櫻子「七森魔法中学校物語 ~続編~」 (81)

【前作:櫻子「七森魔法中学校物語!」】
櫻子「七森魔法中学校物語!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430379061/)

前作・修正版 → http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5603081


前作の続きとなります。ぜひ前作からお読みください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438947500

【七森魔法中学校物語・続編 ~ こころの心と、未来の未来~ 】


<小学校>


未来「花子さまーー!!」

花子「?」くるっ


未来「聞いたよ花子様、またテスト100点だったの!?」

こころ「すごいー」

花子「い、いや……たまたま運がよかったんだし」

未来「そんなことないよ! 私なんて今朝のニュースの占いで1位だったのに、50点しかとれてないんだもん!」

花子「それは勉強してないだけだし」


こころ「それより花子様ー、今日も魔法みせてー?」

未来「そうそう、それ言いに来たの! 放課後あそぶときにお願い~!」

花子「うーん……本当は、危ないからまだあんまり使っちゃダメってお姉ちゃんに言われてるんだけど……」

未来「そこをなんとか~! 今までだってちょっとは見せてくれたじゃん!」

花子「あ、あれは花子もちょっと嬉しかったから……///」

みさき「なに、何の話?」とてきち

こころ「あっ、みさきちだー」


未来「みさきちからも花子様にお願いしてよ! 魔法見せてくださいって!」

みさき「うっ……」じりっ

花子「?」


みさき「そ、そんなことしないわよ! ばかじゃないの?」

未来「えー?」


みさき「魔法魔法って、そんなの大きくなれば誰だって使えるようになるのよ! 全然すごくなんかないんだから!」

こころ「大きくならなきゃ使えないのに、今使えてるからすごいんじゃないのー?」

みさき「むぅ……で、でもみさきだって、ちょっとくらいなら魔法使えるけど!」

花子「えっ、そうなの?」

未来「え~~!? 見たい見たい! 見せて!」

みさき「いいわよ。じゃあ見てなさいね」ごそごそ


花子「?」

みさき「ここに10円があります!」

未来「うん!」


みさき「両方とも手をグーにして……さあ、10円はどっちの手にあるでしょう?」

未来「ん~、こっち!」


みさき「ざんねーんっ、こっちでしたー!」

未来「えーなんでなんで!? みさきちすごい!!」


こころ「グーにするときに移ってたんだよー」

花子「ってかこれ魔法じゃなくて手品だし……」

みさき「て、手品は英語でマジックっていうのよ!///」

花子「…………」


みさき「ま、まあいいのよこんなのはっ。とにかく、魔法なんか誰だって使えるの……みさきだって大きくなって魔法が使えるようになったら、花子くらいすぐに抜かしちゃうんだから!」だっ

未来「あっ、みさきちー?」


こころ「……行っちゃったねー」

花子「うん……」



<帰り道>


未来「じゃーねー花子様、また明日~!」

こころ「またね~」

花子「ばいばーい」ふりふり



未来「はぁーあ、それにしても花子様はやっぱりすごいね~」

こころ「ねー」

未来「私も大きくなったら……魔法が使えるのかなぁ?」

こころ「でしょー」

未来「そうなのかなぁ……花子様やこころみたいに、頭がいい人しか使えなかったらどうしよう……」

こころ「ん~……」



未来「ちび、ただいまー!」


ちび「ワンワン!!」ばっ

未来「あはははっ、よしよし~……こころも触れば? ちびはあったかいよ」なでなで

こころ「ふふっ……」くす

こころ「ねえ、未来」

未来「ん?」


こころ「ちびは、どうしてちびって名前だったんだっけ?」なでなで


未来「あのね、最初は本当にちっちゃいこいぬだったの! あっという間に大きくなっちゃったけど……でも、ちびはずっとちびだよ!」

こころ「うん。それと一緒だよー」

未来「一緒、って……?」


こころ「小さい頃はちびだったかもしれないけど……時間がたてば、こんなに大きくなる。でも、大きくなってもちびはちびのまま」


こころ「未来だって、大きくなればちゃんと魔法が使えるようになると思う。今と何も変わらないかもしれないけど……ちゃんと大人になれるはず」


未来「あ……」


こころ「……だから、そのときは一緒に魔法のお勉強しようね?」


未来「う……うんっ! ありがとうこころー!!///」ぎゅっ

こころ「ふふ……///」


ちび「わん! わん!」わふわふ




撫子「へぇ、魔法見せてってお友達にせがまれるんだ」

花子「もー毎日大変だし。撫子おねえちゃんもこんな感じだったの?」

撫子「ううん、私が魔法使えるようになったのは実は遅めだったから……花子みたいな感じではなかったよ。すごいよ花子は。うちで一番すごい」


櫻子「まーでも今はちっちゃい魔法しか使えないんでしょ? もっと派手なの使いたいなら、櫻子様が今度教えてあげてやってもいいけど~?」

花子「撫子おねえちゃんには敵わないし。今の学校のお友達もすごいって言ってたし!」

撫子「え、会ったんだっけ……恥ずかしいなぁ」

櫻子「聞けよ!!///」


撫子「櫻子は魔力成長期なんだから、今のうちに基礎をしっかり作っておかないと後で伸びないからね。ちゃんと勉強してるの?」

櫻子「うっ……」ぎくっ

撫子「……ひま子に言って、厳しくしてもらうから」

櫻子「なにもー! 花子にばっかり優しくて、私に冷たいんだなねーちゃんは!」

花子「櫻子が特別サボりすぎなだけだし」


撫子「わかったらいつまでもテレビ見てないで、部屋行って勉強しな」しっしっ

櫻子「ちぇー、この後見たいテレビあったのになぁ……」すたすた

花子「じゃあ、花子ももう寝るね。おやすみー」

撫子「うん。おやすみ」


撫子(よーし……今日はドラマ見れるぞ……///)ぴっ

――――――
――――
――


<真夜中>


櫻子「……ん~」むくり


櫻子(トイレ……)がちゃっ


わぉ~ん……


櫻子「ん?」


櫻子「わぁーすごい、犬の遠吠えだ……本物聴いたの初めてかも……」


櫻子「あ~……なんか頭の中に響く……」くわんくわん


櫻子「ん~……」ぽけーっ


櫻子「……あん、漏れちゃう」とととっ


――
――――
――――――

<翌朝>


ちゅんちゅん……


櫻子「んー……」


櫻子「まだ……ねむい……」むにゃむにゃ



『いやぁぁあああーーーー!!!』


櫻子「んぇっ!?///」びくっ


櫻子(下から叫び声が……!)



櫻子「わー、なになに!?」どたどた



がちゃっ


櫻子「…………えっ」


???「あ、櫻子……」


???「…………」


櫻子「え……? あ、あの……どなたですか……!?///」


「は、花子なんだけど……」

「私だよ……」


櫻子「……は??」ぽかん


花子「花子なんだし、本当に!!」

撫子「私……撫子だよ! あんたたちのねーちゃん!!」


櫻子「…………」


櫻子「えええええええええええぇぇぇーーーー!!!///」




櫻子「……まず、状況を整理しよう」


櫻子「えっと、こっちのちっちゃい子が……ねーちゃんなの?」

撫子「そう……朝起きたらこんなんなってたの。アルバム見て今の姿と比べたら、たぶん8歳くらい頃の大きさになってるみたい」

櫻子「んん、言われてみれば確かに……私が小さい頃のねーちゃんはこんな感じだった気がする」


撫子「ちなみに昔はよくメガネかけてたから」すちゃ

櫻子「あーっ! ねーちゃんだ! あの頃のねーちゃんだ!」

花子「アルバムで見たことあるし!」

撫子「……恥ずかしいから外す……///」ちゃっ


櫻子「……で、こっちの綺麗なお姉さんが花子だと」

花子「花子も朝起きたらこんなことになっちゃってたし……すごく背が大きくなった気がするし」

撫子「いや実際大きいよ。前の私くらいあるかも」

花子「ほんと?」

櫻子「いや、背がでかいだけじゃないっていうか……すっごく大人のお姉さんみたいな感じじゃん。花子が大きくなったらこんな感じなのかな……ショック」

花子「なんでショックなんだし」


櫻子「まあまとめると、朝起きたら撫子ねーちゃんは若返っちゃって、花子は大人になっちゃったってことなの?」

花子「恐らくそうだし……なんでこんなことに」

撫子「私たちにだけこんな変なことが起きてるのに、櫻子には何ひとつ変化が起きてないのはなんでなんだろう……」

撫子「はっ……てかもうこんな時間じゃん!! 学校どうしよ、なんて連絡すればいいんだろ……!」

花子「花子もだし! いきなり大人になっちゃいましたなんて言えないんだけど! どうすれば~……」


櫻子「うーん……とりあえず友達にでも相談してみれば?」

撫子「えぇ……友達にこんな変なこと知られるのも嫌なんだけど……」

花子「花子も恥ずかしいし……///」

櫻子「そんなこといったってさぁ……」



ぴんぽーん


撫子「わっ、誰か来た!」びくっ

花子「ちょ、花子たちは出れないし! 櫻子出て!」


櫻子「誰だろう…………はーい?」がちゃっ



向日葵「あ、おはよう櫻子」

櫻子「ああ向日葵か……ごめん、今日ちょっとうちが忙しいことになっててさー……」


「櫻子おねえちゃん、おはようなの」


櫻子「…………へ?」きょとん

向日葵「あ、ああごめんなさい。いきなりこの姿を見せちゃうのはびっくりするかと思いますけど、でも私一人じゃ解決できる問題じゃなさそうだったので……」

櫻子「え、えっと、あのー……こちらのお姉さまは、どちら様で……?」


「えへへへ……櫻子おねえちゃん、楓なの!」


櫻子「かえで……楓……?」ぽかん

楓「うんっ♪」にこにこ


櫻子「…………えええっ!? か、楓っ!?///」


向日葵「朝起きたら、突然楓が大人のお姉さんになってて……」

楓「えへへ、櫻子おねえちゃんがちっちゃいの♪」ぎゅー

櫻子「んわーー! おっぱいでけえー!///」むにゅ

向日葵「とりあえず中に入れてもらえます?」


花子「……ひま姉、事情は聴かせてもらったし」


向日葵「えっ……どなた?」

櫻子「ああ、それ花子だよ」


向日葵「え……えええーー!? これ花子ちゃんなんですの!?」

花子「楓も大きくなってたのかし……」

楓「わあ、花子おねえちゃんすっごく美人さんなの!」

櫻子「奥にねーちゃんもいるよ。こっちは逆に若返ってるんだけど」




撫子「参ったね、なんでこんなことに……」

向日葵「私と櫻子は特に何も無いけど……撫子さんは子供になって、花子ちゃんと楓は大人になってしまった……」

櫻子「夢みたいだけど、全然夢じゃないよね……」


花子「それにしても楓までこうなってるってことは、うちだけで起こってる問題じゃ無いってこと……?」

撫子「……それについては、ちょっと情報が入ったよ」ちゃっ

櫻子「?」


撫子「これ、今友達から来たメール」すっ


[起きたら身体が小学生くらいになっちゃってて……撫子もそうなの?]


向日葵「こ、これは……!」

花子「撫子お姉ちゃんのお友達も若返っちゃったってこと!?」

撫子「どうやらそうみたい……ひょっとして、世界全体でこんな不思議な出来事が起こってるのかも……」



「ご説明いたします」ぱしゅんっ


櫻子「うわああっ!?」びくっ


向日葵「ど、どちら様ですの!? いきなりこんなところに……っていうかどこから入って……!?」


撫子「……あれっ? あなたは確か……!」

「……お久しぶりです、大室さん、古谷さん」


櫻子「えー! この人ねーちゃんの知り合いなの!?」

撫子「いや、っていうかこの人……魔法庁の人だよ。櫻子の古代魔法の件の時にも来てくれた」


「……封印古代魔法管理委員会の者です。今回はあなたたちにお知らせすることがあって参りました」


花子「お知らせ……?」

楓「ひょっとして、楓たちの身体のことで……?」

「……その通りです。しかしまずはテレビのニュースを見てもらったほうがいいかもしれません」


ぴっ

『―――ただいま緊急速報が入りました。富山県の一部地域にて、住人の年齢が突如変わってしまうという珍事件が起こっている模様です。現地の方々とインタビューの中継が―――』

