ゼロ「私はゼロ。自宅を警備し、護る者だ」カレン「働け」(101)

ゼロ「強者(正社員)が弱者(面接志望)を虐げる世界など、私は認めない!」

シュナイゼル面接官「じゃあ帰ってください」

ゼロ「くっ…今日も駄目だった……」ガチャ

c.c.「おかえり、ルルーシュ」モッサモッサ

ゼロ「c.c.…またピザを……」

c.c.「欲しいか?だがやらないぞ」

ゼロ「要るか。それより今日はお前も面接があった筈だろう…結果はどうだった?」

c.c.「ああ、面接か。……行ってない」

ゼロ「…なに?何故だ?」

c.c.「お前の事だ。どうせ落ちてくると思ったからな」

ゼロ「な…」

c.c.「私達は共犯者だ。お前が受かってないのに私だけ受かるわけにはいかないだろう?」

ゼロ「c.c.…、お前と言う奴は……」

カレン「馬鹿な事言ってるんじゃないよ!」ガラッ

ゼロ「うおっ…」ビクッ

c.c.「おや、カレン。何をしにきた?」

カレン「何をしにきたもここは私の家だっての!居候が偉そうな口利くな!!」

ゼロ「くっ…すまない、カレン」

c.c.「ルルーシュも反省している。許してやったらどうだ」

カレン「あんたにも言ってるんだよ!毎日毎日ウチの金でピザばっか頼んで!面接にも行かないでゴロゴロゴロゴロ!!」

c.c.「たまには歩いているさ」

カレン「そういう意味じゃないっての!」

ゼロ「いや、誤解しないでくれカレン…c.c.は俺の事を思って……」

カレン「あんたもそんな簡単に騙されるな!」

カレン「って言うかルルーシュ、あんたには絶対遵守のギアスがあるんでしょ?面接官にギアスを使って雇ってもらえば解決じゃないの!」

ゼロ「ふ…私を誰だと思っている、カレン?私はゼロだぞ」

c.c.「職歴もな」

ゼロ「お、お前は黙っていろ」

カレン「? じゃあギアスを使った事があるの?」

ゼロ「当たり前だ。この就職氷河期と言われる時代…ギアスを使わずに職を得る事など不可能だ」

カレン「そ、そこまで厳しいかな?」

ゼロ「学園を卒業してすぐ、私はあるスーパーに電話をかけて面接にまでこぎ着けた…」

ゼロ「面接日はその翌日で、面接用の嘘を考えるのが面倒だった私は面接官にギアスをかけようと思ったのだ」

ゼロ「面接当日、私は面接官にギアスをかけ、無事に内定を手にいれた」

カレン「なんだ、やっぱり簡単じゃない」

c.c.「しかし、その代償はあまりに大きかった」

カレン「へ?」

ゼロ「初勤務…私はさっそく先輩達に挨拶回りをするついでに、私に優しくしろというギアスをかけまくった」

カレン「……」

ゼロ「これで私は誰に怒られる事もなく、楽に働いて給料を貰えると思った………しかし…」

カレン「な、なにがあったの?」

c.c.「ルルーシュは飽きっぽく、勤務2日目でそこを辞めたくなったんだ」

カレン「は?」

ゼロ「先輩方の優しさもくどく、気持ち悪かったしな」

カレン「いや、それはあんたがギアスをかけたからでしょ」

ゼロ「働いて3日目で私はスーパーをバックレた。ギアスが利いているから先輩達も笑って許してくれてるだろう……全ては上手く行くと思った…が……」

ゼロ「その日から毎日毎日、私の家にある人物が訪ねて来るようになった」

カレン「…誰?心配して見に来た職場の先輩とか??」

ゼロ「いや…違う」

c.c.「面接官だ」

カレン「面接官?」

ゼロ「――そう。私が彼にかけた私を雇えというギアスが……私が職場をバックレたのをきっかけに再発し、私を再び職場に連れ戻そうとやってきたのだ」

c.c.「ギアスがかかってるとはいえ、奴のしつこさは尋常ではなかった…夜中だろうがお構い無しに呼び鈴を鳴らし、ルルーシュの名前をひたすら呼び続けていたんだ」

カレン「…」

ゼロ「怖くなった私は家を飛び出し、この家……カレンの家に転がり込んできたと言うわけだ」

c.c.「私もルルーシュの共犯者だからな。ついてきて当然だろう」

カレン「なるほど………二人共、そんな辛い目に……ってふざけんな!!!」

ゼロ「ひっ」

カレン「そんな自業自得な理由でウチに居座るな!さっさと出てけ!!!」

c.c.「友達が困っているというのに、見捨てるというのか?お前は」

カレン「甘えるな!私だって片親で今の暮らしを支えるのに精一杯なんだ!!居候二人も養ってやる程の余裕なんか無いんだよ!」

ゼロ「返す言葉もない………」

ゼロ「しかしカレンよ。私の居場所はもうここしかないのだ」

c.c.「そうだ。お前しか頼れる人間はいないんだ」

カレン「いやだから…」

c.c.「ルルーシュ、カレンにギアスをかけて養わせたらどうだ?」

カレン「なっ!?あんたは……!」

ゼロ「そんな事出来る訳がないだろう。カレンは私の大事な友人だ」

c.c.「ふ、冗談だよ。カレンもそう怖い顔をするな」

カレン「…冗談に聞こえなかったんだけど」

ゼロ(勿論、それは一度考えた……しかし、カレンには学生の頃に100円を貸して貰うようにギアスをかけてしまったんだ……カレンにギアスはもう使えない…)

カレン「とにかく!今週中に二人とも仕事を見つけてこなきゃ、追い出すからね!絶対!!」

ゼロ「ああ……わかった」

c.c.「やれやれ、全くヒステリックな女だよ」

カレン「誰が怒らせてるのよ……誰が…」

ゼロ「…ところでカレン。さっきから気になっていた事があるんだが……」

カレン「え?…な、なによ」

ゼロ「…今日の晩御飯は何かな?」

カレン「…」

翌日



面接官「質問…お前の大切な物はなんだ?」

ゼロ「はい、金です」

面接官「…」



………


ゼロ「くそ、また駄目だった……」

ゼロ「正直に答えただけなのに、何故説教を食らわなければならないんだ…!頭にきてうっかり死ねとギアスをかけてしまったじゃないか……」

ゼロ「このまま帰ったらまたカレンにどやされてしまう…」

ゼロ「どうする……まだ午前中だと言うのに…」

ユーフェミア「あら、ルルーシュ?」

ゼロ「え…」

ゼロ(なっ…ユフィ!?何故こんな所に……)

