穂乃果「琥珀色のサマーデイ」 (98)


ラブライブss5作目になります
今回は穂乃果ちゃんと絵里ちゃんの、ある夏の日のお話

*4~ 区切りのいいとこまで投下していきます
*百合要素は無し
*わりと長めです

では前置きはこの辺で♪
空いたお時間で楽しんでもらえればなと



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437224945



「ふう、…やっと終わった。今日はなかなか売れたんじゃないかな?」

一段落ついた穂むらの中はがらんとしてる。

今日の午前中いっぱいは、私が店番をすることになっていて、今それが終わったところ。

「この後は、あーどうしよう。宿題は…うん、いいや。夏休みはまだ始まったばかりだし。退屈だなぁ…」

私があれこれ悩んでると後ろから声が飛んでくる。

「穂乃果ー?ぶつぶつ言ってないで早く上がっちゃいなさい」

「あ、うんわかったー」

お母さんに急かされちゃった。

まあいつまでもこうしてても仕方ないしね。

くるりと背中を向けたとき、お店の引き戸がからからと音を立てる。

おっと、いけないいけないお客さんか。

看板娘としてちゃんと出迎えなくちゃね。

こういうところは我ながら、しっかりしてるんじゃないかなぁ?…なんてね、えへへ。

私は精一杯の笑顔を作って振り向く。

「いらっしゃいませ!…ってあぁ!絵里ちゃん!」

「はぁい穂乃果♪」

午前中最後のお客さんは絵里ちゃんだった。

「珍しいね絵里ちゃん。今日は何を買いに来たの?」

「おばあさまへ差し入れを、と思ってね。おばあさまはここのお饅頭大好きだから」

「おぉ、なるほど。じゃあサービス出来るか、お母さんに聞いてくるから。待ってて!」

「気持ちだけでありがたいけれど、いいの…穂乃果?」

「うんいいのいいの、気にしないでっ。じゃちょっと言ってくる!」

私は慌ただしく店内へと駆けていく。

「お母さん駄目かな?」

「えぇ…?まあ、いいけれど、あんまり多くは駄目だからね。わかってはいるでしょうけど」

「大丈夫だって。お母さん、ありがとう♪」

よしっ流石はお母さん。

許可を貰った喜びで、自然と嬉しくなる。

弾む足取りで絵里ちゃんの元へ向かう。

お母さんが後ろで、相変わらずせわしないんだからとか言ってる気がするけど、この際それは置いておいてっと。

「と、いうわけで許可貰ってきましたっ!」

「ありがとうね穂乃果」

「えへへ、穂乃果にはこのくらいしか出来ないから」

まあ普段のお礼も込めて、ね?

それにしても絵里ちゃんのおばあちゃんってどんな人なのかな…やっぱり綺麗な人?

うーん、気になるなぁ。

…そうだっ、いいこと思い付いちゃった♪

「じゃ穂乃果、明日の練習でまた会いましょう」

用が済んで帰ろうとする絵里ちゃんを私は引き留める。

「待って、絵里ちゃん」

不意に呼び止められて、絵里ちゃんはきょとんとしてる。

本日はここまでです

更新です

「どうしたの?忘れ物かしら」

「ううん、違うよ。ね、穂乃果も一緒に行ってもいい?午後やることなくって」

「そうねぇ…いいわ♪きっとおばあさまも喜んでくれると思うわ」

「本当!?ぃやったーっ!ようし、それじゃ行こっか」

「…穂乃果、あなたその格好で行くの?」

「へ?…うわあっ」

まじまじと自分の格好を見て思い出す。

そういえば今まで仕事中だったね。

この割烹着で外に出るのは流石に恥ずかしい…。

「す、すぐに着替えてくるよ」

「慌てないで大丈夫よ?別に急ぎの用事じゃないから」

「う、うんっ!」

ちょっとテンションあがりすぎちゃったかな。

気持ちだけびゅーんって突っ走って行っちゃってた。

今日外はとっても暑そうだなぁ。日差しには気をつけないとね。

着替えも済んだし…うんっ準備万端!

