伝説の結衣さん【俺ガイル・安価】 (123)


 このスレは由比ヶ浜結衣さんが某板の相談者風に安価で相談してきます。

 適切なレスで幸せに導いてやってください。

 なお、誰とどういう関係になっているかは、>>1の独断で決めさせていただきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439204836


 私の名前は由比ヶ浜結衣。……あ、今は比企谷結衣か。

 総武高校を卒業した私とヒッキーは、大恋愛の末、結婚した。

 でも、私には同時に付き合っている彼氏がいた……。


 そして結婚3年目の今日、それがばれた。



相談です

25才既婚女性です。
浮気が理由での離婚の場合慰謝料と生活費は減りますか?


安価下1~5
※アドバイスをお願いします。


 不倫がばれた日、ヒッキーは「夜に話そう」と言って出ていった。

 私の中では、あー、これでヒッキーとも終わりか……と一種の達成感を感じていた。

 これからは彼氏との人生が待っている。

 ちょうど私も彼氏に気持ちが向き始めてたからちょうど良かった。

「……そう言えば、慰謝料とかどうなるんだろう?」

 ヒッキーと彼氏の事ばかり追いかけていた私に友人と呼べる人は残っておらず、焦った私は掲示板に相談した。

 とにかく慰謝料と生活費の確保の仕方を聞かないと!

「えっと、そうだん……です…と」

 昼下がりの静寂を切り裂くキーボードの音。

 私は今、ハッカーの気分だった。


―――

88:名無しの千葉

相談です

25才既婚女性です。
浮気が理由での離婚の場合慰謝料と生活費は減りますか?


―――

 掲示板には親切な人が多いと聞く。

 きっと誰かが答えてくれるだろう。


「今彼氏と付き合ってるかどうか?」

 書きこまれたレスに私は憤慨した。

 だって私が隼人と付き合っているかどうかは、慰謝料や生活費と関係ないじゃん!

 慰謝料や生活費を妻に払う事は夫の義務……やっぱり掲示板は掲示板か……。

「でも、ムカつくから返しとこっと」

 キーボードを叩く音が大きくなった。

 私の怒りは有頂天だ。


―――

102:名無しの千葉

 彼氏とは愛し合っている!

 疑うような言葉をかけるな!

―――


 これでよし。

 きっと、掲示板の人も過ちに気付いて謝ってくれるだろう。


「スペック? ていうか一度に質問し過ぎじゃん!」

 本当に常識がなってない。

 私の体は一つしかないんだよ?

 そんな短時間にいっぱい質問されたって返せる訳ないじゃん!

「でも、スペックとか気になってるんなら返そうかな」


――

104:名無しの千葉

スペック

年齢は25(見た目より若いと言われる)
性別は女
おっぱいは大きい方

―――

 ヒッキーも隼人もおっぱい大好きだし、これで何人か喰いついて親切にしてくれるかな?

「後は……伝説の92?」

 意味分かんないから放置しとこ。


 数分後、トイレに行っている間にパソコンの画面はスクリーンセーバーになっていた。

 ヒッキーは今時スクリーンセーバーなんて意味ないって言ってたけど、意味ないモノが存在する訳ないし、やめる気はない。

「一回ブラウザを消して……」

 パソコンの面倒な所は、同じページに飛ぶのにイチイチページを消さなければならないことだ。

 戻るボタンでも成功する事はあるけど、SNSのログイン画面とかだと意味分かんない表示が出る事があるし使っていない。

「あ、更新されて……る」


―――

102:名無しの千葉

 彼氏とは愛し合っている!

 疑うような言葉をかけるな!


104:名無しの千葉

スペック

年齢は25(見た目より若いと言われる)
性別は女
おっぱいは大きい方

―――


この二つに返信してあげてください。

安価下1~5くらい


 私にとって、この世界は愛が全てだ。

 お金も愛があるから稼げる訳だし、人だって愛があるから一緒にいられる。

 ヒッキーが私の事を愛してくれたことも、隼人が私の事を愛してくれたことも、同じ愛だ。

 だから、きっとヒッキーは分かってくれる。

 分かって、慰謝料と生活費を出してくれるはず。

―――

111:名無しの千葉

ホントに愛し合ってるなら旦那によく分かるように君と彼氏が愛し合ってるところの写真とか動画でも送っておくと裁判で有利になるよ!

―――

 私は、この書き込みを見て耳からうろこが落ちる気持ちになった。

「愛の証明によって、裁判が有利になるんだ!」

 ……でもまって、裁判ってしなきゃいけないの?

