男「魔法使いはまた寝坊か?」 (63)

男「………いってきます…」スッ

武闘家「おーい、こっちこっち!」ブンブン

僧侶「え、ヒカキンの真似?」

武闘家「誰がヒカキンだ」

男「いやーすまんな」

僧侶「まあ昔から男と魔法使いは遅刻魔ですからね」

男「あ、そうだよ、魔法使いまだ来ないのかよ」

男「まああいつのことだからまた寝坊か?」


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武闘家「まあ男も人のこと言えないがな」

男「あいつより遅れたことは無ぇしあいつがいないなら変わらないだろ」

僧侶「ほんと10年振りだってのにみんな中身変わってないね」クスッ

武闘家「…そうだな」

男「そう辛気臭い顔するなよ今から旅立ちだぞ?」

武闘家「お前は相変わ」

男「馬鹿じゃねーよ」

武闘家「まだ言ってねぇぞ」

僧侶「あっ!」

魔法使い「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん♪みんなの魔法使いだよ!!」

武闘家「約束の時間知ってる?」

魔法使い「お、武闘家イケメンになったな!」

武闘家(なにこのパーティ心配)

魔法使い「男も背だけは抜かれちゃったな!」

男「そういうお前はデカくならないな」ジー

魔法使い「はぁ?お前やんのか?」

僧侶「まあまあ落ち着いて!ね!」

魔法使い「魔法使いちゃん会いたかったよーそして胸分けろー」モミモミ

僧侶「あっ、ちょつ、もう!」

武闘家「まあみんな集まったことだし出発しようか」

男「お前はこれ見てなんで冷静でいられるんだよ」

武闘家「正直こんなことしてる場合じゃないだろ?」

男「そうだな」

男「よーし出発!」

魔法使い「GOGOー!」

僧侶「うん!」

武闘家「おう!」

男「まあ最初はこの国の王のいる街に向かうか」

武闘家「そうだな、全然情報がないもんな」

僧侶「それだとこの山のトンネルをくぐるルートとぐるっと回り道するルートがあるね」

武闘家「そういえばあのトンネルにはこの近辺の魔物の中でも強い魔物がいるって話を聞いたが…」

魔法使い「大丈夫大丈夫!あたしはこの10年みっちり修行したからね!」

男「まあみんなの実力を知るためにもトンネルから行こうか」

ザシュッ

ドゴッ

ボァッ

男「まだここらの魔物は楽勝だな」

僧侶「私なんて何もしてないです…」

武闘家「まだまだダメージすら受けそうにないからね」

魔法使い「ん、トントンネルネル見えてきたね!」

武闘家「ナニソレ」

魔法使い「よーし元気出てきたぞ!」

武闘家(相変わらず話聞かないな…)

男「おい、あそこに人倒れてないか?」

タッタッタ

兵士「……うぅ…ゲホッゴホッ…」

男「大丈夫ですか!?」

武闘家「かなり出血している…」

僧侶「大丈夫、私に任せて」

僧侶「回復魔法 大!」ポゥ

シューーン

兵士「うっ…はぁはぁ…あれ?俺助かったのか?」

僧侶「ほっ…もう大丈夫ですよ」ニコリ

武闘家「ふぅ…」ホッ

男「え、今武闘家何した?まさかヌ」

武闘家「すみませんが兵士さん、ちょっとお話を伺いたいのですが」

男「ねー、おーい」

兵士「あぁ、この先の魔物のことだろ?一応俺はこの先の国王のいる城の兵士で中隊長をやっているもんだ」

男(人の話聞いてよ…)

