チンピラ「お怪我はありませんでしたか、お嬢さん」町娘「え?」(127)

村娘「あたしを弟子にして欲しいの!」師匠「なに?」
村娘「あたしを弟子にして欲しいの!」師匠「なに?」 - SSまとめ速報
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上記スレの後の話
上記スレの内容は>>3辺り


町の入り口──

師匠「今日から三日間、この町にある道場で出稽古だ。
   大きい道場で、しかも俺たちが招かれている形だ。粗相のないようにな」

弟子「はいっ!」

村娘「うん!」

チンピラ「おうっ!」

子分「おっす!」

彼らは、とある村の小さな道場の格闘家たちである。


元々師匠と弟子は、用心棒などで金を稼ぎながら旅をしていた。
しかし、ある村に滞在した時、村を狙う悪党たちと遭遇した。


そして、彼ら師弟と村民である村娘、チンピラと子分が一致団結し、
悪党たちを打ち倒したのである。


この事件が縁となり、師匠は村に道場を開き、
弟子と、新たに門下生になった村娘、チンピラ、子分に修業をつけていた。

出稽古が決まったのは、ちょうど一週間前のことだった。

村の道場──

師匠「おいみんな、やっと出稽古を受けてくれる道場が見つかったぞ!」

村娘「えっ、ホント!?」

師匠「ホントだとも。いや、長かった……。
   こんな小さな道場を受け入れてくれるところなんて、なかなかないからな」

弟子「昔、師匠と旅をしてた時はよく旅先で道場に乗り込んだりしましたけど……
   こういうのは初めてですね。ワクワクしてきましたよ!」

チンピラ「よっしゃ、俺たちで相手の門下生全員ブチのめそうぜ!」
子分「そうっすね!」

師匠「おいおい、道場破りに行くワケじゃないんだからな」

町の道場──

師範「これはこれは、ようこそいらっしゃった」

師匠「短い間ですが、ご厄介になります。よろしくお願いいたします」

師範「しかしまぁ……」チラッ

師範「本当に門下生がたった四人だとは思いませんで……ハハ。
   楽でよさそうだ。ウチは門下生が100人もいるので大変なのだよ」

師匠「まだできたばかりの道場なもので……勉強させてもらいます」

弟子(門下生が100人か……スゴイなぁ)
村娘(なんかイヤミな人だなぁ)
チンピラ(チッ、ペコペコしやがって……だらしねえ)
子分(いけ好かないヤツっすねえ)

師範「我が道場にはワシの下に、二人の師範代がおってな。
   一人はワシの息子でして、近いうちに道場を継がせる予定なのだよ」

跡取り「ま、よろしく」
師範代「よろしくお願いします」

師匠「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

跡取り「なんだか、君たちみすぼらしいねえ。
    ちゃんと稽古についてきてくれなきゃ困るよ?」

師匠「門下生の皆さんの足を引っ張らぬよう、がんばります」

師範「ハハハ、世の中の広さを知るのも修業のうちだよ」

師範「初日だし……いつもやってるワシらの稽古に交じってもらって、
   互いの門下生同士を軽く手合わせさせるというのはいかがかな?」

師匠「そうですね、ぜひお願いします」

師匠「じゃあお前ら、勉強させてもらってこい」

弟子「はいっ!」
村娘「頑張ろうね!」
チンピラ「やってやるぜ!」
子分「おっす!」

跡取り(やれやれ三日間も、こんな連中の面倒を見るのか)

師範代(小さい道場ながら、気迫はウチの門下生とは段違いだな……)

師範(ふん、弱小道場め……レベルのちがいを思い知らせてやる)

しかし──

弟子「はあっ!」

バキィッ!

高弟「うぐぐ……ま、参った!」

「門下生ナンバーワンの高弟さんが!」 「あっさりと!」 「なんてヤツだ!」

村娘「でやぁっ!」

ベシィッ!

門下生a「うぐぐ……っ!」ガクッ

「なんて蹴りだ!」 「あの女の子も強いぞ!」 「マジかよ!?」

師範(な、なんだ……これはどうしたことだ!?)
跡取り(なんで、こんなヤツらにやられてるんだよ!)

師範代(やはり……。実力はもちろん、勝つための執念がウチとはちがう。
    しかし、今のこの道場では仕方ないことか……)

チンピラ「へっへっへ、やるじゃねえかよ。弟子も村娘ちゃんも。
     子分、俺たちもやってやろうぜ!」
子分「やってやるっす!」



……

………

初日の稽古が終わり、夜になった。

町の宿屋にて──

師匠「途中、いくつか試合をこなしたが、どうだった?」

弟子「なんとか全勝できました。これも師匠のおかげですよ」
村娘「あたしも五試合やって、全部勝てたよ!」

師匠「よくやった。だが、結果に満足せず、自分を高めろよ。
   ──チンピラと子分は?」

子分「俺は、どうにか一勝できたっす!」

師匠「まだ格闘技を始めてまもないってのに、大したもんだ。
   こうやって経験を積み重ねていけば、もっと勝てるようになるぞ」

子分「はいっす!」

師匠「──チンピラは?」

チンピラ「…………」

師匠「どうした?」

チンピラ「……ぱい」ボソッ

師匠「パイ?」

チンピラ「全敗だよ……」

弟子「!」
村娘「!」
子分「あ、兄貴!?」

師匠「……そうか。残念ではあるが、勝敗は格闘家の常だ。気にするな。
   必要なのは反省と改善だ。どんな負け方をしたんだ?」

チンピラ「反則負けしちまったよ、全部」

師匠「反則……?」

チンピラ「だってよぉ、アイツらヒトを小馬鹿にした感じでよぉ!」

チンピラ「君には礼が足りないだの、品性がないだの、うるせぇっつうの!
     ふざけやがって!」

チンピラ「だから、ついやりすぎちまって……」

師匠「……チンピラ」

師匠「たしかにあの道場の連中が鼻につくってのは分かる。
   だがな、それに腹を立てて試合でうさ晴らしをしてしまったら、
   結局お前も同じ穴のムジナになるってことだ」

師匠「ルールを守らない格闘は、もはや暴力でしかない。
   ……分かるな?」

チンピラ「分かんねえよ!」

チンピラ「俺はアンタの強さに惚れ込んでこうやって格闘技を習ってるけどよ、
     アイツらの門下になったワケじゃねえんだ!」

チンピラ「なのに、アンタときたらあんなヤツらにペコペコしやがって!」

チンピラ「……くそっ!」ダッ

チンピラは外に出て行ってしまった。

子分「俺、兄貴を追ってくるっす!」ダッ

師匠「…………」

弟子「師匠……」
村娘「師匠さん……」

師匠「分かってはいるんだ。一緒に稽古してみて分かったが、
   ここの道場の稽古は強くなるためというより、
   門下生をおだて、強くなった気にさせる稽古だ」

師匠「厳しい稽古じゃ門下生がついてこず、儲けが減るからこうなったんだろう。
   事実、強くなろうって心意気を感じた門下生はごく一部だった」

師匠「しかし、向こうのやり方に合わせないワケにもいかない。
   今回は報酬をもらって、ここに来させてもらってるワケだからな」

弟子「師匠、チンピラさんも話せば分かってくれますよ」
村娘「そうだよ!」

村娘「……でも、チンピラのヤツ、なんからしくなかったなあ」

村娘「たしかに乱暴なヤツだけど、ムカついたらむしろ、
   反則するよりは真っ向から相手を叩きのめすってタイプなのに」

弟子「なにかあったんでしょうか……?」

チンピラは夜の町を歩いていた。

チンピラ(くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!)



門下生a『君んとこの師匠さ、師範たちにペコペコしちゃって情けないねえ。
     ホントに強いの? 実は弱いんじゃないの?』

門下生b『あの弟子ってヤツが、高弟に勝ったのマグレだよな。
     あんな気弱そうなのが強いワケないよ』

門下生c『あそこにいる村娘って子、可愛くね?
     もし試合やることになったら、胸とかさわりまくろうかな』

門下生d『子分ってヤツだけ、君のところでダントツに弱いね。
     才能ないよって教えてあげたら?』



チンピラ(あ~思い出しただけでムカついてきやがる!
     あんなヤツら相手にマトモに試合なんかしたかねえぜ!)