急いで階段を駆け下りて、一言声をかけておく。

「いってきまーすっ!」


「うっ…やっぱり外は暑いね」

「今日はいわゆる真夏日って、天気予報で言っていたわ。熱中症にならないように気をつけましょう?」

「そうだねぇ…。後で飲み物買わなくちゃ」 
 
情けなくうなだれる穂乃果とは反対に、絵里ちゃんはどこか余裕そう。


この暑さでどうして平然としていられるんだろ、わからない…。

「絵里ちゃんはなんか平気そうだね。穂乃果はとろけちゃいそうだよ」

「そんな…とろけるって大げさね。まぁ気の持ちようじゃないかしら?一種の慣れだと思うの」

つまり精神論ってことだよね。

海未ちゃんと同じこと言ってるなぁ…そもそもそれでどうにかなったら苦労はしないと思うんだけど。

うーんでも、実際に絵里ちゃんは全然辛くなさそうだし、一回試してみようかな。

「…暑くない、暑くない暑くない……駄目だーっ!やっぱり暑いよっ!」

自己暗示をかけてみたけど、やっぱり無理があるって。

なんというか、これで大丈夫なのってすごいなって、吹き出す絵里ちゃんを横目にそう思う。

「ふふ…穂乃果には難しかったみたいね。まぁでも暑いって口に出さないだけでもましにはなるんじゃないかしら?」

「そういうものなのかなぁ」

暑さを感じないのは流石に厳しいけど、口にしないだけならなんとかなるかな?

とりあえずは気を紛らわせることを考えなくちゃ。

「そういえば、絵里ちゃんのおばあさんはどんな人なの?」

ずっと気になっていたことを聞いてみることに。

もとよりそれを確かめるために、私の好奇心でついてきたわけだしね。

「とっても優しい人よ。この街でロシア専門料理店をやっているの」

「おお、料理人さんなんだ」

「ええ、今でも現役で仕事をしているわ。

 腰を痛めるから、そろそろ後継者に任せたほうが良いって言っているんだけど、聞かないのよね」

やれやれって体をすくめてる。

苦笑いしてるけど、おばあさんのことを話す絵里ちゃんはすっごく嬉しそう。

「絵里ちゃんっておばあさんが本当に好きなんだね♪」

「そうね。私にとってはとても大切な人よ」

絵里ちゃんの柔らかな微笑みに、聞いてるこっちまで幸せオーラに包まれていく。

本日はここまで

更新です

「もっと聞きたいな絵里ちゃんのおばあさんのこと。教えて絵里ちゃん!」

「喜んで♪じゃあまずは、得意料理について話そうかしら」

「うんうんっ」

「おばあさまの作る料理はどれも絶品だけれど、中でもボルシチが最高ね。世界で一番美味しいボルシチよ」

世界で一番…。いったいどれだけ美味しいんだろう。

是非とも食べてみたいね!ところで…。

「ボルシチってどんな料理なの?」

「うーん簡単にいえば、野菜のたくさん入ったロシア風スープのことね」

「うっ…野菜…。ね、ねぇピーマンは入ってないよね!?」

「ええ、入っていないわ」

ふぅ…よかったよかった。

それなら穂乃果でも食べられそう。

安心して胸をなでおろすと、絵里ちゃんに軽く笑われる。

「あははっ…穂乃果ったらそんなに必死にならなくてもいいんじゃない?」

「だってピーマン嫌いなんだもん。大きくなったら食べられるかなーって、

 この前食べてみたんだけど、やっぱり美味しくなかった…」

その時の光景が頭に蘇ってくる。

なにがあったのかはわからないけれど、お母さんがやけにはりきって作った野菜炒め。

その中に埋もれるピーマンを泣く泣く食べたっけなぁ…。

その後雪穂にも笑われたんだよね。なんだか情けなくて切なくなる。


「でも穂乃果の気持ちも分かるわ。私も海苔と梅干しはいつまで経っても苦手なままだから」

「絵里ちゃんにも好き嫌いってあるんだね」

「私にだって一つや二つくらいあるわ。それこそ弱点のない人なんていないんじゃない?

…あ、見えてきたわ、あそこがおばあさまのお店よ」

いたずらっぽく笑う絵里ちゃんが指差した方向を見てみる。

赤い屋根のオシャレなお店が確かにあるね。

あの看板はなんて読むんだろう?

