【モンハンSS】少女「目指していた場所」(350)



狩人「目指すは伝説級ハンター!」
狩人「目指すは伝説級ハンター!」 - SSまとめ速報
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狩人「目指すは伝説級ハンター!!」
狩人「目指すは伝説級ハンター!!」 - SSまとめ速報
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の、if展開SSになります。




登場人物紹介

狩人
本SS主人公。 最初は、3乙などの失敗ばかりしていたが
生まれ持った並外れた耐久力のおかげで生き残ってきた。
素直な性格だが、人を信じすぎるきらいがある。

少女
本SSヒロイン。 始めの頃こそ狩人よりいいスタートを切ったが
非力な自分の能力に限界を感じ、伸び悩んで狩人の才能に嫉妬してもいた。
が、狩人の目指すものや内面を知り、彼に対してほのかな恋心を抱く様になる。

ロートル
ふもと村の村付きハンター。 狩人達の先輩とも言える歴戦の勇士。
明るくひょうひょうとした振る舞いをするが、G級を目指すものの いつも不運に見舞われ
望みは叶わず、最近見え始めた自身の衰えに内心憤りを感じている。

ソロ
ロートルと同じく、ふもと村の村付きハンター。 寡黙な印象を与えるが
実は狩人と同様、下位の時に失敗ばかりして対人恐怖症になり、一人でクエをこなす内に
『大剣のソロ』『孤高のスレイヤー』と異名で呼ばれる凄腕ハンターとなった。

ベテラン
流れのハンター。 何も知らない狩人を騙して金を巻き上げたが、その後
ロートル達と出会い、意外と義理堅い面を見せる。
イケメンという名前の出来のいい双子の弟ハンターがいるが、引け目を感じている。


村長
ふもと村の村長。 経済面に強く、ふもと村の財政黒字は彼の功績が大きい。


ふもと村、広場前にあるストアの店員の一人。 仕入れ担当だが店番もする。
よく実年齢より上に見られるが、まだ10代である。
狩人や少女を弟や妹みたいに思って、世話を焼いている女の子。

職人
武器・防具の加工屋の加工職人。 狩人の良き理解者で応援もしている。

ネーコ
キッチンアイルーやオトモアイルーを斡旋する
通称ネコ婆さんを生業にしている女の子。
相当な美少女。

板前アイルー
狩人の雇ったキッチンアイルー。

コックアイルー
少女の雇ったキッチンアイルー。


※あらすじ

新人の村付きハンターとしてふもと村へ来た
ちょっと間抜けで不器用なハンターの狩人。

目指していたハンターの様に活躍したくてクエストに行くものの
現実は甘くなく、失敗ばかりして、3乙ハンターだの、ヘタレハンターだの噂され
おまけにほぼ同時期に来ていた、新人の女の子ハンターの少女と比べられ
惨めすぎて集会所に入る事すら ためらう毎日を過ごしていた。

だが、知り合った様々な人やアイルー、ハンターに励まされ
やがて狩人は成長していき、困難に見舞われるものの、ついには上位ハンターになる。

しかし、異変は静かに近づいていた。

狩人の先輩にあたるハンターのロートル達は、調査隊の先遣隊に参加し
偶然異変の原因を突き止めるのだが……







     狩人「目指すは伝説級ハンター!」

     ifルート 少女生存








―――――――――――








     調査隊・先遣隊出立より3日後の夜














     ビュオオオオオオオオ……





雪山奥地 調査隊中継地点 ビバーク予定地 洞窟テント内


ベテラン「う~さむさむさむ……」

ロートル「見張り、ご苦労さん」

ロートル「あまり旨くないが、モス煮込みだ。 温まるぞ」

ベテラン「ほっ、ありがてぇ……」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「熱っ……はふはふ……ふう……あったまるぜ」


ロートル「結局、クシャルダオラは襲来せず……か」

ベテラン「ここらでもドドブランゴのみだったな」

ベテラン「しかも並の奴ばかり……原因の『何か』は、もっと奥地みてーだぜ」

ロートル「…………」

ロートル「……それはしょうがない」

ロートル「モンスターが俺たちの都合を考えてくれる訳はないからな」

ベテラン「ちげーねぇ」

     ハハハ…

ベテラン「……明日はいよいよ帰還、か」

ロートル「何事もなく済めば、それでいいさ」

ロートル「命あっての物種だ」


ベテラン「ほお? ずいぶんあっさりしてるな」

ロートル「今回のドドブランゴ襲来で命を落としたハンターは3人も居る」

ロートル「ネコタクアイルーにも犠牲が出た」

ベテラン「…………」

ロートル「俺たちハンター全員が『そうである』必要はないし、強制もできん」

ロートル「が……自分より若いハンターが命を散らさずに済むよう務めるのは」

ロートル「俺たちにとって、最低限の役割なんじゃないだろうか……」

ベテラン「…………」

ベテラン「……かも知んねぇな」

ベテラン「ハンターやってりゃ、誰だってG級目指したいのは同じだが」

ベテラン「さすがに今回、醜態さらしちまった気がする」

ロートル「……そうだな」


ロートル「さあ、休んでくれ」

ロートル「時間になったら起こす」

ベテラン「ああ。 休ませてもらうぜ」


―――――――――――


??「……ラン……ベテラン」

??「起きてくれ」

ベテラン「……ん」

ベテラン「…………」

ベテラン「……ソロの兄ちゃん」

ベテラン「……もう……交代の時間か……ふあああっ」

ソロ「違う」


ベテラン「はあ?」

ソロ「ともかく、起きて外に出てくれ」

ソロ「今回の騒動の原因が分かった」

ベテラン「……クシャか ラージャンじゃなかったのか?」

ソロ「いいから早く」

ベテラン「??」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「起きたか、ベテラン」

ベテラン「……どうした、ロートル?」


ロートル「しっ……声を絞れ、ベテラン」

ベテラン「はあ?」

ロートル「百聞は一見にしかず……とりあえず、声を上げないように」

ロートル「あの巨大モンスターを見てくれ」

ベテラン「……!?」

ベテラン(巨大モンスター!?)

ソロ「…………」

     スッ…

ベテラン「」

ベテラン「なっ……何だ、ありゃ……!?」

ベテラン「あんなの知らねぇぞ……!?」




     ベテランが驚くのも無理は無かった。

     いつの間にか吹雪は止み、視界が開けていたのだが

     ロートルに促(うなが)され、岩の影からこっそりと覗いたら

     自分達がビバークしている洞窟の目と鼻の先に

     巨大な『何か』が横たわっていたのだ。



     ……いや、もっと正確に言うと

     寝息を立て、寝ていたのだ。






     大きさは縦に約10~15m。

     丸まっているので全長は推定だが、尻尾を含めると

     軽く50mは超える、と、言ったところか……



     そいつは全身を真っ白なウロコ状の甲殻に包まれ

     全体的に流線型の体型をしている。

     特徴的なのは顔面の顎。

     スコップ状の形で、そのまま地面を掘れそうな感じだった。




ロートル「俺も見た事がない」

ロートル「吹雪が止んだので、帰り道の確認をしようと洞窟から出てみたら」

ロートル「『あれ』に気がついたんだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「……今回のドドブランゴ騒動は」

ソロ「ああ……たぶん『あいつ』のせいだろう」

ベテラン「…………」

ベテラン「しかしでかいな……ラオシャンロンくらいは ありそうだ」

ロートル「……ともかく、これは憂慮すべき事態だ」

ロートル「ラオシャンロンは国の軍隊の協力や準備してた防衛設備」

ロートル「そしてHR関係なく、ハンター総出で事に当たって何とかしているのに」

ロートル「あんな奴、たった5人のハンターで相手にできるモンスターじゃない」


ベテラン「ちげーねぇ……」

ベテラン「さっさと荷物まとめてズラかるべきだな」

ロートル「…………」

ベテラン「……ロートル?」

ロートル「いや、何でもない」

ロートル「ふと思った事があるのだが、それは観測所員の意見を聞いてから話す」

     スタ スタ スタ…

観測所員「何事ですか? こんな時間に……」

ロートル「しっ……静かに」

ロートル「見た事もない巨大モンスターが寝ている」

観測所員「!!」

ロートル「ゆっくりと……息を殺して『何』なのか、見極めてくれ」

観測所員「……わかりました」



     スッ…


観測所員「……!!」

ロートル「……どうだ? 何か分かるか?」

観測所員「…………」

観測所員「……わ……私の記憶が正しければ」

観測所員「あれは……おそらく……」



観測所員「崩竜……ウカムルバス……!」



一同「…………」

ロートル「崩竜ウカムルバス……詳しい情報はあるか?」


観測所員「残念ながらありません」

観測所員「ウカムルバスが最後に確認されたのは……確か50年くらい前で」

観測所員「当時の雪山周辺は、まだ未開の土地……」

観測所員「ラオシャンロン同様、何年かに一度の割合で回遊しているのではないか?」

観測所員「と、推測されただけです」


一同「…………」


ソロ「ほぼ、情報はなし、か……」

ロートル「ラオシャンロンと同じように回遊する、と推測した根拠はあるのか?」

観測所員「……大きさから、そう推測されたと記憶してます」

ベテラン「詳しい情報は無し、つー事か……」


ロートル「ともかく、事態は一刻を争う」

ロートル「一度ビバークしている洞窟に戻ろう」

―――――――――――

     ザワ ザワ… ドウスンダヨ…

ロートル「みんな、落ち着いてくれ」

ロートル「ここは洞窟で、とりあえず奴には見つからない」

     …………

ロートル「よし」

ロートル「まず状況的に『撤退』の一択」

ロートル「これはこの場にいる全員が思っている事だと思う」


ロートル「俺もその意見に賛成だが、その前に観測所員」

ロートル「今回の調査ルート……どうやって決めたんだ?」

観測所員「え?」

観測所員「今回のルートは、前回……」

観測所員「8年前に行われた調査を参考に計画されたルートになっています」

ロートル「…………」

ロートル「来る時に思ったんだが」

ロートル「何と言うか、通りやすく、道幅も広いな……と、俺は感じた」

観測所員「それが……何か?」

観測所員「山間部を通り抜ける様にありますので、それを……」

観測所員「!!」

ベテラン「……なるほど」

ベテラン「そういう事か」


ベテラン「俺たち……あの化物の回遊していた跡」

ベテラン「つまり、あいつが作った獣道を調査ルートに選んでいた、と言いたいんだな?」

ロートル「……確かめる時間は、もう無いがな」

観測所員「……あり得る仮説ですね」

ロートル「だが、そうなると少し困った事になる」

ロートル「今の内になら俺たちは逃げる事は可能だが」

ロートル「帰り道も同じルートで帰った場合、奴に追いつかれるかもしれん」


一同「!!」


ロートル「そこでだ」

ロートル「ひとつ提案がある」


観測所員「と、おっしゃいますと?」

ロートル「簡単に言うと……」

ロートル「ハンター以外の非戦闘員は、ここで救助を待っていて欲しい」


一同「!?」


ロートル「残念ながらあの化物……ウカムルバスの能力は全くの不明」

ロートル「仮にラオシャンロンくらいの移動速度だと仮定した場合」

ロートル「非戦闘員を抱えたままでは、おそらく ふもと村にたどり着く前に追いつかれる」


一同「…………」


ロートル「だが、ハンターのみの足なら、かなり早くなる」

ロートル「もっとも今まで通りに休めなくなるが……」


ロートル「それでも、ふもと村までなら何とか奴に追いつかれる前にたどり着けるハズだ」

ロートル「少なくとも可能性は、こちらの方が高いと思う」


一同「…………」


ベテラン「一理あるな」

ベテラン「非戦闘員だけになってしまう不安はあるだろうが」

ベテラン「ここには本チャンの調査隊のビバーク品もある」

ベテラン「大体だが全員で10日……切り詰めれば二週間以上は持つだろうし」

観測所員「し、しかし」

観測所員「も、もし、あなた方が追いつかれて全滅してしまったら……?」

ロートル「その時は覚悟を決めてくれ」


ロートル「どの道、あいつに追い抜かれたら、ふもと村含め」

ロートル「雪山周辺に甚大な被害が出る」

ロートル「そうなったらここへの救助なんて後回しにされるのがオチだ」


一同「…………」


観測所員「……最低な事を言いますが」

ベテラン「ん?」

観測所員「ウカムルバスが通り過ぎた後、帰るはどうでしょう?」


一同「…………」


ロートル「……つまり」

ロートル「ふもと村含め、雪山周辺の犠牲が出ようと知った事じゃないと」

ロートル「見捨てて安全に帰ろう……という事か」



     ……何テコト言ウンダ! コノヤロウ!


観測所員「っ!?」


     オレ達二 家族ヲ見捨テロッテ言ウノカヨ!!

     ソウダソウダ!!


観測所員「し、しかし……!」

ロートル「そのくらいにしておけ」

ロートル「では、こうしたらどうだ?」

ロートル「俺たちハンターを、帰還組と居残り護衛組で分けるってのは?」

ソロ「……待て、ロートル」


ソロ「俺はそれには反対だ」

ソロ「ただでさえ5人と少なく、それを更に少なくするなんて」

ソロ「強行軍での帰還なのに ほとんど休めなくなるぞ?」

ソロ「ここは猟区じゃない」

ソロ「寝込みを襲われて少ない人数では、対応が難しくなる」


一同「…………」


観測所員「…………」

     ……俺ハ、ハンター達ダケデ帰ッテモラウノニ賛成スル

ロートル「!」

     俺モ 俺モダ  俺モソレ二賛成スル

観測所員「……みなさん」

観測所員「…………」



―――――――――――


20分後の夜明け前

ビバーク洞窟前


ロートル「さて、急ぐぞ」

ベテラン「わーってるっての」

ソロ「忘れ物はないか?」

ロートル「地図、方位磁石、切り詰めた食料と暖房用の油」

ロートル「足を遅くする訳にはいかないから、限られた量しか持っていけないが」

ロートル「それでも結構な荷物だな……」

ベテラン「そいつは仕方ねぇだろ」

ベテラン「非戦闘員の人足に持ってもらう訳にはいかねーからな」


ソロ「そっちは大丈夫か?」


     二人のハンター(ガンナー)が大丈夫とばかりに手を挙げる。


ソロ「よし」

ロートル「このいい天気がいつまで続くかわからん」

ロートル「全員強走薬を飲め」

ロートル「今の内にできるだけ距離を稼ぐぞ」

ベテラン「おう」

     グビッ… シュイン!

