魔王「今月の目標は魔王様好感度アップじゃ!」 (42)



魔王「はい。というわけで本日も世界征服の為の会議を行うぞ」

側近「おー」

魔王「……」

側近「どんどんぱふぱふー」

魔王「側近」

側近「はい」

魔王「他のヤツらはどうしたのじゃ」

側近「……寝坊?」

魔王「はああああああああ!?」クワッ

側近「まあまあ」

魔王「何を考えとるんじゃ! たるみすぎじゃ!」

側近「それは魔王様のお腹です」

魔王「……まじ?」

側近「まじです」


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魔王「こほん。ともかく呼んで来るんじゃ」

側近「わかりましたよー、もう……やってらんないなあ……」ボソ

魔王「あぁん?」

側近「何も言ってません」

魔王「よし」

悪魔「ちぃーす! 遅れましたーっ! マジすんませんッス!」ガチャ

魔王「何時だと思っておるんじゃ!」バンバン

側近「魔王さま、机叩かないでください」

魔王「むっ……悪い……」

側近「誰が直すと思ってるんです? わかります? うちは経営難なんですよ?」

魔王「……すまぬ」

悪魔「てか人少なくないッスか?」モシャモシャ

魔王「お前が言うか! いや、ちょっと待て! 何、おにぎり食べとるんじゃ!」

悪魔「え、ここ来る時に人間界で買って来たんスよ。100Gセールだったんで」

魔王「ワシの分はどうしたんじゃ!」バンバン

側近「魔王様!」クワッ

魔王「ぐ、ぬぬ……すまぬ……」シュン


魔王「まあ良い。三人で始めるぞ」ハァ

側近「はい。じゃあ何時もどおりにお願いします」

悪魔「どんどんぱふぱふー」

側近「それはもう良いです」

魔王「ごほん……今月の目標からじゃな」

悪魔「はいはーい!」

魔王「なんじゃ悪魔よ」

悪魔「今月の目標は、手袋をつけようッス!」

魔王「…………えーと、それじゃ側近、何かあるかの?」シレッ

悪魔「いやいや、冗談じゃないッスからね!?」

側近「……」ポチポチ

魔王「何がじゃ……悪魔、下手な言葉を吐いたら……」

悪魔「は、はいッス……わかってるッスよ……」ガタガタ

側近「……」ポチポチ

魔王「側近、会議中はスマホを弄るんじゃない!」

側近「あ、すいません。彼氏がうるさくて」

悪魔「えええええ、彼氏いたんスか!?」

側近「え、うん。いるよ」

悪魔「マジすか……マジすか……」ショボン


魔王「それで。なぜ手袋をつけよううなんじゃ」

悪魔「最近、四天王に加わったヤツいるじゃないスか?」

側近「土の王ですか?」

悪魔「そうッス。ヤツ、ほら……ゾンビ種じゃないスか」

魔王「それがどうしたんじゃ」

悪魔「いやー……汚いじゃないスか……」

魔王「貴様……」

悪魔「違うんスよ!アイツの配下も、全員汚いんスよ!」

魔王「仲間に向かって手が汚いとは……貴様……!」クワッ

悪魔「だって、あの手で食事係ッスよ!?」ブワッ

魔王「なっ……なんじゃと……」

側近「……あー」

魔王「いつからだ……?」

側近「一ヶ月ほど前からですね」

魔王「…………気分が、気分が悪くなってきた」ダラダラ


悪魔「俺は基本、昼勤なんで昼休みしか食堂使わないッスけど……」

側近「魔王様は、住んでらっしゃいますからね」

魔王「わー! 朝昼晩、ゾンビ汁ーっ! ぬぎゃー!」バタバタ

側近「知らなかったんですか。会議以外、引き篭ってるからそうなるんです」

悪魔「魔王様は食堂で食べる事、ないッスからねえ」

魔王「だって……だって! 食事当番は魔剣士だったじゃろ!?」

側近「魔剣士は一ヶ月前から北の国に遠征してますよ」

魔王「ワシ、聞いてない」

側近「えー……あ、魔王様が体調不良でお休みになられた会議でしたね」

悪魔「それってあのゾンビが食事係になった日ッスか?」

側近「あー、うん……」

魔王「ぎゃああああああ! ぬぎゃああああああ!」ジタバタ

悪魔「だ、大丈夫ッスよ! もう身体壊さないって事は、耐性ができてるッス!」

側近「REGIST! REGIST!」

魔王「ふざけるなああああああ!!」ギャーン

