提督「いすずずずずすい」 (44)

提督「愛しているよ、五十鈴」

五十鈴「なに? どうしたの急に? でも、そうね。悪い気はしないわね」

提督「照れちゃって可愛いなあ、五十鈴は」

五十鈴「撫でるのやめて。気が散るわ」

提督「よおし、よしよし」ナデナデ

五十鈴「」

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§

五十鈴「なによ! 提督は五十鈴なんかにデレデレして!」

五十鈴「なに? 妬いているの?」

五十鈴「妬いてないわよ。どうして私がヤキモチをやく必要があるの?」

五十鈴「だって今の五十鈴、不機嫌そうよ」

五十鈴「私が不機嫌なのは、提督なら平等に艦娘と接するべきだと思うからであって、五十鈴が提督のことを好いているとかじゃないから」

五十鈴「まったく素直じゃないんだから」

五十鈴「あなたに言われたくないわ」

五十鈴「あら。集まって何を話しているの?」

五十鈴「あら五十鈴。ご機嫌ね」

五十鈴「そう見えるかしら」

五十鈴「提督に甘えられて満足?」

五十鈴「は? どうして提督が出てくるのよ?」

五十鈴「私たちは見てたのよ。五十鈴が提督に撫でられて満更でもなさそうなところをね」

五十鈴「ちょっと待って。あなたたち勘違いしているわ。私は今日秘書艦だった五十鈴じゃないわよ」

五十鈴「じゃあ、なんでそんな鼻歌まじりでやってきたのよ」

五十鈴「それは今日の海戦でMVPをとったからよ」

五十鈴「五十鈴ならMVPなんて普通に当たり前よ。それ以外に何かあったわね」

五十鈴「私見てたわよ。五十鈴が提督と一緒に食事しているところを」

五十鈴「やっぱり提督関係じゃない! あなた提督のことが好きなのね!」

五十鈴「冗談じゃないわ! 私は提督のことなんてちっとも歯牙にもかけてないわよ」

五十鈴「でも、男性と二人きりの食事なんて、相手のことを憎からずに思ってないとできないことよね」

五十鈴「えっと、えっと、それはそう! 提督が御飯をご馳走してくれるっていったからよ! 高いものをがんがん頼んであげたわ! そうでもないと、提督なんかとデートするわけないじゃない!」

五十鈴「へえ、デート、ね」

五十鈴「なによ」

五十鈴「なんでもないわよ」

五十鈴「なに? 言いたいことがあるならはっきり言えば?」

五十鈴「別に何もないわよ。ただ提督をお財布扱いするには、ずいぶんと良心的な金遣いをしてるのねと思っただけよ。五十鈴は優しいのね」

五十鈴「含みのある言い方ね。そういうの私嫌いだわ。でも、五十鈴が優しいのは事実よ」

五十鈴「あなたたち少しピリピリしすぎじゃない? 提督なんかのことで争って何が楽しいのやら」

五十鈴「あら、五十鈴。あなたは提督のことなんて路傍の石ころみたいだと言うけど、その薬指の指輪は何かしらね」

五十鈴「あなたは馬鹿ね。別に指輪を受け取ったからって、そこに恋愛感情があるとは限らないじゃない。そんなロマンチックな発想がすぐに浮かぶあなたは提督のことが大好きなのね。ねえ、指輪付きの五十鈴さん?」

五十鈴「あなたは脳みそがないのね。可哀想に。私はただ戦力向上のために受け取っただけよ。五十鈴があんなみすぼらしい男の求婚を純粋な好意から受けると思って?」

五十鈴「もちろん私もよ。というか、ここにいるみんなそれだけの理由のはずよね」

五十鈴「そうよ。あんな品性の欠片もない奴との結婚なんて売れ残って自暴自棄になった女じゃないと考えもしないわよ」

五十鈴「本当にね。今日秘書艦で一日中同じ空気を吸わなくちゃいけなかった五十鈴には同情するわ。えっと、あなただったかしら?」

五十鈴「違うわよ。私がもし誘われても、あんな奴と二人きりの同室なんて勘弁。秘書艦のひの文字が出たところで即辞退するわ」

五十鈴「じゃあ、あなた?」

五十鈴「私は提督のことが嫌いなの。そんな五十鈴が秘書艦? 笑えない冗談ね」

五十鈴「じゃあ、誰なのよ。ここにいる五十鈴全員指輪改二で区別できないんだから」

五十鈴「今日、秘書艦をした五十鈴は誰!? 挙手! 別にイジメようってわけじゃないわ。ただ今日、大変だったわねとみんなでねぎらおうと思っているだけよ」

………シーン。

五十鈴「少し待ちなさい。今日の秘書艦は五十鈴で、ここには五十鈴全員が揃っている。この中の誰かが秘書艦なのは明らか。私たちは推理小説を演じたいわけじゃないでしょ?」