―――

113:88

浮気をした場合、慰謝料と生活費を貰う為には裁判を起こさないとダメですか?

―――

 書きこまれた意味が良く分からない。

 私はただ二人を愛しただけ、裁判って悪い人が裁かれる場所でしょ?

「何で私とヒッキーが裁判にいかなきゃいけないの?」

 自然と声が漏れる。

 きっとヒッキーだって私にそんな真似させたくないはずだ。

 だから、間違ってるのはこの書き込みの方だ。間違いない。


「……嘘、でしょ?」


―――

114:名無しの千葉

まだ貰えると思ってるの?


115:名無しの千葉

慰謝料は浮気した方が払うに決まってるじゃん。脳みそ湧いてんの?


123:名無しの千葉

今までどうやって生きてきた。

―――

 他にも、多くの批判が書かれていた。

 そのどれもが、私が慰謝料を貰えるという認識への攻撃で、例えるなら自らの正義を信じて戦ってきた日本人へ見せしめのために爆弾を落とした某国のようなふるまいだ。本当に腹が立つ。

 だけど、この書き込みだけは信じてみようと思う。


アドバイスをお願いします!

安価下1

―――

121:名無しの千葉

思いきって彼氏に相談してみては?

―――

 なるほど、名案だ。

 隼人は弁護士のお父さんがいるし、きっと私がより多くの慰謝料を貰えるように動いてくれるはず。

 私はすぐさま隼人に連絡をとり、ホテルで会う約束をした。

 着替えに小一時間かかったから、隼人は待っているかもしれない。急がなきゃ。


「隼人!」

 今まで利用していた都内のホテルではなく、少し郊外の人気の少ないホテル。

 慰謝料の請求に大変な私の為に静かな場所にしてくれるなんてさすが隼人だ。

「由比ヶ浜さん、ちょっと声が大きいよ」

 ……由比ヶ浜さん?

「ちょっと隼人? 今まで私の事を由比ヶ浜なんて呼んだ事無いよね」

 もしかして浮気?

 もし浮気なら絶対に隼人を許さないんだけど(怒り)。

「今は仕方ないだろ。大体君が比企谷君と何もないって言うから――」

「とりあえずホテルに入らない? 私ちょっと疲れちゃったなぁ」

 せっかく隼人に会えるのに、何もせずに帰るなんてもったいない。

 これから先、共に人生を歩むなら子供の1人は欲しいしね。

「いや、今日は喫茶店で済ませよう」

「は?」

 私はタイピングのエンターキーへの反応速度並みの返事をした。

 私たちが会って何もしないなんてあり得ない。


 どうしても今日は無理だと言うので、しぶしぶ喫茶店に入る。

 こんな事ならやっぱりヒッキーと一緒にいれば良かったかな。

 店内は少し空調が利きすぎてる所為か、寒い。

 ホテルの中に入っていれば、お互いの肌が触れ合って温め合えるのに……隼人のバカ。

「それで、比企谷君はどうするって言ってたんだ?」

「ちょっと隼人。私より比企谷君の方が大事なの?」

 あり得ないんだけど。

「何言ってるんだ君は。君が親に買ってもらったと言っていた家で行為をしてたら、君が数年会っていないという比企谷君が現れたんだぞ!? しかも、君と付き合って3年結婚してもう3年になるというじゃないか! 僕と同じ年数を共にしてるってどういうことなんだい!?」