すると、子分が後ろから追ってきた。

子分「兄貴、待って下さいっす!」ハァハァ

チンピラ「子分……」

子分「兄貴……。俺、なんていったらいいか分からねえっすけど……。
   戻るっすよ、みんな心配してるっすよ」

チンピラ「ふん、ガキじゃあるめえし……わざわざ追ってくるなよ」

チンピラ「俺も熱くなっちまったから、夜風に当たりにきただけだよ」

子分「ならいいんすけど……」

チンピラ「まあ、せっかくお前も出てきたんだ。
     どうだ、夜の町を少し楽しまねえか?」

チンピラ「こんなデカイ町、生まれて初めて来たしよ。
     こういう町には、ああいう店がいっぱいあるっていうぜ?」

子分「えっ、ああいう店って……まさか……」

チンピラ「アレしかねえだろ」

子分「ア、アレって……!」ゴクリ

チンピラ「酒だよ。村じゃめったに飲めねえし、一杯ひっかけてから帰ろうぜ」

子分「酒っすか」ガクッ

チンピラ「──ったく、エロイこと考えやがって。ンな金あるワケねえだろうが」

子分「ま、そりゃそうっすね」

飲み屋──

子分「ゲ、町の道場のヤツらがいるっすよ」ボソッ
チンピラ「チッ、逃げるようでシャクだが、離れたところに座ろうぜ」ボソッ

飲み屋の一角を、師範の息子である跡取りと門下生たちが陣取っていた。

跡取り「だらしないぞ、お前たち!
    あんな貧乏道場のヤツに勝てないなんて……父さんに恥をかかせるなよ!」

高弟「すみません……」

門下生a「まあまあ、跡取りさん」

門下生b「あの程度なら師範や跡取りさんの敵じゃありませんよ」

門下生c「すぐ化けの皮がはがれますって」

跡取り「まあね。オイ、酒もっと持ってこい!」

彼らを横目で眺める二人。

子分「なんか荒れてるっすね」
チンピラ「ま、そりゃそうだろ。
     弟子や村娘に、門下生がだれも勝てなかったんだからな」

跡取り「だがまぁ……あの道場でマトモなのは弟子ってのと、
    あとは村娘って女だけだろうね」

跡取り「残り二人はゴミみたいなもんだろ」

門下生a「まったくですよ。特にあのチンピラっていうヤツ、
     ダウンした相手に殴りかかってきたりメチャクチャですよ」

門下生b「あまりに門下生がいないもんだから、
     そこら辺歩いていたゴロツキをムリヤリ入れたんじゃないですか?」

門下生c「そうにちがいねえ、ハハハ」

恐る恐るチンピラの顔を見る子分。

チンピラ「なに“ヤバイ、兄貴が爆発しちゃうっす”ってツラしてんだよ」

子分「え?」

チンピラ「反則しまくったのは事実だし、
     “そこら辺歩いてたゴロツキ”ってのも事実だ」

チンピラ「さすがにこんなところで喧嘩はしねえよ。
     師匠や他のみんなの顔に泥を塗ることになるからな」

子分「兄貴も大人になったっすねえ……」ホロッ

チンピラ(やっぱりコイツだけは殴っておくか)

酒が入るにつれ、跡取りたちのグループはどんどん横暴になってきた。

ドガッシャーン!

跡取り「酒だ、酒が足らないぞ!」ヒック

店長「跡取り様、どうかお暴れになることだけは止めて下さい。
   他にお客様もおりますので……」

跡取り「なんだって? 君、俺に逆らうってのかい?
    将来の道場主であるボクに逆らおうってのかい」

跡取り「ボクが号令すれば、こんなチンケな店の一つや二つ、
    簡単に叩き壊せるんだ」

門下生a「そうだそうだ!」
門下生b「ブッ壊しちまうぞ!」
門下生c「跡取りさんに逆らうのか!?」

店長「いえ、そんなことは……」

酒を酌み交わすチンピラと子分。

子分「なんか雲行きが怪しくなってきたっすね」

チンピラ「いるんだよな、群れるととたんにタチが悪くなるヤツって」

店長の娘である町娘も出てきた。

町娘「どうか、乱暴はお止め下さい。
   これまでに築き上げた道場の名声が、台無しになってしまいます」

跡取り「ふん、今道場を仕切ってるのは父さんであり、ボクなんだ。
    女如きが知ったようなクチを聞くんじゃない!」

跡取り「ボクがその気になれば、君を手に入れることだってたやすい」

跡取り「やれ」サッ

合図とともに、門下生たちが女店員を捕まえる。

町娘「きゃあああっ! 跡取り様、どうかこのようなことは──」

跡取り「道場に連行しろ。たっぷり楽しんでやる」

店長「娘だけは、娘だけはおやめ下さい! すぐ酒はお持ちしますので!」

跡取り「うるさいっ!」

ドカッ!

店長「あうっ!」ドサッ

チンピラ「そこまでにしときな!」
子分「やめるっす!」

跡取り「! 君たちは……貧乏道場のヤツらか。
    反則ばかりした上、こんなところで酒とは、道場の質が知れるねえ」

チンピラ「ンなことはどうでもいいんだ。さっさと女離せや」

チンピラ「嫌がる女を力ずくでどうにかしようってヤロウは……
     ロクデナシっていうんだよ、このボケナスども!」

跡取り「このボクにそんなクチを叩くヤツは久しぶりだよ」

跡取り「ま、いいや。この町でボクらに盾つくことがどれだけバカなことかって
    たっぷり教えてあげるよ」サッ

跡取りの合図で、門下生たちが一斉に襲いかかる。

門下生a「反則ヤロウが……おりゃあっ!」ブオンッ

門下生aの蹴りをかわし、チンピラがアッパーを浴びせる。

ガゴッ!

門下生a「ぐあっ! ……く、くそっ」

門下生b「やりやがったなっ!」ブンッ
子分「アンタ飲みすぎっすよ」スッ

子分に足を引っかけられ、門下生bが盛大に転ぶ。

門下生b「うおっ!?」ガクッ

ドガッシャアンッ!

チンピラ「おりゃあああっ!」グイッ
門下生c「わあぁぁぁっ!」

チンピラに投げ飛ばされる門下生c。

ドガァン!

跡取り「ちっ、だらしないヤツらだ……。おい高弟、お前も早く行け!」

高弟「しかし……」

跡取り「行けよ……。お前の大好きな師範代を、道場から追放されたくなきゃな」

高弟「……分かりました」バッ

高弟「このぼくが相手だ!」
チンピラ「(コイツは門下生ナンバーワンのヤツか!)来やがれ!」

高弟が、チンピラに的確にパンチを浴びせる。

ドッ! ドカッ! ガッ!

チンピラ「ぐっ……つおりゃあっ!」

ブオッ!

チンピラが回し蹴りを返すが、かわされる。

チンピラ(くそっ……コイツけっこうやりやがる!)

子分(……向こうの方がちょっと強いようっすね)ダッ

店の外へ出る子分。

子分「火事っすよ! 火事っすよ~!」

子分の大声で、辺りが騒然となる。

ザワザワ…… ガヤガヤ……

「なんだなんだ?」 「どうしたんだ、いったい」 「どこが火事なんだ?」

跡取り「ちっ……」

跡取り「オイお前ら、引き上げるぞ!」
門下生a&b&c「は、はい!」

跡取り「高弟、お前もさっさとしろよ!」

高弟「……はい!」ダッ

跡取りたちは飲み屋から去っていった。

チンピラ(あのまま続けてたら、ヤバかったかもしれねえな……)

チンピラ「ケッ、余計なマネしやがって」

子分「いや、兄貴の勝利を疑ってたワケじゃないんすけどね。
   俺も少しくらい活躍したかったっすから」

店長「お二人とも……ありがとうございました!」
町娘「おかげで助かりました」

チンピラ「あぁ? 別にテメェら助けるためにやったワケじゃ──」

チンピラ「!」

この瞬間、チンピラの体内に電流が走った。

チンピラ「お怪我はありませんでしたか、お嬢さん」

町娘「え?」

チンピラ「俺……いやぼくはああいうヤツらを見逃せないタチでしてね。
     故郷の村でも正義感の強い男で通ってるんですよ、ハハハ」

町娘「え、ああ、そうなんですか……」

子分(兄貴がいきなり紳士に……)

チンピラ「ところで連中はいつもあんな感じなんですか?」

店長「えぇ、そうなんですよ。
   少しハナシを聞いていただけますでしょうか……」

チンピラ(テメェにゃ聞いてねえよ!)

店長「彼らは町の道場の師範の息子と取り巻きたちです」

チンピラ(知ってるっつうの……)

子分「道場の連中だからって、あんなに偉そうなのはおかしくないっすか?
   まるで王様じゃないっすか」

店長「今の師範の前──つまり前師範の時は、あの道場はすばらしかったんです。
   町の治安を守ってくれたり、力仕事を手伝ってくれたり……」

店長「この町の人間は、みんなあの道場を尊敬していたんです」

店長「しかし、前師範がご病気でお亡くなりになり、
   今の師範になったとたん道場はすっかり変わってしまいました」

店長「道場の名声をいいことに、やりたい放題なのです」

店長「ウチの娘にも何度チョッカイをかけてきたか……」

店長「特にあの師範の息子といったら……。
   もし彼が師範になったら、今よりもっとひどくなるのは確実です」

子分「どこにでもひでぇヤツはいるもんっすねえ」
チンピラ「少しくらいマシなヤツはいねえのかよ」

店長「もう一人の師範候補である師範代さんは、前師範の志を受け継いでいるお方です」

店長「しかし、師範と跡取りに完全に抑え込まれているようですし、
   彼が次の師範になることはないでしょうね……」

チンピラ「なるほど……で、アンタがいいたいのは
     俺にあのドラ息子を叩きのめせってことか?」

店長「いえ、逆です! 逆なのです!」

店長「今日のことは感謝いたします。
   しかし、このことを表ざたにはしないで欲しいのです!
   どんな仕返しがあるか分かりませんので……」

チンピラ「ケッ、自分の娘をさらわれかけたってのに、みっともねえ──」

町娘「どうか、内密にして下さるようお願いします……」

チンピラ「分かりました。絶対に表ざたにはしませんよ」キリッ
子分(兄貴……)

飲み屋を出たチンピラと子分。

子分「──ったく、兄貴は村娘さん一筋じゃなかったんすか?」

チンピラ「村娘は可愛いけど、気が強いし、俺より喧嘩が強いってのも問題だ。
     だが、あの子はおしとやかで、品もいい」

チンピラ「なんとかこの町にいる間にモノにしてみせるぜ、へっへっへ」

子分「はぁ……。でも、あのドラ息子の件はどうするんすか?
   師匠さんに頼めば、なんとかしてくれるかも──」

チンピラ「バカヤロウ。師匠のヤツが今回の出稽古をさせてもらうまでに、
     どれだけ苦労したか知ってんだろ?」

チンピラ「これ以上、変なことに巻き込ませてたまっかよ」

子分「兄貴……」

すると──

師範代「君たち、ありがとう」

チンピラ「アンタ、道場にいた……」
子分「師範代っすね」

師範代「覚えててくれてありがとう」

チンピラ(ああ、道場の中で少しはマシだってヤツか)

