【ミリマス】P「干物アイドル!ももこちゃん」 (414)

ひものあいどる・ひもどる【干物アイドル】

家の中では様々なことを面倒くさがり、適当に済ませてしまうアイドル。
「家での桃子は――だ」

≪類義語≫干物女・干物妹

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438058661

俺の担当アイドル周防桃子(11)は美少女で評判だ。
 
業界での経験も豊富で目端が利きアイドルとしての人気にも恵まれている非の打ち所のない美少女小学生。老若男女に好かれる理想のアイドルだ。

……と。みんな思ってるらしい……









P「ただいまー」ガチャ

桃子「…………」カチカチカチ

P「……ただいま、桃子」

桃子「あ、うん。お兄ちゃんおかえりー」ポチポチ

P「おう。……おい桃子、夏だからってそんな恰好したままでいると、お腹が冷えて身体壊すぞ」

桃子「えー? 桃子今10thの感想巡回で忙しいからお兄ちゃん直して~」カチカチカチッ

P(まだ11歳の女子小学生が仰向けになって腹を出しながらネットサーフィンにふけっている……)

P(俺のせいだ……。桃子が家に来てからの約一か月、お仕事続きのアイドル生活は小学生には厳しいだろうと甘やかしてしまってから……桃子はどんどんグータラでわがままになってしまっている!)

桃子「ぬひょひょひょひょひょひょ」カチカチカチカチ

P「くっ……!」

P(こうなったら!)ポチポチッ

桃子「ふーんふふー……あれっ!? せ、接続がオフになってる! お兄ちゃんなんかした!?」

P「ああ……。ネット回線をつないでいるルーターの電源を、今オフにした」

桃子「どーしてそんなことするのー!? これじゃ桃子がネットできないじゃーん!!」

P「どうしたもこうしたもあるか! ここ最近、家に帰ってきたらご飯や風呂以外はインターネットばかりして……自分でもよくないとは思わないのか?」

桃子「えーだってー……。お兄ちゃんが夜更かしダメって言うから、深夜アニメはネットで見るしかないし、今月号のグッサンも読み飽きたしー」

P「ネット依存症になってからじゃ遅いんだぞ。電子画面見続けると目や頭に毒だし、電気代もばかにならない……」クドクド

桃子(わー! そのままお説教モード入っちゃったー!)

桃子「……わかったよ。お兄ちゃんの言う通りだね」

P「そうそう。本来なら自分で気付いて自主的に……えっ?」


桃子「とにかく、ネット見る時間を今までより少なくすればいいんだね。桃子なら、それくらい我慢できるよ」

P「あ、ああ。そうしてくれると嬉しいんだけ……ど」

P(あれ? 思ったより素直だな)

桃子「でも、せめて今見ようとしてた分だけはやらせてくれない? 桃子は出演できなかったけど、ファンのみんながあのライブをどういう風に感じてくれたかっていうのはきちんと知っておかなきゃいけないって……思うから」

P「そ、そうだな。……いきなり我慢っていうのは難しいだろうし、急にルーター切った俺も悪かったよ。ごめんな、桃子」

桃子「ううん、いいよ。お兄ちゃんが桃子のためを思って言ってくれたんだもん……ね?」

P「桃子……! ……よし、それじゃ早速夕ご飯にするか! 今日はスイカ買ってきたんだぞ!」

桃子「わーい!」





桃子(…………ふっふっふ)

桃子「甘いよ、お兄ちゃん……!」キュピーン

桃子「……はっ。今の時刻は……深夜の2時ちょい。お兄ちゃんは……」



P「……zzz」



桃子「……寝てるみたいだね。これならイケるかな」

桃子(そう。桃子はインターネットを我慢するとお兄ちゃんに宣言した。しかし、それはあくまでお兄ちゃんの目が及ぶ範囲・時間帯でのこと……)

桃子(子役時代からのお仕事生活で身に付けた仮眠テクをもってすれば、大体狙った時間帯に起きるくらい朝飯前だよ。……ツメが甘かったね、お兄ちゃん)

桃子「と、いうわけで……」

桃子「まずは部屋の隅にあるルーターをポチー!」

桃子「そんでもってマイPCのスイッチオーン! この起動音が耳に心地いい~!」

桃子「イヤホンをPCにセットー! これでボリュームマックスにして動画を見てもお兄ちゃんには聞こえないよ!」

桃子「そしてそしてー! もしかしたらお兄ちゃんが起きてるかもしれないとチェックしつつ冷蔵庫に向かいーの!」

桃子「扉を開けーの!」

桃子「コーラとポテイトを取り出しーの!」

桃子「閉めーの!」

桃子「元の場所に戻ってネットし放題だ~! まったく、たまらないね!」

桃子「くくくく……。お兄ちゃんの好感度を稼ぎつついつものネットサーフィン……お兄ちゃんに怒られてから、一瞬でこの計画を思い付いた自分が怖いよ……」

桃子「手元が暗いけど、それ以外はいつもと変わらないし最高だね。見よ、指が意志を持ったかのようなこの高速ブラインドタッチ!」

桃子「むしろ、お兄ちゃんに隠れてやってるこのスリル……そして、禁忌の深夜コーラにポテイトの最強タッグ……」

桃子「まだ一回目なのにこれは凄い……犯罪的だね……」

桃子「ぬっふっふっふっふ」カチカチカチカチカチカチ



P「……zzz」

(ジリリリリリリリ!!!!!)



桃子「わはぁっ!」ガバッ

P「おはよう、桃子。大分驚いてるみたいけど、昨日はそんなにぐっすり寝られたか?」

桃子「あ……うん。ぐっすり寝れた……かも」

P「昨日はネットを控えめにしたから、今まで目が疲れてた分を取り返せてるのかもな。……ほら、今朝はオムレツ焼いてみたんだ。どうだ?」

桃子「……うん。おいしそう……だね」

P(まだちょっと眠そうな感じかな? まぁ、ネット節制にもそのうち慣れてくるだろう)

桃子(仮眠込みで6時間は寝れてると思うんだけどなぁ……。まぁ、この生活に慣れるまで我慢すればいいよね…)

桃子「……」ガバッ



P「……zzzzz」



桃子(……今日は特にぐっすり眠ってるね。昨日で切れかけてたコーラもポテイトも買い足しといたし……)

桃子「よーし、いっちょ始めちゃうか~!」カチカチカチカチ

(ジリリリリリリリ!!!!!) (ジリリリリリリリ!!!!!) (ジリリリリリリリ!!!!!)



桃子「……うむむ」ムクッ

P「どうした桃子ー? 最近、妙に寝覚めが悪いんじゃないか?」

桃子「……うーん。あ、いやいや、大丈夫だよ。お兄ちゃん」

P「……仕事で疲れてるなら、遠慮なく相談してくれてもいいんだぞ。それとも、きついのは学校の勉強の方か?」

桃子「へ、平気だって!」

P「ガス抜き程度だったら、ネットやったって構わないんだからな。控え過ぎてストレスを溜めると、かえって健康にも悪いしさ」

桃子「だから! 桃子は大丈夫なの! ……それより、今日の朝ご飯なに?」

P「あ、ああ。昨日と同じ焼き魚だけど、塩味は味が薄いって言うから今度は味噌のやつを……」

桃子(…………)

桃子「はぁ……」カチカチカチ

桃子(うーん、一週間もやってると流石に飽きてくるような……。そもそも、漫画とかに飽きてたせいでいつもより多めにネットしてただけだし)

桃子(アニメ視聴も、毎日一時間もあれば十分すぎるしね。そのくらいなら、お兄ちゃんが起きてる時にやってたって別に怒られないし……)



P「……うーん」モゾモゾ



桃子(!!!!)ドキッ



P「うー…………zzz」



桃子(ふぅ……)

桃子「こそこそ隠れてネットするのも、なんだか疲れるしねぇ……」

(ジリリリリリリリ!!!!!) (ジリリリリリリリ!!!!!) (ジリリリリリリリ!!!!!) (ジリリリリリリリ!!!!!)



桃子「……ふぁっ」ムクッ

P「……朝ご飯、できてるぞ」

桃子「ふぁい~」モゾモゾ

桃子「…………」

桃子「…………」

P「桃子? 着替えてるでもないのに、なにしてるんだ?」

桃子「うわっとと! な、なんでもなーい!」

桃子(危ない危ない……朝起きてすぐ、寝落ちするところだったよ……)

P「桃子、お前本当に大丈夫か? そろそろ目にくまでもできてるんじゃないか?」

桃子「大丈夫だよ。お兄ちゃんが心配しないでも、ちゃんと睡眠とれてるって」

P「そうは言うけど……。……ひょっとして、何か俺に後ろめたいことでもしてるのか?」

桃子「……そんなわけないじゃん。桃子のことばっか心配してると、お仕事の方がおろそかになるよ」

P「心配しないわけないだろ。今の桃子は、俺にとって家族と同じなんだから」

桃子「……ごちそうさま。お兄ちゃん、桃子デザート欲しいから、冷蔵庫にあるヨーグルト適当に取ってよ」

P「……はぁ」

桃子「……さ~て、今日もミッションスタートだよ。お兄ちゃんは……」



P「……zzz」



桃子「……よし。正直見張られるとかも考えてたけど、そんなことはないみたいだね」

桃子「確か、ポテイトはもう残り少なかったし、今日はコーラ重点で行こうかな。夏だからって言ってお兄ちゃんに多めに買ってもらってあるしね」

桃子「それじゃ、ルーター点けてPC起動して……っと」ポチポチ

桃子「……」カチカチカチ

桃子「……にしても、今朝はさすがにびっくりしたなぁ。起きてすぐあれなんて、ライブ前の忙しい時でもないのに久しぶりだよ……」カチカチ

桃子「やっぱ、無意識に疲れが溜まってるのかなぁ。でもこれ以上睡眠時間増やすと、夜にネットする時間もなくなるし……」カタカタカタカタ

桃子「それに、最近になってお兄ちゃんにもバレかけてるしな~。たまにはしゃきっとしたとこ見せないと、朝方にグチグチと……」

桃子「……うるさい、」

桃子「し……」

桃子「……」カチカチカチ



『朝ご飯、できてるぞ』


『心配しないわけないだろ』


『疲れてるなら、遠慮なく相談してくれてもいいんだぞ』


『俺も悪かったよ。ごめんな、桃子』


『桃子、お前本当に大丈夫か?』



桃子「……」カチ、カチ



『今の桃子は、俺にとって家族と同じなんだから』



桃子「……」カチ、、、

桃子「……一旦、やめちゃおっかな。まとめブログの過去記事やニカニカ動画漁るのも飽きたし……」

桃子「いい加減、ライブの感想記事やレポートも打ち止めになってきたみたいだし。そもそも、出る側の桃子がこういうの見過ぎてもよくないよね、きっと」

桃子「ブクマの巡回とアニメ視聴だけなら、お兄ちゃんの起きてる時だけでもできるしー……んくっ、んくっ、……ぷはー!」ポイッ

桃子「……それに、こういうときに二本目のコーラ取りに行くの面倒くさいし。お兄ちゃんが寝てるということは、こういう不便さもあるってことなんだね」

桃子「……うーん。それでも、このままおとなしく引き下がるべきかと桃子の中の何かが主張している……ような気がする」

桃子「うーん……」

桃子「……やめちゃおっかな。まとめブログの過去記事やニカニカ動画漁るのも飽きたし……」

桃子「いい加減、ライブの感想記事やレポートも打ち止めになってきたみたいだし。そもそも、出る側の桃子がこういうの見過ぎてもよくないよね、きっと」

桃子「ブクマの巡回とアニメ視聴だけなら、お兄ちゃんの起きてる時だけでもできるし。……んくっ、んくっ、……ぷはー!」ポイッ

桃子「……それに、こういうときに二本目のコーラ取りに行くの面倒くさいし。お兄ちゃんが寝てるということは、こういう不便さもあるってことなんだね」

桃子「うーん。それでも、このままおとなしく引き下がるべきじゃないんじゃないか、って桃子の中の何かが主張している……ような気がする」

桃子「むむむぅ……」

桃子「……よし! 今日限りで深夜ミッションは打ち止めにして、その代わり今日はできるだけめいいっぱいネットの海を駆け巡ることにしよう!」

桃子「まずは、景気づけに残り少ないポテイトを一気! 最後だからこそ、スタミナを蓄えるため惜しまずに資源を投入せねばー!」ザーッ

桃子「むぐむぐむぐ……。……さて、次はコーラだね! ポテイトのパサパサが残っている内に、炭酸の刺激をシュワーっと! 味わいたいところだよ!」

桃子「……一週間以上続いたこのミッションで、きっと最後に味わうことになるであろうコーラ……その一本を今、桃子は自分の手で取りに行く!」

桃子「行くぞー! 冷蔵庫へ向け、しんぐーん!」



(ベコッ!)



桃子「……ベコッ?」

―それは、布団の側で転がっていた一本のペットボトルだった。そう、桃子があのとき捨てていたコーラのペットボトルである。

その時の桃子は、足音でPを起こさないよう、すり足に近い忍び足だった。―それも、コーラをいち早く取るための、早歩きに限りなく近い忍び足だった。

それは、足元への不注意を呼んだ原因となっただけではない。桃子の進行方向……Pの寝ている方向へ、加速度がついたまま桃子が体勢を崩す要因にもなったのであった。

灯りの殆どない暗闇でこうなっては、自らの身の安全を確保するのでせいいっぱいである。

体勢の立て直しが不可能と悟る中、怪我だけはないようにと己が頭部を両腕でガードする桃子。そして、その真下に眠るPの姿……。




桃子「ぬわーっ!!!」ドカァッ!



P「……っぐ!!?!?」


P「桃子-っ!!! 深夜に起きて勝手にインターネットやるどころか、俺に攻撃してくるとはどういうことだー!!」

桃子「違うんだってばー! ていうか桃子、ネットなんてやってないし!」←深夜のネットをやめようとしていたのを都合よく解釈している

P「嘘つけ! 正直に言いなさーい!」

桃子「むぅぅぅ……やってないやってないやってないー!! やってないったらやってないもーーーーーーーん!!」バタバタバタ

P「ばっ……布団や枕を叩くのはよせ! 埃が舞うだろ!」

桃子「やってないんだからー!!」マクラナゲー

P「ぶっ! おい桃子、わかった、わかったから落ち着……」

桃子「わあああああああん! お兄ちゃんのバカ~~~~~!!!」ドタバタバタ







P(……まったく……)


P(とんでもない干物アイドルだ!)

読んでいただきありがとうございました。こんな感じで桃子の日常を適当に投下していけたらいいなと思ってます

トレーナー「1、2、3、4。1、2、3、……伴田さん、今のステップ足が逆になってるわよ」

ロコ「は、はい!」

トレーナー「高槻さんはちょっと走り気味かしら? 体力はあるんだから、振り付けを守るのと同じくらい、力を抜くことや自然に踊ることを意識してみて」

やよい「わ、わかりましたー!」

トレーナー「周防さんは今のところ文句なしね。伴田さんも高槻さんも、一回りも年下の子に負けてられないわよ!」

桃子「あ、トレーナーさん。褒めてくれるのは嬉しいんですけど……。桃子は、一緒に踊る相手と対等な仲間でいたいし、比べるような言い方はあまりしないで欲しい……です」

トレーナー「! ……周防さんの言うことももっともね。次からは気を付けるわ」

ロコ「モモコ……」

やよい「桃子ちゃん……」

トレーナー「ボサっとしてない! 次はステージを想定して三人一緒に踊るわよ! 連携意識しなさい!」



「「「はい!」」」


律子「……で、どうですか? プロデューサー殿」

P「前も言ったけど、これ以上は難しいと思う。今現在の状況で何か起きたら、最悪のケースも想定しなきゃいけなくなるし……」



美希「ふぁ……。……プロデューサーと律子、さん、さっきから難しそうなお話しばっかりなの」

小鳥「多分、桃子ちゃんのスケジュール調整のことじゃないかしら? 最近ますます人気が出てきて出演依頼も殺到してるけど、学業や日常生活に支障が出たら困るのよね~って、律子さんが言ってたわ」

美希「それは大変だね。ミキ的には、睡眠時間がちゃんととれれば別にいいかなって思うけど……あふぅ」

小鳥「もう。美希ちゃんだって他人事じゃないわよ?」





志保「…………」

伊織「…………」

桃子「えっと……。桃子は準備できてるので、今日はよろしくお願いします、善澤さん」ペコッ

善澤「ははは。一対一の取材は初だけど、僕と君たちの仲なんだし、そこまで堅苦しくしなくても大丈夫だよ」

桃子「そうなの? それでも、挨拶はきちんとするのがこの業界のルールだから」

善澤「素晴らしい心がけだね。桃子ちゃんは、挨拶が芸能界で活躍する上で重要なものの一つだと考えているのかな?」

桃子「芸能界っていうか、一般社会……っていうの? 普段の生活でも、近所の大人とか、学校の先生に挨拶するのを習慣づけておくと色々役に立つし」

善澤「ふむふむ。桃子ちゃんは、礼儀やマナーを大事にする方なのかな?」

桃子「んー……、正直面倒くさいなって思うこともあるけど……。でも、相手に失礼な話し方されたら桃子はヤだし、善澤さんもそう思うよね?」

善澤「こういう職に就いてる僕が言うのもなんだけど、まあ、思うね。確かに、礼儀を通しつつコミュニケーションの手段になるという点で挨拶は重要だ」

桃子「うんうん。桃子も、そういうことが言いたかったんだよ」

善澤「なるほどなるほど。では次の質問に移ろうかな……」

教師「それじゃ、発展問題の2は……桃子ちゃん、黒板に式と答え書いてくれる?」

桃子「はい」

桃子「……」カッカッカッ

教師「ありがとう。……うん、正解ね! 桃子ちゃん、これ自分で解いたの?」

桃子「自力じゃないけど、ドリルの30Pに同じような問題あったから、そこのヒント見て解いたの」

教師「もうそこまで解いてるの? 桃子ちゃん偉いわねぇ……!」



マジデー? スオウスゲー! モモコチャンスゴーイ! スオウヤベー! スオウスゲー!

ロコ「やはりモモコが培ってきたテクニックとキャリアは大きいですね……。ロコたちも、頑張ってキャッチアップしないと!」

やよい「それに、私たちが一緒で対等の仲間だって言ってくれたもんね! 桃子ちゃんの気持ちに応えられるように、がんばらなくっちゃ!」



~~~~~



志保(私と桃子、スタート地点で多少の差があるとしてもアイドルとしてのキャリアは同じ……! だからこそ……)

伊織(総合の人気ならともかく、今の勢いで言えば桃子の側に分があるのは認めなくちゃいけないかもしれないわね。それでも……)



((絶対に負けてられないんだから!!))



~~~~~



善澤「周防桃子……か。年相応にあどけないところはあるが、芸歴に相応しくそれなりの考えや自負を持っている子だったな」

善澤「現時点でのプロデュースも順調なようだし伸びる見込みは◎、としておくか。まったく、高木もいい素材を見つけてきたものだ」



~~~~~



教師「さて、次は桃子ちゃんの通信簿か。出席日数が微妙なのはしょうがないとして、課題はちゃんと出すし予習復習もちゃんとやってきてるのよね。う~ん……」

教師「いやいや、評定に私情は禁物よ。……でも、コメント欄なら成績自体は関係ないわよね……」

桃子「ただいまー。……ってそうだ、お兄ちゃんまだ事務所でお仕事してるんだった」

桃子「今日は水曜だし、買い出しにも行くはずだよね。プリン多めに買ってもらうようにラインしとこ」

桃子「ていうか、暑すぎ。早くコーラコーラ……っぐ、ん、んぐっ……」

桃子「……っぷはー!! この一杯のために生きてるぅ~!」

桃子「桃子ふっかーっつ! やー、学校や事務所もそこそこ楽しいけどやっぱり家が一番だね~!」

桃子「そだ、忘れないうちにエアコンの温度下げちゃお。お兄ちゃんが帰ってくるまではあと2時間ちょいかなー。その間は……」

桃子「ネットし放題だーーー! フゥー!フゥーーーーー!!」

桃子「はぁ~? なにこのプレイヤー! HR低すぎだし、桃子たちに比べて恥ずかしいとか思わないのかなー」

桃子「でも、変に同じランクのプレイヤーと固まってもやりにくいかー。対等な関係とかって思われると色々文句言われて面倒だしね」



~~~~~



桃子「……んー、やっぱログボや極道で貯めた分に手出すしかないかー。前回イベのボーダーからして、これだけあれば上位はいけるでしょ」

桃子「やっぱり、こういうのってなんだかんだ年季がものをいうんだよねー。スタートが早い方が有利なのは当たり前だし」

桃子「ていうか、課金制限うざいー! 誰か、桃子の分までお仕事とかやってくんないかなぁ~。このままじゃ張り付かなきゃいけなくなって学校と生活に支障が出ちゃうよ」



~~~~~



桃子「えっ、この人たち荒れ過ぎじゃない? 桃子のTLであんまり物騒なこと言わないでよ……」

桃子「tmetterでくらい気楽にやろうよ……。挨拶とか礼儀とかどうでもいいじゃん……」



~~~~~



桃子「あ、今ポクモン映画やってるんだ。……そういえば、レーティング対戦最後にやったのいつだったっけ……」

桃子「今の環境ってどうなってるんだろ? 調べてもいいけど面倒くさいし。……ま、やってる途中で覚えるから大丈夫っしょ~」

P(……買い物袋の重みを抱いて帰って来てみれば)


P(19℃とかいう電気代を殺す気しかない設定のエアコン。長時間動いているのか発熱しているルーター、それにPC)


P(そして……)





桃子「……」


桃子「……ムニャ」


桃子「……おに、ちゃ。……zzz」





P「…………桃子、」




P「起きろーーーーーーー!!!」フトンバサー





桃子「ふわーーーーっ!!?」

今回分終わりです。 >32さん画像ありがとうございました

家じゃもはや別人だけど、羽伸ばせてるみたいでなんか安心した
一旦乙です

>>33
ロコ(15) Vi
http://i.imgur.com/4hW8ydz.jpg
http://i.imgur.com/CBAB2e0.jpg

>>33
高槻やよい(14) Da
http://i.imgur.com/RbTnjxY.jpg
http://i.imgur.com/kjhvaRY.jpg

>>34
秋月律子(19) Vi
http://i.imgur.com/bqhAjKF.jpg
http://i.imgur.com/1svkm7o.jpg

>>34
音無小鳥(2X) Ex
http://i.imgur.com/g8aE7xk.jpg
http://i.imgur.com/iH8gSG2.jpg

>>34
星井美希(15) Vi
http://i.imgur.com/RsKEGoF.jpg
http://i.imgur.com/A6Ia4UN.jpg

>>34
北沢志保(14) Vi
http://i.imgur.com/sFdL4aX.jpg
http://i.imgur.com/zu0Dq5s.jpg

>>34
水瀬伊織(15) Vo
http://i.imgur.com/qrFDg6e.jpg
http://i.imgur.com/BpeHpaa.jpg

桃子「むふふふふ……。ついにあの計画を実行に移すときが来たよ、お兄ちゃん」ジュルリ

P「……」

桃子「右手にきのこ! 左手にたけのこ! 相克しあう二つのお菓子を同時に、いっしょくたにして味わうこの至福をお兄ちゃんも想像してみるといいよ!」

P(難しい言葉知ってるんだなぁ)

桃子「しかも一袋ずつを一気に解放するんだよお兄ちゃん! すごいでしょ! すごくない!?」

P「そんなに沢山、一人じゃ食べきれないだろ。夕ご飯もあるんだし、ほどほどにしておけよ」

桃子「余った分はお兄ちゃんにもあげるつもりだから大丈夫大丈夫。そのときは、桃子のサービス精神に感謝してね」

P「両方とも俺が買ってきたお菓子なんだけどな……」

桃子「いざ、実食! …………」ムシャムシャムシャ

P「……美味いか?」

桃子「んむ。ただおいひいってだえじゃなうて、独立した二つの味をごちゃ混ぜにすうっていうミックス感と台無し感がたのひいんだよ」ムシャムシャ

P「食べながら喋るなよ」

桃子「だって。……このおいひさを、お兄ちゃんいもわあっれ欲しくて……」ムシャムシャムシャ

P「……ったく。しょうがないな」

桃子「えへへ……」ムシャムシャサクサク

P「…………」

桃子「ウメーウメー」サクサク

P(……だらしない顔してるなぁ……)

桃子「ぐふぅ。……さあお兄ちゃん、おあがりよ!」サッ

P「明らかな余りを俺によこすな! 今食べてる小袋分くらい、食べきれよ」

桃子「ちぇー、薄情なお兄ちゃん。桃子がお菓子漬けになって太ったりしても構わないっていうんだね……」

P(望んでお菓子漬けになってるんだろうが!)

P「それより桃子……。前々から言おうと思ってたけど、お菓子を食べるときはこぼさないように気を付けなさい。今だって、床が汚れ放題じゃないか」

桃子「えぇー?」

P「それが嫌なら自分で掃除しろ。ていうか、桃子は家の中じゃいつも寝っ転がってるけど、食べかすが服や髪にくっついたりしないのか?」

桃子「うむむぅ……。実は、桃子もそこは気になってたんだよね……」

P「よし。それじゃあ、桃子用にカーペットクリーナーでも買いに行くか! 行くぞ桃子!」

桃子「え~っ!? 桃子外出たくな~い! ていうか、そのカーペットなんちゃらってコロコロのことでしょ? 桃子が付いてく必要なくない?」

P「いいから来いって。この際だし、洗剤やスポンジなんかも新しいの買いに行くか」

桃子「お兄ちゃん……。いくらなんでも、女の子を掃除用具のショッピングに誘うなんてありえないよ……」

P「今は家族も同然だからノーカウントだ。ほら、おやつやコーラなんかもついでに買ってやるから、早く行こう」

桃子「そうやって物で釣って子ども扱いするんだから……。お兄ちゃん、そのままだと絶対モテないよ?」

P「や、やかましい! 大きなお世話だ!」



P(……多少強引なのは分かってるけど、こうでもしないと外に出たがらないからなぁ)

桃子「ああ言ったからには、ちゃんとおやつを買ってもらうからね」

P(そっちこそ、ああ言ったくせにきっちり物に釣られてるのな)

桃子「で、どこ行くの? いつものスーパー?」

P「いや、掃除用品買いに行くんだし色々揃ってるデパートかモールに行こうかなって思う。少し歩くけど、ゆっくり買い物して帰ったらそのまま夕ご飯になるくらいの時間だしちょうどいいだろ」

桃子「うぇー面倒くさーい。けどまぁ、お兄ちゃんがどうしてもって言うしついていってあげるよ」

P「ありがとよ」

桃子「やれやれ……世話の焼けるお兄ちゃんだなぁ」

P(お前が言うな!)

P「ここのショッピングモール来るのも先月ぶりかなぁ。いや、今はアウトレットって言うのか?」

桃子「どっちでもいいんじゃない? ところで、お兄ちゃんは先月ここに用でもあったの?」

P「用というより、恵美やエレナが何度も誘うからついていっただけだよ。そのときに色々見て回ったから、どの辺にどういう店があるかはちゃんと分かってるぞ」

桃子「……ふーん」

P「おやつより先に、掃除用品の方買いに行くからな。こういう所だと掃除用品取り扱ってる店少ないし、早いうちに……。……桃子、聞いてるか?」

桃子「聞いてるよ。早く行こ、お兄ちゃん」

P「あ、ああ……」

P「よしよし、コロコロも洗剤も買えたな。スポンジもよさげなものをゲットできたし、他にも掘り出し物がありそうな品揃えだったな……」

桃子「どうでもよすぎ……。いいから、おやつ買って早く帰ろうよ」

P(さっきから妙に冷たいような……。なにかいい作戦は思いつけないのか……)

P「……おっ? 桃子、あれ見ろよあれ」

桃子「なになに? ……って、ただの古着屋じゃん」

P「いやぁ、たまには服でも買ってやろうかなと思ってさ。桃子の家から持ってきた服はあるけど、家に来てからはまだ一着も買ってなかっただろ?」

桃子「別にいらないよ。古着なんて興味ないし、どうせすぐ汚れ……はっ!」



そのとき、桃子に電流走る――!



桃子「…………」

P「……桃子?」

桃子「……」ジロジロ

P(なるべく大きいお店で服買いたい、って急に言い出すから何かと思ったけど……)

桃子「うーん……。こっちの方には置いてないのかなぁ……」

P(機嫌は直ったみたいだし、別にいいか。どんな服がいいって言い出すのか楽しみだな)

桃子「…………」

P「……ん?」



アノコカワイクナーイ? テレビデミタコトアルカモー イッショウケンメイフクサガシテルネ アアイウコイイナー イモウトニシターイ



P(やっぱり人の多い所だとこうなるか。……他人の見た目で騒ぐのに、年齢は関係ないんだな)



アノオトコナンダロウネ フシンシャトカ? カゾクデショ ツキビトトカジャナイ?



P(……付き人ってなんだよ! 付き人って!)

桃子「あの、すいません。聞きたいことがあるんですけど。…………」

店員「……ああ、そういう服でしたらこちらに……」

桃子「ありがとうございます」

P(そろそろ決まるかな。買いたい服が見つからなかったら、代わりにアイスか何かでも買ってやるか)









P「……桃子。本当にその服でいいのか……?」

桃子「うん!」

P「動物をモチーフにしたフード……。それはいいんだが、外に着ていくようなものじゃないぞ……?」

P(ていうか、このフードのモチーフはなんだ!? ハムスター? ……に、見えなくもないが……)

桃子「桃子が家の中で着るものだからいいの! 今試着してる途中だから静かにしてて!」

P「頭の上からかぶるだけだろ。…………んー、まあ、着やすそうではあるけどな……」

桃子「んーしょ……。……よっしゃー! 今、桃子の新たな姿を見せるよお兄ちゃん!」

P「! わかった!」




桃子「ジャジャーン! どうだお兄ちゃん! 新しい装備を身に付けたニュー桃子の姿は!?」



P「おぉ……! な、なんだか分からないが妙に似合ってるじゃないか!」


P(似合ってるっていうかハマっているというか……いつの間にか干物モードになっているが、異様におさまりがいい感じだぞ!?)

P(異様というか、心なしか桃子の頭身が小さくなった気もする……。……まあ、そこは別にいいか)

桃子「ぬふふー。お兄ちゃんが褒めてくれるんだったら、桃子もおとなしく買ってもらってあげちゃおうかな」

P「どんな日本語だ? ……で、買う服はそれで決まりなんだな?」

桃子「うん! 桃子、これがいい!」

P「分かった。それじゃあ、レジに行くか!」

桃子「……うんっ!」

店員「サイズ、色はこちらと同じでよろしいですね?」

桃子「はい」

店員「では、同じものを1着ご用意させていただきます。配達もご利用できますがいかが致しま……」

桃子「あ、1着じゃなくて7着ください。で、配達でお願いします」

P「!!?」

店員「承りました。それでは、こちらの紙にお届け先の住所等、必要事項をお書きになってもう一度レジへおうかがいください」

桃子「はーい♪」

P(も、桃子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!)

P「どういうことだよ! 2着や3着ならともかく、絶対そんなに必要ないだろ!」

桃子「毎日1着ずつ着て、一週間ごとにまとめて洗濯するからこれでいいの」

P「なにがいいんだ? 大体、家の中で着る用なのに毎日替えるほど汚れないだろ」

桃子「そこは心配ないよ。何を隠そう、このフードは、桃子を悩ませてきたお菓子の食べかすやらなんやらの汚れから桃子を守るためのものなんだもん!」

P「なっ……! 桃子、お前……」

P(そのためにわざわざこの店まで案内させたのかー!?)

桃子「お兄ちゃんも、さっき試着したときは褒めてくれたじゃん。ダメ?」

P「ダメ。いくらなんでも、7着は買い過ぎだ」

桃子「お願い、お兄ちゃん。……ダメぇ?」

P「外用フェイスで翼のマネしてねだってもダメだ」

桃子「……むぅ~」

P「2着か3着に訂正してきなさい。店員さんにも、謝って」

桃子「……」

P「そもそも、グータラ癖を治すために買い物しにきたのにグータラするための物を買ったら本末転倒じゃないか。わがまま言うにしても、そのくらい考えてからだな……」

桃子「…………っ」

桃子「…………」

P(……言い過ぎたかな。いや、普段から甘やかしてきたんだしこのくらいは)

桃子「……ぃ」

P「え?」

桃子「……恵美さんやエレナさんだけ、ずるぃ…………」

P(……あっ)

桃子「……」

P「……」ポリポリ

P「……今の財布の中身じゃ、5着までが限界だよ。……それで我慢してくれ」

桃子「…………」

P「桃子、聞こえてるか? 5着までなら……」

桃子「……ふふふ、」



桃子「ぬははははーー!! 桃子の緩急をつけたおねだり攻撃に引っかかったねお兄ちゃん! 一度言ったことはもう取り消せないよ!」



P「な……」

P(なにーーーっ!!?)

P(ぐぬぬ……。しかし、店内で騒ぎすぎだしこれ以上続けるのは辛い……か)

桃子「あの、すいません……。えっと、申し訳ないんですが、注文を7着から5着に変更したくて……」

店員「大丈夫ですよ。こちらの欄に『5』と書いていただければ!」

桃子「ありがとうございます!」

店員「……っ! いえいえ、こちらこそ!」ドキーン

桃子「お兄ちゃん。住所とか、書かないなら桃子が書くよ?」

P「いや、いい……。俺が書くよ……」

P(ったく……。予想外の出費だ)

桃子「……ねぇねぇ、お兄ちゃん」

P「?」




桃子「可愛い服買ってくれて、ありがとうっ!」



P「……」






~それから~





P「おい桃子! お前のために買ったものなんだから、たまにはこれで掃除くらいしろよ!」コロコロコロ



桃子「も、桃子今クエストで忙しいから……」





その日買ったコロコロが桃子に使われることはなかったという……。


今回分終わりです。>43さん、画像ありがとうございます。>44さん、知りませんでした……。トレーナーさんの発言は各自で脳内修正していただければ幸いです……

桃子「……」

小鳥「……どうしたの?」

桃子「……大したことないんだけど。クーラー点いてなくない? って思って」

小鳥「もう、だいぶ涼しくなったもの。季節の変わり目だしそろそろいいかなって」

小鳥「もしかして暑いかしら? 今からでも、クーラー点ける?」

桃子「ううん、大丈夫」



桃子(うむむむむむ……。桃子も、家での設定温度を手加減してあげるべき時期が来ているのだろうか……)



桃子「……うーむ」

小鳥「……」

小鳥「桃子ちゃん、今日のお仕事は終わりのはずだけど誰かと待ち合わせでもしてるの?」

桃子「ん、まあね。お兄ちゃんが『牛乳買い足すの忘れてたから付き合ってくれー』って言うから、お仕事終わるの待ってあげてるの」

小鳥「ふふ、そうなのね。もしかして、なにかの料理に使ったりするのかしら?」

桃子「さあ……? 買うにしても、せいぜい一本か二本くらいじゃない?」

小鳥「? それなら、桃子ちゃんかプロデューサーさんが一人で買いに行けばいいんじゃないかしら?」

桃子「……っ!」ギクッ



~~~~~



桃子「えっ、お兄ちゃん牛乳買い忘れたの?」

P「ああ。まあ、今日の帰りに一、二本買ってくれば間に合うけどな」

桃子「じゃあ、ついでに桃子のコーラも買ってきて! もう残り少ないしそろそろ補充のしどきかなーって思ってたの!」

P「嫌だよ。それじゃ俺が完全にパシリじゃないか」

桃子「なにを今さら……」ボソッ

P「聞こえてるぞ」

桃子「……お願いお兄ちゃん! 桃子の好きなコーラ、買ってきて?」

P「外向きの顔で頼んでもダメだ」

桃子「むぅぅ~~~……お兄ちゃんのケチ! 守銭奴! 社畜!」

P「しゃ、社畜は関係ない! ていうか、そんな言葉どこで覚えたんだ!?」

桃子「と~に~か~くお~ね~が~~~~い!! 買~~~ってきて~~~~~!!!」

P「あーもう分かった分かった! 買ってやるけど、代わりに桃子も俺と一緒に来いよ? でもって、自分で欲しがった分くらいは自分で持って帰ること!」

桃子「はーい!」

P「まったく……返事だけはいいんだからなぁ」



~~~~~

桃子「ま、まあ、お兄ちゃんがどうしてもって言うからしかたなく? 桃子も一緒に行ってあげようかな? って感じ???」

小鳥「へえ……。プロデューサーさんがそんなこと言うなんて、なんだか意外だわ……」

小鳥「それはともかく、プロデューサーさん、仕事終わりまでもうちょっとかかると思うわよ? いつもより急いで終わらせるとしても、あと1時間近くはあるかも」

桃子「えー。じゃあ小鳥さん、オセロかなにか付き合ってくれる?」

小鳥「ごめんなさい桃子ちゃん。こう見えて、私も一応仕事中なのよ……」

桃子「はぁ。……しょうがない。AVルームでも行って、前のライブの振り付け見直してくるかな……」




「ちょーーーーーっと待ったぁ!!!」




桃子「!?」

小鳥「海美ちゃん!?」

海美「話は聞かせてもらったよ! 桃子、今から私たちと軽く野球でもしてみない!?」

桃子「えっ……! わ、悪いけど、桃子なんかが海美さんたちのスポーツに参加したら足手まといになっちゃうよ……」

桃子(というか、間違いなくついていけなくなって体が悲鳴を上げる気がするよ)

海美「全然気にしないって! ルールとかも、実際の野球より断然簡単になってるから!」

桃子「そういう問題じゃな……」

海美「というわけで小鳥さん! ちょっと桃子借りていきますね!」

小鳥「それはいいけど……。劇場の楽屋で野球なんてやったら、また伊織ちゃんあたりに怒られるわよ?」

海美「外でやるから大丈夫です! それじゃ、今日はお疲れ様でしたーっ!」

小鳥「お疲れ様ー……って、もう行っちゃった…………」

海美「のりさん、すばるん、連れてきたよー!」

のり子「おー、桃子じゃん! 高坂スカウトは意外なところに目をつけたねー」

昴「桃子と野球やんのって、かなり前にやった夏のイベント以来かもな! よろしく!」

桃子「……ウン、ヨロシク」



桃子(あわわわ……この三人の中に混ざって野球やるなんて、桃子、生きて帰れる気がしないよ……)





桃子「ていうか、ここ……劇場の横にある、駐車場だよね? 勝手に使って大丈夫?」

昴「へーきへーき。この時間帯だと業者の搬入くらいでしか車来ないし、来てもすぐ場所変えてプレー再開できるくらい広いから」

海美「七夕でいおりんに大目玉を食らってから苦節三日……。すばるんと一緒に劇場の構造を一から見直した結果、見つけ出すことができたのがこのスペースってわけ」

桃子(海美さん、どうしてこういうことには頭使えるんだろう……)

のり子「普段は二人ずつで一対一やってるんだけど、今日はたまたま三人とも都合が合ってさー」

昴「せっかくだし、一人増やして二対二で対戦してみようかなって思って」

桃子「……そうなんだ……」


昴「二対二って初めてだし、試験的なルールではあるけど……」

昴「とりあえず、ここにある車止めの石がホームベースの代わりな。ストライクゾーンの内外は、この石の上通ったかどうかで決めるんだ」

のり子「高さは、胸からひざまでが基準ね。ストライクかボールか怪しい場合は、ピッチャーとバッターの協議で!」

昴「あと、そこに置いてある箒はフェアゾーンの基準だから。一塁線とか三塁線とか、二本の箒の延長線上にある感じで」



桃子(いつの間に箒なんて持ってきてるんだろう……。……多分、どこかの部屋にある掃除棚から取ってきたんだと思うけど)



桃子「……キャッチャーとかって、いらないの?」

昴「止め石の後ろはすぐ壁だし、バッターがボール投げ返せば大丈夫だよ。守備する側は、ピッチャーと外野だけでOK!」

昴「で、打球が飛んだ場合、守備側がワンバンかノーバンで捕球したらアウトね。ただし、ゴロは二人の間を抜けるかエラーじゃなければアウト」

桃子「じゃあ、フライを落としてもツーバウンドする前に拾ったらアウトなんだ」

昴「まあな。んでもって、外野を越えたら長打ってことでツーベース。それ以外は、全部シングルでランナー一個ずつ進塁な」

のり子「外野を越えるどころか、ぐんぐん伸びて駐車場のあっちの方まで行っちゃうような凄い当たりはホームランね! ちなみに、今まで海美しか打ったことがないんだ!」



海美「……!」ドヤッ



桃子「…………」

のり子「まっ、習うより慣れよってことで! アタシたちは本来のとは逆の打席で打つけど、桃子はまだ小っちゃいし好きに打っていいよ!」

桃子「……ムッ。それってハンデってこと?」

のり子「いや、ハンデっていうか、単純にね……」

昴「初めのころ、オレが左打席でかっ飛ばしたらちょうどあの辺に止まってた車に超弾丸ライナーぶち当てちゃってさ」

昴「あっ、車は無事だったよ? プラスチックのバットとゴムのボールだしな」

昴「でも、それから先は『こりゃ本気で打ったらやべーぞ』って感じになって……」

桃子「な、なるほど……」

のり子「なんにせよ、習うより慣れろだよ! チーム分けと先攻後攻決めて、さっさと始めようっ!」

桃子「……うん!」



桃子(ここまで来たら後には引けないし、三人とも縛りプレイしてくれるなら桃子だってきっとイケる!)

桃子(……イケる、はずだよ……ね?)

のり子「よーし桃子狙えー! 初球先頭打者ホームランだ!」

桃子「す、昴さん! なんか思ったより近いけど、本気で投げないよね!?」

昴「投げるわけないだろー。お互い打てないとつまんないし、ピッチャーは手加減するって」

桃子「よ、よーし……! 来い!」

昴「いくぜ!」シュッ

桃子「う……それっ!」ブンッ!



(ポンッ、コロコロコロ……)



のり子「桃子、リラックスリラックス!まだワンストライクだし余裕持っていこー」

桃子「ぐぬぬ……。さあ来い、昴さん!」

昴「気合い入ってんな! 二球目いくぜ!」シュッ

桃子「とりゃーーー!!」ブンッ


海美「花は桜木、女はうみみ! ルーキー桃子に捧げる強烈な一発を、ここに予告するよ!」

のり子「予告本塁打なんて百年はやーい! おりゃっ!」シュッ

海美「甘いっ!」ポコンッ



桃子「わっ! きっ、きたっ!」



のり子「落ち着いて! 一回だったら弾いてもすぐ拾えばOKだから!」



桃子「うんっ! ……っと、とっ!」パシッ



のり子「桃子、ナイスキャッチ!」



桃子「……ふ、ふふんっ。このくらい、桃子には朝飯前だもん!」

のり子「てーいっ!」スカッ

桃子「あっ! 昴さん、いま変化球投げたでしょ!? いいの!?」

昴「おいおい桃子ー。こういう勝負ごとでは、本気を出すのが相手に対する礼儀ってやつだろ?」

桃子「た、確かに……。投球面での縛りに関しては何も言ってなかったけど……」

のり子「大丈夫だよ桃子! アタシは絶対に打つから!」



~~~~~



海美「秘打くるみ割り人形!」ポコッ!

のり子「わーっ! 桃子、追って! 追ってー!」

桃子「追ってるよ~! ……ってあれっ?」ポロッ

海美「落とした落とした! ヒットヒット!」

昴「エラーだよ……」



~~~~~



桃子「えーいっ!!」パシンッ!

昴「!! 海美、捕ってくれー!」

海美「任せて~~~!」

のり子「いい当たりなんだ! 越えろーっ!!」

桃子「こっ、越えろーーーっ!!」



海美「……っだぁー! 無理だーーーー!」



桃子「ねえねえ昴さん! これ、ツーベースでしょ!?」

昴「……そうだよ」

桃子「やったよのり子さん! これで同点でしょ?」

のり子「うん! よくやった桃子、あとは私に任せて!」

P「お~い桃子~! 小鳥さんから聞いたけど、なんだってこんな時間まで……」







昴「よっしゃ三しーん! 桃子、追い込まれたら今のは手出さなきゃダメだぜ!」

桃子「……ううん、今のはボールだよ。のり子さんも見てたでしょ?」

のり子「そうだね。ちょ~っとだけ低かったかな~?」

昴「なんだって? ……くそ、こうなったら……!」

桃子「……むっ!」



「「じゃんけんぽん!!」」



昴「はいこれで三振っと」

桃子「わー! なんで今のでグー出しちゃったかなー……」







P「…………」

P(……ま、別に急いでるわけでもないしな……)


桃子「え? それじゃお兄ちゃん、5回くらいからずっと桃子たちのプレー見てたの?」

P「試合途中に邪魔されたくなかっただろ? ……で、最終的にはどっちが勝ったんだ?」

桃子「うーん、引き分けかなー。途中まではちゃんと点数も覚えてたけど、段々怪しくなってきてたし……」

P「なんだそりゃ」

桃子「今度やるときは、ちゃんと地面にスコアボード描くから大丈夫だよ。石で駐車場にガリガリやるって昴さんが言ってた」

P「おいおい……。ま、いいけどさ……」

桃子「それよりお兄ちゃん! お兄ちゃんを待ってる間の野球で消費したカロリー分、きっちり桃子の分もコーラ買ってよね!?」

P「……まさか、コーラだけで消費分を補うつもりじゃないだろうな?」

桃子「それは流石の桃子でも厳しいって! というわけで、桃子は今日の晩御飯にハンバーグを要求します!」

P「……ま、今日の桃子は頑張ってたみたいだしな。ねぎらいも兼ねて、作ってやるか!」

桃子「やったー! お兄ちゃん、ありがとう!」



~翌日~



P「桃子、起きなさい」

桃子「オキレナイ。オニイチャン、オコシテ」

P「あのな……」

桃子「ウデト、セナカト、アシガイタイヨウ」

桃子「オキレナイヨ……、オニイチャン、オニイチャン……」

P「…………」





野球による疲労と筋肉痛は、その後三日間にわたり桃子を苦しめたという……。

今回分終わり。色々あって投稿遅くなってすいませんでした

ハムスターか、いつかのこのみさん思い出すなww
http://i.imgur.com/6KwWj2R.jpg
一旦乙です

>>79
高坂海美(16) Da
http://i.imgur.com/3WxUynR.jpg
http://i.imgur.com/aVfYwQ5.jpg

>>80
福田のり子(18) Da
http://i.imgur.com/X25r2vv.jpg
http://i.imgur.com/ziOfHN7.jpg

>>80
永吉昴(15) Da
http://i.imgur.com/bZg4kR9.jpg
http://i.imgur.com/ByOwqCi.jpg

>>81
七夕の大目玉
http://i.imgur.com/ym3W7SY.jpg

P「……ただいまー」

桃子「お兄ちゃああああああああああああん!!」ガバッ

P「うああっ!」

桃子「遅いよお兄ちゃーん! こんなに暗くなるまでどこ歩いてたのさー!」ガックンガックン

P「おまっ、離せとりあえず! 鉄板持ってるんだからあまり揺さぶると危ないって!」

桃子「もう、お兄ちゃんは文句ばっかりだなぁ。今日はせっかくのたこ焼きだっていうのに、なにしてるんだか……」

P「あのな、桃子……」

桃子「……お兄ちゃんがいつもより遅かったの、桃子ずっと心配してたんだからね……」

P「!! ……桃子、お前……」







P「仕事帰りの俺に、連絡もなしにたこ焼き用のプレート持たせておいて言う言葉はそれだけか?」

桃子「うぐっ」

P「あのな、桃子。『ホウレンソウ』は俺たちのいる業界じゃ常識だろ? 帰り際に、奈緒がいきなりプレート渡してきたときは何事かと思ったぞ」

桃子「ぅ……」

P「食材も新しく買ってこなきゃいけなかったし……。遅くなったのは俺も悪いけど、俺だけに文句いうのはなにか違うんじゃないか?」

桃子「……」

P「とにかく、これからは同じ失敗しないように気を付けること。わかった?」

桃子「……はーい」

P(ちょっと、言い過ぎたかな。……いやいや、このくらいは注意して当然だよな?)

