乱馬「かぶき町?」 (795)

・乱馬×銀魂のクロスSSです

・書き溜めはありますが長いので何日かにわけて投稿したいと思います

・あまりストーリーに絡みませんがオリジナルキャラが出てきます

・それでも良かったら読んでいってください

よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437480932

天道家居間。

時刻は夕暮れ時。茜色の光が差し込む天道家の居間には、家主である天道早雲と、山田と名乗る燕尾服姿の老人が向かい合い座っていた。

テーブルにはまだ口のつけられていない、湯気の立つ湯呑が二つ。

早雲「して、早速ですが我々に退治を依頼したい妖怪とは?」

無差別格闘流の看板を掲げる天道家には時たま、このような妖怪退治の依頼を持ち込む客人が訪れる。山田と名乗る老人もその一人であった。

山田「はあ、そのことなのですが、まずはこれをご覧ください」

山田はそう言うと、背負っていた風呂敷から一枚の、別段変わったところのない手鏡を取り出し机に置いた。

早雲「この手鏡が何か?」

山田「実はこの何の変哲も無い手鏡、名前を『転生鏡』と言いまして。こうしているとただの手鏡なのですが、ある条件をきっかけに、この鏡に宿る邪悪な妖   怪が現れまして、悪さをするというので困っているのです」

早雲「邪悪な妖怪が悪さ、ですか……」

邪悪な妖怪という言葉に早雲の頭には、自身のすちゃらかな師匠が暴れまわる様が思い浮かび、顔を引きつらせながら山田の言葉を復唱するのであった。

早雲「で、どんな悪さを働く妖怪なのですか?それと、そいつが姿を現し、暴れまわる条件というのはなんなんですかな?」

山田「それなんですがね……」

山田はバツが悪そうに下を向き、湯呑に口を付け、もう一度口を開く。

山田「その条件についてはまったくわかっとらんのですよ。ただ、こいつは『神隠し』を起こすと言われてまして……」

その言葉に困った唸り声を上げ、蓄えた髭を撫でながら言葉を続ける早雲。

早雲「うーん、その条件が分からないと退治は難しいですな。そもそも、そんな危ない手鏡なぞ使わずに質屋に売り飛ばすか、押入か蔵の中にでも放り込んで無視をするというのはいかがですかな?」

依頼人の話に多大な面倒を感じ始め、多少投げやりに返すと、山田はぼそぼそとこの手鏡にまつわるエピソードを語った。

山田「……『かくかくしかじか』というわけなのです」

早雲「ほぉー、そんな謂れのある代物だったとは驚きましたなぁ」

山田はとある温泉街で、何代と続く由緒正しき旅館の番頭をやっているという。その伝統ある旅館で、代々の女将に伝わっているのが転生鏡なんだそうな。

先代からはこの手鏡を無くしたり、質屋に売り飛ばしたりはしないようきつく言われており、なんでも、この手鏡を手放すとその旅館には必ず不幸が訪れるのだという。また、必ず旅館の玄関に飾るようにと釘を刺された。

若かりし先代は曰くつきの鏡など手放そうと質屋に売り払ったのだが、突如経営が傾いたりしたそうな。しかし、ものは試しと手鏡を質屋から取り戻すと傾きは納まったという。

それともう一つ、この手鏡には妖怪が住み着いており、とんでもない悪さをするという話も伝えられたそうだ。一体何をきっかけに暴れだすのか、という話は不明なままで。

先代はその悪さをされたことは無いのだが、その一代前の女将が当主であった時には、旅行客や従業員が何人かその被害に、『神隠し』にあったという。

一日二日で帰って来るケースが大半であったが、何故か被害者は不機嫌そうに、何があったか言おうとせず、中には記憶を無くした者もいたそうな。

そんな物騒な代物が先日、とある条件を満たしたようで男性二名、女性二名の旅行客を神隠しにあわせてしまった。

幸い二日後に帰ってきたそうなのだが、何があったか話そうとしないばかりか、仲良く見えた四人は互いに目も合わせん勢いで不仲になり、宿を飛び出すように出て行ったそうだ。

そして山田は、お客様に手を出すとは許せぬ、と激昂した女将にこの手鏡に憑く妖怪を払うよう命じられ、さる神主の紹介を受け、天道家に行き着いたというわけであった。

山田「で、私共の依頼を受けて頂けるのでしょうか?」

早雲「うーん、破壊するわけにもいかぬし妖怪も姿を現さないとなると難問ですな。申し訳ありませんが、此度の話、お力添えはできないかと……」

山田「もちろんタダでお願いしようとは申しません。もし解決をお約束頂けるなら当旅館で好きなだけ飲めや食えやの大宴会、そして最上級のお部屋に温泉貸切――」

?「天道君っ!!!」

?「お父さんっ!!!」

山田のセリフを遮るように襖が勢いよく開き、二つの声が響いた。

一人は無差別格闘早乙女流開祖、そして天道家の居候、早乙女玄馬。

もう一人は早雲の三人娘の真ん中、天道なびきであった。

二人の目から、早雲は彼らが何を言いたいのか、そしてこれから何を要求してくるのか全てが伝わり、深いため息を付いた。

玄馬「天道君!君はいつからそんな白状な男になったんだ!親友として恥ずかしいよ!我ら武道家は、このような弱き人々を守るため日々修行に励むのではなかったか!君がなんと言おうとも、私はこの依頼を受けるからね!」

なびき「早乙女のおじさまの言う通りだわ!無差別格闘流の娘として悲しい!お父さんがやらないなら代わりに私もやらせてもらうわよこの依頼!で、妖怪退治したら何してくれるのかしらお爺さん?口約束は私信じないから、この証書にサービス内容とお爺さんの署名捺印をお願いね。はい、これが証書とペン」

突如現れた勢いの良すぎる二人に圧倒された山田は、「は、はぁ」と目を白くさせながら差し出されたペンを受け取ると、証書に記入を始めた。

早雲「ちょ、ちょっと早乙女君、どうするんだい?そりゃあ僕だって最高級サービス付きの無料温泉旅行は行きたいけどさぁ、以前のパンダのお札や升の鬼みたいにうまくいく気がしなくなぁい?」

山田が証書に筆を進めている隙に、早雲が玄馬に耳打ちをする。

玄馬「別に本当に解決する必要はないだろう天道君?どこかで似た鏡を買って来るもよし、適当にやってもこんな耄碌した爺さんには何も分からんさ、クックックックック」

なびき「うまいこと一芝居打ってあげるから安心してお父さん、私に任せておいて。それと早乙女のおじさまは下手打つ可能性があるからなるべく口を開かないように」

耳打ちを聞きつけたなびきも会話に参加する。

山田「こ、これでよろしいでしょうか?」

証書を書き終えた山田が三人に紙を突き出す。それをひったくるようになびきが受け取り、隈なくチェックを済ませ、笑顔で答える。

なびき「ええ、確かにこの依頼お引き受けいたしますわ。大舟に乗った気持ちで私たちに任せて――」

なびきのセリフに被さるように、テンションが上がった玄馬もドンと胸を叩き、調子に乗ってあること無いこと叫ぶ。

玄馬「遥か昔の話になりますが!八宝菜という大妖怪を封印したこともあるこの私にどうかお任せあれ!この依頼、無事解決して――」

?「誰が大妖怪じゃぁぁぁ!!このバカモンがぁぁぁ!!」

何が起きたか分からない程の一瞬で倒された玄馬の腹の上で、小さな老人がキセルを咥え座っていた。

早雲「お、お師匠様ぁっ?!お、お久しぶりです!」

早雲と玄馬の師匠、無差別格闘流の創始者である八宝斎がそこにはいた。普段の条件反射からか、はたまた玄馬の失言からか、秒速で土下座をする早雲を尻目に、なびきは舌打ちをした。

なびき(だから余計なこと言うなって言ったのに!八宝斎のおじいちゃんが絡んだら、うまくいくものもうまくいかないじゃない!)

八宝斎「まったく久し振りに弟子達の顔を見ようと思って来てみたら、師匠に対してなんと失礼なことを!ふんっ!」

八宝斎のへその曲り具合を見て、なびきが早々に温泉旅行を諦めかけたその時であった。

八宝斎「お、なんじゃ?その鏡は転生鏡か?懐かしいのう」

机に置かれた鏡を見て八宝斎が言った。数秒の間、時が止まったが

なびき「おじいちゃん!この鏡を知ってるの?!」

なびきは目を輝かせて、失神している玄馬の腹の上から動かない八宝斎に訪ねた。

八宝斎「知ってるも何も、コロンちゃんのいた女傑族の村からワシが譲り受けて日本に持って来たものじゃからな。確かタチの悪い妖怪が憑いているとかいう話で気味が悪かったから、良くしてくれた宿屋に置き土産として置いてきたはずじゃがの」

なびき「この際譲り受けていないで盗んだだけとか、一体それは何年前の話だとか、なんで気味の悪いものを良くしてくれた宿屋に置いてきたんだとか細かい話はいいわ。おじいちゃん、その妖怪を出現させる方法とか退治の仕方とか知ってるんじゃない?!」

八宝斎「ああ、色々とこの鏡のことはコロンちゃんから聞いてるからもちろん知っておるよ、なびきちゃん」

後ろを振り向き見え見えのガッツポーズを晒すと、なびきは八宝斎の手を握って詰め寄った。

なびき「おじいちゃん!是非それを教えてくれないかしら?」

八宝斎「えー、教えてもいいけどタダじゃあなぁ。いくら早雲の娘と言えどもタダじゃあなぁ」

そっぽを向いて、チラチラと厭らしい目線だけはなびきに寄越しながら八宝斎が答える。

ただそんなことは予想済みのなびきは

なびき「今答えれば最高級温泉旅館無銭飲食大宴会よ?」

何が起きているか良く分かっていない山田に、聞こえないように提案する。

八宝斎「うーん、もう一声!」

なびき「今なら女らんま君のセクシー写真10枚セットと、今日のあかねの下着の色を教えるわ」

そのなびきの一言に目付きが変わった八宝斎は、玄馬の腹から立ちあがり、今までの厭らしい顔を一変させ皆に言った。

八宝斎「では今こそ教えよう!この転生鏡の秘密を!」

早雲・玄馬「ははぁ!ありがたき幸せ!」

早雲といつの間にやら復活した玄馬は、深々と畳に頭をこすり付け師匠の言葉を待った。

山田も固唾を飲んで、突如現れた小さな老人の次のセリフを見守る。

八宝斎「転生鏡の秘密!それは!『かくかくしかじか』じゃぁぁぁ!!」

早雲、玄馬、なびきの間に雷鳴が走る。

早雲「な、なんとタチの悪い妖怪なんだ!」

玄馬「き、気持ちは分からんでもないが、ひどくタチが悪い……」

なびき「タチが悪いのを通り越してとっても馬鹿らしいわっ!」

驚愕する三人であった。

そんな三人とは対照的に、ようやく胸を撫で下ろせた山田が八宝斎に頭を下げる。

山田「おお、これで奥様に顔向けできます。ではこれより、その妖怪を呼び出し退治して頂けますでしょうか?」

その言葉に八宝斎は

八宝斎「お主、ワシの話を聞いておったのかい?この面子じゃ無理じゃろがい。そんなことよりさっさと今すぐ旅館に連れて行かんか!ワシの機嫌を損ねたら退治してやるモンも退治してやらんぞぉ。さ、退治してやるからそんな辛気臭い鏡は放って早く案内せい!」

とキセルを燻らせながら、ふんぞり返って答えるのであった。

山田「そ、それは困ります!では早速旅館にご案内いたしますから皆様ご準備を!」

早雲「かすみぃ!今から温泉旅行だぁ!準備を!準備をしてくれぇ!」

なびき「やったやった!荷物まとめてくるねー」

玄馬「ワシもさっさと荷造りをしなければ!」

それぞれが慌ただしく動き始め、玄馬となびきが出て行った居間に、早雲の三人娘の一番上、天道かすみがエプロン姿で現れる。

かすみ「あらあらお父さん、どうしたの?それと八宝斎のお爺様、お久し振りです」

皆のドタバタもなんのその、マイペースで八宝斎に挨拶をするかすみであった。

早雲「今すぐ旅行の準備をしなさい。今からみんなで楽しい楽しい温泉旅行だよかすみぃ」

八宝斎「ワシの人徳のおかげでな。ささ、かすみちゃん。ちゃっちゃと支度をしてきなさい」

その二人の言葉に、口に手を当て困った顔をしてかすみは言った。

かすみ「すぐに行くんですか?丁度今さっき、あかねと乱馬君にお使いを頼んでしまって、二人とも行ってしまったところなのだけど……」

早雲「ななななんと、お師匠様!どうか二人を、せめてあかねだけでも待ってやっては下さらないでしょうか?!」

かすみの話を聞いた早雲が、大量の涙を流しながら頭を下げる。

八宝斎「ええい!駄目じゃ駄目じゃ駄目じゃ!もうワシは今すぐ酒が飲みたい!女風呂を覗きたい!そしてお姉ちゃん達と一緒に温泉に入りたいんじゃあ!」

八宝斎が駄々をこね始めたのを見て、これを説得するのは無理だと悟った早雲は

早雲「かすみ、行先を書いたメモを残して我々は先に行こう。このままではお師匠様が何を言い出すか、何をしだすか分からん。最悪の場合、温泉旅行が無くなるだけならまだしも、我々に容赦のない八つ当たりをしてくる可能性があるのでな」

と今までの涙を嘘のように止め、かすみに向き直り言った。

かすみ「まあ、メモを残していくのだったら二人も後から来れるしいいかしらね。私も用意してきまぁす」

かすみも居間から出て行くと、早雲は山田から目的地である旅館の住所を教えてもらい紙に書き記し、机の上に置き、自分も旅行の支度をしに自室に戻るのであった。

その約五分後、乱馬、あかねを除く面々は意気揚々と温泉旅行へと旅立つのであった。

曰くつきの鏡を居間の机に置きっぱなしにしたまま。

行先を書き記したメモが、開け放したままの居間に風が吹き込み、部屋のごみ箱に入ったのにも気付かないまま。

OP代わりにこれでも

https://www.youtube.com/watch?v=vgy1PB4UxQ0


かぶき町、万屋。

?「『てんせいきょう』だぁ?ああ、あのハムみたいな雌豚がはまってたエサのことだっけ確か?」

住居兼仕事場として使われている手狭な一室で、気怠そうに足を机に投げ出し、椅子に体を放り出している、この万屋の主である坂田銀時は言った。

?「違うアルよ銀ちゃん。ハムみたいな雌豚じゃなくて雌のハムだったアルよあれは」

銀時のぶっきらぼうな発言に反応したのは、チャイナ服を着たまだ幼さの残る少女。名前は神楽。

?「どちらも違いますよ、ハム子さんは人間で本名は公子だったはずです。そもそもハムに性別ないからね、神楽ちゃん。ちなみにその『転生郷』ではなくて鏡の方の『転生鏡』なんです。てか、僕が持ってるものを見たらなんとなく分かるでしょ。むやみに公子さん傷付けたかっただけでしょアンタ達」

長々としたセリフを初っ端から喋った眼鏡の名は志村新八。ソファに腰掛ける彼は、何の変哲も無い手鏡を二人によく見えるように突き出した。

神楽「ああ!分かったアル銀ちゃん!ほら、ツッキーとかいるあの吉原のあだ名みたいなやつのことネ!」

銀時「はいはい桃源郷ね、あのザキ太夫のいる。で、今回はどんな面倒事持ち掛けられたのよ」

新八「違ぁぁう!お前らワザとやってるだろ!だいたい即死魔法みたいな名前の太夫がいるかぁ!月詠さんが聞いたら怒りますよ?!」

銀時「あいつの名前なんかどうでもいいだろ。それに腐っても太夫なんだ、下半身的な意味で即死魔法かけてくれるくらい芸達者かもしれねえぜ?」

新八「開始早々シモに話を持ってくなぁ!」

神楽「え、銀ちゃんそんな三こすり半的な意味で言ってないアルよ。新八きもいアル。新八だけがきもい世界アル」

銀時「まあそう言うなって神楽。この三こすり半蔵君も思春期が故に、すぐに思考がそっち方向行っちゃうんだよ。ほとばしる熱いパトスが色々裏切っちゃうだけなんだよ」

新八「三こすり半蔵ってなんだっ!熱いパトスってなんだっ!新八だけがきもい世界ってなんなんだぁぁっ!そんな世界僕はいらないっ!てかお前らがふざけ過ぎて全然話が進まないんですけどっ!いつまでも本題に入れないんですけどぉっ!」

いつもの如くの新八のうるさい突っ込みを冷めた目で見る二人であった。そんなのっけからテンションの低い彼らの様子を見て、新八は少し荒くなった呼吸を整えた。

新八「まったく、僕の話を聞かないとホント後悔することになりますよ。とっても良いニュースがあるんだから。もう、いつまでもこんなとこで尺取ってられないから、さっさと手短に、何があったか一から説明しちゃいますね」

はーい、とやる気の無い返事をして二人は手を挙げた。

新八「まず二人がよろず屋を空けていた間に、一人のお客さんが来たんですよ」

銀時「ほー、お客さんとは珍しい。最近はめっきり見なくなったからね。俺がジャンプ買いに行ってパチンコですってる間にそんなレアキャラ出たのかよ」

と、新八そっちのけでジャンプに視線を奪われている銀時が言った。

新八「ジャンプ買いに行くって出たっきり全然帰って来ねえと思ったらそんなことしてたのかよアンタは。まあいいや、話を戻しますよ。ついでに視線も僕に戻してください」

コホン、と咳払いをした新八は話を続ける。

新八「依頼人の名前は山田さんというご老人でした。なんでも大企業の会長の秘書をされてる方で、あの赤ちゃん騒動の時の、橋田賀兵衛さんに紹介を受けてやって来たらしくて」

神楽「私が近所のガキの缶蹴りの缶を、空の彼方に蹴り飛ばしてる間にそんなことがあったアルね。てかシルバージェイフォックス懐かしいアルな。元気にやってるかちょっと気になるねー、定春ぅ。それにしてもアイツ、とうとうお客さんの幻覚まで見るし、そんな作り話するようになったアルねー。あの眼鏡はもう現実も何も見えない、無用の長物と化したアルねー」

新八の話に飽きた神楽は、笑顔で超大型犬の定春とじゃれている。

新八「君も君で全然帰って来ないと思ったらそんな荒んだことやってたのかよ……それによくそんな笑顔で無用の長物とか言えるね。ああもう!話が進まない。でですね、その山田さんがこの転生鏡と呼ばれる鏡を置いていったんです」

そう言うと、新八はもう一度二人によく見えるように手鏡を見せたが、二人がその手鏡を見ることは無く、思い思いで暇を潰しているだけなのであった。そんな態度にイライラし始めた新八は立ち上がり叫んだ。

新八「ちょっともう嫌になってきたんで結論から話しますけどぉ!この鏡の謎を解いてくれれば、この前金の十倍の額の報酬をくれるってよぉぉ!!ほら見ろ!貧乏人ども!これがその!前金だぁぁぁ!!!」

懐から出した分厚い封筒を膝元の机に叩き付ける。

その音に、今まで新八の方を見向きもしなかった二人はようやく視線を向ける。

その封筒の分厚さに目を丸くした銀時だが、フン、と鼻で笑うと

銀時「お、俺はそんなモンに騙されないぜ?その封筒に札が本当に入ってるのかよ、中身は子供銀行券とかじゃねえの?それかババアやらと手を組んでまた俺をはめようとしてんのかコノヤロー、絶対お前らの汚い手の平なんかで踊ってたまるかよ」

と疑ってかかった。

新八「汚いのは人の話を信じられない貴方の心ですよ。それに中も確かめました、ちゃんと福沢先生がいましたよ」

銀時「……は?じゃあマジなの?だってその封筒かなり分厚いぜ?今でさえジャンプと同じくらいの厚みがあるのに、十倍にしたらジャンプ十週分の厚みになるんだぜ?ちょっと縛って捨てに行くのが面倒くさいくらいになっちゃうよ?富樫先生の集中連載分くらいにはなるのよ新八君」

疑ってかかった割にはすんなり話を受け入れ始める銀時であった。

新八「なんで物の厚みをジャンプでしか例えられないんですか。そんなに疑うなら実際に確認してみたらいいじゃないですか、ほら」

新八が封筒を銀時に近付けると、恐るべき速さでぶんどり、中身を確かめた。

神楽「銀ちゃん、どうなの?それマジモンのお金アルか?もう三食天かすだけ食う生活から抜け出せるくらい入ってるアルか?」

神楽も封筒の中身が気になり、定春との遊びを止め銀時に尋ねた。

新八「そんな悲しいこと言ってないで神楽ちゃんも見てみなよ!これだけあればお米はもちろん、肉だって魚だってたくさん食べれちゃうよ!ついでに貰ってなかった給料まで出ちゃうくらいだよ!」

神楽「それ本当アルか新八!でも私そんな贅沢言わないネ。卵かけご飯、ごはんですよご飯、納豆ご飯のローテーションを組んでもらえるだけで幸せネ」

十代の少女とは思えない侘しい願いを口にする少女の横で、銀時は札束を手にしながら震えていた。

銀時「うぉぉぉい、これマジじゃねえか。マジモンの万札じゃねえかよ。これだけあれば滞納してた家賃払ってお前らに給料払って、ツケで飲んでた呑み屋にも払って……いや、それよりもこの金を元手にもっと増やそう。そう、例えばパチンコだよ。お金が増えれば俺もみんなももっと幸せになれるもんね?そうだよね?きっとそうに違いないよねパトラッシュ、なんだかとっても眠いんだ……」

新八「ようやく信じてくれたんですね。まあ、あまりの金額にわけわかんないことになってますけど、天に召されかけてますけど。ていうか家賃に給料にちゃんと払えよ、そこは絶対に譲りませんからね」

神楽「うおおおお!!銀ちゃんがテンパりまくってるってことはモノホンのマネーで間違いないアルな!キャッホウ!定春!これでお前もちゃんとしたドッグフード喰えるアルよ!もう公園でおっさんが撒いてるクラッカーを鳩に混じって喰わないで済むアルよ!」

新八「最近依頼がなくて貧乏なのは分かってたけどお前らなにやってんだよ、逞し過ぎるだろオイ。とにかくテンパるのも喜ぶのも良いですけど落ち着いて話を聞いてください。肝心の依頼内容について説明しますから」

落ち着きのない二人を宥めつつ、新八が少しでも話を進めようとする。

銀時「なんでも来いやぁ!なんだっけ?謎解きゃいいんだっけ?俺昔あやつり左近とか読んでたから結構謎解きには自信あるぜ?けけけ、これで報酬もゲットだぜ!」

神楽「私も私も!名探偵コナンとか金田一とか読んでるからもうすっごいアルよ!歩く度に死人が出るレベルね!」

どこからか銀時は小さい操り人形を、神楽は鹿打ち帽と虫眼鏡を装着していた。二人ともまるで修学旅行前日、を通り越して初日の夜のようにはしゃいでいる。

新八「二人が全く頼りになりそうにないってことだけは分かりました。でも、山田さんが言っていた謎を解いてくれっていうのは、そっち方面じゃないんですよね」

その人形や虫眼鏡の出どころに対して突っ込みたい気持ちを抑え、新八は必要最低限の言葉を返す。

銀時「そっち方面じゃないっていうとどっち方面なのよ、あやつり左近じゃなくてデスノート方面だった?まああれも謎解きっちゃ謎解きだもんな」

新八「いい加減ジャンプから離れてください」

今度はジャンプを開きながらをリンゴをかじっている銀時に対して、ずり落ちた眼鏡だけを直して話を戻そうとした新八に、続けざまに髪を逆立てた神楽が強烈なオーラを放ちながら言った。

神楽「そんな突っ込みばっか入れてないでちゃちゃっと本筋入れヨ。早くツエー謎解きたくってオラ、ウズウズしてっぞ!」

新八「強い謎ってなんだよ!神楽ちゃんは早くそのどっかの戦闘民族みたいな設定から離れて!そうしたら余計な突っ込み入れずに本題に入れるんだから。てかお前らはしゃぎ過ぎだぞ!」

とうとう自分の性を抑え切れずに突っ込んでしまった新八であった。

銀時「で、ぱっつぁん。その謎ってのはなんなんだ?そろそろおふざけは止めてちゃんと話を聞こうじゃねえか」

新八「……やっぱりふざけてたんですね、でも話を聞く気になってくれて良かったです。まあ簡潔にまとめますと、ある古物商からこの転生鏡を山田さんの主人、会長さんが手に入れたんです。この鏡にまつわる逸話を大変気に入って」

ここでようやく新八は転生鏡に伝わる謎について語り始める。

新八「なんでも転生鏡には妖怪がとり憑いているらしくて、その妖怪が異世界に人を飛ばしたりと、つまり『神隠し』みたいな話ですね。そんな悪さをすることがあるらしいんです」

銀時「……」

神楽「……」

鏡の逸話に、いつもは騒がしい万屋の空気も静まりかえるが、そのまま新八は続けた。

新八「でも誰にでも悪さをするのではなくて、ある条件の下にしか現れないらしいんです。そこでどうやったらその妖怪が出現するのか条件を探ってくれ、っていうのが今回の依頼内容です。会長さんが一度で良いから異世界を見てみたいって言って聞かないらしくて」

新八「で、金に糸目は付けないからとにかくこの鏡の謎を解いてくれって話なんです。いやー、やっぱ超お金持ちともなると、普通の人とは感覚が違うんですね。そもそもこの鏡に妖怪なんてとり憑いていないかもしれないのに。てか異世界なんておとぎ話にも程がありますよね」

銀時「……返してきなさい。」

新八「へ?」

神楽「銀ちゃん?」

銀時の一言に、先程とは違った意味で事務所内が静まりかえる。

銀時「もうウチには定春君がいるでしょう!それに加えて妖怪なんてウチでは飼えません!結局銀さんが散歩行ったりすることになるんだから!絶対ダメです!」

急にママ口調になった銀時はキビキビと椅子から立ち上がり、机に放りっぱなしにしていたジャンプを片付け、はたきで掃除を始めた。

神楽「そんなぁ、ちゃんと私が散歩行ったりエサあげたりするからぁー!お願いアル!飼って飼って飼ってぇ!それに私しっかり定春の面倒も見てるアル!」

手足をその場でジタバタさせながら神楽が駄々をこねる。神楽の天性の怪力により、床がとんでもない音を立てていた。

銀時「ダメですよ!そんなこと言って銀さんがたまに散歩連れて行ったりエサあげたりエサになったりしてるんだから!」

新八「もうその捨て犬コント終わりでいいですか?てか銀さん、もしかして怖いんですか?あの坂田銀時が、かぶき町四天王の一角である元白夜叉が!いるかいないかも分からない鏡にとり憑いた妖怪が怖いんですかぁ?」

ニタァっとした、厭らしい笑みを浮かべながら新八が銀時ママに突っ込む。この依頼を受けた時、既に銀時がこうなることは今までの付き合いで見当はついていたので、用意していた煽り文句を浴びせるのであった。

神楽「そうなのか銀ちゃん?もしそうだったらめちゃくちゃだっさいアル、がっかりアル、もうお前必要ないわ。今日これより、ここは万屋グラさんの事務所として一から始めるからさっさと出てけよ。ケツまくるなら一人でまくりな、私は絶対にやるからな」

新八「ちょっと何このチャイナ娘。途中からいつものエセチャイナ語じゃなくなって急に日本語ペラペラになったんだけど。まあ銀さん、報酬のこと考えるとここで怖がって依頼を断るなんて、万屋の懐事情的に有り得ないですよ」

新八「僕等がちゃんとフォローしますから頑張りましょう、ね?あと神楽ちゃんもあまり言い過ぎないように。それにそもそも妖怪なんていないですって」

このまま煽って煽って銀時を挑発して依頼を受けさせようとしていた新八であったが、暴走し始めた神楽のせいで、温和路線に切り替える。

神楽「そうアル、熱くなってちょっと言い過ぎたアル。まあ鏡に憑いてるっていう妖怪がもしいても、今までのパターンだと十中八九天人だから安心するネ。なにかあっても私がちょちょいのチョイ君アル」

しかし二人のフォローも虚しく銀時は

銀時「ちょ、ちょっとその感じ止めてくれない?まるで俺がビビッてるみたいじゃん?なんか嫌だなぁーこの感じ。ビビッてないって言っても、もうビビッてるとしか思ってくれない感じだもんこれ。」

銀時「『キレてんの?』って聞かれて『キレてない』って言い返しても『やっぱキレてんじゃん』ていう一連の応酬を彷彿とさせるやつだよ。もともとキレてなかったのにちょっとイライラしてきちゃうやつだよ」

椅子に倒れこむように座り込んだ。

新八「あー……なんかすっごい面倒くさいんだけどこの人。どうしよっか神楽ちゃん」

神楽「どうするも何も私たちは頼まれた依頼を完遂するだけよ志村さん。早速動き出しましょう、でないと私のお腹と背中がくっついてそのまま離れ離れになってしまいそうよ。あ、今の表現はそれ程お腹が減っているという意味だから、実際にそんな現象が起こるということでは無いわ」

ありもしない後ろ髪を神楽は、たなびかせるように掻き上げる動作をした。

新八「神楽ちゃんは空腹とこの大金を前にテンパってそんなキャラになってるってことで良いのかな?てかそんなにお腹空いてるならこの前金で何か食べてからでも遅くないんじゃない?何か食べたいものはある?」

神楽「私ねー、私ねー……」

一瞬で素に戻った神楽が脳ミソフル回転で食べたいものを思い浮かべていると

銀時「おいお前らぁ!なぁーに社長無視して話進めてくれちゃってんの?この依頼は受けないって言ってるだろうが!そもそもこの話、よくよく考えてみれば隅から隅まで胡散臭えし怪しいじゃねえか」

銀時「そんな夢みたいな話にこの高額の依頼料って絶対何か裏があるって。簡単に話受けたら長編エピソード並の厄介事に巻き込まれるの目に見えてんじゃん!」

銀時が冷静に突っ込みを入れる。

新八「確かに胡散臭いってのは分かりますけど一獲千金のチャンスなんですよ?銀さんだってお金欲しいでしょう?」

このままでは本当に依頼を断りかねない銀時に新八が詰め寄った。

銀時「いやそれは欲しいけどさ。まあここだけの話なんだけど、俺もう見えちゃってるからね、その鏡に憑いてるやつ。俺も似たような能力持ってるから見えるんだけどさ」

銀時「なんだろう、両右手の包帯グルグル巻きなのとか、マンインザミラー的なのとか、なんかそんなん憑いてるんだわそれ。だから止めよう、俺達の手には負えないから」

新八「まんまジョジョじゃねえかスタンドじゃねえか!あとマンインザミラー的なのってなんだよ、もうちょっと頑張ってぼかせよ!」

神楽「なんだ、妖怪じゃなくて良かったアルな。じゃあウイルスに感染してワクチンと一緒に鏡の中に行けば相手はリタイア、私達の勝利アル!」

新八「倒しちゃダメだから!目的変わってるよ!僕らはあくまでどうやって鏡の中のスタンド使いを引きずり出すかを調べれば良いだけだから、戦闘不能に追い込んじゃアウトだから!」

銀時「お前らそもそもスタンド持ってないだろ?だから今回の依頼は無理無理。ほーら、さっさとこの鏡と依頼料返してこーい!」

銀時はそう言うと手元のジャンプに視線を落とし、これ以上会話はしない、というスタンスを見せた。

新八「ちょっと何またジャンプ読み始めちゃってるんですか!まさか本当に断る気――」

銀時の様子に見かねて新八がジャンプを取り上げようとしたその時であった。

神楽「おおおお!鏡が光り始めたね!何アルかこれ!もしかして神龍か?!願い叶えてくれるアルか?!」

いつの間にかソファに投げ出されていた鏡から黄金色のまばゆい光がこぼれる。

新八「ちょ、ちょっと何これぇぇぇぇぇ!!!マ、マジだったの?!この鏡マジのヤバイアレだったの?!ぎ、銀さん!ど、どうしますかぁぁぁ!!!!これヤバイっすよ!!妖怪出て来ちゃう感じですよぉぉぉ!!!」

銀時「お、落ち着け新八っ!!こ、これはきっと神楽の言う通り神龍だよ、神龍なんだよ!」

新八「そ、そんなわけあるかぁぁぁ!!!だいたい僕等ひとっつも球集めてないでしょう!!」

銀時「何言ってんだよ新八君っ、その股にぶら下がってるのは何かね!」

新八「それでも僕と銀さんで四つですよ!三つも足りてないですよぉ!」

銀時「お、お前には言ってなかったけど俺実は三つ球があるのよ、それで定春の分足したら合計七つで神龍召喚だコノヤロォォォ!!!ってこんな馬鹿なこと言ってる場合じゃねえだろこのダメガネがぁぁぁ!!」

新八「誰がダメガネだコラァァァ!!」

神楽「世界を私のモノにするアル!!」

二人が顔を寄せ合い絶叫する中で、神楽は暢気に自分の願いを叫んだ。

銀時「そ、そうだ!おい神楽!そんな馬鹿なこと言ってないでその鏡壊せ!それ神龍出てこないから!あの悪い方の龍出てきちゃう方だから!」

神楽「何言ってるアル、私ドラゴンボールは42巻までしか認めてないネ。だからGTで何をやっていようが知らないアル。私にとっての神龍はアイツだけネ」

新八「そんなアホ言ってないで早く鏡を壊して神楽ちゃん!!それかさっさと逃げなって!!もうなんでそんなヤバイ光出てる鏡持って満面の笑みなんだよ!」

銀時「か、神楽!もう鏡は壊さなくて良いからこっち来て机の陰に隠れろ!!」

机の陰にいつの間にか隠れていた銀時が神楽を呼び寄せる。

神楽「お、なんか軍隊ごっこぽくって私もそれやりたいネ!私も隠れるアル!」

新八「だからなんでこの状況楽しんでんだよ!!てか僕も隠れる!!」

新八と神楽は銀時に隠れるように身を隠した。

神楽「うわ、さっきより光強くなったネ!」

新八「くっ!もう何も見えなくなりそうですよ銀さん!」

神楽「オイ新八!」

新八「どうしたの神楽ちゃん!」

神楽「光が眼鏡に反射して面白いアル!ハッハッハッハ!」

新八「この状況でそんなことで笑うなぁぁぁ!!!

光はさらに強さを増し、とうとう何も見えなくなるほどであった。

銀時「逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ逃げてイイヨ」

新八「何逆シンジ君やってるんですか!ってうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

神楽「お、ウオォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」

銀時「逃げときゃ良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

天道家居間。

?「かすみお姉ちゃーん、お父さーん、いないのー?夕飯の買い物行ってきたよー」

ショートカットの快活そうな少女が家中を探しながら、とうに旅行に出発してしまった家族の名前を呼ぶ。

?「ダメだあかね、親父も誰もいねえや。みんなで甘味処でも行ってんのかな?」

あかねと呼ばれた少女が、ぶっきらぼうな物言いのおさげ髪の少年、乱馬に答える。

あかね「それはないんじゃない?だって買い物行って来たらすぐ夕飯にするからってお姉ちゃん言ってたもん」

乱馬「そうだよなぁ、かすみさんが家事ほっぽって遊び行ったりするわけねーもんな。あぁったく、それにしても腹減ったぜぇ」

乱馬がトレーニングと買い物でいつもより空いた腹を悲しそうにさすると、それを見たあかねが名案を思い浮かべたと言わんばかりに手を打って提案した。

あかね「そうだ!そんなにお腹減ってるなら私が今日作るよ!」

誰もが心ときめくようなスマイルのあかねに対し、乱馬は青い顔をしながら

乱馬「い、いいっていいって!お前も今日疲れてるだろ?!なんだったら俺が何とか作るし、シャンプーんとこに出前でも、あ!うっちゃんトコ行くってのもいいんじゃねえか?!」

と両手をぶんぶんと振り回し言った。

あかね「あー、また私がとんでもないもの作ると思ってるんでしょ?!でも今日は大丈夫ですー!今夜は水炊きなんだから、肉と野菜適当に切って鍋に入れて煮るだけでしょ?私にもそれぐらい出来るんだから」

乱馬「その『適当に』ってところが怖いんだよ!俺は野菜と一緒にまな板のかけらなんて食いたくねえからな!」

あかね「だから大丈夫って言ってるじゃない!わ、私だってこのままじゃまずいなって思って、最近おばさまにお料理習い始めたりしてるんだから……」

乱馬は許嫁が自分の母に、究極に料理下手なのを気に病み料理を習っていること、またそのことを少し顔を赤くしながら言う姿に、さっきまでの毒牙を抜かれてしまった。

乱馬「……そ、そうだったのかよ。で、何作れるようになったんだ?」

乱馬も少し赤くなった頬を、ポリポリと掻きながら尋ねた。

あかね「うん!最近はお皿を一枚も割らないように洗い物したり、砂糖と塩をあんまり間違えないようになったの!だから、ね?お鍋くらいなら私にも普通に作れるようになったかなって――」

乱馬「そうか、それは凄い進歩だぜあかね。じゃ、俺は修行の旅に出てくるから。かすみさんが帰るころには俺も帰る」

あかね「なんでそうなるのよ馬鹿乱馬ぁ!私の料理が食べたくないなら素直に言えばいいじゃない!」

どこからか用意した大きいリュックを背負った乱馬に、あかねがしゃもじを投げつける。それを華麗に躱し縁側に立つと

乱馬「いやー、ホントは食べたいんだけどさ。やっぱ無差別格闘流を継ぐ身としては一時もたゆまず鍛錬に精を出す方が良いと思ったんだ。止めてくれるな」

あかね「誰が止めるもんですか!乱馬の馬ぁ――!」

あかねが乱馬に追撃しようと迫りかけた時、乱馬の足元が急に盛り上がった。

あかね「ん?」

乱馬「へ?」

と、間抜けな声を発した直後、真下から凄まじい衝撃が乱馬を襲い、彼を庭まで吹っ飛ばしたのであった。乱馬が今まで立っていた場所からは土煙が上がり、そこからなんとも力強い声が聞こえてくる。

?「ごめんください!いやーお久し振りです!俺が旅をしている間に天道家に繋がる地下トンネルが掘られていたなんて驚きましたよ、ハッハッハッハ!」

あかね「りょ、良牙君じゃない!久し振りねー!また旅に出てたんだー!」

土煙が晴れると、大きなリュックと番傘を担ぎ頭にバンダナを巻いた少年、響良牙が満面の笑みで立っていたのであった。

縁側が破壊されたのを気にもせず、あかねが再会を喜ぶ。あかねを目にした良牙は一瞬で目を輝かせ、リュックから包みを取り出した。

良牙「そうなんですあかねさん。今回は日本最北端まで行って来てやりましたよ、そこの土産の八つ橋です。ぜひ食べてみてください!」

乱馬「へー、今回は京都に行ってたんだぁ、方向音痴のPちゃんは」

良牙の差し出した包みをいつの間にか復活した乱馬が受け取る。

良牙「なっ、乱馬ぁ!お前にやるために買ってきたのではない!返せっ!」

良牙の鋭い突きを巧みに躱す乱馬。

あかね「ちょっと乱馬!意地悪しないの!それに良牙君とPちゃんは関係ないでしょ」

乱馬「あ、そうだっけか?ちなみに良牙。お前が通ってきたのトンネルじゃなくて勝手にお前が作った穴だからあとでしっかり埋めとけよ」

良牙「そ、そうだったんですかあかねさん!俺はてっきりそういう道だったのかと、ならば今すぐ穴を埋めにかかりますので!あ!穴を埋めている間に夜になり、『ついでだから夕飯食べて、今日は泊まっていけば?』とかいった展開なんて全く期待してないですからっ!!」

良牙が溶けそうな程顔をにやつかせてあかねに話しかけたが返ってきた返事は

乱馬「おめえ、誰に向かって言ってんだ?」

乱馬のものであり、あかねはそこにいなかった。

良牙「貴様っ!あかねさんをどこに!」

あかね「良牙君、これ!穴埋めるんだったらスコップ必要かなって思って取りに行ってたの。はい、これ使って」

乱馬の返答に怒りかけた良牙であったが、笑顔のあかねにスコップを渡され

良牙「この響良牙!天道家の庭を復元させるために尽力します!」

あかね「そんな頑張んなくて適当でいいわよ、いつも乱馬やおじさまに八宝斎のおじいちゃんが暴れまくってるんだから。そうだ、終わったら良牙君も夕飯一緒にどう?今日はお姉ちゃんいないから私が作ることになるかもしれないんだけど……」

良牙「うおおおおお!!あかねさんの手料理が食べられると分かれば庭の修復なんて一瞬で終わらせてやる!喰らえぇ!爆砕つ、点穴っ!!」

あかねの言葉にテンションが振り切った良牙は、もう何が何だかわからず、得意の土木技、爆砕点穴で天道家の庭をほじくり返していった。

あかね「こりゃ片付くまで結構時間がかかりそうね、ハハハ……」

乱馬「あかねの飯食って何度も卒倒してるってのに、よくそんな張り切れるな良牙のやつ……」

あかね「なんか言った乱馬?!」

乱馬「いーや何も、じゃあ今度こそ俺は行くからな。あ、良牙に飯食わしてやってもいいけど、ちゃんと腹の薬用意してからにしろよ。じゃっ」

あかねの料理を食べる生贄が都合よく出来たと思った乱馬は、この機に乗じて庭の塀から天道家を出て行こうとしていた。

あかね「だからさっきからそういうことしか言えんのか!この馬鹿ら――」

塀から飛び降りて脱走しようとしている乱馬に、あかねがお玉を投げつけようとした時であった。

?「ニーハオ乱馬!元気してたあるか?!」

チャイナ服の似合う片言の少女が乱馬に抱き付き、そのまま庭に二人で落下していった。

乱馬「ぐええ!シャ、シャンプー!」

シャンプー「そう、乱馬の花嫁シャンプーね。私いなくて寂しくなかたか乱馬ぁ?」

シャンプーと呼ばれた少女は、猫撫で声で乱馬に抱き付き甘えている。

乱馬「何でもいいから早く離れろ!俺が下敷きになってんだろうが!」

落下した二人であったが、乱馬がクッションになりシャンプーは無事であった。

シャンプー「身を挺して私を守ってくれるなんてやっぱり乱馬は私のこと大好きあるな。大歓喜!」

乱馬「そんなつもりはねえっての!」

シャンプー「そんな悲しいこと言うと私水かぶってしまうかもしれないぞ!」

乱馬「わああ!そ、それだけは止めておけシャンプー!」

その後もすったもんだと離れろ、離れないなどと寝転び抱き合いながらのやり取りをしていると

あかね「乱馬ぁ……」

乱馬が声のする方見上げると、あかねが憤怒の表情で立っていた。

乱馬「……あ、あかね?ぜ、全部見てたろ?俺は別にそんなつもりもなくだな!」

シャンプー「あらあかねいたのか、全然気付かなかったね」

あかね「人んちの庭で何ベタベタイチャついてんのよ!さっさと修行でも地獄でも行って来ぉぉぉい!」

どこからか持ち出したハンマーであかねは乱馬、シャンプー二人を狙ってフルスイングをする。

シャンプー「何するあかね!」

乱馬の上にいたシャンプーはヒョイと避けハンマーを躱すが、彼女が乗っかっていた乱馬には逃げる余裕が無かった。

乱馬「なんで俺だけなん――!」

ハンマーで殴られた乱馬はそのままお空のお星さま軌道に乗ったのであったが、突如空中に現れた自転車に顔面をひかれ、天道家の庭に戻って来た。

乱馬「ぐえっ?!」

?「おい乱馬!おらのシャンプーを返してもらうぞ!」

自転車から華麗に飛び降りた長髪の男は決め顔でそう言った。

あかね「ムース、それは壁よ」

ムースと呼ばれた男はあかねの言葉を確かめるように目の前の壁を凝視し振り返った。

シャンプー「何しに来たかド近眼、そして私はお前のものではないね。乱馬ぁ!大丈夫か?」

ハンマー、自転車と二度のダメージを受け倒れた乱馬に、心配するシャンプーが駆け寄った。

乱馬「な、なんで俺だけこんな目に……」

ムース「何故じゃシャンプー!どうしておらはお前だけを見てるのに、お前はおらを見てくれないんじゃ?!」

もうシャンプーが離れないようにと喚きながらきつく抱きしめるムース。

あかね「それはあんたが今抱きしめてるのが私だからじゃない?そんなにシャンプーに見てほしいなら!正面からぶつかってこい!」

誤ってあかねを抱いていたド近眼なムースは、あかねに投げ飛ばされシャンプー目がけて投げ付けられる。

ムース「うおおお!!シャンプーーーー!!」

シャンプーに向かって一直線に飛行するムース。

シャンプー「さっきから危ないね、この暴力女!」

両手を広げて飛んだムースは冷静にシャンプーに躱され、後方で未だ天道家の庭を掘っていた良牙に激突した。

良牙「いってじゃねかこのド近眼!」

衝撃でようやく正気を取り戻した良牙に、ようやく眼鏡をかけたムースが答える。

ムース「どうしてお前に正面からぶつからんといけないのじゃ」

良牙「そんなこと俺が知るかぁ!」

乱馬「だああ!!もううるせえ!なんだってこんな一気に人んちに押しかけてくるんだお前らは!」

あかね「あんたの家でも無いでしょーが!」

シャンプー「そうね、あかねを亡き者にしたあとこの家は私と乱馬のものになるね」

あーでもないこーでもないとギャーギャー騒いでいると居間の方から、聞き慣れた関西弁が聞こえ、皆そちらに顔を向けた。

?「乱ちゃーん、あかねちゃーん、おらんのー?勝手に上がらせてもろてるでー!」

あかね「この声は……」

あかねが言い終わる間もなく縁側に顔を出したのは

乱馬「うっちゃんまで?!」

巨大なヘラを背中に差し、お祭り衣装風な少女、久遠寺右京であった。

右京「なんや、今日はたくさん人がおるんね。まあなんでもええか、晩御飯作りに来たで」

右京はにこっと笑うと、スーパーの買い物袋を顔の横で見せた。

乱馬「うっちゃーん、頼れるのはお前だけだぜぇ。こいつらホント酷くてさぁ……」

庭から縁側までひとっ飛びすると乱馬は右京に泣きついた。

右京「まあまあ乱ちゃん。私の美味しいご飯でも食べて元気出し。許嫁として当然の務めを果たしたるからな」

乱馬「ありがとうっちゃん!すんごい腹減ってるし、あかねが飯作るって言うからもう俺どうなるかヒヤヒヤだったぜ……」

右京「よしよし、私が来たからには大丈夫や」

乱馬の頭を撫でる右京に

シャンプー「右京!いきなり現れて何を言うか!それに乱馬!そんなに腹空いてるというなら私がスペシャル中華フルコース女傑族風作ってあげるね!」

あかね「ちょっと乱馬!それどういう意味よ!それと右京も!今日の夕飯は私が作るんだから!」

二人の少女が食いついた。またまたあーでもないこーでもないと三人の女子の喧嘩が始まる。とそこにムースが乱入した。

ムース「あい分かった!それならば良い解決策がある、それはな!今からおぬしら三人娘がそれぞれ料理を作り、対決をするのじゃ!」

そう高らかに声を上げたムースは近くにいた良牙を反転させ、素早く耳打ちをした。

ムース「審査員としておらはシャンプーの、お前は天道あかねの手料理を食えるチャンスじゃ。この話乗っておけ、良牙」

良牙「ムース。お前ってやつは……天才じゃねえか!」

一瞬で作戦会議を終え、裏でがっつり握手を交わすと良牙は

良牙「そうだな、この際争いの原因なんてどうだって良い。ただ今は誰の料理が一番うまいか、そいつが今日の勝者ってことでいいんじゃないか?」

と向き直って言った。そこに右京がしたり顔で真っ先に声を上げた。

右京「あんたらのそのやっすい企み、乗ってあげてもええで。どうせ勝つのは私やからな!」

シャンプー「中国四千年の歴史、甘く見るでないね!」

あかね「もう砂糖と塩は間違えないんだから!」

乱馬「あかね、お前は棄権したほうがいいんじゃないか」

あかね「乱馬は黙っ――」

あかねが乱馬に一喝しようとした時、またも乱馬に不幸が、白馬の蹄が降りかかったのであった。

?「天道あかね!お前の料理、僕が吟味してやろう!」

乱馬「ぶへぇっ?!」

皆が視線を向けた先には、腰に木刀をぶら下げ白馬に乗った青年が、優雅に扇子を広げていたのであった。

あかね「九能先輩っ?!」

右京「今日はホンマにオールスターかってくらい人が集まるなぁ」

右京が半ば呆れたようにぼやく。

九能「天道なびきから話を聞きつけて会いに来てやったぞ天道あかね。そして時に早乙女乱馬よ。僕の愛馬の足の下で何を寝ているんだ」

乱馬「これが寝てるように見えるのかこのスットコドッコイ!」

踏まれ続けていた乱馬は颯爽と起き上がり、九能を愛馬もろとも蹴り飛ばした。

ムース「綺麗に飛ぶもんじゃのー。それにしても乱馬よ、馬まで蹴り飛ばすとはなんとも鬼畜!」

乱馬「うるせえ!それより九能先輩が『天道なびきから話を聞きつけて』って言ってたな。なんのことだ?」

あかね「私も気になったから聞こうと思ったのに、乱馬が蹴り飛ばしちゃうんだもの」

乱馬「それなら大丈夫だ。もうすぐ落ちてくる頃だぜ」

乱馬がそう言うやいなや、九能が庭に頭から落下し周囲に重い音が響く。

九能「何をする、痛いではないか」

乱馬「人の顔、馬で踏んづけといてよく言うぜ。それより九能先輩、なびきから何を聞いたんだ?」

九能「早乙女乱馬、お前には教えたくない」

乱馬「何拗ねてやがる!」

頭の先が地面に突き刺さっている九能が、プイとそっぽを向く。

あかね「お願い九能先輩、教えて?買い物から帰ってきたら誰もいなくて困ってたところなの」

九能「教えてやろう天道あかね。僕が優雅に街で乗馬を楽しんでいたところでな、大荷物を抱えた天道家の面々に会ったつい先ほどのことだ」

ムース「いっそすがすがしいくらいに態度を変える奴じゃな……」

良牙「それにしても街で乗馬とは、なんとはた迷惑な……」

とここで九能はようやく頭を地面から抜き、ずうずうしくも天道家の居間に座り込んだのであった。

九能「天道なびきが近付いてきて、今宵天道あかねと早乙女乱馬が二人きりで夜を過ごすかもしれぬという情報を僕に勝手に吹き込み、情報料一万円を請求し無理矢理奪い去り、駅の方へ小躍りしながら向かって行ったというわけだ」

乱馬「つまり先輩はなびきにカツアゲされたと……」

あかね「そうじゃないでしょ!まったく、みんなしてそんな荷物持ってどこに行ったのかしら?」

あかねが首をひねる。そこへ右京が

右京「え?!乱ちゃん達何も聞いてへんの?」

驚いた声を上げる。

乱馬「どういうことだようっちゃん」

右京「私は乱ちゃんのオッチャンからプラカードで教えてもらったんだけど、『温泉に行ってくる。馬鹿息子が腹を減らしているかもしれないからよろしく頼む』って書かれたん見せられたで」

乱あ「お、温泉?!」

シャンプー「ホントに何も聞いてないあるか?私も駅の方走り去るハッピーから聞いたし誘われたね。でもその中に乱馬いなかったからもしやと思いこっち来てみたね。そしたら会えた、温泉行かないで良かったね」

驚愕し困惑する二人をよそにシャンプーは実に嬉しそうである。

あかね「温泉ってどういうことよ?!私達なんにも聞いてないじゃない!たまに私達二人だけのけ者にすることあるけど、今回のはちょっとひどいわよ!」

乱馬「おめえら二人は何か聞かなかったか?!行先とか、何かヒントになることとか!」

乱馬が良牙とムースに尋ねる。

良牙「い、いや、俺は何も。旅の途中で寄っただけなんで……」

ムース「お、おらはシャンプーを追ってきただけで何も知らん……」

良ム「なんかすまん……」

二人は申し訳なさそうに、乱馬達と視線を合わせずに謝った。とそこで乱馬が頭を掻きむしり低い声で唸り始めたのを見て、皆怒り出すと構えていたが

乱馬「だああああああ畜生!!もうこうなったらヤケでい!今日はパーッと食いまくるぞ!」

執念深くしつこい乱馬には珍しい意見が口から出てきた。それを聞いてあかねも一息着くと

あかね「ま、それもそうね。いい加減私もお腹空いてきちゃったし、これからみんなを追っても行けないし。よし!右京!シャンプー!みんなでいーっぱい料理作りましょ!」

笑顔でその話に乗ったのだった。

右京「お、ええな!ウチも今日は腕振ろうたるから、若いモンだけで楽しもか!」

シャンプー「乱馬がそう言うなら私美味しい料理たくさん作るね!」

良牙「おお!一時はどうなるかと思ったが、災い転じて福と為すとは正にこのこと!」

ムース「おなご達の仲も良くなったようで、正に雨降って地固まるじゃな!」

九能「フフフフ、やはり青春とは良いものだ……」

大団円。このまま皆で楽しい夜を過ごしたのであった。というわけにはもちろんいかなかった。誰も気付くことなくテーブルの上に放置されていた転生鏡が突如、激しく輝き出したのだった。

良牙「な、なんだこの光は?!」

ムース「くっ?!眩しくて何も見えん!」

シャンプー「何も見えないのはいつものことある!あかね、あの手鏡お前のあるか?!」

あかね「わ、私は知らないわよ!」

皆が混乱する最中、鏡はどんどんその光の強さを増していった。

右京「も、もう眩しすぎて目ぇ空けられへん!」

九能「もしや妖の類か!それならばこの九能帯刀が成敗してくれよう!」

乱馬「たまには良いこと言うじゃねえか!賛成だ九能先輩!おっらああああ!!」

光の中心に乱馬が飛び込んだ直後、七人の体は鏡の方へ吸い寄せられたのであった。

そして光が止んだ。天道家の居間には人っ子一人、生きる者の影は無かった。

今日はここまでで!

再開します!レスありがとうございます!

今日のOP代わりに

https://www.youtube.com/watch?v=fIIvV4q5FSE

???

乱馬「いってててて……みんなぁ!無事かぁ!」

光に吸い寄せられた直後、視界は一瞬ブラックアウトし、何故だか体が宙に放り出され、その後地面に叩き付けられたのであった。

あかね「ってててて。もう、一体なんなのよぉ」

頭をぶつけたあかねが痛そうにおでこをさする。

良牙「い、一体ここは、どこなんだぁぁぁぁ!!!」

誰よりもタフな良牙は、皆よりも早く周囲の状況を把握し、何よりも言い慣れているセリフを叫んだ。

右京「うるさいなぁあんた。ここがなんや言うのよ?」

ようやく光にやられた目が回復してきた面々は、周囲を見渡して驚いた。

シャンプー「ま、真っ暗……?」

ムース「このいくつもの窓はなんじゃ?!」

九能「確かにこれは窓だが、ただ窓はこのように浮かびながら移動したりはせん。ここは一体……?!」

そこは上下左右一面闇の中であった。そしてその闇に浮かび上がるように数々の窓枠が、思い思いに動き、時に反転し、隣り合わせの窓枠ではあり得ない程の景色を覗かせるのであった。

あかね「こっちは雪景色なのにこっちは砂漠……ねえ!これ何なの?!」

あかねは不安げな素振りを隠さずに、傍にいた乱馬の腕に組みついた。

乱馬「心配するなあかね、まずは落ち着くんだ」

シャンプー「あかねだけずるいね!私だって怖いある乱馬!」

右京「ちゃっかりそんなくっつきよるなんてあかねちゃんもやるな、それなら私もや乱ちゃん!」

二人も負けじと乱馬の腕にすがりつく。

乱馬「でえええい!今はそんなことやってる場合じゃないだろ!」

良牙(あかねさんが怖がっている!男響良牙!ここでなんとかしなくては!)

ムース(状況はなんだかよく分からぬがシャンプーに良いところを見せるチャンスじゃ!)

良ム(いや、でも待てよ……)

良牙(いっそここでうまいことあかねさん以外を亡き者にして、ここであかねさんと甘い新婚生活を送るというのはどうだろうか。くっくっくっく……)

良牙『ほら見てごらんあっちの窓。夜空が綺麗だよ。あれはペテルギウなんちゃら座っていうのさ』

あかね『へぇー、良牙君て物知りなのね。あの夜空に負けないくらい素敵っ!』

良牙『フッ、この俺が素敵なのは揺るがない事実だが、そんなことより俺の一等星は君だけなのさ!』

あかね『何言ってるか意味分かんないけど好きよ!』

良牙『俺もだ!』

良牙(……よし!これで行こう!)

