狼「俺が勇者を守る。」(158)


勇者「ハハハ……ありがとう。でも、無理はするなよ?」

狼「……」コクン

勇者「そろそろ行こうか。国王が待ってるよ。」

狼「あの俗物臭い男か。」

勇者「こらこら、聞こえるぞ。」

狼「ふん。」

王城 謁見の間

兵士「ど、どうぞ……」

狼「何を見ている……!」ギロッ

勇者「睨むんじゃないよ、狼。珍しいだけさ。」

国王「来たな、勇者よ。」

勇者「はっ。」

国王「いよいよ明日、お主は旅立つ。仲間も武器も金も馬も、十二分に用意した。」

勇者「はっ。ありがたき幸せにございます。」

国王「良いな?必ず、魔王達を殺してくるのじゃぞ?」ニコッ

勇者「……はっ。」

狼(魔王”達”だと……?)

王城前 正門

狼「勇者。」

勇者「ん?」クルッ

狼「魔王達、とは誰の事なんだ?」

勇者「……」

狼「…………」

勇者「いずれ、話す時が来るよ。その時まで、待ってくれ。」

狼「おあずけか?俺は犬ではないぞ。」

勇者「分かってるさ。でも……もう少しだけ、待ってくれ。」

狼「…………分かった。」

勇者「ありがとう。」ニコッ ナデナデ

<翌日> 城下町 南門前

狼(大きな見送りも無しか……)

国王「こやつらが、お主の旅に同行する仲間だ。」

女戦士「お供を務めさせて頂きます。よろしくお願い致します。」

女武闘家「……よろしく。」

僧侶「……」ペコリ

狩人「アンタが勇者か!思ってたよりも若いな。よろしく頼むぜ。」

剣客「港町まで行くついでに護衛を頼まれた。よろしく頼む。」

勇者「よろしくお願いします。皆さん。」

女戦士「ところで、後ろの……?」

狼「……俺の事か?」

狩人「喋りやがった!?」


勇者「おや、聞いていませんか。」

剣客「人語を介す獣は珍しいな。俺も数回しか見たことはない。」

狩人「コイツは賢そうだ!良い猟犬になるぞ!」ナデナデ

狼「誰が犬だぁ……?」グルル ギロリ

狩人「はは、そんな怖い顔すんなよワンちゃん!」ポンポン

狼「ほぉ……」ガブッ


狩人「いってえぇ!!」バッ

勇者「ああ、すいません。……人を噛むな、って言ってるだろ?」

剣客「今のはその兄ちゃんが悪いさ。」

国王「では、ワシはこれで失礼する。既に馭者には話してある。頼んだぞ。」

勇者「はっ。」

女戦士「…………魔王を倒さんとする勇者の見送りがこんなものとは……」

女武闘家「その分物資や金はかなり出してるわ。」

僧侶「結果を出せば全て良い事です。」

剣客「アンタ……カトリックか?」

僧侶「…………いえ、我が教会は宗派には属して居ませんが。」

剣客「そうか。……何、着ている衣が気になってな……」

狼(あの僧侶……神官の格好の割には教会や聖水の匂いが全くしない……)

女戦士「とりあえず、出発しましょう。」

勇者「あ、はい。」

馬車内

狩人「よいしょっと。」ギシッ

勇者「全員乗った?」

狼「ああ。匂いで分かる。」

狩人「お前も乗るのか!?」

狼「悪いか?」

狩人「狼なんだから走れよ……」

狼「いざと言う時バテて居ては使い物にならん。俺はお前よりかは貴重な戦力なのでな。」

狩人「何ぃ……!?」

剣客「ハハハ!!」

女武闘家「……」クスッ

女戦士「正面に魔物の群れが見えます。かなり大きな群れです。」

僧侶「ここで止まればやり過ごせますね。」

勇者「どうします?」


狩人「アンタ達はここに居てくれ。おい、行くぞ。」ギシッ

狼「ああ。良いだろう。」ギィ

剣客「腕比べをする気か。」

女戦士「やめましょう。無駄な消耗は避けるべきですし、危険が城下に及ぶかも知れません。」

勇者「そ、そうですね。二人とも、止め、るん……だ…………?」

剣客「もう居ないな……」

女武闘家「なんてバカな…………」

僧侶「追い掛けますか?」

勇者「狼なら大丈夫でしょうが……狩人さんがどうか……」

剣客「俺が様子を見に行って来よう。」ギシッ

勇者「すみません。ありがとうございます。」


狩人「そらそらそら!!」ズバッ ズバッ

狼「ゥガァゥ!」ガブッ シャッシャッ

魔物「ギャアアアアアス!!」ジタバタ

狩人「コイツで……打ち止め!」

魔物「ゥガッ!…………」ピクッ

狼「……ざっとこんなもんか。」ペッ

狩人「ああ。……しかし、お前、やるなぁ。」

狼「ふん。」

剣客「もう片付いたのか。早いな。」

狼「七割は殺したが三割は逃げた。残りはもうここらには近付かないだろう。」

狩人「しかし狼が爪を使うとはなぁ。」

狼「お前は弓と剣を使っていたが、短刀は使わないのか。」

狩人「まあ、普段使わないだけで一応使えるには使えるさ。」

狼「それと一緒だ。狼の爪は犬とは違って鋭いからな。」

馬車

勇者「ダメじゃないか。危ない事をするなって。」

狼「ああ。悪い。」

狩人「ははは、すまんすまん。」

女戦士「出発しましょう。」

勇者「え、ええ。では、出発。」

港町

勇者「着きましたね。」

女戦士「結局、あの後戦闘は起きませんでしたね。」

女武闘家「その方が良いわ。」

狼「……この町、匂いが変だ。」

狩人「匂いー?…………確かに、港町にしちゃ、活気がなさすぎるな。」

剣客「調べるか?」

勇者「剣客さんはここまでなのでは?」

剣客「そうだ。ここ、”まで”だ。一度位、腕を振るわせてくれ。」

勇者「ありがとうございます。」

女武闘家「まずは宿を探しましょう。」

狼「こっちだ。」トテトテ

宿

勇者「さて、と。妙だね。」

狩人「スタッフの動きもぎこちない、船が出てない。教会がしまってる。」

剣客「武具や道具、日用品、食品。全ての店は店員が立ってるだけだ。」

僧侶「妙ですね。」

剣客「少なくとも、俺の聞いている港町ではない。」

狼「町に入ってまず匂ったのは、魔物と獣の匂いだ。」

狩人「お前も獣だろうが。」


勇者「何か、魔物の力が動いていると?」

剣客「獣と魔物の匂い……か……」

僧侶「考えられるとすれば…………」

狩人「オークや人形の魔物だな。」


女武闘家「この後どうするのかしら。」

女戦士「恐らく、この町がおかしい原因を究明、解決にあたるものと思います。」

女武闘家「アンタ……なんでそんな硬い口調なの?」

女戦士「すいません。職業柄です。気にしないで下さい。」

女武闘家「まあ、良いけど……とりあえず、勇者達の部屋に行くわよ。」

女戦士「はい。」

期待


ガチャ

女戦士「失礼します。」

女武闘家「……」ペコッ

勇者「ああ、今から動けるかい?」

女戦士「勿論です。」

狩人「まずは町長に話を聞きに行くんだと。」

剣客「聞きたい事が沢山あるからな。」

女戦士「分かりました。」

町長邸宅

勇者「どうも失礼します。」ガチャ

女戦士「ノックくらいした方が良いのでは……」

女武闘家「業界では当たり前、ね。」

狼「!」ケホッケホッ

剣客「おい、待ってくれ、剣が……」

狩人「何やってんだよオッサン。入れねーじゃねえか!」

剣客「悪い悪い。得物がドアをくぐれなくてな。一旦横にしよう。」スッ

狩人「ったく……」

狼(この家…………)

勇者「町長さんはいらっしゃいますか?」


町長「ああ、はい。私が町長ですが……」オドオド

勇者「私はα国の勇者として参った者です。幾つかお尋ねしたい事がありまして。」

町長「は、はい。何でしょうか……」オドオド

狼「…………」

剣客「まず、なんでギルドや酒場がやっていない?この町は船もそうだが、
   青年ギルドの動きが活発な事でも有名な町だっただろうが。」

町長「ああ、それは、その、ギルドの青年達や酒場の主人達が出ていってしまいまして……」

剣客「出ていった?追い出されたとでも?」

町長「は、はい……」

狩人「ふーむ……」


女武闘家「ねえ、なんか、変な匂いがしない?」ボソボソ

女戦士「ええ……」コソコソ

狼「獣の匂い……オークだ。」ボソボソ

女武闘家「オーク?」コソコソ

狼「恐らく、町に入った時に匂った原因はこの家だ。」ボソボソ

女戦士「この家にオークが頻繁に出入りしていると……?」コソコソ

女武闘家「ギルドや酒場が潰れていったのも、関係があるのかもね。」ボソボソ


勇者「船が出ていないのは、どういう事なのでしょう?」

町長「そ、それは……」

狩人「それは?」

町長「それは……………ええっと……」

剣客「ハッキリ言え!!」

勇者「止めましょう。町長さんを責めてもどうしようもありません。」

町長「じ、実は、町が度々魔物の大きな群れに襲われていまして…………
   その、襲撃の時が、大体、貿易等の船が来ている時だったんです…………」

剣客「ふむ…………」

狩人「だから、貿易船が襲われてお互い商売にならないから、船が来なくなり……」

勇者「港が閉じた、と。」

町長「は、はい…………」


剣客「ここら辺で大きな魔物の群れの巣があるとすれば…………」

狩人「東に行った所に洞窟がある。でかくて地中にまで繋がっている所だ。」

勇者「まずはそこか…………」

剣客「行くか。」

勇者「それでは町長さん、お邪魔しました。失礼します。」ペコリ

馬車

剣客「どうもキナ臭いな…………」

狩人「あの町長さん、絶対何か隠してるぜ。目を見りゃ分かる。」

狼「あの家、オークの匂いが強かった。間違いなくあの家には何かある。」

勇者「まずは洞窟に行く事が先決でしょう。話はそれからです。」

剣客「アンタの意見を聞きたいな、僧侶さん。」

僧侶「…………町長の家には邪気がありました。あれは人間の物ではありません。
   確かに、あの町長は非常に胡散臭い人物ではありましたが、勇者様の
   仰る通り、まずは洞窟を調べる事を優先すべきかと存じます。」