師範代「ウチの門下生の横暴を食い止めてくれて、本当にありがとう。
    さすがに跡取りがいては、俺も出ていけないから……」

子分「どうもっす!」
チンピラ「……ん?」

チンピラ「……ちょっと待てよ。
     お前、跡取りと取り巻きどもが店で暴れてるのを知ってて、
     ずっと外にいたってのか?」

師範代「……そうだ」

チンピラ「くっだらねえ。
     道場の中で少しはマシ、どころかとんだヘタレじゃねえか!」

チンピラ「俺たちに礼をいって“あの道場は悪いヤツばかりじゃない”ってのを
     示そうとしたってか?」

チンピラ「ざけんじゃねえや、詐欺師かよオメェは」

チンピラ「跡取りの取り巻きの中には、アンタの立場を悪くしたくないから
     仕方なく従ってるっぽいのもいたぜ。
     アイツも気の毒にな、こんなヤツのためによ」

師範代「……申し訳ない」

チンピラ「……ケッ」

チンピラ「子分、行くぞ!」ザッ
子分「へ、へいっ!」

師範代「…………」

こうして二人は宿屋に戻り、出稽古一日目が終わった。

ここまで

翌日、町の道場にて──

師匠「師範さん、今日もよろしくお願いします」

師範「君はなにも知らないのかね」

師匠「……え?」

師範「昨日の夜、飲み屋で君の門下生にウチの門下生たちが
   怪我を負わされたそうなんだよ」

師匠「えっ……!?」

師範「──だろ?」

跡取り「うん、ボクらが飲み屋で酒を飲んでいたら、
    いきなりあのチンピラってのが絡んできて──」

跡取り「門下生たちに暴力をふるって、逃げたんだよ。
    幸いみんな軽傷だったけどね」

師範「まったく……どうもおたくの道場は心の修練がなってないようですな」

師匠「チンピラ……ホントなのか?」

チンピラ「あぁ!? ンなわけ──」

チンピラ(ここでアイツらが暴れてたっていったら、
     アイツらまたあの飲み屋になにするか分からねえ……)

チンピラ(それに、師匠とこの道場の関係を壊したくねえ……)

チンピラ「……ホントだよ」

師匠「!」

子分「えぇっ!?」

弟子「チンピラさん……」
村娘「チンピラ……」

師匠「そうか……残念だ」

バシィッ!

チンピラに平手打ちを浴びせる師匠。

師匠「お前はしばらく道場の隅で正座をしていろ、いいな」
チンピラ「……分かったよ」

師範「二度とこういうことがないようにしてくれたまえ。
   悪評が広まれば、どこもおたくの道場など相手にしてくれなくなるよ?」

師匠「はい……肝に銘じておきます。どうかお許しを」

師範「まあよい。ワシも心が広い方だからな」
跡取り「貧乏道場はしつけがなってないよねえ、あ~やだやだ」

子分(兄貴は悪くないっす……!)

子分(悪いのは全部あのドラ息子っす……!)

子分(でも……ここで俺が全部バラしたら、あえて黙ってる兄貴に悪いっす……)

村娘「んもう、チンピラったら……。
   アイツらがムカつくのは分かるけど、喧嘩したらダメだってのに」

弟子「この町に来てからのチンピラさんは、ずっとイライラしてますよね。
   子分さんはどう思います?」

子分「俺にはなんも分かんねえっす!」

稽古が始まった。

「はあっ!」 「せいぃっ!」 「とりゃあっ!」

「せりゃあっ!」 「とうっ!」 「えいやっ!」

チンピラ(俺、正座って苦手なんだよなぁ……。やべえ、足シビれてきた……)

門下生a「オイ、アイツ正座してるよ」ボソッ
門下生b「よぉし、昨日の借りを返してやろうぜ」ボソッ

門下生b「そらっ!」バシッ

門下生a「おっとっと……」ヨロッ

門下生aは組み手でよろめいたフリして、チンピラに近づき──

ドボォッ!

チンピラ「うげぇっ!」

──蹴りを入れた。

門下生c「俺にもやらせろよ。ケツ蹴ってくれ」

門下生a「おらよっ」ドカッ

門下生c「すげえ蹴りだ……おっとっと……」ヨロヨロ

ガキィッ!

門下生cのヒジが、チンピラの顔面に入った。

チンピラ「が……っ!」

門下生c「わりいわりい、大丈夫か? よろめいた拍子に腕が滑っちまってさ」

チンピラ「テメェ……この──!」

門下生c「いいのかよ? 俺らが跡取りさんにいえば、この出稽古中止だぞ?
     そうなりゃ、お前の師匠のメンツ丸つぶれだぜ?」

チンピラ「くっ……!」

さらに──

門下生b「おっとぉ!」バッ

吹っ飛んだフリをして、門下生bがチンピラにダイブした。

ドガァンッ!

チンピラ「…………」ブチッ

チンピラ「くっ、いい加減にしやがれ!」

チンピラと門下生たちの乱闘が始まった。

ドカッ! バキッ! ドゴッ! ガスッ! ベキッ!

師匠「お前たち、なにやってんだ!」
師範代「どうしたんだ、いったい!」
跡取り「やれやれ、またアイツか……」

ザワザワ…… ドヨドヨ……

門下生a「稽古してたら、アイツがいきなり襲いかかってきたんですよ。
     ──なぁ?」

門下生b&c「うんうん」

チンピラ「ふざけんじゃねえ! テメェらから先に──」

門下生c『いいのかよ? 俺が跡取りさんにいえば、この出稽古中止だぞ?
     そうなりゃ、お前の師匠のメンツ丸つぶれだぜ?』



チンピラ「ちっ、悪かったよ……」

師匠「……ちょっと待て。乱闘はすぐ収まったのに、
   なんでチンピラだけがこんなに怪我をしているんだ」

跡取り「おいおい、まさかウチの門下生がウソをついてるとでも?」

師匠「いや、そんなつもりは……」

師範代「跡取りさん、ウチの門下生だけじゃなく、
    チンピラ君の言い分もちゃんと聞いた方が──」

跡取り「師範代君、出しゃばらないでくれよ。
    ボクの方が君より偉いんだからさ、破門されたくはないだろ?」

師範代「……失礼しました」

跡取り「あのチンピラはトラブルばかり起こしてくれるねえ、まったく。
    師匠として恥ずかしくないのかい?」

師匠「厳しくいっておきますので……どうかお許しを」

師匠「チンピラ……」

チンピラ「師匠、俺は稽古に参加しねえ方がいいっぽいな。
     とりあえず今は出てくよ」

師匠「すまん……」

チンピラ「いいってことよ、さっきの平手打ちも派手な音がしたが、
     痛くないようにしてただろ」

チンピラ「じゃあ散歩でもしてくらぁ。ついでに病院行ってくる」

チンピラは道場から出て行った。

門下生a「ざまあないねえ」
門下生b「あ~スッキリした」
門下生c「さて、今度は“ちゃんと”稽古しようぜ」

ハッハッハ……

子分(兄貴……)

一人で町を歩くチンピラ。

チンピラ(あ~あ、この町に来てからろくなことがねえや。
     早く村に戻りたいぜ)

町娘「あら、あなたは昨日の……」

チンピラ「ん、え、あ!? こ、これは偶然ですね!」

町娘「そういえば、お名前は?」

チンピラ「チンピラです」

町娘「ひどいお怪我をしてるわ。手当てしますので店に来て下さらない?」

チンピラ「いえいえ、このくらいの怪我、なんてことありませんよ」

町娘「ごめんなさい、余計なお世話だったかしら」

チンピラ「あ、いえいえいえ! ぜひ、手当てをお願いします!」

飲み屋──

町娘「まだ開店時間じゃないので……さ、どうぞ」

チンピラ「ど、どうも……」

町娘がチンピラの手当てをする。

町娘「ところで、なんでこんなお怪我を?」

チンピラ「実はぼく、今この町に出稽古に来てましてね。
     あの道場の連中と、一緒に稽古をしていたんですよ。
     そしたら鍛錬に熱が入りすぎてしまって……ハハハ」

