カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 (1000)

FEifの最初から系話です。
初プレイが暗夜だったので、暗夜ルートをベースにこういうのだったらよかったな的な妄想話です。

主人公のタイプは
体   【02】女性
髪型  【05】大きい
髪飾り 【04】ブラックリボン
髪色  【21】ロング・セクシーの中間
顔   【04】優しい
顔の特徴【04】横キズ
口調  【私~です】

私の好きな属性都合上、主人公に盲目と心想いという勝手に考えた属性を追加していますので、予めご了承のほどよろしくお願いします。

長所  心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
短所  盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】

時々安価があるかもしれません。もしかしたら無いかもしれません。

それでは、始めます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438528779

カムイ(私が光を失ったのは幼い頃のことで、鍛錬の最中に目先を横切った剣先を避けることができなかったことが原因でした)

カムイ(今ではその目の傷は瞼の下に隠されている。人に見せるものでもないと幼心に分かっていたからでしょうか)

カムイ(それから私は感覚を鍛えることに必至になった。体に術式を施してもらえたのは僥倖で、私の感覚能力は高いものになって、今では光を知る人と同じほどに剣を振るえるようになった)

カムイ(でも、この力は一体何に使われるべき力なのか、今の私にはその答えを出すことなど出来るわけもなかった……)

カムイ「お父様が私をですか?」

マークス「そうだ、ついにお前も自由になる時が来たんだカムイ。ここまで続けてきた鍛錬が実を結んだといってもいい」

カムイ「いいえ、これもマークス兄さんや支えてくれた皆さんのおかげです。私自身の力ではどうにもできなかったはずですから」

マークス「ふっ、カムイは謙遜してばかりだな。まぁ、そこがお前の良いところでもあるのだがな」

レオン「ほんと、最初に出会った時に盲目だって聞いた時はどうなるかと思ったけど、今じゃマークス兄さんの攻撃を受けることもできるようになったなんて、正直信じられないよ」

カムイ「マークス兄さんは、手加減がうまいんですよ。本気でこられたら一溜まりもありませんから」

レオン「はぁ、そういう冷静に分析するところとか、羨ましいよ、まったく。はい、これで汗を拭いて」

カムイ「ありがとうございます、レオンさん……ところで、いつも法衣のことを兄さんに言われてますけど、今日は大丈夫ですか?」

マークス「………」

レオン「大丈夫だよ、今日はちゃんと姿見で確認を……」

マークス「ははっ、寝起きはやはりつらいか?」

レオン「ちょっと、わかってるなら一言言ってよ兄さん! 恥ずかしいなぁ、もう……」

カムイ「ふふっ、私も目が見えればレオンさんのが慌てている姿を見ることができるんですけど、感覚だけでは気配が慌てて動いてるようにしか感じられません」

レオン「もう、そこに記憶上の僕の顔をトレースしてるんだから、実際見てるのと変わらな……ごめん、悪気はないんだ」

カムイ「目のことで謝らないでください、それに先に口に出したのは私ですから、だからそう悲しい顔もしないでください」

レオン「……はぁ、見えないはずなのにそう言われると、なんだかからかわれているんじゃないかって時々思うよ」

カムイ「これでも一応お姉さんですから、弟のことはできる限り知っておきたいんです」

レオン「……あ、ありがとう」

マークス「照れているな」

レオン「あーもう、なんでこうも僕ばかり弄られないといけないんだ」

???「仕方ないじゃない、レオンは二人にとって可愛い弟なんだから」

カミラ「もちろん、私にとっても可愛い弟だからね」

カムイ「カミラ姉さん」

カミラ「あらあら、マークスお兄様が外に出られるようになったことを先にカムイに伝えてしまったから、私の出番が無くなっちゃったじゃない」

マークス「すまないな、カミラ。だが、私の口から伝えてやりたかった」

カミラ「仕方ないわ。剣の鍛錬を続けてきたのはマークスお兄様、それは譲ってあげる。けど、最初にカムイを連れて旅をするのは私よ?」

カムイ「カミラ姉さん、旅というのは色々な場所を回るあれですか?」

カミラ「そうよ、もう行きたい場所は決めてあるの。温泉とか、温泉とか、あと温泉とか」

レオン「温泉しかないじゃないか」

カミラ「そこでどっちの胸が大きいのか勝負するの」

カムイ「うーん、レオンさん、私とカミラ姉さんどっちが大きいですか」

レオン「な、なんで僕に聞くんだい!?」

マークス「兄から見て、カムイ残念だがカミラの方が大きい。ざっと見ても2ランクは高い」

レオン「兄さんも何真面目に答えてるのさ」

???「カミラおねえちゃん、先に行かないでよー」

エリーゼ「やっと追いついた、あっ、カムイおねえちゃんだ! カムイおねえちゃーん!」ダキッ

カムイ「おっと、ふふっエリーゼさんはいつも元気いっぱいですね」

エリーゼ「うん、あたしカムイおねえちゃん大好き! 世界でいちばん好き好きー」

カムイ「ええ、私もエリーゼさんが大好きですよ」

エリーゼ「うん。あっ、そのリボン。あたしがカムイおねえちゃんにプレゼントしたのだ、付けてくれてるんだ、うれしい」

カムイ「はい、ジョーカーさんやフェリシアさんに手伝ってもらいました。これを付けているとエリーゼさんがいつもそばにいてくれる気がして、とても嬉しい気持ちになるんです」

エリーゼ「えへへ、なんだか面と向かって言われるとちょっと恥ずかしい///」

カムイ「恥ずかしいんですか。ふふ、エリーゼさんは可愛いですね」

エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃんの撫で撫であたし大好きだよ」

レオン「まったく、ガキはこれだから」

カミラ「そういうレオンも、撫で撫でしてもらいたいんでしょ? 頼めばしてくれるわよ」

レオン「そ、そんなことあるわけないだろ」

マークス「まったく、お前たちは相変わらず騒がしいのだな。さぁ、もう少ししたら出発する、カムイ準備を始めてくれ」

カムイ「はい、皆さんは先に表口で待っていて下さい」

ジョーカー「お待ちしておりました、カムイ様」

カムイ「はい、荷物の準備ありがとうございます、ジョーカーさん」

ジョーカー「いえいえ、お安いご用です。ささっ、ギュンターがすでに正門でお待ちです。それにしても突然決まりましたね」

カムイ「そうですね、お父様。ガロン王様の前に立つのは何年ぶりのことでしょうか。この城塞に入れられるわずかな間に一度見たのが最後でしたから……」

ジョーカー「そうでしたか、悪いことを聞いてしまい申し訳ありません」

カムイ「気にしないでください。むしろ、お父様にお顔を触ってもいいですかと聞くことのほうが恐ろしいプレッシャーなんですから」

ジョーカー「カムイ様、それはあまりにも無謀なことだと思うのですが」

カムイ「だとしても、私の記憶にあるお父様の印象はぼやけてしまっています。正直思い出せない領域にまで入っているのかもしれません」

カムイ「私は私のことを知っている人の顔をできる限り覚えたいんです。これだけは諦めません」

ジョーカー「はぁ、確かに私と初めて会った時も、そんなことを言って私の顔をいっぱい触りましたね。あの時は力加減がめちゃくちゃで、当時の私は涙を流したくらいです」

カムイ「すみません、でも今は優しく触れる自信があります、試してみますか?」

???「そういうわけにも参りませんぞ。カムイ様」

ギュンター「皆さまがお待ちですぞ」

カムイ「そうですか、残念です。ギュンターさんとジョーカーさんが私について来るのでしょうか?」

ギュンター「あと厩舎係のリリスがお供します。リリスにはカムイ様の馬を任せておりますので」

カムイ「はい、わかりました。ところでギュンターさん、お父様のお顔に触れる件ですけど……」

ギュンター「それに関しては私もノーコメントです。しかし、カムイ様から突然『顔を触っても良いですか』と言われるガロン王というのは、一生に一度しか見れないものでしょうな。普通ならそうですな、死罪になるかもしれません」

カムイ「死罪ですか」

ギュンター「そう固く考えなくてもよろしいですよ。カムイ様のしたいようにしてもよろしいかと思います。もしも雷が落ちてきそうならば、私とジョーカーが見事な避雷針となって見せましょう」

カムイ「頼もしい、流石はギュンターさんです」

ジョーカー「ジジイが先に初撃を受けてくれるだろうから、その間に俺はカムイ様を連れて逃げる、この作戦プランでいいんだな」

ギュンター「ふっ、若造がよく言いよるわ」


リリス「カムイ様、こちらです」

カムイ「ああ、リリスさん。では私はリリスさんの馬に乗っていきますので、また城で」

リリス「カムイ様、乗馬の方は大丈夫でしょうか?」

カムイ「ええ、といっても私はリリスさんに身を寄せるくらいしかすることがありませんので」

リリス「たしかにそうですね、すみません」

カムイ「どうかしたんですか、少し元気がないみたいですけど?」

リリス「声でわかっちゃいますか?」

カムイ「はい、誰か違う人に変わってもらいますか? フェリシアさんかフローラさんなら」

リリス「い、いえ、大丈夫ですから」

カムイ「そうですか、ではお願いしますね」ダキッ

リリス「ひぅ」

カムイ「力が強すぎましたか?」

リリス「い、いえ、何でもないんです」

カムイ「ふふっ、変なリリスさんですね。では、お願いしますね、馬に乗るのは一度試して以来ですから、少し緊張します」

リリス「ま、任せて下さ……んっ、カムイ様、手が私の胸に当たって」

カムイ「……リリスさんのは私よりは小さいみたいですね

リリス「……カムイ様行きますね」

カムイ「ちょ、いきなり発進しないでください。危なく落ちかけ、うわあ」

カミラ「リリスの馬、早いわねぇ」

―暗夜王国・王都ウィンダム『クラーケンシュタイン城』―

ガロン「よく来たな、カムイ」

カムイ「はい、お父様。長い間、私のことを覚えて頂きありがとうございます」

ガロン「ふっ、我が子のことを覚えているのは当然のことだ。むしろ忘れられているだろうと思っていたというのは心外だ」

カムイ「はい、すみません。ですが、お父様一つ謝らせてはもらえませんか」

ガロン「何をだ?」

カムイ「私は幼い頃の記憶でしかお父様のお顔を知りません。今こうしてお目通しが叶ったというのに、私はお父様の顔が思い出せないのです」

ガロン「そうだったな、お前は光を失っているのであったか。ふっ、仕方あるまい。長きにわたりお前を閉じ込めてきたのは事実だ。しかし、なぜそのようなことを申すのか、黙っておれば良いことであろう」

カムイ「いいえ、私はお父様の顔を知りたいのです。お父様、お顔に触れてもよろしいでしょうか?」

ガロン「……」

ギュンター(どうなる?)

ガロン「ふっ、いいだろう。存分に触れるがよい」

カムイ「ありがとうございます。それでは……」

レオン(毎度思うが、これは見ているこっちも恥ずかしい、触られているお父様は……)

ガロン「……」

マークス(流石は父上だ、眉ひとつ動かすことはないとは……)

カミラ(さすがにここはお父様といえるわね)

エリーゼ(………おとうさまの指が少しぴくぴく動いてる気がする)

カムイ「お父様、ありがとうございます……」

ガロン「うむ、お前をこうしてこのクラーケンシュタイン城に呼んだのは、日々の精進が実を結んだがゆえ。きくと、今ではマークスと互角に渡り合うほどに腕を上げたそうではないか……その力を私の前で見せてもらおう」

カムイ「見せるですか?」

ガロン「うむ、捕虜を連れて来るのだ」

衛兵「ハッ!」

~~~~~~~~~~~~~

リンカ・スズカゼ「………」

カムイ「あそこにいる方々は?」

ガロン「前回の戦闘で捕虜にした白夜の兵士だ。カムイ、暗夜王国と白夜王国で戦争を続けているのは聞いているだろう」

カムイ「はい、聞いています」

ガロン「我らはいにしえの神の血を継し王族である。神の力を持つ我ら王族にとって、雑兵との力比べなど意味の無いこと、王族の我らには単騎で一隊を……戦況を覆すほどの力がなくてはならない。マークス、レオン、カミラは既にその域にまで達している。カムイ、お前もまた暗夜の王族として成長してもらわなければならぬ」

カムイ「……はい」

ガロン「あの捕虜二人には、お前を倒した場合に自由を与える条件を付けている。むろん、手にしている武器は本物だ」

カムイ「それは私を殺した場合と考えていいんですね」

ガロン「そうだ。お前の死を持って、あの者たちは自由となる。そう契った王としての約束だ。そして、お前にはこの魔剣を授けよう、魔剣ガングレリだ。この剣を振るえば白夜の兵どもなどすぐに殲滅できるだろう」

カムイ「ありがとうございます………お父様、ひとつよろしいでしょうか?」


ガロン「なんだ?」

カムイ「この戦いが終わった時、もしも私が勝利していたら一つ願いを叶えて欲しいのです」

ガロン「なんだと?」

マークス「カムイ! 父上に対して失礼ではないか。父上、カムイは出てきたばかりで、何も知らないだけなのです」

ガロン「マークス、黙っておけ。くっく、外に出た途端に手柄を要求するとは、城塞にいた間に欲というものが無くなってしまったのかと思ったが、そうでもないようだな。いいだろう、この戦いが終わった時、お前が勝利していれば、一つ願いを叶えよう」

カムイ「はい、ありがとうございます」

レオン「姉さん、無茶し過ぎだよ。見ているこっちがハラハラする」

エリーゼ「カムイおねえちゃんって怖いもの知らずなのかな?」

カミラ「わからないけど、寿命が縮まる思いだわ。また何か言うんじゃ無いかって思うと、口を押さえてあげたくなるくらいに」

マークス「カムイ……」

リンカ「話は終わったようだな?」

カムイ「ええ、時間を取らせました」

リンカ「お前か、あたしたちが倒す相手は、なんだか弱そうな小娘じゃないか」

スズカゼ「リンカさん、油断は禁物ですよ」

スズカゼ(話しに聞くと、あの方は目が見えないということですが。いくら従者がいようとも危険なことなのですが、何かあるのかもしれません)

リンカ「ふん、関係ない。力でねじ伏せてやればいいのさ。あたしはリンカ!炎の部族長の娘だ! お前の名はなんだ」

カムイ「暗夜……」

リンカ「?」

カムイ「暗夜王国王女、カムイです」

スズカゼ「カムイ……? まさか……」

カムイ「右にいる人、何かありましたか?」

スズカゼ「いいえ。私はスズカゼ。白夜王国に仕える忍です。私もここで死ぬつもりはありませんので、悪いですが命を奪わせていただきます」

カムイ「はい、わかりました」

ガロン「その力、我に見せてみよ。カムイ!」


今回はここまでです。
 こんな感じで進行していきます。

 チュートリアルの部分から妄想変更してるので、暗夜ルート分岐に行くまでの間は退屈かもしれませんが、よろしくおねがいします。

よく見ると、最初のパラメータの項目が狂ってましたね。

主人公のタイプは
体   【02】大きい
髪型  【05】ロング・セクシーの中間
髪飾り 【04】ブラックリボン
髪色  【21】黒
顔   【04】優しい
顔の特徴【04】横キズ
口調  【私~です】

 正確にはこんな感じです。

リンカ「スズカゼ、挟み撃ちにする。あたしは右、お前は左だ」

スズカゼ「はい、わかりました。私の攻撃の後にリンカさんが仕掛けてください。目が見えていない以上、飛翔攻撃に対してはこちらに部があります」

リンカ「ああ、わかった。あいつを倒して、白夜に戻ってみせる。そのためにはどんな手だって駆使してでもあいつを……」

スズカゼ「異論はありません、その手で行きましょう」



カムイ「ギュンターさん、ジョーカーさん。サポートをお願いいたします。ですが、出来れば攻撃は私だけに一任させてください」

ギュンター「仰せの通りに、我々はサポートに徹しましょうぞ」

ジョーカー「かしこまりました」

リンカ「ふっ、大した自信だな。その自信、伊達や酔狂ではないこと見せてみろ。でやぁ!」ブンッ

カムイ「……んっ」カキン!

リンカ「スズカゼ、今だ!」

スズカゼ「はい、すみませんがもらいましたよ」


レオン「なるほど、先駆けに先制させ、それを受けた所での死角からの攻撃、不意打ちの常套手段だね」

カミラ「ええ、普通の相手ならこれで上出来ね」

カムイ「……リンカさん、足、失礼しますね」

リンカ「え?」
リンカ(目の前が回って……いや、違う、これは足を力強く払われた!? あの一瞬で……そんな馬鹿な。しかも、倒れた場所はスズカゼが投げた手裏剣の機動上……ここまで計算して……)

ザシュ――ザシュ

リンカ「ぐああっ」

スズカゼ「リンカさん、くっ、今度こそは」

ギュンター「させませんぞ。ジョーカー壁になれ」

ジョーカー「言われなくても分かってら」

スズカゼ「なら、違う方角から――」

カムイ「スズカゼさんのいる場所はわかっていますので、何度投げても無駄ですよ。それより、リンカさん、降参しますか?」

リンカ「ふざけるな!」


カミラ「カムイの感覚に対しての力は常人ではとてもたどり着けないわ。あれは光を知らないからこその領域、私だってカムイのあの高見には近づけないわ」

マークス「目が見えないという情報その物が、カムイにとっては武器になる。ふっ、わざわざ目が見えないという前提条件を聞かされているのだ、少しは警戒するべきこと、それを怠った時点であの二人の捕虜に勝ち目はない」

リンカ「くっ、くそ! 目が見えていないはずじゃなかったのか。これじゃ、目が見えているのと何もかわらないぞ」

カムイ「目が見えていないという情報を有利に取るのは勝手です。でも、私にとってはそう思ってくれてる方が、とても戦いやすいんですよ」

リンカ「なら、単純に戦うだけだ!うおおおおおっ!」

カムイ「! ……すごい力……ですねっ!」

スズカゼ「遠距離がだめなら、至近距離でいかせてもらいます」

ジョーカー「カムイ様、背後に」

ギュンター「くっ、やはり早い。カムイ様、お気を付け下さい」

リンカ(よし、挟み撃ちなら避けきれないはずだ。あたしの棍棒で剣を抑えてある。空いた左手だけで何かできるわけでもない、受け流される気もない、あいつの足も踏ん張ってる。そう簡単に動けないはずだ)

リンカ「スズカゼ、そのまま後ろから殺れ!」

エリーゼ「カムイおねえちゃん!」

カムイ(背後から完全に一直線に来てる。なら、これくらいしかないですね)

カムイ「痛いのは苦手なんです」

リンカ「そうか、なら降参したらどうだ? まぁ、もう遅いがな」

スズカゼ「お命、奪わせていただきます」

 ――ドシュ

 ポタ、ポタタタタッ



エリーゼ「!!!!!!」

リンカ「な、なんだと!?」

カムイ「……捕まえましたよ、スズカゼさん」

スズカゼ(ば、馬鹿な。私の刃を左腕で受け止めるなど、すぐにそんな判断できるはずが、第一自身の身を守るのであれば回避行動を取るはずだというのに……)

カムイ「やっと集まりましたから、纏めて二人ともお相手しますね。左手が痛いので速攻で終わらせてもらいます」

リンカ(なんだ、なんなんだお前は!?)

カムイ「リンカさん、手元が緩んでますよ?」ブンッ

リンカ「しまった、武器がっ……く、くそぉ!」ドタリ

スズカゼ「リンカさん!」

カムイ「これで、終わりです」

スズカゼ「しまっ……ぐっ、無念です」ガクリッ

カムイ「………ふぅ。左手がとても痛いですね」

ジョーカー「すぐに手当てを致します。動かないでください」

カムイ「ありがとうございます、ジョーカーさん」

ジョーカー「すみません、敵の接近を許してしまいました」

ギュンター「われわれの失態です。申し訳ありません」

カムイ「いいんです。サポートに徹して下さいと言ったのは私ですから、二人が気に病むことではありません」

ガロン「ふむ、見事だカムイよ」



カムイ「お父様、ありがとうございます。中々手強い方たちでした、これが白夜の力ということですね」

ガロン「ふ、戦いは終わった。さあ、カムイ、その者たちを殺せ」

カムイ「………」

スズカゼ「さすがに、ここまでのようですね。ふっ、実質一人の相手に負けるとは、慢心した結果なのかもしれませんね」

リンカ「そうだな、認めるしかない。あたしたちの負けだ、好きにしろ」

ガロン「ふっ、諦めがよい者たちだ。カムイよ、お前の手で二人を葬るのだ」

カムイ「そうですね、お二人は死ぬことを望んでいるようです。ふふっ、なんだか羨ましいですね」

リンカ「何が羨ましい?」

カムイ「こちらの話です。だから私としてはその望を踏みにじってあげたくなります。お父様、この戦いは私の勝利で終わったと考えていいんですね?」

ガロン「そうだ、お前の勝利だ」

カムイ「では、お父様。私は、この二人を私の配下に加えさせてもらいたいのです」

一同「!!!???」

ガロン「………理由は」

カムイ「この二人には生き恥をさらしてほしい、それだけです。戦場で捕まり捕虜となった挙句に盲目の相手に負け、その相手の配下になる。こんな生き恥、早々体験できるものではありません」

ガロン「……わしがそれを許すとでも、思っているのか?」

カムイ「私もお父様が約束を違える人だとは思っていません」

ガロン「………」

カムイ「それでも殺せというならば仕方ありません。彼らの望を叶えることに――」

ガロン「もうよい、約束は約束だ。その二人のこと、お前に全て任せよう。これがお前の初めての手柄だというのも、ある意味滑稽ではないか」

カムイ「いいえ、私には十分すぎる手柄です。ありがとうございます、お父様」

ガロン「わしは戻る……カムイよ、次の命令を城塞で待つがよい」

カムイ「わかりました、お父様」

~~~~~~~~~~~~~~~

レオン「もう、姉さん。あまり心配かけないでくれないかな。僕たちみんなを早死にさせる気?」

カムイ「そんなつもりありませんよ。それよりも、私は何かおかしなことを言ったでしょうか?」

マークス「あんなことを言って、ただで済むわけがないだろう。最悪、私がお前に刃を向ける羽目になる、そんなことになってほしくはない」

カミラ「口を本当に塞いであげたくなるわ。私のカムイがこんなに世間知らずだなんて、正直信じたくないくらいだもの」

エリーゼ「おとうさま、すっごく怖い顔してた……、でも捕虜の人達が殺されないで済んでよかったね」

カムイ「………そうですね」

リンカ&スズカゼ「………」

 ~王都ウィンダム~

リリス「カムイ様、このような場所にどういったご用事で」

カムイ「ええ、ちょっと来てみたかったんです。リリスさんに誘導されて歩くのは久々ですから、あと胸のことはすみませんでした」

リリス「もう、言わないでください。また言ったら、置いて帰っちゃいますから」

カムイ「謝ってるじゃないですか、リリスさん機嫌を直してくださいよ」

スズカゼ「なんだか……調子が狂いますね」

リンカ「ああ、本当にさっき刃を交えた相手なのかと疑いたくなる。こうやって無邪気に笑っている姿を見ると、あれが悪い夢なんじゃないかと思えるくらいだ」

スズカゼ「しかし、生き恥ですか。そんな理由で生かされるなんて、お伽噺のように感じます。白夜にそんなお話があった気がします」

リンカ「たしかに、こんな理由で生き残る人間はそう多くいない。正直、あたしは生き恥だと少し思ってるぞ」

カムイ「スズカゼさん、リンカさんもこっちに来てリリスさんの機嫌を直すの手伝ってください」

リンカ「そして、この差だ。あたしの自信は粉々にされたも同然だ」

スズカゼ「そうですね、私も同じ感想です。カムイさんのような方が暗夜の王族であるなら、戦いなど起こりはしないのでしょう」

カムイ「それは買い被り過ぎです、スズカゼさん」

スズカゼ「聞こえていましたか、すみません」

カムイ「いいえ、謝らないでください、さて、ここでいいんですか、リリスさん」

リリス「はい、ウィンダムの大門前です」

リンカ「で、ここでどうするんだ? やはり、あたしたちを殺すのか?」

カムイ「ふふっ、リンカさんは面白い人ですね。そんなことをするなら、あそこでお父様にお願いなど頼んでいません。リリスさん、お二人の手掛けを外してあげてください」

リリス「かしこまりました、失礼しますね」

スズカゼ「……一体何の真似ですか?」

カムイ「何がでしょうか?」

スズカゼ「いえ、これではまるで無罪放免と言われているようではないですか。どこでも好きな場所へ行くように言われているように感じます」

カムイ「はい、その通りですね。私はお二人をここで解放することに決めていたので、スズカゼさんの考えであっています」

リンカ「正気か? 今ここであたしたちがお前を襲うかもしれないんだぞ?」

カムイ「その可能性もありますけど、リンカさんはそう言うことをしない人だと信じています。無論、スズカゼさんのこともです」

カムイ「ただ、お二人にお願いがあるのです」

リンカ(交換条件という奴か、なんだかんだ言ってもやはり暗夜の人間か、自由の代わりに欲しがるのは、やはり白夜の情報かなにかか?)

スズカゼ(ここまで温情を掛けていただきましたが、重要な情報を漏らすつもりは毛頭ありませんが……)

カムイ「二人のお顔を触らせていただけないでしょうか?」

スズカゼ「えっ?」

リンカ「はぁ?」

スズカゼ「言っていることの意味がよくわからないのですが、なぜ私たちの顔に触れたいと?」

カムイ「はい、私は目が見えない故、まだお二人の顔を理解しているわけではないのです。私は、私のことを知ってくれている人の顔を知りたいんです」

スズカゼ「なるほど、そういうことですか……しかし、私は本当にあなたの目が見えていないのか、その確証がない。もしかしたら、顔に触れられた瞬間に首を切り裂かれる可能性も十分にあり得ます」

リンカ「そうだな。あたしもお前の目が見えないという話を信用していない、むしろ目が見えていると言ってもらえた方が、幾分か救われるといってもいいくらいだ」

カムイ「つまり、目が見えていないという証明がされない限り、顔を触らせないというわけですね。わかりました、あまり見せたくはなかったのですが……」

リンカ&スズカゼ「!!!!!」

カムイ「これでいいでしょうか?」

リンカ「……」

スズカゼ「……」

カムイ「すみません、見ていて気持ちのいいものではないですから」

スズカゼ「いいえ、私たちが言ったことです。カムイさんはそれに従っただけにすぎません。ですから、私の顔をを触ってください、これは交換条件ですので」

カムイ「スズカゼさん、では、失礼しますね……」

スズカゼ「……ん」

 すみません、今日はここまでです。
  
  やっぱり、戦闘の場面は地の文を入れた方がいいでしょうか?
  ここの戦闘は攻陣の使い方よりも、リンカを回復床に誘導してできる限りレベル上げようとばかり考えてたなぁ

カムイ「スズカゼさんって、きれいな顔立ちをしているんですね。でも、ところどころに男性らしい角張った部分もありますね。髪は何色なんですか?」

スズカゼ「み、緑で……す。くぅ……あ……」

カムイ「耳が弱いんですね、なんだか可愛い声が漏れてますよ」

スズカゼ「か、カムイさん。耳ばかり、触らないでくれませんか」

カムイ「そう言われると、無性に触りたくなります。ふふっ、顔も熱くなってますね、顔を赤くしたスズカゼさんが手に取るようにわかります。恥ずかしいんですね?」

スズカゼ「そ、そんなことは……」

カムイ「無理しないでいいんですよ。一緒に捕虜だった人の前でこんなに触られて、かわいい声まで上げているんですから、恥ずかしくて当然です。それともうれしいんですか?」

リンカ「……なぁ、お前リリスと言ったか?」

リリス「どうかしましたか?」

リンカ「なんだこれは、どうして顔を触るだけなのに、あんな言葉遣いなんだ。見ているこっちが恥ずかしくなるぞ」

リリス「カムイ様は顔に触れながら、相手の反応を見て楽しむのが好きな方なんです。私も最初に触られたときに色々と言われましたから、こうして初めて触られたる人を見るのは、なんだか楽しいんです」

リンカ「………」

リンカ(あたしは絶対に屈しないぞ)

スズカゼ「……ハァ、ハァ、ハァ」

カムイ「スズカゼさん、ありがとうございます。ふふっ、声可愛かったですよ」

スズカゼ「こんな拷問は初めてですよ」

カムイ「拷問っていうのはひどいですね。これでも気持ちをほぐすために話しかけているんですから」

スズカゼ「は、恥ずかしかったのです。言わせないでください」

リリス「美形な方が陥落する姿はいつ見ても様になります。私、カムイ様に拾われて幸せです」

リンカ「幸せの観点がずれている気がするぞ」

カムイ「さて、次はリンカさんですね」

リンカ「くっ、あのような光景を見せられて、素直に従うと思っているのか?」

カムイ「ダメでしょうか」

リンカ「あ、当たり前だ。あんな風に触るなんて聞いてないからな……」

カムイ「では、優しくしますから」

リンカ「そ、それなら考えないでもないが」

カムイ「はい、優しく触らせてもらいます。痛くしたりしませんから」

リンカ「ほ、本当だな、本当に優しくするんだな?」

カムイ「はい」ニコッ

カムイ「リンカさんは顎先が敏感なんですね。ふふっ」

リンカ「は、話がちが……ひぅ」

カムイ「何も違いません。優しくしてるじゃないですか。こうやって髪も頬も眼尻も、優しく触れてます。顎先だって」

リンカ「や、やめっ、……こ、このっ」

カムイ「リンカさんはとても温かい人なんですね。私の手、冷たいですか?」

リンカ「あ、ああ。ひんやりしてる……」

カムイ「頬がとても熱いですね、顔はもしかして真っ赤なんじゃないですか?」

リンカ「そ、そんなことは……あ、顎先はやめ…て…くれ……」

リリス「さすがはカムイ様のエロハンドです! 触られた者の心をとらえて離しません」

スズカゼ「エロハンドですか…」

リンカ「も、もう勘弁してくれ」

カムイ「駄目です、もう少し触らせてください。これは髪ですね、リンカさんの髪は何色なんですか?」

リンカ「や、約束を破った者に教える気など……あっ」

カムイ「約束は破ってないです。優しくしてます、でもこのままだと私の指がリンカさんの顎先を撫でてしまいますよ」

リンカ「し、白だ。い、言ったぞ。もうおしまいにして」

カムイ「そうなんですか、ありがとうございます。お礼に顎先を触ってあげますね」

リンカ「ひゃん……や、やめろ」

カムイ「なんですか、人がいるかもしれない市街地の真ん中で、そんな声をあげちゃうんですか? スズカゼさんは恥ずかしがり屋さんでしたけど、リンカさんは興奮しちゃう人なんですか?」



リンカ「こ、これはお前が。だああ、もう終わり、終わりだ!」

カムイ「すみません、少し意地悪が過ぎましたね」

リンカ「なんていうやつなんだお前は……///」

リンカ(くそ、触れられていた場所が熱い……)

スズカゼ「………」

リンカ「な、なんだ、なんなんだその眼差しは!」

スズカゼ「いえ、お互い恥ずかしい姿を見られた同志なので、少し親近感が増した気がします」

リンカ「そんな同志になんてなるつもりはないぞ。あたしは誇り高き炎の部族。こんなことで……屈しない」

リリス「えいっ」

リンカ「ひゃああああ――っ! な、何をする!」

リリス「いえ、ちょっと。面白そうだなって思いまして」

カムイ「リリスさん、悪戯はいけませんよ」

リンカ「本当にお前はなんだんだ。印象が目まぐるしく変わりすぎて、全く追いつけないぞ」

カムイ「そうですか、私は自然体のつもりなんですが」

リンカ「戦っている最中と今では雲泥の差だ……まぁ、その相手に対する優位を取ろうっていう姿勢には同じものを感じる」

スズカゼ「まったくです、捕虜になって死を覚悟していましたが、まさか恥ずかしいという感情だとは思ってもいませんでした」

リンカ「無自覚なら直したほうがいい、まさかとは思うが身内の王族たちにもあんなことをしているんじゃないだろうな?」

カムイ「………はい」

リンカ「それはどちらに対する返事だ?」

スズカゼ「しかし、そろそろ私たちも脱出したほうがよいでしょう、あまり長居していると何が起きるかわかりません」

カムイ「そうですね、そろそろお別れの時間です。これ以上、お二人がここにいる意味は無いのですから、このままウィンダムを抜けて白夜に戻ってください」

リンカ「本当にいいのか? 配下が脱走したとなれば、それはお前の落ち度になる。その意味がわからないわけじゃないだろう?」

カムイ「はい」

リンカ「見た限り、お前があの王から信頼を得ているとは思えない。信頼を勝ち取るためならあたしたちをあそこで殺すべきだった、違うか?」

カムイ「それは間違いないでしょう。リンカさんとスズカゼさんの命を奪えば、私は暗夜の王族として一歩を踏み出せたはずです。私がお父様を見たのは光を失う前に一度だけ、私ですらそんな考えですから、お父様の信頼を得るためには小さなことも大きなことも、すべてに従うことが正解です」

スズカゼ「わかっているのであれば、どうしてそうしないのですか? 私たちの命を奪うことで、あなたが得るのは信頼だけではありません。安全も手に入るはずです。私たちをこうして逃がすという選択肢を選ぶ必要もなかった……、あなたは難しい選択ばかりしている」

カムイ「元白夜の捕虜が行方知らずとなれば、いろいろと問題になることでしょう。形式的には除隊にして処理はしますが、快く思わない人々には売国奴のように見えるはずです。その結果として王族としての地位を剥奪され、死罪となるかもしれな、それが私の選んだ選択です」


カムイ「でも、それでいいんです。私は王族としての地位にまったく興味がないんです。ただそれだけなんですよ。しかし、死罪まで行ってしまったら、少しやりすぎたということになるんでしょうね」

リンカ「理解できないな、私は部族長の娘としての誇りがある、この立場にいる以上、さらに上に立ちたいと思っているというのに」

スズカゼ「リンカさんにはリンカさんの、カムイさんにはカムイさんの考えがあるということでしょう。いや、ある意味すべてを平等に見ているのかもしれませんね」

カムイ「スズカゼさん、それは買被りしているだけです。私は、そんな立派な人間じゃありません」

スズカゼ「ふっ、そういうことにしておきます。このご恩は忘れません。しかし、もしも次に戦場で出会った時は――」

カムイ「それ以上は大丈夫です、覚悟はしていますから。私も戦場に出ないことになればそれに越したことはないんですが、お父様はそれを許してくれないでしょう」

スズカゼ「……」

カムイ「ですから、敵として私と戦場で対峙したら、今日の恩など忘れてしまって構いません。私がスズカゼさんの、スズカゼさんが私の命を奪うことになったとしても、戦場である以上、それは何も不思議なことじゃないんです。だから、そのような苦悶な顔をするのはやめてください」

スズカゼ「目が見えていないというのに、私の表情を見抜いてしまうとは、あなたはとても不思議な方です。願わくば、戦場であなたと相見えぬことを祈っています」

カムイ「そうなるといいですね」

スズカゼ「リンカさん、それでは行きましょう」

リンカ「……」

スズカゼ「リンカさん?」

リンカ「スズカゼは先に行ってくれ、あたしは少し話してから白夜に向かう」

スズカゼ「リンカさん、カムイさんの指が名残惜しいんですね。わかります」

リンカ「誰が名残惜しいものか!」

スズカゼ「えっ?」

リンカ「え?」

スズカゼ「そういうことにしておきますね。では、お互い生きていましたら白夜の地でまた会いましょう」タタタタタタッ

リンカ「まったく、名残惜しいってそんなわけ……ないはずだ」

カムイ「リンカさん、私に話というのは?」

リンカ「カムイ、一つ聞いてもいいか?」

カムイ「呼び捨てで呼んでくれるんですね。ふふっ、なんだか友達みたいでうれしいです」

リンカ「いや、これは……、失礼かもしれないが、様やさんをつけて呼ぶのは柄じゃないんだ。本来、お前に助けられたあたしが呼び捨てにしていいわけなんてないんだ。でも……」

カムイ「いいえ、私としてはうれしいです。だから呼び捨てでいいですよ」

リンカ「そ、そうか」

リンカ「カムイ、元々お前はあたしたちのために約束を取り付けたわけではないんだろう?」

カムイ「なぜ、そう思うんですか?」

リンカ「いずれまた戦場で刃を合わせることもあり得る相手を逃がすこと自体があり得ないことだ。それにお前は王族としての立場に興味がないとも言っていた、そんなお前が手柄のために約束を持ちかけるのはおかしな話だ。お前は、最初違う願いのために、王に約束を持ちかけたんじゃないか?」

カムイ「……そうですね。リンカさんの考えは間違ってません、私は元々は他の願いのために約束を取り付けました」

リンカ「なら、なぜそうしなかった?」

カムイ「その理由は秘密です」

リンカ「ここまで引っ張っておいて秘密だと?」

カムイ「すみません、でもいつか話せる時が来たらお話しますね。そうですね、私がリンカさんともう一度出会って、友達になれた時にでも」

リンカ「ふん、あいにく炎の部族の教えで交流は禁止になっている。その願いは叶わないな」

カムイ「そうですか、ではスズカゼさんに私が友達になりたいと言っていたと伝えて貰えますか?」

リンカ「……なんか面白くないな」

カムイ「では、リンカさんも友達になってくれますか?」

リンカ「考えておく、いいか、考えておくだけだ。期待なんてするんじゃないぞ」

カムイ「はい、期待してます。それではお気をつけて、白夜までの道中は何も手助けできませんから」

リンカ「野垂れ死になどするつもりはないさ。しかし、本当にお前は不思議なやつだ。それに、顔をこんなに触られたのは初めてだった」

カムイ「恋しくなったら行ってください、すぐに顎先をやさしく触ってあげますから」

リンカ「あ、あの反応はたまたまだ! たまたまくすぐったかっただけだからな!」タタタタタタッ

リリス「顔を真っ赤にして走って行きましたね。カムイ様、本当によろしかったんですか?」

カムイ「リリスさん、心配はいりません。二人を配下として残したとしても、今の私に二人の人間を守れる権力なんてありませんから、これでよかったんです」

リリス「あの、リンカさんの質問の答えって――」

カムイ「リリスさん、今日はとても疲れました。城塞まで連れて行ってもらってもいいですか?」

リリス「……はい、わかりました」

◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇

???「俺に護衛をですか?」

エリーゼ「うん、おねえちゃんのこと任せられると思ったから。それに今は大きな仕事はないんだよね?」

???「たしかに、今は国内と王城の警備を行っているばかりですし、交代の人員も多くいますから、俺が抜けても問題はないと思いますよ」

エリーゼ「うん、そうだと思ってたんだ」

???「でも、カムイ様にも配下の方たちがいるのはずですが……」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、今日お父様に刃向っちゃったの。直接じゃないの、でも……お父様とっても怒ってた。だから……」

???「わかりました。俺でよければ一肌脱ぎますよ。それにエリーゼさまの命令ですから、従わないわけにはいきません」

エリーゼ「うん、ありがとう。動いてほしい時になったら、命令証を渡すね。公の場を通さない秘密の命令証だから、最低限の人にしか見せちゃだめだからね」

???「はい、わかってます。日時が決まり次第、お呼びください。確実に遂行してみせます」

エリーゼ「うん、ありがとう」

ガチャ……バタン

???「カムイ、お前との約束、やっと果たせる日が来たのかもしれない……」

カムイ『私のせいなの、私が頼んだだけ、この子は悪くない、悪くないの! だからお願い、許して……目が見えない私のためにしてくれただけなの』

???「今度は、俺が守る番だ、それが俺の誓だ。待っててくれ、カムイ」

 第一章 おわり

 現在の信頼レベル
 
 スズカゼ  C
 リンカ   C
 ジョーカー C
 ギュンター C


 今日はここまでです。

 パルレに関しては、やっている当初からあまり馴染めなかったので、主人公は盲目で仲間になったキャラクターの顔を確認するために触っているという設定をつけてプレイしてました。
 話の流れは、各キャラクターの登場はここがよかったんじゃないかという感じに変えていきます。
 今回のラストの人物は???とかいていますが、誰かは正直プレイした人には丸わかりのレベルですね。
 彼はここで出てきたほうがよかったんじゃないかと思ったので、こういう配置になりました。

一応、この時間帯を主に更新していこうと思っています。
こんな遅くなのに見ていただいてありがとうございます。

カムイ「ギュンターさんとジョーカーさんに王城へ来るように通達ですか?」

ギュンター「はい、すみませんがしばらくの間、空けることになりそうです。何も問題が起きなければよいのですが」

フェリシア「な、なんで私を見るんですか!?」

ジョーカー「食器は20枚までにしておくんだぞ。フローラの仕事を増やさないようにな」

フローラ「できる限り私がサポートするから、ジョーカーは気にしないでいいわ。そんなことより、カムイ様の傍を離れている間、ジョーカーは大丈夫なの?」

ジョーカー「くっ、カムイ様と共にいられないというのは辛いものがあります。すみませんカムイ様、しばらくの間、傍を離れることをお許しください」

カムイ「いいえ、お呼び出しですから仕方ありません。私は大丈夫ですから、二人とも頑張ってきてください」

ギュンター「ありがたいお言葉、恐縮であります。では、行ってまいりますゆえ、留守は任せましたぞ」

フローラ&フェリシア「はい」

◇◆◇◆◇
―暗夜王国『クラーケンシュタイン城』―

マクベス「ガロン王様、お呼びで」

ガロン「マクベス、よく来た」

マクベス「ガロン王様のご命令とあればすぐにでも」

ガロン「うむ、早速本題に入る、カムイのことだ」

マクベス「はい、耳にしております。この頃、北の城塞を出られたそうですな」

ガロン「うむ、だがあやつには問題がある」

マクベス「はい、その話も聞いております。なんでも捕虜の二人を配下に加えたとか、しかし城塞にはその二人の影はないと聞いています。大方、名目上すぐに除隊処理をしたのでしょう。まったく、どこでそのような知恵を覚えたのか」

ガロン「それで、首尾は?」

マクベス「はい、現在カムイ王女の配下であるギュンター、そしてジョーカーの二名を城に呼び出しております。ギュンターには五日間の軍議への参加、ジョーカーには社交界の給仕としての任を与えてあります。無論、すぐに放棄できる職務状況ではないでしょうな。外部からの情報も耳には入ってこないことでしょう」

ガロン「そうか、ではカムイをここに呼べ」

マクベス「今すぐで?」

ガロン「そうだ」

マクベス「承知しました……、ガロン王様も人が悪いですね。使えそうな配下を抜き出しておきながら呼び出すとは。しかし、どんな形であろうともガロン王様に逆らったカムイ王女に、逃れる術などあるわけもないですがな」

エリーゼ「……」

マクベス「おやおや、エリーゼ様。ガロン王様に会いに来たのですかな?」

エリーゼ「ち、ちがうよ。ちょっと考え事してただけ、失礼するね!」

マクベス「……ふん、いくら王族といえども所詮は子供ですな」

エリーゼ(おねえちゃんを呼び出すって言ってた。早くしないと)


フローラ「正直、カムイ様を送り出したくはないのですが……」

カムイ「いいえ、お父様から直接お声掛けが掛ったのです。従わないわけにはいきませんよ、二人ともここのことはお願いいたします。ふふっ、私がいないから紅茶を用意する準備が減って、フェリシアさんがお皿を割る回数が減りますね」

フェリシア「カムイ様ひどいです~。でも、私も姉さんと同じ意見です。とっても嫌な予感がするんです」

カムイ「フェリシアさん………心配症ですね」ナデナデ

フェリシア「か、カムイ様。な、なんですか」

カムイ「フローラさんもです、二人とも心配症なんですね」ナデナデ

フローラ「カムイ様、お恥ずかしいです」

カムイ「私は幸せ者です、こんなに私のことを気遣ってくれる人がいるんですから。大丈夫です、悪いことなんて起こりませんよ」

フェリシア&フローラ「カムイ様……」

カムイ「大丈夫です、もしも王族としての地位を剥奪されたら、二人とおなじ給仕係に転職しますから。その時は紅茶の入れ方を教えてください」

フローラ「カムイ様、どちらかというと戦闘職のほうがよろしいと思います」

フェリシア「私もそう思います。カムイ様、とっても強いんですから」

カムイ「ふふっ、姉妹揃って同じ意見なんですね。肝に銘じておきます、それでは行ってきますね」

フェリシア&フローラ「はい、行ってらっしゃいませ。カムイ様」

リリス「カムイ様、お城までご案内いたしますね」

カムイ「はい、よろしくお願いします。リリスさん」

リリス「はい、任せてください」

◇◆◇◆◇

カムイ「これで三度目ですね、クラーケンシュタイン城を訪れるのも」

リリス「……」

カムイ「リリスさん、ここまでありがとうございました。ここからは私一人でも大丈夫です」

リリス「……いいえ」

カムイ「どうかしましたか?」

リリス「ちゃんと玉座手前まではお連れいたします。カムイ様はまだここを完全に把握されているわけではないんですから、それに遅れたガロン王様に叱られてしまいます」

カムイ「……そうですね、一人で来るようにとは言われていませんからね」

リリス「はい、ではお手を失礼いたします。しっかり握ってくださいね」

カムイ「こうですか」

リリス「す、少し、痛いです」


リリス「この先を上がれば玉座になります。私はこれ以上行くことができませんので、ここからは……」

カムイ「はい、ここまで案内してくれてありがとうございます」

リリス「私はここでお待ちしておりますので、お気をつけて」

カムイ「玉座に向かうのに気をつけてというのは、なんだか面白いですね。実際そうなんですが」

カムイ「お父―――」

ガロン「ふははははははははははははははっ!」

カムイ「お父様の笑い声……?」

ガロン「誰だ、そこにいるのは?」

カムイ「失礼いたします、ただいま到着しました、お父様」

ガロン「カムイか、よし……入れ」

カムイ「はい、失礼いたします」

カムイ(……誰もいない? おかしいですね、誰かと話していたような気がするのですが)

ガロン「よく来た、カムイ」

ガロン「まずは先の戦闘、見事であった。お前の戦いの資質は十分にあると認めざるを得ない。さすがはわが子だ」

カムイ「ありがとうございます、お父様」

ガロン「うむ、してカムイ。お前に新たな任務を与えたい」

カムイ「はい、どのような任務でしょうか?」

ガロン「なに、それほど難しいことではない。お前には偵察任務を行ってもらう。わが国境沿い、今は白夜領となっている場所に、今は廃墟となっている無人の城砦がある。そこに向かい、付近の状況を調べてくるのだ。先に言っておく、戦いは不要だ、ただの偵察でよい――」

カムイ「お父様、私には目がありません。どうやって偵察など」

ガロン「ふん、話は最後まで聞くものだ。これはお前が部下を正しく使えるかを見極めるためのものでもある。部下はお前の目となり脚となる者たちだ。まず、信頼できる従者を一人連れて行くがよい。しかし、それだけでは足りぬだろうから、わしが選んだ部下を一人授けることにする。部下を使って任務を遂行しろ」

カムイ「……わかりました、お父様」

ガロン「うむ、では城門で待つがよい。最高の人材を用意してやろう」

カムイ「リリスさん、本当によろしいんですか? これから向かう場所は敵の領地、戦闘になる可能性は高いんですよ」

リリス「はい、構いません。それに今動けるのは私しかいません。今から城塞に戻るのも難しいようですから。大丈夫です、私にも魔法の心得はあります、それにカムイ様のお役に立ちたいんです」

カムイ「……」

リリス「カムイ様」

カムイ「できれば、城塞で私の帰りを待っていてほしいのですが。でも、見知った方がいてくれるのはとても心強いです」

リリス「では……」

カムイ「ええ、リリスさん。よろしくお願いします。しかし、まだお父様は現れないのでしょうか?」

エリーゼ「あっ、いたいた! カムイおねえちゃん!」

カムイ「エリーゼさん? どうしたんですか」

エリーゼ「どうしたんじゃないよ、お父様に呼ばれたって聞いたから、みんなで来てあげたのに!」

カムイ「みんな?」

レオン「そうだよ。まったく、外に出られるようになったからって勝手に話を進めないでほしいな。僕たちにも一言声をかけてよ、家族なんだから」

カミラ「レオンの言う通りよ。私たちは家族なんだからちゃんと話してほしいわ」

カムイ「レオンさん、カミラ姉さん。すみません、紺ドアからはちゃんと報告しますね」

紺ドア→×

今度から→○

マークス「報告という固い言葉を使うようになったのだな、カムイ。だが、私たちは家族の間柄だ。もう少し砕けた言葉にしてもいいのだぞ」

カムイ「マークス兄さん。そうですね、ちょっと背伸びをしたくなってしまったのかもしれません、今度からはちゃんとみんなに伝えますね」

マークス「うむ、しかし白夜領にある無人となった城砦への偵察か……」

リリス「はい、私がお供させていただきます」

カミラ「リリスとカムイだけでなんて、不安すぎるわ。何かあったら対処するのだって、私も一緒に……」

マクベス「それはなりませんぞ、カミラ王女」

カムイ「……あなたは?」

マクベス「こうして話すのは初めてですね。名前は耳にしているかと思いますが、初めましてカムイ王女、私は暗夜国の軍師を任されているマクベスと言います」

カムイ「あなたが軍師のマクベスさんですね、よろしくお願いします。ところで、お顔を触ってもいいでしょうか?」

リリス「か、カムイ様……」

エリーゼ「おねえちゃんって、本当にすごいよね」

レオン「ああ、もう姉さんの行動を見てもだんだん動じなくなってきてる自分が怖く感じるよ」

マークス「しかし、あれがカムイらしさとも言えるな」

マクベス「それをして、私に何か利益があるのですかな?」

カムイ「いいえ、私が個人的にマクベスさんの顔を知りたいだけなんです。他意はありません」

マクベス「ふん、少しだけならよろしいですよ」

カムイ「ありがとうございます。では……」

マクベス「!?!?!?!?!?」

カミラ(マクベスの口元、上がったり下がったりしてるわね。ああ……カムイの奇麗な指がマクベスに触れているなんて、正直最悪な気持ちだわ)

マーカス(なんだろう、ほかの者なら気にしなかったのだが。マクベスの顔に触れているという事実を前に、兄としてとても複雑な心境になる)

カムイ「仮面を付けられているんですね。眉は鋭いのに、唇は……どうしたんですか、小さく震えてますよ。マクベスさん」

マクベス「も、もういいでしょう。離れてください、カムイ王女」

カムイ「はい、ありがとうございます。マクベスさん、結構スベスベしてるんですね」

マクベス「まったく、カムイ王女もおかしな趣味をお持ちのようですね。まあいいです。さて、カミラ王女。先ほどの質問への答えですが、ガロン王様はカムイ王女に対してこれを試練であると仰っておられます。王族であるカムイ王女が与えられたものだけでことを成すことができるのか、それを見定めようとしているのです」

マクベス「これでまだ何かを望まれるというのであれば、王族としてガロン王様がカムイ王女を認めることはないでしょう」

カムイ「私は王族でなくてもいいので、十人くらい兵士がほしいのですが」

マクベス「……あのですね、カムイ王女。私の話を聞いておられましたか?」

カムイ「はい、聞いていました」

マクベス「なら、今の発言の意味わかりますよね?」

カムイ「はい、ただ言ってみただけです。冗談ですよ、マクベスさん」

マクベス「人をからかうのもいい加減に――」

カムイ「眼尻にゴミが付いてますよ」

マクベス「はふん……はっ!」

一同「………」

マクベス「と、とにかく、決められた援助以外は受けられないと理解してください。良いですね、カムイ王女」

カムイ「はい、わかりました。ふふっ、からかってしまってすみませんでした」

マクベス「そう面と向かって言われると非常に腹が立ちますが、もういいでしょう」

ガロン「話は終わったようだな。マクベスよ」

マクベス「ガロン王様、どうぞこちらへ」

ガロン「ああ。待たせたな、カムイよ」

カムイ「はい、お父様」

ガロン「では、約束の人材だ。この男を連れてゆけ」

ガンズ「………」

カムイ「この方は?」

ガロン「この男は、ガンズという。見ての通り怪力に心得のある者だ。お前の任務の手助けとなるだろう。無論、お前の命令次第であるがな」

カムイ「はい、ありがとうございます」
カムイ(しかし、偵察任務に怪力の男を宛がうのですか。どう考えても兵種の選択を間違えているような気がするのですが……、お父様は一体何を考えているのでしょうか? それに――)

マークス「……カムイ」

カムイ「マークス兄さん? どうしましたか?」

マークス「カムイ、あの男、ガンズには気をつけるのだ」

カムイ「……血の香りがしますね、あの方からはとても濃い」

マークス「察しがいいな、奴は元重罪人だ。過去に略奪や虐殺を繰り返してきた男で、本来ならば秩序の元で裁かれなければならなかった男だ。父上の手で兵に取り立てられたが……油断はするんじゃないぞ」

カムイ「そうですか。では、先に釘を打たせてもらいますね」

マークス「?」


カムイ「お父様、今回の偵察任務、私が最高指揮官ということでいいのでしょうか?」

ガロン「そうだ、他の者たちは、皆お前の部下だ」

カムイ「では、命令に反した部下の処遇は『私が下してもよい』そう考えてよろしいですね」

ガロン「そうだ」

カムイ「はい、ありがとうございます」

ガロン「では任務を遂行するがよい、カムイよ」


レオン「姉さんって本当に怖いもの知らずだね。だけど、あの肝の据わり方は見習いたくないよ、胃に穴が開く気がする」

カミラ「そうね。ふつう、お父様にあんなことを聞こうなんて思わないもの。ただ、あの男、ガンズをカムイとリリスでどうにかできるものかしら?」

マークス「普通に考えれば、難しいだろう」

カミラ「やっぱり私……」

エリーゼ「カミラおねえちゃん、大丈夫だよ。何とかなるはずだから!」

カミラ「エリーゼ?」

◇◆◇◆◇
―王都ウィンダム―

ガンズ「……」

リリス「……カムイ様」ボソッ

カムイ「ええ、困りましたね。いくらこちらに権限があっても、ガンズさんの手ほどき無しに城砦へはたどり着けません」

リリス「それに私とカムイ様が頑張っても、あの人を止められるなんて思えません」

カムイ「一度も行ったことのない場所で事を起こされては、私はあまりにも不利ですからね。お父様が私の返答に難色を示さなかったのはこういうことだったんでしょう」

ガンズ「カムイ王女、早くしてください」

カムイ「すみません、目が見えないのでもう少し速度を落とせませんか、リリスさんに手を取ってもらっている形なので」

ガンズ「そうはいきません、決められた期限までに偵察を終えて帰らねばならないのですから」

カムイ(……万事休すですね)

???「失礼します、カムイ王女でよろしいですか?」

ガンズ「誰だてめえは? おれたちはこれから大切な任務がある。邪魔するってんならタダじゃ済まさねえぞ」

カムイ「ガンズ! すみません、私の部下が失礼なことを。私がカムイで間違いありません、あなたは一体?」

???「申し遅れました。俺は王城で騎士をしています。サイラスといいます」

カムイ「サイラス……さん?」

サイラス「はい、この度王族の方から直属の命を受け、あなたの任務に同行する任務を与えられ、ここにやってきました」

ガンズ「馬鹿な、そんなことあるわけ……証拠はあんのか?」

サイラス「こちらが証明証です、カムイ王女は目が見えぬと聞きましたので、印に触れて確かめてください」

カムイ「はい、………!」

サイラス「………」

カムイ(これはエリーゼさんの印……。心配をすでに掛けてしまっていたんですね。帰ったらお礼を言わないといけません」

ガンズ「カムイ王女、これは何かの罠です。信じることは―――」

カムイ「いいえ、これは王族の印で間違いありません。あいにく私は文字が読めませんので、ガンズさん確認してください。確認を終えたらサイラスさんにお返しを」

ガンズ「ちっ、話がちげえじゃねえか」ボソッ

カムイ「では、サイラスさん、よろしくお願いしますね」

サイラス「ああ、よろしく頼む」

カムイ「………」

サイラス「………一つ聞いてもいいか」

カムイ「はい、なんでも答えますよ」









サイラス「カムイ、俺を覚えているか?」

カムイ「お顔に触れてもいいでしょうか?」

サイラス「はい、どうぞ」

カムイ「……昔、私なんかに付き添ってくれた友達がいたんです。目が見えない私のためにいろいろしてくれた、今なら親友という言葉をあげたい人が」

サイラス「……俺にもいるんだ。俺のしたことを捨て身で庇ってくれた友達。今なら親友と呼びたい人が」

◇◆◇◆◇

カムイ『サイラス、サイラス? どこ、どこなの?」

サイラス『カムイ、こっちだ。手を取って、あと足もとに気をつけて。ここを抜けたら外に出られるから』

カムイ『うん、サイラスの手、とっても安心できる』

サイラス『それは俺とカムイが友達だからだ。友がいれば、どこにだって行けるぞ』

カムイ『うん!』

サイラス『ぐっ、くそぉ。カムイごめん、俺友達失格だ。こんな怖い思いさせて、ごめん』

カムイ『ごめんなさい、私のせいなの! 私が頼んだだけ、サイラスは悪くない、悪くないの! だからお願い、許して……目が見えない私のためにしてくれただけなの。お願い、サイラスを殺さないで』

◇◆◇◆◇

サイラス「あの時は、すまない。怖い思いをさせてしまって」

カムイ「私の親友はそんな情けない声なんて出しません。首筋が弱くて、いつも元気で、私の手を引っ張ってくれるそんな人です」

サイラス「そうだな。久しぶりだな、カムイ」

カムイ「ええ、お久しぶりですサイラスさん。任務に同行してくれるんですよね?」

サイラス「ああ、必ず役に立って見せる。心に誓ってな」








ガンズ「………」

 第二章 前篇終わり

現在の支援レベル

 スズカゼ  C
 リンカ   C
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C
 リリス   C

今日はここまでになります。
 
 サイラスは主人公の幼馴染という設定を持っていますが、それを全く生かせないキャラクターになっていた気がしますが、正直これは主人公が全く覚えていないことが原因なんじゃないかね。
 リリスはジョーカーと交代する形でロッドナイトとして戦闘に加わることで、突然出てくる例のシーンを少しは緩和できたんじゃないかと思ったので入れた感じになります。
 あと、偵察任務に力自慢な兵士を宛がうガロンのセンスには脱帽するしかない 

◇◆◇◆◇
―暗夜王国『無限渓谷入口』―

カムイ「ここが無限渓谷の入り口ですか、往復の時間を考えれば今日中に偵察を終えないといけませんね」

サイラス「ああ、そう考えて変装したわけだな」しがない護衛風

カムイ「はい、流石に、無人という話ですが場所は白夜領ですから、暗夜の格好で行くわけにはいきません」旅商人風

サイラス「そうだな。でも、この剣だけは隠しきれそうにないぞ」

カムイ「そうですね。ガングレリは見える形で布に包んでおきましょう。これで装飾品の一種かと思われるかもしれませんから」

リリス「あの……私はそのままでもよろしいんでしょうか? この恰好で怪しまれたりしませんか?」

サイラス「リリスの恰好はそれで大丈夫だ。白夜の聖職着にするのもありかと思ったけど、暗夜側から白夜の服を来た人間が現れたら、逆に怪しまれる」

カムイ「着付けの際はリリスさんがいて助かりました。着なれた服以外の身につけ方なんて、わからなかったので」

リリス「いいえ、お安いご用です。でも、いきなり皆様の前で服を脱ぐのはやめてください。さすがに女性としてどうかと思いますので」

カムイ「はい、気をつけます……あとはガンズさんだけなんですが……」

ガンズ「変装なんてする必要はない」

カムイ「ですが、もしも白夜兵がいた場合は……」

ガンズ「事前に敵はいないと聞かされているんだ。なら、変装の必要はどこにもない、違うか?」

サイラス(敵がいないのならガンズみたいな男に声が掛るわけない)

カムイ(やはり、何かしらの意図があってお父様はガンズを宛がわれたのでしょう……)

ガンズ「それともなんですか、命令に背いたってことでここで殺しちまうか? 王女さまよぉ?」

サイラス「お前、言わせておけば!」

カムイ「いいえ、いいんです。すみません、ガンズさんのお父様への忠誠心に感心して言葉が出なかったのです。無理な提案をして申し訳ありませんでした」

ガンズ「へっ、面白くねえ王女さまだ」

サイラス「お、おい。いいのか?」

カムイ「はい、変装は私とサイラスさんだけで大丈夫です。それにリリスさんだって変装してませんから、ガンズの言っていることも一理あるでしょう」

リリス「ガンズさんと同じって、なんだか悲しいです」

ガンズ「ああ?」

リリス「す、すみません」

カムイ「大丈夫、何も心配いりません。では無限渓谷に入りますよ」

カムイ(……ガンズさんには悪いですが、仕方がないですね)

◇◆◇◆◇
―無限渓谷の吊り橋し―

リリス「谷底が全く見えませんね。空も真っ暗ですよ」

カムイ「時々雷の音も聞こえてきます。できればここを通らずに任務を達成できれば良かったんですが」

サイラス「カムイ、それは無理な相談だ。ガロン王様の定めた期限を考えると、ここを抜けるしかない」

リリス「難儀ですね」

サイラス「そろそろ吊り橋の終わりですから、白夜領に……あ」

カムイ「ん? サイラスさんどうかしましたか?」

サイラス「すまない、カムイ。久々の再会に浮かれてこの吊り橋の本来の意味を忘れてた。この橋は不可侵の証でもあるんだった」

カムイ「……それは、そもそも使うこと自体が問題になる橋、ということですか?」

サイラス「残念ながら、そういうことになる」

カムイ「………」

ガンズ(へっ、今さら気づいても遅いんだよ。あまちゃん王女さまよ。俺は言われたとおりに暴れるだけさ、まぁここで王女がその命令を出すんなら、喜んでやってやるさ)

カムイ「ふふっ、お父様は意地悪ですね。ここはガンズさんにお願いするしかないようです」

カムイ「ガンズさん、武装の使用を許可します」

ガンズ「!?」

サイラス「カムイ、いったい何を言い出すんだ!」

リリス「カムイ様、それでは国家間の問題になってしまいます。どうしてしまったんですか!?」

ガンズ「おいおい、お前ら指揮官である王女さまが言ってんだ、従わない奴がどうなるかはわかってるんだろうなぁ?」

カムイ「ガンズさんの言っているとおりです。サイラスさん、私を馬に乗せてください」

サイラス「あ、ああ。別にかまわないぞ」

リリス「カムイ様、一体なにを?」

カムイ「では皆さん、一気に吊り橋を渡り切りますよ!」

サイラス「突撃か、ええい、わかったカムイ、振り落とされないようにしろよ」

カムイ「はい、ちゃんと抱きしめてますから大丈夫ですよ」

サイラス「よし……、じゃあ行くぞ!」

リリス「はい!」

カムイ「全員進んでください! 全速力です!」

ガンズ「そうでなくちゃ面白くねぇ……って、お前ら早すぎるぞ!」

サイラス「吊り橋を渡りきった瞬間に戦闘の可能性がある。カムイ、武器を抜くぞ」

カムイ「いえ、その必要はありません」

サイラス「な、何を言ってるんだ。カムイが吊り橋を渡るように命令したんじゃないか」

カムイ「ええ、ですがサイラスさんとリリスさんに武器の使用は許可してません」

サイラス「この先に白夜兵がいたらすぐに戦闘になるんだぞ! 何を悠長にして……」

カムイ「ガンズさんは流石に足が速いわけではないんですね。ちょうどいい距離感になりました」

リリス「……あっ」

サイラス「リリス、どうしたんだ?」

リリス「カムイ様……それはちょっと可哀そうだと思うんです」

カムイ「いえ、適材適所です。ガンズさんはすべての要素を満たしてますから」

◇◆◇◆◇

白夜兵A「……今日も異常はないか。さすがにこの吊り橋を越えてくるものなどいな――。ん、奥から誰かがやってくる!?」

白夜兵B「馬鹿な、ここは不可侵の証の橋だぞ……」

白夜兵A「前方に馬に乗った二人ともう一人、その後ろから一人の計四人です」

白夜兵B「モズ様、何者かがやってきます!」

モズ「暗夜軍か!? この橋は両国不可侵の証、誰であろうと知らないが、引き返すように通告しろ! 引き返さないようであれば。武力で追い返すんだ」

白夜兵B「はっ!」

サイラス「くっ、予想通り白夜軍だ」

カムイ「そうですね。いてくれて助かりました」

サイラス「カムイ、信じていいんだな?」

カムイ「はい、私を信じてください。サイラスさん」

白夜兵B「貴様ら、この場所から即刻立ち去れ! もしも押し通るというのならば武力をもってでも、対処させてもらう!」

ガンズ「へっ、逃げられると思うなよ! 死ね死ね死ねぇっ! 一人残らず殺してやる!」

白夜兵B「それがお前たちの答えというわけだな……全員武器を抜け、迎え撃つ!」

白夜兵たち「ああっ!」チャキン

サイラス「くそっ、ガンズの言葉で向こうはやる気みたいだぞ……」

カムイ「そうですね。では、そろそろ始めますか………」






カムイ「すぅ―――……」






カムイ「助けてください!」

サイラス「!?」

ガンズ「……はぁ?」

リリス「やっぱり……そういうことですよね、カムイ様」

白夜兵B「ど、どういうことだ。お、おい止まれ!」

カムイ「助けてください、あの人に追われているんです!」

ガンズ「な、なにがどうなって……」

白夜兵C「まさか、ここまで逃げてきたというのか?」

カムイ「はい、突然襲われて……すでに数人、私のために……お願いします、どうか助けてください」

サイラス「……………(悟った顔)」

サイラス「すまない、俺の力が及ばないばかりに……大切な人たちを……」

リリス「もう、すぐそばにまで来ています。私たちをお助けください、お礼は致しますから、おねがいします」

白夜兵B「……。しっかり、早くこちらへ。大丈夫、我々に任せて」

カムイ「ありがとうございます」

白夜兵AB「……」チャキ

白夜兵B「同じ国の民を襲うとは、人間の風上にもおけん」

ガンズ「は、話がちげえぞ………!?」

カムイ(ガンズさん、囮御苦労様です。一度吊り橋から撤退して待っていてください)口パク

ガンズ「て、てめぇ!」

白夜兵B「相手は賊一人だ。それも力持たぬ民を襲うような外道下衆、私とBで対処できる。Cはこのお方たちを城砦へお連れし、モズ様に報告だ」

ガンズ「く、くそおおおおおおおおおお」

白夜兵C「わかった、さぁこちらへ。急いでください」

カムイ「助かりました」

サイラス「すまない、恩にきるよ」

サイラス(ガンズ、心中お察しするよ)

リリス(カムイ様って、案外エグイことをしますね……)

ガンズ「こんなところで死んでたまるかってんだ、退かせてもらうぜ」

白夜兵A「逃げた先で吊り橋を落とされると厄介だ。B、追いかけるぞ」

白夜兵B「ああ」

ガンズ「覚えてやがれ!」

◇◆◇◆◇
―放棄された城砦内部―

カムイ「うまくいったようですね」

サイラス「ああ、でもなんて報告するんだ?」

カムイ「ガンズさんは囮役を引き受けてくれただけです。白夜からすれば賊が現れただけのこと。私たちはそれに追われて逃げ込んできた一般市民、国交問題になりえません」

サイラス「カムイ、俺がいない間どんな毎日を送ってたんだ」

リリス「ひたすら訓練ばっかりしてた印象ですね」



白夜兵C「モズ様、報告に参りました。賊は一人、残りの三人はその賊に追われて逃げ来た者たちです」

モズ「賊にだと……いや、もしかしたらその賊の仲間かもしれん。一般人を装い、ここに入り込むために一芝居演じただけの可能性もある」

カムイ(……鋭いですね)

モズ「念のために手荷物を調べるのだ」

白夜兵C「……すまないが」

カムイ「はい、調べていただいて結構です。服を脱いでも構いません。私たちの身の潔白が証明されるなら」

サイラス(エリーゼさまの印書はカムイの服の中だ……。あれを見つけられたら、誤魔化しきれないぞ)

モズ「ふっ、そこまで我々も鬼ではないが、状況によっては調べさせてもらう。C、調べるんだ」

白夜兵C「……失礼します」



白夜兵C「武器はありますが、何の変哲もない剣とロッドが一つずつ、とてもではないですがここを攻撃する装備とは思えません。明らかに護身用の範囲です」

モズ「そうか、あとはその馬につけられたその包みだが……なんだこの剣は」

白夜兵C「とてもじゃないですが切れ味が良いようには見えませんね。もしかしたら賊が狙っていたのはこれかもしれませんね」

モズ「そうか……」

サイラス(あとはボディチェックくらいだが……)

カムイ「あの、私は服を脱いだほうがいいでしょうか?」

モズ「おい、どこを見て話している? 私はこちらだ」

カムイ「そちらでしたか、失礼しました」

サイラス「カムイ、大丈夫か?」

モズ「カムイと言ったか。目を合わせようとせぬのは何故だ?」

カムイ「いえ、これは……」

モズ「目を合わせぬのは都合の悪いことがあるからではないのか?」

カムイ「……本当は見せたくは無いのですが……私の眼はこのような状態でして」

モズ&白夜兵C「……!!!」

カムイ「すみません、気色の悪いものを見せてしまって」

モズ「いや、こちらこそすまなかった。見せたくない傷なのであろう……。疑ったこと、すまなかった。服は脱がなくてもよい、流石に目の見えない相手を脱がすなんてことはできない」

サイラス(カムイはここまで計算してるのか。正直恐ろしいな)

カムイ「いいえ、お気遣いありがとうございます。ここまで必死に逃げてきて、皆さんに助けていただけだことは感謝しきれないくらいです」

モズ「礼などいい。だがあまり長居をさせることもできない、我らとてあの橋をむやみやたらに渡ることはできぬのだ。安全が確認され次第、戻ってもらうことになるが、それでもよいか?」

カムイ「はい、少しばかり休ませていただけただけでも、感謝しきれないほどですから」

モズ「そ、そうか……」

カムイ「?」

モズ「い、いや、私の名を名乗っていないと思ってな。私はモズという」

カムイ「モズさんですね」

白夜兵C「モズさん、何照れてるんですか」

モズ「いや、ここにも女子はいるんだが、こう静かなタイプはいないのでな……。そういうお前は大丈夫なのか?」

白夜兵C「私は女房一筋なんで、心揺らぎませんよ。ええ」

サイラス「目が泳いでるけどな。ところで、ここは? さっき城砦とか言ってたけど」

白夜兵C「作られた経緯は知らないが、ここは吊り橋を監視するのに一番適した場所なんだ。いち早く仲間も呼べるし、なによりこういった時には救護所だったり、一時の避難場所にもなる。他にも小さい砦がいくつかあるのさ」

サイラス「へぇ」

白夜兵C「ところでさ、あんたあの黒髪のお嬢さんとどんな関係なんだい?」

サイラス「大事な幼馴染さ」

白夜兵C「ほんとにそれだけかぁ?」

モズ「おい、あまり困らせるんじゃない。カムイ、水や食料などの援助が必要なら言ってくれていい。さすがに多くは出せないが三人が一日を越せる量は見繕える」

カムイ「はい、ではお言葉に甘えさせていただきます」

モズ「うむ、しばし待たれよ」

カムイ(ここは白夜の前哨地として使われているみたいですね。サイラスさんと白夜兵の会話を聞く限りでは砦の数も多くあるという話ですから、暗夜王国は相当警戒されているということになりますね)

リリス「……」

白夜兵D「ううっ……」

リリス「こちらの方は?」

モズ「うむ、数日前に寝込んでいてな。今日、応援の者と交代の予定になっている。大丈夫だ、必ず良くなる」

リリス「少し見せてもらってもいいですか?」

モズ「? ああ」

リリス「失礼しますね。ロッドを持ってきてくれませんか」

白夜兵C「ああ、これでいいか?」

リリス「はい、ライブ……」ポワン

モズ「いったい何を……顔色が良くなっている?」

リリス「はい、これで少しは楽になれたと思います」

モズ「これが暗夜の魔術か。すまない、疑ってしまった」

リリス「いいえ、私もいきなりに魔法を使ってしまってすみませんでした。大事な仲間なんですよね、心配に思うのは当然です」

モズ「ありがとう……賊はどうなっている?」

白夜兵E「はい、今は中継ぎの橋前にてAとBは様子を伺っています。賊はまだ居座り、橋の向こうからこちらを鬼の形相で睨んでいるそうです」

モズ「なんと執念深い」

カムイ「………」

サイラス「……殺されるかもな、俺達」

カムイ「そうかもしれませんね……」

◇◆◇◆◇
―無限渓谷・暗夜側吊り橋前―

ガンズ「くそっ、くそおもしろくねぇ。あの王女、戻ってきたら……」

カムイ『命令違反は重罪ですからね』

ガンズ「くそ、ガロン王にいっぱい食わされたのは俺のほうなんじゃねえのか?」

ガンズ(できれば撤退したいところだが、ここで帰ったら俺がガロン王に殺される。命令は絶対、けっ、こればっかりはあの王女の言う通りだぜ。だから待ってやるよ、カムイ王女)

ガンズ「けっ、睨みあいは性に合わせねえ。一芝居打たせてもらうぜ」

◇◆◇◆◇
―城砦内部―

白夜兵C「モズ様、報告です。賊は姿を眩ませたそうです。諦めて帰ったのかと」

モズ「そうか、しかし橋の向こうで待ち伏せしているだけかもしれん……。カムイ、お前さえよければ、白夜にて迂回の道を通れるように掛け合ってみるが」

カムイ「いいえ、今賊がいないのならこの機を逃すわけにはいきません。それに皆さんが私たちを匿ってくれたことで、賊も私たちを餌に罠を張られるかもしれないと、思っているかもしれませんから」

モズ「中々に考えるお嬢さんだ。目が見えていたら、違う職に就いていたかもしれないな」

カムイ「そうですね……そうだといいのですが」


モズ「?」

カムイ「いいえ、変なことを言ってしまいました。皆さん、ありがとうございます。サイラスさん、リリスさん。準備はできていますか?」

リリス「はい、大丈夫です」

サイラス「こっちも大丈夫だ」

モズ「よし、中継ぎの橋まで案内を頼んだぞ」

白夜兵C「はい、わかりました。では、ついて来てください」

カムイ「はい」

カムイ(どうやら、戦闘は無く無事に任務を終えられそうですね)

???「そこの者、止まれ」

カムイ「!」

今日はここまでになります。読んでくれた方々、ありがとうございます。

 次回で第二章は終る予定です。
 支援に関してですが、Sとかはあまり考えてません。初回プレイは誰一人として結婚していなかったので。
 安価の構想を少し考えている感じです。

モズ「サイゾウ様」

サイゾウ「賊が現れたと報告があった……そこにいる者たちか? それにしてはえらく寛いでいるように見える」

モズ「いえ、この者たちは賊に追われ逃げ込んできた暗夜の民。武装なども確認しましたが、護身の範囲であり、部下の治療までしてくれた方々です。それにあの女子は……その……」

カムイ「構いませんよ、モズさん」

モズ「目が見えておりません、我々が確認いたしました。そんなものを嗾けるほど、暗夜も馬鹿ではないでしょう」

サイゾウ「ほう、そうか……。名は何という」

カムイ「……カムイ、と言います」

サイゾウ「………そうか、カムイというのか」

カムイ「モズさん、お世話になりました」

モズ「はい、お気を付け―――」

サイゾウ「モズ、その者たちを捕らえよ。逃がしてはならん」

一同「!!!!!!」

カムイ「……」

モズ「な、なぜですか? 民間人を捕らえるなど……」

サイゾウ「民間人であるなら、俺とて盲目の人間を暗夜が送り込んでくるなど考えない」

モズ「……つまり、それを考えない事情があるわけですか……」

白夜兵CD「……」カチャッ チャキッ

カムイ「理由を聞かせていただけますか。サイゾウさん」

サイゾウ「少し前に捕虜となった者が戻ってきた。その者たちから面白い話を聞いた。暗夜に住む世間知らずの変わった王女の話をな」

カムイ「……」

サイゾウ「その王女は盲目でありながら、太刀打ちできぬほどに強く、人の顔をよく触る変わった奴だそうだ」

サイラス「………」

サイゾウ「捕虜の話によると、その王女はカムイと言うそうだ」

リリス「………」

モズ「ま、まさか……」

サイゾウ「盲目であり、名前が同じ。そんな偶然は早々ありえないことだ。そうは思わないか、カムイ?」

カムイ「……二人とも、走って下さい!」

モズ「くっ、まさか本当に!?」

白夜兵C「逃がすか!」

サイラス「あぶない!」

カムイ「サイラスさん、ありがとうございます。すみません、モズさん」

モズ「くっ、これが真実だというのか。我々をたばかったのか!?」

カムイ「ごめんなさい」

サイラス「くっ、カムイどうする、戦うか?」

カムイ「いいえ、私達でどうにかできる数ではありません。このまま暗夜側に撤退しましょう。サイラスさん馬をお返ししますから、先導をお願いしますね」

サイラス「ああ、わかった。前方は任せてくれ」

カムイ「ええ、後続は私がどうにかします」

サイゾウ「逃がすと思っているのか、喰らえっ!」

カムイ「てやぁ!」キキン

モズ「サイゾウ様の攻撃を!?」

サイゾウ「ふん、スズカゼの報告は真実であったということか。尚更逃がすわけにはいかん」

モズ「くっ、しかしこのままでは逃げられてしまう……」

サイゾウ「心配いらん……」

カムイ「! リリスさん、危ない!」

リリス「えっ、カムイ様、きゃっ!」

 グサッ

カムイ「……ぐっ、さすがにもらいましたか……」

???「む、直撃ではないか、私もまだまだということか」

カゲロウ「カゲロウ推参した。サイゾウ、あやつらが賊か?」

サイゾウ「いや、賊ではない。むしろ賊より厄介な連中だ。しかも殺してはいけないと注文が多い」

カゲロウ「ほう、そうか。しかし、私の攻撃で微少だが傷を負わせた。先より動きは鈍いぞ」

リリス「カムイ様、私なんかのために……」

カムイ「だ、大丈夫です。それよりも、早くつり橋へ向かいますよ」

リリス「怪我の手当を!」

カムイ「いえ、そんな余裕はないと思います」

サイラス「ああ、そうみたいだ。カムイ、南の砦からなんか飛んできてる。たぶん白夜の天馬部隊だ。追いつかれたら、流石に逃げきれない」

カムイ「一刻の猶予もありません。リリスさんは私よりも前を走ってください、飛んでくる攻撃は私が全部対処します」

リリス「そんな、怪我をされているのに無茶です。私が盾になりますから、カムイ様はサイラスさんといっしょにいち早く吊り橋を……」

カムイ「駄目です。それにリリスさんじゃ、飛んでくる攻撃を受けたり避けたりなんてできないでしょう? すぐに追いつかれるだけでリリスさんが私を庇った意味がなくなってしまいます」

リリス「さらっと使えないって、言っちゃうんですね。カムイ様」

カムイ「はい、だから私に守られてください。いいえ、守らせてください」

リリス「……はい、お願いします」

白夜兵F「来たか、止まれ止まるんだ!」

サイラス「カムイ、前方に伏兵だ。武器の使用を許可してくれ!」

カムイ「はい全力でやってください! 武器の使用を許可します!」

サイラス「ああ、行かせてもらう!」

白夜兵F「通すわけにはいかない!」

サイラス「止まるわけにはいかない!道を開けろー!!!」ブンッ

白夜兵F「ぐっ、これしきの攻撃受け止める! 今だ左右の道を防げ!」

白夜兵GH「わかった!」

サイラス「くそっ、道をふさがれた!?」

カムイ「リリスさん、サイラスさんの援護に!」

リリス「は、はい! 私だって、できるんです!」

白夜兵H「ぐっ、追撃を落とされた」

サイラス「リリス、ありがとう」

リリス「はい!」

カムイ「右の兵士を叩いて!」

サイラス「ああ!悪く思わないでくれ!」

白夜兵H「ぐ、ぐあああああっ」

白夜兵F「み、道に穴が……!?」

カムイ「よそ見はいけませんよ」

白夜兵F「しまっ――!!!」

カムイ「てやっ!」

 ドゴォ!

白夜兵F「か、かはっ!」

白夜兵G「ひぃ、ひぃいい!」

カムイ「じっとしていれば何もしません。サイラスさん、早く吊り橋を渡りきって暗夜領へ向かってください。リリスさんも早く!」

リリス「カムイ様はどうするんですか!」

カムイ「できる限り敵を引きつけます。大丈夫です、すぐに追いかけますから」

サイラス「……わかった。リリス馬に乗るんだ」

リリス「は、はい。カムイ様、すぐに追いかけて来てくださいね」

カムイ「わかっています。さぁ、早く!」

サイゾウ「くっ、吊り橋に逃げ込まれたか」

カゲロウ「ふむ、しかし王女がしんがりのようだ。捕らえることは出来るやもしれん。あまり気は進まないが」

サイゾウ「……いくぞ」



白夜兵A「ん、来たみたいだな。賊ならどこかに行ったみたいだぞ」

サイラス「ああ、世話になったよ。ありがとう」

白夜兵A「しかし、まだ安心できるというわけでは……んっ? 馬に乗っていたはずのお嬢さんはどこに?」

サイラス「それは……すまない、許してくれ」

白夜兵A「へっ?……ぐあぁ、いきなり何を……する……」ドサッ

サイラス「本当にすまない」

リリス「サイラスさん、ここで待ちましょう。カムイ様がまだ来ていません」

サイラス「待ちたいところだけど、俺はカムイを信じる。正直、ガンズのことが気がかりだ、ここで三人合流してから向かうのはある意味危険だ。先に吊り橋を渡り切ってガンズと合流する」

リリス「………そうですね。わかりました、ガンズさんと合流しておきましょう」

サイラス「ああ、正直渡っている最中に吊り橋を落とされるかもしれないから、ガンズが出てくる前に暗夜領にたどり着こう」

ガンズ「……きやがったな。ちっ、カムイ王女はいねえみたいだ。くそっ、三人並んでればすぐに橋を落としてやるんだが、仕方ねえ」

サイラス「ガンズ囮の任務よくやってくれた。おかげで偵察は完了だ」

ガンズ「けっ、それで王女はどうした? しんじまったか?」

リリス「ガンズさん!」

サイラス「もうすぐ到着する。それまではここで待機だ」

ガンズ(とか言いながら剣を納めてねえし、俺に注意を向けたまま。こいつ、俺のことを信用してねえってことか、甘ちゃんな王女の部下だと思っていたが、けっ、まあいい)

リリス「カムイ様、ご無事で、ご無事でいてください」

ガンズ「いくら祈っても、もすカムイ王女が死んでたら意味ないぜ。そうさ、カムイ王女はもう死んでるか、捕らえられているに決まってる。ここで待っていると俺たちも危険だろ? 追手が来れないようにこの橋を落とせば、丸く収まる」

サイラス「それを決めるのはカムイの役目だ。俺もお前も、今はカムイの部下だ。命令がない以上、それを行うことはありえない」

リリス「あっ、カムイ様! サイラスさん! カムイ様が来ました!」

サイラス「ああ、わかった」

ガンズ(こいつ、カムイが現れたと聞いても眼を俺から逸らさねえ…)

ガンズ「ん!? へっ、別にかまわねえか。こんな状態ならな!」

サイラス「ガンズ何を言って」

リリス「ああ、そんな! サイラスさん、カムイ様が!」

サイラス「なに

カムイ「はぁ……はぁ……」

サイゾウ「なんという女だ。目が見えないという話が戯言にさえ思えてくるほどの動き、驚異的だ」

カムイ「ぐっ………力が……」

白夜兵C「……動くな、手荒い真似はしたくない」

モズ「……カムイ、もう終わりだ」

カムイ「……ここまでのようですね」

サイラス「カムイ! 待っていろ、今すぐ助けに行く!」

リリス「カムイ様、待っていてください」

サイゾウ「ふっ、暗夜の兵たちよ。この女の命、惜しくば武器を捨て投稿しろ。安心しろ、手荒なまねはしない」

サイラス「………わかった。指示に従う、従うからカムイに手を出すな! リリス、ガンズ武器を」

リリス「は、はい」

ガンズ「……」

サイラス「ガンズ、武器を捨てろ! カムイの命が掛っているんだぞ」

ガンズ「武器を捨てろ? そんな命令には従えねえな。俺は指揮官の命令にしか従わないんでね」

カムイ「ガンズさん!」

ガンズ「……なんですか、カムイ王女?」

サイゾウ(ふっ、命が危なくなれば仕方のないことだな。これで任務は――)

カムイ「命令です」

ガンズ(けっ、今さらどんな命令だろうと従う気はねえけどよ)

カムイ「吊り橋を………吊り橋を落としてください」

ガンズ「……了解!」

サイラス「か、カムイ一体何を言って! ガンズやめろ!」

ガンズ「指揮官の命令は絶対、そうでしたねカムイ王女」

カムイ「ええ、その通りです。ガンズさん、お手数を掛けます」

ガンズ「いえいえ、では、命令通り落とさせてもらうぜ!」ブンッ

 ブチィ、ブチブチ、ガラガラガラ……

サイラス「そ、そんな……カムイ! こんなのは間違っている!」

カムイ「皆さんは、急いでウィンダムに帰還してください。サイラスさん、ここまでありがとうございます。命令もないのに私に従ってくれたこと、感謝しています」

サイラス「何を言っているんだ。俺はエリーゼ様から……」

カムイ「命令なんて、無かったんですよ」ビリッビリビリッ

サイラス(あれは、エリーゼ様の印書……、なんで、何でこんなことまでするん)

カムイ「ガンズさん、お父様への報告をお願いします。配置などを記した紙をサイラスさんから受け取ってください」

ガンズ「ちゃんと遂行してやるよ。おい、お前らさっさとここから逃げるぞ!」

リリス「カムイ様! 待ってください! 私たちを置いていかないでください!」

サイゾウ「弓を奴らに向けて放て、威嚇でいい。どうせ何かできるわけでもない」

白夜兵C「はっ! 一斉射準備!」

サイラス「くっ、リリスこっちへ!」

リリス「嫌です、私はカムイ様をお守りするためにここまで来たんです! こんな、こんなことって!」

白夜弓兵たち「……準備できました」

白夜兵C「放て!」

 タタタタタタタンッ

サイラス「くっ、リリス、すまない!」ガシッ

リリス「いや、いやああああああ! カムイ様!」



サイゾウ「気配が消えた、さすがに逃げたようだぞ」

カムイ(皆さんはどうにか逃げられたみたいですね……。でも私が助かることはもうないでしょう」

モズ「……」

白夜兵たち「……」

サイゾウ「抵抗に意味はない。おとなしく投降しろ、手荒な真似はしない」

カムイ「投稿ですか、投降した先にいったい何があるのか? 正直考えるのも面倒です)

モズ「カムイ、武器を下せ。闘いは終わった。お前にもう勝てる状態ではない」

カムイ「……そうですね」

モズ「そうだ。それに、お前は私の部下の手当をしてくれた。お前じゃなくとも、お前の部下がしてくれたことは変わらない。現にお前は私の部下を一人として殺していない」


カムイ「私が甘いだけですよ。その結果がこんなものですから、兄さんたちが聞いたら笑うかもしれませんね」

カゲロウ(サイゾウ……)

サイゾウ(カゲロウか……)

カゲロウ(単刀直入に言う。まずい状況だ)

サイゾウ(ああ……俺も同じことを考えていた。カゲロウ、これを持て)

カゲロウ(眩暈針……理解した)

サイゾウ(勝機は一度きりしかないはずだ。気を抜くなよ)

カゲロウ(御意……)

カムイ(あの二人、私の狙いに気が付いているみたいですね。くっ、体の痛みが強くなって動きが鈍くなっています。早めにケリをつけないといけませんね。チャンスは一度だけ……)

カムイ「そうですね、このまま抵抗しても何の意味もないでしょう」

モズ「では……」



サイゾウ「………」



カゲロウ「………」


カムイ「でも、死ぬことはできます」ザッ

サイゾウ「させん!」ヒュッ!
カゲロウ「させぬ!」ヒュッ!


 キィン……カキィン


カムイ「……残念でしたね」

カゲロウ(読まれていたということか。くそ、間に合え!)

カムイ(二人の再攻撃よりも、私のほうが早い)

モズ「ま、まて、早まるな!」

カムイ(これで、楽になれる……)

サイゾウ「ま、待て!」

カムイ「待ちません。これで終われるんですから」

カムイ(首を切れば、生半可な回復では間に合わないくらいに切りつければ………)


カムイ「!?」

カムイ(な、なぜ、手が動かかないんですか!? もう、首筋までわずかなのに。腕が? ちがう、これはガングレリが動きを止めている?)

カゲロウ(死の瞬間で怖気ずいたのか? いや、ちがう。しかし、この機を逃すつもりはない)

カムイ(早くっ………!早く動い………)

 ザシュッ……ザシュッ……カラン……

カムイ「う、うぁ。そ、そんな、なんで………なんで、なんですか……」ドサッ

カムイ(意識が……溶け落ち……る)

カムイ(………)

◇◆◇◆◇
―無限渓谷・放棄された城砦内部―

カムイ「すぅ………すぅ………」

サイゾウ「カゲロウ、よくやってくれた」

カゲロウ「ああ、私もよく間に合ったものだと驚いている。この方はどうする?」

サイゾウ「渓谷の下にある村に着くまでの間、カゲロウに運んでもらいたい。女は女に任せるのが一番問題がない」

カゲロウ「ふっ、わかった」

サイゾウ「モズ、ここら一体の監視を強化しろ。暗夜側に目を光らせておけ」

モズ「はい……カムイはこれからどうなるのですか?」

サイゾウ「わかっている。俺たちとて辱めを受けさせるために捕らえたのではない。また、情報を得るためでもない」

モズ「?」

サイゾウ「これは上からの命令だ。今はそれしか言えん」

モズ「そうでしたか。では、我々は監視を続けます」

サイゾウ「ああ、しっかり頼むぞ」

カムイ「う……うぅ……」

カゲロウ「すまない。こちらも任務故な」

カゲロウ(とても軽い。私よりも軽いくらいか。この体があのような動きをしていたなど、にわかに信じられぬ。そんな者があの土壇場で死の間際で止まるものだろうか?)

サイゾウ「カゲロウ、村へと向かうぞ」

カゲロウ「……御意」

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・無限渓谷入口―

ガンズ「俺は王女の命令通りウィンダムに戻る。ガロン王へ報告する命令を受けているからな」

サイラス「そうか、ならここでお別れだ」

ガンズ「なに?」

サイラス「俺には何の任務もない、自由に行動させてもらう。俺はただ個人的に手伝っていただけだからな」

ガンズ「そうかい、勝手にしな。リリス、お前は命令通りにするんだろうな?」

リリス「いいえ、私はカムイ様の従者です。カムイ様の無事を確かめるまでは、ウィンダムに戻るわけにはいきません」

ガンズ「けっ、好きにしな。俺にはカムイ王女に与えられた仕事がある。せいぜい、くたばらないように気をつけるんだな」タタタタタタタッ

サイラス「リリス、本当にこれでよかったのか?」

リリス「はい。ガンズさんとウィンダムまで二人きりなんて、恐ろしすぎます」

サイラス「それは言えてるな。男の俺でもそんなシチュエーションはごめんだからな」

リリス「でも、どうしますか? カムイ様は……もしかしたらすでに」

サイラス「正直、カムイは自害している可能背もあるけど。それを白夜の人間たちが許さないはずだ」

リリス「……取引の材料としてですよね」

サイラス「ああ、普通に考えればそうだ。ただ、ガロン王様がカムイのことで何か代償を差し出すとは思えない。だから俺達で探しに行くしかない」

リリス「はい、お供させていただきます」

サイラス「よし、渓谷を迂回して白夜領に向かう!」

リリス(カムイ様、無事でいてください……)

第二章 おわり

現在の支援レベル

 スズカゼ  C
 リンカ   C
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C→C+
 リリス   C→C+

 今日はここまでになります。読んでくれた方ありがとうございます。

 この話は第三章が『敵をすべて倒すことが勝利条件ではない』タイプの面に関するチュートリアルだったらよかったなという意味合い話になります。 チュートリアルの無限渓谷も確かに敵全滅が勝利条件ではないのですが「敵を全滅できる」仕様だったので、あえてギュンターやジョーカーを抜いてソシアルのサイラス、ロッドナイトのリリスという形にしてあります。内容も城砦の制圧ではなく、吊り橋への到達と考えれば、この編成で勝利条件をクリアする面が作れるかもみたいなものです。
 安価はストーリーの分岐を考えています。この話は暗夜であることは決まっているので、暗夜に入ってからいろいろ安価で選択肢を出していこうかと考えています。

 
 

―白夜王国・平原の村―

カムイ「……んっ、ううっ、頭がグラグラする」

カムイ「たしか私は……無限渓谷で…」

カムイ(腕の傷……そうでしたね。私は白夜軍に……)ハァ……

???「ああ、こちらは問題ない。彼女もまだ眠っている、少し時間を置いてからでもいいと思うが……、わかった」

カムイ(壁を隔てて、誰かの声が聞こえる。この声は女性、あの時に耳にした声ですね)

???「ん、目覚めたようだな」

カムイ「えっと、あなたは?」

カゲロウ「申し遅れた。私はカゲロウ、白夜王国に仕える忍だ。とりあえず、これを」

カムイ「これは……?」

カゲロウ「ただの水だ、毒など入ってはいない、安心しろ」

カムイ「……んくっ、んくっ。ありがとうございます」

カゲロウ「起きて早々だが、無限渓谷でお前の身柄を拘束させてもらった。ここまでは私が運んだ、変な真似はしていない、安心しろ」

カムイ「そうですか……、私はこれから処刑されるのですか、それとも暗夜王国との交渉の材料に使われるのでしょうか?」

カゲロウ「ふっ、現実的に物事を見るようだが、それは無用な心配だ」

カムイ「どういうことですか?」

カゲロウ「お前に会わせたい御方がいる。まずはその方と話し合ってから考えても遅くないだろう。目的地着くまでの間、私が世話をすることになっているから、何かあるなら申してほしい」

カムイ「そうですか……あの、カゲロウさん」

カゲロウ「何用か?」

カムイ「お顔を触ってもよろしいでしょうか?」

カゲロウ「……本当に報告のあった通り、おかしな御方のようだ。別に構わない」

カムイ「ありがとうございます。髪は右側が長いんですね、整った顔立ちですね」

カゲロウ「あ、ああ」

カムイ「唇は少し硬いんですね。でも言葉遣いと合ってるかもしれません。カゲロウさんからは、憮然としたイメージがあります」

カゲロウ「そうでもないが……ただ任務に忠実であるが故、そう思われているかもしれない」

カムイ「すみません、私はこれでしか人を知れませんから……」

カゲロウ「……優しい手つきだな」

カゲロウ(それに、どこか気持ちがいい)

サイゾウ「失礼するぞ、カゲロウ―――そういう趣味だったのか?」

カゲロウ「サ、サイゾウ! いや、そういう趣味はない。私はいたって普通、この方に顔を触らせていただけだ」

カムイ「はい、そうですよ。ありがとうございました、カゲロウさん。そちらの方はサイゾウさんですか?」

サイゾウ「サイゾウだ。先に言っておく、顔は触らせん。お前を信用しているわけではないからな」

カムイ「………」

カゲロウ「すまない、サイゾウはこういった者でな」

カムイ「いえ、仕方ないことですから。それよりもカゲロウさん」

カゲロウ「なんだ?」

カムイ「カゲロウさんなら、私の姉さんといい勝負ができそうだなと思いました」

カゲロウ「?」

カムイ「これのことです」ガシッ モミ

カゲロウ「な、なにを/////」

サイゾウ「!!!!!!」

カムイ「柔らかいですね。それに重たいです」モミモミ タユンタユン

カゲロウ「……サイゾウ、私はこの者が全くわからぬ。非常識というか、無邪気というか、対応に困っている///」

サイゾウ「俺も全くわからん。わからんが、障られているお前を見ていると、少しばかり複雑な気持ちになってしまう」

カゲロウ「ふっ、私が誰かに触られていることが、気になるのか?」

サイゾウ「……そ、そんなことは」

カゲロウ「今でも気にかけてもらえるというのは、嬉しいことではあるがな」

カムイ「カゲロウさんくらいにならないと、姉さんには敵わないでしょうね」モミモミ

カゲロウ「……とりあえず、そろそろ止めてはくれないだろうか……///」

みじかいですが、今日はここまでです

◇◆◇◆◇
―白夜王国・王城『シラサギ』王の間への道―

カムイ(初めて感じる気配ばかりですね。物の形のほとんどが違う、これが文化の違いでしょうか? それにしてもこの雰囲気、どこか穏やかな気持ちになります)

カゲロウ(王城に入ってから手を取っていないにもかかわらず、段差などに足を掛ける気配もない。これほどまでに気配を察しているとは、一体どのような修行をこなされたのか……)

サイゾウ(カゲロウ、手を取らずに平気か? あやつが何かする可能性も)

カゲロウ(サイゾウ、あの方がその気なら、私たちは道中で殺されていただろう)

サイゾウ(……奴の武器はこちらにあったというのにか?)

カゲロウ(誰かを殺めるのに武器など必要ないことくらいわかっていることだろう?)

サイゾウ(……)

カゲロウ(それにあの方に自由に歩いてもらうことも、緊張をほぐしてもらうための一つの手。サイゾウの心配はわかるが、私はあの方が何かをするとは思っていない)

サイゾウ(そうか、お前が判断したことだ。今は従おう……)

カゲロウ「こちらが王の間へと続く道だ」

カムイ「はい……あれ、この気配……」

???「……」

カムイ「そこの柱に陰にいる人、スズカゼさんじゃないですか?」

???「………よくわかりましたね」

 スタッ

スズカゼ「まさか見破られるとは思いませんでした。忍としては大変な落ち度と言えます」

カムイ「ふふっ、どこかで感じたことのある気がありましたので、お久しぶりですスズカゼさん。無事に白夜に戻られたんですね」

スズカゼ「はい、おかげさまで。その説は感謝してもしきれないことです。兄さん、カムイ王女様の護衛、ありがとうございます」

サイゾウ「一番苦労したのはカゲロウのほうだ。報告の通り、顔を触られた揚句……」

カゲロウ「サイゾウ、それ以上言えばどうなるか、承知で言うのであれば、覚悟はできていると理解してよいな?」

サイゾウ「……色々あった。とにかく、話に聞いた通りおかしな娘だった」

スズカゼ「カゲロウさんが兄さんの発言を制すほどのことですか、やはりカムイ王女様怖いもの知らずなのですね」

カムイ「あの、私は王女でも暗夜王国の王女、無理に呼ばなくても大丈夫です」

スズカゼ「いいえ、あなたを王女と呼ぶことに何ら問題はないんです」

カムイ「どういう……」

サイゾウ「しかしスズカゼ、お前がここにいるのはなぜだ? 何か問題が起きたということか?」

スズカゼ「特にこれといった問題はありません、カムイ王女様のことで呼ばれ参上した次第です。一度、本人であるかの確認を、私としてはカムイ王女様のお顔を拝見したかったというのが本当のところです」

カムイ「そうなんですか、うれしいです。耳を触ってもいいですか?」

スズカゼ「そ、それは、またの機会にお願いします」

カムイ「そうですか、残念です」

スズカゼ「それと、もう一人、あなたがカムイ王女様であるかの確認のために来ております」

カムイ「ふふっ、誰かは予想がつきます。でも、またお会いできるのはうれしいことですね」

スズカゼ「はい、ではこの先でお待ちですので……」

リンカ「やっと来たのか、待ちくたびれたぞ」

カムイ「やっぱり、リンカさんでしたか」

リンカ「ああ、久しぶりだなカムイ」

カムイ「私のこと、名前で呼んでくれるんですね。ということは友達になってくれる、ということでいいんですね?」

リンカ「ち、ちがう。言っただろ、あたしは『さん』や『様』を付けて呼ぶのはガラじゃない。ただそれだけだ」

カムイ「やっぱり、そうなんですか。残念です」

リンカ「そ、そんな顔するな。あ、あたしがわるかっ―――」

カムイ「あ、顎先に虫がいますよ?」

リンカ「ひゃんっ! ば、ばか! 皆の前触るやつがあるか!」

カムイ「二人きりならいいんですか? 私は一向に構いませんよ」

リンカ「そういう意味じゃない!」

スズカゼ「………」

リンカ「なんだその眼は!」

スズカゼ「いいえ、リンカさんがカムイ王女様との再会を楽しみにしていたことがひしひしと伝わってきまして、感動していた次第です」

リンカ「こ、これのどこが楽しんでいるんだ!」

カゲロウ「うむ、楽しいそうで何よりだ。炎の部族にもこういった一面もあるのだな」

サイゾウ「もういいだろう、その様子では間違いはないだろう」

スズカゼ「ええ、リンカさんの狼狽ぶりがその証明となります。リンカさん、もう少し素直になるのもいいと思いますよ」

リンカ「な、何をばかなことを言っているんだ////」

カムイ「スズカゼさん。リンカさんは素直じゃないところがいいんですよ? 顔を真っ赤にしながら否定してる姿はとても可愛いと思いますから」

リンカ「かわ、かわいいって侮辱してるのか! おまえ、あたしの顔見えないはずだろ!」

カムイ「それなりに触った人の顔なら想像できますから。かわいいというのは本心です、リンカさん、とってもかわいいですよ」

リンカ「……くっ、勝手にしろ!///」

サイゾウ「もういいだろう、王の間へ入るぞ」

―王の間―

???「待っていたぞサイゾウ、カゲロウ。わざわざ呼び出してすまなかったな、スズカゼ。そしてリンカよ」

カゲロウ「カゲロウ、任務完了した」

サイゾウ「こちらがカムイです。スズカゼ、リンカからの確認は終わっています」

???「そうか……では、カムイで間違いないのだな」

カムイ「……あの方は?」

リンカ「白夜王国の第一王子、リョウマだ。こうして目の前で見るのはあたしも初めてだ」

カムイ「リョウマさんですか」

カムイ(白夜王国の第一王子とあろう人が、私にいったい何の用なんでしょう?)

