淫魔幼女 「鶏鍋で」 詐欺勇者 「魔王オークを」 オーク 「ぶっ殺す」 (160)




国境 盗賊山道



カラ カラ カラ カラ


??? 「おーっと、そこの荷馬車」

盗賊オークA 「ちょいと待ちな」


盗賊オークB 「乗ってる奴、みんな降りろぉ……」


ガチャ ゾロゾロ


淫魔翌幼女 「…………」


詐欺商人 「…………」


黒オーク 「…………」


盗賊オークA 「三人か。へっへっへ……」

盗賊オークA 「頼りねえキャラバンだぜ」

盗賊オークA 「どうやらよそ者のようだが、このオーク盗賊団の山を越えるのに」

盗賊オークA 「たった三人とはよう」


盗賊オークB 「おれたちの頭領が、ここらじゃ何て呼ばれているか知ってるかい」

盗賊オークB 「強欲の魔王さ」

盗賊オークB 「つまり俺たちゃ、泣く子も黙る魔王軍サマってわけだ」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437676123



詐欺勇者 「……軍と言うには、少々規模が小さいようだが」

詐欺勇者 「ちなみに、おれは詐欺商人と呼ばれている」


淫魔幼女 「幼女魔王です」


黒オーク 「黒エルフでがんす」


盗賊オークB 「へっへっへ、ちょっと黙れぇ、嘘をつくなぁ……」


盗賊オークA 「ふざけた野郎どもだぜ。おれたちの恐ろしさが分からねえとはよ」

盗賊オークA 「まあ良い。じゃあ分からせてやるまでだ」

盗賊オークA 「きやがれ、野郎ども!!」


ピィイ


…………


ノシ ノシ

ゾロ ゾロ


盗賊オークC 「…………」

盗賊オークD 「…………」

盗賊オークE~J 「…………」


ゾロ ゾロ ゾロ





盗賊オークたち 「へっへっへ……」


ワラ ワラ


詐欺勇者 「…………」


淫魔幼女 「…………」


黒オーク 「…………」


盗賊オークA 「おうおう、怖くて黙っちまった」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークC 「おい黒髪のお嬢ちゃん、大丈夫かい?」

盗賊オークC 「怖くて立てないなら、座り込んでも良いんだぜ?」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「………グス」

淫魔幼女 「ふええ……」


盗賊オークたち 「ゲラゲラゲラ」


盗賊オークA 「積荷を全部いただく」

盗賊オークA 「妙な真似をしやがったら、上顎と下顎が永遠におさらばだぜ!」





ドヤドヤ ガタガタ

ドサ ドサ


酒樽A~C
魔法の木箱A~C


盗賊オークA 「……これだけか」

盗賊オークA 「とんだ貧乏商人でやがる」


詐欺勇者 「ああ、釣り銭にも困る有様で」


盗賊オークA 「……酒樽」


キュポ


盗賊オークA 「クンクン……」

盗賊オークA 「けっ、安酒だな」

盗賊オークA 「……棺桶みたいなでかさの木箱」

盗賊オークA 「何だこの文字は。上に鶏の絵……鶏肉か?」


ガパ


盗賊オークA 「……鶏肉だな」

盗賊オークA 「貧相な顔のやつばかりだぜ」

盗賊オークA 「……と、おいおい。よく見りゃこの箱、保存用の魔法の木箱じゃねえか」


詐欺勇者 「うちはよく食い物をあつかう上に、長距離の移動が多いもんでね」


盗賊オークA 「こいつを売っちまった方が、金になるんじゃねえのかあ?」


詐欺勇者 「それは困るよ。商売できなくなる」


盗賊オークA 「そうかい」

盗賊オークA 「まあ、みんなおれ達がいただいちまうんだがな」

盗賊オークA 「……ったく、本当にしけてやがる」

盗賊オークA 「こりゃハズレをつかまされちまったな」




盗賊オークA 「おら、てめえら、何をボーっとしてやがる。服を脱げ」


黒オーク 「へえ?」


盗賊オークA 「間抜けな顔で間抜けな声を出すんじゃねえ、この醜い豚が」


黒オーク 「エルフでがす」


盗賊オークA 「ふざけんなよ、黒豚が」


黒オーク 「へえ、ダークエルフなもんで」


盗賊オークA 「この機会におぼえておくんだな」

盗賊オークA 「盗賊に会ったら、身包みはがされちまうってことをよ」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークD 「どうしたお嬢ちゃん。手が震えて脱げねえのかい?」

盗賊オークD 「だったら手伝ってあげまちょうかあ?」


盗賊オークたち 「ゲラゲラゲラ」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークD 「さっさと脱げってんだよ!」

盗賊オークD 「それとも本当に脱がせてほしいか」

盗賊オークD 「ちっこいから手元が狂って、皮膚まで脱がせちまうかもしれねえがなあ!!」


淫魔幼女 「ひっ……」


ポロ

コト カララン


盗賊オークD 「ん? 何か落としたな」




盗賊オークD 「どれどれ……」


淫魔幼女 「……あ、それは……」


盗賊オークD 「…………」

盗賊オークD 「!!」

盗賊オークD 「こいつぁ……ッ」

盗賊オークD 「お、おい……!」


盗賊オークA 「あん?」


盗賊オークD 「こ、これを見てくれ。ガキが持ってやがった」


盗賊オークA 「何だと。どれどれ……」



闇の貴族の紋章



盗賊オークA 「……これは」


盗賊オークD 「間違いないぜ、こいつ、貴族だ!」


淫魔幼女 「……………」




ザワ ザワ


盗賊オークB 「おい、どうするぅ」

盗賊オークB 「貴族に手を出したとあっちゃ、軍が動きかねねえ」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「いや、待て」

盗賊オークA 「これはたしか、闇の国の紋章だ」


盗賊オークC 「闇の国?」


盗賊オークE 「ここから千の山と百の谷、十の海を越えたところにあるという」

盗賊オークE 「あの闇の国ですね」


盗賊オークA 「ああ」

盗賊オークA 「つまり、すぐには来ないってことだ」


盗賊オークB 「けどよぉ……」


盗賊オークA 「へっへっへ、まあ待て」

盗賊オークA 「おれに良い案がある」




盗賊オークE 「良い案?」


盗賊オークA 「おう」

盗賊オークA 「うまくいきゃあ、大金が舞い込むかもしんねえ」


盗賊オークC 「おいおい、何だよそりゃあ」


盗賊オークA 「おう……」

盗賊オークA 「このガキを利用しようってのよ」


淫魔幼女 「……あ、あう」


盗賊オークE 「ふむ?」


盗賊オークA 「良いか……おそらくこいつらは商人なんかじゃねえ」

盗賊オークA 「身分を隠して旅をする貴族のガキと、そのお供ってとこだろう」




盗賊オークD 「な、なるほど。それなら、この貧相な積荷もうなずける」


盗賊オークB 「しかしよぉ、いくら身分を隠すといっても」

盗賊オークB 「貴族のガキが、こんなしょぼくれた荷馬車と護衛で旅するかぁ?」

盗賊オークB 「万が一ってこともあるのに」


盗賊オークA 「良いところに気がついた」

盗賊オークA 「……さて、おれはこの黒髪のガキを餌に」

盗賊オークA 「このガキの家から出来るだけ金を引き出すつもりだが」


盗賊オークD 「人質にとるってのか」

盗賊オークD 「つまり、貴族と交渉しようってんだろ。そりゃ危険だぜ……」


盗賊オークA 「気の小せえこと言ってんじゃねえよ」

盗賊オークA 「だが、まあその通りさ」

盗賊オークA 「おれたちはこいつを人質にとるんじゃねえ」

盗賊オークA 「お客さんとして、丁重にむかえるってわけよ」




盗賊オークA 「筋書きはこうだ」

盗賊オークA 「この貴族のお嬢さん一行は不幸にも落石事故にあい、護衛Aを残して谷底へ落ちた」

盗賊オークA 「残った護衛Aは幾夜も費やしてお嬢さんを探すも見つからず、来た道を引き返す」

盗賊オークA 「しかし、お嬢さんは生きていた。一緒に落ちた護衛Bとともに」

盗賊オークA 「谷底の川で運よく一命をとりとめ、運よく心優しい荒くれ者たちに助けられていた」

盗賊オークA 「怪我はひどかったが、ちょいと時間をかけりゃ、なおる見込みのある程度だ」


盗賊オークC 「そいつぁ良かった」

盗賊オークC 「で、心優しい荒くれ者たちっていったい誰のことだい?」


盗賊オークA 「……献身的な看病にいたく感動したお嬢さんは、ひとつ手紙をしたためて」

盗賊オークA 「先に回復していた護衛Bに持たせ、闇の国へと走らせる」

盗賊オークA 「そして、闇の国で護衛Aが失意の報告をうけ、暗い影のさす貴族家に」

盗賊オークA 「息をきらして護衛Bが駆け込んでくる。手紙を握り締めて」

盗賊オークA 「手紙にはこう書いてある」

盗賊オークA 「……異国の、心優しく気の良い荒くれ者たちに助けられた」

盗賊オークA 「怪我がひどく、報告もかねて先に護衛Bを帰すことになったが、この手紙がそちらに届くころには元気になっているだろう」

盗賊オークA 「助けられていなければ、きっと死んでいただろう」

盗賊オークA 「金銀財宝でお礼がしたいが、いかがでしょうか……」




盗賊オークA 「……どうだ」

盗賊オークA 「貴族はガキがかえってくる。おれたちは大金が転がり込んでくる」

盗賊オークA 「みんな幸せさ」


盗賊オークB 「ふーむ」


盗賊オークE 「そう、うまくいくものでしょうか」


盗賊オークC 「わかった、荒くれ者っておれたちのことだな!」


盗賊オークD 「やっぱり……危ねえんじゃねえかなあ」


盗賊オークA 「ったく、弱い奴には吠え散らすくせに、臆病な奴だぜ」

盗賊オークA 「……そこで、さっきのBの意見さ」


盗賊オークB 「あん?」


盗賊オークA 「貴族サマのお忍びにしちゃ、貧相すぎるって話さ」




盗賊オークB 「んん?」


盗賊オークE 「……あの雌の子どもは」

盗賊オークE 「貴族家であまり重要な位置にいないということですか」


盗賊オークA 「おそらくそうだ」

盗賊オークA 「護衛の奴らも、金で雇われたゴロツキ傭兵って可能性もある」


盗賊オークC 「……??? どういうこった。何が言いてえんだ?」


盗賊オークA 「手紙を出したところで、丸めてポイして知らん振りかもしれねえってこった」

盗賊オークA 「当主にとって、紋章は与えるが金銀財宝を出す価値はない存在」

盗賊オークA 「どころか、邪魔かもしれない」


盗賊オークB 「だったら、無駄じゃねえか」


盗賊オークA 「リスクを減らそうってこった」

盗賊オークA 「おれたちは貴族の恩人となり、大金を得、さらに貴族との繋がりを持つ」

盗賊オークA 「これがベストだ」


盗賊オークE 「たしかに、山賊や海賊が貴族と裏で繋がっているなんてことは」

盗賊オークE 「よくあることですが」


盗賊オークB 「おう。名高き水の国のサハギン水軍も、もとは海賊だったそうだな」




盗賊オークA 「んで、次」

盗賊オークA 「おれたちは貴族のガキを丁重にもてなすも、哀れにもガキは貴族に見捨てられ」

盗賊オークA 「おれたちは貴族とのつながりもできない」

盗賊オークA 「そしてガキを娼館に売り払い」

盗賊オークA 「大金を得る」


盗賊オークC 「………おぉ」


盗賊オークE 「なるほど」

盗賊オークE 「元貴族で雌の子どもともなれば、高級娼婦としてかなり高値で売れるでしょう」

盗賊オークE 「おまけに、この子どもは器量も良い」

盗賊オークE 「最近、黒髪の雌の子どもは、淫魔娼館で高く取引されるようですし」


盗賊オークB 「おいおい、天下の高級淫魔娼館が子どもを扱うたぁ、おちたモンだぜぇ」


盗賊オークE 「いえ。何でも、跡取り探しとの噂も」

盗賊オークE 「若いうちから育てるのも、一般的なことだそうですし」


盗賊オークB 「へーえ」


盗賊オークA 「まあ、今はその辺はどうでも良い」

盗賊オークA 「大事なのは、こいつは金の卵ってこった」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークC 「はっは、おいおい」

盗賊オークC 「こいつは鶏の卵じゃねえぜ?」




盗賊オークD 「そんな回りくどいことしないでよお」

盗賊オークD 「こいつらの身ぐるみはいで、ガキは売っ払っちまおうぜ」

盗賊オークD 「貴族と深く関わったって、そんなに良いことないぜ」


盗賊オークA 「……最悪なのは」

盗賊オークA 「このガキが実は貴族家にとって大事なガキで」

盗賊オークA 「おれたちが黙って売り払い」

盗賊オークA 「んでもって、足が出ちまう場合だ」


盗賊オークE 「ふむ、貴族の一声で国の正規軍が動く場合もある」


盗賊オークB 「強欲の魔王だとか魔王の軍とか呼ばれていても」

盗賊オークB 「おれたちゃあ、洞窟暮らしの盗賊だからなあ」


盗賊オークA 「このガキお襲っちまった時点で、サイコロは転がっちまったのさ」

盗賊オークA 「だったら、前者二つの目が出やすくしようじゃねえかと」

盗賊オークA 「おれぁ言いたいのよ」



>>15 訂正ごめんなさい




盗賊オークD 「そんな回りくどいことしないでよお」

盗賊オークD 「こいつらの身ぐるみはいで、ガキは売っ払っちまおうぜ」

盗賊オークD 「貴族と深く関わったって、そんなに良いことないぜ」


盗賊オークA 「……最悪なのは」

盗賊オークA 「このガキが実は貴族家にとって大事なガキで」

盗賊オークA 「おれたちが黙って売り払い」

盗賊オークA 「んでもって、足が出ちまう場合だ」


盗賊オークE 「ふむ、貴族の一声で国の正規軍が動く場合もある」


盗賊オークB 「強欲の魔王だとか魔王の軍とか呼ばれていても」

盗賊オークB 「おれたちゃあ、廃坑暮らしの盗賊だからなあ」


盗賊オークA 「このガキを襲っちまった時点で、サイコロは転がっちまったのさ」

盗賊オークA 「だったら、前者二つの目が出やすくしようじゃねえかと」

盗賊オークA 「おれぁ言いたいのよ」





盗賊オークE 「しかし、そうするためには大きな問題がありますね」


盗賊オークB 「ガキと護衛二人が思い通りに動くのかってぇ話だ」

盗賊オークB 「うちには洗脳とか魅了とか、細っけぇ魔法を使える奴なんざいねえ」


盗賊オークA 「まあ、ガキの方は大丈夫だろう」


淫魔幼女 「……クスンッ……グス」


盗賊オークA 「あの通り、臆病者さ。ああいうのはしっかり脅しておけばどうとでもなる」

盗賊オークA 「だろ?」


盗賊オークB 「……たしかに。あの年頃のああいう子どもは」

盗賊オークB 「良心や誇りより、恐怖に従っちまうもんだ」

盗賊オークB 「悪いことしたら、夜、盗賊オークにさらわれちまうぞってなぁ」


盗賊オークたち 「ゲラゲラゲラ」


盗賊オークE 「護衛二人の方は?」


盗賊オークA 「なにも、ぶつぶつ呪文唱えたり床に絵を描くばかりが魔法じゃねえ」

盗賊オークA 「おれたちにゃあ知恵と言葉っつう、誰でも使える魔法があんじゃねえか」




盗賊オークA 「おい、そこのふざけた男と、知性の無さそうな黒豚。ちょっと来い」


盗賊オークD 「妙な真似をしたら、この剣で喉を掻っ捌くぞ」

盗賊オークD 「切れ味が鈍ってるから、痛てえぞお?」


ギラリ


詐欺勇者・黒オーク 「…………」


ザ ザ ザ





詐欺勇者 「来たぞ、詐欺商人だ」

詐欺勇者 「好きな海老料理は海老の乗ったピザだ」


黒オーク 「黒エルフでがす」

黒オーク 「夢は宿屋をひらいて宿オークになることでがす」


盗賊オークA 「……本当にふざけた野郎どもだぜ」

盗賊オークA 「まあ良い」

盗賊オークA 「お前らは、いくらで雇われた?」


詐欺勇者 「…………」

詐欺勇者 「はっはっは……!」


盗賊オークたち 「!?」


盗賊オークC 「やろう、何がおかしいってんだ!」


詐欺勇者 「はっはっは……おいおい、これはこれは……」

詐欺勇者 「なあ黒豚よ、やっこさんがた、おれたちをゴロツキ傭兵かなにかと勘違いしているぜ?」


黒オーク 「黒エルフでがす」


盗賊オークD 「…………」


ギラリ


詐欺勇者 「ビスケット五枚だ」


黒オーク 「ビスケット五枚でがすね」




盗賊オークE 「ビスケット」


盗賊オークC 「ビスケットはおれも好きだぜ!」


盗賊オークB 「少しぁ黙ってろ、おバカちゃん」


盗賊オークC 「おう!」


盗賊オークE 「ビスケット……古代カナバル金貨が形状からそう呼ばれていますが……」

盗賊オークE 「たしか、五枚だと……現在の金貨で三枚分の価値だっだはず」

盗賊オークE 「妥当、いえ、金貨一枚分ほど多めでしょうか」


盗賊オークB 「そいつぁ良い。分かりやすい。多いとなお良い」

盗賊オークB 「金に忠実な傭兵ってことだ」

盗賊オークB 「はした金だと、義理だとか別のモンに仕えている疑いも出るからな」


盗賊オークA 「……よし」

盗賊オークA 「五枚だ」


一同 「?」


盗賊オークA 「金貨五枚やるからおれたちに寝返れって言ってんだよ」

盗賊オークA 「ゴロツキ傭兵ども」




盗賊オークB 「五枚だぁ!?」


盗賊オークD 「や、やりすぎだぜ、それは!」


詐欺勇者 「…………」

詐欺勇者 「なめられたものだぜ」


黒オーク 「うちらはそんな薄情者ではないでがすよ」


盗賊オークA 「ああ、二人じゃ喧嘩になっちまうか」

盗賊オークA 「じゃあ、六枚でどうだ」


一同 「!!」


盗賊オークB 「おいおいどうしちまったんだ」

盗賊オークB 「じき頭領といわれるお前がよぉ」

盗賊オークB 「金の計算もできなくなっちまったってのか……!?」


ザワザワ


淫魔幼女 「…………」


詐欺勇者 「………フ」

詐欺勇者 「おいおい……」

詐欺勇者 「こっちにも、誇りってもんがあるんだぜ?」


ギラリ




…………


詐欺勇者 「腕の一本でも折っといた方が良いかな?」


盗賊オークA 「ヘマしなけりゃ何でも良いよ」

盗賊オークA 「治療費は面倒見ねえぜ?」


カチャ カチャ


盗賊オークD 「おら、きびきび歩け、お嬢様。おれらのアジトへ連れてってやろうってんだ」


淫魔幼女 「この裏切り者! 詐欺師! たれ目! フェドラ帽!」


盗賊オークB 「おう、ほえろほえろ、負け犬みてぇに。世間知らずのお嬢様にゃ、良い勉強ってこった」


カチャ カチャ


詐欺勇者 「……おいおい、結局積み荷は持っていっちまうのかよ」


盗賊オークE 「身ぐるみはがされないだけ、運が良いと思いなさい」


盗賊オークA 「裸で走らすわけにもいかないからな」

盗賊オークA 「じゃあ、お嬢様は預からせてもらう」


詐欺勇者 「丁重に頼むよ」


盗賊オークA 「どの口で言ってやがる」


ゲラゲラゲラ


淫魔幼女 「豚! 黒豚! 死ね豚! 豚!」

淫魔幼女 「豚ぁあああ!!」


黒オーク 「エルフでがす」



……………





■不運にもオークに捕獲されてしまった淫魔幼女さんの
 無垢なる願い。
 (画像はイメージです。実際の淫魔幼女とは異なることもあります)


http://i.imgur.com/TS1GCF6.jpg







廃坑 盗賊のアジト

酒場跡



ガヤガヤガヤ

ゲ゙ラゲラ ド ワハハハ


淫魔幼女 「……お願いします」

淫魔幼女 「もう嫌……許してください」


見張りオークA 「うるせえ、そいつは聞けねえと言っているだろう」


淫魔幼女 「そこをどうか、お願いします」

淫魔幼女 「お風呂に……お風呂に入らせてください……!」


見張りオークB 「ぶははは。さすが、貴族のお嬢様は綺麗好きでらっしゃる」

見張りオークB 「だが、あいにくここにそんなものは無えんだ」

見張りオークB 「分かったら黙って柱にくくられてな」


見張りオークA 「そんなに体を洗いたきゃ、便所の水でも使うんだな」

見張りオークA 「えぁっはっはっは」


淫魔幼女 「そ、そんな……」





酒場跡 入口



ガヤガヤ


酔い倒れオークたち 「うぃー、ヒック…………」


ドカッ


酔い倒れオーク 「ぶひっ!?」


酔い潰れオーク 「ぶきゃっ!?」


??? 「……おらおら、どけどけえ酔っ払いのろくでないども!」

盗賊オーク3 「盗賊オーク1さまのご帰還だあ!」


盗賊オーク1 「…………」


ノシ ノシ


盗賊オーク1の部下たち 「…………」


ゾロゾロ




ガヤガヤ

ゾロゾロ


盗賊オークB 「……おっと、ライバルのご帰還だぜ盗賊オークAよ」

盗賊オークB 「煙と馬鹿は遠くからでも良く分からあ。馬鹿は立てる音が大きいからよぅ」


盗賊オークD 「偉そうにしやがって。あいつが次の頭領になることなんてずっと無えのに」


盗賊オークE 「ふう……静かに帰ってくることもできないのでしょうか」

盗賊オークE 「せっかくの酔いがさめてしまう」


盗賊オークA 「…………」


カラン ゴク ゴク


盗賊オークA 「……こっちに来る。口を閉じてな」

盗賊オークA 「おれたちがあいつらに差し上げる息は少ねえ方が良い」


盗賊オークB 「へへ、違いねぇや……」


盗賊オークC 「? どういう意味だ?」




看板オーク 「盗賊オーク1さんがた、さすが、早いお帰りで」

看板オーク 「すいやせん、いつもの席が空いていなくて……」


盗賊オーク2 「だったらどかしゃ良いだろ、あんたが」

盗賊オーク2 「それとも、何、入口に頭をぶら下げられて本当の看板になりたいっての!?」


盗賊オーク4 「おう、怖え怖え」

盗賊オーク4 「なあ、言うこと聞いた方が良いぜ。なにせこいつは昨日」

盗賊オーク4 「金をしぶった宝石屋の主人を、本当にそうしちまったばかりだからよ」


看板オーク 「へ、へえ……!」


ダダダ


盗賊オーク1 「…………」


盗賊オーク3 「……? 姐さん、どうしやい(し)た?」

盗賊オーク3 「テーブルはそっちじゃあ……」


盗賊オーク1 「…………」


ノシ ノシ ノシ

ザザ


盗賊オークA 「…………」


盗賊オーク1 「…………」




盗賊オークA 「…………」


盗賊オーク1 「……聞いたぜえ、A?」


盗賊オークA 「…………」


盗賊オーク1 「ガハハハハ! 天下の特攻オーク野郎Aチームが、ずいぶんとしけてんじゃねえか!」

盗賊オーク1 「あたいらが、慣れねえ土地で商隊ひとつ潰してくる間に」

盗賊オーク1 「勝手知ったるなわばりで、安物の酒と鶏肉、そんでガキ一匹だけとはよお!」


盗賊オーク2 「あひゃひゃひゃひゃ! 傑作!!」

盗賊オーク2 「旧道で靴みがきでもやった方が、儲かるんじゃないの!?」


盗賊オーク1の部下たち 「ブヒャヒャヒャヒャ!」


盗賊オークC 「何だとう!?」


ガタ


盗賊オーク2 「ぁあ゛……ッ?」

盗賊オーク2 「何、このアタシとやろうっての、ぇえ?」


盗賊オークC 「上等だぜ、ブス女!」


盗賊オーク2 「あひゃひゃ! 馬鹿がついにイカレちゃったようだね」

盗賊オーク2 「アタシに一度も勝ててないこと、もう忘れちまったのかよ!?」


盗賊オークC 「あれは引き分けってんだよ、ばーか」

盗賊オークC 「そして馬鹿はてめえだ」

盗賊オークC 「こっちは魔法の木箱も手に入れたんだぜ!!」




盗賊オークA 「まあ熱くならずに座れ、盗賊オークCよ」

盗賊オークA 「遠征ご苦労だった、盗賊オーク1嬢とその木っ端ども。酒でも奢ってやろうか」


盗賊オーク3 「あんだとう!?」


盗賊オーク1 「やめな!」


バキ


盗賊オーク3 「ぶぎゃっ!?」


ドシャッ 

ヨロ ヨロ


盗賊オーク3 「痛ひゃひゃひゃ……」

盗賊オーク3 「まひゃ歯ふゃ(また歯が)……」


盗賊オーク4 「まあた余計なこと言って、3ちゃんよう」

盗賊オーク4 「遠征中も殴られて……ちったあ学習しなよ。これで歯をかえるのは何回目だっての」


盗賊オーク1 「……せっかく奢ってくれるってんだ、貰ってやろうじゃないか」

盗賊オーク1 「でも、あんまり高いのは頼むんじゃないよ」

盗賊オーク1 「稼ぎが少ねえのに可哀想だからさあ!」


盗賊オーク1の部下たち 「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」


ゲラゲラゲラ


盗賊オークA 「………」




盗賊オークE 「やれやれ」

盗賊オークE 「どこかの馬鹿が見境なく片っ端から襲うものだから、他の国まで噂が届いて」

盗賊オークE 「縄張りを通る旅人や商隊が減ってしまったというのに」


盗賊オーク1 「あぁん?」


盗賊オークB 「よせよせ、Eよ」

盗賊オークB 「無駄だ。こちらのお嬢さんは理解できねぇ」

盗賊オークB 「栄養は全部胸と筋肉にいっちまってるからな」


盗賊オーク2 「てめえ!!」


ガシャン


盗賊オーク2 「姐さんを何つった!?」


盗賊オークE 「何のことやら。馬鹿の話はしましたが……」

盗賊オークE 「まさか自分の上司を馬鹿とお思いで?」

盗賊オークE 「で、あれば、同意してさしあげましょう」


盗賊オーク2 「てめえ……!!」


盗賊オークB 「何かい。C相手に引き分ける程度の腕っ節で、やろうってのかい」


盗賊オークC 「何だとう!?」


盗賊オークD 「お前は黙ってろ」




盗賊オークA 「そこまでだ」

盗賊オークA 「……なあ、盗賊オーク1嬢よ。おれは泣きてえほど感動しているんだよ」


盗賊オーク1 「?」


盗賊オークA 「てめえが詩作っつう言葉を知っている事実にさ」

盗賊オークA 「だが頼む、お願いだ。もう口にしてくれるな」

盗賊オークA 「てめえがその臭い口から出すたびに、言葉が穢れるんだ」


盗賊オーク1 「…………!!」


盗賊オーク1の部下たち 「!!」


盗賊オークA 「そりゃ仕事もはやいさ」

盗賊オークA 「襲われた連中も、さっさと身ぐるみおいて逃げちまうか死んだほうがマシと考えるだろうぜ」

盗賊オークA 「全身がカビだらけの糞みてえな臭いのする盗賊に襲われりゃあな」


盗賊オークB 「違いねえ」


盗賊オークAの仲間たち 「ぎゃははははは!」




盗賊オークA 「野郎ども、あいつの汚い目を見るなよ。ネズミの糞みてえな目だ。見られるのもダメだ」

盗賊オークA 「視線だけで腐っちまう」


盗賊オークB 「おいおい、相手ぁご婦人だぞ」

盗賊オークB 「本当のことを言っちゃ失礼ってもんだ!」


盗賊オークAの仲間たち 「ぶはははははは!」


ワハハハハ

バン バン バン ガチャガチャ

ゲラゲラゲラ


盗賊オーク1 「…………」


盗賊オーク2 「………てっっ」

盗賊オーク2 「……んめぇえッッ!! くそ豚どもがァ………!!」


ボキャッ


盗賊オーク2 「げぴゃっ!?」


ガシャン ガラガラガラ

ドサ


盗賊オークE 「……我々のリーダーに手をあげようとは」

盗賊オークE 「ぶち殺されてえか、貴様……ッッ!!」


盗賊オークB 「忠告ぁ、したはずだぜ?」

盗賊オークB 「殴ったのはおれじゃなかったがな」




盗賊オーク2 「あが……はびッ……」


ビクン ガクン


盗賊オーク4 「おいおい……。こいつはちょっと、ひでえってもんじゃないの?」


盗賊オーク5 「……だな。報復すべきだ」


盗賊オークC 「何だあ、やんのか!?」


盗賊オークD 「お、おい、そろそろやめといた方が……」


盗賊オーク1の部下たち 「……………」


ジリ ジリ


盗賊オーク1 「……待ちなあ、お前たち!!」


キイン ビリビリビリ


盗賊オーク1の部下たち 「…………」


>>31 訂正ごめんなさい


盗賊オーク1の台詞


盗賊オーク1 「ガハハハハ! 天下の特攻オーク野郎Aチームが、ずいぶんとしけてんじゃねえか!」

盗賊オーク1 「あたいらが、慣れねえ土地で商隊ひとつ潰してくる間に」

盗賊オーク1 「勝手知ったるなわばりで、安物の酒と鶏肉、そんでガキ一匹だけとはよお!」


のあとに


盗賊オーク1 「詩作に夢中で、獲物を見逃しちまってたかあ!?」


を追加




盗賊オークB 「……チィ、相変わらず馬鹿でけぇ声だぜ」


ビリ ビリ


盗賊オーク1 「……なあ、盗賊オークAよ」


盗賊オークA 「あん?」


盗賊オーク1 「あんたが捕まえたガキ……」



淫魔幼女 「風呂風呂風呂媚薬風呂アヒルさん人形風呂風呂風呂風呂……」


ボソボソボソボソ……



盗賊オーク1 「無傷で売っ払ったら、いくらになるんだろうなあ?」


盗賊オークA 「……まあ、良い値にはならあな」


盗賊オーク1 「そうかい……」

盗賊オーク1 「おい、野郎ども!」

盗賊オーク1 「あの綺麗な服を着たガキをかっぱらって、たっぷり味見してやんな!」




盗賊オーク1の部下たち 「おう!」


ダダダダ


盗賊オークB 「やろう、ばらけやがった!」


盗賊オークA 「野郎ども、ガキを渡すな!」


盗賊オークAの仲間たち 「おう!」


ダダダ



酔いどれオーク 「おう、喧嘩だ喧嘩だ」


こそ泥オーク 「やんややんや」


看板オーク 「あの、ここでは喧嘩は……」


盗賊オーク3 「ふゆひぇえ(うるせえ)!」


バキ


看板オーク 「げふーっ」


ドダバタ

キイン ガキイン

ワー ワー



盗賊オーク1 「遠征でうまい汁を吸った奴は残って足止めだよ!」


盗賊オーク1の部下たち 「おう!」


バババ


盗賊オークE 「いけない、こちらは数が足りない……!」


盗賊オークA 「くそが……ッ」


盗賊オーク1 「がはははは!」

盗賊オーク1 「まあ落ち込むなよ。安酒と鶏肉は残してやらあ!」

盗賊オーク1 「がはははは!」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「けけけ」

盗賊オークA 「ああ、良いぜ。そうなったら、てめえが頭領にぶっ殺されるだけさ」


盗賊オーク1 「!?」




盗賊オーク1 「いきなり何だって」


盗賊オークA 「あのガキについては、ちょっと複雑なんだよ」

盗賊オークA 「おれが、ちょいと作戦を提案していてな」

盗賊オークA 「誰も手を出さねえことにしているのさ」


盗賊オーク1 「はんっ、あんたのちっぽけな脳みそで考えたことなんざ」

盗賊オーク1 「小石ほどの価値もねえ!」


盗賊オークA 「ひとつ言えることは」

盗賊オークA 「魔王オークさまはおれの提案をいたく気に入っていて」

盗賊オークA 「あのガキがキズモノになってすべてが台無しになったら」

盗賊オークA 「怒り狂うだろうってことさ」


盗賊オーク1 「…………」


盗賊オークA 「まあ、信じねえなら良いぜ? 好きにしな」

盗賊オークA 「おれは逃した魚のでかさを嘆きながら」

盗賊オークA 「安酒を片手に、次期頭領候補が処刑されるのを眺めるだけさ」




淫魔幼女 「風呂風呂風呂風呂風呂……」


ボソボソボソ

ドタ ドタ ドタ

グイ


淫魔幼女 「…………ッ」


盗賊オーク13 「へっへっへ、捕まえたぜ」


盗賊オーク18 「ほーう、へへへ、ほうほう、ガキだがなかなかのもんじゃねえか」


盗賊オーク20 「何だかこのガキ、かいだことの無い良いにおいがするぞ」


盗賊オーク13 「どうでも良いや。さっさと秘密の坑道へ運んじまおう」

盗賊オーク13 「ガキとはいえ、こんな当たりは久しぶりだ」


??? 「野郎ども!」


キイン ビリビリ


盗賊オーク13・18・20 「!?」


??? 「喧嘩ごっこはおしまいだ」

盗賊オーク1 「ガキを置いて、さっさと帰るよ!」




ドヨ ドヨ


盗賊オークA 「……ありがとうよ」

盗賊オークA 「おかげで助かったぜ」


盗賊オークB 「へっへっへ」


盗賊オークAの仲間たち 「へへへ……」


盗賊オーク1 「……おぼえてな」

盗賊オーク1 「ぶっ潰してやる」


ノシ ノシ ノシ……


盗賊オーク1 「…………」

盗賊オーク1 「!」


ザ ザ ザ


??? 「……おや」

角オーク 「喧嘩が観られると思うたら」

角オーク 「もう終わっておったかの」


盗賊オーク1 「角オークのじじい」


角オーク 「ほっほ……残念、残念」

角オーク 「……盗賊オークA」


盗賊オークA 「何だ、角オーク翁」


角オーク 「捕らえた娘をつれてくるようにと、頭領からじゃ」




淫魔幼女 「…………」


盗賊オーク13 「く、くそ、こんなのってあるか」

盗賊オーク13 「手に入れたってのに、お預けなんてよ!」


盗賊オーク18 「しかたねえさ、あきらめよう……」


盗賊オーク20 「フーッ……フーッ……」


盗賊オーク18 「……おい」

盗賊オーク18 「どうしたんだお前、目が血走ってるぞ……」


盗賊オーク20 「……や、やってやる」


盗賊オーク13 「……?」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オーク20 「こんなにイイにおいなんだ……やってやる……」

盗賊オーク20 「おれの雌だ! やってやる!」


バ グイ ドサ

ビリッ


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「きゃああッッ!!」


盗賊オーク13 「お、おい、やめろ!」


盗賊オーク18 「聞いてんのか、やめろ!」


盗賊オーク20 「フーッ……フーッ!! 雌、雌ぅう!!」




ヒュルルル

ドゴ メギョ グヂャ 


盗賊オーク20 「ゴヂョッ!?」


盗賊オーク13・18 「!?」


盗賊オーク20 「…………」


ドサ


盗賊オーク20 「…………」

盗賊オーク20の死体 「…………」


グチャ グチャ

ドロ ドロ


ザ ザ ザ


角オーク 「……ほっほっほ」

角オーク 「まったく、若いのう。いかんぞ、こんなところで」


盗賊オーク13 「石つぶての角オーク翁……」


盗賊オーク20の死体 「…………」


角オーク 「やれやれ、わしの力も衰えたもんじゃ」

角オーク 「このくらいの加減なら、首から上は丸ごと爆ぜ飛ばせていたのに」

角オーク 「鼻から下がまるっと残っておる」


盗賊オークA 「なに、力はまったく落ちちゃいないさ」

盗賊オークA 「狙いがつきにくいだけだ」

盗賊オークA 「年のせいでな」


角オーク 「ほっほ、南の小倅が言うようになったもんだわい」

角オーク 「ほれ、さっさと連れていけい。わしは死体を片付けておくでの」


盗賊オークA 「おう」


淫魔幼女 「…………」





盗賊のアジト 一番坑道



ザ ザ ザ


盗賊オークA 「…………」


淫魔幼女 「…………」


チカ チカ ユラ ユラ

ザ ザ ザ


盗賊オークA 「……おい」

盗賊オークA 「きびきび来い。足は縛られてねえだろう」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「お前のためでもあるんだぜ、お嬢ちゃん」

盗賊オークA 「あんまり離れるんじゃねえ」

盗賊オークA 「この鉱山はとっくの昔に捨てられたが、まだ鉱夫たちの怨念が残ってやがる」

盗賊オークA 「鉱山ゴーストの巣だ。何があったか、奥の方はおれたちでも手が出せねえ」

盗賊オークA 「……明かりが届かないところは、やつらの手が届くところってわけさ」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……おい」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「聞こえなかったのか」

盗賊オークA 「お前さんの後ろじゃ、ゴーストが今にも引きずり込もうと両手ひろげてんのかもしんねえぜ?」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「……淫魔、だから……」


盗賊オークA 「あん?」




淫魔幼女 「私、淫魔だから……」

淫魔幼女 「近くにいると、男の人は狂ってしまうから」

淫魔幼女 「みんな、不幸になるから……」


盗賊オークA 「…………」


淫魔幼女 「お風呂にはいって、体のにおいを落とさないと」

淫魔幼女 「人に近づけない……」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「うるせえ、はやくこっちに来い」


淫魔幼女 「……!」

淫魔幼女 「でも……」


盗賊オークA 「てめえみてえなガキが近くにいたところで」

盗賊オークA 「おれはどうとも無い」

盗賊オークA 「おれなんざ、生まれたことが最大の不幸さ」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……はやく来やがれ」

盗賊オークA 「魔王オークさまがお待ちなんだ」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「……はい」


トテ トテ トテ




ザ ザ ザ


盗賊オークA 「…………」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……てめえ」


淫魔幼女 「……ッ」


盗賊オークA 「……親も、そうなのか?」

盗賊オークA 「てめえと同じ……」


淫魔幼女 「……いえ」

淫魔幼女 「お屋敷には誰も、私みたいな体質の者はいません」

淫魔幼女 「だからお父様も、お母様も……私のことで心を痛めていらっしゃいました」


盗賊オークA 「いらっしゃいました、か」

盗賊オークA 「それがどうして、娘をゴロツキに託して旅に出すんだか」

盗賊オークA 「まるで捨てるみたいに」

盗賊オークA 「なあ?」


淫魔幼女 「それは……」

淫魔幼女 「…………」




盗賊オークA 「風呂に入らなきゃ人に近づけねえってのは」

盗賊オークA 「慈悲深きお父様やお母様にもか?」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「みんな不幸になるってのは、なんだ」

盗賊オークA 「まるでそうなったことがあるって感じだったぜ?」

盗賊オークA 「んで、てめえが旅してんのと関係ありますってな」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「まあ、無理に話せってんじゃねえ」

盗賊オークA 「他人の不幸話なんざ、興味もねえや」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……離れんじゃねえ」


