陽乃「静ちゃんって、もしかしてネコ?」平塚「ち、違っ」 (39)

俺ガイルのSSです。

雪ノ下陽乃お誕生日記念。

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平塚「ふぅ、この時期は暖かい缶コーヒーがうまいな……」

陽乃「どこ行ったのかなー……あ、見つけた」

平塚「……陽乃?」

陽乃「静ちゃん、ひゃっはろー!」

平塚「その呼び方はやめろ……」

陽乃「いいじゃん、そんな細かいことは」

平塚「はぁ……」

陽乃「いやー静ちゃんは缶コーヒーを飲んでる姿ですら様になってるね。かっこいいなぁ」

平塚「……それより、どうして学校に来ているんだ」

陽乃「えー、この前言ったじゃん、飲みに行こうって。それのお誘い」

平塚「……君に、本当に積もる話があるなら聞いてやると、そう言った覚えはあるが」

陽乃「だから、それがあるの。積もる話ってやつが」

平塚「……積もる話というのは、まさかとは思うが──」

陽乃「ほら、雪乃ちゃんと比企谷くんのこととかさ」

平塚(──違うのか?)

平塚「……どうしてここでその二人が出てくるんだ?」

陽乃「ん? あれ、もしかして聞いてないの?」

平塚「何がだ」

陽乃「雪乃ちゃんと比企谷くんのこと」

平塚(雪ノ下と比企谷が……何かあったのか?)

平塚「……いや、特に心当たりはないが?」

陽乃「ありゃ、そうなの? 雪乃ちゃんと比企谷くん、この前付き合い始めたんだけど」

平塚「」メキッ

陽乃「わぁ、缶が一瞬で潰れちゃった」

平塚「ゆ、雪ノ下と、ひ、比企谷が……?」ワナワナ

陽乃「うん、そうだよ。ていうか本当に知らなかったの?」

平塚「わ、私のところには何も……」プルプル

陽乃「へぇ。まぁ、ついこの間だしね」

平塚(そうだったのか……あの二人が……)