桃子「……」シュン

P「…………」

P「……それじゃあ、お腹もすいたし早速作るか! スーツ脱いでくるから、桃子はテーブルの上にプレート準備しておいてくれ!」

桃子「……うん!」

P「はい、これ奈緒が貸してくれたプレートな」

桃子「うん! ……と、とっと」ヨタヨタ

P「おいおい、大丈夫か?」

桃子(くっ……。このプレート、思ったより重たいような……がんばれば、テーブルまで持ってけないこともなさそうだけど……)

桃子(…………)



桃子「……うわっとっとっと、」ヨロヨロ

桃子「おぉっとっとっと……、」フラフラ

桃子「うわー、おもたいよー。おにーちゃんたすけてー(棒)」

P「……後で俺が持ってくから、その辺に置いといてくれ……」

桃子「本当!? ありがとう、お兄ちゃん!」

P「いや、別にこのくらい。……じゃあ、桃子はテーブルの上準備しておいてくれよ」

桃子「あいあいさー!」

桃子(ぐふふふふ……。流石のお兄ちゃんも、桃子の演技の前じゃかたなしだね……)

P「……俺、テーブルの上を準備しろって言ったよな?」

桃子「したよ! コーラは標準装備として、ソースにマヨネーズ、それに青のりまで!」

桃子「つまようじもちゃんと用意したよ! 完璧でしょ!?」

P「お前、皿も箸もなしで、熱々のプレートから直接たこ焼き刺して食べる気か?」

桃子「……あっ」

P「まあいいや。新聞紙持ってきてあるから、テーブルの真ん中あたりに敷いておいて」

桃子「なにそれ。どうしてそんなもの敷くの?」

P「粉ものをテーブルの上で作るんだから、タネや焼いた後のカスがいちいち散らばると面倒だろ? プレートの下に新聞を敷いておけば、後からたたむだけで片付くんだよ」

桃子「おおー! 桃子の出演作品は全然知らなかったくせに、そういう主婦みたいな知識はいっぱい持ってるんだね!」

P「……褒め言葉として受け取っておく」

P「……小麦粉が300g、水が1300cc、卵3つに、刻んだねぎや調味料を混ぜて……っと」

桃子「うふはぁ~~~っ!」

P「で、よ~く練って、練って、練って……。……桃子、プレートに火ついてるよな?」

桃子「うん! 弱火だけど、強火とかにした方がいいかなぁっ!?」

P「中火くらいにしておいて。……よしっ、こんなもんか! たこ焼きのタネの、できあがりだ!」

桃子「うっふほぉーーーーっ!! ねえねえお兄ちゃん! 待ちきれないよ、早く焼こっ!」

P「落ち着けって。プレートが火で温まってから、ちょっとずつタネを流し込んでいくからな」

桃子「ふえへへへ……。……楽しみだね、お兄ちゃん?」

P「……ああ!」

桃子「……ねえお兄ちゃん、そろそろお皿に取っちゃってもいいんじゃないの?」

P「確かめるからちょっと待って。……ん、大丈夫みたいだな」

桃子「わはぁーーーっ! お兄ちゃん、それちょうだいちょうだい! お腹減ってるの!」

P「わかったわかった。こっちの方も焼けてるし、もう二つくらい食べてくれよ」

桃子「うん!」

P「えーっと、こっち側の焼け具合は……」

桃子(……ついに、ついに来たよ!)

桃子(自家製たこ焼き、実食の瞬間<とき>が――!!)

桃子(待ちに待った瞬間が訪れたわけだが、焦ってはならない)

桃子(まずは、焼け具合を確かめつつ上にかけるものを決めるのが常道。なにも考えずに一気にソースで染め上げるのも一興だけど、ここであっさり行き過ぎたら面白くないよね……)

桃子(現状の手札<トッピング>はソース、マヨネーズ、青のり、あとはお兄ちゃんが持ってきた辛子か……ふむふむ)

桃子(とりあえず、ソース単体のエリアとソース×マヨネーズのエリアをお皿の両端に作ろう。たこ焼きは3つ取ってあるし、青のりはかけないでソースだけの方から……)

桃子「……ふーっ。ふーっ。…………はむっ」

桃子「!! ……あふ、あふ!」

桃子「……」ゴクン

桃子(…………)







桃子(うまっしゃあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!)







P「あちあち。……ん、いい感じに焼けてるな」モグモグ

桃子「ふーっ、ふーっ! ……う~ん、おいしい~~~!」

P「桃子、こっちまた焼けたぞ。食べるか?」

桃子「うん! お皿乗っけて!」

P「タネは多めに作ってあるから、慌てないで平気だぞ」

桃子「どんどん焼いてお兄ちゃん! 今の桃子は人間火力発電所だよ!」

P「また変なネタを……」

P(なんにせよ、桃子が美味しく食べられてるなら何よりだけどな)

桃子「ありゃ。お兄ちゃん、たこなくなっちゃったよー?」

P「うそ? どうする桃子、『たこなしたこ焼き』でも食うか?」

桃子「それもおいしそうだけどー。……ねえ! 冷蔵庫にあるやつで、適当なの入れて焼いてみない!?」

P「あ、それいいかも……。お好み焼きみたいなもんだし、チーズやバターとか混ぜてみても合うかもしれないな」

桃子「本当!? 桃子、取ってくるね!」

P「うん、頼んだ!」

P「…………」

P(……今のうちに、プレートに油をひきなおしておこう……)


桃子「むにゅむにゅ……うん! チーズ焼き、おいしい!」

P「ちくわを入れたやつも悪くないな。一応シーフードだし、粉ものに合わないってこともないか」

桃子「具なしのも普通にイケるね~」

P「辛子をちょっとつけて……うんうん、いいじゃないか!」

桃子「お兄ちゃん。桃子のマヨネーズ切れちゃったから、お兄ちゃんのお皿にある分貸してー」

P「はいよ」

桃子「ふふふ……スキありっ!」バッ

P「あっ! お前、俺の皿にストックしていたたこ焼きを……!」

桃子「う~ん、ヤミ~~~」

P「美味そうに食べやがって……。なんてことをするんだ……」

桃子「はいお兄ちゃん、あーん」

P「あ……?」

桃子「お兄ちゃん、桃子にたこ焼き取られて悔しそうだったから。ごめんなさいも兼ねて、桃子があーんしてあげるよ」

P「……いや、数は少ないけど、まだたこ焼きは余ってるし……」

桃子「いいから! それとも、桃子があげるたこ焼きはいらないってこと!?」

P「そんなこと言ってないって!」

桃子「じゃ、口開けて。あーん♪」

P「……あー、ん」

桃子「どう? 桃子のたこ焼き、おいしいでしょ?」

P「……ああ」

桃子「えへへ……よかった!」

P(…………)




~~~~~



P「たこ焼きのプレート!? 桃子のやつ、そんなこと全然言ってなかったぞ……」

奈緒「えぇっ? どないしよ……。……私、いったん持って帰りましょうか?」

P「いや、いいよ。それにしても、なんでまたたこ焼きなんか」

奈緒「あー、なんていうか、その。……こないだの日曜に、『リコッタ』の皆でウチに集まってたこパしたんです……」

P「たこ焼きパーティーね。日曜日ってことは…………ああ、そういうことか」

奈緒「すいません……。皆、お互いのスケジュール空いた日ってことにしか気が回ってなくて、桃子の都合だけ、無視した感じになってしもて……」

P「いやいや。確かにその日の桃子は仕事がなかったし、勘違いするのもしかたないよ」

奈緒「せやから、せめてたこ焼きだけでもって……。ほんまは、私がごちそうしてやりたかったんですけど」

P「わかった。奈緒、ありがとな」

奈緒「こ、こちらこそ! プレート、今度私の方から持ち帰りに行きますんで……!」



~~~~~

P「……なあ桃子。俺と一緒にたこ焼き食べて、楽しいか?」

桃子「どうしたの、急に。たこ焼きに変なものでも混ざってた?」

P「そういうわけじゃないが……うーん、なんて言うか…………」

桃子「……桃子、お兄ちゃんと一緒にいると楽しいよ。今日みたいにたこ焼き食べるのも、けっこう楽しかったしさ」

P「……」

桃子「まあ、お兄ちゃんはそういうこと気にしなくてもいいよ。お兄ちゃんの前なら桃子も正直でいられるし、不満があったらちゃんと言わせてもらうから」

P「そうか。……ありがとう、桃子」

桃子「お兄ちゃん……」

桃子「お礼のついでに、インターネットの利用制限ナシにしてくれない? あと、ソシャゲに課金する額も桃子の自由にさせてほし……」

P「調子に乗るなっ!」

桃子「うへーっ!」





~~~~~





奈緒(あ、あかん……! プレート持ち帰りに行きます言うたけど、プロデューサーさんの家に私が邪魔してもええんやろか……?)

奈緒(今は桃子も住んどるんやし、私が行っても問題あらへんよな? せ、せやけど……)

奈緒「うわ~~~ん! どないしよ~~~!」ジタバタジタバタ

今回分終わりです

桃子「うへへへへ。FPSに飽きたころにやるモソハソはやっぱり楽しいなぁ」カチカチ

桃子「……でも、狙った素材が出ないとやっぱり楽しくないなぁ。……はぁ」

桃子「うーん……。3回連続でクエストやっても出ないなると、ちょっと辛いね。これが噂の物欲センサーっていうやつなのかな……」

桃子「いやいや、ここは初心に返ろう! まず、攻略サイトで各クエストの素材入手確率をおさらいするとこから!」

桃子「こういうときのためのインターネットだよねぇ。えぇと、『モ、ソ、ハ、ソ』……」カタカタ

桃子「……あ、最新作の広告ってもう出てるんだ。発売日は……再来月の終わり、かぁ」

桃子「再来月って、ことは……」

桃子(……その時期になったら、お兄ちゃんに買ってもらうのは無理かもなぁ……)

桃子「…………」カチカチ

桃子「…………」カチカチカチ



(タンッ、タンタンッ)



桃子「?」カチカチ



(タタッ、タンッ……)



桃子「……あ、雨だ、この音。雨戸に水滴が当たる音ってなんか不思議だよねー」

桃子「確か、今日は夕方から降るってお兄ちゃんが言ってたっけ。雨の中帰ってくるなんて、お兄ちゃんも大変だなぁ」

桃子「その点、桃子は幸せ者だねっ。今日はお仕事もないから、学校終わってすぐ帰ってこれて、こうしてだらだら遊べるし!」

桃子「まぁ、(家の外では)日ごろの行いもいいし当然だよね。神様も、桃子の魅力に気付いてるってことだね」

桃子「なにか忘れてる気がするけど……ま、いいや。ゲームゲームっ!」カチカチカチカチ

P「桃子っ!」ガチャッ

桃子「お兄ちゃんおかえり~。なんか急いでるっぽいけどどうし……」

P「お前っ、頼んでおいたのに、洗濯物っ」

桃子「へ? …………あっ」



~~~~~



P「なあ桃子。お前、今日は仕事ないし出かける予定もないだろ?」

桃子「ないよ? そもそも出かけたいとか思わないし」

P「今日夕方から雨降るって予報出てるけど、洗濯物は干しておきたいから学校から帰ったら取り込んでおいてくれよ。大丈夫か?」

桃子「大丈夫か? って……。桃子、やる気がないだけでお手伝いが出来ないわけじゃないよ?」

P「そ、そうか。じゃあ、任せたぞ」

桃子「うんっ」



~~~~~



P「桃子、お前……」

桃子「わ、わ……」



桃子(忘れてたーーーーーーーーーー!!)

P「とにかく、今は一緒に洗濯物片付けるぞ! 急げ桃子!」バタバタ

桃子「うっ、うん!」ワタワタ







P「……はぁ。ここまで濡れちゃ、部屋の中に干しておくのも難儀しそうだなぁ」

桃子「……ぅぅ」

P「ちょっとの間家の中がジメジメすることになるけど、我慢するんだぞ」

桃子「……はい」



『関東地方を覆う雨雲は、明日の朝までには北上して東北東部に……』



P「ふーん。この予報が当たれば、明日には干しなおすこともできそうだな」モグモグ

桃子「あの、お兄ちゃん。……ごめんなさい」

P「もういいよ。説教はさっき終わったし、手伝うって言ってくれただけでも俺は嬉しかったから」モグモグ

P「ほら、桃子も食べな? ハンバーグ、冷めちゃうぞ」

桃子「……うん」



(ザアアアアアアアアアアアア......)



P「雨足、強くなってきたな。天気予報だと雲は徐々に移動しているはずなんだけど……」

桃子「ふーん」カタカタカタ

P「ふーん、って。風の音とか聞こえるけど、お前怖いとか思わないのか?」

桃子「ま、桃子くらいになるとこのくらいはね。天気にいちいち怯えてたら、だらだらしてられないしさ」カチカチッ

P「そりゃ、そうだけど……」

P(ちょっと反省したと思ったら、相変わらずゲームにパソコン……。……まあ、さっき叱りはしたんだしこのくらいは……)



(ガタガタガタガタガタ!!)



P「!」

桃子「!?」

桃子「な、なに、今の音?」

P「いや、さっき閉めた雨戸が風で揺れただけだな。大丈夫大丈夫」

桃子「そ、そうなんだ。よかった……」ホッ

P「……桃子、流石に今のはちょっと怖いと思っただろ」

桃子「なっ……なに言ってんのさ! 桃子にかかれば、悪天候や台風なんてひとひねりだもん!」

桃子「ほら、桃子も結構強そうでしょ? シュッ! シュッシュッ!」シュシュシュ

P「気象現象相手に仮想スパーって……」

桃子「やっぱり、アイドルたるもの体力もなくっちゃ! 桃子はまだ子供だけど、このくらい……」



(カッ! ゴロゴロ...!)



桃子「!!?」ビクッ

P「雷か。こりゃ本格的に荒れてきたかなー」

桃子「いい、今の、全然大した音じゃなかった、ね」

P「そうか? わりと近くに落ちたような気もするが……」

桃子「いや、全然あれだよ! 全然! 雷なんて、しょせんこんなもんだよ!」

P(やけに強気だな……。いや、単に強がりなだけ……ん?)

P「桃子、お前もしかして……震えてないか?」

桃子「そそ、そんなわけないじゃん! いい加減なこと言わないでよ、お兄ちゃんのバカ!!」

P「いや、でも……」

桃子「でももなにもないよ! 桃子、怖くないったら怖くないもん!」

P(怖いって自分から言いだしてるし……)

P「…………」

桃子「……もん。……雷なんて、怖くないもん……」ブルブル

P「……なあ桃子。ちょっと提案があるんだけど、いいかな?」

桃子「へっ? ……す、好きにすれば!?」

P「確かに、雷は怖くないけどさ。なんかの間違いで家が停電したら困るし、今日はもう、お風呂入ったら早めに寝ちゃわないか?」

桃子「えっ……。……桃子は別にいいけど……その、」

P「ん? なんかあるのか?」

桃子「お兄ちゃん、家に帰ってもいつも遅くまでお仕事とかしてるし……」

桃子「その……、本当に、いいの?」

P「……」

P「正直に言うと、ちょっと辛いかもしれない」

桃子「やっぱり……」

P「……でも、さっさと眠って、早起きしてからやっちゃえば同じだからな。ちょっと頑張れば、そのくらい何とかなるさ!」

桃子「そうなの?」

P「ああ。こんな夜に、雷や強風を気にしながら仕事するのもなんだしな」

桃子「そ、そうだよね! 気になるもんね! ……こ、怖くはないけど!」

P「そういうこと。俺、今のうちに布団敷いてるから桃子はお風呂の用意してきてくれよ」

桃子「うん! 桃子、今度はちゃんとお手伝いするからね!」

P「おう!」



P(……っていうか、何も言わなくても、風呂は普段から桃子が勝手に準備して入浴剤とか入れちゃうんだけど……)

P(あのときの失敗を反省して、自分から言い出してくれたみたいだし……うん、これでいいか!)

P「……せ、狭い。寝れん……」

桃子「……zzz」

P「まったく。雷が怖いからって、何も同じ布団で寝なくても……」

P「かといって、無理やり起こして動かすのも気が引けるし……俺が頑張って早起きするしかない、か」

P「まあ、今日は色々あったからな。……おやすみ、桃子」ナデナデ

桃子「んっ……。……zzz」

今回分おしまい。前回から間が空いてすみませんでした

保守してくれた方本当にありがとうございます二度も三度も間空けて本当すいませんすいません。取り急ぎ今書けてる分を投下したいと思います。本当にすいません……

P「…………」カタカタカタ

小鳥「お疲れ様です、プロデューサーさん。コーヒーでもお淹れしましょうか?」

P「ありがとうございます。それじゃあ、少しだけ……」

P「――っ」ピクッ

小鳥「……プロデューサーさん?」

P「あ、いえ。そうですね、お言葉に甘えて一杯いただくことにします」

小鳥「はい♪」

P(……なんだろう、今の感じ。殺気……とかじゃないよな?)

P(……)

P(……うーむ、)

P「どうも怪しいなぁ」

亜美「事件のニオイがしますなぁ」

真美「真美たちの出番も近いですなぁ」

P「……あーはいはい。事件事件」

亜美真美「「うあうあ~!! 兄ちゃん、ノリ悪いよ~!!」」

P「いや、ノリがいいとか悪いとかじゃないけどな。二人も気を付けておいてくれよ」

亜美「何が?」

真美「何に?」

P「なんていうかな。今日、765プロに出勤してから、何度か怪しげな視線のようなものを感じたんだよ」

P「変なファンや、悪徳記者なんかじゃないかと思ったりもしたんだが。……ただ、事務所内で仕事してるときにも視線は感じたし、その線は考えにくいんような……」ブツブツ

P「亜美や真美は、それと似たようなものを感じたりしてないか? 例えば、背筋に悪寒が走ったとか……」

亜美「亜美はないよ?」

真美「真美も」

P「そっか。俺の気のせいだったら、それが一番いいんだけどなぁ」

亜美(ちょっとちょっと真美。これはもしかして、亜美たちの出番じゃない?)ヒソヒソ

真美(そうだね亜美。ここは双子の名探偵として真美たちが……)ヒソヒソ

P「亜美。内緒話の途中で悪いけど、そろそろ律子たちと一緒に移動する時間だぞ」

亜美「うあうあ~! 兄ちゃんのいけず~!」

P「真美はこれから撮影だったな。奈緒と杏奈たちのレッスンが終わったら、一緒に車に呼ぶから準備しておいて」

真美「うにゃぁ~。せっかく面白そうなことが起きそうだったのに~」

真美「……ということがあったのだよ」

桃子「なにそれ。他の子も、そういう変な視線感じたって言ってた?」

真美「それが微妙なんだよね。なおやんに訊いたらすっごく驚いてたし、もっちーはもっちーで全然知らないって感じだったしー」

桃子「じゃあ、お兄ちゃんの気のせいかもね」

真美「甘いよももーん! こうして話している間にも、ももーんの後ろでは……!」

桃子「――っ」ハッ!







奈緒「あかんあかん! それ食らったらめっちゃ痛いのにも~~~!!」カチャカチャ


美奈子「勝負の最中によそ見は厳禁だよー!」ガチャガチャ







桃子「奈緒さんたちがゲームしてるだけだね」

真美「はぁ~。ドラマだったら、この辺で犯人っぽい人が出てきたりするんだけどな~……」



~~~P宅~~~





桃子「くのっ! このっ! ……ていっ!」カチカチッ、カチャッ

桃子「んがっ。硬すぎるよこの敵! 全然ダメージ通んないし!」

桃子「んぬっ、ふーっ!」カチカチカチ!

桃子「……………………」カチッ、カチカチャカチッ

桃子「っふぅー……!」

桃子「何とか削りきれたよ~。長丁場になったし、ここはコーラでエネルギー補給といきますか!」

桃子「……っかぁー! 炭酸が身に染みるぅ~!」

桃子「やっぱ息抜きは大事だよね。お兄ちゃんも、働きづめの社畜なせいでありもしない視線を感じちゃったんだろうな~」

桃子(……でも、アイドル業界なんだし、そういうのも気を付けなくちゃいけないのは確かだよね)

桃子(桃子たちは人に見られるのが仕事だけど、ストーカーとかされたら怖いし、あまり視線に慣れすぎるのもいけないような……)

桃子「…………」

桃子「……よし。そうと決まれば、FPSで他人の視線に敏感になれるように練習しよーっと!」

桃子「……」カチャ、カチ

桃子「……」カチャカチャ、、、

桃子「……あ、やられた」

桃子「はぁ~ぁ、お腹へったなぁ~。コーラじゃお腹ふくれた感じしないし~」コントローラーポイー

桃子「お兄ちゃんまだ帰ってこないのかなぁ。ポテイトも切れてるし、帰りに買ってきてってラインしよ……」



(ピンポーン...)



桃子「!!」

桃子「ぐったいみーーーんぐ!! 流石お兄ちゃん、こういうときに頼りになるぅー!」

桃子「……でも、なんでインターホンを? いつもなら自分で鍵を開けてくるはず……はっ!」



~~~~~



P「も、桃子~。遅くなってごめんな~。お詫びに、角のところにあるパン屋さんで色々買ってきたから……」

桃子「わーい! ……でも、残念だなぁ。今ちょうど、お兄ちゃんにポテイト買ってきて欲しいって連絡しようと思ってたのに……」

P「な、なんだって!? すまん桃子、明日には必ず買ってくるから!」

桃子「ついでにパンケーキの素も買ってきて! 桃子の好きなパンケーキ作ってくれたら、それで許してあげる!」

P「な、なんて寛大な心だ……! わかった、明日、ポテイトと一緒に絶対に美味しいパンケーキ食べさせてやるからな!」

桃子「ふふふ。よきにはからえ……」



~~~~~



桃子(つまり、お兄ちゃんがインターホンを押しているのは仕事用の鞄とパンを買ってきた袋で両手がふさがっているから! ……買ってくるのがパンとは限らないけど、きっとそういうことに違いない!)



(ピンポーン...)



