モバP「川島瑞樹の密かな悩み」 (38)

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【女子寮・川島瑞樹の部屋】

瑞樹「飲み物は全員分行き渡ったわね?」

比奈「準備オーケーっス」

沙理奈「よし!それじゃ、そろそろ始めよっか」

春菜「千枝ちゃん、お願いします!」

千枝「は、はいっ!」

千枝「先日の、千枝……じゃない、私たちブルーナポレオンのライブが無事成功したことをしゅくしまして――」

沙理奈「アタシたちはお酒で!」

春菜「私と千枝ちゃんはジュースで!」

千枝「乾杯っ!」

四人「かんぱーいっ!」

沙理奈「さあさあ、どんどん飲んでどんどん食べてね!ジュースもお菓子もいっぱい買ってきたから!」

千枝「こ、こんなに食べきれないです」

春菜「余った分は寮のみんなにお裾分けするので、無理はしなくていいんですよ」

比奈「さー、今日はアタシも飲むっスよー」

瑞樹「プロデューサー君はやっぱり来れないって?」

沙理奈「うん。どうしても早急に終わらせないといけない仕事があるから、五人で楽しんでくれって連絡来てたよ」

千枝「残念です……プロデューサーさんにも、楽しんでもらいたかったのに」

比奈「まあ仕事なら仕方ないっスよ。プロデューサーが余裕ありそうな時に、あらためて声かけてみるっス」

瑞樹「それにしてもあれねー。このメンバーでのライブは久しぶりだけど、なんだか実家に帰ってきたような安心感があるわ」

比奈「ああ、それわかるっス。アタシたち、ブルーナポレオンが一番最初に組んだユニットっスもんね」

瑞樹「ええ。最近はそれぞれ別のユニットでの活動が増えて、このメンバーで集まることが減っちゃって寂しいけれど」

春菜「私と比奈ちゃんはまだサイバーグラスで組む機会がありますけど、それ以外はバラバラですもんね」

沙理奈「アタシは聖來と組んでセーラーマリナー、千枝ちゃんはマーチングバンドが最近のメインって感じ?瑞樹さんは言わずもがな」

千枝「川島さん、いろんなユニットにひっぱりだこですよね。すごいです!」

比奈「その分忙しそうっスけど、体調管理とか大丈夫スか?」

瑞樹「ええ、大丈夫よ。まだまだ若いもの!ガンガン働けるわ!」

瑞樹「……でも、この間の千枝ちゃんの花嫁修行が見れなかったのだけは心残りだけどね」

春菜「ああ、先日のアイドルチャレンジの……どうしてもスケジュールが合わなかったって言ってましたからね」

沙理奈(……プロデューサーが瑞樹さんには目に毒だから別の仕事入れたってウワサ、流れてたね)ヒソヒソ

比奈(ただの事実無根なウワサっスよ……たぶん)ヒソヒソ

瑞樹「後から写真だけ見せてもらったわ。千枝ちゃん、ウェディングドレスとてもよく似合ってたわよ」

千枝「えへへ、嬉しいです。ありがとうございます、川島さん!」

瑞樹「今回は力になれなかったけど、家事のことでわからないことがあったらいつでも聞いてね?これでもちょっと自信があるんだから」

千枝「……それじゃあ今度、事務所でお料理教えてもらってもいいですか?」

瑞樹「もちろん!お安いご用よ!」

比奈「あの、アタシも料理はちょっと……なんでご同席してもいいッスかね?」

春菜「あ、できれば私も後学のために!」

瑞樹「ええ、大歓迎よ!みんなでした方が楽しいもの。沙理奈ちゃんはやらない?」

沙理奈「んー、それじゃあアタシは4人の料理を食べる係で参加しよっかな……春菜ちゃん、メガネは料理の一部!とかやめてね?」

春菜「やりませんよ!いや前にそんなことも言いましたけど、あれはあくまで劇の台詞ですからっ!」

比奈「あー……そんな劇もあったっスね……」

春菜「そんなことしたらレンズに傷がつくじゃないですか!そりゃあ食べられるものなら食べてみたいですけど!」

千枝「食べてみたいんですか……」

瑞樹「ふふっ、春菜ちゃんのメガネへの愛は相変わらずね」

比奈「相変わらずというかエスカレートしてないっスかねこれ」





比奈「あー、なんだか眠くなってきたッス……」ヒック

