はどうする? 窓際がいいとかあるか?」

簪「え、えっと…い…」

一夏「?」

簪「…いいよ、どこでも」

簪(一夏の隣がいいって…言えなかった…)シュン

一夏「そっか。じゃあじゃんけんで決めるか」

一夏の隣は誰?
>>573



一夏「俺の隣は簪か。よろしくな」

簪「う、うん…///」コクッ

箒「……」ゴゴゴゴゴ…

鷹月(篠ノ之さん…不機嫌になるくらいなら何で素直に隣になりたいって言わないのよぉ…
   私、隣座るの怖いよぉ…)

一夏「じゃあ席順も決まったし早く乗ろうぜ。俺、タランプ持って来たしな」

一夏「あ、簪は席は通路側と窓際どっちがいいかってあるか?」

簪「で、出来れば窓際で…」

一夏「了解。じゃあ先に乗っててくれ」

簪「う、うん…///」

箒「ぐっ…!」ギリリッ

鷹月(ひぃぃぃぃ…)

~行きのバス内~

一夏「……よし! こっちだ!」ピッ

一夏「ぐわああああああああ! またババかー!」

箒「ふん、性根が曇っているからだ。お前にはババがお似合いだ」

一夏「くっそー…じゃあ次は簪の番だな。引いてくれ」

簪「うん…」ピッ

簪「…あがり」

一夏「うわ、またか!? 簪、ババ抜き強いな…」

簪(さっきから篠ノ之さんの手から札を引いてる度に、一夏の手元が丸見えなのは…言わない方がいいのかな…)

鷹月「じゃあ次は私が引く番ね。織斑くん、出してくれる」

一夏「お、おう」スッ

鷹月「……」サッ

一夏「……」ビクッ

鷹月「……」スッ

一夏「……」ホッ

鷹月「……」ピッ

一夏「ぬが!?」

鷹月(分かりやすい…)

一夏「くっそー…何でこうもあがれないんだ…」

箒「鍛練が足りんのだ未熟者め。私もあがりだ」ピッ

一夏「げ!? こ、このまま最下位続きなんて嫌だ! 絶対に勝ってやる!」

箒「言っておくが、多分お前は100万回やっても勝てないと思うぞ?」

一夏「え…?」

鷹月(織斑くん…面白いくらいにババ抜き向いてないね…。
   …でも、篠ノ之さんがちょっと機嫌直ったみたいで良かったわ)

~しばらくして~

簪「うぅ…」

一夏「ど、どうした簪? 顔色が悪いぞ?」

簪「ご、ごめん…ちょっと酔ったかも」

一夏「大丈夫か? 背中さするな」スリスリ

簪「!!」ビックゥ

一夏「あと、なるべく遠くの景色とか見てろ。ほら、もう海が見えてるぞ?」ズイッ

簪(い、一夏! 顔、近いぃぃぃ…!)カァァァァ

一夏「お、おい簪! 顔まで赤くなっているけど大丈夫か!?」

簪「~~~~~///」プシュゥゥゥゥゥ

箒「……」グググググ

鷹月「し、篠ノ之さん…トランプがひしゃげちゃってるわよ…?」

鷹月(うぅ…また居心地が悪くなってきた…)

―――――――――
―――――
―――

~旅館前~

一夏「ここに来るのも久しぶりだな」

簪「……///」ドキドキ

一夏「…簪、本当に大丈夫か?」

簪「だ、大丈夫…! 平気…!」フルフル

一夏「そっか。もう夕方だから、夕食までゆっくり部屋で休んでいろよ?」

簪「……」コクコク

箒「……」ピリピリ

鷹月(織斑くん…天然ジゴロでイチャつくのはよして…)

一夏「じゃあ一足先にチェックインしてくるから、ちょっと待っててくれ」

鷹月「う、うん…」

―――――――――
―――――
―――

一夏「…どういうこった」

鷹月「どうかしたの?」

一夏「いや、部屋割りが…ちょっと面倒なことになってな」

簪「え?」

鷹月「え? 織斑くん1人と、女子は3人共用じゃないの? 順当に考えれば」

一夏「いや、何だか2人ずつ充てられたんだ」

鷹月「えぇ!?」

箒「なッ…!? み、見損なったぞ一夏! お前はどこまで破廉恥な奴なんだ!」

一夏「お、俺じゃねぇよ! 知らないうちに予約が入ってたんだよ!」

簪(…きっとお姉ちゃんだ)

鷹月「え、ええと…じゃあ誰が織斑くんと一緒の部屋なの?」

一夏「それが…」

一夏と同室は誰?
>>581



簪「え…」

一夏「はぁ…」

箒「……」ピキピキ

鷹月「」

簪「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

一夏「いや、何ていうか…ごめん」

簪「い、いや、あの、べつに、嫌じゃなくて、その…///」

一夏「そ、そっか…まぁ悪く思ってないならいいや」

簪「よ、よろ…しく…///」

一夏「お、おう(また顔が…熱でも出てるのかな?)
   そんなわけだからさ。箒は鷹月さんと一緒な。普段から同室だから気を使わないで済むだろ?」

箒「知らん!!」

一夏「え」

箒「私は先に部屋に戻る! キーを寄越せ!!」バッ

一夏「あ、おい…って、行っちまいやがった」

鷹月(うわぁ…どうしよう…もの凄く帰りたい)

~一夏と簪の個室~

一夏「おぉーやっぱ和室はいいなー」

簪「う、うん…///」

一夏「…簪、本当に大丈夫か?」

簪「だ、だい、じょう、ぶ」カチコチ

一夏「いや、大丈夫じゃないだろ…バス移動が長かったから疲れてんのか?」

簪「べ、別に…そんな、こと…」

一夏「まぁひとまず夕食まで時間あるし、ゆっくりてようぜ。俺はテレビとか見てるよ」ピッ

簪「あ、うん…」

一夏「おぉー。何か旅館の地方番組って、わけもなくテンション上がるよな」

簪(一夏…全然緊張してない…)

簪(…なんかムカつく)

簪「…お茶、淹れるけど?」

一夏「ん? じゃあ貰おうかな」

簪「うん」


簪「はい」

一夏「ありがと。うーん、やっぱり和室で飲む日本茶は旨いな」ズズッ

簪「お茶菓子…」スッ

一夏「お、ありがとな。こういう個室に備え付けられてる茶菓子って結構好きなんだよ」ポリポリ

簪「うん…」モグモグ

一夏「はぁー落ち着く…最近はミッション続きで休まる心地がしなかったからなー」ズズッ

簪「…うん」

簪(…一夏が全然気にしないから、ちょっと残念だけど)

簪(でも…私といて気が休まるってことで…何か、一夏とこうしてのんびりするのも…)

簪「…ちょっといいかも」ボソッ

一夏「ん? 何か言ったか?」

簪「べ、別に…!」

~箒と鷹月の部屋~

箒「まったく一夏め…! 軟弱者め!」ブツブツ

鷹月「あ、ははは…」

箒「くそ…! 目を離すとすぐデレデレしおって助平め…!」クドクド

鷹月「……」

箒「本当にしょうがない奴だ! 今度会ったら、性根を叩きなおして―――」

鷹月「あー篠ノ之さん? その…」

箒「ん?」

鷹月「その、さ。あんまり気負いすることもないと思うよ?」

箒「べ、別に私は…! あんな唐変朴に気を使うなど!」

鷹月「織斑くんもさ。別に意地悪で篠ノ之さんに構ってあげないんじゃないんだから」

箒「なッ…!?」

鷹月「まぁ確かに…織斑くんは私からしても目に余るほどの鈍感っぷりだけど…」

鷹月「でも裏返せばね。織斑くんの親切は、引け目とかそんなもんじゃない、本当の気遣いだって分かるでしょ?」

箒「そ、それは…まあ」

鷹月「…織斑くんも織斑くんだけど、篠ノ之さんも篠ノ之さんだよ。
   言いたいことも言えないようじゃ駄目だよ? あの鈍感の織斑くん相手なら、尚更」

箒「だ、だから、私は、その…」

鷹月「ほら。そう強がっちゃうからダメなの。ちゃんと素直に向き合わなくちゃ」

箒「……」

鷹月「…私は雑誌を貸したり、こうしてお節介をやくことくらいしか出来ないけどね。
   でも、これでも応援はしてるつもりだよ?」

箒「…静寐」

鷹月「ね?」

箒「…ありがとう」

鷹月「いいわよ。ルームメイトじゃない」

鷹月(というか、本当に気持ちの整理をつけてくれないと…同室として私も困るってのもあるけど…)

~食堂~

一夏「お、2人も今来たのか」

鷹月「こんにちは、織斑くん」

一夏「鷹月さんも箒も浴衣似合うなー」

箒「なッ…///」

鷹月「そ、そうかな…///」

簪「……」ムスッ

一夏「箒は浴衣もいいんだけど、この間神社で見た巫女装束もすごく似合ってて」

ガスッガスッ

一夏「うげ!?」

箒「お、お前という奴は! あの事をほいほい他言するな!」

一夏「いてぇな…殴ることないだろ…ていうか何で簪まで…」

簪「別に…」

鷹月「あ、ははは…(こりゃすぐには無理かなぁ…)」

簪(一夏…私の浴衣姿には何も言ってないくせに…)

一夏「おー。やっぱ旨そうだな」

鷹月「またここの料理が食べられるとは思ってなかったわ」

一夏「そうだな。そういやセシリアがあの時、正座に慣れてなくて苦労したな」

鷹月「オルコットさんにもお茶目なところあるよね」

一夏「あははは、そうだな」ストン

箒「……」スッ

一夏「ん? 箒、俺の隣か?」

箒「ふ、不服か!?」

一夏「いや、別にそういうわけじゃないけど」

箒「ふ、深い意味などない! ただ、お前の食べ方の指導をしてやろうと思っただけだ!」

一夏「えぇー…何だよそれ…」

鷹月(やれやれ…まぁ一歩前進、ってことにしときますか)

箒「ほら、姿勢がなってないぞ! 背筋がまた曲がっている!」

一夏「べ、別にいいだろ…」

箒「ダメだ! 食の作法は武の作法にも通じる! 怠ることは許さん!」

一夏「まったく…飯くらい落ち着いて食おうぜ」バクバク

箒「こら! 箸の扱いが雑だぞ! 箸先は、3cmまでしか濡らしてはいかん!」

一夏「こまけぇなー…いいだろ別に」

箒「…行儀の悪い奴はこうだ!」パクッ

一夏「んが!? 俺が楽しみに取っといた刺身を!?」

箒「信賞必罰だ。作法を嗜まないお前が悪い」

一夏「なら俺は…! これをいただく!」ガバッ

箒「甘い!」ガキン!

一夏「ぐ…! 流石は箒…甘くはないか…!」ググググ

箒「生憎だったな…この出汁巻き卵は渡さん!」ギギギギ

鷹月「行儀悪いよ2人とも」パクパク

簪「まったく」モグモグ

鷹月(…まぁ楽しそうだからいいか)

簪「……」ジィー

鷹月(…この簪って子。さっきからずっと織斑くんの方を見てる…)

簪(一夏のバカ…イチャイチャしちゃって)

一夏「まったく…あれ? ほ、箒! また俺の飯盗ったな!?」

箒「は? 知らんぞ」

一夏「嘘付け! 大事に守っていたエビフライがなくなっているじゃないか!」

箒「知らないうちに食べていたんだろ。濡れ衣など男らしくないぞ」

一夏「白を切るって言うなら…容赦しないぞ!」ババッ

箒「ぬわ!? こら貴様! プリンを取るな!」

簪「……」モグモグ

鷹月(…簪って子の皿の上の海老の尻尾が…2つになってる)

簪「…ふん」

一夏「はぁ…結局食べ損ねるし、箒には殴られるし、散々だ…」

箒「当たり前だバカ! 私のプリンをよくも!」

一夏「何だよー。お前なんかメインディッシュ2つじゃないか。デザート1個じゃ割りに合わないぜ」

箒「だからエビフライは潔白だと言っているだろうが! それに…女子から甘味を奪うとは貴様!」

一夏「うぉ…な、何で怒ってんだよ…」

鷹月「織斑くん、今のはダメだよ」

一夏「え?」

鷹月「覚えておきなさい。女の子ってのはね。甘いものと綺麗になるためなら、命だって賭けれるんだよ」

簪「…今のは一夏が悪い」ウンウン

一夏「え、えぇー…」

箒「まったくお前は! 反省しろ!!」

一夏「は、はい…(チクショウ…俺だって被害者なのに…)」

一夏「お、ここって卓球台があるじゃないか。ちょっとやってかないか?」

鷹月「え? 食後なのに? まぁ私はいいけど」

一夏「だってこの後風呂に入るだろ? 風呂前に汗をかく方がいいんじゃないか?」

箒「まだ賛成と言ってないのに話を進めるな」

一夏「っと、そうだな。すまん、箒はパスか?」

箒「…いや、やる。プリンの恨み、この卓で晴らしてやる!」

一夏「お、おう…簪はどうする?」

簪「…皆が、やるなら」

一夏「よし。じゃあ2対2でやるか。ペアは…またじゃんけんでいいか?」


一夏のペアは?

>>595

たかつきさん

鷹月「わ、私!?」

一夏「よろしくな、鷹月さん」

鷹月「う、うん…(うわぁ…どうしよう…篠ノ之さんの背中を押した手前なのに…)」

箒「…まぁそういうわけだからよろしく頼む」

簪「う、うん…」



一夏「じゃあまずは俺からのサーブだ」パコッ

箒「貰った!」バシーン!!

鷹月「きゃぁ!?」ガッ

箒「よし! まずは先制だ!」

一夏「い、いきなりリターンエースかよ…容赦ねぇな」

箒「ふん! 私を敵にまわしたことを後悔するんだな!」ビシッ

鷹月(ラバーに焦げ後が…どんだけ本気なのよ…)

簪「…えい」パコン

一夏「甘い打球! こいつは貰った!!」バシーン

箒「させるか!」カキーン!

鷹月「ひッ!?(またぁ!?)」

一夏「危ない!!」ガッ

鷹月「え」

カラカラ…

一夏「あー…ネットか。ごめんな鷹月さん」

鷹月「う、ううん…ていうか、ダブルスだと同じ人は2回打っちゃダメなんじゃ?」

一夏「そうなのか? まぁ温泉卓球なんだから公式ルールはいいだろ」

鷹月「そ、そうかもね…あはは…」

一夏「なるべく俺が打つから、鷹月さんはフォロー頼む」

鷹月「う、うん…」

一夏「俺が守るから、安心してくれ」

鷹月「うッ…///」ドキッ

一夏「? どうかしたか?」

鷹月「べ、別に…」

一夏「?」

鷹月(な、なるほど…皆こうやって織斑くんに…)

箒「……更識簪。私が前に出るから援護してくれ」

簪「…了解。全力で手を貸す」

箒「潰すぞ」

簪「うん」

鷹月(あ、ははは…2人の背後から暗雲が…)

箒「はぁ!!」バコーン!!

一夏「うぉ!?」ガッ

簪「ふん!!」バシーン!

一夏「ひぃ!?」パコン

箒「おらおらおらおらおらぁ!!」ガキーン!!

一夏「ちょ、ま、何で2人して俺を狙い打っているんだ!?」

箒「戦略だ!!」

簪「共闘戦線!」

鷹月(…何だかすごく暇になっちゃった)

一夏「い、意味がわから……あ」ガッ

箒「甘いわ! 喰らえ!!」バガッッッ


ベチコーン!!


一夏「がは!?」ドサッ

鷹月「も、もろ顔面に!? 大丈夫、織斑くん!」

一夏「いててて…眉間に入った…」

箒「ふん…鉛玉や矢でなくて良かったな」

鷹月「まったく…大丈夫、織斑くん?」

一夏「だ、だいじょう……いぃ!?」

鷹月「?」

一夏(た、鷹月さんの浴衣がはだけてる!?)

一夏「た、鷹月さん! 水色、水色!」

鷹月「水色? いったい何の……」

鷹月「!!」バババッ

箒「」ピクッ

簪「」ピキッ

鷹月「おおおおおおお織斑くん! 見たの!?」

一夏「い、いや、その…ほんの、ちょっとしか…」プイッ

鷹月「きゃぁぁぁぁぁ///!」

箒「いちかぁぁ…きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴ

一夏「いいいいいいいいやいやいやいや待て待て!! これは不可抗力で!!」

箒「問答無用だ! そこに直れ!!」ブンッ

一夏「うわ待て待て待て待て!! ラケットを振りかぶるな!! 本当に洒落にならないから!」

簪「……」

一夏「か、簪! 見てないで止めてくれ!!」

簪「…変態」スッ

一夏「え、ちょ、あの、何で簪までラケットを振りかぶってんですか…?」

箒「天誅!!」

簪「成敗!」

一夏「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」


バガスバガスッ

ひとまず一旦切ります
続きは未定だけど今週中には
あと安価一個くらい出す予定

―――――――――
―――――
―――

~女湯~

カポーン…

箒「まったく一夏め…! あそこまで不埒だとは思わなかったぞ!」

簪「同感…!」

鷹月「あぁもう…だから2人とも。あれは事故だって言ってるじゃない」

箒「腹づもりがなかろうとあろうと結果は同じだ! 女の下着姿に欲情しおって!」

簪「…!」コクコク

鷹月「よ、欲情って…はぁ…。じゃあ何? 自分の裸で欲情して欲しかったとか?」

箒「ばばばばばばばばばばばばばばバカな事いうな!!
  そのような邪な感情を抱かれたら、問答無用で穿千をお見舞いしてくれるわ!」

簪(……)

鷹月「あんたねぇ…そうやってisやら竹刀を振り回さない方がいいわよ?」

箒「知らん! 腐りきった性根を叩きなおしてやるのも幼馴染の務めだ!」プカプカ

簪(浮いてる…)

簪「……」ジッ↓

簪「……ぐすっ」

鷹月「…?」

※何かもう鷹月さんが『篠ノ之さん』って言うの違和感ありまくりだから変更
鷹月「…前々から思ってたけどさ」

箒「ん?」

鷹月「織斑くんってよく箒に愛想尽かさないわよね」

箒「なッ…!?」

鷹月「だってそうでしょ? 事あるごとに竹刀やら木刀やらで暴力振るわれてるのに。
   それで次の日くらいになると何事もケロッとしてるんだもん」

箒「ま、まぁな! 私は一夏のことはよく知ってる! 一夏はそんなことくらいでは私を嫌いになったりはしない!」

鷹月「…織斑くんって今更言う必要ないくらい鈍感だけど、それが上手い具合に好転しているのがそれよね」

箒「は?」

鷹月「要するに。幼馴染という立場と鈍感という織斑くんの性格を知っているから、
   箒はそんなことも出来るってことだよね?」

箒「ま、まぁ…そう、なるのか…?」

鷹月「…逆に言うとね。今のままじゃ、絶対に箒と織斑くんの仲は進展しないと思うよ」

箒「え…?」

鷹月「裏を返すと箒の言い方は、織斑くんと幼馴染であることに胡坐をかいていることになるからね」

箒「わ、私は…そんな、つもりは…」

鷹月「だって織斑くんのこと、信じてるからそういうことが出来るんでしょ?
   まさか愛情表現の一種として殴ってるわけじゃあるまいし」

箒「そ、そんなわけない! 私だって好きで暴力を振るいたいわけではない! ただ、あいつが不甲斐ないから…」

鷹月「だからってすぐ殴るようなことでもないでしょ? さっきも言ったけど、あれは事故だったんだよ?
   織斑くんはとんだトバッチリなのに、何で全部織斑くんが悪い言い方するの?」

箒「な、何だ静寐…。お前は、あいつの味方なのか?」

鷹月「味方か敵とかそういう問題じゃない。あくまでモラルの問題よ、これは。
   諭すにしても、もっとやり方ってものがあるでしょう」

箒「ぐっ…」

簪「う…」

鷹月「…箒が織斑くんのことをどう思ってるかくらい、私にだって分かる。
   でも今の箒や更識さんは、見ていて不安だよ」

鷹月「今は幼馴染や友達同士のじゃれ合いで済んでいるからいいけど、織斑くんだって人間だよ?
   いくら鈍感とはいえ、絶対に我慢の限度ってものがあると思う」

箒「……」

簪「……」

鷹月「…友達でも幼馴染でもいたくないなら、まずはその関係性を壊すことから始めなきゃ。
   そして、その関係でいたくないならまずは自分を変えることが大事だと思う」

箒「自分を…」

簪「変える…」

鷹月「男は黙って女に従順するなんて女尊男卑の精神、織斑くんには通じない。
   なら古風に、女を磨いて振り向かせる他ないじゃない」

鷹月「だからすぐに暴力に訴えるのはng。分かった?」

箒「お、おう…」

鷹月「返事は?」

箒「は、はい…(なんかルームメイトが怖い…)」

簪「はい…」

箒「し、しかし…そう言われても、どうすればいいんだか…」

鷹月「焦る必要なんてないのよ。まずは身近なところから変えてけばいいの」

箒「わ、分かった…なるべく、善処してみる」

鷹月「うん。頑張って」

箒「すまない静寐…また世話をかけた」

鷹月「いいのよ」

簪「…ねぇ」

箒「ん? 私か?」

簪「やっぱり…篠ノ之さんも、一夏のこと、好き、なの…?」

箒「なッ…!?」

簪「……」

箒「……」

簪「……」

箒「…お前はどうなんだ。更識簪」

簪「わ、私は…」

箒「……」

簪「…一夏のこと、好き。大好き」

箒「…そうか」

簪「…///」

箒「私もだ」

簪「…!」

鷹月(あ、あれ…? これってもしかして地味に修羅場?)

箒「…私だって一夏が好きだ。小学校の頃からずっと、あいつを想っていた」

簪「…そう」

箒「今やセシリアたちや生徒会長やらお前まで恋敵が増えてしまったが…。
  だが、一夏への想いは誰にだって負けない自信がある」

簪「…年月なんて、関係ない」

箒「ふふふっ。そうは言うけどな。私はあいつがいつまで寝小便をしていたかも知っている。
  私と一夏はそれくらい旧知の仲だ」

簪「わ、私なんか…! 両親に、挨拶を済ませた…!」

箒「ははは。そう言えばそうだったな」

箒「…想ってきた年月なんて些細な問題かもしれない。
  だが、私は誰よりも一夏を理解しているつもりだ」

箒「だから一夏も私を理解してくれているはずだ。今は届いてないが…いつか絶対に振り向かせる」

簪「…私だって負けない。相手がお姉ちゃんでも、幼馴染でも、絶対に一夏を諦めない」

箒「……」

簪「……」

鷹月(温泉に浸かっているはずなのに…すごく肌寒いんですけど…)

鷹月「ね、ねぇ2人とも!」

箒「?」

簪「?」

鷹月「え、ええと…その、さ! 2人の気持ちはよく分かったけど…
   でも、だからと言っていがみ合う必要なんてないんじゃないかな!?」

箒「……」

鷹月「せせせ折角こうして、女子が3人水入らずなんだし、もっと親睦を深めあおうよ!」

簪「……」

箒「…そうだな。まぁ一夏のことは置いといて、お前とはちゃんと話したかったからな」

簪「え…?」

箒「ゴーレムⅢのとき、お前の活躍がなければ私も危うかったからな。
  だから今更だが、礼を言いたかった」

簪「あ、あれは…お姉ちゃんと、篠ノ之さんと、一夏が頑張ってくれたからだし…」

箒「だからこそだ。私たちは一度、共に死線を潜り抜けた仲だ」

簪「あ…」

箒「共に背を預けあい、助け合ったなら、それは立派な仲間だからな」

簪「……」

箒「こ、こんな格好で言うことではないかもしれないが…これからも、よろしく頼むぞ」スッ

簪「…一夏のことは、負けないけど」

箒「その言葉はそっくり返すが…それはそれ、これはこれだ」

簪「……」スッ

ギュッ

箒「改めて、篠ノ之箒だ」

簪「更識、簪、です…よろしく、篠ノ之さん」

箒「改まる必要などない。名前で呼び合わないか?」

簪「あ、うん…よ、よろ、しく…箒」

箒「ああ。こちらこそよろしく頼む、簪」

鷹月(ほっ…。何とか穏便に済んで良かったわ…)

鷹月(それにしても…あの箒が、自分から友達を作ろうとするなんてね)

鷹月(…ちゃんと変われてるとこもあるじゃない。口を出すまでも無かったかな)

箒「何か好きなものでもあるか?」

簪「え、ええと…抹茶が好き。マフィンも、作るし」

箒「おぉそれはいいな! 私も日本茶が好きなんだ!
  今度いい店を紹介するぞ! 宇治のを使った特級品でな! 茶菓子も絶品なんだ!」

簪「い、行きたい!」パァァ

箒「よしっ、今度の休みに行こう! 空いているか?」

簪「うん! 行く!」

鷹月(新たな友情が芽生える瞬間…いいわねぇ…)ウンウン

―――――――――
―――――
―――

~生徒会室~

楯無「いやーいいねー! これぞ青春! って感じがするね!」

楯無「箒ちゃん…本当にいい娘だね…こんな後輩持てて、お姉さんは嬉しいわぁ…」グスッ

楯無「しかし未成年向けとは言え、モザイクかけるなんて惜しいことしたわぁ…。
   同席してる簪ちゃんが羨ましいわ。箒ちゃん、なんてナイスバディなの…」ジュルリ

楯無「……」

楯無「…簪ちゃん。友達できて…良かったわ」

楯無「ありがとう、箒ちゃん。姉の私からも、妹を宜しくお願いするわ」

楯無「さてさて…まぁ姉妹の私情は置いておいて…生徒会会長としての職務を真っ当しますか!」

楯無「現在、一夏くんはダウン中。女子と入れ替わりで温泉に入る模様」

楯無「勿論この旅館の温泉は男女で別れていますが…」

楯無「…さてさて。聡明な諸君らは、私がしたいこと分かるわよね?」


楯無「そう! これぞ定番中の定番の温泉旅行のメインイベント! 
   『ドキドキ混浴会~きゃっ/// 何でアンタがここにいるのよ!~』を決行します!!」バーン


楯無「ふふふ…。これから起こる出来事には露知らずで乙女トークを咲かせてるところ悪いけど…。
   このまま行っても盛り上がりに欠けるからね! だからここでテコ入れさせてもらうわよ!」

楯無「さてさて…流石に3人か2人と鉢合わせるのはまずいわね…発覚も早くなりそうだし」

楯無「というわけで…ここにいる3人の内、誰かは一夏くんとドキドキ展開を繰り広げてもらいます!」

楯無「さぁ、撮影班の方! 脱衣所から、誰かの衣服一式をかっぱらっちゃってください!!」


誰の下着と浴衣がなくなった?
>>626



~脱衣所~

撮影班「あいあいさー!」

撮影班「しかしとは言ったものの…誰が誰のかなんて分からないわよね…」

撮影班「あ…これは鷹月さんのね。水色だし…」

撮影班「…織斑くん、こういうのがいいのかしら。なら、私だって…」

キャッキャウフフ

撮影班「はッ!? あまりのんびりしてられないわ! 早く済ませなきゃ!」

撮影班「ええい、これでいいや!」ガババッ

―――――――――
―――――
―――

撮影班「…これ、篠ノ之さんのだ…てか何よこのブラのサイズ…こんなのってないわよ」グスン

撮影班「っとっとっと…。私怨はこのくらいで、仕事、仕事、と」

『男湯』『女湯』

『女湯』『男湯』

撮影班「これでよし、と」

~女湯~

箒「な、ない!?」

鷹月「箒、どうしたの?」

箒「なくなってる! 私の下着も服も!」

鷹月「えぇ!?」

簪「ま、まさか、盗まれた…!? さ、財布は!?」

箒「いや…isなどの貴重品は、個室の金庫に入れているから問題ないが…」

鷹月「きっと誰かが間違えて持ってっちゃったか、回収しちゃったのね。
   私たちの他にも、入れ替わりで出てっちゃった人がいたし」

箒「どどどどどどうすれば!?」

鷹月「落ち着きなさい。取りあえず、フロントに訊いてきてあげるから。
   箒は湯冷めするのもあれだし、もう一回入っちゃえば?」

箒「す、すまない…そうさせてもらおう。本当に世話をかける」

鷹月「いいっていいって」

簪「私は…そろそろ、一夏を呼びに行ってくる」
―――――――――
―――――
―――

~一夏と簪の個室~

一夏「はぁ…だいぶ腫れも引いてきたかな」←氷袋で患部を冷却中

ガララッ

簪「一夏…あがったよ」

一夏「おぉそうか。じゃあ俺も入ってこようかな」ノソッ

簪「…瘤、平気?」

一夏「まぁこれくらい、いつものことだよ」

簪「…あの」

一夏「ん?」

簪「ごめん、ね…?」

一夏「え? あぁ、別にいいよ」

簪「怒って、ない…?」

一夏「怒るっているというか何と言うか…まぁいつのものことだし」

簪「…ごめん」

一夏「ど、どうしたんだよ。気にしてないって」

簪「事故だったのに…ごめんね」

一夏「ま、まぁ…分かってくれたならいいけど」

簪「これからは、気をつけるから…」

一夏「あ、ああ。反省してくれてるなら別にいいよ」

簪「うん…」

一夏(しかしこういう場合…俺が泣き寝入りするのがお決まりだったんだが…何かあったのか?)