桃子「待っててお兄ちゃん! 桃子、今すぐドア開けるから!」



~~~~~~





――うぅ……。『プレート取りに行かせてもらいます』言ってから何日も経ってるのにまだアポとれてへん……。



――せやけど、男の人の住所訊いて家上がらせてもらうのはなぁ……。小中で男友達ん家に行くのとは全然違うし、相手プロデューサーさんやし……。



――……今は桃子と一緒に住んどるっちゅーけど。も、もしプロデューサーさんが独りのときに家上がったら、アレやし。



――せやけど、桃子に案内してもらうんも折角のチャンスを不意にするみたいで嫌や……。……って、チャンスってなんやねんアホ! 私のアホ!



――ほんっまにヤバい……。見てるだけで全然行動に起こせてないってあかんやろ……絶対あかんて。



――っプロデューサーさんに気付かれた!?



――さっき、真美が私や杏奈に言うてた『兄ちゃんの感じた視線』って多分……いや、十中八九私のことやんな……。



――ああもう。こんなことなるんなら、いっそのこと初めから……。



――……いや、んなこと言うてもしゃーない! こうなった以上、出来るだけ早い内に家行かせてもらって用済ませて終わりや!



――今日は……ってか、基本桃子の方がプロデューサーさんより帰るのは早いし。今日私は早めに上がらせてもらって、帰る時間になったら桃子についていけばええな。



――……うん、大丈夫。私はヘタレキャラと違う! 一度決めたら、私ならやれる、はずや……!



――あかん、やっぱ無理や……!



――事務所にいたときから桃子に見張って、そのまま後を尾けてここまで来るだけでも心臓バックバクやったのに、こっからプロデューサーさんの家上がるとか難易度高すぎやん……!



――ってしもた。事務所出たまま桃子についてきたせいで、プレート持って帰る準備してへん!



――今持ってるポーチに入れても絶対はみ出すし、手でぶら下げたまま持って帰るとかありえんし……。今日こんなんばっかやな、私……。



――いやいや、めげたらあかん! ここははよ家戻って準備して、ぜ~~~~ったいにたこ焼きプレート回収して帰るで!



――も、戻ってきたで……。アパートまでの道覚えてられへんかったせいで、いらん時間食ってもうたけど……。



――部屋はここ、やんな。桃子がこの辺の部屋入っていくのは見てたし、もし間違ってたら、出てきた人に事情話してプロデューサーさんの部屋教えてもらえばええし。



――……よし、いくで。このインターホン鳴らせば桃子が……。……もしかしたら、もう帰ってきてるかもしれへんプロデューサーさんが、出てくる……!



――……えいっ!

(ピンポーン...)



奈緒「……あ、あれ? インターホン鳴らしたはずなのに、誰も出て来ないって……」

奈緒「ひょっとして、二人共おらへんのかな? ……うーん」

奈緒「と、とりあえず、もう一回だけ。もう一回だけ鳴らして、みるか、うん」

奈緒「……ていっ」



(ピンポーン...)



奈緒「……」





~~~~~

桃子「お兄ちゃんおかえりー! えへへ、何を買ってきてくれたのか……」ガチャ!





奈緒「……」





桃子「……………………」



桃子(……あ、)







桃子(あがーーーーーーーーーーん!!!)


とりあえずここまでで。次回はこの続きからになります

ほんっと間空けて申し訳ないです。自己保守してでも今考えてる完結エピまでは書くつもりなので、それまで見守っていただけると嬉しいです……

大分遅くなりまして本当に申し訳ありません。>1です

前回の更新は奈緒と桃子が出会った場面で切れてましたね。ようやくまとまった話が書けたので、その続きから投下させていただきます

桃子「……」



奈緒「……」



桃子(ぁう、ぁぅ……)



奈緒(……)





奈緒「…………???」

奈緒(……な、なんやこの子……? めちゃめちゃちっこいし、なんや、たぬきだかハムスターだか動物のフード被ったまま出てきて……)





桃子「……あわわわわ」アワワワワワ





奈緒(なんでこない小さい子がプロデューサーさん家におるんかは全然分からんけど、なんか、この子……)



奈緒(……かっ、)



奈緒(かっ……、)



奈緒「かわぇぇぇ……」





桃子「……へ?」


奈緒「あっ、ちゃうちゃう! 今のナシ! ナシで!」

桃子「!?」ビクッ

奈緒「あぁっ、怖がらんといて! えーっと……なんていうかな、その……」

桃子「……はい」

奈緒「私、プロデューサ……〇〇さんに、用があって来てんねやけど……」

桃子(? わざわざお兄ちゃんの名前を言い直したってことは、もしかして……)

奈緒「君、〇〇さんの妹さん? それとも、桃子の……お友達、とか?」

桃子「……」





桃子(僥倖・・ッ! 奈緒さん、目の前にいるのが桃子だということに、未だ気付かず……!!)


桃子「っあの、〇〇さんのことなら、多分、お兄ちゃんのことだと思うよ!」

奈緒「おぉ~っ! お兄ちゃんってことは君、プ……やなくて、〇〇さんの妹さん?」

桃子「ん? ……あー、うん!」

奈緒「へー! そうなんかー!」



桃子(はずみで嘘をついちゃったけど、とりあえずこの場は奈緒さんに合わせて乗り切ろう……)



桃子「えーっと……。お姉さんは、何しに来たの?」

奈緒「お  姉  さ  ん  !!?」

桃子「!!?」ビクンッ

奈緒「……ハッ。ごめんごめん、私、君みたいな可愛い子にお姉さんって呼ばれるのって、憧れやったからつい……」

桃子「えっ」

奈緒「あー、いや。私、兄貴だけで年下の姉弟とかおらんかったから! そういうの、ちょっとだけええなーって思ってたんよ」

桃子「はぁ……」

奈緒「ほ、ほんま! ほんまにそれだけやから! 神様に誓って嘘やないで!」 

桃子「あ、今のは疑ったんじゃなくて相づち打っ……」

奈緒「ほんま、小さい女の子にやらしい気持ちを抱くようなアブない人とちゃうから私! ほんまに大丈夫やから! 信じてくれ!!!!」クワッ!

桃子「あっ、はい」



桃子(ちょ、ちょっと引くくらい必死だよ……。奈緒さん、なんでか分からないけどすごく焦ってるみたい……)



桃子「……とりあえず、上がります?」

奈緒「!! え、ええの!?」

桃子「え、ええ。お姉さんがよかったらですけど」

奈緒「ほ、ほな、お言葉に甘えて失礼しまーす……」


奈緒「こ、ここここがプロデューサーさんの家……!」

桃子「あの……座布団どうぞ」

奈緒「あ、これはご丁寧に。……失礼します」

桃子「どうぞどうぞ。今、ウーロン茶入れてくるので待ってくださいね」

奈緒「! おおきに!」





桃子(勝手に上げちゃったけどしょうがない……よね? 何か、お兄ちゃんに用があって来たんだろうし……)



奈緒(小っちゃいのに礼儀正しい子やなぁ……。かっこだけやなくて、私をもてなそうとちょこまか動いてくれるのも可愛いし……)



桃子(うむむ。とりあえず、桃子の秘密を守るためにもさっさと用件聞いて帰ってもらうのがいいのかな)



奈緒(にしても、プロデューサーさんの家に上がれる日が来るとは……! うあー、緊張やらなんやらでめっちゃドキドキするわ……!)

桃子「はい、お茶です」

奈緒「ど、どうも」

桃子「……」

奈緒「……」

桃子「……」

奈緒「……」

桃子「……」

奈緒「……」



桃子(な、なにか話してよ奈緒さん! うちに用があって来たんじゃないの!?)



奈緒(……ああああああかん。初対面の、それもプロデューサーさん家におった子なんて、どんな風に話振ればええんか全くわからん……!)

桃子「……あの。とりあえず、一口どうぞ」

奈緒「せ、せやな! ……うん。私えらい緊張してるみたいやし、お茶飲んでちょっと落ち着くわ……」





~~~~~~~~~~





奈緒「……ふぅ。何から何までありがとうな。えっと……」

桃子「?」

奈緒「……君、名前なんていうん?」

桃子「!!」



桃子(失態・・ッ! 桃子、奈緒さんの前で演技すると決めておきながら嘘の名前を考えなかった痛恨のミス……!)





奈緒「あ、私、765プロ事務所の横山奈緒っていうんやけど。プロデュ……〇〇さんと同じとこでアイドルやってん」

桃子(知ってるよ!)

奈緒「今はおらんけど、ここに住んでる桃子とユニット組んで歌ったこともあるんやで? 凄いやろ?」

桃子(嫌というほど知ってるよ!! 本人だもん!!!)

奈緒「それで、なんて名前なん?」

桃子「……」

奈緒「あ、ええと。私みたいに、よう知りもせん人に教えたくないんやったら、あだ名とかでええんやけど……」

桃子「……」

奈緒「……ぅぅ。せっかくやし、ちょっとくらい君と仲良くしてみたかってんけど……そんなに嫌かな……?」

桃子「……」

桃子「……こ」

奈緒「! い、今なんて?」

桃子「その、名前。……こもこ」ボソッ

奈緒「『もこ』!? あはっ、可愛い名前やん!」

桃子「そ、そうじゃなくて! ……こ、こもこ」

奈緒「『こもも』やて!?」

桃子「だ、だからそうじゃなくて……」



奈緒「そっか、こももちゃんかぁ~。もこちゃんと聞き間違えたけど、どっちにしても可愛くてよう似合うてる名前やな~」



桃子(……もう、それでいいや。めんどくさいし)

奈緒「なあなあ、こももちゃん!」

桃子「なんですか?」

奈緒「聞きたいんやけど、あそこに散らかってるのってプロデューサーさんのゲームなん?」

桃子「!」



桃子(しまった! 桃子としたことが、散乱したゲームを片付けるのを忘れていたーーー!!) 



桃子(そもそも忘れる以前に片付けるって発想がなかったような気もするけど……。この場面、どう乗り切るべきか……)

桃子「ど、どうしてそう思ったの? ……思ったんですか?」

奈緒「だって、シューティングとかアクションとか、こももちゃんみたいな子が好きそうなゲームやないし……。……ひょっとして、桃子が遊んでるんかな?」

桃子「う、ううん! 桃子が、じゃなくて桃子お姉ちゃんがあんなゲームで遊ぶわけないよ!!」

奈緒「せやろー? プロデューサーさんも、可愛い女の子たちがおるのにだらしない人やなぁ」

桃子「本当だよ! お兄ちゃんったら、いっつも桃子お姉ちゃんに注意されてるんだから!」

奈緒「へ、へー。桃子も大変なんやなー」





桃子(……なんか、どんどん変な方向に行っちゃってるような。このままだとマズい、かも?)



奈緒(プロデューサーさん、案外子供っぽいところあるんやな……ふふっ)

奈緒「ていうか、私的には親近感湧くゲームチョイスやなぁ。プロデューサーさんも見る目あるわ」

桃子「お、お姉さんもああいうゲームやるんですか!?」

奈緒「まあ、そこそこになー。あそこに転がってるシリーズとか兄貴とよくやったし、他のも、同じ事務所の美奈子や杏奈って子と一緒に遊んだりしてるで」

桃子「な、なるほどー。ふむふむ」

奈緒「……なに? もしかして、こももちゃんもプロデューサーさんと一緒にプレイしてたりするん?」

桃子「う……」

奈緒「どうなん? 別に、怒ったりせんから教えてやー」

桃子「……」

桃子「……はい。実は……」

奈緒「へー。その年でこの手のゲームやってるなんてマセてんなぁ。ま、やり過ぎると体に毒やから気を付けなあかんよ?」

桃子(うぐっ。奈緒さんにまで言われてしまった)

奈緒「いうても、その辺はあの二人にも注意されとるやろうし……。なんなら、今から私と一緒に遊ぶ?」

桃子「いいの!?」 



桃子(これは嬉しいかも! なんだかんだ言って、一緒にプレイできる仲間が増えるのはいいもんだよね!)



桃子(それに、奈緒さんの前で嘘を言い続けるのも嫌だし……。桃子の正体は隠さなきゃだけど、正直に言ってよかったなぁ)


桃子「えと……お姉さん、本当にこももと遊んでくれるの!?」

奈緒「ええに決まってるやん! ほな早速……」

桃子「……あ、でも」

奈緒「なに?」

桃子「それより、お姉さんの用事の方が先……じゃないですか?」

奈緒「あー、そやった! 忘れんうちに話しとくべきやったわ!」

桃子(忘れかけてたんだ……)

奈緒「なあ、こももちゃん。最近、桃子たちとたこ焼き食べたりせんかった?」

桃子「うん? たこ焼きなら、この間の夕ご飯に食べましたけど……」

奈緒「そんときにプレートつこたはずやろ? あれ、実は私が桃子に貸したものなんよ」

桃子「へ、へー。そうだったんですかー」

奈緒「んで、今日はそのプレートを返してもらうために来たんよ」

桃子「えっ。わざわざそんなことしなくても、お兄ちゃんや桃子お姉ちゃんに持ってってもらえばいいのに……」

奈緒「そうは言うても、持ち歩くのが手間やしなぁ。私から桃子に勧めたんもあるし、アフターサービスってことで!」

桃子「……!」



奈緒(プロデューサーさんの家にも来てみたかったし……なんてことは絶対言われへんなぁ)

桃子「えっと……お姉さん、わざわざありがとうございます」

奈緒「奈緒、でええよ。呼び捨てがいやなら、さん付けでもちゃん付けでもかまへん」

桃子「えっ」

奈緒「せっかくこうして知り合うたんやし、敬語もなしでいこうや。なっ?」

桃子「あ……」

奈緒「桃子も、私とはそういう風に話してるしなぁ。そない気遣わなくても、自然に話してくれたら私も話しやすいし」

桃子「……!」

奈緒「それにこももちゃん、桃子と雰囲気そっくりやしな。まあ、こももちゃんが話しやすい方で話しかけてくれたらええよ! うん!」

桃子「……」





桃子「……うんっ。ありがとう、奈緒さん!」

奈緒「ふぐぅっ!!」

桃子「!?」

奈緒(ヤバい、予想以上にかわいすぎて変な声出た……)

桃子「奈緒さん大丈夫? のどにお茶でもつまった?」

奈緒「よ、余裕のよっちゃんやで……。それより、さっき言ったたこ焼きのプレート、どこにあるか知ってる?」

桃子「あ、うん。ちょっと待っててね」トテテテ...

奈緒「…………」





奈緒(あかんあかんあかんあかんかわいすぎやろこんなん……。プロデューサーさんも桃子も、なんでこんな可愛い妹さんおるのを秘密にしてたんや……)



奈緒(や、待って。もし、こももちゃんが私の妹やったとして、聞かれもせんのに事務所の仲間にこももちゃんのことべらべら喋ったりするやろか?)



奈緒(こももちゃんが私の妹やったら……。……うーん)



奈緒(妹……こももちゃん……私の……妹……私の……こももちゃん……妹…………)

桃子「……奈緒さん? たこ焼きのあれ、持ってきたよ?」

奈緒「はっ! ああありがとう!」

桃子「奈緒さん、さっきから何か変だよ? ……いろいろ、大丈夫?」

奈緒「やっ、うん! 大丈夫! 心配させてごめんな!」

桃子「……そう。それなら、いいんだけど」

奈緒(うっ。妙な罪悪感が)

奈緒「ま、まあ、あれやな。さっきも言うたけど、こももちゃんと初対面なんで、ちょっと緊張してもうたのかもしれへんな」

桃子「そうなの?」

奈緒「なはは……」





奈緒(本当は、プロデューサーさんの家に来させてもらってるのが大きいけどな! こももちゃん相手でも、そんなんこっ恥ずかしくて言えへんし!)



奈緒(……ていうか、最初はともかく、こももちゃんと話すこと自体は大して緊張せえへんのよな。桃子に感じが似てるから……かなぁ?)

奈緒「……とりあえず、これで私の用事はほぼ終わったな」

桃子「えっ。奈緒さん、もう帰っちゃうの?」

奈緒「あはは。こももちゃん、私が帰るのを残念がってくれるなんてええ子やなぁ」ナデナデ

桃子「べ、別にそういうわけじゃないよ! ……こもも、まだ奈緒さんに帰って欲しくないもん……」

奈緒「……っ!!!」





奈緒(あかん! 兵器やこれは! 可愛い子が可愛いことまで口にするのは反則やろほんま……!)



奈緒(本音いうたら、私かて帰りたないわ。せやけど……)

奈緒「……とりあえず、これで私の用事はほぼ終わったな」

桃子「えっ。奈緒さん、もう帰っちゃうの?」

奈緒「あはは。こももちゃん、私が帰るのを残念がってくれるなんてええ子やなぁ。お世辞でも嬉しいわぁ」ナデナデ

桃子「おっ、お世辞なんかじゃないよ! ……こもも、まだ奈緒さんに帰って欲しくないもん……」

桃子(せっかくだし、対戦くらいしてから帰ってよね! ……さっきから楽しみにしてるんだし!)

奈緒「……っ!!!」





奈緒(あかん! 兵器やこれは! 可愛い子が可愛いことまで口にするのは反則やろほんま……!)



奈緒(本音いうたら、私かて帰りたないわ。せやけど……)

奈緒「まあ、惜しまれる内が華っちゅうんか? 私にも予定があるし、こももちゃんがそう言ってくれる間に帰ろうって思うんや」

桃子「むー……」



奈緒(ほんっまにすまん! せやけど、道に迷って帰り遅くなったり、プロデューサーさんと鉢合わせてさっき以上に心臓酷使したりすんの怖いねん!)



奈緒「ほな、またな。どこかでも一度会ったときは、よろしく」

桃子「……そんなの、またここに遊びに来ればいいのに……」

奈緒「えっ」

桃子「あっ」


桃子(し、しまったああああああああああああ!! 対戦は別にしても、せっかく桃子の演技がバレる前に帰ってくれるっていうのにまた来るように誘っちゃったーーーーー!!)



奈緒(な、な、なんや今の!? ここ、こももちゃんに誘ってもらえば、またプロデューサーさん家に来れるっちゅーんか……!?)



桃子(今から撤回……するのは無理そうだし、どうしよう……)



奈緒(今の、冗談やあらへんよな……? こももちゃんの誘いは嬉しいけど、また遊びに来たときにプロデューサーさんがおったらどないしよぅ……)



桃子(……こうなったら、腹をくくるしかないね! 色々言い訳するのは大変かもだけど、桃子の演技力ならなんとかなるし……多分!)



奈緒(こ、こうなったら腹くくるしかない! 別にやましいことしに来るんとちゃうし、なんとかなるやろ……多分!)



桃子(……それに、)



奈緒(……それに、)

奈緒「……じゃあ、お言葉に甘えてまた今度遊びに来させてもらうわ」

桃子「う、うん。……えーっと、こもも、携帯持ってないから、遊びに来たくなったらお兄ちゃんか桃子お姉ちゃんに伝言役頼んでくれる?」

奈緒「わかった。ほな、今度こそまたな」

桃子「ん。ばいばーい」



(ガチャッ、バタン)



桃子「……」





~~~~~~~





奈緒「……」



桃子(それに、今の桃子とも一緒に遊んでくれる、お姉ちゃんみたいな友達ができて嬉しかったし……ね!)