瑞樹「比奈ちゃん完全に酔いが回ってるわね……こんなにお酒弱かったかしら?」

沙理奈「ま、楽しいから飲みすぎちゃったんでしょ。瑞樹さんはまだまだいけます?」

瑞樹「もちろんよ。今日は潰れるまでとことん飲むって決めてたもの」

沙理奈「そう来なくっちゃ。さあ、まだまだ飲むよー」

千枝「………」ジー

春菜「? 千枝ちゃん、どうかしました?」

千枝「あ、いえ、なんでも……」

沙理奈「千枝ちゃん、もしかしてお酒に興味あるの? アタシのお酒一口飲んでみる?」

千枝「えっ」ドキッ

瑞樹「こーら、純粋な小学生を悪の道に引きずり込むんじゃありません」

春菜「私たちはアイドルなんですから、未成年の飲酒はご法度ですよ」

沙理奈「まあまあ、寮の中なら誰かに見られるわけでもないんだから、そう堅いこと言わずに。ね、千枝ちゃん、どうする?」

千枝「えっと、千枝は、その……」

千枝「…………」

千枝「きょ、興味はありますけど……千枝はまだ、子供ですから。オトナになるまで、お酒は我慢します」

沙理奈「うんうん、さすが千枝ちゃん。えらいえらい」ナデナデ

沙理奈「千枝ちゃんがオトナのオンナになったら、その時は今度はお酒で乾杯しようね。美味しいお酒、いっぱい教えてあげるから」

千枝「は、はい」

春菜「……千枝ちゃんが断るとわかってて聞きましたよね?」

沙理奈「さあ、なんのことやら?」

瑞樹「……11歳の千枝ちゃんがお酒を飲めるようになるのは9年後……9年後には私は……」ブツブツ

沙理奈「瑞樹さーん。戻っておいでー」





瑞樹「……ところで、唐突だけどここにいるみんなに聞きたいことがあるのよ」ヒック

沙理奈「うん?」

比奈「ふぇ?」

春菜「はい?」

千枝「なんですか?」

瑞樹「みんなって、プロデューサー君にはどんな風に呼ばれてる?」ヒック

春菜「プロデューサーさんにですか?」

沙理奈「アタシは普通に沙理奈って呼ばれてるけど」

千枝「千枝って呼んでもらってます」

比奈「ぷろでゅーさー? ひなってよんでくれてるっスねぇ」ヒック

春菜「春菜、ですね。それがどうかしましたか?」

瑞樹「そうね、みんな名前で呼んでもらえてるわよね」

瑞樹「私は『川島さん』なの」

沙理奈「…………」

比奈「…………」

春菜「…………」

千枝「…………」

瑞樹「……どう思う?」

沙理奈「どう思う、と言われても……」

春菜「なんと言っていいのか……」

比奈「……一瞬で酔いが覚めたっス」

瑞樹「私だけなんだか距離を感じるのよ……」

千枝「で、でも千枝だって川島さんのことは川島さんって呼んでますし……」

瑞樹「千枝ちゃんはいいのよ。というか、年下の子に川島さんって呼ばれるのは別に気にならないの」

瑞樹「……問題はプロデューサー君は私よりも年上ってことよ。そこまで離れてないけど」

春菜「と、年が近いと意識しちゃって下の名前で呼びにくいってこともあるんじゃないですか?」

瑞樹「そういうものなのかしら……」

沙理奈「き、きっとそういうことだって!あんまり気にしなくていいと思うよ、うん!」

比奈「あ、でも、プロデューサーって早苗さんや礼子さんに対しては下の名前で呼んでるっスよ」

沙理奈「もうっ、余計なこと言わない!」ポカッ

比奈「あた」

瑞樹「やっぱり私だけなのね……。プロデューサー君とは長いこと一緒にやってきてるのに、私だけ距離を置かれてるなんて……」オヨヨ

千枝「川島さん……可哀想……」

比奈「あー、だいぶ酔いが回ってるっスねこれは」

沙理奈「瑞樹さん……よし、今日はとことん付き合うよ!どうせアタシ明日はオフだしっ!」

瑞樹「うう……ありがとう、沙理奈ちゃん……」

比奈「じゃあ、アタシも付き合うっス。……春菜ちゃん、ちょっとここからは未成年には見せられない絵面になりそうなんで……」

春菜「あ、はい、わかりました。それじゃあ千枝ちゃん、後のことは二人に任せて、私たちは行きましょうか」

千枝「はい……。沙理奈さん、比奈さん……川島さんのこと、よろしくお願いしますね」