櫻子「…………!」はっ


『朝起きたら、身体がこんなにちいさくなってたんです!! 本当の私は21才なんですけど……』


『学校に行こうと思ったら、制服が入らなくて……鏡を見たら大人になっちゃってて』


『いきなりこんなことになっちゃって……それとお母さんがどこにもいないの! 夢かと思ったのに全然覚めないし……! なんなのもう!』


撫子「そっか、やっぱり背が変わったんじゃなくて年齢そのものが変わってるんだ……!」

花子「世界全体じゃなくて、この町の周りだけなの……?」

楓「そういえば楓のおうちも、おかあさんいなくなっちゃってたの……」


櫻子「あーっ、ちなつちゃんがテレビ出てる!!」


ちなつ『びっくりですよ! 朝起きたらお姉ちゃんがこんなことになっちゃってたんです!』

ともこ『あらこれテレビ? やだどうしよう、まだ起きたばっかりなのに~……』

ちなつ『お姉ちゃんそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!///』


櫻子「いいなーちなつちゃん、私もテレビ出たい~」

撫子「いやそんなのどうでもいいでしょ」



「……このように、あなたたちの身に起こった出来事と同じことが、この七森町・八森町を中心に巻き起こっているのです」ぴっ


撫子「状況はなんとなくわかりましたけど……」

向日葵「何でこんなことになってしまったんでしょう……?」

花子「それと、あなたがここに来た理由は?」

「……今回の事件の原因、詳しいことは未だ誰にもわかっていませんが……恐らく封印古代魔法の影響と思われます」


櫻子「えっ!」

撫子「じゃあ、あなたたちは何か知ってることがあるんですね?」


「ええ……というより、今回の事件は私どもの不手際が原因の、一種の魔法災害であるかと」

花子「不手際?」



「……実は先日より、大室櫻子さんから吸い取られて魔法庁の管理下に置かれていた時間魔法・クロノシアが、行方不明になっていたことが明らかになりました」


櫻子「……え?」

向日葵「ど、どういうことですの? 魔法が行方不明って……?」


「時間魔法クロノシアは意思を持っていたのです。早急に行った調査の結果……大室さんによって魔吸石に封じられたクロノシアは、残存する魔力で施設内の時間を止め、その隙に外部に逃げ出したようなのです」

櫻子「ま、魔法がどこかに逃げちゃったんですか!?」


「はい……しかしこの事実をおおっぴらにするわけにもいかないので、内密に捜査を進めていたのですが……その矢先に今回の事件が起きてしまいました」

撫子「なるほど、それで古代魔法が原因だと……」


「まだ憶測の段階ではありますが、恐らくそうだろうと判断できるのは、あなたたちの身に起こっている変化を見てのことです」

楓「?」

花子「花子たちの変化……?」


「我々の審議会で、この町の住人に起こっている変化を軽く分析した結果……今回の事件にはひとつの法則性があることが明らかになりました」

撫子「法則性……」


「よく聞いてください……あなたたちの年齢は、"13歳を軸に逆転している" のです」


向日葵「!」はっ


撫子「逆転……そうか、そういうことか……!!///」


櫻子「え、なに? 意味わかんないんだけど」

花子「……ちょっとは考えろし」

「では、少し図を使って説明します」


(0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12【13】14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26)


「……このように、13が真ん中の軸になる表を作ります」


「13歳を軸に年齢が逆転する……例えば大室撫子さんは18歳です」


(0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12【13】14 15 16 17 ⑱ 19 20 21 22 23 24 25 26)


「18歳と13歳は、5つ分はなれています。つまり13歳を軸にして、そこからさらに5歳若返ってしまうのです」


(0 1 2 3 4 5 6 7 ⑧ 9 10 11 12【13】14 15 16 17 ⑱ 19 20 21 22 23 24 25 26)


向日葵「なるほど……つまり撫子さんは今、8歳だった頃の年齢に戻っているのだと」

櫻子「言われてみれば確かに! ねーちゃんが小学生ぐらいの頃はこんな感じだった気がする!」


「……同じようにして、8歳の花子さんは13歳を軸に逆転して18歳に。6歳だった楓さんは13歳を軸に逆転して20歳になっているということです」


花子「は、花子が18歳……!///」

楓「楓は今、20歳の姿なの……?」


向日葵「こ、これが20歳になった楓……! ああ、立派に成長しましたわね……///」ほろり

撫子「あのちっちゃかった花子がこんな素晴らしい女の子になるなんて……」ぽろり

櫻子「泣くなよ」


花子「なるほど、13歳から離れてるほど大きく年齢が変わるということ……だから13歳ぴったりの櫻子とひま姉は何にも変わってないんだ」

向日葵「そういえばさっきテレビに出てた吉川さんも、変化がない様子でしたわね」

楓「じゃああのお姉ちゃんって呼ばれてた子は、元はすごくお姉さんだったのかなぁ……」


「ちなみに、13歳を軸にするわけですから……元々27歳以上の年齢の人は、どうやらこの町から消えてしまっているようです」

花子「えええーーっ!?」

撫子「そっか、お母さんたちがいないのはこういうことだったんだ……!」


向日葵「ということは、今この町にいる大人は……」


「……逆転して26才になってしまった、生まれたばかりの赤子が最年長ということです。今全国からこの町に、今回の事件で年齢が極端に変わってしまった大人や子供を保護する協力が集まっています」

撫子「なんてこった、子供しかいない町だ……」

櫻子「それにしてもなんで13歳が軸になってるんですか? 私も変わりたかったのになぁ~」


「それは、時間魔法クロノシアの元々の持ち主が……大室さん、あなただからだと思われます」

櫻子「えっ!?」どきっ


「あのクロノシアは大室さんと共に生まれ、共に成長した魔法です。それが13歳のときに身から切り離されてしまった……つまりあの魔法そのものも、13歳という年齢なのです」


撫子「どうして逆転したかはわからないけど……櫻子の魔法が原因ってのは、13というキーワードからも明らかっぽいね……」

向日葵「それにこんなに大きな影響が出るのは、古代魔法くらいしか考えられませんしね……」


「そしてこの町にのみ変化が現れていると言うことは、この町のどこかに逃げ出した時間魔法クロノシアがいたということなのです。東京の収容施設からここまで、大室さんの元に帰ろうと空を漂い続けたのでしょう」

櫻子「そんなこと言われても、私の身体には戻ってきてないと思うんだけどなあ……」

花子「この町のどこかで隠れているのかもしれないし」


「我々魔法庁も、現在全力で捜査に当たっています。今回の所は我々が知りうる限りのことをお伝えいたしました……大室さんたちにも是非、元所有者として協力をお願いしたい次第であります」

撫子「協力っていうか……もはや責任ですよね」

向日葵「なんとかして、みんなを元に戻さないと……!」


「詳しいことがわかり次第、またお伝えいたします。それでは」ぱしゅんっ


櫻子「あっ……! 行っちゃった」


撫子「まったく困ったことになったね……」

花子「櫻子の魔法のせいなんて……」

櫻子「ちょ、ちょっとー! 私がやりたくてやったわけじゃないんだから、そんなに責めてこないでよ!///」

向日葵「でもあなたの魔法が原因というのは恐らく本当でしょう。これは私たちも原因究明に向かわないといけませんわ」

撫子「早いとこ元に戻らないと……いつまでもこんな身体でいるわけにもいかないしさ」


櫻子「う~ん……よし! とりあえず色んな人に聞いて、魔法がどこかにいないか探してみよう!」



<七森中>


撫子「中学生はあんまり年齢が変わっていないから、中学校にたくさんの人が集まってるみたいだよ」

櫻子「なるほど……あっ、みんないた! お~~い!!」たったっ


あかり「あっ、櫻子ちゃんたちだぁ」

ちなつ「あーあ、やっぱり櫻子ちゃんのお姉さんたちも変わっちゃってるね……」


櫻子「おはようちなつちゃん、さっきテレビに映ってるの見たよー!」

ちなつ「えっ、ほんと?///」

向日葵「いやそんなのどうでもいいですから……あれ、この子たちは?」

あかり「ああ……これ、うちのおねえちゃんなの」


あかね「うふふ……よろしくね♪」ふりふり

櫻子「小っちぇ!!」がーん


向日葵「こっちの子は、さっきテレビにも映ってた吉川さんのお姉さんですわね……」

ともこ「はぁ……小さい頃のあかねちゃんに会えるなんて、私すごくラッキーだわ♪」

あかね「ともこはこんな感じだったのね~」

櫻子「楽しんでるし! たくましい……」


撫子「吉川さん、お姉さんはもともと19歳だったよね?」

ちなつ「あっ……そうですけど」

撫子「なるほど……つまり今は逆転して7歳になってるのか。小学一年生……」

あかり「逆転……?」



「あの……ちょっとその話、詳しく聞かせてもらえますか?」

櫻子「あっ、船見先輩たちだ」


結衣「おはようみんな。大変だね……」

京子「あははっ! 私さくっちゃんより小さくなっちゃった~♪」

櫻子「うおー先輩たちが微妙に小さい!」

撫子「14歳だったから……逆転して12歳になってるんだね」


綾乃「その、逆転ってどういうことですか? 私たちの変化のこと……何か知ってるんですか?」

撫子「うん、簡単に説明するとね……」



綾乃「なるほど……大室さんの古代魔法のことは私も覚えてるけど、まさかこんなことになるなんてね……」

京子「逆転現象についてもようやく納得がいったよ。なー結衣?」

結衣「あ、あぁ……」


あかり「どうしたの??」

京子「あはは、えーっとどこ行っちゃったかな……あ、いたいた。おーいまりちゃーん!」

楓「あっ、まさか……」



まり「……呼んだ? 京子お姉ちゃん」すらっ


ちなつ「きゃーーー!! まっまままままりちゃんなんですか!? このイケメンが!?///」

結衣「昨日はたまたま家に泊まりに来ててさ……朝起きたら、こんなことに……///」


楓「まっ、まりちゃんかっこいいの!」たっ

まり「あっ、楓ちゃん……!!///」


あかり「す、すごく大人なお姉さんになっちゃったねぇ」

ちなつ「結衣先輩も大人になったらこんな感じなんでしょうか……///」ぽけーっ



ちょんちょん


綾乃「あっ、会長! ご無事でしたか?」

りせ「…………」


櫻子「そっか、会長は11歳になって…………ってぇ!?」びくっ


綾乃「か、会長……その双子用ベビーカーに乗ってる子は……?」



向日葵「ま、まさか……西垣先生と……東先生!?///」

りせ「…………」こくり


あかり「わぁ~~~! 先生たちが赤ちゃんになっちゃったよぉ!!」

ちなつ「か、可愛い……ってそんなこと言ってる場合じゃない! 大変じゃないですか!///」

向日葵(というかよく双子用ベビーカーを調達してきましたわね……)


撫子「この子たちもしっかり逆転してるのか……どうやらこの法則にはみんな則ってるみたいだね」

花子「ということは、花子たちの友達も同じようになっちゃってるのかな……」


向日葵「皆さんを元に戻すためにも、早く原因の魔法を探さなくちゃですわね……」

あかり「原因の魔法……?」

ちなつ「向日葵ちゃん、私たちも協力するよ! 年齢が変わってない私たちが頑張らなきゃね!」


撫子「よし、とりあえず別れて手がかりや情報を探してこよう。私は高校の方に行ってみるね。櫻子とひま子は引き続き中学校を……花子は小学校に行ってみて」

花子「わかったし!」たっ

向日葵「何かわかったら、連絡してください」


京子「魔法を探すって、どういうことなの?」

向日葵「ええと……皆さんにも協力をお願いしたいのですけど、あんまり大っぴらにできるようなことでもないので……とりあえず、どこかの教室内に入りましょう。そこで説明しますわ」

――――――
――――
――


<小学校>


花子「あっ、未来! こころ!」


未来「花子様……! 花子さま~!///」ぎゅっ

花子「未来でかっ!! どんだけ成長してんだし!」びくっ


こころ「おはよー花子様」

花子「お、おはよう……っていうかやっぱり、みんなも18歳になっちゃったんだ」

未来「18歳? これ18歳なんだ!」

こころ「おもしろいよねー」


花子「あーあ、小学校が高校生だらけになっちゃってるし……皆はなにしてるの?」


未来「あのね、先生たちがいなくなっちゃったからどうしようかと思ってたんだけど、とりあえずみんな遊んでるっていうか……」

花子「?」



『いっけぇーーーー!!』ばちばちっ

花子「っ!?」びくっ


ずばぁぁぁん!