一夏(…ま、いいか。それよりも久しぶりの温泉だ。ゆっくり浸かってこよう)

―――――――――
―――――
―――

~男湯(女湯)~

一夏「おぉー。客は俺1人か。こりゃゆっくり入れるな」

一夏「まぁ今はシーズンオフだしなぁ。こんないい旅館なのに、勿体無い」

一夏「弾の奴にも教えてやるとするか。今度あいつらと銭湯でも行こうかな」

一夏「さてさて。まぁそれはそれとして…お邪魔しまー」ガララッ


箒「なッ…!?」


一夏「え」

箒「」バイーン

一夏「ほ、箒!?なんでここに!? ここここここここ、男…」

一夏(ていうかやべぇ…! 箒の裸、モロに見ちまった!)

箒「…こ」プルプル

一夏「え」

箒「この戯けがああああああああああああああああああああああああ!!!」ガッ

一夏「ひぃぃぃぃ!?(ヤバイ! 桶を投げられる!?)」ババッ

箒「…///」

一夏(あ、あれ…桶が飛んでこない…?)

箒「…し」

一夏「し、し?」

箒「早く閉めろ! ジロジロ見るな!!」

一夏「は、はぃぃぃ!」ガララッピシャッ

箒「……」

ツカツカ

箒「……」ザブン

箒「い、一夏に…」

箒「見られて…しまった…」

箒「~~~~~~///」ブクブク

―――――――――
―――――
―――

一夏「はぁ…はぁ…はぁ…危なかった…絶対に殴られるか殺されるかと思った」

一夏「しかし箒が…大人しくしてるなんて珍しいこともあるもんだ…どんな心境の変化だ?」

一夏(し、しかし箒…久しぶりに見たけど、小さい頃とは全然違…///)

一夏「いや待て待て待て! 何で箒が男湯にいるんだ!? ちゃんと入る時に確認したのに!」


「箒ー? いるー?」


一夏「!?」

一夏「ままままままままずい! 誰か来たのか!? この声は、鷹月さん!?」

一夏「やばい…! 脱衣所には隠れるところなんてない!」

一夏「…かくなる上は!」


ガララッ


箒「い、一夏!?」

一夏「すまん箒! 匿ってくれ!!」

箒「バババババババ莫迦者!! 堂々と覗きにくる奴があるか!!」

一夏「覗きとかそんな趣味は毛頭ねぇよ! 何でだか知らんが、男湯にお前がいたんだ!」

箒「はぁ!? そんなわけあるか!」


「箒ー? まだ入ってるのー?」


箒「し、静寐!?」

一夏「話はあとだ! とにかく匿わせてくれないと、俺が社会的に死ぬ!」

箒「だ、だからといって…」

一夏「頼む箒! お前だけが頼りなんだ!」

箒「…!」


「箒ー? 大丈夫ー? そこに誰かいるのー?」


箒「わ、分かった! とにかくお前は、湯の中でじっとしてろ!」

一夏「あ、ああ! 助かるぜ、箒!!」ザブン

箒「うぷ!? い、いきなり入るなこの莫迦!!」

鷹月「誰が莫迦だって?」

箒「うわぁ!? い、いきなり驚かせるな!!」

鷹月「いやだって…いきなり大きな水音がしたから…転んだかと思ったじゃない」

箒「そ、そうかすまん! ちょうど、シンクロナイズドスイミングの練習をしていたもんでな! はっはっは!」

鷹月「?」

一夏(あ、危ねぇ…風呂の湯が乳白色じゃなかったら一発でアウトだった…)

箒「そ、それよりどうだ!? 私の服は見つかったか!?」

鷹月「うーん…フロントに訊いてみたんだけど、見つけてもいないし届けられてもいないって」

箒「そ、そうか…」

鷹月「だから新しい浴衣とバスタオルを貰ってきたわ。箒の持ち物も盗まれたのもは下着だけみたいだし、
   明日朝市で売店に買いに行きましょう。今日は下着無しで寝てもらうことになるけど、我慢してね」

箒「わ、分かった…仕方ないな」

鷹月「許さないわねぇ…。旅館の人達は、場合によっては警察呼ぶって言ってるわ」

箒「そ、それは困る! 私物を盗まれたばかりか、はしたない格好で寝ていたなんて知られたくない!」

鷹月「…まぁ箒がそれでいいならいいけど」


一夏(ま、まずい…お湯の中で息を止めているのって…予想以上にきついぞ…)フガフガ

鷹月「そういえばさ。何だか女湯の暖簾、逆になってたんだけど」

箒「な、何!? それは本当か!?」

鷹月「ええ。おかしいと思って旅館の人にはもう言っておいたから、多分そろそろ直っているわ。
   で、誰か男の人とか入ってきてない?」

箒「ふぇ!? いいいいいいいや知らんぞ! 誰も入ってきてないぞ、うん!」ブンブン

鷹月「?」


一夏(ぐ…やばい! そろそろ、息が…! 岩陰に移動して、こっそり呼吸しよう…)モゾモゾ

モニュッ

箒「きゃぁ!? い、いきなり何すんだ!!」ドゲシッ

一夏(ぶほぉ!?)ブブブッ

鷹月「!?」

鷹月「ほ、箒…? どうかしたの?」

箒「へ…? いいいいいいいや! 何でもないぞ! いきなり背筋に水が垂れてきたから、ビックリしただけだ!」

鷹月「露天風呂なのに水が垂れてきたの? 天気だって晴れなのに…って、あら?」


ブクブク…


箒「あ…」

鷹月「ほ、箒…それ…」

箒「うわぁ! み、見るなぁ!! これは、違うんだぁ!!」

鷹月「な、何言って……あ」

鷹月「あー…そういうことか…」

箒「え?」

鷹月「分かったわ。今のは黙っておいてあげるから。箒ものぼせない程度に早くあがってきてね」ソソクサ

箒「え…あ、あぁ…うん」

鷹月(まったくはしたないわね…お風呂で…《ゴニョゴニョ》なんて…。ま、まぁ女の子といえど、しょうがないけど…)

箒「……」

箒「…行ったぞ」

ザッパーン

一夏「ぶはぁ! はぁ、はぁ、はぁ…! お、お湯、少し飲んじまった…はぁ、はぁ…」

箒「このバカ者! いきなり股座を触るな! 変な声が出てしまったではないか!」

一夏「し、仕方ないだろ! このお湯の中じゃ、全然分からないんだよ!」

箒「まったくお前は! 女湯に忍び込むばかりでは飽き足らないのかこの女こましめ!」

一夏「だから違うんだって! お前が男湯に入っていたからビックリしたんだよ!」

箒「お前はまだ…あ、そういえば静寐も似たようなことを言っていたぞ…?」

一夏「だろ!? 俺は無実だよ!」

箒「そ、そうか…って、こっち見るな!!」ガバッ

一夏「ひぃ!? ご、ごめん!」ササッ

箒「…///」プルプル

一夏(あ、あれ…? また、殴ってこないぞ?)

箒(くぅ…堪えろ…堪えろ、篠ノ之箒…! ここで変わらなければ…私は一生後悔する…!)

一夏「え、ええと…」

箒「…///」

一夏「ほ、箒…? 怒って、ないのか?」

箒「怒っているわバカ!!」

一夏「ひぃ!?」

箒「ただ…どうやらこれはお前には責はないようだから…責める様な真似などできん。それだけだ!」

一夏「そ、そうか…」

箒「だ、だからといって私の裸を見られた辱めは許したわけではないからな!」

一夏「わーったよ。まったく…道場の外じゃ素っ裸で水浴びしたこともあったじゃないか」

箒「いつの話だいつの! それに裸だったのは貴様だけだろう!」

一夏「あははは。そうだったっけか」

箒「ま、まったく! とにかく私はもう出るぞ!」ザパッ

一夏「あ、あぁ…うん」

箒「やれや…(はッ!? し、しまった! こんな手ぬぐい1つでは、裸を隠し切れない!!)」

箒「いいいいいいいいい一夏! やっぱり、お前が先に出ろ!」

一夏「はぁ!? 何でだよ!」

箒「私が先に出るとお前に私の裸を見られるだろうが! 私はお前が出て行ったのを確認してから出る!」

一夏「な、何言ってんだよ! そんなことしねぇよ!
   それに、俺が先に出たら脱衣所で誰かに鉢合わせるかもしれないだろ!?」

箒「ぬ…そ、それは困るな…幼馴染を性犯罪者にするわけにもいかないし…」

一夏「あ、あぁ…そうしてくれると助かる」

箒「…///」

一夏「と、とにかく俺は体を洗ってくるよ」

箒「わ、分かった…」

一夏「…こっち、見るなよ?」

箒「みみみみみみみみみみ見るかバカ!!」

カポーン

一夏「はぁ…いい湯だなぁ…」

箒「まったく。親父臭いぞ」

一夏「いいじゃねぇか。久しぶりの温泉だ」

箒「やれやれ…」

一夏「そういや、お前と風呂に入るのって久しぶりだよな」

箒「なッ!?」

一夏「ほら、小学校の時にさ。夏場とかお前の道場の風呂とか借りて、一緒に入った時とかあったよな」

箒「ああああああああれは雪子叔母さんに半ば無理やり…ていうか、今になってその話を出すな!」

一夏「お、おいおい…顔が赤いぞお前。のぼせているんじゃないか?」

箒「煩いこのバカ!」ザパッ

一夏「うわ!?」ササッ

箒「……」フルフル

一夏「あ、あれ…? また?」

箒(ぐ…止めているとはいえ、やはり反射的に手をあげてしまう…まだまだ修行が足りない…!)

一夏「な、なぁ箒」

箒「なんだ一夏」

一夏「お前…どこか具合が悪いのか?」

箒「はぁ!?」

一夏「いやだって…いつもならこういう時、真っ先に叩いたり殴ったりするもんだからさ」

箒「私を何だと思ってる!? 暴漢か何かと勘違いしているのか!?」

一夏「そういうわけじゃないけど…まぁ、お前らしくないかな、って」

箒「私だって好んでお前を叩いているわけではない! お前が助平だからだ!」

一夏「お前こそ普段俺をどういう風に見てるんだよ…」

箒「事実を言ったまでだ! 好きあらば女子と破廉恥なことばかりしおって!」

一夏「いつそんなことしたんだよ!?」

箒「た、例えば…シャルロットと裸で風呂に入っていた時とか…山田先生の、その…胸を…」

一夏「いや、それらは全部事故だぞ!? 第一、俺がいつ自分からそんなことしたんだよ!」

箒「そ、それは…」

箒「そ、そういえば…お前が自発的にそのような行為に臨んでいたことなど…なかったかもしれないな」

一夏「だろ!?」

箒(いつも頭に先に血が上っていたから…気がつかなかった)

箒「す、すまん一夏…」

一夏「え?」

箒「わ、私はそうとは知らずに…お前に色々とひどいことを…」

一夏「い、いや…別に気にしてないけどさ」

箒「ほ、本当か?」

一夏「まぁな。箒って真面目だけど、昔からそそっかしいからな」

箒「ぐッ…!」

一夏「でもまぁ俺も俺で色々と抜けてるところがあるからな。お前に諭されたり、正されたりするのは嫌いじゃないよ」

箒「え…?」

一夏「昔からお前や千冬姉には叱られてたからなぁ。だからお前が何だか大人しいのは、少し寂しいっていうかさ」

箒「一夏…」

箒「ま、まったく! 叱咤されることを望んでいるなんて、お前はとんだ変態だな!」

一夏「何だよそれ…別に怒られたい願望なんかねぇよ…」

箒「…まぁ、私は特に変わる気はないさ。ただ、これからお前を正す時は、
  しっかりと事実を見極めてからにしようと思っただけだ」

一夏「そっか。そうしてくれると助かるな。毎回お前に殴られるのはかなわないからな」

箒「お前…厳しくされたいのかされたくないのか、一体どっちなんだ」

一夏「あははは。まぁお前はお前らしくしてくれていいんじゃないか? 俺もその方がいい」

箒「…そうか?」

一夏「何年の付き合いだと思ってんだよ。お前の事、結構分かってるつもりだぜ?」

箒「…そうだな。ただ、やはり私ももう少し自制はするように心掛けてみることにするよ」

一夏「ああ、そうだな。それで、俺が道を外れそうになったら、遠慮なく引っ張っていてくれよ」

箒「まったく。やはりお前は私がいないとダメだな」

一夏「何だそれ。ぷっ…あはははははははは!」

箒「ふふふふふふ…はははははははは!」

―――――――――
―――――
―――

~脱衣所~

箒「……」キョロキョロ

ガララッ

箒「一夏、今なら大丈夫だ。抜けられるぞ」

一夏「そ、そうか。じゃあお前は廊下に出て、ちょっと見張っててくれ。俺は風呂から出て着替えてくるから」

箒「わ、分かった…」ガララッ…ピシャッ

箒(…本当に見られてないだろうな? 一夏はずっと向こう見ていると言ってはいたが…)スタスタ

箒(ま、まぁ一夏なら…私の裸を見られても…別に…)

箒(なななななななななな何考えているだ私は!? そんな変態じみたことを――)

箒(うぅ…///)カァァ…

―――――――――
―――――
―――
~一夏と簪の部屋~

一夏「はぁ…やっと部屋に帰ってこれたぜ…あれ、簪は…」

※簪は? 1.起きてる2.寝てる3.部屋にいない
>>652

1

簪「あ…」

一夏「簪、起きてたのか。もう遅いのに」

簪「う、うん…心配、だったから」

一夏「そっか。何か悪いな」

簪「…お」

一夏「ん?」

簪「おかえり、なさい、一夏…」

一夏「あ、ああ。ただいま、簪」

簪「…///」

一夏「?」

簪「…なんで、遅かったの? 探したよ?」

一夏「え? わ、悪い…俺、長風呂だからさ…ははは…」

簪「…そっか」

一夏「あ、ああ」

簪「……え、えっと」

一夏「ん?」

簪「もう、寝る?」

一夏「あ、ああそうだな。明日も朝早いし、もう寝ようか」

簪「そ、そう…///」

一夏(? 何で顔が赤くなっているだろう?)

一夏「って、布団が綺麗に横に並べられている…」

簪「~~~~~~///」プシュゥゥ…

一夏「ま、まぁ男子と同室でゴメンな。俺は壁の方に寄って寝るから」

簪「え…」

一夏「やれやれ…多分この部屋決めは多分楯無さんの差し金だろうけど、あの人も何考えてんだか…」イソイソ

簪「い、一夏!」

一夏「ん?」

簪「そ、その…! 離れること、ないんじゃない?」

一夏「え?」

簪「え、ええと…その…」

一夏「だ、だっていいのか? 布団くっつけて寝るんだぞ?」

簪「わ、私は、別に、その…あぅ…///」

一夏「?」

簪「さ、作法! 折角部屋の中央に並べてくれたから、崩しちゃ、失礼! 旅館の人に!」

一夏「え? そういうもんか?」

簪「……」コクコク

簪(自分で言ってて苦しい言い訳だけど…でも、誰にも負けたくないって決めたから…!)

一夏「…まぁ簪がいいならいいけどな」

簪「う、うん…」

一夏「じゃあ寝るか。電気、消すぞ?」パチッ

簪「あ…」

一夏「おやすみ、簪」

簪「お、お休み…一夏」

―――――――――
―――――
―――

~30分後~

簪「……」

一夏「……」

簪(ね、眠れない…)ドキドキ

一夏(やべぇ…何か、近くに女の子が寝てるってだけで…すげぇ緊張してる…)バクバク

一夏「…簪?」

簪「な、何…? 一夏」ビクッ

一夏「…お前も眠れないのか?」

簪「一夏も?」

一夏「ああ。何か、興奮しちまってさ。完全に修学旅行のテンションみたいなもんだな」

簪「…そっか」

一夏「ははは。そういや林間学校でも1人部屋だったからな。誰かと一緒に寝たのなんて久しぶりだ」

簪「そ、そっか…」

一夏「寝付けないし、何か話すか?」

簪「…うん!」

一夏「うーん。といっても、何を話せばいいやら」

簪「そ、そうだね…」

簪(…そういえば、箒は一夏の小さい時の頃を知ってたんだよね)

簪「…一夏の、小さかった時の話とか、訊きたいな」

一夏「俺の? そんなんでいいのか?」

簪「うん」

一夏「そうだなぁ。小さかった頃って言ってもな。俺は物心ついたときから親の顔を知らなくて、
   俺にとっては千冬姉が親みたいなもんだったしなぁ」

一夏「千冬姉の勧めで剣道始めて、箒と出会って別れて、中学校では鈴とか、友達とバカ騒ぎした記憶くらいしかないし」

一夏「まぁ高校に行ってからは、お前の知るところだよ」

簪「…そっか」

一夏「…なんか、ゴメンな」

簪「え…?」

一夏「ほら、俺が急にis動かしたもんだからさ。お前のisの開発が先延ばしにされた事あったじゃないか」

簪「あ、あれは…もう、いいよ」

一夏「いいのか?」

簪「うん…。あれがあったから、私は努力できた」

一夏「…そっか」

簪「…一夏はさ」

一夏「ん?」

簪「…楽しい?」

一夏「は?」

簪「学校」

一夏「学校? そりゃあ、楽しいさ」

簪「…そう」

一夏「どうしてそんなこと、訊くんだ?」

簪「深い意味は、ない…。ただ、男の子にとっては、環境が特殊すぎる、と思ったから…」

一夏「あはははは。まぁ確かに最初は苦労したよ」

簪「…嫌にならない?」

一夏「何が?」

簪「え、ええと…女の人が、いっぱいで…男の人にとっては、あまり良い思いはしない、かなって…」

一夏「んー。そういうもんはないかな。何だかんだで皆優しいから、そういうのは特にないよ。
   そういや俺がチヤホヤされてるのは、俺が国家保護受けるくらい特殊な奴だからって俺の親友に言われたっけか」

簪「……」

簪「…一夏って、すごいね」

一夏「ん?」

簪「男でis動かせるのに…それをひけらかしたりしない、から」

一夏「そうか? 別に自慢するようなもんでもないと思うけどな」

簪「そんなこと、ない。実際、女尊男卑が酷すぎて、男性の集団のデモ抗議なんか、世界中で起きてるから」

一夏「そういやそういうの、ニュースでよく見るな」

簪「だから普通は、男の人がisを持ったら、すごく危険だと思った」

簪「…でも、一夏だったら全然大丈夫。同じ男なのに、何でだろう。一夏がisを持っても、すごく安心する」

一夏「あははは。まぁ確かに男だと割りに合わない世の中だけどさ。俺は別に気にしてないよ。
   その世の中でたまたまisを動かせるからって、どうこうしようなんて思わない」

簪「……」

一夏「俺は世の中に抵抗するなんて大それた真似…柄じゃねぇしな。
   折角の力なら、身近な誰かを守るために使いたい。俺はただ、そう思ってるだけだよ」

簪「…そっか」

一夏「はははは。まぁ本当はそんな大したことじゃなくてさ。最初は慣れなかった学園も、幼馴染の箒と再会したり、
   新たな友達も出来たりとすごく充実してる」

一夏「だから俺はそいつらと同じ青春を送りたいと思うし…それが壊されそうになったら精一杯抗いたい。
   ただ、そう思ってるのかもしれないな」

簪「……」

一夏「…守りたいって難しいよな。俺は家族も友達も、守りたいって思ってるけど…。
   でも、そう考えると、結局は自己満足を守るためにやっているんじゃないかって思えてくるよ」

一夏「結局俺は…自分のためだけに、力を振るいたいのかな…。何か、分かんなくなってきた」

簪「…それで、いいと思うよ?」

一夏「え?」

簪「誰だって…自分が可愛いもの」

一夏「簪…」

簪「私だって…そうだったから」

一夏「……」

簪「私もね…自分のためだけに、必死に頑張ってきたから」

簪「お姉ちゃんのこと、今では好きだけど…でも、元々は私のことを気遣ってくれていた、
  というよりは、私との関係が鬱々としていたもので、それが耐えられなかったから、だとも思う」

一夏「簪…本当に楯無さんは、お前を気遣って」

簪「分かってる。これは、見方の問題。あのね一夏。きっと誰かが行動を起こす時って、
  多かれ少なかれ、自分に益が出ることを吟味する、と思うの」

一夏「それって…何か、悲しくないか? 打算的みたいでさ」

簪「そうは思わない。打算でも何でも、行動の結果で救われる人がいるなら、私はそれでいいと思う」

簪「完全な人はいない。お姉ちゃんが言ってた。だから、完全な善も存在しない。私は、そう思ってる」

一夏「……」

簪「あのね一夏。一夏、誰かを救った時、一夏も嬉しくなるでしょ?」

一夏「そ、そりゃ…まぁな」

簪「それでいいんだよ。それでね…一夏が嬉しいと、きっと救われた人も嬉しいと思う」

一夏「え…?」

簪「そしてその人が嬉しいと分かった時、一夏はもっと嬉しくなる。一夏がもっと嬉しくなると、相手もまた…」

簪「そうやっていくと…嬉しさが、どんどん積み重なっていくの。
  倍々ゲームみたいに…どんどん、幸せみたいなものが、膨らんでいくと思うの」

簪「これってさ…すごく、素敵なことだと思う」

一夏「簪…」

簪「…だから私は、一夏には嬉しくなってもらいたい。
  一夏が嬉しいと、私も嬉しい」

一夏「……」

一夏「ありがとな、簪。お前がそう思ってくれて…俺も嬉しいよ」

簪「…うん」

一夏「何かちょっとスッキリしたよ。本当にありがとう、簪」

簪「ううん」

一夏「ふぁぁ…話し込んだら眠くなっちまったよ。そろそろ寝ようぜ」

簪「そうだね」

一夏「…簪」

簪「何?」

一夏「お前の話…聞けてよかったよ。ありがとう」

簪「…うん」

簪(私も…一夏のこと、知れて嬉しかった)

一夏「お休み、簪」

簪「うん」

―――――――――
―――――
―――

~帰りのバス内~

一夏「ふあぁぁ…」

箒「また欠伸か。たるんでいるぞ」

一夏「う~ん…昨日は色々あったからなぁ…あまり寝つけてないんだよ」

箒「…まさか簪とやましいことしてないだろうな?」

簪「なッ…!? ちょ、ちょっと、箒!」

一夏「してねぇよ。まぁ夜中にちょっと話したくらいだよ」

箒「本当か?」

一夏「本当だよ。まぁ説明するのもちょっと面倒だし…俺は寝るから、モノレール駅に着いたら起こしてくれ」ゴロン

箒「あ…まったくこいつは…」

一夏(やれやれ…寮のベッドに慣れちまったから、旅館の布団は寝つきが悪かった…)

一夏(…あれ? 箒と簪って名前で呼び合う仲だっけ? いつのまに仲良くなったんだ?)

