佐久間まゆ「アイドル戦隊、ですか…?」 (84)



佐久間まゆ「瞳に宿すは灼熱の炎…焦がれるほどに強く熱く!情熱のルビー佐久間まゆ!」


鷺沢文香「たゆたう英知はひたすらに鋭く…万理を包む深き蒼、サファイア鷺沢文香…」


森久保乃々「我らを支う大地より出でし新緑の誉れ、エメラルド森久保乃々なんですけど…」


星輝子「決して朽ちぬ太陽の輝き…優しき光を放て、トパーズ星輝子…フヒ」


白坂小梅「その姿は万物を愛する心を表す、気高き純潔のオパール白坂小梅…」


「「「「「我ら、アイドル戦隊!セレクト・ジュエリーズ!!」」」」」









まゆ「って何なんですかこれは…」

P「何って新しいユニットだが…」

まゆ「いやいやいやご冗談でしょう…こんな戦闘力の低そうな戦隊がいたら困りますよ」

P「ん?まゆがいるから大丈夫だろ」

まゆ「Pさん?何ヘラヘラしてるんですか?まゆは本気で訊いてるんですよ?」

P「わ、わかった!わかったからカッターはしまおうな?な?」

まゆ「まったくもう…で、なんでこんなユニットを組むことになったんですか?」

P「いやこの前さ、支社長と一緒に飲みに行く機会があってさ…その時にこの企画の話をしてな…」

まゆ「お酒の席で適当に決めたんですかあ…?」

P「待て待て待てカッターは駄目だってマジで危ないから、な?な?」

まゆ「…で、どうなったんですか?」

P「思いのほかこの提案が支社長にウケてな…あのオッサン『俺も若い頃は尖った企画ドンドン出してたしなあ』とかノリノリで言い始めて…」

まゆ「それで今回のユニットが決まったということですか…」

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まゆ「いずれにしてもこのユニットは無理です、まゆの負担が大きすぎますよ」

P「そうか?いけると思ったんだがな…」

まゆ「どう考えても無理ですって!トーク番組とか出たら私がずっとしゃべりっぱなしじゃないですか」

P「いいじゃんよ別に~」

まゆ「よくないです!まゆは猛抗議します!」

輝子「ま、まゆさんは、私たちと組むのはイヤか…?」

まゆ「えっ」

文香「力不足で申し訳ない限りです…」

まゆ「あの、その」

小梅「ご、ごめんね?」

まゆ「いえ、あの…」

森久保「罪悪感MAXなんですけど…」

まゆ「…」

P「すまんなお前ら、まゆがどうしてもイヤらしいんだ」

まゆ「えっ…い、いえ別にイヤではないですよ?むしろ嬉しくってつい冷たい反応をしてしまったというかその…」

輝子「ほ、本当か…?」

文香「私自身至らぬところもありますが、よろしくお願いしますね」

小梅「よかったぁ…」

森久保「まゆさんがそこまでやる気ならもりくぼも頑張るんですけど…」

まゆ(アワワ…引っ込みがつかなくなってしまいました…)


P「はっはっはっ、みんな良かったな。まゆがやる気満々で」

まゆ「おおむねPさんのせいなんですが…」

P「そう言うなよ。実際アイツらはいいやつらだろ?」

まゆ「それはそうですけど…実際に仕事が来るのか不安で」

P「もう来てるぞ」

まゆ「えっ」

P「大手プロダクションとの合同企画だ」

まゆ「えっえっ」

P「これで不安も無くなったな!」

まゆ「世の中何かがおかしいですよぉ…」

P「支社長にも悪いしな、必死で仕事は取り付けたよ」

まゆ「Pさん…!」

P「土下座・贈答・接待なら俺に任せとけ」

まゆ「Pさん…」

文香「ちなみにお仕事の内容は如何なものでしょうか…?」

P「相手も5人チームで来て、ウチのチームとそれぞれ1対1のガチバトルをしてもらう」

まゆ「やっぱり無茶じゃないですか!!」


P「ちなみに対戦相手ももう決まってるぞ」

輝子「フヒ…気になるな」

小梅「た、楽しみ…」

まゆ(なんでこの子たちはこんなに呑気なんでしょう…)