町娘「まあ、大丈夫ですか?」

チンピラ「いやあ、常人では病院送りでしょうけど、
     ぼくほどのタフガイになると、これぐらいへっちゃらですよ」

チンピラ「にしても、あの道場の人たちはホントとんでもないですね。
     ブン殴り──じゃなく、お説教してやりたいですよ」

チンピラ「イヤミ師範とドラ息子はもちろんですが、
     マシだっていう師範代もとんだヘタレですね」

町娘「!」

チンピラ「昨夜もこの店の近くにいながら
     あの騒動をボケッと眺めてたっていうんですから。
     師範代ならちゃんと門下生のしつけを──」

町娘「師範代さんを……悪くいわないで下さいっ!」

チンピラ「!」ビクッ

町娘「師範代さんの実力は、師範父子を凌いでいます。
   あの道場に留まらなくても、やっていける方なんです」

町娘「ですが、町民たちや前師範への恩義のために、
   今もああやって残って下さっているんです」

町娘「しかし、師範父子を怒らせれば道場を追い出されてしまいますから
   師範代さんもあまり露骨には逆らえないのです」

町娘「もしあの方がブレーキ役になってくれていなかったら……
   今頃この町の人々はもっとひどい目にあわされていたでしょう」

チンピラ「…………」

チンピラ「……すみませんでした。
     事情も知らずに、変なことをいってしまいました」

町娘「!」ハッ

町娘「こちらこそ……ごめんなさい! つい声を荒げてしまって……」

町娘「そういえば私、この町を出たことがほとんどないんです。
   よろしければ、あなたの村について色々教えてくれませんか?」

チンピラ「自慢できるところなんてほとんどないチンケな村でよければ、
     お安いご用ですよ」

しばらくして──

子分「あ、兄貴、やっぱりここにいたっすか!」

チンピラ「なんだ子分じゃねえか(くそっ、二人きりだったのに……)」

子分「なんだはないっすよ。
   師匠さんにそろそろ呼んでこいっていわれたっす。
   跡取りの息がかかってない門下生となら、練習しても大丈夫っすよ!」

チンピラ「分かった、すぐ行くぜ」

チンピラ「では名残り惜しいですが、ぼくはこれで……」

町娘「チンピラさんと話してると、楽しかったです。
   どうもありがとうございました」

チンピラ「いえ、ぼくも楽しかったですっ!」

チンピラ「子分」

子分「なんすか?」

チンピラ「俺は彼女に惚れた。きっと彼女も俺に惚れてる」

子分「えぇっ!?」

チンピラ「だから俺、この町にいる間は彼女を守り抜くぜ。
     もちろん、師匠とかには迷惑をかけないようにな」

チンピラ「そして町を去る時、俺は町娘ちゃんに告白する!」

チンピラ「そしたら、あの子も俺についてきてくれるにちがいない!」

チンピラ「完璧だ!」

子分「なにが完璧なのかよく分からんっすけど、とりあえず協力はするっすよ。
   弟分として」

チンピラ「おう、頼んだぜ!」

夕方、稽古が終わった。

師匠「みんな、お疲れだ! 宿屋に戻るぞ」

弟子「はい」

村娘「あ~疲れた、早くお風呂に入りたいな。弟子君、背中流してくれる?」

弟子「そ、そんなのダメですよ姉さん! お断りします!」カァァ…

村娘「アハハ、顔真っ赤にしちゃって可愛い~」

チンピラ「…………」

師匠「チンピラ、どうした?」

チンピラ「俺、ちょっと町を歩いてくる」
子分「俺も行くっす!」

師匠「……今日もか。
   かまわないが、もう喧嘩なんかするんじゃないぞ」

チンピラ「ま、安心しなって!」

飲み屋──

店長「いらっしゃいませ!」
町娘「あら、こんばんは!」

チンピラ「今日も来ちゃいましたよ、へっへっへ」
子分「どうもっす」

チンピラ「……ヤツらはまだ来てないみたいだな」

子分「でも、どうせすぐ来るっすよ。
   アイツらみたいなのは、自分のメンツがすげえ大事っすから」

子分「昨日は俺らに女さらうのをジャマされた格好っすからね。
   だから、道場でも兄貴に嫌がらせしてきたっすよ」

子分「でも兄貴、師匠さんに迷惑かけず、町娘さんを守る方法なんてあるんすか?」

チンピラ「まあな、とっておきの方法だ」

子分の予想通り、跡取りたちはまもなく店にやってきた。

ガラガラ……

跡取り「ん?」

跡取り「おやおや、稽古中に道場を追い出されたヒトも来てるじゃないか。
    あんなハプニングは前代未聞だったよ」

門下生a「ホントだ」
門下生b「また俺らに喧嘩売る気か? こえ~こえ~」
門下生c「勘弁してほしいよな」
高弟「…………」

チンピラ「……ふん」

子分(こりゃ、まちがいなくまた町娘ちゃんがチョッカイ出される流れっすよ。
   どうする気っすか、兄貴!?)

町娘「お酒を……お持ちしました……」

跡取り「こりゃどうも」

跡取り「よし、じゃあさっそくだけど脱いでくれよ」

町娘「えっ?」

跡取り「昨日はこの店で色々不快な目に遭わされたからね。
    客を楽しませろっていってるんだよ、聞こえなかったのか?」

町娘「お、お断りします!」

跡取り「ふうん……じゃあムリヤリ脱がせてやれ」サッ

合図で、門下生たちが動き出す。

チンピラ「待ちやがれっ!!!」

跡取り「ん? またボクらに喧嘩を売るつもりかい?
    いっとくけど、ここでまたやらかしたら出稽古中止はまちがいないよ」

チンピラ「安心しろよ……やり合うつもりはねえ」ザッ

町娘と門下生たちの間に立つチンピラ。

跡取り「なんだよ、まさか君が脱ぐの?
    ゴロツキのストリップなんざ見たくないんだけど、こっちは」

チンピラ「ちげぇよ」

チンピラ「──俺を好きなだけ殴れ。
     だから町娘ちゃんに手を出すのは……やめてくれ」

町娘「そ、そんな……ダメですよ!」
子分(えぇ~!? とっておきの方法って、まさかこれっすか!?)

跡取り「へえ、面白い。よしお前ら、望み通り殴ってやれ」

チンピラ(これしか思いつかなかったんだよな……。
     だが、ちょっと殴られるくらいなら、耐えきれる自信はある!)

チンピラ「子分、絶対手ェ出すなよ……!」

子分「あ、兄貴……!」

門下生が次々にパンチを浴びせる。
亀のように丸まって、袋叩きにされるチンピラ。

ドカッ! バキッ! ガスッ! ベキッ! ドゴッ!

門下生a「どりゃあっ!」

ガッ!

門下生b「おらっ、おらっ!」

ドゴッ!

門下生c「かっこつけやがってっ!」

バキッ!

町娘「止めて下さい! こんなこと……!」
店長「あの人が死んでしまいます!」

跡取り「おっと手を出さないでくれよ、手を出したらこの店は終わりだよ?」
高弟「…………」

チンピラ「だ、大丈夫……これくらい……!」

ドゴッ!

チンピラ「──ぐぅっ!」

門下生a「くそっ……コイツしぶといな」ハァハァ

門下生b「頑丈なヤツだ!」ゼェゼェ

門下生c「こっちが疲れてきたぜ……!」ハァハァ

チンピラ(いつもお前らよりよっぽど強いヤツらと稽古してんだ。
     テメェら如きの攻撃じゃ、参らねえよ……さっさと諦めて帰れ!)

跡取り「…………」

跡取り「オイ、イスで殴れ」クイッ

門下生a「……分かりました」ニヤッ

チンピラ(え、ちょっと待って、そりゃさすがに──)

ゴシャッ!

イスがチンピラの頭に叩き込まれた。

チンピラ「ぐわあぁぁぁっ!」

子分(ヤバイっす、兄貴がボロボロにされちまうっす……!)

子分(でも、手を出したら兄貴は絶対俺を許さないっす……!)

子分(どうすりゃいいっすかねえ……。
   今から師匠さんたち呼んでも、多分間に合わないっすよねえ……)

子分(…………)

子分(もしかしたら、近くにまたあの人がいるかも……!)

子分は店の外に飛び出した。

門下生a「なんなんだよコイツ……どんだけ頑丈なんだよ……。
     イスの方が壊れちゃったよ」

チンピラ(ど、どうにか……耐えきったぜ……! ざまあみやがれ!)ハァハァ

跡取り「スゴイねえ、タフさだけは本当に大したもんだ」

跡取り「ようし、そろそろお前の出番だ。高弟君、厨房から包丁持ってきて──
    アイツを刺せ」

高弟「なっ!?」

跡取り「師範代君を破門されたくはないだろう?
    大丈夫、お前には罪が及ばないよう処理するからさ」

高弟「……わ、分かりました……」

町娘「やめてえっ!」
跡取り「うるさいっ!」

バシッ!

町娘「うぁ……っ!」

高弟が厨房から包丁を持ってきた。

高弟「も、持ってきました……!」

チンピラ(ち、ちくしょう……まさかこんなことになっちまうとは……!
     どうしよう……?)

チンピラ(コイツらの辞書には“やりすぎ”って言葉はねえのかよ!?)

チンピラ(子分、助けてくれえ……)チラッ

チンピラ(──って、子分のヤツいなくなってるし! トイレにでも行ったのか!?)

チンピラ(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!)

跡取り「胸に力いっぱい突き刺してやれ」

高弟「は、はい……」

高弟(本当はこんなことやりたくない……)

高弟(……しかしやらなければ、師範代が追放される!)

高弟(ぼくは師範代とともに、ずっと修業していたいんだ!)

高弟(そうだ、コイツはしょせんよそ者……師範代の方が大事に決まってる)

高弟(よし覚悟を決めたぞ……刺す!)ギラッ

チンピラ(……コイツマジで刺す気だ! じょ、冗談じゃねえ!)

跡取り「さあ、早くしろ!」

高弟「はいっ!」
チンピラ(俺死んだ……!)

