美希「でこちゃん、おはよう」 (22)

・いおみき短編(予定)

・百合です。苦手な方はご注意を

・伊織の一人語りなので苦手な方はご注意を

・一応ハッピーエンドの予定です

・話は作ってありますが即興なので誤字脱字分かりにくい表現にはご容赦を



以上が許せる方は読んでくださるとありがたいです

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――朝の陽ざしに目を覚ます。

いつも、朝はこうだ。気怠くて、目を開くのが億劫。

それでも私は開けなくちゃならない。

「ほら、もう朝よ。起きなさい」

起き上がり声をかけるけど反応は無い。これは予想通り。

「起きなさいって言ってるでしょ!」

問答無用で布団をめくり上げる。

「むぅ~、まだ寝てたいのぉ・・・・」

「駄目よ、プロデューサーが来るまでに仕事に行く準備をして布団も洗わなくちゃならないんだから!」

「でこちゃんは朝から元気なの・・・」

「当たり前でしょ、スーパーアイドル伊織ちゃんを舐めないの。それと誰がでこちゃんよ!」

ゆっくりと起き上がる美希にタオルを投げつけた。

「ほら、先にシャワー浴びて来なさい!私も浴びるんだから早くしなさいよね!」

「でこちゃん先いいよ~・・・・・」

「アンタがいない間に片付けるの!アンタがやると適当なんだから!」

「お嬢様のクセに庶民的なの」

「何日ここで生活してると思ってるのよ。もう慣れたわ。さっさといきなさい」

「ふぁ~~い」

私がここで暮らし始めてからもう90日ほど経つ。

きっかけは、お父様とアイドル活動について喧嘩したことと、765プロに大きな宿泊部屋が付いたこと。

ここはレッスン場に併設してあるし、セキュリティーがしっかりした建物の中で安全性も高い。

丁度レッスンしたいという欲求も高まっていたので、プロデューサーの反対を押し切って泊まることにした。

なぜかおまけの金髪が付いてきたけど。

「でこちゃんとはユニット組んでるし。・・・それに、少しでも追いつきたいの。でこちゃんがもっと先に行こうと頑張るならもっともーっと頑張らなくちゃいけないの!」

とは、そのころやる気を出した美希の言葉。スイッチが入って覚醒したみたいだったわね、あの豹変ぶりは。

それで、美希もしょっちゅう泊まりに来る。そんな時は二人で遅くまでレッスンして、同じ布団で寝る。そんな生活もあと九日ほどだ。

アイドルアルティメイト決勝――私と美希の集大成。一年間、私たちが目指してきたステージ。それがもう目前に迫ってきている。

これを超えたら、一度私は自分の身の振り方についてしっかり考えて、お父様とも話し合おうと思う。

「でこちゃーん!ブラがないのー!」

「馬鹿ね、さっき自分で持って行ってたじゃない!どうせ籠の中にでもあるんじゃないの!」

「う~~~ん・・・・・。あっ、あったの!ありがとー!」

「はいはい、早くして頂戴」

美希がくると私は大きな妹か娘が出来たような錯覚に陥る。実際は、美希には大人っぽいところとか尊敬できるところも多いんだけど。

「ふぅ、さっぱりしたの!」

「そう?ご飯は作っておいたから、私がシャワー浴びてる間に食べてていいわ」

「ううん、待ってるの」

「・・・・そう」

――――――――――――――――――

―――――――――

――――




ソロの仕事の後、私は一人想い人を待つ。ここで合流してから次の仕事へ向かう事になっている。

少しだけ冬の空気を孕んだ秋の日差しに目を細める。

窒息しそうな青に心を奪われていると突然後ろから抱きつかれた。

「で~こちゃんっ!」

「遅いわよ、まったく。この伊織ちゃんを待たせるなんていい度胸ね!」

「でこちゃんは心が狭いって思うな!」

「何よ、待たせる方が悪いんでしょ」

美希が可愛らしく頬を膨らませた。

「おいおい、伊織の言う通りだぞ。悪かった、連絡を入れればよかったな。ギリギリ間に合うかと思ったんだけどな」

「本当に使えないプロデューサーね!」

この人は私達二人の担当プロデューサー。こんなでもなんだかんだ優秀なのが気に喰わないわ!

