志希「ねぇねぇしゅーこちゃん」周子「ん、なに?」 (37)


・百合描写注意

・SS投稿初めてなので読みづらかったらごめんなさい



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志希「うりゃー!」プシャー

周子「うわっ冷た!」

志希「ふっふ~ビックリした?  ただの水だよ~♪」

周子「もーいくら夏だからって、さすがのしゅーこちゃんもいきなり水吹き付けられたらムッとするよー」

志希「まあまあ♪ 気持ちいいでしょー。首元とかにかけるとたまんないんだよね~♪ ほらもういっちょ」プシュプシュ

周子「あ、確かにひんやりして気持ちいい」

志希「んふふ~でっしょー。ほれほれ♪」プシュプシュ

周子「いや、さすがにかけすぎやない? ビッチョビチョなんだけど」

ガチャ


泰葉「ただいま戻りました」

周子「泰葉、おかえりー」

泰葉「……周子さんは水浴びでもしたんですか?」

周子「んー、これは話せば宇治川より長くなるんだけどさーって、あれ?」

泰葉「どうしたんですか? キョロキョロして」

周子「さっきまで志希ちゃんと話してたんだけど、どこ行ったんだろ」

泰葉「私が帰ってきたときには見えませんでしたよ」

周子「お得意の失踪ってやつ? もー社会人としてそれはどうかとしゅーこちゃんはおもうなー」

泰葉「室内で水遊びした周子さんが言っても全然説得力がないとおもいます」

周子「今日の泰葉めっちゃグイグイくるねー」

泰葉(あ、あれ?)


泰葉(なんだろう。今日の周子さん、雰囲気がいつもと違うというか)

周子「どったの? なんか顔赤いよ?」

泰葉(なんだか胸がドキドキして、頭がぼーっとする……)

周子「ねぇねぇ、どーしたのー?」

泰葉(今まで意識してなかったけど、周子さんって中性的な顔立ちしててかっこいい、よね)

周子「目の前にいるのに無視キメられちゃってる? マジかーあたしもついに透明人間になっちゃったかー」

泰葉(クールで、どこかつかみどころがなくて、乃々ちゃんに借りた少女漫画に出てきそうで……)

周子「はい、今日のパンツは何色かなーっと、Oh……泰葉、意外と大胆なものを」

泰葉(真っ白な肌。ひんやりしててすごい気持ちよさそう)

周子「ついにあたしもサイキックパウワァーとやらに目覚めたというの!? やっばーユッコちゃんのお株奪っちゃったなー」

泰葉(もしかして……今、事務所に2人っきり?)

周子「あ、いいこと思いついた」

ドンッ


周子「どうしたんだよ。ぼんやりして(イケボ)」

泰葉(か、顔が近いっ)

周子「無視するなよ、子猫ちゃん(イケボ)」

泰葉(こ、これが噂に聞く『壁ドン』)ドキドキ

周子(ノープランのままやっちゃったから次の言葉が出ない)

泰葉「しゅ、周子さんっ」

周子「あ、はい」

ドンッ


周子(あれ? なんであたしが押し倒されてんだろ?)

泰葉「し、周子さんがいけないんですから……私は悪くないです……」ブツブツ

周子(なんかブツブツ言いながら泰葉があたしに馬乗りしてるんだけど。しかも服のボタン外してるんだけど、どういうことなんだろ)

泰葉「周子さんが先に誘って来たんですから……」

周子「ヘイヘイヘイ! ちょーっと落ち着こっか。脱ぐのもやめよ? 暑いならクーラーの温度下げよっか。うん、そうしよ。そうした方がいいからまず降りよ?」

泰葉「私を悪い子にしたのは周子さんなんですから、責任とってくださいね……?」

周子「瞳のハイライトが消えてまゆみたいになってる! これが子役上がりの演技力ってやつ? コワイ!」

泰葉「この火照った体を沈めてください……!」ハァハァ

周子(しゅーこちゃん貞操の危機! 誰でもいいからタスケテー)

ガチャ


紗枝「あら」

周子(今一番来て欲しくない人が来ちゃったーん)

紗枝「お取り込み中のとこ、申し訳ありまへんなぁ。演技の練習でもしてはるん?」

周子(ええい、なりふり構っていられぬってやつよ)

周子「お紗枝はーん、かくかくしかじかでヘールプ!」

泰葉「紗枝さん……今大事なところなので邪魔しないでくれますか?」

紗枝「なんや、随分しつけのなってへん犬どすなぁ」

周子(おや?)