花子「えっ、ええええっ!? あれ何やってんの!?///」


こころ「あのね、みんな大きくなっていきなり魔法が使えるようになったから、その練習をしてるんだよー」

未来「私もちょっとだけやってみたけど、本当に魔法使えたの!」


花子(と、とんでもないことになっちゃってるし……!!)さーっ

「あら、花子はまだ魔法使ってないの?」

花子「?」くるっ


みさき「そんなところで突っ立ってないで、早く自分の魔法を確かめたら?」しゃらーん


花子「みっ、みみみみさきち!!?///」がーん



こころ「みさきちはね、さっきからいっぱい魔法の練習してるの」

花子「いや、っていうか……これが将来のみさきちかし! 背も花子より少し大きいし、おっぱいもあるし、髪も綺麗だし……///」

みさき「ふふん! 褒めても何にも出ないから!」むふー

花子(くっ……///)


みさき「こんなパーフェクトレディーになったみさきは、もちろん魔法の腕前だってすごいのよ。というわけで花子、みさきと勝負しなさい!」びしっ

花子「なっ……勝負……!?」

みさき「そうよ、魔法の勝負!」


未来「みんな魔法が使えるのが嬉しくて、こういう魔法の勝負があっという間に流行っちゃってるみたいなの」

こころ「お守りをつけて戦えば、怪我しないんだってー」


花子「そんなことが……でも今は魔法勝負なんてしてる場合じゃないんだし! みんなにも協力してほしいの、こんなことになっちゃった原因を探すのを……!」


みさき「原因? 原因って……みさきたちがレディになっちゃった原因ってこと?」

花子「そうだし。花子は今回の事件のことを色々聞かされて、みんなをもとに戻すために情報を集めなきゃで……」



みさき「……ちょっと待った。じゃあ花子はみさきたちの身体が元に戻ったほうがいいってことなの?」


花子「そ、そんなの当たり前だし! 花子たちだけじゃなく、今この町には困ってる人がたくさんいて……!」


みさき「みさきはそんなのイヤ!! 大きくなって綺麗になって、魔法もたくさん使えるようになって嬉しいんだもの! 元に戻るなんてイヤ!」

花子「ええっ、そんなこと言ったって……」

みさき「花子がこの世界を元に戻しちゃうっていうなら……みさきは全力で花子を阻止するわ!」ばちっ

花子「きゃっ!」


みさき「その代わり……みさきが負けたら、花子に協力してあげてもいいけどね。さあ立ちなさい花子! 勝負よ!!」


未来「ちょっ、みさきちー!」

こころ「け、喧嘩はダメだよー……」


みさき「どうしても世界を元に戻したいなら、まずはみさきに勝つことよ! 守護石をつけなさい!」ひゅんっ

花子「な、なんでこんなことに……っ」ぱしっ


未来「は、花子様やめなよぉ……」


花子(…………)



花子「……ううん、やる!」がばっ

こころ「えっ……?」


花子「花子の魔法の腕前はすごいんだって……いつも撫子おねえちゃんに言われてるし! 大人になった花子が本当にそうなら……誰にも負けるわけない! みさきちにだって負けない!」

みさき「ふふ……そう来なくっちゃ! 今日こそみさきの方がすごいんだってことを証明してあげるわ!」


未来「そんなこと言ったって、花子様自分が何の魔法使えるかとかわかってるの!?」

花子「……わかんない!」

こころ「えー」


花子「わかんなくたっていい! とにかくみさきちにだけは負けられないんだし!」ばっ

みさき「いくわよ花子! みさきの魔法を見せてあげるっ……!」しゅいいっ



『はーいストップ!!』


みさき「なっ……」

花子「えっ?」


撫子「……花子、魔法はお友達とケンカするためのものじゃないよ」すっ


花子「な、撫子おねーちゃん!」

「……なるほど、小学校の事情は思った以上に壮絶ですね」つかつか

花子「あっ、魔法庁の人……」


撫子「連絡を受けて、小学校が危ないって聞いて飛んできたんだ。みんな、今は魔法を使わないでいて。できればこれを周りのお友達たちにも伝えて欲しいんだけど」


未来「だ、誰だろこの子?」ひそひそ

こころ「花子様のお姉さんだよー」


撫子「あの……さっき言ったことは本当でしたか?」

「ええ、恐らく……それにしてもこの状況は……信じがたいことですが、私たちの未来に何か大きな変革があったことを示唆しているのか……」じっ


みさき「な、何言ってるのこの人? わけわかんない!」

花子「撫子お姉ちゃん……?」



「とりあえず……あなたです。簡単なテストをしますから私の元へ来てください」びしっ


こころ「っ……!?」どきっ


花子「えっ……こころが?」


ぽうっ……

「「…………」」


みさき(な、何してるのかしら)ひそひそ

未来(さぁ……)



撫子「……どうですか?」

「はぁ……やはり、この方ですね」


こころ「?」

花子「な、なにが?」



「小川こころ……あなたは、封印古代魔法使用資質を持っています」

こころ「えっ……」


花子「封印古代魔法……こころも!?///」


みさき「なになに、どういうこと!?」

未来「ふういん……なに?」


撫子「封印古代魔法。大昔に発明された魔法で……危ないから、存在することすら禁止になった魔法」

こころ「私が……?」

「簡単な判定ですが……封印古代魔法ランクC、心理魔法マインディアの使用資質者との合致率が95%と出ています」

撫子「マインディア……」

花子「そ、それはなんなんだし?」


「簡単に言えば、相手の心を読み取れる・自分の思考を直接相手に伝えられる魔法です。訓練すれば、生き物の感情や思考をコントロールすることもできるでしょう……間違いなく、封印古代魔法です」


撫子「今日になって、いきなりこの町に封印古代魔法の大きな反応が現れたらしいんだ。君がそうだったんだね……」

こころ「…………!」


「いえ、それだけではないのです。明確にはわかりませんが、この小学校のあちこちに……既存のデータにない新たな魔法の反応が多数出ているのです」

未来「新たな魔法??」


「ここにいる大室花子、高崎みさきの両名も……特別な魔法を持っていると出ています。既存のデータには該当しないため、現時点で詳しいことはわかりませんが……」


みさき「ええっ、みさきも!? みさきにも特別な魔法があるの!?」

花子「花子にも……!?」


「……これが指し示すところはつまり、何らかの形でここ10年以内に……この世界の魔法文化に一種の変革が起こるのだと想像します。人々はみな独自に新しい魔法を生み出すようになる……かつて滅びた魔法文明がそうであったかのように……」


撫子「こ、これはとんでもないことだよ……私たちは世界の未来の片鱗を見ちゃってるんだ」

未来「んん……? よくわかんない……」


「……まあ、このことは今回の事件とは本質的には別問題です。小川こころ、あなたも本来なら早急に古代魔法に対する措置を取らなければならないのですが、特例状態にある今はこの町の環境そのものを元に戻すほうが先決です。私はひとまず報告のため魔法庁に戻りますが……皆さん危険な魔法が使えてしまうということを忘れないでください」ぱしゅんっ


みさき「わっ、消えた……!」

撫子「まずいね、ほっとけば二次災害がどんどん出てきちゃうってことか……早く時間魔法を見つけなきゃ」

花子「そうだった……未来、こころ、みさきち! みんなにも世界を元に戻すために……協力してほしいし!」


みさき「っ…………」ちっ



みさき「み、みさきは花子に協力なんかしてあげないからっ!///」だっ


花子「ああっ、みさきち!?」

未来「みさきちーー!」


撫子「行っちゃったね……どうしたのあの子?」


こころ「っ!?」どくん


こころ(こ……これは……!)


こころ(みさきちの……気持ちが、入ってくる……っ!)



未来「こ、こころ!? どうしたの!?」ゆさゆさ

こころ「う、ううん……大丈夫……」


こころ「花子様……みさきちのことは、放っておいてあげて……っ」

花子「えっ?」


こころ「みさきちはね……すごく嬉しかったんだって。花子様に近づけて、花子様を追い越せて、花子様よりもすごい魔法が使えるかもしれないってわかって……」


撫子「そっか……君、心が読めちゃうんだよね……」


花子(み、みさきち……)


花子「……じゃあ、みさきちのことはしばらく放っておくし。代わりに未来とこころに協力して欲しいし!」

未来「わ、わかった!」

こころ「うんっ」


撫子「よし。とりあえずみんな中学校に来てくれる? そこで情報をまとめないと」



<七森中・教室>


撫子「よし……とりあえず、私たちの周りの人はこんなものかな」


向日葵「私たちの身近な協力者として、皆さんには是非お力添えをと思っていますわ」

花子「みんなにも申し訳ないし。全てはうちの櫻子が原因なんだし」

櫻子「私がやりたくてやってるんじゃないんだっての!///」


結衣「結構な人数集まったね……」

京子「とりあえず、誰がいるか整理してみない? 今の年齢も合わせてさ」

綾乃「そうね。黒板に書き出してみましょう」


~~~

(年齢は逆転後のもの)


西垣先生・東先生……推定0~1歳

あかね・ともこ……7歳

撫子・藍・美穂・めぐみ……8歳

りせ……11歳

京子・結衣・綾乃・千歳・千鶴……12歳

櫻子・向日葵・あかり・ちなつ……13歳

花子・未来・こころ・(みさき)……18歳

楓・まり……20歳(まりは詳細不明)

櫻子「結構いるなー」

向日葵「みんな年齢が逆転してちぐはぐですけど……面影が強く残ってますからなんとなくわかりますわね」


撫子「それじゃあ、まずはみんなに今の現状を伝えよう。ここを整理して、事件の解決に向かって行かなきゃ」かっかっ


~~~


・今回の事件は、櫻子から吸い取られたはずの時間魔法クロノシアが原因と思われる。

・クロノシアは魔法庁の管理下に置かれていたものの、残っていた魔力を使って収容施設を脱走。櫻子を追ってこの町まで逃げてきた模様。

・何らかの原因があって町全体に魔法の影響が及ぶ。地域一帯の人々の年齢が13歳を軸に逆転。

・27歳以上の大人は行方不明。物心もついていないまま大人になった人や、先生たちのように赤ちゃんになってしまった大人は緊急の保護が設けられている。

・クロノシアが未だに七森・八森町内のどこかにいる可能性は高い。

・早急に見つけないと二次災害・三次災害に繋がってしまう恐れもある。



撫子「……こんなところかな」かっかっ


向日葵「皆さん、時間魔法のことは一応大っぴらにできることでもありませんので、他言無用ということで……」

藍「そうね。みんながパニックになっちゃうものね」


めぐみ「じゃあ簡単に言えば、その逃げ出した魔法を捕まえればいいってことなの?」

撫子「手づかみで捕まえられるものかどうかもわかんないんだけど……何にしても探し出さなきゃ始まらない。私たちのネットワークを使って捜索しよう」


美穂「撫子せんせー、もし見つかったらどうするんですかー?」

撫子「……とりあえず、逃がさないようにしておけばいいよ。後は魔法庁の指示を仰ごう」


あかね「でも……危険よね。これだけの影響力を持った魔法を相手にするんだもの」

ともこ「それに、小さくなっちゃった人は魔力が無いから、今までのような魔法が使えないわ」

撫子「それは私も同じです……今この場で実用的な魔法が使えるのは年齢的に、中学一年生の櫻子たちと、元小学二年生の花子たちと、楓とまりちゃんだけ……」


櫻子「杉浦先輩たちも魔法使えないんですか?」

綾乃「ちょっとだけだったら、多少はできるんだけど……魔力も全然弱いし、何より不安定なの」

京子「悔しいけど、全然だめなんだよね~」

結衣「みんなだいたい13歳ごろから魔力が急成長するから……そこを境に逆転されちゃって、歯がゆいよ」

千歳「まあ、危ないことにならんかったらええけど……具体的にこれからどこを探していくん?」

向日葵「そこなんですが……皆さんの中に、何か手がかりのようなものを知っている人はいませんか? なんでもいいんですけど」


千鶴「手がかり……」

めぐみ「ん~……残念だけど、さっぱりだよ」

楓「朝起きたらこんなことになっちゃってて……寝てる間も、何があったかわからないの」

まり「……うん。寝てたからわかんない」


あかね「寝ている間に何かあったって考えると……この中に誰か夜更かししてた人っていないのかしら?」

撫子「美穂とかしてそう」

美穂「寝不足はお肌の大敵だから夜更かしはしませ~ん」


ともこ「あ、あの……私昨日は、二時まで起きてたわ。大学のレポートやってたの」

めぐみ「おっ!」


向日葵「寝るまでの間で、なにかおかしなこととかありませんでした?」

ともこ「ん~……といっても、ほとんどふらふらで力尽きるように寝ちゃって……実はレポートも完成しないまま寝落ちしちゃったから、特にはわからなくて」

あかね「あらあら」くすっ



櫻子「ん……?」ぴくっ


あかり「どうしたの櫻子ちゃん?」


櫻子「あれ……私昨日、なんか夜起きた気がする」

ちなつ「うそ! なんかあったんじゃない!?」


櫻子「あれ、なんだっけな……トイレ行ったのはなんとなく思い出せるんだけど……あれ?」

撫子「あんたはいいよ。どうせ寝ぼけてたんでしょ」

花子「櫻子は寝ぼけると花子のベッドに間違って入ってくる始末だし」

櫻子「あーもーうるさい! 思い出そうとしてるのに全然思い出せないじゃん!」

向日葵「使えないですわね……」


こころ「……全然情報ないねー」

未来「うん……」


こころ(?)