剣客「…………ふん。」ギィ ストッ スタスタ


勇者「何処へ行くんです?」

剣客「忘れ物をすた。町長の家に行く。」

狩人「何かあっては面倒だ。俺達も付いていこう。」

狼「おい、俺を巻き込むな。」

狩人「まあまあ。良いだろ。」クイクイ

狼「止めろ。引っ張るな。咬むぞ。」

狩人「お前の鼻が必要なんだよ。」コソッ

狼「チッ、良いだろう。」

狩人「流石、話が分かるなハチ公!」

狼「この!」ガブリ

町長邸宅前

狼「気のせいか、さっきよりも匂いが強くなっている気がする。」

狩人「まあまあ、中に入れば分かるさ。」

剣客「静かに。」ピタッ

狩人「?」ピタッ

狼(やっぱり臭えな…………)ピタッ


???「これはまずいんじゃないか?」

???「分かってる。とりあえず洞窟とやらに向かったらしい。」

???「なら今日1日は猶予がある。」

???「ずらかるか?」

???「しか無いだろうな。」

???「それからどうするんだ?」

???「それこそ、一旦身を隠して奴等の言っていた洞窟とやらに行けば良いだろう。」

???「そうだな。」


狼「豚共が…………」

剣客「何匹だ。」

狩人「多く見積もっても五匹。豚の鳴き声なんぞじゃ判断は出来ねえな。」

剣客「ぶっ殺してやる。」

狩人「おう。」ドカッ


オークA「て、テメエらは、さっきの!!」

狼「さっきの……?」

オークB「あ、バカ!」

剣客「本物の町長は何処だ!?教えれば命くらいは勘弁してやる!」

オークC「お、奥の部屋に閉じ込めてある!」

オークD「お、お前!!」

剣客「そうか……」

オークC「これで助けてくれんだろ!?」

狩人「助ける訳ねえだろ。バカな家畜だ。」

オークA「ち、畜生!」バッ

狩人「ふん。」スパッ

オークA「ぐ、ぁ…………」バタン


オークB「ひ、ひいぃぃぃ!!」ダダダダ

狼「逃がすか!」ガリッ ブチブチッ

オークB「ぁ……」グラッ ドタッ

オークC「頼む!命だけ、はっ…………」プシュゥゥゥゥゥゥ バタン

狩人「ケッ。」

オークD「クッ…………」

剣客「大人しく死ぬか。良い潔さだ。豚の割りにはな。」ズバッ

馬車

勇者「遅い…………」

僧侶「かなり大きな物を忘れたようですね。」

女武闘家「夢とか愛とか希望とか?」

女戦士「様子を見に行った方が良いのでは?問題を起こしていたら…………」

勇者「確かにあの三人なら……」


「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

勇者「!?何だ!?」

女戦士「女性の悲鳴……嫌な予感がします。」

女武闘家「アタシが行こうかな。それと女戦士、アンタも来て。」

女戦士「分かりました。」

勇者「頼みます。」

町長邸宅

狼「……こっちだ。」スンスン

狩人「確かに奥の部屋みたいだな。」

狼「……ここだ。」スンスン

剣客「大箱?」

狩人「中身が死体でも金貨でも良い、とりあえず開けようぜ。」ガチャ

剣客「……空?」

狼「箱を開けて匂いが強くなった。間違いない。」

剣客「……本当か?」

狩人「…………この底、偽物だな!?」バコッ ガラン

剣客「二重底とは……豚の割には粋な真似をしやがるぜ。」

狼「金や宝の匂いはしない。後はあの町長が生きていれば勝手になるだろう。」

剣客「そうだな。行くか。」


「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

狩人「女の声だ。良い女と見た。」

剣客「近いぞ。住人がオークの死体を見付けたか?」

狼「それなら俺が匂いで気づく。それとは別件だろうな。」

剣客「人助けは勇者一行の役目だ。行くしかなかろうな。」

狩人「恩を返そうとするような健気な女なら良いけどな。」


狼「匂いが近いぞ。…………オークの匂いもな。」

狩人「嫌な予感しかしねーぜ。」

剣客「まあ、自分で撒いた種と言うか、身から出た錆びと言うか…………」

狼「匂いとは別だが……いやな空気が漂っている…………」

剣客「邪気って奴か。さっきのオーク共に比べてもか?」

狼「比較出来ない程の悪意と強さを感じる……」

狩人「一応、矢は何時でも射てるようにしとくよ。」

港町 宿前

町娘「ひぃ!命だけは!命だけは!!」

狩人「やれやれ、弓矢の腕には絶対の自信があるが、
   嫌な予感には的中率の劣る事ったら無いぜ。」

剣客「さっきのオークの仲間か……随分とデカイのが残っちまったな。」

狼「しかも頭が悪そうだぞ。」

オークトロール「グヘヘヘ……オマエら、ナカマコロした。
        だ、だからオレもオマエらのナカマコロす。」

女武闘家「ちょっと!アンタ達が原因なの!?」

女戦士「…………」

剣客「まあ、そうだな。」

女戦士「……」ハァ


狩人「事情は後で話す!まずは……」ググッ ヒュオ

ザクッ

オークトロール「グアアアアアッ!」ポロッ

町娘「きゃあああああ!!」ヒューー

剣客「おっと。」ダキッ

狩人「うーわ、オッサン、良いとこ取り。」ヒュオ ザクッ

オークトロール「グウウウウウウ!!」ブン

狩人「ぅおっと。」サッ

剣客「参ったな…………」


女武闘家「やああ!」ブン

オークトロール「オソい。」ガッ

女武闘家「デブの割には硬いわね……」

女戦士「それに速い。」

剣客「離れてろよ。」

町娘「は、はい…………」

狼「俺と狩人で撹乱する。その隙に足を叩け。」

剣客「ああ。やりたい事は大体分かったぜ。」

狩人「ホント、賢い猟犬だぜ!」

狼「咬み殺されてえか。」


狩人「さて、と。こっち向けよ豚鼻!!」ヒュオ

オークトロール「もうアたらない。」サッ

狼「バカが。」ダダダ

オークトロール「!?セナカカユい。」ブンブンジタバタ

狩人「行け!」

女戦士「この!」ガッ

女武闘家「ふっ!」ガッ

剣客「らぁ!」ブン ガッ

オークトロール「イテぇ……」ガシッ

狼「ああ!このっ!ガリッ

オークトロール「ウッ!イテぇイテぇ。」パッ

狼「クソ豚が…………」スタッ


狩人「まさか三人がかりでよろけさせる事も出来ねえとはな……」

狼「もう一回だ。」

狩人「ああ、まあ、良いが……」

剣客「アイツ、見た目以上に硬ぇぞ。どうする?」

狼「三人共武器は刃物だ。なら脚の腱を狙え。」

女戦士「分かりました。」

女武闘家「腱……迂闊だったわ。」

狩人「もう一度行くぞ!」


狼(奴の体長は大体7メートル程……なら、宿の屋根だな。)ダダダダ

狩人「おい、どうするつもりだ!?」

狼「黙って奴の気を引いてろ!!」ダダ バッ バッ

狩人「お、おう!」ヒュオ

オークトロール「オマエ、ユミウルサイ。」ブン

狩人「おっと。ソイツは悪かったな!」サッ

狼「よし。」タタタタタ


狼「おい、汚え豚。こっちを向けよ。」

オークトロール「アア?」クルッ

狼「バカが。」ダダダダ バッ

オークトロール「あ、コンドはアタマ。」

狼「お前の耳、食い千切ってやるぜ。」ガリッ ブチ

オークトロール「ギャアアアアアアアアアアアア!!」ドタバタ ジダンダ

狼「ククッ……」ブチブチブチ

剣客「今だ!」ブゥン ズバッ

女武闘家「やああああぁぁ!!」シャッ スパッ