リョウマ「君が、カムイで間違いないか?」

カムイ「はい、私はカムイです。……と言っても、ここで話すことは意味のないことなのでしょう?」

リョウマ「……」

カムイ「後々、処刑されるのでしょうか? それとも暗夜との交渉材料として束縛されるのでしょうか? 早く答えを聞かせてもらいたいのですが」

リョウマ「……なぜ、そう考える?」

カムイ「私は白夜に不法侵入をしました。しかも形だけにせよ王族、使い方は如何様にもあります」

リョウマ「ふっ、安心しろカムイ。お前に罪が与えられることはない。吊り橋の監視を行っていたモズたちからの報告は受けている。一人も殺めることなく、自身の従者は暗夜へと逃がしたお前は素晴らしい人間だ。普通、命を狙われれば我が身可愛さに人を殺め、従者を見捨てる者ばかりだろう。その中で、お前は自身ではなく他の命を選んだ。できることではない」

カムイ「……それは、私が甘いだけです……」

リョウマ「……戦いでの自分の在り方に不安を覚えているということか?」

カムイ「………」

リョウマ「……大丈夫だ。そんなことを気にすることも無い、そんな日々をお前は手に入れることができる。たとえ、光を失おうとも、お前にはそれを得る資格がある。俺がそれを保守しよう」

カムイ「……なぜ、そう言い切れるんですか?」

リョウマ「そうだな、そろそろ来てくださるはずだ……」

???「……カムイ?」

カムイ「……?」

???「カムイ……なのですね……」

カムイ「……はい、私はカムイです」

???「やっと、やっと戻ってきてくれたのですね。私の、愛しい私の子」ギュッ

カムイ「……あの、いきなりのことで、意味がわからないんですが」

???「カムイ、帰ってきてくれた。よく無事で……良かった」

カムイ「すみません、ちょっと落ち着いてください。いきなりのことで状況がつかめません、説明してほしいんです」


ミコト「ごめんなさい、私はミコト、この白夜王国を治める者。夢に思っていたことが叶って、少し取り乱してしまって……」

カムイ(ミコトさんですか、お父様とは対極に位置する人のような気がします。この人からは血の匂いが全くしない、思考やあり方がお父様とは全く異なっているみたいに)

ミコト「カムイ、あなたの質問に答えます。でも、今から話すことはとても信じられない話かもしれません、あなたにとっては荒唐無稽な話だと思います。それでも、私の話を聞いてくれますか?」

カムイ「…………、話を聞く前にひとつよろしいですか?」

ミコト「……何でも言ってください」

カムイ「ミコトさん、あなたのお顔に触れてもいいですか?」

ミコト「………報告にありました。目が見えないのですね、カムイ」

カムイ「はい。証拠に私の瞼の下にあるものを、見ていただいてもよろしいですか……」

ミコト「ええ、私に見せてください」

カムイ「気色の悪いものだとは百も承知です。これを……」

サイゾウ「!!!!!」

カゲロウ「!!!!!」

リョウマ「…………」

ミコト「………」

ミコト「…s何点正直、嘘であってほしいと思っていました。この日を私は待っていたからこそ、あなたに私の姿を見てほしかったから」

カムイ「はい、ですから私は、あなたがどのような顔をしているのかもわかりません。話を聞く前に、一度そのお顔に触れてもいいでしょうか……」

ミコト「……ええ、触れてください。あなたが私の顔を覚えてくれるなら」

カムイ「はい、失礼しますね。柔らかいんですね、そして暖かい、リンカさんみたいな温かさじゃなくて、もっとなんだか柔らかい温かさです」

ミコト「……ええ、ありがとう」

カムイ「髪もサラサラです。髪の色は何色なんですか」

ミコト「カムイとおなじ黒よ」

カムイ「……ミコトさん」

ミコト「ううっ……な、なんでもないの」

カムイ「泣いているんですか?」

ミコト「……ご、ごめんなさい。嬉しいのはずなのに、なんで、こうも悲しい気持ちになるんでしょう。私の子が、カムイが帰ってきてくれたはずなのに……」

リョウマ「カムイ、もういいだろうか」

カムイ「はい、ありがとうございます。ミコトさん」

ミコト「ええ、こちらこそ……」

…s何点正直→×

……正直→○

ひどい誤字ですみません

ミコト「ではカムイ、話をしてもいいですか?」

カムイ「はい、お願いします」

ミコト「カムイ、あなたは――」

◇◆◇◆◇
―白夜王国・シラサギ敷地内―

カムイ「………」

カゲロウ「………」

カムイ「………」

カゲロウ「カムイ様。そろそろ部屋へお戻りになりましょう」

カムイ「カゲロウさん、すみませんが一人にしていただいてもいいでしょうか?」

カゲロウ「それは……」

カムイ「おねがいします」

カゲロウ「……承知した」シュッ

カムイ「………本当の家族……ですか」

ミコト『あなたは私の子どもです』

リョウマ『シュヴァリエ公国を訪問していた父を、ガロンは騙し打ちで殺しお前を攫った』

ミコト『いきなりすべてを信じることはできないと思います。だから、少しずつでもいいんです。私と過ごした日々を思い出してくれたら、私はとてもうれしいのですから』

リョウマ『数日すれば、遠征しているヒノカとサクラ……、カムイにとっては姉と妹にあたる者が帰ってくる。城内には弟もいるが、あいつは少し気難しい性格でな。顔合わせはヒノカたちと一緒になるはずだ。それまでは自由にしてくれ、ここはお前の家なのだからな」

カムイ「こんな私を、迎え入れる必要なんてないのに―――」

 ――――タンッ!

カムイ「この音は……」

 ――――タンッ!

カムイ「矢の音でしょうか?」

今日はここまでです。誤字脱字があって、申し訳ないです

 

???「―――くそ……、一本だけずれる。当たってはいるけど、これじゃだめだ。これじゃ……」

 ガサガサ

???「!」

 ガサガサ

???「誰だ! 出てきて姿を見せなよ!」

カムイ「声を出してもらって助かります。そちらですね、ちょっと待っててください。ふぅ、矢の音だけを頼りに藪を抜けるのは一苦労です。声を出してもらえなかったら、迷子になっていました。やっぱり感覚だけで把握するのには限度というものがありますね」

???「あんたは……」

カムイ「あなたの気配は知りませんから初対面ですね。初めまして、私はカムイと言います」

???「カムイ……。そうか、リョウマ兄さんに聞いて挨拶にでも来たんだ? でも必要ないよ、僕はあんたのこと信用しているわけじゃないから」

カムイ「別に挨拶をするために来たわけじゃないので構いません。矢を射る音が聞こえたので伺っただけですので」

???「……、じゃあ邪魔しないでくれないかな。集中できなくなる」

カムイ「はい」

???「………」

カムイ「………」

???「あのさ、邪魔しないでって言ってるよね?」

カムイ「邪魔はしませんよ」

???「なんでいるのさ。集中できないからどこか行ってくれない?」

カムイ「人がいると集中できないんですか?」

???(なんだよそれ、僕が未熟だって言いたいのか?)

???「……そんなことは、ないよ」

カムイ「なら私はいても構いませんね。音だけを聞かせていもらえればいいので、どうぞ続けてください」

???「……くそ、馬鹿にして。今に見てろよ……」

 タンッ! タンッ! タンッ!

カムイ「………」

???「よし、うまくいった。もう一度………うん、この感じか」

カムイ「……あの」

???「なんだよ、聞いてるだけじゃなかったの?」

カムイ「的は動かないんですか? 先ほどからずっと同じ場所に当たっているようなので」

???「実戦の訓練をしてると思ってるみたいだけど、これは実戦のための訓練じゃない」

カムイ「これは実戦の訓練じゃないんですか?」

???「今僕がやっているのは弓道だ、実戦とは違う。弓道は攻撃てなものじゃない、心を落ち着かせてやる技術の競い合いだ。実戦なら相手にあたるようにすればいい、当てるだけで相手に傷を与えられるからね」

カムイ「そうなんですか。暗夜にはあまりそういうものはないので、あなたがやっているものはなんだか新鮮に感じます。殺めるための技術ではないというのは、なんだか面白いものですね」

???「……タクミ」

カムイ「?」

タクミ「僕の名前、先に名乗ってもらったのに、名乗らないのは失礼だろ?」

カムイ「ふふっ、先ほどまで必要ないって言っていたじゃないですか。おかしな人ですね、でもいいんですか? 私は暗夜の王女ですよ?」

タクミ「あんた、やっぱり暗夜の人間なんだな。僕の臣下にもあんたの人間を怨んでいる者がいる。名前を教えたからって、信頼されているなんて思わないことだね。僕はお前を信用してない、それだけは伝えておく」

カムイ「それが普通の反応です、なんだか安心しました」

タクミ「な、なにがだ。僕をからかってるんだろ」

カムイ「いいえ、タクミさんはわかっているみたいで、それがとても安心できるんです。私は暗夜の人間、生まれは関係ありません。暗夜で育ち、暗夜に養われてきた私をいきなり同胞として迎えろと言われたらどう思います」

タクミ「正直、気色が悪いし、距離を置くよ」

カムイ「はい、私もそう思います。だから、タクミさんのように警戒するのは当然のこと、だから気にしないでいいですよ」

タクミ「……なんか全部受け止められると、僕が情けなくなる。それになんだか、うまくあしらわれてるみたいで正直面白くない」

カムイ「ふふっ、暗夜にタクミさんに似ている弟がいるから、どうもお姉さんになりたくなってしまうのかもしれません。そうやって、少し不機嫌になるところとか、とても似てます」

タクミ「僕は、あんたのことを姉だなんて思ってない」

カムイ「はい、それでいいんです。むしろ、そうあるべきなんですから……」

タクミ「それはどういう……」

カムイ「さぁ、練習を続けてください。私に矢を射る音をたくさん聞かせて欲しいんです」

タクミ「あんたのために練習してるわけじゃない……。だけど、静かにしてるなら別に聞いてて構わな――」

???「やっと見つけた、タクミ様!」

タクミ「んっ、どうしたんだヒナタ?」

ヒナタ「あれ、こっちのは?」

タクミ「暗夜の王女だ、話は聞いていると思うけど」

ヒナタ「ああ、捕虜になったっていう? すごく寛いでるじゃん。なんか、すでにここに住んでるって言われても違和感無いぜ」

タクミ「恐ろしいことを言わないでくれ、それで何かあったの?」

ヒナタ「はい、北と西の地域でノスフェラトゥの大群が確認されたらしいです。このまま放っておくと近隣の村に被害があるかもしれないって」

タクミ「……わかった。ヒナタ、すぐに出るよ。オボロは?」

ヒナタ「オボロはテンジン砦に用事があったらしくて、現場で待機してるみたいです。あとは、俺たちがテンジン砦に着くだけですよ」

タクミ「よし、なら早く向かわないと。僕はこれから出るから、弓道はお仕舞いだよ。それじゃ……」

 ガシッ

タクミ「なんだよ、僕はこれから――」

カムイ「私も連れて行ってもらえませんか?」

ヒナタ「ついてくるって、ついて来ても何もないぜ。ただのノスフェラトゥ狩りだからな」

タクミ「………なるほどね、暗夜と聞いたから合流して逃げようってことか。残念だけどノスフェラトゥにそんなものを期待するのは間違いだ。あれは心を持たない獣だからね」

カムイ「心を持たない獣……ですか?」

タクミ「そうだ。だから、あんたの望むような展開にはならないよ。もっとも、望んでノスフェラトゥに歩み寄るなら、止める気もないけどね」

カムイ「そうですね。止めてくれなくてもいいです、ですから私を連れて行ってもらえますか?」

タクミ「……本当に人の忠告を煽りで返す人だねあんたは……、わかった、同伴を許可するよ」

カゲロウ「タクミ様、それはいくらなんでも、何かあったらリョウマ様になんと報告するのですか」

カムイ「暗夜の王女はカゲロウさんとタクミさんの制止を振り切り、ノスフェラトゥを友軍と信じて駆け寄った結果、殴り殺されたとでも報告しておいてください」

タクミ「……」

カゲロウ「……カムイ様。そのような発言はやめてくださらないか。そんなことになったらミコト様や多くの方が悲しむことになる」

カムイ「………」

タクミ「……いいよ、許可してやる。だけど、もしも逃げだそうとしたらその時は……」

カムイ「はい、タクミさんの望むとおりにしてくださって構いません」

◇◆◇◆◇
―白夜王国・テンジン砦―

タクミ「オボロ、状況はどうなってる?」

オボロ「タクミ様、西の村ですけど、すでに襲撃にあった場所もあるみたいです。すでに出兵は始まってますけど、奴らの動きは不規則ですから、どこを狙われるかわからなくて、指揮系統に混乱があります」

タクミ「そうか。くそっ、もう少し早く気づけたなら……」

オボロ「あのー、タクミ様。そちらの方は?」

カムイ「………」

カゲロウ(オボロか、白夜一の暗夜嫌いと言っても過言ではないが、カムイ様だと知ったらどうなるか……)

ヒナタ「ほら、オボロ。あれだ、捕虜になったっていう王女様だよ」

オボロ「へぇ……」クワッ

カムイ(なんだか雰囲気が変わりましたね。完全に敵視しされている気がします)

オボロ「そう……あんたが捕虜になった暗夜の王女なのね」クワッ

カムイ「そうなりますね」

オボロ「大方、暗夜と聞いて合流して脱出するつもりなんでしょうけど――」

カムイ「その話はタクミさんから聞いてますので、それでこれからどうするんですか?」

タクミ「付いて来ただけのあんたに答えるつもりはないよ。それで、先に出兵した者たちはどこへ?」

オボロ「はい、襲われたとされる西の小さな集落より手前の、比較的大きな集落へと向かうと言ってました。そこから編成を組みなおして討伐を始めるらしいです」

タクミ「そうか、よし、まずは僕たちもその集落に向かおう。オボロ、馬は用意できているか?」

オボロ「ええ、用意できてます。ですが、タクミさまとヒナタの分だけです。残りはありませんよ」

カゲロウ「では、二人乗りで行けばいい。私はカムイ様を護衛するために、すまないが残りはそちらで決めてくれ」

タクミ「はぁ、仕方無い。オボロとヒナタはどうする?」

オボロ「そうですね――」

ヒナタ「タクミ様、オボロを一緒に乗せてやってくれよ。俺乗馬するなら一人のほうがいいんで」

オボロ「ちょ、ヒナタ何言って」

タクミ「仕方無い、じゃあオボロ、馬の場所まで案内してよ。早くしないといけないからさ」

オボロ「え、ええ……」

カムイ「……?」

オボロ(……少し感謝しとくわ)クワッ

カゲロウ「カムイ様、行きましょう」

カムイ「はい」

カムイ(ノスフェラトゥですか……、話にだけは聞いたことがありますがいったいどんな者たちなんでしょう……)

◇◆◇◆◇

―小さな村―
???「静かになってもうた…………」

???「どうすればええんや、あたいわからへんよ」

 ドスンッ ドスンッ ドスンッ!

ノスフェラトゥ「ぐあああおおおおおお!」

???「―――っ!!!!!!」

???(声漏らしたら殺されてまう。お願いや、気付かずに通り抜けてや……)

ノスフェラトゥ「……あああ……ああ」

???(……気付かんといて)

 ドックン……ドックン……ドックン……

ノスフェラトゥ「……ぐあああああおおおおおお!」

 ドスン ドスン ドスン ドスン……

???(た、助かった……ていうても、一先ずの話や。このままここにいても助かるわけあらへん。でも、飛びだしたところで……)

???「すぐに殺されてまうやろな……」

???(なんでこんなことになったんや。今日もみんなと一緒に畑を耕して、狩りをして、笑って、夕陽が落ちるのを見るだけのはずやったのに…)


村人A『だ、だめだ。こっちに向かってくる! みんな早く、逃げるんだ!』

村人B『モズメ、早く逃げるんじゃ!』

村人A『あっ腕を取られ……うわああああ、ぎゃあッ!』
 
 グチャ

村人C『くそっ、こんな農具じゃ、歯が立たない……ぐえっ』

 ベキッ バキャッ

村人B『はよ、はよ行くんじゃ! はわわ、ぐひゃっ……』

モズメ『はぁ、はぁ、はぁ……』

村人D『こっちじゃ、モズメ! ここに隠れておるんや。ええな?』

モズメ『お、おっちゃんとみんなはどないすんや?』

村人D『ほかのみんなを呼んでくるんや。ええか、俺がいいっていうまで、ここを絶対に空けるんやないで、わかったな! おらおら、こっちにきやがれ唐変朴! 悔しかったら追いついてみやがれ!』

ノスフェラトゥたち『ぐあああああああおおおおおお!』
 
 ドスンドスンドスンッ

モズメ『……な、なんでや。なんで、なんであたいだけ守られなきゃあかんのや! 一人に、あたいを一人にしないでや。お願いだから……一人は嫌や……』


モズメ「これまでやろな……。はは、これで死ぬんいうのに、変に落ちついとる」

モズメ(嘘や死にたくなんてあらへん。でも、仕方無いやんか)

モズメ「ぐすっ、みんなの命、無駄になってもうた……。もう助かるわけないんや……一人じゃ何も出来ひん……」

モズメ「だから、許してや……」

今日はここまでになります。

―小さな村を見下ろせる丘―

カムイ「あの、カゲロウさん。私たちはどこへ向かっているんでしょうか?」

カゲロウ「西に位置する小さな集落だ。ノスフェラトゥに狙われたと思われる最初の村と言ったほうがいいかもしれない。ここに至るまでの間、ノスフェラトゥを見掛けていないことから察すると、多くがその村に居座っている可能性が高いゆえ、気を付けていかねばなりません」

カムイ「……生存者はいると思います?」

カゲロウ「……村を襲ったのが人間であるならば、生存の可能性もありますが……」

カムイ「相手が心を持たない獣だからですか?」

カゲロウ「……ノスフェラトゥに襲われた遺体というのは常人が見るには耐えがたいものです。戦う術を持たない者では、逃げきることなど」

タクミ「二人とも、もう話はそれくらいで。あの村に多くのノスフェラトゥが居座っているみたいだ。後続の討伐隊は周辺を確認しながらここを目指してるから、到着の時間にはまだまだ掛る、到着前に僕達でどうにかするよ」

ヒナタ「わかりました。で、どうします、タクミ様」

タクミ「オボロとヒナタは大きく迂回して、下の林道から村へと入って、僕らは先に戦闘を始めているから、相手の背中を一気に襲撃してほしい」

オボロ「わかりました。行くわよ、ヒナタ」

ヒナタ「あいよ、それじゃまたあとで」タタタタタタッ

タクミ「さて、あんたは僕とカゲロウより前に出ないようにして、これは命令だよ」

カムイ「はい、わかりました。……風に乗って血の臭いが漂ってきますね」

タクミ「くっ、酷い……」

カムイ(動かない物体が……一つ、二つ……ざっと五つですか。血の臭いはこれから漂ってきていますから、たぶん人の死体ですね。とても人だったとは思えない形状をしていますが……。あと、動いている巨大な何かの気配が向こうにあります。これがノスフェラトゥの気配でしょうね)

カゲロウ「カムイ様、この剣を」

カムイ「ありがとうございます。これを使っても構わないのですね」

カゲロウ「はい、元の装備品は城で管理させてもらっています。少しの間、お許しを」

カムイ「いいえ、別に構いません。武器を持たせてもらえないかもしれないと思っていたので、助かりました」

タクミ「……」

カムイ「タクミさん、どうかしましたか?」

タクミ「いつでも、こっちは撃てる。忘れないでよ」

カムイ「……そういうことですか。理解しています」

タクミ「……わかってるならいいよ。じゃあ、作戦の説明だけどこの地には竜脈が通っているからこれを利用するから」

カムイ「竜脈ですか。私は目が見えないからあまり使ったことがないのですが……タクミさんは使えるんですか?」

タクミ「僕は王族だ。竜脈を使うことができるのは当たり前だよ。あんたに心配されることじゃない」

カムイ「……」

タクミ「とりあえず、あんたには触れてほしくないから、何もしないで。この竜脈は大きな揺れを引き起こせる、これであいつらの足を止めたところを一気に攻め込むのが、僕の考えだよ」

カゲロウ「タクミ様の作戦で異論はない」

タクミ「それじゃ、竜脈に触れるから、変化と同時に一気に行くよ。あんたは遅れないようにしてよね。ただでさえ、目が見えないのに、さらに足手まといはごめんだから」

カムイ「ふふっ、わかりました」

タクミ(なんだよ、その余裕な笑みは……だめだ、集中しないと)

タクミ「よし、始めるよ」

 ヒュオン! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ズズン!

タクミ「行くよ!」タタタタタタタッ

ノスフェラトゥ「グオオオオオオアアアアア!」

タクミ「動けないんじゃ、ただの的だね」シュパッ

 バシュッ! ドタン……

カムイ「なんだか、変わった弓の音ですね」

カゲロウ「ああ、タクミ様は神器を使われる。風神弓は普通の矢とはまるで違うもの、そしてとても強力だ」

カムイ「なるほど、弓道の時とは違って当てるだけでいいというのは納得です。強力なんですから、でもさすがに倒しきれない者も出てきます」

タクミ「もう一体、当たれっ!」シュパッ

カムイ「援護しますね」ダッ 

 バシュッ ザシュ

ノスフェラトゥ「オオオオオオオオオン」ドタン

タクミ「僕一人の力でどうにかできる、援護なんて必要ない、あんたは前に出てこないでくれ」

カムイ「それは相手が動けない状況の話です。相手が動けるようになったら……」

タクミ「まだ竜脈は沢山ある、いくらでも足を止めることができるだ。あんたの助けなんていらない」

カムイ「そうですか……」

 ドスンドスンドスンドスン!

ノスフェラトゥたち「グオオオオオオオアアアアアア!」

タクミ「よし、多く集まってきた。もう一つの竜脈を使うよ」

 ヒュオン! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ズズン!
 
 ガラガラガラガラ……ガサン

カムイ(大きな物の気配が消えました。揺れに耐え切れなかった建物が倒壊したんですね)

タクミ「ははっ、動けないこいつらに負けることなんてない。オボロとヒナタももう少しで合流するだろうし、楽に事が片付きそうだ」

カムイ(この村の惨状を見る限り、生存者がいるとは思えないとカゲロウさんも判断しているからこそ、タクミさんの行動を容認している……)

カムイ(多くのノスフェラトゥがこちらに向かってきています……。生者を見つけたからここに群がってきていると考えれば納得できますね……)

 アアア……ウウウ……

カゲロウ「んっ、これほどに大きく戦闘を始めたというのに蔵近くのノスフェラトゥは動かないようだ」

タクミ「そろそろ動き始める頃合い。よし、次の竜脈を……」

 ヒュオン! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ズズン!

 ガタガタタタタタタ………ガシャン

カムイ(また、気配が消えた……)

タクミ「あいつだけこちらに来る気配がないな。まあいい、蔵も大きく揺れてる、いずれ蔵の下敷きになるはずだ」

カムイ(多くが向かってきてる中で、一体だけ動かない者がいる? ノスフェラトゥは心を持たない獣。本能のままに行動するというのに?)

カゲロウ「タクミ様、援護に回ろう。数が多くなってきている」

タクミ「さすがに数が多い、すまないけど頼むよ」

カムイ(なら、何もいない蔵の前で待機するわけがない……)

オボロ「あら、背中がガラ空きじゃない。これなら思う存分倒せるわね」クワッ

ヒナタ「まったくだ。結構揺れてたけど、タクミ様が竜脈を駆使してたってことか。おかげでノスフェラトゥの奴ら、立ち往生してやがる」

オボロ「それじゃ、行かせてもらうわ」クワッ

ヒナタ「よし、いっくぜ!」

 ザシュザシュ

 ドタンドタン……

タクミ「よし、二人も合流した。今回はこれで勝ちだ。一気に攻める!」

タクミ(もう少しで殲滅できる。あともう一回か二回竜脈を使えば……)

カムイ「タクミさん、竜脈を使うのをやめてください!」

タクミ「……はぁ、何を言っているのか意味がわからないよ」

カムイ「これだけいれば、竜脈を使う必要もありません」

タクミ「いや、みんなの命が掛ってる以上、安全に戦える方法を僕は取るよ。それに、あんたは今僕の指揮下にいるんだ。その意見に耳を貸すつもりはない」

カムイ「そうですか……わかりました」

タクミ「よし、もう一度竜脈を使う! みんな、攻撃の準備を!」

カムイ(注意が竜脈に向いた。今ならいけますね……)

 ダッ!

ヒナタ「んっ? お、おい! どこに行く気だよ!」

オボロ「あの女、やっぱり逃げる気だったのね。結局は暗夜の人間はこんなものなのよ」クワッ

タクミ「なに、くそ、止まれ! 止まらないと……」

カゲロウ「タクミ様! ノスフェラトゥが体の自由を取り戻しつつある。今は……」

タクミ「くそっ、竜脈!」

 ヒュオン! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ズズン!

モズメ「な、なんなん、なんなんや。いきなりすごい揺れて……。こんな揺れ、建物が耐えられへんよ」

ノスフェラトゥ「アアアア……オオオオオ………」

モズメ「また変なのが戻って来てから、ここに釘づけにされたままや。……仕方ないんやろな、一度生きること諦めてもうたから」

 ガタガタガタガタ、ガタン!

モズメ「!!!?」

ノスフェラトゥ「グオアアアアアアア!」

 ドゴンッ! ドゴンッ!

モズメ「ひいいいいいい」

モズメ(き、気付かれたんや。そうや、気付かれてもうたんや……)

 ドゴンッ! ドガッ! メキメキメキ……

モズメ(お、奥に、奥に逃げな……)

 ドガァン!

モズメ「きゃああ……。ぐっ、あ、足が痛……痛い」

モズメ(あかん、扉の壊された破片が足に刺さって、満足にもう動けへん……)

ノスフェラトゥ「グオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!」

モズメ(……嫌、嫌や、誰でもええ、助けて…………お願いや。あたい、こんなところで死にたくあらへん……)

カムイ「んっ、てやぁ!」

 ザシュ

ノスフェラトゥ「グアアアアアアア」
 
 ブンッ ガキン!

カムイ「っ……もう一度!」

ノスフェラトゥ「グゴッ―――グオアアアア!」

 ブンッブンッブン!

カムイ「当たるわけにはいきません」

 スッ― スッ― スッ

モズメ(だ、誰やあの人……助けに来てくれたんか?)

カムイ「終わりです! でやぁ!」

 ザシュン!

ノスフェラトゥ「オオオオオオオオオオオン」
 
 ドサッ、バタリ………

カムイ「はぁはぁ、どうにかなりました。……誰かいますか」

モズメ「こ、ここに……おるよ……」

カムイ「! 待っていてください。すぐに―――」

 ミシミシミシミシ………バキィ!

カムイ・モズメ「!!!!」

モズメ「た、建物が……!」
 
 ドゴン……バキッ

モズメ(上から板が。だめや、避けられへん!)

 ガシャン……バタンバタン……

モズメ「―――あ、あたい生きとる? なんで……」

カムイ「大丈夫ですか……」

モズメ「!!!!! あ、あんた」

 ポタ、ポタタタタタタ

カムイ「すみません、私の血が顔に落ちてしまった気がします」

モズメ「そ、そんなこと気にせんよ。そ、そんなことよりあんたの怪我どうにかせな」

カムイ「はい、もう少しで皆が来てくれるはずです。それまでは、私があなたの盾になります。だから安心してください」

モズメ「だめや、この建物がもたへんかもしれへん。はやく、あんただけでも……」

カムイ「ここで、あなたを見捨てたら。私がここに来た意味がすべてなくなってしまいます。しばらくは、私に守られてください」

カゲロウ「カムイ様、蔵の中に入るのは危険で――!」

カムイ「カゲロウさん、生存者です。早く、この方を……」

カゲロウ「御意!」

モズメ「つうっ………」

カゲロウ「痛むが我慢してくれるか。よし、カムイ様も早く」

カムイ「はい、っ……血だらけになってしまいました」

カゲロウ「何を悠長なことを、早く出ましょう。肩に手を」



 ドガシャン ガランガランガラガラガラ……ドスンッ



カゲロウ「間一髪、と言ったところか」

カムイ「そうで……す……ね」ドサッ

カゲロウ「カムイ様!?」

カムイ「し、心配しないでください。長く動き続けて疲れが溜まっただけですから」

カゲロウ「わかりました、少しお休みください。ノスフェラトゥは見える限り排除しましたゆえ、今は脅威となる者はおりません」

カムイ「はい、わかりました。それと私よりもそちらの方の治療を優先してあげてください。私はそう簡単には死にません、これでも悪運は強いほうなんです」

カゲロウ「悪運が強いのは、見ている限り理解できます。命令の通りにさせていただきます」

カムイ「ええ、お願いします……」

 今日はここまでです。次で三章終りです

モズメ「あ、あんた、だいじょうぶなんか?」

カムイ「なんとか。ふふっ、無事に外に出られて肩が一気に軽くなったみたいです」

モズメ「ほんと無茶しおる人や。でも、おかげで助かったわ、ありがとう」

カムイ「いいえ。私はカムイと言います」

モズメ「あたいは、モズメいうんや」

カムイ「そうですか……。モズメさん」ギュッ

モズメ「ふぇ、な、なにしよるん!?」

カムイ「すみません。もっと早く気づいていれば、こんな傷を負わなくて済んだはずなのに……」

モズメ「……もっと早く来てほしかった。もっと早く来てくれたら、村のみんなも、あたい一人だけが守られることなんて、あたい、一人で……うわああああん」

カムイ「はい……」

モズメ「あたい、あたい、村のみんなに守られてばっかりやった。もっと早く来てくれたらなんて、あんたたちに責任転嫁してるだけや……」

モズメ(あの蔵から出ることが怖かったのは、死ぬかもしれないからじゃないんや)

モズメ「あたいは、村のみんなの命を背負って生きていくんが怖かった。あたいが生き残ったことが間違いなんやないかって思ったら、もう死んだほうがええって……」

カムイ「そんなことはありません。村の人たちはモズメさんに生き残って欲しいからこそ、頑張ってくれたんです。そして、私がモズメさんを見つけたのは生き残って欲しかったからです」

モズメ「あたい……生き残ってええんか?」

カムイ「はい、私が保証します。モズメさんは生き残っていいんです、これから先、村の人たちの分長く生きて、多くの人と出会うのがモズメさんがするべきことなんですよ」ナデナデ

モズメ(こんな風に慰められたのは、久しぶりや……。ああ、とり乱したら、なんか疲れが来てもうた。朝から何も食べてへんかったから……)

カムイ「少し休んでください。大丈夫、私がそばにいますから」

モズメ「うん、すまへん……」

モズメ「すぅー……すぅ」

カゲロウ「疲れて眠りについたようで」

カムイ「はい、モズメさん以外の村の方々は?」

オボロ「残念だけど、他の人たちは……」

カムイ「そうですか、そう考えれば本当に奇跡的です、モズメさんが生きていてくれたのは。怪我をした甲斐があったというものです」

タクミ「……あんた、なんで生存者の可能性の話を僕にしなかったんだ?」

カムイ「すみません、あの時は竜脈を使用しないでほしいという進言を否定されて、頭に血が上っていたみたいです。知らせなかったことで、皆さんを危険にさらしたことになりますね」

タクミ「……あんたはどうして自分の所為だとすぐに言うんだ! 僕のことが気に食わなかったと言えばいいじゃないか!」

ヒナタ「ちょ、タクミ様! 落ち着いてくれよ。結果的にはノスフェラトゥ倒して、生存者だっていたんだ。もうそれでいいだろ?」

タクミ「くそっ! 僕の指揮が間違っていたと言ってくれたほうが、気持ちが楽になるのに!」

カムイ「誰も答えてくれないことだってあるんですよ……」

タクミ「なに?」

カムイ「いいえ、なんでもありません。忘れてください、モズメさんが起きてしまいますから」

カムイ(ああ、私も少し疲れで意識を保つのが辛くなってきました……。すこし、休ませてもらいますね)

◇◆◇◆◇
―白夜王国・カムイの部屋―

カムイ「……ん、んんっ、ここは……」

ミコト「カムイ、目覚めたのですね」

カムイ「ミコトさん……リョウマさん……ん、手元に誰か……」

リョウマ「お前が救った者だ。名前はモズメというそうだが、カゲロウから聞いた起きるまでそばにいるとお前が約束したと、約束はちゃんと守らねばならないからな」

カムイ「リョウマさん。わざわざありがとうございます。あの、ノスフェラトゥの方は……」

リョウマ「ほぼすべての討伐が完了した。北の地区にはもともとサクラとヒノカがいたことあって村の被害はなかったが、モズメの村は全滅だったと報告を受けている。悔やみきれんな、こうも後手になるというのは」

カムイ「そうですか……痛っ」

ミコト「まだ動いてはなりませんよ。でも、なぜ戦いに出向いたのですか、無理に戦いに参加する必要なんてあなたには……」

リョウマ「カムイにも考えがあったのでしょう。母上、カムイが進んで選んだこと、それを否定するのはあまりいいことだとは思えない」

ミコト「……そうですね。久々の再会ということもあって、すこし過剰になっていたのかもしれません。でも、今日はゆっくり休んでください。ここはあなたの部屋なんですから」

カムイ「はい、心配させてしまって申し訳ありませんでした」

ミコト「私の子なんですから、心配するのは当たり前です。それではリョウマ、あとのことはお願いいたしますね」

リョウマ「あまり母上を困らせてやるんじゃないぞ。まぁ、今まで困らせられたこともないだろうから、それも嬉しいと思っているかもしれん」

カムイ「リョウマさん、あのノスフェラトゥはどういった者たちなんですか?」

リョウマ「タクミ達から説明は聞いていると思うが、あれは心を持たない獣だ。敵味方関係なく狙うような者もいるとされている。カムイは、そんなものを暗夜がなぜ送り込んでいるのかわかるか?」

カムイ「いいえ」

リョウマ「この白夜王国は母上の結界によって守られている。邪悪な心を持つ者たちは、このテリトリーに入るとたちまち萎縮し戦闘することができなくなる」

カムイ「邪悪な心ですか?」

リョウマ「お前は邪悪な心ではないようだ。こうもピンピン動いているのだからな。話は戻るが、その結界故に暗夜は心を持たない生物を作り出して送るようになってきた。それがノスフェラトゥだ」

カムイ「心を持たないが故に、ミコトさんの結界の効果を受けない……ということですね」

リョウマ「そう言うことだ。暗夜は度々こういった嫌がらせを仕掛けている。モズメの村のように襲撃を受けて全滅した村もあった」

カムイ「暗夜の目的は何なんでしょうか?」

リョウマ「ふっ、考えるのも結構だが。この先、それをお前が考える必要はなくなる。俺たち家族がお前を守ると決めているからな。お前には普通の女性としてこれからは生きてもらいたいと考えている」

カムイ「普通の女性ですか?」

リョウマ「ああ、そうだ。目のことはすでに変えられないことだが、これからのことは変えることができる。今度、サクラとヒノカにも会ってやってくれ、話をしたらヒノカは泣き出してしまったくらいだ。安い包容ではすまないと思っていてくれ」

カムイ「……リョウマさん、一ついいでしょうか?」

リョウマ「なんだ?」

カムイ「顔を触らせていただけませんか?」

リョウマ「……構わない。しかし、兜を付けたままになるがいいか?」

カムイ「はい。それじゃ、失礼しますね」

リョウマ「……」

カムイ「……冷たいですね」

リョウマ「兜だからな」

カムイ「あっ、そうでしたか。じゃあ、ここが肌ですね」

リョウマ「ん……ああ」

リョウマ(柔らかい指先、それにどこか安心できる。カムイはとても不思議な存在だな)

カムイ「リョウマさんは髪がとても長いんですね。剣術の鍛錬に支障はないんですか?」

リョウマ「ふっ、これしきの事が気になるようでは強くはなれない。己のことを一番よく理解しているつもりだ」

カムイ「そうですか、なんだかチクチクする髪型ですね」

リョウマ「……その言葉はなんだか複雑な気持ちになる」

カムイ「……ふふッ、チクチク、チクチク、なんだか気持がいいです」ナデナデ

リョウマ「………平常心だ」

カムイ「……」

リョウマ「……カムイ、今日のこと、カゲロウから聞いている」

カムイ「はい」

リョウマ「タクミに竜脈を使わないように進言したが、退けられた。その結果に行動したと」

カムイ「はい、その通りです」

リョウマ「カムイの行ったことは人を助けるという意味では正しいものだ。だが、タクミにもタクミの責務がある。あの場でタクミに課せられた一番の使命は同行者と仲間を守ることだ。だから――」

カムイ「リョウマさん、私はタクミさんに殺されてもいいという覚悟で動いていました……、すこし震えてますよ?」

リョウマ「そのようなことを言わないでくれ、また共に暮らせるというのに」

カムイ「そうですね、ごめんなさい。もういいですよ」

リョウマ「……もう、いいのか?」

カムイ「はい。あの、タクミさんはどちらにいますか?」

リョウマ「それは許可できない。今のあいつは落ち着く必要がある。お前の判断が結果的に民を一人救ったことは間違いない、あいつは自身の下した判断に苦しめられている」

カムイ「そうですか……」

リョウマ「お前はどこか冷静だ、その立ち振る舞いはあいつにはまぶしく映っているのかもしれない。すまないが、今はそっとしておいてはくれないか」

カムイ「はい、私もタクミさんと喧嘩がしたいわけじゃないんです。ただ、話をしたいだけなんですよ」

リョウマ「そう言ってもらえると俺としては安心だ。話はこれくらいにしよう。夕食までは時間がある、今はゆっくり休むといい。それではな」



カムイ「………」

モズメ「なんか、難しい話しをしとったね」

カムイ「起きていたんですか?」

モズメ「へへっ、ごめんな。でも驚いたわ、カムイ様、王族の人なんやな」

カムイ「……結構前から起きてたんですね」

モズメ「うん、聞いたことは誰にも話したりせえへんから、安心してや」

カムイ「ははは」

モズメ「カムイ様。誰が何と言おうと、あたいはカムイ様に命を救ってもらったんやから、カムイ様のしたことが間違いだなんて思ってへんよ」

カムイ「モズメさん?」

モズメ「だから、そんなしょげとらんで心配せんでええよ。あたいはカムイ様の味方やから」

カムイ「ふふっ、モズメさんって面白い方ですね。助けた時はあんなに弱弱しかったのに、今はこんなに元気なんですから」

モズメ「カムイ様の前やからや。約束通り、あたいが起きる前でそばにいてくれたやろ? だから、カムイ様の前でなら平気でいられるんよ」

カムイ「モズメさん。ふふっ、慰められてしまいましたね」

モズメ「そ、そんな大きなことしとらんから。もう、真顔で結構恥ずかしいこと言うんやな」

カムイ「はい、それじゃ一つお願いいいですか?」

モズメ「な、なんや?」

カムイ「モズメさんの顔に触ってもいいでしょうか? とてもかわいい顔をしてると思うんです」

モズメ「さ、さっきリョウマ様にしてたこと、あたいにするんか? そもそも、なんであんなに触ってるんや?」

カムイ「そうでした、モズメさんには説明してませんでしたね。私、実は盲目なんです」

モズメ「………」

カムイ「………」

モズメ「なんていうか、どう反応返せばいいのかわからへん。嘘だって思いつつも、本当だったらどうしようって、頭の中ぐるぐるなるんよ」

カムイ「では、ぐるぐるしたままでいてくださいね」

モズメ「あっ、まだ、良いって言ってへん。ふわぁ///」

カムイ「前髪は短いんですね。でも左右に流れるようにお下げと跳ねてる髪、これは髪飾りですか?」

モズメ「ん、そうや……んぅ」

モズメ(な、なんやこれ、触られてるだけやのに、なんでこんなに気持ちええんや!?)

カムイ「これは、なんの形なんでしょうか……」

モズメ(耳、耳裏に指が触れてぇ………)

カムイ「……耳裏弱いんですね」

モズメ「はぅぅぅぅぅぅ、だっ、ダメや。そんなとこ触らんといて」

カムイ「どうしたんですか? なんだかとっても顔が火照ってますよ」

モズメ(な、なんやこれ。とってもイケナイことしとる気がしてきた。あかん、このまま流されたらあかん、あかんのに……)

カムイ「ふふっ、今まで触ってきた人の中で一番可愛い反応をしてくれますね。とっても可愛いですよ、モズメさん」

モズメ「そ、そんなことあらへん。顔にそばかすだってあるんや、まだほかに可愛い子なんてたくさんおる」

カムイ「気にしてるんですね。そう言うところも可愛いですよ」

モズメ「そないなこと、ふにゃあああ」

カムイ「ふふっ、これ以上するとあれですから。これで終わりにしますね」

モズメ「あっ……」

モズメ(なんや今の声、あたいなに残念そうな声を出しとるんや)

◇◆◇◆◇
カゲロウ「……傍から見ていると、本当に恥ずかしい光景だな」

サイゾウ「まったくだな」

カゲロウ「………」

サイゾウ「………」

カゲロウ「サイゾウ……」

サイゾウ「なんだカゲロウ」

カゲロウ「いつからそこにいた」

サイゾウ「『……』のところからは、いくら返事をしてもお前が返事をせぬので、何を見ているのかと思えば」

カゲロウ「………////」

サイゾウ「……やはり、お前は」

カゲロウ「それは断じて違う!」

◇◆◇◆◇
―白夜王国・王城シラサギ内の湖―

タクミ「くそっ」

タクミ「確かに生存者の可能性を考えなかった僕にも非がある。でも、だったら口にしてくれてもいいじゃないか!」

タクミ「突然現れて、一体なんなんだよ」

???「タクミ、気が乱れているようだけど、なにかあった?」

タクミ「!」

???「私の接近に気付けないなんて、いつものタクミらしくないわね」

タクミ「……そうかもしれない」

???「話は聞いてるわ。暗夜の王女が来ているそうね。そのことと何か関係があるのかしら?」

タクミ「うるさい……一人になれると思ってここに来たのに、失礼するよ」

???「タクミ」

タクミ「なんだよ! アクア姉さん」

アクア「一度、すべての出来事を紙に記しなさい。そうすれば、すべてに理由があるとわかるはずだから。ひねくれているのもいいけど、いつまでもその先に歩めないんじゃ、成長なんてできないわ」

タクミ「なんだよ、僕を子供扱いして」

アクア「そうね、今の怒っているあなたは大きな子供そのものよ。だから、今のあなたよりは少し大人な私の意見に耳を貸してほしいの」

タクミ「………く、わかったよ。アクア姉さんの言うとおりにしてみるよ」

アクア「そう、ありがとう」

タクミ「でも、あいつのことを僕はそう簡単に認める気はないよ」

アクア「………暗夜の王女、私とは対極にいる人、そんな気がするわね」

アクア「暗夜で生まれ白夜で育った私、白夜で生まれ暗夜で育ったあなた。鏡合わせな私たちが出会ったら、何かよくないことが起きる気がする」

アクア「でも、何故かしら。あなたは私を尋ねに来ると思う。それが何かの始まりだったとしても……それに」

アクア「♪~~~~♪~~~~」

アクア(私も、早くあなたに会ってみたいと心のどこかで思っているのだから)


 第三章 おわり

現在の支援レベル

 スズカゼ  C
 リンカ   C→C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C→C+
 リリス   C→C+
 カゲロウ  C
 モズメ   C
 タクミ   D
 リョウマ  C

 今日はここまでになります。

 モズメ外伝は時系列が全くわからないので、なら三章でモズメを仲間にすればいいんじゃないか、みたいな感じにした話です。
 そろそろ価もどきを始めたいと思いますので、お時間がある方おりましたら参加していただけると助かります。
 安価は主にストーリーに関連するものと、キャラクター支援に関するものになります。
 また、暗夜のルートに入るので、上記のキャラクターの中で支援消滅する者もいます。

 最初の安価
 第四章開始の際にカムイが話しかける人物、この中からでお願いします。
 
 スズカゼ
 カゲロウ
 サイゾウ
 モズメ
 ミコト
 リンカ
 リョウマ
 タクミ
 ヒナタ
 オボロ

 >>173

すみません、トリップつけ忘れました
 最初の安価
 第四章開始の際にカムイが話しかける人物、この中からでお願いします。
 
 スズカゼ
 カゲロウ
 サイゾウ
 モズメ
 ミコト
 リンカ
 リョウマ
 タクミ
 ヒナタ
 オボロ

>>174

お疲れ様です!
安価ならミコト

乙です、いつも楽しく読ませてもらってます。
安価ならタクミで。

◇◆◇◆◇
―白夜王国・シラサギ城―

カムイ「リョウマさんの話では、今日の夜にサクラさんとヒノカさんが戻ってくるそうですね」

カムイ(それにしても、ここに身を置いてから数日が経ちました。マークス兄さんたちは、どうしているのでしょうか? 私がいなくなったことで、いらぬ心配を……かけているでしょうね。戻ったら何を言われるかわかりません)

カムイ「……ん、この気配は……」

タクミ「あっ……」

カムイ「……」

タクミ「あっ……あんた……」

カムイ「タクミさん、こんにちは」

タクミ「……ああ、それじゃ」

カムイ「ちょっといいですか?」

タクミ「なんだよ、僕は忙しいんだ」

カムイ「何か変な物をお持ちみたいですね。四角台みたいなものに、あと小さな子箱でしょうか? 中から何かがぶつかりあっている音がしますけど」

タクミ「……将棋だよ」

カムイ「将棋ですか? どういったものなんですか?」

タクミ「目が見えないあんたにできるようなものじゃないよ。知ったところで意味なんてないはずだから」

カムイ「それは知ってみなければわかりませんよ。タクミさん、ちょっと見せてもらってもいいですか? お時間は取らせませんので」

タクミ「なんで、勝手に決めてるんだよ」

カムイ「駄目でしょうか?」

タクミ「……わかったよ。くそ、これならユキムラと一指し終えてすぐに部屋に戻るべきだった」

◇◆◇◆◇

カムイ「へぇ、大小さまざまなものがあるんですね。これは……文字が彫ってあるんですね……」

タクミ「これはそれなりに高価なものだから、文字を彫ってある。一般に出回っているものは筆で文字を書いただけのものだったりする」

カムイ「奇麗に彫りこんでありますから、私でも何が置いてあるかはわかります。で、これを何に使うんですか?」

タクミ「将棋は駒とこの盤を使って争う。盤上で駒を動かして、相手の王将を取ったら勝ち、逆に取られたら負けっていうものだ」

カムイ「暗夜にはチェスという遊びがあります。私の弟がよく遊んでいましたから、基本的なルールはそれに似ているんですね」

タクミ「で、わかるよね。これが目が見えないとできない遊びだってこと」

カムイ「どうしてですか?」

タクミ「盤面を見ないでどうやって戦うっていうんだ。初期配置ならともかく、こういったものは場が目まぐるしく変わるだろ、情報を手に入れないで続けるのは難しいよ」

カムイ「できないということはないですよ」

タクミ「……変な自信だね」

カムイ「駒の動き方とかそういった情報があれば、スタート地点に立てたと思えますよ。もしかしたらタクミさんに勝てるかもしれませんし」

タクミ(何言ってるんだ、本当に癪に障る。でも、将棋なら僕の方が何枚も上手だ、そう簡単に出し抜かれたりしないはず)

タクミ「……その自信、確かめてみる?」

カムイ「といいますと?」

タクミ「僕と一回勝負をしよう。あんたが勝てたら、あんたの頼みを一つだけ聞いてあげるよ。まぁ、無理だと思うけど」

カムイ「その約束、本当ですね?」

タクミ「ああ、それじゃ始めようか」

タクミ「………」パチ

カムイ「………」パチ

タクミ「………」パチ

カムイ「えっと、王手と宣言するんでしたよね?」パチ

タクミ「………」

カムイ「………タクミさんの番ですよ?」

タクミ「……嘘だろ、なんでこんな」

カムイ「……」

タクミ「なんでこんなことに気付かなかったんだ? くそっ、どこに動いても結局は……」

カムイ「タクミさん、早くしてください」

タクミ「………けだ」

カムイ「?」

タクミ「僕の負けだよ! 二回も言わせないでよ」

カムイ「そうですか、では私の勝ちということで」

タクミ「……どうして負けたんだ。なにが、なにが間違えだったんだ」

カムイ「ふふっ、目が見えないことはハンデでもなんでもないんですよ?」

タクミ「こっちの手を尽くつぶされて、怒りとかそういうのを通り越して、もう何も出ないよ」

カムイ「盤面は初期配置からずっと頭に並んでますから、できうる限りの抵抗はできます。ただチェスとは違ってとった駒を使えるというのは曲者でした」

タクミ「本当に、目が見えたないのか疑いたくなってくる」

カムイ「そう言ってもらえたということは、昔から頑張ってきた甲斐があったというものです。さてと、それでは私が勝ったということで、タクミさん。私のお願いを一つ聞いてくれるんですよね?」

タクミ「……さきに条件を出したのは僕だ。ちゃんと従うよ。で、何をしてもらいたいわけ? この前のことに関しての謝罪でもすればいい?」

カムイ「この前のこと……モズメさんの村のことですか?」

タクミ「……僕がちゃんと耳を傾けていれば、モズメは怪我をしなかった。そう考えているんだろ」

カムイ「はぁ、私はそんなつまらないことにこのお願いを使う気はありませんよ」

タクミ「つ、つまらないことって……」

カムイ「やっぱり、あれですね。タクミさんはお願いしても触らせてくれそうにないので、今顔を触らせてください」

タクミ「い、いきなり何を言い出すんだ/// 顔なんて触らせるわけ」

カムイ「いいですよね?私が勝ったんですから、タクミさんがどんな顔の人なのか、とても気になっていたんです。それとも、負けたから勝負は無し、そういうことにしますか?」

タクミ「ぐっ……」

タクミ(そんなことできるか、これは僕の慢心が生んだ結果だ。こいつに顔を触られるなんて最悪なことだけど、ここで勝負の結果を反故にするような発言、恥ずかしくてできるわけがない)

カムイ「大丈夫ですよ。痛くしたりしません」

タクミ「す、好きにすればいい」

カムイ「はい、失礼しますね」ピトッ

カムイ「震えてますね。大丈夫、危害を加えたりしませんから」

タクミ「ぼ、僕が怖がっているって言いたいのか!?」

カムイ「そこまで言ってないですよ。それとも本当に怖いんですか? 無防備なまま、私に顔を触られることが」

タクミ「信用してないからね。―――っ!」

カムイ「後ろ髪は束ねてるんですね……。ふふっ、束ね髪の根元が弱いんですか? 触るたびにタクミさん、少し体が動いてますよ?」

タクミ「へ、変なことをするな」

カムイ「変なことってどういうことですか? 私に教えてください、いったいどんなことなんですか?」

タクミ「そ、それは……///」

カムイ「顔が熱くなってきました、もしかして恥ずかしいんですか?」

タクミ「こ、子供扱いするな!」

カムイ「そうですね、ごめんなさい。ちょっと、失礼しますね」

タクミ「な、何をするんだ、髪留めを……」ファサ

カムイ「リョウマさんの髪はチクチクしてましたけど、タクミさんの髪はどこかなめらかなんですね」

タクミ(くっ、髪を触らているのに、どうしてこうも気持ちがいいんだ。こんな奴に触られて、本当なら嫌悪感しかないはずなのに)

カムイ(ふふっ、サラサラで気持ちがいい)

タクミ「はぁ、はぁ、はぁ……」

カムイ「ありがとうございます。タクミさんの顔をこれで覚えられました」

タクミ「もう、最悪だよ。将棋で負けるし、顔を触られるし、髪をまた束ねなくちゃいけないし……」

カムイ「私はとても満足です。タクミさんの顔とサラサラの髪を知れましたから」

タクミ「このままで終わると思わないでよ。必ず、あんたを負かせてやる!」

カムイ「いいえ、その約束はいいです」

タクミ「僕はお前に勝てないっていうのか?」

カムイ「いいえ、まだ、そんな約束を軽くできる状況ではないからですよ。タクミさんはそれをわかっていますよね?」

タクミ「……そうだったね。勝負と顔を触られたから動揺して忘れてた、あんたは暗夜の人間なんだよな」

カムイ「はい、それは変わらないことです。だから、そんな約束をつけないでください」

タクミ「その言い方だと……あんたは、暗夜に戻るって言ってるようにも聞こえる」

カムイ「そうですね、大きなことが起きない限り、私の心は変わらないと思います。その大きなことが起きた時に私が考えることを放棄したら……」

タクミ「………もういい、変なこと聞いたよ。……夜にはサクラとヒノカ姉さんが戻ってくる。準備をしといた方がいい」

カムイ「はい、そうします。長い時間引き止めてしまって、すみません」

タクミ「……じゃあね」

カムイ「………」

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 モズメ   C
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 リョウマ  C

今日はここまでになります。

◇◆◇◆◇
―白夜王国・シラザキ城・王の間―

リョウマ「来たか」

カムイ「はい、お待たせしましたか?」

リョウマ「少しくらいだな。まずは、中に入ろう」

カムイ「はい」

???「………!」

カムイ「えっと、こちらの方は?」

???「カムイ、カムイなのか?」

カムイ「……はい」

???「カムイ……やっと、やっと……」ダキッ

カムイ「え、えっと……」

???「カムイ、本当にカムイなんだな。私の妹の、このときを、どれだけ待っていたことか……うっ、うう」ギュウウウゥ

カムイ「え、えっと……い、痛いです」

???「ああ、すまない。その、感極まってしまったというか……ううっ、すまない。目の前にすると涙が止まらなくなる」

リョウマ「ヒノカ、あまりカムイを困らせてやるんじゃない。いきなり泣かれて、少し戸惑っている」

カムイ「この方が」

リョウマ「ああ、お前の姉だ。いつもはもっと凛々しいんだがな」

ヒノカ「すまない、取り乱してしまって……大きくなったんだなカムイ。またこうして手を握ることができるなんて、嘘みたいだ」

カムイ「……」

ヒノカ「カムイ?」

カムイ「すみません、私はあなたの妹なのかもしれないのですが、私にはまったく身に覚えがなくて、どう反応を返したらいいのか」

ヒノカ「……そうか、すまなかった。だがカムイ、お前が帰って来てくれて私はとてもうれしい、これは私の本心だ」

カムイ「はい、ありがとうございます……あと、そちらにいる方は?」

???「あっ……」

ヒノカ「サクラ」

サクラ「は、はい。サ、サクラといいます。その、お会いできてとてもうれしいです」

カムイ「サクラさんですね、初めましてカムイと言います。なんだか、すみません。遠征されていたのに、私のために戻ってきてもらって」

サクラ「いいえ、その、私、カムイ姉様のことを聞いたことがあったので、早くお会いしたくて、その……」

リョウマ「サクラにしては珍しいな。そんな風に積極的に自分の思ったことを口にするなんてな」

カムイ「ふふっ、わざわざそこまで考えてくれてありがとうございます」

サクラ「そ、そんなことないです///」

カムイ「サクラさんは、なんだかフワフワしてるイメージですね。可憐でなんだか癒されるようなイメージがあります」

サクラ「……あの、カムイお姉様」

カムイ「はい、どうかしましたか?」

サクラ「リョウマ兄様から聞きました、その……目が見えないと」

カムイ「はい、私は目が見えません。でも、気にしないでください。目が見えなくても全然大丈夫ですから」

ヒノカ「暗夜に攫われていなければ……。その目は何が原因で」

カムイ「訓練中に剣を避け切れなかったんです。顔にその時の傷が残ってると思います」

サクラ「カムイ姉様、すこしいいですか?」

カムイ「サクラさん?」

サクラ「………この傷ですよね……、顔にこんな傷、ひどいです」ピトッ

カムイ「ふふっ、そうかもしれませんね。でも、この傷はここまで私が生きてこられた証でもあるんですよ?」

サクラ「証……ですか?」

カムイ「はい、私には目が見えませんけど、多くの技術があります。それは目が見えていたら手に入れられなかった力ですから、たとえば、こうやって」ピトッ

サクラ「は、はわわっ、カムイ姉様!?」

カムイ「サクラさんのお顔に手を添えて調べさせてもらえるだけで、私はあなたの顔を知ることができるんです」

サクラ「……でも」

カムイ「悲しい顔をしないでください。可愛らしいサクラさんの顔が台無しになってしまいます。眼尻に涙をためて、泣き虫なんですね」

サクラ「だ、だって、カムイ姉様は……ずっと暗夜に捕らえられていて……」

カムイ「辛かったと思ってくれるんですか?」

ヒノカ「当たり前だ、生まれ故郷から見知らぬ地に連れてこられて、辛いわけがないだろう?」

カムイ「そうですね、辛いことがなかったと言ったら嘘になります。たしかに辛いことはありました、でもその分楽しいこともあった。それはどこにいても同じことなんじゃないかと私は思います」

ヒノカ「そ、それはそうだが……いや、すまないな。どうも、私自身まだ心が落ち着いていないみたいだ」

カムイ「いいえ、私の方こそすみません。ヒノカさんとサクラさんが私を大切にみてくれていることはわかりました。ただ、それにどう応えるべきか全くわからなくて」

ヒノカ「いいさ。これから、また一緒に暮らせるんだ。ゆっくりとでいい一緒の時間を重ねていこう」

サクラ「ヒノカ姉様……、私も、これからカムイ姉様と過ごせる日々がとても楽しみです」

短いですが、今日はここまでです

カムイ「あの、ヒノカさん。ひとつ、お願いしてもいいでしょうか?」

ヒノカ「ああっ、何でも言ってくれ。といっても、私にできることは限られているから、あまり難しいこととなるとな」

カムイ「いいえ、その、お顔に触れてもよろしいですか?」

ヒノカ「ああ、いいぞ。むしろ触って欲しい、お前に私の顔を覚えてもらえるならな」

カムイ「ありがとうございます。じゃあ……」ピタリッ

ヒノカ「んっ……気持ちがいいな」

カムイ「ヒノカさんの髪は結構短めなんですね。なんだか、頼れる人っていう感じがします」

ヒノカ「そう言ってもらえると嬉しい。いつかこんな日が来ることを信じていた、お前とこうして話し合える日を」

カムイ「……はい」

ヒノカ「この日が来ることを信じて、ずっと鍛え続けてきたことが結ばれたみたいだ。確かに、ここにお前が来れたことに私は何も関わってはいない。でも結果として、お前が帰ってきてくれたのなら、今日までの日々は無駄じゃなかった。素直にそう思える」

カムイ「……強いんですね、ヒノカさんは」

ヒノカ「私は強くなんてない、ただがむしゃらに進み続けて来ただけだ。それにリョウマ兄様の臣下、サイゾウとカゲロウの追撃を振り切り続けたカムイのほうが、私なんかより強いさ。私も、お前を守るためにまだまだ強くなる必要が出てきた」

カムイ「私は強くなんてありません。ただ……」

ヒノカ「ただ、なんなんだ?」

カムイ「いいえ、なんでもありません。忘れてください、ヒノカさん」

ヒノカ「そうか、いつか話せる時が来たなら話してほしい。私はお前の姉なんだ、だからいっぱい頼ってくれ」

カムイ「はい、いつか、その時が来たのなら……」

◇◆◇◆◇
―シラサギ城・城内の湖―

カムイ「………」

カムイ(リョウマさん、タクミさん。サクラさんにヒノカさん)

カムイ(みなさんは、私のことをずっと覚えていたんでしょうね。私が覚えていない頃にあったという、父が殺され私が攫われた日から……)

カムイ(どうして、そうまでして私を覚えているのでしょうか? 覚えている必要などないような人間であるはずの私を……)

カムイ「水の音が心地いい……、ここは静かでいい場所ですね」

カムイ(北の城塞で、一人になりたい時は夜風の音だけに身を任せることが多かったですけど、この土地にいる間は私はここにいたい。ここはなんだか、あの小さな場所に似ている気がする)

 ♪~~ ♪~~~

カムイ「……歌声?」

アクア「♪~……。夜は空気が澄んでいて歌いやすいわ」

カムイ「………誰かいるんですか?」

アクア「! あなた……」

カムイ「初めまして、私はカムイ」

アクア「そう、あなたがカムイ王女。暗夜王国の捕虜と聞いていたけど」

カムイ「形式的なものだそうです。そうでなかったらこう歩き回ることはできないでしょう」

アクア「それもそうね」

カムイ「………あの」

アクア「私の自己紹介が済んでなかったわね。私はアクア」

カムイ「アクアさんですね。あなたも白夜王国の王族の方なのですか?」

アクア「それは少し違うわね。私は王族でも元、しかも国の名前が違うわ」

カムイ「国の名前ですか?」

アクア「ええ、国の名前は暗夜王国」

カムイ「……ということは貴女は」

アクア「ええ、元は暗夜王国の人間ということになるわ」

カムイ「……よろしければ話を聞かせてくれませんか?」

アクア「話?」

カムイ「はい、あなたがなぜこちらに来ることになったのか、その理由です」

アクア「……正直、私が流れで話すことになると思っていたのに、先に手を打ってくるのね。なんだか、先回りされているみたいで面白いわ」

カムイ「そんなつもりはないんですが、個人的に聞いておきたいことなので」

アクア「始まりの発端くらいは察しが付いていると思うけど」

カムイ「そうですね、たぶん私が原因なのでしょう?」

アクア「……ええ、あなたが暗夜王国に攫われたことは白夜王国の耳にすぐに入ることになった。王とその子供を同時に失うことがどれほどのものかはわからないけれど、白夜王国はあなたを取り戻すために手を尽くした。けど、それらはことごとく失敗に終わった」

カムイ「………」

アクア「ただ、失敗したという形で終わるわけにはいかなかったのよ。攫いに行った者たちも、何も得られずに帰ることなんてできるわけもなかった。だから、目に見える形として私が白夜に連れ去られることになった。対の人質としてね」

カムイ「そうでしたか……」

アクア「勘違いしないでほしいことがあるけど、私は酷い生活を送ってきたわけじゃない。むしろ、その逆だったわ。この国の人たちは私に優しくしてくれた、ミコト女王は私のことを自分の娘みたいに愛してくれたから。正直にいえば、私は暗夜にいた時より、幸せな生活を送れた」

カムイ「そうですか、私は暗夜の生活に関して特に言うことがありません。辛いことも楽しいことも平等にあったと思えますから」

アクア「………正直気を悪くしないでほしいのだけど、あなたの記憶はいじられてると思うわ」

カムイ「でしょうね……。正直、それは認めないといけないかもしれません。ここまで向けられてきた視線と私への態度はすべて本物で、わざわざ大がかりに嘘を作る必要もないことばかりですから」

アクア「なら、どうするの」

カムイ「さぁ、どうしましょうか?」

アクア「はぁ、ここで決めてはくれないのね」

カムイ「はい、それにこういうのは誰かに言うものでもないでしょう?」

アクア「………それもそうね。でも、信頼できる人がいるなら、言うべきかもしれないわ。一人でもそういう人はいるかしら?」

カムイ「……いませんね」

アクア「暗夜に兄妹は?」

カムイ「います。いますが……私の本心まですべてを曝け出せる相手はいません」

アクア「カムイ……あなたは」

カムイ「すみません。アクアさんの望む答えを私はまだ持ち合わせていないみたいです」

アクア「…………そう、ならいつか聞かせてもらえるのかしら?」

カムイ「そうですね、アクアさんの言う信頼できる人に、あなたがなれたらですかね?」

アクア「……タクミの言うとおり。なんだか気に触る人だわ。あなた」

カムイ「ありがとうございます」

アクア「褒めてないわ」

カムイ「怒られてしまいました。でも、アクアさん。あなたの言っていることは正しいことですよ。私は言葉を濁して答えを先延ばしにしているだけなのかもしれません。本当は、信頼できる人ができたとしても、口に出すことがないのかもしれない」

アクア「……それでいいと?」

カムイ「わかりません、私には何もありませんから……」

今日も短いですが、ここまでです。

アクア「何もないわけじゃないでしょ? 何もないなら、考えたり悩んだりなんてしないわ。あなたはちゃんと考えてる、だから私の質問に対して答えが出せない、ちがうかしら?」

カムイ「……はぁ、アクアさんは意外に意地悪な人なんですね」

アクア「会った瞬間から煽りを入れてくる人に言われたくないわ。それで、私の推測は当たっているのかしら?」

カムイ「答えは出しませんよ。答えが聞きたかったら……」

アクア「信頼を勝ち取りなさいって言いたいようだけど、あなた、私を信頼する気なんて今はないんでしょう? それじゃ永遠に答えを聞けないじゃない」

カムイ「そうですね、でも入口はありますよ?」

アクア「入口?」

カムイ「はい、ちょっと顔を貸していただければ」

アクア「……殴り合いかしら? 私としては平和的に信頼を得たいところなんだけど……」

カムイ「殴り合いで信頼が生まれるんですか、すごく興味深い話ですね。相手の弱点を理解することで、お互いの理解が深まる、そういうことですか?」

アクア「え、顔を貸すってそういう意味じゃないの?」

カムイ「いいえ、顔をそのままこちらに貸してくれませんかという意味ですが……」

アクア「……具体的に何がしたいのかしら?」

カムイ「具体的に言うと、アクアさんの顔を触らせてくれませんか?」

アクア「最初からそう言ってくれれば変な誤解はしなかったんだけど」

カムイ「すみません、言葉が足りなかったみたいです。では改めて、顔を触らせてもらってもいいですか?」

アクア「………」

カムイ「………」

アクア「はぁ、仕方無いわね。少しだけよ」

カムイ「はい、ありがとうございます……とても長い髪なんですね」

アクア「ええ、あなたも長いわね、私よりは短いけど」

カムイ「この頃はあまり切ることができなかったので、伸び本題ですね。暗夜にいた時は定期的に切ってもらっていました」

アクア「そう……っ、眼尻も触るのね」

カムイ「アクアさんの顔を覚えるためです。他意はありません」

アクア「それにしては、時々眼尻とは違う方角に指が動くことがあるけど?」

カムイ「………気のせいです」

アクア「あなたの髪、ミコト女王と同じ色なのね」

カムイ「アクアさんの髪は何色なんですか?

アクア「透明感のある青と言えばいいかしらね。母親と同じ髪の色だから、あなたと同じよ」

カムイ「同じですか?」

アクア「そう、同じ。私は暗夜から白夜へ、あなたは白夜から暗夜へ。私たちはまるで鏡映しのように入れ替わってしまっているもの」

カムイ「変なものですね。本来は出会うこともなかったんでしょうね」

アクア「だから、私とあなたが出会ったことには意味がある、私はそう思っているわ」

カムイ「アクアさんはどこかロマンチストなんですね。そんなこと考えたこともありませんでした」

アクア「私は白夜が好きよ。このミコト女王の平和を愛する心に共感していることもあるし、なによりここは私にとって家族と言える人が住まう場所だから」

カムイ「……そうですか」

アクア「あなたは暗夜に戻るつもりなのよね」

カムイ「いずれはそうなるでしょう」

アクア「白夜にいるつもりはないの?」

カムイ「私が白夜にいることは、たぶん間違っているんです。考えてみれば、そうだとだれもが気付くはずです」

アクア「その心は変わらないの?」

カムイ「……今のままなら変わることはありません」

アクア「そう、それで、私の顔の形は覚えられたかしら?」

カムイ「はい、すみません。長い間、触り続けてしまって」

アクア「別に構わないわ。あなたに少しだけでも信頼されるならね」

カムイ「まだ入り口ですよ?」

アクア「入口でも構わないわ。だけど、気を付けたほうがいいわ」

カムイ「何をですか?」

アクア「あなたは考え続けてきた人のようだから、ここに来てあなたが意識を向けなければならない事柄が唐突に増えたと思う。あなたから見て、出会うはずのなかった事象さえあるのかもしれない」

カムイ「………」

アクア「あなたはここまで考え続けてきた人だから、もしも、考えることをやめてしまったら……」

カムイ「……」

アクア「あなたは流されるだけの人になってしまう気がする。今日、今ここにいるあなたは多分、どこにたどり着くこともなく、ただ流され朽ちていくことになるんじゃないかって、私は思っているわ」


カムイ「心配してくれているんですか?」

アクア「ええ、初対面だけど心配したくなるような人なのよ、あなたは」

カムイ「なんだか、不思議な感覚です。ご忠告は心に受け止めておきますね」

アクア「そうしてもらえると助かるわ……。でも、私は助言ができるだけだから、決めるのはあなたよ」

カムイ「はい」

アクア「こういうところは素直ね。拍子抜けというか……、いえ、今回はわかっているからすぐに答えを出せただけでしょうけど……」

カムイ「ところで、アクアさん。私の部屋まで送っていただけませんか?」

アクア「道くらいわかるでしょう? ここまで歩いてこれたんだから」

カムイ「夜道は中々怖いものですから、それにアクアさんと少し一緒に歩きたい気分なんです」

アクア「良い誘い文句だけど、残念だけど私は女よ?」

カムイ「私も女ですから、私の部屋まで連れて行ってもらっていいですか?」

アクア「わかったわ。それじゃ、手を握って頂戴」

カムイ「はい」

◇◆◇◆◇
―王の間―

カムイ「ここに呼ばれるのも、結構な回数になりましたね」

モズメ「ほんまやなぁ。今さらなんやけど、あたい、こんなところにいてええんやろか?」

カムイ「いいんですよ。モズメさんは私の従者なんですから、それにいやなら断ってくれてもよかったんですよ?」

モズメ「ううん、あたしにはもう何も残ってへんからな。カムイ様に命救われた時から、あたいはカムイ様に付いて行くしかないんよ」

カムイ「ありがとうございます、それじゃ中に入りましょう」

カムイ(今日はなんだか空気が違いますね。ミコトさんに呼ばれたのは何回かありますが、これほどまでに王の間に人がいないのも珍しいですね。リョウマさんも、ヒノカさんもいませんし。衛兵の方たちの気配もありません……)

ミコト「カムイ、それにモズメさんですね。城の生活にはもう慣れましたか?」

カムイ「はい。今日はいつもの皆さんがいないみたいですね」

モズメ「そうやね、リョウマ様もおらんのは珍しいことや」

ミコト「少し用事があるんですよ。少ししたら来てくれます」

カムイ「そうですか。それで、ミコトさん、私にどういった御用なんでしょうか?」

ミコト「私の横にあるものはわかりますか?」

カムイ「気配だけです。大きなものみたいですけど」

ミコト「これは、白夜王国の玉座です。これには古の神である神祖竜の加護が宿っているものなんです」

モズメ「えらい大きな、椅子やね」

ミコト「ええ、私ではみたところ抱えられてるようにも見えてしまうかもしれません」

カムイ「その玉座が、なにか?」

ミコト「いきなり急なことなんですが、カムイ。これに座ってみませんか?」

カムイ「玉座にですか?」

ミコト「はい、この玉座には先ほど言った加護が宿っています。この玉座に座った者は真の姿を取り戻すと言われているのです」

カムイ「………つまり、ミコトさんは私が何かしらの術にかけられているから、記憶を持っていないと考えているわけですね」

ミコト「そ、そんなことは……いえ、ごめんなさい、その通りです・覚えていない理由が何かしらの術なら、私はそれを解きほぐしてあげたい、だから……」

カムイ「そうですね、私はたぶん記憶をいじられていると思います」

ミコト「なら、座ってくれるのですね?」

カムイ「いえ、残念ですが。私はその玉座に座るつもりは、今はありません」

ミコト「今は……ということですか?」

カムイ「はい、少しの間だけ私に時間をくれませんか。まだ色々と整理がついていないことが多くて、これ以上のことを考えるのが少し辛いんです」

ミコト「はい、わかりました。私はカムイの味方ですから。その気持ちが固まったときにここに座ってくれるなら」

カムイ「もう少しだけ待たせることを許してください」

カムイ(私に弄られた記憶があることは間違いないです。でも、今それを知ったら私の頭は止まる寸前まで行ってしまう気がする。もしも止まってしまったら、私は……)

リョウマ「カムイ、悩むことはない。母上は待ってくださるんだ、あとはお前が踏ん切りをつけられるようになればいい」

カムイ「リョウマさん」

リョウマ「ふっ、母上。準備の方は大方整いました。ただ、もう少し時間が必要かもしれません」

ミコト「そうですか、仕方ありません。今日は記念すべき日になりますから、準備はきちんと行いましょう。準備している方々には無理をされないように伝えてあげてください」

リョウマ「わかった。カムイ、もう少し時間に余裕があるみたいだから、のんびりしているといい。俺は、まだやることがあるから、これでな」

ミコト「リョウマの言っていた通りです。まだ時間がありますから、少し経ってからまた来てください」

カムイ「はい、わかりました。それでは、失礼しますね」

ミコト「ええ、また会いましょう」

ミコト「………やはり辛いものですね。我が子から母という言葉を貰えないというのは……」

ミコト「でも、カムイはいつかここに座ってくれると約束してくれた。私のいる目の前で、いつかこれに座ってくれるって……」

ミコト「……浅ましい、私は浅ましいのですね。我が子から母と呼ばれたいが故に、こうして我慢できずに話を持ちかけてしまうのですから……」

ミコト(もしも、あんなことが起きなければ、私の腕にはまだ、カムイのぬくもりが残っていたのでしょうか……)

ミコト「カムイ、私は……あなたに母親らしいことをすることができるのでしょうか? 何もかも忘れてしまっているあなたに、私は……」

第四章 前編おわり

現在の支援レベル

 スズカゼ  C
 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 リリス   C+
 カゲロウ  C
 モズメ   C
 タクミ   D+
 リョウマ  C
 ヒノカ   C
 サクラ   C
 アクア   C

今日はここまでになります。
 
 安価です。
 次回の最初、空いた時間に話しかける人物、この中からでお願いします。

 
 スズカゼ  
 リンカ

 リョウマ   
 カゲロウ
 サイゾウ  
 タクミ
 ヒナタ

 オボロ  
 ヒノカ   
 サクラ   
 アクア   
 ミコト

 モズメ

>>215

乙です。
安価はミコト

カムイ「モズメさんはどうしますか?」

モズメ「あたいは部屋で休ませてもらうわ。カムイ様はどないすん?」

カムイ「もう一度ミコトさんに会ってこようと思います。少し話してみたいことがあったので」

モズメ「わかったわ。あたいも少ししたら王の間に行くから」

カムイ「はい、それではまた……」

◇◆◇◆◇

カムイ(……しかし、あのあとだというのにすぐに来て良いものなのでしょうか? 少し考えさせてほしいといった手前、こうしてすぐに足を運ぶというのは……)

カムイ「悩んでいても仕方ないですね。時間は限られているんですから」

 コンコン

ミコト「………誰ですか?」

カムイ「ミコトさん、私です」

ミコト「カムイ? まだ部屋で休んでいてもいいのですよ?」

カムイ「いえ、特にやることもなかったので準備が済むまでの間、ミコトさんと話ができたらと思いまして……ダメでしょうか?」

ミコト「ふふっ、断るわけないじゃないですか。むしろ、うれしいです。さぁ、中に入ってきて」

カムイ「はい、失礼します」

ミコト「ふふっ、正直時間になるまではここに来てくれないと思ってましたから、なんだか嬉しいものですね」

カムイ「そう思っていただけるとわたしもうれしいですよ」

ミコト「ええ、それで話というのはなんでしょうか?」

カムイ「はい、ミコトさんは私のお母様なんですよね?」

ミコト「そうですよ、記憶を持たないあなたには信じることが難しい話かもしれませんが」

カムイ「すみません」

ミコト「いいんですよ、それで聞きたいことというのは?」

カムイ「この白夜にいたころの私についてお尋ねしたかったんです。私は確かにここに住んでいた記憶を持っていませんけど、ミコトさんにはその頃の思い出はあるんですよね?」

ミコト「ええ、ありますよ。カムイと過ごしてきた日々は、死ぬまで忘れられない私の宝物ですから」

カムイ「その宝物を、少し私に分けてもらってもいいですか?」

ミコト「ええ、でも、この思い出があなたの重荷になるかもしれない」

カムイ「私が決めたことですから、ミコトさんが気に病むことはありません。それに聞いてみたいんです。私の知らない私の話を」

ミコト「カムイ……」ダキッ

カムイ「ミコトさん?」

ミコト「カムイ、そんなことを言わないで。あなたはただ忘れているだけ、だから知らないわけじゃないの」

カムイ「ですが、私は……」

ミコト「言っていたじゃないですか、記憶をいじられているかもしれないと。なら、それは知らないわけじゃない、ただ忘れているだけだから。お願い、カムイから私の記憶を奪わないで」

カムイ「ミコトさん……」

ミコト「わかっています、あなたからすれば無茶苦茶なことを言っていることは。でも、私とあなたをまだ繋いでいるかもしれない思い出を、あなたの口から否定するようなことだけは、言わないで」

カムイ「……」

ミコト「おねがい……」

カムイ「すみません、私はミコトさんに話を聞きたかっただけなのに……」

ミコト「ごめんなさい。こんな風にお願いしてしまって、いきなりこんなことを言われても困るだけですよね」

カムイ「いいえ、その約束はちゃんと守ります。私はそれを思い出すまでは、一方的に否定したりしません」

ミコト「カムイ……、私が母親なのに慰められてばっかりですね」

カムイ「その言い方だと、ミコトさんは大きな子供みたいです。私のほうがまだ年も若いんですよ?」

ミコト「いいんです……。あのカムイ、一つお願いしてもいいですか?」

カムイ「なんですか?」

ミコト「膝枕をさせてもらえませんか?」

カムイ「私がミコトさんにされる側でいいんですか? 私がする側でもいいですけど」

ミコト「ふふっ、少しは母親らしいことさせてください。さっきまで、そのことで悩んでいたんですから」

カムイ「わかりました。よいしょ、これでいいですか?」ポフッ

ミコト「はい。ふふっ、あのころから比べてやっぱり重くなりましたね。髪もこんなに伸びて、走りまわってた頃からは想像できません」

カムイ「ミコトさん、昔の私は今の私とどう違うんですか?」

ミコト「そうですね、数えれば切りがないくらいです。今度、時間があったらゆっくりお話しましょう。なんだか、楽しみになってきました」

カムイ「はい、ふあああ、すみません」

ミコト「ふふっ、少し疲れているのですか?」

カムイ「……そうかもしれません、ちょっとこの頃考えることが多かったので」

ミコト「なら、少し休んで。まだリョウマの準備も終わっていないみたいですから、誰かが来たら起こしてあげますよ」

カムイ「ですが………」

ミコト「……」

カムイ「そうですね、では甘えさせてもらいます」

ミコト「はい、お休みなさいカムイ」

カムイ「はい、お休みなさい、ミコトさん。……すぅ……すぅ」

ミコト「……寝顔は昔のままですね。ねぇ、カムイ。本当はあなたが描いた似顔絵とか、文字の練習を見ながら静かに過ごしたかったんですよ」

ミコト「あなたがいなかった間に起きたこととか、それも全部くるめて、あなたと一緒に再び暮らせることをずっと待っていたんですよ」

カムイ「……んん……」

ミコト「ふふっ、母として接することばかりに気を向けていて触れかたを恐れていたのは私だったのかもしれませんね」

ミコト「あなたが私を覚えているのかは重要じゃないんですね。あなたと話をしたくて、あなたと心を通わせたくて、その思いの結果としてあなたと深い絆を作ることができたなら、それは確かな絆に違いないんですから」

ミコト「カムイ、愛しい私の子。戻って来てくれてありがとう……」

◇◆◇◆◇
―白夜王国・王都入り口付近―

リリス「どうにかここまで来れましたね」

サイラス「ああっ、しかし、鎧じゃくてこのみすぼらしい行商人の恰好がに会うことになるなんて思わなかったよ」

リリス「でも、どこを見ても多くの人がいますね。何か催し物でもあるんでしょうか?」

サイラス「人の流れを見る限りだと、どうやら中心地に向かってるみたいだからな。もしかしたらそこに、カムイがいるかもしれない」

リリス「だといいんですけど、でもここまで来てなんですけど、これって立派な不法入国ですよね……」

サイラス「そんなことどうでもいいさ。まずはカムイの無事を確かめることの方が先だ」

リリス「カムイ様は無事なんでしょうか?」

サイラス「無事かはわからないけど、白夜王国の状況を見る限り、ここは大っぴらに処刑などを行う国には思えないから、この人だかりが公開処刑とかじゃないとは思う」

リリス「そうですね、白夜王国はなんだか穏やかな雰囲気がありますから」

サイラス「さぁ、広場までまずは向かわないと」

リリス「それにしてもほんとにすごい人ですね。あの、すみません」

町人「ん、なんだい?」

リリス「すみません、旅をしてきたもので、これは一体何があるんですか?」

町人「ああ、王女様が見つかったという話でな。やっと外に出られるようになったらしく、これから皆に紹介されるそうなのだ」

サイラス「見つかった? 生まれたではなくて?」

町人「ああ、王女様はその昔暗夜王国に攫われてな、それは恐ろしい事件だった。当時の王、スメラギも凶刃に倒れたこともあって、多くの人々が悲しみに明け暮れたものだ。それも、ここにきて一つの区切りが来たというわけだ」

サイラス(暗夜に攫われた白夜の要人? そんな話は聞いたことないぞ……。いや、当然か、俺みたいな一兵、当時から考えれば一般の民衆の耳に入るはずもない情報だろうし)

リリス「かわいそうです」

町人「ああ、全くじゃ。しかも無事に帰ってきたというわけじゃないらしい」

サイラス「というと?」

町人「話によると、その王女は光を失っておると……」

サイラス「!!!!! すまない、その王女の名前は何と言うんだ?」

町人「たしか、カムイと」

リリス「あ、あの。皆さん、今広場に向かっていますけど、もしかして……」

町人「お譲ちゃん、察しがいいね。広場でそろそろ催し物が始まることになっているんだ。見に行くには遅かったな、もう人だかりで眼前で拝むのは難しいことさ」

サイラス「おじさん、たすかったよ。リリス行くぞ」

リリス「はい! おじさん、ありがとうございます」

サイラス「他人だと思うか?」

リリス「いいえ、そうは思えません」

サイラス「俺もだ。まったく、カムイは本当に不思議な奴で困るよ。とりあえず、まずは姿を確認する方が先決だ」

リリス「はい………あれ?」

サイラス「どうした?」

リリス「あれって広場の方角ですよね?」

サイラス「……あれは―――」

今日はここまでです

◇◆◇◆◇
~数分前~
―白夜王国・炎の広場―

 ミコトサマー! ミコトジョウオウサマー!

カムイ「すごいですね……声だけでもわかります。ミコトさんが多くの人に慕われているのが」

リョウマ「ああ、母上の平和を願う心を多くの人々は理解している。俺もいずれは母上のような、人から信頼される人間になりたいものさ」

カムイ「リョウマさんなら大丈夫ですよ。ここに来るまでの間、多くの人に声をかけられていたじゃないですか」

リョウマ「ふっ、お前にそう言ってもらえるなら安心だな」

カムイ「それで、私がここに連れてこられたわけというのは?」

リョウマ「ああ、お前が帰ってきたことは多くの民が耳にしていることだ。しかし、その姿を確認できているのはごく一部にすぎない」

カムイ「ちゃんとした形で、私が帰ってきたことを示したい……そういうわけですね」

リョウマ「そうだ。お前が帰ってきてくれたことは今の白夜王国にとって良い知らせに他ならない」

リョウマ「それにこれは暗夜に対する抑止力になると同時に、平和へとつなぐための足掛かりになると母上は言っていた」

カムイ「私がですか?」

リョウマ「ああ、ただそのやり方だが、俺には皆目見当がつかない。母上には母上の考えがあるのだとは思うが、大規模な争いが始まらないようにするためにいろいろ考えているに違いない」

カムイ「ミコトさんからは、お父様とは正反対の物を感じていましたから、そう考えて間違いないですよ。あの人はとても優しい人ですから」

リョウマ「ああ」

ミコト「カムイ、こちらへ来てくれますか?」

リョウマ「さぁ、母上がお呼びだ。行ってくるといい、皆にお前の姿を見せてやってくれ」

カムイ「はい、では失礼しますねリョウマさん」



リョウマ「ここまでは順調だ、何も起きなければいいのだが」

カゲロウ「リョウマ様、緊急の用件が」

リョウマ「カゲロウか、何があった?」

カゲロウ「はい、サイゾウから城の保管庫に何者かが侵入したようだと、死者も出ています」

リョウマ「なんだと!?」

カゲロウ「現在確認したところ、カムイ様の所持品の剣が無くなっているそうです。それと死者は警備の者ですが……」

リョウマ「どうした?」

カゲロウ「信じたくはない話ですが、真正面から切り伏せられていたそうです。避けた形跡もなく、真正面からです。最悪、この国の者の中にこの狼藉を働いた者が迷い込んでいるかもしれません」

リョウマ「サイゾウは?」

カゲロウ「すでに周囲の監視を始めています。城内の探索はスズカゼが担当しています。後に合流する予定でありましたヒノカ様たちにもこの話は耳に入れてありますので、すでに戦闘の可能性を考えていると思います……」

リョウマ「すでに、この広場に入り込んでいる……」

カゲロウ「リョウマ様」

リョウマ「……狙いは明確か、俺はカムイと母上の元にいよう。カゲロウもできる限りでいい、周囲の監視を始めるんだ!」ダッ

ミコト「カムイ、私はあなたの知っている暗夜の方々と友好的な関係が築けたならと思っています。そのために私はあなたの望むことをしてあげたいのです」

カムイ「私の望むことですか?」

ミコト「ええ、あなたが暗夜に戻りたいというなら止めることもありません。昔の時間は思い出すことがあっても作り上げることはできませんから、私は少し昔にこだわり過ぎていたんです」

カムイ「ミコトさん」

ミコト「でも、それは間違いでした。昔ばかりを見ていても前には進めません、だから皆さんにあなたを紹介させてください。そしてその時に、あなたの望みを母に聞かせてください。私のできる唯一のことは、あなたの選択の後押しをしてあげることなんですから」

カムイ「……はい、ありがとうございます」

ミコト「気にしないでいいの。必ず、あなたの選択を私は受け止めてあげます」




ミコト「みんな今日は急な話なのに、集まってくれてありがとう。今日は、みんなに改めて紹介したい人がいます」

???「………」ザッ

ミコト「さぁ、カムイ。皆さんに……」

カムイ「はい……?」

???「………」スッ

カムイ(これは……明確な殺意!? あの人ごみの中に、何かがいる!)

カムイ「みなさん、そこから離れて!」

???「………」ニヤッ

 ザシュッ グォォオオオオオン バシュウウウウゥゥゥゥン!!

 ウワァァァァァァァ!!!!

カムイ(何かが浮遊している? これは私をそれとも……)

???「……」ブンッ

 ヒュヒュヒュヒュン

カムイ「ミコトさん、伏せて!」ガバッ

ミコト「か、カムイ!」ドサッ


カムイ「ミコトさん、大丈夫ですか?」

ミコト「は、はい。カムイのおかげで……。こんな、こんなむごいことを……」

カムイ(血の匂いがひどい。動かない人はもう駄目ですね、それよりも、あれは一体? 気配はあるようですけど、なんでしょうか、この感じは)

ミコト「地面が抉れています。リョウマたちと合流出来そうにありません」

カムイ「仕方ありません、私が敵を引き付けている間にミコトさんは、逃げてください」

ミコト「な、何を言っているんですか。一緒に、逃げましょう」

カムイ「ミコトさん、私の選択を後押ししてくれると約束してくれましたよね」

ミコト「それは―――」

カムイ「今がその時です。ミコトさん、早く逃げてください。だれだかわかりませんが、私が相手になります。てやぁ!」

???「………」キンッ

カムイ(くっ、純粋に強い……、ですが相手が一人なら……)

 シュオオォォォ 

カムイ(しまった、魔法を使う伏兵が!?)

 ガギン!

カムイ(ぐっ、右腕にあたって、うまく力が入らない………)

???「……」

 ブンッ バシュッ!

カムイ「ああああああああっ!!!!」

カムイ(……膝を。これではもう素早く動けません、剣もうまく扱えず、敵は複数……八方ふさがりですね)

ミコト「カムイ!」

カムイ「来ないでください! そのままリョウマさんたちと放流してください! 私は大丈夫ですから――」

ミコト「そんなわけありません。カムイ、早くこちらへ、今ならまだ逃げきれるはずです」

カムイ「無理です、私のことは捨て置いてく―――」
 
 ドゴン!

カムイ「かはぁ……」ドサッ

カムイ(しまった。吹き飛ばされて、壁に追いつめられるなんて………。ふふっ、私の力ではこの者たちには勝てない……。わかってはいますけど少し悔しいですね)

???「………」スタスタスタ

カムイ(もう、眼の前に来てしまったんですね。私は剣も振れない、満足に動くこともできない……殺されるのを待つしかない」

???「………」チャキ

カムイ(……でも、これで、ミコトさんが生き残ってくれるなら、私の命は―――)






 ズシャ






 ドサリ――――



カムイ(顔に暖かい何かが掛っている……)

 ヒュー ヒュー

カムイ(これは、私の呼吸の音? でも、違う。私の膝の上に誰かがいる感触、その何かの呼吸?)

 カ……イ カム……イ

カムイ(この声は、ミコトさん?)ピトッ

 ヒュー ヒュー

カムイ(とても弱弱しい呼吸音……)

カムイ(この暖かい水は? 血の匂いが…… ミコトさんの呼吸が…… あなたの声はなんで掠れているんですか?)

 ヤク……ヤクソク… ヒュー …マモ……レナイ……カアサン……デ ヒュー ゴメン……ネ

 ヒタリ

カムイ(ミコトさんの手のひらの感触……がする。もしかして、すべて終わったんですか?)

 ヒュー ヒュー ヒュッ ―――

カムイ「ミコトさん……。無事ですか……」

ミコト「…………」クタリ

カムイ「ミコトさん……」ピタリ

 ペタペタ

カムイ(頭……)

 ペタペタ 

カムイ(唇……)

 ペタペタ

カムイ(顎先……)

 ペタペタ

 ペタペタ









 グチャリ







カムイ(……………)



 グチャリ……グチャリ




カムイ(なんで……首に大きな傷があるんですか?)

カムイ「ミコトさ―――」

 ドスッ

???「……」

カムイ「あ……こふっ」

カムイ(体が冷たい……。私はここで死ぬ。ミコトさんを殺した奴を目の前にしながら、何もできずに死んで行く?)

 ドクンッ

カムイ(………)

 ドクンッ

カムイ(許さない)

 ドクンッ ドクンッ

カムイ(殺してやりたい。殺してやりたい、八つ裂きにしてやりたい。顔を、体を、いや、お前という存在がただの肉片になるまで)

 ドクンドクンドクンッ

カムイ(殺しきってやる)

カムイ(今だけ光がほしい……八つ裂きにするために光が……)

カムイ「うあああああああああああああああああ!!!!!」

???「………」チャキ ブン




 グシャ



???「……くごっ、くごごごごぉ……おごっあが」

 プラーン

カムイ・竜人「……見えますよ。あなたの口に私の手が入っているのが。苦しそうですね……手で開きにしてあげますね」

 バチュ バキュバキ ビチャビチャ

 ブンブンッ ポイッ ズビチャ……

カムイ・竜人「足りない、タリナイ。まだ、全然足りない。これじゃ……足りない……」

???「……」スチャ チャキ



「お前ら全員……ミナゴロシダ」

◇◆◇◆◇

リョウマ「くそ、母上とカムイは?」

サクラ「駄目です。広場の入り口が崩れていて、この先にいると思うんですけど、これじゃたどり着けません」

アクア「どうなっているかわからないんじゃ、どうしようもないわ。どうにかして向かわないと」

 バサバサバサ

ヒノカ「すまない、遅くなった。私の天馬が先行する」

アクア「ヒノカ、私を連れて行ってくれる? カムイ王女の様子が気になるわ」

ヒノカ「ああ、わかった。もう一度往復するから、リョウマ兄様は少しだけ待っていてほしい」

リョウマ「ああ、わかっている。それとアクア、気を抜くな。どこの手のものかわからないが、全く気付かれずにここまでのことをしたんだ、確実に手ごわい」

アクア「ええ、わかっているわ。ヒノカ?」

ヒノカ「ああ、行くぞ!」




ヒノカ「くっ、ひどい」

アクア「あそこで何かあったみたいね。残念だけど、あの付近にいた人たちは……」

ヒノカ「くそ、カムイに母様は!?」

アクア「……あれ、ヒノカ!」

ヒノカ「見つけたのか?」

アクア「崩れた竜の像の陰に、何かいるわ」

ヒノカ「あれは、母様の……!」

アクア「………」

ヒノカ「……そ、そんな……母様……」

アクア「……残念だけど」

ヒノカ「くそ、なんで、なんでこんなことに! 私たちが何をしたというんだ!」

アクア「カムイ王女は?」

ヒノカ「くっ、カムイは? 母様だけでなく、カムイまでなんてことは信じたくないんだ。頼む……」

アクア「これは、血の跡。この先の道に続いているみたいだけど」

ヒノカ「くっ、すぐにこの跡を……」

アクア「いいえ、それよりも先にリョウマを連れて来たほうがいいわ。このままじゃ、ミコト女王が可哀そうよ……」

ヒノカ「あ、ああ、わかった」

アクア「私はこの跡を追うわ。大丈夫、無理はしないから、すぐに追いかけて来て」

ヒノカ「……わかった、すぐに追いかけるから任せたぞ!」

アクア「この血の先に、カムイがいるの?」

???「ようやく、広場にたどり着いたみたいだな。黒い煙が見えた時から覚悟してたが、予想以上にひどい有様だな」

アクア「誰!?」

サイラス「ん、生存者か。そっちの倒れている人は」

リリス「すぐに手当てを……っ!」

アクア「……残念だけど」

リリス「そんな……」

アクア「それより、あなたたちは一般人でしょ? 早くここを離れたほうがいいわ」

サイラス「いや、そうもいかない。ここには大切な幼馴染がいるかもしれないんだ。無事を確かめるまで、帰るつもりはない」

アクア「もしも、この広場に来ていたのだとしたら絶望的よ。最初の爆発で多くが命を落としてしまったから」

サイラス「……そうか」

アクア「そういうことよ。後々、身元の確認が行われるはずだから。あなたたちはここから反転して、避難場所に行くといいわ」

サイラス「あんたはどうするんだ?」

アクア「私はやることがあるから、この先に進むわ」

サイラス「なら、それに同行させてもらうよ。ここは危険だ、護衛はいたほうがいいだろ?」

アクア「あのね……」

サイラス「それに馬っていう脚もある。すぐに行きたい場所まで行けるはずだ」

アクア「……、なんでそこまでするのかしら?」

サイラス「俺はその幼馴染に命を救われた。そして、前にも同じように救われた。もらった恩を返さないままは嫌なだけ、ただそれだけだよ」

リリス「私も同じです。きっと、生きていてくれると信じているんです」

アクア「あなたたち……いいえ、なんでもないわ。じゃあ、その流れに私も混ぜてくれないかしら? 私が探している人のことを、私は知りたいとおもっているの。この前、やっと入り口に立てたばかりだから、ここでそれが終わるのは面白くないもの」

サイラス「なら決まりだな。俺はサイラス」

リリス「リリスと言います」

アクア「アクアよ」

サイラス「よし、リリス。アクアを頼んだ。一気に走り抜けるぞ!」

リリス「はい! アクアさん、私に掴まってくださいね」

アクア「ええ、わかったわ」

サイラス「それじゃ、行くぞ!」




サイラス「よし、どうやら追いついたみたいだ……って、なんだあれ?」

カムイ・竜人「グオオオオオオオ」

???「………」

カムイ(モットハヤクウゴケルカラダガホシイ、コロシツヅケルコトノデキルカラダガ、イノチヲツミトルカラダガホシイ、ホシイホシイホシイホシイホシイ)

カムイ「ウギャアアアアアアアアアア」

 ズオオオオオオ!!!! バサバサ 

竜「グオオオオオオオオオオオオオン!」

サイラス「おいおい、何がどうなってんだ!?」

アクア「……カムイ」

サイラス「あれが、カムイなのか?」

リリス「カムイ様……」




タクミ「なんなんだよ、あれは」

オボロ「ど、どうします? 敵なのか味方なのかわかりませんけど」

ヒナタ「ただ、まっすぐ戦ったら負ける気しかしない相手だよな。一応、なんかよく見えない兵を殺しまくってるみたいだけど」

タクミ「くそ、ただ今さっきまでの服装を見た限りだと、あいつだってことは間違いないはずだ」

オボロ「どうします?」

タクミ「くそ、竜は撃つな。竜を囲んでいる気配を打て、少しでも当てたらこっちに飛んでくるって思ったほうがいい」

オボロ「わかりました、タクミ様」

タクミ「………くそっ、なんでこんな配慮してやらないといけないんだ!」

アクア「ねぇ、サイラス」

サイラス「あ、ああ。すまない、突然のことで意識が飛んでいた」

アクア「ひとつ頼まれてくれないかしら?」

サイラス「頼まれる? 何を」

アクア「私をあの竜の前まで連れて行ってくれないかしら?」

サイラス「正気か? どう見ても今近づくのは間違ってる。見たところかなり興奮しているようだし……」

アクア「だめ、今すぐにでも止めないと。カムイはすべてを殺すために動き始めてしまうわ」

リリス「私もそう思います。今のカムイ様からは、優しいものがありません。見ているだけでわかるんです、あれはただ振り回されているだけだって」

サイラス「………」

アクア「あなたの幼馴染に対する思い入れは、その程度なの?」

サイラス「嗾けるのがアクアは上手いんだな。そう言われたらやらないわけにはいかないな」

アクア「感謝するわ。タクミ!」

タクミ「アクア姉さん!?」

アクア「周りの奴らをできる限り、あなたへと引きつけて!」

タクミ「どういうことか説明してくれないと」

アクア「説明する暇はないわ。とにかくやりなさい!」

タクミ「……ああっ、くそっ!」

オボロ(なんだかんだで、タクミ様って)

ヒナタ(アクア様にはまったく頭が上がらないよな~)

タクミ「全員、気配を誘導する。できる限り竜の周りから、あいつらを引き離せ!」


サイラス「よし、場は出来始めたみたいだ。アクア覚悟はできているんだな?」

アクア「ええ、すぐにでも発進してもいいわ」

リリス「アクアさん、頑張ってください」

アクア「……ええ、まかせて」

サイラス「よし、カムイがあと一人倒せば……」

竜「グギャアアアアアア!」ズブシャ

サイラス「行くぞ!」

アクア「!!!!」

アクア(流石に大きく揺れるわね。馬に乗ったことなんてあまりなかったから体の負担が……)

サイラス「よし、このまま懐に入るぞ!」

竜(ダレダ、ダレデモイイ、ニギリツブセバ、ウゴカナクナル!)

アクア「来るわ!」

サイラス「わかってる。よっと!」

 ズガシャアアアン

サイラス「当たったら、一発アウトだな、これ」

アクア「もう一回来るわよ」

サイラス「ああ! よし、抜けた!」

アクア「できるかぎりカムイとの距離を維持して頂戴」

サイラス「わかった、で何時前まで運べばいいんだ?」

アクア「私があなたの背中を叩いたらよ………」

アクア(カムイ、私にどこまでできるかわからないけど……。必ずあなたを止めてみせるから)



 すぅ………



アクア「♪~ ♪~」

サイラス「これは、歌?」

タクミ「アクア姉さん……」

リリス「この歌は………」

竜「グゴォ! ウウウウウウウウ」

サイラス「苦しんでる……のか?」

 ポス

サイラス「わかった……」

竜「ウオオオオオオ!」

サイラス(歌に苦しんでいるんじゃない、怯えているんだ。でも、一体何に……いや、そんなことどうでもいい。今はアクアの考えを信じるしかない)

アクア「♪~ ♪~」

サイラス「………」スタッ

竜「ガウゥ! ウガァ!」

アクア「……カムイ」

竜「グアアアアアアアア!」

 ガシッ!

アクア「ぐっ……」

サイラス「アクア!」

タクミ「ちっ、全員、武器を!」

アクア「タクミ!」

タクミ「……くそっ!」

竜「グウウウウウ」

アクア「カムイ、この前話したこと、覚えてる?」

竜「………」

アクア「私、まだあなたのことを知りたいの、あんな短い話だけであなたと別れるのはとても嫌なの」

竜「……」

アクア「おねがい、だから戻ってきて。そして私に、信頼できる人になる機会を与えてほしいの」

 ピキピキピキ パリィ
 
 シュオオオオオオオ

 ドサリッ

カムイ「……こ、ここは」

アクア「カムイ、もう大丈夫、大丈夫だから」ダキッ

カムイ「アクアさん………、なんだかひどい夢を見ていた気がします。目が見えるようになって、多くの人を殺す夢でした」

アクア「そう、それは悪い夢よ」

サイラス(よし、カムイは無事みたいだ。だけど、ここに居続けると問題が起きるかもしれない……)

リリス「サイラスさん。私たちは……」

サイラス「ああ、一先ずここを離れよう」タタタタタッ


カムイ「あれ、今……。すみません、なんでもありません」

タクミ「何も覚えていないのか?」

カムイ「……覚えているのは……」

カムイ(ミコトさんの首にあった大きな傷の感触と、どす黒い心の流れだけ。そう言えば目は―――)

 パチリ……

カムイ「……やっぱり、何も見えない―――」

 第四章 おわり

現在の支援レベル

 スズカゼ  C
 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 リリス   C+
 カゲロウ  C
 モズメ   C
 タクミ   D+
 リョウマ  C
 ヒノカ   C
 サクラ   C
 アクア   C→C+

今日はここまでです。次でチュートリアルまでが終わります。
 道が通れない状況で飛行ユニットを使うみたいな面で、天馬のヒノカを輸送に使うみたいなこと考えて出来た話です。
 

◇◆◇◆◇
―白夜王国・炎の広場―

カムイ「……ぐっ、頭が」

アクア「見たところ怪我は無いわ。たぶんその頭の痛みは竜化したのが原因よ。少しすれば治るはずだから」

カムイ「はい……アクアさん。ミコトさんは……」

アクア「残念だけど……」

カムイ「……そう、ですか…」

タクミ「なんで、そんなに冷静なんだよ、お前は……」

カムイ「タクミさん……」

タクミ「どうしてだ。母上が死んでしまったのに、なんでそんなに冷静でいられるんだ。お前は!」ガシッ

サクラ「タクミ兄様、やめてください!」

リョウマ「タクミ! カムイから手を放せ!」

タクミ「うるさい! 母上はこいつに殺されたようなものじゃないか! お前が、お前が現れなければ、こんなことに、こんなことになんてならなかったんだ!」

ヒノカ「タクミ、落ち着くんだ!」

 バッ

タクミ「くそ、くそおおおおおおお!」

リョウマ「………」

カムイ「町の方たちは……」

リョウマ「全体に大きく被害が出ている、広場周辺はもう瓦礫ばかりだ。同時に多くの人々が命を落としたのも確かだ」

カムイ「………」

リョウマ「カムイ、これが暗夜王国のやり方だ。おそらく、城内に忍び込みお前の剣を奪い、事を起こすこの運びも。お前がここにたどり着くこと、そして母上がこうした場を設けることさえ」

カムイ「すべて、計算されたこと……。ははっ、だからガングレリは私を殺してくれなかったんですね」

カムイ(あの時、無限渓谷で死ぬことができなかったのは、私が駒としての役割を果たしていなかったから……、でもこうしてミコトさんが倒れた今、私の役割は……)

カムイ「わたしには、どこにも至れる場所など、最初からなかったのかもしれません」

アクア「どこに行くつもりなの?」

カムイ「私がここにいる意味はもう無いんです。暗夜に帰る意味も、白夜にいる意味も、何もかも……、もう無くなってしまったんですから」

???「お待ちください」

カムイ「?」

タクミ「ユ、ユキムラ……」

ユキムラ「カムイ様、お初にお目にかかります。私はユキムラ」

カムイ「ユキムラさんですか。一体何を待てというんですか? 私がここいることがそもそもの間違いだったんですから、もう構わないでください」

ユキムラ「いいえ、今回の事をミコト様は予感していたのです。これは避けられぬ運命なのだと……」

カムイ「でも、この運命を引き寄せたのは私です。私が現れたことで………」

ユキムラ「それは違います。ミコト様は暗夜王ガロン……いえ、もっと恐ろしい悪魔のなせる所業だと仰っておられました。カムイ様、あなたの所為ではないのです」

ユキムラ「そして、あなたに試してもらいたいものがあるのです」

カムイ「私に……ですか?」

ユキムラ「カムイ様、像の場所に何か気配を感じませんか?」

カムイ「気配ですか………」

カムイ(これは……剣? いえ、どちらかといえば刀でしょうか?)