奈緒(それに、えらい可愛くて、妹みたいな友達ができて嬉しかったし……な!)






~~~2時間後~~~



桃子「……というわけで、これからたまに奈緒さんが遊びに来るかもしれないから、よろしくね」

P「!?」

桃子「あと、奈緒さんが一緒にいるときは桃子は『こもも』になるから。お兄ちゃんも、その辺気を付けて桃子に接するようにしてよね」

P「!?」

桃子「『こもも』は、なんやかんやでお兄ちゃんの家に少しの間居候しにきてる設定にするから。奈緒さんになにか訊かれたら、適当に言ってごまかしといて」

P「!?」

桃子「それと、事務所内で『こもも』のことが知れ渡ったら面倒だから、明日お兄ちゃんの方から奈緒さんに口止めしておくこと」

P「!?」

桃子「じゃあ、桃子は奈緒さんの接客で疲れたから仮眠するね。ご飯できたら、起こしてね……」

P「えっ」



桃子「…………zzz」



P「……正直、桃子が何を言ってるのか、何があったのかよくわからなかったが……」



桃子「うぇへへ……にゃおさん、なかなかやりゅねぇ……zzz」



P「干物状態の桃子に、友達ができてよかった……のかなぁ?」

読んでくれてありがとうございました。

かなり久しぶりの更新になってしまいましたが、いつか書いたように、どれだけ長くなってもこのSSは完結までもってくつもりなのでだらだらお付き合いいただけると幸いでございます

保守してくださった方々、ありがとうございました。次回の更新なるべく早くできるように頑張ります

>1です。前回書いた『来週中』のギリギリになっててすいません。投下します

P「いってきまーす」 

桃子「ふぁ~……。……いってらっさーい」 

P「うん。鍵閉めてな」 

桃子「あーい……」 





P「って何してるんだ! 桃子も学校行く時間だろ!」 

桃子「うぇぇ~……。やぁ~だ~!」 

P「やだじゃない! ただでさえ仕事で穴空けてるんだから、学校にはしっかり行きなさい!」 

桃子「ねーむーいー! 昨日撮影で疲れたし、いつもがんばってるしたまにはいーでしょー!」 

P(昨日は俺が帰ってきてから寝るまでゲームやりっぱなしだった癖に、駄々コネやがって……! 一体どうすれば……)

P「……」ムムム

桃子「あきらめよーよ、お兄ちゃん。はやくしないとお仕事遅刻するよ~」 

P「むぅ……いいから早く目を覚ましなさい! いい加減怒るぞ!」 

桃子「も~。お兄ちゃんったら、最近桃子に厳しくない? ……あ!」 

P「あ?」 


桃子「見て見て、お兄ちゃん! 猫! あそこの塀の上に黒い猫さんいるよ!」 

P「本当か!? どれどれ!」 



ネコ「……」サッ



桃子「あー。逃げちゃった……」 

P「みたいだなぁ。……残念」 

桃子「……」 

P「……」 



P「って話を逸らすなー! とにかく、早く目を覚まして学校に行きなさーい!」 



桃子「やだぁ~! 桃子、一生ここで寝て暮らすもん~~~!」 

~その日の夕方~



桃子「はぁ~……」 

桃子(朝、お兄ちゃんが諦めるまで粘れてたらなぁ……。授業中、眠りかけて危ないときが何度もあったし……)

桃子「……はっ」 



ネコ「…………」 



桃子(今朝会った黒猫さんだ……。うちのアパートの階段下に座ってるけど、何してるんだろう?)



ネコ「……」ジロッ



桃子「こっち見て……あっ! また逃げた!」 

~数日後・朝~



桃子「いってきまーす!」 

P「うん。……最近早起きするようになったみたいだけど、いいことでもあったのか?」 

桃子「ん、まあね。なんだと思う?」 

P「そうだなぁ。……たぶん、学校でなn」 

桃子「行ってきまーす」

P「最後まで聞けよ! ……いってらっしゃーい」 

P「さて、そろそろ俺も出るか。昼はコンビニと出前のどっちにしようかなぁ……」



(ガチャ)



P「フンフンフンフーンフフーン♪ フフフフンフンフフーン、フフーン♪」

P「フフフフンフフーン♪ フフフーン……ん?」



ネコ「……」



P「お前、この前の! ……あっ、逃げた!」 

P「うちの近くに居着いてるのか? ひょっとすると、桃子が早起きになったのはあの猫のお陰だったのかもなぁ」 

~数日後・夕方~



桃子「……にゃーん。にゃんごろにゃー……」



ネコ「……」



桃子「うーん、もうちょっと近くに来てくれれば触れるのに……。……にゃーん、にゃーん」



ネコ「……」



桃子「こ、怖くないよー。にゃんごろにゃーん。にゃ……あぁっ、行っちゃった」



P「……」



桃子「!!! お、お兄ちゃん……。帰ってたんだ……」



P「……ああ」

P「……エサあげたりしてないよな?」

桃子「しっ、してないよ!? ……この前はネコジャラシで釣ろうとしたけど……ゴニョゴニョ」

P「ならいいんだ。他所から逃げてきた猫かもしれないし、変にこっちの人に懐かれてもなぁ」

桃子「そ、そっか。……でも、ちょっと仲良くするくらいは迷惑じゃないでしょ? ね?」

P「それぐらいはいいんじゃないか? ついこないだアパートの人たちと相談したんだけど、まずはポスターなんかで飼い主を探して、その結果次第かな」

桃子「ふーん。……やっぱり、元の飼い主のところに戻った方があの猫にとってもいいのかなぁ……」

P「どうだろうな。猫の考えることは俺たちにはわからないし」

桃子「でも、ちゃんと帰る家があるなら、そっちに帰った方がいい……と思うんだけど」

P「……」

P「まあ、首輪とかの目印は身に付けてないし、人への警戒心も強いし、あれは本当にノラ猫なのかもしれないな」

桃子「うむむぅ。どっちなんだろう……」

P「さあ? ……ところで、桃子」

桃子「なに?」

P「『ニャンコロ』ってのはあの猫の名前か?」

桃子「!! な、なんのこと!?」

P「ほら、さっき桃子が猫に向かって言ってただろ? にゃんにゃーん、にゃんころにゃー……って」

桃子「……~っ!」

桃子「お兄ちゃんのばかばかばかっ!! 普段お仕事だとぼけっとしてる癖に、どうしてそんなことはちゃんと覚えてるわけ!?」

P「ぼけっとなんかしてないわい! 別に、そんなに怒らなくてもいいじゃないか……」

桃子「あ~もう! 言っておくけど、そのこと事務所のみんなにバラしたりしたら今以上に本っ当に怒るからね! わかった!?」

P「……あ、ああ。わかった」

桃子「絶対だからね!」

P「わかったって。誰にも言わないから安心してくれ」

桃子「おわびとして、今日はデザートでパンケーキ作ってよね!」

P「はいはい。作ってあげるから、そろそろ俺たちの部屋に帰ろうな」

桃子「ん!」

~朝~



P「桃子~。もう時間だろ? 早く準備して出て来いよー」

桃子「ぅぅ……。あと5分だけ仮眠させて……」

P「朝ごはんまで食べた後なのに寝るな! 歩いている内に目も覚めるし、ささっと準備して登校しろって」

桃子「カバンが、重い……。学校なんて行きたくないよぅ……」

P(はぁ。猫効果で早起きになったと思ったけど、やっぱり一過性だったか)



P「どうしたもんかなぁ…………おっ?」

P「桃子、桃子、ちょっと来てみろって」

桃子「わかった、わかったよぉ。行けばいいんでしょ行けば」

P「あれ見ろあれ。ほら……」

桃子「? ……あ、」



ネコ「……」



桃子「いつも来てるのと違う猫さんだ……! あっちは黒かったけど、今度は白い猫……」

P「本当だ……。いつのまにか、新しいのが来ていたんだな」

桃子「ねえねえお兄ちゃん。触りに行っちゃダメかな?」

P「やめとけよ。桃子だって、起きたすぐ後に色々構われると嫌になるだろ?」

桃子「……じゃあ、明日からは桃子のこと起こさないで」

P「それとこれとは話が別だ」

桃子「ちぇー」

P「それにしても、朝からノラ猫がこんなに見られるなんてラッキーだよ。この辺には猫を惹きつける何かがあるのかもな!」

桃子「そう?」

P「日向ぼっこのできる昼間でも身を隠せる夜でもなく、こういう時間帯に猫を見られるってなかなかないことだよ」

桃子「へぇ。……まあ、言われてみればって感じかな」

P「まあ、あいつらが人に慣れていて、朝でも平気で活動できるっていう可能性もあるけど……」

桃子「そういえば、黒猫の方の飼い主探しってどうなったの? 誰か見つかった?」

P「いや、まだだよ。探し始めてから時間も経ってないしな」

桃子「そっか。……どっちがいいのかなぁ」

P「なにが?」

桃子「ん、なんでもない」

~同日・夜~



P「ただいまー……」



P(……返事がないな。ゲームか漫画にでも夢中になっているか、それとも寝てるか……)



P「桃子、ただいま……」



桃子「お兄ちゃん、しーっ」



P「桃子、窓開けて……なに見てるんだ?」



桃子「いいから、音立てないでこっち来て。早く」



P「あ、ああ……」

P「で、さっきからどこ見てたんだ?」

桃子「ちょっと黙って! ほら、聞こえない?」

P「ん……」





ニャー...



    ...ナァーン





P(あの二匹の声か!? どこにいるんだろう?)

桃子「ほら、あそこだよ。あそこ」

P「どれどれ……」

クロネコ「……」

シロネコ「ナァー」

クロネコ「……ニャ-」

シロネコ「……ニャー」





P「仲がいいんだな……。はちあわせて、ケンカしたりしないか心配だったんだ……」

桃子「ふふっ。もしかしたら、これが初対面で挨拶しているのかもね」

P「縄張り争いが起こらなくてよかったなぁ。二匹とも仲よしってことは、互いにおとなしい気性なのか……」

桃子「もしかして、オスとメスで恋人同士なんじゃない? 白猫の方は、黒いのを追っかけてここまで来たのかも」

P「それはありうるな。だとすると、これは求愛の一環なのかもしれないぞ」

桃子「求愛……。……じゃあ、桃子たちが見ている今この瞬間に、あの猫さんはプロポーズしてるんだね……」

P「そうだなぁ……」

桃子「……窓閉めよっか。なんか、覗いてるみたいで猫さんたちに悪いし……」

P「あ、うん」



P(もし、これが本当に求愛行動なのだとしたら……)



桃子「本当に求愛してるんだったら、すごいよね。あの猫さんたちの子供が、そのうち見られるかもしれないんだもん」

P「そう……。子供が産まれてくるよなぁ」

桃子「あの二匹の間に産まれた子なら、きっと可愛い子猫さんになるよね」

P「うん……」

桃子「桃子ね、お兄ちゃんが白猫さんの飼い主を探し始めてから、飼い主が見つかるのと見つからないの、どっちがいいのかなって考えてたの」

桃子「ちゃんと自分のおうちがあるなら、帰った方が猫さんにとっていいんじゃないかって思ってたけど……」

桃子「……でも、今の環境が楽しいならもう少しの間このままでもいいのかなぁって……」

桃子「それに、あの猫がいなくなっちゃったら寂しくなるから。……桃子、まだ仲よくなれてないし……」

桃子「……でも、黒猫さんが来て、二匹の子供が産まれてくるなら、もし白猫さんが誰かの所に帰っても寂しく……」

桃子「ってお兄ちゃん! 聞いてるの!?」

P「ん? ああ、聞いてる聞いてる」

桃子「もう。あれで聞かれてなかったら、桃子はどれだけ長い独り言をしゃべってたことになると思ってるのよ」

P「うんうん。俺もまだあの猫たちを撫でたりできてないしな。このままいなくなってたら、ちょっと寂しいところだった」

桃子「まだ、最初の猫さんが来てから10日くらいしか経ってないのにね。……なんか、不思議かも」

P「桃子は、ペットを飼ってた経験はあるのか?」

桃子「ないよ。……別に、いらないかなって思ってたから」

P「じゃあ、元の家に戻るときになったら何か買ってやろうか? 魚とか、ハムスターとか場所をとらないしいいと思うんだけど」

桃子「えっ……! ……か、考えとくね」

P「おう」



P(それにしても、オスとメスなぁ。……うーん)

読んでくださってありがとうございました。今回のお話は長くなったので、投下はこれでいったん切って後日続きを投げさせていただきます

投下してから気が付きましたが、>215で黒猫と白猫が逆になってしまっているので脳内変換をお願いします



幕張のLIVEですが、本当に最高でしたね……。しかし、既にBMDイベの魔の手がPたちに……うごごごごごごごごご

BMDお疲れさま?
シリアスの予感、一旦乙です

>>135
双海亜美(13) Vi
http://i.imgur.com/lV5avOu.jpg
http://i.imgur.com/vhLe0fj.jpg

双海真美(13) Vi
http://i.imgur.com/C1ZLXg1.jpg
http://i.imgur.com/C3mf1Kp.jpg

>>138
佐竹美奈子(18) Da
http://i.imgur.com/kEtkA8n.jpg
http://i.imgur.com/HLMl2AQ.jpg

どうも>1 です。ひと月前にした宣言より大幅に遅くなってすみませんでした

言いたいことは色々ありますが、まずは>216 からの続きを投下していきます。

~翌日の夜~



P「……ということで、お願いします」

P「そうですね。どっちの方向でまとまるにしても、あの子たちを捕まえなきゃいけないわけですし」

P「ああ、それはもうネットで注文しておきました。代金もこちらの方で支払っておきましたので、届き次第連絡します」

P「……はい。はい。お手数かけますが、どうかよろしくお願いします。それでは」ピッ

P「ふー……」

桃子「……このっ、ここが! それっ!」カチカチカチ

P「もう何時間やってるんだ? いい加減やめないと体調悪くなるぞ」

桃子「今っ、いいとこだから、黙ってて!」

P「何度も注意してきただろ。今すぐやめないなら、明日のご飯は作ってやらないからな」

桃子「あっ、死んだ。……もー、お兄ちゃんがジャマするからー」

P「はいはい、ごめんな。ゲームもいいけど、お湯が冷める前にお風呂入ってこいよ」

桃子「はーい」

桃子「はー、いい湯加減だった~」

P「……」カタカタカタカタ

桃子「お兄ちゃんまだ仕事してるの? 社会人は大変だね」

P「いや、これはマンションで回すアンケートを作ってるだけだよ」

桃子「アンケート……? よくわかんないけど、それってお兄ちゃんが作らなきゃいけないの?」

P「ああ。そもそも、発案者が俺だしね」

桃子「しっかし、いまどき紙媒体なんて古いねー。これだからゆとり世代はダメって言われるんだよ」

P「世代関係ないだろ……。メールじゃ気付かない人もいるし、普通だよ、普通」

桃子「まあ、がんばってね。桃子には関係ない話だけど」

P「いやいや。桃子にも関係あると思うけど一応見てかなくていいのか?」

桃子「そうなの?」

P「うん。ニャンクロたちの処遇に関わる話だから」

桃子「その名前はやめて。……どういうアンケートなわけ?」

P「んー。簡単に言うと、ニャンクロたちとお別れするか、このままマンションの周りでノラ猫やってもらうかの二択って感じだな」

桃子「ふーん。……ていうか、その名前本当にやめてってば」

P「えぇ? 桃子の言ってた『ニャンコロ』をもじって、黒い方がニャンクロで、白い方がニャンシロ。いい名前だと思うんだけどなぁ」

桃子「……はぁ。その名前でいいよもう……」

~翌々日・事務所~



『ニャンクロたちとお別れするか、このままマンションの周りでノラ猫やってもらうか……』



桃子「……」

茜「おいおいどうしたのさ、桃子ちゃ~ん。この世紀の美少女を目の前にして、なにを憂えることがあるのかな~?」

桃子「あ、うん……。ちょっとね」

茜「なんだいなんだい。悩みがあるなら、遠慮しないで茜ちゃんに相談しなって! さあ! さあ! さあさあさあ!」

桃子「……じゃあ、聞いてくれる? そんなに大したことじゃないかもだけど」

茜「ドンウォーリー! 茜ちゃんにまっかせなさーい!」

桃子「というわけで、その猫さんたちにとってはどっちがいいのかな、って……」

茜「にゃるほど~。この茜ちゃんも猫系アイドルのはしくれだし、他人事ではない話だね~」

桃子(むしろ、猫要素しか共通点ないんじゃ……)

茜「これは茜ちゃんね~。びしっとずばっと答えちゃうよ。じらさず一発回答しちゃうよ、桃子ちゃん」

桃子「ぇっ。そ、そんなに早く?」

茜「そりゃあもう! はっきり言うけどね、桃子ちゃん。この問題は……」

桃子「……」ゴクッ

茜「ずばり、桃子ちゃんが気にする必要ナシ! 大船に乗ったつもりで、プロちゃんに任せちゃいなよ!!」

桃子「えー? 本当にそれでいいの?」

茜「身もふたもない言い方だけど、その猫ちゃんの考えてることは茜ちゃんにはわからないし。でしょ?」

桃子「本当に身もふたもないね……。響さんみたいに、猫とお話しできたらどうにかならないかな?」

茜「んー、それはまた別の話じゃないかにゃ?」

桃子「?」

茜「だってだって、ノラ猫を続けるのと、誰かに飼われるのと、どっちがその子たちにとって幸せなのかって正直成り行き次第っぽくない? 多分、猫ちゃんたち自身にもどっちがいいのかは分からないだろうしさ」

桃子「それは……まあ、そうだけどさ」

茜「大体、猫ちゃんたちがマンションに居たがったとしても、住人の皆が嫌がるならそれはダメになっちゃってもしょうがなくない? って話じゃんか」

桃子「うーん……?」

茜「茜ちゃんがそこの住人なら断然Welcome!!だけど、猫がどーーーーしても嫌だって人も、いるときにはいるもんだしさ」

桃子「……あー、そうだね」

桃子(アレルギー持ちの人とかがいたら、猫をマンションで飼うのを反対されてもしかたないもんね)

桃子「でも、今みたいな半分ノラ猫って状況はあの子たちにとって幸せそうだったよ?」

茜「それこそ、さっき言った『成り行き次第』なわけだよ桃子ちゃん。猫ちゃんとしても、ちゃんとした飼い主に見守られた方がいいのかもしれないしさ」

桃子「むー……」

茜「とまあ、こんなことくらいしか茜ちゃんは言えないけど。でもでも、本当に桃子ちゃんが気にしなくても大丈夫な問題だと思うよ、うん」

桃子「……本当にそうだねー。アンケートをとることは、もう決まっちゃってるんだし」

茜「マンションの決め事くらいなら、桃子ちゃんがワガママ言えばどうにかなる……のかな? そのマンションって、部屋で猫ちゃん飼うのはOKなの?」

桃子「わかんない。飼ってる人見たことないし、もしかしたらダメかもしれない……」

茜「そっかぁ。まあ、なんにしてもプロちゃんならきっとうまくやってくれるよ! 安心しなって!」

桃子「……うん、わかった。色々ありがと、茜さん」

茜「うんうん。ちょっとでも桃子ちゃんの役に立てたのなら、茜ちゃん冥利に尽きるってもんだよ」

桃子「とりあえず、お兄ちゃんともまた相談してみるね。……本当にありがと、ね」

茜「どういたしましてー!」

~夜~



P「ただいまー」

桃子「あっ、お兄ちゃん。ゾンアマからなにか届いてたから受け取っといたよ」

P「えっ、もう届いたのか? 明日だと思ってたけど早いんだな……」

桃子「おっきい段ボールで二つも来て、大変だったんだからね。桃子に感謝しておくこと!」

P「おう。ありがと、桃子」

桃子「ん、よし。……で、なに買ったの? ここで開けて見せてよ」

P「や、大したものではないんだけどなぁ」

桃子「なんでもいいから見せてって言ってるの! 二つあるんだし、大きさ的に新しい棚とか? それとも、PC機器かなにか……」

P「そんなに面白いものじゃないよ。ていうか、受け取るときに注文票とか見てないのか?」

桃子「あー……。届いたときはオンラインでゲームしてたし、荷物はその辺に置いて早くプレイ再開することだけ考えてたから……」

P「……相変わらず依存症だな、お前……」

P「ま、開けてみるか。よいしょ……っと」

桃子「……なにこれ?」

P「捕獲器……って言って分かるか?」

桃子「ホカク……捕獲? ……お兄ちゃん、何か捕まえようとしてるの?」

P「あ、分かるのか。ニャンクロとニャンシロの二匹を、これで捕まえるんだよ」

桃子「あの二匹を捕まえ……る…………?」

<タン、タン、タタタンッ、タン♪


『あっ! やせいのニャンクロとニャンシロがあらわれた!』



ニャンクロ『……』

ニャンシロ『ナーン』



『Pはどうする?   ちかづく   ▷どうぐ 
           こえをかける にげる』



『▷どうぐ  ▶ほかくき』



『Pは ほかくき をなげた!』



『…………』



『やったー! ニャンクロとニャンシロをつかまえたぞ!』


<ターターター、タタタッタター♪

P「ゲームの影響が強すぎるって……。そもそも、捕獲器は投げるものじゃないし」

桃子「まあ、ペット用のかごみたいな形だもんね。罠みたいに使うわけ?」

P「そうだな。中にエサなんかを置いて、それに釣られた動物がこの外へ出てこられないようにするらしい」

桃子「……それって、危なく、ないの?」

P「ん? ああ、ニャンクロたちがケガしないかってことか?」

桃子「うん」

P「多分大丈夫だよ。中で暴れたら少し傷付くかもしれないけど、少なくとも怪我をさせたりするための仕掛けはない」

桃子「……急に知らない所に閉じ込められて、ストレスにならないのかな」

P「それは、なぁ。他にいい考えも思いつかなかったし、これがベターだとは思うんだけど……」

桃子「…………」

桃子「そ、それよりあれはどうなったの? ほら、アンケート!」

P「ああ、あれ? 結果はまだだけど、一応、ノラ猫のままでいさせることに決まるっぽいとか」

桃子「ぽいってどういうこと!?」

P「お、落ち着けよ。まだ全員分は集まってないけど、現状回答している中では『今まで通りでいい』って人が多数派……って大家さんが教えてくれたんだ」

桃子「じゃあ、ニャンクロたちはここで桃子たちと一緒に暮らせるってこと?」

P「まだ分からないけど、その見込みは高いんじゃないか?」

桃子「そうなんだ。…………よかったぁ……」

P「……」

P「……桃子は、やっぱりあの二匹に傍に居てほしかったんだな」

桃子「うん。ちゃんとした家に引き取られた方がいいのかな、とか考えてたけど……」

桃子「……でも、ここの人たちが『居てもいい』って言ってくれるなら、今、楽しく過ごせてるこの場所にもう少し長く居てもいいんじゃないかな……って」

P「うん」

桃子「それに、ほら。ニャンクロとニャンシロの二人……じゃない。二匹とも、すごく仲がいいから」

P「片方ずつ引き取られて、別れ別れになったりしないか心配だったんだな」

桃子「うん。だから、このまま二匹が一緒にいられそうでよかったなって」

P「さっきも言ったけど、まだ確定じゃないからな。これから飼い主を探して引き取ってもらうことに決まっても、わがまま言わないでちゃんと見送ってあげるんだぞ」

桃子「……うん。わかったよ、お兄ちゃん」

~数日後・P宅~



奈緒「なるほどなぁ。どーりで階段の辺りに変な動物ケージが置いてあるって思たけど、それやったんやな」カチカチカチ

桃子「うん、そうなんだー」カチャカチャッ

奈緒「ほんで、アンケートはどうなったん? 猫ちゃんたち、そのままここでノラ猫できるって決まったんか?」カカッ、カチッ

桃子「うん。里親を探そうって言う人もいたけど、ここに居着くこと自体に反対する人はいなかったってお兄ちゃんが」カチカチカチカチ

奈緒「へー。そんなら、なんで猫ちゃんたち捕まえるんやろか?」カチャカチャッ

桃子「……?」カチ...

奈緒「だって、ノラやらせるなら今まで通りほっとけばええやん。捕まえて、目印に首輪つけるってわけでもないんやろ?」

桃子「それは……」

奈緒「ん? こももちゃん、プロデューサーさんに理由聞いてへんの?」

桃子「き、聞いてるよ。……病気の検査だかなんだかで、一旦捕まえるって……」

奈緒「それって里親にあげるからと違うん? いま元気なら、すぐに動物病院連れてかんでもええやんって思うけどなぁ」

桃子「た、多分、マンションの皆を納得させるのに、必要なことなんじゃ……ないかな」

奈緒「なんか要領を得んけど、予防接種みたいなもんなんかな? 猫なんて飼ったことないし、ようわからんわ」

桃子「……こもももよく分かんないけど、お兄ちゃんが大丈夫って言ってたし大丈夫だよ。……多分」

奈緒「まあ、大人に任せた方がええんやろな。今度遊びに来るときは、その猫ちゃんたちと会えるとええなぁ♪」

桃子「そうだね。……会えると、いいね」

奈緒「それより、はよゲームの続きやろうや。私、アクション系でポーズ画面長く見てるとな~んか不安になってくるねん……」

桃子「う、うん。わかった……」カチッ

~その日の夜~



桃子『うん……? ここ、どこだろ……』



……ン……



桃子『? なんか聞こえ……』



……チャン…… ……モモコチャン……



桃子『誰!? いったい、ここは……』

シロネコ『ニャー』

桃子『え、ニャンシロ? ニャンクロも……どうしてここに』

クロネコ『ニャニャー』

シロネコ『ニャニャニャー』

桃子『……二匹の鳴き声が、いつもと違う……? もしかして、さっき桃子を呼んでいたのもあなたたちなの?』

シロネコ『ナン』

桃子『そ、そうだったんだ。桃子に、なにか言いたいことがあるんだよね?』

クロネコ『ニャーニャニャニャ』

桃子『……へ?』

シロネコ『ニャニャニャン。ニャニャ、ナー』

クロネコ『ニャン、ニャニャニャン』

桃子『そ、そんな……そんなことないよ!』



桃子『お兄ちゃんが、桃子に嘘ついてるなんてありえないんだから!』

桃子「はっ!? ……あぁ、夢だったんだね……」

桃子「はぁ~。よく考えたら、響さんじゃないんだし猫の声が桃子にわかるわけない、か」

桃子「……でも」チラッ



P「アイ……ラチナスタ……修羅……響…………zzz」



桃子「お兄ちゃんが、そんなこと。……桃子に、嘘ついてるなんて」

桃子「あの二匹が、……やっぱりここからいなくなっちゃう、だなんて…………」

今回の投下はここまでです。猫に関わる話が大分長くなってしまいましたが、明日また投下する分でこのお話は終わらせるつもりです

何度も何度も遅刻して申し訳ありません。正直に申しますと、単純に>1 が怠けていたので遅くなりました。パワプロめっちゃ面白かったです



気付けば、このスレが立ってからもう一年が経っていました。はじめは一発ネタで建てたつもりのこのSSがこんなに長くなってしまうとは思いませんでした

うまるちゃんのアニメもとっくに終わってその後も色々とありましたが、このスレ自体が>1 にとっても思い出深いものになりそうです。細々とですが、頑張って続けて綺麗な形で結べればいいなと思います

読者の皆さま、支援や保守をくださる方々の皆さま、今まで本当にありがとうございました。これからも、のんびりお楽しみいただけるととても嬉しいです

>1 です。昨日の予告通り猫の話を完結分まで投下していきます

桃子「……はぁ」

桃子(あの夢見てから、ネコさんたちのことが気になってダメダメだなぁ……。今日のレッスンでも、トレーナーさんに怒られちゃったし)

桃子「切り替えなきゃいけないって、わかってるんだけどな」

のり子「おーい桃子、レッスン終わったのに何してるの?」

桃子「あ、のり子さん。ちょっと……ね」

のり子「もしかして、なにか悩みごと? 茜にしたみたいにさ、あたしにも相談してみる?」

桃子「……のり子さん、どうしてそのことを知ってるの?」

のり子「ここ2、3日の桃子、傍目に見てても少~し変に思えてさ。みんなにそれとなく訊いて回ったら、亜利沙が教えてくれたんだ」

桃子(……なんで亜利沙さんが知ってるんだろう。これからは、もっと気を付けないとダメかな……)

のり子「ま、なんだ。思い切って誰かに話を聞いてもらえば、気分も楽になるよ! きっと!」

桃子「ありがと、のり子さん。でも大丈夫だから」

のり子「それならいいんだけど、ね」

桃子「うん」

のり子「……なのに浮かない顔してるってことは、オーディションか何かの結果待ちってことなのかな」

桃子「……ちょっとだけ近いかな。待ってる、っていうのはそうかもしれないね」

のり子「……」

桃子「……」

のり子「よし、桃子! じっとしててもしょうがないし外でも出よっか!」

桃子「!? ど、どうしてそうなるの?」

のり子「座って待ってるだけなんて、つまんないじゃん! ツーリングでもご飯でも何でも付き合うから、あたしと一緒に気晴らししようよ。ね?」

桃子「う……」

桃子(正直めんどくさいかも……。けど、考えてるだけじゃなんにもならなさそうだし、こういう風に誘ってくれるのも……嬉しいし)

桃子「……」

桃子「いいよ、のり子さん。なにしよっか?」

のり子「そーだねー……」

昴「いくぜ、新球縦スライダー!」シュッ

のり子「なんのぉっ!」ポカッ!

桃子「わっとっと……」パシッ

昴「おっけっ。ナイキャッチ、桃子!」

桃子「う、うん。昴さん、どんどん打たせていいよ!」

のり子「くっそー。捉えたと思ったのにな~」

麗花「へーきへーき♪ のり子ちゃんの分まで、私がすごいの打っちゃうんだからっ」

昴「さて、麗花の初打席か。海美に比べてリーチあるし、芯食ったら飛びそうだな……」

桃子「……っ」ゴクッ

桃子「……って、なんであの流れで野球になるのさ!?」

昴「まーまーいいじゃんか。球は見えにくいけど、ナイターってのも面白いだろ?」

のり子「そうそう! ひと汗かいたら、ファミレスでも寄って美味しいもん食べて帰ろうよ!」

桃子「や、今日はレッスンで汗かいてるし……」

麗花「桃子ちゃん、よそ見はダメだよ! 今から桃子ちゃんの所に、ぼ~ん! って打球が行くかもしれないよー?」

桃子「麗花さんはいつの間に参加してたの……?」

昴「遅くなると怒られるし、さくさく行こうぜ! いくぞ、麗花!」

麗花「ばっちこーい!」

桃子「それは守備側のかけ声だし……」



桃子(はあ。ニャンクロたちのことを考える暇もないけど、今はこれでいいのかな……?)

桃子「た、ただいま……。お兄ちゃん、遅くなって、ごめん…………」ヨロヨロ

P「おお、おかえり桃子。のり子たちとなに食べてきたんだ?」

桃子「ハンバーグとか……かな。お風呂、準備できてる?」

P「大分疲れたみたいだな。今、お湯ためてくるよ」

桃子「ん」ボフッ

P「……そのまま寝るなよ? 着替えも歯磨きも済ませてないんだからな?」

桃子「んー……」

桃子「ふぅ、さっぱりした。疲れた体にお風呂は効くね~」

P「ああ、そういえば桃子に言っておこうと思ったことがあって……」

桃子「なに? 今言わなきゃダメなこと?」

P「言わなきゃダメってことはないけど、一応耳に入れとこうかと」

桃子「早く言いなよ。桃子、今日はもう寝……」



P「ニャンクロとニャンシロ、大家さんが明日獣医さんに連れて行ってくれるって」



桃子「……!」

桃子「どっ、どっ……」

P「ん?」

桃子「……っ、ニャンクロとニャンシロはどうなるの? もう、二匹とも捕まっちゃったの?」

P「うん。ニャンシロを先に確保した後、少ししたら同じ場所に置いた捕獲器にニャンクロも捕まったんだって」

桃子「そ、そうなんだ。……よ、よっぽど、ニャンシロたちにはいい場所だったのかな?」

P「かもしれないけど、ニャンクロの方はニャンシロの気配を辿ってる内に捕まったんじゃないかな? あの二匹は仲も良かったし、ありえなくはないと思うんだ」

桃子「…………」

P「? どうした、固まって……」

桃子「……お兄ちゃん、病気を検査するからニャンクロたちを捕まえるんだって言ってたよね」

P「うん」

桃子「本当にそれだけ? 病気の検査だけだよね?」

P「だけってことはないけど……んー、なんというか」

桃子「! お兄ちゃん、どういうことなの? 桃子に、嘘ついたの?」

P「つくわけないだろ! ただ、桃子に説明するタイミングが……」

桃子「……やっぱり」







桃子「お兄ちゃん、桃子に隠しごとしてたんだ……」

P「……」

桃子「ねえ、正直に話してくれる?」

P「な、何をだ?」

桃子「ニャンシロたちを捕まえたわけ。病気の検査以外に、何かするんでしょ?」

P「それは……ほら、病気が見つかったりしたら、治療もしなきゃいけないわけだろ?」

桃子「それ嘘でしょ? そんな当たり前のこと、言うか言わないかで悩む必要も説明するタイミングを見計らう必要もないもの」

P「む……」

桃子「お願い、お兄ちゃん。本当のことを言ってよ。桃子だって、そんなに子供じゃないんだからね?」

P「……桃子……」

桃子「お兄ちゃん。桃子、ごまかさないで本当のことを言ってほしいの。ニャンクロたち、病気の検査以外にもきっと何かをされるんだよね?」

P「……なるほど。ここまで真剣な態度で訊かれたら、な……」

桃子「……お兄ちゃんが、そう言うってことは」

P「ああ。はっきり言って、桃子がそこまで一生懸命ニャンクロたちのことを考えてるとは思わなかった。だから今まで黙ってたんだ」

桃子「……」

P「でも、それは俺の考え違いだったみたいだな。生き物の命にかかわる話だし、初めからちゃんと説明するべきだったよ」

桃子「それなら……」

P「ああ。今から、桃子にもきちんと説明する。だから、桃子もしっかり聞いてくれよ」