撫子「めぼしい情報は無しか……もう夕方近いし、とりあえず今日のところは解散しましょう。各自帰って……あ、家に不都合があるなら協力して泊まったほうがいいのかな。みんなもたぶん、親御さんいなくなっちゃったんだよね……」


京子「よーし、じゃあとりあえずみんなで結衣んちに泊まろうか」

結衣「なんでだよ!///」

京子「だってもともと一人暮らしなのはこの中で結衣だけでしょ? なんの不都合もないじゃん」

結衣「……そうだけどさ」


京子「んじゃ、とりあえずまりちゃんと綾乃は結衣んちだな」

綾乃「わ、私も!?」

京子「だって綾乃、家帰っても一人なんでしょ? 心細くない?」

綾乃「……まぁ」


京子「千歳たちは?」

千歳「うちは千鶴もおるし、いつもどおりでええよ~」

千鶴「……うん」


りせ「…………」

綾乃「会長も、赤ちゃん先生たちの面倒見れるって言ってるわ」

結衣「だ、大丈夫なんですか!? 困ったことあったら何でも協力するんで言ってください……?」

りせ「…………」こくこく


あかり「ちなつちゃんたちは……このままおうち帰る?」

ちなつ「えっ?」

あかり「せっかくだから纏まってたほうがいいんじゃない? うちでよかったら……」

ともこ「い、いいの!?///」がばっ

あかね「そうね。ともこもちなつちゃんもいらっしゃい。こんな日だからこそいつもより楽しくしましょ♪」

ちなつ「うん。じゃあ、あかりちゃんのおうち行こうかなっ」


美穂「はいはーい、私は撫子の家いきたいでーす」

めぐみ「ど、同感……うちも私以外誰もいなくて、さみしいの……」

藍「わ、私も……///」

撫子「……わかったよ。うちの櫻子が原因でみんなをこんな目に合わせちゃったんだし……責任とって、うちに避難しててもらおう」

美穂「わ~い♪」


櫻子「向日葵と楓もくれば? 二人だけで家にいるのもあれでしょ」

向日葵「えっ、ええと……」

楓「おねえちゃん、楓もお泊りしたいの!///」わくわく

向日葵「……わ、わかりましたわ。櫻子のとこにお邪魔しましょうか」

花子「未来とこころは? うちにくる?」

未来「うっ……えっと」

花子「?」


未来「わ、私はおうちに帰るよ! ちびの面倒も見なきゃだし……」

花子「ああそっか……でも大丈夫?」

未来「大丈夫大丈夫! 今は18歳だし、何も怖くないもん!」

花子「うん……じゃあ何かあったら花子に連絡してほしいし。こころも心配だから、未来についててあげて?」

こころ「わかったー」



撫子「これでみんな、しばらくの生活体勢は決まったかな」

向日葵「ええ、大丈夫そうですわね」


櫻子「みんな、何かあったらうちの誰かに連絡してね! すぐに飛んでくから!」

撫子「そうそう。自分で何とかしようとは思わないでね」

花子「困ったことがあったら何でも言って欲しいし」

美穂「さすが、大室三姉妹は頼れるわ~♪」ぎゅー

めぐみ「花子ちゃんかっこいい~」

藍「それじゃ、よろしくお願いします」


撫子「明日はグループで別れて、魔法の探索に当たることになるかな……計画とかもこっちで考えておくね」


櫻子「よーし、ひとまず解散! 明日こそ魔法を見つけるぞー!」

「「おーー!」」




未来「…………」とぼとぼ


こころ「未来……」

未来「あ……な、なに?」


こころ「あの……私、心が読めるようになっちゃったんだよ……?」

未来「……!」はっ


こころ「だから、未来の考えてることもわかっちゃった……でも、ちゃんと言葉にして?」

未来「…………」


こころ「未来……私は、何があっても未来の味方だよ。絶対誰にも言わないから……」ぎゅっ


未来「……うん。じゃあ、このまま家についてきて」



未来「あのね……本当は私も、何が起こってるかよくわかんないの……」


未来「でも……ちびが……ちびが……!///」わっ


こころ「な、泣かないで……」




がちゃっ


こころ「っ!!?///」びくっ


未来「ちび……ただいま。大丈夫?」


ちび「ガゥゥ……」


こころ(こ……これは……っ!?)



未来「あのね……昨日の夜、突然ちびがすごく吠え出したの。真夜中だったから私は寝てたけど……その鳴き声で起きた」


未来「具合が悪いのかと思って、家の中に入れたの。でも全然鳴きやまなくて……犬のお医者さんに電話しようと思った」


未来「そしたら……突然、ちびの身体が光って……あっという間に4メートルくらいの体長になっちゃったの」

こころ「…………!」

ちび「ウゥゥ……」


未来「毛も伸びて、牙も出てきて、額には変な紋章が出てきて……もがき苦しんだ後に、ものすごい大きな声で吠えた」


未来「家が壊れちゃうかと思うくらい大きな遠吠えだった……私はその鳴き声を聞いて立てなくなって、そのまま気を失っちゃったの……」


未来「朝になって起きたら、私は18歳になってて……ちびは大きくなったままぐったりしてて、お父さんとお母さんはいなかった」



未来「ねえ、こころ……やっぱり、ちびが原因だと思う……?」

こころ「え、えーっと……」


未来「でも、ちびは何も悪くないんだよ!? ちびはいい子だから、こんなことしたくてやってるんじゃないの……!!」

こころ「うん、それはわかるけど……」


こころ「!」はっ

こころ「未来……ちょっと待って」すっ

未来「え……なに?」



こころ「ちびは……ちびは苦しんでるみたい……」ぽうっ

未来「あ……! こころ、ちびの心も読めるの!?」


こころ「…………」


未来「こ、こころ……?」


こころ「……未来、落ち着いて聞いてね」

未来「う、うんっ」



こころ「今日、花子様のお姉ちゃんたちが言ってた時間魔法は……どうやらちびの中に入っちゃってるみたい……!」


未来「ええっ!?」がーん


こころ「その魔法がちびをこんなに大きくさせちゃった……ちびは今、魔法の力に支配されちゃってるんだって」

未来「そ、そんな……! じゃあ今私たちの世界がこんなことになっちゃってるのは……!」


こころ「……! ちびの吠え声だよ! 家が壊れるかもしれないくらい大きな鳴き声……それが届いた人の年齢が、みんな変わっちゃったのかも……!」


未来「じゃ、じゃあこの事件は……全部ちびのせいなの……!?」

こころ「そ、そんなことないよ。ちびは自分から魔法を取り込んだんじゃないって言ってる……」


未来「でも、みんなは必死で原因の魔法を探してるよ!? きっとすぐにちびのこともバレちゃう……みんなでちびをいじめちゃうかもしれない!」

こころ「待って未来、そんなことにはならないようにするから……っ!」


未来「やだやだ、ちびをいじめちゃやだぁ……!!///」ぽろぽろ

ちび「ガゥ……」くんくん


こころ(……どうすれば……)



<裏山・林>

こころ「とりあえず……ちびを隠しておかなきゃ。この大きさだから家には置いておけないよ……」


未来「ちび、ごめんね……必ず迎えに来るからね?」

ちび「ガゥ……」


未来「いい? 私とこころ以外の誰が呼んでも出てきちゃだめだよ? 必ず私たちがなんとかするから……」

こころ「うん……待っててね」

ちび「くぅ~ん……」


しゅばっ!!


未来「うぁっ!?///」びくっ

こころ「だ、誰っ!?」


『…………』


未来「まっ、まずいよこころ! もう私とちびのことが誰かにバレてる……! こっちを攻撃してきてるよ!!」

こころ「どうしよう……!」


ばちばちばちっ!!


未来「きゃーーーっ!!」

こころ「未来っ……!」はっ


こころ「ちび! 未来を守ってあげて!!」

ちび「ガルルル……グァゥオオオァァアアーー!!!」


しゅいいいぃ……


『なっ……!』


ぱしゅん!


『き、消えた……っ!?』

『探せ! まだ遠くへは逃げていないはずだ!』


こころ「消えた……? 私たちの姿は向こうから見えなくなったの……?」

未来「ち、ちび……そんな魔法が使えるの?」

ちび「ガルル……」


こころ「『未来を守るため』……だって」


未来「ち、ちび……ありがとう……!」ぎゅっ


未来「私も守る……ちびのこと絶対守ってあげるからね……!!」ぽろぽろ

こころ「未来……」


未来「どんな姿になっても、どんな魔法が使えても、ちびはちびなんだからぁ……!///」

ちび「……ガゥ」ぺろぺろ

こころ「…………」



<夜>


こころ(こんなところで野宿なんて……)


こころ(ちびがベッドになってくれてるから寒くないし、寝心地はいいけど……)ころん


未来「…………」すぅ


こころ(未来……)さら



こころ「ちび……起きてるー?」


ちび「……わぅ?」


こころ「ねえちび……ちびは、本当に何のつもりもなしに魔法を宿しちゃったの? それとも、魔法を使えるようになりたいと思ったことがある?」


ちび「……がふ」


こころ「え、昨日の夕方?」


こころ「……未来が大きくなって魔法を使うところを……見たいと思った……!?」はっ


ちび「…………」


こころ「未来が大きくなる頃まで、自分が生きているかはわからないからって……そんな……」


こころ(そんな悲しいこと……思ってたの……!?)


ちび「……くぅん」


こころ「……そっか。そうだよね……ちびはすごく小さい頃から未来と一緒だったんだもんね……未来が大きくなるところを見たいよねー」なでなで


こころ「きっと、時間魔法さんも……ちびのそんな気持ちに反応しちゃったんだね。ちびの願いは……変な形だけど叶っちゃったんだよ」


こころ「でも苦しいでしょ……? 世界を捻じ曲げちゃうほどの力が入ってきちゃって、凄く苦しいよね……?」


ちび「わぅん……」


こころ「うん……きっと大丈夫。私と未来と……花子様たちにも相談して、みんなでちびを助けてあげるからね……」なでなで


こころ「おやすみ、ちび……」


ちび「…………」

――――――
――――
――


<朝>


ちゅんちゅん……


未来「あ……ぅん……?」ぱちっ


こころ「…………」じっ


未来「あ、あれ……昨日はお外で寝ちゃったんだっけ。こころ、おはよう……」

こころ「しっ……」


未来「あは、ちびがベッドになってくれたんだ……ありがとね、ちび」こしこし

ちび「……くぅん」


こころ「未来……あれ見て」すっ

未来「えっ?」



『このあたりです。ここで対象は突然、時間魔法と思われる魔法を発動……それ以降しばらく捜索しましたが姿は確認できませんでした』

『ふむ……昨晩の観測反応が消えたのもここら一帯でとのことです。くまなく調査をお願いします』

『『はっ!』』ざっざっ



未来「こころ……この人たち、たぶん国の偉い人だよ……!?」

こころ「うん……」


未来「ちびの魔法で、こっちの声も姿も向こうには届かないみたいだけど……いつまでもここにいたら見つかっちゃうかもね……」


こころ「…………」ぽうっ



こころ「…………っ!!」どきっ

未来「な、なに? どうしたの?」


こころ「未来……この人たち、やばいかも……っ」

未来「え!?」


こころ「証拠を消す、どんな手を使っても消すって言ってる……私には聞こえる……!」


未来「証拠を消すって……」


こころ「昨日花子様たちに聞いたでしょ……? 魔法庁の偉い人たちが魔法を逃がしちゃったから、こんな事件になっちゃったんだって……」


こころ「この人たちはそのミスを国民に漏らさないように、逃げ出した魔法ごと攻撃して消しちゃおうとしてるんだよ……!」

未来「えっ……てことは……!」


こころ「どうしよう……ちびを狙ってるみたい……!」

未来「そっ、そんなぁ……! 国の偉い人なのに、なんでそんなことするの……!?」




『しかし……これだけ探してもいないとなると、考え方を変えねばなりませんね』

『何か心当りが?』


『いいですか、時間魔法とは本来、時間の流れの進行・逆行を操作するものですが……世界全体の時間をコントロールするには並外れた魔力が必要らしいです。なので通常はある特定地域や特定の人間・物質を対象にするといいます』


『ではどうやってその特定のものの時間だけをコントロールするか? そこがポイントです』

『……はぁ』


『次元という言葉を聞いたことがあるでしょう? 二次元や三次元という言葉でお馴染みの。空間の広がりをあらわす指標というのが次元なのですが、その概念を用いるなら我々は立体的な三次元空間に生きていると言えます。しかし物理学の基本的な枠組みでは、我々が存在しているこの時空は「空間三次元・時間一次元」の四次元として表されるのです。これをミンコフスキー時空と呼びます』

『……??』


『特殊相対性理論に基づく現代の様々な力学・量子論はこのミンコフスキー時空によって記述されてます。それはもちろん魔法物理学でも同じです。我々の理解の及ばない文明が果たして同じ魔法物理学を採用していたかは定かではありませんが、この時空概念に当てはめるとすれば……クロノシアは我々の思う単一方向に等速で進み続けるはずの時間次元を自由に操作するものといえます。つまりは……』

『あ、あの……自分にはさっぱりなので、要点だけをお願いできませんか』


『……ふっ、すみませんね。つまり我々の対象が時間魔法を使って逃げたとするなら……ターゲットは、今我々がいる時空とは別の時空にいる可能性があります。時間次元だけをコントロールして!』ばしゅっ


こころ「あっ!!」

ちび「!?」はわわん


『それならば、我々の時空にわずかな座標の痕跡を残している可能性がある……! そこにいますね!?』ごおううっ


ちび「っガルルルル!!」ばっ


こころ「ああっ、ちびが見つかっちゃった!!」

未来「えっ、ええっ!?///」

――――――
――――
――


<七森中>


撫子「いい? 今魔法庁を中心とした派遣部隊が、この町を取り囲むように捜索してくれてる。この町のどこかに潜伏してると思われる時間魔法が、よその土地に逃げないようにね」

向日葵「だから私たちは、この中心地から放射状に探索を行っていこうと思いますわ」

櫻子「調査に出るのは、魔法が使える人だけにしよう。万一のことがあったら危ないから……」

花子「大きく若返っちゃった人たちは、引き続きこの中学校で情報を集めながら待っていて欲しいし」


あかね「あかり……気をつけてね」

あかり「う、うんっ」

ともこ「ちなつも、危ないことがあったら逃げていいのよ……?」

ちなつ「だ、大丈夫だよ。みんなもいるもん」


結衣「まりちゃん……これ、私のローブと魔法剣。今はまりちゃんにしか使えないとおもうから」

まり「……!」

京子「たぶんだけど、まりちゃんは今ここにいる中で一番お姉さんなんだ。みんなを守ってあげてね」

まり「わ、わかった!」

楓「まりちゃん……楓はまりちゃんと一緒に行くの。何かあったら楓がまりちゃんを守るの!」

まり「か、楓ちゃん……///」


櫻子「あかりちゃん・ちなつちゃん部隊、まりちゃん・楓部隊、あとは私と向日葵の部隊と……あれ、花子のお友達は?」

花子「まだ連絡がつかなくて……これから迎えに行くし。花子は未来たちと一緒に行動しようと思うし」


撫子「じゃあその4部隊だね。私はこの中学校にいるから……みんな、何かあったら必ず私に連絡して。こっちも何かわかることがあったら教えるから」


櫻子「よしっ、それじゃあしゅっぱー……」



グァァァァァオオオオオオオオウウウゥゥ!!!!


