女騎士「くっ、こいつがどうなってもいいのか!」(51)

女騎士は人質をとった模様。

オーク「や、やめろ!子供は巻き込まないでくれ!」

子オーク「うわーん、お父さーん怖いよー!」

女騎士「私だってこんな卑劣な行為はしたくない…だがな!」

ナイフ スッ

子オーク「ひぃっ!」

女騎士「これも平和の為だ…許してくれとはいわない…ただ、理不尽に死んでくれ」

オーク「…わかった。だから子供は解放してやってくれ」

女騎士「…あぁ」

パッ

子オーク「うわーん」

ダッタッタ

オーク「おぉよしよし、怖かっただろうね…」

ナデナデ

女騎士「…」

女騎士(オークにも家族がいる…分かっている。分かっている…割り切れ…でないと、死ぬぞ…)

ギリッ

女騎士(だが私は…くっ…駄目だ、割り切れ…ハイネ…イグッ…ナイ…テッド…)

オーク「さぁ、家に帰りなさい。決して振り返ってはいけないよ…」

子オーク「え…お父さんは…?」

オーク「お父さんは…後から行くから…」

子オーク「おと…うさん…?」

オーク「いい…から…お願いだ…いう事を…きい、て…くっ…」

ポロポロ

子オーク「お父さん…」

オーク「早く!行くんだ!」

子オーク「!」

ダッタッタ…

女騎士「…行ったか。素直な子だ」

オーク「…あぁ」

女騎士「気休めを言うつもりはないが、お前の首を持って帰れば、しばらくはオーク討伐は無いはずだ。我らの王は、何かしら形ある成果を好むからな」

オーク「そうか…」

女騎士「…では、死んでもらう」

チャキッ

オーク「…ぐっ…ふぐっ…」

ポロポロ

女騎士「…」

ザンッ

・ ・ ・ ・ ・

とある時代、とある国
人間の王は残虐非道であった。
人にあらずば生きる価値無し。
魔物は例外なく殺された。
何度も歩み寄った魔物の長、魔王は
やがて諦め
自衛の為、人間を殺した。
こうして人間と魔物は
互いに殺しあう事となった。

とある時代、とある国
ごく平凡な女騎士は
当たり前の如く、魔物を殺していた…

~国営宿舎~

女騎士「…ふぅ」

サケ グビー

女騎士「…」

女騎士(馴れないな…魔物を殺した後の、この不快感には)

?「おやおや昼間から飲んでるのかい」

女騎士「…弓兵か」

弓兵「嫌なことは忘れるのが一番、忘れるには酒が一番…てね」

ヒョイ グビー

弓兵「っ、これ薄めてないじゃん!よく平気で飲めるわね…」

女騎士「平気なものか…口に含むたび火を吹きそうだよ」

弓兵「…また討伐に駆り出されたのね」

女騎士「あぁ…魔物を…殺した」

弓兵「馴れろとは言わないけど…そんなんじゃあんたの方が壊れちゃうよ」

女騎士「はは、戦神と呼ばれたお前が心配するだなんてな」

弓兵「…」

女騎士「大丈夫…大丈夫、だから」

ナデ

弓兵「…」

弓兵「私達は死と隣り合わせ…いつ誰が死んでもおかしくない…だけどさ、それでも、誰にも死んで欲しくない…当たり前じゃん」

女騎士「…あぁ。優しいな、お前は」

弓兵「またそうやって…一番危ういのはあんたなんだよ…」

女騎士「大丈夫だと言っているだろ。私は…私はお前…お前達より先に死にはしない」

弓兵「…うん」

女騎士「やる事が…やらなきゃならない事があるんだ…死ねないさ」

・ ・ ・ ・ ・

~夜~

女騎士「…」

女騎士(いつまで…いつまで私は…斬り続ければいい…殺し続ければいい…)

チャキッ

女騎士「はは、随分と血に染まったものだ、この剣も」

女騎士(人も魔物も数え切れないくらい斬った…それが正しいと…いつか平和になると…王を信じ…国を信じ…)

女騎士(なぁ、お前も同じ気持ちなのか…私と同じ気持ちで人間を…殺しているのか…)

女騎士「なぁ、魔王…」

ぽつりとこぼれた言葉は
やがて夜の静けさに消えた…

~魔王城~

魔王「…」

魔王と呼ばれるその人物は
まるで人間であった。
若干肌の色が青みがかっている以外は
まるで人間であった。

魔王「ふぅ…」

?「ため息が似合いますね、魔王様」

魔王「からかうなよ…エルフ」

エルフ「連日の指揮でお疲れ様のようです、少しお休みになっては?」

魔王「そうは…いかないさ」

エルフ「ですが…」

魔王「…わがままを言わせてくれ。今…今が無理をしなきゃならない時なんだよ」

エルフ「…はい」

魔王「心配をかけて…すまない」

エルフ「いえ…私は私の意志で…ここにいます。ここにいて…貴方の側で…」

ソッ フワッ

魔王「あぁ…ありがとう…ごめん。ありがとう」

エルフ「謝ってばかり。本当、変わらないですね」

エルフ「…」

エルフ(目に見えて衰えてきている…私の術式では…もう進行を…)

