【艦これ】大鳳「衣食住に娯楽の揃った鎮守府」浦風「深海棲艦も居るんじゃ」 (357)

・先のスレ同様、リクエストを受け付けながら勝手気ままに書いていきます

・スレの設定から著しく逸脱する場合パラレルとして書きます

・Rー18は一回のリクエスト受付の中で一番先に該当したものを採用し、それ以降のものは繰り下げて採用します

前スレは以下の5つです

【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」

【艦これ】大鳳「一度入ったら抜け出せない鎮守府?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399761014/-20)

【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」

【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401844632/l20)

【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」

【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406746107/l20)

【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」

【艦これ】大鳳「浦風が可愛い鎮守府」提督「多分一応は鎮守府」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416478239/l20)

【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」

【艦これ】浦風「姉さんが拗ねとる鎮守府」大鳳「最近私の影が薄い鎮守府」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423975394/l20)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439108390

では前スレで書いた通り、今スレ最初のリクエストを受け付けます

18時より三つ、21時より三つ受け付けます

朝霜と高波は未実装です

大鯨ケッコンカッコカリ済みになりました

春雨次にリクあればケッコンカッコカリするかもです

雲龍次で確定

他も徐々に進展中

・秋月『節電です!』

・葛城&瑞鶴『アウトレンジ』

・大和『夏の夜に』

・川内『笑わなくてもいいじゃん!』

・クー『言ッタコトニハ責任持テ』

・早霜『少し、楽しくなってきました』

以上六本でお送りします

・秋月『節電です!』 、投下します

駅前のスーパーで猫と熊と卯印の野菜が販売中

「こりゃまた凄いな……」

「ゴーヤさんに頼んでやっていただきました」

「頑張ったでち」

 各寮でグリーンカーテンを作る、という計画を秋月が言い出したのはつい先日のことで、それが実現するまでの時間の短さに提督は素直に感心する。
 明石には各艦娘用の冷却マット作成、各部屋の室長にはエアコンの掃除、冷蔵庫の綺麗な収納術講義を間宮と鳳翔へ依頼、他にも様々な節電・節約の為に秋月は行動を起こしていた。

「最初は協力して頂けるか不安でしたが、皆さん快く協力して下さいました」

「今までは正直余裕があったからあまり気にしていなかっただけで、面倒だから嫌だとは誰も言わんさ」

「多少、そういう声もあるにはあったのですが……」

「あー……大体どうなったかは予想がつく」

 苦笑いする彼女を見て、恐らく姉妹艦辺りに全員一喝されたのだろうと提督も苦笑いで返す。

「それにしても、塵も積もればなんとやらで、霧島がざっと計算したらこのぐらい浮くらしい」

「す、凄いですね……」

 向けられた電卓に表示された数字を見て、秋月は目を丸くする。
 鎮守府の規模が大きい分、全体で節電・節約を心掛ければそれだけ成果は大きくなる。

「――さて、この功績を踏まえて秋月、何か望むものがあれば言っていいぞ。常識の範囲内なら叶えてやる」

「いえ、私はただ自分のわがままに皆さんを付き合わせただけですので」

「なら、付き合った俺のわがままも聞いてもらう」

「提督、その返しはズルいと思います……では、こういうのはどうでしょうか?」

「――提督、その料理の山は……」

「各屋台から差し入れが届いたんだよ。秋月、どれか食うか? アイツ等コスト無視して作ってるからどれも美味いぞ」

「じゃあ、たこ焼きとチョコバナナをいただきます」

「一舟百円、一本五十円、原価は大体五百円ってとこか」

(逆にどうしたらそこまで高く出来るんだろ……)

「それにしても大きな祭がしたいってのは面白いお願いだな」

「去年のクリスマスが楽しかったので、出来ればまたやって欲しいと思っていたんです」

「元々前から計画はあったんだが、各自やりたいことを出し合ったらバカみたいに必要な予算が膨らんでな……」

「私の質素倹約の精神は、必要な時の為に備えるというのが目的ですから」

「何かで読んだな、“本物のドケチは金の使い方を知っている”、だったか」

「提督も、無駄遣いはなるべくしないで下さいね?」

「……善処はする」




――――秋月、コンビニじゃダメか?

 ――――ダメです。駅前のスーパーの方が十八円も安いです。

・葛城&瑞鶴『アウトレンジ』、投下します

自分もされて初めて知る苦労

「瑞鶴先輩!」

「葛城か、私に何か用?」

「私に空母としての戦い方を教えて下さい!」

「教わるなら私じゃなくて、もっと他に適任がここにはいっぱい居るんじゃない?」

「私は瑞鶴先輩に教わりたいんです!」

「そ、そこまで言うならいいけど……私も人に教えるのはあんまり慣れてないから、分かりづらくても文句言わないでね」

「はい! よろしくお願いします!」

(慕ってくれるのは嬉しいんだけど、何か調子狂うなー……)

 落ち着きを持ってしまった瑞鶴からすると、今の葛城は昔の自分を見ているような気分になり、少し気恥ずかしくもあった。
 しかし、一度引き受けた以上、自分を鍛えてくれた未だに越えられない壁に笑われない様にしなければと、すぐに気を引き締めるのだった。




「とりあえず発艦と着艦、百回ぐらいやってみて」

「百回!?」

「うん、どうかした?」

「い、いえ、やります!」

 飛ばす、戻す、飛ばす、戻す、ただそれだけとはいえ、百回となるとそれなりに時間がかかる。
 更に言えば、艦載機を飛ばす際には集中力も必要な為、地味に疲れる訓練でもあった。

(五十八、五十九……)

「――はい、そこまで」

「へ? きゃっ!? せ、先輩!?」

「集中し過ぎて周りが見えてないとそうなっちゃうから、次は私の動きにも注意しながら飛ばしてみて」

「は、はい!」

 背中へ訪れた冷たい感触に振り返った葛城の目には、水鉄砲を構えた瑞鶴の姿。
 使っているものは水鉄砲と遊びにも見えるが、空母が戦う上で重要なことを彼女は教えていた。

(コレ、かなり文句を加賀さんに言いながらやったっけ……私の時は水鉄砲じゃなくてハリセンだったけど)

 懐かしき日々に思いを馳せながら、瑞鶴は再び背後に回り込んでカウントをゼロに戻す。
 葛城がようやく百を数えられるようになったのは、この翌日のことだった。

「よし、じゃあ次は簡単よ」

「あの、艤装はいらないんですか?」

「あってもいいけど、多分邪魔にしかならないんじゃない?」

(艤装無しで何をするんだろ……早く先輩に艦載機を使った戦い方を教えて欲しいな)

 若干艦載機に執着や拘りの強い雲龍型らしく、葛城も艦載機を飛ばすことに喜びを感じていた。
 それを知った上で、瑞鶴は次の特訓に協力してくれる艦娘の名を呼んだ。

「じゃあ頼んだわよ、島風」

「一日追いかけっこに付き合ってくれるってホント!?」

「えっ? いや、えーっと、瑞鶴先輩……?」

「今日一日、島風をずっと追いかけること。とっても簡単でしょ? じゃあ頑張ってね」

「私には誰も追い付けないよ! じゃあよーい、ドン!」

(先輩が言うことに間違いは無いはず……よね? よ、よーし頑張るぞー)




 翌日、筋肉痛と極度の疲労により葛城ダウン。
 なお、島風がキラキラしたことにより天津風がスタミナ料理を差し入れに向かった模様。

 その後も特訓は続き、大和・武蔵の道場で稽古、祥鳳の弓道教室に参加、ほっぽのお守り、那珂の艦娘アイドルレッスンを経て、ようやく瑞鶴は艤装を葛城に着けるよう指示した。
 当然、瑞鶴も艤装を着けている。

「瑞鶴先輩、今日こそは艦載機を使って訓練ですよね?」

「ねぇ、葛城。貴女は艦載機を上手に操れるようになって、空母として強くなって、どうしたいの?」

「瑞鶴先輩みたいになりたいです!」

「ふーん、私みたいに、か。じゃあ葛城は――私には一生勝てないわね」

「っ!?」

 知っていた。知っていたはずだった。
 しかし、その迫力に葛城の背筋に悪寒が走る。

(まるで、別人みたい……)

「後は自分で必要なことを覚えて、学んで、私を倒せば晴れて一人前よ。遠慮なんていらないから、全力でかかってきなさい」

「はい!」




――――瑞鶴、葛城はどうだ?

 ――――いざ自分がされるとこんなに神経がすり減っていくとは思わなかったわ……。

――――(射程外から延々観察……ストーカーとは違うが確かに神経はすり減りそうだな)

 ――――(いいなぁ、瑞鶴先輩とお茶……違う! ちゃんと観察しないと!)

 ちょっと海に出てくるよ、そう言った彼女を誰も止めなかった。
 少し沖まで出た後、穏やかで静かな夜の海に一人佇み、目を閉じる。
 雪風と並び幸運艦と称されるだけの経歴を持つ彼女が、雪風の持つ願いを共に願っていたとして何らおかしいことはなく、暗い海の底まで届くように祈りを捧げる。

(僕はここだよ、皆もおいでよ。きっと、楽しいから)

 手を前へ出し、ただ祈りながら待つ。
 握り返す感触が本当に来るとは、彼女も思っていない。
 しかし、そうなれば嬉しいとは心の底から思っていた。

(……今日は、もう帰ろうかな)

 目を開き、手を下げて踵を返そうとした。
 だが、彼女にはそれが出来なかった。
 何故なら――。

「ン。久しぶり、時雨の姉貴」

「っ……うん、久しぶり、だね」

 確かにその手は、妹の手を掴んでいたのだから。




――――江風を時雨が連れて帰ってきました。

・大和『夏の夜に』、投下します

夏は姉妹共々実は苦手

 ――私はお札を部屋中に貼りました。それこそ扉が開かないぐらいに。

(後が大変そうだな)

(大和は幽霊なんて主砲で追い払ってみせます)

 ――また夜が来て、あの音がし始めました。でも、その日は前日までとは違う点が一つだけありました。

(なんとなくオチは読めた)

(ち、違う点……?)

 ――……その音、部屋の外じゃなくて中から聞こえてきたんです。私、見えない何かと一緒に部屋に閉じ籠ってしまっちゃってたんですよ。……結局その部屋、翌日に引き払いました。

「素人が札なんかベタベタ貼ったって意味なんて無いだろうに、なぁ大和……大和?」

「や、大和は幽霊なんて怖くありません。へっちゃらです。大和の主砲ならきっと幽霊だってたちまち逃げ出してしまいます。だから提督、ちょっと工廠へ行ってきますね?」

「待て、お前の主砲は俺も逃げるぞ。ちょっと落ち着け大和」

「大和は至って冷静です」

「冷静な奴が部屋で、しかも真夜中に主砲ぶっぱなそうとするわけがあるか!」

「……提督が悪いんです」

「おい、何でそうなる」

「どうして恐怖番組なんて見たんですか!」

「夏だし他にろくな番組が無かったんだよ」

「恐怖番組を見るぐらいならニュースの方がまだ楽しめます!」

「わざわざ二人でニュースなんか見たくないわ!」

「もういいです。大和、本日は部屋に戻らせていただきます」

「あぁ、勝手にしろ」

「失礼しま……? っ!?」

「ん? 戻るんじゃなかうおっ!?」

「て、提督、音、ガリガリ、扉……」

「お、おちづけやまど、ぐるじ……」

 ――ガリガリ……ガリガリ……。

「ひっ!?」

(や、やばい、背骨が……胸で息も……い、意識が、遠、退いて――)

「て、提督は大和がお、おお守りします……提督? 提督、しっかりして下さい、提督、提督ー!」




――――どうやら逃げ出した雪風のペットが、あの音の正体らしい。

 ――――申し訳ありません提督、大和、一生の不覚です……。

――――まぁちょっと死にかけはしたが、大和の貴重な怯える姿も見れたし、次はホラーDVDでも見るか?

 ――――ず、ずっと提督に抱き着いていてもいいなら、構いませんよ?

――――(ある意味その死と隣り合わせな状況はかなりホラーだな)

・川内『笑わなくてもいいじゃん!』、投下します

任務とライブ以外は地味に露出が少なかったり

 執務室に響くノックの音。大抵はノックなどせず入る者がほとんどであり、誰かとは問わずにただ入れと言うのが提督の常である。
 書類に目を落としたまま扉の開く音を聞き、キリのいいところまで書いてから、彼は顔を上げた。
 そこに居た相手が予想外であったことに驚くと同時に、珍しいものを目の当たりにして思わず提督は笑ってしまう。

「何も笑うことないじゃん!」

「いや、すまん。そんな顔してるお前を見るのは初めてだったんで思わずな」

 本当にそれだけの理由かと疑いの眼差しを彼に向けるのは、最近また新しい忍者の漫画を読み始めた川内である。
 しかし、今彼女が身に着けているのは、忍者とはかけ離れたものだった。

「それにしてもどうしたんだよ、そのタキシード」

「次の那珂のライブでの衣装」

「他の二人は?」

「那珂は天使、神通はウェディングドレスだよ」

「那珂が恋のキューピッドで、二人を結婚まで導く、みたいな感じか」

「大体それで合ってるよ」

「それで? わざわざここへ来た理由は何だ?」

「うん……別にさ、男装するのが嫌って訳じゃないんだけどね、神通のウェディングドレス見てたら何かこう、モヤモヤしちゃうっていうか……」

「お前も着たいってことか?」

「うーん……提督はさ、私のウェディングドレス姿って……見たいの、かな?」

 川内は顔を横に逸らしながら、横目で提督の反応を窺う。
 普段ははっきりとした物言いをするものの、こういうところでたまに女の子らしい素振りを見せるのが、彼女の魅力の一つだと提督は思っていた。

「それを口にすると俺はまた暫く小遣いゼロになるからコメントは控えさせて頂く」

「へー、見たいんだ。ふーん、そっかそっか」

「今日はまた随分とコロコロと表情が変わるな、入ってきた時のちょっと恥じらった様な顔が一番珍しかったが」

「私だって女の子だし、変な恰好してるとか思われるの嫌じゃん」

「変どころか似合ってるぞ、タキシード。立派に神通をエスコートしてこい」

「何か釈然としないなぁ……あっそうだ、良いこと思い付いちゃった。提督、ちょっと待ってて」

(何かは分からないが、嫌な予感がする……)

「あははははははっ!」

「笑うな! やらせたのはお前だろ!」

「ごめんごめん、想像以上におかしくって」

「全く、こんな恰好するハメになるとは提督になった時は考えもしなかったぞ」

「いいじゃん、貴重な経験が出来たって思えば」

「女装なんぞ一生経験したくなかったんだが?」

「提督もそれでライブ出演してみる?」

「人前になんぞ出れるか!」

「……じゃあさ、逆なら人前に出てくれたり、する?」

「……考えておく」




――――提督、早く早くー!

 ――――(良く考えたら川内の普段着ってボーイッシュなのが多い気がするな……今度那珂に頼んでみるか)

――――提督ってばー!

 ――――分かった、分かったからそんな大声で呼ぶな! 急がなくてもドレスは逃げん!

 執務室にその報せが飛び込んだのは、ヒトヨンマルマルを過ぎた頃だった。

「――熱中症で所属不明の艦娘が遊技場で倒れただと?」

『はい、今明石にこちらに来てもらえるよう連絡したところです』

「分かった、俺もすぐに向かう。大鳳、周囲の人払いを頼む」

『了解です』

(はぁ……ここはどうしてこう次から次へと……)




「あっ提督、こっちです!」

「倒れた艦娘の様子はどうだ? 大丈夫なのか?」

「それが、その……説明するより見て貰った方が早いわね」

「?」




「ハヤスィー?」

「あ、いえ、速吸です、はい」

「グラーチェハヤスィー! リベ、まだこっちの暑さに慣れてなくって」

「えっと、あの、こちらの艦娘の方ですよね?」

「ううん、リベはどこにも所属してないよ? 何か楽しそうな場所だったから来てみただけー」

「えっ、えぇっ!?」

(まずい、どちらの話を聞いても面倒なことになりそうな予感しかしない……)

(あのジャージ良いわね、私も一着欲しいわ)




――――職(着任先)探し中のジャージ娘と放浪中の駆逐艦が鎮守府に現れました。

 ――秋雲は餓えていた。
 当然、食欲的な意味合いではなく、最古参の吹雪から新規着任した艦娘、果ては猫から深海棲艦に至るまで描き尽くしてしまった今、新しいイラストのモデルに餓えているのだ。
 彼女は願った、まだ描いていない艦娘がここへ現れることを。
 それは、若干不純な動機から願ったことかもしれない。
 しかし、雪風達の絵を何度も満足のいく出来になるまで描き直した彼女の心の奥底には、確かに純粋に願う思いが存在した。
 そして――。




「いやぁー!?」

「待って、一枚、一枚だけだから!」

「……秋雲のバカ」

「うふふ、来て早々あの子も大変ね」




――――秋雲の新しい餌食(モデル)が着任しました。

「秋月、ちょっといいか」

「提督? こんな時間にどうされましたか?」

「お前の長十センチ砲ちゃん、逃げ出したりしてないよな?」

「長十センチ砲ちゃんならちゃんとここに居ますけど、どうしてそんなことを?」

「そうか……だったらコイツはやっぱり迷子砲ってことになるのか」

「迷子砲って――えっ、なっ、何?」

 提督の陰から現れた、秋月の長十センチ砲ちゃんに良く似た迷子砲。
 それは秋月を見付けると走り寄り、手を引いて何処かへ連れていこうとする。

「あなた、ひょっとして……」

「とりあえずついて行ってやれ、誰か後から向かわせる」

「はい、お願いします!」




 柔らかな風が吹き抜ける海、水面に映った丸い月の中心、そこに彼女は浮かんでいた。
 近付けば近付く程、秋月の推測は確信へと変わっていく。
 僅かな距離がもどかしく、最初は手を引かれていた長十センチ砲ちゃんを脇に抱え速度を上げる。

(ようやく、ようやく会えた!)