櫻子「!?」びくっ


向日葵「な、なんですの!? 化け物!?///」

ちなつ「えっ、えええぇぇ……!?」

『…………』


綾乃「お、収まった……?」

撫子「なに……今の咆哮は……」


櫻子「あーっ!!」がーん

あかり「ど、どうしたの櫻子ちゃん?」


櫻子「お、思い出した……あの日の夜のこと!!」

花子「えっ」



櫻子「みんながこうなっちゃう前の日の夜!! 私、トイレに起きて……今みたいなのじゃないけど、すごく大きな犬の遠吠えみたいなものを聞いたんだった!!」

向日葵「えっ……!」


京子「ということは、今の咆哮と何か関係が……?」


撫子「……櫻子! みんなをつれて、さっきの咆哮の元を探して!」

櫻子「あいあいさー!」だっ

向日葵「ちょっと、私も行きますわ!」

楓「おねーちゃん、楓も行くの~!」

まり「ああっ、楓ちゃん待って……!」だっ

あかり「ちなつちゃん、行ってみよう?」

ちなつ「えぇ~怖いよぉ……」


撫子「花子っ」

花子「?」くるっ


撫子「気をつけて……何か危険な匂いがする。今この中で一番頼りになるのはあんただから……櫻子たちを、守ってあげて……!」

花子「……わ、わかったし!」



櫻子「さっきの咆哮はどっちの方向だ!?」

向日葵「うまいこと言ってんじゃねーですわ」

まり「あ…………あっち! 何か光ってるよ!」

楓「いってみるの!」


ちなつ「ちょっとみんな大丈夫なの!? 絶対やばいのがいるって!」

あかり「と、とりあえず何が起こってるかを確かめなきゃ。何かただならないことが起こってる気がするし……」

向日葵「危ないことに巻き込まれないよう、いつでも逃げる準備はしておかないとですわね……何かあったらすぐに拠点の中学校まで戻ること」

花子「了解だし!」

ちび「ウガルルルルル!!」


『くっ、手間取りますね……! これほどまでに手ごわいとは……』


『……タイムリミットです。これ以上戦うのは分が悪い……いったん退散しましょう』

『ちいっ、仕方ない! 退却!!』だっ





未来「あ……行ったみたい!」

こころ「よかった……ちびはそこまでダメージを受けてないって」


ちび「…………」くんくん


未来「ちび……ちび! 早く森の中にに隠れて? じゃないとまた誰かに見つかっちゃうよ……!」

こころ「どうしたの、ちび……?」


ちび「わぅ!」


こころ「え……未来、ちびが隠れてろって言ってる」

未来「……?」



櫻子「ここは……裏山の入り口か」ざっざっ

まり「あれ、さっきまで何かいた気がしたんだけど……」

あかり「何もいないねぇ」


未来(あっ、花子様たちだよ……!!)

こころ(……!)

ちなつ「あれから咆哮も聞こえて来ないから、本当にここで合ってるかもわかんないし……」

楓「もう一回鳴いてほしいの」


櫻子「おぉーーーい!! もう一回鳴いて~~~~!!」


向日葵「……何やってるんですの」

櫻子「いや、お願いすれば鳴いてくれるかなーと思って」

花子「そんな単純なことでうまくいくわけ……」



グァァァァァオオオオオオオオウウウゥゥ!!!!


ちなつ「きゃぁぁーーーーー!!」

櫻子「うぁぁあああ!! 絶対この近くにいんじゃん!!!」

向日葵「ほ、本当になんの声なんですの!? とんでもない化け物の声じゃ……!!」


まり「ああっ、あそこっ!!」


がさがさっ


花子「林の奥から……何か……!」

あかり「あわわわわ……」



『ウゥゥ……ガォォォオオオッ!!!』ばばーん


ちなつ「いやぁーーー!! ライオンーーーーーー!!!」だだだっ

あかり「ち、ちなつちゃーん!? 待ってぇ~!」ぴゅーん


まり「うっ……嘘でしょ……!?」

楓「お、おかしいの! こんなに大きなライオンさんいるわけないの! というかこんなところにライオンさんがいること自体おかしいの!」

花子「じゃあライオンじゃないんだし! でもこんな動物見たことない……!」

櫻子「でも咆哮の正体はこの子で間違いなさそうだ……!」



未来(まずいよこころ!! ちびが花子様たちと戦おうとしてる!)

こころ(いや……待って! ちびには何か感じるものがあるみたい! あれはただ戦おうとしてるんじゃない……)

楓「っ!! こっちにくるの!」


『ウガゥゥゥ!!』ばっ


櫻子「きゃああああああっ!!」


がきん!!


まり「くっ……!!」ぎぎぎ

楓「まりちゃん!?」


まり「はぁぁぁあっ!!」ぶんっ

『グルルル……』ばっ


楓「すごいの! まりちゃん強いの~!///」

向日葵「それは……船見先輩の魔法剣……!?」


まり「おねえちゃんたちも力を貸して!! ここでこいつを食い止めなかったら、町の人たちが襲われちゃう!!」

楓「そんな……!」


櫻子「や、やるしかないよ! あかりちゃんたちが助けを呼んで来てくれるはずだから、それまで耐えよう!」ばっ

花子「みんなで協力するしかないし!!」だっ

向日葵「花子ちゃん、櫻子……!」


櫻子「えやあああっ!」ごおうっ

まり「らああぁぁっ!!」びゅんっ


『ガウッ!』ぶんっ

櫻子「ひぃぃ!」


『グゥゥ……グルァァァァア!!』


櫻子「へっ……!?」どくん


櫻子(なに……この、感じ……!?///)


向日葵(な、なんですのあのライオン、櫻子ばっかり狙って……!?)

『ゴァァアアァ!!』ばっ

櫻子「うわああああっ!!」

花子「さ、櫻子ーー!」



花子(そうだ、魔法……魔法を使わなきゃ……!!)はっ


楓「花子お姉ちゃんっ!」

花子「えっ?」


楓「大人になった楓たちはちゃんと魔力も成長してるの! 花子お姉ちゃんが将来18歳になったときにお勉強してきた魔法が、今もう使えるようになってるはずなの!」

花子「そ、そっか……!」


楓「身体の中をめぐる自分の魔力を……思うがままに打ち出してみて? きっと花子お姉ちゃんはすごい魔法が使えるはずなの!」

花子「よし……!!」ぐっ


花子(花子はうちで一番すごいんだって、撫子お姉ちゃんにずっと言われてきた……)


花子(その魔法を使って、みんなを助けなきゃ……!)ぽうっ


しゅぃぃぃ……


楓「あ……!」

向日葵「花子ちゃん……?」


花子(見える……花子が使える魔法のビジョンが見える……!)


花子「いっけぇーー!!///」ぐっ


しゅるしゅるしゅる!


『グァゥッ!?』びしっ


楓「わあっ!」

まり「これは……!」

向日葵「植物のツルが……絡みついて……!」


花子「やあーーーっ!」ぐぐぐっ


『!?』びたーん



まり「す、すごい……!」

楓「花子お姉ちゃんさすがなの~!」

向日葵「植物を扱う……土魔法でしょうか?」


花子「大自然の力を借りる土魔法の発展……独創魔法、『花魔法・フラワリア』!!」

向日葵「独創魔法……花子ちゃんのオリジナル魔法ってことですの!?」

楓「かっこいいの~♪」


花子(幸いここには色んな植物がある……花子の魔法が活かせるし!)

『グルル……ガォォァァアアア!!!』だだっ


櫻子「ひえー!」

まり「危ないっ!!」


花子(コスモスの花を盾に……!!)しゅぃぃん


『きゃうん!』ぽよよん


楓「花がおっきくなったの!」

向日葵「いいですわ花子ちゃん!」

まり「このまま頑張れば……!///」



『ウゥゥゥ……!』

花子「っ……」じりっ


『グァオオオオオオォオォォォオゥウ!!!!』ぎゅーん


ぱしゅんっ……



花子「なっ!?」


櫻子「き、消えた!?」きょろきょろ

向日葵「うそ……っ!」


まり「ど、どこに行った!?」

楓「もうどこにもいないの……!」



「みんな~~! 大丈夫~~!?」たたた

櫻子「あっ、あかりちゃん!」


あかり「あれ、さっきのライオンさんは……?」

向日葵「それが……大きく吠えたかと思ったら、急に空気に溶けるかのようにどこかに消えてしまったんですわ」

まり「唸り声も気配も無い……本当にいなくなっちゃったみたい」

あかり「そうなんだ……でもよかったぁ、みんな無事みたいだねぇ」


向日葵「またどこかで出てくるかもしれませんけど……とりあえず撫子さんたちの所へ戻りますか?」

櫻子「そうだね……あいててて」

楓「きゃっ……! 櫻子お姉ちゃんケガしてるの!」

櫻子「へーきへーき、ちょっと転んじゃっただけだから……」

楓「すぐ治してあげるの……!」しゅぅぅ


まり「あんな怪物がいたなんて……ひとまず、おねえちゃんたちに報告しなきゃ」

向日葵「では戻りましょうか」


花子(…………ん?)くるっ


『っ……』ぱぱっ


花子(今……誰かいた気が……)



未来「だめだよちび!! あれは私のお友達の花子様! ちびに会いに来たこともあるでしょ!?」

こころ「いや、ちびはちゃんと花子様のこともわかってたみたいだよ。他に理由があるみたい……」

未来「えっ……?」


ちび「……がぅ」

未来「ちび、何て……?」


こころ「……! あのね、ちびは櫻子お姉ちゃんにすごく興味を持ってるんだって……!」

未来「興味?」


こころ「櫻子おねえちゃんがすごく気になるんだって……紋章がくすぐったくなったって言ってる!」

未来「そ、そうだ! だってちびの魔法は、元々は櫻子おねえちゃんのものなんだから……魔法が櫻子おねえちゃんの方に戻りたがってるんじゃない!?」


こころ「そっか……じゃあ、櫻子おねえちゃんならちびの魔法を取り除けるかもしれないんだ……!///」


未来「そうだよ……花子様たちに話して助けてもらおう!? もうそれしかないよ……」



こころ「でもちび、どうすれば魔法が櫻子おねえちゃんの方に移るか、それはわからないの?」

未来「そ、そこ大事だよ。近くにいるだけで移ってくれるとかなの?」

ちび「…………わぅ」


こころ(っ!!!)ぎくっ



こころ(なっ……そん、な……)さああっ



未来「えっ? こころ、ちび何て言ってるの……?」


こころ(い、言えない……こんなの……)



未来「ちょっと、こころ? ねえっ」とんとん

こころ「あ、うん……」


こころ(くっ……///)



こころ(未来……ごめんね……)


こころ「……未来、ちびの魔法を取り除く方法……わかった」

未来「うそっ、ほんとに!?」



こころ「よく聞いて……この魔法を……時間魔法を消し去るには……」




「櫻子お姉ちゃんを、倒すしかないの……」


――――――
――――
――

<七森中>


結衣「ライオンの化け物……?」

まり「私たちより何倍も大きい獣で……金色の毛のライオンみたいな感じだった」

楓「長い牙と大きな爪が合って、楓たちにとびかかってきたの!」

京子「あの咆哮は……獣の咆哮だったのか」


向日葵「どういうことだと思います? この町に起こっている変化とあの獣には何か関係が……」

撫子「ううん、わからないけど……今この町に魔法の影響で暴走してる動物がいても、おかしくはないかな……」


櫻子「…………」

あかり「櫻子ちゃん、どうかした?」


櫻子「え、いや……」


櫻子(なんだったんだろう、あのライオンに近づいた時の、ざわっていう変な感じは……)