沙理奈「まかせといて♪ 二人とも、おやすみー」

バタン

比奈(……で、今日のことは飲んで忘れるとして、今後はどうするっスか?)ヒソヒソ

沙理奈(プロデューサーに、瑞樹さんが悩んでるみたいってアタシから言っとく。あの朴念仁にはそうでもしないと伝わりそうもないし)ヒソヒソ

比奈(それが無難っスね……)ヒソヒソ

瑞樹「なんらのよぉ川島さん川島さんって……あらたの方が年上のくせにぃー……」ヒック

沙理奈「うわあ瑞樹さんが早くもお見せできない状態になってる」

比奈「二人を帰して正解だったっスね……さ、アタシらも飲むとしますか」

【翌日】

沙理奈「――ってことがあってね。瑞樹さん、自分だけ距離を置かれてるみたいって、結構気にしてるみたいよ?」

P『そうだったのか……川島さんがそんな風に感じていたなんて、全然気がつかなかった』

沙理奈「まあ、無理もないと思うよ。瑞樹さんはオトナだから、普段は全然不満とか表に出さないもん」

沙理奈「でも、それは内に内に溜め込んでるだけだからさ……プロデューサーが、ちゃんとケアしてあげてね」

P『ああ、わかった。今後はそのあたり配慮するよ。教えてくれてありがとうな、沙理奈』

沙理奈「ウフフ、お礼なんていいの。……その代わり、アタシのケアも忘れずにしてもらうから」

P『あー……考えとく。それじゃあ、今から打ち合わせがあるから、またな』

沙理奈「はーい♪楽しみにしとくねっ」

プツッ ツー ツー

沙理奈「……本当にわかったならいいんだけど。なんだかイヤな予感がするのよね」

【数日後・事務所】

P「あ、おはようございますさり……松本さん!」

沙理奈「…………」

P「は……上条さん、来週のスケジュールの件なんですが」

春菜「…………」

P「荒木さん、これ荒木さん宛のファンレターです」

比奈「…………」

P「先ほどのボーカルレッスン、先生が佐々木さんのこと誉めていましたよ」

千枝「…………」

沙理奈・春菜・比奈「「「プロデューサー(さん)は馬鹿なの(なんですか)(なんスか)?」」」

P「えっ!?」

春菜「えっ!?じゃないですよ!沙理奈さんから川島さんの話は聞いたんですよね!?」

P「あ、ああ……」

比奈「それでなんでアタシらに対して他人行儀な感じになるんスか!?」

P「いやほら……川島さんが一人だけ疎外感感じてるって話だったから……それなら全員に敬語使えばいいのかなって……」

沙理奈「プロデューサーがここまで馬鹿だとは思わなかったわ……」

P「そ、そんなに駄目だったか?」

比奈「ダメダメっスよ……ほらいきなりそんな接し方したから千枝ちゃんショック受けてるじゃないっスか……」

P「えっ」

千枝「プロデューサーさん……」ウルウル

P「」

千枝「プロデューサーさん……千枝のこと、キライになっちゃいましたか……?」ウルウル

P「そんなことない、そんなことないぞ!すまん千枝!もう二度と佐々木さんなんて呼ばないから!だからお願い泣かないで!」

沙理奈「瑞樹さんに対してもそのくらい必死になりなよ……」





沙理奈「それで?」

P「うん?」

沙理奈「なんでプロデューサーは、頑なに瑞樹さんのことだけ名前で呼ぼうとしないの?」

P「……別に、呼ぼうとしてないわけじゃ」

沙理奈「本当にそう? 何か名前で呼べない理由があるんじゃないの?」

春菜「現に他のアイドルは基本的にほぼ全員名前で呼んでますもんね、プロデューサーさん」

比奈「さすがにちょっと不自然な気がするっス」

P「……これ、言わないと駄目なやつ?」

沙理奈「当然」

比奈「諦めて白状した方がいいっスよ」

P「あんまり言いたくないんだけどなあ」

千枝「……もしかしてプロデューサーさん、川島さんのこと苦手だったり」

P「それはないっ!」

沙理奈「否定はやっ!」

P「俺が川島さんのこと苦手なんてそんなことあるわけないだろ!?あんなに美人で気立てがよくて歌が上手くてトークも出来て家事万能でときどきお茶目でキュートな女性を苦手になる理由なんて何一つないっ!」