五十鈴「そうよ。あんな奴の秘書艦を務めたのは何も恥ずかしいことじゃないわ。むしろ誇るべきだわ。あんな無能のサポートを一日続けたのだからね」

五十鈴「あなたじゃないの? 提督とデートしたことがあるんでしょ? 私には提督と顔を付き合わせるだけで逃げ出したくなるのに、あなたはすごいわね。提督耐性が強いのね」

五十鈴「ええ? そうだったかしら? デートをしたのはあの五十鈴じゃなかったかしら?」

五十鈴「ちょっと私には無理よ! 生理的に無理だもの!」

五十鈴「ちょっと、ちょっと! わけがわからないわ! じゃあ、聞くわ。今日提督に会った五十鈴は手をあげて! 確か今日は入渠中だったただ一人の五十鈴を除いては全員会ってるスケジュールのはずよ!」

沈黙。

五十鈴「こんな馬鹿な話はない。みんな嘘をついているわ! どうしてみんながただ一人の五十鈴になるのよ!?」

五十鈴「あなたはうるさいわね。なんでそんなことを気にする必要があるのよ」

五十鈴「そんな疑いの眼差しを向けられる覚えはないわ。私はただ今日五十鈴が提督からどんな扱いを受けたかを聞いて、後日への教訓として提督への対策をたてようとしただけよ」

五十鈴「へえ、じゃああなたは後日に提督と会うつもりなんですか。そうですか」

五十鈴「下手な揚げ足取りもいいとこよ。災害への対策準備を整えている人に「あなたは災害にあうつもりなんですね」と言うようなものよ。馬鹿馬鹿しい。それよりも、あなたの方が怪しいわよ。随分とこの話題を変えたそうじゃない?」

五十鈴「不愉快な提督の話を聞きたくないだけよ」

五十鈴「どうだか。本当は提督のことが好きで、コソコソ逢引しているけど、みんなの前だと言い出せないだけじゃないの?」

五十鈴「なんですって! 侮辱だわ! そんなおぞましい想像の中に五十鈴を登場させるなんてね! そんな考えをするあなたの方が、実はそうしているんじゃないの?」

五十鈴「というか、あなたたちは何と戦っているのよ。提督のことでカッカしずぎ。そんなに強く否定されると逆にあなたたちを疑いたくなるわ。犯人が一番大声を出して主張するってやつよ」

五十鈴「なに? 傍観者気取り? 嫌だわ。対岸の火事を見るかのように余裕を気取って、自分にはさも関係ないと言わんばかりだけど、あなたもその渦中にあるのよ?」

五十鈴「そういうつもりじゃないけど。明らかに変なのは確かね。どうしてみんな素直になれないの?」

五十鈴「やれやれ。今度はそれね。ならば、あなたはどうなのよ?」

五十鈴「私? 私は別に提督に対して何とも思ってないわよ」

五十鈴「あら奇遇ね。私もよ」

五十鈴「何とも思ってないなら、どうしてこんなに荒れているのよ?」

五十鈴「それは提督のことを好きなどこかの五十鈴が騒ぎ立てているだけよ。私に原因があるわけじゃないわ」

五十鈴「ちょっと待って。一番騒ぎ立てていた五十鈴ってこの五十鈴じゃね?」

五十鈴「そうよ。そうよ。言われてみたらその五十鈴が事件の発端な気がするわ!」

五十鈴「何を馬鹿なことを言ってるの? 騒いでいた五十鈴はそこにいる五十鈴でしょ。私はここにいるわ」

五十鈴「位置なんて何の役に立つのよ? 私たちはさっきから椅子取りゲームでもしているかのように動き回っているじゃない」

五十鈴「そもそも何で私が騒ぎ立てて、それの火消しもしなくちゃいけないのよ」

五十鈴「簡単なことだわ。あなたは騒ぎ立てることによって提督大好きの秘書艦をでっち上げようとしたのよ」

五十鈴「どうして五十鈴がそんなことをする必要があるのよ?」

五十鈴「これは事件よ。五十鈴たちが互いに相手が秘書艦ではないかと疑心暗鬼に陥って右も左も分からず混乱することは確実」

五十鈴「そこで、あなたは秩序を守ろうとする警官の役割で再登場する。「こんなことで争うのは無駄よ」ってね。そうなるとあなたへの印象は騒ぎをおさめようとする善良な一般五十鈴となるわけ」

