京太郎「時間の枝を掻き分けて」 (65)


京太郎「何で俺はこんなに影の薄い青年になってしまったのだろう…」

京太郎「中学の頃にはハンドボールもやっててモテモテだったのになぁ…」ハア

???「そこのお兄さん…」

京太郎「は?俺の事?」

???「あなた、旅行に行きたくは無いですか?」

京太郎「旅行っても…部活の雑用もあるしどこにも行く時間は…」

???「なら…『時間』旅行なら?」

京太郎「時間…旅行…?」


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 咲「ふーん、そんな事が有ったんだ」

 京太郎「あぁ…気味悪かったぜ」

 咲「でも時間旅行かぁ…私は行ってみたいな」

 京太郎「やめとけよ、想像してるみたいに良い事ばっかりじゃねーよ」

 咲「もう!京ちゃんは夢が無いなー!」

 京太郎「夢は寝てる時に見る位が調度良いんだよ…」

 咲「変な京ちゃん…それで?時間旅行の件はどうなったの?」

 京太郎「あぁ、もちろん…」

 京太郎「断ったさ…」

 咲「そっかぁ…学校着いたら優希ちゃんと和ちゃんにも教えてあげなきゃ!」

 京太郎「ハハッ…そりゃいいや」


京太郎(もし俺がそんな能力を持っていたら一体何に使うだろう…)

京太郎(悪用して警察に捕まったり、死んだらどうなるんだろう…)

京太郎(もっと慎重に考えるべきだ…こんなくだらない事をか?考えて何になる…)

京太郎「なぁアンタ…」

どうせ

???「はい?」

どうせ

京太郎「あのさ…」

いんちきに決まってる


京太郎「連れてってくれないか?」


京太郎「う…ん?ここは…」

???「お気づきになりましたか」

京太郎「あんた…俺は今まで何を」

???「少しあなたの体を弄らせていただきました」

京太郎「弄るって…一体何を!」

???「時間旅行とは考えてる程甘くは無いんですよ。時空転移に耐えうる脳かどうかの検査」

???「そして…脳内に埋め込んだチップがあなたを時間旅行に連れて行ってくれます」

京太郎「チップって…なんでそんな事まで!」

???「あなたがしようとしているのは魔法なんかじゃない。科学の人体実験だと思ったほうが良い」

京太郎「人体…実験…」


???「あなたの頭に埋め込んだチップが脳で言う海馬の役割になり、あなたの『跳べ』という信号をキャッチすると…」

???「願った時間、その時間のあなたの脳へデータを送信する。つまりタイムトラベルではなく『タイムリープ』ですかね」

京太郎「何を…言っているんだ?」

???「あなたが『跳びたい』と願った時間にあなたの意識と記憶が『跳んでいく』それだけの話です」

京太郎「じゃあ…この世界の俺は、記憶が抜け落ちて意識の無い俺はどうなるんだよ!?」

???「それは私にも解りません。あなたがタイムリープした事は貴方以外、気付くことは出来ないから」

京太郎「それじゃあ…俺がこの世界から消えてなくなるって事かよ!」

???「それはまだ解りません。貴方は説明出来ますか?もしかしたらこの世界の、貴方と親しかった人達は」

???「どこかにタイムリープしたかもしれない。そして貴方達の記憶の中からだけ消えているかもしれないなんて事を」

京太郎「それは…」


???「同じなんですよ、今は認識出来ていようが、いつかは認識出来なくなるかもしれない」

???「また、誰かに認識されなくなるかもしれない。」

京太郎「・・・・・」

???「貴方は現状を変えたいと思った。だから私にすがったんじゃないですか?」

京太郎「でも…そんな事急に言われたって…」

???「貴方は深く考える必要は無い。タイムリープをして貴方が感じたことを、貴方が忘れてしまわない限りは」

???「思い描くんです、自分のやり直したい過去を」

???「念じるんです、その時間へ『跳びたい』と」


京太郎「・・・・・」

???「跳べ、跳べと」

京太郎(跳べ…跳べ…)