ロートル「出発する!」



―――――――――――


24時間後






     ビュオオオオオオ……








ロートル「くっ……」

ベテラン「ロートル!」

ベテラン「これ以上は もう無理だ」

ベテラン「ビバークしよう」

ロートル「…………」

ロートル「……仕方ないか」

―――――――――――

テント内


ベテラン「はあ……疲れたぜ」

ソロ「…………」

ロートル「ペースとしては かなり進んだと思うが……」

ロートル「ソロ、どうだ?」


ソロ「……明日にはふもと村に着きそうだ」

ベテラン「ほっ……3日分の距離を1日半程度か」

ソロ「吹雪かなければ、今日中に着いていたと思う」

ロートル「道を間違えている可能性はないか?」

ソロ「大丈夫だ」

ソロ「一人で地図なしとかならヤバかったが」

ソロ「方位磁石と目印の地形をみんなで確認しながらだったからな」

ロートル「そうか……」

ベテラン「その代わり疲弊も激しいな……」

ロートル「それは致し方ない」

ロートル「……ウカムルバスの奴も休んでてくれると ありがたいんだがな」


ベテラン「ちげぇねぇ」

ベテラン「しかしまあ、あのデカブツも生き物であるのには間違いない」

ベテラン「現に寝ていたのを確認しているしな」

ソロ「そういう事だ、ロートル」

ソロ「明日に備えて休める内に休んでおこう」

ロートル「……そうだな」



―――――――――――


数時間後の午前中



     ザッ ザッ ザッ

ソロ「見えた」

ベテラン「おーあれか」

ベテラン「来る時も思ったが、切り立った絶壁の様な崖」

ベテラン「崩れたらヤベーなって思ったっけ」

ソロ「ここを抜ければ、ふもと村までもうすぐだ」

ロートル「…………」

ソロ「……どうした? ロートル?」


ロートル「……いや」

ロートル「ここを大タル爆弾で……と思ったが」

ロートル「持っていないしな」

ベテラン「なるほど……確かに足止めくらいには なりそうだな」

ソロ「先を急ごう」

     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「!」

ロートル「あれは……後発隊か?」

ソロ「みたいだな」

ソロ「予定では明日出会うはずだったが……」

ベテラン「…………」

ベテラン「おい。 それよりも……」


ベテラン「さっきのロートルのアイデア……」

ベテラン「できるんじゃねーのか?」

ロートル「!」

ソロ「!」

ロートル「……よし」

ロートル「大タル爆弾を持っているかどうか聞いてみよう」

ソロ「そうだな」

ベテラン「へっ……何となくだが」

ベテラン「運が向いてきた気がするぜ♪」

     オオーイ…



―――――――――――


午後

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「ふう……」

少女「そろそろ採取も飽きてきたわね」

狩人「そうは言っても新しい防具に必要だからなぁ」

狩人「早いとこ職人さんのところに持っていこう」

少女「そうね」

少女「…………」

少女「ね、ねえ! 狩人!」

狩人「ん?」


少女「あの、さ……」

少女「いつだったかの髪の毛の話……覚えてる?」

狩人「ああ。 もちろん覚えてる」

狩人「それがどうかした?」

少女「……っ」///

少女「ほ……欲しい……」///

狩人「え?」

少女「私っ……狩人の髪の毛……欲しい」///

狩人「あ……」

狩人「そ、そうなの……か……」///

狩人「も、もちろんいいぜ!」///


     ブチッ!

狩人「痛でっ!」

少女「か、狩人!?」

狩人「ははは……慌ててひとフサ掴んで抜いてしまった」

狩人「おおー……痛っ」

少女「もう……バカね」 クスッ

狩人「だよな……それに、こんなに要らないよな」

少女「貰うわよ。 全部」

少女「せっかくだし」

狩人「そ、そうか……ほら」つ(髪の毛)

少女「うん。 ありがとう、狩人」つ(髪の毛)



少女「代わりに私のもあげるね」


     シーン…

狩人「ん?」

少女「え?」

     シーン…

狩人(何……この空気?)

少女(みんな、ものすごく驚いた顔をして……こっちを見てる?)

     ダダダダダダッ!

女「しょ、少女ちゃん!」///

少女「はい?」

女「知らないから やらかしたんだろうけど……」///


女「あ、あのね……その幸運の分け方のおまじないってのは……ね」///

女「お、女の子は……し、下の方のやつ限定なのよ……!」///

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……下の…?」

少女「方……?」

女「……分からない?」///

女「それとも……まだ生えてないの?」///

狩人「生える? 下の方?」

少女「…………」

少女「っ!!!」///


少女「わ―――――――――――!!」///

少女「ち、違うんですっ!!」///

少女「わ、私は、髪の毛の事だと思って!!」///

女「うんうん。 分かってる。 みんなも分かってると思うから」///

狩人「…………」

狩人「……あ」

狩人「陰毛……って事!?」///


     スパコーンッ!!


狩人「痛てぇ!」

狩人「干物で殴ること無いだろ!?」

女「デリカシーの無いこと言うからよ!!」///



     ザワッ…


狩人「……ん?」

     ドヤ ドヤ ドヤ…

女「あれ? 後発隊の人たち?」

狩人「今朝出発したばかりなのに……忘れ物でもしたのかな?」

少女「まさか!」

少女「そんな理由で帰ってくるわけ無いわよ」

狩人「じゃあどうしてだ?」

少女「さあ……そこまでは」

狩人「……!?」

狩人「ロートルさん!?」


ロートル「狩人」

狩人「何かあったんですか?」

狩人「予定ではもう少し先って……」

ロートル「詳しくは村長が来てから話す」

ロートル「すまないが呼んできてくれないか?」

狩人「は、はあ……」

少女「…………」

女「…………」



―――――――――――


ロートル「――という訳だ」


一同「」


村長「崩竜……ウカムルバス……」

     ザワ… ザワ…

ロートル「残念ながら、観測所の方でもこいつの詳しい情報は何もない」

ロートル「分かっているのは、ラオシャンロン並みの巨体であるという事」

ロートル「ラオシャンロンと同様、回遊するのではないか?と」

ロートル「推測されただけだ、という事だ」

村長「…………」

村長「……すぐに村の住人に避難を呼びかけます」

ロートル「ああ、そうしてくれ。 それも今すぐに、な」


少女「それで……どう戦うんですか?」

     ザワッ…!

ベテラン「……おいおい、嬢ちゃんよう」

ベテラン「話、聞いてなかったのか?」

ソロ「襲来が予想されるウカムルバスは、ラオシャンロンと同等の大きさ」

ソロ「つまり、少なくともラオシャンロンと同じくらいの被害が予想される」

ロートル「……気持ちは分からないではないが」

ロートル「少なく見積もってもラオシャンロンクラスの化物なんだ」

ロートル「ここにはラオシャンロンを迎え撃つような設備は何もないし」

ロートル「国やギルドのバックアップも報酬も見込めない」

少女「だからって、戦いもせずに逃げるんですか?」

少女「私たちハンターが……!」



一同「…………」


少女「確かに人命を優先すれば、全員で逃げるのが最良です」

少女「でも、それで次またウカムルバスが来た時も同じように逃げるんですか?」

ロートル「……その時は何らかの防衛設備と対策が」

少女「モンスターは それを待ってくれるんでしょうか?」

少女「50年ぶりの確認と言ってましたけど……」

少女「すでにラオシャンロンは複数の個体や亜種まで存在が認められています」

ロートル「…………」

少女「今日逃げても……いつかは戦わなければならない相手です」

少女「なら」

少女「『今』戦ってもいいんじゃないでしょうか?」



一同「…………」


狩人「俺は少女の意見に賛成できない」

少女「な……」

狩人「臆病者と言われるのを覚悟で言うけど」

狩人「こちらの準備ができていないのに戦うのは……無謀だと思う」

少女「けど……!」

狩人「少女らしくないよ、こんなの」

狩人「君は常日頃、入念な下調べと準備を整えてから、狩りに向かって行ってる」

狩人「俺は……最初の頃、事情はあったけど何の下調べもせずにクエストして」

狩人「いつも手痛い目にあってきた」

少女「…………」


狩人「生きてさえいれば、次また挑戦できる」

狩人「ここは……悔しいけど、引くべきだと思う」


一同「…………」


少女「……じゃあ」

少女「このまま引き下がって、黙ってモンスターの被害を受けて」

少女「住処や生活基盤を失った人達はどうなるの?」

狩人「そ、それは……」

少女「確かにふもと村には、ある程度の蓄えがあるわ」

少女「でも近隣の村々はそうじゃない」

少女「村付きハンターを1人置いておくのがやっと、というのがほとんど」

少女「ラオシャンロンクラスなら、一つや二つの村で済む訳がない」


少女「彼ら村の住民は、私たちハンターが逃げ出したら」

少女「どうする事も出来ないのよ!」


一同「…………」


少女「これだけの数のハンターが居て」

少女「たった一匹のモンスター相手に考える最初の一手が『逃げる事』だなんて」

少女「私は認めない」

少女「私は戦う」

少女「私は戦う事を考える!」

     …………

     ……オレモ  アタシモヨ

狩人「!」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン(……まずい流れだな、こりゃ)

狩人「…………」


     集会所が熱気に包まれていく。

     培ってきた自信、ハンターとしての誇り

     狩りの対象であるはずのモンスターから『逃げる』という屈辱。

     それらが、綯交(ないま)ぜになって彼らは

     勢いだけで『戦う』という事を選択しようとしている。


狩人(少女……)




     ロートルには、その理由が分かっていた。

     少女もそうだが、まず若い、という事。

     未知のモンスターと戦う『恐怖心』が無い。

     もしくは希薄なのだ。

     自分と違い、人生経験が足りていない分

     どんなに賢くても無謀な方向へと傾いてしまう事がある。






     そして……声高に戦いを叫ぶハンターは、みな

     『痛み』を知っている者達なのだろう。

     おそらく自分の故郷や村、出身地をモンスターに襲われ

     路頭に迷い、苦労した経験や、それを間近で見てきて

     ハンターになった。 そんな経緯があったのだろう……

     決して珍しい話ではない。






     ……そんな気持ちを理解しつつも

     若さを無くし、経験を積んできたロートルは

     形容しがたい苦い表情を浮かべ

     諦めにも似た結論が頭に浮かんでいた。



     こうなったら……もう止められない、と……



という所で、今日はここまでです。
お待たせしてすみません……
俺……このお盆休み中で……書き上げるつもりなんだ……(震え声)



―――――――――――







     数時間後











加工屋


職人「どうだい? どこかキツいところ無いか?」

狩人「ええ、大丈夫です」

狩人「オウビートS装備、いい感じですよ」

職人「少女ちゃんはどうだい?」

少女「……デザインはともかく、大丈夫です」

職人「そうか……」

狩人「職人さん、危機が迫っているのに……ありがとうございました」

職人「なぁーに……俺に出来るこたぁ、これくらいがせいぜいよ」

職人「頑張れ……ってのは合ってるか分からねぇが」

職人「命を粗末にはしないでくれ」

職人「危ないって思ったら、逃げるんだぞ?」


狩人「ええ……分かってます」

職人「なら……俺から言う事は もう何にもねぇ」

職人「必ず、生きて帰って来い」

狩人「はい」

職人「それじゃ……またな、狩人、少女ちゃん」

少女「お疲れ様でした」

―――――――――――

     シーン…

少女「…………」

狩人「…………」


狩人「……静かだな」

少女「……うん」

少女「住民はほとんど避難し終えたみたい」

少女「さっきの職人さん含め、つい今しがたの避難民達が最後だったのかも……」

狩人「残っているのは俺たちハンターと」

狩人「ギルドの職員くらい……か」

少女「そうなるかな……」

狩人「…………」

少女「…………」

少女「ねえ、狩人」

狩人「ん?」

少女「どうしてあなたは残ったの?」

少女「私の意見に反対なんでしょ?」


狩人「…………」

狩人「……そりゃ君の事が心配だし」

狩人「放っておけなかった」

少女「…………」

少女「……心配とかなら、しなくてもいい」

狩人「え?」

少女「今の内に言っておくね、狩人」

狩人「あ、ああ……」

少女「あなたは……きっと気が付いていないでしょうけど」

少女「ハンターとして、とてつもない才能を秘めているわ」

少女「私なんか比べ物にならないくらいに……」

狩人「…………」


少女「だから……」

少女「こんな無謀な作戦に参加しない方がいい」

少女「生きて、生きながらえて」

少女「狩人の望むハンターを目指して欲しいの」

狩人「…………」

少女「……私は、いつも狩人に無茶なお願いと指示をしてきたわ」

少女「ティガの時も、ドドブランゴの時も……」

狩人「…………」

少女「お願い、狩人」

少女「今の内に逃げて」

狩人「……それじゃ、俺の目指すハンターじゃなくなってしまう」

少女「え?」


狩人「それに」

狩人「俺の方だって少女の世話になってるし、お願いもしてるよ」

狩人「モンスターの情報とか、戦い方とか、読み書きだって君に相談した」

少女「…………」

狩人「迷惑なら俺も君にかけているし」

狩人「ハンターとしてのとてつもない才能なら、少女も持っている」

少女「……?」

狩人「少女はいつも的確で、冷静で……」

狩人「しかもあっという間に作戦を組み立て、決断している」

狩人「俺なんかじゃ とてもじゃないけど敵わない」

少女「……そんな事は」


狩人「聞いてくれ、少女」

少女「…………」

狩人「俺、さ……君と二人なら」

狩人「どんなモンスターが相手でも怖くないって思ってる」

少女「!」

狩人「俺は、君の出来ない事をやって」

狩人「君は、俺の考え付かない事を思いついてもらって」

狩人「そうやって、二人でクエをこなしていけたら……」

狩人「きっと二人揃ってG級になるのも夢じゃないって思っているんだ」

少女「狩人……」

狩人「依存しすぎって言われるかもしれないけど……」

狩人「そんな風に考えている」

狩人「だから、今回の討伐に参加した」


少女「…………」

少女「……ありがとう」

狩人「……ん」

少女「…………」


     ありがとう?

     ううん……それは正しくない気がする。

     でも、他に適当な言葉が思いつかなかった。

     そして……ひとつ気がついてしまった事がある。


少女(…………)

少女(私の我がままに……)

少女(また狩人を巻き込んでしまった……)


少女(自分の命を失う事なら、とっくに覚悟をしている)

少女(でも……それに付き合ってくれる狩人の命を……)

少女(私は……考えていない)

少女(…………)

少女(いいえ、考えない様にしていた)

少女(心のどこかで……付いて来てくれる事が当たり前で)

少女(狩人なら、って……)

少女(…………)

少女「狩人」

狩人「ん?」

少女「これ……もらってくれる?」つ(お守り)


狩人「これ……お守り?」

少女「うん」

少女「し……下の方、のは入れてないけど」///

少女「私の髪の毛……」///

狩人「ああ、例の……ありがとう」

少女(本当は1本だけ入れたけどね)///

狩人「大切にする。 すごいご利益がありそうだ」

少女「……そうであって欲しいわ」

狩人「あるさ」 クスッ

少女「だといいんだけど……」 …クスッ

少女(今の私に出来る事なんて……せいぜいこのくらい)

少女(…………)








     狩人。

     私も、あなたとなら――










―――――――――――


ふもと村 集会所


ソロ「ロートル」

ロートル「ん?」

ソロ「いい加減休め」

ソロ「予想では、ウカムルバスが来るのは明日以降」

ソロ「俺たちは強行軍で帰ってきたばかり」

ソロ「雪山から監視の目もある。 動きがあれば、閃光玉や狼煙(のろし)で知らせが来る」

ソロ「休める内に休まないと体が持たないぞ」

ロートル「……分かっている」


ロートル「だが、これを読んでみてくれ」

ソロ「これは?」

ロートル「少女がまとめた作戦案だ」

―――――――――――

ソロ「…………」

ロートル「どうだ?」

ソロ「……驚いた」

ロートル「だろう?」

ロートル「細かな点で修正はいると思うが……」

ロートル「大筋では同意せざるを得ない内容だ」

ソロ「この前上位に上がったハンターが思いついた作戦とは思えないな……」

ロートル「全くだ」


ロートル「参加するハンターとネコタクアイルーの力量、人数、状況によるプラン変更」

ロートル「どれをとっても的確だ」

ロートル「少なくとも現在の状況で、ウカムルバス討伐に向けた策として」

ロートル「これ以上の案は俺の頭じゃ思いつかん」

ロートル「少女なら一軍の将だって出来るかもしれん」

ソロ「…………」

ロートル「……つくづく」

ロートル「自分が衰えたと思わされる」

ソロ「そんな風に思うのはよせ」

ソロ「心身共に疲れているから そんな考えになってしまうんだ」

ロートル「……かもしれないな」


ロートル「心配かけてすまん、ソロ」

ロートル「もう休む」

ソロ「……ああ、早く休めよ」

     テク テク テク…

ロートル「…………」

ロートル(……問題は)

ロートル(犠牲がどれだけ出るのか)

ロートル(また、それによって……)

ロートル(…………)

ロートル(いや、今は考えない方がいい)

ロートル(必ず上手く行く、と思わなければ……)

ロートル(ダメだ、と判断してしまった瞬間、崩壊する)

ロートル(…………)


※それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ゲキリュウノツガイ 火属性)
防具:ガノスU装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(ブルーウィング 火属性)
防具:ザザミU装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ガンランス(ガンチャリオット 龍属性)
防具:フルフルS装備一式



狩人(HR 4)

武器:片手剣(ヴァイパーバイト 麻痺属性)
防具:オウビートS装備一式


少女(HR 4)

武器:ライトボウガン(メラルーラグドール)
防具:ガンナー用パピメルS装備一式



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場


     ガヤ ガヤ…

狩人「おはよう、少女」

少女「おはよう、狩人」

狩人「……結構いるな」

少女「最終的な参加ハンター人数は全部で48人」

少女「ネコタクアイルーは10部隊、約40人になるわ」

ソロ「……そうか。 いい数字だな」

ベテラン「また迷信……と言いたいが」

ベテラン「いい意味でなら、あやかりたいねぇ」


狩人「……あんたは」

ベテラン「改めてよろしく、狩人」

ベテラン「ベテランだ」

狩人「…………」

ベテラン「ま……挨拶すらしたくねーよな」

ベテラン「けどまぁ……モンスターを討伐したいって気持ちは本物だ」

ベテラン「邪魔をするつもりも騙すつもりもねーよ」

ベテラン「それだけは確かだ」

狩人「……そうですか」

ソロ「……ベテラン、お前の武器」

ソロ「それ、シルバーソル(リオレウス希少種)の素材を使っているのか!?」


     ザワッ…!