ぱしゅんっ


「どうも」すたっ


撫子「あっ、魔法庁の……」


「大室さん、古谷さん……先ほどの魔獣についてわかったことがありましたので報告いたします」

向日葵「えっ、見てたんですの!?」


「時間魔法捜索のため、今この町には厳戒態勢が敷かれております。あらゆるネットワークを使って情報を得ており……さきほどのあなた方の戦闘も、実は間近でデータをとらせていただいておりました」

花子「知らなかったし……」


撫子「わかったことというのは?」


「はい。先ほどあなた方が戦っていた獣ですが……非常に強い時間魔法の魔力を有していました。ビンゴかもしれません」

櫻子「ビンゴ……?」


「大室花子さんの独創魔法を受けたあの獣が撤退するとき、咆哮と共に時間魔法クロノシアと思われる魔法が発現されていました。あれは姿を消したのではなく、自分の存在する時空とは別の時空を作ってそこに移動したのです」

花子「!!」

向日葵「え……ということは……!」


「ええ……時間魔法クロノシアは、あの獣の中に宿っているとみて間違いないでしょう」


櫻子「えええーー!? あれが魔法の正体ってこと!?」

「正体というより、何らかの生き物に魔法が宿ってしまい、その魔力で獣自身も魔獣化してしまったものと思われます」


櫻子「じゃあ、やっぱり……あのライオンに近づいた時の変な感じは、私の時間魔法が反応してたんだ……!」

向日葵「向こうもきっとそれを感じて、櫻子を集中的に狙ってたんでしょうね……」

花子「でもライオンなんて……この町に動物園はないのに」

「あれがライオンかどうかは現時点でも定かではありませんが……犬や猫を元にしている可能性は充分考えられるでしょう」

櫻子「犬や猫かぁ……ねーちゃん知り合いにいない? ライオンみたいな犬や猫を飼ってる友達とか」

撫子「いるわけないでしょ」

楓「千鶴おねえちゃんはこの町の猫さんについて詳しいの!」

千鶴「で、でもそんな獣になるような猫は、いないと思うけど……」



花子(あ、大きな……犬……!!!)はっ


――
――――

未来「ちびはかわいいんだよ~」

花子「へぇー。大人しい?」

こころ「すっごくお利口さんな子だよー」


未来「ちびー! 花子様がきてくれたよー!」

ちび「ワンワン!!」

花子「でかっっ!!? ゴールデンレトリバーじゃん!!///」びくっ

未来「可愛いでしょ~♪」

――――
――


花子(あの大きさ……あの毛並み……!!)


花子(も、もしかして……ちびが……!?///)



櫻子「ん……どうしたの花子?」

花子「い、いや……なんでもないし」


「現在我々の方でも捜索範囲を絞ってこの町に応援を集めています。早急にあの獣の位置を特定し、捕獲するつもりです」

櫻子「捕獲かあ……でもあの子すごく強かったけど」


「もちろん魔法の回収は目的ですが、それよりも成すべきは事態の収拾です……もはや上等な手段を選ぶ余裕はありません。必要があれば、命を奪ってでも沈静化させる必要はあるでしょう」


花子(なっ……!?///)ぎくっ


「ひとまず、ここまでの御協力ありがとうございました。あなた方はもう大人しくしてくださってて結構です……後は我々にお任せください」ぱしゅんっ

櫻子「ああっ、行っちゃった」



結衣「それにしても、人間以外の動物に魔法が宿るなんてね……」

向日葵「そこかしこの時間をいじったりしないだけ、お利口な動物なのかもしれませんわ」

花子「…………」


花子(命を奪うなんて……そんなの絶対ダメだし……!!)


花子(花子が、花子が何とかしないと……)

――――――
――――
――



未来「まっ、待ってよこころ! 櫻子お姉ちゃんを倒すって……!!」

こころ「……ちびが言うんだから間違いないよ。元々の魔法の持ち主である櫻子お姉ちゃんを倒せば、ちびの魔法も消えるんだって」


未来「そ、んな……そんなの……」


こころ(未来……ごめん……)


未来「無理、だよぉ……櫻子お姉ちゃんを、花子様たちを敵に戦うなんて……!」


こころ「……でも未来、もう時間がないの。魔法庁の人たちは今でもちびを狙ってる……その人たちにちびが倒されちゃったら、魔法も何も解決しないままちびだけが死んじゃうの!!」

未来「!!!」


こころ「辛いのはわかってる……私だって、お友達を相手に戦いたくなんかない……」



こころ「未来が……決めて?」

未来「えっ……」


こころ「どっちを取るか……ちびが生きる方を取るか、ちびが死んじゃう方を取るか」


未来「そん、なの……選べないよぉ……!///」


こころ「……立ち向かうか、逃げるか。ちびのことだから私は選べない……未来が選ばなきゃだめなの。でも私はどっちを選んでも、未来に協力するから……!」


未来「…………」


ちび「……くぅん」



未来「……た……たたかう……」


こころ(……!)


未来「わたし、も……たたかう……! ちびのためなら、何でもする……っ!!///」


こころ(未来……)ぎゅっ


未来「ぜったい、ちびを助けるって……決めたんだからぁ……!」ぽろぽろ


ちび「…………」



<大室家>


花子(未来……こころ……どこにいるんだし)はぁ



((( ……さま……花子さま…… )))


花子「へっ……?///」どきっ


((( 花子様……聞こえますか……)))


花子「な、なにこの声……こころ……!?」


花子「こころ! この近くにいるの!?」



((( フラワーパークに……来て…… )))


花子「ふ、フラワーパーク……?」


((( 未来を……ちびを……助けてあげて……!! )))


花子「ど、どういうことだし……助けるって……」


花子(やっぱり、未来とちびがこの事件に……くっ!!)ばっ



たたたた……


花子「あっ!」ばったり

櫻子「うわあっ!?」ぎくっ


花子「さ、櫻子どうしたの靴なんかはいて……? どこか行くの?」

櫻子「や、えーと……ちょっと散歩というか。花子も?」

花子「えっと……そうだし。なんか……でかけたくなって」


櫻子「……もしかして、フラワーパーク?」

花子「!!」ぎくっ


櫻子「あ、じゃあやっぱり……さっきの……!」

花子「櫻子も聞こえたの? こころの声……!」

櫻子「聞こえた! 未来を助けてって言ってた……絶対何かあるんだよ!」


花子「どういうこと……? 櫻子と花子にだけ声が届いたのかな……」



櫻子「……花子、ねーちゃんたちには秘密で行こう。何か危険な匂いがする……」

花子「……うんっ」こくり



<フラワーパーク・広場>


櫻子「ねえ花子、教えてよ。こころたちは何か隠してることがあるんでしょ?」

花子「うん……まだ花子もちゃんと確認できてないけど……」


花子「未来はね、ちびっていう名前の……名前はちびだけど、すごく大きなゴールデンレトリバーを飼ってるの」


花子「今日、花子たちが戦ったライオン……あれはもしかしたら、ちびなのかもしれない……」

櫻子「ええっ!?」



「その通りだよ」

花子「っ!」びくっ



ぱしゅんっ……


未来「……花子様、よく来たね」


こころ「…………」

ちび「グルルル……」ざっ


櫻子「う、うわあああっ!///」びくっ

花子「や、やっぱり……! 未来、その子はちびなんでしょ!!」


未来「……そうだよ。おかしな魔法を取り込んじゃって、ちびはこんなになっちゃったの」

花子「花子たちの所に来れなくなったのは、これを隠すため? 全ての原因がちびにあるから、言い出せなかったの?」


未来「……っ……違うでしょ……」


未来「全部の原因は、櫻子おねえちゃんでしょ!!!」

櫻子「っ!?」びくっ


未来「櫻子お姉ちゃんの魔法のせいなんだよ!! そのせいでちびは苦しんでるの! 望まない力に蝕まれて、たくさんの人から命を狙われて!!」

花子「ま、待って未来! 櫻子は別に……!」


未来「もうだめなんだよっ……! 櫻子お姉ちゃんも花子様も……いや、今や世界全体が私たちの敵なの……」


未来「それでも私は、ちびを助ける方法がひとつでも残されてるなら戦う! そう決めたの……! たとえ世界中を敵に回しても、ちびを守るんだって……!」

櫻子「み、未来……」



未来「……この魔法を生み出した櫻子お姉ちゃんを倒すことで、ちびは元通りになるんだって」


花子「なあっ……!?///」


未来「……花子様、最初で最後のケンカだね。私たちは……全力で、花子様たちを倒すっっ!!」

花子「そ、そんな……」がくっ


櫻子「ちょっと待ってよ! そんなことしなくたって、魔法庁とかにお願いすれば戦わなくても魔法をなんとかできるかもしれないよ!?」


こころ「……魔法庁の人はね、魔法を管理できなかった失態を国民に知られないように、ちびの存在ごと消して証拠隠滅しようとしてるの」

櫻子「ええっ!?」


未来「花子様たちがいない間、私たちはずっとその人たちに襲われてた!! 花子様たちだって今日ちびと戦ったでしょ!?」


こころ「ちびの魔法で隠れながら、なんとかこのフラワーパークまで逃げてきたの。少しでも時間を稼ぐために……」

未来「魔法庁の人が来る前に、なんとしても櫻子お姉ちゃんを倒さなきゃいけないの……こっちは本気だからね!!」

櫻子「なんで……なんでこんなことに……!」

花子「こ、こんなのおかしいし! なんで未来と戦わなくちゃいけないんだし……!」



((( 花子様……櫻子お姉ちゃん……戦って )))


花子(えっ……?///)どきっ

櫻子(こ、こころ……?)


((( 戦って……未来に、ちびに……私に勝って……!! 今はそれしか方法がないの……! )))


花子(これ……こころの魔法!? こころ、一体何を……)

櫻子(未来を、ちびを倒すって……どういうこと!?)



未来「いくよっ、ちび!!」

ちび「ウガァァウ!!」だんっ


櫻子「危ないっ!!」ばっ

花子「きゃっ!?」


バキィン!


櫻子「くぅっ……!」じりじり

花子「さ、櫻子!!」


櫻子「よ、よくわかんないけど……そっちがその気なら、黙ってやられるつもりはないんだから!!」ぶんっ

ちび「ガゥゥ!!」ばっ



未来「花子様も立ってよ……! 最後くらい、正面からぶつかってきてよ!!///」


花子(わけがわからない……こころ、この戦いは何のためのものなの!? 花子はどうすればいいの!?)


こころ「…………」



<大室家>


美穂「だめっ、どこにもいない!」

めぐみ「近所一帯も探したけど……もうこのあたりにはいないみたい……!」


撫子「くそっ……なんでこんなときに……!///」だんっ


向日葵「櫻子と花子ちゃん……何かあるんでしょうか」

藍「何も言わずに出ていっちゃうなんて……」


楓「そういえば花子お姉ちゃんは、さっきあんまり浮かない顔してたの……」

向日葵「確かに、何か秘密にしてることがあるような……」



「失礼します」ぱしゅんっ


撫子「あっ、あなたは……!」はっ


「大室さん、大変です。あなたの妹たちが、あの魔獣を相手に戦闘を始めた模様です……!」


撫子「ええっ!?///」がーん

向日葵「そ、そんな……どうして……!?」


「詳しい理由はわかりませんが……どうやらあの魔獣の飼い主が、大室花子さんの御友人らしく……」


楓「えーーっ!?///」

美穂「そ、それで誰にも言えずに出ていっちゃったんじゃない!?」

「場所はフラワーパークです! 応援に向かうならお願い致します……それでは」

撫子「ちょ、ちょっと待ってください! それなら私たちをエルトランスでそこまで運んで……!」


「……申し訳ありませんが、今魔法庁側でもある緊急事態が発生しているのです……私は早急にそちらへ向かわねばなりません」

藍「緊急事態……?」


「……魔法庁関係者の一部に、今回の件を全て揉みつぶすため動いている一味がいることが明らかになりました。彼らは魔獣どころか……下手すれば大室さんたちごと攻撃する可能性すらあります」


向日葵「な、なんですって!?///」


「ですのでフラワーパークの座標特定時間や、この人数を全て送る時間はありません。私共は全力でその団体を止めます……お願いします!」ぱしゅんっ


撫子「なんなのもう……わけがわかんないことばっかり……!!」


楓「お姉ちゃん、花子お姉ちゃんのところに行ってあげよう? 今はそれしかないの!」

向日葵「そうですわね……魔法の使える私たちは行かなくては……!」

撫子「ひま子、私も連れてって!! こんな所で待ってるだけなんてできない……!」


楓「めぐみお姉ちゃんたちは、このことをまりちゃんやあかりおねえちゃんのお家にも電話してあげてほしいの! 今は一刻も早い応援が必要なの……!」

めぐみ「わ、わかった!」


美穂「みんな、気をつけてね……」

藍「無茶なことだけは絶対にしないで……!」

楓「大丈夫なの。何かあったら楓が皆を守るの!」


撫子「……行くよ、みんな!」だっ

向日葵「はいっ!」




未来「えやあぁぁぁっ!!」ばしゅんっ

櫻子「ちいっ!///」だんっ


ちび「ウガルルルル……!」


未来「ちび! 櫻子お姉ちゃんを狙って!」

ちび「グァウゥゥ!!」

櫻子「うわあああっ!」


花子「櫻子ーー!」たっ


花子(パンジーの花を、シールドに……!)ぽうっ


ちび「!?」ぼよん


花子「アロエの葉を……剣に!!」


ずがががががっ!