泰葉「聞こえなかったんですか? 邪魔しないでって言ったんですけど、京都の人には通じないんですかね?」

周子(おやおやおや?)

紗枝「こっちの言葉聞こえてへんみたいやし、もういっぺん。下品に盛った雌犬やと言うたんどす」

周子(え、なんなのこの空気)

ゴゴゴゴゴ




乃々(もりくぼです……帰ってきていつものように机の下で漫画を読んでいたら……な、なんだか大変なことになっていました)

乃々「(よくわからないんですけど……周子さんの上に泰葉さんが乗っかって、そこに紗枝さんが戻ってきて……なんだか険悪な雰囲気で)

乃々(周子さんは助けを求めてたみたいだし、もしかしていぢめ……?)

志希「にゅふふ~悩める少女にこの志希ちゃんが答えを教えてしんぜよ~♪」

乃々「ッ!?」モゴモゴ


志希「乃々ちゃんってばびっくりしすぎー。あんまりおっきい声出すとバレちゃうから静かにね?」ヒソヒソ

乃々「は、はい……」

志希「そ・れ・で。なんでこんな状況になったかというと、こいつが原因なのだよ~♪」パンパカパーン

乃々「霧吹き……?」

志希「もちろん、この志希ちゃんが持ってるということでただの霧吹きじゃないよー。なんと中身はしゅーこちゃんのフェロモンを増幅するパフュームなのだ~」

乃々「ぱふゅーむ……香水?」

志希「そっそー。しゅーこちゃんってさ、女ったらしっぽい雰囲気持ってない?」

乃々「言われてみればそんなような……」

志希「そんな遊び人しゅーこちゃんの魅力を最大限にする摩訶不思議アイテムがなんかできちゃってさ~試したくなるのが研究者の性ってもんじゃない?」

乃々「要は媚薬じゃないですか……むーりぃー……」

志希「ホントはちょーっとドキドキするくらいの効果だったんだけど、吹きかけてたら楽しくなっちゃって。バレないようににおいもしないよう調整したからついね。にゃはは~」

乃々「全部志希さんのせいだとおもうんですけど……」

志希「だよね~♪ でもひとつ言っておくと、これって薄めにしてあるから、対象者に好意を寄せてないと効かないはずなんだけどなー」

乃々(ということは……)


泰葉「私が先です! なんであとから来た紗枝さんに口を挟まれないといけないんですか!」

紗枝「後先の問題やおまへん。うちと周子はんは同郷で、ユニットも組んで、付き合いも長い……泰葉はんは業界の先輩とはいえ、そこは譲りまへんえ?」



乃々「これが、修羅場……」

志希「乃々ちゃんの読んでる少女漫画にもこういうシーン出るとおもうけど、取り合ってるのが同性っていうのが興味深いねー」


周子「ま、まーまーまー。一旦落ち着かない? あっ、アイスが冷蔵庫にあるからみんなで食べようよ。話し合いはそれからでもできちゃうし」

泰葉・紗枝「「周子さん(はん)は黙って」」

周子「はい……」



志希「おおー! あのしゅーこちゃんが押されちゃってるよ~♪ 貴重貴重♪」

乃々「あ、あの二人あんなに勢いありましたっけ……」

志希「これも香水の効果なのかなー?」

乃々「随分他人事みたいに言ってますけど……」

志希「よくわかんないうちにできちゃったものだしねー。あたしにもわかんないことだってあるよ。にゅふふ~」

乃々「もしかして二人ともあのままだったり……?」

志希「半日もすれば効果は消えるとおもうんだけど、どうだろうねー」

乃々「半日って……もう昼過ぎですけど……」

志希「実質、今日一日はこれってことだね~」


ワーワーギャーギャー

周子(よくわかんないけど二人が言い合いしてる間に……)