P「川島瑞樹さんと日野茜ちゃんだろ…あとはヘレンさんに桐生つかさ社長、五十嵐響子ちゃんだな」

まゆ「どう考えても負け戦じゃないですか…!」

P「いやいや、俺は勝てるつもりでいるよ」

まゆ「何を根拠におっしゃってるんですか…」

P「そりゃウチのチームにはまゆがいるからな」

まゆ「ぴ、Pさん…」

P「頼りにしてるぜ」

まゆ「いやいや一瞬騙されそうになりましたけど、これって一人が勝っても残りの4人が負けたら意味無いですよね?」

P「…」

まゆ「黙らないでください!」


P「いやいやマジで勝てるんだなそれが」

まゆ「何なんですかその自信は…」

森久保「ないよう…」

まゆ「?」

森久保「勝負の内容によっては、勝てるかもしれないんですけど…」

P「おっ、鋭いな森久保。そうだ、勝ち目がある種目なんだよなこれが」

まゆ「もう…それならもったいぶらずに教えてくださいよぉ…」

P「拗ねてるまゆも可愛いなあ」

まゆ「へっ…いきなりそういうこと言わないでください!」

P「ちょっ、照れ隠しにカッターの刃を持ちだすのはやめていやマジで怖い」

文香「ちなみに勝負の内容は…?」

P「おっ、すまんな文香。内容は『クイズ』『大食い』『障害物競走』『宝探し』『料理』の5ジャンルで戦うらしい」

まゆ「料理、と言っても幅が広いのですが…何の料理かは決まってないんですか?」

P「それが、詳しい内容は勝負の直前までわからないらしいんだ…対策や予習もほとんどできないからアイドルの地力にかかってるな」

文香「慎重にオーダーを組まないと、ですね…」

まゆ「また適当に決めたら…わかってますよね?」

P「わかってる!わかってるから刃を押し当てないで!」


P「勝てるオーダーを決めたぞ!!」

小梅「わ、わあ…どんなの?」

森久保「気になるんですけど…」

P「クイズ:文香、大食い:輝子、障害物競走:森久保、宝探し:小梅、料理:まゆ

これで挑もうと思う」

文香「私の知識で勝てるかはわかりませんが…頑張りますね」

輝子「フヒ…キノコの大食いなら任せろ」

小梅「宝探し…できるかなあ?」

まゆ「料理なら任せてくださいね♪」

森久保「い、異議ありなんですけど…!」

P「やかましいぞ森久保ォ!」

森久保「障害物競争とか…むーりぃー…」

P「やってみなきゃわからんだろう」

森久保「やるまでもないんですけど…っていうかやりたくないんですけど…」

P「そうお前はいつもいつも逃げ腰になりやがってこの野郎!」

森久保「い、いひゃい…頬をつねらないでくだひゃい…」

P「ここか!ここが弱いんかコラ!」

森久保「ひっ!あうぅ…脇腹をつつくのもダメなんですけど…」


まゆ「それにしてもPさん、文香さんとまゆはわかるんですけど…他の子たちの種目はどうやって決めたんですか?」

P「ん?小梅は霊感持ちだからな。『宝探し』に役立つ探知能力もあるだろうと思って」

まゆ「ちょっと安易な気もしますが…」

P「で、残るは『障害物競争』と『大食い』だが…輝子に障害物競争なんて危ないことさせたくねーしな。大食いならギブアップもできるし」

まゆ「乃々ちゃんは危なくてもいいんですね…」

P「まあ全勝できるとは思ってないよ。文香、まゆ、小梅で3勝できれば十分だ」

まゆ「相手も相手ですしねえ。高学歴の川島さんに体育会系の茜ちゃん、家庭的な能力のある響子ちゃん、商才のあるつかささんに世界レベルのヘレンさんまでいますし」

P「改めて言われるとキツイな…総合的な能力を考えればウチのボロ負けだし。コミュ力も女子力も勝てねえ」

まゆ「アイドルとしての人気も正直彼女たちの方が上ですしねえ」

P「くっ…すまんな」

まゆ「いえいえ…Pさんのせいでは…」

P「実際、番組的にもウチが勝ってほしくはないだろうしなあ」

まゆ「そうなんですか?」

P「ああ…番組タイトルだって『アイドルガチンコバトル5VS5~正義が勝つとは限らない!?~』だしな」

まゆ「露骨ですねえ…」

P「こっちは正義の味方だってのになあ」

まゆ「でもまゆ…なんだか燃えてきました♪」

P「お、おうマジか」

まゆ「自信満々で挑んできた相手を粉々にして泣かせる…面白そうじゃいないですかあ…?」

P「目が怖いですまゆさん…」


P「チャネリングとかは『宝探し』で使えそうか、小梅?」

小梅「ウィジャボードが使えればできるかもしれないけど…そういうの持ちこむのは無理ですよね…?」

P「そうだなあ…たぶんダウジング行為自体が反則な可能性もあるし難しいと思う」

小梅「ア、アストラル・ヴィジョンも私使えないですし…」

P「ミディアムシップとかはどうだろ?」

小梅「うーん…ひ、憑依が終わる前に相手の人がお宝を見つけちゃうかも…」

P「ドルイド系で何か良いのなかったかなあ…?」

小梅「フィーレくらいの能力があればできるかもしれないけど…わ、私はヴァテス並みの霊力しかないから…」

P「そうかあ…なかなか難しいもんだな」

まゆ「お二人が何の話をしているかさっぱりわからないのですが…」

文香「オカルティズム、ですね。ポストモダニズムより深化したこの時代に酔狂な人たちです…私はアウラを持たざるものですので、彼らの感覚は掴めませんが…」

まゆ「ふえぇ…文香さんも何言ってるかわかんないですよぉ…」


司会「いよいよ開幕です!!『アイドルガチンコバトル5VS5~正義が勝つとは限らない!?~』!!さあ!今回はどんなアツい戦いが見れるのでしょうか!?」

P「ふぅ…緊張してきたな…」

まゆ「ふふ…Pさんが緊張してどうするんですか」

P「だってさあ…」

まゆ「大丈夫、ですよ。みんな平気そうですし」

輝子「フヒ…ぼっちの力を見せる時が来たな」

小梅「がんばるね…?」

文香「出来る限りのことは、しないとですね…」

森久保「あうぅ…本当無理なんですけど…今すぐ帰りたいんですけど…」

P「お前ら本当メンタル強いよな…頼りにしてるぜ」

まゆ「みんなやる気満々ですね♪」

森久保「もりくぼはめっちゃビビってるんですけど…無視ですか…」

輝子「た、対戦相手は決まってるのか…?」

P「おう。クイズが文香VS川島さん、宝探しが小梅VSつかさ社長、障害物競争が森久保VSヘレンさん、大食いが輝子VS茜ちゃん、料理がまゆVS響子ちゃんだ」

文香「相手も順当な采配ですね…」

P「ああ…どれも一筋縄ではいかないだろうな」

森久保「勝てる気がしないんですけど…」

P「とは言え、勝機が無いわけじゃない。一戦一戦を大切にしていこう」

森久保「また無視されたんですけど…」

小梅「ど、ドンマイ乃々ちゃん…」

森久保「あぅ…」


司会「さあさあ!まず一回戦は川島瑞樹さんと鷺沢文香さんのクイズ対決だ!元アナウンサーの豊富な経験が勝つか!?文学少女の深遠な知識が勝つか!?これは見物だ!」

文香「それじゃあ、行ってきますね…?」

P「おう、がんばってこいよ!」

まゆ「まゆたちもここで応援してますね」

輝子「し、親友…」

P「ん?どうした輝子?」

輝子「その、文香さんは…勝てるのか?」

P「んー…100%とは言えないな。でも文香ならやってくれると信じてるよ」

小梅「川島さんってそんなに頭いいの…?」

P「何せK応大学卒のアナウンサーだからなあ。俺の50倍くらいは博識な人だと思う」

小梅「す、すごいんだね…」

P「あとは問題次第かな…」


司会「今回のクイズ対決は!みんな大好きポイント方式で行われます!ジャンルごとに10~40点の問題が用意されているので、
   回答者がそれぞれ交互にジャンルと点数を選んでいく形だッ!」

瑞樹「ふふ…面白そうじゃない?あなたもそうは思わない?」

文香「あっ、はい…よろしくお願いします…」

瑞樹「え、ええよろしく…」

瑞樹(ふぅん…なんだかえらく大人しそうな子ね…でもこういう子こそ油断ならないものよ、わかるわ)

司会「では先手は鷺沢文香さん!ジャンルとポイントを選んでください!!」

文香「えっと…じゃあ歴史の40点で…」

瑞樹「いきなり40点問題!?せ、攻めるわね…!」

司会「歴史の40点ですね…!『神学大全』を記したトマス=アクィナスの出身大学は?」

瑞樹「トマス=アクィナスの名前は知っているけれど、大学なんて…わからないわ…」

文香「ナポリ大学、ですね」

瑞樹「わかるの!?」

司会「せ、正解ィ!!」

文香「彼は南イタリアの貴族出身でしたから…13世紀の有名な大学は限られますし…」

司会「な…なんと解説付きだァ!!」

瑞樹「くっ…これは…まずいわ」

P「見たかァ!これがウチの文香だ!!」

まゆ「なんでPさんが偉そうなんですか…」

森久保「で、でも、リードしたのは事実なんですけど…」

まゆ「そうですね…このまま何も無ければいいんですが…」


司会「では後攻の川島さん、ジャンルとポイントをどうぞ!」

瑞樹(低いポイントの問題だとどんどん差が開いちゃうし、かと言って高いポイントの問題で答えられなかったらもっと困るし…悩みどころね)

瑞樹(何より怖いのが、自分の指定した問題で先に相手に答えられること…相手の苦手そうなジャンルを選ぶのも手ね)

瑞樹「…ファッションの30点で!」

司会「先月に原宿で日本で初めてオープンしたブランドバッグの専門店と言えば?」

文香「…」

瑞樹「ふふ、私の読み通りあなたはこういう問題には弱いようね。答えは『クリスタル・ラボ』よ。わかるわ」

司会「正解ッ!」

P「さすが川島さんだ、流行もしっかり押さえてきてる」

まゆ「手ごわい相手のようですねえ…」

輝子「で、でもまだ勝ってるぞ…」

P「ああ…このままちょっとずつでも差を広げれば…勝てる」

文香「生物の40ポイントで…」

司会「アフリカに生息する『巨人』の名を冠する甲虫は?」

文香「ゴライアスオオツノハナムグリです…」

司会「正解!!」

瑞樹「くっ…健康の20点で!」

司会「緑茶・麦茶・ほうじ茶・ジャスミン茶、この中で最も水分補給に適しているのは?」

瑞樹「麦茶よ!」

司会「正解ッ!」

文香「医学の30点…」

司会「ヒトの表皮に存在する樹状細胞の名称は?」

文香「ランゲルハンス細胞です…」

司会「ッ正解ィィ!」

瑞樹「グルメの30点!」

司会「フランス料理で振舞われる『アミューズ・ブーシュ』。日本語に訳すと」

瑞樹「くっ…わからないわ…」

文香「私もこれはちょっと…」

司会「両者不正解ッ!!」

瑞樹(自分が指定した問題を落としちゃった…まずいわ…)

小梅「文香さん、いい調子…」

P「そうだな、これはいけんじゃねえか?」

まゆ「最初は少し心配でしたが…さすが文香さんですね」

輝子「フヒ…まず一勝か…」


司会「ついに最終問題だ!!ここで二人の点数を見てみよう!川島瑞樹:180点、鷺沢文香:220点で鷺沢文香の一歩リード!!」

瑞樹「えっ、40点差って…あと一問じゃ逆転不可能じゃないかしら」

司会「心配ご無用!最終問題はスペシャルで50点の問題だッ!!」

P「いやいやおかしいだろ!」

まゆ「確かに納得いきませんねえ…文香が勝ってたのに…」

司会「何やらブーイングも上がっているようだがそちらも心配ご無用!最後の問題はアイドルなら誰でも答えられるサービス問題だ!」

文香「…」

司会「問題内容は…『名実ともにトップアイドル・渋谷凛のデビュー曲は?』これはちょっと簡単すぎるかな!?」

文香「…ません」

司会「んん!?」

文香「わかり、ません…」

司会「これは意外!これまで素晴らしい回答をしてきた鷺沢文香が!このタイミングで回答不可!」

瑞樹「『Never say never』ね…」

司会「川島瑞樹、正解!!230点対220点でこの勝負、川島瑞樹の勝利だァァァ!!!」

P「嘘だろ…」

森久保「逆転負け、なんですけど…」

まゆ「そんな…」


文香「Pさん…ごめんなさい私っ…うっ…」

P「泣くな文香。今回負けたのは俺のせいだ。もっと文香に色んなアイドルを教えてやるべきだった」

文香「私…まだ、知らないことばっかりで…本を読んでわかった気になって…」

P「いいんだ。お前はそれでいいんだよ。悔しいのもわかる。これから、もっと知っていこうな」

文香「…はい」

まゆ(ちゃっかりPさんが文香を抱き寄せてるのが気にくわないですが…今回は仕方ないですね)

輝子「気に病むな文香さん…後は私たちに任せろ…フヒ」

小梅「そう、です。まだ終わりじゃないです」

森久保「負けにくくなったけど…逃げるわけにもいかないんですけど」

まゆ「そうですよ、文香さん。みんなで勝てば勝ちです。まだその涙はしまっておきましょう、ね?」

文香「みなさん…」


茜「うおお!!瑞樹さんお疲れ様です!!」

瑞樹「ありがと、茜ちゃん。なんだかズルい勝ち方しちゃったわね」

ヘレン「勝者はいつの時も美しいものよ。胸を張りなさい」

響子「そうですよ!あんな博識な人に勝つなんて、瑞樹さんすごいです」

つかさ「結果がすべてとは言わないけど、結果が一番重要なのも事実だからな」

瑞樹「みんな…ありがとね。次はつかさちゃんだっけ?頑張ってね」

つかさ「任せとけって。最高のステージ見せてやるよ」

響子「頑張ってください!ところでつかささん、その手に持ってるものは…?」

つかさ「あ?ぬか漬けに決まってんだろ、言わせんな」

茜「な、なぜぬか漬けを…!?」

つかさ「緊張してる時はコイツを齧るのが一番なんだ、何なら試してみるか?」

茜「ぜひ!!せっかくなのでご飯も食べていいですか!!」

ヘレン「どんな状況でも自分を見失わない…なかなか面白い子たちね」

瑞樹(この濃いメンバー…個人戦で良かったわ…)


P「次は小梅か…無理せず頑張ってこいよ」

小梅「うん、行ってくるね…?」

まゆ「相手はつかさ社長ですか…いささか不安ですね」

P「まあな…個性的なキャラクターが目立つが実力は本物だろう」

輝子「だが小梅さんも賢い子だぞ…フヒ…」

文香「そうですね…白坂さんなら、きっと…」

森久保「切実に…勝ってほしいんですけど」

P「どうした森久保、珍しく前向きなコメントだな」

森久保「2敗の状況でもりくぼが戦うなんて…むーりぃー…」

P「ビビってんじゃねえぞオラオラァ!」

森久保「あう…耳を引っ張らないでください…」


司会「では『宝探し』の概要説明だァ!ルールは単純明快、部屋の中に隠された宝物を見つけるだけ!ただし、それが宝物だと言える根拠も言わねばならないぞ!
   そして今回のお宝のヒントは…これだァ!!」

まゆ「なんでしょうアレ…クレオパトラが描かれた…缶ジュース?」

P「缶ジュースにしか見えないな…クレオパトラにはどういう意味が…」

文香「それを推理する勝負になりそう、ですね…」






つかさ「ふーん、えらく可愛いのがアタシの相手なんだね」

小梅「かわいい…?そうかな、嬉しいな…」

つかさ「皮肉に決まってんだろ。言っとくけど、子ども相手でも容赦しねえからな」

小梅「いいよ…私も全力でいきますから…」

つかさ「ふん…上等だ」

司会「おおっ!?早速両者睨み合っております!意外と攻撃的なのか!?
   では火花を散らす二人にはお宝が隠された部屋に入ってもらいましょう!なお、室内の様子はモニターでご覧いただきます!」

P「おっ二人が部屋に入ったな。これは…普通の洋室に見えるが…」

まゆ「そうですねえ。机に食器棚に化粧台に…これと言って変わったものは無さそうですが…」

文香「鳥の描かれた絵画や活けた花、机の上には紅茶のセットもありますが…どこに答えがあるのか容易にはわかりませんね」

P「あのヒントもよくわかんねえしな…大丈夫かな小梅?」


つかさ「ヒントがわからねえなら…動くしかねえな。脚は使ってナンボだ」

司会「おっと、先に動いたのは桐生つかさ!おもむろに室内を物色し始めたぞ!?」

つかさ「怪しいものが見つかったらそこから逆算してヒントとの関連を見つければいい。ぼーっとしてる方がよっぽど愚策だろ」

小梅「…」

司会「一方白坂小梅は…?おぉーっと!室内の椅子に座った!!これは長考の姿勢か!?」

小梅「クレオパオトラ…エジプト…ナイル…?ピラミッド…?それとも…」ブツブツ

つかさ「これも…違うか、おそらくただのノートだな」

司会「白坂小梅はどうやらじっくり考え事をしている様子だ!一方桐生つかさは室内の物を一つ一つ手に取って検分しているぞ!『動』の桐生つかさと『静』の白坂小梅!対照的な戦いだ!」

P「くそっ、的確にプレッシャーを与えてくるな…さすが桐生社長だ」

輝子「プレッシャー…何がだ?」

P「ああやってあちこち動き回られたら小梅としては不安だろう…先に答えの手がかりになるものを見つけられるかもしれないって懸念が頭から離れないだろうし」

まゆ「なるほど…確かにそれは集中しづらそうですねえ」

文香「それに、答えを探りながら動くというのも合理的ですね…」

P「ウワアアア不安だよ森久保ォォォォ」

森久保「ゆ、揺さぶらないでほしんですけど…うぇ…」


-10分経過-

つかさ「ふぅ…一通り探し終えたが…なかなか怪しいものって見つかんねえもんだな」

小梅「クレオパトラ…パトラ…うーん」

つかさ「さっきから座り込んでるけど何なんだお前?やる気ねえのか?」

小梅「…」

つかさ「だんまりか…まあいいけどな。無口な奴なんてのはだいたい中身の無いつまんねえ奴なんだ」

小梅「中身…」

つかさ「あ?なんだよ」

小梅「そっか、中身かあ…」

つかさ「なんだ急に立ち上がって…お前、まさか」

小梅「たぶん…だけど」

P「小梅が花瓶を持ったぞ?」

文香「花瓶…なるほどそういうことですか…」

P「??どういうことだ?」

小梅「答えは、この中に」

つかさ「花瓶を…ひっくり返しただと…!?」


小梅「やっぱり…あった」

つかさ「なんだそれ水晶玉、か?」

司会「おぉっと何かを見つけたようだぞ白坂小梅!!それでは答えをどうぞ!!」

小梅「クレオパトラは『美』の象徴…『かん(缶)』の中に『び(美)』が入ってるから…『かびん(花瓶)』。合ってますか?」

司会「ン大正解ッ!!!」

つかさ「何…だと…」

司会「勝者は白坂小梅ッ!!!」

小梅「えへ…」

P「うおおおおおお小梅が勝ったぞおおおお!!!」

輝子「フヒ…さすがだ」


つかさ「アタシが、負けた…?しかもこんな暗い奴に…」

小梅「が、外見に囚われちゃだめだよ…」

つかさ「えっ…?」

小梅「答えの、花瓶と同じ…中に何が入ってるかは確認しなきゃわからないんだから…」

つかさ「くっ…」

P「よくやったぞ小梅えええええ」

小梅「えへ…がんばったよ」

P「しかしよく答えがわかったな!」

小梅「ホラー映画は、ゾンビだけじゃないから…謎解きも、ホラーだと定番、ですよ」

まゆ「まゆも最後までわからなかったですねえ…」

文香「考えてみればクレオパトラの缶ジュースと花瓶には共通項も多いですね…中に液体が入ってたり、花は…缶で言うと装飾に当たるものですかね。
   美しいものに封じ込められた宝…」

森久保「もりくぼだったら絶対勝てなかったんですけど…」

P「とにかく一勝一敗だ!次も大事な一戦になるな…なあ森久保ォ!」

森久保「うぅ…プレッシャーなんですけど…」

輝子「ぼののさんなら大丈夫だ…私は信じているぞ…」

まゆ「乃々ちゃんとヘレンさんの勝負ですか…まるでリスとライオンの戦い、ですねえ…」

森久保「それ…食べられる未来しか見えないんですけど…」


つかさ(くっ…みんなに合わす顔がねえな…)

響子「お疲れ様です、つかささん!」

茜「ナイスファイトでしたよ!!!」

つかさ「お前ら…」

ヘレン「世界に通用するかどうかを分けるのは、負けた時に前を向けるかどうか。さあ、顔を上げなさい」

瑞樹「そうよ、綺麗な女の子がうつむいてちゃダメよ」

つかさ「そう、だな…アタシらしくもねえところ見せちまったな」

瑞樹「長い人生、弱気になることもある…わかるわ」

茜「今の私たちにできることを精一杯やりましょう!!ほら!!メガホン持ってヘレンさんの応援しましょう!!」

つかさ「恩に着るぜ…ヘレンさん、アタシの分も頑張ってくれよな」

ヘレン「任せなさい。必ず観客を沸かせてみせるわ。それが私の存在意義よ」


司会「さあ!続いては障害物競争だ!果たして二人は迫りくる幾多の困難をどう乗り越えるのか!!」

森久保「あぅ…不安しかないんですけど…」

ヘレン「あなたが私の相手ね…名前は…森久保乃々だったわね」

森久保「もりくぼのこと、知ってるんですか…?」

ヘレン「当然。ライバルになりそうな素質を持つアイドルのことは把握しているものよ」

森久保「私はそんな大層なモノじゃないんですけど…」

ヘレン「自分を過小評価するものじゃないわ。乃々…楽しませてもらうわよ」

森久保(なんかよくわからない期待をされてるんですけど…何なんでしょうこれ…)

P「完全に委縮してるな…森久保」

まゆ「これは仕方ないですよねえ…私もヘレンさんの前で堂々としてられる自信は無いですし」

輝子「ぼののさんのミラクルに期待だな…フヒ…」

P(ミラクルか…輝子ですら期待してないんだなこの闘い…)