ユーフェミア「私です。ユーフェミアです!」

ゼロ「し……失礼ですが、どちら様ですか?私はルルーシュなどという名前では…」

ユーフェミア「ふふ、とぼけたって無駄ですよ。いい年した男性がそのような格好で外出をするのはルルーシュ以外にはいませんから」

ゼロ「…!……ふ、さすがだなユフィ…相変わらず恐ろしい洞察眼だ」

ユーフェミア「立ち話もなんですし、時間があるのなら私と一緒にお茶をしませんか?」

ゼロ「……(早く帰ってもカレンに怒られるだけだ。…時間潰しには丁度いいか)」

ゼロ「ああ、いいだろう」

ユーフェミア「良かった、じゃあ私についてきて」

ブリタニアイレブン本社 社長室


ガチャ

ユーフェミア「さ、入って」

ゼロ「……」

ユーフェミア「? どうしたの?」

ゼロ(ここはコンビニ業界最大企業のブリタニアイレブン…!な、何故ユフィが……)

ユーフェミア「…あ、もしかして驚かせちゃいました?」

ゼロ「あ、ああ…まぁね……しかし、何故君が……し、しゃ、社長を……?」

ユーフェミア「元々の社長はコーネリアお姉様がやっていたのだけど、急に私に任せると言って…。半ば無理矢理社長にされたの」

ゼロ「ほ……ほう…」

ユーフェミア「さ、座って」

ゼロ「あ、ああ…」

ゼロ(就職氷河期の真っ只中に放り込まれた俺の苦労を知らずにこの女は姉の気まぐれ一つで社長就任……!)

ゼロ(面接依頼をする時の電話の緊張感も知らない奴が………!面接の段階で断られた時の絶望感も知らない奴が……!ユーフェミアァァァ…!)ワナワナ

ユーフェミア「ねえ、ナナリーは元気にやってる?」

ゼロ「え!?ナナ…リー……?…………………」

ゼロ「」ドキッ

ゼロ(しまった!面接官から逃げるのに夢中でナナリーを家に置いていったままだ!!)

ユーフェミア「?」

ゼロ「あ…あぁ。元気にやってる…よ……と思う」ボソリ

ユーフェミア「そう、良かったー。ナナリーにも暫く会ってないから心配してたの」

ユーフェミア「ルルーシュは今、何のお仕事をしているの?」

ゼロ「」ピクッ

ゼロ(貴様……平日の昼間っから町をプラプラしてたら大体察しはつく癖に………!そうやって無邪気に人の傷口を抉るというのか…!!)

ユーフェミア「ねえ、お話してるんだからその仮面はとって」

ゼロ「…。……ああ」スッ

カチャ

ルルーシュ(ならば……思い知らせてくれる!)

ルルーシュ「……実は、今…求職中でね。笑っちゃうだろ?」

ユーフェミア「あ………ご、ごめんなさい…」

ルルーシュ「ふふ…いや、いいんだよ。こんな時代だからね…仕方ないさ(そして貴様も今、俺と同じ絶望を味わうんだ!!)」キュイーン

ユーフェミア「ぁ…!じゃあ、もし良かったらなんだけど…ここの会社で働いてみない?」

ルルーシュ「ルル…………なに?」

ユーフェミア「ルルーシュは信頼出来る人だし、何より子供の頃からの付き合いですから」

ルルーシュ「……!?」

ユーフェミア「お給料も内緒で多めに渡しますし、ナナリーとの時間も取れるように休みも多く入れますから。大サービスで」

ルルーシュ「…ユ、ユフィ。冗談だろう?」

ユーフェミア「いいえ、本当です」ニッコリ

ユーフェミア「あなた達には幸せな生活を送ってほしいから……あなた達に幸せになって貰えたら、私も幸せだから…」

ルルーシュ「ユ、ユーフェミア……………」

ユーフェミア「でも、履歴書はちゃんと持ってきてね?」

ルルーシュ「あ、ああ!お安い御用だ!!(やった……やったぞ!奇跡が…奇跡が起こった!)」

ルルーシュ「…ふぅ。俺とした事が、些か性急だったようだ…」

ユーフェミア「性急?」

ルルーシュ「ああ…もう少しで君にギアスをかける所だった」

ユーフェミア「ギアス…?ってなんですか?」

ルルーシュ「魔法みたいな物さ。俺のギアスにかかった者は俺の言う事を確実に実行するんだ」

ユーフェミア「………くすっ」

ルルーシュ「?」

ユーフェミア「ルルーシュ、あなたもいい大人なんですから、そういうのはもう卒業しなきゃ駄目ですよ?」

ルルーシュ「いや、本当なんだ。c.c.…いや、学生時代に魔女と出会い、この力を……」

ユーフェミア「…くすくす。真顔で説明されると余計に可笑しいです」

ルルーシュ「本当なんだ!実際に見たら解る!」

ユーフェミア「ふふ…じゃあ、私になんてギアスをかけようとしたんですか?」

ルルーシュ「ああ、今すぐに全社員をリストラし、全ての会社に放火しろ―――

ユーフェミア「ぁ…」キィィィィィン…

ルルーシュ「――とな」

ユーフェミア「い……嫌……そんな事…」

ルルーシュ「…ん?」

ユーフェミア「リストラなんて……したく…な…い……!」

ルルーシュ「ユフィ………?………あっ」

ユーフェミア「」ピクッ

ユーフェミア「…そうね。全員リストラさせて会社に火をつけないと」

ルルーシュ(し、しまった……!うっかりギアスを…!)


