佐久間まゆ「凛ちゃんと過ごす一日」 (24)

~起床~

佐久間まゆ「凛ちゃん、起きて」

渋谷凛「うー……」

まゆ「凛ちゃん」

凛「もう少し寝かせて。あと……」

まゆ「あと五分?」

凛「あと三十分」

まゆ「起きなさいっ」ガバッ

凛「あー、お布団……」

まゆ「ほら、着替えてください。もう朝食出来てるんですからね」

凛「眠い……まゆはなんでそんなに寝起き良いの?」

まゆ「小さい頃からママのお手伝いで朝食作ったりしてたから……でしょうか」

まゆ「逆に凛ちゃんはなんでそんなに寝起き悪いんですかぁ?」

凛「まゆに優しく起こしてもらうため……かな」

まゆ「も、もうっ……さらっとそういうこと言うんですから……」


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~朝食~

凛「ねえ、まゆ」

まゆ「はい?」

凛「余ってる野菜を味噌汁に入れるのは良いんだけど、きゅうりは合わないと思うなぁ」

まゆ「冷や汁って知ってます? きゅうり入り味噌汁みたいな」

凛「あー……知ってるけど、味噌が合わないんじゃなくて温かいのが合わないんだよ」

凛「冷や汁だって冷たいでしょ」

まゆ「じゃあ残して良いですよ、私が食べますから」

凛「ごめんね、いつも作ってくれてるのに。……はい、あーん」

まゆ「そのままお椀に残してくれれば……」

凛「良いから良いから。ほら、あーん」

まゆ「あー……ん」モグモグ

まゆ「今までも合わないと思ったものありました?」

凛「うーん、特には。でもそうやって余り物を処理するの主婦って感じがする」

まゆ「うふふ、そう言ってくれると嬉しいです」

凛「おかわり」

まゆ「はい」

まゆ(ニコニコ)

凛「な、なに?」

まゆ「たくさん食べてくれて嬉しいなぁって」

凛「昨日まで絞ってたからね。撮影当日の朝くらいしっかり食べておかないと」

凛「まゆもちゃんと食べないとバテるよ?」

まゆ「そうなんですけどね……ビキニだからお腹出ちゃうんじゃないか心配で」

凛「撮影まで結構時間あるでしょ。それに……」

まゆ「それに?」

凛「お……美味しいから大丈夫だよ」

まゆ「ふふふっ。凛ちゃんがそのセリフを言うなんて」

凛「あーやっぱり言うんじゃなかった、恥ずかしい……」

まゆ「かな子ちゃんのモノマネでもう一回」

凛「無理だよっ」

~プールでグラビア撮影~

カシャカシャカシャ……

撮影監督「はいオッケーでーす」

撮影監督「この後は休憩挟んで二人一緒の撮影をします」

撮影監督「特に指示はしないので好きに遊んでください」

凛「こんな感じで、とかないんですか?」

撮影監督「一応コンセプトは楽しく水遊びしてる感じで、ということなんですが」

撮影監督「それなら指示する必要ないでしょ?」

撮影監督「自然な表情撮りたいので、カメラも意識しなくていいです」

まゆ「分かりました」

凛「……丸投げされたの初めてだよ」

まゆ「カメラ目線でキメ顔もいいですけど、自然な表情がほしいときはこんなこともありますよ」

凛「まゆは経験あるんだ? ……そっか、元読者モデルだからね」

まゆ「ええ。でも自由に遊んでって言われても、当時は何をして良いか分からなかったんですよねぇ」

凛「自由なのに?」

まゆ「読モの頃は、仲の良い人が少なくて……つい遠慮してしまって」

まゆ「あっ、いえ、学校にはちゃんとお友達いましたよ?」

まゆ「ただお仕事で一緒になる時間が少なかったからどうしても」

凛「今は?」

まゆ「くす……全く遠慮してません」

まゆ「お仕事どころか、寝たり食べたりも凛ちゃんと一緒ですからね」

まゆ「そうそう、撮影再開前に日焼け止め塗ってくれませんか?」

凛「良いけど、撮影前も塗ったのにマメだね」

まゆ「そろそろ落ちてもおかしくない時間経ってるから……念の為に、ね」

凛「じゃあうつ伏せになって」





撮影スタッフ「監督見てください。渋谷さんが佐久間さんに……日焼け止めですかね」

撮影監督「おっ、いいねー。せっかくだから撮影しておこう。邪魔しないようにね」

撮影スタッフ「一言声かけなくていいんですか?」

撮影監督「自然な表情を撮りたい、と言ってあるから大丈夫。休憩中は撮らないとは言ってない」

撮影スタッフ「うわぁ……」

撮影監督「なによりこんな素晴らしい映像を残さないなんてありえない。彼女らに対する冒涜だよ」

撮影スタッフ「同意します」

撮影監督「終わったようだね……いや待て、まさか前も塗ってあげるのか!?」

撮影スタッフ「普通に考えたら自分で出来ますよね……どんだけ仲良いんですかね」

撮影監督「クソォ、渋谷さんの手のひらになりたい」

撮影スタッフ「激しく同意します」





凛「よし、終わったよ」

まゆ「はぁ……凛ちゃんに全身まさぐられちゃいました」

凛「そういう言い方やめて」

まゆ「今度は私が塗ってあげますね」

凛「あ、うん」

まゆ(うふふ、無防備な背中……なんだかいたずらしたくなっちゃう)

まゆ(ツツツ)

凛「うひっ!? ちょっと、くすぐったいからやめて!」

まゆ「背中は敏感なんですねぇ……ほぉ~ら、つんつん」

凛「だからやめてってばぁ!」

~ショッピング~

凛「何を買うとか決めてるの?」

まゆ「夏物のワンピースと……他に気に入ったものがあれば」

凛「ワンピースは……あった。それにしても……」

まゆ「はい?」

凛「なんというか……すっっごく可愛いデザインだよね。ほとんどにリボンとかレースついてるし」

凛(リボンパーティー……名は体を表す、なブランド名だ)

まゆ「ええ、お気に入りなんですよ。凛ちゃんもなにか選んだらどうですか?」

凛「いや、私は……こんなに女の子っぽくて可愛いのはちょっと恥ずかしいかな」

凛「ステージ衣装は、まあ……そういうものだから良いけど。私服までは……」

凛「まゆなら似合うと思うけどね」

まゆ「凛ちゃんだってきっと似合いますよ。女の子は誰だって可愛くなれるんですから」

凛「私のことはいいからっ。あ、ほら、この蒼いワンピースなんてどう? 涼しげで良いと思うよ」

まゆ「……そうですね。自分の好みで選ぶとつい、ピンクとか赤が多くなってしまうから……」

まゆ「たまには良いかも。ちょっと試着してきます」





まゆ「どう? 変じゃないですか?」

凛「うん、このブランドのデザインがまゆに合ってるのかな。寒色系も結構似合ってるよ」

まゆ「話題を変えるために適当に選んだにしては、ね?」

凛「な、なんのことかな~」

まゆ「あら、ごまかすんですねぇ」

まゆ「じゃあ凛ちゃんもこれ、試着してもらいましょうか」

凛「なんで!?」

まゆ「うふ、私が着てほしいからです♪」

凛「ええぇ~……じゃあせめて、もう少し大人しいデザインの」

まゆ「だーめ。さ、早く。それとも私が着替えさせてあげましょうか?」

凛「もう……分かったよ。まゆって結構強引だよね」

まゆ「そうですか?」

凛「Yesって言うまで『そうですよね? ね?』って言って迫るでしょ」

まゆ「迫るだなんて……不安だから確認してるだけなのにぃ」

凛(不安だからやってたんだ……ちょっとスネた顔も可愛い)





凛「……まぁ、悪くないかな」

まゆ「ほら、ね? 凛ちゃんだってこういうの似合うんですよ」

凛「でも普段使いにはちょっと恥ずかしいよ……なんというか、可愛すぎて」

まゆ「じゃあ特別なときに着ればいいじゃないですか」

まゆ「私と色違いでお揃いのワンピース……素敵でしょう?」

凛「んー、でも」

まゆ「リボンパーティーのコピー知ってます?」

凛「キャッチコピー? いや、知らないけど」

まゆ「『恋する女の子を応援する。』なんですよ」

凛「そう、なんだ……」

まゆ「ええ」

凛「これ着たら、応援された気になって……頑張れる?」

まゆ「なりますよ、とっても」

凛「じゃあ買おう……かな」

凛「でも! 私が着るときはまゆもだからね。でないと恥ずかしい」

まゆ「ふふ、はい」

まゆ「せっかくだから可愛い下着も買いますか?」

凛「それはまた今度っ!」

~TV視聴~

アクリョウガ イル...!

まゆ「ひっ……!」

凛「今の、そんなに怖いシーンじゃないよね?」

まゆ「冷静に考えたらそうですけど、その……演出が恐怖を煽るというか……」

凛「苦手ならわざわざ見なくても」

まゆ「でもせっかく……小梅ちゃんがおすすめって貸してくれたブルーレイだから……」

凛(なんで受け取ったのかな……)

凛「友達思いなのは良いんだけど――」

オマエノ タマシイヲ ヨコセエエエ!!

まゆ「きゃーーっ!!」ダキッ

凛「ま、まゆっ。苦しいよ」

まゆ「ううぅ……もうお化け出てないですかぁ?」

ウボアー!

凛「いや、絶賛活躍中だね……」

まゆ(ガクガクブルブル)

凛「こんなに怖がりだったっけ?」

まゆ「実は……CDデビューの告知をしていたときに……」

まゆ「聞こえるはずのない声を聞いてしまって、それ以来ですね……」

凛「CDデビューってことは、小梅も一緒だった?」

まゆ「そ、そうなんですよぉ……小梅ちゃんがあの子の声だ、って……」

凛(うーん……)

凛(あの子の声を聞いた → 自分(小梅)と同じ → ホラーも好きなはず)

凛(とでも考えたのかな)

凛(悪気はないんだろうけど、小梅に振り回されてるような……)

凛「仕方ないなぁ、見終わるまで抱きついてていいから。それなら怖くないでしょ」

まゆ「ありがとう……私のほうが年上なのに、ダメダメですね」

凛「年上と言ってもたった一歳差だし」

凛「それに私の方こそ、毎朝起こしてもらったりごはん作ってもらってるし、お互い様だよ」

まゆ「じゃあお風呂も今日は一緒に……だめ?」

凛「どうしようかな……」

まゆ「凛ちゃぁん……」ウルウル

凛(ああもう可愛い)

凛「ほ、ほんの冗談だって。良いよ、もちろん」

~就寝~

まゆ「はぁ……」

凛「どうしたの?」

まゆ「いえ、なんでもないです……ただ、早くプロデューサーさんに会いたいなって」

凛「まだ二日目じゃない。出張から帰ってくるのは三日後だよ」

まゆ「分かってますよぅ、ただの愚痴です」

まゆ「ああぁ~……お仕事なければついて行くのにぃ~~」

凛「学校は?」

まゆ「お仕事で休むこと多いし、学校はどうでもいいです」

凛(プロデューサーに会えないあまり、まゆがやさぐれ始めている……)

まゆ「皇族の方々の公務だってたいていはご夫婦一緒じゃないですか」

凛「うん、そこと比べるのおかしいからね」

まゆ「凛ちゃんは寂しくないんですか? 会いたくないんですか?」

凛「そりゃ会いたいよ」

凛「でも会えない時間が長ければ、その分帰ってきたときの嬉しさが大きくなる」

凛「……と思って、必死に気持ちを抑えてる」

まゆ「本当?」

凛「うん、本当」

凛「まゆがプロデューサーを好きなのと同じくらい、私もプロデューサーを好きだよ」

まゆ「……やっぱりそうですよねぇ」

まゆ「そうは見えないから、凛ちゃんは平気なのかって思ってました」

凛「そんなわけないって。私だって、ついて行けるなら行きたいよ」

凛「でもわがまま言って仕事の邪魔しちゃダメでしょ」

凛「帰ってくる家を守って支えてあげなくちゃ」

凛「それが私達、プロデューサーの妻の役目なんだから」

まゆ「そう……ですよね。ありがとう、凛ちゃん」

凛「どういたしまして」





まゆ「お帰りなさい。出張お疲れ様でした」

凛「え、これ? うん、お揃い……まゆと一緒に買ったんだ」

凛「幸子じゃないんだから、そんなに可愛いを連呼しなくていいよ!」

まゆ「うふふ。それでは……あ・な・た」

まゆ「ごはんにします?」

凛「お風呂にする?」

まゆ・凛『それとも、わ・た・し・た・ち?』

おわり

逆に考えるんだ、妻が二人でも良いさと考えるんだ
って夢の中でジョースター卿に言われたので

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