魔王「…ごめん。やっぱりもう、そろそろ駄目なのかな…?」

エルフ「!」

魔王「はは、自分の体だからね、だいたいは…うん」

エルフ「…もう、防腐魔法は効果がほとんどありません。状態保存の魔法も同じく…今はただ進行を遅くする事が精一杯です」

魔王「そうか…」

魔王「困ったなぁ…人間の王を殺すまで、保てばいいけど」

エルフ「…」

魔王「それより厄介なのがいるからなぁ…どのみち最終目標は同じなんだから、手を貸してくれてもいいのにねぇ、彼女も」

エルフ「あの人は…姉さんは、どこまでいっても人間なんですよ」

魔王「うん…だね」

クラッ…

魔王「っくぅ」

エルフ「!」

魔王「だ、大丈夫だよ。悪いけど、また頼む」

エルフ「はい…」

パァァ

魔王「っ…ふぅ。だいぶ楽になったよ」

エルフ(嘘つき…本当はちっとも楽になんか…)

魔王「ありがとう、ごめんね」

エルフ(それでもこの人は…ごめんねと…)

魔王「さて、ちょっとばかり予定より早いけど…あの計画を進めようかな」

エルフ「…はい。では手はず通りに」

魔王「頼んだ。僕は第六十八部隊に合流してくる」

エルフ「…お気をつけて」

魔王「うん」

・ ・ ・ ・ ・

エルフ「…」

エルフ(魔物と人間の全面戦争…もはや計画と呼べるものではない。恐らく魔物が一方的に人間を蹂躙するだけ…それが分からぬ男ではない筈だ…人間の王は何を考えている…)

エルフ(あるいは本当に愚者か…そんなものと心中する気なの、姉さん…?)

・ ・ ・ ・ ・

~森にて~

女騎士「イッキシ!」

弓兵「風邪?体調管理は大切だよー」

女騎士「いや、誰か噂でもしているんだろ」

弓兵「噂ねぇ…っと、そろそろゴブリンの巣だね」

女騎士「あぁ。雑魚だが数が数だ、気を抜くな」

弓兵「合点承知!」

弓兵「入口に火矢を撃つわ」

ガサゴソ

女騎士「挨拶がわりか…やってやれ」

弓兵「あいよ。ショラッ!」

パシュッ

サクッ

ゴウッ ボワー メラメラメラ

弓兵「ははははは!燃えろ、燃えろ!」

女騎士「煙に気づいたら、一気に来るぞ…構えておけ」

チャキッ

弓兵「あいよ」

ザッ

女騎士「…」

ザワザワ

ゴブA「ガァァァ!」

ゴブB「グギャァ!」

ゴブC~ゴブZ「ワラワラワラ」

女騎士「多すぎ」

弓兵「ゴブ多すぎ」

女騎士「一匹も逃がすな、全滅させろとの命令だ」

弓兵「…あいよ」

パシュッ パシュッ

ゴブA「ブヘァァァ」

ゴブB「イッグゥゥゥ」

弓兵(ったく、命令ね…王サマは慕われてますなぁ…胸糞悪いなぁ)

女騎士「はぁぁぁっ!」

ザシュッ

ゴブC「アイター」

女騎士「まとめて消えろ…せぇぇぇい!」

ズザザザザザザ

グォォ

ゴブD~S「死んだ」

女騎士「はぁっ…はぁっ…」

ガクガクガク

弓兵(またあんな負担の大きい技を…そんなに早く死にたいの、あんたはっ…!)

ゴブK「グヌヌ…」

女騎士「死に損なったか…」

テクテク

ゴブK「ウガ…」

女騎士「…」

ザクリ

ゴブK「ウ」

弓兵「…注目通りの全滅ね」

女騎士「…あぁ」

ボタボタ

女騎士「はぁ…ぐっ…あっ…ふぅ…」

ガサゴソ

ジャラジャラ

女騎士「…」

弓兵「…」

弓兵(赤い錠剤…命の前借り…まったく、なぜそこまでできるの…!?)