ベテラン「ほお? 目ざといな。 ソロの兄ちゃん」

ベテラン「ああ、その通りだ」

狩人「シルバーソル?」

少女「リオレウス希少種の別名よ」

少女「その名の通り、滅多に居ない銀色のリオレウスで」

少女「強さはG級モンスター並み、とも言われてるわ」

狩人「……そんなモンスターの素材を使っているのか」

少女「と、同時に、それを倒せる実力を持っているハンター……という事でもある」

狩人「…………」

ベテラン「へへへ。 注目を受けるってのは、いいもんだな!」

狩人(そんな実力がありながら、なんであんなセコイ真似をするんだ……この人)


ソロ「お前……そんな物を持っていながら」

ソロ「なぜ先遣隊の時に持って行かなかったんだ?」

ベテラン「そりゃクシャやラージャンが相手だと思ってたからな」

ベテラン「ガンランスなんて部が悪すぎる」

ソロ「…………」

狩人「……どういう意味?」

少女「ガンランス……別名『味方打ち砲』なんて揶揄されてもいる武器だからよ」

少女「火薬を使った爆風と、更に強力な『竜撃砲』と呼ばれる攻撃ができるけど」

少女「よく味方を巻き込んでしまうの……」

狩人「あー……危ないな、と思ったから、真っ先に売っぱっらった武器だ……」

ベテラン「ひでぇ扱いだな!?」

狩人「あんたのせいでもあるけどな」


少女「でもメリットもあるわ」

少女「モンスターの肉質……簡単に言うと、どんなに硬い部分でも」

少女「一定のダメージが与えられるのよ」

少女「一人でクエをこなす場合やグラビモス相手とかで使うハンターは結構いるって聞く」

狩人「へぇー」

ベテラン「まあ確かにその嬢ちゃんの言う通りだけどよ」

ベテラン「今回はあのデカ物相手だ。 巻き込みは少ないだろうし」

ベテラン「肉質もそうだが、こいつはレアな龍属性を持っている」

ベテラン「いつかラオシャンロンを相手に使うつもりだった、俺の切り札だ」

狩人「つまり今まで使う機会がなく、ホコリをかぶっていたと」

ベテラン「うるせーよ!?」

ソロ(図星か……)


     テク テク テク

ロートル「みんな、おはよう」

ロートル「とりあえずリーダーに選ばれた、このふもと村の村付きハンターのロートルだ」


一同「…………」


ロートル「まず、未知のモンスターであるウカムルバス討伐に」

ロートル「参加してくれた事に礼を言う」

ロートル「一応足止めをしておいたが、おそらく奴は、今日中にここへ来るだろう」


一同「…………」


ロートル「では、詳しい作戦を説明するが……その前に村長」

村長「どうも……ふもと村の代表者である村長です」


村長「この村の代表者として、ウカムルバス討伐に参加していただいて」

村長「改めてお礼を言います。 本当にありがとうございます」

村長「そこで」

村長「ギルド側に私の権限で正式な討伐依頼を出しておきました」

村長「報酬は総額で約700万z(ゼニー)になります」


     ザワッ…!


村長「……ですが」

村長「我々が出来ることは、せいぜいこのくらいしかありません」

村長「モンスターの討伐が成される事を望みますが」

村長「決して、無理はなさらない様にお願いします」

村長「どうか、ご無事で……私からは以上です」


ロートル「ありがとう、村長」

ロートル「では、作戦の説明を行う」


一同「…………」


ロートル「昨日、みんなに通達した通り」

ロートル「ウカムルバスの行動や生態・戦闘力等、一切分かっていないが」

ロートル「おおよその推測から、火炎属性の武器と、氷耐性の防具を」

ロートル「用意できる者は用意して、事に当たってもらいたい」


一同「…………」


ロートル「次に」


ロートル「大まかな分け方として、前衛をHR6のハンターがやり」

ロートル「ガンナー及びHR5以下のハンターは、後衛とサポートをやってもらう」

少女「!」

少女「待ってくd」

ロートル「今は黙れ。 後で聞く」

少女「っ!」

狩人「…………」

ロートル「……それから」

ロートル「今回は作戦の都合上、雪山猟区のBC(ベースキャンプ)が」

ロートル「使えなくなるかもしれない」

ロートル「その為、雪山の洞窟内に臨時のBC(ベースキャンプ)を」

ロートル「ネコタクアイルー達に頼んで昨日の内に作ってもらった」

ロートル「危ない、と思ったら誰かに断らなくてもいい。 洞窟内に行ってくれ」


ロートル「少々冷えるが、乙ハンターもここに行く事になる」

ロートル「その場でリタイヤと判断された場合は、そこで大人しく待っていてもらいたい」

ロートル「そして肝心の作戦内容だが……」

―――――――――――

少女「ロートルさん、どういう事なんですか!?」

少女「あの作戦は、私が出した案そのものじゃないですか!」

ロートル「…………」

少女「その私が……安全な後衛に回されるなんて、納得がいきません!」

ロートル「……それについては」

ロートル「少女自身の案に書かれていた通りの編成にしたまでだが?」

少女「なっ……」


ロートル「自惚れるな」

ロートル「上位に上がったばかりのひよっこハンターが」

ロートル「前衛に加われると思う方がおかしいんだ」

少女「……っ」

ロートル「作戦自体は少女の考えた物だが」

ロートル「リーダーは俺だ」

ロートル「黙って従ってもらおう」

少女「…………」

少女「わかり……ました……」

     トボ トボ トボ…

ロートル「…………」

ロートル「狩人」

狩人「は、はい?」


ロートル「少女から目を……いや」

ロートル「少女を守ってやってくれ」

狩人「!」

狩人「……ええ、言われなくても そのつもりです」

ロートル「頼むぞ」

狩人「はい!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「…………」

ロートル「……ふう」

ソロ「……お疲れ、ロートル」

ロートル「ああ……本当に疲れたよ」

ロートル「こんな傲慢なリーダーをやらなきゃならんとはな」


ベテラン「…………」

ベテラン「しかし、マジなのか?」

ベテラン「あの作戦をあの嬢ちゃんが考えたって……」

ソロ「マジだ」

ロートル「大マジだ」

ベテラン「信じられねぇ……」

ロートル「俺もそうだが……あの大きさから、やはりラオシャンロンを想定してしまうが」

ロートル「ここまで『そうでない場合』を考え、いくつかのプランを思いつくのは凄い」

ベテラン「おまけに誘い込んだ猟区での作戦も見事だな……」

ベテラン「下位でも上位でもハンターを上手く使ってやがる」

ソロ「それに与えられた役割は分かりやすいしな……」

ロートル「ああ……」



―――――――――――


広場前 ストア


     ガヤ ガヤ

女「はい、回復薬ですね。 毎度~」

女「睡眠弾とカラ骨、あ、麻痺弾もですか?」

狩人「」

少女「」

狩人「お、女!?」

少女「女さん!?」

女「毎度~」

女「あら、狩人に少女ちゃん」

女「何か要る物はある?」


狩人「要る物はある?じゃ無いだろ!」

狩人「早く逃げないと、君も戦いに巻き込まれるぞ?」

女「……うん。 分かってるわよ」

女「でも……未知のモンスターを相手に戦ってもらうのに」

女「私たち住人が何もしないで、ただ逃げるだけなんて、ずるいかなって思ったの」

狩人「女……」

少女「女さん……」

女「いいのよ、気にしなくて」

女「私は私の出来る事をやりたいってだけだし……それに」

女「職人さんやネーコちゃんも残っているわよ」


狩人「」

少女「」

女「職人さんは、ハンター達の武器や防具を万全にしてやりたいって言ってたし」

女「ネーコちゃんは、ネコタクアイルーのバックアップやサポートをするって」

女「意気込んでいたわ」

狩人「…………」

少女「…………」

女「みんな、ふもと村を何とか守りたいって気持ちは」

女「ハンターにだって負けてないの」

女「直接は戦えなくても、何か出来る事があると思った人達がここに残っている」

女「それだけよ」


狩人「…………」

少女「…………」

女「さ、準備は万全にして行って」

女「出血大サービスの半額で承(うけたま)るわ♪」

狩人「」

少女「」

狩人「は……ははは……」

狩人「お金はしっかり取るんだな……」

女「あったりまえよ。 お金は大事なんだから!」

少女「…………」

少女「……ふふっ」

     アハハハハ…



―――――――――――




集会所


     ガヤ ガヤ…

狩人「……ふう」

狩人「緊張しているせいか、あまり食えないな……」

少女「それでも食べておかないと……」

少女「……うぷっ」

狩人「ははっ……少女もダメそうだな」

少女「……みたいね」


狩人「…………」

少女「…………」

狩人(できるだけの準備はした)

狩人(覚悟も決めている)

狩人(それでも……待つっていうのは、しんどいものだな)

少女(…………)

少女(……大丈夫、上手く行く)

少女(必ず、上手く行く)

少女(必ず……)

狩人「…………」

少女「…………」



     カーン! カーン! カーン!


狩人「!」

少女「!」

     ザワッ!

狩人「モンスター襲撃用の半鐘……!」

少女「とうとう来たみたいね……!」

     ヨシ! 行クゾ!

     俺ノ実力、見セテヤルゼ!

少女「私たちも行くわよ!」

狩人「ああ!」

     タッ タッ タッ…




     作戦の第一段階

     ウカムルバスの進行ルートは、ある程度判明している為

     ラオシャンロンの速度と同じと仮定した場合

     雪山で見張っているのならば

     およそ一時間程度の時間的余裕が見込まれる。



     その時間を有効に使い

     HR6の前衛ハンターは、雪山猟区への誘導準備を

     残りは雪山猟区へと向かう。





―――――――――――


ウカムルバス予想進行ルート上 森林地点


ロートル「よし、各員、誘導準備!」

ロートル「十分警戒に当たれ!」

     オオー!

ロートル「奴がこちらを気にせずに進んだ場合は」

ロートル「ここが、ここからが戦場になる!」

ロートル「誘導成功の合図は俺がやる」

ロートル「成功した場合は深追いするな!」

     了解! 任セル!




     作戦の第二段階

     ウカムルバスが、ラオシャンロンと同様かどうか

     見極める最初の一手。


     ラオシャンロンは、回遊を優先するモンスターで

     ハンターやバリスタ、その他の攻撃に対して無関心であるが

     その代わり とてもタフで、回遊を妨害する施設には

     攻撃を加え、破壊しようとする。

     まずは、これを見極める。






     ラオシャンロンと同様だった場合。

     雪山猟区で待機しているすべてのハンターは現場へ急行。

     ガンナーを中心にした戦いを仕掛ける。

     この場合、HR4以下の剣士ハンターは、完全サポート要員として

     前衛・後衛の弾薬・回復薬等の補給を担当する。

     また、BC(ベースキャンプ)は通常の雪山猟区の物を使い

     ネコタクアイルーの部隊は、それを拠点とする。

     回遊する進路を見極め、ラオシャンロンと同様の対応を行う。






     ラオシャンロンよりもハンターの攻撃を気にするが

     それでも回遊を優先した場合。

     こちらもガンナーを中心とした戦いを仕掛けるが

     前衛の攻撃も需要となる。

     少しでも進行を遅らせ、村への被害を最小限にとどめたい。






     明らかにハンターへ反撃してきた場合。

     通常のモンスターと同様の反応のため

     この場合は誘導が可能。

     村への被害を最小限にとどめるため、雪山猟区へ誘導を行う。


     本格的な戦いは猟区にて仕掛ける。




     …ズシン  …ズシン  …ズシン

ロートル「来たぞ……!」

ロートル「全員、強走薬を飲め!」つ(強走薬グレート)

     グビッ  シュインッ!

ロートル「よし……」

ロートル「…………」

     …ズシン  …ズシン  …ズシン

ロートル(こちらには、まだ気が付いてないみたいだな)

ロートル(森の木々が上手くカムフラージュしてくれている様だ……)

     …ズシン  …ズシン  …ズシン

ロートル「……仕掛けるぞ!」


     ズバッ! ズバッ!

     グルルル……?

ロートル「…………」

ロートル「……どうだ?」


     ガアアアアアアアアッ!!


ロートル「!」

ロートル「威嚇……という事は!」

     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!

ロートル「くっ!?」

ロートル「うおおおおおっ!!」 回避!

ロートル「はあっはあっ……」

ロートル(あんな図体で結構早い突進だな……!)


ロートル(……だが)


     グルルル…

     ガアアアアアアアアッ!!


ロートル「…………」

ロートル(回遊を続ける気配は……無い!)

ロートル「よし」

ロートル「誘導できると判断する!」つ(閃光玉)

     ブンッ! カッ!

     グアアアア…



―――――――――――


雪山猟区 BC(ベースキャンプ)付近


流れハンター「…………」

流れハンター「…………」

流れハンター「!」

流れハンター「閃光玉の光を確認!」

ハンター(女)「数は!?」

流れハンター「…………」

流れハンター「……ない」

流れハンター「一回だけだ!」

ハンター(女)「わかったわ!」

ハンター(女)「ウカムルバスが、こっちに来るよ!」



―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア


     カッ!!

狩人「!」

少女「!」

     …………

狩人「…………」

少女「一度だけ……みたいね」

少女「誘導してこっちに来る作戦よ!」

狩人「ああ、準備はいいか!?」

     オオー!




     作戦の第三段階

     ウカムルバスの誘導は、標的を分散させ

     囮役が引きつけている間に別のハンターが攻撃を加え

     今度はそのハンターが囮役になり、引きつけ、任意の方向へ導く。

     森の木々を上手く隠れ蓑にし、これを繰り返し

     できるだけ安全に猟区へと誘い込む。





     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!

     バキバキバキッ! メキャッ!