五十鈴「つまり、あなたはまんまと秘書艦探しの場において有利な立場を確保して、秘書艦容疑から外れようとしたのよ」

五十鈴「私がマッチポンプをしたと言いたいわけね? でも、そんな無駄に場を荒らすだけの行為をなぜ私がするのよ? 私の趣味じゃないわ」

五十鈴「五十鈴は無駄に場を荒らす艦娘じゃないことは私たちみんなが知っているわ。でもね、一人だけいるじゃない。そのマッチポンプが無駄にならない人が」

五十鈴「………誰よそれは?」

五十鈴「秘書艦よ。秘書艦が自分を秘書艦だという疑いを逸らすには誰か他の五十鈴を盾にすればいい。藁人形式の常套手段よ」

五十鈴「五十鈴、あなたが秘書艦です」ピシリ

五十鈴「ちょっと待ってよ! 確かに私は騒いだのは認めるわ! でも、それは面白半分であって、私は決して秘書艦じゃ!」

五十鈴「まずいわ! 取り押さえて! 五十鈴の中に紛れるつもりだわ!」

五十鈴「ほら、観念しなさい! あなたが提督大好きの秘書艦だったのね!」

五十鈴「だから、違うってばああ!」

五十鈴「秘書艦はみんなそう言うのよ!」

ノック音。

五十鈴「静かに! 誰か来たわ!」

五十鈴「どなた?」

提督「ああ、まだ起きていてくれたか。昼間の書類に不備があってな、少し俺ひとりで直すには骨が折れる。悪いが、五十鈴、今夜執務室で手伝ってくれないか?」

ざわざわ。

五十鈴「わかったわ。今夜執務室に行きます」

提督「そうか。すまない。助かる」

遠ざかる足音。

五十鈴「………はあ」

五十鈴「ちょっとどうするつもりよ! あんなに軽々しく秘書艦を引き受けて! しかも夜間! それってつまり、あれよ、あれってことよね!?」

五十鈴「誰が行くのよ?」

沈黙。

五十鈴「私が行くわ」

五十鈴「え?」

五十鈴「だから私が行くって言ったの!」

五十鈴「どうして?」

五十鈴「どうしても何も、あなたたちが私を秘書艦として捕らえたんでしょ? 書類のミスは秘書艦である私のミスよ。気は進まないけど、私が出向くのが当然よ」

五十鈴「いいえ。嫌だけど私が行くわ。だって、私が受け答えして秘書艦を引き受けたんですもの。あなたは休んでいなさい」

五十鈴「ちょっと待って。あなたたちばかりに負担はかけられないわ! あなたは今日一日秘書艦を頑張って、あなたもさっき提督と頑張って話した。今度は私が頑張る番だわ! だって私たちは五十鈴仲間じゃない? 助け合いましょう? ね?」

五十鈴「そうよ! あなたたちばかりに頼っていたら五十鈴の名折れよ! 我慢して私が行くわ」

五十鈴「いいえ! 私が行くわ! さぼりぐせのある私はその日暮らしの怠惰な日々を過ごしてきたけど、五十鈴の助け合いに感化されてしっかり生きようと思えたわ! お願い! 私にいかせて!」

五十鈴「この五十鈴を差し置いてみんないい格好をしようたって、そんなの許さないわ! その秘書艦の役目は私が引き受けるわ!」

五十鈴「ちょっとあなたたちが無理する必要はないじゃない!? 責任は今日秘書艦を務め提督と一日を共にしたこの私にあるわ。あなたたちが尻拭いすることないわ!」

五十鈴「いいえ! いいえ! そもそも今回の秘書艦は私がさっき「いいえ」と答えていたら回避できたはずのもの。やっぱり私が今夜の相手をするべきだわ!」

五十鈴「なによ? 今夜の相手って? あんたもしかして………」

五十鈴「穿った見方をしないでくれる? 提督みたいな野蛮な男が夜遅くに部屋に艦娘を誘うのよ? 当然そうなると考えるべきでしょう? 逆にその可能性を考慮せずに秘書艦に赴こうなんて、楽観的すぎよ。そんな慢心五十鈴には今回の秘書艦は無理よ。やっぱり私が行くわ」

五十鈴「ちょっと待って。そこまで言うのだったら、提督対策はバッチリなんでしょうね?」

五十鈴「え?」

五十鈴「え、じゃないわよ。まさか提督から無防備に襲われるつもりじゃないんでしょ? 用意周到な五十鈴さん?」

五十鈴「………も、もちろんよ」

五十鈴「どんな作戦なのかしら? 後学のためにも聞かせてくれる?」

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