京太郎(俺が麻雀を始める前に…)

???「一心不乱に念じるんです」

京太郎(跳べ…跳べ…)

京太郎「『跳べ』!」


その日、この時間軸から「須賀京太郎」が消えた


 京太郎「ん…くっ…はぁ!?」

 京太郎「ここは!?時間は…」パカッ

 京太郎「高校に入学した…翌日?」

 京太郎(戻った?俺の意識だけが?日付も時間も…全部戻ってる)

 京太郎「俺は…タイムリープしたのか?」

 京太郎(母に話を聞いた。俺が麻雀に興味を持っているかと)

 京太郎(スポーツ馬鹿の俺にそんな複雑なもの出来る筈がない…だとさ)

 京太郎「これで俺は…やり直せるのか?」


 京太郎(まずは極力、麻雀部の面子には近づかない事)

 咲「京ちゃんおはよう!」

 京太郎「おう咲か、おはよう」

 咲「ねぇ、京ちゃんは入る部活決まった?」

 京太郎(来た…ここがターニングポイントだ)

 京太郎「いや、多分部活には入らねーと思う」

 咲「そっかぁ!じゃあ私と一緒だね?」ニコッ

 京太郎(そうか、咲は俺が誘わなければ麻雀部に入ることは無かったのか…)

 京太郎「そうだな…」

 咲「でも京ちゃん勿体無いよ?折角ハンドボールで良い所まで行ったのに…」

 京太郎「良いんだよ、もうなんだか疲れちまってな」

 咲「ふーん、そっか」


 京太郎(これで咲も麻雀部に入らないって事は…全国には行けないって事だよな…)

 京太郎「…なぁ咲」

 咲「どうしたの?」

 京太郎「お前…麻雀とか興味ないか?」

 咲「え?麻雀?」

 京太郎(俺の我儘で皆の夢を壊す事は出来ない…せめて咲だけでも…)

 咲「なに言ってるの?私麻雀なんかやった事無いもん」

 京太郎「なに?やったこと無いって…家族麻雀もか!?」
 
 咲「な、なにさ急に…お父さんがやってるのは見た事あるけど私はルールも知らないよ?」

 京太郎(なんだこれは?どうなってるんだ?)


 咲「でも麻雀なんて急に言い出すなんて京ちゃんちょっとおかしいよ?」

 京太郎(なんだっけ、こういうの…時間を跳んだら世界が変わる…)

 タイムパラドックス…だっけ?

 
 京太郎(あの後俺は優希と和に何か変わった所は無いかと聞きに行くことにした)

 
 2人はそこに居なかった

 
 京太郎(それどころか部長や染谷先輩まで…)

 京太郎(こんなにも変わってしまうのだろうか?俺が麻雀部に入らないという選択だけで…)

 京太郎(もしかしたらそれよりもっと前に…俺が『跳んだ』時に?)

 京太郎(考えていても仕方ない…一度元の時間に戻ろう…)

 京太郎「『跳べ』!」


京太郎「うっ…はっ!」

京太郎「今の日付は…よし、戻ってる!」

京太郎「まずは咲達にコンタクトを取ってみるか…」

咲「どうしたの?京ちゃん急に呼び出して」

京太郎「あぁ…実は和とか優希にも連絡したんだけどな…」

咲「のどか…?ゆうき…?」

おい…冗談だろ?

咲「ねぇ、京ちゃん」

それ以上はやめてくれ…もう…

咲「それって、だれ?」


京太郎「うああああああああああ!!」

咲「京ちゃん!待ってよ!京ちゃん!!」

咲「もう…どうしちゃったの…」

京太郎(まさか…俺の軽率な行動で皆の存在が…)

ごめん…本当に…

どうしたっすか?