「――照月!」




――――助けた長十センチ砲ちゃんに連れられて月に照らされた艦娘を発見しました。

・クー『言ッタコトニハ責任持テ』、投下します

てんで性根は優しいキューピッド

何があったかはまたの話

「オイ」

「何だクー、珍しいな、一人か?」

「今日ハオ前に話ガアッテキタ」

「お前がわざわざ一人で来たってことは、春雨絡みか?」

「分カッテイルナラ話ガ早イ。春雨トケッコンカッコカリシロ」

「ケッコンカッコカリは言われてはいそうですねってするもんじゃない」

「春雨ノ何ガ不満ナンダ。胸カ、春雨ヲ入レタ料理シカ作ラナイトコロカ、ピンク色ノ髪カ、村雨ノブラヲ着ケタママ村雨ノマネヲシテ恥ズカシサデ暫ク動ケナカッタトコロカ」

「最後さらっと春雨の秘密の暴露になってるからやめてやれ、誰だってそういう時はある」

「サァ、春雨ノ秘密ヲ聞イタカラニハ答エテモラウゾ」

「無茶苦茶だなおい……別に、春雨に不満なんぞ無いさ」

「ソレナラ」

「不満が無いのと、するかどうかは別の話だ。第一、春雨に関してはそこまで好かれるようなことをした覚えが全く無い」

「多分、切ッ掛ケハアレダ」

「アレ?」

「春雨ガ変ニナッタ時、オ前ガ言ッタ台詞ダ」

「当たり前のことをして、当たり前のことを言った記憶しか無いんだが」

「呆レタ奴ダナ……。トリアエズ、言ッタコトニハ責任ヲ持テ」

「責任を果たしてるから俺はこうして毎日毎日働いてるんだろ」

「年ノ半分ハ艦娘達ト仲睦マジク遊ンデイル癖ニ、ソノ中ニ春雨ガ増エルダケノコトヲ何故ソンナニ拒否スル」

「逆に聞くが、お前はどうしてそこまで春雨の為に行動するんだ? 似ているから、だけじゃないんだろ?」

「……半身ノ幸セヲ願ウノハ、普通ノ話ダ」

「……そうか」

「マズハ、“ココニズット居タイ”トイウ願イグライハ叶エテヤレ。ケッコンカッコカリシタカラスグニベッドデ仲良クトイウ訳デモナインダロ?」

「当たり前だ」

「泣カセタラ、承知シナイヨ。モシ泣カセタラ春雨ノ海ニ溺レサセテヤル」

「貴重な体験が出来そうだが、遠慮願おう」

「クーちゃん、どこ行ってたの?」

「タダノ散歩ダ」

「春雨スープあるけど、飲む?」

「飲ム」

「クーちゃん、帽子に乗るならスープ飲んでからにしてくれないかな……」

「イイカラ早クシロ、慣レナイ事ヲシテ疲レタ」

「もう、叩かないでよぉ」




――――し、司令官から呼び出し? 何だろう……。

 ――――村雨ニ貰ッタ下着ヲ着ケル時ガ来タノカモナ。

――――クーちゃん!?

予定外の仕事が入ったので結晶破壊作戦と更新は少しお待ちください、すいません…

途中ですが一旦投下

 ――第一即席艦隊。

「単装砲の力、見せられるといいな」

「阿賀野はお姉ちゃんらしいところ見せなきゃ」

「ボクと同じ航空巡洋艦もいるのかな?」

「あちらにも空母が一隻居ればいいんですけど……」

 現れた鬼級への対処として編成された即席艦隊。由良・阿賀野・最上・祥鳳の四人は、他地点を防衛している艦隊から同様に送り出された四人と合流するべく移動していた。
 その場の判断で動かなければならず、他鎮守府の艦娘との連携に一抹の不安が残るものの、協力に即座に応じて貰えただけでも儲けモノである。

「――あっ、あれかな?」

 先頭を進んでいた由良の視界に四つの人影が映る。
 すぐにその姿は大きくなっていき、誰であるかが四人全員に判別出来るようになるまで、そう時間はかからなかった。

「あたしがこっち側の、旗艦……の……ぐぅ」

「おーい加古、寝たらダメだって」

「んぁ? あー、どこまで話したっけ?」

「まだ、何も言ってない」

「そっか、まぁお互い説明とか無くても大丈夫だよな。ひとまずよろしくぅっ!」

「うぃーヒック! よろしくなぁ~」

 どの鎮守府でもそうなのか眠そうな加古、その頭をペシペシ叩く望月に寄りかかる初雪、顔が赤く上半身が揺れている隼鷹。
 普通に考えればふざけているとしか思えない光景だが、この場に居合わせてる以上、実力は折り紙つきということだ。

「集中砲火で一体ずつ、中破したら即後退、でいい?」

「オッケー、さっさと済ませて戻んないと古鷹に小言言われそうだし、いっちょやってやりますか!」

 シンプルイズベスト。さっさと倒して、とっとと戻るという大雑把な作戦が、今の切迫した状況では最も的確といえた。
 敵前衛主力への強襲作戦。今後この地点の防衛にどれだけ余裕を生むことが出来るかは、八人の艦娘の手に委ねられたのだった。

 重巡一隻、航巡一隻、軽巡二隻、駆逐艦二隻、軽空母二隻。
 バランスとしては申し分無く、合流地点からすぐに鬼退治へと一行は向かう。
 元々そう遠くない距離まで接近していたこともあって、彼女達が臨戦態勢を取るまでそう時間はかからなかった。

「私と隼鷹さんで射線を開きます」

「後はジャンジャン撃っちゃって~」

 言うや否や数十機の艦載機が二人から発艦し、先陣を切る。
 その様は少し特殊で、祥鳳の艦載機の動きをトレースしたかのように隼鷹の艦載機が動きを合わせていた。

「凄いでしょうちの飲んだくれ、酒が抜けると逆にてんでダメなんだけどね」

「凄いのならボク達の仲間だって負けてないよ、ね?」

「――射線、開いた」

「うおぉっ!? い、今の何さ」

「あー!? 阿賀野が一番に撃ちたかったのにー!」

 突然の轟音に慌てる望月。それとは違った意味で慌てる阿賀野は、由良の単装砲の餌食となった相手を確認する。
 幸いと言っていいのか近くのヘ級が庇い、南方棲戦鬼は黒煙を上げてはいるが動きを止めていなかった。

「キラリーン、阿賀野が止め刺しちゃうよー」

「緊張感、ゼロ」

 間髪入れぬ阿賀野の追撃が決まり、一隻目の鬼級が沈む。
 それを後ろから冷静に眺めていた初雪は、全く鬼級が居る方向とは見当違いの方向へと視線を這わせた。

「――そこ」

 無造作に放たれた数発の爆雷。しかし、放たれた数だけ大きく水柱が上がり、潜水艦がそこに居たことを示す。

「そっちの初雪はこっちの五十鈴みたいなポジションなんだ。じゃあそろそろボクも、行くよ!」

 最上は試製晴嵐を飛ばし、鬼級二隻へと同時に攻撃を仕掛ける。
 対空砲火が祥鳳と隼鷹の艦載機へと向いていたこともあり、撃沈とまではいかなかったが一隻を中破、一隻を小破へと追い込んだ。

「望月、あたし達も負けてらんないぜ」

「あいよー」

 出遅れた加古と望月も、砲雷撃を開始する。
 二人は特別な何かをしている訳ではないが、その一撃一撃が次の行動を妨げ、相手の動きを封じていた。
 ものぐさならではの“回避せずに済む戦い方”であり、ものぐさらしからぬ積み重ねた練度がそれを可能にしていた。

「よっしゃ、このまま――」

「敵増援です! 更に後方より二隻接近中!」

「やっぱり、そう簡単には終わらせてくれないみたいだね……」

 延長戦の笛が鳴り、八人は再び体勢を整え備える。
 このロスタイムがいつまで続くかは、他の艦隊の働き次第である。

 ――第二艦隊。

「あーもうキリが無いったら!」

「ゴーヤ達ももうそろそろいっぱいいっぱいでち……」

「瑞鶴さん、一度睦月達も補給しないと弾が空っぽになりそうなのね」

(もう少し粘りたかったけど、ここが限界みたいね……)

「第二艦隊各員に通達! 砲火を後方一点に集中、一時補給を兼ねて後退よ!」

『了解!』

 数の暴力というのは凄まじく、一撃一墜でも追い付かない程に後から後から無尽蔵に深海棲艦は湧き出てきていた。
 下がっている間はその数の暴力が最終防衛ラインまで雪崩れ込むことになるが、轟沈しては元も子もない。
 瑞鶴の一時後退という判断は、この状況下では最善と言えた。

『私達は雪風と島風を回収しながら戻る、そちらは先に睦月型と潜水艦達を連れて後退してくれ』

『そういう訳だから、また後で会いましょ』

『瑞鶴、くれぐれも気を付けてね』

「分かりました、伊勢さん達も気を付けて。翔鶴姉ぇ、心配しなくても大丈夫よ。何たって私は幸運の空母なんだから」

 二手に分かれて後退を始める第二艦隊。
 当然、簡単に逃がしてくれるはずもなく、容赦無く砲火が後方より追いかけてくるのだった。

「なるべく敵の薄いところを突っ切って! 左右への警戒も忘れないで!」

「うわっ!? あっぶねー……」

「弥生、しっかりするぴょん! 傷は浅いぴょん!」

「ずぶ濡れになっただけ。弥生は大丈夫、だから」

 至近弾が何度も身体を揺さぶり、足元を掬おうとする。
 それに負けじと文字通り阻むモノを砲と魚雷と艦載機で蹴散らしながら、瑞鶴達は着実に防衛ラインを目指して後退していた。

「ねぇ、アイツ等やっちゃっていい?」

「通り道なら構わないだろう」

「ここは戦場だ、立ちはだかるならば容赦はしない!」

「この長良を仕留めるには遅い、全然遅い!」

 ここまで比較的温存していた長良は先頭を進み、他の艦を引っ張っていく。
 その後ろから長月、菊月、文月の三人が、鎌鼬の傷薬を止めに変えたコンビネーションで援護していた。
 そして、通り道に居たデカイ獲物も勢いに任せて一匹葬り去るのだった。

続きは近いうちにまた定期的に投下します

・早霜『少し、楽しくなってきました』 、投下します

床下収納に眠っていたりするかも

 夜も少し更け、鎮守府が僅かに静かになった頃、そこはひっそりと営業を開始していた。
 カウンターには常連の那智、姉の夕雲、酒を飲み始めたばかりの大鯨、店の前でドアをにらみ付けていた不知火の四人が座っている。
 それぞれ既に一杯目は注文しており、全員グラスは空に近くなっていた。

「早霜、ここに梅酒はあるのか?」

「えぇ、ホワイトリカーで漬けたモノで良ければあります」

「じゃあ次はそれをもらおう」

「あのぉ、梅酒って飲みやすい方なんでしょうか」

「口に合うかどうかなどを抜きにすれば、ホワイトリカーで漬けたモノなら一番梅酒の中では飲みやすいかもしれないな」

「そんなんですかあ。だったら私も一杯飲んでみようかな」

「早霜、私にも一杯いれてちょうだい」

「夕雲姉さん、度数が低いという訳ではないけれど、大丈夫なの?」

「大丈夫よ、自分がどの程度なら飲めるかぐらい弁えているもの」

「そう、ならいいんですけど」

「では、不知火もいただきます」

「……四人分、ですね」

 一つはストレートで、二つはロック、一つを梅サイダーで早霜は準備する。
 幸いなことに不知火からは死角であり、他の者も彼女が飲めるとは到底思っていないので黙っていた。

「――どうぞ」

 出された梅酒はまだ年季が入っているはずもなく、正に作りたてという色をしていた。
 口に含んだ各々は、それぞれ違った反応を示す。

「ふむ……深みがこれから増していき、来年にはもっと良い味になっていそうだな」

「う~ん……やっぱりちょっと私にはキツかったかも」

(体が熱くなってきちゃったわね……)

「不知火は気に入りました、梅酒」

「気に入って貰えたなら何よりです。大鯨さんは口に合わなかったご様子ですので、サングリアをお入れしますね」

「ありがとうございまあす」

「梅酒、もう一杯お願いします」

「はい、すぐに」

(私もこっそり梅サイダー頼もうかしら)




「――十五年物、味がまろやかで癖になりそう」

「飲みやすい分、酔いも回りやすいですから飲むときは注意して下さいね」




 サングリアに続き鳳翔の十五年物の梅酒が早霜のお気に入りに加わった模様。

次のリクエスト受付は明日の8時から三つ、20時より三つ受け付けます

朝霜、高波、瑞穂、海風は未着任です

・加賀&飛鷹『立ち話』

・木曾『お前等の指揮官は無能だな』

・陸奥&蒼龍『お化粧直し』

・磯風&長月&江風『ここをこうすると』

・Bep&潮&雪風『常識に囚われないこと』

・武蔵『涼しいな』

以上六本でお送りします

・加賀&飛鷹『立ち話』 、投下します

タイプは違えど

「加賀、ちょっといい?」

 普通のトーン、普通の調子で呼び止められた加賀。
 鎮守府内、ましてや仲間を相手に警戒するはずもなく、彼女は足を止めて振り返った。

「何?」

「用っていうか、貴女に前からちょっと聞きたいことがあったのよ」

「今答えられることなら構わないけれど」

 急ぎの案件も無く、休憩しようと思っていた加賀からすれば、多少の立ち話程度なら何の問題もあるはずがない。
 それに、普段はそこまで話さない相手ということもあり、何を聞きたいのか加賀自身気になりもしていた。

「じゃあ聞くけど、加賀って提督の昔の話って聞いたことない? あっ、内容は言わなくていいから」

「昔の話……いえ、ないわ」

「気になったことはないの?」

「あの提督業に関係ない雑学はどこから得たものか、趣味の広さ、髪と足を好む様になった原因程度しか気になっていません」

「地味に多いわね、気になってること」

「自分のことをあまり語ろうとしない人ですから」

「……加賀は、どう思うの?」

「その時が来るのを待つわ」

「踏み込まないのね、やっぱり」

「そう、して頂きましたから」

「……思い出したら何か無性に気恥ずかしくなってきたわ色々、絶対いつかは聞かせてもらわないと不公平じゃない」

「その役目は譲りません」

「いい加減色々私達に譲ってもいいと思うけど?」

「譲りません」

「……今からご飯でも、行かない?」

「和食なら付き合います」

 このまま続けると立ち話だけでは終わりそうも無いと判断し、二人は移動を開始する。
 形は違えど思いを同じくする相手との会話は弾み、赤城行きつけの店で閉店まで話し込むのだった。




――――(俺的にこの組み合わせは意外だな……)

 ――――加賀、次はパスタ付き合ってよ。

――――和風パスタのある店なら構わないけれど。

 ――――パスタなんてどう足掻いても洋風じゃない。

――――醤油を使えば和食です。

・木曾『お前等の指揮官は無能だな』、投下します

マントは昼寝場所

 たまたま見付けた資料、それをアイツに見せて聞けた話は俺を動かすには十分だった。
 笑いながら協力すると言われたのには多少ムカついたが、そこで止めないからこそ、俺はアイツを気に入っていた。
 必要だったのは通信一本、野暮用への切符はそれで事足りた。




「――こんなものか」

 熱を帯びた砲身とは対称的に、口から溢れたのは酷く冷めた言葉。

「練度も兵装も動きも悪くない。だが、一つだけ足りないものがあるから俺一人に簡単に負けるんだ」

 戦った艦娘達は理解している。ただ一人この場で理解していないのは、状況を呑み込めず馬鹿みたいに口を開けて突っ立ってる奴だけだ。

「俺より強い姉貴を手放した、お前等の指揮官は無能だな」

 野暮用を済ませ、また部屋でだらけているだろう姉貴達が待つ部屋へと戻る支度を始める。
 バレたらまた何をされるか分からないが、それも悪くはないと思った。

「……だが、大井姉にだけは何もされたくねぇな」




(見たクマ)

(聞いたにゃ)

「お前等の指揮官は無能だクマー」

「お前等の指揮官は無能だにゃ」

「やめろそこのアニマルズ」

「お姉ちゃんに向かってその口の利き方はなんだクマー」

「そうにゃそうにゃ」

「いいねぇ、痺れる台詞だねぇ」

「ちょっと馬鹿だとは思ってたけど、予想以上にうちの妹は馬鹿だったみたいね」

「別にいいだろ、姉貴達に迷惑はかけてない」

「そういう問題じゃないのよ、全く」

「まぁまぁ大井っちー、木曾も私達の為にやったことなんだし大目に見てあげようよ」

「まぁ、北上さんがそう言うならいいですけど……」

「俺は俺の為にやっただけだ。姉貴達の為にやったわけじゃ――」

「姉貴を手放したお前等の指揮官は無能だクマー」

「姉貴を手放したお前等の指揮官は無能だにゃ」

「うるさい黙れそこのアニマルズ!」

「お姉ちゃんに向かって黙れとは何だクマー」

「そうにゃそうにゃ」

「まぁ何ていうの、もう完全にあの時のことなんて忘れてたけど――ありがとね」

「……あぁ」

「じゃあ今から勝手なことをしたお仕置きタイム、いってみよー」

「なっ!? さっきと言ってることが――」

「そうね、お仕置きは必要よね」

(いつの間に背後に!?)

「じゃあ、行くよー」




――――も、もういいだろ。

 ――――お姉ちゃん達からのハグを嫌がる妹にはこうしてやるクマ。

――――っ……くふっ……んっ……。

 ――――(木曾をこそばすのは反応が楽しいクマー)

 海での戦いは終わり、彼女達は深海棲艦に対抗する為の存在から無用な争いの抑止力へとその存在理由を変えていた。
 つまりそれは、陸の上で行われる戦いにおいての強さも要求されるということだ。
 ある者は拳で壁を砕き、ある者は銃弾を弾き落とし、そして彼女は――。




「珍しいな、お前が道場に居るなんて」

「そういう提督だって、ここには滅多に来ないんじゃない?」

「普段は一般女性が多いだろ、自然と足も遠退くさ」

「……ひょっとして提督って、艦娘以外に興奮しないから提督になったとか?」

「人聞き悪いこと言うな、至って俺はノーマルだ」

「ふふっ、冗談よ。それで、ここへ何しに来たの?」

「軽く運動しに来た、暇なら付き合え」

「別にいいけど、提督って剣道とかの経験あったっけ?」

「仮にも提督だぞ、一応基礎的な武道は粗方やってる。腕前はともかくとして、だが」

「そこで実は剣の腕前は凄いんだ、とかにならない辺りが提督っぽいなぁ……じゃあ、やりましょうか」

 少し距離を空け、二人は木刀を構えて立つ。
 構えると言っても、伊勢は木刀を片手で持っているだけだ。

「――ふんっ!」

 馬鹿正直な踏み込みからの真正面への振り下ろし、下手な小手先の技など使うことすら出来ない提督からすれば、これが出来うる最良の行動だった。
 それを伊勢は木刀を上に構え直しただけで受け止め、頬を掻く。

「あー……うん、やっぱり本当に弱いんだ」

「だから俺は頭脳労働専門なんだ、よっ!」

「守るこっちとしてはもう少し提督が強いと楽出来るから頑張ってよ」

「その為にこうして悪足掻きしてるんだ、ろっ!」

 とにかく打ち込む提督と、軽々受け流す伊勢。
 提督の息が既に乱れてきているのを見ながら、伊勢は溜め息を溢す。

「まずはもっと体力を付けるところから、かな」

「歳も……はぁ……取ってきたからな……ぜぇ……」

「まだまだ若いじゃん、元帥と比べたら」

「あんな……妖怪と一緒にするな……ふぅ」

 打ち込む手を休め、額から流れる汗を提督は拭う。
 その頭をコツコツと叩いた後、伊勢は木刀を流れるように振るう。

「提督、最低でもこれぐらいは出来るようになってよ?」

「……走るだけじゃなくて、腕立てもやるか」

 提督の去った後、伊勢は一人になった道場で真剣を抜き放ち、構える。

(提督にはあぁ言ったけど、どんなに提督が強くなったって守ることには変わんないんだけどね)

 戦艦の中でもあまり突出した強さは持たず、どちらかといえば目立たない立ち位置に居た伊勢。
 しかし、それは彼女の真価が別のところにあったというだけの話だ。
 “伊勢の姉御”と天龍が呼ぶのは、その真価に彼女が敬意を表してのことである。

(砲も捨てて、艤装も捨てて、ただの人になっちゃったとしても、やることは一つ)

「――皆と明日を斬り開く、なんちゃって」




(伊勢さん、カッコイイ!)

