杏子「暑い...」 (24)

ミーン ミンミーン

杏子「やべえ...これ、マジで死ぬぞ」

杏子「クーラー...いや、そんな軟弱なモンに頼らねえ!ていうか、使えねえ!」

杏子「いやでも、扇風機くらいなら...でも、そんなもんねえし...」

杏子「ジュースかアイス...つっても、金無いし...」ブツブツ

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QB「やあ、杏子」

杏子「なんだよ、何しに来たんだよ」

QB「いやあ、悩める魔法少女がいるならば、それのケアをするのが僕の役目だからね」

杏子「人を魔女に変えたがってる奴が何言ってんだか...」

QB「それで、君の悩みはなんだい?」

杏子「まあ、歩くヤ○ー知恵袋みたいなあんたなら、この悩みを解決できるかもな...」

QB「なるほど。要は、君はこの暑さに耐えられないということだね」

杏子「何か涼しくなれる方法はねえか?もちろん無料で」

QB「なぁに、簡単な方法があるじゃないか」

杏子「なんだと?」

QB「僕を見てごらん。汗をかくどころか、息も乱していないだろう?」

杏子「そういえばそうだな」

QB「つまり、感覚を遮断すれば暑さなんてへっちゃらさ!さあ、君も今すぐ...」

杏子「いや、それは魔力が勿体ないだろ」

QB(チッ...)

杏子「そんなリスキーな方法じゃなくてさ、もっと簡単なのはねえのかよ」

QB「それなら、誰かの家に行けばいいじゃないか」

杏子「それだ!あんた、よくそんなことに気付いたな!ありがとな、早速行ってくる!」

タタタッ

QB「...彼女って、時々馬鹿だよね」

ピンポーン

さやか「あれ、杏子じゃん。いきなりどうしたのよ」

杏子「よう、さやか。涼しそうな頭しやがって、クソが。あたしなんか無駄に赤くて暑苦しいってのに...」ブツブツ

さやか「えっ、あたしあんたになにかした?」

杏子「なんでもねーよ。それよか、あんた今暇か?」

さやか「あ~、ごめん。ちょっと今から家族旅行なんだ」

杏子「えっ...どこにだよ」

さやか「沖縄に行くんだ。シュノーケリングってやつをやるの」

杏子「そうか...悪かったな、忙しいところ邪魔しちまって」

さやか「いいのいいの。お土産、ちゃんと買ってくるからね」

ピンポーン

まどか「どうしたの、杏子ちゃん?」

杏子「よう、暇か?」

まどか「今からは...」

ほむら「お待たせ、まどか...あら、杏子。どうかしたの?」

杏子「ほむら。あんたこそどうしたんだ?」

ほむら「夏休みももうすぐ終わるから、二人で遊園地でも行こうかとね」

杏子「そうか...だったらあたしも」

ほむら「」ジー

杏子「い、いや、なんでもない」

ほむら「」ニコリ

杏子「じゃあ、タツヤはどうだ?」

まどか「タツヤはママたちと旅行に行ったよ」

杏子「」


ピンポーン

杏子「...おかしいな。受験生のあいつならいると思ったのに...」

QB「マミなら山に行ったよ」

杏子「...はぁ?」

QB「勉強疲れを癒すために、富士山で新必殺技を編み出す特訓だって」

杏子「なんだそりゃ...あいつ、大丈夫なのか?受験的にも将来的にも」

QB「まあ、それは本人が決めることだからね。僕からはなんとも言えないよ」

杏子「これで、知り合いの家は全滅か...改めて人脈の狭さに泣きたくなる」

QB「なら、図書館はどうだい?あそこなら、無料で使えるよ」

杏子「今日は休館日だ」

QB「プールや海は...」

杏子「...泳げねえんだよ」

QB「コンビニは」

杏子「ブラックリスト」

QB「少しお金はかかるけどジュースやアイスは」

杏子「んなもん一瞬だろ。勿体ねえから、公園の水飲み場と砂糖で我慢する」

QB「もはや打つ手は無いね。ここは素直に僕の案を受け入れたらどうだい?」

杏子「そうだな...何のリスクも無しにできることなんざないってのが世の常だもんな。こうなったら腹くくるしかねえか」

QB(―――勝った!)