一夏(…まぁいいや。俺はちょっと寝よう…)

箒「やれやれ…本当にこいつはマイペースな奴だ」

鷹月「まぁまぁ。疲れているんだから寝かせてあげなさいよ」

箒「何を言っているんだ。朝は一日の要だぞ。朝こそシャキっとしなくてどうする」

鷹月「やれやれ…あんただって朝方すごい格好で寝てたんだから大目に―――うぷ!?」

箒「うわああああああああああああ!? そ、それは言うなって言っただろうが!!」

簪「…?」

箒「そ、そんなことより簪! お前、昨晩一夏と何かあったのか!?」

簪「…別に何も」

箒「…本当か?」

簪「うん。少し話しただけ」

箒「そ、そうか。差し支えなければ、どんな話か訊いてもいいか?」

簪「ダメ」

箒「なッ…!?」

簪「秘密」

箒「ぐぬぬ…」

鷹月「もぉ…せっかく仲良くなれたんだから、帰りにそんな張り合わなくてもいいじゃない…」

簪「箒は、誰も知らない一夏の秘密を知ってる。だから、これでおあいこ」

箒「ぐぐぐ…」

簪「…ふふっ」

鷹月(うわぉ…すごくいい笑顔だ…)

箒「ふん、まぁいい。私だって昨日は一夏と色々あったからな」

簪「え…?」

箒「ふふふふ…一応言っておくが二人きりだったんだぞ?」

簪「なッ…!? な、何があったの!? 教えて!」

箒「ダメだな。一夏と私の秘密だ」

簪「ぐッ…」プルプル

鷹月「あーもう…ほら、そのくらいにしましょうよ。旅館のお土産でも食べながら落ち着きましょう?」

一夏「……」グゥー…グゥー…

―――――――――
―――――
―――

~生徒会室~

楯無「おっかえりなさーい☆ そして一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!」パンパカパーン

一夏「うぉ…起きぬけにこれは結構堪えますね…」

楯無「今回は色々と長丁場だったしねー。ま、気分もスッキリできたことだし、良しとしますか!」

一夏「あはは…また凄惨なミッション地獄の日々が始まるのか…」

楯無「文句言わないのー! ほら、ちゃっちゃとスタンバイする!」

一夏「へーい…」

簪「……」

楯無「あ、あれ…? 心なしか、簪ちゃんかなり落ち着いてるわね…?」

簪「え? お姉ちゃん、見てたんじゃないの?」

楯無「流石に消灯時間過ぎてからは撮影できないよ…ま、まさか部屋で何かあった?」

簪「…秘密」

楯無「ぬぅ!? き、気になるわ切実に! か、簪ちゃん…一応聞くけど、まだ処女だよね?」

簪「!? なななななななななななな何、言って、る、の!?」

楯無「あ、ああ良かった…まだ穢れてないみたいでお姉さん安心したよ…。やれやれ。
   さてさてじゃあ不安もなくなったことだし…次のミッションを読みまーす。ええと…『>>670』だね」

というわけでやっとこさ終了
続きはgw最終日か明けかな
じゃあの

現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□
簪     ■■■■■■□□
シャル  ■■■□□□□□
箒     ■■■□□□□□
鷹月   ■□□□□□□□


簪と全校生徒の前でディープキス

『簪ちゃんと熱いあっつ~い大人のキ☆ス…(全校生徒の前で♪)』


楯無「」

一夏「楯無さん? 何で固まってんですか? クジ、早く見せてくださいよ」

楯無「」

一夏「…楯無さん?」

楯無「はッ…い、いやーごめんごめん! 今引きなおすから!」

一夏「え?」

楯無「あっはっは! 全然ミッションとか関係ないもん入ってたから面食らっちゃった!
   多分誰かがゴミ箱と間違えて捨てたもんだね! というわけで、気を取り直して―――」


ガシッ


楯無「え」

簪「…お姉ちゃん」

楯無(わ、私が腕をつかまれた!? いくら何でも油断しすぎたわ!)

簪「…見せて」

楯無「えぇ!? だだだだだだだダメよ簪ちゃん! これは全然関係ないから!」

簪「見せて」グィィ…

楯無「いだだだだだだだだだだ! ちょちょちょちょちょタイムタイム! 折れる、折れちゃうから!」

一夏(簪が関節技を…流石は更識家の次女だ。柔術の心得はあったのか)

一夏(というか楯無さんが弱音吐いているところなんか初めて見た。やっぱ妹相手だと甘くなるのか?)

簪「…何が、書いてあったの?」チラッ

楯無「あぁダメ! それを見ちゃ―――」


『簪ちゃんと熱いあっつ~い(略)』


簪「」

一夏「な、何で簪まで固まってんだよ。一体何が書かれて―――」


『簪ちゃんと(ry』


一夏「」

楯無「あ…」

簪「……」

一夏「ちょ…た、楯無さん…これ、何ですか…?」

楯無「え、ええっとぉ…何、だろう、ねぇ…? あはは…」

一夏「え、エロ系はなしだったんじゃ…」

楯無「い、いや…キスはギリギリokなのよね、それが…あはは…」

一夏「え、ええええええええええ!? いやいやいやいや! これはいくら何でも問題あるでしょ!?」

簪「……」

一夏「ちょ、簪も黙ってないで何か言ってくれ! お前だって―――」

簪「一夏」

一夏「ん?」

簪「ちょっと、出てってもらえる?」

一夏「え?」

簪「話があるから。お姉ちゃんと」

一夏「楯無さんと?」

簪「うん」

一夏「そ、そうか…流石にお前も、こればっかりは嫌だったか」

簪「…違う」

一夏「え」

簪「だってこれ…入れたのは、私だから…」

楯無「!?」

一夏「はぁ!?」

簪「…///」

一夏「お、おい簪…冗談、だよな?」

簪「…嘘、じゃないよ」

一夏「え…」

簪「…一夏はさ」

一夏「はい?」

簪「私とするの、嫌…?」

一夏「なぁッ!?」

簪「~~~~~///」

楯無「……」

一夏「いいいいいいいいいや待て待て簪! 嫌とかそういう問題じゃなくてだな!
   とと、とにかく落ち着いて―――」

楯無「…一夏くん」

一夏「はい?」

楯無「私からもお願い。ちょっと席を外してくれる? 簪ちゃんに訊く事が出来ちゃった」

一夏「?」

楯無「そうだなぁ…場所はアリーナがいいかな。あそこなら、全校生徒が入れるはずだから」

一夏「ちょちょちょちょ! 何で楯無さんまで乗り気なんですか!?
   流石に妹が好きでもない男からキスされるのは、姉としても嫌で―――」

簪「…ッ」ズキッ

楯無「…!」


パァン!!


一夏「え」ツーッ…

簪「…ッ!」

楯無「……」

一夏「ひ、ひぃぃぃ!? ななななななな何すんですか楯無さん! ちょっと頬を掠めたじゃないですか!」

楯無「聞こえなかったの?」

一夏「え…?」

楯無「消えなさい」

一夏「へ…?」

一夏(な、なんだこれ…ここまで本気で怒ってる楯無さん…初めて見るぞ…)

簪「…お姉ちゃん。やめて」

楯無「……」

簪「一夏。お願いだから、先に行ってて」

一夏「あ、ああ…」

簪「…一夏」

一夏「な、何だよ…」

簪「…キス、するからね?」

一夏「いぃッ!?」

簪「…あと、大事な話があるから」

楯無「…!?」

一夏「え…」

簪「待ってて…ね?」

一夏「な、何言ってんだよまったく…」

楯無「……」

一夏「と、ともかく何だか込み入った話があるようだから俺は失礼するよ」

簪「うん」

一夏「…簪」

簪「なに?」

一夏「え、ええと…本気、なのか?」

簪「…うん」

一夏「そ、そっか…///」

簪「…///」

一夏「な、なんかごめんな…相手が俺でさ」

簪「…いいよ」

一夏「え…?」

簪「というか…一夏だから…一夏じゃなきゃ、私…」

一夏「うッ…!?」バックン!

簪「~///」

一夏「ま、まったく…。とにかく、先に行ってるからな」ドキドキ

簪「…うん」

一夏「じゃ、じゃあな(うぅ…簪のこと、まともに見られない…というか、歯を磨いた方がいいのだろうか…?)」


ガララッ…ピシャッ…


楯無「…ごめんね簪ちゃん。いくら鈍感でも、あれは流石にドタマにきたわ」

簪「…うん」

楯無「…それよりさ、何であんな事言ったの?」

簪「…さっきのクジ、私が書いた、って言ったこと?」

楯無「うん…」

簪「やっぱり…お姉ちゃん、だったんだね。書いたの」

楯無「…うん」

簪「お姉ちゃん」

楯無「…何かな」

簪「何で隠そうと、したの?」

楯無「…ッ」

簪「答えて」

楯無「何でか、なんて…そ、そりゃあ…」

簪「……」

楯無「だ、大事な妹が…毒牙にかかりそうだってのに、見過ごせる姉がこの世にいるのかなぁ、なんて…」

簪「…ホントに?」

楯無「あ、当たり前じゃん!」

簪「自分で入れたのに?」

楯無「そ、それはその場のノリよ! 悪ノリが過ぎたと思っただけ!」

簪「……」

楯無「え、ええと…だから、私が言いたいのは…」

簪「…お姉ちゃん」

楯無「な、何…?」

簪「はっきり言って今のお姉ちゃん…かっこ悪い」

楯無「…ッ」ズキッ

簪「お姉ちゃん、私のことを本当に考えてくれてるのは知ってる」

簪「さっきの一夏の心無い言葉も、私のことなのに本気で怒ってくれた。
  私は…そこまで私のことを思ってくれるお姉ちゃんのことが好きだし、感謝してる。姉妹として」

簪「だからお姉ちゃん、また私のことを思ってくれたのも分かる。
  本気で私の背中を押そうとして、これを入れてくれたんだって」

楯無「……」

簪「…私は一夏のことが好き。でもねお姉ちゃん…私が一番幸せになって欲しいのはね…お姉ちゃんなんだよ?」

楯無「え…」

簪「私は…お姉ちゃんにはもっと素直になって欲しいと思う。
  ヒーローでも…普通に恋をする権利くらい、あるはずだから」

楯無「…ッ///」

簪「お姉ちゃん。私、お姉ちゃんとはちゃんと勝負したいの。
  お姉ちゃんが一夏のこと、ちゃんと向き合って…それで、お姉ちゃんに勝ちたい」

簪「もしね。もし、お姉ちゃんが私に気を使って、お節介を焼いて、一夏の事を諦めるなら」

簪「私きっと…今度こそ、本当にお姉ちゃんを嫌いになると思う。
  一生、軽蔑すると思う」

楯無「……」

簪「だって逃げてるのなんて、お姉ちゃんじゃない。そんなの、私の姉だなんて認めないから」

簪「…言いたかったのはそれだけ。一夏が、待ってるから、私行くね」

楯無「……」

簪「お姉ちゃん。私、本気だから。本気で、一夏と…」

楯無「待って」

簪「…なに?」

楯無「ここまで言われてさ…流石に引き下がれないよ。
   みっともないけど…言い訳にしかならないけど、でも聴いてくれる?」

簪「……」

楯無「私だって、こんな風になるなんて思わなかったんだよ?
   最初は…簪ちゃんと一夏くんのこと応援してた」

楯無「箒ちゃんや他の皆の気持ちも何となく分かっていたけど、ちょっと悪いかな、って思ってたけど…。
   でも、私からすればとてもお似合いに見えたから。簪ちゃんと…一夏くんは」

簪「……」

楯無「…でも。でも、ね…。何でかな。今は胸を張って、2人を応援できないんだよ。
   私だって簪ちゃんはすっごく大切だし、一夏くんだって大事な後輩。
   でも2人が一緒だとね…こう、胸の奥が…すごく縮こまっちゃうの」

簪「……」

楯無「…遠まわしにしか言えなくてごめんね。結局は…そういうこと、なんだろうねぇ…あはは」

楯無「でもさ…簪ちゃんだって酷いよ」

簪「……」

楯無「最初は一夏くんのこと…可愛い後輩くらいにしか思ってなかったのに…。
   でも、最初に一夏くんと一緒に散歩して…カレー食べたりして、さ…」

楯無「そしたらさ…いつの間にか、頭も胸も一夏くんで一杯になってた」

簪「……」

楯無「でも、きっかけは簪ちゃんだったんだよ?
   簪ちゃんがあんなミッション入れてなければ、私はまだ堂々と2人を応援できてた」

簪「……」

楯無「どういうつもりなの? 私、本気で2人のこと、いいカップルだなって思えてたのに。
   何で私の心を、こんなに目茶苦茶にしたがるのかな?」

簪「お姉ちゃんも、さ」

楯無「?」

簪「意外と…鈍感さん、なんだね」

楯無「はぁッ!?」

楯無「ちょ、ちょっと待ってよ! 何で私まで、あんな唐変朴と同じ扱いを受けなきゃならないの!?」

簪「だって…今更になって、気付くなんて、ね」

楯無「わわわわわわ私は! 別に、最初はそんな気、これっぽちも無かったよ!」

簪「最初は、そう思っていたかもしれない。でも、きっとお姉ちゃんは…遅かれ早かれ、こうなってたよ」

楯無「へ?」

簪「お姉ちゃんは…すごく、一夏のこと、気にかけてたから」

楯無「いや、それは…将来、すごく有望な後輩的な意味合いだよ?」

簪「そう。一夏はね、すごいんだよ」

簪「男でisを使えるってだけじゃなくて、才能もずば抜けてて…それで、言ったことは絶対に守るの」

簪「それでね…いつの間にか、皆の心の中に入っていっちゃうの。いつかの、私みたいに」

楯無「……」

簪「だから皆…一夏を好きになるんだと思う」

簪「…お姉ちゃんだって、そうでしょ?」

楯無「……」

簪「でね。お姉ちゃん、言ったよね? 一夏は、有望だって」

楯無「…まぁね。一夏くんなら、きっと私よりも強くなると思うよ。世辞も贔屓もなしに、本当にすごいから」

簪「でしょ? だからお姉ちゃんも、きっと、一夏の事しか考えられなくなると思った。私と同じように」

楯無「え…?」

簪「だって、一夏はすごいから。お姉ちゃんと、ようやく肩を並べられる存在が…一夏だから」

簪「お姉ちゃん、一夏のことになると、すごく楽しそうになる。からかっている時も、特訓しているときも、
  とても一夏が大切なんだなって、すごく伝わってきた」

簪「きっと一夏は、お姉ちゃんにも負けないくらいの操縦者になれるから。
  だから、お姉ちゃんは嬉しかったんでしょ? 一夏が、いてくれたこと」

楯無「…つまりは、良きライバルってことだね」

簪「うん。最強っていうことはね。てっぺん、だから。昇るべき壁も山もない、ってこと。
  それはすごく…悲しくて、寂しい事なんだと思う。だから、対等な相手が見つかることは…嬉しいこと」

楯無「…まさか簪ちゃんに看破されるとは思わなかったよ」

簪「アニメの受け売り」

楯無「あはは。なるほどね」

簪「それで…ライバルが異性同士なら、恋愛感情が芽生えるのも、お決まりのパターン」

楯無「なッ…///」

簪「だからいつか絶対、お姉ちゃんはそうなっていた。私は、少し早めたに過ぎない」

簪「お姉ちゃんに、後悔だけはさせたくなかったから。私のことを理由に、不幸にさせたくなかったから」

楯無「……」

簪「…でも、お姉ちゃんが逃げるなら話は別。私、本気で一夏を手に入れる」

楯無「簪、ちゃん…」

簪「もう、素直になってなんて、言わないから。だからお姉ちゃん…。
  もたもたしてると、取っちゃうよ?」

楯無「…すごいね」

簪「…何が?」

楯無「簪ちゃんが」

簪「…一夏の、おかげ」

楯無「そんなことないよ。簪ちゃんだって…本当にすごいよ。
   そこまで言えるようになれるなんて」

簪「…一夏が、好きだから。それだけ、だよ」

楯無「…そっか」

楯無「簪ちゃん」

簪「なに?」

楯無「私たち…やっぱり、姉妹なんだね」

簪「…そうだね」

楯無「うん。ちょっと、嬉しいのかも…しれない。複雑な気持ちだけど」

簪「…うん」

簪「…そろそろ、行っていい?」

楯無「うん。呼び止めてごめんね」

簪「…ううん」

簪「じゃあね、お姉ちゃん」

ガララッ…ピシャッ

楯無「…ありがとう、簪ちゃん」

楯無「貴女のような妹を持てて…すごく、幸せだよ」

―――――――――
―――――
―――

~第3アリ-ナ:入り口前~

一夏「…遅いなぁ簪」

一夏(結局部屋に戻って念入りに歯を磨いてしまった…)

一夏(し、しかしまさか簪があそこまで乗り気だとは思わなかった…
   てっきり恥ずかしがって絶対にやらないと思ってたから…)

一夏(楯無さんも何だか知らんけど容認してるみたいだし…。
   あれ? そういえば楯無さん、何であの時怒っていたんだろ?)

一夏(やっぱり、俺なんかが簪と…キ、キスするなんて耐えられなかったのかな?)

一夏(けど簪の奴、俺だったらいい、って言ってたけど…あ、あれ…? もしかして簪、俺の事…)

一夏(……)

一夏(いやいやいや。ないないない。そんなアニメだかドラマみたいなご都合主義)

一夏(…簪、か)

一夏(最初は取っ付き難い奴だって思えたけど…でも、実はすごく頑張り屋なんだよな)

一夏(あいつは何かと自分の姉と比べる癖があるけど…でも、やっぱり凄い奴なんだよな。
   isを1から組み立てようとするなんて…俺なんか絶対に出来ない)

一夏(……)

一夏(千冬姉から言われたっけ。『1人くらい守りたい奴を決めろ、って』)

一夏(実は守りたいって意味で一番傍にいたのいのは…簪なんだよな)

一夏(箒やセシリアたちや他の専用機持ちの皆は…何というか、すごく芯があるんだ。
   みんな見ていて惚れ惚れするくらい、それぞれの強さを持ってる)

一夏(でも簪は自分が弱いって思ってる。自分はダメだからって、非力だからって思っちまう癖がある)

一夏(あいつの親父さんも言ってたけど、本当は凄くて強い奴なのに…自分で気付けないでいるんだ。
   だから何だか…支えてやらないと不安なところがある)

一夏(だから誰かが傍にいて…しっかり、手を握ってやりたいと思っちまうんだよなぁ。不思議と)

一夏(…って、こんな保護者みたいな考え方、あいつが聴いたら驚くだろうな)

簪「…一夏?」

一夏「うわぁ!? お、驚かすなよ簪!」

簪「?」

驚くだろうな→怒るだろうな

簪「ご、ごめん…」

一夏「あ、あぁ…こっちこそ、いきなり声を荒げて悪い。
  (やべぇ…変なこと考えてたから、自然と意識しちまう…)」

簪「え、ええと…」

一夏「ん?」

簪「そ、その…よろ、しく…」

一夏「あ、ああ…ああん、その…こ、こちら、こそ…?」

簪「…///」コクッ

一夏(な、何か気まずい…)ポリポリ

一夏「そそそそそそそう言えばさ! 大事な話があるって言ってたけど、なんだ!?」

簪「あ…」

一夏「な、何だ!? 打鉄弐式の整備の話か!? それなら、また俺が一緒に整備班の皆に―――」

簪「ち、違う、の…」

一夏「え?」

簪「え、ええと…あの、そのぅ…」

一夏「ん?」

簪「い、今は、無理…かな?」

一夏「は?」

簪「ミ、ミッションが、済んでから…じゃ、ダメ?」

一夏「え?」

簪「あ、あぅ…///」プュシゥゥゥ…

一夏「え、ええと…別にそれで、いいなら」

簪「う、うん…///」

一夏(し、しかし…キ、キスの後に言うことって…ま、まさか…いいいいやいやいやいや! 考えすぎだ俺!)

一夏「…///」

簪「…///」

一夏(な、何だこの空気…)


ピンポンパンポーン


一夏「ん?」

楯無『あーテステステスー。本日は晴天なりー』

一夏「あ、この声…」

簪「お姉ちゃんだ…」

楯無『ええーどうやら役者は揃ったようなのでー。全校生徒の皆さんはーアリーナの観客席の方に移動してくださいー』

一夏「あ…///」

簪「う…///」

楯無『ほらほらほらー。簪ちゃんも一夏くんも、何時まで舞台袖にいる気なのー?
   そんなんじゃオーディエンスから生ゴミぶつけられちゃうよー』

一夏「あぁもうこの人は…どこまで俺たちを弄べば気が済むんだ…」

簪「……」

~第3アリーナ中央~

ざわざわ…
がやがや…
きゃっきゃうふふ…


一夏「うぅ…本当に全校生徒が集まっているのか…。すごい視線の数だ…」

簪(は、はぅぅぅ…恥ずかしすぎて…し、死にそうぅぅぅぅ…)

楯無『さぁさぁー! 今日の千両役者の登場だよー!
   皆さん、盛大な拍手で出迎えてあげましょうー!』


わー!ぱちぱち!
やんややんや


一夏「や、やべぇ…もう帰りたくなってきた…」

簪「…同じく」

楯無『はいはいー! それじゃ早速だけど、メインイベントにいっちゃいますか!』

楯無『既に皆さんも知っての通り、今日のミッションは…簪ちゃんと一夏くんの熱いキスです!!』

楯無『お2人にはアリーナの中央で…キスをしてもらいます!!』

わーきゃーやいのやいの

一夏「…簪。正直ちょっと限界だ。さっさと終わらせようぜ」

簪「う、うん…(流石にこれはちょっと…お姉ちゃんを焚き付けるんじゃなかった…)」

楯無『ただしミッションの指定には「大人のキス」とあったので…ただの触れ合うだけのキスは無効です!』

一夏「なッ!?」

簪「え、えぇッ!?」

楯無『というわけで…以下の条件のどれかをクリアーしたら、ミッション・コンプリート扱いにします!!』

楯無『①舌を絡ませあう!』

楯無『②30秒間キスを続ける!』

楯無『③ぎゅぅぅぅぅっと、互いの体を抱き寄せながらキス!!』

楯無『以上!!』

一夏「」
簪「」

楯無『ルール説明は以上!! さぁ、張り切っていこうか!!
   大人の階段を上っていくシンデレラたちを、皆さんで温かく見守りましょう!!』


きゃー///ふけつー///でもすてきー!


一夏「な、なんだこれ…どどどどどどうすればいいんだ…」

簪「わ、私も…何をどうすればいいやら…」

一夏「…い、一応確認するけど…①ってどう思う?」

簪「むむむむむむむむむむ無理無理無理! 絶対、無理!」

一夏「だ、だよな…///」

簪「…///」コクッ

一夏「じゃ、じゃあ…②?」

簪「そ、それも、ちょっと…」

一夏「そ、そっか…」

簪「わ、私…30秒も、息を止めてられないから…」

一夏(そんな理由だったの!?)

簪(本当は2分くらいなら息を止めていられるけど…一夏とキスしながらなんて…ぜぜぜぜぜぜぜぜ絶対無理!)

一夏「…じゃあ、消去法で③か」

簪「あ、うん…」

一夏「こ、これくらいなら俺でも…」


ちょっとー!はやくしてよー!
あまりじらさないでー!

『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』
『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』
『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』
『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』


一夏「ま、まったく皆…人の気も知らないで…」

簪「あ、あぅぁ…///」

一夏「…簪?」

簪「い、いち、かぁ…」プルプル

一夏「あ…」

簪「……」ガクガク

一夏(簪…震えてる…怯えきったみたいに、今にも泣きそうなくらい…)

一夏(…バカだな俺は。全然学習しねぇや)

一夏(頑張りやだけど…でも恥ずかしがり屋で人見知りのこいつが…
   ここに立っているだけだけでも限界だって、分かりきっていたはずなのにな…)

一夏(だから俺が支えてあげたいって思うようになっていたのに…。
   またこいつを、不安にさせちまうところだった)

一夏(…本当にごめんな、簪)


ギュッ


簪「きゃっ…///」

一夏「大丈夫だ、簪」

簪「いち、か…?」

一夏「俺がついてる」

簪「あ…」

一夏「俺が簪を守るよ」

簪「ッッッ!!」ドクン!!

きゃー!いよいよよー!
はやくはやくー!


簪(あ、う…し、心臓がすごく跳ねちゃった…一夏に、バレた、かな…?)ドックンドックン

一夏(と言ったのはいいけど、正直俺も限界なんだよな。簪に動悸、聞こえてないかな…?)バックンバックン

簪「…一夏」

一夏「な、何だよ…」

簪「…ありがとう」

一夏「…気にするな」

簪「……」


ギュッ


一夏「うッ…///」

簪「一夏がいるから…私、頑張れるよ?」

一夏「そ、そうか…///」

簪「…一夏」

一夏「ん?」

簪「……」スッ

一夏「いぃ!?」


きゃー!だいたんー!
おりむらくんおとこをみせてー!