 超弩級駆逐艦(仮)が次の目標に狙いを定めました。

・陸奥&蒼龍『お化粧直し』、投下します

妖怪化粧いらず

 ――化粧、それは女の武装であり、解除するのは難しいものである。
 弱い部分を守り、相手にその部分を悟られないようにする技術を、彼女達は日々研究しているのだ。
 例え気付かれなかったとしても、彼女達が水面下での努力を怠ることは無い。




「陸奥さんっていつもバッチリメイクしてますよね」

「部屋で長門によく“そんなに時間をかけてまでやることなのか?”って言われるわ」

「長門さん、全く化粧品使わないもんなぁ」

「蒼龍は比較的薄めな化粧って感じよね」

「バッチリすると、子供がした化粧みたいになっちゃうから……」

「あらあら……チークとアイシャドウはどこのを使ってるの?」

「色々試してみたんですけど、今はケイトかブルジョワです」

「少し前までは私もその辺りを使ってたんだけど……歳を取るって残酷ね」

「陸奥さんが言うと多分世間一般の女性に怒られちゃいますよ?」

「だって私が比較するのは艦娘だもの」

「まぁ確かに鈴谷とか熊野を見てると羨ましいなーってなる時はありますけど……」

「逆に秋津洲ちゃんは見てて微笑ましくなるわね、おめかしって感じで」

「分かります分かります。厚化粧っていうのとはちょっと違いますよね」

「そういえば、蒼龍は鳳翔さんの話は知ってるの?」

「鳳翔さん? いえ、知りませんけど……どんな話ですか?」

「――石鹸しか使わないらしいわ」

「えーっと、それは化粧水とかも全く使わないっていう意味ですか?」

「髪は提督があぁいう人だから手入れしているみたいだけど、肌に関してはそうらしいのよ」

「……加賀さんもですけど、私達と違って歳取らないままなんじゃ……」

「最近は少し疲れやすくなったらしいわ」

「全くそんな風には見えないなー。二人ともいつ寝てるのって感じだし」

「まぁお互いこれからもお化粧の力を借りて頑張りましょ」

「はい、頑張りましょう!」




 ――今の人達、どう見てもすっぴんで大丈夫でしょ。

 ――世の中って不公平ね……私も彼氏欲しー!

・磯風&長月&江風『ここをこうすると』、投下します

睦月型は当番制、陽炎型は気分次第、白露型は五月雨を見張りながら皆で

 呼吸をするように、歩くように、拳を突き出し、氷を打つ。
 ただ力に任せるでなく、自然な体捌きの中に組み込まれた一撃は、氷柱を砕かず、割った。

「――どうした二人とも、かき氷にするんじゃないのか?」

「何度見ても目を疑う技だ」

「へー、種も仕掛けもホントにねぇんだな」

「艦娘としては駆逐艦の枠に入るが、駆逐艦の枠にただ収まっている必要もあるまい」

 長月も伊勢同様、ただの艦娘として見ればこの鎮守府に居る者の中で特に秀でた部分があるわけではない。
 しかし、彼女の言う通りその枠での強さだけで全てを語るのは愚かというものだ。

「姉貴達も大概なもんだったけど、他の連中もこんなんばっかなのか」

「普通の範疇にある者も私を含め少なからず居るぞ」

「どの口で言っている磯風、貴様も大概だ」

「何っ!?」

(変な奴も多いけど、皆良い奴ばっかで過ごしやすいってのは有り難いもんだな)

「話を戻すがかき氷だ。削らねばわざわざこうして割った意味も無い」

「そうだ、この磯風ともあろう者が任務を忘れるところだった」

「任務ってか罰ゲームだけどな」

 恒例となりつつある休憩スペースでのトランプ遊びに負けた罰ゲームとして、二人は氷を取りに来ていた。
 長月の氷柱割りは単なるサービスのようなものであり、ここへ来た目的はあくまでかき氷を作ることにある。

「モノはついでだ、私の分も作ってくれ」

「味は?」

「いちご練乳で頼む」

「了解だ、この磯風に任せてもらおうか」

(ンっ、こりゃまた意外なチョイス)

「何だ江風、私がいちご練乳で食べるのに不服でもあるのか」

「ねぇよンなもん。ただ、そういうとこはしっかり女の子やってんだなって思っただけだよ」

「当たり前だ。拳を解けば私とて料理もすれば洗濯もする」

「じゃあ今度何か作ってくれ」

「あぁ、考えておこう」




――――うっ!?

 ――――どうした長月!?

――――こ……これは練乳じゃなくウェイパーだ! どうやったら間違えれる!

 ――――(ある意味磯風もすげぇな、ホントにここに居りゃ退屈はしそうにねぇぜ)

タイトル変更

・Bep&潮&雪風『昔辿った道、今から辿る道』、投下します

「ハラショー、これはいいクッキーだ」

「あひはほうほはいはふ!」

「ヲーちゃんに作ってあげたら作りすぎちゃって」

 潮の作ったクッキーを食べながら、ヴェールヌイの淹れたロシアンティーを飲む三人。
 一人頬がパンパンになっているが、いつものことなので二人はスルーする。
 この組み合わせになったのは偶然であり、基本的に誰が誰と仲が悪いということの無いここにおいては、廊下で偶々会ってというのは珍しい話ではない。
 クッキーのサクサクという音が暫く三人の間を包み、一息ついたところでヴェールヌイが最初に口を開いた。

「二人は、この先どうするか決めているのかい?」

「雪風はしれぇと大淀さんが作ろうとしてる施設のお手伝いがしたいです!」

「私は、その、ヲーちゃんみたいな子達がまだ他にもいるなら探して保護してあげたいかなって……」

 雪風の言う施設とは、艦娘の為の駆け込み寺のようなものだ。
 自分達の力で明日の生活費を捻出していかねばならない現状で、新たに生まれてきた艦娘を受け入れられない鎮守府も少なくない。
 潮の言っているのは言葉通りの意味であり、非公式に深海棲艦達を保護したいということである。
 ただ優しいだけでなく、その意志を貫く覚悟と強さがあるからこそ、やりたいといえる話だ。
 それに賛同するであろう者もこの鎮守府には少なくとも二名はおり、一人で全くのゼロから始めなくていいのは彼女にとって救いだった。

「二人とも、もう決めていたんだね」

「ヴェールヌイはどうするんですか?」

「そうだな……帽子でも作ってみようかな」

「ヴェールヌイちゃん、ずっと帽子被ってるもんね」

「どれも私の帽子には皆の思いが込められてているから、被っていると落ち着くんだよ」

 一度は失ってしまったが、新たに皆から貰った帽子達はヴェールヌイには宝物になっていた。
 そんな彼女だからこそ、いざ作るとなれば気持ちのこもった帽子が出来上がるのは容易に想像できる。

「――今度は、違う意味でバラバラだね」

「でも、気持ちはひふはっへひっほへふ!」

「言い終わるまで食べるのを待てなかったのかい?」

「慌てなくてもまだあるから大丈夫だよ、雪風ちゃん」




 それぞれの歩む別々の道、然れどそれは幾度も交差し、繋がっている。

・武蔵『涼しいな』 、投下します

妹が苦手なのは夏の暑さ、でも……

 人気のほとんど無い深夜の駅前、コンビニが少し先に行けばあるが、今居る辺りはあまり人が通らず街灯の光しか届かない。
 見渡す限り田んぼという程に田舎ではないものの、遊興施設や宿泊施設などは皆無で民家が視界の大半を占めていた。

「提督よ、こういう場合は廃墟や人里離れた場所に行くものじゃないのかい?」

「そういう場所は別の意味で面倒な場合が少なからずあるからな、今回はこういう場所を狙って選んだんだよ」

 実は私有地、裏の住人が出入りしている場所、安全面に難あり、等という問題がある場所が心霊スポットには多く存在する。
 武蔵が同行している以上提督の身に危険が及ぶことは限りなくゼロに近いものの、問題を避けられるのなら避けておくべきだという判断に基づいて行き先を彼は選択していた。
 最も、最初から行かなければいい話ではあるのだが、そこには大和と武蔵のいつもの他愛ない姉妹喧嘩が絡んでいた。

「本当にお前はこっち系は大丈夫なのか?」

「深海棲艦は大丈夫で幽霊はダメって大和の方が珍しいと思うぜ?」

「まぁ、お前の言いたいことは分からんでもない」

「それで、ここにはどういう話があるんだい?」

「この先の家に住んでた主婦がそこの駐輪場で刺し殺されてな、それ以来その主婦が化けて出るって話だ。――刺し殺した犯人の居る方向を睨みながら」

「察するに、犯人は旦那というところか」

「そう世間では噂されてたんだが、結局未解決のまま旦那も引っ越して幽霊話だけが残ったそうだ」

「ふむ、ではあそこに立っている女の旦那は相棒ってことになるな」

「質の悪い冗談はやめろ、第一俺はその事件の頃はまだ子供だ。ほら、次行くぞ」

(――死者の念は生者の念に劣ると聞くが、アレは相当強いな)

「お前にとっては、こういう場所は過ごしやすいんじゃないか?」

「この時間ともなると幾分暑さも和らいで過ごしやすくはあるが、まぁ、それだけだ」

「そりゃ残念だな」

「寒気を感じたら腕にでも抱き着くとしよう」

「折らないなら好きにしろ」

 川沿いの堤防にあるベンチに座り、二人はのんびりしていた。
 正面の川から背後に目を向けてみると、眼下には公園があり、真の目的地はその公園だった。

「夜な夜な子供が遊んでいる。トイレに自殺者の霊が現れる。話は色々あるみたいだな」

「無邪気に子供が遊んでいるのを怖がる必要もあるまい」

「人ってのは大抵自分の常識の及ばない事柄に対して怯えるものなんだよ」

「常識とは面倒な――相棒」

「どうした武蔵、急に手なんか握って」

「休息は十分だ。次の場所へ移動するぞ」

「別に構わんが、まだ公園に入ってないぞ?」

「わざわざ中まで行く必要もあるまい……それに、忠告は有り難く聞くものだからな」

(忠告? 何の話だ?)




――――おおきいおねぇちゃん、あぶないよ。

「提督よ」

「何だ?」

「深海棲艦の泊地なんかは空気が澱んでいるように感じたものだ。ここは、それと同じモノを感じるぜ?」

「知る限り、少なくとも五人は死んでる踏切だ。そう感じるのもおかしくはないかもしれん」

「成る程、確かにコレは少し涼しいな。霊気と冷気、読みは一緒か」

「一人で納得してないで俺にも分かるように説明しろ。お前、最初の場所から全部何か見えてるだろ」

「説明しろと言われると難しいが……そうだな、比叡の玉子焼きが一番近いか」

「アレか、そりゃ見えなくて正解だな」

「――なぁ、相棒」

「どうした?」

 次の言葉を口にはせず、武蔵は提督の腕を取る。
 その顔に浮かぶのは恐怖や怯えではなく、哀れみだった。

「さて、姉同様に妹も怖がったところで、帰るか」

「おい、別に私は怖がってなど……しかしまぁ、帰るのに異論は無い」




 もうすぐ空が白み始めそうな頃、二人は並んで帰路に着く。
 真に怖いのは後悔や無念を残したまま、その瞬間を迎えることだと再認識しながら。

次のリクエストを本日21時より三つ、明日9時より三つ受け付けます

朝霜、高波、瑞穂、海風は未着任です

・春雨『約束』

・秋月&照月『対空射撃演習』

・『空と海』

・望月『物は試し』

・矢矧&霞『取材』

・五月雨『夕張さんと遊ぼう』

以上六本でお送りします

後、球磨多摩も

・春雨『約束』 、投下します

計画通り

「司令官、お呼びでしょうか?」

「あぁ、まぁそこに座れ」

「はい」

 帽子の上にクーが居ないのを確認した後、提督は紙を一枚取り出し春雨の前に出す。
 それは艦娘にとって一生に一度の書類であり、一生ここに繋ぎ止める錨でもあった。

「読んで、考えて、分からないところは聞いて、それでもいいなら名前を書け」

「――質問を、させて下さい

「いいぞ、何でも聞け」

「司令官は、春雨にずっと居て欲しいですか?」

「……この前も言われたんだが、どうやら俺は誰が欠けても駄目だそうだ。全員が深海棲艦になって世界が敵になったとしても、俺はお前等の側を離れるつもりはない。その質問にちゃんと答えるなら、“手放す気は微塵もない”、だ」

「また変になりそうになったら、頭を撫でてくれますか?」

「帽子がグシャグシャになるまで撫でてやる」

「春雨、必ず入れても文句言わないですか?」

「不味くない限りは言わん」

「その……村雨姉さんみたいに色気なんて無いけど……いい、ですか?」

「そこについては保留する」

「……」

 春雨の質問はそれで最後であり、視線を書類に下ろして彼女は深呼吸をする。
 そして、ゆっくりと書類に名前を書いた。

「――司令官」

「何だ?」

「ゆ……指……」

(ここで指切りと言ってしこたま殴られたのは確か曙だったな……)

 文字通り痛い記憶を思い出しながら、提督は引き出しから指輪を取り出す。
 それが視界に入ると、春雨は頬を染めながら目を輝かせた。

「書類持ってこっち来い」

 手招きされ、春雨は机にぶつかりそうな勢いで提督の元へと向かう。
 普段は見せないような積極的な態度に、その気持ちの強さがはっきりと彼にも伝わっていた。

「これは、俺とお前を一生繋ぐ。ある意味では結婚指輪より重い指輪だ。それに見合うだけのモノを、春雨、お前にやる」

「……はい」

 そっと、指に填められた絆の証。
 急に恥ずかしさが込み上げて来たのか、春雨は帽子を目深に被り顔を隠そうとする。
 しかし、それは思いもよらぬ相手に妨害されるのだった。




――――サッサトキスデモシタラドウダ?

 ――――お前、帽子の中に居やがったのか……。

――――(いつの間に入ったんだろ……)

 ――数時間後。

「一番先に、突撃インタビュー! 春雨ケッコンカッコカリおめでとー!」

「おめでとう春雨、お祝いをしないといけないね」

「はいはーい、村雨はいつでもスタンバイOKよ」

「夕立も準備万端っぽい!」

「涼風、私は何したらいいかな?」

「江風と一緒に春雨の話し相手だね」

「ンっ、そのぐらいなら任せときな」

「ん―? 春雨? おーい」

「返事がない、ただの春雨のようだ」

「あらら、心ここに在らずって感じね」

「でも、幸せそうっぽい?」

「やっぱり私も料理を――」

「江風、五月雨確保。激辛と激甘が嫌なら絶対離すんじゃないかんね?」

「激甘は願い下げだけど激辛ならいいかもしんないねぇ」

「春雨ー? おっ、もちもちほっぺだ」

「良い伸び方だね」

「ズルいわよ二人とも、村雨にも触らせて」

「夕立も触るっぽい!」




――――今頃姉妹ニカラカワレテイルダロウナ。

 ――――(勢いってヤツはどうにも恐ろしい……)




 この日、提督は二度唇を奪われた。

艦これの起動が二週間程出来ていないので更新は明日までお待ちください

限定絵は全員書きます

・秋月&照月『対空射撃演習』 、投下します

長十センチ砲ちゃんは知っている

 空を見上げる。

 そこには青と白が広がっていて、時折鳥が横切っていく。

 彼女達が守り、他の何色にも染めさせないと決めた場所。

 それは、この平和を勝ち取った世界でも変わりはしない。

 今日も、守りたい人達の為に彼女達は空を見上げる。

 そして――。




「わあっ!? 長十センチ砲ちゃん暴れないでー!?」

(何だか照月の長十センチ砲ちゃん、言うこと聞いてないような……)

 照月を交えての対空射撃演習。しかし、肝心要の彼女の相棒は命令を聞かず勝手に動いていた。
 動けなかった主人の為に秋月を探しに来た義理堅い子と同じとは信じられない自由奔放さだ。

「照月、何か機嫌を損ねるようなことでもしたの?」

「実は昨日、磨いてあげる時にちょっと失敗しちゃってー……」

 言われてよく見てみると、側面に軽く傷があるのが分かった。
 しかし、それだけが理由では無いと秋月は何となく直感で理解する。

「ドシタノ? 遊バナイノ?」

「ごめんねほっぽちゃん、少し待っててもらえる?」

「ウン!」

 トテトテと近付いてきて、またトテトテと去っていくほっぽ。
 その背中を見つめているように見える長十センチ砲ちゃんの顔が、どこか寂しげに秋月には思えた。

「照月が悪かったから機嫌治してよ~長十センチ砲ちゃ~ん」

「これは先が思いやられるかな……ねぇ、長十センチ砲ちゃ――あら?」

 横に居るはずの相棒に問いかけるも、そこに姿はない。
 辺りを見回してみると、鳥を追いかけてあらぬ方向に走っていく後ろ姿が彼女の目に飛び込んでくる。

「これじゃ私も照月のこと言えないか、はぁ……長十センチ砲ちゃーん! 戻ってきなさーい!」

 結局妹と同じく長十センチ砲ちゃんと追いかけっこを始める秋月。
 それを見て痺れを切らしたのかほっぽも混ざり、対空射撃演習は鬼ごっこへと形を変えることとなる。
 しかし、これはこれで有意義だなと感じるようになった辺り、秋月もしっかりここに馴染んでいるのだった。




――――加賀、この対空射撃演習で全員大破って何だ。

 ――――ほっぽが鬼で艦載機を飛ばしたようです。

――――(本物でやったら鬼ごっこにならんだろ……)

「浜風、そりゃちぃと欲張り過ぎじゃ」

「はむ?」

 焼きとうもろこしにイカ焼き、綿あめ、たこ焼きを抱えた妹をジト目で見る浦風。
 普段は生真面目な浜風も最近は気を緩ませる機会が増えたのか、祭を目一杯楽しんでいた。

「まぁうちも祭は好きじゃけぇ、気持ちは分からんでもないよ?」

「その景品の山を見れば分かります」

 口の中に入れた物をきちんと飲み込んだ後、今度は浜風が浦風をジト目で見る。
 サンタの様に袋を肩から担いだ彼女もまた、目一杯祭を楽しんでいた。

「姉さんも来れたら良かったんじゃけど」

「祭の警備の任務がありますから、仕方ありません」

「魂抜けとったけど、大丈夫かねぇ……」

「その程度で手を抜くような方ではないのを、浦風が一番知っていると思いますが」

「うちが心配しとるんはそうと違うんよ、むしろ逆――」

 ――ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?