迫る高弟、目をつぶるチンピラ。

師範代「やめるんだっ!!!」

師範代「やめるんだ……高弟! 俺のためにそんなバカなことをするな!」

高弟「師範代!?」

師範代「俺が全て悪かったんだ。
    真っ向から跡取りたちに逆らえない俺が悪かったんだ」

跡取り「ほう、なんだいそれ? もしかして、ボクに逆らう気かい?
    この場で破門にされちゃってもいいのかい?」

師範代「ああ」

跡取り「な……なにっ!?」

師範代「俺は道場に居座ることにこだわって、大切なことを見失っていた。
    強くなることも、お前たちのような外道から町を守ることも、
    別に道場にいなくなってできる」

師範代「だから、俺はお前に最後の勝負を申し込む!
    明日の稽古が終わった後、一対一で勝負だ!
    勝っても負けても、俺はこの道場を辞める!」

師範代「さすがのお前にも、
    この挑戦から逃げることを恥とする心くらいはあるだろう!」

跡取り「くっ……」

跡取り「いいだろう……受けて立ってあげるよ」

師範代「……よし、明日正々堂々と立ち合おう」

跡取り「ふん……引き上げるぞっ!」ザッ

門下生a&b&c「はいっ!」

跡取りと高弟を除く門下生たちは飲み屋から出て行った。

師範代「チンピラ君、大丈夫か?」

チンピラ「なんとか防御してたからな……。
     しかしアンタ、昨日よりいい顔になったじゃねえか」

師範代「子分君が店の外で様子をうかがってた俺を呼びに来たんだ」

子分「いやぁ、間に合ってよかったっす」

数分前 店の外にて──

子分「頼むっす! アンタしかあの場を収められるヤツはいないっす!
   もうウチの師匠さんたちを呼んでたら間に合わないんす!」

師範代「しかし……俺は大っぴらにアイツらと敵対することはできないんだ。
    分かってくれ……!」

子分「そこをなんとか……お願いするっす……!
   あのままじゃ、兄貴が殺されちまうかもしれないんす……!」

子分「どうか……どうか……!」ガバッ

今にも泣きそうな顔で、土下座する子分。

師範代「…………!」

師範代(そうだ……こういう時こそ、格闘家は動かなければならないんだ。
    中で頑張っているチンピラ君やこの子分君のように──!)

師範代「分かった、すぐに向かおう!」

子分「恩に着るっす!」

町娘の手当てを受けるチンピラ。

町娘「チンピラさん、本当にありがとう……!
   昨日に続いて、また助けてもらってしまって……」

町娘「でも本当に大丈夫なんですか? お医者さんに行った方が──」

チンピラ「いやあ町娘ちゃんのおかげで、全快しました!
     ハッハッハッハッハ……!」

チンピラ「まあ、ぼくじゃなければ死んで──」

町娘「師範代さん、本当に道場を辞めてしまうんですか!?」

師範代「ああ、ようやくふっきれたよ」

町娘「でも、師範代さんがいなくなったら私……!」

師範代「大丈夫、この町を出るワケじゃない。
    これからも独自に修業はするし、アイツらの悪行を食い止める。
    むしろ自由になれて、せいせいしてるくらいだ」

町娘「そうなんですか、よかった……」

チンピラ「…………」

チンピラ「……子分、高弟、俺らは帰ろうぜ」

子分「へいっ!」
高弟「…………」

子分「これで、なんとか町は救われそうっすね。
   今後は道場を辞めた師範代が、バカ父子に対抗してくれるっすよ」

チンピラ「ああ……」

高弟「じゃあ、ぼくはここで……」

チンピラ「おう」
子分「さよならっす」

一人きりになった高弟は、悲しげな表情でつぶやく。

高弟「なんで師範代が辞めなきゃならないんだ……」ブツブツ

高弟「なんで……」ブツブツ

跡取り「やあ、高弟君」スッ

高弟「アンタは──!」

跡取り「さっきはすまなかったね。あんなことをやらせようとして」

跡取り「それに、ボクだって本当は師範代には辞めないで欲しいんだ。
    だから、少し協力してもらいたいことがあるんだけど……」

高弟「え!?」

宿屋──

チンピラ「おう戻ったぜ」
子分「ただいまっす」

村娘「ちょっとどうしたのよ、チンピラ!? アンタ、ボロボロじゃない!」

弟子「だれかと戦ってきたんですか!?」

チンピラ「いや……なにもなかったぜ。なぁ?」
子分「なにもないっす」

師匠「チンピラ……なにがあったのか話せ」

チンピラ「だからなにもねぇって!」

師匠「ちゃんとワケを話せ!
   なにもなくて、そんなアザだらけになるハズないだろう!」

チンピラ「……なんでもねえんだよ! 頼むからなにも聞かないでくれ!」
子分「聞かないで欲しいっす!」

師匠「…………」

師匠「分かった、なにも聞かないでおこう」

師匠「この出稽古も、明日でいよいよ終わりだ。
   ゆっくり体を休めて、最後まで気を抜かないようにな」

弟子「は、はい……」

村娘「う、うん……」

チンピラ「おう!」

子分「おっす!」

師匠(チンピラ……お前たちはいったいなにに巻き込まれてるんだ……?)

夜が明け、いよいよ出稽古の最終日となった。

師匠「今日もよろしくお願いします」

師範「ふん、くれぐれもトラブルを起こさないように頼むよ」

一日目、二日目と、アクシデントばかり続いたが、
この日の稽古は不気味なほど平穏であった。

「とうっ!」 「せいやっ!」 「えいっ!」

「どりゃあっ!」 「はあっ!」 「けいっ!」

跡取り「…………」

師範代「…………」

子分「あの二人、今日全然口を開いてないっすね」
チンピラ「ま、今日の稽古が終わったら雌雄を決しようってんだ。
     師範代はもちろん、あのドラ息子もさすがにナーバスになるだろうぜ」

子分「ところで高弟がどこにもいないっすね」
チンピラ「師範代が辞めるとこは見たくないっていってたしな。
     今日は休んでるんだろ」

その頃、町では──

高弟「見つけた……」

町娘「あ、あなたは──!?」

高弟「師範代を辞めさせないために、あなたが必要なんだ!」ガッ

町娘「は、離してっ!」

高弟「いいから来いっ!」ガシッ

町娘「だ、だれか──モゴッ!」

高弟「はぁ、はぁ、はぁ……これで師範代は追い出されずに済む……」

結局、何事もなく稽古は終わった。

師匠「三日間、本当にお世話になりました。
   また機会がありましたら、よろしくお願いします」ペコッ

師範「ハハハ、本当だよ。感謝してくれよ」

師範「ウチほどの道場が君たちくらいの規模の道場を招くなんて、
   本来ありえないことなのだ」

師匠「おっしゃる通りです」

師範「風のウワサでは、君は若い頃、悪名高い賭博格闘技に出ていたとか……。
   金と娯楽のために格闘技をするなんて、最低の行いだよ」

師匠「まったくお恥ずかしい過去です」

師範「師がダメだと、門下生もダメになる。くれぐれも精進してくれよ」

師匠「はい、ありがとうございます」

村娘「なんなのアイツ! 最後の最後まで師匠さんにイヤミばかりいってさ。
   弟子君、腹が立たない!?」

弟子「まぁ、多少は……」

村娘「多分、小さい道場に格の差を見せつけてやろうとあたしらを呼んだけど、
   あたしらが思ったより強かったから機嫌が悪いんだよ」

村娘「特に弟子君なんて、この三日間苦戦すらしてないしさ。
   多分、弟子君の実力は向こうの師範とかよりも上だよ」

弟子「しかし、師匠がああやって丁寧に対応してるのに、
   ぼくらが怒ったら全て台無しですし……」

村娘「そうだけどさぁ……チンピラたちもそう思わない?」

チンピラ(この後、あのバカ息子と師範代が試合するわけか……)
子分(勝負の行方が気になるっすねえ……)

村娘「き、聞いてない……!」

道場を出る師匠たち。

師匠「さてと報酬も入ったし、今夜はみんなでパァッとやるか!
   特にチンピラたちには色々嫌な思いをさせちまったからな」

弟子「いいですね!」
村娘「賛成!」

チンピラ「…………」
子分「…………」

チンピラ「あのさ、師匠……」

師匠「ん?」

チンピラ「俺と子分、ちょっと抜けていいか?」

村娘「えっ、どうしてよ! アンタら、三日間ずっとそんなんじゃない!」

チンピラ「……頼む」

師匠「……分かった、行ってこい!」

チンピラ「ありがとよ!」ダッ
子分「ありがとうっす!」ダッ

町の道場──

師範代(今日でここに入るのも最後か……)ザッ

師範代が足を踏み入れると──

跡取り「やあ、やっと来たか」

師範代「!」

ズラッ

そこには跡取りと、30名ほどの門下生がいた。

師範代「……これはどういうことだ?」

跡取り「これくらいで驚いてもらっては困る。
    あっちにはスペシャルゲストを用意してあるよ」スッ

跡取りが指差した方向には、町娘を捕える高弟の姿があった。

師範代「なっ!?」

高弟「師範代……どうか大人しくして下さい」
町娘「うぅっ……」

師範代「お前、なぜそんなことを!?」

高弟「ぼくは師範代に道場を去って欲しくないんです……。
   ぼくは師範代に憧れて入門したようなものですから……」

高弟「跡取りさんに師範代を懲らしめるのに手を貸してくれたら、
   師範代を辞めさせないでやるっていわれて……」

師範代「高弟……なんてバカなことを!」

跡取り「ハハハッ、どうしても君に辞めないで欲しいんだとよ。
    いい弟子じゃないか」
   (こんなウソに騙されやがって。師範代の命はここで終わりだ)

跡取り「さてと、高弟には君が手を出せば町娘を殺すよう命じてある。
    これから君には門下生30人の相手をしてもらう。無抵抗でね」

師範代「跡取りッ! ……まともに勝負する気はないのか!?
    俺と戦うのが怖いのか!?」

跡取り「オイオイうぬぼれるなよ。
    将来の道場主が、お前如きに直接手を下すなんてありえないだろ」

跡取り「──かかれっ!」

ワアァァァァァッ!