一夏(か、簪が…キスを、待ってる!?)ドキドキ

簪「……///」ドキドキ

一夏(簪の顔が…すごく、近い…!)ドキドキ

一夏(睫毛がすごく長くて…肌も白くて、でもほんのりと紅潮していて…)バクバク

一夏(それで何だか…シャンプーのすごくいい香りが…お、女の子って…皆こんな匂いがするのか…?)ハラハラ

一夏(か、簪…///)バックンバックン

楯無『ふっふっふー…ギャラリーそっちのけで盛り上がってますねー』

楯無『さてさて…アッツアツなところ悪いんだけどー…ここで1つ、言い忘れたことがありまーす』

楯無『今回招待した生徒諸君らはアリーナの観客席に集まってもらいましたが…実はこれには訳があります』

楯無『その訳、とはねー…ふふふっ♪ 実は専用機持ちの皆には、特等席を用意しちゃったのです☆』

楯無『そう…! 一夏くんと簪ちゃんのチューを、超間近で見れるという特等席をね!!』


簪「……」

一夏「……」

簪「い、一、夏…はや、くぅ…」

一夏「か、簪…それなんだが…」

簪「…?」

一夏「お、俺だって必死に…しようとは、しているんだが…」

一夏「ど、どういうわけか…体が…動か…」ググググ…


???「…随分と楽しそうにしているなぁ…嫁よ」ゴゴゴゴゴゴゴ

簪「!?」

一夏「そ、その声は…まさ、か…!?」ギリギリ


???「お前の初めてのキスの相手は私だというのに…そしてお前は私の嫁だと言うのに…」

???「そんなことも忘れ…あまつさえあの女の妹を手に掛けようなどと…万死に値する…!」

???「お前の唇は、私以外は認めん! 異論も反論も、断じて認めん…!!」


ラウラ「このラウラ・ボーデヴィッヒとシュバルツァ・レーゲン! 赦しはせんぞ!!」



<aic(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)>

簪「え…?」

一夏「な、なんで…お前が、ここに…?」

ラウラ「知らん! 専用機持ちは別スペースに案内されたから来てみれば…! ここはアリーナ内ではないか!」

ラウラ「私の手の届くところで嫁の唇が奪われそうになるのに…手を拱いて見ていられるわけがないだろうが!!」

一夏「な、何言ってんだお前…」

ラウラ「一夏、忘れたのか! 私の初めてのキスは…とうにお前に浚われてしまったのだぞ!!」

簪「…一夏、どういうことなの?」

一夏「い、いや…あれは事故みたいなもんで…」

ラウラ「兎に角だ! これ以上はお前たちの好きにはさせん!!
    このシュバルツァ・レーゲンで…止めさせてもらおう!!」ドビュッ

一夏「か、簪…! 逃げろ!」

簪「で、でも…でもぉ…!」

ラウラ「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 一夏のキスは私のものだー!」

???「それはどうかな!!」

ラウラ「何ッ!?」


<高速切替(ラピッド・スイッチ)――重機関双銃「デザート・フォックス」>


ラウラ「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」ガギギギギギギギ

シャル「ふぅ…危ない危ない」

ラウラ「…お前か、シャルロット」

シャル「ダメだよラウラ。自分だけ先に行っちゃ」

ラウラ「緊急事態だったからな。やむを得まい」

シャル「ははは。まぁそうかもしれないけどね」

ラウラ「…だから邪魔立てするな、シャルロット」

シャル「そうはいかないかな。こっちだって緊急事態だからね」

ラウラ「…そうか。出来るなら、お前とは戦いたくなかったが」

シャル「僕だって同じだよ。同じルームメイトだしね」

ラウラ「ふッ…だが悲しいかなシャルロット。お前には、タッグトーナメントで煮え湯を飲まされた遺恨がある。
    その雪辱…不本意だが、ここで晴らさせてもらうぞ!」

シャル「趣旨が微妙に変わってるけど…こっちだって容赦しないよ! 一夏を守りたいのは、ボクも一緒だから!」

簪「な、何あれ…」

一夏「…おい簪。逃げるぞ。ラウラがシャルに気を取られているうちに」コソコソ

簪「あ、うん…」

一夏「ま、まったく…何考えてんだあいつ等…。なるべく音を立てずに立ち去るぞ」ギュッ

簪「あ、うん…///(て、手を握られちゃった…)」

ゴツッ

一夏「いてっ。ててて…なんだ? 何かにぶつかったぞ?
   あ、あれ…? アリーナの中央なのに何かにぶつかった…?」

一夏「て、ていうかこれ…ピ、ピッォ!?ト」


<ブルー・ティアーズ>


一夏「うわぁ!?」


<龍砲>


一夏「ぎゃぁぁぁぁ!?」

セシリア「……」

鈴「……」

一夏「セ、セシリアに鈴!? お前らまでここにいたのか!?」


<展開装甲―――雨月>


一夏「どわぁ!!??」

箒「……」

一夏「ほ、箒まで…何で揃いも揃って、isを展開してるんだよ!?」

箒「何で、だと…?」

セシリア「どの口が…」

鈴「言ってるのかしらね…」

一夏「え」

箒「…流石にこれは看過できんぞ」

セシリア「同感ですわね…おふざけも程々になさいませ、一夏さん」

鈴「あんたねぇ…あたしらの前でそんなことさせられて…指くわえて見てろって言うの…?」

一夏「な、何言ってんだお前ら…そんな見たくないなら、見なければいいじゃないk――」


「黙れ!!」「お黙りなさい!!」「うっさいわねこのバカ!!」


一夏「」ビクッ


箒「…ともかく、幸いにも生徒会から何のお咎めもない」

セシリア「故に、私たちの妨害行為は黙認されているということ!」

鈴「だったらここで…全力で止めてやるわ!! 覚悟しなさい!!」ジャキッ

一夏「ひ、ひぃ!?」


??「盛り上がっているところ悪いけど…誰か忘れてない?」

簪「え…!?」

一夏「な…!?」


<清き熱情(クリア・パッション)>


箒「ぐぅ!?」ドゥン!

セシリア「うぅ!!」ドゥン!

鈴「きゃぁぁ!?」ドゥン!


??「ふふふふ…言ったよね? 専用機持ちの皆は、特等席を用意してあるって」

??「なのに私を差し置いてきゃっきゃうふふと洒落込もうなんて…ちょっと妬けちゃうなぁ…可愛い後輩たち」


楯無「この学園最強の…生徒会長を差し置いて遊ぶなんてさ…!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ


ダリル「ちなみに私たちもいまーす」

フォルテ「何か面白そうね。ダリル、行ってきたら?」

ダリル「だが断る。働きたくないでござる」

フォルテ「まぁそうよね」

箒「な、なんで貴女がここに!?」

楯無「何でって心外だなー。君たちと同じ事をしようとしているだけだよ?」

セシリア「な、何ですって!? 生徒会長も参加されていますの!?」

鈴「じょ、冗談じゃないわ!」

簪「お姉ちゃん…」

楯無「…やぁ、簪ちゃん」

簪「何で、こんなこと…」

楯無「…私も本気だそうと思っただけ」

簪「え…?」

楯無「何だかさ…色々と吹っ切れたから。だから、私も本気で…戦おうかなって思ったの」

簪「……」

楯無「でも…私だけじゃフェアじゃないから、この子達も参加させたかったの。
   別に悪気があったわけじゃないわ」

簪「…そう」

簪「お姉ちゃんがそう来るなら…私、行くよ。おいで、打鉄弐式」


<打鉄弐式―――展開>


一夏「か、簪!? 本気なのか!? 楯無さんと戦うなんて!」

楯無「…ほらほら一夏くん。なにボサとしてるの」

一夏「え?」

楯無「男なら、女の子ばっかりに守らせてないで、気概を見せなさいな!」

一夏「あぁーもう!! 何がなにやらだけど、こうなりゃヤケだ!!」


<白式―――展開>


簪「いち、か…」

一夏「ともかく1人ずつ撃破するぞ、簪!」

簪「で、でも私…まだ、調整が…」

一夏「簪は弾幕を張ってくれるだけでいい!! あとは俺に任せろ!
   お前のフォローがあれば…大丈夫だ!!」

簪「…!!」

箒「ぐッ…おのれ…!」

セシリア「見せ付けてくれますわね…!」

鈴「あぁもうー! そっちがその気なら、こっちだって行くわよ!」

シャル「一夏、本気だね…僕だって負けないからね!」

ラウラ「学園最強がどうした! そんなもの、蹂躙してくれるわ!」

楯無「ふぅー怖い怖い…。さてさて淑女の皆さん…もう、言いたいことは分かるね?
   欲しいなら…全部勝ってからにしなさい!!」


『上ッ等!!!』


一夏「や、やるしかないのか…!」ジャキッ

簪(一夏と…一夏がいてくれれば…私は大丈夫! 誰にだって…負けない!!)



フォルテ「何か盛り上がってるわねー。あ、ダリル。ポテチ取って」

ダリル「ぽたぽた焼きうめぇ」ポリポリ

箒「先手必勝だ!!」


<展開装甲―――スラスター>


一夏「ぐッ…!? いきなり箒…仕掛けてきたか!」

鈴「あ、バカ!」

箒「え?」

セシリア「よ、よけ―――」


<スターライトmkⅢ>

<龍砲>


箒「ぬがぁぁ!?」ドッゴォォォ!

箒「な、何するんだ貴様ら!!」

鈴「いや、あんたがいきなり突撃するもんだから…」

セシリア「まずは威嚇射撃により陽動するのが定石というものでしょう!?
     そんなことも分かりませんの!?」

箒「知るか!! 武士なら特攻あるのみだ!!」

楯無「やーれやれ…連携がまるで取れてないね。
   そんな半人前諸君には…こうだ!」パチン


<清き熱情(クリア・パッション)>


ドォォォォン!!


箒「うぉわ!?」
セシリア「きゃぁ!?」
鈴「うぐッ!?」


楯無「ほい、縦3連鎖ってとこかな。固まって言い争いなんかするから、狙いやすかったわ」

一夏「う…や、やっぱり楯無さんは強いな…連携が取れてないとはいえ、あの3人を手玉にとるなんて…」

箒「ぐッ…やはりあの会長を何とかしなければ…!」

セシリア「ですわね…」

鈴「不本意だけど、あたしが風(フェン)で陽動をしかけるわ! セシリアは援護!
  箒はタイミングを見計らって決めて!」

セシリア箒「「了解!!」」


<風(フェン)>


楯無「ふむふむ…フットワークは中々のものだね…。でも、敵地に無闇に飛び込んでいいのかな!?」


<清き熱情(クリア・パッション)>


ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!


鈴「きゃぁ!?」

箒「ば、バカ!! 動きを止めるな!!」


<蒼流旋>

鈴「か、は…!?」ドゴォ

箒「鈴!!」

セシリア「まさか水蒸気爆発を囮に使うとは…!」

楯無「爆破させるだけが芸じゃないわ! ようは使い方よ!」

セシリア「ですが…隙が出来たのは同じ事ですわ!!」


<スターライト・mkⅢ>


ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!


楯無「おぉっと!!」


グィン


セシリア「なッ…!? き、軌道が勝手に逸れましたわ!?」

楯無「正確にはちょっと違うね。空気中の気圧差と湿度差による光の屈折現象だよ。
    レーザー系の武器は、私には届かないよ!」

箒「ならば…直接斬り込むまで!!」


<展開装甲―――スラスター>

<展開装甲―――エネルギーソード>


楯無「また特攻!? そんなもの、爆破で視界を覆えば…」グッ


<aic>


楯無「なッ…!?」

ラウラ「私を忘れてもらっては困る!!」

楯無「ラウラちゃんか…」

ラウラ「私が押さえている間に…箒、決めろ!!」

箒「応ッ!!」

楯無「ラウラちゃん。別にラウラちゃんを忘れてたわけじゃないんだよ」グググ…

ラウラ「そうか…だが、どちらにせよ同じことだ。あと数秒もしないうちに、箒がお前に引導を渡す」

楯無「やれやれ…でもねラウラちゃん。1つ、忘れてない? 君のaic、捕捉の対象は1つだけなんだよね?」

ラウラ「まぁな。だが、今は充分だ」

楯無「それでね…aicを使っている最中の君は、すごく無防備」

ラウラ「…何が言いたい?」

シャル「!?」

楯無「そろそろ…身を守る準備をした方が…いいんじゃないかな!?」


<清き熱情(クリア・パッション)>


シャル「ラウラ、危ない!!」ドン!


ドォォォォン!!


ラウラ「ぐッ…!?」

箒「ラウラ!?」

楯無「余所見している場合!?」

箒「なッ…し、しま―――」


ドゴッ


箒「ぐわぁ!?」ドサッ

楯無「あと一歩の詰めで油断なんてまだまだだね」

ラウラ「す、すまん...シャルロット、大丈夫か…?」

シャル「大丈夫だよ。防御パッケージで何とか防げたから」

楯無「私の本体ばっかりに気を囚われすぎたね。
   私のisは不可視なんだから、もっと警戒しないとダメだよ?」

箒「つ、強い…」

セシリア「こ、こんなの…」

鈴「勝てるの…かしら?」

楯無「やれやれ…これくらいで戦意喪失? もっと頑張って―――」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

楯無「!!??」


ガキン!!


楯無「…まさか本丸から、お出ましとはね!」

一夏「楯無さん…あんた、何考えてんですか!!」

楯無「何ってねぇ…一夏くんがそれを言うの?」

一夏「答えてください!!」ギギギ…

楯無「…別に。楽しいのは、皆がいた方が面白いでしょ?」

一夏「ふざけんな!!」


<零落白夜>


楯無「!!??」

眠いので一旦切ります。続きは明日ね
あまりにもラウラが出ないから我慢出来ずに出してしまった。
あんま後悔はしてない

なん•••だと•••。

乙。

楯無「…クッ!」クン!

一夏「逃がさねぇぇぇぇ!!」バシュッ!

楯無「…!」スッ



<清き熱情(クリア・パッション)>


ドゥン!! ドゥン!! ドゥン!!


一夏「ぐッ!?」

簪「一夏!!」

一夏「大丈夫だ簪! ただの目くらましだ!」

楯無(…予想以上に技の発動速度が向上してる。私が後手に回らなきゃいけないほどに)

一夏「クソ…逃げられちまった」

楯無(本当に一夏くん…すごい速度で成長しているね)

楯無「…というか一夏くん酷くない? 私が相手とはいえ、本気で斬りかかることないでしょ?」

一夏「…大人げないのは楯無さんだって一緒ですよ」

楯無「あらあら嫌われたものね。私たちがここまでする理由も出来ない君に言われるなんてね」

一夏「…確かにこいつ等が、なんでここまでムキになっているかなんて俺には分かりません」

箒(ああもう…)ハァ…

鈴(こいつって奴は…)ヤレヤレ…

一夏「…でも」

楯無「?」

一夏「楯無さんが…間違っていることくらいは分かります!!」

楯無「!?」

一夏「あんたがやっていること…すごく、らしくない!
   こんな一方的なリンチみたいなやり方、絶対におかしい!」

楯無「言いたい放題だね。まるで私が弱い者虐めでもしているみたいじゃない」

一夏「何が違うんですか!? 今の楯無さんは…俺にはただ、自分の力をひけらかしているようにしか見えない!」

楯無「…ッ!」

一夏「そんなの、全然あんたらしくない! 何でそんなに必死なんですか! おかしいですよ!」

楯無「私は…ただ、本気で皆と向き合いたかっただけ。
   本気でこの子達と…渡り合おうとしたかっただけだよ?」

一夏「だったら尚の事…俺は、あんたを認めることは出来ない!!」

楯無「な…ッ」

一夏「今の楯無さんは…見ていてすごくかっこ悪いんです!こんな…
   こんな暴力に頼るばかりのあんたなんか…間違っている!
   いい気になっているガキ大将と、何一つ変わらない!」

楯無「わ、私は…そんな、つもりは…」

一夏「例えどんな理由があっても…これ以上、俺の仲間を傷つけさせない!
   もし、これ以上―――」

スッ

楯無「あ…」

一夏「か、簪…」

簪「一夏…もう、いいから」

一夏「でも!」

簪「一夏の気持ちは、充分分かったから。だからこれ以上、お姉ちゃんを虐めないで」

楯無「……」

一夏「い、虐めてるってお前…」

簪「…ごめんね一夏。お姉ちゃんがこんなことするのは…私の所為、なんだよ」

一夏「え…」

楯無「……」

簪「…今のお姉ちゃんはね。確かに、いつもとは違うかもしれない。
  でもそれは…やっと、素直になってくれたお姉ちゃんなの」

簪「こんな不器用な形になっちゃったけど…でも、生徒会長でもない、更識家当主としてでもない」

簪「ただの一人の女の子としてのあの人を…これ以上否定しないで」

一夏「簪…」

楯無「……」

簪「…でも、一夏の言ってることも分かる。お姉ちゃんなら…もっと、やりようがあったはず」

簪「わざわざisなんて使わずに…もっと、自分の気持ちを伝える術があったはずだもの」

簪「だからこれは…私が、止めないといけない」スッ


<夢現>


簪「私…戦うよ。一人の女として、お姉ちゃんと戦う」

一夏「簪…お前…」

簪「止めないで一夏。これはね…本当に、譲れないから」

楯無「簪ちゃん…」

簪「お姉ちゃん。やっと、やっと素直になってくれて嬉しい。
  だから私は…今、本気で貴女に勝ちたいと思う」

楯無「…私も、今貴女と本当の意味で向き合えて嬉しく思う。
   そして…今までごめんね、簪ちゃん」

簪「……」

楯無「私さ、気付いたんだ。今まで簪ちゃんたちのことを応援しているつもりで…
   簪ちゃんのこと、嘗めてた」

楯無「また要らないお節介を焼いて…貴女に、何もかも与えた気になって、悦に浸ろうとしていた。
   そういうの、簪ちゃんが一番嫌うはずなのに…ごめんね」

簪「うん。お姉ちゃんのそういうところ、嫌い」

楯無「あはは。でもさ…もう、やめる。私…貴女とは、本当に対等でありたいもの」

楯無「姉妹としても、ライバルとしても…貴女と共に生きていきたいと、心から願ってる」

簪「…うん」

楯無「でも、自分の心と向き合って出した結論がこれじゃ…格好つかないね。
   だって自分が誇れるところと言ったら…これくらいしか思いつかなかったからさ」

簪「お姉ちゃんらしいと言えば、らしいよ」

楯無「あはは、ありがと。でも…やっぱり私は、今は最強であることよりも、最愛であることを望みたい」

楯無「ただ力をぶつけ合うんじゃなくて…気持ちで、貴女にも皆にも勝ちたい。
   今なら、心からそう思える。本当にありがとう、簪ちゃん」

簪「…うん」

楯無「私、もう逃げないから。だから…私の気持ちを、どうか受け止めて欲しい」


<ミストルテインの槍>


一夏「なッ…!?」

簪「…本気、ってことだね」

楯無「うん。こればっかりはどうしても譲れないからね」

一夏「しょ、正気ですか楯無さん!? 妹相手に、そんな大技を…」

楯無「生憎、私の相手をしているのは妹じゃないよ。私の…最大のライバルだからね」

簪「…!」

一夏「くッ…! なら、俺も!」ジャキッ

簪「一夏…邪魔、しないで」

一夏「ふざけるな!! お前にここまでさせて…黙っていられないだろ!」

簪「…ッ!」

一夏「約束しただろ! お前はどんなことがあっても…俺が守ってやるって!」

簪「いち、か…」

楯無「……」

一夏「俺にできる事なんてあまりないかもしれないけど…援護と陽動くらいなら出来る」

一夏「だから決着は…お前がつけろ簪」

簪「…うん!」

簪(不思議…一夏が、守ってくれる…。
  それだけで…お姉ちゃんが相手でも、絶対に負けないって思えてくる…!)

楯無「……」


ズキン…

楯無(…簪ちゃん、一夏くん、それに箒ちゃんや皆…ごめんね)

一夏「行くぞ簪!!」

楯無(私…また逃げてただけみたい。皆と気持ちでぶつかり合おうと決めながら…
   ただ、自分の圧倒できるフィールドに持ち込みたかっただけ。
   一夏くんの言うとおり…弱い者虐め、したかっただけかもしれない)

簪「うん!!」

楯無(皆本当にごめん…そしてありがとう、簪ちゃん。
   貴女は本当に…強く、立派になったんだね)

簪(山嵐で清き熱情(クリア・パッション)の射程を抑えつつ…一夏とのコンビネーションで間合いを詰めて…
  そして、夢現を叩きこむ!)

楯無(でも、だからこそ…私は全力で貴女を迎え撃ちたい! もう、逃げたくない!)

一夏「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

楯無(だって……)


楯無「私も……一夏くんが―――」




??「その辺にしておけ。この大馬鹿ども」

楯無「!!??」


ガキン!!


楯無「ぐっ…!?」

簪「お、お姉ちゃん!!」

一夏「何だ…!? いきなり、ショートブレードが楯無さん目がけて飛んできたぞ!?」

箒「いや、あの装備は…!」


千冬「茶番は終わりだ。この場は私に預からせてもらうぞ」


一夏「ち、千冬姉!!」

千冬「だから学園では…まぁいい。それよりも更識。お前…どういうつもりだ?」

楯無「それはこっちの台詞ですよ。どういうつもりですか織斑先生」

千冬「見て分からぬか大馬鹿め。これ以上、つまらぬ私情で生徒たちを争わせる訳にはいかん」

楯無「…心外ですね。私たちが伊達や酔狂でこんなことしていると言うんですか?」

千冬「別に小娘どもの小便臭い色恋沙汰に首を突っ込む趣味はない。だが、これ以上は看過できない。
   凰やボーデヴィッヒをあそこまで痛めつけて…お前、何様のつもりだ?」

楯無「…確かにやり過ぎただけかもしれません。それは反省してます」

千冬「ならとっととisを解除しろ。何故、臨戦態勢を解かない?」

楯無「それとこれとは話が別です。だって…この催しを後押ししたのは他でもない、貴女なんですよ?」

千冬「…それを言われると痛いな。まさか貴様がここまで暴走するとは思わなかったからな」

千冬「とんだ見当違いだったよ。私はお前を見誤っていたようだ」

楯無「……」

千冬「とにかく、これ以上の戦闘行為は許可できん。代表候補生が揃って再起不能では学園の沽券に関わるからな」

楯無「…断る、と言ったら?」

千冬「今、貴様を生徒会から除名したうえで八つ裂きにしても構わんが…。
   色々と面倒だ。だから、言伝を頼まれている」

楯無「…頼まれて、いる?」

千冬「…学園長からな」

楯無「!!??」

千冬「これ以上は言う必要はないな? つまりはそういう事だ」

楯無(轡木さんからか…流石にこれは逆らえないわ。幾らなんでも暴れすぎちゃったみたいね…)

楯無「…分かりました。ごめんなさい」


<ミステリアス・レイディ―――解除>


千冬「まったく…とんだ尻拭いもあったものだ。二度と御免被る」

箒「た、助かったのか…?」

セシリア「一応…そのよう、ですわね…」

鈴「はぁ…色んな意味で生きた心地がしなかったわ」

ラウラ「納得いかん! 教官、私はまだ負けてません!」

シャル「ラウラ、今は大人しくしてて。爆破で鼓膜がやられてる可能性もあるから、診てもらわないと」

ラウラ「ぐッ…!」

楯無「……」

千冬「小娘どもはさっさと持ち場に戻れ。更識は後で職員室に来い」

楯無「…はい」

一夏「や、やれやれ…」

簪「ええと…これ、どうなっちゃうのかな?」

千冬「ああそうだ。織斑と更識の妹はこっちに来い」

一夏「え」

簪「え」

千冬「別に取って食おうって訳ではない。さっさと来んか馬鹿者」

一夏「な、何なんだよ…」スタスタ

簪「…?」トテトテ

千冬「…ふん」グイッ

一夏「え」

簪「え…」


ブチュゥ


一夏「!?」

簪「!!??」

楯無「!!??」

一夏「んんんんん!? んんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」ジタバタ

千冬「騒ぐなこのバカ者。いいから大人しくしてろ」

箒「なななななななななななな何してんですか千冬さん!?」

セシリア「そそそそそそそそそうですわ!! そのような不埒な行為を自ら―――」


千冬「黙ってろォッッ!!!」クワッ


女子たち『』ビクッ

千冬「…私の監督不行き届きが招いた結果だからな。
   せめてこの命令だけは全うさせてやる」


一夏(な、何だこの状況!? か、簪と…キキキキキキキキキキスしてるのか!?)

簪(いいいいいいいいいいいいい一夏が…! 一夏の顔が、一夏の唇、がぁぁ…!?)

簪(~~~~~~~~~~~~~~///)ボボボボボボ

一夏(か、簪の顔からsl汽車の如く蒸気が…いやいやいやいやいや冷静になってる場合じゃなくてだな!?)

一夏「―――」

簪「―――」


スッ


一夏「ッッぷはぁ!! はぁ…はぁ…はぁ…い、いきなり何すんだよ千冬ね―――」

ボゴスッ

一夏「いってぇ!?」

千冬「いい加減にせんかこの馬鹿め」

簪「~~~~~~~~~///」


ドサッ


一夏「か、簪!」

楯無「簪ちゃん!!」

千冬「…ったく。どいつもこいつもキスくらいで騒ぎおって」

一夏「お、おい簪! しっかりしろ!!」

楯無「簪ちゃん! お願いだから気を確かに!」

簪「いち、か…」

一夏「な、何だ簪!」

簪「わた、し…」

簪「……」ボソボソ

楯無「……え」

一夏「…何て言ったんだ簪? 無理、しなくていいんだぞ?」

簪「あの、ね…私……」

楯無「ま、待って! 簪ちゃん、一夏くん、待っ―――」



簪「…一夏が、好き。大、好き……」



楯無「―――」

一夏「え……」

簪「大事な、話、だから…」

一夏「お、お前…え…?」

楯無「……」

簪「…///」


コテッ


一夏「お、おい簪! どうした!?」

楯無「…安心して、気を失っちゃったみたいね」

一夏「な、何だそうか…はぁ、良かった…」

楯無「…うん」

一夏「て、ていうか簪…今、さっき…」

一夏「俺の事……え…?」

楯無「……」

楯無「……」

一夏「え、ええと…好きって…アニメとか、か…?」

ゴスッ

一夏「いてっ」

楯無「…そんなわけないでしょこのおバカさん」

一夏「え、えぇ…!? ほ、本当に…簪、俺を…!?」

一夏「ちょ、ちょっと待ってくれよ…そんなこと、急に、言われても…///」

楯無「……」


ツーッ


一夏「ん?」

楯無「ま、まったく! 一夏くんも隅に置けないね!」ゴシゴシ

一夏「あ、あの…」

楯無「まさか私の可愛い妹まで侍らせるなんてさ! 流石は天性の女たらしだよ!」

一夏(…気のせい、だよな? 楯無さんが…泣いて、いた…?)