ちび「きゃうん!?」

未来「ちび!? しっかりして!!」


櫻子「は、花子強い……!!」

花子「だんだん掴めてきたし……自分の魔法が!」



こころ(……よし)ごくっ


こころ「ちび! 今だよっ!!」すっ


ちび「ウゥゥ……グァオオオウウゥゥゥゥ!!」


櫻子「なっ!?///」しゅいぃぃ……

花子「えっ!」


ぱしゅんっっ……


花子「なっ、櫻子とちびが消えた……!?」


こころ「……ちびと櫻子お姉ちゃんには、こことは違う世界にワープしてもらったの」

花子「違う……世界……!?」


こころ「私たちがいる場所とは、違う時の流れの場所……ちびが切り出した世界」

未来「ふふっ……じゃあ櫻子お姉ちゃんのことはもうちびに任せて……後はもう、私たちだけだね!!」ばしゅっ

花子「くっ!!///」だっ

~~~

<別時空>


櫻子「花子、花子!! 私の声聞こえないの!?」


櫻子(くっ……!)


ちび「…………」


櫻子「……な、なにさ! 一対一に持ち込めば勝ったも同然って言いたいの? 悪いけど……」


((( ……櫻子 )))


櫻子「へっ!?」びくっ


((( 櫻子……済まなかった )))


櫻子「う、うそ……ちび……!? ちびなの!?」


((( 櫻子と二人きりになれる機会を伺ってたんだ。やっと……終われる )))


櫻子「終われるって……?」


((( 私のこの魔法を……今すぐ取り除けるのは、櫻子しかいないんだ……! )))


櫻子「えっ……」


((( 紋章に……手をかざして )))


櫻子「紋章に……」


((( さあ、早く……! )))





花子「っああああぁ!!」ずざあっ


未来「はぁ、はぁ……」

こころ「っ…………」


花子「くっ……つ、強い……っ!!」


花子(二対一なんて……花子にはまだ無理だし……!)はぁはぁ


未来「ま、まだまだ……こんなもんじゃあ……!」すっ



きらりーん!


未来「うわっ!?」

花子「な……」


しゅぃぃぃ……


未来「こ、この光は……!?」


しゅぱーん!!


未来「うわーーーー!」ずばぁん

こころ「未来っ!?///」がーん


花子「な、何が起こって……」



「……立ちなさい」


花子「ふぇっ?」


「立つのよ……こんな所で負けるタマじゃないでしょう、花子!」


花子「あ、あああっ!?」

未来「そんな……」

みさき「ちょっと未来! 二対一なんて卑怯だと思うけど?」しゃらーん


こころ「み、みさきち……っ!///」

花子「みさきち……なんで、なんでこんな所に……!?」


みさき「ふん……言っとくけど、たまたま通りかかっただけなんだから。勘違いしないでよね」


未来「みさきち……なんの用なの!? わたしの邪魔しないでよ!!」しゅっ


みさき「花子、下がってて」

花子「え……」



みさき「見せてあげる、みさきの魔法……独創魔法、『天魔法エンジェリア』!!」


きらきらきら……


未来「んなっ……!?///」

こころ「……!」


みさき「はあっ!」しゅん


しゅきききーーん!


未来「うああああっっ……!」ずばずばっ

こころ「み、未来っ!?」

みさき「未来っ! いい加減に目を覚ましなさいよ!」

未来「くぅ、な、何を……っ」


みさき「未来が花子を倒した所で、ちびには何の関係もないんじゃないの? そうでしょう!」

こころ「!」

花子「あ……」


みさき「もうこの戦いに何も意味はないはずよ。今の未来は……ただ意地を張ってるだけ。周りを全部敵と思い込んで、自暴自棄になってるだけ! そんなつまらない意地の張り合いで友達が傷つくのは……みさきは嫌なんだけど!」

花子「み、みさきち……」


未来「ぐぅ……く、くそぉ……!」がくっ



みさき「こころ……この中で一番悪いのは、あなたよ!」

こころ「っ!!///」どきっ


花子「こ、こころが……?」


みさき「二人ともおかしいと思わないの? こころはマインディアで心が読めるのよ。未来の心もみさきたちの心も、もちろんちびの心だって読める。それなのになんで全部をわかった上で、未来に戦いを続けさせてるの?」

こころ「っ……」


みさき「よくよく考えれば何もかもおかしいわ。櫻子お姉ちゃんを倒すためだけなら、花子をここに呼ぶ必要はなかった。そしてこんなフラワーパークなんて……花子に地の利がある場所も選ばない。こころが本気でマインディアを使えば、相手の行動を読んで絶対に負けないはずなんだから」


こころ「みさきち……たまたま通りかかっただけなんかじゃ、ないんじゃん……」

みさき「ふんっ……どうなのよ!///」


未来「こ、こころ……?」

花子「お、おかしいことはまだあるし……! こころは花子たちにしか聞こえない声で、さっきからずっと訴えてた! 未来とちびを……」

こころ「花子さまっ、言わないで!!///」

未来「っ!?」びくっ


みさき「ちょっとこころ……何を隠してるの? ちゃんと言いなさい!」

花子「そ、そうだしこころ! 花子たちはもともと未来とこころの仲間なんだから……何があったって二人を助けるつもりでいるんだし!」


未来「こ、こころ……何か知ってるの? 私にも隠してることがあるの!?」



こころ「……う……ぅぅ……っ///」ぽろぽろ

未来「え……」


こころ「うあぁぁぁ……あぁぁ……っ!///」ぱたっ


未来「ちょ、ちょっと……どうしたの……!?」


こころ「みらい……ちびは、ちびはぁ……っ!」


未来「なっ、なに!? ちびが一体……」


ぱしゅんっ!!


花子「あっ!?」



櫻子「じ、時空が戻った…………はっ!!」

ちび「………くぅん……」


櫻子「ちびっ!? ちびーー!!」ゆさゆさ

ちび「…………」はぁはぁ


未来「ちびっ……!?///」がーん

花子「ちょっと櫻子、どういうこと!? 櫻子がちびを倒したの!?」

櫻子「違うの! ちびは自分から……っ!」


しゅいいいいっ……


櫻子「ああくそっ!! 魔力の流れが止まんないよ!!///」

未来「魔力の流れって……」



こころ「未来っ!! ちびは……ちびは最後の力を振り絞って、自分の魔法を櫻子お姉ちゃんに渡してるんだよ!!」

未来「ええっ……!?」


こころ「そして……魔法が切り離されたとき、ちびは……ちびは……っ!」



櫻子「ちびぃっ! だめぇええええええええ!!!///」


きゅいいぃぃん!!


みさき「ああっ……!」

花子「ちびの身体が……小さくっ……!?」


未来「ぁ……」


しゅぅぅぅ……



ちび「…………」ぱたり


櫻子「あ……ぁ……」


こころ「うううっ……」


みさき「う、うそ……!?」さああっ

未来「ち、ちび……? どうしたの……?」



未来「お、起きてよ……目をあけてよ……ちび……っ!!」



櫻子「ちび、ちびぃ……!」


ちび「…………」


未来「い、いや……そんなっ……いやあああああああああっっ!!!」


花子「ちび……ちびが……」



みさき「ど、どういうことよ……こころ!! 何か知ってたんでしょ!?」


こころ「……ちびは……言ってた。自分の身体には時間魔法が宿って、魔法の力で限界を超えた成長を遂げたけど……肉体そのものは、その魔力だけで無理やり保たれているものだったの……」


こころ「だからそれが身体から切り離されるとき……ちびは……ちびの命は耐え切れずに……」


花子「そ、そんなぁ……!!」


未来「あああぁぁぁ……ちび、ちびぃいいいいい……っ!!///」ぽろぽろ




向日葵「あっ! 撫子さんあれ!」たたたっ

撫子「!!」


楓「な、なに……どうしたの? 集まって……」


向日葵「皆さん……泣いて……!」はっ



花子「ど……どうしてなの!? こころは全部わかっててこの戦いを……っ!」

こころ「ちびが言ったの!!」

花子「!」


こころ「ちびは……ちびは魔法の力を望んでしまった! その願いに引かれて魔法を宿し……でも世界を変えてしまった責任を未来が負うことになったら、未来は世界中の敵になってしまうって……」


こころ「未来の未来を守るために……ちびは命を賭しても、本当に魔法を扱える櫻子お姉ちゃんに返すと決めたんだって……!」


櫻子「…………」


こころ「でも私……そんなこと未来に言えなかった……! ちびが死んじゃうなんて言えなかったから……」


こころ「だから、櫻子お姉ちゃんを倒せばちびは助かるって嘘ついて……花子様たちと未来を戦わせるようにして、それで花子様たちが勝ってくれるのを信じて……」


花子「こころ……」

みさき「くっ……!」

「…………」


ぽうっ


櫻子「ん……!?」ぴくっ


花子「なっ、櫻子……??」

向日葵「櫻子の身体が、光って……」



((( 櫻子…… )))


櫻子「ふぇっ……」


((( 櫻子……ありがとう…… )))


櫻子「き、聞こえる……ちびの声が聞こえる……!!///」

未来「えっ……?」


((( その魔法で……世界を、元に…… )))


櫻子「わ、わわわっ……魔力が溢れてくる……!」ほわわわ

こころ「え……?」


櫻子「あ、あぁぁ……うわあーーー!!」しゅぱっ


しゅるるるる……

ぴかーん!!


花子「あっ!!」きらきら

みさき「みさきたちの身体が、光って……!」ぴかぴか

撫子「わ、わわわ……っ///」しゃらしゃら


未来「ぁ……」しゅぅぅ

こころ「年齢が……元に……」

楓「も、戻ったの……!!」

櫻子(そ、そうだ……それなら……!!///)ばっ


花子「櫻子……?」


櫻子(ちびの、ちびの時間を……!!)きゅいいん

向日葵「ちょ、ちょっと……?」


未来「な、何をして……」



きらきらきら……


みさき「ああっ!」

こころ「ち、ちびの身体が……光って……!///」


花子「そ、そうだし! ちびの時間を戻せば……!!」


櫻子(ちび……戻ってきて……っ!!)ぐっ


しゃらしゃらしゃら……


しゅいん!


ちび「…………」


未来「ち……ちび……?」



ちび「……わうん?」ぱちっ


花子「あああっ!」ぱあっ

みさき「ちび……ちびが……!!///」

こころ「ちび……!」はっ

未来「ち、ちび……?」

ちび「?」ぺろぺろ


未来「ちび……ちびぃぃ~~~!!///」ぎゅっ

ちび「わん!」はっはっ


櫻子「やった……戻ったぁ……!」ぱたっ


向日葵「ああ、櫻子っ!?」

撫子「……大丈夫、この子は単なる魔力切れみたい」


こころ「ちび、ちび……よかった、よかったよぉ……っ!///」ぎゅっ


楓「えへへ、これでみんな元通りなの!」


みさき「うふふ……よかったぁ……///」ぽろぽろ

花子「みさきち、泣いてるし……///」くすっ

みさき「花子だって……!」



「お~~~い!!」

花子「あっ!」


あかり「櫻子ちゃん、花子ちゃ~ん!」たたたっ

向日葵「皆さん! 皆さんも元に戻って……」


めぐみ「どうやらこの町の人達みんな、元の年齢に戻れたみたい!」

綾乃「大人たちもみんな帰ってきたわ!」

京子「やったねーみんな!」ぱちぱち

ちなつ「ありがとう~!」ぱちぱち


未来「ちび……よかった、よかったね……!///」

ちび「わお~ん!」


櫻子「…………zzz」すぅすぅ


向日葵(ふふっ。お疲れ様、櫻子……///)ぎゅっ

――――――
――――
――



―――ちびはね、最初は本当に小さな子犬だったの!



でも、あっという間に大きくなっちゃった! 子供の私が乗れるくらい!



それでもね、ちびはちびのままだよ。どんなに大きくなっても、変わらないの。



私がちびを追い越して、ちびより大きくなったとしても……ちびはちび! 私の大切な家族!



これからもずっとずっと、一緒にいるの……!



――
――――
――――――

『―――住人の年齢は元に戻ったそうです。地元の警察と魔法庁は今回の件を受けて―――』


櫻子「あーあ、一時はどうなることかと思ったよ……」ぴっ

向日葵「なんにしても、全部解決したんだからよかったですわね」

花子「花子もこの身長でいるほうが落ち着くし」

楓「でも楓は魔法が使えておもしろかったの♪」


撫子「今回の事件で、どうやら魔法庁と古代魔法管理委員会が大きくもめてるみたいだね……魔法庁の一派が最後まで事件を秘匿にしようとしてたけど、管理委員会側は逆に事実を公にして、魔法のありかたそのものを根本的に見直していく必要があるって」

櫻子「国のお偉いさんにも色々あるんだね~……」


撫子「……あ、なるほど、こうやって世界が変わっていくってわけか……」

櫻子「へ?」