中隊長「もともとここは魔物が多く住む山だったんだが、山を登らずにこっちの街に渡りたいという要望が多くてこのトンネルを作る時に魔物を全部追い払ったんだ」

中隊長「とはいえ俺も話で聞いただけでこのトンネル自体もう数十年の時が経ってる、この山に魔物が戻りつつあったんだ」

中隊長「ただ魔物が戻るだけならいい、この近辺の魔物はそんなに強くないから市民でも追い払うことはできるだろう」

中隊長「でもここ数年被害が急に大きくなった、そしてみんな口を揃えて恐ろしい魔物がいると言うんだ」

中隊長「それで王の命令を受け魔物討伐に行ったんだが見事に返り討ちにあってな」

僧侶「他の兵士さんはいないんですか?」

中隊長「あの腰抜け共が魔物を見たら逃げやがった!仕方がないから1人で立ち向かったが…俺も歯が立たず命からがら逃げてきたところよ」

中隊長「最近魔王の動きも活発になってきてるのに不甲斐ない…」

男「どんな魔物だったか覚えてるか?」

中隊長「でけぇ猪みたいなやつだ…だが凄まじい破壊力で強固なトンネルの壁を軽々破壊していたな」

中隊長「トンネルに限らずあの山全体を牛耳ってると考えたほうがいい、城を目指してるんだろ?気配を感じたらすぐ逃げろ」

男「じゃっ、いっちょ討伐行きますか」

武闘家「だな」

中隊長「おいお前ら俺の話聞いてたか?」

男「うちのパーティにはちゃんと話聞くやついないんだわ」

武闘家「君と魔法使いだけだろう」

男「え、お前マジで言ってる?」

僧侶「少なくても私は話聞きます!」

魔法使い「ねぇ、まだ話終わんない?」

男「な?」

中隊長「な?じゃねぇーよ!俺は本気で忠」

武闘家「まあまあ大丈夫ですよ、みんな10年みっちり修行してきてるはずですから…こんなとこで勝てないようじゃ先には進めませんし…」

中隊長「…わかった、だが俺もついていく…負かされたまま泣いてちゃあ男じゃねぇし、勝てたら城にお前らの功績を報告してやるよ」

~トンネル内~

ズタンッ

バキッ

魔法使い「ん、いるね…」

武闘家「あぁ…」

中隊長「わかるのか?」

男「まあこれだけ殺気立ってればねー」

中隊長「ずいぶん熟練した旅人達なんだな、10年だっけか?」

男「いーや俺達これ初陣」

中隊長「え、は?おいちょっと…」

武闘家「来た!」

猪魔獣「グオオオオォォォ…」

男「おーけー」チャキッ

武闘家「いや、1発目は俺に行かせてくれ」

猪魔獣「フシュルルル…ゴオオォォ!」ズリズリ

魔法使い「武闘家、もう来るよ!」

武闘家「大丈夫、みんな一回下がってて、あの魔獣には真っ直ぐ突っ込んでもらうから」

中隊長「おい!馬鹿死ぬぞ!」

猪魔獣「オオオオオォォォ!!」ズタンズタン

武闘家(関節が無数にあるイメージをするんだ…そしてその関節ごとに力を増幅させるイメージ…もっと関節を増やすんだ…まだ…まだだ…………)

中隊長「おい!」

武闘家(……これだ)カッ

男「あいつは大丈夫だ」

猪魔獣「ゴオオォォォォォォ!!!」

武闘家「うおおおおぉぉぉ!」

武闘家「音速正拳突きッッッ!」キンッ

猪魔獣「ヌオォォォ…」

バキバキッ

ガラガラガラ

中隊長「あの巨漢を殴り飛ばしただと…」

武闘家「ちっ、予想以上に重いな」

僧侶「手、出して!回復魔法 中!」

魔法使い「次は私の番♪」

魔法使い「上級火炎魔法 獄炎!」ゴァッ

メラメラメラ

猪魔獣「ォ…ォォ…」

中隊長(こいつ上級魔法まで…いったい何なんだこいつらは…)

武闘家「やったか?」

猪魔獣「ォ…ォオオオオオ!」

魔法使い「いいや、しぶといね」

男「トドメだ!」

男「三連燕返し雷撃斬!」バリバリバリ

中隊長(…なんかアダルトグッズで聞いたことあるような技名だ…)