なんだか英語のような違うような…。

「カ、カパ…?うん?絵里ちゃん、どういう意味なの?」

「“Сарафан”サラファンって読むのよ。意味はまあ、ロシアの花嫁衣装みたいなものかしら」

「おぉすっごく可愛い名前なんだね。花嫁衣装かぁ…。絵里ちゃんの花嫁姿見てみたいな♪」

「え、そ、それは駄目よ。まだ結婚なんて年じゃないし。それに結婚する前に着ると行き遅れるって言うじゃない?

もし、そうなってしまったら大変だもの」

「えぇ?そんなの迷信だってー。心配しなくても大丈夫だって」

絵里ちゃんって結構意外なところで心配性だよね。

暗いところが怖かったりで、実はμ'sの中で一番純粋なのかも。


「と、とにかく中へ入りましょう」

「うん、そうだね!」

動揺を隠しきれない絵里ちゃんが“close”って書かれた扉を開けて、私達は中へ入っていく。

からんからんと透き通った音が店内に響き渡る。

普段はこういう落ち着いたお店には来ないから、なかなか新鮮な感じがする。

たまにはこういうのも良いよね。

それにしても良い香りが広がってるなぁ。

本日はここまです

再開になります


「まだ準備中だよ。…ん?おや、エリチカいらっしゃい」

「ええ、おばあさまこんにちわ♪調子はどうかしら?」

「そうだねぇ、ぼちぼちだよ。ところでエリチカ、そちらの方は?」

絵里ちゃんがカウンターにいたおばあさんとハグを交わした後、おばあさんが私に気付いたみたい。

「初めまして、高坂穂乃果ですっ」

「高坂って…もしかして穂むらの孫娘さんかい?」

「はい!」

「まあ随分と大きくなったねぇ。前見た時は私よりも小さかったのに」

「私のこと知っているんですか?」

「ええ。十年ほど前のことだったか、私がお饅頭を買いに行ったとき

妹さんと二人店前で一生懸命やっていたのをよく覚えているよ。とっても可愛らしかったわ」

「えへへ、ありがとうございます」

意外なところで自分のことを、知ってる人に会うのって嬉しくなるよね。

でも、言われてみれば、昔会ったことがあるような…。

確かに、私が小さなころお店に来てた。

日本人からしたら物珍しい、銀に輝く髪の毛のおばあさん。

あの時、閉店後に雪穂と二人で綺麗だとかなんとか言いながら、かなりはしゃいでた気がする。

もし本当に絵里ちゃんのおばあさんだったら、これもある意味運命なのかな?

おお、なんだか不思議な感じ。思わぬ出来事に胸が熱くなる。

「そういうわけで今日は、看板娘自らおばあさまのために届けにきてくれたのよ」

「わざわざありがとうねぇ。今紅茶を出して上げるから、待っててもらえるかい?」

「あ、じゃあお願いします!」

にっこりとおばあさんが笑って厨房の方へと向かっていく。

それを見ていた絵里ちゃんが、今にも私がやる!って言い出しそうな顔で後を追う。

けど、おばあさんに大丈夫だからとたしなめられちゃった。

ふうと溜め息を一つついて、絵里ちゃんがこっちにウインクをしてくる。

「…ね?全然私のことを頼ってくれないの」

「あはは…うんでも、話に聞いてた通りの人だね。すごく暖かくって、優しい人」

「ふふ、でしょう?」

得意気に言う絵里ちゃんの笑顔が眩しい。

こうして見てると絵里ちゃんって前よりも表情豊かになった気がするね。

「…?穂乃果?どうしたの?じっと見つめられたら照れるわ」

「あ、ううんなんでもないよ♪」

しみじみと見てたのが伝わってたみたい。

別にやましいことはないけど、なんとなく誤魔化しちゃった。

絵里ちゃんは不思議そうな表情をしてるけど、大して気にしてなかったみたいで、そのまま席へと座り込んだ。

絵里ちゃんが座ると同時におばあさんが戻ってくる。

「はい、おまちどうさま」

おばあさんが丁寧に紅茶を差し出してくる。

広がる香りにほんの少しの安心感…うん、そう安らぎを感じるかも。

「ありがとう、おばあさま。あ、穂乃果、ロシアでは紅茶に砂糖のかわりに、ジャムを入れるのが主流なの」

はい、これと絵里ちゃんから蓋付きの小瓶を手渡される。

よっと、中身はなにかなーっと…。

恐らくイチゴだねこれは。…そういうことならありがたく使わせてもらうねっ。

「ふむふむ、結構美味しそうだね。…じゃ、頂きますっ」

こういうのも異文化交流って言うのかな?