ムース(いっそここでうまいことシャンプー以外を亡き者にして、ここでシャンプーと甘い新婚生活を送るというのはどうだろうか。くっくっくっく……)

シャンプー『一体いつになったら助けが来るあるかな……』

ムース『心配するでないシャンプー。何かあればおらがお前を助けるし、いつか必ずここからお前を連れ出してやる』

シャンプー『ムース……ここに来るまで知らなかたある。お前が、いやあなたが。こんなにも男らしく頼もしかったなんて!』

ムース『フ、ほめ過ぎじゃシャンプー。ただ能ある鷹は鷹爪拳と言うじゃろ。つまりはそういうことじゃ』

シャンプー『そんな言葉聞いたことないけどなんか好き!ずっと一緒にいたいある!』

ムース『おらもじゃああ!シャンプーーーー!!』

ムース(……よし!これで行こう!)

良ム(差し当たっては乱馬が厄介なのだが、まずは乱馬を葬り去るまではこいつと手を組んでおくか!なんなら邪魔しなければ生かしといてやってもいいわ!)

良ム「くっくっくっく……」

九能「この異様な空間、やはり妖で間違いないようだな。出てこい!この風林館高校の蒼い雷!九能帯刀が成敗してくれよう!」

この異常な空間においても、常にマイペースな一同であった。

?「ふざけた奴等だとは思ったが、一人なかなか出来る奴がいるらしいな。蒼い雷とやら。」

そこに聞き慣れない、妙に甲高い男の声が響き渡った。

乱馬「誰だっ?!姿を現しやがれ!」

右京「……やだ、なんか今の声気持ち悪なかった?」

ムース「確かに、あまり生理的に受け付けんタイプの声であったな」

乱馬「あ、やっぱり?俺もぞっとして真っ先に声上げちゃったぜ、ハッハッハッハ!」

一同「ハッハッハッハ!」

楽しく笑い合う中で、再度声が響く。

?「馬鹿にしているのか貴様ら!そもそもお前らこの状況どういうことか分かってんの?!常識じゃ考えられない景色が目の前に広がってるんだよ?アンビリバボーだよ、これで驚かないお前らはダンカンより馬鹿野郎だよ!」

良牙「とにかく姿を現して俺たちをこんなところに連れてきた目的でも話したらどうだ?このままじゃお互い埒が明かんだろう!」

シャンプー「そうね、早く出てくるよろし!」

?「そこまで言うならこの異空間の主、魔鏡の間の王、火神凶也の姿を見せてやろう!」

乱馬達の周囲に、どこからか煙が立ち現われ、彼らに体感したことのないようなプレッシャーを感じさせた。

――ドドドドドド

九能「いや待て、そこまでもったいぶられる程には見たくないぞ僕は」

火神「えええ?!このタイミングで止めんの?!ウソだろおい!わざわざ煙出したり『ドドドドドド』とか効果音まで流してんだよこっちは!それにだって君、自分のこと蒼い雷とか言ったり一番こっちぽかったじゃん、ここで裏切るのかよぉ……」

乱馬「いやー、珍しく今日は意見が合うな九能先輩!俺もそこまでやられて見たいかって言われたら絶対見たくねえもん、ハッハッハッハ!」

一同「ハッハッハッハ!」

笑い声が響く中で、先程とは違い余裕の感じられなくなった声が響いてくる。

火神「もう完璧怒ったわ、俺を怒らせちまったわ。お前らの態度によっては軽い感じで済まそうと思ったけど、こりゃかなりエグイとこ飛んでもらいますわ。まあええ、今からそっち行くさかい、待っときぃ!」

右京「なんか変な訛りやな」

すると上空から、辺りの闇よりも更に一段暗い闇と黒いマントを纏った、それなのに顔だけが奇妙なほど白い人物がふわりと降りてきた。

ムース「お、お前はっ!……ック」

あかね「な、なんて姿なの……?!ップ」

その姿に思わずムースとあかねは絶句し口に手を当てる。

火神「ようやく我の身に纏う闇を目の当たりにし恐れおののいたか。くっくっくっく、それで良いのだ人間共」

余裕を取り戻し、満足気に頷く火神。

右京「……オシロイ塗ってんのこいつ?」

乱馬「プスッ!」

右京の呟きにとうとう乱馬が噴き出す。乱馬が噴き出したことにより、皆ザワザワクスクスとざわめき出す。ただその中でも良牙だけは何故か難しい顔をしていた。

火神「な、なんだよ!び、ビビッてンのか?!ああ?!」

取り戻した余裕を、一瞬で無くす火神。

良牙「そうか!閣下だ!閣下を小さく太らせてタコ殴りにしたような顔だ!」

手の平をポンと叩き、ようやく取れた胸のモヤモヤに喜ぶ良牙であった。

一同「ハッハッハッハ!」

火神「閣下ではない!これはそういう魔を現すメイクなの!笑うなぁぁっ!!このいじめっ子どもが!!」

ムース「笑うなと言われてものう……」

右京「そもそも声とセリフが合ってなくておかしいねん」

シャンプー「体型と服装も合ってないね」

あかね「顔と声も合ってないかも」

火神「……っ。もういいもん……」

火神は長すぎて床に垂れているマントを翻し、しゃがみ込み地面を指でグリグリしている。

乱馬「あー、ちょっと言い過ぎたかもな。ま、閣下!元気出せよな!」

乱馬が鏡を励まそうと肩に手をかけるが

火神「だから閣下ではない!」

その手を勢いよく払いのけると飛び上がり叫んだ。

火神「本当は何故ここにお前らが呼ばれたのかとか、色々物語上話さなきゃいけないことあったけどもういいわ!これ以上いじられたくないのでな!早いとこお前らなど、数ある世界の中でもトップクラスに荒廃した異世界に送ってやるわ!」

あかね「ど、どういうこと?!」

火神「フ、泣いて謝ってももう遅いもんね!もうそこすっごい酷いから、人も街もなんかやべえことになってるから!我だったら絶対行きたくないって感じー!」

良牙「俺も言い過ぎたとは思ったが、やはりこいつは腹が立つな」

良牙が拳をわなわなと震わせる。

九能「異世界に送ってやるというと、もしやこの窓がその異界とやらに通じているとでも言うのか?!」

火神「ほう、流石は蒼い雷。その通り!我は様々な異世界へ移動し、また移動させる能力を持った魔の者よ!」

九能「気安く僕の名を呼ぶな」

火神「ああもうホント嫌こいつら!顔も見たくない!もうさっさと行ってしまえぇ!お前ら人間共が支配されている、あの世界へぇ!」

火神がそう叫ぶと、乱馬達の下へ一枚の窓枠が近付き、光を放ち始める。

乱馬「わっ、わああああ!!まぁ待て!何するつもりか分からねえがちょっと話を――!」

この空間に連れてこられた時よりも早く光は強まり、火神は乱馬が最後まで言い切る前に彼らを異世界へと送り出した。

火神「あぁーせいせいした。もう今日はジャンプ読んで寝よ。あとサンデー編集部に苦情の電話入れてやる」

涙目の火神は、そう言うとケツをバリボリ掻きながら自室へ向かうのであった。

かぶき町、万屋。

乱馬「どっ、わああああっと!!!」

またも宙に体を投げ出された一同。その中でも乱馬は綺麗に着地を決めたが、上から降って来る仲間達に潰され結局痛い目を見たのであった。

あかね「いっててて、こ、ここは?」

良牙「天道家の居間ではないですね、どうやらどこか民家の一室のようだが」パリン

シャンプー「とにかくさっきの辛気臭いところから出られて良かったね」

ムース「おらはシャンプーのいるところならどこでも構わんがな!」

右京「出られたのは良かったけど、あの白豚の言ってたことが気になるな」

九能「ああ、元の世界に帰ってきたのではなく、本当に奴の言う通り異世界に飛ばされた可能性がある。まあ、集団で夢を見ていただけという線も考えられるが」

あかね「夢を見ていただけなら、ここがうちの居間じゃないとおかしいんじゃ……」

乱馬「いいから俺の上からさっさとどきやがれぇぇっ!!!」

乱馬の怒鳴り声に、一同はヒョイとその体を彼の上からどかせた。そんな彼らに控えめに声が掛けられる。

銀時「あ、あのー、おたくらさ、人んちにどうやって入ってきたのかね?もしやウチに閃光弾投げ込んでその隙に入ってきたとか?だったらさ、今の激しい光はその鏡に纏わるオカルト的なエトセトラじゃなくて、ああ、テロリストの仕業かなぁ、っておじさん超安心するんだけど」

机の陰に隠れていた銀時が、申し訳なさそうに出てくる。

新八「鏡の妖怪も嫌ですけどいきなり閃光弾投げて侵入してくるテロリストに安心しないでください!」

神楽「もしかしてテロリストじゃなくて警察かもなー。最近のポリ公は平気でバズーカ撃ってきたりするし、この事務所、叩けばいくらでも埃は出るからなー」

銀時に続いて新八、神楽も顔を出す。

新八「埃って掃除してないって意味で良いんだよね?世間様に顔見せ出来ない方の埃じゃないよね、一応確認したいんだけど」

銀時「……と、時に新八君、いつも通りに暢気に突っ込んでる場合じゃねえぞ。こ、こいつらの格好見てみろ!」

神楽「あー、私や兄貴となんか似てるネ。あのごっつい傘とかも!」

神楽が無邪気に良牙の番傘や、乱馬達のチャイナ服を指差す。

新八「も、もしかして!や、夜兎?!テロリストの中でもこの宇宙で一番凶悪なの来ちゃったの?!」

新八が頭を押さえる。

銀時「おい神楽、この兄さん達は親戚かなんかか?ダメだろぉ、親族会議する時はちゃんと家主の銀さんにお伺い立てなきゃ。それにしても頭の眩しいお前の親父さんは来てないけど、もしやさっきのハゲしい光は親父さんだったりするのかな?」

銀時の明らかな動揺を気にもせず神楽は

神楽「そんな予定全くないアル。あの宇宙パイレーツ共がカチコミにでも来たんじゃないアルか?なんだかんだで結構あいつらの邪魔してるからな私達」

と冷静に返した。

新八「ちょ、ちょっとおおおお!夜兎一人でも厄介だってのにこんな人数で来られたらもう終わりですよ!は、早いとこ逃げましょう銀さん!神楽ちゃん!」

言うやいなや窓から飛び降りようとする新八と銀時。

良牙「ま、待ってくれ!何か誤解をしているぞ、俺達はテロリストでも警察でも宇宙パイレーツでもない!話を聞いてくれ!」

窓から飛び降りようとする二人を良牙が止める。

乱馬「お、おい……こいつらが何言ってるか分からねえが、これ本当に違う世界に来ちまったってのかよ……」

あかね「ほ、ほら!この人たちの格好!あの日光の方にある江戸村みたいなとこの従業員さんかもしれないじゃない!」

銀時「ここは江戸のかぶき町だ、江戸村なんてとこじゃねえぞ」

乱馬「かぶき町?」

あかねの言葉に窓枠に足をかけていた銀時が返す。

右京「そもそもさっきまであかねちゃんの家にいたのに、そんな知らんとこにうちらがいるわけないやろ」

ムース「これはどうやら落ち着いて話を聞いてもらった方が良いのではなかろうか」

ムースが珍しく真面目な顔で、眼鏡を外しながら言った。

シャンプー「その意見には賛成だがムース、眼鏡かけるね」

新八「ぎ、銀さん、もしかしてこの人達、鏡の……」

銀時「そ、そんなわけあるめえよぱっつぁん。まさか異世界からこんにちはとでも言うのかよ……」

事務所内に探り合う空気が流れる。

あかね「……実は私達『かくかくしかじか』な事情でどうやら異世界に来てしまったみたいなの」

新八「ええっ?!そ、そんな『かくかくしかじか』があったんですか?!銀さん!やっぱりあの鏡は本物だったんですよ!」

互いにこれまでの経緯を説明し合った一同。

神楽「いやー、そっちの人達とクロスとなると『かくかくしかじか』で説明省けるから助かるアル」

新八「神楽ちゃん、そういうのさらっと言うの止めようね」

銀時「とにかくだ。鏡が本物だったってことならさっさとその不細工な鏡の妖精とやらを引きずり出そうぜ。俺達はそれで依頼達成、お前らは元の世界に帰れる。どっちもハッピーでこの話終了じゃねえか。長編エピソードに流れ込まないで済むわ」

乱馬「そうだ!鏡っ!」

良牙「閣下の野郎引きずり出してやる!」

皆で一斉に鏡を探し出す。

右京「うわっ、最悪や……」

床に放り棄てられた転生鏡を見つけ、手にした右京が皆に見せる。

ムース「わ、割れておる……」

シャンプー「これ、本当に帰れるのか?」

鏡の部分は割れ、破片が無残に床に散らばっていた。

新八「えええええええっ?!割っちゃったんですか?!どうしてくれるんですか?!せっかく成功報酬貰えると思ったのに!!てかこれじゃ成功報酬どころか前金没収、それで済めばいいけど損害賠償なんて話になったら万屋無くなっちゃいますよぉ!」

新八が半狂乱で割れた破片を元に戻そうとパズルに奮闘する。

良牙「待て待て!俺たちが割ったとはまだ決まってないだろ!」

神楽「確かにな。でも私聞いたネ、お前らの登場シーンで『パリン』って音」

九能「それは本当か。時に話は変わるが少女よ。君の親戚におさげ髪のチャイナ服の健康美溢れる少女はいないかね?」

神楽「銀ちゃん、こいつごっつきもいアル。なんていうか新八とは違う、マジモンのやばさを感じるネ」

銀時「こいつの格好見てみろ、お侍さんだろ?本物の侍ってのはどこか狂気を身に纏ってるもんなんだよ。どこぞの腑抜けたアイドルオタ眼鏡侍と違うのは当たり前だろうが」

神楽「おお納得、銀ちゃんの天パもどこか狂気じみた音楽家を彷彿させるもんな!」

銀時「お前あとで校舎裏でシメるからな。まあそれは置いといて早速こいつらの登場シーンを見てみよう!VTR!スタート!」

右京「そんな便利な機能あるんや!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

乱馬『どっ、わああああっと!!!』

あかね『いっててて、こ、ここは??』

良牙『天道家の居間ではないですね、どうやらどこか民家の一室のようだが』パリン

シャンプー『とにかくさっきの辛気臭いところから出られて良かったね』

ムース『おらはシャンプーのいるところならどこでも構わんがな!』

右京『出られたのは良かったけど、あの白豚の言ってたことが気になるな』

九能『ああ、元の世界に帰ってきたのではなく本当に奴の言う通り異世界に飛ばされた可能性がある。まあ、集団で夢を見ていただけという線も考えられるが』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一同「……」

皆の冷え切った視線が良牙に向けられる。

良牙「ち、違う!俺じゃない!確かに俺のセリフの後に割れた音がしているが、行動の描写が無いじゃないか!俺がやった証拠にはならないだろう?!」

銀時「見苦しいぜ兄ちゃん、いい加減罪認めちゃいなよ。こっちもさ、警察突き出そうとかってわけじゃないから。払うモン払ってくれりゃそれでいいんだから」

新八「警察に突き出された方がマシなような気が……」

神楽「だいたい何アルかそのバンダナ、時代錯誤も甚だしいネ。そんなの今時トッシーくらいしかしてないネ」

良牙「バンダナは関係ないだろう!」

あかね「良牙君」

良牙「あ、あかねさん……」

あかねの悲しげな視線に思わず良牙の胸は痛くなった。

あかね「私たちも一緒に謝ってあげるから。ね?」

良牙「あかねさん!あなたって人は……」

この中で唯一味方をしてくれるあかねがいつも以上に天使に見えた良牙であった。

あかね「それでしっかり罪を償って、ちゃんとこの人たちにお金を返すのよ?」

良牙「……あ、はい。やっぱ払わなきゃいけないですよね」

ムース「とにかく割れたとはいえ、使えなくなったと決めつけるのは早計ではないか。この眼鏡の小僧が鏡を復元させようとしておる。なんとかなるやもしれん」

乱馬「それに賭けるしかねえか、ここで良牙をとっちめても何も変わりやしねえしな。おい閣下!聞こえるか!返事しろぉ!」

乱馬は仕方なさそうに頭を掻き、新八が必死に復元しようとしている鏡パズルを覗き込んだ。

銀時「おいおい、お前らはそれでいいかもしれないが、こちとら客の大事なモンぶっ壊されてんだ。そんなんで――」

銀時の言葉は突如鏡から放たれた光に遮られた。だがその光は先程に比べると限りなく弱いものであった。

良牙「これはいけるんじゃないか?!」

シャンプー「元の世界に帰れるあるか?!」

あかね「火神さんお願い!酷いこと言ったのは謝るから元の世界に私たちを帰して!」

すると鏡の破片から微かに声が聞こえてくる。

?「ちげーよ!ダチだよ!彼女じゃねえし!てか部屋勝手に入ってくんなっていつも言ってんじゃん!」

?「いやー、お母ちゃん嬉しいわ、マー君にお電話かかって来るなんて一万年と二千年振りくらいだもんねぇ!お母ちゃん八千年過ぎた頃から友達いないんじゃないかと思っちゃてて。し・か・も、女の子の声したじゃない!」

マー君「『しかも』の間の『・』やめろババア!いいから早く出てけよ!あとマー君て呼ぶな!」

お母ちゃん「はいはい、なんだっけ?水鏡凍季也さんだっけ?じゃあもう行くから、あと下にチャーハンあるから好きな時に食べるんだよ」

マー君「火神凶也だよ!」

鏡から聞こえてくる一連のやり取りを呆れた表情で聞く一同。

新八「……何これ、こんなんが鏡の妖精なんすか?」

右京「ああ、確かにこの生理的に受け付けん声はあいつやなぁ……」

銀時「洞爺湖の仙人といい、こういう奴等しかいないのかこの手の話は」

とここで鏡から咳払いが聞こえ、先程よりトーンを落とした声が聞こえてきた。

火神「クックックック、苦しんでいるようだな貴様ら。我に歯向かった報いを受けるがいいのだ、ハッハッハッハッハッハ!」

あかね「そんなことよりマー君さん、鏡が割れちゃったの!これでもちゃんと元の世界に帰れるの?!」

火神「マー君て呼ぶなぁっ!!てか会話聞こえてたのかよぉ、もういいよぉ。マジ萎えるわぁ……ってえ?鏡、割っちゃったの?」

乱馬「ああ、割れちまったんだ。で、どうなんだ?俺達は帰れるのかよ?」

火神「道理で反応が弱すぎると思ったわけだ。はっきり言おう。その割れた鏡ではどうにも出来んな。残念でしたー、我を愚弄した罪だと思って生涯その世界で生き続けるといい!」

乱馬「……この鏡、粉々にしていい?」

乱馬が拳をワナワナさせながら皆に尋ねる。皆、気持ちは分かるがといった顔で首を横に振った。

あかね「本当にごめんなさい!でも私達どうしても元の世界に帰りたいの!方法は本当に無いの?!」

火神「え?!い、いいや、な、無いってわけでもないんすけどぉ……」

あかねの真摯な言葉に先程までとは打って変わったテンションになる火神。そこで銀時はあることに感付き、シャンプー、右京、あかねに走り書いたメモを見せる。

そこには『こいつは女に免疫がない。色仕掛けで説得しろ』と書かれていた。

右京「ああ、私はなんて事を言うてしまったんや。聞けば聞くほど魅力的な素晴らしい声や、聞くだけで良い意味でゾクゾクするわぁ」

シャンプー「私もね。さっきは暗くてよく見えなかったけど、思い返せば思い返すほど、あなたの姿がかっこ良く私の脳裏に蘇るね。ああ、早く会いたいある」

ムース「シャ、シャンプー!なななんてことを言うんじゃああああがふっ!!!」

暴走し始めたムースを男子全員で鎮圧する。

あかね「そ、そうよ!私もぜひ自慢の手料理を火神さんに食べさせてあげたいなぁなんて」

乱馬「それはよした方が良いんじゃ――」

あかね「なんか言った?!」

乱馬「言ってません」

火神「そ、そうか。そこまで言うのならば仕方ない。実はな、その世界にはまだ転生鏡がある。元来、転生鏡は世界に一つなのだがその世界はまだ我が魔族になる前に生きていた世界でな。我の子孫にスペアとして幾つかの転生鏡を残してあるのじゃ。それを見つけよ!その暁には、そなた達は我の花嫁となることができるだろう!」

最後の部分は聞かなかったことにして、その言葉に皆が喜ぶ。

新八「やりましたね銀さん!これで賠償金払わずに済みそうですよ!」

銀時「ああ、ついでにスタンドの発動条件も聞けば依頼完了!一気に億万長者だぜぇ!」

ハイタッチに小躍りで喜ぶ二人。

良牙「お前の子孫とやらは一体どこにいるんだ?!やっぱりあの閣下なのか?!」

火神「だから閣下じゃねえよ!まあある意味閣下なんだけどさ。我はそこから遠い異星の王族じゃった。今も我の血が続いていれば、異星の王として君臨していよう」

右京「ホントに閣下やったんや」

九能「それはどこにあるのだ?!サイド7か?!」

火神「どこだよそれ知らねえよ、無駄に良い声だし。まあ今その星があるかは分からんが転生鏡の反応はあるからの。とにかく鏡を探せ!探すのじゃ!」

銀時「おい水鏡マー君閣下!ちなみにお前のスタンドの発動条件はなんだ?!ついでに聞かせてくれ!」

鏡「おいお前全部名前間違えちゃてるよ。まあよい。聞きたいか?!我が力の発動条件を!クックックック」

一同が固唾を飲んで見守る。

火神「それはなぁ!じ――」

定春「クチュン!」

定春のくしゃみの勢いと何やらで、今度こそ鏡は粉々に宙を舞ったのであった。

一同「あ……」

――なんやかんやあった後

銀時「まあなんやかんやあったが、俺たちの目的と利害は一致しているわけだ。俺達は依頼達成のため、お前たちは元の世界に帰るため。ここは協力してあの鏡を探そうじゃねえか」

良牙「そうは言ったってあんた。宇宙まで含めてどこにあるか分からん鏡を探すなんて無茶苦茶じゃないか?」

神楽「それは心配いらないネ。漫画特有のご都合主義でなんやかんやあってきっと見つかるはずネ」

あかね「そういうものなのかしら」

乱馬「ま、この世界のことなんて全く俺らには分からねえんだ。手組んでくれるってんなら喜んで誘いに乗ろうじゃねえか」

乱馬の言葉に一同が頷く。

新八「それならまず自己紹介でもしませんか?いつまでも互いの名前も知らないままじゃ色々やりにくいですし!」

九能「それもそうだな。少年、名はなんという?」

九能が新八に名前を尋ねる。

新八「僕ですか?僕は志村新八っ――」

九能「聞いておいてなんだが人に名を問う時は自分から名乗るのが礼儀だな!よし僕から名乗ろう!」

新八「は、はあぁ……」

九能「僕の名前は九能帯刀。人呼んで風林館高校の蒼い雷、青春真っ盛りの17歳だ」

どこからか取り出したマサカリを掲げ九能の自己紹介が終わった。

新八「なんかこのタイプの話を聞かない人、銀さんの周りによくいますよね」

銀時「ああ、これは紛れもねえ。ヅラ系馬鹿男子だ、ほっとくぞ」

小声でささやき合う二人とは対照的に神楽が楽しそうな声をあげた。

神楽「おお!自己紹介とかなんか合コンみたいで楽しくなってきたアル!飲みモン持ってくるネ!気の利く女をアピールしてライバルに差をつけるネ!」

すぐに神楽が台所へ走り出す。

右京「なんや元気な子やなぁ、微笑ましいわ。あ、私は久遠寺右京。得意料理はお好み焼き、そこの乱ちゃんの許嫁や」

流れで右京も軽く自己紹介を済ます。

シャンプー「サラッと勢いで何言ってるね!乱馬はこの私、シャンプーの花婿ね!」

二人がしょうもない言い合いを始めるのを横目に

銀時「これはどう見るね、新八君」

銀時が新八に尋ねる。

新八「ええ、これはどうやらハーレム系漫画からやってきた方々と判断できますね」

銀時「よろしい、合格だ」

乱馬「だあああ!!もううるせえよお前ら!今そんな話してる場合じゃねえだろ!さっさと自己紹介なりなんなり終わらせて、早く鏡見つけて帰るんだよ!」

乱馬の言葉に二人が仕方なそうに黙る。

乱馬「俺の名前は早乙女乱馬。よろ――」

神楽「飲みモン持って来たヨー!ってうわああっ!」

走って戻ってきた神楽が躓き、お盆に乗っていたオロナミンCを乱馬にぶちまけてしまう。

乱ま「どわああああ!!冷めてえっ!!」

新八「ど、どうなってるんですかこれ?!」

銀時「フ、ファーストチルドレン?!」

神楽「OH、一瞬で私よりグラマーね……」

呪泉郷での悲劇により、水をかぶると女に変身してしまう体質の乱馬に三人が驚く。

らんま「……中国の呪泉郷ってとことで修行してよ、かくかくしかじかなワケで水をかぶるとこんな体になっちまうってわけさ。ちなみに俺と一緒でシャンプーとムースとりょ――」

良牙「乱馬ぁ!!」

らんまの言葉を良牙が遮る。

九能「おお!おさげの女よ!僕に会いに世界の壁まで越えて来てくれるとは!その気持ち、しっかりと受け止めよう!」

九能がらんまを力強く抱きしめる。

らんま「……俺から、離れやがれぇっ!」

らんまの渾身の右アッパーで、九能が開けっ放しの窓から空の彼方へ消えていった。

新八「な、なにあの威力……ぎ、銀さん!やっぱりこの人たち夜兎なんじゃないですか?!変な指の形したままお星さまになっちゃいましたよ九能さんて人?!」

銀時「な、なぁにビビんなよ。ほらあれだよ、ギャグ漫画補正だよ。このクラスの威力は最近あんまり見ねえけど、この人たちはそういう世界から来たんだよ。きっと一コマ経てばなんてことなく戻ってきてるから」

一コマ後。

新八「戻って来ねええええええ!!!!」

らんま「九能先輩なら大丈夫だ。あの人記憶喪失だろうが頭にわけわかんねえ鳥が乗ってようが逞しく生きていける人だから」

神楽「確かに逞しくはありそうネ。ただあの人乱馬が変身すること知らないアルか?」

神楽が先程のやり取りを見て疑問を投げかける。

あかね「そうなの。一体何がどうなったら乱馬の変身体質に気付かずに女のらんまに惚れちゃうなんておバカなことが起こるのか分からないけど、とにかく気付いていないの」

銀時「まあ帰って来ないのは少し心配だが一人減って会話も回しやすくなったことだしよ、サクサクいこうぜ。じゃあ、そこのショートカット」

あかね「あ、はい。私は天道あかねっていいます。と、得意料理は、野菜炒め、かな?」

らんま「無理して料理の話しなくていいじゃねえか」

銀時「で、君は乱馬君とは何もないの?この流れだと君もハーレムの一員なわけでしょ?」

らんま「は、ハーレムってお前?!」

あかね「い、一応、許嫁です。ただそれは勝手に親同士が決めただけであって別に私達はなんにも――」

新八「ツンデレキターーーー!!!」

神楽「銀ちゃん、新八きもいネ。属性という仮面に惑わされた哀れなピエロネ。てか私も分類的にはツンデレヒロインなんだけど」

銀時「新八がきもいのは確かだが神楽、ヒロインはゲロ吐かねえんだよ。この漫画のヒロインは結野アナだから」

神楽「万歩譲ってヒロイン結野アナでいいけど、ツンデレなら私負けないアル。『このバカ犬!』」

新八「ツンデレに反応した僕が悪かったからもう止めようか神楽ちゃん!」

神楽「『うるさいうるさいうるさい!』」

新八「だから簡単に壁越えるようなマネは止めろって言ってんでしょうがぁぁぁ!!!

あかね「ハハハ……ホントに元気な人達ね……」

銀時「よーし、じゃあ次はそこのセクシーチャイナ娘」

銀時がシャンプーを指差す。

シャンプー「私はシャンプー。女傑族の戦士ね。そして乱馬の花嫁ある!」

そう言ってシャンプーは乱馬に抱き付いた。

らんま「は、離せシャンプー!」

シャンプー「皆が見てるからって恥ずかしがることないね」

その様子を見ていたあかねが、ムスっとした顔で台所に向かう。

新八「なんか女の子同士のこういう風景ってのも中々良いもんですね。他の作品では良く見るけど、うちの女性陣はどうもギスギスしてるのが多いからこういうのあんまりないじゃないですか」

銀時「うん、悪くないね。それにあの色気のある感じ。チャイナ服を着る女ってのはああじゃなきゃな。いっそ流れであの子のこと神楽って呼んで、いつの間にかレギュラーチェンジ的な展開に――」

神楽「面白くないネあいつ。私と服装から喋り方、あの女を武器にする感じとかキャラがダダ被りネ」

神楽の言葉に耳を疑う二人。

新八「へ?お、女を武器にって神楽ちゃん。神楽ちゃんの武器はその怪力と傘じゃないか、嫌だなぁもう」

銀時「神楽ちゃん?君とシャンプーがキャラ被ってるとなるともうなんでもアリになっちゃうから。俺と流川楓だってキャラ被ってない?とかワケ分かんないことになってくるからね?ひとまず鏡でも見て来なさい」

神楽「……いつか消してやる。レギュラー争いってものの厳しさ、教えてやんよ」

新八「神楽ちゃん?今ボソッと流暢に恐ろしいこと言ってなかった?」

そんなやり取りをしていると、バケツを持ったあかねが戻って来る。

あかね「いつまでイチャイチャしてんのよ馬鹿乱馬ぁぁぁぁ!!!!」

二人にバケツの水をかけると、今度はシャンプーが猫に変身したのであった。

シャンプー「ニャーオ!」

らんま「猫は嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

猫になったシャンプーが顔に張り付いたまま、半狂乱でらんまが部屋を駆け回る。

新八「ほ、本当にシャンプーさんも変身しちゃった……って一体らんまさんに何があったんですか急に!」

良牙「乱馬は極度の猫嫌いなんだよ」

当惑する新八に良牙が答える。

ムース「いつまでオラのシャンプーに抱き付いてるか早乙女乱馬ぁぁぁぁぁ!!!」

怒り心頭のムースがらんまだけを綺麗に蹴り飛ばし、どこからか持ち出したヤカンでシャンプーにお湯をかけた。

シャンプー「私と乱馬の邪魔するでないねムース」

うまいこと変身時にチャイナ服を着ることができたシャンプーが、鋭い視線でムースを睨み付ける。

銀時「よし、じゃあ次はそこのシャンプーちゃん大好きなロン毛が自己紹介しろー。ちなみに銀さんなんとなく関係見えて来ちゃったぞー」

銀時がムースに振る。

ムース「オラはムース。暗器使いのムースじゃ」

定春「ワン!」

神楽「なんであの人、定春に向かってカッコ付けて自己紹介してるアルか?」

あかね「あの人はね、酷いド近眼なの」

神楽の質問にあかねは優しく答えた。

銀時「じゃあラストはそこの幸薄そうな、鏡を割ったバンダナ君、どうぞ」

良牙「くっ、幸薄そうなって言うな!」

らんま「そうだ!こいつは幸薄そうじゃなくて幸薄いんだ!」

良牙「黙っとれ乱馬!」

突如顔を出してきたらんまの頭を下げさせる良牙。

良牙「俺の名前は響良牙だ。よろしく」

神楽「で、お前は誰が好きアルか?」

良牙「へ?なな、何を言っているお嬢ちゃん。あまり年上をからかうもんじゃあ無いぜ」

神楽「ちょっと私より年上だからって年上面すんじゃねーヨ。人生は長さじゃなくて濃度なんだよバッキャロウ。で、誰が好きアルか?」

良牙「な、生意気なクソガキめぇ……!」

銀時「なんかその声聞き覚えあんだよなぁ、誰だったっけなぁ……」

良牙の声を聴きながら物思いにふける銀時。

新八「まあまあ神楽ちゃん、その話は置いといてさ。せっかくあちらのみんなが自己紹介してくれたんだ。今度はこっちの番じゃないかな」

神楽「それもそうネ!私は神楽!かぶき町の女王ネ!何か困ったことがあったらいつでも私のトコに来るといいよ!酢昆布持ってな」

あかね「よろしくね、神楽ちゃん」

あかねが微笑みかける。

神楽「おう!なんか姉御みたいな雰囲気アルなあかねは」

新八「確かに言われてみればそんな気も」

銀時「エディ・マーフィーだ!金曜ロードショーで見たエディ・マーフィーの声にそっくりなんだ!」

新八「い、いきなりなんなんですか銀さん」

銀時「いや良牙の声だよ。どっかで聞いたことあるなぁって思ってたらそうだよエディに似てんだよ!いやーすっきりした。まー、それとは別になんかクソ懐かしい感じがするんだがまあいいか」

銀時「オッスオラ坂田銀時。この町で万屋やってまーす。ってことでこれで全員自己紹介終わったな!このまま作戦会議だ!」

一同「オーッ!!」

新八「……アレ?僕やってなくね?あの人に邪魔されてそのまま流れたっきりなんですけど……ねえ、ねえってば!みんなぁ!」

ガヤガヤと作戦会議に移ってしまった皆の耳には新八の声は届かないのであった。

?「アンタ達!さっきからどったんばったんうるさいんだよ!ろくに家賃を払わないどころかウチの開店準備まで邪魔する気かい?!」

そこで玄関のドアが勢い良く開かれ、煙草を指で挟んだ、着物を着た老婆の怒鳴り声が響く。

新八「げっ?!お登勢さん?!」

お登勢と呼ばれた老婆が、我が物顔で玄関から入って来る。

銀時「いやーすまなかった。だがいくら開店準備前とはいえ、今からじゃもうその顔面整えるのは無理じゃなかろうかね?」

お登勢「顔面ならとっくに戦闘態勢万端だいバカヤロー!で、一体何なんだいそのガキ達は?寺子屋でも新しく始めんのかい?」

煙を吐き出しながらお登勢が迷惑そうに言った。そしてその後ろから

?「ソレナラ私ノヨウナセクシー女教師ヲ雇ウ気ハナイカ?!アホノ坂田ァ!」

着物姿の、猫耳を全く活かしきれていない女が威勢良く出てくる。

銀時「『給食費盗んだのは誰?みんな顔を伏せて、犯人だけ手を挙げてください。先生誰にも言わないから、ね?はい、手を挙げて』って流れで自分が手を挙げちゃうような先生は嫌だね」

神楽「ていうかキャサリンが嫌ある」

新八「銀さんちょっと失礼ですよ!もうキャサリンさんだって心を入れ替えたんですから。それと神楽ちゃん、今のじゃ普通に嫌いな感じ出ちゃってたからね。もうちょっとオブラート使っていこう」

キャサリン「何言ッテルカアホノ坂田、私ガ手ヲ挙ゲルノハ頭ニ銃突キツケラレタ時クライイナモノネ。盗ルモン盗ッタラコンナトコ、マッハデ脱出スルワボケェ!」

新八「このブス猫全然心入れ替えてなかったぁぁぁ!!ってあっ!!キャサリンさんを見たららんまさんの猫嫌いが発症しちゃうんじゃ?!」

新八が心配そうにらんまの方を見る。

らんま「う、うわあああ!!ね、猫ぉっ!?……じゃないな、これなんだ新橋?」

新八「新八です」

キャサリン「猫ダヨブスオサゲ!コノ神聖ナ猫耳ガ貴様ニハ見エナイッテノカ!」

?「もしキャサリン様の頭に付いているものが猫耳と初対面で見破れる方がいましたら、直ちに私が責任を持って病院に連れていきます」

お登勢の影からモップを持った可愛らしい着物姿の少女が出てくる。

良牙「大丈夫だ、ただの妖怪にしか見えん」

たま「それは良かったです。私はメイドロボのたまと申します」

あかね「ロボットなのあなた?!ここの科学力って凄いのね……」

たま「源外様の改造により、キャサリン様くらいなら小指で消し飛ばす程の戦闘力も有しております」

たまが微笑みながら頭を下げた。

キャサリン「モット他ニ良イ例エナカッタノカヨ!」

ムース「シャ、シャンプーが二人いるだと?!ど、どうなっておる?!」

新八「ムースさん、アンタ今までどうやってシャンプーさんを認識してたんですか?」

シャンプー「こんな化け物と見間違うとは心底見損なたある。新横浜、その竹刀でこの男叩き出すよろし」

新八「新八です」

ムース「おい新木場!どっちが本物のシャンプーなんじゃ!同じ眼鏡同士、オラに答えを教えてはもらえぬか?」

新八「新八です。てかおいぃぃっ!お前らわざとやってるだろ?!なんでこの世界来て一時間と経たずに僕のキャラ掴んでんだよ!」

お登勢「あーもう!ギャーギャーピーピー煩いんだよ新八景島シーパラダイス!さっさとこれがどういう状況なのかを説明しな!」

新八「途中まで惜しかった!僕新八です!って、お登勢さんまで一体なんなんですかもう……まあ簡単に説明しますとですね、『かくかくしかじか』ってわけなんですよ。信じてもらえるか分からないですけど」

いい加減痺れを切らしたお登勢に新八が説明する。

お登勢「俄かには信じられない話だけど、アホなアンタ等の周りで起こる話だ。そんなアホなことも起こるもんなのかもしれないね」

右京「いやぁ、話の分かるおばあちゃんで助かるわぁ」

お登勢「誰がおばあちゃんだい!今でも心は遥かセブンティーンだよ!で、銀時。アンタこのガキ達の面倒どうする気だい?私は払うモン払ってくれたらなんでも良いがね、家賃もろくに払わないような穀潰しのくせに、このガキ達の面倒見るなんて言ったらタダじゃおかないよ!」

お登勢がぴしゃりと言い放つ。

良牙「払うモン払ってくれたらとは、この銀髪と同じこと言いやがる……」

先程の銀時のにやついた笑みが良牙の脳裏によぎる。

神楽「確かにこの穀潰し機は私一人満足に養えていないからナ」

銀時「何その世界で一番いらなそうな機械」

新八「でもお登勢さんの言う通りですよ銀さん。ちゃっちゃと鏡が見つかればいいですけどすぐに見つかるとは限らないし」

新八「そうなれば住まいだって食事だって必要になってきますよ?いくら鏡が見つかれば億万長者だからって、現状の生活すらままならない僕等じゃサポートしきれませんよ」

新八の言葉で行き詰った空気が流れるが、銀時は不敵な笑みを浮かべ言った。

銀時「このかぶき町で何甘えたことぬかしてんだぱっつぁん。自分の食い扶持は自分で稼ぐ、この町で生きてく上で当たり前のことをしてもらうんだよ」

良牙「どういうことだ?」

銀時「これからお前らにはそれぞれの適正に見合った職場で、働きながら鏡の件について調査してもらうことに今決まった!ここんとこ丁度な、何カ所からか良い人柱力じゃなかった人材紹介してくれないかって依頼が来ていてな」

あかね「わ、私たちがこの町で働くの?」

あかねが不安げに尋ねる。

銀時「ああ、まあ安心しろって。ソープに沈めなんて酷な事は言わねえからさ」

らんま「何勝手なこと言いやがる!俺達は早く鏡見つけて元の世界に帰るんだ!それを働きながらなんて悠長な――」

右京「まあまあ乱ちゃん、やっぱ先立つものがないと人生やっていけへんのも事実や。ウチが幼少の頃、屋台盗られた時に比べれば全然マシやで。仕事紹介する言うてくれてるんやから」

らんま「う……そ、その話は……」

威勢良く啖呵を切った乱馬であったが、右京の屋台盗難話を聞き引っ込んでしまう。

右京「それに仕事しながら鏡の調査もしてって、それって無差別格闘流としては良い修行のチャンスなんやないの?乱ちゃんならその生活の中で更に強くなれるはずや」

らんま「く……やるしかねえのかぁ……」

お登勢「ま、話も決まったみたいだから私たちはもう行くよ」

そう言ってお登勢は玄関へと、あとの二人を引きつれて向かう。

たま「皆さん、失礼いたします」

キャサリン「アデュー!私ニ惚レルナヨー!」

良牙「なんだろう、今ならかなり高威力の獅子咆哮弾を撃てる気がする」

とここでお登勢は振り返り、銀時に声をかけた。

お登勢「そうだ最後に銀時。私のとこにも活きの良いの一人見繕っておくれよ。どっかの万屋と違って給料もメシも住むとこも用意あるからさ」

銀時「了解。神楽ぁ、一番テーブルご指名です!フゥ!」

神楽「なんで私アルか銀ちゃん!ここは幸薄バンダナ辺り行かせて皿洗いでもさせとけばいいネ!」

神楽は憤慨した様子で良牙を指差す。

良牙「おいチャイナ娘!幸薄バンダナと呼ぶなぁ!」

あかね「まあまあ良牙君、子供の言うことなんだから、ね?今はとにかく働くとこ決めてもらって、鏡の調査に乗り出さなきゃ!」

良牙「あかねさん……」

ムース「で、おら達を一体どこに売り飛ばそうというんじゃ?返答によっては容赦せんぞ」

壁にもたれかかったムースの、眼鏡の奥がキラリと光った。

銀時「そんな物騒な顔するんじゃねえよ。どこも俺達とは顔馴染みの奴等のトコばっかだから安心しろって。よし!じゃあ一人一人このアンケートに記入してくださーい!このアンケート結果から、皆さんに合った就職先を紹介しまーす!」

今日はここまでで!

次は土曜日くらいになりそうです、それでは

再開します

今日のOP!

https://www.youtube.com/watch?v=YT_cYObUuW4

一か月後、スナックお登勢。

銀時「お、おーっす」

時刻は午後九時も回ったところ。銀時ら万屋組は、夕飯と晩酌を済まそうとスナックお登勢に顔を出していた。

あかね「あら銀さん、いらっしゃい。新八君も神楽ちゃんも、お疲れ様」

カウンター越しに和服姿で割烹着を着たあかねが笑顔で出迎える。奥のテーブル席ではキャサリンとたまがお客の相手をしていた。

新八「こ、こんばんはあかねさん。いやー、まったく疲れちゃいましたよ」

首をゴキゴキと鳴らしながら新八がカウンター席に座る。

神楽「今日もなーんも成果無かったネ、あか姉」

ぐったりとした様子で神楽もカウンターに倒れこむ。

あかね「あれからもう一か月、なんの手掛かりも得られないんじゃ流石に疲れてきちゃうよね、まあこんな時はご飯食べて元気出してよ!みんな、何食べたい?」

疲れ切った三人を元気付けようと、あかねはカウンターから身を乗り出して尋ねた。

銀時「あ、あー、お、俺はとりあえず熱燗もらおうかな?飯は後でいいや、ハハ、やっぱ疲れてると先に酒飲みたくなっちゃうんだよねオジサンさんだからさ」

銀時が引きつった顔で酒を注文する。

あかね「はーい、新八君と神楽ちゃんはどうする?」

新八「僕はお茶で。それとぼ、僕もご飯は大丈夫です。後で姉上と食べるんで!」

今日は夜の仕事で自分の姉が家にいないことを知っていた新八であったが、咄嗟にそんな言葉が出てしまっていた。

神楽「私卵かけメガマックス盛りご飯!」

神楽が元気に手を挙げて答える。

あかね「うん、すぐに作るからね」

あかねが注文を受け三人から離れると、銀時は気怠そうに口を開いた。

銀時「よくお前はあいつの出す謎にマズい卵かけご飯が食えるな。なんだったらもうその辺の雑草とかでいいんじゃねえの?タダだし」

神楽「何を言うか銀ちゃん。あか姉の作った卵かけご飯が何故か酸っぱくても、口に入れた途端吐き出しそうな辛味を帯びていても私は気にしないネ。そこに白米があるという事実だけでご飯山盛り食えるネ」

銀時「じゃあいっそ山でも食ってこい味覚崩壊娘」

神楽「私卵かけメガマックス盛りご飯!」

神楽が元気に手を挙げて答える。

あかね「うん、すぐに作るからね」

あかねが注文を受け三人から離れると、銀時は気怠そうに口を開いた。

銀時「よくお前はあいつの出す謎にマズい卵かけご飯が食えるな。なんだったらもうその辺の雑草とかでいいんじゃねえの?タダだし」

神楽「何を言うか銀ちゃん。あか姉の作った卵かけご飯が何故か酸っぱくても、口に入れた途端吐き出しそうな辛味を帯びていても私は気にしないネ。そこに白米があるという事実だけでご飯山盛り食えるネ」

銀時「じゃあいっそ山でも食ってこい味覚崩壊娘」

新八「ハハ……あかねさんの料理も姉上程ではないですけどかなり強烈ですからね。一体なんでただの卵かけご飯であの味が出せるんだろう」

新八が今日の疲れとはまた別の理由でゲッソリした苦笑いを浮かべる。

銀時「まあどんな物体でもダークマターに変換できるお前の姉ちゃんクラスの錬金術師はそういねえからな。ったく一体何を練成しようとしたらあれだけの呪いを受けるんだよ」

神楽「兄さんは人体練成を――」

新八「神楽ちゃんストップッ!」

疲れた体に鞭を打ち、新八は神楽のセリフを遮った。

新八「はぁ、それにしてもお腹減ったなぁ。てか銀さん、今日はあかねさんシフト入ってないはずだったんじゃないんですか?だからここでご飯食べようって話だったのに」

新八は非難の念がこもった瞳で銀時にぼやいた。

銀時「昨日来た時には明日休みって言ってたんだよ」

銀時も空の腹をさすりながら不機嫌に返答する。

神楽「流石あか姉、きっと休みだったけど働きたくって店出ちゃったネ。仕事に対してバカ真面目アルな。お前らクズ共も少しは見習えヨ、これだから昨今の駄眼鏡はとか尾木ママに言われるネ」

新八「○木ママは駄眼鏡なんて絶対言ったことねえよ!」

銀時「いーや言ってたね。ちなみに大木凡人も言ってたわ」

新八「それもねーよ!てかなんで二人とも眼鏡かけてんのに眼鏡ユーザー貶めるようなこと言うんですか!そして名前伏せろよ!」

新八が声を荒げて突っ込んでいると

あかね「出来たわよー」

とあかねが注文の品を持って三人の前に置いた。新八は突っ込むのを止め、はぁと一息吐くと、湯気の立ったお茶に口を付けた。

銀時「今日お前休みだったんじゃないのか?」

銀時もお猪口に口を付けながらあかねに尋ねた。

あかね「そうだったんだけどね、今日お登勢さんちょっと用事があるみたいだから代わりにお店出ることにしたの。やっぱりお世話になってるし少しでも恩返ししたいから」

神楽「いやー、やっぱあか姉は良い奴アルな。この不真面目と無能眼鏡も少しは見習って欲しいネ」

猛烈な勢いでメガマックス盛りのご飯を片付けながら神楽が口を挟む。

新八「ちょっと神楽ちゃん、駄眼鏡より酷いことになってんだけど」

銀時「お前が店に立たないで危険物を量産しないことが、何よりの恩返しだと俺は思うんだけど」

あかね「なんか言った銀さん?」

銀時「いや何も」

あかね「全くもう、乱馬みたい」

銀時「ったく、お妙みたいだぜ」

少しすねた様子であかねがそっぽを向き、銀時は呆けた顔で酒を飲む。それを見た新八達は、疲れているとはいえ、いつもの変わらぬ日常の有難さをほんのりと感じていた。

そう、ここには退屈だけど穏やかで、ありふれてはいるが、かけがえのない時間がゆっくりと流れていた。きっと明日も明後日も、そのまた次の日も、何年経ってもこんな温かい日々が続いていくのだろう。

絶対この幸せな日々を守り続けよう。誰も口には出さないが、皆そう思っていた。場末の汚いスナックで。大好きな人達に囲まれながら。

END

おいぃぃぃぃぃぃ!終わっちゃダメだろぉぉぉぉぉぉぉっ!?

銀時「っておぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!!ふっざけんな!!>>157の言う通り終わってる場合じゃねえだろ!!何勝手に日常END的なナレーション入れてんだよ誰だよ?!そもそもあかねぇ!!!」

銀時が勢い良く立ち上がり、カウンターを強く叩いた。

あかね「は、はい!」

その勢いに気圧され背筋を伸ばしてあかねが答える。

銀時「何がババアが用事あるから代わりに店出てるだぁ?恩返ししたいだぁ?そんなことより鏡の手掛かりを見つけに行けよぉぉぉ!!!確かにさぁ、言ったよ?働いてもらうって。でもさ、それってあくまで鏡について調査しながらって感じじゃん!」

銀時が頭を掻き毟りながら更に言葉を続ける。

銀時「それが何よ今の状況、完璧スナックお登勢の看板娘だったじゃん!一日働いて疲れて帰ってきた俺らを優しく出迎えてくれてちょっと嬉しかったじゃん!それと新八、神楽!お前らもだ!何微笑ましくあのナレーションを享受しながらエンディング迎えようとしてんだコラ!」

新八「す、すいません銀さん。あまりに心地良い日常の空気に突っ込みも忘れて浸っちゃってました。もうこのまま終わりでいいかなぁって、この話」

神楽「私はそんなことなかったヨ、この後如何にして宇宙大皇帝になるかを夢想していたネ。設定上では私一度死んだし、もう体の9割がサイボーグ化しているアル。ちなみにメタリックモードは一回使ったらその後30分は使えなくな――」

銀時「お前に至っては日常どころか現実すら見えてねえじゃねえか馬鹿野郎!」

神楽の長々とした妄想を遮り、銀時はもう一度カウンターを叩いた。

銀時「とにかくだ!あかね、お前も含めて異世界組にこれから説教に行こうと思う!」

あかね「せ、説教?!そ、そんな」

銀時「だいたい最初に決めてあったろ、仕事しながらでも調査をして4、5日に一回で良いから報告をしに来るってよぉ」

あかね「そ、そういえばそんな話だったかも。ハハハ……」

第一回作戦会議のことを思い出し、気まずそうにあかねは笑顔を作った。

銀時「それがお前をはじめ、どいつもこいつも仕事が忙しくって来なくなってよぉ。まだお前はこうやって会ってるからあれだけど、他の奴等なんかここ2、3週間見てねえぞ」

神楽「そういえば全然見てないアルな。町であいつらの噂は良く聞くようになったけど」

新八「九能さんはあの日吹っ飛ばされたまま行方不明。良牙さんに至っては仕事初日に迷子で未だに行方不明だけどね。みんなは大丈夫って言ってたけど流石に心配になってくるよ。てか良牙さん、方向音痴にも程があるでしょ……」

九能、良牙のことを思い出し、ずり落ちた眼鏡を新八は人差し指で戻した。

銀時「ってことでお前ら行くぞ!若造共に一発ガツーンときついのお見舞いして目ぇ覚まさしてやるってんだ」

銀時がそう言って店を出て行こうとすると、店の戸が開き、一人の男が入ってきた。

?「お!銀さんじゃねえか、昨日のパチンコ屋振りだな」

その男は薄汚れた衣服の上からミカンと書かれた段ボールを装備し、咥え煙草でサングラスをかけていた。

新八「昨日ちょっと見かけない時間ありましたけどそんなとこ行ってたんですか?そんなんじゃ説教にも説得力がありませんよ銀さん」

銀時「そ、それは紳士の嗜みとしての一環でだな」

?「でも結構昨日は調子良く玉出てたみたいじゃねえか。みんなには幸せのおすそ分けはしたのかい?で、どうだい?俺にも少しはこの店で幸せ分けてくれよぉ、金欠で困っててさぁ。ヘヘヘ」

『?』はサングラスの上からでも分かるようないやらしい顔つきで言った。

神楽「ええ?!銀ちゃんパチンコで勝ったのに何もお土産無かったアルか?!いつもなら酢昆布二日分は買って来てくれるのにぃ」

あかね「酢昆布二日分がどれだけの量か分からないけど、お財布に余裕あるならもう少し飲んでから行けばいいじゃない、銀さん」

銀時「っかぁー、これだから餓鬼とはいえ女ってのは。商売上手になってる場合じゃねえだろうが」

あかね「あ、そうだった」

あかねは舌を出して片目で笑った。

?「何?これからみんなどっか行くの?てか俺の名前の『?』いつ取れるの?いつまで経っても未確認のポケモン図鑑みたいなんだけど。バグってんのこれ?」

銀時「バグってんのはアンタの人生設計だよ。悪いな、俺達行くところがあるからよ。また今度な」

銀時は『?』に言った。

?「なんだよぉ、ノリ悪いなぁ。せっかく俺の公園に若い新入りが入ったから歓迎記念に連れてきたってのに」

銀時「そこは家無し宿無し金無し同士で楽しくやってくれ。今日ババアはいねえみたいだからうまくやりゃあタダ酒できんじゃねえか?」

それを聞いた『?』は先程より一層厭らしいゲスな顔をして喜ぶと、外に待たせているらしい新入りを呼んだ。

?「おーい!入ってこいよぉ、気にすることはねえ。今日はタダだってさぁ!あといつまで経っても名前表示されないから自己紹介するわ。俺、長谷川泰三でーす」

開かれた戸からボロボロな衣服の上に、リンゴと書かれた段ボールを身に纏った少年が、木の枝を杖代わりにしてよろけながら入ってきた。

?「ほ、本当か……。と、とにかく飯だ。め、飯を、く、くれ……」

マダオ「もう大丈夫だぞ、今日はタダで食い放題の飲み放題だ!でもなんで本名で自己紹介したのにマダオ表記されてんの?やっぱバグってねこれ?」

あかね「りょ、良牙君!!ど、どうしたのよそんな恰好で!!」

新八「りょ、良牙さん?!」

あかねが慌ててカウンターから飛び出しボロボロの少年、良牙に駆け寄る。

マダオ「何々?みんな知り合いなの?どういう事よ、オジサンだけ仲間外れにしないで教えてよぉ」

そんな長谷川の言葉には誰も反応せず、とうとう力尽きたのか良牙が倒れ込む。そこを地面寸前であかねが受け止めた。

あかね「もう、一体こんなになるまでどこ行ってたの?!」

良牙「……あぁ、あかねさんの幻が見える……ま、まるで天使だ、これで飯さえ食えればもう思い残すことは……」

あかね「分かった!とにかくすぐご飯作るわね!」

あかねはそう言って良牙を放り出すと、調理のために店の奥に駆けていった。今度は地面すれすれで新八が受け止め、なんとか良牙をテーブル席のソファに座らせた。

神楽「全く、どこほっつき歩いてたネ幸薄バンダナ。みんなお前のこと心配で飯も喉通らなかったんだぞ」

銀時「さっき危険物一山平らげてたろうが」

銀時の視線の先にはいつの間にか空になった大きな丼があった。

新八「でも良かったですよ、ちゃんと帰って来れて。とりあえずはい、お水どうぞ。」

良牙「……み、水?……水!」

良牙は薄目で水の入ったコップを確認すると、新八から奪い取るように一息で飲み干した。

銀時「で、一体どこをさ迷ってたんだ?出勤初日からサボタージュかましやがって」

どうやら少し落ち着いたらしい良牙に声をかける。

良牙「ああ、あの日俺は指示された場所に向かったんだが。気付いたら宇宙船に乗り込んでいたらしくてな」

新八「もう方向音痴のレベルが地球じゃ納まりきらなくなっちゃたんですね……」

新八が呆れた様子で呟く。

良牙「降りる間もなく俺はそのまま宇宙に上がったんだ。ただその乗組員たちがタチの悪い野郎ばっかりでな。そうだ、みんな乱馬や神楽みたいな恰好をしていたな……」

神楽「ハハハ、もしかしてあの夜兎ばっかりの海賊船だったりしてな」

神楽が暢気に笑った。

良牙「夜兎?確かにあいつら自分たちのことを夜兎族がどうとか言っていたな。そして恐ろしく強い連中だった」

銀新「……」

淡々と語る良牙のその言葉に絶句する二人であった。

良牙「その後執拗に戦いを仕掛ける奴等と激闘の末、なんとか小型艇を奪取した俺はその宇宙船から脱出。見知らぬ星に不時着したんだがそこは気持ちの悪いペンギンのような生き物しかいない機械の星だった。どいつもこいつもプラカードで会話をし、ご飯にスーファミのカセットをかけていた」

マダオ「なんだよそれ、そんな奴等がいるわけねえだろ。ハッハッハッハ!」

神楽「ハッハッハッハ!」

良牙「それが本当なんだよ長谷川さん、神楽」

銀新「……」

事情を知らずに声を上げて笑う長谷川とは対照的に、良牙の話に口を開けない銀時、新八であった。と、過去の事をすっかり忘れて笑う神楽。

良牙「そこでもダースベーダーみたいな恰好した悪い奴が復活したとかで一戦闘あって。まあ、それは俺や周りの協力もあって解決したんだがな。その戦いのせいで俺の小型艇もその星の宇宙船も全部使い物にならなくなってしまって……」

マダオ「それでどうしたんだい?」

良牙「そのペンギン達が知り合いの商人に連絡を取ってくれることになって、その商船に乗っけてってくれることになったんだ。九州訛りが強い人で、坂本さんって言うんだ」

良牙「ただ体調が良くなかったのか、なにかと吐いていたな。だがとても気の良い人だった。まあそんなこんなでその後も色々あってボロボロになって、フラフラさ迷っていたところを長谷川さんに助けてもらって、ようやくここに戻って来れたってわけさ」

良牙は話を終え一息付くと、ソファに体を投げ出した。

話が終わったと察した銀時と新八は無言で目配せをし何事かをジェスチャーで伝え合うと、新八は深く頷いた。そして大きく息を吸うと

新八「って何それぇぇぇぇぇぇ?!!!!もうすっごい摩訶不思議アドベンチャーしてんじゃないですかっ?!もう鏡がどうとかじゃなくてそっちの話メインでやった方が絶対面白いって!!そもそもこっちの話みぃぃぃんな仕事に夢中で全然進んでないしぃっ!てかアンタ強ええええええええ!!!!!どんだけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

と大声で突っ込んだ。銀時はそれを見て満足気に頷き彼の突っ込みを称賛した。

銀時「流石新八だ。俺達の突っ込みたかったところを漏れなく突っ込んでくれた。そしてこの話は今の突っ込みをもって終わりとしよう。いい加減話を進めないとな」

神楽「そうアルな。ただ今の突っ込みで唯一足りないところがあるとしたら、『その段ボールの中のリンゴおいしかったかーい!』アル」

銀時「足りないのはお前の頭だ」

銀時が神楽の頭にチョップをした。

マダオ「いやー、良牙君がそんな凄い大冒険していたとはなぁ。なんだよぉ、てっきり俺と一緒で底辺をギリギリ崖の上を行くようにフラフラしてんのかと思っていたよ」

新八「大丈夫ではないですよ、貴方の場合は」

マダオ「彷徨える蒼い弾丸、略してマダオかと思っていたのに」

新八「あの無理にB‘z絡めようとするの止めてもらえません?!それにそのマダオの略し方強引すぎるだろ、言葉の順番まで変わっちゃてるじゃねえか!」

新八の突っ込みを聞き流しながら、いつの間にやら銀時の徳利の酒を直飲みし始める長谷川。

マダオ「まあそう堅いこと言うなよ新八君。で、みんなと良牙君はどういう関係なんだ?」

新八「それは話すと長いんですけど『かくかくしかじか』なことがありまして、なんやかんやで今の状態です」

マダオ「へぇぇぇ!そんなことがあったのかぁ。俄かには信じられねえが銀さんの周りじゃさもありなん、って奴だな。ハッハッハッハ!」

銀時「笑ってないで俺の酒返しやがれ、このたまねぎ剣士」

銀時は長谷川から徳利を奪い返し、自分のお猪口に注いだ。

あかね「良牙君お待たせ!たくさん作ったからいっぱい食べてね!」

そこへ大盛の肉野菜炒めとご飯をあかねが運んでくる。

良牙「あ、あかねさん!よ、ようやくだ。ようやく飯が食える……それもあかねさんの!」

銀時「まあとにかくだ。俺達は異世界組に喝入れてくっからお前は飯食ってここで休んでろ。じゃあまた後でな、もうお前はここから動くんじゃねえぞ。長谷川さん、残りの酒アンタにやるからしっかり見張っといてくれ」

目を輝かす良牙にそう言うと、銀時は背中を向けた。

銀時「ほら、ちゃっちゃと行くぞてめえら。あとあかね、お前もついて来い」

新八「さ、話進めるためにもサクサク行きますか」

神楽「そうネ、いい加減進展欲しいネ!」

あかね「ちょ、みんなちょっと待ってよ!」

良牙「いただきます!」

銀時の背中を追って三人は夜の歌舞伎町へと繰り出した。よろず屋組は後ろで良牙の叫び声が聞こえた気がしたが、皆気付かないフリをして歩を進めた。

かぶき町、通り。

神楽「で、まず誰から会いに行くアルか?」

銀時「そうだな、まずは右京に会いに行く」

新八「確か右京さんは町外れで黒駒の勝男さんが仕切ってる屋台村で働いてるんでしたっけ?」

銀時「ああ、ちょうど七三から良い屋台出せそうな人間いないかって話が来てたからな」

あかね「でも右京大丈夫なの?その人危ない人なんでしょ?」

四人が歩いているとけたたましいサイレンの音と共に、何台ものパトカーとすれ違った。その最後尾のパトカーが銀時のもとに止まり、助手席の窓が開くと、黒い制服に身を包んだ美少年が声をかけてきた。

?「よぉ、よろず屋の旦那ぁ。今日はお供を連れてどちらまで?お、その見かけねえ嬢ちゃんは最近町賑わしてる奴等の一人ですかい?確か暴行と毒物製造の常習犯で『暴力毒料理』とか呼ばれてる――」

あかね「違います!って私そんな風に言われてるの?!」

彼の名前は沖田総悟。真選組一番隊隊長。剣の腕前が天才的な、サディスティック星の王子である。

銀時「別にこの町の人間なら誰だって危ねえよ。この警察官だって平気でバズーカ撃ってくるからね、スピード違反くらいで」

あかね「ハハハ……過激な人なんですね」

あかねが苦笑いで総悟に会釈する。

新八「それより沖田さんどうしたんですか?このパトカーの数は」

沖田「それが今夜は大変でね。ロン毛の攘夷志士と新手の攘夷志士がタッグで現れたって通報に、天人のお偉いさんが二人組の男女に天誅されたって話。そのうえ町じゃホストやらキャバ嬢やらオカマやらが喧嘩してるってんで、動ける隊士総出で現場に向かってるんでさぁ」

沖田「旦那達、何か心当たりでもありませんかい?」

銀時「い、いやー相変わらず物騒だねこの町も。んー、でも特に心当たりないかな。ま、沖田君、今日も頑張って江戸の平和を守ってくれたまえ!」

一瞬嫌なものが頭をよぎった銀時であったが、激励の意味を込めて沖田の肩を叩き紛らわす。

神楽「そうネ、さっさと逝くネ」

沖田「おい字が違うんじゃねえかチャイナ娘。てめぇが先に逝け馬鹿って今日は相手してる場合じゃねえんだぃ。まあ旦那、くれぐれもこんな日に暴れねえで下さいよ。それじゃ。おい神山、車出せ」

神山「はい、ドSバ……沖田隊長!」

沖田「お前今ドSバカって言おうとした?てめえ絶対まだ携帯の登録名変えてねえだろおい」

あかね「今の人、ムースの声に似てるわねぇ」

何やら一悶着ありそうだったがパトカーの窓は閉まり、そのまま車は走り去っていった。

新八「銀さん、沖田さんが言ってた話って……」

銀時「十中八九、異世界組絡みだろうな」

あかね「まったくみんなったら、異世界来ても問題起こしちゃうなんて」

銀時「自分は違うみたいな雰囲気出してるけどお前も十分問題児だからね?」

新八「とにかく真選組に検挙される前に皆さんを回収しましょう!」

新八の言葉に皆力強く頷き、歩き始めようとしたその時であった。すぐ脇の裏路地から大きな物音が二つ響いたのであった。

神楽「な、何アルか今の音?!」

神楽が裏路地に入っていく。

新八「ま、まずいって神楽ちゃん。こういう時は大抵めんどくさい話になってくるから無視して右京さんのところに……」

新八が神楽を追って裏路地に入り、物音の原因と思われる二人組を目にすると、銀時に声をかけた。

新八「銀さん、問題児一人発見しました」

それを聞いた銀時とあかねも裏路地に入っていく。そこにはどこからか落下したのであろうか、痛みに顔をしかめ、打ち付けた頭や腰を押さえ倒れている二人組がいた。

あかね「ムースじゃない!も、もう一人の人は……忍者?」

?「こ、この匂いは……銀さん?!」

長いマフラーを巻いたくノ一姿の女性は痛みも気にせず立ち上がり、すぐ傍のゴミ箱に勢いよく抱き付いた。

銀時「俺はそんな臭いしてねええええ!!!」

銀時がゴミ箱ごとその女性を蹴り飛ばす。

?「ボロボロの人間にこの仕打ち……本当に銀さんだわ!ムース、銀さんよ!」

ムース「やったなさっちゃん!残念ながらおらは今ほとんど何も見えんが、幸せそうで何よりじゃ!」

さっちゃんと呼ばれた女性の名前は猿飛あやめ。悪党専門の始末屋をしている超ド近眼くノ一である。ただ、今トレードマークでもある眼鏡を付けてはいなかった。ムースも同様だ。

新八「なんで超ド近眼コンビが眼鏡もかけずに外出歩いてんだぁぁぁ!!てかお前らだろ天人を天誅した二人組って!!もう警察動き出しちゃってるよ!それに眼鏡もかけずにそんなことすんなよっ!!」

ムース「いや何、簡単な話じゃ。眼鏡はかけておったんだが逃げる際にな、さっちゃんの納豆が原因でおら達の眼鏡が襲われたんじゃ」

あかね「ムース、全っ然簡単じゃないわその話。それとも私が馬鹿になったのかしら……」

あかねが心底不安そうに両手で頭を抱える。

神楽「ははは、こんな話も分からないなんてあか姉も馬鹿アルな。つまりは納豆派の世界制覇を邪魔したい梅干し派の仕業ってことネ」

新八「大丈夫ですよあかねさん。馬鹿なのはこのド近眼コンビと神楽ちゃんです。そもそも銀さん、なんでムースさんをさっちゃんさんのところに派遣させたんですか?どう考えたって相性良くないでしょう」

新八がもう興味が無くなったように鼻をほじっている銀時を責めた。

銀時「いやぁ、ド近眼同士で生み出されるケミストリーを感じてみたくてつい」

新八「悲劇しか生んでないじゃないですか、一体どうすんですかこの化学反応!最悪のケミストリーですよ絶対売れませんよ!」

ムース「新八!それは間違っているぞ!」

ムースが電柱にを指差し言った。

あかね「間違ってるのはあなたよムース」

ムース「おらとさっちゃんのコンビはかぶき町にて最強!そして何者も寄せ付けぬ相性の良さを誇っておるぞ!」

銀時「確かにまったく近寄りたくはないな、あぁあっと」

銀時はなおも鼻をほじりつつあくびをした。

猿飛「悲劇など生んでいないわ新八君。そりゃ最初は銀さんが出張サービスで来てくれると思ってお金払って派遣をお願いしたわけだから少し悲しかったけれど」

銀時「人をデリヘルみたいに言うな」

新八「言ってねえよ!アンタの思考が常にそっち方面行ってるだけだろ!」

猿飛「ド近眼ロン毛キャラが被ってる、銀さん以外の男が来た時はがっかりしたものだけれど。でもそれも銀さん特有の放置プレイなんだって気付いた時には興奮したわ!」

目を輝かせてゴミ箱に話しかけるさっちゃん。

神楽「こいつらは人と話す時はその人の方見なきゃダメって教わらなかったのか、二人には一体何が見えてるアルか?」

猿飛「んでぇ、まぁちょっとムースと話してみたらぁ、結局なんかすっごく気が合っちゃってぇ!お互いとっても好きな人がいることとかぁ、恋に臆病で不器用なとことかぁ」

銀時「なんかその女子女子した喋り方うざいんですけど。それに恋に臆病なやつは人んちに不法侵入したりしないから。海賊王並みに勇気あっからそれ」

猿飛「ちなみにムースもその好きな子とは、直接暴力的なSMプレイを頻繁に行っているらしいの、そんなとこまで被ってたらもう意気投合するしかないじゃない?!」

銀時「ムース『も』ってなんだ『も』って!いつものアレ、プレイとかじゃないからな。本気で死んで欲しいと思っての攻撃だからな」

若干青筋をヒクヒクさせながら銀時がさっちゃんに言った。

ムース「ということでな!今日も今日とて以心伝心の頼れるパートナーと、仕事を終えて帰宅途中というわけじゃ」

猿飛「そう、私たちは恋に仕事に一生懸命な、今を逞しく生きるかぶき町人!それにしてもごめんねムース。私だけ好きな人に出会えてしまえて。ホーホッホッホッホ!」

ムース「なーに、気にするなさっちゃん。だがおぬしらを見ていたらシャンプーに会いたくなっただ。今日はこの後シャンプーに会いにでも行こうかのぉ、ハァーハッハッハッハ!」

神楽「だからお前が見てるの電柱だけアル。さっちゃんの『さ』の字も見えてないネ」

高笑いする二人を尻目に、珍しく神楽が冷静に突っ込みを入れた。

銀時「そうかそうか、ムース君も猿飛さんと一緒で恋に仕事に頑張ってるわけか。うん!銀さんも仕事を紹介した身として安心したよ」

ムース「いや、こちらこそこんな良い職場を与えてくれて感謝しておる。さっちゃんの忍術を取り入れることによって、おらの暗器使いも一段レベルが上がりもしたしな。フフ、ということで特別に、この一か月で体得した忍術との融合秘儀を見せてやろう!」

あかね「暗器と忍術の融合秘儀……?」

タダならぬ気配を感じてあかねが身を固くする。

ムース「秘儀!亀甲緊縛術ぅっ!」

一瞬にしてムースの両腕から放たれた縄の付いたナイフやヨーヨーにより、ムースの体は宙に浮かびながら、見事なまでの亀甲縛りを体に受けていた。

新八「ってそれ忍術じゃねえよ!タダのSMプレイの一幕だよ馬鹿!なんて下品なものと融合させてんだ!技名聞いた時もしやと思ったけどやっぱそんなオチかいぃぃぃ!!」

あかね「な、なんて早業なの?!」

新八「あかねさんもそんなことで驚かないで下さい!」

新八が忙しそうにムース、あかねと続いて突っ込む。

猿飛「流石はムースね。この短期間の間にここまで腕を上げるなんて、末恐ろしいわ……」

新八「こんなことで驚愕してるアンタが恐ろしいわ!」

銀時「いやぁ、惚れ惚れするくらいの早業。おまけに完成度の高い亀甲縛りだねぇこれは」

ムース「おお!やはりお前にも分かるか銀時よ!」

銀時「ってそんなこと言うわけねえだろこの馬鹿チンがぁぁぁ!!!」

銀時は宙に浮いているムースの頭を掴み、思いっきり電柱に打ち付けた。

ムース「があぁぁぁぁぁぁ!!!め、目の前が赤いっ!さてはまたも梅干し派の連中の攻撃かぁ?!」

あかね「ほ、本当に梅干し派の連中に襲われてたのっ?!」

新八「そこは気にしちゃダメですあかねさん!ていうか気にするとこそこぉ?!」

心配そうに胸に手を当てるあかねに新八が言う。

銀時「何が恋に仕事に頑張ってるだぁ?!丸の内のデキるOL気取りかグータンヌーボーかこの野郎!そこじゃなくて鏡の調査を頑張れよぉぉぉぉ!!!」

痛みに喘いでいるムースはその言葉を聞くと、何もなかったかのようにあぐら座りをし、ポンっと手を叩いた。

ムース「おお!そうじゃったそうじゃった!充実した毎日を送っていたらそんなことすっかり忘れておったわ。そろそろまた始めんとな」

銀時「忘れてたじゃねえよ!そっちが丸の内OLごっこして充実してる間も、こちとら朝から晩まで死んだ顔で鏡の調査してたってのによ!」

あかね「いえ、どちらかっていうと死んだ魚のような目だったわ」

新八「あかねさん、少し黙っててください」

神楽「私は丸の内OLごっこじゃなくグータンヌーボーごっこしたいアル、あのソファに座りたいアル」

新八「神楽ちゃんもね」

あかねと神楽の戯言に新八がストップをかける。

銀時「まあ分かったなら明日からまた鏡の調査だ!今日はこのあとお前の仲間たちを集めて作戦会議だからな、先にババアのとこ戻ってろ!もう良牙が待ってっから」

新八「銀さん、先に戻ってろって大丈夫なんですか?先も何も見えないこの人達だけで行かせたらいつ着くか、それに警察に捕まってしまうかもしれませんよ?」

銀時「その点は大丈夫だ。おい、腐れストーカー!」

さっちゃん「何かしら銀さん!」

銀時に呼ばれて、嬉しそうに腐れストーカーは両手を上げた。

銀時「お前なら俺の匂いを辿っていつものように屋根伝いによろず屋まで行けるだろ。その下の飲み屋で大人しく待ってろ」

さっちゃん「いや!銀さんったら匂いだけでウチに辿り着けなんて、まるでどこぞの王様みたいに横暴なのね!もう!何よそれ!」

あかね「銀さん、流石に今の言い方は女の子にはきつかったんじゃ……」

さっちゃん「最っっっっ高じゃない!!その上放置プレイだなんてオプションまで着いてくるなんて!今夜は寝かさないんだからね!」

銀時「いや寝ろ、ムースを送り届けた瞬間に永眠しろ。あーったく、鬱陶しいからさっさと行きやがれ」

さっちゃん「分かったわ銀さん、もう本当にせっかちなんだからぁん。じゃあ行くわよムース!銀さんの布団の匂いを辿って!」

ムース「了解じゃ、さっちゃん!とうっ!」

二人は仲良くゴミ箱に突っ込んだ。

銀時「だから俺はそんな臭いはしてねええええ!!!!」

神楽「もう行くネ、チンタラやってたら朝になっちゃうヨ。睡眠不足はお肌の敵アル」

あかね「そうね、神楽ちゃん。はぁ……」

新八「初っ端からこんなに疲れるとは……」

ゴミ箱に突っ込んだ二人を蹴り付ける銀時を背中に、三人は夜の通りに再びくり出したのであった。

今日はここまでで!

今日は短くてすいません、あとレス励みになりますありがとう!

次回は週明けくらいになりそうです、それでは!


続き楽しみにしてる
良牙がどうやって夜兎と渡り合って宇宙船から脱出したのかとか

>>198 とりあえず本筋終わらしてからそこは絶対書きますんで待っててください!

とりあえず一か月間にみんななんやかんやあった設定で話進めますんで!

再開します!

今日のOP代わりに

https://www.youtube.com/watch?v=cTCFy7HLFDw

かぶき町、屋台村。

新八「いやぁ!凄い賑わいですね!」

あかね「なんだかお祭りみたいで私ウキウキしてきちゃった!」

銀時「っかぁ、すげえ人だな」

神楽「うぉぉぉ!銀ちゃん私あの肉の串食べたいネ!突撃するアル!」

そこには通りの左右を隙間無く、ぎらぎらと輝く屋台が並んでいた。どの店からも美味しそうな匂いと煙が漂い、それにつられて沢山の人がこの屋台村につめかけていた。

新八「あ、神楽ちゃん!そんな走ったら人にぶつかっちゃう――」

神楽「イテっ!」

新八が神楽に注意しようと声をかけるも時すでに遅く、強面三人組の一人にぶつかってしまっていた。

チンピラA「うおおおおおおお!!!!いてぇぇぇぇぇぇ!!!かあちゃぁぁぁぁん!!!いてぇよぉぉぉぉぉ!!!!折れた、こりゃ確実に折れたぁぁぁぁ!!!!」

ぶつかった男は大げさに腕を抑えて転がり回った。

チンピラB「てめえこのクソガキがぁぁぁ!!!」

痛がる男の連れが、ドスを効かせた声で怒鳴る。

銀時「あーあ、言わんこっちゃねえや」

あかね「そんな暢気なこと言ってないで助けないと銀さん!神楽ちゃん絡まれてる!」

そう言うやいなや、あかねは男達の中に飛び込んだ。

あかね「ちょっと!軽くぶつかったくらいで骨が折れるわけないじゃない!何言いがかりつけてるのよ!」

チンピラB「何言いやがる女!こいつはなぁ、骨密度が異常に低くてちょっと触れたくらいで簡単に骨が折れちまうんだよ!」

あかね「そんなカルシウム不足連れてこんな人混み来るのが悪いんじゃ――」

チンピラC「てめえらからぶつかっといてなんて言い草だ!ったく、こうなったら慰謝料だ!慰謝料よこせや!」

チンピラA「もう投げれねえよぉ、こんな腕じゃあのスライダーはもう投げれねえよぉぉぉ!!野球できねえよ!!もう生きてたって!生きてたって!!」

チンピラB「ああよしよし。俺達がこいつ等からがっぽり慰謝料もらってやっから!その金でアメリカで手術しようなぁ!」

あかね「そ、そんな……そんな凄い野球選手だったなんて……」

勢い良く飛び込んだあかねだったが、頭が弱いせいで三人の男達に丸め込まれようとしていた。

神楽「そこまで言うんだったらいっそ私が楽にしてやるネ。お前はもう生きていなくていい、私はお金払わない。WINWINな関係の成立アル」

チンピラA「いやそれ全然WINWINな関係じゃねえよ!!俺が一方的に殺されただけだよきっちり勝敗ついちゃったよ!ただWINWINな関係って言ってみたかっただけだろお前!」

神楽「チッ、ばれたネ。なんかグータンヌーボーで、行きずりの男と体の関係持つってお互いWINWINな関係って言ってたから私も言ってみたかったアル」

チンピラA「行きずりの男と体の関係ってそうじゃねえよ!」

あかね「なんだぁ、意外と元気じゃないあなた。そんな元気があるなら大丈夫!もう一度野球、頑張ってみよ?私も応援するから、ね?」

あかねが膝をつくAと同じ目線にしゃがみ込み、素敵な微笑みを浮かべ肩に優しく手をかけた。

チンピラA「じょ、嬢ちゃん……そ、そうだな、俺もう一度!もう一度頑張ってみるよ!そしてア、アンタを、甲子園に連れてってやんよ!」

Aがはにかんだ笑顔で、頬を赤くしながら言った。

あかね「フフフ、嬉しい。待ってるね、たっちゃ――」

新八「ストォォォォォップ!!!!野球の話になった時やばいかなと思ったら案の定だよコンチクショウ!そういう危険球は止めてください!そんな往年の名作使ってボケてたら僕等なんか簡単に潰されちゃいますよ?!」

あかね「あれ?私の意志とは別に、知らない人の名前が口から……」

遠目に見ていた新八が、これはまずいと思いあかねを止めた。

チンピラB「てめえも何再起を誓ってんだよ?!どん底から這い上がるお前の野球人生なんてどうでも良いんだよてかそんな物語始まらねえよ!さっさと金ふんだくってずらからるぞ!早くしねえとあいつらが来ちまうだろ?!」

チンピラA「す、すまん。彼女の声と笑顔が今の設定上、恐ろしいくらい魅力的に感じられて……」

銀時「あっれー、今金ふんだくってって言ったぁ?設定って言ったぁ?まるで当たり屋みたいなこと言うんですねぇ、お兄さん方ぁ」

それまで黙って見ていた銀時も、Bの言葉尻を捕らえて輪に入って来る。

チンピラC「い、今のはちげえよ!そういう意味で言ったんじゃないんですぅ!」

そんな中、身振り手振りを交えて子供じみた言い訳をするCの腕が、軽く銀時に当たってしまう。

銀時「いってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!折れたぁぁぁぁぁぁ!!!もう打てねえ!!!アイツの球をバックスクリーンにぶち込むができねえぇぇぇぇ!!!」

銀時も勢い良くひっくり返り、腕を押さえ転がり回った。

新八「お前もやるんかいぃぃぃぃ!!!てかこの当たり屋返し前やったんだからやるなよ!四天王編の序盤でやってたからっ!それにわざわざ同じフィールド立つなぁぁぁ!!!なんなの?!ライバルだったのっ?!」

神楽「銀ちゃんの股間のタマなら私がバックスクリーンにぶち込んでやるネ、それでWINWINネ」

新八「お前はもうWINWIN止めろぉっ!絶対意味分かってないだろっ!」

銀時「俺も応援してくれ南ちゃぁぁぁぁぁん!!!」

新八「だから名前は伏せろぉぉぉぉ!!!」

あかね「ごめんなさい銀さん。私なんだか、バッターよりピッチャーを応援してあげなきゃいけない気がしてるの」

銀時「え、マジか……」

新八「本気で落ち込むなよ!どれだけ期待してたんだよ?!」

?「おうおうお前ら!天下の往来でさっきから何喚きちらしとんのじゃボケェェェ!!シバキ回すぞコラァ?!」

馬鹿騒ぎする銀時達の背後から、関西弁の男の声が響いた。

チンピラA「こ、こいつは!かぶき町の暴君……」

チンピラB「黒駒の勝男ぉ?!」

チンピラC「や、やべえ!逃げろぉっ!」

声の主の姿を見ると、三人の男たちは先程までの威勢もなんのその、怯えながら走り去っていった。

そのチンピラ達を一瞬で怯えさせた七三分けが印象的な男の名前は黒駒勝男。溝鼠組の若頭で、現かぶき町四天王の一人である。愛犬の名前はメルちゃん。

あかね「ね、ねえピッチャーさぁん!あなた腕大丈夫なのぉ?!」

勝男「何きっちりオチまで付けて道の真ん中でコントやっとんじゃい劇団天然パーマ!」

銀時「おう、なんかポマードくせえと思ったらいたのかい、七三」

銀時は傍の電柱に寄りかかりながら、ニヒルな表情で言った。

勝男「何お前今の当たり屋コント無かったかのように振る舞ってんの?!お前が転げ回る辺りからずっと見とったからな?!何その久し振りにライバルに会ったみたいなクールな切り返し!なんか服に土付いとるからね?!」

今までの醜態をリセットして話を進めたい銀時であったがそうはいかなかった。

銀時「こ、これは土じゃねえよ。あれだよ、球児達の汗と努力の結晶的なやつだよ」

勝男「まだその設定引きずるんかい!お前が南ちゃんに素っ気なくされてんのも見てたからな?!わざわざ自分から傷口に塩塗るなや!ナメクジだったら消滅してるレベルの塗り方やぞそれ!」

神楽「もうこれ以上銀ちゃんを苛めないであげてよ七さん」

勝男「七さんって誰の名前じゃ!俺の名前は黒駒勝男で髪型が七三なだけや!」

新八「そ、それはそうと勝男さんはここで何していたんですか?」

話が進まないと思った新八は、無理矢理に話題を変えた。

勝男「ああ?何って巡回に決まってるやろ坊主。この屋台村は今のワシらにとっての大事な資金源なんじゃ。そこでお前らみたいなタチの悪いもんに騒がれてみぃ、あっちゅう間に一般のお客さんいのぉなってしまうやろ」

神楽「タチが悪いってなんだよ七さん。私をこの当たり屋天パと一緒にするんじゃないネ。私はただアイツにトドメ差そうとしてただけアル」

勝男「はぁ?!当たり屋なんかより全然タチ悪いやん!シャバに出て来ちゃマズい奴やんけお前!さっさと帰れぇぇぇ!!」

あかね「ちょっと待ってください、カツオさん!話を聞いてください!」

あかねがすかさず勝男を止めに入る。

勝男「うん、お嬢ちゃんはこの中でもマシな方に見えるから話聞いてやってもええで。でもな、カタカナでワシ呼ぶの止めてくれる?それだと日曜夜六時半思い出すねん、なんか気分めっちゃ重なんねん。で、何よ話って」

あかね「ありがとうございます。実は私達、ここの屋台で働いてるっていう右京に会いに来たんです。会って話したらすぐ帰りますから、どこにいるか教えてくれませんか?」

勝男「おお?お前らなん――」

?「あらー!あかねちゃんやないの!銀さん達まで!今日はどしたん?こないなとこ来るの珍しいやん!」

あかね達が声のする方を見ると、左右で白と黒とで色の違う着物を着た右京が手を振って立っていた。すると勝男が大声を上げて頭を下げた。

勝男「姉さん!今日もお疲れ様ですっ!」

それに習ったかのように屋台で働く店員達も

おっさん一同「お疲れ様ですっ!姉さん!」

頭を下げ、右京の姿を見た通りのおっさん達も

おっさん一同「お疲れ様ですっ!姉さん!」

一様に頭を下げた。その様子はまるで、海を割り歩くモーセの様だったと後に新八は語る。

銀新神あ「……」

新八「……な、なんか極妻みたいな人来たぁぁぁぁぁぁ!!!」

右京「もうちょっとみんな止めてぇや。お客さんもおんねやから、さっさと仕事に戻りぃやぁ!」

周りの対応に驚きもせず、右京はにっこりと笑って周囲に声をかけた。

おっさんA「はい、姉さん!喜んで!」

おっさんB「合点です姉さん!」

おっさんC「姉さん!あとでウチのたこ焼きもらってってくだせえ!」

おっさんD「姉さん!今日も綺麗だねえ!」

おっさんE「姉さ――」

新八「おっさんのセリフこんなに拾わんでいいわぁぁ!!」

右京の一声で皆は先程までの活気を取り戻し、いやそれ以上の勢いを持って営業を再開した。

銀時「おい右京、これ一体どうなってんのよ。確かにヤクザが経営する屋台村に派遣させたけどさ、何?嫁いじゃったの?妻たちの一人になったの?」

右京「ちょっと銀さん何言うのよ、私が乱ちゃん以外と結婚するわけないやんかもう」

困惑する銀時に右京が笑って答える。

勝男「おいよろず屋ぁ、ワシらの姉さんに何気安く声かけてんねん?その口の利き方直さんと、いつかみたいにゴミ箱詰めてコンクリかけてまうでぇ!」

おっさんF「ホンマじゃボケェ!ナメた口聞いてるといてまうどコラァ!」

おっさんG「誰に向かってその鼻の下のケツ穴開いとんじゃいクソがぁ!」

おっさんH「覚悟は出来とんのかワレェ!」

銀時「す、すいませんしたぁ!なんか軽口聞いちゃってすいませんしたぁ!なんかこの眼鏡がそういうテンションで喋れって言うんでぇ!じゃないとお前を眼鏡掛け機にしてやろうかぁって脅してくるんで仕方なくてぇ!」

新八「ちょ!ちょっとぉぉ!!僕全然そんな事言ってないでしょぉ!だいたい眼鏡掛け機にしてやろうかなんて脅しでもなんでもないだろ!てかなんでちょっと蝋人形にしてやろうか風なんですか!」

いつものノリで話しかけた銀時に勝男を始め、四方八方からヤクザの罵倒が飛んでくる。

右京「ちょっとみんな、この人らは私の友達で今の仕事紹介してくれた恩人さんなんやで。そんなきつく当たらんといてや」

勝男「すいませんしたぁ!姉さん!」

右京がたしなめると、勝男と男達は即座に右京に、そして銀時達に頭を下げた。

新八「い、一体この一か月の間に何があったんですか?あの溝鼠組がここまで右京さんに心酔してるってちょっとただ事じゃないですよ?!」

何があったか分からない新八が不気味そうに銀時に尋ねる。

銀時「そんなもん俺が知るかよ、ただ何事かあったのは確かだろ。ここは穏便に聞き出せ新八。無遠慮な物言いだと、いつまたこの辺のヤクザ共が吠え出すか分からんからな」

銀時が周りに聞こえないように新八に耳打ちをする。

神楽「どうして右京はこのヤクザ共にこんなに慕われてるアルか?もしやアレか?体をうまいこと使ってガンガンのし上がったアルか?WINWINな関係アルか?」

新八「最悪の爆弾ぶっこんできたぁぁぁぁぁぁ!!!だからもうWINWIN使うなって言っただろ!しかも最悪のタイミングで使っちゃったよどうすんだよこれぇぇぇ!」

周囲の空気が張り詰めるのを銀時、新八は確かに感じた。勝男達ヤクザ軍団の眉間の皺はとんでもなく深くなり、湯気が上がる程の怒りのオーラが彼らを包んでいた。

銀時「あ、そうだ。今夜の金曜ロードショー紅の豚じゃん。やべ、録画すんの忘れちゃったよ。つーことで先に帰ってるから、じゃ」

新八「この状況で逃がすかぁぁぁ!!だいたい今日火曜だよ!吐くんならもう少しまともな嘘吐けよ!!」

背を向けこの場から退散しようとしていた銀時を、新八が背後から抱き付いて止める。

右京「まったく神楽ちゃん、そんな言葉どこで覚えたん?そういう事は子供のうちは言ったらアカンで。ちなみに私は特に何もしてへんのよ。いつも通りにお好み焼きを焼いて、半端なことする奴にはヤキ入れてってやってただけやねん。それを勝男さん達が姉さん姉さんって言うもんやから、ウチもちょっと気恥ずかしいねん」

右京がペロッと舌を出して照れ臭そうに笑った。

神楽「おお、そうだったアルか。腕一本でのし上がったアルな、カッコいいアル。キャリアウーマンネ、グータンヌーボー出る資格のある女ネ」

右京「そんなカッコいいモンちゃうよ。あー、それとみんな。子供の言ったコトやねんからいちいち目くじら立てんといてな」

勝男「はい!姉さん!」

勝男たちから発散されていた怒りのオーラがみるみると霧散していく様子に、ようやく人心地着く銀時と新八であった。

銀時「た、助かった……」

新八「本気で東京湾コースかと思っちゃいましたよ……」

あかね「で、カッツォさん達は実のところなんでそんなに右京を慕っているの?」

勝男「カッツォってどこのイタリア人やねんボケ。嬢ちゃんもしかしてアレか?見た目まともだけど結構頭イッてんの?まあええわ。最初はこのアホよろず屋の紹介やからどんなアホが来るか思って正直あまり期待してなかったんやけどな」

勝男は右京が来たばかりの時を思い出すように、少し遠い目をして語り出した。

勝男「それが並居る人気店を押さえ仕事初日にしてこの屋台村で売り上げ一位。あとはこの喧嘩っ早いアホ共の喧嘩の仲裁。それも見事と言わざるを得ない手際やった。他には敵対勢力との抗争では先陣切って相手に突っ込み、組員を守りながら相手の大将にヤキ入れとった」

勝男の話を黙って聞くよろず屋組であったが、目をキラキラ輝かせながら右京の武勇伝を聞く神楽とは対照的に、銀時、新八の表情は暗いものであった。

新八「なんで良牙さんといい、この人達は本編と関係ないところでそんなにドラマチックに生きてんすか……てかまたもや本編より面白そうじゃないですかこの話……」

勝男「そして極め付けはメルちゃんがまた妊娠したんやけど、そん時にメルちゃん体弱って大変やったんやぁ。そこで姉さんは三日三晩寝ずにメルちゃんに付いてくれて無事出産を済ませてくれたっちゅう話や」

勝男「もうその頃には気付いたら皆姉さん姉さんと呼んでおったわ。で、ワシもメルちゃんの件以来、姉さんの下に付こう思ての、おまけにお礼として今来ている着物をプレゼントさせてもらったわけ。ま、このまま順調にいけば、溝鼠組を姉さんが率いるのもそう遠くない話やろな」

右京「ちょっと勝男さん、なんか恥ずかしいから止めてぇや。それに組継ぐ気なんてあらへんよ。私はお好み焼きが焼けて、乱ちゃんが傍におればそれだけで良いんやから」

勝男「……ね、姉さん!そんなこと中々言えるもんじゃあらへんで。ああもう!一生ついて行かせて下さい!」

右京「まったく大げさやねんから勝男さんは。で、あかねちゃん達は今日は何用やったんや?」

右京があかねに質問すると、あかねは銀時に視線を向けた。

銀時「言えねえよぉぉ!!こんな状況で現実見ろ鏡の調査再開しろボケェなんて言えねえよ!さっきのムースの時みたいなテンションで言えるわけないじゃん!」

銀時が新八にだけ聞こえるように小声で怒鳴りつける。

新八「そんなん僕に言われたってどうにも出来ないですよ!でもさっき言ってたじゃないですか、ガツンと言ってやるって。頑張ってください銀さん、ここが男の見せ所ですよ!」

新八は応援の意味を込めて拳を強く握って銀時に見せた。

銀時「そうは言ってもよぉ……」

銀時がどう穏便に伝えようか頭をフル回転させていると、神楽が先に喋り出した。

神楽「実はな、銀ちゃん右京に『さっさと鏡の調査始めろやボケェェェ!!何いつまでチンタラお好み焼き焼いてんねん!!いてまうどコラァァァ!!』って言いに来たネ」

新八「何言ってくれちゃってんだお前はぁぁぁぁ!!いい加減空気読んで発言することを学べぇぇぇ!!」

神楽「銀ちゃんなんだか言いにくそうだったから私が代わりに言ってあげたネ。フフ、別に恩に着ることは無いからネ」

神楽は褒めてくれと言わんばかりに銀時に無邪気な笑顔を向けた。

銀時「恩に着ることは無いから安心しろ神楽。むしろこの木刀でお前を斬りたい、出来るならKillしたいくらいだから」

再び不穏な空気が立ち込める中、右京が思い出したように手をポンと叩いた。

右京「そういやそうやったな!色々あり過ぎてついつい忘れとったわ鏡のこと!」

あかね「そりゃそんな色々あったら忘れもするでしょうね……」

勝男「鏡ってなんのことですかい姉さん?」

事情を知らない勝男が右京に質問する。

右京「まあ信じられない話かもしれないんやけど『かくかくしかじか』なわけでな、その鏡探さないかんねん」

勝男「そ、そんな!ってことはその鏡を見つけたら、姉さん元いた世界に帰ってしまうってことやないですかい?!」

あかね「結構すんなり信じてもらえるのね……」

勝男の態度に素直に驚くあかねであった。

右京「ウチもここ離れるのは寂しいけど仕方ないことや。色々と残してきたモン向こうにあるし。お好み焼きがあって乱ちゃんがいる今の生活も捨てがたいんやけど、やっぱ納まるモンは納まるべきトコがある。だから私は鏡を見つけて帰らないかんねん」

おっさんI「か、帰らないでくださいよ姉さん!」

おっさんJ「お、俺!姉さんがいない生活なんて想像できねえ!帰んねえで下せえよぉぉ!!」

おっさんK「やだぁぁぁ!!!姉さんがいなくなるなんて嫌だぁぁぁぁ!!!」

通りのそこかしこから右京を惜しむ声がし、中には泣き出す者もいるくらいであった。勝男も何も言いはしないが、その表情は悲しみに暮れていた。

右京「大の大人たちがピーピー泣くもんじゃあらへん!」

右京が怒鳴ると、辺りの男達は一瞬で声を上げるのを止めた。そしてゆっくりと、優しく右京は言葉を続けた。

右京「ウチかて寂しいしみんなとも離れたないねん。でもな、分かるやろ?人間帰る場所があるんなら、いつかはそこに帰らないかんねん。だから、この世界で帰る場所を作ってくれたみんなにはとっても感謝しとる。ホンマにありがとうな。で、私はこの後無事向こうに帰ってな。たまにみんなのこと、異世界の帰る場所のことを思い出すねん」

銀時「アレ、なんだろう?目から汗出そうなんだけど。野球し過ぎたせいかなこれ」

辺りのヤクザ同様、銀時の目にも水分が溜まっていた。

右京「みんな元気しとるかなとか、メルちゃん病気してないかなとか。そんで私はいつかまたここに帰ってくんねん。ここも私の帰る場所の一つやから。ま、言うても鏡見つかるまでどんくらいかかるか分からんし、すぐ向こう帰るってわけでもないから当分はまだ、みんなよろしくな!」

おっさんL「姉さんんんん!!!!うおぉぉぉ!!!」

おっさんM「悲しいけど!悲しいけど!全力で応援させていただきやす!!」

おっさんN「うわぁぁぁぁ!!!涙が!涙が止まらねえ!!」

勝男「この溝鼠組!全身全霊で姉さんをサポートするでぇぇぇ!!!」

銀時「右京!!アンタ最高だよっ!!よ!日本一!」

新八「何アンタまで混じって泣いてんすか!!まあ気持ちは分からなくはないですけと、僕も正直ウルってますけども」

右京「ま、そういうわけでお好み焼き屋は当分休業かな。勝男さん、この着物、私が戻るまでとっといて!」

右京が着物をばさりと脱ぐと、下にはいつものお祭り風の服が現れる。

右京「その着物も好きなんやけど、やっぱ私にはこれが一番かな」

そう笑うと右京は、男泣きしている勝男に着物を渡す。

あかね「じゃあ右京。スナックお登勢で待っててもらえる?先に良牙君やムースが待ってるはずだから」

右京「了解やあかねちゃん。じゃあみんな、ほなな」

右京は振り向きながらそう言うと、目を閉じながら片手を上げた。

神楽「かっけえアル!!今のすんげえかっけえアル!!」

新八「渋いよ、渋すぎるよ!あんなキャラなんでしたっけ右京さんて?とにかくかっけえよ!ずりいよ!」

銀時「右京!憎いねこの野郎!よっ!」

あかね「銀さん、それなんだか古くないかしら……」

屋台村の右京コールはその後、暫く鳴り止むことはなかったという。

今日はここまでで!

短いですけどちょっとPCに不具合が出て……

次は週末辺りになりそうです、それでは!

再開します!

今日のOP代わりに!

https://www.youtube.com/watch?v=euSAybwQ-mA

かぶき町、通り。

神楽「銀ちゃん、次はどの馬鹿に会いに行くアルか?」

屋台村を後にした一行は、夜のかぶき町を歩いていた。

銀時「……とうとうボス戦だ」

神楽「へ?」

銀時「ホストキャバ嬢オカマ達が騒いでるってドSが言ってたろ?その爆心地に向かう。そこに残りの異世界組もいるだろうからな」

状況が良く分かっていない神楽に、銀時が思い詰めた表情で語る。

神楽「それの何がボス戦アルか?」

新八「その辺りで騒いでいる人達の事を想像するだけで気分が重くなりますね……おまけに真選組までいるっていうんだから、ハハハ……」

神楽「ああ!そういう事アルか!確かに濃いーメンツが揃ってそうアルな、オラワクワクしてきたゾ!」

銀時「そう言うんならちょっと一人で行って来てくれない?お前の戦闘力なら心配ないだろうから、ヤムチャくらいなら一撃でいけそうだろうからお前なら」

あかね「そ、そんなに危険な人達がいっぱいいるとこなの?」

かぶき町の住人にあまり詳しくないあかねが心配そうに尋ねる。

銀時「腐るほどいるな。まあでもこのパーティーなら大丈夫なんじゃね?ニート侍♂にクソ強い格闘家♀二人、眼鏡♂が一つ。これで駄目ならもう一度レベル上げしてまた別の日に挑もう。てかもうなんなら諦めても良い気がしてきたわ」

新八「おいちょっと待てぇぇぇ!!今パーティーにさらっと無機物入ってたんですけど?!それって僕のこと?!ねえ!僕のことですか?!」

神楽「落ち着くアル新八。銀ちゃんはお前が眼鏡って意味じゃなくて職業的な意味で眼鏡って言っただけネ」

新八「職業眼鏡ってなんだぁぁぁ!!そんな職業で今から歴代魔王ばっかみたいなパーティーと戦いたくないわぁぁ!!ちょっと僕ダーマ行ってきますから!!」

銀時「待て待て新八、行っても無駄だぞ。お前、まだ全然レベル足りてないから。お前がなれるとしたらこのままレベル30で魔法使いくらいだから」

新八「それどういう意味で言ってんすか銀さん。僕が30歳になるまで童貞のままって話してんすか?」

神楽「あ!テレビカメラが来てるネ!」

青筋の入った新八の突っ込みを無視し、神楽がテレビ番組の取材クルーを発見し興奮しながら指を差す。

銀時「お、ホントだ。誰来てんの?結野アナ?結野アナ来てんの?」

新八「あ、あのお店、幾松さんのラーメン屋さんじゃないですか!すごいなぁ、テレビに取材されるくらい有名になったんですね」

新八が店を見ながら感慨にふけって言った。その間僅か数秒であったが、三人に視線を戻すと全員の着替えは終了していた。

銀時「よし、今日は幾松のところでラーメンを食べよう。新八君、まだ僕等夕飯食べてないもんな。よし、行こう。ものっそい常連ですみたいな顔で行こう、まあ普通に常連なんでそんな顔する必要もないんだがそういう雰囲気で行こう。あかね、蝶ネクタイずれていないか?」

タキシードに赤い蝶ネクタイを付けた銀時が、あかねにネクタイのずれを確認する。

あかね「ずれてないわ、大丈夫よ銀さん。それより私のこの恰好、どうかな?最近ずっと和服で洋服久し振りだから、なんか変じゃない?」

白い帽子に、可愛らしい白のワンピース姿のあかねが銀時に聞き返す。

銀時「そちらも問題ない。さわやか夏コーデって感じで問題ない」

新八「問題ありまくりだお前らぁぁぁぁ!!!何おめかししてんだよテレビに映る気満々じゃねえかよ!僕等急いでるんでしょう?こんなとこで常連面してテレビに映ってる場合じゃないですから!それにあかねさん、ラーメン食べるのにその色のチョイスは問題ありですよ!」

あかね「ハッ!ス、スープのシミが目立ちやすい……!」

あかねがその事実に気付き頭を抱える。

神楽「はーい、それでは一旦CMでーす」

タモリ風衣装の神楽がマイクで喋る。

新八「お前に至っては何を狙ってるんだぁぁぁ!!まだオシャレして張り切るとかなら分かるけどなんでタモさんになってんだよ意味分かんないよ!何?!フジのお昼枠でも狙ってるの?!」

神楽「グラさんて呼んでくれるかな?」

新八「いいともぉ!なんて言うわけないだろぉ!」

銀時「おいぱっつぁん、まあそう固いこと言うなって。飯食ってないのは事実なんだしよ。ボス戦前にいっちょ腹ごしらえでもして気合い入れ直そうぜ?」

新八「確かにお腹はすごい減ってますけど……はあ、じゃあちゃちゃっと食べて行きますか!腹が減っては戦は出来ないって言いますしね」

神楽「はーい、それでは一旦ラーメン屋でーす」

ラーメン屋、北斗心軒。

?「おお!銀時ではないか!こんなところで奇遇だな!」

銀時「よし、帰ろう」

一行が店に入ると、カメラを向けられラーメンを啜る長髪の男が銀時に気付き声を掛けてきた。

神楽「またここ来てたアルかヅラァ!それに何キャメラ独占してるアル?私もキャメラ独占してウインクとかしたいネ!」

桂「ヅラじゃない、桂だ」

神楽がヅラと呼んだ男の名前は桂小太郎。銀時らと攘夷戦争を共に戦った戦友で、今も攘夷志士として日々戦いを続けている。

?「おお!天道あかねではないか!僕を追ってここまで来たのか!いや、なんとも可愛い奴め!」

桂の横に立っていた男はあかねの姿を見ると、一瞬で彼女の肩を抱いた。

あかね「く、九能先輩!こんなところで一体何を?!それに無事だったんですね!そして離れて下さい!」

あかねは言うだけ言うと返答も待たず、九能の顔面に思い切り拳をめり込ませた。

新八「二大馬鹿が夢の競演しちゃってますよ、馬鹿の祭典バカリンピック開催しちゃってますよ銀さん。ここは帰りましょう、こんなところで無駄に体力を削っている場合じゃないです今は」

銀時「ああ、撤退だ。さっさと店出るぞ新八」

桂「九能君、花野アナ。彼の名前は坂田銀時。攘夷戦争時代は白夜叉として恐れられた歴戦の攘夷志士だ。そして俺の戦友、攘夷友達でもある」

銀時「飲み友達みたいな感じで紹介するな」

今までの流れも気にせず、桂は九能とレポーターの女性、花野アナに銀時を紹介した。

九能「おお!貴方があの『白夜叉』だったとは!初めて会った時は死んだ魚のような眼をしたダメ人間だと思っていたが、それ程までに有名な攘夷志士の大先輩だったとは!これは失礼なことを。いや、とんだご無礼を」

銀時「うん、思ってただけなら言わなきゃ良かったよね今の。言ったことによって失礼がばれたわけだからね」

花野「おーっと!ここで桂さんの戦友であり、今話題の新進気鋭の攘夷志士、九能さんの尊敬する先輩志士の登場だぁー!よくここで攘夷志士の会合が開かれるのですか?」

銀時がテンションの高い花野アナにマイクと、そしてクルーにカメラを向けられる。

銀時「ちょっと待てヅラ。これなんの撮影なの?確認なんだけど北斗心軒の撮影なんだよね?ラーメンの取材なんだよね?」

するとここで今まで黙っていた北斗心軒女店主、幾松がムスッとした顔で口を開いた。

幾松「それが違うんだとよ銀さん。そこの若い兄ちゃん、『蒼い雷』さんの密着取材なんだってさ。ったく、二回目ともなるともうどうでも良くなっちまうもんだね。で、何頼むんだい?」

銀時「おいヅラァァァ!!何勝手にそんな取材で人のこと攘夷志士とか紹介してくれちゃってんだよ馬鹿野郎!もう今はそういうのとは関係ない一般人なんだよ俺は!警察にマークでもされたらどうしてくれんだよ!」

新八「もうとっくにマークされてるんでその辺の心配はいらないと思いますよ」

桂の襟首を締め上げながら銀時が抗議する。

銀時「ちゃんと放送の時にピー音とかモザイクとか入れてくれんのこれ?」

花野「編集入るんで大丈夫です。もうなんなら全身モザイクの全音声ピーでもいけます」

銀時「人のこと全身性器みたいな表現すんなぁ!」

花野「あなたが聞いたんでしょう?!」

変わり身の早さに驚く花野アナに、銀時が無遠慮に突っ込む。

神楽「私ラーメン超大盛アル!」

新八「あ、幾松さん。僕はラーメン大盛で一つください。昼から何も食べてないんでお腹減っちゃって」

あかね「私は普通のラーメンでお願いします」

幾松「はいよ」

銀時達のことなぞお構いなしに注文をする三人であった。

桂「別に良いではないか銀時。これを機にまた二人で、いや、九能君を入れて三人だな。三人でこの国に夜明けをもたらそうではないか」

九能「そうだ白夜叉殿!不肖ながらこの九能帯刀、命尽きるまで尽力致そう!」

銀時「いや、もうホントそういうの良いんで。攘夷志士とかやってたのもなんか若さ故っていうか、ちょっと中二病入ってたっていうか、なんかそういうのモテるかなって思ってやってただけなんで」

花野「お話が弾んでいるようですが、この辺りでインタビューの続きをさせていただきます。九能さんは元々遠い異国の地に住まわれていたそうですがどうしてこの江戸の町に?また桂さんとの出会いや攘夷を志すきっかけがあればお聞かせください」

花野アナが今度は九能にマイクを向ける。

九能「うむ。とある事件に巻き込まれてこの国に来ることになってな。そんな僕はこの国に到着した途端何者かに襲われたようで、意識も記憶もあまり無くフラフラ歩いていたそうだ。そこを助けてくれたのがこの桂殿というわけだ」

九能「そして世話をしてもらっている中でこの国の惨状を聞き、僕にも何か出来ることはないかと立ち上がった次第である」

決め顔で九能はカメラに向かって言った。その後を桂が引き継ぐ。

桂「その後は皆さんも知っての通りの大活躍ぶりというわけだ。ただあまり皆に知られてはいないようだが、過酷な戦があってな」

九能「おお、『あれ』ですね。桂殿」

花野「『あれ』とは一体どんな戦だったんでしょうか?!是非お聞かせください!」

スクープの匂いを感じたのか、より一層花野アナのテンションが高くなる。

九能「ああ、僕達は桂殿とエリザベス殿と三人でその日も攘夷活動に励んでいたのだが。桂殿が発見した巨大な箱から噴出したガスを浴びた途端、周囲の景色が一変してな」

桂「もう核戦争によって秩序も文明も失って、暴力に支配されたような世界が広がっていた。人々は絶えず恐怖に怯え、モヒカン頭の肩にギザギザを付けた男たちが『ヒャッハー!』と叫びながらハーレーで走り回る地域であったな。この国にまだあんな酷い場所があろうとは知らなんだ」

銀時「……へ?」

九能「中でも聖帝、拳王と名乗る二人の漢は手強かった……まあその後その一帯をなんやかんや平定した僕達は再びガスを浴び、この江戸の町に戻ってきたというわけだ。いや、それにしてもあんなガスで移動できるとはこの国の科学力にも驚きだ」

銀時「またまたお前は別の事件に巻き込まれてんじゃねえよぉぉ!!」

銀時が桂の頭を掴み、思いっ切り机に叩き付けた。

銀時「それ別の世界だから!核の炎に包まれた199×年の世界だから!てか異世界行けんならもうこの長編終われんじゃん!おい九能!そのガスはどうなった?!」

頭から血を流し倒れる桂を無視して銀時が九能に尋ねる。

九能「残念ながら僕達が戻ってきたのを最後に、もうガスは出ることは無かったな」

銀時「ああもうホンットお前ら使えねえしめんどくせえな!いっそ拳王倒したんなら修羅の国行っちゃえば良かったのに!そしてそこで死ねぇぇぇ!!」

銀時が息を切らしながら馬鹿二人に突っ込む。

銀時「ったくよぉ。って、ん?そういや世紀末救世主の一人が今日は見当たらねえじゃねえか。あの白い気持ち悪いの」

桂「白い気持ち悪いのでない!エリザベスだ!ってあれおかしいな?どこに行ったのだエリザベスは?」

復活した桂は辺りをきょろきょろと見回すが、白いペンギンのような生き物、エリザベスの姿はどこにも無かった。

九能「む?そういえば聖帝戦辺りから見かけていないような。命懸けの戦いだった故、あまり周囲に目が届かなかったが……」

九能は深く考えるように顎に手を置いてブツブツ呟き始めた。その横で桂が頭を押さえ、苦しそうな表情をする。

桂「ん?なんだこの記憶は?エリザベスが聖帝の作ったピラミッドの階段を、てっぺんに置く石を背負いながら歩いているぞ……?な、何故だエリザベス?!どうして矢に撃たれているのだっ?!エ、エリザベスゥゥゥ!!!」

銀時「お前ら良いように記憶消してるけどそれエリザベス死んでるからぁぁぁ!!もう聖帝十字領の下敷きになってるからっ!異世界置いてけぼりだからっ!てかなんでそんな大役あいつがやってんの?!どんだけ世界改変してきたのお前ら?!」

桂「おおおおお置いていくなどそんなわけあるまいっ!ああああ、ああアレだ!洗剤切れてたから買いに行ってもらってるだけだ!な、なあ!九能君!」

全身から汗を流しながら桂が九能に話を振る。

九能「そ、そうです白夜叉殿!ぼ、僕達がエリザベス殿を置いてくなんて……い、今まままま、ママ・レモン買って来てもらってるだけでずっ!ぜっだいそうでず!!うゔぅ……!」

銀時「ヅラはキョドって汗だくだし九能に至ってはワンピースみたいな感じで泣いちゃってんじゃん!絶対お前ら記憶蘇ってんじゃん!ってか新八ぃ!早く仕事しろぉ!もう俺じゃこいつらのボケ捌ききれないから!あ、俺ラーメン大盛で」

銀時が馬鹿二人とこれ以上関わっていられないと判断し、幾松に注文してカウンター席に腰掛ける。

新八「僕だってこの二人のボケなんて捌き切れませんよ」

新八は到着したラーメンを、眼鏡を湯気に曇らせて食べながら銀時に答える。

神楽「そうネ、こんなスライムレベルの脳ミソの奴等には何言っても無駄ネ」

あかね「神楽ちゃん、それは言い過ぎよ。九能先輩だってぶちスライムくらいの脳ミソはあるわよ」

銀時「その差なんなの?ぶち?」

エリザベスを置いてきた罪悪感に死にかけている救世主二人のことなんて無かったかのように、いつも通りの会話を始める四人であった。

?「うーす、やってるかぁ?」

そこに先程の真選組の沖田と同じ制服に身を包んだ男二人が店に入って来る。先頭の男の眼つきは鋭く、口には煙草を咥えていた。

花野「おーーーっと!!ここで真選組鬼の副長!土方十四郎の登場だぁぁぁ!!『蒼い雷』九能帯刀を追ってきたのかぁぁぁ?!」

花野アナが大声で店内に入ってきた男の説明をすると、カメラが男に近づき、アップでその端正な顔立ちを映した。

彼の名前は土方十四郎。真選組鬼の副長と呼ばれ、腕が立つだけでなく頭も切れる真選組のナンバー2である。

土方「へ?え、あ、ああ!そうだ!ご、御用改めである!」

一瞬花野アナの言葉に戸惑った土方であったがすぐに立て直し、よく分からずもいつものセリフを言い放った。

?「もう違うでしょ副長。腹も減ったしなんかテレビが来てて気になって入っただけじゃないっすか。ってあぁぁぁ!!!万事屋の旦那達!そ、それに桂とこいつは!ほら九能とかいう新手の攘夷志士じゃないですか副長!いやぁ、野次馬根性でラッキー拾っちゃいましたね!」

土方の後ろから顔を覗かせたのは山崎退。真選組の監察で自他共に認める地味キャラである。本日は土方らと攘夷浪士発見の通報を受け町に出たが、結局見つからず腹が減り、ラーメンと取材クルーが気になった副長と入店してきた今日だけラッキーボーイだ。

土方「よ、余計な事ばっかくっちゃべってんじゃねえ!それに別に気になってねえし!警察の勘がこいつらがここにいるって教えてくれたんだ黙ってろボケ!」

山崎「そ、そんなぁ!店入る前めっちゃサイドミラー見てたじゃないですか!『襟、ずれて変になってない?』とか聞いてきたじゃないですか!」

土方「あー、うるせえうるせえ。俺は仕事しに来たんだ。ってことで不貞浪士一人逮捕だ」

そう言うと土方は躊躇いもなく、ラーメンを食べていた銀時の手首に手錠をかけた。

銀時「なんで俺ぇぇぇぇ?!これまためんどくせえのが来たと思ったから黙って食って帰ろうと思ったのにぃ!」

土方「その酷く捻じ曲がった天パーで暴力的にキューティクルを拘束していることによる監禁と暴行の罪だ」

銀時は勢い良く丼をカウンターに置くと、二人を離れて撮っていたカメラに近づきレンズを覗き込んだ。

銀時「ちょっとキャメラの向こうの全国の皆さーん!不当逮捕です!チンピラ警察24時でーす!助けてくださーい!」

土方「ちょ、何言ってやがんだてめえ!まだまだ風当たりきついんだからマジ止めやがれこのクソ天パ!」

カメラにしがみつく銀時を、風評を恐れた土方が必死になって引きはがそうとする。

銀時「皆さん見てください!今暴行を受けてます!こ、この瞳孔開きっぱなしのカタギとは思えない警官に暴行をぉ!」

花野「カ、カメラの前の皆さん!見たくなくても見えているでしょうが、今私達は現役警察官の暴行現場を捉えております!大不祥事です!」

山崎「ふ、副長ぉ!止めてください!マジ洒落になんなくなりますって!こんな事が問題になれば松平のおっさんに物理的に首飛ばされかねないっすよぉ!」

カメラの前でもいつもと変わらず、情けなく土方にすがりつく山崎であった。

幾松「ちょっとアンタ達!喧嘩すんなら表でやりな!ここはラーメン屋だ!客じゃないんなら出てっておくれ!」

幾松がぴしゃりと彼らを叱りつけると、銀時と土方は互いに小さい声でブツブツ言いながらも、大人しく席に座ったのであった。

土方「っち、俺ぁマヨネーズラーメン一つだ」

銀時「ねえよそんなもん!それと早くこの手錠外しやがれ、食いにくくってしょうがねえや」

山崎「は、はい!すぐ外します!あ、お姉さん!今のシーン、全体的にカットでお願いね。それと僕はネギラーメンで!」

引きつった笑顔で山崎はポケットから鍵を出し、銀時の手錠を外した。

九能「店主に言われてすぐさま引き下がるとはお笑いだ。実はこの僕に怯えているのではないか?フフフフフ」

土方の横に座った九能が、食べかけていた自分のラーメンを再び啜りながら不敵に笑った。

あかね「ちょっと九能先輩!せっかく静まったんだから余計な事言わないの!」

あかねが丼に胡椒を振りながら九能に注意する。

土方「何言ってんだクソガキが、俺は腹減ってるからここに来たんだ。飯食ってこの店出たら、よーいドンでてめえを斬り殺してやる」

幾松「はいよ、マヨネーズラーメン」

銀時「あったのかよ!じゃあ俺の丼にもあんこトッピングしてくれよ、今からでいいからさ」

銀時が食べかけの丼を幾松に渡そうとするが

幾松「それはないね。はい、ネギラーメン」

銀時「なんでそれはねえんだヘボラーメン屋が!クソッ!」

すぐに戻すと納得いかない顔で食事に戻る。

桂「幾松殿を愚弄するな銀時!お前でも笑って聞き逃せぬことがあるぞ。時に幾松殿よ、このラーメン冷えて食えたものではないのでな。代わりに蕎麦をくれ」

新八「あんたが一番酷い愚弄の仕方してるわぁぁぁぁ!!!」

思わず橋を置いた新八の突っ込みと同時に、桂の額には幾松の投げた包丁が突き刺さった。

神楽「食べ物を粗末にするなんて許せないアル。この国もそんな奴に救われたくないネ」

超大盛をあと少しで食べきりそうな神楽が、離れた席の桂に声を掛ける。

桂「おお、その通りだ!俺はなんと愚かだったのだ……リーダー!リーダーの言う通りだ!幾松殿、すまなかった」

そう言って額には包丁が刺さったまま、血は流れたままの桂は食事を再開した。その横では無言で山崎がラーメンを啜っている。

銀時「そういえば馬鹿二人は仲間置いてきたことからもう立ち直ったのかよ」

桂「何を言うか銀時。置いてきていない、エリザベスはいつもこの胸の中にいる」

新八「もう完璧に過去の思い出にしちゃった人のセリフですよねそれ」

九能「そんなことは無い。エリザベス殿は我らの頭上に、南斗を守護する一星として輝いている」

土方「俺は山のフドウが好きだな」

銀時「誰も聞いてねえよ。誰も山のフドウが鬼のフドウと呼ばれていたことも覚えてねえよ。って何?自分が鬼の副長と呼ばれているからって自己投影しちゃってんの?今後お前は山の副長って呼ばれんの?」

神楽「山岳救助隊みたいアル」

土方「おいクソ天パ。お前は哀しみを知る前に殺す」

山崎「ちょ、え?!あの白い変な生き物死んじゃったんですか?」

銀時「お前は黙ってろジャギ」

山崎「ザキっす、僕」

あかね「不吉な名前ねぇ……」

花野「す、すごい状況ですっ!」

皆がひたすらラーメンを貪る後ろで、相変わらず自分の仕事を全うする花野アナ。

花野「今も第一線で活躍を続ける『狂乱の貴公子』桂小太郎。新進気鋭の攘夷志士、『蒼い雷』九能帯刀。『白夜叉』として恐れられていたという坂田銀時。そして攘夷志士の仇敵である真選組ナンバー2『鬼の副長』土方十四郎。この面子が今、カウンター一列でラーメンを啜っております!」

花野「そして話す内容と言えば実に下らない!中学生が放課後ラーメン屋に立ち寄ったレベルです!なんと馬鹿らしい!ってもうやってられるかぁぁぁぁ!!!またこんなかいぃぃぃ!!!以上、現場の花野でした」

そこでインタビュー映像は終わり、ニュース番組のスタジオに画面が切り替わった。

お登勢「一体なんだい、こりゃあ。はぁ……」

お登勢は深い溜息と共に煙草の煙を吐き出すと、呆れた顔でテレビのスイッチを切った。

ここで一旦、銀時らがラーメンを貪るより少し前に時間は遡る。

かぶき町、飲み屋街。

らんま「ったく!こんなに働かされてたら鏡の調査なんて出来やしねえぜ!」

きわどい和服姿で女体化中のらんまは愚痴をこぼしつつも声を潜め、オカマバー『かまっ娘倶楽部』の裏口から人目を盗んで脱出しようとしていた。

らんま「あのクソよろず屋めぇ、次会ったらただじゃおかねえ!この俺を、ていうか俺だけ三店舗に売り払いやがってぇ!」

無事通りに出たらんまは拳をわなわなと震わせながら、自分を夜の店に売り払った銀時への怒りに燃え上がるのであった。

そう、彼はその女性への変身体質を買われ、ホストクラブ『高天原』、オカマバー『かまっ娘倶楽部』、キャバクラスナック『すまいる』に派遣されていた。

?「あらぁ、らん子?仕事中に一体どこ行くのさ。化粧室なら店の中じゃないの」

らんまの後ろから突如気配もなく、野太い声が上がった。

らんま「げぇっ?!西郷のおっさん!」

声の主は西郷特盛。かまっ娘倶楽部のママであり、『鬼神マドマーゼル西郷』という通り名を持つ元かぶき町四天王の一人である。青ヒゲが濃く、伝説の攘夷志士であったガタイの良いオカマである。

西郷「おっさんじゃなくてママって呼べっていつも言ってんだろうがてめぇ!タマ引っこ抜くぞ!それとさっさと仕事に戻りな!アンタ目当ての客が今日も大勢詰めかけてんだ!」

らんま「この体にゃタマなんて付いてねえよーだ!それに今日はどの店にも仕事が入ってねえ休みの日なんだ!好きにやらせてもらうぜ」

らんまの言う通り今日は一日オフなのであったが、彼目当ての客が大勢来ていると、西郷率いるオカマ軍団に無理矢理連れて来られた次第なのである。

西郷「休みだろうがなんだろうがそこにお客がいるんなら関係ないんだよ!世の中ブラック企業とかいうのが蔓延ってるらしいけど、それに比べたらウチなんて限りなくホワイトに近いじゃない」

らんま「いや、限りなく透明に遠いブルーなんだけど」

西郷「誰がヒゲの話しろって言ったのさ!」

らんま「とにかくおっさんのトコだけならまだしも『高天原』に『すまいる』でも働かされてんだこっちは!時間が無いなんてもんじゃねえぞ!俺には元の世界に帰るって目的があるんだ。悪いがそっちを優先させてもらうぜ」

西郷「あーら、いいのかしらぁ?そんなことで本当にこの町のトップを取れると思っているの?」

らんま「……くっ!」

一か月という短い期間ながらも共に過ごした西郷は的確に、らんまの『負けず嫌い』、『一番にならなくては気が済まない』という性格を見抜き、上手に手綱を握っていた。

西郷「確かにアンタは何十年に一度現れるかってくらいの良いモンを持っている。この一か月にも満たない短い間に『かまっ娘倶楽部』でナンバー1、『高天原』に『すまいる』でも五本の指に入る売り上げを記録している。かぶき町史上初のオカマでありホストでありキャバ嬢でもあり売上ナンバー1という『夜王』、いや、『夜皇』に最も近い男!」

背景に雷を轟かせながら西郷がらんまに指を差す。

西郷「でもね、うちの店でナンバー1を取ったからといって、そのアンタ贔屓のお客さん達をほっぽってたら足元なんてすぐ掬われちまうんだよ!おまけにアンタはまだまだ新参者、この町で足場を固めるには、一日もたゆまぬ営業が必要なのさ!」

今度はらんまが雷に打たれたように膝を着くのであった。

らんま「がはぁっ?!お、俺は、そんな簡単なことも分からない馬鹿な男だったなんて……悪かったママ、どうやら目先の利益に囚われ過ぎていたようだぜ!」

鏡の調査を忘れていない流石のらんまであったが、何が目先の利益なのか分からない程には頭が弱いのであった。

西郷「分かってくれればいいのよ、さ!お店に戻るわよらん子!」

?「その大いなる夢の手助け、是非今晩私の店にてさせてもらえないでしょうか?」

店に戻ろうとした彼ら二人に声が掛かる。

らんま「お、店長」

西郷「やぁん、狂死郎さんじゃない!今日はどうしたの?そんなにお仲間引き連れて。私と飲み比べでもしに来たのかしら?」

彼らに声を掛けたのは本城狂死郎。ホストクラブ『高天原』のオーナー兼ナンバー1ホストである。その脇にはもちろん、アフロ頭が印象的な八郎が控えていた。そして狂死郎にしては珍しく、その後ろに十人ほどのホストを連れていた。

狂死郎「その提案も楽しそうですが、今日ここへ来たのはその為ではありません」

西郷「すると何かしら。やだ、アフターのお誘い?流石の私もこんな人数相手じゃ嬉しくて気が狂いそうだわん。腰がもってくれるかしら」

らんま「オヴェェェェ!」

西郷「ちょっとらん子!お客さんの前ではしたないわよ!」

らんま「どっちがじゃ!」

狂死郎「今日はらん子さんを迎えに来たんです。どちらかというとらん子さんというより乱馬君なんですが」

西郷「ほう?」

狂死郎の一言で、今までとは西郷の周囲の空気が変わる。

狂死郎「今日乱馬君はオフでしたのでゆっくり休んでもらいたかったのですが、大口の予約が入ってその方々がどうしても乱馬君をご指名したいらしくて。そこで乱馬君にお頼みしようと自宅に向かったら、大勢のオカマさん達にさらわれたと話を聞きまして」

らんま「お前ら俺の休みはホンットどうでもいいのな」

西郷「らん子誘いに来るくらいでこんなたくさん引き連れてくる必要なんてある?やだぁん、私嫉妬しちゃうわ狂死郎さん」

西郷が狂死郎を始めホスト達を、嘗め回すように見つめる。

西郷「それにしても良く出来た人ね貴方。後ろの子達は顔に『力ずくでも』って書いてあるのに、貴方はただデートに誘いに来たような表情なんですもの」

狂死郎「いえいえ、恐縮です。でも私は本当にそんな軽い気持ちで来たのですよ。ただこの話を聞いたウチの若いのが、ね。何分まだまだ血の気が多いみたいで」

大柄のオカマとホスト軍団の間で、不穏な空気が流れる。

らんま(さっきは場の空気でおっさんに説得されそうになったが、やっぱりここは逃げる!このドンパチしそうな雰囲気の隙に……)

向かい合う西郷と狂死郎の脇から見えないように、差し足でその場を脱出しようとしたその時であった。

?「ちょっとママにらん子!いい加減お店戻ってちょうだい!忙しくてタチの手でも借りたいくらいなんだから!っていけない!タチじゃなくてネコの手でしたー!」

店の裏口から逞し過ぎるアゴを持った陽気なオカマが出てきた。

らんま「か、花王のマークが喋った?!」

花王「誰が花王のマークよ!一か月近くいるんだからいい加減驚くのやめなさいよ馬鹿ぁ!あ・ず・みよ、あずみ!」

彼の名前はあずみ。かまっ娘倶楽部で働く大きなアゴを持つオカマで、西郷が一線を退いてからは、『拳王アゴウ』としてかぶき町四天王の一人に数えられている。

らんま「もう少しで逃げられそうなのに思わず突っ込んじまったぁぁ!!どうしてくれんだこの野郎!」

あずみ「その理不尽なキレ方、パー子を思い出すわね……ってあらぁぁ!!狂死郎さんじゃなぁぁぁい!今日はどうしたの?もしかして私に会いに来てくれたとかぁ?!」

らんま「どうしてここのオカマはどいつもこいつもそんなにポジティブなんだ……」

逃げられなかった落胆とあずみの精神力にやられ、がっくり肩を落とすらんまであった。

西郷「あずみが来たことだし私は店に戻るわ」

狂死郎「おや、今日は引いてくださるのですか?」

てっきり話のカタが着くまで西郷は引かないものだと思っていた狂死郎は不思議に感じ、背を向け店に戻ろうとする西郷に尋ねた。

西郷「私は一線を退いた身。サボってる子に説教はするけど他の勢力とやり合うつもりはないの。こっからはあずみがお相手するわ。それじゃあね、狂死郎さん。今度はお客さんとして来て頂戴」

西郷はそう言ってウインクすると、店の裏口に消えていった。

あずみ「ちょっとらん子、これどういう状況なの?!私がこのイケメン達の夜のお相手しちゃっていいの?!」

興奮して鼻息を荒くして詰め寄るあずみにドン引きしながらも、らんまが状況を説明する。

らんま「落ち着け妖怪。今『かくかくしかじか』って状況なんだよ。お前の妄想しているような事には決してならん」

あずみ「そ、そんな!いくら狂死郎さんの頼みでも、らん子を貸すことは出来ないわ!そうだ!代わりに私を連れて行きなさいよ!いくらでもらん子の代わりを務めるわ!そうして私の身も心も蹂躙すればいいじゃない!」

ホストA「お前みたいな化けモンに代役が務まるわけねえだろ!それにもう身も心も蹂躙され尽くしたみたいになってんじゃねえか!」

ホストB「そうだそうだ!鏡見てこい!エアーズロックみたいな逞しいアゴ持ちやがって!」

あずみ「んだとコラァ!喰らわすぞてめえら!」

あずみのアホな言葉に怒ったホスト達が怒鳴り飛ばすが、彼も負けてはいない。

オカマA「ちょっとアンタ達!あずみに向かってなんてこと言うのよ!」

オカマB「それにエアーズロックは言い過ぎよ!せいぜいグランドキャニオンくらいよ!」

らんま「お前それフォローしてるつもりなのか?」

西郷が消えていった店の裏口から今度は、十名ほどのオカマが勢い良く現れあずみの後ろを固めた。

あずみ「あ、貴方たち!どうしてここに?!」

オカマA「ママから事情は聞いたわ!加勢しに来たの!」

オカマB「らん子は私たちの大事な仲間!いくら狂死郎様とはいえ渡すわけにはいかないわ!」

ホストC「なんだこんな大勢で!やるってのかよ!」

ホストD「こっちだって引くわけにはいかねえんだ!」

らんま「はぁ、帰りてぇ……」

徐々にヒートアップしていくホストとオカマ達を見てらんまは、深くため息をついたのであった。

?「らんまぁ!こんなところで何してるあるか?」

そんなホスト軍団とオカマ軍団の喧騒に割って入ってきたのは、少しカタコトな日本語の女性の声であった。

らんま「よー、シャンプーじゃねえか」

狂死郎「これは困ったことになりましたね……」

あずみ「め、『女豹』シャンプー?!」

三者三様のリアクションで迎えられた彼女の名前はシャンプー、相も変わらずセクシーにチャイナ服を着こなしている。そして羽根飾りが妖艶な扇子を手に、それをらんまに向け嬉しそうに振っている。

ちなみに今は『すまいる』で働くナンバー1キャバ嬢である。

シャンプー「狂死郎、これはどういうことあるか?この私が乱馬の予約したというのに、どうして乱馬は今ここで女の姿でこんな恰好してるね?」

後ろにこれまた十名ほどのチャイナ服に身を包むキャバ嬢を連れたシャンプーが、腕を組み不機嫌な表情で狂死郎を威圧する。

彼女は今や、かぶき町でも他の追随を許さない程にお水の花道を駆け抜けており、狂死郎にすらこのような態度が許される数少ない一人であった。

らんま「どういうことなんだ店長?」

狂死郎「さっき言っていた大口で乱馬君を指名したいお客様というのがシャンプーさんなんですよ。今日はシャンプーさんのグループが休みなので、『高天原』で乱馬君とがっつり呑みたいという話なんです」

気付けばシャンプーは、自分の派閥が出来るほどにこの町のキャバクラ界で力を付けていた。

シャンプー「そういうことね、店に着いたら誰もいなかったからもしやと思って来てみれば。ということで乱馬!さ、早く着替えて店行くね!」

らんま「わ!引っ張るなシャンプー!というかお前は休みなら毎度毎度飲みに出てないで鏡の調査をやらんか!」

飛びついて来たシャンプーを振りほどきながら、らんまはシャンプーを怒鳴りつける。

シャンプー「……か、がみ?」

らんま「忘れたんかいおのれはぁ!」

シャンプー「冗談ね、フフ。それは今私の奴隷たちが……ゲホゲホっ、なんでもないね。今私のお客さんたちが必死に探してくれてるから大丈夫ね。果報は寝て待つよろし」

らんま「客商売する身としては絶対言っちゃいけないこと言わなかった?」

あずみ「こ、これが『女豹』のシャンプー……!なんて恐ろしい子……!」

彼女はその容姿の端麗さ、性格のドキツさ、圧倒的な強さから『女豹』と呼ばれかぶき町の住人から畏れられていた

らんま「とにかくだ!お前の奴隷だか客だかわけわかんねえのに任せてられねから俺は鏡の調査に行く。それに何度も言ってるが俺は今日休みなんだ、お前らにこれ以上付き合ってらんないぜ」

あずみ「ちょっとらん子ぉ!あんたの事情は聞いてるし気持ちもわかるけどさ、今日はお願いだから舞台に立って?ね?お願い」

シャンプー「ばかうけは黙ってるね!乱馬は私と遊ぶね!」

あずみ「誰が青のりしょうゆ味だこの野郎!この青髭でてめえのスベスベお肌すりおろすぞ!」

オカマA「そうよそうよ!あんたちょっと綺麗だからって調子乗ってんじゃないわよ!」

オカマB「それにばかうけは言い過ぎよ!せいぜいグランドキャニオンくらいよ!」

らんま「さっきからお前のそれ全っ然フォローになってないからな」

キャバ嬢A「シャンプー様に向かってなんて口聞いてんのよおっさん共!この町からはたき出すわよ?!」

ホストA「だいたいばかうけよりグランドキャニオンの方がひでえじゃねえか!」

あずみ「もうアゴの話はやめてぇ!」

シャンプー「やめて欲しかったら大人しく乱馬を渡したあと整形外科でも行くよろし!」

あずみ「らん子渡す意味皆無じゃないっ!」

先程よりも人数が増えたことで更に場がヒートアップしていく。その騒ぎにほとほと嫌気が差すらんまであったが、これはチャンスとまたも抜き足でその輪から逃げ出そうとする。

と、そこに一人の女性の大声が響き渡った。

?「らんまちゃーん!迎えに来たわよー!出勤のお時間でーす!」

https://www.youtube.com/watch?v=-bzWSJG93P8

こちらを聞きながら

その声の主を顔も見ずに分かったらんまは、今日一番がっくりとうなだれ

らんま「ははは……もうなんでもいいや。好きにしてくれ」

と涙を流しながら両手を上げ逃走を諦めた。

あずみ「あ、あんたは?!」

狂死郎「かぶき町四天王が一人、『女王』――」

シャンプー「お妙!」

そこには新八の姉であり、お登勢、西郷からの後押しを受け四天王に成り上がった、シャンプーと同じく『すまいる』で働くキャバ嬢、かぶき町最強の『女王』志村お妙が立っていた。これまた他勢力同様、その後ろには何人もの自らの傘下、キャバ嬢を従えながら。

お妙「あら、皆さんこんなに集まってどうしたんですか?宴会でも開いているんですか?でしたらこの後『すまいる』にも寄って行ってくださいな」

お妙が不気味なほどの営業スマイルでその場の者に話しかけた。すると今までの騒ぎがまるで嘘のように静まり、皆本能に従い身を構えるのであった。

ただその中でも、自然体で口を開ける者が数人。

狂死郎「こんばんはお妙さん。今日はそんなに綺麗な女性を引き連れて何用ですか?」

狂死郎が得意の必殺スマイルを顔に浮かべながらお妙に尋ねる。

お妙「嫌ですよ狂死郎さん、今言ったじゃないですか。らんまちゃんを迎えに来たんです。そろそろ店を開けなきゃならないんで」

狂死郎の笑顔に一ミリも心動かさずにお妙は言葉を返し、輪の外で逃走を諦めたらんまに声を掛けた。

お妙「ごめんねぇ、らんまちゃん今日休みなのに働いてもらうことになっちゃって。お店、人が休み過ぎてこのままじゃ営業できなくなっちゃうの。だから、ね?命令」

らんま「もうお願いでもねえのかよちくしょう!」

シャンプー「勝手な事言ってるんじゃないねお妙!乱馬は今日私のものね!」

お妙「あらシャンプーちゃんいたの?でもそんなこと言われても、店を開けられない元凶はそもそもあなたなのよ?」

わざとらしく今気づいたフリをしながらお妙は話を続ける。

お妙「あなたが自分の派閥全員休ませて、ホストクラブで遊ぶだなんて言うから人が足りなくなったのよ。稼ぎまくってるあなたには店長も何も言えなかったみたいで。まったくもう何なの?このまま独立して行政特区『チャイナ』でも立ち上げる気なの?お水の騎士団団長さんなの?」

シャンプー「そんなに人足りないならそいつら引き連れてさっさと店にでも基地にでも帰るよろし、バストゼロ」

今日最大級の火花がシャンプー、お妙の間で飛び散る。いや、爆散する。

お妙「誰がバストゼロじゃスリット全開の痴女猫がぁっ!!」

シャンプー「うるさいね全身まな板女!それに何度も何度も私と乱馬の逢瀬を邪魔するな!お前なぞに乱馬は渡さないね!」

この一か月の因縁が互いに噴き出し、周囲を寄せ付けない闘気の風が二人から発生する。

お妙「私はあんな脳みそスチャラカでデタラメな変身体質持った変態いらんわぁ!そりゃあの子を見てると『おすわり!』って言いたくなるけど、なんか白い犬っころ思い出すけど――」

らんま「だから度々言ってるけどそれなんなんだよ!」

お妙「女のあなたには関係ありません!」

シャンプー「私を差し置いて乱馬と飼い犬プレイなど許さないね!」

近藤「そうだそうだ!けしからん!それにお妙さんには俺という忠実な犬がすでにいるじゃなですか!」

お妙「誰が飼い犬プレイなんて希望するかぁ!こちとら碌に稼いで来ねえ愚弟養うだけで精一杯なんだよ道場復興とか夢のまた夢なんだよ!その上こんな駄犬飼えるかぁ!」

らんま「誰が駄犬じゃ誰が!」

シャンプー「そうね!乱馬は私の忠犬ね!」

近藤「えええ?!そうだったの?!シャンプーちゃんと早乙女そんなただれた関係だったのぉ?!うらやまけしからんな、逮捕だっ!」

らんま「なんでそうなるんだクソゴリラ!……って、え?」

一同「……ん?」

お妙とシャンプーから発せられていた闘気の渦が収まり、皆、とある人物を見て固まる。

一同「……」

お妙「……お前は何さっきからいましたみたいな感じで会話に参加してんだ腐れストーカーがぁぁぁ!!!」

近藤「ぐぶほぉっ!!」

お妙の渾身の右ストレートが近藤の顔にめり込み、人体からはおよそ鳴らない鈍い音を立てて近藤は崩れ去った。

らんま「ホンットこいつはどうしようもねえな」

シャンプー「なんか興醒めしたある」

お妙「みんなごめんなさいね、このストーカーのせいで不愉快な思いをさせて」

あずみ「いいのよ、困った時はお互い様じゃない。それより何もされなかった?」

狂死郎「大丈夫ですか?お妙さん。すぐに警察を呼び――いえ、この方が警察でしたね……」

険悪なムードが去った一同の脇に倒れている男の名は近藤勲。土方や沖田の属する真選組の局長である。隊士達からの信望は厚く剣の腕も立つ。が、お妙を愛するあまりストーカーと化してしまった哀れなゴリラである。

近藤「……ち、違うんですよお妙さん。今日はお妙ハンター勲Gとしてではなく、警察官として仕事しにここに来たんです」

常人ならば確実に絶命しているであろうダメージを受けた近藤であるが、こんなの慣れっこと少しよろけただけで普通に立ち上がり、ここに来た経緯を話し始めた。

近藤「今日も今日とてお妙さんに会いに行こうとパトカーに乗っていた時でした」

らんま「何も違わねえじゃねえか!」

シャンプー「それに仕事中とは公私混同甚だしいね」

近藤「まあ待て早乙女にシャンプーちゃん。そこで俺は一本の無線を受けたのだ」

近藤が目を瞑り顎に手を当てる。

近藤「『かぶき町でホストにオカマにキャバ嬢が暴れてるらしいんで近藤さん、そっち頼みやす』との通信だった。ということで現場に駆け付け今に至る。そして早乙女、逮捕だ」

近藤は懐から取り出した手錠を、慣れた手つきでらんまの両腕に掛けるのであった。

らんま「なんでだぁぁぁ!!!俺はなんにもやっちゃいねえ!!!」

近藤「何をしらばっくれてんだ。ホストでオカマでキャバ嬢なんて珍妙な生き物お前しかいないだろ。それに喧嘩の常習犯だし。今は女の子の格好してるからって容赦しないぞ、お前の変身体質にはもう騙されん」

この一か月、乱馬が喧嘩する度に何故か近藤が現場に駆け付けることが多く、二人は顔見知り以上の間柄になっていた。

また『すまいる』でもなんやかんやあったのだが、ここはそのエピソードは割愛して読んでくれている人のご想像にお任せしようすいません。

らんま「ホスト『と』オカマ『と』キャバ嬢『が』暴れてんだ!ホストでオカマでキャバ嬢なんて珍妙な生き物が暴れてる話じゃねえんだよ!手錠外しやがれぇ!」

近藤「まあ話はゆっくり署で聞くから。おい、さっさと行くぞ」

そう言ってらんまをしょっぴこうとした近藤に、四方八方から激しい罵詈雑言が飛んだ。

あずみ「最後にのこのこ現れてらん子かっさらうなんて許すわけないでしょ!早く離しなさいよ!」

狂死郎「彼は私たちの大事な仲間です。警察の方とはいえ、連れていくなら容赦はしませんよ」

シャンプー「おいゴリラ人間!私の乱馬をさっさと解放するね!」

お妙「近藤さん?らんまちゃんにはこの後たっぷりウチで働いてもらわ、あー、なんか喋んのめんどくさくなってきたから早く死んでください」

ホストA「早く乱馬君離せよ!」

キャバ嬢B「そうよそうよ!じゃないとアンタの上にコスモキャニオンが降って来ることになるんだから!」

あずみ「おいコスモキャニオンって私のことかこらぁ!誰がエアリスに似てるだこらぁ!」

ホストB「んな事誰も言ってねえだろこのモルボル!てかさっさと滅べ古代種がぁ!」

オカマB「それにエアリスは言い過ぎよ!せいぜいミドガルズオルムくらいよ!」

らんま「もうお前は敵側だと思うんだが」

オカマA「アンタ何勢いで裏切ってんの?!それセフィロスに惨殺された蛇よ?!」

オカマB「ごめんなさい。エアリスの思い出を汚された気がしてつい……」

あずみ「この子を裏切らせるなんてもう許さないわ!アンタ達!行くわよぉぉぉ!!!」

一旦は鎮火しかけた騒動であったが、渦中のらんまを近藤が連行しようとしたことで再燃。そしてとうとうオカマ軍団がホスト、キャバ嬢軍団に突撃をしかけたのであった。

ホストA「やる気かてめえら?!俺達も行くぞぉっ!」

狂死郎「止めはしませんが女性に手を出すことは許しませんからね」

ホストBCD「命に代えてもぉぉぉぉ!!!」

シャンプー「私たちも行くね!そしてこの機に乗じてお妙一派を亡き者にするある!」

キャバ嬢ABC「それ超イケてるぅぅぅ!!!」

お妙「全軍突撃!動くものは全て殲滅せよ!繰り返す!動くものは全て殲滅せよ!特にスリット全開のチャイナ服を着た動くものは入念に殲滅せよ!」

キャバ嬢LMN「サーイエッサー!」

それに応戦する形で全軍入り乱れての乱戦が始まってしまったのであった。

らんま「あーあ、俺しーらねっと」

近藤「早乙女ぇ、お前の言ってたことホントだったんだな……ちなみにこれ、俺のせいなのかな?」

らんま「たぶんなぁ……」

決戦の火ぶたは、まさかの警察官によって切って落とされたのだった。

今日はここまでで!

来週はちょっと仕事が忙しいので更新厳しいかもしれないっす…

また週末辺りの更新になると思いますんでよろしくっす!それでは!

乙です

おつ
お妙さんの犬ネタは犬夜叉かな?
だったら桔梗もすぐ側……

1乙

うん、適材適所ではあるww

>>304、305 レスありがとう!

>>306 正解です!この後がっつりその辺で絡む予定ですww

>>307 自分的にはまったのは九能と桂ですww

また読んでください!

再開します!

今日のOP!

https://www.youtube.com/watch?v=bSdtTqKSMqM

らんま「……ったく。おい近藤、俺ならこいつらを一瞬で鎮圧できる。この騒ぎを止めて欲しいならさっさとこの手錠を外せ」

殴り殴られ蹴り蹴られの大乱闘が始まる。その騒ぎに釣られ、喧嘩好きのかぶき町の住人も野次馬根性で集まって来る。

近藤「うーむ、まぁ今回は仕方ないか。早くこの騒ぎを止めなきゃいかんしな。それにこの大乱戦、お妙さんが心配だ」

数秒程の間、あまりの喧嘩の激しさに現実から遠ざかっていた二人だが、このまま傍観している場合でもないことに気付き、近藤はらんまの手錠を外した。

らんま「ああ、お妙による死者が出る前にこの馬鹿騒ぎを終わらせる!」

近藤「そっちじゃねえよ!純粋にお妙さんのこと心配してんだよ!」

らんま「あれでも?」

らんまの指差す先にはどこからか持ち出した薙刀で、周囲の敵をばったばったと蹴散らす戦鬼、お妙がいた。

らんま「呂布かっつーの」

近藤「……そ、それにしてもアレだな!」

三國無双と化しているお妙のことは都合が悪いので見なかったことにして、近藤は話を逸らした。

近藤「ホスト、キャバ嬢、オカマの三勢力がぶつかり合うなんてまるで三国志だな!なんだっけ?『魏』、『ア呉』、『蜀』だっけ確か」

あずみ「ちょっと今人体のパーツ混じってたわよ!どの三国志作品にも出てきたことない国出てきてたわよ!」

あずみはホストの猛攻に耐えながら、必死に近藤のボケに突っ込みを入れた。

らんま「――さて、いくか」

近藤「あんまりやり過ぎるなよ早乙女。あと、くれぐれもお妙さんには怪我をさせるんじゃないぞ。怪我させた時点でお前のその首、斬りっぱねてやるからな」

奮闘するあずみの突っ込みを相手にもせず、らんまは右腕をグルグルと回し、喧嘩の輪に歩み寄る。

らんま「はいはいっと。まあ俺が何したって怪我するようなやわな女じゃねえだろ、ありゃ」

腕を組み、それを後ろから見つめる近藤。憎まれ口こそ叩きあうものの彼らの間には、短いながらも築かれた信頼があるようであった。

らんま「女を相手にするのは気が引けるが、今は俺も女の体ってことで許してくれよ?」

誰に言うわけでもなく一人呟くとらんまは、不敵な笑みを浮かべながら戦の渦に飛び込んだ。

オカマD「おりゃぁぁぁ!!!」

すぐさま、興奮しすぎて誰を相手にしているかも分かっていないオカマの右拳がらんまに迫る。

らんま「……ふっ」

これを難なく躱すと、周囲の荒れ狂う者たちとは対称的に、冷静にステップを踏み円を描きながら、人と人の間を縫うように動く。

シャンプー「らんまぁ!私を助けに来てくれたあるか?!ってその動き――!!」

お妙「らんまちゃん!今から加勢してくれたらあとで破亜限堕津買ってあげるわよ!ってあのアホ私まで巻き込もうとしてんじゃねえか!」

らんまの不思議な動きの意図に気付いた二人は、自分に群がる敵を蹴散らし、逃げの構えを取った。

その間もらんまは喧嘩の輪の中心へ、螺旋を描くように移動する。

キャバ嬢E「くらえぇぇぇ!!」

ホストG「おらぁっ!」

キャバ嬢の蹴りをいなし、ホストの一太刀を避け続けるらんま。

そして遂に、熱い熱い闘気の中心に辿り着く。

らんま「……これで少しは頭を冷やしな」

そこで彼は、冷たい冷たい右拳を振り上げる。

らんま「飛竜っ!昇天破ぁっ!」

突如として彼を中心とした小規模の竜巻が起こり、それまで暴れていた一団を軒並み豪快に吹き飛ばしたのであった。

近藤「相っ変わらず滅茶苦茶やるなぁ、あいつは……」

お妙が事前に竜巻の射程外に避難するのを確認していた近藤は落ち着きながら、また半ば呆れながら四方八方に飛んでゆくオカマや野次馬を眺めていた。

らんま「……ふぅ、これでも最大限手加減したつもりなんだがな。ま、お前らの闘気が凄まじかったってことで勘弁な」

今や誰もいない円の中心で、らんまは静かになった周囲を見回す。すると背後から、お妙同様一足先に避難し、難を逃れたシャンプーが抱き付いてくる。

シャンプー「良くやったねらんま!これで誰にも邪魔されることなく遊び行けるね!」

らん馬「だあああっちぃぃぃ!!!」

そして抱き付くとともに、どこからか調達してきたヤカンの熱湯を乱馬に掛けるのであった。そんな中

お妙「何が誰にも邪魔されることなくじゃ甘ちゃんがぁ!」

お妙の薙刀による一閃が二人を襲う。

乱馬「どわぁぁぁっ!!」

シャンプー「まだ生きてたか、ゴキブリの如くしぶといねっ!」

それを間一髪、二人とも毛先を斬られながらもすれすれで躱す。

お妙「らんまちゃん、いえ、今は乱馬君ね」

躱された薙刀を構え直したお妙が向き直る。

お妙「てっめえ!そこのチャイナ痴女は良いとして私まで巻き込もうとしやがったなこの野郎!」

乱馬「ち、違うんだって!お前らなら俺の動きに気付いて逃げ延びるって信じてたんだよ!ほ、ホントだって!な?!」

体中から冷や汗を流し、腰を抜かした乱馬が近藤に話を振った。

近藤「そうですよお妙さん!いやー、流石の身のこなしでした!」

シャンプー「私は最初から乱馬の思惑に気付いてたね。私と乱馬とは以心伝心、お前と違って思いが通じ合ってるね」

シャンプーがお妙に扇子を向け挑発する。

お妙「ちょっとさっきからいちいち乱馬君絡めて張り合ってくるのやめてくれない?私そういうの興味ないんで、それにもっと男らしい年上の人がタイプなんで」

近藤「そうだぞシャンプーちゃん。ちなみに今のは愛の告白と受け取ってよろしいのでしょうかお妙さん!」

お妙「代わりにこれ受け取ってください!」

お妙が笑顔で薙刀の一閃をプレゼントする。

近藤「うおぉぉぉ!!お妙さんそれ当たるとマジヤバイ奴です!!」

近藤も命からがら、乱馬同様腰を抜かしながらお妙の薙刀から逃れたその時であった。

シャンプー「危ないね!」

お妙「ちぃっ!」

シャンプー、お妙は咄嗟に反応し飛び上がったが、腰を抜かしていた二人は動くことができなかった。

乱馬「げっ!――」

近藤「へっ?――」

飛んできたバズーカの弾は乱馬、近藤の間に着弾。二人をもろに巻き込んで爆発したのであった。

お妙「犬夜――」

シャンプー「乱馬ぁ!!」

お妙の声は都合よくシャンプーにかき消され、辺りを覆っていた爆煙が晴れる。そこに二人の男が上空から、気絶している乱馬、近藤の傍に着地した。

九能「おお、早乙女乱馬ではないか。こんなとこで寝ていたら風邪を引くぞ馬鹿者」

桂「『鬼の副長』恐るべし……まさか、自らの上官や知り合いすら巻き込んで我らを亡き者にしようとは……」

現在、かぶき町でもトップを走る馬鹿二人の到着であった。その遥か後方から、またも別の声が上がる。

山崎「うわぁぁ!!ヤバイっすよ?!ターゲットじゃなくて一般人に当てちゃってましたよ今!!」

土方「だ、大丈夫だ。この際もう全部、なんもかんも過激派攘夷浪士のせいにしちまえ!」

野次馬をかき分けて桂、九能を追っていた土方と山崎が駆け付ける。

山崎「うわ!良かったぁ。一般人じゃなくて局長といつもの喧嘩少年でした。この二人なら超合金Zで体できてるから大丈夫ですね」

土方バズーカの被害者を発見した山崎は、その正体が分かると安堵で胸を下ろすのであった。

土方「近藤さん!近藤さんっ!しっかりするんだ!」

土方は近藤に駆け寄り、膝を着き彼の体を力強く抱き上げた。、

土方「……くそっ!俺達の近藤さんをこんな姿にっ!攘夷浪士共め!絶対許さねえ!」

乱馬「白々しい芝居打ってんじゃねえ!全部聞こえてたわ!」

実験に失敗した科学者ヘアーの乱馬が起き上がり怒鳴りつける。

土方「まぁたお前か早乙女。で、この惨状はお前の仕業か?それともあの女傑二人か?」

土方はかったるそうに近藤を放ると、周囲の死屍累々を見回しながら尋ねた。

シャンプー「私何も知らないある。そもそも日本語よく分からないある」

お妙「私もなんのことかさっぱり分からないわ。怖いわねぇ、シャンプーちゃん」

恐ろしいほどに息を合わせる二人であった。

山崎「まあ、この惨状はここにいる全員の合作なんでしょうね。ははは、はぁ……」

事態の収拾の面倒さを憂い、山崎が顔を引きつらせながら笑った。

九能「自らの過ちを僕らになすり付けるとは許せん!」

桂「この国の警察はここまで腐敗しておるのか……」

乱馬「脳ミソ腐敗してるお前らには言われたくないだろうな」

幾松のラーメン屋を出た途端に命懸けの追いかけっこを開始させられた攘夷志士二人組が、口惜しそうに拳を震わせる。

桂「とここで質問だ早乙女君!君もこやつらにはさぞ煮え湯を飲まされているだろう?」

乱馬「ま、まあこいつらのせいでさんざんとっ捕まったり何やらひでえ目には会ってるな……」

この一か月の間のいざこざを思い出し、苦い顔をする乱馬。

桂(裏声)「そんな貴方に朗報です!今私たち攘夷志士は新しい新入志士を大募集中!君ほどの男なら、数ある試験も全部パス!」

九能「お前と組むのは遠慮したいが桂殿がここまで言うのだ。僕に異論はない」

桂(裏声)「それになんと今ならママ・レモン一か月分を無料でプレゼント!おまけに特別応援プラカード付き!」

桂がどこからか大量のママ・レモンと、『このピラミッドの石、重いっす』と書かれ血で汚れたプラカードを取り出した。

乱馬「そんなもんやってられるか!それとこのプラカードの持ち主に一体何があったんだよ!」

桂(裏声)「ぬ、ぬうっ?!い、いかん!このプラカードを見た途端再び頭痛が……過去のトラウマが……」

九能「だ、大丈夫か桂殿!貴様!桂殿に何をした!」

乱馬「どう見てたって俺は何もしとらんだろ!こいつが勝手に自分の古傷えぐっただけだろうが!それと早く声戻せバカツラ!」

桂(ビブラート)「バカツラではない、桂だ」

そんな彼らの下らないやり取りも、とある男の叫び声で中断させられる。

沖田「かぁつらぁ!!」

彼ら三人は声がした瞬間に、何が飛来してくるか瞬時に察し勢い良く飛び上がった。

桂「ちぃっ!」

乱馬「毎度毎度お前らはいきなりバズーカ撃ってくるんじゃねえ!」

彼らの足元を、沖田が発射したバズーカの弾が火を噴き通過する。

九能「ぼさっとするな!そこぉ!」

土方「んっ?――」

周囲を検分していた土方に、歴戦の艦長よろしく九能が注意するも時すでに遅く、弾は土方の体に直接着弾。大きな爆発が起こる。

神山「うわぁぁ!!ヤバイっすよ?!ターゲットじゃなくて一般人に当てちゃってましたよ今!!」

沖田「だ、大丈夫だ。この際もう全部、なんもかんも土方のせいにしちまえ!」

真選組一番隊隊長沖田と、その部下神山が被弾し倒れている被害者に駆け寄る。

神山「うわ!良かったぁ。一般人じゃなくて副長でした。この人ならゲッター線浴びてるから大丈夫ですね」

沖田バズーカの被害者を発見した神山は、その正体が分かると安堵で胸を下ろすのであった。

沖田「近藤さん!近藤さんっ!しっかりしてくれ!」

沖田は近藤に駆け寄り、膝を着き彼の体を力強く抱き上げた。、

近藤「……お、うぅ。総悟じゃねえか。こ、こりゃ一体……?」

意識を取り戻した近藤だが、如何せんファミコン並みの容量しか持たない頭であるため、記憶を少し飛ばしたようであった。

沖田「全部なんもかんも土方さんのせいですぁ」

土方「なんでそうなるんだお前はぁ!!それに自分で俺吹っ飛ばしといて真っ先に近藤さんとこ行く普通?!せめて白々しい芝居打てよ!!全部聞こえてたわ!」

爆発パーマの土方がむくりと起き上がり、さらっとした顔の沖田に突っ込みを入れる。ただ土方は自分が近藤を撃ったのも知られてはいないが事実であるので、早々にこの話を切り上げた。

土方「で、お前はなんでこんなとこでバズーカ撃ってんだ?天人襲撃犯追跡の仕事はどうした、またサボりかこの野郎」

沖田「やめてくださいよ土方さん。仕事で来たんでさぁ、仕事で。こっち方面でそのホシらしき野郎共を見たって連絡が入ったんで。まあお前にバズーカ撃ち込んだのは趣味だけどな」

土方「あ?お前最後ぼそっとなんて言った?趣味って言った?趣味で上司にバズーカ撃っちゃうの?南アフリカでもそんな危ねえ奴いねえぞこら」

沖田「お、噂をすればなんとやらだ。どうやら俺が早く到着しすぎたみたいで。怪しいやつらが、ほれ」

至近距離でメンチ切りまくってる土方のプレッシャーをものともせず沖田は、通りの向こうからやってくる騒がしい一団を指差した。

右京「らんちゃーん!やっぱりここにいた!許嫁のうちが会いに来たでぇ!」

ムース「シャンプー!こんなとこにいただか!さ!今日もじゃんじゃんおらがボトル入れたるだ!」

猿飛「銀さん?!銀さんはどこ?!こんなに人がいるのにあの人は何故いないの?!そう、そういうプレイなのね!もうどんだけ興奮させれば気が済むのよっ!!」

良牙「おい眼鏡女!さっきからはしたないぞ貴様!」

長谷川「しょうがねえさ良牙君、この子と銀さんはそういうプレイで楽しんでんだよ。ま、あと数年すれば良牙君にも分かるさ」

その一団の正体はスナック『お登勢』で待機中のメンバーであった。その中にはもちろん、沖田が追っている天人襲撃犯の二人の姿もある。

乱馬「これまた面倒なのがわんさかと……この場所は馬鹿が集まる呪いのアイテムでも埋まってんのか……」

どんどん人が増えるにつれ、自分の目的が離れていくのを感じ、今まで以上に肩をうなだれる乱馬であった。

良牙「おい乱馬!貴様聞いたぞ!」

そんな落ち込む乱馬に。良牙が指を差し叫ぶ。

良牙「鏡の調査もあかねさんもほっぽり出して、毎夜毎夜やれ水商売やら夜遊びやらと呆けているらしいじゃねえか!男として恥ずかしくないのか!」

乱馬「うるせえ!逃げても逃げてもオカマにホストにキャバ嬢が追っかけてくるんでい!こっちの身にもなってみろ!で、そういうお前はどうなんだ、良牙」

良牙「ふ、俺か?」

乱馬の切り返しに自信ありげに良牙が微笑む。

乱馬「な、何か手掛かりを掴んだのか?!」

良牙「そんなものあるわけなかろうが!この一か月!宇宙を巡って戦っていた俺にそんなこと期待するなボケェェ!!」

乱馬「自信満々に言うことかっ!」

良牙のセリフに、乱馬の顔が思わずへのへのもへじに変わる。

良牙「まあそんなことはどうでも良い。俺がここに来たワケはな乱馬!この一か月宇宙を転戦し成長したこの力を、お前で試そうというわけだ!」

良牙(クックックック。水商売で碌に修行もしていない弱体化した乱馬などここで亡き者にしてくれるわ!そして俺はあかねさんと!!)

ムース「その決闘、おらが立会人を務めよう!乱馬!まさか断るつもりもなかろうな?」

ムース(クックックック。頼んだぞ良牙、最悪お前が仕損じても控えでおらがついてるだ!そしておらはシャンプーと!!)

良牙の突然の宣言。そして乱馬の返答も聞かずにムースも声を上げた。そう、彼らが銀時の言いつけを破ってまでここに来た目的は、ここで乱馬を始末することだったのだ。

ちなみに右京は乱馬に会いたかったから、さっちゃんは言いつけを破っての銀時のお仕置きが目的である!

乱馬「良い度胸じゃねえか良牙。こっちはストレス溜まって溜まって仕方なかったところだ。すっきりするまでやらせてもらうぜ!それにな、ただ俺がこの一か月、アホみたいに夜の町に浸かっていたとでも思ったか?」

良牙「何?!」

ムース「ど、どういうことじゃ?!」

今度は良牙に代わって乱馬が自信満々ににやりと笑った。

乱馬「無差別格闘流は常に進化し続けているってことだよ、ふっ」

あずみ「ま、まさかあの子!!」

右京「わ!Mr.シャイン?!」

あずみ「違うわよ!それにどれだけの人がMr.シャインでピンと来ると思うの?!わざわざググってもらうことになるから止めなさい!」

ようやく復活したあずみは一突っ込み入れると、乱馬の自信のワケを続けた。

あずみ「この短期間で私から伽魔仙流の極意を盗んだんじゃ……?!」

乱馬「いや、それは知らない」

狂死郎「そうですよ、あずみさん」

フラフラになりながらも、狂死郎も復活し確信に満ちた表情で言う。

狂死郎「彼は百須斗神剣の使い手となったのですよ」

乱馬「ああ、それも知らない」

右京「なんなんやあんたらは……」

とそこに警察官たちの一声が入る。

土方「おいお前らぁ。話勝手に進めてるが、警察官の前で決闘なんて許されるわけねえだろーが。このままだと全員パクることになるがいいんだな?」

近藤「そうだぞ早乙女。さっきは乱闘を止めるため仕方なくお前を解放したが、これ以上やるってんなら見過ごすわけにはいかなくなる」

沖田「俺は面白そうだからいいんですけどね」

賛成1、反対2で警察の意見は割れたものの彼らの言葉に、その場に緊張が走った。そこにさらに追い打ちをかけるような人物が現れる。

勝男「ワシはその若いあんちゃんに一票や!」

右京「勝男さん!それにみんなも!」

櫛でトレードマークの七三をぴっしり決めながら、大勢の部下を連れた勝男である。

勝男「姉さん!俺らあのあと話し合いましてね、さっそく今日から姉さんの手伝いさしてもらいましょってことであの天パのとこ向かう途中やったんですよ」

右京「そうなんかぁ!いやぁ、そりゃ助かるわぁ!」

勝男「そしたらこんな面白そうな見世物やってるやないですか、警察の皆さん。なんや決闘や言うても所詮はガキの喧嘩。ワシらいい大人は微笑ましく観戦と洒落込もうやないですか」

土方「そうはいくか溝鼠が。最近真っ当な商売に手を出したと聞いて少しはマシになったと思っていたんだがな」

土方が煙を吐き出しながら勝男を睨み付ける。

ムース「始めぇぃ!!」

勝男「始めんの?!」

土方「勝手に始めんなよ!こっちシリアスパート始まりかけてたんだけどっ?!」

大人の事情など知ったこっちゃない彼らの決闘が始まる。

良牙「異界の地で眠れ乱馬ぁ!」

乱馬「そうはいくかよっ!」

良牙が策も防御も考えも無しに乱馬に突撃する。それを乱馬は飛び上がり躱し技を放つ。

乱馬「この一か月の成果を喰らえ!おしぼり千烈破っ!」

良牙「くっ?!」

空中の乱馬から熱々のおしぼりが雨のように降り注ぎ、良牙の足を止まらせ視界を奪う。

乱馬「マドラー返し!」

その隙に後ろに回り込んだ乱馬は、マドラーで良牙の足を払い、彼を転倒させた。

乱馬「お名刺楔掛けっ!」

そこで逃げられないように、もう一度飛び上がり数十枚の名刺を投擲。その角で良牙の服を地面に固定する。

ムース「おお!流れるような連続技!」

右京「ただなんか緊張感あらへんな」

あずみ「ま、まさかこの一か月でらん子、ここまで……」

狂死郎「流石ですね」

彼の多彩な水商売格闘術にそれぞれの感想を漏らす。

乱馬「そしてトドメだ!コースター落とし!」

自身が落下する勢いを利用して、手の平にコースターを当て良牙目がけて降下する。

良牙「ふんっ!」

乱馬「へっ?」

良牙はなんてこと無しに名刺の拘束を破ると、何もない地面に着地した乱馬の後ろに回り込んだ。

良牙「やっぱり水商売してただけじゃないかボケナスがぁ!!」

そのまま背後から乱馬の腰を掴み、華麗にジャーマンスープレックスホールドを決めた。

乱馬「ぐへぇっ?!」

見事な技に周囲の野次馬から割れるような歓声が上がる。

ムース「これまたなんとも綺麗に決まったな」

右京「まあ、こうなるやろな」

あずみ「そうよね、マドラーにコースターって」

狂死郎「普通に戦った方が彼強いですからね」

彼の無様なホールドっぷりにそれぞれの感想を漏らす。

?「乱馬!良牙君!喧嘩はやめなさいっ!」

そこに熱狂に燃える野次馬を掻き分けながら、良く通る女の子の声が響いた。

?「早くどくアル、このモブ共がぁ!かぶき町の女王のお通りネ!さっさと酢昆布の花道用意するヨロシ!」

野次馬からどよめきが起こり始める。

?「検挙される前に回収ってのはダメになっちゃいましたね、真選組がこんなにもって何これぇ!歴代魔王で天下一武道会でもやってんすか?!」

何が来るのか、それを察した者は喜び、頭を抱え、ため息を吐き、とそれぞれの表情を見せる。

?「火事と喧嘩は江戸の華って言うだろ?この町はこれくらいでいいんだよ」

とうとう真打ちの、遅れての入場となる。

銀時「どうもぉ、万事屋でーす。待たせたな」

銀髪の男たちがニタリと顔をにやけさせながら登場したのであった。

今回はここまでで!

まさか書き込み中に寝落ちするとは思わなんだ…

今夜来れたら続きいきます!それでは!



さすがにおしぼりじゃ良牙にはダメージにならんよなぁ
良牙本人ならおしぼりを硬化させて攻撃とかもできそうだけど


マドラーで足払いってどんなマドラーだよと思ったらww

あと総悟の副長暗殺のとこは最初誤字を疑ったぜ
狙ってたのが分かってから吹いたww

乙です

レスありがとうございます!

>>345 一応良牙は夜兎達との戦いを経て強くなった定ですんでw

>>346 やっぱり総悟には常に副長を狙っていてほしい!w

>>347 読んでくれてありがとうございます!

今日は体力の限界が来てしまったんでごめんなさい、明日必ず更新しますんで!もうまぶたに最大級獅子咆哮弾喰らってる気分なんで…

またよろしくお願いします!

再開します!

今日のOP代わりに

https://www.youtube.com/watch?v=fG3nn3RMLF8

銀時「で、うちで待ってろって言った連中はなんでこんなとこでお祭り騒ぎしやがってんですかコノヤロー。碌にお留守番もできないんですか、少しは自宅警備員の皆さん見習ったらどうですか馬鹿野郎共が」

新八「そこを見習うのはどうかと思うんですけど……」

神楽「まったく最近の十代は落ち着きがないネ、すぐ夜の街で非行に走るアル。やっぱり夜回りして正解だったな」

新八「そういう狙いで僕達歩き回ってたわけじゃないからね?神楽ちゃんの記憶も十分落着きないからね」

場の空気もなんのその、いつも通りのノリで万事屋トークを始める三人。

あかね「……乱馬」

そんな中、あかねが一歩前に出て乱馬を切なそうな目で見つめた。

乱馬「よ、よぉあかね。ひ、久しぶりだな……」

無様なホールド状態から立ち上がった乱馬も一歩あかねに近寄る。

シャンプー「なんだか不穏な空気ね」

良牙「そうか!きっと乱馬の街での淫蕩三昧を聞いたあかねさんは嫌気がさし、三くだり半を突き付けようとしているのだ!」

近藤「俺が言うのもなんだが都合の良い妄想すぎやしないだろうか」

あかねは尚も切なげな顔をして言葉を紡げないでいる様子ある。

乱馬「そ、そんな顔してどうしたんだ?あ、なんか俺の変な噂を聞いたかもしれないがどれもきっと誤解だからな!俺は真面目に鏡の調査をしようとしていたのに――」

あかね「違うの!そ、そうじゃないの……もっと、別のことなの……」

乱馬「べ、別のこと……?」

あかねの次のセリフに一同がゴクリと唾を飲みこんで待つ。

あかね「は、早く着替えて来た方が良いと思うの。今は男の姿なのよ、乱馬」

乱馬「へ?」

そう言われて乱馬はマジマジと自分の服装を見つめる。女性の姿では際どくセクシーだった和服姿だったが、男に戻った今となっては変態以外の何者でもなかった。

あずみ「言われるまでまっっったく気付かなかったわ!!」

お妙「こんな変態丸出しの格好でも当然だと思っていたわ!!」

近藤「逮捕されてしかるべき姿なのに、いつも通りだと思い完全に意識の外にあったぞ!!」

沖田「プークスクス」

土方「あ、お前は気付いてたんだ。ホンット嫌な奴だなお前」

乱馬「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

一同にボロクソ言われた乱馬は顔を真っ赤にして『かまっ娘倶楽部』の裏口へと駆け込んでいった。

新八「物凄く赤い顔をしてましたね、それにしても素速い」

神楽「さすが赤いと三倍速く動けるネ」

二人が暢気に会話をしていると、息の上がった乱馬が普段のチャイナ服に着替えて戻ってきた。

あずみ「出た!お得意早着替え!」

近藤「よっ!その速さ江戸随一!」

乱馬「はぁはぁ……よぉ、あかね。久し振りだな」

馬鹿な合いの手は一切無視して出会いテイク2を始める乱馬。

神楽「あ、さっきの無かったことにしようとしてるアル。七さんに会った時の銀ちゃんみたいアル、ださいアル」

勝男「だから誰やねんそれ」

銀時「そう言ってやるな神楽、男は誰だってってわけじゃないがあんな格好してハメ外したりハメたかったりする日もあるんだよ。それを許嫁に見られちまったんだ、そりゃうまくいくまで何度でも時をかけるさ」

乱馬「元はと言えばてめえが俺をこんなトコに売り飛ばしたせいだっつーの!!それに俺にそんな趣味は無い!!そして万屋ぁ!!」

怒りに燃える乱馬が死んだ眼で鼻をほじる銀時を指差す。

乱馬「ここで会ったが百年目!この一か月の恨み、晴らさせてもらうぜ!」

あかね「待って乱馬!銀さんも何も悪気があって乱馬を夜のお店で働かせたわけじゃないと思うの!鏡の調査も頑張ってやってくれてたし、ね?銀さん!」

銀時に襲い掛かろうとした乱馬をあかねが立ち塞がり止めた。

銀時「へ?あ、ああ!そうだよ、悪気なんてこれっぽっちも無かったさ!いや、君ならどんな困難でも乗り越えらると信じてたんだよ!な、だから一回落ち着こう。さっきの女装姿も銀さん見なかったことにするから、脳ミソ内で今消しゴムめっちゃ使ってるから」

乱馬「その話は止めろぉ!」

お妙「おすわり!」

乱馬「はぅっ!」

再度銀時に飛び掛かろうとした乱馬であったが今度はお妙に、そのオーラによって阻止された。

お妙「ちょっとこれはどういう事か説明してもらえますか銀さん?」

銀時「えーっとぉ、すんません。マジでなんのことかわかんないですけど……」

顔は笑ってはいるものの、お妙の身体から発せられている殺気を察知した銀時は真剣に思い巡らせるも、何に対して説明すればいいのやら分からないでいた。

新八「姉上、一体なんのことですか?お願いですからこれ以上話がこじれるようなことだけは止めて――」

お妙「新ちゃんは黙ってて。さぁ銀さん、その今一緒に来た女の子について説明してもらいましょうか?」

銀時「そりゃどういう意味で――」

猿飛「そうよそうよ!」

困惑する銀時をよそに、お妙の言葉にさっちゃんも乗っかる。

ムース「お、まさかあのゴリラ女が天道あかねに嫉妬しておるのか?!そんな事とは無縁そうであったのに」

右京「ゴ、ゴリラ女てあんた。普段どんな人なん?」

ムース「シャンプー目当てでキャバクラに通い詰めていたせいで何度も絡む機会があったんじゃが、なんというかのう。もう、むごい……」

右京「この町らしい人っちゅうわけやな」

ムースの表情と説明でだいたいを察した右京は苦笑いで話を流した。

お妙「銀さんじゃお話にならなそうなのでもう本人に言ってしまうけれど、まずあなたお名前は?」

あかね「て、天道あかねっていいます」

突然の質問に戸惑うあかねに構わずお妙は言葉を続ける。

お妙「私は志村お妙といいます。そこの駄眼鏡の姉です。そして私は第一話から登場しています。そして私は第一話から登場しています」

一同(なんで二回言ったんだろう……)

あかね「あ、あなたが新八君のお姉さんだったんですね。はじめまして!」

猿飛「私は猿飛あやめ。そこの天パの嫁です。そして私は第四十話から登場しています。そして私は第四十話から登場しています」

銀時「しれっと嘘を吐くなぁ!」

お妙「それでなんだけど、もう私が何を言いたいか分かったかしら?」

あかね「え、ええ?!す、すいません。なんのことやらさっぱりなんですけど……」

ほぼノーヒントといえる状態で答えを迫られた、というよりイチャモンを付けられたあかねは困惑するばかりであった。

猿飛「まったく最近の主人公やヒロインってのはどうしてこう鈍いのかしらねぇ?眼ん玉に焼き火箸突っ込まれても気付かないんじゃないのかしら?プフッ」

お妙「言い過ぎですよ猿飛さん、それにこの子最近のヒロインて感じがしないわ。九十年代の香りがプンプンするもの、プフッ」

新八「や、やべぇ……我が姉ながらドン引きするレベルで底意地が悪い……」

銀時「卵焼き以外も真っ黒じゃねえかお前の姉ちゃん」

お妙に聞こえないように声を潜める二人。

お妙「分からないなら教えてあげるわ!いい?!今あなたがいるポジション!万事屋三人の横っていうのはね、あなたみたいなポッと出の人がいていい場所じゃないのよ!」

お妙の背景に雷鳴が轟く。

一同「へ?」

猿飛「そのポジション争いのため、何人の女の子が今まで涙を飲んできたことか!今日だってほら見なさいよ!ツッキー達だって言ってしまえばあなたのせいで来れなかったのよ!」

さっちゃんの背景に納豆が轟く。

一同「えぇー……」

理不尽な二人の主張にもはや打つ手なしの一同であった。

お妙「ということで早くそのポジションを私に返しなさい。この晴れの舞台、やっぱりそこには第一話から登場している私が立っているべきです」

良牙「俺達の世界と『ということで』の使い方が違うのかこの世界は……」

右京「大丈夫や良牙。ウチにも何が何やらや」

ムース「やはり女王お妙。むごいのう……」

猿飛「ちょっとなんでお妙さんなのよ!ここは私に決まってるでしょ?!今から私と銀さんでTo LOVEるの世界にクロスしに行って色々トラブっちゃう予定なんだか――」

銀時「もう色々トラブり過ぎだお前らはぁ!」

思い切り蹴り飛ばしながらさっちゃんに突っ込みを入れた銀時はお妙と対峙する。

銀時「もうこの辺でいいだろ?これ以上はなんだか見てられねえぜ。さ、異世界組ぃ、さっさと帰って説教アンド作戦会議だバカヤロー」

あかね「銀さん……」

お妙との間に入ってくれた銀時を見てあかねが表情を緩める。

お妙「あら、もうこの天パを懐柔したの?シャンプーちゃんと一緒で手が早いのねぇ」

あかね「ちょっとそれどういう意味ですか?!」

お妙「聞こえた通りの意味よ。まったく自分の作品の男もきちんと捕まえられないくせに他にも手を出すなんて」

乱馬「ま、まあまあ。少しは落ち着こうぜ?な、あかねもさ。万事屋の言う通りここは鏡の調査を――」

あかね「乱馬はどっちの味方なのよ!」

お妙「ちなみに乱馬君だって今はあなたとくっつくみたいな感じですけど、次回作だと私とくっつきますからね。あなた次回作の『犬○叉』じゃもういきなり死んだ設定ですから、負け確ヒロインルートという深い業を背負わされてますから」

新八「もうこれ以上はホントに止めてください姉上!!次の人気投票どうなっても知らないですよ?!てか今更作品名隠す意味あんのかこれ……」

近藤「そうですよお妙さん。ちなみに俺とお妙さんの次回作『勲物語』じゃ俺達二人序盤でくっついてその後ラブラブルートですから安心してください」

乱馬「こじれるから馬鹿ゴリラは黙ってろ!」

あかね「あら!大変!」

近藤の立ち居振る舞いを見たあかねは今までのいざこざもなんのその、近藤にどこからか持ち出したヤカンで熱湯をかけた。

近藤「うおあっちいいいいいい!!!」

あかね「そんな!!変身が戻らない!!乱馬大変よ!!この人ゴリラ溺泉で溺れた人だと思うんだけどお湯をかけても戻らないわ!!」

乱馬「あ、ああ。そいつな、別に呪泉郷で溺れたわけじゃないんだ。俺もてっきり最初はそう思っていたんだがそれが素なんだ」

あかね「そ、そうだったの?!ご、ごめんなさい!私ったら良かれと思ってつい……」

取り出したハンカチで慌てて近藤を拭くあかね。

近藤「熱過ぎてこれが恋なのかと思ったが大丈夫だ。よく分からんが君の優しさはおじさんにも伝わったよ」

右京「全然大丈夫ちゃうやろ!大やけどしといてこれが恋かと思ったって頭大丈夫ちゃうやろ!」

お妙「だいたい良かれと思って熱湯をかけるって何?この子ダチョウ倶楽部にでも育てられたのかしら?それに近藤さんにもちょっかいをかけるなんてもはや無差別テロね」

新八「姉上!また暗黒面に侵されています!気を確かに!」

沖田「おいそこの女ぁ!近藤さんに熱湯かけといてタダで済むと思ってんのかぁ?!動物虐待で逮捕しろ土方ぁ!」

土方「動物虐待じゃなくて暴行と傷害だろぉが!あとなんで普通に呼び捨て?!」

勝男「おいおいなんやこの茶番は?こんなもんやのうてさっきの喧嘩の続きしてくれへんのぉ?退屈やとおっさん達が暴れてまうでぇ!」

良牙「そうだ乱馬!決闘の続きだ!」

乱馬「そんなことしてる場合じゃないだろぉが!」

乱馬の思いとは裏腹に場はますますヒートアップしていく。

ムース「この混乱の勢いに乗じてならいけるやも!シャンプー!好きじゃあ!」

シャンプー「……良かったなマダオ、ムースがお前のこと抱きしめるほど好きあるって。ったく、ちゃんと眼鏡かけるよろし」

長谷川「え、ええ?!そ、そうなの?!もう止めてくれよムース君!何回かキャバクラで会っただけだってのに、そ、それに俺にはハツって女房がいてよぉ」

狂死郎「セリフとは反対に何故そんなに顔がほころんでいるのでしょうか……」

アゴ美「やだぁ!カマップル成立よぉ!一番アゴ美!ハッピーカマーウエディング歌いまーす!」

桂「誰がカツラップルだ!桂だ!」

エリザベス『その聞き間違いは流石に無理がありますよ桂さん』

九能「おお!!エリザベス殿!!戻って来られたのですね!!」

山崎「ええ?!こんな流れの中で俺も一言いいんですか今日は?!よーし、わ――」

神山「シャンプー!好きじゃあ!」

新八「中の人ネタもう止めろぉ!飽き飽きしてんだこっちは!」

神楽「なあ新八、アレ何あるか?あの気持ち悪いの、あ、隠れた」

新八「何を言ってるんだか分からないけど知らないよ!とにかくこの騒ぎを止めなきゃ!」

お妙「騒ぎを止める?新ちゃんこそ何を言っているの?こんな乱世でこそ英雄は生まれるもの!フハハ、世界よもっと乱れるのだぁ!あの星を目指すのだぁ!」

新八「あんたは一体何キャラ目指してんだぁ!」

猿飛「銀さぁん!私ならもうとうに乱れてるから早くあなたの金ピカの英雄王見せてぇ!」

近藤「お妙さん!代々伝わる俺のタマの裏の星型のアザでいいなら見せましょうか?!」

新八「そんな血統は滅びちまえぇぇ!!」

状況はまさにカオスとしか言いようの無い状態であった。周りを囲んでいた野次馬達からも不安の声が上がる。

野次馬A「現かぶき町四天王が全員集結、武装警察に攘夷志士、おまけに最近かぶき町を騒がしている奴らまで揃ったぞ……い、一体何が始まるってんだ?!」

野次馬B「せ、戦争だ!戦争に違いねえ!華陀の時とは比べ物にならねえ程の戦争が始まるんだきっと!」

銀時「うるせえぇぇぇ!!!もう何も始まらねえよ!!!この後の展開なんて知るか!!!こんなめちゃくちゃになった後の流れなんて思い付かないからこのあとみんなでピアノの音に合わせてお辞儀して終了かもしくは夢オチでいいわぁぁぁ!!!」

神楽「ねえ銀ちゃん、アレ何アルか?今度はあの空飛んでるやつ」

銀時「知るかぁぁぁ!!なんでもは知ってるわけじゃねえんだよ!!知ってることだけなんだよ!!」

あかね「飛行船?それになんだかとっても近いし大きなスクリーンまで……」

空を見上げるあかねの言葉に銀時と新八も顔を上げる。

銀時「ん?なんだあ――」

パァァァッン!!

パァァァッン!!

パァァァッン!!

三発の大きな花火が上がり、その場で騒いでいた連中も何事かと空を見る。なんだなんだとざわめく一団の上には周囲のビルすれすれで大型の飛行船が浮いていた。そして甲板からは地上に向けて大きなスクリーンが垂れ下がっていた。

?「かぶき町の諸君、御機嫌ようなのじゃ」

スクリーンに光が灯り、二つの人影が映し出された。だがシルエットのみで誰だかはまるで分からない。

乱馬「……この声、どこかで聞いたような気が」

?「早速じゃが血気盛んな諸君らに良い知らせがある!」

首をかしげる乱馬。尚もシルエットの言葉は続く。

?「かぶき町バトルロワイヤルの開催をここに宣言する!」

シルエットの声にエコーが入り周囲にこだまする。数秒の間呆気にとられて黙ったままの一同であったが、銀時の罵声をきっかけに皆スイッチが入った。

銀時「何ワケ分かんねえこと言ってんだ!もうこの話は夢オチってことで終わらせんだよ!分かったらさっさとすっこみやがれぇ!」

新八「そうですよ!もうこの後の展開なんてどうせグダグダになるんですからここらで畳むのが正解なんです!だいたいその話も唐突すぎるんですよ、無理矢理感半端ないです」

神楽「そうアル!だいたい何アルかその超上から目線!私と話したいならその頭地面にこすり付けて喋るヨロシ!」

そう言うと神楽は新八の眼鏡を奪い取り、レーザービームのような威力で飛行船に投げ付けた。

新八「な、何やってんだお前はぁぁ!!」

神楽「むしゃくしゃしてやった、後悔はしてない」

新八「後悔と反省と弁償をしろぉぉ!!」

あかね「ああっ!!新八君がっ!!」

新八「僕こっちぃぃぃ!!!」

近藤「警察を前にしてなんて事言ってんだこらぁ!」

沖田「賞品とか賞金は出るんですかこらぁ!」

土方「返答次第でどうするつもりだお前は!」

真選組もバズーカ、拳銃を容赦なく撃ち込む。周囲の人々も空き缶や棒切れを次々に投げ付ける。

乱馬「次から次へと厄介事をぉぉ……!!もうあったま来た!!喰らいやがれ!猛虎高飛車ぁ!!」

良牙「……なんだかあの豚野郎を思い出してムカついてきたな、俺も乗ったぞ乱馬!獅子咆哮弾っ!!」

右京「ウチらも続くでぇ!」

シャンプー「私と乱馬の邪魔する、許さない!」

ムース「ククク、こんな船!おらが縛り上げてやるだぁ!」

九能「弾幕薄いぞ!何やってる!」

異世界組も上空の飛行船にそれぞれのありったけをぶつける。

?「わ、あああ!!や、止めるのじゃ止めるのじゃあ!!おい!じい!なんとかせいっ!この艦、波動砲とか付いてないの?!薙ぎ払うのじゃぁ!」

?「イスカンダルまで行くわけじゃないんだから付いてるわけないでしょ!だいたいワシは嫌だって言ったじゃないですか!この星の人間たちは、特にこの町の人間たちは野蛮なサイヤ猿より野蛮なんですから!」

地上からの攻撃が次々に命中し、大型飛行船はグラグラと揺れ、そこかしこから煙が上がり始める。スクリーンに映る二つのシルエットも大慌てである。

?「お、落ち着くのじゃ皆の者!よ、余はちゃんと莫大な賞金と、世にも珍しい賞品を用意しておる!優勝した者にはもちろんこれを贈呈しよう!」

一同「……」

その言葉に一同の攻撃が嘘のようにピタリと止む。

銀時「ち、ちなみになんだけどさ、興味はないけどまあ代表して聞いとくけどさ。その賞金てのはいくらなのよ?」

?「ふぅ、やっと落ち着いたか。まるで猛獣じゃな」

神楽「ああ?!なんか言ったアルかこらぁ!」

?「な、なんでもないぞ!賞金はなんと!百億円じゃ!!」

またもシルエットの声にエコーが入り、音が響き渡るが先程とは違い失笑の嵐であった。

新八「ひゃ、百億円て。小学生じゃないんですから」

スペアの眼鏡を掛けながら新八が鼻で笑う。

お妙「フフ。まあ飛行船でわがまま出来るほどにはお金はあるようだけど、さすがに百億円と言われると笑っちゃうわね」

賞金のあり得ない額に、スクリーンの向こうの人物を嘲笑する声がいくつも上がる。

?「ほ、ホントじゃぞ!これが証拠じゃ!」

シルエットが画面から消えると台座に置かれた、サッカーボール大の眩いばかりに輝くダイヤが映し出された。

?「現金で百億を用意するのは難しいのでな、この宇宙で最も希少で巨大な宝石を進呈しよう。この石の時価がまあ百億というとこのなのでな」

アゴ美「あ、あれ本物じゃない?!私ヒルナンデスで見たわよこの前の宝石特集で!!」

狂死郎「あ、あれは幻の……?!一度お客様に写真だけ見せられたことがありますがあの輝き、そっくりです!」

夜の世界で生きる、そういった方面には耳聡い二人の言葉で一同は驚きの声を上げた。

良牙「百億円だとっ?!そ、それだけあればあかねさんとの夢のマイホームをっ!!」

右京「テンパるのは分かるけど色々前提吹っ飛ばし過ぎや」

長谷川「何軒建てる気なんだよ良牙君。でぇ、ものは相談なんだけど、もしあれを手に入れたら百分の一でいいから貰えないかな?グヘヘッ」

?「うむうむ、なかなか食い付きがいいの。ではこの流れで賞品の紹介じゃ。賞品はこれじゃ!!」

画面に戻ってきたシルエットは、今度は画面一杯に持っていたものを映し出す。

近藤「な、なんだありゃ一体」

桂「まったく価値のないような物に見えるのだが」

そのブツの正体を知らない者たちの間で疑問や推測が交わされる。

銀時「お、おおおおおおおおい!!!あ、あれはっ!!」

しかし、万事屋組と異世界組だけは反応が全く違っていた。

乱馬「ま、まままままままさか!!!あ、あれはっ!!」

銀時と乱馬が声を合わせて叫んだ。

銀乱「転生鏡っ?!」

画面には一か月前粉々になった、転生鏡が映し出されていた。

今回はここまでで!

グダグダ続いたこのSSもようやくラストに近づいてきました

次回はまた週末辺りに、8月中には終わらせられる!はず!

夏休みが欲しい…

それでは!

乙です


バカ殿はただ沈められるためだけに出てきたのだと何の疑問も抱かずに思っていた
すまんのバカ殿

>>1

このオールスター感いいな

更新待ってるぜー

おつです。

乙乙
だがこんなにキャラが出ているのに、九ちゃんとツッキーが出ていないだと…?!

先週末は更新できずすいません…

日曜か遅くとも月曜には来れそうです!

>>382 >>384 >>385 レスありがとう!

>>383 もう少し皇子には出てもらいます!

>>386 次回登場予定!

良かったらまた読んで下さい、それでは週末!

再開します!

今日のOP!

https://www.youtube.com/watch?v=M33x7iyBmns

?「この鏡の名は転生鏡、異世界に行くことが出来ると言われている我が王家に伝わる宝物じゃ!優勝者には先程の宝石と共にこの鏡を進呈しよう!」

シルエットがさも誇らしげに、代々伝わる逸品を紹介する。

あかね「あの鏡、転生鏡に間違いない!ホントにこの世界にあったんだわ!」

探し続けていた転生鏡を前にし、あかねが喜びの声を上げる。

新八「それは言いんですけど、この話気前が良すぎて胡散臭くないですか?だいたい戦って勝ったら百億円に転生鏡だなんて怪しすぎるというか、それに素直に貰える保証もありませんし。ていうかあれ、あのバカ皇子とお付きの人ですよね?」

?「バカ皇子ではない!ハタ皇子じゃ!まあ訝しむ気も分かるがここは王族として優勝者には必ずこの二品を渡すと約束しよう!」

シルエットの意味を全否定する皇子であった。

新八「まあそれはそれとして何故僕らがバトルロワイヤルなんてやらなきゃいけないんですか?そっちには得なんて一切無いじゃないですか!」

ハタ「ただただ余はこの町で一番強いのは誰だかを知りたい、それだけじゃ!その為にはいくらでも!金なんてかけてやるぞ!」

新八「あの人、あんなにバキっぽい感性持ってましたっけ?」

疑う新八を気にもせず、皇子の説明は続く。

ハタ「ルールは簡単、一週間後この町で行うバトルロワイヤルで、最後まで立っていたものが優勝じゃ。戦い方にも武器にも制限なし!誰と組もうが裏切ろうが一切のルールなし!とにかく最後まで生き抜いたものの勝利とする!」

じい「説明は以上じゃ、質問はなんかあるか愚民共。ん、ないな。よし、では一週間後にまた会おう!」

ハタ「バイバイなのじゃ!楽しみにしてるぞー!」

説明をそそくさと終えると、原住民達の追撃を恐れてか、ボロボロの飛行船は高度を上げ去って行った。

新八「言いたいことだけ言って颯爽と去って行きましたね……」

あかね「でもこれに勝てば転生鏡が手に入って元の世界に帰れるんだよね?チーム組んでも良いみたいだし、みんなで頑張ろう!」

新八「まあそれもそうですね!銀さんに神楽ちゃん、そして異世界の皆さんが組めばいくらこの町の人が強者揃いとはいえなんとかなるはずですし! 」

ハタ皇子の宣言に不安や疑問の残る新八であったが、あかねの言葉に覚悟を決める。

新八「それで僕等が勝ち残った後、適当な芝居でも打って優勝者を決めてしまえば賞金も賞品もゲットです!ね!銀さん、神楽ちゃん!ってさっきから黙ってどうしたんですか?まあ僕もこの話信じ切ってるわけではないですけれど、ここは話に乗っかって……」

新八は先程から嘘のように沈黙を貫いていた二人に話を振ったが、彼らの眼を見て口を呆けたように開け、言葉が出なくなってしまった。

銀時$「へ?あ、ああそうだな!俺達が組めば怖いもんなんてねえよ!賞金に賞金に賞金に賞金に賞金に、あと、なんだっけ?あのきったねえ鏡だっけ?いらねえけど。とにかくいただきだぜ!」

神楽$「そうアル!だから私のためにみんなには死んで欲しいアル!」

新八「ちょっと待てお前らぁぁ!!早速目が$になってるんですけどぉっ?!分かりやす過ぎるし表現古すぎだろぉぉぉ!!銀さんはもう賞金にしか興味無いし神楽ちゃんに至ってはもう仲間のセリフじゃねえだろぉぉ!!」

新八「そりゃ賞金欲しいけど心を闇に侵され過ぎだぁぁ!!そんなに賞金独り占めしたいのかぁぁ!!」

あかね「そ、そうよ二人とも。別に私たちが組めば優勝間違いなしなんだし一回落ち着いて――」

乱馬「ちょっと待ちな!あかね!」

賞金に眼がくらむ二人を説得していたあかねの言葉を、乱馬が強く遮った。

乱馬「勝手にこいつらと組むなんて決めるんじゃねえよ。俺は万事屋なんかとは絶対に手は組まないからな!」

あかね「な、何言い出すのよ!乱馬まで賞金に目がくらんじゃったの?!」

乱馬「違わい!俺には万事屋にこの一か月の恨みがある!戦う理由はあれど、鏡が見つかった今、こいつと組む理由なんて無い!それに俺ならこのバトルロワイヤル、こんな奴等と組まんでも余裕で優勝できっからな」

自信満々に言い切る乱馬に、銀時が返す。

銀時$「へぇー、変態女装少年がやけに自信ありげじゃねえか?あとで頭下げられたってもう手ぇ組んでやったりはしねえぜ?それでも良いんだな?」

神楽$「今なら土下座でそのセリフ無かったことにしてやるヨ、私たちを敵に回すなんて馬鹿なマネ、さっさと撤回するネ」

銀時、神楽から静かに殺気が滲み出始める。

新八「……あの、二人とも?ちょっとシリアス入ってるけれども眼が$マークのままなんで早くそれ止めません?おかしな感じになってますから」

あかね「もう乱馬ってば聞き分けのないこと言わないの!みんなからもなんか言ってあげてよ!」

あかねは乱馬を諌める言葉を期待し、右京達面々の顔を見る。しかし返ってきた言葉は

右京「ごめんな、あかねちゃん。乱ちゃんが銀さんらと組まへん言うんなら私も組めへん。私は乱ちゃんと一緒や」

願っていたものではなかった。すると右京に続き

シャンプー「私も乱馬と一緒のチームね。乱馬も賞金も鏡も全部私のもの!」

ムース「悪いな天道あかね。乱馬となんざ組みたくはないが、おらはシャンプーと共に戦うだ!」

シャンプー、ムースも銀時たちとは組めないと袂を分かった。

あかね「そ、そんな三人とも本気?!敵味方分かれて戦うだなんて――」

良牙「大丈夫ですよ、あかねさん。俺はあかねさんの味方です」

次々と万事屋、異世界組同盟から人が離れていく中、良牙はあかねに優しく声をかけた。

九能「僕はもちろん白夜叉殿に付かせてもらおう。あかね君もいるしな。そして早乙女乱馬!此度の戦でお前の首、そしてあかね君を貰い受ける!」

九能があかねの肩を抱きながら高らかと宣言する。

あかね「組んでくれるのは嬉しいんですけど話をややこしくしないで下さい!」

良牙「何をやっている貴様!」

あかねと良牙の拳が九能の顔面にめり込む。

新八「とにかく銀さんも神楽ちゃんも!乱馬さん達も一回落ち着いて話合いましょうよ!」

乱馬「へ、俺は冷静だぜ。あとお前たち、別に俺に付かなくったっていいんだぞ?」

右京「そんなつれへん事言わんといてよ」

シャンプー「私は乱馬と絶対離れないね!」

ムース「シャンプー、どうしておらを見てくれないのじゃぁ!」

くっきりチームが分かれて困り切った新八を余所に、一人の攘夷志士が銀時に声を掛ける。

桂「俺はお前と組もう銀時。フ、お前と組んで戦うなんて懐かしいな。攘夷時代を思い出す」

風に長髪をなびかせ、銀時の横に桂が並び立った。

新八「いや、二人が組んで戦うこと結構ありましたよね。竜宮とか蓮舫とか」

桂「無粋なことを言うでない、新八君。どうだ銀時、攘夷時代を思い出すだろう?いやもういっそ攘夷時代を思い出せ、無理矢理でいいから。あなたは段々攘夷時代を思い出ーす、思い出ーす。あなたは段々攘夷時代を思い出ーす、思い出ーす」

桂「はい、眼を開けたらあなたは攘夷時代に戻っていて立派な攘夷志士。この戦いに勝利し、100億円を国家転覆の準備資金としたくなーる、したくなーる、した――」

銀時$「耳元でうるせえぇぇぇ!!!いい加減にしろぉ!だいたい眼なんてずっと開いてるわぁ!」

新八「あんたもいい加減にしろぉ!いつまでそんな汚い目の開き方してんだぁ!」

そんな喧しく騒ぎ出す万事屋たちとは反対側、乱馬たちの後ろから関西弁の声が響き渡る。

勝男「なんや面白い話になってきたやんけ!ワシ含めた溝鼠組全員、姉さんの下に付かしてもらいましょか!」

手下共「うおおおおおおお!!!!」

勝男率いる溝鼠組組員たちが昂ぶりの声を上げる。

アゴ美「パー子には悪いけどらん子は今、私たち『かまっ娘倶楽部』の一員!私らオカマはらん子に付くわよぉ!」

オカマ共「うおおおおおおお!!!!」

狂死郎「私たちは今回は大恩ある万事屋さんに付かせていただきます。乱馬君、ごめんなさいね。みんな、付いてきてくれるか?」

ホスト共「うおおおおおおお!!!!」

シャンプー「もちろんお前たちは私の下で戦うあるな?」

チャイナ服キャバ嬢共「うおおおおおおお!!!!」

次々と万事屋組、乱馬組に分かれていく大軍を前に新八、あかねは頭を抱える。

あかね「ちょ、ちょっとみんな落ち着いてってば!」

新八「ハハハ……あかねさん。こうなったらもうこの人たちは止まりませんよ……待つのは両陣営による大戦争だけです。ハハ……」

今後の惨劇を想像し、もう笑うしかない新八に更なる追撃が加わる。

お妙「新ちゃん、両陣営って何を言ってるの?」

新八「な、何ってそりゃ見たままのことですけど。で、姉上はどちらに付くんですか?」

お妙「どっちに付くもないじゃろがいぃぃ!!この戦ぁ!!制すのは私たちキャバ嬢だぁぁ!!」

和服キャバ嬢共「うおおおおおおお!!!!」

新八「……………………………………」

とうとう口から魂のようなものが抜けかける新八であった。

猿飛「ムース、残念ね」

第三陣営の出現に皆が更に騒ぎを大きくする中、さっちゃんは静かにムースの前に立った

ムース「うむ、これも互いの愛のため。分かっておる」

猿飛「私は銀さんのために。あなたはあの子のために。死力を尽くしましょ」

ムース「ああ。できれば戦場で会わないよう願っている。武運を」

ムースが右手を差し出す。さっちゃんは少し悲しげに手を取ると

猿飛「私もそう願っているわ。でももし出会ってしまった時、手加減なんてしたらさっちゃん許さないぞ。互いの本気の愛のため、本気でぶつかり合いましょう」

そう言いながら、にっこり微笑んだ。

ムース「そうじゃな、では」

猿飛「ええ、また」

二人は優しく視線を交わした。そしてさっちゃんは銀時の下へゆっくり歩き出した。

銀時「お前……」

猿飛「銀さん。私はあなたのために、戦うわ」

先程とは打って変わった強い意志を持った瞳で、さっちゃんは愛しい男の前に立った。

銀時「ああ、任せたぜ。ってんなこと言うかぁぁぁ!!!ボケろよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

そんなさっちゃんを容赦なく銀時は突っ込みを入れながら蹴り飛ばした。

銀時「ったく、あいつらはわざわざ尺取って何しやがってんだ。そんな雰囲気の作品じゃねえんだけどこれ」

神楽「その通りネ。このSSにはそんな雰囲気存在しなくていいネ。だいたい書きにくいしそういうの」

新八「ふ、二人とも!ようやく眼の$マークを消してくれたんですね!ちなみに、最後のは誰の声なの?」

あまりの騒ぎで正気を取り戻した二人に新八は喜んだ。しかしそれも束の間、事態を更に悪化させる声が二つ。

?「話は聞かせてもらったが何やら大変なことになっているな」

?「フッ、何が大変なことか。面白い、の間違いでありんす」

一人は片目に眼帯を当てた天才剣士、柳生家次期当主、柳生九兵衛。もう一人はキセルを燻らせた吉原自警団、『百華』頭領、月詠であった。

お妙「九ちゃん!」

銀時「ザキ太夫!」

月詠「死神太夫じゃ!」

月詠が突っ込みを終えた時には、銀時のおでこには立派なクナイが突き刺さっていた。

新八「また争いの火種が……」

お妙「いつ呼びに行こうか迷ってたのよ九ちゃん!なんか空気読まない人たちのせいで出演枠大幅に取られちゃってて。来てくれて嬉しいわ!」

九兵衛「ああ、僕等もいつ登場しようかタイミングを伺っていてね。実を言えば彼らがラーメン屋にいた頃から機会を伺っていたんだが、なんやかんやでこんな遅くなってしまったよ。妙ちゃん、ごめん」

神楽「そん時からアルか!ラーメン屋にいたのは今日のはずなのにまるで22日前の出来事のように感じるアル!」

銀時「で、お前らは何しに来たんだ?二人して遊びにくり出して来たってわけでもねえんだろ?」

銀時は額の血を拭いもせず二人に尋ねた。

月詠「ああ、そうじゃったそうじゃった。今日ワシらが来たのはな、『二代目』吉原の英雄に会いに来たんじゃ。吉原の皆に代わって感謝の意を伝えるためにな。そ、それにしてもぬしはクナイを躱すのが相変わらずじょ、上手じゃの!」

銀時「あ、当たり前だろ、そんなん楽勝だぜ。それにしても『二代目』吉原の英雄ってどういう事だ?またなんかあったのか?」

あかね「え?クナイ躱したの?じゃ、じゃあ刺さってるあれは何?あの血は――」

新八「あかねさん!シッ!」

タブーに触れそうなあかねを新八が止める。

九兵衛「あったなんてものではなかったぞ。江戸中を、いや、この星を脅かすほどの脅威に狙われたのだ、吉原は。その際に、柳生の者が迷惑を掛けたり世話になったりとしたのでな、僕は彼に詫びに来たのだ」

月詠「そう」

月九「早乙女乱馬に」

声を合わせた二人は同時にこの喧騒の中心人物の一人、乱馬を見た。

乱馬「よ!元気にやってるか?」

新八「ってまたそんなエピソードあんのかよっ!!もうだいたい察しは付いてたけどさっ!!てかこの星を脅かすほどの脅威ってやべぇぇぇぇ!!!!こんなもんで良いすか?銀さん」

銀時「十分だ、新八。やっぱテンポ良くいかないとな」

月詠「その節は助かった、吉原全員を代表して感謝する。今度吉原に参った時は、この世の桃源郷を是非堪能してもらいたいと皆言っておったぞ」

乱馬「そ、そそれは遠慮しとくぜ!は、ハハハ……」

月詠「フッ、相変わらずうぶな奴じゃ」

月詠の提案に顔を真っ赤にする乱馬であった。

九兵衛「こちらは色々と迷惑をかけてすまなかった。柳生を代表して謝罪する」

乱馬「いいっていいって、気にすんなよ!ま、みんな無事で良かったじゃねえか!」

頭を下げる九兵衛の肩を叩き、乱馬は彼女の顔を上げさせた。

新八「ま、まずいですよ乱馬さん!九兵衛さんは男の人に触られると――」

九兵衛「それが彼は何故か大丈夫なんだ。半分女の体だろうからか、不思議なものだ」

九兵衛が信頼の籠った目を乱馬に顔を向けた。とそこに不機嫌な声が上がる。

あかね「乱馬の馬鹿っ!何よ!この非常時にデレデレニヤニヤしちゃって!それに銀さん達とは組めないだなんてこの強情っぱり!変態和服女装高校生!もう知らない!」

先程の乱馬と同じくらい顔を赤くし、フグのように膨らませたあかねであった。

乱馬「な、デレデレニヤニヤなんてしてねえだろうがっ!へんっ!だいたい俺だってお前みたいな頑固で可愛くなくて色気のねえ女なんて知らねえぜ!」

乱馬の言葉を聞いてプルプルと怒りに震えるあかねであったが、ふぅ、と一息吐くと右手中指を立ててこう言った。

あかね「乱馬たちとは今から敵同士だからね!一週間後!覚えてなさい!」

乱馬「ほぉー、良い度胸じゃねえか。一週間後が楽しみだぜ!」

そう言い合うと二人はフンッと鼻を鳴らしながら互いにソッポを向いてしまった。

九兵衛「な、何やらいらぬ勘違いをさせてしまったのではないだろうか?」

月詠「なーに、こいつら男と女の問題じゃ。ぬしが心配することでもありんせん。で話を本筋に戻すが、此度の戦。我ら百華も参戦しよう!」

月詠のセリフに一同がまたもどよめく。

月詠(先の戦いで我ら百華の未熟さを痛感した。此度の戦を通して、わっち含めて百華をもう一度鍛え直さなくてはならんと思っての。実に良い機会じゃ)

月詠「あの宝石欲しーっ!日輪にあげたら喜んでくれるだろうか?!ハッハッハ!夢が広がりんすっ!」

新八「本音と建て前が逆ぅぅ!!賞品を前に浮かれすぎだろぉぉ!!もうリンス買って帰れぇぇ!!」

月詠「ち、違うでコンディショナー!い、今のはぬし達がわっちの本音建て前真逆大作戦を見破れるかどうかを謀ったのじゃ!」

新八「語尾コンディショナーって動揺しすぎだぁ!てかいつもの『~りんす』ってホントに髪をいたわる方だったのぉっ?!そして作戦名ダサすぎだろぉ!」

銀時「止めろ新八、こいつはそうやってただ俺達を試しただけだ。俺には分かる」

額にクナイが刺さったままの銀時が言った。

あかね「どっちが本音で建て前でも恥ずかしい気がするわ。それにやっぱり銀さんの額にクナ――」

銀時「默リンスinシャンプー!」

猿飛「で、あなたはどちらに付くのかしらツッキー?ちなみに銀さんチームにはもう私がいますから、忍者枠埋まってますから。悔しさでハンケチ噛みながらそっちの二代目英雄さんチームに行くことね!ホーッホッホッホッ!」

蹴りのダメージからいつの間にやら復活したさっちゃんが、片手を口に当て下品に笑った。

月詠「あくまで今回は実戦型訓練として参戦するのじゃ。もちろん、現在劣勢の側に立ってこそ意味のあるものと言えよう」

猿飛「ってことはあんた――」

月詠「ということだ、すまんな。乱馬。今日はぬしに感謝の言葉を伝えに来たというに」

乱馬「お前とは一度手合わせしてみたかったところだ。望むところだぜ」

月詠の選択に、乱馬は不敵な笑みで返したのだった。

月詠「ということで此度の戦、死神太夫月詠始め吉原自警団百華は!万事屋組に付く!」

異世界組を始め多くのヤクザ、オカマ、キャバ嬢を仲間にした乱馬のチームを優勢と見た月詠の選択であった。が、しかし、その本心は誰にも分からない。

九兵衛「乱馬君、僕も申し訳ないのだが今回は君に味方出来ない」

月詠に続いて九兵衛も自身の意志を示した。

乱馬「わーってるって!もちろん行くんだろ?あいつのとこに。お前とも戦えるの、楽しみだぜ」

九兵衛「ああ、理解があって助かるよ。戦いの前でも後でも良い、今度柳生家を訪ねてくれ。手厚くもてなそう。柳生流でな」

九兵衛は笑ってそう言うと、お妙に宣言するのであった。

九兵衛「お妙ちゃん!柳生九兵衛とその一門、名門の名に懸けて君に勝利を約束しよう!」

近藤「フッ、お前ならこっちに来るだろうと思っていた。共に力を合わせてお妙さんを勝利に導こう!」

いつの間にやらお妙の横で腕を組み、力強く近藤が頷く。

東城「若のためとあらば柳生一門、全力を挙げて付き従う所存です!」

すぐ傍の店から出て来たばかりの、裸体にタオルを巻き、ぬるぬるのエアマットを抱えた柳生四天王が一人、東城歩も近藤に倣う。

一同「……………」

一同の視線が男二人に集まる。

近東「……あのぉ、何か?」

妙九「何か?じゃねえだろぉぉぉがぁぁぁ!!!」

お妙、九兵衛の拳が彼らの顔面にめり込んだ時、その場にいた者は確かに、生命が終わる音を聞いたという。

お妙「はぁ、はぁ、はぁ……ペッ!」

九兵衛「東城、あの世で反省してくれ」

真選組組局長、近藤勲。柳生四天王筆頭、東城歩。この町でも上位の実力者二人を開戦前に亡くしたお妙組であったが、その武力は他の組を怯えあがらせるに、最適なデモンストレーションとなっていた。

そんな淀みきった空気の中、神楽は銀時の後ろにいる男に疑問を持ち、それを投げ掛けた。

神楽「おいマダオ。どうしてお前こっちいるアルか?」

この状況の中、自分に話題が振られると思っていなかった長谷川は少々驚きながら言葉を返した。

長谷川「え、お、俺っ?!そりゃぁ神楽ちゃん、こっちチームには慣れ親しんだ銀さんやづらっちだとかいるからさ。俺はこう見えて義理堅い男なん――」

神楽「義理堅いとかそういうこと聞いてんじゃねーヨ。てか何が言いたいか分からないようだから率直に言うけど、お前みたいな貧乏厄病神いると負けそうだから余所の組行けヨ、いや行けよ」

長谷川「な、それは酷いだろ神楽ちゃん!だいたいなんで最後二回言ったの?!二回目全然カタコトじゃなかったし、もう止めてくれよぉ!銀さんからもなんか言ってやってくれぇ!」

長谷川が困り果てた笑顔で銀時に顔を向けると、とてつもなく冷たい顔をした銀髪が立っていた。

銀時「出てけ」

長谷川「…………」

一同「…………」

銀時「…………」

長谷川「…………」

一同「…………」

長谷川「ってそれだけぇぇ?!出ていけ流れにしてももうちょっとイジリながらとかあるじゃん?!本気の出てけじゃん!!なんでそんなに嫌うのさ!!」

銀時「幸運の神様に、親の仇の様に嫌われてるアンタとは今回ばっかりは組めねえっての!!」

神楽「そうアル!最初っから負債抱えて桃鉄始めようとする奴なんていないネ!ほれ、語尾に『なのねーん』て付けるヨロシ!」

二人の言葉にとても傷付いた長谷川はすがるように新八を見たが、彼は一切目を合わそうとしなかった。

長谷川「ほ、他のみんなはっ?!」

続いて桂、良牙、あかねと見回したが、皆一様に目を合わせようとはせず、キョロキョロと気まずそうに視線をそらすだけであった。どうやら銀時、神楽と意見が一致しているようである。

長谷川「ああそうですか!じゃあもういいよ!別のチーム行くから!後になって後悔しても遅いからな!賞金貰ったって一円もあげないからな!ペッ!」

これ以上粘っても無駄と察し長谷川は、捨て台詞と共にタンを吐き、万事屋陣営から抜け出し、三陣営が向き合う空白地帯へと歩を進めた。

長谷川「お、お妙ちゃ……」

お妙「っ!!!」

長谷川「ひぃっ!!」

恐る恐る話しかけようとした長谷川だが、こっちに来るなオーラに気圧され、また足元に転がる二つの死体を見て、このチームには入れないと悟った。

長谷川「乱馬く――」

乱馬「ダメだ」

長谷川「早いよ!!もう少し考えようよ!!いや、ほら、君は若いじゃないか。俺みたいな経験豊富なおじさんの意見ていうのも今後必要になってくると思うよ?!」

ここに断られたらもう行くところがない長谷川は、必死に乱馬を説得しようと試みる。

乱馬「経験すればする程能力が下がる経験しか豊富じゃないおっさんはいらねえ」

神楽「負の経験値しか溜まってないごみ溜めの意見なんて必要ないアル」

お妙「長谷川さんに意見を聞くくらいなら、言葉の分からないマサイ族の人にでも聞いた方がまだマシだわ」

そんな長谷川に三方向から、容赦ない言葉が浴びせられる。

長谷川「そ、そんなぁ……みんな酷いよぉ……」

サングラスのせいで瞳の具合は分からないが、かなりの涙声で膝を着く長谷川は嘆いた。そんな彼を見ていていられなくなった男が一人。

良牙「……っく!わあああやっぱダメだ!俺には恩人を見捨てることなどできん!」

そして女がもう一人。

あかね「や、やっぱそんな意地悪しちゃダメよね!うんっ!」

彼らはそう言うと、長谷川の下へ駆け寄り、精神的に死にかけた彼を助け起こした。

良牙「見捨てて済まなかった長谷川さん!」

長谷川「りょ、良牙くぅん!君ってやつはぁ!」

二人とも涙を流しながら抱き合う横で、あかねも長谷川に声を掛けた。

あかね「うまくいくか分からないけど私銀さん達を説得してみるね!それとさっきはごめんなさい!」

長谷川「いいんだよあかねちゃぁん!こんなオジサンのためにありがとうなぁ!」

あかね「私、頑張ってみるからね!」

あかねは長谷川に向けて固く握った拳を突き出し覚悟の程を見せると、銀時達の前に立ち説得を試みた。

あかね「銀さん、長谷川さんを――」

銀時「ダメだ」

あかね「ダメでした」

長谷川「早いよ!!もう少し粘ろうよ!!君といい乱馬君といい早すぎだろ!!」

そこに良牙が食い下がる。

良牙「そこをなんとか頼む銀さん!この通りだ!」

あかねもそれに倣って頭を下げる。

あかね「私からもお願い!」

銀時「そうは言われたってもなぁ。ただでさえウチは幸薄バンダナという牛歩カード喰らってるようなもんがいんのに、その上あの人引き入れたらその状態でボンビラス星に飛ばされるようなもんだよ?勝ち目ねえよ、温厚な銀さんだってコントローラーぶん投げちまうよ」

あかね「でもマイナスとマイナスが掛け合わさればとてつもないプラスになるわ!」

新八「良牙さんのことの暗にマイナスって認めてませんそれ?」

とここで、神楽が何か感じることがあったらしく表情を緩めた。

神楽「ふぅ、しょうがないアルな、あか姉がそこまで言うんだったら私は別に良いネ」

あかねの必死な姿を見て、神楽は折れて意見を変えたのだった。

長谷川「か、神楽ちゃん!」

神楽「ただちょっとでも足引っ張ってみろ?四肢引きちぎってやるからナ?」

長谷川「ペナルティ重過ぎじゃないそれ?!余計足引っ張ることになると思うんだけど?!」

セリフとは裏腹に、長谷川の顔は嬉しそうである。

銀時「へいへい、わーったよ。一人で悪者になるのもアレだしな。その代わり、戦いが始まったらお前らが責任持って相手チームになすり付けてくるんだぞ?いいな?!」

あ良「はい!」

長谷川「仲間に入れてくれるのは嬉しいんだけど、それって仲間入りしてないようなもんじゃないの?それに二人とも元気良く『はい!』って!てかまるっきりさっきからキングボンビー扱いだよねこれ?」

なんやかんや言いつつもまた輪に戻った長谷川に、皆口々にさっきはごめんと彼に謝る。近藤、東城が亡くなった空気とは一変、少し暖かい空気が流れる。

と、そこに水をぶっかける怒声が響いた。

土方「いい加減にしろお前らぁ!!警察を前に戦争の相談たぁどんだけネジ外れてんだこらぁ!!本当にそんな馬鹿げたことやらかすつもりか知らねえが、そんなもんやらせるわけねえだろがぁ!!全員この場でしょっ引くぞっ!!」

真選組鬼の副長である。

銀時「あぁ?まだなぁーんにも僕達やってないのに逮捕するんですかぁ?不当逮捕だぁ!さっきのカメラクルー誰か呼んでこぉい!チンピラ警察不当逮捕の瞬間パート2だこらぁ!」

乱馬「だいたい全員しょっぴくったってお前が強いのは百も知っちゃいるけど、この面子相手にお前らだけで敵うのかよ」

鬼の副長の剣幕に一切の怯みも無く二人は言った。

沖田「みんな気を付けろぃ。この人こんな事言っちゃいるがあれだから。真選組使って優勝企んでるクチだから」

土方「おめえはどっちの味方なんだよ!!そ、それにそんな事考えて無いしぃ!別に賞金で自宅兼マヨネーズ工場作ろうとか全然考えて無いしぃ!」

新八「絶対考えてたろぉ!!だいたいその願いなんなんすかぁ?!ウーロンより酷いわぁ!!」

右京「もういっそマヨネーズ工場にでも住めばええやん。工場内に四畳半くらいのスペース借りて住めばええやん」

九能「そんなにマヨネーズが好きだったとは。僕の家は自分で言うのもなんだが裕福だ。お前が望むだけのマヨネーズをくれてやるからそんなトチ狂った考えは捨て置け」

周囲から口々と土方の願いについての非難が上がる。

土方「うるせえぇぇぇ!!!金があったら何使おうが俺の勝手だろうがっ!!それに俺はそんなことがふと頭によぎっただけでこんな馬鹿げた騒ぎに乗るつもりはねえ!!とにかくお前らみたいな危険分子!!全員この場でしょっ引かせてもらう!!」

土方が刀に手をかけたその時だった。しわがれた老婆の声が響く。

お登勢「なんだいなんだい?今日は祭りでもやってるのかい?相変わらず騒がしい町だねぇ」

お登勢が煙草の煙を吐き出しながら、ゆっくりと、されど力強く騒ぎの中心に踏み込んできたのだった。

狂死郎「かぶき町元四天王……」

アゴ美「お登勢、もう一線は退いたって話なのに……」

勝男「隠居のババアが何出張ってんねんボケェ!」

ムース「猿の干物?」

お登勢「誰が猿の干物だい!それにこちとらわざわざ出張ってきたつもりはないよ。古い知己の見舞いの帰り道なんだよ」

元かぶき町四天王、『女帝』お登勢の登場に、周囲がまたもざわつき始める。

お登勢「それにしても私らの若い頃に比べて、警察ってのはなんとも間の抜けた組織になっちまったもんだぁね」

土方「なんだとババア?残り少ない余生を檻の中で過ごしたいのか?それともその短い余命、ここで終わらせてやろうか?」

土方から殺気が溢れ出るが流石は『女帝』、顔色一つ変えずに煙草を吸ったまままである。

お登勢「やり方が直球過ぎるって言ってんのさ。豚は太らせてから食べるもんだろ?こんなところで刈り尽しちまうなんてとんだ早漏野郎だね」

沖田「やーい早漏」

土方「殺すぞてめえ!」

沖田「ま、冗談は置いといて俺もこのババアの意見には賛成でさぁ。今ここにはいない桂一派やら何やら、一週間後の祭りにゃもっとたくさんの馬鹿が集まるでしょうしね。そこでブン捕まえる方が、今後この町も少しは大人しい綺麗な町になるってもんでしょうや」

お登勢の言葉の真意を理解した沖田は、珍しく真面目に土方に助言する。その発言を受け、少し考え面倒そうに頭を掻いた土方はこう言った。

土方「ったく、今回はババア。てめえの的を射た意見と顔を立てて引いてやる。俺達の大将もあのザマだしな。山崎、あれ回収してこい」

山崎「はい!」

山崎他数名が倒れている近藤を起こしにかかる。

沖田「いやぁ、これで真選組も正式参戦決定ですね。副長」

土方「お前絶対自分が参加したかっただけだろ」

沖田「そんな事ありませんよ。不貞の輩共の逮捕、頑張りましょうや。ただバトルロワイヤル、いつ命が奪われてもそれはしょうがないですよね。副長」

土方「ま、そんなの俺達にとっちゃ平常運転だろ。ただなんだろう、お前の眼がすごく怖いんだけど」

沖田「ちなみに今入った情報によると、『土方・THE・キラー』とかいう土方さん専門の殺し屋も参戦するそうでさぁ。気を付けてくださいね。副長」

土方「そんなニッチな殺し屋聞いたことねえよ!!てかだいたい犯人の目星付いてんだけどってかお前だろ総悟っ!!」

山崎「副長!ゴリラの死体回収しました!」

無事パトカーに死体を回収した山崎が土方に報告する。

土方「よし、真選組!撤収!」

隊士達はその言葉にそれぞれ返事をし、到着していた十数台のパトカーに乗り込んでいく。と土方だけが立ち止り振り返った。

土方「おい万事屋、早乙女。シャバの空気、今のうちに楽しんでおけよ」

そう言い残すともう振り返ることなくパトカーに乗り込む。そうしてパトカーの大軍はこの騒ぎから一足先に抜け出たのであった。

勝男「相変わらずやりおるのう……無血で武装警察引かせおった」

右京「なんや凄い人やったんやなぁ、あのお婆ちゃん」

勝男「お婆ちゃんなんて優しいもんあらへんですよあれは。妖怪やら物の怪の類ですよ姉さん」

一線を退いても尚のお登勢の手腕と貫録に、その場にいた者は格の違いを見せられた気がしていた。

あかね「お登勢さん!どこも怪我とかしてない?!あんな人たちに近付くなんて危ないですって!もうダメですよ?」

だがそんなことは気にもせず、あかねはお登勢に駆け寄った。

お登勢「そんなにヤワな生き方してないから何も問題無いよ。ただアンタみたいな小娘に心配されるとは、私もとうとう焼きが回ったってやつかねぇ」

銀時「回り過ぎて焼野原のようだが」

お登勢「キューティクル焼き切れてるような奴に言われたかないよ!ところであかね、あんた今日は私の代わりに店出てくれてたんじゃなかったのかい?」

あかね「……あ」

お登勢「あ、じゃないよアホ垂れ!とっとと店戻んな!」

あかね「は、はい!」

お登勢「ほれほれ、アンタ達もさっさと仕事に戻りな!夜の町で働く人間たちが雁首揃えてこんなとこで油売ってるんじゃないよ!」

お登勢のもっともな言葉に一同は、今夜の騒ぎの終末を感じた。

お登勢「それと最後に!」

引き上げようとしていた一同に向かってお登勢が声を張り上げる。

お登勢「この町は浄も不浄も受け入れる、なんでもあり、喧嘩上等の毎日がお祭り騒ぎみたいな町さ!ただね、踊る阿呆にはなっても踊らされる阿呆なんて無粋者にはなるんじゃないよっ!いいねっ?!」

皆その言葉に何か感じることはあったが、大いなる野望を胸に秘め、黙々と引き上げていったのであった。

決戦は一週間後、その結末は未だ誰にも予想しえない。そう、だってまだ考えてないから。

今回はここまでで!

明日からはそれぞれの一週間編を毎日一日ずつ、数レス程度ですが投下していく予定です!

で一週間後に最終回投下予定です!

明日からも良かったら読んでってください、それでは!

ちなみに今時点のチーム分け

銀時、新八、神楽、あかね、良牙、長谷川、桂、九能、さっちゃん、月詠、百華、狂死郎、ホスト軍団

VS

乱馬、シャンプー、シャンプー一派、右京、勝男、溝鼠組、ムース、アゴ美、オカマ軍団

VS

お妙、お妙一派、九兵衛、柳生一門

VS

真選組

VS

土方・THE・キラー

抜けがあったらごめんなさいw

~それぞれの一週間編・一日目~

―かぶき町、公園。

男は鍛えていた。

六日後の戦いに備え、体を、心を、精神を。

身体から汗が滴り落ちる。筋肉が悲鳴を上げる。全身に熱がこもる。

男は満足のいく鍛錬が出来たと感じていた。

そしてセル戦の前の悟空の『試合前に修行のやり過ぎは良くねえ』とかいう言葉を思い出し、今日のところはこの辺にしようと、同じく修行をしている同士達に声を掛けた。

長谷川「よし、今日の訓練はここまでだ!みんな、お疲れ!」

新八「いや早えよ、始まってまだ10分も経ってないんですけど」

長谷川「だって疲れちゃったんだもぉん!今日は止めようよぉ!それにセル戦の前の悟空だって――」

新八「そのくだり地の分で読んだんでいいっす」

神楽「そんなに止めたいならいっそ人生ごと止めさせてやろうか?」

あかね「こら神楽ちゃん。そういうことは言わないの」

良牙「あかねさんの言う通りだ、そんなこと言ってると修行付けてやらないぞ」

ここはかぶき町のとある公園。良牙、あかね、新八、神楽、長谷川の五人は六日後の戦いに備えて供に修行をしようとやって来ていた。ちなみに銀時は二日酔いで家でダウンしている。

神楽「それは嫌アル!済まなかったマダオ」

どうして良牙の言う事をこんなに素直に聞いているのかというと

神楽「ちゃんと謝ったアル!だからあの技、飛行船を撃った手からかめはめ波みたいなの出すやつ教えて欲しいアル!」

というわけである。

新八「いやー、まさか手からあの類の必殺技を撃てる世界から来ていたなんて。もっと早く知りたかったですよ。これで僕等もまた一段と強くなれるね、神楽ちゃん」

神楽「うん。ちゃんとマスターして公式にも認めてもらったら次にゲーム化した時かなり画面映えするのは確実アルな。人気もうなぎ上りアル!」

新八「いや、その可能性はホントにゼロだから。そういうのは期待しないで」

良牙「よし、では基礎練はここまでにして実際に気を練って撃つ修行に入るか」

長谷川「よ!待ってました!」

あかね「もう、長谷川さんも調子良いんだから」

俄然やる気の出す長谷川を見てあかねが言う。もちろん彼も必殺技を修得したいがために、昨夜の銀時達との決起集会飲み会明けの体に鞭打ってここまで来ていた。

良牙「あの技は獅子咆哮弾といってな。簡単に言えば自身の重くなった気を練り上げ体外に撃ち出すという技だ」

神楽「父膀胱ガン?」

新八「それはまた別で重いよ!ちゃんと話聞けよ!」

良牙「まあ俺に適していたのが重い気を扱う獅子咆哮弾だったわけで、お前らみたいなちゃらんぽらんには難しいかもしれんな」

神楽「それじゃ私たちには出来ないアルか?」

良牙「そういうわけでもない。乱馬も自身の強気を練り上げて撃ち出す猛虎高飛車という技を使っているが、それは奴が獅子咆哮弾を撃つに適していなく、自分にあった気の使い方を編み出したからだ」

良牙「つまり、自分にあった気を使えば獅子咆哮弾ではなくとも、新たにあの手の技を開発することは可能ということだ」

新神長「おおー!!」

良牙の理論に一同が興奮する。

良牙「では早速やってみるとするか。普通の人間には難しいとは思うが三人とも見たところ、かなり鍛えてはいるみたいだからな。六日もあれば完成させられるだろう。では神楽、お前からだ!」

神楽「はい師匠!」

神楽が満面の笑みで、ウッキウッキで手を挙げる。

良牙「ではまず俺が軽く撃つからその型通りにやってみるんだ」

そう言うと良牙は両腕を体の前で交差させ、重い気を練り始めた。そうして練り上げられた気は付き出した両手を通して

良牙「獅子咆哮弾っ!」

眩い光を放った気の塊となって空に放たれた。

良牙「こんな感じだ、やってみろ。ただお前は重い気を使おうとするなよ。自分に合うと思う気を使うんだ!」

神楽「おう師匠!」

神楽が良牙の型を見よう見まねで模倣する。その様子を少し離れて見ていたあかねが微笑みながら言った。

あかね「なんだか師弟というより兄弟みたい。神楽ちゃんはしゃいじゃって」

新八「確かに。神楽ちゃんも年相応に可愛らしいところがありますからね」

長谷川「ハハッ。それにしても神楽ちゃんなら早速マスターしちゃいそうだな」

なんて冗談で三人は笑い合っていたのだが、神楽の体から目に見えるほどの練り上げられた気が精製されていた。

長谷川「ま、マジでっ?!」

そして神楽は良牙同様に練り上がった気を両手から放出した。

神楽「ヘルズ!ファキナウェェェイ!!」

神楽の両手から禍々しい気の塊が放出される。それは射線上にあった樹木を綺麗に丸ごと消滅させるほどの威力であった。

あかね「神楽ちゃん凄いじゃない!」

良牙「良くやったぞ神楽!技の名前はどうかと思うがな」

神楽「サンキュー師匠!これでこの星を、いや全宇宙を支配することが出来そうアル!凶帝カイザーファキナウェイに一歩近づいたアル!」

長谷川「自分に合う気って一体何使ったらあんなドス黒い色になるの?!ってかこの子に覚えさせちゃまずかったんじゃ……」

新八「じゃあ次僕!僕お願いします!」

神楽の成功にテンションの上がった新八は思い切り手を挙げて、次の挑戦者に志願した。

良牙「よし、やってみろ」

新八「はい!師匠!」

新八もこれまた型通り目を瞑って気を練り始める。その様子を皆少し緊張しながら見守っている。

新八(自分に合った気、自分に合った気、自分に合った気……)

そして練り上げられた気が新八の両手から放たれる。

新八「うおぉぉぉぉ!!!」

新八の両手から3メートル級の眼鏡が放出された。それは射線上にあった樹木を綺麗に丸ごと消滅させるほどの威力であった。

長谷川「なんでぇぇぇ?!なんで気じゃなくて眼鏡出てんのぉぉぉ?!」

あかね「新八君も凄いじゃない!」

神楽「やるな新八。駄眼鏡の汚名返上ネ!」

新八「やりましたよ師匠!思い付かなかったから技名は言えませんでしたけど」

良牙「良くやった新八、技名は俺が付けてやろう。『魔眼招来破』というのはどうだ!」

新八「ありがとうございます!」

新八はとても嬉しそうに頭を下げた。

長谷川「誰も不思議に思わないの?!手からでっかい眼鏡出たんだよこの子?!気を練ってたんじゃないの?!それに手からでっかい眼鏡出すだけなのに技名カッコ付け過ぎじゃね?!」

良牙「よし、最後は長谷川さんだ!長谷川さんなら獅子咆哮弾でいいだろう。自身の重い気を練り上げるんだ」

長谷川「わ、分かったよ。色々と突っ込み足りない部分はあるけどやってみるよ」

長谷川もこれまで通り、皆の模倣をして目を瞑り気を練り始める。と突如、周囲に異変が起きた。

あかね「な、なんか重力が増してないかしら?」

新八「た、確かに体が、重くなってます!な、なんなんだ一体?!」

神楽「なんかマダオの周りの景色が歪んでるアル!」

良牙「ま、まさか!長谷川さんの重い気が原因で、この一帯の重力に影響を与え始めているというのか?!」

新八「良牙さん!長谷川さんを止めて下さい!あの人と獅子咆哮弾の相性が良すぎて逆にマズいですこれは!」

良牙「お、おう!ぐふっ!」

動き出そうとした良牙であるが、尚も増していく重力にとうとう立っていることさえ出来なくなってしまっていた。

神楽「マダオ!止めるアル!」

その叫びも長谷川の周囲の重力に阻まれて彼の耳に届くことは無かった。

長谷川(重い気重い気重い気重い気重い気重い気重い気重い気重い気重い気重い気……よしっ!)

そして彼は目を開け気を解き放った。

長谷川「獅子!咆哮弾っ!」

良あ新神「う、うわあああああああああ!!!!!!」

―かぶき町、上空。ヘリコプター内。

花野『こちらが謎の大規模爆発が起こった現場です!一体何があったのでしょうか?!地面に巨大なクレーターが出来ています!警察では六日後に開催されると言われている『かぶき町バトルロワイヤル』に関連した事件ではないかと捜査をしているとのことです!以上、現場の花野でした!』

ピシャンッ

ソファに寝転がった銀時はテレビを消すと一発屁をこき、昨日のジャンプを読み始めた。

銀時「物騒な世の中だねぇ」

こうして彼らの一日目は過ぎていった。

今日はここまでで!

こんな感じで短いですが毎日投下します!

それでは明日!

マダオぶっ壊れだなwwwwww

乙です

>>454 こんなですが今後もマダオ出ずっぱりです!

>>455 レスありがとう励みになりますあざっす!

明日も良かったらまた読んでください!


マダオ最強伝説始まったな!

>>457 まだまマダオ伝説終わりませんので!ww

また今夜も!

―かぶき町、通り。

男は走っていた。

腕を振り、足を上げ、どこを目指すともなく、ただ走っていた。

まるで、俺の人生のよう。立ち止まることはいつでも出来る。

ただ俺の中の性が、熱い何かが、そうするのを許さないのだ。

だから俺は走り続けるのだ。






~それぞれの一週間編・二日目~






とは言っても呼吸が続かない。よし、今度こそ煙草を止めよう。男は固く誓った。

後ろを振り返る。よし、今度こそこいつらとの関係は止めよう。男は固く誓った。

長谷川「あぁぁぁ!!!もう走れない!!ホント無理だって!!」

ムース「喋る余裕はあるようではないか!」

二人はかぶき町の通りを激走していた。

長谷川「もうこれ以上は何も喋れません!!どうにかしてぇムースえもん!!」

ムース「仕方ない。ほら!!」

ムースの袖口から多数のロープが放たれ長谷川の体に巻き付く。

長谷川「え?ええ?!」

そのロープを巧みに操るとムースは、長谷川を簀巻きにし引きずって尚も走り続ける。

長谷川「うおおおおお!!!!!痛い!!痛いよこれ!!色々ぶつかるし!!」

ムース「注文の多い奴じゃな!だったら後ろの男達にさっさと捕まえてもらうがいい!」

長谷川「そ、それは嫌だ!!って痛っ!!ビンを路上に捨てるな!!」

二人の後ろには十名前後の真選組の隊士達。ムース達は彼らから逃げているのであった。

事の起こりは数分前。

―かぶき町、裏路地。

長谷川「ったく、昨日は酷い目にあったぜ。しかし良く生きていたもんだ。ギャグ漫画補正万々歳だぜ」

長谷川は裏路地のゴミ箱を漁り、何か食べられるものはないかとエコ活動を行っていた。

長谷川「今日はなんもねえか。ちっ、しけてんな」

そう言って顔を上げ伸びをする。そこで彼は信じられないものを目にし固まってしまう。

長谷川「え?いや、え?」

ムース「おお、お前は長谷川。こんばんは」

二階相当の高さに亀甲縛りをされて宙吊りになっているムースの姿がそこにはあった。

長谷川「む、ムース君?な、何してんの?!てかなんでそんな恰好で普通に挨拶してんの?!」

ムース「なーに、簡単な話よ。天人襲撃の件で真選組に追われていての。奴等から逃げる為にこの様な隠れ方をだな――」

長谷川「ごめん、ジェネレーションギャップかな。全然オジサンにはその話簡単じゃないんだけど?!なにがどうなったらそんな隠れ方に行き着くの?!」

ムース「奴らに追われてこの路地に逃げ込んでな、すかさず亀甲緊縛術でこの高さまで体を移動させたのじゃ。その後おらを追ってきた真選組は狐につままれたように首をキョロキョロとさせ今し方、表通りの方にいもしないおらを探しに行ったというわけじゃ」

ムースがえっへん、といった調子で説明を終えた。

長谷川「あ、君馬鹿なんだ!わざわざ自分を縛る必要なくない?!君ならもっと別の道具でなんとかなったでしょ?!前使ってた鉤爪とかさ?!」

ムース「そ、その手があっただかっ!目から鱗が落ちただっ!」

ムースが衝撃を受ける。

長谷川「うん、じゃあ鱗と一緒に君も降りてこようか。絵的になんかすごいマズいことになってるから今」

ムースは自身の技を解いて地面に降り立った。

長谷川「そう言えば今日はさっちゃんは一緒じゃないのかい?」

ここ最近は常にセットで現れていたので、さっちゃんの姿が見えないのを不思議に思った。

ムース「始末屋稼業は一昨日で廃業、コンビも解消じゃ。五日後敵味方に分かれて戦うというのに、続かられるわけがなかろう」

長谷川「そ、それもそうか。なんか変な事聞いちゃって悪かったな」

ムース「なーに、別に気にすることもない」

そう言ったムースの真意を、彼の眼鏡の奥から長谷川には測ることは出来なかった。

神山「いたぞ!ムースだ!」

隊士A「なんか一人増えてるぞ?!まあいい、とりあえず牢にぶち込んどきゃいいだろ?いくぞ!」

二人の隊士が表通りから戻ってきてしまったのであった。

ムース「まずい!逃げるぞ長谷川!」

長谷川「ええ?!俺も?!俺なんもしてないんだけど?!」

ムース「あいつらがそんなこと素直に聞いてくれると思っているのか?その事はおらより長くこの町にいるお前の方が分かってるんじゃないか?」

真選組の傍若無人っぷりを頭の中で再生させた長谷川は

長谷川「逃げよう!!」

ムースよりも早くその場から逃げ出した。

その後逃げている間にあれよあれよと追手の隊士の数が増え、冒頭に繋がるのだった。

沖田「桂ぁ!ってあれ?今日は違うの?」

神山「隊長、今日は桂じゃありません!二日前の天人襲撃犯です!」

そしてとうとう、最悪の追手が応援要請を受けて追跡に加わった。

ムース「こりゃいかんな。あの茶髪が出張ってくるとは」

長谷川「いでっ!た、確かに真選組屈指の強さらしいけど、いでっ、君も結構強いんじゃないの?!いっそやっつけちゃってよ、ムースえもん!」

ムースに引きずられ、舌を噛みつつも長谷川が言った。

ムース「おらにばかり頼り過ぎるでないマダ太君。それに一度奴とは手合わせしたことがあるんじゃが、情けない話だが敵う気がせんかった。仕方ないだがここは逃げる!」

ムースの走る速度が更に早まる。その後ろ姿を見た沖田は数日前一戦交えた暗器使いを思い出した。

沖田「ああ、あいつかぁ。結構厄介な、めんどくせぇ戦い方をする奴だったなぁ。よし、接近戦はしたかねえから今日はこれで行こう!」

神山「これっていつものやつじゃないですか!」

沖田がどこからか取り出した愛用品を見て、思わず神山は突っ込んでしまう。

沖田「ムースゥ!」

沖田は慣れた手つきで、なんの躊躇いも容赦もなくバズーカを発射した。

長谷川「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ムース「ちぃっ!!」

二人に着弾したのかは定かではないが大きな爆発が起こり、周囲に爆煙が立ち込めた。

―かぶき町、上空。ヘリコプター内。

花野『こちらが天人襲撃犯が爆殺されたと噂の現場です!周囲の建物にも被害が見てとれます!真選組のこのような捜査に対し、益々市民からの風当たりは強くなりそうです!警察では五日後に開催されると言われている『かぶき町バトルロワイヤル』に関連した事件ではないかと捜査をしているとのことです!以上、現場の花野でした!』

ピシャンッ

ソファに寝転がった銀時はテレビを消すと一発屁をこき、一昨日のジャンプを読み始めた。

銀時「物騒な世の中だねぇ」

こうして彼らの二日目は過ぎていった。

短いですが今日はここまでで!

また明日!

乙です

>>473 こんな感じで短編を毎日日曜までいきますんでよろしくお願いします!

―かぶき町、とある店。

男は踊っていた。

スポットライトを浴び、きらびやかな衣装に身を包み、心弾む曲に合わせて。

自らを見てくれる観客のため、またそれは自らのためでもあった。

しかし、だがしかし、どうにも頭にこびり付く疑問が拭えない。

そして彼はとうとう、その疑問を口にしたのだった。自分と同じ舞台に立つ、ダンサー仲間に。







~それぞれの一週間編・三日目~







長谷川「なあ!なんで俺、こんなことしてるのかな?!」

自分の右横で、慣れた様子で踊る桂に長谷川は声を張り上げた。曲がかかっているため、大声ではないと声が届かないのだ。

桂「ここは舞台。私たちは演者。簡潔にして至極真っ当な理由だろう!」

長谷川「いや、なんかそういう哲学的なんじゃなくてさ!君はどうなの?!なんの疑問も湧かないの?!」

九能「少し静かにしてもらえないだろうか!集中したいのでな!」

長谷川「ええ?!そんな真剣にやってたのぉ?!」

桂「逆に聞くが真剣にやっていないというのか?!来てくれたお客さんに失礼であろう!」

長谷川「いや、まあ真剣っちゃ真剣だけどもさ!ホントにこんなんで恩返しになるの?!」

昨日真選組から追われていたところを偶然通りかかった桂、九能に長谷川は助けられていた。そして、今日、何か恩返しはできないかと尋ねたところ、人手の足りぬ店でショーダンスを踊って欲しいと言われて今に至る。ちなみにムースとは昨日の爆発で離れ離れになってしまった。

桂「なるともさ!さあ!踊り狂おうではないか!」

九能「フンッフンッフンッフンッ!」

長谷川を置いてけぼりにするように、二人のダンスに更にキレがかかる。

客A「おい真ん中のヒゲオカマ!しっかり踊りやがれぇ!」

客B「そうだそうだ!こっちは金払って見に来てやってんだぞ!てからん子ちゃん出せやぁ!」

体が着いていかなくなってきている長谷川にヤジが飛ぶ。

長谷川「うるせぇ!だいたいこんな恰好で踊れるかっつーの!」

煌びやかでセクシーな和服に身を包んだヒゲオカマ、長谷川がそれに応戦する。

桂「こらマダ子!お客様に向かってなんてこと言うの!」

長谷川「もうやってられっかよ!づらっち!別の形で恩返しさせてくれよぉ!」

九能「づらっちではない!ヅラ子よ!」

そう、ここはかまっ娘倶楽部。三日前から修行の旅に出てしまった乱馬の穴埋めに桂、九能が呼ばれ、丁度良いタイミングであったため長谷川も連れて来られたのだった。

アゴ美「こらヒゲ美!お客さんと喧嘩してんじゃねえ!」

長谷川「名前くらいは統一してくれよ!」

九能「グラ江さん!落ち着いて!」

長谷川「え?!君日本語分からないの?!いい加減にしろぉ!」

―かまっ娘倶楽部、厨房。

九能「まったく、長谷川さんのせいで花形であるダンサーから降ろされてしまったではないか」

とうとうアゴ美からレッドカードを貰い、厨房で仕事をするように言われてしまった三人であった。

長谷川「だからなんで九能君そんなにやる気あるの?てかめっちゃ踊り慣れてたよね?若干どころか結構オジサン引き気味なんだけど」

九能「フッ、攘夷志士たるもの、そして桂さんの弟子たるもの、変装術は磨いておかねばならないのでね。桂さんの伝手で踊り、変装できるここは恰好の稽古場だったわけですよ。それにここではおさげの女も働いていたので。ああ、おさげの女!君は何処に行ってしまったんだ!」

長谷川「あ、実際はそれ目当てでここに通ってるうちに踊り慣れたのね。やっぱ頭一つ飛びぬけて馬鹿だよ君」

虚空に手を伸ばす九能を、長谷川はばっさり切り捨てた。

オカマA「鳥のから揚げ一つね!」

そんなくだらない会話をしていると、ホールから注文が入る。

桂「来たか。ちなみに言っておくが俺は料理などからっきしだ」

長谷川「俺も正直苦手だな。普段の食生活とかそりゃ酷いレベルだしね」

九能「僕も料理はうちの者がやってくれていたので……」

三人の間に不穏な空気が流れるが、それを九能が打ち破った。

九能「そうだ!鳥のから揚げは出来ないがスイカなら見事に切ってみせましょう!」

桂「何!それは凄いではないか九能君!よし!それでいこう!」

長谷川「どんだけ褒めて伸ばすタイプなんだよ!全然それじゃいけないよ!鳥のから揚げですって言いながらスイカ出すホールの人の気持ちも考えようよ!」

長谷川の突っ込みをまったく気にもせず、九能は腰の木刀を構えた。

九能「そりゃ!」

どこからか取り出したスイカを一瞬にして、見事な切り口でカットされたスイカに変えた九能であった。

桂「おお!この切り口は!うまい!うまいぞぉ!」

長谷川「いや、確かに見事だったしうまいけどさぁ!鳥のから揚げはどうすんだよづらっち」

そんなことを言いつつもむしゃむしゃとスイカを貪る長谷川であった。

九能「こんな時エリザベス殿がいてくれたら!」

長谷川「あれ?そういや今日いないじゃん。どこ行ったの?」

桂「俺の密命を受けて今頃江戸中を飛び回っているだろう。Xデイまでには戻るだろうさ」

スイカの種を口の周りに付けまくりながら桂が言った。

桂「さてと、このまま手をこまねいているわけにもいくまい。このスイカに下味と衣を付けて揚げてみよう」

長谷川「ごめんなんて言ったの?とうとう俺の耳壊れたみたいだわ」

九能「鍋に油入れておきましたよ桂さん。ただ火の付け方が分からん。うーむ」

九能が首と、どこからか持って来た巨大なガス管の栓をひねっている間に、桂が下味と衣を付け終わる。

桂「よし、アイキャンフラーイ!ってなんか臭いな」

長谷川「あーあ、もう煙草でも吸うかな。疲れちゃったよ」

長谷川がくたびれた様子で懐から煙草とライターを取り出す。

九能「クンクン、ま、まさかガスが?!」

桂「は、長谷川さん!止めるんだ!ガスが充満して――」

長谷川「え――?」

カチッ。長谷川がライターの巻き石を回した瞬間、

ドゴォォォォォォォォン!!!!

辺り一面を吹っ飛ばすほどの大爆発が起きたのだった。

―かぶき町、上空。ヘリコプター内。

花野『こちらがガス爆発が起きたとの情報が入った現場です!!なんでも今火が上がっているお店はオカマバーだそうで、日頃から近隣の店舗とのいさかいが絶えなかったそうです!警察では四日後に開催されると言われている『かぶき町バトルロワイヤル』に関連した事件ではないかと捜査をしているとのことです!以上、現場の花野でした!』

ピシャンッ

ソファに寝転がった銀時はテレビを消すと一発屁をこき、三日前のジャンプを読み始めた。

銀時「物騒な世の中だねぇ」

こうして彼らの三日目は過ぎていった。

今夜はここまでで!

―かぶき町、通り。

男は浮かれていた。

残り少ない所持金に、恐怖で怯えていた先程までの自分が嘘のようだった。

体が、心が、軽い。

男は賭けた。なけなしの所持金を、自分の下を去った女房を連想させる数字の競走馬に。

見事に勝った。劇的な勝利であった。久々に財布が分厚く、重い。

ここ最近の不幸を帳消しに出来ると感じるほどの幸運であった。

長谷川「よし!飲みいっちゃうぞぉ!」










~それぞれの一週間編・四日目~









オーナー「お、長谷川さんじゃないか!どうだい、今日はホント安くするから飲んで行ってくれよぉ!」

長谷川「よぉ、すまいるの店長じゃねえか。店長自ら客引きたぁ泣かせるねぇ」

長谷川が通りを歩いていると、馴染みのキャバクラ『すまいる』の店長に声を掛けられた。

オーナー「それがよぉ、三日後のかぶき町なんちゃらのせいで客がビビッてこの町に全然寄り付かなくなっちゃってねぇ。店も閑古鳥なんだ」

店長はしけた顔で通りを見渡す。長谷川もつられて通りを見ると、言われれば普段より人も活気も感じられない気がするのであった。

オーナー「で、どうだい?!こんな暇だと女の子たちも退屈しちゃうんでね、今日はホント安くするよ!」

長谷川「うーん、行ってもいいっちゃいいんだがなぁ……」

自身の財布の中身、安くしてくれるという店長の言葉。普段なら二つ返事で店に駆け込むところだが、今日は、いや、少なくとも今週は店内は戦場と化しているのではないか。

店で働く二人の女傑族を思い浮かべ、長谷川は悩み唸り声を上げる。

そんな長谷川の思いを見透かしたように

オーナー「あ、もしかしてお妙ちゃんとシャンプーちゃんがドンパチ始めて巻き込まれないかと心配してる?でも大丈夫!」

店長は先回りしてフォローを入れた。

オーナー「店が始まる前にお妙ちゃん達が赤い馬に乗って矛担いで店長室に乗り込んできてね」

お妙『オーナー、軍事教練をしたいので今日は私たち有給使わせてもらいまーす!』

オーナー「って宣言して去って行ったんだよ。いやー、あんな暴力的な有給申請は生まれて初めてだったね。いや頷くしかないもん、首縦に振るしかなかったもん。じゃなかったら首横に飛んでたもん」

その記憶がフラッシュバックしたのか、グラサン越しでも分かるほど涙目になった店長には同情を禁じ得なかったが、不安が晴れた長谷川は二つ返事で入店を決めたのであった。

オーナー「一名様ご案なぁぁい!」

―かぶき町、スナックすまいる。

店内は店長の言う通り客数もまばらで数える程しかおらず、普段の賑わいからは想像もつかない程閑散としていた。

そこに可憐な女性たちの中でも、特に目を引く美しいチャイナ服の娘が扇子片手に長谷川の座ったテーブルに歩いてくる。

長谷川「おお!今日はシャンプーちゃんが付いてくれるのか!やっぱ今日はツイてるぜぇ!」

にやける長谷川には挨拶もせず、シャンプーはどかっとソファに座り込んだ。

シャンプー「早く酒注ぐよろし」

長谷川「なんでだよっ!なんで初っ端からそんなSっ気全開?!ここそういう店じゃないでしょ?!俺が酒注がれる側なんだけどぉ?!」

長谷川の席に着いたシャンプーは、早速いつもの如く奔放に振る舞うのであった。

シャンプー「何か面白い話するよろし」

長谷川「だからなんでだぁぁぁ!!!違うでしょ?!俺が楽しませてもらうとこでしょここはぁ!何ぃ?!俺が違うのぉ?!」

シャンプー「お前が違うある。ここは女の子の機嫌を取って楽しませ、時に高いプレゼントをし、時に高い食事に連れて行き、それでも報われない夢を見続ける男の墓場、オスカンダルある」

長谷川「ぶっちゃけちゃったぁぁぁ!!!それ絶対言っちゃだめだろぉぉぉ!!!店長っ!!この子チェンジッ!全力でチェンジィィィ!!!」

シャンプー「そういうサービスのある店じゃないある、静かにするね。はあ……」

立ち上がって大声でわめく長谷川と正反対に、切なげな眼をして元気のないシャンプーであった。

長谷川「……ったく、なんかあったのかい?」

そんな様子を見た長谷川は一息つくと煙草に火を付け席に座る。

シャンプー「乱馬が私を置いて修行の旅に出てしまて私とっても悲しいし暇ある」

長谷川「うん、まあ少なくとも今は暇じゃないはずだよね。ちゃんと仕事しようか」

いつまで経ってもシャンプーが酒を作る気配がないので、とうとう自分で酒を注ぎながら長谷川は言った。

シャンプー「ムースのやつも会いに来ないし……」

ため息を吐いて足を組み直すシャンプー。

長谷川「あ、ムース君なら一昨日会ったよ」

シャンプー「ホントあるか?!どこで何してるあるアイツ!」

急にテンションが上がったらしいシャンプーが身を乗り出して尋ねる。

長谷川「あ、あー……」

長谷川は口にしたことを後悔した。真選組に追われている最中に爆発に巻き込まれてそのまま行方不明とは、彼女には言い出しにくかった。

そんな気まずい表情を一瞬で読み取ったシャンプーは言った。

シャンプー「隠さず言うね。女の前で隠し事なんて出来ると思てるのか?ヒゲのくせに」

長谷川「……ふぅ、まぁそれもそうか。隠さず言うよ。でもヒゲのくせにって何?」

長谷川は煙を吐き出し覚悟を決める。

長谷川「実は『かくかくしかじか』な事情で彼とは離れ離れになっちゃったんだよ」

シャンプー「そ、そんなことがあったあるか……」

ムースの身を案じてか、彼女の顔には陰りが差し、とうとう俯き、その表情は見えなくなってしまった。

長谷川「……………」

シャンプー「……………」

シャンプーの小さな方が震える。

長谷川「シャンプーちゃん……」

シャンプー「超ウケるあるな」

長谷川「受けねえよっ!!!何?!今の下見て震えてたのって笑ってたの?!会いたくて震えてたんじゃないの?!」

シャンプー「面白い話できるあるな。褒めてやる」

長谷川「いらねえよぉぉ!!店長やっぱこの子チェンジっ!!もう最悪店長付いてくれればいいから!!」

今までの重かった空気を吹き飛ばすように長谷川が声を張り上げた。

シャンプー「ちなみにマダオ。そのムースをやったやつの名前はなんていうね?」

長谷川「え?ああ、あの真選組一番隊隊長、沖田総悟だよ」

シャンプー「あいつか……」

そうシャンプーが呟いたその時であった。すまいるの入り口のドアが凄まじい音と共に破られたのであった。

長谷川「な、なになになにぃ?!」

そこには赤兎馬に跨り、巨大な矛に鎧で身を固めたお妙が部下を従え、こちらを、いやシャンプーを睨み付けていたのだった。

お妙「本日の軍事教練のシメはここで痴女猫部隊との戦闘訓練だぁ!者どもぉ!覚悟はいいかぁ!」

お妙の掛け声にお妙配下の者たちが鬨の声を上げる。

長谷川「い、いやだぁぁぁぁ!!!もうオチ読めたもん!!!絶対いやだぁぁぁ!!!もう爆発に巻き込まれたくないっ!!!!」

今後の安易な展開を瞬時に察した長谷川は、慌てふためきながら裏口から逃げようと駆けだした。

それに続く他の客たち。そんな彼らを気にもせず、シャンプーは不敵な笑みを浮かべるとゆっくりと立ち上がった。

シャンプー「丁度良かたある、なんでか知らないが滅茶苦茶むしゃくしゃしてたね。きっとこれは乱馬がいないせいある」

お妙に向かって歩き出すシャンプーの後ろに、シャンプー配下の者たちが列を成す。

シャンプー「私のストレス、全部無くなるまで今日は帰さないある。覚悟するよろし」

お妙「女の子が『帰さない』だなんてはしたないこと言うもんじゃないわよ。まあ少し早いけど前哨戦ということで、消えてちょうだい」

二人が互いの射程距離に入る。見つめ合いにっこりと笑い合う。

シャンプー「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

お妙「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

ドゴォォォォォン!!!!!

巨大な気と気がぶつかり合い、とてつもない威力の爆発が起きたのであった。もちろん、長谷川が裏口から逃げきれなかったのは言うまでもない。

―かぶき町、上空。ヘリコプター内。

花野『こちらがZ戦士同士の戦闘が起きたとの情報が入った現場です!!大小様々なクレーターが発生しており、またあちこちに火の手が上がっています!まさに世紀末といった様相です!!』

花野『警察では三日後に開催されると言われている『かぶき町バトルロワイヤル』とは関係なく、『あんなのいつものお妙さんじゃない!』と不可解なコメントを発表しています!以上、現場の花野でした!』

ピシャンッ

ソファに寝転がった銀時はテレビを消すと一発屁をこき、四日前のジャンプを読み始めた。

銀時「物騒な世の中だねぇ」

こうして彼らの四日目は過ぎていった。

今日はここまでで!

また明日!

(どうしよう、まだ月曜投下予定の最終回書けてないなんて言えない……)

乙です


大丈夫だってここまで天丼しておけば適当にマダオを爆発四散すればきっと綺麗にオチがつくって目が死んでる天パが言ってた

>>506 レスあざっす!

>>507 その人紹介してくださいww

それでは始まり!

男は怯えていた。

次はいつ、どこからだ。

どこから襲ってくる。

どこが、何が、爆発するんだ。

もう嫌だ!何故、何故俺だけが。毎日、毎日爆発に巻き込まれなければならないんだっ!

ていうかなんで俺まだ生きてんの?普通死ぬっしょ初日の時点で。

あぁ!毎日爆発に巻き込まれるくらいならもういっそ死なせてほしいんですけどぉ!

もう嫌だ!止めてくれ!ギャグ漫画補正とかいらないから!いっそ楽にしてくれぇぇ!

今ならディアボロの気持ち分かるわ、次はいつどうやって爆発するんだ。

く、くっそぉぉぉ!!!

長谷川「俺のそばに近寄るなぁぁぁ!!!」








~それぞれの一週間編・五日目~








―かぶき町、通り。

子供「母ちゃん、この人なんでこんな怯えてんの?」

母「こら!そっち見ちゃいけません!」

母親らしき女性が子供の手を引っ張り、足早に長谷川の下から去って行った。

長谷川「くそぉぅ、くそぉぅ……どっからだぁ、次はどっから来るんだぁ!うわぁぁぁぁ!!!!」

怯えた様子から一転、今度は目を血走らせ周囲を伺い始める長谷川。どうやら順調に精神が病んでいっているようである。

長谷川「ここかぁ!それともここかぁ!それともあの子のスカートの中かぁ!グワハハハハハ!!!!」

ゴミ箱の蓋を開けたり、通りすがる女性を下品な言葉を投げつける長谷川。そんな彼に声が掛かる。

右京「あら、長谷川さんやないの。こんな天下の往来で一体何してんの?」

買い物帰りで通りを歩いていた右京は、奇怪な行動に走る長谷川に気付き声を掛けたのだ。

長谷川「ククク、次は君か!右京ちゃん!さあどうやって俺を爆破するんだ?!あれか!かんしゃく玉が引火してドカンみたいな感じなんだろ!さあ出してみろよ!お前のキラークイーンをぉ!!」

右京「ちょ、ちょっとなんやのいきなり。何があったん?」

長谷川「しらばっくれてもこっちには分かってんだ!!このグラサンの奥からでもな、まるっとお見通しなんだよ!!」

右京「だからなんの話やねんて……」

長谷川のここ数日の事情を知る由もない右京は、その常軌を逸したような彼の振る舞いに、ただただ困惑するばかりであった。

長谷川「ほら!ほら!早く爆破してくれよ!もう楽にしてくれよぉ!さあ!さあ!」

そんな右京の両肩をゆすりながら長谷川は叫び続ける。

右京「だから落ち着け言うてるやろが!ったく……」

右京は揺らされながらも渋々愛用の巨大なヘラを持ち出すと

右京「少し眠ってなっ!!」

長谷川の頭をフルスイング。そして間抜けた顔で気絶した長谷川の首根っこを掴むと、彼を引きずりながら目的地へと再び歩き出した。

―かぶき町、川岸。とある屋台。

鈍い頭痛と共に目を覚ました長谷川は、鼻孔をくすぐる、食欲を刺激する匂いを嗅いだ。

右京「お、起きたんやね。はい、これ。食べ!」

屋台の席に座らせられていた長谷川の前に、焼き立てのお好み焼きが出される。

長谷川「こ、これは一体……?」

右京「腹減ってるからあんなよう分からんことになるねんて。でもウチのお好み焼き食べたらそんなん吹き飛ぶから。さ、熱いうちにはよ食べや」

まだ状況をあまり理解していない長谷川であったが、空腹なのは事実であったので、その厚意を素直に受けることにした。

長谷川「い、いただきます」

ゆっくりと箸をつけ口に運ぶ。

長谷川「こ、これは!美味い!美味すぎるよ右京ちゃん!」

右京「そりゃ良かったわ」

右京がにっこりと笑う。そこからはあっという間にお好み焼きを平らげた長谷川であった。

長谷川「いやぁ、ホントにありがとう!こんな美味いもんで腹が膨れたらなんだか気持ちも落ち着いてきたよ!」

右京「で、あんな追い詰められるまで何があったんよ。ウチで良ければ話聞くで」

空いた皿を片付けながら右京が言った。

長谷川「き、君はなんて良い子なんだ……オジサンなんだか涙出て来ちゃったよ」

右京「あーもう泣かへんの。これでも使いぃ」

右京がカウンター越しにお手拭きを放る。

長谷川「それがね、聞いてくれよ!もう毎日毎日『かくかくしかじか』な事情で何かと爆発に巻き込まれるんだ!なんなんだろうね、吉良吉影の怨霊でもとり憑いてんのかね」

右京「そ、それはまたなんとも難儀な話やな……まあ、迷惑かけたみんなの分も謝っとくわ。すまんかったね」

長谷川「い、いいっていいって!右京ちゃんが謝ることじゃないし!それに、こんな美味いもん食ったから元気になったよ。また今日から頑張って生きていくよ」

長谷川が拳と共に決意を固めた。

長谷川「そう言えばどうしてこんなとこで屋台やってんの?溝鼠組の仕切りのとこでやってたのに」

右京「ああ、それはなぁ」

右京が洗い物をしながら答える。

右京「あの滅茶苦茶な日あったやろ?五日前の。なんかあれ終わったあと、まだまだこの町の人たちのこと知りたなってな。どうしても同じとこいると見えないとこって出てくるやんか?」

右京「それで勝男さんに我儘言うてな。最後の一週間は好きなとこで屋台引かせて色んなもん見せてぇって、そんな感じで今はここでやらせてもろてんねん」

長谷川「そうだったんだ。でもあの極道たち悲しんでたんじゃない?右京ちゃんにべったりだったもんな」

右京「もう大変やったわ。姉さんが家出するやら一足先に異世界に帰るやら泣き叫び始めて」

長谷川「ハッハッハ、それは見てみたかったな」

先程とは別人のように落ち着いた様子で長谷川が笑った。

長谷川「で、なんか面白いもんは見れたのかい」

右京「うーん、どうやろなぁ」

この五日間のことを思い出しながら皿を拭く右京。

右京「眼鏡掛けた兄さんと綺麗な姉ちゃんのコンビはおもろかったな。ありゃあ仲の良い兄弟、いや、なんだか親子にも見えたなぁ。ま、その姉ちゃんがここでドーナッツを焼いてほしいとか言い始めたりして」

長谷川「それでどうしたんだい?」

右京「もちろん焼いたったわ。ポンデなんとかには敵わないけど美味しいって褒められたわ。あとはさっきまでいたんやけど、めっちゃ怖い顔したおとんと可愛らしい嬢ちゃんの親子とか。会話がめっちゃ物騒なんやけど嬢ちゃんはめっちゃ笑顔やねん」

長谷川「この町ならさもありなんだな」

長谷川が腕を組み深く頷く。

右京「あとはべろんべろんに酔っぱらったアナゴさんみたいな声のおっさんと、凛々しい顔した兄ちゃんのコンビとか。兄ちゃんが素面みたいな顔で自分のこと将軍とか言うてたから、どんだけ酔ってんねん!って思わずど突いちゃったわ」

長谷川「……うん、それは、あれだな。ともかく色んな人たちに会えたみたいで良かったな」

そのコンビに思い当たる節はあったが、自分が誰を叩いたかを彼女に知らせて要らぬ心労を与える必要もないと考え黙っていた。

右京「せやな。ホントに楽しい町やでここは。自分たちの世界に帰るのが、少しだけ、億劫になっちゃうくらいに」

そう言って右京は微笑んだ。その後も彼らは穏やかな会話を続け、五日目の夜は更けていったのであった。

長谷川「え?!今日爆発しないの?!いいの?!やっと解放されたの?!やったぁぁぁ!!!」

右京「良かったなぁ!まあ爆発なんてしないのが普通なんやけど、ともかく良かったわぁ」

席を立って喜び踊る長谷川を見て、右京も嬉しそうであった。

彼の喜びのダンスはその後10分ほど続き、いい加減しつこいと右京にヘラで殴り飛ばされたのだった。けれども、彼の顔は喜び浮かれていたという。

こうして彼の長かった不遇な数日は幕を閉じたのであった。

―かぶき町、万事屋。

花野アナ『とうとう二日後に迫ったかぶき町バトルロワイヤルに合わせて、あのアイドル寺門通が明後日、かぶき町でライブを行うとの発表をしました!警備等に不安の声が出ているものの、厳戒態勢で行われるとのことです!ではその寺門通さんにインタビューをしたいと思います!』

通『みんなー!元気にしてたー?!今回のライブ名は『かぶき町MUTEKIなのは誰だ?!私は絶対にSUTEKIデビューはしないんだから!んだタンをお前の顔面に吐きつける!』です!みんな絶対来て――』

ピシャンッ

ソファに寝転がった銀時はテレビを消すと一発屁をこき、五日前のジャンプを読み始めた。

銀時「平和な世の中だねぇ」

こうして彼らの五日目は過ぎて――

新八「過ぎるなぁぁぁぁぁ!!!!!お前いつまで屁ぇこいてジャンプ読んでんだよっ!!!!もう五日も経ってんだよアホたれぇぇぇぇ!!!!!!」

銀時「え、ちょっと何よいきなり。もうここ最近はこんな感じで話畳んでんだからいいっしょ。今日はもう終わり終わりぃ」

新八「終わらせるかぁぁぁ!!!みんなこの五日で修行したり戦ったりとかやってんのに、なんでアンタはそんな夏休み中盤のだれ気味中学生になってんだよ!!」

銀時「だってそういうの柄じゃないしよぉ。あ、そうだ。じゃあこれからちょっくら修行してくるわ。多分日付変わっても帰って来ねえからお前帰っていいぞぉ。あぁ、あとヘパリーゼだけ買っといて、帰ったら飲むから」

新八「おい絶対飲み行くだけだろアンタ!おいっ!ちょっと待て坂田ぁ!アホの坂田ぁ!」

新八が止めようとするも、さっきまで屁をこいて寝っ転がってた人物とは思えない程俊敏な動きで、銀時は家から脱出したのだった。

新八「ったく、明後日大丈夫なのかなぁ……心配だよ、はぁ……」

とため息をついたところで、さっと表情をにやついたものに変えるとTVを付けた。

新八「ま、心配してても仕方ないしここはお通ちゃんを見て幸せな気持ちになろう!それにしてもライブやるんだ!楽しみだなぁ!」

その様子を神楽は酢昆布をかじりながら、死んだ魚のような眼で見ていた。

神楽「ホント男ってのはどいつもこいつも駄目な奴ばっかアルな」

こうして彼らの五日目は過ぎていった。

今日はここまでで!

また明日!明日は一週間編ラストです!

(どうしよう、最終回まだ半分もかけえてないなんて言えない……)


爆発しない……だと……?
いやまてもうこうなったら我々の手で爆発させればいいのではないか……?
むしろ爆発させるのが義務なのでは……?

乙です

>>526 >>528 レスありがとう!

~番外編~

長谷川「>>527ふざけんじゃねえ!やっと爆発の輪廻から抜けることが出来たんだ!今更そんな理由で爆発してたまるか!てか爆発の輪廻ってなんだよマジで!」

ボム兵「ジジジジジジジジジジジジジ」

長谷川「え?ええ?!ボム兵?!爆発するにしても雑過ぎやしないこれ?!もうふざけんなよぉ!」

ボム兵「ジジジジジ」

長谷川「こっち来んなぁぁぁぁぁ!!!!!」

ボム兵「ジジ」

長谷川「あっ――」

ドゴォォォォォン!!!!

特に理由のない爆発が長谷川を襲う!

明日も良かったら読んでってください!

それでは!

(こんな番外編書いている暇ないなんて言えない、まだ半分も最終回書けてないなんて言えない……)

男は満ち足りた気分であった。

思えば今週一週間どころか、あいつらと出会ってからというもの不運不幸の連続であった。

女房、仕事、金、社会的地位、人としての尊厳、数多のサングラス。そのどれをも失ってきた。

こんな人生、もうどうでもいいや。自暴自棄になり今までも酒、ギャンブルに溺れ、怠惰な生活を享受してきた。

だが昨日、彼女といた時間を通して、何かが自分の中で変わった気がした。

ただ、美味しいお好み焼きを食べさせてくれただけ。話を聞いてくれただけ。それでも男にとっては、死神と貧乏神と厄病神と4Pをかましている男にとっては、それがとてつもなく嬉しかった。

その帰り道、ふと男は思った。

仕事、探すか。

思い立ってからの動きは早かった。

早速日雇いのアルバイトを決め、今はその帰り道。

久々の労働。それによる心地良い疲れ。今日は久々にぐっすり眠れそうだ。

よし、その前に軽く一杯引っかけて帰るか。

男は馴染みの屋台の暖簾を持ち上げた。







~それぞれの一週間編・六日目~






長谷川「冷で一杯頼むよ」

親父「あいよ。お、久し振りじゃないか」

長谷川が席に座り、目の前で美味そうに煮えているおでんの具を吟味する。

長谷川「ああ、今日は久々に実入りもあったことだし。親父さんのおでんを食いたくなったんだよ、夏だってのになんだか急に涼しくなっちまったし」

親父「嬉しいこと言ってくれるねぇ、はいよ」

親父が元々細い目をさらに細くしながら冷酒を長谷川の前に置いた。

長谷川「まずは大根と玉子もらおうかな」

親父「今日のは良く煮えてるからうまいよぉ。それにしても長谷川さん、あんた良い顔になったんじゃないかい?どこかこう、何か吹っ切れたというか」

長谷川「そうかい?まあ吹っ切れたというより吹き飛ばされ続けたんだけどさ。まあ気持ち的に前向きにはなってきたよ」

長谷川が酒に口を付ける。今日の疲れがスーッと引いていくような感覚に、心地よさと懐かしさを覚える。

親父「何があったかは知らないがそいつは良かった良かった」

大根と玉子、そしてがんもが盛られた皿が長谷川に出される。

長谷川「おい親父。俺はがんもなんて頼んでないぜ」

親父「サービスだよサービス、長谷川さんの新しい門出を祝してね。それに他にも良いことがあって少し気分が良いんだよ」

長谷川「おお!ありがとな親父。で、良いことってのはなんだい?聞かせてくれるんだろ?」

プリプリの玉子を二つに割りながら長谷川が聞く。書いていたら自分も飲みたくなってきた。

親父「良くここに通ってる常連がいるんだがね、それがどうにも情けないタチの男だったんだ。屋台のことを婆とか言ったり焼酎のことをカミーユって言ったりと分けも分からん客で、まあ酷いもんだった」

長谷川「親父の聞き間違いも酷いと思うけどな」

親父「だがそれが最近は少しはまともになってきてね。まあ自分の息子でもなんでもねえ赤の他人なんだが、何故だか嬉しくなっちまってね」

長谷川「そいつは良かったじゃねえか。これからはそいつに稼いでもらってもっと足繁く通ってもらわねえとな」

親父「ハッハッハ、まったくその通りで」

穏やかな時間が流れる屋台であったが、そこに二つの声が暖簾の向こうから聞こえてくる。

乱馬「いってぇな!離せ!おさげを引っ張るな!」

西郷「まったく男のくせにうだうだうるさいわねぇ、今日くらい素直に付き合いなさいよ」

西郷が修行から帰りたての乱馬を捕獲、飲みに連れてきたのである。

長谷川「おお、西郷さんに乱馬くんじゃん!」

西郷「あら、まるでダメなオ○ンポで有名なマダオじゃないのさ」

長谷川「まるでダメなオッサンでマダオだ!そんな間違え方するんじゃねえ!」

乱馬「胸を張って言う事か!」

長谷川の横に乱馬を無理矢理押し込むと、西郷はその横に座り込んだ。

親父「いらっしゃい。今日は懐かしい客が多いねぇ」

西郷「私はポン酒一升、瓶で。あんたは?」

乱馬「俺はいらねえや」

西郷「親父、こいつ私とおんなじやつね」

親父「あいよ」

乱馬「あいよじゃねえ!俺は明日大事な決闘があるんだ。飲んでなんかいられっかっつーの」

長谷川「それもそうだよな。スラダンで言う山王戦前日みたいなもんだからな」

西郷「だからこそじゃない。それに山王戦前日もなんかビデオ見てもんもんしてただけじゃない」

長谷川「確かにもんもんしてたかもしれないけど言い方酷くね?!ただAV見てただけに聞こえんだけど?!」

親父「あいよ」

乱馬と西郷の前に、重量感のある音と共に一升瓶が置かれる。

乱馬「だから俺はいらね――」

西郷「最後の夜なんだ、一杯くらいいいじゃないか」

声を大にして拒否しようとした乱馬であったが、西郷の眼差しを受けると、仕方ないといった様子で頭を掻いた。

乱馬「ったく、少しだけだからな」

西郷「それでこそかまっ娘倶楽部元ナンバーワン!さ、あんたも一緒に」

長谷川「お、いいのかい?それじゃ」

西長「かんぱーい!」

一升瓶二本とグラスという不格好な乾杯である。

西郷は豪快に瓶を傾け酒を煽った。対して乱馬は一口嘗めただけで瓶を置いた。

西郷「ふぅ、親父。適当に盛り合わせ頼むわ」

親父「あいよ」

これまた豪快に瓶を置いた西郷は選ぶのも面倒なので、親父におでんのチョイスを頼んだ。

西郷「それにしてもこの一か月、色々あったけど楽しかったわね」

乱馬「楽しいもんか、俺にとっては散々だったぜ。女の格好してオカマバーにキャバクラ勤め、おまけにわけのわからん連中と毎日毎日戦って……」

この一か月のことを思い出し、思わず酒に手を出す乱馬。

西郷「良く言うわよ、楽しそうに夜皇目指して頑張ってたじゃない」

乱馬「今思えばなんであんなに燃えていたのか分からん、修行二日目にして正気が戻ってこの一か月のことを悔いたわ」

西郷「ハッハッハ、まああんた程乗せやすい奴もいなかったわ。すぐ熱くなるんだもの」

乱馬「笑いごとで済ますな!」

西郷「そういうとこよ」

乱馬「ぐっ……けっ」

いいようにやり込められ、またも酒に手を伸ばす乱馬であった。

親父「あいよ」

そこに大皿に盛られた沢山のおでんが置かれる。

西郷「乱馬」

急に真面目に顔を正した西郷が乱馬の眼を真っ直ぐに見る。

西郷「アンタは明日元の、自分のいた世界に帰るわけじゃない?だから最後に言っておくわ」

乱馬「な、なんだよ急に。それに明日帰れるって決まったわけじゃ――」

西郷「私程のオカマになると別れには敏感になるから分かるのよ」

謎理論で西郷は乱馬の言葉を遮る。

西郷「さっきも言ったけどね、アンタはすぐ熱くなるタチだ。それが良い方向に働いていれば問題無いんだろうけど、そううまいこといくばかりでもない」

乱馬「……」

西郷「アンタの大切なモンってのが私には分からないけど、その熱さのせいで、何が大切なモンなのかを見失うようなザマにはなるんじゃないよ」

乱馬「……ああ、頭の片隅くらいには置いとくぜ」

そして二人は静かに一升瓶を傾けた。

西郷「さ、真面目なのはここまでだ!こっからは大いに飲むぞぉ!親父、そこのグラサンにも瓶出したげて。ここは私の奢りだよ!」

長谷川「ええ?!いいのかい?!それじゃあ遠慮なく頂いちまおうかな!」

乱馬「おいオッサンども!俺は少ししか付き合わねえって――」

西郷「誰がオッサンだこらぁ!ママって呼べぇ!」

乱馬「もう俺は店員じゃねえんだ!ママなんて呼ぶ義理はねえ!だいたいお前みたいなママがこの世にいてたまるか化け物!」

西郷「あら残念だわ乱馬!アンタ元の世界には帰れそうもないわよ!」

と馬鹿騒ぎしていると再び暖簾が持ち上がる。

近藤「お、今日はなんだか盛り上がってるな親父!ってげぇっ?!」

土方「近藤さん、ホントにこんな騒がしい屋台で飲むのかよってお前ら!」

真選組局長と副長の二人であった。

乱馬「あ、お前らっ!」

西郷「あらあなた達。いらっしゃい」

親父「西郷さん、セリフ取らねえでくださいよ。いらっしゃい。少々狭いかもしれませんが座ってください」

親父が笑顔で出迎える。

乱馬「よぉ真選組の。この店にはマヨネーズなんざ置いてねえぞ」

土方「おぉ早乙女じゃねえか。未成年がこんなとこで何してやがんだ?それに今日はあの素敵な衣装はどうした?」

長谷川「な、なんかやばそうな雰囲気じゃん……」

乱馬、土方の間で不穏な、暴力の気配が高まる。

西郷「ちょっと乱馬。こんなとこでドンパチやらかそうってわけじゃないでしょうね?もう私の言葉を忘れたってのかい?」

近藤「トシ、今日は止めておけ。始まりの合図の前に斬りかかるなんざ無粋なマネすんじゃねえ。それに」

近藤が乱馬、西郷の顔を見る。

近藤「こいつら異世界のやつらの、この町で過ごす最後の夜なんだ。今日くらいは静かに酒を酌み交わすのも悪かなかろうよ」

西郷「あら、アンタ話がわかるじゃない。ほら、こっち座んなよ」

近藤「おう、お邪魔させてもらうぜ」

煮え切らない顔の土方を尻目に近藤は、西郷の横に着席する。

西郷「ほらアンタも、早くしな」

土方「……けっ」

納得のいかない表情ながらも土方も近藤の横に座った。

近藤「熱燗くれ親父!こいつもおんなじのね!」

土方「近藤さん、今日はちぃと飲み過ぎじゃねえか?」

もうすでに出来上がっているらしい近藤は、陽気に土方の分も含めて注文する。

西郷「ちょっとそんなチマチマした飲み方してんじゃないよ。今日は私の奢り!親父、こいつらに私らと同じものぉ!」

親父「あいよぉ」

そうして置かれる一升瓶二本。計五本の一升瓶が狭いカウンターに並べられていた。

乱馬「……なんだこの絵面は」

西長近「かんぱぁーい!!」

五本の一升瓶がカウンターの中央で交わる。

近藤「いやぁ、まさかこんなところで会うとはなぁ早乙女ぇ!」

乱馬「酒くせぇ息吹きかけんな!」

近藤「つれないこというんじゃねえよ!ま、短い付き合いだったが結構楽しかったぜ!かなり迷惑かけられたけどな、ハッハッハ!なあトシ?」

土方「楽しいことなんかあるかよ。ただでさえ面倒な奴等が多いクソみてえな町だってのに、こんなのが何人も別世界だかなんだか知らねえが来やがりやがって。明日と言わずさっさと帰ってもらいたいもんだぜ」

西郷「あらぁん。この色男、ウチの乱馬と同じようなこと言うのね」

近藤「こりゃ傑作だ!確かにトシと早乙女は似てるところあるかもなぁ!ギャッハッハッハ!」

西郷「そうなの?てことはあのニート侍ともそこの色男が似てるってことかしら?」

近藤「ニート侍って万事屋のことか?ギャーッハッハッハ!素直じゃねえとこはそっくりかもぉ!」

乱土「俺はあの万事屋なんざに似ちゃいねえ!」

長谷川「なんだよ、息ピッタリじゃねえか!」

西長近「ギャーッハッハッハ!」

乱馬と土方は馬鹿みたいに笑い転げる三人を苦々しく睨み付けると、やってられないといった様子で一升瓶を煽った。

土方「ったく、なんでこんなせめえカウンターで窮屈に、しかも男ばっかで飲まなきゃなんねえんだよ」

土方が愚痴りながら煙草に火を点ける。

西郷「あら嫌だ、ここに紅一点がいるのが見えないの?」

乱馬「紅一点が一番ガタイが良いってのもおかしな話だぜ」

西郷「だったらあんたもこっち側に来ちゃいなさいよ」

と西郷はどこからか調達したバケツの水を乱馬にかぶせた。

乱ま「つめてっ!何しやがる!」

近藤「くっ!お、おおお女の姿になったからといっても、もう騙されんぞ!らんまちゃん!」

長谷川「早速流されかけてるけど大丈夫かおい」

土方「姿形が女になろうが結局は男だろうが!」

西郷「注文の多い色男ね、アンタの顔面が横のゴリラ顔だったら私もう五回は殺してるわよ?」

近藤「いやぁ、良かったなぁトシィ!」

長谷川「良いんだっ?!」

馬鹿な会話が続きながらも、酒のペースは衰えない一同。

西郷「ま、どうせ全員男ならここはいっそあれやるっきゃないわね?」

らんま「あ、あれって?」

西郷「ボーイズトークに決まってるじゃない!」

らんま「俺水ぶっかけられ損じゃねえか!」

近藤「お!いいねぇ!お互い好きな子とか言っちゃう感じのあれでしょ?!俺の好きな人、みんな分かるかなぁ?」

土方「アホらしい……」

長谷川「まあまあ」

面倒臭そうに呟く土方に長谷川がフォローを入れる。

西郷「それではボーイズトーク!!始めるわよーん!!」

近藤「イエーイっ!!!」

長谷川「よっ!」

西郷「それじゃあ最初のお題はこれ!『ワンピース何巻まで続くのか問題』よっ!」

らんま「なんじゃそりゃ!」

土方「確かにボーイズの間じゃよく交わされてるだろう会話だろうけども!」

親父「ワシはあと50巻くらい続くと思うねぇ。その頃まだ生きてりゃいいんだけどねぇ」

らんま「親父入ってきちゃったじゃねえか!」

土方「しかもなんか重いんですけど?!大丈夫だ親父!きっとアンタはその頃もここで店やってジャンプ読んでるからっ!」

先程の長谷川とは比較できない程のフォローを土方が見せる。

近藤「お、俺実はお妙さんが好きなんだ!」

らんま「まだ一人だけ修学旅行の夜みたいなボーイズトークやってんじゃねえ!」

長谷川「もう俺はすでにオッサンだったからあれとしても、初連載当時ボーイズだった少年たちも今や立派なメンズになってるからなぁ。なげえよなぁ」

長谷川が腕を組みながらしみじみと言った。

西郷「あら、メンズとは限らないわよ。ボーイズが成長したって私みたいな綺麗なレイデェになる場合もあるんだから」

近藤「レイデェってなんだっけ?ボブ・マーリーとかそういう話だっけ?」

西郷「喰らえぇ!レゲエパンチッ!」

カクテルの名前を叫びながら西郷が近藤の顔面に拳を打ち込んだ。

長谷川「じゃあ続いてはどうだろう、『ジョジョは第何部が好き?っていうか最近の良くわかんねえんだけど問題』について話すってのは?」

らんま「ボーイズトークっていうかもうただの会話だよなこれ」

西郷「私は第一部に決まってるじゃない!ナヨナヨした男なんて論外よ」

土方「俺は第三部だな。承太郎はかっこいい」

近藤「俺はやっぱりお妙さんが一番好きかな?お妙さんは可愛い」

らんま「もう突っ込まないからなー」

長谷川も煙草に火を点ける。

長谷川「俺も実は承太郎が好きで第三部が好きなんだけどさ。だからこそ!だからこそさ!第六部がもう読めねえんだよ」

土方「確かにその気持ちは分かる。まあ読めないって程では無いが、あの承太郎が○○ところなんて俺も見たくはねえ」

親父「ハッハッハ、まだまだお若いですな」

らんま「また入ってきた!なんてボーイズな親父なんだっ!」

長谷川「驚いてるとこ悪いんだけどボーイズな親父って何?」

親父は咳払いを一つすると、ゆっくりと話し始めた。

親父「確かにハッピーエンドではないし、承太郎ファンにとっては納得いかないエンドとも言えるストーリー展開です。ですが、彼の魂はエンポリオに引き継がれ、悪の親玉を倒すことに成功したではありませんか」

土方「だからって承太郎が○んで悲しかったのには変わりねえ!」

親父「承太郎も数々の仲間の、死者の魂を、黄金の魂を引き継いで彼の地に向かい戦いました。彼も、彼の周りもそのことが分かっている、いや、心が理解している」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

らんま「な、なんなんだこの親父は……」

親父「彼が○んで悲しかった、だからもう見ないっていうのは違うんじゃありませんか?彼が好きだからこそ、彼が引き継いだもの、彼があの少年に引き継がせたものを最後までしかと見るべきなのではないでしょうか?真正面から向かい合うべきなのではないでしょうか?!」

親父「○んで悲しいからもう見ないだなんて言う情けない男に、承太郎を好きになる資格なんてありません!と私はそう思うのですよ。いや、すみません。口が過ぎましたね」

沈黙が屋台を包み込む。最初に口を開いたのは、涙声の土方であった。

土方「うぅ……た、確かに俺が間違っていた。そ、そうだよな。こんな情けないこと言ってたら、承太郎にオラオラされちまうぜ。親父ぃ!ありがとよぉ!」

長谷川「親父ぃ!その通りだった!俺は!いや俺達は!承太郎が好きだ!だからこそきちんと最後まで向かい合わなきゃならなかったんだな!彼の残した意志が、きちんとエンポリオに受け継がれていくのを!うぉぉぉぉ!!!親父ぃ!あんた最高だぁ!」

西郷「私としたことが馬鹿なマネしちまったわね。ナヨナヨがどうとかじゃあない、ジョナサンの魂だって彼らに受け継がれているんですものね。ありがと、親父」

近藤「感動したっ!でも俺は承太郎よりお妙さんが好きだぁぁぁ!!!」

らんま「なんじゃこりゃぁ……」

らんまを除いて皆親父の言葉に感極まっていたのであった。

西郷「こうなったら乾杯よあんた達!愚かな私たちとはおさらばするのよ!」

長谷川「おうよ!」

土方「乗ったぜ!そして俺達の魂もいつか誰かに引き継がれる!」

近藤「お妙さぁぁぁぁぁん!!!!」

らんま「もう、なんでもいいやぁ!」

五人が一升瓶を持って立ち上がる。

ら西長近土「かんぱぁぁぁぁぁい!!!!!」

こうして彼らの六日目は過ぎていった。

―かぶき町、通り。

長谷川「いやー、今日は飲み過ぎちまったぜ。明日もあることだし早く帰らねえとな、ヒック!それにしてもあの四人はまだ飲むってんだからやっぱ体力あるよなぁ、ヒック!」

屋台を出て長谷川が本日のねぐらに向かっていると、へべれけで町を歩く二人組に出会った。

長谷川「おおい!銀さんにづらっちじゃねえか!なんだぁ、二人もご機嫌だねぇ!」

銀時「おうともよ長谷川さん!なんだか今日はどこの店も気前が良くってタダで飲んでけって言うもんだからよぉ!」

桂「ハッハッハッハァ!長谷川さん!いつから多重影分身を覚えたのだぁ?!ハッハッハッハァ!」

二人ともかなりアルコールが回っているようであった。

銀時「さっきお妙から連絡があってさ、明日の前祝にすまいるでタダ酒飲ましてくれるって言うから行くんだけどさぁ!長谷川さんもどうよぉ?!タダ酒だぜぇ?!」

長谷川「俺も行っていいのかい?!そんなの行くに決まってんじゃねえか!!」

桂「長谷川さん!いつから死神の口寄せなんて覚えたんだぁ?!肩に乗っかっているぞぉ!!ハッハッハッハァ!」

長谷川「それは笑えねえよぉ!!」

銀時「いいから笑っとけよぉ!ハッハッハッハァ!」

長谷川「まっ、いいか!ハッハッハッハァ!」

銀桂長「ハッハッハッハァ!」

男達の夜は終わらない。しかし、時は刻一刻と、開戦の時に近づいていたのであった。

今日はここまでで!

また明日!

明日は最終回!

~お詫び~

銀時「皆さんこんばんわ。えー、早速ではありますが。本日はこのSS最終回だとかなんだとか言っていましたが!なななななんとぉ!」

神楽「全然書き上がりませんでしたぁ!フゥーッ!ジャストドゥーイット!」

新八「テンションで乗り切ろうとするなぁ!」

銀時「私がぁぁ!今日で最終回って何べんも言ったのにぃ!うううぅぅ!!命懸けでぇぇ!!ううぅぅぅう!」

新八「あの記者会見止めろぉ!しかも文字で見るとなんのことやら分からんわぁ!」

銀時「まあそんなこんなで書き上がらなかったんでぇ、最終回は前後編にしまぁす!」

神楽「最終回サギに加えて前後編商法とは最低アル」

新八「神楽ちゃん、その商法まで否定しないで!」

神楽「うっすい総集編の垂れ流しで前編ですぅ!なんて消費者なめるのも大概にするヨロシ。たっくんの家のカルピスより薄いなんてちょっとした事件アル」

新八「もう止めろぉ!そしてたっくんって誰?!」

銀時「えー、とにかく今日は最終回!(前編)をお送りします!皆さん!」

本当にすいませんっしたぁ!!

――かぶき町、特設ライブ会場。

お通『今日は集まってくれてありがとうきびう○こぉぉぉ!!!』

ファン『とうきびう○こぉぉぉ!!!』

お通『今日はこのかぶき町で天下一武道会が開かれるらしいけど、みんな怪我には気を付けてねジは死ぬ必要あったのかぁぁぁ!!!』

ファン『あったのかぁぁぁ!!!』

お通『それではお通の特別ライブ、そして最終回!(前編)』

タカティン『スタートォ!!』

タカチン『お前がそれ言うのぉ?!』






~最終回・遥かなる旅路、さらば友よ(前編)~





今日のOP!

https://www.youtube.com/watch?v=mRlnB02Wirk

――かぶき町、ライブ会場横。

右京「らっしゃいらっしゃい!みんな買うてってやぁ!ウチのお好み焼きはうまいでぇ!」

ライブ会場横のスペースに勝手に模擬店を出店した右京、勝男率いる溝鼠組は忙しく接客、調理に励んでいた。

客「お好み焼き二つ下さい」

右京「あいよ!毎度おおきに!」

右京が慣れた手つきでお好み焼きをひっくり返し客に提供する。

勝男「さすが姉さん、繁盛してまんなぁ」

見回りをしていた勝男が右京のもとへやって来た。

右京「おかげ様でな!それと一週間、我儘聞いてもろてありがとうな」

勝男「そんなこと言わんといてくださいよ、姉さんが望むとおりにやってくれたらワシらはそれでええんですから。それにしても」

勝男が腕時計を見ながら首を傾げる。時計の針は14時を示している。

勝男「ワシらの出番は何時からなんですかね?あのクソ飛行船始める時間も指定せんと飛び去りおって」

右京「ホンマやね。ま、今は商売に専念や勝男さん!」

勝男「それもそうですね!おいお前ら!気合い入れ直してきりきり働けやぁ!」

ヤクザズ「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

ライブ会場、またその周辺は異様なまでの盛り上がりを見せていた。

――かぶき町、万事屋。

新八「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!!やられたぁっ!!!勝負はもう昨日の夜から始まっていたなんて!僕としたことが……」

新八「それにお通ちゃんのライブには行けないし、何故かタカティンがスタート言っちゃうし、最終回のタイトルまんま第三部パクっちゃってるし、最終回は前後編だし出だしから謝罪するしもう最悪だぁぁぁ!!!」

新八が頭を抱えて、最終回(前編)ということで普段の三倍ほど声を張り上げた。

良牙「お前のせいではない、新八。俺達全員の読みが甘かった、ただそれだけだ」

腕を組み、壁にもたれかかった良牙が言った。

あかね「そうよ新八君、それに私にこそ責任があるわ。私最後に見たのよ、あの時止めていればこんなことには……」

あかねは胸に手を当て唇を噛んだ。

神楽「あか姉のせいでは絶対ないネ。これはこの馬鹿の責任と姉御たちの策略の結果ネ」

神楽が冷めた眼で和室を眺める。そこにはパンツ一丁で、どこからか持ってきてしまったカーネルサンダース人形を抱いた、尋常じゃない程に酒臭い銀時が大いびきをかいていた。

そう、前日にタダで良いからとかぶき町の敵陣営の人間たちにしこたま飲まされていたのだ。というか自分から飲んでいたのであった。

あかね「こんな状態で銀さん戦えるのかしら」

良牙「万全じゃないとはいえ戦ってもらわなきゃ困る。ただでさえうちの陣営は人手不足なんだからな」

神楽「とにかく起こすアル!」

新八「そうだね!神楽ちゃんはそっちをお願い!僕は早く酔いが醒めるように、あと二日酔いが早く治るようにっと……」

新八がいそいそと用意を始める。その時であった。

パァァァァァァァァァァン!!!

パァァァァァァァァァァン!!!

パァァァァァァァァァァン!!!

と、三発の花火の音がかぶき町中に響き渡った。

良牙「ま、まさかこの花火の音は?!」

あかね「もう始まっちゃうの?!」

良牙とあかねが窓から身を乗り出し上空を見上げる。そこには一週間前、かぶき町の住人達にボロボロにされた飛行船が浮かんでいた。

ハタ「皆の者!一週間待たせたの!それではここにかぶき町バトルロワイヤルの開始を宣言する!」

あかね「そ、そんないきなり?!」

スピーカーから発信されたその声はかぶき町中に届いた。何の前触れもなく、覚悟をする暇もなく、唐突に、かぶき町バトルロワイヤルは開始したのであった。

神楽「銀ちゃん!早く起きるアル!そんな白髪の爺さんとベッドイン決め込んでる場合じゃないアル!」

神楽が渾身の力で揺さぶるも、何の反応もない。

あかね「神楽ちゃんそっちカーネル!」

神楽「あ、間違えたネ」

新八「神楽ちゃん!とりあえずお風呂沸かしてきたからそのゴミ野郎早くぶち込もう!」

神楽「了解アル!」

ピンポーンっ

神楽がカーネル人形ごと銀時を持ち上げると、玄関のチャイムが鳴った。

良牙「一体こんな時に誰だ?!」

あかね「私出てくるね、N○Kの集金かもしれないわ」

新八「暢気かぁ!」

あかねが玄関に向かおうと歩き出した時である、玄関の扉は激しい音と共に吹き飛んだ。

お妙「おはようございます、銀さん。ってまだ起きてるわけないわよねぇ」

赤兎馬に乗り、矛を担いだお妙が笑顔で万事屋に乗り込んできたのであった。

あかね「お妙さん?!」

良牙「ま、まずい!最初から狙われていたのか?!ここは一旦引くぞ!」

神楽「さすが姉御!容赦なさ過ぎて尊敬するアル!」

新八「実の弟のチームにくらい容赦してくださいよ!」

四人、プラス神楽に担がれた銀時は玄関から反転し、奥の窓から外に飛び出した。

お妙「フフ、逃がすわけないでしょう?」

外に飛び出たは良いものの、下にはお妙一派、柳生一門と思しき侍たちで埋め尽くされていた。

新八「開始早々ゲームオーバーじゃねえかぁぁぁ!!!」

良牙「そんなことはない!いいかみんな!着地の瞬間に辺りが見えなくなるとは思うが、構わず真っ直ぐ駆けだすんだ!」

良牙の言葉の真意は分からないものの、彼の言葉に一同は頷いた。

良牙「喰らえっ!獅子咆哮弾っ!」

良牙の手の平から気の塊が地上に放たれる。侍たちは見たことのない技に、小さい悲鳴を上げながら飛び退いた。

そうして空いたスペースに四人は着地する。とここで続けざまに良牙が地面を、左右の指で突いた。

良牙「爆砕天穴っ!両手突きぃ!」

凄まじい土煙と共に、地面そのものが舞い上がる。

良牙「走れぇ!」

その煙幕の中を四人は駆けていった。

そんな様子を万事屋から眺める二人。

九兵衛「さすが彼の友人だな。この包囲網を潜り抜けるとは」

お妙「そうね、侮れないわ。でも銀さんは見た通り戦力外。その隙にさっさと潰してしまいましょう」

九兵衛「ああ、行こうお妙ちゃん」

こうして二人は万事屋を後にし、一団を率いて彼らの追跡を続けるのであった。

――かぶき町、通り。

四人は後ろを気にしながら町を駆け抜けていた。幸い、追跡されている様子はなく、今までひたすら無言で逃げ続けていたが、ようやく新八が口を開いた。

新八「良牙さん!ありがとうございました!良牙さんがいなかったら危うくあそこでゲームオーバーになるところでしたよ」

良牙「気にするな。だがあの状況から察するに完璧あの一団にはマークされていたな。頼みの万事屋も使い物にならなくされているし、困ったものだ」

あかね「で、私たちは今どこに向かって走ってるの?」

あかねが先頭を走る良牙に尋ねる。

良牙「仲間のもとへ行こうと思う。ただでさえ俺たちの陣営は人数が少ない上にそれがばらけてスタートしちまった」

良牙「ということで、長谷川さん、九能達、ホスト達のところへ行き戦力強化を図る。残念だがこちらから吉原に行っている余裕はないだろうから、あいつらについては待ちだな」

新八「おお!確かに百華の皆さんがいないのは心許ないですが十分頼もしい戦略です!この馬鹿にも見習って欲しいもんですよまったく。それにしてもいつ起きるんですかねこの酔っぱらいは」

そう言って神楽に担がれた銀髪を非難のこもった眼で見た。

新八「あ…………………」

新八は走りながらではあるが、口をだらしなく開き、顔は真っ青になっていた。そんな様子に気付いた神楽が声を掛ける。

神楽「どしたアル新八?」

新八「……ダメだそれ、百年経っても起きないやつだそれ」

あかね「どうしたの新八君?って神楽ちゃんそれ!」

神楽「何アルかあか姉?」

良牙「ん?お、お前っ!馬鹿もんがぁぁぁ!!!」

良牙が足を止め神楽の頭に拳骨を落とす。

良牙「戦力が少ないと話をしたばかりというにお前はぁぁぁ!!!」

皆足を止め、どうしたもんかと頭を抱える。神楽は拳骨の痛みからであるが。

神楽「だから何アルかぁ!みんな酷いアル!」

新八「酷いのはお前だぁぁぁ!!!何背負ってるか見てみろぉぉぉ!!!」

神楽「何って銀ちゃん背負ってるに決まってるア――これカーネルじゃん」

神楽がにっこり笑い、片目を瞑って舌を出した。

神楽「いっけね、テヘッ」

新八「いっけね、じゃねえよぉぉぉ!!!どうすんだよこれマジで!!!」

神楽「だってどっちも頭白くて似てるアル、これは間違っても仕方ないアル」

あかね「とりあえず来た道戻ってどこかに落ちていないか探しましょう!」

新八「そんな財布感覚で言わないでください」

あかねが戻ろうとするもそれを良牙が止める。

良牙「待つんだあかねさん。あのアホもさすがにもう起きているだろう、一人で動けるはずだ。となると一人でもなんとかるアイツの心配ではなく、他の仲間のところへ行くべきだ」

新八「そ、それもそうですかね。まあ、銀さんなら一人でもどうにかなるか」

神楽「そうネ新八。そうだ、いっそこの人形を銀ちゃんぽく改造しちゃおうヨ。相手チームも『あの白夜叉がぁ?!』っているだけでビビるような」

あかね「あら面白そう。じゃあ目をこうやって死んだ感じにして」

神楽「頭に角付けるアル」

新八「もうそのお爺さん解放してあげてぇぇ!!」

カーネルに魔改造を施し始めた二人を新八が止める。

良牙「まずは一番居所がはっきりしていて大人数のホスト軍団のところへ行く。ついて来い!」

良牙が先陣を切って明後日の方角へ走り出した。

新八「そっち違うぅぅぅ!!!もうどうなるんだこれ……」

かぶき町バトルロワイヤルが始まってまだ数分、新八はただただ頭を抱えるばかりであった。

――かぶき町、飲み屋街。

あかね「はぁはぁはぁ、ようやく着いたわね。今のところ追手はいないようだし、早く高天原に――」

狂死郎「お待ちしておりましたよ、可愛いお嬢さん」

あかね達が飲み屋街に辿り着くとそこにはもう、軍団を引き連れ準備万端の狂死郎達がいた。

新八「狂死郎さん!無事合流できて良かったぁ!」

狂死郎「ええ、まったくもってその通りで。ところで万事屋さんのお姿が見えないようですが何かあったのですか?」

狂死郎が心配そうな様子で尋ねる。

神楽「それがここに来るまでに、私たちをかばって……」

新八「ちげえだろ!お前が落としただけだろ!実は『かくかくしかじか』な事情がありまして」

狂死郎「そうだったのですか、まあ彼なら一人でも問題ないでしょうが」

そこに狂死郎の腹心である八郎が大慌て駆けこんで来る。

八郎「きょ、狂死郎さんっ!奴らが、奴らがもうやって来ましたっ!し、しかも!大軍ですっ!」

彼の震えている指の差す方を見ると、大軍を率いた強者達の姿があった。それはまるで地面を揺らすように感じられたという。

シャンプー「やはりここに来たね。万事屋勢力、ここで潰す!」

右京「あかねちゃん堪忍なぁ、これも乱ちゃんの為や!」

勝男「死ぬ覚悟は良いかぁボンクラ共ぉ!」

アゴ美「男は度胸女は愛嬌、オカマは最強よぉ!」

乱馬「……………」

乱馬陣営が、ムースを除いて全員が集合し、万事屋陣営の前に姿を現した。他の者と違い先頭を歩く乱馬は、緊張した面持ちで口を閉じている。

あかね「乱馬……」

良牙「来たな乱馬」

新八「や、ヤバイですよ!向こうが全力でぶつかってきたら一瞬で僕等飲み込まれてしまいますよ?!」

新八が怯えるのも当然、単純な人数比で言えば、乱馬陣営は三倍近くの大所帯であった。

神楽「私のヘルズファキナウェイが火を吹くね」

新八「そんなこと言ってる場合じゃないって!」

狂死郎「確かにこれはマズいですね。向こうさんがこんなにも早く仲間を集めきるとは……」

ゆっくりと、だが圧倒的なまでの威圧感を放った一群の歩みが止まる。いつの間にやら、喧嘩好きのかぶき町の住人ですら野次馬として残る者はいなかった。

そして二つの軍団が向かい合う。

乱馬「………………」

あかね「なんか言ったらどうなのよ!乱馬っ!」

乱馬とあかねが互いに一歩前に出る。あかねの言葉にそれでもなお、乱馬は押し黙ったままだ。

シャンプー「乱馬はあかねなんかと喋りたくないある」

あかね「シャンプーは黙ってて!ねえ、そうなの?乱馬?」

乱馬「………………」

乱馬がジェスチャーで『違う』との意思を示す。

あかね「どういうこと?な、何か喋れないわけでもあるの?」

乱馬「………………」

今度は『そうだ』との意思を示す。そこであかねは乱馬から、銀時と同じ匂いを嗅いだ。

あかね「……もしかして、二日酔いが酷くて喋れないとか?」

その問いに数秒程固まったのち、『そうだ』との意思を涙を流しながら示す。

あかね「もう最っ低!」

あかねがフンと振り返り、自陣に帰っていく。

乱馬「ま、待てあかうぼおえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

思わず口を開いた乱馬の口からは、言葉ではなく大量のゲ○がこぼれ出てきてしまった。

右京「乱ちゃん!」

シャンプー「乱馬ぁ!あかね、お前乱馬に何したね!」

あかね「何もしてなかったでしょーが!」

右京とシャンプーが乱馬に駆け寄る。

アゴ美「ちょっとぉ!らん子をここまでそれっぽくするの大変だったのよぉ!それをこの数秒で無に帰すなんてぇ。アンタ、やるわねっ!」

あかね「だから私は何もしてないっ!」

新八「な、なんて締まりのない戦いなんだ……でもこれならどうにかなるんじゃないか!」

勝男「そんな甘い希望なんて一瞬で打ち砕いたるわい!行くぞお前らぁ!」

ヤクザ共「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

新八の表情が緩んだのも束の間、勝男達が先行して攻めに転じる。しかしその先頭を行く勝男の足元に多数のクナイ、手裏剣、納豆が突き刺さり、彼の進軍を止めた。

神楽「このクナイはっ!」

勝男「な、納豆っ?!」

月詠「どうやら間に合ったようじゃな」

猿飛「銀さんはっ?!銀さんはどこなのよぉ!」

始末屋さっちゃんと、吉原自警団『百華』頭領、月詠がビルの屋上から彼らを見下ろしていた。その後ろにはもちろん百華が控えている。

新八「これで人数も少しは拮抗するはず!」

勝男「おいお前らぁ!これ以上助っ人ダンス踊られる前にこいつら潰してまうぞぉ!」

アゴ美「右京、シャンプー!らん子の介護は任せたわ!私たちも行くわよぉ!」

これ以上の増援はこちらが不利になると察した勝男達は、とうとう本格的に万事屋陣営に攻め込んだ。

月詠「まったくせっかちな殿方達じゃ。皆の者!手練手管で誠心誠意お相手してやれ!」

百華ズ「了解!」

百華の女たちが一斉にビルから飛び降り、ヤクザ、オカマと交戦を始める。

新八「ぼ、僕達も行きましょう!」

新八の手に握られた竹刀が震える。

良牙「そうだな、あれほどまでに弱っている乱馬なぞ敵ではない!」

良牙もそれに答える。

九能「無論、僕達も参戦いたすっ!」

一団の後ろから九能の声が響く。

神楽「おお!お前らっ!」

神楽が声のする方を見て歓声を上げる。

勝男「あちゃー、言うてる傍からめっさ厄介なん来てもうた」

アゴ美「ヒゲ美にヅラ子、そして……パー子っ!」

皆の戦いの手が止まり、九能が連れて来た一団を見る。

銀時「………………」

桂「………………」

長谷川「………………」

エリザベス『ふぅ、こっちも間に合ったぜ!』

そこにはいつになく真面目な顔をした銀時達、その後ろにはこの一週間でエリザベスが集めて来たやる気満々な桂一派の軍団が。

戦力は、人数比で言えば五分五分となった。

彼らがゆっくりと歩き出す。皆彼らの邪魔にならぬよう、道を空ける。

そして銀時達はようやく、新八達との合流を果たしたのであった。

銀時「おいてめえら、もうちょっと優しく起こしてくれても良かったんじゃねえか?」

新八「銀さん!無事だったんですね!」

銀時「ああ、路上でぶっ倒れている俺をヅラの一味が回収してくれたみたいでな」

神楽「ごめんネ銀ちゃん、私が落としちゃったばっかりに……」

申し訳なさそうにする神楽の頭に銀時が手を置く。

銀時「なーに、気にするな。今はそんなことより目の前の敵に集中しようぜ」

桂「そうだぞリーダうぼおおぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

長谷川「ちょっとづらっち!そんな吐かれたら貰っちまうぼおおぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

銀時「うぼおおぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

新八「ってやっぱりお前らもかぁぁぁぁぁ!!!!!どんだけアル中しかいないんだこの町はぁぁぁ!!!」

ゲ○を吐き散らかす三人に新八が突っ込んだ。

銀時「いや、俺は頑張ったじゃんかぁ……ヅラがあんなに吐きまくるもんだから貰いゲロだよ俺のは」

桂「ヅラじゃないうぼおおぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!だ」

新八「もういいんで『うぼおええええ』さんは帰ってください」

長谷川「へへ、今なら前回以上の獅子咆哮弾が撃てるぜうぼおおおえええ!!!!」

新八「絶対アンタはそれ撃つなぁぁぁ!!!それとその汚い咆哮も止めろぉぉぉ!!!」

万事屋陣営が増援で勢いづくも、いまいち乗り切れない様子であった。それを見た乱馬がとうとう立ち上がった。

乱馬「向こうもかなりのダメージを負ってるみたいだ。ここは短期決戦、一気に奴の首を取って決める!」

右京「まだ戦ってもないのに両者この深刻なダメージとは……」

シャンプー「右京!私たちも行くね!」

シャンプー、右京が前に出る。

良牙「俺達も出るぞ!」

新あ神「了解!」

どうしようもない酔っぱらいは置いておき、四人も戦いの渦に飛び込んだ。

良牙「おらぁ!」

神楽「ヘルズファキナウェイ!」

新八「せいっ!」

あかね「やあっ!」

万事屋陣営は先の四人が中心となって相手を蹴散らす。対して乱馬陣営はシャンプー、右京、勝男、アゴ美を中心に進軍していた。

その戦いの中に、上空から二人の忍者が飛び込む。

月詠「やはりこの中ではぬし達が主戦力のようじゃな」

猿飛「こんなメス豚の相手じゃなくて銀さんの相手をしたいのになんなのよツッキー!」

月詠とさっちゃんは屋上から観察し、相手陣営の主戦力を的確に分析、そして獲物の前に現れたのだった。

月詠「その節は助かった、礼を言う。ただ今日はその恩を仇で返すことになるんじゃが」

右京「そう言うなら堪忍してや。アンタらの相手なんてしてられへんのよ」

シャンプー「何情けないこと言ってるあるか、乱馬の敵は誰であろうがぶっ潰すだけね!」

猿飛「何を言ってるの?私たちの銀さんへの愛に潰されるのはあなた達の方よ」

月詠「『達』を付けるでない」

二対二、彼女たちの間で火花が散る。

月詠「死神太夫月詠!参る!」

猿飛「坂田あやめ!参る!」

右京「うちらかて負けられへんのや!」

シャンプー「女傑族の力、思い知るがよろし!」

月詠が二人目がけて大量のクナイを投げる。それを全弾、右京が巨大なヘラを一振りで豪快に叩き落とす。

そのヘラの軌道に隠れるようにシャンプーが月詠に飛び掛かる。それをさっちゃんがハイキックで止める。

猿飛「あなた!そんなえっろいチャイナ服で戦場に出てくるなんてどういうつもり?!もしかして私の銀さんを誘惑するつもり?!そうはいかないんだからっ!」

シャンプー「誰があんな天パ誘惑するか!」

シャンプーが双錘でさっちゃんに殴りかかる。それをすんでのところで躱すさっちゃん。

右京「シャンプー!一旦引けぇ!」

シャンプーはその言葉に従って後ろに飛び退く。

右京「メリケン粉爆弾!」

右京が懐から出したブツを二人に投げつける。辺りに衝撃と煙幕が炸裂する。

月詠「くっ?!煙幕かっ!」

猿飛「な、何も見えないわぁ!」

月詠「普段通りじゃろ」

猿飛「そんな冷静に突っ込み入れてんじゃないわよ!」

月詠とさっちゃんの二人は、煙にまかれて敵を見失っていた。

右京「今のうちや!」

シャンプー「てえいやぁぁぁ!!」

その煙幕の外から月詠とさっちゃんを捕捉した右京達は、この隙に仕留めようと勝負に出る。

しかし、もの凄い衝撃と共に吹き飛ばされ、煙幕も晴れてしまった。

右京「な、何モンやっ!」

お妙「何モンなんてよそモンのあなたには言われたくないわ。まあ答えてあげるなら、そう!かぶき町の女王よっ!」

再度、三國無双、お妙の登場である。

九兵衛「女性陣だけで戦っているというのに、僕等をのけ者にするとは酷いじゃないか」

その横には九兵衛の姿もあった。

シャンプー「お妙っ!ようやく来たか」

お妙「こんにちはシャンプーちゃん。この前の続き、始めましょうか?」

互いに一歩近づき、射程距離すれすれのところで口を開く。

お妙「あなたとのこの一か月の因縁、あなたの命ごと断ち切ってあげるわ」

シャンプー「乱馬に纏わりつく害虫は全て駆除する」

お妙「だから私にその気はねえって言ってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!!!」

シャンプー「寝言は墓場で言うよろしっ!」

二人のバトルが始まる。お妙の矛での斬撃を巧みに躱すシャンプーは懐に潜り込み、双錘で攻撃する。それをなんとか防ぎ、矛で目の前の空間を薙ぐ。

お妙「相変わらずちょこちょことウザったいわね」

シャンプー「性格と同じくガサツな攻撃ね」

再び、両者の攻撃が交わる。

九兵衛「僕等も始めようか?誰が相手をしてくれるんだい?」

そう言って九兵衛が右京、月詠、さっちゃんを順々に見やる。

九兵衛「全員同時でも構わないぞ?」

猿飛「何なめた口聞いてくれちゃってんのよぉぉ!!」

その挑発に一番に乗ったのはさっちゃんであった。

月詠「では私たちも続きを始めよう」

右京「お手柔らかに頼むで」

こうしてなんとも男らしい女の戦いが幕を開けたのであった。

新八「姉上たちの勢力もいつの間にやら参戦してきてますよ?!もうどうなるんだこれぇ?!」

新八が目の前の敵と鍔迫り合いをしながら叫んだ。

神楽「どうするもこうするもないネ!こいつら全員やっつけてカイザーファキナウェイに俺はなる!」

新八「海賊王みたいに言うなぁ!」

ドゴォォォォォン!!

突如、新八の目と鼻の先で爆発が起きる。

新八「へ?」

周囲を見渡すと黒い制服に身を包んだ大軍が、バズーカ抱えて控えていた。

沖田「こんにちはぁ、どうも町のお巡りさん真選組でーす」

沖田が拡声器を使って戦い続ける集団に語り掛ける。

沖田「今すぐこの暴動を止めなさい、今すぐですよー。さもないと逮捕、もしくは首の辺りを斬っちゃいますんで気を付けてくださーい」

いつもの如く気の抜けた調子で沖田が言う。

沖田「はい、あと10秒以内に止めないとお巡りさん達武力介入しまーす。目標を殲滅しまーす。はい、10、9」

新八「とうとう真選組まで来ちゃったぁぁぁ!!!もう生き残れる気がしないんですけどこれ、殲滅される気しかしないんですけどぉぉぉ!!!」

沖田「1、0ぉ!真選組ぃ、突撃ぃ!!!」

新八「8から2はぁぁぁ?!」

隊士達「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

刀に銃火器を装備した一団が戦闘に加わり、更に戦場は混沌と化す。

――その後方。

沖田「いい加減シャキッとしてくださいや近藤さん、土方さん」

沖田はパトカーの後部座席で二日酔いで死んでいる上司達に言った。本来なら先程の指揮などは局長、もしくは副長が行うのであるが言わずもがな、この二人も二日酔いでまともに喋れなかったのである。

沖田「まったくこの人達ゃ。あ、土方さん。早く仕事しねえと俺が――じゃねえや土方・THE・キラーが殺しに来るって連絡がありました。LINEで」

土方「なんでそんな殺人鬼とLINEで連絡取り合ってんだてめぇ!!内通者なんてレベルじゃねえぞこら!!ていうかそれお前だろ前にも言ったけどおぼおええぇえぇぇぇ!!!」

とうとう耐え切れず、土方がパトカーから這い出しゲロを吐き散らす。

沖田「近藤さん、突撃した隊士の報告によるとあの騒ぎの中心地に姉さんがいるらしいですぜ」

近藤「何それは本当か総悟っ?!早く助けに行かなくてはっ!」

近藤は勢い良く扉を開け駆けだした。たった二秒ほど。

近藤「走るなんて無理に決まってうぼおおおえおえええええ!!!!」

沖田「ハッハッハッハッハッハ、二人ともおもしれえやぁ」

沖田が無邪気に腹を抱えて笑った。

土方「てめえどこまで性格歪んでやがんだうぼおおおえおえええええ!!!!」

近藤「どうやら俺はここまでみたいだ……総悟、お前が俺の代わりにお妙さんをおおおぼっぼぼぼぼぼぼえええ!!!!」

沖田「二人ともきったねえなぁ、じゃ!俺は先に行きますんで、二人も元気になったら来てくだせぇや。まあ、その頃には全部終わってるかもしれませんがね」

そう言って振り返りもせず沖田は喧騒の渦に身を投じるのであった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

乱馬「お妙達、真選組も出張ってきた。そろそろ行くか!」

ようやく体調が回復しつつあった乱馬は状況を把握し、大きく息を吸い込んだ。

乱馬「みんなぁぁぁ!!!ここは一旦退却だぁぁぁ!!!ひとまず引いて態勢を立て直す!!」

乱馬が大声で皆に指揮する。

お妙「あら、あなた達の大将さんビビッて退却宣言かましてるわよ?」

シャンプー「ビビッてるわけじゃないある!」

右京「続きはまた今度や!」

月詠「くっ、待て!」

右京「も一発メリケン粉っ!」

再び炸裂した衝撃と煙幕により、右京とシャンプーは無事撤退に成功する。

お妙「追えぇぇぇ!!逃がすなぁぁぁ!!」

狂死郎「ここは攻め時!逃がさないように!」

乱馬「しんがりは俺が引き受ける!さっさと退却しろぉ!」

乱馬の指揮により、乱馬陣営は次々と戦闘を放棄し撤退していく。それを逃がすまいと、各陣営が追いすがる。

新八「姉上の陣営に真選組介入で引きたくなる気持ちも分かるけど、なんか乱馬さんらしくないような……」

乱馬陣営撤退により、少し余裕の出来た新八が一人呟く。

あかね「確かに乱馬らしくないわ。こういう時は必ず――」

良牙「ろくでもないことを考えているな」

神楽「例えば何考えてると思うアルか?」

良あ「うーん……」

二人が乱馬の思惑を見抜こうと思案していると、後方からようやく体調が戻りつつある三人のダメな大人達がやって来た。

銀時「よぉ、吐きまくったおかげでどうにか動けそうだぜ」

桂「うむ、やはり歩狩汗は効くな」

長谷川「いや、づらっちが飲んでたの江根瑠限だったよ」

新八「銀さん達!回復したんですね!」

ダメな大人達は力強く頷く。

長谷川「ってことで俺達も行くかっ!」

桂「俺達が行けば戦況は大きくこちらに傾くだろう」

銀時「久し振りに大暴れしてやるぜ!お前らはミロでも飲んで休んでな!」

そう頼もしいセリフを言い残し、三人のダメな大人たちは戦場の中心へと走り去っていった。

良あ「そうか!分かった!」

新八が三人の背中を見送っていると良牙、あかねが同時に声を上げた。

神楽「何が分かったアルか?」

良牙「あいつが自らしんがりを務めるなんておかしい!」

あかね「あの乱馬が自己犠牲なんて有り得ないわ!」

新八「散々な言われようだな乱馬さん……」

良牙「つまりあいつの狙いは!」

あかね「敵を自分に引き付けて!」

良あ「あの技を狙ってる!」

乱馬(あの万事屋は恐らくあの軍団の後方にいるはず!中央の軍勢が邪魔であそこに急襲を仕掛けるのは無理に思えるが、俺なら出来る!)

乱馬は自分の気を冷却していく。

乱馬「この技で!一気に大将首までの道をこじ開ける!」

そして乱馬の冷たいスクリューアッパーが放たれる。

乱馬「飛竜昇天破ぁっ!」

乱馬を中心に、周囲の熱い闘気を利用した巨大な竜巻が発生する。それに巻き込まれ派手に吹き飛ばされていく他陣営の敵たち。

乱馬「これであの万事屋のところまで――」

と言いかけたところで乱馬は発見してしまった。

桂「うわあああああああああああ!!!!!!」

長谷川「うわあああああああああああ!!!!!!」

銀時「うわあああああああああああ!!!!!!」

様々な方向に勢い良く飛ばされる人たちの中に、あの万事屋の姿があったのを。

乱馬「あの野郎っ!大将ってのは前線に出ないもんじゃねえのか?!一体何してやがんだっ!」

それに気づき、すぐさま乱馬は銀時が吹き飛ばされた方向へ駆けて行ったのであった。

新八「いやー、飛びましたねぇ。銀さん」

神楽「あんなかっこ悪い主人公の漫画のヒロインであることが恥ずかしくなってきたネ」

あかね「雑魚キャラと同じ勢いで飛ばされてったわね」

良牙「俺達も万事屋を追っていこう!」

良牙の言葉に頷く三人。そして銀時、乱馬の後を追おうとした矢先であった。

良牙「あぶねえっ!!」

新八「へっ?!」

良牙が番傘で、新八に迫る相手の斬撃を防いだ。

土方「やるじゃねえか」

二日酔いから復活した真選組副長、土方の攻撃であった。

土方「おいおい、これだけ暴れてお巡りさん無視してどこ行こうってんだよ?ああ?!」

良牙「くっ……」

その刀と番傘の鍔迫り合いの最中、良牙に助太刀が入る。

九能「愛の障壁粉砕剣っ!!」

高速の突きのラッシュを九能が土方に浴びせる。

土方「ちっ」

それを一旦距離を取って躱す。

九能「僕は少々そこの男に借りがあるのでな。あかね君!白夜叉殿や桂さんを頼んだぞ!」

九能が土方の前に立ちふさがった。

土方「ガキが、生意気言ってんじゃねえぞ?」

土方の体から殺気が迸る。

九能「フッ、先日白夜叉殿から頂いたこの伝説の木刀さえあればお前なぞ敵ではない!ただどうにもカレー臭い気がするのは何故だろうか……」

土方「あの天パ……厄介なもんガキに持たせやがって」

土方が煙草に火を点けぼやく。

あかね「九能先輩!ありがとう!私たちは行きます!」

九能「ああ!早く行くのだ!そしてあったかいご飯でも作って待っててくれ!そしてその勢いで僕の妻になってくれ!」

あかね「それは嫌です」

あかねはきっぱりと拒否の意思を告げると颯爽とその場を走り去った。

新八「あの人、土方さん相手に大丈夫なんですか?!」

あかねの背中を追いながら不安げな新八が尋ねる。

良牙「大丈夫だ、ふざけちゃいるが実力はある……はず」

神楽「あいつの死は無駄にしちゃいけないネ!」

新八「まだ死んでねえ!」

良牙「それにしてもあいつら良く飛ぶな」

神楽「中身ペラッペラだからナ」

ダメな大人三人衆は、新八達の遥か先を依然飛行中であった。

九能「九能帯刀、推して参る!」

九能が土方に鋭い突きを放つも、それを紙一重で躱す土方。

土方「甘えよっ!」

避けながらも土方は一太刀を振るう。それを九能は木刀の柄で止めた。

土方「けっ、思ったよりはやるな。ただの道場剣術じゃあねえみたいだな」

九能「そんなものに拘る僕ではない。西瓜、鳳凰と手にした魔剣の力、とくと味あわせてやろう」

土方「その考え方は嫌いじゃあねえ。まあ、これで仕舞いだがなぁ!」

両者の剣戟が再度ぶつかり合う。

シャンプー「乱馬ぁ!私を置いて行くでないね!」

右京「さっきまで二日酔いで死んでいたとは思えん程足早いな」

シャンプー、右京は銀時の後を追って行った乱馬を追跡していた。

しかし、そこである男と視線の合ったシャンプーが足を止める。

右京「どうしたんシャンプー?早く行かんと乱ちゃんに追いつけ――」

シャンプー「先行くよろし。倒さなきゃいけない奴見つけてしまたね」

どうすべきか迷った右京であったが、シャンプーの強い決心が見て取れると

右京「じゃあ先行かせてもらうわ。アンタが死んでも容赦なく乱ちゃんはウチが頂くからな」

そう言って先を急いだ。

シャンプー「私が死ぬわけないね」

双錘を握る手に力を込めた。

沖田「別れの挨拶はもう済んだのかぃ?」

ある男、沖田がシャンプーに尋ねる。

シャンプー「待っててくれて感謝する。確認のため聞くが、ムースやったのはお前でいいんだな?」

錘を沖田に向けてシャンプーが言った。

沖田「ああ、確か四日前くらいに天人襲撃犯の一人としてこれでズドーンっと。いや、ドゴォォォォォンだったっけ?」

愛用のバズーカを沖田は撫でた。

シャンプー「その言葉だけで十分ある。私の憂さ晴らし、付き合ってもらうあるっ!」

目にも留まらぬスピードで、シャンプーは双錘で沖田に殴りかかった。それを多少の驚きを見せつつも、沖田は完璧に防ぎきる。

沖田「こんな別嬪な姉ちゃんにそんな事言われるたぁ嬉しいねぇ。でもなぁ、俺はチャイナ娘ってのが大っ嫌いなんだっよ!」

沖田がシャンプーを吹き飛ばす。

沖田「しっかりみっちり調教してやんぜぇ、二度と俺に楯突く気にならないようになぁ!」

シャンプー「お生憎、私もドSね。そんな調教されるような趣味は無いある」

今の一撃でかなりのダメージを負ったシャンプーであったが、顔に出さずに言い返す。

シャンプーが再び双錘で攻撃を仕掛けるも、それを容易く避けると、空いたボディに思い切り蹴りをぶち込む沖田。

シャンプー「ぐはっ……?!」

その場に崩れ落ちるシャンプー。

沖田「俺もドSだから分かるが、ドSってのは打たれ弱くっていけねえよなぁ」

シャンプーの頭を掴み持ち上げる。

沖田「さぁて、これからどうしてくれようかぁ」

シャンプー「くっ!その汚らしい手を放すね!」

反動を利用して沖田の顔に蹴りを入れるシャンプー。

沖田「ちっ?!」

クリーンヒットこそしなかったが、その蹴りは彼の頬を掠めていった。

沖田「まだまだ痛めつけんのが足りなかったぁみたいだなぁ。ちょっとイラッときたから、ギア上げさせてもらうぜぇ」

シャンプー「っ?!」

そう言った刹那、すでに沖田はシャンプーの眼前にまで迫っていた。驚きでシャンプーの目が見開かれる。あとは沖田が刀を振りぬけば、彼女の敗北が確定するであろうはずだった。

?「秘儀っ!鷹爪拳っ!」

そこに空中から鷹の様に鋭い爪を付けた蹴りが飛んでくる。

沖田「て、てめえはっ!」

すんでのところで躱す沖田。

シャンプー「む、ムースッ!生きてたあるかお前っ!ふぅ……」

命の危機を逃れた安心からか、それともムースが生きていたことの安堵からか、シャンプーは瞳を潤ませながら膝を着いた。

ムース「なんとかのう!爆発に巻き込まれた後、顔は鬼の様じゃが親切な花屋に拾われてなってそんな話はどうでも良い!貴様ぁっ!シャンプーになんて真似しくさってんじゃぁぁぁ!!!!」

ムース(あと一歩遅ければシャンプーが負けて新たな婿候補が増えるところであった。危なかっただ……)

ムース「だが、ただただ単純に、シャンプーを傷付けた罪、絶対に許さん!」

沖田「俺に負けた分際で減らねえ口だぜ」

シャンプー「ムース、来てくれて助かったあるが早く逃げるよろし。お前じゃアイツには絶対勝てないね!」

ムース「お前を見捨てて逃げるなど出来るわけなかろう!それに、確かに実力はかけ離れているかもしれん、だが勝機が無いわけではない!」

眼鏡の奥でムースの目がきらりと光る。

沖田「へっ、おもしれえぇ。お手並み拝見といこうかぁ」

沖田、ムースの間で闘気がぶつかり合う。その緊迫感の中、先に動いたのはムースであった。

ムース「ああ!!土方が敵に囲まれて死にかけているっ!!」

沖田「トドメだ土方ぁぁぁぁぁ!!!!!」

ムースの指差したあらぬ方向へ沖田がバズーカをぶっ放す。

ムース「今じゃっ!!」

その隙にムースは、沖田の身体を数十本にも及ぶロープで一瞬で捕縛した。

沖田「……あれ?」

ムース「秘儀っ!白鳥拳っ!」

身動きできない状態で頭部に白鳥のおまるによる打撃を受けた沖田は、成す術なく意識を失ってしまった。

ムース「強敵じゃった……」

シャンプー「なんてくだらない幕引きね……」

二人の間にヒューっと風が吹く。

ムース(真正面から勝てない相手にはどんな手段も使う。乱馬のようで歯痒いがここはシャンプーを守れたということで良しとするか)

ムース「シャンプー早く行こう。この化け物のことじゃ、いつ息を吹き返すか分からん。さっさとこの場から逃げるぞ。今の手段は二度は通じないであろうしな」

シャンプー「それもそうね。乱馬の行方を追うある!」

二人はそそくさと、気絶する沖田を放置して乱馬の行方を追ったのであった。

今日はここまでで!

最終回といいながらこの体たらく、すいませんっしたぁ!

次回後編は一週間後に必ず投下いたしますんでその時はまた、良かったら読んでいってください!

それでは!

>> 627 628

こんな愚かな自分めに暖かいレスありがとうございます……

次は一週間後!

良かったら読んでください!

乙っす!

悲しい話ながらまだ最終回が書ききれていません……

もう少しお時間を!必ず終わらせますんで!

もういっそ自分も卵掛け機で猫の死骸に入り込みたい……

ってことでもう少しお待ちを!ホントにすいません!

マヨネーズやるから生きるんだ

>>632 生きます!

両原作から空気感離れないように両原作読みまくってたらこんな時間が過ぎてただけなんで!

あと正直キャラ出し過ぎた!まとまんねえよこれ!マジどうしてくれんだよ!

マダオの一週間書いてる暇なんざ無かったっすww

もうしばし時間を!

ホントにお待たせしてしまってすいません!

必ず完結させますんでしばしのお待ちを!

長らく間空いちゃってすいません!

もうすぐ書き終わりが見えて来たんで明日の夕方くらいからラストまで投下したいと思いますんでよろしくっす!

再開します!

――かぶき町、特設ライブ会場。

お通『今日は集まってくれてありがとうきびう○こぉぉぉ!!!』

ファン『とうきびう○こぉぉぉ!!!』

お通『二か月ぶりでもうどういうテンションでいけばいいか分からないけどとにかく始まるよッシーアイランドォ!!!』

ファン『アイランドォ!!!』

お通『それでは最終回!(後編)』

タカティン『スタートォ!!』

タカチン『だからなんでお前がそれ言うのぉ?!』








~ホントに今日で最終回・遥かなる旅路、さらば友よ~










今日のOP!

やっぱこれだよね

https://www.youtube.com/watch?v=hFqnjW6s9lU

かぶき町、上空。

桂「ちっくしょぉぉぉ!!!」

かぶき町の空を、桂が凄まじい形相と勢いで飛行している。

銀時「めいっぱいとばせぇぇ!!」

その少し後ろをこれまた必死な顔の銀時が、更にその後ろには長谷川が飛んでいた。

長谷川「……な、何言ってんの?いきなり、二か月ぶりだから読んでる人よく分かんないと思うよ。俺だってそうなのに」

二人の発言に不可解な表情を浮かべ長谷川が尋ねる。

桂「何って長谷川さんはドラゴンボール読んだことがないのか?」

銀時「ほら、あの有名なベジータの『はやくしろ!間にあわなくなってもしらんぞ!』の後のクリリンとベジータのセリフだよ。舞空術使いながら二人が言うんだよな」

銀時の言葉に桂が腕を組み深く頷く。

長谷川「うん、それは分かったわ。だけど俺達別に舞空術使ってるわけじゃないからね?乱馬君の竜巻で吹っ飛ばされてるだけだからね?」

彼の言う通り、乱馬の飛竜昇天破で三人は未だに空の上を吹き飛んでいた。

銀時「うるさぁぁぁい!あんだけ意気揚々と新八達のもとから走り去ったってのに……」

桂「……そ、それはそうと誰か吐き気止め持ってませんか?ちょっと治まってたけどこの浮遊感で吐き気がもう一回来てるうぼええええええ!!!!!!」

長谷川「や、止めろづらっち!せっかく俺も止まってたのに貰っちゃうだろうぼぇぇぇぇまだおぉぉろろろろろぉぉ!!!!」

銀時「も、もう止めろお前えらぁぁぁぁばばばばばばぁぁぁぁっぁ!!!!!」

二日酔い三人衆はかぶき町上空を吹っ飛ばされながら、依然ゲロを吐きまくっていた。

二日酔い三人衆の下。

乱馬「待ちやがれぇ!万事屋ぁ!」

彼ら三人、というよりとんでもない速さで吹き飛ばされている銀時を追って乱馬がかぶき町を駆け抜ける。

と、上空から謎の飛来物が迫るのを視認し、咄嗟に民家の屋根に乗り移って回避する。そしてそれを恐る恐る確認した乱馬は

乱馬「わっ!きったねぇ!これゲロじゃねぇかぁうぼろろぉぉぉぉ!!!!」

貰いゲロをしていた。

あかね「やっと追いついたわ乱馬!」

良牙「ここが年貢の納め時だ!」

足が止まった乱馬にあかね達が追いつく。

新八「……いや、もう年貢納めて切羽詰まってるような状態なんですけどこれ」

神楽「ったくお前ら二か月以上経ってもまだ二日酔いアルか、情けない」

新八「神楽ちゃん、リアルな時の流れ言うの止めて。書いてる方もこのブランクに情けなくなってるから、当初予定してた流れとか忘れちゃってるレベルなんだから」

乱馬「っく!厄介な奴らがっ……」

口からこぼれる胃液を拭いながら乱馬が四人に相対する。

右京「乱ちゃんっ!」

両者の間にようやく追いついてきた右京が飛んで入る。

乱馬「うっちゃん!」

右京「乱ちゃんは先行って銀さんやっつけて、さっさとこのアホらしい戦い終わらして来ぃ!ここは私が食い止めたる!」

右京のセリフに少しの間逡巡する乱馬であったが

乱馬「……ごめん!」

と一言また銀時を追って行ったのであった。

あかね「……右京」

良牙「その心意気あっぱれだが右京。ここは四対一、そしてこの面子!足止めにもなると思ったかぁ!」

良牙がそう言って右京に襲い掛かった時であった。突如、彼目掛けて謎の塊が飛んできた。

良牙「な、なんだ?!」

その物体をなんとか躱した良牙であったが、それが屋根にぶつかった衝撃で動きを止めた。

勝男「おうこらおう!!ワシらの姉さん集団でボコろうとは随分楽しいマネし腐ってくれんのぉぉぉ!!!」

あかね達の後ろから殺気に溢れた勝男が拳を鳴らしながら、鬼のような表情で凄んでいた。

新八「は、挟まれた?!」

あかね「で、でもまだ人数はこっちが上よ!」

二人が両サイドの敵を警戒する。

神楽「右京!私お前とは戦いたくないアル!そこどいて銀ちゃん助けに行かせてヨ!」

神楽が悲痛な面持ちで右京に訴える。

右京「神楽ちゃん……私もアンタらとは戦いたくはないんやけどな、これも乱ちゃんのためや。堪忍な」

右京も神楽につられたように嘆く。その言葉に数瞬の間、場の流れが止まるも

あかね「だったら私が右京と戦う!」

あかねが再び時を動かした。

新八「あ、あかねさん?!大丈夫なんですか?!二人は友達なんじゃ……」

あかね「ええ、でも私たちはいつもこうだから。ね、右京」

心配する新八をよそに、あかねは右京に笑顔を向けた。

右京「ふっ、そうやな。私もあかねちゃんなら本気出せるわ。この勝負に勝った方が乱ちゃんのもとに辿り着ける!こういう分かりやすい勝負は好きやわ」

それに右京も笑って答える。

良牙「だったらこの極道の相手は俺だな、あかねさんを置いてここからは動けん。それに……」

先程屋根に直撃した塊を抱き起こしながら良牙が言う。

新八「そ、それはっ!!」

神楽「狂死郎っ!!」

良牙の足を止めたのは、気絶して勝男にぶん投げられた狂死郎であった。

良牙「短い間とはいえ仲間だった男だ。仇は必ず取ってやる」

間抜けた顔をして気を失っているナンバーワンホストの目を閉じてやると良牙は、強く握り込んだ拳を勝男に向けた。

良牙「来いよ極道!一瞬で終わらしてやる」

勝男「威勢のええ兄ちゃんやんけ、おもろいわ!どうや、この戦い終わったらウチの組来ぃひんか?!」

良牙「寝言は寝て言えっ!」

勝男「じゃったら気絶して寝てるお前さんの耳元で囁いたるわ!」

良牙と勝男が激しく衝突する。

あかね「新八君!神楽ちゃん!急いで!早くしないと弱ってる銀さんが乱馬にやられちゃうから!」

そこに待ったの声が入る。

月詠「ぬしが行け!乱馬を止めに!」

新八、神楽を急かすあかねのもとに月詠が駆け付け、声を上げたのだった。

新八「月詠さん!あの竜巻の中無事だったんですね!」

月詠「ああ、なんとかな。他の者がどうなってるかは分からぬが」

キセルで一息吐く月詠があかねに再び声を上げる。

月詠「とにかく行くのじゃ!乱馬を実力で止められるかわっちには自信がない!でもぬしなら!奴と懇意のぬしなら可能性はあるじゃろ!早く行けぇ!」

あかね「こ、懇意って!私たち別にそんなんじゃ――」

神楽「あか姉!ここはツンデレってる場合じゃないアル!後で幾らでも2000年代ツンデレ界の女王たる私(中の人)がツンデる場所用意するから急ぐネ!」

新八「そうです!急ぎましょうあかねさん!」

あかね「う、うんっ!」

戸惑うあかねの手を引いて神楽が集団から飛び出しそれを新八が追う。

月詠「さて、第二回戦といこうかの。今宵は眠らせてはやらんぞ?」

右京「はぁ……うちにそんな趣味ないし、アンタみたいな猛者と闘り合いたくないんやけどなぁ……」

二人の間に無言の緊張が走る。

月詠「参るっ!」

右京「いてもうたるわっ!」

こうして二人の第二ラウンドが始まった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勝男「ワシ相手にようやるやんけ兄ちゃん、ますますウチの組に欲しくなったわ。どうや、元の世界なんて帰らんとこっちでこの町の王様ならへんか?」

何度も打ち合い良牙の実力を認めた勝男が言った。

良牙「そんなものに興味はない。俺はあかねさんと元の世界に帰るんだ。それに、向こうで待っていてくれているであろう人もいるしな」

良牙は自分に好意を持ってくれている豚相撲好きの少女を思い出す。

勝男「あーあ、振られてもうたわ。姉さんがいて兄ちゃんがいて、それに親父にお嬢が帰って来て、なんて夢のような未来を想像してしもうたんやけどなぁ」

笑みを浮かべてはいるが、勝男はどこか切なそうであった。

良牙「なら、互いの夢の為。この戦い、次の一撃を打ち合って終わりにしよう。俺には時間がないんだ。早くしないと俺達の馬鹿大将がやられちまう」

勝男「カッカッカッカ、ほんまワシ好みの兄ちゃんやで。兄ちゃん、負けたら潔くウチ来てなぁ」

両者の間に、今日一番の闘気がぶつかり合う。

良牙「喰らえぇぇぇ!!!」

勝男「死にさらせぇぇぇ!!!」

お互いの顔面に全力の右ストレートがぶち込まれる。

勝男「……ふっ」

良牙「……」

二人は自身の右拳を相手の顔面にめり込ませたまま動かない。

勝男「……ごっつ過ぎてワシの手には負えんわ、兄ちゃん」

か細い声でそう呟くと、勝男はゆっくりと膝を着き気を失った。

良牙「どっかのアホのせいで頑丈さだけは誰にも負けん。宇宙人だろうが、極道だろうがな」

良牙はそう言ってあかね達が走り去った方を見た。視界の端に右京と月詠が戦闘しているのを視界の端に捉えたが、全身に力を入れ直すと彼女たちの後を追って行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

かぶき町、中心地。

エリザベス『おい九能、起きろ』

エリザベスは腑抜けた顔で失神している九能をプラカードでぶん叩き、彼を無理くり起こした。

九能「はっ、ここは?!確か僕はおさげの女、天道あかねと遊園地で甘美なひと時を過ごしていたはず――」

新しいプラカードで再度九能を叩きセリフを遮るエリザベス。

エリザベス『違う。お前は真選組副長に負けたんだ。だがそのことはもういい、今はとにかく桂さんを追うぞ』

九能「そ、そうであったのか……口惜しいが今はそうした方が良さそうですね、この状況を見ると」

周囲に転がる死屍累々を見回しながら九能は頷いた。見知ったオカマ達や、あの真選組一番隊隊長ですら縄に縛られて気絶している。

九能「では行きましょう!エリザベス殿!」

エリザベス『ああ』

二人は桂の後を追って走り出す。しかしこの時、彼らの足元で最凶最悪の化け物が順調に育っていたのは知る由も無かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

かぶき町、外れ。

落「ったく、せっかく最近かぶき町クリーン作戦を展開してたってのにこれじゃたまったもんじゃないよ。何がバトルロワイヤルだよ、ホントに止めてほし――」

中心街から避難し一人愚痴垂れていた落の下に、飛来物が三つ、凄まじい捻りを加えながら落下してくる。

落「な、なんなのこれはぁ?!も、もう嫌だぁぁぁ!!!」

恐怖で顔を引きつらせながら、犬神家の死体の様に地面に埋まった六本の足を残し、落は逃げ去って行った。

乱馬「はぁ、はぁ、ようやく落ちてきやがったか。どんだけ飛ばされてんだこいつらは」

ようやく追いついた乱馬が、遠くにそびえ立つターミナルを確認しながら言った。

乱馬「おい万事屋!起きやがれ!」

埋まっている六本の足の内、二本に乱馬は叫んだ。

銀時「……」

桂「……」

長谷川「……」

しかし返事がない。ただのしかばねのようだ。

乱馬「どこまでもコケにしやがってぇ!」

そう声を荒げると乱馬は、地面に埋まっている銀時の足を掴み、掘り起こして投げ飛ばした。

銀時「……」

落下の衝撃で気を失ったのか、それでも尚銀時は動かない。

乱馬「……」

その姿を一瞬の気のゆるみもなく見つめる乱馬。

乱馬「……あっ!あんなところで宇治金時とチョコパフェがチークダンス踊ってる!」

銀時「なんだってぇぇぇ?!!」

今まで倒れていたのが嘘のような勢いで銀時が体を起こし周囲を見回す。

乱銀「……」

一陣の風が吹く。

乱馬「やっぱり狸寝入りこいてやがったなてめえ!」

気まずそうな銀時を勢い良く指差す乱馬。

銀時「いやぁ、そ、そんなことは無かったよ。戦うのが面倒だとか決してそんなんじゃないからね今の寝入りは」

乱馬「へっ、だが今更そんなことどうでもいい!勝負だ!万事屋ぁ!お前を倒してこの戦いを終わらせる!そして元の世界に俺は帰る!」

乱馬の激情をものともせず、いつも通りに気だるげに銀時が返答する。

銀時「確かに俺がこっち側の大将みたいな空気になってるけどさ、これバトルロワイヤルだからね?俺を倒したところで第二、第三の俺が出てくるだけだよ?要は最後に立ってたやつが勝ちだってんだから」

乱馬「そりゃそうだが精神的支柱であるお前を倒せば後のやつらはもろい!そうなればお前に勝った勢いで全てを飲み込んで、俺達の、俺の勝ちだ!」

銀時「っかぁー、その歳で結構エグイこと考えるじゃないの。はは、嫌いだけど好きだぜ。そういう奴」

銀時は困ったように頭を掻きながら笑った。

乱馬「あとはこの一か月の恨みを晴らさせてもらう!」

銀時「……本当にそれだけか?」

銀時の問いかけに乱馬に勢いが止まる。

乱馬「……へっ、さすがに鋭いな。本音を言えば戦ってみたいのさ。この一か月、かぶき町の実力者達は全員お前に一目置いていた。月詠も九兵衛も、あの西郷のおっさんすらも。無差別格闘早乙女流二代目として、そんな奴と戦わずに帰れるかよ!」

乱馬が拳を構える。それに応えるように、とうとう銀時も腰から愛用の木刀を抜いた。

銀時「本当にそれでいいのか?今ならまだ取り返しがつくぞ。ここで俺達が停戦協定を結んで他勢力を潰して、あとはなあなあで優勝者を決める。そんな楽な方法もあるんだぜ?で、賞金は山分け、賞品の転生鏡でお前らは元の世界に帰る。俺達は誰も傷付かないハッピーエンドだ」

乱馬「……お前こそ、本当にそう思ってるのか?」

今度は逆に乱馬が銀時に問いかける。

乱馬「たったの一か月。たったの一か月だが俺なりに分かったことがある。あの町は火事と喧嘩が大好きな、ワクワクするような馬鹿な華町だ。で、その町の、かぶき町の生粋の住人であるお前が、今更抜いた刀引くようなタマかよ。もうやる気は十分なんだろ?」

銀時「……けっ、生意気な新参者だ。めんどくせぇ」

銀時の木刀を握る右手に力が入る。

乱馬「いくぜぇ」

銀時「怪我しても労災はおりないからな」

二人の間で闘気がぶつかり合う。極限の緊張感の中でも震えない刀と拳。その後方で生えている四本の足。互いの隙を突こうとする視線の応酬。

その後方で生えている四本の足。ほんの数ミリ、互いの射程に近付く二人。その後方で生えている四本の足。激しい熱気の中、流れる冷たい汗。その後方で生えている四本の足。

乱馬「……っだぁぁぁ!!!あの足が気になって集中できねえ!!!いつまで犬神家やってんだあいつらは!!!」

最高潮の緊張感の中、未だ地面に埋まったままの桂と長谷川が気になってしまった乱馬に、突っ込みという致命的な隙が生まれた。

銀時「隙ありぃぃぃ!!!」

初撃を決めたのは銀時であった。突っ込みによって生まれた隙を突かれた乱馬は、銀時の薙ぎ払いで吹き飛ばされ民家に激突。激しい土埃が舞い上がる。

銀時「作戦成功だ、お前らぁ」

ニタァッとした笑顔を浮かべる銀時の一言を聞くと、逆立ちの要領で桂と長谷川がようやく地上に顔を出した。

桂「ふっ、どうやらうまくいったようだな。犬神家の一族スケキヨ(偽)作戦は」

長谷川「まあな、さすがにスケキヨ二体もいたら気になるもん。気にならない方がおかしいもん」

銀時「このまま仕留めるっ!」

銀時が追撃しようと乱馬が吹き飛ばされた方へ駆けだすが

乱馬「猛虎高飛車!」

その直後、土煙の中から歴戦の戦士でも躱せない程のタイミングで、カウンター気味に放たれた気砲を食らってしまう。

銀時「ぐほぁっ?!」

今度は反対方向へ銀時が吹き飛ぶ。

長谷川「銀さんっ!!」

乱馬「……やってくれるじゃねえか、万事屋ぁ!」

土煙が晴れ、闘気を溢れさせる乱馬が叫ぶ。

桂「……これは大変だぞ、長谷川さん」

長谷川「ああ、戦闘に明るくない俺でも乱馬君の強さは分かる。銀さん、大丈夫なのかぁ?!」

乱馬の強さを目の当たりにして、長谷川が心配で声を荒げる。

桂「いや、そうではない」

長谷川「……じゃ、じゃあどういうことなんだ?!」

長谷川とは対照的に、焦ってはいるのだろうが態度には出さずに桂が言う。

桂「今ここに新八君たちはいない。つまり……」

長谷川「つまり?」

桂「戦闘解説キャラを俺達がしなければならないということだっ!」

長谷川「……は?」

桂「お、俺は嫌だぞ!ロン毛がかぶってるからってヤムチャポジションなんて!あんな富士額に女を取られ、人造人間には体を貫かれなんて!せめてピッコロ!ピッコロポジションでいかせてほしい!長谷川さんにはあれ、天さんポジあげるから!ね?!」

長谷川「ね?!じゃねえよ!もう黙って見てろっ!!」

阿保二人を置いて戦いは刹那の度に進む。

銀時「そんなドラゴンボール的な攻撃するなんて卑怯だろうがぁぁぁ!!!持たざる者の気持ちも考えろぉぉぉ!!!」

猛虎高飛車をもろに食らった銀時であったが、痛む体を引きずってすぐさま反撃に移る。それに合わせて乱馬も迎撃体制を整える。

乱馬「そんなもん知るかぁぁぁ!!!」

右上段からの刃と右拳がぶつかり合う。両者互角、どちらもたじろぎすらしない。その中で次の一手を先に打ったのは、経験の差からか。銀時であった。

銀時「っく!!」

刃と拳のこう着状態から左蹴りを放ち、乱馬の腋腹に決める。

乱馬「っかは?!」

思わず膝を着きたくなるダメージを受けながらも、乱馬はがむしゃらに空いている左拳で銀時の右頬をぶん殴る。

銀時「っ?!」

蹴りが決まってからの反撃を予想していなかった銀時はそれを真正面から受けてしまう。意識も、地面で踏ん張っている両足でさえも吹き飛びそうであったがなんとか繋ぎ止める。

その隙を捉えた乱馬は瞬時に距離を詰め、シャンプーの祖母から教わった、女傑族の秘技を放つ。

乱馬「火中天津っ!甘栗拳っ!」

乱馬の両拳から、人間技では有り得ないスピードで正拳突きが繰り出される。

銀時「っな?!こ、これはっ?!」

もはや人間の目に見えるスピードでは無かった。だがそれを銀時は数弾ではあるが視認し、かつ天性のセンスと歴戦の経験で防いでいた。しかし、それも全弾防ぎきることは不可能。数十発のパンチをもらって再び吹き飛ばされる。

長谷川「銀さんっ!づ、づらっち!一体何が起こったんだ?!乱馬君の両手が消えたと思ったら銀さんが吹っ飛んで――」

桂「す、凄い。こ、この俺ですら全弾見切ることは出来なかった……」

桂が思わず息を呑む。

長谷川「す、凄い。づらっちがまともに解説キャラになっている……」

長谷川も思わず息を呑む。

これで勝負が決まったと一瞬、たった一瞬気を抜いたその時。次は銀時が乱馬に襲い掛かる。

乱馬「ぐっ!!」

脳天に木刀の直撃。それでも乱馬は意識を手放さない。それに耐え、次の一手を繰り出す。

銀時(この歳でなんて野郎だっ!この技とセンスに負けん気、末恐ろしいなんてもんじゃねえぞっ!)

乱馬が返す刀で右拳を銀時に突き上げる。だがそれを右手の木刀で巧みにいなすと、銀時は左拳の裏拳を乱馬に打ち込む。

乱馬(こ、こいつ間違いなく俺が今まで戦ってきた誰よりも強えぇ!なんて柔らかくて力強い戦い方だっ!もしや八宝斎のじじいよりっ?!)

至近距離で二人の格闘戦が始まる。噴き出す血、はじける汗、張り詰めた空気。それを見ているあの桂に長谷川さえも口を開けない。そんな中、その声も出せない状況で、ようやく彼らを追っていた三人が駆け付ける。

あかね「乱馬!銀さん!もう止めてっ!」

新八「二人とも!ここは一旦話し合いましょう!」

神楽「そうアル!ケンタッキーでも食べながら落ち着くアル!」

血だらけで繰り広げられる激闘を見た三人は、この不毛な戦いを止めようと説得を試みる。

乱馬「うるせぇ!茶々入れんじゃねぇ!」

銀時「残念ながら、そんな穏やかに話纏められるタイミングはとうに過ぎちまってるみたいだぜ」

乱馬、銀時とも激しい呼吸の中声を振り絞る。

あかね「私も熱くなったのは謝るから乱馬!もういいでしょ?!」

新八「ここまでする必要なんてないじゃないですかぁ!」

二人の惨状を見て、悲痛な声を上げる。

乱馬「必要不必要なんて話じゃねんだよ、俺の武闘家としての血がもう止まらねえんだよ!」

神楽「血を言い訳にするんじゃないアル!」

自身の境遇を顧みて神楽が叫ぶ。

銀時「ここまできて止められっかての。結野アナの再婚話でも持ち上がらない限り止めはしねえよ」

この状況下で銀時がいつもの如くにやつく。

あかね「そ、そんな……止められないの……?」

あかねが両手を胸に当て悲しそうに呟く。その時であった。

ドゴォォォォォン!!!!

遠くに見えるターミナルの方角から、彼らにも聞こえるほどの轟音が鳴り響いた。

新八「な、なんだ一体?!」

あかね「あ、あれは……何っ?!」

神楽「私を食った化け物とそっくりアル……!」

桂「馬鹿でかい触手っ!くっ、クリムゾン先生……?!」

長谷川「もうホント黙ってような」

音の方を見やると幾本もの触手を持った巨大な化け物が、江戸の町に突如出現していたのであった。

その異常な事態に、銀時と乱馬の闘いの手も思わず止まる。

銀時「……おいおい、あの時のやつとそっくりじゃねえか。神楽、早く父ちゃん呼べぇ。間に合わなくなっても知らんぞぉ」

神楽「思春期の女の子は自分から父親に連絡なんてしないネ」

新八「そんなこと言ってる場合じゃないよ神楽ちゃん!前回だって星海坊主さんがいてくれたからなんとかなったってのに!」

神楽「だいたい手紙で連絡取り合ってるようなアナログな親子に、携帯一つで呼び出すような感じで言われても困るアル」

新八「ど、どうするんですか銀さん?星海坊主さんに手紙が届いて助けに来てくれる頃には江戸が無くなってるかもしれませんよ……」

銀さん「……そうだ、京都へ行こう」

新八「行くなぁ!」

あかね「な、なんなのあの化け物はっ?!」

乱馬「で、でけぇ……」

何度も奇形の生物と対峙している万事屋組は慣れたものであったが、初めて見る乱馬とあかねは驚くほかなかった。

銀時「とにかくあのハゲがいなくてもどうにかするしかないだろ、あのまま暴れられたらウチまで無くなりかねねえからな。いや、滞納してた家賃もうやむやになるからいっそ無くなった方が良いのか……?」

新八「何アホなこと言ってんすか銀さん。あの町と万事屋が無くなったら僕達どうやって生きていくっていうんですか?それに先月の給料もまだ貰ってませんし」

神楽「そうネ!だいたい女王である私の許可なく暴れまわるとは許せないアル!」

遠くから見ても分かるほどに、化け物の触手は荒れ狂い江戸の町を破壊していた。

桂「そうと決まったらボサっとしているんじゃない、お前たち。天人にもあんな化け物にも、俺たちの国は壊させやせん」

長谷川「正直力になれるか自信はないけど俺も行くよ。思い出の詰まった、俺たちの町だからな」

桂、長谷川のセリフにとある一人を除いて頷く。

乱馬「そうはいくかよっ!」

そのとある一人が待ったをかける。

乱馬「おい万事屋!俺との戦いほっぽってあの化け物と戦いに行くってのか?!そんなもん許すわけねえだろうが!決着つくまで逃がしゃしねえ!」

乱馬が鬼気迫る表情で怒鳴る。

銀時「……」

あかね「ら、乱馬っ!そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが!」

新八「そうですよ乱馬さん!早くアイツをやっつけないと町が!」

神楽「そんなことあの化けモンやっつけてからゆっくりやりゃいいネ!」

桂「優先すべき事項を判断できておらんな。そんなことでは命を、己の大事としたものでさえも無くしかねんぞ」

長谷川「乱馬君!今はそんなことより化け物を倒すことが先決だろっ?!」

銀時を除いた五人が、未だに決着をつけたがる乱馬を説得するも

乱馬「うるせぇ!」

彼の一言で一蹴されてしまう。

乱馬「あの町がどうなろうと知ったことか!んなことよりこの闘いに決着をつける方が先だろうが!あんな町どうなろうがどうでもいい!早く続け――」

荒ぶる乱馬の言葉が、押し黙っていた銀時の拳で止まる。

乱馬「っがは?!」

今までとは比べ物にならない程の殺気を纏わせた銀時の一発が乱馬を襲った。戦闘状態を緩めていない乱馬でさえ、防ぐことも避けることもできない、鋭い一撃であった。

銀時「……てめぇ、それ本気で言ってんのか?」

銀時の拳で尻もちをついた乱馬が、切れた唇の血を拭いながら答える。

乱馬「ほ、本気に決まってんだろっ!ここまで来て今更止められるかっ!」

銀時「そうじゃねえ。てめえが言った、あんな町どうなろうと知ったこっちゃねえってことだよ」

乱馬「……」

静かに、ただそれでいて迫力のあるトーンの銀時の言葉に、今度は乱馬が口を塞ぐ。

銀時「この一か月、てめえはあの町で何を見て、何を聞いて、何をして生きてきた?そして何をして、何をもらった?」

銀時が木刀を腰に収めながら言葉を続ける。

銀時「恩着せがましく言うつもりもねえしてめえがどう思おうと勝手だがな、あの町は、かぶき町は!てめえの目にどう映った!」

尻もちをつく乱馬の襟首を強く掴みながら銀時が言った。

新八「もう行きましょう銀さん、これ以上こんなところで馬鹿の相手してる場合じゃないです」

神楽「そうネ、ただでさえ弱っちい奴等が戦いで弱ってるアル。早くしないと全滅ネ」

その間も化け物はその大きすぎる触手を振り回し、江戸の町に土埃を上げていた。

銀時「てめえにとって何が一番大事なのか、その猪みたいな脳ミソで良く考えてみやがれ。それでもその時、俺との決着が一番だっていうなら相手になってやる。あの化け物の足元だろうが、ジャンプ読んでる最中だろうが、あの子のスカートの中だろうがな」

乱馬「……」

銀時はスッと襟首を離し、乱馬に背を向けた。

銀時「おめえら!行くぞっ!」

その一声に皆力強く頷くと、あかねを除いてかぶき町に駆けだした。

あかね「乱馬……」

乱馬「……なんだよ」

あかね「信じてるからね」

そう一言悲しげな笑顔で言い残すと、彼女も乱馬を一人置いて、皆の後を追って走り出したのであった。

かぶき町、市街地。

お妙「ちょっとホントになんなのよこれはっ!!」

九兵衛「お妙ちゃん!危ない!」

かぶき町中心地にほど近い場所に巨大エイリアンが出現してからどの陣営も困惑し逃げ惑っていたが、流石はかぶき町の住人達。すぐさま態勢を立て直し、考えを切り替え、スクラムを組んで化け物退治を行っていた。

そんな中、触手の一撃に潰されそうになっていたお妙を、持ち前の俊敏さで九兵衛が助ける。

お妙「ありがとう九ちゃん!そ、それにしてもなんて卑猥な形状の生き物なの……?!」

九兵衛「礼には及ばないよ。ただこの化け物の容姿について言及するのは控えないか?」

お妙をお姫様抱っこで救出した九兵衛が言った。その後方で、彼女たちを襲った触手にクナイ、ナイフ、青龍刀、ヨーヨーが突き刺さり、トドメにハイヒールの飛び蹴りが降りかかる。

猿飛「な、このMっ気をくすぐる化け物はなんなのぉっ?!そうかっ!きっと銀さんが私に用意してくれた新しい性玩具に違いないわっ!」

ムース「さっちゃん!今はそんな事言ってる場合じゃないだぁ!」

シャンプー「ムース!お前の仕事仲間っ、早く快楽天あたりに移籍させるある!」

自らの武器を投擲するさっちゃん、ムース、そして飛び蹴りを放ったシャンプーが前線で化け物の進撃を食い止める。

お妙「……九ちゃん、離して」

九兵衛「お妙ちゃん?」

予期していなかったお妙の言葉に戸惑う九兵衛。

お妙「あの泥棒猫が戦ってるのに!私がお姫様抱っこされてる場合じゃないじゃろがいぃぃ!!」

九兵衛の手から離れ、矛を振り回しながらお妙は化け物に向かって行く。

九兵衛「ふっ、お妙ちゃん」

そんなお妙の背中を見ながら非常時であるのに九兵衛は微笑むと、その逞しい背中を追って行った。


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化け物付近でやられていた人たちも今はどのチーム関係なく救助され、回復した者から戦線に復帰し化け物と戦っていた。

一方、彼ら戦士たちとは違うフィールドで、しかし最前線で戦う者たちもいた。

結野「見てください皆さん!謎の生物が急激に巨大化しております!ですが皆さんは覚えておいででしょうか?!このような生物がこの町を襲うのは二度目だということを!」

そう、マスメディアである。お天気お姉さんの結野アナが克明に現場の状況を視聴者に伝える。だがそんな無力で無害なお姉さんにも、化け物は容赦なく襲い掛かる。

結野「い、いやっ?!」

結野アナと取材クルーごと潰しにかかる触手であったが

土方「ふんっ!」

目にも止まらぬ速さで現れた真選組副長の一太刀により、彼女たちは事なきを得る。

結野「し、真選組です!江戸を守る武装警察、真選組が駆け付けてくれました!しかもあの時とは違います!ターミナルと離れているおかげか、前回と打って変わって彼らもその武力をもって町を守らんとしてくれています!」

前回エイリアンが現れた時の不甲斐ない真選組を直視していた結野アナは興奮気味にそう伝える。そこに強力な味方がもう一人、真選組一番隊隊長、沖田総悟が拡声器片手に現れる。

沖田「えー、エイドリアーン!お前は完全に包囲されている。大人しく投降しなさい」

結野「え、ちょっ。これじゃ前回と同じじゃ……てかエイドリアンじゃねえよ馬鹿ロッキー」

結野の突っ込みも気にせず沖田が続ける。

沖田「故郷のお母さんも泣いてるぞ、こんなエイリアンにするために生んだんじゃないってな。そして兄のようにはなってほしくなかったと、ね?お母さん」

結野「え?!兄?!お母さん?!」

沖田の呼びかけに動揺する結野を尻目に、後方のパトカーの扉が開く。そこには

近藤「もうこれ以上私たち家族を苦しめるのは止めて!」

タコ足型宇宙人に扮した近藤が、二枚のエイリアンの遺影を持って叫ぶ姿があった。

近藤「アンタのお兄ちゃんがあんなことになってしまったから、アンタだけは!アンタだけはと思ってたのに!結局お兄ちゃんと一緒でそっちの道に行ってしまうのね!でも今からならまだ間に合うから!暴れるのを止めて――」

エイリアンに扮した近藤の説得も空しく、彼らのいる場所を触手が襲う。

近藤「ぐはっ!!」

真っ先に近藤が攻撃されたのを好機と察し、その場にいた者が全員全速力で走り去る。

結野「結局アンタ達なんにも前回と変わってないじゃない!アホ警察!」

沖田「ひでえ事言いますぜ、なあ土方さん。ってことであの触手みたいに人格的にネチネチしてる土方さん、アンタしかあの化け物と張り合えるのはいねえと思うんで逝って来てください。二階級特進!フゥー!」

土方「死ぬこと前提で送り出すんじゃねえクソ野郎!縄ほどいてやった恩も一分と経たずに忘れやがって!」

町を守る意思があり実際に戦ってもいるのだが、何分戦力差が開きすぎているせいか、武装警察真選組でさえも一進一退の攻防を続けているような状態であった。

かぶき町、外れ。

そんな中、木刀で叩かれた頭より、蹴りを食らった胴体より、何故か痛む頬を押さえながら乱馬は呆けたように座り込んでいた。そこに近付く人影が一つ。

?「こんなところで何やってんだ、呆けた顔した兄ちゃん。だが良いねぇ、その瞳の奥に光る刃。俺には見えるぜ」

顔を上げると、包帯で顔の左側を覆った男が立っていた。

乱馬「……なんだてめえは」

その男の禍々しいオーラに、思わず身体を固くする。

?「俺のことなんざどうだっていい。ところでどうだ、その刃。俺の下で振るう気はないか?」

その男は素性も明かさずに乱馬との会話を続ける。

?「へっ、良い具合に壊れてんなぁ、国が。自分たちの無力さってやつをどうあがいても突き付けられちまう」

今は遠きかぶき町で、化け物が暴れ回る様を見ながら男が言った。

乱馬「……どっか行きやがれ。今は誰とも話す気分じゃねえんだよ!」

残り少ない気力を振り絞って、乱馬が精一杯包帯男に気勢を吐く。

?「そうかよ。ただ何かを、なんでもいいからぶっ壊したくなったら俺の下へ来いよ。待ってるぜ」

乱馬の言葉に臆した様子もなく男は平然と、口元を歪めながら笑う。

?「大事なもんを奪われちまったんならよ、無くしちまったんならよ。いっそ全部ぶっ壊しちまえばいいんだよ、全部捨てりゃいいんだよ。後悔と未練と、執着と共によ」

男は膝を着き、乱馬の耳元で囁いた。

乱馬「お、俺は……っ!」

?「その眼、俺の大嫌いな男に似ているな。だが、今ならまだ間に合うぜ。こっち側に来て、うつつを壊しまわるのにはな」

それだけ言うと不気味な笑みを浮かべた男は、いつの間にやら彼の後ろに従えていた数名の人間たちとその場を去って行った。

乱馬「……」

何か怒鳴り散らしたい乱馬であったが、男の眼、言葉、オーラに気押され、何も言葉を紡げなかった。

乱馬(……全部壊す、全部捨てる、か)

彼らが去り、全身の力が抜けた乱馬は、包帯男の言葉を反芻していた。

自身の力のない拳を見つめる。そこにふと、この一か月乱馬に迷惑をかけっぱなし、しかし、誰よりも親身に接してくれた男の声が蘇る。

西郷『アンタの大切なモンってのが私には分からないけど、その熱さのせいで、何が大切なモンなのかを見失うようなザマにはなるんじゃないよ』

その言葉を思い出し、力なく笑う。

乱馬「へっ、昨日言われたばっかだってのにな」

彼の頭に、この一か月の出来事が次々と浮かんでくる。


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らんま『だから俺はこんなトコで働かねえって言ってんだっ!』

アゴ美『ちょっとママァ!パー子だってもう少し素直だったわよ!それが何このじゃじゃ馬は!』

西郷『そのアホ万事屋から安く仕入れたのよ。ちゃんと使えるようにしな、アンタの仕事だよ』

らんま『だいたいこんな妖怪の巣に誰が好き好んで金払って来るってんだ!』

オカマA『誰が妖怪よ!』

オカマB『そうよ!アゴ美のアゴは妖怪の仕業じゃないんだから!』

らんま『いやそんなことは言ってない』

アゴ美『ちょ、ちょっと!私のアゴはこの際いいから早くママに謝りなさい!死ぬわよアンタっ!』

らんま『へ?』

西郷『誰が妖怪じゃぁぁぁぁ!!!!!』

ドゴォォォォォン!!!!


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乱馬『俺は鏡の調査に行くんだ!』

狂死郎『まあまあ落ち着いて。とりあえず今日のところは働いてください。明日明後日はお休みにしますから』

シャンプー『乱馬ぁ!今日も楽しく遊ぶね!』

ムース『ふんっ!おらはシャンプーの付き添いじゃ!』

狂死郎『お!大口のお客さんじゃないですか、頼みましたよ!』

乱馬『ったく、調子良いんだからよぉ』

西郷『らん子ぉ!飲みに来てやったわよぉ!』

アゴ美『いやぁん!狂死郎様ぁん!』

狂死郎『……い、いらっしゃいませ』

シャンプー『残念だたある西郷。タッチの差で乱馬の身体は私のものになったある』

西郷『もう!そんなけち臭いこと言ってんじゃないわよ!楽しく一緒に飲み明かすわよ!』

シャンプー『うーん。ま、それもそうね。一緒に飲むある』

乱馬『お、お前らの相手は絶対嫌だ!酔うと酷いなんてもんじゃねえからな!さっさと自分たちの巣に帰りやがれ化けモン共が!』

アゴ美『ら、らん子……私悲しいわ。あなたの学習能力の無さに』

乱馬『あ』

西郷『誰が化けモンじゃぁぁぁ!!!』

ドゴォォォォォン!!!!


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らんま『もう休ませてくれぇ!』

お妙『もう、らんまちゃんったら若いのにそんなお休み欲しがっちゃって。まだまだいっぱい働けるでしょう?顔に書きますよ?』

らんま『……顔に書いてあるとかじゃねえんだ』

近藤『おっ妙さぁぁぁん!!今日もあなたの愛しのエンジェル、近藤勲が来ましたよぉ!』

らんま『また来た……』

お妙『すいませーん!誰か警備の人呼んでくださーい!』

シャンプー『警備より強いのにそんなもの呼ぶ必要ないある。さっさとそのオスゴリラ連れて仲良く檻に戻るよろし』

お妙『な、なんですってぇ……』

ムース『シャンプー!今日もお前の愛しのエンジェル、ムースが来ただぁ!』

らんま『ダメだこいつ、完全に毒されてやがる……』

西郷『私もいるわよん』

らんま『もう許してくれぇ!』

西ム近『かんぱーいっ!!』

キャバ嬢A『ちょ、ちょっとまたお妙さんとシャンプーさんが喧嘩始めちゃったわよ!』

キャバ嬢B『わ、凄い!二人の拳の軌道が見えない?!』

キャバ嬢A『らんまちゃんお願い!二人の喧嘩、ていうかラグナロクを止められるのはらんまちゃんしかいないから!』

らんま『ええ?!またかよぉ……店長は?』

キャバ嬢B『まだ胃潰瘍で入院中』

らんま『しょうがねえなぁ……』

お妙『死ね痴女ぉぉぉ!!!』

シャンプー『朽ち果てろまな板ぁぁぁ!!!』

らんま『二人とも止めろってっ!!ってうわぁぁぁぁ!!!!』

ドゴォォォォォン!!!!


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乱馬の頭にこの一か月の思い出が次々と、走馬灯のように駆け巡る。

乱馬「……」

乱馬「……良い思い出が無い?」

?「いや、そこはなんか良かったこととか思い出して決意新たに戦いに行くところじゃろ!」

?「そうじゃそうじゃ!肥大化しすぎた余の可愛いペットを止めにいくところじゃろ!」

乱馬「は?」

乱馬が顔を上げると、ハタ皇子と爺、今回のバトルロワイヤルの企画者である二人が立っていた。

乱馬「……余のペット?」

ハタ「そうじゃ。可愛い可愛い余のペットじゃ。前回ターミナルのエネルギーで肥大化してしまったペットの親戚じゃ」

乱馬「へ?」

爺「そうそう。それをこのバカ皇子がかぶき町でなくしやがって。で、今回のアイツは人の闘気を吸って大きくなるからバトルロワイヤルでも開催してたんまり闘気を吸わせて、大きくして見つけやすくしてから回収するはずだったんじゃが、どうにも大きくなり過ぎてのう」

乱馬「あ?」

ハタ「誰がバカ皇子じゃ!とにかくああなっては手に負えん。よもやあんなに激しい闘気が発生するとは。でも余の可愛いアイツもあんなに闘気を吸えてさぞ満足してるじゃろ。ハッハッハッハッハ」

爺「そうっすね。まあなんにせよ、止めようにも闘気を放出したまま戦ってたんじゃ一生止めらんないけどな。あんな増殖し続けたままじゃ、体内にある『核』を破壊出来ないから殺せないし。ハッハッハッハッハ」

二人の馬鹿笑いが響く。

乱馬「……つまり今回の騒ぎはお前らが原因だってことか?」

爺「あ、やべ。ちょっと皇子、喋り過ぎたかも。爺知ーらないっと」

ハタ「ずるいぞ爺ぃ!一人だけ関係ないみたいな顔するな!そしてその顔めっさ腹立つ!」

乱馬の拳に力が戻り、抑え切れずプルプルと震える。

爺「お、おこなの?少年おこなの……?」

ハタ「いや、爺。これは激おこじゃないか……?」

乱馬「当ったり前だぁぁぁ!!!」

怒りを爆発させた乱馬は三秒と経たずに二人をボコボコにした。

爺「……いや、マジすいませんした」

ハタ「……ホントすいません。でも触覚殴んのは止めてもらっていいっすか?」

正座で反省する二人に乱馬が叫ぶ。

乱馬「くそっ!とにかく早く町に行くぞ!この情報伝えねえとあいつら全員やられちまう!」

ハタ「は、はいぃ!爺!この方を飛行船最大船速で送って差し上げろ!余はここでちょっとアレしなきゃいけないからお前行け!」

爺「そんなぁ!元々アンタのペットなんだからアンタが責任持ってあの化け物に食われちまえよ!」

ハタ「化け物じゃない!余のペットじゃ!」

爺「ばーけものっ!フゥー!ばーけものっ!フゥー!」

喧嘩を始める二人の脳天に、乱馬が両拳でげんこつを落とす。

乱馬「い・そ・げ」

ハ爺「はい」

かぶき町、市街地。

良牙「ったく!一体なんなんだこの化けモンはっ!消滅させてもどんどん巨大化していくぞっ?!」

月詠「愚痴っていてもしょうがないぞ、童!」

右京「口動かす暇あったら手ぇ動かす!」

良牙、月詠、右京の三人は位置的に近いところにいたため、エイリアン発生時から共闘の形をとっていた。

他にホスト軍団、ヤクザ、百華などの混成軍団の頑張りでなんとか前線を凌いでいる状況である。

良牙「獅子咆哮弾っ!」

右京「喰らえっ!」

そして未だ相対しているエイリアンの生態を知らない彼らにとっては、倒しても倒しても無限増殖を続けるなんとも厄介で不可解な敵であった。

月詠「危ないっ!」

荒れ狂う触手が月詠の傘下である百華の一人に迫る。

百華A「か、頭っ?!」

咄嗟に突き飛ばし触手の魔の手から部下を救った月詠であったが、代わりに自らが触手の攻撃を食らってしまう。

月詠「っぐ?!」

右京「月詠さんっ!」

吹き飛んだ月詠に右京が駆け付ける。

良牙「ば、馬鹿か右京!ギリギリもっているというのにお前まで抜けては――っぐは!」

なんとか良牙、右京、月詠の奮戦で持ちこたえていた戦線も二人が抜けるとどうにもならず、良牙までもが触手の重すぎる一撃を食らい吹き飛ぶ。

月詠「わ、わっちは大丈夫じゃ、ぬしは気にせず戦いを続けるでありんす……」

瀕死といっても差し支えない月詠の体を、膝を着いて抱き起こす右京。

右京「そんなこと言うたってあんな攻撃もろうたら――」

月詠「大丈夫と言ったら大丈夫じゃ。わっちのことはいいからこの町を、人を守るのじゃ。やつの居ぬ間にこの町を落とされたとあっては、二度も救われといて申し訳が立たんからな」

頭から、いや、体中から血を流しながらも月詠は右京に言った。

右京「大丈夫なことあるかっ!とにかく後ろに下がって手当を――」

月詠「いい!とにかくぬしは戦いに戻れ!」

右京「……くそっ、分かったわ」

食い下がる右京であったが月詠の瞳を見ると説得も不可能と思い、巨大ヘラを握り直しエイリアンに向き直る。

月詠「フフッ、ぬしはいい女じゃな。屋台なんかではなく、吉原で働いてはみぬか?ぬしなら吉原の天女にもなれるやもしれぬぞ」

勝男「そんなとこで姉さんを働かせるかいぃぃぃ!!!」

月詠への突っ込みと共に、エイリアンの触手にフルパワーの右ストレートを決めながら勝男が現れる。

右京「か、勝男さんっ!」

ヤクザ軍団「あ、兄貴ぃ!!」

勝男「遅うなってすんまへん、姉さん。ちょっと気持ち良く夢見てたもんで。へへっ」

左目にでかい青タンを作った勝男が笑う。

狂死郎「お前たちっ!何をやっているっ!レディをここまで傷付けられてやられっぱなしとはなんて情けないっ!」

その横で全身ズタボロの狂死郎が叫ぶ。

八郎「狂死郎さん!」

狂死郎「私たちはかぶき町のホスト。この町を守るのも、女性の笑顔を守るのも、私たち最大の使命です!この町のホストなら、その使命を果たしなさいっ!」

ホスト軍団「い、命に代えてもぉぉぉ!!!」

勝男「溝鼠組ぃ!親父とお嬢の、そして姉さんの愛した町のためっ!クソ生意気なエイリアン風情をいてもうたれぇぇぇ!!!」

ヤクザ軍団「うおぉぉぉ!!!」

彼ら二人の号令で士気の上がった両軍が、今まで以上のスペックを発揮し触手に立ち向かう。

右京「ウチもいくでぇ!!」

ヤクザA「姉さんがいてくれりゃ百人力だぁ!」

その勢いに右京も乗っかる。

勝男「さっきはすまんかったのぉ、狂死郎はん」

狂死郎「いいんですよ、ただの喧嘩なんですから」

二人が微笑む。そして顔をギュッと引き締めると

勝男「んーで、おい兄ちゃん!いつまで寝とんのじゃい!そんな体たらくじゃヤクザ軍団からの一位指名取り下げるでぇ!」

崩壊した民家に向かって勝男が叫ぶ。

良牙「……誰がプロ入りするなんて言ったんだボケ」

血液と瓦礫を体中から落としながら良牙が立ち上がった。

勝男「へっ!それでこそ一位指名や!」

狂死郎「中々良い男ですね。ウチからも一位指名させてもらいます」

良牙「馬鹿を言うな貴様ら。俺はFAで天道家を希望する」

満身創痍の三人も、どこかの誰かと似たような笑みを浮かべて化け物に向かって駆け出す。そんな彼らを後ろから悔しさで唇を噛みしめながら月詠は、必死に両足に力を込めて追いすがる。

百華B「頭ぁ!ここは私たちでなんとかしますから休んでいて下さい!」

百華A「私なんかを守るため本当にすいません!もう頭はっ!」

月詠「無粋なことを言うなんし。こんな騒がしいところで休んでなんかいられ――」

何本か折れているであろう脇腹を押さえながら歩く月詠に、後ろから力強く、けれども優しい手が肩に置かれた。

?「寝てろ馬鹿野郎。そもそも寝るのが太夫の仕事じゃあねえか」

月詠「ぎ、銀時?!」

町の外れから、ようやく戻って来た銀時が月詠に言った。

月詠「ふんっ、嬢にだって拒否権はありんす。あんな客と一緒に寝てなぞいられるか」

銀時「ははっ、違いねえ」

もっと色々と言ってやろうと思った月詠であったが、彼の姿を見ると、その言葉をキセルの煙と共に飲み込んだ。

神楽「前回みたいに容易くやられると思うなヨ!」

新八「僕達の町をこれ以上壊させやしない!」

新八が竹刀を、神楽が拳を強く握りしめる。

九能「桂殿ぉ!探しましたぞぉ!」

エリザベス『行きましょう!桂さん!』

桂「おお二人とも!行こう!この国の夜明けへ!」

攘夷志士トリオにも力が漲る。

長谷川「お、俺だってやってやるっ!」

武蔵っぽい人「頑張れよ」

長谷川「ええ?!アンタなのこの場面で?!もっと縁のあるキャラが出てくる感じでしょここぉ!なんでぇ?!」

長谷川がなんやかんや震える。

あかね(乱馬……来てくれないの?)

不在の許嫁を思ってあかねが遠くを見つめる。だが彼女の思いなどつゆ知らず、男たちの最後の闘いが始まる。

銀時「行くぞぉぉぉ!!!」

一同「うおぉぉぉ!!!!」

飛行船、操舵室。

乱馬「おい!もっとスピードでねえのかこの飛行船!」

ハタ「ちっ、これが最大船速じゃい……」

爺「ぺっ、自分の足で走れや……」

乱馬「なんか言ったかこら」

ハ爺「いえ言ってません」

皇子の飛行船に搭乗し化け物へと向かう乱馬であったが、如何せん飛行船、中々スピードが出ずにじれったい思いをしていた。

乱馬「そういえば聞きたかったんだけどよ、なんでお前らが転生鏡持ってるんだ?」

そこで気になっていた疑問を乱馬が二人に投げかける。

ハタ「ああ、それか。それはな『かくかくしかじか』という事情での。今は余の持ち物となっている」

乱馬「え、ええええっ?!お、お前がアイツのっ?!」

皇子が何故所有していたか、理由を聞いて大変驚く乱馬であった。そして数瞬の後

乱馬「……なんやかんや今回の一連の騒動の一端はやっぱお前らだなこら、こら!」

との結論に至り、ゲシゲシと皇子に蹴りを打ち込んだ。

ハタ「や、止めるのじゃ!とにかく触覚は止めてっ!って爺!助けんかっ!」

爺「面舵いっぱーい!」

ハタ「無視すんな!面舵取る場面でもねえし!」

乱馬「この!この!お前もだ!」

乱馬の魔の足が爺にも迫る。

爺「あ!痛い!止めてください!」

乱馬「うるせぇ!お前らなんていなければぁ!」

ハタ「すいません!あと執拗に右目だけ狙うの止めて!」

爺「ちょ、ちょっとホントに止めてください!そ、操縦がぁぁぁ!!!」

乱馬の攻撃の余波で、操縦にとても大事そうな舵がポキっと折れた。

舵「ポキ」

乱馬「あ」

ハタ「へ」

爺「わ」

一同「…………」

変な声を出した一同であったが、床に落ちた舵を見てすぐさま沈黙に包まれる。

ハタ「……これどうなんの?」

爺「このまま真っ直ぐ飛び続けて……」

乱馬「飛び続けて?」

爺「燃料が無くなって落ちるかもしくは……」

ハタ「もしくは?」

爺「障害物に当たって撃沈するか……」

操舵室の真正面のガラスからは、巨大エイリアンが先程と変わらず元気に暴れ続けている姿が見えた。

乱馬「……つまり俺達はあの化けモンにぶち当たって撃沈すると」

爺「そういうことですな……」

ハタ「Oh……」

その間にもぐんぐん飛行船はエイリアンに近付いている。

乱馬「もう笑うしかねえな、こんなもん。HAHAHAHAHAHAHAHA!」

ハタ「それもそうじゃの!HAHAHAHAHAHAHAHA!」

爺「死にたくねえよぉ!HAHAHAHAHAHAHAHA!」

一同「HAHAHAHAHAHAHAHA!」

一しきり皆で肩を組んで笑い合い、連帯感のようなものを三人で感じ合うと一呼吸吐き

乱馬「大事なモン持って脱出するぞぉぉぉ!!!」

ハ爺「は、はいぃぃぃ!!!」

我に返って逃げ出す準備を始めたのであった。

飛行船、下方。

新八「っく!やっぱりこいつ、強い!」

神楽「化けモンのこと褒めてる暇あったら斬り込むネ!」

あかね「頑張ろう?!新八君!神楽ちゃん!」

触手の猛攻を躱しつつ、新八、神楽、あかねが奮戦する。その上空では、乱馬達が乗った飛行船がブレーキを失い、エイリアン本体に突っ込もうとしていた。

新八「……ん?あの飛行船、どっかで見覚えが」

神楽「おお、このまま行くとど真ん中ストレートコースネ」

あかね「あ、あれは……!」

その異様な光景に戦う手も止め、真っ直ぐ突き進む飛行船の行方を見守る三人。

乱ハ爺「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

新神あ「っ?!」

そこに飛行船から脱出した三人が物凄い勢いで落下してくる。

新八「ら、乱馬さん?!」

神楽「おお!援軍ネ!」

あかね「え、援軍なのかしらあれ?」

乱ハ爺「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

頭上に真っ逆さまに墜落してくる三人を華麗に彼らは躱した。その少し先では飛行船がエイリアンに衝突し爆炎を上げていた。

乱馬「……よ、よぉ」

ハタ「……優しく受け止めて欲しかった」

爺「……労災認定絶対しろよ馬鹿皇子」

ギャグ漫画補正により命を繋ぎ止めた三人がなんとか言葉を紡ぐ。

新八「ら、乱馬さん!来てくれたんですね!」

神楽「性格は悪いけどお前が来てくれたら百人力アル!反撃に移るネ!」

あかね「乱馬!来てくれるって信じてた……!」

気絶した皇子と爺を尻目に、四肢をプルプルと震わせながら乱馬が立ち上がる。

乱馬「ま、まあ今は色々置いといてだな……あいつの特性は『かくかくしかじか』なんだ……今すぐみんなを戦わせるのを止めねえと……」

新八「な、なんですって?!あいつは人の闘気を吸って強くなって巨大化し続けるって?!で、その核を破壊しない限り再生し続ける?!」

神楽「それは参ったネ。つまり『癖になってんだよね、足音消して歩くの』レベルで絶を使いながら戦わなきゃならないってことアルか?!しかも一瞬で心臓抜き取らないと!今のアイツらには到底無理ネ!」

あかね「みんな凄いやる気出ちゃってるから……」

乱馬の説明を聞いた三人が絶望的な表情を戦場に向ける。

ヤクザ「うおぉぉぉ!!!!」

ホスト「おりゃぁぁぁ!!!」

キャバ嬢「やあぁぁぁ!!!」

視線の先には闘気全開で戦うかぶき町の住人の姿が映っていた。

あかね「ど、どうしようかしら……」

乱馬「どうするも何も止めに行くしかねえだろ!」

新八「じゃ、じゃあ逆にこんな作戦はどうですか!」

とある作戦を思い付いた新八が皆に提案する。

新八「奴が闘気を吸って大きくなるといってもやっぱり限界があると思うんです!だからここはみんなで最大の闘気を放ってアイツを満腹状態にすれば、勝手にアイツが闘気を吸いまくって飽和状態になって爆発するんじゃないですか!」

神楽「おお!ドラゴンボール38巻で魔獣ヤコンを倒した作戦アルな!」

新八「そういうのは言わないでいいから」

新八の作戦を聞いた乱馬が頷く。

乱馬「うだうだしてても始まらねえ、とりあえずはその作戦に乗ってみるか!」

新八「は、はい!」

珍しく自分の意見が採用された新八が笑みを浮かべる。

乱馬「行くぞぉ!」

乱馬の掛け声に皆が全身から闘気を発する。

乱あ新神「うおぉぉぉ!!!!」

目に見える程のオーラが彼らから立ち上る。

ヤクザ「な、なんだ?!化け物の勢いが強くなったぞ?!」

ホスト「うわぁぁぁぁ!!!!」

キャバ嬢「きゃあぁぁぁ!!!」

目に見えて活性化した触手が皆を襲う。

新八「…………」

あかね「う、うん!乱馬の情報は正しかったってことで!」

乱馬「い、いやぁ!新八!目の付け所は良かったんじゃないか!」

神楽「足を引っ張るどころか敵に与するとは恐れ入ったネ、ゴミ眼鏡」

四人の下にも触手の攻撃の手が迫る。それを躱しながら

新八「ホンットすいませんでしたぁぁぁぁ!!!もう余計なことは言いませんんん!!!」

乱馬「こうなったらでかい闘気の発生源に行って事情を説明するしかねえか?!」

あかね「こんな状態でみんな話を聞いてくれるのかしら?」

神楽「それでも行くしかなさそうアル!」

意見を纏めて四人は、猛者達が集う戦場へと向かって行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

沖田「くそっ!斬っても斬っても再生するたぁなんて野郎でい!」

土方「はっ、珍しいな総悟!お前が弱気たぁ!」

沖田「てめぇを殺す気は満々なんだけどなぁ」

土方「この期に及んで何言ってんだこらぁ!」

近藤「はっはっはっは!気持ちで負けるんじゃないみんなぁ!闘気全開で頑張るぞぉ!」

真選組「了解!うおぉぉぉ!!!!」

乱あ新神「…………」

他のメンバーが戦う戦場に来た乱馬達であったが、あまりの奮戦ぶりになんと声を掛けていいか分からないでいた。

新八「め、滅茶苦茶燃えてますよ皆さん!どう話つけるつもりなんですかこれ?!」

神楽「私腹減ったから吉牛行ってくるアル」

新八「現実から逃げるなぁ!だいたいこんな状況でやってる吉野家があるかぁ!」

乱馬「さっ!あかね!俺達の世界に帰ろう!」

あかね「そうね!乱馬!お鍋の用意をしなくっちゃ!」

乱馬「フフッ!楽しみだなぁ、あかねが作った鍋!」

新八「アンタらも自分らの世界じゃないからって知らんぷりすんなぁ!だいたいあかねさんの手料理なんて食べたら――」

あかね「食べたら?」

新八「幸せですよねー」

こんな状況でもマイペースな彼らに再び触手が襲い来るも必死に躱す四人。

?「はぁぁぁぁい!皆の衆ごぉぉぉ苦労ぅぅぅ!」

そこに拡声器で響き渡るアナゴさんの声。

近藤「あ、あれはっ!!」

土方「松平のとっつぁん!!」

沖田「へへっ、戦艦動かしてくれるたぁ部下思いで涙が出るねぇ」

彼らの頭上に巨大な戦艦が一隻、主砲をエイリアンに向け浮かんでいた。

松平「えぇぇぇ!!今日も今日とてぇ、家族の記念日ぃぃぃにぃ、暴れやがったクソエイリアンとそれを退治できないクソ部下共に対してぇ、ハゲ上がりそうな程ムカついてますおじさんはぁぁぁ!!!」

その戦艦から私情丸出しのセリフが響く。

松平「とはいえてめえらぁ!!そのクソ野郎を消滅させないと俺の愛娘がおちおち暮らせねえのもこれ事実ぅ!ってぇぇぇことで登場したばかりですがぁ、松っちゃん砲ぅ!発射ぁぁぁぁ!!!!!」

エイリアンに向いていた主砲にみるみるエネルギーが溜まっていき放射され、その大部分を吹き飛ばす。

近藤「勝機は我らに在り!真選組!突撃ぃ!」

真選組「うおぉぉぉ!!!!」

これを好機と察した近藤が号令をかける。しかしそれも束の間、瞬く間にエイリアンの体は再生を始める。

土方「押せぇぇぇ!!!」

沖田「一気に潰せぇぇぇ!!!」

松平「警察をなめんじゃねえぇぇぇ!!!!」

戦艦からの援護射撃も加わるが、それでも彼らの闘気を吸うエイリアンの再生速度には敵わない。

新八「は、早く皆さんを止めないと!このままじゃイタチごっこどころか――」

一刻も早く事情を説明せんと焦る新八が三人を急かす。

神楽「私ねぇ!牛丼特盛三杯に生卵一つでいけるアル!」

あかね「あら!神楽ちゃんは省エネね!地球に優しくって素敵だわ!」

乱馬「俺なんて紅ショウガだけで充分だね!へっへ!」

神楽「な、なんとぉ?!」

あかね「もう二人とも!そんなことで喧嘩しないのっ!フフッ!」

三人が優しく微笑み合う。

新八「だから現実逃避すんじゃねえよぉぉぉ!!!しっかり目の前と向き合えぇぇぇ!!!」

打つ手無し、八方塞がりな彼らであった。


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アゴ美「喰らえぇぇぇっ!」

勝男「っ?!危ないで!クソオカマ!」

触手の一撃を食らいそうになるアゴ美を、寸でのところで勝男が抱きかかえ救出する。

アゴ美「あらやだアンタ!ヤクザなんて全く興味は無かったけど、一晩くらいなら相手してあげてもいいわよ?」

勝男「何気色悪いこと抜かしてんねんボケカス!お前やられおったらオカマ軍団総崩れするから助けただけじゃい!」

頬を赤らめるアゴ美に勝男が突っ込みを入れる。

右京「勝男さん!前見て!突っ込んでる場合やあらへん!」

勝男「な!姉さん!ワシはこんなオカマに自分の息子突っ込んでなんかあらへん――?!」

アゴ美「いや――?!」

勝男がアゴ美の相手で気を抜いたその瞬間、彼らの頭上から触手の一撃が振り下ろされる。

銀時「くそったれぇぇぇ!!!」

右京「銀さんっ?!」

近くで戦っていた銀時がフォローに入るが、衝撃による土煙で何も見えない。

アゴ美「……」

勝男「……いったぁ」

銀時「……ぐふっ」

土煙が晴れると、なんとか木刀で防いだものの触手の凄まじい威力を全ていなし切ることは出来ずに、かなりのダメージを負った銀時達の姿があった。

右京「銀さん!銀さん達までやられてもうたらホントにこの町は終わりやでっ?!」

長谷川「だ、大丈夫かぁ?!」

右京、長谷川が瀕死の三人の下に駆け寄る。

銀時「余裕のよっちゃんでぇ馬鹿野郎……」

右京「そんなに血ぃ流しといて……」

銀時「今日は多い日なんだよ、男の子の日なんだよ」

木刀を杖代わりにして銀時が立ち上がる。

銀時「おい、クソオカマにクソヤクザぁ。真っ昼間からこんな路上でベッドインたぁ恥も外聞もねえのかてめえら」

勝男「アホ抜かせクソ天パ、ワシは姉さん一筋じゃい」

アゴ美「……あら、私は構わないわよ」

勝男「まんざらでもない顔すなぁ!」

ふらふらと勝男、アゴ美も立ち上がる。

長谷川「口では強がっちゃいるがもうみんな限界なんじゃないか?!俺達このままじゃマジで……」

周囲の惨状に頭を抱えて長谷川が嘆いた。普段であったらここで軽口の一つ、きつい突っ込みの一つでも長谷川にくれてやる場面であったが、この時ばかりは皆、口も体も動かないのであった。

エイリアン「―――――――――っ!!!!!」

化け物の言葉にならない叫び声が周囲に更に絶望を広げる。

?「おいてめえらぁ!!それでもこの町のオカマかぁ!!そんなナメた真似してると全員タマ引っこ抜くぞぉ!!」

そこに、化け物の叫び声をかき消す程の音量で、野太い男の声が響いた。

長谷川「あ、あれは!」

アゴ美「マ、ママっ!」

声の発信源は元かぶき町四天王、西郷のものであった。勇ましい白いふんどし姿、そして肩で巨大なハンマーを担いでいる。

西郷「一線を退いた私が出張らなくちゃダメなんて、もう嫌になっちゃうわアンタ達」

銀時「だったらその汚いケツしまって、さっさと家帰ってガキと仮面ライダーでも見てやがれ」

西郷「つれないこと言うようになったのねパー子。まあ、実際は最近どうにも暴れたりないから運動不足解消しに来ただけなんだけど」

銀時「あの化けモンとやり合うのが運動不足解消ってんだから、どっちが化けモンかわかりゃしねえぜ」

銀時と西郷が笑う。そして西郷は大きく息を吸い込み叫んだ。

西郷「準備運動はもういいだろうてめえらぁ!オカマ軍団っ!突撃だぁぁぁぁ!!!!!」

オカマ軍団「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

フラフラだったオカマ達に力が戻り、オカマ軍団は闘気全開でエイリアンに突っ込んでいった。

そんな中また別の方角から、低く威圧感のある声が通る。

?「俺のいねえ間に随分と腑抜けた町になっちまったみたいだなぁ。後進がここまで育ってないとなると放浪生活もこれで終わりかねぇ」

?「おいこらぁ、半端やってると綺麗なお花畑咲かせちまうぞクソ共ぉ」

そこにはこれまた元かぶき町四天王、泥水次郎長の姿が。その横には娘、平子も控えていた。

勝男「親父ぃ!お嬢!帰ってはったんですかぁ!!」

右京「あ、あの時のお客さん?!組長さんやったんや……」

次郎長「久し振りに里帰りと決め込んだがなんだぁ、このザマは。これならいっそ、あの女狐に落とされた方が幾分かマシだったんじゃねえか?情けねえぇ」

勝男「お、親父ぃ。せやかてあの化けモンごっつ過ぎて……」

勝男が柄にもなく弱音を吐く。

次郎長「あんな化けモンがどうしたよ、あれくらいのモンこの町には幾らでもうろついてんじゃあねえか。そん中でオイラがいねえ間もてめえらはこの町守って来たんだ。今更そんなしみったれた事言ってんじゃねえやぃ、なあ!銀髪のあんちゃんよぉ!」

銀時「それもそうだなガングロ爺ぃ。アンタ然り、ウチの大家然り、ふんどし姿のオカマ然り。それに比べりゃなんてことねえや」

銀時が答える。

勝男「……は、それもその通りやな」

次郎長「はっはっはっは!相変わらず面白ぇあんちゃんだ。さ、おめえら。分かったならさっさとあの目障りな化けモンぶっ倒して来い。早くしねえとオイラ達の里帰り祝いが出来ねえじゃねえか」

勝男「そうですなぁ、お二人に紹介したい人もおりますし。ささっと片ぁ付けてきます」

勝男が懐から取り出した櫛で髪型を整え直す。

勝男「行くでお前らぁ!!!これがラストラウンドじゃぁぁぁ!!!」

溝鼠組「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

右京「ヤキ入れたる!」

勝男、右京率いる溝鼠組もエイリアンに立ち向かう。

?「ケツ叩かれなきゃやる気になれないなんてホントにしょうもない奴等だね。あの人が見たらがっかりしちまうよ」

?「アホノ坂田と不愉快ナ仲間タチ!サッサトアイツヤッツケテ酒ノモウゼ!」

?「清掃対象ロックオン。これより対象の排除行動を開始します」

最後に登場したのはキャサリン、たまを従えたお登勢であった。民家の屋根の上でゆっくりと煙草をふかしている。

良牙「お、お登勢さん達!!」

銀時「ババアまで来やがったのかよ……」

お登勢「へ、年甲斐もなく久々に喧嘩に首突っ込みたくなっちまってね。そしたらどうだい、私やあの人が愛した町はボロボロ。いつもの馴染みはいつもより貧相な顔しちゃって」

銀時「生まれつきなんだよ、言ってやるな。長谷川さんの顔のことは」

長谷川「ええ?!俺だけじゃねえだろそれは!」

お登勢「とにかくだよ!」

お登勢が煙を吐き出しながら言う。

お登勢「泣いても笑ってもここが踏ん張り時の大一番!この町があんな化けモンにやられるようなヤワなもんじゃないって!見せてやりな!」

銀時「ったく、うるせえババアだな。言われなくてもやる時ぁやるっての。それが銀さんのウリだからね」

桂「皆の衆!我らも行くぞぉぉぉ!!!」

皆の衆「うおぉぉぉ!!!!」

長谷川「俺もだぁぁぁ!!!」

桂、長谷川達がエイリアンに向かって駆け出す。そこに、それまでの成り行きを見守っていた乱馬たちが入れ替わるように登場する。

新八「……どうするんすかこれ。この流れ長編ラストにありがちなパターンじゃないですか。名キャラに一言もらってやる気出して敵を倒すパターンのやつじゃないですか」

あかね「良いじゃない。感動的だと思うわ」

新八「そりゃいつも通りだったらいいですけど今回はまるっきり逆効果でしょ!!今までの流れの闘気吸ってアイツ滅茶苦茶パワーアップしちゃいますよ?!てかなんでさっきから他人事みたいな感じ出してんすか!!」

乱馬「…………」

新八の突っ込みの横で、気まずそうに乱馬が頬をポリポリと掻く。

銀時「よぉ、お前も来たのかよ。待ってたぜ、大将」

良牙「フンッ、来るのが遅いんだよ馬鹿野郎」

銀時と良牙が乱馬にニヒルな笑みを見せる。

神楽「とりあえず二人に事情説明してこの長編ラストモードから目を覚まさせてやるアル。このままじゃ哀れなピエロでしかないネ」

銀時「何言ってんだ神楽。俺達は常に運命に弄ばれる道化だろうが。まあ、そのまんまってんじゃ気にくわねえから運命なんてシナリオ書いた奴の思い通りには動いてはやらねえけどな。行くぜ!お前ら!」

良牙「その通りだ、乱馬!あかねさん!みんなの力を集めてアイツをやっつけよう!そして帰るんだ、俺達の世界に!」

銀時が木刀を、良牙が拳をエイリアンに向け新八たちに発破をかけた。

あかね「……早く事情を説明した方が良いわ。なんだかとっても痛い、色々なところが」

乱馬「俺もそれに賛成だ。いくらなんでもこんな奴ら放っておけねえぜ……」

乱馬とあかねが気の毒そうに二人を見ながら呟く。

新八「そ、そうですね。ぎ、銀さん、良牙さん。とりあえず落ち着いてください」

銀時「ちょ、何言ってんだよお前ぇ。ここはこの勢いに乗っかってみんなでアイツ倒して大団円って流れじゃん。どうしたぁ?空気読めよ、突っ込みと空気読むくらいしか取り柄のないお前から空気読むの取ったらただの眼鏡突っ込みマシーンになっちゃうよ?もう行こうぜぇ?」

良牙「新八、何があったか知らないがここはお約束ってやつだろ。もう絶対勝てるぞこの流れは。早く適当に流れに乗っかって倒しに行くぞ」

あかね「それがね、銀さん。良牙くん……」

乱馬「実は『かくかくしかじか』ってやつでさぁ……」

エイリアンの闘気を吸って強くなるという特性を聞いて呆けたように口をだらしなく開け、その後頭を抱え膝を着く銀時と良牙。

銀時「ま、マジかよ……調子に乗って運命とかいうシナリオとか言っちゃったじゃぁん……うわ、恥ずかし……あぁ、もう無理だぁ!」

良牙「俺は何も言っていない俺は何も言っていない