陽乃「まぁそこら辺で積もる話ってのがあるからさ、ちょっとこの後行こうよ」

平塚「あいつらいつの間に……くそ、立派にリア充になりやがって……」ブツブツ

陽乃「静ちゃーん、聞いてるー?」

平塚「あ、ああ……ちょっと待ってろ、職員室行ってくる」

陽乃「わーい」

平塚「……今日は飲まないとやってられないな……」


バー


陽乃「乾杯」カチン

平塚「乾杯」カチン

陽乃「ん、これおいしいね。お店もいい雰囲気だし」クピクピ

平塚「だろ、ここは私のお気に入りの店でな」ゴクゴク

陽乃「いい店知ってるね、さすが静ちゃん大人っぽいなぁ」

平塚「大人っぽい、か……いくつになっても、自分のことは子どもだと、そう思ってしまうものだけどな」

陽乃「そんなもんなのかな」

平塚「さて、本題に入ろうか。雪ノ下と比企谷が、その、つ、付き合っていると聞いたが……」

陽乃「なんでそんなに動揺しちゃってるの」クスクス

平塚「いや、その、正直に言って信じられなくてな……」

陽乃「そんなに疑わなくても本当だよ。この前二人から直接聞いたし」

平塚「本当か……そうか、そうだったのか」

陽乃「あはは、雪乃ちゃんもまるで別人のように変わっちゃっててさぁ」

陽乃「雪乃ちゃんがあんなに素直になるなんてね……」

平塚「……妹が姉離れするのは寂しいか?」

陽乃「ん、なんのことかな?」

平塚「わざわざ酒の場に連れ出して、隠し事をする必要はなかろう」

陽乃「……やっぱり静ちゃんには適わないなぁ」

平塚「まったく……」

陽乃「寂しい……のかなぁ」

陽乃「この前までよちよちわたしの後をついてくることしか出来なかったのにさ」

平塚「今でもそう思っているのなら、すぐに認識を改めた方が良い」

平塚「雪ノ下はとうに自立している。君の手など借りずともな」

陽乃「そっか……」

陽乃「でも、比企谷くん相手に頼りっきりになったら前と変わらない」

平塚「心配せずとも、比企谷もきちんと分かっているさ」

平塚「それより陽乃、君こそ妹離れをする時じゃないかね」

陽乃「えー……」

平塚「……今更隠すような仲か」

陽乃「それはそうだけどー」

平塚「君が一番妹のことを気にしていることくらい、知っているさ」

平塚「そういえば、他にも妹のことが大好きな奴がいたな」

平塚「……なるほど、君はどこか比企谷に似ているんだな」

陽乃「は? さすがに失礼だよ静ちゃん」

平塚「その反応こそ比企谷に失礼だと思うんだが……」

平塚「まぁ確かに外面だけなら、君と比企谷は正反対の存在と言えるだろう」

平塚「かたやなんでも出来て友達も多い優秀な女、かたやひねくれぼっちの問題児」

平塚「別世界の人間とも言えるだろう」

陽乃「じゃあどこが似てるっていうの」

平塚「はは、よく言う。陽乃ともあろうものが、気が付いてないわけがないだろうに」

陽乃「……」

平塚「その上っ面のものだけを信じないところ、妙に捻くれているところ、そのくせ芯は真っ直ぐなところ、自分を犠牲にして何かを為そうとしているところ、その他諸々が実にそっくりだ」

陽乃「……」

平塚「そうそう、そのシスコンっぷりもよく似ているな」

陽乃「む」

平塚「もっとも、比企谷は逆に妹にだけは素直に心を開いている節があったが……」

平塚「妹を想うあまりにわざとヒール役を演じる君とは、思っていることは同じでも、やり方が真逆だな」

陽乃「……」

平塚「そうだな。そう考えてみると、君と比企谷の共通点はかなり多いように感じる」

平塚「それなのにも関わらず、アプローチや在り方が全くの逆なところが面白いところだが」

陽乃「……何が言いたいの、静ちゃんは」

平塚「まぁあれだ。君によく似ている比企谷になら雪ノ下を任せられると、私は信じていると言いたかったのだよ」

平塚「私の信じる比企谷を信じろ」

陽乃「……静ちゃんが言うなら、少しは信じてみてもいいかな」

平塚「うむ、そうだな」

陽乃「……でもやっぱり」

平塚「?」

陽乃「でもやっぱり雪乃ちゃんが心配だよ~~~~」ウワアアアアン

平塚「なんだ、やっと酔いでも回ってきたか」

平塚「いつもそれくらい素直になればいいだろうに……」

陽乃「ひっく、でも、あの雪乃ちゃんが、ひっく、ちゃんとやっていけるか、心配で、うえええええん」

平塚「陽乃、お前実は割と酔うの早いんだな……」

平塚(そういえば陽乃、まだ20歳だったなぁ……)

陽乃「うう……雪乃ちゃんが……わたしの雪乃ちゃんが……」ゴクゴク

平塚「まぁまぁ落ち着け、比企谷なら平気だ」

平塚「むしろ、陽乃もこれを機に雪ノ下と素直に仲良くしたらどうだ?」

平塚「もう敵役を演じる必要もないだろう」

陽乃「雪乃ちゃんと……仲良く……」

陽乃「無理だよぉぉぉおおお、もう嫌われまくってるもおおおおおん!!」グビグビ

平塚「お、おう、陽乃、ちょっと飲むペース落とそうか……」

陽乃「うう、雪乃ちゃん……いっそ比企谷くんを消すしか」

平塚「やめろ、もういい加減素直に祝福してやれ」

平塚「それにしても男女の付き合いか……ふっ、青春してるな」

平塚「私にも、出会いがいればいいのだが……あっ」

陽乃「……」ジッ

平塚「……すまない」

陽乃「……わたしの前で、それを言う?」ギュッ

平塚「……なんで私の手を掴む」

陽乃「わたし、まだ諦めてないよ」

陽乃「わたしは、今でも静ちゃんのことが」

平塚「ストップだ、陽乃」

平塚「卒業式の時にも言っただろう、私とお前は教師と教え子」

平塚「それに──」

陽乃「分かってるよ」

平塚「……」

陽乃「言われなくても、分かってる」

陽乃「分かってるけど、抑えられないの」

平塚「……本当にすまない、しかし君の気持ちには……」

陽乃「いいよ、もうフラれてから二年だもん」

陽乃「その代わりに、お酒と愚痴に付き合ってちょうだい?」

平塚「──ああ、それならばいくらでも付き合おう」


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陽乃「うっ、吐きそう……ひっく」

平塚「おい陽乃、飲みすぎだ」

平塚(こいつ、そんなに後先考えず飲むタイプだったのか……)