道場の外──

ドカッ…… バキッ…… ズガッ…… ドズッ…… ベキッ……

チンピラ「お、激しい音がしてんな。もう始まってるのか」

子分「でもなんか、一対一のわりに音が多くないっすか?」

チンピラ「そういやそうだな……」

チンピラ(中でなにが起こってるのか、なんとなく分かったぜ……)

チンピラ「子分」

子分「なんすか?」

チンピラ「俺は正面から入る。お前はどっか窓から入れ」

子分「へいっ!」

ガララッ!

チンピラ「なにやってんだ、テメェら!」

「なんだ!?」 「だれだ!?」 「あれは出稽古にやってきてた……」

師範代「う、ぐ……チンピラ君……」

跡取り「また君か……。とことんヒトのジャマをするのが好きみたいだな」

チンピラ「ケッ、一対一の対決を挑まれておいて、門下にフクロにさせるたぁ、
     ゲスの見本市みたいなヤロウだな」

跡取り「なんとでもいえよ。まあ、君もすぐ同じ目にあってもらうけどね。
    あそこにいる町娘が見えるだろ?」

町娘「チンピラさん、私にかまわず……!」
高弟「大人しくしろ」グイッ

チンピラ(高弟のヤツ、跡取りについたのかよ……!)

跡取り「少しでも反撃したら、町娘には死んでもらうよ」

チンピラ「子分! 出てこいっ!」

子分「おうっす!」バッ

どこからか飛び出した子分が、高弟から町娘をかっさらった。

高弟「なっ!?」

子分「こっちっす!」ダッ
町娘「ありがとう!」

チンピラ「ようし! 師範代、子分、町娘ちゃんを守るように陣形を作れ!」

師範代「すまない、助かった……!」ヨロッ
子分「オッケーっす!」

跡取り「くそっ……だが、人数はこっちの方が上だっ!
    あの三人を血祭りに上げろっ!」

門下生30人が襲いかかってきた。

師範代「はぁっ! つああっ! でいやっ!」

バキィッ! ドゴォッ! ベキィッ!

「ぐはぁっ!」 「うおぁっ!」 「げぶぅ!?」

さすがに師範代は強く、門下生たちを寄せつけない。

チンピラ「おりゃあっ! ずりゃあっ! ナメんなっ!」

ドゴッ! ガスッ! ドカッ!

「うおおっ!」 「ぐえっ!」 「こ、この……!」

ダメージを受けつつ、チンピラも大勢相手に一歩も引かない。

「このヤロウ!」 「これでも喰らえ!」 「オラッ!」

ヒョイッ スカッ ヒョイッ

子分「うわっと! ひぃっ! 危ないっす!」

実力で劣る子分は、どうにか避けながら持ちこたえる。

そして、道場の外では──

師匠「やはりこういうことだったか……」

弟子「師匠、すぐに助けに入りましょう!」
村娘「そうだよ、あたしらが加わればあんなヤツらあっという間に──」

師匠「いや入らない」

弟子&村娘「えっ!?」

師匠「俺たちは、なぜ道場内で戦いが起きているのか全く知らない。
   今この場にズケズケと入り込む権利はない」

村娘「権利って……このままじゃチンピラたちが……!」

師匠「チンピラたちは、ついに最後まで俺たちを巻き込もうとしなかった。
   ここで助けに入れば、アイツらの気遣いを全て無駄にすることになる」

村娘「いいじゃない、無駄にしたって!」

弟子「……分かりました、師匠。
   でも、チンピラさんと子分さんが本当に危なくなったら、
   たとえ師匠が止めてもぼくは助けに入ります!」

師匠「ああ」

村娘「んもう……!」

師匠(チンピラ、子分……勝ってみせろ!)

数分の乱闘の後、門下生たちはほとんど全滅していた。

師範代「さあ残るはあの三人だけだ……!」ハァハァ
チンピラ「ケッ、ぬるいヤツらだったぜ!(ほとんど師範代が倒したけど)」ゼェゼェ
子分「なんとかなるもんっすね……!(俺は一人も倒してないっすけど)」ヒィヒィ

門下生a「くそっ……!」
高弟(さすが師範代……)
跡取り「情けないヤツらだ……」

跡取り(まぁいい、師範代はヘトヘトだ……今なら十分倒せる!
    他の二人は残ってるヤツにやらせるか)

跡取り「高弟、お前はチンピラを倒せ! 門下生aはあのチビだ!
    ボクは師範代をやる!」

門下生a「はい!」
高弟「はい」

高弟が拳と蹴りのコンビネーションで、チンピラを翻弄する。

高弟「はっ! ていっ! ──とりゃあっ!」

ガッ! バシィッ! ドカッ!

チンピラ(やべぇ、コイツやっぱ強い!)

チンピラ「こなくそぉっ!」

ブオンッ!

チンピラのヤケクソ気味のソバットは外れ、逆に拳をもらってしまう。

バキィッ!

チンピラ「──ぶおっ!」
高弟(こんな素人に毛が生えただけのようなヤツに負けてたまるか!)

子分も門下生aの猛攻に苦戦していた。

門下生a「どりゃ! おりゃ! ──せいりゃっ!」

ドガッ! バシッ! ガゴッ!

子分(くっそ、やりやがるっすねえ……)

門下生a「どうしたい、てんで手応えがないじゃないか。
     よくこんなんで助太刀に入ろうなんて思ったもんだねえ」

子分「うるせえっす!」

子分の右ストレートはガードされ、返しのミドルキックが脇腹をえぐる。

ドズゥッ!

子分「ぐえぇっ!」
門下生a「ほら、どうしたどうした!」

師範代と跡取りの戦いは──

ガッ! バシッ! ドカッ! ドガガッ! ドスッ!

跡取り(くそっ、コイツ疲れてるハズなのに……!)

師範代(ずっとこの時を待っていた……。
    ずっと俺はコイツと全力で戦い、倒したかった……!)

──わずかに師範代が押していた。

ズンッ!

師範代の中段突きが、跡取りを吹っ飛ばした。

跡取り「ぐおぉっ……!」ヨロッ

師範代「どうした、こんなものか!?」

道場の外──

村娘「師範代って人は、どうやら勝ちそうだね」

村娘「師匠さん、あの二人はどう?」

師匠「チンピラと戦っている彼は、攻守のバランスがよく手強い。
   子分の相手もここの門下生の中じゃ強い方だろう」

師匠「だが、ここまで一方的にやられるほどの差はないハズだ。
   二人とも自分の組み手がまったくできてないな」

弟子「やはりさっきまで大勢と戦ってた疲れが……」

師匠「それもあるが、無理に相手と駆け引きしようとして、
   自分の持ち味を殺してしまっている」

村娘「どういうこと?」

師匠「昔はガムシャラに突っ込むだけだった二人が格闘技を覚えたことで、
   間合いやら技やらに気を取られてしまってるんだ」

師匠「もちろん、これはアイツらが成長した証拠でもあるんだが──」

弟子「今の時点だと、それがマイナスに働くということですね」

高弟のヒジが、もろにチンピラの顔面を打った。

ガキィッ!

チンピラ「つぅっ……!」

チンピラ(ちくしょう、このままじゃやられちまう……)

チンピラ(師匠から習ったことを思い出せ……)

チンピラ(ウチの道場の基本となる動きは三つ──)

清流のように穏やかに──
激流のように力強く──
滝のような一撃を!

チンピラ(まず清流の動きをやってみるか……苦手なんだけど、コレ)ユルリ…

高弟「シイッ!」

ゴッ!

チンピラ「ぶげぇっ!」

体の力を抜いたところに、高弟のハイキックがクリーンヒットしてしまった。

子分「うぅ……っ!」ガクッ

門下生a「俺はこの道場で、かなり上位の方なんだよ。
     貧乏道場の最弱君が、相手になるワケないだろう!」

子分(分かってるっす……)

子分(俺は体つきも小さく、センスもないし、覚えも悪いし、
   普段の稽古にだってなかなかついていけず、迷惑ばっかかけてるっす……)

子分(でも、そんな俺に道場のみんなはバカにせず接してくれるっす!
   だから道場の恥になる戦いはできないっす!)

子分(そしてなにより、子供の時からいつも俺を助けてくれた兄貴が、
   近くで戦ってるんす!)

子分(ここでやれなきゃ男がすたるっす!)

子分「うおおおおっす!!!」ダッ
門下生a「うおわっ!?」

グチャアッ!

子分捨て身の頭突きが、門下生aの鼻っ面にめり込んだ。

門下生a「うがぁっ!」

子分「さあ、勝負はここからっすよ!」

師範代と跡取りの戦いは、師範代がペースを握りつつあった。

師範代「はぁっ!」

ドスッ!

中段蹴りが腹に炸裂。

師範代「とりゃあっ!」

ガツンッ!

右ストレートが顔面を直撃。

さらに左フックでの追い討ち。

ゴッ!

跡取り「あぐぐ……くそぉ……!」ガクッ

師範代「昔は俺とお前はほとんど互角だった……。
    だが、師範の息子という地位に甘んじるようになって、
    お前は明らかに弱くなってしまった……!」

跡取り(くそっ、こんなヤツに……このボクが……! こうなったら……!)

子分の頭突きを受けた門下生aが、激怒して掴みかかる。

門下生a「このヤロウ!」ガシッ

子分「うわっ!」

門下生a「オラッ!」

ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ!

門下生aが密着状態から、ヒザによる連撃を浴びせる。

だが──

子分「へへ……俺みたいなチビを懐に入らせたのは失敗だったっすね……」

門下生a「ど、どういうことだ!?」

子分「こういうことっす!」

ガツンッ!