ルルーシュ「ユ、ユフィ!今のは嘘だ!!」

ユーフェミア「ごめんなさい、ルルーシュ。さっきのお話はなかった事にして」

ルルーシュ「だから今のは嘘なんだユフィ!!忘れるんだ!!」

ユーフェミア「今から私、全社員のリストラを発表しなきゃならないから…」

ルルーシュ「待ってくれユフィ!! 『俺の』 生活はどうなる!?」

ユーフェミア「うふふ、リストラ!リストラです!!」

タッタッタ…

ルルーシュ「な…なんという事だ……!」

ピンポンパンポーン♪

ルルーシュ「!」

『業務連絡です!皆さん、明日から会社に来ないで頂けないでしょうか?』

ルルーシュ「お、おのれ……!人の気分を持ち上げといて突き落とすとは……!ユーフェミアァァァ…!」ワナワナワナワナ

『本当は辞職して欲しかったのですが……嫌ですか?』

『では皆さん、今日限りでリストラです!リストラされて下さい!!』

『社長ユーフェミア・リ・ブリタニアの名のもとに!全ての社員はリストラです!!』

『それから、これから私は会社に火をつけますので、死にたくない方はさっさと逃げて下さい!そして二度と会社に来ないで下さい!!アハハハハ………………

その夜


ガチャ

ゼロ「…ただいま」

c.c.「おかえり、ルルーシュ」

カレン「遅かったじゃない。色んな所回ってたの?」

ゼロ「…ああ、まあな」

c.c.「ルルーシュ、見ろ。面白いニュースがやっているぞ」

ゼロ「ニュース…?」

ミレイ『こんばんはー。午後6時のニュースをお伝えしまーす!なんとなんとなんと!あのコンビニ業界最大手ブリタニアイレブンの社長、ユーフェミア・リ・ブリタニア氏が逮捕されました!!』

カレン「ユーフェミアって、最近社長に就任したばかりの人じゃない?」

ゼロ「ああ…そうみたいだな」

c.c.「…お前の知り合いじゃなかったか?あの女は」

ゼロ「知らない。私は全く関係ない」

ミレイ『ユーフェミア容疑者は社内放送で全社員のリストラを伝えた後、本社に火をつけて回ったそうです。ついでに放火を止めに入った社員数人に怪我を負わせたとかなんとか!怖いですね~』

カレン「大人しそうな顔してたけど、怖い事するのね」

ミレイ『また、ユーフェミア容疑者は警察の調べに対し、「さっさと私を釈放しなさい。私は会社を燃やし尽くさなければならないのです」と供述しているようです。一体彼女に何があったのでしょうね~?以上、ミレイ・アッシュフォードがお伝えしました~』

ゼロ「…ふっ、己の能力以上の仕事を任され、精神的に追い詰められたのだろう。細い神経をした奴だ」

c.c.「…」

c.c.「お前の仕業だろ」ボソッ

ゼロ「」ギクリ

ゼロ「さて、私は明日も面接があるので休ませてもらおう。おやすみ、カレン、c.c.」

カレン「え……お、おやすみ」

c.c.「…おい待て、ルル

ゼロ「おやすみ。 シ ー ツ ー 」
ピシャッ

c.c.「……」

一週間後


カレン「出てけっ!」ゲシッ

ゼロ「ぐわっ!」

c.c.「いいぞ、カレン。さっさとそのタダ飯喰いを追い出せ」

カレン「いや、あんたもだっての!早く出ていけ!」ドンッ

ゼロ「ま、待ってくれカレン…!」

カレン「その台詞はもう聞き飽きた!!一週間前に言ったわよね!仕事見つけなきゃ追い出すって!!」

ゼロ「く…!確かに言ったが……」

c.c.「お別れのパーティーくらいは開くべきだろう」

カレン「寝ぼけた事言うな!結局一回も面接に行かないでピザばっか食ってて!!」

c.c.「お陰でチーズちゃん人形が手に入ったじゃないか。これは歴代の客の中でも最短記録だろう…もっと喜んだらどうだ」

カレン「要るかこんなの!あんたが持ってけ!!」ポイッ

ゼロ「カレン…聞いてくれ。今日、ある会社に面接の電話を入れたんだ…今度こそは絶対に……」

カレン「さよなら、ルルーシュ!!!」
バタンッッ

ゼロ「カレン!カレン……ッ!」

c.c.「本気で怒らせてしまったな」

ゼロ「…」

c.c.「どうする、これから?まだ外は寒いぞ」

ゼロ「……仕方ない、何処か野宿出来る場所でも探すしかあるまい」

c.c.「この私に地べたで寝れと言うのか?ゴメンだな」

ゼロ「黙れ、魔女。贅沢を言うな…お前が仕事を見つけてればこんな結果にはならなかったというのに…」

c.c.「言っただろう、私達は共犯者だと」

ゼロ「ええい、何度も聞いたよその台詞は……行くぞ」

c.c.「やれやれ、仕方ない」

ゼロ「……と、その前に」


ゼロ「カレン、私に100円を貸してくれないか?」

ガチャッ

カレン「はい、どうぞ」スッ

c.c.「情けない出発だな」

スタスタスタ…

c.c.「ルルーシュ、100円ぽっち貰って何をする気だ?」

ゼロ「決まっている。食料調達だ」

c.c.「100円で何が買えると言うんだ」

ゼロ「うまい棒が10本買えるな」

c.c.「…」

ゼロ「なんだ、その顔は?文句があるなら何処とでも行くがいい」

c.c.「ふん、文句などないさ。お陰でいい事を思いついた」

ゼロ「?」

c.c.「さ、行こうかルルーシュ」

オレンジマート


ウィーン

『いらっしゃいませ~』

ゼロ「さて…うまい棒は何処にあるかな」

c.c.「私は少し周りを見てくる」

ゼロ「わかった。余計な物を持ってくるなよ。100円しかないのだからな」

c.c.「ああ、わかっているよ」スタスタ…

ゼロ「…」

ゼロ(何かを思いついたと言っていたが……。嫌な予感がするな)

ゼロ(c.c.が面倒を起こす前にさっさと買い物を済ませてしまおう…)

ゼロ「…む、ここにあったか」

ゼロ「どれ、味の種類は………チーズに明太子にたこ焼きetc……ふはははは、中々に充実しているじゃないか」

子供「ママ、変な人がいる」

母親「しっ、見ちゃいけません」

ゼロ(さて、我が選択肢は3つ…一番好きな味を10本買うか、一番と二番に好きなのを半分づつ買うか、全ての味を一本づつにしてバラエティーにするか……ククク、悩むな…)

c.c.「ルルーシュ、やっと見つけた」カラカラカラカラ

ゼロ「c.c.か。私は今、何を買うか考えている最中だ。余計な口は挟まないでもらおう」

c.c.「ああ、いいとも。好きなだけ考えていればいい」ゴソゴソゴソ…

ゼロ(やはり俺の一番好きな明太子味を10本……いや、それでは味に飽きが来るか)

ゴソゴソ ゴソゴソ

ゼロ(それにバラエティーに揃えても、味がごっちゃになってしまってうまい棒に失礼な気がする……)

