八幡「一色×雪ノ下=いろゆき?」 (37)

部室



由比ヶ浜「やっはろー!」ガラガラ


雪ノ下「こんにちは」


一色「結衣先輩やっはろーです!」


由比ヶ浜「ゆきのんもいろはちゃんもやっはろー!」


一色「あ、先輩もどうもでーす」キャピッ


八幡「おう」ガタッ


一色「むぅ~。反応うっす~い」


八幡(もうその手のやつには慣れたっつーの。てかなんでこの娘、部員の俺たちよりも先に部室にいるの。こわい、いろはす速くてこわい)


雪ノ下「今、紅茶を入れるわね。それにお茶請けも」ガタッ


由比ヶ浜「ゆきのんありがとー」


八幡「……ども」


八幡(まあ、それに関してはもはや慣れつつあるし、今は理由を聞く気にもなれないので置いとくとして、だ)


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由比ヶ浜「……あったかぁい……」ズズッ


八幡「……」ズズッ


雪ノ下「一色さん、クッキーとチョコパイどちらが良いかしら」


一色「えー、わたしが決めちゃって良いんですかー?」


雪ノ下「ええ。私も丁度、決めあぐねてたところだったから」


一色「それじゃあ、クッキーでお願いします!」


雪ノ下「分かったわ」フフッ


八幡(ぴしっとあざとく敬礼ポーズを決める一色。それに対して柔らかな微笑みを浮かべる雪ノ下)


八幡(……そうなのだ。最近この二人の距離がかなり近いのだ。それはもう精神的なものでも、物理的なものでも。今だって椅子を横にぴったりくっつけて座っている)


八幡(そして、それによってジェラる奴が一人……)チラッ


由比ヶ浜「……」ムムッ

由比ヶ浜「……あたしも混ーぜて!」ガタガタッ


雪ノ下「ゆ、由比ヶ浜さん。近いわ」


由比ヶ浜「いいじゃん、いろはちゃんだって超近いし」ギュー


雪ノ下「……もう」フイッ


一色「はい、雪ノ下先輩、あーん」ヒョイ


雪ノ下「!? じ、自分で食べられるから大丈夫よ一色さん」フイッ


一色「えー? そんなこと言わずにー」グイグイ


雪ノ下「……ダ……ダメ」ググッ

八幡(一色のやつ、いたずらっぽい笑み全開で超楽しそう。雪ノ下のスキンシップ耐性の低さを完全に見越してやがる。見切りスキル超高い)


由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん! あたしもあーんしてあげる! ほら、あーん!」ヒョイ


雪ノ下「ちょ、ちょっと、由比ヶ浜さんまで」


八幡(そんな一色に抗戦するよう、元祖雪ノ下篭絡兵器こと由比ヶ浜結衣が逆サイドからぐいぐい攻める)


八幡(結果的に雪ノ下がうつむいたまま硬直してしまったため、両名のあーんはお開きとなったわけだが……)


八幡(今ここに、右に由比ヶ浜、左に一色を置いた雪ノ下による百合ハーレムが完成していた)


八幡(……女の子同士っていいですね! なんかこう、春風を感じる。俺の存在が完全に忘れられているだろうことはこの際どうでもいい)

一色「そういえばー、雪ノ下先輩って呼び方なんか堅苦しくないですかー?」


雪ノ下「? そうかしら? 私は特に問題ないと思うのだけれど」


由比ヶ浜「うん、別にふつーって感じ」


一色「えーだってー、結衣先輩は下の名前ですけど雪ノ下先輩は上の名前ですしー。わたし的になんか違和感あるんですよ」


雪ノ下「それで言うなら、あの男も下の名前に先輩づけで呼ぶ必要があると思うのだけれど」


一色「先輩は先輩でいいんです! 別物です!」


八幡「どういうことだよ……」


八幡(ちょっと? シンプルに仲間はずれにするのやめてね? まあいいけどよ)

一色「だから雪ノ下先輩も下の名前で呼ぼうと思うんですよー。いいですかね?」


雪ノ下「まあ、これといって問題が出るわけでもないし、別にかまわないけれど……」


一色「じゃあ、雪乃せんぱ……んー」


雪ノ下「? どうかしたの?」


一色「なんか違いますねー。むしろ違和感増しちゃった感パないです。んー、やっぱりここは……」


雪ノ下「……?」


一色「……ゆきのん先輩でいきましょう!」


雪ノ下&由比ヶ浜「「!?」」

雪ノ下「い、一色さん? ちょっと、それは馴れ馴れし過ぎるというか、」


一色「えー。こっちの方が可愛くていいじゃないですかー」


雪ノ下「で、でも」


一色「……ダメ、ですか?」ウワメヅカイ&ソデツカミ


雪ノ下「うっ……」


一色「……」キラキラ


雪ノ下「……あなたが、そう呼びたいのなら、良いわ」カアアッ


一色「了解です、ゆきのんせーんぱいっ!」


雪ノ下「……」///


八幡(おい、顔うつむけて隠してるつもりかも知れないけど真っ赤っかなのバレバレだぞお前)