司会「では両者位置について…用意…スタートォ!!!」

P「始まったか!」

文香「最初は縄くぐりですね…」

P「うわあヘレンさんくぐるの速っ!!なんだあの動き…ヘビかよ…」

小梅「それに比べて乃々ちゃんは…ゾンビみたいな移動速度だね…」

P「くっ…いきなり差をつけられたか…先にヘレンさんが次の障害物に着いたな」

まゆ「あの吊るされてるものは…あんぱんでしょうか?」

P「ああ…って今度はヘレンさんが回転しながら跳んだ!?」

文香「フィギュアスケートの…トリプルアクセルに似た動きですね」

P「無駄にやることが派手だな…そのまま走って…次は平均台か」

まゆ「あっ!乃々ちゃんがあんぱんまで辿り着きましたよ!」

P「やっとか…しかも森久保、ジャンプ力が無さすぎてあんぱんまで届いてねえ…」

輝子「親友…アレを見てみろ、面白いぞ」

P「ん、どうした…ヘレンさん今度は逆立ちしながら平均台を歩いてやがる!?」

まゆ「なんという余裕…力の差が圧倒的ですねえ…」


響子「あの…ヘレンさんはなんであんな無d…じゃなくて変わった動きをしてるんでしょうか?」

茜「筋トレですね!!わかります!!」

瑞樹「そうねえ…少なくとも筋トレじゃないのは確かだけど…」

つかさ「たぶんあれがあの人のアイドルとしてのスタイルなんだろ」

響子「どういうことでしょうか?」

つかさ「森久保相手に競争で勝つのは難しいことじゃない。ただ、単に勝っただけじゃ観てる側もつまんねえだろうからな。それを踏まえての行動なんだろ」

瑞樹「なるほどね…」

つかさ「何を売りにするかはアイドルによってそれぞれだ。可愛さやカッコ良さ、親しみやすさ…色々あるだろうな。あの人にとっての武器は『観ている人間を楽しませること』その一点なんだろう」