ガシッ

紗枝「どこいかはるん? 周子はん」

周子「えーっと、ちょっくらむこうのお花屋さんに行こうかなーみたいな? (紗枝はんめっちゃ力強いやん)」

泰葉「はんなり毒舌女より私を選んでくれますよね?」

紗枝「泥棒猫は黙り」

周子(あかん)


乃々「こ、こわいんですけど……」

志希「しょうがないねー。ちょっくら助け舟出しちゃおうかな」

乃々「もともとは志希さんが蒔いた種じゃ……」

志希「野暮なこと言っちゃダメだよ」


志希「あっ、ジュピター!」

紗枝「えっ!?」

泰葉「?」

周子(今だ!)バッ

紗枝「あっ、周子はん!?」

志希「しゅーこちゃんが逃げたぞー! 者ども、追え追え~♪」

泰葉「言われなくても!」

乃々「え、えぇー……助けるって言ってたのに……」

志希「ふっふー! だってこの方が面白いじゃん♪」

乃々「そういう問題じゃないとおもうんですけど……」



ーーーーーーー


周子「はぁ、はぁ、ふぅー……とりあえず外に出てきたけど、これからどうしよっかな。てか、白昼堂々アイドルがそこらへんブラブラしてるのってヤバない?」

周子「しばらく事務所には戻れないだろうし、どうしたもんか……お、あれは」

フレデリカ「フンフンフフーンフンフフー、フレデリカー♪」

周子「おや、宮本さんじゃありませんか」

フレ「おやおや、これは塩見さん。こんなところで奇遇ですね」

周子「あー、よかったー。フレちゃんはいつものフレちゃんだー」

フレ「おー? ノーメイクのとき以外はいつでもフレちゃんはフレちゃんだよー?」

周子「あっ、でもこれだけじゃ本物かどうかは判断できないぞ。フランスの血が入った本人ならフランス的なことを言えるはず」

フレ「無茶ぶりー☆ んーっと、アイアムフレデリカミヤモト! メルシー?」

周子「フランス要素が最後だけだからこのフレちゃん本物だー」

フレ「ホンモノのフレちゃんだよー☆」

周子「フレちゃん」キリッ

フレ「いきなり真面目な顔しちゃってなになにー? 告白しちゃう?」

周子「なにも聞かずにかくまって!」



フレ「フレデリカルームにようこそ~♪」

周子「要は宮本さんちね」

フレ「シューコちゃんひどーい。あ、ジュースでも飲む? お茶しかないけど」

周子「じゃあしそジュース」

フレ「はい、ぼなぺてぃ☆」

周子「あるんかーい」

フレ「ママが好きでね、夏になると冷蔵庫に備蓄されようになるんだー。そのおすそ分けでこっちにも送ってくるんだよね。ついでに納豆も食べる?」

周子「いやーおやつに納豆が出る家はやだなー」

フレ「まぁまぁ、遠慮せずに」

周子「わー随分三角な納豆が出てきたぞー」

フレ「おいひいほへ。やふはひ」モグモグ

周子「あたしゃ食べ飽きたけどね。あ、これうちのやつだ」モグモグ

フレ「八つ橋ってフランス語でなんていうか知ってる? アタシは知らないけど」

周子「Yatsuhashi」

フレ「……ホント?」

周子「さぁ?」


フレ「八つ橋って結構おなかふくれるね。こりゃ太っちゃうなー」

周子「あんさん、2つ食べたら、飽きた! って言ってましたやん」

フレ「そうだっけ?」ゴローン

周子「しゅーこちゃんの膝枕は高いぞー」

フレ「じゃあ出世払いで!」

周子「とりあえず領収書はPさんの名前できっとくねー」

フレ「ちひろさんにまた怒られそ~」

周子「ちひろさんは怒るのが仕事ってとこあるから」

フレ「その発言も怒られそ~」


周子「いやー平和だ」

フレ「ここは日本だしねー」

周子「なんかフレちゃん猫っぽい」ナデナデ

フレ「ごろにゃ~ん♪」

周子「ネコデリカだ!」ナデナデ

フレ「にゅふふ~♪ って言ったらシキちゃんっぽいよね」

周子「すぐ人のにおい嗅ぐし、みくにゃんより猫っぽいよね」ナデナデ