「……予想、的中したみたいですね」

「うち、ちょっと様子見てくるけぇ浜風は祭を楽しんどってえぇよ」

「私も行きます」

 カランコロンと下駄の音を鳴らしながら、二人は悲鳴の聞こえた場所を目指す。
 その手にはフランクフルトと焼きそば、それとデジカメを持っていた。




――――姉さん、やり過ぎはいけんよ?

 ――――コレ、陣中見舞いです。

――――アレ、私の顔を見ただけで悲鳴上げたのよ? 酷いと思わない?

「……おい」

「何だクマー?」

「何にゃ」

「仕舞うな」

「着ない服は当然仕舞うクマ」

「こんな動きにくそうな服一生着ないにゃ」

「だったら何で欲しいって言ったんだ」

「妹だけは不公平だクマ」

「貰えるものは貰っておくにゃ」

「ほー、そうか。祭に誘うつもりだったが着る気がないなら違う奴を――」

「五分で支度するクマ」

「さっさと部屋から出ていくにゃ」

「言われんでも出ていくから安心しろ」

(やれやれ、これで無駄にならずに済んだか……)




「わたがし美味いクマー」

「イカ焼き美味いにゃ」

(色気より食い気……いや、これはこれで良いか)

「クマ? そんなに見つめても球磨のわたがしはやらないクマー」

「多摩もあげないにゃ」

「別に取る気は無いから安心しろ、食いたくなったら俺も買って食う」

「だったら焼きとうもろこしが良いと思うクマ」

「お前が食いたいだけだろ」

「多摩はたこ焼きがいいと思うにゃ」

「どっちも普通に買ってやるから食え」

「全部食べてると浴衣じゃ苦しいクマ」

「半分ぐらいでちょうどいいにゃ」

「全部食うつもりなのがそもそも間違ってると気付け」

「いいから焼きとうもろこし買うクマー」

「たこ焼きもにゃ」

「分かった、分かったから引っ張るな。屋台は逃げん」

 球磨と多摩に両側から引っ張られる提督。
 下駄は歩きにくいからという口実で腕に掴まる二人の浴衣姿を間近で楽しみながら、祭が終わる時間まで続くであろう屋台巡りに付き合うのだった。




――――不覚クマ……。

 ――――気持ち悪いにゃ……。

――――水風船ではしゃぐからだアホ。

 ――――下着まで濡れてるクマ。

――――下着だけ脱ぐにゃ。

 ――――脱ぐな、鎮守府まで我慢しろ。

「姉さん、浴衣で走らないで~……」

「これってわざと動きにくくしてトレーニングしてるんじゃないの?」

「そんな風に考えるの長良さんだけだと思う、多分」

「着崩れしますから、あまり派手に動かない方がいいですよ」

(那珂と姉さん、どこ行ったんだろ……)

「あっ、あのぬいぐるみ可愛い……」

「名取欲しいの? ここは長良に任せて!」

「朧もやります」

(固定、重し、その他細工は無いみたいですね)

(あのお面は、私と姉さん? 那珂のはどこに……)

「ラムネとこけし」

「蟹ぐるみとキャラメル」

「C敗北ですね」

「――やっぱり、欲しいものは自分で取らないと」

(メール? “ゲリラライブそろそろ決行するよ、神通も至急浴衣のまま指定の場所に集合”……私、何も聞いてません)

「アレ? 何か帯が弛くなってきたかも……大淀さん、ちょっと帯が――うわっ!?」

「きゃっ! そ、そこを引っ張らないで下さい!」

(下手に近付くと巻き込まれるかも、そっとしておこう)

「や、やったー! 姉さん、取れ――ど、どうしたの二人とも!?」

「名取、ちょっと手伝って!」

「うん、今行くから、ってきゃあっ!?」



 この後、ギリギリセフトな格好で近くの物陰に駆け込んだ艦娘三名を再び祭の喧騒の中で見ることは無かった。

「電、次はどれにする?」

「りんご飴かチョコバナナで悩んでいるのです」

「だったら半分こしましょ」

「なのです!」

「雷、電」

「あら、江風も来てたの?」

「こんばんはなのです」

「いやー姉貴達が来ないと損するって言うから来てみたが、祭ってなぁ美味いしいいもンだな」

「(す、凄い量なのです……)」

「(あんなに食べてお腹壊さないのかしら?)」

「おっ、あそこのも良い匂いしてンなぁ。次はアレにすっか」

「ま、まだ食べるのですか?」

「あんまり買うと手に持ちきれないわよ?」

「それもそうか。んぐっんぐっんぐ――よっし、これで手が空いたぜ。じゃあまたなー」

「……あんなに細いのにどこに入るのか不思議なのです」

「浴衣で帯も締めてるのに、苦しくないのかしら」

「赤城さんは苦しくならないコツがあると言っていたのです」

「赤城さんのは多分参考にならないから真似したってダメよ」

「――あっ、ちょ、ちょっと待って欲しいのです!」

「どうしたの?」

「下駄の鼻緒が切れそうなのです」

「ホントだわ、雷に任せなさい」

「このぐらいなら……ううん、やっぱり何でもないのです」

「ここをこうして、っと。はい、出来たわよ」

「ありがとう雷、助かったのです」

「お礼はチョコバナナでいいわ」

「ふふっ、はいなのです」




――――ンっ、ちょうど良かった。時雨の姉貴、屋台回ってたら足りなくなっちまったから金貸してくンねぇ?

 ――――いいよ、その代わり何でも言うことを一つ聞いてもらうよ。

――――いいぜ。じゃあ有り難く借りとくな。

 ――――(あららー、見たこと無いような悪い顔を時雨がしてるわね。まっ、江風には良い社会勉強になるかしら~?)

「千歳お姉、このぐらいあれば十分かな?」

「そうね、十分じゃないかしら」

 やっていることは落ち葉の掃除。しかし、その目的は掃除に非ず。
 古今東西九割の女性に愛される甘いもの。その中でも秋から冬にかけて主に食べられ、トラックで売り回る者も居る人気の品。
 そう、何を隠そうそれは――。

「焼き芋楽しみだね」

「えぇ、お酒もあれば最高なんでしょうけど」

「ダメだよ千歳お姉、後片付けもあるんだから」

「はいはい、分かってます――あら?」

 視界の端にチラリと見えた春の色。
 消えた方に視線を向ければ、物陰からこっそり様子を窺おうとしてまた隠れる艦娘の姿があった。

「別に隠れなくても大丈夫だから、こっちで一緒に待たない?」

「……い、いいんですか?」

「何だ、春雨ちゃんだったのね」

「私モ居ルゾ」

「えーっと……リスの着ぐるみ、なの?」

「鳳翔さんが作ってくれたんです。クーちゃんも気に入ったみたいで」

「アァ、悪クナイ」

「こうしてみるとホント、あんなに苦労させられた相手とは思えないよね」

「今は頼りになる……マスコット、かしら?」

「マスコットナラ春雨ニコノ着グルミヲ着セテオケ」

「そういう扱いはされたくないなぁ……」

「――そろそろ焼けそうじゃない?」

「あっ、ホントだ。千歳お姉、新聞紙出して」

「はいはい」

「私も手伝います」

「じゃあ春雨ちゃんも焼き芋を取り出していって」

 落ち葉の中から回収されていくアルミホイルに包まれた芋達。
 それは相当な量であり、とても三人で食べきれる量ではなかった。

「さてと、じゃあ焼いた者の特権で一番は千代田達でいいよね?」

「どうせもう嗅ぎ付けてる人達も居るでしょうし、いいんじゃない?」

「私も、貰ってもいいんですか?」

「いいのいいの、どうせ皆で食べようと思ってたんだもの」

「じゃあ、改めて――」

「「「いただきます」」」




――――はぁ~……やっぱり秋は焼き芋よね~。

 ――――芋焼酎、まだあったかしら?

――――ち~と~せ~お~ね~え~?

 ――――ふふっ、冗談です。

――――(甘くて美味しい~)

 ――――(焼キ春雨……無イカ)

 片手で水風船をポンポンと弾ませながら特徴的なアホ毛を揺らして歩く浴衣姿の美女と、イカ焼きにかぶり付きながら次の獲物を探すこれまた浴衣姿の美女。
 その二人の間で袋の中を泳ぐ金魚を眺める小さな女の子は、イカ焼きを食べる美女に瓜二つだった。
 浴衣はそれぞれ白に椿、藍に猫の手と猫じゃらし、ピンクに猫という柄で、普段の印象を完全に覆い隠しているのは一人だけである。
 その三人の少し後方で歩く男と少女もまた、浴衣を着ていた。
 紺一色の浴衣を着た男は荷持ち兼財布役、淡い紫にウサギの絵の柄が入っている浴衣を着た少女は電話で誰かと連絡を取り合っている様子だ。

「多摩、どう考えてもこの並びおかしいクマ」

「問題ないにゃ、むしろ球磨と漣で歩かせた方が面倒にゃ」

「漣が子供っぽく振る舞ってくれたら大丈夫だクマ」

「100パー無理な話にゃ」

「? 何の話してるのにゃ?」

「綺麗な女は罪作りって話クマ」

「馬鹿は死んでも治らないって話にゃ」

「姉に向かって馬鹿とは何だクマー」

「その下り飽きたにゃ」

「そりゃ奇遇だクマ」

 半分食べたイカ焼きを娘に渡し、多摩は後ろへ視線を向ける。
 その視線は簡単に目的の人物と交わり、それだけで意志疎通は完了した。
 一瞬で行われた一連の流れを横目に見ていた球磨は、やっぱり二人は夫婦なのだと改めて認識する。

「――はい、わたがし」

「ありがとにゃ」

「子多摩と球磨君も、はい」

「わたがしにゃー」

「金魚は球磨が預かるクマ」

「いいよ、僕が持げふっ!?」

「ご主人様ー? 私のが見当たらないんですがー?」

「さ、漣君電話してたから後の方がいいかと思って……」

「今すぐ、ナウ、ハリー、買って来やがって下さい」

「はい……」

「――さて、球磨と子多摩はあっちで面白い催しやるそうなんで付き合って下さいね」

「成る程、その為の電話してたクマね」

「何やるのにゃ?」

「それは行ってからのお楽しみってことで。じゃあ多摩、行ってきますねー」

「別にそんな気を遣ってくれなくても良かったにゃ。……でも、ありがとにゃ」




――――浴衣姿、いくら見ても飽きないや。

 ――――花火上がってる時ぐらいは花火見るにゃ。

――――何見るかなんて僕の勝手でしょ?

 ――――……バカ。

・『空と海』 、投下します

表と、もうひとつの表

 少し肌寒さを感じるようになった秋の夜に、ゆらり、ゆらりと鎮守府を歩く影。
 その行く手を遮るように、一人の艦娘が現れる。

「照月、部屋へ戻りましょう」

「……」

 ピタリと足を止め身体を前に傾けた後、小刻みに肩を震わせ始めた照月。
 心配して近付こうとした秋月をその場に縫い付けたのは、次の瞬間に聞こえた声だった。

「ヘー、来タンダ」

「……貴女、誰?」

「何言ッテルノ? 照月ニ決マッテルジャナイ」

「っ……そん、な……」

 そう言いながら身体を起こし、にこやかに微笑んでいる彼女の目は、片方が紫に染まっていた。
 この異常事態に一瞬膝から崩れ落ちかけた秋月を支えたのは、いつの間にか背後に立っていた飲み屋帰りの軽空母だった。

「何やよぅ分からんけど、妹の一大事に腰抜けとったら格好悪いで?」

「サッキカラ変ダヨ秋月姉、照月ガドウカシタノ?」

「キミ、ちょっとそれは悪趣味なんとちゃう? いくらなんでもイタズラが過ぎるで」

「今ハ秋月姉ト話シテルノ。邪魔ヲ――スルナ!」

 何処かから現れ砲身を龍驤へと向ける長十センチ砲ちゃん。その目の様に見える部分は、今の照月同様紫色の光を灯している。

(秋月庇いながらこの子黙らせなアカンのか。こりゃほろ酔いではちょっとばかしキッツいなぁ……)

 下手に応援を呼べば刺激しかねず、かといって艦載機も無しに場を収められる状況でもない。
 久々に冷や汗が背中をつたうのを感じた龍驤は、とにかく口を動かした。

「キミ、何で今更こんなことしたん? 他の子等は普通にここで生活しとるよ? 一体何が不満なんや」

「マタ私ヲ暗クテ冷タイ場所ニ一人デ置イテ行クツモリナンデショ? 今度ハ秋月姉モズット、ズーット一緒ニ居マショ。フフッ、ハハハ、アハハハハッ!」

(アカン、こらホンマにマズイで)

 徐々に強くなる感じ慣れた気配、幾度と無く向けられた強い憎悪の念。
 それは紛うことなく、彼女達の敵だった頃の深海棲艦のものだった。

 自分を抱える龍驤の声と、照月ではないと認識した誰かの声。
 その二つが、秋月の耳の中をすり抜けていく。
 彼女は敵としての深海棲艦を知らず、この様な事態が起こることなど微塵も考えてはいなかった。
 それだけに、受けたショックの大きさは相手が妹であることも加えてかなりのものだ。

(照月……どうして、どうしてこんなことに……)

 解体、処分、嫌な言葉が頭をよぎる。
 そんな結末を黙って認める提督ではないと知っていても、一度思考を支配したものはそう簡単に払拭出来ない。
 軋む心を守る為、目の前の現実から目を逸らそうとした秋月を引き留めたのは、小さい無機質な手だった。

「長十センチ砲、ちゃん……?」

 いつの間にか腰にしがみついていた長十センチ砲ちゃん。
 その手が指し示したのは、今龍驤へ向けて高笑いしながら砲撃している妹の顔。
 恐る恐る向けた視線の先には、逸らしてしまっていたら後悔していたかもしれない真実が待っていた。

「ドウシタノ? 抵抗シナイノ? ソレトモ出来ナイノォ?」

「うちは生憎ここの化け物共と違って至極普通な艦娘なんや。艤装も無しに戦えるわけないやろ」

「ジャアサッサト秋月姉ヲ置イテ消エナサイ」

「残念なことにここやと鳳翔とうちが歳で言うたら一番上なんよ。そんな真似死んでもよう出来んわ」

「アッハハ、ダッタラ――死ニナサイ!」

(こりゃ何か特別手当てでももらわな割に合わんなぁ……)

 照月の長十センチ砲ちゃんから放たれる黒く濁った砲弾。
 全弾回避は難しいと判断した龍驤は、秋月を庇うように背中を向け、気付いた誰かが到着するまで待つことを選択する。




 ――しかし、待つまでもなく対抗する手は最初からそこにあるのだった。

「お願い、長十センチ砲ちゃん!」

「……何デ? 何デ邪魔スルノ、秋月姉」

「妹が悪いことをしたなら、叱ってやめさせるのが姉の勤めだもの」

「フーン、ソウナンダ。ヤッパリ照月ヲ一人ニ――」

「馬鹿なこと言わないで! やっと……やっとまた会えたのに、一人になんてする訳無いじゃない!」

「嘘……ソンナノ嘘……嘘、嘘、ウソダウソダウソダウソダウソダッ! 一人ハ嫌……モウアノ暗イ海ニ一人ハ嫌……嫌ァァァァァッ!」

「アカン、完全に記憶がごっちゃになっとる。どないかして正気取り戻させへんと壊れて――って何してんねや!?」

「あの子は、ただ寂しかっただけなんです。だから、側に行ってあげないと」

 後ろから聞こえる一度止まれの言葉も聞かず、秋月は照月の元へと駆け出す。
 錯乱状態が功を奏して砲撃はあらぬ方向を狙っており、当たる可能性は低いものの、危険なことに変わりはない。
 至近弾の影響で飛来した小石や木片による傷などは気にも留めず、秋月はただ真っ直ぐに妹の居る場所を目指した。

「照月!」

「ア……秋月、姉? ソッカ、来テ、クレたんダ……」

「私はここに居るよ。だから大丈夫、もう泣かないで」

「うン……あぁ、星空ガ、綺麗……」

 照月の目から流れ落ちる雫と共に、紫色の水晶が地面へと落ちる。
 それと同時に辺りに漂っていた悪い気配は消え去り、脅威が去ったことを後ろでひやひやしながら見守っていた龍驤も理解した。
 新たに観測された謎の現象と、破壊してなお何かしらの力を持つ結晶、そして――。

「……増えたのか」

「みたいやね」

「秋月姉ハ私ト居ルノヨ、ネェ?」

「照月とだもん! ねっ、秋月姉?」

「え、えーっと……」

「助け求めてんで、昨日は影でコソコソ眺めるだけやってんから助けたったら?」

「アレは先を見据えてあえてだな……」

「私ト!」

「照月と!」

(長十センチ砲ちゃん、こういう時には何で居ないのかなぁ……)




――――防空棲姫のルキが秋月を照月と取り合うようになりました。

 ――第三艦隊。

「バァァァァァニング・ラアァァァァブ!!」

「あらあら、そんなに私と火遊びしたいの?」

「フォイヤー!」

「私達より不幸になりたくなければ退いてちょうだい」

 前方に向けて多数の戦艦により生み出される砲火の豪雨。その勢いは凄まじく、戦艦棲姫十隻を相手に優勢を保っていた。
 一つ問題があるとすれば、相手は一発当てればそれだけで簡単に戦況を一変させられるという点だ。