杏子「素直に扇風機を買って来るよ。幸い、手持ちに三千円くらいはあるし」

杏子「ああ、こんなことに付き合ってくれてありがとな、キュゥべえ」

QB「...あれ」

――――――――――――――――――

ミーン ミンミン

仁美「ふぅ...相変わらず暑いですわ」

「いいか、手筈通りにいくぞ!」

「おうっ!」

バッ

仁美「きゃっ、なんですの!?」

「こいつで大人しくしてろっ!」

バチッ

仁美「うっ...」ドサッ

「よし、急いで車に乗せろ」

仁美父「この辺りで待ち合わせている筈だが...あっ!貴様ら、ウチの娘に何をしている!」

「やべえ、ズラかるぞ!」

ブロロロ

仁美父「ま、待て!」

――――――――――――――



杏子「二千円もしちまったが、ついに買ってやったぜ」

杏子「ブッ壊れるまで存分に使ってやるからな、覚悟しとけ!」ニシシ

ブロロロ

杏子「ん?」

ドグシャ

「や、ヤバイ。ガキ轢いちまった...」

「そんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない」

「け、けど...」

「いいから行くぞ!」

ブロロロ

杏子「うっ...」

仁美父「だ、大丈夫か君!?」

杏子「ったた...一体なに...が...」

扇風機「」グシャリ

杏子「」

仁美父「今すぐ救急車を...あいつらめ、絶対に許さんぞ!」

杏子「まちやがれてめえらああぁぁ!!」ダッ

仁美父「あっ、ちょっと!?」

――――――――――――――

ボス「男は...毎日がテストだ。男は、夢に、欲望に、運に、全てに自分を試される...」

ボス「そこから逃げない男だけが、ラッキーを手にすることが出来る...」

ボス「俺は...どうだ?今日は...どうだ...?」

「りょ、両のこめかみに拳銃を当てて...」

カチカチカチカチカチ

ボス「ハハ――ッ、今日もラッキーだァ―――!!」

ドンドンドンッ

「「「ラッキー!ラッキー!」」」

仁美(...意味が分かりませんわ)

ボス「教えてやろう...この世には、平等なものが二つある。一つは死...もう一つはラァッキィーだァ!」

ボス「今日、お前にはその二つが仲良くやってくる!」

仁美「!」

ボス「知れ...お前たちのラストラッキーを!お前の親父が財産を明け渡すことだけが、お前たちの生き残りラッキーロォ~ド!」

仁美「そ、そんな...!」

ボス「恨むんなら、自分のアンラッキーを恨むんだなぁ!」



ドガァン

「な、なんだぁ?」

「ドアを蹴破った様な音が...」

ボス「下の階だな...」

「まさか、サツが!?」

ボス「慌てるな...今日の俺たちはラッキーだ。サツに連絡すれば娘を殺すと脅迫状を渡してある。それに、万が一のために腕利きの用心棒を百人雇っている。奴らの壁を突破するなんて...」



「何しにきやがったガキィ!?」

「大人舐めてっと痛い目をみぶりゃ!?」

「おーおー、好き勝手やりなさる...」

「絶対に許さんぞ!ジワジワとなぶり殺しにしてくれる!」

「ぶるああぁぁ!」

「クズが、立場を知れぇ!」

「て、てめえなんかこわかねえ!野郎ぶっころしてやらあああ!」

「うほっ、いいおんな...」




シーン...