子分渾身の上段突きが、門下生aのがら空きの顎を打ち抜いた。

門下生a「ぐぁ……ぁ……」グラッ

ドサッ……

子分(や、やったっすよ……みんな……兄貴!)

高弟「しぶといな……いい加減倒れたらどうだ!」

チンピラ「そっちこそ……なかなかやるじゃねえか」ハァハァ

高弟「当然だ! ぼくは師範代に憧れて入門し、今日まで技と体を鍛えてきたんだ!
   おかげで門下生の中で一番強くなった!」

高弟「師範代のもとで修業できる……これがぼくにとってなによりの喜びなんだ!
   お前なんかにジャマはさせない!」

チンピラ「ケッ、くだらねぇ……」

高弟「なんだと!?」

チンピラ「テメェは師範代のためっていうが、
     結局師範代の下でいつまでもぬくぬくしていたいだけだろうが。
     だから、あんなバカ息子の口車に乗せられちまうんだよ」

チンピラ「俺はちがうぜ」

チンピラ「俺はいつか師匠より強くなってみせる!」

チンピラ「師匠を超えようとする気概もねえテメェなんかにゃ、負けねぇよ!」

高弟「ほざけっ!」ダッ

チンピラ(俺が得意なのは、激流の動き……!)

チンピラ(だったら下手な小細工はやめて、
     攻めて攻めて攻めて、攻めまくってやるっ!)

ダンッ!

チンピラが力強く踏み込む。

これまで後手に回り、高弟のコンビネーションに翻弄されていたチンピラが、
攻めに徹する。

ドゴッ! ドガッ! ズドンッ!

高弟(くぅっ……! 動きが変わった……!)

高弟も応戦するが、チンピラの勢いが勝っていた。
チンピラ怒涛の攻めに、高弟のコンビネーションが押し込まれていく。

チンピラ「うおりゃっ!」

ガゴッ!

チンピラの左フック。高弟の視界が揺れる。

高弟(し、師範代のために──……)グラッ
チンピラ(俺は師匠だって超えてやるっ!)

ドゴァッ!

ダメ押しの右ストレートが決まった。

高弟「ぐぶぁ──!(師範代、ぼくは……)」

ドサァッ!

チンピラ「ハァ……ハァ……ったく、手強いヤロウだった……」

道場の外──

村娘「やったぁ! アイツらもなかなか強くなってるじゃん!」

弟子「えぇ、二人とも喧嘩ではなく格闘技の動きになってましたよ。
   ぼくもうかうかしていられませんね」

師匠(チンピラ、子分……上達したな)

師匠(あとはあの師範代が跡取りを倒せばこの場は丸く収まる、
   というところだろうが──)

跡取り「ふざけやがって……!」サッ

跡取りは懐からナイフを取り出した。

子分「あ、ずるいっす! 卑怯っす!」
チンピラ「どこまでゲスなんだ、テメェは!」

跡取り「うるさい!」

師範代「大丈夫だ、二人とも」

師範代「ウチの道場に武器術はない。
    あんなものに頼れば、かえって弱くなるだけだ」

跡取り「ふふふ、ならこうしてあげるよ!」ビュッ

跡取りは町娘に向かって、ナイフを投げつけた。

町娘「あぁっ!」
師範代「しまった!」ダッ

グサッ!

肩でナイフを防ぐ師範代。

師範代「ぐぅ……っ!」

跡取り「かかったねえ!」ニヤッ

ガゴンッ!

跡取りが強烈な飛びヒザ蹴りを、師範代の顎に直撃させた。

師範代「──ぐはぁっ!」ドザッ

跡取り「ハハハハハッ! 会心の一撃! ざまあないや!」

跡取り「せめてボクを倒して道場を出て行きたかったんだろうけど、
    結局最後の最後まで、君はボクに勝てなかったねえ」

跡取り「この負け犬がっ!」

ダウンした師範代を蹴りまくる。

ドガッ! ドガッ! ドガッ!

町娘「やめてっ!」
跡取り「うるさいっ!」

バシッ!

チンピラ「テメェ……!」

跡取り「うん? ……ああ君たち、まだいたのか。
    ここからはこの町のハナシだ、君らは村に帰るといい」

チンピラ「だれが帰るかよ……次は俺が相手だ!」サッ

跡取り「おいおいまさか君如きが、ボクに勝てるつもりか?
    高弟を倒したぐらいでいい気にならないでくれよ」ザッ

チンピラ「うおりゃあっ!」ブンッ
跡取り「ふん」

チンピラのパンチに、回し蹴りでカウンターを合わせる跡取り。

ドゴォッ!

チンピラ「ぐあっ!」

子分「兄貴!(アイツ……ドラ息子のくせに強いっす!)」

チンピラ(そういやコイツも師範代なんだよな……。
     やっぱマトモにやり合ったらかなわねぇか……!)

ガードを固め、丸まっているチンピラを、容赦ない攻撃が襲う。

跡取り「はあぁっ!」

ドガァッ!

跡取り「せいやっ!」

バキィッ!

跡取り「つえぁっ!」

ズドンッ!

子分「兄貴、ガッツっす! ファイトっす! 根性っす!」

師範代(く、くそ……俺が不甲斐ないばかりに……!)

町娘「チンピラさん……!」

道場の外──

弟子「師匠……もう我慢の限界です! ぼくは助太刀に入ります!
   チンピラさんには悪いですが、チンピラさんの命の方が大事です!」

村娘「あたしも! チンピラのヤツ、殴られっぱなしじゃない!
   連戦だし、もう反撃する力が残ってないんだよ!」

師匠「……待て」

弟子「師匠!」
村娘「師匠さん!」

師匠「アイツ……なんか狙ってるぞ」

弟子「狙ってる?」

師匠「いや、狙ってるというか……溜めてるというか……」

跡取り「どりゃっ! おりゃっ! せりゃっ!」

バゴッ! ドスッ! ズガッ!

チンピラ「ぐっ……!」

跡取り(コイツが頑丈なのは知ってる……。
    おそらくガードを固め、ボクが殴り疲れるのを待つ気だろう)

跡取り(だが甘いよ!)

跡取り(ボクとて師範代の身、スタミナには自信があるんだ)

跡取り(君は死ぬまでボクのサンドバッグになる運命なんだよ!)

チンピラは殴られながら、この三日間のことを思い返していた。



自分の師匠がイヤミをいわれ──

自分の仲間が陰口を叩かれ──

濡れ衣で正座をさせられ──

稽古から追い出され──

飲み屋で好き放題殴られ──



チンピラ(あ~だんだんイライラしてきた……いい感じにムカついてきた……)

チンピラ(これというのも、今俺を殴ってるクソヤロウのせいだ……!)

チンピラ(せいぜい殴るのに夢中になっていやがれ……!)

チンピラ(今──万倍にして返してやらぁっ!!!)ブチブチッ

チンピラの怒りが最高潮に達した。

チンピラ「うおらぁぁぁぁぁっ!!!」

全身にほとばしる怒りで拳を握り、ただ全力で振り抜く。

ブオンッ!

跡取り「な、なんだ──」

──滝のような一撃を!

ボゴァッ!

遠心力たっぷりの拳は、跡取りにめり込み──

跡取り「ぐべぇ──!」

跡取りの体は壁まで吹っ飛び──

ドゴォン!

跡取り「ごぶっ!」

──床に墜落した。

跡取り「ガハァッ……!」ガクッ

チンピラ「あ~~~~~……久々にスカっとしたぜ。
     ひどい便秘が一気に解消したって感じだ」ドサッ

子分「兄貴っ! 俺、信じてたっす!」

町娘「チンピラさん……よかった……」
師範代「みごとだ……!」

道場の外でも──

弟子「すごいパンチでしたね。まさに怒りの一撃って感じでしたよ」
村娘「チンピラのくせにやるじゃん……」

師匠「…………」

弟子「さて、ぼくらは気づかれないうちに戻りましょうか」
村娘「うん、そうだね」

師匠「……よくやったぞっ!!!」

弟子&村娘「あ」

師匠「あ」

この大声が、中にいる人間に聞こえたことはいうまでもない。

チンピラ「──ったくよぉ、お前らずっと戦いを見てたのかよ。
     ヒマなヤツらだな、まったく」
子分「ひどいっすよ~!」

弟子「すみません……」
村娘「ごめん……」
師匠「すまん……」

チンピラ「まぁ、お前らに話してなかった俺たちだって悪かったんだしな」
子分「特別に許してやるっす」

師匠&弟子&村娘「ありがとうございます」

チンピラ「ところでアンタ、本当に道場を辞めるのか?」

師範代「……ああ、そうするつもりだ。
    チンピラ君にぶっ飛ばされた跡取りを見て、だいぶスッキリしたしな」

町娘「も、もし行くところがないのなら、私のお店に──」

師範代「ありがたい話だが、君の店もアイツらにしょっちゅう荒らされて
    だれかを雇う余裕はないだろう。
    今後も格闘技を続けていくつもりだしね」

師範代「とりあえずはこの町で働き口を探すよ。
    そしてできれば、今後も高弟のヤツに教えをつけたいと思ってる。
    今度はちゃんと、師離れできるように──」

