男「おやすみ」女「おやすみなさい」 (27)

友「おいって」

男「ん…ふぁ…なぁに…?」

友「なぁに? じゃないわアホタレ、なに呑気にうたた寝してやがる」

男「……」ポヤ-

友「チャッチャと済ませないと委員長にどやされるぞ」

男「いや…別にこの時期に頑張らなくても間に合うだろ…文化祭には…」

友「そうは問屋がおろさないの。というか委員長が許さないの」

男「……」チラリ


女「ハイ! そこの看板の位置間違ってる、計画書には前方のドアとされてるじゃない!」


男「みたいですね…」

友「目をつけられる前にやることやっちまおうぜ、俺らの仕事は単なる花づくりだし」

男「うん…」

友「ノルマ終わらせてさっさとゲーセンにでも…つか本当に眠そうだな、徹夜でもしたのか?」

男「別に…趣味的なモンをやりきろうとしたら朝まで掛かっただけ…」

友「ハッ! なんだよお前らしくないな、眠いのは分かるが俺も早く帰りたいから我慢しろ」オリオリ

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放課後


友「うっし帰るぞー」ガタリ

男「うむ」

友「今日こそは500円以内に一勝をもぎ取ってやるぜー」

男「友弱すぎるからね、そろそろ本気のキャラ使ってもいい? ボッコボコにしてやってもいい?」

友「ダメだ! 俺がもうちっと強くなったらな!」

男「負けず嫌いなだな…」


ピタ


男「あ」

友「ん、忘れもん?」

男「筆箱忘れたかも…」

友「おっちょこちょいさんだな、待ってる?」

男「いや先に行ってていい、文化祭の準備で教室内がごった返してるし、探すのに時間かかるかも」

友「了解、逃げんなよ」

男「逃げる必要性が何処にあるんだ…」

友「俺のしつこさ」

男「…確かに数時間と負けても負けても粘られるしつこさは嫌気が差すけど…」

友「もう諦めろ。一度本気になったら諦めが悪い、それが俺という人間なのだ」

男「わかったよ…とにかく先に行ってて」

友「うぃー」スタスタ

男「……」

男「さて、教室に戻るか──」

~~~~

男「───……」ピタリ

男(教室内から声がする)スッ


『そろそろさぁ、委員長ウザくない?』

『いやあのさ、そろそろというより既にウザいんですけど』

『ちょっとっ! くすくす、アンタ言い過ぎだってば』


男「……」


『まだ二週間以上もあるんだよ? なにあの張り切りよう、見てて痛いっていうかさー』

『ウチのクラスだけじゃん。こんなに切羽詰まってる感じ?』

『切羽詰まってるんじゃない。これは、切羽詰まってる風を装ってるだけ、無駄に張り切り過ぎてんの』


男(……。筆箱は明日でいっか)スタ

男「…!」くるっ

女「……」

男「あ…」


『たかが文化祭にどれだけ気合入ってるんだかねー』

『内申点が死ぬほど欲しいとか? ほら委員長の家、貧乏だって噂だし』

『かわいそーそれに巻き込まれてる私達かわいそー』


女「……」

男「えっと、うーん、…どうぞ?」ササッ

女「……」

男(場所を譲るのも可笑しいか、いや、この気まずさの中で何をしても駄目な気がする)

女「……っ!」ギュッ


             スタスタ スッ


男(居心地悪さ関係なく教室に入ろうとするか、強いなぁこの人…)

男「あのー女さん」

女「なに」ピタリ

男「えっと…なんというか…文化祭、成功させたいんだよね?」

女「え? あ、うん…?」

男「……」コソコソ

女「っ」びくっ

男(なら教室に入るのはやめたほうがいい、文化祭までの残り日数、あのメンバーとは気まずくになるし)ボソボソ

男(殺伐とした空気になるよりは寧ろスルーだよ、我慢だ、感情剥き出しのまま突き進むのは良くないと思う)コクコク

女「……」

男「無駄にしたくないよね? これまでの準備期間を」

女「あ、貴方に…私の何がわかるの…」

男「わかるよ」

女「は、はあっ?」

男「わかっちゃ駄目かな? 女さんの頑張りは他人であっても同じクラスメイトなら十分、分かってるつもりだけど」

女「……」

男「このまま教室に入るのは良くないことが起こる。ただそれだけ、女さんには言っておきたい」スッ

男「それじゃ、さようなら」フリフリ