桃子「! うん、桃子、ちゃんと聞くよ」

P「その前に、桃子にいくつか確認したいことがあるんだが……大丈夫か?」

桃子「……大丈夫」





桃子(もう、桃子なりに覚悟は決めてるから。お兄ちゃんの言うことを、しっかり受け止めなくっちゃ……!)

P「桃子さ……去勢って知ってる?」

桃子「きょせ……? なにそれ」

P「避妊は? 保健の授業とかで習ったことはないか?」

桃子「えっと、赤ちゃんができないようにすることでしょ? さっきまでの話と、どんな関係があるわけ?」

P「わかった。いま、一から説明するからよく聞けよ。いいな?」

桃子「う、うん」

P「まず、動物には発情期とか繁殖期とか言われる時期があってだな……」

桃子「…………ぇっ」

~説明終了~



桃子「お兄ちゃんの変態! バカ! バカバカバカ!!」

P「な、なんだって!? お前、自分から訊いてきたのになんてこと言うんだ!」

桃子「だって、その……生殖とか性器とかって、え、エッチとかおちんち……もう、言わせないでよバカ! 変態! へんたーい!」

P「しかたないだろ! なら他にどう説明しろっていうんだ!」

桃子「そこは、もっとこう……二匹を大人しくさせて、病気にもかかりにくいようにする便利な手術をするとか言ってさ……」

P「曖昧な言い方を嫌ったのは桃子の方だろ? 本当のことを言え、正直に言えってしつこく迫ってきて」

桃子「うるさいうるさい、お兄ちゃんのバカ! スケベ! 変態!」

P「わかった、俺が悪かったから大声で言うのはやめてくれ! 近所に誤解される!」

桃子「バカ! 変態!! へーんーーたーーーい!!!」

~数日後~



クロネコ「ナァン」

桃子「あっ、ニャンクロ!」

シロネコ「……」

桃子「ニャンシロも! よしよし、こっちにおいでー……」



桃子(結局、二匹とも大家さんに連れていかれた先の動物病院で手術を受けたんだとか。それでも、今まで通り仲はいいみたい)

桃子(赤ちゃんが作れないのは残念だけど……。これからも、一緒に、平穏に過ごせるのなら今はこれで十分、なのかな)

桃子(ただ、一つだけ困ったことが……)

P「ニャンシロ! ほれ、ねこじゃらしだぞー」

シロネコ「……」サッ

P「あっ、ニャンクロ。ねこじゃらし……」

クロネコ「フーッ」

P「ぅ……」



桃子「…………」

桃子「……あれから、大家さんやお兄ちゃんみたいな大人の男の人は避けられるようになっちゃったね」

P「みたいだな」

桃子「……」

P「……」

桃子「……」

P「……このくらいでは泣かないぞ」

桃子「……がんばってね」

P「……うん」

というわけで、>198 から続いていた猫話はこれにて終わりです

次回の更新は早めにできるように頑張ります。読んでくださった方、ありがとうございました

>1です。投下します

P「~♪」

社長「おぉ、キミ。なにやら調子がよさそうじゃないかね?」

P「しゃ、社長!? すみません、つい……」

社長「いやいや、構わんとも。嬉しそうにしているのは、仕事のことかね? それともプライベートのことかい?」

P「両方……ですかね。仕事のほうは、『MAJIDE』でうちの年少組が特集してもらえることになりまして! これから書類を作って、社長にも改めて連絡しようと思ってます」

社長「うむうむ。そういえば、天海くんたちも名を上げてきた頃にあの雑誌の取材を受けたものだったねぇ」

社長「それで、プライベートの方は? いい人でも見つけられたのかね?」

P「そ、そんなことありませんよ。……まあ、これで桃子が気をよくしてくれれば家でも過ごしやすいかな……と」

社長「はっはっは! 確かに、あの子は少々気難しいからね。私生活でもそれは変わらないのかな?」

P「そうですね。桃子を預かり始めたときから比べると、大分遠慮もなくなってきて複雑な気分ですよ」

社長「ふむ……」

社長「……周防君が来てから、もうずいぶん経ったろう」

P「ええ。三か月とちょっと、ですかね」

社長「今さら『申し訳ない』などとは言わないが……唐突なことだったのに、彼女を預かってくれたキミにはとても感謝しているんだよ」

P「ありがとうございます。まあ、自分で言ったことですから」

社長「正直な話、私は必ずしもキミが周防君を預かる必要があるとは思っていないんだよ。今も、昔もね」

P「……」

社長「ただ、結果として周防くんもキミも今まで通り、むしろそれ以上に仕事に励んでくれている。心なしか笑顔が増えたようにも思えるし、今の君たち二人を見ていると私は非常~~~に安心するのだよ」

P「はあ。そこまで言われると、ちょっと照れますね」

社長「予定の日まではもう少しなんだろう? キミが周防君を預かってくれてよかったのだと思えるよう、その日まで仲良く過ごしてくれたら私も嬉しいよ」

P「はい。頑張ります!」

桃子「ほらほらお兄ちゃん頑張って! あと一息なんだから踏ん張ってよね!」カチカチカチ

P「んなこと言われても……くっ」カチカチッ

桃子「そっちじゃないって! 敵の視線を追えば次どこに攻撃来るかわかるでしょ!?」

P「それはわかるけどカメラの視点が上手く合わ……あっ、やべ」カチ...

桃子「あー!! もう、あとは桃子がやるからお兄ちゃんは拠点から動かないでじっとしてて! あと一回死んだらミッション失敗になるから!」

P「ぐぐぐ。ごめん、桃子」

桃子「反省してよね。まだ20代なのに、こんなに下手だなんて……はぁ」

P「そう怒らないでくれよ。大して遊ぶ時間もない中で、俺なりに一生懸命やってるんだからさ」

桃子「結果を出さないと認められないのがアイドルやプロデューサーでしょ。ゲームの世界も一緒だよ」

P「ぐむ。悔しいが、それはごもっともだ……」

桃子「まったくもー。お兄ちゃんがそれなりのお仕事とれたって言うから、ご褒美に桃子が遊んであげたのに」

P(ご褒美というかなんというか。桃子と遊べたのは嬉しいんだが)

桃子「あっ、もうすぐ9時だからリミラジ聴かなきゃ。この前のライブ振り返り特番は楽しかったな~」

P「おい、桃子。パソコンもいいけどゲーム機とテレビの電源消してからにしなさい」

桃子「やだー。お兄ちゃんも遊んでたんだしお兄ちゃんが消せばいいじゃん」

P「……あのな」

桃子「おぉーっといけないいけない! スタミナ溢れてるしドレステ回さないと!」

桃子「あー大変だなーゲームとか片づけてる暇ないなー誰かやってくれないかなー」チラッ

P「……っ」

桃子「だーれーかーやーってくーれーなーいーかーなーーー?」

P「……はぁ……」



P(本当、前に比べて遠慮がなくなってきて嬉しいやら悲しいやら……だな)

~数時間後~



P「桃子、そろそろ寝る時間だぞ。ほら、パソコンのルーターも切って」

桃子「……ねーお兄ちゃん、今度の土日どっちかで時間空いてない?」

P「え? 日曜なら空いてるけど」

桃子「じゃあさじゃあさ、その日一緒に映画見に行こうよ。桃子、見たい映画があるの」

P「桃子が? 事務所の誰かが出演してるやつはやってないし……アニメか何かだろ?」

桃子「いいじゃん別に。お兄ちゃん、一緒に見に行こうよ。ね?」

P「……」



P(そういえば、桃子から外出に誘われるのってかなり珍しいような。仕事の時以外は依然としてひきこもりがちだし、これはチャンスかもしれん)



P「わかった、見に行こう。とりあえず今日はもう寝なさい」

桃子「うん、わかった。席だけ予約するからもう少し待ってて」カタカタカタ

P「……パソコンの電源消しとけよ。おやすみ……」

桃子「ん。おやすー」

P「いや~、桃子と外出なんて久しぶりだな! 日曜の朝から出歩くのも結構いいもんだろ?」

桃子「お兄ちゃん、うるさい……。今、歩きながら寝てるんだから黙ってて……」

P「なんだそりゃ……」

P(こいつ、さては昨日ずっとパソコンいじってたな)

桃子「……お兄ちゃ、おんぶして……」

P「赤ちゃんじゃないんだからしっかりしなさい。実際、そんな状態で歩いてても危ないし手つなぐか?」

桃子「……いい。恥ずかしい、もん」

P「だろ? それなら、映画館に着くまでしっかり目を開けて……」

桃子「…………」

P「……」

桃子「……おんぶ……」

P「……あともう少しだから、がんばって歩こうよ。着いたらアイス買ってやるから」

桃子「ふひぃ~……。お兄ちゃんの鬼ぃ~!」

桃子「ふー。映画館の中は涼しくていいね、うん」

P「そうだなぁ。アイスはどうする?」

桃子「これから飲み物とか買うし、いいよ。発券もあるし、桃子がついでにお兄ちゃんの分も買ってきてあげる」

P「そうか? ……じゃあ、しょうゆバターのポップコーンとコーラをお願いしようかな。サイズは両方Lで」

桃子「わかった。行ってくるね」タッ

P「おう!」



P(家に来てから、ずいぶん性格が変わった気もしたけれど……桃子の根っこはやっぱり変わらないんだな)

P(ませてて、自信家で、素直じゃないけど、他人に優しくて……。まあ、干物みたいに思うこともあったけど)

P(とにかく、桃子が外で元気そうにしてくれてて何よりだ。なんとなく悲しい喜び方な気もするけど、気のせいだと思おう!)

桃子「お兄ちゃ~ん。ちょ、ちょっとこれ持って~」ヨタヨタ

P「飲み物以外も買ってきたのか。その袋に入ってるのは……映画のグッズかな?」

桃子「パンフレット買ってきたの。この映画、テレビシリーズの派生でもあるしお兄ちゃんには予習をしたうえで見てもらわないとね!」

P「おお、それはありがとな」

桃子「しかしお兄ちゃん、映画を見るときにコーラって……」

P「?」

桃子「やっぱり桃子のプロデューサーなだけはあるね! いい趣味してるじゃん」

P「いや、桃子だけじゃビール買えないと思って……。コーラでも良かったのは本当だけど」

桃子「……」

P「?」

桃子「こういうときは、素直に喜んどけばいいのに。だからお兄ちゃんは……はぁ」

P「う、うるさいな!」

P「あ、そうだ。桃子、これでチケット代の分もお金足りるかな?」

桃子「ん、大丈夫。こういうのを催促する前にきちんと出せるお兄ちゃんは、一応合格点だね」

P「子供に払わせるわけにはいかないよ。桃子は自分でお金を稼げてるけど、それはそれとしてな」

桃子「そういうことは口に出さない方がポイント高いよ。さりげなくお金を出すのがカッコいいんだから」

P「手厳しいなぁ」

桃子「それよりパンフレット読んだ? ちゃんと読まないと、せっかくの映画も楽しめないよ?」

P「読むさ。俺も子供の頃はポクモンのアニメ見てたし、きっと映画も楽しめる……はず」

桃子「しっかりしてよね。アニメ鑑賞は遊びじゃないんだから」

P(意識高いなぁ……)

桃子「でね、今やってるシリーズは作画が贅沢になってるんだけど評判がいいだけに次シリーズはネットで物議を……」

P「へー」

P(桃子のやつ、この映画のプロデュースに熱心だなぁ。俺にそこまで楽しんでほしいってことは、相当気に入ってるアニメなのかな)

P「桃子って、そんなにポクモン好きだったっけ? ゲームとかをやりこんだのも、俺の家に来てからなんだろ?」

桃子「……前から気になってたけど、手を出す機会がなくて。お仕事で忙しかったのもだけど、ゲームとかねだりにくかったし……」

桃子「あっ、桃子のイメージ的にって意味ね? お母さんは優しくしてくれてたから」

P「うん。わかってる」

桃子「それに、今はネットがあれば色んなサイトで昔のアニメも見られるからね。時間が空いたときにもちょこちょこ見ていけるし」

P「……違法動画じゃないだろうな」

桃子「ちゃんとした配信サイトで見てます。それより、パンフ読んでる?」

P「うん、最後まで読み終わったよ。……おっ?」



(フッ)



P(場内が暗くなったか。映画館のこういう時間は雰囲気あって好きだなぁ)

桃子「……」ゴソゴソ

P(暗くて見えづらいけど、なにしてるんだろう)



『みんな、今日は映画を見に来てくれてありがとう。これから、来場特典の特別なゲロコウガのプレゼントを……』



桃子「……」カチカチ

P(あ、特別なポクモンを配ってるのか。子供向けの映画はこういうのあるもんな)

P(それにしても……)

桃子「……」カチカチポチッ、タッ

P(スマホと根っこは変わらないのに、外でもゲームしてる子供を見ると切なくなるのは何故なんだろうだなぁ)

~上映終了後~



P「う~。背中いた~」

桃子「お兄ちゃん大丈夫? 座ってるだけでそれって、事務仕事のやりすぎで体悪くしてるんじゃない?」

P「俺は昔からこうだからいいの。……で、どうする?」

桃子「どうする、って?」

P「いや、もう昼になってるからさ。昼ごはん、帰って食べるか、どこか外のお店に寄るのか」

桃子「あっ、そっか! ……じゃあ、桃子、どこかでお昼ごはん食べたいな。お兄ちゃんと一緒に!」

P「了解。それじゃ、適当にぶらぶらしながらよさそうな店を探そうか」

桃子「うん!」

桃子「お兄ちゃん、あそことかどう? 看板のランチメニューがおいしそうだよ」

P「うん、いいんじゃないか?」

桃子「よし、決定ね! それじゃ早速……」



アノコカワイイネー、アイドルミターイ

テレビデアアイウコミルヨネー

テイウカ、アノコガアイドルジャナイ? タシカ、スオウ…



P(……無視して店に入ろう、桃子)ヒソヒソ

桃子(ん、わかってる)ヒソ

桃子「お店に入ればひと安心かな。お兄ちゃん、なに食べる?」

P「俺は、ランチセットにビールかな。桃子は?」

桃子「そうだね~……。……こういうお店って、メニューは豊富だけどパターンが似ていて実際のバリエーションは微妙だから迷っちゃうな」

P「……そういうことは店の中で言わないように」

桃子「確かに、行儀悪かったね。周りに聞こえなかったかな……」

P「反省しろよ本当に。誰が見てるかわからないんだしさ」

桃子「わかってるってば。さっきみたいに、余計なこと言ってくる人たちいっぱいいるもんね」

桃子「……せっかく、お兄ちゃんと二人で出かけてるのにな」

P「!」

P(……聞こえなかったふりをしておこう、かな。うん。そうしておこう。うん)

桃子(……お兄ちゃん、いきなりニヤニヤしだして気持ち悪い……)

P「そ、それより注文は?」

桃子「今決めた。桃子もランチセットで、ドリンクはオレンジジュース、デザートはジャンボバナナパフェで!」

P「さっき映画館でポップコーンとか食べたばかりだろ。パフェは普通サイズのにした方が……」

桃子「いいの。もし駄目でも、お兄ちゃんに分けてあげられるし」

P「そっか。……じゃあ桃子、注文のボタン押して」

桃子「なんで? お兄ちゃんが押せばいいじゃん」

P「……ああ、うん。そうだな……」ポチッ

桃子「……」

P「……」

桃子「ね、お兄ちゃん」

P「うん?」

桃子「その……映画どうだった?」

P「ん、よかったよ。桃子が言ってた……作画だっけ。画もぐいぐい動いて凄かった」

桃子「……うん、うん。他には?」

P「他には、って言われても。……ストーリーは、ちょっときつかったかなぁ。ポクモンたちが悪役にひどいことされてるのを見てると、感情移入しちゃって辛い気持ちになっちゃって」

桃子「うーん、確かにそういう面はあったね。他には?」

P「いや、桃子こそどうだったんだよ。俺ばかり言うのも変じゃないか」

桃子「いいから! よかったところ、作画以外にも言ってよ!」

P「お、おう」

P「そうだな、主役のポクモンたちはいいキャラクターしてたかな。二匹とも優しいし、動きも面白かったから見ていて楽しかったよ」

桃子「なるほどねー。桃子的には、マジアナの動きはあざといと思ったけど」

P「あざといって……。映画中に『かわいい』って言ってる声もちらほらあったし、子供向けならあんなものだろう」

桃子「ま、可愛かったのは認めるけどね」

P「もうちょっと素直に見ろよ……おっ」



オマタセシマシタ、ゴチュウモンノビールトオレンジジュースデゴザイマス



P「ありがとうございます。桃子、ジュース来たぞ」

桃子「いいから続けようよ。映画の話」

P「……わかったよ。えっと、どこまで話したんだっけ」

桃子「お兄ちゃんが、主役の二匹の動きが楽しかったって言ってたところ!」

P(その後は、注文の料理が届いてからも桃子と映画に関する色々な話をした。熱心に話す桃子の表情を見ていると、子供の頃の俺を思い出すような気分になる)

桃子「でね、あのポクモンの100%モードは新作で操作することができて……」

P(あの頃の俺は、一緒に映画を見に行った親が上映中に寝てると怒ったものだっけ。『面白かった』って言ってもらえたら、本当に嬉しく思ったなぁ)

桃子「ストーリーも、単純なカンゼンチョーアクじゃなくてよかったよね。ボムケニオンと人間の関係が……」

P(今までの桃子は、こんな風に大人相手にアニメ映画の感想を熱弁したことなんてあったのかなぁ。小さい頃には、そんなこともあったのかもな)

桃子「で、思うに……お兄ちゃん、聞いてる? 桃子の言うことをちゃんと聞くのもプロデューサーの仕事なんだからね?」

P「うん。ちゃんと聞いてるよ」

桃子「本当に?」

P「聞いてるさ。ちゃんと、全部な」

桃子「……ん。それなら、いいの」

P「……桃子。また時間ができたら、二人で映画見に行くか?」

桃子「! ……お、お兄ちゃんが行きたいって言うならいいよ? どうしても、って言うなら!」

P「ん? 今日は桃子の方から俺を誘ったんじゃないか」

桃子「それはいいの。桃子の面倒を見るのがプロデューサーの役目だから、桃子が誘うのについてくるのは当たり前だよ」

P「じゃあ、お互い見たいものがあったら一緒に見に行くってことで。な」

桃子「……うん!」

P「よし、決まりだ!」



『キミが周防君を預かってくれてよかったのだと思えるよう、その日まで仲良く過ごしてくれたら……』



P(俺が甘やかしたことで、今みたいな桃子の笑顔を見られるようになったのなら……それは良いこと、なのかな……)

~翌日~



桃子「ねーお兄ちゃーん、ジャンピース見に行こうよ~。君の縄。も見たい~」

P「悪いけど、今週は予定が詰まってるから無理だよ。土日も朝から早いし」

桃子「え~? 桃子だってアイドルがんばってるんだから、お兄ちゃんもがんばって時間作ってよ~」

P「努力はする。でも、これからすぐっていうのは厳しいって言わざるを得ないというか……」

桃子「はぁ~あ。日頃は桃子を引きこもりーとかなんとか言うくせに、桃子が外出したいって言うとこれかぁ」

P「……」

桃子「ま、お兄ちゃんも忙しいししょうがないよね。ここは許してあげるから、反省してよ?」

P「……あー、うん。……反省する」

桃子「誠意っていうのは言葉じゃないんだよ。お兄ちゃんには、今度イシャリョーとしてポテイトを一週間分買ってきてほしいなぁ」

P「……」

桃子「よし、今日は久々にレートでもやろっかな。ゲームのお供にコーラ、コーラ♪」トテトテトテ

P「……」



P(……こんな桃子の姿を見るくらいなら、甘やかさずにちゃんと管理するべきだったかなあ。…………はぁ)

今回の投下はこれでおしまいです。読んでくださった方、ありがとうございました

君の縄か、15歳以下が見ていい奴だろうか.......
一旦乙です

>>235
野々原茜(16) Da
http://i.imgur.com/MCMoci8.jpg
http://i.imgur.com/dpRLfWW.jpg

>>258
北上麗花(20) Da
http://i.imgur.com/dstb6yE.jpg
http://i.imgur.com/3hddlqv.jpg

毎度毎度お待たせして申し訳ありません 今日の昼から夕方にかけて書き溜めた分投下します

P(俺が桃子を預かってからもうすぐ四か月。暦も秋に近づいて、夏休みも終わりになるというのに……)

P「桃子さぁ……。映画見に行ったあの日から、仕事以外で一歩も外に出てないんじゃないか……?」

桃子「んー。そーだねー」ポチポチ

P「年少組の仕事は比較的少なめにしてるんだし、もう半月経つんだから、夏休みの最後くらい外に遊びに行くとかさ……」

桃子「だるいからヤだ」ゴロゴロ

P「くっ。相変わらず手ごわいやつ……」

P(干物と化した今の桃子にとって、夏休みというぬるま湯はこれ以上なく甘い蜜のようなもの……! 覚悟してたが、保護者としてはやりきれないな)

P(しかし、こんな調子で明日からの学校は大丈夫なのだろうか……)

P「……そういやお前、宿題はちゃんと終わらせたよな?」

桃子「へ?」ポチポチ

P「休みは今日で終わりだろ? 今のうちに、持ち物もいっしょに確認した方がいいと思うぞ」

桃子「お兄ちゃんは心配性だねえ。そんなのとっくに済んでるから大丈夫だよ」

P「……おかしいな。俺の目には、空っぽのままほったかされたランドセルが見えるんだが……」

桃子「気のせいだよ、気のせい。朝になったらちゃんと中身入ってるから」ポチポチ

P「そっか。じゃあ、あそこで散らかってる教科書やワークのたぐいも俺の気のせいか」

桃子「うん、幻覚幻覚」

P「なぁんだ。あれもこれも、俺の見た幻だったのか……」

P「ってんなわけあるかー! 夕飯までに、ちゃんと片づけて明日の用意もしておきなさい!」

桃子「もーお兄ちゃんさっきからうるさい! ホームドラマの小姑じゃないんだから静かにしてよ!」

P「だれが小姑だ、だれが。やらなかったら後で困るのは桃子だぞ」

桃子「しょうがないわね。そんなに片づけたいなら、お兄ちゃんにその役目は譲るよ……」

P「俺がやっても意味がないだろ。片づけしないと、夕飯作らないぞ」

桃子「……ひょ、ヒョーロー攻めとは卑怯なり! 見損なったぞー!!」

P「観念してさっさとやっちゃいなって。そうしたら俺も注意しないから」

桃子「はぁー。しかたないなぁ……」

桃子「ふでばこー。ノートー。習字の宿題ー。自由研究のシートー……」ゴソゴソ

P(よしよし。なんとか自分で片づけはじめてくれたか)

桃子「漢字練習帳と、それか……ら…………」ピクッ

P「?」

桃子「……うん、準備完了! これで文句ないでしょ、お兄ちゃん?」

P「なんか、いま変な間があったような」

桃子「気のせいだって。それよりお腹すいたし、ごはん! ごはん!」

P「はいはい」

P「はい、お待ちかねの夕ご飯だぞー……っと」

桃子「わ、ラーメンだー! これインスタントじゃないの?」

P「今日で夏休み終了だし、ちょっと張り切って作ったんだ。材料自体は普通の野菜やチャーシューだけどな」

桃子「へーそうなんだー。お兄ちゃん、なんだかんだ言ってなかなかやるじゃない?」

P「どういたしまして。さ、冷めないうちに早く食べよう」

桃子「うん。いただきまーす」

桃子「……フーッ、フー」

桃子「……ん、おいしい!」

P「そりゃよかった。……うん、これは我ながらいい出来だ……」

桃子「はぁ、もう夏休みも終わりかぁ……。桃子は悲しいよ……」パリパリムシャムシャ

P「そうだな。学校が始まれば今みたいに寝る前にテレビ見ながらダラダラ……ってのも少しはやりにくくなるだろ」

桃子「あと1時間足らずで9月なんて信じらんない! 最近の8月には根性が足らないよね、根性が!」

P「どうにもならない時間の流れに無茶言うなよ。まあ、今日は寝坊しないように早めに寝ような」

桃子「……わかったよ。桃子もう寝るから、お兄ちゃんも早く寝なよ」

P「もう布団敷いたら寝るよ」

桃子「……そう。それならいいのよ」

桃子「……すぅ。……すぅ」

桃子(夏休みの最後にこんなピンチが来るなんて思ってなかったけど、桃子のプライドにかけてなんとかしてみせる! そのためには……)

桃子(お兄ちゃんの動向を察知するのが大事。消灯してからけっこう経つけどどんな感じかな……)チラッ



P「…………」



桃子(布団には入ってるけど、寝ついたかどうかは微妙かな。念のため、もう少し待った方がよさそうだね)

桃子(それにしても、この感覚……。遊びのためじゃないけど、ゲームやパソコンをこっそり遊ぶのとはまた違ったスリルがあって楽しいかも……)

~3時間後~



P「……」

P「……zzz」

P「…………んん、ふがっ」

P「んん……? なんか、いま変な音したか……?」

P「……ふぁ~あ。地震で揺れたのかもしれないし、念のため確認しとくかぁ」

P「あれ、向こうの部屋電気点いてるし……。桃子が夜ふかししてるのかな」

P(だいぶ前にこんなことが、あったような、なかったような。確か、あのときは……)

P(桃子がこっそりPCやってた上に、なぜか俺に肘打ちを食らわせてきたんだっけ。とすると、今日もゲームかPCか?)



P「……桃子ー。何してるんだー?」


オニイチャン!? チョッ、ナ、ナンデモナイ!


P「なんでもないことないだろー。盗み食いでもしてるんじゃ……」

P「…………本当に何してるんだ、桃子?」

桃子「お兄ちゃんこそ、なに見てるのよ。桃子のことはいいからあっち行って寝てなって」

P「まあとにかくさ、桃子はなんで今になって算数のドリル? なんてやってるわけ?」

桃子「そ、それは、そのぉ……」

P「……もしかして、他の宿題終わらせてるのにこれだけすっかり忘れたままだったとか…………?」

桃子「…………」

P「……だからあんだけ確認しとけって言ったのに」

桃子「う、うるさいうるさい! 今日になるまで注意してこなかったお兄ちゃんも連帯責任なんだから!」

P「なに~? それはいくら何でも強引だぞ」

P「で、なんで夕方のうちにやっとかなかったんだよ」

桃子「だって……。『全部終わらせた』って言ったのに、後からお兄ちゃんの目の前でやってなかった宿題やるなんて、桃子恥ずかしいじゃん……」

P「そんなつまらないこと気にするなよ……」

桃子「むー。とりあえず、桃子はここで宿題してるからお兄ちゃんは寝てなよ。明かりもそっちに届かないようにするし」

P「……はぁ。お前ってやつは本当に……」

P(こういう負けん気は家にいても変わらないなぁ。今回は悪い方に働いてるけど、まあしかたないか)

P「まあなんだ、とりあえずパジャマの上になにか羽織れ。いくら夏でも、夜中は冷えるだろ」

桃子「お、お兄ちゃん? ……桃子のこと、怒ったり……しないの?」

P「ここまで来たら応援するしかないだろ。ほら、上着上着」

桃子「じ、自分で着られるから! ……もう」

P「ごめんごめん。それより、えーと……今2時半くらいだけど、朝までに終わりそうなのか?」

桃子「ん、それまでには間に合うよ。あと1時間か2時間くらい、かかりそうだけど……」

P「そうか。大変だなぁ」

桃子「……うん。それなりに大変、かな」

P「そうだ、コーヒーでも淹れてやろうか? 甘めに作れば桃子も飲むだろ?」

桃子「別にいいって。お兄ちゃん、集中できないから桃子のことは放っといて早く寝なよ」

P「まあまあ。夕飯で余ったおかずも温めておくから、小腹が空いたら食べると元気になるぞ」

桃子「だからそういうのが……!」

P「お前、放っておいたらコーラやお菓子で済ましちゃいそうだからなぁ」

桃子「……ソ、ソンナコトナイヨー」

P「はいはい。じゃあ台所で準備してくるからなー」

(ボボボ……カチッ)

(コポポポ……)



P(……よし、これでOKっと)

P「それじゃ桃子、がんばってな。俺はまた寝るけど、寝坊だけはしないように気をつけろよ」

桃子「う、うん。……おやすみ、お兄ちゃん」

P「おう、おやすみ」

P「……zzz」



桃子「…………」

桃子「……ありがと。お兄ちゃん」



P「……zzz」



桃子「……よしっ」

桃子(あと10ページと少し! ぜったい終わらせるんだから!)

~翌日~



桃子「ほんっとありえない!! あんなにがんばって終わらせたのに今日回収じゃなかったなんて……ほんと最悪だよ!」

P「まあまあ。どうせやらなきゃいけなかったんだし、早めに終わらせたんだと思えばさ」

桃子「そういう問題じゃないでしょ! もう、これじゃお兄ちゃんにお礼言ったのがバカみたいじゃん」

P「は? お礼ってなにが?」

桃子「あ、…………お兄ちゃんは別に気にしないでいいの!」

P「そう言うなら、気にしないでおくけどさ」

P「で、連絡のプリントは? 学期替わりでPTAとかもあるだろうし、時間が空けばお母さんの代わりに行くよ俺」

桃子「あ、でも……」

P「でも?」

桃子「……お兄ちゃんは、そういうのやらなくていいよ。もう、大丈夫だから」

P「? 言っている意味がよくわからないぞ」

桃子「……」

P「急にどうしたんだよ。言いにくいことなのか?」

桃子「……あのね、お兄ちゃん。今日帰ってくる途中で、携帯に電話かかってきたんだけど……」

P「うん」

桃子「お母さん、退院の日付決まったんだって」



P「……!」



桃子「だからその……。……お兄ちゃんはもう、桃子のお世話しなくても……いいんだよ」



P「…………そう、なのか」

桃子「…………」

P「…………そうか。お母さん、元気になってよかったな。本当に」

桃子「……うん」

P「元々、このぐらいの時期に治るって言ってたしな……。そうか、そうか……」

桃子「お兄ちゃ、」

P「ああ、細かいことは俺から連絡して聞いておくよ。伝言ありがとな、桃子」

桃子「……お兄ちゃん…………」

P(やれやれ。今まで大変だったけど、干物アイドルの世話に手を焼くのも、これでおしまいか)



P(桃子のお母さんが事故で入院して、なんやかんやで俺が引き取って、もう四か月か……)



P(……そうか。そうだよな……)



P(桃子との生活も、もうじき終わるってことなんだな…………)

今回分はこれで終わりで、あと一回か二回投下したら本編完結の予定です。前回から三か月も待たせてすみませんでした

桃子「んっしょ、んっしょ……ぇいっ」

桃子「……はあ、めんどくさいなー。お兄ちゃん片づけるの手伝ってよ」

P「ええ? 服を畳むくらい自分でやってくれよ」

桃子「ヤダー。ダルイー。オニイチャンガヤッテクレタラモモコオニイチャンノコトスキニナッチャウカモー?」

P(すっげぇ棒読み……)

桃子「…………」ジー

P「な、なんだよ」

桃子「…………じー」

P(自分で擬音出すなよ……)

桃子「あーあ。堂々と桃子の服に触れるチャンスだったのに、お兄ちゃんも欲がないんだね」

P「変なこと言うなって。大体、桃子の服を毎日洗濯してたのは誰だと思ってるんだよ」

桃子「その点桃子はエラいよね。『お父さんと一緒に私の服を洗濯しないでよ!』みたいなありがちなこと言ってお兄ちゃんを困らせなかったし」

P「いや言ったよ。一日か二日で折れたけど、確かにそんな感じのこと言って俺を困らせてた」

桃子「……うそ。言ってないもんそんなの」

P「言ったよ。ウチに来てすぐだったから忘れてるだろうけど」

桃子「言ってない、はず?」

P「自分でも不安になってるじゃないか……。それはそれとして、早く片付けしろって」

桃子「はーい。……ほんと、ケチというか器が小さいというか……そんなだからモテないんだよ」ブツブツ

P(こいつにだけは『器が小さい』と言われたくない。散々ワガママしてきたくせに)

桃子「かたづけ終わった! これで押入れも大分スッキリしたね!」

P「ああ。パジャマや例のハムスター(?)モチーフのフードも含めると結構量があるな」

桃子「センスもだけど、女の子は服の種類が大事だもの!」

P「どうする? 家に持っていくときは俺が手伝おうか?」

桃子「あー……いいよ別に。明日からちょっとずつ、お母さんと一緒に持って帰るから」

P「そうか。うん、わかった」

P(あれから元の家に戻る日付も決まって、桃子は文句を言いつつも着々と「帰宅」の準備を進めている)

P(ゲームや漫画なんかはちょっとしか持っていかないみたいだけど……片付けてくれる、よな?)



桃子「お兄ちゃん、なにぼけっとしてるの」

P「へ? ま、まあ考え事というか心配というか……」

桃子「そんなこと言っちゃってー。『桃子が帰るなんてさびしいなぁ』って素直に言えばいいのに」ニヤニヤ

P「はぁ? そ、そんなこと思わないって」

P「100%ないとは言わないけどさ……。とにかく、また桃子がお母さんと暮らせるようになったのがよかったってのが大部分だよ」

桃子「……そう」

桃子「桃子はさびしいけどね」

P「……!」

桃子「だって、今までみたいにゲームや漫画できなくなるし」

P「」ガクッ

桃子「ふふ、さびしいのは本当だよ? そんな桃子をなぐさめるために、お兄ちゃんはどんな夕ご飯を作ってくれるのかな?」

P「……今日は普通のチャーハンにするつもりだけど」

桃子「もう、これなんだから。お兄ちゃんのケチ!」

P(相変わらず変わり身の早いやつ……)

~数時間後~



桃子「……すー、すー」

P「あれ、もう寝てる。片付けで疲れたのかな」

P(しかし、元の家に帰るんだからパソコンやらなんやらで夜更かししない生活習慣に戻るのも大事だな。そのへん、桃子のお母さんには悪いことをした……)

P「色々あった、よな。桃子がここに来てから本当に、色々あった」

P「……社長から話を聞いたときは、こんなことになるなんて思ってもみなかったけど」

桃子「すぅー……」

P(こうしておとなしく寝てる桃子の顔を見てると、『あのとき』に感じた不安が嘘みたいだよ…………)