そんなことを思いつつ、ゆるゆると溶けていくジャムをかき混ぜて一口。

「…っ、すっごく美味しいです!」

「それはよかった。日本の人は紅茶に親しみのない人も多いからねぇ。気に入ってもらえてなによりだよ」

確かにそうかもしれない。現に私は種類すらわかってないわけでして。

真姫ちゃんならきっとわかるんだろうなぁ。

まぁ、美味しいってだけでも今は十分…と思いたい。

ではでは 本日はここまで

再開です


「ふぅ、ごちそうさまでした!」

紅茶を飲み終えると同時に、急にお腹が空いてくる。

ぐーっと起きな音がひとつ。

笑っちゃいそうになるような音が響く。

「そういえば勢いで来たから、お昼食べてなかったのね」

「うぅ…ごめん絵里ちゃん…」

「気にしないで穂乃果。じゃあおばあさま…」

絵里ちゃんがおばあさんにアイコンタクトを送る。

それに満足げに頷いて、おばあさんが口を開く。

「よし、それじゃあ昼食にしましょうかね。午前中の残りでよければ食べるかい?」

「良いんですか?あ、でもどうしよう絵里ちゃん…穂乃果今お金ないよ…」

「ああ、御代は大丈夫だよ。宅配までしてもらったんだからね。
  
 普段エリチカが良くしてもらってるお礼も兼ねて、今日は特別サービスだよ」

「わぁ、すみません。ありがとうございます!」

絵里ちゃんのおばあさんの好意に甘えることに。

うんうん人の好意は素直に受け取らないと、ね。

絵里ちゃんが世界一って言ってたから余計に楽しみ♪
 
「エリチカ、厨房に大きな鍋があるからそれを温めてきておくれ。
 
 皿と食器は自由に使っていいからね」

「ええ、わかったわおばあさま」

絵里ちゃんが一人厨房の方へと消えていく。

姿が完全に見えなくなって、おばあさんが優しい視線を私に向ける。

「あなた達のことはよく聞いているよ。あの子と一緒に音乃木を守ろうとしているんだろう?」

「はい!今はまだわからないんですけど、
 
 いつか絶対に結果が出ると信じてがんばってます!」

「ふふ、頼もしいねぇ。音乃木のことだけじゃなくて、

 エリチカのことも重ねてお礼を言うよ。本当にありがとう」

深々と頭を下げるおばあさんにちょっと腰が引けちゃう。

「ああ、その…そんな大したことはやってないですから。あはは…」

「いやいや遠慮しなくていいんだよ。あの子が生徒会長になってからというもの、

 常に責任に負われていたんだと思う。入学した時よりも笑顔が少なくなっていた気がしてね」

静かに紅茶を飲みながら、おばあさんが続ける。

「そんなあの子が最近はまた、昔のように無邪気によく笑うようになった。

 会う度にあなたたちのことを嬉しそうに語るんだよ」

「そうだったんですか…」

言われてみれば、μ'sに入る前の絵里ちゃんはふと見かけたとき、いつも気難しい顔をしていた気がする。

そっか、じゃあさっき私が感じていたことは勘違いじゃなかったんだ。

「きっとあの子にとって救いだったんだろうね。心を解きほぐしてくれてありがとう。

 これからも私の可愛いエリーチカをよろしく頼むよ」

「はいっ!」
 
丁度話に一区切りがついた所で絵里ちゃんが、料理の乗ったトレイを手に戻ってきた。

「二人でなんの話をしていたのかしら?なんか、よろしくとか聞こえた気がするけど…」

「なぁに、次回も配達を是非お願いしたいって話だよ」

「ふふ、なるほどね。確かにこんな機会そうそうないものね」

本当のことは伝えずにしれっと誤魔化すおばあさん。

一人でうんうんと納得している絵里ちゃんを横目に、私にそっと合図をしてくる。

今の話は秘密ってことなのかな。

くすくす、そういうお茶目なところもなんだか絵里ちゃんと似てるかも。

「さあさ、冷めないうちに食べてしまいましょうかね」

「そうね、はいおばあさま」

「どうも、エリチカ」

「はい穂乃果。これがボルシチよ」

「ありがとう絵里ちゃん。くぅーっ、すっごく美味しそう!」

初めて見る料理を前に興奮が抑えられなくなっちゃった。

見た目はそうだね…ビーフシチューを薄めたような感じかな?