ロートル「次! 右から回りこめ!」

ロートル「やや左にずれているぞ!」

     ワカッタ! マカセロ!

ロートル(…………)

ロートル(……森の木々を物ともせず、なぎ倒しながら進んでくる)

ロートル(それでいて、この速さとはな……!)

ロートル(だが、今のところは順調だ!)




     効果が認められなかった場合。

     ガンナーは貫通弾に切り替え、前衛ハンターの援護を行う。

     後衛も同様だが、HR4以下のハンターは前に出るのではなく

     後ろに下がってきた前衛ハンターの

     弾薬・回復薬等の補給を行うものとする。



     効果が認められた場合。

     それぞれの状態異常弾・ビンを駆使して戦う。

     特に睡眠弾が効いた場合は

     睡眠爆殺を行う。






     睡眠爆殺は、モンスターの緊張を睡眠で無くし

     弛緩(しかん)した状態で防御力が著しく低下したところを

     大タル爆弾による爆破攻撃を行う戦法を指す。

     いかな巨大モンスターでも

     必ず大きな効果が見込まれるものと推測する。


     通常、大タル爆弾は割高な上に持って行くには かさばるので

     あまり使用される事のない戦法だけど

     分業してHR4以下の剣士ハンターに

     大タル爆弾を調合分含め持って行ってもらい

     ウカムルバスが寝たら仕掛けて、下がってもらう。





―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア



     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


ロートル「はあっはっはあっ……」

ロートル「待たせたな、みんな!」

ロートル「しばらく頼むぞ!」

ベテラン「任せな!」

ベテラン「用意はいいか!?」

     オオー!

ソロ「いつでもいいぞ!」

ソロ「さあ……かかってこい、ウカムルバス!」


少女「作戦通り、状態異常を狙っていくわ!」

少女「まずは麻痺弾よ!」

     オオー!

少女「もう少し近付いたら、仕掛ける!」

狩人「…………」

狩人「……ん?」

少女「え?」

少女「どうしたの? 狩人?」



     …………


ベテラン「な……なんだ?」

ベテラン「さっきまでの勢いはどうした?」

ソロ「……?」

ソロ「いきなり移動を止めた……?」

ロートル「…………」

ロートル(……どういう事……だ?)

ロートル(これだけの数のハンターを見て怖気づいた?)

ロートル(……まさかな。 そんな訳……)




     このモンスター……

     ウカムルバスは、ラオシャンロンじゃない。

     少女は そう考え、今回の作戦を思案した。

     だが……


     無意識下、とでも言うのか

     やはりどこか『同じ』に思っていた部分があった。


     もちろん少女が悪い、という事ではない。

     人間の想像力には限界がある。

     どれだけ予測や予想に優れていようとも

     その上を行く事態が起こってしまうのは、決して珍しい事じゃない。








     そうである。




     ウカムルバスは

     ラオシャンロンとは















     『違う』のだ。














     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!




     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!





ロートル「――っ!!」

ベテラン「うおおおおおっ!?」

ソロ「な――」

少女「!!」

狩人「っ!?」




     悲鳴は ほとんど聞こえなかった。

     ウカムルバスの放ったブレスの射線上に居たハンター達は

     おそらく直撃を喰らい……自分の身に何が起こったのかも理解できずに

     この世を去っただろう。


     そして、この余りにも圧倒的なモンスターの攻撃により

     何もする事なく、約3分の1ものハンターが戦闘不能に陥り

     迎え撃つハンター達にとっては最悪の形で

     戦いの口火を切る事となった……



お待たせしました……
という所で、今日はここまでです。
次はもっと早くできるといいなぁ……



―――――――――――


ふもと村 集会所


女「…………」

受付嬢「…………」

     グラッ… ユラ ユラ…

女「!」

受付嬢「!」

女「……地震?」

受付嬢「……分かりませんが」

受付嬢「少し揺れましたね」

女「…………」


女(……ウカムルバス)

女(ラオシャンロンと同じくらいの大きさの化物って聞いた)

女(…………)

女(狩人……少女ちゃん……ロートルさんにソロさん)

女(それと討伐に参加してくれた大勢のハンターの皆さん……)

女(どうか……無事に帰ってきて……)

女(どうか……)

女(…………)


※ここで ウカムルバス戦闘 のBGMを流すといいかもです。



―――――――――――


ロートル「…………」

ソロ「…………」


     モンスターの驚異的な力は

     ハンターであれば、誰でもある程度は分かっている。

     が……

     このモンスター……ウカムルバスの この攻撃は

     想像をはるかに超えた破壊力だった。


狩人「…………」

少女「…………」




     たぶん水ブレス……

     ガノトトスが使う、貫通性の高い、直撃を食らうと

     下位の防具なんて簡単に穴を開ける、要注意な攻撃。

     アレだ。 それはすぐに分かった。



     けど、破壊力が比較にならない!!



     ブレスを吐いた途端、地面の土砂や大岩を巻き上げ

     大地ごと何人かのハンター達が……前衛・後衛関係なく

     吹き飛ばされてしまった!!







     それ故に――

     どのハンターも一瞬、動きを止めてしまっていたが


     そんな中、一人、例外が居た。





ベテラン「――ォラァッ! これでも……」つ(ガンランス)

     シュオオオオオオ……

ベテラン「喰らいやがれ!!」つ(ガンランス)


     ドオォォォンッ!!(竜撃砲)


     グアアア…


ベテラン「お前ら! 止まるんじゃねぇ!」

ベテラン「死にたいのか!!」

ロートル「!」

ソロ「!」

狩人「!」

少女「!」



     ベテランの放った『竜撃砲』の爆音と言葉に

     はっ、とするハンター達。


ソロ「……うおおおおおっ!!」

     ダッ!!

ロートル「くっ……でやあああっ!」

     ダッ!


狩人「あ……!」

     ウウ… アア……

狩人「おい、大丈夫か!?」

少女「狩人! 負傷者はネコタクアイルーに任せておきなさい!」


狩人「え!? け、けど!」

少女「さっきのブレス攻撃、私たちがまともに喰らったら、たぶん即死よ!」

少女「絶対にウカムルバスから目を離さないで!」

狩人「!!」

狩人「わ、分かった!」

少女「それからもっと近づかないと……ここからじゃ遠すぎて」

少女「有効な打撃にならないわ!」

狩人「よし!」

狩人「ガンナーと後衛のハンター!」

狩人「前進して状態異常を狙うぞ!!」

     オ……オオー!!


少女「…………」

少女(……これはまずい状況かもしれない)

少女(このエリアは湖に面していて、やや横に長く広い)

少女(だから最も扇状に広がれる場所で陣取って構えていたのに……)

少女(ウカムルバスにあんなところで動きを止められたら)

少女(広がって攻撃するのが難しくなる……!)

少女(…………)

少女(むしろ今の攻撃で人数が減ったのは……)

少女(!!)

少女(バカ! なんて事を考えているのよ! 私は!)

少女(彼らは……私が立てた作戦で……!)

少女(……っ) ギリッ


ロートル「はあああああああっ!!」つ(双剣)

     ズバッズバッズバッ!!(鬼神乱舞)

ベテラン「オラッ! オラッ! オラァッ!!」つ(ガンランス)

     ドンッ! ドンッ! ドンッ!

ソロ「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

     ドガアッ!!(タメ3)


     ガアアアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「!?」

ロートル「!?」

ソロ「!?」




     一斉に攻撃し始めた前衛ハンター達であったが

     やはり先ほどのブレス攻撃のせいか、やや及び腰になっていた。


     その為、ウカムルバスの行動の異変に敏感になり

     若干引いて様子を見る。





     ズズウゥ……


ロートル(あの巨体で立ち上がるのか……!)

ベテラン(だが、そんなのはラオシャンロンだってやってるぜ!)

ソロ(ラオシャンロンなら……大きな隙になったはず!)



     ハンター達は、ラオシャンロンの例に当てはめ

     この後、咆哮を仕掛け 長い時間の隙があると予測した。

     確かにその予測は間違いでは無かった。









     ゴアアアアアアアッ!!





ロートル「ぐっ!?」

ベテラン「がっ!?」

ソロ「ごふっ!?」

     ウワッ!? ギャアッ!?




     見えない壁に体を叩き付けられた様な衝撃……!

     これはティガレックス等に見られる

     強烈な咆哮による音波ダメージと原理は同じだ。

     しかし、これもティガとは比較にならないほど強力で範囲が広い!

     ハンター達は、完全に間合いを見誤り

     それぞれの後方へ吹き飛ばされる!



ベテラン「く……くそっ……たれ……!」

ベテラン「は、反則……だろ……こんなの……」つ(回復薬G) グビッ

ロートル「はあっ……はあっ……」つ(回復薬G) グビッ

ソロ「ぐっ……くっ……」つ(回復薬G) グビッ



     グルルル…  ブウウウウウンッ


ベテラン「!!」

ベテラン「まずい! 尻尾を振り上げているぞ!」

ロートル「テールアタックか!?」

ソロ「ロートル! 俺の後ろへ隠れろ!」 防御姿勢!

ロートル「それぞれも防御できるハンターの影へ逃げ込め!」 ダッ!

     チイッ! クソッ! ウワワッ…!

ロートル(くっ……! 近すぎて半分くらい間に合わ――)


少女「――攻撃ッ!」

     ドドドドドドドドドドッ!!!

ロートル「!」

ベテラン「!」

ソロ「!」


     ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ…!?


少女「!」

一同「!!」


     状態異常が……効いた!!


狩人「ロートルさん! 今の内に!」




     作戦の最終段階

     いずれかの状態異常(麻痺・毒・睡眠)の効果が

     認められた場合は、効かなかった物を除いて攻撃を続ける。

     また、モンスターは薬品・罠・閃光弾等に対し

     だんだんと耐性を持って行く為

     麻痺→睡眠→毒、といった、ローテーションを組んで

     少しでも状態異常に長く、休みなく、陥らせる様に攻撃を行う。




ロートル「叩き込め!!」

     言ワレナクテモ!! オリャア!

ベテラン「顔面はもらった!」つ(ガンランス)

ソロ「はあああああああっ……!!」 溜め攻撃準備


少女「今の内に睡眠弾へ切り替えて!」

     分カッテル! カチャカチャ…

少女「狩人、準備は!?」

狩人「いつでもいいぞ!」つ(大タル爆弾)

少女「お願いね!」

少女「…………」



     ゴアアアアッ!

     グルルル…(首フリフリ)


少女「攻撃ッ!」

     ドドドドドドドドドドッ!!!

ロートル「攻撃やめ!」

ロートル「睡眠攻撃の邪魔になる!」

ロートル「攻撃を止めろ!」


     グアアアア……ズズンッ

     グルルル…zzz グルルル…zzz


少女「! 効いた!」

少女「狩人!」

狩人「行ってくる!」 ダッ!


ロートル「少し離れろ!」

ロートル「爆破に巻き込まれるぞ!」

ソロ「今の内に砥石・スタミナ・体力等の回復を済ませるんだ!」

     オウッ!

狩人「よいしょっと……」

     スッ… ドドンッ  スッ… ドドンッ

狩人「よし」

狩人「ロートルさん、また後で!」

ロートル「ああ」

     タッ タッ タッ…


少女(……本当はどのくらいの間、寝ているか見てみたいのだけど)

少女(今はそんな事を言ってる場合じゃない!)

少女「私が起爆するわ!」つ(ライトボウガン)

     ワカッタ! マカセル!

     爆弾班! 急イデ離レロ!

少女「…………」

少女「…………」

少女「……よし」

少女「起爆!」

     ドウッ!


     ドガアアアアアアアアアアンッ!!




―――――――――――


洞窟内 臨時BC(ベースキャンプ)


医療アイルー「こっちの治療は終わったニャ!」

見習いアイルー「次はこのハンターを……」

医療アイルー「わかっ……」

医療アイルー「…………」

     ボカッ!

見習いアイルー「ニャギャ!?」

見習いアイルー「何するニャ!?」

医療アイルー「今は死人を見てる暇はないニャ!」


医療アイルー「よく見て助かりそうなハンターだけを拾って来い!」

見習いアイルー「そ、そんな!?」

医療アイルー「次!」

見習いアイルー「ま、待ってニャ!」

見習いアイルー「さっきまで……さっきまで生きていたのニャ!!」

     ポン…

ネーコ「……落ち着いて」

ネーコ「医療アイルーさんも出来るなら、みんな救ってあげたいと思っています」

見習いアイルー「でもっ……でもっ……!」

ネーコ「あなたがそうやって駄々をこねていたら」

ネーコ「みんな助かるんですか?」

見習いアイルー「……!!」


ネーコ「辛いのは、みんな同じです」

ネーコ「最善を尽くしても、やれる事には限界があります」

見習いアイルー「…………」

ネーコ「あなたが、今の状況で出来る最善は何ですか?」

見習いアイルー「…………」

見習いアイルー「……わかったニャ」 グスッ…

     タッ タッ タッ…

ネーコ「…………」

板前アイルー「あんな若造には辛ぇ現実だニャ……」

ネーコ「板前アイルーさん……」

ネーコ「…………」

ネーコ「生きておられるハンターさん達の様子は?」


板前アイルー「今、あっしの作った特製スープを飲ませて休ませてるニャ」

ネーコ「そうですか……」

板前アイルー「まさか10人以上運び込まれて、たった3人しか助かってねぇなんて……」

板前アイルー「しかも全員ドクターストップ……ウカムルバスってぇモンスターは」

板前アイルー「とんでもねぇ化物みたいだニャ」

ネーコ「…………」

コックアイルー「大丈夫ニャ!」

ネーコ「コックアイルーさん?」

コックアイルー「ご主人様たちは、きっとやっつけてくれますニャ!」

ネーコ「……そうですね。 きっと」

板前アイルー「ああ、ちげぇねぇニャ」

板前アイルー(……そうですよね、旦那)



―――――――――――


狩人「よいしょっと……」

     スッ… ドドンッ  スッ… ドドンッ

狩人「よし」

     ……スマン、回復薬クレナイカ?

狩人「あ、はい。 どうぞ」つ(回復薬G)

     コッチハ強走薬ヲ頼ム

     オレモ…

狩人「……どうぞ」つ(強走薬)

狩人「…………」


少女(…………)

少女(……まずいわ)

少女(紫発汗(※)があったから、毒状態にもなってるけど……)

少女(二度目の麻痺と睡眠に3斉射もかかってる)

     ※注 紫発汗

     モンスターが毒状態になると起こる発汗現象。

     許容範囲以上の毒を打ち込まれたモンスターは

     体外に毒を排出しようとして、何故か頭から紫色の汗という形で出してくる。

     これが起きると体への負担となり、ダメージになる。

     理由は不明だが、体の構造が根本的に違う牙獣種や甲殻種にまで

     同様の現象が起こる。(おい、ハンターは?というツッコミはナシの方向で)

少女(やっぱり最初の一撃でハンターが大勢やられたのは痛かった……!)

少女(この速度で耐性がついてしまうと、状態異常弾が足りなくなる恐れがある)


     タッ タッ タッ

狩人「少女!」

少女「何? 狩人」

狩人「この段階で回復薬や強走薬を欲しがったハンターが居る」

少女「…………」

狩人「……最後まで持つのかどうか」

少女「…………」

少女「でも、やるしかない」

狩人「…………」

狩人「そうだ……その通りだな!」

少女「起爆するわ!」








     ドウッ!


     ドガアアアアアアアアアアンッ!!










―――――――――――


     ズズウッ…


ソロ「また立ち上がった!」

ソロ「ボディプレスかもしれん! 気をつけろ!」

     オウッ! 下ガレ!

ロートル「くっ……!」


     ド  ズ  ン  ッ !!


ベテラン「……うおおおおおおっ!」つ(ガンランス)


     ドオォォォンッ!!(竜撃砲)


ベテラン「ちっ……! タフなヤローだぜ!」


ベテラン「…………」


ベテラン(しかし……ケチのつき初めになった)

ベテラン(このガンランスで今回の大一番を戦う事になるとは)

ベテラン(因果なもんだぜ……)

ベテラン(…………)

ベテラン(シルバーソル(リオレウス希少種)討伐に参加したのは偶然だった)

ベテラン(俺は……肝心な所で 1乙してしまい、パーティの1人に犠牲が出てしまった)

ベテラン(悲しい出来事だったが、俺は報酬素材の良さに喜びを隠せなかった)

ベテラン(それだけなら……ここまで落ちぶれずに済んだのかもしれねぇな)


ベテラン(…………)

ベテラン(俺は直ぐ様、その報酬素材でこのガンランスを作ったが……)

ベテラン(それが原因であの時、組んだ連中のやっかみを買う事になる)

ベテラン(…………)

ベテラン(死んだ奴の報酬を横取りして、こいつを作ったという)

ベテラン(根も葉もない噂話があっという間に広まった)

ベテラン(…………)

ベテラン(悔しかったな……)

ベテラン(何を言っても信じてもらえなかったし)

ベテラン(弟のイケメンや仲の良かったハンターの連中にもそっぽを向かれ……)

ベテラン(俺と組む奴は居なくなった)

ベテラン(…………)


ベテラン(…………)

ベテラン(このガンランスも同じ気持ちだったのかもしれん)

ベテラン(俺がこんな目にあったのは、こいつのせいじゃねぇってのに)

ベテラン(俺は……)

ベテラン(…………)

ベテラン(…………)

ベテラン(すまねぇな……使ってやらなくてよ)

ベテラン(…………)


ベテラン「うおおおおおっ!!」




     ……戦い始めてから どのくらい経ったのか。

     夕日が差し込み、雪山猟区を朱に染めているので

     言葉にすれば数時間、というところであろう。


     ハンター達は懸命に戦い、恐れながらもウカムルバスに果敢に挑み

     傷つき、一人、また一人と脱落する者が増えていったが

     白いモンスターの巨体もまた、確実に傷が増えていった。


     その背はガンナーの攻撃により穴だらけにされ

     腹は無残な切り傷に覆われ、前足の爪はボロボロにされ

     特徴的な顔面のスコップ状の顎すら、刃のこぼれた刀身の様に砕けている。











     しかし、ウカムルバスは攻撃面において

     少しの衰えも見せなかった。











     頼みの綱であった状態異常も

     回を重ねるごとに驚くほどの速度で耐性が付いて行き

     手持ちの状態異常弾はすぐに底をついた。


     補給を担当する狩人達であったが

     それすらも無くなるのに時間はさほどかからず

     苦肉の策として、乙ハンターの持ち物を貰いに洞窟へ下がったり

     果ては物言わぬ肉塊と化したハンター達のポーチを漁ったりもした。











     だが……それでも現実は容赦が無かった。









少女「狩人! 睡眠弾を!」

狩人「もう無い!」

少女「なら他の状態異常弾を!」

狩人「それも無い!」

狩人「思いあたる分は探して少女に渡しきった!」

狩人「どこを調べても、ここにはもう無い!」

少女「くっ……!」

少女(今でも前衛にかなりの負担をかけているのに……!)

少女(このままじゃ……ロートルさん達が先に参ってしまう!)



     ガアアアアアアアッ!!(咆哮)


ソロ「くっ!!」 防御姿勢!

ソロ(前足の爪は砕け、背中はガンナーの攻撃でボロボロ……)

ソロ(腹も傷だらけな上に、顔面の顎すら見る影もなく砕けているのに)

ソロ(全く弱っている気がしない!)


ロートル「はあっ……はあっ……はあっ……」

ロートル(ガンナーの援護……状態異常も耐性が付いてしまったみたいだな)

ロートル(…………)

ロートル(立っている前衛は俺を含めて5~6人か……)

ロートル(最後まで持ってくれよ!)


狩人「…………」

狩人「……少女」

少女「え?」

狩人「俺、前衛に加わってくる」

少女「」

少女「な、何を言ってるの!?」

少女「ロートルさん達ですら、鍛えに鍛えた防具で一撃耐えるのがやっとなのよ!?」

少女「狩人の防具じゃ、即死しかねない!!」

狩人「他にどんな方法がある?」

少女「っ!」

狩人「それに、こんな事もあろうかと」

狩人「身軽で麻痺属性の片手剣で来たんだ」


少女「で、でも!」

狩人「どの道、ロートルさん達が倒れたら」

狩人「誰かが前衛に付かないと、あのブレス攻撃が来てしまう」

少女「…………」

狩人「なら、今の内から前衛に加わって」

狩人「あいつの気を逸らして、少しでも長くガンナーに攻撃をしてもらった方がいい」

狩人「ロートルさん達が倒れてからじゃ遅いと思う」

少女「け、けど……!」

狩人「大丈夫さ」 ニコ

狩人「君がくれたお守りもあるしね」

少女「……っ」


狩人「言っておくけど、死ぬつもりなんてこれっぽっちもない」

狩人「俺には目指す目標と、やらなければならない事があるんだ」

狩人「石にかじりついてでも生き残ってやる」

狩人「必ず!」

     ダッ!

少女「あ……!」

少女「…………」


     ……止めないといけない。

     無謀なのは明らかなのだから。

     だけど……


少女(狩人の言ってる事は……正しい)

少女(前衛の動きからしても、ガンナーの攻撃を少しでも長く、という意思が読み取れる)


少女(…………)

少女(……!)

少女(ダメ! 今は……)

少女(今はくよくよ考えている時じゃない!)


少女「状態異常弾が尽きたガンナーは、貫通弾に切り替えて攻撃して!」

少女「なるべく近付かないで攻撃しましょう!」

     ワカッテル! モウ少シダ!

     ガンバルゾ!

少女「ええ!」

少女「…………」


ロートル「はあっはあっはあっ」

ベテラン「くっ……はあっ……はあっ……」

ソロ「ぜえっ……ぜえっ……」


     ガアアアアアアアッ!!(咆哮)


ロートル「ぐおっ……!!」

ベテラン「ロートル!」

ソロ「ロートル!」

ロートル「……ぐっ……く……」

ロートル「……スマ……ン……」

     ドサッ…

ベテラン「畜生!」

ソロ「ネコタクアイルー! 回収急げ!」


ベテラン「くそおおおおおっ!!」つ(ガンランス)

     ドンッ! ドンッ! ドンッ!

ソロ「ベテラン! 焦るな!」

ソロ「奴の間合いだぞ!!」

ベテラン「っ!!」


     ブウンッ!(前足攻撃)


狩人「危ないっ!」

ベテラン「がっ!?」

     ドサッ! ゴロゴロゴロ……

狩人「良かった、間に合った……!」

ベテラン「……お前」


狩人「礼なんかいい」

狩人「その代わり、一番いい『場所』をもらう!」

     ダッ!

ベテラン「!?」

ソロ「お、おい!?」

ソロ「狩人! その装備じゃ――」


狩人「はああっ!!」

     ズバッ! ズバッ!

狩人(……ここで一旦引いて様子見!)


ベテラン(……!)

ソロ(……!)




     ベテランとソロは驚きを隠せなかった。

     狩人は、ウカムルバスの『右後ろ足』のみに攻撃を加えていた。

     そうである。

     その場所は……






     唯一と言っていい程、ウカムルバスの反撃が来ない場所だったのだ。








ベテラン(ウカムルバスの野郎……)

ベテラン(戦いにくそうにしやがって)

ベテラン(身近で戦っていた俺たちでも気がつかなかったのに……!)

ソロ(狩人は……遠くから戦いをただ見ていたのではなく)

ソロ(ずっと観察し続け、弱点を探し当てたのか……!)


狩人「はあああっ!」

     ズバッ! ズバッ!


ベテラン(……けど)

ソロ(……だが)


     まだ甘い。




     ガアアアアアアアッ!(咆哮)


狩人「ぐっ!?」 防御!

狩人「……おおおおおお!?」

     ドサッ!

狩人(畜生! 防御ごと後ろに……はっ!?)


     グルルル…

     グワアッ!(前足攻撃)


狩人「やば!」


ベテラン「おおっと!」 (防御姿勢)

     ガシッ!

ベテラン「ぐううっ……!」 ビリビリビリッ!

狩人「!」

狩人「あんた……」

ベテラン「へっ……やるじゃねぇか。 もうヒヨっ子じゃねーみたいだな」

ベテラン「盛大に見直したぜ」

狩人「…………」

ベテラン「オラアッ!!」つ(ガンランス)

     ドンッ! ドンッ! ドンッ!

     グアアア…

ベテラン「しっかりしろよ! そうそう援護はしてやれねぇからな!」

狩人「言われなくても分かっている!」

     ズバッ! ズバッ!



―――――――――――


洞窟内 臨時BC(ベースキャンプ)


医療アイルー「…………」

医療アイルー「……ダメニャ。 左腕の骨が折れているニャ」

医療アイルー「ドクターストップニャ」

ロートル「……そうか」

医療アイルー「次ニャ!」


ロートル「…………」

ネーコ「ロートルさん。 これをどうぞ」つ(特製スープ)

ロートル「む?」


ネーコ「板前アイルーさんが作ってくれた特製スープです」

ネーコ「傷つき、疲れた体とお腹に優しく、薬効もあり、しかも温まりますよ」

ロートル「そうか……いただこう」

     ズズッ…

ロートル「ほう……旨いな」

ネーコ「ゆっくり休んでてください」

ロートル「ああ……」

ロートル(…………)

ロートル(俺と同じく、ストップのかかった者がざっと11~12人程度)

ロートル(……こっちに布を掛けられ、ズラッと並べられている者もほぼ同じくらい)

ロートル(最初の一撃で吹き飛んだ者も考慮すると……)

ロートル(戦場に残って戦っているのも……だいたい10人前後か)




     ロートルは自分の限界を……

     衰えを、先を、考えずにいられなかった。


     ソロの奴は、気にしすぎだ、と言うに違いないだろう。

     だが……やはり自分のハンターとしての寿命はもう長くない。

     それは確かだ。


     ……おそらく、もうすぐウカムルバスは倒される。

     若くして有能な大剣使いのソロに

     知り合ったばかりだが優秀なランサーのベテラン

     そして……成長著しい狩人に少女。






     きっと……あいつらは『英雄』と呼ばれる様に成れる素質を持っている。

     俺がどれだけ欲しがっても、渇望しても、手を伸ばしても

     届かなかった高みへ行く事が出来るハンターとなるだろう。



     …………



     彼らと共に戦えた事、出会えた事は

     俺にとって掛け替えの無い財産であり、誇りになった。

     だから非才なる身で、自分にだけ出来る精一杯の事を











     俺はやろう。









狩人「はあああああああっ!!」

     ズバッ! ズバッ!

狩人(くそったれ……!)

ソロ「はあっ……はあっ……」

ソロ「……おおおおっ!!」

     ブウウンッ! ドガッ!(タメ3)

ベテラン「ひいっ……ひいっ……」

ベテラン「……っの野郎!」つ(ガンランス)

     ドンッ! ドンッ! ドンッ!


少女(狩人……無理はしないで!)

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!




     ウカムルバスは相変わらず猛り狂い

     前衛のハンター達を相手にしていた。



     が……



     ついに……







     




     『その時』が来た。












     ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ…!?


狩人「!!」

ソロ「!!」

ベテラン「!!」

     麻痺った!

ソロ「はあああああああっ……!!」つ(大剣)

     シュイン!(タメ1) シュイン!(タメ2)

ベテラン「待ってたぜぇ……この時をっ!!」つ(ガンランス)

     シュオオオオオオ……



     これが最後のチャンスとばかりに

     前衛ハンター達は、残った力を振り絞って

     ウカムルバスに攻撃を加える。


狩人「はあっ!!」

     ズバッ!ズバッ!

ソロ「でやああああああっ!!」つ(大剣)

     ブウゥゥンッ! ドガァッ!!(タメ3)

ベテラン「オラアアッ!!」つ(ガンランス)

     ドオォォォンッ!!(竜撃砲)










     グオオオオオオオオオオオオオンッ……











     ウカムルバスが これまでとは違う

     ひときわ高い唸り声を上げ、よろめいた。


     それを聞き、見上げた狩人達は確信する。




     ようやく、戦いの終止符を打ったのだと……!




ベテラン「っしゃあああああああああああああっ!!」

ソロ「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

狩人「どおだああああああああああああああっ!!」



     歓声が上がる。

     狩人達だけでなく、後衛のガンナーからも歓喜の声が放たれた。

     ……少女を除いて。


少女「…………」


     もちろん喜んでいない訳ではない。

     強敵を打ち破ったという高揚感もある。

     でも……





     グラァ……



ベテラン「ざまあみろってもんだ……あん?」

ソロ「ははは……む?」

狩人「とにかくこれで……え?」


     ズズズズズズズズズズ……


ベテラン「や、やべえっ!?」

ベテラン「あの野郎! こっちに向かって倒れて来るぞ!」

ソロ「くっ……逃げろ!」

狩人「わわわわわっ!?」


少女「!」

少女「か、狩人!?」




     ズズウウンッ!!




少女「そ……そんなっ!」

     ダッ!

少女「狩人!」


狩人「……う……っ……」

ベテラン「ソロの兄ちゃん! 狩人!」

ソロ「ぐっ……くっ……!」 防御姿勢

少女「!!」

少女「か、狩人!?」


     そこには……

     ウカムルバスの巨大な右腕の下敷きになっている狩人と

     かろうじて大剣で それを支えているソロの姿があった。



少女「待ってて、今――」

ソロ「来るな!」

少女「!?」

ベテラン「!?」

     ピシッ… ミシミシ…

ソロ「……もう……支えきれん」

ソロ「困った事に……2人とも足を挟まれていてな」

ソロ「俺たちは……逃げられない……」

少女「そ……そん……な……」


ベテラン「…………」

少女「くっ! それでも、私は!」

     ガシッ!

ベテラン「待ちな」

少女「放して! このままじゃ、狩人が! ソロさんが!」

     ジャキン!

少女「え……?」

ベテラン(…………)つ(ガンランス)

     シュウ… シュウ…(放熱中)

ベテラン(さっき ぶっ放したばかりだからな……)

ベテラン(当然……か) カチャカチャ… カチン✩

少女「あなた……いったい何を……?」

ベテラン「オラアッ!!」

     ザクッ!!

ソロ「……!?」




     ベテランは竜撃砲を打ち終わった直後のガンランス

     シルバーソル(リオレウス希少種)の貴重な素材を使って制作した

     ガンチャリオットを

     狩人達にのしかかっているウカムルバスの腕に差し込んだ。



ソロ「! まさ――」

ベテラン「…………」

ベテラン「……あばよ」つ(ガンランス)

     シュオオオオオオ……

少女「!?」

少女「な――」








     ドオォォォンッ!!(竜撃砲)




     バ キ ャ ン ッ !!










     竜撃砲により細かな肉片になって飛び散っていく

     ウカムルバスの右腕……


     と同時に


     ベテランのガンチャリオットも

     砕け散って破片を撒き散らした……






     通常、ガンランスは竜撃砲を放った直後

     砲身が高温になり、そのまま続けて竜撃砲を放つと

     熱により強度の落ちた砲身が持たない。


     そのため、放熱してからでないと竜撃砲を撃てない様に

     リミッターが仕込まれているのだ。




ソロ「…………」

少女「…………」

ソロ「リミッター……外したのか」

ベテラン「…………」

ソロ「貴重な素材を使った武器だったのに……すまん」

ソロ「大きな借りができたな」

少女「ベテラン……さん」

少女「ありがとうございます」


ベテラン「へっ……気にすんな」

ベテラン「コイツには いい思い出はねーし」

ベテラン「それに……」

ソロ「……それに?」

ベテラン「…………」

ベテラン「何でもねぇ」

ベテラン「それよりも大丈夫か? 手を貸すぜ?」

ソロ「……頼む」

ベテラン「ほれ、嬢ちゃんも狩人を助けてやん……って」

ベテラン「言うまでもなかったか。 ははは!」

ソロ「…………」


ベテラン(…………)

ベテラン(……これでいい)

ベテラン(これで良かったんだ……)

ベテラン(ここで狩人とソロを見捨てたら)

ベテラン(きっと……俺は自分を許せなくなる)

ベテラン(あの時の俺以上に……な)

ベテラン(…………)

ベテラン(ありがとうよ。 ガンチャリオット)

ベテラン(最初で最後になっちまったが……)

ベテラン(お前のおかげで狩人とソロ……それに)

ベテラン(俺も救われたぜ……)




     雪山猟区が暗くなってゆく。

     夕日はすっかり沈んで姿が見えなくなり、夜の帳(とばり)が

     辺りを包み込み始めていた。



     ハンター達はかろうじてウカムルバスに勝利し

     こうして一つの戦いは終わった。

     洞窟内に待機していた負傷者及びアイルー達も下山を始め

     勝利に喜ぶ者、複雑な表情で笑う者、そんな余裕すらない者……

     それぞれで違った顔を見せてはいたが

     危機が去った事について安堵したのは、みな同じであった。





―――――――――――


数時間後の夜

ふもと村 病院


女「じゃ、大丈夫なんですね?」

医師「ええ」

医師「二人共足が折れていますが命に別状はありませんし」

医師「秘薬と回復薬Gを飲んで安静にしていれば、3日くらいで治ると思います」

少女「良かった……狩人……ソロさん」

医師「それでは……」

女「ありがとうございます」

少女「ありがとうございます」


少女(本当に良かった……狩人が無事で)

少女(ちゃんと治る怪我で……)

少女(…………)

少女(でも……)

少女(……最終的な犠牲者数)

少女(死傷者は全部で39人……死者は行方不明者を含めて17人)

少女(ネコタクアイルーは2人が死んだ……)

少女(…………)

少女(また、今回の負傷が原因で引退するであろうハンターは)

少女(6人……)

少女(…………)







     みんな……私が立てた作戦での




     犠牲者……






という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。
次回、最終回になります。



―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 広場


     ガヤ ガヤ…

狩人「…………」

ロートル「それでは……討伐隊・解散式を始めたいと思う」


一同「…………」


ロートル「まず最初に、アイルーやここに居ないハンターも含め」

ロートル「本当にお疲れ様」

ロートル「おかげで、ふもと村や近隣の村々は救われた……」


ロートル「ギルドから正式な発表が届いたのだが」

ロートル「ウカムルバスは古龍種では無いが」

ロートル「アカムトルムと同じか、それ以上の危険度であると判断され」

ロートル「討伐に参加した、条件を満たしたハンター……」

ロートル「つまりHR6で、討伐の最後まで立っていたハンターを」

ロートル「アカムトルムと同じ扱いでG級ハンターとするそうだ」

     オオッ!

ロートル「……裏を返せば」

ロートル「ドクターストップや3乙したハンターは除外となる」

     …………

ロートル「だが破格の報酬は、生き残った者すべてに支払われる事になった」


ロートル「集会所の方で受け取りの準備をしている」

ロートル「ふもと村の報酬プラス、ギルド側からも出た」

ロートル「ウカムルバスの素材と一緒に受け取ってくれ」

     オッシャァ! ヤッタゼ!

ロートル「……最後に」

ロートル「この報酬を受け取る事もなく」

ロートル「無念の死を遂げたハンターや、アイルー達に黙祷を捧げたい」


一同「!」


ロートル「彼らは……自らの意思で討伐に参加してくれたとは言え」

ロートル「リーダーである、俺の判断で選んだ作戦の最中に犠牲となった」

ロートル「それは確かだ」


狩人「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」


ロートル「俺たちに……いや、俺に出来る事は」

ロートル「忘れない事と、彼らの死を無駄にしない事だと思う」

ロートル「どこまで背負えるかは分からないが……」

ロートル「その責をずっと心に刻みつけ、前を向いて行くつもりだ」


一同「…………」


ロートル「では」

ロートル「大地に還った彼らの眠りが静かである事を祈ろう」









     黙 祷










―――――――――――


ソロ「……ロートル」

ベテラン「…………」

ロートル「ソロに……ベテラン」

ソロ「…………」

ソロ「……何と……言っていいのか」

ロートル「いいんだ、ソロ、ベテラン」

ロートル「G級ハンター昇格、おめでとう」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」


ロートル「2人とも、もっと胸を張れ」

ロートル「そんな暗い顔はふさわしくないぞ?」

ベテラン「…………」

ベテラン「引退するつもりか?」

ソロ「!」

ロートル「…………」

ロートル「……年内にはな」

ソロ「な!?」

ソロ「ま、待て、ロートル! 早まるな!」

ソロ「今回もツキが無かっただけで――」

ロートル「気にしすぎ……か?」

ソロ「!」


ロートル「いいんだ、ソロ」

ロートル「もう庇ってくれなくても」

ソロ「そんなつもりはない!」

ロートル「いいから落ち着け、ソロ」

ソロ「…………」

ロートル「……この左腕を見ろ」

ロートル「ソロや狩人の足の骨折はとっくに治っているが、俺はまだだ」

ロートル「俺の体は……ハンターとして限界を迎えている」

ソロ「…………」

ロートル「今回のウカムルバスは……死んだ奴には悪いが」

ロートル「いい機会だったんだ」

ベテラン「…………」


ソロ「だ、だからって……」

ソロ「いきなり引退なんて、早急に考えすぎだ!」

ソロ「もう少し時間を――」

     バキッ!

ソロ「ぐっ!?」

ベテラン「…………」

ソロ「な、何をするんだ!?」

ベテラン「……いい加減にしな、ソロの兄ちゃん」

ベテラン「ロートルに頼り切るのは」

ソロ「っ!?」

ベテラン「はっきり言わせてもらうが」

ベテラン「お前はロートルに依存しすぎているんだよ」


ソロ「バカな事を言うな!」

ソロ「俺は……」

ベテラン「だったら」

ベテラン「ロートル抜きで、誰かとパーティ組んでみろ」

ソロ「っ!!」

ロートル「…………」

ベテラン「……やれやれだな」

ベテラン「いきさつは知らねーが、お前さんが他のハンターを怖がっているのは」

ベテラン「見てりゃわかる」

ベテラン「狩人や、少女とかいう格下のハンター相手でもな。 相当な重症だ」

ソロ「…………」


ベテラン「そろそろロートルを自由にしてやれ」

ベテラン「お前さんが いつまでもそんなだから」

ベテラン「ロートルは引退をためらっていたのかも知んねーぞ?」

ソロ「!!」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「……ともかくだ、ソロの兄ちゃん」

ベテラン「少し頭を冷やして来い」

ベテラン「落ち着いて考えをまとめてから、もう一度ロートルと話してみな」

ソロ「…………」

     スタ スタ スタ…

ロートル「…………」

ベテラン「…………」


ロートル「……辛辣だな」

ベテラン「それなりに人生経験積んだからな」

ベテラン「で? 俺の言った事は合ってるか?」

ロートル「…………」

ロートル「……ど真ん中ではないがな」

ベテラン「…………」

ベテラン「……そうか」

ロートル「ソロのおかげで救われても来た」

ロートル「今日までやっても来れた」

ロートル「それも……確かなんだよ」

ベテラン「…………」


ロートル「で?」

ロートル「ベテラン。 お前は、これからどうするんだ?」

ベテラン「俺か……」

ベテラン「特に決めてねーよ」

ベテラン「報酬もらったら、とりあえずデカイ街に行って派手に遊ぶ」

ベテラン「そんくらいかな」

ロートル「自堕落まっしぐらだな」 クスッ

ベテラン「ほっとけ」 クスッ

ロートル「…………」

ロートル「……なら」

ロートル「ひとつ、俺の頼みを聞いてくれないか?」

ベテラン「頼み?」



―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「……え?」

狩人「少女……まだ報酬を受け取りに来てないんですか?」

受付嬢「はい」

受付嬢「昨日の晩、私も彼女の家へ受け取りに来るよう言ったのですが……」

受付嬢「体調が思わしくないとキッチンアイルーに言われまして」

狩人「…………」

狩人「……そうですか」


少女の家


     コンコン

狩人「…………」

     ガチャ…

コックアイルー「あの……ご主人様は、体調が……」

狩人「コックアイルー」

コックアイルー「! ……狩人さん」

狩人「少女に会いたいんだけど」

コックアイルー「…………」

コックアイルー「……きっと、ご主人様は会いたくないって言うt」

狩人「なら、勝手に入らせてもらう」

コックアイルー「狩人さん!?」


狩人「おい、少女」

少女「…………」

狩人「……返事くらいしてくれよ」

少女「…………」

少女「……何?」

狩人「受付嬢さんから、君が報酬を受け取ってないって聞いた」

狩人「あの日から外に出ていないみたいだし、心配で様子を見に来たんだよ」

少女「……そう」

狩人「…………」

少女「…………」


狩人「……俺は頭が悪いから」

狩人「君がどうしてそこまで思いつめているのか良く分からない」

少女「…………」

狩人「ロートルさんは、討伐隊・解散式で」

狩人「犠牲になった人達の事を忘れない事と」

狩人「彼らの犠牲が無駄にならない様に心に刻みつけて」

狩人「前を向いて行くって言っていた」

少女「…………」

少女「……そんなの詭弁よ」

少女「どう言い繕っても……私が立てた作戦の犠牲者なのは変わらない」

狩人「…………」

狩人「また来る」


ふもと村 広場


狩人「…………」

狩人「どうしたものかなぁ……」


狩人(悩んでる時って、ひとりで居たいものだし)

狩人(あーしろ、こーしろって言われると)

狩人(正しいって分かってても腹が立つし……)

狩人(…………)

狩人(……俺はあの時)

狩人(3乙ばかり繰り返してたあの時……どうされたかった?)

狩人(…………)

狩人「……う~ん」


ソロ「お……狩人」

狩人「え? ……ソロさん」

ソロ「…………」

狩人「…………」

狩人「……えと、何ですか?」

ソロ「あ……いや……」

ソロ「何でもない」

ソロ「邪魔したな。 じゃ……」

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人「何なんだ?」


ロートルの家


ロートル「よう、ソロ」

ソロ「……ああ」

ロートル「どうした? 入れよ」

ソロ「…………」

―――――――――――

ロートル「まあ、その辺に座ってくれ」

ロートル「まだ早い時間だからな。 酒は無しだ」

ソロ「ああ……分かってる」

ソロ「……ん?」

ロートル「これか?」つ(書類)

ロートル「ちょっと考えてる事があってな……」


ロートル「ギルド側と交渉しないといけないんだが……」

ロートル「面倒な手続きがいるんだよ」

ソロ「交渉? 手続き?」

ソロ「何をするつもりなんだ?」

ロートル「いくつかあるんだが……まだ秘密にしておく」

ソロ「…………」

ロートル「で? お前は俺に何の用だ?」

ソロ「…………」

ソロ「引退の話」

ソロ「止めてくれ、と言っても無駄か?」

ロートル「……ああ。 無駄だな」


ソロ「…………」

ソロ「そうか……」

ロートル「…………」

ソロ「……思い返せば」

ロートル「ん?」

ソロ「あんたには、振り回されてばかりだった気がする」

ロートル「…………」

ソロ「一番ひどかったのはババコンガの時だったか……」

ロートル「俺が消臭玉忘れてしまって、クソまみれで死ぬところだったな」

ソロ「ヒプノックの時はケンカしたな」

ロートル「……眠らされたから叩き起こそうとして、焦って刃のついた方で起こしたな」

ロートル「そこからは仕返しの応酬……でも大剣のお前の方が酷いと思うぞ?」

ソロ「ははは……」


ソロ「…………」

ロートル「…………」

ソロ「でも……ロートルとの狩りはいつだって」

ソロ「楽しいものだった」

ロートル「…………」

ソロ「俺はロートルに救われた」

ソロ「救われてきた……」

ロートル「ソロ……」

ロートル「それは俺だって同じだ」

ロートル「俺もソロに救われてきたからこそ、今、ここに居るんだ」

ロートル「今まで本当に助かった。 感謝している」

ソロ「…………」


ソロ「俺も……感謝……して、る……」

ソロ「あり……ぐっ……ありが、とう……ひぐっ……うくっ……」

ロートル「…………」

ロートル「……おいおい。 泣く奴があるか……」

ロートル「俺は死ぬわけじゃないし、引退はもう少し先だ」

ロートル「だから……泣くなよ」

ソロ「うぐっ……くっ……ぎっ……はっ……ううっ……」

ロートル「…………」



―――――――――――


翌日の朝

少女の家


コックアイルー「あの……ご主人様」

コックアイルー「朝ごはんが出来ましたニャ」

少女「…………」

コックアイルー「ここのところ……あまり食べていませんし」

コックアイルー「お腹に優しいリゾットにしておきましたニャ」

少女「……ありがとう」

少女「そこに置いておいて。 食べるから」

コックアイルー「…………」



―――――――――――


更に翌日の朝


コックアイルー「…………」

コックアイルー「あの……ご主人様」

コックアイルー「本当に大丈夫なんですかニャ?」

少女「…………」

少女「……大丈夫よ」

コックアイルー「で、でも……」

コックアイルー「出したご飯……ほとんど口をつけていないみたいですし……」

少女「……大丈夫って言ってるでしょ」

コックアイルー「で、ですけど」


     コンコン

コックアイルー「! あ、はいニャ!」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」

     ……! チョ…! …! …!