側近「落ち着きましたか?」

魔王「……一応」

悪魔「ていうわけで、手袋着用の義務を申請するッス」

魔王「検討しておく……いや、させる……」

側近「ていうかそれ、今月の目標じゃないですよね」

魔王「そ、そうじゃな。ええい、悪魔! もっと長期的な案を出すんじゃ!」

悪魔「ええ~……何かあるッスかね……」

魔王「というか、この会議がなんの為にあるか分かっておるか?」

悪魔「魔王様との懇親会じゃないんスか?」

魔王「なっ……」

側近「……まあ、八割は」

魔王「違うぞ、違うんじゃからな!」

側近「こういう時しか、部屋から出ない癖に」ボソ

魔王「ベ、別に……お前らと、話したいとかじゃ……断じて違う!」

悪魔「はあ」

魔王「いやちょっと待て、全員そう思ってるのか?」


悪魔「まあ、殆ど全員がそう思ってるッス」

魔王「じゃ、じゃあ……今日こんなに少ないのは、ワシ嫌われてるのか……!?」

側近「最近、魔王様の好感度は低下してますからね」

魔王「ぎにゃー! 何故じゃー!」ガーン

側近「わがまますぎる、とか」

魔王「へう……し、しかし魔王は……」

側近「そういう一昔前のステレオタイプなとこじゃないですか?」シレッ

魔王「そうなのか? そう貴様ら、思っておるのか? ふ、ふえ……」ジワッ

悪魔「だ、大丈夫ッス! 俺は魔王様の事、大好きッスよ!」

魔王「ほ、本当か! なあ、側近はどうなんじゃ!」

側近「私が好きなのは彼氏だけです」キッパリ

魔王「びえええええええええええええええ!」ブワッ

悪魔「ぎゃあああああああああああああああ」ブワッ


魔王「決まったな。今月の目標は”魔王様好感度アップ”じゃ!」

側近「世界征服とか全く関係ないですけど」

悪魔「そうッスねえ……」

魔王「馬鹿もの! 配下に愛されていないのに、世界征服が成せるわけないじゃろ!」

悪魔「……確かにッス」

魔王「従業員の満足なくして、顧客の満足はないのじゃ!」

側近「顧客って誰ですか……」

魔王「この世界の民じゃ」

側近「まあ、魔王様が人類大好き病なのは知ってますけど」

悪魔「人間好きッスからね……」

魔王「とにかく、人間どもと仲良くなる為には世界征服! 世界征服の為には配下からの好感度アップじゃ!」

悪魔「世界征服って言っちゃてるあたり、仲良くはなれそうにないんスけどねぇ……」

魔王「暴君の王よりも、ワシが人間を統治する方が……絶対、良いじゃろ?」

側近「でも魔王様、人間は魔族を恐れてますし」

魔王「うるさーい! そういうイメージを払拭する為に、ワシらは頑張らなくちゃいけないんじゃ!」ブンブン

悪魔「と、とにかくッスね。話が進まないからまず、好感度の話をするッスよ」

魔王「う、うむ。そうじゃな」

側近(無理じゃないかなあ)ポチポチ


悪魔「じゃあまず、魔王様の嫌われてるポイントを洗い出すッス!」

魔王「ぐ……そ、そうだな……」

側近(知りたくないって顔してるなあ……)

悪魔「とりあえず聞いた話を言っていくッスね……えーと、確かこの前、ゴーレムがッスねぇ」

魔王「むう。何かしたかの」


ゴーレム『アノ、魔王様ガ……最近、俺ノ……身体デ、ジェンガ……スルンダ……』
『正直、痛イシ、直ル時モ結構痛イシ、俺ヲ、パーティ、グッズ……ニ、スルノ……ヤメテホシインダ……』


悪魔「……って」

側近「完全にパワハラじゃないですか」

魔王「だって……あのレンガが積み上げられてる感じ、ジェンガしたくなるじゃろ……」ショボン

悪魔「いや、ゴーレムのヤツ嫌がってるッスよ?」

側近「しかもパーティグッズって事はなんですか。余興でやっちゃった感じですか」

魔王「え、えーと……勇者と、戦士と飲んだ時に、よく呼び出す……」ボソボソ

悪魔「うっわ、マジッスか……」ドンビキ

側近「……」

魔王「いや、あのね。だってね、勇者がね、凄い気に入ってるんじゃよ」アセアセ

側近「……」

悪魔「……」

魔王「……すいませんでした」

悪魔「もう、ゴーレム呼んじゃダメッスからね。ジェンガ、禁止令ッス」

側近「まったく……誰が暴君なんですかね……」

魔王(´・ω・`)