「それじゃ、次の現場までは俺の運転だ。行くぞ」

「はーいなの」

「さっさと行くわよ!」

美希はどうせ後部座席で寝るに決まってるわね。私はいつもの通り助手席かしら。

「でこちゃん、今日は美希と後ろに乗ろ?」

「いやよ、どうせアンタすぐ私を枕にするでしょうが」

「むぅ、嫌なの?」

「嫌って言ってるじゃないの」

「でこちゃんのケチ!」

プロデューサーが苦笑する。

「おい、またケンカか?仲良くしろよ?」

「分かってるわ。美希、私は前に乗るから」

「分かったの・・・・」

案の定、美希はすぐに寝てしまった。

・・・・・言うなら今しか無い。

「ねぇ、プロデューサー?」

「ん、なんだ伊織」

「・・・・プロデュース、ありがとう」

「どうしたいきなり?なんかあったのか?」

「担当、外れるかもしれないんでしょ?」

「・・・・・まいったな、誰に聞いたんだ?」

「昨日、小鳥と話してたじゃない。その時に聞いちゃったの。盗み聞きみたいになったのは悪いと思ってるわ。でも――」

「伊織」

今までにそう何度も聞いたことがある訳じゃない、プロデューサーの静かで強い声。私は思わず息を呑む。

「その話は、全部終わってからだ。伊織はプロだろう?余計なことは考えず、レッスンと仕事に励んでほしい」

「・・・・・・分かったわ」

面白い事に、私の声色はさっきの美希とよく似ていた。

今日の仕事を終えて美希とレッスン。あと九日、九日しかないのだ。今までの積み重ねを無駄にしないためにも、私たちは全力で練習する。

「こうした方が可愛いって思うな!」

「そこでアピールするのは良くないわ。その後にサビがあるんだから」

「そこに向けて盛り上げるの!」

「サビより盛り上がったら意味ないでしょ!元々盛り上がるタイプの曲じゃ無いじゃない!」

「でも、でこちゃんとミキならもっと皆を引き付けられるって思うな!ここでアピールしたってへっちゃらなの!でこちゃんはもっと上を目指したくないの?!」


思考が止まる。

頭を思いっきり殴られたかと思った。

それほど衝撃的だった。

この伊織ちゃんが、無難に収まろうとしているですって?

馬鹿言ってんじゃないわ!!


「でこちゃん、出来ないの?」


何言ってるの。そんな事――


「出来るに決まってるじゃない!スーパーアイドル伊織ちゃんにできないことなんて無いわ!」

美希の顔が太陽のように――いや、それよりもずっと明るく輝いた笑顔になる。

「うんうん、それでこそ美希のライバルなの!」


悔しいけど、美希はやっぱり凄い。私なんて、すぐに追い抜いて行っちゃうでしょうね。

いま勝っているのは私の方が少し長く努力してるから。美希の才能はそんな事歯牙にもかけない。

でもね、だからこそ私はアンタを尊敬して、敵視して、そして愛おしく思う。

アンタにだけは、絶対に負けたくない。


「どうしたの、ぼーっとして?」

「なんでもないわ。さ、続きやるわよ!」

「うん!!」

美希と私はいつも同じ布団で寝ている。布団はいくつかあるけれど、美希がいつも私の布団に潜り込んでくるので初めから一緒に寝るようになった。

あの日から、私はひそかな期待を抱きながら夜を迎えていた。

大体私は美希に背を向けるようにして寝転がっている。そうすると大抵、美希がすり寄ってくる。

「でこちゃん、起きてるよね」

「・・・・」

私は答えない。初めて寝た日から、これはある種の合図みたいな物だ。

「でこちゃんが寝てるなら、何してもいいよね?」

あの日から、変わらない台詞。私は気付かないふりをする。

「・・・・・でこちゃん」

耳元で、甘くて、でもどこか突き刺すような、そんな息遣いが聞こえる。

「ふぅー」

「ひゃんっ」

思わず声をあげてしまった。いきなり息を吹きかけるなんて卑怯よ!