タクミ「あれは、黄金の刀?」

リョウマ「ユキムラ、まさかあれは伝説の?」

ユキムラ「はい、この世に救いのもたらす者、資格無き者は手にすることを許されない刀、『夜刀神』です」

カムイ(……救いをもたらす刀……)

 チャキィン ヒュンヒュンヒュンヒュン ガキンッ

カムイ「!」

タクミ「……あいつの前に、刀がやってきた? 刀が選んだっていうのか?」

リョウマ「カムイには資格があるということだろう。世界に救いをもたらしえる、その力が……」

サクラ「カムイ姉様」

ヒノカ「カムイ……」

カムイ「………」ガシッ

カムイ(こんな私に、何をさせたいんですか? もう、考えることさえ辛いのに……。でも、それが望みなら……)

サイゾウ「失礼する、リョウマ様」

リョウマ「………サイゾウ、何があった?」

サイゾウ「はい、たった今入りました情報を、国より暗夜王国の大軍勢が出現、白夜王国に攻め入ってきたようです」

リョウマ「……こうして母上を殺め、町を破壊し、見計らったように侵攻とはな。これ以上好きにさせるつもりはない!」

サイゾウ「すでに多くの兵が出陣の準備を整え、あとは命令を出していただければ」

リョウマ「ああ、仇は討たねばならない。討たねばこの怒りが晴れることはない! 皆のもの、これより国境に赴き、暗夜と刃を交える!」




カムイ「……私は」

アクア「カムイ……、大丈夫?」

カムイ「アクアさん」

アクア「まるで迷子みたいな顔をしているわ」

カムイ「迷子、そうですね間違ってないと思います。私にはこの夜刀神が何を思って私を選んだのかさえ、皆目見当がつかないんですから」

アクア「なら、それは自分で見つめるしかないわ。この前言ったわよね、私は助言できるだけだから」

カムイ「はい……」

アクア「助言のこともあるけど、それよりもあなたの中にある竜の血について教えておくべきだと思ったの」

カムイ「私が、竜化したという話ですよね……」

アクア「あなたの中にはとても濃い竜の血が流れているわ。だからこそ、あなたは竜へと姿を変えられた。そのことを覚えていないかもしれないけど」

カムイ「………」

アクア「あの時のあなたは衝動のままに行動した。今は戻ってきているけど、このままだといずれ支配されて……」

カムイ「殺しを続ける……ということですか?」

アクア「ええ、その力は強大なもので、何物をも殺せる力になるかもしれない。でも酷使すれば、いつかあなたが獣に成り果ててしまう……」

カムイ「獣……ですか」

アクア「ええ、見えるものをただ殺し続けるだけの、本能だけで暴れまわる存在になってしまうわ」

カムイ「なにか、手はあるんですか?」

アクア「ええ、あなたの衝動を封印するわ」

カムイ「……何にですか?」

アクア「竜石と呼ばれるものよ。この中に封印すれば、あなたは意志をもったままでも竜の力を使えるようになる。ただ、その力は劣るものになるわ。目だって見えないままよ」

カムイ「……それでも構いません、アクアさん、お願いできますか?」

アクア「……すべての説明が終わってないけど、いいの?」

カムイ「はい、心の中がもやもやしていて、今はほとんど考えることができないんです。それが少しでもマシになるなら……」

アクア「そう、それじゃ始めるわね……」

アクア「…………」

アクア「良かった。これでひとまずは大丈夫。この竜石はあなたの一部、大切に持っていて」

カムイ「はい………」

アクア「ねぇ、カムイ」

カムイ「なんですか?」

アクア「私は確かに、あなたに対しては助言しかできない……。でも、考えることに疲れてしまったなら、そこでもう休んでしまってもいいとは思っているわ」

カムイ「………流されてしまうのも、悪くないかもしれませんね」

アクア「それで、カムイ。これからどうするの?」

カムイ「私も、国境へと向かいます。暗夜が攻めてきているというのなら、多分そこに暗夜の兄妹たちが来ているはずですから」

アクア「そう……私も一緒に行くわ。今のあなたじゃ、うまく歩けそうにないもの」

カムイ「そうですね、すみませんが連れて行ってくれますか………」

アクア「ええ、といっても私の他にもあなたを支えてくれる人はいるみたいよ?」

カムイ「え?」

モズメ「カムイ様、大丈夫なんか?」

カムイ「モズメさん、どうしたんですか。これから向かう場所は危険ですから、ここで待っていてください」

モズメ「何言うとんの、あたいはカムイ様についていくって決めたんやから、付いて行くに決まってるやろ」

カムイ「……そうですか、それじゃモズメさん。付いて来てください」

モズメ「ええよ。それより……」

アクア「あら、どうかした?」

モズメ「えらい別嬪さんや。なんか、ちょっと自信無くなってまう」

アクア「ふふっ、よかったら私の代わりにカムイに肩を貸してあげてくれないかしら? ちょっと疲れてしまって」

モズメ「顔色一つ変えてへんやん。でも、代わらせてもらうで」

カムイ「モズメさん、ありがとうございます」

モズメ「ええよ。それより、早くせんと馬が全部出てまうから、急ぐで」

カムイ「はい……それじゃ行きましょう……」

◇◆◇◆◇
―白夜王国・白夜平原―

 イクゾォーーー! ウオォォォー!

サイラス「まさか、ここまで暗夜軍が来ているなんて思わなかったな」

リリス「白夜でのあの騒ぎに乗じてきたんでしょうか?」

サイラス「さぁ、だけどどちらにせよ今すぐ暗夜に合流はできない。しばらくは様子を見るしかない。それに、カムイは必ずここに来るはずだ」

リリス「はい………カムイ様。私はどちらに到ろうとも、あなたに仕え続けます。必ず……」



カムイ(多くの人たちの声が聞こえる……とても大勢の声が聞こえる。白夜にいる間に起きた出来事は、すべてに悪意が込められていた……)

モズメ「………いた、リョウマ様や!」

カムイ(誰が見ても……白夜に光がある……)

リョウマ「やるではないか、暗夜の王子よ! だが、悪であるお前たちに俺は負けん!」

マークス「ふっ、口だけは威勢がいい。しかしいつまで続くか見せてもらおう!」

カムイ「モズメさん、あの二人の元へ行けますか?」

モズメ「ええよ。いくで!」


リョウマ「はぁ!」

マークス「ふんっ、これで、どうだ!」

リョウマ「まだまだだな………誰だ!?

マークス「……!」

カムイ「マークス兄さん……」

マークス「カムイ! 無事だったようだな。よく、よく生きていてくれた。さあ、こちらに来るんだ。お前もこの戦いに加われ、そうすれば無駄な犠牲を出さずに戦争を終わらせることができる」

リョウマ「ふっ、ここまで大軍で攻め込んできながらよくそんな御託を並べられる物だ。カムイ、耳を貸すことはない。お前は俺たちとともにいるべきだ」

マークス「気安く、妹の名を呼ぶな!」

カミラ「そうよ、誰だか知らないけど。妹を呼び捨てにするなんて百年早いわ……」

レオン「ほんと、悪運強いね、カムイ姉さんは。だけど、あの場所で何をしてるんだろう?」

エリーゼ「そんなことどうでもいいよ。早く、カムイおねえちゃんの元に行かなくちゃ!」

ヒノカ「何を言う、カムイは私の妹だ。お前たちのように、攫っていった暗夜の者にその名を呼ぶ資格はないと知れ!」

サクラ「カムイ姉様は、私たちの大切な家族なんです!」

カミラ「あら、何を言ってるのかわからないわ。カムイは家族よ、それも私にとっては妹、誰にも渡さないわ。絶対にね」

リョウマ「カムイ、口車に乗せられるな。見てきただろう、暗夜の者が行ってきたことを、俺たちはお前を守る、守りぬいてみせる」

カムイ「リョウマさん………」

マークス「カムイ、戻ってこい! またきょうだい一緒に暮らそう。お前とともに長き時を過ごしてきた私たちとともに、また時を過ごそう」

リョウマ・マークス「カムイ!」


暗夜兄妹「………」


白夜軍兄妹「………」



カムイ「………………」

カムイ(白夜が受けた被害の甚大さ。そして私の駒としての役割が終わった時点で、私が暗夜に戻ることに意味はない……)

カムイ(光の中を私は進めばいい、なにも決めなくていい……。休むことができる……)

カムイ(私は……………)






 
 
 (本当にそれでいいのか?)














カムイ(ミコトさんは私の決める道を後押ししてくれると言ってくれました………)

カムイ(考えることをやめて、ただただ流されるままに、白夜に行くことがミコトさんの望んだことなんでしょうか?)

カムイ(いいえ、ミコトさんが望んだことは、私が選んで選択すること……。最後に決めるのは自分自身)

カムイ(ミコトさんのいなくなった白夜で、私ができることは……おそらく無いでしょう。文字通り流されるままに、私は進むことになる)

カムイ(それは、私の生き方じゃない……。最後まで、考えて私は歩みたい……自分が決めた道を進みたい)

カムイ(私が選ぶべき道は光あふれる道じゃなくていい……)





(私が選ぶべきは………光の見えない闇を進みゆく、今までと変わらない世界で構わない……)

(私がするべきことは、光に甘えることじゃない……。今はそれがわかっただけで十分ですから)




 第五章 前篇おわり





 スズカゼ  C→消滅
 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 リリス   C+
 カゲロウ  C→消滅
 モズメ   C
 タクミ   D+→消滅
 リョウマ  C→消滅
 ヒノカ   C→消滅
 サクラ   C→D+
 アクア   C+

   ↓ 
 
現在の支援レベル(暗夜)


 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 リリス   C+
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+

今日はここまでです。
 白夜は流されるままに戦いを続けつつ、戦争を終わらせるために動き始める話で、暗夜は最初から考えて行動する話だったらいいなという考えで始めたのがこの話なので、強制的に暗夜ルートです。

 DLCで色々と設定が増えてくると怖いですね……、今回は運が良かった。

 とりあえず安価です。
 五章後編入って少ししたら、カムイと話をするキャラクターを決めたいと思います。

 サイラス
 リリス
 マークス
 レオン
 カミラ
 エリーゼ
 モズメ

安価番号をつけ忘れました。

>>267

で、おねがいします。

かみら

◆◆◆◆◆◆

リョウマ「………それがお前の答えだというのか、カムイ!」

カムイ「はい、これが私の答えですリョウマさん……」

リョウマ「なぜだ、なぜだカムイ。お前にだってわかるだろう、暗夜のやってきたことが! 母上を殺し、王国を蹂躙した者たちなのだぞ!」

カムイ「私には私の考えがあります。リョウマさん、それを言ったところであなたが納得することはないと思います。だから何も言いません、ただ私は暗夜王国に戻らなければいけない理由がある、ただそれだけなんです」

リョウマ「くっ、やはりお前は……暗夜の人間ということなのか」

カムイ「私は私です。モズメさんはどうしますか?」

モズメ「答えくらいわかっとるやろ?」

カムイ「そうでしたね、私の後ろへ」

モズメ「わかったわ」

ヒノカ「おい、お前は白夜の民じゃないのか!? お前は村をノスフェラトゥの攻撃で失ったのに、なぜ暗夜に付くんだ!」

モズメ「あたいの命を救ってくれたんは、白夜王国やなくてカムイ様や」

タクミ「……っ!」

モズメ「あれは誰のせいでもあらへん。でも、あたいはあの時からカムイ様のために戦う決めたから、カムイ様の向うところにあたいは付いて行く。ただそれだけや。城ではいろいろありがとな。でも、これだけは変えられへん」

マークス「ふっ、自国の民からこのように言われては、面目も何もあったものではないな」

リョウマ「カムイ……、お前は自身を殺そうとしたガロンの元へと帰ろうというのか。そんなこと許すわけにはいかん。暗夜に行けば、お前は殺されることになる。それをみすみす行かせてなるものか!」

マークス「カムイ………それは本当のことか?」

カムイ「そうですね。たぶん、私が戻ったところでお父様は良い顔をしないでしょう。でも、私には暗夜に帰ります」

リョウマ「ならば、力づくでもここでお前の願いを砕くしかあるまい」チャキ

カムイ「………斬りますか?」

リョウマ「殺しはしない。ただ、もう自由に歩ける体ではいられぬと思え………おまえは白夜にいるべき人間だ。その夜刀神が白夜に牙をむくことがあっては、母上に何と言って詫びればいいのかわからん。それゆえに、お前から自由を奪わせてもらう」

マークス「そうはさせん。白夜の王子よ」

リョウマ「邪魔立てするか!」

マークス「当り前だ。カムイは私にとって大事な家族……たとえ、この血が繋がっていないとしても、家族と信じる者の決断を邪魔するものを私は許さん」


カミラ「……マークスお兄様の言う通りよ。大事なカムイに手を出すつもりなら、容赦しないわ」

レオン「はぁ、姉さんと血が繋がってないからって言って、僕たちの絆が切れることはないよ。残念だったね、白夜の王子」

エリーゼ「うん、カムイおねえちゃんをいじめる悪い人をはやくやっつけて、みんなで暗夜に帰ろっ!」

カムイ「………そういうことです、リョウマさん。私は暗夜に戻ります」

タクミ「そうかい……、ならここで、討たせてもらうよ!」ヒュンッ

サイラス「そうはいかない!」キンッ

タクミ「!? あんたはあの時にアクア姉さんを乗せていた!? くそ、暗夜の人間だったっていうのか!?」

エリーゼ「ええっ、サイラス。今までどこに行ってたの!?」

サイラス「すみません、やっと合流できたみたいで。サイラス、ただいまカムイ様と合流しました」

カムイ「……やっぱりサイラスさんでしたか、あのとき感じた気配は誰かに似てると思いましたから」

リリス「私もいますよ、カムイ様。少し怪我をしてるみたいですから、治療しますね」

カムイ「リリスさん、ウィンダムに帰ったんじゃなかったんですか?」

リリス「ガンズさんと一緒に歩いて帰るなんて、ひどい仕打ちですよ」

カムイ「ふふっ、そうかもしれませんね。ここまで追ってきてくれる人を持てて、私は幸せです」

ヒノカ「カムイ……嘘だろ。なら、私は何のためにここまで頑張ってきたんだ……」

サクラ「カムイ姉様……行かないでください」

カムイ「ヒノカさん、サクラさん。すみませんが、私の居場所はこちらなんです」

サイラス「よし、カムイ。乗ってくれ、すぐにここを――」

レオン「サイラスだっけか、それは無理だ」

サイラス「レオン様? なぜですか、カムイはずっと白夜にいて………」

カムイ「レオンさん、わかっています」

レオン「ここで一度、カムイ姉さんにはちゃんと白夜と戦ってもらう必要がある。周りの兵は、まだカムイ姉さんのことを認めているわけじゃない、カムイ姉さんの意思を見せつける必要がある」

カムイ「わかっています。その代り、殺す必要はありませんよね?」

レオン「ああ、むしろここで誰か一人でも殺してしまったら、引き際が難しくなるからね。僕たちも協力する、早く終わらせて暗夜に帰ろう」

カムイ「はい、それじゃ。行きましょうか、リリスさん、サイラスさん、モズメさん」

白夜兵「裏切り者のカムイ王女を討ち取れ!」


マークス「ふっ、白夜の王子よ。一騎打ちと行こう……」

リョウマ「いいだろう、『雷神刀』の錆になりたければ、かかってくるがいい!」


ヒノカ「カムイを返してもらうぞ!」

カミラ「あらあら、威勢のいいお嬢さんね。でも、呼び捨てにするのは聞き捨てならないわ」


タクミ「どけよ、そいつを殺せないじゃないか」

レオン「生憎だけど、それは無理な相談だね。あんたはここで無様に逃げかえることになるんだから」


エリーゼ「みんな、負けないでー!」

サクラ「み、皆さん、無茶はしないでください……」


マークス「ふん、まだまだだな白夜の王子よ」

リョウマ「くっ……ヒノカ、タクミ、大丈夫か」

ヒノカ「大丈夫だ、大丈夫だが……」

カミラ「中々だったわよ。でも、まだまだ力不足ね。ふふっ」

タクミ「く、くそ……」

レオン「ふぅ、案外手ごわいんだね。でも、これ以上やっても結果は見えていると思うよ」

カムイ「そうですね。白夜兵の方々には悪いですが、これ以上戦っても時間の無駄ですし、わざわざ死傷者を増やす必要はないでしょう」

白夜兵「ぐっ……馬鹿な、なんだこのでたらめなうごきは……」

リョウマ「……退くしかないというのか」

マークス「賢明な判断をするのだな。まだやるというのならば、容赦せん」

リョウマ「くっ、皆の者、一度下がる……カムイ、お前はいずれ後悔することになるぞ」

カムイ「………」

ヒノカ「カムイ……私は……くっ」

タクミ「覚えていろ、いつか必ず、お前を殺してやる」

サクラ「……カムイ姉様……」

ユキムラ「サクラ様、ここは危険です。早く後方へ」

サクラ「………」

アクア「カムイ」

カムイ「アクアさん」

アクア「あなたの選んだ道を見せてもらったわ。でも私は白夜とともにありたいと思う。だから……」

カムイ「はい、わかっています」

アクア「ええ、もしもまた出会うことがあったら……、いいえ、なんでもないわ。それじゃ」


暗夜兵「白夜の軍勢、すべてが撤退を開始しました!」

マークス「よし、今回の戦い、私たちの勝利だ!」

 ウオオオオオオオオオオオオ!!!!

◆◆◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・無限渓谷へと続く道―

カミラ「カムイ!」ギュッ

カムイ「カミラ姉さん、少し痛いです」

カミラ「だめよ、久しぶりに妹の体温を感じたいんだから。よかったわ、無事でいてくれて」

カムイ「はい、長いこと心配をかけました」

カミラ「白夜で変なことされなかった? 何かされたならすぐに言ってね、数十倍にして白夜にお返ししてあげるから」

カムイ「いいえ、特にこれといって何かされたわけではありませんから……。それより、もう姉さんと呼ばない方がいいのかもしれませんね」

カミラ「………どうしてかしら?」

カムイ「私と皆さんは本当の兄妹じゃなかったんですから……、そう考えたらこうして姉さんと呼ばれるのは嫌なことなのかもしれないと」

カミラ「……それはだめよ。私はカムイに姉さんと呼ばれたい。あなたを初めて知ったとき、目が見えないことを気にしないあなたを見た時に、あなたのことを守ってあげたいって思ったの」

カムイ「気にしてないように見えたのにですか?」

カミラ「そう、気にしてないように見えたからよ。どんなことがあっても、気にかけないカムイを見ているとね。少しだけ心配になるから、カムイはすべてを自分の中でどうにかしようとするから」

カムイ「あはは、それほどでもないですよ?」

カミラ「褒めてなんていないわ。ねぇ、カムイもっと私たちを頼って頂戴。前にも言ったけど私たちはあなたの家族、そこに血の繋がりなんてありはしないわ。これからいろいろと何かが起こる、その時に少しでも困ったことがあったら相談して、可能な限りカムイの力になってあげるわ」

カムイ「………はい、ありがとうございます」

カミラ「ええ……」

カムイ「……」モミモミ

カミラ「んっ、カムイ? 胸に手を当ててどうかしたのかしら?」

カムイ「やっぱり、そうですね……いい勝負だったかもしれません」

カミラ「……何の話かしら?」

カムイ「いえ、白夜にカミラ姉さんと良い勝負ができそうな人がいたんです……」

カミラ「………へぇ、そうなの」

カムイ「あれ、カミラ姉さん? どうしたんですか?」

カミラ「……もう少し大きくなった方がいいのかしら?」

カムイ「………」

◆◆◆◆◆◆

マークス「よし、白夜からの追手はいないようだ。このまま無限渓谷を通って王都へと戻る」

エリーゼ「うん、お城に帰って早く休みたいよ」

レオン「まったく、まだ敵地なんだから気を抜くにはまだ早いよ」

エリーゼ「わかってるよ。でも、本当に良かったカムイおねえちゃんが帰って来てくれて、。私、とっても嬉しい」

カムイ「心配をかけましたね」クシャクシャ

エリーゼ「えへへ、頭撫でてもらっちゃった」

マークス「よし、もうそれくらいでいいただろう。さすがに無いとは思うが、待ち伏せされている可能性もある。エリーゼと私の部隊は先の様子を見てくる。レオン、カミラどちらかは周辺の確認を頼む」

レオン「わかったよ。さてと、どうしようか?」

カミラ「私はできればカムイの近くにいてあげたいわ。といってもレオンもカムイと一緒にいたいのよね?」

レオン「そんなことあるわけ……」

エリーゼ「レオンおにいちゃん、白夜におねえちゃんがいるって聞いたとき、一番慌ててたんだよ」

レオン「ば、ばかっ////」

エリーゼ「えへへ、それじゃマークスおにいちゃんと先見てくるね!」

レオン「まったく……あっ、カムイ姉さん、そのこれは……」

カムイ「心配してくれたんですね、レオンさんありがとうございます」

レオン「う、ううう。その、無事でよかった。それだけだから!」

カムイ「はい、ありがとうございます」

カムイ(でも、帰ってからが大変ですね。私がするべきことが、まだはっきりと考えられません、でも今は重荷は何もない方がいい……)

レオン「それで、どうするんだいカムイ姉さん」

カミラ「そうね、カムイに選んでもらいましょう。どちらと一緒にいたいのか?」

カムイ「………そうですね」

◆◆◆◆◆◆

サクラ(カムイ姉様……、やっと出会えたのにこれでお別れなんて嫌です)

サクラ(カムイ姉様が、このまま暗夜に行ってしまったら殺されてしまうかもしれないって、リョウマ兄様は言ってました)

サクラ「そんなの絶対に嫌です。なんとかしてカムイ姉様を……」

サクラ(でも、私に一体何ができるんでしょうか? 私は非力で、力なんて全くない……)

サクラ「うっ……ううっ。どうしたら」

???「サクラ、なに泣いてるの」

サクラ「! ガザハナさん、泣いてなんかいません……」

カザハナ「……あの王女のこと?」

サクラ「やっぱり、カザハナさんには隠しきれませんよね……」

カザハナ「サクラはあの王女が白夜を出ていったから泣いているってわけじゃないみたいだね」

サクラ「カムイ姉様は暗夜に行くって言ってました。すごく悲しかったです、また離れ離れになってしまうから」

カザハナ「……」

サクラ「でも、暗夜に戻ったらカムイ姉様は、もしかしたら殺されてしまうかもしれないって聞いて、そんな場所に帰っていこうとするカムイ姉様を思うととても辛いんです」

カザハナ「そう、サクラはやさしいんだね。みんなはほとんど裏切り者としか王女のことを言ってないのに、サクラはまだ王女のことを姉様って呼んでる。すごいよ」

サクラ「そんなことありません。私は結局心配しているばかりで、何もできない、ただの子どもなんですから………」

カザハナ「サクラ……」

???「それで、サクラ様はどうしたいんですかー?」

サクラ「え、ツバキさん?」

ツバキ「カザハナ、サクラ様のしたいこと聞いてくるって行ったのに、一緒にしみじみしてちゃだめだよ」

カザハナ「だ、だって幼馴染としてサクラの話はできる限り聞きたいの。あたしはサクラが優しい人だって知ってるから、まずは心から解せたらって」

ツバキ「うん、カザハナらしいと思うよー。でも、今は時間に余裕がないから、すぐにでもサクラ様に聞かなくちゃいけない」

サクラ「えっ、ツバキさん? カザハナさん? いったい何の話なんですか?」

カザハナ「……うん、そうだね。ここはツバキの言う通りかも。よし、サクラ!」

サクラ「ひゃ、ひゃい!」

カザハナ「サクラ、サクラはどうしたいの? このまま、ここで待っているだけでいいの?」

サクラ「か、カザハナさん?」

ツバキ「サクラ様。俺とカザハナはサクラ様の臣下です。サクラ様の命令には絶対に従います」

カザハナ「ねぇ、サクラ。これが最後のチャンスになっちゃうかもしれないんだよ? それでもいいの?」

サクラ「………」

サクラ(……二人とも、ごめんなさい。私のわがままに、巻き込んでしまって、でも二人がそう言ってくれるなら)

サクラ「ツバキさん、カザハナさん」

ツバキ・カザハナ「はい、サクラ様」

サクラ「………」






サクラ「私………」









サクラ「私を…………」












「カムイ姉様の元へ、連れて行ってください!」






第五章 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C
 エリーゼ  C
 カミラ   C→C+
 リリス   C+
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+

今日はここまでになります。ここから個人妄想が全開になってく感じです。

 安価でカムイと一緒に待機するのをどちらにするか決めたいと思います。

 レオン
 カミラ

 のどちらかになります。

 安価指定の番号は

 >>285
 
 になります。
 


乙!
ここからがFEifっていう題材の醍醐味やね
安価はレオン

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・無限渓谷入口―

レオン「……」

カムイ「……」

レオン「姉さん、なんで僕を選んだんだい?」

カムイ「どちらでもいいと言われたので、私のことを一番心配してくれたレオンさんにしただけですよ?」

レオン「そ、そう。……だけど、無事に帰って来てくれてよかったよ」

カムイ「……無事ですか。そうですね、よく生きてここまでこれたものです」

レオン「ねぇ、姉さん。さっきの話だけど」

カムイ「……お父様のことですね」

レオン「父上が姉さんを殺そうとしたって……」

カムイ「そうですね。殺そうとしたというよりも、用が済んだという考えがいいでしょう」

レオン「……」

カムイ「どうやら、私はお父様が与えた役割をすべて終えたようなので、正直帰ったところで歓迎されません」

レオン「その心配はしなくていいよ。僕が何とかしてみる。それに悪運の強い姉さんなら、なんだかんだどうにかできる気がするよ」

カムイ「ふふっ、悪運だけでどうにかなるならレオンさんに手は掛けさせませんよ。でも、無理はしないでくださいね。レオンさんの立場が危うくなるようなことはやめてください」

レオン「そんなことにならないように考えてるから大丈夫だよ……。そろそろ僕たちに最後尾の部隊が合流する頃だと思う。マークス兄さんとエリーゼもそろそろ戻ってくるはずだよ」

カムイ「はい、ではそろそろ移動の準備を……」

 ……サ……バ………サ……

カムイ(………これは何の音?)

カムイ「モズメさん」

モズメ「なんや?」

カムイ「あちらの方角、何か見えますか?」

モズメ「あちらって、白夜の方角やけど………」

サイラス「……!」

リリス「何か、こっちに来てます」

レオン「………天馬みたいだね。誰かが僕たちを追ってきたみたいだけど、あれだけ?」

カムイ「………」

カムイ(無謀すぎる行為、とてもじゃありませんが場数を踏んでいる人がする行為じゃないですね)

レオン「敵である可能性は高いよ、姉さん」

カムイ「まずは、待ちましょう。こちらの人数なら、少しで事足りますから。相手の目的が知りたいところです」

レオン「同感だね……」

 バサバサバサバサ

カムイ(いったい誰が……こんな危険場所にやってきたというんですか?)

カムイ(天馬ということはヒノカさんでしょうか? でも、ヒノカさんはすでに幾度となく戦いを経験している人、こんな死にに行くようなことをそう簡単には行わないでしょう)

カムイ(では……)

カムイ「一体誰が……」

 バサッ……バサッ…… スタッ シュタッ

カムイ(天馬に一人、降りたのが二人……。そのうちの一人……この人は、まさか)

サクラ「ハァ……ハァ……カムイ姉様!」

カムイ「サクラさん……あなたがどうしてここに? 撤退したはずじゃなかったんですか」

サクラ「私は………カムイ姉様を連れ帰りにきました。私たちと一緒に白夜に帰りましょう。今なら、リョウマ兄様やみんなの誤解を解けるはずです」

レオン「わずか三人で何しに来たかと思えば、寝言は眠りながら言ってほしいね」

カザハナ「ちょっと、誰だか知らないけど聞き捨てならないわね! 私たちは本気でここまで来たんだから」

レオン「ふん、白夜の一般兵に興味なんてない。僕はそこにいる白夜の王女に言っている。さっさと尻尾を捲いて帰るんだね。ここにいたって勝ち目はない」

カザハナ「ふん、暗夜の王族っていうのはこんな奴らばっかりなのね。それと、あたしにはカザハナっていうちゃんとした名前があるんだから」

レオン「そうかい。で、その一般兵のカザハナが僕たちに一体何のようなわけ?」

カザハナ「いちいちムカってする言い方、あんたに話すことなんて何もないわ。あたしたちの用事はカムイ王女、あんたよ!」

カムイ「………カザハナさんでしたか、残念ですけどその願いにうなずくことはできません」

カザハナ「サクラのことを思うんだったら、今すぐこっちに戻ってきなさいよ!」

レオン「お願いする側の態度じゃないね」

カザハナ「暗夜の奴にお願いなんて死んでもごめんよ。あたしはサクラの命令に従うだけ、ただそれだけなんだから」

ツバキ「うんうん、カザハナの考えに僕も賛成だなー」

カムイ「天馬の方ですか」

ツバキ「初めましてー。サクラ様の臣下、ツバキって言います。カムイ王女、平原で戦った方たちはあなたのことを目が見えないと油断してましたけど、俺は手を抜いたりなんてしませんから……」

カムイ「……サクラさん、頼みます。今すぐ引き返してくれませんか、まだここの包囲は完成していません。今ならどうにか見つからずに白夜の陣営に帰ることができます」

サクラ「か、カムイ姉様……」

カムイ「お願いしますサクラさん。あなたはここにいてはいけないんです。無理に戦う必要は今どこにもありません、だから……」

サクラ「駄目です!」

カムイ「………」

サクラ「今ここでカムイ姉様を止められなかったら、暗夜で殺されてしまうかもしれない……。それを見送るなんてできません!」

カムイ「ふふっ、とても頑固なんですね。サクラさんの見た目からは想像できません」

サクラ「……本当は私は強情なんです。だから、ここは引けません」

カムイ「ええ、そちらがその気ならやるしかありません……」

レオン「カムイ姉さん、サポートするよ」

カムイ「ありがとうございます……。すみませんが、皆さん。サクラさん、ツバキさん、カザハナさんを殺さないようにお願いします」

レオン「姉さんに従うよ。でも、後続が到着する前に決着をつけないといけない。他の兵たちは、容赦なく三人を殺すはずだ」

カムイ「はい、わかりました。行きますよ、皆さん!」



カザハナ「サクラ、早く命令してよ。ここまで来たらもうやるしかないんだから!」

ツバキ「サクラ様、命令をお願いしますー」

サクラ(……行きます。カムイ姉様!)

サクラ「ツバキさん、カザハナさん。カムイ姉様を取り戻してください、おねがいします」

カザハナ・ツバキ「サクラ様、わかりました!」




カムイ「サイラスさんはモズメさん、リリスさんと陣を組んでツバキさんを牽制してください。私はサクラさんの元へ、レオンさんと向かいます」

サイラス「わかった。モズメ、後ろ任せたぞ!」

モズメ「まかせとき!」

リリス「はい、怪我をしたら言ってください」

ツバキ「へぇ、馬で相手するのかい? なら、さっさと君たちを倒して、カザハナと挟み撃ちにするのがいいかもねー」

サイラス「ふん、ならさっさと倒して見せるんだな」

ツバキ「言ってくれるねー。後悔しても知らないよ」

レオン「そっちからこっちに攻めてくるなんて。いい度胸してるじゃないか」

カザハナ「うるさい、むしろカムイ王女からこっちに来てくれるなんて、走る手間が省けたって感じ」

カムイ「カザハナさん」

カザハナ「……あたしはあんたを倒して連れ帰る。ただそれだけ、サクラのためにここまで来たんだから負けるわけにはいかない!」

レオン「ふん、一般の兵がどこまでできるのか見せてもらおうかな。失望させないでよね」

カザハナ「ムカつく、すぐにその余裕を吹き飛ばしてやるんだから!」

カムイ「では、行きますよ。カザハナさん」

 タタタタタタッ

カザハナ「!?」

カザハナ(こんなに入り組んでる場所なのに、すごい急接近。本当に目が見えてないって先入観捨てないとだめだ」

カザハナ「えい!」

カムイ「てやぁ!」

カザハナ「まだっまだああ!」

 キンッ キンッ 

カザハナ「負けてたまるかぁ! えい、やぁ!」

カムイ(思った以上に攻めが強いですね……。後続の到達までの時間があやしくなってきました……)



ツバキ「あれー、なんでこうもしぶといのかな」

サイラス「ハァ……ハァ。幼馴染から頼られてるんだ、そう簡単に倒れるわけにはいかないんだ」

ツバキ「なら、これで!」

モズメ「させへんよ! サイラスさん、大丈夫?」

サイラス「ああ、まったく。ここまで強い相手を任せるなんて、カムイも意地が悪いよ」

モズメ「本当やね。でも、負ける気なんてあらへんよ」

カザハナ「このまま、押しきれば! てやぁ!」

 ザッ 

カムイ(また距離を戻されてしまいました。すごい気迫ですね……。早くしないといけないというのに、なかなかうまくいきませんね)

レオン「カムイ姉さん、この子は僕が引き受けるよ」

カムイ「いいんですか?」

レオン「この二人はサクラ王女のために戦ってる。なら、そのサクラ王女に危害が向かう状況になれば……」

カムイ「そうするしかなさそうですね。では、一気に私が抜けますから、私の出発地点に向けて魔法をお願いします」

レオン「ああ、せいぜい。僕が撃った魔法に当たらないようにしてよね」

カムイ「わかってます。私を信じてください」

カザハナ「何ごちゃごちゃ話してるの! こないならこっちから!」

カムイ「………でやぁ!!!!」ブンッ
 
 ガキン!

カザハナ「ううっ……! すごい振り下ろし、手が痺れ……って、あんた!?」

カムイ「すみません、戯れている時間はないので」

カザハナ「行かせない! それに背中ががら空きよ!」

レオン「ブリュンヒルデ!」

カザハナ「えっ、カムイ王女に向けて!?」

カムイ「……!」サッ

 ドォン

カザハナ「避けた……! しまった、サクラ!」

レオン「余所見をしてる暇はないよ」


カザハナ「えっ、きゃああああ」

レオン「ふん、こんなものかい?」

カザハナ「う、ううっ、まだまだ……あうっ」ドタッ

レオン「死にたくなければ、そのままにしているんだね」

カザハナ「サクラ……サクラぁ、ごめん、ごめんね……」ポロポロ……


ツバキ(! カムイ王女がカザハナを抜けた!?)

ツバキ「サクラ様!」

サイラス(視線が逸れた!)

サイラス「今だ! 当たれぇ!」

ツバキ「しまっ……」

天馬「ヒヒイイイン!!!!」

ツバキ(馬をやられた!? 態勢が崩れて……)

ツバキ「ぐぁ…… くっ!」

 チャキン

サイラス「無駄な抵抗はするな」

ツバキ「………俺が負けるなんて、サクラ様……」




サクラ「………ツバキさん! カザハナさん!」

 タタタタタタタタッ

カムイ「見つけましたよ、サクラさん」

サクラ「カムイ姉様……」

カムイ「サクラさん……いいえ、白夜王国の王女、サクラ。もうあなたを守るものはいません」

サクラ「……ううっ」

カムイ「投降してください」

サクラ「………カムイ姉様。どうして、白夜に戻って来てくれないんですか……」

カムイ「………」

サクラ「………どうして、どうしてですか姉様……」

カムイ「白夜に帰るという答えを私は持っていない。ただそれだけなんですよ」

サクラ「………」

カムイ「……」

サクラ「私の……私の負けです……カムイ姉様」

◆◆◆◆◆◆
~戦闘後~

カザハナ「………」

ツバキ「………」

サクラ「………」

レオン「で、姉さんどうするの?」

カムイ「できれば、何もなかったことにして処理したいところなんですが、もうそうはいかないんですよね」

レオン「もう向こうには後続部隊の影が見える。そしてここに隠れられるような場所はどこにもない。このまま、三人を置いて行けば確実に殺されるだろうね」

サクラ「!!!!」

カムイ「もう少し早く終わらせることができればよかったんですが、こうなっては―――」

カザハナ「ねぇ……」

カムイ「はい?」

カザハナ「サクラだけでも助けてよ、あたしはどうなっても構わないから、サクラだけでも助けてよ」

ツバキ「俺からもお願いだ。こんなこと言えた義理じゃないことはわかってる。わかってるけど、サクラ様だけはどうか助けてほしいんだ」

レオン「さっきまでは連れて帰ると粋がっていたくせに、ずいぶん調子が良すぎるんじゃないかな?」

カザハナ「それくらい、あんたに言われなくたってわかってる! でも、サクラだけは、サクラだけは助けてほしい。お願い、なんだってするから……」

サクラ「そ、そんな。私の命令に二人は私の命令に従ってくれただけなんです。カムイ姉様、私の代わりに二人を助けてください! お願いします」

カムイ「………残念ですけど、私にはどうにもできない問題です」

サクラ「そ、そんな……」

カザハナ「なんでよ! あんたは暗夜の王族なんでしょ! 王族ならそれくらいどうにかできるんじゃないの!? なんでできないの」

カムイ「カザハナさん。私は、お父様に絶対に歓迎されることのない人間なんです。この意味がわからないわけじゃないですよね?」

カザハナ「………」

カムイ「私が持っている暗夜の王族という肩書に効力なんて無いんです。ただの名札と同じです、そんな私が白夜の、しかも王女を捕虜にして所有権を主張したところで、そんなものが認められるわけはないんです」

カザハナ「な、なんで、なんですぐに決めるの。もしかしたら………」

カムイ「もしかしたらという過程は私の立場を考える限り無意味です。私があなた方を捕虜として得たとしたら『もしも』はありません、絶対的に屈辱的な終わりが待っているだけでしょう」

カザハナ「そ、そんな。そんな、そんなこと!」

カムイ「だから、帰って欲しかったんです。その忠告をあなたたちは無視してしまった。無視してしまった以上、その結果がどうなるか、覚悟していたはずです。サクラさんも、それは考えていたことでしょう」

サクラ「ううっ、ごめんなさい。ツバキさん、カザハナさん、私が、私が我慢をしなかったばっかりに」

カザハナ「サクラの所為じゃない! 悪いのは……悪いのは、あたしだよ。あたしが、あたしがサクラに決めるように迫ったから」

ツバキ「俺も同罪だよ。ほんと、二人ともごめん」

レオン(本当にまずいことになった。ここで白夜の王女が殺されたとなれば、白夜は防衛をかなぐり捨てて、暗夜に攻めてくるはずだ。暗夜はまだ国内に問題を抱えているから、それをどうにかしたかったんだけど。でも、流石にこれはどうにもできない。あのとき、サクラ王女が帰るという選択肢をしなかった時点で――)

 チョンチョン

レオン「ん?」

カムイ「………」

レオン「姉さん、どうかした?」

カムイ「いいえ、サクラさんとカザハナさん、そしてツバキさんについてのことなんですが」

レオン「姉さんだって言っていただろう、姉さんの捕虜として扱っても絶対に殺される。父上はすぐにそう決めるよ。これはいくらなんでも変えられないことだから」

カムイ「………レオンさん。なんでサクラさんたちを殺さないように指示を出したと思いますか?」

レオン「……言いたくはないけど、サクラ王女が妹だから、でしょ?」

カムイ「それは全体の一割程度の理由ですね」

レオン「……姉さん。何を考えてるの?」

カムイ「ええ、私の最初するべきことを考えていました。まずはお父様の信用を勝ち取るのが一番だと考えました。重荷がないのでいろいろとやることがあるかと思いましたが、ここで重荷が増えましたので、それを使おうと思います」

レオン「まさか、カムイ姉さん………」

カムイ「……レオンさん、協力してもらってもいいですか?」

レオン「……わかった。協力するって言ったからね。で、僕は何をすればいいの?」

カムイ「はい……それはですね」


第六章 前篇 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C→C+
 エリーゼ  C
 カミラ   C+
 リリス   C+
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D
 ツバキ   D

仲間たちの支援
 
 今回の戦闘でサイラスとリリスの支援がCになりました。
 今回の戦闘でサイラスとモズメの支援がCになりました。
 今回の戦闘でリリスとモズメの支援がCになりました。

 今日はここまでになります。やっぱり、マークスがリョウマと一騎打ちしたら大抵敗走だよね……

 仲間たちの支援ですが、アバウトに構成していきます。
 安価で誰と戦闘の組を作ったりすることがあると思うので、ご参加いただけると幸いです。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆
 ―暗夜王国・王都ウィンダム『クラーケンシュタイン城』―

マクベス「………」

ガロン「………」

マークス「父上、ただいま戻りました」

ガロン「うむ、マークスよ。敵国での戦闘、御苦労であったな」

マークス「ありがたきお言葉。それと、もう一つ良い知らせが。無限渓谷にて行方不明となっていたカムイが、無事に戻りました」

ガロン「…………」

カムイ「お久しぶりです、お父様」

ガロン「ふん、今さら何をしに戻ってきたのだ……」

エリーゼ「お、お父様……? カムイおねえちゃんが帰ってきてくれたのに、どうしてそんな言い方……」

カムイ「エリーゼさん、仕方ありません。言ったでしょう、私は歓迎される立場にいないと」

エリーゼ「……そんな」

ガロン「カムイ、お前はこの行方不明になった間、白夜の王城にいたと聞く……」

カムイ「はい、間違っていません」

ガロン「お前はそこで白夜女王より、出自を聞かされたのであろう? 自分が我が娘ではないこと、幼い頃に攫われた白夜の王女であることも。そして、我が暗夜王国が憎き敵国であることも、すべて理解しているのだろう?」

カムイ「はい、よく聞かされました」

ガロン「にも拘らず、この城に戻ってきたのは何故だ?」

カムイ「なぜって、もしやお父様は私があなたを殺すために送られてきたとお考えなんですか?」

マクベス「自分の口でいうとは、自覚があるようですな。カムイ王女、私たちはあなたを信用していないというわけです」

マークス(カムイの予想通りだな……。やはり、歓迎されることはなかったというのか……ここは)

マークス「父上、カムイが父上を討つために送られてきたというのは、あり得ないことです」

ガロン「なんだと? なぜそう言い切れる」

マークス「その証拠をお持ちしましょう。レオン、捕虜をここへ」

レオン「……わかったよ」




カザハナ「放せ、放しなさいよ!」

サクラ「カザハナさん! 二人に乱暴しないでください!」

ツバキ「無防備な女の子に乱暴とか、本当に暗夜は救いようがないね」

マクベス「ほぅ、これは良い土産ですね……」

ガロン「………こやつらは」

マークス「はい、白夜王国の王女とその臣下たちです。カムイは平原の戦闘の後、あとを追ってきたこの者たちを打倒し捕らえました。カムイが父上を暗殺しようというのなら、ここに彼らがいることはありえません」

マークス(いくら、父上といえど、こうして王女を捕らえた事実を踏まえられれば、カムイを見る目を変えてくれるはずだ)

ガロン「ふっ、それがわしに対する忠誠の証……、そう言いたいのだな?」

サクラ「カムイ姉様………まさか、私たちを殺さなかったのは、そんなどうして!」

カザハナ「カムイ王女、絶対、絶対あんたのこと許さないんだから! 絶対に……」

マクベス「黙りなさい」ドスッ

カザハナ「うっ、ぐぁ……」ドタッ

マクベス「それ以上騒ぐと、今すぐにでもその口が開けないようにしてしまいますよ?」

カザハナ「ううっ……こんな、こんな終わり方なんて……」ゴホッゴホッ

ツバキ「カムイ王女………君はこの状況をどうも思わないっていうのか。サクラ様は君をずっと思っていたというのに!」

カムイ「うるさいですね。少し静かにしていてもらえますか」バシッ

ツバキ「ぐっ……」ポタッポタッ

サクラ「ツ、ツバキさん!」

カムイ「捕虜の分際で、何を懇願しているんですか。少しは立場を分けまえてください」

エリーゼ「カ、カムイおねえちゃん……、なんだか怖いよ」

カミラ「………そうね。でもカムイの言う通りよ。捕虜はここでは口をふさいでおくこと、それが唯一できることなんだから」

エリーゼ「カミラおねえちゃん?」

レオン「そうだよ。今はカムイ姉さんを信じるしかないから……」

レオン(本当に、うまくいくんだよね。姉さん………)

カムイ「すみませんお父様、時間を取らせてしまったようです。どうですか私の忠誠心の形はこの捕虜三人、これで私を認めてはくれませんか?」

カザハナ(なによ、結局私たちを使って、安全を確保しようって魂胆じゃない! サクラが、サクラが昔から、こんな奴のために悩んできたなんて、こんなひどいことって……)

ガロン「くっくっく、カムイよ……お前の考え見せてもらった。確かに手土産見せてもらったぞ……」

マークス「では………父上」






ガロン「だが、これだけでは足りんな」






マークス「な、父上何を言って」

ガロン「黙れ、マークス。今わしはカムイと話をしている、お前の意見は聞いておらん」

マークス「………くっ」

カムイ「足りないとは、どういう意味でしょうか。お父様」

ガロン「お前の忠誠心は確かに見せてもらった、しかし、それだけではお前を信用することはできぬ、そう言っておるのだ」

カムイ「そうですか……」

ガロン「カムイ、命令だ。その三人の首を、今ここで跳ねよ」

サクラ・カザハナ・ツバキ「!!!!!!!」

マークス「父上!」

ガロン「カムイ、お前の暗夜への忠誠心は、その三人の血によって証明される。さぁ、白夜ではなく、この暗夜にいることを選んだその意思、ここでわしに見せつけよ!」

カムイ「………」










カムイ「はい、わかりました」ジャキ

サクラ「ひっ……カムイ姉様」

カムイ「衛兵の方々、三人を動けないように拘束してください」

衛兵たち「し、しかし……」

ガロン「カムイの命令に従え!」

衛兵たち「ハ、ハイッ!」

カムイ「……白夜で手に入れた夜刀神が、白夜の王女とその臣下の命を奪う刀になるなんて。おもしろいことですね」

カザハナ「やめて、サクラは……サクラだけは! サクラだけは!」

サクラ「カザハナさん、ツバキさん。ごめんなさい、ごめんなさい……」

ツバキ「ほんと、絵に描いたような鬼だよ君は、絶対に許さないからね」

カムイ「そうですか、別に許さなくて構いませんよ。私はお父様から信頼を回復したいだけですから。そのためなら何だってします。その最初が、皆さんの命を奪うことになった。ただそれだけです」

エリーゼ「い、いや。カムイおねえちゃん。そんな、そんなことしちゃ――」

カミラ「………」

マークス「………」

レオン「………」スッ

カムイ「結局こうなるから、殺しておこうと言ったのに。まったくとんだ時間の無駄遣いです。やはり、首だけ持ってくるのが一番でしたね……」

サクラ「カムイ……姉様……」

カムイ「臣下が死ぬのを見るのは辛いでしょう、私なりの慈悲です。サクラさんから、送って差し上げますね」

ツバキ「サクラ様!」

カザハナ「サクラぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

カムイ「さようなら、サクラさん」ヒュンッ!

サクラ「!!!!!!!!」




 ガキンッ!!!!

カムイ「――っ!」

 ヒュンヒュンヒュンヒュン カランカラン

マクベス「んー? これは一体何の真似ですかな?」

ガロン「……」

マークス「なぜ、こんなことを」

エリーゼ「ど、どうして……」

カミラ「……ふふっ、そういうことね」



レオン「カムイ姉さん、そこまでだよ………」

サクラ「……えっ?」

カザハナ「な、何が起こって」

カムイ「レオンさん、なんで邪魔をするんですか?」

レオン「まったく、姉さんがここまでずる賢い人間だなんて思わなかったよ。まさか、僕が手に入れた捕虜を自分の手柄にして、お父様からの信頼を勝ち取ろうなんて、筋書きを作るんだから」

カザハナ「えっ、えっ? ど、どういうこと、あたしたちって確か――って、痛ぁ! ツバキ何すんのよ!」

ツバキ「カザハナ、今は何も言わない方がいい。捕虜は捕虜らしく、黙っておくほうがよさそう」

ガロン「どういうことだ。レオン……」

レオン「はぁ、確かにカムイ姉さんはこの三人を倒す戦闘に参加はしたけど、全く役に立ちませんでした。むしろ怯えて逃げるばかり。そこで僕と他の兵でこの三人を捕らえた。そしたら、本当に笑っちゃうことだけど、姉さんはこれを献上すれば、暗夜での地位を回復できる、そんなことを言い出したんです」

カムイ「………誰にも言わない約束だったじゃないですか」

レオン「僕が聞いたのは、捕虜で父上が認めてくださるまでの話だよ。僕には僕なりに捕虜を有効的に使う方法を考えてる、それを台無しにされるわけにはいかなかった」

カムイ「お父様、私は――」

ガロン「カムイ、黙っておけ。レオン、この者たちを生かしておく必要があると、お前は言うのだな」

レオン「はい、父上」

ガロン「その理由を申してみよ」

レオン「氷の部族の反乱のことは、父上も耳にしておられると思います」

ガロン「うむ、反乱は抑えねばならない。しかし、それとその捕虜たちと何か関係があるというのか?」

レオン「現在暗夜王国は白夜王国という大国との戦争に入っています。そのためには暗夜王国全体としての結束を強めることが急務です。今、暗夜の各地には表面上化しているだけでも、多くの国々が反乱を起こしている。ここを白夜に付け込まれると、内側で活動する反乱軍に油を注ぐ行為になります」

カザハナ(なに、こいつ。難しいこと言ってるけど……。もしかして、あたしたちを庇おうとしてるの?)

レオン「白夜の王女と臣下を材料に白夜を牽制している合間、それらの問題を解決すべきだと僕は考えている」

ガロン「………」

マクベス「なるほど、内部の問題を片付け暗夜の力を確かなものにする。レオン王子らしい考えです。王女が捕らえられていると知れば、白夜の腰抜けたちは、そう簡単に暗夜へ攻め入ってこれなくなることでしょう」

ガロン「レオン、お前は暗夜王国に白夜を倒すほどの力がないといいたいのか?」

レオン「今の力だけでも白夜を征服、支配することは簡単でしょう。現に――」チラッ

カザハナ「な、なによ!」

レオン「この一般兵は僕の一撃で地に倒れましたから」

カザハナ(………なんであたしのことを例に出すのよ!)

レオン「ですが、犠牲は最小限にとどめようと考えるのが僕のやり方です。お父様、白夜を倒したあとでも戦いはあります。それを考えれば、多くの戦力を維持し、被害を最小限にすることは大きな課題となるでしょう。僕は、それを考えてこの捕虜三人の命を奪うべきでないと進言します」

カムイ「お父様。ここで捕虜を残しても意味などありません、ここで斬り伏せてしまうことが、暗夜のためです」

マクベス「どうしますか、ガロン王様……」

ガロン「ふっ、そうだな。カムイ、一度確認する。レオンの言っていたこと、それはすべて本当か?」

カムイ「くっ、はい。私はお父様から信頼されたい……ただ、そのためだけに」

ガロン「くっくははははははははははははは!」

一同「!!!!!!」

ガロン「くっくっ、そこまで小賢しいことを考えるとは、お前のことを少しばかり誤解していたようだ。お前のその悪だくみ、わしには愉快に見えた。ここまで人の心を踏みにじる真似ができるお前は、やはり暗夜の王族なのだろう……」

カムイ「お父様……」

ガロン「カムイ、お前を我が子として、もう一度迎え入れてやろう」

カムイ「ありがとうございます」

ガロン「して、レオン」

レオン「はい、父上」

ガロン「お前の考えは理解した。すぐに王女とその臣下を捕らえたこと、白夜へ伝えよ」

レオン「ありがとうございます、父上。捕虜は捕らえた僕が面倒を見ますので、手は煩わせません」

ガロン「構わん、好きにするがいい。皆の者、御苦労であった。各々休息に入るがよい……」

カムイ「………」コクリッ

レオン「………」コクリッ

マークス「一体、何が……」

エリーゼ「ほ、ほんと。よくわからなかったよ」

カミラ「ふふっ、そうね。でも、よかったじゃないすべて丸くおさまったみたいだから」

◆◆◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・レオン邸―

レオン「カムイ姉さん。今はどこにも監視の目はないよ。優秀な部下がすべて確認し終えたみたいだから」

カムイ「そうですか……。レオンさん、ありがとうございました。おかげでサクラさんたちの命をどうにかつなげました」

レオン「べ、別にカムイ姉さんのために頑張ったわけじゃないから。僕にだってやるべきことがあった、ただそれだけだよ」

カムイ「いいえ、お礼を言わせてください。ありがとうございました」

レオン「でも、これからが大変だよ。父上に言ったとおり、僕はあの三人を白夜への抑止力として引き取ったにすぎない。もしも、すべての反乱が終息して、白夜へと攻める準備が整ってしまった時は……」

カムイ「わかっています。それまでに色々と考えるべきことが出来てくると思います。でも、レオンさんの演技は中々でしたよ」

レオン「そんなこと言ったらカムイ姉さんの演技のほうがすごいというか、本当にサクラ王女の首を落としてしまうかと思ったよ」

カムイ「がんばりましたから」

???「何が頑張りました、よ!」

レオン「ん、一般兵か。少し静かにしてほしいね。姉さんと大事な話の最中なんだ。さっさと、与えた部屋に戻ってよ」

カザハナ「一般兵じゃない、あたしにはカザハナって名前があるんだから!」

カムイ「カザハナさん、すみません。怖い思いをさせてしまいましたね」ピトッ

カザハナ「ええっ、なんでいきなり人の顔……触って」

カムイ「カザハナさんの顔を知りたいだけですから。他意はありませんよ」

レオン「カザハナ、諦めるんだね。姉さんはそれを始めたら、お前を調べ尽くすまでやめないはずだから」

カザハナ「な、そ、そこは眼尻……ひぅ」

カムイ「カザハナさんは眼尻が弱いんですね。なんだか威勢が良かっただけに、そう言う弱弱しい声が出るというのは、なんだかとてもいいですね」

カザハナ「な、何がいいのよ! ひゃうっ!」

カムイ「ふむ、このまいてあるものはなんですか?」

カザハナ「それは鉢巻、って解かないでよ! ああっ、髪が前に掛って」 

カムイ「すみません。ちょっと力を入れすぎちゃったみたいです」

カザハナ「もうっ……」

レオン「で、何の用? 特に話すことは今ないんだけど」

カザハナ「……ありがとう」

カムイ「?」

カザハナ「あたしたちのこと、どうにか助けてくれて……」

カムイ「そんなことですか……。別に気にしないでください、サクラさんたちを利用して、私がどうにか地位を回復したことに違いないんですから。結局、私はあなたたちを売ったんです」 

レオン「そうだよ。それにお前たちの命が絶対に助かる保証なんてない。僕は自分の考えを通すために、お前たちを利用しただけだよ。お礼を言われる筋合いはない」

カザハナ「そうかもしれないけど、お礼は言いたいの。ありがとう。それに牢屋じゃなくて、こんな立派な場所に置いてくれるんだから、少しだけ見直したよ」

レオン「ふん、カザハナは立ち回りを見直したほうがいいよ。戦場であんな倒れ方したら無様でしかないからね」

カザハナ「………なんで、そうやって人をコケにする発言するわけ? あたしはお礼を良いに来ただけなのに……」

カムイ「ふふっ、カザハナさん。レオンさんは、照れてるんですよ」

レオン「ちょ、カムイ姉さん!」

カザハナ「……へー、そうなんだ」ニヤニヤ

レオン「………こいつだけ打ち首にしとけばよかった。なんで姉さん、こいつから始めなかったの?」

カムイ「順序っていうものがありますから……。それでは私はこれで失礼しますね。お二人の……いえ、レオンさんの邪魔をするわけにはいきませんから」

レオン「姉さん、なんでそこ言いなおしたの?」

カムイ「他意はありませんよ。それよりもレオンさん、今度教えてほしいことがあります、お時間をいただけますか?」

レオン「連絡をしてくれれば出来る限り時間は取れるようにするよ」

カムイ「ありがとうございます」

カムイ「レオンさん、カザハナさんやツバキさん、そしてサクラさんをお願いしますね」

レオン「わかってるよ。心配症だね」

カムイ「すみません。それでは、失礼いたしますね」

レオン「うん。おやすみ、姉さん」

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・北の城塞・カムイの部屋―

カムイ「…………」

カムイ(このベッドの上に倒れられるのが、夢のようですね)

カムイ(本当に、今日までのことが夢だったらと望まぬことはありません)

カムイ(…………)

カムイ(どうしましょうか……。思った以上に辛いですね……)

 コンコン

カムイ「ん? 誰ですか?」

 ギィ

???「カムイ様」

カムイ「あれ、どうしたんですか……」

リリス「カムイ様、少々時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

カムイ「リリスさん?」

今日はここまでです。次にこの章が終わる感じです。
         前回の選択してカミラだった場合は、カミラがサクラたちを引き取っている形になる予定でした。

リリス「はい、カムイ様に少し付いてきていただきたい場所があるんです」

カムイ「別に構いませんよ。でも、できれば城塞から出る場所でない方がうれしいんですが」

リリス「はい、大丈夫ですよ。この部屋から一歩も出たりしませんから。少しだけ失礼しますね」ダキッ

カムイ「リリスさん、抱きついてどうかしましたか?」

リリス「はい、今からカムイ様をご招待する準備みたいなものです」

カムイ「これがですか? ベッドの上で抱き合ってるところをジョーカーさんたちに見られたら、いらぬ誤解を生みそうですね」

リリス「そ、そういう意味じゃありませんから!/////」

カムイ「ふふっ、ではリリスさんにお任せしますから。どうぞ、私をそこに連れて行ってください」

リリス「はい。 神祖竜よ、汝が地に、我らを迎え入れたまえ」

 ヒュオオオオオオオオ 

カムイ「!?」

 トスッ

カムイ「……ここは一体?」

リリス「すみません。驚かせてしまいましたか?」

カムイ「えっと、さっきまで私とリリスさんはベッドの上にいたはずなのに……、あのここはどこなんですか?」

リリス「はい、ここはカムイ様が先ほどまでいた大陸、いえ世界とは異なる場所、星界と呼ばれる場所です」

カムイ「星界? リリスさん、あなたは一体?」

リリス「まだ人の体は保てるみたいです。もう少し無理をすることになっていたら、維持できなかったかもしれませんね」

カムイ「維持ですか?」

リリス「はい。カムイ様、私は人間ではないんです」

カムイ「奇遇ですね。私も人間ではなかったみたいですから、お揃いです」

リリス「………」

カムイ「……?」

リリス「……あの、一世一代の告白だったんですけど?」

カムイ「それに目が見えない私が今さら形で嫌うことなんてありません。リリスさんはリリスさんですよ」

リリス「はぁ、覚悟をきめてきたんですけど、全部カムイ様に台無しにされた気分です」

カムイ「すみません。ところでこの星界というのは、どういう場所なんですか?」

リリス「……本当にカムイ様は動じない人ですね。なんだか少し寂しいです」

カムイ「そんなことはないですよ。リリスさんにさびしい思いをさせていたわかってしまったら、顔を撫でてあげなくちゃと思うくらいには、人のことをよく考えてますから」

リリス「それって、私の顔を触って反応を確かめたいってだけの話ですよね?」

カムイ「……」

リリス「まぁ、その話はもういいです。ここは星界、時空を司る星竜の加護を受けた世界です」

カムイ「加護を受けた世界ですか?」

リリス「はい、ここでは時間の流れが少し異なります。感覚的にはこちらの方が無効の世界より時間の進みが早いとだけは言えます。それに、竜脈も満ちています」

カムイ「へぇ、どういうものができるんですか?」

リリス「そうですね……。ちょっと待っていてください。えいっ!」

 ドォン!

<マイルーム>

カムイ「いきなり何かができたみたいですね」

リリス「はい、こうやって何かを建てたりできます……けど、この建物は駄目ですね」

カムイ「どうしてですか?」

リリス「その、カムイ様のためにとお家を作ってみたんですけど……、その梯子で登らないといけないものにしてしまったので」

カムイ「別にいいですよ。梯子を登るくらい造作もありませんから、訓練で梯子から一気に下りるのもこなせますから」

リリス「いいえ、木を伐採しますね」

 スパーン!

<マイルーム(地)>

リリス「これで大丈夫になりました。積もる話もありますので、中で話をしましょう」

カムイ「はい、わかりました。しかし、私の家ですか。なんだか柄にもなくワクワクしてしまいますね」

◆◆◆◆◆◆
―マイルーム―

カムイ「それでリリスさん、私にこのような場所を提供した理由というのは何なんですか?」

リリス「カムイ様は、これからどうするつもりなんですか?」

カムイ「……これからというのは、暗夜で何をするかということですよね?」

リリス「はい。今回はどうにかなりました。でもこれはガロン王様の目が届いていなかった場所で準備ができたからですよね?」

カムイ「そうですね。お父様は私が死んでいると仮定していたようですし、たぶん生きていたとしても白夜に付くだろうと思っていたのかもしれませんから」

リリス「ここは、あの世界とは違う場所です。そして、ここで話したことは当の本人たち以外知ることはない場所です」

カムイ「なるほど、そういうことですか」

リリス「はい。この先、多くのことを考える必要が出てくると思います。その度に誰にも邪魔されない場所を見つけるのは難しいことですから。私はカムイ様が進む道を信じています。だから、私はカムイ様にこの場所を提供したいんです」

カムイ「それで、無茶をしたんですか?」

リリス「もしかしたら人ではない本来の姿になってしまうかもしれませんでした。でも、そうなったとしても私は、カムイ様をこの場所に連れて来たかったんです」

カムイ「リリスさん……。ありがとうございます。実は少しだけ辛かったんです、何を考えるにしても監視されている可能性が否めない場所に居続けるというのは。この世界、有効的に使わせてもらいますね」

リリス「はい、カムイ様にお役に立ててうれしいです」

カムイ「といっても、今はやることの選択肢はないんです。それに、次にやることは決まっているでしょうから」

リリス「そうなんですか?」

カムイ「はい。だから、まずはそれにどう対処するべきなのかを考えているのが、今の実情です。あと、私は暗夜について知らないことが多すぎますから、それをどうにか補わないことには、暗夜に来た意味が何もなくなってしまうでしょう。いろいろと大変な日々が始まりそうです……」

リリス「カムイ様は強いんですね」

カムイ「皆さんによく言われますけど、全くそんな気はしないんですが」

リリス「ふふっ、カムイ様はいつも謙遜されますから。それが美徳だとマークス様は言っていました」

カムイ「ここにはいつでも来れるんですか?」

リリス「はい、私に言ってくだされば、すぐに門を開きます。ただ、門を開いた場所からどこかへ移動することはできませんから、そこだけはお願いしますね」

カムイ「この先、利用することが多くなると思います。そして、使うことがなくなった時が、すべてが終わったときなんでしょうね」

リリス「はい、そうなるといいですね」

リリス「私からの話は以上です。では、そろそろ元の世界に戻りましょ――あ、あれ……」

 ポフッ

カムイ「リリスさん、大丈夫ですか」

リリス「えへへ、ごめんなさい。少しだけ無理をしてしまったみたいです。元の世界に戻って部屋で休みますから……」

カムイ「いいえ、ならここで休んでいきましょう。ベッドは……大きいのがあるみたいですから」

リリス「カムイ様? ひゃっ」

カムイ「やっぱり、リリスさんは軽いですね。ちょっと、ベッドまで移動しますね」

リリス「す、すみません。私、人間じゃないのにあまり体力ないんです」

カムイ「気にしないでください。平原で私の元に来てくれたこと、とてもうれしかったです。これくらいは甘えてもいいんですよ。そうだ、何かしてもらいたいことはありますか?」

リリス「し、してもらいたいことですか?」

カムイ「はい、私のできる範囲でしたら。リリスさんの望むことをしてあげたいです」

リリス「え、えっと……じゃあ、カムイ様……一緒に、寝てもらっても……いいですか?

カムイ「一緒にですか?」

リリス「そ、その、だめ……ですか?」

カムイ「いいえ。それじゃ、横失礼しますね」

リリス「んっ」ギュッ

カムイ「ふふっ、リリスさんは甘えん坊ですね」

リリス「……良かったです。無事でいてくれて、カムイ様」

カムイ「はい、私もまたリリスさんに会えてうれしいですよ」ナデナデ

リリス「私が、今度はちゃんと守って見せます、だから……今だけは甘えさせてください」

カムイ「はい、でも。無理はしないでくださいね。リリスさんにもしものことがあったら、私はとても悲しくなりますから」

リリス「そう言ってもらえるだけで、私はとっても嬉しいです。お休みなさい、カムイ様」

カムイ「ええ、ゆっくり休んでください……」

リリス「はい………。すぅすぅすぅ」

カムイ「………」



カムイ(今日、サクラさんの首を剣で斬ろうとしたとき………)

カムイ(私はどこかで、人が死ぬことに喜びを感じていた。私は本気でサクラさんを殺そうとしていた。あの時、レオンさんの攻撃が遅れていたら、その時は………)

カムイ(アクアさんは言っていた。獣に成り果てると本能のままに動くようになってしまうと……)

カムイ「衝動は封印されているけど、私の中に流れる竜の血は、まだ脈打ち続けているんですね……」

カムイ(いつか、私の中の衝動がすべてを殺すことを望んでしまったら……その時、私はどうなってしまうのでしょうか?)

カムイ「少し辛いですね。これを抱えながら過ごさなければいけないというのは……」

リリス「う、うーん。カムイ様………」

カムイ「……ふふっ」ナデナデ

カムイ(今は休みましょう。今日はさすがに疲れましたから………)

カムイ「……お休みなさい」






カムイ(目覚めた時、私が私でありますように……)

◆◆◆◆◆◆

―暗夜王国・王の間―
ガロン「くっくっくはははははははははははははは。あれで我を出し抜いたつもりであろうな」

ガロン「カムイよ、つくづく面白いことをしてくれる。すべてが我が掌の上だということを知らずにどうもがくのであろうな?」

ガロン「これもあの方のご意思があってこその采配、さぞ面白いことになるのであろう」

ガロン「例の件、カムイに任せよう。彼の部族の反乱、その鎮圧をな………」

ガロン「さぁ、どう我を楽しませてくれるのだろうか」

「………我が子よ」



 第六章 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C
 カミラ   C+
 リリス   C+→B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D→D+
 ツバキ   D→D+

仲間たちの支援
 

 カザハナとレオンの支援がCになりました。

今日はここまでです。リリスは星界をつなぐだけなら人間状態を維持できるんじゃないかなとか思ったので、人間形態で進行します。
 
 安価で第七章開始時にレオン邸に着いたとき、レオンと話をしているキャラクターを決めます。

 カザハナ
 サクラ
 ツバキ

 >>334でおねがいします。
 

カザハナ

◆◆◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・レオン邸―

メイド「ようこそ、お越しくださいました」

カムイ「はい、すみません。こんな朝からお邪魔してしまって」

メイド「いいえ。レオン様も、カムイ様とお会いするのが楽しみだと仰っていましたから、これほど早く来ていただけて、とても喜んでいらっしゃいますよ」

カムイ「はい、ありがとうございます」

メイド「こちらの部屋です」

カムイ「案内してくださってありがとうございます」

メイド「はい、それでは」

 コンコン

カムイ「レオンさん、入りますね」

 ギィ

レオン「だから、出来る限り善処はする。するけど、立場にあった発言をしてほしい。君たちは捕虜、それを忘れないでくれないかな」

カザハナ「立場立場っていうけど、あたしとサクラは女の子なんだよ。少しはそこらへん融通利かせるのが、男ってものじゃない!」

レオン「……こんな手のかかる捕虜を取るくらいだったら、あの時周囲を確認しに行けばよかった。そうすれば、一般兵の面倒なんて見ずに済んだのに」

カザハナ「あんた、また人のこと名前で呼ばないんだね」

レオン「お前こそ、僕のことを名前で呼ばないくせに上から目線だね。誰のおかげで命が繋がってると思ってるんだろうね?」

カザハナ「嫌なこと蒸し返すよね、ほんとこんなのが王子なんて暗夜も大したことないわ」

レオン「なんだと、もう一回言ってみなよ。立っていられないくらいに、僕の魔法をありったけぶつけてあげるから……、って、ね、姉さん!?」

カザハナ「へっ?」

カムイ「………来る時間を間違えたみたいですね。レオンさん、カザハナさんとお話があるようでしたら、少し時間を潰してきますが」

レオン「いや、つまらない話だから」

カザハナ「つ、つまらなくなんかない!」

カムイ「……カザハナさん。一体どうしたんですか。まだ部屋にいるべき時間ですよ?」

カザハナ「………。その……お風呂のことで……」

カムイ「お風呂……ですか?」

レオン「ああ、毎日入らせてほしいと言ってくる。捕虜を自宅に置いているという時点で、すでにいろいろと面倒があるっていうのに……」

カザハナ「だ、だって……。白夜にいた時は、毎日の習慣だったのに、ここでいきなりそれをやめてなんて、ちょっと納得いかない」

レオン「本来なら殺されていた身で、どうしてここまで横暴なんだよ……。それに毎日の入浴が平常化したら、実は脱出を考えていたとかそんなことになっても困る。君たちは大事な駒なんだから、少しは考えてほしいね」

カザハナ「むーっ!!! ケチ!」

カムイ「つまり、レオンさんとしては誰も見ていないことが不安なわけですよね?」

レオン「そうなるね」

カムイ「なら、簡単です。監視をつけましょう。それが簡単な解決方法です」

レオン「それができるならやってるよ。ただ人員が足りないし、捕虜がのびのびとお風呂に入っているところを監視させるなんて、それこそ三人の寿命を縮める行為になりかねない」

カザハナ「…あたしだって、知らない奴に監視なんかされたくないし」

カムイ「いや、双方知り合いですから何の問題もないじゃないですか……」

レオン「?」

カザハナ「?」

カムイ「……レオンさんが監視すればいいんですよ。ね、レオンさん」ニヤッ

レオン(なるほど、わかったよ姉さん)

レオン「……そうだね、それなら別に構わないよ」

カザハナ「なっ、何言ってんの!? 変態、変態じゃない!」

レオン(こうしておけば、さすがに無理に意見を押し通したりしないだろう。到底受け入れがたい内容が入れば、流石に引くはずだ)

カムイ「それなら、カザハナさんの願いも叶えられますし、レオンさんの監視の問題も解決すると思います」

レオン「まぁ、僕も譲歩出来てこれくらいかな。最低でも誰かしらの監視は必要だけど、こんなことに大事な臣下は使えないからね」

カザハナ「うっううっ……」

レオン(よし、あと一歩だな。すでに牙城は崩れたみたいだし)

レオン「まぁ、見られたくない気持ちはわかるから、別に無理しなくていいよ。毎日じゃなければ別に問題はないし、僕としても時間の手間が外れて助かる」

カザハナ「…………」

レオン「ふん、まぁ、そう言うわけだから……、もう話は終りだよ」

カザハナ「わかったわよ―――」

レオン「最初からそうしてくれれば、よかったんだ。これからは―――」









カザハナ「その条件呑んであげる……」

レオン「だよね、賢明な判断―――え?」

カムイ「……え?」

カザハナ「その条件飲んであげるって言ってるの! いいもん、暗夜の王子は人のお風呂を監視するような変態だって、言いふらしてあげるから!」

レオン「ちょ、ちょっと待――」

カザハナ「大っ嫌い!」タタタタタタタタッ

 ガチャ バタン………

レオン「………」

カムイ「…………」

レオン「………」

カムイ「……レオンさん」

カムイ「姉さん………」

カムイ「すみませんでした。カザハナさん、結構負けず嫌いな方なんですね」

レオン「………良い教訓になったよ。もう、あいつと何かでもめたら、褒め倒すことにするから。あれは押して引いてじゃない、譲歩して向こうに罪悪感を持たせたほうが倒せる相手だ」

カムイ「………これが戦場だったら、死んでましたね」

レオン「なら、僕はまさに戦死してることになるよね……」

>>341

白夜王国→×

暗夜王国→○

お恥ずかしい、凡ミスです。申し訳ない。

◆◆◆◆◆◆

レオン「それで、僕に聞きたいことって何かな。姉さん」

カムイ「はい、レオンさんの言っていた暗夜で表面化している反乱についてです」

レオン「反乱のことね」

カムイ「はい、レオンさんはこの前のお父様の話で言っていました。武力事態は白夜を征服、支配することが可能なくらいにあると」

レオン「……そうだね。正直な話、反乱を押さえ込まなくても白夜に勝つことはできる。でも、被害は甚大になるのは間違いない。暗夜王国のことをよく思ってない周辺諸国、それに部族は数多いからね」

カムイ「話に上がった氷の部族もその一つですか?」

レオン「そうだね。父上がその気になれば集落はすぐに焼き払われることになる。今まではその力という凶器で反乱を抑えてきたけど……」

カムイ「力を示せば示すほど、反乱に加担する諸国が増える可能性がある……そう言うことですね?」

レオン「うん。今はまだ白夜と戦端を切っただけだから、その余波がまだ来てない。でも、白夜に暗夜側にありながら抵抗している国の情報は必ず入るはず。力を示して抑え込み続ければ、民衆の不満は大きな原動力になる。そこに白夜の手が入り込めば、暗夜は大多数の兵力を国の反乱鎮圧に充てることになる。そうなったら……」

カムイ「前線が拡大して、各地に穴ができる……ということですね。気づけば前線を一つ、また一つと崩されて、最悪戦争に負けますね」

レオン「ほんと、姉さんは理解力があるよね。剣を振ってるよりも指揮を出してた方が……ごめん、また悪い癖だ……」

カムイ「レオンさん、何度も言っていますけど、気にしないでください」

レオン「無理だよ。気にしないと――、ううん、なんでもない」

カムイ「レオンさん?」

レオン「なんでもないって言ってるでしょ? 話は戻るけど、僕はそんな形で前線を崩された揚句、多くの無駄な犠牲が出ることを抑えたいと考えてる。だから反乱の鎮圧はできる限り、武力じゃない形で終わらせたい。もちろんその先にあるのは、暗夜の勝利だよ。暗夜が白夜に負けるなんてことは考えてないから、あの三人には悪いけど、白夜との戦争は僕たちが勝つ以外の道はない」

カムイ「そうですか」

レオン「姉さんは、どうしたいの?」

カムイ「そうですね。まずは、迫りつつある問題に対処することでしょうか?」

レオン「迫りつつある問題?」

カムイ「はい、お父様が何をお考えかはわかりませんが。多分、私に何かしらの任務を与えてくれるでしょう」

レオン「……」

カムイ「先に言っておきますけど、私はレオンさん、力ではない方法で反乱を抑えるという考えに賛成です。それに武力で鎮圧してしまったら、サクラさんたちを助けた意味がなくなってしまいますから」

レオン「その言葉、信じてもいいんだよね」

カムイ「ええ、姉さんを信じてください」ピトッ

レオン「ね、姉さん。いきなりなにを……」

カムイ「久々にレオンさんの顔を触りたくなっただけですよ。ふふっ、やっぱりどこか可愛いですね」

レオン「男としてはなんだか複雑な気分になるよ」

カムイ「ええ、レオンさんは、鼻先が弱かったんですよね」

レオン「ぐっ……や、やめてよ姉さん」

カムイ「ふふっ、もう少しだけ触らせてください。レオンさんもこれから忙しくなるでしょうから……」

レオン「………捕虜のこと?」

カムイ「それもありますけど、私たちはお父様に色々と命令をもらうことになると思います。白夜の戦争が始まったことで、その頻度は増します。次に会えるのはいつかもわかりませんから」

レオン「………はぁ、わかったよ。もう少しだけだからね」

カムイ「はい、ありがとうございます……」



レオン(姉さん、姉さんの目が見えていたらと僕はよく思うんだよ。でも、その理由を姉さんが知ったら、僕のことをどう思うんだろう……)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城―

カムイ「……お父様、カムイ、ただいた参りました」

ガロン「うむ、よくぞ来たカムイよ」

マクベス「カムイ王女、捕虜の件ですが。ガロン王様からの信頼を得たいがためとはいえ、面白ことをやってくれるものですな」

カムイ「それくらいしかできることが無かったものですから、今後は自身の力を示していくつもりです」

マクベス「いい心がけです。カムイ王女、期待していますよ」

ガロン「さて、カムイよ。お前を我が子と見越して一つ任せたいことがある」

カムイ「はい、お父様」

ガロン「先に聞いた氷の部族の話、覚えておるだろう?」

カムイ「レオンさんが言っていた、反乱を起こしている部族のことですね」

ガロン「ああ、その反乱の鎮圧、それをお前に任せたい」

カムイ「反乱の鎮圧ですね。わかりました」

ガロン「ああ、良い報告を期待しているぞ」
 
カムイ(……あっさりし過ぎている。兵士に制限を掛けたり、それ以外に何かしらの手が加えられると思っていましたが……)

ガロン「………どうした、すぐに準備を始めるがよい」

カムイ「はい、わかりました。準備を終え次第、部族の村へ向かいます」

カムイ(何かあると考えたほうがいいですが、一体……)

◆◆◆◆◆◆

ガロン「そうか、カムイは氷の部族の村へと向かったか」

マクベス「はい、それでどういったことをしておられるのですかな?」

ガロン「何もしておらん。ただ、暗夜の王女が氷の部族の村に向かうと、氷の族長に伝えただけだ。そう、今にも反乱をおこそうとしている者たちにな」

マクベス(なるごど、あちらはカムイ王女を反乱を武力で抑えに来た者だとすでに決めつけているでしょうな。ふふっ、これは面白い)



マークス(父上、なぜそのようなことを……。なぜ、そんな挑発的な発言をするのですか。このままではカムイの身が危ない……)

マークス「どうするべきか……」

エリーゼ「マークスおにいちゃん、どうしたの? なんだかすっごく悩んでるみたいだけど?」

マークス「エリーゼ……。エリーゼ、ひとつ頼まれてくれないか」

エリーゼ「マークスおにいちゃんがあたしに頼みごとなんて……うん、あたしにできることだったら何でもやるよ!」

マークス「私は、父上の傍にいる必要がある。かわりにエリーゼ、カムイ元へと赴いてほしい」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、どこに行っちゃったの?」

マークス「氷の部族の村に向かったそうだ。だが、氷の族長はすでにカムイが訪れることを知っている……。待ち伏せされている可能性が高い……」

エリーゼ「そ、そんな……」

マークス「だからこそだ、エリーゼ。カムイの力になって欲しい。出来れば私自身がいければよいのだが……」

エリーゼ「ううん、マークスおにいちゃん、あたし頑張るよ。だから、安心して!」

マークス「ああ、任せた」

エリーゼ「でも、カムイおねえちゃんはどこから向かったのかな?」

マークス「カムイのことだ、できる限り最短距離で到着できる道を選ぶだろう。だとすると天蓋の森を抜けている可能性が高い。あそこは目が見えるものでも、時間のかかる場所。それにカムイは仲間を連れて歩いている、どうにか追いつけるはずだ」

エリーゼ「うん、わかった。マークスおにいちゃん、カムイおねえちゃんのことは、あたしに任せて。きっと、無事に帰ってくるから!」

マークス「ああ、すまないが。頼んだぞ、エリーゼ」

エリーゼ「うん!」


◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都正門―

エリーゼ「うん、よし! 待っててね、カムイおねえちゃん」

???「エリーゼ!」

???「エリーゼ様!」

エリーゼ「え、二人ともどうしたの?」

???「どうしたのじゃない。エリーゼ、行くなら私も連れて行ってほしい。黙っていくなんて」

???「そうですよエリーゼ様。私は正義の味方である前に、エリーゼ様の臣下なのですから!」

エリーゼ「そうだね、ごめん。それじゃ、一緒に来てくれるよね、エルフィ、ハロルド!」

エルフィ「もちろんよ。私はエリーゼを守る盾だから、どんな危険も私が受け止めてみせるから」

ハロルド「もちろんです。さぁ、行きましょう!」

エリーゼ「うん、二人とも頑張ろうね!」

エリーゼ(カムイおねえちゃんに追いつければいいんだけど、頑張らなくちゃ!)



 第七章 前編 おわり

 今日はここまでです。話的には、カムイが何をすべきなのかを考えるため、部族面前に暗夜の現状を理解するという話にした感じです。
 凡ミスすみませんでした。レオンさん、すでに白夜に家構えてるとか、おかしすぎました。

 次回戦闘でカムイと陣を組むキャラクターを決めたいと思います。

 ジョーカー  
 サイラス  
 リリス   
 モズメ   

 >>355 でお願いいたします



乙です
ジョーカー

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・天蓋の森『死霊の沼』―

 サガセ、カナラズコノモリヲトオルハズダ

カムイ「こんな森に誰か人がいるなんておかしいと思いましたが……そういうことですか」

ジョーカー「どうやら、すでに私たちが向かうことは知られていたと考えるのが自然ですね。見たところ、盗賊とは違うようですし、氷の部族の者たちと見て間違いはないかと」

カムイ「はい、出来ればまだこの森にいると思わせて、集落に向かうのが一番いいでしょう。向こうも、この森で私たちを探すのに手こずっているみたいですから………」

サイラス「なら、善は急げだ。あの一団を見送って、早く先に進もう」

モズメ「せやな、この森の中、嫌な感じで早く抜けたいわ」

リリス「白夜には、このような森は無い感じがしますからね」

モズメ「こんな場所、どんなに手をくわえても、良い野菜が育つところになると思えへんから」

サイラス「そうだな、白夜に比べて、暗夜は痩せた大地が多い。作物を作る条件が悪いところでもあるから」

ジョーカー「ないわけじゃないが、あり大抵の場所は貴族が牛耳っている場所が多い。暗夜王国らしいといえば暗夜王国らしいことだな」

モズメ「そうなんか、あまりいい話やないな」

 ミツケマシタ!

サイラス「! 感づかれたか?」

 コノサキニテ、アンヤノツカイトオモワレルモノタチヲハッケン ――サマガサキニムカワレマテイマス

 ヨシ、ワレワレモイクゾ、アンヤノツカイタチヲトラエルノダ!

カムイ「……敵に動きがあったみたいですが、今の会話を聞く限り……」

サイラス「どうやら、俺達の他にこの森にいた人たちがいるみたいだな……」

モズメ「あたいらと勘違いされてるみたいや……」

リリス「カムイ様、どうします?」

カムイ「…………」

ジョーカー「カムイ様。どうなさいますか? このまま集落に向かえば見つかる確率は減りますが……」

カムイ「どちらにせよ、集落での戦いは避けられないものでしょう。なら、敵の手を先に確認するのも悪くありませんね」

ジョーカー「では………」

カムイ「皆さん反転します、その方々の援護に向かいます。ジョーカーさんは私と一緒に行動をお願いします」

ジョーカー「仰せのとおりに」

カムイ「モズメさんとサイラスさんで連携を、リリスさんは治療の準備がすぐにできるようしてください」

リリス「わかりました……」

カムイ「……それでは行きますよ、皆さん」

◆◆◆◆◆◆

エルフィ「えいっ!」バシン

部族兵「ぐあああああっ」ドタンッ

ハロルド「くっ、まさかここで見つかることになるとは」

エルフィ「ハロルド、つべこべ言わないで戦って、エリーゼ様を守るのよ」

エリーゼ「ハロルド、エルフィごめん。あたしについて来たばっかりに……」

ハロルド「気になさらないでください。なにせ、私は正義の味方。エリーゼ様がカムイ様を心配して行ったことです。私はそれを全力でサポートするだけです」

エルフィ「そうよ、私たちはエリーゼ様を守るために、ここにいるんですから!」ドスッ

部族兵「ぐおおおっ」ドタッ

ハロルド「しかし、私たちが見つかったということは、カムイ様はまだ見つかっていないということでしょう」

エリーゼ「うん、そうだね。カムイおねえちゃん、無事に集落につけてるといいな……」

エルフィ「とりあえず、ここにいる人たちを全員眠らせてから、ゆっくり後を追いかけましょう」

部族兵「くっ、こいつら強い……」

???「あれ? カムイ様じゃない? もしかして、集落に向かわれてしまったのでしょうか?」

部族兵「くっ、はずれをつかまされたということですか。どうします?」

???「姉さんと約束したんです、絶対にここで止めてみせるって。気は進みませんけど、あの人たちを捕まえてカムイ様には王都に戻ってもらいます!」

部族兵「全員、一気に掛れ!」

 オオオオオオオオ!

エルフィ「! 三方向からくる。ハロルド、エリーゼ様を守って」

ハロルド「エルフィくん! わかった、このハロルド、命に代えてもエリーゼ様をお守りする!」

エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「今こそ訓練の成果を見せる時よ」

 ガキン キイン

部族兵「くっ、なんだ攻撃が全く通らない!?」

エルフィ「軽いわ。今度はこっちの番!」

 ブンッ ドゴォ

部族兵「くっ、くそおお」ドタッ
部族兵「な、なぜ……」ドタッ

エリーゼ「エルフィ、すごい」

エルフィ「はぁはぁ……ぐっ、まだまだ!」

???「行きますよ。やあっ!」ヒュン

エルフィ「ぐっ……、鎧の隙間に……力が……」

部族兵「てやああああ!」

エルフィ「ああっ!」

ハロルド「エルフィくん!」

エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「……当たれえ!」

部族兵「ふっ、動きが鈍ればこちらの物だ」

???「ごめんなさい、でもこうするしかないんです!」ヒュン

エルフィ「……しまった!」ドサッ

部族兵「倒れた。今だ!」

エリーゼ「! エルフィ」

ハロルド「くっ、エリーゼ様。ここでお待ちください! 私がお相手する!」

エルフィ「……くっ、ごめんエリーゼ……私、もう……」

部族兵「くらえっ!」

ハロルド「間に合わない!」

エリーゼ「エルフィ!!!!!」

エルフィ「!!!!!」

 ドゴォ!!!

エルフィ「…………」

エルフィ「………?」

エルフィ「……え?」

カムイ「倒れた相手に追い打ちとは、品性を疑いますよ」

部族兵「な、いきなり……」ドサッ

カムイ「さて、とりあえず攻撃をしようとしている気配を攻撃しましたが、こちらが味方でいいんでしょうか?」

ジョーカー「ええ、間違っていないと思います。はっ!」ヒュン

部族兵「ぐっ、新手だと!? 一体どこから現れた」

サイラス「まったく、倒れた相手一人に後続がぞろぞろとか、見てて情けなくなるね」

モズメ「あんた、大丈夫? リリスさん、こっちへ来てや」

リリス「はい、これでよくなると思います。……あれ、エリーゼ様!?」

エリーゼ「リ、リリス!? え、カムイおねえちゃん!?」

カムイ「追いかけてきた人というのはエリーゼさんだったんですか。もう、危ないことをしてはいけませんよ」

エリーゼ「ご、ごめんなさい……」

カムイ「そこの方、立てますか?」

エルフィ「え、ええ。ありがとう」

カムイ「すみません、遅れてしまいました。エリーゼさんの臣下の方ですね?」

エルフィ「はい、エルフィと言います。助けてくれてありがとう」

カムイ「はい、そちらの方も?」

ハロルド「私はハロルド、エルフィくんを助けてくれて感謝するよ」

エリーゼ「カムイおねえちゃん……」

カムイ「まったく、御転婆ですねエリーゼさんは。でも、無事でよかった」ダキッ

エリーゼ「怖かったよ。エルフィが死んじゃうかと思ったから……あたしのせいで……」

カムイ「怖い思いをさせてしまいましたね。でも大丈夫、ここからは私たちも一緒です」

サイラス「そういうことですから、エリーゼ様。安心してください」

エリーゼ「サイラス、うん!」

カムイ「それでは、どこの誰かわかりませんが。妹に色々としてくれたお返しをさせてもらいましょうか」



 ザッ ザッ



カムイ「………?」

カムイ(この気配………私の知っている人?)

ジョーカー「……? おいお前、これは一体何の冗談だ?」

フェリシア「……冗談なんかじゃありませんよ、ジョーカーさん」

リリス「フェリシアさん!? どうしてこんなところに」

カムイ「……フェリシアさん」

フェリシア「ふふっ、カムイ様。驚きました?」

カムイ「はい。何のためにいるかは聞く必要はないようですね」

フェリシア「カムイ様、王都に帰ってくれませんか」チャキッ

ジョーカー「フェリシア、カムイ様に向かって何言ってやがる!」

フェリシア「だめです、私はここを通すわけにはいきません。氷の族長の娘として、通すわけにはいかないんです」

部族兵「……フェリシア様」

フェリシア「少しだけ待ってください。カムイ様、お願いですから帰って、私は戦いたくなんてありません。主君だからとかじゃないんです、私はカムイ様とこんな戦いをしたくないんです」

カムイ「フェリシアさん。あなたの部族の事情は察しますが。私の目的を勘違いしているのは……」

フェリシア「わかってます。カムイ様が戦うために来たわけじゃないことくらい。でも、みんなはそう思ってくれません。ここで帰ってもらう以外に、私たちはこの刃を抑えることはないんです。それに集落のみんなは、カムイ様たち捕らえて暗夜の交渉に使うつもりです。意味がないわかったら、殺されてしまいます」

カムイ「そうですか………。今の重大発言ですよ……」

フェリシア「………」

ジョーカー「はぁ、フェリシア。ノロマだとかそういう問題じゃない、お前は馬鹿だ。お前が仕えていたのはカムイ様だ。カムイ様に仕えることが俺たちの役割だ。そうだろ?」

フェリシア「それを選べたら良かったんですけど、ごめんなさい」

カムイ「なら、答えは一つですね。フェリシアさん、私にはちゃんとした役割があります。その役割を満たすことを私は約束したんです」

フェリシア「退くつもりは……ないんですよね」

カムイ「はい、そうです」ジャキッ

フェリシア「皆さん、もういいです。カムイ様を……いいえ、暗夜王国の王女を倒してください」

部落兵「はい、全員いくぞ!」

フェリシア「……ごめんなさい。私はやっぱり、ダメメイドです……」

カムイ「ジョーカーさん。少し激しく動きますけど、サポートよろしくお願いします」

ジョーカー「はい、思う存分お動きください。このジョーカー、かならずサポート仕切ってみせます」

サイラス「モズメ、サポートに回る。決めてやれ!」

モズメ「わかったで、ていやっ!」

部族兵「ぐっ、しかし、浅い!」

ハロルド「はっはっは、こちらにもいるぞ!」

部族兵「ぐはっ……」ドサッ

エリーゼ「ライブ! えへへ、エルフィ、完全回復できたよ!」

エルフィ「ありがとう、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、カムイおねえちゃんのために道を作ってあげて。何とかしてくれるはずだから」

エルフィ「ええ、助けてもらったお礼、ちゃんとしなくちゃいけないから」ガシィン

カムイ「エルフィさん、感謝します。ジョーカーさん行きますよ」

ジョーカー「はい。フェリシア、恨みは全くないが、カムイ様の命令通り止めさせてもらうぞ」

フェリシア「カムイ様……。だめ、しっかりしないと……。いきます! やあっ!」ヒュン

 カキィン

カムイ「ジョーカーさん!」

ジョーカー「喰らえっ!」ヒュン

フェリシア「んっ!」キィン

ジョーカー「本当に戦闘中の動きはいいんだが、あれでどうして紅茶を全部こぼしたりするんだ?」

カムイ「それがフェリシアさんらしさですよ。だから、こちらも本気で行かないと駄目ですね。さぁ、いきますよ! てやぁ!」

フェリシア「えい! カムイ様、強いんですね」

カムイ「フェリシアさんも、中々やるじゃないですか」

フェリシア「私には、これしかありませんから!」

ジョーカー「ふっ、カムイ様に当てられると思うなよ」

フェリシア「……何回かやってればきっと当たります!」

カムイ「……そうですね。それじゃ、こういうのはどうですか」

 ゴソゴソ 

カムイ(さて、これを使ったらどうなるかはわかりませんが、フェリシアさんの意識を一瞬だけそらせるはず!)

カムイ「行きます」

 シュオオオオオン

ジョーカー「カムイ様!?」

フェリシア「なんですか、この光?」

カムイ(竜状態)「ウオオオオオオン」

ジョーカー「これは、カムイ様?」

フェリシア「か、カムイ様……なんですか」

カムイ(竜状態)「フェリシアさん、よそ見はよくないですよ」

フェリシア「!?」

カムイ(竜状態)「ジョーカーさん、今です」

ジョーカー「はい、ってわけだ。フェリシア、おとなしく反省しろ!」

フェリシア「しまっ……きゃああああああ」ドタドタン

部族兵「フェリシア様……!? な、なんだあれは………」

サイラス「カムイ、竜になれるのか?」

エリーゼ「え、あれが、カムイおねえちゃんなの?」

リリス「カムイ様……」

エルフィ「……きれいね」

ハロルド「ああ、不思議と目が追ってしまうような美しさだ」

フェリシア「うっ、うう」

カムイ(竜状態)「………」ジーッ

フェリシア「ひぅぅぅ」

カムイ(竜状態)「フェリシアさん、まだ戦いますか?」

フェリシア「か、カムイ様………」

カムイ(竜状態)「…………お願いします。もうここまでにしてください」

フェリシア「みんなは……」

フェリシア(みんな、もう戦える状態じゃないんですね……。結局、私はどちらにいても役に立てないんですね……)

カムイ(竜状態)「……フェリシアさん」

フェリシア「どうすればよかったんでしょう。私はメイドとしての仕事もできないから、この戦う技術だけしかないんです。でも、これがカムイ様を倒すために使うのが嫌だったのに、結局こんなことになっちゃうんですね」

カムイ「………」

フェリシア「カムイ様、私は……」

 シュオオオオン

カムイ「まったく」ナデナデ

フェリシア「えっ、カムイ様?」

カムイ「悩んでいたら話してください、私はそんなに信用がないんですか?」

フェリシア「いえ、私のことでカムイ様に迷惑をかけたくなくて」

ジョーカー「その結果がこれだろうが」

フェリシア「ご、ごめんなさい」

カムイ「フェリシアさん。約束をしましょう」

フェリシア「約束、ですか?」

カムイ「ええ、私は集落の人を誰一人殺したりしません。もちろん、フローラさんのことも同じです、ちゃんと和解してみせます。だから、フェリシアさん、もう一度私のメイドとして仕えてくれませんか?」

フェリシア「だ、だめです。一度、刃を向けた私がカムイ様にまた仕えるなんて……。それに……」

エルフィ「?」

フェリシア「あちらの方に、私は攻撃を加えたんです。そんな人の近くに私がいたら……」

カムイ「エルフィさん」

エルフィ「はい、なんでしょうか?」

カムイ「根に持ちますか?」

エルフィ「いいえ、特に」

フェリシア「だ、だって、あの時カムイ様が現われなかったら、あなたは……」

エルフィ「そうね、でもそれが戦場というものだから。私とあなたは今敵同士、だからその結果で私が死んでしまっても、それは仕方のないことだから」

フェリシア「………でも」

エルフィ「気にしないで、それに」スッ

フェリシア「え?」

エルフィ「あなたが仲間仲間になってくれるなら、私はあなたを守る盾にもなるわ。エリーゼ様を守る盾である私は、エリーゼ様を守ってくれるみんなを守る盾でありたいの」

フェリシア「な、なんで。なんでそんなに優しいんですか……私、許されないようなことしたのに」ポロポロポロ

エルフィ「大丈夫。あなたのしたことを、私は非難したりしないわ。あなたにはあなたの立場があって、その結果に攻撃が行われただけだもの」ギュッ

エルフィ「だから、あなたが行ったことで気に病む必要はないわ」

エルフィ「あら、自己紹介してなかった。私はエルフィ、エリーゼ様に仕えてるわ」

フェリシア「私はフェリシアです。その、私は……」

カムイ「………」

フェリシア「私は、カムイ様に仕えるメイドです……」

エルフィ「ふふっ、そうなの。これからよろしくね、フェリシア」ギュッ

フェリシア「は、はいぃ……よろしくお願いします……」

エルフィ「ええ、よろしく」

フェリシア「………うう、ううっ」

エルフィ「どうしたの?」

フェリシア「ごめんなさい、攻撃しちゃってごめんなさいー」ポロポロポロポロ

エルフィ「だ、大丈夫よ。気にしてないわ」

フェリシア「うわあああん」ポロポロ




カムイ「氷の部族の皆さん。信じるかはお任せいたします」

部族兵たち「………」

カムイ「私は誰も殺したりしません。部族長さんもフローラさんも皆さんの大切な人たちもです。だから、すべてが終わるまで見ていてくれませんか……」

部族兵「……いいだろう。その提案、受けよう。確かにここにいる者たちは誰一人として命は失っていない。だが、もしも約束を破ったその時は……」

カムイ「はい、いかなる処罰も受けましょう」

部族兵「ああ、いい知らせを待っている」




カムイ「皆さん、話は付きました。そろそろ移動を――」

フェリシア「うえええええん」

ジョーカー「まったく泣きやまないな」

フェリシア「ふええええええん」ポロポロ

エルフィ「泣かないで……本当に大丈夫だから」アセアセ


「ごめんなさい、エルフィさん、ごめんなさいー」


第七章 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C→C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+

仲間たちの支援
 
 今回の戦闘でサイラスとモズメの支援がC+になりました。
 今回のイベントでカザハナとレオンの支援がC+になりました。
 今回のイベントでフェリシアとエルフィの支援がCになりました。

 今回はここまでになります。個人的な話ですが、エルフィの支援はアサマとの支援が一番好きです。
 氷の部族に話が漏れていて、天蓋の森で戦う面という感じです。

 では、次回の始まりの際に話をしている組み合わせを決めます。

 カムイ
 ジョーカー
 サイラス
 モズメ
 リリス
 ハロルド
 エリーゼ
 エルフィ
 フェリシア

 こちらの中から二人選ぶ形になります。お時間のある方、参加していただけると幸いです。

 安価は>>373 と >>374で行います。

 同じキャラクターが被った場合は374以降の違うキャラクターで構成します。

 

回復役が4人もいる
エルフィ

騎士の誓いだ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村付近の洞窟―

カムイ「……さて、ここからどうしましょうか?」

ジョーカー「ええ、この吹雪の中を進むしかありませんが、こちらが寒さに疲弊したところを狙われる可能性もあります。かといって、この洞窟で燻っていても、氷の部族の反乱活動が終わるわけじゃありません」

カムイ「そうですね。私はフェリシアさんから話を聞いてきますので、皆さんは体を温めて待っていてください」

リリス「カムイ様、私も同伴しますね。ジョーカーさんも一緒に来てください、見知った顔がいてくれればフェリシアさんも落ち着いてくれるはずですから」

ジョーカー「わかったよ。たくっ、あいつも本当に手が掛るな」





エリーゼ「ううっ、寒い」

エルフィ「エリーゼ様、こちらを。この毛布をお使いください。薄いかもしれませんけど」

エリーゼ「ううん、ありがとうエルフィ……」ウトウト

エルフィ「エリーゼ様?」

エリーゼ「ごめんね、ちょっと眠くなっちゃったみたい。でも大丈夫、頑張って起きてるから」

エルフィ「エリーゼ様、よかったら――」

サイラス「眠っていていいんだぞ」

エリーゼ「サイラス?」

サイラス「カムイが言ってただろ? 体を温めておけって、眠ればその分体も温まるし、体力だって回復できる」

エリーゼ「でも……」

エルフィ「その通りよ。エリーゼ様、今はゆっくり休んで」

エリーゼ「……エルフィ、一緒にいてくれる?」

エルフィ「ええ」

エリーゼ「ありがと、ごめんね。私ちょっとだけ休むから……すぅすぅ」

サイラス「城から俺たちを追いかけてきたんだよな」

エルフィ「ええ、最初は私たちに声もかけずに行こうとしてたから、少しだけ悲しかった」

サイラス「横。座っていいか?」

エルフィ「構わないわ」

サイラス「それじゃ、失礼する。まだちゃんとした自己紹介が済んでなかったな。俺はサイラス。新米の騎士だ」

エルフィ「私はエルフィ、エリーゼ様に仕えてる。よろしくね」

サイラス「ああ、よろしく頼む。それで話は戻るけど、どうして悲しいと思ったんだ」

エルフィ「エリーゼ様は、私たちよりもカムイ様を優先された。感じちゃいけないのかもしれないけど、そこに少しだけ思うことがあるのよ」

サイラス「……」

エルフィ「私はエリーゼ様を守るために王城兵になったから。どこに出るにしても何か言ってもらいたかった。昔からの親友だったから」

サイラス「そうか、エリーゼ様と昔からの親友なんだなエルフィは、なんだか俺に似てる気がする」

エルフィ「? 私は女だけど? 髪型だってぜんぜん違うわ」

サイラス「ちがうちがう。どうして見た目で考えるんだ」

エルフィ「じゃあ、なに?」

サイラス「騎士になった理由もそうだけど、俺もカムイとは昔馴染みだ」

エルフィ「そうだったの」

サイラス「ああ、目が見えないカムイの手を引いていろいろな場所を歩いたものさ。今でも思い出せるくらいに、カムイと過ごした日々は俺の原動力といっても過言じゃないからな」

エルフィ「私もエリーゼ様と過して来た日のことを忘れることはないわ」

サイラス「そうだろう。今の俺があるのはカムイと出会ったからなのと同じようなものさ」

エルフィ「そうね……だから、少しだけ思ってしまうのかもしれないわ」

サイラス「エルフィ、エリーゼ様のこと信じているんだよな?」

エルフィ「ええ、信じているわ」

サイラス「なら、それで充分だと俺は思う。今、エルフィはカムイ様に少しだけ嫉妬してるだけだからな」

エルフィ「私が、嫉妬してる?」

サイラス「ああ、でもそれは自然なことさ。今まで一緒にいた親友が、誰かのために走って行ってしまうんだ。思わないことがないわけない」

エルフィ「……」

サイラス「でも、そうなってしまうくらいにエリーゼ様のことをエルフィは大切に思ってる。それはとても素晴らしいことだと俺は思う。だから、今はその少しだけ悔しいって思うのくらい仕方のないことさ」

エルフィ「……ふふっ、どこかでエリーゼ様のことを私が一番わかっているって、思っていたのかもしれないわね。ありがとうサイラス」

サイラス「お礼なんていいさ。それに親友のために兵士になる道を選んだ奴が同じ仲間にいるのは、なんだか安心する」

エルフィ「そういうこと、だから似ているって……」

サイラス「まぁ、そうなるな。ただ……」

エルフィ「?」

サイラス「いや、なんでもない。俺は少し外を見てくるから、エルフィも体を冷やさないようにしとけよ」

エルフィ「ええ、ありがとう」

エリーゼ「う、ううん。エルフィ……」

エルフィ「エリーゼ様、いいえ、エリーゼ。安心してね、私が必ず守り切ってあげるから。私は、あなたを守るためにここにいるから……」ナデナデ

エリーゼ「うん……ありがとー」

エルフィ「ふふっ」






サイラス「………はぁ」

カムイ「フェリシアさん。落ち着きましたか?」

フェリシア「は、はい。すみません、ここまで泣いてばっかりで」

ジョーカー「まったく、カムイ様の前で泣き続けてる時はどうしようかと思ったぞ。まぁ、落ち着いたようで何よりだ」

リリス「はい。落ち着いてくれてよかったです」

カムイ「それで、フェリシアさん。ここから村まではどう行けばよいのでしょうか? 吹雪の中でも到着するにはフェリシアさんの知識が必要です」

フェリシア「ええっ!? この吹雪の中を行こうって言うんですか。そんなの自殺行為ですよ」

リリス「でも、そうしないと村につけないじゃないですか」

ジョーカー「なにか方法があるんだったら今すぐ言え。それがお前のするべき最初の仕事だ」

カムイ「お二人とも、少し落ち着いてください。それで、フェリシアさん。何か方法はないんですか?」

フェリシア「あ、あります」

カムイ「あるんですか」

フェリシア「あるというよりも、私の故郷ですから。天気の移り変わりを読むことくらい、お安いご用です」

ジョーカー「そう言うことか、しかしちゃんと予測できるんだろうな。さすがに途中で道に迷うなんていうオチは御免だぞ」

フェリシア「そ、そんなことしません。カムイ様は私にチャンスをくれたんですから、それを棒に振ることはできません」

カムイ「フェリシアさん。ありがとうございます。それでは、導いてくれますか? 私たちをあなたの故郷に」

フェリシア「はい、任せてください。でも、私は戦いには参加できません、カムイ様の約束を見届けたいから、それでも……いいですか?」

カムイ「はい。ここまでしてもらったんです、フェリシアさんは見ていてください。必ず約束を果たして見せます」

フェリシア「はい、頑張ってください」

ジョーカー「はぁ、フェリシア。ここでの戦いが終わって城塞に戻ったら、一から作法を鍛えなおすからそのつもりでいろよ」

フェリシア「ええっ、なんでですか!?」

ジョーカー「一度、カムイ様を裏切ってるんだ。お前はまたカムイ様に仕え始めた当時に戻る、つまりもう一度作法の練習からやり直しに決まってるだろ」

フェリシア「そ、そんなぁ」

リリス「それじゃ厩舎の世話は私が教えますね」

フェリシア「り、リリスさんまで、ひどいですぅ」

カムイ「そうですね、では私はこれが無事に終わったら、あれをやりましょう」

フェリシア「え、カムイ様?」

カムイ「久々なので楽しみです。指をよくほぐしておかないといけませんね」

フェリシア「カムイ様? いったい何をするんですか?」

リリス「………」

ジョーカー「………」


◆◆◆◆◆◆

フェリシア「………そろそろです」


 ビュオオオオオオオオ――

 ………

ジョーカー「驚いたな、本当に吹雪が止んだ」

モズメ「すごいわ。こんなに天気読めるなんて」

サイラス「さてと、で、どうするんだカムイ」

カムイ「特に策は考えていません。まっすぐ出会って、まっすぐ解決しましょう。正直、下手な小細工をする方がのちに遺恨を残す可能性がありますから」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしも頑張るから」

カムイ「ええ、一緒にがんばりましょう」

エルフィ「うん、いっぱい食べたから。次の戦いが終わるまでは持つわ」

ハロルド「ううむ、私の食べ物がビスケット一つだけになってしまったが、なあに、私はこれだけでも十分頑張れる!」

リリス「ハロルドさん、私の持ってるこれをどうぞ」

ハロルド「むっ、いいのかね?」

リリス「はい、私はあまり前線に立てるわけじゃありませんから」

ハロルド「そうか、ではありがたく……うまい!」

リリス「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいです」

フェリシア「え、えっと、皆さん!」

一同「?」

フェリシア「あ、あの。姉さんを、村のみんなのこと、お願いします!」ペコッ

カムイ「ええ、任せてください。だから、フェリシアさんは見つからないように私たちを見ていてください。ちゃんと、どうにかしてみせますから。それじゃ、皆さん行きますよ、氷の部族の村へ」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村『族長の家』―

クーリア「……目が見えないという先入観は捨てたほうがいい、そういうわけだな」

フローラ「ええ、父さん。私が暗夜で仕えていた方は、目が見えないことがハンデになりえない様な方です」

クーリア「それを知っていながらなぜフェリシアを向かわせたのだ……」

フローラ「フェリシアもその方に仕えていましたから。それに戦わせるために送ったわけじゃありません……。王女を説得して王都に戻ってもらうためです」

クーリア「……だが、森に向かった者たちは今だ帰っていない。吹雪が止むこの時間に戻ってくることになっていたはずなのにだ」

フローラ「ええ、つまりそう言うことでしょう……。私が甘かったのかもしれません」

クーリア「……くっ、従者であろうと暗夜に立て付くものには刃を下す、それが王女のやり方ということか」

フローラ「………」

クーリア「フローラ、遠慮は無用だ。村の者に伝えよ、全員で迎え撃つ準備をするようにと。出来れば捕らえ、暗夜王国との取引に利用する!」

フローラ「わかりました。父さん」

 ガチャ バタン

フローラ「カムイ様、あなたならフェリシアを手に掛けるなんてことしないことはわかっています。これは私のエゴ、フェリシアに生きていてもらいたいための私の勝手な考え。フェリシア、姉さんはこんなことしか考えられないのに、なんで一緒に帰るなんて考えたの」



フェリシア『姉さん、姉さんが戻るなら私も一緒に戻ります! 大丈夫です、父さんを一緒に説得して、カムイ様を驚かせてあげましょう』

フローラ『……ええ、そうね。でも、父さんとの話は私に任せて。フェリシアはカムイ様に戻るよう伝えて。大丈夫、私が何とかしておくから』

フェリシア『姉さん……あ、あの』

フローラ『なに?』

フェリシア『ううん、なんでもないよ。私、カムイ様を説得してみせるね……。だから、姉さん、無茶はしないで。だって、姉さんがいなくなったら私悲しいから』

フローラ『大丈夫、そんなことになんてならないわ。安心して』




フローラ「ごめんなさい、フェリシア。私は……やっぱり氷の部族の人間で、心が冷たくて、とても暗夜が許せない人間なの。それをあなたは理解してたはずだから、カムイ様に私たちを止めるよう頼んでるかもしれない」

フローラ「でも、その思いに応えられない。私を止めに来たのが仕えてきた主君であっても変わらない。だって、部族に厳しくしてきた暗夜を私は許せない」チャキッ

 ガチャ バタン!