悪魔「えーっと、勇者で思い出したッス。次は魔剣士ッスね」

魔王「それよりまだ帰ってこんのか、食事係!」

側近「気分って言ってましたよ。まったく、あの人は……はあ」プリプリ

悪魔「え……側近さん?」

側近「ん?」

悪魔「……い、いや何でもないッス」

魔王「?」

悪魔(…………魔剣士、羨ましいッス)ギリ

悪魔「えーっと、魔剣士の魔王様への愚痴ッスけどね」

魔王「応」

側近「そんなに気合いれなくても」


魔剣士『私は魔王様の忠実な配下だ。しかし、はっきり言ってこちらの感情も考えて欲しいのだ』
『先日、呼び出されて勇者と僧侶が居た時は肝を冷やした。僧侶のやつ、俺の事を好きだと言う……』
『無論、私には彼女が居る。断ったが……それから、魔王様がどうにも僧侶とくっつけようと必死なのだ……』
『勇者も事ある毎に、僧侶を推してくるし……はあ、早く遠征に行きたい……』


側近「…………ほう」ピキッ

悪魔「……遠征の日を、すげぇ待ち望んでたッス。アレは当分の間、帰ってきたくないッスね」

魔王「だって、魔剣士の彼女なんてどうせブスじゃろ。あいつ、私服のセンス悪いし」

側近「」ピキピキッ

魔王「だからきっと彼女を選ぶセンスも悪いんじゃ。剣と料理の腕しか取り柄がないんじゃ、器量の良い僧侶とくっついた方が幸福じゃ」

側近「」ビキビキッ

悪魔「ま、魔王様……俺、知らないッスよ?」

魔王「えっ?」

側近「魔王様、ちょっと、一緒にお花を摘みに行きましょう」グイッ

魔王「えっ? えっ?」ガタッ

側近「はいはーい、女同士仲良く連れションですよー」サツイノハドウ

魔王「いだだだ! 痛い! 痛いって! ちょ、なんじゃーーーーーーっ!?」ズリズリ

悪魔(……ああ、あんな怒った側近さん初めて見たッス)ポッ


魔王「……」ボロッ

悪魔「お、おかえりッス」

魔王「……うん」

側近「……金輪際、配下のプライベードには立ち入らぬ様にしてくださいね?」ニッコリ

魔王「……うん」

悪魔(う、うわぁ……魔王様、完全にレイプ目ッス……)ガタガタ

側近「……ちっ、まじありえん……」イライラ

悪魔(遠距離恋愛の原因が魔王様だし、彼氏に言い寄る女がいるし、全部殺したい……って顔してるッスね……)ガタガタ

魔王「……つ、次に行っても良いか? 側近よ」ビクビク

側近「しっかりと反省してくださったなら、結構ですけど?」

魔王「は、反省しました」

側近「よろしい、次に参りましょう」

悪魔「土の王のご飯が嫌なら、さっさと魔剣士が帰って来てくれる様に魔王様も反省するッスよ」

魔王(´・ω・`)


悪魔「後は……サキュバスからひとつあったッス」

魔王「げっ、なんじゃと……」

側近「ああ、苦手ですもんね」

魔王「ああいう、なんか、女を売ってるやつ、ワシは苦手じゃ……!」

側近「それは魔王様がスタイル貧相で顔もそんなに良くはないから、嫉妬してるだけなんじゃないですか?」

魔王「ぎっ、ぎぎぎ……」グヌヌ

悪魔(まだ機嫌治らないんスかねえ……)

魔王「ブスじゃないもん! ワシは結構モテるもん! 人間界ではアイドルじゃぞ!?」

悪魔「人間界と魔界じゃ好みが真反対ッスからね……」

側近「こっちのブスは向こうの可愛いだからねー」

魔王「ふ、ふん! 魔界のやつらは見る目がないんじゃ!」プンスカ

悪魔(でも人間界でも魔王様のファン層って凄いディープな人間たちじゃ……)

側近(幼女に愚民って言われてよろこぶ人たちにモテて何が嬉しいんだろう)


悪魔「はい、じゃあサキュバスの愚痴行くッスよ~」

魔王「……」ブー

側近(完全に聞く気ないじゃん)