比奈「いや、まあ、そこはその通りだと思うっスけど」

千枝「じゃあ、どうして名前で呼ばないんですか?」

P「……色々と事情があるんだよ俺にも」

千枝「じじょう?」

P「……俺がプロデューサーになって、一番最初にスカウトしたアイドルが川島さんだって話したことあったっけ」

春菜「初耳ですね」

比奈「同じくっス」

沙理奈「アタシは知ってたよ。アタシがスカウト2人目で事務所入りしたとき、まだ瑞樹さんしか担当してなかったもんね」

P「んで、当時の俺はアイドルとの距離感が掴めてなかったから、最初に川島さんって名字で呼んじゃって、それがそのまま定着しちゃったわけだ」

P「春菜や比奈をスカウトした頃にはもうプロデューサー業にも慣れてきてたから、早い段階で名前で呼ぶようになったんだが」

沙理奈「あ、思い出した。アタシのことも最初の最初だけ松本さんって呼んでたよね」

P「おう。名字だとむず痒いから名前で呼べって言われて初日に沙理奈呼びになったけどな」

P「俺がアイドルとの適切な距離感とかを考え出したのも、確かそこからだった気がする」

P「……こんな感じで、納得してもらえたか?」

比奈「うーん……」

春菜「川島さんって呼び始めた理由はわかりましたけど、ずっと呼び方を変えない理由にはなってない気がしますね」

P「うっ」

春菜「川島さんがプロデューサーさんのことを信頼してるのは端から見てても感じますし、名前で呼んだっていいんじゃないですか?」

P「……今日の春菜はなんだか鋭いところを突いてくるな。さすがメガネキャラ」

春菜「お褒めにあずかり光栄です」

P「俺だって信頼されてるのは自覚してるよ。名前で呼んでも、川島さんは受け入れてくれるだろうこともわかってる」

P「でも、川島さんがよくてもそれだけじゃ駄目なんだ……それとは別の重大な問題があるんだ」

沙理奈「問題って?」

P「俺が恥ずかしい」

沙理奈「うわあ、しょーもない」

P「しょーもないとか言うんじゃない。こちとら川島さんとは長い付き合いなんだぞ」

P「沙理奈をスカウトするまでの間、酸いも甘いも川島さんと二人三脚で噛み分けてきたんだ」

P「そんな川島さんを今さら名前で呼ぶなんて……て、照れるじゃん?」モジモジ

沙理奈「もじもじするのやめてよ気持ち悪い」

比奈「右に同じく」

P「……ねえ今日のお前たちなんか俺に辛辣じゃない?」

比奈「鈍感主人公って見ててイライラするんスよね」

千枝「……川島さん、プロデューサーさんが名前で呼んでくれないって、すごく寂しそうにしてました」

P「うぐっ」

千枝「千枝、さっき佐々木さんって呼ばれて……プロデューサーさんに嫌われたんじゃないかって、とてもこわかったです」

千枝「だから、川島さんもきっと不安なんじゃないかって思うんです……川島さんも、千枝と一緒で、プロデューサーさんのこと大好きですから」

P「…………」

千枝「だから、お願いです。プロデューサーさん、川島さんのこと」

P「……そうだな」

千枝「!」

P「千枝の言う通りだ。俺が恥ずかしいとか……本当にどうでもいい理由だった」

P「アイドルを不安にさせちゃいけない。プロデューサー足るもの、それが何よりも優先すべきことだったのに」

P「そんなことに今の今まで気付けなかったとか……情けないなあ、俺」

春菜「でも、まだ遅くないと思いますよ?」

沙理奈「そうそう。プロデューサーが不器用なことくらい、アタシたちみんなわかってるし?」

比奈「一番付き合いの長い瑞樹さんなら、言うまでもないっスよねえ」

P「ありがとな、みんな」

P「お前たちのおかげで、大事なことに気付くことができた。俺、ブルーナポレオンのプロデューサーで本当によかったよ」

春菜「ふふふ、お礼を言うにはまだ早いんじゃないですか?」

比奈「感謝の言葉なら、全部終わってからあらためて聞くっスから……先にやることやっちゃいましょうよ」

P「ああ……!ええと、今日のスケジュールはスタジオで新曲の収録だったか……終わった頃に迎えに行って、その時に――」

沙理奈「え?やるなら今すぐでしょ?」

P「え?」

【スタジオ・休憩室】

楓「あ、ケータイ鳴ってますよ」

瑞樹「あら、本当ね。誰からかしら」

楓「瑞樹さん、未だにガラケーなんですね……スマホに変えたりしないんですか?」

瑞樹「そうねえ……よく薦められるけど、今の携帯でも特に困ってないのよね」

瑞樹(……プロデューサー君から?何か急なスケジュール変更でもあったのかしら)

楓「最近のスマホは、なんでもできてとっても便利なんです。まほうみたいに」ドヤッ

瑞樹「楓ちゃん、電話出てもいいかしら?」

楓「はい、どうぞ」

瑞樹「はい、もしもし?」

P『……あ、俺です。今、ちょっとお時間大丈夫ですか?』

瑞樹「ええ。レコーディングが順調に進んで、今は休憩中なの。何かあったのかしら?」

P『……ええと、何かあったと言えばあったんですが』

瑞樹「? もしかしてトラブル?」

P『いや、トラブルとかではなくて……その、なんと言うか、ですね』

瑞樹(……プロデューサー君がこんなにテンパってるのも珍しいわね)

瑞樹「プロデューサー君。何があったかわからないけど、まずは落ち着きましょう?」

P『は、はい……』

瑞樹(ふふっ。なんだか可愛い)

瑞樹「落ち着いた?」

P『な、なんとか』

瑞樹「それじゃあ、用件を聞かせてちょうだい?お仕事の話かしら?」

P『いや、仕事の話ではないです……どうしても一言だけ、伝えないといけないことがありまして』

瑞樹「……?」

P『お……』

瑞樹「お?」

P『お、お仕事がんばってください……みっ、瑞樹さん!』

瑞樹「えっ」

P『す、すみません仕事中に!あ、後で迎えに行くので収録終わったら連絡お願いします!』

瑞樹「あ、ちょ、ちょっとプロデューサー君!?待って、もう一度、もう一度言って!?」

ツー ツー

瑞樹「……切れちゃった」

楓「プロデューサーさんからだったんですか?」

瑞樹「え、ええ……」

楓「……告白でもされました?」

瑞樹「さ、されてないわよ!なに言ってるの、もうっ!」

楓「そうですか……急に瑞樹さんの顔が赤くなったので、まっ、カップルの成立かと」

瑞樹「……気のせいよ、気のせい。そろそろ休憩終わりの時間ね、戻りましょう!」

楓「ふふ……そうですね。なんだか休憩前よりも、いい歌が録れそうな気がしますし」

瑞樹(あの人に名前で呼んでもらえただけで、こんなに動揺するなんて……)

瑞樹(で、電話でよかったわ……)

【事務所】

P「ふう、何とか言えた……」

沙理奈「いやそこは呼び捨てにしなよ!」

春菜「愛しの瑞樹!くらい言ってもバチは当たりませんよ!」

比奈「というかプロデューサー、敬語はそのままなんスね……」

P「う、うるせえ!これでも俺は頑張った!頑張ったんだよ!そんなに一気に変えられるか!」

比奈「プロデューサーは小学生男子か何かっスか?」

千枝(そういえばクラスで似たような光景見たことあるような……)

沙理奈「はいはい、頑張った頑張った。でも、迎えに行く前にその顔だけはなんとかした方がいいよ?」

春菜「名前呼ぶだけでここまで顔を真っ赤にする人初めて見ました」

P「うわ、マジか……で、電話でよかった……」

P・瑞樹(……それにしても、この後どんな顔して会えばいいんだろう(いいのかしら))




おしまい

以上になります
松本さん→川島さんの呼び方などもしかしたら公式と食い違う部分があるかも…
お付き合いありがとうございました

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