知久「マドマギ幼稚園?」(21)

「今日から宜しくお願いします、早乙女先生!」

「はいよろしくお願いします鹿目先生。元気があってよろしいですね」

彼の名は鹿目知久、今日から此処マドマギ幼稚園で1ねん1組を担当する新人教師だ。
妻の詢子にいい加減に働けと言われ紆余曲折、ようやく仕事を手にする事が出来た。

新人ながら担任を任され緊張が絶えない知久だったが、やる気だけは人一倍にある。彼の新たなる生活はこうして始まった。

和子「では教室に案内するので、ついてきてくださいね」

知久「はい!」

階段を上がり、廊下を進む。

知久「ところで早乙女先生、僕が担当する1ねん1くみってどんなクラスなんですか?」

和子「皆とっても明るくていい子達ですよ。鹿目先生もきっと馴染めると思います」

知久「そうですか、今から楽しみです」

和子「…………」

そしてやがて、1ねん1くみと書かれたプレートが見えてきた。どうやらあそこらしい。

和子「見えましたね、あの教室です」

知久「早乙女先生は2くみなんでしたっけ?お隣ですね」

和子「そうですね。……それじゃあ鹿目先生、大変だと思いますけど頑張ってくださいね」

知久「はい!……いい人そうでよかったなあ。それにちょっと美人だし」

知久「いかんいかん、何を考えてるんだ僕は。しっかりしないと!」

そして気持ちを新たに、知久は教室に足を踏み入れた。

知久「皆、おはよう。今日からこのクラスを担当することになった、鹿目知久です。まだ新人の先生だけど、皆よろしくお願いします!」

「おはようございます」

知久「…………」

そこで知久は首を傾げた。
やけに暗い声をした挨拶が教室に響く。

知久(変だな、皆声が暗いぞ。それにやけに変な衣装した子が多いし……)