猪魔獣「オ…ォォォ……………」

男「ほら、中隊長倒したぜ」

魔法使い「まあまああたしがいるからね!」

中隊長「…ありがとう…凄いなお前ら」

男「まあね!まさかみんなもここまで鍛えてるとは思わなかったけど…」

僧侶「ほんとみんな凄いです!」

武闘家「まあいいとこは持ってかれたけどね」

男「ちなみに技名はお世話になってる師匠から取ったんだぜ」

中隊長(…らいか使ってるのか…)

武闘家(…誇ることじゃないだろ…)

僧侶「へぇー師匠なんていたんだ、会ってみたいな」

男「こ、今度会わせてやるよ!」

武闘家(女に突っ込まれると思ってなかったんだな)

魔法使い「うあー腹減ったー早く行こーよー」

男「お前は相変わらず食い意地張ってるのにデカくならないのか?」

魔法使い「おいてめぇなんつった!」

僧侶「2人とも落ち着いて、ね?早く街に行こう?」

魔法使い「うるさいその脂肪渡せ」

中隊長「ははっ、お前らは仲がいいんだな!」

武闘家「まあ幼馴染みですから」

中隊長「ところでお前らは街に行って何をするつもりなんだ?」

男「…まあいろいろね」

魔法使い「」

武闘家「」

僧侶「…うん」

中隊長「…あまり聞かれたくないことだったか?悪いな…」

武闘家「いえ、大丈夫です」

魔法使い「あ、出口見えてきた!」

中隊長「トンネルを抜ければ城はもうすぐだ」

魔法使い「おートンネル抜けたー」

武闘家「すっかり夕方になってるな」

僧侶「夕日きれい!」

魔法使い「凄いな!なんか小さい頃みんなで日が暮れるまで遊んだのを思い出すな…」

みんなとくだらない話をしたり、魔物を倒したり、夕日を眺めたり、この瞬間はまるで幼い頃と何も変わってないように錯覚する

でも俺達はみんな大きなものを失ってる

心に深い傷を負っている

いつかその傷が膿んできて体全体を蝕むような気がしてならない

だからって沈んでいる訳にもいかない

とにかく今は前に進むしかない

男「お、城見えてきたな」

魔法使い「ふぅーついたー」

武闘家「日も沈んでしまいましたね」

中隊長「悪いが城は日が沈むと門を閉めちまうんだ、そうすると余程緊急事態じゃない限り城の中には入れない」

中隊長「報告は明日になるから今日はどこかの宿でゆっくり休んでくれ、ここは栄えてるから酒屋も宿屋もいっぱいある」

中隊長「俺は家で家族が待ってるからまた明日な」

僧侶「ありがとうございます!」

中隊長「俺は今日何もしてねぇよ、お礼を言うのはこっちだ、ありがとうございます」

男「それじゃあどうする?」

魔法使い「腹減った!」

男「お前は」

魔法使い「うるせぇ燃やすぞ」

武闘家「まあ俺もお腹空いたし」

僧侶「…」グゥー

男「確かに俺も何か食べたいな…飯にしよう!」

魔法使い「ふむふむ…」クンクン

武闘家「何してるんだ?」

魔法使い「…こっちだ、こっちの酒場が一番旨いものが置いてある」

僧侶「す、凄いね…」

男「にしてもデカいなーこの街」

僧侶「私達田舎もんですからね…」キョロキョロ

武闘家「そういえばみんなはこの10年間どこにいたんだ?」

魔法使い「あそこだ!」ダーー

男「まあ飯ゆっくり食いながら話そうぜ」

魔法使い「はやくはやく!」

男「あいつ元から自由奔放だったけどここまでだったか?」

ガチャッ カランカラン

酒場の主人「いらっしゃい!」