~~~~~



P「えっ!? も、桃子が一時的に活動停止って……どういうことですか!」

社長「しっ! あくまでそういう『可能性』があるということだよ! あまり大きな声で言わないでくれたまえ」

P「す、すみません。それにしても、どうして?」

社長「実はね、つい先日、周防君の親御さんから連絡があって……」

P「はい……」

P「……なるほど。母親の入院、ですか」

社長「うむ。経過次第だが、退院まではおおよそ四か月の見込みだそうだ」

社長「当然、それまで彼女は家に帰れない。すると、一人っ子で母と二人暮らしだった周防君が『浮いて』しまうわけで、結局昨晩は独りで家にいたそうだよ」

P「一人暮らしは桃子の年齢だときついですからね……。誰か、世話をしてくれる親戚のあてはないんですか?」

社長「それなんだがね……。……これは、向こうの方も言いにくそうにしていたことなんだが」

P「な、なんですか。遠慮しないで言ってください、社長!」

社長「お母さまも、懸命にツテを当たったそうだが……」

社長「つまりその、周防君の面倒を見ると買って出たのは…………今、他県にいる彼女の祖父母くらいしかいらっしゃらないようでね」

P「…………?」

社長「その祖父母夫婦も、正直に言うと孫娘と暮らすには不安があるらしい。これは不仲というわけではなく、ご年齢やこちらでの暮らしなどを考えた上でのことなのでその点は心配いらないよ」

P「心配いらないって、そ、そこはいいんですよ。とにかく、桃子のおじい様やおばあ様は桃子の世話をする気ではいらっしゃるんですね?」

社長「うむ。ただ、周防君自身も難しい年頃なのにアイドルをする孫娘と突然一緒に暮らせというのは……客観的に見ても、少々相手に酷だと思うね」

P「つかぬことを伺いますが、他の類縁の方……。たとえば、周防さんのいとこだとかは…………」

社長「…………」

社長「……察してくれたまえ」

P「……すみませんでした」

社長「ともかく、周防君の生活が一変することによってアイドル活動へも影響が出るだろうと私は予想しているのだよ」

社長「あの子の能力は疑いようもないが、やはり精神的なものを考えるとね。あくまで選択肢の一つであるが、彼女を第一に考えれば活動休止も視野に入れるべきだと思う」

P「それは俺も賛成です。あくまでも最後の手段、ですが」

社長「で、だ。余計なこととは思いつつ、私も一つ策を考えてみたのだが……」

P「はぁ。なんでしょうか」

社長「少しお耳を拝借。……ゴニョゴニョゴニョゴニョ」

P「……えぇっ!!?」

P「も、桃子をウチのアイドル宅に居候させるなんて……無茶ですよ社長!!」

社長「そ、そうかね? 私としては意外と妙案ではないかと思ったのだが……」

P「……そうですね。桃子のこと、アイドルのこと、双方に理解があって、かつ事務所に通える範囲で世話になれる相手というのを考えるとメリットは大きいと思われます」

社長「! うむ、そうだろう!?」

P「ですが、なにぶん話が急な上にリスクも大きいですからね……」

P「たとえば、経済状況が芳しくないやよいの家や実家から出てきている環、ひなたなんかの家には行かせにくいですよね。相手の負担もありますし」

社長「うむ」

P「男兄弟のいるエレナや昴の家も……。学業を考えると、受験生になる14,15歳や17,8歳の子がいる家には居候をお願いしにくいです」

P「伊織や星梨花の家なんかは余裕あるでしょうけど、あのレベルは生活水準が大違いですからね。4か月間暮らすとなると、桃子の方に何か影響が出るかも……」

社長「うむ、確かに……」

P「結論から申し上げると、莉緒やこのみさん辺りの、成人している社会人でかつ一人暮らしのアイドルに頼むのがベストですかね」

社長「うむ。私も察しはついたが、彼女たちの家に周防君が居候するとして不安点はどこにあるのかね」

P「やはり、二人の仲が拗れたときが辛いですよ。仕事でぶつかり合うくらいなら俺も慣れてますが、同じ家、同じ空間で顔を合わせなければならないのは相当きついと思います」

P「桃子も、このみさんたちもそれで仕事を疎かにはしないでしょうが……」

P「ただ、何か月も同じ家で暮らすわけですからね。面倒見る方も見られる方もそんな経験ないでしょうし、何が起こるかも、どう問題に対処すべきかもわからないでしょう」

P「大前提として、生活圏が変わることで繊細な桃子にどんな影響が出るかという不安もありますしね。プロデューサーの俺としては、いずれにしても相当に注意して桃子のプロデュースにあたろうかと思います」

P「……その上で、なんですが。あくまで、これは俺から提示するアイディアの一つとして聞いていただきたいの、ですが」

社長「……うむ。心して聞かせてもらおう」

P「桃子を、俺が一時的に預かるというのはどうでしょうか?」

社長「うむ! おおいに結構じゃあないか」

P「ですよね。あれだけ不安点を並べておいて、なに勝手なこと言ってるんだとお思いでしょうが…………って」

P「ええ!!? しゃ、社長は俺が桃子と暮らすことに賛成なんですか!?」

社長「周防君がよし、と言えばの話だがね」

P「そりゃもちろんですけど……」

社長「君の話した通りに考えると、周防君を引き取るとしたら事務所の関係者では私、音無君、キミの三者に限定されるわけだろう?」

P「は、はい」

社長「その中でプロデューサーであるキミ自身が間近に周防君をチェックし、問題にも素早く対処できるようにと考えれば最上の選択肢じゃあないか。私は異論ないとも」

P「で、でもいいんですか!? むろん手を出す気なんてありませんけど、仮にも若い男が自分の事務所のアイドルとひとつ屋根の下で4か月も暮らすんですよ! 不安になりませんか?」

社長「ならん! ……というのは嘘になるがね」

社長「それ以上に、私はキミを信頼しているのだよ。キミが65プロの一員として働き、誠意を尽くしてくれたことを考えると今回に限ってキミを信じないというわけにはいかないさ」