 隼人が珍しくまくしたててくる。

 さっきから私ばかり責めてきて哀しくなってきた。

 私はただ、愛に従ってきただけだというのに。

「ねぇ、隼人」

「……なんだい?」

「慰謝料と生活費って、いくらくらい貰えるかな?」

 その瞬間、隼人の口からコーヒーが盛大に漏れた。

 男ってほんと出す事しか考えてないのかしら(呆れ)。


「貰える訳ないだろう!? 払うんだよ! 君が!」

 隼人も掲示板と同じ事を言い始める。

「何で? 慰謝料って旦那さんが払うモノじゃないの?」

「君って奴は……」

 隼人が額に手をあてて溜息を吐く。

 正直彼は笑っているより苦しんでいる時の方が絵になってカッコいい。

「じゃ、じゃあ私はどうやって生きたらいいの?」

 私は働いてないからお金もないし。

「知らないよ。後、もう君とは個人的に会う気ないから。じゃあね」

 隼人は二千円を机に叩きつけると、足早に去って行った。

 私はその二千円をポケットに入れ、自分の飲んだコーヒー分の会計だけ済ませてホテルを出た。


 家に帰りパソコンをつける。

 西日が差してきたから、もうすぐヒッキーが帰ってくる。

 夕食を作ってもらわらないとお腹ぺこぺこだ。

「その前にさっきのこと詳しく聞いておかないと」


―――

150:88

>121
相談してきました。
慰謝料は自分で払わなくちゃいけないと言われました。
やはり、女でも払わなくちゃいけないんですね……。

―――

 まずは報告から。

 その後にすぐ質問しよう。

―――
151:名無しの千葉

マジで相談逝ってるしwww

152:名無しの千葉

本物がおる……
で、真実を知ってどんな気持ち?

155:名無しの千葉

頭悪すぎだろう。
大体個人的に会ったら不利になるだろうに相手もバカか?

―――


 暴言の……羅列。

 私は吐き気さえ催してきたのを我慢しながら、返信を続ける。


―――
168:88

>151
相談に行けと言ったのはあなただ!

>155
彼はそんな事を気にするような小さい人間じゃありません

―――

 私は怒りと悲しみでつぶれそうだった。

 何で世界はこんなにも悪意に満ちていて、私を傷つけるのだろう……。



 気持ちを落ちつけようと、アドバイスっぽいレスだけを眺める。

 すると、いくつか分かってきた事がある。


・浮気をしたら慰謝料を払わなくてはならない。
・その際、未来の生活費は払ってくれなくなる。
・彼氏(隼人)からも請求される場合がある。


「隼人はそんな事しない!」

 私は叫んだ。西日に向かって、力強く。

 ただ、ヒッキーに払わなくてはならないのは確かなようだ。

 どうすれば軽減されるだろう。


「……このレス…」


 私は直感に従ってこの書き込みに従うことにした。


安価下1

アドバイスお願いします!

170:名無しの千葉

頭の良い友人に相談すればなんとかしてくれるかも

―――


 名案だ。

 私は早速、旧友であるゆきのんに電話をかけた。

 ゆきのんは本当に頭が良い。

 きっと良い解決策を見つけてくれるはずだ。




 ゆきのんはこの掲示板を……、

安価下1

 1、見てる
 2、見てない


『もしもし、由比ヶ浜さん久しぶりね』

「えへへ、久しぶりー。元気してた?」

 久しぶりに聞くゆきのんの声。

 世界に押し潰されそうな私を助けてくれる一筋の光。

 やっぱりゆきのんはゆきのんだ!


「ねぇゆきのん」

『何かしら?』

「浮気したら慰謝料っていくら貰えるかなぁ?」

『………』


 掲示板に騙されてたらダメだから一応聞いておく。

 ゆきのんはしばらく間を空けた後、ゆっくりと、


『あなた、浮気したの?』


 と、震える声で言った。


「うん、ていうかどっちも本気なんだけどさー」

『……っ、え、ええ、そうね。そうよね』

「掲示板で相談したら、慰謝料は浮気した奴が払うべきだって言うから」

『ぷっ…………それはいつごろ相談したのかしら?』

「今日だよー」

『ぐふっ! そ、そう。それは大変ね……』


 さっきからゆきのんは何度も咳のような音を出していた。

 もしかして風邪ひいてる?


「ゆきのん……大丈夫?」

『! い、いえ、問題ないわ。それより、状況を詳しく教えてくれるかしら』

「うん!」


 思えば、これが間違いだったのかもしれない。

 私が昔みたいに軽々しく人に頼ったその行為自体が……。

 