千冬「おい更識。いつまで油を売っている。お前はさっさと来い」

楯無「はいはーい! じゃあ一夏くん! 私、ちょっと怒られてくるね!
   悪いけど、簪ちゃんをお願い!」

一夏「あ、あぁ…分かり、ました」

楯無「…いい子だからって手を出したら…お姉さん、怒っちゃうぞ☆」

一夏「ししししししししししししませんよ! 何言ってんですか!?」

楯無「あっははは♪ じゃあね、バイビー!」タッタッタッ…



楯無「お待たせしてすみません」

千冬「まったくだ」

楯無「えへへ…」

千冬「…涙の痕くらいちゃんと隠せ。気丈に振る舞っても、誤魔化せるのはウチの愚弟だけだ」

楯無「ははっ。なら、いいかな。こんな格好悪いところ…一夏くんには、絶対に見られたくないですし」

千冬「……」
―――――――――
―――――
―――

~生徒会室~

一夏「やれやれ…何とか簪を保健室まで送り届けることができたぞ」

一夏「一緒にいた箒や鈴たちからきつい詰問されたが…まぁ何とか適当に誤魔化せた…気がする」

一夏「簪はただの過労だからすぐに戻れるし、楯無さんもきっとすぐに終わるだろう」

一夏「それまでは1人だな…」

一夏「……」

一夏「それよりも簪が…あんな風に思っていたなんて…」

一夏「大事な話って…絶対にそんなことないとか、思ってたのに…まさか本当に、告白だなんて…」

一夏「…返事、ちゃんとしなきゃいけないよな」

一夏「でも…色々あり過ぎたせいか、まだ気持ちの整理がつかないんだよな」

一夏「俺は…簪の事、どう思ってるんだろう?」

一夏「あいつとは付き合いはそんな長くないけど…。
   でも、この数日あいつと過ごせたのは…とても楽しかった」

一夏「一緒に実家に行った時も、温泉旅行で過ごした日も…すごく心が落ち着いた」

一夏「何というか…鈴みたいにバカ騒ぎするんじゃなくて…。
   あいつといると、すごく穏やかになれて…俺は、その時間がとても好きだった」

一夏「それで…俺が傍で、支えてやりたいと思えた相手だ」

一夏「……」

一夏「…ダメだ。まだ…確信が持てない。これが…そういうことかどうかなんて、俺には分からねぇよ…」

一夏「情けないな…何だかこう…喉に魚の小骨が引っかかっているのに、取る方法が全然分からないような」

一夏「簪のこと考えると…何か、すげぇ落ち着かないんだけど…。
   でもこれは…初めて告白されたから動揺しているだけなのかもしれない」

一夏「…俺ってひょっとして鈍感なのだろうか」


ガララッ


一夏「あ…」

楯無「…やぁ」

一夏「お、おかえりなさい…」

楯無「うん、ただいま♪ いやーまいったまいった! こっぴどく怒られちゃったよ!
   でもまぁ、isの使用を禁止した上でなら、まだ続けていいって!」

一夏「そ、そうなんですか…」

楯無「うん! 流石にここまで来て途中で終わりにしたくないしね!」

一夏「……」

楯無「…一夏くん」

一夏「ん?」

楯無「簪ちゃんの事、好き?」

一夏「はぁ!?」

楯無「教えて、くれないかな?」

一夏「なななななななななな何でそんなこと、訊くんですか!?」

楯無「なんでも」

一夏「なッ!?」

一夏「お、おかえりなさい…」

楯無「うん、ただいま♪ いやーまいったまいった! こっぴどく怒られちゃったよ!
   でもまぁ、isの使用を禁止した上でなら、まだ続けていいって!」

一夏「そ、そうなんですか…」

楯無「うん! 流石にここまで来て途中で終わりにしたくないしね!」

一夏「……」

楯無「…一夏くん」

一夏「ん?」

楯無「返事、決まった?」

一夏「……」

楯無「……」

一夏「…いえ」

楯無「…そっか」

一夏「…ごめんなさい。まだ、よく分からないんです。これが本当に…好きってことなのか、どうか」

一夏「あいつの事は友達としては好きだし、一緒に居ると落ち着くし、守ってやりたいとも思うけど…」

一夏「でも…まだ、そういう感情を持てるっていう確信が持てないんです」

楯無「…なるほどね」

一夏「だから、その…もっと、ちゃんと向き合ってみたいんです」

一夏「あいつともっと…他の人とももっと接して…俺がどう思ってるか、考える時間が欲しいです」

楯無「…分かったよ」スッ

一夏「え?」

楯無「次は君が引きなさい」

一夏「俺が?」

楯無「うん。何となくだけど…君が引かなきゃいけない気がするから」

一夏「……分かりました。じゃあ…引きます」


ゴソゴソ


一夏「ええと…次のミッションは……『>>780』?」

鷹月さんとプール&遊園地(一泊)。

鷹月さんとプール&遊園地(一泊)。

というわけで√突入までには至らなかったとさ。
果たして個別√なのか姉妹√なのか
それとも逆転劇はあるのか
それは安価のみが知るのです
じゃあの

現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□
簪     ■■■■■■■■←リーチ!
シャル  ■■■□□□□□
箒     ■■■□□□□□
鷹月   ■□□□□□□□

このレスが安価なら↓


楯無or簪ssは貴重ってレベルじゃないからぜひこの二人には頑張ってもらいたい

箒・・・。

読み返してみたら間違えて修正前のレスを投下していたとはね
>>776>>777に差し替えて補完オネシャス

そして安価把握。
安価は絶対だから守るけど…これ以降の連投は勘弁してくれ
ちなみに近日中に再開するお

>>788
確かに。天然記念物だな。
ヒロインなのにモブキャラレベルの数しかssないし。

『誰かと一緒に遊園地とプールに行く(一泊で)』


一夏「え…また一泊?」

楯無「……」

一夏「ええとこれは…誰かといけるか、俺が選べるって事ですか?」

楯無「そういうことになるね。誰かと行くか、決まってないの?」

一夏「…ええ、まぁ」

楯無「…てっきり、簪ちゃんと行くと思ったんだけど」

一夏「……」

一夏「…いえ。まだ…決められませんよ」

楯無「…そっか」

一夏「まだ整理が付きませんから。それに、簪には昨日も今日も相当無理させてますし」

楯無「そっか。そう言えばそうだね」

楯無(一夏くん…簪ちゃんに優しいね)

楯無(それに…『まだ』、か…)

…ズキッ

楯無「じゃあどうするの? 専用機持ちの誰かと行くの?」

一夏「それも考えたんですけど…どうせなら、ゆっくりと相談できる相手と行こうかなぁ、って」

楯無「相談役なら、シャルロットちゃんとか鈴音ちゃんが適任そうだけど?」

一夏「いや、シャルも鈴もさっきの事で無理させてますし。今日はゆっくり休んでもらわないと」

楯無「うッ…」ズキッ

一夏「あ、ごめんなさい…楯無さんを責めてるわけじゃないんです」

楯無「う、うん…でも、ごめんね?」

一夏「…俺じゃなくて、ちゃんと皆に謝ってくださいね」

楯無「あ、うん…そうだね。ごめん…」

一夏(…なんか楯無さん、いつもと違ってすごくしおらしいな)

一夏「あの…」

楯無「ん?」

一夏「アリーナでは、何であんなことを?」

楯無「あははは。一夏くんがそれを訊くんだ」

一夏(…そういえば同じようなこと言われたな)

一夏「…教えてくれないんですか?」

楯無「うん、そうだね。こればっかりは女の子の矜持に関わるから」

一夏「そ、そうですか」

楯無「でもコレだけは言っておこう」

一夏「え?」

楯無「甲斐性なし」

一夏「いきなり何ですかこの言われよう」

楯無「はははは。まぁ思い当たる節が分からないのなら、このミッションを通じて学んできなさい」

一夏(何だか上手く流された気が…)

楯無「ミッションの内容は前回と一緒で、この部屋に戻ってきてくればクリアー。
   けど今回は予約とかは出来ないから、遊蕩費と宿泊費は自腹でお願いね。
   また領収書を貰ってきてくれれば、後でこっちで立て替えるからさ」

一夏「うッ…一時的とはいえ、結構な出費が」

楯無「こらこら。女の子と遊びに行くのに財布の紐を気にするんじゃありません。
    だから甲斐性なしなんて言われるんだよ」

一夏(え…俺って、結構守銭奴ってことか…?)

楯無「それで、もう誰と行くか決めた? まだ決めてない?」

一夏「それなんですけどね。実はさっき、思い当たる人が出来ました」

楯無「そうなんだ。一体―――」

楯無(あ、あれ…? そういえば1年生の専用機持ちの皆とは行かないって言ってたし…。
   それで、唯一行ける相手とすれば…)

楯無(まままままままままさか、わた―――)

一夏「鷹月さんと行こうかなぁ、って思うんですよ」

楯無「ちょちょちょちょちょっと待ってよ一夏くん! 簪ちゃんがいるのにまだそんな、心の準備が…って、え?」

一夏「い、いや何驚いているんですか…?」

楯無「え、ええと…誰と行くって?」

一夏「だから鷹月さんですって」

楯無「鷹月って…もしかしてさっき箒ちゃんと簪ちゃんと一緒に行った子? 何でまた?」

一夏「何でって…まぁ、何となくって言うのもありますけど…鷹月さんって、大人しいじゃないですか」

一夏「それで真面目だし、箒たちが暴走しそうになった時も止めてくれたりしてたし、
   相談するにはいい人かなって」

楯無「な、なるほどね…(相談ごとで一泊つきのデートに誘うのってどうなのよ…)」

楯無(…って言うよりも、また良からぬフラグが立つかそれともポッキリと折れる予感がしてならないんだけど)

一夏「そういうわけですので、行ってきますね」

楯無(…まぁいいか。一夏くんが、決めたことだもの)

楯無「そうだね。行ってらっしゃい」ヒラヒラ

一夏「はい。失礼します」


ガララッ…ピシャッ…


楯無「…そうだよね。決めるのは、一夏くんだもの」

楯無「私がいくら引っ掻き回しても、横槍入れても…きっと彼なら、添い遂げられるパートナーを選べるわ」

楯無「……」

楯無「待つ身って辛いなぁ…。それも、実るかどうかも分からないなんて…不安で押しつぶされそうだよ」

楯無「簪ちゃんも、箒ちゃんたちも…こんな気持ちだったんだ」

楯無「…辛いなぁ」

―――――――――
―――――
―――

~廊下~

一夏「お、いたいた。探したよ鷹月さん」

鷹月「お、織斑くん…本当に、私でいいの?」

一夏「まぁな。鷹月さんとなら、さっき一緒に行ったからな。
   専用機持ち以外なら他の皆よりは気兼ねしなくて済むと思ってさ」

鷹月「そ、そうなんだ…(それでも淡い期待を捨てきれない自分が恨めしい…)」

一夏「そんな訳だからさ。また一泊で悪いけど、付き合ってくれよ」

鷹月「うん、そうだね―――って、あれ…?」

一夏「?」

鷹月(よ、よくよく考えれば…明日まで織斑くんと2人きり!?
   ここここここんな、1組のアイドルと言っても過言ではない織斑くんと、私が!?)

一夏「どうかしたのか?」

鷹月「ふぇ!? なななななななな何でもないわ!」ブンブン

一夏「そ、そうか?」

鷹月(ヤ、ヤバイわ…! すごく緊張してきた…!)ドキドキ
―――――――――
―――――
―――

~遊園地~

一夏「ここに来るのも久しぶりだなぁ」

鷹月(あぁ、うぅぅ…移動中、織斑くんと何話してたか全然記憶に無いわ…)

一夏「平日なのに人は結構いるもんだなー」

鷹月(ていうか箒に何て言えばいいんだろう…応援すると言ったのに、こんなことしてていいのかしら…。
   しかも谷本や相川や布仏にも後で茶々入れられそうだし…)

一夏「…鷹月さん?」

鷹月「は、はぃぃ!?」

一夏「ど、どうしたんだよ…具合でも悪いのか?」

鷹月「え、えぇ!? そそ、そんなこと、ないわよ!?」

一夏「そうか? もしかして嫌だった? 疲れてから行くのも何だし、最初に遊園地にしようと思ったんだけど」

鷹月「え…(織斑くん、ちゃんと考えてくれてたんだ…///)」

一夏「ごめんな。こういうの、あんま慣れてないから。」

鷹月「ちち、違うの! 別に嫌とか、そういうのじゃなくて!」

一夏「そ、そうか?」

鷹月「ごめんね、ボーっとして! 早く行こうか!」

~メインストリート~

鷹月「あ、織斑くん見て! マスコットだよ!」

一夏「おー…こ、これは…何ていうか…」

モッピー「モッピー知ってるよ。一夏は最後には私を選ぶって事」

鷹月「……」

一夏「……」

モッピー「…風船あげるよ」スッ

鷹月「あ、ありがとう…」

モッピー「モッピーは出来る女だからね。でも寝取ったら容赦しないからね」キョムキョム

一夏「…何かどこと無く、誰かと面影があるマスコットと思うのは気のせいか?」

鷹月「そ、そうだね…(しかも気のせいじゃなければ…私たちの共通の知り合いと…)」

一夏「…でも何でだろう。軽くイラッとくる」

鷹月(実は私も…)

―――――――――
―――――
―――

~ジェットコースター~

一夏「やっぱ遊園地に行ったからにはこれに乗らないとな」

鷹月「う、うぅ…」

一夏「どうかしたか?」

鷹月「ご、ごめん…私は、ちょっと…(絶叫系、苦手なのよね…)」

一夏「そ、そうか…じゃあ、他のにするか?」

鷹月「ごめん、そうしてもらえる?」

一夏「分かった。じゃあ、アレなんかどうだ?」

―――――――――
―――――
―――

~バイキングシップ~

ゴゥンゴゥンゴゴゥン
ワー キャー シヌー

鷹月「」

一夏「これ、前から乗りたかったんだよなぁ」

鷹月(なんで間髪入れずに絶叫系チョイスなの!?)

鷹月「ご、ごめん…実は私、絶叫系はちょっと…」

一夏「あ、何だそうなのか。気が利かなくてごめんな」

鷹月「う、ううん…何か、ごめんね」

鷹月(箒から散々聞いていたけど…確かに鈍感ね)

一夏「じゃあそうだなぁ…アレなんかいいんじゃないかな? ちょっと着いてきてくれるか?」

鷹月「あ、うん…///」

鷹月(なるほどね。ハッキリ言えば、あとはちゃんとエスコートしてくれるのね…)

鷹月(ちょ、ちょっといいかも…なんて…///)

―――――――――
―――――
―――

~ゴー・カート~

ブオンブオンブオン ゴガァ
キャー

一夏「おぉー! やっぱいつ見ても楽しそうだぜ!」

鷹月(前言撤回。チョイスが男の子過ぎるわ…)

一夏「あれ? どうかした? ここなら、あまり怖くないぜ?」

鷹月(なるほどね…乙女心に関しては壊滅的に鈍いわ…しかも悪気が無いから余計に性質が悪い…)

鷹月(…でも、何度も遠慮するのも悪いしそろそろ付き合わないといけないわよね)

鷹月「ごめんなさい。今から行くわ(まあ、これくらいならきっと…)」



鷹月「う、うぷ……」

一夏「ご、ごめん…いくら何でもはしゃぎ過ぎた…」

鷹月「い、いいから…気に、しないで…。
  (予想以上に…衝突時の振動が身体に響くわ…ていうか女の子相手に全力突進て…)」

一夏「本当にごめん…弾と一緒に乗った時と同じよう要領でやっちまった…」

鷹月「大、丈夫、だから…でも、次は大人しい乗り物でお願いね…?」

一夏「わ、分かったよ…本当にごめんな」

鷹月(箒も…苦労してるのねぇ…)

―――――――――
―――――
―――

~観覧車~

一夏「だ、大丈夫か鷹月さん…?」

鷹月「う、うん…(織斑くんの肩を借りてるのに…ドキドキしていいやら胸焼けをこじらせていいやら…)」

一夏「ほら、もうすぐだから。高いところから景色を眺めれば、気が紛れるだろ」

鷹月「あぅぅ…ありがとぅ…」



鷹月「ふぅ…ちょっと落ち着いてきたわ」

一夏「そっか。良かったよ」

鷹月「それにしても…いい景色ね。学園まで見渡せるわ」

一夏「そうだな」

鷹月「あれ? 何か織斑くん、あまり興奮してない?」

一夏「あぁー…高いところからの景色は、isでしょっちゅう見てるからかなぁ…」

鷹月「そっかぁ…専用機持ちってやっぱりいいなー」

一夏「そうか?」

鷹月「そりゃそうよ。自分だけの専用機は、is学園に入学した者なら誰だって憧れるわ」

一夏「そっか。やっぱり、そういうもんか」

鷹月「そ、そういうもんって…織斑くん、専用機持ちがどれだけ凄いか、分かってないの?」

一夏「分かってるよ。isってのは専らスポーツ競技用とはいえ、紛れも無く兵器だからな。
   だからそれを自由に使役できる専用機持ちって言う立場のステータスも、少しくらいは知ってる」

鷹月「う、うん…」

一夏「…まぁ俺は、正直言って棚ボタでisを貰ったようなもんだからな。確かに認識は甘いかもしれないよ」

鷹月「あ、ごめん…別に、そういうつもりじゃ…」

一夏「…でも、俺は別に専用機持ちがそんなにいいとは思えない」

鷹月「え…?」

一夏「兵器を持つって事は言うまでもなく、力を持つことだ。
   力を持ったからには、それ相応の責任も当然付きまとう」

一夏「使い方次第で国を左右するし、気に入らなきゃ色々とぶっ壊す事だって出来る。
   だから専用機持ちの皆は、誰だって何かしらの責任を背負っているからな」

一夏「セシリアも、鈴も、シャルも、ラウラも、楯無さんも、国の代表としての誇りを持ってる。
   代表候補生でない俺や箒だって、決して生半可な覚悟でisを持ってるわけじゃない」

鷹月「……」

鷹月「そっか…他の皆は、専用機をファッションかトレンドの何かと勘違いしてるみたいだけど…。
   本当は、そんな大事なものなんだね」

一夏「あぁ、ごめん。別に他の皆に覚悟が足りないとか、そんな意味じゃないんだ」

鷹月「分かっているわ。でも、それでも織斑くんは…立派だね」

一夏「…まぁ千冬姉にはまだ甘いって言われるけどな」

鷹月「あはは…でも、そっかぁ…。確かに、そんな中途半端な気持ちで専用機持ちになりたいってのは…
   ちょっと、おこがましかったかもしれないわ。反省する」

一夏「別になりたければ、それに向かって努力するのはいいと思う。
   でも俺は…やっぱり皆、普通の女子高生でもいいと思う」

鷹月「え…?」

一夏「isが出る前は、俺たちの頃の高校生ってさ。普通に友達同士で遊びあっていたじゃないか。
   でも今は…何となくだけど、すごくギスギスしてるんだよな」

一夏「isが出てから、何かと皆は自分以外の誰かを追い越そうと、出し抜こうと必死になってる気がするんだ」

一夏「だから別にisなんか乗れなくてもさ…普通にまた、笑い合いながら友達と遊ぶだけの…
   そんな高校生ってだけでも、全然構わないと思う。だってそれが…普通だったはずだから」

鷹月「……」

一夏「…まぁ、今となっては男としての甘い考えなのかもな」

鷹月「そんなこと…ないと思うよ」

鷹月「ありがとう。何だか、少し楽になったわ」

一夏「そうか? 大した事は言ってないと思うんだけどな」

鷹月「ううん。何だかね…ここに入ってからは皆、とにかく落ちこぼれないように頑張ろうとしていると思う」

鷹月「でも…織斑くんみたいな考え方も、やっぱりあっていいと思う。
   だってそれが、年頃の女の子の当たり前の過ごし方だもの」

一夏「あはははは。千冬姉が聞いたら多分怒られるな」

鷹月「そうだね。うふふふっ」

―――――――――
―――――
―――

鷹月「はぁー…楽しかったね」

一夏「そうだなー。観覧車なんて久しぶりに乗ったけど、何だか落ち着けて良かったよ」

鷹月「うん、そうだね―――って、あれ?」

一夏「?」

鷹月(よ、よくよく考えれば…今の今まで、密室の個室で…織斑くんと…ふふふふふふふ2人きり!?)

鷹月(あ、あぅぅぅぅぅぅ…/// い、意識しだしたら恥ずかしくなってきた~///)カァァ

一夏(あ、あれ…? どうしよう、また具合でも悪くなったのかな? 顔が赤くなってきているぞ…?)

~アヴェニュー~

一夏「そろそろ時間が迫っているな…。最後に1つ乗って、プール行こうか」

鷹月「あ、うん…(うぅ…まだ顔が熱いわ…)」

一夏「だ、大丈夫か? まだ、少し休むか?」

鷹月「う、ううん! 気にしないで!」ブンブン

一夏「そっか―――ん?」

鷹月「どうかした?」

一夏「あれは…」


『ゲーッゲッゲッゲッゲ!! この小僧の命が惜しければ、いけ好かないあの野郎を呼ぶこったな!!』


鷹月「あ、何かのヒーローショーみたいね。懐かしいなぁ…」

一夏「……」

鷹月「え…も、もしかして織斑くん…結構、興味あるの…な、なーんて…」

一夏「…かもしれない」

鷹月「え」

一夏「…ごめん、ちょっと見たいんだけど、ダメか?」

鷹月「べ、別にいいけど…(うわぉ…意外な趣味ね…男の子って、そういうもんなのかしら…)」



お姉さん「きゃー! 皆、大変よー! 良い子が悪い怪人に攫われちゃった~!」

子供「うわ~ん! 助けて~!」

怪人「ひーっひっひっひっひ!! 泣いても喚いても無駄よぉ! お前には、あいつを呼び出す餌になってもらうぜぇ!!」

お姉さん「何て悪い怪人なのかしら! でも、大丈夫! 皆のヒーローが、きっと助けてくれるからね!」

お姉さん「さぁ皆! 声を揃えて、元気呼ぼうね! せーっの!」

鷹月「おぉ…ベタな展開だけど、あの怪人もセットも凝ってるわねぇ…」


ヒーロー「とうッッ!!」シュタッ


お姉さん「待ってました! 我らがヒーローの登場です!」

怪人「無垢な子供を脅かす悪党め! この正義の鉄拳、受けてみろ!!」

なんてこった死にたい

怪人「無垢な子供を脅かす悪党め! この正義の鉄拳、受けてみろ!!」

ヒーロー「無垢な子供を脅かす悪党め! この正義の鉄拳、受けてみろ!!」

鷹月「す、すごいわ…ムーンサルトで登場なんて…流石はアクション俳優ね」

一夏「……」

鷹月(うわぉ…織斑くん、めっちゃ真剣に見てるわ…)

一夏「……」

一夏(簪も…こういうのが好きなんだよな)

鷹月「おぉ…いきなりシャイニングウィザード…容赦ないわねあのヒーロー…」

一夏(悪い奴らを、怖い奴らを懲らしめる悪の軍団に悠然と立ち向かうヒーロー…。
   それを、多分あいつは、いつか自分もなれるって思って…憧れていたんだよな)

鷹月「え…何で4の字固め? 最近のヒーローって寝技もありなの?」

一夏(…そう言えばゴーレムⅢ襲撃のとき、俺は簪に言ったな。『完全無欠なヒーローはいない』って)

一夏(俺たちは、ただの人間だ。ただ逃げないで、立ち向かえる人間だって)

鷹月「あぁ、あ、あの技は…! 相撲の禁断の禁じ手、鯖十字!? まさかこんなところで見れるなんて!?」

一夏(そう…俺はただの人間だ。簪も、楯無さんも、ただのisを使えるだけの人間だ)

鷹月「そして決め技は……」

一夏(でも…)

鷹月「……あ、コブラツイストだ。意外に普通なのね…」

~プールへの道中~

鷹月「それにしてもヒーローショー、中々面白かったわ。正直、子供だましと思ってたんだけど」

一夏「……」

鷹月「…織斑くん?」

一夏「あ、あぁごめん。ちょっと考え事してた」

鷹月「そ、そうなんだ。でもちょっと意外だったわ。織斑くん、こういうのが好きだったなんて」

一夏「え…? いや、俺は、そんな…」

鷹月「隠さなくてもいいじゃない。あんな真剣に見てたんだもの。誰だって分かるわよ」

一夏「……」

一夏(別にそこまで好きでもないんだけど…気が付いたら、足が向いていたんだよな)

一夏(もしこの場に簪がいたら…きっと、目を輝かせて見に行っていただろうし)

一夏(簪がどんな気持ちでヒーローを見ていたのか、知りたかっただけなんだ)

一夏「……」

鷹月「男の子の好みってよく分からないけどさ。やっぱり皆、あーいうのが好きなの?」

一夏「まぁ…誰だって、一度くらいは憧れるな」

鷹月「そうなんだ。小学校の時、クラスの男子もさ。
   ヒーロー番組の翌日にはそのごっこ遊びしてたのを思い出したの」

一夏「あははは。そういや俺も似たようなことをしてた気がする」

鷹月「でも私、思うんだよね。男の子も女の子も、憧れる本質は同じだって」

一夏「え? どういうことだ?」

鷹月「男の子が一度はヒーローに憧れるようにね。女の子も、一度くらいはお姫様に憧れるの。
   いつか自分を、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるって」

一夏「あはははは。ベッタベタだな」

鷹月「笑うなんて失礼ね。女の子の永遠の夢なのよ?」

一夏「あ、あぁごめん。でも、何が同じなんだ?」

鷹月「えっとさ。男の子も…きっと、王子様に憧れるんだと思うの」

一夏「は?」

鷹月「ほら、ファンタジーでもよくあるじゃない。竜に囚われたお姫様を助け出して、結婚する王子や騎士のお話」

一夏「そう言えば確かに聞くな。でも、ヒーローと同じなのか?
   確かにドラゴンを倒しに行くくだりは同じかもしれないけど」

鷹月「ヒーローだって、危なくなったヒロインを助けたりするじゃない?」

一夏「そうだけどさ。でも、男がヒーローに憧れるのは格好いいからだと思うぜ。
   悪い怪人たちを、バッタバッタと倒していく姿にさ。俺たちも、あんな風になりたいと思うんだ」

鷹月「違うわ。憧れる本質は、もっと別の方にある」

一夏「え?」

鷹月「ただ力を振るいたいだけなら、男の子は悪の首領とか暴力団に憧れるようになるはず。
   でもそれでもヒーローが愛されているのは…助けて、愛される人がいるからだと思う」

一夏「―――!!」

鷹月「ヒーロー物語も騎士の物語りも、カタルシスはドラゴンを倒すことにあるかもしれない。
   でも物語はそれで終わるんじゃなくて、ちゃんとお姫様と結ばれるハッピーエンドを残してる」

鷹月「いろんな人から感謝されて、色々な人に愛される人。そのために、ヒーローは正義を貫いている。
   だから皆格好良くって、誰もが憧れるんだと思うの」

鷹月「だから男の子も、皆を救うヒーローになりたいと同時に、お姫様を救い出す王子様になりたい。
   きっと、そう願っているんだと私は思うんだ」

一夏「……」

鷹月「…って、柄にもなく熱く語っちゃったわね。何だか恥ずかしいわ」

一夏「…ありがとう、鷹月さん」

鷹月「ん?」

一夏「俺、さ。やっぱりヒーローが好きだったんだな」

鷹月「え…あ、あぁ、うん…(知ってるけど…?)」

一夏「ありがとう。鷹月さんのおかげで、色々と気付けた気がするよ」

鷹月「へっ? あぁ、いや…どう、いたしまして?」

一夏(そうか…そういう、ことだったんだ)

>>830
>>1はシャル以外のヒロイン単も書いてたのか
できればそれぞれのタイトル教えてくれないか?