由比ヶ浜「……」プクー


八幡(そしてゆきのん呼びを取られた由比ヶ浜さんがふくれていらっしゃる。こいつどんだけ雪ノ下のこと好きなんだよ。百合ヶ浜百合じゃねえか)


一色「それでさっそくなんですけど、ゆきのん先輩」


雪ノ下「な、なにかしら」


一色「今週の土曜日って空いてたりしますかー?」


雪ノ下「……ええ。これといった用事は確かにないけれど」


一色「それじゃあ一緒にお買い物行きません?」


雪ノ下「!」


由比ヶ浜「!」ガタッ


八幡(いやだからなんでお前が一番動揺してんだよ)


雪ノ下「……別に、構わないけれど」ソワソワ


一色「ほんとですかー!? ちょうどその日暇してて困ってたんですよ」


由比ヶ浜「あ、あたしも! あたしも行く!」ガタタッ


一色「結衣先輩は土曜日三浦先輩たちと遊ぶって言ってたじゃないですか。それ知ってなきゃ誘ってますよー」


由比ヶ浜「あっ……そだった」シュン…


八幡(……ついには休日に二人でお出かけまでする関係にまで)

一色「……先輩? なんなんですかその生あたたかい目は……はっ! もしかして自分も誘ってもらえるんじゃと期待していたんですかすみませんそういう態度ちょっと無理です」


八幡「ちげえよ……だいたい俺も土曜日は用事あるし」


雪ノ下「嘘ね」


一色「先輩、変な意地張らない方がいいですよー?」


由比ヶ浜「ヒッキーどうせ家から出ないじゃん!」


八幡「お、おう……まあ嘘なんだけどよ」


八幡(なんでこいつら即座に断言できるわけ。俺のひきこもり信用度高すぎだろ)

八幡「……で、結局なんでお前はここにいるんだよ」


一色「ほぇ? わたしですかー?」


八幡「(あざとい)お前以外に誰がいるんだよ」


一色「それもそうですねー。……こほん。えっと、実は生徒会の仕事でちょっとよく分からないところがあって、そのお手伝いを頼みにきたんですよー」


雪ノ下「……一色さん」


一色「なんですかーゆきのん先輩?」


雪ノ下「あなた、そろそろ自力で何かを成し遂げるということを知るべきではないのかしら」ニコリ


一色「ひっ!?」


八幡(出たよ、氷の女王スマイル。あんなにニッコリ微笑んでるのになぜこうも恐怖を喚起させるのか。八幡気になる)


八幡(……というか、何から何まで甘くなるってわけじゃないのな、雪ノ下も)

一色「いや、そのですね、頑張ってはいるんですけどなかなか結果がついてこなくてですね」


雪ノ下「自分で努力したと声高に言う人間ほど努力が足りないものよ。それに結果が出ていない以上その努力は無意味だわ」


一色「うぅ」


雪ノ下「それに、あなたの態度から察するに、人に頼ることに全く罪悪感を感じていないようね。確かに時と場合によってはそれも大事なことなのかもしれないけれど、それが常になってしまってはいつまで経ってもあなたは停滞したまま。あまりよろしくはないわ」


一色「……はい。反省します」ムスッ


雪ノ下「はい、よろしい」クスッ


一色「!」ドキッ


雪ノ下「……どうせ時間もないのでしょう? 今回だけは手伝ってあげるわ」


一色「え、あ、は、はい」///

一色「ええっと……。お手伝いさんがひとり確実に確保できるって前提で仕事進めちゃってたんで、ゆきのん先輩の言う通り時間はないです」


八幡「お前なあ……」


由比ヶ浜「あ、あはは、いろはちゃんらしいねー……」


一色「そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか! 先輩方を頼りにしてたんですから!」


雪ノ下「はぁ、まったく……ごめんなさい。少し行ってくるわ」ガタッ


八幡「おう」


由比ヶ浜「あ、うん。いってらっしゃーい」


雪ノ下「ええ。……一色さん、行くわよ」スタスタ


一色「え、あ、はい。ではでは皆さん、さよならでーす! ……あ、ちょっと待ってくださいよゆきのんせんぱーい!」タッタッッタ



ガラガラ ピシャッ

八幡&由比ヶ浜「…………」


八幡(……なるほどな。さっきの説教も雪ノ下なりの優しさ、か)


八幡(ただただ甘えられて一色になすがままにされるでもなく、言うべきことはきっちり言う。そしてその叱咤に隠れた善意を、一色もまたきちんと察している)


八幡(……あいつら、マジのマジに仲良くなってんじゃねえか)


由比ヶ浜「……ヒッキーさあ?」


八幡「なんだ」


由比ヶ浜「いろはちゃんに頼られなかったのちょっと残念って思ってるでしょ」

八幡「…………別に」


由比ヶ浜「ほんとにー?」ニヤニヤ


八幡「働かずに済むのならこれ以上嬉しいことはねえよ。……っていうか、お前こそいいのかよ」


由比ヶ浜「? なにが?」


八幡「雪ノ下がとられちまっても」


由比ヶ浜「あ、あはは。うーん、そりゃあちょっと寂しいかなーとか思ったりしなくもないけど。……あたしゆきのんのこと大好きだし」


八幡(よくそんな恥ずかしいこと臆面もなく言えるなこいつ。凄いやら羨ましいやら)


由比ヶ浜「でもね」


八幡「……?」


由比ヶ浜「……こうやって、ヒッキーとふたりで部室にいるのもたまには悪くないかなーって」エヘヘ


八幡「…………」

由比ヶ浜「……なんか反応しろし」ムスッ


八幡「…………なんて返せばいいんだよ」フイッ


由比ヶ浜「えっと、それは、ほら」クシクシ


八幡「……」


由比ヶ浜「……」


八幡&由比ヶ浜「…………」

八幡「……そういや」


由比ヶ浜「?」


八幡「……どっか適当に暇な日あるか」


由比ヶ浜「へっ!? ど、どしたのヒッキー」


八幡「ほら、あの、なんか約束してたやつあっただろ。あれだ」


由比ヶ浜「ええっと、あ、うん、……今週の日曜とかは、暇、だと思う」


八幡「……そうか」ペラッ


由比ヶ浜「う、うん」


八幡「…………」


由比ヶ浜「……えへへ」


八幡(……ヤバイ、読書にまったく集中できん。顔赤くなってねえだろうな)

廊下



一色「待ってくださいよゆきのんせんぱーい」タッタッタ


雪ノ下「……あの、やはりその呼び方はやめにしないかしら」


一色「えー? どうしてですかー?」


雪ノ下「…………だって、恥ずかしいんだもの……」///


一色「!」


一色(うう、やっぱり可愛いなーゆきのん先輩。普段の凛とした感じとのギャップがすごいっていうか)

一色「ダメですよー。もうゆきのん先輩はゆきのん先輩で決まっちゃったんですから!」


雪ノ下「そうは言っても……」


一色「うーん……。あ、じゃあ代わりと言っちゃなんですけど、わたしのことも好きに呼んでいいですよ?」


雪ノ下「え? それはどういう……」


一色「だからですねー、たとえば『いろはさん』とか『いろは』とか『いろはちゃん』とか、そんな感じです」


雪ノ下「!? そ、そんな恥ずかしい呼び方、」


一色「むっ、恥ずかしいあだ名なんかじゃないですよー。ほら、結衣先輩だって『いろはちゃん』って呼んでるじゃないですか」


雪ノ下「そ、それはそうだけれど私にはちょっと……」

一色「……」ウワメヅカイ


雪ノ下「……くっ」


一色「……」キラキラ


雪ノ下「……はぁ。分かったわ。もう好きに呼んでくれてかまわないから」


雪ノ下「でもその代わり、私は今まで通りの呼び方で行かせてもらうわ、一色さん」


一色「むぅ、分かりました。じゃあ、いつの日かゆきのん先輩に『いろはちゃん』って呼んでもらえるの楽しみにしてますね」ニコッ


雪ノ下「……勝手になさい」フイッ


一色(あ、耳が真っ赤)


一色「……ふふっ」


雪ノ下「……何を笑っているのかしら?」ジトッ


一色「え。あ、えと……やだなー。ただの思い出し笑いですよー」


雪ノ下「もう少しまともな言い訳を考えたらどうなのかしら……」ハア…

雪ノ下「まあいいわ。とにかく手早く仕事を終わらせましょう。場所は生徒会室でいいのよね?」


一色「あ、はい。それで大丈夫です」


雪ノ下「……」コツコツ


一色「……」テクテク


雪ノ下「……私があなたの仕事を手伝うことは今後一切ないわ。それに、比企谷くんに頼ったりするのも、もうダメよ」


一色「……はい、わかってます」


雪ノ下「……」コツコツ


一色「……」テクテク

雪ノ下「……それでも、その」


一色「?」


雪ノ下「部室に遊びに来たりだとかなら別に、その、かまわないから」


雪ノ下「……い、いろはちゃん」ボソッ


一色「……ほぇ?」ドキッ


雪ノ下「……」カアアッ///


一色「せ、先輩。今のもう一回もらっていいですか」///


雪ノ下「…………」スタスタスタ


一色「あ、ちょっと、歩くの速いですって! ゆきのんせんぱーい!」タッタッタ



<ネ、センパイ。モウイッカイ、モウイッカイダケ!


<……ニドメハナイワ


<エー。ソコヲナントカタノミマスヨー

八幡「……いろゆき、か」


由比ヶ浜「? ヒッキー、いろゆきってなに?」


八幡「……いや、なんでもない」





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