雪ノ下サイド。


 出る杭は打たれる。まさにその通りだわ。

 高校卒業と同時に私は引きこもりとなった。


 由比ヶ浜さんが水族館で言った言葉。

 私はそれを否定する事ができなかった。

 結果として何が変わった訳でもないけれど、私の中に入ったモノはどんどんと侵食していった。

 私にはホンモノを掴む勇気も、資格も、運命もない。


 だけど、引きこもって良かった事もある。

 掲示板の情報は真偽が入り乱れてはいるモノの、知識ある者であればすぐに見抜く事ができる。

 私が真のネット使いとなるまでそう時間はかからなかった。



 それでも、後悔したことがいくつかある。

 その中の一つが、比企谷君との繋がりが切れてしまったことだ。

 彼は一般人の中では割と私達寄りで、物事の本質を見抜けていたと思う。

 だから彼となら上手くやれる気がしてた。

 なのに、由比ヶ浜さんは彼と私を遠ざけた。


 引きこもりとなった私とも比企谷君は会ってくれた。

 大学でもボッチだった彼は、私と一緒にいる時が一番楽だと言っていた。

 由比ヶ浜さんが話しかけてくれるから大学は続くが、辛い、と。


 私は彼の為ならもう一度立ち上がるつもりだった。

 立ちあがって、彼の為に稼ぎの良い職に就くつもりだった。



『由比ヶ浜と……付き合うことにした』



 夢は夢で終わった。


 由比ヶ浜さんは、少し困った表情を浮かべながら私に謝った。

『黙っててごめんね。ヒッキーとのこと』

 私は震える肩を両手で抱き、唇を噛んで涙をこらえた。

 唯一の繋がりが、ゆっくりと消えていく。

 それでも、私の中で由比ヶ浜さんは唯一と呼べる親友だった。

 そして、比企谷君は大切な人だった。


 大切な人と親友が幸せになるのなら。


 私は祝福した。

 知り合いには黙ってて欲しいと由比ヶ浜さんに言われたが、私に伝えるような人はいない。



 こうして私は、完全無欠な引きこもりとなった。


「本当に戸部翔と付き合ってるの?」

 しばらく会っていない所為か、翔の事をフルネームで呼んでしまった。

 優美子は少しばつが悪そうに、

「まぁ、妥協って奴? 隼人に振られたあーしに翔は優しくしてくれたし」

「いやそんなの良くないよ」

「は?」

「あ、うそごめん」

 しまった。思わず批判しちゃった。

 でも、優美子のその行動は悪いと思う。いくら隼人が手に入らなかったからって、好きでもない人と付き合うなんて。

「それで、結衣は誰かと付き合ってんの?」

「うん、というより結婚してるよ」

「マジ!? 何で言ってくれなかったし!」

 少し怒りの混じった声が、私の耳を責める。

「うん、だって皆ヒッキーの事、バカにしてたし」

「ヒキオと? ヒキオと結婚したの?」

 その瞬間、優美子の言動が嘲笑っている感じに変化した。

 ……私は少しいらつき始めていた。


「ヒキオとだなんてどうせ出来婚っしょ?」

「子供なんていないよ……」

 何こいつ、こんなバカだったっけ?

 20代前半で結婚してたら出来婚だと思うなんて時代遅れすぎるし、何だか考え方が少し気持ち悪い。

「じゃあ何で結婚したの? 意味分かんないんだけど」

「本当に好きな人と結ばれたら、結婚するんだよ」

 私がボソリと反論した瞬間、

「は? 何それ、あーしに喧嘩売ってんの?」

 と、優美子が怒りの表情をあたしに向けた。

「べ、別にそう言う意味じゃないし。あたしの価値観だから気にしないで」

「ま、いいけど。どうせヒキオだし」

 どうせ。

 その言葉を聞いた瞬間に私の中で何かが弾けた。

 それは慰謝料や生活費を貰えない理不尽な社会に対する怒りも含まれていたように思える。

「優美子さっきから酷いよ! 隼人と付き合えなかったからって、あたしに当たらないでよ!」

「はぁ!? 何でそーなるし!」

 もはや、目の前にいる金髪女はあたしの親友ではなかった。

 ただの、嫌な女だった。



「そんなんだから隼人はあたしを選んだんだよ!」



 気が付いたら、あたしはそれを口にしていた。


「は? え? どういう事?」

「い、いや、今のはその……」

 全身から冷たい汗が噴き出した。

 自分でもどれだけ不味い事を言ったのか分かる。

「あんた……隼人と付き合ってたの? いつ?」

 優美子の表情が怒りから憎しみへと変貌していく。

 今にも包丁を取りそうな勢いだ。

「ち、違うの。あたしは隼人と……」

「つーかあんた結婚してんじゃん!!」

 優美子の叫びに私はびくりと身体を震わせる。

 怖い。

 ヒッキーとの平和で幸せな生活に慣れ過ぎた所為か、赤の他人が何考えてるのか全然わからない。

「は、隼人とは……愛し合ってるから…」

 浅い呼吸しかできなくて、声が出せない。

 とにかく、逃げる準備をしなくちゃ……。

「きゅ、急にごめんね。あたし、用事があるから帰るね」

 急いで立ちあがり、玄関へと向かう。

「結衣」

 静かで、真っすぐな声が背中に刺さった。

「な、何かな?」

 あたしは優美子の方を向かずに、声を出した。

 すると、優美子はまたも落ちついた声で、


「あんたの事、許さないから」


 あたしは逃げるように部屋を飛び出し、優美子から逃げた。

 遠くへ、できるだけ遠くへ行かなくちゃ!