京太郎「えっ?」

モモ「清澄の須賀さんっすね?」

京太郎「東横…さん?」


モモ「なるほど、タイムリープっすか…」

京太郎「信じられないだろ?こんな話…」

モモ「信じるっすよ」

京太郎「ははっ…ありがとう…こんな変な話に付き合ってくれてさ」

モモ「タイムリープなんかじゃ驚かないっすよ。私なんかほぼ透明人間っす」

京太郎「むぅ…確かにそう言われれば…」

モモ「この世界には不思議が溢れてるんっすよ。私達には想像できないレベルで」

京太郎「そっか…そうかもな」

モモ「それで、何を深刻そうに悩んでたんすか?」


京太郎「俺の知ってる部員が…タイムリープした世界に居なかった…」

京太郎「俺がこの世界に帰って来たら…ここにも皆の姿は無かった…」

モモ「皆って?」

京太郎「片岡優希、タコスが大好きでよく作ってやったよ…俺の事イヌとか呼ぶ生意気なやつだった」

京太郎「原村和、とにかく綺麗で…胸も大きくて麻雀も強い完璧人間だった。俺の…憧れだった」

京太郎「染谷まこ、気さくで後輩の面倒見の良い先輩だった。自宅で雀荘をやってたんだ」

京太郎「竹井久、麻雀部の部長で学生儀会長も兼任して…頭の切れるかっこいい人だった…」

京太郎「なのに…なのに!!クッ…」

モモ「須賀さん…」

モモ「今の話、おかしくないっすか?」


京太郎「な、なにがだよ?」

モモ「今あなたと顔見知りなのは宮永さんだけっすか?」

京太郎「あぁ、麻雀部の中ではな…」

モモ「なんで…宮永さんは2つの世界線に存在してるんっすか?」

京太郎「え…?なんでって…」

モモ「あなたが大事に思っている部員の中で、宮永さんだけが消えてない世界線が無いって事は」

モモ「何か手がかりがある筈っす」

京太郎「でも…心当たりも無いんだぜ?それなのに…」

モモ「これは1つの仮説っす」

モモ「須賀さんが今の時間軸以外に跳んだときに、また私に相談して欲しいっす」


京太郎「でも…俺以外の人は皆記憶が無くなって…」

モモ「…明日私はここを通る用事があるっす。だから、明日のここに飛んでくださいっす」

モモ「そこで『パソコンの調子が悪いだろう』と言ってください。私しか知らない情報っすから」

京太郎「わかった…相談に乗ってくれてありがとう」

京太郎「じゃあ…また、明日」

モモ「はい、また明日っす」

京太郎(咲だけが俺の居る時間軸には必ず居る?それは消えた皆の方が特殊なのか?それとも…)

京太郎(そしてあの口ぶり…東横さんは何かを知っている?)

京太郎「考えたって仕方ない、今日は少し休むか…」


翌日 同時間 同場所にて

京太郎(来た、東横さんだ!)