サキュバス『もー! 親汁! 魔王って勇者の前だとにゃんつくじゃん? この前、勇者たちとDNでさー』
『とりま魔王も呼んであげてさー。魔王かまちょだし、誘わないと激おこぷんぷん丸だし』
『そしたら秒でくんの! マジウケる! ってみんなでバイブス上がったんすけど~……魔王、ガチしょんぼり沈殿丸ってさー』
『そしたら勇者とかガチめに機嫌取りだして~。そしたら魔王、自分のことパーリィピーポーマックスだわーって自慢すんじゃん?』
『マジおっさん。秒で戦ぴっぴにわんこしてぎゅーしばきに弾丸ー。ガチめに魔王うざたん』


魔王「あ、相変わらず何言ってるかわからんぞ!」

側近「たかし」

魔王「えっ?」

側近「……確かに」シレッ

悪魔「いや、俺もうろ覚えなんで合ってるかわかんないんスけど、こんな感じで喋ってたッスよ」

魔王「むぅ……で、結局何を言いたいんじゃあの淫魔は!」ムガー

側近「魔王様が勇者の前だとぶりっこちゃんすぎるし、勇者との飲みの席に呼ばないと絶対怒るし、勇者に自分のこと誇示しすぎだから、見てて滑稽って事じゃないですか?」

悪魔「あ、多分そんな感じッス」

魔王「な、なんじゃとー!? 誰が勇者の前だとぶりっこじゃ! それに別に呼ばれなくても怒りなどせん!」

悪魔「じゃあ、サキュバスにそう伝えとくッス」

魔王「あっ……それは、ちょっと……待つんじゃ……」


悪魔「…………とりあえず、空気は読む事を努力するッスね」

側近「魔王様が勇者の事好きなのは分かりましたから、自重してください」

魔王「好きじゃなーい! あんなやつ、全然好きじゃなーい!!!」ジタバタジタバタ

側近(バレバレなのに……)

悪魔「魔王様、今度サキュバスに謝っとくッスよ。あと、戦士さんにも」

魔王「むぅー……サキュバスのじゃが、戦士も会話が成り立たんからのう……」

悪魔「えっ、あのカップル二人揃ってあの話し方ッスか!?」

側近「戦士さんザイルですしおすし」

悪魔「えっ」

側近「お似合いのカップルですから」シレッ

悪魔(魔剣士のやつ、知ってるんスかね……)


側近「ここまでで気づいた事があります」

悪魔「なんスかー?」

魔王「言ってみるがよいぞ」

側近「魔王様、大体が勇者関連で配下に迷惑かけてません?」

悪魔「あ」

魔王「…………そ、そうじゃなあ」

側近「とにかく。もう少し、勇者と親密にするのを控えましょう。そして、我々に迷惑をかけないこと」

魔王「えー、嫌じゃー……ワシ、勇者ともっと遊ぶんじゃー……」ブーブー

悪魔「じゃあせめて俺たちを巻き込まないでくださいッス」

魔王「だって! 勇者はお前らを気に入ってるんじゃぞ! ワシの配下をだ! なんか、嬉しくなってつい!」

側近「とにかく、勇者関連で迷惑をかけ続けると好感度は地を這う事になりますからね」

魔王「むぅ……わかった、控える……」ションボリ

悪魔「勇者たちが俺らに仲良くしてくれるのは良いんスけど、親しき仲にも礼儀ありッスからね?」

側近「わかりましたか、魔王様」

魔王「はーい……」ブー


悪魔「んー……大きめのは、これくらいッスかね? 後は給料が少ないとか、配置場所が人少ないとかしょーもない愚痴ッス」

魔王「まー、その辺りは側近に任すぞ」

側近「そうですね。悪魔、今度言ってたヤツらリストアップなさい」

悪魔「え……嫌ッスよぉ……仲間売るみたいなの、なんか嫌ッスよぉ……」

側近「そういう大した働きもしないのに愚痴を言う魔物はお仕置きしなくてはいけません」キリッ

悪魔(うわー、俺もされたいッスねえ……)ポッ

側近「…………全身の毛、むしってやる……」ボソッ

悪魔「!?」

魔王「とりあえずは落ち着いたかの。ワシが勇者関連で迷惑をかけてるのが、最近の好感度の低下の原因だったんじゃな」

側近「というか全部、勇者関連での不満です。私が聞いている分もありますよ」

魔王「ぐぬっ……まだあるのか!」

悪魔「そりゃ、三人程度で済むわけないッスよ」ハァ

魔王「そんなに!? ワシそんなに人気がないのか!?」ガーン

勢いで書いたから今回でおわり


側近「えー、ちゃんと書類として提出してもらってるのが何件かありますね」バサ

悪魔「あれ、そんなアンケート取ってたんすか?」

側近「まあ、こんなこともあろうかと」

魔王「ワシ、聞いてない」

側近「言ってませんから。まあ、ごく少数の方だけにですけどね」

悪魔「ッスよね。俺知らないですもん。幹部にだけッスか?」

側近「そうね。四天王の意識調査も兼ねてたんだけど……」

魔王「ええい、さっさと言うんじゃ!」ブワッ

側近「わかりましたよ……泣かないでください、勇者に嫌われますよ」

魔王「んぐぅ! ワシ、なかない……」グッ

悪魔(あ、ちょろい)