女騎士「うぐっ…」

バクバク ガリガリボリボリ ゴクン

女騎士「あっぐぁぁぁ…はぁぁぁ…」

ブルブル

弓兵「…肩貸すから、ほら」

女騎士「す、すまない…」

>>30
× 注目
○ 注文

・ ・ ・ ・ ・

~国営宿舎~

女騎士「はぁ…ふぅ」

弓兵「落ち着いたようね」

女騎士「あぁ、すまなかった」

弓兵「いいよ…それより、さっきの」

女騎士「…あれがないと、もう立つこともできない。はは、辛いものだ」

弓兵「いずれ尽きるんでしょ。命のストック、無限って訳じゃ…」

女騎士「ん、あぁ。まぁ効き目が無くなった時が、その時って事だな」

弓兵「そこまで王に尽くして…何になるの…何が残るの…」

女騎士「何も。何もないさ。いや、何も残してはいけないのさ、これがな」

弓兵「だって…!」

女騎士「人間の王も死ぬ。私も死ぬ。そして魔王も…それでおしまい、それからがはじまり」

弓兵「…他に方法は無いの?」

女騎士「さぁね。ただもうあれこれ考える時間も無いし、余裕もないんだ。何より、疲れたんだ、私は…私達は」

弓兵「…」

女騎士「誰もが平和を願って行動した結果さ。良くも悪くも私達は満足しているよ」

弓兵「そんな言い方…じゃあ、残される私…私達は…何なの」

女騎士「それも含めて、私は私がなすべき事を分かってやっている…つもりだ」

弓兵「…ごめん。今更こんな事言ったって…困らせるだけだって…わかっ、てるのに…」

女騎士「優しいな、お前は…本当に、優しいよ」

女騎士「やさしさだけじゃ、人は愛せないから…」

弓兵「…ああ。なぐさめて…あげられない」

オークの幽霊A「がんばれ…」

オークの幽霊B「がんばれ…」

オークの幽霊C「がんばれ…」

オークの幽霊D「がんばれ…」

弓兵「い、今まで女騎士が殺したオーク達の霊が!」

女騎士「恨みで成仏できず化けて出たか…!」

オークの幽霊A「…」

フルフル

女騎士「違うのか?」

オークの幽霊B「オレタチ…ウラミ、モウナイ」

オークの幽霊C「君も辛かったのだろう…分かる分かる、君の気持ち」

オークの幽霊D「セックス!セックス!」

オークの幽霊A「我々はただ、君…君を…」

ニマァ

オーク達「犯すために、来たのさ」

弓兵「なんとぉー!」

ヴェスバー!

女騎士「そうか…そうだよな、オークだものな」

オークの幽霊A「いいじゃない、オークだもの」

ボロンッ ギンッギン

弓兵「きゃあ、テポドン!」

オークの幽霊B「ツギハオレダ!」

ポロリ ヒョロ~

女騎士「しらす!」

オークの幽霊C「ふむ…」

ポロンチョ ダンディズムゥ…

弓兵「あらやだ、紳士的ちんぽ…」

オークの幽霊D「セックス!セックス!」

ボロンッ ギガ! ドリルゥ! ブレイクゥゥゥ!

女騎士「天元突破しとるやないか!」

オークの幽霊D「セックス!セックス!」

弓兵「あれは危険よ…あんなギガドリルでブレイクされたら…!」

オークの幽霊D「俺は俺だ、穴掘りオークだ!」

女騎士「ホモかーーーい!」

ズザザッ

オークの幽霊D「俺は俺だ!」

ガシッ

オークの幽霊A「!?」

スコココ ドプッ←この間0.8秒

オークの幽霊D「俺は俺だ!」
ガシッ

オークの幽霊B「ウガッ!?」

スコドプ←この間0.02秒

オークの幽霊D「俺俺!」

ガシプッ←この間0秒

ガシプッ ガシプッ ガシプッ

オークの幽霊D「おおおお俺」

オークの幽霊C「ふむ…危なかったですね」

女騎士「な…何が起こった?」

オークの幽霊C「ふむ…私の能力…【ゼロ・リピード】ですよ」

女騎士「な、何だその安っぽい能力名は!」

オークの幽霊C「ふむ…簡単に言うと、永遠の0秒を繰り返す、という能力です」

弓兵「なんだかわからんが、すごそうだ」

女騎士「ふふ…そんなすごそうな能力を見せられては、な…」

ニヤリ

女騎士「見せてやろう、私の必殺技…命と引き替えに放つ、最強最大の…ビッグバンマンコ!」

グモモォォォ!

モングリィィィ マングリィィィ

サニーデイサー

ビッスゥゥゥ!

モワァ…

弓兵「ぶ、ブルーチーズ臭い!」

モワァ…

オークの幽霊C「うぐっ…頭が…臭さで頭が割れそうに痛い!」

弓兵「がぁぁぁぁ、私もだ!」

女騎士「ぐふっ…」

弓兵「お、女騎士…そうか、さっき言っていたもんな…命と引き替えに放つ必殺技だと…」

女騎士「ぐふっ…」

モワァ…

そしてそのブルーチーズ臭は

世界を包み

魔王とか人間の王とか

その他もろもろを巻き込み

その命を奪い去った。

女騎士は、なんやかんやで

目的を果たしたのだった。

おつまみ、おつまみ。

【完】

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