魔法使い「とにかく旨いもの大量にくれ!」

酒場の主人「ははっ、頼み方が豪快だな!」

武闘家「なんかすみません…」

酒場の主人「いいってことよ!愚痴を聞くのも仕事だがやっぱり大きな笑い声を聞けるのが一番楽しいのさ」

酒場の主人「嬢ちゃん今日はガビアルカルビに女王エビ、シモフリトマト、千年蟹、黄金米が入ってるけどどうするかい?」

男「うわ、どれも高そうだぞ…」

魔法使い「もちろん全部で」キリッ

武闘家「初日で財布からにするつもりか?」

魔法使い「あとフラヒヤビール4つ!」

僧侶「私お酒飲んだことない…」

魔法使い「大丈夫大丈夫!せっかく10年振りに会えたんだ、みんなといた時はまだ子供だったからこうやって飲んだりもできなかっただろ?ずっとみんなで飲んではしゃいでみたかったんだ!」

男「まあ今日くらいぱーっとやるか!」

武闘家「まあはしゃぎたくないって言ったら嘘になるしな」

酒場の娘「こちらフラヒヤビール4つになります」

男「じゃあ…」

「「「「乾杯!」」」」

男「そうだ、武闘家さっきみんな何してたとか聞いてただろ?お前は何してたんだ?」

僧侶「私も気になります!」

魔法使い「」ソワソワ

武闘家「自分が引き取られた先はそこそこ裕福な家だったんだ、しかも両親がいい人で可愛がってもらってた」

男「修行とかは?」

武闘家「少し年の離れたお兄さんがいてね、そのお兄さんに習ってたんだ」

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ガチャッ

武闘家「ただいま!」

養母「おかえりなさい」

武闘家「お兄さんは!?」

養母「それより宿題は?」

武闘家「もう学校で終わらせてきたから場所教えてよ」

養母「はいはい…今日は道場に行くって言ってたよ」

武闘家「わかった!じゃあ道場行ってくるから!」

ガチャッ

村人「お、武闘家、どこ行くんだい?」

武闘家「道場行ってお兄さんに稽古つけてもらう!」

村人「そうか、力をつけることはいいことだな、その分多くのものを守れる…って子供にはまだ早いか」ハハッ

武闘家「ううん、分かるよ!自分もお兄さんみたいにみんなを守れる強い人になりたい!」

村人「いい志だな」

武闘家「んでね、将来魔王を倒すんだ!」

村人「ははっ、応援してるぞ」

タッタッタ ガラガラ

武闘家「お兄さん!」

義兄「ん、どうした?」

武闘家「今日も稽古をつけてくれ!」

義兄「んなことだろうと思ったけどね」ハハッ

義兄「ああ、全然いいよ」

武闘家「よっしゃ!今日は何を教えてくれる?音速正拳突き?」

義兄「ありゃあお前には10年早いな」

武闘家「そんなに…」

義兄「まずは基礎基本を極めなきゃな、俺も基礎基本から稽古してきたんだ」

武闘家「そうなの?」

義兄「当たり前だろ?誰もが最初は初心者なんだよ」

武闘家「おぉー」

義兄「どうした?」

武闘家「誰もが最初は初心者」キリッ

義兄「てめ、この野郎!」ガシッ

武闘家「わかった!ごめんって!」

義兄「お前はこめかみグリグリの刑だ」ワハハ

武闘家「ぎゃああぁぁ!痛ってぇーーー!」


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武闘家「こんな感じで尊敬する兄に教えてもらってたんだけど最初は全然ダメでさ」

酒場の主人「ほい、これがガビアルカルビと女王エビと黄金米だ」

魔法使い「やった!いただきます!」ガツガツ

武闘家「それでも強くなる道はこれしか無かったからずっと稽古をつけてもらっててさ」モグモグ

僧侶「なんか兄弟の絆っていいなー」モグモグ

男「俺なんて師匠にしごかれまくってたからな」グビグビ

武闘家「自分はまともに戦えるようになるまで5年はかかったよ」

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武闘家「おはよー」

養母「おはよー、ご飯できてるわよ」

武闘家「ありがと、飯食ったら道場行ってくる」

養父「勉強は大丈夫か?」

武闘家「それがこないだのテスト学年3位」ドヤッ

養父「そうかそうか、なら行ってよし!」

武闘家「あれ?お兄さんは?」

養母「まだ寝てるわよ」

武闘家「…これはチャンスだ」

ガチャッ

スーーッ

武闘家「よし!まだ寝てる!」

武闘家「思いっきりデコピンしてやれ!、ってその前に落書きしとくか」キュッキュッ

武闘家「…ッククク…ダメだ笑いこらえられない」プルプル

武闘家「よし起こすか!」

武闘家「オラ!起きろバカお兄さん!」ビシッ

義兄「ぬわっ!」

武闘家「先手必勝!今日こそ勝ってやる!」

義兄「わーったちょっと待っとけ」

義兄「おはよー」

養母「おはよー、って何それ」クスクス

義兄「え、なんのこと?」

養父「…なんじゃそりゃあ!」ブワハハハ

養母「…鏡見てきたら?」クスクス

義兄「…これは…武闘家てめぇこの野郎!」ドカドカ

義兄「っていねぇ!」

養母「さっきこっそり外行ったわよ、多分道場じゃないかしら」

義兄「武闘家待てこらー!」

ガチャッ

養母「…ほんと仲いいねあの2人は」

養父「そうだな、武闘家も最初からしっかりしていたが何か放心気味で心配してたんだが」

養母「もういつの間にか5年も経ったからね」

養父「もうそんなになったか」

養母「いつまでも若くはいられないのよ」クスクス

養父「いーや俺はまだ若いね」

養母「でも武闘家が来てくれてほんとに良かったわ」

養父「義兄もずっと引きずってたからな」

ドカドカ ガラガラガラ

義兄「おいこら武闘家」

武闘家「言ったでしょ?先手必勝だって!」

義兄「…いい度胸じゃないか、いつも俺に負けてるくせに…」

武闘家「だから今日こそ勝ってやるって!」

義兄「よし、こいよ」

武闘家「言われなくても!」ダッ

義兄「ただ突っ込むだけじゃ甘いぜ」ヒュッ

武闘家(きた、これは真面目に受けてはいけない、逸らすように受け流して懐に入る)スッ

義兄「ほう」

武闘家(ここだっ!)

パシッ

義兄「上手くなったな、でもそんな水月ガン見してたらバレバレだぞ?」

武闘家「まだまだっ!」

武闘家(ここまで接近すれば足下はブラインドになる)

武闘家(ここで上段廻し蹴りだ!)

義兄「いい攻めじゃないか」スカッ

武闘家(ならば後ろに回りこむ)シュン

義兄(速いな、だが…)ブン

武闘家(後ろとった!)

義兄(裏拳!)

武闘家「もらっ…グヘッ!」

ゴロゴロ ドテン

義兄「すまんやり過ぎたか!?」

武闘家「はん、情かけんじゃねぇ」スクッ

義兄「そうかいそうかい、でもやられっぱなしだぞ?」

武闘家「こっからだって!」

武闘家(相変わらず読まれてるが、それ以上にお兄さんのスピードは何故ここまで速いんだ…)

武闘家(…それは後で聞くとして今勝つためにはどうしようか、こっちも相手の動きを読まないとな…)

武闘家(いや、分からないなら動かせばいいんだ!)

武闘家(相手の動きを制限して徐々に追い詰めていこう…)

武闘家(まずは足に気を溜めて…)

武闘家「飛脚術 一閃!」ヒュッ

義兄「お、ちゃんと飛ばせるようになったじゃないか」スッ

武闘家「もう一丁!」ヒュッ

武闘家(これでお兄さんは飛んで避けるしかない、ここを突く!)ダッ

義兄「よっと、ん?」スッ

武闘家「貫手 雀蜂!」ズオッ

義兄「うおっと!」スッ

義兄「危ねえ危ねえやられるとこだったぜ」

武闘家(なんで当たらない、まるで空気を相手にしてる様な感覚だ)

義兄「じゃあ次はこっちの番だ」ビッ

武闘家「消え…」

義兄「後ろだ、落書き小僧にはこめかみグリグリの刑だ」グリグリ

武闘家「ってぇぇぇ!」

義兄「完全に後ろとったし今日も俺の勝ちだな」ハハハ

武闘家「…なんでそんなに速いんだ…」

義兄「んー、お前にもそろそろ教えてやるかな…」

武闘家「え?」

義兄「俺には無数に関節があるのよ」

武闘家「えぇー!?」

義兄「嘘だよ…」

武闘家「…え?」

義兄「実際に無数に関節がある人間がいる訳無いだろ」

武闘家「じゃあどうやって?」

義兄「イメージをするんだ」

武闘家「イメージ?」

義兄「あぁ、俺には関節が無数にあると、そしてその関節一つ一つで伝わってきた力をさらに加速させるイメージを持つんだ」

義兄「音速正拳突きの正体はたったこれだけ」

武闘家「あの技が!?」

義兄「スピードだって足に無数の関節があると想像するだけ」

武闘家「それならいけそう!」

義兄「でも俺は音速正拳突きをマスターするのに5年はかかったぞ」

義兄「それを動きの中に取り入れるようになったのはさらに5年かかった」

武闘家「お兄さんでそんなに…」

義兄「まあ誰でも最初は」

武闘家「初心者?」クスクス

義兄「グリグリしようかな…」

武闘家「すみません」

義兄「…しかも危険があるんだ」

武闘家「危険…」

義兄「あぁ、さっきも言ったとおり無数に関節がある人間なんていない」

義兄「それを無数に関節がある人間と身体に思い込ませて動かす訳だ」

義兄「当然そのスピードは人間の限界は超えているから身体が保たない」

義兄「自分が関節を増やせば増やすほど身体を痛めつけることになる」

武闘家「なるほど…」

村人「うわー!敵襲だー!魔王軍だー!」

義兄「なにっ!」ダッダッ

武闘家「自分も行く!」

ガラガラガラ

何か片腕食われそうな奴だなwww

義兄「てめぇらなんのようだ!」

虎男「魔王様の命令でここを侵略せよとのこと、そして人間どもは捕まえて奴隷にしろとの命も受けている」

武闘家「んな、そんなことさせるか!」

虎男「貴様等の意見など聞いてない、行け野郎共!」

下っ端魔族s「うおぉー」

義兄「飛脚術 十閃!」ヒュン

下っ端魔族s「ぐわっ!」ドサッ

下っ端魔族s「グヘッ!」ドサッ

武闘家(すげぇいつの間に十閃も…全然見えなかった…)


下っ端魔族s「ちっ、じゃあこっちの小僧だ!」

武闘家「舐めんじゃねぇよ!」

武闘家「三連突き!上段廻し蹴り!貫手 雀蜂!」ヒュッ ヒュッ ヒュッ

グヘェ! ギャオース! ヌワー!

下っ端魔族s「と、虎男さんこいつら只者じゃないっす!」

虎男「ちっ、人間相手に情けない奴らだ!」

武闘家「…はぁはぁ、数が多いな」

義兄「気を緩めるな!」

バキッ ドゴッ ズドムッ

ギャー ブヘェー グワー

下っ端魔族s「はぁー!」ヒュッ

武闘家「くっ!」ズキズキ

義兄「はっ!」ドカッ

下っ端魔族s「ギエェ!」ドサッ

義兄「あと少しだ頑張れよ!」

武闘家「ごめん、助かった…ありがとう」

武闘家(やっぱりお兄さんにはまだまだ追いつかないなー)

武闘家(確かにスピードも速いけどそういうものじゃない何かがあるんだ)

武闘家(どうしたらお兄さんみたいになれるのか)

武闘家「飛脚術 一閃!」ハァハァ

虎男「隙あり!」

虎男「飛剣術 四閃!」ヒュヒュン

武闘家「え?」

義兄「武闘家ーー!」バッ

ズバッ ズバッ

義兄「…グハッ…」ポタポタ

武闘家「お兄さん!」

虎男「庇いに入るとは泣かせてくれるね」

虎男「手強い方が自ら手負いになってくれるとは思わなかった」ハハハ

虎男「貴様には死んでもらう!」

武闘家「…」ギッ

虎男「何だその目は」

武闘家「ふん!」

虎男「貴様は邪魔だ」ドカッ

武闘家「グワッ!」ゴロゴロ

虎男「気が変わった、もうどちらも虫の息だが小僧から殺そう」スラー

義兄「…」フラッ

虎男「…まだ立つか」クルッ

義兄「…武闘家は絶対に殺させない…」グッ

虎男「今にも死にそうなお前がよく言うよ」

義兄「…もう2度と俺の前で弟は殺させない!」

虎男「残念だがその願いは叶わない、お前と小僧2人共ここで死ぬのだ」

義兄「もう2度と後悔したくない!いや今でもずっと後悔している!」

義兄「絶対に守る!そのために常に強さを求めてきた!絶対に絶対に弟は殺させない!」

武闘家(あぁ、なんでお兄さんが強いのかわかったよ…)

武闘家(お兄さんは昔自分の目の前で弟を殺されたことを後悔してるんだ)

武闘家(それで護る強さを手に入れるために強くなったんだ)

武闘家(強くなる必要性が全然違ったのか)

武闘家(お兄さんは強くならなくては気がすまなかった)

武闘家(もう何も失いたくないっていう必死の想いだったんだ)

武闘家(自分は護りたいって気持ちをわかった気でいたけど全然違う)

武闘家(何だかんだ自分はただ復讐したいだけだったのかもしれない)

武闘家(でも、今は違う)

武闘家(…お兄さんは、いや今は別れた他の仲間も絶対に殺させない!)

虎男「話の通じない奴だ、茶番は終わりだ」

武闘家「動けクソがー!」

武闘家(関節を増やすイメージ…もっとか…もっともっと…)

虎男「友情ごっこは見飽きたんだよ、燕返し!」ビュン

武闘家「音速正拳突きッッッ!」ドンッ

虎男「ぐっ…てめぇどこからその力が…」グラッ

義兄「はぁぁぁあああ!」ヒュン!

虎男「な、速い…」

義兄「夢想乱舞ッッッ!」

ドカドカドカドカ

武闘家(み、見えないどころじゃない、一体一瞬の間に何百発打ち込んでるんだ…)

虎男「…カ……ウグッ…」ドサッ

武闘家「…絶対負けねぇ」ニヤッ

養父「大丈夫か!」

義兄「あぁ全然大丈夫元気有り余っているわ」ポタポタ

養母「嘘つけ!…無理しないでよ…」

養父「弟のこともあるのはよくわかるがお前と武闘家が死んだら俺達はどうすればいいってんだ」

武闘家「…死んでも死なないから大丈夫、失うのが怖いのはみんな同じ」

武闘家「自分が死ぬことで大事な誰かが悲しむなら死ぬわけにはいかないよ」

養母「何か急に大人になったわね」

武闘家「まあ色々知ったんだ」

養母「もう武闘家が来てから10年になりますよ」

養父「もう10年か、早いな…」

養母「今日からまた少し寂しくなるわね…」

養父「ああ、義兄も魔族軍を追い払ったその力を認められて王国軍に泊まりこみで武術を教えてるからな」

養母「たまには顔を出して欲しいわね、武闘家もよ?」

武闘家「うん」

養父「俺と母さんと義兄を悲しませるなよ」

武闘家「うん」

養母「貴方ならしっかりしてるから大丈夫よ、やっていけるわ」

養母「でも無茶は厳禁よ」

武闘家「もちろん、では」

武闘家「お世話になりました!魔王を倒しに行ってきます!」

養父「おう!頑張れよ!」

養母「いってらっしゃい!」


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>>51
どこかで『灼熱の時間』は入れたいwwwwww
あの時の愚地克巳の輝きは凄かった

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