響子「それが世界レベル…」

茜「なんだかよくわかりませんがヘレンさんはすごいってことですね!!」


文香「今度は森久保さんが平均台に着きましたね…」

P「ああ…だがヘレンさんはもう次の跳び箱に差し掛かってる」

まゆ「なかなか追いつけないものですねえ」

P「くっ、ヘレンさんの無駄な動きを差し引いても身体能力に差がありすぎる…」

輝子「ぼののさん…赤ちゃんみたいな恰好で平均台を渡ってるぞ…上は歩けないのか」

P「予想以上にひどいなアイツ…」

小梅「ヘレンさんが凄い動きで3つの跳び箱を越えたよ…」

文香「ハンドスプリングにロンダート、それとバックハンドスプリングですね」

P「バックハンドスプリングって…バク転かよ!?俺もできねえよそんなの…」

まゆ「次は…空気の入ってない風船でしょうか?あれを膨らませてから行かないとダメなんですね」

P「ヘレンさん平然と膨らませてるぞ…息切れとかしないのかあの人は?」

小梅「乃々ちゃんは…跳び箱に怯えてるね…」


P「ん…?ヘレンさん、膨らませた風船をまだ触ってるぞ…あれはまさか!」

文香「バルーンアートですね、犬を作ってるみたいです」

P「もうこれ森久保に勝ち目無いじゃんよ…色んな意味で大敗だよ…」

まゆ「そもそも私たちの中でヘレンさんに勝てる人いないですしね…ちょっと乃々が可哀想になってきました…」

P「ダメだ…もうヘレンさんはもう最後の直線に差し掛かってる」

まゆ「乃々ちゃんも何とか風船にたどり着きましたが…そもそも風船を膨らませられてないですねえ」

森久保「ふー!ふー!」

まゆ「乃々ちゃん…顔が真っ赤です…」

P「森久保…お前なんでそんなになってまで…」

小梅「も…もーりくぼ!もーりくぼ!」

P「小梅…!」

輝子「ぼーのの!ぼーのの!」

文香「もーりくぼ、もーりくぼ」

観客「…も、もーりくぼ!!もーりくぼ!!」

P「何っ!?まさかの森久保コールが!?」

まゆ「どれだけ実力の差を見せつけられても諦めない…それは簡単にできることではないですからねえ。ほら、Pさんも応援しましょう?」

P「もーりくぼ!!もーりくぼ!!」


ヘレン「…」

司会「おぉーーっとぉ!?ヘレンがゴールを目前にして立ち止まったぞ!?これは一体!!」

P「な、なんだ…?森久保の方をじっと見て…」

ヘレン「乃々!頬を膨らませてはダメよ!お腹から空気を送り込みなさい!」

森久保「ふ、ふううううぅぅぅ」

まゆ「ああ惜しい!ちょっと膨らみかけてたのに!」

P「が、がんばれ森久保ォ!!」

観客「がーんばれ!!がーんばれ!!」

森久保「ふっ、ふううううう!ふううううう!」

P「うおおおお!膨らんできてるぞ!!」

輝子「や、やったぞぼののさん…」

文香「完成、しましたね…」

森久保「もぅ…むーりぃー…」

ヘレン「ふふ…いい子ね」

司会「おぉっと森久保乃々を見届けたヘレン、颯爽とゴールに向かった!!障害物競争、勝者はヘレンだぁ!!」


森久保「負けちゃったんですけど…申し訳無いんですけど…」

P「大健闘じゃねえか森久保ォ!」

森久保「えっ」

まゆ「乃々ちゃん、頑張りましたね…まゆ、涙が出ちゃいそうです」

輝子「感動したぞぼののさん…フヒ」

文香「不屈の精神…立派でしたよ」

小梅「すごかったよ」

森久保「も、もりくぼは頑張れたんでしょうか…」

P「ああ、見ろよ観客の顔…誰もお前を責めようなんて思わないさ」

森久保「…あぅ」







瑞樹「真の勝者は敗者すら作らない、といったところかしら」

つかさ「粋なことしてくれるじゃねえか」

ヘレン「ただ勝つだけなら誰にでもできる…大事なのはその先にあるものよ」


P「とは言え1勝2敗か…もう後が無いな」

輝子「フヒ…どうやら私の本気を見せる時が来たようだな」

P「輝子、無理はしなくていいからな?つらくなったらギプアップしろよ?」

まゆ「Pさんは過保護ですねえ…ここに来た時点で私たちはもう戦士ですからね、輝子ちゃんも覚悟もできているはずですよ」

輝子「そうだぞ親友…まあ、甘いものはあまり食べられる自信は無いけどな…」

P「向こうもアイドルだし、あんまりカロリーも食べさせられることはないと思うが…お題は何なんだろうな」

輝子「キノコなら私の勝ちは確定したようなものだ…フヒ」

P「いやいやそこまで露骨にお前に有利なものではないだろ…」

文香「言いにくいことではありますが…勝算の高い勝負ではないですね」

P「ああ…相手が茜ちゃんなのがマジでキツい。数いるアイドルの中でも彼女の胃袋は上位に入る」

輝子「誰が相手だろうと私は全力を尽くすぞ…自信は無いが…」

小梅「が、がんばってね」


司会「さあ続いては四回戦だ!!セレクト・ジュエリーズの方はkもう後が無いぞ!ここで意地を見せるか!?それとも敢え無く決着がついてしまうのか!?」

茜「ふふふ…!大食いなら負ける気がしません!!!」

輝子「じ、自信満々だな…」

茜「自信こそ力ですからね!!いい勝負をしましょう!!」

輝子「そうか…私とは違う考え方だな…とにかくよろしくな…」

司会「おお!!闘う前から両者握手を交わしております!!美しいスポーツマンシップだ!!それでは二人とも席についてもらおう!!」

輝子「大食いの料理は…まだ隠されてるな」

茜「ステーキですか!?それとも牛丼ですか!?何でもかかってこいですよ!!!」

司会「今回のお題は…コイツだぁ!!!」

P「あれは…ゴーヤ!?」


司会「それでは両者お箸を構えて…用意、スタートゥ!!!」

茜「野菜の輪切りとは予想外ですね!!しかし私にかかればこの程度…うっ!!!???」

P「どうした!?茜ちゃんが一口食べただけで青ざめてるぞ!?」

文香「あの小ぶりなゴーヤは…おそらく『すずめゴーヤ』ではないかと」

P「『すずめゴーヤ』?えらく可愛らしい名前だが…」

文香「一般的にゴーヤは、サイズが小さく色が濃いものほど苦味が強いと言われています」

P「サイズも小さいし、かなり原色に近い緑だなあのゴーヤ…つまりあれの苦味は…」

森久保「うえぇ…想像したくもないんですけど…」

P「待て…!でも輝子は黙々と食べてるぞ!?」

小梅「輝子ちゃん、寮でもよく生でキノコ食べてるからね…生のキノコは苦くて食べれない人も多いのに」

P「なるほど…まさか輝子のキノコ偏愛が役に立つ日が来るとは…」


司会「おぉーっと!?日野茜の箸が止まっているぞ!?一方で星輝子は淡々と箸を進めている!!」

輝子「食べないのか…?なかなか悪くない味だぞ…」

茜「くっ…!お醤油!!お醤油はいただけませんか!?」

司会「残念ながら調味料の使用は禁止だ!!出されたゴーヤはすべて生で味わっていただきます!!ただし喉を詰まらせると危険なので水を飲むことだけはOK!!」

茜「それなら…!!水で流しこむしかないですね!!正面突破です!!」

司会「おっと日野茜、突然大量にゴーヤを口に詰め込んで…いったぁ!!水を飲んで強引に嚥下しました!!」

茜「の、飲みこんでも苦い…!ですが!!根性で乗り切ります!!!」

P「くっ、やっぱり簡単には勝たせてもらえないか…!」

文香「なんて勢い…私には真似できない芸当です…」

P「いやでも、輝子が追いつかれないように頑張れば…ってあいつ、よく噛んで味わってやがる!?」

まゆ「さすが輝子ちゃん、お行儀がいいですねえ」

P「くっ…今度は輝子の食べ物に対する敬意がアダになったか…」


茜「くあああ!!苦い!!!でも私は!!めげません!!!」

輝子「…モグモグ」

茜「うおおおお!!!根性!根性!!根性!!!」

輝子「…ムグムグ」

司会「おぉっと日野茜、涙目になりながらも皿を減らしていく!!一方星輝子落ち着いてゴーヤを味わっているぞ!!対照的な対決だ!!」

文香「対照的…名前からして対照的な二人ですからね…」

P「ん?どういうことだ?」

文香「夜に輝く星と、昼を明るく照らす太陽…偶然ですが二人の名前は対極なんですよ」

P「言われてみれば確かにな…ところで文香」

文香「はい…?」

茜「私は!!負けません!!最後まで諦めません!!!」

P「なんか俺、茜ちゃん応援したくなってきた」

文香「…奇遇ですね、私もです」


P「やべえ、もうすぐ追いつかれる…!」

まゆ「輝子ちゃんがライブの時みたいに勝てるんじゃないですか?ほら、あのヒャッハーっていうやつ」

P「いや、あれはメイクをしてる時じゃないとダメらしいんだ…今は難しい」

まゆ「それなら最初からメイクをしておけばよかったのでは…?」

P「それも輝子に提案したんだが…『いつもの姿じゃないと勝っても意味が無い』って断られちまったよ」

まゆ「どういうことでしょう…?」

小梅「輝子ちゃんね、メイクしてる時は気持ちよくなって周りが見えにくくなっちゃうんだって…『ちゃんと仲間の姿を見たいから』って言ってたよ」

まゆ「輝子ちゃん、そんな風に思っててくれたんですね…」

司会「これは意外!!ついに日野茜が追いついたぞ!!このまま逆転なるか!!?」

茜「ま、負けませんよーーー!!私は自分を信じます!!!」

輝子「む…だが黙ってやられる私ではないぞ…!」

司会「んん!?今度は星輝子の咀嚼の速度が上がった!?」

輝子「負けられないのは、私だって同じだ…!文香さんだって、小梅さんだって、ぼののさんだって全力でぶつかってきたんだ…!」

茜「ゲホッ…!ここに来てそのペース…!!や、やりますね!!」

輝子「そして最後のまゆさんに繋げる…!やっと出来た友達なんだ、誰一人裏切ってたまるか…!」


司会「残り時間一分を切って大食いの勝負らしくなってきたぞ!?果たしてゴーヤの神はどちらに微笑むのか!!」

茜「うおおおお!!!」

輝子「ぬああああ…!」

P「どっちだ!?どっちがリードしてる!?」

文香「お皿を数えないとわからないですね…」

P「頼む…勝ってくれ…!」

司会「ここで試合終了だァ!!さあ計測班にお皿を数えてもらいましょう!!」

森久保「きのこさん…」

まゆ「ど、どっちが勝ったんでしょう…?」

司会「さあお待ちかね試合結果だが…53対52でッ…!!」

文香「…」

司会「星輝子の勝利だ!!!」

小梅「わ、わあ…!」


茜「そんな、私が大食いで負けるなんて…!」

輝子「ふぅ…いい試合だったぞ…フヒ」

茜「あ、ありがとうございます…!!すごく悔しいです!!」

輝子「そ、そうか…」

茜「あの、一つだけ教えてもらってもいいでしょうか!?」

輝子「?」

茜「なぜ、なぜ私はあなたに負けたのでしょうか!?私は、間違っていたのでしょうか!?」

輝子「間違ってはいないと思うぞ…自信に根性、素晴らしいものだと、私も思う」

茜「では、何故…!」

輝子「ただ、私の仲間やキノコとの絆は、それらに劣るものではなかった…それだけのことだ…フヒ」

茜「なるほど…!後学にさせていただきます!!」


P「よくやったぞ輝子おおおおおお!!」

輝子「キノコ以外のものをこんなに食ったのは…は、初めてだ…フヒ」

小梅「輝子ちゃん格好よかったよ…」

文香「さすがですね…」

森久保「あんなリア充っぽい人に勝つとか…すごいんですけど…」

輝子「はは…しばらく緑の食べ物は見たくないぞ…」

まゆ「頑張りましたねえ…」

P「みんなのお陰で何とかここまで来れたな。さて、残るは…」

まゆ「うふ♪」


まゆ「では、行ってきますねえ…」

P「お、おう…」

まゆ「Pさん、不安ですかあ…?まゆなら、大丈夫ですよ」

P「ああ、頼りにしてるよ。頑張ってくれ」

P(時々怖いけどこういう時頼もしいよな、まゆは)

輝子「な、なあ親友…」

P「ん?どうした輝子?」

輝子「私は…この試合の結果がどうなってもいいかなって思ってるんだ…へ、変かな」

P「どういうことだ?」

輝子「ここに来て、みんなそれぞれ頑張って、喜んだり悔しがったり…もう私はそれだけで十分なんだ。結果がどうとかじゃなく…」

P「あー…言いたいことはわかるよ。俺もお前らが必死になってるのを見ただけで胸がいっぱいだよ」

輝子「し、親友もそうなのか…?」

P「だがまあ、感傷に浸るのはこの試合が終わってからだな。まゆの勝利を見届けてからだ」

輝子「それもそうだな…フヒ」

森久保「まゆさん、自信満々だったんですけど…何か秘策でもあるんでしょうか…」

P「無いだろ。無くてもああいう顔するやつなんだ、あいつは」

小梅「さすがリーダー、だね」

文香「私も佐久間さんを見習わなければいけませんね…」

P「そうだな…全員まゆの姿をよく見とけよ。お前らもよくわかってるだろうが、あいつは俺の見出した中でも最強のアイドルだ。学ぶことも多いはずだ」


響子「よろしくお願いします、佐久間さん。家庭的なアイドルNo.1は譲りませんよ」

まゆ「ふふ、あなたとはいずれぶつかる運命にあったとまゆも思ってたんですよお…楽しく闘いましょうねえ?」

司会「さあ大将戦だ!!この『料理』という対決内容!!五十嵐響子の女子力が勝つのか!?それとも佐久間まゆの妖しい魅力が勝つのか!?一瞬たりとも目が離せない一戦だ!!」

響子「お題は…?」

司会「先ほどお題の通知が来ました!!お二人には…『スイーツ作り』で対決していただきます!!!」

まゆ「ふふ…得意ジャンルです♪」

響子「奇遇ですね…私もです」

司会「今回は審査員として特別ゲストを3名及びしております!!どうぞ!!」

槙原志保「甘いものなら任せてください♪」

難波笑美「食と言えば大阪!きっついジャッジするから覚悟しときや!」

高峯のあ「この手の依頼は美食公演以来かしら…存分に腕を振るいなさい、私の舌もそう望んでいるわ」

P「審査員も曲者ぞろいか…」

文香「そんなに個性的な方々なのでしょうか…?」

P「甘いものばっかり食べてる人に、イチャモンつけるのが得意な大阪人、のあさんに至っては人かどうかも怪しいからなあ…」

文香「佐久間さんも大変ですね…」

P「まあ、まゆを信じて待とう。それが今の俺たちにできる最善策だよ」


司会「では早速お二人には調理に取りかかってもらいましょう!!」

まゆ「たくさん材料がありますねえ…何を作りましょうか…」

響子「私はもう決まりましたよ!お先に作り始めさせもらいますね!」

まゆ「そうですかあ…まゆは焦らずじっくりいきます。そう、じっくりね…」

小梅「まゆちゃん、お菓子作りは得意なんだよね…?」

P「んー…そういう話は聞くが実際どうなんだろうな。俺は朝食を作ってもらったことしかないしなあ」

森久保「朝食…?」

P「なんかこの前仕事から帰ったら俺の部屋にまゆがいたから朝までUNOして遊んでたんだ。その時に朝食は作ってもらった」

森久保「どこから突っ込めばいいのかわからないんですけど…」

P「とにかくその時の料理はうまかったよ。食べた後すぐ眠くなったから記憶があいまいな部分もあるけど」

森久保(どう考えても一服盛られてるんですけど…)

P「起きた後はなんかやたら身体がだるかったな」

輝子(薬の副作用だな…フヒ)

P「あとなぜか半裸になってた」

文香(寝相で半裸になった…というわけではなさそうですね)


瑞樹「みんなはどう見るかしら、この試合」

茜「響子さんの大勝利でしょう!!見てくださいあの手際の良さ!!」

つかさ「どうだろうな…対戦相手の佐久間、あいつの目はヤバい。何かやらかしてくる目つきしてやがる」

ヘレン「ふふ、二人ともなかなか面白そうね。勝負であることも忘れて見とれてしまいそうだわ」

瑞樹「確かに二人とも迷いなく着実に調理を進めてるわね。少しまゆちゃんの方がローペースだけど…二人からは強い意志を感じるわ」

茜「熱い魂のぶつかり合いですか!!いいですね!!」

つかさ「それぞれ譲れないもんがあるんだろうな。どちらの信念が正しいか、それを競っているようにも見えるが…」

瑞樹「つかさちゃんの言う通りでしょうね。似たタイプの二人だからこそ、お互いの相違点は嫌でも気になるはず。今までの対決でも一番火花が散ってるんじゃないかしら」

つかさ「意志の強さで勝敗が分かれるのは間違いないはずだ。どっちが勝つかは…見当もつかねえがな」


―20分後―


響子「できました!これで完成です!」 


司会「おーーっと先に調理を終わらせたのは五十嵐響子だ!!さてどんな品を繰り出してくるか!!期待が集まるぞッ!!!」

響子「では皆さん召し上がってくださいね♪」

志保「これは…フルーツポンチですね!」

笑美「おっ!カラフルでええやん!」

のあ「均整の取れた一品ね…立ち上る香りも悪くないわ」

司会「では審査員の皆さまは実食をお願いします!!」

志保「じゃあ早速…♪ んー、爽やかでおいしいです!」

笑美「パインに桃…この辺は定番やな。ほんでこれは…ライチと無花果か!フルーツポンチに珍しいなあ!」

響子「ライチや無花果は美容効果も高いと言われていますから、アイドルの皆さんにも喜んでもらえるかと思って♪」

のあ「甘すぎないのもポイントね。この酸味は…ヨーグルト由来かしら」

響子「ご名答です!ヨーグルトの風味も足してしつこくない味になってるはずですよ♪」

司会「なんと!!審査員の評価も上々だ!!できることなら私もご相伴に預かりたいところだ!!」

P「ただ味で楽しませるだけではなく、食べる側の人への配慮も抜かりない、か…」

小梅「手強そうだね…」

P「っていうか俺も響子ちゃんの料理食べたい」

輝子「親友は浮気者だな…またまゆさんに怒られるぞ…フヒ」

P「ヒッ…今のもアウトかなあ…」

森久保「まゆさんめっちゃこっち凝視してるんですけど…」

文香「アウトというよりダウトですかね…」


まゆ(Pさん、まゆの姿を見ていてくださいね…貴方のために、私は勝ちますから)

司会「続いては佐久間まゆの一皿だ!!今度はどんな味の芸術が飛び出すのでしょうか!!私興奮で涎が止まりません!!」

まゆ「どうぞ、ごゆっくり召し上がれ…」

のあ「ふぅん…見たところ至極普通のショートケーキね」

笑美「さっきのフルーツポンチに比べたらえらい地味やなあ…」

志保「確かに見た目はシンプルですね…」

司会「んん!?見た目の点においては審査員の評価は芳しくないようだぞ!?この状況に佐久間まゆはどう反応するのか!!」

まゆ「…うふ♪」

輝子「余裕の顔だな…」

文香「余裕の顔ですね…」

志保「と、とにかくいただいてみましょう!ね?」

笑美「まあ気乗りはせえへんけど…」

志保「じ、じゃあいただきまーす♪ …えっ?」

笑美「な、なんやこれ…」

のあ「ほう…」

P「あ、あれ…審査員みんな一口食べて固まってるけど…」

森久保「まさかの事態なんですけど…」

小梅「ううん。よく見て」


P「二口、三口…みんな黙々と食べてるぞ!?」

輝子「フヒ…状況がわからないな…まゆさんは有利なのか?」

森久保「静かすぎて不気味なんですけど…」

小梅「フォークの音しか聞こえないね…どうしたんだろ…」

文香「この勝負、おそらくは…」

P「文香!?何かわかったのか!?」

文香「佐久間さんの勝ち、です」





笑美「な、なんやねんこれ…フォークを進める手が止まらん…」

志保(私が今まで食べてきたお菓子とは異質…すごく不思議な気分です…でも、おいしい)

のあ「面白い品ね…こういう楽しませ方もあるのかしら」

司会「では審査員の皆さまはフォークを置いてください!!これよりどちらの料理がより優れていたか評価してもらいます!!」


志保「どちらが上か決めるのは心苦しいですが…敢えて言うなら私は、佐久間まゆさんのケーキですね」

笑美「ウチも佐久間やな。どっちもうまいとは思ったんやけど…比較されたら敵わんわ」

のあ「私の心を揺るがすことができたのは佐久間まゆのケーキよ…久しぶりに興を掻き立てられたわ」

司会「これは…!!満場一致で佐久間まゆの勝利だァ!!」

P「よしっ…!でも、なんで響子ちゃんが負けたんだろ?審査員みんな食べてる時に険しい顔してたよな?」

森久保「ふしぎなんですけど…」





響子「自信あったんですけどね…負けちゃいましたか…」

まゆ「ふふ♪響子ちゃんのフルーツポンチもとても美味しそうでしたよお…?」

響子「今はそれを言われてもちょっと悔しいです…」

まゆ「折角ならまゆのケーキも食べてみますかあ?」

響子「えっ、いいんですか?」

まゆ「もちろんですよ…」

響子「じ、じゃあお言葉に甘えて…うっ!?」

まゆ「いかがでしょうか…?」

響子「すごい…いきなり強烈な甘みが襲ってきます…」

まゆ「ふふ…」

響子「それなのに、後味はどんどん優しくなっていって…またあの激烈な甘みが欲しくなってしまいます…!これはフォークが止められないですね…!」

まゆ「面白いでしょう?」

響子「私は…今まで料理は愛情だと思ってました。こんな形の料理があるなんて…」

まゆ「いえ、まゆも料理は愛情だと思いますよ」

響子「えっ?」


まゆ「響子ちゃん愛情は美しいものだと思います。慈しみに溢れていて、あったかくなるような…」

響子「…」

まゆ「でも、それだけが愛情じゃないともまゆは考えています。『私だけを見てほしい』『私にもっと溺れてほしい』綺麗な感情ではないですが、強い強い感情ですから…」

響子「そういう綺麗じゃない気持ちも含めて、愛情なんですね…私は、視野が狭かったのかもしれません」

まゆ「そういうことです♪ 献身的な姿勢は素敵ですが、響子ちゃんももっと自分に正直になっていいんじゃないでしょうかねえ…」

響子「そう、かもしれませんね…私の見えていなかった世界を教えてもらいました。今回まゆちゃんが相手で良かったです…!」

まゆ「ふふ…光栄です」






P「さすがだな!!まゆ!!!」

まゆ「うふ♪ Pさん、最初から最後まで目を離さないでいてくれましたかあ…?」

P「ヒッ…も、もちろんじゃないか!!」

森久保「…」

P「お前もなんかしゃべれや森久保ォ!」

森久保「うぅ…八つ当たりなんですけど…」

輝子「やるな、まゆさん…」

文香「鮮やかな勝利でしたね」

小梅「おいしそうだったよ…」

まゆ「ふふ、今度事務所でも作ってみますね…」

P「はは、そりゃ楽しみだな」

まゆ「Pさんは吐くまで食べてくださいねえ…?」

P「まゆさんなんか勝ってから切れ味鋭くなってない?俺の気のせいかな?」



――後日譚――


P「ええ、29日ですね。はい、打ち合わせには森久保を同行させていただきますので…いえいえ!こちらこそ何とぞお願いします!」

P「ふぅ…」

まゆ「またお電話ですか?最近目に見えて忙しくなりましたねえ…」

P「ああ、あれ以来お前ら宛の仕事依頼が多くてな…それぞれの対決でキャラクターが立ってたし、いい宣伝になったんだろうな」

まゆ「ありがたいことですねえ」

P「まったくだよ。川島さんたちの事務所もより繁盛してるみたいだし、案外敗者のいない勝負だったのかもな」

まゆ「ふふ♪ あっ、Pさんまた電話が…」

P「おっ本当だ。お電話ありがとうございます、こちら●●プロダクションマネージング担当でございます。ええお世話になっております…」

まゆ(今度はどんな用件でしょうか…?)

P「えっ…セレクト・ジュエリーズの5人一緒に番組出演ですか?いえいえ、とんでもない!ぜひお願いします!」

まゆ「うふ、また忙しくなりそうですね♪」

おわり

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