一体どんな味がするんだろう。

本日はここまで

更新になります

「それじゃあ、全員に行き渡ったことだし…」

「「「いただきます」」」

待ちわびたこの瞬間を、スプーンですくって噛み締めてゆく。

「おぉ…!」

「お味はどうだい?」

「とっても美味しいです!見た目よりも結構あっさりしてるんですね」

私の予想ではもっとまったりとした味だったんだけど、いい意味で期待を裏切られたね。

いやぁうん本当に美味しいなぁ。すいすい食が進んじゃう。

なるほど、これが世界一。

「口に合うようで良かった。その味の秘密はサワークリームを使っているからだね」

「サワークリーム?」

「ええ、酸味の強い乳製品の一種でね。北欧ではよく親しまれているものなんだよ」

「まぁ日本ではなかなか取り扱っていないし、穂乃果にはなじみのないものだと思うわ」

「うん、そうだね。今日初めて耳にしたよ」

ほんの少しだけど、ロシアの知識が増えていく。

世界史の授業なんかよりも、こういう料理の雑学の方が頭に入るよね。

それは穂乃果が食いしん坊だからじゃないかって?

う…ま、まぁ否定は出来ないけど。

実際今も夢中になってなっていたら、あっという間に食べ終わっちゃった。

「なかなかの食べっぷりだったわね穂乃果」

全員食べ終わってから、絵里ちゃんに茶化される。

「あまりにも美味しくって、思わずいっぱい食べちゃった」

恥ずかしながら、おかわりまで頂いちゃいました…。

(おばあさんが全然大丈夫だよって言ってくれたのもあるけどね)

流石に遠慮しておくべきだったかなとは、思ってたけど魅力的過ぎて駄目だったね、うん。

「あれだけ幸せそうに食べてもらえれば、料理人冥利に尽きるよ」

からからと笑うおばあさんに、ほんの少しの気恥ずかしさも救われるかも。

うぅ、本当すみません…。

まぁなによりごちそうさまでした♪


「あんまり長居しても迷惑だよね。そろそろ行こうか絵里ちゃん」

「まだ準備するまで時間があるからゆっくりしていっていいよ」

「おばあさまもこう言ってるし、まだいいんじゃない?」

「じゃあお言葉に甘えて…」

どうやら、まだここに居てもいいみたい。

とは言っても…なにをして過ごしたらいいんだろう。

いざなにか話を聞こうって、思っても案外迷っちゃうね。

ん?そういえばさっき、おばあさんが音乃木のこともありがとうって言ってたよね?

もしかして関係者なのかな?よしっ聞いてみようっと。

「あの…おばあさんって音乃木の卒業生だったりするんですか?」

「うん?そうだね。今から丁度50年前の卒業生だよ」

「あ、やっぱりそうなんですね。昔の音乃木のこと教えてください!」

またとないチャンスに私の好奇心がうずきだす。

聞く機会のないお話だもん。現音乃木生として、聞かない理由はないよね。

「ええ、よろこんで。まずはどこから話そうかねぇ…」

そこからおばあさんが嬉々として教えてくれる。

スクールリングの話、合唱部の話、文化祭の話…どれもこれも素敵でずっと聞いていたかったくらい。

特にリングのお話は面白かったなぁ。

なんたってちっちゃなころの絵里ちゃんが、私も欲しいーって駄々をこねて困らせていたんだって。

今の姿からは想像できなくて、くすっときちゃった。

では、本日はこれにて終了

遅くなりました 更新です

ちょっと話は変わるけど、おばあさんの話を聞いて思ったことがひとつあります。

それは、なんとしてでも音乃木を守りたいっていうこと。

私がいずれ年をとったときに、こうして今度は私がそのときの音乃木生にお話しをしてあげたいな。

そして、その人たちに今の私と同じように、そんな面白いことがあったんだって感じてもらいたい。

流石に穂乃果がおばあちゃんになっても学校が残ってるかはわからないけれど…。

でも、決して今の努力を無駄にしないためにも、もっと全力で頑張らなくっちゃね!

「…と、まぁこんなところかね。おや、エリチカまだ拗ねてるのかい?」

「…だって、あの話をするなんて思ってなかったもの」

昔の自分を暴露されて、絵里ちゃんはちょっとふくれてる。

こういう意外と子供っぽいところもまた、可愛らしいなんて思っちゃう。

まぁ確かにああいう話は、本人の前でされるのは恥ずかしいよね。

「ふふ、悪かった悪かった。…おっと、もうこんな時間。

 そろそろ夕方の準備をしないといけないね」

「そう、それじゃ私達も出ましょうか、穂乃果」

「わかった!おばあさん、今日はありがとうございました!

 またおじゃましてもいいですか?」

「ええ。次はお友達もつれていらっしゃいな」

「はい!おじゃましましたっ」

「おばあさま、じゃまた今度。体調には気をつけてね」

柔らかに見送るおばあさんに挨拶をして、私達は通りへ出ていく。


「さてとこれからどうしましょうか?」

「うーん、どうしよっか…まだ3時前だもんね。このまま帰るにはもったいないよね」

絵里ちゃんのおばあさんのお店を後にして、私達は少し考え中。

このあとの時間をどうやって過ごそうかって必死にね。

もう目的は達成しちゃったから、私には行く宛が無いんだけど、あはは…。

「穂乃果はここに来る前、確かすることないって言ってたかしら?」

「うん。だから特にこれといって行きたい場所が無くって。

 えーっと、その…なんかごめんね?」

「気にしないで、穂乃果。とは言え、困ったわ…」

むーと小さく声に出して、考え込む絵里ちゃん。

ちょっと唇を尖らす表情が意外とあどけなくて可愛いな…って違うよそうじゃなくて。

うわーん、また穂乃果のわがままで迷惑かけちゃったかも。よし、しっかり考えなくちゃ!

ゲーセンは気分じゃないかな。、カラオケ…お金もってないし。

…だめだ、どうしよーっ!?全然思いつかないよ!?

「あ、そうだ」

私の頭が煙を噴き始める寸前で、絵里ちゃんがなにか思いついたみたい。

「ねぇ穂乃果。私の趣味に付き合ってみない?」

「趣味?いったいなにするの絵里ちゃん?」

「新しいアクセを作るために材料を集めようかなと。私がご贔屓にしている手芸屋さんがあるんだけど、

 今回は割と材料が多いから、手伝ってもらえたらうれしいなーって」

「なるほど、うんそういうことなら手伝うよっ。

それにしても絵里ちゃんに、そんな趣味があったなんて知らなかったなぁ」

「そう言えば、ことりと希くらいにしか言ってなかったかも。

 こう見えて実は結構器用なのよ?このブレスレットだって自分で作ったものなの」

絵里ちゃんが誇らしげに腕のブレスレットを見せてくる。

え、嘘…。これが自作なの?ほぇー…とても手作りにはみえないレベルなんだけど。

凄いな絵里ちゃん、ううん凄すぎるよ! 

「そのブレスレット、今日会ったときから、すっごく綺麗だなって気になってたんだ。

 てっきり誰かからのプレゼントなのかもって勝手に思ってたんだけどなぁ。

 市販品じゃ無かったんだね」

「ふふ、そんな洒落たことしてくれる人いないわよ?」

「えっと絵里ちゃんってモテモテだからつい、ね♪」

「もう、穂乃果ったら…。せっかくだし穂乃果が欲しいなら

 なにか作ってあげるけど、いる?」

「本当?欲しい欲しい!」

「了解♪そうと決まれば善は急げよ。さ、行きましょうか」

「うんっ」

まるで犬みたいに絵里ちゃんの後をついて行く。

穂乃果にアクセサリを作ってくれるなんて、嬉しいな。

えへへ、出来たらみんなに自慢しちゃおーっと♪

本日はここまでです

再開です


「はい、到着よ」

案内されておよそ15分。

私達は奥まった路地にあるお店に到着。

「絵里ちゃんよくこんな場所知ってるね。知る人ぞ知るお店って感じ」

「確かに、わざわざ探さなければ見つからないと思うわ。私も最初はネットで探したから」

「それだけ趣味にこだわりを持ってるってことだよね」

「ええ、好きなことは全力でやらないと♪」

やっぱり何かを作るのが趣味の人って、自分にとってもまっすぐだと思う。

ことりちゃんもそうだけど、なんていうのか…うん、情熱がすごいよね。

こういう風に熱中できることがあれば、もっと今が楽しくなるのかな。

穂乃果が考え事をしてる間に、店の前で絵里ちゃんが立ち止まってじっとしていた。

「絵里ちゃん?なにか変わったものでもあったの?」

「見てみて穂乃果、今日は露店をやっているみたいよ」

目を輝かせる絵里ちゃんに言われて、そばに寄ってみるとそこには、“本日、露店開催!是非お立ち寄りください。”と書かれたチラシが。

「露店って掘り出し物市みたいなやつだっけ?」

「そうそう。今日は各国の珍しい石だって。

 いったいどんなものがあるのか楽しみね。とりあえず入りましょうか」

「そうだね」

手芸屋さんって私にはなじみがないから、結構ワクワクしてる。

膨れる期待を胸にいざ、未知の世界へレッツゴー!

「すごくいっぱいものがあるね」

お店の中は所狭しと、いろんなものが吊り下げられている。

ビーズや、フェルト、モールに毛糸、ストラップ…。

まるで、小さな女の子の宝箱の中をひっくり返したみたい。

とてもキラキラしていて見ているだけでも楽しいかも。

「それじゃ先に私の欲しい材料からでもいい?」

「うん、オッケー!どこから見ていく?」

「そうね…。こっちのビーズのコーナーからがいいかしら」

絵里ちゃんの指示を受けながら、色とりどりの材料を集めていく。

赤や黄、緑に青、小さいのもあれば、大きいのもある。

色も形もみんなバラバラでとっても個性的。

それにしても、随分たくさん集めてるけど、こんなに使うのかな?

思わず聞いてみたら、絵里ちゃんいわくあくまでもストック用なんだって。

こうして数があった方が、イメージが湧いてきやすいみたい。

なんだか、絵里ちゃんの内なる職人魂を目の当たりにした気がするよ。

今日は絵里ちゃんのいろんな面が見れて、とてもお得な気分♪

「ふぅ…お疲れ様。ありがとう穂乃果助かったわ」

「どういたしましてだよ」

「私のは終わったから、次は穂乃果の分ね。

 なにかこうしてほしいみたいなのはある?」

「うーん…あんまり派手じゃない方がいいかなーって」

「なるほどね。ひとまず露店の方も見て、合わせて考えてみましょう?」

「うんっ!」

本日はここまでです
もう少しで完結になりますので、どうぞお付き合いください<m(__)m>

更新です


店の一角に設けられた、石市のコーナーに足を運ぶ。

平台の上には大小様々な石が並べられている。

まぁ大きいって言っても5cmぐらいなんだけどね。

「結構小粒なものばっかりだね。もっと、どどーんって大きなものがあるんだと思ってたよ」

「そういうのは運び込むだけでも大変だと思うわ…。

 アクセサリ用だからこのくらいでちょうどいいんじゃないかしら」

「なるほどねぇ。確かに身に付けるのにあんまり大きくても困るよね」

手に取った綺麗な石を見ながらイメージしてみる。

これだけでも割と目立ちそうだね。存在感があるというか…。

流石にもっと立派なのをぶら下げるのは勇気がいるかな。

「ねぇねぇ絵里ちゃん。今、穂乃果が持ってる石ってなんて名前かわかる?」

「そうね…おそらく琥珀ね。ハラショー、穂乃果にぴったりの石だと思うわ」

「うん?どうして?」

「えっとね、その石の意味からかしら。石にも花と同じで、一つ一つ思いが込められているの。

 そこで琥珀には、豊かな人間関係、喜びなんて意味があるわ」

「いい言葉だね。ようしっ、決めた!絵里ちゃん、これでお願いできる?」

「ええ、大丈夫よ。とびきり可愛いのを仕立ててあげる♪」

「楽しみにしてるね!」

絵里ちゃんお手製の私だけのアクセサリ。

一体どんなものができるんだろな。

楽しみすぎてすっごい浮かれちゃう。

「あ、そうそう忘れてた。なにを作るか決めてなかったけど、希望はある?

 ほら、アクセサリってひとえに言ってもいろいろあるじゃない?

ネックレスだったりブレスレットだったり…」

「そういえばそうだね。うーんどうしよっかなぁ…」

むむ、悩むねこれは…。

みんなに見せてあげたいし、一目ですごいってなるようなのがいいかな?

と、なるとやっぱりあれしかないよね!

「じゃあブレスレットがいいなっ。あ、それでね、今絵里ちゃんが身に付けてるのに似てる感じ

 …って、ちょっとわがままかな?」

「ふふ…そういうことね。OK、わかったわ。全然大丈夫よ♪」

「わぁいっ、ありがとう!」

やっぱりおそろいっていいよね。一種のキズナって言うのかな。

距離がすごーく近いって思わない?

穂乃果は大好きな人は、いつもそばに感じていたいから、おそろいって大好き。

えへへ、だからずうずうしくもお願いしちゃった。

これでもっともっと仲良しになれたら嬉しいな。


「それじゃ用事も済んだことだし、帰りましょうか」

「そうだね。じゃ行こっか」

二人並んで、まだ蒸し暑さの残る夕方の通りを歩いていく。

来たときと同じように、いろんな話をしてたらあっという間に、分かれ道がすぐそこに。

「あ、ここまでね。確か穂乃果はあっちよね?」

「うん。気をつけて帰ってね」

「ええ、穂乃果こそね。それじゃまた明日の練習で」

「ばいばーいっ!」

お互いに手を振って、それぞれの帰路につく。

今日は素敵な日でした。あのときの暇に感謝、だね♪

今日はここまでです
明日の更新で最後になります

更新です


---数日後---

「はい、今日はここまで!夏のライブも近づいてきていますから、各々疲れを残さないように気をつけてください」

「「「「「「「「はーいっ」」」」」」」」

練習も終わってみんな思い思いに話しながら片づけをしてる。

「よし、これでオッケーっと」

「穂乃果も終わったみたいね。はいこれ、どうかしら?」

「お、ついに完成したんだね!どれどれ…おおーっ!!」

絵里ちゃんに渡されたブレスレットを見て、思わず声が大きくなっちゃった。

私の声にみんなびっくりして、近くに集まってくる。

「どうしたん穂乃果ちゃん?」

「見て見てーみんな!絵里ちゃんにつくってもらったんだこれっ」

「すごっ…え、嘘でしょ。絵里これ自作なの!?」

「わぁ…すっごく綺麗…」

「絵里って意外と器用なのね」

にこちゃんも花陽ちゃんも真姫ちゃんも、みーんな同じように驚いてる。

穂乃果も最初見たときはびっくりしたもん。やっぱり手作りには見えないよね。

「絵里ちゃんすっごいにゃーっ!」

「ちょ、ちょっとみんな。そんなに褒めなくても」

みんなからわいわい褒められて、満更でもなさそうな絵里ちゃん。

凛ちゃんやにこちゃん達に、つくってーってせがまれてにやけてる。

こうしてると、本当μ'sのおねえさんだなぁ。

「絵里も大変よね」

もみくちゃにされる絵里ちゃんを横目に真姫ちゃんが話しかけてくる。

「そうかな?絵里ちゃんすっごく幸せそうだよ?」

「まぁ、確かにね。かなり間抜けな顔になってるもの」

「真姫ちゃんもなにか頼んでみたら?きっと喜ぶと思うよ」

「わ、私は別に…」

いつものように髪をくるくるとしながらそっぽにむく真姫ちゃん。

またまた素直じゃないなぁ。

本当はそんなことないんだろうけど、指摘すると怒られそうだからやめておこうかな。

まぁそんなこんなで、各メンバーに絵里ちゃんがちょっとしたものを作るのがブームになりました♪

あの後絵里ちゃんから、真姫ちゃんもどうって聞かれたときの、ぱぁっとした顔を穂乃果はばっちり見ちゃった。

おめでとう真姫ちゃん!そして、ありがとう絵里ちゃん。

これからも穂乃果たちの頼れるおねえさんでいてね♪

これにて無事完結になります
多くのレス、並びに見てくださった方ありがとうございました<m(__)m>

依頼出してきたいと思います
では、またの機会に

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