「あはっ、起きてたの?・・・ううん、でこちゃんは寝てるもんね」

首筋に這うような感触。美希は、私の頸を舐めるのが好きだ。

「おいしそう・・・・食べちゃいたいの」

はむ、と甘噛みされる。うなじからそのまま耳元まで舐ってくる。

「ん・・・」

くすぐったさと、そして一抹の快感に声が漏れ出る。

美希の愛撫は執拗に続く。次第に、下品でいて蠱惑的な水音が大きくなってきた。

「・・・っ・・・ぁ・・はぁ・・んっ・・」

自然と息遣いが荒くなってきた。にじむ汗を、美希は丁寧に舐めとる。

「んっ、おいひいほ・・・・」

口をつけたまましゃべるので、私はくすぐったくて堪らない。

美希のからだがもぞもぞと動き始める。達しそうな兆候だ。

ここまで出来上がると、美希は私の胸に手を伸ばしてきた。

パジャマ代わりのTシャツの下から手を入れて、私の乳房を探す。

「はぁ・・ぅ・・・ん・・・っくぅ・・あん」

美希が頂点の周りを手のひらで撫で回した。

だんだん固くなってくると、今度はじらすように指先で突き始める。

耐えきれず、私は嬌声をあげてしまう。

美希は嬉しそうに笑い声を漏らすと、もっと意地悪く、触るか触らないかのところで手を動かす。

あまりのじれったさに私は理性を失い、自分でも驚くほど甘い声が口から飛び出す。

突然、美希が乱暴に揉みしだき始める。

顔を私の唇に近づける。でも、私は指を一本美希の唇に押し当てて微笑んだ。


そこからはもう、完全に美希のペースだ。

頸筋と胸をいじるだけで私を快楽に引きずり込むと、今度は私の上に覆いかぶさり赤ん坊のように胸をしゃぶりだす。

不意に、美希の手が秘部に触れる。

そこから発せられる湿った音は、いったい何なのだろう?

考える間もなく、私はただ欲望におぼれていく―――――


――朝の陽ざしに目を覚ます。

美希と致した朝は、いつもこうだ。気怠くて、目を開くのが億劫。

それでも私は開けなくちゃならない。

「ほら、もう朝よ。起きなさい」

そう、普段通りのぬるい朝。

仕事の合間に、ずっと考えていた。

プロデューサーは、嘘のつけない性格。私を安心させたいなら『担当は変わらない』と言えばいいのに、明言を避けた。

つまり。

本当に、プロデューサーは私から離れてしまう。

不安は確信に変わる。

そして――

アイドルアルティメイト決勝二日前。つまり、私達の関係もあと二日。

レッスンの出来も上々、負ける気は全然しないわね。

いつもより軽めのレッスンで終わりにして、体力を蓄える。

早めに入った布団の中で、美希がいつものようにすり寄って来た。

美希は私の体を余すところなく舐る。

私はされるがまま、快楽におぼれる。


いつもと同じように、美希が、私の唇に顔を近づける。

私は目を閉じて美希を待つ。

大きく息を呑む音。そしてしばらくの間。

美希が私の肩をつかむが、その感触はまるでフィルターにかかったように鈍い。

唇に、鋭敏な感覚。

妙に冷たくて不思議に思い、目を開ける。

美しい笑みを浮かべた美希が私の唇に指を押し当てていた。

「でこちゃん、駄目だよ。でこちゃんは寝てるの」

「寝てたらアンタを押し返したりも出来てなかった筈なんだけど?」

「そうだっけ?」

照れたように笑う。

指って、こんなに冷たかったのね。美希はいつもこの温度を感じていたの?

「でもね、でこちゃん。それは駄目、ルール違反。ミキ、抑えられなくなっちゃうから」

「・・・・・」

「ミキはね、分かってるんだよ?ミキがでこちゃんの一番になれないこと」

「美希、私は・・・」

「言わないで。ミキは、でこちゃんのファーストキスまで奪いたくないの」

「待って、違うわ、美希」

「ミキはでこちゃんの一番の代わりにはなれないの。こんな卑怯なことをしなきゃ繋がれないくらいに、悪い子なの」

「違う、私はただ」

ただ、の後に言葉が続かない。美希を失いたくなかっただけ?

ええ、そうね。あの人が去ってしまうなら、私は美希を捕まえておきたかった。

本当に卑怯なのは、私の方ね。

「・・・・・でこちゃんは優しいの。こんなことをいっつもしてたミキを受け入れてくれるなんて。でも、やっぱり甘え過ぎてたね。ごめんね、伊織」

「・・・・・・・・」

「あはっ、泣いてくれるの?やっぱりやさしいんだ」

「・・・・違うわ、ただただ自分が情けないだけ。優しくなんかないわ」

「ううん、優しい。だからミキは伊織が好きだったの」

「・・・・・・・・・ありがとう」

「だから、もう今日でおしまい。伊織が、自分の本当に好きな人を追いかけられるように」

「・・・・笑うのね、アンタは」

飛び切りの笑顔。女の私ですら目が離せなくなるほど、魅力的で、妖艶で、爛漫で、脆そうな笑顔で、美希は私をまっすぐ見つめる。

「そうだよ、だってでこちゃんの幸せはミキの幸せだもん」

そう言った美希の顔は、この世の誰よりも美しかった。

「アンタ、最高にいい女ね。悔しいけど」

「あはっ、あとで『振らなきゃよかった』って後悔させてやるの」

「あら、フラれたのは私だと思ってたわ」

「・・・・・・・そうかも」

「ふふっ」

「あはっ」

二人で笑いあう。今までの気持ちすべてに片を付けるように。

―――――――――――――――

――――――――

――――

――


「それじゃ、終電が来ちゃうからミキは帰るね」

「待ちなさいよ」

私は財布を投げつける。

「でこちゃん?ミキ、いしゃりょーなんて欲しくないよ?」

「馬鹿、私がそんな狡からい真似するわけないでしょ!タクシー代よ」

「でも、ミキは電車だよ?」

「今のアンタをそのまま返すわけには行かないわ。途中で襲われてもおかしくないのよ、アンタは」

「そうかなー?」

「泣きはらした目、挑戦的で露出の多い服。要素は十分よ。いいからその金使ってタクシー乗りなさい。もう呼んであるから」

「・・・うん、ありがとう、でこちゃん

「でこちゃんって言うな!」

「あはは!じゃあね、でこちゃん!」

走り去る美希の後ろ姿を見る。金髪が街頭に照らされ綺麗に輝いている。


美希が無事タクシーに乗ったのを見届けて、私は宿泊部屋に戻る。

人が一人いないだけで、部屋の暖かさは全然違う。

「さむいわね・・・」

布団にもぐりこんで暖を取る。

そうすると、さっきまでいた美希の温もりが感じられるようだった。

不意に、頬をつたう涙に気が付いた。

「私・・・・それでもやっぱり、アンタの事もそれなりに、そうね、それなりには、好きだったみたいよ?」

一人呟く。その声は部屋の中に響き渡り、やがて消えた。

エピローグ

「美希、久しぶりね。お互い忙しくてなかなか会えないわね」

「ほんと、やになっちゃうの。まあ、好きでやってるんだけどね」

「どう?女優に転向しない?」

「それは伊織の領分なの。私は歌手でいーの!」

「あらそう。昔はあんなにやる気なかったのに」

「そんな昔の話は止めてほしいな!」

「ふふ、冗談よ。じょーだん」

「・・・・・伊織、綺麗になったね」

「アンタもね。なんたって、女は失恋を乗り越えて綺麗になるのよ?」

「あはっ、じゃあ綺麗なのは当然って感じかな?」

「そうね、当然よ」







「伊織、結婚おめでとう。これから――」

「ありがとう、美希。アンタも――」



どうか幸せでありますように。

短編というか短すぎた・・・

かなりさらっと書いたので分かりにくいところが多そうで申し訳ないです

一応99nightsを意識して書いてみました

99nightsはいおみきに歌わせるのが好きです


それでは読んでくれた皆さん、おやすみなさい。駄文に付き合って下さりありがとうございました!

まさか知っている人がまだいたとは・・・

こちらこそ申し訳ありませんでした

百合氏ね先輩には頑張ってもらいたいなぁ

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