撫子「花子の独創魔法やみさきちゃんの独創魔法、そしてこころちゃんが18歳になっても古代魔法を吸い取られずに所持していたワケ……ここ10年内に、今の魔法文明に何らかの改革が起こったのかもしれないって魔法庁の人が言ってたけど、全てはここから始まったのかもしれないね」

向日葵「なるほど……これから色々と、私たちの周りも変わってくるかもしれませんわね」



<中学校・生徒会>


りせ「…………」ぺらっ

奈々「おおーこれが赤ちゃん時代の私たちというわけか」

東先生「うふふ、こんなのが見れるなんてお得な体験しちゃったわね」


向日葵「あ、あれは何をやってるんですの……?」

綾乃「みんな年齢が変わったのをいいことに、写真撮影したりとかで楽しんでたらしいわ」

櫻子「のんきだなぁ……」


向日葵「あれ、そういえば櫻子……あなたの時間魔法って、今は……」


櫻子「え? これ?」しゅん


くるくるくる……


綾乃「きゃーー! 時計の針が!」

向日葵「ば、ばかっ!! そんな危ないもの気軽に使っちゃだめでしょう!?」

櫻子「あっはっは! わかってるよ~♪」

向日葵「いやわかってないじゃない!///」



<小学校・放課後>


未来「よーし、それじゃ帰ろっか!」

花子「あれ、みさきちは? 一緒に未来の家に遊びに来るんじゃないの?」

こころ「いったん家に帰ってから来るんだって~」


花子「それにしても……今回は本当にいろんなことがありすぎたし」

未来「そうだねー……なんか、全部夢だったみたい」

こころ「うん……」



花子「……未来、こころ」


未来「?」


花子「……これからも、何かあったらまず花子たちに相談してほしいし。どんなことがあっても花子は未来たちの味方……お友達なんだから」

こころ「あ……」


未来「うんっ! えへへへ……花子様ありがと~♪」ぎゅっ

花子「んわっ! もう……///」


こころ(ふふ……)


花子「こころも!」

こころ「えっ?」

花子「……こころは、なんでも一人で抱え込みすぎだし! こころは古代魔法なんか使わなくたって、いつも花子たちのことをわかってくれてるけど……でも、もっと花子たちを頼って欲しいし」

こころ「……うん……///」


未来「そ、そうだよこころ。あの時だって、わざわざ私に嘘をつかなくても、時間魔法を取り除く方法を直接言ってくれれば……!」

こころ「そんなの、言えるわけないよー……」

花子「ん……まあ終わったことだから、今更あんまり言っても仕方ないけど……とにかくまず友達に相談だし。わかった?」

未来「そうそう♪」


こころ(未来……)


こころ(私は後悔が怖すぎて、自分じゃ動けなかった……私の未来も、未来に決めて欲しかったんだよ……)


こころ(未来が決めたことなら、私は……全部受け入れられるから……///)



「あっ、みんなー!」ぶんぶん


花子「あ、みさきちだ」

みさき「ちょっと遅いわよ! まだ帰って来てなかったの?」はぁはぁ

未来「み、みさきちが早すぎるんだよ……そんなに息切れるほど走ったんだ」

みさき「こっ、これくらいなんともないから!///」

花子「ふふっ……」



未来「ちび、ただいまー!」


「「「ただいまーー!」」」


ちび「わん! わん!!」



~fin~

【七森魔法中学校物語 ~ 続編・設定資料】


『年齢逆転後の世界』


(若い方から)

・0~1歳?

奈々……完全に赤ちゃんになっている。人一倍ミルクを飲む元気な子らしい。

東先生………同じく赤ちゃんになっている。あまり泣いたりしない大人しめの子らしい。ぐずったときは絵筆を持たせてあげると機嫌が直る。


・7歳

あかね……自分より大きなあかりにべたべた。妹同然の姿になったのをいいことにものすごく甘えている。ともこにたくさん写真を撮られている。

ともこ……小さくなってもあかねのことが大好き。世界そっちのけで写真を撮っていたので、それだけでアルバムが作れたらしい。本人は大満足。


・8歳

撫子……ちょっと目が悪いのでメガネをかけている。魔法は使えなくなってしまったが、不肖の妹が原因で世界がこんなことになったと責任を感じ、小さくなってもリーダー格でみんなを引っ張った。

藍……小さくなってもあまり人柄は変わらない。ひそかに撫子たちの写メをたくさんとっていた……らしい。

美穂……「子供のころ使ってたカチューシャ、残しておいてよかったわ~」ということで、見た目は大きい頃と大差ない。大室家でのお泊りの際、撫子と一緒のベッドに潜り込んでいたらしい。

めぐみ……年齢逆転後、朝起きたら自分の姿が子供になっていたので、「なんだまだ夢なのか」と思い二度寝したらしい。そういうところはずぶといが、ちょっぴり怖がり。


・11歳

りせ……年齢逆転後の赤ちゃん先生たちを一人で面倒見ていたという。赤ちゃんの世話が憧れだったらしく、どこからともなくベビー用品を調達してきた。


・12歳

京子……年齢が若干変わった所で特に気にしておらず、学級閉鎖になった感覚で遊んでいた。しかしだんだんと不安になってくる周りの人たちを元気づけようと、いつも以上に明るく振る舞っていた。

結衣……心の中では不安であったが友人たちの手前弱みを見せるわけにもいかず、我慢して耐えていた。京子の変わらない明るさに救われていたといえる。大きくなったまりちゃんにローブと魔法剣を渡している。

綾乃……年齢逆転後、覚めない悪夢の世界に閉じ込められてしまったのかと思って、実は家で一人で泣いていた。めぐみの逆パターン。そこに京子ちゃんからの電話がかかってきて、とりあえず中学校においでよと言われてだんだんと平静を取り戻した。「泣いてたこと……誰にも言わないでね」と京子にこっそりお願いした。

千歳……船見家にお呼ばれしていった綾乃ちゃんと京子ちゃんの妄想でこっそり鼻血を出していた。たくましい。

千鶴……平然を装っていたが、心の底では大きな不安を抱えていた。そのため夜は千歳と一緒に寝ていた……らしい。


・13歳

櫻子……前回から魔法の勉強をちょくちょく頑張って、妨害や回復など少しくらいならできるようになっていた。実は撫子との魔法特訓 + 魔力成長期もあって、今の一年の中で一番保持魔力が高い。最初に暴走させたときより時間魔法のコントロールもできるようになっている。花子は大きくなっても私の妹であることに変わりはないんだからね! と言って、おねえちゃんらしく守ってみせようと頑張っていた。

向日葵……回復魔法のエキスパート。実は氷魔法の芽が出始めている。努力の天才としてりせ以上の結果を残しており、七森中の先生たちの間ではかなり評価が高い。逆転後の朝、いきなり大人になっていた楓ちゃんに起こされたため、びっくりしすぎて混乱していた。

あかり……怖がりのちなつちゃんと7歳になった姉たちに囲まれて、赤座家の一番のお姉さんとして念願の頼りがいのある姉ライフを満喫していた。実は密かに、花子のように大人になりたかったなあという願望を持っていた。

ちなつ……最初は夢みたいな出来事にパニックになっていたが、事態が現実味を帯びるにつれ怖くなっていった。赤座家で密かに、小さくなったあかねとともこに元気づけられていたらしい。


・18歳

花子……魔法の幅は姉たちに比べると狭いものだが一応特殊プリマチュアである。土魔法を一番得意とし、その発展として花の力を扱う魔法『花魔法フラワリア』を独自編出した。年齢逆転の仕組みを知って数分後、自分の胸が大して成長していなかったのに気づいて静かにショックを受けていた。対してみさきの方はナイスバディになっていたので、二重にショック。戦うときは撫子のローブを借りていた。

未来……ちびという名前のゴールデンレトリバーを飼っている(大室家1巻 限定版付録 花子の絵日記より)。年齢逆転後は一番身長が高くなった。水属性魔道士であり、実は獣を強化して共に戦う「ビーストテイマー」の才能がある。死力を振り絞った未来の魔法は、花子の花魔法を切り裂くほどに強かったという。

こころ……ランクC封印古代魔法『心理魔法マインディア』の使用資質所持者。実は闇魔道士である。今回の事件を通してこころは全てを理解していた。しかし自分ひとりで事の顛末を決める覚悟ができず、全ての決断を未来に委ねた。未来に恋心を抱いており、彼女が傷つくような選択を避け続けていた。

みさき……光・雷魔道士。聖なる独創魔法『天魔法エンジェリア』を編出。18歳になった姿は、みんなが羨ましがるほどにスタイルが良い。実は魔法庁の部隊とちびが戦闘している現場や、ちびと花子・櫻子たちが邂逅している現場を影から確認していた。未来とこころが何か隠していることにいち早く気づき、影で行動していたらしい。


・20歳(まりは詳細不明)

楓……補助・回復魔道士。20歳の彼女は現在の向日葵を上回るほど豊満だという。年齢が大きくなっても喋り方などはそのままで、向日葵についてまわっていた。

まり……ちなつが思わず惚れかけるほどのイケメン氷魔道士。すらりとしたモデルのような体型で、船見家の子らしく氷魔法の強い才を持つ。実は楓のことがほっとけない。

『逃げ出した時間魔法クロノシア』


櫻子から吸い取られたはずの時間魔法クロノシアには意思があった。
魔吸石にかけられたクロノシアは、魔法庁の管理下に置かれてしばらくおとなしくしていた。しかし封印古代魔法に対しての理解が浅い今の魔法文明は、その強大すぎる力を把握しきれておらず、通常の収容プロトコルで保管ができる代物でないことにも気づかなかった。時間を操るクロノシアにとって、収められた小さな施設内の時間を止めて警備を抜け出すのは容易なことだった。
さまよう魔法は櫻子の元に帰りたがった。都会を抜け出して空をただよい、櫻子が暮らす町へと移動していった。そして……真に時間魔法を欲する存在が目の前に現れた。
長い間空を漂い、残存する力も残っていなかったぼろぼろの時間魔法は……魔法を欲する犬、ちびに飛び込んだ。魔法を受容できるように無理矢理肉体を変異させ、魔法に蝕まれていくちびは思わず叫んだ。あらゆる物質も透過して町全体に響いていったその遠吠えを受けたものは、みな年齢が逆転してしまった。

クロノシアは現在、ちびの元を離れて櫻子の手にある。古代魔法管理委員会は魔法庁全体から刷新対象となり、そのごたごたが落ち着くまでは櫻子が自分の中に宿して守っているようだ。



『時間魔獣・ちび』


時間魔法クロノシアの影響で驚異的な成長を遂げた心優しいゴールデンレトリバー。魔法が使えるくらい大きくなった未来を見たい、未来に魔法を使わせてあげたい……その想いにクロノシアが惹かれ、魔法を宿してしまうこととなった。
体長は頭の先から尻尾の先まで4メートル以上あり、牙・爪の成長や毛も伸びたため、神獣のような見た目になった。しかしそれでも未来を大切に思う気持ちは変わらず、未来のためなら命を擲つ覚悟を持つほどの忠犬であった。
魔法が身から離れたことにより力尽きてしまったものの、櫻子に渡った時間魔法で生命力を取り戻した。その際今回の事件にわたっての記憶がなくなってしまったようだが、今までと変わらずに未来の傍に居続けようという想いは変わらない。
時間次元だけを操作して別の次元空間を切り出すことができる。そちらの世界から元の時空は見えるものの、切り出した方の時空は見えなくなる。



『心理魔法マインディア』


A~Dまである危険度ランクのうち、ランクCに分類される封印古代魔法。非常に古い歴史を持ち、その起源は人間以外の魔法を使用する動物が生み出したものではないかとも言われている。
生き物の思考を感じ取る、または自分の思考を離れた相手に伝えることができるという。言葉を発さずとも、術者にはまるで耳元で語りかけられるかのように感じるらしい。
古代魔法は存在することを許されないという扱いであったが、なぜ18歳になったこころがアブソープション措置をとられていないかは定かではないが、何らかの形でここ10年以内に封印古代魔法のありかたに変革が起きるものと思われている。



『花魔法フラワリア』


花子が編出した独創魔法。土魔法の発展系であり、自然豊かな場所では壮絶な威力を発揮する。
硬質化した花びらを射出したり、巨大化した花で身を守ったりと様々な扱い方ができる。ヒマワリのシールド、アサガオのムチ、テッポウユリのラッパ銃など、武器として花を変化させることもできるという。
こころは花子の魔法を見抜いており、この魔法を信じて花子と櫻子をフラワーパークに呼んだ。



『天魔法エンジェリア』


みさきの得意とする雷魔法と光魔法を合わせて発展させた独創魔法。神聖な美しさと神の裁きのような荒々しさを兼ね備えている。雷は水に、光は闇に強いため、みさきが本気を出せば未来とこころを完封できるかもしれない。

ありがとうございました。

花子ちゃん誕生日おめでとう!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom