勇者「3分間クッキング!」(178)

勇者「ちゃらららら~♪」

 \グツグツグツ/

勇者「はいッ、まずは煮えたぎったお鍋を用意しまっす!」

勇者「このように! おっきな深鍋がBESTでMUST!」フタトリ

 \ブバッモワワワ‥/

勇者「すっごい湯気ですNE! それもそのはず! 溶岩流がはいってます!」

 ジャーン!(SE)

勇者「ここで本日のぉ~……っお料理、発表ッ、賢者ちゃんッ」クワッ

賢者「はあいっ」つ[フリップ『火竜の溶岩シチュー』]トン

兵士「……くそ熱っちいな、おい」パタパタ

兵士「火山のふもとでビバークとか、阿呆か」チッ

勇者「というわけで! ななんとッ」

勇者「魔界の火山帯に生息する火竜!」

勇者「これを今日はじっくりコトコト煮込んじゃいますYO!?」

 ワーパチパチパチ!!(SE)

勇者「続いてぇ――レシピッ、兵士ちゃんッ」m9 ビシ

兵士「……あ? これ読みゃいいんだな」ペラリ

兵士「えー、小麦粉、乳酪、塩胡椒を適量」

兵士「状態異常を起こす根菜を各種……」

兵士「で、溶岩流が鍋いっぱい?」

兵士「……ざけんな、おい」ペイッ

賢者「はあいっ」ピョコン

賢者「ちなみにお鍋は特注のっ、魔力伝導! および保持! かつ耐久にすぐれたあっ――魔銀製っ」ビシ

鍋キラキラ

賢者「さらに祝福も重ねがけっ、火と毒の耐性マックスですですっ」

賢者「ぜーったい熔けませんっ」エヘン

兵士「阿呆か……んなもん食ったら人体が融解するわ」

兵士「つうか魔銀って、おい」

兵士「この鍋ひとつ鋳潰すだけで、王国の都市部に豪邸を濫造できるわ」ハァ

勇者「HEY!」

勇者「肝心の材料が聞こえてこないよ~兵士ちゃん!?」ミミニ テ

兵士「……あーはいはい」ペラリ

兵士「火竜の、テール?」

勇者「YES!」グッ

勇者「ここの火竜はサラマンドラ種だからNE!」

勇者「尻尾の筋肉が程よく発達してるのさ!」

勇者「噛みしめると火傷化するほど美味しいYO☆」ウィンク バチコン

兵士「阿呆か!」

兵士「んなもん口に入れた瞬間、全身発火の状態異常おこすわ!」ベシッ フミニジニジ

賢者「わわっ、時間がおしてます勇者サマっ」パタパタ

勇者「おっといけねぇ!」

勇者「では、さっそくお肉を調達してきまっする!」シュバッ

 ドゴーン アンギャー

 ボォオオオオッ

 ズダン! ザクザク

兵士「あぢいー」グデン

賢者「あっ、治癒ですか、治癒いりますねっ?」パァッ

兵士「いや、つうか熱い……」

賢者「むう。ではではっ、炎熱への抵抗値を上げる祝福をさずけましょうっ」サッ

 パァアアッ

兵士「おお……って最初からやれよ!」ビシ

賢者「うふふっ、暖かくて丁度いいなあって思ってましたっ」

兵士「あー」

賢者「わわっ、今のうちに根菜を並べておきましょうっ」アセアセ

賢者「ええっと、マンドラゴラ種の――こっちがマンドレイクでっ、こっちが亜科のアルラウネ、っと」コトン コトン

兵士「って魔物じゃねえかよ!」ビシッ

賢者「魔界だと動植物がいっしょくたですよねっ」ニコッ

勇者「――HEY! 無事に調達できましたYO!」ノッシノッシ

 ズルズルズル‥

賢者「わあっ、すごいですねっ、しっぽだけでヒトの背丈の5倍くらいっ」パチパチパチ

勇者「YES! 全長は10倍くらいでしたぁ! ちょっと小型でしたNE!」ザックザック

勇者「ではこのようにぃ、材料を乱切りにして大きさをそろえましたらぁ~~? すかさずお鍋に投入ッ――」

 \ボトボトトッ ザバーッ/

勇者「では賢者ちゃん、仕上げプリーズ!」バッ

賢者「はあいっ! 時間を早送りしますですよっ」サッ

 パァアアア‥

賢者「やりました判定成功ですうっ」

勇者「というわけでぇ! じっくりコトコト100年分、煮込んだものがぁ~……」

勇者「こちらッ」ニア →


鍋\【名状しがたきもの】/ドンッ!!


兵士「なあ、帰っていい?」

勇者「っ続いてぇ! 実食でございます!!」ニッコリ

賢者「ですですうっ」ニッコリ

兵士「……食わねえぞ?」

勇者「……えぇー」

賢者「ゆ、勇者サマ、はいっ」つ[カンペ『次でボケて!』]サッ

勇者「あらまぁ、ちょっと奥さん聞きましたぁ?」

賢者「ヤーですわっ、反抗期かしらあっ?」

兵士「食わねえからな? ゴリ押ししても」

勇者「もぉう! 兵士ちゃんってば、いったい何が不満なんだYO!」プリプリ

兵士「何もかもに決まってんだろが、こんのクソガキどもが!」ダンッ

賢者「えええっ?」

兵士「つうかよ、なんだ? さっきの早送りってのは」

賢者「はいなっ、【物質高速再生】ですよっ! 魂の入ってない物体に時間を作用させますですっ」エヘン

兵士「……ちなみに、それを使える“人類”は?」

勇者「アッハッハ! もちろん賢者ちゃんだけさ!」ニッコリ

賢者「そんなっ、あとひとりくらいはいますよっ」ニコッ

兵士「あー」

勇者「おぉっと! もしも魔道を遣えない場合!? 100年おいて熟成させまSHOW!」m9 ビシ

兵士「ねえよ」

兵士「つうか、お前らのテンションなに。正直ついてけねえんだけど」

勇者「そ、それは――ねぇ?」モジモジ

賢者「えへへ。だってえ、うふふ」モジモジ

兵士「んだよ」

勇者「――そう、それは初めての旅ッ」バッ

賢者「それに初めてのっ? お泊りっ」ババッ

勇者「そしてぇ! 初めてのキャンプ!」ビシッ

賢者「それからそれからあっ? 初めての飯盒炊爨っ」バシッ

兵士「飯盒……はんごう……?」チラッ


鍋\【名状しがたきモノ】/ドンッ☆


兵士「――サイズが5倍以上、違えよ」ビシ

勇者「NO! こまけぇこたぁいいんだよ!」

賢者「いいんだよっ」パタパタ

兵士「駄目だこいつら、早く何とかしないと――うん無理だわ」

兵士「あー。保存食どこにしまったっけか――」ゴソゴソ

兵士「っと。あったあった」

勇者「もぉう! そんな好き嫌いしてるとレベルアップできないYO!」モグモグムグ

賢者「ですですうっ」コクコク

賢者「せっかくの手料理なのに……つれないんですからあ」モッキュモッキュ

兵士「あのな?」

兵士「こちとら漂ってる瘴気だけで継続ダメージ受ける一般人だぞ?」モグモグ

賢者「んもう。ちゃーんと周囲に【障壁】はってますですうー」プクー

兵士「そうじゃなくてな」

兵士「お前らみたく物理と精神の抵抗値マックス、かつ」

兵士「自動回復するような化けもんと一緒にすんなっつう」ビシ

勇者「うわぁー、化け物とか事実だけど、うわぁー」ニコニコ

賢者「ひどいですう、私のせんさいなハートがズタボロですうっ」ニコニコ

兵士「帰っていい?」

勇者「そんなの断じて認められないよ!?」

勇者「なんたってYOUは勇者一行の首輪係だからね!」バッ

賢者「ですですっ」バッ

賢者「ちゃあんと手綱をとってもらわないと困るんですうっ」ビシ

兵士「いや、どうせお前らなら魔王くらい楽勝で倒せんだろ?」

兵士「別に見届けたりしなくても、国王の野郎にゃ適当に報告しとくからよ」

兵士「あーと、大司教の野郎にゃフカシこいときゃいいだろ」

兵士「まあ、適当にブッ倒して、適当に帰ってこいや」

勇者「HEY! それは職務怠慢というものだよ兵士ちゃん!」クワッ

賢者「そうですよっ? 職務放棄ですよ兵士さんっ」パタパタ

兵士「帰りてえ……」


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オリジナル用語用法が多数、あと少々ショッキングな内容が含まれます。

誤字やイミフなところがあったら気軽に指摘してください。

勇者「ちゃらららら~♪」

勇者「本日もやってまいりましたぁ――3分間クッキングのお時間ッ」

勇者「司会アーンド調理は、わたくしこと勇者、と!」

賢者「アシスタントの賢者ですですっ」

賢者「よろしくお願いしますですう」ペコリ

兵士「……つうかよ、どこだ? ここ。なんで湿地帯よ」グルリ

兵士「おい。一日で風景、変わりすぎだろ」

勇者「はいはーい!」パンパン

勇者「では、さっそく本日のお料理はッ!?」クワッ

賢者「はあいっ」つ[プラカード『水竜の腐蝕沼スープ』]グルンッ

兵士「って毎度それ新しいの出してっけど、わざわざ持ってきて用意してんのか?」

賢者「えへへっ、もっちろんっ」

賢者「私の【亜空間】はっ、ほぼ底無しですうっ」エヘンッ

勇者「そう! まさしくインフィニット=ジャスティス!」ビシ

賢者「いいえっ、力こそ正義! ですっ」ババッ

勇者「NO! それなら力こそパワー、だZE☆」ビッ

賢者「じゃあじゃあ、可愛いは正義っ、ですうっ」キャッキャ

勇者「アッハッハ! それがあったNE!」キャッキャ

兵士「意味わからんわ、クソガキどもが」ハァ

兵士「つうか空間に作用すんのも、時間と同じくすげえ魔道だよな、確か」

兵士「……あー。肩、凝った」クビ ゴッキンゴキン

兵士「こちとら自動回復しねえんだよ」ウデ グールグル

兵士「ただでさえ魔界だぞ? 野宿連泊とかねえわ、マジねえわー」モミモミ

兵士「つか、そんなほぼ無制限に荷物を運べんだったらよ、豪華寝台でも入れろや」ゴリゴリ

賢者「あっ」

賢者「治癒ですかっ? 治癒いりますかあっ?」テテテッ

賢者「うふふっ、疲労回復の天恵さずけちゃいますよおっ」ワキワキ

兵士「ん? ああ、頼むわ」コクリ

兵士(……なんでそんな嬉しそうなんだよ)ヒキ

賢者「いっきまっすよお――いてこませ疲労っ」バッ

 パァアアア‥ シュワシュワ

兵士「いや気持ちいいけどよ。なにその呪文」

賢者「呪文じゃありません気合ですうっ」ニッコリ

兵士「ん? そういや詠唱破棄ってのも、確かすげえ高度だったような」

賢者「ふふっ。自動補正って、馴れると案外ジャマなんですよっ?」ニコッ

兵士「あー」

兵士「ま、ちったあ首も軽くなったしな」コキコキ

勇者「っえー、ではレシピをお願いします賢者ちゃん!」コホン

賢者「はあいっ」テテテテッ

賢者「ではではっ」コホン

賢者「まずは、ご近所の腐蝕沼から泥水を汲んできてくださいねっ」ニコッ

兵士「ねえよ」

勇者「おっとぉ! もしもYOUのお近くにない場合ッ?」

賢者「あわてずにっ、“魔王印の毒沼のモト(腐蝕味)”っ、これにお水を加えてくださいねっ?」

兵士「敵の親玉の宣伝すんな。あと、そういう意味じゃねえ」

勇者「そしてぇ! おっきな深鍋に限界までそそぎまっSHOW!」

賢者「はあいっ」ピョコン

賢者「その前にお鍋には祝福をっ、腐蝕耐性マックスにするのを忘れずにっ」チラッ

勇者「おっ、ナイスフォローですね賢者ちゃん!」チラッ

兵士「……」プイ

勇者「――っ今回はぁ、あらかじめ用意したものがぁ~……こちらッ」

 \グツグツグツ ブシュー/

勇者「ナイスに濁ったドドメ色ですNE!」

賢者「えへへっ、さっき汲んだばかりの新鮮な腐蝕泥水ですうっ」エヘン

勇者「さらにさらにぃ~?……塩胡椒を適量ッ」ドバババーッ

賢者「わあ豪快ですねっ、そーれ一気一気っ」パンパンパン

 \ゴポゴポォ‥/

勇者「続いてぇ~、肝心の材料を賢者ちゃんッ?」

賢者「もちろんっ、いちばん忘れちゃダメですねっ」

賢者「そうっ、水竜の肉、できれば胴体っ」ビシ

勇者「しかぁしッ、ここの水竜はナーガ属ロン種、しかも単頭胴長の亜種なんで!」

勇者「胴体は採り放題ですけどNE☆」バチコン

兵士「うぜえ……」

賢者「ああっ、勇者サマお時間がっ」パタパタ

勇者「おっといけねぇ!」

勇者「では材料を調達してきまっする!」シュビッ

 ブシュー
 ドギャー
 ザッパンザッパン
 ドスッ

兵士「あー」

兵士「この辺りの大気にゃ、瘴気だけじゃなくて腐蝕化の成分まで混じってそうだな」グルリ

 ブシューブシュー

賢者「はいなっ」

賢者「兵士さんは【障壁】から出ないでくださいねっ?」ニコッ

賢者「あっでも即死さえしなければ、私の治癒魔法が光ってうなりますうっ」グッ

兵士「出ねえよ」

賢者「そうですかあ――」

賢者「でもでもっ、どっか不調があったら、すぐに言ってくださいねっ」ニッコニコー

兵士(だからよ、なんでそんな嬉しそうなんだっつの……)

勇者「HEY、ただいま戻りましたYO!」ノッシノッシ

 ズルズルズル‥

賢者「わあっ、大物ですねっ、さすがですねっ」パァッ

兵士「いや、あのな?」

兵士「鍋の容量の10倍以上はありそうなもんを持ってくんじゃねえよ! しかも毎度毎度!」ビシ

勇者「アッハッハ! それではぁッ――お肉を入るだけお鍋に投入しMUSCLE!」

 \ボトボトボトッ バザーッ/

賢者「わあっ、リッチですねゴージャスですねっ」

賢者「お鍋からあふれてますですよっ」パチパチパチ

勇者「あふれるほど愛を入れたら、3分の1くらいは伝わるんじゃないかな! と!」チラッ

兵士「……」プイ

勇者「……っ続きましてぇ!」

勇者「勇者のにわか召喚術! 魔力のゴリ押しで【地獄の業火】を召喚しまっしょう!」バッ

 ――ゴォオオオオオッ

兵士「だからよ、にわかで毎度とんでもねえもんを亜界から顕現させてんじゃねえ!」ビシ

兵士「つうかな、普通に火精召喚じゃダメなのかよ。魔力コストかかんねえだろ?」

勇者「ちっちっち! そんなんじゃ火力が足りないYO!」

賢者「はいなっ、水属性でも腐っても竜種ですうっ! 単純な物理抵抗値も高いんですですっ」

兵士「はあん」


 ブォオオオオッ

勇者「アッハッハ! 燃しましょう! どんどんヤっちゃいまっSHOW!」

賢者「はあいっ」

賢者「あらかじめお鍋に祝福をっ、火耐性マックスにするのを忘れずにっ」ビシ

勇者「おっ、またまたナイスフォローですね賢者ちゃん」チラッ

賢者「えへへっ」チラッ

兵士「……」プイ

勇者「……っでは、いつもの時間操作をお願いしまっす!」

賢者「まかされましたあっ! いざっ」

 パァァアアア‥ッ

 ‥‥プスン

賢者「あっ」

勇者「あっ」

賢者「判定失敗しちゃいましたあっ……てへ」

勇者「そんなこともありましょう!」

勇者「では3分を超えますが! 普通に調理しましょうNE!」

賢者「あいさーですうっ」ビシ

勇者「練れば練るほど色が変わってぇ~?」グールグール

賢者「てーれってれーっ♪」ピカー

勇者「完成です!」

賢者「わあいっ」ピョン

勇者「それではぁ!」

兵士「――食わねえよ?」

勇者「えっ」

賢者「えっ」

兵士「いや死ぬから。それ100回くらい即死できるから」

兵士「腐り落ちてアンデッド科に転化するからな?」

勇者「なぁんだ。そんなの、ぜんぜん問題NOTHING!」ビシ

勇者「ね、賢者ちゃん?」クルッ

賢者「えへへっ」

賢者「内臓の腐蝕抵抗を上昇させる祝福ですねっ」ニッコリ

賢者「ちゃーんと死なない程度にかけますですよっ」ワキワキ

勇者「さぁさ遠慮せず!」ズイ

賢者「どうか召し上がってくださいなっ」ズズイ


鍋\【冒頭的なもの】/メメタァ


兵士「……」

勇者「兵士ちゃんは好き嫌いを直したほうがいいよね」モグムグムニュ

賢者「ねーっ。偏食はよくないと思いますですう」モニ゙ュゴックン


兵士「はー……」

兵士「臭いだけでダメージ来るとかマジえげつねえわー鼻もげるわー……首ヤベえわ……」ノックダウン


勇者「あ、もしかしたら味付けが気に入らないのかな?」ヒソヒソ

賢者「い、いわれてみれば単調だったかもしれませんっ」ヒソヒソ

勇者「これはとんだ失態だYO」ボソボソ

賢者「反省しきりですう」ボソボソ


兵士「くそ……なんか食わねえと死期がダッシュで近づいてくる」ゴロン

兵士「保存食は、っと……」ゴソゴソ

勇者「うぅーん、次の町に着いたら違う調味料を探してみよっか」

賢者「勇者サマっ、このあたりではもう人間製の商品は売ってないですう」パタパタ

勇者「じゃ魔族が売ってるのでいいや」

勇者「そっちのが瘴気も濃くて美味しいしNE☆」ニッコリ


兵士「阿呆か……ダメージ受けるつってんだろが」チラッ

兵士「魔界産は何でも瘴気を帯びてっからなあ……」モグモグ

兵士「うぐ……レーション食い飽きた」ウエー


勇者「……」チラッ

賢者「……」チラッ

賢者「それなら――あっ、より道すれば明日には魔族の町につきますよっ?」マップ チェック

勇者「よっし決まりだ!」ニッコリ

賢者「つぎこそ食べてもらえるとイイですねっ」ニッコリ


兵士「……」

兵士「……」ムクリ

勇者「Zzz……」スヤァ

賢者「……うふふう……」ムニャムニャ

兵士「……」チッ

兵士「やっべ。もうほとんど残ってねえなー」

兵士「まさかこんな早く目減りするとはよ」

勇者「……Zzz」スヤァ

賢者「わあ……」ムニャムニャ

兵士「は。化けもんどもが平和に寝くたれやがって」

兵士「今なら――」ゴソ‥

兵士「いや、まだ確実じゃねえし、な」ピタ

兵士「っあーくそ、肩こった」ゴキゴキ

兵士「……」ハァ

兵士「帰りてえ……」

今日はここまでー

再開ー

勇者「ちゃらららら~♪」

勇者「今日も今日とて皆さまお待ちかねッ」

兵士「待ってねえよ」ボソ

勇者「勇者の3分間クッキングのお時間ですYO!」

 ワーワーパチパチ(SE)

勇者「さて本日のお料理はッ――!?」クワッ

賢者「はあいっ」つクイクイ [くす玉]パンッ

[たれ幕『風竜の手羽先、痺れ煮込み』]ヒラヒラー

勇者「よしきた! 甘辛いダシがポイントですNE!」チラッ

賢者「わあいっ」チラッ

兵士「……国から持ってきた保存食が……ついに切れた……」ズーン

勇者「っええ! もちろん重要な部位は翼の付け根!」

賢者「脂肪がすくなくてやわらかいんですよねっ?」

勇者「YES!」

勇者「それを煮込むわけですから!?」

勇者「これはもう至高のやわらかさになるはずですYO!」

賢者「わあっ、楽しみですうっ」パチパチパチ


兵士「もう終わりだ……」ドヨーン


勇者「ではさっそく調達してくるZE!」

賢者「いってらっしゃいませえっ」ノミ フリフリ

 キシャー
 バサササ
 ドズンッ
 ギコギコ

兵士「……」

兵士(今のところは計画通り、か――)

兵士「……でもなあ」ボソ

賢者「んっ?」クルリ

賢者「どうしましたあっ、兵士さんっ?」テテテテ

兵士「あ?」

兵士「別に。なんでもねえよ、いちいち寄ってくんなって」シッシ

賢者「もおう」プクー

兵士(問題は――いつまで耐えられるか、だな)

兵士「……」グー

兵士(あんま時間もねえな、こりゃ……)ハァ

賢者「……」ジーッ

勇者「……」スタスタスタ

勇者「――はいさ! 採れたて新鮮ホッカホカ!」ドサドサドササッ

 ヤマモリ ツミアゲ

賢者「わあいっ」ピョン

兵士「また鍋に入り切らん量を……」

勇者「ここの風竜は亜科のワイバーン種だったので楽勝でしたNE!」

賢者「ええっ、そんなにちがうモノですかあっ?」

勇者「そらもうね!」

勇者「さすがの勇者もエレメント目ドラゴン科ドラゴン属だと手こずりますYO!」

賢者「またまたー」クスッ

勇者「アッハッハ!」

兵士「よし、寝るか」

勇者「HEY、スタァーップ!!」

賢者「こ、これからがお食事の時間ですよ兵士さんっ!?」

兵士「……汚食事いらねえ」

勇者「ちっちっち! いつも同じと思ってもらっちゃ困るNA!」

賢者「そうですよっ」

賢者「ほら見てください、このお鍋をっ」カパッ

 \ドロドロドロ‥/

兵士「…………ヘドロ?」

勇者「この甘辛ダシ! プラス麻痺化する風竜肉の合わせ技!」

勇者「これでYOUもイチコロだZE☆」バチコン

兵士「まあ……ワンタイムキルなのは間違いない」メソラシ

賢者「えへへっ、しびれるお味になりますですっ」ニコッ

兵士「まあ、ショック死すんだろうな」ハァ

勇者「しかぁもッ! なんといっても竜肉は栄養豊富の滋養満点ですからぁ!?」

賢者「はいなっ」コクコク

賢者「食べるだけで各種の実効値っ、および抵抗値を爆上げさせちゃう、すぐれモノですですっ」

勇者「でも何といっても? 一番は!?」

賢者「とうぜんっ、不老長寿の霊薬ですうっ」ニコッ

勇者「YES! 市販品とちがって混ぜ物で薄めてないから、効能はバツグンだYO」ニッコリ

賢者「うふふっ、兵士さんには長生きしてほしいですもんねっ」キラキラ

勇者「もっと丈夫にもなってほしいしNE!」キラキラ


兵士「……阿呆か」ボソ

兵士「んな劇物をじか食いして平気なのは、化けもんだけだっつうの」

兵士「ったくよー」

兵士「こいつら、祝福で抵抗値を上げて、ダメージは治癒すりゃいいと思ってやがるからなあ……」ハァ

勇者「よっし仕上げだ! 肉投入!!」ドボドボドボン

賢者「すかさず早送りしますですよっ」サッ

 パァアアアア

勇者「やったね判定成功だ! 賢者ちゃんが一瞬でやってくれました!」

賢者「うふふっ、今日はなんとなんとっ――ここから石化させますですっ」ババッ

 \ガキンッ/

勇者「すごいや、これなら歯ごたえもバッチリだZE☆」

賢者「えへ」テレッ

兵士「阿呆か……」

 \カッチンコッチンッ/

勇者「OH、軽く叩いても割れないや」ペチンペチン

賢者「これなら、きっと兵士さんも満足してくれるハズ……っ」

勇者「ああ、さすが賢者ちゃんだNE! 絶妙の呪詛加減だYO!」ニッコリ

賢者「えへへっ」テレテレ

兵士「……」

賢者「ついにっ、よーやく私たちの努力が実をむすぶときがきたんですね勇者サマっ」キラキラキラ

勇者「そうだね賢者ちゃん!」

勇者「思えば王国から旅に出て、苦節……えぇーっと、半月くらい。ああ、なんて長い道のりだ」ホロリ

兵士「食わねえよ?」

勇者「えっ」

賢者「えっ」

兵士「あのな、歯が立たねえってレベルじゃねえぞ。砕けるわ」

兵士「お前らみてえな化けもんと違うからな? 物理実効値を考えろや」

賢者「だいじょーぶですうっ」ピョコン

賢者「ほら私、こうみえて治癒魔法は世界一とくいですからっ?」クイックイッ

勇者「そうだよ!」

勇者「賢者ちゃんの【起死回生】にかかれば、瀕死からオートで全快なんだZE!」

勇者「ささ兵士ちゃん遠慮せず、ぐいっと!」ズイ

賢者「がぶっとっ」ズズイ


鍋\【宇宙的恐怖なもの】/ドドドドドド


兵士「いらねえ」

兵士「寝るから起こすなよ」モソモソ

兵士(こいつら知識とステータスは半端ねえ癖して、なんで使う方向が全力で迷子なんだ……)ハァ

兵士「……」ゴロン

兵士「意外だわー。魔界にも星空ってのは、あんだな」ボー

兵士「瘴気で濁ってやがるけど」

 ボヤーン‥

兵士「なるほど。となると、あれだ、王国を丸ごとカバーしてた【聖域】の魔法――」

兵士「ありゃあ、つまり空の彼方まで届いてたんだな」

兵士「いつでも、はっきりくっきりクリアーな夜空だったかんなあ……」

兵士「……」グー

兵士「ま、腹減るのなんざあ慣れてっしー」ゴロンゴロン

 ガッツンゴッツン

兵士「……」ピタ

兵士「おい。岩肌にシュラフはねえだろ、いくらなんでも」イテテ

兵士「豪華寝台……」ハァ

勇者「うぅーん。今度こそ気に入ってくれると思ったのになぁ……」モグモグバキッゴキ

賢者「あっ。もしかして甘辛いのは好みじゃなかったのかも……」ガキッゴキンゴックン

勇者「なるほど! じゃ次はどうしよっか」

勇者「もっと純粋に甘いのとか辛いのがいいかな?」

賢者「んーとんーとっ」

賢者「あっ、すっぱいのはまだ試してないですうっ?」

勇者「よしきた! 次の町で仕入れる調味料は決まりだ!」b グッ

賢者「はあいっ、がんばりましょう勇者サマっ」d グッ

勇者「おうさ!」

勇者「美味しさのあまり、ひと口で昏倒できるレベルを目指してがんばるZE!」

賢者「えいえいおーっ」

兵士「……お前らよ」

兵士「なんで魔王城に向かわず魔界をウロウロしてんだ? 旅の目的、わかってんよな?」

勇者「なに言ってるのさ兵士ちゃん!?」クワッ

賢者「忘れるわけないですよっ、兵士さんっ?」パタパタ

兵士「……そうか」

勇者「もちろん! 兵士ちゃんに美味しい料理を食べさせる、ぶらりグルメ旅だよNE☆」バチコン

兵士「おい」

賢者「ついでにっ、兵士さんのステータスをレベリングさせちゃおう旅ですよねっ」ニコッ

兵士「おい!」

勇者「アッハハハ! 勇者ジョーク!!」ニコニコ

賢者「だいじょーぶですですっ、ちゃあんと魔王を倒すための秘策を練ってるんですからあっ」クスクス

兵士「は? いや待て。お前ら、それ――」

勇者「OH! 兵士ちゃんはね、勇者たちにぜんぶ任せてくれればいいのさ!」ビシ

賢者「はいなっ、おまかせあれっ、ですうっ」バシ

兵士「…………不安しかねえ」ハアァー

兵士「帰りてえ……」

再開ー

勇者「ちゃらららら~♪」

勇者「本日も待ちに待った3分間クッキングのお時間ッ」

兵士「……」モグモグ

勇者「HEY! そこのYOU! なに食べてんNO!?」

兵士「なんでもいいだろ」ゴックン

賢者「そ、それ……その保存食はっ、私の魔眼がたしかならっ」キュインッ

兵士「阿呆か。んな【ステータス鑑定眼】なんぞ使わなくても判別できるだろ」ハァ

勇者「へ、兵士ちゃん、どこでそんなものをッ!?」キッ

兵士「お前らが町で調味料を買い込んでる隙に、魔族の行商から仕入れた」つ[袋]ゴソゴソ

兵士「なんも食ってなかったから助かるわー」ヒョイパク

勇者「えー」

賢者「えー」

勇者「がっかりだよ兵士ちゃん!」ビシ

賢者「がっくりですよ兵士さんっ?」ビシ

兵士「るせえ。お前らの料理に比べりゃ、まだ人肉のがマシだ」ガジガジ

勇者「そんな……いったいこれから何を目的に生きていけばいいんだYO……」トオイメ

賢者「わかりません……私にはもう……なにも信じられません……」orz

兵士「阿呆か」

兵士「あのな、目的なんて決まりきってんだろ?」

兵士「“打倒魔王”」

兵士「ほらシンプルだ。見失うなよ?」カジカジ

勇者「そんなん、どうだっていいよ……もう生きてる意味なんてないんだ」ヒザカカエ

賢者「この世はほろぶべきなんですう……」ジメンニ ノノジ

勇者「ああ――そうさ、こんな世界いらないよね!」スック

賢者「はい。業火ですべて焼きつくして地獄にかえてしまいましょうっ」バッ

兵士「いや、お前らが言うと洒落にならんから」

兵士「つか下らん小芝居してんじゃねえよ」シラー

勇者「だって兵士ちゃんがさぁー」ジトーッ

賢者「ぜんぜんお料理、食べてくれないんですもん」プクー

兵士「なにこの過重責任。一介の兵士が背負うもんじゃねえぞ」

兵士「つうかな? あれだ、あの【物質高速再生】だっけか?」

兵士「んな高次の大魔道をイミフな遣い方すんなや」

勇者「えっ」

賢者「えっ」

兵士「えっ、じゃねえ! 化石は食いもんじゃねえんだよ!!」ズビシッ

勇者「そっか、下手に凝ったのが悪かったんだNE」ヒソヒソ

賢者「まさか手をかけすぎたのが敗因だったなんてっ」ヒソヒソ


兵士「……ったく」

兵士(半分くらい神サマに突っ込んでる領域だよなあ?)

兵士(時間および空間に独力で作用する――4次元魔道つったか)

兵士(今の人類で単独発動に至れる奴ぁ、この賢者と、あとひとりくらいだとか何とか)

兵士(とんでもねえ代物のはずなんだが……)


賢者「ここはあえて手抜きしましょう勇者サマっ?」ボソボソ

勇者「兵士ちゃんがいうなら仕方ないなぁ」ボソボソ


兵士「あとな、調味料の量を減らせ」

勇者「えっ」

賢者「えっ」

兵士「だから、えっ、じゃねえんだよ!」ダンッ

兵士「毎度毎度、大袋いっぱい突っ込みやがって!!」

兵士「一つまみでいいんだよ、んなもなぁ!!!」ビシ

勇者「な、なに言ってるんだYO」オロオロ

賢者「そ、そんなの……入れたウチに入りません……よ?」オドオド

兵士「だから常人にゃそれが適量なんだっつの!!」ジダンダ゙ダン

兵士「つうかダメージ受けるの前提で作るんじゃねええええ!!!」ズビシッ

勇者「WHY? ノーダメじゃ、ぜんぜん食べた感触ないYO?」キョトーン

賢者「ですよねっ? それじゃ食べる意味ないですよねっ?」クビカシゲ

兵士「くっ……」

兵士「こいつらに異常な物理作用値と、生命値と、精神値と、自動回復の恩寵を与えたの誰だよ、って」

兵士「女神か……」ガックシ


勇者「……」ヒソヒソ

賢者「……」コクンッ

勇者「それではッ! 兵士ちゃんの意見をとりいれてぇ~?」

勇者「ちゃらららら~♪」

賢者「はあいっ、あらためましてっ」

賢者「勇者サマの3分間クッキング、はっじまっるよーっ」テノヒラ メガホン

兵士「もう永遠に終わっとけよ……」

勇者「さぁさ本日のメニューはッ」

賢者「うふふ、きっと予想もつかないハズですうっ」

勇者「おっと焦らしますね賢者ちゃん!?」

賢者「えへへっ」ポッ

兵士「つうか毎度の、この茶番劇はなんなんだよ……」

賢者「はあいっ」

賢者「今日はなんとなんとっ」ババッ

賢者「地竜と土竜のお刺身の盛り合わせっ、ですですうっ」ビシイ

勇者「WAO! 豪華2本だて!」ヒューッ

賢者「味付けは……そーですねっ、シンプルにお酢のみでいきましょうっ」チラッ

勇者「よっし! これなら味にうるさい食通さんも納得だ!」チラッ


兵士「しっかしまあ――」ストン

兵士「密林と砂漠が隣り合うとか、まあ節操ねえこと」

 ウッソウ ←  → カラカラー

兵士「魔界の地勢だの植生だのってマジ謎だわー。ま、たいがい瘴気のせいってか」つ[袋]ゴソゴソ

兵士「……」ヒョイパク

兵士「このジャーキー……ちっと干しすぎだな」ガジガジ

兵士「いや、あんま味が残っててもアレだが。アレだし」ゴックン


勇者「……っ、それではぁ! さっそくお肉を狩ってきまっSHOW!」

賢者「いってらっしゃいませですうっ」ノミ フリフリ

兵士「……」ボー

兵士「あー。なんか上空で瘴気が渦巻いてんなあ」

兵士「……もうそろそろ、か」

兵士「なにやってんだかなー……こんな魔界の奥まで来てよ」

兵士「……」ゴロン


勇者「はいさッ、新鮮なお肉がたっぷり獲れましたYO!」

 ドサドサドサ

賢者「わあっ、さすが勇者サマっ、すでにさばいてありますですっ」パチパチ


兵士「……ったくよー」ハァ

兵士「化けもんどもは元気でいいわ。活き活きしとるわ」ゴロリン

兵士「そういやあ――異界の料理番組のデータを参照して、真似てるだの言ってたか?」ジー

賢者「って、あれっ、腕が石化してますねっ?」

勇者「地竜はコカトリス種ですからNE! 石化のブレスが厄介でしたYO!」ゴンッ

賢者「しかも毒化してますねっ、お顔がド紫ですうっ」

勇者「土竜のバジリスク種の毒化ブレスですNE! まさかの竜種タッグに勇者もタジタジ!」

勇者「【物理傷害減殺】体質じゃなかったらヤバかった!」

勇者「久しぶりに肉体強化しましたYO!」ニッコリ

賢者「またまたー」クスッ

勇者「アッハッハ!」


兵士「……」

兵士「どんだけ物騒な異界を元にしてんだ……」


勇者「いうて勇者は時間経過でバッドステータス全自動回復するんでッ」

勇者「このまま調理はいりまっす!」シュバッ

賢者「たまには治癒させてほしいですう、天恵がさびついちゃいますう」ワキワキ


兵士「――女神の恩寵なんぞ糞食らえ」ボソ


勇者「生肉にぃ、よく酢を揉みこんでぇ」つスリスリ

賢者「わわっ? 毒化のパープルと、狂化のイエローがまざってっ?」

賢者「とっても綺麗なマーブル呪詛ですねっ」パチパチパチ

勇者「YES! 物理傷害と精神汚染の華麗な競演でっす!」

勇者「食べる前からよだれが出ますYO」つモミモミ

勇者「AH……これを賢者ちゃんも味わえればいいのに」フゥ

賢者「私は【状態異常無効】体質だから、しょーがないですう」フゥ

賢者「でもですねっ」

賢者「お口のなかですぐ解ける感触もっ、味わいぶかいものですよっ?」エヘン

賢者「それに目でも味わえますですしっ」キラキラ

勇者「アッハッハ! なんだか羨ましくなってきたYO!」キャッキャ

賢者「うふふっ、残念でしたねっ」キャッキャ

兵士「聴こえねえ……何も聴こえねえ」ブツブツ

勇者「よっし仕上げだ! 【地獄の業火】を召喚……ッ」

 ゴォオオオオッ

賢者「わーわーっ! 勇者サマ、タンマですうっ」パタパタ

勇者「OH! ステーキからメニュー変更したの忘れてた!」

勇者「召喚、っからのお~……っ召還ッ!!」クンッ

 シュゴオオオオォッ‥

 ‥‥プシュンッ

賢者「やったあっ! 【強制送還】っ、判定成功ですですっ」パチパチパチ

勇者「フー、あぶないところだったZE!」フキフキ

賢者「あっ、いいカンジに表面があぶられてますですよっ?」

勇者「結果オーライ、なんだZE☆」b ビシ

勇者「ふぅ――ではお待たせのッ、お刺身盛り合わせ完成でっす!」ドン!!

賢者「うふふっ、加熱したり熟成させたりしたいところを、ぐっとガマンしましたねっ」グッ

勇者「しかぁしッ! その分、綺麗な原色が出てますYO!」サイケデリック マーブル ナマニク

賢者「ではではっ、待望の実食タイムですうっ」ニッコニコー

勇者「今日こそ!」ワクワク

賢者「手料理をっ」ドキドキ

兵士「……」

勇者「今日、こそ」ジー

賢者「手料理、を」ジー

兵士「……」スピー

勇者「OH……時すでにおすし」orz

賢者「じ、時間をかけすぎちゃいましたかっ」orz

兵士(……いい加減、諦めろよ)タヌキスリープ

勇者「いいや! どれだけ当たって砕けても! それでも勇者はくじけないッ」スック

勇者「いつか来たるその日まで! 挑戦しつづけるんだZE!」ビシ

賢者「はあいっ! 食べてもらえるその日までっ」スック

賢者「ずっと応援しますですっ」フレーフレー


兵士「……」

兵士「……」ムクリ ジーッ

賢者「……えへへえ……」ムニャムニャ

勇者「Zzz……」スヤァ

兵士「ふん」ゴソゴソ

兵士「……」スタスタ

兵士「……」スタ

勇者「……」スタ

兵士「」ビクッ

兵士「おま、無言で背後に立つな!」アトジサリ

勇者「どこ行くの?」

兵士「あー。ちょいと花摘みにな」

勇者「アハ。魔界の花が相手じゃ、逆に兵士ちゃんが摘まれちゃうよ?」

兵士「比喩表現だっつの。トイレだ、トイレ」スタスタ

勇者「ふぅん」スタスタ

兵士「って……なんで着いてくんだよ!?」

勇者「そりゃ危険だからさ」

兵士「は? この辺はまだ賢者の【障壁】の範囲だろ? 大抵のもんは防げ」

 ビシュンッ

 ‥ドサ

勇者「残念、亜科のワーム種かぁ。図体だけだね」ゲシッ

 ワギリ ゴロゴロ

勇者「うぅーん。毒性も薄いし、あんまり美味しくなさそう」ジロジロ

兵士(って素手で解体してんのかよ……そら武器とか買ってなかったけどよ)

勇者「アハハ。ほら、【障壁】って外からの侵入は防ぐんだけどさ」

勇者「展開した時点で内側にいた場合は、そのまま残るから」

兵士「……なるほどな」

勇者「まぁ、賢者ちゃんなら瘴気汚染の浄化といっしょに一帯の魔物を殲滅っ、とかできそうだし」

勇者「勇者の召喚術で、辺りを焦土に!とかもできるけど」

勇者「でも――それだと食材がなくなっちゃうからね!」ニッコリ

兵士「お前ら結局それかよ……」ガックシ

勇者「見たとこ2等級かなぁ?」ジロジロ

勇者「町に持ち込んだら、素材と肉でそれなりの額には換金できるだろうけど」

勇者「せっかくだし、軽くローストして明日のおやつにしよっと」サッ

 ゴォオオオオッ

兵士「もはや突っ込む気力もねえわ」

勇者「あ、そうだ。ちょっと待ってね、兵士ちゃん――」ンンー

兵士「あん?」

勇者「うん! この辺にほかの魔物はいないよ! やったね兵士ちゃんでも安全だ!」

勇者「たぶん、こいつが一帯のヌシだったんだろうね」ニア ビッ

 コンガリ ホカホカ ジュージュー

兵士「はあ? んなこと、なんでわかんだよ。お前、探知系の恩寵なんて持ってたっけ?」

勇者「ないけど、調べた」

兵士「だからどうやって」

勇者「うん? 魔力を全方向に継続放射すると反射でマッピングできるじゃん? それから反響魔力の波長を方位と距離と深度で測って比較して誤差を抽出し」

兵士「あーもういい」ヒラヒラ

兵士「とにかく着いてくんなよ」

勇者「じゃあ、ここで待ってる」ムシャムシャ

兵士「って食ってんじゃねえよ!」ビシ

勇者「ちょっと味見と思ったら意外とイケる……」ガブリ ブチッ

勇者「ふぉうら……賢者ちゃんも起こしてこよう」ムグ゙モグ ゴックン

 ステテテテッ

賢者「うふふっ、それにはおよびませんですよっ」スタッ

賢者「ふたりだけでズルいですうっ」ニコニコ

兵士「いや頭数に入れんなよ……」

勇者「アハハ! ごめんね! はい、いいとこあげる」つ[モツ]

賢者「わあいっ」つ[モツ]カプッ

賢者「あっ……おいひぃれすう」モッチャモッチャ


兵士「帰りてえ……」

今日はここまでー

ひゃっほうさんではないですよー
そんな恐れ多い

でも、あそこのノリ大好きだから、影響を受けてるかもです!