ゴソゴソ ゴソリ

ゼロ(――と、なると選択肢はひとつ……2種類に分けて購入する…か)

c.c.「…」ゴソゴソ

ゼロ(一応、コイツの事も考えてやらないといけないしな……明太子とチーズを5本づつにするか)

c.c.「決まったのか?」

ゼロ「ああ、明太子味とチーズ味を5本ずつにする」

c.c.「そうか、ならば私がレジまで持って行ってやる」

ゼロ「なに、お前が?どういう風の吹き回しだ?」

c.c.「いいだろう?たまには。私だってたまにはレジに立ちたくなるのさ」

ゼロ「……?」

ゼロ「そういえば先程、俺の後ろで何かやっていなかったか?ガサガサ音が聞こえてた気がするんだが」

c.c.「気のせいだろう」

ゼロ(怪しいぞコイツ…?何を企んでいる……?)

c.c.「早く100円をよこせ。お前のようなフルフェイス男がレジに立ってはいらぬ誤解を招くだけだ」

ゼロ「…!そ、そうか。確かにそうだな……」

c.c.「理解したか?だったら早く100円を渡せ」

ゼロ「ああ」

c.c.「お前は先に店を出ていろ。不審者と通報されると面倒だ」

ゼロ「…わかった」

ゼロ(確かに、スーパーでこのような格好をしていれば通報される可能性もあったな。俺とした事がうかつだったよ)スタスタスタ…

c.c.「…」

出入口付近

ゼロ「…」スタスタ…

ゼロ(先程から誰かの視線を感じる……)

ゼロ(店員か?…まさか、俺を強盗と疑っているのではないだろうな?)

スタスタ…

ビーッ ビーッ

ゼロ「!?」

ビーッビーッ

ゼロ「なんだ、この警報音は?」

ウィーン ガタン

ゼロ「!?ドアが閉められた?」

ゼロ「…ッ、開かない……一体どうなっている?」

???「そこまでだ、仮面の男よ!」

ゼロ「? 誰だ?」

ジェレミア「私はジェレミア・ゴットバルト!オレンジマートの万引きgメンである!!!」

ゼロ「ま、万引きgメンだと!?私は万引きなどしていないぞ!」

ジェレミア「笑止!この万引きgメン、ジェレミアの目を甘く見てもらっては困る!!」

ゼロ「していないと言ったらしてはいない!」

ジェレミア「そうか。ならば両手を上にあげてみるといい」

ザワザワ…

ゼロ「両手を上にだと?いいだろう、それくらい御安い御用だ」

バッ

ドサドサドサドサッ

ゼロ「えっ」

ジェレミア「万引きではないのならそれは買った商品なのかな?それならば普通は袋かマイバッグに入れる筈だ」

ゼロ(な、なんだこれは!?)

ジェレミア「ピザポテトにピザパン…冷凍ピザにピザソースまで……余程ピザがお好きなようだな」

ゼロ「ピザ…」チラッ

野次馬「ザワザワ」

野次馬「ザワザワ」

c.c.「…」

ゼロ「お、お前の仕業か!!!」

c.c.「チッ、バレたか」ボソ

ゼロ「何かおかしいと思っていたが、そういう事か!この魔女め!!」

キューエル「ジェレミア、万引き犯か?」

ジェレミア「キューエル店長。私も嘗められた物だ、マントに商品を隠して持ち去ろうなど…」

ジェレミア「この万引きgメンのジェレミア・ゴットバルトの眼をたぶらかそうなど、100年早い!!」

キューエル「万引きgメンが堂々としすぎだ。ここでは他のお客様の迷惑になる」

ゼロ「…」

キューエル「君、事務所まで来てくれるな…?」

ゼロ(じ……冗談じゃない…!)

ゼロ(この俺が万引きなど、しょうもない犯罪で前科を作ってたまるか…!前科などつけば就職は不可能だ……!)

ジェレミア「ふん、絶望のあまり、声も出ないか。しかしこれも自業自得……さぁ、私と事務所に来てもらおうか」

ゼロ「……お断りだ」

キューエル「?」

ジェレミア「なに?」

ゼロ「俺はこんなくだらない事で止まるわけには行かないんだ!」キュイーン

ジェレミア「万引き犯が何を偉そうに…!」ズイッ

キューエル「おいジェレミア、乱暴な事は…」

ゼロ「そこの万引きgメン!私を見逃せ!!全力で見逃すのだ!!!」

ジェレミア「!」シュイイイイン…

ジェレミア「…わかった。何処とでも行くがいい」

キューエル「なに?」

ゼロ「…よし」

キューエル「何をふざけている、ジェレミア?」

ジェレミア「…」

ゼロ「さて、他に出口は…」

キューエル「…おい、お前!何処へ行く気だ!?」

ジェレミア「キューエル店長。奴の事はもういい…見逃してやれ」

キューエル「なんだと?イチ雇われgメンが偉そうな口を…!おい、待て!」
グイッ
ゼロ「…」


ジェレミア「キューエル店長!!私は見逃してやれと言った筈だ!!!」

キューエル「お前に構ってなどいられるか。さぁ、来い!」

ジェレミア「キューエル店長!最後通告である!彼を見逃してやるのだ!!」

ザワザワ ザワザワ

キューエル「黙れ、ジェレミア!お前も後で…
ジェレミア「ならば全力で阻止させてもらおう!」

ブンッ
キューエル「えっ」

ドゴガッッ

野次馬「きゃああっ!」

キューエル「」ドサッ

ゼロ「ふ…、よくやってくれた。ジェレミア君」

ジェレミア「気にするな。ここは私に任せておけ」

c.c.「綺麗なアッパーが入ったな」ヒョッコリ

ゼロ「貴様…ぬけぬけと」

c.c.「捕まったらどうなるかと心配したぞ。ギアスを与えた私に感謝するがいい」

ゼロ「お前という奴は……!…ええい、もう、いい…」

c.c.「そうだ。そんな事よりここを逃げるのが先決だ」

ゼロ「ここと反対側にもう一つ出入口があった筈だ」

c.c.「そこを目指すしかないようだな。野次馬の壁を突き破りながら」

ジェレミア「ならば私に任せておけ。一般人など…」

ゼロ「ま、待てジェレミア。一般人を巻き込むな」

c.c.「……おや?」

ゾロゾロゾロ

店員「キューエル店長!?」

店員「ジェレミアさん、あんた何を…!」

ゼロ「ち、増援か。強行突破は無……

ジェレミア「安心するのだ!お前は私が全力で見逃す!!」ダッ

ゼロ「え、おいっ!」

店員「うわっ!何をす…うぎゃあ!」バキッ
店員「だ、誰か警察に…うごぉっ!!」ドゴッ

警備員「ジェレミア!貴様ー!!」ゾロゾロゾロゾロゾロゾロ

c.c.「おお、大増援だ。これは乱戦になるぞ」

ゼロ「呑気な事を言ってる場合か!」

ゼロ「お前が万引きなどしなければこんな面倒な事には!」

c.c.「ごめん、ルルーシュ」

ゼロ「…」

c.c.「珍しく私から謝ってやったんだ。さっさと脱出する方法を考えろ」

ゼロ「おのれ……お前にギアスさえかかれば……!!」

c.c.「仮にかかったとしても、お前に私を上手く扱えるとは思えないがな」

ゼロ「…つくづく魔女だ、お前は……」

c.c.「そうとも、私はc.c.なのだから」

ゼロ「……とにかく、このドアを開けない事には外に出れん」

c.c.「結構頑丈そうなガラスだな」ガンガン

ゼロ「恐らくは強化ガラス……俺達の力で破るのは無理だろう」

c.c.「では、諦めてお縄につくのか?」

ゼロ「冗談じゃない、万引きの濡れ衣をきせられて捕まってたまるか」

c.c.「あの万引きのgメンも長くは持たないぞ。早く脱出方法を考えろ」

ゼロ「うるさい奴め…!人にばっかり頼らず、お前も何か考えろ!!共犯者なんだろ!」

c.c.「…やれやれ、無駄なエネルギーは使いたくないのだが」

ゼロ(素手での破壊が不可能なら、道具を使えばいいが……近くにあるのは商品を入れるカートのみ……)

c.c.「…」

ゼロ(これを使って……いや、こんな物で破壊出来る強化ガラスなど存在しない…か…)

ゼロ(…というか、ガラスを破壊して逃げては間違いなく犯罪者と思われてしまうじゃないか!俺は巻き添えを食らっただけだというのに!!)

ワー ギャー

ジェレミア「ぬおおおお!見逃す邪魔をするな~!!」
バキッ ドカッ

ゼロ(警備員の数も増えてきている…!ジェレミアも時間の問題か……!くっ、どうする…!?)

c.c.「閃いたぞ、ルルーシュ」

ゼロ「! なに?」

c.c.「この強化ガラス、私達が反射しているだろう?」

ゼロ「…?ああ、それがどうした」

c.c.「この反射を利用し、自分にギアスをかけるんだよ」

ゼロ「な、なに…!俺に!?」

c.c.「かけるギアスはこうだ。『全力でこの強化ガラスをぶち破る』」

ゼロ「な…なるほど……!ギアスにかかれば痛みも恐怖も感じず、ガラスをぶち破り、脱出出来ると言う事か…!」

c.c.「その通りだ」

ゼロ「そしてお前は無傷で脱出…俺も身体が動ければ脱出出来る……万が一、脱出に失敗しても俺一人が全て罪を背負えば……ってふざけるな!」バンッ

c.c.「……今のはノリツッコミだったのか?」

ゼロ「真面目に考えろ!この魔女!!」

c.c.「………私は真面目に考えたつもりなんだが」

ゼロ「えぇい…お前なんかに頼ろうとした俺が馬鹿だった……!」

ジェレミア「ならば私に任せてもらおう!」

ゼロ「なにっ?」

ジェレミア「ぬおおおお!!!」ダダダダダッ

c.c.「こっちに突っ込んでくるぞ」
ゼロ「避けろ、c.c. !」

ドドドドド…

ジェレミア「記録せよ!ジェレミア・ゴットバルトォ!!!」

ゼロ「ジェレミア…!まさかお前が……」

ジェレミア「お前を全力で見逃した、記念すべき男の名前だ!!」

バリバリドガシャーーーンッッ

c.c.「おおっ…、頭から行ったぞ」

ゼロ「ジェ、ジェレミア!!」

ジェレミア「私に構うなぁ!早く往けぇ!!」プシャー

c.c.「ルルーシュ、逃げるぞ」

ゼロ「…ジェレミア、お前の名前は忘れない……!さらばだ!!」

タッタッタ…

ジェレミア「はははは!そうだ!往け!!往くのだぁぁ!はははは……は…」シュイイン

ジェレミア「………ん?私は何を…」
警備員「今だ!押さえろー!!」ドシーン

ジェレミア「ぐわああっ!?」

警備員「この野郎!警察に突き出してやる!!」

ジェレミア「な、何をする!?離せ!私はここの万引きgメンであるぞおぉぉぉ………………

タッタッタ…

ゼロ「はぁっ、はぁっ…」

c.c.「改めて思い知らされたな。お前のギアスの力を」

ゼロ「お…お前っ……が、万引き…っしなければっ……こ、こんな…事に…ぁ……」ゼェゼェ

c.c.「なんだ、もうバテたのか?女の私より体力がないとは、情けない奴め」

ゼロ「だ、だまっ…黙れ…魔女……っ…こんな……格好をしてれっ…ば……誰だって……」ヒィヒィ


c.c.「まぁ、ここまで逃げれば大丈夫だろう。そこの公園で休むか。私も少し疲れた」

ゼロ「……っ…っ……」コクリ

ゼロ「………ふぅ」

c.c.「落ち着いたか?」

ゼロ「ああ、まあな…」

c.c.「ほら、お前の取り分だ」ポイッ

ゼロ「! …うまい棒か」

ゼロ「…?おい、このチーズ味の方はお前の分だが…」

c.c.「やるよ。お前のギアスがあったお陰で警察に行くのを免れたからな」

ゼロ「しかし、それではお前の食事は…」

c.c.「気にするな、私は不死の身だ。飢えて死ぬ事もない」

ゼロ「c.c.…」

c.c.「それに、私にはこれがあるしな」グイッ

ゼロ「なに?」

ドサドサドサドサッ

ゼロ「こ……これは、お前がさっき万引きした食料…!?」

c.c.「アイツがガラスをぶち破った時のどさくさで服に忍ばせといた」

ゼロ「お前という奴は……」

c.c.「見事な手並みだろう?」

ゼロ「俺に少しでも感謝しているなら、そっちをよこせ」

c.c.「拒否する。これは私が自力で手に入れた物だからな。お前はうまい棒が好きなんだろ?それで十分じゃないか」

ゼロ「…この万引き魔女め」

c.c.「いい加減聞き飽きたな、その台詞は」

ゼロ「…しかし、何故万引きのやり方をしたんだ。あんな古風なやり方ではセンサーに引っ掛かるのは当然だろ」

c.c.「そんな事を言われてもな。知らなかったから仕方ないだろう」

ゼロ「今どき、子供でも知っている事だぞ。レジに商品を通さないといけない事くらいは」

c.c.「買い物など、ここ百数年した事がなかったからな」

ゼロ「…」

c.c.「技術の進歩とは恐ろしいものだな、ルルーシュ」

ゼロ「お前の無知のお陰で俺は人生を詰みかけたのか…。俺はお前が一番恐ろしく感じるよ……」

玉城「おい、お前ら!ここで何してやがる!?」

ゼロ「ん?」

c.c.「なんだ、お前は?……汚い格好だな。近寄るな」

玉城「なんだとぉ!?てめえ、俺を誰だと思ってんだぁ!?」

ゼロ「落ち着け、いきなりなんだというんだ」

玉城「ここは俺達、扇グループの縄張りなんだぞ!勝手に入ってくるんじゃねえ!」

ゼロ「扇グループ……?」

c.c.「そうか。その汚い格好…扇グループというのはホームレスの集まりか」

玉城「そうだ!悪いかよ!!」

ゼロ「縄張り…ホームレスにも縄張りなどあるのか……」

ゼロ「…ちょっと待て。お前の目には私達も同じに見えると言うのか」

玉城「カップルだろうが、浮浪者だろうが関係ねえ!ここは俺達の縄張りなんだよ!!」

c.c.「不法占拠しようとしているのは、むしろお前達の方じゃないのか?」

玉城「なんだと、この女ぁ!!」

ゼロ「やめろc.c.、話が通じる相手ではなさそうだ」

扇「おい、玉城…何を騒いでいるんだ」

ゼロ「む…?」

玉城「あ!?」

ゾロゾロ…

南「お前、また一般人に絡んで…!」

井上「警察に通報されたら面倒だから、よしなさいって言ったでしょう?」

c.c.「……ぅ…鼻が曲がりそうだ」

玉城「うるせぇ!俺は、俺の居場所を守る為にだなぁ!!」

扇「落ち着け玉城……またリフレインをキメたんたな?あれほど手を出すなと言ったのに…」

扇「……すまなかったな、いきなり驚かせて」

ゼロ「…いや……気にするな」

ゼロ「…失礼だが、君は…?」

扇「ああ、俺は扇って者だ。一応、この扇グループのリーダーをやってる」

玉城「俺だって…俺だって官僚になるって夢が…」ブツブツ

扇「そこにいるのが玉城。ちょっとナイーブな奴なんだ」

南「俺は南」

井上「私は井上。他にも何人かの仲間がいるわ」

ゼロ「私の名はゼロだ。そして、コレはc.c.という」

c.c.「…おい、コレとはなんだ」

扇「変わった名前なんだな……まぁ、よろしく」

c.c.(ルルーシュ、さっきから鼻が曲がりそうだ。さっさとこの場から離れるぞ)

ゼロ(…少し待て。俺は彼等に興味が湧いた)

c.c.(なに?まさかホームレスの仲間入りをするんじゃないだろうな?)

ゼロ(黙って見ていろ)

ゼロ「…。……良ければ君達にひとつ、頼みたい事があるのだが」

扇「ん?」

玉城「あァ?なんだよ?」

ゼロ「なに、難しい事ではない。…俺の質問に答えて貰おう」キュイーン

扇「!」
玉城「!」
南「!」
井上「!」

キィィィィィン…

c.c.「!? ギアスを掛けたのか?」

扇「…ああ、わかった」

玉城「しょうがねえな。なんでも答えてやるよ」

ゼロ「ふ……ありがとう…」

ゼロ「では質問させてもらおう。お前達がホームレスになった経緯を教えてくれ」

扇「俺は職場の女に手を出してクビになったのでホームレスになった」

玉城「俺は職場の気に入らない上司と後輩をぶん殴ってクビになった。コンビニのバイトを始めたけどそこでも店長を殴ってクビになった。働くのが馬鹿らしく思ってホームレスになった」

南「俺は職場仲間のロッカーから財布を盗ろうとした所を見つかってクビになった」

井上「私は会社のお金を横領して……」

ゼロ「…やはりな、思った通りだ。稀に見る屑の集まりだ」

c.c.「屑さではお前も負けてないと思うがな」

ゼロ「ユーフェミアの事か……」

ゼロ「…ふっ、確かにそうだな。俺も同じ屑だな」

ゼロ(俺は安定した職と金を持つ者が憎かったんだ…この就職難で苦労している者達がいるのを他所に暢気に暮らしている奴等が…!)

扇「…」

ゼロ(人は平等ではない…!学生の頃、嫌と言う程聞かされた台詞………ならば俺が…!この魔女と契約したギアスの力で……!)

ゼロ(人々を平等に……!俺と同じ『ゼロ』にしてやる!!)

c.c.「おい、どうしたんだルルーシュ」

ゼロ「……もう一つ質問をさせてもらおう」

扇「ああ」

玉城「いいぜ」

ゼロ「安定した職を持つ者や大金を持つ者が憎いか?」

扇「ああ、勿論だ」

ゼロ「……よし、ならばお前達は私と同志だ」

c.c.「…?ルルーシュ。今、なんと言ったんだ」

ゼロ「質問は終りだ」

扇「ああ、わかった………っ…あれ?」

玉城「……ん?…ん?」

南「頭がぼやけたような…気のせいか?」

ゼロ「扇グループは今日限りで解散だ。お前達は私の下につけ」

玉城「はぁ?」

扇「な、なんだって?」

c.c.「おい、どういう事だ」

ゼロ「c.c.、彼等に先程スーパーで持って来た食料をくれてやれ」

c.c.「勝手に話を進めるな」

ゼロ「そんな冷凍ピザより、熱々の出来立てピザを食べたくはないか?」

c.c.「……なに」ピクッ

ゼロ「食べたければ私の言う事に従え」

c.c.「……いいだろう、お前を信じてやる」ガサガサ

ゼロ「よし。……扇、お前達にこの食料をやろう」

玉城「うおっ!ピザだ!!」

井上「ピザソースまで…!」

扇「え……い、いいのか?」

ゼロ「ああ。ただし、私の仲間になるのが条件だ」

扇「仲間だって…?こんな、俺達をか?」

ゼロ「ああ、お前達だからこそ必要なんだ。それに――」

扇「…?」

ゼロ「私に付き従えばもっと良い生活も保障しよう」

南「…話が上手すぎやしないか?」

玉城「いいじゃねえか!俺達ゃどうせ、社会に棄てられた厄介者なんだからよ!!」

井上「それもそうね。これ以上、堕ちようもないし」

扇「…」

ゼロ「どうする、扇?決めるのはリーダーである君だ」

扇「………」

玉城「扇!」

南「…扇……」

ゼロ「…」

c.c.(なんだこの光景は…)