「今回ばかりは、データも役に立たないわね」

「まだまだ先は長いなんて、不幸だわ……」

「気合いで! まだまだ! いけます!」

「榛名もまだまだ大丈夫です!」

 後ろに控える主力艦隊を是が非でも最深部まで導く為、その戦意は極限まで高揚していた。
 それは戦艦のみに限った話ではなく、他の者も出し惜しむことなく全力で眼前の敵を撃ち倒していく。

「ふふっ、昔に戻ったみたいですね、龍驤」

「アンタに昔の感じに戻られたら何人かチビってまうよ?」

「そんな柔な子はここには居ないはずですよ」

「まぁウチはえぇけど……程々にしぃや」

「はい。では――元・元帥艦隊空母教導艦鳳翔、推して参ります」

 ――犠牲となったのは、レ級の艦載機。
 それまではその圧倒的性能差で翻弄されていたかに見えた鳳翔の艦載機が、まるで最初から全てルートを計算していたかの様に次々と機銃の射線に入った艦載機を撃ち落としていく。
 追う側から追われる側へ変わっていたなど、レ級には全く分からなかった。
 そして、気付いた時には彼女の身体を爆撃が捉えていたのだった。

「ふぅ……やはり現役の頃と比べると、少し動きが悪いでしょうか」

(横の千代田と千歳が目を必死に逸らしとんの、気付いとるんやろなぁコイツ)




 前方の敵艦、大半が沈黙。同時に一部艦娘の鳳翔への畏怖の念が強まった。

連絡三点

・本日帰宅後更新します

・追加期間限定グラもやります

・Q、それはサンマですか? Aいいえ、それは炭です

「――揃ったみたいだな」

 普段ならば一人、多くても三人程度しか集まらない執務室に集まった十を越える艦娘達。
 その顔触れは待機艦隊に加え、裏で動いている者達が大半だ。
 いつもならば緩い雰囲気を出している者も、今は真剣な面持ちで提督の言葉に耳を傾けていた。

「明石、大淀、盗聴の類いはどうだ?」

「バッチリ対策済みです」

「念のために周囲の警戒もお願いしてあります。問題ありません」

「そうか、なら本題に入るぞ。お前達には既に通達済みだが、今回の照月の一件でネズミが罠にかかった」

「ネズミか、それにしては大層な面子を集めたものだ」

「窮鼠猫を噛むって言うだろ? ネズミ相手でも手は抜けん」

 自分一人で事足りると言いたげな武蔵をやんわりと制止し、提督は話を続ける。

「今回はあえて丁重にネズミを招き入れる。出迎えは大和、赤城、伊勢」

「承りました」

「了解です」

「試し切り出来るかなー」

「分かってるとは思うが当然生け捕りだぞー伊勢ー。次、武蔵、電、吹雪、木曾、ネズミの護衛を相手しろ」

「隠れて動くというのは苦手なのだが……」

「了解なのです」

「任せて下さい、司令官」

「ネズミ相手か、張り合いねぇなぁ……」

「籠は島風、利根、大鳳、龍驤」

「はーい」

「うむ、吾輩に任せるのじゃ」

「私達、やることあるのかしら……」

「楽でえぇやん」

「そこ空母二人、ヘマしたら六ヶ月減給だぞー。加賀、大淀は指揮を任せる」

「了解」

「最善を尽くします」

「後は……言うまでもないな」

 省かれたのはこの場に居ない面子。
 普段ならば武蔵達の担当する役割はその者達の仕事なのだが、別の仕事が彼女達には任されていた。

「今や絶滅寸前のネズミだが、一片の躊躇無く絶滅させてやれ。この鎮守府はクリーンで安心安全がモットーだ」

「提督ー、雪風のアレは?」

「あー……ペットは可だ。以上! 解散!」




――――ネズミ捕り、準備開始。

・望月『物は試し』 、投下します

乙女もっちー

 眼鏡は目を守り、目から守り、目によって成り立っている。
 コンタクトは目を守り、目によって成り立つが、目から守りはしない。
 望月にとってそれは今と昔では違う理由から重要な意味を持つものの、必須であることに変わりはなかった。




「――物は試しだ、変えてみてもいいんじゃないか?」

「別に困ってないし」

「コンタクトの何が不満なんだよ」

「寝落ちしたらヤバイし、着けるの面倒だし、何か落ち着かないし……」

「別にずっとコンタクトで居ろとは言ってない。一回着けてみるだけでも嫌か?」

「何でそんなにコンタクト推すのさ」

「最後にお前の眼鏡を外した姿を見たのが何年前か分からんからだ」

「それ、何か問題あんの?」

「特に無い」

「じゃあいいじゃん別に」

 提督の私室で提督を背もたれにして寛ぐ望月。
 やんわりと想い人からの要求を無視し、彼女はスマホの画面を流れていくリズムアイコンを目で追っている。
 両手の塞がっている今なら眼鏡を外すことは可能だが、確実に腹部を抉る肘鉄が待っていた。

「なぁ望月」

「んぁー?」

「コンタクトにしたら旅行に連れてってやる」

「めんどいからパス」

「甘味」

「間宮さんのより美味いやつとかあんの?」

 大抵の艦娘を落とす連撃は虚しく外れ、大きく提督はため息を吐いた。
 幸か不幸か彼の頼みを断る艦娘などほぼ皆無な中で、望月はその例外に入る。

「……相変わらずそういうところだけは譲らんな」

「面倒なことと嫌なことはしなくていいって言ったじゃんか」

「ならせめて俺の前でだけ外すのを頑なに拒み続ける理由を教えろ」

「面倒」

「一言で片付けられて納得するわけないだろ」

「逆に何でそこまで拘んのさ……」

「今のお前の眼鏡を外した顔を見たい、それだけだ」

「別に前と変わってないって」

「そんなもの見なきゃ分からんだろ」

「あーもうその話いいから、夕飯作ってくんない?」

「……パスタかドリア」

「ボロネーゼ」

「また手間のかかるものを……作ってくるから待ってろ」

「あーい」

(……眼鏡無いと、話すの面倒になるじゃん)

~明くる日~

「明石さん、コンタクト」

「はーい、使い心地はどんな感じですか?」

「まぁ、悪く無いよ」

「それは良かったです。今度また詳しく聞かせて下さいねー」

「んぁーい」




「望月、今日はコンタクトなのね」

「如月姉は伊達眼鏡なんかしてどうしたのさ」

「たまにはこういうのも新鮮で司令官も喜ぶんじゃないかと思ったの」

「あたしは普段通りで良いと思うけど」

「じゃあ望月もそのコンタクト姿で司令官に会ってあげたら?」

「……知ってて言うのやめてくんない?」

「うふふ、そういう貴女の可愛いところ、好きよ。じゃあ行ってくるわね」

「あい、行ってらっしゃい」

(……それが出来たら苦労しないんだっての)




 目は口ほどに物を言い、眼鏡はそれを遮るフィルターである。 

――――もっちー? コンタクト持ってるよ?

 ――――コンタクトってアレだぞ? 目に入れるやつ。

――――それぐらい知ってるもん。司令官、今あたしのことバカにしたでしょー。

 ――――してない、してないからつねるな文月、肩車しにくくなる。

・矢矧&霞『取材』、投下します

有能(まともとは言っていない)

「――はぁ? 意味分かんない」

「雑誌の取材と撮影、疑問が生まれる部分は無いと思うが」

「霞が言いたいのはそういうことじゃないんじゃない?」

 やや不機嫌な霞と、特に異論は無いが自分達が選ばれた理由は気になっている矢矧。
 二人の視線を受け、提督は明後日の方向を見ながらその点について口を開く。

「読者アンケートの結果、だそうだ」

「私の目を見て言いなさいな」

「……アンケートの結果だ」

「何の、アンケート結果なのかしら?」

「……罵られたい艦娘と、調教されたい艦娘」

「アンケート考えた奴も答えた奴も死ねばいいのに」

「提督、艤装の使用許可を申請するわ」

 前者はより冷ややかな声音で、後者は満面の笑みで、怒気を放つ。
 当然の反応ではあるが、提督も断られる訳にもいかず二人を宥める。

「まぁ落ち着け二人とも。悪ふざけが過ぎるとは俺も確かに思うが、そんなアンケートが取れる程度には司令部内部も平和になったってことだ」

「それとこれとは話が別」

「平和ボケした司令部の気を引き締めてあげないと、ね?」

「内容は至ってまともな取材と撮影だから大目に見てやってくれないか?」

「何でよ」

「それは取材を受ければ分かる」

「――あの盃に誓って、その取材は受けるべきって言える?」

「あぁ、言える」

「そう……だったら私は受けるわ」

 宝物である盃に誓うと言われ、矢矧は先に折れる。
 しかし、霞は以前不機嫌な表情を崩さぬままだ。

「霞、お前にも取材を受ける義務がある。お前のこれまでの行動の結果を見届けてこい」

「……分かったわ」

「よし、じゃあ取材は明日だ。しっかりやってこい」

~翌々日~

「ほー、よく撮れてるな」

「普通よ、普通」

「まさか、手袋をはめ直す仕草をお願いされるとは思わなかったわ」

「それで、取材はどうだった?」

「……ふんっ、ちょっとは成長してたんじゃない?」

「うちの阿賀野もあれぐらいしっかりしてくれてたら能代も楽なんだけど」

「はははっ、また機会があれば会ってやれ。こういう繋がりも大事だからな」

「まぁ、気が向いたらね」

「今度はうちの阿賀野も連れていこうかしら」

(ふぅ……取材中は二人とも平常心は保てたか、今頃すごそうだな)




――――あー、やっぱりあの霞さんの目、ゾクゾクするなぁ~。

 ――――司令部にも矢矧が居れば、阿賀野をダメな子ってお仕置きしてもらうのに……。

木曜に休みが取れるので更新します

最近間隔が開くことが多くなり申し訳ありません

・五月雨『夕張さんと遊ぼう』 、投下します

川内+長月=危険

 夕張は考えた。五月雨が遊んでも被害が一切出ないモノならば絶対に安全なのではないかと。
 五月雨は思った。最近毎日夕張が呼んでくれて凄く嬉しいと。
 そして、鎮守府の他の者全員が思った。
 ――何かの拍子に鎮守府が吹き飛びはしないか、と。




「夕張さん、今日はどんなので遊ばせてくれるんですか?」

「今日はコレよ」

 夕張が取り出したのは小型の液晶と幾つかのボタンが付いた機械。
 電源を入れたその機械にはまず、“かんむすずかん”という文字が浮かび上がった。

「コレ、どうやって遊ぶんですか?」

「ここの部分にセンサーが付いてるから、調べたい艦娘にここを向けてこのボタンを押すの」

「えーっと、こう、かな?」

『夕張。試したがり艦娘。何でも試したがる。通販番組を見せると大変なことになるかもしれない』

「へー、そうなんだー」

「五月雨ちゃん? 一応断っとくけど、私は通販番組見ても大変なことにはならないわよ?」

 機械音声が読み上げる本当の夕張とは少し違う説明文。
 それを真に受ける五月雨に苦笑しながら、夕張は説明を続ける。

「これはね、今度作る皆で出来るゲームの図鑑みたいなものなの」

「図鑑?」

「えぇ、ちゃーんと五月雨ちゃんや他の皆のデ―タも入ってるわ」

 試しに自分へ向けて五月雨がボタンを押すと、画面にはデフォルメされた彼女の姿が浮かび上がり、また自動音声が流れる。

『五月雨。ドジっ娘艦娘。そのドジはいつか世界を滅ぼすかもしれない』

「私、そこまでドジっ娘じゃないです!」

「それはゲーム上の設定だから怒らないで、五月雨ちゃん」

(現実でもそのぐらい危ないのはホントだけど……)

「それでね五月雨ちゃん、出来れば不具合が無いか皆に使って確かめてきてくれない?」

「いつも夕張さんは私と遊んでくれるし、そのぐらいなら喜んで」

「じゃあ、お願いね」

『涼風。てやんでぃ艦娘。てやんでぃてやんでぃと言いながら敵と戦う』

「そんなにあたいっててやんでぃって言ってるかな……」

「大丈夫だよ涼風、これはゲームの中の設定だから」

「でも五月雨のはまんまじゃないのさ」

「違うもん!」




『比叡。ヒェー艦娘。居眠りしては飛び起きヒェーと鳴く』

「気合い! 入れて! 鳴きません!」

 ――比叡! どこでサボってやがる! 資料一枚持ってくんのにいつまでかかってんだ!

「ヒェー!?」

「比叡さん、大変そうだなぁ……」




『白露。一番艦娘。ひたすら一番になれるものを探し続けている。二番になると一日どんよりするが、またすぐ一番を探し始める』

「いっちばーん!」

「図鑑番号は七十九だよ?」

「……白露型では一番最初ー!」

(図鑑のまんまだなぁ)




「えーっと、後誰に会ってなかったっけかなぁ――きゃっ!?」

「五月雨、歩きながらそんなものを触っていると危ないわよ」

「あっ、加賀さん」

(そうだ! 加賀さんのがまだだった!)

「えいっ」

 ――五月雨は気付いていなかった。転んだ拍子に図鑑が少し壊れてしまったことに。
 五月雨は気付かなかった。世界ではないが一つの鎮守府が崩壊の危機に頻していることに。

『かガ。夜戦かんムす。や戦ヲこよなく愛シ、一日に最低十回ハこなしてイル』

「……五月雨、その機械は夕張が作ったもの?」

「はい、そうですよ。皆のデ―タが入ってるからおかしいところが無いか確かめて来てって頼まれたんです」

「そう。次からはちゃんと前を見て歩きなさいね」

「はい、気を付けます」

「――この窓、閉めておいて」

「へっ? あの、加賀さ……飛び降りてっちゃった……ここ、四階だよね? 凄いなぁ、私にも出来るかな?」




――――い、色々誤解だと思うんですけど!?

 ――――そう、逝ってらっしゃい。

――――置いていかれるのも嫌だけど先に逝くのはもっと嫌ー!




 一方、五月雨はその頃白露と仲良く頭にたんこぶを作りながら入渠していた。

次のリクエストは7時より三つ、21時より三つ受け付けます

海風、瑞穂、かも波、朝霜は未着任です

期間限定終わったけど書く予定

次のイベント艦の着任は絶望的なので期待しないで下さい

・磯風『提督、何をしている』

・飛鷹『その手を取って』

・雲龍『握りたいもの』

・天城『見初められて』

・村雨『Girl or Lady?』

・速吸『時給850円』

以上六本でお送りします

・磯風『提督、何をしている』 、投下します

コーディネートby陽炎型

 額に触れる手。想像していたよりも少し男らしく、普通に返すつもりが声が上擦る。
 今まで感じたことの無かった気恥ずかしさに距離を取ろうとするも、着なれない服に足を取られた。

「おい、大丈夫か?」

「……」

 抱き止める腕の優しさに胸が熱くなり、何も言えないまま提督の顔を見上げる。
 誰かがこう言っていた、“気付いた時にはもう手遅れ”と。

(……あぁ、確かに手遅れだ)

 そろそろ体勢が辛いと情けない言葉を吐く目の前の男が、私は堪らなく――。

「暫くこのままで居させてくれ、今とても気分が良い」

 他の誰かがこうも言っていた、“あの男を困らせるのは楽しい”と。
 確かにこれは少し楽しい。

「――提督、この服は、その……」

 また、言葉に詰まる。
 これは私も知っている、“提督はお世辞を言わない”。
 この磯風をここまで臆病にさせるとは、やはり提督はただ者ではない。
 夜の散歩は充実した時間だった。
 記憶はあやふやだが二人で酒を飲んだ日もとても気分が良かった。
 もっと、もっと私は――。




「今頃磯風、うまくやってんのかしら?」

「心配なら執務室に聞き耳たててきたらえぇやん」

「絶対やらないわよ」




 規則正しい寝息と、幸せそうな寝顔。
 ギュッと服を握って放さないのが愛らしく、そういえば磯風の姉妹艦にはこの癖がある者が多いなと思い至る。
 自分に似合う可愛い服とは何か、自分に似合う髪型とは何かを悩み、姉妹や仲間の力を借りて精一杯着飾った彼女は普通の女の子であり、素直に可愛いと思った。

「にしても寝不足で寝落ちとは、この落ち度は不知火のがうつったか?」

 頬を軽くつつき、暇を潰す。
 時折身をよじるが、起きる気配はない。

「ん……笑って……な?」


「寝言、か」

 つつく、つつく、つつく、つつ――突く。

「寝相は……時津風……だ、な……」




 その日、磯風は提督の指揮の元で戦い、最後は敵をアッパーで沈める夢を見た。

・飛鷹『その手を取って』、投下します

自然体で周りに気を配るのは難しい

 私が不覚にも惚れてしまった相手は口が悪い。
 口喧嘩してしまうことも多々あり、デ―ト中に一切会話が無い時間が出来ることも少なくない。
 切っ掛けはほんの些細なことで、次の日には忘れている様なレベル。
 ――そんな関係が、私にはちょうどいいらしい。




「……」

「……」

 無言で劇場までの道を歩く二人。これからオペラを見に行くところなのだが、どちらからも楽しみにしているという様な雰囲気は見受けられない。
 互いに視線を合わそうともせず、ひたすらに歩を進めていく。

(はぁ……何時もより気合い入れたっていうのに、無反応とか冗談じゃないっての)

 イブニングドレスに身を包み、暁がなりたいと願う一人前のレディーそのものといって差し支えない気品を纏(まと)っている飛鷹。
 髪や化粧、その他諸々の準備を含めると、彼女はこのデ―トの為に実に六時間も費やしていた。
 それ故に、鎮守府の入口で合流してからタクシーに乗り、渋滞を避け近場で降りて歩き、劇場が視界に入った今に至るまで、およそ一時間半もの間無反応というのは飛鷹には色々な意味で耐え難かった。

(……何時もなら、馬子にも衣装ぐらいは言ってくれるのに)

 拗ねた様な、寂しげな視線を隣を歩く男の横顔に向ける。
 想いが通じ合っていればいついかなる時でも相手の考えが全て分かるなどというのは幻想であり、そこから何を考えているかは彼女には読み取れなかった。

「――手」

「きゅ、急に何よ」

「いいから手出せ」

 訳も分からぬまま言う通りにした飛鷹の手を取り、提督は再び歩き始める。
 そして少し歩くと、すぐに彼女にも何故彼が今そんなことを言い出したのかが理解できた。

「落ちそうになったらちゃんと支えてよ?」

「いいから前見てしっかり歩けアホ」

 何てことはない普段通りのやり取り。しかし、だからこそ彼女には嬉しくあり、繋いだ手をギュッと握りながら自然と笑みを浮かべるのだった。




――――気の利いた言葉は出てこんし慣れない靴と服のせいかお前の歩くスピードは遅いし変なのが居ないか周りは気になるしお前は人の顔見て前見てないし大変だったんだよこっちは。

 ――――だったら階段以外でも手を握るなり腕を組むなりすれば良かったじゃない。

――――……うるさい、察しろ。

 ――――んー? 何々?

――――マジでやめろ、踏み外して二人で転げ落ちかねん。

「大鳳」

「どうしたの提督、眉間に皺なんて寄せて」

「……手続きが面倒って理由で着任了承の書類がうちだけ免除になったって通知が来たんだが、これまた来るってことだよな?」

「……寮、増築した方が良いわね」

「……だな」




――――近日新規艦娘数名着任予定。

・雲龍『握りたいもの』 、投下します

ニギニギ

 握る。手綱を握る。把握する。握り潰す。人心掌握。
 “握る”という言葉にも多様性が存在する。
 ――では、彼女が真に願う、待ち望む、“握る”とは何なのだろうか。




「俺が悪かった。悪かったからこの方向性は勘弁してくれ」

「美味しくなかったの?」

「不味いとは言わない。が、好みじゃない」

 イチゴ、キウイ、オレンジ、桃、メロン。
 フルーツの盛り合わせの様なラインナップが盛り付けられているのは器ではなくシャリの上であり、皿の上には色鮮やかな寿司が並んでいた。

(ちょっと珍しいのが食いたいとか言うんじゃなかったな)

「出来れば、どういうものが食べたいか言って」

「そうだな……炙りとか漬けとかそういうタイプの寿司にしてくれ」

「うん、分かった」

「それにしても、本当に寿司まで覚えてくるとは思わなかったぞ」

「握るの、好きだから」

(赤城が連れてきた時は多少心配もあったが、もう大丈夫だな。別の意味で心配はあるが……)

 最初は無機質でどこか儚い表情を浮かべていた雲龍。良くも悪くも刺激的な毎日に、柔らかな笑みを浮かべるちょっと天然な優しい艦娘となっていた。

「――提督」

「何だ?」

「お願いを、聞いて欲しいの」

「艦載機か? それとも包丁か?」

 今までは大抵その二つだったのだが、雲龍は首を横に振り違うと伝える。
 思えばその二つしかねだられたことが無かった為、提督は何を望んでいるのか見当が付かず、首を傾げた。

「――手」

「手?」

「手を、出して」

 提督は言われるがままに手を前に出し、彼女が動くのを待つ。
 ジッとその手を見つめた後、雲龍はただ静かに彼の手を握った。

「ずっと……ずっとこうして握っていられたらいいのに」

「……なぁ、雲龍。改めて聞くが、俺はただの節操無しの強欲でワガママな人間だ。それでもいいのか?」

「私は、もう多くを貴方に貰ったもの。他の誰でもない、貴方の艦娘で居させて欲しい。嫌だと言っても、もう握って放さないから」

「その頑固さは、誰に似たんだろうな」

「さぁ、誰かしらね」




 彼女の“握る”は、思いを伝える手段であり、願いそのもの。
 彼女の手から伝わった思いはとても暖かく、大切なモノを守りたいという強さで溢れていた。




――――ここを握ればいいの?

 ――――そこは握らんでいい!






 ――――最後に見たあの子の顔は、笑顔でした。



 深海棲艦との戦いは終局を迎え、新たな戦火の種火も種火のまま消えてゆき、歪だった艦娘と人の在り方は正しくなり始めようとしている。
 しかし、その正しさを万人が受け入れられる訳ではない。
 そもそも“正しいこと”や“正義”の基準など曖昧で、立場と思想と価値観の違いで簡単にひっくり返るものだ。
 清濁合わせ飲み、自分を貫き通す覚悟があれば、その行いが誰からも正しくないと思われたとしても、間違いだと断ずることは出来ない。
 ――つまり、これから繰り広げられる全ての出来事にも何一つ問題は存在しないのである。




「……生憎と、俺にこっちの趣味は無いんだが?」

「これを機会に目覚めてみませんか?」

「遠慮させてくれ」

 執務室の床に組み伏せられた提督と、笑顔の香取。
 あまり緊迫した雰囲気に感じられないように思えるが、このまま彼を殺すことなど、彼女には容易いことだった。

「それで? そちらさんの要求は何なんだ?」

「綺麗すぎる池には住めないモノも存在すると知って欲しいそうです」

「別に今だって苔ぐらい生えてるだろ」

「濁ってうっすらと泳ぐ魚が見える程度が理想でしょうか」

「今だって十分濁っているのを特殊なフィルターで誤魔化しているだけだってのに……まぁ、そっちは今回は関係無いんだろうがな」

「ともかく、こちらを着けて頂けますか?」

「何だよ、それ」

「ふふっ、周囲に被害が出ない安全な爆弾です」

「周囲には、か。そりゃ安心だな」

「あら、もう少し情けない反応を期待したのですが」

「残念ながら俺が怖いのはアイツ等が居なくなることだ、俺が死ぬ分には別に怖くない。恨まれるのは若干怖いが」

「……本当に、羨ましい限り」

「羨ましがる必要なんて無いさ。お前ももう――」

「ね、子日、今日は布団に籠る日~……」

「初春、アレをどうにかしなくていいのか?」

「放っておけばよいわ。明日には落ち着いておる」

(提督のバカ提督のバカ提督のバカ提督のバカ提督のバカ提督のバカ提督のバカ……)

 風切り音が絶え間無く聞こえる初春型私室。
 本日初霜は待機の日。

 ――鎮守府正面海域。

「出迎えがあの大和とはな、相手にとって不足は無い!」

「あらあら、長門ったらはしゃいじゃって」

「油断するな二人とも、あの元帥艦隊に退けを取らぬと言われる鎮守府の艦娘達だ」

「そんなこと言って、那智姉さんだって憧れの艦娘に会えて興奮してるくせに」

「う、うるさい!」

 大和、赤城、伊勢の三人はその会話を聞きながら、少し予想していた雰囲気と違うことに顔を見合わせる。
 しかし、そこで気を緩める程彼女達も甘くはない。

「大和型一番艦大和、推して参ります!」

「私の認知度ってどのぐらいなんでしょうか?」

「まっ、適当にやりますかー」




 ――出迎え艦隊、戦闘開始。

 ――鎮守府内某所。

「目的は鬼の確保、ないし匿っている証拠の入手。各隊一・三のフォーマンセルにて作戦に当たれ。以上、状況開始」

 闇に紛れる数十もの影。今までここへ潜入した部隊とはその手際が一線を画していた。
 潜入される前に察知出来ず、潜入されてからその事態を察知したのは今回が初めてのことだ。
 ――しかし、それはあくまで防衛機能が察知出来たかという話でしかない。

「っ! 散れ!」

「ふむ……やはりこういう役回りは性に合わん」

 堂々と道の中央に構えていた武蔵。遭遇した部隊は彼女を囲むように散開し、各々特殊な形状をした武具を取り出す。

「ほぅ、艦娘と人の混合部隊とは珍しいな」

「――シッ!」

「むっ?」

 左後方から放たれ、腕に絡み付く鎖。そんなもので拘束されはしないと言わんばかりに武蔵は腕に力を込めるが、キツく食い込むだけでほどけはしなかった。

(対艦娘用装備、といったところか。これは流石に他の者達も手を焼くかもしれんな)

「ふっ……ふふふっ……面白い、戦艦武蔵、久々に本気で暴れさせてもらう!」




 鎮守府内防衛隊、戦闘開始。

 ――???

「あっちはうまくやってるかなー」

「うまくやってるに決まってんじゃん。だって私達の鎮守府だよ?」

「青葉が心配なのは“スクープ! 一夜でまたも半壊した鎮守府!”とかになってないかなーっと」

「きっと大丈夫だって、今回は加賀さんとか大淀さんとかストッパーが――そこに隠れてる奴、出てきなよ」

 差し掛かった廊下の曲がり角、そこからゆらりと現れた艦娘。
 右手には小型連装砲、左手には何やら文字の書かれた小刀の様な物を手に持ち、完全に話し合いなど通じない雰囲気を醸し出していた。

「うわぁ……よりによって一番やりにくい相手じゃん」

「青葉もあんまり戦いたくありませんねー……」

「――誰であろうと、この先は通しません」




 隠密部隊、戦闘開始。

「総員、作戦行動に入りました」

「そう、後は報告を待つだけね」

「ここは私一人でも問題ありませんし、提督のところへ向かっても大丈夫ですよ?」

「総指揮を一任された以上、ここを離れる訳にはいかないわ」

「そうですか。作戦が終了したら、また執務室が賑やかになりそうですね」

「……提督の隣は譲れません」

「私も、少し本気を出します」

 ――ちょっとー、お守り組のこと忘れないでくれない?

 ――間宮さんと伊良湖ちゃんのお菓子で今は皆大人しいです。

 ――長引きそうなら蒼龍と瑞鶴の裸踊りでどうにかします。

 ――ちょっと飛龍!?

 ――何で私まで!?

「……異常無し」

「はい」




 作戦、今のところ順調に進行中。

「薙ぎ払え!!」

「ってぇー!!」

「あら、あらあら」

 轟音が唸り、空気が震え、衝撃が絶え間無く海を揺らす。
 一人で二人を相手取っている大和の砲は、以前霧島と戦った時とは性能がまた向上しており、安定性と速射性が増していた。
 対する長門と陸奥は、真っ直ぐ敵だけを見据える姉とそれを柔軟に補佐する妹という連携の取れた動きを武器に対抗していた。
 一対一であれば大和が十割勝てる勝負だが、現状は七・三。不確定要素次第では一気に形勢を逆転されるかもしれないという状況だ。

(負い目が無い、真っ直ぐな戦い方……どういう形であれ、彼女達にも信念があって今この場に居るということですね)

「――なればこそ、ここで大和が負ける訳にはいきません」

「……陸奥」

「えぇ、分かってる」

 長門と陸奥の装甲を震わす“戦艦大和”の静かながら圧倒する様な気迫。
 砲撃にはより重みが増し、攻撃に転じる隙を与えない苛烈な攻めを見せ始める。

「くっ……だが、私達とて死地を潜り抜けて来たのだ!」

「この程度で退いてちゃ、ビッグセブンの名折れよね?」

 至近弾には目もくれず、多少の被弾をモノともせず、主砲と副砲、機銃が撃てる限り戦うという不退転の意思を二人は見せる。
 止めるには轟沈寸前まで追い詰めなければならない現状――だからこそ、彼女は闇に紛れてその隙を窺っていた。

「っ!? 陸奥!」

「えっ――」




 彼女達が最後に見たのは、一切脅威も恐怖も敵意も感じさせない、気にも留めていなかった三人目の敵だった。

「最初から降参は、してくれませんよね?」

「そんなことは出来ん」

「当然! こんな機会滅多に無いもの!」

「……仕方ありません。一航戦赤城、参ります」

 実のところ、艦娘とこうして真っ向から戦うことになるのがかなり久しぶりな赤城。故に、一つだけ心配があった。
 それは――。

(どのぐらい手加減すればいいのかしら?)

 ――ん゛にゃー!?

 ――真上だと!?

(この後お夜食とか出るんでしょうか……)

 ――那智姉さん! 対空! 対空射撃!

 ――くっ、動きが早すぎる……。

(お茶漬けとかいいですね)

 ――最初からこれだけの数を飛ばしてたっていうの? こんな暗い中で!?

 ――秘書艦加賀以外も空母は全員艦載機という名の魔物を飼っているとは聞いていたが、これ程とは……。

(あっ……そういえば今日は間宮さん達もう寝てましたね……残念です)

 ――カツカレー……足りなかった……かな……。

 ――むしろ……食べ過ぎ……だ……。

(電ちゃんなら作ってくれるでしょうか……)

「――? 第二次攻撃隊は……いりませんよね?」




 赤城、夜食はおにぎりに決めた模様。

続きは年内に、新規艦加入はもうしばらくお待ちください

大変申し訳ありません…年始は書きます、墨塗ります、凧あげます、餅突きます、電回ります、大鳳脱ぎます、嵐が来ます

「提督、明けましておめでとう」

「あぁ、明けましておめでとう大鳳」

「……それだけ?」

 新年らしく着物を着て、普段より大人びた雰囲気の大鳳。
 小首を傾げる仕種も子供っぽさは無く、どこか女性らしさを秘めていた。

「それだけって、何のことだ」

「……お年玉」

「子供かお前は。それより大鳳、若干顔が赤いが大丈――ぶっ!?」

「おーとーしーだーまー」

「浦風! 浦風ぇっ! ちょっとこの酔っ払い引き取りに来い!」

「ふふっ、つかまえた~」

 ていとく は ひっしにもがいている!

 しかし、ぬけだせなかった。

 たいほう の きくずれる!

 たいほう の いろけ が あがった。

 ていとく は さらにひっしにもがいている!

 しかし、たいほうにしっかりとおさえこまれてしまった!

「んー……あつい」

 たいほう の ゆうわく!

 たいほう の いろけ が グーンとあがった!

「浦風ー!」

 ていとく の たすけをよぶ!

 しかし あたりにおおごえがむなしくこだまするだけだった……。

「……わたしのこと、きらい?」

 たいほう の なみだめ!

 こうかはばつぐんだ!

(……最近相手してやれてなかったし、今日ぐらいはいい――)
「――提督さん?」

 押し倒し返した体勢、着崩れて涙目の大鳳、半分脱ぎかけの提督、若干頬が赤らんでいる浦風、導き出される結論は――。

(どう転んでも俺にはハードそうだな……)

 ていとく は めのまえがまっくらになった……。




――――提督、新年早々やつれてるけどどうしたの?(記憶無し)

 ――――……伏兵が居た。

――――う、うちが栄養あるもの作るけぇしっかり食べて元気出すんじゃ!(記憶あり)

甘酒で酔った大鳳、酔わせて酔ったフリの浦風、年始はスッポン鍋の提督でした

「タコアゲ、ヤリタイ」

「オレ、上ガリタイ」

「子供ネ二人トモ……マ、マァ私モ付キ合ッテアゲテモイイケド」

「リトは素直じゃないですネー」

「済マナイガ、頼ム」

「別に気にしなくていいわ、暇してたし」

「先輩先輩、蛸って上がるものなの?」

「ヒィッ!?」

(そういえば昔蛸に絡み付かれて蛸嫌いになってたわね、瑞鶴……)

「レキちゃん、どんな凧にしたの?」

「磯波」

「……え?」

「磯波ガ鏡ノ前デ――」

「ひやぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

「ほっぽちゃん、楽しい?」

「ウン、楽シイ!」

「リト、もっと風をうまく掴むデース」

「言ワレ、ナクテモ……分カッテルワヨ!」

(これは暫く見てるだけで楽しめそうネー)




 尚、スイカクがこっそり上げた凧は烏が何故か群がった模様。

「おっそーい!」

「羽子板で土煙上がるような動きするアンタの方がおかしいのよ……」

「はいはーい、曙ちゃんも罰ゲームね」

「く・そ・提・督・ラ・ブっと。うん、良い感じに書けたかな」

「ちょっと時雨! 何てこと書いてんのよ!?」

「何って、本当のことを書いたまでさ。そのまま提督のところに行ってみたらどうかな?」

「しぃぃぃぐぅぅぅれぇぇぇ……」

「シャッターチャンスktkr!」

「っ!? 何勝手に写真撮ってんのよこのバカなみー!」

「朧的には、力作」

「すっごーい、本物の蟹っぽい!」

「筆、くすぐったかったよぉ……」

(いやー新年早々良いもの見せてもらったなー新作は潮ちゃんのちょっとえっちぃのにしよっかねー)



 後日、秋雲をフル装備で追いかける潮の姿が鎮守府で見かけられたそうな……。

・天城『見初められて』 、投下します

天城越えの手順、まず学ランを着て前を開けます、そしておもむろに眼鏡を装着し、テ・イ・ト・クと唱えましょう

きっと明石が修理してくれることでしょう

「――お見合い、ですか?」

「……あぁ」

 執務室に呼ばれた天城に告げられたのは、自分への見合い話だった。
 艦娘に見合い話を持ち込むなど普通ならばあり得ないことだが、相手が相手である為、提督も眉間に深く皺を刻みながら彼女に話すことを決めたのだ。

「当然ながら一般人じゃなくて相手は提督だ。たまたまここへ訪れた時にお前を見かけたらしくてな、その時に……まぁ……一目惚れ、したらしい」

「は、はぁ……」

 突拍子も無い話に天城は困惑した表情を浮かべながら、提督の次の言葉を待つ。

「一応念のために言っておくが、断りたいなら断っていい。それと、相手のことは俺もよく知ってる。生真面目を絵に描いたような奴でな、話を聞いた時は耳を疑ったぐらいだ」

「そんな方が、どうして私を?」

「お前、たまにその辺の建物の裏とかで歌ってるだろ。そこに出くわしたらしくてな、そのまま彼の言葉を伝えるなら、“女神だと思った”そうだ」

「め、女神ですか!?」

 女神と言われ、天城は目を白黒させる。
 言った提督も複雑な心境なのか、そこで一度話すのを止めた。

「えーっと……私はどうすればいいんでしょうか?」

「お前が会ってもいいと思うなら、会ってみるといい。気に入らないなら断ればいい話だ。そもそもそんな気が無いなら見合い自体を断っても構わん」

(お見合い、かぁ……)

「――会うだけ、なら」

「……そうか」

 提督としては断って欲しかったところだが、艦娘の意思を最大限尊重するのが信条である以上、天城が行くと言うなら止めるという選択は彼には無かった。
 ――こうして、前代未聞の艦娘と提督の見合いというものが実現することとなったのだった。

「あ、ああああ天城さん! こうしてお話出来て光栄です! 自分は奥手提督といいます!」

「あ、あはは、ありがとうございます」

(悪い奴ではないんだが……)

(おぉおぉ顔に出とるのぅ、愉快愉快)

(卯月ちゃんにバレたらお説教されちゃうだろうなぁ)

 見合いの席に同席することになったのは、当事者二人に提督、元帥、潮の五人。
 艦娘と提督の色恋沙汰が大好きな老人とそのお付きと被害者達という組み合わせだ。
 奥手提督は見るからに体育会系で、その勢いと体格に天城は若干引き気味になっていた。

「天城さん!」

「は、はい」

「す、す……」

「す?」

「す――好きな歌は何ですか!?」

「えーっと、『ヒカリ』、『空のリフレイン』、『翼』などでしょうか」

「り、りふ? 残念ながらどれも存じ上げませんが、さ、さぞ良い歌なんでしょう!」

 必死な奥手提督、終始苦笑いの天城、こめかみを抱える提督、肩を震わせる元帥、LINEで実況中の潮。
 見合いの席に選ばれた少しお高めな料亭の雰囲気とはかけ離れた空気に、最初に動いたのは元帥だった。

「さて、儂としてはこの縁談がうまくいってくれることを期待しておるのだが、どうじゃお二人さん?」

「お会いして確信しました、やはり天城さんは私の理想の女性です!」

(うーん……悪い人には見えませんけど、そういう風にはちょっと……)

 どう断ろうかと悩む天城、その表情から提督が口を挟もうとした次の瞬間、襖が急に開き一人の艦娘が乱入する。
 その表情はいつも通りそのものだが、手には包丁が握られており一瞬場に緊張が走ったのを誰もが感じ取った。
 そして、いつも通りの口調で一言言い放った。




「天城は私の妹だから、ダメ」

「雲龍姉様」

「何?」

「お見合い、正式にお断りしてきました」

「そう」

「あの方には、少し悪いことをしてしまいました」

「どうして?」

「最初からお断りすることになるだろうとは思ってましたから」

「なら、気にしなくていいと思う」

「でも、包丁持って脅すのはやり過ぎですよ、雲龍姉様」

「脅してない、たまたま手に持ってただけ」

「もう、姉様ったら……でも、何だか少し嬉しかったです。ありがとうございます、雲龍姉様」

「――するなら、提督とすればいい」

「へ?」

「お見合い」

(提督とって……姉様的にそれはありなんでしょうか……)

 つい先日ケッコンカッコカリをして心なしか幸せオーラを漂わせている姉の単純な様で複雑怪奇な思考に悩まされつつも、炬燵で三人で過ごす時間は確かに失いたくないものだと再認識するのだった。




――――……ずいかくしぇんぱ~い……むにゃむにゃ……。

 ――――この子の面倒を見るのも、一人だと大変。

――――ふふっ、確かに心配ですね。

~奥手鎮守府~

「今回は残念じゃったのぅ、まぁお前さんなら良い相手が必ず見つかるはずじゃて」

「爺さんの言う通りだ、お前はもう少し視野を拡げて周りを見てみろ」

「周り……ですか……?」

 断られて意気消沈している奥手提督の元を訪れた二人。
 その二人に言われ、彼は自分の周囲に居る女性の顔を思い浮かべる。
 未だに面と向かって会話が出来ない秘書艦羽黒、常に一定距離を保ち決して近付いて来ない不知火、話し掛けると十歩飛び退く名取。

「……魅力的だと思える者は居ますが、自分に縁があるように思えません」

「ほぅほぅ、魅力的だと感じる艦娘はここに居るんじゃな?」

「……わざとらしいぞ、爺さん」

 執務室のドアの向こうに聞こえるように声を強めた元帥に呆れた声を漏らしつつも、提督自身も心の中で頑張れよと三人の艦娘にエールを送るのだった。




――――艦娘は提督に似るなんて迷信があるが、強ち間違ってないのかもしれんな。

 ――――雲龍姉様が自由過ぎるのは提督に似たのでしょうか?

――――俺はあそこまで自由人になった覚えはない。

「とおぉぉぉ~」

「熊野、その掛け声気が抜けてタイミングズレそうなんですけどー」

「し、自然に出てしまうのですから仕方ありませんわ」

「集中しないとホントに手を突かれるよ鈴谷」

「これがホントのお手突き、ですわ」

「ちょっと三隈~笑わせないで――」

「とおぉぉぉ~」

「~~っ!? いっったいし~!」

「ご、ごめんなさい鈴谷。大丈夫ですの?」

「ボク、明石さんに高速修復軟膏貰ってくるよ」

「三隈ももがみんについていきます」

「正月早々こんなのマジであり得ないんですけどぉ……」

「よ、よそ見をした鈴谷もいけませんのよ?」

「変な声出す熊野が悪いに決まってんじゃん。うっわ、腫れてきたし」

「……本当に、ごめんなさい」

「――ぷっ」

「す、鈴谷?」

「この程度で腫れる訳無いじゃん。鈴谷の演技力も大したもんでしょ?」

「演技……そうでしたの。大したことなくて、本当に良かったですわ」

「へっ? いや、そ、そうだし、杵で百発殴られたって鈴谷は平気だよ」

「――じゃあ、試してみてもよろしくって?」

「・・・え?」




「軟膏貰ってきた……よ?」

 ――とおぉぉぉ~!

(三隈ももがみんとあんな風にもっと仲良くなりたいですわ……)

 ――ちょっ、うわっ!? 頭にフルスイングはマジでヤバイんですけどぉ!?




 実は本当に腫れてて箸が握れずあーんされる鈴谷は、また、別のお話。

「ハラショー、これはいいな」

「だかりゃあ、あかちゅきが一番ってこちょよね?」

「いかずちだもん……かみなりじゃないもん……」

 平気なヴェールヌイ、完全に呂律の回らない暁、涙目で普段は見せないような弱気な姿を見せる雷。
 駆逐艦娘に甘酒を振る舞っていた間宮が気付いた時には遅く、食堂は大惨事になっていた。
 実は厨房もこの時甘酒を味見した伊良湖の暴走で大変なことになっていたのだが、間宮は知る由も無い。

「あっ、陽炎ちゃんに吹雪ちゃん! 二人は平気――」

「なーにー? あたしとーヒック、おはなししたいのー?」

「はい! 吹雪は平気れす!」

(じゃ、ないみたいね……他に大丈夫そうな子は……)

「んふふっ、酔うと皆こんな風になるのね、んふ、んふふ」

「ビスマルク、重いよ、起きてってば……」

(早霜ちゃんは大丈夫……大丈夫なのよね、アレ。レーベちゃんは何故かビスマルクさんに押し潰されかけてるし助けないと)

 あたふたする間宮さんの死角、そこで今行われようとしているある遊び。
 それは――。

「ぐへへーよいではないかよいではないかー」

「や、やめてよぉ漣ちゃん……」

「ほんのり上気した肌、嗜虐心をそそる涙をうっすらと溜めた目、着物の緩んだ胸元から見える豊かな双丘、これを放置する手があるか? 否、否ですよ潮!」

(ダメだ……漣ちゃん完全に酔っちゃってる……)

 ※平常運転です。

「秋雲ちゃん、目が怖いのです……」

「はぁ……はぁ……ちょこっとだけ、ちょこっとだけスケッチのネタにする為に回すだけだから……」

「はにゃー!?」

 甘酒が苦手で飲まなかった為酔わずに済んだ電。しかし、それが却って彼女に不幸を招いた。
 ある種のリミッターを外す作用が例の物には入っているらしく、今の秋雲から逃げるには戦艦クラスの力が必要だったのだ。
 そして、後日イラストを描こうとした彼女は当然以下略である。




 主犯卯月:背中に辛子を塗られ、六十度の熱湯で軽く茹で兎にされる。尚、全然懲りていない模様。
 共犯時雨&谷風:節分の豆を艦娘全員分(提督から見た)年齢だけ小袋に分けていく作業の手伝い。尚、金剛の袋に百以上入れてあげた模様。
 潮&電本:検閲により販売差し止め。

一月は正月です

タイトル変更

・村雨『彼女の見付けたもの』、投下します

事務員は五月雨

 それは明確にそうだと思わせる決定的な要因が存在するものではない。
 ふとした時に、何となく、個人の価値観に基づいて、その人物はそうであると判断されるものだ。
 故に、彼女がそうなったと提督が判断したことに、全ての人間が納得するような答えは存在しないのである。




「――“村雨の、ちょっと良いとこ、見せたげる”、だったか?」

「ちょっ、やめて、思い出すと恥ずかしくなっちゃうからー」

「まぁ確かに見せてはもらったが」

「……今思うと、提督って結構変態だったり?」

「誰が変態だ、艦隊戦の話に決まってるだろ」

「ふふっ、ちゃんと分かってるってば」

「どうだかな」

「――ねぇ、提督」

「何だ?」

「艦娘に関する法律が出来るかもしれないって、ホント?」

「……そういう動きがあるのは、確かだ。艦娘を人間と変わらない存在として認識している人間が増加している一方で、やはり違う存在だと主張する人間もいる。戦時化とは違って今や街中を艦娘が好きに出歩くのが黙認された現状で、国としては何か大きな問題が無い今のうちに作ってしまいたいんだろう」

「提督は……どう考えてるの?」

「悪いことすりゃ裁かれる、何もしてなけりゃ裁かれない、例えそうなったとしても何の問題もない。――表向きは、だろうけどな」

「……」

「それで? こんな話を俺にしたのはどうしてだ?」

「ふふ~ん、ヒ・ミ・ツ」

「ほぅ、俺に隠し事か」

「乙女に秘密は付き物よ?」

「乙女って程ウブでもな――痛っ!?」

「ん~?」

「ムラサメハオトメダナー」

「よろしい!」

(はぁ……やりたいことを見付けたのを喜んでやるべきなのか、わざわざそんな地雷源みたいな場所に飛び込むのはやめろと言うべきなのか……まぁ、後者を俺が言うわけにはいかんか)

「提督」

「ん? 何だ?」

「――村雨の、ちょっと良いとこ、また見せたげる!」




 ――はいはーい、こちら村雨艦娘相談所よ。今日はお姉さんにどんな相談かしら~?

・速吸『時給850円』 、投下します

バイト艦速吸

「提督さん、仕事を下さい!」

「アイドルマッサージ屋喫茶店メイド喫茶パン屋服飾万屋夜警監視員イベント運営委員その他好きなものを選べ」

「一番時給の良い場所でお願いします!」

「いや、うちに時給制度は無いんだが……」

「じゃあ、賄いのあるところで」

(一体どういう生活してきたんだコイツ……)

「とにかくまずは喫茶店に行ってこい、責任者の金剛には俺から話を通しておく」

「ありがとうございます! ところで提督さん、段ボールと新聞紙ってどこでもらえますか? ジャージ一枚だと流石に寒くって……」

「・・・ちょっと待ってろ。荒潮、至急執務室まで来い。繰り返す、荒潮は至急執務室まで」

「あっ、後この辺で食べられる野草がいっぱい生えてるところとか知りませんか? それと、寮って家賃はどのぐらいなんでしょう?」

「野草については詳しい奴が――ってそうじゃない。お前にはまず一般的な生活ってのを教えてやる」

「は、はぁ……」




 仕事の前に衣食住の問題が無いことや施設は自由に使用出来ること、補給用燃料は誰も狙っていない等の説明に小一時間かかりました。

「よろしくお願いします!」

「よろしくデース」

「カレー担当の比叡です! カレーの事なら任せて!」

「フロア担当の榛名です。分からないことがあれば榛名に聞いてくれれば大丈夫です」

「経理と会計担当の霧島です」

「それで、私は何をすればいいんでしょうか?」

「榛名と一緒にフロアをお願いしマース」

「了解です!」

「後、一つ聞いておきたいのですが、貴女は何か特技は持っているかしら?」

「特技ですか? 特技なのかはちょっと分かりませんけど――」




「三百八十七グラム」

「こっちはどう?」

「二百四十五ミリリットル」

「……えぇ、どちらも量ってみたけど正しいわ」

「ひぇー……」

「面白い特技デスネー」

「元々は給油して減った分をすぐに確認出来るようになればいいなって思ったのがきっかけなんです。量り売りしてたので」

「は、量り売り? 燃料の、ですか?」

「結構需要はあったんです。戦争が終わって廃業になっちゃいましたけど……」

「ちょっと地味ですけど、これはこれでありかと」

「グラムでしっかり管理出来るのは良いデスネー」

「お客様に合わせて量を調節しやすいです」

「あのー……」

「どうしたデース?」

「この特技で賄いが豪華になったりしますか?」




 速吸の賄いはカレーにトッピング三品まで自由となりました。

今回は8時から三つ、19時から三つリクエストを受け付けます

未着任は瑞穂、高波、朝霜、グラーフ、海風です

・春雨『始めてのお出かけ』

・五月雨『雨』R-18

・陸奥『本気の遊び』R-18

・鳳翔&葛城『二日灸』

・間宮『ご飯を食べてくれるということ』

・赤城『ある冬の日のこと』

以上六本でお送りします

R-18って一番先のみが採用でそれ以降は繰り下げじゃなかったっけ?

>>276
自分で書いてて自分で忘れてました…

今回は前回ほど遅れないと思うので朝潮『いぬのきもち』を追加します

次回からは繰り下げで対応します

ご指摘ありがとうございました、以後気を付けます

・春雨『始めてのお出かけ』 、投下します

春雨ノ…海ニ…沈ンデ…イキナサイ(グルグル目)

 トレードマークの白い帽子を片手でおさえながら、彼女は彼の元へと駆けていく。
 待ち合わせはヒトヒトマルマル、鎮守府を出たのがヒトヒトマルマル。
 どこでもドアでも持っていない限り、鎮守府の前が待ち合わせ場所でもなければ確実に遅刻である。

「――し、司令官! 遅れてごめんなさい!」

「別に急ぐ用も無いし構わんさ。どっかの古鷹型みたいに三時間寝坊されたら流石に怒るがな」

「服がなかなか、決まらなくって……」

「とりあえず一回息を整えろ、通行人が思わず振り返る走りっぷりだったぞ」

「だって、楽しみに、して、たから……ふぅ~……」

 深呼吸をしてようやく落ち着いたのか、春雨は乱れた髪を手で軽く整え、にこりと微笑む。
 そこにある真っ直ぐな好意は誰から何度向けられても気恥ずかしくなるもので、提督は視線を逸らし、代わりに手を差し出した。

「行くか」

「はい!」

 飛び付くように握られた手。“白露型は犬だ”と誰かが言っていたのは強ち間違いでもないと思いながら、白い帽子に視線を落とす。
 今日はその中に住人は居らず、完全に二人っきりだ。

「――? 司令官、どうしたんですか?」

「いや、なんでもない。それより今日はどこへ行きたいんだ?」

「あの、実は前から気になっていたのになかなか行く機会が無かったお店があって……」

「そうか、じゃあとりあえずそこから行ってみるか」

 淡い桃色のセーター、赤のチェックスカート、可愛らしいショルダーポーチ。
 きっとそれらのどれか一つには二人で選んだものが含まれており、お気に入りなのだろうと提督は考える。
 ここには居ないその子の“ドウダ、可愛イダロ?”という声が聞こえた気がして、彼はなんとなく帽子をぴょこぴょこさせながら横をついてきている春雨の頭を繋いだ反対側の手で撫でた。

「ひゃうっ!? 急にどうしたんですか?」

「いつもは撫でようにもアイツが居るから今撫でてみた」

「びっくりしちゃいますからいきなりはやめてください」

「その割には嬉しそうだが?」

「それは……そうですけど……」

 帽子を少し下に引っ張り、目を隠す春雨。
 そんな仕種も可愛らしいなと思いつつ、目的地への道中そんな他愛もないやり取りを彼は繰り返すのだった。

「――なぁ、春雨。ここか? 本当にここか?」

「はい、ここです」

「そ、そうか……」

 思わず念入りに確認をしたくなる店構え、内装、メニューの数々。
 おおよそデートには似つかわしくないその店で、春雨は目を輝かせていた。

(春雨丼? 春雨巻き? メニューから料理の想像が出来ん……)

「司令官はどれにしますか?」

「えっ、あぁ、うん、春雨はどうするんだ?」

「悩みましたけど、やっぱり春雨丼と麻婆春雨に決めました」

(何をどう悩んだか具体的に教えてくれれば参考になりそうなんだが、さっぱり分からん……)

 こういった場面で同じものを頼むのがタブーであることぐらい提督も重々承知している。
 しかしながら、挑戦し尚且つ春雨も喜びそうなメニューがどれかなど彼には見当も付きそうになかった。

(えぇい、こうなったら適当に指して決めてやる!)

「じゃあ――これで」




「お待たせしましたー春雨丼に麻婆春雨、春雨焼きでございまーす」

 注文した料理がテーブルに並び、春雨は姉妹に見せるのだとスマホを構える。
 その撮影の間に提督は料理の材料などを推察する。

(春雨丼は春雨を中華餡と絡めてご飯の方にも調理が施されてる感じか。春雨焼きは……何だこれ、モチーフはたこ焼きか? 周りは春雨なんだろうが焼いてるから中身が見えん……)

「司令官、もう大丈夫です。早く食べないと冷めちゃいますよ?」

「あ、あぁ」

 言うや否や春雨丼に箸をつけ始める春雨。その様子をジッと見つめながら、彼女の反応を待つ。
 一口、二口と口の中に消えていく春雨丼。その度に溢れる笑みが、味を雄弁に語っていた。

(美味いのか、アレ。ならこれもきっと大丈夫なんだろうな……多分)

 恐る恐る、一口大の丸い物体を口許へと運ぶ。そして、意を決して口の中へ放り込んだ。

「司令官、どうですか?」

「カリカリの春雨の層とプチプチとした春雨らしい食感の層、最後にトロリとしたピリ辛のあんが口の中に広がって、面白いな」

「美味しそう……春雨も一つ食べたいです」

「あぁ、ほら」

 皿を春雨の方に近付ける提督。しかし、何かを考えるような素振りを見せた後、もじもじとしながら彼女は箸を置いた。

「……あ、あーん」

「……」

 ――この時、提督の頭を過ったのは朝潮に待てをした時の反応だった。

――――デートハドウダッタ?