側近「では……これは火の王ですね」ペラッ


火の王『魔王様が好きだ! めちゃくちゃ好きだ! だがしかし! 魔王様は俺など眼中にない!』
『あの勇者にぞっこんではないか! 俺はどうしたら……ああ、どうしたら……!』
『それに最近では勇者と戯れ合うことすら魔王様に止められる! 勇者と戦う事が! 俺の楽しみでもあるのに!』
『俺は愛する人の言葉を守るべきなのか……! だがそれは勇者の為……くそおおおおおお!』
『何故だ! 何故、魔王様は俺を好いてくださらない! いっその事、嫌いになってしまえば良いのか!』
『魔王様なんて嫌いだー! ちくしょー! だが好きだー! 叶わぬ想いなら、せめて勇者とは戦わせてくれーっ!!』


悪魔「あの人そんなに魔王様好きなんスか!?」

側近「数少ない魔王様に惚れてる人です。魔界でも一握りの」

魔王「むぅ……あいつ、暑苦しくて苦手じゃ……」

悪魔「良いじゃないですか。勇者なんかより、火の王さんの方がイケメンッスよ?」

魔王「勇者のほうがイケメンじゃし。しかも火の王、ロリコンじゃし」

悪魔(自分が幼女ってわかってるんスね……)

側近(でも幼女を見る目で好いて来る人は嫌いなんだ……)


悪魔「勿体無いっすねぇ……火の王って言ったら、魔界では大人気なんスけど」

側近「魔剣士とエルフと三人でアイドルグループもしてるしね」

魔王「じゃーから、ワシはああいう暑苦しいタイプは苦手なんじゃ」

悪魔「勇者は爽やかーな感じッスからね~」

魔王「じゃから! 勇者なんて好きじゃな」ガガガッガガガガーオ……

側近「あれ、電話鳴ってますよ魔王様」

魔王「なんじゃまったく……あ、勇者! うん、うん! えっ、ほんと? いいよ! うん、じゃあまた夕方ね!」プチ

悪魔「……」ジロー

側近「……」ジロー

魔王「ふふ、全く……ん? な、なんじゃその目は」

悪魔「魔王様、好きな人の前だと口調変わるタイプッスか」

側近「そりゃサキュバスにぶりっこって言われますよ……」

魔王「~~~~~~~~!/////」ボッ


側近「とりあえず、火の王にはせめて勇者と戦う事を許可しましょう」

魔王「なんでじゃー、万が一勇者に怪我でもあったらどうするんじゃー」ブースカ

悪魔「大丈夫ッスよ? あの二人は攻撃的じゃないッスから、怪我する様な事はしないッス」

魔王「えっ、そうなのか? 男同士だし、こう……殴り合い的な? するんじゃろ?」

側近「魔王様、人間と平和的に生きて行きたいって宣言しましたよね」

魔王「うん」

側近「それを守って、我々魔族は人間とは怪我する様な戦闘はしてませんよ」

悪魔「そうッスねー……大体、口論かゲームとかで収めるッスからね」

魔王「いや、そうじゃろうが……万が一、な? 火の王はプロレスとか好きじゃろ」

側近「確かに二人はプロレス対決もよくしてますけど」

悪魔「火の王さんのイヤァオはいつ聞いても痺れるッスからね」

側近「勇者のオツカレサマデシタも愉快です」


魔王「じゃから、ああいう野蛮な戦いは良くないとワシは思うんじゃ」

側近「いやだから、スポーツみたいなものじゃないですか」

魔王「ええー……だって、勇者痛そうな顔するんじゃもん」ブー

悪魔「過保護ッスね!? ていうか絶対、魔王様は彼女にしたら面倒なタイプッス!」

魔王「なんじゃと!? 好きな男を心配して何が悪いというのじゃ!!」バンバン

側近「魔王様、机叩かない」バシッ

魔王「あいたっ!? え、あ、うん……ごめん……」ヒリヒリ

悪魔(魔王様に張り手ッスか!? 側近さん凄いッス……)ポッ

側近「それと、好きな男って言っちゃっいましたね」クスッ

魔王「んぎゃ!/////」ボッ

悪魔「茶番ッスねえ」


側近「まあ、火の王と勇者と、三人で話し合ってください」

魔王「そうじゃな、これは検討しよう。夕方には勇者も来るし、火の王も呼んで飲みに行くとするか♪」ワクワク

悪魔(そういや魔王様、幼女の見た目なのに年齢確認どうしてるんスかね~……)

側近「ハメは外さぬようにお願いします……で、次行きますよ?」

魔王「よいぞ」

側近「では……次は水の王です」ペラッ


水の王『魔王様に恋愛相談をした。僧侶が好きだと、打ち明けたわけだ』
『そうするとスライムを渡された。これで我慢しろと言われた』
『僧侶とは似ても似つかない。気を利かせてスライムが僧侶の形になってくれたが……』
『案外、スライムも良いものだと思ってしまった。もう私はまともな快楽では……どうしてくれるのだ、魔王様……』


悪魔「ぴー! ぴー! ぴー!」

側近「これは酷い」

魔王「お、おぉ……アイツ、スライムでしか」アゼン

悪魔「ぴー! ぴー! ぴー! ダメッス! その先は言わせないッスよ!?」


魔王「これは不満なのか? 本人は結構、幸せなんじゃないじゃろうか」

悪魔「いや悲劇ッスよ!? 水の王たるあの方が、スライムでしか満足できなくなったんスよ!?」

側近「あのナルシストな感じの水の王が、夜な夜なスライムで」

悪魔「ぴー! ぴー! ぴー! だめーッス!」

魔王「スライムも悦んでるみたいじゃったし。万々歳じゃろ」

悪魔「あんた鬼か! 人の性を……何だと、思ってるんスか!?」

側近「まあ、異種間恋愛も有りな時代ですし」

悪魔「違うッスよ!? 恋愛じゃないッスよ! 完全に寂しさを紛らわせる感じの……ああ、もう良いッスよ!」プンスカ

魔王「何を怒っておるんじゃ?」キョトン

悪魔「水の王さんが、同じ男として可哀想でならないッス……」ブワッ

側近「魔王様、水の王にあげたスライムって?」

魔王「スライム族の中でも女騎士を専門としていた優秀なヤツの子孫じゃったな」

側近「スライム族に性別はないとは言え、気分的には完全に」ウホッ

悪魔「うわああああああ! ぴー! ぴー! ぴー! 水の王さあああああああん!!」ブワッ

男同士のプロレス(意味深


魔王「ま、水の王に関してはどうしようもないじゃろ」シレッ

側近「まあ……でも、僧侶とくっつける努力はしてあげてくださいね」ギロッ

魔王「え、あ……うん……?」ビクッ

悪魔(水の王さん→僧侶さん→魔剣士→←側近さん←俺)

側近「では次は風の王ですね」ペラッ


風の王『武闘家とサシ飲みに行くのをやめて欲しい』


悪魔「すっごい短文来たッスねー!?」

魔王「なんでじゃ! ちゃんと理由も添えねば分からんじゃろ!」

側近「そう言うと思って聞いてきましたよ」


風の王『私と武闘家が付き合ってるの知ってるのに、魔王様なんであんな事するんだろ』
『そりゃ武闘家に勇者の事、相談したいのは分かるけど……武闘家、満更でもない感じするんだよね』
『なんか、最近アイツの家にいったら幼女モノとか隠してて、凄いショックだった……』
『側近とか私とかさ、やっぱり魔王様と違ってスタイル良いじゃない? つまりそういう事なのかなって……はぁ』


悪魔「すっげぇ深刻じゃないッスか……」

側近「はい。魔王様、軽々しく殿方とサシ飲みはしてはいけません」

魔王「えー、ワシは別にそんな気はないのに。それに武闘家も、良いヤツじゃし……」

側近「男はみんな、狼なんですよ? それに人の彼氏と飲みに行くなんて、デリカシーなさすぎじゃないですか」

悪魔「そうッスよ! 風の王さんだって乙女なんスから。ていうか完全に武闘家、魔王様を意識しちゃってるじゃないスか!」

魔王「むむむ……では誰に相談しろと言うのだ! 戦士は唯の脳筋じゃし、僧侶は肯定しかせんのじゃぞ!」

悪魔「武闘家さんが案外、恋愛相談得意って事がびっくりッス」

側近「では、今度から武闘家さんを誘う時はもう一人くらい、誘ってください」

魔王「面倒じゃな。これだから女というのは……」ブツブツ

悪魔「わかりますけど、ナイーブな人はナイーブなんスから……」

魔王「んー、魔剣士でも誘ってみるかのう。武闘家と魔剣士は仲良いし……」

側近「…………まあ、別に、良いですけど」カタカタカタ

悪魔(すっげぇ貧乏揺すりしてるッス! この人もナイーブな人ッス! ……あれ、それにしても)