女戦士「はあああああ!!!」ブン ズバッ

 ゴパッ


オークトロール「グアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」バタン

狼「おっと。両足の腱を斬ったか。やるな。」ストッ

オークトロール「グッグギギギ……」バッ

剣客「腕だけで立つ気か!?」

狩人「さて、そろそろだな……」ニヤッ

オークトロール「オレ、カラダウゴかない……」

狩人「回りは遅いが、確実に自由を奪う毒を撃ち込んだ。終わりだ。」


狼「耳の次は首筋だ。豚野郎。」ガリッ ブチブチ グチャリ

オークトロール「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

狼「じゃあな。」スタッ

オークトロール「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

剣客「往生際が悪い。うるさすぎだぜ。」

オークトロール「オオオオオオオオオオオオ!!」

女戦士「…………」

オークトロール「オオオオオオオオ!」

女武闘家「憐れな家畜ね…………」

オークトロール「オオオオ……」ビクッ

狩人「この死体、どうする?」

剣客「さあな。放っておけば勝手にどうにかなるんじゃないか。」


剣客「コイツ、デカイが、オークとトロールのハーフか何かか?」

女武闘家「アタマの形はゴブリンよ。肌の色も緑だしね。」

女戦士「しかし、ゴブリンの血は半分も入っているとは思えません。」

狩人「緑が濃くないからな。トロールもゴブリンも体毛は薄い筈なのによ。」

狼「コイツはそれなりにあるな。……!?」

狩人「どうした?」

狼「手が……手の指が……」

剣客「?……ウッ!?」


女戦士「指が、五本……」

女武闘家「な、何よ。猿かゴリラか、入ってる訳?」

狼「もう最近は数がめっきり減った。今や世界的に見ても数が少ない。」

狩人「この地方にはその類いはもう居ないだろうな。」

女武闘家「え?どういう事?」

剣客「もっと居るだろうが。数が多くてここら辺に幾らでも居るのが。」

女武闘家「…………ゴメン、思い付かないわ。」

狼「……お前らの事だ。」


狩人「オークの指は二本。トロールが種類によるが三本か四本。ゴブリンが四本。」

女戦士「…………魔王軍直系の軍は四つあります。死神党、悪魔会、亜人組、魔獣団。
    その中の悪魔会の筆頭、レヴィアタンは、人間や生物と魔物を異種交配させ、
    自分達の道具にしていると、聞いたことが、あります。」

狩人「……流石だな。正に悪魔の所業って奴だ。」

狼「……まずは、勇者に伝えよう。」

馬車

勇者「ああ、無事でしたか。」ホッ

剣客「ああ、まあな。」

狩人「まずはさっさとずらかろう。」

女戦士「馬車を出して下さい。」

勇者「どうかしたんですか?」

狼「説明は後だ。教えるべき事が沢山ある。」

女武闘家「まずはここから離れなきゃ。」

勇者「わ、分かりました。」

平原 馬車

勇者「人間と魔物の、異種交配…………」

狼「ああ。」

勇者「しかし、どうやって…………」

剣客「やってるのは悪魔会の筆頭、つまりNo.3のレヴィアタンだ。
   悪魔の中には当然インキュバスやサキュバスも居るだろう。」

狩人「そんな面倒な事せず、魔物に直接犯させて居るかもな。」

女戦士「っ……」ピクッ

勇者「…………方針を、改めよう。」

狼「これからどうする?」

勇者「魔王を倒せば終わり。だから一直線に魔王の元へ行けば良いと思ってた。
   今起きている現実に対して見て見ぬふりをする訳にはいかない。」

狼「…………」

勇者「まずはレヴィアタンを討つ。魔王や直系の長はその後で良い。」

剣客「フッ、良い顔になってきたじゃねえか。勇者さんよ。」

狩人「あれ?オッサンなんでここに居るんだ?」


狼「アンタ、港町まで行くついでの護衛じゃなかったのか?」

勇者「あ、そうだ。忘れてた。」

剣客「まあ、確かにその予定だったんだが、荒稼ぎ出来る筈の
   青年ギルドも無くなっていて、町長の家滅茶苦茶にした後
   オークの死体がゴロゴロしてるような町で暮らす気にはな。」

女武闘家「まあ、アクシデントが有りすぎたわよね。」

僧侶「次は何処に行くのですか。」

勇者「うーん……あの大きなオークが異種交配で生ま…………ん?」

剣客「どうした?」

勇者「あの大きなオーク……何処に隠れて居たんでしょう……」

狩人「巨大化出来る機能を持っていた、とか?」

女戦士「怒りに応じて、なら非常にあり得ることですね。」

勇者「あの町に所謂キメラのオークが居て、人口は非常に少なかった……」

剣客「あのタヌキ豚…………」


女武闘家「何?どういう事?」

狩人「目的地はそう遠くないって事だよ。」

女武闘家「意味わかんないわ。」

狼「町長に化けてたオーク曰く、青年ギルドの若者や酒場の人間は町から居なくなった。
  そして代わりに居たのはオークやキメラ。奴等はそう遠くに動ける脚を持ってない。」

女武闘家「え?って事は…………」

勇者「そこにレヴィアタンが居るか否かはさておき、
   異種交配が行われている場所が近くに有る事は
   充分に考えられますね。」


剣客「奴ら、東に有った洞窟については気付いてなかったようだぞ。」

勇者「なら奴らの本拠地があるのは港町の北か南…………」

女戦士「北には大きな山があります。そこになら何かあってもおかしくありません。」

狼「いや、ちょっと待て。あのオーク達は本当にレヴィアタンの配下か?
  オークは直系四組織の中では亜人組に入るんじゃないのか?」

狩人「キメラのオークが居たからそれは間違いだろう。」

狼「だが思い出せ、奴等根城を東の洞窟に変えようとする相談をしてなかったか?」

剣客「……していたな。」

狼「奴らの根城とはあの町だ。そして奴等がレヴィアタンの配下だと言うなら…………」

勇者「まさか……町その物が異種交配の根城?」

女戦士「だとするなら港がしまっていたのも
    宿のスタッフがぎこちなかったのも
    納得出来なくは無いですね。」

狩人「一番怪しい場所は何処だ……?」


勇者「まずは港町に戻りましょう。」

剣客「そうだな……」

狼(実験をするには地下が最適だろう…………まさかキメラと戦っている間
  ずっと足の下では人間と魔物の雑種が創られてた、なんて笑えない話だ。)

港町

勇者「着きましたね。」

剣客「さて、と。怪しい所から回ってくとするか。」

狼(一番怪しかった所は…………)

ノリで急に安価
一番怪しかった所は?

1.町長の家
2.宿
3.教会

>>54

教会行ってみようぜ


狼「あの教会……何か妙じゃ無かったか?」

女戦士「教会……?」

狩人「そう言えば、やけに厳重に閉められてたな。教会なんぞ神官の神具くらいしか
   金になるものは無いのだから、わざわざ盗人も来ようとなんてしないのによ。」

剣客「見たところ、あれは魔術で封じられてたようだが……
   ……アンタ、神官だってんなら問題無く解けるよな?」

僧侶「…………ご安心を。一通りの術は学んでおります。」

狼(誰に学んだんだろうな……どうにも匂う奴だ。)

勇者「とりあえず、教会へ行きましょう。」

教会前

女戦士「ここですね。」

勇者「確かに……厳重にされてるみたいだ。これは異常だよ。」

女武闘家「普通に開けられないの?…いたっ!」バチッ

僧侶「いけません。魔法による防護壁に素手で触るのは危険です。ここは私が。」

剣客「お。」

僧侶「……………………」ブツブツ

ガタガタガタ ガチャガチャ ガチャリ スーッ

僧侶「どうやら上手く行ったようです。」

狩人「早いな。」

勇者「中に入りましょう。」ガチャ

教会

勇者「!」

神官「おのれ、鍵を開けて入るとは何事か!罰当たりめ!神の敵め!」

剣客「こいつは?」

狼「魔物だ。香水で隠しちゃ居るがな。」

狩人「やれやれ…………ふん!」ググググ ヒュゥア

神官「グホッ!」ザグリ バタン

女戦士「額の真ん中に深々と…………」

剣客「今更ながら、中々の腕だ。」

勇者「怪しい所はありませんか?捜しましょう。」

狼「……………………」スンスン スンスン

狩人「どうだ?」

狼「こっちだ。」トトトト


女武闘家「……祭壇?」

女戦士「至って普通では?」

狩人「ふーん……………………ここだろ?」ガン

狼「底が抜けた途端悪魔の匂いと邪気が強くなった。大当たりだ。」

剣客「さて、と。何が出るやら楽しみだぜ。…………まさか本当に教会とはな。」

狩人「悪魔が教会で悪事って……奴等完全にバカにしてやがる。」

教会地下

勇者「はぐれないように行きましょう。」

女戦士「はい……」

女武闘家「気味の悪い……」

狼「その感覚は正しい。この場所には人間の持ち得る気が無い。あるのは邪気ばかりだ。」

剣客「人間の匂いは?」

狼「あるような気がする、程度だ。俺の望みであって、本当は無いかもしれん。」

狩人「上等だ。行ってみようじゃねえか。」

勇者「まずは進みましょう。」


狩人「悪魔どもやオークにぶち当たら無いのがかえって不気味だな。」

狼「さっきから……匂いが強くなって来ている。今では声も聞こえる。」

剣客「案内しろ。急ぐぞ。」

狼「あ、ああ…………」

勇者「具合でも悪いのかい?」

狼「いや、単純に……単純に、行きたく無いだけだ。」

狩人「?なんでだ。」

狼「いや、その……俺は、この先にある光景をみたくない……」

女戦士「…………」

女武闘家「…………」


狼「近いぞ。」

狩人「分かってる。匂いももう俺達にも感じ取れる。」

剣客「それに、女の悲鳴もな……」

勇者「悪魔め…………」グッ

女戦士「……………………お、恐らく、あの門を潜った先でしょう…………」

狼「間違いないだろうな。」

剣客「俺と狩人で突入する。」

狼「では俺と勇者が続こう。」

勇者「待ってくれ。突入は……俺にさせろ。」

狩人「……!」

剣客「ほぉ…………」

狼「俺は依存ないが。」

剣客「では俺と勇者殿で突入しよう。狩人は弓で狼と続け。」

狩人「了解だ。」

悪魔祭壇

 バァン

勇者「…………」

娘「た、助け……ヒイイイィィィィ!!」

悪魔「ほおぉ、人間とは珍しい……」

娘「お願い、もう許し……」

悪魔「何を言う。ここからが本領よ。」ドクドクドク

娘「いやあああああああっっ!!」

勇者「止めろ。」

悪魔「クククククク…………」ドクドクドク

剣客「その娘を話せ、雑魚。」

悪魔「雑魚だと?我が誰だか知っていての言葉か?」

狩人「レヴィアタンか。」

レヴィアタン「ほぉう。我が名を知っているとはな。誉めてやろう。」

僧侶「遂に見つけた…………」


レヴィアタン「……!?お主、名を名乗れ!」

僧侶(?)「アンタみたいな下っ端に名乗ってやる義務は無いんだけど…………」

狼(……………………?)

女剣聖「私は女剣聖。アンタみたいな悪魔を斬り祓う為の存在よ。久し振りね。」

勇者「久し振り……?」

レヴィアタン「お前のような小娘、見覚えなどないわ。」

女剣聖「あら、酷い。八年前とは言え、あんな事をした相手を忘れるなんて。」

剣客「…………?」

レヴィアタン「ま、まさか貴様…………」

女剣聖「あの時私を生かしたのは失策だったわね。アンタの残した穢い物が、
    私の力になるなんて、想像も出来なかったでしょ?間抜けな悪魔。」

狩人(何だろうな……大体の想像は付くけどなんかわかんねえや。)フアァ


レヴィアタン「気が変わった……我が直々に相手をしてやるとしよう。弱き人の子よ。」

狩人「何だか知らんが光栄だぜ。すぐに息の根止めてやる。」

女剣聖「手を出さなくて良い。邪魔しないで。」

剣客「そう言うな、僧侶さんよ。俺達にも一枚噛ませてくれ。」

勇者「レヴィアタン、お前は俺が殺す。」

レヴィアタン「ほぉう?」

勇者「人間の尊厳を穢し、辱しめるお前の首は、人の救い手たる俺が斬る。」

狼(人の救い手……大きく出るにも程がある。)

レヴィアタン「やってみるがいい、弱者よ!」バッ


勇者「……っく!」ガキン

レヴィアタン「どうした?そんなものか?軽いぞ。人の子ぉ!」ブン

勇者「っ!」サッ

剣客「つぁっ!」ブン

レヴィアタン「ほぅ……中々やる……」ギリギリ

剣客「悪魔のNo.3がこんなものとは……そこが知れるな!!」グアッ

レヴィアタン「ぬぅ……」ズザザザー

狼「背中に気を付けろよ……」サッ ヒュオ

レヴィアタン「ぐぅお!?」ズパッ

狼「ふん。鈍い奴め。」

レヴィアタン「この畜生ごときが!」ブン

狼「その畜生の爪や牙に、精々翻弄されて事だ。」ギリッ ブチ

レヴィアタン「うぅお!」フラ


女剣聖「終わりよ。レヴィアタン。」

レヴィアタン「…………」

女剣聖「この数では仕方ないかしら。アンタは私に力を貯める時間を与えてしまった。」

レヴィアタン「魔の力……か。」

女剣聖「聖の力もね。…………ルシファーの剣に焼かれて死ね、レヴィアタン。」

レヴィアタン「クッ。」

女剣聖「…………」ブン

レヴィアタン「…」バタリ

冒険の初っ端から結構強いな


勇者「…………」

剣客「さて、と…………」

狩人「改めて見ると、酷いな…………」

女戦士「何でしょうか、この筒……ガラス?」

女武闘家「男も女も全裸で閉じ込められてる…………」

狼「魔物の精らしき物もこっちにはあるな。」

勇者「人間は生きてるかい?」

狼「ダメだな。死の匂いが強すぎる。植物状態って所だ。」

勇者「そうか…………」

女剣聖「どうするの?勇者様。」

勇者「貴女については外に出てから。ここは……焼き払おう。」


狩人「本気かよ!?」

剣客「勇者よ。死にかけとは言え人間だ。こんな所で焼き殺すのは…………」

勇者「人間だからこそです。こんな様を誰かに見せるべきじゃない。
   誰にも見られぬよう、そっとここで、眠らせてあげたいんです。」

女戦士「私は…………勇者様に賛成です。」

女剣聖「私もよ。」

女武闘家「全裸で閉じ込められてる姿なんて出来れば見られたくないわよ。」

狩人「まあ、そうか。何にせよ、俺は勇者に従うだけだ。」

勇者「油を撒こう。最後に狩人、火矢で終わりにしてあげてくれ。」

狩人「了解だ。」


剣客「油、大体撒き終わったぞ。」

勇者「ありがとうございます。皆下がって。狩人。」

狩人「了解。」

狩人(憐れな、そして誇り高き青年達よ…………)ググググ

狩人「さらば。」ヒュア

魔王城

サタン「レヴィアタンが死んだ。」

ハデス「なんと。」

ティフォン「そりゃ、あれか?おたくの……」

サタン「ああ。俺の片腕だ。」

ハデス「病死では無かろうな。何者かに?」

サタン「恐らくは……人の子。」

カオス「レヴィアタン様が人間ごときに!?まさか!」

サタン「気持ちは分かる。お前達亜人にとってあやつは父のような存在。だが…………」

カオス「く…………」

ティフォン「何処へいくってんだ、カオス。」

カオス「その人間共を殺しに行くのです!」

ハデス「落ち着けカオス。焦ってはならん。レヴィアタンを
    倒すとなれば中々の手練れ。先ずは策を練ろうぞ。」

カオス「…………くぅ……」

馬車

勇者「さて、と。聞かせて貰いましょう。」

女剣聖「えへっ。」

狩人「えへっ。じゃねえ。」

女剣聖「何から聞きたいの?」

勇者「まずは、自己紹介から。身を偽っていた理由と目的を。」

女剣聖「私は女剣聖。目的は、レヴィアタン等を始めとする悪魔を滅ぼす事。
    事情を話してどうのこうのするのが面倒だと思ったから、
    レヴィアタンを倒すまでは僧侶のふりをさせてもらってたわ。」

剣客「…………」ポリポリ

勇者「僧侶としての役割は?」

女剣聖「一通りはこなせるわよ。」

勇者「なら、問題はありませんが。」


女戦士「信用して良いのですか?」

勇者「先程の戦いを見た限り、身分の疑わしさよりも、
   戦闘スキルの頼もしさの方が上回りました。」

狼「僧侶のふりをしていた時と違って妙な匂いも違和感のオーラも無いな。」

狩人「ま、ウチで最も鼻の利く奴が言うなら間違いは無いだろうな。」

女武闘家「ま、良いんじゃない。強かったし。」

剣客「だな。」


勇者「さて、もうすぐ町に着くよ。」

狩人「もう暗いからな。早い所風呂入って眠りたいぜ。」

剣客「同感だ。宿に着いて風呂に入ったら、一杯やろうか。」

狩人「お!良いねえ!」

女戦士「ご一緒しても?」

剣客「勿論。酒は人数が多い方が美味いさ。」

狼「そろそろ着くようだ。」

カジノシティ

狩人「デカイな…………」

剣客「懐かしいな、この明るいネオン。」

女武闘家「眠れる気がしないわね。」

女剣聖「スロットでも回してこようかしら。」

狩人「もう聖職者は止めたのかよ。」

女剣聖「今は一人の女よ。」

剣客「まあまあ、今日の所は皆で飲もうじゃねえか。なあ、勇者殿?」

勇者「ああ、いえ。僕は飲めないんです。異常に弱くて……又の機会に。」

狩人「なんだ、残念だな。」

剣客「まあ、仕方ない。まずは宿探しだ。」

宿 勇者(with狼)・女戦士部屋

勇者「広いですね。」

女戦士「裏街の宿なので、不安になりましたが、安心しました。」

狼「大抵の宿がペット禁止だったからな。」

勇者「皆気にしてないよ。君が悪い訳じゃないさ。」

狼「…………ああ。」

勇者「すみません。ホントは男女別の部屋にしたかったのですが。」

女戦士「気になさらないで下さい。満室だったのなら仕方ありません。」

宿 女剣聖・女武闘家

女剣聖「ふぅー、やっと一息。」

女武闘家「アンタ、これからどうするの?」

女剣聖「んーと、とりあえずお風呂入って、狩人君達の所行って来ようかな。」

女武闘家「そう言う事じゃなくて、レヴィアタンを倒したでしょ?」

女剣聖「ああ、そう言う事?…………サタン、ひいては魔王の息の根を止めるまでは、
    私は戦いを止めるつもりは無いわ。ただひたすらに悪魔を殺し続ける。」

女武闘家「……そう。」

女剣聖「……それだけでいいの?」

女武闘家「他にも聞きたい事は沢山あるけど、アタシ、そう言うの苦手だから。」

女剣聖「ふーん。」

宿 剣客・狩人部屋

狩人「さて、と……んじゃ、俺は酒とツマミを買ってくるぜ。」

剣客「俺も行くか?」

狩人「別に良いって。そんくらい俺だけで。オッサンは風呂でも入ってな。」

剣客「ああ。すまんな。」

狩人「んじゃ、行ってくるぜ。」


狩人「帰ったぞ、オッサン。」ガチャ

剣客「おう、悪いな。風呂、入って来いよ。」

狩人「おう。」スタスタ

女戦士「女戦士です。」コンコン

剣客「お、早速来たか。入ってくれ。」

女戦士「失礼します。」ガチャ

剣客「今狩人が風呂に入ってる所だ。もうすぐ他も来るだろう。」

女戦士「先に始めますか。」

剣客「だな。辛抱ならん。」ポン


女剣聖「お邪魔しまーす。」ガチャ

女戦士「ノック位してはいかがです?」

剣客「構わんさ。さあ、飲め飲め。」グビグビ

女剣聖「頂きまーす。」

女戦士「女武闘家さんは?」

女剣聖「お風呂に入ってるわ。もうすぐ来ると思うけど。」

剣客「さあさ、酒はいくらでもある。まずは飲もうじゃねえか。」


狩人「ふぃー、さてさて、俺も混ぜてくれ。」

剣客「お、来たな。飲め飲め飲め飲め。飲め。」

狩人「オッサン、さてはもう既に大分飲んでるな?」

剣客「バカ野郎、ここからが本番だろうが。おら、さっさと飲まんか。」

狩人「んじゃ、俺も貰うかね。」ポン グビグビグビ プハッ

女剣聖「すっご、ボトル一気に。」

剣客「ほぉ……出来るな。」

狩人「へっへー。」


狩人「やっぱ風呂上がりは酒に限るぜ。」

女武闘家「来たよ。アタシも混ぜて。」コンコン

狩人「おう、来たな。どーぞ。」

女武闘家「こんばんは。」ガチャ

狩人「あれ、そういや、犬っころは?」

女戦士「狼さんは勇者様とご一緒のようです。」

狩人「あー、アイツの為に肉も買ってきたのにな。」

女戦士「私が呼んできましょう。」

剣客「お、悪いねえ。」

女戦士「いえ。」

宿 中庭

勇者「…………」ブン ブン

勇者(レヴィアタンと戦った時、全く役に立てて居なかった……)ブンブンブン

勇者(勝てたのは数が多くて、たまたま中に強い人間が居たからだ……)ブンブン ブォァ

勇者(こんなんじゃ、魔王どころか、直系四組織すら倒せない……)ブブブン ブンブン ブォオン

勇者「強くならなければいけない…………」

宿 勇者・女戦士部屋

狼「…………」ジーー

狼(勇者…………)

女戦士「……」ガチャ

狼「どうした?」

女戦士「勇者様は入浴中ですか?」

狼「いや、その、な……」

女戦士「?」ヒョイ

狼「…………中庭で鍛練の最中だ……」ハァ

女戦士「素振り、ですか……」

宿 中庭

勇者「……!」ピタッ クルッ

女戦士「お邪魔になってしまいましたか?」

勇者「い、いえ、そんな事は……しかし、何故ここに居ることが分かったんですか?」

女戦士「窓から、見えていましたよ。」

勇者「これは……迂闊でした。」

女戦士「少し、お休みになっては?」

勇者「そう、ですね…………」


女戦士「お風呂にでも入ってきては?」

勇者「そうですね。そうしましょう。」

女戦士「背中、お流ししますよ?」

勇者「いえ、お気遣いなく。」ハハハ

女戦士「す、すみません、余計な事を……」シュン

勇者「ああ、いえ、その、そういう意味では…………」

宿 勇者・女戦士部屋

狼「…………」ジーー

狼「……さっさと風呂入れよ…………」

温泉 家族風呂

勇者「え、ちょっ、本当にいいんですか。」

女戦士「勇者様がよろしければ。」

勇者「いや、僕は構わないですけど……」

女戦士「では、行きましょう。」グイッ

勇者「は、はい……」


カッポーン

勇者「女戦士さん、お風呂まだだったんですか。」ザバー

女戦士「いえ、もう入りました。」ザバー

勇者「えぇ。」

女戦士「ただ、その……」

勇者「はい?」

女戦士「勇者様は、その役職についていながら、あまり他のパーティーメンバーに、
    その、あまり、ねぎらわれたりする事が少ない様に見えたものですから……」

勇者「あ、ああ……そういう事ですか。」クスッ

女戦士「?」

勇者「そんなに気にしなくて良いんですよ。僕だって人間ですから。」

女戦士「は、はい……」

勇者「それに、敬語じゃなく、普通に話してくれて良いんです。様付けもしなくて良い。」

女戦士「じ、じゃあ……」


女戦士「勇者、も、その、私の事を呼び捨てにして良い……」

勇者「……」クスクス

女戦士「っ。」カアアァァ

勇者「分かりました。いや、分かったよ。女戦士。」

女戦士「……」コクッ

勇者「それじゃ、もう少し浸かったら上がろうか。あまり長く入っているとのぼせそうだ。」

女戦士「う、うん。」

宿 勇者・女戦士部屋

勇者「ふー。」ガチャ

狼「遅かったな。お楽しみだったな。」

女戦士「…………」カアアァァ

勇者「まあ、まあ……」

狼(よく分からんがなんか腹立つな………)イラッ

女戦士「あ、狼さん。狩人さんがお肉を買ってきてるそうですよ。」

狼「何!?何故もっと早く言わない!!」ダダダダダ

勇者「速い…………」


ワイワイ ガヤガヤ

勇者「女戦士も行ってきたら?楽しそうだよ。」

女戦士「勇者は、行かないの?」

勇者「僕は下戸だから。」

女戦士「じゃあ……まだここに居ても良い……?」

勇者「勿論、構わないよ。」

女戦士「うん。」

宿 剣客・狩人部屋

チュンチュン

剣客「……」グーグー

狩人「うぅ……頭が痛い…………」

女剣聖「……」スピースピー

女武闘家「あぁ……朝か……」ウトウト

狩人「くっそ……二日酔いだ……俺とした事が…………」

女武闘家「……寝ちゃ……ダメ…寝ちゃ…寝……」ウトウト

女武闘家「…………」スースー

宿 勇者・女戦士部屋

勇者「……ん……」パチ チラッ

女戦士「…………」スヤスヤ

勇者「起きよう、女戦士。もう朝だ。」トントン

女戦士「んぁん…………」ゴロッ

勇者「起きなきゃダメだよ。」クスッ

女戦士「んー……」クルッ

勇者「……ふふっ。」

カジノシティ 街中

狼(結局部屋には戻らせて貰えなかった……勇者…………)トテトテ

狼(まあ、朝早くこんな風に散歩するのも悪くない……)トテトテ

狼(……朝日が心地良い。)ピタッ

狼(腹が減ったな。)トテトテ

老婦人「あら、ワンちゃん。朝から元気ね。お肉でもいかが?」

狼「…………」パクッ

老婦人「ふふふ、じゃあね。」

狼「俺は狼だ。犬じゃない。」

老婦人「えっ?」

狼「じゃあな。ごちそうさん。」トテトテ

宿 剣客・狩人部屋

狩人「ふー……水飲めばそれなりにマシになったな…………」

剣客「ん……!」パチ

狩人「おう、起きたかオッサン。」

剣客「ああ。気持ち良い朝だな。」ノビ

狩人「おいおい、マジかよ……俺はようやく二日酔いが治って来た所だぜ。」

剣客「まだまだ青いな、若造。」

狩人「けー。」


女剣聖「んー……よく寝たー。」フアアァァァ

狩人「まさか俺だけかよ……やられてんのは……」

女武闘家「そうなんじゃない?」ムクリ

剣客「起きてたのか。」

女武闘家「まあね。」

狩人「ちくしょう……また頭がガンガンしてきやがった。」

女剣聖「意外に弱いのねー。」

狩人「お前らが強すぎだっての……キッツ…………」

剣客「まだまだだなぁ。」ハハハ

宿 勇者・女戦士部屋

女戦士「んんん…………」パチ

勇者「やっと起きた。おはよう。」クスリ

女戦士「ん……おはよう。」

勇者「さ、そろそろ皆を呼んで朝食を食べに行こう。」

女戦士「うん。」

狼「遅いぞ。」

勇者「狼。どこ行ってたんだい。」

狼「あまりにも起きるのが遅いからな。散歩の行っていた。」

勇者「そうか。それじゃ朝食に行こうか。」

馬車

狩人「あーあ、朝飯位ゆっくり食べたかったなぁ。」

女剣聖「贅沢言わなーい。」

勇者「これから、どこに向かおう……」

女戦士「悪魔会の本部があるのは、北だって、噂がある。」

剣客「北だろうな。悪魔がらみの事件が起こるのは大体北だ。」

勇者「まずは……悪魔か……」

女武闘家「本格的になってきたわね。」

勇者「進路を北へ!まずは北西の国へ向かう!」

剣客「まだ見ぬ敵か……わくわくするな。」

狩人「ダルい敵は勘弁してほしいけどなー。」

北西の国 城下町

勇者「着いたな。」

狩人「おいおい、ここ本当に城下町かよ?治安悪すぎだぜ。」

剣客「ストリートで決闘をしたり、ギルドで抗争があったり、男共がやりたい放題だ。
   でもな、そう言う国こそが強国となって世界の覇権を握るんだ。なんせ…………」

女武闘家「兵が強い奴らばっかになるからでしょ。」

剣客「その通り。だから、良いか?街中でタイマンや決闘を吹っ掛けられても、
   断ってはならんぞ!絶対に。それは柄を握る者として恥ずべき行為だからな!」

女武闘家「アホらし。喧嘩なんて冗談じゃないわよ。」

女剣聖「まあでも、郷に入っては郷に従えって言うし、たまには乗ってあげようかな。」

剣客「うむ。良い心掛けだ。」

狼(決闘…………狼同士では出来ないか……いや、相手が居ないな。)

勇者「決闘、か……」


 タッ タッ タッ タッ タッ

勇者「!?」ガキン

女戦士「勇者!?」

剣客「おっ、早速来たな!」

狩人「嬉しそうだなオイ。」

勇者「決闘を挑む者、礼を欠かすべからず。我が名は勇者。名を名乗って貰いたい。」

???「これは失礼……」バサッ

勇者「!?」

剣士「我が名は剣士。出で立ちから見るに、相当の腕と見た。お手合わせ願おう!」チャキ

勇者「分かりました。お相手致しましょう。…………どうなっても知らないけどね!」チャキ


勇者「はぁ!」ガキン

剣士「…ぉ!?」ガキ

勇者「……っのぉ…………」ギリギリ

剣士「チッ…………」バッバッシュバッバッ

勇者「クッ、このっ……」タンッ

剣士「…………」ニヤリ バッ シャッ

勇者「!?」キン

剣士「……っふっ!」タタッガキン

勇者「…………」ギリギリ

剣士「…………」ギリギリ


勇者「……っんなあぁ!!」ガキイイィィン

カーン

剣士「……クッ……負けた。」ガクッ

勇者「ふぅ……」

剣客「よくやった、勇者!やるじゃねえか!」

狩人「見直したぜ!勇者!」

狼「遠くから大勢の人間が来る。恐らく兵士だ。まずいぞ。」

勇者「逃げよう!」ダダッ

剣客「ずらかるぞ!裏路地に入るんだ!」ダダッ

女武闘家「喧嘩とかしてるからでしょバカね!」ダダッ

女剣聖「でも楽しいかも。」ダダッ

女戦士「…………」ダダッ

城下町 裏路地

狩人「やれやれ、城下町でこの治安じゃ、他の町が知れねえよ。」ハァハァ

勇者「誰もはぐれてないようだね。良かった。」フゥ

剣客「しかし、勇者よ、見直したぞ。」

狩人「もっと弱いと思ってたもんな。」

狼「…………」

勇者「ハハハ……」

剣士「ところで、勇者殿。」

女武闘家「アンタいたの。」

狼「気配は察してたぞ。」

剣士「アンタは旅をしてるんだろ?」

勇者「ん、まあ。」

剣士「俺ももう少し腕を上げたい。その旅に連れてっちゃ
   貰えないか。その分の働きはそれなりにするつもりだ。」


勇者「……構わないけど、楽ではないよ。」

剣士「構わないさ。修行の為に行くんだ。」

女剣聖「何を鍛えたいの?」

剣士「剣……は勿論だが、己の感性や感覚等だな。」

女戦士「…………?」

剣士「なんと言うか、カンだ。決闘で言えば相手がどうで出るかを相手の表情や動き、
   挑発への反応等から感じたり察したりする、戦闘センスをより深くしたい。」

剣客「なるほどな。」

女武闘家「分かるの?正直さっぱりなんだけど。」

狼「分かる。だがこれを既存の言葉で表現するのは難しい。」

勇者「まあ、この旅がそれの習得に役立つかは分からないけど、歓迎するよ。」


女武闘家「って言うかなんでそれが勇者と旅すれば手に入る、って思った訳?」

剣士「勇者殿からはとても強く感じたのだ。そのセンスを。」

勇者「…………僕から?」

剣士「ああ。正直、勇者殿は力も俺以下、技術も俺以下、速さも俺と同程度。
   だが、何故か一手一手の先手を取るのは必ず勇者殿だった。何故か?」

狼「そこが、勇者の優れた点か。」

剣客「戦闘では何よりセンスが重要だからな。」

女武闘家「なんか、よくわかんない。」

女剣聖「分からなくはないけど、あんまり。」

狩人「戦闘の経験不足だろうな。」


勇者「それじゃ、とりあえず宿へ行こう。」

剣客「国王に会いに行くか?」

勇者「うーん…………いや、特に援助が必要な訳でも無いので。」

狼「逆に利用しようとされるかも知れんしな。」

狩人「国王ってのは大体カスみたいな人間ばっかりだろ。」

剣士「まあ、概ねそうだろうな。俺の知ってる国王は全員そうだった。」

女武闘家「自分の力で王に成ってないのが大半だろうからね。」

女戦士「本来なら、自分の力のみで成り上がった者こそが
    覇者としての権威を発揮すべきなのでしょうね。」

女剣聖「そう言う人に限って、力を使いたがらないのよね。」

宿 

部屋割り

勇者・狼
剣客・剣士
女戦士・女剣聖
狩人・女武闘家

宿 剣客・剣士部屋

剣客「ふぅ。相変わらず小さい宿だ。」

剣士「知ってるのか?」

剣客「若い頃はここに住んでたんでな。」

剣士「ほお……」

剣客「この町には大分鍛えられたな。そして、やはりこの宿には三人部屋が無い。」

剣士「うむ。狩人殿に至っては、非常に羨ましい限りだ。」

剣客「女と相部屋、か。」

剣士「多少性格のキツそうな女と言えど、女性には違いないからな。」

追いついた乙!

宿 狩人・女武闘家部屋

狩人「ふぅ…………」

女武闘家「あのさ。」

狩人「んー?」

女武闘家「なんで私とアンタが相部屋な訳?」

狩人「三人部屋が無いからだろ。」

女武闘家「狼とかのが良かったわ。」

狩人「なんでだよ。」

女武闘家「男と相部屋なんて冗談じゃないわよ。何されるか分かったもんじゃないわ。」

狩人「何もしねえっつーの。」

女武闘家「どうだか。」

狩人「なーにイライラしてんだか。」

女武闘家「イライラなんかしてないわよ。」

狩人「さあな。どうだか。」

むしろ狼と同室とかご褒美以外何でもないだろうjk
モフモフ出来るじゃなイカ

魔王城

ベルゼブブ「失礼致します。」

カオス「ベルゼブブ様!?」

ベルゼブブ「カオス様、私ごときに様は不要にございます。今や貴方は四人の公王の一人。
      私はあくまで悪魔会の副長。どうぞ、ベルゼブブとお呼び下さい。」

サタン「して、どうした。」

ベルゼブブ「レヴィアタンを殺した勇者一行が、北西の城の町に居ます。」

カオス「!」ガタッ

ハデス「落ち着けカオスよ。」

サタン「一番近くに居る上会悪魔は?」

ベルゼブブ「長クラスですと、アスタロトが一番かと。」

サタン「アスモデウスは?」

ベルゼブブ「アスタロト程ではありませんが、近くに在しております。」

サタン「向かわせろ。」

カオス「サタン様!!」


カオス「是非、私にも行かせて下さい!」

サタン「ふむ……まあ確かに、4と6では心細い。お前も行くならば行け。」

カオス「ありがとうございます!!」

ティフォン「面白そうだ。俺も行くかね。」

ハデス「お前まで行ってしまっては陛下のお怒りに触れる。止めておけ。」

ティフォン「けっ。」

カオス「勇者よ……このカオスがお前を……」

宿

狩人「飯だ飯!」

剣客「腹が減ったな。」

勇者「夕飯はバイキングの様です。」

狩人「バイキング!!良い響きだな!」

剣客「今夜はたらふく食うぞ!!」

女武闘家「楽しそうね、バイキング位で。」

女剣聖「あら、良いじゃない。私も好きよ。」

女武闘家「はしゃぎすぎって事よ。」

暗い平原

(…………れで、恐らく今アスモデウスがそちらに向かっている。)

アスタロト(はい。私はカオス殿、アスモデウス様と合流出来次第、
      北西の城の城下町を襲えば良いのですね。)

(ああ。物分かりが良くて助かる。出来るか?)

アスタロト(使い魔を使えば容易でしょう。)

(うむ。頼んだぞ。サタン様もお前に期待をなさっている。)

アスタロト(はっ。)


アスモデウス「よう。」バサバサッ

アスタロト「アスモデウス様!」

アスモデウス「やれやれ、ベルの兄貴も困ったもんだよなあ。急に勇者襲えってよ。」

アスタロト「もうすぐカオス殿が到着するでしょう。私は使い魔で町に火を放ちます。」

アスモデウス「その内に俺達が勇者をやれと?」

アスタロト「私もすぐに合流致します。町は家屋が密集しています。」

アスモデウス「火を放てば一瞬で火の海か。」

アスタロト「ええ。」


カオス「すまない。遅くなった。」

アスモデウス「これはこれは、カオス殿。」

カオス「アスモデウスか。」

アスタロト「私が火を放ちますので、カオス殿とアスモデウス様は勇者一行を。」

カオス「うむ。すまない、助かる。非常に少ないが、亜人組の構成員も呼んでいる。」

アスモデウス「ゴブリンの放つ火矢は火の回りが早いのだとか。」

カオス「うむ。では行こう。」

宿

狩人「ふー、食った。腹一杯だぜ。」

勇者「……何か嫌な気配がする。」ピクリ

剣士「ん?」

剣客「俺達以外に居ないぞ?」

勇者「もっと遠い所……町の中で……」

女戦士「大丈夫?勇者。」

狼「いや、俺も感じる。町の中に既にいる。ヤバい奴だ。」

女剣聖「本気で言ってるの?」

女武闘家「冗談じゃすまないわよ。」

勇者「全員部屋に戻って武器と最低限必要な物を用意。
   戦闘の邪魔にならない物だけ持っていこう。」

狩人「おいおい、マジかよ……」

宿 フロント

主人「お、お客様?」

剣客「安心しな。すぐ戻る。」

狼「おい、主人。水を大量に用意しておけ。」

主人「えぇ?それは、どういう……」

狼「良いから死にたくなければ水を用意しておけ。じゃ、後でな。」

勇者「全員用意は良いね。行くよ。」

狼「今回は……シャレにならなそうだぞ……」

剣士「面倒な事に巻き込まれなきゃ良いがね……」

城下町

ウー カンカン カンカン

勇者「町の入り口に火の手が上がっている。急ごう!」タタタ

狩人「弓は百発百中のつもりだが、やっぱこう言う予感程ピタリと当たりはしねーな。」タタタ

剣士「今日は風が乾いている。火の回りが早くなりそうだな。」タタタ

剣客「ついてねえなぁ。」タタタ

女武闘家「で、なんで私らは外出てんの?」タタタ

狼「火元は恐らく悪魔だからだ。」タタタ

女戦士「…………悪魔……」タタタ

女剣聖「なら、私の出番じゃない。斬ってやるわよ、悪魔。」タタタ

勇者「…………!!あ、アイツは……」


アスモデウス「ほぅ。早くに見つかったな。」

勇者「お、お前がこれをやったのか。」

アスモデウス「正確には俺の弟分だが、まあ良い。目的はお前だ。
       勇者よ、悪いがお前にはここで死んでもらう。」

狼「あん?」グルルルルル

カオス「見つけたぞぉ!勇者!!」バサバサッ

勇者「お、お前達、何者だ!」

カオス「我が名はカオス。亜人組の組長にして四人の公王の一角。」

アスモデウス「俺はアスモデウス。悪魔会の上会悪魔第四位だ。」

女戦士「か、カオス……」

女剣聖「アスモデウス…………」

アスタロト「アスモデウス様。」バサバサッ


アスモデウス「おお、丁度良い。今コイツらに自己紹介をしていた所だ。ほら、お前も。」

アスタロト「はっ。上会悪魔第六位、灰塵王子アスタロトだ。」

勇者「…………強い気配はお前達か……」

女武闘家「嘘でしょ、悪魔のNo.4とNo.6が……」

狩人「しかも亜人の頭とか言うとんでもなく不要なオマケ付きだ。」

剣客「……………………」ギリッ


勇者「カオス。お前の目的は俺だろう。掛かってこいよ。」

カオス「ふん。バカな奴め。我が名を知らぬ……」

勇者「うるせえ。場所を変えるぞ。来るなら来い……」スタスタ

剣客「狼、女戦士の嬢ちゃん。お前達は勇者に付いてきな。」

女戦士「…………」コクン タタタタ

狼「すまん、恩に着る。」ダッ

アスモデウス「……俺の相手は俺が選ぼう。お前と……お前と、……お前、だ。」

剣客「…………」

女剣聖「…………」

女武闘家「…………」

平原

勇者「お前は俺が相手をしてやる。」

カオス「…………聞いた話とは違う者だな。」

女戦士「勇者。」

狼「勇者!」

カオス「ほぅ、三対一か。だが、これで果たして勝てるかな?」

屋根の上

アスモデウス「おい、小娘。」

女剣聖「何かしら?」

アスモデウス「お前だろ?レヴィアタンの爺さんに止め入れたのは。」

女剣聖「だったら何?私を殺す?」

アスモデウス「ふっ。どっちにしろお前達は全員皆殺しだ。」

女剣聖「出来るのかしら?私達はアンタの所のNo.3を斬ってるのよ?」

アスモデウス「ハハハ、あんな力の抜けた老いぼれを殺して喜んでるのか。おめでたいな。」

剣客「何?」

アスモデウス「あの爺さんの力が俺より上な訳が無い。それどころか、アスタロト以下だろう。」

女武闘家「そんな…………」

アスモデウス「今更絶望されてもねぇ。」

城下町 東門前

アスタロト「…………」

剣士「大人しいな。何か言わないのか。」

アスタロト「これから仲間もろとも死ぬ人間に、話をしてどうする?」

狩人「……言うじゃねえの。」

アスタロト「強いて言うなら……レヴィアタン様の痛みを、思い知らせてやる、とでも。」

剣士「そのレヴィアタンとやらに俺は会った事も無いのでね。悪いが、遠慮するよ。」

アスタロト「無力なお前達に絶望を与え、灰にしてやろう……」ゴゴゴゴゴ

屋根の上

アスモデウス「つぉらっ!」ドン

剣客「……っ。」ガキン

女武闘家「やあありゃあっ!!」ブン ブンブン ドカッ ドカドカ

アスモデウス「やれやれ…………」サッ サッサッ ガッ ガガ

女武闘家「爪が当たらないし、蹴りも効かない…………」

女剣聖「やぁ!」ブンブン

アスモデウス「おっと。」サッサッ

剣客「……」ニヤリ グアッ

アスモデウス「!?」サッザク

剣客「ほぉう……致命傷は避けるか…………」ググググ

アスモデウス「ナメるなよ人間…………!!」ギギギギ

女剣聖「堕天の聖と邪の力、我に応えよ。」バチバチッバチ

アスモデウス「!…………」ギギギギ


女剣聖「ぅん!」ブンブンバァン

アスモデウス「この…………」サッサッサッ

女剣聖「はぁああああぁぁぁぁ……!!」

アスモデウス「調子に、乗るなよ!」ゲシッ

女剣聖「あぁ!」ドォン

剣客「この!」ブォン

アスモデウス「ふん。」サッ

乙!

東門前

剣士「つあぁ!」ガキン

狩人「……っらぁっ!」ビュォオ

アスタロト「…………」ガキン サッサ ブンブン

剣士「っと。」サッサッ ブン

アスタロト「…………」サッ ブン

狩人「そこだ!」ビュオ

アスタロト「……!」ザクッ

剣士「よし!」ガキン

アスタロト「…………」ギリギリ

狩人「…………ぅら!」ヒュヒュヒュオ

アスタロト「…………っ。」キンキンキン

平原

カオス「くっ……」ガキン

勇者「どうした。公王の一角とやらはこの程度か。がっかりさせるな。」

カオス「バカな……聞いていた話と違う!お前は、お前がレヴィアタン様に勝てたのは、
    周りの仲間のお陰だったと!一人では何も出来ないと!」

勇者「ああ。全くその通りだったよ。この前の俺はな。」カチャ ガキン

カオス「貴様……!何者だ!」ガキン ギリギリ

勇者「ただの勇者だ。」ギリッ キィン ズバッ

カオス「ぬぉぉぉおおお!!」グラッ


勇者「ヤキが回ったか。公王とやら。」チャキン

カオス「バカな……バカなバカなバカなバカな!!!」

女戦士「どういう事…………」

狼「分からん。だが、勇者の声音がいつもと違う。雰囲気や匂いも少し違う。」

勇者「お前が町に火を放ったのか。」チャキ

カオス「……アスタロト……正確には奴の使い魔だ。」

勇者「そうか。」ズバッ

カオス「グゥ!……ぁ……レヴィアタン様…………」

屋根の上

剣客「厳しいな…………」

女剣聖「……まずい…………」

女武闘家「ちょっと、嘘でしょ。アンタ達が二人で……」

アスモデウス「ふん。悪魔の恐ろしさ、ようやく知ったか。」

剣客「……知らんな。まだまだ。」チャキン

アスモデウス「ほぉ……なら、!?」グラッ

女剣聖「?」

アスモデウス(カオス殿……いや、カオスめ、死んだか……)

女武闘家「え、ちょっと、どうした訳?」

アスモデウス「悪いが、面倒な事になった。ここで少し…………」ビュオ

剣客「!避けろ!!」

女武闘家「え?」ズガッ


女武闘家「」グラッ バタン

アスモデウス「印を持ってく必要があるんでな。この娘の首は貰った。」

剣客「…………ま、待て!」

アスモデウス「なんだ?抵抗する気か?」

剣客「逃げる気か?」

アスモデウス「逃げる、と言うのは弱者のする行為だ。従って、俺には当て嵌まらん。」

女剣聖「…………」フラフラッ

アスモデウス「ふん。最早戦える状態でも無いだろう。じゃあな。」バサバサッ

東門前

(アスタロト。)

アスタロト(アスモデウス様!?)

(カオスが死んだようだ。退くぞ。)

アスタロト(そんな!?貴方は任を放棄なさるのか!?)

(カオスが死んだ事を伝えるべきだろう?それに、こんな事は俺の知った事じゃぁない。)

アスタロト(なんてお方だ……)

(そう言うな。一つ土産に首を用意した。それで足りるだろう。)

アスタロト(私は退きません。必ずや勇者の首を……)

(結構な事だが…………死ぬなよ。)

アスタロト(っ。)


剣士「どうした?掛かってこないのか?」

アスタロト「ふん。」ギュゥィィィィィイイイイイイン

狩人「!?」

剣士「あれは……魔力の塊?」

狩人「この!」ビュォ カーン

剣士「弾かれた、か。」

アスタロト「…………」ギュゥィィィィィィィイイイイイイイン

剣士「あ、まずい。」

アスタロト「…………」ニヤリ パリン

狩人「あ。」

ゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ

平原

狼「壊れた。」

勇者「何がだ?」

狼「魂だ。」

女戦士「魂……誰の?」

狼「分からん。」

ゴオオオオオォォォォォオオオオオオオオオ

勇者「何だ?」

女戦士「戻ろう。」

狼「!?あれは!?」

アスモデウス「さらばだ勇者。」バサバサバサバサバサバサッ

勇者「逃げたか……アスモデウス。」

女戦士「何か持っていた。」

狼「俺にも見えなかった。」

勇者「急ぐぞ。」

東門前

勇者「…………」

狼「……何だこれは…………」

剣士「勇者…………」ゴフッ

勇者「大丈夫か。」

剣士「か、狩人が…………」

女戦士「…………死んでいます。」スッ

勇者「アスタロトだな。どこに居る?」

アスタロト「ここだ。勇者よ。」

勇者「…………」チャキリ

乙!


勇者「女戦士、剣士を宿まで連れていってくれ。まだ息はあるはずだ。」

狼「狩人はどうする。」

勇者「死んでいる。まずはお前だ、アスタロト。」

アスタロト「…………」

勇者「見たところ、もう既に魔力も限界のようだな。」

アスタロト「…………」

勇者「とりあえず、死ね。」ズバ


アスタロト「っ!」フラッ

勇者「……」ズバッ

アスタロト「ぅっ!」ガクッ

勇者「立て。」ドカッ

アスタロト「ガハッ!」ググググ

勇者「まだ殺さん。ゆっくりと、痛め付ける。」ズバッ

アスタロト「うぐぁっ!」フラフラッ

勇者「どうだ?痛いか?」バキッ

アスタロト「ぐ…………人間、めぇ……」ギリッ

勇者「生意気な目だな。」バキッバキッ ドカッ

アスタロト「ぐはっ!」バタッ

勇者「立て。」ゲシゲシゲシゲシゲシ


アスタロト「…………」ヒュー ヒュー

勇者「…………」バキッドカッバキッ

アスタロト「…………」フラフラッ

勇者「あまりリアクションが無いな。」バキッ

アスタロト「…………」ガクリ

勇者「何度も言わせるな。立て。……尻尾でも切るか。」ゲシ ガッ

アスタロト「…………化け物め…………」

勇者「お互い様だ。」スパッ

アスタロト「うぐぁぁぁぁ…………」バタン

勇者「……死んだか。」

???

アスモデウス(アスタロトめ、死んだか。言わんこっちゃない。)バサバサッ

アスモデウス(もうすぐ城だな…………)バサバサッ

アスモデウス(全く……バカな奴らだな…………)バサバサッ

宿

女戦士「かなり町に被害は出たけど、城には何も無かったみたい。」

勇者「…………そう、か…………」

剣客「狩人と、女武闘家は平原の土に眠らせといてやったよ。今朝な。」

勇者「………………」

狼「剣士は眠っている。魔力の爆発でかなりやられた様だが、今は落ち着いている。」

勇者「…………」

女剣聖「大丈夫?」

勇者「ああ。大丈夫だ。」

乙!


勇者「とりあえず、皆休もう。まだ寝ていない筈だ。」

剣客「そうだな……眠れるかどうかは分からんが。」

女戦士「…………」

狼「その前に狩人と女武闘家の荷物を整理して、部屋をチェックアウトするべきだろう。」

勇者「ああ、そうだね。女戦士は女武闘家の荷物を頼む。僕は狩人のをやるよ。」

女戦士「分かった。」

狼(僕……か…………)

宿 狩人・女武闘家部屋

勇者「…………これで、全部だな。」ゴソ

女戦士「こっちも終わった。」ゴソ

勇者「使える物は使わせて貰おう。」

女戦士「他の物は?」

勇者「本国に送ることは出来ない。捨てるしか無いと思う。」

女戦士「そう…………」

狼「終わったか。」

勇者「うん。」

狼「そうか。部屋に戻るぞ。」

勇者「うん。」

乙!

宿 剣客・剣士部屋

勇者「剣士。」

剣士「おお、勇者……か。」

勇者「大丈夫かい?」

剣士「すまない……狩人が…………」

白い女「体に障ります。喋ってはなりません。」

勇者「……貴女は?」

白い女「大変失礼しました。私はこの町の寺院から来ました…」

勇者「ああ、これはこれは。お忙しいなか申し訳ありません。」

女僧侶「いえ、とんでもございません。町を救って頂いたのですから。」

剣士「勇者……」

勇者「ああ、剣士。どうした。」


剣士「狩人は俺を庇って死んだ……そして死ぬ直前遺言を伝えてくれと言われた……」

勇者「…………」

剣士「狼にもだ……」

狼「俺にか。」

剣士「よく分からないが……勇者は、自分を見失うなと。狼には、勇者を守れ、と。」

勇者「自分を見失うな、か…………」

狼(言われなくたって、分かって居るさ。誓った事だ。)

狼「俺が勇者を守る。」


剣客「すまん、少し出掛けていた。」ガチャ

狼「遅い。何処に行っていた。」

剣客「新しい仲間を探しに酒場までな。」

女剣聖「…………ふーん。」

剣客「うおっ。驚かすな。」

女剣聖「もう、新しい仲間、募集するわけ?」

剣客「どういう意味だ?」


女剣聖「狩人と女武闘家が死んだばかりでしょ。なんでそう、新しい仲間なんて。」

剣客「…………」

女剣聖「死んだら補充すれば良い、ってそれじゃ、国の考えと変わらないわよ。」

勇者「俺達には…………」

狼「……」ピクッ

勇者「時間が無い。余裕も無い。死んだ仲間を悔やんで涙を流して地団駄を踏んでいる暇など
   今の俺達には無いし、死んだ仲間への義理立てのつもりで新しい仲間を入れないで
   戦って居られる程の余裕も無い。あの面子で挑んでも悪魔のNo.4とNo.6に見事に
   してやられていた。更に弱体化したパーティーで戦ってアイツらが喜ぶのか?」

女剣聖「…………変わったのね。勇者サマ。」

勇者「すぐ理解しろとは言わない。だが、魔王や悪魔を殺すのがアイツらへの何よりの
   手向けになる筈だ。その為の効率化を俺は惜しむべきではないと考えている。」

女剣聖「…………勝手にしたら良いんじゃない。」バタン


勇者「…………」

剣客「仕方無い。あの娘も自分なりの責任を感じているんだ。もっと自分が強ければってな。」

狼「一般的には、あの感覚が正しいだろう。」

女僧侶「あの、すいません。」

勇者「ああ、すいません。治療はとっくに終わってますよね。」

女僧侶「いえ、その事ではなくて…………」

剣客「……うん?」

女僧侶「お見受けした所、勇者様のパーティーは後衛が少ないのではと感じました。」

勇者「はい。恐らく、今出ていった彼女が少し回復役を出来る位です。」

女僧侶「はい。ですから、その、旅先で大変な事もあるでしょうから、
    私が勇者様の冒険にここの方達同様、お供してはなりませんか?」


狼「…………」

勇者「…………」

剣客「……おいおい、本気か?」

女僧侶「いえ、ご迷惑だったら良いのです。出過ぎた事を申しました…………」

剣士「俺は良いと思うがね。美人がパーティーに増えるのは良い事だ。」

剣客「お前…………」

女僧侶「あの、良いんです。失礼しました…………」

勇者「いえ、こちらとしてもありがたい。貴女が嫌でないと言うのなら、是非。」

女僧侶「あ、ありがとうございます。恐縮です……」

狼「しかし、良いのか?最悪の場合、死ぬんだぞ。良くても剣士の様になる。」

女僧侶「承知しております。」

剣客「コイツは……肝の太いお嬢さんだ。」


勇者「何日で歩けるようになる?」

剣士「歩けと言われれば今すぐにでも。」

剣客「あと何日で戦えるようになる?」

剣士「……一日だけ、待ってくれ。」

勇者「よし、三日待つ。」

狼「……良いのか?」

勇者「ああ。その間に新しいメンバーを見つけよう。」

剣客「了解だ。」

乙!

続きはよ

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