「ぼ、ボス...音が止みました...」

ボス「う、うろたえるんじゃあない。強盗団はうろたえない」

コツ コツ

「誰かあがってきやすぜ...」

カツン

杏子「......」


「が、ガキ...!?」

ボス「ほう...中々強そうじゃあないか。気に入った」

ボス「どうだお嬢ちゃん。俺たちと組まないか?」

杏子「......」

ボス「今日はラッキーなことに大金が舞い降りてくるんだ...その半分でお前を雇いたい。どうだ、悪い話じゃないだろう?」

杏子「...き」ボソッ

ボス「んん~?」

杏子「扇風機の仇ィィィ!!」


仁美(それからは一瞬のことでしたわ。かろうじてわかったことは、あの赤毛の彼女がラッキーアフロ軍団をワンパンで沈めていたということだけ。まさに嵐のようでした)

杏子「ちくしょー...動いたら余計暑くなってきやがった...あとアフロが暑苦しかった...」

仁美「あ、あの...ありがとうございました」

杏子「だれだ、あんた...?」

仁美「志筑仁美と申します」

杏子(仁美...確か、さやかの友達のお嬢様がそんな名前だったな。そいつが縛られている...アフロに囲まれていた...!)ピコーン

プルルル

仁美父「は、はい」

『あんたが志筑仁美の親父か?』

仁美父「そ、そうですが...」

『あんたの娘は強盗団から取り返した』

仁美父「本当ですか!?ありがとうございます!」

『だが、ただで返すわけにはいかねえ。ギブ&テイクってやつだ...わかるな?』

仁美父「わかっています。私は一体どうすれば...」

――――――――――――――

教会

杏子「ついに...ついに手に入れたぞ!」

杏子「こいつさえあればこのクソ暑い夜もへっちゃらだ!さあ、コンセントを刺して...スイッチオン!」

カチ

扇風機「」シーン

杏子「あ、あれ?」

カチカチカチカチカチ

杏子「お、おかしいな...あっ」

杏子「ウチ、電気通ってねえじゃん...」


終わり

――――――――――――

おまけ

さやか「いや~楽しかったなぁ。早速みんなにお土産配らないと」

さやか(あれ?うちのマンションの前で誰か倒れてる)

さやか母「ね、ねえあなた。あの子、倒れてるんじゃない?」

さやか父「本当だ。大丈夫かきみ!さやか、なにか冷たい飲み物を買ってきてくれ!」

杏子「」グデー

さやか「杏子!?」

数時間後

杏子「いやー、助かったわ。ありがとな」

さやか「あんなところで扇風機抱えてなにやってたのさ」

杏子「それがさ。昨日、雨が降ったから身体を冷まそうと思って道端で寝ころんでたらそのまま寝ちまってさ。気が付いた時には晴れ渡ってて、そのまま干からびて...」

さやか「ミミズかあんたは!」

杏子「それよりさやか、お土産は!?」

さやか「ちゃんとありますよ。はい」

杏子「ちんすこうか!ちんすこう...」

さやか「どうしたの?」

杏子「なあ、さやか。ちんすこうって、響きがちんk」

さやか「小学生か!」

ブイーン

杏子「ちんすこううめえ!」モグモグ

さやか「そりゃよかった。ところで杏子、なんで扇風機持ち込んでんの?」

杏子「ウチだと電気が通ってないから使えないんだよ」

さやか「あたしの扇風機があるから持ってこなくてもよかったのに...」

杏子「自分の扇風機は格別なの」

さやか「そういうもんかねぇ...」

さやか(そういえば、扇風機っていえば、昨日仁美が興奮しながら電話で...)


仁美『並みいるアフロたちをものともせず、勇猛果敢に立ち振る舞うあの紅き後ろ姿...そして、扇風機一つで済ませるあの度量の広さ!彼女こそ真の淑女ですわ!』



さやか(とか言ってたけど...まさかねえ)

杏子「扇風機...サイッコー...」ブーン

さやか「あは...あはは...」ヒクヒクッ



終わり

終わりです。
最近暑くて寝覚めが悪いです。皆さんも体調にはお気をつけて。

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