京太郎「すみません、鶴賀学院の東横さんですよね?」

モモ「あなたは…清澄の、須賀さんっすね?」

京太郎「実は俺…昨日のあなたにここへ来るように言われたんですよ」

モモ「え?私、昨日あなたに会いましたっけ?」

京太郎「その…実は俺!タイムリープしてるんです」

モモ「…なんすかその厨二病設定」

京太郎「東横さん『最近パソコンの調子悪いんじゃないですか?』」

モモ「…なんでそれを」

京太郎「昨日のあなたに聞いてきました。信じていただけますか?」

モモ「…話だけは聞くっす」


京太郎「俺が体験したことは以上です」

モモ「ふーむ…確かに宮永さん以外の人の名前は聞いたことが無いっすね」

京太郎「それで、俺はどうすれば…」

モモ「任せてくださいっす!私昔からこういうオカルト大好きで色々調べてたっすから!」

京太郎「そもそも時間を遡っただけでなんで咲以外の部員は消えちゃったんですか?」

モモ「まぁ…時間を遡るなんて普通は出来ない芸当で、過去の自分が知らなかった情報を持ったあなたがその時間に居るって事は」

モモ「単純にその時間内のバグになってるんです。その時間にバグが居ることによって、様々な事に異変を起こしているって事っすね」

京太郎「それじゃあ、俺がタイムリープする度に世界は少しずつ変わって行くって事…ですか?」

モモ「そういうことっす」


京太郎「じゃあ俺が皆の居る時間帯に戻ろうとすればするほど…」

モモ「いつかはあなたの知らない人しか居ない世界になるかもしれないっす」

京太郎「そんな…じゃあ俺はもう二度と皆に会えないのかよ…」

モモ「そう落ち込むことはないっすよ、まだ手はある」

京太郎「一体どうすれば?」

モモ「やっぱり気がかりは宮永さんっすね。彼女がこの時間軸にいれば、ほぼ彼女がキーになってる可能性があるっす」

京太郎「電話してみます!」

prrrrrrr…ガチャ


京太郎「もしもし!咲か!?」

咲「どうしたの?そんなに慌てて…」

京太郎「お前、身の回りに何か変わった事とかないか?」

咲「京ちゃんがおかしいって事くらいしか変わりは無いよ…」

京太郎「そうか…よかった…」

京太郎「…なぁ咲」

咲「なぁに?」

京太郎「優希と和って知ってるか?」

咲「もう!だから知らないよ?」

京太郎「そっか…なんでもないんだ、悪かった」

咲「変な京ちゃん…」


モモ「決まりっすね」

京太郎「でも、咲が居るってわかったところで解決にはならないんじゃ…」

モモ「まだ時間はあるっす、詳しいことがわかったら連絡するっす。なるべく宮永さんから離れないようにして欲しいっす」

京太郎「わかった…お願いします」

京太郎(咲が鍵を握ってる…か。俺の居る時間軸には必ず咲が…)

京太郎(跳ぶ前、一度跳んだあと、変わってしまった元の世界、そしてこの世界)

京太郎(三度跳んだ世界に必ず咲は居る…様々な物が変わっていても咲は居る…)

京太郎「咲には…話しておいた方が良いかもな…」


京太郎「もしもし?咲か?ちょっと今時間あるか?」

咲「どうしたの?もう結構遅い時間なのに…」

京太郎「近くの公園で待ってるから」

咲「?わかった…」



京太郎「咲、今から大事な話をするから聞いてくれ」

咲「そんな改まって…やっぱり最近の京ちゃんおかしいよ…?」

京太郎「俺は…時間を自由に行き来できるんだ」

咲「なに馬鹿なこと…」

京太郎「真面目な話なんだ!聞いてくれ!」

咲「…わかった」

京太郎(それから俺は咲に全部話した。始めは話半分に聞いていた咲も段々と真剣に聞いてくれるようになっていた)


京太郎「これが俺の体験した出来事だ」

咲「そんな…じゃあ私は京ちゃん以外にたくさん友達がいたって事?」

京太郎「あぁ…」

咲「私は、京ちゃんの知ってる私じゃ無いって事…だよね?」

京太郎「信じて…くれるか?」

咲「うん、京ちゃんがこんなに一生懸命なんだもん。私も信じるよ」

京太郎「ありがとう…咲!」

咲「それに京ちゃん嘘下手くそだから、嘘ついてたらすぐにわかるもん!」

京太郎「なんだとー!」

咲「あはははは!」


京太郎「でもよかった…咲が信じてくれなかったら…俺もう諦めてたかもしれない」

咲「京ちゃんはやれば出来るんだから、途中で諦めたりしちゃ駄目だよ?」

京太郎「あぁ…ありがとうな」

咲「それじゃあまた明日!お休み」

京太郎「あぁ、気をつけて帰れよ」

京太郎(胸がすっきりした、自分の目標がしっかり決まったって言うか)

京太郎(諦めちゃだめ…か。そうだよな、咲も皆とまた会えるように)

キキーー!ドカーン!

京太郎(なんだ?事故か?あそこって、咲の居た)

京太郎「さ…き?」


京太郎「咲ー!咲!大丈夫か咲!!」


咲はそこに居るはずは無かった


京太郎「咲!?」


俺が帰る後姿を


京太郎「さ…き?」


ずっと見ていない限り


咲「きょ…ちゃ…」


京太郎「喋るな!今すぐ救急車を!」

咲「私…あいた…かったな」

京太郎「喋るなって!!」

咲「私の…知らない」

咲「私の…とも…だち」

京太郎「おい咲!目開けろ!咲!咲!」

京太郎「あああああああああああああああああ!!!!」

京太郎「『跳べ』!!」


 京太郎「ぐっ…あああああああ!!」

 京太郎「戻った…咲と別れてすぐ…車に轢かれる前の時間…」

 京太郎「咲!」

 咲「どうしたの?京ちゃん」

 京太郎「送ってく」

 咲「え?いいよ別に、すぐ近くだから…」

 京太郎「頼む…送らせてくれ…」

 咲「わかったよ…」


 京太郎「なぁ咲、さっき言ってた友達にさ…会いたいか?」

 咲「うーん、やっぱり会いたいかな?仲は良かったの?」

 京太郎「あぁ、そりゃもう」

 咲「そっか…また、友達になれるかな?」

 京太郎「あぁ、もちろんだ!俺がすぐに会わせてやるからな?」

 咲「うん!期待してるね?」

 パアン!


 目の前で血を噴出して倒れてる咲


 銃声
 

 頭を打ち抜かれてる


 また駄目だったんだ


 跳ぼう


 咲、待っててくれ


 京太郎「『跳べ』」


京太郎「東横さん、相談があるんだ」

モモ「なにか…起きたっすか?」

京太郎「俺が『跳んだ』世界で、咲が誰かに殺される」

モモ「そんな!?…もしかしたら、宮永さんは本当は消えるべきイレギュラーだったのかも…」

京太郎「どういうことですか?」

モモ「本当は、他の部員達と同様に、この世界に産まれてくる事が無かった存在で」

モモ「存在してはいけない…だからどの世界線でも結局…」

京太郎「咲を救う方法は?」


モモ「様々な時間軸に跳んで、今までしなかった行動をとり」

モモ「意図的にイレギュラーを発生させれば…可能性は有るっす」

京太郎「そうですか…助かりました」

モモ「須賀さん…あなたが宮永さんを助けたいのはわかるっす」

モモ「でも…後何回宮永さんが死ぬところを見るか、わかんないっすよ?」

京太郎「いいんだ…あいつ、優希たちに会いたいって言ってたんだ」

京太郎「頑張ってねって、俺なら出来るって、諦めないでねって」

モモ「須賀さん…」

京太郎「『跳べ』」

今日の投下は以上です

完結はさせてますのでまた明日少しずつ投下していきますね

明日で全部投下出来ると思いますので少々お待ち下さい

おやすみなさい


 京太郎「俺が咲を…助けるんだ」

 京太郎(何度も何度も咲が死んだ。俺の知らない咲が何度も何度も)

 京太郎(今まで俺がしてこなかった選択を、咲が死ぬ度選んでいった)

 京太郎(それでも咲は、『俺の目の前で』死んでいった)

 京太郎(いつしか俺は、部屋から出ることをやめた)

 京太郎「咲…咲…咲…」

 京太郎(俺は目を瞑った)

 京太郎「いつまで続ければいいんだ…」

 京太郎「どこに跳んだって咲は死ぬ…」

 京太郎「もう…疲れた…」


 prrrrrrrrr

 京太郎「電話…?」

 宮永咲

 京太郎(咲から…か)

 京太郎(この電話に出るとまた…咲に会いたくなっちまうな…)

 何かがおかしい

 京太郎(ごめんな、咲またお前を)

 この違和感はなんだ?

 京太郎(咲はもう昨日…)

 死んで…ない?


 京太郎(あれ?昨日俺は眠ったはず…)

 京太郎(咲が死ぬはずの時間に、家で眠ってしまった)

 京太郎(今日、咲は生きている?)

 京太郎「咲!?」

 咲「やっと出た!もう!学校にも来ないでなにやってるの?京ちゃん!」

 京太郎「咲なんだな!?本当に…咲だな!?」

 咲「なにそれ?気持ち悪いなぁ…」

 京太郎「はは…やった…咲、今日…会えないか?」

 咲「うん、学校終わったらいいけど…本当大丈夫?」

 京太郎「あぁ、大丈夫だ!それじゃあな!」


 京太郎(この時間軸の咲はまだ生きてる!俺の選択が、咲に会わないっていう選択が正しかったんだ!)

 京太郎「東横さんにも連絡しておこう!」

 モモ「もしもし?須賀さんっすか?」

 京太郎「東横さん!咲が!咲が生きてたんですよ!」

 モモ「宮永さんが!?それって運命が変わったって事っすか!?」

 京太郎「昨日、咲に会わなかったら、さっき電話があって!」

 モモ「まだ終わって無いっすよ!宮永さんから離れたら、もしかしたらまた…」

 京太郎「この世界の咲は…絶対に俺が守ります!」

 モモ「元気になったようで安心っす、これからも頑張ってくださいっす!」

 京太郎「はい!」





 京太郎「今度こそ…俺が咲を!」


 数時間後

 京太郎(咲…本当に会えるのか?)

 京太郎(俺の目の前で何度も死んでいった咲)

 京太郎(昨日、死ぬ事は無かった咲)

 京太郎(俺が会わなかったから死ななかった咲)

 京太郎(俺が…会わなかったから?)

 咲「あ、京ちゃーん!」

 京太郎(じゃあ…今俺に会った咲は?)

 パアン!ドサッ

 京太郎(俺に会って…死んでしまった咲)


 京太郎(俺が守ろうとして、離れなかったから…咲は死ぬ?)

 宮永さんから離れないようにして欲しいっす

 京太郎(離れなかったから…誰かに殺され続ける咲)

 宮永さんから離れたら、もしかしたらまた…

 京太郎(咲が居ることが不都合な誰かに…)

 そうか、最初から

 京太郎「『跳べ』」

京太郎「おい、あんた」

???「はい?何でしょうか?」

京太郎「東横桃子さん、だろ?」

???「…案外早かったっすね」


モモ「どこで気付いたんすか?」

京太郎「あなたは咲に執拗にこだわっていた。俺の目を咲に向けようとしていた」

京太郎「そもそも最初俺は、咲以外の部員にまた会いたいって言ったんだ」

京太郎「それなのに咲から離れないようにさせた、なぜ?」

京太郎「俺の目の前で咲を[ピーーー]必要があったからだ」

モモ「へぇ、意外と頭が切れるみたいっすね」

京太郎「そして、まだおかしな所はあった。気付かない方がおかしい位のな」

モモ「・・・・・」

京太郎「東横さん、あんた」

京太郎「タイムリープしてるだろ?」


モモ「驚いたっすね…まさかそこまで」

京太郎「おれは咲が死ぬ度、あんたに相談した。解決策を一緒に考えた。でも…」

京太郎「俺がタイムリープしてきた事を、あんたはいつも知っていた」

京太郎「最初に決めた筈の合言葉『最近パソコンの調子が悪いんじゃないか?』と言ったのは、あんたと会った二回目の時だけだった」 

京太郎「最初に会った日に、あんたは次の日に『跳んでくれ』と言って、次の日俺はそこに現れた」

京太郎「次の日のあんたは俺の事を知らなかった…そして合言葉を聞いてやっと俺の話を聞いてくれたんだ」

京太郎「俺は前の日、『跳んで』いなかったのにだ」

モモ「!?」


京太郎「家に帰って疲れて寝てしまったんだよ。その時は気が動転してて、自分でも『跳んだ』と思っていたんだ…」

京太郎「実際、次の日東横さんに言われて咲に電話したとき」



京太郎「…なぁ咲」

咲「なぁに?」

京太郎「優希と和って知ってるか?」

咲「もう!『だから知らないよ?』」


京太郎「俺以外の人間が、タイムリープした時の記憶が有る訳無いんだ、俺が『跳んでいないんだから』咲は前日の咲と同一人物だったんだ」

京太郎「あの時はこんなことにも気付かなかった…」

モモ「まいったっすね…こんなはずじゃ無かったっす…」


京太郎「なんでこんな事を俺にさせたんだ?」

モモ「最初に会ったとき、あなたの脳内にチップを埋め込んだって言ったじゃないっすか」

モモ「アレは嘘っすよ」

京太郎「な!?実際俺は時間を『跳んでた』んだぞ!?」

モモ「もともとあなたにはそれが出来たんすよ」

モモ「私と同じ様に」

京太郎「どういうことだ…」


モモ「時間軸だとか世界線なんて話もでたらめなんすよ。実際に起こってるのは」

モモ「身の回りの、他の人の存在感を吸い取っているだけなんすよ」

京太郎「そんなバカな…!」

モモ「じゃあ、なんであなたは最初から私を認識出来てたんすか?」

京太郎「あっ…」

モモ「人の存在感を吸収して、私は皆に認識されるようになった」

モモ「そして、あなたと同じ事が起きたっす」

モモ「私以外の部員がこの世界から居なくなってしまったっすよ」


モモ「最初はタイムパラドックスだと思って、何度も『跳んで』その度存在感が強くなって」

モモ「『跳べなくなってた』」

京太郎「でも…今までずっと…」

モモ「意識をどの世界とも共有出来るだけっすよ。私自身はどこにも行ってない」

モモ「『跳びすぎた』代償っすよ」

京太郎「じゃあ、なんで俺に『跳ばせた』!?」

モモ「最初は私みたいな人を探したんすよ。私みたいに存在感の薄い人を探して、加治木先輩の居る世界まで連れてって貰おうと」

モモ「それが出来ると期待していたっす」


モモ「そしてあなたを見付けて、眠らせた後に『跳び方』だけを教えた」

モモ「案の定あなたは『跳んだ』でも私は一緒に行けなかった…ただ」

モモ「あなたが『跳んだ』次の日に、加治木先輩以外が戻って来たんすよ」

京太郎「…何?」

モモ「あなたの世界で消えた人数分、帰って来たんすよ」

モモ「ただ一人を除いて」

京太郎「だから咲を…」


モモ「宮永さんが消えれば加治木先輩は戻ってくるはず、でも中々消えなかった」

モモ「だから、あなたが何度も『跳ぶ』ように、『あなたの目の前で』何度も殺したんすよ」

京太郎「てめぇ…!」

モモ「別に宮永さんが消えた後に、あなたも私と同じ事をすればあなたの周囲は元通りになるじゃないっすか」

京太郎「ふざけんな!お前のせいで咲は!咲は…!」

モモ「だからぁ…私みたいに次の人を探せばいいじゃ…」

その言葉で、俺の中の何かが切れた


それからの記憶は無い、気付いたら東横桃子だったものが目の前に転がっていた

俺はこいつみたいにはならない。こいつみたいに…

京太郎「『跳べ』」

失敗はしない…

 ???「なぁあんた、旅行に行きたくは無いか?」


カン

以上でカンです。

でも最後のレスでカンではないんです

京太郎はどこかに『跳んだ』んです

皆さんにも見える所に

同じ世界線だと思ってても

少し『ずれてる』所へ

また別のSSでお会いしましょう

ありがとうございました

新しいSS投稿する前にネタバラシと言うか、自分の中の構想を書かせてください!

実はタイムリープをした後の世界の描写を、スペースを1つ開けて書いてるんですね。

なので、京太郎が『跳べ』と言った後の文が少しずれてるんです。

でも、最初の方に京太郎がまだ『跳べ』と言ってないのに少しずれてる文章が有るんです

それじゃあ一体どこから跳んだのか?って言うのをやりたかったんですが…難しいですね!ww

ラストの文から>>2に『跳ぶ』って事でFAです!

見ていただいてレスもありがとうございました!

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