淫魔幼女 「…………」


トテ トテ

ザ ザ ザ


…………




盗賊のアジト 頭領の間



ガコン ギギギ

ザ ザ ザ


盗賊オークA 「……魔王オークさま」

盗賊オークA 「ガキをつれてきました」


??? 「…………」

魔王オーク 「…………」

魔王オーク 「……んもーう」

魔王オーク 「おっそぉい!」


盗賊オークA 「すいやせん」






魔王オーク 「んーで……」


ドシ ドシ ドシ


淫魔幼女 「…………」


魔王オーク 「ぶほほ、きゃー、やっぱりこの子きゃーわーいーいー!」

魔王オーク 「お人形さんみたーい!」


ブヒ ブヒ


盗賊オークA 「……このガキに何か用があるんで?」


魔王オーク 「ねえねえ、とっときのお人形さんに着せようと思っていた服があるんだけど着てみなーい?」

魔王オーク 「フリッフリのやつ。ピンクのフリッフリしたやつ!」


淫魔幼女 「……あ、あの………」


盗賊オークA 「魔王オークさま」


魔王オーク 「ああん、可愛いわあ! いっぱい着せ替えしたいわあ!」

魔王オーク 「剥製にしちゃいたいー!」


ブヒ ブヒ

ドスン ドスン


盗賊オークA 「……オカマのクソオーク」


魔王オーク 「…………」


ピタ


魔王オーク 「ぁあ゛ん!?」




魔王オーク 「そーよ、私はオカマよ」

魔王オーク 「オカマのオーク、カ"マオー"クで魔王」

魔王オーク 「オカ魔王クよ」

魔王オーク 「それが何……」

魔王オーク 「何か文句あるてえの゛が!?」


盗賊オークA 「……ガキに何か用があるんじゃなかったんで?」


魔王オーク 「…………」


淫魔幼女 「…………」


魔王オーク 「……あーらぁ!」

魔王オーク 「そうそう、そうだったわぁん」

魔王オーク 「おほほほほ、私ったら、いっけなあい!」


ドシドシ ブヒペロ


淫魔幼女 「…………」




魔王オーク 「ねーえ、お嬢ちゃん」


淫魔幼女 「……はい」


魔王オーク 「やーん、やはりきゃわいぃい~。声出すと二倍きゃーわーいーい~!」

魔王オーク 「そんなにカタくならないで、あたしのことは気軽に」

魔王オーク 「お・ね・え・さ・ま」

魔王オーク 「って、呼んでくれれば良いのよぉ!」


淫魔幼女 「………お」


モジ モジ


淫魔幼女 「お姉、さま……」


魔王オーク 「…………」

魔王オーク 「きゃ~~~~~!」

魔王オーク 「ほーんともう、きゃわいすぎィ!」

魔王オーク 「ブヒッ、ブヒッ!」


ブヒ ブヒ


盗賊オークA 「用事は良いんで?」


魔王オーク 「ブヒッ……」

魔王オーク 「んもう、せっかちねん」

魔王オーク 「……ん?」


淫魔幼女 「……グス、ヒック」


メソメソ


魔王オーク 「あら、泣き出しちゃったわよ、この子」




盗賊オークA 「魔王オークさまは泣く子も黙るオーク盗賊団の頭領」

盗賊オークA 「そんな風にはしゃがれちゃあ、そりゃ子供はおびえちまいまさあ」


魔王オーク 「何よぉ……」


淫魔幼女 「……ち、違う……グス……違うんです」

淫魔幼女 「私……本当のお姉さまのこと、お姉さまって呼んじゃ駄目だったから……」

淫魔幼女 「なんだか、不思議な感じで……グス、ヒック」


シクシク メソメソ


盗賊オークA 「…………」


魔王オーク 「…………」

魔王オーク 「うぅう……!」

魔王オーク 「泣ける……泣けるわぁああ!」

魔王オーク 「ブフォォオオオオオーー!!」


ドシン ドシン

グラ グラ




魔王オーク 「ちょっともーう、泣かせるじゃないのこの子!」

魔王オーク 「今すぐ剥製にしちゃいたい!」

魔王オーク 「分かったわ、今日から私がお姉さまよ」

魔王オーク 「ブフォッ、ブフォオオオッ……」


グジョグジョ ズビー


盗賊オークA 「……用事は良いんで?」


魔王オーク 「あ、そうだったわね」

魔王オーク 「ねえ、お嬢ちゃん、あたしって料理にハマってるんだけどぉ」


淫魔幼女 「はい……」


魔王オーク 「あなたからいただいた鳥肉。あれって、ここらじゃ見ないんだけど」

魔王オーク 「何か良い料理のしかたとか知らなぁい?」


淫魔幼女 「……ごめんなさい」


魔王オーク 「あら」


淫魔幼女 「あの肉は闇の国にしか生息しない鳥の肉で」

淫魔幼女 「薄く切って、ぐらぐらに沸いた鍋にさっと通してからお好みのタレでいただくと、天にも昇る美味しさだけれど」

淫魔幼女 「私の国では貴族にしか許されない食べ方なので教えられないのです……」


盗賊オークA 「…………」


魔王オーク 「……あーら」



…………




次の日 夜

盗賊のアジト 酒場跡



ガヤ ガヤ ワイワイ


暗殺オーク 「ブヒヒヒ」


空き巣オーク 「ブヒャヒャヒャ」


ガヤ ガヤ

キン カチャン ワイワイ

グツグツグツ


盗賊オークB 「……たくよぉ」

盗賊オークB 「こんな暑いときに鍋なんてやるもんかね」


盗賊オークD 「しかたねえや。頭領は料理に夢中だから」


盗賊オークC 「おれらの分までつくってくれるなんて」

盗賊オークC 「頭領は太っ腹だぜ!」


盗賊オークE 「材料は私たちで調達したんですがね……」




グツグツグツ

ムシャムシャ


盗賊オークD 「あちち……ハフ……ホフ……」

盗賊オークD 「しっかし、うめえなあ、この鳥肉」


盗賊オークC 「薄すぎて食った気がしねえけどな」


盗賊オークE 「それは、君があまり噛まずに食べるからです」

盗賊オークE 「……それにしても、ううむ、闇の国にこれほどの鳥肉があるとは」


盗賊オークB 「おぅ、それよ」

盗賊オークB 「ぶりっとしていて、噛むと不思議な熱い旨みがチュワッと出てきて」

盗賊オークB 「口中の唾液に染み渡りやがる」

盗賊オークB 「言われなきゃ、鳥の肉とは分からねぇぜ」


モチュ モチュ


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークD 「……だがよお、なんだってガキをおれたちが面倒みなきゃなんねえんだ」


盗賊オークA 「しかたねえだろう」

盗賊オークA 「頭領の手元に置いといたら、計画がおじゃんだ」


盗賊オークE 「気に入った子供を剥製にして」

盗賊オークE 「着せ替え遊びをする癖がありますからね……」




盗賊オークB 「ま、暇つぶしと思ってやるっきゃねぇやな」

盗賊オークB 「ほれ、お前も肉、食いねぇ」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークB 「あーん、だ。あーん。縄をとくわけにゃいかねぇからな」

盗賊オークB 「それとも足で食うってか?」


淫魔幼女 「……あーん」


盗賊オークB 「熱いから気をつけろよぅ」

盗賊オークB 「しょうもねえ怪我でいちゃもんつけられちゃ、かなわねぇからな」

盗賊オークB 「ほれ」


ヒョイ


淫魔幼女 「あむ……ハグ、ハグ……」


盗賊オークB 「おーおー、体全体で噛みやがるなぁ」


盗賊オークE 「肉が大きすぎるのですよ」

盗賊オークE 「口の大きさからして我々と違うんですから」


淫魔幼女 「ムグ、ムグ……ゴクン」

淫魔幼女 「…………」


盗賊オークB 「おぅ、よく食えました」


盗賊オークC 「なあなあ、次は野菜食うか?」


淫魔幼女 「……うぅ」

淫魔幼女 「グス……」


メソ メソ




盗賊オークB 「ぅおい、泣き出しちまったぜ?」


盗賊オークE 「肉が大きすぎたんですよ」


盗賊オークB 「おれのせいってぇかよ」


淫魔幼女 「グスン……ヒック……」


盗賊オークC 「なあ、おい、どっか痛いのか?」


盗賊オークD 「こらガキ、あんまり泣いてっと……」


淫魔幼女 「う、嬉しくて……」


盗賊オークたち 「……?」


淫魔幼女 「こんな風に、たくさんの人と賑やかに食卓をかこんで」

淫魔幼女 「あーんって、食べさせてもらって……」


グスン グスン


盗賊オークB 「食べさせて……て」


盗賊オークE 「やはり、君のせいでしたね」


盗賊オークB 「うるせぇやい」




淫魔幼女 「グス……」


盗賊オークC 「……グスン」


盗賊オークB 「……まぁ、なんだ」

盗賊オークB 「ほれ、もっと食え」


ヒョイ


淫魔幼女 「あーん……アム」

淫魔幼女 「ハム、ハム……」


盗賊オークA 「…………」


カタン


盗賊オークE 「おや、どこへ?」


盗賊オークA 「寝る。かまわず続けてな」


盗賊オークC 「もう食わねえのか?」


盗賊オークA 「じゅうぶん食ったさ」

盗賊オークA 「…………」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……ガキは苦手だってこと忘れてたぜ」

盗賊オークA 「とくに、すぐ泣くガキはよ」


ザ ザ ザ


淫魔幼女 「…………」


ワイワイ ガヤガヤ

キン キン カチャン




…………



盗賊オークC 「ああ、うまかったなあ、昨日の鍋」


盗賊オークD 「まだ口の中に味が残ってやがるぜ……」


ズドォンッ


淫魔幼女 「きゃっ……」


ドサ


盗賊オークB 「へっはっは! だぁから言ったろう」

盗賊オークB 「蒸気銃ってのは反動がすげえんだ」


淫魔幼女 「……すごい」

淫魔幼女 「蒸気の鼓動の感触が、まだ手に残ってる……」


盗賊オークB 「へっへ、病みつきになんだろう?」

盗賊オークB 「……おらよ」





淫魔幼女 「……?」


盗賊オークB 「さっさと立ち上がれってぇこった。握手じゃねぇぞ」

盗賊オークB 「つかまんな」


淫魔幼女 「……は、はいっ」


ギュ


盗賊オークB 「……へッ」

盗賊オークB 「ったくよぅ、むず痒い感じだぜ……」


盗賊オークA 「…………」




…………



淫魔幼女 「あの、終わりました……」


盗賊オークE 「もうですか。どれどれ……」


パラ パラ

ペラペラペラ


盗賊オークE 「……素晴らしい。これで帳簿整理がはかどります」

盗賊オークE 「簡単なものとはいえ、まさかコーヒーを飲む間にしあげるとは」


淫魔幼女 「旅の間、お金のやりくりをしていて、同じようなことをしていたので……」


盗賊オークE 「良い心がけです」

盗賊オークE 「うちは大雑把な者が多くて……」


淫魔幼女 「……あの、他に手伝えることはありますか?」


盗賊オークE 「そうですね」

盗賊オークE 「では、最後にこれをお願いしましょうか」


チャリン


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「……お金?」


盗賊オークE 「酒場で甘いものでも食べてらっしゃい」


淫魔幼女 「……!」

淫魔幼女 「はいっ」


トテ トテ トテ


盗賊オークE 「ふふっ……」


盗賊オークA 「…………」



…………




…………


ガサ ゴソ


盗賊オークC 「いやあ、うまかったよなあ、あの日の鍋」

盗賊オークC 「あの鳥肉をくれた淫魔幼女ちゃんには感謝だぜ」


盗賊オークD 「……けっ」

盗賊オークD 「みんな、他のチームの奴らまであのガキをちやほやしやがって」

盗賊オークD 「おれは認めねえからな」

盗賊オークD 「あいつは実際のところ、人質なんだ。それ相応の扱いってもんをしなきゃあ……」


盗賊オークC 「なあなあ、これなんて似合うかなあ」


ピンクの服(盗品)


盗賊オークD 「……いやあ、こっちだろう」


黒いフリルの服(盗品)


盗賊オークC 「えぇー」


ガサ ゴソ

ガサ ゴソ


盗賊オークC 「……淫魔幼女ちゃん、気に入ってくれっかなあ」

盗賊オークC 「おれたちの選んだ服」


盗賊オークD 「けっ、頭領の着せ替え癖でもうつっちまったかよ……」

盗賊オークD 「……これなんて、良さそうだな」


ガサ ゴソ


盗賊オークA 「…………」



…………




…………


ドン ドカ


淫魔幼女 「きゃっ……!」


ドサ


盗賊オーク1の部下たち 「へっへっへ……」


盗賊オーク2 「きひひ……よう、貴族のお嬢ちゃん」

盗賊オーク2 「最近でかい顔してんじゃねえか」

盗賊オーク2 「雄どもを手玉にとってよう」


淫魔幼女 「私、そんなこと……」


盗賊オーク2 「あぁん!?」


ドガ パラパラ


淫魔幼女 「ひっ……」


盗賊オーク雑魚 「お、おい、ここは元坑道なんだ。やたらと壁を殴っちゃ……」


盗賊オーク2 「うるっせえ!」

盗賊オーク2 「……あのなあ、お嬢ちゃん」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オーク2 「あんたは人質なんだ」

盗賊オーク2 「忘れてるようだから、ここらで立場ってもんを分からせてやろうじゃねえか」

盗賊オーク2 「その体にたっぷりと……」

盗賊オーク2 「ねえ、あんたたち!?」


盗賊オーク1の部下たち 「おうッ」




盗賊オーク1の部下たち 「…………」


ジリ ジリ


淫魔幼女 「……ぁ、あ……ぃ、いや………」


盗賊オーク1の部下たち 「……へっへっへっ…………」


ジリ ジリ


……ザ


??? 「…………」


盗賊オーク2 「……あん?」


??? 「…………」

盗賊オークA 「よう、大勢で楽しそうだなあ」


ザ ザ ザ


淫魔幼女 「…………!」


盗賊オーク2 「てめえ……」


盗賊オークA 「ったくよお……盗賊オーク1チームが、よってたかってガキ一匹に群がるとは」

盗賊オークA 「笑える話じゃねえか。なあ?」

盗賊オークA 「えぇ、おい……!!」


ビリ ビリ


盗賊オーク1の手下たち 「……ッ!」





盗賊オーク2 「……ッ」

盗賊オーク2 「……へへへ」

盗賊オーク2 「これはこれは、ガキのお守りのAチームじゃねえか」

盗賊オーク2 「どうだい、クソブタ保育園の調子は……」


ヒュン

ゴギャ


盗賊オーク2 「ぼぎぇっ!?」


ドザ


盗賊オークA 「……コツがあんだよな。まだまだ角オーク翁みてえにはいかねえか」

盗賊オークA 「おれの石つぶてじゃ、頭のどこも吹っ飛びやしねえ」


ポン ポン





盗賊オーク2 「はびっ……ひびびびびィ!!」


ジタ バタ


盗賊オーク雑魚 「ひでえ、顎か粉々だ……」


ザワザワ


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……おい」


淫魔幼女 「……ひっ」


盗賊オークA 「…………」





淫魔幼女 「……ぁ」


盗賊オークA 「何をボーッとしてやがる」

盗賊オークA 「Bから習ったろう」


淫魔幼女 「……は、はい」


ギュ

ヨロ ヨロ






淫魔幼女 「……ありがとうございます」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「行くぞ」


ザ ザ ザ


盗賊オーク雑魚 「ま、待ちやがれ!」


盗賊オークA 「…………」


盗賊オーク雑魚 「てめえ一人、逃すと思ってんのか」

盗賊オーク雑魚 「のこのこやって来やがってよぉ……!」


盗賊オーク1の部下たち 「へ、へへへ……」


盗賊オークA 「頭領からの呼び出しだ」

盗賊オークA 「鳥肉のことで、このガキに用があるってんでな」


盗賊オーク1の部下たち 「!?」


盗賊オークA 「邪魔しようってのか?」




盗賊オークA 「まあ、おれは良いんだぜ?」

盗賊オークA 「てめえらと殴りあって、ちょっとこのガキが怪我しても」

盗賊オークA 「ここでのことを包み隠さず報告するつもりさ」

盗賊オークA 「つまり、てめえらにゃ負ける気がしねえってことだ」


盗賊オーク1の部下たち 「…………」


盗賊オーク2 「かひゅ……ふぁひゃは……」


ビク ビク


盗賊オーク雑魚 「……て」

盗賊オーク雑魚 「撤退、負傷者を回収して撤退だ……ッ」


盗賊オーク1の部下たち 「お、おう!」


ダダダダダ




盗賊オークA 「……けっ」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークA 「……まあ、一理あるってことだ」

盗賊オークA 「気を抜くのは勝手だが、ここはてめえの生まれ育った庭じゃねえってことを、忘れないこったな」


淫魔幼女 「……はい」


盗賊オークA 「じゃあな」


ザ ザ ザ


淫魔幼女 「………あの」

淫魔幼女 「呼び出しは……」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「ああ?」

盗賊オークA 「何のことだ」


淫魔幼女 「え……」


盗賊オークA 「……冗談だ」

盗賊オークA 「行くぞ」


淫魔幼女 「は、はい」


ザ ザ ザ


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「……ぷ」

淫魔幼女 「ぷくくく……ぷふっ……ふふふふ……ッ」


クツ クツ


盗賊オークA 「なに笑ってやがる。しっかり歩けよ」

盗賊オークA 「……ククッ」


淫魔幼女 「フフッ……クスクス……」


ザ ザ ザ


……………




…………


盗賊のアジト 空き地



トン テン カン

ガコ ガコ

ザバ ザバ ザバ ザバ

ゴオオ

グラグラ


盗賊オークD 「……よし、沸いてきたか」


盗賊オークC 「まだまだ、グラッグラに沸かそうぜ」

盗賊オークC 「いつかの鍋みたいによ」

盗賊オークC 「フーッ、フーッ」


ゴオオ

グラグラ


桶風呂


盗賊オークB 「しっかし、思ってもみなかったなぁ」

盗賊オークB 「おれたちが風呂をつくっちまうなんてよぉ」


盗賊オークA 「鬱陶しい泣きべそが減るってんなら安いものだろ」


淫魔幼女 「………むぅ」


盗賊オークB 「だがよぉ、せっかく完成しても、もうそろそろなんじゃねぇか?」

盗賊オークB 「あのゴロツキどもが嬢ちゃんの家に着くのはよぅ」


盗賊オークE 「いえ、おそらくまだだとは思いますが……」

盗賊オークE 「まあ、風呂はあって困るものではないでしょう」


盗賊オークA 「……そういうこった」




盗賊オークC 「フーッ! フーッ! フーッ! フーッ! フーッ! フーッ!」


グラグラ グツグツ


盗賊オークD 「……お、おい。もうその辺で」


グラ グラ グラ グラ



盗賊オークA 「…………」


盗賊オークE 「…………」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークB 「……なぁ」

盗賊オークB 「おれたちゃあ、鍋をつくってんだったか?」


盗賊オークA 「いや……風呂だな」


グツ グツ グツ



盗賊オークD 「な、なあ、おい、もうやめろ……!」


盗賊オークC 「ふーろ、フーッ! ふーろ、フーッ!」

盗賊オークC 「楽しくなってきたぜえ! フーッ!」


グラグラグラグラ


盗賊オークD 「おい……!」


グラグラグラ

ミシ……



盗賊オークE 「……いま」

盗賊オークE 「嫌な音がしませんでしたか」


盗賊オークA 「……ああ」




桶風呂 「…………」


ミシ ミキミキ

ガコ ガコガコ


盗賊オークB 「……おいおい、やべぇぞ、おい」


盗賊オークE 「沸かしすぎたんです。それで……」


桶風呂 「…………」


ピシ

バキバキバキ


盗賊オークたち 「………!」


メキメキメキメキ……

バゴン


盗賊オークA 「……た」

盗賊オークA 「退避だ! 風呂がぶっ壊れるぞ!」


バガッ

ザバアァア


盗賊オークたち 「う、うわーーーっ!!」


ザアアアア



ザバン バシャアア

サバ゙アアア

ザバ ザバ ザバ……

ピチョン



盗賊オークA 「…………」


盗賊オークD 「……いたたたた」


盗賊オークB 「あーあぁ、びっしょびしょだぜぇ」


淫魔幼女 「お風呂……壊れた……」


盗賊オークE 「まあ、火傷しなかっただけマシとしましょう」

盗賊オークE 「風呂は作りなおせば良いことです」


盗賊オークC 「よっしゃ、今度こそちゃんと沸かすぜ!」


盗賊オークB・D・E 「それはやめろ」


盗賊オークC 「な、なんだよう……」


盗賊オークA 「………クク」

盗賊オークA 「ははは……!」

盗賊オークA 「がはははははは……ッッ!」


ゲラゲラゲラ


盗賊オークD 「…………」


盗賊オークE 「…………」


淫魔幼女 「………プフ」

淫魔幼女 「うふふ……あはははは」

淫魔幼女 「あははははは……!」


コロコロコロ


盗賊オークB 「………へ」


盗賊オークE 「………ふふ」


盗賊オークD 「………ひひ」


盗賊オークC 「………ぶは」


アハハハハハ

ブヒヒヒヒヒ

ゲラゲラゲラゲラ


……………




…………


盗賊のアジト 桶風呂



モワ モワ

ザプ チャプ

コン カポーン


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークB 「…………」


盗賊オークC 「…………」


盗賊オークD 「…………」


盗賊オークE 「…………」


淫魔幼女 「…………」


盗賊オークたち・淫魔幼女 「…………」

盗賊オークたち・淫魔幼女 「ふいぃ~………」


モワ モワ


…………




…………




どこか



???A 「まだか! いつまで待てば良いんだ!」


???B 「時間がかかるのです。大急ぎで走っているはずですから、きっとあと少し」


???A 「昨日もその前もそう言った!」

???A 「そして今日も!」


???B 「計画的に使わないからそうなるのです」

???B 「とにかく、いくらわめいても来ないものは来ません」


???A 「ぬうぅううう……!!」



…………




廃坑

盗賊のアジト 酒場跡



ザワ ザワ

キン カチャ


腹ぺこオーク 「ポケー…………」


酔っ払いオーク 「……ウイィ」


カチャ カチャ


盗賊オークD 「ここ最近は、頭領の顔を見てねえな」


盗賊オークE 「軽い病気だそうですが、長引きますね」

盗賊オークE 「具合はどうなのです?」


盗賊オークA 「……おれも会っていない」


盗賊オークB 「まぁ、万が一にも寝首をかかれるおそれがある」

盗賊オークB 「威厳ってもんもあるだろうし、部下を寄せ付けたくはないだろうよ」


盗賊オークA 「直接会っているのは、おつきの角オーク翁とこいつくらいだ」


淫魔幼女 「……はい」


盗賊オークA 「で、どうなんだ」


淫魔幼女 「じつは……」

淫魔幼女 「あまり、芳しくはないようで……」




淫魔幼女 「口外は避けるべきだと、今まで黙っていたのですが……」

淫魔幼女 「……ごめんなさい」


盗賊オークたち 「…………」


盗賊オークB 「……そうかい」

盗賊オークB 「さしもの魔王オークさまも、病気にゃ勝てねえってぇことなんかね」


盗賊オークE 「まだ負けたわけじゃ無いでしょうに」


盗賊オークA 「このことは、もう誰にも話すなよ」


淫魔幼女 「はい……」




盗賊オークB 「まあ、前向きにとらえようじゃねぇの」

盗賊オークB 「これで我らが頭領、盗賊オークAさまの誕生する日が近づいたってことでよう」


盗賊オークA 「よせよ、不謹慎だぜ」


盗賊オークE 「そうです。死にゆく者は惜しまねば」


盗賊オークB 「おめえも死ぬって思ってんじゃねぇかよ」


盗賊オークE 「ふふ……」


盗賊オークB 「まあ、乾杯といこうや」

盗賊オークB 「魔王さまの安らかな眠りと、我らがリーダーの洋々たる未来を願って」


盗賊オークE 「まったく、まだ朝ですよ」


盗賊オークB 「かまいやしねぇよ」

盗賊オークB 「なぁ……」


盗賊オークC 「ポケー……」


盗賊オークB 「……おぃ?」


盗賊オークC 「……うん?」


盗賊オークB 「どしたぃ、食うときは人一倍うるせぇてめえがよ」


盗賊オークC 「……いやあ」

盗賊オークC 「あのとき食った鍋、うまかったよなあ……」




盗賊オークD 「またそれか」


盗賊オークB 「すっかり、嬢ちゃんの鳥肉の虜ってわけだな」


盗賊オークC 「なあ、淫魔幼女ちゃん。あの肉、もうねえのかい?」


淫魔幼女 「はい。ごめんなさい……」

淫魔幼女 「私の国に行けば、たくさん手に入ると思いますが……」


盗賊オークC 「そっかあ……」

盗賊オークC 「! そうだ!」


盗賊オークたち 「?」


盗賊オークC 「淫魔幼女ちゃんの国に遠征するってのはどうだろう!」

盗賊オークC 「そうすりゃ、たんまり金が手に入るし、肉も手に入るだろ?」




淫魔幼女 「遠征って……盗みに入るということですか……?」

淫魔幼女 「私の国に」


盗賊オークC 「淫魔幼女ちゃんを追い出すようなところだぜ?」

盗賊オークC 「かまいやしないって!」


盗賊オークB 「おっ、くいさがるじゃねぇか」


盗賊オークD 「食い意地がはってるだけだぜ、こいつは……」



ガシャン

バリン



??? 「だから、この料理がまずいって言ってんだよ」





盗賊オークB 「……何だぁ?」


盗賊オークE 「カウンターの方ですね」


ガヤガヤ

ザワザワ


??? 「こんなまずい物」

腹ペコオークA 「舌が受けつけねえんだよ!」


看板オーク 「そ、そんなこと言われても……」


腹ペコオークB 「ふざけやがって!」

腹ペコオークB 「こちとら腹がへってんだってのに」

腹ペコオークB 「それですらまずくて食えねえモン出しやがって!」


看板オーク 「いつも通りだと思いやすけど……」


腹ペコオークA 「うるせえ!」

腹ペコオークA 「何か食える物をよこしやがれ」

腹ペコオークA 「でねえと、餓死しちまうぜ!」


看板オーク 「そ、そんなあ……」




ガヤガヤ ヒソヒソ


盗賊オークB 「……野郎ども、どんだけ上品な舌をしてやがんのかね」


盗賊オークD 「しかし実際、味は落ちてるよな」


盗賊オークC 「それはおれも思ったぜ」


盗賊オークB 「……ま、ここにゃあ酒場はひとつだけだから」

盗賊オークB 「怠慢も仕方ねぇや」


ハハハハ


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークE 「……誰も、止めに入る気配はありませんね」


盗賊オークA 「しかたねえ、ぶん殴って黙らせるか」

盗賊オークA 「まずいメシでも、無いよりマシだ」


盗賊オークB 「へいへい」

盗賊オークB 「おうい、てめえらぁ……!」


ザ ザ ザ ザ


…………

……





……………




盗賊のアジト 小部屋




盗賊オークA 「…………」


殻つき木の実


盗賊オークA 「…………」


パキ

バリ ボリ


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「…………」


ズシンッ


盗賊オークA 「!!」


グラグラグラ

……ワー ワー


盗賊オークA 「何だ、いったい……?」




ズシン ズシン

ワー ワー


ダ ダ ダ ダ


盗賊オークA 「……おい!」


盗賊オークB 「おぅ!」

盗賊オークB 「てめえも起こされたかい」


盗賊オークA 「ああ、ゆっくり詩作することもできねえ」

盗賊オークA 「何だってんだ、いったい」


盗賊オークE 「酒場の方で何かあったようです」

盗賊オークE 「ただの喧嘩というわけではなさそうですが……」


盗賊オークA 「まあ分かる」

盗賊オークA 「……奴らはどこだ」


盗賊オークE 「ええ、たしか酒場に」

盗賊オークE 「あの子も一緒のはず」


盗賊オークA 「……チィッ」

盗賊オークA 「行くぞ。どのみち行かなきゃなんねえ」



ダ ダ ダ ダ




盗賊のアジト 酒場跡



ガシャン バリン

ギャー ギャー


吊り灯 「…………」


ユラ ユラ ガシャン


盗賊オークB 「おいおい、すげえことになってんな!」

盗賊オークB 「盗賊でも入ったかぁ?」


盗賊オークA 「……おい!」


盗賊オークD・C 「おう!」


ダ ダ ダ


盗賊オークA 「無事か」


盗賊オークD 「おう」

盗賊オークD 「……淫魔幼女とは一緒じゃねえのか?」


盗賊オークA 「そりゃこっちの台詞だ」

盗賊オークA 「てめえらと一緒に酒場にいると聞いたんだがな」


盗賊オークD 「途中までは」

盗賊オークD 「だが騒ぎが起きて、なんとか逃がしたんだ。てめえらと合流するよう言って」


盗賊オークB 「おいおぃ……」


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークE 「行き違いでしょうか」


盗賊オークA 「……いや、それより今はあれだ」


ガチャン バリン

ワー ワー



??? 「ぬぅうううう……!!」

魔王オーク 「ブキィォオオォオ!!」



ドスン ドスン

グラ グラ





盗賊オーク1 「お頭! 落ち着いてくれ、お頭!」

盗賊オーク1 「なんであたいらを襲うんだ!」

盗賊オーク1 「そんなに暴れたら坑道が崩れちまう!」


盗賊オーク2 「ひゃふひゃい、はふぇひゃん! (危ない、姐さん!)」


盗賊オーク4 「こりゃもう攻撃してでも止めるしか……て、腹が減って力が……」

盗賊オーク4 「うわっと……!」


ガシャン ドゴン

ガラララ


魔王オーク 「ぶきぃいいいいい!!」


ドスン ドスン


盗賊オークB 「ありゃまあ、なんとも……」

盗賊オークB 「断末魔ってやつかね」


盗賊オークE 「病人とは思えない暴れっぷりですが」




ガシ 


盗賊オーク2 「ふひゃっ……!」


魔王オーク 「………グルルル」


盗賊オーク2 「はっ、ひぇ……はやふへへ、ほひゃひふぁ! (は、離せ……離してくれ、お頭!)」

盗賊オーク2 「ひょうひひほひょ…… (正気に戻……)」


ガブリ


盗賊オーク1 「!!」


盗賊オーク1の手下 「……!?」


盗賊オーク2 「…………」

盗賊オーク2の下半身 「…………」


魔王オーク 「ぶもっ……ふがっ、ふがっ……」


ガツ ガツ モグ モグ


盗賊オーク3 「ひぃいっ……く、食われた」

盗賊オーク3 「頭領が手下を食ったぞお!!」


看板オーク 「うあぁ……」

看板オーク 「うわああああああ!!」


盗賊オーク1の部下たち 「………!」


ドタ バタ

ギャーギャー


盗賊オーク1 「う、うろたえるな野郎ども!」


魔王オーク 「ハグッ……ブモッ、ブモッ……!!」


バキバキバキ

ムシャムシャ


盗賊オーク2の下半身 「…………」

盗賊オーク2の靴 「…………」


ポト ゴロン





ドタドタ

ギャーギャー

ブヒブヒ


盗賊オークB 「……おいおいおいおいおい」

盗賊オークB 「洒落ですまんぜ、これはぁ!!」


盗賊オークE 「病気と関係があるのか……」

盗賊オークE 「いえ、今はあれを止めなくては!」


盗賊オークA 「シャクだが、1どもに加勢する」

盗賊オークA 「オーク盗賊団の存亡がかかっている」

盗賊オークA 「あの仲間食いの魔王を死ぬ気で止めろ。殺してでもだ!」


盗賊オークD 「く、くそぉ……」


盗賊オークA 「返事はどうした、ろくでなしどもッ!」


盗賊オークB~E 「おう!」


盗賊オークAの仲間たち 「お……おう!」


盗賊オークA 「行くぞぉ!!」


盗賊オークAの仲間たち 「おうっ!!!」


ダダダダダ




…………


ギャー ギャー

ガキン ドゴン

ドタドタドタ


魔王オーク 「に゛ぐ……」

魔王オーク 「に゛ぐぅうぅうぅ゛う゛!!」


ブオン ブオン

ガシャン ドガン


盗賊オークD 「ぅ、が……っ!」


ドザ


盗賊オークA 「怪我したらさがれ!」

盗賊オークA 「心が折れた奴は邪魔だ! あの豚の餌になるか、尻尾巻いて逃げてそのまま足洗え!」




ワー ワー


盗賊オークE 「…………弓隊」


グググ


盗賊オークE 「てぇーー!!」


弓オークA 「………!」


弓オークB 「………!」


ギュパ

ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ


魔王オーク 「ぐるるるる!!」


ガキ ボト

ガシ バキ


弓オークたち 「……!!」


盗賊オークE 「……腐っても、さすがは魔王と呼ばれる男」

盗賊オークE 「ただの矢が皮膚を通らないことは分かっていましたが」

盗賊オークE 「重い矢も通じないどころかまさか掴むとは……理性は残っているのでしょうか」




魔王オーク 「うがああああ!!」


ドシ ドシ ドシ


弓オークC 「く、来るぞぉ……!」


盗賊オークE 「くっ、皆、体勢を……!」



盗賊オークB 「おいおい理屈屋ぁ」



バッ


盗賊オークB 「こんなとこでベラベラ喋ってっとぉ!」

盗賊オークB 「舌ぁ噛むぜぇ!!」


盗賊オーク4 「そういうこと!」

盗賊オーク4 「黙って弾を撃ってろってことで!!」


ドム ドム ドム ドム

バゴン バゴン


魔王オーク 「ブキィイイ!?」


盗賊オークB 「うっし!」


盗賊オーク4 「蒸気じかけの弾の味、ご満足いただけたかなっ!?」




モク モク


魔王オーク 「グゥゥ……」


ヨロ


盗賊オークD 「きいてる!」


盗賊オーク4 「足を集中的に狙ったからなあ!」


盗賊オーク5 「まだだ……!」


魔王オーク 「ぅううう……!」

魔王オーク 「ウガァアアァアァア!!」

魔王オーク 「アガーーーッ!」


ゴオオ

ビリ ビリ


盗賊オーク雑魚たち 「うわぁ!?」


盗賊オークE 「……!! 何という咆哮」


盗賊オークD 「声だけでここを潰すつもりかよ……!」


魔王オーク 「ウギャゥ! ぎゃぶ、ブキィイイイ!」


ドシ ドシ


盗賊オークC 「まだ暴れるっての!?」


盗賊オーク5 「いかん、灯りを守れ……!」


盗賊オーク4 「やれやれ、明日は自分で飯を食えないね……!」


盗賊オークB 「おぅ、反動を気にしてる場合じゃねえ」

盗賊オークB 「あれの動きを止めねえと……!」



モク モク モク

バフッ


盗賊オークA 「…………」


盗賊オーク1 「…………」


ダ ダ ダ



盗賊オークB 「!!」

盗賊オークB 「ヤロウ、盗賊め! おれの蒸気銃の煙にまぎれて……!」




モク モク


魔王オーク 「ブキャ! ぶきゃあああ!!」


盗賊オーク1 「悲しいねえ、お頭……!」

盗賊オーク1 「煙に紛れて仕事をするやりかたは、あんたが教えてくれたってのに」

盗賊オーク1 「気づきもしないなんてよぉ!」


盗賊オークA 「偉大な小悪党よ、これ以上自ら晩節を汚してくれるな」

盗賊オークA 「あとはおれに任せて、とっとと退場してくれ……!」


盗賊オーク1 「はんっ! 背負えるのはあたいの鎚だけさ!!」


盗賊オークA・1 「ぬうぇえぁああああ……!!」


ギュオ ブオン

ボガ

ベゴンッ


魔王オーク 「ブギュィイィイイイィイィイ!?」





魔王オーク 「ウガアアァア……!」


ドシン

グラグラグラ


盗賊オーク4 「両脛を砕いた……!」


盗賊オークD 「これで動きが止まる!」


盗賊オークE 「今こそ一気にしとめます」

盗賊オークE 「弓隊、集中砲火!」

盗賊オークE 「世界中の鳥を殺すつもりで射続けなさい!!」


弓オークたち 「おう!」


ヒュパ ヒュパ ヒュパ ヒュパ

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


盗賊オーク4 「撃……つ、ぜぇえええ!!」


盗賊オークB 「いよいよとなりゃ、おれの玉までくれてやらぁ!!」


ドムン ドムン ドムン


盗賊オークD 「お、おれたちもやるぞ。武器をとれ!」


盗賊オークC 「魔王退治だあ!」


盗賊オークたち 「おう!」


ダダダダダ




ドウン ドウン

ワー ワー


盗賊オークA 「……っつぅ」


ヨロ


盗賊オークD 「A!」


盗賊オークA 「おう、味方の弾に当たんねえよう気ぃつけな」

盗賊オークA 「悪いがおれぁ後ろにさがるぜ」

盗賊オークA 「脛一本折るのに両腕がいっちまった」


盗賊オークD 「わ、分かった!」


ダダダ


盗賊オークA 「…………」


タタタ


盗賊オークA 「……ん?」

盗賊オークA 「こいつぁ……」


角オーク翁の腕


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「あんたが、最初の犠牲者だったのか……?」


ワー ワー




ドムン ドウンッ


盗賊オークB 「……っ! ……っ!」


ザ ザ ザ


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークB 「おう、お帰りかい勇者どの……っ!」


ドムン


盗賊オークA 「続けろ」

盗賊オークA 「情けねえよ。脛一本折るのに、両腕と相棒を引き換えにしなきゃなんねえとはな」


盗賊オークB 「相手ぁ魔王だ。大金星だろうよ」

盗賊オークB 「で、その見覚えのある腕は何でぇ」


盗賊オークA 「……ああ、角オーク翁のすべてだ。たぶんな」

盗賊オークA 「最初に食われたらしい」


盗賊オークB 「……そうかい」


ドウンッ ドウンッ


盗賊オークB 「まあ、そういうもんさ」

盗賊オークB 「あとで花でもそなえてやらぁ。化けて出て小言を言われたかねぇや」


盗賊オークA 「おう」




ボグ ボガ

ヒュン ヒュン

ドム ドム


盗賊オークB 「しっかし、頑丈なもんだぜ魔王さんはよぉ」

盗賊オークB 「こんだけやって、まだ動いてやがる!」

盗賊オークB 「皮膚が竜の鱗でできてんじゃねえのか!?」


ドウンッ…… ドウンッ


盗賊オークD 「うおおおお!」


盗賊オークC 「ひぃやっほぉう!」


盗賊オーク雑魚たち 「うおおお!」


バゴ バゴ

ドゴドゴドゴ


魔王オーク 「ブギィイイッ。ビギィイイ……ッッ」

魔王オーク 「ブゲぇえ゛……に゛く゛……」

魔王オーク 「に゛く……食べだいよぉぉ……」

魔王オーク 「に゛ぐぅう………」


ドガ バキ

ドウン ヒュン ヒュン


盗賊オークA 「…………」




盗賊オークE 「A」


盗賊オークA 「あん?」


盗賊オークE 「ここは我々でどうにかできます」

盗賊オークE 「あの子を探してください」


盗賊オークB 「おいおい、ここにゃぁ頭領候補がもう一人いるんだぜ?」


盗賊オークE 「力自慢のあちらさんも、どうせ君と同じような状態でしょう」


盗賊オークA 「まあな。両肩までいっていたが」


盗賊オークB 「へっへ」

盗賊オークB 「だとよぉ、相棒……ッ」


盗賊オーク4 「教えてくれてどうも……ッ!」


ドムン ドムン


盗賊オークE 「彼女は両腕を使えない上に、部下の疲弊は我々より大きい」

盗賊オークE 「我々でどのようにもできます」

盗賊オークE 「……この騒動で坑道の灯りが落ちているところがあるかもしれない」

盗賊オークE 「もしあの子がそこにいたら、生者のにおいを辿る鉱山ゴーストが、蟻のように群がるでしょう」


盗賊オークA 「…………」




盗賊オークB 「だから魔法の火にすりゃ良いって言ってたんだよ、おれぁ……」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「次期頭領が大事な節目に立ち会えねえとは、しまらねえ話だな」


盗賊オークE 「あの子を利用しようと言い出したのは君でしょう」

盗賊オークE 「もしくは」

盗賊オークE 「君はここじゃあ使い物にならないが」

盗賊オークE 「使い物にならない腕に灯りくくりつけて坑道を歩くことぐらいできるだろう」

盗賊オークE 「と、いうことです」


盗賊オークA 「……へっ」

盗賊オークA 「清々しいぜ」


盗賊オークB 「まあ、決めるのはお前さ」

盗賊オークB 「優先するのは頭領の座か、ガキ一匹の命か」


盗賊オークA 「頭領の座に決まってんだろう」

盗賊オークA 「……ガキ一匹じゃねえ、大金だ」

盗賊オークA 「誰か手を貸せ」

盗賊オークA 「この腕じゃ、灯りをくくりつけるだけで三日はかからあ」




…………


坑道



ズル ズルル ズル


鉱山ゴーストA 「…………」


鉱山ゴーストB 「…………」


ザ ザ ザ


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「おらよ、どけどけ夜更かし野郎ども」

盗賊オークA 「いつまでもボロ布まとってグズってねえで、さっさと土の下で寝ちまえ」


灯り


チカ チカ

ユラ ユラ


鉱山ゴーストたち 「!!」


ザザザザ

ズルルル


盗賊オークA 「けっ……」

盗賊オークA 「……ここもいねえか」


ザ ザ ザ




…………


盗賊のアジト 桶風呂



ザ ザ ザ


盗賊オークA 「……おう、ここは灯りが生きてやがったか」


??? 「…………」


ザバ


盗賊オークA 「よう」


??? 「…………」

淫魔幼女 「…………」



……ワー ワー

カポーン


盗賊オークA 「本当に風呂好きな奴だぜ」

盗賊オークA 「こんなときまでとはよ」


淫魔幼女 「……本当に、感謝しています」

淫魔幼女 「こんなものをつくっていただいて」


盗賊オークA 「はんっ……」

盗賊オークA 「さっさとあがんな」

盗賊オークA 「ここの灯りも危ないかもしれねえし、万が一もある」


淫魔幼女 「…………」


……ワー ワー


淫魔幼女 「騒ぎは、まだおさまっていないようですね」


盗賊オークA 「…………」




淫魔幼女 「……良いのですか」

淫魔幼女 「次期頭領であるあなたが、ここに居て」


盗賊オークA 「良いわけ無いな」

盗賊オークA 「つまりさっさと着替えてついてこいってことだ」

盗賊オークA 「てめえの厄介な体質やら、推察の域を出ない過去の悲劇に鑑みれば」

盗賊オークA 「混乱の中にあって風呂場にいるのは、まあ理解できるが」

盗賊オークA 「本当なら着替える時間も惜しいんだぜ」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「あなたらしくありません。あなたは盗賊なのでしょう」

淫魔幼女 「私なんてほうっておいて、頭領の座の傍にいるのが良いでしょうに……」


盗賊オークA 「ああ、その通りさ」

盗賊オークA 「ふざけるな。てめえがおれのあり方を決めるんじゃねえ」

盗賊オークA 「さっさと来い」


淫魔幼女 「……そうですか」


ザバ

スタ

ピチャ ピチャ


淫魔幼女 「分かりました」


ペタ ペタ


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「……!!」


淫魔幼女 「…………」


ペタ ペタ


淫魔幼女 「要するに」

淫魔幼女 「予想外にお粗末な男なのだな、貴様は」


ズ ズ ズ ズ




盗賊オークA 「……ッ」


淫魔幼女 「貴様がここに来るのは予想外だった」

淫魔幼女 「もう少し盗賊という役割に……」

淫魔幼女 「自分の人生に徹することのできる男だと思っていたのだが」


ズ ズ ズ ズ


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「……ずいぶんとドス黒い目をするじゃねえか」

盗賊オークA 「お嬢様がよ」


淫魔幼女 「……おれは男だ」


盗賊オークA 「へははは……!」

盗賊オークA 「こりゃ良いや。お前の冗談の中でいちばん笑えるぜ」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「まあ、もはやどうでも良いこと」


ズ ズ ズ


盗賊オークA 「……その目を見たら、襲ってなんかいなかったろうよ」

盗賊オークA 「それが本性ってわけかい」

盗賊オークA 「随分ともったいぶってくれたじゃねえか」

盗賊オークA 「いったいどういうわけで臆病なガキのふりをして」

盗賊オークA 「我らがアジトにお邪魔なすったんで?」


淫魔幼女 「……おれも、人のことは言えないということだ」




淫魔幼女 「本来ならおれは、臆病な貴族の娘のまま」

淫魔幼女 「ここを去るつもりだった」

淫魔幼女 「だが」

淫魔幼女 「先も言ったように、貴様がここに来た」


盗賊オークA 「…………」


淫魔幼女 「……風呂は良い」

淫魔幼女 「たとえそれが泥水であっても」

淫魔幼女 「感謝しているのは、本当のこと」


盗賊オークA 「…………」


淫魔幼女 「……おれなりの誠意なのだ、これは」




盗賊オークA 「誠意ってんなら」

盗賊オークA 「てめえの貧相な裸でなく、おれの質問への答えを見せてもらいたいもんだぜ」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「鍋はうまかったな」


盗賊オークA 「?」

盗賊オークA 「ああ、運悪くおれはあまり食えていないが」

盗賊オークA 「Cはすっかり虜だよ」


淫魔幼女 「あの魔王も、そのようだった」

淫魔幼女 「うまく連絡がつけば、あの肉を故郷の贔屓の店から取り寄せられるかもしれないと言ったら」

淫魔幼女 「以来、毎日催促の嵐だ」


盗賊オークA 「……あの肉に毒か薬でも混ぜてんのか」


淫魔幼女 「なにも」




盗賊オークA 「……何が目的だってんだ」


淫魔幼女 「盗賊の縄張りを通るのは、修行僧や旅人ばかりではないということだ」

淫魔幼女 「彼らにとって貴様たちがそうであるように」

淫魔幼女 「理不尽というものは自由に歩き回るのだから」


盗賊オークA 「自分が悪魔か天使だとでも言いてえのか」

盗賊オークA 「どっちにしろ答えにならねえな」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「ここに来た貴様のお粗末さは、嫌いではない」

淫魔幼女 「……もう酒場跡には戻らないことだ」

淫魔幼女 「このアジトを出て、すべて忘れると良い」



盗賊オークA 「……ふざけるな」

盗賊オークA 「そいつにゃあ従えねえな」


淫魔幼女 「……そうか」


灯り 「…………」


ユラ

チカ チカ


盗賊オークA 「……!」

盗賊オークA 「灯りが……腕のやつも暗く……」


フッ


盗賊オークA 「!」

盗賊オークA 「くそっ……何だってんだ、いきなり暗闇かよ」

盗賊オークA 「おい、どこだ、ガキ……!」


パッ


灯り 「…………」


ユラ ユラ


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「……戻った」

盗賊オークA 「……ッ。ガキは……!」


シン


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「くそっ」

盗賊オークA 「いっちまった……!」



…………



盗賊のアジト 酒場跡



ザワザワ


ザ ザ ザ


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークB 「よぅ」


盗賊オークA 「おう」

盗賊オークA 「…………」


魔王オークの死体 「…………」


盗賊オークA 「……やったか」


盗賊オークB 「あぁ」

盗賊オークB 「……最期はメソメソと、まぁ哀れなもんだったぜ」


盗賊オークA 「そうか」


盗賊オークB 「……お嬢ちゃんは、どしたぃ」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「遅かった」

盗賊オークA 「奥に行った形跡はなかったから」

盗賊オークA 「たぶん、どさくさに紛れて行っちまったんだろうよ」


盗賊オークB 「……そうかぃ」

盗賊オークB 「まずいな。走らせたゴロツキのこと、どうにか手を打たねぇと」


盗賊オークA 「まずいって声に聞こえねえな」

盗賊オークA 「……まあ、それについては大丈夫だろうよ」


盗賊オークB 「……?」



盗賊オーク1 「……痛ぅ」


ヨロ ヨロ


盗賊オーク2の靴


盗賊オーク1 「…………」


ガサ ゴソ


盗賊オーク3 「あ、姐さん……後片付けの指揮を……」


盗賊オーク1 「うっせえ!!」

盗賊オーク1 「くそっ……言うことをききやがらねえ」

盗賊オーク1 「軟弱な指がよお……!!」


ガサ ゴソ

ガサ ゴソ

ガサガサガサ

ゴソゴソゴソゴソ

……ボト


盗賊オーク2の靴 「…………」

盗賊オーク2の足 「…………」


盗賊オーク3 「うわっ……!」


盗賊オーク1 「……ったく、上等なもんじゃねえか」

盗賊オーク1 「無鉄砲に身を焦がすような生き方だったが」

盗賊オーク1 「こんだけのこったんだ」

盗賊オーク1 「上等、上等……ッ」


盗賊オーク2の足 「…………」




カチャカチャ

ガチャガチャ

カチン ガチャ


弓オーク 「おうい、棚を起こすの手伝ってくれ」


盗賊オーク雑魚 「おう」


ザワザワ ドタドタ


魔王オークの死体 「…………」


盗賊オークE 「……さて、我々のゆうに二倍はある巨体」

盗賊オークE 「元は我々の頭領。ぞんざいに扱っては、オーク盗賊団の看板に泥がつくかもしれない」

盗賊オークE 「どう片付けたものか」

盗賊オークE 「……ん?」


腹ペコオークA 「…………」


腹ペコオークB 「…………」


ノロ ノロ


盗賊オークE 「そこ、あまり近づかないように!」

盗賊オークE 「ただの死体ではないのです」


腹ペコオークたち 「…………」




腹ペコオークA 「…………」


ノロ ノロ


盗賊オークE 「聞こえなかったのですか!」

盗賊オークE 「かつての頭領から離れなさい!」


腹ペコオークたち 「…………」


盗賊オークE 「……まったく」


ザ ザ ザ


盗賊オークD 「……風呂の湯を持ってきたぜ」


タプ チャプ


盗賊オークE 「お疲れ様」

盗賊オークE 「……さて、まずは死者の体を清めなくては」

盗賊オークE 「怪我の軽い者、手の空いている者は手伝ってください」

盗賊オークE 「何せ体が大きいので」




ザプ ジャブ

ゴシ ゴシ


盗賊オークD 「……良いのかね」

盗賊オークD 「これ、床を擦るブラシだろ」


盗賊オークE 「しかたありません」


盗賊オーク4 「けっこう熱いな、この湯」


盗賊オーク5 「ちょうど良い」

盗賊オーク5 「皮膚がふやけて、以前からたまっていた汚れも落としやすい」


ゴシ ゴシ ゴシ


腹ペコオークA 「…………」


腹ペコオークB 「……フゴッ」




カラン ガララ


盗賊オークE 「?」


腹ペコオークたち 「…………」


盗賊オークE 「また君たちですか」

盗賊オークE 「早くそのブラシを拾って……」


腹ペコオークA 「フゴッ」


ガバ


腹ペコオークB 「……フガ、フガ」


腹ペコオークC 「ブフ、フゴゴゴッ」


腹ペコオークたち 「フガッ、フガッ……」


フゴ フゴ クン クン


盗賊オークD 「な、何だあ……?」


盗賊オーク5 「頭領のにおいを、かいでいるのか?」


盗賊オークE 「こら、いい加減にしなさい、君たち……」


腹ペコオークA 「フガッ……ま、間違いねえ!!」


腹ペコオークB 「フゴゴッ……おう、これだ、このにおいだ!!」


ブヒ ブヒ

ブホッ ブホッ


盗賊オークE 「なっ……」

盗賊オークE 「いったいどうしたと言うのですか……」


腹ペコオークC 「ブヒッ、ブヒヒヒヒ!! これだ、これだぁ!!」

腹ペコオークC 「間違いねえ。この魔王豚、卑怯者、隠し持ってやがった!!」

腹ペコオークC 「あの鳥の肉だあ!!」





ブキイイ ブモ ブモ

ブヒーッ ブヒーッ


盗賊オーク1 「フーッ、フーッ……!!」


盗賊オーク3 「あ、姐さん……!」

盗賊オーク3 「やめえうれ(やめてくれ)、それは駄目だ!」

盗賊オーク3 「だって、それは……!」


盗賊オーク1 「でもよぉ、でもよぉ!!」


盗賊オーク2の足


盗賊オーク1 「こいつの足……あんまりにもよぉ!!」

盗賊オーク1 「あの鳥の肉と同じ味なもんだからよぉ!!」


バリバリ モシャモシャ


盗賊オーク3 「だ、ダメだ、姐さん……」


盗賊オーク1 「フーッ、フーッ!!」

盗賊オーク1 「ちくしょう、ちくしょぉおう!!」

盗賊オーク1 「うめえ……うめえよぉこの鳥肉!!」


バリバリ モシャモシャ


盗賊オーク3 「あ、姐さん……駄目だ……」

盗賊オーク3 「だめ、だめ……」

盗賊オーク3 「独り占めは、駄目だぁあ゛あ゛あ゛!!」


ギャー ギャー

ワー ワー




盗賊オークB 「……おぃ!」


盗賊オークC 「……ハグッ、ハグッ」


ガジ ガジ


盗賊オークA 「何してやがる、おい……!」


盗賊オークC 「ホガッ……だ、だってよぉ」

盗賊オークC 「おれの腕、こんなにうまいんだよぉ!!」

盗賊オークC 「噛むとあの鳥肉の味が染み出してくんだよぉ……!!」


ガジ ガジ

ブシュ ボチャボチャ


盗賊オークC 「いてえ……いてえよぉ……腕がいてえよぉ」

盗賊オークC 「腕がうめえよぉお……!!」


ガジガジガジガジ


盗賊オークB 「このぉっ……くそ、やめろ、やめやがれ!」


ドガ ドガ


盗賊オークC 「フーッ、フーッ……!」


ガジガジガジガジ

ブシュ ガシュ ビチャビチャ




盗賊オークB 「はあ、ふう……いくら蹴ってもびくともしねぇ!」


盗賊オークA 「くそっ、腕が満足につかえたら……!」


盗賊オーク4 「……な」

盗賊オーク4 「なあ、そんなにうまいのかい……?」

盗賊オーク4 「本当に……ゴクッ……あの鳥の味がするのかい……?」


盗賊オークC 「ああ! 涙が出るくらいうめえ!」


盗賊オーク4 「く、食わせてくれないか!」


盗賊オークC 「おう、一緒に食おうぜ!」


盗賊オーク5 「……お、おれも」


盗賊オークC 「おう……」


ガブ グヂュリ


盗賊オークC 「ブキィイイイイイィイィイ!?」




盗賊オーク4 「ほ、本当だ、うまい!!」


盗賊オーク5 「あの鳥肉の味……!!」


ガブリ ガブリ

ガシュガシュ ゴリュゴリュ


盗賊オークC 「ぶぎゃぁあ!? ギピィイイイーーーッッ!!」


ボシュ ベチョ

ダクダクダク

ブシュ ブシュ


盗賊オークB 「……!!」


盗賊オークA 「くそが……っ!」



??? 「ぎやぁあああああーー!!」



盗賊オークA・B 「!?」




??? 「ぶぎゃあああ……!!」

盗賊オークD 「ぴぎゃぁあぁあぁあ!!」


腹ペコオークD 「こっちにもあったぞぉ、肉がぁ」


腹ペコオークE 「湯をかけろぉ、食わせろお!!」


腹ペコオークたち 「ブモッ、ブゴゴゴッ!!」


ガツ ガツ モグ モグ


盗賊オークE 「なんということだ……」

盗賊オークE 「か、考えなくては……このままではオーク盗賊団は壊滅してしまう」

盗賊オークE 「鳥肉を食べて、考えなくては……っ!!」


ガブ ガブ ガブ




ギャー ギャー

ワー ワー

グチュグチュグチュ



盗賊オーク4・5 「ガフッ、ガフッ、ガフッ、ガフッ」


盗賊オークC 「痛でえええ! うめえよぉお!」

盗賊オークC 「お前たちも食えよう」

盗賊オークC 「仲間だろう!」

盗賊オークC 「ガフッ……だず……助けてくれよぉ……!」


盗賊オークB 「…………!」

盗賊オークB 「あちこちで共食いかよ……!」


盗賊オークA 「地獄の底から地獄が出てきたみてえだぜ……」


ギャー ギャー



ズザザザザザ


盗賊オークE 「…………A!」


盗賊オークA 「……!」




盗賊オークE 「か、考えましょう、この地獄のような状況を打開する方法を」

盗賊オークE 「オーク盗賊団の未来のために……」

盗賊オークE 「鳥肉を食べて………!」


ユラ ユラ


盗賊オークA 「ああ……だが鳥肉はいらねえな」


盗賊オークE 「ではください、オーク盗賊団の未来のために!!」

盗賊オークE 「その腕の骨にたっぷりとついた鳥肉を!」

盗賊オークE 「我々は仲間でしょう!?」


ガバ


盗賊オークA 「チィッ……!!」


ズキン


盗賊オークA 「ぐ……ッ」



……ズドンッ



盗賊オークE 「…………」

盗賊オークE 「ゴポ……ガフッ……?」


バタン


盗賊オークE 「…………」

盗賊オークEの死体 「…………」


盗賊オークB 「…………」


モク モク


盗賊オークA 「……ハアッ…フゥ、ハァ……」


盗賊オークEの死体 「…………」


盗賊オークB 「…………」

盗賊オークB 「まぁ、よくあることだな……」




モク モク モク


盗賊オークA 「……腕は」


盗賊オークB 「片方が残りゃぁ御の字よ」

盗賊オークB 「でぇ、どうする」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「煙があるうちに、ここからずらかる」

盗賊オークA 「外を目指してな」


盗賊オークB 「了解……!」


ダダダダダ


盗賊オーク1 「……鳥肉が逃げるぞ!」

盗賊オーク1 「野郎ども、肉を逃がすんじゃないよ!!」


腹ペコオークたち 「おぉおおオォオ゛!!」


ドタドタドタドタ



廃坑 盗賊のアジト 

坑道



ズルズルズル

ズルズルズル


鉱山ゴーストA 「オォオオ」


鉱山ゴーストB 「ォオオ」


鉱山ゴーストたち 「ォオオオオ……」


ダ ダ ダ ダ゙


盗賊オークB 「……おいおい、なんだよこりゃぁ」

盗賊オークB 「灯りがほぼ全滅じゃねぇか!」


盗賊オークA 「夜が深くなって、ゴーストの数も増えたか……!」


腹ペコオークの声 「プギィイイイイ!!」


ズル ズル

ズズズズズ


盗賊オークA 「誰か捕まったようだ」


盗賊オークB 「おれたちも持ってかれちまわねぇよう、気をつけようや」


ダ ダ ダ ダ ダ





ズルズルズル

ズルズルズル


鉱山ゴーストたち 「ォオオオ」


ズルル ズザ ズルルル


鉱山ゴーストたち 「ォオオオオー……」


ズルルルルル

ズルルルルル


盗賊オークB 「今日はいってぇ、どれだけいるってんだ」

盗賊オークB 「布を引きずる足音だけで、気が狂っちまいそうだ」


盗賊オークA 「暗い上に、そこを腹ペコの生者どもがドタ足で走り回ってるんだ」

盗賊オークA 「そりゃ寄ってくるだろうぜ」


盗賊オークB 「ゴーストを避けながら追っ手とも戦うってのは」

盗賊オークB 「厳しいもんがあるな」


盗賊オークA 「いくら坑内だろうと」

盗賊オークA 「夜が終わりゃゴーストどもも少しは大人しくなるだろうが……」


腹ペコオークたち 「に゛くーー!!」


盗賊オークA・B 「!!」




腹ペコオークたち 「…………」


ユラ ユラ


盗賊オークB 「先回りされたってかぁ……!?」


盗賊オークA 「いや、先に酒場を出た奴らだろう」

盗賊オークA 「ゴーストどもに捕まってりゃ良いものを」


盗賊オークB 「おう、だがよ……」


腹ペコオークたち 「………にく、鳥肉だぁ……」


オォオオ ユラ ユラ


盗賊オークB 「ゴーストどもも見分けがつかねぇだろうよ」

盗賊オークB 「あいつらの顔、ほとんど亡者とかわりねえぜ」


腹ペコオークたち 「とりっ……に゛く゛ーーー!!」


ザ ザ ザ ザ ザ


盗賊オークB 「呪いの麻薬でもキマッちまってんのかよ……!」


盗賊オークA 「……くそ、こっちだ!」


タ ゙タ ゙ダ ダ




…………


盗賊のアジト 桶風呂




灯り 「…………」


ユラ ユラ

チカ チカ


盗賊オークB 「……ここは灯りが生きてっか」

盗賊オークB 「だが、ちくしょう、逃げ場がねえ」

盗賊オークB 「大事なところで、ゴーストに鳥肉中毒者だ」


盗賊オークA 「まあ……日頃の行いってやつが悪いんだろうよ」


盗賊オークB 「へっへっへ。違いねぇや」

盗賊オークB 「灯りと言わず、燃やせる木の一本でもありゃ良いんだがよ……」


灯り


ガコ ガコ

パカ


光る石


盗賊オークB 「……駄目か。光脈から外すと消えちまうやつだ」

盗賊オークB 「だぁから、魔法の炎にすべきだっつったんだよ……」


盗賊オークA 「……ゴーストどもがおとなしくなる時間まで待つしかねえな」

盗賊オークA 「もう片方の敵さんが、ここを見逃してくれるのを祈りながらな」





ズ ズルルル

ズル ズル ズル

ブキイイー ドタドタ



盗賊オークB 「……腕の調子はどうでぇ」


盗賊オークA 「まあ、やれるさ」

盗賊オークA 「役立たずになった灯りの火屋を振り回しゃ」

盗賊オークA 「ゴーストどもは蹴散らせなくても、豚は刺し殺せるだろうよ」

盗賊オークA 「てめえの方は?」


盗賊オークB 「骨まで痺れてらぁ」

盗賊オークB 「まあ、撃てねえことはねえだろう」

盗賊オークB 「……ついてねぇなあ、本当によ」

盗賊オークB 「魔王を倒したと思ったら、これだぜ?」

盗賊オークB 「凱旋パレードもお姫さんの口づけも無しだ」


盗賊オークA 「おれたちゃ勇者じゃねえからな」

盗賊オークA 「これが、魔王の呪いってやつだろうよ」


盗賊オークB 「へっへ……足じゃ無いだけマシか」




盗賊オークB 「……やっぱり、あの鳥肉かね」

盗賊オークB 「頭領や奴らをおかしくしちまったのは」


盗賊オークA 「ああ、たぶんな」


盗賊オークB 「そうかぃ……ちくしょう」

盗賊オークB 「あれだったのか!」


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークB 「世の中にはよぉ、きっと」

盗賊オークB 「たしかに存在するが知っちゃいけねぇ、触れちゃいけねえ物ってのがあるんだ」

盗賊オークB 「ドラゴンの胃袋の中とか、マンドラゴラの叫び声とか、世界を平らげる爆薬とかよ」

盗賊オークB 「おれたちにとっちゃ、あれがそうだったんだなぁ」


盗賊オークA 「……違いねえ」

盗賊オークA 「あの貧相な積み荷の貧相な商隊が、おれたちにお似合いの悪魔だったってわけさ」


盗賊オークB 「へっへ、悪魔かぃ」

盗賊オークB 「悪人くらい容赦してくれたって良いだろうによ」




盗賊オークB 「……あの鳥肉、いってぇ何だったんだろうな」


盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「ありゃ、鳥の肉なんかじゃねえ」

盗賊オークA 「あれは……」

盗賊オークA 「…………」

盗賊オークA 「……なあ」


盗賊オークB 「あん?」


盗賊オークA 「てめえもあの日、あの肉を食ってたよな」





盗賊オークB 「おう、そりゃもう。てめえの十倍は食ったな」


盗賊オークA 「大丈夫なのか」


盗賊オークB 「いいや」

盗賊オークB 「あの鳥肉が食いたくてしかたねぇや」


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークB 「だがよぉ、何ちゅうか、そりゃあ違うだろう」

盗賊オークB 「やっちゃいけねぇだろう」

盗賊オークB 「やっちまったら、おれぁ盗賊オークBっつう人じゃいられなくなる」

盗賊オークB 「ただの腹ペコの豚になっちまう」


盗賊オークA 「……我慢できるもんなのかね」


盗賊オークB 「おれぁ、やりたくないことをやらなきゃなんねぇ時にゃあ」

盗賊オークB 「やりたくないことを隠さないのよ」

盗賊オークB 「やりたくねえとボヤきながらの方が、やりたくないこともやれるのさ」


盗賊オークA 「……へ」

盗賊オークA 「そうかい……」




ザ ザ ザ


盗賊オークA・B 「!!」


ザ ザ ザ ザ


腹ペコオークたち 「……………」


腹ペコオークF 「……肉、鳥肉だぁ」


腹ペコオーク4 「おぉオ、ちょうど鍋もあるぜぇ……」


腹ペコオークたち 「ぉおおお……」


ブゴ ブヒ フシューッ

ユラ ユラ ワラ ワラ


盗賊オークA 「……けっ、こいつはまた大人数でお越しなすったもんだぜ」


盗賊オーク1 「…………フシュー」


盗賊オークB 「権力争いには負けちまったみてぇだな、次期頭領」


盗賊オークA 「……ここにはもう、権力なんざありゃしねえ」



盗賊オーク1 「…………ブゴ」

腹ペコオーク娘 「ブキィイイィイィイーーーッッ!!」


腹ペコオークたち 「………ッ」

腹ペコオークたち 「ブギャアァアーーーーッッ!!」


ゴオオ グララ

ビリ ビリ



盗賊オークB 「違いねぇや……!!」




腹ペコオークたち 「ブォオオォオォオ!!」


グラ グラ グラ



盗賊オークB 「……なぁ」


盗賊オークA 「あん?」


盗賊オークB 「さっき言いかけてたが」

盗賊オークB 「あの鳥肉、何だったんだ」


盗賊オークA 「ああ、知らない方が良いぜ」



腹ペコオークたち 「ブキャァアアアアア!!」


ノシ ノシ ノシ

ドシン ドシン ドシン



盗賊オークA 「……豚肉だ」





盗賊オークA 「あの鍋にゃあ、鳥なんて入ってなかったのさ」

盗賊オークA 「鳥だと思って食っていたのは」

盗賊オークA 「どこかの哀れな豚野郎の肉だったってオチさ」


盗賊オークB 「………へはは!」

盗賊オークB 「そうかい……ッ!」


ドウン ドウン

バズ ドゴン


腹ペコオークH 「ブギュア!?」


腹ペコオーク3・5 「ブギィイ!?」


ドタ バタン

ドシ ドシ ドシ


盗賊オークB 「ちくしょう、もう限界だ……鳥肉くいてえなぁ!」


盗賊オークA 「ああ」

盗賊オークA 「おれも腹が減ってきたところだ……!」



腹ペコオーク(理屈) 「ブギャアアア!」


腹ペコオーク娘 「ブギィイ、ビギャアア!!」


腹ペコオークたち 「ブヒィイイイイイ!!」


ドシ ドシ ドシ ドシ

ド ド ド ド ド ド


盗賊オークB 「来やがれぇ、豚どもぉおッッ!!」

盗賊オークB 「さっと湯通しして、しゃぶっと食ってやらぁああ゛あ゛ーーーッッ!!」


ドウン ドウン

ド ド ド ド ド ド

ド ド ド ド ド ド

ギャー ギャー

ワー ワー



…………

……



シャブだけに



…………


火の国 城



ヴァー ヴァヴァー


火の国王 「……おお、勇者とその仲間たちよ。よくぞやってくれた!」

火の国王 「よもや本当に、廃坑に巣食った魔王オークの一団を退治してくれるとは」

火の国王 「これで、商人たちも安心して旅ができるぞ」


黒オーク 「…………」


淫魔幼女 「…………」


詐欺商人 「いやいや、どうもどうも」




淫魔幼女 「…………」


ドゲシ


詐欺商人 「あいてっ……」

詐欺勇者 「……コホン」


火の国王 「……?」

火の国王 「……我が火の国は、いま水の国と戦争状態にある」

火の国王 「盗賊退治にまわせる戦力は残っていなかったのだ……」

火の国王 「勇者よ……そしておまけの者たちよ、火の国の王として、礼を言わせてもらう」

火の国王 「報酬とともに、勇者には特別に勲章も授けよう」


詐欺勇者 「光栄しごくにございます、火の国の王様」

詐欺勇者 「しかし、勲章をいただくのは私ではなく、こちらの淫魔幼女でございます」


ズズイ


淫魔幼女 「…………ッ」


ゲシ


詐欺勇者 「いてっ」

詐欺勇者 「踏むな、この……ッ」


火の国王 「?」




淫魔幼女 「…………」


詐欺勇者 「……コホン」

詐欺勇者 「この者は根暗な幼女のくせに」

詐欺勇者 「オーク盗賊団への、たったひとりでの潜入に名乗りをあげ」

詐欺勇者 「そして見事、おのれの役割を果たし生還したのでございます」

詐欺勇者 「この者がいなければ、魔王の討伐はなせなかったことでしょう」


火の国王 「ほう……!」


淫魔幼女 「…………」


火の国王 「この子供がそのような大任を……」

火の国王 「この、ねじくれこけイジけ倒したような目の子供が……!」


淫魔幼女 「…………」


黒オーク 「打ち明け、おれたちはブラブラ観光してただけとか」

黒オーク 「そういうことは無いでがす」




詐欺勇者 「そして、告白いたしますと」

詐欺勇者 「この者はさる闇の国の有力貴族」

詐欺勇者 「そのご息女であらせられるのです」


火の国王 「なんと、闇の国だと……」


淫魔幼女 「……あ、手がすべった」


ポト


闇の貴族の紋章


火の国王 「……おぉ、これは」

火の国王 「まさに、闇の国の紋章!」

火の国王 「よもや、闇の国の者に助けてもらう日が来ようとは」

火の国王 「遠く、よからぬ噂も多い国であったが……うーむ、見方を改める必要があるようだ」




ヴァー ヴァー


火の国王 「では、淫魔幼女よ、これより紋章を授与する」


淫魔幼女 「…………」


デデデー

チャーラーラーラー

ファファー


淫魔幼女 は 勲章 を手に入れた!


淫魔幼女 「……ありがとうございます」


ポイ


黒オーク 「…………」


ガシ


詐欺勇者 「ナイスキャッチ」


大臣 「何やっとんじゃお前、紋章を貰った先から投げ捨てるとは!」


淫魔幼女 「…………」


詐欺勇者 「闇の国では、こうやって喜びをあらわすのです」

詐欺勇者 「と、同時に、これに甘んじることなく精進するという決意をも」

詐欺勇者 「申し訳ありません。なにぶん子供なもので、他の国のしきたりに疎いのです」


火の国王 「なるほど。疑う余地はない」




火の国王 「……勇者よ。そして子供と豚よ」

火の国王 「本当は、この国にとどまり、力を貸して欲しいが……」


詐欺勇者 「申し訳ありません。我々は勇者」

詐欺勇者 「世界では、まだ見ぬ名も無き者たちが」

詐欺勇者 「我々の助けを待っているのかもしれないのです」


火の国王 「そうか……うむ、それこそが勇者よ」

火の国王 「残念だが、未練がましく止めはすまい。残念だが、非常に残念だが」

火の国王 「行くが良い!」

火の国王 「世界のために残念だが行くが良い、勇者よ!!」


詐欺勇者 「ははぁっ!!」


プァーン

パパパプァー

パパパ パッパカパッパ

パ パ パ パ プァー


詐欺勇者 「…………」


淫魔幼女 「…………」


黒オーク 「…………」


ザ ザ ザ ザ ザ




…………


闇の国 貴族の城



ザワザワザワザワ

シュラララ



城主オーク 「……おお、強き旅商人たちよ。よくぞやってくれた!」

城主オーク 「遠方の忌まわしき豚どもを討ったばかりか、火の国に貸しまでつくるとは」

城主オーク 「これで、枕をたかくして眠れるわい」


黒オーク 「…………」


淫魔幼女 「…………」


詐欺勇者 「なあに、勇者ですから」




淫魔幼女 「…………」


ツネ


詐欺勇者 「あいてっ」

詐欺商人 「コホンッ……」


城主オーク 「……辺境のゴロツキ風情が、わしを差し置いて魔王と呼ばれるなど」

城主オーク 「許せん話よ」

城主オーク 「よくぞ……本当によくぞやってくれた!!」

城主オーク 「ガハハハハハ!!」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「気前よくお貸しいただいた紋章、お返しいたします」


闇の貴族の紋章


城主オーク 「うん?」

城主オーク 「ブハハハ、良い、良い、報酬とあわせてくれてやるわ!」

城主オーク 「好きに使うが良い!」


淫魔幼女 「……ありがたく」




城主オーク 「しかし、不思議な話よ」

城主オーク 「……紋章と鶏の首から上を用意すれば」

城主オーク 「不愉快な風の噂の元を取り除いてやると、そなたたちは言い」

城主オーク 「そしてその通りとなった」

城主オーク 「いったい、どのような手を使ったのだ?」


豚・詐欺・根暗 「…………」


黒オーク 「……いや」


詐欺商人 「なあに」


淫魔幼女 「手というか……」



豚・詐欺・根暗 「鳥肉を」






城主オーク 「……鳥肉とな?」


淫魔幼女 「はい、城主さま」

淫魔幼女 「うちだけが取り扱っている、それは美味しい鳥肉です」

淫魔幼女 「薄く切ってさっと湯に通して食べると、もう病みつき」

淫魔幼女 「どこでも配達、定期購入も受け付けておりますよ」

淫魔幼女 「まずは試しに一包み……」

淫魔幼女 「無料でいかが?」




……………

………





淫魔幼女「鶏肉で」詐欺勇者「魔王オークを」オーク「ぶっ殺す」

おわり



淫魔幼女「鶏鍋で」詐欺勇者「魔王オークを」オーク「ぶっ殺す」

おわり

※おまけ




…………



地獄 釜茹で



グツ グツ

グラ グラ


盗賊オークA 「…………」


盗賊オークB 「…………」


盗賊オークC 「…………」


盗賊オークD 「…………」


盗賊オークE 「…………」



…………



どこか 秘湯



キイ キイ キイ

クエーッ


淫魔幼女 「………」


詐欺商人 「………」


黒オーク 「………」



…………



盗賊オークたち・三馬鹿 「…………」

盗賊オークたち・三馬鹿 「ふいぃ゛~~……」






盗賊オークたち・三馬鹿 「極楽、極楽……」







おまけ
おわり





ありがとうござ淫魔
次回、牛肉バージョンにご期待ください

http://i.imgur.com/nUT0xTr.jpg






1.貴族の紋章を持つ娘を捕え、ついでにすごくおいしい鶏肉を強奪して食べました。

2.鶏肉の味が忘れられません。

3.鶏肉はじつはオークの肉でした。(オークの肉を鶏のかたちに整えて、鶏の頭をつけたものでした)

4.オークの盗賊団が滅びました。



5.強奪された商人たちは、盗賊団壊滅の依頼をうけた人々でした。

6.依頼者は他にもいました。オークでした。紋章と鶏の頭部は彼から調達しました。



このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom