恭介「理樹、これから旅に出よう」理樹「ええっ?」【実験的ss】 (117)



理樹部屋

ミーンミンミンミーン

理樹「暇だなあ……」

理樹(夏休み。僕以外のリトルバスターズメンバーはほとんど実家へ帰ってしまった。今学校に残っている知り合いはクド、二木さん、それと寮長さんぐらいだ。一度男子寮の水道管が破裂したという噂を聞いたが気のせいだったらしい)

理樹(たまにクドからお茶の誘いを受けて二木さんらと談笑する以外はやる事が本当にない)

コンコンッ

理樹「はい?」

理樹(ノックの音がした。クドが遊びに来てくれたんだろうか…)

ガチャ

「うっす。元気にしてたか?」

理樹(意外や意外。そこに立っていたのは…実家に帰ったはずの……!)

理樹「恭介っ!!」

恭介「どうやらその様子だと帰ってきて正解だったかもな」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439473200

旅をするss。どんなssかと言うと見ていけば分かるはず
でもこんな事は初めてだから上手く行くかどうかは分からないから温かい目で見守っていってほしい





理樹「恭介…どうしてこんなところにいるのさ?まだ鈴と帰省中じゃなかったの?」

恭介「ああ、鈴はまだ実家にいるぜ。俺が勝手に一人で帰ってきただけさ」

理樹(何はともあれ恭介が帰ってきてくれたのは素直に嬉しい。これでこれからの夏休みに退屈という文字は消え去った)

恭介「俺が今帰ってきた理由は理樹が可哀想だと思ったんだ…去年は1人で学校に居てずっと寂しがってたろ?だから今回は早めに帰ってこようと思ってな」

理樹「確かに暇だったけど寂しがるほど子供じゃないよっ」

恭介「で、ただ俺が帰ってきたところでも仕方がないだろう。だから理樹、これから旅をしよう」

理樹「ええっ?」

恭介「だから旅だよ。夏休みまでどうせ暇なんだろ?だったら、夏の思い出を作ろうじゃねえか!」

理樹「そ、そんな急に言われても…」

恭介「大丈夫だ。準備は既に整ってある。俺の部屋に2人分のカバンがある」

理樹「用意周到だなぁ……」

理樹(でも恭介と2人で行く旅はきっと面白いんだろうな。確かに恭介の言う通り、どうせここに居てもただ起きてテレビを見てまた寝るだけだ)

理樹「どこに行くの?」

恭介「九州」

理樹「うわっ、遠いね…電車?それとも船?」

恭介「ママチャリ」

理樹「………ごめん、もう一回言って」

恭介「ママチャリ」

理樹「ええーーっ!!」

恭介「考えてもみろよ就職活動中にママチャリで長期旅行なんて誰が考えるんだ?普通思わないだろ?」

理樹「まぁ、それは…」

恭介「就職活動中じゃなくてもなかなかそんな気になれない。お前はなれるか?」

理樹「いや、まぁ、なれないけど…」

恭介「だろ?だからこそ俺は旅をすることにしたんだ」

理樹「でもそれじゃあ僕は単なる巻き添えじゃない」

恭介「いや、おまえたちも同じだろ。試験勉強や課題に追われる日々の中で、旅をするなんて思いもしなかったはずだ。それはおまえが今さっき同意しただろ?」

理樹(なんだこの説得力は……こうして僕はまた恭介に丸め込まれていくんだ…)

恭介『出発は明日の5時な。荷物には着替えも入ってるからとりあえず早く寝る事だけ考えてくれればいい』

理樹「なんで僕の着替えも持ってるのさ…」

理樹(それにしても2人旅か……こんな真夏に本当にたどり着けるのかな……)

パチッ

理樹「おやすみなさい…」

理樹(ただ、それでワクワクしている僕も少なからずいるわけで……)


……………………

……………

続く

このssの更新が突然途絶えて、そのままスレが落ちるようなことになったら俺は死んだと思っていてくれていい



コンコンッ

理樹「ううん……」

恭介「起きろ、4時半だ」

理樹「うわっ!」

恭介「用意が出来るまで俺は部屋の外で待ってようか?」

理樹「いや別にいいけど…」

理樹(恭介は準備万端な様子だった。恭介もかなり楽しみにしていたんだろう)






校門前

恭介「ほい、これ理樹のリュックな。大きい方には着る物と空気入れが、小さい方のは食べ物とスポーツドリンクその他諸々が入ってる。携帯は持ったな?」

理樹(本当にママチャリだった。恭介車持ってたから実はママチャリは冗談ですと言うのかと思っていたが甘かった…)

理樹「うん…」

恭介「よし!それじゃあ行くぞっ!!」

恭介「おっと、その前にとりあえず朝食だな。飯はこれだ!」

理樹(リュックからガサッと取り出した)

理樹「あんぱん?」

恭介「ああ。あんぱんを見くびるなよ?こう見えてもエネルギーを補給するのに手っ取り早い糖分がたっぷり入ってるんだ。塩分も取れるが油分が少ないので胃の負担になりにくい。道中でまた買おう」

理樹「へぇ」

恭介「あとサドルは高めに調整しておいた方が疲れにくいぜ。競輪のチャリなんかもう足届かないからな!」

理樹(ママチャリと競輪を同じにするのは失礼じゃないかな…)

恭介「じゃあ行こうか」

理樹「うん」

理樹(旅は意外とのんびりしてて苦痛がある訳ではなかった。……いや、それは恭介のアシストのお陰かもしれない)

恭介「リュックは背負わず前の台に乗せておいた方が楽だぜ」

理樹「分かったっ」





理樹(僕らは海沿いの山陽方面へ向かった)

恭介「よし、見えてきたぞ…大阪だ!」

理樹「おおーっ……ってあんまり実感湧かないね……」

恭介「まあ、もっと西の方行かないと目立った変化はないかもな…。それじゃあこのまま43号線方面へ行こう」

理樹「えっ?どこか寄らないの?」

恭介「寄らない」

理樹「ええー…」

恭介「観光地?へっ!知るか!それより先に進む方が先だぜ!」

理樹「いやいやいや、旅ってそういうところ見に行くんじゃないの!?」

数時間後

恭介「よし…そろそろだな……」

理樹「えっ、何が?………うわっ!」

恭介「淀川だ。海から近い方から見た方が迫力があるってもんだぜ」

理樹「大きいね…写真撮っておこう」

恭介「ああ。漕ぎながら撮ると危ないぜ」

パシャッ

http://i.imgur.com/JBsdRWh.jpg




数時間後

恭介「よし!そろそろ兵庫県だ!理樹、ほらそこの看板を見ろ」

理樹「43号線に沿って行けば迷わなくて済むね」

恭介「ああ。だが次で2号線に変えよう。そっちの方が色々あるだろうし。ちょうど腹も減ってきたしな」

理樹「そうだね」

兵庫県

理樹「兵庫って神社とか鳥居が多いね」

http://i.imgur.com/ds8D4u4.jpg

恭介「まあ結構もうちょっと行ったら有名なところもあるしな。…そろそろ神戸駅だ。ここはチャリでもすぐそこだから見に行ってみよう」



神戸駅

http://i.imgur.com/lAFHbxR.jpg(プライバシーのため云々)