悪魔「側近さん、内緒にしてるんスか?」ボソッ

側近「は? 何が?」

悪魔「え、いや……魔剣士と……」

側近「黙れ」

悪魔(…………知られたくないみたいッス。そんなに分かりやすいのに……)


側近「恋愛関係でごちゃごちゃしたくないなら、魔王様もよく考えてくださいね」

魔王「むー、女の世界は面倒じゃのー」

悪魔「勇者さんとサキュバスがサシ飲みしてたら、嫌ッスよね?」

魔王「絶対、嫌じゃ! 許せん!」シャーッ

悪魔「そういう事ッス。魔王様もしっかり女ッスよ」

魔王「…………むう」ブー

側近「では最後ですね。土の王です」ペラッ


土の王『魔王様wwwww何を思って拙者をwwwww食事係に任命なされたwwwwwww』
『拙者wwwwwやはり腐食の魔物wwwwww料理に色々混入してしまう事もあるでござるwwwww』
『特にwwww女性に作るwwwww時はwwwwww張り切りすぎてwwwwww色々出ちゃうでござるwwwwwコポォwwwwww』
『これは生理現象wwwwww止められないでござるwwwwwwww決して役得とはwwww思ってござらんwwwwww』
『ただ魔王様の分も作る訳で。作り置き系を作る時に拙者のサムシングが混入する場合があるでござる』
『その作り置き系が魔王様に運ばれた時の絶望は凄いでござる。こんな悲しい気持ちになるなら食事係なんて嫌でござる。切にそう思うでござる』


魔王「……うげえええええ」ウップ

側近「………」オエッ

悪魔「ま、まあ……生理現象ッスからね。俺らは男ッスから、被害は女性陣よりは少ないッスけど……」ゲロォ


魔王「というかワシ任命しとらんし。側近じゃろ、これ」

側近「人員が割けなかったので、どうしても回避は出来ませんでしたから……」

悪魔「だから最近、外食ばっかりしてるんスか!?」

側近「……えへ」

悪魔(自分さえ良ければいいという……この人は鬼畜ッス!)

魔王「まあ、土の王もワシに運ばれる事を悲しんでおる。ワシの事を想ってくれておるんじゃ。早急に変えねばな……」フフッ

悪魔「えっ?」

側近「えっ?」

魔王「えっ?」

悪魔(これって魔王様の口にサムシングが入る事は嫌だって事ッスよねぇ……)

側近(あの変態性の強い土の王でさえも、魔王様の口に入る事だけは興奮しないしむしろ萎えるって話じゃ……)

魔王「まあ、よく分からんが。早急に魔剣士を呼び戻そう! それで万事解決じゃ!」

側近「それには大賛成です♪」ニコッ

悪魔(あー、すげぇ良い笑顔ッス……胸が痛いッス……)キュンキュン


魔王「土の王の件は側近の失態じゃな。早急に解決するよう!」

側近「……ちっ、わかってますよ」

悪魔「魔剣士が遠征に行っちゃったのも、帰って来たくないのも魔王様のせいッスけどね」

側近「ねー」

魔王「むっ……じゃ、側近とワシが悪いって事で」

側近「結局、魔王様が悪いんで良いんじゃないですか?」

悪魔「ちょっ、側近さん……」

魔王「ワシだけに責任を押し付けるのか!?」ガーッ

悪魔「魔王様も、落ち着いて……」


側近「大体、体調を崩して会議に来れなかったから、土の王の件に気付かなかったんじゃないですか」

魔王「それは貴様が土の王を食事係に任命したからじゃろ! だからワシが体調を崩したんじゃ!」

悪魔「二人ともー、落ち着くッスー……」

側近「なんですか? 結局、私が全部悪いって言うんですか? 最低ですね」イラッ

魔王「じゃから、そうは言っとらんじゃろ!? お互いに悪い所があると!」

悪魔「あの……」

側近「魔王様はそうやって自分の意見ばかり通します。まったく、そんなだから好感度も下がるんですよ」

魔王「なんじゃと……貴様、ナメた口を聞きよる……っ!!」イラッ

悪魔「ちょっとちょっと、マジで落ち着くッス!!」

魔王・側近「うるさい殺すぞ!!!!!!」ブチギレ

悪魔(´;ω;`)