扇「…信じていいんだな、ゼロ?」

ゼロ「勿論だ」

扇「…わかった、今日から扇グループ…いや、俺達は君の仲間だ。ゼロ」

ゼロ「ああ、宜しく頼む」

玉城「よしっ!他の仲間にも知らせてくるぜ!!」

井上「私も行くわ!」

タッタッタ…

南「やれやれ、気持ちの切り替えが早い奴等だ」

c.c.「ピザの為とはいえ、ホームレスを仲間にする事になるとはな」

ゼロ「文句を言うな。お前は共犯者なのだから」

扇「それで…これからどうするんだ、ゼロ?」

ゼロ「早速、お前達に夢を見せてやろう。…だが、その前に」

扇「? なんだ?」

ゼロ「扇グループは無くなった。これから我々は新たな組織を名乗る」

扇「新組織…か、カッコいいな。じゃあ、ゼログループか?」

ゼロ「いや、もっとインパクトのある名前でなくてはいけない……そう、我々の新組織名…それは屑の騎士団!」

扇「屑の騎士団…!」

c.c.「訳すと屑の集まりか」

ゼロ「――そうだ、社会に見限られた屑の集まり…全てをゼロにする外道の中の外道……それが我々だ!」

…………


コツコツコツ…

ゼロ「さぁ、着いたぞ」

扇「つ、着いたぞって…このお屋敷は……」

玉城「俺でも知ってるぜ。ここら辺で一番の金持ちのクロヴィス邸じゃねえか…」

南「骨董品や美術品なんかも趣味で集めているらしいな」

扇「ゼロ…、こんな所で何をする気なんだ?」

ゼロ「なに…少し『話し合い』をするだけだ。ガラクタ収集に金をかけるくらいなら、その金は我々の為に使うべきだ」

玉城「はぁ?無理に決まってんだろそんなの!」

c.c.「なるほどな。それは良い考えだ」

扇「い…良い考えって…」

ゼロ「…まぁ、見ていろ」

スタスタスタ…

玉城「お!おいっ、アイツ、門の所に行きやがったぞ!」

c.c.「…」スタスタ

扇「え、ちょ、ちょっとあんた…!」

c.c.「なんだ。お前達はあの男を信じられないのか?」

扇「や…だ、だって……ここは普通の民家とは…」

玉城「下手すりゃ警察呼ばれるだろうが!」

c.c.「ふん、腰抜け共め。ならばそこでじっとしていろ」

スタスタスタ…

玉城「…っ、ど、どうするんだよ扇!!」

屑「わからん…!とりあえず、逃げる準備だけはしておこう!」

門番「……ん?」

ゼロ「…」

門番「な、なんだ!お前は?」

ゼロ「私はゼロ。君にはこれから起こる全ての異常を見逃してもらう」キュイーン

門番「!」キィィィィィン…

門番「よし、わかった」

c.c.「ふふ…ギアスの使用に迷いが無くなってきたな」

ゼロ「目的も無く安易に使えるモノではないからな。……扇、早く来い」


タッタッタ…

扇「…だ、大丈夫だったのか?」

ゼロ「ああ。物分かりのいい門番だ」

門番「…」

玉城「……どうなってんだぁ?」

クロヴィス邸内

…コトッ

バトレー「…チェックです」

クロヴィス「! ぬ、ぬうぅ…!ちょっと待ってくれバトレー…!」

バトレー「ご主人様。これで4回目ですぞ…」

クロヴィス「手が滑ったんだ。本来はここに置くつもりだったのが……」


 コン コン 

バトレー「…ん?」

クロヴィス「……誰だ?客を呼んだ覚えはないな?」

バトレー「はい…、それに客ならば門番が知らせに……」


ガチャ

ゼロ「…」

バトレー「!?」

クロヴィス「な、なんだ、お前達は!?」

ゼロ「…我々は、屑の騎士団」

クロヴィス「く、屑の騎士団!?」

バトレー「ご、強盗か!?門番達は何を……!」

ゼロ「強盗?…いや、私はただあなた達に頼み事をしにきただけだ」

クロヴィス「た、頼みだと…!?」

扇(い、勢いで来てしまったが…本当に大丈夫なのか!?)

ゼロ「ええ…ただ、一つだけ。私の頼みを聞いてくれるだけでいい」キュイーン

クロヴィス「な……なんだ?やはり金か!?」

ゼロ「いや、金だけではない。あなた方の持つ財産全てを……我々の為だけに使わせてもらいたい」

キィィィィィン…
クロヴィス「!」
バトレー「!」

数日後


住人「ねえ、最近クロヴィスさんのお屋敷とても賑やかよね」

住人「ええ。昼夜問わず大騒ぎしてていい迷惑よ。門番の人に文句言っても無視されるし…」

住人「以前はあんな感じじゃなかったのにねえ……」


…………


コトッ

ゼロ「チェックだ」

クロヴィス「うっ、またか…!」

ゼロ「弱いな、お前は」

クロヴィス「いやあ、君が強いんだよ」

ガチャ

バトレー「ゼロ様。c.c.様がお話があると…」

ゼロ「…ん?どうした、c.c.」

c.c.「この家の金も残り僅かだ。そろそろ出ていく頃合いじゃないか?」

ゼロ「なに?まだ一週間も経っていないのにか?」

c.c.「扇達の金使いが相当荒いのが原因だろう。玉城などはfxに手を染めたみたいだしな。さすが屑の集まりというだけはある」

ゼロ「…ふっ、やってくれるじゃないか。ならば、予定より早いが次の段階に移るか…」

c.c.「次の段階…?もう他の家に目星を付けているのか?」

ゼロ「…いや、家ではない。我々が次に向かうのはテレビ局だ」

――その夜

ブリタニアテレビ局前


ゼロ「……さて、そろそろ時間か」

玉城「おい、ゼロ。テレビ局なんかで何をやらかすつもりなんだよ?」

扇「急にクロヴィス邸を出たと思ったら……今度はテレビ局で暮らすつもりなのか?」

ゼロ「違う。今回の目的は世に我々の存在を知らしめる為だ」

南「な、なんだって?」

玉城「テレビジャックをする気かよ!?」

ゼロ「そういう事になるな」

扇「そういう事って、随分簡単に言うが…」

ゼロ「お前達は私の後ろで立っていればそれでいい。…行くぞ」

ニューススタジオ

ギィ…

ゼロ「ここの部屋だな」

スタッフ「…ん?なんだ、お前…

ゼロ「邪魔だ。休憩でもしていろ」キュイーン

スタッフ「! よし、わかった」
スタスタスタ


ディートハルト「…では次のニュースです。実の父を殺害したとして住所不定、無職の枢木スザク容疑者を…」

ゼロ「よし、行くぞ。私について来い」

扇「ま、待ってくれ。心の準備が…」

c.c.「覚悟を決めるんだな。お前達も私達と同じ共犯者なのだから」

ディートハルト「調べに対し枢木容疑者は、父は死ななければならなかったと意味不明な供述を……ん?」

ゾロゾロゾロ…

ゼロ「…」

ディートハルト「…な、なんだ?君達は……」

ゼロ「私の名は、ゼロ」

ディートハルト「ゼロ…?」

ゼロ「そこのカメラ。私を映せ」キュイーン

カメラマン「!」サッ

ディートハルト「お、おい…何を……」

カレン宅

ガチャ

カレン「ただいまー……あー、疲れたー…」

カレン「ドラマが始まる時間には間に合ったわね。良かった良かった…」

カレン(……ルルーシュ達が出ていってもう一週間近くか…)

カレン(そろそろ戻ってくるんじゃないかと思ってたけど、仕事見つかったのかしら…?)

カレン「………居なきゃいないで少し寂しいかな……なーんて、ね」ピッ

ヴン

ゼロ『私は、ゼロ』

カレン「!?」

カレン「え………は?」

カレン「え…!?な、なんで……え?」

ゼロ『我々の名は、屑の騎士団!世に見捨てられ、己の居場所をも失った社会不適合者の集まりである!!』

カレン「な、なんでルルーシュが……いや、他人のそら似……?ってこんな変な奴が二人もいる筈ないし……!」

c.c.『…』

カレン「! c.c.がいるって事はやっぱり……!何をやってんのよ、あの馬鹿は!?」

ゼロ「我々屑の騎士団は、職や金を持たない全ての者の味方である!」

ゼロ「イレヴンだろうと、ブリタニア人であろうと関係は無い!大金を持つ者、安定した職を持つ者全てが我らの敵だ!!!」

ディートハルト「さ、逆恨みではないのか!?」

ゼロ「職無き浮浪者達よ!我らを求めよ!!」

ゼロ「金を持て余す者共よ!我らを恐れ、そして覚悟せよ!!我らはお前達を我らと同じゼロに、平等へと導く漆黒の案内人だ!!」


………………


…………


……





c.c.「――こうして、屑の騎士団は世界(主に金持ち)に宣戦布告をした」

c.c.「屑の騎士団…もとい、屑の集まりはその後も金持ち達の前に突如現れ、イナゴの如く財産を食い散らかしては姿を消す…」

c.c.「ルルーシュの思惑通り、人々を自分達と同じ平等に…ゼロへと変えて行ったのだった……」

c.c.「ギアスという名の王(無職の)の力は人を孤独にする」

c.c.「ルルーシュは自分と似たような者達を仲間し、組織を拡大して行くが所詮は彼等屑の集まり。いつかは彼等がルルーシュに牙を向ける時が来るだろう」

c.c.「その時……ルルーシュはどうするのか?」

c.c.「…」

c.c.「この後、刑務所に入れられた枢木スザクの救出や扇の裏切り等の展開も考えてたのだが、それはまた別の話とする」

c.c.「…」

c.c.「正直に言えば、面倒だからだ」

c.c.「ここまで読んでくれて感謝する。お前達もルルーシュや私、扇達のような浮浪者にならない事を祈る」

c.c.「それでは、さらばだ。熱々のピザが私を待っているのでな」

ゼロ「…待て。私にも一言言わせろ」

c.c.「なんだ、いたのか」

カシャッ

ルルーシュ「…」キュイーン

ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる…」




ルルーシュ「全力で職を探せ!」




c.c.「…お前にだけは言われたくないだろうな」

おまけ



ジャー ガチャガチャ…

ジェレミア「…」

店員「おい、オレンジ!もっと早く皿洗えねえのか!!」

ジェレミア「…っ!……すみません……」

ジェレミア(何故だ……!オレンジマートのエリート万引きgメンである、私が食堂の皿洗いに等…!)

リヴァル「…先輩、ジェレミアさん何でオレンジって呼ばれてるんです?」

店員「ああ、なんかアイツ、元オレンジマートの万引きgメンやってたらしいんだけど、突然店で暴れて店長や従業員殴ってクビになったんだと」

リヴァル「ええっ、なんでまた……」

店員「さぁな。本人は話したくないみたいだ」

店員「ウチの先輩がたまたま現場を観てたらしくてね。それでオレンジってアダ名をつけたんだと」

リヴァル「へぇ~……」

ジャー ガチャ ガチャ

ジェレミア(何故か私にはあの時の記憶がない…!あの仮面の男を見たのを最後に……!)

店員「おいオレンジ!汚れちゃんと落ちてねえぞ!!」

店員「皿洗いも出来ねえのか!?」

ジェレミア「ぬっ…ぐっ……!」ピクピク

店員「おい、オレンジ。パン買ってこいよw」

ギャハハハハ…

ジェレミア(ぐぐぅ……!全てはあの消えた仮面の男が………!!)

店員「おい、ちょっとテレビ見ろよ!何か変だぞ?」

ジェレミア「……?」

店員「なんだなんだ?」

店員「放送事故って奴?」

ザワザワ…

ジェレミア「…」ジャブジャブ

『――私は、ゼロ』

ジェレミア「…!」ピクッ

店員「なんだ、コイツ?」

リヴァル「仮面被って…変なの……」


パリィィィンッ

リヴァル「!?」
店員「なんだ?」

ジェレミア「……………………」

店員「オレンジ!!てめえ、皿割って…」

ジェレミア「…ゼ…………ロ…」

店員「…は?」

ジェレミア「コイツが…私の…………!う……おおおおおぉっ……!!」




ジェレミア「ゼェェェェェロオォォォォォォォォッッ……!!!!!!!」







おわり (`・ωひ´)

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