>>833
シャル「幸せになりたい」
鈴「一夏を振り向かせるわ!安価で!」
ラウラ「一夏を本格的に嫁にするぞ!」クラリッサ「安価で!」
セシリアもタイトル忘れたけど安価スレがある

再開前の諸注意

安価は多分あと1回。多くとも2回
安価次第では簪√も楯無√もバッドエンドも姉妹どんぶりも有り得る
次スレはありません。意地でもこのスレ内で終わらせます

あと、安価取る時、連投は無効st扱い
それと、やるなとは言わんけど一泊とか日を跨ぐのは勘弁して…どうしても長くなるから…

んじゃいきなりキンクリで悪いけど始めますの

~ホテル前~

一夏「ふぅ。ようやく着いたな」

鷹月「近くにホテルがあって助かったわね。小さいけど綺麗で良かったわ」

一夏「ご、ごめんな…遊園地とプールで散在しちまったから、手持ちがそんななくて…」

鷹月「い、いいのよ。気にしないで(夕飯がファーストフードだったのは正直どうかと思うけど…)」

鷹月(…そういえば、温泉旅行のときは織斑くんって会長の妹さんと同室だったのよね)

鷹月(…まさか、まさかねぇ。いやいやいやそんな展開あるわけが)

一夏「じゃあ、まずはチェックインしなきゃな」

鷹月「そ、そうだね」

一夏「時間帯としてはギリギリだけど、まぁ多分2部屋くらいは取れるだろ」

鷹月(あ、うん…別に期待はしてませんでしたよホント)

―――――――――
―――――
―――

~フロント~

ホテルマン「学生2名様ですね。現在の料金はこちらになっております」

鷹月「う…や、やっぱり結構値が張るわね。でもギリギリ足りて良かったわ」

一夏「……」

鷹月「どうしかした、織斑くん?」

一夏「…鷹月さん」

鷹月「ん?」

一夏「申し訳ないんだけど…貸してくれない?」

鷹月「え、えぇぇぇ!? まさか、手持ちがそんなにないの!?」

一夏「ご、ごめん…まさかこんなに高いだなんて思わなくて…」

鷹月「ちょ、ちょっと待ってて。うわ、そんなにないんだ…。でも私もギリギリしかないし…。
   銀行も閉まってるし近くにatmもないし…」

一夏「じゃあホテルの人には悪いけど…やめるか?」

ホテルマン「お客様。この辺りの宿泊施設は、当ホテルぐらいしかありませんよ?
      最寄の旅館などは、歩いて2時間かかります」

一夏鷹月「「」」

~個室(ダブルベッド)~

一夏「…結局こうなっちまったか」

鷹月(恨みたい…浅はかにフラグを立ててしまった自分を呪いたい…)

一夏「な、なんかゴメンな。俺が無計画なばかりに相部屋になっちまって」

鷹月「あ、あぁうん…仕方ないわよね」

一夏「しかし鷹月さんまで、とは…」

鷹月「え?」

一夏「いや、さ。この間温泉行った時、簪と同室だっただろ?
   箒も、最初の寮生活の時は同室だったからさ」

一夏「まさか鷹月さんとも、同じ部屋で暮らすとは思わなかったなぁ、って」

鷹月「く、暮らすって…///」

一夏「あ、あぁごめんごめん! 変に含みのある言い方になっちまったな! ごめん!」

一夏「と、とりあえずベッドが近いから少し離すよ。鷹月さんはゆっくりそっちで寝てくれ」ズル…ズル

鷹月「あ、うん…(含みのある言い方された後にこういうのされると…複雑な気持ちになるわ)」

鷹月「と、とにかく寝ましょうか。私もだいぶ疲れちゃったし」

一夏「そうだな。俺は平気だけど、鷹月さんはシャワーとか浴びなくていいのか?」

鷹月「そ、そうね…じゃあ、借りようかしら」

一夏「ああ。ゆっくり温まってきてくれ」

鷹月「…織斑くん?」

一夏「ん?」

鷹月「の…覗かない…でね?」

一夏「えぇぇ!? し、しないよ!」

鷹月「あ、うん…念のため」

一夏「ま、まったく…箒といい簪といい、楯無さんといい…俺の事を何だと思ってるんだ」

鷹月「あはは…じゃあちょっとシャワー借りるわ」

一夏「お、おう…」

―――――――――
―――――
―――

鷹月(…本当に何事もなく終わってしまった。ホッとしてる自分とガッカリしてる自分が同時にいる…)

一夏(うッ…な、何だか湯上りの女の子って…3割増しくらいで艶っぽく見えるよな…)

鷹月(実はプールのときも気合入れた水着だったのに…。乗りも微妙だったし…。
   水色じゃなかったかしら…?)

鷹月「わ、私は髪を乾かしてから寝るから。織斑くんは先に寝てていいよ」

一夏「そ、そうか?」

鷹月「うん。ちょっとうるさいけど、勘弁してね」カチッ

ブォォォ

一夏「…なぁ鷹月さん」

鷹月「なに?」ブィィィィ

一夏「話があるんだけど」

鷹月「ふぇ!?」カチッ ブボボボボボボボボボ

鷹月「あ、あちちちちちちちちちちちちち!?」

一夏「お、おいおい大丈夫か?」

鷹月「ご、ごめんごめん…(は、話ってまさか…え、まさか…!?)」

鷹月「驚かせてごめんなさい。で、は、話って…何かな?」モジモジ

一夏「…俺さ。気になる女の子がいるんだ」

鷹月「そ、そうなんだ…///」

一夏「この間温泉に一緒に行ったり、色々あったけど…何だかんだで楽しかった」

鷹月(この話の切り口…そ、それに温泉に一緒に行った女の子って…)

鷹月(え、えぇぇぇぇぇ!? まさか、本当に!? ちょちょちょちょっと! いくら何でも急すぎるわ!)アタフタ

一夏「何か前からさ。他の皆とは違って、見ていて危なっかしいというか…
   一緒に居て、傍で支えてやらないといけない奴だなぁって思えて」

鷹月「う、うん…そう、なんだ…」ドキドキ

一夏「今では変わったけど…自分で自分の限界を決めてるっていうか、殻に篭りたがるような奴だったからな。
   だから、俺が何とかして手を引いてやりたいって思えたんだ」

鷹月「へ、へぇ…」

鷹月(た、確かに私は専用機とか持ってないし、どうせ自分なんかとか思っていたけど…。
   お、織斑くん…そこまで心配してくれていたなんて…///)

一夏「でも、あいつは実は凄い奴なんだよな。そんな自分を変えるために、一生懸命になれる奴なんだよ」

一夏「だって1からisを作ろうとしようなんてさ。普通思わないだろ?
   なのにあいつは…ひた向きに頑張っていたんだ」

鷹月「そ、そうなんだぁ…1からisをねぇ…」

鷹月「………」

鷹月「……」

鷹月「…」

鷹月「あれ?」

一夏「俺もさ。メチャクチャ凄い姉がいるんだけど、あそこまで努力しようだなんて思わなかったからな。
   だからあそこまで努力しようとする奴を見てさ。ちょっと凄いなぁ、って思った」

鷹月「…あのさ」

一夏「ん?」

鷹月「もしかしてその子って…更識簪さん?」

一夏「あはは。ばれちまったか」

鷹月「」

鷹月「そ、そうなんだ…気になる子の話ってのいうのは…更識簪さんのことだったんだ…」

一夏「いきなりでごめんな。こんなこと話せるの、鷹月さんがいいなぁって思ったから」

鷹月(そういう時は『相談があるんだ』って言ってよ!!)

鷹月「(ま、まぁいいわ…)で、何? 続けてよ」

一夏「…実はさ」

鷹月「ん?」

一夏「あー…これ、言っていいのかな?」

鷹月「何で?」

一夏「いや、撮られてるから」

鷹月「もう消灯時間は過ぎてるわ。流石に生徒が寝る時間までは放映されてないと思うわ」

一夏「そ、そっか。実はさ」

鷹月「うん」

一夏「その…今日、簪に告白された」

鷹月「あー…」

一夏「…なんで驚かないんだ?」

鷹月「いや、だって…ねぇ?」

一夏「いや、『ねぇ』って言われても…」

鷹月(だっていずれはそうなるって分かりきってたし…まぁ最初が簪さんだったのは意外だけど)

鷹月「それで告白の返事も決まらないまま、どうすれば良いか分からないから、今日のパートナーを私にしたわけね」

一夏「うん。理解が早くて助かるよ」

鷹月「そ、そうなんだ…」ハァ…

一夏「でも、俺自身があいつをどう思っているかよく分からなかったからな。
   遊んでいる最中も、簪の顔がちらついててどこか浮ついた感じになっちまうし」

鷹月「……」

一夏「…鷹月さん?」

鷹月「織斑くんってさ」

一夏「ん?」

鷹月「甲斐性ないよね」

一夏「え」

鷹月「はぁ…」

一夏「な、何でため息なんか吐くんだよ」

鷹月「だってまぁ…2人きりで遊んでいる最中に他の女の子に現を抜かしていただなんて言われちゃ、吐きたくもなるわ」

一夏「え? そ、そうなのか?」

鷹月「…まぁ最初からあんまり望みが薄いって事は分かっていたけどね」ボソッ

一夏「ん?」

鷹月「何でもないわ。で、どうすれば良いか、まだ悩んでいるの?」

一夏「…いや」

鷹月「え?」

一夏「もう、決めたからな」

鷹月「え…」

一夏「俺があいつにとって…どんな存在になりたいかは決めたから」

鷹月「……」

一夏「鷹月さんのおかげだ」

鷹月「え?」

一夏「ほら。さっきの、男の子は王子様にも憧れるって話」

鷹月「あー。あれ?」

一夏「ああ。あれを聞いたらさ…何だか胸のつっかえとか、モヤモヤしていたもんが全部吹っ飛んだ気がしたんだ」

一夏「何だか…すごく、気が楽になったんだよ。だから、お礼を言いたかった。それだけだ」

鷹月「…そっか」

一夏「本当にありがとうな、鷹月さん」

鷹月「私はただ、持論を言ったに過ぎないわよ。大した事はしてないわ」

一夏「それでもいい。決められたのは、鷹月さんのおかげだ」

鷹月「あははは。ありがと」

一夏「話長くなっちまってゴメンな。髪、乾かしてる最中なのに」

鷹月「いいわよ。もう大分乾いたから」

一夏「そっか。じゃあ、俺寝るわ」

鷹月「うん。お休み」カチッ

ブォォォォ…

鷹月(…頑張ってね織斑くん。陰ながらだけど、応援するわ)

鷹月(それと箒は…そっか。これは見てないんだっけ。でも…悲しませるだろうなぁ…)

鷹月(…本当に罪作りな男ね、織斑くんは)

鷹月(箒。きっと辛いかもしれないけど…でも、貴女ならきっと大丈夫よ)

鷹月(愚痴も嗚咽も聴くし、私の胸ならいくらでも貸してあげるから)

鷹月(だから箒…頑張ろうね)

ブォォォォ…カチッ

―――――――――
―――――
―――

~翌日、生徒会室~

ガララッ

一夏「ただいま戻りましたー…って、あれ?」

簪「あ…お、おかえり…一夏」

一夏「おぉ簪…って、その顔どうした? 目の下にすごいクマができてるぞ?」

簪「あ、う…こ、これは、そのぉ…」

一夏「?」

簪(だだだだだ、だってぇ…一夏と、きききき、キス、して…告白まで、したその日に…眠れるわけ、ないよぉ…)


ゴスッ


一夏「いてっ」

楯無「はいはい一夏くん。お姉さんに挨拶を忘れるなんてちょっと寂しいなー」

一夏「す、すいません…ただいまです、楯無さん」

楯無「うん、おかえりなさい! そしてミッション・コンプリートおめでとー!」パンパカパーン

一夏「うぉ…は、はははは…どうも」

楯無「…さてさて一夏くん。ここでお知らせがあります」

一夏「え? 何ですか?」

楯無「このイベントは…今日で終わりです」

一夏「えぇ!? 何で急にまた!?」

楯無「織斑先生のお達しでね。あの後、職員会議があったらしくてさ。
   本当は即刻中止になりそうだったんだけど、何とか今日一杯だけ時間を作ってくれたらしいの」

一夏「そ、そうなんですか…千冬姉が…でも、何でそこまで…?」

楯無(…このイベントは、一夏くんにとっても大事なものだからね。本当に色々な人から愛されるなぁ、一夏くんは)

楯無「まぁまぁそういうわけなので。最終日のミッション、張り切って行こうか」

一夏「は、はい!」

楯無「…ねぇ」

一夏「はい?」

楯無「あれは…決まったの?」

一夏「……」

簪「……」

一夏「…はい」

簪「…ッ!」

楯無「…そっか」

一夏「まだ言いたいことはまとまってないけど…考えは、決めました」

楯無「そっか。じゃあ、今日も君が引きなさい」スッ

一夏「…分かりました。じゃあ…いきます」

一夏(内容によっては、これが最後のミッションか…色々と大変だったけど…)

一夏(でも…やっぱり、楽しかったな)

ゴソゴソ

一夏「ええと…次のミッションは…『>>859』です」

おりむーとかんちゃんが私にケーキを作ってプレゼントする~ by本音

今日は色々とキンクリでごめん。尺が足りないのと鷹月さんの情報少なすぎてなんか、もうね……
鷹月さんが好きすぎる素知らぬ誰かすまぬ…すまぬ…

次回は日曜の予定。じゃあの


現時点好感度指数(参考)
鈴     ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□
簪     ■■■■■■■■←リーチ!
シャル  ■■■□□□□□
箒    ■■■□□□□□
鷹月   ■■□□□□□□


『おりむーとかんちゃんが私にケーキを作ってプレゼントする~ by本音 』


楯無「……」

一夏「の、のほほんさん…まぁらしいっちゃらしいけどさ…」

簪「あ、うぅ…///」

一夏(か、簪が緊張してる…)

一夏(む…無理もないか…昨日、あんなことを言った手前でいきなりコレじゃぁな…)

楯無「…さてさて! 無事に次のミッションも決まったね!
   じゃあ審査員を呼んで来るからちょっと待っててね!」

―――――――――
―――――
―――

本音「呼ばれました~」フリフリ

虚「す、すいませんお嬢様…何だかうちの妹が変なミッションを入れてしまったみたいで…」

楯無「いいのいーの! 私としては本音ちゃんも皆も、このイベントを通じて楽しんでくれればオールオッケーだから!」

本音「わ~い! 楽しみだな~! 私、かんちゃんのケーキ大好きだもん~!」ピョコピョコ

虚「もう本音ったら…はしたないわね」

楯無「はいはーい! では審査員も揃ったことだしルール説明を行いまーす!」

楯無「ミッションは至極単純! 
   一夏くんと簪ちゃんが共同で作ったケーキを、私と虚ちゃんと本音ちゃんの3人で試食します!」

楯無「そして3人全員の舌を唸らせ、見事『美味しい』と言わせればミッション・コンプリートです!」

一夏「うぉぅ…全会一致で認められなきゃダメか…。楯無さんも味見するし、これは難儀だな」

楯無「場所は家庭科室ね! 材料は一通り揃っているはずだから!
   それじゃ…レーッツ・クッキーング!」

一夏「了解しました。じゃあ移動するか、簪」

簪「あ、うん…」

―――――――――
―――――
―――

~家庭科室~

一夏「さて…バターに砂糖、薄力粉にペーキングパウダー、バニラエッセンスに牛乳と旬の果実。
   本当に必要なものは一通り揃ってるな」

簪「…うん」

一夏「うーん…しかし弱ったなぁ。ケーキなんて作ったことないぞ」

簪「え…そう、なの?」

一夏「俺は主に和食専門だしな。デザートなんてコーヒーゼリーくらいしか作ったことない」

簪「そ、そう、なんだ…」

一夏「簪はどうだ? ケーキとか作れそうか?」

簪「い、一応…」

一夏「お、そうなんだ。どんな?」

簪「カ、カップケーキ…抹茶の」

一夏「カップケーキ?」

簪「それくらいしか…作れないから」

一夏「そっか。じゃあ丁度いいし、それを作ろうぜ」

簪「え…? い、いいの?」

一夏「2人で慣れないもんを作るよりは、簪の慣れたもんを作る方が安心するよ。
   それに、のほほんさんも簪の作ったケーキは美味いって言ってたしな」

簪「で、でも…」

一夏「ん?」

簪「…自信、ない」

一夏「……」

ポンッ

簪「ふぇ!?」

一夏「簪、大丈夫だ。お前を信じろ」

簪「え…」

一夏「お前はお前が思っているより、ずっと凄い奴だよ。それは俺もそう思うし、楯無さんだってそう思ってる」

一夏「だから簪。もっ自信を持て。何より、お前のケーキを楽しみにしてくれてるのほほんさんに悪いだろ」

簪「いち、か…」

一夏「まぁ自信ないようなら俺だって手伝うよ。味の調整くらいはできるからな」

簪「わ、分かった…ごめん…」

一夏「…そういう時は謝るんじゃなくて、礼を言うもんだ」

簪「…うん」

一夏「よしっ。じゃあ作るか」

簪「…一夏」

一夏「ん?」

簪「ありがとう…」ニコッ

一夏「お、おう…どう、いたしまして…///」

―――――――――
―――――
―――

一夏「ええと。じゃあまずは何をすればいいんだ?」

簪「まずは常温で温めておいたバターがあるから…一夏は、それをボウルに入れて混ぜて」

一夏「混ぜる?」

簪「ペースト状になるまで、よくかき混ぜるの。結構、力要るから」

一夏「おっけー」シャコシャコ

簪「私は卵を溶いたり、薄力粉と抹茶とベーキングパウダーを予め混ぜておくから」カシャカシャ

一夏「うぉぉぉぉ…これ、意外と疲れるな…」ジャコジャコ

簪「大変だけど、しっかり混ぜて。すごく大事な作業だから」

一夏「分かった」シャッシャ

簪「うわぁ…やっぱり男の子がやると早い…もう白くなってる」

一夏「そ、そうか? 最初の方は大変だったけど、溶けてきたら結構楽になったぜ」

簪「これくらいなら、もういいかな。砂糖を入れるね」

一夏「あ、うん」

簪「一夏はかき混ぜ続けて。砂糖は、3回に分けて入れるから」

一夏「そ、そうか。悪い」シャコシャコ

簪「じゃあ入れるね」

パッパッ

一夏「それは…粉砂糖か?」

簪「うん。これだと、味が馴染みやすいの。篩(フルイ)を使えば、均等に味付けも出来るし」

一夏「あれ? でも、粉砂糖なんかあったっけ? グラニュー糖ならあったけど」

簪「粉砂糖は簡単に作れるよ。普通の砂糖をすり鉢で潰すだけ」

一夏「そうなのか。準備いいな、簪」

簪「な、慣れてる、から…///」

簪「こんなものかな。あとはまた、味が全体に馴染むまでかき混ぜて」

一夏「おう」ワシャワシャ

簪「溶き卵も入れちゃうね。これも3回に分けて入れる」

一夏「分かった」

簪「まずは卵黄から」

一夏「あれ、卵黄から? 白身はどうした?」

簪「こっち」コト

一夏「ん? 泡だってるな?」

簪「卵を溶くとき、白身を分けて泡だてておけば、すごくふっくらと焼きあがるの」

一夏「そうなんだ。じゃあ、そっちも入れてくれ」

簪「うん。少しずつ入れるね」

一夏「砂糖もそうだけど、こういうのって一気にいれないのか?」

簪「ダメ。生地が均等にならないから。ケーキの生地はすごく繊細なの。
  ちょっとした匙加減のミスが、生かすか殺すかを決める」

一夏「そ、そうなのか…」

一夏「こんなもんかな」シャコシャコ

簪「そうだね。じゃあ、今度は薄力粉とか混ぜた奴を篩で入れていくよ。
  一夏はゴムべらで、ざくざくと切るように混ぜて」シャコシャコ

一夏「切るように?」

簪「生地に空気を混ぜるの。より、ふっくらと焼ける」シャコシャコ

一夏「へぇー…なるほど」

簪「時々、外側から内側へ巻き込むように混ぜるのもいい」

一夏「え、えーと…こうか?」クイッ

簪「違う。こう―――」

ピタッ

一夏「ッ///」

簪「ご、ごめん…///」ババッ

一夏「あ、いや…」

簪「……」

一夏「か、代わるか?」

簪「あ、うん…」

簪「え、ええと…じゃあこれくらいかな。あとは牛乳を入れて、もう一回混ぜる」

一夏「ま、混ぜてばっかりだな…」

簪「もう少しだから頑張って」トプトプ

一夏「あいよ」シャッシャッシャ

簪「あ、それくらいでいい。このままボウルにラップをかけて、冷蔵庫で30分くらい寝かせる」

一夏「分かった」ピッ

一夏「じゃあ冷蔵庫にしまうな。よっと…」

パタン

一夏「ふぅ。ひとまずは一息ついたな」

簪「そうだね」

一夏「ええと…じゃあ、暇になったのか」

簪「何もしなくてもいいけど、どうせならトッピングの材料も作ろうと思う。
  チョコレートに生クリームに小豆、色々合うから」

一夏「分かった。俺も手伝うよ」

簪「うん」

簪「じゃあ…一夏は、生クリームを作ってて」

一夏「了解。ええと、この液状の生クリームをかき混ぜるんだよな?」

簪「うん。ひたすら、かき混ぜて」コトッ

一夏「お、おぅ…(何だか作業的になってきたぞ…)」シャコシャコ

簪「それも結構大変だから…ごめんね」

一夏「き、気にするな。こういうのも男手が必要だからな!」シャカシャカ

簪「私は、小豆を茹でる」グツグツ

一夏「お、おう(な、なんだこれ…ちっともクリーム状にならないぞ…)」ジャカジャカ

簪「い、一夏…そんなに力を入れないで…」

一夏「そ、そんなこと言ってもな…結構力入れてるんだけど、全然上手くいかなくてさ…」

簪「ただ揺らすだけじゃだめ。空気を入れる感じでかき混ぜないと。貸して」サッ

一夏「お?」

簪「こんな感じ」シャッシャッシャッ

一夏「おぉー…器用だな」

簪「そ、それほどでも…」

簪「ほら。ちょっと堅くなった」トローン

一夏「なるほど。縦方向にも回転させながら混ぜるといいのか」

簪「そう。ボウルの中の空気を、巻き込みながら溶くイメージ」

一夏「ありがとう。じゃ、やってみるよ」シャッシャッシャッ

簪「うん」

―――――――――
―――――
―――

一夏「はぁ…はぁ…はぁ…つ、疲れた…」

簪「お疲れ様。こっちも、準備できたよ」

一夏「か、菓子作りって色々と重労働なんだな…。
   ゼリーなんて混ぜて型に流し込むくらいだから、知らなかったよ」

簪「大変だったね。じゃあ、これらもラップにかけて、冷蔵庫で冷やしておこうか」

一夏「分かった」

―――――――――
―――――
―――

一夏「よしっ。しまい終わったぞ」

簪「うん、ありがとう一夏」

一夏「ええと…生地を寝かしつけてどれくらいだ?」

簪「まだ10分くらいだね」

一夏「他にやることは?」

簪「…特にないかな」

一夏「そっか。じゃあ、のんびり待とうぜ。お茶でも淹れるよ」

簪「う、うん…ありがと」

―――――――――
―――――
―――

一夏「ほいよ、粗茶ですが」コトッ

簪「あ、ありがと…」

一夏「ケーキ待ち遠しいな。あれだけ頑張ったんだから、絶対美味いぜ」

簪「そ、そうだね…私も、美味しくできてると思う」

一夏「ああ。簪もそう思うか?」

簪「う、うん…だって…」

一夏「ん?」

簪「い、一夏と一緒に…作ったものだから」

一夏「え…///」

簪「…///」

一夏「そ、そうだよな! 何てたって俺と簪の初めての共同作業だからな!
   う、美味くないわけがないぜ!」

簪「きょ、きょうどう…さぎょう…はじめての…///」プシュゥゥゥ…

一夏(な、何言ってんだ俺は…///)ドキドキ

簪「…ね、ねぇ一夏」

一夏「な、何だよ簪…?」

簪「あ、あのね、その…き、昨日の、こと、なんだけど…///」

一夏「あ…お、おう…///」ドキッ

簪「その、えっと、あの…」モジモジ

一夏「うッ…(顔をすごく赤くしてモジモジしてる…)」

簪「え、ええと、ね…! その、あぅ…」カァァァ…

一夏「か、簪…無理、しなてくても―――」

簪「い、いや!」

一夏「え…?」

簪「だ、だっ、て…わわ、私…」

一夏「うッ…」

簪「こ、告白、したから…一夏に」

一夏「あぅ…///」

簪「///」プシュゥゥゥ…

簪「だ、だから、その…!」

一夏「え…」

簪「へ、返事…ききたい」

一夏「えぇッ!?」

簪「い、一夏の返事…きき、たい…!」ドキドキ

一夏「い、今じゃなきゃ…ダメか…?」

簪「だ、ダメ…! 今じゃなきゃ、ダメ!」

一夏「えッ…」

簪「い、一夏は…」


簪「私のこと……好き?」


一夏「いッ!?」ドクン!

簪「///」ジュゥゥゥゥゥ…

一夏「え、ええと…その、何ていうか…」

簪「……」

一夏「へ、返事と言われても…」

簪「…一夏は」

一夏「ん、ん?」

簪「やっぱり…私のこと、嫌いなの…?」

一夏「ち、違う! そういう意味じゃない!」

簪「じゃあ…」

一夏「だ、だから! 告白なんてされたことないから、何て言えばいいか困ってるだけだ!」

簪「…なら、言って」

一夏「え?」

簪「私のこと…どう、思ってるか」

一夏「うッ…そ、それは、だな…ええと…」ドキドキ

簪「……」バクバク

一夏「ええと…こ、告白してくれた時、正直言ってすごく驚いたけど…」

簪「……」

一夏「その…お、お前が俺のこと、そういう風に思ってくれて…何ていうか、その…」

簪「……」

一夏「あ、あぁもう…言いたいことがまとまらねぇな…。と、とにかく!
   あの後…すごく考えたんだ、俺…」

簪「……」

一夏「鷹月さんとかに相談してさ…。お前が俺にとって、どんな奴なのか」

一夏「俺自身がお前にとって、どうありたいのか…そういうのを、必死に答えを探した」

ドンドンドン

一夏「それでその…俺、自分なりの答えを見つけた気がした。俺の気持ち…分かった気がするんだ」

簪「…ッ!」ドキッ

一夏「だ、だから俺は、その…お、お前にとって―――」


『いちかあああああああああああああああああああああああああああああ!!!』ドンドンドンドンドン!!