フレ「人に撫でられるのって新鮮ー♪」

周子「お? ここか? ここがええんか?」ナデナデナデナデ

フレ「ごろごろ……ん~……ひゃうっ!」

周子「あ、ごめん。変なとこ当たった?」

フレ「う、ううん。大丈夫。ほ、ほら、ネコデリカは気まぐれだから撫でてくれないと拗ねちゃうぞー☆」

周子「ふっふっふ……それじゃ遠慮なく。おりゃー!」ナデナデナデナデ


フレ「んっ……」

周子「……」ナデナデナデナデ

フレ「ふぅ、あっ……そこ、いいっ……」

周子(ナニコレ)ナデナデ

フレ「ふあっ」

周子(首元撫でるとフレちゃんがめっちゃ悶えるんですけど)

周子(そしてだんだんと目つきがとろーんってして頬を紅に染めてるんですけど)

周子(いや、確かにちょーっとスキンシップが過ぎたなーとはおもってましたよ?)

周子(撫でるのやめたらすっごい切なそうな顔して見てくるし)

周子(これ、どーすりゃいいんだ)



周子(……かれこれ30分くらい撫で続けてるから、腕も足もしんどい)

周子(フレちゃんもあれから喋らないし、なんだか気まずい)

周子「はぁー……」

フレ「あ……ごめんね。アタシばっかり。疲れた?」

周子「あぁ、いいよいいよー。お邪魔してるのはあたしの方だしさ。ちょっと休憩しよっか」

フレ「うん……」

周子(ようやく解放されたけど……)

フレ「……」モジモジ

周子(なんか、みょーに距離がある)

周子(こんなにしおらしいフレちゃん初めて見たかも)

周子(目も合わせてくれない)

フレ「の、飲み物入れてくるね」

周子「うん」

周子(体調悪いとか? 生理? いや、発情期?)



フレ(どうしたんだろ。シューコちゃんの近くにいると急に余裕がなくなっちゃうっていうか……なにも考えられなくなる)

フレ(身体が熱っぽいし、風邪でも引いちゃったのかな。全然そんな前触れはなかったんだけど)

フレ(心臓がすごいうるさい)

フレ(アタシがアタシじゃなくなってくみたい)

周子「フレちゃん」

フレ「ひゃい!」

周子「お、驚かすつもりはなかったんだけど、ごめん」

フレ「こ、こっちこそゴメン……」

周子「フレちゃん体調悪いみたいだから、今日のところはお暇するね。明日レッスンあるでしょ? しっかり休まなきゃねーん」

フレ(え……)

周子「ジュースと八つ橋ごちそうさま。今度お邪魔するときはアイスがいいな。なーんて」

フレ(なんで……なんでアタシすごいショック受けてるの?)

周子「それじゃ、また明日」

フレ「あ、ま、待って!」

ドンッ


周子(あははー。1日で2回押し倒されるとか、まるでハーレムものの主人公じゃん。あたし)

フレ「あ、え、えっと……そ、その……」

周子(そして私の目の前でうろたえるフレちゃんという超珍しいシチュエーション)

周子(あ、リンゴみたいに顔、真っ赤)

周子(なんかこのフレちゃんかわいいな)

フレ「ご、ごめんね」

周子(意外とすんなりどいてくれたなー。泰葉はあんなんだったのに)

周子(あたしたちの前では陽性の塊みたいなフレちゃんもこういうとこあるんだなーって考えると、すごい愛おしく感じる)

周子(まーだからといってなにかするってわけじゃないけどねー)

周子「んーん、大丈夫よ。よっこいせ。フレちゃんこそ怪我ない?」

フレ「うん……」

周子(やっぱり体調悪いのかな)

フレ「あの……」

周子「ん?」




フレ「か、帰って欲しくな……い」ギュッ

周子「」ムラッ

周子(いや、あかんわ。これ)



ーーーーーーー


別にあたしはレズってわけじゃないし、かといって同性愛を真っ向から否定するような人間でもない。
ただ目の前にいる女の子がいつもと違う顔をしてあたしを誘っているんだから、据え膳食わぬはなんちゃらってね。
我慢できなくなるのはしょうがないことだとおもう。