女「…ぇ…」


スタスタ


男(余計なこと言ったかな、ま、別にいっか。どっちにしろ【関係ない】し)チラリ


女「……」ポツーン

男(だめだよ、入っちゃ)フリ


女「っ」ビクッ


男「……───」


翌日


女「ほら! そこの三人! またパイプ椅子の数があってません! メモは取ってなかったんですか!」


友「おー恐…今日は一段と張り切ってんな、委員長さん」オリオリ

男「ぐかー」スピー

友「ってオイ! お前…!」ゆさゆさ

男「んがっ?」

友「ばかばか、寝るなって! また徹夜でもしたのか…?」

男「…うーん…」コクリ

友「おいおい、何してっか知らないけどよ」

男「うぅー…寝不足すぎて頭が痛いぃ…」

友「もう保健室行ってこいよ、ホラ、委員長には俺から言っといてやるから」

男「…優しいな友」

友「そりゃ後でジュースでも奢ってもらうわ。さっさと立て、それともおんぶしてやろうか?」

男「おんぶは幾ら…?」

友「嘘だよ、求めるんじゃない。あ、委員長! コイツ頭が痛いって言うんで保健室行かせますー!」

女「ええっ? それだと準備に支障が…」ボソリ


『…はぁ? 今の聞いた…?』

『具合悪いことも駄目とか、軍隊かよ』


女「……、」

友「あ、えっと、駄目なら保健室に紙を持って行って作らせるってのもー…寝ながらも出来るし的なっ?」

男「友。何枚かちょうだい、持っていく」

友「お、おお」スッ

女「男君」

男「ん…はい、なんですか?」

女「熱は?」

男「然程感じられませんね…今朝はそれほど体調も悪くなかったんですけど」

女「そう。じゃあ頭痛薬が保健室にある筈だから、それを飲んで安静にしておきなさい」

男「それだと準備出来ないから、薬は良いです」

女「かまわないわ。その分、私が埋め合わせします」クルッ

男「…さいですか…」

女「先生には私から伝えておきます。では、これで」スタスタ

男「じゃあ友、行ってくる」ガタリ

友「あんま無理すんなよ」

男「そう無理もしてもない、むしろ結構楽しいよ」

友「楽しい…?」

男「気にするな、行ってくる」


ガラリ ピシャ


男(ふぅ、我慢我慢。まだ我慢できる、ふぅううううう)


放課後 保健室


男「む…」パチリ

男「ふわぁ~…今何時だろ…」ゴソゴソ


「七時よ」


男「……。どうして?」

女「どうして? なにがどうなって、どうして?」

男「いや、なんで、居るのかなって…」

女「文化祭の準備を行っている中で、一人の男子生徒が具合が悪くなった」

女「そも他人であっても同じクラスメイトなら心配するのも当たり前でしょう?」

男「なるほど」

女「…納得するのね」

男「生真面目な貴女なら言いそうな事だなと」

女「……」

男「よっこいしょ、ったく友のやつ起こしに来てくれなかったのか」

女「ちょっと良いかしら」

男「ん、なんです?」

女「唐突に変な事を訊くようで申し訳ないのだけれど、貴方、知ってるかしら?」

女「私のクラスで行う出し物。その準備に幾らか支障が出てることを」

男「そうだったんですか?」

女「ええ、私はある程度皆の手際を把握して計画を建てたつもりだったのだけれど…」

女「しかしそれでも準備が滞ってる。まるで、そう──」


「誰かが夜な夜な、邪魔をしているかのように」


男「へー」

女「なにか心当たりは?」

男「ありませんけど…何故俺に?」

女「単なる質問、興味本位のようなものよ。けれど確かに前日に用意されていたパイプ椅子や、長机の数、紙ナプキンの枚数…」

女「それらが一晩の内に減らされているの。一見、巧妙に手違いと思わせる程度に」

男「それはそれは、女さんが気づくほどだ。誰か放課後に忍び込んで…という可能性もありますね」

女「ええ可能性としては十分に」

男「……」

女「それで貴方に心当たりはあるかしら?」

男「え、もしかして疑われてるんですか?」

女「……」ジッ

男(めっちゃ睨まれてる。そっか、【あっち】よりも【こっち】か…少し感づかれてるのかな…)モゾリ

男「あの、俺を疑うよりもまずは滅茶苦茶怪しい人たち居ませんでしたか? ほら、昨日とか…?」

女「私の陰口を叩いていた連中? いいえ、あの人達にそんな度胸なんてありはしないわ」

男「断言するんだ…」

女「勿論。だから見逃してあげたのよ、ああやって好き勝手言われたとしてもね」

男「……」

女「何か言いたそうね、貴方」

男「別に、なにも」

女「そう。それで貴方は最近、寝不足だと聞いたのだけれど。それはなぜかしら?」

男「はい?」

女「今日も寝不足がたたって頭痛を引き起こし、こうやって保健室に寝転んでるんじゃなくて?」

男「まぁ…そうですけど、別に夜な夜な教室に潜りん混んでるわけじゃないですよ…?」

女「証拠は?」

男「証拠って…まるで取り調べか、探偵ごっこみたいですねこりゃ」

女「事実を把握するためなら、警察や探偵の真似事でもやり切るつもりよ」

男「…親は二人共海外に出てて居ません」

女「ご兄妹は?」

男「妹が二人。けどどっちも寮制で殆ど家には…」

女「さて、段々と犯人像が浮かび上がってきたわね…」

男「い、いまだ証拠不十分では?」

女「真似事だもの。私が納得できればただそれだけでいいのよ」

男「とんだ暴君だ…」

女「どうしてやってしまったの? 動機は? 私に対しての当て付け?」

男「ま、待ってください、まずどうして俺を疑うのか聞いておきたいんですけど…?」

女「顔」

男「ワッツ?」

女「顔よ顔。見るからしてやりそうだわコイツ…と思ったのよ、ただそれだけ」

男「もう帰っていいですかね」

女「ダメよ、疑わしきは罰せよ。これが私のモットーなの」

男「マジモンの暴君だったんですね」

女「減らず口は閉じてなさい。ほら、もういいでしょうここまで来たなら素直にゲロってしまいなさい」

男「答えはノーです、それにそんなに俺を疑ってるのなら…そうだ明日になって確認してみればいい」

女「…明日に?」

男「貴女は今日の進行度を把握しているでしょう、そして俺は未だ保健室から出ていない」

男「この後俺を見送り、そして明日になってもう一度進行度を確認すればいいんだ」

女「進行度が減少していれば貴方が犯人ではなく…他の実行犯が浮き彫りになると…?」

男「その通り。俺が犯人じゃない十分な証拠となるし、貴女の思い込みの激しい価値観も見直される機会を得るわけですね」

女「いえ、それだけでは不十分だわ。貴方が家に帰った後、また校舎へと戻るかもしれないもの」

男「頭痛で具合がわるいのに?」

女「明日にまた体調の度合いが増えるだけだわ」

男「…疑い深いですね」

女「申し訳ないのだけれど、既に九割ほど貴方が犯人だと思ってるもの」

男(さいですか…七時半か…結構話し込んだな…)チラリ

女「………」

男「仕方あるまい!」ポン

女「な、なにっ?」ビクッ

男「こうまでなればやれる所までやりましょうか、なので、今から俺の家に来てください」

女「…へ?」

男「そんで泊まっていって下さい。あ、服とか下着とか妹のがあるんで心配しなくてもいいですよ」ストン

女「ま、まち、待ちなさい…! あなた、急に何を言って…?」

男「本気で疑ってるのなら最後まで突き通すべきじゃないんですか、委員長」

女「うっ…」たじ

男「俺は違うと言ってるんです。けれど貴方はそれでも疑ってる、なら今の状況下は実に分かりやすいと思いませんかね?」

女「けれど…高校生の身分で男子生徒の家に…と、泊まるのは…」

男「…期待されてる所申し訳ないですけど…別に襲ったりしませんからね…?」

女「きっ! きたた、期待などしてません!」

男「それに俺彼女居るし、裏切ること出来ませんもん」

女「へ…? そ、そうなの…?」

男「ええ」

女「そ、それを早く言いなさい! だったらここまで私も躊躇うこともなかったわ…!!」

男(いや躊躇うべきだと思う。断るべきだと思う)

女「…良いでしょう、その案に私も乗ると決めました。これから貴方の家にと、……泊まるわ…」ボソボソ

男「良いんですね、それで」

女「…そう言ったでしょう」

男「わかりました。じゃあ早速帰りましよう、一緒に」

女「一緒に…」

男「じゃなきゃ家わからないでしょう?」

女「え、ええ、そうね」コクコク

男(面白いなこの人)

帰宅路


男「この前を曲がった先が俺の家です、ちなみに」チラリ

女「……」

男「……。今日も家には誰も居ませんのでご心配なく」

女「……」

男「そうだ、寝る前に一緒にトランプでもしませんか? 修学旅行のノリでやれば楽しいと思いますけど…」


ピタ


男「女さん?」

女「…やっぱり帰るわ」

男「怖くなりました?」

女「……」

男「何度も言うようですけど、別に襲ったりしません。けれど嫌なら良いです、ですが納得もしておいて下さい」

男「俺が犯人じゃないことを、今ここで」

女「…横暴だわ…」

男「どっちが? 貴女が? それとも俺が?」

女「……」

男「んー、貴女はどうしても文化祭を成功させたい。自分の手で無事に、だからこそ不安要素は取り除いておきたい」

男「必死に犯人を断定させておきたい気持ちも理解できます、けれど焦って物事を推し進めても…」

女「ねぇ、貴方はどうして…」

男「どうして?」

女「どうして貴方は私に対して敬語を使っているの?」

男「…、ノリですけど」

女「ノリ? ノリで同級生に対して敬語を?」

男「悪いことでしょうか」

女「些か距離を感じるわ。貴方と私の立場的に、その喋り方は」

男「もう一度いいますけど、それは悪いことでしょうか」

女「いえ、特に悪くはない。わたし的にも悪いことではないわ…でも、」

男「でも?」

女「【作られてる気がする】」

男「………」

女「…私はそう感じるわ、貴方と私の距離感を演出して作り上げて、まるでそう…」


女「周りのことなんて最初からどうでもいい。だから自分の思い通りになれば、それでいい」


女「その作り方に【レベル】は関係がない。ただそうなればいい、その程度の思惑でやっている」

男「よく意味がわからないんですが…」

女「そう、でも私にはわかる。貴方が考えていることが、だからこそ貴方が犯人だと疑ってる」

男「………」

女「ごめんなさい、誘って頂いて悪いけれど今日は帰るわ」ペコリ

男「いえ、構いません。疑いは晴れましたか、俺の」

女「むしろ深まったわね。貴方をよく知れば知るほど、頭のなかでピースが上手く嵌っていくから」

男「だから違います、俺は犯人じゃないですって」

男(そうじゃあないんだよ、女さん。もっと周りをよく見なきゃ駄目だ)

男「…そう言っても君には分からないでしょうけど」

女「また明日に会いましょう。嫌でも答えは訪れるわ、その時になってもう一度審議に掛ける」

男「携帯番号でも教えましょうか? 寝る前に電話を一本入れますよ」

女「いいえ、結構」スッ

男「なぜ?」

女「──その方が楽しそうだから」


スタスタスタ


男「…確かに」ウム


翌日 


男「……」


男(なんというか、言葉が出ないというのはこういう時に使うべきだよなぁ)

友「はよー…うわぁ!? なんじゃこりゃ!?」

男「おはよう友、今日もいい天気だね」

友「待て待て、窓の外じゃなく内を見ろ。……ひでぇなコレ、今まで準備してきたのが滅茶苦茶だ」


ガヤガヤ ザワ ガヤガヤ


男「どう思う?」

友「というと?」

男「犯人はクラスメイトの予感」

友「…んーまぁ色々と昨日もいざこざがあったしなぁ…というか昨日今日でやるか、疑われるだろフツー」

男「え?」

友「知らなかったのか? いや、知らないか。お前が保健室に行った後に、クラスの女子と委員長が口論になったワケ」

男「三人組ぐらいと?」

友「……知ってるじゃん」

男「ただの勘、それで?」

友「おお、最初は小さな言い合いだった。そのうち所かしこに飛び火して、いつの間にクラス中の口論合戦になったという…」

男「みんな鬱憤がたまってたんだね…」

友「それでもここまでするか? やり過ぎだって、さっきも言ったが昨日今日でここまで報復的なことをすりゃ直ぐに疑われるだろ」

男(そうだね、確かに争いの発端である三人の女子に疑惑の目が向けられる)チラ


『だから違うって言ってるじゃん! なんなのアンタら!?』

『ウチらは家にいたっての! 親だって一緒にいたし!』

『意味分かんないし!』


男「…まぁあんな風に言ってるぐらいだし、昨日の夜に忍び込んでやったーとは無理臭いよね」

友「うん…それでもこれさ、やっぱ委員長に対しての報復だよな…?」


男「いや、俺ならここまで破壊することは、昨日にしないな」ガチャ


友「え?」

男「なんでもなし、とにかくボーっと突っ立ってても物事は進まない。片付けようよ」グイッ

友「お、おお。つか今日はやけに乗り気な、寝不足は大丈夫なのか?」

男「うん。昨日は久しぶりにちゃんと寝たから」


昼休み


男「ふぃー疲れた」

友「だいぶ元通りになってきたな、こりゃ一時はどうなるかと思ったが」

男「委員長はまだ頑張ってるね」

友「思う所があるだろうけど、今更後に引けないみたいだなぁ」

男「後に引けない?」

友「そりゃそうだろ? 影で文句を言われていたとしても、仕上がりは上々だったんだし」

友「…壊されちゃったからハイお終い、なんてスッパリ諦められないだろ」

男「確かに、他のクラスと比べるのも失礼なぐらいなものだった」

友「過去形にするな、過去形に。残りの日数で元通りにするだろうし、委員長は元からそのつもりで動いてる」チラ


女「…」カンカン トントン


友「俺らもパッパと飯食って参加しようぜ、ぼおっと突っ立ってちゃバツが悪い」

男「そうだね」


「ちょっと良いかしら」


男「はい?」

女「少し時間良いかしら、手間は取らせないから」

友「あ、委員長! 実はこれから飯を食ってこようかなと思ってて…あの、食ったら直ぐに取り掛かるんで!」

女「お昼を?」

男「はい、そうなんです。あ、良ければ一緒に食べられますか?」

友「…へ?」

女「私も?」

男「用があるようでしたら飯を食べながらでも聞けるかなと、さして残された時間も多くはないですし」

友「お、おい…お前何言って…」ユサユサ

男「どうですか?」ユラリユラリ

女「………」

女「…お邪魔じゃなければ」

男「だってさ友。委員長が居たら邪魔になる?」

友「ばっ! そんなコト言ったら、つか、言えるわけないだろ…っ」

男「どうやら良いみたいですよ、では早速行きましょうか」スタスタスタ

女「ええ」スタスタ

友「えぇー……」


食堂


男「どういうつもりかって…効率化を求めたんだよ、たったそれだけ」ストン

友「愛を知らない科学者かお前は! …なんかあんだろっ…こう渦中の存在を気軽誘っちゃいけない雰囲気が…!」

男「とりあえず座れば?」

友「座るよ!」ストン

男「…別に他意はないよ、本当に気まぐれで誘っただけなんだ」

友「気まぐれすぎる、そんな性格だったかお前?」

男「友が知らないだけだよ、勿論、友の性格だって俺も詳しく知らないし」

友「言ってくれるじゃんか…その気まぐれに付き合わされてる俺の気持ちはどうなる」

男「本当に優しい奴だよ、友は」

友「あぁわかった、お前はそんな性格だったよな。うん、今わかったよ、うんうん」

男「ご理解いただけたようで有り難し」ナムナム

友「じゃあ正直に答えろ、もしかして惚れたのか…?」

男「誰に?」

友「…委員長に」

男「それはない」

友「マジで気まぐれだと言ってんの…?」

男「うん。だってそのほうが楽しそうだしね」パクパク

友「はぁ~…なんだよ楽しそうって…」


女「お待たせしたわね、ごめんなさい」


友「おふぅっ!? い、いえいえ! そんなことないぜー?」

男「先に頂いてます」モグモグ

女「結構よ、久しぶりに食堂に訪れたものだからメニューを選ぶのに手間取ったわ…」ストン

男「普段は弁当ですもんね」

女「…よく知ってるわね」

男「ええ、まあ」

友「そ、そうなんか。でも確かに食堂のメニューって味は大したこと無いのに、種類だけ沢山あって選ぶの大変だよな~…?」

女「そうかしら? このうどん定食、なかなか美味しいけれど」ズズ

男「食べたくないならお前の分、俺が食べるけど?」モグモグ

友「うぐ…! そ、そういや委員長? なんか男に用事があるとかないとか…?」

女「ええ、そうよ」チラ

男「用とは?」

女「あら気に留めてなかったのかしら? だったら無理に時間を合わせる必要もなかったようね、思慮が足りなかったわ」

男「冗談ですって。今回で俺への疑惑は晴れましたか?」

女「三割方晴れたかしら?」

男「それだと未だ五割を超えてるんですけど…」

女「良くなくて? それとも貴方は、チェックメイト寸前でジリジリ問い詰められる方が好みなのかしら」

男「いえ、むしろ俺は盤をひっくり返して最初から無かったことにするのが大好きです」

女「………」ピタ

男「…なにか?」

女「何もないわ。ただ未だその敬語に耳が慣れてないみたい」

男「すぐに慣れますよ、うちの妹二人も、俺の敬語を幼いころに三ヶ月で聞き流すようになりました」

女「あなた兄妹にも敬語を使用しているの…?」

男「節度を持った兄弟関係を表面的にも表すためにです、ご理解されなくても良いですよ」

女「…正直に言うわ、変な人ね」

男「自分に正直なだけです」

友(会話に入りづれぇ…)

男「用とはその件だけですか?」カチャン

女「ええ、貴方的にはまだあると思ってるのかしら」

男「面倒なことは無いに越したことないですけどね、気になるから言ってみようと思いますけど」チラ

女「なにかしら」

男「昨日の夜に忍び込んで、教室を滅茶苦茶に荒らしていったのって、あれ…」


男「貴女でしょう? 委員長さん?」


友「え…?」

男「……。俺の予想が外れていたのなら教えてください、それは間違っていると」

女「……」

男「どうなんでしょう? 些か出来過ぎだと思いませんかね、色々と」

女「なにが、かしら」

男「聞いた話だと女さん、昨日はクラスの女子の何人かと揉めたそうですね。それから他方に飛び火、教室内で口論が飛び交った」

男「みんなの鬱憤や溜まった苦情が見境なく吐出された、そして、その翌日に」

男「──教室内が派手に荒らされた。まるで皆の想いが形となって現れたかのように」

男「そうですね、分かりやすくそれこそ一目で頭が理解してしまうぐらい形として【作られた】わけだ」

男「あなたが、委員長の女さんがクラスの皆の総意──面倒臭い出し物の準備──を汲み上げて」

男「ずず、ぷはぁ! 自ら壊した、これでもかって粉々になるまで」コトリ

女「へえ…」

男「違います?」

友「ちょい待ち! 待ってくれ、ナニイッテンオマエ?」

男「今朝に教室内を見て思った感想」

友「頭腐ってるだろお前? は? なに、どうして委員長がやったと思うんだよ…?」

男「友は変だと思わなかったの?」

友「思わねぇよ、これっぽっちも思うか。変ってなんだ、なにが変だって?」

男「明らかにやり過ぎた感とか」

友「はぁ? そりゃそう思いもしたけど…苛ついてたからって彼処までしなくてもとは…」

女「……!」ピクン

男「うん。そうだよね、ただ単に苛ついてる程度でやる破壊度じゃなかった、明らかに咄嗟の感情とは思えないほどの本気が伺えたよ」

男「その【本気】ってのは…女さんはどう捉えます?」

女「…そうね、本気で私を恨んでいるとか?」

男「それこそあり得ないです」

女「なぜ?」

男「そんな本気を持てる人間など居ないと知ってるから、あなたは高慢的な態度で要られるから」

女「些か私を買い被り過ぎてるようね…私は特に人間掌握に秀でている訳でも無いのだけれど」

男「雰囲気として捉えられる人は居ると思いますけど、それにそこまで高度な技術は必要ありませんから」カンカン

男「それにぶっちゃけ人との付き合い滅茶苦茶下手くそですよ、委員長さん」

女「……」

男「俺が言いたいのは、その本気。恨み辛みではなく元より違った形として破壊し尽くす本気があった」

男「言葉にすれば簡単ですよね。結局、貴女が皆の意見を一時的に纏めるために、仮想の犯人を作り上げる為のでっちあげ」カラン

男「鬱憤の溜まったクラスメイト達に透明な罪悪感という首輪をつける」


男「その為に本気で壊し尽くす必要があった、貴女が本気になって出し物を台無しにする覚悟が」


友「……は…」

女「……」

男「まあ妄想ですけどね」

友「は、はは…お前…そこまで言い切ったら妄想もなにも…」チ、チラリ

女「……」

友「どう、すんだよこれ…言っていい事と悪いことぐらいあるだろ…す、すまん委員長マジでコイツ最近さ…」

女「ねえ」

男「はい」

女「どうしてそこまで私を疑い切れるのかしら? まずはそれを聞いておきたいわ」

男「え? 見るからにやりそうだな此奴…と思っただけですけど?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年08月03日 (月) 02:03:30   ID: 2358aM7v

喋り方くっせーなー

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