 ――――……司令官が意地悪だった。

――――フーン? ソレハ良カッタナ。

 ――――良くないよぉクーちゃん……。

リアルシュラバヤ沖海戦中なのでまた遅れます、本当に申し訳無いです…

日曜日には確実に更新します




加賀さんが艦これ改で初正規空母でした

「大淀、五十鈴は?」

「イオナ級の潜水艦が出たら行くそうです」

「アイツは良い勝負しそうだからな……」

「ちょっと待って、いくらなんでも積みすぎじゃない!?」

「マスター、爆雷とソナーガン積みはロマンです」

「身体にくくりつけられても発射出来ないんだけど!?」

「ヴェールヌイ、出撃する」

「やめてヴェールヌイちゃん、この艦隊ツッコミが少ないからウォッカ置いて早く爆雷持ってきてー!」

「吹雪、そういう君も寝巻きだよ? 良いボケだね」

「皆準備おっそーい!」




一時間後、こんな艦隊に海域は攻略された

「日向ー対抗して瑞雲ガン積みしなくていいからねー」

「タービンガン積みのお前には言われたくないな」

「ご飯を回収しに行くっぽい?」

「ご飯を回収したらお茶ですねー」

「何で北上さんと一緒じゃないのかしら、編成が悪いのよ……」

「艦戦ガン積み? いいけれど」




鎮守府にガン積みブーム到来中

 泣くことを忘れ、怒ることを忘れ、悲しいを忘れ、楽しいを忘れた。

 消耗品に感情はいらない、そう司令官は言った。

 だから、ただ毎日深海棲艦と戦った。

 ある日、司令官は捕まった。

 次はどこの海域へ行けばいいか捕まえに来た人に尋ねたら、暫く戦わなくていいんだよと言われた。

 その後、連れて来られた鎮守府で言われた通り部屋で次の戦いを待った。

 ――それは、雪の降る寒い冬の日の事だった。



「弥生、あの時凄く寒かったよ」

「部屋にずーっと引きこもってたらキノコが生えちゃうぴょん。だから換気してあげただけぴょん」

「雪玉、投げられた」

「手が滑っただけでぇーっす!」

「……怒ってないから、ちょっとそこに座って」

「うーちゃんは賢いから騙されないぴょん、弥生のその顔は怒ってる時の顔だぴょん!」

「怒って、ないよ?」

「絶対絶対ぜーったい怒ってるぴょん!」



 弥生には特別な思い入れのある曲がある。
 泣き顔でもなく、鉄パイプも持っていなかったけれど、彼女にとっては、卯月こそが笑顔を再び取り戻すきっかけを与えてくれた存在だった。



――――トラブルメイカーの方が合ってそうだがな、アイツの場合。

 ――――卯月は誰かの笑顔が無いと死んじゃうって言ってたよ?

――――やれやれ……本当に厄介な兎だな、お前の妹は。

 ――――睦月にとってはただちょっとイタズラが好きな可愛い妹なのですよー。

むっちゃんはもう少しお待ちください、長くなりそうです

・陸奥『本気の遊び』R-18 、一部投下します

ときめきの導火線に火が点いた

 艦娘として生まれた宿命の一つに、人から向けられる様々な視線に晒されるというものがある。それは一般人からに限らず、提督も例外ではない。
 下心を秘めた下卑た目、人ならざるモノに怯えた目、一線を引いた無機物を見るような目、その強大な力を自分のモノにしたいという目。
 当然、優しく暖かい視線を向ける人間も中には存在した。
 ――だが、本当に彼女が求めていたモノはそれだけでは足りなかったのだ。




「本日付で着任した戦艦陸奥よ、よろしくね」

「あぁ、よろしく頼む。加賀―……は瑞鶴に付き合って買い物だったか。吹雪も今日は遠征に出てたな……。ちょっと待っててくれ、鎮守府の案内に今呼んで大丈夫そうな奴が居ない」

「それはいいんだけど、大丈夫ってどういう意味?」

「干からびるまで遊びに付き合わされるか、潰れるまで酒に付き合わされる」

「あ、あらあら……」

「――よし、じゃあ行くか」

「もしかして、提督が案内してくれるの?」

「あぁ、書類が一向に減らないんでな、気分転換ついでだ」

(確かに凄い山ね……どうしてこんなにあるのかしら)

「――回ってれば分かる」

「っ!?」

「じゃあ行くぞ、どこか優先的に見たいところはあるか?」

「そ、そうね……これから住む寮を先に見たいわ」

「分かった、お前が望むなら長門も居るから同室にもしてやれるぞ」

「あら、そうなの? でも、その辺はまず会ってみてから決めたいわね」

「多少変わり者だが、悪い奴ではないから安心しろ」

(……噂には聞いていたけど、本当に問題を起こした艦娘の墓場みたいなところなのかしら。もしここから二度と出られないのなら、長門とは仲良く過ごせるといいんだけど……)




 部屋で島風の抱き枕を抱き締めながら昼寝をしていた長門を見て、変わり者だが一緒に暮らして問題は無いとこの時の陸奥は何故か判断した。

「――そういえば、私の話は聞いてるんでしょ?」

「ん? あぁ、原因不明の第三砲塔爆発の話か。勿論聞いているが、それがどうした」

「こんな風に私が自由に歩き回っても大丈夫なの?」

「おかしなことを言う奴だな、ここはお前の鎮守府だぞ。一々鎮守府内で移動に許可申請なんぞ必要だったら面倒で仕方がない」

「……もし、急に爆発して貴方が巻き込まれたらどうするの?」

「俺がベッドで転がってても加賀と吹雪が居れば大抵問題ない」

「死ぬかもしれないわよ」

「死んでる暇なんぞない、まだやることが山程残ってるんでな」

「……変わってるのね、貴方って」

「俺は至って普通だ」

「ふふっ。――ねぇ私と火遊び、してみない?」

「……遠慮しておく」




 ただただ普通の扱いをされたことに、ただただ普通の反応が返ってきたことに、胸の奥で今にも消えかけていた火が再び勢いを取り戻すのを彼女はその時感じた。
 その火は戦いが終わってからも消えることはなく、遂に提督の導火線にも火を点けたのだった。

「うっひゃーやっぱすっげー」

「こんな格好をするだけでいいの?」

「うんうん、いやー雲龍さんスタイル的にもバッチリだし捗るわー」

「何だかよく分からないけど、新しい包丁お願いね」

「秋雲さんにまっかっせなさーい。で、それどんな包丁?」

「これ」

「……ん?」

『最高級包丁、百年研がなくても大丈夫! 二百九十八万円』

「はっは~いやそんなまさか」

『二 百 九 十 八 万 円』

「……う、雲龍さ――」

「包丁、お願いね」

「アッハイ」




 一ヶ月後、満足そうな雲龍の前で真っ白に燃え尽きた秋雲の姿があったそうな。

更新する時間ががが…

雲龍さんは某シリーズの先生(抜剣状態)コス

木曜日更新予定

・朝潮『いぬのきもち』、投下します

 誰からも許された訳ではない一人の散歩。
 宛もなく、ただ足の赴くままに街を歩く。
 その足がとある店の前で止まったのは、見慣れた顔を見付けたからだった。

「――朝潮、何してるんだ?」

「っ!? し、司令官?」

「何をそんなに驚いてるんだよ。見てたのは、コイツか?」

 ――わんっ!

「犬、好きなのか?」

「別に好きかと聞かれるとそこまでではないのですが、この子は何故か気になってしまって……」

 ――わふぅ……わふっ!。

(そう言われると確かにどこか気になるな、この犬)

 少し眠気が来たのかあくびをして一度頭を下げるが、気合いを入れるように吠えてしっかりこちらを見つめてくる雑種らしきもふもふの犬。
 朝潮に話を聞くと、誰かが近寄ってくると去ってゆくまでこうしてジッとこちらを見つめてくるそうだ。

「まだまだ遊び盛りでそんな訓練も受けてそうには見えないんだがなぁ……」

「この子自身の性格なのかもしれません」

 誰に言われた訳でも教えられた訳でもなく、自然とそうしてしまう。
 その姿が誰かと重なって見え、気になった原因が何であるか理解する。

(待てって言われたら餓死するとしても食わなそうだな……)

「――司令官? 私の顔に何かついていますか?」

「目と鼻と口がついてる」

「?」

 真剣に考え込もうとし始めた朝潮の頭を撫でつつ、値札を見た。
 小言が何方向かから飛んでくる程度で済むゼロの数がそこには並んでおり、財布の中の諭吉で足りるかを頭の中で確認した後、念のために確認をする。

「――コイツ、飼いたいか?」

「あら~」

「もふもふ尻尾に小さい身体、可愛いです」

「……んちゃ」

「一言の相談も無しに買ってきたの?……まぁ、いいけど」

「可愛いわねー朝雲姉ー」

「か、噛んだりしないわよね……?」

「名前は綿雲です。皆、出来る範囲でいいので飼うのを協力してもらえないでしょうか」

 それぞれ肯定的な返事を口にし、朝潮はほっと胸を撫で下ろす。
 当の本人(犬)はというと、誰の方を向けばいいのか判断がつかず、グルグルと部屋の中心で回っていた。

「綿雲、今日からここがあなたの家です。明石さんが外に犬小屋も作って下さるそうなので、楽しみにしてて下さい」

 ――わんっ!

 雰囲気からようやく自分の主人を朝潮と判断し、綿雲は彼女の方を向いて一度鳴く。
 そして、抱き上げられると糸が切れたように静かに寝息を立て始めるのだった。




――――全く、何でこんなところに来たのかしら……。

 ――――わふ?

――――っ……す、少しだけだからね。




 世話の頻度は意外にも満潮が高い模様。

・鳳翔&葛城『二日灸』、投下します

鳳翔さんだって女の子…子?

更新遅れていて申し訳ない

「鳳翔さん、あの……初めてなので、優しくして下さい」

「えぇ、最初は少し戸惑うかもしれませんけど、すぐに気持ち良くなりますから」

(……何かいかがわしく聞こえるのは青葉がおかしいんでしょうか?)

「んっ……ちょっと、ムズムズします」

「あまり動くと危ないですよ」

「うんうん、動くと危ないから我慢して下さいね天城さん」

(主に撮影的な意味で)

「お灸を据えるのなんていつ以来かしら。懐かしいわ……」

「こんなことも出来るなんて、やはり鳳翔さんは皆さんが言うように凄い方なのですね」

「ふふ、ちょっと皆より長生きなだけよ」

(そういえば、鳳翔さんって艦娘になって何年になるんだろ……)

「それじゃ火を点けますね」

「何だか、緊張してきました……」

「大丈夫です、私達の肌ならそうそう火傷にはなりませんし」

「そもそも艦娘にお灸を据えて意味があるんですかねー」

「桃の節句や端午の節句、そういったものと同じですよ。私達が艦娘だからこそ、こういったことを疎かにしてはいけません」

「艦娘だから、か。青葉、ちょっと目から鱗が落ちた気分です」

「やっぱり、鳳翔さんは凄い方です」

「あらまぁ、二人ともおだてても何も出ませんよ?」

「――そういえば、司令官には二日灸してあげないんですか?」

「……提督に、ですか」

(あら? 鳳翔さんの様子が急に……)

「ここのところ店に顔をお出しになりませんから、便りが無いのは良い便りと言いますし、あの人には必要ありません」

「ソ、ソウデシタカー」

(こ、心なしかお灸から感じる熱が増したような……それに、背中になんともいえない重い空気を感じます……)

「新らしく着任する子も次々と増えていますし、仕方ありません。私の店で憩う暇も無いのでしょう」

「あ、あの~非常に恐縮ですが青葉はこれから取材の記事をまとめないといけないので失礼しまーす!」

「青葉さん、まだ途中――で、出ていってしまいました……」

「そういえば、加賀も最近めっきり顔を見せなくなりましたね。龍驤も忙しそうでしたし、時折誰も来ない日も……」

(……私、お灸が終わるまでこの話を聞かなければならないのでしょうか?)




 健全な精神は健全な肉体に宿るというが、病は気からともいう。
 天城の話を聞いた鎮守府の面々が鳳翔の店へ通う頻度を増やしたのは、言うまでもない。

今見直して気付いた、葛城と天城間違えてた…後日別で一つ書きます…遅れた挙げ句に間違えていて申し訳ありませんでした

・間宮『ご飯を食べてくれるということ』 、投下します

待つことも戦いである

「――間宮さんは、どうしてここへ?」

 不意に伊良湖ちゃんにそう聞かれた私は、少し昔を思い出しました。
 私、給糧艦『間宮』もご多分に漏れず、他の鎮守府からここへ流れてきた、いわゆる訳あり艦娘でした。
 以前、お世話になっていた鎮守府でも私の料理や甘味は皆さんに喜ばれていました。
 戦いの疲れを少しでも癒せるよう、自分に作れる最高のモノを作り続ける日々でした。
 でも、いつしか私は――。

「本日付でこちらの鎮守府にお世話になることになりました間宮です。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく頼む」

「あの、こちらの鎮守府では食事は……」

「今うちに居る艦娘の六割程度は料理が出来る。その中で一週間の当番を決めて回してる形だ」

「そう、ですか」

「お前に関しての話は聞いている。――が、働かざる者食うべからず、だ。洗濯や掃除、食料の調達なんかはしっかりやってもらうぞ?」

「調達、ですか? 配給されるんじゃ……」

「“働かざる者食うべからず”、まだまだここは戦果もろくに挙げていない鎮守府だ。それ相応の量しか配給されないんでな、食い扶持だけは多いし足りないんだよ」

(そこまで逼迫した状況で、どうして私を受け入れてくれたんでしょうか……)

「とにかく、家庭菜園もどきやその辺に生えてる野草なんかも立派な生命線だ。しっかり頼むぞ」

「は、はい!」

「吹雪ちゃんは秘書艦、なのよね?」

「はい、そうですけど」

「秘書艦も当番に組み込まれてていいの?」

「はい! 少しでも皆が過ごしやすくするのも秘書艦の務めですから!」




「白雪ちゃん、今日は掃除当番の日なの?」

「いえ、少しここが汚れていたので拭いていたんです」




「よい、しょ……ふぅ」

「初雪ちゃん、せめて部屋まで布団運んでから寝ましょ? ね?」




「深雪スペシャルカレー、一丁上がり!」

「も、もう少し具材を小さく切った方がいいんじゃないかしら……」




「ひゃあぁぁぁぁぁっ!?」

(農薬、使ってないものね)

「どうだ? ここでの暮らしは」

「大変、という言葉しか浮かびません……」

「ははは、まぁ間宮が着任する鎮守府なんて基本的にはどこも戦いに集中出来る環境が整ったところだろうからな。料理以外の家事をやらされる経験なんぞ今まで無かっただろ」

「“『給糧艦』の作る食事は艦娘にとって他の艦娘や人間の作るそれに無い何らかの疲労回復と高揚効果がある”。だからこそ私達は戦えないながらも重用されています」

「大半の艦娘はそれを知らん。美味しい料理や甘味を作ってくれる非戦闘用員艦娘、その程度の認識だ」

「……何故、ですか?」

「何故、とは?」

「何故、私をここへ?」

「評判の良い間宮が居て、どこも受け入れない。そりゃ喜んで受け入れるだろ」

「今は料理が作れなくても、ですか?」

「それのどこに問題がある」

「どこに、って……」

「“調理”という工程に関わる作業をすると強烈な吐き気に襲われる、そこにどんな理由があるかは今の俺には分からん。だが、また作りたくなるかもしれないだろ」

「……めて」

「ん?」

「やめて、下さい……私には、もう無理なんです……」

「そうか。なら、この話はこれで終わりだ」

「そう、ですか……では、荷物を――」

「じゃあ、明日からも頼んだぞ」

「……え?」

「最初に言っただろ、働かざる者食うべからず、だ」

「どう、して?」

「どうしてって、タダ飯ぐらいを置くほどうちに余裕が無いのは見れば分かるだろ。それに――そこの当番表、また組み直したら遠征やら何やらの予定まで変えなきゃならんから面倒だ」

(包丁……最後に握ったのは、いつだったかしら)

「――アレ、間宮さん?」

「あぁ、吹雪ちゃん。料理当番?」

「はい、今日はきのこカレーです!」

「……ねぇ、吹雪ちゃん」

「はい?」

「提督は、どうして私をここへ呼んだんだと思う?」

「ん―……私達の司令官がお人好しだから、じゃないでしょうか」

「お人好し?」

「那珂さんはアイドルになりたいそうです」

「・・・・・・え?」

「加古さんは一日十二時間以上寝たい、北上さんは改装したくない、由良さんは単装砲しか積みたくないそうです」

「それは、許されることなの……?」

「普通は絶対に許されないと思います。でも、司令官ですから――あっ、そこのマイタケ取ってもらえますか?」

「上からは何も言われないの?」

「そういう艦娘達を受け入れる場として黙認されてる、って司令官が言ってました。叢雲が“艦娘は捨て猫じゃないんだからほいほい拾ってくるんじゃないわよ!”ってこの前怒ってましたけど。戸棚からカレールウ、お願いします」

「カレールウ……あった、これね。でも、那珂ちゃんや他の皆も普通に出撃してるのよね?」

「そうですね、何か特別な事情が無い限りは全員持ち回りで出撃してますよ。――うん、こんな感じかな」

「やりたいことがあったり、嫌なことがあってここへ来たのなら、皆はどうしてあんな平気な顔で出撃しているの?」

「それは……私達が艦娘だから、だと思います。守りたいものがあって、帰りたい場所があって、戦う力を持ってる。“アイドルになったって、ファンが居ないと意味無いよ!”って那珂さんは言ってました」

「……ねぇ、吹雪ちゃん。いつもの食事に知らないうちに戦うための薬が入っていたとしたら、食べたくなくなる?」

「そんなの、私だって料理を作る時は毎回入れてますよ?」

「入れてるって、何を……?」

「薬とはちょっと違うかもしれませんけど、とっておきの隠し味です。ほら、よく言うじゃないですか。――“料理は愛情”って」

「間宮さーん、オムライスお願いします」

「あら吹雪ちゃん、いらっしゃい。ちょっと待ってね、すぐ作るから」

「食べたくなって自分で作ろうかと思ったら、冷蔵庫に玉子が無くて……」

「ふふ、たまにでいいからこうして食べに来てね。最近皆料理出来る子ばかりになっちゃったから赤城さん以外あんまり来なくなっちゃって……」

「間宮さんの料理だとついつい食べ過ぎて体重計に乗るのが怖くなるから、って皆言ってますよ」

「当然です。だって私の料理には隠し味がたくさん入ってますから」




――――愛が重い女とはまた言い得て妙だな。

 ――――提督、給糧艦に練度が無くて良かったですね。

――――……最近、昔ほど食えなくなってきてるんだが。

 ――――お残しは許しません。

そう言えばみんな何かしらの問題があったからここに来たんだろうけどその理由は安価取らないと語られないのかな?

>>354
安価+気分でたまに書きます


内容的に夜戦シーン抜きでも引っ掛かるから移転も已む無しですね

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年08月14日 (金) 00:36:32   ID: Ip3lR9r8

明らかにタグが違うよね?

2 :  SS好きの774さん   2015年08月14日 (金) 00:38:31   ID: Ip3lR9r8

タグじゃねぇカテゴリだった

3 :  SS好きの774さん   2015年08月15日 (土) 01:42:33   ID: 3ujs7OZW

モバマスになったのか……なわけry

4 :  SS好きの774さん   2015年12月15日 (火) 22:48:30   ID: hqPcLBpr

1スレ目から見てやっと追い付いた……

5 :  SS好きの774さん   2016年07月13日 (水) 04:28:03   ID: 6Ih3gR1g

R-18板に移転したようなのでリンク変更と更新オナシャス

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