「……シューコちゃん」

彼女はそう言って、すっかり赤く熟れた顔をゆっくりと近づけてきた。

あたしは目を細めて少し首を傾けることで、言葉による承諾を省略した。
あと10センチ、5センチ、2センチ……歩くような速さであたしたちの距離は縮まっていく。
そして、ゼロ距離。

形容しがたい、ただただ柔らかな感触が、唇の先から脳へ、手に、足へ、心に、ビリビリとした衝撃を走らせた。


最初のキスはお互いの唇を確認するような短いキス。

いつもの彼女なら「これはフランスでは挨拶みたいなものだよ」なんて言いそうなんだけど、実際口にしたのは「もっと」という短くて溺れそうな言葉。

唇の柔らかさを知った2度目のキスは味わうような深いものとなった。

自慢じゃないけど、生まれてこのかたキスなんてしたことがなかった。
でも教えられたわけでもないのに、どうすればいいのかなんて悩むよりもまず体が動いた。

さっきよりも倍以上の時間をかけた口づけ。
頭がじーんとなって、蕩けてしまいそうなこの感じ。

「ヤバいかも、これ」

唇を離すと、おもわず言葉が漏れた。
気持ちよすぎて、クセになっちゃいそう。

相変わらず彼女の顔はテレビでも見たことのない官能的な表情をしていて、あたしの中にいるなにかを煽動する。


顔も耳も真っ赤で、半開きになった口から火傷しそうな熱い吐息が漏れている。

「もう、ガマン、無理かも」

普段では考えられない、消え入りそうな弱々しいセリフだったけど、ライン際ギリギリに立っていたあたしの背中を押すには十分すぎるものだった。

後方に位置するベッドを一度見る。
薄いピンクで揃えられたなんでもない寝具が、今日ばかりはなにか意味を持つような気がしてならない。

再び彼女に視線を戻すと、エメラルドグリーンの瞳が水面でゆらゆらと揺れてあたしを誘惑していた。
言い訳にしか聞こえないけど、そんな目で見られたら抗えないに決まっている。

まさにテンプテーション・アイズってね。


彼女の部屋だけど、あたしが手を取ってこの短い距離を先導する。

惚けた顔をしたお姫様をベッドに座らせると、そのまま重力に身を任せるように力なく横たわった。
その隣に腰を下ろすと、1人用のベッドが軽く軋んで、恥ずかしさが今になって押し寄せてきた。

仰向けになると体のラインがはっきりと見えて、意識しないでいることなんて無理。

呼吸に合わせてお腹が沈んだり、膨らんだり。
その動作すらあたしを誘っているんじゃないかとおもってしまうくらい、頭の中はぐるぐるでぐちゃぐちゃ。

なにをするわけでもなく、しばらくの沈黙。

静かな室内に2人の呼吸だけが響き、次第にそのリズムが重なり合った。
それと同時に彼女の上へ覆いかぶさるように体を移動する。

視界に映るのは彼女だけ。

あたしを惑わす色香は、過去未来のことなんかすべてどこかに吹き飛ばして、今目の前にある欲望に溺れろと脳に直接囁く。


キスしといてなんだけど、ここから先は一方通行。
決して引き返すことができないけもの道だ。
一時期の感情による過ち、では済ませられない。

かといってこの空気でやっぱやめたー、なんて無責任なことは言えない。
というか、ここからどうすればいいんだろう。
ファーストキスがちょっと前の出来事なんだから、それ以上のことは深海と同じくらい未知だ。

「シューコちゃん、すごい顔赤い」

はにかみながらそう言う彼女はやっぱりかわいくて、グダグダと思考していたものは全部消失した。


顔を近づけていくと、彼女はすべてをあたしに委ねるかのように、ゆっくりと目を閉じた。
細い腕があたしの首元にまわされ、もうどこにも行けなくなる。
そして3度目のキスをする。

ついばむような口づけでは足りないし、長い時間、唇を重ねるのは限界がある。
なのでしゅーこちゃんは考えた。

交わって数秒おき、彼女の唇を舌先でちろりとノックする。
それを何度かすると、彼女もその意図がわかったのか唇を開いてくる。
そこからするりと侵入することができたあたしの舌は、ゆっくりと唇の内側に付いた唾液を舐めとるように動いた。