P「社長……!」

P「あ、ありがとうございます! 桃子がOKしてくれたらですけど……俺、ちゃんと面倒みますので安心してください!」

社長「うむ。周防君だけでなく、親御さんたちの許可も忘れないようにね」

P「そ、そうでした。とにかく、この件についてはその方向で早速今日から当たってみます」

社長「頼むよキミ。別の選択肢として、私も長期の家政婦サービスなど調べてみるよ」

社長「しかし意外だなぁ。キミの人柄は上司として熟知しているつもりだったが、自分から言い出してくれるとは」

P「……俺は、ただ桃子のことが心配なだけですよ」



~~~~~

P(あのときはそんな風に言ったけど、今になってみるとわかるな。社長にいったあの言葉は、俺の本心じゃなかったって)

P「桃子……」



桃子「……すー、すー」



P「桃子やお母さんからOKもらって、皆からも色々なアドバイスもらって、それでもトラブル続きで、桃子を引き取るなんて言わなきゃよかったって思ったりもして」

P「やっと折り合いつけられたと思ったら、パソコンだのゲームだので堕落しちゃって……。年の離れた弟、妹や子供の面倒見てる人たちがどれだけ凄いのかっていやというほど痛感した毎日だったなぁ」

『そんなこと言っちゃってさ。『桃子が帰るなんてさびしいなぁ』って素直に言えばいいのに』

『はぁ? そ、そんなこと思わないって』

『100%ないとは言わないけどさ……』



P「……さっきは、素直に言えなかったけど」

P「やっぱりさびしいよ。この何か月、苦労しながらも楽しんできた桃子との生活が、終わるんだもの。さびしくないわけがないさ」

P「まあ、おかしかったのが元に戻るだけだから、な。本当にこの暮らし以外は、今までと何も変わらないんだが……」



桃子「…………」



P(桃子。俺は、もう少しだけ二人で一緒に暮らしていたかったよ)

P「……寝るか。明日も早いし考え事するのももったいないや」ゴソゴソ

P(これを言う機会も、もうなくなるんだな。こんなありふれた言葉、特に感慨を抱くようなことでもないはずなのに……)



P「おやすみ、桃子」



桃子「…………」

それから3日後…………。



「プロデューサーさん、長い間、娘がお手数かけて本当に申し訳ありませんでした」

P「いえいえ、桃子はまあ……一筋縄じゃいきませんでしたけど、本当にいい子でこちらこそ色々お世話になりました」

桃子(一筋縄じゃいかないってどういう意味よ!)

P(うるさい!)

「突然のことでご迷惑おかけしましたが、娘が学校もお仕事も以前と変わらずに両立できたのはプロデューサーさんのお陰です。本当に、本当にありがとうございました」

P「いえいえそんな……! その点については、桃子の方を褒めてやってください」

桃子「はいはい。タクシーも待たせてるし、社交辞令なら早く終わらせてよね」

「あらあら、桃子ったらもう……」

P「ははは。待ちくたびれてるみたいですし、そろそろ別れましょうか」

P「桃子。最後の確認になるけど荷物ちゃんと持てるよな? 本当に手伝わなくていいんだな?」

桃子「大丈夫だってば! しつこいなー、もう」

P「……あー、あれだ。生活習慣とか、仕事のこととか、趣味のこととか色々言いたいことはあるけどさ」

桃子「うん」

P「わがまま言ってお母さん困らせるんじゃないぞ! 入院明けできついんだし、お前が気遣ってやるんだからな!」

桃子「なによそれ! お母さんにも失礼だし……お兄ちゃんのバカ!」

P「おまっ……親御さんの前でそういうこと言うか!?」

P「……とにかく、元気でやれよ。元の生活に戻って、今まで通り元気でいて、それでまた、765プロの事務所で会おう」

桃子「なんかそれ、桃子がアイドルを辞めちゃうみたいな言い方だね。病気で一時的に活動停止、的な」

P「揚げ足ばかり取って……。そうそう気の利いたセリフなんて浮かばないからな」

桃子「いいのよ。お兄ちゃんは作家さんじゃなくて、桃子のプロデューサーなんだから」

P「……だな、うん。そうしたら、素直な気持ちだけ言って、いったんお別れだ」

桃子「……ん」

P「楽しかったよ桃子。大変な生活だったけど、やっぱり楽しかった」



P「桃子がいなくなると、さびしくなるよ。お母さんと元気でな」



桃子「! ……もう、お兄ちゃんってば……」



桃子「……こんなとき、ばっかり…………ズルいんだから……!」

桃子「……桃子も、楽しかったよ。いっぱいいっぱい迷惑もかけちゃったけど、お兄ちゃんと暮らすの、楽しかった!」

桃子「ヘンだね、こんなの。やっと、帰れるのに。やっとお母さん帰ってきて、元の家に戻れるのに……!」

P「……変でもいいんだよ。それが桃子の気持ちなんだから」

P「けれど、子供はやっぱり家族と一緒に暮らすべきなんだよ。こんな言い方したら、お前は怒るかもしれないけどな」

桃子「…………」

桃子「桃子、覚えてるよ。あのとき、桃子がパソコンしすぎで夜更かししてたとき、お兄ちゃんが、」

桃子「お兄ちゃんが、『今の桃子は、家族と同じだよ』って言ってくれたの、覚えてるよっ」

P「……っ!」

桃子「でも、たったいまお兄ちゃんが言ったことも桃子にはよくわかる、から。だから……!」

P「……ああ、そうだな! ちょっと離れるだけで、俺はいつでもお前のプロデューサーで、お兄ちゃんで、家族だから、な!」

桃子「……うん!」



P「でも、今はいったんお別れ……だよ。そうだろ、桃子?」

桃子「うん。……そう、だね」

P「すいません、長々と話し込んじゃって。もう終わりましたし、タクシー、出しちゃってください」

「……プロデューサーさん。何度も言わせてもらいましたが、やっぱり言わせてください」

「娘を預かってくださって、本当にありがとうございました」

P「……こちらこそ、ありがとうございました」



P「じゃあな、桃子。明日また、事務所で」

桃子「……うん。また、またね、お兄ちゃん……!」

こうして、俺と桃子の共同生活は終わりを告げた。

1年の1/3を桃子と一緒に過ごした日々は、やはりその影響も大きくて。

睡眠、食事、洗濯、掃除、余暇の過ごし方やもちろん仕事まで。

「桃子が一緒にいる」ということを基準にしていた俺の暮らしは、これから元の暮らしに戻る上で色々なところに混乱を生んでしまう原因になるのかもしれない。

それもまた、俺が桃子と二人で暮らしていたことの証なのだ……とか思ってみたりして。

P「……さて、さしあたってやるべきことといえば……」



ゲーム「おっす」

漫画「こんちゃーす」

散らばった服「置いてかれました」

菓子・コーラ「粗末にするなよ」



P「桃子が居たことを示す負の証を、かたっぱしから片付けていくことだな……!」

そうして、俺は戻っていく。

桃子のいなかった生活へ。

元の、独りでの生活へと戻っていくのだろう。

P「あっ、あいつPCの充電器置いていってる! これ、俺が届けてやらなきゃいけないのかな……」

P「てか桃子、こんなに雑誌積んでたのか! 勝手にリサイクル出したら……いや、さすがにこれで俺が怒られるのは理不尽だぞ」

P「わっ、なんだこの服? シミついてるのになんで黙ったまま置いてくんだよ!」

P「こっちの漫画もカバーがないし、この棚もゲームソフトを雑に突っ込んだまま……」

P「あー! まったくもう!!」



P「あの、干物アイドルがーーーーー!!!」






……もっとも、それにはまだまだ時間がかかりそうである…………。





(P「干物アイドル!ももこちゃん」 おしまい)

以上で本編終了となります、が、まだ構想はありますので本編の番外、あるいは続き的な話をもう一度だけ投下します

今回分の投下で『おしまい』とするのは悩んだのですが、物語としてはここで区切るのがいいかと思い、いったん終了とさせていただきました

いずれにせよ物語にひと段落がついたことは間違いないです。上述の投下はいわゆる「おまけ」的な位置としてお考えいただければ幸いです



読んでいただいた皆様、レスや画像をくださった方々、真にありがとうございました。長い間待たせた上に保守などもしていただいて、本当に感謝しかありません

次回の投下でまたお会いしましょう。それでは

桃子が元の家へ帰ってから三日が経った。

「予想通り」と言うのはなんだが、食事を多めに作ってしまったり、使う気もないはずの入浴剤を買ってしまったり……という具合に、二人暮らしの癖が抜けないままで妙に苦労した三日間だった。

桃子とは事務所で普通に会うし、それこそ独り身に戻った以外に生活が変わる要素もない。

ただ、なんとなく……。

なんとなく、日々の暮らしが退屈になっているような気がしていた。

(ガチャ)



P「ただいま、もも…………あっ」

P(またやっちまった。これで何度目かな)

P「……ただいま」



当然だけど、声に応えてくれる者は部屋にいるはずもなく。

「おはよう」、「おやすみ」、「ただいま」、「おかえり」。そんな言葉のやりとりが無くなるだけで、ここまで寂寥感が沁みてくるのは予想していないことだった。

P「だーっ! 今日疲れたしなんも作りたくないなー。ったく、帰ってくるついでに弁当買ってくりゃよかったぁー!」

P「……っはー、正直ダルい……。ちょっと前まで毎日飯作ってた俺ってすごかったんだなー…………」

P「まあ、しょうがないや。桃子預かってるんで律子やこのみさんに肩代わりしてもらってた仕事もあったし、単純な仕事量も4か月前の水準に戻ったんだもんな」

P「なんかおかしいなぁ……。仕事の量考えても、俺の負担は桃子いた頃の方があったような……気がするんだけど…………」

P(思ったより気楽になれないっていうか……。一昨日の休みとか、俺なにしてたっけ…………)

P「…………はぁ」

P「……………………」

P「……あー危な、いま寝るところだった」

P「うぅ、背筋が痛い。痛いけど、がんばって夕飯作らないと……」

P(うどんかパスタでいいかな。茹でて味付ければ完成だし)

P「桃子もいないし、野菜や副菜にこだわる必要がなくなってよかったなー! ……なわけない、か」

P(まずいな俺。はたから見たら情緒不安定一歩手前だったりして)

P「なんにせよ、飯は作らにゃあな。スーツ着たまま眠るわけにもいかないし」ムクッ

P「んー、うまかった。満足満足」

P「…………ふー……」

P(どうした、俺。桃子がいなくなった云々より先に、三日前に比べて明らかに覇気というか、活力がなくなってる……)

P「…………」

P「……よし、変わろう! 今から、仕事面では四か月前と同じように、生活面は四か月間と同じように過ごせるような人間に変わる……ぞ!」

P「まずは、あれだ。あれを始末しよう」



そうして、俺は夕飯のあとを片付けると。

未だにダイニングの一角を陣取っている、伏魔殿へと足を踏み入れた。

P(この伏魔殿【桃子用のだらだらスペース】もずいぶん小っちゃくなったな。主の帰還と同時に、大部分が解体されたから当たり前だけども)



その一角に最低限しか手を入れてこなかった理由に、「桃子の痕跡をそのままにしておきたかったから」という…………なんとも女々しい感情があったことは否定できない。

とはいえ、決別とまでは行かずともこのタイミングで自分の気持ちに整理をつけること。それが避けては通れないのはほとんど自明だった。



P「ていうか、半放置してたのは失敗だったかな。ものぐさなあいつのことだし、どんな爆弾が仕掛けられているのか……」

P「……うっ、早速出てきたぞ!」

500mlボトル×3「「「どもっす……」」」



P「あいつ、わざわざバレないように隅っこにこんなもん隠して!」

P「アリが寄ってきてないのが奇跡だよ……。ったく、なんでいちいち面倒くさがるのかなぁ」

P「隠す以前に、平気でコーラのペットボトルを転がしてたりしてたからなぁ。……そういえば、」

P「いつぞやの夜も、桃子の足元に凹んだコーラのペットボトルが転がってたっけ……」

『桃子-っ!!! 深夜に起きて勝手にインターネットやるどころか、俺に攻撃してくるとはどういうことだー!!』

『違うんだってばー! ていうか桃子、ネットなんてやってないし!』

『嘘つけ! 正直に言いなさーい!』

『むぅぅぅ……やってないやってないやってないー!! やってないったらやってないもーーーーーーーん!!』

『ばっ……布団や枕を叩くのはよせ! 埃が舞うだろ!』





P「……何度思い返しても、理不尽な出来事だった……」

P「うーん。大物は片付けたはずだったのに、まだあんなのが残ってるとは想定外だったぞ」

P「ま、今回の本丸はこの棚だな……。ゲームやら漫画やらでごちゃごちゃしてるし、ゲームとCDは別のラックに詰めて漫画本も整理してあげなきゃならないか」

P「しかし、4か月間でどんだけ買ってたんだろうなぁ。俺も大分援助しちゃったけど、漫画だけでも100冊くらい……おっ?」

P「これ……学校の通信簿じゃないか! すっかり頭から抜け落ちてたけど、これもいつか親御さんに返した方がいいのかな」

P「…………」ペラッ



「保護者様へ:特殊な事情で出席日数が平均に満たないことは事実ですが、単位認定には支障ありませんのでご安心ください」

「学校では非常に立派です。大人びてるため、たまに他の子と衝突することもありますが、桃子ちゃんは自分の考えを持った上でそうしているのが伝わってきますし、クラスの皆もそれを理解しているのか桃子ちゃんを頼りにしているようです」

「ペーパーテストはもちろん、授業態度を見ても成績は優秀です。上記の事情故に評定は下方修正せざるを得ませんが、保護者様におきましてはどうかご理解を……」



P「……こんなに褒められてたっけ?」

『起きろーーーーーーー!!!』

『ふわーーーーっ!!?』





P「家であんなにだらだらしてたのに……。本当に、外面はいい子だったんだよな」

P「内面も、まあ……悪い子ってことは断じてないけど……」ブツブツ

P「ん~、それにしても悩ましいのは……」

P「この、ミニクローゼットなぁ。桃子のためにわざわざ買ったけど、どうしたものか……」

P(買ったときは『こんな小さいのじゃ足りないよ!』とか言われたっけ。今じゃ、掛ける服もなくなって足りる足りないの話もできなくなった)

P「……まあ、しぶとく残ってる服もあるけど。この服たち、いつになったら桃子に送り返してやろうかなぁ」

P「この辺のハムスター(?)フードなんて、5着も買わせたのに案の定余ってるし」

P「あんだけ気に入ってたんだし、ウチに置いたままで帰らないでくれよ……桃子…………」

『……ねぇねぇ、お兄ちゃん』

『?』

『可愛い服買ってくれて、ありがとうっ!』





P「今にして思うに、あれだけ買わせたのは洗濯に出しても大丈夫なように予備を多めにとるためだったのかな……。あいつ、変なところで頭回すんだから」

P(しかし、フード以外にもシャツやらスウェットやら……)

P「いくらものぐさにしても、忘れすぎな気がするが……。……気のせい、かな」

P「しかしまぁ、よくこんなに漫画買ったもんだ。この辺に並んでるのは俺も読んでたし、桃子が残してくれたのかな?」

P「……あ、ここ巻数ズレてる。細かいとこだけど、俺も読み返すかもしれないんだし全部整理しちゃうか」

P「…………」

P「……ん? こんな漫画、ウチにあったっけ?」

P「『クラブのA』……野球漫画か。3巻だけ置いてあるのはどういうことだろう」

P「……」パラパラ

P「お? カバーの折り返しに細ペンでなんか書いてあるぞ」

P「永吉、すばる? なんで昴の名前がこんなところに?」

P「……あっ、わかった! 桃子のやつ、きっと昴から漫画借りたままウチに忘れてったんだ!」

P「3巻だけ置いてあるのも、多分そういうことだろうな。今度、教えてあげないと」

P「しっかし、漫画に名前を書くなんて昴も子供っぽいというかなんというか……」

P「……あーでも、この漫画もう50巻くらい出てたっけ? 昴がこれ買ったのも、桃子と同じかもっと小さい頃だったのかも……」

『よっしゃ三しーん! 桃子、追い込まれたら今のは手出さなきゃダメだぜ!』

『……ううん、今のはボールだよ。のり子さんも見てたでしょ?』

『そうだね。ちょ~っとだけ低かったかな~?』

『なんだって? ……くそ、こうなったら……!』

『……むっ!』

『『じゃんけんぽん!!』』





P「みんな、楽しそうに遊んでたっけ。正直、劇場の駐車場で野球やられるのも困ったもんだけど」

P(桃子が筋肉痛起こしてたりもして……懐かしい思い出だよ)

P(ところでこの漫画、昴に知らせるべきか桃子に知らせるべきか。二人ともに知らせた方がいいかな)

P「知らせるといえば、事務所の皆に桃子と離れたことを知らせるべきかな……。このみさんたちには知らせたけれど、まだ告知してないメンバーが大多数だし」



(ブーッ。ブーッ)



P「着信? ……奈緒からのLIMEだ」



『突然のLIMEすみません! けど、桃子のお母さん元気になったって聞いたんでプロデューサーさんにもそれだけ……よかったですねって言いたかったんです!』



P「桃子から聞いたっぽいな。やっぱり、他のみんなにも改めて知らせるべきかも」

『ところで……』



P「ん?」



『こももちゃん、最近見んけどなんかあったんですか?』

『向こうからの連絡もありませんし、仲良うさせてもらってたからちょびっとだけ心配で』



P「……ふむ」

P(こももは、桃子がでっちあげた架空人物で俺の妹、一時的に居候していたという設定だったな)

P(もうこの時機なら、ウソをばらすか、適当な場所に引っ越したとかで誤魔化すのがいいんだろうけど)

P「…………」



(P)『こももなら、夏休みが終わって元の家に帰ったよ』

(奈緒)『えっ! そんなら、ええんですけど』

(P)『でも、本人はまた奈緒と遊びたいって言ってたよ。俺の方からも伝えておくし、これからも仲良くしてやってくれ』

(奈緒)『!!』

(奈緒)『当たり前ですやん! こももちゃんにもよろしく言っといてください!』

(奈緒)『ほな、失礼しました!』



P「ま、こんなもんだろ。桃子が全ての原因だし、あとは本人に責任とってもらおう」

P(あっ、でも『こもも』と奈緒が遊ぶようになったらまたウチに集まるのか? それはそれで……なんというか…………)

P「……っし。これでほとんど終わりだ!」

P「うんうん。残ったゲームも、本も、CDその他もかなりすっきりしたな! あとは細かいゴミだけ拾って風呂入れよ……ん?」

P「……なんだこれ。ゲームソフト……じゃないな」

P「ポクモンが描いてあるぞ。えーと、『マジアナ』……『まぼろし』……」

P「ああ、これあれだ! 映画行ったときの入場者特典で貰ったんだっけ!」

P「ここまで来ると、今でも鮮明に思い出せるぞ。まだ先月の話だし」

P「桃子が自分でチケットとってくれて、暑い暑いってごねるのをなだめながら映画館まで歩いて……」

P「子供向けだと思ってたけど、結構楽しい映画だったなぁ」

『……桃子。また時間ができたら、二人で映画見に行くか?』

『! ……お、お兄ちゃんが行きたいって言うならいいよ? どうしても、って言うなら!』

『ん? 今日は桃子の方から俺を誘ったんじゃないか』

『それはいいの。桃子の面倒を見るのがプロデューサーの役目だから、桃子が誘うのについてくるのは当たり前だよ』

『じゃあ、お互い見たいものがあったら一緒に見に行くってことで。な』

『……うん!』





P「あそこで口約束したんで、他にもたくさんアニメ映画見させられて……」

P「今年は邦画が好調だったらしいし、765プロの皆にも頑張ってもらわないと。……いや俺が頑張らなきゃだな、うん」

ニャーーーン

         ナァー…………

   ニャァ……





P「! 猫の鳴き声……ニャンシロたちの声か?」

P「あの二匹がウチのマンションに出没したのっていつだったっけか。たしか、奈緒が遊び来るようになった頃だと思うが……」

P「カレンダーに……書いてあるわけないか。ペットにでもしていれば、記念日とかにしていたのかな」

P「しっかし、なかなか濃密な4か月間だったよ。たこ焼きしたり、雷で桃子が怖がった日もあったっけ」

P「なに思い返しても、ついつい『懐かしい』って思っちゃうな。どれもこれも、ついこの間の出来事なのに……」

P「…………」

P「……うしっ、切り替え切り替え! ネガティブ思考入りかけたし、切り替えて風呂でも入れてこよう!」

P「大体、桃子のいるいないを気にしすぎだぞ俺。寂しいことは寂しいけど、それを受け入れて前進しないと」

P「……そうだよ。桃子がいなくなって寂しいなんてことは、とっくに認めてるんだから」

P「…………」

P「……………………」

P(くそぅ。俺、馬鹿みたいに何度も何度も『寂しい』なんて口に出して……)

P(最初に桃子を預かるって言いだしたときだってそうだ。あのときの俺は、桃子が心配というのも勿論あったけれど)

P(本心では、桃子のためじゃなくて単純に俺が……独りでいることに…………)

P「……本当馬鹿だなっ、俺」

P「全然ふっきれないまんま……。もう『ただいま』や『おかえり』なんて言う意味も、言う相手もなくなったのに……」





桃子「お兄ちゃん、ただいまー」ガチャッ



P「ああ、おかえり桃子。三日ぶりだな」





P「ったく、桃子はもう…………」

P「……!?」

P「おっ、まっ、なんで!? なんでウチに来てんだよ!!」

桃子「お兄ちゃんうるさすぎ。なんでそんなに驚いてるの?」

P「いやだってそりゃ……。元の家に戻った桃子がまた帰ってくるなんて、普通思わんだろ」

桃子「はぁ、思い込み激しすぎ。お母さんの前じゃ思う存分ゲームやパソコンやれないし、こっちに置いていったゲーム機だってあるんだし」

桃子「そもそも桃子たち、『いったんお別れ』で済ませてたでしょ? 帰ってこないなんてひとことも言ってないよね!?」

P「そ、そうだったかもしれないけどさぁ……」

P(あれ? あれぇー???)

P「ていうかお前、鍵とかどうしたんだよ」

桃子「お兄ちゃんボケた? もともと、桃子が先に帰ってもいいように居候した最初の日に合鍵くれてたじゃん」

P「あっ、そうだっけ。……お、親御さんへの連絡は」

桃子「お母さんね、これから泊まり込みの仕事増やすみたい。本当はそんな必要ないらしいけど、職場のみんなに迷惑かけたからって」

桃子「誰かさんと同じで社畜になっちゃったんだ。桃子、娘として悲しいよ……」

P「そ、そうか……」

桃子「てなわけで事後承諾になるけど、今日泊まっていいでしょ? まさか……」

桃子「こんな夜遅くに、いたいけな美少女に『出ていけ』なんて言ったりしないよね!?」

P(……こっ、こいつ。相変わらず悪知恵を……!)

桃子「着替え持ってきてないけど、部屋着だけは置いてったままだから気にしないでいいよー」

P「おまっ……服の忘れ物が多かったのはそれか!」

桃子「忘れ物じゃないよ! ぜんぶ桃子の計算の結果だよ!」ムッ

桃子「とりあえず、お風呂入りたいなー。あの入浴剤も余ってるよね?」

P「……切らしてたから、買っておいたよ」

桃子「ひゅーっ、気が利くーっ。さっすがお兄ちゃんの家事スキルは頼りになるよ!」

P(桃子がいた頃の悲しい癖が、こんな形で生きるとは…………もう、なんて言えばいいのか俺にはわからん……)

桃子「ほほーう! 懐かしのPS4! どーん! ばーん!」カチャカチャカチャ

P「おい桃子、風呂入ったんだからポテイト食べると汚れるから……ていうか、既に床に散乱してるし本当にやめろよ!」

桃子「むー、やっぱりうるさいんだからー。そのためのハムちゃんフードなのに」

P「だから床が汚れるんだって。来る前に掃除したばかりなのに、また汚して!」

桃子「久しぶりなんだからちょっとくらい見逃してよね! ……うりゃっ、とーう!」カチャカチャ

P「おまっ……」

桃子「お兄ちゃんコーラ持ってきてー。そろそろボトル空きそうだし片付けついでにー」カチャカチカチカチ

P「……っ」

P(桃子のやつ……俺と別れるとき、殊勝な態度だから少しは改心したと思えば……!)



桃子「かーっ、楽しい! やっぱお兄ちゃんちで遊ぶゲームはやめらんないよ!」



桃子「んぐ、んぐ……はぁ~~~~~! コーラのらっぱ飲みも最高! 家じゃこんなこと出来ないし戻ってきてよかったなー」



桃子「たのひー。おもしろーい。やめらんな~い……」ダラダラ



P(周防桃子。こいつはやっぱり……)






P(とんでもない干物アイドルだ!)







(P「干物アイドル!ももこちゃん」 本当の本当におしまい)

はい、おーしまいっ!(アニメEDのうまるちゃん風に)





ということで、上に書いた通り本当の本当におしまいです。このSSに関しては書きたいことも書くべきことも全部書いたかなー、と思えていますし、自分は幸せです

7/28に書き始めた作品が2/28に完結したということで、一年と七か月の間、干物のごとくだらだら続いていたこのスレにお付き合いいただいた皆様に、改めて感謝申し上げます

他にも色々書いてきましたが、時間的にも分量的にもこんなに長く続き、また完結できたSSは自分にとって初めてで本当に思い出深い作品になりました

読んでくださった皆様に重ねて、また、元となった『ミリオンライブ!』や『うまるちゃん!』にもこの場を借りて感謝申し上げます

また、別作品でお会いできれば幸いでございます。三度目になりますが、今まで本当に本当にありがとうございました

裏話というほどではないですが、桃子を選んだ理由だけちゃちゃっと書いていきます



①デフォルメされたうまるちゃんのような等身をイメージしても違和感が少ない
②Pを「お兄ちゃん」呼びしても違和感がない
③Pと同居する設定を比較的でっちあげやすい
④外面の評価が高そうであり、かつ、干物状態にさせたときのギャップが大きい
⑤Pに対して横柄な態度をとるのが似合う


はじめは杏奈や琴葉あたりを干物化させようか迷いましたが、おおむねこんな理由で桃子になりました。もう本当に書くことないのでhtml依頼してきます

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