一夏「ん?」

一夏「な、なんだ? 家庭科室の外から?」


箒『おい一夏! ここを開けろ!』

セシリア『どういうことですの!?』


一夏「いぃッ!? も、もしかしてお前らか!? 何でここにいるんだよ!?」


鈴『そんなの決まってるじゃない!!』

シャル『放送で、会長の妹が一夏に告白したって聴いて…居ても立ってもいられなくて!』

ラウラ『そのような事実があったかどうか、ちゃんと確かめさせてもらうぞ! ここを開けろ、嫁!!』ドンドン


一夏「そ、それはちょっと…勘弁して、もらいたいというか…ははっ…」


箒『しらばっくれるなら…この場で実力行使をするまでだ!!』


一夏「そ、そんな! みみ、皆、頼むから落ち着いてくれ!!」

一夏「ああもう! とにかく俺は今はミッション中で忙しい! お願いだから帰ってくれ!!」


セシリア『お断りですわ! 一夏さんは、私たちに返答の義務があります!』

鈴『セシリアどいて! こんな扉、甲龍で一発で粉々に…』キィィィィ…


一夏「うわ、ばか! こんなところでisを展開させるな!!」

簪「……」

一夏「か、簪! 何かちょっとヤバくなってきた! お前は逃げて」


ドッゴォォォォォォォォ!!


一夏「え…と、扉の外から…何だか衝撃音が…?」


千冬『まったくこのバカどもは…こんなところでisの使用を許可した覚えはないぞ』

楯無『君たちぃー必死になるのも分かるけど、いくら何でもこれはだめだよー。
   昔の人の言葉にもあったでしょ? 人の恋路の邪魔する奴は、風穴開けて死んじまえってね♪』


一夏「ち、千冬姉に楯無さん!?」

楯無『はいはーい☆ こんにちは、一夏くん♪
   今、ミッションの妨害に入ろうとした不届き者たちは、私たちで抹殺しておいたから安心してね!』

千冬『人聞きの悪い言い方をするなバカ者。少し気絶させておいただけだ』


一夏(元世界最強と現学園最強の最凶コンビ…これは相手にしたくない…)


楯無『もぉー…織斑先生のいけずぅー。まぁいいけどねー!
   そんなわけですので、妨害阻止は達成できたしお邪魔虫は退散するよー♪
   引き続きミッションに励んでねー! んじゃ、バイビー☆』


一夏「ふ、ふぅ…何とか…助かった、のか?」

一夏「はぁ…生きた心地がしない…昨日はさんざん殺されかけたからなぁ…」

簪「……」

一夏「…騒がせて悪かったな簪。大丈夫か―――」

ドサッ

一夏「え…か、簪!? どうした、しっかりしろ!」

―――――――――
―――――
―――

~保健室~

簪「……」クゥー…クゥー…

楯無「綺麗な顔してるだろ。信じられるか? 眠ってるんだぜ、それ」

一夏「無駄に含みのある言い方しないでください。倒れた時、本当にビックリしたんですから」

楯無「あっはは、ごめんごめん。まぁしょうがないよ。昨日から全然寝付けなかったようだしさ」

楯無「そんなコンディションでいきなり朝一番にミッションだもん。
   負担、かけちゃったみたいね。反省、反省」

一夏「楯無さんが気にすることじゃないですよ」

楯無「まぁそうかもしれないけどさ。やっぱり可愛い妹だから心配ぐらいさせなさいな」

一夏「…そうですね」

楯無「ひとまずミッションは中断だね。しばらく休ませようか」

一夏「…はい」

楯無「じゃあここで話しても、簪ちゃんとしてはうるさいだろうから場所を移ろう?」

一夏「え…あ、はい。分かりました」

―――――――――
―――――
―――

~屋上~

ヒュゥゥゥ…

楯無「ふぅーここからの景色って結構好きー♪」

一夏「そうですね。俺も気にいっています」

楯無「そっか。何だか嬉しいな」

一夏「そうですか?」

楯無「うん。同じ価値観に共感してもらえるのって、何だか嬉しくない?」

一夏「まぁ…それはそうかもしれませんね」



楯無「…一夏くんさ、覚えてる? 私と、初めて会った時のこと」

一夏「それは、まぁ…あの後大変でしたし」

楯無「どうして?」

一夏「どうしてって…千冬姉に怒られましたから。遅刻して」

楯無「あっはは。そういえば…あの時は呼び止めちゃってごめんね」

一夏「あはは…」

楯無「でもそういうのじゃなくてさー。もっといい思い出とないのー?
   こう、さ…見ててすっげー美人な人がいるなー、とか」

一夏「え、ええと…それは、まぁ…綺麗な人だなって言うか、ミステリアスな人だなーって思いましたね」

楯無「ミステリアスねぇ。まぁ褒め言葉と受け取っておくね」

一夏「自分で言っておいて何ですけど…褒めてたんですかね?」

楯無「そうだよー。女のほとんどは秘密でできているの。
   女から秘密を取ったら、あとはつまんないもんしか残らないわ」

一夏「そ、そうですか」

楯無「…じゃあさ。簪ちゃんに初めて会ったときはどうだった?」

一夏「簪は、まぁ…楯無さんに会ったあとですから、姉とよく似てるなーって印象と」

一夏「あと…すごく険悪だったんでビックリしました」

楯無「懐かしいね。『私には、貴方を殴る権利がある』って言われたんだっけ?」

一夏「ははは…そう言えばそんなことも言われましたね」

楯無「…ねぇ一夏くん」

一夏「はい?」

楯無「ちょっと訊いていい?」

一夏「何ですか?」

楯無「ぶっちゃけ、さ。簪ちゃんのこと、好き?」

一夏「えぇッ!?」

楯無「どうなの?」

一夏「いいいいいいいいいやいやいや! 何で楯無さんがそんなこと訊くんですか!?」

楯無「好奇心」

一夏「ちょ、ちょっと…いや、勘弁してくださいよ…///」

楯無「……」

一夏「そ、そりゃぁ…姉として心配する気持ちも分かりますけど、こ、これは俺と簪の問題だし―――」

楯無「ごめん。やっぱなし」

一夏「え?」

楯無「……」

楯無「それにしてもさ。一夏くん、簪ちゃんの告白きいてすごくビックリしてたね」

一夏「そ、それはまぁ…いきなりああ言われて驚かない奴なんていませんよ」

楯無「…はぁ」

一夏「な、何でそんなガッカリしてんですか…」

楯無「だって本当に気付いてなかったって聴いてさー…。簪ちゃん、前から随分頑張ってたんだよ?」

一夏「え?」

楯無「ほら、覚えてる? 最初の簪ちゃんとのミッションのときさ。織斑先生に、何て言ったと思う?」

一夏「え、ええと確か…私を俺の嫁にしてくださいって…」

一夏「あっ…」

楯無「本当に何で今更なのかなー。君の鈍感さには呆れを通り越して好奇心すら沸いてくるよ。
   頭を掻っ捌いて脳みそを豆腐と取り替えても大差ないんじゃないの、ってくらい」

一夏「うぅ……面目ない」

楯無「あーあ。簪ちゃんも難儀な男に唆されちゃったなぁー」

一夏「そ、唆したって…」

楯無「自覚ないって言うの?」

一夏「俺は…特に何もしてませんよ」

楯無「やーれやれ。あんだけ思わせぶりなことを言ったりしといてその言い草かい」

一夏「えぇー…」

楯無「本当にうちの妹にも困ったものだ。こんな女心も分からない、鈍感さんのどこがいいんだか」

楯無「別に頭もいいって訳じゃないし、isの操縦だってまだまだ荒いし、行動だって無計画で無責任だし」

楯無「そのくせ自分のことよりも他人のことを優先しちゃう救いようのないお人よしでさ」

一夏「え、えぇー…」

楯無「…でもさ」

一夏「ん?」

楯無「私ね。今なら簪ちゃんの気持ち、少し分かる気がする」

一夏「えっ…?」

楯無「一夏くんってさー。何ていうかすごく裏表のない、まっすぐな人なんだなーって思ったの」

楯無「嘘とかつけるタイプじゃないし、自分の決めた信念を絶対に曲げないから」

楯無「…まぁ、女子を誑かすのも素でやっちゃうっていうんだから、よっぽど性質が悪いんだけどね」

一夏「俺を褒めたいんですか、それとも貶したいんですか…」

楯無「でもさ。だからこそ、一夏くんのやることなすことが、下心のない本心から来るものだって分かる」

楯無「誰かが困っていたら助けようとするのも、危なくなったら本気で守ろうとするのも。
   それが見返りとか打算とか、そういうのを一切合財なしでやってるんだって」

楯無「一夏くんは…私たちに本気でぶつかってきてくれた」

一夏「……」

楯無「だから、かなぁ。皆、いつの間にか心を許しちゃうんだよね。一夏くんには」

楯無「本心から行動してるって分かってるから、自然と警戒を解いちゃって。
   一夏くんと接していくうちに、不思議と自分たちも何だか素直になっちゃってさ」

楯無「それでいつの間にか…一夏くんは入ってちゃうんだよ。皆の心の中に」

一夏「……」

楯無「簪ちゃんもね。一夏くんと会うまでは自分の殻に篭りっぱなしの困ったちゃんだったけど…。
   でも、一夏くんが簪ちゃんの心の中に入ってくれて…それをブチ壊してくれた」

楯無「きっとあの時の私は…一夏くんのそういうところ、無意識に分かってた。だから簪ちゃんを任せられたんだと思う」

一夏「…買いかぶりすぎですよ」

楯無「あっはは。本当に鈍感さんだなぁ。これさえなければねぇ…」

一夏「え、えぇー…」

楯無「…でも、そうだね。それも一夏くんのいい所。自分のおかげだとかそんなひけらかすような真似をしないのも」

楯無「むしろその後、皆の手を引いて、立ち上がらせようとしてくれる。
   そういうことが出来る人なんだよね、君は」

楯無「そんなところもあるから一夏くんの周りには…自然と人が集まるんだね」

一夏「……」

楯無「うん、やっぱりすごいね一夏くんは」

一夏「…俺は、別に自分が大した奴だなんて思えません。楯無さんの方が…ずっと凄いと思います」

楯無「何で? 最強だから?」

一夏「それもありますけど…何ていうか楯無さんはすごく、皆のことを考えてくれてんだなーって思えたんです」

一夏「文化祭の時も、このイベントも…まぁ俺をダシに使っている感じはしますけど…。
   でも、結局は生徒全員が楽しめるように考えてくれてるって分かります」

一夏「isの訓練も…見ず知らずの俺や箒に指導をつけてくれたり…。何より、簪のことを誰よりも大切に思ってる。
   何だかんだで、お人好しって意味では楯無さんも相当ですよ」

楯無「あはは…言うようになったね、一夏くん」

楯無「…そうだね。まぁ私だってそれなりに知恵を絞ったり、色々と努力とかはしてきたつもり」

一夏「…楯無さんだって、『努力』って言葉で自分の才能を自慢しないところも、凄いところですよ」

楯無「んーでも、努力してきたことは本当だよ?」

一夏「それはまぁ、そうですけど…」

楯無「私だって君が言うほど、自分が大した人間とか思ってないよ。
   ただ自分に出来ることを、自分なりに工夫して、自分なりに高めていったに過ぎない」

楯無「学園最強っていう称号もさ。言ってしまえばただの旗印だし」

一夏「え?」

楯無「そう思わない? だって、努力すれば皆こうなれるんだよ?
   才能だとかそんなもんなくたってさ。やりようによっては誰だって最強になれるって」

楯無「その証明が、私だもの。それを皆が見てくれればきっと、皆はもっと頑張ってくれる。
   私の後を目指して…走ってきてくれるって」

楯無「私は…そう思ってるから」

一夏「……」

一夏「やっぱり楯無さんは…お人善しですね」

楯無「あっはは。そうかな」

一夏「ええ。とても優しい人です」

楯無「てへへっ。もっと褒めてくれていいよ」

一夏「そうやってふざけて誤魔化すのも…ようは、照れ隠しなんじゃないですか?」

楯無「なッ…!?」

一夏「あはは。ほら、やっぱり」

楯無「か、勘のいい一夏くん、だと…」

一夏「いや、何でそこまで意外そうにするんですか…失礼でしょ」

楯無「も、もぉー全く…まさか君にそんなことを言われるとは思わなかったわ」

一夏「あはは、すいません。でも、何だか不思議ですね」

楯無「ん?」

一夏「何ていうか…お人善しってところも…根っこのところでは、誰かのことを本気で考えているってところも」

一夏「俺と楯無さんで似ているなんて…何だか不思議な気持ちです」

楯無「ッッ!」

一夏「って、はは…。何言ってんですかね、俺って」

楯無「…うん、そうだね。私も、そう思う」

一夏「え?」

楯無「一夏くんと私は…似ているところもあるのかもしれない」

楯無「やっていることは違うかもしれないけど…でも、本質は一緒。
   誰かのために…本当に、一生懸命になれるってところとかさ」

楯無「だから私は…君に会えて嬉しかった。
   ちょっとだけだけど、同じ価値観を持った人と巡りあえるのは…やっぱり嬉しいことだから」

一夏「……」

楯無「それで、さ…一夏くんならきっと、私のことを追い越してくれるんだと思う」

一夏「え……」

楯無「isの操縦とかそう。本当に私なんかよりずっと早くコツを掴んでさ。
   ここ最近の君の成長は…本当に惚れ惚れするよ」

一夏「め、珍しいですね…楯無さんがそこまで褒めるなんて」

楯無「こんな時だからね。素直に言っておかなきゃいけないと思ってさ」

一夏「?」

楯無「きっと一夏くんは…私が思っているよりも早く、私よりも全然強くなると思う」

楯無「それで…私も、誰も想像つかないような方法で…誰も彼も助けられる、そんな夢物語も実現してくれる」

楯無「私は君に…そんなことを夢見てる」

一夏「で、デカ過ぎますよ…そんな期待持たれたって、困りますよ…」

楯無「あはは、でも聴いてよ。お願いだから」

一夏(え…な、何だこの…真っ直ぐな瞳は…)

楯無「初めてだったんだ。本当に私と対等に渡り合えると思った人。
   そして、私を追い越せるかもしれないと思わせた人は」

楯無「なのに一夏くんは、それだけの力を持っていながら…誰かの、皆のために使おうとしてた」

楯無「時には自分の命を顧みずに…必死に、誰かを守ろうとしてくれた。見ず知らずであるはずの、私の大好きな妹も」

一夏「え、ええと…」

楯無「だから、かなぁ…。君を無理やりにでも私の傍に置いておきたかったよ。
   これから君はどうなっていくのか、一番近いところで君を見てみたかった」

楯無「無理やり引き込んで、いっぱいからかってたりもして、君は本当に困ったような顔をしていたけど…
   でも、最後は笑ってくれてた。今まで…傍に居て、離れないでいてくれた」

一夏「た、楯無、さん…?」

楯無「そして君は…本当に救ってくれた。簪ちゃんを。私たち姉妹の絆を…取り戻させてくれた」

楯無「君はいつも誰かを助けて…傍に居て、支えて、戦ってくれた。それで私たちは…本当に救われたよ」

一夏「た、楯無さん…言ってることが、よく―――



楯無「だから私は……そんな君が、好きになった」



一夏「―――」

一夏「え…」

楯無「この子のことをずっと見てみたい。この人と、ずっと一緒に歩んでいきたい」

楯無「一緒に強くなって、色んな人を助けて、お互いに守れる存在になりたい」

楯無「そう思わせてくれたのが…一夏くんだった。
   いつの間にか一夏くんが…私の中で、こんなにも大きくなっていた」

一夏「あ、あの…ええと」

楯無「…あっはは。うん、何だか恥ずかしいね。でも不思議。すごく…心が、軽くなったよ」

一夏「た、たて、なし、さん…?」

楯無「んー?」

一夏「い、いま、俺の、こと…え…?」

楯無「…はぁー。このテンプレ鈍感難聴主人公キャラが」

一夏「え…?」

楯無「こんなこと、女の子に何度も言わせる気?」

一夏「い、いや、あの、でも、ええと…」

楯無「でも出血大サービスね。耳かっぽじってよーく聴きなさい」

一夏「え…」



楯無「私はね。一夏くんが…織斑一夏くんが、好き。大好き」



一夏「―――!!」バクン!!

楯無「えっへへ/// 参ったか!」

一夏「あ、あの、ええと…!」アタフタ

楯無「こらこら。何そこまでテンぱってんのよ。告白までした私がバカみたいじゃない」

一夏「い、いや、だって! い、いいいいきなり、過ぎますよ!!」

楯無「あっはは! 本当に一夏くんてば可愛いなー!」

楯無「…まぁ、そんなところも好きだけどね☆」

一夏「う、ぐッ…!?」

楯無「てへっ///」

一夏「い、一応訊きますけど…」

楯無「ん?」

一夏「な、何かの冗談なんてことは…」

楯無「……」ジャキッ

一夏「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!? す、すいません許してください!
   お願いだから殺意100割の眼差しで無音無動作でis装備を向けないでください!!」

楯無「まったくつくづく君って奴は…好きさ余って憎さ100倍になるところだったよ」

一夏「す、すいません…」

楯無「…で、どうするの一夏くん?」

一夏「え…?」

楯無「これが、私の気持ち。偽りも遠慮も全部なくした、私の気持ちだよ」

一夏「あ、う…」

楯無「…簪ちゃんの気持ちもよく知ってる。でも、これだけは譲る気持ちも負ける気持ちもない」

楯無「もう、決めたから。自分に嘘なんかつかないって。
   これ以上妹に嫌われるのも、妥協して一夏くんを諦めることも絶対に嫌だ」

一夏「…?」

楯無「…勿論決めるのは一夏くん。一夏くんがどう思っていたって私は構わない。
   たとえ簪ちゃんでも私たち以外を選んでも、もう言った以上は後悔なんかしない」

楯無「私は一夏くんが好き。だから、貴方の選択を一番に尊重したいから」

一夏「……」

楯無「…今すぐここで答えろなんか言わないよ」

楯無「でもちゃんと…私たちの気持ちと向き合って欲しい。そうしないと…私は君を許さないと思う」

一夏「…楯無さん」

楯無「なんだい?」

一夏「不意打ち過ぎますよ…」

楯無「あはは。でも、私らしいといえばらしいと思わない?」

一夏「いや、こんなの…マジで心臓に悪すぎですから」

楯無「てへへっ♪」

一夏「…正直言って、本当は時間をかけて返事すべきなんでしょうけど」

一夏「でも、1つ決めたことがあるんです」

楯無「…何かなそれは」

一夏「…貴女なら多分、分かっているんじゃないですか?」

楯無「…あっはは。そうかもしれないね」

一夏「……」

楯無「…簪ちゃんのことだね?」

一夏「…はい」

一夏「鷹月さんと一緒に遊んでいた時…すごく考えました」

一夏「あいつがヒーローを好きになったこととか…あいつが今も昔も、何を考えていたのか」

一夏「あいつは…簪はきっと、楯無さんに憧れてて…それを知って、貴女が羨ましくなった」

楯無「…ッ」

一夏「俺はきっと…あいつに憧れている貴女に憧れている。だから…貴女のようになりたいと思いました」

一夏「こんなにまであいつに信頼されるように…ずっと貴女のように、俺もなりたい」

一夏「いつの間にか…そう、願っている自分に気付きました」

楯無「……」

一夏「だから楯無さんは俺の目標だし、いつまでも尊敬できる先輩です」

一夏「俺だって貴女には何度も助けられて、感謝だってしきれないくらいだけど…でも、でもそれは…」

一夏「…ごめん、なさい。何だか上手く言えません」

楯無「…そっか」

一夏「すいません…」

楯無「いいよ。私が言わなくても、君はちゃんと向き合っていた。それが分かったことだけでも、嬉しいよ」

一夏「……」

楯無「オッケー分かった。みなまで言うな」

一夏「え…」

楯無「君の気持ちは分かったよ。ちゃんと答えてくれて、ありがとね」

一夏「で、でも俺…まだ、貴女にちゃんと返事を―――

楯無「君と一緒にしないでくれる?
   私は君みたいに1から10まで言ってあげないと理解できないような鈍感じゃありません」

一夏「うッ…」

楯無「…ちゃんと気持ちと向き合ってくれて嬉しいって言ったでしょ? だから、それでいいのよ」

一夏「……」

楯無「…はぁ、やれやれ」ツカツカ


バシーン!!


一夏「いってぇ!?」

楯無「ほら、何ボサッとしてるの?」

一夏「え?」

楯無「こんな所でボヤボヤしてないで、さっさと行きなさい。お姫様が待ってるよ?」

一夏「で、でも…」

楯無「早くしなさい。眠り姫は、王子様のキスで目覚めるのが常套なんだからさ」

一夏「……」

楯無「ほらっ。いつまでも夢見る乙女を待たせないの。行きなさい」

一夏「…楯無さん」

楯無「なに?」

一夏「俺の気持ちに本当に気付いているって言うのなら…」

楯無「……」

一夏「その…何ていうか、ごめんなさい」

楯無「……」

ゲシッ

一夏「いってぇ!?」

楯無「バカにするのも大概にしなさい」

一夏「え?」

楯無「…恋する乙女は、超最強なのよ」

一夏「……」

楯無「ほら、忠告は3度までよ。行きなさい」

一夏「…楯無さん」

楯無「んー?」

一夏「ありがとう…ございます」

楯無「…いいわよ」

一夏「……」

楯無「その代わり、と言っちゃなんだけど」

一夏「…?」

楯無「…あの子を、よろしくね」

一夏「…はい!」


タッタッタ…


楯無「…行っちゃったか」

楯無「頑張ってね、一夏くん…」

~生徒会室~

ウィーン

楯無「ただいまー」

虚「おかえりなさいお嬢様」

楯無「あれ? 本音ちゃんは?」

虚「さっき出て行きました。『かんちゃんのお見舞いに行ってくるー!』って」

楯無「…そっかぁ。つくづく幸せ者だね、私の妹も」

虚「そうですね。ところでお嬢様はどちらに行ってたんですか?」

楯無「んー。ちょっと負け戦に、かな?」

虚「は…?」

楯無「いやー…やっぱ分かっていたとは言え辛いわぁ…。
   こりゃ予想以上のダメージだよー。ちょっとやそっとじゃ立ち直れそうにないや」

ポスッ

楯無「そんなわけだから、よろしく」

虚「いや何がよろしくですか。当たり前に私の胸に飛び込まないでください」

何で生徒会室が自動ドアの体で書いてしまったんだ…
ウィーン→ガララッ

楯無「だって虚ちゃんの身体ってば極上なんだもんー。
   温もりも柔らかさも申し分ないし、どんな天蓋ベッドよりも快眠できるよ」

虚「言っときますけどちっとも嬉しくありませんからねその賛辞」

楯無「ぬほほ~ぬくい~やわい~ふかふかでぬくぬくする~よいではないかよいではないか~」モフモフ

虚「きゃぁッ/// や、やめてください! 普通にセクハラですよ!?」

楯無「いーじゃん別にさー。こっちだって疲れているのよー?」

虚「と、とにかくやめてください! 誰かに見られたら、変な誤解が!」

楯無「あー大丈夫大丈夫。さっき、鍵かけておいたからね」

虚「え?」

楯無「ここにはしばらく…誰も入ってこれないから」


ギュッ


虚「え…?」

楯無「だからもうちょっと…このままで、いさせて…?」

虚「……」

確かis学園はドアが圧縮空気式だったから、どちらかと言うと「バシュッ」かな。

>>921
でもアニメは普通のドアだった気がするんだよなぁ…
こういうところで齟齬が生まれるとどうもメンドイね

虚「…何があったんですか?」

楯無「言ったでしょ。負け戦だったって」

虚「それはそんなに…辛い、ものだったんですか?」

楯無「…まぁね」

虚「…そうですか」

楯無「何ていうかさ…情けない話だけど…すごく、後悔しかないんだ」

虚「え…?」

楯無「私がもっと早くから…気持ちに気付いていれば…。意固地も張らずに、下手に遠慮なんかしなければ、さ…」

楯無「もっと自分に…素直になっていれば…こんな思いにならなくて、済んだかも、しれないって…」

虚「……」

>>922
アニメでもドアが自動で開いて、
一夏「おはよっ、何話してんだ?」
一同『何でもないよ!』
ってのがあったよ?

楯無「でも、でも、さ…そんなの…選べないよね。選べるわけ、ないよぉ…」

楯無「だってそうしたら…簪ちゃんを悲しませるかもしれないって…そう思うと、訳が分からなくて…」

虚「…大丈夫ですよ。あの人は誰よりも…貴女を尊敬してます」

楯無「…うん、そうだね。簪ちゃんならきっと…そうしてくれていた」

楯無「それでね…その気持ちも、もっと早く気付いていれば…。
   こう、なってなかったかも、しれないって思うと……ひっぐ…」

楯無「あっはは…失恋って、こんなに苦しいんだぁ…ぐす…」

虚「……」

楯無「あはは…ごめん、ね…こんな姿、誰にも見せたく、ないから…」

虚「…貴女が望むなら、私は付き合いますよ」

楯無「うん…ありがと、虚ちゃん」

虚「でも…」

楯無「ん…?」

虚「泣くことは…全然、格好悪くないです」

楯無「え…?」

虚「だって貴女は…最強である前に、私たちの主人である前に

虚「ただの普通な…女の子なんですから」

楯無「…!」

虚「だから貴女は…泣いていいんです」

楯無「…そっか。そうだよね」

虚「…勿論、無理にとは言いませんが」

楯無「あっはは。でも涙が出ちゃうよ。女の子だもん」

虚「…はい」

楯無「だからもう少しこのままで…。ごめんね…シャツ、汚しちゃって…」

虚「…いいですよ。私の身体くらい、いくらでも貸します」

楯無「あはは…あり…がど…うぅ…」

虚「……」

楯無「いぢかぐんも、ひどいなぁ…はじめで、だっだのに、さぁ…ひっぐ…」

楯無「ぜっだいに…うぅ…ゆる、さないがら…」

楯無「かんざしぢゃんを…えっぐ…じあわせに、じないど…ゆ゛るざないがらぁ…」

虚「……」


楯無「う、うぅ、うぅぅぅ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…

―――――――――
―――――
―――

ひとまず今日はここまでですのー
続きは今週中の予定。
じゃあの

>>924
あーそうだったっけか。
寮の部屋は何の変哲もないドアだったからてっきり…
今までisssは普通の引き戸の体て書いてた死にたい

>>928
とりあえず乙。

まあ扉の描写なんざいちいち気にも止めないわな、そりゃ。
とにかく頑張って。
もちろん次スレも読むよ!