理樹「でかっっ」

恭介「そうだろうそうだろう。俺結構この建物好きなんだよな。ちょっと写真撮っててくれ」

理樹「うん」

パシャッ

恭介「じゃあそろそろ飯にするか!」

理樹「うん。せっかくだからご当地モノとか食べてみたいよね」

恭介「よし、探してみよう」





恭介「うーむ………」

理樹「あっ、ねえ恭介!あそこいいんじゃない?」

恭介「いやダメだ。もっと新しい店にしよう」

理樹「じ、じゃああっちのは…?」

恭介「いやダメだ。それなら前にあった店の方が美味しそうだ」

理樹「じゃあどうするのさ…」

恭介「もうちょっと探させてくれ…もう少し進んだらいい感じのがあるかもしれない」




数十分後

恭介「やべえ、チェーン店以外の店自体がほとんどなくなっちまった!!」

理樹「早く決めておけば良かったのに……」

恭介「うっ……分かったよ…そ、それじゃあ、あそこのパン屋に寄ろう…」

パン屋

カランカラン

店員「おーいおっさん、客が来たぜ」

店員2「あいよー」

恭介「おお!なんとなしに来てみたが割と当たりかもしらねえな。案外イケそうだ」

理樹「じゃあ僕あんぱん買うね。2個でい……なんだ…これ…」

ピカァーッ

理樹(美味しそうなパンに自然と並べられた七色に光る物体……いや、札を見る限り食べ物なのかこれは…?)

店員2「ああ、そいつは買わない方がいい。ウチのが作ったんだがもうこの世のモノとは思えなくって!」

理樹(くわえタバコの店員さんがトングを渡しながら言った。じゃあなんで商品として並べてるんだろう)

店員「おいおっさ…!」

店員2「ん?」

理樹(振り向いた先には……その作った張本人らしき人物が…)

店員3「私の…私のパンは…この世のモノではないんですねーー!!」

理樹(涙を光らせて店を出て行ってしまった。すぐに後を追いかけていく男の人)

店員2「待ってくれ早苗ぇぇえ!!俺は大好きだぁぁぁああああ!!」

恭介「…………とりあえず会計を」

店員「あ、はい…」

理樹「…………」

数十分後

恭介「おっ、来た来た来たぁ!」

理樹「えっ?ああっ」

理樹(海だった。かすかな潮の匂いもする)

恭介「よし理樹!せっかくだから海の方から行こうぜっ!!」

理樹「うんっ」





数分後

恭介「…………………」

理樹「…………………」

http://i.imgur.com/453nMeZ.jpg

恭介「俺だっていつも完璧な訳じゃないやい!」

理樹「とりあえず戻ろうか……」

理樹(そしてそこからかなり走るとちらほらと明石の看板が目に付いた)

恭介「もうちょっとで例の明石海峡大橋が見えるな」

理樹「うん」

「そこの……兄さんたち…見て……いくかい?凄え珍しい糸を使わない人形劇だ……ぜ……」

理樹(そこには顔がゴリゴリとやせ細った人形使いの人がいた……)

恭介「そ、そいつはいいがあんたは大丈夫か?ガリガリで今にも倒れそうだが……」

人形使い「だからこれで稼ぐのさ…ささ、そこ座ってくれ…」

恭介「いや、悪いが俺たちもさっき休憩したばかりだしまだそんな余裕はないんだ…だが代わりにこれを貰ってくれ。それでまた人形劇を続けてくれよ」

理樹(取り出したのはあんぱんだった)

人形使い「お、わ…悪いな!お前たちの事一生忘れないぜ!」

恭介「そりゃどうも。じゃ、お互いの旅を祈って」

人形使い「ムシャムシャ……ん?俺が旅してるってなんで分かったんだ?」

恭介「まあそこのいかにもって感じのリュック見りゃな…」

理樹(なるほどその人の荷物入れはボンサックだった)

人形使い「フッ……それじゃあな。どこまで行くのかは知らないが、幸運を」

恭介「ありがとう」

理樹「ありがとうございます」

理樹(しかし今の人…なんとなく恭介に似てたな……)

更に数十分後

恭介「よっしゃあ!見ろ理樹、もう分かるだろ?」

理樹「橋だ!」

理樹(さっきまでは建物とかで隠れて見えなかったけど、やはりそこまで行くとその大きさに圧倒される)

理樹「巨大だな……まさにザ・橋って感じだね」

恭介「もう少し近くで見てみよう」

http://i.imgur.com/F8hlRgY.jpg

理樹「今日が晴れで良かったね…」

恭介「ああ。……それじゃあ写真を何枚か撮ったら先へ行こう。宿はもうちょっとしたら着くからな」

理樹「えっ?ちょっと早くない?」

恭介「いや、これぐらいじゃないと逆に夜の運転は危険だぜ。一応反射鏡もライトが付くのに変えてはいるがな…それにこの時間だとあと30分もしたら真っ暗だぜ」

理樹「そういうものなのかな…」


宿

理樹(確かに着く頃には割と暗くなっていた。この道は車も信号も多いから恭介の言うとおりかもしれない)

恭介「じゃあ荷物も置いてきたし飯食いに行こうぜ!」

理樹「うん」





理樹「美味しそう…やっぱり明石といえばこれだね」

http://i.imgur.com/eLAHJzN.jpg

恭介「ああ。なかなかいい店選びだろ?」




理樹「ごちそうさま…これならいくらでも食べられるね」

恭介「それはそこ、腹八分ってことで。それじゃあ宿に戻るか」


部屋

恭介「ストレッチも抜かりなくな?歯磨きは?」

理樹「ちゃんとやったよっ」

理樹(少し過保護すぎだ)

恭介「そうかい。……じゃ、おやすみ」

理樹「おやすみ」

パチッ

理樹(結構順調な旅だったと思う。恭介はもう少し進みたかったと言っていたけど……とりあえず今は寝て体力を温存しなくちゃ……こうして夜は更けていく……)

………………………

………………


続く
今後の展開がどうなるかはマジで分からん
リタイアすることも十分にあり得る
それじゃあおやすみ

ジリリリ…ピタッ

理樹「ふう…今度はちゃんと自分で起きられたぞ」

恭介「なんだ…もうそんな時間か……」

理樹「まあ、まだ出発まで余裕があるけどね……あれっ?」

恭介「どうした?」

理樹「おかしいな…昨日あれほど動いたのに全然筋肉痛が痛くないよ!いつもなら足上げると痛いのに」

恭介「よかったじゃないか!柔軟のおかげだな」

理樹「真人もよく言ってたけどやっぱり全然違うねっ。ところで今日の目的地は?」

恭介「そうだな、今度は岡山まで行ってみよう。ここからは昨日より坂が多いから頑張ろうな」

理樹「うんっ」

理樹(恭介の言う通り岡山への道は急な坂が多かった)

恭介「とにかくギアを小まめに変えろ!同じペースで移動するのを心がけるんだっ」

理樹「うん…!」

ゴウンッ

理樹(僕らが移動する道はすぐ横に自動車やトラックが走っていた……)

理樹「ねえ恭介!本当にここ進んでもいいの!?めちゃくちゃ怖いんだけどっ」

恭介「心配すんな。確かに狭いが自動車や徒歩の人用のレーンがあるだろ?それにたまにロードバイクが通るじゃねえか」

理樹(そこを本当に徒歩で行く人はほとんどいないんだろうな…)

理樹「岡山まで100kmか…キツイなぁ」

恭介「あっ、俺らが泊まる予定のところはそれの更に30km先だから。倉敷ってとこな」

理樹「そ、そんな…」

恭介「何を憂いでいる?なんなら着くのは夜になるがスピードを落とそうか」

理樹「ごめん…」

理樹(流石にその距離をずっとこのペースで走るのは……ロードバイクと違ってママチャリは本体自体が重いしなあ。荷物は乗せやすいけど)




恭介「おっ、結構いい眺めじゃねえか」

理樹「本当だね。やっぱり海沿いになると川も大きいや」

http://i.imgur.com/04VlhsW.jpg




理樹「はぁ…はぁ……!」

恭介「ふぅ……ふぅ…」

理樹「ここ本当に急だね…」

恭介「ああ…だがここを越えると……見ろ!」

理樹「おおー」

http://i.imgur.com/Qp6xZ23.jpg

恭介「姫路だ。今まで上にあった2号線の車が見渡せるのは良い気分だぜ!」

理樹「そうだ!姫路ってことは姫路城は……」

恭介「行かない」

理樹「ええーっ」

恭介「お前城好きなのか?」

理樹「いや、別に好きってわけじゃないけど…」

恭介「じゃあ見なくていいじゃねえか」

理樹「いやその理屈はおかしいよ!」

恭介「まあまあ…このペースでそんなの見てたら泊まるところまでたどり着けないぜ?それにゴールはもっといいもんが見れるからそっちを楽しみにしておきな」

理樹「え?う、うん…」

理樹(そこまで言うなら仕方がない……と、その時僕は思っていた)

恭介「イヤッホーーーウッ!!見ろよ理樹!田舎だ、田舎だぞ!」

理樹「えっ?そうだね」

恭介「写真撮ろう!俺こういうところが大好きなんだっ」

パシャッパシャッ

http://i.imgur.com/3hrPMQG.jpg

http://i.imgur.com/cWUhIXz.jpg

理樹(恭介はそこが気に入ったのかずっと撮りっぱなしだった)

理樹「ね、ねえ…時間がどうとか言ってなかった?」

恭介「これは違う。休憩の合間に撮ってるだけだ!」

理樹「確かにルートから外れてないけどさあ…」

理樹(まあ、恭介の始めた旅だしこのぐらいは目をつむったおこう。僕も結構田舎の景色、好きな方だし)


恭介「あっ、そうだ理樹。これやるよ」

理樹(帽子を受け取る)

理樹「ありがとう。熱中症対策だね……って何これ?なんでオーストラリア?」

理樹(帽子には「I LOVE Australia」とプリントされていた。恭介が海外旅行なんて聞いたことがない…)

恭介「ああ、そいつはホームステイに来ていたアイザックがオーストラリア名物にそれをくれたんだ」

理樹「いや、ばりばり量産型お土産グッズだけど!?」

恭介「ふう…おっと、こっちはトンネルをくぐるより隣の道を登った方がいいな。おあつらえ向きに『自転車、徒歩の方はこちら』と来てやがる」

理樹「でもここも急な坂だからギアを一番軽くしても無理っぽいね…」

恭介「やっぱ岡山っていうほどだから山が多いんだな。どこもかしこも山だらけだぜ」




理樹「よいしょっ…と!やっと峠だね……」

恭介「理樹、その看板には何が書いてある?」

理樹「えっ?……ああ!」

http://i.imgur.com/ud5a2qQ.jpg

理樹(やっと着いたんだ…岡山に!)

恭介「あっちの看板にある岡山ってのはもっと先の事を書いてあるからな。とりあえず普通に間に合いそうでよかったぜ」

理樹「これだと夕方には……ゴホンッゴホンッ…」

恭介「どうした!?」




理樹「ガラガラガラ……ペッ」

理樹(急に咳が止まらなくなった。原因は車の排気ガスだという)

恭介「ここは車がよく通るからな…定期的にうがいはやっておいた方がいいか」





理樹「よいしょっ…こらしょっ……」

恭介「そろそろ腹減ったな…何か食う所は…おっ!あんなところに『備前焼き』って書いてあるぞ!きっと回転焼きみたいなもんだろ!行ってみようぜっ」

理樹「うん?」




恭介「……………」

http://i.imgur.com/V2fX9cs.jpg

理樹「そ、そういう時もあるよ!ほら、結局隣に食べるところもあったし良かったじゃないっ」

恭介「うん…まあ……そうだな…」

理樹(それにしてもこれお土産に出来そうだな…部屋に1個花瓶を置いておくとして小さいのを鈴達にあげよう)




…………

…………………

恭介「さあ今日の旅も大詰めだ!ここからは飛ばしていくぜっ!!」

理樹「よーし!………う、うわぁぁああ!!」

恭介「どうした理樹?川なんか見て…そんなに川が好きなのかい?」

理樹「い、いや…この川の名前……」

恭介「へ?」

http://i.imgur.com/wiktB2F.jpg

恭介「ぐ、偶然もあったもんだな…」

理樹「ううっ…つ、着いた……」

理樹(ホテルに着いた頃には夜だった。それでもまだ7時だったから少し街を散策出来る余裕はある)

恭介「よし、荷物を置いて出てみよう。行く時に言ってたお楽しみってやつを見せてやろう」






理樹「ママチャリで行ってるから出かける時も気軽に使えていいよね」

恭介「そうだな。と言っても今から行くところは5分としない……ほら、もうそこだ」




理樹「うわ、凄いねここ…この空間だけタイムスリップしたみたいだ」

恭介「だろっ?夜になっても……いや、むしろ夜の方が雰囲気があっていい感じだ。店は思いの外ほとんど飲み屋だが」

http://i.imgur.com/Np8VTQv.jpg

http://i.imgur.com/vGfzzeE.jpg

ホテル

理樹「ふうー…」

ドサッ

恭介「お疲れのようだがちゃんとシャワーを浴びてから寝ろよ?ここは部屋に備え付けてあるから先に入ってくれ」

理樹「うん。それじゃあお先に…」

理樹(とうとう岡山まで来ちゃったか…この調子だと明日は広島だな。天気が良かったら良いんだけど……)




パチッ

理樹「それじゃあお休みなさい」

恭介「ああ、お休み…」

理樹(明日もいい旅になりますように…)


………………………

……………

続く?

むしろ燃える以外の理由があったら教えてほしいぜ!
再開



理樹(岡山から広島へは結論から言うとほとんど坂は無かった。一度岡山の坂を経験すれば怖いことはない)




恭介「ふう…なかなか良いペースだな。やっぱ意外と理樹も体力あるじゃねえか!」

理樹「日々なんだかんだで鍛えてるからね。でもこの旅で本当に必要なのは体力じゃなくて精神力だよ…田舎とか自然の景色があんまり好きじゃない人はすぐリタイアするよこれ…」

恭介「…もしかして理樹はあまり好きじゃなかったか?もしもそうならここからしまなみ海道というところで九州までショートカット出来るが…」

理樹「いやいや、別に嫌いじゃないよ!でもそのしまなみ海道っていうの確か景色良いんだっけ?」

恭介「ああ!だがそれを使うならママチャリでここまで来た意味が無くなってくるからな…出来るだけ使いたくはないんだが…」

理樹「いや今回はもう全部恭介の好きに決めて良いよ。どうせ付き合ってきたんだし」

恭介「おう!ありがとうなっ」

夕方

理樹「ハァ…ハァ…!なんのさこれ!なんでこんなに急な山に登るの!?」

理樹(今まで来た2号線から外れたので何かあるなとは思ったけどこれは…あまりのキツさにギアを一番軽くしても乗り切れなかった)

恭介「あ、ああ…ここを抜けたところに社務所神社っていうちょっとした凄い神社があるんだ!どうせなら行ってみようと思ったんだが…こいつは本当にやべえな…多分ロードバイクやクロスでも無理だな…」

理樹「ああ…もう下ってくる自動車の人達が僕らを哀れんでるよ…」

恭介「そんなもの国道走ってる時から好奇の目線を向けられてるから慣れてるだろ」










神社

http://i.imgur.com/QYcmDnu.jpg

理樹「………これがその凄いお寺?」

恭介「………ま、間違えた…」

理樹「じゃあそっちにまた行く?」

恭介「いや、それだともう宿泊先に間に合わねえな…とりあえずここでお参りでもしよう…」

理樹(恭介のテンションの下がりっぷりと言えばそれはもう鈴から本気でドン引きされた時と同じぐらいだった)



シャンシャン

理樹(とりあえずこの旅で事故がありませんように!そしてこれからの道は楽になるといいな…)

恭介「ひゃっほーう!」

理樹「気持ち良い…!」

理樹(とりあえず後半の願いは叶えてくれたのか帰りは下り坂しかなかった。逆に車は渋滞だったのでそれをすり抜けていく感じで下っていく…これ時速40kmはあるよな…)

恭介「どうだ!今まで散々抜かされてきた車を置き去りにする感覚は!」

理樹(恭介はいつの間に用意したのか携帯から大音量でマリオカートのスターを取った時よろしく無敵BGMを流して疾走していった)








理樹「なんか広島はあっという間だね。特にこれといったものはなかったかな」

恭介「だがやはり広島市に来ると違うだろ?都会が並んでてギャップに驚くぜ!」

理樹「まあ確かに」

理樹(これほどの都会は初めてみた。まさか歩行者用の信号にあとどのくらいで青になるか分かるライトが付いてるなんて…)

http://i.imgur.com/CmGNrH0.jpg

恭介「よし、そろそろ今日の目的地だぞ」

理樹「そうだけど今日はどんなホテルに泊まるの?」

恭介「いやそもそもホテルじゃない。ゲストハウスだ」

理樹「えっ?」





ゲストハウス

ガヤガヤ

恭介「今日予約した棗ですが…」

「はいどうも」

理樹「うわ…凄い」

理樹(ゲストハウスとは旅人の人達が集まる格安の宿だ。部屋も8人や4人で他の泊まりに来た人と寝るのでそこで交流が生まれるわけだ。ちなみにお茶の間には外国人の人や英語を喋られる人達が話し合っている)

恭介「じゃあ他の人と話すのは後にしてとりあえず今はメシを食いに行こうぜ!」

理樹「そうだね」

理樹(僕も結構人見知りな方だし…)



理樹「今日は何食べる?」

恭介「やっぱ広島焼きだろ!まあこういう言い方をすると怒る奴もいるらしいが…」

理樹「広島焼きって言うとお好み焼きってことか」







「へえ!ママチャリでここまで来たのかい!凄いことするもんだなあ兄ちゃん達!よっしゃあ!お兄さんらチーズは食べられる?よし、それなら今日はそんな旅に挑戦する2人にチーズもサービスだ!」

恭介「おお!それはありがとうございます!」

理樹(驚いた…こういうのって漫画や映画の中だけかと思ってたら本当にサービスしてくれるんだ!)


ドンッ

「じゃあマヨは自分で好きなだけかけてくれ!」

理樹(ソースの匂いが食欲をそそる…この旅はお腹を空かせるからこれは反則的だ…!)

パクッ

理樹「おいしい!」

理樹(中の大量な具と真ん中にあるチーズが良い感じに絡み合う!)

恭介「理樹、その海鮮の奴と肉の奴半分こにしようぜ!」

理樹「もちろんだよ!」

http://i.imgur.com/oT9jlw3.jpg

ゲストハウス

理樹「うう…お腹いっぱい……」

恭介「よし!ちょっとお茶の間の外国人に話しかけてくるぜ!」

理樹「もう僕は寝るからね…」

理樹(恭介は眠たくないのかな……まあ…とりあえず今は………)

『う、うぁぁぁああ!!』

理樹「!」

理樹(い、今のは恭介の叫び声!?まさか調子に乗り過ぎて襲われてるとか!)



ガラッ

理樹「恭介!?」

理樹(場は普通に静かだった。恭介も腰抜かしただけで特に怪我はなさそうた)

理樹「いったい何見てそんな大声を張り上げてどうしたの!?」

「まっまくだ。まるで人を幽霊が出たかのように…」

理樹「………えっ?」

来ヶ谷「しかしその旅、理樹君も行っているのか…少し見直したぞ」

理樹「……………えっ

超眠い
続く

数十分前

恭介「そこで俺たちは旅をする事にしたんだ」

ボブ「Hummm...ナツメ、ナオエ・イズ・グレートメーン! マサニ・ナツノ・モウシゴデース。HEHEウマイコトイッタ~」

「ほーう。私もロードバイクで帰ろうと思っていたがまさかただの自転車でやるとは…流石恭介氏、発想が違うな」

恭介「ああそうだろ?最初はどうなる事かと思ったが………ん?」

来ヶ谷「どうした?」

恭介「う…」

恭介「う、うあぁぁぁああ!!」






理樹「そっか…来ヶ谷さんも旅だったんだ」

理樹(落ち着いたところでテーブルに戻った)

来ヶ谷「まあ私は帰省して少し時間が残ったから山口の方から来たわけだ」

理樹(来ヶ谷さんはロードバイクで来たらしい。僕らのより値段が数段高い代わりに数段軽くて早い競技や長距離旅用の自転車だ)

恭介「じゃあ明日からはこのまま学校へ帰るんだな」

来ヶ谷「いや、それは止めた」

理樹「え?」

来ヶ谷「私も君たちについて行こう。そんな面白そうな旅なら見逃す手はない」

恭介「ち、ちょっと待て!別に俺と理樹は構わんが一旦戻る事になるんだぞ!?」

来ヶ谷「なに、その点は大丈夫だ。どうせ君らの自転車で山口のあの坂を越えながら進む事なんて出木やしない。どうせ海岸線を通るんだろう?」

恭介「まあ…その通りだが」

来ヶ谷「なら別の景色を見れて良いじゃないか!海沿いはさぞかし絶景だろう」

理樹(恭介はどうしたものかと僕にアイコンタクトを送った。僕は恭介に任せると答える)

恭介「分かったよ…だけど絶対弱音なんて吐くなよ?この旅は並みのやつは続けられないぜ?」

来ヶ谷「君らと違って私はまさにそういった旅に適したものを乗っているからな。それに理樹君が吐かない弱音を私が漏らすとでも?」

恭介「……確かに」

理樹(怒っていいはずなのに納得するしかなかった)

………………

………





恭介「じゃあ出発と行こう。今日は山口までだ!」

理樹「距離はどのくらい?」

恭介「今日も150km程度だ」

理樹「ええー!…って『今日も』って何
!?」

恭介「ああ。実は始めに言うと気が滅入ると思って言ってなかったんだが、実は昨日150km程走ってたんだぜ」

理樹「ほ、本当に!?」

理樹(全然気づかなかった…確かに着いたのは遅かったけどそんなに体力を使ってないと思ってたんだけどな…)

恭介「どうだ、そう考えると余裕な気がしてきたろ?しかも今日行くのは来ヶ谷の言う通り海岸線だから坂らしい坂は終盤しかないぜっ」

来ヶ谷「君らはロードバイクを使えば200kmは行けそうだな。いやはや、若い男の子は元気でいいな」

恭介「まあ体力自体はあんまり要らねえけどな、この旅」

理樹「足は凄く痛いけどね…」








ザァーー!

理樹「………」

来ヶ谷「………」

恭介「な、なんじゃあこりゃぁああ!!」

理樹(雨。土砂降りの雨だった。広島を出て、山口の県境に着いた途端これだった)

恭介「くそっ!死ぬほど寒い!温度と共にエネルギーも無くなってきたぜ…」

理樹(それに足もぐっしょりで気持ち悪く、とても歩ける状態じゃなかった。これじゃあテンションも下がっていく…)

来ヶ谷「どうする恭介氏?私はそもそもこの細いタイヤだから雨に打たれながらの進行は無謀だ。それに君らもそんな状態じゃ漕げないだろう」

理樹(僕らも一応カッパを買っていたがこの雷さえ降っている雷雨では無駄に終わった。どうやここが中心として降っているらしい)

恭介「運がねえ…しかたがない!ここは雨が止むまでどこかで雨宿りするっきゃねえぜ!」

来ヶ谷「幸い天気が晴れるのはあと2時間程度だ。それまでにシャワーでも浴びよう」

ネットカフェ

恭介「ふふっ…」

来ヶ谷「上がったぞ。理樹君も入って来るといい」

理樹「結構設備凄いよねここ…シャワーからパソコンまであるよ…ちょっとしたご飯まであるし」

理樹(僕らが立ち寄った店は結構近くて助かった。時間も程よく潰せるし(実際恭介は漫画を読みふけっている)小腹も満たすことが出来た)

来ヶ谷「まあそういう事のための所でもある。旅人は金がない時はここで泊まったりすることも可能だ。もっとも私達は高校生だからそんな時間までいられやしないが」

2時間後

http://i.imgur.com/mqpmlX3.jpg

恭介「おお!凄え晴れたなっ」

理樹(まったくさっきまでの天気が嘘みたいだ。空には青空が見え、気温もぽかぽかと夏本来の温もりが蘇ってきた)

理樹「でも靴や靴下がグズグズのままだね…」

恭介「仕方がない。このまま進むのは気が乗らないから少しもったいないがそこらの店で靴と服一式を買おう」

理樹(そのあと近くのデパートに寄って気持ちを一新してから旅を再開した。しかしかなりの時間ロスだった…)

恭介「ヒィーーヤッホーウ!!」

理樹(しかしそこからはまさに旅らしい旅と言えた。海岸沿いに行ったのは坂が無いのもそうだけど景色が抜群に素晴らしい!)

恭介「見ろ二人とも!海!うみだぞ!!」

理樹「いや分かってるよ…左を向いたら嫌でも見えるんだからさ」

理樹(左には海が広がっていて右には青空をバックに青々とした山の木々が。こんなところをずっと散歩出来るならここに住んでもいいと思えるほどだった)

恭介「せっかくだから海に寄って行こうぜっ」

来ヶ谷「…恭介氏は理樹君の前だといつもこうなのか?」

理樹「いや、まあ…」

理樹(確かに普段の超人っぷりからは考えられないほど隙だらけだった)

恭介「うぉぉぉぉおお!!海が透き通ってるぞ!」

http://i.imgur.com/0NWwfe3.jpg
http://i.imgur.com/0UZhGg3.jpg



理樹(夕方頃の景色も味があった。この日が沈みかけの太陽には思わずため息が出てしまう。あの来ヶ谷さんでさえしばらく目を離さなかった)

http://i.imgur.com/yNS4Nf4.jpg
http://i.imgur.com/zWCYRhW.jpg

恭介「……なあ」

理樹「?」

恭介「この写真売ったらいくらになるかな」

理樹「感動してるところだからちょっと静かにしておいて」

拡張ツールのおかげで画像見るの楽でいいww

因みにこういった旅って幾ら掛かるんだ?

>>84
結構かかるな
宿泊代も込みで1日1万かかるときもある。まあ大抵はお土産やご当地の美味いもん食ってるからなんだが

恭介「よしあとひと息だ…」

理樹(今までと違って物凄い回り道だから次の街に着く頃にはすっかり夜になっていた)

来ヶ谷「時に恭介氏、今日は宿が安く取れたと聞いたが」

恭介「ああ!何故か分からんがちゃんと風呂屋シャワーがついているホテルでペアでは8000円のところ、シングルでは3000円で済んだぜ!」

来ヶ谷「シングルは私か。それは良いところを見つけてくれたらしい…感謝する」

恭介「いいってことよ!それよりこのペースだと日が暮れちまう、急いでいくぜ!」

グニョッ…グニョッ…

理樹「あ…あれ!?」

理樹(後輪が急に変な音を出した。スピードもそれに伴ってどんどん遅くなっていく)

来ヶ谷「どうした理樹君?」

理樹「も、もしかしてこれって…」

恭介「パンクか!?」

理樹「う、うん…!これは後輪だね…」

恭介「マズイな…前輪ならまだしも後輪の方は作りが複雑過ぎてこんな暗い中じゃ分解すんのは勇気がいるぜ……」

来ヶ谷「今は夜の7:30だ。このままではどこの自転車屋も閉まっていくぞ」

理樹「ど、どうしよう!」

来ヶ谷「しょうがないな。とりあえず君は前輪を傾けるようにして持ち上げながら進め。大丈夫か?」

理樹「結構重たいけどなんとか…」

理樹(パンクしたまま漕いでしまうとタイヤの中にあるチューブまで傷付いてしまう。そうなると修理代もかなりかさばってしまうのだ)

恭介「調べたところ、ここから1kmのところに8時までは開いてある自転車屋がある!疲れたら代わってやるから急ぐぞっ」

理樹「わ、分かった!」

自転車屋

理樹「ぜぇ…ぜぇ……」

来ヶ谷「うむ。よく頑張ったな少年」

理樹「たかが1kmだと思ってたけど歩いて行くとかなりあるように感じるよこれ…」

「お兄ちゃんらどこから来た?こんな夜遅ぉに来て…」

恭介「実は…」





「へぇ!そんでこのチャリで来たんかいな!そこのお姉ちゃんのじゃなく?よー頑張ったわ」

理樹「まあ…」

理樹(自転車の部品をまるでやり飽きたパズルのように分解してまた直す様はカッコイイなと思った。僕も…)

来ヶ谷「ぼくも自転車の修理出来たらかっこいいんだろうなー」

理樹「うわっ…急に心読まないでよっ!」

「よっしゃ治った!そんじゃあ代金は500円」

理樹「えっ?そこの看板には800円って…」

「ええ、ええ、それよか山口も大変やから頑張りや」

理樹「あ、ありがとうございます!」

理樹(偶然かもしれないけど広島って本当に良い人が多いな…将来こっちに移ろうかな…)

恭介「さて、ホテルもすぐそこだ。この調子で行って早くシャワーに浴びよう」

理樹「うん!」

ホテル

恭介「なっ…つ、つまりそのシングルって言うのは男性専用だと…?」

「はい。予約欄にはちゃんと書かれていましたが…」

理樹(ホテルに着いた途端雲行きが怪しかった)

恭介「今から予約のキャンセルは…」

「キャンセル料は宿泊代の80%となっております」

恭介「なにィ!?」

理樹「どうするのさ!これじゃあ来ヶ谷さん泊まれないじゃないかっ」

来ヶ谷「いや一つ方法があるじゃないか」

理樹「方法?」

ツインの部屋

来ヶ谷「じゃあ先にシャワーを浴びさせてもらうよ」

理樹「う、うん…」

理樹(い、いくらキャンセル料がおしいからってこの状況は……)

ジャー…

理樹(し、静まれ!僕の心臓!…そうだ、こんな時は魂の叫びで落ち着こうっ!!)

理樹「ボドドドゥドオー」

キュッ

来ヶ谷「ん?なにか言ったか?」

理樹「いや…なんでも……」

理樹(そのあと断食中のキリストに囁きかける悪魔のように来ヶ谷さんが僕を誘惑してきたが割愛させてもらう)

ファミレス

理樹(夜ご飯を取りつつ今後の方針を話し合った)

来ヶ谷「そう言えばまだ九州のどこと聞いていなかったが最終的な目標はどこなんだ?」

恭介「熊本だ。熊本のどこかはまだ教えない」

理樹「なんでさ!?」

恭介「まあ着いた時のお楽しみさ…それより理樹、さっきのパンクの時、結局最後まで自分で担いで行ったよな…あれは驚いたぜ」

理樹「まああの時は2人に迷惑かけられないと思って…」

恭介「この分じゃ坂もなんなく越えられそうだな」

理樹「坂?」

来ヶ谷「ほほう…」

恭介「次の山口から九州までは回り道を使わず真ん中を通っていく」

理樹「えっ!?」

理樹(それって昨日来ヶ谷さんが言ったようにかなりきついんじゃ…)

恭介「大丈夫だ!どうしてもキツければ自転車を押して登ればいいんだしよ」

理樹「ええーーっ……」

理樹(だが例にもよってそれに対する反論は無駄に終わった…)

………………

………







部屋

来ヶ谷「消すぞ」

理樹「はい…」

理樹(今回の旅を抜けばいつもは真人と寝ていたのにそれが女の子に代わるってだけで凄く眠れない……)

来ヶ谷「………眠れないか?」

理樹「おやすみなさい!」ガバッ

来ヶ谷「ふふふ…そう怖がらなくてもいいんだぞ…怪しいことはしないよ」

理樹(もうその言葉が怪しいんだって!)

翌朝

理樹「…………」

恭介「どうした?今日はやけに早く漕ぐじゃねえか!これならペースアップしても構わないな」

理樹「う、うん…」

理樹(複雑な気分だった。あのあと言葉巧みに起こされてずっとからかわれてたけど最後にやってもらったマッサージのおかげで足がすごく軽い…。マッサージもやり方で全然効力が違うということか)

恭介「よし、そろそろ坂だ!気合い入れろっ!!」






国道

理樹「はぁ…はぁ……」

理樹(汗が肘からポタポタ落ちていく…いい天気なのも相まって喉が乾く…しかしここで自転車を降りて水を飲めばこの長い坂はそのあとずっと歩いて漕がなければならない)

理樹(急で短い坂ならそうやって押していけばいいだろう。しかし緩やかな長い坂はそうもいかない…)

恭介「ふっ…ふっ…見ろ!そろそろ峠だ!この調子乗って俺たちを抜かしまくってる車どもを逆に抜いていけるぜ!」

理樹「いや調子は乗ってないと思うけど……あれ?」

来ヶ谷「おや、あんなところに食事処があるぞ。少し涼んでいくか?」

理樹(来ヶ谷さんは相変わらず口調が変わっていない)

恭介「そうだな。せっかくこの道から来たんだし少しぐらいなら大丈夫だろう」

レストラン

「いらっしゃいませー!…ええっ!?」

理樹(店員さんが驚くのも無理はない。僕らはまるでバケツの水を被ったように全身汗塗れで足もおぼつかず、これに血糊でも付けていればさっき事故にあってきた人達と化すからだ)

理樹「クーラーが気持ちいい…」

「あ、あちらの席にどうぞ!」





「ご注文はお決まりでしょうか」

恭介「さて、何を頼もうか…おっ、この骨つきチキンは美味しそうだっ」

理樹「朝食べたばかりなのによくそんなもの頼むね…じゃあ僕はこのミニソフトを」

来ヶ谷「うむ、お姉さんもそれをお願いしよう」



理樹(数十分後。恭介のチキンと共に来たのはミニソフト(?)だった)

http://i.imgur.com/EqjalY5.jpg

理樹「でかっ!」

「店長からのサービスですっ」

理樹(ははあ、なるほど。きっとこんな僕らの状態を見て哀れんでくれたんだろう。ソフトはイチゴのソースがかかっていてとても美味しかった)

恭介「ちくしょう!俺もそれ頼んでおけば…!」

理樹「そういうこと言うとみっともないよ…」


恭介「へっ!お前らがそういうつもりなら俺だって超美味そうに食ってやるぜ!!」

http://i.imgur.com/4NXerVp.jpg

理樹(恭介はホイルの部分を持ってわざとらしく腕をプルプルさせながらゆっくり食べた)

来ヶ谷「さて理樹君。これを食べたら会計は恭介氏に任せてさっさと下り坂を走ろう。きっと風が気持ちいいぞ」

理樹「そうだね」

恭介「ちょっと待ったぁーー!」






「全部で862円です」

店長「君らどっから来たん?」

理樹(店長らしき人が現れた)

理樹「あ!ソフトありがとうございました!」

店長「はっはっはっ!腹壊させたらごめんなっ」

理樹(そのあと一通り喋ったあと、旅を再開した)

来ヶ谷「もう少しで下関だ。そろそろ今晩の宿を決めよう」

恭介「そうだな…今晩あたりは福岡の小倉で泊まろう」

理樹「福岡ってことは…」

恭介「ああ、今日中に九州に着く」

理樹「おおー!」

来ヶ谷「着く前に面白いものも見られるな」

理樹「面白いもの?」

シャーッ

理樹「それにしても国道っていつ行っても怖いね…」

恭介「ああ…もうほとんど高速道路と変わんねえからな……」

理樹(一応たまに歩道が設けられていることもあるがだいたいはトラックの30cm横を通ることになる)

チャリッ

理樹「うわっなんか踏んじゃった!」

理樹(国道の端には衝突事故の時の破片や瓶のガラスが落ちていて非常に危ない。硬いタイヤに替えているならまだしもノーマルなママチャリにこだわった恭介と僕のタイヤでは踏んだだけで致命傷だ)

来ヶ谷「む?よく見てみろ。君が踏んだのは……」

理樹(後方の来ヶ谷さんが呼びかける)

理樹「えっ?…あっ」

理樹(小銭だった。それも大量にある…!)

恭介「どうした?…うおっ!」

理樹(よく見ると小銭入れも転がっていた。誰かが窓から落としてしまったんだろうか…拾わないのも無理はない。こんなところでは止めようもないしUターンも出来ない)

恭介「しかも見ろ!この財布よく見たらヴィトンだぞっ」

理樹「うわあ…どうしようこれ」

来ヶ谷「あいにくこの辺りに交番はない。仕方がないからそれが見つかるまで理樹君のカバンにでも入れておけ」

理樹「それくらいしかないよね」





恭介「そうだ、そういえばこの辺りは貝汁が美味いことで有名なんだ。そこのドライブインに行ってみようぜ!」

理樹(既に辺りは夕方。小腹も空いてきたしちょうどいい)



http://i.imgur.com/2kOxnqx.jpg

恭介・理樹「「おおーーっ!」」

来ヶ谷「案外貝の量が多いな。もはや汁より多いんじゃないか」

恭介「もう我慢出来ねえ!いっただきまーす!」

理樹「いただきます」

理樹(まずは汁からいただいた。やはり回転寿司の赤だしとは違う。貝の風味が全体に広がっていて、まろやかなエキスが喉を通った…身体の芯から温まる)

モグモグ

理樹「!」

理樹(貝もそこらのとは比べ物にならない。柔らかいのに噛みごたえは充分。噛めば噛むほど旨味が滲み出てくる…こんなのがまだまだ大量に残っていることが幸福に感じた)

理樹「見たところ常連さん多いね」

恭介「ああ。店の雰囲気もいいな…こういう飯巡りが出来るだけでも来てよかったよな!」

理樹「まったくだね」

恭介「よし!下関だ!そろそろ関門トンネルだなっ」

来ヶ谷「ああ」

理樹「関門トンネル?」





http://i.imgur.com/PesEu1o.jpg

理樹「長っ!」

来ヶ谷「ここは人道トンネルだ。ここからいよいよ本州から九州に渡るんだ」

理樹「なるほど…いまは海の中に居るってことなんだね」

恭介「そういうことだ!チャリは押していかないといけないから走って行くぜ!」

理樹(よく見るとここを散歩の日課にしている人もちらほらいた)


恭介「ヒィィーーーーヤァーーーッホォォォオゥゥゥゥッッーーー!!」

http://i.imgur.com/bh1cXqK.jpg

理樹「本当にママチャリで着いた…信じられない…」

来ヶ谷「よく頑張ったな二人とも」

理樹(ここから本州は本当にすぐそこだった。しかし僕らの中では本当に遠い存在だったんだ)

恭介「よっしゃあ!あとはホテルに着くだけだぜっ!!」

理樹(なんだかんだで6日でここまで来たんだ…いままでにこういうことした人は知らないから遅いのか早いのか分からないけど…)

2年前のちょうど今日の日付(2013年8月23日)から、茨城の水戸から北海道の苫小牧まで自転車旅しながら、その行程をアイマスSSで書いてる人いたよ~
その人はママチャリで650kmちょいを10日間だったかな
参考までに

>>105
フッ…俺を見くびるな、俺は6日で700kmだぜ!

恭介「見ろよ、あっちの光が綺麗だぜ。これあいつらにも見せたかったなあ!」

理樹「じゃあこれも写真を撮っておこう。携帯からだけど」

来ヶ谷「君は写真魔だな。フェイスブックとかで食べる前に必ず写真撮る奴だろ」

理樹「いやああいうのはよく分かんないから…なんか面倒くさそうだし」

恭介「それにこういうのは知人に自慢する程度がちょうどかっこいいんだよなっ!」

理樹「同意求められても困るんだけど…」

理樹(とりあえず一枚)

パシャッ

http://i.imgur.com/tge0jKv.jpg



ホテル

理樹「着いた…!」

恭介「いよいよ明日がゴールだ。しかし気を抜くなよ。あしたもきついからな」

理樹「うん」

理樹(とは言ったものの正直あの岡山と山口の峠をいくつも越えてきたことに比べれば訳ないと思った。……のが間違いだった)



http://i.imgur.com/rUpN1mR.jpg



理樹(体力の疲労で言えばここが一番だった。長い長い登り坂はどれだけ漕ごうが終わりを見せる様子はなく、ただ果てしなく曲がり道を登っていくしかない。来ヶ谷さんは僕らのペースに合わせれば逆に体力が消費されるので先に峠で待っているという)

理樹「足が…もう筋肉痛で限界だよ…っ!!」

恭介「気張れ理樹!ここが実質この旅最後の坂だっ!!あの頃のお前を思い出せーーッ!!」

理樹「あの頃っていつさ!?」

理樹(今やこんな馬鹿話もいたずらに体力を消耗する要因でしかない。いっそ急な坂なら諦めて降りることが出来るというのに…)




来ヶ谷「よく自転車から降りずに上がってきた。ご褒美になでなでしてやろう」

理樹「恥ずかしいよ…」

ポツポツ…

理樹「?」

理樹(雨が降り始めた…)

恭介「やべえさっさと降りるぞ!滑りやすい時にちょっとでもハンドルミスしたら横の車にぶつかってお陀仏だっ」

理樹(そういえば聞いたことがある…なんでも来ヶ谷さんのようなロードバイクで走行中の人が意識を少しクラっとさせただけでトラックにぶつかり、そのまま後続の車に撥ねられて……!)

恭介「それに来ヶ谷のは特にやばい。降りる前に勢いが増すことになれば今日は潔くどこかで雨宿りしよう」






………………

………



理樹「あれ…やんできた…」

来ヶ谷「山の天気はよく変わるからな。青空も見えてきた…もう安心だろう」

理樹(どうやら今回はまたネットカフェに御用になることはなさそうだ。そして……)




恭介「二人ともこれを見ろ!」

理樹「えっ?…ああ!」

来ヶ谷「よくここまで頑張ったな…」

http://i.imgur.com/bpImXd9.jpg

理樹(おそらく青い点が僕らの部分だろう。やっとだ…やっとここまで来たんだ……よくぞここまで自転車が壊れてしまわなかったものだ!)


理樹「ということは、ここはもう…」

恭介「ああ!」

来ヶ谷「ふふ…」

理樹(うだる暑さの中、一日中サドルにまたがっていた。数日前から汗疹が出来ていて漕ぐたび擦れてヒリヒリしている。既に筋肉痛が続く足に鞭を打って登った坂は数知れず。しかし、この逆境を耐えて迎えるからこそ、それ相応の達成感というものが得られるんだろうと思う。やってることはバカバカしいけど)





理樹「もう夕方だねえ…そろそろ恭介の言うゴールを教えてよ」

恭介「ゴールは自分の帰る場所だ。だから理樹の言うゴールとは折り返し地点のことだ」

理樹「じゃあそこは?」

恭介「もうすぐそこだ。ほら見ろ、そこにちょっと大きな家があるだろ?」

理樹「え?うん」

理樹(そう言うと恭介は携帯を取り出して誰かに電話をかけた)

恭介「そうだ、もうそこだ……ああ…」

来ヶ谷「なるほどそう言うことか」

理樹「?」




理樹(家の表札が見えるほどまで近づく)

理樹「ここの家ってもしかして恭介の知り合い……あっ!」

理樹(表札の名前を見て驚く。そうかここが恭介の…)

ガラッ

鈴「なんだ、本当に来たんだな。こいつらバカだ」

恭介「フッ、バカで結構だぜ!」

理樹「ここが恭介の実家なの!?」

恭介「ああ。実は家に忘れ物してさ…鈴に持って来させるのも良かったんだがせっかくの夏休みだしなっ」

来ヶ谷「ということは今日の宿泊先はここかな?」

恭介「そういうことだ」

理樹(ここはもう片方の恭介達の祖父母さんの家なんだろう。あちらの方は知ってたけどこっちに来るのは初めてだ…)

鈴「チャリはそこ置いとけ。というか理樹、お前凄い日焼けだな」

理樹「あっ、やっぱり?」

ガラッ

「よく来ましたね…そちらが話に聞いている直枝くんと来ヶ谷ちゃんか」

「部屋は余っていますからお気になさらずね」

理樹(そしてそれらしきお二方が。なるほど、確かに面影がある)

恭介「そういう訳だ!それじゃあ今日は目的の達成を祝ってBBQだぜっ!!」

理樹「やった!」

…………………………………


…………………





理樹(帰りは新幹線で帰ることになった。自転車は後で送ってもらう)


理樹部屋

ガチャ

理樹「ただいまー…」

理樹(ここが本当のゴール。久々の我が家。ホテルもいいけどやっぱり本当の意味でくつろげるのはこのベッドしかない)

シーン

理樹(真人や謙吾ら帰省組は明日か明後日に帰ってくるらしい。僕の変わりようを見たら少しは驚くだろうか…反応が少し楽しみではある)

ボフッ

理樹「ふぅ………」

理樹(荷ほどきも何もやってないけど今日だけは全てを投げ打ってひたすら眠りにつきたい…多分誰でもそう思うだろう。僕はそうした)

パチッ

理樹(色んなことがあった。親切にしてくれた人のことや旅の数々のトラブル…その全てがこの一週間で起きたんだ…本当に充実した一週間だった…ただ、これは僕には少し疲れるな………でもまあ、こういうのはまたやってもいいかもしれない…とりあえず今は…)

理樹「………おやすみなさい…」







終わり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月16日 (水) 20:35:30   ID: 67PQrECI

これはいいSS

2 :  SS好きの774さん   2015年12月06日 (日) 23:09:35   ID: -k8geU0p

マジで、お疲れ様!
ただ、夏休みに実家に行くとなると
クドわふの出来事がなくなってしまって
リキにはいいのか、悪いのか、、だな

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