再開ー

勇者「ちゃらららら~♪」

賢者「ついにっ、この日がやってきましたね勇者サマっ?」

勇者「やってきちゃったよ賢者ちゃん!」

賢者「とうとう……最後まで兵士さんには食べてもらえませんでしたけども……」シュン

勇者「さすがの勇者も……これには凹んだYO……」ショボーン

賢者「でもですねっ」バッ

賢者「勇者サマならきっとっ、魔王を打倒できると信じてますですよっ」グッ

勇者「もちろんさ!」

勇者「天下の勇者に不可能なんてないんだZE!」d ビッ

兵士「いや、数秒前に思いっきり不可能なことがあったって認めてんだろ」

魔王「……」

側近「……」

勇者「そんなこんなでぇ!」クワッ

賢者「はあいっ」

賢者「勇者サマの3分間クッキング――堂々のっ、フィナーレですうっ」

 パンパカパーン!(SE)

魔王「――おい、そろそろ始めてもよいか?」

勇者「おぉっと失礼!」

勇者「タイトルコールしないと気分が出なくてNE☆」バチコン

側近「ふむ……人間界では今、こういうものが流行っているのでしょうか……?」

兵士「ねえよ」

魔王「では頼むぞ側近よ」

側近「は。それでは、わたしが審判と進行を務めさせていただきます……」ススー‥

魔王「ム。ちと待て。人間側からも審判を出さんとフェアーとはいえぬな」

魔王「あとから文句を言われても困るのでな、そちらからも選出させい」

勇者「といっても、こっちから出せるのは」チラッ

賢者「勇者サマがお料理でっ、私がアシスタントですからあっ?」チラッ

兵士「死んでも拒否する。つうか死ぬ」

勇者「もぉう。最後までワガママな兵士ちゃん!」

兵士「化けもんは化けもん同士で決着つけろよ……」ハァ

賢者「しょーがないですう」

賢者「こっちからはナシってことでっ」× バツサイン

勇者「どうせ勝つのは勇者だからNE!」m9 ビシ

側近「などと申しておりますが……よろしいでしょうか?」ススー

魔王「フン。脆弱な人間風情が吠えおるわ」

魔王「我が勝った暁には、真っ先にその舌を料理してやろうぞ!」バサッ

魔王「構わぬ。側近、開始の合図をせい」クイ

側近「はは」コクリ

側近「それでは3分クッキング対決をおこないます」

側近「公式ルールはご存知でしょうが、念のため……」

側近「対戦相手にダイレクトアタックを仕掛けた場合、その時点で失格し、負けが確定されます」

側近「また、おおかたの食材や調味料、および調理器具は、あちらに用意があります……」ニア

 ズラズラー

側近「が、持ち込みも許されます。制限はありません」

側近「そして、この砂時計をひっくり返しますので……調理時間は正味3分」スッ

側近「もし完成にいたっておらずとも、落ち切った時点で実食にうつります」

 クルリ‥

側近「これより――――始めッ!」ダンッ

淫魔「ハァイ! では、こっからアタシ淫魔が実況するわよぉン?」ピョイッ

兵士「どっから湧いて出た」

淫魔「イヤぁン。性と精があるかぎり、どこにでも現れるわぁン?」クネッ

兵士「Gか……」

淫魔「ヤん、クールぅ」

魔王「先手必勝、まずは食材召喚と参ろうぞ――」パンッ

 “Ph’nglui mglw’nafh Cthulhu R’lyeh wgah’nagl fhtagn”

側近「ああ窓に! 窓に!」

淫魔「あはァ、魔王ちゃんったら、すっごいトばしちゃってるわぁン?」

淫魔「目のハシっこに入れただけでイっちゃいそーよぉ……ぃぁぃぁ」

兵士「なんだm、tkがdkれああれなだれよれっゆだkd」ガガガガクガクガク

勇者「OH! 兵士ちゃんが正気を喪ってるYO!」

賢者「あらら、兵士さんの精神汚染抵抗を引き上げておくべきでしたねっ」テテテッ

賢者「しっかりしてくださいなっ……てや」スパコーン

兵士「はっ?」

兵士「なんだ? 今なんかあったような、なかったような」メ ゴシゴシ

兵士「見たような……思い出さないほうがよさそうな……」ブツブツ

賢者「はあいっ! 困惑と狂化と恐慌と錯乱の一括キャンセルっ、判定成功しましたあっ」ニコッ

賢者「ふむむっ? 精神値もおっけーですねっ」キュインッ

賢者「ではアシスタントにもどるですですっ」ステテテッ


勇者「やったね賢者ちゃん、一発判定だ!」ニッコリ

賢者「えへへっ。それほどでもありますですう」テレテレ

賢者「――それにしてもっ、さすが魔王ですっ」キッ

賢者「まさか異界の【Яψв指定生物】を食材に持ってくるなんてっ」アセッ


魔王「フハハハハッ!」ザックザック

 \ビタン ビタァン!/

淫魔「あンッ、美味しそうな触手ゥ~! やァん、もう濡れちゃうぅ~ン」クネクネ

側近「さすが陛下……開幕から一気に畳みかける戦法ですね。おそらく一品勝負でしょう」

勇者「これは勇者も予想GUYだZE」ゴクリ‥

賢者「でもでもっ、私の【ステータス鑑定眼】によればっ」キュインッ

賢者「いまので魔力をほとんど持ってかれてますですよっ」バッ

賢者「もう時間内に大物の召喚はできないハズっ」

勇者「よっし! こっちも攻めるZE!」キッ


淫魔「あらン?」

淫魔「オキテ破りのアレに対してぇ、勇者一行はどんなすっごいアレで対抗するのかしらぁン?」

兵士「……なあ、帰っていい?」

側近「そなたも勇者一行の一員でしょうに」ジロッ

兵士「来たくて来たわけじゃねえんだよ!」ダンッ

勇者「賢者ちゃんッ」

賢者「はあいっ」

賢者「【亜空間】――大っ解放っ! いでよ食材っ!!」バババッ

 ドドドドドッ

側近「ほう……時間と空間に働きかける4次元魔道ですか」

側近「人間の分際で……単体で展開するとは、やりますね」

淫魔「【亜空間】ってぇ、突っ込んだブツをそのまま保てるっていうアレよねぇ?」

側近「ええ。それで新鮮な食材を大量に……」

側近「食材の持ち込み可の公式ルールを、うまく利用したものです」

兵士「はー。んなもんより豪華寝台いれろよ……」

魔王「フハハハッ! さすがは勇者一行よ、考えおったわ……い?」

 ドドドドドドドッ

側近「……」

淫魔「……」

 ドドドドドドドドドッ

魔王「……」


 ッドドドドドドドドドドドバアアァッ

 ズササー‥


兵士「……」


 ヤマモリ テンコモリ

 アシノフミバ ナシ


兵士「って阿呆か! 床が埋もれるほど持ってきてんじゃねえよ!!!」ズビシィ

魔王「フッ、策に溺れたな勇者めが!」

魔王「すでに残り時間は2分を切った! この量を調理する余裕などあるま……い?」

 スパパパパパパンッパンッ

勇者「アッハハハハハハ!! 残像だ!」シュインッ

 パパパパンパンッ

淫魔「あァん! すっごぃイイ!」ビクンビクン

勇者「今のは包丁さばきではない……手刀だ!」シュッ

側近「め、目にも止まらぬ速さで、さばいている……っ?」

賢者「いいですよっ、修行のせいかが出てますですよ勇者サマっ」グッ

勇者「勇者の下ごしらえ術は百八式まであるんだZE!」

 パパパパパパパパ‥ッ

魔王「クッ、負けてはおれぬ! 我の調理力は53万だッ――!!」バサアッ

側近「なっ!? 陛下が人間相手に最終形態に……っ!!?」

兵士「……」

兵士「帰りてえ……」

今日はここまでー

書き溜め分を見直すので、次はちょっと時間がかかるかもですー

なかなか見直しが終わらんので、修正しつつ順次再開しまする

側近「うンまぁ~~~いッ!!」ボー

魔王「うーまーいーぞぉー!!!」ゴオオッ

淫魔「あはぁン、らめぇえええっ……イっちゃうのほおぉおおおっ」ビクビクビクッ

兵士「何も視えねえ何も聴こえねえ何も……」ブツブツブツ

勇者「どうだ! これが人間の料理ってもんだZE!」m9 ビシ

賢者「はいなっ! 魔界にはない、せんさいなセンスですよっ」エヘン

兵士「ねえよ」

兵士(つうか、なるほどな)

兵士(こいつらの味覚って完全に魔族寄りだったんだな……マジ化けもんか)

魔王「クッ、まさか我の料理より精神汚染度が高いとはッ」

側近「あぁ……実体の薄いわたしですら、これほどのダメージを受けられるのですね……」ホゥ

淫魔「あへぇ」ピクピク

魔王「これはッ……あの大量の食材すべてに天然の呪詛がこめられていたな!?」

魔王「しかも竜種など1等級の魔物肉のみの構成で、物理傷害と精神汚染を網羅するとは――」

魔王「なんと厳選したものよッ!」カッ

勇者「イグザクトリー!(その通りでございます)」

勇者「この対決のために! 魔界全土をまわって収集したんだZE☆」バチコン

賢者「そうですよっ! 魔王城は人間界から徒歩で約半月っ」

賢者「それを倍の、ひと月もかけて来たワケが、これなんですうっ」エヘンエヘン

兵士「いや……普通は瘴気に強い騎獣を使うし、まっすぐ向かっても半年以上かかるっつの」

兵士「ったくよー」

兵士「道理で脈絡のねえ場所に次々移動すると思ったわ」ガックリ

側近「しかも……まさか、あの量を4次元魔道によって極小まで時空圧縮するとは……」

側近「……これが人間の知恵……工夫……」フゥ

勇者「YES!」

勇者「あらゆる状態異常をナノサイズに凝縮した――その名も“ダークマター”!!」ビシ

賢者「もちろん、それだけじゃありませんっ」ズイ

賢者「私が実食者に【起死回生】の天恵をさずけましたからっ」

賢者「瀕死状態におちいればオートで全快しますですよっ」エッヘン

魔王「ククク。よって生命値ゲージの最大と最小を高速で行き来する、というわけか」

魔王「快気から今わの際へ――生と死のあわいの、なんたる味わい深さよ」

魔王「この魔王をもってしても、初めての感覚であったぞ?」ニンマリ

淫魔「あはァ……また逝っちゃうぅううう……」ヒクヒク

賢者「これぞ勇者サマと私の生みだしたっ」ババッ

勇者「そうッ――究極の必殺レシピ! なんだZE!!」クルクルクルッ‥スタイリッシュ ビシッ

魔王「フハハハハッ――天晴れなり!」バサッ

魔王「しょせん人間と侮った我こそが誤っておったわ! 潔く詫びようぞ!!」

勇者「いいや! 魔王の“タコ焼き”も美味かったZE!」

勇者「まさかお腹の中で高速再生をくり返しながら!」

勇者「さらに錯乱の状態異常をかけてくるなんてNE!」ニッコリ

賢者「はあいっ」ピョコン

賢者「【状態異常無効】の私ですら意識が戻ってくるのに数分っ」

賢者「あれは至高の領域でしたあっ」ニコッ

魔王「ム、ムム、そうかそうか!」ニマァ

側近「ああ……こんなにも喜んでいらっしゃる陛下は初めてです」ホッコリ

兵士「このアウェー感」

魔王「クク……素晴らしい料理を味わわせてもらったのでな」

魔王「側近よ、先の布告は撤回するように」バサッ

側近「ははっ。人間界の食肉牧場化計画は白紙ですね……」

側近「これまで通りに同意を得ての買い付けに留めましょう」

魔王「うむうむ」

側近「はぁ……瘴気のないジャンクフードとして最近のブームで高騰してましたからね」

側近「この計画で安定した供給になると思ったのですが……」

魔王「しかし、これほどのセンスが育つとあれば、断じて阻害するわけにゆかぬわ!」

魔王「今とて乱獲は取り締まっておるし、現状を維持しても差し支えはなかろう」


兵士「誤解と齟齬の上に成り立つ砂上の楼閣、か。いつまでもつことやら」ハァ

兵士「……ま、どうでもいいか。もう関係ねえし。あー首いてえ」ゴリゴリ

賢者「えへへっ。無事に任務しゅーりょー、ですねっ」ニコッ

勇者「これにてミッションコンプリート! なんだZE☆」バチコン

兵士「うぜえ……」

側近「本日はお疲れ様でした……魔王城へのまたのお越しを、心よりお待ちしております……」

魔王「必ず再び相まみえようぞ! フハハハハッ!」

 ギィイイイーッ
 バタム

賢者「えへへっ」

賢者「おみやげ、いっぱいもらっちゃいましたねっ」ルンルン

勇者「アッハッハ!」

勇者「魔王印の調味料も大量だZE!」ホクホク

賢者「これで魔界風料理のレパートリーがはかどりますねっ」テクテク

勇者「そもそも今までだって魔界の食材しか使ってなかったけどNE!」スタスタ

賢者「うふふっ」

勇者「アハハッ」

兵士「さて帰るか」

賢者「あっ、どーせだから魔界観光したいですうっ」ニコニコ

勇者「そうだね! 任務期限までは、まだ余裕があるからNE!」ニコニコ

賢者「はあいっ! 地獄温泉がいいですうっ」ニコニコニコ

勇者「ほんとに底が地獄とつながってるのかな!」ニコニコニコ

兵士「いや帰るからな?」

兵士「ま、短え付き合いだったな。もう二度と会わねえけど」

賢者「うふふ」

勇者「アハハ」

賢者「なあに言ってるんですかあ? 兵士さあーん?」

勇者「そうだよ! まだ時間はあるんだし、ちょっと遊んでから帰ろうZE!」

兵士「は? お前らは魔界に残るんだよ」

勇者「……」

賢者「……」

兵士「マジ阿呆だな、おい」

兵士「王国に、お前ら化けもんの居場所なんて、どこにもねえよ」

勇者「アッハッハ! ねぇ本気で言ってるの? 兵士ちゃーん?」

賢者「頭おかしくなっちゃいましたかあ? だったら状態異常キャンセルしますよう?」ワキワキ

勇者「だいたいさ、危険な魔界から人間界まで、兵士ちゃんひとりで帰れるわけないのに! アハハッ」

賢者「ふふふっ、兵士さんは私たちと違って軟弱なんですからあっ」

賢者「ここまで来るのだって私が【亜空間】ではこんであげて、今も瘴気をさえぎる【障壁】を」

兵士「るせえ」

兵士「化けもんは化けもん同士で群れてろ。人間様を巻き込むんじゃねえ」

兵士「じゃあな」サッ

 ボトリ ガシャンッ

兵士「あ」

勇者「やだな、逃がすわけじゃないじゃん」ニッコリ

兵士「……おま、腕ごと切るか?」ブシューッ

賢者「えへへっ。部分麻痺化させたから、か弱い兵士さんでも痛くないはずですう」ニッコリ

兵士「へっ、そりゃどうも」チッ

勇者「あっぶないとこだったNE!」

勇者「【登録座標置換】する魔道具なんて使わせないよ――」パキンッ

勇者「こんな国宝級のアイテムを、こっそり兵士ちゃんに渡したのは――?」

賢者「国の大司教に決まってますうっ」

賢者「4次元魔道と召喚術の両方を扱えるニンゲンって、消去法でひとりしか残りませんしい?」

兵士「……」ブシュウー

勇者「万が一、勇者たちが離反したときに備えた、取って置きってことだよNE!」ニッコリ

賢者「ですですう。私たちが魔族側につく、って言いだしたときの保険だと思いますですよっ」ニッコリ

勇者「ってことはぁ? ほんとは3人まとめて【強制送還】させるために使うものだYO!」

賢者「それを自分だけに使おうだなんてっ、兵士さんってば、お茶目さんっ」クスッ

兵士「あー」ブシュウウー

兵士「やっぱりか」

兵士「お前ら、とっくに解けてたな?」

勇者「アッハッハ! それってさ――この旅に出る前に」

賢者「アナタが私たちにかけた、魅了のことですう?」クスッ

兵士「……はっ。なーにが1年は効果が持続する、だ」

兵士「糞教会が。マトモに観測しろや」チッ

賢者「あら、ご謙遜ですう」

賢者「ちゃあんと国を出るまでは効果があったですよっ?」

賢者「うふふっ――【状態異常無効】の私に、それだけもったなんて、すっごいことですう」ニコニコニコ

勇者「アハハハッ! 瘴気で効果が薄れたみたいだNE!」

勇者「魔界に入ってすぐ、バッドステータス全自動回復で消えちゃったYO!」

勇者「たぶん王国――【聖域】のなかに留まってたならさ、観測予想どおりだったんじゃないかな?」ニッコリ

勇者「ほんと超強力だったよ、YOUの恩寵! アハハハハッ!」

賢者「ですですうっ! 私たちを魅了状態にできるなんて、きっと人類ではアナタだけですよっ?」クスクスクスッ

兵士「つかな」

兵士「そろそろ残り生命値がレッドゾーン突入で、絶賛カウントダウンしてんぞ、今」ブシュブシュー

兵士「ま、感覚ないまま楽に死ぬってのも手ではあるけどよ」グラリ

勇者「おっといけねぇ!」

勇者「賢者ちゃんプリーズ!」クワッ

賢者「はいなっですうっ」ササッ

賢者「ええっと? 親指があるほうが上でっ、こっちが下っ」グリグリ

賢者「角度よし、ですう――えいやっ」ギュッ

 パァアアア‥

賢者「はあいっ、無事くっつきましたあっ」パチパチパチ

兵士「ひとの身体を粘土細工みてえに扱いやがって……」ハァ

賢者「うふふっ、生命値ゲージも満タンに戻しましたですよっ」キュインッ

勇者「それで? どういうことか説明してほしいね! 兵士ちゃん!?」

賢者「ですよっ! なんで私たちだけ残して帰ろうとするんですかあっ」

兵士「最初からそのつもりだった。王国を出る前からな」

兵士「どうすりゃ大司教に悟られずに、お前らを魔界に捨ててこられるか、ってな」

兵士「あと一歩だったんだがなあ……」

兵士「つうか、なに、普通に帰る気だったわけ?」

賢者「あったりまえじゃないですかあー。だって」

兵士「阿呆か」

兵士「変態か、ドMか、被虐趣味か」

勇者「アッハハハ!」

賢者「うっふふふっ」

勇者「兵士ちゃんてば、な~に言ってんのかなぁ? わっかんないなぁ! ねぇ賢者ちゃん!」

賢者「ほんとうですねっ、たわ言ですねっ、もーおかしいったらっ」

兵士「……」

勇者「ねぇ兵士ちゃん……そっくり同じセリフを返したいんだけどね?」

賢者「ええ。兵子さんだけ帰ったりしたら――その首輪」

賢者「それにかけられてる時限式の致死の呪いで、死んじゃうんですよお?」

兵士「へっ。やっと肩凝りが消えて清々すらあ」

兵士「もとから死刑執行までの猶予期間なんだよ、お前らの子守なんてよ」

兵士「どのみち任務成功して帰ったところで、機密封じに暗殺されるに決まってんだからな」

兵士「聖教の総本山たる我らが聖王国がよ、秘密裏に化けもんを飼ってました――なんて醜聞をよ」

兵士「諸外国に知られるわけにゃいかねえからなあ?」

兵士「つうわけで――お前ら化けもんの顔が見えねえとこで、あと腐れなく死なせろや」

勇者「アッハハハハハハハ!! どうしよっか賢者ちゃん!?」

賢者「うふふふふふふふっ! どーしましょうか勇者サマっ?」

勇者「ダメだよ……兵士ちゃんにはさぁ、まだ料理を食べてもらってないんだよねぇ」

賢者「そうですよお? その前に、勝手に楽になれるだなんて思わないでください、ですう」

勇者「――YES! YOUをここで簡単に死なせたりしないYO☆」ニッコリ

賢者「はいなっ、アナタの意見が変わるまでっ? ちゃあんと付き合ってあげますですよっ」ニッコニコー


――前編終了















後編開始――

兵士「はあ? どういうこったよ、そりゃ?」

『ほう? 理由は自明だと思うが、はっきり聞きたいかね?」

兵士「あ? 仕事はこなしてんだろうが」

兵士「俸給だって、他の奴より少なくていいって」

『それがなあ、君も知っとるだろう』

『先だっての魔王の宣戦、いや侵略布告がなあ――』

『いやあ、牧場化などと誠にふざけておるが』

兵士「それがなんだってんだよ」

『まあ、それで泡を食った他国の難民がなあ』

『女神様の加護の篤い――この聖王国に押し寄せてきよるのでなあ』

『となれば、君と同じ俸給でも構わんと抜かす卑賤なやからがなあ、万と控えておるのだよ――』

『であれば、なあ?』

兵士「……」チッ

『それに――聞いた噂じゃ君い』

『この職に就く前は、いかがわしい手段で身を立てていた、とか?』

兵士「んなもん昔の話だし、それに当時の聖王国法を犯したわけじゃ」

『いやいや、しかしなあ』

『王都たる神聖都市を守る兵士としては、誠に相応しからぬ経歴であろう?』

『むしろ欠損のある人間をこれまで雇ってやっていた慈悲にこそ、感謝してもらいたいものだよ――』

『入れ』

 バタン!
 バタバタバタッ

兵士「なっ、警邏兵がなんで――!」カツンッ

『はは。魔族を相手にするなんて汚らわしい商売をしていたんだ――』

『不義内通の疑いがかかっても仕方あるまい?』

 ゴトゴトゴト

兵士「……けっ」

兵士「天下りの腐れ貴族が」

兵士「なーにが新しい職を紹介してやる、だっつの」

兵士「どうせ斡旋料でもかすめてんだろが」

兵士「しかも有無をいわさず手鎖かけて、護送車に詰め込むとかよー」ジャラン ジャラン

 ガタンッ
 ゴトゴト

兵士「……王立魔道研究所だあ?」

兵士「取り調べを全部スッ飛ばして送られるってこたあ――」

兵士「人体実験の材料か、こりゃ」ハァー

兵士「短え人生だったな」ボー

 ガタガタゴト‥

 ゴオンゴオンッ

 カツーン カツーン‥

兵士「――研究所の地下に巨大通路とか、都市伝説かよ」キョロキョロ

『この場所については他言無用である』

兵士「へっ、その前に生きて出られる保証してから言えや」

『……賢明な判断を心がけよ』

兵士「はん」

 カツーン カツーン

兵士「しかも方角と距離からすると、神聖都市の中心点――」グルリ

兵士「大聖堂の真下に向かってんな」

『……過分な詮索は身を滅ぼすぞ?』

兵士「はっ。そりゃまた悪役くせえー脅し文句だな、おい」

『……』

 カツーン‥

兵士「へーへーなるほど」

兵士「あれだ。聖教会と、この国の王権が癒着して腐敗してるって噂の実証だわ、こりゃ」

兵士「お布施と税金の二重取りかあ? 業突くばりなこって」

『黙れ貴様ッ――聖教を愚弄するかッ!?』

兵士「はっ! おたくも魔道士にしちゃあ妙に抹香くせえと思ったんだよ!」

兵士「おい。仮にも神職なら持ってんだろ?」

兵士「女神からリースした天恵ってやつをよ」

兵士「ちっと施してくれよ、奇蹟の御業とやら」カツンッ

『さっさと歩けッ』

兵士「けっ」

『ここだ――入れ』

兵士「あー、はいはい。押すなっつうの」

 ギィイイイイー‥ バタン
 
 カツン カツン カツ‥

兵士「んだ、こりゃ。石像?」

兵士「ずいぶんリアルな造りじゃねえの」ジーッ

兵士「にしても手枷と足枷、と」

兵士「首輪の上から、さらに首枷? で、柱に磔で」

兵士「目隠しに猿轡――うわ、耳栓まで」

兵士「は。とんだSMマニアな芸術家もいたもんだぜ」ドンビキ

兵士「やべ。こっちの手鎖がかすむわ。負けたわ」ジャランッ

『……像ではない。石化の呪詛がかかっておるのだ』

兵士「はあ?」

 ピキ‥

 パシッ

兵士「あん? なんっかヒビ割れて……」

 パリパリパリッ

 バキンッ

『く……末端の司祭まで総動員して魔力を注いだというのに、半日ともたぬか……ッ』

兵士「うお。石化の状態異常の自力キャンセルかよ。初めて見るわ」

兵士「すんげえ恩寵持ちだな」


 ギシッ


 ギシッ ギシッ ギシッギシッギシッギシッ


 ギシッギシッギシッギシッギシギシギシギシギシギシッ


 ギッギッギッギッギッギッギッギッギッギッギッギッギッギッギ

 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

兵士「おいおい。暴れとるけど、いいのか? アレ」ユビサシ

『き、貴様の仕事は監視だッ』

『まっとうするまではこの部屋から出ること、ゆめ能わぬと思えッ――』アトズサリ

兵士「はあ?」

 ピシッ!!

『ひっ』

兵士「うわ。放射魔力つええなー」

兵士「こりゃあ魔族レベルっつか、それ以上じゃね? 威圧ハンパねぇ」

『な……貴様、なぜ平然としていられるッ?』

兵士「あ? すんげえ、さぶいぼ立ってっけど? ほれ」トリハダー

『っ…………ここに観測装置がある』

『この出力された数値をな、日に一度、扉の小窓から提出せよッ』ウキアシ

兵士「あのなあ? 両手つかえねえだろ、このままじゃ」ジャリンッ

『手鎖の鍵は、あとで小窓から入れてやろう……』ジリジリ

兵士「いやいやいや。メシとかトイレとか、どうすんのよ」ビシ

『貴様の食事は、その提出物と引き換えだ……小窓を介して与える』

兵士「なにその腐れシステム」

『よいか、くれぐれも枷を外すでないぞッ』

兵士「へー」ジー

『く……妙な気は起こすなッ』

『こ、この状態でも、こやつらは簡単に人を殺せるのだぞッ!?』

兵士「へー」ジー

 バシッ!!

『ひ……ッ』

 バタンッ ガチャガチャ
 チャリンッ バタバタバタッ

兵士「おーお。奴さん大慌てで逃げてきやがった」

兵士「え? 殺せるってマジで?」

兵士「石化が解けたつっても全身拘束されてんぞ?」

兵士「まんま手も足も出ねえじゃん。あ、上手いこと言った気ぃする」

 ギシッ

兵士「や、そこで肯定されても」

兵士「っつか、そんだけ固定されてんのに、よく顎とか動かせんなー」

兵士「てか、こやつらって言ってたか。なに、まだいんの?」

 ギッ

兵士「ふーん」

兵士「とりあえず自分の鎖どうにかすっか……えー、鍵、鍵っと」ジャリン

 チャリン カチャ

兵士「くっ」

 チャリンッ カチャカチャ

兵士「くっ」

兵士「難しいわ!! 外してけや!!」ジャリンッ

兵士「くそ……無駄に消耗した」テクビ サスリスリ

兵士「まー、なんとか取れたが」テサキ プランプラン

兵士「で。さっき顎で指されたのが、お隣の部屋っつか簡単に仕切ってあるだけ――の」カツンッ

兵士「こちら、と」ジー

 ゴオンゴオン‥

兵士「ふん?」

兵士「こっちの奴も柱に四肢拘束の上? さらに、ぶっとい管がドタマに刺さってんぞ、おい」カツン

兵士「あん?」ピタ

兵士「なんかやべえ感じの首輪は――あっちの奴とおそろいか」メソラシ

兵士「なにファッションよ、それ」

『……あい、おはよーございますう……?』ムニャムニャ

兵士「しっかし、これで生きてるっつうのがなー」

『んんー……? 知らない声ですうー』

兵士「おい。目隠し取るぞ?」バサ

 ボシュッ

兵士「あ」

 ジュワ
 ゴドンッ ゴロ‥

兵士「指とれた」

兵士「うお。目線だけで腐蝕化と石化の呪詛できんのかよ」ジーッ

兵士「これが魔眼ってやつか、初めて見たわ。初めて尽くしだわ」

『あらら、寝ぼけて、ついうっかりっ』

兵士「寝起き悪すぎんだろ、おい」

兵士「あー。さっきの司祭だか何だかの奴、戻って来ねえかな――」プランプラン

兵士「ま、来ても治癒しねえか」グッパー チョキデキナイ

兵士「短え自由だったぜ」ハァ

『どーもですっ、新人さんですねっ、よろしくですですう』ギシッ

兵士「あ、こりゃ丁寧にどうも。ところでトイレどこ?」

『ぶふうっ』

兵士「ん?」

『く、くふっ……くふひひひいっ』ヒーヒー

兵士「いやツボってるとこ悪ぃんだけど、うっかり聞き忘れちまったのよ」

『えへへっ、知りませんっ』

兵士「知らねえのかよ!」ズビシ

『生まれてこのかた使ったこともないですよっ』エヘン

兵士「や、んなこと自慢げにされてもな」

兵士「っつかトイレ使わないって、どんな田舎育ちよ……」

『実験室生まれの聖堂育ちですけどもっ?』

『ご飯たべないですからあっ、出るものも出ませんですうっ』

兵士「はあん……って待てよ。まさかそれ、あっちの奴も一緒?」チラッ

『ですですう』ギシ

兵士「うおい……やべえよ、そろそろ漏れそうなんだよ」ウロウロ

兵士「マジかよ、ねえよ、これはねえわ」ウロウロ カツカツ

兵士「……ふぅ」

兵士「危ねえ危ねえ。まさか扉の近くの通路脇にあったとはな」

兵士「ま、ほぼ穴つうか排水溝だったけどよ」カツン カツン

兵士「天下の神聖都市の名が泣くわー。今日び貧民窟でもまだマシな設備してんぞー、おい」カツッ

 ギシギシギシ

兵士「あん? っと忘れてたわ」

兵士「お前もいたな、元石像」クルリ

 ギイッ ギシッ

兵士「いや悪ぃ悪ぃ――って完全に聴き取れてんじゃねえかよ」

兵士「耳栓のレーゾンデートルとは何だったのか」カツン カツン

兵士「あ? これ、耳栓つうか――杭だな」

兵士「こっちもこっちで、なんで生きてんだよ……よいせっ」グッ

 ズルーリ‥

兵士「あ? もしかしてアレか? 恩寵か?」

兵士「スーパーレアな【物理傷害軽減】ってやつか」

 ギシッ

『いいえっ、ちょっと違いますっ、【物理傷害減殺】らしいですよっ?』

兵士「うへ、ダブルスーパーレアか。ちょっとどころじゃねえだろ」

兵士「しかも状態異常の自動キャンセル付き、っつうなー」

兵士「で、そっちが魔眼持ち?」

兵士「――恩寵の総合デパートか!」ビシ

『それだけじゃありませんよっ! 私は【状態異常無効】ですですうっ』

兵士「はあ? んなもん存在すんの?」

『えへへっ、なんとウルトラレアっ』エヘン

兵士「おいおい、人間が搭載できる範囲を超えてんぞ」ビシ

『さすがに人類では私だけだと思いますですよっ』

兵士「だろうな、そりゃ」

 ギシギシッ

兵士「あーあー。わーった。口のも取ってやるっつの」ゴソゴソ

兵士「って待てよ?」

兵士「こいつも食べる必要ないってこたあ……いつから塞がれてんだ?」

『あっ』

兵士「あっ?」クルリ

『あのですねっ、耳ふさいだほうがイイですよっ』

兵士「へ?」パッ

 ゴトンッ


『っア……アー』





『ハ……』









『―――― ッ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ッ ハ ア ッ !!』







 パ ン ッ !!!





兵士「っみみ、が……」グラリ

 ドサ‥




.

兵士「は」パチ

『あっ、だいじょーぶですうっ?』

兵士「う。そうか、気絶して……」ヨロリ

兵士「うあ」

 ガクンッ ベタ

兵士「おお、立ち上がれねえ」

『あれえっ? 自動回復、遅いんですねっ?』

兵士「いやいやいや! 遅いって以前に、ねえから!」ビシ

兵士「それ自体で充分レアな恩寵だからな!?」

『あらら、それは大変ですねっ』

兵士「そもそもだな――もし持ってたら、とっくにマトモに歩けとるわ!」ズビシ

『あっ、その義足、ファッションじゃなかったんですねっ?』

兵士「阿呆か! お洒落で片脚になって堪るか!」カツンッ

 ズーリズーリ

兵士「くそ」

 ゴロン

兵士「あ、耳から血ぃ出てんな」ダラー

『もしかして死んじゃいますう?』

兵士「この程度じゃ死なねえよ」

『そうですかっ』パァァ

兵士「嬉しそうだな」

『いっぱいお話できるの嬉しいですですっ』ニコニコ

『だってっ、みんな、ぜんぜんお話してくれないし、すぐに死んじゃうですうっ』

兵士「はん。で、そっちのは」

『アーアーアァー』

兵士「発声練習かよ」

『アアァーハッハハハ! 声出したの数年ぶりだったからNE! うっかり殺しちゃうとこだったYO!』

『うっふふふっ! ダメですよおっ? 私もやっちゃいましたけどもっ』

 ピシッ パシッ

兵士「は。お前ら、そろってうっかりしすぎだろ」ハァ

兵士「んのクソガキどもが」

『くっふふふっ』

『ッハハハハ!』

 ピシシッ
 バンッ パシッ

兵士「つうかな? ちったあ放射魔力を控えろや」

兵士「くそみてえに垂れ流しやがって」トリハダー

『アッハハハ! これでも抑えてるYO!』

兵士「マジか……」

『でも、この首輪のせいで制御できないのさ!』

兵士「糞教会め! ロクなことしやがらねえ!!」バンッ

『アハッハッハハッハハァ!!!! 笑えるっていいNE!!!! 自由だNE!!!!!!』

兵士「つかな? せめて、もーちっとボリューム下げろや」キーン

『……怒った? 怒ってる? それも致しかたNOTHING!』

兵士「別に」ゴロン

『……うふふっ』

『……アハハハッ』

兵士「は。気味わりいな、お前ら」

『おかしいですねっ』

『とってもおかしいYO!』

兵士「あん?」

『アナタは言わないんですかあ?』

兵士「はあ? 何をよ」

『うふふっ、それはもちろんっ』

『“助けてくれ”とか“許してくれ”とか、“早くここから出してくれ”とか、“地獄に落ちろ”――とかですよっ』

『YES!』

『他にはぁ、“どうして自分がこんな目に”とか“早く楽にしてくれ”とか、“死ね化け物”――とかも多いんだZE!』

兵士「あー」

兵士「なに、そういう様式美?」

『うふふふふっ』

『アッハハハハハ!』

『おもしろいヒトですうっ』

『楽しいNE!』

兵士「何もおかしかねえっつか、うるせえから静まりやがれ、ガキども」ムクリ

『ふ……くっ……ふふ』ギシギシ

『ア……ハ……ハハ』ギシギシ

兵士「なんだ素直じゃねえかよ。よし寝るか。確かさっき寝台がこっちに……」ハイズリズリ

兵士「…………シーツくらい洗濯しろや。血まみれのまま凝固してんじゃねえか」バサッ

兵士「……あ。肉まで」ベリットナ

次で完結まで一気に投下……できるといいなー
見直し時間かかるよう……

再開ー

兵士「……化けもんとの幽閉共同生活にも慣れた今日この頃」

兵士「しっかしまあ、阿呆なくらい厳重に全身くまなく拘束してあんな、こりゃ」ペシペシ

『アッハッハ! 10年以上かけて、ちょっとずつ増えてきたんだZE!』

『これでも最初のうちは動かせるとこもあったんだけどNE!』ギシギシ

兵士「はあん」

『ちなみに一気にやらないのは単に原材料が少ないからだってさ!』

兵士「へー」

兵士「……って、よく見りゃまさかのオール魔銀製だとぉ!?」マジッ

兵士「おいおい総額いくらだよ、やべえよ」ユビオリ ユビタリナイ

兵士「しかも、こりゃあ多分あらゆる耐性マックスまでガッチガチに祝福してあらあな」ゴンゴン

『YES! でなかったら、とっくに引きちぎってるYO!』

兵士「はん。さっすが化けもんは言うことが違うわ」ジー

兵士「魔道適性ねえからなー、物理実効値も低いからなー」ギギギー

兵士「は。見事に傷ひとつ付けられんわ」

兵士「って、やべ。貴重な指が欠けた」ボロッ

『OH! 自動回復を分けてあげたいYO!』

兵士「いらんわ。つうか――」

兵士「目隠しと猿轡と耳栓は、さすがに外せたけどよー」

兵士「確かこの辺に捨て……うわ」ガシ

兵士「こんなんまでオール魔銀かよ。ねえわ。マジねえわ」ジー

兵士「都民の血税、無駄にしすぎで笑えるわー」ポイッ ガキンッ

兵士「どっかに鍵穴とかねえの――って」

兵士「柱に溶接されとる、どころか……おいおい、柱まで魔銀って阿呆か!」ペタペタ

兵士「んなもんに金と魔力を注ぎ込むくらいなら貧乏人に施せや!」ゲシッ

兵士「やべ。貴重な足が欠けた」ボロ

『……WHY?』

兵士「あん?」

『YOU、もしかして……外そうとしてる?』

兵士「なんだ、全身拘束されたままがいいのか? Mか? ドMか? 被虐趣味か?」

『違うけど――ハ……アハハッ』

兵士「おい。また超音波攻撃すんなよ?」

『……ッ』

兵士「物理傷害抵抗、大して高くねえんだからよ」

兵士「今も片耳、聴こえねえしよー」ゴロリン

兵士「片脚でも歩けた頃がすでに懐かしいっつの」ハイズーリズーリ

『……で』

兵士「あん? なんか言ったか?」ゴロン

『ほんとに……怒ってないの?』

兵士「はっ。急にしおらしくなりやがって――悪いもんでも食ったか?」

『……何も食べてないの知ってるくせに』

兵士「別に食えなかねえんだろ?」

兵士「自動回復で餓死しねえっつうだけでよ」

兵士「腹は減るんじゃねえの」

『さぁ……そんな感覚もう忘れちゃった』

『最後に食べたの…………アハ、覚えてないや。10年以上前だし』

兵士「はん。バッドステータス回復すんだろ?」

兵士「記憶力の補正はないんかよ」ゴロリン

『……アッハッハ! ここに来る前から、ほとんど食べたことなかったっけ! 思い出せないわけだね!』

兵士「お? なんだったらゲロ不味いの分けてやるぜ?」ムクリ

兵士「これがマジ吐ける味でよー。ある意味、感動すんぜ」ベシベシ

『いらないよ!』

兵士「阿呆か。ガキが遠慮すんな」

『NO! 大して年、違わないよね!』

兵士「いいや、こっちのが上だ。畏まって敬え」

『――そうじゃなくてさ』

『耳のとか、元に戻していいから……』

兵士「はあ?」

兵士「なんだ。やっぱりMか、ドMか、ド変態か」

兵士「――ありゃあ遠隔で精神汚染する対象固定の魔道具だろうが」

兵士「ブッ刺してなくても多少は効果あんだろ?」

兵士「お前、たまに泣いてるし」

『なっ――』カァア

兵士「やーい泣き虫やーい」

『ううううううっ』ギシギシギシ

兵士「はん。余計な気ぃ回すんじゃねえよ」

『だって……量、減らされてるじゃん』

兵士「最初からあんなもんだ」

『受け渡しのときに脅されてるよね!』

『元通りに拘束すれば満足な食事を与えるってさ!』

兵士「知るか」

『……』

兵士「どうせ死ぬなら好きなようにするわ」

『……し』

兵士「どのみち生きちゃ出されねえだろうしなー、こっからはよ」ゴロリン

『……死ぬ、の?』

兵士「そらまあ、自動回復の恩寵とかねえし」

兵士「外の奴らも治癒しねえだろうし」ゴロン

兵士「手先も欠けたし、そろそろ食うのも面倒臭えし」ゴロンゴロン

兵士「あの観測も止めっかな――」ゴロゴロロロ

『………………』

兵士「這うより転がって移動したほうが早えという新発見」ゴロンゴロン ゴロリン

『……どーしてですう』

兵士「おう質問が好きだな。今度はこっちかよ」ピタ

『だってっ……わ、私たちは』

兵士「――加工処理が失敗して自我が残っちまった魔道具」

『っ……』

兵士「聖教会と王家の共同開発品、失敗作。ただしエネルギー源としては利用価値あり、と」

兵士「あっちが制御不能な狂った大量破壊兵器、で。利用価値すらない産業廃棄物、な」

兵士「外の奴ら談」

兵士「ネチネチうるせえんだよなあ」

兵士「メシだけ寄越して、さっさと帰れっつの」

『………………』

兵士「いやマジどうしてくれんの」

兵士「お前が寝ぼけるたびに、いろんなとこが欠けてくわ」ボロボロ

兵士「もう末端が原形とどめてねえわ」ドロドロ

『うふ、ふ……だったら目隠しを戻せばイイんですう。遮断の魔法がかかってるって、知ってますよねえ?』

兵士「だってありゃアレだろ」

兵士「もれなく物理傷害の継続ダメージ効果の呪詛も付いてくんだろ」

『そんなのっ、アナタと違って自動回復するんですからあっ』ギシッ

兵士「阿呆か。お前、頭に管ブッ刺されてんの回復し続けてんじゃねえか」

 ゴオンゴオン‥

兵士「つかダメージ感じねえわけじゃねえだろ。寝ながら泣いてる癖して、マジ阿呆か」

兵士「あー。んなもん観測しとるのも阿呆だな。よし、今日から止めだ」

『だ、ダメですう……だって』

『だってっ、アナタは食べなかったら……っ』

兵士「知るか」

『なんで……平気なんですかあ?』

『アナタは――【化け物】じゃないのに』

兵士「あー。これ単に麻痺ってるだけだから」

『えっ?』

兵士「肉体の痛苦のみをブロックする、っつう呪詛が全身にかかってんのよ」

兵士「感じねえだけで治りゃしねえから、ご覧の有様だけどな」グチャグチャ

兵士「ま、こうなってみると祝福や恩寵と変わんねえわ」

兵士「なんにしろな」

兵士「それがなけりゃあ、今までに来た奴と、まったく同じ反応してたと思うぜ?」

兵士「だってお前ら、マジに化けもんだし。ほれ、常にさぶいぼ状態よ?」トリハダー

『……うふふ』

『アハハッ……』

兵士「だからま、近いうち死ぬけど気にすんなよ。どうせすぐ補充が来んだろ」

『……』

『……』

兵士「お前らはなんだ、あと何十年後だ?」

兵士「ちまちま生命力、削られて」

兵士「継続ダメージ量に拮抗する自動回復の速度がほぼ相殺~の」

兵士「なんたらかんたら観測結果より、ってな」

兵士「いやあ先に楽になっちゃって悪ぃなー、マジで」

『……そうだNE! ずるいよ、そんなの!』

『えへへっ、そうですよっ……どうせなら…………いっしょがイイですう……』

兵士「……」

兵士(いろいろ外した結果、継続ダメージ量と速度は鈍ってる、が)チラッ

兵士(それでも自動回復をコンマ上回ってやがる……ジリ貧なんだよなあ)

兵士(どっちを選ぶべきなんだかな)

兵士(拘束を元通りにして、早く楽にしてやったほうが……もしかして)

兵士「……」

兵士(阿呆か。どうせ後任の奴と入れ替わるときに戻されるわ)

兵士(だったら、ま、このままでいいだろ)

兵士(どうせ短え人生なら……最後にガキどもに費やすのも、まあ、悪かねえわ)

『――ところでさ、どうしてそんな呪詛かけられたんだYO!』

『あっ、それ私も気になりますですよっ』

『だって感覚ぜんぶ、とかなら、わかりますけどっ?』

『痛苦だけえらんでブロック、しかも全身なんてっ』

『せんさいで高レベルでレアな呪詛ですよっ』

『神職でいったら司教クラス以上……? ううん、それでも難しいハズっ』

兵士「あー」

兵士「かけたの魔族だから」

兵士「そっち系が得意な種の奴だったから、わりと軽くな」

『WHAT? 魔族って、この聖王国内には存在できないよNE?』

『ですよねっ? 魔族は入ってこれないですよねっ?』

『だって国全体が【聖域】になってるんですしっ』

兵士「や、この聖王国な」

兵士「今はその【聖域】のお蔭様で、外部からの魔族や魔道を撥ねる、ってのが全土で機能してよ」

兵士「んで女神の加護が篤いだのって、周辺国から聖教徒がお参りに来るまでになってっけどよ」

兵士「昔は王都――この神聖都市だけを、ショボい【障壁】で囲ってる程度だったからな」

『ですねっ』

『だって強化と拡大できたのってっ、私から根こそぎ法力を吸いとってるからですもん』

兵士「あー。その頭に刺さってる管って、そういうのか」ジー

 ゴオンゴオン‥

『うふふっ』

『なにしろ幼児だったときから持ってかれてますからあ、だいぶ余ってると思いますですよっ』

『もう【聖域】を稼動させるだけならですねっ? うーんと、えーっと……』

『はいっ、試算によると、ストック分だけで数年は現状維持できますですう』

兵士「マジかよ!」

兵士「んなダブついてんなら貧乏人に施せや、マジで」

『……これが外れれば、アナタに天恵を与えて癒せるのに』

兵士「……は。いらねえよ」

兵士「あ――で、故郷の村は辺境だったんでな」

兵士「ま、そこらへんを普通に魔族がうろちょろしてたわけよ」

『へぇー、そうなんだぁ。取って食われたりしないの?』

兵士「んなお伽噺じゃあるまいし」

兵士「魔族にも一応、法律みてえなもんはあるからな」

兵士「無断で食うとかは野蛮だぜ」

『ん?』

兵士「ん?」

『あのあのっ、魔族ってどんなカンジですかあっ?』

兵士「ああ。化けもんだからな、お前ら気が合うんじゃね?』

『そっかぁ。一度、会ってみたいNE!』

『魔界に生まれたかったですう』

兵士「……」

兵士「で、話を戻すとだな」

兵士「ガキんころに近隣一帯を襲った大規模災害があってなー」

兵士「そこいらの村は残らず燃えかすになっちまったのよ」

兵士「んで運よくひとり生き延びた、っつうても、親も財産も土地も自活能力も、なんもねえ」

兵士「しゃーねえからよ、魔族に体を売って暮らしてたわけよ」

『えっ』

『えっ』

兵士「ま、唯一持ってた恩寵が魅了系だったんでな」

兵士「ほら、魔族ってなあ基本、人間よりか精神値が高えだろ?」

兵士「だから、そっち系って普通は通用しねえんだけどよ」

兵士「なんか条件次第でバリ貫通しちまうっつう、ダブルスーパーレアでよ」

兵士「そりゃもうすげえ売れっ子になってなー」

兵士「痛いだの死ぬだの喚いてたら、客にうるせえって呪詛かけられたって話」

兵士「ラッキーだったわ」ウンウン

『……え、うん? え? ええぇ!?』

『こ、こんなとき、どんな顔したらイイか、わかんないですう』

兵士「笑えばいんじゃね?」

『……う、うふふっ?』

『アハ……ハ』

兵士「笑えよ」

休憩

ふむ

再開ー

>>131
むふ

兵士「……」

『HEY! YOU!』

兵士「……」

『起きてくださいなっ』

兵士「……あ?」ボー

『アッハッハ! ついに永眠したかと思っちゃったYO!』

兵士「あー……」

『うふふっ、おねぼすけさんですうっ』

兵士「……ああ」ゴロン

兵士(マトモに食ってねえし、実際もう長くねえだろうが、なぁ)

兵士(あー、くそ、やべえマジやっべえ)

兵士(ちょっと寝起きが悪かっただけでよ、なんで、そんな……そろって泣きそうなツラで笑ってんだよ)

兵士(化けもんが……普通に会話できたってだけで阿呆みたいに懐きやがって)

兵士(どうせくたばるなら、せめて――こいつらから、見えないところで)

『上で、おもしろい話してるんだYO!』

『えへへっ、なんとですねっ』

『王国軍兵も、聖教神兵もっ、魔王一体に手も足も出ず食材にされちゃったらしいですうっ』

『各国から女神の加護はどうしたって、つるし上げくらってるらしいYO!』

『うふふっ、これで大聖堂の威光もかたなしですねっ』

『アッハッハ!』

『イニシアチブがどうとかさ、欲かいて出兵なんてするからだNE!』

兵士「相変わらず地獄耳だな、お前ら……」

兵士「なんだ、内燃魔力の純粋な肉体強化だけだろ?」

兵士「それで地上の音が拾えるとか……ねえよ」

『やればできる! 基本だZE!』

兵士「ねえよ」

兵士「……あ」

『どーしたんですかあっ』

兵士「あー」

『なんだYO!』

兵士「――魔王か」

兵士「アレか、全魔界3分クッキングトーナメントでブッチ切り優勝したっつう」

『アッハッハ! 魔族の基準って、よく分かんないよNE!』

『ですねですねっ』

『どーして料理で頂点に立つだけでっ、最高権力者になるんでしょうねっ?』

兵士「さあな」

兵士「んで、食肉用に人間を大量に卸させろだのなんだの要求してる、アレだ」

『うふふっ、人肉って美味しいんでしょうかっ?』

兵士「そりゃモノによるわ」

『なんで詳しいんだYO!』

兵士「ん?」

『ん?』

兵士「いや。んなことより、すっかり忘れてたわ」ムクリ

兵士「阿呆か……あー」


兵士「お前らなあ――ちっと魔王を倒しに、ピクニック行こうぜ」

『……アッハッハ! 藪からスティックだね!?』

『うふふっ、寝耳に水ですうっ』

兵士「むしろ瓢箪から駒だ。じゃなくてだなー」

兵士「アレだ、お前」ビシ

『はあいっ?』

兵士「魔眼だろ? 【ステータス鑑定眼】は入ってねえのかよ」

『スペック上では搭載してますけどっ、今は行使できないですよっ?』

『スキャンが安定しないってゆうかっ』

兵士「あん?」

『この首輪ですねっ』

『継続ダメージ効果だけじゃなくてっ、魔力の出力制御をジャミングする権能もありますですよっ?』

『YES! でなきゃ、こんな拘束、肉体強化だけでBREAKできちゃうYO!』

『はいなっ! これがなければ魔眼だってっ、もっと制御……っできるんですうっ』

兵士「あー。そのなんか見てらんねえ感じの首輪な」チラッ

兵士「ペアルックなファッションじゃなかったんだな?」

『――うふふっ、そうですよっ。オシャレで首輪になってたまるかっ、ですよっ?』

『アッハッハ! なにファッションだYO!』

兵士「パねえなー」

『えへへっ』

『私って、この世のありとあらゆる魔道を頭に植えつけられてますけどっ』

『それでも知らない原理で施行されてますですよっ?』

『しかもさ、前に聴力強化で聞き取ったんだけどNE!』

『この首輪、大司教の協力で偶然開発できたやつだから、壊す方法がないんだってさ!』

『でもでもっ、存在値に関連付けされてますからあっ、拘束対象が死亡すれば自動消滅しますですよっ』

兵士「はあん」

『アハハッ! そもそもこの首輪って実体参照されてないんだZE!』

兵士「あん?」

『うふふっ……』

『ここにあるようにみえてもあるわけじゃないけどないわけでもなくてあるんですけどないんですう』

『おっといけねぇ!』

『YOU! それ以上は精神汚染されちゃうYO!』

兵士「はあ?」

『アッハッハ! 少なくとも物理じゃ破壊できないってこと!』

『たぶん状態異常の呪詛でもムリですねっ』

『首輪自体が呪いのかたまりみたいなのですからあ、それに負けちゃいますですうっ』

兵士「お前ら意味わからんわ!」ビシイ

兵士「ま、いいわ。ちっと外の奴らと交渉してきてやんよ」ズーリズーリ

兵士「なんせ泣く子も黙る神聖都市の聖教会のお膝下だしな」ピタ

兵士「ダブルスーパーレアな【ステータス鑑定眼】くらい持ってる奴ぁいんだろ」ゴロンゴロン

兵士「つうわけで、だ」

兵士「どうだ? 久しぶりの外は」

兵士「なんだ、そろって10年以上は、あそこにいたんだろ?」

兵士「あー」

兵士「そういやお前ら名前ないんだっけか」

兵士「不便だから適当に付けてやらあ――【勇者】と【賢者】、これでどーよ」

「……勇者、って、あの勇者な勇者?」

「……賢者、って、お伽噺のですかあっ?」

兵士「魔王を倒すんだから、ま、そんなもんだろ」

「ってYOU! そもそもそっちが名乗ってないYO!」

兵士「あ? まあ【兵士】でいんじゃね。うん、決定」

「うふふっ、兵士さんですねっ」

「アッハッハ! 兵士ちゃんだ!」

兵士「ちゃん……ちゃんって、おい。年上だぞ、奉って尊べや」

兵士「ま、いいわ」ハァ

兵士「おら! いつまで突っ立ってんだ?」

兵士「さっさと行くぞ――勇者に賢者」

「アハハ、勇者かぁ」ニコニコ

「うふふ、賢者なんですねっ」ニコニコ

勇者「――いいんじゃない賢者ちゃん!」ビシ

賢者「――はあいっ! イイと思います勇者サマっ」ビシ

兵士「けっ、楽しそうで何よりだな」

兵士「こちとら今にも死にそうだぜ……いや、全身治癒はされたけどよ」ゲッソリ

兵士「両脚とか久しぶりすぎて戸惑うわ、とと」ガクッ

兵士「はは……歩き方も忘れてるとか、我ながらやべえ」

勇者「あ、そうだよ」クルリ

賢者「ええ、そうですう」クルリ

勇者「YOU、なんで首輪してんの? それも、ふたつも」

賢者「でもって、どーして私たちのは、なくなってるんですう?」

兵士「いや、見てたろ経緯」

勇者「そうじゃなくてさぁ」

賢者「こうなること、知ってたんですね?」

兵士「つか、それを前提に交渉したかんな」

兵士「あー……【登録座標置換】つってたか、大司教の野郎がかけたやつ」

兵士「あらかじめ登録した対象の座標を任意に入れ換え可能、とかなんとか」

兵士「んで、今度、国の大聖堂に一歩でも入るとな?」

兵士「大司教の魔力に反応して、また首輪がお前らに戻るっつう設定だとよ。自動で」

勇者「……」

賢者「……」

兵士「いいよな?」ニコ

勇者「ッ」ビクッ

賢者「っ」ビクッ

勇者「うわぁー、うわぁー」ドキドキ

賢者「わかってたけど、ききますですう」ドキドキ

兵士「んー」

兵士「自分じゃ分かんねんだよなあ、この効果」

兵士「ま、持続効果1年って観測されてっからよー」

兵士「お前らの異常スペックだったら、余裕で魔界まで行って帰ってこれんだろ」

勇者「どどどうしよう賢者ちゃん! これがLOVEってやつかな!?」ワタワタ

賢者「勇者サマっ、ニコポっていうらしいですよっ?」パタパタ

兵士「聞けや」ビシ

勇者「だって、いくらなんでも反則だYO!」

賢者「そうですよっ、まさか――」

賢者「【自分の肉を食べた対象を絶対魅了】する恩寵だなんてっ」

兵士「おう。美味かったろ」ゲンナリ

勇者「……!!」アワワワ

賢者「……っ」バタバタバタ

兵士「ん? なんで魔族の奴らといい、お前らといい……ワケ分からん反応すんだ?」

勇者「……」カァァ

賢者「……」ポッ

兵士「しかも彼我のレベル差が大きい相手ほど効果大、とか、マジふざけてやがるわ」

兵士「つまり普通の人間にゃ大して利かねえっつう汎用性のなさがなー」

兵士「うあー」

兵士「マジで女神、死ねよ」ボソ

勇者「兵士ちゃんが望むなら!」バッ

賢者「神だって殺してみせますよっ」ババッ

兵士「いらねえ」

兵士「はー」

兵士「ま、お前らにこんだけ利くなら魔王にも利くだろーよ」

兵士「なんでも奴ぁ、3分クッキング対決に絶対の自信があってな?」

兵士「どんな種族が相手でも正々堂々、単体で勝負を受けるっつう話だからよ」

兵士「お前らの首輪、兼、食材として同行するわ」

兵士「ま、その功罪を鑑みて、つうことで」

兵士「無事に任務さえ終えりゃあよ、晴れて無罪放免、で、お前らの子守からも解放」

兵士「っつう条件を取り付けたわけよ」

兵士「あー。ダリぃ、首いてえ、肩こるー」グデン

勇者「……」ジー

賢者「……」ジー

勇者「賢者ちゃん!」クルリッ

賢者「はあいっ」

兵士(……つうか、この首輪マジ半端ねえわー、じわじわ削られとるわー)フラッ

兵士(こいつらだから10年以上も耐えたっつうことかよ……)

兵士(ちっと見通しが甘かったなー)

兵士(まさかマトモに歩けやしねえとか)グラングラン

兵士(つうか、付けられて分かったが……)

兵士(こりゃ生命値じゃなくて、存在値を削ってんな)

兵士(死ぬんじゃなくて、この世に存在した痕跡ごとデリートされてく感じがなー、ゴリゴリとなー)

兵士(そら、こいつらの規格外の自動回復はもちろん、治癒魔法でも何ともならんわなー……)

兵士(もう幼少の分まで削れっちまったし)

兵士(つうても、こちとら天涯孤独の身の上だから、それ自体は構わねえが)

兵士(……)チラッ

兵士(聖教会おかかえの【ステータス鑑定眼】でも、さすがに存在値となると観測できてなかったからな)


兵士(助かるわー)

勇者「魔王の好みを徹底リサーチ……!」ヒソヒソ

勇者「ぜったい兵士ちゃんを使用しないで勝つんだZE!」

賢者「はいなっ……」ヒソヒソ

賢者「私の頭に埋め込まれたあらゆる知識っ、さっそく複製転写しますですよっ」グッ


兵士(……ま、最初っから存在しなかったことになるわけだよな)


兵士(歴史からも、記憶からも)


兵士(こいつらと出会ったことも、話した内容も全部……消える)


兵士(ならよ――こいつらも気にしねえで、この先、生きてけるだろ?)


兵士(……こいつらでも、すぐには戻って来れねえ距離まで離れたら、隠し持ったアイテムで王国に転移)


兵士(そのまま速やかにくたばれば、首輪は消滅。ふたりは自由)


兵士(この安い命ひとつで買えるなら、充分にお釣りがくるわー)

兵士「で――今にいたる。回想終わり、っと」

兵士「魔王とも存外に気が合ったようだしな? 化けもんの群れにいる方が馴染んでんぜ?」

兵士「つうわけで、お前らはこのまま魔界に残れ。以上」

賢者「……うふふ、おっかしいですねー勇者サマ? いつ私たちが」

勇者「アハハ、そうだよね!」

勇者「兵士ちゃんを犠牲にしたいなんて言ったんだYO!」

兵士「何もおかしかねえよ」

兵士「つか、お前ら分かってんのか?」

兵士「こんな好機、二度とねえんだぞ」

兵士「王国に戻ったら前よか厳重にされて、数十年かけてじわじわ殺されんだぞ?」

勇者「アッハッハ! YOU! いいこと教えてあげよっか!」

兵士「んだよ」

勇者「兵士ちゃんの故郷の村を滅ぼしたの、勇者だよ?」

兵士「……」

勇者「大規模災害ってことにされたんだNE! アハハッ!」

勇者「うっかり魔力暴発させちゃって収監されたんだYO!」

勇者「ほら、仇なんだZE!」

勇者「だから」

兵士「知ってた」

勇者「ッ」

兵士「阿呆か、お前」

兵士「その頃は、まだ物心もつかんようなガキだろうが」

兵士「前にお前が受けてた精神汚染って、そんときの記憶を無理やり蘇らすやつだろ」

兵士「いくら弱体化してるからって、ダメージ喰らい過ぎてたしな?」

勇者「……っそんなの」

兵士「あー、つうか、ぶっちゃけな?」

兵士「どっちにしろ、あと数分しかねえんだわ、完全デリートされるまで」

勇者「は……!?」

賢者「ウソっ、だってまだっ」

兵士「いや、この首輪な? 同一座標に重ねがけで2個つけてんじゃん?」

兵士「したらダメージ効果が加算じゃなくて乗算、いやもう鼠算になってんのな」

兵士「存在値は本人以外、魔眼でも鑑定できねえつっても、こりゃあ間抜けだわー」

兵士「ま、どうせすぐ記憶から消えるからよ――――おい、泣くなよ」

勇者「ッ……っざけんなッ!」

賢者「バカじゃないですかっ!? な、なんでもっと早くっ」

兵士「もう魅了は解けてんだろ?」

勇者「っ、だから――」

賢者「そんなの……関係ないですうっ」

勇者「だってっ」

賢者「なんでですかあっ」

勇者「勇者たちは【化け物】なんだよ! だから……っ」

賢者「ちゃんとした【人間】のアナタが身代わりになる必要なんて……ないんですうっ……」

兵士「――お前らなあ」

兵士「なんでここまで悪態吐かれて懐くんだ?」

兵士「頭おかしいんじゃねえの」ハァ

兵士「……てめえの命を優先しろや」ビシ

勇者「だ、だからその言葉は!」ビシ

賢者「そっくりそのまま返しますですよっ?」ビシ

兵士「しゃーねえだろ、お前らが泣くツラなんかよ――」

兵士「あー……さくっと転移してりゃ見ずに済んだのになあ」

兵士「阿呆だわ。こんなギリギリまで同行するんじゃなかった」

兵士「存在値がざくざく削れてってよー」

兵士「いつお前らに、知らねえ奴を見るような目を向けられるのか、なんて……ビビりまくってた癖によ」

兵士「……帰る隙なんて、いくらでもあったのに」

勇者「っ賢者ちゃんッ」バッ

勇者「【登録座標置換】を使って、もう一度、首輪を入れ換え――」

賢者「もうなんども試したですっ」

賢者「でもっ……使用権限がロックされた4次元魔道は……同一座標に重ねがけ、できな……」

勇者「ま、魔道で聖王国に跳ぶのはッ?」

賢者「っ……あらかじめ着地点を設定してないと、大幅なズレが生じるです……っ」

賢者「もし魔道痕が【聖域】にかすりでもしたら……下手すると異界に撥ねられ……ですう……」エグ

勇者「い、今からでも走って戻るッ」

兵士「もう諦めろよ」

勇者「NO! あきらめたら人生終了だYO!」

賢者「兵士さんっ、お料理が……お料理がしたいですっ」

兵士「お前らステータス混乱になってねえか?」

魔王「何を騒いでおるのだ」ヌゥ

淫魔「あはン♪ お城の前で修羅場るなんて、ヤるぅ~」クネッ

兵士「また面倒臭えことに」ハァ

魔王「む? そこな人間――」ギロッ

兵士「あん?」

魔王「よくよく見れば、珍しいものを召喚しておるな?」マジー

兵士「はあ?」

淫魔「やン。あなた、召喚術なんて発動できたのぉ?」

淫魔「でも、そんな魔力なんてカンジないわねぇン?」

魔王「フム? 見せてみい」グイッ

兵士「ぎゃす」ゴキ

勇者「兵士ちゃんッ!?」

賢者「なにするんですかあっ」

兵士「ぐげ」ブラーン

淫魔「いヤん! 魔王ちゃんてば! 人間はか弱いのよぉン?」

魔王「ム。そうか?」パッ

兵士「うご」ドサッ

賢者「治癒しますですよっ」

 パァァア

兵士「なんなんだ……」グテ

魔王「ヌウ。いかなる異界の食材をも網羅したと思っていたが――人間よ、それを譲ってはくれぬか」

兵士「あ?」

兵士「……あ」

兵士「あー、なに」

兵士「バッドステータス起こさずに取れるってんなら、喜んで進呈すっけど?」

魔王「そうか! ククッ、どのような味がするものか」ジュルリ

勇者「!――こ、この首輪って……そうかッ、大司教が偶然召喚した異界生物が組み込まれて!?」

賢者「で、でも同一座標への重ねがけは無効ではじかれるですっ」

魔王「フハハハハッ、この魔王を舐めるでない!」バサッ

魔王「召喚術はな――我の最も得意とする魔術よ」グイッ

兵士「ぐげ」ブラーン

淫魔「魔王ちゃんたら……」ハァー

魔王「魔力――同期――刻印しての――産地【強制送還】ッ!」

 シュゴォオオオ‥

魔王「判定よしッ!」

魔王「続けて位相探知――刻印検出――いざ我が元に出でよ再召喚ッ!!!」ブンッ

 パァァァッ

淫魔「あンっ! 判定成功ねぇン? あハ、さっすが魔王ちゃん♪」

兵士「うご」ドサッ

勇者「兵士ちゃんッ」ユサユサッ

賢者「しっかりですうっ」ユサユサッ

兵士「死ぬ死ぬマジで死ぬ今」ガックンガクン

勇者「おっといけねぇ!」パッ

兵士「あああ頭がシェイク……」グラグラ

賢者「治癒しますですよっ」

 パァアアアッ

魔王「クク。どう調理してくれようか」ホクホク

魔王「礼を言うぞ、人間!」

兵士「あー、こちらこそ?」

兵士「おっ、久しぶりに首が軽いぜ」ペタペタ

魔王「――さっそく取りかかるとしよう!」ダダ゙ッ

淫魔「あぁン、せっかくのデートがぁ……待ってぇン! 魔王ちゃぁんっ」タタタッ


勇者「……」フルフルッ

賢者「……」プルプルッ

兵士「……ま、結果オーライ?」

勇者「兵士ちゃんッ」ギュッ

賢者「兵士さんっ」ギュッ

兵士「ぐえ」

勇者「よかった! よかったYO!」ギュウギュウ

賢者「えへへっ、そーですねっ」ギューッ

兵士「死ぬ死ぬマジで死ぬギブギブロープなう」タップタップ

兵士「あ? そういや結構ギリギリだったのに記憶、消えてねえのな」プハ

賢者「……精神値が高いとですねえ、記憶を高次ストレージにマイデータ保存できますからあっ」

勇者「同期してダウンロードもできるしNE!」

勇者「だから、たとえ完全にこの世から消えてても、思い出は復元できるんだYO!」

兵士「…………………」

兵士「け、結果オーライ?」ダラダラ

勇者「……」ジトー

賢者「……」ジトー

勇者「アッハッハ!」

勇者「ねんがんの調理道具とスタジオをてにいれたZE☆」バチコン

賢者「うふふっ」

賢者「これでっ、よーやく本腰を入れて調理できるんですねっ」ニコッ

兵士「帰りてえ……」

兵士「いや、帰る場所ここだけどよ」ガックリ

勇者「そんなこんなでぇ~? お集まりの魔族の皆さんッ」クワッ

勇者「このたび魔王城にて食客になりましたぁ! わたくし調理担当の勇者! と!」

賢者「はあいっ! アシスタントの賢者、とっ――」

賢者「こちら食べるヒト、兵士さんっ」サッ

兵士「食わねえよ!?」

賢者「ではではっ、今ここに堂々の開幕ですうっ」つグイッ [横断幕]シュルルルルッ――パァン!


勇者「3分間クッキング!」


 ワーワーパチパチパチパチ!!


おしまーい。








途中でレスくれた人、ありがとうございました!

>>11にもありますが、あらためて、このスレは【転載禁止】です。
でも今後どっかよそで編集するかもしれないから、一応ここだけトリ付けてみる。

独自設定をたくさん入れちゃったので、何かわからないとこがあったら聞いてください。

>>160
ありがとー

乙ー

>>162
ありーがとー


うーん、設定ちゃんと通じてたっぽいかな?

最初はノリについて行け無かったけど、途中から慣れて面白く読めました!ありがとー乙!

スレが落ち切るまで、設定の補完も兼ねて小ネタ追加したりしなかったり

>>168
一応ラストから最初に戻ると、勇者賢者が単にはしゃいでただけって分かるかなって……
読み辛いノリですんませんっしたぁ!
でも最後までお付き合いいただいて嬉しい、ありがとー!



小ネタ

勇者。

.

兵士「……」スピー

 キィィー‥バタン

 ヒタヒタヒタ

 ジイィー

兵士「あ……?」パチ

勇者「あ」

兵士「あ?」

勇者「あ――」

勇者「ねぇ兵士ちゃん、一緒に寝ていい?」

兵士「あー?……ああ」コクリ

勇者「アハ、やったぁ」

 モグリモグリ

兵士「大人しくしてろよ」

勇者「……。うん」

兵士「今の間はなんだ」

兵士「……」スピー

勇者「……」

兵士「……」スピー

勇者「……いい匂い」ボソ

兵士「食うなよ?」

勇者「!」

勇者「ア……ハハ! やだなぁ、食べないYO!」アセッ

兵士「寝ろ」

勇者「うん」

兵士「……」スピー

勇者「……」

 クンクン

勇者「……」

勇者「ちょっとだけなら……」モソ

兵士「寝ろ」



小ネタ

賢者。

.

兵士「……」スピー

 キィィー‥パタム

 ピタピタピタ

 ジィイー

兵士「……あ?」パチ

賢者「あっ」

兵士「……あー」

賢者「あ、あのですねっ、これはそのっ」パタパタ

兵士「寝るか?」

賢者「いっしょに……えっ」

賢者「いいんですかあっ?」パァ

兵士「あー。入れ入れ」バサ

賢者「わあいっ」

 モグリモグリ

賢者「えへへえ」ニッコニコー

兵士「大人しくしてろよ」

賢者「……。はあいっ」

兵士「だからよ、なんだその間は」

賢者「はっ。まさか――」バッ

勇者「……」プイッ

賢者「ぬ、ぬけがけ禁止ですうっ」パタパタ

勇者「で、でも、お互い様だよNE!」

兵士「るせえ。寝ろ」

「「はーい」」

兵士「……」スピー

賢者「……イイにおいですう」スンスン

勇者「だめだよ賢者ちゃん」ボソ

賢者「わかってますですよー」ボソ

勇者「……」

賢者「……」



小ネタ

反省だけなら化け物でもできる。

.

勇者「BUT、ちょっと端っこを舐めるくらいなら?」ヒソ

賢者「ちょこっと先っぽをかじかじするくらいならっ?」ヒソ

兵士「――出てけ、ガキども」

 バタン!!

勇者「……失敗しちゃったYO」スタスタ

賢者「反省しきりですう」テクテク

勇者「やっぱ手順を踏まないといけないよNE」

賢者「清く正しい交際をしなきゃですですう」

勇者「――そうさ、そのためには!?」バッ

賢者「お料理を食べてもらわなきゃですねっ?」ババッ

勇者「なんせ異界のデータによれば? 恋人には手料理をふるまうものらしいからNE☆」

賢者「ですですっ。毎朝“お味噌汁”をつくるのが伴侶の条件らしいですっ」コクコク

勇者「YES! いつか来たるその日のために!」ビシイ

賢者「はいなっ、腕をみがいて精進しましょうですっ」グッ


兵士「……豪華寝台……最高……」スピー

給餌=求愛という認識のふたりは兵士が保存食とか食べるたびにNTR気分、という話だったとさ。

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