つるつるとした感触。してる側なのに気持ちよすぎて意識が飛びそうになる。
もっと、もっと、と欲に任せて時計回りに、あるいはその反対に動かした。
その度に彼女の体はびくんと震え、あたしの感情と体温を高めていった。


唇を離しても、あたしたちの距離は鼻先が触れ合うほどを維持していて、インターバルを挟むことなく次のキスへと移る。
口づけを重ねるたびにその激しさは加速していき、ぺちゃぺちゃという音まで出すようになった。

違う生きもののように情熱的に絡み合うお互いの舌。
キスというより、これはもはやセックスなんじゃないかとおもえてしまう。

時折、太ももあたりに違和感を感じるようになってきた。
あたしの左太ももはちょうど彼女の股の位置にあって、挟まれるような形で置かれている。
顔を付き合わせているので確認はできないけど、その違和感の正体がなんなのかはすぐ理解できた。


「ねぇ、フレちゃん。それ気持ちいい?」

耳元でそう囁くと、ただでさえ赤く染まった耳がより色を濃くした。

「だってえ……」

指摘しても彼女の腰の動きは止まることなく、熱くなったそこをあたしの太ももに擦り付けていく。
羞恥に染まった顔とは対照的に、その体は快楽を貪欲に求め続ける。

「やだぁ、シューコちゃん見ないで」

顔を隠そうとした両手の力はほとんど入ってなく、簡単に拘束できた。
グラインドに合わせて太ももを彼女の方へ押し付けると、普段からは考えられない嬌声が鼓膜を揺らした。
その度にあたしの気持ちは昂り、嗜虐心もくすぐられっぱなし。

ゾクゾクが止まらない。
かわいい。
めちゃくちゃにしたい。

「恥ずかしいのに止まらないの?」

「だ、だって言うこと聞かないんだもん。はぁ、あっ」

次第に接触している部分からほのかに湿り気を感じられるようになってきて、彼女の腰はベッドから浮きっぱなしになっていた。


「せつないんだもん……苦しいんだもん……いじわるしないでよぉ……」



大丈夫だよ。
あたしだって、もう我慢できないもん。




ーーーーーーー



乃々(もりくぼです……今朝、事務所に来ると、紗枝さんと泰葉さんが謝罪合戦をしていました)

乃々(お互い床に正座して、ひたすら頭を下げているその光景は、見ているこっちがつらくなるものだったんですけど……)

乃々(その後ろでは志希さんがプロデューサーさんにこっぴどく怒られているみたいでしたが……当の志希さんは反省するどころか新しく開発したという香水を取り出しては、まったく意に返さない様子でした……)

乃々(そして今回の被害者である周子さんはというと……)


周子「おなかすいたーん♪ お、フレちゃんアイス食べてんじゃーん。あたしにもちょーだい」

フレ「いいよー♪ フレちゃんの食べかけだけど」

周子「もんだいなーし♪」パクッ

周子「んー、おいひー」

フレ「フレちゃんエキスが入ってるからねー☆ 普通より甘くなっちゃうカンジ?」

周子「いつも摂取してるから、もし糖尿病になったときは責任とってね」

フレ「シューコちゃんなら、いつでも宮本家にウェルカム!」

周子「んー、どっちかというとうちの店で働くフレちゃんが見たいから嫁に来て欲しいなー」

イチャイチャ


乃々(あとから志希さんに聞いた話ですが、どうもフレデリカさんにも同じような香水をつけたらしいです。周子さんのものに比べるとかなり効果は微弱だとかなんとか……作った本人は「にゃーっはっは! 実験は成功~♪」って上機嫌だったんですけど……)

乃々(二人になにがあったのか、もりくぼにはわかりません……こ、こわくて本人たちにも聞けません……フフ……きっと知らない方がいいことだとおもうので、もりくぼはこのまま机の下で過ごしています……)


志希「今日、しゅーこちゃんとフレちゃんのにおいが一緒なんだよねー。なんでだろうね?」

乃々「も、もりくぼに聞かないでください……」




おわり


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