少女「……?」

     スタ スタ スタ

狩人「おはよう、少女」

少女「……狩人?」

少女「何をしに……というか、その大量の食べ物は?」

狩人「飯だよ」


少女「……悪いけど要らな」

狩人「何を言ってるんだ?」

少女「え?」

狩人「これは全部『 俺 』の飯」

狩人「何となく気分で、ここで食いたくなっただけ」

少女「はあ!?」

狩人「いただきまーす!」

     ガツガツ ムシャムシャ…

狩人「うめぇ!」

狩人「やっぱり幻獣チーズと肉の取り合わせは最高だな!」

少女「…………」


     ガツガツ ムシャムシャ…

     ズズズ…

狩人「ぷはっ! このモス煮込みが またいいダシ出てて最高に旨い!」

少女「…………」

     ガツガツ ムシャムシャ…

狩人「付け合せのシモフリトマトもいい感じだ」

少女「…………」 ゴクッ…

     ガツガツ ムシャムシャ…

狩人「ふう……あー旨かった」

少女「…………」

狩人「じゃ、またな! 少女!」

少女「…………」

     スタ スタ スタ…





少女「」

狩人「いただきまーす!」

     ガツガツ ムシャムシャ…

狩人「うめぇ!」


―――――――――――


宵の口


少女「…………」

狩人「いただきまーす!」

     ガツガツ ムシャムシャ…

狩人「くううっ! やっぱり晩飯はがっつり肉料理に限る!」


少女「なんなのよ!? 狩人!」

少女「いい加減にして!!」

狩人「んぐっ!?」

狩人「っ! っ! っ!」つ(コップ)

少女「……狩人?」

     ゴク ゴク ゴク…

狩人「ぶはああああああっ……」

狩人「し、死ぬかと思った……」

少女「……本当に怒るわよ?」

狩人「いや、今のは演技じゃないんだけど……」

少女「ともかく!」


少女「ご飯食べる為『だけ』に」

少女「私の家に押しかけて来るなんて非常識にも程があるわ」

少女「今すぐに出て行って」

狩人「…………」

狩人「……そうは言われてもな」

狩人「少女、ちゃんと食べているのか?」

少女「余計なお世話よ」

狩人「そんなのは百も承知だ」

狩人「だから、俺は考えに考えて、この方法を思いついた」

少女「……は??」

狩人「ここ……ふもと村の村付きハンターとして、スタートしたばかりの頃」

狩人「俺は一人ぼっちだった」

少女「…………」


狩人「3乙ばかりして、誰からもヘタレだって陰口叩かれて」

狩人「集会所に行くのすら辛かった」

少女「…………」

狩人「そんな状況で食べる飯は……まあ、俺自身の料理が下手なのかもしれないけど」

狩人「あんまり旨くないし、量も食えなかった」

少女「…………」

狩人「ロートルさんに強引にご飯に付き合わされた時の事、覚えているか?」

少女「え……?」

狩人「あの時さ、ロートルさん」

狩人「飯ってのは大勢でワイワイ言って食うから旨いんだって言ってた」

少女「……あ」


狩人「あれから俺は、無意識の内に集会所で食べる機会が増えていったけど」

狩人「知り合いや、仲のいい奴が居なくたって」

狩人「誰かが旨そうに飯を食ってるの見てるだけで、食欲って沸くものなんだって」

狩人「今更ながら気がついたんだ」

少女「狩人……」

狩人「我ながら……もっとスマートに出来ないのかなって思う」

狩人「でも、俺も最初の頃、俺以外の誰かが家にいて」

狩人「そいつが飯を食っているの見てたら……食欲が沸いたのかもって」

狩人「そういう結論にたどり着いた」

少女「…………」

コックアイルー「……あの!」

狩人「ん?」


少女「どうしたの? コックアイルー」

コックアイルー「狩人さんの言う通りなのですニャ!」

少女「え?」

コックアイルー「ほんのちょっとですけど……」

コックアイルー「今日のご主人様、食べる量が増えてましたニャ!」

少女「…………」

狩人「そっか」

コックアイルー「勝手ですけど……ご主人様のご飯を用意しましたニャ」

コックアイルー「どうか、狩人さんと一緒に食べてくださいニャ」

少女「…………」

狩人「…………」

コックアイルー「…………」

少女「……いただくわ」



―――――――――――








     数日後













少女の家


狩人「おはよう、少女」

少女「……おはよう、狩人」

少女「ん?」

少女「その格好……今日は狩りに行くのね」

狩人「ううん。 出かけるつもりだけど、狩りじゃない」

少女「え?」

狩人「まあ朝飯食いながら話すよ」



―――――――――――


     ガツガツ ムシャ ムシャ

少女「……それで、どこに出かけるつもりなの?」

狩人「草原村」

少女「そう」

少女「何をしに?」

狩人「お墓参り」

少女「……そう」

狩人「それで、できたら……少女にも付き合って欲しいんだ」

少女「……え?」

少女「どうして私が?」


狩人「少女、しばらく家にこもりっぱなしだったから」

狩人「ついでに外に連れ出そうかな……っていう感じ」 クスッ

少女「……お墓参りのついでなんて」

少女「なんか釈然としないわ」

狩人「ははは……」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「それで、どうかな? 無理にとは言わないけど……」

少女「…………」



―――――――――――


ふもと村 広場


     ガヤ ガヤ

少女「……お待たせ」

狩人「うん」

     ガヤ ガヤ

少女「…………」

少女「随分人が多いわね」

狩人「ああ昨日、調査隊の人たちが帰ってきたからだよ」

少女「……調査隊?」

狩人「ロートルさん達の調査隊、ウカムルバスに気がついたから」

狩人「それを知らせる為にハンター達だけで先に帰って来たんだって」

少女「……!」


狩人「それで……」

少女「……非戦闘員の人達を迎えに行って昨日帰ってきたと」

狩人「うん。 さすが少女」

少女「…………」

狩人「ロートルさん、討伐前からギルドに言ってたらしいんだけどね」


少女(そうだった……ロートルさん達が帰ってきた日数)

少女(それにハンター達だけだったから、あれ?とは思っていたのだけど)

少女(すぐにウカムルバス襲来の事で頭がいっぱいになってしまってた……)


狩人「俺なんて彼らが帰ってくるまで、まったく気がつかなかった」

狩人「ロートルさん、見えない所で色々やってたんだって思ったよ……」

少女「…………」


     スタ スタ スタ…

ソロ「狩人」

狩人「あ、ソロさん」

ソロ「……これから狩りに行くのか?」

狩人「いえ……今日はちょっとヤボ用で草原村に行くつもりです」

ソロ「そ、そうか……」

狩人「ソロさんはこれから狩りですか?」

ソロ「あ、ああ。 そんなところだ」

ソロ「それじゃ……」

狩人「あ、はい。 また」

     スタ スタ スタ…

狩人(……?)


狩人「まあいっか」

狩人「そろそろ行こう、少女」

少女「ええ……」


―――――――――――


草原村 墓地


     ファサ…(献花)

狩人「…………」

少女「…………」

少女「……このお墓」

狩人「ん?」


少女「アイルーの?」

狩人「そう」

狩人「ドドブランゴ襲来の時……自分の命と引き換えに俺を救ってくれたんだ」

狩人「救助アイルー……」

少女「!」

少女「……そうだったの」

狩人「ああ……」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「俺……救助アイルーを看取った際」

狩人「ある約束をした」

少女「約束……」



狩人「グラビモスや ラオシャンロンだって」

狩人「一人ででも倒せるハンターになるって」


少女「…………」

狩人「…………」

狩人「無謀だと思う?」

少女「……ううん」

少女「狩人なら、成れると思う」

狩人「ははは。 お世辞でも嬉しいよ」

少女「お世辞なんかじゃない」

少女「あなたには、それだけの才能が――」

狩人「少女」


少女「う、うん……」

狩人「…………」

狩人「ずっと……怖くて聞けなかったんだけど」

狩人「聞きたい事がある」

少女「…………」

狩人「……少女は」




狩人「ハンターを辞めるつもりなのか?」




少女「…………」

狩人「…………」


少女「……まだ」

少女「まだ、決めてない」

狩人「…………」

少女「今回の事で分かった事があるの」

少女「犠牲を考えなかったわけじゃない」

少女「でも……私はどこか」

少女「狩人も含め、『命を失う事の重さ』を考えない様にしていたのよ……!」

狩人「…………」

少女「亡くなったハンターにだって家族が居る」

少女「腕や足を失って、引退を余儀なくされたハンターも居る」

少女「みんな……私が立てた作戦で……悲しみや苦しみを背負う事になった」

狩人「…………」


少女「そんな私がハンターを続けていいの……?」

少女「これから先、また私の指示で誰かがそういったものを背負うかも知れない」

少女「私は……それについて責任を持つ事が……できない」

狩人「…………」

狩人「……そっか」

少女「…………」

狩人「じゃあ……辞めるって事なの?」

少女「え……」

狩人「俺は頭が悪いからさ……」

狩人「少女が責任を感じているのは分かるんだけど」

狩人「どうしてそこまで悩むのかが分からない」

少女「な……」


狩人「確かに少女が立てた作戦での犠牲だけど」

狩人「参加したハンターは、それらについて何も文句は言わなかったし」

狩人「討伐参加を強制した訳でもない」

狩人「何よりもウカムルバスという驚異から」

狩人「ふもと村を、家族を、何かを守ろうとして戦ったんだ」

狩人「自分の意志で」

少女「…………」

狩人「それに……君がハンターを辞めたとして」

狩人「みんな救われた気持ちになるんだろうか?」

少女「…………」

狩人「…………」


狩人「……でも」

狩人「少女がどうしてもハンターを辞めたいと言うのなら」

狩人「俺は君の意思を尊重するよ」

少女「!」

狩人「……本音を言えば、もちろん辞めて欲しくない」

狩人「前にも言ったけど……君と2人でなら」

狩人「どんなモンスターだって倒していける気がするから」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「少女」

少女「……うん」

狩人「以前……だいぶ前にハンターを続けるのは、何か目的があるからって」

狩人「言ってたよね?」


少女「……っ!」 ビクッ…!

狩人「…………」

狩人「良かったら……どんな目的なのか、教えてくれない?」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「…………」


     私がハンターを続ける……

     続けたいと思う、目的……


少女「……それは」




     ああ……

     そうなんだ。



     だから私は……『迷った』んだ。



     ハンターを辞めるという事は

     それすらも『諦める』という事に繋がるのだから。


     心のどこかで、辞めたくないって、続けたいって

     ずっと……『思って』いたんだ……




少女「…………」

狩人「…………」

少女「狩人」

狩人「うん」

少女「私……自分の生まれ育った村をモンスターの襲撃で無くしたの」

狩人「……うん」

少女「…………」

少女「何もかもが憎かった」

少女「モンスターも、それから逃げ出したハンターも、勝手な村人も、無力な自分も……」

狩人「…………」

少女「だから……モンスターをねじ伏せる」

少女「ねじ伏せられるハンターに成りたいって思った」


狩人「…………」

少女「でも……」

少女「それも通過点なの」

狩人「……通過点?」

少女「うん」

少女「私の目的は……自分の村を復興させる事」

少女「でも、その為には、今の火山猟区を人の住める土地にしないといけなの」

狩人「…………」

狩人「へ?」

少女「……狩人は、今の猟区ができたのはここ10年くらいなのは知ってる?」

狩人「え~っと……全然知りません」

少女「そう」 クスッ


少女「簡単に言うとね」

少女「俗に言う旧猟区。 あれが『猟区』だった頃」

少女「今現在の猟区に人が住んでた時期があるのよ」

狩人「」

狩人「ほ、本当か!?」

少女「うん」

少女「もちろん全ての猟区がそうだった訳じゃないけどね」

狩人「…………」

少女「私の居た村は……旧火山猟区の近くで」

少女「今の火山猟区の少し先くらいにあった」

狩人「……すごいところに住んでたんだな」


少女「そうなるかな……」

少女「火山灰はすごいし、今から思うと」

少女「その状況だけでも人が住むのには無理のある土地よね」

狩人「…………」

少女「年々モンスターは手ごわくなってくるし」

少女「村付きハンターのなり手も居なくなって来ていた……」

少女「そして……村はモンスターに襲われ、壊滅……」

狩人「…………」

少女「その1年後に火山猟区は『旧』火山猟区になり」

少女「今の火山猟区が新しく制定されたのよ」

狩人「そうだったのか……」

少女「私は……それを覆そうと本気で考えたの」


少女「今の火山猟区からモンスターをすべて排除して」

少女「旧火山猟区を『火山猟区』にすれば、人が入ってこれる様になる」

少女「そうなれば……私の居た村の復興を始められる。 そう思ったの」

狩人「」

狩人「なっ……!?」

少女「やっぱり驚くよね」 クスッ

少女「どう考えたって無茶な方法……たとえG級ハンターに成れたとしても」

少女「たった一人でそれをやろう……なんて、ね」

狩人「…………」

少女「モンスターの強さを肌で感じて、ようやく浅はかな考えだって気がついた」

狩人「…………」


少女「でも……」

狩人「…………」

少女「それでも……2人なら……狩人とならって」

少女「最近は思うように……なって……」

狩人「…………」

少女「…………」


     サアアアアア……


狩人「…………」

少女「…………」

少女「……私」

少女「続けても……いいのかな……?」

少女「ハンター」


狩人「ああ、もちろん。 自信を持って、そう言える」

少女「狩人……」

少女「私……私ッ……」

     ギュッ…

少女「!」///

狩人「……もういいんだよ」

狩人「抱え込まなくて」

少女「狩人……」

狩人「これからは……2人で背負って行こう」

少女「…………」

少女「……うん」///




     爽やかな風が……俺たちを包み込んでゆく。

     ハンターという職業は、常に死と隣り合わせ

     今朝、笑顔で話してた仲間が夕方には居なくなる事も珍しい事じゃない。

     そしてそれは……俺と少女も例外ではない。


     でも……


     それでも俺は、俺たちは、それを選んだ。

     多くの死を見てきた。 痛みを経験してきた。

     それがこれからも続く事を覚悟して、今日










     2人で同じ道を歩もうと

     前を向いたのだった。










―――――――――――


その日の夕方

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

ロートル「おっ、少女?」

ロートル「久しぶりだな」

少女「あはは……そうですね」

ロートル「元気になって何よりだ」

狩人「相席、いいですか?」

ロートル「おう、いいぞ」

ロートル「ソロ、ベテラン。 構わないよな?」


ソロ「ああ……」

ベテラン「女の子は大歓迎だぜ♪」

狩人「……暗に俺は余計って言うなよ」

ロートル「ははは!」

ロートル「じゃ、少女が復帰した事を祝って、今日の飯は俺が奢ろう!」

ロートル「みんな、じゃんじゃん食ってくれ!」

狩人「ロートルさん、ご馳走になります!」

ソロ「……いただこう」

ベテラン「ねーちゃん! 黄金芋酒、おかわりだ!」

     ハーイ

ロートル「……ところで少女」

少女「はい?」


ロートル「今回の作戦」

ロートル「何が良くなかったと思う?」

狩人「!」

狩人「ロ、ロートルさん!」

少女「いいのよ、狩人」

少女「そうですね……」

ロートル「…………」

少女「結果論もありますが」

少女「合図の手段に閃光玉を使った事です」

ロートル「ほう……」

少女「私は状態異常が効く事を前提にあの作戦を考えましたけど」

少女「大タル爆弾を戦力として扱いすぎました」


ロートル「…………」

少女「誤認を防ぐため、閃光玉を限られた人間だけ持って行く様にした」

少女「もし閃光玉を使った戦い方をすれば……」

少女「もっと犠牲は少なく済んだかもしれません」

ロートル「…………」

狩人「け、けど、ウカムルバスに閃光玉が効くかどうか、分からなかったんだし……」

少女「うん……だから、結果論でしかない」

少女「限られた情報で戦えば、当然リスクが大きくなる」

少女「ラオシャンロンだって、それこそ今、普通に戦えるモンスターだって」

少女「最初は手探りで犠牲も多く出たはず」

少女「でも……その犠牲があったからこそ」

少女「『今』があるのよ」


狩人「少女……」

ロートル「……ふふ」

ロートル「どうやら、本当に完全復活したみたいだな、少女」

少女「お眼鏡にかないましたか?」

ロートル「ああ、合格だ」

ロートル「それだけ冷静に振り返ることができるのなら、もう大丈夫だ」

少女「ふふっ」

ベテラン(……末恐ろしい嬢ちゃんって気もするがな)