悪魔「はーい、落ち着いたッスか二人とも」ハァ

魔王「ふん」

側近「ぷい」

悪魔「どっちも悪いッス。側近さんも魔剣士が、げふん、色々あってイライラしてるのかもしれないッスけど、非は認めるッス」

側近「……ちっ」

悪魔「魔王様も、色々と廻り回って惨事が起きる事を知るッスよ」

魔王「……ちっ」

悪魔「二人とも、分かってるんスか!?」ガーッ

側近「分かってるってば……はあ」

魔王「悪魔、生意気。嫌い」

悪魔「んぎぎぎぎ……何なんスか! 二人して子供みたいッスね!」ブワッ

悪魔(あー、もう、なんでこんなギスギスしなくちゃいけないんスか……!)


勇者「こんにちは。魔王はいるかな?」ガチャッ

魔王「ぴょ!?/////」

勇者「ああ、ごめんね。夕方って言ったんだけど、午前で用事は終わらせたから……来ちゃった」ハハッ

魔王「……へ、へぇ。そうなんだぁ」アセアセ

勇者「何か騒いでたみたいだけど……どうかした? 魔王ってそんなに声を荒げるタイプだっけ?」

魔王「べ、別にぃ……ちょっと、色々あっただけだよ……」モジモジ

悪魔(うわぁ、完全にぶりぶり……ッス……)

勇者「あ、側近さんに悪魔さん。突然お邪魔してごめんね?」

側近「はぁ……別に、問題ありませんけど……」

悪魔「ちょっとちょっと、側近さん。態度悪いッスよ……」

勇者「んー……なんか、やっぱり喧嘩したのか? タイミング悪かったかな……」

魔王「別に! 大丈夫だよ! 勇者なら、いつ来ても良いんだからー!」エヘヘ

側近「きっしょ」ボソ

魔王「あ?」カチン


勇者「……えーっと。魔剣士、タイミング悪かったみたい」

側近「へっ」

魔剣士「……その様だな」

魔王「いつの間に帰ってきたんじゃ!?」

魔剣士「勇者殿に言われたので。早く帰らないと、色々面倒だと……まったく、言えばいいものを……」チラッ

側近「……ひ、ひさしぶり」

魔剣士「言いたい事は言え。そう言っている。お前が我慢すると、俺も辛い。勇者に感謝するんだな」

側近「……うんっ! ごめんね? おかえり!」

魔王「えっ、なんじゃ? 二人って……もしかして……」

魔剣士「報告が遅れました。側近と、お付き合いさせて頂いております。先日、婚約も致しました」

側近「えへへ……びっくりさせたくて、内緒にしたくて……」テレテレ

魔王「お、おぉー……なーんじゃ、それで側近は……」

側近「……ごめんなさい」

魔王「そう言ってくれれば、ワシも色々改めたものを。いや、すまなかったな! 気遣いができぬワシを許してくれ」

側近「そんな! そう仰られただけで……私、許します!」ダキッ

魔王「ふぉ! やめろ、みんながおるじゃろーっ」キャッキャ


魔剣士「ふっ。では……昼食でも、作りに行きますかな」

勇者「やっぱり魔剣士の料理が一番だもんね。土の王さんには悪いけど……」アハハ

側近「はい、では今日の会議はこれまででみんなで、ランチに致しましょうか」ニコッ

魔王「そうじゃな! よーし、魔剣士よ期待しておるぞー!」

魔剣士「御意。腕によりをかけましょう」

側近「うふふ、うふふー♪ 魔王様、ダブルデートみたいですねぇ~♪」キャッキャ

魔王「こらっ、ワシは別に……/////」

勇者「ん。なんの話かな?」

魔王「ひゃぅ! な、なんでもないよぅ……/////」



キャッキャ ワーイ エヘヘ


パタンッ



悪魔「…………」スチャッ

悪魔「……………………」カキカキ

悪魔「………………………………」ケシケシ

悪魔「………………………………………」コトン


悪魔『魔王様と側近さんが乙女すぎてウザいッス。俺だって春が欲しいッス』
『男で態度をコロッと変える女がウザいッス。俺も彼女が欲しいッス』



悪魔「…………スライム、飼うッスかねぇ」ブワッ



- 完 -

(・ε・) オツカーレジブン

おつー
悪魔・・・・(;△;)ブワッ

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