部族兵たち「フローラ様! フェリシア様たちが戻らないのです、もう吹雪も治まったというのに……」

フローラ「この時間になって戻らない、残念ですけど……最悪の結果を考えないといけません」

部族兵たち「そ、そんな……」
 
フローラ「みなさん、父さんからの指示を伝えます。暗夜からやってきた野蛮な者たちを一掃してください。王女だけはできれば生きて捕らえてください。暗夜との交渉材料に使います。私たちは間違っていません、それを見せつけましょう」

部族兵たち「フェリシア様の仇を討つぞ! オオオオオオオオオッ!」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村周辺―

???「どうやら、吹雪が止まったみたいだね。これでどうにか部族の村まで進めそうだ」

???「やったの! これでどうにか追いつけるの!」

???「本当だよ。それにしてもカムイ様はすごいね、僕たちをマークス様が直々に送り出すくらいなんだから」

???「マークス様、とっても心配そうだったの。ピエリたちが駆けつけて、安心させてあげるの! ラズワルドも急ぐの!」

ラズワルド「そうだね。もうすでに部族の村に入って戦いになってるかもしれない。ピエリ、マークス様からの命令は覚えてるよね?」

ピエリ「誰も殺さないように戦うの」

ラズワルド「ピエリ大丈夫かい?」

ピエリ「大丈夫なの、ここに来るまでにノスフェラトゥをいっぱい、えいっ!したからしばらく大丈夫なの!」

ラズワルド「ははっ、それはよかったよ。それじゃ、急ごう。僕たちが加われば何とかなるはずだから」

ピエリ「そうなの。ラズワルドもピエリの馬に乗るの!」

ラズワルド「それじゃ、言葉に甘えさせてもらうね!」

ピエリ「それじゃ行くの! ちゃんと掴まってるの!」

ラズワルド「………」

ラズワルド(カムイ様、どうか僕たちが行くまで、無事でいてください……)


第八章 前編 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでサイラスとエルフィの支援がCになりました。

今日はここまでになります。書いてて思ったけど、これ魔法使い無しで戦うことになるのか……

 次の戦闘でカムイと陣を組むキャラクターを決めます。お時間のある方、参加いただけると幸いです。

 サイラス
 ジョーカー
 リリス
 エルフィ
 エリーゼ
 ハロルド
 モズメ

 >>400
 
 また、戦闘での組み合わせを一組決めます。これも上記一覧のキャラになります

 >>402
>>403

 重複はその後のキャラクターで設定しますのでよろしくお願いいたします。

すみません、安価番号間違えました。

 主人公との陣は>>391

 組み合わせは>>393 >>394です

 サイラス
 ジョーカー
 リリス
 エルフィ
 エリーゼ
 ハロルド
 モズメ

 誠に申し訳ありません。

さらばオーディン
エリーゼ

リリス


安価はエリーゼおなしゃす

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村―

カムイ「………ジョーカーさん」

ジョーカー「ええ、すでに多くが外に出ています。戦闘の準備もすでに終えているようです」

カムイ「モズメさん、これを」

モズメ「これは……弓やな」

カムイ「はい、弓を扱うことはできますか?」

モズメ「猟は得意分野やったからな。問題あらへんよ」

カムイ「なら安心ですね。すみませんが、私たちは離れて戦うことのできる人が今あまりいません。モズメさんにはできる限りの援護に回って欲しいんです。相手を釘づけにしてくれるだけで結構ですから」

モズメ「わかったで」

カムイ「それじゃ、まずは私が行きます。正直、話し合いで収まるとは思えませんけど」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしも一緒に行くよ」

カムイ「エリーゼさん。ですが……」

エルフィ「エリーゼ様、それは危険すぎます」

カムイ「ううん、もしかしたらあたしとカムイおねえちゃんだけで行けば、話を聞いてもらえるかもしれない。フェリシアとの約束だってあるもん、だから……」

カムイ「戦闘になる可能性はとても高いです。それでもいいですか?」

エリーゼ「うん。元はといえば、あたしがフェリシアたちに見つかっちゃったから……。だから、あたしにできることをやりたいの」

エルフィ「エリーゼ様………」

エリーゼ「エルフィ、大丈夫だから。心配しないで」

エルフィ「……カムイ様」

カムイ「なんでしょう?」

エルフィ「私がたどり着くまで、エリーゼ様のことをお願いします」

カムイ「はい」

サイラス「よし、俺たちは入口より離れた場所で待機する。だが、到着するのに時間が少し掛るはずだ。それまでは……」

カムイ「何とか生き残ってみせますよ。いや、逃げきってみせますと言ったほうがいいですね」

ハロルド「話には聞いていたが、カムイ様はなんとも緊張感がないというか、冷静な方なのだな」

ジョーカー「カムイ様は冷静で美しい、素晴らしい御方ですよ」

カムイ「美しいは余計ですよ。私は自身の顔を見たことがないんですから。さて、お話はここまでです。皆さん、もしもの時はお願いします」




エルフィ「………」

リリス「エルフィさん、大丈夫ですよ」

エルフィ「リリス?」

リリス「カムイ様は、必ずエリーゼさまを守ってくれます。だから、もしもの時は急いで二人の元に駆けつけましょう」

エルフィ「そうね。その場所までは私があなたを守るわ」

リリス「はい。私もエルフィさんを守ってみせますね」

◆◆◆◆◆◆

フローラ「……来ましたね」

部族兵たち「………」ジャキッ



クーリア「ほう、わずか二人で来るとは、私たちに対してはそれだけで十分と?」

エリーゼ「ち、ちがうよ。あたしたちは、お話をしに来ただけ。本当にそれだけなの」

カムイ「はい。氷の部族の皆さんに話合いをするためにここまでやってきました」

クーリア「私の娘を一人殺したものが何を言う」

エリーゼ「あたしたちは……そんなことしてないよ! フェリシアも無事、だから……」

クーリア「なら、なぜあなた方とともにフェリシアがいない? 姿無き言葉に、私は動じたりしない」

エリーゼ「……そ、そんな」

カムイ「エリーゼさん、もういいです。こういう方に説明は無用です」

エリーゼ「で、でも……」

カムイ「それにこの場にフェリシアさんがいたとしても、信用はしないでしょう。大方、無理に言わされていると決めるでしょう」

クーリア「言いたいことをいウ方だ」

カムイ「あなたが、族長ですか。はじめまして、カムイといいます」

クーリア「そうか、あなたがカムイ王女ですか、なるほどフローラとフェリシアに聞いた通り、冷静な人物のようだ。その手で従者を殺しながら、身に何も感じないとは、まるで鬼ですね」

カムイ「そうですね。あなたにはそう見ているようですから、何も訂正するつもりはありません。あなたの見たいように私を見てくれて構いません」

フローラ「カムイ様、今の立場を理解しての発言、そう考えてよろしいのですね?」

カムイ「フローラさん、あなたは氷の部族の方だったんですね」

フローラ「ええ、そうですカムイ様。そして、今は暗夜に刃を向ける者です」

カムイ「私の従者として活動していたのは……」

フローラ「カムイ様、あの城塞は牢獄なんですよ。私とフェリシアがあそこにいたのは、ただの人質としてだったんですから」

カムイ「人質ですか。ふふっ、そうなると反乱がおきている時点で、人質の意味はありませんね」

フローラ「ええ、そうかもしれません。だから私とフェリシアはここまで戻ってこれたんでしょう。そして、今日でそんな生活も終わりです」


フローラ「カムイ様、そしてエリーゼ様。あなた方を捕らえて、氷の部族は暗夜から独立させてもらいます。長きにわたる迫害を続けてきた暗夜に付いたあなたを、もう主君と呼ぶことはできません」

カムイ「……話し合いの余地はないということですね」

クーリア「暗夜の王女を捕らえるのです。まだ、二人の仲間がこの村に入ってくる前に」

エリーゼ「カムイおねえちゃん。ごめんね、やっぱりあたし……」

カムイ「いいえ。こうして話し合いをしようと一緒に来てくれたエリーゼさんが悪いわけありません。頭が固い人たちが悪いだけですから……」

カムイ(フェリシアさんを連れてこなくて正解でしたね。こんな風に話を聞いてくれない家族の姿など、見たくないに違いありませんから)

フローラ「それでは、皆さん。行きましょう」

部族兵「丸腰の王女と盲目の王女だけだ。すぐに捕まえてやる!」

クーリア「盲目とは思わないことです。いいですか、決して殺してはなりません。生きていなければ意味がないのですから」

カムイ「エリーゼさん、あの民家の影まで行けますか?」

エリーゼ「うん、まかせて。カムイおねえちゃん、乗って!」


サイラス「……! 動いた! みんな行くぞ!」

リリス「エルフィさん、乗ってください!」

エルフィ「ええ!」

ハロルド「ぐおっ、足が雪に取られて……」

モズメ「何やってるんや。こんなところで不運なところ見せつけんといてや」

ハロルド「出来れば私もこの不運から抜け出したいのだが」

モズメ「ならあたいの走った後を付いてくるんや。雪の硬い場所選んで通ったる」

ハロルド「すまない」

モズメ「気にせんでええよ。早くいかんと」

サイラス「リリスとエルフィはカムイとエリーゼ様の元に急いで行ってくれ。俺たちは、横から強襲する!」

リリス「わかりました! エルフィさん、少し揺れますよ!」

 ヒヒーン!!!!

エルフィ「……すごく早いわね」

リリス「これでも厩舎係ですから。馬を扱うのはお手の物なんです。それよりもエルフィさんは大丈夫ですか?」

エルフィ「あまり乗馬訓練はしたことないから……。少しだけ辛いわね」

リリス「も、持ちますか?」

エルフィ「持たせるわ。だから、早くエリーゼ様の元に」

リリス「はい、わかりました。速度あげますね!」

エルフィ「えっ、まだ上がるの!?」

リリス「行きますよ、エルフィさん!」

エルフィ「ちょ……揺れ……ううっ」

サイラス「なんだあれ、全く追いつける気がしないぞ」


カムイ「さて、どうにか感覚把握で民家を理解できましたけど、ここから先はもうわかりませんね」

エリーゼ「どうするの? カムイおねえちゃん」

カムイ「決まっています。ここで数人倒してしまいしょう」

エリーゼ「やっぱりそうなるよね」

カムイ「多分左右から来ますから。ここは、エリーゼさん馬を下りてください」

エリーゼ「ええっ、大丈夫なの?」

カムイ「はい、それとこちらに……」



部族兵「よし、この民家の裏だ。一気に行くぞ!」

 ザザザッ

部族兵「!? どこに行った!?」
 
 サガセ、サガスンダ

部族兵「馬を置いて一体どこへ………」

 ハラ……ハラ……

部族兵「んっ、これは木の葉?」



カムイ「上からだと気配がとても探しやすいですね。それでは行きますか」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたし……」

カムイ「今はここにいてください。たぶん無傷では済みませんから、終わった直後に治療をお願いします」

エリーゼ「うん! 気を付けてね」

カムイ「わかっています。てやああああ!」

部族兵「ぐがぼ……」ドタッ

部族兵「なに!?」

カムイ「遅い、はぁ! せやっ!」

 ドサドサ

部族兵「くっ、だがこの人数なら!」

カムイ「まだまだ、これからですよ」

 シュオオオン

部族兵「!? な、なんだこれは!」

カムイ(竜状態)「驚いている暇はないですよ! せいやっ!」

部族兵「ぐおおあああああっ」ドタッ

エリーゼ「カムイおねえちゃん……すごい」

部族兵「怯むな! 迎え撃つ、援護しろ!」

部族兵「わかりました。くらえっ!」

カムイ(竜状態)「ぐっ……魔法ですか。避けづらいものを使ってきますね」

部族兵「まだまだ、ここから続くぞ!」

 ザシュ 

カムイ(竜状態)「やりますね、でもこちらもまだまだ」

部族兵「いたぞ!」

エリーゼ「もう追いついてきちゃったの!? カムイおねえちゃん!」

カムイ(竜状態)「はさみうちにされましたか」

部族兵「化け物め。戻ってこなかった同胞をこれで殺したのだろう!?」

部族兵「一気に掛れば、どうにかなるはずだ!」

カムイ(竜状態)「……負けるわけにはいきません」

部族兵「俺たちも、負けるわけにはいかないんだよ! くらえ!」

カムイ(竜状態)「くっ、これはさすがに避け切れません!」


 ズバッ


エルフィ「てやあ!」

部族兵「な、なんだとぉ……」

リリス「カムイ様! お怪我はありませんか」

エルフィ「ふん、リリス。サポートをおねがい!」

リリス「はい!」

部族兵「くらええええええええ!」

エルフィ「ぐっ」

部族兵「もらった!」

リリス「させませんよ!」カキィン

エルフィ「いくわ! せやぁ!」

部族兵「ば、ばかなぁ!」



エルフィ「お腹すいちゃった……」

リリス「食いしん坊なんですね」

エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「エリーゼ様、どうして木の上なんかに?」

カムイ「これくらいしか手立てがなかったので。すみません、近くに一緒にいてあげることが私はできませんでした」

エルフィ「いいの、守ってくれてありがとう。カムイ様とエリーゼ様はここでしばらく休んでいて、私とリリスでどうにかしてみせるから」

カムイ「いいんですか? まだ敵は……」

エルフィ「大丈夫です。みんな合流しましたから」




部族兵「あの民家の影に暗夜軍の増援も行った。一気に畳みかけ――」

サイラス「そうはさせない!」ザンッ

ジョーカー「そういうことだ!」ヒュン

部族兵「くそっ、新手か。魔法で攻撃を――ぐああああっ!」

モズメ「させへんよ。ハロルドさん、今がチャンスや」

ハロルド「ああ、感謝するよモズメくん! 喰らいたまえ、これが正義の力だ!」

部族兵「くっ、これでは民家に近づけ―――」

リリス「今です、動きが止まりました」

エルフィ「リリス、後方の奴らをどうにかするわ。回り込んで!」

リリス「はい! 行きますよ」

 ワー ワー ウシロカラダト!? グワアアアアアア

エリーゼ「みんなすごい。どんどん倒してる」

カムイ「ええ、これでどうにかなったというところでしょうね――」

エリーゼ「うん、これなら」

カムイ「第一陣は終りです。第二陣が来ますね」

エリーゼ「えっ……」

フローラ「第一陣がやられたようです。では、父さん、行きましょう」

クーリア「ああ、捕らえるのはできたらにするべきだろう。殺すつもりで行く、いいなフローラ」

フローラ「ええ、父さん」




サイラス「くそっ、また新しいのが出てきたぞ。さすがに人数的に不利だな」

カムイ「はい、ですがやるしかありません。そうしない……んっ?」

カムイ(この音、馬? 入口の方角から何かが来ている?)

 パカラパカラッ

ピエリ「平原を抜けたの!」

ラズワルド「よし、もう戦闘は始まってるみたいだけど、カムイ様たちはどこだろう?」

エルフィ「新手!?」

エリーゼ「でも、あれって暗夜の装備だよ。もしかしたら――」

サイラス「増援か? でも一体誰が?」

カムイ「あなたたちは誰ですか?」

ピエリ「! ラズワルド、あそこなの!」

ラズワルド「ああ、カムイ様! やっと見つけましたよ」

 タタタタタタタッ

カムイ「えっと、あなた方は」

ラズワルド「はい、僕はラズワルド。マークス様からの命を受けて、カムイ様に加勢しに来たんだ」

ピエリ「ピエリはピエリっていうの。ラズワルドと同じマークス様の命でここに来たの!」

エリーゼ「マークスおにいちゃん、すっごく心配してたから。でも、あたしだけじゃやっぱり足りないって思われてたのかな……」

カムイ「いいえ、エリーゼさんがいて助かってますから。大丈夫ですよ」ナデナデ

エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃん、ありがとう!」

カムイ「それで、ラズワルドさん。ピエリさん。来ていただいたばかりなのですが……」

ラズワルド「はい、誰も殺さないように、ですよね」

ピエリ「ピエリたちもマークス様からそう命令を受けてるの! だから心配しないでいいの! でもボコボコにするの!」

カムイ「マークス兄さん。手回しが早いんですね」

ピエリ「早くボコボコにしたいの!」

カムイ「ええ、一緒に彼らをボコボコにしましょう。話を聞いてくれない頭の固い人たちですから」

ピエリ「頭をえいっして、柔らかくしてあげるの! ピエリ、カムイ様といい友達になれる気がするの!」

ラズワルド「うん、それじゃ。僕たちもカムイ様の指揮下に入るから。指示をお願い」

カムイ「はい、それではみなさん。一気に攻めます、だけど殺さないでください。すごく難しい問題ですが、同時に力量の差を見せつけられます。相手の意思を完全に砕いてあげましょう」

ピエリ「一番乗りなの!」

ラズワルド「前に出すぎないようにね」

ピエリ「えいっ! それ!」

サイラス「ラズワルド、ピエリ! 俺はサイラス、援護に回るから前線は任せた!」

ピエリ「わかったの!」

部族兵「くっ、なんだこの力は。くそ、押し負けちまう! なっ、しまった横から!?」

ラズワルド「ごめんね」ザシュ

部族兵「ぐはぁ!」

ラズワルド「うん、いい感じ!」

部族兵「けっ、背中ががら空きだぜ!」

モズメ「あんたもや」

部族兵「ぐあっ」

エルフィ「吹っ飛んでて」ドガン

リリス「うわぁ、盾で殴られて結構吹っ飛んじゃいましたね」

エリーゼ「エルフィ、すごい!」

エルフィ「ふふっ」

クーリア「……何故だ。なぜ。正義はこちらにある、こちらにあるはずなのになぜ、こんなにも……」

フローラ「父さん、私たち二人であの方たちを倒しきればいいことです」

クーリア「そうだな。すまない、族長である私が気弱になってしまっては」

フローラ「いいえ。ここが踏ん張りどころですから……」

フローラ(何が踏ん張りどころなのか、もうすでに戦況は私たちに不利な状態になっている。もう全体の八割が倒れた今、私たちが勝てる可能性なんて……)



エリーゼ「カムイおねえちゃん!」

カムイ「はい、ここまで運んでくれて、ありがとうございます」スタッ

クーリア「直々に始末をつけにきたというわけですか?」

フローラ「くっ父さんには……!」

 ヒュンッ キキィン


フローラ「………」

ジョーカー「お前の相手はこの俺だ」

フローラ「ジョーカー」

ジョーカー「主君に従者を切らせるわけにはいかない。たとえ刃を向けた奴だったとしてもな」

カムイ「ジョーカーさん、ありがとうございます。クーリアさん、あなた方の負けです」

クーリア「ふん、まだ終わってなどいない。あなたを捕らえれば、この反乱は実を結ぶ。氷の部族は晴れて呪縛から解放されるんです」

カムイ「よ迷い事ですね。私たちにこれほどやられたのに、お父様を手玉にとって戦えるなどと本当に思っているんですか?」

クーリア「やってみなければわからないこともある。その可能性を否定することはあなたの自由ですが、私たちはそれにかけているのです! リザイア!」

カムイ「話は聞かないということですね。なら、どこまでやれるか見せてもらいましょう」タタタタタタタッ

クーリア「待て!」

フローラ「ジョーカー。何年ぶりかしら、こうして刃を交えるのは」

ジョーカー「最初はカムイ様に反抗的な態度をとったお前に喧嘩を売った時だったか。まぁ、そんなことどうでもいい。目を覚ませ、お前がいるべきはカムイ様の傍だ。ここじゃない」

フローラ「……私が城塞にいたのはただの人質として、カムイ様に忠誠なんて誓っていないわ」

ジョーカー「そうかい、ならどうして今まで逃げださなかったんだ? 今のお前を見ていると、すぐにでも逃げだしてそうに見えるが?」

フローラ「……それはね、ジョーカー。あなたがいたから……」

ジョーカー「ああ? 俺がいたから逃げなかった? 意味がわかんねえな」

フローラ「そうよね、あなたにはわからなくて当然だわ。同時に、それがとても悔しくてたまらない。そうね、私がカムイ様に刃向ったのは、もしかしたら……」

ジョーカー「御託はいい、さっさと武器を抜け。一から教育し直してやる。もちろん帰ったらジジイにも報告するからな」

フローラ「それは困りますね。ジュンターさんの作法の教えは、長くて辛いものですから」

ジョーカー「なら、さっさと帰ってこい!」ヒュンッ

フローラ「いくらジョーカーの頼みでも、それは受けられないわ!」

ジョーカー「くそ、姉妹揃って馬鹿じゃねえか。大馬鹿野郎だ」

クーリア「くらえ」

カムイ「そんな攻撃じゃ当たりませんよ」タタタタタタッ

クーリア「くそっ、おちょくるつもりか。私たちの行為そのもの愚弄して、何が楽しい!」

カムイ「愚弄はしません。ですが、こんな私一人をどうにかできないのに、反乱が成功すると思っているその考えは浅はかですよ。あなたが考えているよりもお父様はとても冷酷な方なんですから」

クーリア「その血を引いているあなたも同じものだろう!」

カムイ「そうですね、多分間違っていませんでしょう。でも、それで私がここで倒される可能性が上がるわけじゃありません。それに、一人でよく追ってきましたね。私の仲間が待ち構えているかもしれないというのに」

クーリア「!!!?」ズサササ

クーリア「……!?」

クーリア(な、なぜ足を止めた!? 私は、反乱を、解放を求めて闘っているはずなのに、なぜ、なぜそんな言葉で足を止めた!?)

カムイ「結局、それくらいということです。フローラさんなら、私の言葉に耳を貸さず、私を捕らえることに執着していたでしょう」

クーリア「わ、私が。私が自分の命を優先したとでも!」

カムイ「私は何も言っていませんよ」

クーリア「くっ」

カムイ「もう逃げるのも空きましたし、ここならいいでしょう」

クーリア「………何もない場所だと」

カムイ「ええ、あなたは魔法。私は剣、こんな遮蔽物のない空間、あなたのほうがとても有利です」

クーリア「……あなたという人は、どこまで人を」

カムイ「死にたくなければ、本気で来てください」

クーリア「……」ゾクッ

カムイ「行きます」

クーリア「うおおおおおおおおおっ!!!」



 ヒュンッ




クーリア「ぐっ、魔術書が!」

サイラス「よっと、これで武器はもう無いな」

モズメ「へへっ、やったで!」

ハロルド「素晴らしい腕前だぞ。モズメくん」

モズメ「いやや、照れるわ。カムイ様、言われたとおりやったで!」

カムイ「はい、ありがとうございます。さて、まだ戦いますか?」

クーリア「ぐっ、卑怯な手を使うとは」

カムイ「話し合いをしにきた私とエリーゼさんに刃を向けておきながら、それはないでしょう?」

クーリア「くっ、殺せばいい。もう私には何も残っていない」

カムイ「………」

クーリア「なぜだ、なぜとどめを刺さない」

カムイ「言ったでしょう。私は別にあなた方を殺すためにここまで来たわけじゃないんですから」

クーリア「な、なんだと、だ、だがフェリシアは……」

カムイ「フェリシアさんも、ほかの方々も無事です。エリーゼさんが言ったでしょう、無事だって。かってに盛り上がったのはあなた達ですから」

クーリア「……わ、私は」

カムイ「サイラスさん、ここは頼みます。私はジョーカーさんとフローラさんを」

サイラス「ああ、わかった!」

フローラ「はぁ、はぁ、はぁ」

ジョーカー「はぁ、はぁ、はぁ。くそ、フェリシア程じゃないにしろ。やっぱり手こずるな」

フローラ「ジョーカー、私は負けるわけにはいかない。絶対に、絶対に」

ジョーカー「………」

フローラ「なによ、武器を取りなさい! まだ、戦いは………」

ジョーカー「いいや、もう戦いは終わったようだ」

フローラ「な、何を言って」

ジョーカー「おかえりなさいませ、カムイ様」

カムイ「ええ、遅くなりましたジョーカーさん。フローラさんあなたの父を拘束しました。それに、村の方々もすべて無力化済みです」

フローラ「………」

カムイ「闘いは終わりました。だから、その武器を納めてください」

フローラ「いやです」

ジョーカー「フローラてめえ、物わかりの悪い奴だな」

フローラ「暗夜王国のいいなりになるくらいなら、私死んだって構わない。そう考えているんですから」

カムイ「………フローラさん」ザッザッ

フローラ「カムイ様、それ以上近づかないでください!」

カムイ「………」ザッザッ

フローラ「来ないで!」ヒュンッ

カムイ「ぐっ………」ザッザッ

フローラ「どうして、どうして近づいてくるんですか!」

カムイ「フローラさんが私の大切な従者だからですよ。まだ、私はあなたを解雇なんてしていませんから」

フローラ「暗夜王国にとって抑止力になるからですよね。カムイ様は私を人質としてしか見てない。そうなんですよね」

カムイ「いいえ、わたしはあなたのことを信頼できる人だと思っていますよ。だからです」ダキッ

フローラ「や、やめてください。私を、そんな優しく抱きしめないでください」

カムイ「なぜですか?」

フローラ「私は、私は今日死ぬつもりだったのに。心も体も、氷のようになってしまおうって思っていたのに……」

カムイ「それは無理な相談です。フローラさんには、いつもどおり優秀なメイドさんでいてほしいんですから。そんな氷のようになってもらっては困ります」

フローラ「放してくれないんですね……カムイ様」

カムイ「はい、まだまだ放してあげません。フェリシアさんもフローラさんのことを待っていますから。それに久々にあれもやりたいですし」

フローラ「え、えっとカムイ様。あのあれというのは……」

カムイ「とにかく、ここは私に任せてくれませんか? 悪いようには絶対にしません」

フローラ「……その言葉を、信用してもいいんですか?」

カムイ「はい、今はまだ早すぎただけなんです。だから私を信用してください」

フローラ「………本当に、カムイ様には敵いませんね」


「私の負けです。カムイ様……」

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C→C+
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+

仲間たちの支援
 
 今回の戦闘でリリスとエルフィの支援がCになりました。
 今回の戦闘でハロルドとモズメの支援がCになりました。
 今回の戦闘でジョーカーとフローラの支援がCになりました。
 今回の戦闘でピエリとラズワルドの支援がCになりました。

今日はここまでです。このルートではハイタカさんは捕獲できないんだ、すまない。
 
 次回かその次で第八章が終わります。

 次の安価を決めます。

 氷の部族の村、族長の家で会話をしている組を二組決めたいと思います。
 お時間ありましたら、ご参加いただけると幸いです。

 サイラス
 ジョーカー
 リリス
 モズメ
 エルフィ
 エリーゼ
 ハロルド
 フェリシア
 フローラ

 キャラクターは上記からお願いします。

 一組目は >>417 >>418

 二組目は >>420 >>421

 になります。

ハロルド参上だぁ!

ジョーカーでおなしゃす!

モズメ

エルフィで!

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村・族長の家―

エルフィ「お腹すいちゃった……でも、食事の準備ができるまで時間が掛るって言ってたわね。でも、がまんしなくちゃ」

エルフィ「……」きゅるぅぅぅ。

エルフィ「どうしよう、お腹が鳴ってしまうわ///」

モズメ「エルフィさん、どうかしたん?」

エルフィ「モズメ? なんでもないわ」

モズメ「でも、なんだ顔が赤いで?」

エルフィ「ほら、ここら辺は寒いから、その所為……」きゅるぅぅぅ。

モズメ「………」

エルフィ「……こ、これはその///」

モズメ「なんや、お腹すいとったんか」

エルフィ「その、いっぱい動いたから」

モズメ「そうやな、リリスさんと一緒にいっぱい動き回ってたから」

エルフィ「もう少ししたら夕食の時間だから、待ってようと思ってたんだけど……」

モズメ「みんなの前でお腹鳴らすなんてあかんで、エルフィさん女の子なんやから」

エルフィ「ならないようにできたらいいんだけど」

モズメ「これでええかな?」

エルフィ「え、これって。モズメの携帯食じゃ」

モズメ「あたい、結構食べなくても持つ方なんよ。だから、今食べられないあたいの代わりにエルフィさんに食べてもらいたいんや」

エルフィ「モズメ……、ありがとう。それじゃあ、ありがたくいただくわ」ハムハム

モズメ「エルフィさん、戦ってる時かっこよかったわ。あたいはまだまだやからうらやましい」

エルフィ「かっこいいかどうかわからないけど、モズメだってよくやってたわ。最後にちゃんと敵を無力化してた、あの状況で魔術書だけを狙い打つなんて、そうそうできることじゃないわ」

モズメ「あれは、まぐれや。みんながいてくれたからできたことなんや。あたい一人やったら、たぶん」

エルフィ「モズメ。あれはまぐれなんかじゃない。モズメが行動して手に入れた結果だもの、そこを否定しちゃいけないわ」

モズメ「……そう言われても、実感が湧かないんや」

エルフィ「いいえ、すでに目に見える形であるわ」

モズメ「ど、どこにあるんや?」

エルフィ「周りを見て」

 ワー ワー ショッキハコッチニオイテクレ ハイハイ、マッタクカッテニカンチガイシテタダケカ クーリアサマモキズヒトツナカッタッテイウシ、オレタチモナンダカンダシンデナイシ、カンシャシナイトナ

エルフィ「モズメがあの時、魔術書を狙い打てなかったら、まだこんな雰囲気じゃなかったはずよ。こうして、部族の皆が私たちを迎え入れてくれたのは、モズメの行動があったから。モズメの腕の良さはちゃんと証明されてるわ」

モズメ「………」

エルフィ「モズメのしたことは、この状況を後押しできた。今はそれでいいんじゃないかしら?」

モズメ「せやな……。あたい、役にたてるかわからへんかったから、エルフィさんの言葉で少し自信付いてきたんよ」

エルフィ「ふふっ、よかったわ」

モズメ「なぁ、エルフィさん。もしもまた悩んだりしたら、話聞いてもらってもええかな?」

エルフィ「いいわ。何か悩んだら話をして頂戴。私にできる限りで、答えるから」

モズメ「エルフィさん、ありがと」



『エルフィとモズメの支援がCになりました』

◆◆◆◆◆◆

ジョーカー「ふむ、どうするか……」

ハロルド「ジョーカーくん、どうしたんだね。悩んでいるようだが」

ジョーカー「ハロルドか……」ササッ

ハロルド「なんで、自然と距離を取るのかね」

ジョーカー「出会ってばかりで申し訳ないが、お前の近くにいるとあまり良いことが起きない気がしてな」

ハロルド「ううっ、そう言われてしまってはぐぅの音も出ない。確かに、私はとてつもないほどに運が悪いのは確かだが……」

ジョーカー「そうか、ならできる限り近づかないでほしいな。カムイ様に用意する紅茶をこぼされたりしては大変だからな」

ハロルド「しかし、君が悩んでいることは見過ごせないな。どうしたんだね、このハロルドに聞かせたまえ!」

ジョーカー「……悩んでいることか。話したところで解決するものでもないと思うが?」

ハロルド「それはわからないぞ。もしかしたら、解決の糸口が見つかるかもしれない、私が協力する。まかせたまえ」

ジョーカー「あまり気乗りがしないが。親睦を深めるために大人数で楽しめる何かを頼まれた。できれば食事関連の事柄でだ」

ハロルド「食事は皆で楽しむものだろう」

ジョーカー「俺が言っているのは、食事に遊びを織り交ぜたようなものの話だ」

ハロルド「うむ……。遊びかしかし食事に遊びを混ぜるというのは……」

ジョーカー「ああ、一歩間違えれば顰蹙を買うだろうな。カムイ様に任されてしまった手前、完璧にこなす必要がある」

ハロルド「私は食事で遊びは賛成できない。ただでさえ、私の食事は運に左右されることが多いのでな」

ジョーカー「?」

ハロルド「ミートサンドを頼んだら、ミートが入っていなかったり。焼き立てパンを買った直後に雨が降ったり、買出しの帰りに飛竜の群れが真上を飛行して糞を落とされたり。正直、食物に対してこう悲しい気持ちになる」

ジョーカー「なるほど、それがお前の言う俺に対するアドバイスということだな」

ハロルド「食事の見た目に遊び心を入れるのが一番いいはずだ。なに、ジョーカーくんは一流の執事だと聞く、きっとうまくいく」

ジョーカー「そうだな。うまく生かせないといけないな。ハロルド、ちょっとここで待っていろ」

ハロルド「むっ、なぜだ?」

ジョーカー「話を聞いてくれた礼に、ケーキでも作ってやる。ただ、手のかからないものだから、豪華なものは期待するなよ?」

ハロルド「なに、私のために用意してくれるのか!?」

ジョーカー「ああ、任せろ。お前にぴったりなものを用意してやるからな」ニヤニヤ

ジョーカー「できたぞ。といっても、スポンジだけだがな」

ハロルド「流石というべきだな。しかし、これだけの量を食べてしまっては、夕食を食べられなくなってしまうぞ」

ジョーカー「全部食べろなんて言っていない。今から切ってやるから、選んで食べればいい」

ハロルド「そうだな。私は一切れだけで十分だ。他はみんなに分けてあげてくれ」

ジョーカー「そうか。よし、切り終わった。ほら、どこでもいいから食べるといい」

ハロルド「うむ、ではこの一切れをいただこう」

ジョーカー「……ハロルド、すごいな」

ハロルド「んぐっはむっ…なにがだ――」

ハロルド「!!!!!!!!」ダンダンダン!

ジョーカー「どうした、ハロルド! そんなにおいしいのか!」

ハロルド「じょ、ジョーカーくん! こ、これはなんだ。とても、とても苦いぞ!」

ジョーカー「ああ、お前の話を聞いて浮かんだアイデアを形にしてみた。一切れだけ苦くて体にいい薬草を中心に練りこんだ。運がものをいう遊び心を込めたデザートだ」

ハロルド「ぐっ……わ、私の話を聞いてどうしてこれができるのかね?」

ジョーカー「単純な話だ。お前の運の悪さを聞いたら、ちょっと試したくなった。本当にすごいな。十二等分した中の当たりを一発で引き入れるなんてな」

ハロルド「ぐほっ、ごほごほっ。な、何か飲み物をくれないか」

ジョーカー「ああ、今日の夕食に出すカムイ様の要望に力添えをしてくれたお礼に、二番目にうまい紅茶を淹れよう。これはしばらく、いい暇つぶしができそうだ」


『ジョーカーとハロルドの支援がCになりました』

 今日はここまでです。次回でこの章が終わります。
 
 味方を一人残らず全滅させたけど、やっぱりモブ兵はマイキャッスルに配置されないんですね……。
 サンペキだらけにしたかったんだけどなぁ

 
 

◆◆◆◆◆◆
カムイ「………」

 コンコンコン

リリス「カムイ様、失礼いたします」

クーリア「………」

カムイ「クーリアさん。足を運んでいただいてありがとうございます」

クーリア「構いませんよ。村の者には誤解であったと説明した。それに、あなたたちが誰一人として命を奪わなかったこと、そして傷の手当てに全力を尽くしてくれたこと、それこそがこの状況を作り出したといってもいいのです。ありがとうございます」

カムイ「そういっていただけると、皆に命令を出した結果が報われたというものです。すみません、私たちのために部屋を貸していただいたこと、感謝いたします」

クーリア「頭をあげてください、すみませんが本題に入る前に私から一つ質問をよろしいか?」

カムイ「……なんでしょうか?」

クーリア「あなたは何を思って、私たちを生かしたのですか?」

カムイ「質問の意味がよくわからないのですが……」

クーリア「ガロン王の娘であるあなたにとってすれば、部族の反乱を抑える行為に工夫など要らないはずだ。私たちを皆殺しするだけでいい、それだけでも結果として受け取ってくれるでしょう。わざわざ話し合いをする必要もないはずでは?」

カムイ「誰も殺さないで反乱を鎮圧するほうが難しいらしいですから、結果の提示になります。それにできれば殺したくありませんでしたので、こういった形で終えることができて良かったです」

クーリア「あなた……いえ、カムイ殿。あなたは不思議な方のようだ」

カムイ「よく言われます。それでお呼びした理由なのですが」

クーリア「改めてお願いされなくとも大丈夫です。私たちの反乱に関しての話でしょう……」

カムイ「………」

クーリア「ここまで力の差を見せつけられ私たちは負けた。それに村の者たちに対する献身的な医療活動、そしてカムイ殿の言葉に止められてしまった私自身の不甲斐無さを思えば、私たちの反乱が浅はかだと言っていたことは間違いないのでしょう」

カムイ「ふむ……困りましたね」

クーリア「?」

カムイ「少しだけ勘違いをされているようです。反乱をやめることはすでにあの時に決まっていたと思っていましたから……クーリアさん、私はこれからのことについての話をするためにあなたを呼んだんです」

クーリア「……これからのこと?」

カムイ「リリスさん、星海へクーリアさんを招いていただけますか?」

リリス「……はい、わかりました。クーリア様、失礼いたしますね」


―星海・カムイのマイルーム―
クーリア「むっ! こ、ここは一体!?」

カムイ「ここはですね………」



クーリア「にわかに信じがたい話ですが、なぜそのような場所に私を………」

カムイ「他人には聞かれたくない話というのがあるからです。いわばクーリアさんと密約を交わしたい、だからお招きしました」

クーリア「……密約ですか?」

カムイ「はい、先ほどのあなた方を殺さなかった理由についての本当の答えを言わせていただきますと、あることを頼みたいからです」

クーリア「……聞きましょうか」

カムイ「はい、暗夜と白夜が戦争状態に突入した話は聞いていますね?」

クーリア「ええ、私たちの反乱の話など、今考えれば白夜との戦争突入の話題で掻き消えていたのかもしれませんが」

カムイ「それは仕方のないことです。話を戻します、今は国境間での小競り合いばかりで国全体を揺るがす形での戦闘は起きていません。ですが、いずれは無限渓谷を越えて暗夜は白夜に総攻撃を仕掛けることになります。その時、暗夜王国では大規模な兵士の徴用が始まるでしょう」

クーリア「………何が望みですか?」

カムイ「簡単です。クーリアさんたちはその話が持ち上がったとき、徴用に前向きに取り組んでほしいのです」

クーリア「暗夜の侵攻を手助けをしろというのですか?」

カムイ「……」

クーリア「………やはり、カムイ殿も暗夜の――」

カムイ「クーリアさん、人の話は最後まで聞くものですよ。まだ私は徴用に前向きに取り組んでほしいという話をしているだけです。暗夜の侵攻を手助けするようにとは一言も言っていません」

クーリア「?」

カムイ「クーリアさんにお頼みしたいのは、あるときある場所で、今日と同じように振舞ってもらうことなんです。ここにお呼びしたのはそのためなんですよ」

クーリア「………ふっ、あなたは本当にガロン王の娘なのですか?」

カムイ「お父様は育ての父ですから、それに育てられた私は娘で間違っていないのでしょう。これは自由意志です、クーリアさんが望まなければ、この話は全てお流れになりますし、このことで氷の部族の処遇に手を加えるつもりなどありません。どちらにせよ、私は氷の部族の自治が認められるように全力で働きかけます。この言葉に偽りはありません」

クーリア「………まったく、お人好しといいますか、本当に不思議な方だ」

クーリア「このまま話を進めては、私たちはカムイ殿に甘え続けるだけで自治を勝ち取っても意味はないでしょう」

カムイ「クーリアさん」

クーリア「あなたを改めて見ると思うのです、古くから伝わる勇者の話、暗闇に光を与える勇者の話を」

カムイ「勇者ですか? 私はそんな大それたものじゃありませんよ。私は唯、こうして人に条件を突きつけるだけの、姑息な存在なんですから」

クーリア「ふっ、そうなると私はその姑息な存在の話に乗っかってしまう愚かな男になってしまいますね。ですが、あなたの行動を伴った行いには信じる価値があります。もしかしたら、あなたは世界を変える勇者なのかもしれませんから」

カムイ「面と向かって言われると、少し恥ずかしいものですね」

クーリア「いいでしょう、その話確かに承りました。徴用の件、私たちは率先して事に当たりましょう。村の者たちへの説明は私がいずれしておきますので」

カムイ「はい、ありがとうございます。話は以上です………あっ、あと一つよろしいですか?」

クーリア「あと一つですか?」

カムイ「はい、すみませんが、顔を触らせてもらってもよろしいでしょうか?」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・氷の部族の村・族長の家―
フローラ「………」

フローラ(真夜中になってから来るように言われましたが、いったい何の用事なのでしょうか?)

カムイ『フローラさん、今日真夜中になりましたら、私の部屋に来てもらえますか?』

フローラ(やはり、反乱のことでしょうね。従者をクビになるのか、でもあの時、カムイ様は私には従者でいてもらいたいというようなことを言ってましたし……)

フローラ「考えていても始まらないわ。結局、部屋で話を聞けば済むことなんだから」

フローラ「ここね ……? だれか先客がいる?」

 ―ひゃうっ、カ、カムイ様……そんな、だめですぅ

フローラ(!? こ、この声はフェリシア!?」

 ―何がダメなんですか。まだ触ってるだけですよ

フローラ(カ、カムイ様? もいるみたいですけど、なに何が起こっているの!?)

 ―やっぱりフェリシアさんの体はどこか冷えているんですね。触れるたびに体がゾクゾクします

 ―んんっ、か、カムイ様。そんなところ、触らないでください」

 ―久々なんですから、いっぱい触っちゃいます。それに、私に一度刃を向けてしまったんですから

  誰があなた達の主なのか、ちゃんと教えてあげないといけませんから。ふふっ
 
 ―はううううっ

フローラ「…………」

フローラ「………」ガクガクガクガク

フローラ(えっ、カムイ様にはそんな趣味があったということですか。た、たしかに男女拘らず、障る癖はありましたけど。あれは、人を理解するための行為だったはず、ま、まさかそんなことがあるわけ…三t年)

 ―ふふ、入口に触れただけで、そんな声をあげちゃうんですね……

 ―そ、そのこれは……

フローラ(入口? 入口ってなに?)

 ―大丈夫、あなたの弱点はちゃんと知ってますから。さぁ、いれますよ

 ―ふぁん、ひゃ、ひゃむひひゃま。んんーーッ

 ―ふふ、やっぱりここが弱いんですね。思った通りです。それにしてもはしたないですよ。私の指がベトベトになっちゃいました

フローラ(こ、これは、大変危険な気がします。今は逃げておきましょう)

 クルッ

リリス「……」ニコッ

 ガシッ

フローラ「リ、リリス」

リリス「はい、お待ちしておりましたフローラさん。中でカムイ様がお待ちですよ」

フローラ「いえ、あの、今中に入るのは、そのまずいと思うの」

リリス「どうしてですか?」

フローラ「だ、だって。カムイ様は何か用事があるみたいですし」

リリス「用事……ああっ、そう言うことですね」

フローラ「ええ、そういうことよ。だから私はここでしばらく」

リリス「はい、フローラさんも交じる予定だと、カムイ様は言っておられましたから、何も問題ありませんね!」

フローラ「………」

リリス「ささ、早く中へ」

フローラ「…嫌」

リリス「へっ?」

フローラ「私の操は私の決めた人にあげると決めているんです。カムイ様は確かに、確かに私の主ですが、そこまであげることはできません!」

リリス「あの、フローラさん?」

フローラ「わ、私にだってそれくらいの自由が許されてもいいじゃないですか。こんな、こんなことになるなら、私は……」

リリス「えっ、えっ、ちょっとフローラさん?」

フローラ「あそこで氷になってしまえばよかった……。こんな、救いようのない話があっていいんですか」

 ―フェリシアさん、少し失礼しますね

 ―ひゃ、ひゃあぃ

 ガチャ

カムイ「何時まで経っても入ってこないのでどうしたのかと思いましたよ、フローラさん」

フローラ「カ、カムイ、様………」

カムイ「? どうしたんですか。なんだかこの世の終わりのような雰囲気をまとっているみたいですけど」

フローラ「か、カムイ様。フェリシアに、何をしたんですか」

カムイ「え、はい、久々にあれをですね」

フローラ「わ、私の知らない間に妹に手を出していたっていうんですか!」

カムイ「確かに手を出してはいますね。現に触れていますし」

フローラ「!?」

フローラ(カムイ様右手、なんだか異様な光沢が、あの手に付いているのはなに!?)

リリス「カムイ様、指にフェリシアさんのがついてますよ?」

カムイ「ああ、そうでしたね。でも最中ですから、仕方無いですよ」

フローラ「………そ、そんな」

フエリシア「カムイ様~、どうしたんですか~、って姉さん?」

フローラ「フェリシア?」

フェリシア「ふえええ、どうしたんですか。なんで、泣きだしそうにしてるんですか?」

フローラ「あなたが、あなたがカムイ様に、カムイ様に何かされていたこと気付けなくて、ごめんね。私はあなたの姉なのに。気づいてあげられなくてごめんね……」

フェリシア「え、えっと……」

リリス「………! フェリシアさん、カムイ様はやさしくしてくれましたよね?」

フェリシア「はい」

フローラ「フェ、フェリシア? いったい何を言って」

フェリシア「カムイ様は私のこともう一度よく知りたいって言ってくれたんです。だから、私はカムイ様に触ってもらいたかったんです」

カムイ「できれば、二人とも同時にしてあげたかったんですけど」

フローラ「ふ、二人同時!?」

カムイ「はい、ですが、フェリシアさんにも明日仕事がありますから、待たせるわけにはいきません。だから先に始めていたんです。フェリシアさんの中、温かかったですよ」

フェリシア「カ、カムイ様。その、恥ずかしいですから、姉さんの前で言わないでくださいよぉ///」

フローラ「」

リリス(フローラさん、顔真っ青ですねぇ)

カムイ「というわけで、次はフローラさんの番ですよ。フェリシアさんはもう部屋に戻って………」

フェリシア「私も一緒にいます。その方が、姉さんが安心すると思いますから」

フローラ「フェ、フェリシア……」

フェリシア「大丈夫、カムイ様はやさしくしてくれますから。それに今のままの姉さんを一人きりにするなんてできないから、それに……」

フローラ「そ、それに?」

フェリシア「その、姉さんもやっぱり同じなのかって、その興味があるから。双子なら、その声あげちゃう場所も同じなのかなって……」

フローラ「」

カムイ「ささっ、中に入ってください。リリスさん、フローラさんは疲れてるみたいですから、ベッドまで運んでいただいても」

リリス「はい、フローラさん失礼しますね」

フローラ「」

 ドサッ

リリス(なんでしょうか、フローラさんから感じる儚い波動がすごいことになってます)

フェリシア「姉さん、体をお越さないと。私が支えるね」

フローラ「」

カムイ「ふぅ、さてと手も洗いました。お待たせしました、失礼しますねフローラさん」

フローラ「な、何をするんですか……」カタカタカカタ

カムイ「あ、はい。そうでしたね。呼ばれていきなりこれでは、確かに混乱するかもしれませんね」

フローラ「?」

カムイ「フローラさん。改めてのお願いなんですが……」

「顔を触らせてもらっても、よろしいですか?」

今はここまでで、残りはいつもの時間くらいに始めます。

フローラ「……えっ?」

カムイ「ですから、顔を触ってもいいですか?」

フローラ「……そ、それだけなんですか?」

カムイ「はい、そうですよ。さっきまでフェリシアさんの顔を触らせてもらっていたんです」

フェリシア「そうですよ姉さん。そんなおびえなくても大丈夫です、カムイ様はやさしく触ってくれるんですから」

フローラ「そ、そう。そうだったの……」

フローラ(よかった。カムイ様はフェリシアに手を出してしまったわけではないのね……。触られるくらいなら何の問題もないわ。私には顔の表面上の弱点はないはずですし……)

カムイ「それでフローラさん、触ってもいいんでしょうか?」

フローラ「そう悲しそうな顔をしないでください。すみません、カムイ様、私の早とちりだったようです。カムイ様、私の顔に触れてください。気にする必要はありませんから」

カムイ「そう言ってもらえると私もうれしいですよ。それじゃ、失礼しますね……」

フローラ(カムイ様の言っていたあれというのはこれのことだったんですね。もっとおかしなことをされると思っていましたけど、いつものことじゃないですか。たしかに、この頃は触ってもらっていませんでしたし、カムイ様の指は確かに気持ちいいですから……)

フローラ(でも、だとしたら、あの時カムイ様の右手の光沢は一体何だったんでしょうか? たしかリリスさんはフェリシアのと言っていましたけど……)

カムイ「それじゃ、触りますよ」

フローラ(……そもそもフェリシアが顔を触られてあんな声を上げたことなんてなかったはず……、なのにあんな声を上げてしまったということは……)

 ピトッ

フローラ「んんっ んんううっ!」

フローラ(え……な、な、なんでこんな声が漏れてしまうの?)

フェリシア「姉さん、すごい声です///」

フローラ「カ、カムイ様、一体何を……」

カムイ「フローラさんとフェリシアさんは同じなんですね。こうやって入口を触るだけで……」

フローラ「ひゃんっ……いやぁ」

フローラ(カムイ様、カムイ様の指が私の唇に、触れて………触れるたびにムズムズして……)

フェリシア「やっぱり姉さんも私と同じなんですね。なんだかうれしいです」

フローラ「フェ、フェリシア……んあぁぁ」

カムイ「はじめて触った時には唇に触れてなかったから、気がつきませんでした。フローラさんとフェリシアさんの唇が、こんなに敏感だなんて……」

フローラ「いやっ、これい……じょう。か、カムイ様、こんなの初めてで……」

カムイ「大丈夫ですよ、フェリシアさんも初めてでそんな感じでしたから。恥ずかしくないですよ」

フェリシア「そうだよ、姉さん」

フローラ「ああっ、んっ……唇で感じるなんて、そんなこと……」

カムイ「唇でこれじゃ、中に触れたらどうなっちゃうんでしょうね?」

フローラ「な、中って……」

フェリシア「はわわ、姉さんの中にも入れちゃうんですか」

カムイ「当り前です。もっと、フローラさんの声を聞きたいですから、そう、いつものフローラさんからは想像できないような、そう言う声を」

リリス(とりあえず、双子の妹に拘束されながらなすがままにされているこの構図は、いろいろと危ないですねぇ)

フローラ(唇の上で指が止まってる? 何をするのカムイ様)

カムイ「ふふっ、フェリシアさんの中に入れた指でフローラさんの中を探るというのは、なんだか背徳的なものを感じますね。さっきまでこの指に付いていたフェリシアさんのが中で交じり合うと思うと……」

リリス「カムイ様、さすがにそれ以上の発言は危険だと思います」

フェリシア「か、カムイ様。それはさすがに恥ずかしいですし、ちょっと気持ち悪いです」

カムイ「そうですか、すみません。でも、今からそれをすると考えると、こう責め立てたくなるんですよね」

フローラ「か、カムイ様」

カムイ「口をあけてください、フローラさん」

フローラ「あ、あー」

カムイ「はい、それじゃフローラさんの中に触れますよ」

フローラ「―――!!!!!」

フローラ(わ、私の口の中にカムイ様のゆ、指が……内頬をさわっ」

フローラ「ふおぉぉ、ほぉ、んおあ」

カムイ「温かいですよ、フローラさん。触れるたびに、フローラさんの体が振動してるのがわかります。フェリシアさんと全く同じ場所が一番気持ち良くなれる場所なんですよね?」

フローラ「んんっ、ひょひょんなほとぉ」

カムイ「そうですか、でも内頬に爪を立てれば……」

フローラ「んんんん!!!!!」

フローラ(なにこれ、内頬に爪が立って、これだけで気持ちいいなんて……。口の中を指で触られてるのに、どうしてこんなに気持ちが……)

カムイ「ふふっ、やっぱり一緒なんですね。でも、これ以上触るといけませんから、ここまでにしますね」

フローラ「ふぁ……んん」

カムイ「触らせてくれてありがとうございます。フローラさん」

◆◆◆◆◆◆


フローラ「は、恥ずかしかったです。今後は唇には触れないでくださいね、カムイ様」

カムイ「それは……」

フローラ「わかりましたね?」

カムイ「……はい」

リリス「これはまじめに怒ってますね、フローラさん」

フェリシア「姉さんのあんな姿を見るなんて、思ってませんでした。その、なんだか私興奮してるみたいです」

リリス「すごくエロかったから仕方ありません。こんな方からの好意に気づいていないジョーカーさんって……」

フェリシア「? ジョーカーさんがどうかしたんですか?」

リリス「……ううん、なんでもないです」

フローラ「まったく、妹の前でこんなはしたない姿を見せてしまうなんて」

カムイ「いいじゃないですか。二人とも同じ場所が弱点だったんですから」

フローラ「それを知って得をするのはカムイ様だけでしょう? しばらくは顔を触らせませんから、そのつもりでお願いします」

カムイ「それは……あ、いいえ、なんでもないです」

フェリシア「でも、カムイ様。どうして私と姉さんの弱点が、口だってわかったんですか?」

フローラ「それは私も気になりました。それにカムイ様も唇に関しては気付いていなかったと言っていたじゃないですか。なのにどうやって?」

カムイ「それですか。正直確信はなかったのですが、その遺伝してるかもしれないと思いまして」

フローラ「?」

フェリシア「?」

リリス「………」

~~~~~~~~~~~~~
クーリア『くっ、くふっ。そ、そこはあああぁ』

カムイ『クーリアさん、唇が弱いんですね。弱いんですね? 反乱も抑えられて、こうやって体の弱点までさらけ出されてどんな気持ちですか? 女性にこうやってなるがままにされるのはどんな気持ちなんですか?』

クーリア『こ、この程度の……うああ』

カムイ『いいですよ、身を捩ってるのがわかります。でも触っていいと言ったのはあなたなんですから、満足するまで触るのをやめませんから』

クーリア『やめろ、たのむ、このままでは……』

カムイ『このままでは、なんなんですか? その口で話してください、ふふっ、触れるたびに唇が震えてかわいらしいです』

クーリア『だ、だめだぁああ』

リリス『』
~~~~~~~~~~~~~
リリス「ホントウ、イデンッテコワイデスネ」

カムイ「さて、フェリシアさん。フローラさん、私の用事は以上です。部屋に戻ってゆっくり休んでください。明日はすぐにでも王都へ向かうことになりますから」

フローラ「……あの、カムイ様」

カムイ「はい、なんですか?」

フローラ「今日はカムイ様のお傍にいてもよいでしょうか?」

フェリシア「私もですぅ。あの、カムイ様、今日は一緒に眠ってもいいですか?」

カムイ「……どうしたんですか、突然?」

フローラ「突然呼び出しておいて顔を触るカムイ様に、突然と言われたくはありません」

カムイ「そうですか……。わかりました」

フェリシア「カムイ様、ありがとうございます」

カムイ「リリスさんは、どうしますか? 一緒に寝ますか?」

リリス「さすがにそのベッドで四人は無理ですから、私は宛てられた部屋に戻ります。いろいろと面白いものも見れましたから」

カムイ「そうですか。今日はお疲れ様です、お休みなさい」

リリス「はい、カムイ様。フェリシアさんもフローラさんもおやすみなさい」

 ガチャ バタン

フローラ「では、カムイ様お手をこちらに。ベッドまでお連れいたします」

カムイ「はい、フローラさん」

フローラ「やっぱり、カムイ様の手はどこか温かいんですね」

カムイ「フローラさんが氷の部族の人だからそう感じるだけですよ」

フローラ「そんなことは……」

フェリシア「姉さん、ベッドの準備はOKです」

フローラ「ありがとう、フェリシア。それではカムイ様、お先にお布団へ」

カムイ「はい、ふふっ、こうしてもらうのはもう何年ぶりでしょうか。まだ私が小さかった頃にこうしてもらった気がします」

フェリシア「昔に戻ったみたいです。あの時のカムイ様は、まだこうやって空間把握になれてるわけじゃなかったから、私と姉さんで、よくベッドまでお連れすることが多かったから」

フローラ「でも立場的にいえば、昔に戻ったっていうのは間違いじゃないわ。私たちは、今日、一回カムイ様に刃を向けているんだから」

カムイ「いいえ、昔になんて戻っていませんよ。今になっただけです、過去は過去で今ではないんですから」

フローラ「……カムイ様。もう一度、私とフェリシアを従者として受け入れてくれるのですね?」

カムイ「はい、むしろお願いするのはこちらですよ。フェリシアさん、フローラさん。もう一度、私の従者として共に歩んでくれますか?」

フローラ「はい、カムイ様」

フェリシア「私の主は、この先もカムイ様だけですから」

カムイ「ありがとうございます。それじゃ、一緒に寝ましょう、フローラさんは左で、フェリシアさんは右です。ふふっ、なんだか久しぶりで私もなんだかワクワクしてます」

フローラ「ふああ…、その、カムイ様……すみません」

フェリシア「ふあ~。ごめんなさいカムイ様、私とっても疲れてて」

カムイ「はい、ゆっくり休んでください。今日はお二人とも色々ありましたから……」

フローラ「正直に申し上げれば、さっきのお触りタイムが一番疲れることになった原因でもあるんですけどね」

カムイ「ふふっ、それじゃその疲れも早く眠って癒してしまいましょう。明日は私よりも早起きして起こしてくださいね?」

フローラ「はい、容赦なく起こさせていただきますね」

フェリシア「はい、起きなかったら冷たくしておこしちゃいますから」

カムイ「ええ、おねがいします」

フェリシア「はい、がんばりますね」

フローラ「任せてください。」

「では、おやすみなさい、カムイ様」

カムイ(今回は何とかうまく行きました……)チラッ

フェリシア「すぅ……すぅ」

フローラ「すぅ……すぅ」

カムイ「眠っている姿もそっくりですね……」

カムイ(氷の部族の反乱は終わりを迎えましたが、まだ色々な問題があるんでしょう。正直、白夜の動きが一番気になります、サクラさんが捕虜となっている話を聞いたとしても、強硬派がいればそれを口実にこちらへと攻め込んでくる可能性が高いし、それによって一度攻勢を決める流れになれば、大規模な攻撃も行われるかもしれない)

カムイ(それに、私はどうやら取り返しのつかないことを考え始めているみたいですから。クーリアさんとの約束、それをお願いする時が来たとき、その時は……)

カムイ「……王都に戻ったら、一度レオンさん場所に行きましょう。サクラさんたちの様子も気になりますから」

カムイ(それに、いろいろとまだ情報がほしいところでもありますからね)

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城―

武将「いつまでも脅しに屈している場合ではない! それをリョウマ王子もわかっておられるはずだ!」

リョウマ「今はだめだ。サクラとその臣下が暗夜で人質になっている以上、迂闊な行動は最悪の結果を生むことになる」

武将「ならばどうする? サクラ様が処刑される日を待つだけでいいというのか? リョウマ王子、ここは暗夜に我々の戦う意思を見せつけるときなのです。それに、第一陣の攻撃が成功すれば、そのまま暗夜王国王都のウィンダムへの道も開けましょう。こうして、暗夜で活動するレジスタンスからの報告を待っているばかりでは、こちらの戦況が不利になるばかりです!」

リョウマ「……ことを仕損じるな。耐えるべく所は耐えるしかない。それを理解しろ」

武将「……」

リョウマ「話は以上か? なら、今日はここまでだ」


武将「くそっ、こうして白夜が蹂躙されるのを指をくわえ、怖れ戦き待つなど私にはできぬ!」

ハイタカ「将、どうされた?」

武将「むっ、ハイタカか? リョウマ王子は耐えろとばかりに仰る。しかし、このところ暗夜軍が無限渓谷を越えて前線に手を加えることが多くなってきた。これを見ているだけなど、もはや我慢の限界だ」

ハイタカ「………、将、私に一つ考えがございます」

武将「む、なんだ?」

ハイタカ「はい、ここはひとつあの方に意見を打診してみてはよろしいかもしれません」

武将「あの方?」

ハイタカ「はい、あの方は今とても暗夜を憎んでおられます故、今はあまり軍議にも参加されていないと聞きます。それは妹君も暗夜に捉われた手前、心中をお察ししますが」

武将「……」

ハイタカ「しかし、あの方を慕っている方は多くおります。あの方の鶴の一声があれば、多くを動かすことができるやもしれません。それに、陸地を通らずとも、まだ道は残っているのですから」

武将「……なるほど、ハイタカの考え一理ある。あの方は確かに王族である。しかし、あの日以降はいつも獲物を求める眼ばかりしている。我々の話に耳を傾けてくれるやもしれん」

ハイタカ「はい、私はフウマ公国にこの件を打診してみます。海沿いでもっとも近くにあり、暗夜の上陸を防いでいるのはフウマ公国だけですから」

武将「うむ、わかった。私は部屋に戻りできる限りの要点をまとめた後、あの方に話を持ちかけてみよう。成功すれば、われわれが先立って暗夜に一太刀浴びせてみせる!」

ハイタカ「はい、では私も作業に入ります」

武将「うむ、任せたぞ」タタタタタタッ

ハイタカ「ふむ、武将のためにできる限りのことをこなすのも良いことだが、果たして吉と出るか凶とでるか……。さて、動くとするか」


 第八章 おわり

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア  →C
 フローラ   →C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでハロルドとジョーカーの支援がCになりました。
 今回のイベントでエルフィとモズメの支援がCになりました。

今日はここまでです。ハイタカさん、ごめん。

 ここからピエリ、ハロルド、ラズワルド、エルフィの顔をカムイが触るまでの間、本篇が動かない時間に入ります。

 この先の展開を安価で決めたいと思います。お時間のある方は、参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 まずはレオン邸に付いて行くキャラクターを決めます。
 
 付いて行くキャラクターはこの中から

 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 安価番号は>>457 

◇◆◇◆◇

 次にレオン邸で話をしているキャラクターはこの中から

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ

 安価番号は>>458

◇◆◇◆◇

 最後に話をしている組み合わせをこの中から

 カムイ
 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 話をしているキャラ一人目は>>459 二人目は>>460

 すみませんが、よろしくお願いいたします。
 


ハロルド

乙!
サクラでおなしゃす


エルフィ

乙です
フローラさんでお願いします。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・街道―
カムイ「すみません、ハロルドさん。私の用事に付き合わせてしまって」

ハロルド「いいんですよ。困った人を放っておけないのが私、ハロルドなのですから! しかし、レオン王子が捕虜の方たちの世話をしているというのは本当だったのですね。にわかには信じられませんが」

カムイ「はい、まぁこうなってしまったのは私が原因のようなものですから、ハロルドさんのお勧めのパン屋さんでお土産も買ってきましたし」

ハロルド「いやはや、いつもは買った直後に何かあったりするので、カムイ様に災難が伝染しないか冷や冷やしましたが、今日はとても運がいい日のようだ」

カムイ「ハロルドさんは面白い方ですね。まるで毎日不運なことばかりが起きているみたいな言い方ですよ」

ハロルド「まぁ、あまり運がいい方では……。んっ、前方から馬車が来ますね」

カムイ「そうですか、ちょっと横に寄りましょうか」

ハロルド「そうですね。ふむ、どうやらワインを運んでいるようですな。大きな樽がよく揺れて……」

 ガタンッ! バシャー

カムイ「ん、なんだかすごい音がしましたけど……樽が落ちたんでしょうか?」

ハロルド「…………はい、そのようですね」ビチャビチャ

カムイ「ん……ハロルドさん、いつの間にお酒を飲んだんですか?」

ハロルド「……いいえ、その……」

 ニイチャン、ダイジョウブカイ!?

ハロルド「はっはっは。大丈夫だ、そのワインで体がとてもベトついてしまっているが……」

カムイ「それは大変ですね、仕方ありませんレオンさんのお宅でお湯を借りましょう。私が頼んでみますから」

ハロルド「カムイ様。すまないがよろしくお願いするよ」

カムイ「はい、任せてください」

―レオン邸―
レオン「姉さん、よく来てくれたね」

カムイ「いいえ、時間を作ってもらってありがとうございます。これ、お土産です。喜んでくれるといいんですが」

レオン「パンみたいだね。ありがとう。ところで、このワインまみれの人は?」

ハロルド「初めましてレオン王子、私はエリーゼ様の臣下ハロルド」

レオン「そう、君がエリーゼの……よろしく、あと王子は別につけなくてもいいから」

ハロルド「では、レオン様。このような格好で押しかけてしまって申し訳ない。こんなことになるとは思っていなかったもので」

カムイ「はい、私をここまで案内してくれたんですが、途中でワインを浴びてしまって」

レオン「酒場にでも寄って来たの?」

カムイ「いいえ、その、なんと話をすればいいのか。とりあえず、ハロルドさんは運が悪いということだけ伝えておきます」

ハロルド「カムイ様。ちゃんと説明した方が良いのではありませんか」

カムイ「ハロルドさんは気にしないでください。それで、レオンさんハロルドさんにお湯を貸していただけませんか?」

レオン「はぁ、せっかく来てもらったし、そんな格好で屋敷の中を歩くのも気が引けるだろうし、構わないよ」

ハロルド「レオン様、ありがとうございます」

レオン「大袈裟だよ、とりあえずこっちに付いて来て」

ハロルド「では……ううむ、このまま入っていいかどうか」

カムイ「ハロルドさん、靴を私がお持ちしますね」

レオン「……」ピクッ

ハロルド「しかし、私の靴など持ってしまっては――」

カムイ「気にしないでください。それに今日は私の用事につき合っていただいたんですから、これくらい造作もないことですよ」

ハロルド「そ、そうですか。では、お言葉に甘えて……」

カムイ「ふふ、他に持ってもらいたいものがありましたら言ってください」

ハロルド「いや、これ以上は大丈夫。それに、ほかの物を持たせてしまったら、カムイ様もお酒で汚れて……オワッ!」

カムイ「あっ、ハロルドさん、あぶない」

 ドサッ

レオン「ちょ、姉さん、だいじょ……」

ハロルド「う、うーん。私としたことが、転んでしまうとは……」

カムイ「ハロルドさん、その、重たいです……」

ハロルド「……え? うわっ、こ、これは、不可抗――」

レオン「姉さん大丈夫!?」ドゴッ

ハロルド「ぬおぉぉぉ!!!!」ゴロゴロゴロ

カムイ「レオンさん? 今、ハロルドさんがとてつもない速度で転がっていったような気がしたのですが?」

レオン「なにそれ、僕は知らないよ。それよりも大丈夫、体痛めたりしてない?」

カムイ「はい、大丈夫ですよ。ハロルドさんも大丈夫ですか?」

ハロルド「え、ええ……」

カムイ「そうですか、それは良かった。あ、でも……」ビチャビチャ

ハロルド「ううむ、カムイ様もワイン塗れになってしまいましたね。私の不注意で申し訳ない」

カムイ「そうですね……。でも、なんだか楽しいです。ハロルドさんといると、楽しいと感じられます」

ハロルド「そう言われても、とても複雑な心情になってしまうのですが……」

レオン「ハロルド、こっちだから、早く来い」

ハロルド「……なぜだ、なぜこのような敵意ある視線を私が向けられることに」

カムイ「レオンさん、私もお湯を御借りしても」

レオン「ああ、それよりも姉さんも姉さんだ、今度から注意してよ。ハロルド、君は一番奥の扉だから、間違えないように」

ハロルド「あ、はい」

カムイ「ふふっ、二人して怒られてしまいましたね」

ハロルド「……カムイ様、少しだけ疲れてしまいましたよ」

カムイ「そうですね、まずはお酒を落としてしまいましょう。それでは」

ハロルド「はい、それではまた」



レオン「………」

サクラ「あ、あの……レオンさん?」

レオン「なんだいサクラ王女……。僕は少し機嫌が悪いんだ」

サクラ「えっ、姉様が来てくれるって、さっきまで……」

レオン「……」

サクラ「そ、そのごめんなさい」

レオン「……すまない。こんなことで機嫌を悪くするなんてどうかしてたよ。サクラ王女も姉さんと話をするのが楽しみなのに」

サクラ「いいえ、カザハナさんもツバキさんもレオンさんができる限りの事をしてくれて感謝してるって言ってましたから」

レオン「ふーん、廊下ですれ違った時、ツバキに言われることはあっても、あの一般兵からは言われたことないけどね」

サクラ「それはたぶんお風呂の件が」

レオン「……そうだよ、なんであそこで乗っかってくるんだ。ふつう、あんな条件を出されたら引き下がるはずなのに」

サクラ「ふふ、カザハナさんは少し頑固なところがありますから、ずっと昔から一緒にいてくれた幼馴染だからわかるんです」

レオン「そう。いいのかい、そんな身内の話を僕にしても。いずれサクラ王女たちのこと、僕が捨てるかもしれないんだよ?」

サクラ「いずれ、そうなる日が来るかもしれません。でも、ここで私たちを守ってくれてるレオンさんを、私たちは信じるしかありませんから」

レオン「………」

サクラ「だから、私はレオンさんともっと話がしたいです。もちろん、カザハナさんや、ツバキさんともよく話してくれると嬉しいんですけど」

レオン「……一般兵とは、話が通じるか全くわからないところだけどね」

サクラ「カザハナさんは素直になれないだけですから、それに監視って言っても扉の前で待機してるだけです」

レオン「さすがに入浴中の女性を直に監視するような趣味はないからね……。それに一般兵にそんなことしたら、いろいろと変な噂を流されかねない」

サクラ(有言実行できないヘタレってカザハナさんが言ってたことは内緒にしておかないと)

レオン「それにしても、白夜にはサクラ王女と同じ名前の木があるって聞いたよ」

サクラ「はい、その。似てないかもしれませんけど、とってもきれいなんですよ。でも、その怖い話もあって」

レオン「へぇ、怖い話? 何それ、少し気になるけど」

サクラ「はい、その、サクラは薄い桃色の花なんですけど、その花が桃色な理由が、その……木の下に埋まっている死体の血を吸ってるからって言われてて」

レオン「へぇ、そんな話があるんだ。暗夜にもいろいろな怖い話があるけど、大抵の者は夜道に現れる化け物の類が多いかな……」

サクラ「化け物……ですか」

レオン「うん、まぁサクラ王女は怖い話が苦手みたいだから……」

サクラ「え、えーと」ソワソワ

レオン「………」

サクラ「そ、その、私……」ソワソワ

レオン(…なるほどね、サクラ王女はそういうタイプなわけか。ちょっと面白そうだね)

レオン「話をしたいのはやまやまだけど、今は昼間だから雰囲気でない。今度夜にでも話してあげるよ」

サクラ「よ、夜にですか?」

レオン「そう、まぁ、怖い話かどうかはわからないけどね。まぁ、楽しみにしててよ」

サクラ「は、はい。わかりました……」

◆◆◆◆◆◆
カムイ「すみません、お待たせしてしまいましたか?」

サクラ「姉様」ダキッ

カムイ「ふふ、お久しぶりですサクラさん。レオンさんにひどいことされませんでしたか?」

レオン「ちょ、姉さん。いきなり何を言って」

サクラ「はい、レオンさんはとても優しくしてくれましたから、ツバキさんもカザハナさんも問題なく過ごせてます」

カムイ「そうですか。レオンさん、ありがとうございます」

レオン「先に人を疑っておいて言うことじゃないよね、それ。ふつうは順序が逆だよね?」

カムイ「細かいことは気にしないでください。あと、ハロルドさんはもう少し時間が掛るそうです。おかしいですね、同じような浴室だと聞いていたんですけど」

~~~~~~~~~
ハロルド「ううっ、なぜ水がこんな少ししか出てこないんだ?」

ハロルド「これではお酒の臭みを取るのに時間がかかってしまう……。やはり私は運がないのだな……」
~~~~~~~~~

レオン(まぁ、少し故障している部屋を進めたから当然か)

レオン「それで、カムイ姉さん。僕に聞きたいことがあったんだよね」

カムイ「はい、まずは氷の部族の反乱の件、耳に入っているとは思いますが」

レオン「うん、さすがカムイ姉さんだね。犠牲も出さずに平定したんだから、その影響もあってかわからないけど、周りの決起に流されそうになっていた少数の部族が反乱を終息させているみたいだ」

カムイ「そうですか、結果的にいい方向に話が進んだみたいですね……」

サクラ「カムイ姉様、すごいです」

カムイ「サクラさん、あまり喜んでいいことじゃないんですよ? 反乱が終わりを迎えれば終わりを迎える程に、サクラさんたちの命も危なくなっていると言っていいんですから」

サクラ「でも、カムイ姉様が誰も犠牲を出さないでことを終えられたことは、すごくいいことですから」

カムイ「サクラさん……。今回は運が良かっただけですから、今後はそううまくいかないでしょう」

サクラ「………そうですよね」

レオン「サクラ王女の気持ちもわかるけど、これは戦争だ。それは忘れない方がいい」

サクラ「はい……」

カムイ「レオンさん、白夜の動きの情報などは入ってきているのでしょうか?」

サクラ「!」

レオン「そう言う話だと思ったよ……」

カムイ「………それで、どうなんですか?」

レオン「まぁ、サクラ王女に言っていいかわからないけど。白夜事態にこれといった動きはないよ。むしろ暗夜が白夜領への侵攻を強めてる状態と言ったほうがいいかな。といっても無限渓谷から入り込んだ少しの場所で小競り合いをしてる、そんな具合だよ」

カムイ「そうですか、なら少しの間はサクラさんたちの安全は確保できそうですね」

レオン「そうだね。でも油断はできないよ。僕もできる限りサクラ王女たちが命を維持できるように努めるけど、たぶんそれほど猶予はない気がする」

カムイ「はい、サクラさん」

サクラ「カムイ姉様」

カムイ「白夜のみなさんのことを気にしているんですよね?」

サクラ「……はい、私がツバキさんとカザハナさんに頼まなければ、こんなことにならなかったのかもしれないって思ってしまうんです」

カムイ「そうですね。でも、もう過ぎてしまった物事をどうにかすることはできませんから」

サクラ「……」

カムイ「だから、サクラさん。私もできる限り頑張ってみます」

サクラ「カムイ姉様?」

カムイ「はい、サクラさんが無事に白夜に帰れるように、サクラさんが白夜に戻ってしたいことをできるように、頑張りますから。今はどうか耐えてくれませんか?」

サクラ「……はい。姉様」

レオン「はぁ、カムイ姉さんは甘いよね、本当に」

カムイ「レオンさんも結構甘いと思いますよ。さて、それでは私のお土産を食べてみましょう」

レオン「はいはい、今から切り分けてくるから。少しだけ待っていて」

サクラ「カムイ姉様、信じてます」

カムイ「はい……サクラさん」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

エルフィ「え、えっと……」

フローラ「……」

 キラァーン

エルフィ「その、この食事の量は一体……」

フローラ「妹から聞きました。エルフィさんに怪我をさせてしまったと、そのこれで許してもらえるとは思えませんが……」

エルフィ「べ、別に気にしてないわ。それに、あの時は私たちは敵同士だったから、仕方無いことよ」

フローラ「……そう割り切られるものではないはずです。私もみなさんに刃を向けた身です、本当に申し訳ありませんでした」

エルフィ「……ふふっ、フェリシアさんにも同じこと言われたから、なんだかおかしいわ」

フローラ「エルフィ様?」

エルフィ「フローラさんが気にしていることはもっともかもしれないけど、そこまで背負い込む必要はないと思うわ」

フローラ「そ、そうでしょうか?」

エルフィ「ええ、それに。カムイ様はフローラさんを許してくれたんでしょう?」

フローラ「は、はい。こんな私を、もう一度従者として認めてくださいました」

エルフィ「なら、それでいいはずだから」

フローラ「エルフィさん……」

エルフィ「あの、とりあえずなんだけど、この料理はもらってもいいのかしら? その、見てたらお腹がすいてきちゃって」きゅるうううう

フローラ「はい、召し上がってください。ほしくなったらもっと言ってくださいね」

エルフィ「ありがと。それじゃ―――」


フローラ「」

エルフィ「お、おかわり」

フローラ「どういうことですか、全く食材が追い付かないなんて」

エルフィ「はぁ、こんなにいっぱい食べられるなんて……フローラさんって料理が上手なんですね」

フローラ「あ、ありがとうございます」

フローラ(まったり返事を返していたら、おかわりに追いつけなくなってしまいます)

エルフィ「こんなにもらってばっかりじゃ悪いから、私もなにかお返ししたいけど……」

フローラ「いいえ、これは私が振舞ってるだけですから、おかえしなんて……」

エルフィ「食べ終わった食器、今から持って行くわ」

 ガシャン

フローラ「え?」

エルフィ「………こっちの食器を」

 ガシャシャン

フローラ「」

エルフィ「ごめんなさい」

フローラ「……エルフィさん。もしかしてわざとでしょうか?」

エルフィ「その、力加減ができなくて……」

フローラ「……フェリシアに任せていたら、食器の半分以上を割られていたかもしれませんね。私が担当してよかった」

エルフィ「でも、私、何かでちゃんと恩返しするから」

フローラ「その、お心遣いだけで私は大丈夫ですから……」

エルフィ「……大丈夫、力仕事だったら何でも言ってほしいわ。私、力にはとても自信があるから」

フローラ「………」

フローラ(ここでするべき力仕事、そんなものあったでしょうか……)

フローラ「そうですね、わかりました。少しだけ考えておきます」

エルフィ「ええ、まかせて」

フローラ(とても不安だわ)


◆◆◆◆◆◆

カムイ「ただいま戻りました」

フェリシア「カムイ様、おかえりなさいませ」

ジョーカー「おかえりなさいませ、カムイ様。おや、着ていった服とは違うようですが?」

カムイ「はい、途中で汚れてしまいまして」

ジョーカー「そ、そんな。くっ、申し訳ありません。私が付いていればこんなことには………」

カムイ「いいんですよ、気にしないでください。ハロルドさんは先ほど帰られましたので……」

ジョーカー「ああ、そう言えば今エルフィがここにいますね。もう時間が時間ですので、宿泊される流れになっておりますが」

カムイ「そうなんですか……」

フェリシア「お部屋の方は私が準備しました! エルフィさんに恩返ししたかったので、がんばりました」

カムイ「はい、よかったですねフェリシアさん……そう言えば、まだエルフィさんの顔を私触っていませんでしたね。フェリシアさん、エルフィさんのお部屋まで私を連れて行ってくれますか?」

フェリシア「は、はい。そのジョーカーさん……」

ジョーカー「今日の訓練は終わりだから、もう好きにしていいぞ。明日はもっと早くからになるから覚悟しておけ。それではカムイ様、何かありましたらお呼びくださいませ」

カムイ「はい、お疲れ様です。ジョーカーさん」

エルフィ「………なんだか夢のような時間ね。いっぱい食べて、こうやってふかふかのベッドに横になって、いつもの兵舎だと想像できないくらいだわ」

 コンコン

エルフィ「……はい?」

カムイ「エルフィさん、私です。もうお休みになられていますか?」

エルフィ「カムイ様ですか、ちょっと待っててください」

 ガチャ

カムイ「こんばんは、少しお時間良いですか?」

エルフィ「ええ。すみません、こちらに泊めさせてもらって」

カムイ「いいですよ。それにこの前の反乱平定の件で、皆さんには報酬と休暇が与えられてますから、緊急招集がかからない限り、呼ばれることはありません。だからゆっくりして行ってください」

エルフィ「ありがとうございます。それで、カムイ様。私にご用事とは一体?」

カムイ「エルフィさん、あなたのお顔を触らせていただいてもいいですか?」

エルフィ「わたしの顔ですか?」

カムイ「はい、私は目が見えませんので、触れて人の顔を認識してます。私はエルフィさんのお顔を知りたいんです」

エルフィ「……私がまだここにいられるのは、あの時カムイ様が私を助けてくれたからです。だから……」

カムイ「……いいんですか?」

エルフィ「はい、気が済むまで、どうぞ」

カムイ「では……」ピトッ

エルフィ「……んん」

カムイ「力持ちだって聞いていますけど、全然そんな感じはしないんですね。むしろ、なんだか華奢な感じがします」

エルフィ「私なんて、まだまだですから……」

カムイ「そうなんですか?」

エルフィ「まだまだです。もっともっと強くなってエリーゼ様を守るのが、私の使命だから。終わりなんてないんです」

カムイ「ふふっ、エルフィさんは目標を持っているんですね」サワサワッ

エルフィ「んくっ……」

エルフィ(今、なんだか気持よかった)

カムイ(首の横筋ですね……。ふふっ、楽しくなってきました)

カムイ「どんな訓練をしているんですか、私に教えてください」

エルフィ「そ、その、岩をも、もち、あげたり……はうん」

エルフィ(……///)

カムイ「それから?」

エルフィ「え、えっと……う、腕立もひゃっ……ひゃっかいくらい……」

カムイ「すごいですね。それなら力持ちなのも、納得です」

エルフィ「か、カムイ様。そ、そこはやめて……ん」

カムイ「どうしたんですか、なんだかとても力抜けてるみたいですよ? どうしてでしょうね?」

エルフィ「や、やめてくだ……」

エルフィ(首、首の横ラインに、カムイ様の指が、指が触れると度に力が、力が抜けちゃう……)

カムイ「ふふっ、なんだか息が上がってきてますよ」

エルフィ「はぁ、はぁ、そ、そんなこと……ありません」

カムイ「そうですか、でも私の指がエルフィさんの汗で湿ってますよ……」

エルフィ「こ、これは……」

カムイ「ふふっ、エリーゼさんもこんな姿のエルフィさんを知りませんよね……。こんな姿を見たら、エリーゼさんどう思うんでしょうか?」

エルフィ「!!!!!! か、カムイ様」

カムイ「冗談ですよ、安心してください。だから、もっと私に感じさせてください。エルフィさんの女性らしい反応というやつを」

エルフィ「きゃうぅ、はぁ、だめ、そこ、弱い場所だから……」

カムイ「はい、ここがいいんですね」

エルフィ「あっ、んんっ」

カムイ「エルフィさん、髪を結んでるんですね……。失礼しますね」スッ ファサー

エルフィ「あっ」

カムイ「こんな髪を下ろした姿、あまり人には見せないんじゃないですか?」

エルフィ「え、エリーゼ様には……」

カムイ「そうなんですか、なら私は二人目になれたのかもしれませんね。いっぱい触らせてください」

エルフィ「カムイ様、んんううううぅう。もう、ゆるして……」

カムイ「はい、もう少しで終わりますから。待っていてくださいね」

エルフィ「はぁ、はぁ……」

エルフィ(くっ、くやしい、でも――)

 スッ

エルフィ「……ふぇ?」

カムイ「エルフィさん、ありがとうございました」

エルフィ「あ、あの……」

カムイ「はい、もう終わりです。それとも、まだ触って欲しかったですか?」

エルフィ「いえ、その……もう大丈夫です。そのエリーゼ様には」

カムイ「言うわけないですよ。こんなことを誰かに言いふらすなんてもったいないですから」

エルフィ「もしもカムイ様が盲目ではなかったら、その頭を林檎みたいにしてたかもしれません」

カムイ「林檎みたいにとは?」

エルフィ「こう、ぎゅって」

カムイ「怖いですね。でも安心してください、私は目が見えませんから、そんなことをする必要はありません」

エルフィ「……目見えてるんですよね? 一回うなづいてくれれば、すぐにぎゅってしますから。安心してください、痛みは無いと思います」

カムイ「見えませんから、ぎゅってする必要はありませんよ」

エルフィ「………」

カムイ「……」ニコニコ

エルフィ「……わかりました。でも、今度顔を触らないでくださいね」

カムイ「それは……」

エルフィ「もしも破った時は―――ぎゅってします」

カムイ「あ、ハイ」


 休息時間 ―1― おわり

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド   →C
 エルフィ   →C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C→C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでサクラとレオンの支援がCになりました。
 今回のイベントでレオンとハロルドの支援がCになりました。
 今回のイベントでエルフィとフローラの支援がCになりました。

今日はここまでです。長くてあと三回、短くまとめてあと二回くらいで休息時間が終わる感じです。ご了承をお願いいたします。
 ちょっと、テンポが崩れ気味で申し訳ないです。

 次の安価を決めたいと思いますので、参加いただけると幸いです。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 カムイが次に顔を触るキャラクター

 ラズワルド
 ピエリ
 ハロルド
 
 安価は>>480

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 レオンが監視することになる相手

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ

 安価は>>481

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 どこかで話をしている組み合わせ

 カムイ
 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 一人目は>>482
 二人目は>>483

 でお願いいたします。

ピエリ

ツバキ

青の踊りさん

実妹

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国のどこか―

ラズワルド「………やぁ」

リリス「………なんでしょうか、ラズワルドさん」

ラズワルド「いや、その、お茶でもどうかなって……」

リリス「無理に笑顔を貼り付けて声をかけなくてもいいんですよ?」

ラズワルド「うん、そうだね。話すのは初めて……ってことでいいのかな、リリス」

リリス「そうですね、そうかもしれません」

ラズワルド「……困ったな。こんなに可愛い子が僕の話を聞いてくれてるのに、気の利いた言葉を投げかけられる気がしないなんて……」

リリス「お世辞ありがとうございます。私は特に話すこともないので、これで失礼しますね」

ラズワルド「ちょ、ちょっと待ってよ。え、えっとそうだね。リリス、これから僕の知ってる洒落た喫茶店でお茶しようよ。それに知らない仲じゃないんだし」

リリス「それ、この前ほかの女性にも言ってましたよね? 軽い男は嫌われますよ?」

ラズワルド「そうだね、ほら女性を見るとすぐ声をかけたくなっちゃうからさ。こればっかりは仕方無いよ。うん」

リリス「悪びれる様子がないんですね。まったくといいますか、私がどういうものなのか、あなたは知っているはずですよ?」

ラズワルド「……」

リリス「ですから、以降は私に話しかけなくてもいいですよ。無理に話しをして、仲間の輪に軋轢を作るのはカムイ様も望んでいないでしょうから…」

ラズワルド「リリスが何を言ってるのか、僕にはわからないかな」

リリス「え?」

ラズワルド「僕はリリスが可愛い女の子だったから声を掛けたんだ。ただそれだけ、根掘り葉掘り追求するために話しかけるなんてことはしないよ」

リリス「………」

ラズワルド「リリスはとてもかわいい女の子だから声をかけた、それだけだから。確かに僕にもやらなくちゃいけないことがある。どうにかできるかはわからないけど、僕たちを信じてくれた人のためにもね。でも、それの合間にリリスと仲良くなったって何か問題があるわけじゃない」

リリス「……はぁ、本当にどうかしてますね」

ラズワルド「だって、僕とリリスはこの前初めて会ったばかり、でしょ?」

リリス「そうでしたね。ふふ、それじゃこれからよろしくお願いしますね、ラズワルドさん」

ラズワルド「うん。それじゃ、もっと親睦を深めるためにお茶に行こうか!」

リリス「ふふっ、それはパスです」ニコッ

ラズワルド「えぇ………」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸・中庭―

レオン「せいっ! はっ!……やっぱりうまくいかない、どうしてだ」

ツバキ「………」

レオン「もう一度……!」

ツバキ「体の軸が少しぶれてる気がするよー」

レオン「!」

ツバキ「ははっ、それに俺が見てるのに全然気がつかないから、全然だめだねー。俺たちのことちゃんと監視してないといけない立場なんですから―」

レオン「ツバキか。別に何かしようって気でもないだろ? なら、僕だって僕なりに時間を使いたいんだ」

ツバキ「それもそうですねー。どうしたんですか、剣なんかもって」

レオン「僕だって剣くらい扱えるし、持ってちゃ変なのかい?」

ツバキ「そうなんですか? レオン王子はグラビティーマスターの異名を持つ、暗夜一の魔術師だから剣とかはあまり使わないと思ってたんですけどねー」

レオン「……それ白夜にまで広がってるのか、恥ずかしすぎる二つ名なんだけど」

ツバキ「そうですか? こう聞くたびに背筋がムズムズする感じがして、俺はとっても好きですよー」

レオン「それは僕のことをからかってるようにしか聞こえないんだけど……」

ツバキ「そんなことないですよー。それにさっきの剣のふるまいよりも、魔術を使っているときのレオン王子のほうが、かっこいいですから。さすがはグラビティーマスター」

レオン「その呼び方はやめてくれ」

ツバキ「レオン王子は魔術師ですから、仕方無いですよー」

レオン「……剣の扱いをどうにかした方がいいかもしれないな。その二つ名で呼ばれるのはとても不愉快だ」

ツバキ「なら、まずは剣を持った時に重心がちゃんと中心に来るようにした方がいいですよー。今のままじゃ、ふらふら震えてて少し格好悪いですから」

レオン「余計な御世話だよ!」

ツバキ「そうですかー、でも姿勢は重要ですよ。特に戦いは基本をこなしてこそですから―。最初から独自でやるのは、レオン王子には合ってないって思いますよー」

レオン「……ぼくを本気で怒らせたいみたいだね……」

ツバキ「すみません、いろいろ言いすぎたみたいで。俺はこれで失礼しますねー」

 タタタタタタッ

レオン「くそ、捕虜に意見されるなんて……」

レオン(重心を体の真ん中にすればいいんだよな……べ、べつに言われたからじゃない。参考にするだけ……)

 ヒュン! ズアッ

レオン「……」

 ズバッ ブンッ

レオン「……動きやすいな、これ」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・ピエリの屋敷―

カムイ「先日の件でピエリさんにお礼にと来たのですが。今は鍛錬中ですか」

メイド「はい、もうそろそろお帰りになられると思います。ここまで来ていただいたのに、申し訳ありません。館主様も今は出られておられますゆえ」

カムイ「いいんですよ。突然訪問したのは私ですから。マークス兄さん、ここまで付いて来ていただいたのに申し訳ありません」

マークス「なに、気にすることはない。それに、久々にお前と話せたのはうれしいことだ。氷の部族の件、無血で平定とは予想していなかったぞ」

カムイ「ふふ、マークス兄さんも色々と手をまわしてくれたじゃないですか。臣下の方たちを私に預けてくれたんですよね」

マークス「ああ、エリーゼにも頼んでしまった手前、やはり心配であったのでな」ナデナデ

カムイ「マークス兄さん。くすぐったいですよ、ふふ、大きな手でなんだかとても落ち着きます」

マークス「ふふ、どんな事情があろうとも、お前は私の妹だ。心配にもなるし、いつまでたっても可愛いものでもある。ラズワルドとピエリには、引き続きお前に随伴するように手続きを取ってある。存分に使ってやってくれ」

カムイ「はい、わかりました。二人とも大事に使わせてもらいますね、マークス兄さん」

マークス「ああ。すまないが私はそろそろ城へと戻る。ピエリがいると踏んでいたため、合間に出て来ただけだからな」

カムイ「はい、私はここでピエリさんをお待ちしますので。軍議の方、頑張って来てください」

マークス「ああ、それではな」

ピエリ「あれ、カムイ様なの!」

カムイ「ピエリさんですか、お待ちしてました」

ピエリ「どうしたの? ここはピエリのお家なの、もしかしてお父様に用事なの?」

カムイ「いいえ、私が用事があったのはピエリさんのほうです。まずはこれを……」

ピエリ「おいしそうなお菓子なの!」

カムイ「先日のお礼です。ありがとうございます、ピエリさんたちが来てくれたおかげで、どうにか目標通りに事が進められました」

ピエリ「そう言ってもらえるとピエリとっても嬉しいの! 外で立ち話もなんだから、中に入ってお話するの!」

メイド「では、カムイ様。わたしはこれで」タタタタタタッ

カムイ「え? はい」

ピエリ「みんなすぐに行っちゃうの。やっぱり変なの」

カムイ(ピエリさんが帰ってきたのに、どうしてすぐにいなくなってしまうのでしょうか?)

ピエリ「それじゃカムイ様、ピエリに付いて来るの! ピエリの部屋まで案内してあげるの!」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

カムイ(屋敷の中に入りましたが、あまり人の気配がありませんね……それに、どうしてでしょうか、少しばかり血の香りもします)

ピエリ「カムイ様、目が見えないの本当なの?」

カムイ「ええ、あまり人に見せるものではありませんから、見せることはできませんけど、ピエリさんが私の手を取ってくれてるので、助かります」

ピエリ「ピエリのお家だから、案内は任せてなの!」

 トタトタトタ

カムイ(ん、前方から誰か気ますね。まっすぐに歩いていないところをみると、何か持っているみたいですが……)

メイド「んしょっ」

カムイ(フローラさんやジョーカーさんと比べるというわけではありませんが、あまり動きがいいというわけではないみたいですね。慣れていないといえばいいでしょうか?)

メイド「あっ、ピエリ様」ペコリッ

カムイ(でも、ほかのメイドの方たちと違って、あいさつはしてくれるんですね)

ピエリ「……イライラするの」

メイド「?」

カムイ「ピエリさん?」

ピエリ「カムイ様、一緒にきれいになるの!」ジャキ

 ヒュッ

メイド「えっ?」

 カキンッ

ピエリ「……なんで邪魔するの」

カムイ「いえ、ピエリさんこそ何をしているんですか」

メイド「ひっ、ひいいいぃぃ」

ピエリ「カムイ様。ピエリの邪魔をしないでほしいの。その子、えいっ!ってしたいだけなの」

カムイ「要領が得られません。この方がスパイだったとか、そう言う事情なら別に構いませんが」

ピエリ「違うの、ただえいってしたいからするの。帰り血ドバドバ浴びて、カムイ様もピエリみたいに奇麗になるの」

カムイ「……冗談を言っているわけじゃないみたいですね」

メイド「ひぃ、た、たすけて」タタタタタタッ

ピエリ「逃がさないの!」

 ブンッ ガキンッ

カムイ「……ピエリさん。やめてください、こんな事をする意味はありませんよ」

ピエリ「……カムイ様。なんでピエリの邪魔するの。いくらカムイ様でも許さないの、八つ裂きにしたくなっちゃうの」

カムイ「なら試してみますか?」

ピエリ「……もしもカムイ様をえいっして死んじゃったら?」

カムイ「それは私が単純にピエリさんより弱かっただけですよ。気に病む必要なんてありません」

ピエリ「そうなの! なら遠慮しないの、ピエリ、カムイ様をえいっしていっぱい奇麗になるの!」ブンブンブンジャキッ

カムイ「私は別にピエリさんにえいっするつもりはないので……。それじゃ私がピエリさんの手から武器を落とせたら勝ちでいいですか?」

ピエリ「カムイ様、おかしいの!ピエリが武器を落としちゃうなんてありえないの、でも、カムイ様に武器が刺さっちゃって、手を放すことはあるかもなの」

カムイ「そうですか。それじゃ始めましょう」

ピエリ「そうなの。それじゃ行くの!」

~~~~~~~~~~~
ピエリ「これで、終わりなの!」

カムイ「そこです!」

 カキンッ ヒュンヒュンヒュンヒュン ザクッ

ピエリ「……ピエリの武器、飛んじゃった……。ふえ、ふええぇぇーーーん!」

カムイ「ふぅ、何とかなりました。ピエリさん、今度は大泣きですか?」

ピエリ「ピエリ、ピエリ負けた、負けちゃったの。びえぇぇぇーーーーん!」

カムイ「本当に困りましたね……」

ピエリ「ふえぇーーーーん!」

カムイ「ピエリさん、泣かないでください」ピトッ

ピエリ「ぐすっ……カムイ様、ピエリ、ピエリぃ……」

カムイ「ふふっ、涙で顔が汚れちゃってますよ。ふふ、言葉遣いと同じで、とても柔らかいんですね。ピエリさんは」

ピエリ「か、カムイ様。く、くすぐったいの……」

カムイ「ふふっ、ピエリさんは。私と勝負に負けたんですから、これくらい我慢してください」

ピエリ「ピエリ、カムイ様と勝負なんてしてないの。ただ、えいってしたいだけなの」

カムイ「そうですか。ピエリさんは素直なんですね。だから、もっと素直な反応を私に見せてください」ススッ

ピエリ「ぴ、ピエリ、なんだか気持ちいいの……」

カムイ(目を隠すくらいの前髪に反応してるんでしょうか?)サワサワ

ピエリ「あははっ、くすぐったいの」

カムイ(違いますね……。前髪に触れて出た声じゃないみたいです……つまり、間接的に触れた場所が、ピエリさんの弱点……もしかしてこの髪に隠れた……)

ピエリ「んくっ! か、カムイ様、そこ、なんかへんなの」

カムイ「そうですか、どこが変なんですか? 私に教えてください」

メイド(新入りのメイドが走って逃げて来たから何事かとおもって駆けつけましたが……。これは一体何事?)

ピエリ「ピエリ、なんだかおかしいの。さっきまでカムイ様のこと、えいってしたかったのに。今そんなこと全然思わないの。もっと触って欲しいって思うの」

カムイ「そうですか。そう言ってくれると嬉しいです。ピエリさんが一番感じるのは、ここですか?」

ピエリ「ひゃああああ。か、カムイ様、そこ、そこ、なんか声出ちゃうの! やめてなの!」ジタバタジタバタ

カムイ「ふふっ、やめません」

カムイ(隠れてる瞼が弱点ですね。ピエリさんの口調はどこか子供っぽいのに、気持ち良さそうにしてる時の声との差がすごくて、止められる気がしません)

ピエリ「ふええっ。やめてなの! ごめんなの、えいってしようとしてごめんなさいなの! もうさわっ、ふにゃぁ」

カムイ「ふふっ、なんだか猫みたいな声を上げてますよ」

ピエリ「これは、カムイ様が――、ひゃあん。やめてなの、変な声止まらないの」

カムイ「ピエリさん、顔が真っ赤になってるんですね。それに快感におぼれてるのが、わかりますよ?」

ピエリ「これ以上――あっ」チラッ

メイドたち「……あっ」

ピエリ「た、助けてなの……」フルフル

カムイ「ふふっ、なんだか皆さん見てるみたいですね。もっと見せつけてあげましょう? ピエリさんは人前で撫でられて甘い声を上げてしまう人間なんだって」

ピエリ「もう、えいってしないの。しないから助けてな――ひゃうんっ!」

カムイ「ふふっ、可愛かったですよ、ピエリさん」スッ

ピエリ「……あ、あ、カムイ様?」

カムイ「ふふっ、ピエリさん、顔を触らせてくれてありがとうございます。今さっきの言葉ちゃんと守ってくださいね。メイドさんたちにえいっしてはいけませんよ?」

ピエリ「……面白くないの」

カムイ「そうですか、やっぱり」

ピエリ「カムイ様のお顔、ピエリも触るの。それでお相子なの!」ガバッ ドサッ

カムイ「ピエリさん?」

ペタペタ

ピエリ「カムイ様の手、とっても温かかったの。だから、ピエリもお返しするの」

カムイ「そうですか。ふふっ、くすぐったいですよ」

ペタペタッ サワサワ

ピエリ「むーっ、カムイ様の弱点、全然わからないの……」

カムイ「ふふっ、見つけられるといいですね。私の弱点」

ピエリ「悔しいけど、カムイ様との決着はこれでいつかつけるの! それまでピエリがカムイ様を守るの!」

カムイ「はい、頼りにしてますよ。ピエリさん」

ピエリ「でも、カムイ様。またピエリに人前でこんなことしたら、本気のえいっしちゃうの! 返り血じゃ済ませないの、ボコボコにしてやるの!」

カムイ「……」

ピエリ「ピエリ本気なの」ニッコリ

カムイ「この頃は釘を刺されてばかりですね……」

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城ー
ユキムラ「……おやおや、こんな夜分にどうかされましたか?」

武将「これはユキムラ様。少しばかり報告があったもので」

ユキムラ「そうですか」

武将「早く誰かが重い腰を上げてくれないか待っているのですが。ユキムラ様、早急に手を打たねば、白夜は圧されるばかりですぞ」

ユキムラ「そうですね。ですが、今はリョウマ様、タクミ様、ヒノカ様の考えを待つところです。必ずやいい考えを出してくれるでしょう」

武将「ははっ、期待しております。それでは失礼いたす。

武将「……いい考えなど待つことなどできぬ」

ハイタカ「武将……」

武将「首尾はどうだ、ハイタカ」

ハイタカ「接触を終えました。フウマ公国は我々の案を受け入れてくれるそうです。すでに船の手配も多くを済ませました」

武将「そうか、では私も動くことにする。今からその方にでも会って話をするつもりだ。ハイタカ、お主も同伴しろ」

ハイタカ「仰せのままに」


 コンコン

???「だれか?」

武将「夜分に失礼いたす……一つお話がある故、お時間をくださらぬか」

???「……わかった、入っていいぞ」





 休息時間 -2- おわり

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C→C+
 ピエリ    →C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C→C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでリリスとラズワルドの支援がCになりました。
 今回のイベントでレオンとツバキの支援がCになりました。

 今日はここまでです。書き終えて気づいたけど、レオンを監視するキャラになっていた……。カムイのエロハンド攻略は残り二人です。
 次の休憩終りに、全体的なキャラクター支援の状態を一覧にしようと思います。

 というわけで、次の安価を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 カムイが次に顔を触るキャラクター

 ラズワルド
 ハロルド
 
 安価は>>505

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 レオンが風呂を監視することになる相手

 サクラ
 カザハナ
 ツバキ

 安価は>>506

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 どこかで話をしている組み合わせ

 カムイ
 サイラス
 エリーゼ
 エルフィ
 ハロルド
 モズメ
 ジョーカー
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ピエリ
 ラズワルド

 一人目は>>507
 二人目は>>508

 でお願いいたします。


ハロルド

サクラ

ハロルド参上だぁ!

乙です
モズメ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸―

レオン『………』ペラ…ペラ

サクラ「………」

サクラ(やっぱり、なんだか気になります。その扉の前で監視してるだけなのはわかってるんですけど……)

レオン『………』ペラ

サクラ(ううっ、逆にいるっていう証明がほしいです。そのレオンさんはそう言うことをする人じゃないって、わかってますけど、やっぱり男の人ですから……」

レオン『サクラ王女、どうかしたのかい?』

サクラ「えっ、な、なんですか!?」

レオン『いや、いつもならもうお湯の音が聞こえてるくらいなのに、今日は何も音がしないからね』

サクラ「いえ、その……」

レオン『大丈夫、絶対覗いたりしない。暗夜王国の第二王子として、当然のことだからね』

サクラ「その、レオンさんがそういったことしないってわかっているんですけど……、やっぱり」

レオン『まぁ、疑って当然か。でも、この監視は譲れない線だ。悪いけど……』

サクラ「はい、わかってます」

レオン『……はぁ、わかったよ。それじゃ、何か僕がしゃべるから。そうすれば、僕がここにいるってわかるでしょ? それに扉が開いたら僕の声だって聞こえ方が変わるはずだ』

サクラ「は、はい。でも、一人で何か喋ってるのってなんか……」

レオン『なら、サクラ王女が僕の話し相手になってよ。それなら僕も虚しくないしね』

サクラ「はい。ありがとうございます」

レオン『そう、それで、何を話そうか?』

サクラ「……レオンさんのこと、教えてくれませんか?」

レオン『僕のこと? 暗夜の第二王子だよ』

サクラ「違います、あの、好きなものってなにかあるんですか?」

レオン『好きなもの? そうだね……トマトが好きかな』

サクラ「トマトですか?」

レオン『白夜じゃ見ない食材なのかもしれないね。こう手のひらに収まるくらいの大きさで、真っ赤で酸味がある野菜だよ』

サクラ「そうなんですか、食べてみたいですね」
 
 バシャー

レオン『そう、サクラ王女も気にいると思うよ。スープに入れてもいいけど、僕は冷やして均等に切ったやつも好きだから。ただ、そのままは抵抗があるならやっぱりスープに入れて食べるのがお勧めだよ」

サクラ「ふふっ、なんだか面白いです。レオンさんのことだから、この前言ってた怖い話をするんじゃないかって思ってましたから」

レオン『ああ、それもあったね。でも、それはちゃんと真夜中に話したいね。サクラ王女、なんだかんだで怖い話が好きそうだから、直に反応を見てみたいからね』

サクラ「ううっ、その、私これでも怖い話、苦手なんですよ?」

レオン『みたいだね。この前のことからわかるから。でも気になって仕方がない、そうなんでしょ?』

サクラ「ううっ、レオンさんって少し意地悪です」

レオン『そうかもしれないね。でもサクラ王女が話をしてって頼んできたんだから』

サクラ「そ、そうですね。はい」

レオン『だから、怖い話はいずれ違うところでしてあげるよ。それまで楽しみに待っていて』

サクラ「……は、はい。わかりました……」

レオン『それじゃ、話はこれくらいでいいよね。出る時は、もう一度声を掛けてくれればいいから』

サクラ「……」

 ピチャン ピチャン

レオン『………』ペラ ペラ

サクラ「……」

サクラ(……お風呂、まだ半分も終わってないのに、無言になられると……)

サクラ「あ、あの……」

レオン『どうしたの?』

サクラ「な、なにか話してくれませんか///」

レオン『ん、もう終わるくらいの時間かと思ったんだけど……、もしかして僕に話を求めたのって』

サクラ「わーっ!! わーっ!! 違います、違います! 静かになった部屋の中で響く水の音とか、誰か後ろに立ってるんじゃないかとか、そう言うのが怖いとかそういうわけじゃないんです!」

レオン『そう、ごめんごめん』

レオン(なのに怖い話が気になるなんて、面白い人だな)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『中庭』―

モズメ「……えいっ!」

 カンッ

モズメ「うーん、もうちょっとどうにかせんと、あかんかもしれんな」

ハロルド「おや、モズメくんじゃないか。鍛錬の最中かね?」

モズメ「せやな。あたいもカムイ様の役に立ちたいんから、毎日頑張ってるんよ」

ハロルド「そうか、とても良い心がけだ。誰かのために頑張ることは素晴らしいことだからね」

モズメ「そういうハロルドさんは、なにしとるん? 今日はカムイ様は外に出とるから、帰ってくるのは夕方頃ってフェリシアさんが言ってた」

ハロルド「ははっ。なに、エルフィくんが、城塞で手伝いをしていると聞いてね。私もその手伝いを手伝いに来たとうわけさ」

モズメ「そうなんか、でも、何か手伝ってるようには見えんけど」

ハロルド「……そうだな」

モズメ「なんかあったん?」

ハロルド「うむ、ここに来るまでにいろいろとあってな。エルフィくんに来ない方が皆のためといわれてしまってね」

モズメ「エルフィさんも結構きついこと言うんやな」

ハロルド「はっはっは。まぁ、エルフィくんなりに私を気遣っての発言だろう。なにせ……」

 ヒューン ペチャ

モズメ「あっ、鳥の糞……」

ハロルド「……」

 ズボッ

モズメ「地面に穴がいきなり!? どうなっとるん?」

ハロルド「まぁ、こういうことだ。私はどうも、こういった出来事に会いやすい性質のようでね」

モズメ「不思議なもんや。あたいなら、人生にめげてまうやろな」

ハロルド「はっはっは、大丈夫だ。なにせ、私と一緒にいればできる限りの不運は私の元にやってくるからね」

モズメ「なんやそれ、言ってる意味わからんよ?」

ハロルド「モズメくん、用は考えかただよ。たしかに私はこうして不幸の身ではあるが、この不幸の身である私が起きるかもしれない悪いことを受けることで、誰かを守ることができるのだとすれば。それは素晴らしいことだ。まぁ、降りかかる災難の大きさ小さいことに越したことはないのだがね」

モズメ「……ハロルドさんはすごいんやな。あたいじゃ、そういう風に考えられへんよ」

ハロルド「なに、それほどでもないさ……」

モズメ「でも、ちゃんと体洗わんとあかんで、流石にその姿で歩き回るんは……」

ハロルド「そ、そうだな。モズメくんの言う通りだな」

モズメ「ふふっ、でもハロルドさんと話してあたい肩が軽くなった気がするんよ。せやな、用は考え方やからな」

ハロルド「そうさ。モズメくん、もしも鍛錬をするなら私にも声をかけてくれ、一緒に切磋琢磨し、カムイ様の役にたてるよう頑張ろう!」

モズメ「そうやな。それじゃ、言葉に甘えさせてもらうわ。よろしく、ハロルドさん」

ハロルド「任せたまえ!」


◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

リリス「カムイ様、本日はお疲れ様です」

カムイ「ええ、これでフリージアの件はすべて報告が終わりました。マクベスさんも反乱鎮圧で部族を潰さないことについては納得してくれたようですし」

リリス「はい、では私はこれから馬を戻しますので」

カムイ「はい、あとはよろしくお願いしますね」

 キャアアアアアアア

 ガシャン!

カムイ「…この声は、フェリシアさんですね。また転んでいるのでしょうか?」

リリス「フェリシアさんも懲りませんね」

カムイ「ふふ、そうですね。ちょっと様子を見てきましょう」


フェリシア「ごめんなさい、ごめんなさ~い!」

ハロルド「………いや、気にしないでいい。怪我などはないかね?」

フェリシア「は、はい。でも、ハロルドさん、さっきお湯を浴びたばかりなのに……」

ハロルド「……はっはっは。気にしないでくれたまえ、私は戻ってから――」

カムイ「ハロルドさん?」

ハロルド「おおっ、こんばんは、カムイ様」

カムイ「はい、こんばんは。今日は紅茶の香りがしますね。原因は……まぁ、フェリシアさんですよね」

フェリシア「す、すみません。その、バランスを崩してしまって……」


ハロルド「気にしなくていい。お湯を浴びれば済む話だ。それに、今日は一度お湯を借りていることもある、これ以上お世話になるのは……」

カムイ「お湯を使って行ってください、ハロルドさん」

ハロルド「し、しかし。すでに昼間使わせていただいている身でありますゆえ」

カムイ「気にしないでください。それに、ハロルドさんは私の仲間なんですから、こういう遠慮はしないでください」

ハロルド「そうですか、では、お湯の方、貸していただけますか?」

カムイ「はい。フェリシアさん、お湯の準備をお願いします」

フェリシア「は、はい!」タタタタタタタタッ

カムイ「……ところでハロルドさん。顔にも紅茶が掛っていたりするのでしょうか?」

ハロルド「まぁ、顔全体に掛ってしまったのでね。不幸中の幸いは、紅茶がぬるくなっていたことだよ」

カムイ「ふふっ、掛ったことは変わってないんですから……今、拭いてあげますね」ピトッ

ハロルド「あっ、カムイ様。手が汚れてしまいますよ」

カムイ「いいんですよ。それに、このまま歩かれても皆さん反応に困りますし、ハロルドさんも少し身なり正したほうがいいですから」

ハロルド「そ、そうですか。しかし、カムイ様の手を煩わせるのは……」

カムイ「いいえ、私がしたくてやってるんです。気にしないでください」サワサワ

ハロルド「んんっ? そ、そのカムイ様、なんだか手の動きが……」

カムイ「手の動きが……なにか?」サワサワ

カムイ(顔を全体的に触ってみましたけど、あまり反応がありませんね)

ハロルド「そ、その、なんだかくすぐったいのですが」

カムイ「すみません。今ハロルドさんの顔を調べながら、拭いてるので……」

ハロルド「し、調べるですか?」

カムイ「はい、ハロルドさん。とっても男らしい角張った顔の方なんですね。顎も二つに割れてるみたいですし」

ハロルド「ふははっ、くすぐったいですよ。カムイ様。しかし、そうでしたね。カムイ様は目が見えないお方でした」

カムイ「はい、ですからもう少し触ってもよろしいですか?」

ハロルド「はい、気の済むまでお触りください」

カムイ「ありがとうございます」

カムイ(顔は大方調べ終わってしまいましたね……となると……、この首筋のライン?)

ハロルド「首もお触りになるのですか」

カムイ「はい……」

カムイ(違いますね、となると……)

 スーッ ピタッ

カムイ「失礼しますね」

ハロルド「んおっ! いや、カムイ様、今の声はその……」

カムイ「どうしたんですか?」

 シュッシュ

ハロルド「くあっ、いえ、そのなんでもありません。……落ち着くんだハロルド。何も、何も起きていない。ただ、カムイ様が私の顔を覚えるために触っているだけ、それだけだ」

カムイ「そうですか? でも、ここに触れると、ハロルドさんから温かい息が漏れてくるのがわかりますよ」

ハロルド「こ、こふっ!」

カムイ(ふふ、まさか喉仏が弱点なんて、平面の中に突起したハロルドさんの弱点。正義の味方の弱点……。なんでしょう、このニュアンス、とても興奮してしまいます)

ハロルド「くあっ、か、カムイ様。そ、そこはー、そこはーーー!」

カムイ「駄目ですよ、ハロルドさん。正義の味方が、そんな声を出しては。正義の味方のハロルドさんは、平和を守るのが仕事なんですよね?」

ハロルド「そ、そうです。そうですがっ、くぅぅぅ」

カムイ「ふふっ、口から洩れる息が。まるで絞り出したみたいに苦しそうですよ? がんばれ、って応援したくなります」

 サワサワサワサワ

ハロルド「か、カムイ様。こ、こんなことはいけません!」

カムイ「がんばれ、がんばれ。ふふっ、ハロルドさん、どうですか? 気持ちいいですか?」

ハロルド「は、も、もう。やめ、やめてください! お、おねがいですから!」

カムイ「ふふっ……そうですね。そろそろ、フェリシアさんが戻ってきてしまうかもしれませんから……」スッ

ハロルド「はぁはぁはぁはぁ……」

カムイ「すみません、つい楽しくていっぱい触っちゃいました」

ハロルド「ううっ、まさかカムイ様にこのような趣味があったとは……。驚きが止まらない」

カムイ「ごめんなさい。ハロルドさんのこと、よく知りたかったんです」

ハロルド「そ、そうですか……」

カムイ「はい、しばらくはこんなことをはしませんから」

ハロルド「はい。そ、そのですね。気持ちはよかったです」

カムイ「はい、自信がありますから。それに、やっぱりハロルドさんといるとなんだか楽しいです」

ハロルド「はぁ、カムイ様。私を困らせないでいただきたいのですが……。まぁいいでしょう、それでは私はお湯を借りますので」

カムイ「はい、ゆっくりしてってください」

ハロルド「はい………」サワサワ

ハロルド(やはり、自分で触っても、何も感じないものだな……って、私は何を考えているんだ……)

ハロルド「しかし……カムイ様の指は柔らかくて気持ちが良かった……、いやっ、忘れろ。忘れるんだハロルド!)

◆◆◆◆◆◆
―カムイの部屋―

カムイ「…………」

リリス「カムイ様、失礼いたします」

カムイ「リリスさんですか、こんな夜分にどうかしましたか?」

リリス「いいえ。その、少し胸騒ぎがするんです」

カムイ「そうですか、ふふっ。面白いですね、私も少し胸騒ぎがします。こうして、みんなと過ごしていると、今、白夜と戦争をしているなんて全く思えませんから」

リリス「そうですね。カムイ様は、もう一度白夜の王国に行きたいと思っているんですか?」

カムイ「そうですね。願い叶うなら、もう一度行ってみたいかもしれませんね。もちろん、こんな無粋な物を持ってではなくてですけど」

リリス「……夜刀神という名前でしたか?」

カムイ「はい、世界を救うものが持つことのできる刀でしたか。私にそんなことができるなんて思えないんですけど」

リリス「いいえ、カムイ様は本当に世界を救うことのできる人かもしれませんよ」

カムイ「リリスさんもそんなことを言うんですか?」

リリス「私は、カムイ様を信じてますから」

カムイ「そうですか……」

リリス「カムイ様、あの……」

カムイ「リリスさん、今日は一人にさせていただけますか?」

リリス「はい、わかりました」

カムイ「すみません」

リリス「いいえ、それではおやすみなさいませ」

カムイ「おやすみなさい、リリスさん」


カムイ(この胸騒ぎが杞憂であってほしいとどこかで祈っている私がいます。でも、こうして肌に感じるほどに、私はよくないことが近づいているのを感じてしまうんですね。これも――)

カムイ「獣の本能が嗅ぎつけているのかもしれませんね……」

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・フウマ公国―

???「すでに準備は整っていると聞いたが……」

ハイタカ「はい、先陣は我々が仕切りますゆえ」

???「そうか、すまない。死地へとお前たちを送ることになってしまう」

武将「いいえ、この身暗夜に一度刃を突き立てられれば、それだけでもこの命を掛ける価値があります。それに、こうして王族であるあなたが前に出てくれることで、他の方たちも重い腰を上げてくださる。待つだけの時間は終わったのです」

???「ああ、すまない。先制、頼んだぞ」

武将「仰せのままに」




武将「よし、あとは我々に宛がわれることになる人質のことだ」

ハイタカ「人質……ですか?」

武将「ああ、暗夜はサクラ王女を人質にしてきたのだ。こちらも、長年育ててきた暗夜の娘を人質に侵攻する」

ハイタカ「暗夜の娘? しかしこの行為に意味があるとは」

武将「ああ、意味などない。だが、白夜の中に暗夜の者がいるという不安を拭い去ることはできる。なに、これは独断での考えだが、だれも文句は言うまい。すでに、その人質は船に乗っている。まずは我々が進み先陣を切る!」

ハイタカ「わかりました、して、その人質とは?」




―――アクア王女だ―――





 休息時間 おわり

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C
 サイラス  C+
 マークス  C+
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C→C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間たちの支援
 
 今回のイベントでレオンとサクラの支援がC+になりました。
 今回のイベントでハロルドとモズメの支援がC+になりました。

―男性の支援状況―
【サイラス】
 リリス   C
 モズメ   C+
 エルフィ  C

【レオン】
 サクラ   C+
 カザハナ  C+
 ツバキ   C
 ハロルド  C

【ハロルド】
 レオン   C
 モズメ   C+
 ジョーカー C

【ジョーカー】
 ハロルド  C
 フローラ  C

【ラズワルド】
 リリス   C
 ピエリ   C

【ツバキ】
 レオン   C

―女性の支援状況―
【リリス】
 サイラス  C
 ラズワルド C
 エルフィ  C
 モズメ   C

【モズメ】
 サイラス  C+
 リリス   C
 ハロルド  C+

【エルフィ】
 モズメ   C
 フェリシア C
 フローラ  C
 リリス   C

【エリーゼ】

【ピエリ】
 ラズワルド C

【フェリシア】
 エルフィ  C

【フローラ】
 エルフィ  C
 ジョーカー C

【カザハナ】
 レオン   C+
 
【サクラ】
 レオン   C+

 今日はここまでです。支援一覧作ったけど、これ見辛いですし、どこかミスしてる気がします。見やすく改良しておきます。

 ここから本篇再開しますのでよろしくお願いします。

 

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・クラーケンシュタイン城『王の間』

ガロン「………」

カムイ「お父様、少し遅れてしまいました。申し訳ありません」

レオン「遅いよ、姉さん。もうみんな集まってるって言うのに」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、もしかして寝不足なのかな?」

カミラ「行ってくれれば、私が迎えに行ってあげるわ。そうね、今度から迎えに行くわ」

マークス「カムイ、少し気が緩んでいるようだな。しっかりするのだぞ」

カムイ「すみません、マークス兄さん」

ガロン「ふん、遅れたことを別に攻めるつもりはない。フリージアの件もある、結果を出せばいいそう言うものだ」

カムイ「ありがとうございます、お父様」

マークス「父上、私たちをお呼びしたわけとは?」

ガロン「うむ、白夜の軍が暗夜領へ侵攻した」

カムイ「!」

レオン「……」

ガロン「手薄となった海上より、暗夜領に入り込んできたようだ。現在、黒竜砦に身を置いている」

レオン(なんでだ、サクラ王女の身を考えれば、こんな強行的な手段を取るはずないのに……油断してたのは僕の方だって言うのか、クソ……)

カムイ(強硬派でしょう。サクラさんが捕虜となっている今、リョウマさんなどがこういったことを考えるとは思えませんからね。でも、こうなってしまってはサクラさんたちを捕虜としておく理由がなくなってしまうかもしれません。どうすれば……)

ガロン「無論、愚かな白夜の者は殺す以外にない。この暗夜に入り込んできたことを後悔させてやるほどにな」

レオン「父上、サクラ王女たちには未だ利用価値があります。この白夜の侵攻に啓発されて、捕虜を処理するのは――」

ガロン「レオン……勘違いしているようだな」

レオン「ぼ、僕は……」

カムイ「レオンさんの言う通りだと思います。捕虜はこちらにとって使うことのできる札です、それをこのような形で消費するのは……」

ガロン「カムイ、レオン。お前たちの意見に興味はない」

レオン「……しかし、父上!」

マークス「レオン、そこまでだ。父上申し訳ありません。弟の発言、お許しください」

ガロン「マークス、気にすることはない。それにわしにとって捕虜のことなど今はどうでもよいことだ」

レオン「え」

ガロン「レオン、お前が話を聞かずに口を先に出すとは珍しいものだな。白夜の物に唆されているのではあるまいな?」

レオン「……それはありえません。安心してください、父上」

ガロン「ふっ、ならばよい。わしが言っているのはこの暗夜に小さな策で侵攻してきた者たちへについてだ。そう、奴らの企みもろとも殺してくれる」

カムイ「企みですか?」

ガロン「白夜が侵攻は、すでに我が耳に入っていたこと。そうとも知らずに奴らは侵攻してきた。そして、その侵攻が見事に成功していると思い込んでいる頃だろう」

カムイ「彼らの目的は、その……」

エリーゼ「黒竜砦だよ、カムイおねえちゃん」

カムイ「はい、その黒竜砦の制圧、すでに達成されているのではないですか?」

ガロン「黒竜砦はわざと手薄にしておいたにすぎない。あの砦は白夜の軍には過ぎた物、あそこが重要な拠点であるとわしが考えていると思っているのは白夜の者たちだけだ。目下の問題は奴らの本当の狙いだ」

マークス「つまりこの侵攻は囮、そういうことですか」

ガロン「この侵攻はわれらの目を黒竜砦に縛り付けるために行われているにすぎない。奴らの本当の目的はノートルディア公国に陣を築くことにある」

カムイ「ノートルディア公国?」

レオン「………そうか、ノートルディア公国に陣を組んで、海上からの侵攻ルートの確立、これが白夜の狙いか」

カミラ「でも、どうしてそんなことがわかるのかしら?」

ガロン「単純なことだ、暗夜に白夜へ手を貸そうとする者がいるようにな」

カミラ「なるほど、そういうことね」

エリーゼ「え? どういうこと?」

カムイ「白夜にも暗夜に協力的な国がある、そう言うことですか」

カムイ(そうなると、白夜も一枚岩ではないということにもなりますね)

ガロン「その国よりもたらされた情報だ。信用する価値はある、先立って現れた白夜軍は黒竜砦へすぐさま向かった。われらの目が自分たちに引き寄せられているということを信じてな」

エリーゼ「でもおとうさま。今からノートルディアに向かっても間に合わないんじゃ……」

ガロン「言ったであろう、黒竜砦は手薄にしたと。すでに、マクベス率いる軍がノートルディアに待機しておる。白夜は主力が待つノートルディアで一戦交えるだろうが、すでに陣を組んだわれらの有利は動かぬ……」

カムイ「……どちらにせよ。黒竜砦に滞在する者たちは、すでに死ぬことを覚悟しているようですね」

マークス「捨て石なのだろう。そしてそれを理解もしているはずだ。まったく、敵ながら無茶苦茶なことをする」

レオン「正直、やる必要もない作戦だね。頭悪いよ」

ガロン「それほどの策しかないということだ。そして、唯一の本命もまた、こちらに知れている。白夜の企みをすべて崩し、その上でいずれ蹂躙してくれようぞ。カムイよ、お前に命令をくだす」

カムイ「はい、お父様」

ガロン「黒竜砦にいる白夜軍を殲滅し、港町ディアまでの街道を確保せよ。やつらの小さき策、そのすべてを握りつぶせ」

カムイ「はい、わかりました。お父様、準備ができ次第、黒竜砦の奪還、及び港町ディアへとの街道の確保の任に付きます」

ガロン「うむ、期待しておるぞ。カミラ、レオン、マークス……お前たちにも任を与える――」

 少し休憩入ります。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

カミラ「お父様も意地悪ね。私たちもカムイに同伴させてくれてもいいのに」

カムイ「カミラ姉さん、そう言ってもらえるのはうれしいです。ですが、カミラ姉さんにもやるべきことがありますから」

カミラ「そうね。私にも与えられた仕事があるから、それを放り出すなんてことはできないわ。でも、やっぱり心配だわ」

カムイ「ふふっ、カミラ姉さんは私を放してくれませんね」

カミラ「ええ、二人でいる時はこうやってギュッとしていたいもの」ギュー

カムイ「カミラ姉さんは、白夜のこと、どう思っていますか?」

カミラ「あら、おかしな質問をするのね。カムイを困らせるなら、誰であろうと私は容赦しないわ。それが私にできるカムイへの愛情表現だもの」

カムイ「そうですか。そう言ってもらえるとなんだか照れてしまいます」

 コンコン

カムイ「はい」

ギュンター『カムイ様、お時間よろしいですかな?』

カムイ「はい、大丈夫ですよ」

ギュンター「失礼いたします。これはカミラさま、もしかしてお邪魔でしたかな」

カミラ「いいえ、そうでもないわ。そろそろ私も行かなくてはいけない時間だから。カムイ、こちらの仕事が終わったらすぐに向かってあげるから、楽しみに待っててね」

カムイ「はい、楽しみに待ってます」

カミラ「ええ、私もよ。それじゃ、またね」

カムイ「はい、カミラ姉さん」

カムイ「お待たせしました。ギュンターさん。そうでした、私がフリージアに向かっていた間など、城塞の警備をしてくれて、ありがとうございます」

ギュンター「いえいえ、これくらいのこと、気にしないでください」

カムイ「はい、それでお話とは?」

ギュンター「はい、此度私もカム様に同伴させていただくことになりましたゆえ、そのご挨拶にと」

カムイ「そうなんですか。改めて挨拶されるのはなんだか不思議な気持ちですけど、ギュンターさんがいてくれれば、心強いです」

ギュンター「フッ、ジョーカーやフェリシア、フローラはあまり喜んでくれそうにはありませんがな」

カムイ「……そうでした。フローラさんとフェリシアさんのことで一つお聞きしたかったことがあるんです」

ギュンター「といいますと?」

カムイ「ギュンターさん。フェリシアさんとフローラさんがフリージアに向かったのを知っていましたね?」

ギュンター「なんのことやら、私にはわからない話ですな」

カムイ「とぼけないでください。ギュンターさんほどの人が、二人の動きに気付かないわけないんですから」

ギュンター「久々に故郷へ帰りたくなることもありましょう。ただそれだけの話です」

カムイ「………もしも、私ではない誰かが、フリージアに向かっても止めなかったんですか?」

ギュンター「……」

カムイ「ふふっ、やっぱりギュンターさんはやさしい人ですね。ありがとうございます、私を信じてくれて」

ギュンター「……カムイ様はやはり優しい方です。本来なら私は処罰される身でしたでしょうに」

カムイ「何の話か私にはわかりませんね。ギュンターさんも、フェリシアさんも、フローラさんも、いつもどおりに城塞で過ごしていたのに処罰されるわけありませんよ」

ギュンター「はっはっは、確かに私もフェリシアたちも城塞にいたのに、処罰されるわけはありませんな」

カムイ「そういうことです。では、これからの戦い。よろしくお願いしますね。ギュンターさん」

ギュンター「はい、この老体にどこまで役目が務まるかは知りませぬが、可能な限りカムイ様を守る盾となりましょう」

カムイ「はい、でも、盾ではいけませんよ。私と一緒に戦う剣になってください。その方が、私はとてもうれしいですから」

ギュンター「わかりました。では、私はカムイ様と共に闘う剣となりましょう」

カムイ「はい、ありがとうございます、ギュンターさん」

ギュンター「私のお話は以上ですが、カムイ様。何か頼みごとなどはございますか?」

カムイ「頼みごとですか?」

ギュンター「はい、このところ。あまりカムイ様に仕えているとは言い難い状況でしたので、なにかお望みがあればなんでも致しますよ」

カムイ「気にしなくてもいいんですが、でもそうですね………」

ギュンター「些細なことでもよろしいのですぞ」

カムイ「では、久々に本を読んでいただけませんか?」

ギュンター「」ピクッ

カムイ「ギュンターさんが朗読してくれるのとても楽しみだったんです。ここ最近はいろいろあって頼めませんでしたし、ギュンターさん夜は雲隠れしてしまいますから」

ギュンター「そ、そのカムイ様。今日はすこぶる体調が……」

カムイ「どうぞ、こちらに座ってください」ポンポンッ

ギュンター「……その、カムイ様。ひとつお聞きしたいのですが、私が読むことになる本というのは……」

カムイ「えっと、待っててください。こうやって帯を触っていけば……ありました、これです」
 
<吐息、抱き寄せた先に>

ギュンター「」

カムイ「ギュンターさんが読んでくれない唯一の本でしたから、こうやって本の帯に突起を付けてすぐわかるようにしておいたんです。いつかギュンターさんに読んでもらおうって思ってましたから、とっても楽しみです」

ギュンター「あの、カムイ様、その本ですが……」

カムイ「なんでもいいっていいましたよね?」

ギュンター「ちなみにその本をお持ちになったのは……」

カムイ「たしか、エリーゼさんでした。今話題の本だからって渡されました」

ギュンター(エリーゼ様、一体何というものをカムイ様にお渡しになられているのか。たしかに恋愛小説の部類ではありますが……、これを朗読して聞かせるなど……いや、もしかしたら柔らかい表現が多いのかもしれませんな)

ギュンター「カムイ様、ちょっとその本を貸していただいてよろしいですかな?」

カムイ「はい、どうぞ」

ギュンター(うっ、なんといきなりこんな過激なシーンを!? しかも台詞がこれほどに、老体というよりも、これを朗読するのは――)

カムイ「ふふっ、ギュンターさんの声って渋くてかっこいいですから。とっても楽しみです」

ギュンター「……はぁ」

ギュンター(ここまで長く生きてきましたが、まさかこのような本を朗読することになるとは……)

ギュンター「わかりました。カムイ様に伝わるように朗読させていただきます」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

ギュンター「では―――」

◆◆◆◆◆◆
カムイ「………さて、明日の朝には黒竜砦に向かうことになるんでしょうね」

 コンコン

カムイ「はい?」

???「……」

カムイ「誰ですか?」

???「カムイ様、失礼するよ」

 ガチャ バタン

カムイ「その声……、ラズワルドさんですか?」

ラズワルド「うん、こんな夜遅くにごめんね」

カムイ「というよりも、どこから入られたんですか? この時間になったら門も閉まっているはずです」

ラズワルド「はは、正確には昼ごろからずっといたんだけどね。ここにいたけど、別の場所にいたって言うところかな?」

カムイ「……どういう意味でしょうか?」

ラズワルド「まぁ、気にしないで。僕はちょっと話があってここに来たんだ」

カムイ「話ですか?」

ラズワルド「うん、というよりか決意表明みたいなもの……かな」

カムイ「?」

ラズワルド「カムイ様、僕はカムイ様を、君のことを守りたいって考えています」

カムイ「突然どうしたんですか? 私とあなたが出会ったのはこの前なのに、そんなこと……」

ラズワルド「はい。驚かれても仕方ないと思うけど、僕はそう考えてるんです。なんだか、軽い言葉に聞こえちゃうかもしれないけど、それが僕の使命の一つみたいなものだから」

カムイ「使命……ですか?」


ラズワルド「うん。それだけ伝えたかったかったんだ、マークス様の命令だとかそう言うんじゃないってことだけ、それを伝えたかった」

カムイ「………」

ラズワルド「そ、その。難しい話じゃないんだ、ただそれだけで……あーっ、なんだろう言葉が出てこないや」

カムイ「ふふっ、ラウワルドさん。お顔を触らせてもらってもよろしいですか?」

ラズワルド「……はい」

カムイ「………」ペタッ

カムイ「……」

ラズワルド「…………」

ラズワルド(なんだろう、とても儚いものをこの人から感じてしまう。どうして、こんなに……触る手が暖かいのに、どこか)

カムイ「ラズワルドさん。一つ約束してくれませんか?」

ラズワルド「なんですか、カムイ様」

カムイ「私よりも、先に死なないと約束してくれませんか?」

ラズワルド「……僕が死んじゃったらカムイ様を守れませんから、その約束は守ってみせます」

カムイ「はい、ありがとうございます」スッ

ラズワルド「えっ、もうこれだけですか?」

カムイ「はい。ラズワルドさん、あなたの使命が叶うといいですね」

ラズワルド「はい、必ず叶えてみせます。だから、カムイ様のこと守らせてください、それが一番の近道だって思ってますから」

カムイ「はい、それでお帰りはどうしますか?」

ラズワルド「それは大丈夫です。リリスさんと話を付けてありますから」

カムイ「……そう言うことですか。わかりました、いずれその場所でお話しすることがあるでしょうから、その時にまたいろいろお話しましょう?」

ラズワルド「はい、明日は朝早いんですよね。ゆっくり休んでください。それでは」

 ガチャ  バタン


カムイ「………」

カムイ(リリスさんが星界に招いた人なんですね……。どういう目的かはわかりませんが、いずれまた話をする時になったら……)

カムイ「もう寝ましょう……」

カムイ(今はしばらくの戦いのことだけを考えていればいいんです)


第九章 前編 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C→C+
 サイラス  C+
 マークス  C+
 ラズワルド  →C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C→C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

 今日はここまでです。カム子のほうがやっぱりしっくりくるのかな?

 戦闘時における、組み合わせの安価を取りたいと思います。参加いただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイと陣を組むキャラクター

 ジョーカー 
 ギュンター 
 サイラス  
 ラズワルド

 ピエリ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 リリス
 モズメ
 フェリシア
 フローラ

 >>548 でおねがいします。

◇◆◇◆◇
 キャラクターで陣を組む組み合わせを二組

 >>548で選ばれたキャラクター以外

 一組目は >>549 >>550

 二組目は >>551 >>552

 キャラクターが被った場合は、下へと一段ずつスライドする形になります。
 

サイラスで

ピエリなの!

ジョーカー

乙なの
エリーゼ

ハロルド

◇◇◇◇◇◇
―暗夜王国・黒竜砦『右側の塔』

 ガチャ ガチャ

アクア「……さすがに鍵は掛けるわよね、信用されていないことはわかっていたけど、ここまでされると辛いわね」

アクア「……まさか、こんな形で暗夜に戻ることになるなんて思わなかったわ……。それも、まったく利用価値もない人質としてだなんてね……。戦争が始まったらどうなるかなんて、予想はしてたけど……

アクア「どちらにせよ、ここにいる白夜は自分たちがどうなるか理解してる。ここにいる人たちは死ぬためにここにきているのだから、私も結局死ぬことになるのでしょうね」

アクア「でも、もしも叶うのであればカムイ、あなたにもう一度……」

シモツキ(武将)『どうだ、いたか?』

白夜兵『シモツキ様。いいえ、今ハイタカ様が周囲を探索しておりますが………』

シモツキ『くそ、北から敵が迫っている。伏兵の危険性は無視できないが仕方がない。今すぐ陣を敷く、捜索はハイタカにまかせて、迎撃態勢を整える。お前も前線に向かえ!』

白夜兵『はい!』

アクア「なんだか騒がしいわね。外から聞こえているみたいだけど………そういえば、窓はあるのよね……」

 ガチャ ヒュオーーー

アクア「ロープも何もなしにここから降りても死ぬ高さじゃないけど……ただでは済まないわね。……ん? あれは……」


ニュクス「煩わしいわね……。戦争が始まったとは聞いていたけど、まさか白夜の兵がこんな場所まで来てるなんて、迂闊だったわ。おまけに私を暗夜の兵と勘違いしているみたいだし、捕まったらどうなるものかわからないわね。それとも、ここが私の罪の行きつく果てということかしら?」

アクア「……ねぇ、あなた!」

ニュクス「っ!?」キョロキョロ

アクア「上よ、上」

ニュクス「……なに?」

アクア「いいえ、困っているみたいだから、声をかけたのよ。見たところ子供だから、もしかして迷子?」

ニュクス「……気安く話しかけないでほしいわね、お嬢ちゃん」

アクア「どう見ても私の方があなたより年上な気がするのだけど?」

ニュクス「人を見かけで判断しないで頂戴。年端も行かないような若造に子供扱いされたくないわ」

アクア「そう。それは別に困っていないっていう意思表示でいいのね」

ニュクス「そう言って――」

アクア「みんな、ここに――」

ニュクス「!?」

アクア「冗談よ。でも、もう少し大きな声を上げれば、誰かしら寄ってくるでしょうね?」

ニュクス「……あなた性格悪いわね」

アクア「たくましいって言って欲しいわ。あなたに頼みたいことがあるの、いいかしら?」

ニュクス「はぁ、私に選択権は無いのに、頼みたいことって……」

アクア「そう。侵入者が――」

ニュクス「わかった、わかったわ! わかったから」

アクア「いい子ね。あとで飴をあげるわ」

ニュクス「これでもしもバラしてたら、化けて出てあげるから。女の恨みは恐ろしいのよ」

アクア「そう、楽しみだわ。ねぇ、頼みごとだけど、北から暗夜の一団が迫っているらしいの」

ニュクス「そう、それで私に何をしろって言うのかしら? その暗夜の一団にここのことを教えればいいのかしら?」

アクア「そうね。それも一つだけど、できればあなたにカムイという人に伝えてほしいことがあるの。出来れば、もう一度あなたに会いたかったって」

ニュクス「……それって」

アクア「どうせ、ここは長く持たないわ。誰もがわかっていることだもの、暗夜が攻撃を仕掛けてくれば、私は意味のない盾にされる。そして死ぬことになる。それに、暗夜の者たちも私のことを覚えているわけがないわ」

ニュクス「まるで、もともとは暗夜に住んでいたみたいな言い方ね」

アクア「そうなるけど、もう関係のないことだから。私の名前はアクア、この名前はカムイに会ったときだけ言ってくれればいい。どうせ、ほかの人たちには感慨のない名前のはずだから」

ニュクス「……ニュクス」

アクア「え?」

ニュクス「私の名前よ」

アクア「ニュクス……聞いたことがあるけど……」

ニュクス「あなたの頼みに力を貸してあげる。そのカムイって人に、あなたの言葉ちゃんと届けるわ」

アクア「……ありがとう」

ニュクス「それじゃ。運がよかったら、また会いましょう」

 タタタタタタタッ

アクア「運がよかったらね……」



ニュクス(とは言ったけど、カムイの顔を私は知らないし……こんな口調で話しかけたら、確実に怪しまれるわね……)

ニュクス「……」

ニュクス(やりたくはないけど……、仕方無いわよね。その、約束してしまったんだから)

◆◆◆◆◆◆
―黒竜砦・北の森林―

サイラス「さて、どうするか」

カムイ「私は地図が見えないので何とも言えませんが、黒竜砦というのはどういった場所なのですか?」

サイラス「内部構造はかなりシンプルだ。それゆえに、こちらの攻撃方法もかなり限定されるからな。相手が誘導に引っ掛かってくれればいいけど、全く動かないような相手だったら」

カムイ「というより、砦に陣を構えておきながら、こちらにのこのこやってくるとは思えませんけど」

サイラス「……考えてみればその通りだな。すまない」

エリーゼ「サイラスって、そう言うところ抜けてるよね。しっかりしてよ、もー」

サイラス「ううっ、頭が上がらないな。向こうの斥候が顔をよく出してるから、偵察情報なんて手に入るわけないしな……」

カムイ「……なにか情報でも手に入ればいいんですが……」

 ガサッ ガササッ

エリーゼ「!?」

カムイ「誰ですか!」

サイラス「まさか、白夜兵!?」 


 ガササササッ


ニュクス「………」

サイラス「えっ、こ、こども?」

エリーゼ「ど、どーしたのこんなところに……」

ニュクス「……だ、誰なの? にゅくすのこと、つかまえるの?」

ニュクス(くっ、すごく恥ずかしいわ)

カムイ「私たちは暗夜軍の者です」

ニュクス「にゅ、にゅくすにひどいこと……しない?」

サイラス「こんなに怯えて……もしかしたら、白夜の兵に襲われたのかもしれない」

エリーゼ「絶対そうだよ。でも大丈夫、ひどいことなんてしないし、あたしたちが守ってあげるから! 白夜の人たちひどいよ。こんな小さい子を追いたてて、許せない!」

サイラス「まったくだな。もう大丈夫だぞ、無事でよかった」

カムイ「……」

ニュクス「あ、あのね。この先に、怖い人たちが……いっぱいいるの……。そこで追いかけられて、ここまで逃げて来たの……」

エリーゼ「やっぱり、黒竜砦に居座ってるんだね。もう、黒竜砦はもともと暗夜のものなのに!」

サイラス「そうか、よく抜けてこられたな。いや、子供だからかもしれないが、すまないけど、なにか見てないかな? そう、気になったこととかあったら何でもいいから」

ニュクス「あ、あのね……うんとね。ここに来る途中でね……塔の上から、にゅくすに声を掛けてきたおねえちゃんがいたの」

ニュクス(背筋が寒くなりそう……)

サイラス「おねえさん、誰かが捕らわれているのか……」

エリーゼ「ううっ、そうなると強行したら、その人が危なくなっちゃうよ」

カムイ「えっと、あの……サイラスさん、エリーゼさん、ちょっといいでしょうか?」

サイラス「ん、どうしたんだ?」

カムイ「あの、このそれなりに歳がいっていそうな人が、子供のように振舞っていることに、何か疑問を持たないんですか?」

ニュクス「」

ニュクス(え、どういうことよ。私の見た目を見て、なんで子供と思わないわけ。こ、こんな恥ずかしい言い方してる私の心境をどうしてくれるのよ///)

サイラス「何を言ってるんだ、どう見てもこの子は」

カムイ「はい、確かに気配で体格は子供ほどだとわかるのですが、まったく年下に感じないといいますか。年長者特有の、なんといいますか。そんなものが漂っているんです。なんというか、その非常に胡散臭いんです」

ニュクス「にゅ、にゅくすのこと、おねえちゃんきらいなの?」ギュッ

エリーゼ「怖い思いをしてきた子にそんな言い方ないよ!」

ニュクス(危ないわ。この女、間違いなく私の内面を見抜いてる! ここで見抜かれたら、死にたくなるわ。早く用件だけ話して、アクアの言ってたカムイって人の場所を聞き出さないと」

サイラス「そうだぞ。いくらなんでも疑って良いことと悪いことがある」

エリーゼ「そうだよ!」

ニュクス(この二人は騙されてくれてるから、どうにかなりそう。はぁ、早くここから抜けて……)

エリーゼ「カムイおねえちゃん、いくらなんでも言っていいことと悪いことってあると思うよ!」

ニュクス「」

サイラス「カムイ、子供が助けを求めてきてるんだ。ここは信じて話を聞くべき――」

ニュクス「あ、あなた。カムイっていうの?」

カムイ「あっ、そうです。ニュクスさんでしたか、あなたにはそのような声が似合うと思いますよ。違和感がなくなって、私としてはすっきりとした気分です」

サイラス「え?」

エリーゼ「?」

ニュクス「……ごめんなさい。その人の言うとおり、私は結構年の言ってる女よ。ごめんなさい、演技だとしても、後ろに隠れるような真似しちゃって」

エリーゼ「え……、どういうこと。あの、怖かったら」

ニュクス「別に怖くなんてないわ。全部芝居だもの……」

サイラス「それにしては、顔が結構赤いぞ」

ニュクス「……////」

カムイ「まぁ、恥ずかしいんでしょう。人前であんな演技をするのは。それで、カムイは確かに私です。いったい何の用でしょうか?」

ニュクス「さっきの話の続きよ。その塔にいた人からあなたに伝言を頼まれたのよ」

サイラス「? だれだ、カムイの知り合いがここの近くにいたのか?」

カムイ「いいえ、そんな知り合いはいないはずですが」

ニュクス「そう、だけど頼まれたから。あの子、自分が助かることはないと思っている見たいだったから、ちょっと叶えたくなったのよ」

カムイ「それで、その方は私に何と?」

ニュクス「『出来れば、もう一度あなたに会いたかった』、そう伝えるように頼まれたの」

カムイ「相手のお名前、聞いてもいいですか」

ニュクス「アクア、そう言っていたわ」

サイラス「! アクアって、白夜王国にいたあの女性か?」

カムイ「……」

ニュクス「余計な御世話かもしれないけど、今なら白夜兵の少ない道を案内できるわ」

カムイ「……その口ぶりだと、私たちに力を貸してくれると言っているように聞こえますよ?」

ニュクス「そう言っているのよ。運が良かったら、また会いましょうと約束してしまったの。どうやら、あの子の運は良いもののようだから」

カムイ「そうですか」

サイラス「カムイ、信用していいのか?」

エリーゼ「そ、そうだよ。すごくあやしいよ」

カムイ「さっきまで、信用しろと言ってたのはエリーゼさんとサイラスさんだったじゃないですか」

サイラス「そ、それはそうだが」

カムイ「私はニュクスさんを信じますよ。あんな恥ずかしい演技を見せてもらったんです、信じる価値がありますよ」

ニュクス「……あなた、アクアって子と同じ感じがするのだけど?」

カムイ「気のせいですよ。私は私です、アクアさんはアクアさんですから。では、ニュクスさん、案内のほう、お願いできますか?」

ニュクス「ええ、付いて来なさい。あと、黒竜砦の状況、見た限りのことなら教えてあげるから、参考にして頂戴」

カムイ「はい、ありがとうございます」

エリーゼ「……なんか納得いかないよ」

サイラス「俺もだ。なんだろう、最初に信じた分、反動をもろに浴びてしまったような、そんな気持ちになるよ」

今日はここまでです。次回で黒竜砦終わります。
 ニュクスって普通に打ち込んで変換すると、乳クスってなるんだけど。なんでや

◆◆◆◆◆◆
―黒竜砦近辺―

ニュクス「――以上が私の知っている情報よ。内部構造の方はあなたたちの人の方が詳しいから省くけど」

サイラス「これで情報はほとんど出そろったな。カムイ、どうする?」

カムイ「別動隊でアクアさんの救出を優先しましょう。正直、相手は意味ないと思っていますが、私としてはアクアさんに助かって欲しいので、人質として出されるのはとても困りますから」

サイラス「そうか。で、誰に右の塔へと行ってもらうか。それともカムイ自身で行くか?」

カムイ「いいえ、私はみなさんと敵の注意を引き付けます。それに、私の名前に過剰反応する方も少なからずいるはずですから、目を惹きつけることはできるでしょう」

サイラス「なるほどな。それじゃ、誰を向かわせる?」

カムイ「ニュクスさん、右の塔への道案内、引き受けてくれますよね?」

ニュクス「ええ、構わないわ」

カムイ「エリーゼさん、ハロルドさんとエルフィさんを連れて救出の任、お願いできますか?」

エリーゼ「うん、わかったよ、カムイおねえちゃん」

ニュクス「大丈夫かしら?」

エリーゼ「だ、大丈夫だもん。それにハロルドとエルフィも付いてるから!」

ハロルド「ええ、任せてくださいエリーゼ様」

エルフィ「塔の中は狭いから、私が前衛に回るわ。ハロルドはエリーゼ様を守って。あと、ニュクスは私の隣で案内をお願い」

ニュクス「別に、私は……」

エルフィ「あなたも、そのアクアにもう一度会いたいのでしょう? なら私の後ろで待機して、大丈夫、どんな攻撃も全部受け止めてみせるから、あなたを傷つけさせたりしないわ」

ニュクス「そう、わかったわ。あなたの言葉、信じさせてもらうわね」

カムイ「すみません、別動隊故に少人数で行かせることになってしまって。私たちもできる限り敵の注意を引きますが……」

ニュクス「心配し過ぎよ。それとも、あなたは仲間のことを信用してないのかしら?」

カムイ「……ふふっ、そうですね。ニュクスさんの言う通りですね。頑張ってください」

エリーゼ「うん!」

カムイ「さぁ、それでは、始めますよ、皆さん」


「これより、黒竜砦の攻略を開始します」

◇◆◇◆◇◆◇

白夜兵「……敵に動きは無いみたいだな。斥候もまだ帰ってきていないし、怖れをなして逃げたか?」

白夜兵「それはないはずだ。無駄口をたたいてないでちゃんと見張れ」

白夜兵「わかってる――」

 ヒュン  トスッ

白夜兵「て……」ドタン

白夜兵「ん、どうし――」

 ヒュン  トスッ

白夜兵「…がっ、い、いつの間……に」ドサッ

 テキシュウ! テキシュウダー!

白夜兵「シモツキ様! 敵襲です!」

シモツキ「なに!?」

白夜兵「すでに二人やられました。奴ら、斥候の目を逃れてすでに砦の前に至っていたようです」

シモツキ「そうか、すこし陣を下げろ。相手が入ってくるのを待って、一網打尽にする。ノコノコと入ってきた奴らを分断し、各個に狙え!」

白夜兵「はっ!」



モズメ「二人、やったで……」

カムイ「はい、辛いことさせてしまいましたね」

モズメ「ええんよ。あたいがやるしかないことやから」

ジョーカー「さて、ここからは少しの間、睨めっこですね。向こうが痺れを切らして出てくるとは……」

カムイ「そうですね。では大声で宣言でもさせてもらいましょうか」

カムイ「黒竜砦に居座る白夜の者達に告ぐ―――私はカムイ」




白夜兵「!? カムイ、あの裏切り者の!?」

白夜兵「くっ、裏切り我らを切り伏せて名をあげるつもりか……」

シモツキ「静まれ、まだ姿は見せていない。まだ確証はないのだから、うろたえるな」

白夜兵「……」

シモツキ「……しかし、まさか、ここで裏切り者の王女の名を聞くことになるとはな………アクア王女を連れてきたことがこんな形で役に立つとはな……」

白夜兵「シモツキ様」

シモツキ「アクア王女を連れて来い、有効な駒だ。ちゃんと使ってやらねばな」

ニュクス「始まったみたいね……」

エルフィ「そうみたい……。それじゃ私たちも始めましょう」

ハロルド「うむ、ここがその扉で間違いないかな、ニュクスくん」

ニュクス「ええ」

エルフィ「それじゃ、いくわね」スッ

ニュクス「えっ?」

エルフィ「はあああああっ!」

 ドゴンッ

エリーゼ「エルフィ、すご~い!」

ニュクス「……ばれないように静かにするべきじゃないの!?」

エルフィ「大丈夫、すぐに上にいければ済むことだから。私が先陣を務めるから、いくわ」

 ガシャンガシャンガシャン

ニュクス「この石の階段を何の苦もなく、上って行くのね」

ハロルド「ああ、エルフィくんにはこんな階段を上がることなど、簡単なことだからね。さぁ、ニュクスくん、エリーゼ様。先へ、私は後ろを守ります」

エリーゼ「うん、ハロルドお願いね!」

白夜兵「何事だ!」

エルフィ「邪魔!」

 ドゴンッ

白夜兵「ぐへぇ!」ドタン

ニュクス「えげつないわね……あなた」

エルフィ「急ぎましょう。踊り場に出るわ」

白夜兵「おっ、戻ったか。一体何の騒――」

ハロルド「はああああ!」

白夜兵「ぐあっ、あ、暗夜兵……だ……と」ドサッ

ハロルド「他には誰もいないようだね。その、アクアくんがいるという部屋は?」

ニュクス「多分、この部屋よ」

アクア「外にいた見張りの声が消えた?」

アクア(そう、もうここまで暗夜兵が来たってことね。もしかしたら、死ぬ前にカムイともう一度話せるかもしれないと思ったけど、儚い夢だったわね)
 
 ガチャガチャガチャ ドンドンドンッ

アクア「……うるさいわね。少し静かにしてくれないかしら。別に逃げるつもりもないわ」

ニュクス「えらく達観した物言いだけど、そんな若さで死ぬことはないわ」

アクア「……えっ?」

ニュクス「少し下がっていて。というか下がってないと確実に怪我するわよ」

エルフィ「開錠してる時間なんてないから、力技でどうにかするわ」

アクア「えっ、どういうこと」

ニュクス「言う通りにしなさい、アクア。そうじゃないと飛んできた扉の下敷きになって死ぬことになるわよ」

アクア「!? ど、どういうことかわからないんだけど?」

ニュクス「ああ、もう助かりたかったら、さっさと言う通りにしなさいって言ってるの!」

アクア「わかったわ………いいわよ?」

エリーゼ「エルフィ、やっちゃって!」

エルフィ「でやああああっ!」ガギン、ドゴォオン!

 ガンッ

アクア「!? 扉が吹き飛んで……」

ニュクス「はぁ、ここまで私をこき使ってくれて、ちょっとは労わって欲しいんだけど」

アクア「ニュクス、これは一体……」

エルフィ「どう、アクアはいた?」

ニュクス「ええ、この人よ」

エリーゼ「うわっ、きれいな人だね。もう大丈夫、私たちアクアのこと助けに来たんだよ」

ハロルド「正義の使者ハロル――!?」

アクア「? えっと、なにか?」

ハロルド「いや、その。ううむ、他人の空似、ではないのか?」

アクア「?」

ハロルド「いえ、失礼。今はそのような話をしている場合ではありませんでしたな。私はハロルド、救出に参りました」

ニュクス「そういうことよ、アクア早くここを抜けましょう」

アクア「一体何をしたの? 私のことをどうやって助けるよう仕向けるなんて」

ニュクス「私も運が悪かったってことよ……。いや、運が良かったのかもしれないわね。こうして、もう一度生きてあなたに会えたんだから」

アクア「運が良いって……」

エリーゼ「あのね、カムイおねえちゃんが助けに行ってくれって言ってくれたんだよ!」

アクア「!?」

エルフィ「話をしてるところ悪いんだけど、そろそろ行きましょう」

アクア「ええ、それじゃカムイの元までエスコートしてくれるかしら?」

エリーゼ「うん、まかせて! こっちだよ」

アクア「それと、ありがとうニュクス。そのさっきのことだけど……」

ニュクス「別に構わないわ。それにまずはここを乗り越えてからにして頂戴。まだ、戦いは終わってないんだから」

アクア「そうね、わかったわ」

ニュクス「ええ、ありがとう。それじゃ、救出が終わったことをカムイに知らせないとね」

 ヒュオオオオオオオオ ボウウウウウ



 ドゴオオオオオオオオン!!!!!

シモツキ「な、一体何だ!?」

白夜兵「右の塔より火の手が上がっています」

シモツキ「なんだと、あそこには……アクア王女が。裏切り者に気を取られ過ぎたか、くそ……」

白夜兵「現在、アクア王女を連れに行った者も帰ってきておりません。このままでは、敵別動隊が内部に入り込んでくる可能性が」

シモツキ「くそっ、ハイタカは?」

白夜兵「ハイタカ様は伏兵の探査を終え、現在外回りに砦正門に向かっています」

シモツキ「全員武器を取れ、敵別動隊の動きをここで食い止める。待っていても奴らは入ってこないだろうが、ハイタカに任せておけば問題はない。別動隊を食い止め、ハイタカの背中を守る。白夜の侍魂を、暗夜の野蛮人どもに見せつけてやるんだ!」

 ジャキ ガチャ 


カムイ「すごい音ですね……」

サイラス「ああ、大きな音だ。さてと、それじゃ俺たちもそろそろ動こう。もうピエリとジョーカーは準備が出来ている」

カムイ「はい、わかりました。サイラスさん、背中は任せましたよ」

サイラス「ああ、任せてくれ」

カムイ「では、行きましょう。白夜の力がどれほどのものか、見せてもらいましょう!」

 タタタタタタタッ

白夜兵「よし、痺れを切らして入ってきたぞ!」

白夜兵「よし、弓兵引け、生かす必要はない!」

 セイシャ ジュンビヨシ!

白夜兵「よし、今――」

 ドゴォン

白夜兵「!? 壁が」

ジョーカー「なに、カムイ様に攻撃しようとしてんだ屑ども」

ピエリ「カムイ様を攻撃する人は、殺しちゃうの!」

 ザシュ ザシュ

白夜兵「強襲だと、くっ、陣形を立て直――」

 ズシャ ポタポタタタタタ ブシュアアア

ピエリ「返り血、とってもきもちいいの!」

ジョーカー「刺した敵を俺に向けるな。服が汚れる」

ピエリ「ジョーカーもきれいになるの。血がドバドバ出ててとてもきれいで、きもちいいの!」

ジョーカー「はぁ、なんでこんな奴と一緒に行動しないといけないんだ。俺はカムイ様と一緒に行動したいのに」

ピエリ「血が出なくなったの。ピエリあたらしいの見つけるの!」

 ブン ビシャァ

白夜兵「怯むな、敵はたった二人。数で押せば――」

カムイ「懐ががら空きですよ」

 ズビシャ 

白夜兵「い、ぐあああああ」

サイラス「一回の襲撃で崩れるようじゃ、まだまだだな!」

白夜兵「くそっ、いつの間に入ってきて!――ぎゃあ」

カムイ「ピエリさん、ジョーカーさん、最高のタイミングでした。前衛に穴があきましたよ」

ジョーカー「ありがとうございます、カムイ様」

ピエリ「えへへ、褒められるとピエリもっと頑張っちゃうの!」

カムイ「ええ、もっと頼みます。このまま砦の中枢に……」

シモツキ「来たか……」

エルフィ「ここが中枢ね。いっぱいいるみたいだけど……」

エリーゼ「あの人が指揮官かな? 早く倒して、ここを取り戻さないと」

ハロルド「しかし、右の塔はすでに使えるものではなくなってしまいましたが、大丈夫でしょうか?」

アクア「白夜が火を付けたということにすればいいわ。それで、すべて解決よ」

ニュクス「そうね。白夜が火を付けたんだから仕方のないことよ」

シモツキ「ふん、アクア王女。まさか我らに刃を向けるとはな。白夜で育った恩、それをこうした形で返すというのか?」

アクア「そうね、結果的にそうなることに間違いはないわ。どういい繕っても、私は私を助けに来てくれたこの人達に手を貸すことになるでしょうから」

シモツキ「ふん。結局、お前は暗夜の人間だということだ。その身に流れる暗夜の野蛮の血がその証。今思えば、要らない荷物だった」

ニュクス「人を荷物扱いなんて感心しないわね」

シモツキ「ふん、暗夜にはわかるまい。場所を奪われることの辛さなど、平和を奪われる辛さも、そのすべてがわからないからこそ、お前たちは戦争を仕掛けてきた。ちがうか!?」

エリーゼ「あたしたちだって、戦争がしたいわけじゃ……」

ハロルド「エリーゼ様、相手にそんなことを言っても意味はありません。それに、私たちが今やっていることは殺し合いなのですから」

エリーゼ「ハロルド……でも……」

ニュクス「エリーゼ、今は何を言っても相手が納得する答えなんてないわ。人を殺すのに納得できる答えなんて、存在しないように……ね」

シモツキ「私はシモツキ。お前たちを殺し、暗夜に一矢報いるもの。どうせ、この先助かる道など私たちにありはしない。この命尽きるまで、暗夜軍を一人でも多く切り刻む。それが私、いや、ここにいる我々の使命だ」

エルフィ「………この数を受けきるのは一苦労だけど、守り切って見せるわ」

ハロルド「エリーゼ様を守るため、向かってくるものには容赦はできない。そして、そんな野蛮な願いをかなえるわけにはいかない。ここで、君たちには倒れてもらう以外にない」

エリーゼ「あたしにだって、守りたい人たちがいるから。だから」

アクア(でも、この数をどうにかするなんて、正直無理よ。押されてしまうわ、どうすれば……)

アクア(……あれは竜脈? そう、ここは太古の竜の亡骸で作られた砦、もしもあれに手が届けば……)

ニュクス「アクア、何か思いついたのかしら?」

アクア「ええ、でも、成功させるためには、移動しないといけない。かなり危険よ」

エルフィ「何か考えがあるならお願いします。受けきり続けるのにも、認めたくないけど限界があるから」

アクア「かなり、厳しいものになるけど、いいかしら?」

エルフィ「ええ、おねがい」

ニュクス「たくましいアクアが提案することだから、勝算はあると思っているわ」

アクア「たくましいって……もういいわ。私をあそこまで誘導してくれればいいわ。あとは、それでおわるから」

 ドゴン!

カムイ「!」

ハイタカ「死ねぇ!」
 
 ヒュッ キン カキン

カムイ「まったく、こちらの作戦を真似しないでもらいたいですね」

ハイタカ「……このような欠陥があるとはな。先に調べておくべきことだった。そうすれば、もう少し多い人数で、お前を八つ裂きにできたのだがな」

カムイ「……」ジャキ

ハイタカ「私はハイタカ。裏切り者のカムイ王女、その首取らせてもらう」

サイラス「そうはいかない。ここで、カムイを失うわけにはいかないんでね」

ハイタカ「ふっ、暗夜の騎士に守られた、気分はお姫様ということか?」

カムイ「そうかもしれませんね。ところでハイタカさんでしたか、白夜の戦略というのは、こうも唐突な出来事に弱いのですか? わずか数名の奇襲で前線が崩壊してしまいましたよ?」

ハイタカ「ふっ、そう言われても仕方ないだろう。ここにいるのはただの捨て石。ほとんどの兵は勢いだけで付いて来た血の気の多い者たちばかりだ。正義など要らぬ、ただ暗夜を殺すためだけの刃を寄せ集めただけの軍勢なのだからな」

カムイ「死ぬための兵隊ですか。本当の狙いがバレテいるというのに、無駄なことをするんですね」

ハイタカ「本当の目的か、そんなものは私たちにはどうでもいいことだ。今は、お前という存在をこの槍で貫き殺す、それ以外に思うことなどないのでね。お前たちも、そうだろう?」

白夜兵「……裏切り者には死、それ以外はない」

カムイ「いいでしょう、殺せるものなら殺してください」

ハイタカ「その言葉に、甘えさせてもらう! くらぇぇぇぇぇぇ!」



エルフィ「くっ、……はぁっ!」
 
 ザシュッ

白夜兵「ぐっ、まだだぁぁ!」

ハロルド「くらいたまえ!」ブンッ

白夜兵「甘い。暗夜の攻撃も大したことないな!」

ニュクス「やっぱり若いっていいわね。威勢が良くて過信しやすいから、倒しやすくて」

 ボォォォォォ

白夜兵「ひぎゃ、ぐぎゃがあああ、が、がらだがぁ、がらがだだああぼえ、ぼえるぅ……」ドサッ プスッ プスッ

シモツキ「あの先は袋小路だ、やつらはここの構造をあまり理解してないと思える。このままいけば、いずれ奴らの体に刃を突き立てられる。剣を振え、矢を射て!」

 ヒュン

エルフィ「くっ、流石に攻撃が激しくなって……」

エリーゼ「エルフィ、ライブ!」

ハロルド「くっ、エリーゼ様。あぶないっ!」カキン

エリーゼ「ひっ……は、ハロルド」

ハロルド「大丈夫ですか、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、ありがとう」

アクア「みんな、ごめんなさ。もう少しだけ、がんばって」

ニュクス「わかっているわ。わかっているから、そこにたどり着けたらちゃんと頼むわよ」

アクア「ええ、任せて」

エルフィ「ハロルド、一気に道を作るから、同じように盾に!」

ハロルド「任せたまえ」

エルフィ「息を合わせて、すぐに出るわよ。1……2……3!」

カムイ「くっ、やはり中々にやりますね。さっきの人たちとは……大違いです」

ハイタカ「………どうして、白夜を裏切った」

カムイ「理由を聞いてどうしますか? 意味なんてないでしょう?」

ハイタカ「意味など確かにない、だがあの方が私たちの案を受け入れたのは、カムイ王女、あなたの所為に他ならない」

カムイ「あの方……ですか」

ハイタカ「誰かを教えるつもりはない。だが、あの方がこのようなことに手を貸してくれたこと、その理由が釣り合うものであったのかどうか」

カムイ「ふっ、それを聞くためにここまで来たのですか? 御苦労なことです!」

ハイタカ「ぐっ!?」

カムイ「サイラスさん!」

サイラス「ああ、カムイに何を聞いているか知らないが。カムイは自分で選んでここに来た、それをお前に話す必要はない!」

 ガキィン

ハイタカ「そうだな。それは確かにその通りだ。だが、私にはそれを聞く義務があると思っている。このような兵を無駄にするとしか言いようのない、作戦の理由がどんなものであったのか、その理由を聞かずに、倒れることはできない!」

 バシィン

サイラス「くっ、態勢が!」

白夜兵「未だ、死に晒せ!」

ピエリ「そうはいかないの」

 キシッ ズビシャ

白夜兵「あ、ばかな……」

ピエリ「弱いの。弱いから殺したい放題なの!」

白夜兵「このアマがぁ!」

ジョーカー「はぁ、うるさいだけで脳がない。邪魔だ」

 ズシャァ プシャアアアアアァァァ

白夜兵「こふっ……ヒュ……ヒュー、ごががが」ベチャ

ハイタカ「ふっ、やはりこの程度、ということかもしれんな。なら、私くらいは一人屠って散るとしよう」

カムイ「できるものならですがね」

シモツキ「くらええええええぇぇぇぇぇ!」

 ガギィィン! ゴドン

アクア「!?」

エルフィ「私は平気だから、今のうちに!」

アクア「わかったわ!」

ハロルド「くっ、これは持つかわからない。エルフィくん、大丈夫か」

エルフィ「こ、このぉ!」

 ガッ ブンッ

シモツキ「はぁ!」ドゴォン

エルフィ「ああああああっ!」

 ドサッ ドタンッ

エリーゼ「エルフィ!」

ニュクス「くっ、攻めて足止めくらい!」

 ボオォォォ

白夜兵「くそ、道が炎で!」

シモツキ「慌てるな。魔術の炎など、少しすれば消え去る。奴らはもう袋小路に入った。急ぐ必要など何もない、刀の血を拭いておけ、斬りやすいようにな」

エリーゼ「エルフィ、エルフィ!」

エルフィ「え、エリーゼ様。ううっ、大丈夫です。まだ、まだ戦えます」

エリーゼ「だ、駄目だよ。こんなに怪我してるのに、もう戦わないで。本当に死んじゃう」

エルフィ「でも、私が」

ハロルド「エリーゼ様の言う通りだ。エルフィくん、君はもうボロボロになっている。ここからは私がすべてを受け止める」

エルフィ「そんな斧で、どうにかできるわけないわ」

ハロルド「やってみなければわからないさ。それにエリーゼ様が心配されている。エリーゼ様は笑顔の似合う御方、曇った表情にしたままなど私のポリシーっが許さないのだよ」

エリーゼ「ハロルド……ありがとう」

ハロルド「はっはっは。さぁ、白夜の者たち掛ってきなさい! 私がすべてを受けきって―――」

アクア「盛り上がってるところで悪いのだけど、もう終わるわ」

アクア(この竜脈を起動させれば……いや。もう選んでいられないわ、私はこの人達を守ると決めたんだから。この選択に、後悔なんてしない)

アクア「竜脈よ。私に応えて……」

 シュオン! シュウィン 


ハイタカ「ふんっ、どうだぁ!」

カムイ「まだまだです。はぁあああ!」

 ザシュン

ハイタカ「ぐおおぉ……ま、まだああああ!」

 ブンッ ブンッ

ハイタカ「お前の、お前の答えを聞くまで、私は、私はああああ!」
 
 キン キィン ガシィン

カムイ「……ハイタカさん」

ハイタカ「……これで、終わり――」

カムイ「はい、もう終わりです」

 ザシュンッ

ハイタカ「……!」

 ポタ ポタタタ

カムイ「ハイタカさん、あなたの聞きたかったこと、それの答えを聞かせてあげます」

ハイタカ「な、なに……こふっ……」

カムイ「私があんたに付いた理由ですよ。でも、それを聞いてもあなたの心は晴れることはないです」

ハイタカ「それを、決めるのは……」

カムイ「そうですね、あなたです。ですから教えてあげます。私はただ、考え続ける私でいたいから、こっちに来たんです」

ハイタカ「な、なにをいって」

カムイ「私の答えは以上です。安らかに眠ってください」

 ズシャン

ハイタカ「は、ははははっ、なんと、無念……だ…」

 ガシャン カランカラン ドサッ

カムイ「……」

サイラス「カムイ、大丈夫か!?」

カムイ「ええ、私は。急いでニュクスたちに合流を……」


 ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

カムイ「!?」

サイラス「奥から聞こえたぞ、まさか」

白夜兵「ウギャアアアアア、アツイ、ハダが、ハダガアアアア」

白夜兵「テガテガァアアアア。ギャアアアアアアア、ヒャハハハハハ、オデガオデガドゲデェエエエ」

シモツキ「酸の雨だと!? いったい何が、ぐおぉあああああああ」

 ウギャアアアアアアアアア

ハロルド「な、なんだこの光景は……」

ニュクス「……酷いわね」

エリーゼ「え、な、何が起きて」

エルフィ「エリーゼ様、見てはいけないわ」

 トケル! カラダガカラダガアアアアアアア

アクア(黒竜の酸を人が受けたらどうなるのかくらい予想がつく。それをもろに浴びた人を襲う痛みも、恐怖も、全部理解してるつもりよ)

シモツキ「グオオアアアアオオ、ユヅザン! グオオオオオオオ!!!!!」

 ベチャ ベチャ

ハロルド「こちらに向かってくるようだぞ」

ニュクス「すごい精神力ね。でも……」

シモツキ?「ハァ……ハァ……ハァ、オマエラヲギリギザンデ………ガルゥ………」

 ドサッ シュウウウウウウウウウウ……

ハロルド「うっ……」

ニュクス「こんな姿になると……悲惨なものね」

シモツキ?「…………」

アクア「………酸の雨がやんだわね」

サイラス「何があったんだ。これは」

ジョーカー「さすがに、こんな死体はあまり見たことはないな。それこの臭い、とてもじゃないが嗅いでいられる物じゃない」

ピエリ「すごっく臭くて、目も痛くて、びええーーーーーん。ここにいるの嫌なの!」

カムイ「……先ほど、竜脈が使われたような気配がありましたが、それと関係あるんでしょうね」

 タタタタタタタタッ

サイラス「誰だ!?」



ハロルド「サイラスくん、私だ! ハロルドだ!」

カムイ「ハロルドさん! 皆さん無事ですか?」

ニュクス「ええ、無事よ。でも、エルフィの怪我が深刻だから、早く手当てをしてあげて頂戴」

カムイ「エルフィさん、大丈夫ですか」

エルフィ「カムイ様、はい、大丈夫――っ」

エリーゼ「エルフィ、しゃべらないで。全然傷が塞がってないんだから」

カムイ「そうですよ。今は無理をしないでください、みんなを守ってくれてありがとうございます」

カムイ(あとはアクアさんだけですけど……)

 ヒタッ ヒタッ

カムイ「!」

アクア「………」

カムイ「……」

アクア「カムイ……なのね?」

カムイ「アクアさん」ダキッ

アクア「! どうしたのカムイ」

カムイ「無事で良かったです。そして、また会えてうれしいです」

アクア「……ええ」


「私もまた会えてうれしいわ」


第九章 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C+
 サイラス  C+→B
 マークス  C+
 ラズワルド C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C

仲間の支援レベル

 今回のイベントでアクアとニュクスの支援がCになりました。
 今回の戦闘でハロルドとエリーゼの支援がCになりました。
 今回の戦闘でジョーカーとピエリの支援がCになりました。

今日はここまでです。
 シモツキは私が初めて手に入れた捕虜で、捕まえたのはこの黒竜砦でしたね、あのくるくる回っているあの侍さんです。今では内の主戦力の一人で剣聖してます。今後、気に入ってるモブを出したりすると思うので、ご了承をよろしくお願いしたします。
 あと、乳クスってやっぱり伸び悪いんだね


 安価を取りたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 次に話をしているキャラクターの組み合わせ。
 
 二組でお願いします。

 ジョーカー 
 ギュンター 
 サイラス  
 ラズワルド

 ピエリ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 リリス
 モズメ
 フェリシア
 フローラ
 ニュクス

 一組目は >>591 >>592

 二組目は >>593 >>594

 キャラが重なった場合は下にスライドします。

アクア

ラズワルド

エリーゼ

カムイで

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディア『宿舎』―

カムイ「そうですか、ウィンダムから増援が来てくれるのですね」

ギュンター「はい、明日の昼頃となるようです。丸一日ほど、休みができたことになりますな」

カムイ「そうですね、黒竜砦の件もありますが、ここまで休みなく進んで来て、皆さん疲れていることでしょう」

ギュンター「ですな。気を張り過ぎても良いことはないでしょうし、ここはひとつ」

カムイ「はい、ウィンダムからの増援到着まではみなさんに自由にするように伝えてください。休息できる時にしておかないといけませんから」

ギュンター「わかりました。それと、カムイ様もお休みになられるようにお願いします」

カムイ「ふふっ、わかってますよ。今日は一日、休みですから、ギュンターさんも気軽に過してください」

ギュンター「そうさせていただきます。それでは」

 ガチャ バタン

カムイ「さて、とは言ったもののやることもありませんし……。そうですね」

「とりあえず寝ましょう」

カムイ「すぅ………すぅ……」

???「―――」

???「―――」

???「―――?」

???「―――」

エリーゼ「ううっ、気になる」

???「あれ、エリーゼ様?」

エリーゼ「きゃあっ!」

ラズワルド「どうしたんですか、そんな浮気現場を調査してるみたいに、こそこそと」

エリーゼ「ラズワルド、もう脅かさないでよ!」

ラズワルド「ごめんね。でも、エリーゼ様が周囲の注目を浴びてるのに気付かず、ずっと何かを覗き込んでるみたいだったから。それに一人で歩くなんて危ないですよ。白夜が狙っているのはノートルダム公国ですけど、もしかしたらこっちに忍びこんでる者がいるかもしれないから」

エリーゼ「ご、ごめんなさい。そうだ、だったらラズワルドも調査に協力してよ!」

ラズワルド「調査?」

エリーゼ「そう! ほらあの二人」

ラズワルド「二人?」

ニュクス「――」

アクア「――」

ラズワルド「ニュクスとあれは、アクアですか?」

エリーゼ「うん。カムイおねえちゃんはあまり紹介してくれなかったし。アクアはあのあとすぐに倒れちゃって、ニュクスはあの見た目であたしよりも年上だって言うし」

ラズワルド「ああ、確かにそんなこと言ってましたね。まったくそうは見えないけど」

エリーゼ「だから、今日は自由時間だから話をしようって思ったんだけど、お話しようと思ってた二人が一緒に出かけてて……」

ラズワルド「で、見つけたのはいいけど二人の物静かな雰囲気の中に入り込むのが難しいって感じたわけだね」

エリーゼ「二人の間に入っても、あたしじゃ話が合う気がしなくて……。だからラズワルド、協力して」

ラズワルド「お安いご用ですよ。といっても、すでに喫茶店でのんびりしてるから、いつもの口説き文句は使えないし。喫茶店にいる相手に、僕の知ってる喫茶店なんて言ったら、それだけでぎくしゃくしてしまう気がする」

エリーゼ「うーん、じゃあラズワルドがいつもやってるあれで颯爽と登場すればいいんじゃないかな」

ラズワルド「いつもやってるあれ? なんのことだろう?」

エリーゼ「ほら、ルンルンルン♪って」

ラズワルド「……え、エリーゼ様。そ、そのステップをどこで/////」

エリーゼ「この前、黒竜砦のあと街道で少し休んだ時に森の中でやってたでしょ! あれ踊りなんだよね。踊りながら話しかければ、二人とも笑ってくれるはずだよ」

ラズワルド「それ、僕が笑われること前提じゃないですか。見られただけでも恥ずかしいのに、人前で踊りながら二人に話しかけるなんて……」

エリーゼ「女の人にモテてるラズワルドなら大丈夫だよ!」

ラズワルド「え、えっとですね。エリーゼ様、あれは――」

ニュクス「少し煩わしいわね。あそこにいる人たち」

アクア「いいじゃない、今は休息時間なんだから、好きにさせましょう?」

ニュクス「アクアがそう言うならそれで構わないわ。でも、あのお嬢ちゃんのことを思ってあげるなら、自分のことを少しは伝えるべきじゃないかしら?」

アクア「そうかもね。それと、私の昔話にニュクスも興味があるんでしょう?」

ニュクス「それはそうよ。命を掛けて守った相手がどういう人なのか、少しは気になるものだから。当たり触りない部分だけでも教えてくれればいいわ。あとは特に聞くこともないでしょうから」

アクア「あっさりしているのね。もっと聞いてくるのかと思った」

ニュクス「話したくないことの一つや二つあるわ。私がそうであるようにね、だからそれすらも話したくないことなら…」

アクア「いいえ、別に構わないわ。ありがとう」

ニュクス「それじゃ、あそこにいるのも呼びましょう。そろそろ騒ぎ過ぎでギャラリーが付き始めているわ」

アクア「……」

エリーゼ「ええっ、ラズワルド、全然モテないの!?」

ラズワルド「そ、そんな大声で言うことないじゃないですか!」

エリーゼ「だ、だってあんなに女の人に声を掛けてるのに!」

ラズワルド「あれは、僕が一方的に声を掛けてるだけで」

 カルイオトコッテ…… アノコモモシカシテコエヲカケラレテルンジャ 

ニュクス「早く仲間に入れてあげないと、ラズワルドがどこかへ連れてかれてしまうかもしれないし」

アクア「そうね」ガタッ

エリーゼ「って、こんなこと言い合ってる場合じゃないよ。二人は……」

アクア「あら、二人してどうしたの?」

エリーゼ「わわっ、アクア!」

ラズワルド「あ、アクア。そのこれは、えっと」

アクア「仲がよさそうだけど、もしかしてデートか何かかしら?」

ラズワルド「え、そ、そう見えますか///」

エリーゼ「ちがうよ、あたしたちアクアとニュクスのこと――!!! えっとね、ちがうの。そう、避難訓練してたの、ラズワルドは追いかけてくる炎の役なんだ」

ラズワルド「え、ちょっとエリーゼ様?」

エリーゼ(いいから、踊って、炎みたいに踊って!)

ラズワルド「……ボウボウボウ、ボウボウボウ////」

アクア「そう、避難訓練もいいけど、よかったらそこで一緒にお茶でもどう? ニュクスと一緒だけど」

ラズワルド「え、ほんと?」

アクア「はぁ、エリーゼよりもあなたが先に目を光らせるのはやめて頂戴。それで、どうかしら?」

エリーゼ「い、いいの? あたし、その、子供だよ。難しい話とか、そんなのできない」

アクア「難しい話なんてしないわ。それに私もエリーゼと一度話をしたかったの、だから」

エリーゼ「ほ、本当?」

アクア「ええ、それに一度私のことについて話しておかないといけないことがあると思ったから」

エリーゼ「……アクア、うれしい! いっぱいお話ししよっ!」

ラズワルド「よかったね、エリーゼ様」

エリーゼ「うん。ラズワルドもありがとう」

ラズワルド「困ったな。僕がしたことなんて踊りくらいなんだけど……でも、そのおかげでこんなに可愛い女の子たちとお茶ができるんだから、運がいいや」

エリーゼ「えへへ、それでアクア、あたしに話したいことって何?」

アクア「ええ、それはね―――私が一応王女であったことと」

ラズワルド「そうだったんですか。すみません、アクア様」

アクア「別に呼び捨てでもいいわよ?」

ラズワルド「いえ、これは騎士としての線引きみたいなものなので、今からはアクア様と呼ばせていただきますね」

エリーゼ「ラズワルドは律義すぎるよ。でも王女だったんだ、あたしと同じだね!」

アクア「それと、元々は暗夜に住んでいたという話もね」

エリーゼ「えっ、それってどういうこと?」

アクア「それは、あの席で話してあげる。さぁ、行きましょう、ニュクスも待っているわ」

エリーゼ「うんっ!」

ハイタカとカムイの会話のあんたは、どう見ても暗夜の打ち間違えです。本当にありがとうございました(すみませんでした)。

昨日は疲れで倒れてました。更新できなくてすみません。時々こんなことになったりします、すまねえ。

ピエリ×リリスと本篇はいつもの時間くらいにやります。

◆◆◆◆◆◆
フェリシア「う~ん、足りないですぅ」

リリス「フェリシアさん、どうかしたんですか?」

フェリシア「あ、リリスさん。その、ライブの数が人数分ないみたいで……」

リリス「ああ、結構使いましたからね」

フェリシア「その、私が使いすぎちゃったのかなって。エルフィさん、とっても傷ついてましたから」

リリス「ふふっ、すぐに駆けつけましたからね、フェリシアさん。エルフィさんも、いっぱい掛けられて困惑してましたし」

フェリシア「は、はい。でもここで足りなくなったちゃったのは……」

リリス「では私が買いに行ってきますよ。ちょっと用事もありますから」

フェリシア「ありがとうございます。エルフィさん、誰か付いてないと……」

 エルフィさん、いきなり運動を始めようとしないでください。まだ体の内部まで傷が治ってるわけじゃないんですから

 でも、毎日の特訓は欠かせないわ。大丈夫、これくらいなら……

 駄目です、今日は安静にしてください。話を聞かないようなら凍らせますよ?

リリス「フローラさんも大変ですね。でも、なんだかんだで二人ともエルフィさんが心配なんですね」

フェリシア「はい、まだ私はエルフィさんに恩を返し終わっていませんから。リリスさん、買い物よろしくおねがいしますね」

リリス「はい。任せてください」

 ガチャ バタン

ピエリ「あっ、リリスなの!」

リリス「ピエリさん」

ピエリ「どこかにお出かけのなの?」

リリス「はい、これから調度品などの買出しに出ようと思ってます。今日は一日お休みですから、今のうちに買い物も済ませてしまおうと思って」

ピエリ「買い物! 買い物なの! それじゃ、ピエリも付いてくの」

リリス「ピエリさんもですか?」

ピエリ「そうなの。町の洋服屋さん覗きたいの!」

リリス「わかりました、すぐに出かけられますか?」

ピエリ「なの! ピエリはいつでも準備オッケーなの!」

リリス「はい、わかりました」



―港町ディア『大通り』―

ピエリ「リリスは何買うの?」

リリス「そうですね……回復用のライブを余分に買っておこうと思います。前回よく使いましたから」

ピエリ「エルフィ、とっても血だらけだったの。でも、どこかきれいだったの! ピエリもいっぱい返り血浴びて、いっぱい奇麗になりたいの」

リリス「血ですか、私はそうは思わないんですけど。でも、カムイ様の前に立ちはだかる人がそうなるのは仕方のないことですね」

ピエリ「リリスも魔法じゃなくて、剣持つといいの。カムイ様を守るのなら魔法よりも剣なの。剣で刺すと楽しいの!」

リリス「ふふっ、楽しいかどうかはわかりませんけど……。そうですね、私はこの手に何かを持って人を殺したことはないんですから」

ピエリ「リリス、どうしたの?」

リリス「ピエリさんは今までどれくらいの人を殺してきたんですか?」

ピエリ「わからないの、従者も敵もいっぱい殺してきたの。いっぱい殺せば褒めてもらえるから、いっぱいいっぱい殺したの。もう数えることもないくらい殺したの」

リリス「そうですか。いっぱい殺してるんですね」

ピエリ「でも、不思議なの!」

リリス「何がですか?」

ピエリ「リリス、ピエリの話を聞いても全然不思議そうな顔しないの。みんなピエリの話を聞くと、なんか怖い顔するのがほとんどなの」

リリス「そうなんですか」

ピエリ「よくわからないの。ピエリはやりたいことだけやってるの。やりたいからやってるの。みんなだって同じなの。でも、こう言うとみんなそれは違うっていうの」

リリス「私はピエリさんの言っていることがわからないわけじゃないですよ」

ピエリ「そうなの?」

リリス「はい、でも、時々我慢しなくちゃいけないことがあるんです」

ピエリ「……ピエリ我慢苦手なの。この前、従者をえいってやろうとしたら、カムイ様に止められたの」

リリス「カムイ様らしいですね。もしかして変なことされませんでした?」

ピエリ「顔いっぱい触られたの。あと従者にえいっしないって約束させられたの。だから黒竜砦は楽しかったの!」

リリス「ふふっ、ピエリさんもカムイ様に弱点をいっぱい触られちゃったんですね」

ピエリ「リリス、笑わないの!」

リリス「ごめんなさい、でも約束は守らないといけませんよ。口に出してしまった約束、相手にちゃんと届いてますから」

ピエリ「リリスも約束、何かしてるの?」

リリス「はい、とても大切な約束を一つしてます。そのためだったら、私はこの命を掛けても構わないって思ってるんです」

ピエリ「ピエリは殺して命を守るの。リリスの言い方は命を捨ててるの。それは馬鹿だと思うの」

リリス「はい、そうですね。私は馬鹿なんです。でも、馬鹿な私がした約束だけは私が守らないといけない近いですから」

近い→×

誓い→○

ピエリ「リリス馬鹿なの。でも、ピエリのこと怖い顔で見ないから好きなの」

リリス「そう言ってもらえると嬉しいです。でも、我慢だけはしてくださいね。そうしないと、みんなに迷惑かけちゃいますから」

ピエリ「がんばるの。あっ、道具屋さんなの」

リリス「本当ですね。それじゃ、買い物を済ませたら、ピエリさんの行きたいお店に行きましょう。あまり洋服を扱ってるお店にはいったことがないから、ちょっと楽しみなんです」

ピエリ「わかったの。可愛いものいっぱいある洋服屋さん見つけていっぱい入るの! リリスに似合うリボン買ってあげるの!」

リリス「わ、私にですか……、似合うでしょうか?」

ピエリ「ピエリに任せてなの! リリスといるととっても楽しいの」

リリス「……私もピエリさんと一緒にいるの、とても楽しいです。早く買い物済ませてきちゃいますね」

ピエリ「リリス、とってもいい子なの。でも、このままじゃいつか死んじゃうって言ってるの……どうすればいいの?」

◆◆◆◆◆◆
―港町ディア『宿舎』―

カムイ「思ったよりも眠ってしまっていたんでしょうか。もう夜だとフェリシアさんが言っていましたね」

カムイ(黒竜砦の戦いが終わってここに増援が来れば、次は私たちもノートルディア公国に向かうことになるんでしょうか? それとも……増援をここにおいてウィンダムに戻ることになるのでしょうか)

カムイ「……こればかりは命令を待つしかなさそうですね」

エリーゼ「あっ、カムイおねえちゃん」

カムイ「あれ、エリーゼさん。どうしたんですか、もう夜だというじゃないですか?」

エリーゼ「あ、あのね。アクアおねえちゃんがいないの」

カムイ「アクアさんがですか? それと、アクアおねえちゃんとは?」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、ひどいよ。アクアおねえちゃんが元々暗夜の王女だってこと、どうして教えてくれなかったの?」

カムイ「ああ、すみません。戦闘の直後でそこまで頭が回ってなかったんです。でも、エリーゼさん、自分から話を聞きに行ってくれたんですね。本来なら私が説明すべきことだったんですが」

エリーゼ「もう、それはいいよ。それよりも、カムイおねえちゃんもアクアおねえちゃんを探して、宿舎にはいないみたいだから。あたしは今日話した場所にハロルドたちと一緒に行ってくるから」

 タタタタタタタタタッ

カムイ「わかりました……といっても、町の構造がわからないことにはどこにいこうにも……」

ニュクス「ちょっといいかしら?」

カムイ「ニュクスさん? すみません、ちょっと用事があって」

ニュクス「そう、ちょっと手伝ってほしいことがあったんだけど」

カムイ「手伝ってほしいことですか?」

ニュクス「ええ、あなたが探してる人のことでね」

カムイ「……アクアさんのことでですか?」

ニュクス「そうよ。あの子、黒竜砦でやったことを、少し引きずってるみたいだから……」

カムイ「アクアさんがしたこと――」

ニュクス「あそこであの子はあなたを選んで、人を、白夜の人間を殺したのよ。わからないわけじゃないでしょ?」

カムイ「……」

ニュクス「残念だけど、私がそのことを言ってもアクアはちゃんとした言葉を返してくれないわ。アクアはあなたのことを気にしてた、だから」

カムイ「それ以上は大丈夫です。いる場所はわかっているんですよね?」

ニュクス「ええ、ついて来て」


―船着場―

ニュクス「あそこの影よ。ずっと座り込んでいるわ」

カムイ「そうですか。ありがとうございます、ここからは私だけで行きますから。ニュクスさんは戻ってもらって大丈夫ですよ」

ニュクス「ええ、さすがに覗き見する趣味はないからそうさせてもらうわ。頑張りなさい」

カムイ「何をがんばるのかはよくわかりませんけど。できることはしますね」

アクア「………」

アクア(私は白夜の人間を殺したのよね……。ミコトの歌う平和に憧れているなんて言いながら、結局対話を拒否して……。シモツキやハイタカも私がもっと動くことが出来たら……)

アクア「今さら後悔しても、仕方無いのに」

カムイ「後悔しているんですか?」

アクア「! か、カムイ」

カムイ「はい、エリーゼさんが探してましたよ。アクアおねえちゃんがいないと」

アクア「ふふっ、私が元々暗夜の王女だって言ったら、お姉ちゃんと呼んでくれたの。あの子の出生は白夜にいる時に聞いただけだったから、こうして会えるなんて思ってもいなかったわ」

カムイ「そうですか」

アクア「こうやって、得られたうれしいことを述べてしまうのは……認めたくないことから目をそむけているからかもしれないわね」

カムイ「アクアさん」

アクア「いいの、私が決めたことだから。私はカムイたちのことを選んだの、だから白夜の人間を殺した。ただそれだけよ」

カムイ「失礼しますね」

 ギュッ

アクア「………」

カムイ「やっぱり手が震えてます。ほんと、あの時と逆ですね」

アクア「あの時?」

カムイ「はい、あの日。炎の広場で襲撃が起きたアの日、私は考えることをやめてしまうかもしれないほどに心が揺れていました。そこをアクアさんに支えてもらったんです」

アクア「あれは私の力じゃないわ。それにあの後、あなたは考え続ける道を選んだじゃない。それはあなたが決めたこと。私は――」

カムイ「助言をしただけ……ですよね?」

アクア「……」

カムイ「まずはお礼を言わせてください。アクアさん、あなたのおかげで私は仲間を失わずに済みました。あなたがことを行ってくれなければ、アクアさんも含めて死んでいたかもしれませんから」

アクア「……ええ」

カムイ「アクアさん。あなたがここに来てしまったのは、間違いなく私の所為です。あの日、すべてが変わってしまったんですから。過去は何も変わりません。そして、アクアさんが手を下して殺してしまった白夜の人たちが帰ってくることもありません」

アクア「っ!」

カムイ「でも、アクアさん。それを思って涙を流すことは罪じゃないんです。泣いていいんです」

アクア「カムイ、………」

カムイ「ごめんなさい。本当ならアクアさんがこんなことをしないように、私たちが動くべきだったんです。それを……」

アクア「いいの。あれは、あれは私が、私が決めてやったことだから……。でも、ごめんなさい。今だけは、私は、私のした罪に、その重さにまけてもいいかしら?」

カムイ「はい、今は私が支えますから。罪の重さで沈まないように、私が支えてあげます。だから、今だけは気を張らないでください」

アクア「カムイ……ありがとう――ううっ」

アクア「……ごめんなさい。弱い姿を見せてしまって」

カムイ「いいんですよ。これでお相子ですから」

アクア「ふふっ、あの時のことを全部清算されちゃったわね。でも、私はあなたに信用されてるって思ってもいいのかしら?」

カムイ「はい。アクアさんはもう仲間ですから。でも、この先をどうするかはアクアさん次第ですよ」

アクア「えっ?」

カムイ「アクアさん、この先白夜の人たちと戦うことが増えるでしょうし、それは避けられません。私はこの戦いに無理やりあなたを引きこむつもりはありません」

アクア「………」

カムイ「あなたが望むのなら、ウィンダムで過ごせる場所を作ってみせます。そこで、戦争が終わるのを待っていてください」

アクア「……カムイ」

カムイ「気に障るようなことを言っているのはわかっています、ですが、無理に戦う必要はありません」

アクア「……」

カムイ「辛いのであれば、ここで降りてもいいんです。それを誰も責めたりしませんし、責める権利もありません」

アクア「……そう」

カムイ「はい。ただ、一緒に戦ってくれるというのなら、私と一緒に手を汚してくれますか?」

アクア「……手を取るとは言わないのね」

カムイ「奇麗事ではないからです。この手が血で見えなくなるまで、戦いは終わりませんから。そんな手になってくれるというなら、共に行きましょう」

アクア「ふふっ、人に争いで白夜と争うこと、奇麗事じゃないことを言われて、普通ならここで逃げだすわよ」

カムイ「はい、アクアさんにはストレートに言ったほうがいいと思ったので」

アクア「ほんと、温度差が激しいわ」

アクア「でも……」

 ガシッ

アクア「答えは決まっているの。私はあなたの答えを知りたいから、隣でその答えを見つめさせてもらうわ」

カムイ「そうですか。いつかそれが見つかるといいですね」

アクア「あなたが見つけるのよ。私が見つけるんじゃないわ」

カムイ「そうでしたね。さて、そろそろ戻りましょうか。エリーゼさんが町にまで出てますから、早く戻って安心させてあげましょう」

アクア「そうね。カムイ手を取ってあげるわ」

カムイ「私が言う前に誘われてしまいましたね」

アクア「行ってくると思ったから、先回りさせてもらったわ」

カムイ「はい、では私を連れて行ってくれますか」

アクア「ええ、任せてちょうだい」

カムイ「はい、頼りにしてますよ。アクアさん」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・レオン邸―

レオン「そう、カムイ姉さんは港町ディアまでの街道を確保したんだね」

ゾーラ「はい、これで白夜の策も失敗に終わるでしょうな。この動き、ガロン王様もお喜びになることでしょう」

レオン「ところで、いつもは衛兵にことを知らさせるのに、なんでゾーラがやってきたんだ?」

ゾーラ「おやおや、心当たりがないと?」

レオン「ああ、そういうことか。それはない、間違っても白夜の奴らに唆されたりなんてことはね」

ゾーラ「そうですか、ならよろしいんです。私もこんなことでレオン様を疑いたくわありませんが……これも命令ですので」

レオン「そう、気にかけてもらえて僕は幸せ者かもね。父上に伝えてほしい。何も心配はいらないと」

ゾーラ「その言葉、確かにお伝えいたしますゆえ。それでは、私はこれにて……」

 ガチャ バタン

レオン「ゾーラめ、そんなことを思ってもいないくせに……父上からの命令っていうのもこじつけに決まってる。くそ、気分が悪い」

???『あ、あの、レオンさん』

レオン「ああ、ごめん……入ってきていいよ」

サクラ「はい、失礼します」

カザハナ「邪魔するわね」

ツバキ「うん、失礼するよー」

レオン「三人とも、そこに掛けて。すでに耳にしてることだとは思うけど」

サクラ「白夜王国が侵攻してきたんですよね?」

カザハナ「ほんと、信じられない。サクラが捕らわれてるのに、なんでそんなことできるのかな」

レオン「ああ、それは……カザハナの言う通りだね」

カザハナ「あ、あんた。名前……」

レオン「別にもういいだろう。名前を呼ばないでギクシャクするのも面倒だからね、カザハナは呼びたいように呼んでくれていいから」

カザハナ「……な、なんか調子が狂うんだけど」

レオン「まぁ、僕も少し違和感があるけどね」

ツバキ「それで、俺たちはどうなるのかなーって、気になってるんですよね」

レオン「うん、そのことについてだけど。今のところ処罰の話は上がってないよ。というよりも、父上は君たちに興味がないみたいだから」

カザハナ「……なにそれ」

レオン「どうやら、父上は君たちを使う気がないってことだよ。この白夜の一件が終わるまでは安全って考えて問題ない」

ツバキ「喜んでいいのかよくわからない話だねー。逆になんだか不安になるよ」

レオン「まぁ、その理由がわからないわけでもないんだ。今回ことを起こしているのは強硬派のようだからね。強硬派に誰か権力者でも交じってない限り、この白夜の侵攻作戦は失敗に終わるはずだからね」

カザハナ「権力者?」

レオン「白夜の王族って言ったほうがいいかな。リョウマ王子、タクミ王子、ヒノカ王女。この誰かが手を引いてたら少し違うだろうけど、それでも難しいだろうね」

サクラ「どうして、そんなことがいえるんですか?」

レオン「ん、奴らの目的がノートルディア公国に陣を置くことだというのは、こっちに漏れてるからだよ。すでにノートルディア公国に暗夜は陣を敷いてる。陣を敷いた場所を落とそうとしたら、最低でも二倍以上の戦力が必要だ。しかも海上から攻めるとなると、沖での戦いを終えてから陸に上がらなくてはいけない、それに一日で陸に着かなければ、仕切り直しだからね」

カザハナ「ないそれ、卑怯じゃない。どうして、そんな話が入り込んできてるのよ」

レオン「白夜にも暗夜に協力する国があるってことだよ」

ツバキ「暗夜で白夜に協力する国があるから不思議じゃないね」

サクラ「あの、レオンさん」

レオン「なんだい、サクラ王女?」

サクラ「もしも、もしも。兄様や姉様がこの侵攻に加担していたら……どうなるんですか?」

レオン「その可能性はあまり考えていないんだ。というよりも、普通はこんなことは行わない、兵を犠牲にすること前提の作戦なんて到底容認できないからね」

カザハナ「兵を犠牲にしないってこと?」

レオン「当り前だよ。僕がカザハナの指揮官だったとしたら、こんな作戦には送り出さない。出来る限り注意をそらすために敵陣に突撃するだけの作戦なんてやる価値もない。だったら、違う形で注意を逸らすよ」

カザハナ「な、なんであたしの名前出すのよ!」

レオン「ああ、別にいいでしょ? 減るものじゃないし」

カザハナ「そ、それはそうだけど……」

ツバキ「まぁ、カザハナの名前が出たことは置いておいて、サクラ様の質問の答え、聞かせてもらえないかな」

レオン「……権力者がかかわるってことは、横のつながりすべてを巻き込むことになる。こんな強行作戦でも、これが行われるとされたら、その成功率をあげるか、それを見越して何か策を立てる。なにせ、もう盤面が動いてるから、ここで何もせずに待っていることはできない。僕だってそうする。でも、今回は敵の最初の目的がわかってるから、そこを抑えてどうにか食い止められるはずだ。そうすれば、白夜の侵攻も治まって、僕は反乱の平定ができる」

カザハナ「……終わったら結局……」

レオン「さぁね、でも僕も頑張るつもりだよ。なんだかんだサクラ王女たちとはこうして過ごしてきたんだから、できれば白夜に君たちを返したいって考えてる」

サクラ「い、いいんですか。そんなことを言って」

レオン「もちろん、交渉の材料としてだけどね」

カザハナ「一瞬でも喜びかけて、損したわ」

ツバキ「まぁ、そう言ってもらえたほうがなんだか安心できるよ。それじゃレオン王子、しばらくの間はよろしくね」

レオン「ああ、問題を起こさないんだったら別に構わないよ」

サクラ「あ、あの」

レオン「サクラ王女?」

サクラ「ありがとうございます。レオンさん、本当に優しいんですね」

レオン「……そんなことない////」

ツバキ「あー、顔赤くなってますよ」

レオン「う、うるさい!」

◇◇◇◇◇◇
―暗夜王国南海域―
???「いやはや、一時はどうなることかと思いましたが、うまくいくものですね」

???「夜明けまでまだ時間がある。私、寝てるね……」

???「はいはい。それにしても、こんなことになってしまうとは、人生わからないものです。しかし、暗夜軍の方々が待っていると思うと、あまり気乗りがしませんねぇ」

???「気乗りなんてもともない。でも仕方無い……」

???「そうですねぇ。仕方のないことです、私たちのやるべきことは決まっていますから、お互い頑張って生き残りましょう、なんといっても」

「今日は多く人が死にますからねぇ」

第十章 前編 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C+
 サイラス  B
 マークス  C+
 ラズワルド C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+
 ハロルド  C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+
 リリス   B
 モズメ   C
 サクラ   C+
 アクア   C+→B
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C
 ニュクス  C

仲間の支援レベル

 今回のイベントでアクアとニュクスの支援がCになりました。
 今回のイベントでラズワルドとエリーゼの支援がCになりました。
 今回のイベントでピエリとリリスの支援がCになりました。
 今回のイベントでエルフィとフェリシアの支援がC+になりました。
 今回のイベントでエルフィとフローラの支援がC+になりました。

今日はここまでです。アクアさんのヒロイン力をあげたい


 安価を取りたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
次の戦闘でカムイが付くことになるチームを決めます。

  チーム城塞【ギュンター・ジョーカー・フローラ】
  チーム受壁【エルフィ・サイラス・ハロルド・フェリシア】
  チーム砲台【ニュクス・モズメ・エリーゼ・アクア】
  チーム遊撃【ピエリ・ラズワルド・リリス】
  
 次の戦闘でカムイが付くことになるチームを決めます。

 >>628 でおねがいします。

◇◆◇◆◇






すみません、この安価は多数決的なものにします。>>634までの間で一番多かったチームにします。

乙です
チーム砲台

チーム砲台

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディア―

ニュクス「……あら、やっぱり隊長っていうのは朝が早いものなの?」

カムイ「いいえ、今日は珍しく目が覚めてしまっただけですよ。ニュクスさんは朝早いんですね」

ニュクス「ええ。朝は静かで好きなの」

カムイ「そうですか。それと昨日はありがとうございます、アクアさんと色々と話ができました」

ニュクス「礼なんていらないわ。私がしたかっただけ、それだけよ」

 ガチャ

モズメ「カムイ様、もう起きてたんか? 今日は早いんやなぁ」

カムイ「モズメさん、おはようございます。まだ眠っていてもよかったんですよ。増援の到着は昼頃のはずですから」

モズメ「んや、いつもの習慣みたいなもんやから。っていっても今は畑もあらへんし、のんびり町でもふらついてくるんよ」

カムイ「わかりました、気を付けて」

モズメ「そんな危険なことなんてあるわけないのに、カムイ様は心配し過ぎや」

カムイ「そうですね」

モズメ「はぁ、海ってのはこんなに広いんやなぁ。陸地ばっかり見て育ってきたから、なんか感激してまう」

モズメ「この先にノートルディア公国があるんか」

ニュクス「そうね……」

モズメ「もう戦いが始まっとるのかもしれへんな……」

カンカンカンカン カンカンカンカン

カムイ「ん、何の音でしょうか?」

モズメ「何かの祭りの音?」

ニュクス「……あまり景気がいい音にはまったく聞こえないのは、私の気のせいかしらね?」

カムイ「………モズメさん、皆さんを起こしてください。大至急です!」

モズメ「え、わ、わかったで!」

カムイ「ニュクスさんもお願いします」

ニュクス「仕方無いわね。わかったわ、あなたはどうするの?」

カムイ「私は音のなった方角に向かいます。ニュクスさんの言うとおり、とても嫌な予感がするんです」

 タタタタタタタッ

カンカンカンカンカンカンッ!

暗夜兵士「戻って来てもどうにもならない、あいつらにはしばらく耐えるように合図を送れ! くそっ、すべての新船はノートルディアに出ているというのに!」

カムイ「あの、何があったんですか?」

暗夜兵士「ん、誰だお前は、ここは……」

カムイ「私は暗夜王国王女カムイ、こういえばわかりますね?」

暗夜兵士「こ、これは、とんだ非礼を」

カムイ「そんなことはいいんです。それより何があったんですか。この鐘の音は初めて聞きますけど、あまり喜ばしい知らせではない様な気がします」

暗夜兵士「はい、日の出より、海上を哨戒していた軍の船が謎の船団を発見し、すぐさま戦闘に、現在すでに二隻を沈められ残り一隻が応戦している状態になっています」

カムイ「………その謎の船団ですけど」

暗夜兵士「はい、間違いなく白夜の船団だそうです。推定数は五隻」

カムイ「白夜の船団、接触までのおおよその時間は?」

暗夜兵士「このままでは持って三十分もありません。ど、どうすれば」

カムイ「ここの指揮官は?」

暗夜兵士「ノートルディア公国での防衛線に出ております。引き継いだものは哨戒へ出て……」

カムイ「そうですか」

暗夜兵士「くそ、なんでこんな場所に船団がやってくるんだ、いくならノートルディアに行ってくれよ。ここには兵力なんてそんないないんだ。襲われたらひとたまりもない」

カムイ「悲観している暇はありませんよ。だれか代役を立てないと、指揮が伝わらず数分でこの町は落ちてしまいますよ」

暗夜兵士「そ、そんなこと言われたって、決められるわけないだろ! そもそも、こんな防衛の指揮なんて誰も取りたがらない。負けが見えているじゃないか!」



カムイ「なら、私がやりましょう」

暗夜兵士「えっ」

カムイ「そのかわり、私の命令には絶対に従ってもらいます。それでもよろしければ、この町のすべての責任を私が負いましょう」

暗夜兵士「……ああ、ああわかった。わかったから、早く対策を考えてくれ!」

カムイ「わかりました。今応戦を続けている船は、まだ移動することは可能ですか?」

暗夜兵士「あ、ああ。まだ何とかなるはずだ。伝令を飛ばしたのはさっきだから、あと数分で戻ってくるとは思う」

カムイ「わかりました。それでは、すぐに戻ってきますから、その伝令の方が戻ってきていたら、ここに待たせてください。あと、私が指揮をとることを他の人に伝えてください。わかりましたね?」

暗夜兵士「わ、わかった」

カムイ「はい、頼みましたよ」


◆◆◆◆◆◆

ジョーカー「してやられた、そう考えていいでしょうね、これは」

ギュンター「そのようだな。黒竜砦の囮は我々にノートルディア公国防衛に信憑性を与えるための布石、そして白夜の本当の狙いは、この港街ディアの制圧にあったということですな」

エリーゼ「そ、そんな。ど、どうするのカムイおねえちゃん」

カムイ「どうするもこうするも、町を守る以外に選択肢はありません。運が良いのは、町の中心に入るために港を経由しなければならないっていう、この構造ですね。これで、敵の流入口を一つに狭めることができます」

サイラス「ああ、港は大型船が停泊できる場所が三つ、小型船は二つ。防衛用におかれた弓砲台が二つに魔道砲台が一つある。それぞれの道は最終的に表通りに入り込む大広場につながっている構造だ」

カムイ「まずは市民の避難からです。ギュンターさん、ジョーカーさん、フェリシアさんは住民の方々の誘導をお願いします。時間があまりありませんから、新しい指示が入らない限り、大通り入口に陣取って通ろうとする白夜兵を始末してください」

ジョーカー「仰せの通りに」

ギュンター「わかりました」

フローラ「はい、カムイ様

カムイ「次にピエリさん、ラズワルドさん、リリスさんは三人で遊撃についてもらいます。出来る限りでいいです。漏れた敵を各個撃破、団体に出会っても絶対に戦わないでください。必ず団体を各個にして見せますから」

ピエリ「わかったの。ラズワルド、リリス、すぐに行くの!」

リリス「ぴ、ピエリさん、引っ張らないでください。ちゃんと歩きますから!」

ラズワルド「わかったよ。カムイ様

カムイ「次に右側の一本道、ここは水路もあってここ以外に通れる要素がありません。ですから、ここをエルフィさんとサイラスさん。そしてハロルドさんにフェリシアさんの四人で固めてください」

エルフィ「わかったわ」

サイラス「ああ、ここの道は絶対に通さないさ」

ハロルド「うむ、まかせたまえ!」

フェリシア「はわわ、が、がんばります!」

 

アクア「それで、私たちはどうするの?」

カムイ「はい、中央通りにある固定砲台、これらを使って敵を釘付け、または分隊の分散を図ります。敵が中央に入り込んできたとしても、私には竜の体があります、どうにか足止めの壁くらいにはなれるはずですから」

アクア「でも―――」

カムイ「贅沢は言っていられません。それにここを落とされたら、ウィンダムにいるサクラさんたちの命が危ないんです」

アクア「……そう、サクラはまだ生きているのね」

カムイ「はい、どちらにせよ白夜の好きなようにはさせません。本日の増援到着は昼頃ですが、すでに馬を走らせて増援部隊への連絡を行っています。出来る限り早く、こちらに到着してくれるはずです。それまで持たせられれば、私たちの勝ちです。皆さん、こんな無茶苦茶な戦いですが、ついて来ていただけますか?」

ニュクス「……無謀な作戦だけど、やるしかないじゃない」

モズメ「せやな。ここで負けたらそれまでや、なら頑張ってどうにかするしかないで。カムイ様、あたい頑張るから」

エリーゼ「そうだよ、カムイおねえちゃん。絶対あたしたちが負けるわけないんだから、一緒にがんばろっ!」

一同「!」コクリ

カムイ「ありがとうございます。では、それぞれ持ち場についてください、ディア防衛戦を始めます!」

カムイ「遅くなりました。状況はどうでしょうか?」

暗夜兵「すでに船員の半数が行動不能、残りもあらがっていますが時間の問題です……」

カムイ「わかりました、もう海上での防衛戦は意味がありません。至急、船をこちらに戻してください。あと一番左の船着き場に置く形にしていただけると助かります」

暗夜兵「な、なんでそんな指示を?」

カムイ「はい、その船は、再度使う見込みはありますか?」

暗夜兵「いえ、もうボロボロですからそれはないと………」

カムイ「それでしたら――――」

暗夜兵「しょ、正気ですか? そんなことを」

カムイ「隠れられる場所など与えたくないんですよ。いいですか、必ず船員を全員避難させて行ってください。これだけでも十分に敵の脅威を減らすことができるはずです」

暗夜兵「……わかりました。おい、至急船に伝達、第一船着き場に船を入れろ。船員はすぐに下船できる準備を整えておくようにとも伝えろ」

カムイ「ご協力感謝します。もう、この監視塔は利用できません、あなたも防衛に参加してください」

暗夜兵「は、はい。ほ、本当に勝てるんですよね?」

カムイ「正直、勝つのではなくて負けを少なくするような作戦ですから……。勝ちはあり得ません」

暗夜兵「……そ、そうですか」

カムイ「ただ、うまくいけば引き分けにはできます。だから、頑張りましょう」

暗夜兵「よし、船が戻ってきたぞ! 早く第一船着き場に入れるんだ」

暗夜兵「白夜の船影確認、五。内三隻が侵攻中!」

暗夜兵「よし、合わせろ。よしよし、よぉおおし!」

 ドガサン

暗夜兵「よし、船から全員下りろ! 武器と大事なものだけでいい、死体はそのままでいい!」

 ワー ワー ワー

暗夜兵「船より全船員下船完了しました!」

暗夜兵「よし、全員火の準備! この船はもう使わない。火を放て!」

 ボウッ ボウッ ボウッ ボワワワワ
 
暗夜兵「よし、それくらいでいい。第一船着き場はこれにて放棄、第二、第三船着き場で敵を迎え撃つ!」


アクア「第一船着き場の船に火が付いたみたいよ」

カムイ「これで、第一船着き場に船は入れなくなりますし、入りこんだ白夜兵の隠れ蓑に使われることもなくなりましたね。実質、敵の機動隊は真ん中からこちらに進んでくるしかない状態になりました」

アクア「そう、そうやって相手の侵攻手段をこちらから減らしていくのね」

カムイ「ええ、まだまだ頑張ることが必要ですけど。まずは相手がどう出るか……モズメさん」

モズメ『なんや? 今、この砲台の設定でちょっと手こずっとるとこなんよ』

カムイ「敵の船影はどうなりましたか?」

モズメ『待ってな……。ひとつが進行を止めたらしいわ。でもの、残り二隻は以前進んで来とるで』


ニュクス「でも、一隻減らせたなら十分なことよ。これで敵の瞬間戦力が減るわ。砲台の設定終わったわ、いつでも使える」

エリーゼ「うん、ニュクスってすごいんだね。あたし全然わからなかったのに」

ニュクス「エリーゼにも使えるようにしてあるわ。あなた、魔法に関しては筋がよさそうだからね」

エリーゼ「ほ、ほんと?」

ニュクス「ええ、まぁやってみないと流石にわからないとは思うけどね。こっちの砲台はエリーゼと交代で運用するから、特殊な指示がある時は言ってちょうだい」

カムイ「はい、エリーゼさん。ニュクスさんと頑張ってください」

エリーゼ「う、うん。頑張るね」

モズメ「よし、こっちもできたで……。それにしても迫ってくる船って、怖いもんやな」

アクア「そうね、それにあっちは私たちを倒すつもりで来てるから」

カムイ「そうですね。だけどやすやすとやられてあげるつもりはありません。モズメさん、すみませんが指示に従って攻撃をしてもらっても構いませんか?」

モズメ「ええよ。まかせとき」

カムイ「はい、アクアさんはモズメさんの傍らでサポートをお願いします。私は地元の兵の方たちと一緒に、相手をねじ伏せます」

―第二船着き場―

白夜兵「船着き場に入るぞ! 全員戦闘準備!」

 ジャキジャキ

???「はぁ、まさか主君より先に臣下である私たちが先とは、いやはや手が掛りますね」

暗夜兵「おらぁ、白夜の野郎どもが、さっさと掛ってこい!」

???「野蛮ですねぇ。でも、それも仕方のないこと、すぐにその野蛮さを取り除いてあげますね」

 シュオオオ

暗夜兵「へっ、な、なんだよこれ、体から力が抜けて」

白夜兵「邪魔だ!」ズシャ

 ギャアアアア

白夜兵「このまま、攻め入るぞ! 怯むことはない、我らに正義あり、この町を手にいれ暗夜への足掛かりとするのだ!」

 オオオオオオオッ!!!!


―第三船着き場―

???「はぁ……こんなに天気がいいのに面倒なことこの上ないけど、仕方無いよね」

暗夜兵「弓、構え――」

???「あっ、いた。えいっ」

 ヒュン  ドスッ

暗夜兵「かっ……えっああ」ドタ

???「遅いの。もう、見える前から構えてないと。みんな、射て」

 ヒュンヒュンヒュンヒュン 

 グアァア ギャアア モノカゲニカクレロ!

???「ああ、ちょっと少なかったかな。でも、これくらいでいいよね」




アサマ「さて、それでは主君が安心してこれるようにしませんとね」

セツナ「それじゃ、始めよう。みんな」



「侵攻開始」

今日はここまでです
寝ぼけ眼でやってたら、間違えてヒノカとサイゾウを結婚させて本セーブに上書きしてしまった。ショックでかかった。

すべてを見てから、これいいなぁって言う組み合わせを選びたかったんですよね……

モズメ「いっぱい船から出てきたで」

カムイ「モズメさん、弓を持った方たちはどちらから来ますか?」

モズメ「第三船着き場(右の船の場所)の方からやな。兵隊さん押されとるから、このままじゃ、すぐになだれ込んでくるで」

カムイ「足止めします。モズメさん、敵弓兵の頭上に向けて撃ってください。出来ればタイミングは連続よりも一つだけ遅めで指示があるまで続けてください」

モズメ「えっ、連続で撃たへんの?」

カムイ「はい。機械的にお願いしますね」

モズメ「わかった、ほな始めるで」

 ガチャ キリキリキリ ガコン バシュッ!

 ヒューーーーーーン

白夜兵「上空から、矢が来ます!」

セツナ「とりあえず避けて、物影に……」

 グアッ! クッ

カムイ「兵士の皆さん、弓を構えてください。各々目に付いた敵に向けて、放て!」

 ヒュンヒュンヒュン

 ギャア! グオアアア!

モズメ「二射目いくで!」

 ヒューーーーーン

白夜弓兵「セツナ様、敵に穴をふさがれました」

セツナ「楽勝だと思ったのに、手ごわいね……」

アサマ「おやおや、セツナさんは貧乏くじを引いてしまったようですね。では、私たちはこちらから行かせていただきましょうか」

 ボウッ ドワァン!

白夜鬼兵「ぐおっ、なんだこれは魔術!?」

ニュクス「そう簡単には通さないわよ」

エリーゼ「ニュクス、すごい。誰にも当てないで足止めするなんて」

ニュクス「………そうね」

ニュクス(手元が狂って外したなんて言えない状況ね…)

ニュクス「威嚇射撃よ、次からは当てるわ」

アサマ「なるほど、威嚇射撃ですか。慈愛があるといいますが。みなさんには通用しませんね」

白夜鬼兵「舐めやがって! この隙に距離を詰める、二手に別れて突き進むぞ!」

ニュクス「……」

エリーゼ「ニュクス、いっぱいくるよ!」

ニュクス「はぁ、こうなることくらいわかってたことだけど、それじゃ二射目いくわ」

 ボウッ ドワァン!

 グギャアアア グガアアア

ニュクス「二人かしら。簡単に通れるなんて思わないことね」

白夜鬼兵「たかが砲台一つで止められるとおもっ――」

 パカラ パカラ

ピエリ「死ぬの!」

 ザシュッ

白夜鬼兵「かはぁっ!」ポタポタポタ

 キサマァ! ブンッ

ピエリ「ミートシールドなの!」

 ドゴッ ブチィ

白夜鬼兵「くっ、同胞を盾に!?」

ピエリ「ラズワルド、今なの!」

ラズワルド「うん、まかせて!」

白夜鬼兵「!? このぉ!」

ラズワルド「はい、力だけじゃだめだよ!」ズシャァ

 ゴロン ゴロゴロゴロン

ラズワルド「よし。孤立は処理したよ。次の場所に向かわないと」

ピエリ「うん、こんな感じで孤立したのを、いっぱい殺していけばいいの! ピエリいっぱい殺せてとっても楽しいの!」

リリス「ううっ、結構速く動きまわるんですね。目が回りそうです」

ピエリ「リリス、ピエリの後ろに乗っらないと置いてけぼりになるの。仕方ないの」

リリス「そ、そうですけど……」

ラズワルド「ピエリ、リリスのことを気に言ってるみたいだからね。一緒に行動できてうれしいみたいだよ」

リリス「私、戦闘向きじゃないんですよ。だから、少しは」

ピエリ「だから剣を持つの。カムイ様の命令守らないとだめなの!」

アサマ「遊撃も回っているんですか、砲台ばかりに気を取られていたらひどいことになりますね」

白夜鬼兵「小型の船で第三陣が来るようです」

アサマ「そうですか、あまり期待できそうにありませんね」

白夜鬼兵「?」

アサマ「どうやら、頭の回る方がまだいたようです。本当に、うまくいかないものですね」



エルフィ「来たわね」

白夜槍兵「いけ、あの橋を渡れば一気に広場に出られる!」

ハロルド「はっはっは、通すと思っているのかね!」

エルフィ「私が攻撃を受け止めるから、みんなで間接攻撃して。受けとめた後なら、嫌でも当たるわ」

サイラス「ああ、任せろ。だが危険になったら言ってくれ、すぐにでも場所を交代するからな」

フェリシア「怪我をしたら言ってください。きちんと直して見せますから」

白夜槍兵「たった一人で、抑え込めるとでもおもっているのかっ!」

 ブンブンブン ズシャ ガキンッ

エルフィ「今」

サイラス「ほんと、腋ががら空きだな」ザシュッ

白夜槍兵「がっ、くぅう」ボチャン

白夜槍兵「ひるむな、どうせ一人、畳みかけろ!」

 タタタタタタタタッ

ハロルド「フェリシアくん、横合いから行くぞ!」

フェリシア「は、はい。ごめんなさい、でもやられるわけにはいかないんです」

 ヒュン フオン

白夜槍兵「く、くそ、橋の上では隠れる場所も、くっ、だが、ここさえ抜けられれば」

エルフィ「通さないわ、絶対に。はああああっ!」

 ドゴォン! 

白夜槍兵「こふっ」ボチャン

セツナ「……うん、感覚が掴めてきた。次に攻めよう」

白夜弓兵「はい。全員、タイミングを合わせて距離を詰める」

セツナ「速射限界はどんなものにもあるからね。機械の砲台なら、尚更、敵の弓兵が一瞬ひっ込んだら、その間に……」

カムイ「……弓兵の方々、次の一斉正射と同時に、一度矢がなくなったように装ってください」

暗夜弓兵「えっ、まだ矢はあります。このままでも……」

カムイ「いいえ、そろそろやっておいた方がいいですから。機械的な限界を向こうに勘違いさせるくらいには、時間は使いましたので。その代り、敵の矢は確実に飛んできますから、全員者陰には隠れてください」

暗夜弓兵「……了解。全員、もう一度の正射の後、物影に身を置くように!」

カムイ「モズメさん」

モズメ「わかったで、タイミングは?」

カムイ「次の正射とともに、発射感覚を限界まで上げてください」

モズメ「わかったで、アクアさん。矢の取り入れ、忙しくなるで」

アクア「わかったわ。私にはこれくらいしかできないもの、全力を尽くすわ」

モズメ「おおきに」

 セイシャ テー! 

セツナ「……矢が止んだね」

白夜弓兵「後続援護射撃!残りは前進、今の間は砲台も矢を放てない!」

 タタタタタタタッ

白夜弓兵「よし、このまま」

 ガチャ キリキリキリ ガコン バシュッ!

白夜弓兵「えっ?」

セツナ「……やられた」

 ヒュンヒュンヒュン ザシュザシュザシュ

 オアアア イテエエエエエ コフッ コフー

モズメ「うわっ、ほとんど当たってもうた」

アクア「次の装填終わったわよ」

モズメ「わかったで」

カムイ「皆さん、再攻撃。弓、構え!」

暗夜弓兵「了解!」
 
 キリリリリリッ バシュッ!

 グアアアアアアア

白夜弓兵「くっ、セツナ様」

セツナ「悔しいね。こっちの考えなんてお見通しって言われてるみたい」

白夜弓兵「奇襲したというのに、どうしてここまで……」

セツナ「はぁ。攻めろって命令だったからやってみたけど、あんまりうまくいかないね」

白夜弓兵「セツナ様……」

セツナ「うん、このまま状況を維持して、もうそろそろ来るはずだから」



アサマ「これでは進撃の目処が立ちませんね。戦力を分散して同時に進行しているというのに、すべてに蓋をされてしまっているこの状態では」

白夜鬼兵「アサマ様………」

アサマ「そうですか。このような結果というのは情けないものですが、仕方ありませんね」

白夜鬼兵「はい……」

アサマ「もう、睨みあいも終わりのころ合いでしょう」

カムイ「おかしいです。もう攻撃が弱まってきましたね」

モズメ「せやな。まだ全然、人数おるのに……」

アクア「……モズメ、あれを見て。あの船影」

モズメ「……あれ、三隻目やろ? けど、この港には入ってこれないで?」

アクア「船は入ってこれないわ。でも、これるものは来れるはずよ」

モズメ「?」

カムイ「モズメさん、何か見えませんか?」

モズメ「……なんやろ、変な黒い点みたいなもんが………」

 バサバサバサバサバサ

アクア「天馬隊!?」

カムイ「飛行戦力も追加ですか。さすがにこれは予想してませんでした」

モズメ「すごい量が来るで!」

カムイ「モズメさんは、地上の牽制を続けてください。兵士の皆さん、見ての通りですが敵の飛行戦力が来ます。翻弄されないようにしてください」



セツナ「これで、少しは楽になりそう……。少しは前に進まないと、怒られる……」

アサマ「さて、ではもう一度進撃を開始しましょう。みなさん、行きますよ」



白夜天馬兵「上空ならどこからでもいける。まず前線を狭める敵の主力を挫く!」

 バサバサバサバサバサ

暗夜兵「半分は地上部隊の釘づけを続けろ。残り半分は飛行戦力へ攻撃!」

白夜天馬兵「おそい!」
 
 ザシュ

カムイ「くっ、直に弓を狙いにきましたか」

暗夜兵「このぉ!」

 ヒュン ザシュッ ヒヒヒーン!

白夜天馬兵「ゴフッ」ボギッ

白夜天馬兵「弓を減らせ、セツナ様の部隊を攻撃距離まで押し上げるんだ!」

モズメ「カムイ様!」

アクア「くっ、砲台にも向かってきてるわね」

カムイ「モズメさん、ここは死守しますから、あと少しだけでも続けてください!」

白夜天馬兵「邪魔をするな!」

カムイ「それはこちらのセリフです」ザシュッ

白夜天馬兵「―――っああああああ!!!!!」ブシャー

 ドタン


白夜天馬兵「こちらはあの砲台を狙うぞ!」

ニュクス「くっ、エリーゼ。砲台は任せたわ。私は外から来るのを相手するから」

エリーゼ「そ、そんな。あたしうまくできるか……」

ニュクス「やるのよ。やらなきゃだめ、少しでも食い止めるのが私たちの役目よ」

エリーゼ「……わ、わかった! ニュクスも頑張って!」

ニュクス「ええ、射程ならこちらが上よ」

 ボウッ ボワワワワワ

白夜天馬兵「ひっ、馬が、燃え、キャアアアアアアア」

 ボウ ボワアア

ニュクス「さぁ、次の焼き馬は誰かしら?」

白夜天馬兵「恐れることはない。私に続け!」

ニュクス「三人で来るのね、なら―――」

エリーゼ「えいっ!」
 
 ボゥ ドワァン!

白夜天馬兵「ぐっ、くそ。こちらを狙ってきたのか」

ニュクス「よそ見はだめよ」

白夜天馬兵「ぐぎゃあああああああ」

ニュクス「エリーゼ、助かったわ……ごめんなさい。私がすべきことなのに」

エリーゼ「ううん、ニュクスも無事でよかったよ。! 次来るみたいだよ」

ニュクス「ええ、わかってるわ」

ニュクス(敵の指揮が上がってるように感じるわね。ということは、まだ何かいるって考えたほうがよさそう)

暗夜兵「くっ、押され始め――」

セツナ「見つけた」

 トスッ

暗夜兵「――っ――あ」

 ドサッ

暗夜兵「くっ、くそ。こんなの対処できない!」

カムイ(皆さんの指揮が下がってます。このままでは……)

モズメ「カムイ様! こっちの発射感覚完全に読まれてる! 進み始めとる!」

カムイ「くっ、仕方ありません。暗夜兵の皆さん、この前線から一つ下がります、大広場の入り口に陣取ります!」

暗夜兵「全員、ここは放棄して第二線まで下がるぞ。負傷兵は先に大通りへ運ぶんだ。残りの時間はこちらでどうにかする」

ピエリ「カムイ様、お手伝いするの!」

ラズワルド「この飛行戦力は予想できなかったけど。どうにか持ちこたえるしかないからね」

カムイ「すみません。相手の動きを抑えてください。モズメさん、弓兵への牽制はあと六回後に終わり、砲台の射出装置を破壊して中央広場へ向かってください」

モズメ「わかったで、アクアさん。後六回でこの砲台を放棄するで」

アクア「ええ……」

アクア(あれはアサマとセツナ……ということは、この船団を率いているのは……)

カムイ「くっ、てやぁ!」

アサマ「あれは、なるほど。そう言うことですか、それなら納得というものです。ここに彼女がいるというのは、そう言うことなのでしょう」

アサマ「では、簡単に倒れてもらえるように、使わせていただきましょうか」
 
「禍事罪穢」

カムイ「!?」

 キンッ

ピエリ「! カムイ様」

リリス「カムイ様!」

ラズワルド「ピエリ、リリス、あぶないっ!」

 キキン

白夜鬼兵「………」

ピエリ「カムイ様と分断されちゃったの!」

リリス「カ、カムイ様……」

ラズワルド「どきなよ。僕たちの主がそこにいるんだ!」




カムイ(くっ、いきなり体が重くなって、いったいどうして……。感覚も……)

カムイ「こ、このままでは……」

白夜天馬兵「くらえ!」

カムイ「しまっ――――きゃあああああ」ドサッ ドタン!

モズメ「!? カムイ様!」

アクア「カムイ!」

白夜天馬兵「死ねえ!」

モズメ「させへんで!」

 ヒュンッ ドスッ

白夜天馬兵「ぐっ。くそ」ドサッ

モズメ「カムイ様、大丈夫?」

カムイ「は、はい。なんとか、ふふっ、格好悪いところ見せてしまいましたね」

アクア「カムイ、もう大丈夫。さぁ、早く広場に行きましょう。早くしないと私たちは孤立してしまうわ」

カムイ「す、すみません。ぐっ……」

アクア「モズメ。左肩を私は右肩を持つから」

モズメ「わかったで」

カムイ「早く、皆さんに防衛の指示を出さないと―――」



「そうはさせないぞ、カムイ」

アクア「!?」

 バサバサバサバサバサ タッ

アクア「やっぱり、あなたなのね」

「……」

カムイ「この気配は……」

「久しぶりだな。いや、やっと見つけたというべきかもしれないな。まさか、ここの防衛をしていたのがお前だとは思わなかったよ」

カムイ「…………」

「これも、私の信念が呼び寄せたんだ。お前を必ず白夜に連れて戻ると決めていたから。こうして、それが叶うと思うと私はとてもうれしい」

カムイ「……」

「ああ、お前さえ戻ってくれれば白夜はすべて元通りになる。また一緒に暮らそう、カムイ」

カムイ「あなたなんですね、ヒノカさん」

ヒノカ「ああ、お前を迎えに来たんだ。さぁ、姉さんと一緒に帰ろう」

「そう、家族の元にな」

―暗夜王国・港街ディア入口―
???「二人とも急ぎなさい。もう戦闘は始まっているらしいから」

???「わかりました。けど、これが私の精一杯だから」

???「ちょっと、かなり揺れるんだけど、もっと緩やかにできないわけ?」

???「ごめん、命令を優先するから。どうにか落ちないようにしがみついてて」

???「ありがとう。でも、こっちが本命だったなんて、運が悪いことね。カムイに何かしたら、どうなるか教えてあげるわ」

「だから、カムイ、もう少しだけ待っていてちょうだい」

今日はここまでです。
アサマが禍事罪穢を十章に使ってきてたら、アサマに対する印象やばかっただろうなぁ。
次で港街ディアの戦闘が終わります。
明日はもしかしたら更新できないかもしれないので、すみません。

―港町ディア・港内―
アクア「ヒノカ、なんでこんな作戦を強行したの。あなたなら、こんな被害が大きくなる作戦をするなんて」

ヒノカ「わかっているさ。だが、この作戦のおかげでカムイが白夜に帰ってくる。やってみた甲斐があったということだ」

カムイ「ヒノカさん、ウィンダムにはサクラさんと臣下の方たちがいるんです。それをわかっていながらやったというんですか?」

ヒノカ「そうか、サクラはまだ生きているのか。ふふ、また良い事を聞けたよ。私はサクラがもう暗夜に殺されているとばかり思っていたからな。卑劣な暗夜が人質を残しておくはずないと」

カムイ「その考えに反論できませんね」

ヒノカ「だけど、カムイ。サクラが生きているのはお前のおかげだと思ってる。ありがとう、サクラを見捨てないでくれて、とてもうれしいよ」

カムイ「……ですが、ヒノカさん考えてください。この町が落ちてしまったら、サクラさんの命は――」

ヒノカ「ふふっ、だからここを落としたらすぐに暗夜王都を落としにいく。そうすれば、何の問題もない」

アクア「ヒノカ、そんなこと無理に決まってる。どうやって王都までたどり着こうというの? 天馬でもそんな早くつけるわけないわ」

ヒノカ「やってみなければわからないさ。大丈夫、行くのは私たちだけだ、アクアとカムイは白夜に戻って本当の家族と一緒に、私とサクラの帰りを待っているだけでいい。そう、それだけでいいんだ」

アクア「……っ」

カムイ「ですが、私は」

アサマ「そんな弱弱しい姿で何を言うかと思えば、ここは諦めて白夜へ戻るのがいいでしょう」

カムイ「……どなたですか?」

アサマ「目が見えないというのは本当なんですね。私はアサマ、ヒノカ様の臣下です。ここであなたに会えたというのは、ここであなたが白夜に戻るためでしかありませんよ」

カムイ「白夜に戻ったところで何の意味もないと思うんですけどね」

アサマ「ええ、私はそう思ってますが。なにせ主君の命令ですので」

ヒノカ「アサマ、口が過ぎるぞ。カムイは暗夜に王国に操られているだけだ。闘いたくもない白夜と戦わされているだけにすぎない」

アサマ「はぁ」

カムイ「なるほど、苦労してるんですね。アサマさんは」

アサマ「ふむ、あなたには私の悩みが伝わるようですね。はい、本来なら白夜の地でのんびりゆったりとしていたかったのですが」

ヒノカ「これから先は白夜で休んでいてくれても構わないぞ。できればカムイのことを見守っていてほしいからな」

アサマ「それは勘弁遠慮しますよ。悩みがわかる方と一緒にいても、面白くはありませんから」

セツナ「あっ、アサマに先越されちゃった……残念」

アサマ「はっはっは、セツナさんは貧乏くじでしたね」

セツナ「それほどでも……。この人が……カミイ様?」

ヒノカ「カムイだ。ふふ、これから一緒に過ごすことになる」

セツナ「……そう、よろしくね。カムイ様」

モズメ「ど、どうすればええんやろ?」

アクア「今動いたら腕の一本か二本持っていかれそうね」

カムイ「すみません。私の不注意で、お二人を巻き込んでしまって」

アクア「カムイ、そんなこと言わないで」

モズメ「そうや、あたいがもっとうまく出来てればよかったんや」

アサマ「ふむ、ではヒノカ様。どうしましょうか?」

ヒノカ「ああ、このままこの三人を連れて戻ろう。アサマ、セツナも一緒に戻ってくれ。ここの制圧はもう少しすれば終わる。あとは、ウィンダムまで一気に攻め入るだけさ」

カムイ(……そんなことできるわけもないのに、どうしてそんなことを)

エリーゼ「おねえちゃん、今助けてあげ――」

ニュクス「駄目よ、今攻撃してもカムイたちを危険に晒すだけ、今は耐えて」

エリーゼ「そんな、このままじゃカムイおねえちゃんが……」

ニュクス「そうね、運が良いのは、敵の動きが少しだけ遅くなってるってことね。増援が来てくれればいいのだけれど」

エリーゼ「ううっ、このまま見てるだけなんて悔しいよ!」

ニュクス「耐えることも必要よ。エリーゼはカムイのこと信じているんでしょ?」

エリーゼ「うん」

ニュクス「なら、信じましょう。その瞬間まで。だからそんな泣きそうな顔しないの。可愛い顔が台無しになっちゃうわ」

エリーゼ「う、うん。ありがとう……」

 バサバサバサバサバサ

ニュクス「? この音、大通りの方角から?」

エリーゼ「ん、あ、あれっ!」

ニュクス「……あれは竜?」

ヒノカ「それじゃ、カムイ。いこう」スッ

カムイ「……」

???「何をしてるのかしら?」

ヒノカ「!」

セツナ「っ! ヒノカ様」チャキ

???「おっと、そうはさせないわよ!」

セツナ「!? いつの間に……」

アサマ「おやおや、強襲ですか。でも背中が――っ!」サッ ボキッ

アサマ「おっと、祈祷棒を折られてしまいましたね。まぁ命が助かっただけ安いものですね」

???「……そう、次は外さない」

カムイ「い、一体何が」

カミラ「カムイ、大丈夫? お姉ちゃんが助けに来たわ」

ルーナ「あたしたちが直々に助けに来てあげたんだから、感謝しなさいよ!」

ベルカ「任務はあなたを守ることだから。早く後ろに下がって」

カムイ「カミラ姉さん、どうしてここに」

カミラ「増援の任を奪い取ってここまで来たのよ。ああっ、カムイひどい怪我ね。ちょっと、オイタした子にお仕置きしなくちゃね……」

白夜天馬兵「ヒノカ様の前に割って入るか、貴様ぁ!」

カミラ「うるさいわね、邪魔よ」ニコッ

 グチャ ドタンドタ……

アサマ「あまり、穏やかじゃないですねぇ」

セツナ「……みんな、準備」

ヒノカ「……暗夜の王女、何の真似だ?」

カミラ「それはこっちの台詞よ。私の大事な妹をどこに連れて行こうというのかしら? 人の物を取っちゃいけないって、幼い頃に習わなかったのかしら?」

ヒノカ「黙れ目狐。カムイは私たちの家族だ、私の邪魔をするというなら、ここで切り殺すまでだ」

カミラ「怖いわね。でも、そう言ってもらえると助かるわ、容赦なく血祭りにできるもの。カムイを困らせる人は一人残らずね。「

ヒノカ「……大した自信だな」

カミラ「ええ、カムイが見てるもの。おねえちゃんだから、負けられないわ。カムイ」

カムイ「なんですか、カミラ姉さん」

ヒノカ「っ」

カミラ「増援はあと少しで到着するから、防衛の方任せるわね」

カムイ「はい、ありがとうございます」

カミラ「お礼なんていらないわ。あなたが無事でよかった。ルーナ、ベルカ!」

ルーナ・ベルカ「はい、カミラ様」

カミラ「カムイたちと広場に行ってちょうだい。私は、この泥棒猫と踊らなくちゃいけないみたいだから」

ベルカ「わかった。カムイ様と他の人も乗って」

カムイ「はい、ありがとうございます」

ヒノカ「カムイ、待て!」

カミラ「あら、駄目よ。あなたの相手は私、泥棒猫ちゃん」

ヒノカ「邪魔をするんだな。この目狐……」

カミラ「そうよ、カムイがほしかったら私を倒してからにしなさい」

ヒノカ「白夜の天馬術、見せてやる。手出し無用だ。他のものは進軍を続けろ!」

ベルカ「うん、みんな乗れた」

ルーナ「よし、次はあたしね! ベルカ、今乗るから!」

ベルカ「ごめん、重量オーバーだからルーナは回り道で来て」バサバサバサバサッ

ルーナ「ええっ、あたしだけ徒歩なの!? この中を徒歩で行くなんて、聞いてないわよ!」

 エイッナノ! グワァ
 ハイッ セイヤァ! 

ピエリ「抜けたの!」

ラズワルド「よし、カムイ様って……ルーナ?」

ルーナ「ラズワルド、どうしてこんなところにいるのよ!」

ラズワルド「いや、僕は……それより、カムイ様は」

ルーナ「相方が連れてっちゃったわ。あたしは置いて行かれた感じ―――」

リリス「あっ……」

ルーナ「あ、あんた」

ピエリ「なになに、リリスの知り合いなの? なら仲間なの! いっぱい敵を倒して、カムイ様をお守りするの!」

ラズワルド「ルーナ、大丈夫。僕が保証するよ」

ルーナ「色目使われてるわけじゃないでしょうね?」

ラズワルド「ち、ちがうよ。それにお茶に誘ったら断られちゃったから」

ルーナ「ふーん、そっ」

リリス「あの、よろしくお願いします」

ルーナ「しょうがないわね。緊急事態だし、今は何も聞かないわ。とりあえず、広場まで抜けるわよ。この大軍すべてを相手なんてできるわけないから」

ラズワルド「同感、ピエリ。道を作ってくれるかな?」

ピエリ「任せるの!」

リリス「行きます! ライブ!」

ピエリ「痛みがなくなったの! 元気一杯、槍いっぱいなの!」

カムイ「ベルカさんですか。ありがとうございます」

ベルカ「気にしないで、そう言う任務だから。今から私もあなたの命令に従うわ」

カムイ「はい、ありがとうございます。増援の方たちが来る時間はわかりますか?」

ベルカ「弓騎兵を中心に構成していたから、もうそろそろよ。相手にもその情報が漏れてるから何かしてくるかもしれないわ」

カムイ「そうですね。何をしてくるのかはわかりませんけど、守りぬく以外に選択肢なんてありませんから」

ベルカ「そう、ついたわ」

エリーゼ「あっ、カムイおねえちゃん。今ね、カミラおねえちゃんが」

カムイ「はい、わかっています。エリーゼさん、ニュクスさん、もう一度砲台で牽制射撃をお願いします。もうすぐ、増援が到着するらしいので」

ニュクス「そう、こちらはできる限りのことをやってみるけど、ずっとは無理よ?」

カムイ「はい、何か変化が起きたらすぐに砲台から出て、中央の舞台と合流してください」

エリーゼ「うん、わかった。カミラおねえちゃんは大丈夫?」

カムイ「ええ、ヒノカさんが相手ですから。あの人は武人です、一騎打ちに水を差すような支持はしないでしょうから」

アクア「ヒノカのこと信じてるのね」

カムイ「そうですね。わずかに話しただけでも、そう言う人なのだと思えましたから。ただ……」

アクア「ただ?」

カムイ「いえ、なんでもありません。さぁ、最後のひと踏ん張りですよ」

ヒノカ「はぁ! せやっ!」

カミラ「ふふっ、確かに動きは速いけど、力はいまいちなのね。それっ!」

ヒノカ「くっ。力が強い!」

カミラ「ふふっ、威勢はいいけど、力不足よ。カムイを追いかけて来たみたいだけど、これじゃ拍子抜けだわ」

ヒノカ「くっ、私じゃ届かないっていうのか? こんなに、こんなに長く思い続けてきたというのに」

カミラ「……なら、なんであの子の心を汲んであげないのかしら」

ヒノカ「なんだと!? 私は、カムイを暗夜の手から取り戻すために、それだけのためにここまで来たんだ! それをお前のような、血の繋がっていない存在に!」

カミラ「……そうね。確かに私とカムイは血がつながっていないわ」

ヒノカ「なら、なぜ姉のようにふるまう」

カミラ「私がカムイと一緒に過ごしてきた時間は、確かなものだからよ。それをあなたに否定されるわけにはいかないわ」

ヒノカ「くっ。使いたくはなかったが! 竜脈!」

 シュオンッ ドゴォオオオオオン

カミラ「? 水が引いて、カムイ!」

ヒノカ「ふんっ!」

カミラ「くっ。やってくれるわね」

ヒノカ「進撃は成功させる。そのためにも、お前をカムイの元に行かせはしない!」

「絶対に、絶対に!!!」


カムイ「揺れて、一体何が……」
 
暗夜兵士「み、水が引いただと!?」

暗夜兵士「枯れた水路から敵が侵攻してくるぞ!」

カムイ「くっ、これが最後の手段ですか。ヒノカさんも、やりますね」

モズメ「感心しとる場合じゃないで!」

カムイ「ですね。もう、陣形を考える必要はありません。皆さん、敵を絶対に通さないでください。路地裏もすべて封鎖してください!」

ニュクス「エリーゼ、あと一回撃ったら引くわよ」

エリーゼ「うん、わかった!」

 ボウッ ドワァン!

 グアアアアアッ

ニュクス「合流するわよ」


エルフィ「水が引いて、この位置じゃ囲まれてしまうわ」

フェリシア「エルフィさん、こっちです。早く!」

サイラス「流石にこうなったら危ない、水路の上がれる場所を抑えるしかない」

ハロルド「エルフィくん。こちらが援護する、フェリシアくんは治療を優先だ!」

フェリシア「は、はい。エルフィさん、もう少しでもう少しですから!」

サイラス「くそっ、どこからでも攻められるからって調子に乗るなよ!」

エルフィ「ごめん、私動くのは遅いから……」

フェリシア「気にしないでください、いつもなら私の方がドジして遅いんですから」

エルフィ「……ふふ、今言うことじゃないわ。でもありがとう、肩が軽くなった気分よ」

サイラス「本当に、変な励まし方だな。でも、俺だってけがしたらそれくらい遅い」

ハロルド「うむ、沼に足を取られれば私だって遅いぞ」

エルフィ「……ええ、それじゃ、遅い私の援護、お願いできるかしら?」

一同「もちろんだ」

ピエリ「ここから絶対に広場に入れてあげないの!」

ルーナ「もうっ、そろそろ諦めなさいよ! ラズワルド、右の方、影!」

ラズワルド「わかったよ! それ!」

 グアアアア

ピエリ「すごいの。どんどん来てくれるから、どんどん血みどろにできるの!」

リリス「ううっ、血で服がべとべとになっちゃった」

ピエリ「今度可愛い服買ってあげるの! リリスに似合う可愛いのなの!」

ルーナ「え、なに、買い物。今度買い物に行くの!? だったらあたしも連れて行きなさいよ!」

ピエリ「ルーナも可愛いもの好きなの?」

ルーナ「いや、買い物が好きなの!」

ラズワルド「そうだね、ルーナって無駄な買い物多いから!」

ルーナ「無駄じゃないわよ!」

ピエリ「いいの! この戦いが終わったら、三人で買い物に行くの!」

ラズワルド「えっ、ピエリ。僕は、僕も付いて行っていいよね?」

リリス「ううっ、ラズワルドさん、少しは女子会の空気読んでください」

ルーナ「ほんとよね。それだから女の子に話しかけても相手にされないのよ」

ピエリ「ラズワルド、泣きそうな顔してるの! 面白いの!」

ラズワルド「違うよ、剣を振り過ぎて、つかれただけだよ。泣いてるわけじゃないから」

ルーナ「とりあえず。こいつら止めてからね」

ピエリ「なの、リリス。最後にお願いなの。ここからはそんな暇ないの」

リリス「はい、ピエリさん。頑張ってください」

「ライブ!」

カムイ「弓兵の方々。壁の奥に向けて一斉正射!」

セツナ「負けてられない。私たちも……射て」

カムイ「遮蔽物で射線を避けて、右水路から近付いてくる伏兵に注意してください!」

モズメ「いくで! ニュクスさん、援護してや」

ニュクス「わかったわ。といっても、そろそろ抑えられる限界に来てるんだけど」

モズメ「仕方無いやろ。こっちと無効で人数二倍くらい違うんやから!」

アクア「そうね、愚痴るのはよくないわね」

ニュクス「アクア、とりあえず。ここにいても守りきれる自信がないわ、エリーゼと一緒に後方に下がってて頂戴」

アクア「ええ、そうね……」

カムイ「くっ、これ以上は………」

 タタタタタタタタタッ

ジョーカー「カムイ様!」

カムイ「ジョーカーさん。遅かったですね」

ギュンター「ええ、住民の方々を誘導するのに時間がかかりましたが故」

フローラ「すみません、遅くなってしまいました」

カムイ「今は一人でも手数がほしいところです。上からも敵が来ていますから、すぐに迎撃を」

ジョーカー「はい、いっぱい連れて来ましたので。存分に使ってあげてください」

カムイ「え?」

 ドタドタドタドタドタッ!

増援兵「前衛弓を引け、騎馬隊負傷兵の前で大盾準備、土足で入り込んできた白夜の方々をお出迎えしろ!」

「ファランクス準備!!!」ザッ

カムイ「増援、間に合ったんですか!」

ジョーカー「はい、すみません。私たちは彼らをここに誘導することくらいしか」

カムイ「いいえ、住民の方々の避難誘導、ありがとうございます」

白夜兵「くっ、増援が!」

白夜天馬兵「上から行けば」

増援兵「上に矢を射て! 一匹たりとも通すな!」

 ヒュンヒュンヒュン


ヒノカ「くっ……」

カミラ「ふふっ、あなたの負けよ。奥の手も空振り、部隊をこれ以上進める意味はないと思うけど?」

ヒノカ「……なぜ、なぜなんだ。正義は、正義は私たちにあるはずなのに……」

カミラ「………」

アサマ「御話し中、失礼しますよ」

カミラ「あら、丁寧に言うのね」

アサマ「おやおや、攻撃してこないのですね」

カミラ「ええ、一騎打ちの約束だもの」

アサマ「そうですか。ヒノカ様、もう撤収のお時間ですよ。私たちの役目も終わりましたので」

ヒノカ「くっ、……そういう取り決めだったからな」

アサマ「よかったです。これでまだ進むと言ったらどうしようかと思いましたよ。まだまだ無駄死にする兵士が増えるところでしたから」

ヒノカ「………部隊に伝えてくれ。撤退すると」

アサマ「はい、わかりました。ちなみにですが、カムイさんがああなった原因はある意味私かもしれないんですよねぇ」

カミラ「……そう、今から三枚に落としてもいいかしら?」

アサマ「はっはっは、それはご遠慮させてもらいます」

 タタタタタタタタッ

カムイ「はぁ、はぁ、ヒノカさん」

ヒノカ「カムイ、私は必ず。お前の目を覚まして見せる、暗夜からお前を救ってみせる。だから……」

カムイ「ヒノカさん。もう私のことは忘れてください」

ヒノカ「な、何を言い出すんだ! お前は、なんで私にそんな残酷なことを言うんだ。ここまで、ここまで来たのは!」

カムイ「ヒノカさん。最後の警告です。私のことを忘れて、すぐに撤退してください。そうじゃなければ、私はここであなたを切り伏せないといけなくなります」

ヒノカ「か、カムイ。冗談だよな? カム」

 チャキ

カミラ「………あなた、わかってあげなさい。カムイの気持ちをね」

ヒノカ「嘘だ。カムイ、お前は騙されているんだ!」

カムイ「ヒノカさん。私は私の意思で、考えて行動しているんです。それをあなたに否定する権利はありません」

ヒノカ「………」

セツナ「ヒノカ様、戻りましょう」

ヒノカ「か、カムイ……」

カムイ「さようなら、ヒノカさん。願わくば、あなたと戦場で会わないことを祈っています」







「いやだ」








カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「………私は、私はあきらめないぞ。次に会ったとき、お前は白夜に戻るんだ。力づくでも、連れて帰る。そうでなければ―――」

セツナ「ヒノカ様!」

ヒノカ「くっ………」

 バサバサバサバサバサッ

カムイ「………」

カミラ「カムイ……」

カムイ「カミラ姉さん、ありがとうございます。ヒノカさんを殺さないでくれて」

カミラ「ふふっ、殺してほしくないことくらいわかっていたから。でも、カムイ、あなたあのままヒノカ王女がここに居座ってたら、殺すつもりだったでしょう?」

カムイ「……さぁ、どうでしょうか……」

『………私は、私はあきらめないぞ。次に会ったとき、お前は白夜に戻るんだ。力づくでも、連れて帰る。そうでなければ―――』

カムイ「そうでなければ……何なんでしょうね」

カミラ「?」

カムイ「いいえ。町の防衛は成功しました。負傷者の救護に当たりましょう」

カミラ「ええ」ダキッ

カムイ「カミラ姉さん?」

カミラ「改めて言わせて、無事でいてくれてよかったわ」

カムイ「いいえ、助けてくれてありがとうございます。カミラ姉さん……」

今日はここまでです。
ここのヒノカさんはこういう感じです。ヒノカさん好きな方、申し訳ありませんがご了承をお願いいたします。
次回でこの章が終わります。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディア『宿舎』―

カムイ「改めてお礼を言わせてください、ありがとうございます。皆さんのおかげでこの町をどうにか守り切ることができました」

暗夜兵「いいえ、すみません。押しつけるような形で指揮を任せてしまって」

カムイ「たまたまうまくいっただけです、これも皆さんが私の指示に従ってくれたが故です。本当にありがとうございます」

暗夜兵「そんな……、あなたの下でなら戦いたいと思えるくらいでしたよ。私たちだけでは右往左往するばかりで、町は落とされ被害は甚大になっていたはずですから」

カムイ「買被りすぎです。犠牲も少なくありませんでしたから……。負傷兵の方々には後々会いに――」

暗夜兵「いえ、その思いだけでありがたい。そんなことを前の指揮官は口にさえ出しませんでしたから。町の方は我々にお任せください」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

暗夜兵「では……」

 バタン

カミラ「ふふっ、もう慕われているのね」

カムイ「港町を守れたという結果だけでも十分なんですけど。すみません、話の途中で席を外してしまって」

カミラ「構わないわ。それに、カムイが誰かに慕われている姿は見ていて良いものだから。でも、邪魔な虫だったら、おねえちゃんが切り落としちゃうわ」

カムイ「実感が湧きません。指示した通りにみんなが従ってくれたこと、それがこの結果に結びついているんですから。私がお礼を言われることもないと思うんですけど」

カミラ「そう、カムイらしいわ。謙遜はあなたの美徳だもの、ここにマークスお兄様がいたら同じことを言うでしょうね」

カムイ「謙遜だとかじゃありませんよ。私だけでどうにかできた問題じゃないんですから、だからカミラ姉さんが来てくれて本当に助かりました。あのままだったら、私とモズメさん、アクアさんは今頃白夜の船の中にいたでしょうから」

カミラ「本当、間に合ってよかったわ。ベルカとルーナにも後でお礼を言ってあげて、さすがに私一人じゃ力が足りなかったかもしれないから」

カムイ「はい。でも、増援の任を奪い取ってきたっと言ってましたけど……」

カミラ「ええ、お父様から渡された任を終えた頃に増援の話があってね。頼りなさそうなのが率いていくと聞いたから、私がその任務を代わってあげたの。カムイに早く会いたかったし、王女が直々に指揮を執るとなれば、みんなのやる気も出るでしょう?」

カムイ(それ職権乱用ですよ、カミラ姉さん)

カミラ「だから安心して、これからは私も一緒に戦うわ。カムイのためだもの、お父様もわかってくれるわ」

カムイ「……そうですか。わかりました、これからよろしくお願いしますね」

カミラ「ええ。任せて頂戴」

カムイ「……本当にこれが白夜の狙いだったのでしょうか?」

カミラ「どうしたの?」

カムイ「確かにヒノカさんの部隊が現れたことは間違いないんですけど、正直攻めてくる数は少ないと思えましたから」

カミラ「そうね、ヒノカ王女の臣下が言っていたわ、私たちの役目も終わったって。少し引っかかるのよね」

カムイ「………ですが、今の状況では動くこともできません。この町をもう一度白夜が襲わないとも限りませんし、なによりノートルディアで今だに来るはずもない白夜を待っているマクベスさんの戦力を暗夜に戻さないことには……」

カミラ「ほんと、お父様は暗夜に協力する白夜の国があると言っていたけど、この結果を見る限りじゃ」

カムイ「もしくは、ヒノカさんはすでにその国が信用ならないと思っていたのかもしれませんね。だから、それを利用した形なのかもしれません。よくある騙し合いです。だけど、今はどちらが合っているかを考えている暇はありませんから……」

カミラ「マクベスへの連絡は?」

カムイ「すでに送りました。あとはマクベスさんから返答か、ご本人がここに来てくれるのを待つばかりです。さすがに、すべての兵が一気に戻ってくることはできないでしょうから」

カミラ「そうね、さすがにそれは難しいわ。だから、マクベスからの接触があるまで、ここで待つことにしましょう?」

カムイ「はい」

カミラ「そうだ、久しぶりにお風呂に一緒に入りましょう? 久々に背中を流してあげるわ」

カムイ「カミラ姉さんはお風呂が好きですね。いいですよ、ご一緒します」

カミラ「ふふっ、久しぶりだからおねえちゃん、とってもうれしいわ……。どれくらい大きくなったかも調べてあげるからね」

カムイ「調べても意味ないですよ? 私ではカミラ姉さんに敵いませんから」

◇◇◇◇◇◇
―暗夜南海域―

ヒノカ「………カムイ」

アサマ「ヒノカ様」

ヒノカ「アサマか?」

アサマ「どうやら落ち着かれたようですね。良かったですよ、ご乱心な主君の下にいると苦労ばかりしますから」

ヒノカ「手の掛る臣下には言われたくない言葉だな。カムイは暗夜に操られているだけだ、それを心配に思うことが悪いことだとは言わせないぞ」

アサマ「……勘違いしないでください。そのことに関して話をしに来たわけではありませんから」

ヒノカ「?」

アサマ「私たちの役目は見事に終わりました。そして、今やその結果が実を結ぼうとしているようです」

ヒノカ「………そうか。私の意思を汲んでくれたんだな」

アサマ「はい、ですから。もう無理はしないでください、流石に冷や冷やしましたので」

ヒノカ「………それは約束できない。カムイもそうだがサクラが生きていることがわかったんだ。この先やるべきことなど、もう決まっている」

アサマ「……はぁ、仕方ありませんね。話は以上です」

ヒノカ「ああ、今日は休んでくれ。いろいろと疲れてしまっただろうからな」

アサマ「はい、では………」

ヒノカ「…………」

 ドゴン ポタポタ

ヒノカ「私は、無力なのか………」

ヒノカ「誰か、誰か教えてくれ。どうすれば、どうすればカムイは……」

「カムイは白夜に帰ってきてくれるんだ……」

第十章 おわり

現在の支援レベル(暗夜)

 リンカ   C+
 ジョーカー C+
 ギュンター C+
 サイラス  B
 マークス  C+
 ラズワルド C
 ピエリ   C
 レオン   C+
 エリーゼ  C+→B
 ハロルド  C+
 エルフィ  C
 カミラ   C+→B
 ルーナ    →C
 ベルカ    →C
 リリス   B
 モズメ   C→C+
 サクラ   C+
 アクア   B→B+
 カザハナ  D+
 ツバキ   D+
 フェリシア C
 フローラ  C
 ニュクス  C→C+

仲間の支援
 今回の戦闘でニュクスとエリーゼの支援がCに上がりました
 今回の戦闘でピエリとリリスの支援がC+に上がりました

昼間はここまでです。夜いつもどおりの時間くらいに新しい章を始めたいと思います。

この先の展開に関しての安価を取ります。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 マクベスからの応答があるまでの間に話をしている組み合わせを決めたいとおもいます。

 カムイ
 アクア

 ジョーカー 
 ギュンター 
 サイラス  
 ラズワルド

 ピエリ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 カミラ
 ルーナ
 ベルカ
 リリス
 モズメ
 フェリシア
 フローラ
 ニュクス

 一組目は>>702 >>703

 二組目は>>704 >>705

 になります。

ルーナ

ラズワルド

フローラ

ジョーカー

◆◆◆◆◆◆

カムイ「カミラ姉さん。そんなに背中に体を押しつけないでください、洗い辛いです」

カミラ「いいじゃない。久し振りにカムイと入るお風呂なんだもの。前に入ったのはいつだったかしらね?」

カムイ「半年前くらいだったと思いますよ」

カミラ「そう、なら少し大きくなってるかもしれないわね」モミモミ

カムイ「っ、いきなり触らないでください。びっくりするじゃないですか」

カミラ「ごめんなさいね。お詫びに私のを触らせてあげるわ」

カムイ「……」モミモミ

カミラ「んっ……どうしたのカムイ?」

カムイ「いえ、やはりというか。やっぱり、あの人は姉さんと良い勝負ができたと思えるんですよね」

カミラ「……正直妬いちゃうわ。その女の胸をもいであげたくなるくらいに。もいで、ペタンコにしてあげれば、カムイの中の一番はおねえちゃんになるわ。そうでしょう?」

カムイ「冗談……ですよね?」

カミラ「ふふっ、冗談よ。冗談」



―どこか―

カゲロウ「うっ!?」

サイゾウ「どうした、カゲロウ」

カゲロウ「いや、胸に悪寒が走ってな……」

サイゾウ「胸に悪寒……局地的な脅威が迫っているのかもしれぬぞ」

カゲロウ「悪い知らせでないといいんだが……、どうしたサイゾウ?」

サイゾウ「……いや、なんでもない」

カゲロウ「?」

―港町ディア・広場前噴水―

ルーナ「………」

ルーナ「はぁ、なし崩し的にどうにかカムイ様と接触したわけだけど、正直不安ね。本当にあたしたちにどうにかできるのかしら?」

ラズワルド「ルーナ!」

ルーナ「きゃああ!って、ラズワルドじゃない。脅かさないでよ!」

ラズワルド「ごめんごめん。僕が近づいてきてるのに気付かないなんて、どうしたの?」

ルーナ「別に、なんでもないわよ」

ラズワルド「なんでもなくないでしょ?」

ルーナ「………あたしたちがするべきことを考えてたらね。少しだけ不安になったのよ」

ラズワルド「………僕たちの使命のことだよね」

ルーナ「約束っていうこともあるわ。絶対に成し遂げなくちゃいけないって、覚悟も持ってきたんだから。でも、大まかなことなんてわからないわ」

ラズワルド「そうだね」

ルーナ「目標は決まってる。決まってるのはすごくいいんだけどね、そこまでの道筋が全く思いつかないのよ。もしかしたら、あたしたちが来たことなんて何の足しにもならないんじゃないかって思ったら――」

ラズワルド「……ルーナ」

ルーナ「ごめんね、久しぶりに再会したっていうのに、なんだか調子狂っちゃうわよね」

ラズワルド「いや、なんだか安心した」

ルーナ「?」

ラズワルド「僕も同じだよ」

ルーナ「さっきまで女の子に声を掛けてた奴の言葉とは思えないんだけど?」

ラズワルド「あはは、僕なりの処世術みたいなものだから。紛らせてるだけっていったほうがいいかもしれない。ルーナの考えてること、僕も思ってることだよ」

ルーナ「……」

ラズワルド「出口だけしか見えないのがこんなに不安なんて思わなかったからね。出口までの道が全くわからない中で進まなくちゃいけないのに、あの時みたいに僕たちの手を引いてくれる人はいないから、とても不安だよ」

ルーナ「……」

ラズワルド「だから、僕はとりあえずだけどカムイ様をお守りすることを今の指針に考えてる。それが一番の近道だって思うからね」

ルーナ「そう、ラズワルドはそう考えてるのね」

ラズワルド「うん、不安なことだけ考えてても前になんか進めないから。今はあの人を守ることが、出口に最も近づけることだって信じるしかないからね」

ルーナ「はぁ、カムイ様が女の子だからだとか、そんな理由じゃないでしょうね?」

ラズワルド「カムイ様は可愛いと思うよ。そうだね、そう考えればもっと守りたくなってきたかも」

ルーナ「……一瞬でも見直したとか思った私がばかだったわ。やっぱり、あんたはあんたのままなのね」

ラズワルド「ええっ、カムイ様を守ろうっていうのは僕の本心だよ!」

ルーナ「そこで止めとけばいいのに、なんでこうも軽い発言をするのかわからない、そう言う意味よ」

ラズワルド「落ち込んでるから、少しでも気がまぎれるかと思ったのに」

ルーナ「そう……まぁ、その気遣いはありがと……」

ラズワルド「うん、さてと。それじゃ僕は宿舎に戻るよ」

ルーナ「そう、あたしはもう少しここにいるから、大丈夫よ。少しだけ軽くなったから」

ラズワルド「うん、ルーナ。また気が滅入ったりしたら言ってね。力になれることはできる限りするからさ」

ルーナ「そう、一応気には留めとくわ。一応よ、一応だからね!」

ラズワルド「あはは、わかったよ」

ルーナ「もう……」

―港町ディア・宿舎―

 ガシャン

フローラ「あっ……いけないわね。でも、まだ仕事が……」

ジョーカー「んっ、いつも通りフェリシアが皿を割ったのかと思ったら、お前がドジを踏むなんて珍しいこともあるんだな」

フローラ「ジョーカー」

ジョーカー「まったく、使用人が疲れて仕事に支障を出すなって、ジジイに言われてることだろうが」

フローラ「そうね……。でも大丈夫よ、任された仕事はちゃんとこなすわ。与えられたことをきちんとこなしてこそ使用人、でしょ?」

ジョーカー「はぁ、俺が言ってるのはそう言うことじゃねえ」

フローラ「えっ」

ジョーカー「フローラ。さっきの戦闘の疲れがまだ残ってるんだろ? 血色もいつもより白いくらいだ」

フローラ「そんなことないわ。疲れてなんていないもの、落とした食器を片づけるから、ジョーカーは自分の仕事に。っ!」

ジョーカー「言わんこっちゃない」

フローラ「……この程度の切り傷」

ジョーカー「見せてみろ」

フローラ「! ジョ、ジョーカー一体何を」

ジョーカー「まったく、使用人が指先に怪我なんてするんじゃねえ。人様が見て快く思わないことだってあるんだぞ」

フローラ「……ジョ、ジョーカー、その、顔……顔が」

ジョーカー「ああっ? 顔がどうしたって?」

フローラ「だから………」

ジョーカー「とりあえずこれ使っとけ」

フローラ「これは?」

ジョーカー「俺のハンカチだ。見ればわかるだろ?」

フローラ「………ええ」

ジョーカー「……なぁ、フローラ」

フローラ「な、なによ?」

ジョーカー「フローラにとって、俺たちは信用できない人間なのか?」

フローラ「そうよね、一度カムイ様に刃を向けた私がそう思われても……」

ジョーカー「勘違いしてんじゃねえ。俺はそう言うことで聞いてるんじゃない」

フローラ「え?」

ジョーカー「カムイ様があの時のことを許した以上、俺がそれをどうこう言うことなんてない。俺が聞いてるのは、お前自身が俺たちのことを信じているかどうかっていう話だ」

フローラ「そ、それは……」

ジョーカー「俺はお前を信用してる。なんだかんだでよくこなしてくれて助かってるのは確かだ。だから、俺はお前の横でちゃんと仕事ができる」

フローラ「……」

ジョーカー「だが、もしもお前が俺たちを信用してないって言うなら、残念だが俺はお前と一緒の仕事はできなくなる。信頼されてない奴とする仕事なんてのは手間が増えて大変だからな」

フローラ「それもそうね……」

ジョーカー「ああ、それでフローラ、お前は――」

フローラ「ごめんなさい。私、そう言うことを考えていなかったみたい」

ジョーカー「フローラ」

フローラ「どこかで償わなきゃいけないって思ってたのかもしれないわ。自分がボロボロになってでもって」

ジョーカー「はぁ、ならお前は馬鹿だ。そんなこと、カムイ様は頼まねえ。無理して倒れたら誰が後に入るんだよ?」

フローラ「フェリシアは……おっちょこちょいだから難しいわね」

ジョーカー「ああ、それにジジイの扱きに堪えられるような奴を見つけるのだって一苦労だからな」

フローラ「ええ、ごめんなさいジョーカー。無駄な心配を掛けてしまって」

ジョーカー「わかればいいんだよ。なら、俺がお前に今してもらいたいこと位はわかるよな?」

フローラ「ええ、少し休ませてもらうわね。ジョーカー、私の仕事任せてもいいかしら?」

ジョーカー「ああ、任せておけ。ちゃんと期待どおりにこなしておいてやる」

フローラ「ええ、あの、これだけど」

ジョーカー「ああ、ハンカチがどうかしたか?」

フローラ「洗って返すから」

ジョーカー「そんなこと気にする必要もないんだけどな。したいならそうしてくれ、それじゃ、さっさと休んでこい」

フローラ「ええ、ありがとう」

 ガチャ バタン

フローラ「………」

フローラ「信じてるなんて、うれしいこと言ってくれるのね」

 クンクン

フローラ「ジョーカーの匂いがする……って、私は何を……ん?」

エルフィ「………」

フローラ「……え、えっと」

エルフィ「大丈夫、何も見てないわ」

フローラ「」

エルフィ「でも、応援してるからね」

フローラ「」

すみません、今日はここまででお願いします。
 飲み物買いに行って靴の中に変な違和感を感じて、脱いでみたら擦り切れたgkbrがいて……その、頭がパーンして、ほんと、短くてごめんなさい

◆◆◆◆◆◆
―港町ディア『宿舎』―

マクベス『伝令から状況は承りました。認めたくありませんが、白夜の策にまんまと嵌められたというわけですな』

カムイ「はい、そう言うことになりますね。すみません、できうる限り被害を抑えようとは思いましたが、ディアに滞在する兵士を少なからず失ってしまいました」

マクベス『その件はガロン王様から直接の物言いがあるでしょう、私が特に言うことはありません。ところで捕虜などはいましたかな?』

カムイ「いいえ、逃げ遅れた白夜兵はその場で自害したようで、残念ながら情報はなにも」

マクベス『ふむ、手ひどく縛り上げて吐かせようと考えていましたが、仕方がないですな。私たちはノートルディアからの撤退準備中ですので、着くのは翌日ほど、完全撤退の完了には数日かかるでしょうな』

カムイ「はい、わかりました」

マクベス『他に何か情報はありますかな?』

カムイ「一つだけなら、カミラ姉さんがヒノカ王女の臣下から不審なことを聞いたそうです」

マクベス『カミラ王女もそこにおられるのですか。まぁ、いいでしょう。それでどういったことですかな?』

カムイ「はい、役目が終わったと言っていたそうです。本来この襲撃が本命なら失敗という言葉を使う気がするのです」

マクベス『……何かまだあると、カムイ王女はお考えなのですな?』

カムイ「無ければそれに越したことはないのですが……」

マクベス『まあ良いです。では、これにて』

カムイ「はい」

 シュッ

カムイ「すごいですね。ノートルディアからここまでの距離を魔術投影できるなんて」

ニュクス「そうね。ただ報告してる姿は結構滑稽なのよ?」

カムイ「そうなんですか?」

ニュクス「部屋の真ん中に立って誰もいない空間に永遠と話しかけてるんだから、それは滑稽よね」

カムイ「マクベスさん。天幕の中で一人なんですか、なんだかかわいそうですね」

ギュンター「しかし、これでいよいよわからなくなってきましたな。ガロン王様からの命令がない限り動けないとなると」

カミラ「黒竜砦のは見越せたけど、今回の件は運が良かったとしか言いようがないわ」

カムイ「はい、増援が間に合わなければ敗走、ノートルディア公国にいるマクベスさんたちも、孤立することになったでしょうから。ここを止められたのは不幸中の幸いですね」

ギュンター「そう考えますと、白夜の目的は複数あるということになりますな。そしてそのうちのひとつ、港町ディアの占領は失敗、だがそれが失敗しても問題ないということなのでしょう」

カムイ「……そうですね。少し知恵が欲しいところですね」

エリーゼ「……ねぇ、今暗夜の兵士さんってどういう風に割り振られてるのかな?」

カムイ「割り振られてる……ですか?」

エリーゼ「え、えっとね。ノートルディアとここに兵士さんがいるのはわかってるんだけど……」

カミラ「つまり、ほかの場所にはどれくらいの兵士がいるのかを知りたい。そう言うわけね」

エリーゼ「うん」

カムイ「そうですね。ギュンターさんは何かご存知ないですか?」

ギュンター「城を出る前の情報くらいでしたら耳にしております」

カムイ「おねがいします」

ギュンター「はい、ガロン王様の考えでは黒竜砦の強襲を皮切りに白夜はノートルディアの襲撃という筋書きですが、同時に無限渓谷からの侵攻の可能性も考えていたようです」

エリーゼ「えっ、でもあそこは一番暗夜の目が光ってる場所だよ?」

ギュンター「そうですな。エリーゼ様の言うとおり、無限渓谷から侵攻は絶望的でしょうが、もしやという可能性もあったのでしょう。あと、ウィンダムにもまだ多くの兵が滞在しております故、そう易々と攻め落とされますまい」

カムイ「つまり、今戦力が集中しているのはノートルディア、無限渓谷、王都ウィンダムの三か所になるわけですか………」

ギュンター「そう言うことになりますな」

一同「………」

ニュクス「カムイ、その、今から言うことは私の独り言よ。そう、どこかに向かって魔術的に話をしているようなものなの。だから気にしないでほしいの」

カムイ「……」

ニュクス「この配置、海岸線ガバガバじゃないの」

カムイ「ええ、ガバガバですね」

カミラ「カムイ、ガバガバなんて言わないで頂戴、その口をふさぎたくなっちゃうから」

カムイ「無限渓谷とノートルディアの監視と王都防衛に宛てた分、ガバガバになっちゃったんですね。ニュクスさんの言うとおり、これじゃ海岸線を攻め放題です」

ニュクス「ガバガバ前線じゃ、報告もないから異常なしになるのも仕方ないわ」

カムイ「ガバガバ前線異常無し、確かにその通りですね」

カミラ「あのね、カムイ……」

エルフィ(エリーゼ様に悪影響を及ぼしそうな会話ね……これ)

エリーゼ「ねぇ、エルフィ」クイクイ

エルフィ「どうしました、エリーゼ様?」

エリーゼ「ガバガバってどういう意味かな?」

エルフィ「………エリーゼ様、ちょっと外でお話をしましょう?」

エリーゼ「え、ガバガバの意味知りたいよー」

カムイ「エリーゼさん、ガバガバっていうのはですね」

エルフィ「それ以上、エリーゼ様に変なことを教えると、つぶれた林檎になりますよ?」

カムイ「アッハイ」

エルフィ「エリーゼ様、ちょっとお外で待ちましょうか?」

エリーゼ「え、なんで。あたしも――ふわぁ~」

エルフィ「もう夜ですから、今日は休みましょう?」

エリーゼ「う、うん。みんなごめんね」

カムイ「いいんですよ。ゆっくり休んでください」

 ガチャ

エルフィ「カムイ様、あとで林檎を潰しに行きますね?」

カムイ「いえ、エリーゼさんと一緒に林檎を食べててください」

エルフィ「……いいえ、伺いますので」

 バタン

カムイ「話は戻りますけど、海岸線の監視がされてない以上、あらゆる場所から侵入されているかもしれません」

カミラ「沿岸沿いに近い国といえば、ミューズ公国かしら? でも、いきなり大勢の白夜軍が押し寄せてきたら、流石に問題になるわよね?」

カムイ「まだ話が届いていないのかもしれませんね。ちなみになんですが、ミューズ公国から王都まで陸路で行くためにはどういった道を通ることになるんですか?」

ギュンター「ミューズ公国から目指すとなると、まずシュヴァリエ公国、次に国境線として存在する城壁、次に賭博の町と呼ばれるマカラスを経由して、黒竜砦という順路ですな。地理に理解がなければ、この道を通ることになるでしょう」

カムイ「ここまでは至らないと考えたほうがいいのかもしれませんね」

カミラ「ふふ、流石に城壁を易々となんて突破できるとは思えないわ」

ニュクス「でも、現在戦力が集中してるのはあの三か所なのよね?」

カムイ「そうなんですよね……。ちょっと休めると思ったらすぐこれです。ギュンターさん、地元の方に視察隊をマカラスへ派遣してもらえるように頼めますか?」

ギュンター「視察隊ですか?」

カムイ「ええ。明朝、陸路でマカラスに走ってもらいたいんです。正直、無いとは思いたいのですが……」

ギュンター「わかりました。掛け合っておきましょう」

カムイ「すみません、お願いいたします」

カムイ「はい、すみません。今日の会議はここまでにしますね。皆さん、今日一日疲れている中、集まってくれてありがとうございます」

カミラ「ええ、今日はもう休むわ。おやすみなさい」

ニュクス「話はこれで終わりなのよね。それじゃ部屋に戻るわ」

カムイ「ニュクスさん、少しいいですか?」

ニュクス「なにかしら?」

カムイ「今日の夜、お暇でしょうか?」

ニュクス「特にやることはないわ」

カムイ「そうですか、でしたら一度私の部屋に来ていただいてもよろしいですか?」

ニュクス「別に構わないけど、いったい何の用事かしら?」

カムイ「はい、個人的なお願いがありまして。できれば二人きりで頼みたいことなんです……」

ニュクス「そう、わかったわ」

カムイ「ありがとうございます。さて、ちょっと、指の運動をしておかないといけませんね」

ニュクス「?」

―カムイの部屋―

 コンコン

ニュクス「失礼するわね」

カムイ「はい、ニュクスさん。お待ちしてました」

ニュクス「それで、お願いって何かしら?」

カムイ「はい、とりあえずベッドに座ってください」

ニュクス「ええ、失礼するわね。それにしても、目が見えない割には私だってよくわかるわね?」

カムイ「ふふっ、感覚を捉えることはそれほど難しくないんです。それに気配にも人それぞれ特色がありますから」

ニュクス「なんだか野生の獣みたいね……。ごめんなさい、目が見えない相手にこんなことをいうものじゃなかったわね」

カムイ「気にしないでください、目が見えないのにこうやって目が見えるように……」スッ

ニュクス「んっ」

カムイ「触れられることは、正直怖いことだと思えますから」

ニュクス「……私はそうは思わないわ。これがあなたにとって相手を知る唯一の方法だというなら、それにすがることに間違いなんてないもの」

カムイ「そうでしょうか?」

ニュクス「カムイは私の罪を知っているかしら?」

カムイ「いいえ、何も。ただあなたの身形と雰囲気は全く合いませんから……」

ニュクス「そうね。この姿は私にとっての罰みたいなものだから……」

カムイ「罰……ですか?」

ニュクス「ええ。昔ね、調子に乗った子供がいたのよ」

カムイ「……」

ニュクス「その子供はね。好奇心と自己陶酔を繰り返した揚句に、あらゆることに手を伸ばしたの。その結果、多くの人間の命を奪ったわ」

カムイ「……」

ニュクス「その代償として、子供は恐れられる存在になった。そして体はその当時のままに、いつしか一人で過ごすことになったの。誰ともかかわりを持たないように、誰にも見つからないように、見つかっても気にされないように」

カムイ「ふふっ、そこをアクアさんに見つかってしまったんですね」

ニュクス「そうね。そして、すぐにあなたに出会ってしまったわ。あんな……恥ずかしい真似も見られちゃったわ」

カムイ「皆さんには年相応な姿に見えていたみたいですよ」

ニュクス「大人の女性をからかうものじゃないわ」

カムイ「そうですか? ニュクスさんは冷静な印象ですけど、だからからかいたくなっちゃうんですよね」サワサワ

ニュクス「んっ、ちょっと、なんで頬をそんなに……んやっ」

カムイ「ニュクスさん、今はそのようなことをしようなんて思っていないんですよね?」

ニュクス「当り前よ、だから私は……見つからないように過して来たのよ」

カムイ「そうですか。ふふっ、ならすぐに私たちの元を離れてもよかったんですよ」

ニュクス「……もう、そんなことできないわ」

カムイ「どうしてですか?」

ニュクス「アクアと出会ってあなたに出会って、もう私はこの中の繋がりを作ってしまったわ」

カムイ「ふふっ、なんだかんだでみんなと別れたくないんですね……」

「可愛いですね、ニュクスさん」ナデナデ

ニュクス「んあっ! ――っ今のなに!?」

カムイ「ふふ、おでこが弱点なんですね。こうやって撫で撫でしてあげると、肩が小さく震えてるのがわかります」

ニュクス「こ、こらっ、やめな、さい。お、おとなのぉ」

カムイ「ふふ、どうしたんですか。手に触れてる御でこがとっても熱いですよ?」サワサワ

ニュクス「いやぁ、やめぇ、やめてぇ。そ、そこ、そこ、なんか変なの」

カムイ「大丈夫ですよ。演技じゃなくて、本当に子供みたいに反応してるニュクスさん、とっても可愛いですよ。顔の形もわかりましたから、その我慢してる顔に涙を流させたくなります」

ニュクス「はぁはぁ、こんなの、知らないぃ、こんなこんな風に撫でてもらったことなんてぇ」

カムイ「知らないなら覚えてください。ニュクスさんは頭を撫でられて感じてしまう人なんだってことを。それとも、やっぱり願望から来てるんですか?」

ニュクス「そ、そんなことぉ」

カムイ「ふふっ、今の話だと優しく褒められたことなんてなかったんですよね。ずっと、飢えていたんですよね。こうやって、優しく」

ニュクス「あっ」

カムイ「腫れものでも扱うように」

ニュクス「んんっ」

カムイ「優しく撫でられたかったんですよね?」

ニュクス「か、からかわないっで」

カムイ「からかってなんていませんよ。私はニュクスさんにお礼が言いたいんですから。これが私の気持ちです」

ニュクス「だ、だったら、もっと、表現方法をっ はうんっ!」

カムイ「すみません、私がしたいというのもありますので」

ニュクス「も、もう許して、お願いだからぁ……」

カムイ「そうですね。はい、すみません。ちょっと調子に乗りすぎたみたいです」パッ

ニュクス「はぁ……はぁ」

カムイ「大丈夫ですか?」

ニュクス「どの口がそんなことを言ってるのかしらね……。あなた、みんなにこんなことしてるのかしら?」

カムイ「はい」

ニュクス「即答するのね。あなたの頭の中ガバガバじゃない」

カムイ「ガバガバですか。確かにそうかもしれませんね」

ニュクス「まったく……でも、カムイも私のこと恐ろしいと思ったでしょう?」

カムイ「何がですか?」

ニュクス「私の罪の話、聞いてなかったの?」

カムイ「そのことですか。いいえ、別にそうは思いませんよ」

ニュクス「私がまた過去と同じようなことをするかもしれない、そうは思わないの?」

カムイ「はい。もしもするような人だったら、アクアさんを見捨てていたでしょうから。ここにアクアさんがいること、それだけでも私はあなたを信じる理由になります」

ニュクス「そう、変わっているのね」

カムイ「はい、よく言われます」

ニュクス「調子が狂うわね。けど、ありがとう」

カムイ「いいえ、これからもよろしくお願いしますね。ニュクスさん」

ニュクス「ええ、よろしくね……。ただ、こういうスキンシップはあまり感心しないわ」

カムイ「そ、そうですか。気持ち良くなかったですか?」

ニュクス「か、帰らせてもらうわね///」

 バタン!

ニュクス「はぁはぁ、もう……」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・マカラスと黒竜砦の分かれ道―

暗夜兵「よし、この先をずっと進み続ければマカラスだな」

暗夜兵「ええ、それにしても。港街の件は本当に助かりましたね、あのカムイ王女ですか。あの方がいなかったら」

暗夜兵「まったくだ。それに、俺たちのおかげだとも言ってくれるような方だった」

暗夜兵「ええ、ああ。俺もあんな指揮官の元で働きてえな。それに、ほら、あの恰好」

暗夜兵「うっ、あまり考えないでいたのだがな」

暗夜兵「お前ら、談議はそれまでにしておけ、このままマカラスを――」

 トテトテトテ

暗夜兵「隊長、前方に人影が!」

暗夜兵「なに? 人数は?」

暗夜兵「見たところ一人だけみたいです……。赤い鎧を着ていますね」

暗夜兵「ゆっくり近づけ、何があるかわからんからな」

暗夜兵「はい……」

???「はぁ、はぁ……ぐっ」

 ドサッ

暗夜兵「おい、大丈夫か?」

???「あ、あんたら、いったい……」

暗夜兵「われわれは港町ディアより、マカラスへ向かう視察隊だ。見たところ、暗夜の鎧ではないようだが」

暗夜兵「しかし、傷だらけだな。鎧はもうボロボロじゃないか」

???「へへへ。どうにかこうにかこれで命を繋いできたんだ」

暗夜兵「命を繋いできたって、一体どういうことだ?」

???「ああ、それを伝えるためにここまで来たんだ。ほんと、こうやってあんたたちに巡り合えてよかった」

暗夜兵「おい、水を飲ませてやれ」

暗夜兵「よし、ゆっくり飲むんだ」

暗夜兵「怪我とかはないみたいだな。鎧に感謝しないとな」

???「んくっ、んくっ、はぁああああ。生き返ったよ、ありがとな」

暗夜兵「何よりだ。それで、ここまで来た理由って言うのは?」

???「ああ、マカラスに白夜軍が到達したんだ」

暗夜兵「!? な、なんだと」

???「ああ、仲間に託されて命かながら逃げてきたんだ」

暗夜兵「そうか。すまないが、どこから来たか聞いていいか?」

???「ああ、私はクリムゾン」





「シュヴァリエ公国からここまでやってきた。白夜が侵攻してきたって伝えるためにね」


第十一章 前篇 おわり

カムイの支援状況と起きているイベント

―対の存在―
アクア
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターC+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリスB
(一緒に眠ったことがあります)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドC
(あなたを守るといわれています)
ピエリC
(今度はカムイの弱点を探ってみせると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC
(イベントは起きていません)
ルーナC
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドC+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラC+
(イベントは起きていません)
カザハナD+
(イベントは起きていません)
ツバキD+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(イベントは起きていません)
ニュクスC+
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)

―カムイと絆を維持する者―
リンカC+
(イベントは起きていません)

仲間たちの間で起きているイベント

【対の存在】
―アクア―
ニュクスC
(イベントは起きていません)

【城塞組】
―ジョーカー―
フローラC+
(信頼していると伝えています)
ピエリC
(イベントは起きていません)
ハロルドC
(ジョーカーは、ハロルドの運の無さが暇つぶしに向いていると気付いたようです)
 

―ギュンター―

―フェリシア―
エルフィC+
(色々と怪我をした時は手をまわしています)

―フローラ―
ジョーカーC+
(ジョーカーのハンカチを借りています。クンカクンカしました。それをエルフィに見られています)
エルフィC+
(今度、城塞で力仕事を手伝うそうです)

―リリス―
ラズワルドC
(和解はできています。喫茶店はパス)
ピエリC+
(あり方を受け入れています。今度可愛い服を一緒に買いに行く予定)
エルフィC
(イベントは起きていません)
サイラスC
(イベントは起きていません)
モズメC
(イベントは起きていません)

【暗夜第一王子組】
―マークス―

―ラズワルド―
リリスC
(和解できたので、喫茶店に誘うが見事に断られる)
ピエリC
(イベントは起きていません)
ルーナC
(悩みがある時は力になるといいました)
エリーゼC
(尾行コンビ結成、避難訓練では炎役)

―ピエリ―
ジョーカーC
(イベントは起きていません)
リリスC+
(約束のためには命を掛けるリリスを気にかけています。魔法をやめて剣で戦うように奨めています)
ラズワルドC
(イベントは起きていません)


【暗夜第二王子組】
―レオン―
ハロルドC
(カムイに不可抗力したので蹴り飛ばした)
サクラC+
(サクラは怖い話が苦手だけど聞きたいようなので、今度話す約束をしています。トマトが好きだと教えています)
ツバキC
(剣の扱いについて色々指摘されました)
カザハナC+
(お風呂の監視係を務めることになっています)


【暗夜第一王女組】
―カミラ―

―ベルカ―

―ルーナ―
ラズワルドC
(一応、一応気にとめています)

【暗夜第二王女組】
―エリーゼ―
ラズワルドC
(尾行コンビ結成)
ハロルドC
(イベントは起きていません)

―ハロルド―
ジョーカーC
(ジョーカーは、ハロルドの運の無さが暇つぶしに向いていると気付いたようです)
レオンC
(カムイに不可抗力をしたので蹴られました)
エリーゼC
(イベントは起きていません)
モズメC+
(一緒に鍛錬を積む約束をしています)

―エルフィ―
フェリシアC+
(げがをした時、率先して傷を癒してくれます。まだ、部族の村のことの恩返しを続けているようです)
フローラC+
(今度、城塞で力仕事の予定があるらしい)
リリスC
(イベントは起きていません)
サイラスC
(主君の話を聞いて、サイラスは少しうらやましいと思うことがあるようだ)
モズメC
(エルフィはモズメの悩みを聞くことを約束しています)


【白夜第二王女サクラ】
―サクラ―
レオンC+
(怖い話を聞かせてもらう予定です。レオンはトマト好きだと知っている)

―ツバキー
レオンC
(グラビティーマスターを返上したいようなので、剣に関しての指摘を行った)

―カザハナ―
レオンC+
(お風呂の件で言い争いがありました)



【カムイに力を貸すもの】
―サイラス―
リリスC
(イベントは起きていません)
エルフィC
(主君の話を聞いて、サイラスは少しうらやましいと思うことがあるようだ)
モズメC+
(イベントは起きていません)

―ニュクス―
アクアC
(イベントは起きていません)
エリーゼC
(イベントは起きていません)

―モズメ―
ハロルドC+
(一緒に鍛錬を積む約束をしています)
エルフィ
(エルフィはモズメの悩みを聞くことを約束しています)
サイラスC+
(イベントは起きていません)
リリスC
(イベントは起きていません)

今日はここまでです。gkbr怖い、靴の中にホウサンダンゴいれなきゃ。
 今起きている支援を一通りまとめてみましたが……。あまり見やすくないかも。うまい方法が見つからなくてもうしわけない。
 書き忘れてしまいましたが、アクアとカムイの支援は現在B+です

 次の展開における安価を取りたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイと話をすることになるキャラクター
 
 アクア
 ジョーカー
 ギュンター 
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ラズワルド
 ピエリ
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ

 安価番号は>>740

◇◆◇◆◇

 次に出発前に話をすることになるキャラクターの組み合わせを一組
 
 カムイと話したキャラクター以外で上記の表から

 安価番号は>>741 >>742 でお願いいたします。 

おつ
ルーナ

カミラ?

ピエリ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・港町ディア『宿舎』―

コンコン

カムイ「はい、どなたですか?」

ルーナ「カムイ様、あたしよ」

カムイ「その声、カミラ姉さんの臣下の方でしたね。たしか……」

ガチャ

ルーナ「ルーナよ。ちゃんと覚えてよね」

カムイ「はい、ごめんなさい。色々あってお話しする時間を作れませんでしたから。私の落ち度ですね」

ルーナ「ちょっと、いきなり謝らないでしょ。あたしが悪いみたいじゃない」

カムイ「ふふっ、それでどうしたんですか? 何か急ぎのお話でも?」

ルーナ「そ、そうよね。そのためにここまで来たんだから」

カムイ「?」

ルーナ「え、えっとね、カムイ様」

カムイ「はい、なんでしょうか」

ルーナ「あたしもカムイ様を守るために戦うわ」

カムイ「それは嬉しいですが、どうしたんですか、突然? まだ会って一日も経ってませんよ?」

ルーナ「な、なによ。あたしに守ってもらうのが不愉快なわけ?」

カムイ「いいえ、そうじゃありませんよ……」

ルーナ「じゃあ何よ、何が不満なわけ?」

カムイ「いいえ。私なんかより、まず自分の命を大切にしてください。そうしてもらわないと困るんです」

ルーナ「あたしじゃ、力不足だって言いたいのかしら。それ見る目ないわよ」

カムイ「はは、見えませんから、間違ってないかもしれませんね」

ルーナ「ううっ、目が見えないのになんでそんな言い方するわけ? 趣味悪いわよ」

カムイ「仕方無いですよ。もう無くなってしまった物なんですから……」

ルーナ「無くなった物……」

カムイ「……あの、ルーナさん。少しお顔を触らせてもらってもいいですか?」

ルーナ「な、なんでよ」

カムイ「私は触って相手の顔を理解する以外に手がないので、もしもよろしければ、私にルーナさんの顔を教えてくれませんか?」

ルーナ「……痛くしないわよね?」

カムイ「はい」

ルーナ「厭らしい手つきじゃないわよね」

カムイ「はい」

ルーナ「そう、ならいいわ」

カムイ「失礼しますね」ピトッ

ルーナ(……温かい、なんだか……安心できる)

カムイ「ルーナさんは、私のこの目のことをどう思いますか?」

ルーナ「え、それは。その……」

カムイ「可哀そうだって思いますか?」

ルーナ「そ、それはね。だって、子供の頃に目が見えなくなったんでしょ? 本来だったら、もっと世界を見れるはずだったのに、それを奪われるなんて」

カムイ「ふふっ、やっぱりそう思っちゃいますか」

ルーナ「な、なんで笑うのよ」

カムイ「いいえ、ルーナさんは言動と違って心の中はやさしい方なんだなって思いまして」

ルーナ「バッカじゃないの! そんな質問されて、全然なんて言えるわけないじゃないの……。それにワザとでもそんなこと言えない」

カムイ「ありがとうございます、ルーナさん。確かに目を失ったことが良いことだなんて思いませんよ」

ルーナ「じゃあ」

カムイ「ええ。でも、私はそこで止まるなんてできませんでした。まだ、可能性がありましたから」

ルーナ「………可能性?」

カムイ「はい、私ができうる限りのことをする可能性です。やることは難しいです、でも、いつまでも手を引っ張られたままで世界を歩き続けることなんて私にはできなかったんです。私は思った以上に欲張りなんです」

ルーナ「欲張り? 謙遜が美徳って言われてるのに、なんだかおかしいわよ」

カムイ「みんな私が謙遜してるってよく言うんですよ。私はこんなにわがままな女なのに」

ルーナ「わがままって……」

カムイ「わがままですよ。こうしてルーナさんに触れられるのは、目が見えない自分のわがままを叶えるために動いて来たからなんです。自分のためだけに力をつけて来て、わがままなままに生きて来た私が、謙遜だなんて、面白い話です」

ルーナ「はぁ、それ我がままじゃないと思うんだけど」

カムイ「わがままですよ」

ルーナ「違うわ。それは努力っていう自己鍛錬よ。それに普通の人だったら、目が見えなくなったら誰かに支えてもらいたいって思うはずよ。で、そっちの生き方のほうがよっぽどわがままに見えるわ」

カムイ「そうですか?」

ルーナ「そうよ……。というか、それがわがままだったら、世の中の努力家がみんなわがままになっちゃうじゃない。あたしは嫌よ、あたしの頑張ってきたことが全部わがままになるなんて。これじゃ、あたしはわがままなやつになっちゃうじゃない!」

カムイ「ふふ、ルーナさんはわがままなんですね」

ルーナ「ああっ、もう! なんでそういう話になるのよ……。でもいいわ、そろそろ触るのは終りにしてくれない?」

カムイ「はい、そうですね」スッ

ルーナ「ふぅ、カムイ様の考えはわかったけど、あたしはあんたを守るつもりだから」

カムイ「そうなんですか?」

ルーナ「ええ、そうよ。いやって言っても守り通してあげるんだか……でも、あんたのわがままにも付き合ってあげてもいい……わよ」

カムイ「?」

ルーナ「ちゃんと、自分の身も守って見せるわ。それに先にあたしが死んじゃったら、カムイ様のこと守り続けられないからね。だから、絶対に死なないから」

カムイ「はい、そう言ってもらえてうれしいです」

ルーナ「……あと、あたしに頼めることがあったらいつでも言って、できる限り力になるわ、だから――」

カムイ「はい、いつかその時が来たら……」

 ガチャ バタン

―港町ディア『宿舎』ロビー―

ピエリ「おいしいの!」

カミラ「あら、ピエリ。何しているのかしら?」

ピエリ「あっ、カミラ様なの! 今、地元の兵隊さんからいっぱい甘いお菓子貰ったの!」

カミラ「すごい量ね。こんなにあったら、みんなでお茶会が開けそうだわ」

ピエリ「すごい量なの! さっきまでもっとあったの。ピエリいっぱい食べたの!」

カミラ「ふふっ、はしたない子ね。口元に食べカスがついてるわよ」フキフキ

ピエリ「ん、カミラ様優しいの! お屋敷だと誰もピエリにこういうことしてくれないから、うれしいの」

カミラ「それは仕方無いわ。あなた、従者に酷いことしてるってきいてるから」

ピエリ「………」

カミラ「?」

ピエリ「カミラ様も、ピエリのこと悪く言うの? ピエリ、ピエリ、ふえええええぇぇぇぇん!」

カミラ「あらあら、ごめんなさい。怖がらせるつもりなんてなかったのに。ほら、泣きやまないと顔がひどいことになっちゃうわよ?」

ピエリ「ひぐっ、カミラ様も、ピエリのことおかしいって思ってるの。きっとそうなの」

カミラ「ふふっ、ピエリは怖がりなのね」

ピエリ「怖がりじゃないの。怖くなる前に、えいっ!てするの」

カミラ「それを怖がりっていうのよ」

ピエリ「ん、どうして怖がりなの?」

カミラ「そうね。怖いことから逃げたくなる気持ち、私にもわかるわ。私もカムイが白夜にいると知ったとき、とても怖かったから。カムイをさらった奴らを八つ裂きにしてやりたいって、思うほどにわね」

ピエリ「八つ裂き、ピエリもいっぱい八つ裂きにするの!」

カミラ「そうね。でも、何でもかんでも力で解決しようとするのは、少しだけ頂けないわ」

ピエリ「どうしてなの? 怖いこともすぐになくなるし、返り血浴びて奇麗になれるから一石二鳥なの」

カミラ「ええ、でも、時には一番頼れるものに蓋をしてでも、立ち向かわないといけないことも出てくるわ。むしろ、そうしなくちゃいけない場面もね」

ピエリ「ピエリ、よくわからないの」

カミラ「ええ、すぐにわかる必要なんてないことよ。それに、今はそういうときじゃないから」
 
 ヒョイ

ピエリ「? カミラ様どうしたの?」

カミラ「はい、あーん」

ピエリ「……あ~ん」パクッ

カミラ「ふふっ、どう?」

ピエリ「うん、おいしいの!」

カミラ「こうしてお菓子を食べてる姿、とっても可愛いわよ」

ピエリ「カミラ様に可愛いって言われたの。ピエリ嬉しいの」

カミラ「そう言ってもらえると嬉しいわ。もう一つ、どう?」

ピエリ「食べたいの!」

カミラ「じゃあ、口をあけて頂戴。あーん」

ピエリ「あ~ん! ん~、おいしいの。カミラ様、ありがとうなの。今度はピエリがやってあげるの!」

カミラ「そう、お手柔らかにね」

カミラ(こうしてみると可愛い子供そのものね)

◆◆◆◆◆◆
―港町ディア『宿舎』―

カムイ「そうですか。いやな予感というのは当たってしまうものなんですね」

暗夜兵「はい」

カムイ「その、シュヴァリエ公国から逃れてきたという方は?」

暗夜兵「待機させております」

カムイ「では、その方をここい呼んでいただけますか?」

暗夜兵「はい、少々お待ちを」

ギュンター「まさか、シュヴァリエ公国からマカラスまでが落ちているとは。一体いつの間に」

カムイ「情報が漏れないほどに、完膚なきまでに叩きのめされたのでしょう。どちらにせよ、ヒノカ王女の部隊がディアを襲ったのは城壁攻略を成功させるための陽動だったということですね」

アクア「カムイ、これからどうするの?」

カムイ「まずは、その方から話を聞いてみましょう」

暗夜兵「どうぞ、こちらの部屋です」

クリムゾン「………あんたがここのリーダーさん?」

カムイ「はい、初めまして。暗夜王国王女のカムイといいます」

クリムゾン「カムイっていうのかい……へぇ」

カムイ「あの、どうしました?」

クリムゾン「いや、なんでもないよ。あんたがマカラスまで視察隊を出してくれたんだってね。追手から逃げてふらふらだったから、おかげで助かったよ」

カムイ「それで、あなたの名前は?」

クリムゾン「そうだったね、私はクリムゾン。誇り高きシュヴァリエの戦士さ。といっても、この体たらくじゃ、そんなこと言えないけどね」

カムイ「クリムゾンさん。そのここまでの顛末を教えてくれませんか? いったい何があったのかを」

クリムゾン「ああ、白夜軍が突然現れたのは数日前だ。たぶん海からやってきたんだろうけど、深夜の静まり返っていたところを私たちの国は襲われてね」

カムイ「………」

クリムゾン「もうシュヴァリエのほとんどは白夜に占領されてる。まだ、隠れて抵抗してる奴らもいるけど時間の問題だった。そこで私は仲間たちに頼まれて、このことを国境の城壁に伝えに行ったのさ。でも、考えが甘かったんだよ」

カムイ「すでに城壁は落ちていた……というわけですか?」

クリムゾン「ああ、敵の中をどうにか見つからずに進んで、マカラスに至った時、運悪く見つかっちゃってね。命かながらディアを目指してたところを」

カムイ「私の送った視察隊に発見されたということですか」

クリムゾン「そういうことになるね」

カムイ「わかりました。貴重な情報ありがとうございます。となると、海上はすでに白夜に抑えられているんでしょうから。ディアからノートルディアを目指す道は使えませんね」

ノートルディア→×

シュヴァリエ→○

ギュンター「やはり陸路でマカラス、国境線と進んでシュヴァリエ公国を目指すほかありませんな」

カムイ「そうですね。クリムゾンさん」

クリムゾン「なんだい?」

カムイ「あなたはどうしますか? ここでシュヴァリエ解放までお待ちいただいてもよろしいのですが」

クリムゾン「いや、祖国が侵略されてるのに、黙ってみてることはできないよ。カムイ王女が許してくれるなら、私も同行させてくれないかい?」

カミラ「いいんじゃないかしら? シュヴァリエの兵士はとても優秀と聞いているわ」

カムイ「優秀……ですか」

クリムゾン「ああ、任せてくれよ」

カムイ「………わかりました。クりムゾンさん、一緒にシュヴァリエまでの道を開きましょう」

クリムゾン「ありがとう、助かるよ」

カムイ「……皆さん。聞いての通りです、私たちはこれよりマカラスへ移動し、占領地域を奪還します」

アクア「ガロン王とマクベスの指示を待たないの?」

カムイ「流石に待っている暇はないですよ。できる限り、早く白夜の侵攻に釘を打たないといけませんから。道中での戦闘も予想されますので、皆さん準備は万全にしていきましょう」

カムイ(わずかな期間でシュヴァリエ、国境線の城壁、そしてマカラスを落としたとなると、すさまじい量の軍勢でしょうが、今はどうにかするしかありませんね………)

◇◇◇◇◇◇
―暗夜王国・賭博の町マカラス―
タクミ「そう、この町の奴らは抵抗も何もなく降伏したってことでいいんだね?」

オボロ「はい、すでに全兵士の投降を確認してます。今、この町は私たちの制圧下にあります」

ヒナタ「でも、拍子抜けだよな。ここまで来るのに戦闘なんてなかったし、もっと剣を振るえるかと思ってた」

タクミ「なら、もう準備しておくんだね。いずれ話を嗅ぎつけてこっちにやってくる奴らがいるはずだから。僕たちはそれを迎え撃つだけでいい」

オボロ「わかりました、タクミ様。ところで、この荷車の中にいるのはどうするのです?」

タクミ「ああっ、暗夜に媚を売ったやつらのことかい? 前線で戦ってもらうよ、使える駒はちゃんと使える場所に置かないとね」

「結局、そういうことにしか使えない奴らなんだからさ」

―荷車の中―

 ウウッ ドウシテ ドウシテコンナコトニ

 カアサン トウサン ゴメンヨ ゴメンヨ

???「………」

スズメ(巫女)「あの……」

???「スズメか、どうした。眠れないのか?」

スズメ「はい。船に乗せられて、ここまでこの荷車に乗せられるままに来ましたから、疲れているはずなんですけど。リンカ様はお疲れでないのですか?」

リンカ「ああ、大丈夫だ。それよりも、お前は体が弱いんだろう? ゆっくり休んだ方がいい」

スズメ「はい、ごめんなさい。不安なのはリンカ様も同じはずなのに」

リンカ「気にすることじゃないさ。こんな捕虜みたいな扱いを受けるのは初めてのことじゃないしな。……まぁ、それが原因でここにこんな形で連れてこられてるわけだけどな」ジャラッ ジャラッ

スズメ「でも、なんだかその割には、悲観の色が少ないですよ?」

リンカ「そうだな。確かにそうかもしれない。まったく、こんな姿、父には見せられないな。孤高であることを重んじる炎の部族の名折れだ」

スズメ「でも、やっぱり嬉しそうです」

リンカ「そうだな。たぶん、それがあたしがここに連れてこられても、心が折れない理由なのかもしれない」

「あいつに会えたらいいな。たとえ、殺し合いの中心地であったとしても」

カムイ支援の新規項目

 カムイとル―ナの支援がC+になりました

仲間間の支援

 カミラとピエリの支援がCになりました

今日はここまでです。スズメはモブ巫女です。
 マップを見ながら町の位置関係を確認していると、マカラスって国境線の城壁を超えた先にあるんですよね。
 そしてそんな場所にカムイが来るかもという情報だけで、出向くリョウマたちは罠の可能性を考えなかったのか……

◇◆◇◆◇

 次から戦闘に入ります。カムイと一緒に行動することになるチームを決めたいと思います。

 チーム城塞(ギュンター・ジョーカー・フローラ)
 チーム血みどろ(ピエリ・リリス・カミラ)
 チーム攻め盾(エルフィ・エリーゼ・フェリシア)
 チーム青一点(ベルカ・ラズワルド・ルーナ)
 チーム走行遊撃(サイラス・ニュクス・ハロルド)
 チーム連続投射(アクア・モズメ)

 今回も多数決で決めたいと思いますので、>>768までの間で一番多く選ばれたチームにしたいと思います。



青一点

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・賭博の町マカラス―

クリムゾン「ここがマカラスだよ」

カムイ「そうですか……」

サイラス「しかし妙だな。町にまったく損害が見えない。本当に白夜軍がここに来てるんだろうか?」

ニュクス「すでに投降したのかもしれないわよ。それにマカラスにいる民にとって、戦争なんてどうでもいいことなのかもしれないわ」

ハロルド「関係ないことだ。私たちは白夜から暗夜を守るために来ている、そこはどうあっても変わらないことだよ」

カムイ「ハロルドさんの言う通りですね。それに町の方々が無事なら、それに越したことはありませんが」

サイラス「とりあえず。町に入ってみよう、待ち伏せされている可能性は高いけど、ここで待ってるわけにはいかない」

カムイ「そうですね。皆さん、戦闘態勢を維持したままでマカラスに入ります。敵の奇襲が予想されます、窓や屋根、裏路地にも気を配るようにお願いします」

一同 コクリッ

カムイ「それでは、行きますよ」

◇◇◇◇◇◇
―マカラス市内―
ヒナタ「タクミ様、どうやら暗夜の一団が入ってきたみたいだ」

タクミ「そう、それじゃ手筈どおりに奴らを誘導するように指示を出して」

ヒナタ「わかりました」

タクミ「オボロ、僕の援護をお願いできるかな?」

オボロ「ええ、もちろんです」

ヒナタ「しかし、乗ってくれるかな?」

タクミ「乗らなきゃ、マカラスはこのまま白夜の物になるだけ、何の問題もないよ。それをここに来た奴らがどう思うか知らないけどね」

白夜兵「オボロ様、侵入してきた者たちの中に……」

オボロ「そう、タクミ様に伝えておくわ。あなたは誘導部隊を指揮しながら、例の場所まで奴らを誘導して頂戴」クワッ

白夜兵「わかりました」サッ

タクミ「オボロ、何かあった?」

オボロ「ええ、裏切り者がどうやら来てくれたようですよ。タクミ様」

タクミ「! そうかい、ふふ、ならここでリョウマ兄さんとヒノカ姉さん、サクラの心配事の種を摘んであげないとね」

ヒナタ「タクミ様。俺たちも向かいましょう」

オボロ「タクミ様」

タクミ「ああ、そうだね。それじゃ、行こうか……」

「裏切り者たちを殺しにね」

◆◆◆◆◆◆
―マカラス宮殿近辺―
 
 ヒュン キンッ

サイラス「くっ、ちょっかいみたいな攻撃ばっかりだな」

ハロルド「うむ、こうも遠距離攻撃ばかり。さすがに堪えるぞ」

ニュクス「ねぇ、これって間違いなく誘われてるわよね」

カムイ「でしょうね。だんだんマカラス市街地から離れていますし、この先には何があるんですか?」

カミラ「この先には王族の別荘が多くある場所よ。たぶんそこに誘い込もうとしてるんでしょうけど」

カムイ「解せませんね。市街地で戦う方が何倍も優位のはずなのに。そこから遠ざかるというのは」

カミラ「私たちを呼び出す意味があるんでしょう?」

カムイ「……」

アクア「カムイ、誘いに乗らないのも手よ? このまま市街地に戻って――」

カムイ「いえ、たぶん相手は市街地になんてやってきません。どうやら、私たちを宮殿に招き入れるのが目的のようですから、来るまでこういう嫌がらせを続けるでしょうから。それに、待っていてもマカラスの奪還はできません」

アクア「そう、わかったわ。ごめんなさい、意見を出してしまって」

カムイ「謝る必要なんてありませんよ。皆さん、罠であることは百も承知ですが、このままマカラスの別荘地に向かいます。よろしいですね?」

サイラス「カムイ、護衛は任せてくれ、必ず守り通してみせるからさ」

カムイ「ええ、頼りにしてますよサイラスさん。それでは、行きましょう」

サイラス「………宮殿に入ったら奴らの気配が消えた?」

ニュクス「ほんと、さっきまでちょっかいばかり出してた奴らの気配が消えたわね」

ハロルド「代わりと言ってはなんだが、向こうにたくさんの人影があるようだが……」

カムイ「まぁ、そうなるでしょうね。さて、誘いに乗ってあげたんですから、あいさつくらい欲しいものですけど」

「ほんとふてぶてしい態度だよね。見ててイライラするよ」

アクア「!」

 ザッ ザッ

タクミ「罠だってわかってるのに、ここに入ってくるなんて、どうかと思うけどね」

カムイ「そういう性分なんですよ。お久しぶりですね、タクミさん」

タクミ「馴れ馴れしく声をかけるな、この裏切り者。どうして、あんたはそんなに堂々としてられるんだよ」

カムイ「堂々となんてしてませんよ。あとイライラしてたら当たるものも当たらなくなりますよ?」

オボロ「カムイ王女、タクミ様を侮辱するなら、容赦しないわ」クワッ

サイラス「うえっ、なんだあの顔」

ハロルド「ううむ、すごい気迫だ。この距離でも感じられるほどとは」

ニュクス「そうね、背中が少しヒュンってなるわ」

カムイ「侮辱と取るかはオボロさん次第です」

オボロ「……そう、なら容赦しなくてもいい、そういうことよね?」クワッ

カムイ「さて、とりあえず聞きますけど、マカラスから早急に撤退してもらえませんか? 戦うのは本坊ではないので」

タクミ「ふんっ、素直に聞くと思ってるわけ?」

カムイ「いいえ。タクミさんが素直に聞いてくれるとは思ってませんよ。でも、一度は聞いておくべきですから」

タクミ「形式的な話なんていらないよ。あんたはここで死ぬんだから、そんな必要もない」

アクア「タクミ……」

タクミ「アクア姉さん? なんだ、生きてたの。てっきりもう暗夜兵に殺されたと思ってたのに」

アクア「やめてタクミ。カムイはあなたの姉さんなのよ。姉弟同士で争うなんて……」

タクミ「今さら何言ってるんだよ。ここにあんたたちがいるってことは、ヒノカ姉さんの部隊をどうにかできたってことだろ? 争うつもりがないなら、ヒノカ姉さんについて行けばよかったんだ。ヒノカ姉さんは、あんたのことを助けに行ったんだからね」

アクア「それに従ったら、捕まっているサクラは――」

カムイ「アクアさん。何を言っても無駄ですよ、それに私がわかりました、ついて行きましょうと言ったところで、タクミさんや他の方たちは許すつもりもないんでしょうし」

タクミ「ああ、皆の前で処刑してあげるよ。暗夜の人間が辿る道がどういうものか、みんなに教えなくちゃいけないからね」

 ザザッ ジャキ チャキ

白夜兵「カムイ王女、いや国を売った売女。貴様が、貴様がいるから……」

タクミ「裏切り者を殺せたら、わかってるよね?」

白夜兵たち「……いくぞ!」

 ウオオオオオオオオッ

リンカ「……スズメ、お前は後方で待機してろ」

スズメ「で、ですが」

リンカ「言う通りにしてるんだ。それに、お前は巫女だろ? 前線には向かない」

スズメ「……はい、リンカ様」

 タタタタタッ

リンカ「さてと、あたしも行くか」

カムイ「皆さん、近くの方たちと陣を組んでください!」

サイラス「カムイには近づかせない。ハロルド!」

ハロルド「任せたまえ!」

白夜兵「カムイ! 死ねえええええ!!!!」

 ブンッ

ハロルド「ん?」キンッ

白夜兵「くっ、まだまだ!」

ニュクス「ハロルド!? これで!」ボッ

白夜兵「ウギャアアアアアアアア」ドサッ

ニュクス「どうしたの。敵が目の前に迫ってるのに、棒立ちになって」

ハロルド「いや、気迫は確かに感じる。感じるのだが……。そんな、このようなことがあってよいというのか?」

ニュクス「くっ、気にあるけど敵がまだまだ迫ってきてる。ハロルド、今は」

ハロルド「わかっている。くそっ、なぜこのような戦いをせねばならないんだ」

サイラス「てやぁ!」

 ザシュッ

白夜兵「ぐっ、ぐおおお」ドサッ

サイラス(なんだ、この違和感は?)

カムイ「サイラスさん!」

サイラス「!? くっ、くそ、なんなんだこれは!」

 ブンッ

白夜兵「きゃあああああ」ドサッ

サイラス「………くそっ、最悪な気分だ」

カムイ「サイラスさん、どうしたんですか」

サイラス「カムイ、俺たちはとても嫌な戦闘を強いられてる気がする。こんなの戦闘じゃない」

カミラ「……ピエリ、ちょっといいかしら?」

ピエリ「カミラ様、どうかしたの?」

カミラ「弱すぎるわ。間合いの取り方も、武器の扱い方も、連携の取り方も、全部とっても」

ピエリ「うん、この人達とっても弱いの。だから殺したい放題なの!」

リリス「ピエリさん、あの、私はどうして後ろにいなくちゃいけないんですか。もう、また血でべとべとなんですけど」

ピエリ「リリスを守るためなの。仕方ないの、でも、こんなに弱かったらリリスを後ろに乗せる必要なんてないの!」

カミラ「ええ、本当に弱いわ。これが本当に城壁を越えてやってきた白夜の先鋭だなんて言われても信じられないわね」



ギュンター「ふむ、ジョーカー、フローラ」

ジョーカー「なんだ爺」

フローラ「どうしました?」

ギュンター「こいつら、どう思う?」

ジョーカー「雑魚だ雑魚、俺が真正面から投げてるのに全く避ける気配もねえ」

フローラ「そうですね。弱すぎて話になりません」

ギュンター「やはりか。くっ、この歳になってこのような、戦いを強いられることになるとは思っていなかったが」

サイラス「カムイ、向かってきてる兵たちは戦闘訓練なんて一切受けてない、新兵以下の奴らだ」

カムイ「……最悪ですね」

ハロルド「こんな戦闘技術も身に付けていない人間を向かわせるなんて、正気の沙汰ではない。すぐにやめさせなければ!」

カムイ「……陣形を変えます。私たちを中心に敵中を突破、肉薄するようにして、この作戦の指揮官を倒しましょう」

ニュクス「わかったわ……だけど、敵の本隊がそれを許してくれるかしら? あのラインから先の奴らはどう見ても――」

カムイ「許す許さないの問題じゃありません。この生産性のない戦いを終わらせることが何よりも大事ですから。」

サイラス「カムイ、乗ってくれ。こんな狂った戦いを俺は早く終わらせたい」

カムイ「ええ、すみませんがよろしくお願いしますね」

サイラス「任せてくれ、必ず奴の足元まで連れて行ってやる」

カムイ「ハロルドさん、ニュクスさん、敵の足止めをお願いします」

ハロルド「ああっ、できる限り殺さないように努めさせてもらうよ。こんなものは正義でもなんでもない」

ニュクス「本当に悪趣味ね……。私がやってきたことを見てるみたいで、吐き気がするわ」

カムイ「皆さん、向かってくる方たちを抑えてください。これより、敵指揮官に攻撃を仕掛けます!」

???「やっと追いついたと思ったら、もう始めちまってるとはねぇ」

???「風が囁いている。守るべき者たちが危ないと……。だけどどうする。正面からはとてもじゃないが」

???「何言ってんだ、正面がダメなら上から回ればいい。上からねっとりと攻め立ててやるんだよ」

???「天から颯爽と現れ、仲間たちを救う。栄光的なシチュエーションじゃないか!」

???「そうだな。とりあえず、手頃な入れる場所を見つけようか。なに」

「どこから入ったって、的はいっぱいあるんだからな」

 今日はここまでになります。
 白夜の暗夜に手を貸した人間たちを排除するながれを考えたら、こんなえげつないことありそうだなって感じになった。
 ちょっと、テンポがまた悪かったかもしれません。申し訳ない。
 

◇◇◇◇◇◇

タクミ「やっぱり寄せ集めじゃ役に立つわけもないか、わかってたことだけど」

オボロ「タクミ様、援護はしないのですか?」

タクミ「裏切り者に手を貸す気なんてないよ。裏切り者同士で殺し合えばいい」

オボロ「……そうですか」

タクミ「リョウマ兄さんみたいな生ぬるい考えじゃ、暗夜なんかに勝てないんだ。それを、僕が証明してやる」

オボロ「………」

ヒナタ「オボロ、ちょっといいか?」

オボロ「なによ?」

ヒナタ「この作戦、やっぱり気に入らない。確かにカムイ王女を倒すこと自体には何も不満なんてねえよ。裏切り者なんだからな」

オボロ「そうね」

ヒナタ「でも、こんなことってありかよ。暗夜に少しでも媚を売ったからって――」

オボロ「……ヒナタは暗夜を擁護するって言うのかしら?」クワッ

ヒナタ「ちげえよ。暗夜は攻めてきた。それは揺るがねえし、許せねえ。でも、だからこそ俺たちは俺たちが間違ってないことを証明するために、戦うべきなんじゃねえのか。こんなの――」

オボロ「なら、向かってくる裏切り者を切り殺せばいいのよ。そうすれば、ここにいるみんなが全員救われるわ」

ヒナタ「……選んでる暇はねえってことかよ。わかったよ、俺がカムイ王女の首を取ってくる。とってくればいいんだろ!」ダッ

タクミ「オボロ、僕のこと、守ってくれるよね?」

オボロ「……はい、タクミ様」

白夜兵「来たな、くらえ!」

 ブンッ

サイラス「そうそう、こういう感じだ」

 キン ザシュ

白夜兵「ぐおぉ!」

カムイ「サイラスさん、ここからは私も降りて闘います。ハロルドさん、ニュクスさんサイラスさんを先頭に前進します。左右からの敵の排除を優先してください」

ニュクス「ええ、わかったわ」

白夜兵「ふん、ここまで来たからと言って、タクミ様に届くと――」

ニュクス「煩わしいから、黙りなさい」ボウッ

ハロルド「前線に戦闘技術もままならない者たちを送り出すような君たちに、負けるわけにはいかない!」ブンッ

 ザシュ ザシュザシュ

カムイ「エルフィさん、ギュンターさん! 後ろから迫ってる人達を受け止められますか?」

エルフィ「任せて。こんな攻撃、訓練で受け止めてる丸太に比べたら軽いものよ」

エリーゼ「エルフィ、ほんとすごい訓練してるよね」

フェリシア「ど、どういう訓練なんですか、それ」

ギュンター「まかされましたぞ。とはいっても、老体にこの量とは、カムイ様もなかなか無茶を仰りますな」

ジョーカー「爺、根性みせろ」

ギュンター「若造に言われるまでもない。フローラ、ジョーカー、この者たちの命、奪わぬようにな。カムイ様もそれを望んでいるだろうからな」

フローラ「はい、できる限り努めさせて頂きます」

ジョーカー「はい、お任せくださいカムイ様」

カムイ「ギュンターさんには丸わかりみたいですね。すみませんが、エルフィさん、エリーゼさん、フェリシアさんも、あの方たちの命を奪わないように対処してください!」

エリーゼ「うん、わかったよ!」

フェリシア「はい、わかりました。手加減するのは得意なんです」

カムイ「皆さん、この先にいる方々に容赦は必要ありません。撤退したくなるまで、叩きのめします」

モズメ「わかったで、アクアさん」

アクア「ええ……♪~」

モズメ「!! みつけたで!」

 パシッ バシュッ パシッ バシュ

 ドスッ ドスッ

白夜兵「な、なんだ。その速度は……」

モズメ「ほんま、アクアさんの歌聞くと、体中の神経が研ぎ澄まされるみたいや。こんなに簡単に二射できる」

アクア「役に立ててうれしいわ。このまま、カムイの進撃のサポートに徹するわよ」

モズメ「そうやね!」

白夜弓兵「こんな空間で竜に乗ってやってくるとはな。格好の的だ!」

カミラ「ええ、引きつけ役にはもってこいなくらいに、目立つでしょう? ピエリ!」

ピエリ「カミラ様、上がってなの!」

 バサッバサッ パカラ パカラ

白夜弓兵「!? 竜の陰から!」

ピエリ「えいっなの!」
 
 ズブシャッ

白夜弓兵「ぐあっ、おおっ」

ピエリ「うん、鍛えられてるから中々槍が入らなくて楽しいの! もっと押し串刺しにしてやるの!」

 ビチャッ

白夜弓兵「こはっ……」

白夜弓兵「貴様よくも! くらえ!」パシュッ

ピエリ「ミートシールドの出番なの」ザッ

リリス「ミートシールドってすごいですね」

ピエリ「重たいけどすぐに使える優れモノなの!」

白夜弓兵「くっ、死体を盾にするとは。だが、そうなんども……影!?」

カミラ「上もみなきゃだめよ?」グルグル ザシュッ

白夜弓兵「がっ、な、なぜ、ここにまで至れる……前線にあれほどの……」ドサッ

カミラ「あなたたちが兵士じゃない人たちを無理やり使ってるからよ。ど素人が出ても役に立たないことくらい、わかってるはずよね?」

ピエリ「ここにいるの、みんな殺していいの?」

カミラ「ええ、思う存分殺しましょう。あとピエリ、帰ったら私と一緒にお風呂に入りましょう?」

ピエリ「いいの? なら、リリスも一緒なの!」

リリス「わ、私はいいですよ!」

カミラ「いいわよ。三人で仲良く洗いっこしましょう?」

ピエリ「いっぱい奇麗になって、一緒にお風呂入るの!」

リリス「……」ポスポス

カミラ「ふふっ、まだ大きくなるわ、きっとね」

リリス「………あるわけないじゃないですか」

ルーナ「ほんと、こんなこと考えるなんて最悪ね!」

ラズワルド「そうだね。さすがにこれは悪趣味かな!」

白夜槍兵「先に手を出してきたお前たちに言われたくはない!」ブンッ

ルーナ「ベルカ!」

ベルカ「掴まって」スッ

ルーナ「いいわよ」ガシッ

 スカッ

白夜槍兵「!?」

ベルカ「真上ガラ空き、ルーナ」

ルーナ「ええ、喰らいなさい!」

 ザシュ

白夜槍兵「ぐぎぁ」ベチャ

ルーナ「あ、あれ。剣が床に刺さっちゃった!?」

白夜槍兵「間抜け目!」

ルーナ「や、やられる!?」

ラズワルド「そうはいかないよ!」ザシュ バシ

白夜槍兵「ぐ、ぐおおおあ」ドサ

ベルカ「ルーナ、突き立てなくてもよかった。あの距離なら普通に切り落とすだけでも」

ルーナ「いいじゃない、少しだけ決めてみても」

ラズワルド「ル―ナ、カッコよく決めたいって、まるで……」

ルーナ「そんな恥ずかしいこと言ってないじゃない!」

ラズワルド「いや、その格好良く決めたいっていうのがさ」

ルーナ「ちがうわ」

ベルカ「そうね、最後とてもカッコ悪かったし」

ラズワルド「ははっ、言えてる」

ルーナ「ううっ、笑わないでよ!」

ベルカ「どうでもいいけど、また次くるよ。敵の分散はほとんど出来たみたいだから、ここの奴らを倒して一気に距離を詰めるましょう」

ルーナ「そうそう、地上はラズワルドが先行しなさいよ」

ラズワルド「わかってるよ、それに女の子を先に歩かせるわけにはいかないからね」

ベルカ「軽いわね」

ルーナ「そこがラズワルドの使いやすいとこだったりするから。あ、ベルカ、あたしも乗せてよね」

ベルカ「わかったわ。その代り、弓兵がいたらすぐに言って。できる限り、対応してみせるから」

ちょっと休憩入ります。新DLC、来たね!

サイラス「そろそろ、敵陣の中枢に入れるぞ」

カムイ「サイラスさん、油断は禁物ですよ!」

サイラス「わかってるさ。でも、早くどうにかしないと犠牲ばかり増えることになる!」

カムイ「サイラスさん……」

白夜槍兵「通すか!!!」

サイラス「押し通させてもらう!」

 ドゴン ドタリッ

サイラス「よし、抜け―――」

???「てやぁ!」

カムイ「サイラスさん、危ない!」キン

カムイ(くっ、力強い……、力強いけど、この気配は……)

???「……あたしは最後の最後で運がいいみたいだ」

カムイ「その声……てやぁ!」

???「おっと、もっと強くなったんじゃないか? カムイ」

カムイ「お久しぶりですね。リンカさん」

リンカ「ああっ、久しぶりだなカムイ。次に会った時は敵同士だと言っていたが、本当にそうなるなんてな」ダッ

カムイ「……本当、偶然というのは怖いものですね。こんな形でリンカさんと再会することになるなんて」

リンカ「そうだな。手加減はするつもりはない、全力で行かせてもらう」

カムイ「そうですか。でも、今の狙いはリンカさんじゃないんで。ここでじっとしていてもらえませんか。そうすれば危害は加えませんよ」

リンカ「そう言いながら剣は構えたまま、本当に抜け目のない奴だ。でも、そういうところ、あたしは気に入ってる」

カムイ「リンカさん」

リンカ「けど、戦いは戦いだ。カムイ、おまえをここで倒させてもらう! てやあああ!」

 ブンッ 


 キン!


サイラス「さっきは不意を突かれたが、今度はそうはいかないぞ」

リンカ「暗夜の騎士か。そこをどけ、あたしはカムイと戦いたいんだ」

サイラス「生憎だけど、俺を倒してからにしてほしいね。カムイにはやるべきことがある、それを邪魔させるわけにはいかない」

リンカ「そうか……。カムイはいい仲間を持ってるんだな」

カムイ「リンカさん?」

サイラス「カムイ、ここは俺が食い止める。他のみんなを連れて早く進むんだ」

カムイ「……はい、わかりました。二人とも行きましょう」

ニュクス「ええ」

カムイ「ハロルドさんも早く!」

ハロルド「わかりました! サイラスくん、すまないがここは任せたぞ!」

サイラス「ああっ、任せてくれ」

リンカ「……こんなに多くの者たちが信じて従っているなんてな。カムイは本当に不思議な奴だ」

サイラス「ああ、だからその信じる証として、お前をこれ以上先に進ませるわけにはいかない。闘うつもりがないなら、武器を下してくれればいい」

リンカ「……残念だが、それは無理だ。闘うことしか、今のあたしにはないんからな」

サイラス「そうか、なら手合わせ願おうか? 俺はサイラス」ヒュンヒュンヒュン チャキ

リンカ「望むところだ! あたしはリンカ……誇り高き戦士だ」ジャキッ

カムイ「あと少しだと思うんですが……」

ヒナタ「あたれぇ!!」

カムイ「っ!」サッ

ヒナタ「くそ、避けられた」

カムイ「その声……もしかして、ヒナタさんですか?」

ヒナタ「……覚えててくれたんだな。あんなわずかな時間しか一緒にいなかったのにさ」

カムイ「ええ、できる限り人のことは覚えておこうと思ってますのでね!」ドンッ

ヒナタ「押し出しかよ。間合い、また詰めねえといけねえ」ジャキ

カムイ「ヒナタさん。なぜこのような真似をするんですか?」

ヒナタ「さぁな、俺にもわかんねえし、わかりたくもねえ」

カムイ「………」

ヒナタ「ただ、カムイ王女、あんたの首を持ち帰れば、少しは良くなる。俺はそう信じてる、だから悪いけど、ここであんたには死んでもらわなくちゃならねえ」

カムイ「………それは無理な相談です」

ヒナタ「相談なんてしてねえ、する気もねえ」

ハロルド「君はこの作戦が間違っていると思っているということかね? なら、すぐに指揮官にやめるよう言いたまえ」

ヒナタ「それはできねえ。俺はタクミ様の臣下だ、従う以外に選択肢なんてない。無い以上、俺はすぐに終わるように動くことしかできねえ」

カムイ「……なら、仕方ありません。こちらも全力でことに当たらせてもらいます」

ヒナタ「裏切り者のカムイ王女。その首、取らせてもらうからな!」

白夜侍「ヒナタ様、お供いたします!」

ヒナタ「ああ、一人残らず斬り伏せろ!」

白夜侍「わかりました。いくぞ!」

カムイ「ニュクスさん、ハロルドさん。よろしくお願いします」

ニュクス「ええ、任せて。ハロルド、私が牽制するから、その隙におねがい」

ハロルド「ああ、ニュクスくん、頼んだよ!」

ニュクス「ええ、まずはその動き、崩させてもらうわね」 ボウッ

白夜侍「甘い!」サッ

ハロルド「そこだ!」

 グサッ

白夜侍「ぐっ、まだだぁ!!!」

 シャキン ズシャ

ハロルド「ぐっ。何のこれしき、こんなことで負けるわけにはいかない!」 

白夜侍「はっ、満足に動けずに何を!」

 ボワワワワッ

白夜侍「ぐあ、しまっ、うわ、うぎゃあああああ……うぁぁ」ドサッ

ニュクス「大丈夫?」

ハロルド「すまない。カムイ様は?」

ニュクス「あの侍と戦ってる最中よ。私の魔法じゃ、巻き込みかねないわ」

ハロルド「くっ、どうすれば」

白夜侍「いたぞ! 暗夜の兵を切り殺せ!」

ニュクス「次から次へと、ここも切りがないわね」

ハロルド「くっ、カムイ様の援護に回ろうにも、このままでは!」

カムイ(気配が増えている……このままでは囲まれてしまいますね)

ヒナタ「このままいけば。俺たちの勝ちだな」

カムイ「さぁ、どうでしょう……ねっ!」ドガッ

ヒナタ「くっ、足蹴りかよ」

カムイ「剣だけが武器ではありませんよ。力を使わせてもらいます」

 シュオオオオン

カムイ・竜状態「グオオオオオオン!」

ヒナタ「! 竜状態かよ。おもしれえ!」ブンッ

カムイ・竜状態「くっ、でいっ!」

ヒナタ「ちっ、刀で受け流すのが精いっぱいだぞ、これ」

ヒナタ(もろに受けたら、刀が折れちまう。早くしねえと、前線の奴らが疲弊し切っちまう、そんなことになったら)

オボロ「タクミ様、ヒナタがカムイ王女の侵攻を止めてるみたいです」

タクミ「うん、見えてるから大丈夫だよ。それじゃ、とどめを刺さないとね」

 カチャ ブオン 

タクミ「こちらに気づいてない今なら……どこにでも当てられる。さっきの言葉を地獄で後悔させてやる」

 キリキリキリキリ 

オボロ「これで、終わりですね」

タクミ「ああ、これでみんなを悩ませる種を摘める。暗夜に対抗する状況を作り出せる。だから、ここで死ね」

???「ふっ」

オボロ「!? タクミ様、下がって!」

タクミ「っ!」サッ

 ヒュンヒュン トストス

???「避けちまうのか、気付かれてないと思ったんだが? 腐っても王族、そう言うことかもしれないな」

タクミ「誰だ!」

???「名乗る必要性なんて感じないねぇ。そちらから名乗ったらどうな――」

???「ふっふっふ、聞きたいようだな。ならば聞かせてやる!」

 バッ

???「あの、馬鹿……」


 スタッ

???「深淵なる暗黒より生まれし力。ある時は言霊として世界を混沌の闇へ誘い、ある時は力を持って闇をこの手で飼いならす」

オボロ「?」

???「この闇の力、その加護を受けし男!」


「俺の名は漆黒のオーディン!!!!!」

 今日はここまでになります。次回でここの戦闘は終わる予定です。

ヒナタ「なっ、新手かよ!」

カムイ・竜状態「そこです」グッ ドゴォ

ヒナタ「ぐっ、しまっ――」

カムイ・竜状態「はぁ!」

 ドガッ

ヒナタ「ぎっ……くそっ、引き下がるしかないって言うのかよ」タタタタタッ

シュオオオン

カムイ「はぁはぁ、どうにかなりましたね」

ニュクス「カムイ、大丈夫?」

ハロルド「カムイ様、お怪我は?」

カムイ「流石に無傷とはいきませんけど、ヒナタさんの意識が逸れたのが幸いです」

ニュクス「そうね。あの先でなんだか聞いてて背筋がムズムズしそうなことを言っているのがいるみたいだったから、意識を持っていかれるのも仕方ないわ」

ハロルド「うむ、敵か味方かわからないが……」

カムイ「でも、流れを見る限りタクミさんたちと戦っているようですから、敵というわけではなさそうです。サイラスさんがリンカさんを抑えてる間に、決着をつけましょう」タタタタタタッ

タクミ「オボロ、容赦はいらないから」

オボロ「ええ、タクミ様」クワッ

オーディン「……ゼロ」

ゼロ「なんだ。もしかしてビビっちまったのか?」

オーディン「そんなことはない。いや、すまん、結構ビビってるんだ。なんだよあの顔、力が抜けそうになるぞ」

ゼロ「ああ、しかし慣れたら結構あの視線でゾクゾクできそうだ」

オボロ「そう、残念だけど慣れる暇なんてないわよ。ここで、バラバラにしてあげるわ。暗夜の人間、私は大っ嫌いなの」クワッ

 ヒュンヒュンヒュン ジャキ

タクミ「くらえっ!」ヒュン!

 サッ

ゼロ「そうこなくっちゃな。オーディン、女は任せろ、軽く遊んでおいてやる」

オーディン「ああ、任せたぜ。俺は指揮官の足をすくってやるさ。なにいくら、強力な武器だからといっても、こう近づかれたら」

タクミ「甘いよ」ギリッ バシュッ

オーディン「ええっ、なんで近距離で準備早いんだよ。こっちが術を使う前に射るなんて」

タクミ「残念だけど、懐に入ったからって勝ち目があるわけじゃないんだよ!」

オーディン「くっ、だが、ここで引いたらカムイ様を狙われる。それだけは阻止させてもらう! せやぁ!」シュオン

タクミ「ふんっ、ほんと運がないよね。あんな女に加勢しにきて、ここで死ぬことになるんだからさ!」

オーディン「おわっ、……結構真面目にピンチじゃないか俺」

オボロ「そこよ!」ブンッ

ゼロ「おっと」

オボロ「……ちっ、逃した。早くあんたを殺してタクミ様の元に戻らないといけないの」クワッ

ゼロ「それは御苦労な事だ。なら、さっさとその槍で俺をイカせてくれよ」

オボロ「口の減らない人ね。でも、完全に避け切れてるわけじゃないみたい」

ゼロ「そうだな。なかなかにいい筋してるぜ。さすがは王族の臣下と言ったところだが、負ける気はしないな」

オボロ「ふん、避けてばっかりのくせに何を言うのかと思えば……。その口、縫ってあげるわ」

ゼロ(イライラさせて集中力が欠けると思ったが、こいつ俺との距離を正確に見極めてやがる。弓なんて引いたら、すぐに刺されそうだ)

オボロ「ふんっ、暗夜の力なんてこの程度、あんたの相棒もタクミ様には到底及ばないみたいね」

ゼロ「……そうだな。でも時間稼ぎ位はできるもんだぜ?」

オボロ「?」

 タタタタタタタタタッ

カムイ「てやぁ!」ザシュ

 グオオオアアアア ドサッ

オボロ「あれはカムイ王女、ヒナタの奴しくじったのね」

ゼロ「視線がお留守だ!」

 ヒュン

オボロ「ふんっ」キン

ゼロ「はぁ、予想済みか。いいね」

オボロ「ここまで来られるなんて思ってなかったわ。このままじゃ、タクミ様に」

ゼロ「どうした、主の元に帰らないのか? 帰すつもりもないけどな」

オボロ「くっ」

カムイ「みなさんは彼の援護を! 私はこのままタクミさんと戦っている方を援護に向かいます!」

ハロルド「わかった! 加勢するぞ、君!」

ニュクス「敵か味方かわからないけど、手伝うわ」

オボロ「挟み撃ちなんて、卑怯ね」

ゼロ「ああ、卑怯で結構だ。どうする、このまま戦い続けるか?」

オボロ「調子に乗らないでほしいわね。誰でもいいから道連れにしてやるわ。タクミ様に、手を出させなんてしない」

ニュクス「……そう、そういうことね」

オボロ「なにがよ」

ニュクス「いいえ、健気だと思っただけよ。ただ、それだけ」ボウッ
 
 ボワッ

オボロ「くっ、暗夜の奴らがあああああ!」

ハロルド「ニュクスくん、ここは私が。よしっ。お返しだ」

オボロ「ちっ」

ゼロ「背中が御留守だぜ」

オボロ「ああっ! うっ、ううっ、こんな奴らに負けるわけになんて、いかない……いかないのよ!」クワッ

ハロルド「もう、やめたまえ。武器を捨てるんだ!」

オボロ「命乞いするくらいなら、最後まで戦うわよ」

ゼロ「……そうかい。なら、ここで終わりだ」ヒュン

オボロ「!!!!」

 シュオンッ

 カッ

ゼロ「!? 消えた?」

ハロルド「ふむ、逃げたのか?」

ニュクス「魔術的なもののようだけど、とりあえずは一段落ね。カムイの方は……」

オーディン「くそ、全然近づかせてもらえないとは、格好悪すぎだろ」

タクミ「どうしたの、僕を倒して見せるんじゃなかったのかい?」

オーディン「言わせておけば、よし。このタイミングで一気に!」

タクミ「そんなことでどうにかできると思わないでほしいね」ヒュンッ

 ガッ

オーディン「いでっ! しまった、態勢だ崩れて――」ドタッ

タクミ「終わりだよ!」ヒュンッ

オーディン「や、やられ―――」

 キンッ

オーディン「……ってあれ?」

カムイ「……すみません、遅くなりました。大丈夫ですか?」

オーディン「なにその、かっこいい登場の仕方」

カムイ「えっ?」

オーディン「そうだよ、できれば俺はそんな感じに表れたかったんだ! 颯爽と現れて、敵を薙ぎ払って」

カムイ「そうですか、なら次からはそんな感じでお願いします」

タクミ「ふん、ここまで来れるなんて思ってなか――」

カムイ「せいっ てやぁ!」

タクミ「いきなり攻撃してくるんだね」

カムイ「話を聞いている暇なんてありませんので、そこの人」

オーディン「お、俺か?」

カムイ「そうです、すみませんが援護をお願いします。一秒でも早く、タクミさんには倒れてもらわなくてはいけないんです」

タクミ「ふん、やっぱりそういうことだ。おまえは僕が憎いんだろ、あの村の件のこと本当は――」

カムイ「勘違いも甚だしいんですよ。あなたは」

タクミ「か、勘違いだって?」

カムイ「そんな理由で、あなたと戦うと思っているんですか?」

タクミ「なら、なんで僕たちの邪魔をするんだ! 白夜を守るために戦うことや、母さんのことを思えば、暗夜に行くなんてこと考えないはずなのに!」

カムイ「それに答える義理はありませんし、答えてる暇もないんですよ」

タクミ「このぉ!」ジャキ

オーディン「煽りに弱いな、それじゃ指揮官向きじゃない」シュオン

タクミ「くっ」

カムイ「はぁ!」ドゴンッ

タクミ「ぐあっ、まだ……」

 チャキッ

タクミ「―――っ!」

カムイ「タクミさん、あなたの投降と、皆の武装解除を要求します」

タクミ「僕は、まだ負けて」

カムイ「これ以上の戦いに意味はありません。投降してください」

タクミ「はっ、僕の命の保証なんてないのによく言うよ。サクラも生きているなんて言ってどうせ死んでるんだろ?」

カムイ「……なら、仕方ありませんね。あなたを殺して、この戦いを終わらせることにしましょう」

 スッ

カムイ「さようなら、タクミさん」

タクミ「――っ」

 ブンッ

 シュオンッ

 キンッ!

オーディン「き、消えた!?」

カムイ「…みたいですね」

オーディン「どこかから攻撃されたりしないよな?」

カムイ「大丈夫だと思います。それに戦闘兵のほとんどは、もう倒し終えたみたいですから、事実上闘いは終わったも同然ですね」

オーディン「え、えっと、カムイ様でよろしいんですよね? 俺は――」

カムイ「すみません、自己紹介よりも先に今は戦っている人たちを止めて来ていただけませんか」

オーディン「ああ、わかった」

 タタタタタタタタッ

カムイ「……やっぱり、私の手は躊躇しないんですね……。振り下ろすことに、何の感慨もなかった。まるで、獣みたい」

 シキカンハテッタイシタ! モウタタカウヒツヨウハナイ!

サイラス「勝負あったな」

リンカ「……みたいだな。だが、これでよかったのかもしれない、久々にカムイにも会えた。思い残しは何もない」

サイラス「カムイの知り合いみたいだけど」

リンカ「ああ、まぁ、それが原因でここに贈られる羽目……いや、ちがうな。ここにはあたし自らが望んだことで来ることになっただけだ。カムイの所為じゃない」

サイラス「………」

リンカ「なぁ、お願いしてもいいか?」

サイラス「俺にはそれを叶えられる権限はないけど、まずは聞かせてくれないか?」

リンカ「ああ、あの者たちをどうにか助けてやってくれないか?」

サイラス「あの者たち……。前線に出てきた兵士とも思えない人たちのことか?」

リンカ「ああ、そうだ」

サイラス「それは無用な心配だと思うぞ。そもそも、助けるつもりがなかったらカムイは全員を切り伏せるように命令していたはずだ。わざわざ何人かに受け止めるのを任せてまで、殺さないように配慮するなんて普通はしない」

リンカ「そうか……ありがとう」

サイラス「降伏してくれるか?」

リンカ「ああ、少し疲れたからな……」

サイラス「そうか、なら休んでてくれ。俺は彼らの武器を下ろすように勧告してくるから」

 パカラパカラ

リンカ「スズメは大丈夫だろうか? いや、心配しなくてもいいか。あいつなら、きっと白夜に帰れるはずだからな」

◇◇◇◇◇◇
―マカラス宮殿・裏出口付近―

タクミ「……えっ?」

オボロ「タクミ様。ご無事で」

ヒナタ「タクミ様」

タクミ「オボロ、ヒナタ?」

スズメ「ハァ……ハァ……」

タクミ「こいつは連れてきた奴の一人じゃないか、どうしてここにいるんだ」

オボロ「どうやら七難即滅で私たちをここに連れてきたみたいです。もう正規兵の撤退準備は整ってます」

スズメ「ハァ……無事だったんですね……やった甲斐がありました」

タクミ「そう、なるほどね。僕たちを助けて白夜に一緒に帰ろうってわけ? ふん、いい心がけだけど――」

スズメ「勘違い、しないで、ください……」

タクミ「?」

スズメ「私が救いたかったから、救っただけです。それを理由に白夜に帰るつもりはありません、私が帰るところなんて、もうどこにもありはしないんですから……」

ヒナタ「お、おい。お前くらいなら――」

スズメ「さぁ、早くどこかに行ってください。あなた達がいると、戦っている人たちが戦いをやめられないんです。これ以上の流血を望まれるなら、あなた達自身で、あの人たちと戦ってくればいいんです」

オボロ「タクミ様に無礼な態度ね、殺すわよ」

ヒナタ「オボロ、こんな裏切り者の言葉に耳を傾ける必要なんてねえよ。それに、俺たちの役目は終わったんだ。そうだろ、タクミ様」

タクミ「……ああ、ここに残っても暗夜の連中がお前たちを大事にするわけない。裏切り者もここに捨て置けば後はどうにでもしてくれる。撤退するよ」

 タタタタタタタタタッ

ヒナタ「こんなことどの口が言うんだって思うかもしれねえけど、本当にすまねえ……」

スズメ「いいんです。もう、どうにもならないことですから。早く行ってください、ヒナタ様にも立場があるんですから、こんなところで裏切り者と話しているのはよくないことですよ」

ヒナタ「……ああ」

 タタタタタタタタッ

スズメ「……ははっ、白夜に帰る最後の機会、失ってしまいましたね……。リンカ様にお膳立てもしてもらったのに。本当に私は馬鹿ですね……」

 ガチャ

カムイ「………」

スズメ「カムイ王女ですね。すみませんが、タクミ様たちには逃げていただきました。この手引きをしたのは私です」

カムイ「そうですか……」

スズメ「どうぞ、私を殺してください。私の命など安いものですけど、あなたの無念が少しでも晴れるなら」

カムイ「いいえ、タクミさんがもうこの地を去るというのでしたら問題ありません。追撃の必要もありませんし、中にいる方たちも武装解除に従い始めていますから」

スズメ「殺さないのですか?」

カムイ「特に理由がないので、殺すつもりはありませんよ。それに皆さんには聞きたい話がありますので、……そのあまり聞かれたくないことかもしれませんが」

スズメ「……白夜のことですよね?」

カムイ「それもあります。あと前線で戦っていたあの方たちについてです」

スズメ「はい、気付いているんですよね? あの方たちがとても非力な存在だということを。兵法や連携以前の問題に、武器の持ち方もそのすべてに至るまでが、未熟すぎるとも」

カムイ「はい、とてもじゃないですが。シュヴァリエと城壁を破ってきたような精鋭には見えませんでしたから」

スズメ「当然ですよ。だって――」









「あの方たちは精鋭でも正規兵でもない。白夜に住んでいた、ただの民間人なんですから」

残りはいつもくらいの時間に

◆◆◆◆◆◆
―賭博の町マカラス・貴族宮殿―

カムイ「ギュンターさん。連れてこられた民間人の被害はどれほどでしょうか?」

ギュンター「生き残りの数は25人ほど、遺体の数は20人と言ったところでしょうか……。戦闘中に転び、後続に踏み殺された者もいたようで、できうる限りの治療行為は行いましたが、今だ多くが怯えております」

カムイ「わかりました。引き続き、彼らに寄り添ってあげてください。決して武器を手にしてはなりません」

ギュンター「はい、では……」

スズメ「ありがとうございます。カムイ王女、あなたが来てくれたおかげで多くの人の命が救われました」

カムイ「いいえ。すみません、早くに気づいていれば、まだ多くを救うことができたはずです。彼らにも友人などがいたのでしょう?」

スズメ「いいえ。ここにいるものはすべてが他人同士です、肉親や知り合いは一人としていないんです」

アクア「あえて分けたということ? なんで」

スズメ「……白夜は今、底知れない恐怖に支配されています。アクア様も、幽閉されていた間、その片鱗を見ていたと思いますが」

カミラ「あなた幽閉されていたの? 私はてっきり……」

アクア「ええ、といっても当然のことだと思っていたから。もともと暗夜で育ってきた私を危険視することは、戦争が始まったら真っ先に考えることともいえるから」

スズメ「アクア様には覚悟があったということですね。なら、私の話すことはその覚悟がなかった方々に起きた話になると思います」

カムイ「何があったか聞かせてもらえますか?」

スズメ「はい、皮切りは白夜の暗夜強襲の話がひそかにささやかれたことが始まりでした」

カムイ「ハイタカさんとシモツキさんの行った強襲作戦のことですね」

スズメ「はい。でも、アクア様が無事なのを見る限り、お二人は……」

カムイ「……はい、私たちが」

スズメ「あの方々はそれを望んでいましたから。でも今さらのことですが、本来あの作戦は行われないはずでした」

アクア「リョウマとユキムラね」

スズメ「はい、リョウマ様とユキムラ様の二人が白夜軍の指揮権を持っていました。だから、最初は強行的に暗夜を攻めようという方々の意見が通ることもなかったのです。サクラ様が捕らえられたという話が上がると、サクラ様の身を案じてお二人は慎重に作戦を考えるようになりました。ですが………」

カムイ「……ヒノカさんですね」

カミラ「えっ?」

カムイ「ヒノカさんが強硬派の作戦に乗ってしまった。それが原因だったんですね」

スズメ「はい。サクラ様が暗夜の捕虜となったという知らせが届いたとき、悠長に事を構えている暇はない今すぐ救出のために進軍すべきだというのが強硬派の考えでした。でもそれは建前で、彼らの目的は暗夜に傷を与えること、言い方を悪くすれば、サクラ様は強硬派にとって駒にしか見えていなかったんです」

カムイ「そこに王族であるヒノカさんが強行作戦に同調した。結果、強硬派の意見に箔が付いたということですね」

スズメ「そして、ヒノカ王女の出立と同時に白夜で大規模な裏切り者を排除する流れが強まりました」

カムイ「………その一部があなたたちなんですね」

スズメ「はい、私は白夜の医療術師として所属していました。あの平原の戦いの日、私は傷ついていた暗夜兵を治療しました。そして、それが私がここに送られることになった理由です」

アクア「まさか、それだけでここにいるというの!?」

スズメ「残念ですけど、私が捕まるのには正当性がわずかながらにあります。暗夜と交易を交わしたという理由だけで束縛された者さえいます」

カミラ「……ひどいわね」

スズメ「一族もろとも捕らわれた者たちもいました。そして、それぞれ繋がりのない人々の場所へと送られるんです。まったく知らない他人の中に、怯える人しかいない中に送って、そして唆すんです」

アクア「暗夜を討てば、すべてが元に戻る……」

スズメ「そうです。でも、皆さんが思っている通りですけど、あの方たちに正規の兵と戦う力はありません。結果、無駄死にしていくだけなんです……」

カムイ「リョウマさんや、ユキムラさんはどうしたのですか?」

スズメ「はい、私たちが送られることになる数日前に、ユキムラ様を含む多くの方々は幽閉され、リョウマ様は国内情勢安定化のためにこの作戦を行う決意をされました。もう、白夜はかつての白夜ではありません。もう、何もかも変ってしまったんです」

アクア「そんな……」

カムイ「ありがとうございます、スズメさん。辛いお話をさせてしまって申し訳ありません」

スズメ「いいえ、誰かに話しておきたかったんです。今の白夜のことを。その相手がカムイ王女様だったというのは、面白い偶然でした」

カムイ「……スズメさん。一つお願いできますか」

スズメ「はい、なんでしょうか?」

カムイ「民間人の方々を統率するリーダーになってもらえませんか?」

スズメ「……リーダーですか?」

カムイ「はい、この後のことを少しだけ考えています。残念ですが、このままここにいたとして、あなた達の身の安全の保証はできません。いいえ、多分後続でこちらを目指している方々は、あなた達をすぐに殺すでしょう」

スズメ「では、私がリーダーになる意味というのは、なんなんですか?」

カムイ「はい、皆さんが生き残るためには、誰かが引っ張らなければなりません。こうして私に話をしてくれたスズメさんに、それを任せたいんです。あなたなら、民間人の方たちを見捨てないでいてくれると」

スズメ「……私に務まるかはわかりません。でも、命を救われたあなたの頼みです、任されました」

カムイ「はい、ではスズメさん。皆さんの元へ行ってあげてください」

スズメ「はい、それでは……。あの、リンカ様は?」

カムイ「皆と一緒にいるそうです」

スズメ「ありがとうございます」

 ガチャ バタン

カムイ「……白夜がそのようなことになっていたなんて。サクラさんに説明するのが辛いですね」

カミラ「サクラ王女のことはわからないけど、真実は伝えておくべきよ」

カムイ「はい、戻ったら覚悟しないといけませんね。では、次の議題ですけど、すみません外で待っている方を呼んでいただけますか?」

フローラ「はい。お待たせしました、こちらへ」

ゼロ「ああ」

オーディン「廊下で待つのってなんだか緊張する」

カムイ「すみません、長い間待たせてしまったようで。どうぞ、座ってください。まずはお礼を、ありがとうございました。お二人の加勢もあって多くの人たちの命を救うことができました」

ゼロ「礼を言われることでもない。むしろ、加勢が来て助かったくらいだ。お相子だよ。そうそう、俺の名はゼロ」

オーディン「俺は漆黒のオーディン。まあ、正直、冷や冷やしたぜ。それにあの顔が怖いのなんのって」

カムイ「オボロさんですね。確かに気配だけでもすごいものですから。それは置いておいて、お二人はどうして私たちを援護してくださったんですか?」

ゼロ「主君からの命令でな。急いで追いかけてきた」

カムイ「主君? いったい誰でしょうか?」

オーディン「俺たちの主、それはグラビティーマスターさ」

カムイ「グラビティーマスター? 誰のことでしょうか?」

ゼロ「……やっぱり浸透してないようだな。だから言ったろ、大抵の奴にはそれじゃ伝わらないってな」

オーディン「おかしいな。かなり決まってる二つ名だと思ったんだけど………」

フローラ「グラビティーマスター……レオン王子のことですね?」

オーディン「いよっしゃあああああ! ビンゴだぜ、メイドさん」

フローラ「フローラです。本当なんですね、その二つ名」

カミラ「ふふふっ、そう言えばそんな二つ名あったわね。今度呼んであげなくちゃいけないわ」

カムイ「レオンさん、そんな強力な二つ名があるんですね。私も呼んであげないといけません。グラビティーマスターレオンさんって」

ゼロ「……オーディン、覚悟はしておいた方がいいかもしれないぜ」

オーディン「いやいや、レオン様も気に入ってるはずだ。なにせ三日間考え抜いた二つ名なんだぜ。他にもライフオブツリーとか、リバーシブルバストゥメントとかな」

ゼロ「ああ、すごい熱意だ。それをレオン様に話すとイイぞ。同じくらいお前は寝て過ごすことになるだろうがな」

カムイ「で、ゼロさん、オーディンさん。港町ディアからこちらまで来られたんですよね? 私たちの後続で誰かマカラスを目指していますか?」

ゼロ「マクベス様率いる、正規兵がこちらに向かってる。まぁ、容赦するような連中じゃないな」

オーディン「……正直、ここにあの民間人たちを置いておくと、命はないぞ」

カムイ「仕方ありませんね。ありがとうございます、お二人はこれからどうされますか?」

ゼロ「レオン様からはカムイ様の力になるように託をもらってる」。つまりそういうことだな」

オーディン「ああ、俺が来たからにはもう安心だ。すべての障害を、この漆黒で覆い尽くしてみせる!」

カムイ「はい、期待してます。これからよろしくお願いしますね。では、お話はここまでです、ほかの皆さんもゆっくり休んでください」



カムイ「あのフローラさん」

フローラ「はい。なんでしょうか、カムイ様?」

カムイ「ひとつお願いがあります。よろしいでしょうか?」

フローラ「はい、どうぞ仰ってください」

カムイ「はい、実は―――」

◆◆◆◆◆◆
―賭博の町・マカラス西街道への出口―

スズメ「カムイ王女、ここまでの気遣いありがとうございます」

カムイ「いいえ、苦肉の策です。すみませんがこれで我慢していただけると――」

スズメ「いいんです。今、私たちに必要なのは心を落ち着かせることですから。それに、こうして護衛も付けてくれるのです、感謝しきれません」

 ウウッ、ダイジョウブナノカ? デモ、キガイハクワエテコナカッタヨ

 アンヤノフクッテ、ナンカフシギナモノダナ。

カムイ「送ることしかできませんから、あとは向こうの方たちに従ってください。大丈夫、あそこの方たちは私の知り合いですから、信じてください」

スズメ「はい」

リンカ「スズメ。すまないが、この者たちを頼むぞ。あたしじゃ、一緒にいても気の利いたことの一つも言えないからな」

スズメ「リンカ様も一緒に来れば」

リンカ「だめだ、あたしの顔は暗夜の人間が知っている。あたしが一緒にいることは、お前たちを危険に晒すことになる。だから、ここでお別れだ。スズメと過ごした時間、楽しかったぞ」

スズメ「……リンカ様……私も楽しかったです」

リンカ「ああ」ジャラジャラ

カムイ「申し訳ないです、リンカさん。こんなものを付けてしまって」

リンカ「いいんだ。それにこうしておかないと、スズメたちに要らぬ疑いを掛けることになるからな。安いものさ」

カムイ「はい」

マクベス「カムイ王女、こちらにおりましたか」

カムイ「マクベスさん」

マクベス「マカラスの戦闘は終わったと聞きましたが、こちらにいる兵の方々は?」

カムイ「はい、マカラスの地元兵の方たちです。どうやらフリージアに白夜の兵が向かったという情報がありまして、こうして集まってもらいました」

マクベス「そうですか」

カムイ「はい、たとえ嘘だったとしても、白夜の襲撃を考えて彼らには安全が確保されるまでフリージアにいてもらうことになると思います」

マクベス「ふん、地方部族のことなど気にする必要もないとは思うのですが、まあ良いでしょう。白夜と結託されて反乱を起こされるよりはましですからな。ところで、この地にいた白夜軍は?」

カムイ「はい、撤退したようです。多分、国境線の城壁に拠点を移したと思われます」

マクベス「そうですか、ではここからは私たちの出番ですが……。むっ、そちらの方は」

リンカ「………」ジャラジャラ

マクベス「ふむ、一人捕虜がいるようですね。これは――」

カムイ「捕虜なんて呼ばないでください。私の臣下なんですから」

リンカ「え、カムイ?」

カムイ「どうしたんですか。あの日、私はあなたを部下にしたんですよ、忘れたわけじゃありませんよね?」

リンカ「あ、あれは」

カムイ「もう、こうやって触るとよく鳴いてくれるリンカさんを手放すわけないじゃないですか」スッ

リンカ「ひゃうっ! な、人のいる前で触るなと」

カムイ「え、聞こえません」サワサワッ

リンカ「いやっ、やめっ……」

マクベス「そうですか、まあいいです。そうやってごっこ遊びにでも耽っていてください。私はこれよりノートルディア公国まで進みます。案内人もいますのでね」

クリムゾン「へへっ」

カムイ「クリムゾンさん、いつの間にかいないと思ったら」

クリムゾン「ごめんごめん、ちょっと怖くて隠れてたんだ。でも、マカラスを取り戻してくれたおかげで、こうやってノートルディアに戻ることができそうだよ、ありがとな」

カムイ「いいえ、気にしないでください。ではマクベスさん、後のことはお任せします。私はこれより、王都に戻って事の成り行きをお父様に報告したいと思います」

マクベス「わかりました。では、私はこれより城壁に向かいますので」

カムイ「はい。お気をつけて」

フローラ「それでは行きましょう皆さん」

ジョーカー「逸れない様に気をつけろよ」

ギュンター「ではカムイ様、この者たちとともにフリージアへ向かいます。我々のことは待たず、王都へお戻りくださいませ」

カムイ「はい、すみませんが、皆さんのことよろしくお願いします」

リンカ「あたしからも、すまないがよろしく頼む」

ジョーカー「任されましたぞ。では」

 ザッザッザッザッザッザッ

カムイ「行ってしまいましたね」

リンカ「ああ。カムイ、ありがとう。おかげで助かった」

カムイ「リンカさん、一つ聞いてもいいですか?」

リンカ「なんだ?」

カムイ「リンカさんはどうしてここに来たんですか。たとえ捕虜になったとしても、あなたは炎の部族の族長の娘なんでしょう?」

リンカ「……そうだったな」

カムイ「……捕虜といえば、スズカゼさんはどうしたんですか?」

リンカ「あいつはリョウマの配下に親族がいたこともあるが、やるべきことをこなして地位を守った。信頼を勝ち取ったんだ」

カムイ「……あの」

リンカ「勘違いするな。炎の部族の皆に庇われなかったとかそう言うことじゃない。むしろ、みんなあたしを庇ってくれた。気にするなと、守ってやると言われた。父にはお前は悪くないと、久々に抱きしめられたよ」

カムイ「……」

リンカ「あたしは、そんなみんなが繋げてきた炎の部族を終わらせたくなかった。だから――」





リンカ「部族から自主離反したんだ。だから炎の部族としてのリンカはもういない、今はただのリンカだ。だからさ、少しだけ肩を貸してくれないか」




「今だけ、今の間だけ支えてくれ……」



第十一章 おわり

 今日はここまでです。支援レベル関係ですが、ちょっと見直してみます。

 ここから少し休息時間に入ります。

 次の展開を決める安価を取りたいと思います。ご参加いただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 まず、カムイが話をする人物。

  ベルカ
  ゼロ
  オーディン
  カザハナ
  ツバキ

>>825

◇◆◇◆◇
 次にレオンが話をすることになる人物

 サクラ
 ツバキ
 カザハナ

>>826

◇◆◇◆◇
 最後に話をしている組み合わせ(イベントが起きているキャラ同士は、そのイベントが継続します)
 イベント一覧表は <<735~<<737を参照してください。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター 
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ラズワルド
 ピエリ
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ

 一組目は>>827>>828

 二組目は>>829>>830

 キャラが被った場合は、次の数字のキャラクターに移行します。 

 すみませんが、よろしくおねがいいたします。

 

イベント一覧表が間違ってました。申し訳ない
>>735から>>737です

カザハナ

サクラ

ツバキ

かぶりすまん
オーディン

ニュクス

ゼロ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・地下街―
リリス「う~ん、どうしましょうか」

ゼロ「………」

リリス「……やっぱり野菜でしょうか。干した果物もいい気がするんですけど」

ゼロ「……」

リリス「………」

ゼロ「……」

リリス「はぁ、あのゼロさん。私に何か用ですか?」

ゼロ「やっと気づいたか、この距離でも気付かれてないんじゃどうしようかと思ったが」

リリス「声をかけないと、周りの方たちからの視線が結構痛いので」

ゼロ「そうか、まあいい」

リリス「私はよくありません。それで何の用ですか? 結構前から尾けていたんですよね?」

ゼロ「……ああ、それとお前の経歴を調べさせてもらった」

リリス「……」

ゼロ「お前、一体どこからこの国にやってきたんだ? まったくと言っていいほど足取りがなくて気味が悪い」

リリス「私のことを信用できない、そういうことでいいんですね?」

ゼロ「敵だとは思ってない、が信用もしてないってことだ」

リリス「そうですか、無理に信用しなくても大丈夫ですよ。私はレオン様に興味なんてありませんから」

ゼロ「そうかい、なら別にいい。だが何時でも俺はお前を見ているぞ」

リリス「そうなんですか、もう少しカッコイイ人になら見ていてもらいたいんですけど」

ゼロ「口の減らない奴だ……」

リリス「ふふっ、ゼロさん。よかったら買物のお手伝いをしてくれませんか?」

ゼロ「はぁ? 何だって俺が持たないといけないんだ?」

リリス「あー、重いなぁ。重たいなぁ。ゼロさん、一緒に来てくれたんですから、持ってくれてもいいじゃないですか?」

ゼロ「はぁ? 何を言ってんだ、俺は――」

 オジョウチャンガオモイッテイッテンダ アンタモッテヤレヨ

 ココデササエナキャ オトコガスタルヨネェ

ゼロ「ぐっ……お前、結構腹黒なんだな」ガシッ

リリス「賢いって言ってください」ニコニコ

ゼロ「これはずる賢いっていうんだよ。くそっ、まさか荷物持ちにされるなんて思ってもいなかったぜ」

リリス「ふふっ、ゼロさんはレオン様のこと、とても大事に思っているんですね。私みたいな一介の召使のことなんて、調べる必要なんてないんですけどね」

ゼロ「不安要素はできる限り消したいんでね」

リリス「ふふっ、主君思いというところでは、私とゼロさんは似てるかもしれませんね」

ゼロ「……素性のわからない奴と同類にされるのは御免だな」

リリス「別に私のことを調べるのは構いませんよ。心置きなく調べてください、ただ……」

ゼロ「ただ?」

リリス「また、買い物のお手伝いをしてくれませんか?」

ゼロ「……考えておいてやるよ」

―暗夜王国・北の城塞『薬品庫』―
オーディン「おおっ、この陰湿且禍々しい空間、ここだ、ここでこそ俺のインスピレーションが輝くに違いない。よーし、きたきたきたきたあああああ!出でよダークネスボルトォオオオオ! ジュジュジュジューン! 決まったあ!」

ニュクス「煩わしいわね……一体何の騒ぎよ」

オーディン「て、ニュクス。いつからそこに!?」

ニュクス「どうしたのかしら、人のことを物珍しい視線で観察して。大丈夫よ、あなたの輝くに違いないあたりの発言に、背筋がムズムズはしたけど、実際無害なんでしょう?」

オーディン「実際無害って、俺は……ふん、我が力の片鱗はそう簡単に見抜けるものではないからな」

ニュクス「何を言っているのかわからないけど」

オーディン「ふふっ、貴様の闇もなかなかのものだと思うぞ」

ニュクス「人に向かって闇なんて言わないでほしいわね……、確かに私の後ろめたいことばかりだけど、ね」

オーディン「あ、ああ……その、すまない」

ニュクス「素直に謝るのね。でも事実だから謝る必要はないわ。気にしないで、それよりどうしたのかしら? 今、カムイは外に出てるわ」

オーディン「カムイ様に会いに来たことは確かなんだが、そうかやっぱり出かけてるのか。はぁ、ちょっと挨拶を済ませておきたかったんだけどなぁ」

ニュクス「昨日、王都に帰還して、すぐに報告を終えたのに、すぐに出掛けるなんて。本当に多忙ね」

オーディン「そうだな。俺ならすぐにへこたれる」

ニュクス「若いんだから元気出しなさい」

オーディン「ニュクスに若いんだからって言われてもな」

ニュクス「見た目だけよ。これでも中身はいい歳なの、少しは察して頂戴。だから、あなたよりは魔術には詳しいと思うから、困ったことがあったら聞くといいわ」

オーディン「え、いいのか?」

ニュクス「別に構わないわよ」

オーディン「なら、一つ俺の魔術作りに協力してくれないか?」

ニュクス「いきなりなお願いね、一体何をするのかしら?」

オーディン「ああ、すっごいやつだ。できあがったら、みんなが驚きのあまりに叫び出してしまうような。そんな奴を作りたい」

ニュクス「結構アバウトなのね」

オーディン「まぁ、考えてるだけっていうのもあるけどな。ただ、一人じゃどうも纏まらないし、さすがにレオン様に聞くってわけにもいかない、てわけなんで、お願いできないか?」

ニュクス「元々、私から聞いてと言ったんだもの。約束くらい守るわ」

オーディン「本当かっ!」

ニュクス「ええ、準備ができたら言ってちょうだい。ちゃんと手伝ってあげる。その代り……」

オーディン「そ、その代り、なんだ?」

ニュクス「いいえ、なんでもないわ」

オーディン「そうか、ありがとうなニュクス。よし、久々に燃えてきたぜ!」

 タタタタタタタタタタタッ

ニュクス「魔術ね。どんな魔術を作るのかしら……。いえ、魔術の目的なんて、決まってるわよね。私が一番知っているはずだから……」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸―
カムイ「レオンさん、サクラさんたちは?」

レオン「姉さん。うん、集まってもらってるよ……。正直、話すのが嫌なことではあるんだけどね」

カムイ「そうですね。でも、知っておいてもらわないといけません。今の白夜がどんなことになっているのかということを」

レオン「……わかったよ姉さん。この部屋に三人とも待ってる、どうする僕が代わりに話しても」

カムイ「いいえ、これは私が話すべきことですから、あの場にいて聞いた話をすべて、伝える必要があります」

レオン「そう、強いね姉さんは」

カムイ「そんなことないですよ。私は出来る限り、やるべきことをやるだけですから」

 ガチャ

サクラ「カムイ姉様」

カムイ「ただいま、サクラさん。どうにか生きて戻ってこれました」

カザハナ「ちょっと、開口一番にサクラが不安になること言わないでよ」

ツバキ「ほんと、カムイ王女は容赦がないよねー」

カムイ「はは、ツバキさんも元気そうでなによりです。音色だけで、元気な感じが伝わってきますよ」

ツバキ「そうですかね。これでも白夜の件で少し悩んでたりするんです。それで、その話なんですよね?」

カムイ「………はい。あまり良くない話です」

サクラ「………」

カザハナ「……」

ツバキ「……」

レオン「姉さん、ここに」

カムイ「はい」

サクラ「……姉様、その良くないお話っていうのは」

カムイ「はい、正直皆さんにとっては信じ難く、辛い話だと思いますが。終わるまで話を聞いてくれますか?」

サクラ「……お、おねがいします姉様……何があったのか、教えてください」

~~~~~~~~~~~~~~~^

カムイ「これで以上です」

サクラ「……そ、そんな」

カザハナ「……そんなことって」

ツバキ「………」

カザハナ「ごめん、あたし……ここにいられない」ガタッ

サクラ「カザハナさん!」

カザハナ「サクラ……ごめん」

 ガチャ バタン

サクラ「カムイ姉様、何かの間違い……ではないんですよね………」

カムイ「私もできれば信じたくないことですが、スズメさんの話、そしてあの場にいた人々の雰囲気から、真実なのだろうと思っています」

サクラ「……」

カムイ「……ごめんなさい、サクラさん」

サクラ「いいんです。姉様も、私たちに話すのは辛かったのに」

カムイ「いいえ、サクラさん達の命の責任があります。それを考えたら私が話さなくてはいけないことですから」

サクラ「……ありがとうございます」

レオン「やっぱりカザハナには、辛い話だったかもしれない」

ツバキ「うん、そうだろうね。カザハナは平和な白夜の世界で育って来たから……」

レオン「ツバキは、大丈夫かい?」

ツバキ「正直、ショックはあるし、もしかしたら俺たちが何もしなければみたいに思うこともある。でも、そんなことを考えても仕方ないってことくらい、カザハナだってわかってるはずだよ。でも、今はそれを受け入れられるかどうかわからない」

カムイ「探しに行きましょう。レオンさん」

レオン「……そうだね。捕虜として受け入れたのは僕だから責任がある」

ツバキ「そうしてくれるかな。俺はサクラ様と一緒にここで待ってるよ。今は、俺たちがいるよりも二人のどちらかがいてくれたほうがいいと思うから」

レオン「そう、わかったよ。姉さん、僕は屋敷の北側を探す」

カムイ「では、私は南の方を回ってみますね」

 ガチャ バタン

サクラ「………どうして、こんなことになってしまったんでしょうか」

ツバキ「サクラ様、今はそのことを考えない方がいいです。たぶん、答えなんて出ないし、決めつけることで自分を縛りつけちゃうことなるかもしれないから」

サクラ「はい……」

~~~~~~~~~~~~~

カザハナ「……なによそれ。なんで、なんでそんなことになってるの。意味わかんない、意味がわかんないよ……」

カザハナ「あたしが、あたしが……サクラにそうするべきだって言ったからなの? それがこんなことに繋がっちゃうっていうの?」

 タタタタタタタタッ

カムイ「! カザハナさん、見つけました」

カザハナ「……なによ、何しに来たの」

カムイ「カザハナさん、この出来事を自分の所為だと思っているんですか?」

カザハナ「だって、そうでしょ。暗夜に攻めてきた強硬派は、サクラが捕まってるからって理由で攻撃を仕掛けて来て。ヒノカ様やタクミ様もそれに流されて、あたしが、あたしがあの時……」

カムイ「多分……理由なんて、どうでも良かったんですよ。だから、カザハナさんが気に病むことなんてありません」

カザハナ「ど、どうでも良いって……。そんなこと、信じたくない……信じたくないよ」

カムイ「カザハナさん、自分を責めないでください」

カザハナ「無理だよ……」

カムイ「……」

カザハナ「もう、白夜になんて戻れない……。もう、あたしたちの居場所なんて……居場所なんてない。あたしが、サクラの帰る場所なくしちゃったんだ」

カムイ「カザハナさん」

カザハナ「レオン王子だって、あたしたちのことをどうにかしてくれるって言ってくれたのに、これじゃ、もう………」

カムイ「カザハナさん、もうそこまでにしてください」ギュッ

カザハナ「やだっ、やだよぉ。あたしの、あたしたちの生まれ育った国が、こんな、こんな事をしてるなんて、信じたくない、信じたくないよぉ……」

カムイ「カザハナさん……」

カザハナ「あたしが、あたしがサクラも、サクラも不幸にしちゃったんだ……。親友失格だよ、あたし」

カムイ「……それは違います」

カザハナ「なんで、そんなこと言えるのよ! あんたに、あんたに何がわかるっていうの」

カムイ「そうですね、私にはカザハナさんのこともサクラさんのこともよくはわかってません」

カザハナ「だったら!」

カムイ「でも、カザハナさんとサクラさんの間にある絆は確かなものだと思っています。カザハナさん、サクラさんは不幸だなんて思って無いと思いますよ。あなたが一緒にいて、サクラさんはとても安心しているはずですから」

カザハナ「……そ、そんなこと……わからない」

カムイ「そうですね。これは私の憶測ですから、でもサクラさんはそう思っていると思いますよ。親友っていうのは信じてくれるから親友なんです。私の親友であるサイラスさんのように」

カザハナ「……」

カムイ「怖がらずに聞いてあげてください。サクラさんはちゃんと答えを返してくれるはずですから」

カザハナ「でも、白夜が、白夜が変わっちゃったのは」

カムイ「カザハナさんは、自分に国の意向を変えられる力があると思いますか?」

カザハナ「そ、そんな力あるわけ――」

カムイ「そういうことです。軍の主権を握っていたのはリョウマさんとユキムラさんでしたから。正直言って、カザハナさんが何かしたからといって、変わるものじゃないんですよ。だから、安心してください」サワサワッ

カザハナ「ひゃう、ちょ、なんで眼尻触って……」

カムイ「リラックスさせようと思いまして」

カザハナ「そ、そういうのは。もっと違う感じでも、あうぅぅ」

カムイ「はい、リラックス、リラックス」

カザハナ「だ、だめ、だめだから!」

カムイ「ふふっ、何がダメなんですか。おしえてください、何がダメなんですか?」

カザハナ「そ、それは……」

レオン「……姉さん、そっちにカザハナは……」

カザハナ「んっ、んんんっ」

レオン「……どういう状況なのかな、これ?」

カムイ「あっ、レオンさん。その、心をほぐしてあげようと思いまして」

 少し休憩します。

◆◆◆◆◆◆
―レオン邸―

 シャー

レオン「………」

サクラ『……』

 シャーーーー

レオン「……」

サクラ『……』

レオン「サクラ王女?」

サクラ『………』

レオン「サクラ王女!」

サクラ『はっ、え、えっと、なんですかレオンさん』

レオン「反応がないからどうしたのかと思ってさ……」

サクラ『すみません、その、ぼーっとしていて』

レオン「……サクラ王女」

サクラ『ごめんなさい、心配かけちゃったみたいで、なんでもないんです……なんでも』

レオン「……なんでもないってことはないよね」

サクラ『そんなこと……』

レオン「いつもなら、僕に何か話をするように頼んでくるのに。今日だけはだんまりで何もない、気づいてくださいって言われてるみたいだよ」

サクラ『………』

レオン「白夜のことだね」

サクラ『はい』

レオン「サクラ王女が気に病むことじゃない。サクラ王女に何ができたかなんてわからないし、もしも白夜にあなたがいたとして、それを止められたかはわからないんだから」

サクラ『そ、それは……そうですよね。私にどうにかできたなんて思えませんから……』

レオン「………」

サクラ『私、いつも誰かの後ろにいて、守れてばかりで……そんな私が今の白夜にいて何か出来ることなんてありませんよね……』

レオン「そうだ。だから、サクラ王女にできることなんてなかったんだよ。ここにいても、白夜にいたとしても」

サクラ『………私は何もできないんです。ただ弱いだけで誰も救えない、そんな人間なんです』

レオン「…………」

サクラ『レオンさん、私には一体何ができたんでしょうか?』

レオン「言ったでしょ、何もできることはなかったって。もう一度言わせないで」

サクラ『………』

レオン「……サクラ王女」

サクラ『なんでしょうか?』

レオン「少しの間だけ耐えてくれないかな」

サクラ『レオンさん?』

レオン「白夜の変化も、白夜が行っていることも、これから僕の考えがまとまるまでの間に起きる出来事も、そのすべてに耐えてくれるかい?」

サクラ『……私に耐えられるでしょうか?』

レオン「耐えられるよ。ここにはツバキもカザハナもいる、あなたを支えてくれる人がいるんだ。だから、そうやって気丈に振舞うのはよそう」

サクラ『レオンさん……あの』

レオン「やっぱり、やっぱり弱弱しい姿はみんなに見せられない?」

サクラ『いいえ、あの、さっきの上げてくれた人に姉様とレオンさんが入ってません』

レオン「姉さんはともかくとして、僕はそんな支えるなんて」

サクラ『今支えてくれてるじゃないですか』

レオン「こ、これは捕虜としてサクラ王女を預かってる身だから」

サクラ『ふふっ、大丈夫です。わかってますから』

レオン「そ、そう……ならいいんだけど」

 ピタッピタッ ピトッ

サクラ『レオンさん……』

レオン「……どうかした?」

サクラ『私、ツバキさんとカザハナさんにいっぱい甘えてみようと思います』

レオン「そうかい。なら、その間に何か考えてみせるよ。姉さんも力を貸してくれるはずだから」

サクラ『はい、待ってますね。レオンさん……』

レオン「ところで、扉に密着してるのかな?」

サクラ『え、あっ、そのごめんなさい』

レオン「いや、別にいいんだけど」

レオン(ドア一枚隔ててとはいえ、こう距離が近いとわかると、そのなんだか恥ずかしい///)

サクラ(そ、そうですよね。いくらドアがあるって言っても、こんなに声が聞こえる距離に……あわわわ、なんか恥ずかしくなってきました///)

レオン「……落ち着こう」

サクラ『落ち着かないと……』

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・シュヴァリエ公国―

 ウウッ タ、タスケ

ガンズ「がはっはっはっは。死ねぇ、死ねぇ!」

 グワアアアアアアア 

マクベス「ふん、白夜の軍勢とはどういうものかと思いましたが。この程度とは拍子抜けですね。しかも、ノートルディア公国の騎士たちも、どうやらそのほとんどを取り返したようですな」

ガンズ「へっ、殺せるなら殺しちまえばいい。おらおらおらおら!」

 ザシュッ ガシュッ

マクベス「ふむ、シュヴァリエ公国の騎士クリムゾン。この町の制圧はほぼ完遂しました。この程度の兵にやられるようではそこが知れるというものですな。優秀な兵というのは過大評価というものです」

クリムゾン「……」

 オッ、オンナノヘイガイルゾ マクベスサマ

マクベス「好きにしていいですよ。その代り、ちゃんと処理をしてください」

 サッスガ マクベスサマ ハナシガワカル
 
 ヤメ……テ……

クリムゾン「おい、いくらなんでも、それは」

マクベス「いいのですよ。それに、あなた達の国を救うために我々は来たのですから……。敵の兵をどうしようと我々の勝手というものです」

クリムゾン「……そうだな。助けてもらっておいて、言うことなんてないからな」

マクベス「それでいいのです。さぁ、残りの行き残りを炙り出しますよ。ガンズ、残っている者たちが立てこもっているという建物を襲撃しなさい。私も他の部隊を率いて、逃げようとしたものを仕留めますので」

ガンズ「ええ、マクベス様の命令通りに! おら、ゲパルト兄弟、俺様に付いてきな」

ゲパルトP(パラディン)「ええ、さっさと暗夜に立て付く愚か者を殺しましょう」

ゲパルトS(ソーサラー)「そうですね。ですが、私としては魔法で八つ裂きにしてやりたいところなんだけどね」

ガンズ「へっ、関係ねえよ。見つけ次第殺せばいい。お前たちは楽しそうに人を殺すからなぁ。みてて気分がいいんだよ」

ゲパルトP「はい、もっとすがすがしく殺しますから」

ゲパルトS「それでは行きましょうか、兄さん」

ガンズ「がーっはっはっはっは! 皆殺しだ、殺して殺して殺しまくるぞ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クリムゾン「………」

白夜民間人「」

クリムゾン「……間違ってるのかもな。あたしたち」

 オラオラオラーーーーー
 
 ザコデスネ

 ハハ、ヨクモエル、ヨクモエルヨニイサン

クリムゾン「戦いの糧になる、糧になると信じているのに」

マクベス「一人残らず殺すのです。逃がす必要はありませんのでね」

クリムゾン「…………」ギリッ

「何も見出せないよ。リョウマ……」



休息1 おわり


カムイ支援関係
 カザハナとの支援がCになりました。

※カムイのみ引き続き、支援をレベルで表記します。

仲間関係の支援
 レオンとサクラのイベントが進みました。
 オーディンとニュクスのイベントが始まりました。
 リリスとゼロの支援がイベントが始まりました。

※試験的に仲間同士はイベントの有無表示にしようと思います。少し続けて、無理そうなら戻す感じです。

 今日はここまでです。ゲパルト兄弟はモブですが、この先それなりに出番があると思います。
 ちょっと、支援関係の見直しをしてますが。少し時間がかかりそうです。申し訳ありません。

 また安価で今後の展開を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
カムイが話をする人物

 ベルカ
 ゼロ
 オーディン
 ツバキ
 
 >>857

◇◆◇◆◇
レオンが話をする相手
 
 ツバキ
 カザハナ

>>858

◇◆◇◆◇
 話をしている組み合わせ

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター 
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ラズワルド
 ピエリ
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ

 一組目は>>859>>860

 二組目は>>861>>862

 キャラが被った場合は、次の数字のキャラクターに移行しますので、よろしくおねがいしたします。

ベルカ

ツバキ

ルーナ

フェリシア

ゼロ

アクア

―暗夜王国・北の城塞『小さな小屋』―

フェリシア「よし、紅茶の時間まであと一時間あります! 今日こそ、ちゃんと成功させてみせます!」

フェリシア「え、えっと。まずは……紅茶をいれたことにして、カップを持って……。うん、フェリシア、いきます!」

フェリシア「いい、いいですよ。あとはこのまま……わっわわわわわわ」

 ガチャン!

フェリシア「ああっ! カップが割れちゃいました! ど、どうしましょう! 練習用に買った最後の一個だったのに」

ルーナ「騒がしいわね、誰かいるわけ?」

フェリシア「あっ」

ルーナ「あれ、あんたカムイ様の……えっと、フェリシア?」

フェリシア「は、はいい。ごめんなさい、ごめんなさい」

ルーナ「はっ、何いきなり謝ってんのよ? って、これカップ破片一杯散らばってるじゃない」

フェリシア「え、えっと、その……」

ルーナ「……」

フェリシア「……はうう」

ルーナ「これって何か失敗した後なわけ?」

フェリシア「は、はい。お恥ずかしい話、私、全然メイドとしての仕事ができなくて、ここでその紅茶を運ぶ練習をしてたんです」

ルーナ「で、始めて早々にカップを割っちゃったわけね。はぁ、噂は聞いてたけど、本当にドジなのね」

フェリシア「ううっ、本当のことなので何も言い返せません」

ルーナ「ふふっ、そう言うことならあたしに任せなさい」

フェリシア「ふぇ?」

ルーナ「あたしがフェリシアの練習相手になってあげるわ」

フェリシア「え、えっと、いいんですか」

ルーナ「いいのよ。べ、別に頑張ってるのが報われないのは可哀そうだからとか、そういうこと思って手伝うって言ってるわけじゃないんだからね、勘違いしないでよ!」

フェリシア「え、えっと、うれしいです。よろしくおねがいします。でも、今練習用に買った最後のカップを割っちゃって……」

ルーナ「なら、あたしが買ったの使っていいわ。ふふん、あたしいっぱいカップ持ってるから、正直使わないものだから割ったって構わないわ、今度持ってきてあげる」

フェリシア「そ、そんな。そこまでしてもらわなくても」

ルーナ「あたしがいいって言ってるの。それともなに、あたしのものは使えないって言いたいわけ?」

フェリシア「そ、そんなことありませんよ!」

ルーナ「なら決まりね」

フェリシア「は、はぁ……」

―暗夜王国・北の城塞付近の泉―

アクア「……♪~ ♪~ ……こうして歌うのは久しぶりかもしれないわね」

 ザッザッ

ゼロ「……アクア様」

アクア「……何時からそこにいたのかしら? 盗み見なんてあまりほめられたものじゃないわ」

ゼロ「すみません。その聞き入っていたので……」

アクア「そう」

ゼロ「………」

アクア「……」

ゼロ「……」

アクア「えっと、それで何の用かしら?」

ゼロ「そうでした。アクア様、少しおしゃべりしませんか?」

アクア「……え?」

ゼロ「俺がここに来た理由はそれなんです」

アクア「……えっと、その……」

ゼロ「なにか用事でもあるのでしたら、後日でも」

アクア「いいえ。ごめんなさい、話に聞いていた印象と違うから動揺していただけよ。でも、どうして私なんかと話をしたいの?」

ゼロ「そうですね。俺とあなたはどこか似ている、そう思うからです」

アクア「………」

ゼロ「………」

アクア「え?」

ゼロ「そんな嫌そうな顔をしないでくださいよ」

アクア「ごめんなさい。話に聞いてるしゃべり方をしないのは、それが理由なのかしら?」

ゼロ「ええ。俺がいつものように声を掛ける相手は二通りくらいですから」

アクア「二通り?」

ゼロ「ええ、一つは苦労を知らなそうな人、もう一つは人の心に土足で入り込もうとしてくる者」

アクア「そう……。ねぇ、ゼロ」

ゼロ「なんですか、アクア様」

アクア「あなたの話、また今度でもいいかしら?」

ゼロ「正直、すっぱり興味がないといわれるかと思っていたんですが」

アクア「そんなことないわ。それに自分のことをこうやって話してくれるのだから、それに応えないわけにはいかないもの。でも、今は聴けそうにないわ」

ゼロ「その理由だけ、聞かせてもらっても?」

アクア「そうね……耳にしていたあなたの噂と、今の話からが釣り合わない、それだけよ」

ゼロ「ふっ、そうですか。なら、また今度ここにアクア様がいた時、お話させてください」

アクア「ええ、わかったわ」

残りはいつもの時間に

―暗夜王国・王都ウィンダム『レオン邸』―

レオン「……せいっ!」ブンッ

レオン「……ふぅ、ツバキに教えられた通りにこなしてみたけど、うまくなってるのかちょっとわからないな」

ツバキ「いやー、前に比べたら見違えるくらいだよー」

レオン「……ツバキ、いるならいると言ってくれないかな?」

ツバキ「集中してるみたいだったんで、声を掛けづらかったんですよー。でも、大丈夫、俺から見ても全然上達してますから」

レオン「そうか、なら時間を掛けた甲斐があるよ。でも、一人でやってもあまり実感がわかないよ。実戦で試しても意味はないだろうし」

ツバキ「うーん、残念だけどそうだね。一瞬の隙を狙える相手だと、すぐにやられちゃうと思う」

レオン「……厳しい意見だけど、重く受け止めとくよ。はぁ、ここに来てまさかもう一度剣を握ることになるなんて、思ってもいなかったけど。こんな感じだったんだ……」

ツバキ「もう一度ってことは、一度離れたってことだよね」

レオン「……そうだね。だから、ツバキには感謝してるよ、一度は離れた場所に戻るのも悪くないから」

ツバキ「なら、その先に行ってみるのも悪くないと俺は思うよ」

レオン「?」

ツバキ「俺が相手をすればレオン王子の腕も上達するはずだよ。レオン王子は筋がいいから」

レオン「何を言い出すかと思えば、煽てたって捕虜のツバキには模擬刀も触らせる気なんてないよ」

ツバキ「そうだね。でも、もしも俺が模擬刀を握れる日が来たら、その時はちゃんと手合わせしてくれるかな?」

レオン「……そうだね。その時が来たらお願いしようかな、悔しいけど一人じゃ限界も感じてるし」

ツバキ「うん、わかったよー」

レオン「ところで、ツバキ。話は変わるんだけどいいかな?」

ツバキ「何の話かな?」

レオン「白夜のことについてなんだ。ツバキ、君はどう考えているんだい?」

ツバキ「……そうですね。正直、信じたくないって思う反面、そうなっちゃうこともあるのかなって思わないこともないんだ」

レオン「どういうことだい?」

ツバキ「……これは俺の推測だから、サクラ様やカザハナに話さないって約束できるかな?」

レオン「ああ、その約束は守るよ。絶対に」

ツバキ「うん、なら安心して話せるよ」

レオン「これはなるようになったって言っていたけど、ツバキはどうしてそう考えたんだい?」

ツバキ「……白夜王国は大きな戦争が起きたことがないんだ。争いは確かにあるよ、盗賊が村を襲ったりとか、それを粛清する小さな闘いとか、小さいけどこれは争いだからね。でも集落間での争いなんてない。本当に戦争史を書きあげたら真白って言ってもいい場所なんだ」

レオン「いいことじゃないか。暗夜の戦争史を作ったらその真逆になるだろうからね。父上が武力で平定した土地は多い、土地の関係上、集落同士の争いだって珍しくない。暗夜王国の領土のほとんどは争いによってもたらされたものだからね」

ツバキ「うん、そう言うと思ってた。でも、そう言うのがなかったから白夜は狂っちゃったんだと俺は思うんだよね」

レオン「?」

ツバキ「白夜は……戦争っていう物事に対してとても無防備だったんだよ。少なくとも俺はそう考えてる」

レオン「……その無防備さっていうのは、起きてしまった出来事に対することだよね?」

ツバキ「理解してくれてうれしいよ。でも、元々あんなことが起きなければ、今日までのことなんて起こり得なかったんだから、暗夜のことを怨んでないなんてことは言えないけどね」

レオン「……ツバキ」

ツバキ「大丈夫、レオン王子が戦争を始めたわけじゃないんだから、そんなに気に病むことはないよー」

レオン「……捕虜に心配されるなんて。僕の立場がないじゃないか」

ツバキ「あはは、そうかもね。まぁ、俺から言えるのはこれくらいだよー」

レオン「……そう、ありがとう。その話、参考にさせてもらうから」

ツバキ「うん、そうしてもらえると助かるかな。それじゃ、俺はこれで」

 タタタタタタタッ

レオン「……考えないといけない……か」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『カムイの部屋』―

 コンコン

ベルカ「カムイ様」

カムイ「ベルカさんですね。入ってください」

ベルカ「……失礼するわ」

 ガチャ バタン

カムイ「すみません、カミラ姉さんの臣下であるあなたに、このような仕事を頼んでしまって」

ベルカ「構わない。それに、カミラ様からもカムイ様の役に立つよう命令を受けているから」

カムイ「そう言ってもらえると助かります。それで、シュヴァリエ公国はあなたの目から見てどうでしたか?」

ベルカ「……白夜軍の掃討は終わったと思って間違いない。……町の中はそうでもないけど、人の寄りつかない森に野晒にされた遺体が多くあった。……女性が多かったわ」

カムイ「……マクベスさん達の報告通り、白夜軍は完膚なきまでに叩き潰されたということですね。……はぁ、きれいごとばかりでは済まされないとはわかっていますが、殺すだけでは飽き足りないのですね」

ベルカ「……私には理解できない。殺すだけで別に構わない。それとも、そうするように命令が出たの?」

カムイ「命令なんていりませんよ。大義名分なんてものは後から付いてくるものですから、ただ、そこにいた人たちがやりたいことをやっただけに過ぎません」

ベルカ「……」

カムイ「……ごめんなさい。隠密としてのあなたの腕を見込んで視察を頼みましたが……辛いものを見せてしまったようです」

ベルカ「命令だから、あと視察に関する話は終わってないから」

カムイ「……フリージアのことでしたね。スズメさんと他の方々の様子はどうでしたか?」

ベルカ「暗夜の地に慣れていないことよりも、シュヴァリエ公国で白夜兵が皆殺しにされたという知らせが応えてるみたい。でも、スズメができる限りフォローに回ってるおかげで、大きな混乱はないようだから」

カムイ「スズメさんもそうですが、クーリアさんがあの方々を受け入れてくれたことがありがたかったです。それにベルカさんがそう言うのなら、しばらく心配はいりませんね」

ベルカ「……私の意見なんて、あまり参考にならない」

カムイ「でも、ベルカさんからは問題が無いように見えたんですよね?」

ベルカ「……ええ」

カムイ「なら良かった」ナデナデ

ベルカ「……? なんで頭を撫でる?」

カムイ「いえ、嫌でしたか?」

ベルカ「……カミラ様も、時々頭を撫でてくる。私にはよくわからない」

カムイ「わからないとは?」

ベルカ「……依頼を遂行するのは当然のこと、依頼を遂行できないようなら私に生きている価値なんてないわ。依頼を達成することは……私にとって普通のことよ。だから完遂したことで頭を撫でられる意味がわからない」

カムイ「……なら、これは私がベルカさんにへの追加報酬だと思ってください」

ベルカ「……そう、なら十分貰ったわ。手を放してくれる?」

カムイ「そうですか。うーん、もう少し触りたいんですけど……。そうです」

ベルカ「?」

カムイ「ベルカさん、顔を触らせてもらってもいいですか?」

ベルカ「……嫌よ」

カムイ「では、命令です。ベルカさん、私に顔を触らせてください」

ベルカ「………」

カムイ「いいじゃないですか、減るものじゃありませんし」

ベルカ「……本当におかしな人ね、カミラ様から聞いた通りだなんて思わなかったけど、命令なら従うしかないから」

カムイ「はい、ありがとうございます」ピトッ

ベルカ「……」

カムイ「……」ペタペタ

ベルカ「……」

カムイ(あまり顔は反応がないですね……)

ベルカ「………」

カムイ「……」ススッ

ベルカ「っ……」

カムイ「首筋、気持ちがいいんですか?」

ベルカ「……ちがうわ」

カムイ「でも」サワサワ

ベルカ「っ……!」

カムイ「ふふっ、息を殺してますね。どうして、そんなに強く息を殺してるんですか?」

ベルカ「……っん。っ……」

カムイ「首の弱い方は他にもいましたけど、こうやって強情に耐えるのはベルカさんが初めてですね。ちょっと、声を上げさせたくなってきました」サワサワシュッシュ

ベルカ「――っ、はっぁ」

カムイ「………ふふっ、カミラ姉さんがベルカさんを可愛がっている理由が、なんだかわかります」

ベルカ「……っ。もう、いい?」

カムイ「はい、堪能させてもらいましたから」スッ

ベルカ「……意味がわからないわ。どうしてこんな意味のないことするのか」

カムイ「意味があるかないかは私が決めることです、とても有意義な時間でしたよ」ナデナデ

ベルカ「なんで、また頭を」

カムイ「命令に従ってくれた追加報酬です。それだけですよ」

ベルカ「………そう」

カムイ「はい、ただそれだけですから。シュヴァリエ公国とフリージアについての報告、ありがとうございます。そして、無事に戻って来てくれてよかったです」ナデナデ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城『来客室へと続く廊下』―

カムイ「私に客人なんて、珍しいこともあるんですね」

マークス「珍しいことではない。先の戦い、暗夜王国を駆け巡り、ほぼすべての地域を防衛、解放してきたお前と話をしたいというものはいないわけではないからな。むしろ、この先は増えるかもしれん」

カムイ「私はできる限りのことをしただけ、あと皆が命令通りにこなしてくれたからこそです。それにマークス兄さんなら、もっとうまく出来たかもしれません」

マークス「それはわからないさ。カムイ、今回のことは誇るべきだ、お前は暗夜の危機を防いだのだからな」

カムイ「そうだといいんですけどね」

マークス「まだ白夜との戦争は続いている故、気を抜くことはできない。しかし、お前が成し遂げたことは誇れるべきものであることは間違いない。この私が保証しよう」

カムイ「ありがとうございます、マークス兄さん」

マークス「ここが来客室だ。私はこれより軍議に向かわねばならないが……。話ではお前も知っている者が来ているそうだ」

カムイ「私の知っている人ですか?」

マークス「ああ、ではな」

カムイ「はい、頑張って来てください。マークス兄さん」

カムイ(私の知っている人……一体誰でしょうか?)

 ガチャ

カムイ「すみません、お待たせしてしまったようです」

???「はは、少し待たせてもらったよ、カムイ」

カムイ「……この声、クリムゾンさんですか?」

クリムゾン「良くわかったね。あまり話してなかったと思ったんだけど、覚えててくれてうれしいよ」

カムイ「いえ、その節は先導してくださってありがとうございます」

クリムゾン「いいって、協力するのは当然のことだからさ」

カムイ「帰還したマクベスさんから報告はいただいています。シュヴァリエ公国の奪還の方、無事に済んだようですね」

クリムゾン「…………」

カムイ「どうしました?」

クリムゾン「あ、いや、ごめんよ。すぐにこっちに向かってきたからさ、ちょっと疲れてるだけだから、気にしないで」

カムイ「そうですか。それにしても、なぜ私を訪ねてきたんですか。シュヴァリエを開放したのはマクベスさん率いる正騎兵の方たちでしたが」

クリムゾン「ははっ、カムイがマカラスを開放してくれたおかげで道が開けたんだ。だから私は正規兵よりもカムイ王女の遊撃隊の方に礼を言いたくてね」

カムイ「そうですか。ふふっ、わざわざありがとうございます」

クリムゾン「まいったね。私が礼を言いに来たのに、礼を言われてばっかりじゃん。まぁいいや、少し暗夜王国に滞在することになってるから、礼はいつでもいいよね」

カムイ「少しの間、滞在される予定なんですか?」

クリムゾン「ああ、そうさ。まぁ、カムイと接点が無かったら、この滞在も叶わなかっただろうしね」

カムイ「ふふっ、そうですか。それで、どこに泊まる予定なんですか?」

クリムゾン「ん、決まってないよ。まぁお忍びってわけでもないけど、突然来たようなものだし、いきなり頼むのもあれだし。まぁ、野宿には慣れてるからさ」

カムイ「……そうですね。あの、クリムゾンさん」

クリムゾン「ん? なんだい」

「よろしければ、私の住む城塞に来てみませんか? ふかふかのベッドをご用意できるかもしれません」


休息2 おわり

●カムイの支援一覧○

―対の存在―
アクアB+ 弱点:不明
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターC+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC 弱点:口
(イベントは起きていません)
フローラC  弱点:口
(イベントは起きていません)
リリスB   
(一緒に眠ったことがあります)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドC 弱点:不明
(あなたを守るといわれています)
ピエリC 弱点:前髪に隠れた瞳
(今度はカムイの弱点を探ってみせると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンC
(イベントは起きていません)
ゼロC
(イベントは起きていません)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナC+
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC→C+ 弱点:首筋
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB 弱点:喉仏
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC 弱点:横首筋
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラC+
(イベントは起きていません)
カザハナC 弱点:眼尻
(イベントは起きていません)
ツバキD+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB 弱点:首裏
(イベントは起きていません)
ニュクスB 弱点:おでこ
(イベントは起きていません)
モズメC+ 弱点:耳裏
(イベントは起きていません)

―カムイと絆を維持する者―
リンカC+ 弱点:顎先
(イベントは起きていません)

●仲間間支援状況○
 
・新規発生イベント

 アクアとゼロのイベント(似た者同士)が始まりました。
 ルーナとフェリシアのイベント(努力はいずれ……)が始まりました。
 
・進行したイベント

 レオンとツバキのイベント(剣を手に)がBになりました。
 

 今日はここまでです。すこし、支援関係を試行錯誤していますので、コロコロかわったりして申し訳ありません。
 今回も新しい試みをしてみようと思いますので、すみませんがよろしくお願いいたします。
 また安価で今後の展開を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。  

◇◆◇◆◇
カムイが話をする人物

 ゼロ
 オーディン
 ツバキ
 
 >>882

◇◆◇◆◇
 話をしている組み合わせ

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター 
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ラズワルド
 ピエリ
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ
 リンカ

 一組目は>>883>>884(すでにイベントが発生しているキャラクターで起きた場合は、イベントが進行します)

◇◆◇◆◇
 進行する異性間イベント

1アクア×ゼロ(似た者同士)C
2ジョーカー×フローラ(頼れる影)C
3ラズワルド×リリス(和解の紅茶)C
4ゼロ×リリス(疑惑と買い物)C
5ラズワルド×ルーナ(異界に至っても)C
6ラズワルド×エリーゼ(暗夜尾行コンビ・ラズーゼ)C
7オーディン×ニュクス(魔術の手伝い)C
8サイラス×エルフィ(昔のままではいられない)C
9モズメ×ハロルド(鍛練!鍛練!鍛練!)C

 この中から一つ >>885(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)

◇◆◇◆◇
 進行する同性間イベント

1ジョーカー×ハロルド(不運の暇つぶし)C
2フェリシア×ルーナ(努力はいずれ)C
3フェリシア×エルフィ(傷つかぬ盾)C
4フローラ×エルフィ(不器用の恩返し)C
5ピエリ×リリス(守られる盾と剣)C
6ピエリ×カミラ(世界にそれは一人だけ)C
7エルフィ×モズメ(悩みの種が芽吹くまで)C

 この中から一つ >>886(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)

おっつおっつ!
安価ならゼロでおなしゃす


リンカ

アクア


クリムゾンがクリムゾンされてしまう

2

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞大広間―

リンカ「アクア、少しいいか?」

アクア「あら、リンカ。あなたから声を掛けてくるなんて珍しいわね、それも私なんかに」

リンカ「……用があるから声を掛けてるだけだ。それとも今から何か用でもあるのか?」

アクア「いいえ、特にないわ」

リンカ「そうか、なら、アクア。お前はどうしてそう切り替えられるんだ?」

アクア「ごめんなさい、その言っていることの意味がよくわからないのだけど?」

リンカ「……すまなかった、言葉が足りなかったようだ。あたしが聞いてるのは、アクアは輪に入ったり出たりを繰り返しているのに、どちらへもすぐに切り返しが出来ていると思ってな」

アクア「輪の中……もしかして人のことかしら」

リンカ「そうだ。確かにあたしはもう炎の部族の人間ではないが、未だ孤高でありたいとは思ってる。だが、ここに来てからはあまり一人ではいられることも少なくなった。その所為もあって、この頃は一人でいることに違和感を覚えるほどになってきてる」

アクア「そう。でもいいんじゃないかしら? そうやって変わっていくことに不思議なことはないんだし、むしろリンカが打ち解けているようにも思えるわ」

リンカ「……そうだ。打ち解けてることに関しては……悪くないと思ってる」

アクア「なら」

リンカ「でも、やはりあたしは心のどこかで孤高でありたいと願っているのさ」

アクア「………」

リンカ「だが、この環境を悪くないと思っているあたしがいる以上、あたしはそっちのあたしも認めてやりたい。だからアクアみたいに切り替えができたらと思ってな」

アクア「そう、そう言うことね。残念だけどリンカ、それはあなたには難しいと思うわ」

リンカ「な、なんだと」

アクア「ええ、悪いことは言わないわ。このまま打ち解けてしまったほうがいいと思う」

リンカ「くっ、あたしでは力不足という意味なのか?」

アクア「いいえ。どちらかといえば、あなたの性格を思うにそう言うことはできないと思うからよ」

リンカ「ど、どういう意味だ? 孤高を目指すあたしと、打ち解けようとしているあたし、二つに手を伸ばしているから無理だというのか?」

アクア「そういうことじゃないの……。そうね、リンカ、今度あなたにそのことに関する問いかけをしてあげる」

リンカ「問いかけ? その結果があたしに切り替えができないという証明になるというのか?」

アクア「ええ、少なくとも。リンカはこういった切り替えをするには向いてないってことは証明できると思うわ」

リンカ「……わかった。アクアのその問いかけを待つよ」

アクア「ええ、ありがとう。それじゃ近いうちにね」

リンカ「ああ……」

―北の城塞『小さな小屋』―

 ガシャン!

ルーナ「………」

フェリシア「ま、またやっちゃいました……」

ルーナ「ねぇフェリシア、あたしがここでカムイ様役として座ってから何個目のカップよ、それ」

フェリシア「え、えっと……十二個目でしたか?」

ルーナ「十五個目よ! ちょっと、流石にこれはどうかと思うわ」

フェリシア「ごめんなさい! ごめんなさい!」

ルーナ「カップはあるって言ったけど、これじゃいくつあっても足りなくなっちゃうわ」

フェリシア「そ、その。私、頑張りますから。その……」

ルーナ「うん、そのがんばる努力するっていう熱意だけは褒めたいんだけど、こうも空振りする人を見るのは初めてかもしれないわ。だって、まだカップに何も注いでないのよ。なのに突然、カップが宙を舞うくらいに躓くって……ある意味天才的よ」

フェリシア「ううっ。失敗しないように注意してるんです。でも、うまくいかないんです。毎日ジョーカーさんや姉さんの手間を増やしてばっかりで」

ルーナ「……はぁ、仕方無いいわね。ちょっと休憩しましょう」

フェリシア「だ、大丈夫です。まだ頑張れますから!」

ルーナ「いいから言うこと聞きなさい。それに、こんなにカップの破片が散らばった場所で練習したって良いことないわ」

フェリシア「は、はい……」

ルーナ「フェリシア、いつも失敗したらどうしようとか、そんなこと考えてない?」

フェリシア「そ、それはそうですよ。失敗したら皆さんに迷惑をかけちゃいますから、だから失敗しないようにいっぱい集中してるんです」

ルーナ「やっぱりね。まったく、そんなに肩肘張ってたらできるものもできないわよ」モミモミ

フェリシア「だ、大丈夫ですよ。肩なんて揉んでもらわなくても」

ルーナ「いいのよ。いっぱい溜まってたカップをもらってくれたお礼みたいなものだから……。あたしもね、こうやって肩肘張っちゃうことがあるの。だからあんたの悩みがわからないわけじゃないわ」

フェリシア「ルーナさんにも、そんなことあるんですか?」

ルーナ「そうよ、実戦の時なんて特にね。あたしのミスで誰かが死んじゃうかもしれない。そう考えると肩肘に力が入って、いつもより動けなくなっちゃう、本当はそんなことあっちゃいけないんだけどね。つまり、フェリシアがよくドジするのはそれが原因だってあたしは思うのよ。あたしが言うんだから間違いないわ」

フェリシア「……そ、そうなんでしょうか?」

ルーナ「そうよ、だから次の練習の時はやりたいようにやってみなさい。大丈夫、絶対うまくいくんだから、あたしを信じなさい」

フェリシア「はい、ルーナさんを信じてみますね。よーし、私頑張っちゃいます!」

ルーナ(……元気が出てのはいいけどど、新しいカップ用意しなくちゃまずいわね。まさか、持ってきた半分を割られるなんて思わなかったわ)

―暗夜王国・王都ウィンダム『地下街』―

リリス「確かここら辺で待ち合わせでしたけど、少し時間がありますね」

ラズワルド「やあ、奇遇だね。こんなところで会うなんてさ」

リリス「あれ、ラズワルドさん。本当にこんなところで会うなんて、何しに来てるんですか?」

ラズワルド「うん、ちょっと用事でね。そうだ、時間があるなら、近くでお茶しない? 地下街でおいしいお店を見つけたんだ」

リリス「ふふっ、今日はその口説き文句で何人に振られたんですか? 五人ですか、十人ですか、もっと多いんですか?」

ラズワルド「……ぐっ、痛い所を突くよね、リリスは。だからさ、僕のためにお茶しない?」

リリス「ごめんなさい。ラズワルドさんの連敗記録に箔をつけるためにお断りさせてもらいますね」

ラズワルド「ええっ、まだ負け続けるの。正直、そろそろお情けでもいいから白星がほしいところなんだけど」

リリス「駄目です。お情けでもらった白星に意味なんてありませんから。ラズワルドさんの実力で白星を手に入れてください」

ラズワルド「うう、これでも自信満々に声を掛けてるんだけどなぁ。何がいけないんだろ、やっぱり何か装飾品が必要なのかな?」

リリス「口にバラとかどうですか? 情熱的な男って感じが出て女性が笑ってくれるかもしれませんよ」

ラズワルド「リリスの言ってる笑うって、失笑の部類だよね」

リリス「さぁ、どうでしょうか?」

ラズワルド「でも、本当に不思議だね。まさか、こんな風に話し合う日が来るなんて思いもしなかったから」

リリス「そうですね。本当ならこうして話し合うことなんてありえなかったことでしょうから」

ラズワルド「うん。僕はできれば、和解の印としてリリスとお茶を楽しみたいんだけど……」

リリス「そうですね……。ついて行くのは正直、嫌なんですよね」

ラズワルド「……そう言われると、ちょっと凹みたくなるよ」

リリス「ふふっ、だからと言ってはなんですけど。ラズワルドさんのご都合がつくのでしたら、北の城塞で紅茶を楽しみませんか?」

ラズワルド「えっ? これって、もしかして逆ナン――」

リリス「調子に乗ると、今の話はなかったことにしますけど?」

ラズワルド「……ごめん」

リリス「ふふっ。ラズワルドさんの誘いに乗ると白星になっちゃいますけど、私からのお誘いなら私に白星が上がるだけですから」

ラズワルド「なんだろう、なんか悔しい」

リリス「なら、やめます?」

ラズワルド「いや、せっかくのお誘いだからね。それに女の子から誘われて断る男がいるわけないよ」

リリス「そう言ってもらえると、なんだか嬉しいです。準備ができたらお呼びしますね」

ラズワルド「あっ、うん。楽しみにしてるから」

リリス「はい、楽しみにしててください」

―地下街『洋服市場』―
ルーナ「へぇ、そんなことがあったのね。まあいいわ、あたしも別にもう気にしてないし、あんたが噛みついてこない限り、何もする気はないわ」

リリス「そんな簡単に許しちゃっていいんですか?」

ルーナ「いいのよ。それに今のあんたから嫌な感じは全然しないし、それに今から買い物行くのに、ギスギスなんてしてられないじゃない」

リリス「……ふふっ、ルーナさんって優しい方なんですね。そんな感じ全然しないのに」

ルーナ「ちょ、全然しないっていうのは余計よ!」

リリス「ごめんなさい」

 アッ、イタノ!

 タタタタタタタタタッ

ピエリ「ルーナにリリス、見つけたの!」

リリス「ピエリさん、少し遅刻ですね」

ピエリ「ごめんなの、リリスとお出かけだからいろいろ準備してきたの」

リリス「ふふっ、いつも以上にかわいいですよ」

ピエリ「ありがとなの!」

ルーナ「ちょっと、少し遅れてるわよ。夜になると市街を移動するのって結構危険なんだから。日没までに買い物済ませて戻るわよ」

ピエリ「大丈夫なの、リリスに似合う服のお店は頭に入ってるから後は選んでもらうだけなの。こっちだからついてくるの!」

リリス「ところでルーナさん、その手にぶら下がってる大きな袋はなんですか?」

ルーナ「へっ、こ、これは……その、近くの雑貨市でカップが安く売ってたから買っただけよ。文句ある!?」

リリス「な、なんでそんな攻撃的な口調なんですか……」

ピエリ「ルーナ、リリスをいじめちゃ駄目なの。次、またいじめたら、えいっしちゃうの!」

ルーナ「えいっって、あんたのえいっはシャレにならないのよ」

ピエリ「なら、リリスいじめちゃ駄目なの」

リリス「ピエリさん、ありがとうございます」

ピエリ「お安い御用なの! ピエリ、リリスのこと大好きなの」

リリス「え、えっと、その……///」

ルーナ「ん、なになに、もしかしてこうやって面と向かって言われるの始めてだったりするわけ?」ニヤニヤ

リリス「そ、その……はい」

ピエリ「好きだから好きっていうの、おかしなことじゃないの。ルーナのことも好きなの」

ルーナ「……そ、そう、ありがと」

リリス「あれ、ルーナさん。なんで目線そらしてるんですか?」

ルーナ「う、うるさいわね。ちょっと、安売り商品に目が向いただけよ」

リリス「安売り商品ですか……『夜の刺激に一役、朝は貴婦人なあなたも夜は女王様に』……ルーナさん、いい趣味してますね!」

ピエリ「ルーナはああいう服がいいの? 黒くて変な仮面付き、しかも鞭が付いてて、なんだか強そうなの!」

ルーナ「ち、ちがう。あんなのあたしの趣味じゃないから」

リリス「でも、安売り商品に目が向いたって言ってたじゃないですか? 興味がなかったら普通見向きもしませんよ。買ってきたらどうですか?」

ルーナ「そ、それは。ああもう、ピエリにその……好きっていわれて動揺しただけ! ただそれだけ、これでいいでしょ!/////」

リリス「顔真っ赤で可愛いですよ」

ルーナ「なんでこんな風にいじられないといけないのよ」

リリス「へぇ、こんな服あるんですね。でも、私には似合わないみたいですね」

ルーナ「ふーん、あたしなら着こなせそうね」

リリス「いえ、この服、どう見ても胸の大きな方用ですよ?」

ルーナ「……ど、努力すれば結果は実るはずよ」

リリス「そ、そうですよね……」

ピエリ「この服、きつくて着れなくなっちゃったやつなの」

ルーナ&リリス「!?」

ピエリ「二人ともどうしたの?」

ルーナ「あ、あんた、まだ成長してるっていうの!?」

リリス「嘘ですよね。嘘に決まってますよね!?」

ピエリ「ピエリ、まだまだ大きくなってるの。でも鎧も新調しなくちゃいけないから大変なの。ルーナもリリスも大きくならないの?」

リリス「……も、もちろん、これから大きくなるんですよ」

ルーナ「ええ、まだ本気だしてないだけだから。気づいたらカミラ様と同じくらいになるのよ。だから、この服はそれまで買わなくてもいいわ」

リリス「そうですね。この服は来るべき時まで買えませんね」

ピエリ「そうなの? ピエリは新しくこれを買うの!」

リリス(……あれ、さっきよりも少し大きくないですか?)

ルーナ(何よあれ、カミラ様に匹敵する大きさを想定したつくりじゃないの!)

ピエリ「うん、ちょっと試着してくるの!」

 パタパタパタ

ピエリ「いい感じなの! 胸も苦しくなくてとってもいいの!」

リリス「……」ツンツン

ルーナ「……」ツンツン

ピエリ「? どうしたの?」

リリス「……はぁ、こんな弾力。夢のまた夢です」

ルーナ「……どうやったらこんな風に育つのよ。不公平だわ」

ピエリ「よくわからないの。でも、二人とも楽しそうで嬉しいの!」

リリス「……そうですね。こうやって、自由に買い物に来るのは初めてですから、とっても楽しいです」

ルーナ「そ、そうね。いい暇つぶしになってるから悪い気はしないわ」

ピエリ「ピエリ嬉しいの。でも、今日はリリスのために来たから、リリスにピエリのお勧めプレゼントするの!」

リリス「えっ?」

ピエリ「はい、これなの。ピエリとお揃いのリボンなの。リリス、ピエリのこと全然怖がらなかったの。だから、そのお礼なの!」

リリス「……」ポタポタ

ピエリ「り、リリス泣いてるの? も、もしかしてうれしくないの?」

リリス「ううん、ちがいます。嬉しくて、涙が出ちゃうだけです」

ピエリ「? 泣いてるなら悲しいんじゃないの?」

リリス「ううん、うれしくて涙が出ることもあるんです。ありがとうございます、リリスさん」

ピエリ「……うん、リリスが喜んでくれてピエリ嬉しいの!」

ルーナ「ちなみになんだけど、あたしには……」

ピエリ「ルーナの分は無いの!」

ルーナ「そうよね………。でも、良かったわね、リリス」

リリス「はい、大切にしますね、ピエリさん」

今日はここまでです。カムイの安価と本篇は明日でお願いします。
最後の買い物の話は港町ディアでの戦闘での約束を回収をした感じです。
ピエリ関連の回収があと一つあるので、それもこの休息時間中に回収する感じです。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

クリムゾン「うーん、よく寝た。ベッドってあんなにフカフカなんだな! いつも使ってるのと別物過ぎて違和感すごかったよ」

カムイ「気に入ってもらえたみたいで良かったです。滞在される期間は、あと五日間ほどでしたね?」

クリムゾン「ん、そうだよ。でもよかったのかい? まだここに慣れてもいないのに、こんな自由に歩かせて」

カムイ「私にとって初めてのお客さんですから、といっても私は目が見えないので案内などはできないので、申し訳ないんですが」

クリムゾン「カムイ、あんた本当に目が見えてないのかい?」

カムイ「はい、瞼の下はあまり見せられたものじゃありませんから、クリムゾンさんがどうしてもというのであれば、お見せしますけど」

クリムゾン「………見せてもらってもいいかい?」

カムイ「はい」パチッ

クリムゾン「……!」

カムイ「これでいいですか?」

クリムゾン「……本当に目が見えないんだね。これであの動きは反則だって言われても仕方ないな」

カムイ「よく言われます。でも、私だけでここまで来られたわけじゃないので、支えてくれた人たちには感謝してます」

クリムゾン「謙遜するね。支えられたからって、ここまでできるようになるなんてすごいことだよ」

カムイ「ふふっ、ただ欲張りなだけなんですけどね」

クリムゾン「欲張りって、ははっ、確かにそうかもね。普通ならここまでなろうなんて思わないからさ」

カムイ「はい、ところでどうします? どこかを見て回るのでしたら、案内を付けますが」

クリムゾン「いや、別にいいよ。それに、私はどっちかというとカムイに興味があるね」

カムイ「私にですか?」

クリムゾン「ああ、目が見えないっていうのにあの動き、一回お手合わせ願いたくてさ」

カムイ「別に構いませんよ。武器はどうしますか、得意なものがあればそれで用意しますよ」

クリムゾン「いいのかい、なら斧槍がいいな」

カムイ「わかりました。付いて来てください。こちらに小さいながら演習場がありますので」

~~~~~~~~~~~~

クリムゾン「はいっ!」

カムイ「んっ、てやっ!」

クリムゾン「おっとと! 攻め強いね」

カムイ「そう言うわけでもないですよ。クリムゾンさんも、中々やりますね」

クリムゾン「そんな風に笑みこぼされて言われてもね。でも、少し楽しくなってきたよ。ここからは私も攻めるからね!」

カムイ「はい、よろしくおねがいします」

クリムゾン「いくよっ!」

 キンッ カキンッ

カムイ「このままじゃ、負けちゃいそうです」

クリムゾン「まだまだ、こんなものじゃないでしょ?」

カムイ「クリムゾンさんもですよね?」

クリムゾン「それじゃ、仕切り直しってもう一回やろっか?」

カムイ「はい、そうしましょう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アクア「……シュヴァリエ公国の騎士って、強いのね」

ニュクス「珍しいわね、アクアがこういった様子を見ているなんて」

アクア「ニュクス……ちょっと気になることがあって。その確認みたいなものよ」

ニュクス「確認?」

アクア「ええ、あのマカラスでの戦いを考えると。白夜がしたかったことが裏切り者への制裁だけとは思えないわ」

ニュクス「……そう? 裏切り者を排除して、暗夜の力を削ぎ落とせれば」

アクア「そんな勢力でもなかったでしょ? 今まで人と人との争いをあまり経験したことのない人たちが使い物にならないことなんて、わかってるはずなのに。あえてこんな風に使うのにはわけがあったんじゃないかしら?」

ニュクス「……残念だけど、私はそういう専門家じゃないから、コメントできそうにないわ。けど、アクアの言いたいことがわからないわけでもない」

アクア「ニュクス」

ニュクス「アクア、こういう時はそう言うことに詳しい人を尋ねるべきよ。それも国の動きをわかっているような、そう言う人にね」

アクア「……確かにその通りよね、とはいっても、私にそんな知り合いなんていないわ」

ニュクス「そうね、でもあなたのことを知っている人ならいるかもしれないわ」

アクア「誰かしら……マクベス?」

ニュクス「……別に構わないけど、あのマクベスに教えていいことがあると思う?」

アクア「無いわね」

ニュクス「はぁ、アクアは元々暗夜の王女だったんでしょ?」

アクア「ええ」

ニュクス「なら、その界隈に聞いてみるのも悪くないと思うわ。今、この国に王子と王女と呼ばれる人は少ないし、全員カムイを慕ってる。そうそう、悪いことにはならないと思うわ」

アクア「暗夜の王族ね……。でもいきなり話に行くなんて、接点も何もないのに」

ニュクス「エリーゼを仲介に立てましょう、あの子なら喜んで引き受けてくれると思うわ」

アクア「……そう、参考にさせてもらうわ」

ニュクス「気にしないでいいわ。それじゃ、私は戻るから、あと、その頭どうにかしたほうがいいわよ」

アクア「………ああ、寝癖のことね。ええ、どうにかしておくから。その、あまり見ないでほしいわ」

ニュクス「なら、今度からはちゃんと直してから、外に出たほうがいいわ。それじゃね」

アクア(……私もできる限り動かないといけないわね。まずは、エリーゼに会いに行かないといけないか)

アクア「でも、先にお湯を浴びるべきね。この寝癖を直さないと……」

残りはいつもくらいに始めます

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸―
レオン「君がアクア?」

アクア「ええ、そうよ」

レオン「話は聞いたことあるよ。といっても噂くらいだったから、こうして話をするのは初めてになるのかな?」

アクア「そうなるわね。ごめんなさい、こうして会いに来たのにいきなり私の方から話を始める形になってしまって」

レオン「いや、構わないよ。それにサクラたちのことをエリーゼから聞いて、すぐに来てくれたんだ。僕としても三人と話ができる人間がほしかったところなんだ」

アクア「やっぱり、白夜のことが……」

レオン「ああ、サクラもツバキもカザハナも表面上は気にしてないように見せてるけど、内情は複雑なままだからね。どちらにしても、今の白夜に対してサクラ達が交渉材料になることはない。認めたくないけど、僕は三人を守り通せなくなってきたのかもしれないね」

アクア「諦めないでほしいけど、今の状況じゃ仕方ないのかもしれないわね……」

レオン「まぁ、できうる限りのことはするつもりだよ。あとで、サクラ達に会ってやってくれないかな? 今はエリーゼの遊び相手になってもらってるし、アクアが行ってくれれば、サクラ達の緊張もほぐれるはずだからさ」

アクア「ええ」

レオン「それで、僕に話したいことって何かな?」

アクア「今回の白夜侵攻のことについて、少し気になったことがあったの。私では考えがまとまりそうにないから、詳しい人に話しておきたくて」

レオン「ふーん、それで僕を尋ねに来てくれたのかい?」

アクア「ええ」

レオン「先に言っておくことがある……正直、僕はまだ君を信頼してない」

アクア「ええ、わかっているわ」

レオン「だから、アクアの話を聞いたところでそれに対して考えるかどうかも僕次第だ」

アクア「そうね。私が今の白夜の人間で、あなたに間違った物を教えようとしているかもしれない、そう考えれば当然のことだと思うわ」

レオン「うん、それでけわかればいいよ。それじゃ、アクア。君の思ってることを僕に話してくれないかな?」

アクア「ええ、いいわ。まずシュヴァリエ公国の騎士、クリムゾンが来ていることは知っているわよね?」

レオン「ああ、聞いてる」

アクア「こういったことにただの騎士を寄こすものかしら? 普通なら町を維持する貴族の物や、騎士団の団長が陳謝にやってくるものだと思うの」

レオン「………」

アクア「それに彼女はカムイに対して礼をしたいと現れたらしいわ。シュヴァリエ公国への道、マカラスを開放したのは確かにカムイだけど、シュヴァリエを実質開放したのはマクベス率いる正規兵なのに。それはせずにカムイに接触してるわ」

レオン「…………」

アクア「それと、マクベスの報告を聞く限り。シュヴァリエ公国を占拠していた白夜兵はとても弱かったらしいわ。今日の朝、クリムゾンとカムイが鍛錬をしているところを見たわ。クリムゾンの騎士としての強さを考えても、シュヴァリエ公国があの程度の白夜軍をどうにかできなかったとは思えない」

レオン「……カムイ姉さんから聞いた話だと、残っていた兵は白夜の民間人だったと聞いてる。でも、攻めてきた時は先鋭だったのかもしれないよ?」

アクア「それは、そうかもしれないわね」

レオン「それにそう考えれば、シュヴァリエ公国に残っていた白夜兵が民間人だったのも納得できる。結局、港町ディアを攻め落とせなかった時点で、白夜の作戦は失敗していた。結局、裏切り者たちを暗夜においてくることは、作戦の副目標で、気にすることじゃないって僕は思うよ」

アクア「そう……」

レオン「でも、アクアはまだ白夜の牙が隠れているんじゃないかって考えているわけだね」

アクア「ええ、正直、これだけとはとても思えないの。まだ、何かが隠れているんじゃないかって……そう思うのよ」

レオン「……ふふっ、なんていうかアクアはカムイ姉さんになんだか似てるよね」

アクア「私が、カムイと?」

レオン「そうやって考え続けてるところとか、特にね」

アクア「そう、ありがとう。レオンも私の知ってる弟に似ているわ」

レオン「それは心外なんだけど……」

アクア「ふふっ、ごめんなさい」

レオン「それじゃ、話はこれくらいかな?」

アクア「そうね、私が話しておきたかったことはこれだけね」

レオン「そう、なら――」

アクア「ここからは聞きたいことがあるわ」

レオン「なんだい?」

アクア「ねぇ、サクラ達の服装、あれはどういうこと?」

レオン「服装……ああ、メイド服のこと?」

アクア「ごめんなさい。こうして話しを少ししただけなのに聞くのはどうかと思うのだけど。レオン、あなたってメイドが好きなの?」

レオン「……ごめん、何を言っているのかわからないんだけど」

アクア「ごめんなさい、言い方を変えるわね。メイド服を着てる女のことが好きなの?」

レオン「何も変わってないよね。あとサクラ達がメイド服を着てることが、僕の好みの服装になるのか教えてほしいんだけど」

アクア「そこにメイド服を着た少女が二人もいることが何よりの証拠だと思うわ」

レオン「それは横暴だよ」

アクア「私はね、ここにサクラ達がいるってエリーゼから聞いたとき、再会したら優しく抱きしめてあげようって思っていたの」

レオン「そうだね、そうしてくれればサクラも安心するはずだよ」

アクア「そうね、エリーゼが玄関を開けてメイド服を着たサクラが私の目の前に現れるまではね。あまりの衝撃に抱きしめることなんてできなくなってしまったわ」

レオン「そう、残念だけど僕は別にメイド服が好みってわけじゃないよ」

アクア「そう、なら何が好みなのかしら」

レオン「そこ追求する場所じゃないよね」

アクア「じゃあ、なんで二人はメイド服を着ているのかしら?」

レオン「……単純な話だよ、使用人の服を貸してるだけだから」

アクア「その理由を聞いてるのよ」

レオン「……着てみたいって、頼まれてね」

アクア「……」

レオン「捕虜である以上、三人は外に出られないからね。ストレスだって溜まる。それに白夜の件もあって精神的にも辛いだろうから、本当にそれだけだよ」

アクア「……そう」

レオン「ああ、いつか白夜に戻してあげたいって考えていたから、今回の白夜の件は僕も応えてる」

アクア「……優しいのね」

レオン「三人はこの先しばらくは絶えないといけない場面にいる。精神面のケアをしてあげるのは、引き取った僕の使命でもある。それに……」

アクア「?」

レオン「この頃は、僕の屋敷も騒がしくなってきて、静かだと妙に落ち着かない感じがするんだ」

アクア「そう、……レオン。サクラ達のこと、守ってくれてありがとう」

レオン「お礼を言われることじゃないよ。さぁ、これで話は終わりでしょ?」

アクア「ええ、私はサクラ達と話してくるから。レオン、よろしくね」

レオン「正直、ただの思い過ごしで済むといいんだけど」

アクア「そうね、そうだといいのだけど……」


◆◆◆◆◆◆
―北の城塞『カムイの部屋』―

カムイ「今日は一段と手が痺れますが、クリムゾンさんとの打ち合いはとても楽しかったですね」

???「カムイ様」

カムイ「……その声はゼロさんですね?」

ゼロ「はい」

カムイ「どうかしましたか? こんな夜分遅くに、音も立てずに入ってくるなんて」

ゼロ「……いいえ。レオン様より、託を頼まれましてね。ちょっと、こうして忍びこんできたんですよ」

カムイ「……レオンさんからですか?」

ゼロ「はい、クリムゾンに警戒しろと」

カムイ「……そうですか。レオンさんも何か感じたということですね?」

ゼロ「……いや、今回は出所は違うみたいなんで」

カムイ「?」

ゼロ「まぁ、いいです。では、託も済んだので、俺はこれで」

カムイ「いえ、少し待ってください」

ゼロ「?」

カムイ「ちょっと、お話しませんか? あまり互いのことをよく知らないのも、これから戦っていく上では問題になりますから」

ゼロ「ほぉ、つまりカムイ様は俺と知り合いになりたい、そうおっしゃっているんですね」

カムイ「はい、ですから、こちらにどうぞ」

ゼロ「なるほどね、こうやって横に座らせて、顔をその手で撫でまわすんだな」

カムイ「あれ、どうして分かったんですか?」

ゼロ「色々と有名なんですよ。カムイ様のその、エロハンド」

カムイ「エロハンドですか、リリスさんが良く言ってますけど。浸透していたんですね」

ゼロ「触るなら触ってくれて構わないぜ」

カムイ「うーん、こうも挑戦的な人は初めてですね」

ゼロ「中途半端な責めだったら、逆に俺が責め返しちまうかもしれないけどな」

カムイ「そうですか。別に責めるとかそう言うわけではないのですが、ゼロさんの顔を覚える絶好のチャンスなので、このままやらせていただきますね?」

ゼロ「ああ、いつもでいイイぜ」

カムイ「それでは……」ピトッ

ゼロ「?」

カムイ「あれ、これは……眼帯ですか?」

ゼロ「そうだ、子供の頃にヤられたんだ」

カムイ「そうなんですか……。ふふっ、お揃いですね」

ゼロ「おれは同情なんてしないぜ。同情したからって、失った物が帰ってくるわけじゃないからな」

カムイ「そうですね。では……」

ゼロ(話には聞いていたが、まったく気持ち良く感じないね。くっくっく、俺が感じる顔を見られなくて、試行錯誤し始めたら、逆に責め返してやるか)

カムイ(……困りましたね。手がしびれてうまく動かせません。顔を認識するくらいはどうにかできますが、弱点を探るとなると……)

カムイ「……」シュッシュ ピトピト ペタペタ

ゼロ「カムイ様、まったく気持ち良くならないんだが?」

カムイ(困りましたね。手がフルフル震えてしまっては……後触ってないのは……ここですか?)

 ピトッ

ゼロ「!」

カムイ(なるほど、弱点は口回りなんですね。でもこのフルフルと震える手では、的確に触れることは難しいですね……)

ゼロ「今のは少し感じちまったよ。もっと激しくイかせてくれるんだろう?」

カムイ「そうしたいのはやまy

ゼロ「!」

カムイ(なるほど、弱点は口回りなんですね。でもこのフルフルと震える手では、的確に触れることは難しいですね……)

ゼロ「今のは少し感じちまったよ。もっと激しくイかせてくれるんだろう?」

カムイ「そうですね。ゼロさんのご要望にお応えできるように、頑張ってみます」

カムイ(さすがに的確には触れられませんから……ここは手の震えを利用してみましょう。まずは、ここに手を乗せて……)

ゼロ「ほ、ほう。一回触れば把握は的確なんだな」

カムイ「はい、それが私のもってる技術の一つですから。でも、ごめんなさいゼロさん」

ゼロ「何がだい? やっぱり、震える手じゃ俺を満足させられないってことか?」

カムイ「そうですね。満足はできないと思います。変わりにですけど……」

ゼロ「?」

カムイ「とっても焦らされる感じになると思います」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ゼロ「ぐっ、なんだ、イキそうで、このイケない感じは」

カムイ「震える指じゃずっと触ってられませんから、でもどうですかこうやって弱点を触れたり触れなかったりする感覚。満足したくても満足できない、ゼロさんだけが体験できる特別なものなんですよ?」

ゼロ「こ、これは、キキやがる」

ゼロ(口回りに感じる快感がまるで波だ。くそ、カムイ様の行為に絡めとられちまうとは)

カムイ「ふふっ、どうしたんですか。顔も熱くて、息も途切れ途切れですよ? 仕方ないですよね、今日の私は手が不自由なので」

ゼロ「くそっ、も、もういい。俺の負けだ、その手を早く」

カムイ「はい、ゼロさんがそう仰るのでしたら」パッ

ゼロ「……はぁはぁ。くそ、エロハンドを甘く見過ぎていたようだ。こんな使い方をしてくるなんてな」

カムイ「焦らしも効果的なんですね、ゼロさん、ありがとうございます」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城『王の間』―

ガロン「こんな茶番でだませると思ったか? くっくっく、甘いぞカムイ、だがお前がどんなことをしようとも何もかわらぬ」

ガロン「むしろ、お前が考え行動し、得ようと動けば動くほどに、血は満ちていく。白夜も暗夜も平等に、血で満ちていくのだからな」

ガロン「さぁ、異形神ハイドラよ。我に新たな天啓を……」

ガロン「……」

ガロン「くっくっく、はーっはっはっはっは! 面白い、ならばどう動くのか、しばらく眺めるとしよう」

「次の準備が整うまでな」


休息2 おわり

○カムイの支援一覧●

―対の存在―
アクアB+
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターC+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリスB   
(一緒に眠ったことがあります)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドC
(あなたを守るといわれています)
ピエリC
(今度はカムイの弱点を探ってみせると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンC
(イベントは起きていません)
ゼロC→C+
(イベントは起きていません)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナC+
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラC+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキD+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(イベントは起きていません)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)

●仲間間支援状況○
 
・新規発生イベント

 アクアとリンカのイベントが始まりました。
 
・進行したイベント

 ラズワルドとリリスのイベントがBになりました。
 フェリシアとルーナのイベントがBになりました。

 今日はここまでになります。
 名前欄のミス申し訳ありませんでした。ちょっとぼんやりしてたみたいで、本当に申し訳ない。
 あと、キャラが微妙に崩れてるところがあったり申し訳ない……

 次の展開の安価を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
カムイが話をする人物

 オーディン
 ツバキ
 
 >>917

◇◆◇◆◇
 話をしている組み合わせ

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター 
 フェリシア
 フローラ
 リリス
 ラズワルド
 ピエリ
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ
 リンカ

 一組目は>>918>>919(すでにイベントが発生しているキャラクターで起きた場合はイベントが進行します)

◇◆◇◆◇
 進行する異性間イベント

1アクア×ゼロ C
2ジョーカー×フローラ C
3ラズワルド×リリス B
4ゼロ×リリス C
5ラズワルド×ルーナ C
6ラズワルド×エリーゼ C
7オーディン×ニュクス C
8サイラス×エルフィ C
9モズメ×ハロルド C

 この中から一つ >>920(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)

◇◆◇◆◇
 進行する同性間イベント

1ジョーカー×ハロルド C
2フェリシア×ルーナ B
3フェリシア×エルフィ C
4フローラ×エルフィ C
5ピエリ×リリス C
6ピエリ×カミラ C
7エルフィ×モズメ C
8アクア×リンカ C

 この中から一つ >>921(話をしている組み合わせと被った場合は、そのかぶったものの一つ下の数字になります)

さすがのゼロもカムイさまには勝てなかったよ……

おつー
安価ならオーディン

乙でしたー
本編にない砦組の支援とか見てみたいのでギュンター
他のキャラと絡ませ辛かったら安価下のキャラで

2でお願いします。

サイラス

カムイの話す相手:オーディン

キャラ支援:ギュンター×サイラス

進行する異性間支援:ジョーカー×フローラ

進行する同性間支援:フェリシア×ルーナ

で行きたいと思います。

◆◆◆◆◆◆
―レオン邸―
サクラ「あっ、アクア姉様」

エリーゼ「アクアおねえちゃん! レオンおにいちゃんとの話は終わったの?」

アクア「ええ、エリーゼのおかげでね。それとありがとう、私をサクラに会せてくれて」

エリーゼ「お礼なんて良いよ。あたしもサクラのこと気になってたもん。でも、あたしが訪ねて不安にさせちゃったらどうしようって、思ったりしてたから」

サクラ「エリーゼさん、そんな私のことなんて気にかけていただかなくても」

エリーゼ「気にするよ! だって、ここはサクラの故郷じゃないんだよ、そんな場所にいるのに……あたしだったら不安で泣いちゃうと思うから」

サクラ「あ、あの、エリーゼさん」

エリーゼ「?」

サクラ「私、今日エリーゼさんに会えてとっても良かったって思ってるんです。確かにここにいることで、辛いこともあります。もしかしたら明日には私たちが死んでしまうかもしれないってことはわかってるんです。でも、今はエリーゼさんとこうしてお話できて、アクア姉様とも再会できたから、私後悔はしてません」

エリーゼ「……サークラ!」ダキッ

サクラ「え、エリーゼさん!?」

エリーゼ「あたし、サクラともっとお話ししたい。ねぇ、好きな本のこととか、食べ物のこととか、いっぱいいっぱいお話ししよっ?」

サクラ「……はい、私エリーゼさんといっぱいお話ししたいです」

アクア「ふふっ、私が間に入ることができないくらい仲良くしてるのね。レオンの心配は杞憂に終わったみたいだけど、ところでサクラ」

サクラ「アクア姉様、何か気になることがあるんですか?」

アクア「ええ、そのメイド服だけど……あなたが着たいって言ったのかしら?」

エリーゼ「そうそう、あの日着てた巫女服……だよね。あれを着てると思ってたから、最初レオンおにいちゃんが新しいメイドさんを雇ったのかと思ったよ」

サクラ「え、えっと、その、私が着たいって言ったわけじゃないんです」

アクア「? じゃあ誰が……」

サクラ「それは――」

 タタタタタタタッ

カザハナ「サクラ見て見て! これもすっごくヒラヒラし――」

アクア「………」

カザハナ「………あ、あれ、えっと、その……」

アクア「そう、思った以上にレオン邸の生活に馴染んでるのね。ふふっ、心配なんて無用だったみたい。私はアクア、好きに呼んでちょうだい」

カザハナ「え、えっと。カザハナです。その……アクア様、こ、これはですね――」

アクア「ええ、とっても似合ってるわよ。ここのメイドに転職したらどうかしら?」

カザハナ「なんでここなんですか!?」

アクア「え、私はてっきり……」

カザハナ「そういうんじゃありませんから!」

 ワイワイ ガヤガヤ

ツバキ「何もないみたいだねー。よかったよかった」

レオン「混ざらないのかい?」

ツバキ「それは酷ってものですよー」

レオン「たしかに、そうかもね」

◆◆◆◆◆◆
―北の城塞『壊れかけた塔』―

サイラス「あれ、ギュンター? こんなところで何をしているんです?」

ギュンター「サイラスか。なに、老朽化した塔の様子の確認をしていてな。さすがにこれを保全し続けるにも限度というものがある」

サイラス「ん……たしかに結構年季が入ってますね、これ」

ギュンター「そうだな。だが、いずれ朽ちるものであることに変わりはない。人も物も同じようにな」

サイラス「が言うと、説得力のある言葉だな」

ギュンター「ふっ、これでも長く生きてきた身。何もかも衰えていくことは嫌でも認めなくてはならん事だ」

サイラス「……ギュンターが言うと、なんだかすごい説得力があるよ。なんていうか、強い意志みたいなのを感じる」

ギュンター「ふっ、昔ここを訪れているお前は、時々そんな顔をしていたな」

サイラス「そ、そんな顔してました?」

ギュンター「あの頃、カムイ様の手を引いてくれたのはサイラスだけであったからな。私もジョーカーへの手ほどきあって、あまり多くの時間を過ごせなかった。年が近いという理由だけで来てくれたが、あれほどカムイ様と仲良くしてくれたこと、感謝しているぞ」

サイラス「ありがとう。でもギュンターと初めて会った時はその……」

ギュンター「顔に傷があるからと怯えられたな。確かに幼いお前には恐ろしいものに映ったのかもしれん」

サイラス「今まで顔に傷がある人なんて見たことがなかったこともありましたから。正直、戦うとこうなるのかもしれないって思ったりもしました」

ギュンター「ふっ、でもお前は騎士となって、またカムイ様の前に現れただろう。しかし、戦うことに恐怖を覚えたというのに、何故騎士を目指したのか、わからないがな」

サイラス「ああ、それは単純なことです」

ギュンター「?」

サイラス「カムイの力になりたいと思った時にさ。いつもカムイの傍にいるギュンターのことを思い出したんだ」

ギュンター「………」

サイラス「俺が騎士を目指そうと思ったのはギュンターがいたからかもしれない。幼い記憶の中で思い出せるかっこいい男って聞かれたら、ギュンターだって答えられる。それくらいに、俺はギュンターのことを尊敬してる。」

ギュンター「ふっ、恥ずかしいことを言ってくれるな。だが、お前が本当にカムイ様を守れる力があるかはわからんぞ」

サイラス「?」

ギュンター「サイラス、お前とは手合わせをしたことがなかったな。その腕がカムイ様をお守りするに足りるのかどうか、確かめてみたくなった」

サイラス「……望むところだ。俺の力、ギュンターに見せつけてみせる」

ギュンター「ふっ、若造が調子にのりおる。手合わせ、楽しみにしておるぞ」

サイラス「ああ!」

◆◆◆◆◆◆
―貴賓室―
ジョーカー「フローラ、これを持つのを手伝ってくれないか?」

フローラ「わかったわ」

ジョーカー「ああ、よしそのままで頼む」

フローラ「ねぇ、ジョーカー。後で私の仕事も手伝ってくれないかしら?」

ジョーカー「仕方ねえな」

フローラ「ええ、ありがとう」

ジョーカー「でも、こうしてフローラが俺によく手伝いを頼むようになったのを見ると、あの日の説教はちゃんと機能したんだな」

フローラ「ええ、ジョーカーは頼っても良いって言ってくれたから、うまく使わせてもらってるわ」

ジョーカー「ちっ、そういうことかよ。まったく、素直に手伝ってほしいって言えよ」

フローラ「ふふっ、ジョーカーにそんなこと言われるなんて思ってもいなかったわ。でも、仕事を効率的にできる部分だけよ、ジョーカーに手伝いを頼んでいるのは」

ジョーカー「そうかい、まぁ、俺も同じようにうまく使わせてもらってるんだから、お相子ってことか?」

フローラ「そうね、そう考えるとすごくしっくりくるわ……」

フローラ(そういえば、まだあのハンカチを返してなかったわね……)

ジョーカー「……考えごとか?」

フローラ「えっ?」

ジョーカー「仕事中に考えごとは感心できないな」

フローラ「そうね、ごめんなさい。でも、なんで考えてるなんてわかったの?」

ジョーカー「前にも言っただろ? 俺はお前を信用してる、信用してるんだからお前が何か考えてることくらい理解できる、ただそれだけの話だ」

フローラ「……そ、そう////」

ジョーカー「ん、どうした。顔が赤くなってるが、また風邪か?」

フローラ「ふふっ、そうかもしれないわ。ねぇ、ジョーカー、この前貸してもらったハンカチ、今度返すわね」

ジョーカー「ああ、そんなこともあったな。すっかり時間がたったから忘れられてるかと思ってた」

フローラ「ひどいことを言うのね」

ジョーカー「ああ、流石に行軍中に帰してもらおうなんて思ってないからな。だが、少し時間がたち過ぎてるからてっきり」

フローラ「それは……、いろいろあったのよ」

ジョーカー「色々ね……。まぁ、俺は気長に待つことにする、フローラがどれだけきれいにして返してくれるのか、少し気になってはいるからな」

フローラ「そう、なら、驚くくらいきれいにして返してあげるから。楽しみに待ってて欲しいわ」

ジョーカー「そうか、楽しみに待ってるぞ」

◆◆◆◆◆◆
―小さな小屋―

フェリシア「……」

ルーナ「……」

 カチャ 

フェリシア「……! できました、やりましたよ! ルーナさん、できました!」

ルーナ「やればできるじゃないの。私のアドバイス、ちゃんと活かせたみたいでうれしいわ」

フェリシア「好きなようにやってみました。だから、失敗したらとかそういうこと考えないでやってみたんです」

ルーナ「ふふっ、フェリシアは心配症だからね。肩の力を抜くのに失敗しても大丈夫だからとか、そんなこといっても抜けるわけないって思ったのよ。だから、好きにやらせてみただけだから」

フェリシア「いいえ、ありがとうございます。私、ちょっと自信が付いてきました」

ルーナ「ええ、そうやって努力は続けていくのよ」

フェリシア「……ルーナさんはこんな風に努力を続けてるんですか?」

ルーナ「そうよ、努力に終わりはないの。壁を越えた先に壁があって、それをまた越えるために努力してを繰り返すの……」

フェリシア「辛くないんですか……」

ルーナ「辛くないって言えば嘘になるわ。私もね、一度はあきらめかけたことがあるわ」

フェリシア「ルーナさんがですか?」

ルーナ「ええ……努力してもどうにもならない事があるって信じたくはなかったけどね」

フェリシア「……そ、そんなこと」


ルーナ「でもね、努力の先に得られる物がまだあるってわかったから、私は努力を続けられるの。たとえばこうやって、努力してるフェリシアに助言をしてあげることとか、カップがここまで来るのをちょっとドキドキしながら眺めたりとかね」

フェリシア「……ルーナさん」

ルーナ「そ、そんな顔で見ないでよ。あー、なんでこんなこと言っちゃったの、こんなのあたしのキャラじゃないわ」

フェリシア「ふふっ、ありがとうございます。いつか、ちゃんと紅茶の入ったカップをルーナさんのいる席まで届けられるように、頑張りますね」

ルーナ「何言ってるのよ。そんな小さな目標で、あたしは満足なんてしないから」

フェリシア「ええ、これじゃダメなんですか?」

ルーナ「ダメよ、ダメダメね。もっと、目標は高く持たないといけないわ! でも……その、大きな目標の通過点として、あたしに紅茶を運んでほしいわ。ちゃんと、できるようになったって、確認したいからね」

フェリシア「はい、今の一番の目標にさせてもらいます」

ルーナ「それじゃ、また始めるわよ。今度はカップ一式を棚から取り出して、ここに運んでくる練習よ。ふふっ、今度は一から準備が必要だからね、カップはまだまだあるから、気にしないでいいわ!」

フェリシア「はい、いっぱい頑張っちゃいますね。ルーナさん、ありがとうございます」

ルーナ「……お礼なんて……ううん、ありがとね、フェリシア」

 今日はここまでです。本篇とカムイの安価は明日で
 
 サントラ早く出ないかな……

◇◆◇◆◇◆◇

ピエリ「お湯、温かいの! いっぱい殺した後のお風呂は気持ちがいいの!」

カミラ「そうね。ふふ、いつものピエリは可愛らしいけど、髪を下ろすとどこか大人びた雰囲気になるのね」

ピエリ「誰かとお風呂入ることあまりないから楽しいの! リリスも早く来るのよ」

リリス「や、やっぱり私、あとで一人で入りますから!」

ピエリ「なに言ってるの。一緒に入るって約束したの、こっちに早く来るの!」

リリス「ちょ、引っ張らないでください。ああっ、うう、なんの罰ゲームですか」

ピエリ「胸なんて隠して、リリスおかしいの」ドン!

カミラ「ふふ、恥ずかしがることなんてないのよ」ドドン!

リリス「ううっ、ピエリさんやカミラ様にはわからない悩みです。ほっといてください」

ピエリ「? ピエリ、リリスに何か変なこと言ったの?」

カミラ「ふふっ、そうね。リリスにしかわからない、そういうものがあるのよ」

リリス「カミラ様まで……。もういいです、私、先に体洗って出ちゃいますから!」

 ペタペタ

ピエリ「リリス、ごめんなの。許してほしいのよ」

リリス「こればっかりは駄目です。ない人の悩みを持ってる人がわかるわけないんですから、もうピエリさんなんて知りません!」

ピエリ「び、びぇええええええん! カミラ様、リリスに、リリスにぃ、嫌われちゃったの。どうすればいいの」

カミラ「あらあら、かわいそうに。でも大丈夫よ、私に任せておきなさい」

ピエリ「ふぐっ、なんとか、何とかしてくれるの?」

カミラ「ええ、持たざる者には与えてあげればいいのよ。こうやってね」モミッ

リリス「ひゃん……、か、カミラ様。いきなり、な、なにを、はうううぅん」

カミラ「こうやってね、優しく触れば大きくなるのよ」

ピエリ「そうなの、ピエリ良いこと聞いたの! 今から、リリスの小さいのを大きくしてあげるの」

リリス「ひゃ、ふ、ふたりで、そんな、わ、わたしの胸、そんな、いっぱい触ら……いたっ」

カミラ「だめよ、ピエリ。そんな強く握っちゃ、リリスが痛がってるわ」

ピエリ「むずかしいの」

カミラ「大丈夫よ、ピエリがリリスに優しくしてあげたいようにするのが一番いいのよ。ほら、こうやって」

ピエリ「わかったの。リリス、いっぱい優しくしてあげるの!」

リリス「だ、だめ、そ、それいじょう、いや、もう―――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

リリス「っていうことが、マカラスの戦いのあとにあったんですけど。本当に辛かったです」

カムイ「……リリスさん、なんで私はその場にいなかったんでしょうか?」

リリス「カムイ様、流石に怒りますよ」

カムイ「もう怒ってるじゃないですか。でも、カミラ姉さんや、ピエリさんと仲良く過ごしてるみたいで、なんだか安心しました」

リリス「ううっ、こんなに胸を責められたのに、仲良くなんて言い方はないですよ、カムイ様」

カムイ「そうですね。今度、そんなイベントがあったらちゃんと呼んでくださいね。目が見えないのであらぬ場所に手が行ってしまうかもしれませんが」

リリス「………」

カムイ「……冗談ですよ、冗談」

本篇、少ししたら始めます。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞―

カムイ「クリムゾンさん、ちょっといいですか?」

クリムゾン「ん、どうしたんだい? あれか、また鍛錬したくなったとか? うれしいよ、私カムイとの鍛錬なら四六時中付き合えるからさ」

カムイ「いえ、今日は鍛錬がしたいわけじゃないんです」

クリムゾン「なんだ、ちょっと残念だね」

カムイ「すみません。クリムゾンさんに聞きたいことがあったんですよ」

クリムゾン「私に聞きたいことって一体何かな」

カムイ「はい、その、あまり良いことではないんですが」

クリムゾン「……」

カムイ「シュヴァリエ公国でのことを、聞かせてもらえませんか?」

クリムゾン「それは、どういう意味のことかな?」

カムイ「できれば、私がマカラスを開放して、後をマクベスさんに任せた後の話です」

クリムゾン「………」

カムイ「あの」

クリムゾン「何が聞きたいんだい?」

カムイ「……そうですね。白夜の兵士たちがどのような行動をとったのかということです。すでに現場の方は臣下の方に見てもらい報告を受けていますが、実際に何があったかまではわかりませんからね」

クリムゾン「………それをなんで私から聞くんだい? シュヴァリエを開放したマクベスから直接聞けばいいじゃないか?」

カムイ「聞ければいいんですが、この頃私はマクベスさんに煙たがられているようなので。あまり詳しい話は聞かせてもらえないんですよ」

クリムゾン「……なんで、あんたのおかげでマカラスまでの道が開けたんだよ。それを……」

カムイ「さぁ、何か面白くないのかもしれません。別に私にとってはどうでもいいことですが。でも、シュヴァリエ公国までの道を開いたのは私ですから、その先で何が起きたの、知らなくてはいけない立場にいるはずですから」

クリムゾン「……、口から出まかせ言ってるわけじゃなさそうだね」

カムイ「こんなことで嘘を吐いたって仕方ありませんから、それに私を訪ねてきた時のクリムゾンさんはとても辛そうでしたよ? 正直、ウィンダムに出来れば来たくなかったんじゃないですか?」

クリムゾン「……なんか、私の心の中を探られてるみたいで気味が悪いね」

カムイ「……」

クリムゾン「けど、カムイにはシュヴァリエ公国までの道を開いてくれたのは確かだ。わかったよ、でもあまりいい話じゃないよ」

カムイ「わかってます。逆に意気揚々と話されたりしたら、困りますから」

クリムゾン「私が、そんな風に話をするようなやつに見えるかい?」

カムイ「人は見かけによりませんから」

クリムゾン「そこはお世辞でも、クリムゾンさんはそういう人には見えません、って言うところだよ」

カムイ「でも、クリムゾンさんのほうこそ大丈夫ですか?」

クリムゾン「なにがだい?」

カムイ「正直、話す方が辛いことだと思いますから」

クリムゾン「ははっ、こんな風に気にしてくれるなんて、まるで友達みたいだな」

カムイ「はい、私とクリムゾンさんは友達ですから、心配するのは当然ですよ」

クリムゾン「……まったく、調子のいい友達だね。わかった、話せる範囲でいいなら」

カムイ「お願いします」

クリムゾン「といっても、城塞は手強かったよ。マクベスだっけ? あいつの指揮のおかげで暗夜の兵士も何人か死んだみたいだけど」

カムイ「……そんな報告は資料になかったのですが」

クリムゾン「……戦死者が出るってことは、経歴に傷がつくってことなんでしょ。でも、正規兵の方が城壁に詳しい、土地鑑は間違いなく暗夜にあった。だからかもしれないよ、少ししたら城塞から白夜の兵が引いたのさ」

カムイ「引いた? 陣を組み直したりといったことはしなかったのですか?」

クリムゾン「ああ、正規兵の数にここを持たせられないって思ったのかもしれない。城壁に入った時にはもぬけの殻だったよ」

カムイ「………」

クリムゾン「ん、どうしたんだい?」

カムイ「いいえ、それで。城壁を越えた後はどうなったんですか」

クリムゾン「……シュヴァリエ公国の都市にマクベスが入った時には、白夜軍は撤退の動きに入ってたよ。後から聞いた話だけど、騎士団が戦況を盛り返したって言ってたから、それと城壁が落ちたことが重なって、白夜が撤退を開始した。でも、しんがりを務めることになった兵もいたんだ」

カムイ「多くの兵を逃がすための囮ですか……、あのクリムゾンさん、正直に答えてもらえますか?」

クリムゾン「なんだい?」

カムイ「その、最後の戦いは争いでしたか?

クリムゾン「……争い――」

カムイ「……」

クリムゾン「……争いのわけない。あれは単なる虐殺だ」

カムイ「虐殺……ですか」

クリムゾン「……戦闘の意思がなくなった相手をめった刺しにして笑ってる兵がいた。動けない女に群がってる男たちもいた、怖さに耐えるように身を寄せ隠れていた家に火を放って、逃げる奴を追いかけて、追いかけて……逃げきれなくなったところで殺していた。それをマクベスは愉快そうに見てたよ」

カムイ「………」

クリムゾン「私は止めたかった。でも、シュヴァリエを開放するためにやってきたマクベスに意見することなんてできなかった。私は、多くの人間が一方的に殺され犯されていくのをただ黙って見てるだけだった」

カムイ「……クリムゾンさん」

クリムゾン「今でも、時々思い出すんだ。男の組み敷かれてる女や、足もとに倒れて動かなくなった亡骸がさ、ふと頭をよぎるんだ。暗夜軍がしたことはたしかにシュヴァリエ公国の解放に繋がったけど、そのやり方を私は支持できない」

カムイ「……マクベスさんは、あまり兵士に恵まれていないんでしょうね」

クリムゾン「?」

カムイ「多分、兵士たちは最初マクベスさんから指示を仰いだんじゃないですか?」

クリムゾン「な、なんの指示さ」

カムイ「簡単です。ここに女がいる、この女を犯してもいいですか、って。私の臣下にそんなことを嬉々揚々という人はいません。それは私が臣下の方たちに恵まれているから、そういったことが許されるわけもないと、みんな知っているからです。ですが、マクベスさんが率いている兵士たちは違います、それをマクベスさんはよく理解していると思いますよ」

クリムゾン「……何が言いたいんだよ」

カムイ「私は国取りとか、領土拡張とかそういうものはよくわかりません。そもそも、できれば戦いなど起きない方がいいんですよ。マクベスさんもなんだかんだ言えば、戦いをせずに結果が出るのが望ましいと考えているでしょう」

クリムゾン「だったら、シュヴァリェ公国であいつが出した指示は」

カムイ「はい、でもそれは仕方がないんですよ。なにせ、マクベスさんとは全く関わりのない兵士たちが大量にいたんですから。それに隠ぺいされた戦死された兵の話もあります。正直、城壁攻略までに置いていえば、マクベスさんは兵士を消耗して、敵に逃げられただけの状態なんですよ。それを従えている兵士たちに見られているわけですから。兵士の士気低下というのは目に見えて自身への評価に繋がりますからね、マクベスさんとしてもそれは抑えなければならないことです。軍師を務めている以上、泥を塗るわけにはいきませんからね」

クリムゾン「……まさか、そんな、そんな理由で!?」

カムイ「クリムゾンさん。あなたにとってそんなことでも、マクベスさんにとっては正規兵に頼りにされる指揮官を演出できる格好の舞台だったんですよ。あそこにいた方たちは、それを体よく提供してくれたでしょう。戻ってからマクベスさんに対する正規兵の指示は上がっていますからね。ただ、本当の意味でマクベスさんを信頼している人はいないでしょうが」

クリムゾン「……わからないよ。そんなことで、あんな蛮行が許されるって言うのかい?」

カムイ「……戦争はそういうものですから、相手は白夜の兵です、何をしても御咎めなどありませんから。マクベスさんの命令はやりたいことをやっていいという、許しみたいなものなんですから」

クリムゾン「敵国の人間なのはわかる、だけど民間人にそんなことをしていいはずはないだろ。自分は兵士じゃないと懇願しているのに、そんな相手を殺すなんて」

カムイ「そうですね、でも起きてしまったことは変えられませんから。クリムゾンさん、もう話は大丈夫ですよ」

クリムゾン「……少し熱くなってたかもしれない」

カムイ「ふふっ、感受性豊かなんですね。クリムゾンさんらしさなのかもしれませんね」

クリムゾン「そ、そうかな……」

カムイ「はい、長い間拘束してしまって申し訳なかったです。私は部屋に戻りますから、クリムゾンさんはゆっくりしていてください」

クリムゾン「あ、ああ。なんだか、話して後悔した気がするけど、カムイに聞いてもらえてちょっと肩の荷が下りた感じがするよ」

カムイ「ふふっ、そう言ってもらえると話を聞いた甲斐があるというものです。それでは、失礼しますね」

 ガチャ バタン

カムイ「……民間人……ですか」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・レオン邸―

レオン「サクラとカザハナはどう思う?」

サクラ「その、シュヴァリエ公国の騎士さんですよね。その、話を聞く限りだと、少しだけ」

カザハナ「いや、アクア様の話を聞いた限りだとあやしいよ、それ」

レオン「うん、僕も同じ考えだよ。火の気のないところにとはいうけど、ここまで露骨に説明されると疑わずにはいられないかな」

カザハナ「でも、目的がわからないよ。要人の暗殺とかかな?」

レオン「どうだろう。こうやって堂々と現れてるところを見ると、要人暗殺とかそういったことを考えるようには見えない。だから、正直それが不気味で仕方ないんだ」

サクラ「あ、あの。本当にカムイ姉様に会いに来ただけだったりするんじゃないでしょうか?」

レオン「会うだけっていうことだけですでに意味がわからないんだけど。つまり、接触することが目的ってこと?」

カザハナ「何のためによ」

サクラ「そ、そのお友達になるため……とかでしょうか?」

レオン「……そんな平和的なものではない気がするけど。まぁ、姉さんが直に見ているんだから、そんな間違いが起きるとは思えないよ。さてと……」

サクラ「これから軍議ですか?」

レオン「ああ、この頃は臣下たちにも自由時間を与えてる。監視の目がないからって勝手に外へ出ないようにね」

カザハナ「わかってるわよ。さすがに死にたくなんてないし、それに抜け出して白夜に帰っても、今は意味なんてないから」

レオン「……ごめん、ちょっと無神経だった」

カザハナ「いいからいいから。ほらほら、レオン王子。早くいかないと軍議に遅れちゃうよ」

レオン「ああ、わかってる。それじゃ、行ってくるから、おとなしくしてるんだぞ」

 ガチャ バタン

カザハナ「はぁ、それじゃあたしちょっと行ってくるね~」

サクラ「カザハナさん、いくら自由にしていいって言われてても」

カザハナ「いいじゃない。それに、結構あたし気に入ってるんだよ。あのひらひらしてるスカートとか」

サクラ「レオンさんが帰ってきたら怒られちゃうかもしれないよ」

カザハナ「軍議の日は決まって夜まで帰ってこない。だから、最低夕方までは自由時間よ。それに少しだけだから、ね?」

サクラ「わ、私にお願いされても」

カザハナ「そういうわけだから、ちょっと着替えてくるね!」

 タタタタタタタタッ

カザハナ「うん、なんだかんだでこのメイド服動きやすくていいのよね。それじゃ、戻ってサクラに紅茶でも入れてあげよう。ふふん、少しは様になってきたはずだし」

 ガチャ 

レオン「……」

カザハナ「」

レオン「その格好」

カザハナ「こ、これは――って、軍議のほうはどうしたの。遅れるとまずいんじゃない?」

レオン「ああ、ちょっと忘れ物をしてね」

カザハナ「珍しい、いつも忘れ物なんてしないのに」

レオン「ははっ、僕だって忘れることだってあるよ」

カザハナ「まぁ、そうよね。カムイ王女の客人が危険人物かもしれないなんて話をしてたからかな?」

レオン「……」

カザハナ「?」

レオン「そうだね。ははっ、僕としたことがいろいろと考え込んでるのかもしれない」

カザハナ「しっかりしてよ」

レオン「でも、勝手にメイド服に着替えてるのは感心しないけどね」

カザハナ「こ、これは……」

レオン「まぁいいよ。それじゃ、僕はもう行くから」

カザハナ「へっ、……うん」

レオン「あ、それと、結構似合ってるんじゃないかな。その服装」

カザハナ「……」

レオン「それじゃ……」

 タタタタタタタッ

カザハナ「……」

 テトテトテトテト

サクラ「あ、カザハナさん。遅かったで――。ど、どうしたんですか、なんだか無表情ですよ?」

カザハナ「ウウン、ナンデモナイヨ、サクラ、トッテモコイシイコウチャ、イレテアゲルワネー」

サクラ「そんな片言言葉で返されても、全然説得力ありませんよ?」

カザハナ「ダウジョウブ、ホントウニナンデモナイノ」






カザハナ「……///」

◆◆◆◆◆◆
―星界・マイルーム―

カムイ「……」

 コンコン

リリス「カムイ様、皆さまをお連れしました」

カムイ「はい、入ってもらってください」

ラズワルド「ははっ、この空間に来るのも久しぶりだけど。カムイ様の部屋に来るのは初めてかな」

ルーナ「邪魔するわよ。って、何もない部屋ねここ、もっと何か置きなさいよ」

オーディン「ふっ、魅惑なる隠された大地に聳える隠れ家とか、なんだよこれカッコよすぎるだろ」

リリス「すいません、一人とってもうるさい人が」

カムイ「いいえ、構いませんよ。むしろ、賑やかなことはいいことですから」

ラズワルド「そう言ってもらえると嬉しいよ。僕たちのこと招待してくれてありがとう、カムイ様」

カムイ「いいえ。いずれお話を聞かなくてはいけないと思っていましたから。どうぞ、座ってください」

ルーナ「……失礼するわね」

オーディン「それにしても、こんな隠れ家があるなんて。リリスはすごいな」

リリス「これくらいしかカムイ様のお役にたてませんから。それでは、私はしばらく外で待っていますね」

カムイ「はい、すみません」

リリス「いいえ、では皆さん。またあとでお会いしましょう」

 ガチャ バタン

カムイ「さて、ここに来てもらったのは他でもありません。あなた達に少し聞きたいことがあってお呼びしました」

ラズワルド「僕たちの目的、そういうことですよね?」

カムイ「はい、正直ラズワルドさんだけかと思いましたが、ルーナさんも、オーディンさんも来るとは予想外でした。皆さんは最初からお知り合いだったんですね」

ラズワルド「まぁ、腐れ縁みたいなものです」

オーディン「そうさ、俺たちは切っても切れない縁で繋がれているんだからな」

ルーナ「はぁ、ほんと、長い間一緒よね」

オーディン「ふっ、運命が俺たちをつかんで離さないだけさ。そう、俺たち選ばれし者なんだからな!」

カムイ「ふふっ、オーディンさんは面白い人ですね。さて、皆さんは私のためにここまで戦ってきてくれました、ですから、私としてはあなた方の目的に力添えがしたいと考えてます」

ラズワルド「……あまり詳しいことは言えませんがよろしいですか?」

カムイ「はい、話せないことや話したくないことは別に構いません。ただ、目的だけはわかるように教えていただけませんか?」

ラズワルド「はい、僕たちの目的ですが―――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「神器を巡り合わせる……ですか」

ラズワルド「はい」

カムイ「ふむ、よくわからない話ですね。それをすることによって何が起きるのか、全く予想がつきませんから」

ルーナ「詳しいことは教えられない、けどそれが約束で、あたしたちの目的だから」

オーディン「ああ、この力はその目的のために、使われるべき力だからな」

カムイ「そうですか、と言っても、このまま戦争が続けば否応にも巡り合うことになりそうですけどね」

ラズワルド「確かにそうかもしれません。でも、それはつまり」

カムイ「ラズワルドさん、暗夜に付いた時点で、その覚悟くらいはありますよ。どういう形であれ、私が白夜の方々を裏切ったことに間違いはありませんから」

ラズワルド「……しかし」

カムイ「いいですか、私はあなた達のするべき目的に力添えすると言っているんです。このまま流れに任せても、それが成されるのであれば、それはむしろいいことです。それに、私だって相手を殺したいわけではありませんから、だから安心してください」

ラズワルド「……はい、カムイ様」

ルーナ「はぁ、ラズワルドはダメダメね。カムイ様はわがままなんだから。ね、カムイ様」

カムイ「ふふっ、そうですね。さて、これでラズワルドさん達の目的はわかりましたね」

カムイ「さてと、オーディンさん。ちょっとよろしいですか?」

オーディン「ついにカムイ様の淫靡手が、ついに俺に向けられたということだな」

カムイ「……淫靡手?」

ラズワルド「……多分、カムイ様のエロハンドのことです」

カムイ「なるほど、そういうことですか。言葉が変わると、予想されていたとはわからなくなってしまいますね」

オーディン「ふっ、この漆黒のオーディン。どんな責めにも屈するつもりはない、俺こそ淫靡手の誘惑を耐えきる唯一無二の戦士だ!」

カムイ「ふふっ、相当の自信ですね。ちょっと指を解さないといけないようですね」

ラズワルド「うっ、カムイ様の指、すごく柔らかそう」

ルーナ「んー、でもあたしはあまりそんな攻められてないのよね」

ラズワルド「確かに僕もそうだね」

カムイ「はは、そういうこともありますよ」

オーディン「ふっ、ラズワルドとルーナが耐えられたなら、楽勝だな。さぁ淫靡手の使い手カムイよ、この俺から嗚咽を引き出してみるがいい!」

カムイ「そうですか、なら遠慮なく―――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

オーディン「うわあああああ、やめろぉ、やめ、そ、そこは」

カムイ「どうしたんですか、こんなに体をピクピクさせて、なにがやめてほしいんですか?」

オーディン「だ、だからその、えっとですね」

カムイ「ふふっ、今さっきまでの言葉遣いはどうしたんですか。もっと、シュトルムシュオールとか、アイゼンドラッケンとか、そんな感じの言葉で私を封じ切るんじゃないんですか?」

オーディン「ちょ、ちょっとまって、ほんとおねがいします。ふたり、二人に見られてるからぁ! はううん!」

カムイ「見せつけてるんですから、焼きつけてもらいましょう。漆黒のオーディンは耳から首筋にかけてのラインをこうやって、優しく撫でられると……」

オーディン「っあ!」

カムイ「声をあげちゃう人間なんだって……」

ラズワルド「ううっ、これをずっと見せられるとか、すごい拷問だよね」

ルーナ「ええ、なまじ知り合いなだけに、直視できない光景だわ」

オーディン「お、おい、二人とも、見てないで助けてくれ! この、この人容赦……」

カムイ「ふふっ、顔が震えて温まってきてますよ、オーディンさん」フゥー

オーディン「っはうあう」

カムイ「耳も弱いんですね、こんなに弱点がいっぱいなのに、私の淫靡手を攻略できると思ってるんですか?」

オーディン「やめっ、やめてー。耳は、耳に息吹きかけるのはー! し、静まれ、静まれ俺の中でうごめ――って、はうあああああっ!」

ラズワルド「カムイ様、ごめんなさい。これ以上は勘弁してください、見てるこっちが倒れたくなります」

ルーナ「私からもお願いするわ、正直、あしたの仕事に影響するかもしれないくらい、見ててきついから」

オーディン「ひどくない、やられてるの俺なのにひどくないか!?」

カムイ「仕方無いですね。オーディンさん、また今度機会があったらお触りさせてくださいね」

オーディン「……その、遠慮させてほしいです」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城『王の間』―

マクベス「……カムイ王女に正規兵を任せるというのですか!?」

ガロン「何か不満があるようだな、マクベスよ」

マクベス「カムイ王女はまだ、正規兵を統率できるほどに戦闘実績がありませぬ。まだ懸念材料がある以上、ここはこのマクベスに任せるていただけば」

ガロン「ふむ、マクベスよ。お前はわしの判断にたいして意見している。そう考えてよいのだな?」

マクベス「そ、そんなことは。ただ、私は暗夜の正規兵を任せられるほど、カムイ王女には実戦経験が――」

ガロン「ふっ、港町ディアの猛攻を阻止し、賭博の町マカラスまでも開放した我が子は力不足だと、そういいたいのか?」

マクベス「そ、それは」

ガロン「ふっ、マクベス。シュヴァリエ公国での一件もある、お前にも休み時間がいるだろう。その合間、正規兵をカムイが運用するだけの話だ。何も不思議なことはあるまい」

マクベス「ガロン王様、私は」

ガロン「話は以上だ……。しばしの休みに入るがよい」

マクベス「………わかりました、ガロン王様」

 ガチャ バタン

ガロン「ふふっ、憎かろう。悔しかろう、さぁ、マクベスよ。どう動く、お前の心にあるそのどす黒いものは、我にどんな余興を与えてくれるのだろうな? 楽しみにしておるぞ……」


休息3 おわり

○カムイの支援一覧●

―対の存在―
アクアB+
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
ギュンターC+
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアC
(イベントは起きていません)
フローラC
(イベントは起きていません)
リリスB   
(一緒に眠ったことがあります)

―暗夜第一王子マークス―
マークスC+
(イベントは起きていません)
ラズワルドC
(あなたを守るといわれています)
ピエリC
(今度はカムイの弱点を探ってみせると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
レオンC+
(イベントは起きていません)
オーディンC→C+
(イベントは起きていません)
ゼロC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第一王女カミラ―
カミラB
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ルーナC+
(目を失ったことに関する話をしています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB
(イベントは起きていません)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラC+
(イベントは起きていません)
カザハナC
(イベントは起きていません)
ツバキD+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
サイラスB
(イベントは起きていません)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)

●仲間間支援状況○
 
・新規発生イベント

 ギュンターとサイラスのイベントが始まりました。
 
・進行したイベント

 ジョーカーとフローラのイベントがBになりました。
 フェリシアとルーナのイベントがAになりました。

 今日はここまでです。このスレは休息の終わりまではいけたらなと思っています。ちょっと、長文が増えると思いますので、ご了承のほどをよろしくお願いします。
  この頃は仲間間支援と本篇の文章バランスが崩れていたようで、読みづらいことが多かったかもしれません。申し訳ない。
 
 ここで一度、仲間間支援のほうは終わります。しばらくは本篇のみとなると思います。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・レオン邸―
アクア「そう、やっぱりレオンもそう思うわけね」

レオン「問題が起こる前に考えるとそうなるってだけの話だよ。たしかにマクベスへのあいさつが無いままに姉さんだけに会いに来てるのは不自然だからね……」

アクア「……また、争いが起きるのかしら?」

レオン「それを未然に防げればいいけど。サクラは友達になるためにここにやってきたっていう意見だったよ」

アクア「ふふ、サクラらしい考えね。そんな平和的なものであればいいのだけど、それは淡い期待としか言えないわ」

レオン「そうだね。わざわざここまで来てるんだから、もう少しはっきりとした目的があるとは思う。それにしても、こうして話してみるとアクアもカムイ姉さんのこと、心配なんだね」

アクア「……命を助けてもらったということもあるけど、それ以上にカムイの力になりたいの」

レオン「そう。なら、早くした方がいいかもしれない」

アクア「?」

レオン「父上が姉さんに正規兵を任せるという話が、静かに上がってきてる」

アクア「……それは、実質マクベスの指揮権が失われるってことよね」

レオン「そうなるね。父上に姉さんが認められているっていうことだろうけど、風当たりはかなり厳しくなるはずだ。そもそもマクベスにとって面白い話のはずはないからね」

アクア「マクベス以外にも、カムイのことを目の敵にしている人たちがいるのかもしれないわね」

レオン「ふっ、まぁそんな奴らから姉さんを守るのもいいじゃないか」

アクア「ふふっ、そうね。カムイのことだから、にっこり笑って頭を撫でてくれるかもしれないわ」

レオン「ちょ、なんで、そういう話になるわけ?」

アクア「だって、話を聞けば聞くほどレオンはカムイのことが大好きみたいだから……ふふっ」

レオン「そ、そんなわけないから。ほら、カムイ姉さんって、そのなんだか放っておけないところとかあるから」

アクア「その感じわかるわ。でも、レオン、カムイの話をしている時のあなたは真剣そのものよ。すごい親愛を感じるから」

レオン「だからそれは……////」

アクア「あらあら、顔を赤くして可愛いわね」

 ワイワイ ガヤガヤ

カザハナ「ううっ、何話してるんだろ?」

ツバキ「カザハナ、扉に張り付いて何してるの?」

カザハナ「な、なんでもないわよ!」

サクラ「カザハナさん、こんなところにいたら、レオンさんに怒られちゃいます。部屋に戻りましょう?」

カザハナ「……」

サクラ「はぁ、ツバキさん」

ツバキ「わかったよー、さぁさぁ、カザハナ。部屋に戻ろうねー」ガシッ
 
 ズルズルズル

カザハナ「ああっ、あと、あと少しだけだから。あと少しだけだからぁ!」ジタバタ

サクラ「カザハナさん、アクア姉様とレオンさんの御話の邪魔をしちゃ駄目です」



 ジャマシテルワケジャ――――
 
レオン「……何やってるんだよ、あいつらは」

アクア「ふふっ、本当に自由にさせてあげているのね。はやくこの問題を終わらせて、サクラ達が白夜に帰れる策を考えないといけないんでしょう?」

レオン「うん、カムイ姉さんに任されてるから。それにできれば帰してあげたいって言ったと思うけど」

アクア「そうね、再度確認して悪かったわ。でも、お礼はまた言わせてちょうだい、ありがとう」

レオン「お礼なんていらないから。それじゃ、僕は午後から軍議に出ないといけないから」

アクア「? 時間にしては早いと思うけど?」

レオン「色々と議題の準備が必要だからね、それじゃ失礼するよ」

 ガチャ バタン

アクア「明日にでも、カムイに話さないといけないわね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・北の城塞―

カムイ「……」

クリムゾン『敵国の人間なのはわかる、だけど民間人にそんなことをしていいはずはないだろ。自分は兵士じゃないと懇願しているのに、そんな相手を殺すなんて』

カムイ「……正直、これだけを証拠とするのはよくないのですが、普通ならわかるはずのない情報なんですよね」

リリス「カムイ様、やっぱりそういうことなのでしょうか?」

カムイ「正直なところ、まだわかりません。ですが、あの場にクリムゾンさんはいなかったのに、どうやって知ることができたのかは全くわからないんですよね。マクベスさんの報告書にもそんな記述は無かったようですから」

リリス「……どうするんですか?」

カムイ「まだ、考えが纏まりません。纏まりませんが、一度レオンさんに確認しに行くのがいいかもしれません。クリムゾンさんが何か目的をもってここに来ているとレオンさんは踏んでいるようですし。ただ、誰からか話が来たということですから、レオンさん自体が気付いたことではないのかもしれませんね」」

リリス「……やはり、ここは皆さんにも協力を仰いだほうが」

カムイ「大事にすると、クリムゾンさんに迷惑がかかりますし、それが原因で彼女が拘留されたとなれば、それが新しい火種を呼ぶかもしれません。シュヴァリエ公国の人々が抱いている暗夜王国へのイメージは、この前の白夜軍掃討戦で最低なものになっているでしょうからね。他人であろうとも、それがどうされているかを見てしまった人たちが抱く感想は似通って同じものでしょうから」

リリス「わかりました、カムイ様の考えに私は賛同しますね」

カムイ「すみません」

リリス「いいんですよ。それではカムイ様、私はお出かけしてきますね」

カムイ「ええ、久々にお休みですから。今日もピエリさんとお出かけなんですよね?」

リリス「はい、カムイ様にもピエリさんがプレゼントしてくれたリボンを見てもらいたいんですけど」

カムイ「ははっ、触らせてもらいましたから。私には可愛いリボンを付けたリリスさんが見えますよ」

リリス「ありがとうございます。それでは………」

 ガチャ バタン

カムイ「……はぁ、どうするべきでしょうか」

 コンコン

カムイ「はい」

ジョーカー『カムイ様、ジョーカーです』

カムイ「ジョーカーさん、どうしました?」

ジョーカー『はい、レオン様が来られまして、今日は何かご予定が?』

カムイ「……いいえ、何もありませんが。ちょうど良かった、話したいことがありますので貴賓室に通してもらえますか。私も向かいますので」

ジョーカー『仰せの通りに』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

レオン「………」

 ガチャ

カムイ「すみません、お待たせしてしまって」

レオン「ううん、僕の方こそ、何も連絡なしに来ちゃってさ」

カムイ「いいえ……?」

レオン「姉さん、どうかした?」

カムイ「いえ、レオンさん背が縮みましたか?」

レオン「……ひどい挨拶だよ、それ」

カムイ「そうですか、ここら辺が……」

レオン「そこは眉間だよ。ちょっと、痛いからやめてくれないかな?」

カムイ「すみません。サクラさんたちはお元気ですか?」

レオン「ああ、元気で困るくらいだよ」

カムイ「そうですか、それは良かったです。あの、レオンさん、今日ここに来られたのは――」

レオン「カムイ姉さんのことだから察しはついてると思うけど」

カムイ「……クリムゾンさんのことですね? 安心してください、すでに人払いは済ませてありますから」

レオン「……さすがは姉さんだ、わかってるなら話が早いよ」

カムイ「レオンさんはどう思っているんですか?」

レオン「……僕の意見より、まずは姉さんの意見を聞きたいかな。僕の意見なんて、すでに予想されてるかもしれないからね」

カムイ「そんなことはないと思いますけどね」

レオン「だからこそだよ、僕の意見と姉さんの意見が一緒だったら、何も間違いはないはずだからね」

カムイ「そうですか。では、私の意見としてですが……多分、クリムゾンさんは白夜と繋がっていると思います」

レオン「……どうしてそう思うんだい?」

カムイ「今回の訪問もそうですが、クリムゾンさんが暗夜に抱いている感情に良いものを感じません。それを押し殺しながら来る理由が、私へのお礼というのはいささか負担がかかり過ぎるものです」

レオン「うん、本来ならマクベスに礼を言うべきところだからね」

カムイ「話はクリムゾンさんから聞きました、どうやら白夜兵に対しての蛮行を容認したようです。それがクリムゾンさんには許せなかったのかもしれません」

レオン「……」

カムイ「ただ、目的は未だにわかりません、でも何かをしたいというわけではありませんし。とくに出掛けることもなく、今もここにとどまっていますから」

レオン「……姉さんに会いに来たんじゃないかな?」

カムイ「私にですか? でも、私と接触して意味があるとは思えないのですが。私はこの頃はマクベスさんから嫌われてしまっているようですし、そんな人と話しても、反感を買うだけだと思うんですが……」

レオン「そうだね、ここから自由になってわずかの間に多くの功績をあげてるんだから、マクベスが面白く思うはずなんてないよ。他にもそういう奴らはいるからね」

カムイ「…あまり、気分が良いものではないですね。だからこそ、そんな方たちからクリムゾンさんを守らないといけませんね」

レオン「守る?」

カムイ「はい、私はクリムゾンさんの真意を確かめようと思います」

レオン「……真意次第では殺すのかい?」

カムイ「いいえそこまではいかないと思います。何も起きていないのに、処罰などできませんし。それに一介の騎士が言うことで戦争なんて起きたりしませんから」

レオン「……なるほどね、それは言えてる。でも、なら早くした方がいいかもしれない」

カムイ「? どういうことですか」

レオン「……クリムゾンに不信感を抱いている者がいるみたいだからね。今は何も動いてなんていないけど」

カムイ「そうですか、まさかそれを伝えに?」

レオン「ははっ、姉さんのためだからね。これくらいのこと容易いことだから。それじゃ、僕はこれで戻るよ、後のことは任せるね」

カムイ「はい、ありがとうございますね。レオンさん」

レオン「うん、それじゃあね」

 ガチャ バタン

レオン「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・レオン邸―
カザハナ「……ああ、もう。なんでこんなことになってるのよ、あたし」

カザハナ「レオン王子とアクア様が何話してるかなんて、気にする必要なんてないのに……。はぁ」

 ヒラヒラ

カザハナ(ヒラヒラしてて可愛いから着てたけど、今は違う意味で着てる気がする)

カザハナ「……あたし、どうしちゃったんだろ」

カザハナ「……ああ、もう。これもレオン王子の所為よ! あんな風に似合ってるなんて言うから!」

レオン「僕がどうしたって?」

カザハナ「う、うわあああ! れ、レオン王子!?」

レオン「いきなり驚かないでくれないかな。それと、またその服を着てるんだね」

カザハナ「な、何か文句あるの!」

レオン「別に、とりあえず似合ってはいるからね」

カザハナ「な、ばかぁ////」

レオン「? 意味がわからないけど、どうしたんだい? なんだか、考えごとをしてたみたいだけど」

カザハナ「あんたがアクア様とどんな話をしてたのかなって、ちょっと気になってただけ、ちょっとよ、ちょっとだけよ!」

レオン「そうかい?」

カザハナ「……やっぱり、レオン王子も頼りになる人のほうがいいの?」

レオン「………」

カザハナ「アクア様みたいにカムイ王女に危険が迫ってるかもしれないって教えてくれるような、そんな人のほうが……」

レオン「……」

カザハナ「べ、別にね。あんたのことを支えたいとかそういうことじゃないから、ただ、その、気になっただけで……」

レオン「ありがとう、気にしてもらえるのはうれしいよ」

カザハナ「そ、そう」

レオン「でも、別に肩肘を張る必要はないよ。君には君の良さがある、それで別にいいだろう?」

カザハナ「……なんか優しいね、レオン王子」

レオン「状況が状況だからね、気落ちしてるまま放置するのも問題になる」

カザハナ「……ありがとう。でもどうしたの、午後は軍議のはずじゃ」

レオン「ん、ちょっと新しい議題が入ってね。その準備に戻ってきたところだから、すぐに戻らないといけない」

カザハナ「そ、そう……」

レオン「それじゃ」

カザハナ「レオン王子……」

レオン「ん? どうかした?」

カザハナ「え、えっと、その……」



カザハナ「行ってらっしゃい」



レオン「……うん、行ってくる」

 タタタタタタタッ



カザハナ「……胸が、ドキドキする……」

レオン『あ、それと、結構似合ってるんじゃないかな。その服装』

カザハナ「……ううっ」

レオン『別に、とりあえず似合ってはいるからね』

カザハナ「別にだけ、余計よ……///」

◇◇◇◇◇◇
―暗夜王国・北の城塞『来客室』―

クリムゾン「………」

~~~~~~~~~~~~~

シュヴァリエ騎士『クリムゾン、何をためらう必要がある。お前が前線で立つことこそが自由への旗揚げになる。それをお前も理解していたはずではないのか?』

クリムゾン『……』

シュヴァリエ騎士『今、城塞の警備の八割をシュヴァリエは任されている状態だ、そう簡単に破られることなどない。ここで一気に決起し、我らシュヴァリエの地で糧となった人々の無念を晴らさなければならない』

シュヴァリエ騎士『いやいや、あれは同胞じゃないって話だぜ、白夜にいながら暗夜に味方した奴らだって話だ。敵同士が斬り合ってただけだってよ』

シュヴァリエ騎士『なんだ、はははは、それは愉快なことだ。尚更、気にする必要ない。そうだろ、クリムゾン』

クリムゾン『ごめん、少しだけ外に出てきていいかな?』

シュヴァリエ騎士『ああ、考えがまとまったら言ってくれよ。俺たちはいつだって暗夜を倒す準備が整っているからな』

クリムゾン『頼もしいかぎりだね』

 ガチャ バタン

クリムゾン『……どうすればいいんだろうね』

???『どうしたんだ? クリムゾン』

クリムゾン『その声、リョウマかい?』

リョウマ『ああ、なんだか気落ちしているようだったからな』

クリムゾン『はは、恥ずかしいところ見られちゃったね。こんなところに遙々来てもらってるのにさ。もう、シュヴァリエの生活も板に付いた感じじゃないか?』

リョウマ『そうだな、あの作戦の日に上陸してからずっとここにいたのだからな。慣れるものさ』

クリムゾン『それも、そうだよね……』

リョウマ『反乱の件か……』

クリムゾン『……ああ、なんでだろうね。ここに来て思うんだよ、本当にこんなことして意味があるのかって』

リョウマ『今、シュヴァリエ公国は暗夜の敵対国ではないのだろう?』

クリムゾン『まぁね、でも明日には敵対国になるかもしれないよ。私が戦おうって言えば、みんな動いてくれるからさ。いや、私が戦わないっていっても、いずれは戦うことになるとは思うけど』

リョウマ『そうか……俺はできれば戦ってほしくなどないのだがな』

クリムゾン『リョウマ?』

リョウマ『民間人を犠牲にする戦い方を許可し、民が殺されている中で地下に潜み、何もできなかった俺のような男が言うことなど、許されないことだろう。だが、だからこそ、俺はそんな戦いにこのシュヴァリエを巻き込みたくないと思っている』

クリムゾン『リョウマは武人だね』

リョウマ『武人ではないさ。あの作戦を止めることができなかったのだからな……』

クリムゾン『あのさ……リョウマがもしも、ここを攻めてきた暗夜軍だったら、民間人たちをどうしていたと思う?』

リョウマ『抵抗する者は切り捨てるしかない。だが、力無き者や無抵抗なもの、降伏した者に刃を下ろすことはない。する必要性がないことだからな』

クリムゾン『そう。私ね、マカラスで死んだ白夜兵の数、数えたんだ。確かに少なくない数が死んだけど、遺体は30くらいしかなかったよ。全部が民間人のでも、マカラスに連れていかれた数には及んでなかった』

リョウマ『そうか……。タクミから話は聞いている。マカラスを開放したのはカムイだとな……。あいつはそれに気が付いたのかもしれない、あそこにいるのが戦闘兵じゃないことに。そんなカムイが戻ってくれば、白夜は元に戻ってくれると、どこかでまだ信じている俺がいる。情けないとはわかっていてもな』

クリムゾン『ねぇ、リョウマ。私、カムイともう一度話してみたいんだ』

リョウマ『?』

クリムゾン『だからさ、リョウマ。私が戻るまでの間、みんなが動くのを止めてくれないかな?』

リョウマ『……そうか。わかった、出来る限り善処してみせる。だが、そう長くは持たない。お前の意見はお前がいる間だけ機能する、お前がいない間にもしも何かが起こってしまったら』

クリムゾン『それは私のことが心配で言ってくれてるのかい?』

リョウマ『もちろんだ。お前に今の俺のような道を歩ませたくはないからな……だから、俺にできることがある間にカムイと会ってやってくれ』ナデナデ

クリムゾン『あはは、頭撫でられたのなんて久しぶりだよ。わかった、カムイに会っていろいろ話をしてみる。だからさ、リョウマ。私が帰るまで、お願いできるかい?』

リョウマ『ああ』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クリムゾン「リョウマ……、カムイはとってもいい奴だよ」

クリムゾン「だからカムイとは戦いたくない。闘うなら、一緒に剣を取りたい……。とって一緒に平和を手に入れたい」

クリムゾン「明後日にはウィンダムを出ないといけない、その前に話をしないと……」

―暗夜王国・クラーケンシュタイン城『マクベスの執務室』―

マクベス「おもしろくありませんね、なぜあのような小娘に正規軍の指揮など……」

マクベス「ガロン王様もどうかしている。カムイ王女はここまで奇麗に事を運んできましたが、そこがあやしいと思うべきところ」

マクベス「やはり、カムイ王女は未だ白夜と繋がっていて、情報を漏らしていると考えれば辻褄があうのです」

マクベス「ノートルディア公国を襲うはずの戦力が港町ディアとシュヴァリエ公国に向かったのも納得できるというもの……だが、証拠など何もない机上の空論、こんなものではガロン王様は耳さえも傾けて――」

 コンコン

マクベス「……人が考え事をしているときに! 誰ですか、ここは軍師マクベスの執務室ですよ」

 コンコンコンコン

マクベス「くっ! いいかげんにしませんか!」

 ガチャ

マクベス「……誰もいない? ますます腹が立ちますね、カムイ王女のこともあるというのに、こうも悪戯をされるなど。ふむ……、これは」

マクベス「手紙のようですね、一体誰が?」

 ピリッ スッ

マクベス「………! ふふふ、これは面白い話ですな。真意はどうあれ、目を光らせておくのは問題のないことでしょう」

マクベス「これでカムイ王女たちの仲良しごっこはおしまいですね。内部に亀裂が入れば、それだけで……」

マクベス「それに、これは事が起きてから動かせばよいもの。これでガロン王様にも示すことができます」

「カムイ王女が、反逆者であると認識させられる証拠を……」



 休息4 おわり

 残りはいつもくらいの時間になります。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『カムイの部屋』―

 コンコン ガチャ

リリス「カムイ様、クリムゾン様をお連れいたしました」

カムイ「はい、ありがとございます」

クリムゾン「………」

カムイ「どうしたんですか、いつもなら元気よく挨拶をしてくれるのに、今日はダンマリですね」

クリムゾン「……真剣だからね、無口にもなるのさ」

カムイ「そうですか」

クリムゾン「二人だけで話がしたいんだけど、こっちの方には退室してもらってもいい?」

カムイ「そうですね。ある場所に向かってから、退室してもらいますので。リリスさん」

リリス「はい、カムイ様。クリムゾン様、お手を失礼いたしますね」

クリムゾン「? いったい何を……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―マイルーム―

リリス「では、私は外でお待ちしておりますね」

 ガチャ バタン

クリムゾン「カムイ、お前一体何者なんだよ。こんな意味のわからないことができる知り合いがいるとか……」

カムイ「ええ、ですからできる限り有効に利用させてもらってますよ。こういった、他人に聞かれたくない話をする時などは、特に」

クリムゾン「そうかい……。ここに招いたってことは、私が来た理由をおおよそ察してるってことだよね?」

カムイ「はい、もう少し時間を掛けてからと思っていましたが、あなたのことを不審に思っている方々がいるという話を聞きましたので、こうしてお呼びしたわけです」

クリムゾン「はは、不審に思うのも仕方ないさ。むしろ、思わない方がおかしいことだからね……」

カムイ「……クリムゾンさん」

クリムゾン「大丈夫、私から話すよ。そのつもりでここに来たんだからね」

カムイ「そうですか。では、お願いします」

クリムゾン「ああ、あんたの思っているとおりだけど、シュヴァリエ公国と白夜王国は繋がってる。共に暗夜を打倒するっていう旗の下にね」

カムイ「ということは、あの時、シュヴァリエ公国が白夜軍に占拠されたというのは……」

クリムゾン「真っ赤な嘘だ。いや、真っ白な嘘って言ったほうがいいのかな。シュヴァリエ公国は白夜軍に飲食住すべてを提供してたからね。港町ディアの攻撃は城壁に援軍を送られないための戦いだったんだよ」

カムイ「……だから、役目が済んだとヒノカさんの臣下が零していたのですね」

クリムゾン「そうだよ。城壁を攻略するのも簡単だったよ。暗夜の大将に財宝とかを一切合財積んだ馬車を差し出してね、これをあげるから城壁にしばらく匿ってくれってね。あとは、白夜軍が攻めてきたと同時に、内部にいた私たちが攻撃を開始するだけで済んだよ」

カムイ「……」

クリムゾン「そこからは私がシュヴァリエ公国に白夜が攻めてきたっていうことを知らせるために、港町ディアを目指してあんたに出会った。あとはここまでの流れどおりだよ。あんたを連れてマカラスに戻って、裏切り者に戦いを強いて死なせる。大量の戦死者が出たために白夜が撤退したように演出すれば、暗夜は乗り気になって城壁、そしてシュヴァリエまで攻めてくる。そして、同じように、また白夜の大敗を演じさせるんだ。今度はマカラスの何倍の数の裏切り者を使ってね」

カムイ「……」

クリムゾン「今ね、シュヴァリエは弱小国として暗夜に認識されてるよ。弱い白夜軍に負けてしまう、非力な国だってね。でもそれでいいんだ、そのおかげで、城壁の防衛に私たちはつくことができたからね。今、誰もが暗夜に対して攻撃を仕掛けようとしてる。今はそういう段階なんだ」

カムイ「反乱をおこす、そう言いたいんですね」

クリムゾン「ああ、私も暗夜と一矢報いるため技を磨いて来たからね。この力は自由と平和のために使うつもりでいたんだ」

クリムゾン「いたんだけどさ……私にはわからなくなってきちゃったんだよ」

カムイ「わからないですか?」

クリムゾン「はは、暗夜軍に殺される白夜の民間人の姿を見ててさ、最初暗夜に対しての感情が渦巻いてたよ。でもさ、良く考えてみれば民間人がいること自体がおかしいことなんだって気づいて、それが殺されている様をただ見ているだけの私たちは、暗夜と何にも変わらないんじゃないかって……さ」

カムイ「……一つ聞いてもいいですか?」

クリムゾン「なんだい?」

カムイ「シュヴァリエ公国に来た白夜の王族は、タクミさんだけでしたか?」

クリムゾン「……いいや、ちがうよ。むしろ、タクミはやることが終わったからってもう帰っていったよ。もうシュヴァリエにはいない」

カムイ「では……ヒノカさんですか?」

クリムゾン「白夜の第一王女だっけ? 名前は聞いてるけど会ったことはないよ」

カムイ「だとすれば、まさかリョウマさんですか?」

クリムゾン「ああ、リョウマは今もシュヴァリエにいるよ。いや、正確にはいてもらってるよ」

カムイ「リョウマさんはまだシュヴァリエにいるんですか?」

クリムゾン「本当はもう帰っている予定なんだ。それを私がお願いして待ってもらってるんだ。こういっちゃなんだけどさ、私ってみんなの行動の指針を担ってたりするんだよ。私が攻めようと言えば、兵士が動く。私が戦うことで兵たちの指揮が上がる。ははっ、今考えるとマスコットみたいだよ」

カムイ「クリムゾンさん」

クリムゾン「でもさ、リョウマはね。シュヴァリエをこの戦いに巻き込みたくないって言っていたよ。あと、カムイに戻ってきてほしいって零してた」

カムイ「……残念ですけど、そのリョウマさんの願いには答えられそうにもありません」

クリムゾン「わかってる。本当はね、カムイに会いに来なくても道は決まってたはずだったんだ。でも、心の中にさ生まれた暗夜に対する思いが、それを隠してたのかもしれない。手元を見れば、民間人が殺されているのを見てただけの私たちも、何も変わらないのにね。もしも、その気があるなら、最初から一緒に戦っていればよかったんだ。そうすれば、白夜の民間人が、無残に殺されることなんてなかった」

カムイ「そうかもしれません。でも、もうそれをどうこう言っても、解決にはなりませんよ」

クりムゾン「わかってるさ。だから、こうして話をしに来てるんだよ。ここからが本題なんだ。最後まで話は聞かないと」

カムイ「そうですね。それで、クリムゾンさんは私に何を望むんですか?」

クリムゾン「カムイ、私たちと剣を取って闘ってくれないかな」

カムイ「それは、私も反乱に加われということですか?」

クリムゾン「そういうことになる。でもさ、それは今じゃないんだ、この反乱に私は正義を見出せない。たぶん、みんな人を殺したくて仕方がないだけなんだ。戦争に、悪意に酔いしれてる。この反乱の先に、私は平和も自由もなにも無いように思えてね……」

カムイ「……そうですか」

クリムゾン「だから、私はこの反乱を思い留まってくれるように、シュヴァリエのみんなを説得することにするよ。そしてさ、本当の意味でこの悪意を晴らす戦いができる時、もう一度、私はカムイに会いに来る。その時はさ、カムイも私と一緒に剣を取って共に闘ってくれるって、約束してくれるかい?」

カムイ「ふふっ、クリムゾンさん。それって私に共犯者になれって言ってるのと変わりませんよ」

クリムゾン「カムイは、暗夜王国がこのままでもいいのか? ここはお前の家族が住んでる場所なんだよ」

カムイ「……私が暗夜王国に戻ってきたのは。ここに家族がいるからではないんです」

クリムゾン「え……」

カムイ「私は目が見えません。目が見えない私は考え続けることで、その暗闇から逃げてきましたから。それを手放すことができなかったんですよ。光に甘える事を私は嫌ったんです」

クリムゾン「……自分でいることの証明みたいなもの?」

カムイ「さぁ、そこまではわかりません。自分のことなのに、おかしなことですね」

クリムゾン「そうでもないよ。私だって少し前の自分のことがまったく理解できないからさ」

カムイ「そんなものでしょうか?」

クリムゾン「そんなものさ。それで、ぶり返して悪いんだけど。私の提案、どう思ってくれるんだい?」

カムイ「……反乱ですか。たしかにある部族の村の方と、それに似た約束をしています」

クリムゾン「えっ」

カムイ「といっても、反乱というものではありませんよ。白夜侵攻が決まったところで彼らを徴用して、防衛の任に付かせるんです。暗夜の主力が抜けている間に山賊の横行が予想されますから、それを制圧するために各地の遊撃をしてもらい、その功績で独立を果たすっていう、子供だましみたいな話なんですけどね」

クリムゾン「なんだそれ、頭悪いのかいいのかわからないね、カムイは」

カムイ「はは、そうなります。でも、そうですね。クリムゾンさんの言うその時に到ったら、私はあなたとともに剣を取るのかもしれません」

クリムゾン「……本当かい!?」

カムイ「その時が来たらですよ。まずは、クリムゾンさんがシュヴァリエの反乱を抑えなくちゃいけませんから。でも、大丈夫ですか?」

クリムゾン「勝算はあるよ。なかったらこんな話なんて持ちかけないから、それに反乱自体をやめるんじゃない。時が来るまで待つだけさ」

カムイ「ものはいいようですね。マスコットって自虐してましたが」

クリムゾン「ほら、どんな場所でも戦の華みたいなのがいるだろ。シュヴァリエの反乱軍のシンボルは私だからさ」

カムイ「……シンボルですか。そうですね、ちょっとそのお顔に触れたくなりました」

クリムゾン「? いきなり何言って ひゃっ!」

カムイ「ごめんなさい。ちょっと、障るのが我慢できそうにありません」

クリムゾン「ちょ、いきなり、なにすっ。んやっ!」

カムイ「御近づきの印ですよ。私とあなた、その時に至ったら剣を取って共に闘うっていう、その印です」

クリムゾン「ひゃ、ん、んぁ、や、め、」

カムイ「ふふっ、クリムゾンさん。髪は短いんですね」

クリムゾン「あ、ああ。闘いのに、じゃまだか、らっ、ひうん!」

カムイ「……ふふ、柔らかいです。シュヴァリエ公国のシンボルにこうやって堂々と触れてるなんて、なんだか心が高鳴ります」

クリムゾン「な、なん、今さっきまでの重い話のふ、雰囲気が。あっ、んゅっ!」

カムイ「ふふ、耳朶、弱いんですね。ちょっと噛んじゃいましょうか?」

クリムゾン「そ、そんなことして、意味なんてないだろ!」

カムイ「そうですか? でも、そうですね、共に剣を取っていないのに信用できるわけありませんよね」

カムイ「では、共に闘うことになったら。ちょっと噛ませてください」

クリムゾン「ちょっと、あんたおかしいよ。一体何がしたいんだ。あっんぁ、も、もう耳朶に、ふれない、触れないでよ」

カムイ「はい、そうですね。ありがとうございました」

クリムゾン「はぁ、こっちは心臓に鞭打って話に来たっていうのに」

カムイ「そう怒らないでください。クリムゾンさん、ではその時が来たら私はあなたとともに剣を取ることを約束しましょう」

クリムゾン「……二言はないんだね?」

カムイ「はい。ですが、今は駄目です。今はどんな理由があろうともあなたと剣を取ることはできません。むしろ、剣を交える側に回ることになります」

クリムゾン「……そうならないために、私がいるんだよ。へへっ、その日が楽しみになってきたね」

カムイ「……クリムゾンさん。正直、私は難しいと思っています。あなたの話を聞いた限り、もうこの瞬間に反乱が始まっている可能性さえあるんですから」

クリムゾン「その時はその時だよ。運がなかったって諦めるしかない。でも、リョウマがいてくれるんだ。帰る予定までは持たせてくれるはずだからさ」

カムイ「そうですか。では」スッ

クリムゾン「?」

カムイ「握手です。私とクリムゾンさんの約束がここで為されたこと、それを証明する、ただそれだけの行為です」

クリムゾン「ははっ、いいねそれ。それじゃ、いつか共に剣を取って戦おうね、カムイ」

カムイ「はい、クリムゾンさんのフニフニした耳たぶを噛むことができることを祈ってます」

クリムゾン「…………」ギュッギュッギュ

カムイ「あ、あの、クリムゾンさん、手が、手が痛いです」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・ウィンダム正門―

カムイ「では、お気をつけて」

クリムゾン「ああ、宿泊場所を提供してくれてありがとう」

カムイ「いいえ、それでは」

クリムゾン「ああ、それじゃ、また会おうね」

 バサッバサッ バサッバサッ

カムイ「……」

アクア「カムイ……」

カムイ「あれ、アクアさん。どうしたんですか?」

アクア「クリムゾンは国へ帰ったの?」

カムイ「はい、明日までの予定だったんですが、急遽帰ることになったようです」

アクア「……はぁ、私が何かを言う前に、自分で片付けてしまうのね。あなたという人は」

カムイ「さて、何のことでしょうか?」

アクア「……まあいいわ。要らない心配だったのかもしれないわね」

カムイ「何の話かはわかりませんけど、アクアさんありがとうございます」

アクア「さぁ? 私も何の事だかわからないわ。でも、その感謝の言葉は素直に受取って置いてあげる」

カムイ「そうですか……」

カムイ(反乱ですか。たしかに、お父様がやっていることは圧政です、それらから民を救うという大義名分はすでに用意されています)

カムイ(でも、反乱が成功して暗夜が変わっても、平和が訪れるという確証を私は得られない。なんでしょうか、何かを私は見落としているのかもしれません)

アクア「カムイ、どうしたの?」

カムイ「いいえ、すみません。考え事をしてました」

アクア「そう。目が見えないのにここまできて疲れたでしょ、帰りは私が手を引っ張ってあげるわ」

カムイ「そうですか、なら、お願いできますか?」

アクア「ええ……」

今日はここまでです。明日で休息が終わる感じです。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城―

カムイ「歓迎会ですか?」

エリーゼ「うん! アクアおねえちゃんが仲間になってくれたのに、あたしたち歓迎会してないなって思って。マークスおにいちゃんもレオンおにいちゃんにも話しをつけてあるから、どうかなって思って」

カムイ(シュヴァリエ公国のこともありますし、歓迎会を行うのは内心抵抗がありますが、でも、エリーゼさんが頑張って準備してくれたんですから、ここはその意思を組んであげるべきでしょうね)

カムイ「いいと思いますよ。では、アクアさんにも話を――」

エリーゼ「ダメダメダメー! カムイおねえちゃん、それはしちゃ駄目だよ!」

カムイ「どうしてですか?」

エリーゼ「アクアおねえちゃんを驚かせてあげようって思ってるの。アクアおねえちゃんが驚いたところってあまり見たことがないから」

カムイ「ふふっ、エリーゼさんらしいですね。アクアさんもきっと驚いて、喜んでくれます」

エリーゼ「うん! それじゃ、あたしは準備を始めるから、カムイおねえちゃんは時間になったらアクアおねえちゃんを連れてきて」

カムイ「はい、わかりました。そう言えば、今日は珍しく何もない日なんですよね」

エリーゼ「うん、だからここしかないって思うの!」

カムイ「ですね。それではアクアさんのことは任せてください、場所はどうしますか?」

エリーゼ「場所は北の城塞の大広間の予定なんだー」

カムイ「アクアさんも城塞に身を置いているんですが……」

エリーゼ「その点は大丈夫だよ。今、アクアおねえちゃんは城塞にいないはずだから」

カムイ「? なにか用事でもあるのですか?」

エリーゼ「うーんとね、用事を作ってもらったの、カミラおねえちゃんに!」

―暗夜王国・カミラ邸―

アクア「おいしいわね」

カミラ「そう言ってもらえると嬉しいわ。アクアの好みは知らないから、カムイの好きなものにしてみたの」

アクア「……えっと」

カミラ「カミラでいいわ。その方が気が楽でしょ?」

アクア「ええ。カミラ、今になってどうして私を招いたのかしら?」

カミラ「ふふっ、あなたと話がしてみたかったからよ。あなたも私にとっては可愛い妹だからね」ギュッ

アクア「いきなり抱きつかないでほしいわ。その、少し恥ずかしいから」

カミラ「そう? でも、やっぱりそうね。アクアは抱きしめられるよりも抱きしめる方の人なのかもしれないわね」

アクア「?」

カミラ「ふふっ、包容力があるように見えるのよ。可愛いけど、どこか頼りがいのあるそんな人ね」

アクア「え、えっと、それって喜んでいいことなのかしら?」

カミラ「心が強いって意味よ。あなたが暗夜にいた頃、どんな扱いを受けていたから知らないわけじゃないわ。私もマークス兄様も、気には掛けていたけど、守りになんていけなかった。ごめんなさい」

アクア「気にしないでいいわ。それに昔のことよ、それに今は私の傍にいてくれるだけで、うれしいものだから。当時だったら、絶対に考えられないことだったもの、こうやって兄妹と話すことができるなんてね」

カミラ「ええ、こうやってあなたと巡り合わせてくれたカムイに感謝しないといけないわ。紅茶のおかわり、どうかしら?」

アクア「ええ、お願いするわ」

カミラ「待ってて頂戴、おいしいのを入れてあげるわ。ふふっ、今日は良い日になりそうね」

アクア「?」

カミラ「ええ、こうやってアクアと御話をして、お茶会を楽しめるなんて、いい日に決まってるじゃない」

アクア「そ、そう……」

カミラ「ふふっ、照れてるのね」

アクア「そ、そんなことないわ。ただ……」

カミラ「ただ?」

アクア「私が来たことで、カムイの居場所を取ってしまっているんじゃないかって、思わなくもないの。だって、カミラはカムイとのお茶会のほうが楽しいと思うのでしょう?」

カミラ「……そうね。確かにそう思うわ、あなたには誤魔化しなんてあまり通用しないみたいだから」

アクア「……」

カミラ「でも、これからは違うわ。アクアも私の大事な妹だもの、これからゆっくり育てていくつもりよ、あなたとの繋がりをね。それにカムイだってアクアが私たちと仲良くなることに賛成してくれるわ」

アクア「そうね。私がみんなと仲良くしてるって聞いて、カムイが嫉妬してる姿なんて想像できないもの」

カミラ「それはそれでお姉ちゃん悲しいけど、なら何も問題ないじゃない?」

アクア「そうね、ありがとう、カミラ」

カミラ「ふふっ、それじゃ御近づきの印に、一緒にお風呂に入りましょう?」

アクア「……え、どうしてそうなるの?」

カミラ「だって、妹のことは多く知っておきたいから。ふふっ、裸のお付き合いは心の距離も縮められるのよ」

アクア「……カミラ、私、ちょっと急用を――」サッ

カミラ「駄目よ、もうお湯の準備は出来てるんだから」ガシッ

アクア「はふっ!」

カミラ「ふふっ、この頃はお風呂に一緒に入る子が増えて楽しいの。だから、アクアも仲間に入りしましょ?」

アクア「や、やめっ。あ、あーーーー」

 ガチャ バタン

 ポチャン

 フフッ ケッコウキヤセスルノネ アクアハ

 チョ、カミラ ソンナニサワ ンッ―――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・レオン邸―
マークス「そうか、アクアの歓迎会か、エリーゼらしい考えだな」

レオン「いいんじゃないかな、アクアも元は暗夜の王族で、故郷に戻ってきたようなものだし、僕たちの兄妹であることに変わりはないんだから」

マークス「うむ、父上にも出席してもらえるかどうか聞いてみよう」

レオン「……父上が参加してくれるとはあまり思えないけど」

マークス「そうかもしれんな。あれで、昔の父上は子煩悩だったと言って、幾人が信じるのかわからん」

レオン「僕もその話、信じられないけどね」

マークス「父上には私から話を出しておくとする。ところでレオン、この頃おかしなことはなかったか?」

レオン「おかしなこと? どういうおかしなことかな」

マークス「……いや、マクベス達の動きがこの頃全くないのだ。そう、何かを待っているかのようにな」

レオン「……何を待っているっていうんだい?」

マークス「わからない。だが、カムイに正規兵を任せるという父上の話が上がった頃、マクベスは少し荒れていた。それがぴたりと止んでいる」

レオン「……」

マークス「カムイの台頭を面白く思っていない者たちもだ。何か企んでいないと良いのだがな」

レオン「カムイ姉さんは何も悪いことなんてしてないよ。むしろ、椅子に座ってばかりで御高説しか言わない奴らは見習うべきだけどね」

マークス「そうだな。で、今日のことだが、私も時間は開けておいた、久々に兄妹で過ごすのも悪くないからな」

レオン「そうだね、僕も時間は空けておく、予定だとカムイ姉さんがアクアを連れて城塞に来る予定らしいから、僕たちは先に城塞に向かっておけばいいんだよね?」

マークス「ああ。アクアとは少しばかり話しただけだったからな。こういった席を設けてくれたエリーゼには感謝しないとな」

レオン「そうだね、兄さんはいろいろ理由をつけて軍議に参加させてとか、いろいろ面倒くさそうなこと考えそうだから」

マークス「やはり、私は気難しいことばかり考えているのかもしれないな」

レオン「それが兄さんらしさだと僕は思ってるよ。それに、兄さんから気難しさを無くしたら、何が残るか全く想像できないし」

マークス「……私自身も、予想できないな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・北の城塞―

カムイ「アクアさん、どうしたんですか? なんだかお疲れの様子ですけど」

アクア「……カムイはすごいわね。毎度のようにカミラのお風呂に付き合ってるなんて」

カムイ「カミラ姉さんですか? 特におかしなことはないと思うんですが」

アクア「いえ、色々触られてしまったから、それともカムイはそんなことされたことないのかしら?」

カムイ「いいえ、毎度のことなのでもう慣れてしまいましたから、それでどうでした、カミラ姉さんとのお風呂は」

アクア「……ノーコメントでお願いするわ」

カムイ「そうですか、それじゃ行きましょうか」

アクア「カムイ、どこに向かうのかしら?」

カムイ「大広間です、ちょっと忘れ物をしていたことを思い出しまして」

アクア「そう、よかったら。私が手を引っ張ってあげるけど」

カムイ「……そうですね。お願いできますか?」

アクア「任せて、ふふっ、こうやってカムイの手を握ってあげるのもなんだか慣れてきたわ」

カムイ「……そうですか?」

アクア「ええ……」

アクア「ねえ、カムイ」

カムイ「どうしました?」

アクア「今日考えたことがあるの。私はまた暗夜に戻ってきて、あなたは白夜に戻れなくなってしまったということをね」

カムイ「……」

アクア「そう考えたらね、今日カミラと過ごした時間がとても重く感じてしまうの。本当だったら、そこにはカムイがいるべきなのに、私がそこにいることが、とても恐ろしいことに思えてくる」

カムイ「……」

アクア「カミラはこれから絆を作っていけばいいって言ってくれたわ。でも、本当ならあの日、暗夜に付くことを決めたカムイにだけ、それは与えられるべきだって私は――」

カムイ「アクアさん、私がそんなことを気にする人だって思ってるんですか?」

アクア「で、でも――」

カムイ「ふふっ、アクアさん、誰が誰と仲良くするのかに許可なんていらないんですよ。それとも、アクアさんは皆さんと仲良くしたくないんですか? なら、確かに突っぱねてしまってもいいんですけど」

アクア「そ、そんなことはないわ。私だって、その、みんなと仲良くしたいと思っているわ」

カムイ「なら決まりですね。アクアさん、いっぱい仲良くなってください。皆さん、アクアさんと親睦を深めたいって思っているはずですから」

アクア「自信満々の発言ね。なにか知ってるような言い方よ?」

カムイ「そうですね、確かに知っていると言えば知っています。でも、教えません。もう、すぐ近くですから」

アクア「そう、なら、別にいいわ」

カムイ「はい。あと、アクアさん。最初に言いましたよね、私が白夜に戻れなくなったって」

アクア「ええ、確かにいったわ」

カムイ「戻れなくなったんじゃないんです、私は捨てたんです」

アクア「!」

カムイ「あの日、あの場所で、暗夜を選んだ時、私は白夜で生きることを捨てたんです。そして捨てたからと言って、私に何かが与えられるなんてことあるわけないんですよ」

カムイ「でも、そうですね。そんな私でも得ることができた物があるとすれば、考え続けることでしょうね。私は、考えて考えて自分の選んだ道を進むことを望んで、ここにいるんですから」

アクア「カムイ」

カムイ「だからアクアさん、私のことなんて気にしないで、みんなと仲良くしてください」

アクア「……ありがとう、カムイ」

カムイ「いいえ。そろそろ大広間―――」ピタッ

アクア「カムイ?」

カムイ「………招いた覚えはないんですが」



???「招かれた覚えもありませんのでご安心ください、ここには仕事として来ているだけですので」

アクア「マクベス?」

マクベス「おやおや、アクア様とも御方が私たちをここに呼んでおきながら、とぼけるのは感心しませんな」

アクア「な、何を言っているの?」

カムイ「……大広間でお待ちの皆さんは?」

マクベス「はい、今は丁重に御持て成しをさせていただいてます。こちらにはちゃんとした証拠も出揃っておりますのでね。皆さんには静かにしていただいたということです」

カムイ「一体、何の話ですか?」

マクベス「ふんっ、今さらあなたには関係のない話ですよ。皆さん、カムイ王女を捕らえるのです」

 ガチャ ガチャン

 
 ザザザッ 

 シュキン チャキ

暗夜兵「おとなしくしろ!」

暗夜兵「……この反逆者、アクア様から離れろ」ドガッ

カムイ「ぐっ」

 ドサッ ガシッ ガシッ 

暗夜兵「取り押さえました、マクベス様」

マクベス「皆さん、素晴らしい手際の良さです。これで不安の種が一つ摘めたというものでしょうな」

アクア「カムイ、なんでこんなことを!」

マクベス「おやおや、まだまだ情が抜けませんか」

アクア「マクベス。何を言っているの? 私、私があなたに何をしたって言うの!?」

マクベス「あなたから頂いた情報はとても役に立ちました。シュヴァリエ公国の騎士クリムゾンへの疑惑。そしてそのおかげで繋がりましたよ。カムイ王女がとんでもない売国奴であるということがですね」

アクア「そんな詭弁が許されると思っているの? 何も起きていないのに、こんなことをして」

マクベス「ええ、何も起きなければ私とてカムイ王女を疑ったりはしません。ですが、悲しいことに起きてしまったものはしょうがないのですよ。それも、カムイ王女と彼女が出会い、話をしたわずかな間にですがね」

カムイ「……!」

マクベス「おやおや、カムイ王女には思い当たる節があるようですな? ここで知らないというのであれば――」

カムイ「なにも反応しなかったら、隠し通しますか?と託するだけでしょう?」

マクベス「……ほう、そういうことを言いますか」

 カッ カッ カッ

 ドガッ

カムイ「ぐあぁっ……ゴホゴホ」

アクア「カムイ!」

マクベス「ふんっ。なら、ご存知ないカムイ王女に教えてあげましょう、一体何が起きたのか」

マクベス「先ほど、国境の城壁が占拠されたという報が入りました。それも、わずかな時間で落とされたというね」

アクア「!」

カムイ「……そういうことですか」

マクベス「ええ、そこには白夜兵の姿とともにシュヴァリエ公国の騎士たちの姿もあったそうです。どうやらシュヴァリエ公国と白夜は繋がっていたということでしょう。そして反乱声明も発せられています」

アクア「……そ、そんなことって、カムイ!」

カムイ「……」

マクベス「カムイ王女、あなたにはシュヴァリエ公国と白夜王国に味方するスパイの疑いがあります。故にあなたを拘束させていただきます。そして情報協力をしていただいたアクア様には、多くの褒美が与えられるでしょうな」

アクア「わ、私は、私はそんなことに協力なんてしてない。それにカムイは何も、何もしていないわ!」

マクベス「ふんっ、芝居も長く続くと皆から反感を買いますよ? アクア様。では兵士の皆さん、カムイ王女を連れて行きなさい」

暗夜兵「はっ。おら、さっさと立て!」

カムイ「……はい」

アクア「カムイ、私は」

カムイ「わかっています。だから安心してください」

暗夜兵「さっさと歩け!」ドガッ

カムイ「ええ、わかってますよ」

マクベス「ふんっ、哀れですな。カムイ王女」

カムイ「ええ、そうですね」

マクベス「……ふん、黙らせるのも煩わしいものですな。さぁ、皆さん行きますよ。アクア様、後日御話に上がりますので、楽しみに待っていてくださいね」

アクア「わ、私、私は……」

 ザッザッザッ

アクア「………どうして、どうしてこんなことになってしまうの」

「カムイ………」


休息時間 おわり




第2幕へ

 これにて第一スレはおわりになります。ここまで読んでくださった方々、コメントなどくれた方、ありがとうございました。

 ここでいわゆるこの話の確認があります。
 これは暗夜王国ルートの個人妄想になっています。オリジナルでは生きていたのが死んでしまったり、死んでしまったのが生き残ったりと色々な事柄が発生すると思いますので、ご了承をお願いいたします。

 次回スレは、少ししたら作ると思います。
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」第二幕
 こんな感じの題名になるかと思います。

 残りはわずかなスレなので、一応依頼は出しておきますが、埋めていただいても構いません。

 
 最後に、ありがとうございました。
 


新しいスレを立てました。

【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443780147/)

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