ロートル「これで……俺も安心して引退できる」

狩人「……え!?」

少女「引退……」

ソロ「…………」


ロートル「ああ」

ロートル「正直言えば、少し前から衰えが見えていたからな……」

ロートル「俺の体は……もう限界なんだよ」

狩人「そう……ですか」

少女「…………」

ロートル「ふふ。 そんな顔をするな」

ロートル「一応年内は続けるつもりだし、俺は死ぬって訳じゃない」

ロートル「何かで迷ったり、分からなくなったりした時は」

ロートル「遠慮なく聞きに来て欲しい」

狩人「ええ、もちろんです!」

少女「頼りにしますよ」 クスッ

     ハハハ…



―――――――――――


数日後の朝

ロートルの家


     コン コン

ロートル「おう。 どうぞ、開けてくれ」

     キィ…

ベテラン「よう、おはよう」

ロートル「これはこれは。 G級ハンターのベテラン殿」

ベテラン「よせよ……そういうの」

ベテラン「ちょいと挨拶に来た」

ロートル「今日出発か」 クスッ


ベテラン「ああ」

ベテラン「それでよ、あの話……」

ベテラン「受けてやるよ」

ロートル「!」

ロートル「そうか……ありがたい」

ロートル「俺が引退した後のふもと村、頼むぞ」

ベテラン「へっ……この俺が村付きハンターになるなんてな」

ベテラン「弟が聞いたら、さぞかし驚くだろうぜ……」

ロートル「弟が居るのか」

ベテラン「まあな。 俺と違ってそこそこ名の売れたハンターになってる」

ロートル「何という名前だ?」


ベテラン「イケメン」

ロートル「!!」

ロートル「ベイグランド・スレイヤーのイケメンか……?」

ベテラン「ああ。 何年か前にG級になった、な」

ロートル「こいつは驚いた……」

ベテラン「そのおかげで俺の肩身は狭い狭い」

ロートル「……さもありなん、か」

ベテラン「つーわけで、俺はしばらく後始末、というか」

ベテラン「村付きハンターになる準備をしてくらぁ」

ロートル「わかった」

ベテラン「じゃあ……またな」

ロートル「ああ。 またな」



―――――――――――


集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「よし」

狩人「延び延びになっていた沼地のフルフル」

狩人「狩りに行かないか?」

少女「ええ、いいわよ」

少女「私もこの派手派手なパピメル装備から離れたいし」

     ハハハ…

ソロ「……狩人」

狩人「え? ああ、ソロさん」


ソロ「よ……良かったら……その……」

狩人「?」

ソロ「……いや、何でもn」

ロートル「よし、たまには一緒に行くか、狩人、少女、ソロ」

ソロ「!?」

狩人「ロートルさん」

少女「でもいいんですか? ロートルさん達からしたら大した事ないクエですけど」

ロートル「いいさ。 なあ、ソロ?」

ソロ「あ、ああ。 もちろんだ」

ロートル「じゃ、決まりだ」

ロートル「ひと狩り行こうぜ!」




     俺と少女は、妙にテンションの高いロートルさんと

     逆におどおどしたソロさんに戸惑いつつも

     上位で初となるモンスター討伐クエを受注し、出かけた。



     ……何かロートルさん、子供っぽく はしゃぎまくってた気がする。

     まあ、そうは言っても危なげなく、フルフル討伐は終了した。






     この後も何度か狩りを一緒に行ったが

     ロートルさんは、以前言ってた通りハンター業を引退した。

     その際、ひと目もはばからずソロさんが大泣きに泣いて

     周囲の人間を驚かせた。

     たぶん、俺の知らない何か……友情というか、絆、というか

     そういうのがあったんだろうな。






     ……で、引退したロートルさんの代わりに

     村付きハンターとして来たのが

     あのベテランとかいうハンター。



     この人……優秀なのは認めるけど何か釈然としない。

     命を救ってもらって何だけど、どうしてこんな事になったんだか……






     でも、ふもと村としてはG級ハンターが

     2人も村付きになってくれたので、さらに安心感が増し

     村の発展に貢献してくれると、村長さんは大喜び。


     ウカムルバス討伐に、これまで村が貯蓄していた復興資金を

     全額あてがっていた事もあり

     財政事情的には大助かりと、ホクホク顔……






     そして、引退したロートルさんは、これまで貯めたお金を元手に

     ふもと村で新たに宿屋を開いて、そこのバーのマスターになっていた。

     そこを利用するハンターはもちろん、商人や旅人にも評判は上々で

     半分冗談で村長さんに税金安くしてくれと言ったとか何とか……






     そうだ。 忘れちゃいけないのが そのロートルさんのお店。

     あの時の……ウカムルバス討伐で怪我をし、助かったものの

     引退を余儀なくされたハンターを従業員として雇っている。

     また、ギルドにいろいろ掛け合って、そういった引退ハンターの

     その後のケアを呼びかけ、現在も交渉中。






     そうそう。 交渉中といえば

     G級昇格条件の緩和もギルドに求めていたな。


     両方とも難しい問題が多いが、現役のハンターにも呼びかけ

     手応えはしっかりあるとロートルさんは言っていた。

     もちろん、俺や少女も応援している。












     そして……











―――――――――――









     5年後











ふもと村 教会


     ガヤ ガヤ…

神父「えー 静粛に」

神父「それでは……合同結婚式を始めたいと思います」

     ワー! ワー!

神父「静粛に」

神父「…………」

神父「では……」

神父「汝、この者……少女を妻とし、永遠の愛を誓いますか?」

狩人「は、はい! ち、誓いましゅっ!」///

神父「……少し落ち着きいなさい」

     ドッ! ハハハ…

狩人「~~~っ」///


神父「では、次はこちら」

ベテラン「お、おう……」///

神父「汝、この者……女を妻とし、永遠の愛を誓いますか?」

ベテラン「ち、ちちち、誓うぜ……じゃなくて、ちかいまっすっ」///

神父「……君も少し落ち着きなさい」

ベテラン「しょ、しょうがねーd」

     グニッ

ベテラン「痛ぇ!?」

女「…………」

     ドッ! ハハハ…


神父「では、汝……狩人を夫とし、永遠の愛を誓いますか?」

少女「はい。 誓います」///

神父「うむ」

神父「では、こちらも」

神父「汝……ベテランを夫とし、永遠の愛を誓いますか?」

女「はい。 誓います」

神父「うむ」

神父「それでは、誓いの口づけを」

     ヒュー ヒュー!」

     早クヤレー!

ベテラン(あいつら……後でしばくっ!)///

狩人(めちゃくちゃ恥ずかしい……)///

     ……チュッ!


神父「神の御前において、ここに新たな2組の夫婦が誕生しました」

神父「病める時も健やかなる時も互いを想い、暮らしていきなさい」

神父「死が2人を分かつその日まで……」

     ワー! ワー!

     オメデトウー!

狩人「は……ははは……」///

ベテラン「や、やっと……終わったな……」///

少女「ふふふっ」///

女「普段からは想像もできないくらいヘタレてたわね……」

女「考え直そうかしら?」

ベテラン「いきなり酷ぇな!?」


ロートル「結婚おめでとう。 狩人、少女」

ロートル「人生の墓場だな、ベテラン」 クスッ

ベテラン「だから何で俺はそんな扱いなんだよ!?」

ソロ「普段の行いの結果だろ……」

ベテラン「ぐぬぬ……」

女「まったく。 これからはビシバシ鍛えていくから」

ベテラン「……はい」

狩人(……とてもG級ハンターとは思えないな)

少女(突然でいきなりだったから ものすごく驚いたんだけど)

少女(どんな馴れ初めがあったのかしら……?)

ネーコ「お二人とも、とても綺麗ですね」

女「あら、ネーコちゃん。 ふふ、ありがと」

少女「ありがとうね」 クスッ


板前アイルー「旦那! おめでとうだニャ!」

板前アイルー「あっしの料理、たんと食ってくだせぇニャ!」

コックアイルー「ご主人様! お綺麗ですニャ!」

村長「いやはや、本当にめでたいねぇ」

職人「感無量だよ、女ちゃんと少女ちゃんの花嫁姿が見れて」

女「うふふ~これからもご贔屓に!」

職人「はっはっはっ!」

村長「次はかわいい赤ちゃんだね」

ネーコ「もう、村長さん」

ネーコ「それセクハラですよ?」

村長「まあまあ。 細かい事はいいじゃないか!」

村長「はっはっはっ!」

ロートル「それじゃ、この新たな2組の夫婦の門出を祝って……」









     カンパーイ!










―――――――――――


数ヶ月後の朝

狩人と少女の家


狩人「ふう……今日は何を狩りに行くかな」

少女「…………」

少女「ねえ、狩人」

狩人「ん?」

少女「私……しばらく狩りを休むわ」

狩人「え? ……ああ、アレが始まったのか」

少女「ううん。 違う」

狩人「え?」


少女「もしかしたら……そのまま引退かも」

狩人「な……!?」

少女「もう……相変わらず鈍いわね」

狩人「だ、だって……引退なんて言うから」

狩人「それで? どうしてなんだ?」

少女「うふふ」///

     サスリ サスリ

少女「ここに新しい命がいます」///

狩人「っ!!」

狩人「ほ、本当か!?」

少女「うん!」///


狩人「そ、そうか……俺に……子供が」

狩人「!」

狩人「そうだ、こうしちゃいられない!」

少女「へ?」

狩人「だ、だって子供が生まれるんだぞ!?」

狩人「服とか、ベビーベッドとか、その他いろいろいるじゃないか!」

少女「」

少女「ま、待って! 狩人!」

少女「生まれるのは、もうちょっと先……」

狩人「とりあえず、女のところに行ってくる!」

     ダッ!

少女「あ……」

少女「……もう。 あわてんぼうなんだから」 クスッ


少女「…………」

少女(この子が生まれたら)

少女(やっぱり引退かな……)

少女(…………)

少女(ううん。 私の村をいつか復興するって夢は)

少女(ハンターでなくとも、他にやれる方法がある)

少女(不可能じゃない)

少女(…………)

少女(でも)

少女(私が行きたかった所は……目指していた場所は、きっと)

少女(狩人……あなたの隣だった) ウフフッ



―――――――――――


ふもと村 ロートルの店


     ガヤ ガヤ

狩人「はあ……」

狩人(女のところに行ったら、落ち着きなさいって言われた……)

狩人(いやまあ……帰ったら少女にも同じこと言われたんだけど)


ロートル「どうした? 狩人」

ロートル「ため息なんてついて」

狩人「あ、ロートルさん。 実は……」


ロートル「そうか! とうとう父親になるのか!」

ロートル「おめでとう! 狩人!」

狩人「ははは……」///

     ドヤ ドヤ ドヤッ

ベテラン「ちっ……先を越されちまったか」

ロートル「ベテラン」

狩人「あんたか……」

ベテラン「トップは譲ってやるが、数は負けねーからな!」

狩人「そういうのは張り合う事じゃないだろ……」

ベテラン「余裕かましやがって!」

ロートル「落ち着け、ベテラン」 クスッ

ロートル「こういうのは狩りと同じで、欲しい欲しいと思ってると なかなか出来なかったりする」

狩人・ベテラン「あー……」


ロートル「ま、愛情込めて、女ちゃんを毎晩可愛がってやれ、ベテラン」

ベテラン「にひひ! そいつは、なあ?」

狩人「……俺はしばらく出来ないんだなぁ」 ハァ…

ソロ「……まだ日も高いのに何の話をしているんだ?」

ロートル「おっ、ソロ?」

ロートル「今日は休むんじゃなかったのか?」

ソロ「そのつもりだ。 が……」

ソロ「散歩の途中、広場あたりで お前の客に道を尋ねられてな」

ロートル「客?」

ソロ「フッ……きっと懐かしい顔だぞ」

?「ど、どうも……お久しぶりです」


ロートル「!!」

ロートル「君は……玄人(くろうと)の?」

?「はい。 玄人(くろうと)の息子の男です」

男「お久しぶりです、ロートルさん、ソロさん」

ロートル「でかくなったな……というか、その格好……」

ロートル「ハンターになったのか」

男「はい! 今日、ここの村付きハンターとして来ました」

男「父は……右腕を失って無念の引退を余儀なくしましたが」

狩人「!」

狩人(玄人(くろうと)、右腕……という事は、あの時の引退ハンターの……?)

男「俺は、父の様な、立派なハンターになりたいんです!」

ロートル「……そうか」

ロートル「父の背中を見て、覚悟を決めて来たんだな……」


男「はい!」

ロートル「歓迎しよう」

ロートル「上手い具合に今、ふもと村の村付きハンターが勢ぞろいしてるんだ」

ベテラン「よろしくな、坊主」

ベテラン「俺はベテランだ」

男「よろしくお願いします!」

ベテラン「なんなら……採取クエに付き合って、いろいろ教えてやるぜ?」 二ヒヒ…

男「ありがとうございます!」

狩人「おいおい……あんたまだ……ん?」

     ロートルは注意しようとする狩人に『シー』という合図を出す。

ロートル「……これも経験だ」 ニヤリ

狩人「はあ……」


男「あなたもここの村付きハンターなんですか?」

狩人「!」

狩人「ああ、そうだ」

狩人「狩人っていう。 よろしくな、男」

男「はい! よろしくお願いします!」

狩人「…………」

狩人「俺は……君のお父さんと一緒にクエをした事はないけど」

狩人「ひとつ大事な事を教わった」

男「大事な事……どんな事ですか?」

狩人「『狩りの最中に飯の話をするな』」

男「……?」


ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ロートル「…………」

狩人「……今は分からないか」

狩人「でも、心掛ける様にしてくれ」

狩人「それが第一歩だと思う」

男「は、はい!」

男「えと……皆さんは全員G級ハンターなんですよね?」

男「何か、成れるコツとかありますか?」

ロートル「…………」

ベテラン「……んなもんありゃ苦労しねぇっての」

ソロ「努力、実力……そして、幸運を味方に付ける事」


男(……やっぱり厳しい世界なんだな)

男「狩人さんは?」

狩人「……そうだな」

狩人「勝利の女神を手に入れる事と」

狩人「破る事のできない約束をする事」

狩人「それに……」

男「それに?」

狩人「誰かに、大勢に馬鹿にされようとも、しっかりとした目標を持つ事だ」

男「目標……ですか」

男「ちなみに狩人さんの目標って何ですか?」

狩人「聞いて驚けよ」 クスッ









狩人「伝説級ハンターになる事さ!」








     おしまい


という事で、これで終了です。
何というか、主人公の狩人。 精神的に全然成長しなくなってて
書いてて、おいおい……とか思ってしまいました……

今回はifルート、という事で少女『だけ』生存させるのもなんだかなぁ
と思ったんですけど、だからといってソロやベテラン、ロートルの誰かを
死なせるのも後味悪いと思って、全員生き残らせる事にしました。
その分、ウカムを強化して苦労させましたけどねw

リアリティ的にバランスは取れてないとは思いますが
これもひとつの結果と捉えていただければ嬉しいです。
お付き合い、本当にありがとうございました!


また、各まとめサイトの皆様。

このifルートは>>7以降を
『 狩人「目指すは伝説級ハンター!」 』の
1スレ目>>878からすげ替えて、ドッキングさせる事ができるよう書きました。

もし、このifルートが気に入って、正式ルートにしたいのであれば
暇な方は、そうしてもらっても構いませんので。

まとめて頂けるのであれば、そのままでも、どちらでもご自由に使ってください。


最後に修正
>>122>>123の間に↓が入ります。




     作戦の第四段階

     ウカムルバスが、ラオシャンロンと同様かどうか

     見極める次の一手。


     ラオシャンロンは戦いを重ねていく内に

     毒・麻痺・睡眠、いずれの状態異常薬品が

     まったく通じない事が確認されている。

     これを試す。

     ウカムルバスは、ラオシャンロンではないので

     効果があるかもしれない。



乙でした
ベテランと女の馴れ初めは・・・

という訳で、読んでいただき
改めてありがとうございました!
またどこかで!

>>338
端折ってすみません><
女が誰とも結婚しないのは可愛そうだし、意外性を込めて
何となくこの2人、くっついたら笑えるかな、と……w

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