―――

101:88

友達の家に行ったら、浮気相手の事でもめました。

どうやら私が浮気相手と愛し合ってる事を妬んでいるようです。

自分は好きでもない浮気相手のおまけと付き合っている癖に、私のやってる事が間違っていると言わんばかりでした。

あーほんとにイライラする!


105:名無しの千葉

いや間違ってるだろwww

106:名無しの千葉

こんな奴にNTRされた友達かわいそす

110:名無しの千葉

厳密にはNTRじゃないけどね

115:名無しの千葉

いずれにせよ、88のクソが上から目線なのはおかしい

116:名無しの千葉

つーか早く離婚届にサインして慰謝料払ってしねよ

―――

「……皆、酷い」

 何だか浮気をしたって事だけで、あたしの事を色眼鏡で見ているような気がする。

 少しだけ、自分を良く見せた方が公平だろうか……。

―――

129:88

補足しておくと、その友達は私の浮気相手のストーカーでした。

浮気相手は凄く困っていたので、いつも私が相談に乗っていました。

最終的には、私が彼女を説得してストーカーをやめさせました。

それでもまだ私が悪いでしょうか?


―――


 これでよし。

 少し大げさに書いただけで間違いじゃない。

 しばらくしたらあたしを誉めるレスがくるはず……。

―――

132:名無しの千葉

後だしすぎw
絶対嘘だろ

135:名無しの千葉

友達をストーカーだと嘘つくとか最低だなお前

140:名無しの千葉

割とマジで一度死んだ方が良いと思う。

142:名無しの千葉

つーかそれどころじゃねぇだろ。
さっさと夫の所いけよ

―――

「……なんで?」

 普通なら、心優しいあたしに誉め言葉をくれるんじゃないの?

 ここの人達少しおかしい。

 でもまぁ、頼れる人いないし、ここで聞いておこう。

―――

150:88

今から旦那の所へ戻ってみようと思います。

私はどういった行動をとれば良いと思いますか?

間違った事をした訳じゃないので謝る必要はないと思います。

夕食を作らなかった事を怒った方が良いですか?

アドバイスお願いします

―――



安価下1

―――
151:名無しの千葉

夕食を作ってくれなかった事を叱り、謝罪してもらおう

153:名無しの千葉

名案www

157:名無しの千葉

日本男児が夕食作らなかったんだ。当然の事だな(錯乱)

160:名無しの千葉

期待ww

―――

「やっぱりね」

 あたしは心の中で手のひら返しの激しい掲示板の人達を見下しつつ、正論は受け止めなくてはと寛容な心でアドバイスを実行する事にした。


比企谷家


「ヒッキー!」

 家に帰ると、リビングで電気も点けずに座っているヒッキーの背中が見えた。

 あたしが扉を思い切り開けても、反応もせず座っている。

「ヒッキー! 聞きなよ!」

 間違っている癖に、その態度はなんなの!?

 これは良き妻として、叱らなければいけないような気がする。


 ぱちぃんっ!

 軽快な音が響いた。

 ジンジンと手の平が痛む。

 何で叱る側のあたしが痛い想いをしなければならないのか。

 やっぱりあたしはヒッキーの事を嫌いじゃないんだと思う。

 だから、悪い事をしてもちゃんと叱ってあげてるんだと……。


「何で叩いたんだ?」


 ヒッキーの声には感情と呼べるものが感じられなかった。

 妻に説教されて悔しくないのだろうか。

「何でって、ヒッキーが夫としての義務を果たさないからじゃん!」

「夫としての……義務」

 バカにしているのだろうか。

 ヒッキーはよく分からないと言った顔であたしの事を見ていた。

 分からないのなら、分かるまで叱るしかない。

「ヒッキーは料理も洗濯もせずにぼーっと部屋に座ってる。普通はちゃんと家事するから!」

 ヒッキーってこんなバカだったっけ?

「いや……じゃあお前は何なんだよ」

 だんだんと、ヒッキーの声が震え始めた。

 どうやらようやく分かってくれたようだ。

 反省して、涙さえ出てきたらしい。

「あたしはヒッキーの妻に決まってんじゃん。だから、ね? 作って?」

 今ならまだ間に合うから。

 そう言いかけたあたしに、ヒッキーは小さな声で。




「離婚だ」




 と、呟いた。


「ちょっと待ってよ。今そんな話してないじゃん!」

 優美子の家でも食事のできなかったあたしのお腹は、今にも飢えて死にそうだった。

 だから、今離婚の話とかされても困る。

「お前が浮気をした。だから離婚する。他に何があるんだよ」

 ヒッキーが筋の通らない話を続ける。

 本当にこの人は昔から自分の意見ばっかり。

 だからあたしがいなきゃ社会人として成り立たないのに、分かってるのだろうか。

「それはそれじゃん! 今は離婚してないんだから夫としての責任をとってよ!」


 パシィンっ!

 二度目の叱咤激励でも、ヒッキーの態度は変わらなかった。

 それどころか、

「これ、全部録音してるから」

 と、犯罪行為を自白して、部屋から出ていってしまった。

「……え、本当に意味分かんないんだけど」

 あたしはその場に崩れ落ち、しばらくの間まともに動けかなかった。

 お腹がすいたので、野菜にマヨネーズをつけて食べた。

 生は美味しくない。

―――

251:88

夫にDVされました。


253:名無しの千葉

マジ?

254:名無しの千葉

妄想乙


261:88

ご飯を作らずに出て行きました。
アドバイス通り叱ったのですが、無駄でした。


262:名無しの千葉

叱った内容くやしく

264:名無しの千葉

こいつもう(手の施しようが)ないじゃん……


267:88

家に帰っても電気も点けず料理も作ってなかった夫に、しっかりしろとビンタしました。

それでも変わらなかったのでもう一度ビンタしたら離婚だと出ていきました。

正直意味が分からなくて驚いています。


268:名無しの千葉

お 前 の 意 味 が 分 か ら な い 

269:名無しの千葉

同感ww

271:名無しの千葉

あーあ、DVで慰謝料上乗せだな


273:88

DVをしたので慰謝料を貰えますか?

生活費も貰えますか?


274:名無しの千葉

お前は貰えねェよwww

275:名無しの千葉

この会話が成り立っているようで全く成り立っていない漢字ww

278:名無しの千葉

お前が旦那に暴力を振るったから慰謝料が上乗せされるんだよ


280:88

旦那の間違いを正すのが妻の役目ではないのですか?


281:名無しの千葉

そのお前が人類史上最大の間違い女なんだよww

282:名無しの千葉

>281が言い過ぎのように見えて何も間違っていない件。

283:名無しの千葉

ていうか両親に言ったの?


285:88

怒られるので言ってません


286:名無しの千葉

子供かwww


 翌日、ママから電話があった。

『結衣!? あんた浮気したの!?』

「浮気じゃないもん! 本気だもん!」

『世間じゃそれを浮気って言うのよ!』

「隼人と結婚しようと思うんだけど、ほんとに慰謝料もらえないのかな?」

『………うぅ』


 電話越しで、ママは泣いていた。

 あたしはママを泣かせるような制度を作った日本を恨んだ。

―――

410:88

ママから電話がありました。

あたしが慰謝料もらえないと聞いて泣いていました。

本当に日本には腹が立ちます。


412:名無しの千葉

ちょっと(アホすぎて)意味分かんない……

414:名無しの千葉

愛を注いだ娘がこんなんになったら死にたいだろうな

416:名無しの千葉

それで、慰謝料はどうなった?


418:88

今日の夕方、夫が弁護士を連れてくるそうです。


420:名無しの千葉

弁護士ちゃん大変だろうな……

421:名無しの千葉

人生終わったな……

―――
425:88

夫がその気なら、私もやることやろうと思います。

どうすればいいでしょうか?


―――


アドバイスをお願いします!

安価下1

―――

426:名無しの千葉

今からでも遅くない
誠心誠意謝れ

―――


 あたしはそのレスを見た瞬間、全ての重荷がふっと消えたような気がした。

 今までの行動も全部、崩壊していく人生から少しでも逃げたくてしたのだと思う。

 謝ろう。

 謝って、許してもらおう。

 そして、できるなら慰謝料と生活費を貰って隼人と新しい人生を歩もう。

 だからあたしがヒッキーと弁護士さんに言う言葉は、




「あたしが悪かったので、慰謝料と生活費ください」




「「死ね」」



 総額1000万の借金ができました\(^o^)/

ごめん、俺には伝説の92の思考は理解できなかったよ。。。

これで終わります。。。

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