チンピラ「ああ、そうした方がいいな」

師匠「…………」

子分「師匠さん、どうしたっすか?」

師匠「……師範代さん、道場を辞める必要なんてないありませんよ」

師範代「え?」

チンピラ「なんかいい方法があるのかよ?」

師匠「チンピラと子分がせっかくここまでやったんだ。
   二人の師匠である俺も、少しくらい働かないとな」

翌日、町の道場にて──

師範「──なんだと!? だからそんなひどいケガをしたのか……」

跡取り「師範代のヤツ、ボクたちを闇討ちしやがったんだ!
    飲み屋の町娘も一枚噛んでたみたいでさ! 父さん、ボク悔しいよ!」

師範「おのれぇ……! どうりで今日は姿を見せんワケだ……。
   よくも私の可愛い息子や門下生に……!」

跡取り「門下生を総動員して、師範代と飲み屋をブッ潰そうよ!」

師範「もちろんだ! お前を傷つけたヤツは絶対に許さん!」

すると──

師匠「おはようございます」ザッ

師範「!?」

師範「なぜ君がここにいるんだ!? 出稽古は昨日までだったハズだが……」

師匠「はい」

師範「では、なんの用だ!? こっちは今、君などに関わってるヒマはないんだ!」

師匠「今日は出稽古ではなく、道場破りとして参上しました。
   俺が勝ったら看板は頂きます」

師範&跡取り「!?」

師範「……道場破りだと!? キサマ、いったいなにを考えている!
   出稽古を受け入れてやった恩を忘れたのか!?」

師匠「もちろん、昨日受け取った報酬はお返しします」ドサッ

師範の前に、報酬が入った袋が投げ出された。

跡取り「……父さん! コイツの門下生のチンピラと子分にもやられたんだ!
    コイツやっつけてよ!」

師範「なんだとぉっ!? ようし、父さんに任せなさい!」

師範「いいかよく聞け……道場破りは殺されても文句はいえんぞ!」ザッ

師匠「…………」

道場の外──

町娘「……本当に師匠さん一人で大丈夫なんですか?」

村娘「まあ、見てれば分かるって」

チンピラ「見るまでもねえけどな」

子分「ないっすね」

弟子「頑張って下さい、師匠……!」

師範代(師範は心根はともかく、決して実力は低くない……。
    さてどんな戦いになるか……)

師範(貧乏道場の分際で、このワシに戦いを挑むとは愚かな……。
   すぐに叩き殺してくれるっ!)

師範「きえぇっ!」ダンッ

ビュッ! シュバッ! シュッ!

師範が次々と拳足を繰り出す。──が、一発も当たらない。

師範(な、なぜだ!? ──くそっ!)

シュッ! ビュッ! ブオッ!

「かすりもしない!?」 「完全に見切られてる!」 「ウソだろ……!」

師範「く、くそ──!」

──ピタッ

師範の鼻先に、拳が寸止めされた。

師匠「続けますか?」

師範「う、うぐぐ……っ!」

町娘「すごい……!」

村娘「相変わらず強いねぇ」

チンピラ「師匠のヤツ、完全に遊んでやがるぜ」

子分「散々俺らをバカにしてたから、ざまあないっす!
   あの師範も、全然大したことないっすね!」

師範代「いやそうじゃない……君たちの師匠が強すぎるんだ。
    これほどの強さがあれば、もっと有名になってていいハズなのに……」

弟子「師匠にも色々事情がありまして……」

道場内──

師範の醜態に、100人の門下生がどよめく。

師範「く、くそう……バカにしおって……!」ハァハァ

師匠「俺はあなたを一方的に叩きのめすこともできる。
   しかし、世話になった身でそれはやりたくない。負けを認めて下さい」

師範「ふ、ふざけるなあっ!」

師範が跡取りに「加勢しろ」と目配せする。

跡取り(──喰らえっ!)シュッ

跡取りが師匠の背後から、ナイフを投げつける。

師匠(しょうもないことを──)

シュバッ! ──バキィンッ!

ナイフは後ろ蹴りで迎撃され、粉々に砕けた。

跡取り(バ、バカな……! 見もせずに……!)
師範(なんだとぉ~!?)

師匠「なんなら、剣で斬りかかってもらってもかまいませんよ。
   そうしたら剣を砕くまでですがね」

師範(勝てるワケがない……こんなバケモノに……)ガタガタ
  
師範「ま……参りましたぁっ! ひぃぃぃぃっ!」ダダダッ
跡取り「と、父さん!? 待ってくれよぉっ!」タタタッ

師範父子は道場から逃げ去ってしまった。

師匠「……さて、これでこの道場は俺のモノになったワケだ」

ザワザワ…… ガヤガヤ……

師匠「だが、俺にこの道場を仕切る気はないし、そんな資格があるハズもない。
   次の師範には……ある人を推薦したい」

師匠「師範代さん」

師範代が道場の中に入る。

師範代「…………」

師範代「みんな……」

「師範代!?」 「師範代さん……」 「師範代……!」

師範代「俺は……まだまだ未熟だ。格闘家としても、人間としても。
    未熟だからあの父子の横暴を食い止められなかった」

師範代「あの二人を食い止めるには、
    こうして他道場の人たちの力を借りるしかなかった……」

師範代「だが……たとえ未熟でも俺はやり直したい。
    この道場を、かつての道場へと戻したい」

師範代「強くなった気になるのではなく、心も体も強くなるための道場へ……。
    町の人々に尊敬される道場へ……戻したい!」

師範代「頼むっ……!」

ザワザワ…… ドヨドヨ……

「どうする……?」 「いや、俺はついていくよ!」 「俺だって!」

突然の出来事に門下生たちも戸惑ったが、師範代の言葉は心に響いたようだった。

そして──

師範代「本当にありがとうございました、皆さん」
町娘「ありがとうございました」

師匠「こちらこそ出すぎたマネをしました」

チンピラ「ホントだぜ、オイシイところ全部持っていきやがって!」

子分「まぁいいじゃないっすか。この町は救われたんすから」

村娘「そうだよ、チンピラたちもよくやったって」

弟子「今回の殊勲賞はまちがいなくチンピラさんですよ」

師匠(その通りだ。チンピラと子分がいたからこそ、
   俺も商売人根性を捨てる決心がついたんだからな……)

師範代「ところで、先ほど師範に突き返してた報酬ですが、お持ち帰り下さい」ジャラッ

師匠「いや、けっこうですよ。
   さっきの騒ぎで、道場を去った門下生もいるでしょうし、
   今後の道場経営のために使って下さい」

師範代「しかし、それでは──」

チンピラ「いいからとっとけって!」
子分「そうっす!」

師範代「そうですか……ではいずれまた、このお返しはしますので」

師匠「またぜひ、一緒に稽古をさせて下さい」

師範代「えぇ! あなたの道場のように、気迫あふれる道場にしてみせますよ!」

町娘「……チンピラさん」

チンピラ「はい!」

町娘「今回私は色々な人に助けられましたが、
   特にあなたと子分さんには何度も助けていただいて……
   本当にありがとうございます」

チンピラ「あ、あのっ!」

町娘「え?」

チンピラ「ぼ、ぼくは……あなたの……」

チンピラ「あなたの……」

チンピラ「あなたの……」

チンピラ「あなたの店に、また行かせてもらいますっ!」

町娘「ぜひいらして下さい! たっぷりサービスしますから!」

子分「…………」

こうして師匠たち一行は、町に別れを告げた。

村娘「あ~あ、またあの村に戻るのか。
   色々あったけど、もう少しいたかったな」

弟子「また出稽古する機会はありますって」

師匠「ああ、やはり他の道場と交流するのはいい刺激になるからな。
   今後も続けていくつもりだ」

村娘「でも、今度はあまりイヤミじゃない道場にしてよね」

弟子「まあまあ、姉さん」

村娘「……それにしても今回はチンピラと子分にやられたよ。
   あの乱暴者と腰巾着がねぇ……」

子分「兄貴……」

チンピラ「あ?」

子分「どうして最後、告白しなかったっすか?
   “あなたのことが好き”っていおうとしたっすよね?」

チンピラ「あんな状況で告白するとか、なんかアンフェアだろ。
     俺は断られてもいいけど、断った側は後味悪いじゃねえか」

子分「オーケーされたかもしれないじゃないっすか」

チンピラ「分かってんだよ……断られるって」

子分「え?」

チンピラ(師範代、町娘ちゃんを頼んだぜ……)

それから一ヶ月が経過した。

村の道場──

師匠「あの道場から手紙が来たぞ」

村娘「えっ、ホント!?」
弟子「あれから、どうなったんですか?」

師匠「師範代さんが新しい道場主になってから、辞めたのもいたが
   むしろ前よりも門下生の数が増えたらしい」

師匠「あの町娘もマネージャーとして、時折顔を出してるようだ」

師匠「高弟もしばらく道場を休んでいたようだが、
   師範代さんが説得して復帰したみたいだな」

師匠「だいぶ状況も落ち着いてきたから、
   そろそろまた出稽古に来て下さいって書いてあるよ」

チンピラ「よっしゃ、今すぐ行こうぜ!」
子分「行くっすよ!」

師匠「お、おい。だが……近いうちに行くことにしよう」

チンピラ「そうこなくっちゃな!」

チンピラ「俺はあの町を救ったヒーローみたいなもんだからな。
     多分ファンクラブとかできたりしてんだろ」

子分(できてるワケねえっす)

チンピラ「今度こそ可愛い女の子をゲットしてみせるぜ」

子分「いやぁ~兄貴のハングリー精神には呆れ……いや尊敬の念を禁じえないっす」

チンピラ「そうと決まりゃあ、特訓だ! 子分、俺と組み手しやがれ!」

子分「おっす! 今度はもっと白星上げるっす!」



格闘技とは、敵を倒すための技術である。
しかし、正しく使えば仲間を増やすこともできる。

彼らはこうしてまた、共に強くなれる仲間を得たのだった。

                                     <完>

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