だがハッと我に返る。
声が暗いなら、元気にさせるのが先生の役目ではないのか。

気を取り直して、知久は生徒達に向き合った。
彼の本当の戦いが始まる。

──────────────



知久「それじゃあ改めて自己紹介するけど、僕は鹿目知久。趣味は家事全般かな、希望する子がいたらその辺の事も教えてあげるよ」

知久「とりあえず、皆の事もよく知りたいから自己紹介をしていってほしい。趣味とか好きな事とかあったら、教えてくれるかな」

「はーい」

やはり声は暗い。
しかし先程の決意を忘れないためにも、知久は出来る限り笑顔で対応した。

知久「じゃあまずは名簿順に……って、これ名前がバラバラだね。どういう並びなんだい?」

「ストーリー順です」

知久「ストーリー順!?どういう並びなんだいそれは」

名簿を見直すが、やはり意味はよくわからない。

そして一番目の子が席を立った。

知久「じゃあよろしくね」

「私の名前は、ゲルトルートです。趣味は薔薇園の手入れ。というか生き甲斐そのものです」

知久「へえ、そういえば机が一面薔薇だらけだけど……少し触ってもいいかな?」

「触るな人間風情が!」

知久「なんで!?君も人間だよね!?」

「ああ、今ので少し傾いてしまった……」

難しい子なのだろう、知久は流す事にした。

二番目の子が立ち上がる。

「……ズライカです。趣味は妄想…」

知久「(一際暗い子だなあ)へー色々考えてるってことかい?どんな事いつも考えてるか聞かせてもらっていいかな」

「sm、ロリ、ヤンデレ、×××……」

知久「そっちの方!?」

「そっちの方って何考えてるんですか……いやらしいです」

知久「放送禁止用語連発した君には言われたくないよ」

知久「じゃあ次の子」

「シャルロッテです。趣味はわかりませんが、好きな物はお菓子です。特にチーズが好きです」

知久「ああうん、子供らしくていいね」

「でも人肉も好きです。この前も女の子を頭から丸呑みして」

知久「おおおおい!?今さりげなくとんでもない発言が!」

激しくツッコミたいが、何か取り返しのつかない事になりそうな予感がしたので知久はやめた。

「………キルステン。皆からはエリーって呼ばれてます」

知久「エリーちゃんね、よろしく」

知久「(この子はまともそうだな)」

知久「趣味とかはあるのかい?」

「趣味……。集団自殺鑑賞ですかね、あと人の心読んだり……」

知久「ごめん、前言撤回させて」

「……貴方の心は、凄く浅いですね」

知久「放っておいてくれないかな」

知久「じゃ、じゃあ次は……」

「アーニャです!落書き大好きです!」

知久「!まどか……!?」

「?」

知久「ああいやごめん。娘に声が似てたものだからつい」

「先生の娘……きっと先生に似てツッコミのうるさい子なんですね」

知久「うるさいよズライカちゃん」

知久「っとごめん、話が逸れたね。落書きが好きなんだって?でもあまり壁とか机に書かないようにね」

「はい!なら先生の顔に落書きしてもいいですか?」

「やめようね。ってクレヨン投げないで!」

知久「次は」

「おうおう先生!待ちくたびれたぜ!ギーゼラだ、よろしくな!」

知久「うん、よろしくね。ところでギーゼラちゃん、一ついいかな」

「あぁん!?」

知久「何で幼稚園児なのに学ラン着てるのかな」

「おかしいってのか!?あたしの自由を奪う奴は許さねえ!」ドンッ

知久「ひい!?」

知久(な、なんて子だ……彼女はよく注意しとかないと)

知久「次は……ってあれ、該当の子の席に誰もいない。今日はお休みなのかな」

ここにいますよ

知久「きゃああ!?ど、どこ?」

だからここですよ、ここ

知久「ま、まさか影……?」

はい、エルザ・マリアです。お見知りおきを

知久「う、うん。よろしく」

知久(姿は見えないけど、結構礼儀正しい子だな。他の子より真面目そうだ)

「先生……早速差別ですか」

知久「心読まれてる!?」

知久「じゃあ次の子、どうぞ」

「はーいはいはい待ってました!あたし、オクタヴィア・フォン・ゼッケンd」

知久「名前長いね、あと魚臭い。次」

「ちょっとぉ!?」

知久はスルーを覚えた。

「イザベルです、趣味は創作……」

知久「それゴッホじゃない?」

「ひまわりいいいいいいいいいいいいい」

知久「(次に行こう)」

スルーを覚えた知久はとても頼もしい。


「パトリシアです。このクラスの委員長を勤めさせてもらっています」

知久「パトリシアちゃん、よろしく」

「はい。……個性的な面々ばかりですが、負けないように頑張ってください。応援してます」

知久「パトリシアちゃん……」

知久「僕と先生変わってください」

切実な願いだった。

次の子へ移る。

「はいはいまた私だよ!あたしオクタヴィア・フォn」

知久「えーっと次の子は」

「オクタヴィアちゃん無視すんなー!」

知久「じゃあ次、名前よろしく」

「私ロベルタ、よろしくねぇ」

ロベルタはやけに色っぽさを強調し返事をした。

「趣味はぁ……ナンパとか男引っ掻けたりかしら?皆擦りよって来て面白いのよ、こっちはその気もないのにねえ」フフ

知久「うん、とりあえずロベルタちゃん本当に幼稚園児?」

「今度先生も一緒に遊びにいくのとかどうかしらぁ?」

知久(何この子怖い)

知久「ふう、だいぶ喋ってもらったかな。残すはあと二人か……」

知久「でも変だな、名簿にはちゃんと名前があるのに席が無い……エルザ・マリアちゃんですら席があるのに」

知久「おーい皆、クリームヒルト・グレートヒェンちゃん知らないかい?」

彼女なら最初からいるじゃないですか

知久「何でよりによって君が答えるんだい……って、は?」

上見てください

知久は言われるがまま上を見上げた。腰を抜かした。

知久「ええええええええええ!?」


「ウェヒヒ、せんせー!」

知久「クリームヒルトちゃん、何で君はそんなに大きいのかな?大きすぎて雲を突き抜けてる気がするんだけど」

「ウェヒヒ、生まれつきなの!ウェヒヒ」

知久「(山に話しかけてるようだ……)」

「えっと、改めましてクリームヒルト・グレートヒェンです!趣味は……人類の魂吸い上げていく事です!ウェヒヒ」

知久「しかもとんでもない事言ってる!?」

知久「と、とりあえずこれで全員かな……」

「先生、あと一人忘れてます」

知久「え?」

イザベルがそう言った瞬間だった。
いきなり正面からレーザーのようなものが襲い、教室は半壊した。
レーザーが放たれた方に顔を向けると、そこには一人の女の子がいた。

「ワルプルギスの夜です、よろしく」

満面の笑みで自己紹介する。
知久は何故幼稚園児が舞台衣装を着ているのか激しく気になったが堪える。そして最初の宣言通り笑顔を貫いた彼も、満面の笑みで言った。

「僕、今日で幼稚園辞めます!」




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