~保健室~

ガララッ

本音「あ~! おりむら~だ~!」フリフリ

一夏「おぉのほほんさん。来てたのか」

本音「うん~! 見て見て~! かんちゃん、元気になったの~!」

簪「あ…い、一夏…」

一夏「簪、起きてたのか。良かったよ」

簪「ごめん…私、途中で…」

一夏「気にするなよ。寝不足なお前に無理をさせた俺のせいでもあるんだし」

本音「かんちゃんごめんねぇ…私があんなミッション入れたばっかりにぃ…」ショボーン

簪「ち、違うの…! 私の体調管理不足のせいだから…! 謝らないで…!」アセアセ

一夏「まぁ何にせよ、すっかり良くなってるみたいで安心したよ」

簪「あ、うん…///」

一夏「取りあえず簪はもうすぐ復帰できるから、のほほんさんは戻って用意しててくれないか?」

本音「わかった~! じゃあおりむ~あとはよろしく~!」トテトテ

ガララッピシャッ

一夏「…もう、すっかり良いのか?」

簪「う、うん…心配かけて、ごめん」

一夏「気にするなって。大事がないなら、それでいい」

簪「…うん。じゃあ、戻ろうか?」

一夏「あ、待ってくれ。そのまま、聞いてくれないか?」

簪「え?」

一夏「…少し、話がしたいんだ」

簪「えっ…?」

一夏「…いいかな?」

簪「い、いいよ…///」ドキドキ

一「そっか。良かった」

簪「……」バクバク

一夏「なぁ簪。覚えているか? 俺と、初めて会った時の事」

簪「…うん」

一夏「あんときは何度話しかけても素っ気無いし、すごく嫌われててビックリしたよ」

簪「うッ…あ、あまり…思い出させないで…」

一夏「あはは、ごめんごめん。別に意地悪してるわけじゃないんだ」

一夏「…でも不思議だ。今はこうして、ちゃんとお前といれることが出来ているんだからな」

簪「それは…い、一夏とお姉ちゃんが…頑張って、くれたから」

一夏「そのことなんだけどさ、簪。何で俺に心を許してくれるようになったんだ?」

簪「そ、それは…」

一夏「……」

簪「一夏は…助けてくれたから。私を」

簪「ずっと閉じこもっていた私を、引っ張り出してくれた。殻を、壊してくれた。
  それで一夏は…私に、居場所をくれた。お姉ちゃんという姉妹のあり方も、友達も」


簪「だから私は…そんな一夏が好きになった」


一夏「―――!!」

簪「…どうか、した?」

一夏「い、いや、別に…」

一夏(何でこんなに…似るんだろうな…姉妹って)

簪「…?」

一夏「…話を少し変えるけどさ。何で簪は、ヒーローが好きなんだ?」

簪「え、ええと…格好いいから、かな?」

一夏「悪い奴らをやっつけるところとかか?」

簪「う、うん…。私も、あんな風になりたかった、から…」

一夏「…楯無さんのように?」

簪「…うん」

一夏「ずっと、楯無みたいになりたかったんだよな?」

簪「うん…あれだけ強くて、綺麗な女性になれたら…どれだけ素敵だろうって思ってた」

簪「…でも最初の方はそう思っても、だんだん劣等感の方が強くなっていったの。
  姉妹なのに、どうしてこんなにも違うんだろうって。私の、何がいけないんだろうって…」

一夏「……」

簪「だから私は…いつの間にか、お姉ちゃんを直視することが…出来なくなった…」

一夏「…つまり簪はさ」

簪「?」

一夏「お前はきっと…ヒーローじゃなくて、ヒロインになりたかったんじゃないかな?」

簪「え…?」

一夏「……」

簪「な、何…? どういう、こと?」

一夏「これは俺の個人的な考えだけどな。お前が強くなりたかったのは、認めてもらいたかったからだろ?」

一夏「楯無さんのように自分もなれるんだって、皆に証明したかったんだろ?」

簪「…そうだけど、それだとよく分からない。私が、ヒロインになりたかった理由」

一夏「ヒーローに助けられるヒロインってのは、見方によっては認められたってことだと思うんだよ。
   『自分は助けるに足る人間であった』と、認められた結果、ヒーローに助けられる」

一夏「だからヒーローに助けられた時、誰もがヒーローに『ありがとう』って言うんだ」

簪「……」

簪「…そうかもしれない。私は…誰かに認めてもらいたかった」

簪「私だって立派に強くなれるって…皆から、お姉ちゃんから、認めてもらいたかったんだと思う」

簪「そうやって私の劣等感を打ち壊してくれる…助けてくれる、誰かを待っていた。そういう、ことかもしれないね」

一夏「…そっか」

簪「…うん」

一夏「お前も…俺と同じだったんだな」

簪「え?」

一夏「千冬姉に言われたんだ。お前は何のためにisを纏っているんだ?』って」

一夏「その時俺は、皆を守りたいからだって言ったんだ。そしたら、甘いって言われてさ」

簪「……」

一夏「漠然と誰かを守りたいって気持ちはあったんだけどな。
   誰を、何のために戦っているのかって言われたら…俺は答えられなかった」

一夏「それで、最近になって思ったんだ。俺は特別な誰かを守りたいんじゃなくて…
   きっと、誰も彼も助けて、いい気になりたかったんじゃないかって」

一夏「子供の頃に夢見たヒーローみたいにさ。格好よく、誰かを助けてみたい。
   俺はそんな餓鬼臭い夢を捨てきれない、ただの子供だったんじゃないかって…」

一夏「……」

一夏「俺だって同じだよ。誰かに感謝されたくて、認めてもらいたくて力をつけたかった…ただの偽善者だ」

簪「……」

一夏「…でも、俺は前に言ったよな。『完全無欠のヒーローなんかいない。俺たちは人間だ。
   泣きもするし、笑いもするし、負けるときだってある』」

一夏「『けど、諦めない。逃げ出さずに戦える人間だ』って」

簪「うん…私、今でも一夏のその言葉、ハッキリと覚えてる」

一夏「あぁ。だけどそれを思い出したら、ますます分からなくなった」

簪「え…?」

一夏「俺たちはどんなに頑張っても、いくら憧れても、完璧なヒーローにはなれない。
   ヒーローを気取ることは出来ても…俺たちはただの人間なんだから」

一夏「だったら俺は…本当は、何になりたかったんだろうな、って」

簪「あっ…」

一夏「…でもな。そのモヤモヤを壊してくれたのは、簪だった」

簪「え…?」

一夏「ほら、旅館で一緒に寝泊りした時にさ。言ってくれただろ?
   『誰かを守る理由は、自己満足でも構わない』って」

簪「う、うん…」

一夏「俺が何でisを纏いたかった理由を知って、すごく悲しくなってさ…。
   でも、簪のこの言葉を思い出したとき…すごく、心が軽くなったんだ」

一夏「誰かを助けた時、そいつは誰かを助けたことで嬉しくなる。
   助けられた方も、自分を助けてもらったことで嬉しくなる」

一夏「そしてお互いがそういう気持ちを持ってるんだって知った時…。
   何だか不思議と、また嬉しさが増していく。そういう考え、すごく素敵だと思った」

簪「…///」

一夏「だからさ。俺、このままでいいんだって言われた気がした。
   たとえ偽善でも、自己満足でも、それで誰もが幸せになれるっていうのなら、それでいいんだと思った」

一夏「俺のあり方っていうか…俺の答えみたいなものを、簪が指し示してくれた。そんな、気がするんだよ」

簪「……」

一夏「だからさ、簪。俺、やっぱり皆を守っていきたいと思う。
   偽善と言われても、それがどうしたって鼻で笑って、皆を助けていきたいって思う」

一夏「だって皆を守りたい気持ちに、嘘はないんだから。だから俺は、戦えるんだ」

簪「一夏…」

一夏「だからその事を教えてくれた簪には…すごく感謝してる」

簪「…私は別に特別なことは言ってないよ。一夏が、立派だからだと思う」

一夏「そう言ってくれてありがとな。それでさ、もう1つ決めたんだ」

簪「えっ…?」

一夏「これも千冬姉に言われたことなんだけどな。
   『こいつだけは、命を賭けても惜しくない、そんな大切な人を決めろ』って」

一夏「そういう人ってどんな気持ちで決めたらいいか、分からなかったんだけど…
   でも、今になって分かった気がする」

簪「えっ…?」

一夏「そういう人はさ。いつまでも一番近くで、守ってやりたい奴だと思う」

一夏「見ていると何だか不安で、思わず手を差し出したくなって…でも、それだけじゃなくて」

一夏「俺の事、ちゃんと分かってくれてさ。その人も、俺のことを支えてくれる人がいい。
   たとえ俺が1人になっても、離れないでいてくれる人がいいと思う」

簪「いち、か…?」

一夏「…なぁ簪。あの時、こうも言ったよな。『俺が嬉しいと、お前も嬉しい』って」

簪「う、うん…」

一夏「俺もさ…お前が嬉しいと、すごく嬉しくなる」

簪「…///」ドキッ

一夏「だから俺は、これからもお前と嬉しさや幸せを共有したい。
   そしてお互いに高めあって、磨きあって、一緒に強くなっていきたい」

簪「あ…あぁ…」



一夏「だから俺は―――そんな簪が、好きになった」



簪「―――」

一夏「一番支えてやりたくて、傍で助けてやりたいと最初は思ったけど…」

一夏「でも自然と…俺に色々なことを気付かせてくれたから。
   こんな気持ちにも…気付かせてくれたからな」

一夏「だから俺は簪が……更識簪が、好きだ」

簪「え…?」

一夏「だから俺は…お前と一緒にもっと強くなりたい。
   一番好きな簪を守りながら、一番大切な簪を支えながら」

簪「あ…」

一夏「え、ええとだな…つ、つまり、その…あ、あの時の返事は、こ、こんな、俺でよければ―――


ポタ…ポタ…


一夏「え…?」

簪「う、うぁ…うぁぁぁぁぁ…」ボロボロ

一夏「お、おいおい…泣くことないだろ…」

簪「だ、だっでぇ…ご、ごんなのぉ…ひっぐ…」

一夏「……」

簪「うそ、じゃない…? いちか、わたしが…?」

一夏「…ああ。俺も、お前が好きだ。簪」

簪「あ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

一夏「……」


ポスッ


簪「あ…///」

一夏「取りあえず、落ち着いてくれ」

簪「う、うん…」ギュゥゥ

一夏「平気か?」

簪「う、うん…もう、大丈夫、だから」

一夏「…ごめんな、泣かして」

簪「…いいの」

簪「だってこれは…嬉し泣きだから」ニコッ

一夏「…そっか」フッ

簪「嬉しい?」

一夏「ああ。すっげぇ嬉しい」

簪「ふふっ…私も。すっごすごく、嬉しい」

一夏「…こんな俺だけどさ。傍にいてくれるか?」

簪「うん…」

一夏「…ありがとう簪。そう言ってくれると、すごく心強い」

簪「うん…私も…一夏が傍で守ってくれるってだけで…すごく、力が沸いてくるの」

一夏「ああ。俺も、簪がいるってだけで、死ぬ気で戦える」

簪「…死んじゃダメ」

一夏「あはは、そうだな。お前を一番悲しませるようなこと、絶対にしないよ」

簪「うん…あり、がと…一夏…」ポロポロ

一夏「…また泣いてるぞ?」

簪「い、今は…泣かせて?」

一夏「…分かった」

ギュッ

簪「あぅ…///」

一夏「こ、ここでよければ…いくらでも泣いてくれ///」

簪「あ、うん…///」

簪「…泣き虫で、ごめんね?」

一夏「いいよ。むしろ、もっと守りたくなる」

簪「ふふっ、ありがと。でも…」

一夏「ん?」

簪「…一夏に、守られるばかりじゃダメだから。私も、一夏を守れるくらい、強くなるから」

簪「だから今だけはこんな私を…弱い私を、許して?」

一夏「…ああ。もちろんだ」


ギュゥ…


一夏「…好きだ、簪」

簪「うん…私も、一夏が好き…大、好き…」

―――――――――
―――――
―――

~しばらくして、生徒会室~

ガララッ

楯無「お?」

一夏「ただいま戻りましたー」

簪「た、ただいま…」

楯無「おっかえりなさーい☆ 簪ちゃん、もう大丈夫?」

簪「うん、平気…。心配かけて、ごめん…」

楯無「いいってことよ! むしろ寝不足よりは、一夏くんに寝込みを襲われんじゃないかって方が心配だったから!」

一夏「ちょ…あんだけ嗾(ケシカ)けておいてその言い方はないでしょ…」

楯無「てへっ♪」

簪「あ、う…///」

楯無(…2人とも、分かりやすいなぁ。それだけ表情に出されたら一目瞭然だよ)

楯無(…おめでとう、簪ちゃん。一夏くん)

楯無(これからはもっとちゃんと、2人の事を応援するからね?)

楯無「でわでわー! ようやく主役が舞い戻ったところで! お待ちかねの試食ターイムです!!」

本音「わ~い!」パチパチ ヤンヤヤンヤ

一夏(いつの間にこんなセット用意したんだ…)

簪「あ、うぅ…お手柔らかに、お願いします…」

一夏「…簪。大丈夫だって。俺たちが頑張って作ったんだから」ギュッ

簪「あ、うぅ…そ、そうだね…///」ギュゥ

楯無(…あーあ見せ付けてくれちゃってまぁ)

楯無「はいはーい! そんなわけで本日のスイーツの登場です! アシスタントさん、お願いします!」

虚「な、何で私がこんな役回りを…///」キュルキュル

本音「うわ~! お姉ちゃん、可愛い~!」ピョンピョン

簪(メ、メイド服姿にワゴン台…どんだけ本格的なの…)

一夏(弾に見せたら卒倒しそうだな…今の虚さんの姿…)

本音「おぉぉぉ~! すごく美味しそうだよ~! ありがとうかんちゃん、おりむ~!」パタパタ

楯無「ふむふむ…プレーンタイプに甘栗、黒豆、小豆、生クリームや旬のフルーツをトッピングした
   様々な抹茶カップケーキ…。こりゃちょっとしたバイキングだね」

楯無「ではでは! いよいよ運命の…ジャッジメントタイムに入りましょうか!」

本音「は~い! じゃあまずは私から~!」

パクッ

一夏「……」ゴクリ

本音「ん~♥ 美味しい~!! やっぱりかんちゃんのケーキは最高ぉ~!」ホワワーン

一夏「ほっ…」

虚「本音は文句なしに合格みたいですね。次は私が」

パクッ

簪「……」ゴクリ

虚「まぁ美味しい! 甘すぎずしつこすぎない絶妙な甘さと、抹茶の苦味がすごく合います!」

虚「トッピングがかかったものも美味しいです!
  バリエーションも豊富で色々な味が楽しめるので嬉しくなりますね」

虚「これは…非の付け所などありません。もちろん合格です」

簪「ど、どうも…」ペコリ

楯無「さてさて…ではいよいよ私の番です。いただきます」

パクッ

簪「……」ドキドキ

一夏「……」ハラハラ

楯無「……」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うわー! かんざしちゃん、なにつくってるのー!?」

「お、おねえちゃん…まだみちゃだめ…」

「おかーさーん! かんざしちゃんが、すごいのつくってるー!」

「あ…ちょ、ちょっと、おねえちゃん…」

「あらあら何作ってるのー? これは…カップケーキ? 美味しそうね」

「で、でも…しっぱい、しちゃった…」

「えー? こんなにおいしいそうなのにー?」

「どれどれ。1つ頂くわね」

「あ、だめぇ!」

「うッ…こ、これは…何、入れたの…?」

「そ、それはぁ…おさとうと、しおをまちがえちゃって…」

「そ、そうなの…」

「それに…やきすぎてこげちゃったし、なかはやけてなくて、どろどろしてる…」

「し、失敗は誰にだってあるわよ。気にしちゃだめ」

「かたちだって…すごく、ぶさいくだし…」

「そ、それは、まぁ…アハハ…」

「だから…だめって…いったのに…ひっぐ…」

「あ、あー…ほら、泣き止みなさい簪。そんなことくらいで泣いてはダメよ?」

「だっでぇ…ぎっど、おねえぢゃんなら、おいしぐ、づぐれだのにぃ…ひっぐ…」

「…?」

「そんなことないわよ。―――だって、最初から何もかも上手くできたわけじゃないんだから」

「でもぉ…わだしは、いっぱい、れんしゅうしても、ぜんぜん、だめで…えっぐ…」

「かんざしちゃん? どーしたの?」

「だから、だめっで、いっだのにぃ…うぇぇぇぇぇぇん…」

「…!」


パクッ


「あ、おねえちゃん! だから―――」

「おいしい!!」

「え…?」

「これ、すっごくおいしいよかんざしちゃん!!」

「おねえ、ちゃん…?」

「ほら、おかーさんもたべて! とってもおいしいから!」

「う、うそ…それ、すごく、しっぱいして…」

「うそじゃないんもん! ほんとうにおいしいんだもん!」

「…そうね。とっても美味しかったわ」

「お、おかあさんまで、そんな…」

「あのね簪。確かに出来栄えは悪いかもしれないけど…でも、私たちのために焼いてくれたカップケーキでしょ?」

「そ、そんなこと、ないもん」

「あらあら。その大人数のお皿は誰の分なの? 1人でそこまで食べる気?」

「…ッ///」

「…おいしいってのは、ただ味が良ければいいってわけじゃないわ。
 誰かのために作ってくれたのなら、それだけで幸せでお腹一杯になれるのよ」

「うん! そうだね! かんざしちゃんのケーキたべれて、わたし、すっごくうれしい!」

「おねえちゃん…おかあさん…」

「かんざしちゃんのけーきはせかいいちだよ! さすがはわたしのいもうとだね!」

「ありがとう簪。また作ってね」

「う、うん…!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

楯無「……」

簪「……」

一夏「あ、あの…楯無さん? そろそろコメントが欲しいんですけど…」

ツーッ

一夏「!?」

簪「!?」

楯無「えへへ…やっぱり…いつ食べても…簪ちゃんのケーキは…美味しいなぁ」

簪「え…?」

楯無「そういえば、あの時食べたのもこんな味だったなぁ…変に、塩気が混じっててさぁ…」

簪「…!」

楯無「…うん、でも。やっぱり、美味しい。幸せの味がする。
   本当に美味しい…もう、世界一美味しいよ」

簪「お姉、ちゃん…」


楯無「ありがとう簪ちゃん! すっごく美味しい! 流石は私の妹だね!」


簪「―――!!」

虚「ということは…」

楯無「というわけで…文句なしに合格!!
   そして一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!」パンパカパーン

本音「やった~! おめでと~!」パチパチ

一夏「ほッ…よ、良かったぁ…」

簪(お姉ちゃん…)

楯無「ん?」

簪(…あり、がと)ニコッ

楯無(…気にしないの)ニコッ

一夏(ん…? また視線で会話してるのか…?)

楯無「さぁーてさて!! 次のミッションに移る前に…ここで重大発表です!」

一夏「え?」

簪「?」

楯無「えー…全校生徒の皆さーん。それと教員や用務員、その他is学園の方、聞こえますかー?」

一夏「な、なんだ…? 学園に向けての重大発表?」

簪(…嫌な予感しかしないのは何でだろう)

楯無「えー…実は我が生徒会の期待のニューホープの一夏くんですが」

一夏「え、俺?」

楯無「なんと…なんと、この度!!」

一夏「?」




楯無「私の妹、更識簪ちゃんと………晴れてカップルになりましたぁー!!」




一夏「」<ブ―――――――――――――――ッ!!

簪「」<ブ―――――――――――――――ッ!!

虚「」

本音「えぇ~!? そ、そうなの~!? こ、これは大ニュースだぁ~!!」アタフタ

楯無「というわけで学園関係者の皆さん、その他紳士淑女の皆様方!
   新しい恋人たちの門出に、盛大な拍手を!!」パチパチパチ

一夏「ちょちょちょちょちょちょ!? 何で当人差し置いて勝手に盛り上げてんですか!?」

簪「おおおおおおおおおおおおお姉ちゃん!?」

楯無「おほほほほ♪ 何とも初々しいカップルだこと…☆
   そんな君たちには、輝かしい青春の1ページのハイライトをお届けしちゃいまーす!」ピッ


『…好きだ、簪』

『うん…私も、一夏が好き…大、好き…』


一夏「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!??」

簪「あ、あ、あぅ、あぅ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」ボボボボボボ

本音「う、うわぁ~!? かんちゃんの顔まっかっか~!
   顔から火が出るって諺は本当にあったんだ~!?」ピョコピョコ

虚(お嬢様…)

一夏「あああああああああああんた、何てことしてくれたんですか!?」

楯無「いやだってー。可愛い妹の門出なのに盛大に祝わない姉がこの世にいると思う?」

一夏「あんたの辞書に遠慮の文字はないんですか!?」

楯無「生徒会長は、引かぬ、媚びぬ、省みぬ!!」バサッ<扇子『聖帝』

一夏「豪快に開き直りおった!?」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


一夏「な、何だはこれは…全校生徒職員で拍手するとこんな音がするのか…?」

簪「いや、これは…地鳴り…」

一夏「じ、地鳴り!?」

簪「う、うん…きっと、箒たちがこっちに向かってくる音だと思う…」

一夏「何でまた!?」

楯無「んっふっふっふー。どうやらピンチのようだねぇ」

一夏「どどど、どうしてくれるんですか!? 完璧に楯無さんの所為じゃないですか!!」

楯無「慌てない慌てない。実はこんなこともあろうかと、既に次なるミッションは引いていたのです」ピッ

一夏「ここここ、こんな状態でミッションなんて出来るわけ―――」

楯無「最後まで聞きなさいって。その気になるミッションの内容ですが…」

一夏「な、何なんですか?」


楯無「ずばり!! 『簪ちゃんと一緒に皆から逃げ切る!!』」バーン


一夏「はぁ!?」

簪「え…?」

虚「えぇー…」

本音「うわ~! 愛の逃避行だ~!」ピョンピョン

楯無「ルールは至極単純! 簪ちゃんと一緒に皆に捕まらずに逃げきること! 今日1日!!」

一夏「い、いいいいいいいやいやいや! 何で簪まで巻き込むんですか!?」

楯無「なーに言ってるの」

一夏「はいぃ!?」

楯無「これくらいのことで守れないようで、妹の事を任せられるわけないでしょ?」

一夏「あ…」

楯無「ね?」

一夏「いや『ね?』じゃないですよ! また流されそうになりましたけど!
   結局はあんた、かき回したいだけ――」


『いちかああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』


一夏「ひぃッ!?」

楯無「ほーれほれ。ブー垂れてる暇なんかないわよー」

一夏「あぁもう!! こうなったら絶対に逃げ切ってやる!! 行くぞ簪!!」ギュッ

簪「う、うん!」ギュゥ

一夏「安心しろ簪!! 絶対に守ってやる!!」

簪「うん! 私も、一夏を守る!」

楯無(…簪ちゃん。貴女は、もう大丈夫。私がいなくても…大丈夫だから)

楯無(だから…その手は、絶対に放さないでね。ずっとずっと、握り締めていなきゃダメだよ?)

楯無(これは…『本当のミッション』の練習みたいなもの。最後の、私からの贈り物だから)

楯無(イベントは今日で終わりだけど…こっちのミッションは、永久執行だからね?)スッ…


『簪ちゃんとずっと幸せに暮らす』


ドッゴォォォ!!

一夏「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!? あ、ああああいつら、扉をぶち壊しやがった!?」

楯無「あらあら血気盛んだ事。さて! 本日そしてこのイベントの最終ミッションの幕開けだァー!!」

一夏「最後の最後でコレかよチクショー!!」

楯無「それでは…」


楯無「ミッション・スタート!!」

~mission complete!!~

というわけでまさかの簪√でしたとさ
あー長かった。スレ立ててから4ヶ月くらいでやっと終わった
まぁ何だかんだあったけど終わって良かった
お前ら本当にありがとう

ここで1つ注意事項

【!】このssスレの転載はご遠慮ください

いや何かね…呼称間違ってたり設定間違ってたり風呂敷広げすぎたりしすぎで…
どっかにまとめられたら死にたくなるので
まぁそんなわけでよろしく

ちなみに次はこっちの板で箒ちゃんss書く予定
まぁまた忙しくなるからいつになるかは分からんけども…
これで本当に終わりです
長らく乙でした
じゃあの

なんとか1000いくまでに終わったな
纏められないのは残念だがお疲れさん

ラウラはイキロ

これのまとめが読めないとは残念だ。
また何か書いてくれるととっても嬉しい。
アフターとかないかなw?

>>979>>980

だって無駄に長杉誤字多杉とか多いし…
あと楯無さんの本名の伏線結局回収してないとか色々と死にたい部分があるからさ…
まぁこんなスレまとめてくれる酔狂なサイトがあるかもわかんね

最後にちょっと余興でもしてみようかな。
次スレタイを選んでください

1.一夏「また箒とルームメイトになってしまった…」
2.一夏「この間箒に胸でしてもらったんだけどさ」弾「え」
3.楯無「一夏くんに悪戯しちゃおう! 安価で!」

※多数決安価
>>982->>987の範囲内で多かった方になります

こんどこそ楯無に!

3

3

安価把握。というかエロスレタイ選んだ奴がいないってどういうことなの
これが深夜のノリなのか

安価出しておいてなんだけど、別の楯無さんスレともろにスレ被りだよね…
まぁ安価は絶対だからやるけども。多分月末くらいに立てます

これで本当におしまい
長い間ありがと。じゃあの

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