平塚(よほど最愛の妹に彼氏が出来たのが寂しいと見える)

平塚(……多分、私のせいでもあるんだろうけどな)

平塚「おい大丈夫か、歩けるか?」

陽乃「うう……ちょっと無理そう、おんぶして」

平塚「アホ言うな。肩だけ貸してやる、タクシーを呼んで君の家にまで──」

陽乃「静ちゃんの家に泊めて」

平塚「……何を言っている、駄々こねてないで自分の家に」

陽乃「あはは、最後まで……聞いてよ、うっ、気持ち悪い」

平塚「おい陽乃、しっかりしろ」

陽乃「うっ……こんな姿だとさ、ひっく、ほら、お母さんに見られると、ちょっとヤバイっていうか、ね?」

平塚「……そういうことか」

平塚(だが、陽乃がそんなことを分かっていないはずがない)

平塚(それを忘れて酒に溺れるなど、こいつらしくないが──)

陽乃「だからさ、静ちゃんのお家に泊めてくれると、嬉しいなぁ」

平塚「……陽乃、まさかわざと酔いつぶれるまで飲んだな」

陽乃「あはは、何を言ってるのか分からないなぁ、ほら酔ってるから」ニヤニヤ

平塚「お前……」

陽乃「……別に教師と教え子、しかも女同士だよ」

陽乃「過ちなんて起きるわけがないでしょ?」ニヤニヤ

平塚「……はぁ。朝になったら帰れよ」

陽乃「わーい、静ちゃん大好きー」ダキッ

平塚「ああもう抱きつくな、今タクシー呼ぶから待ってろ」

陽乃「えへへー」ギュー

平塚(……計算でやってるんだが、本当に酔ってるんだが判断がつかないな……)


平塚宅


陽乃「おじゃましまーす」フラフラ

平塚「おい、こっち来い」

平塚「今布団出すから待ってろ、シャワー浴びるか?」

陽乃「んー? 誘ってるの静ちゃん?」

平塚「追い出すぞ」

陽乃「ごめんごめん……シャワーはいいや、水だけちょうだい」

平塚「分かった、今持ってくる」

平塚「ほら、水は飲んどけ」

陽乃「ん、ありがと」

平塚「布団もここに敷いておくから、ここで寝ろ」

平塚「明日の始発で帰れ──うわっ!?」ドサッ

平塚(押し倒された!?)

陽乃「むふふー、いい眺めだね……」

平塚「おい、陽乃、離れろ」

陽乃「やだ」

平塚「やだじゃない……今なら、なかったことにしてやるから、早く」

陽乃「やだもん」

陽乃「なかったことになんか、したくない……」ポロポロ

平塚「……陽乃」

陽乃「……あはは、ごめん。ちょっと湿っぽくなっちゃったね。あー静ちゃん良い匂い良い匂い」クンカクンカ

平塚「おいやめろ、離れろ」

陽乃「本当にやめて欲しかったら、もっと本気で引き剥がしに来てよ」ガサゴソ

平塚「あっ、おま、どこを触って」

陽乃「ふふっ、柔らかい……」サワサワ

平塚「や、やめっ、あっ」

陽乃「静ちゃんって、もしかしてネコ?」

平塚「ち、違っ」

陽乃「じゃあ、もっと抵抗してよ」

陽乃「じゃないとさ、本当にこのまま襲っちゃうよ」

平塚「……」

陽乃「ねぇ、なんか言ってよ」

陽乃「じゃないとさ、勘違いしちゃうよ」

陽乃「受け入れてくれるってさ、思っちゃうよ……」


平塚「……そんな哀しそうな顔で言われてもな」


陽乃「──え」

平塚「こんな形で受け入れられるなど、君が一番嫌がるだろうに」

陽乃「……」

平塚「……こんな酔った流れで繋がっても、それは本物じゃないよ」

陽乃「静、ちゃん」

平塚「全く、お前らしくもない」

平塚「胸くらいは貸してやるから、今日はもう寝ろ」

陽乃「静ちゃん……う、うわあああああああ」ギュッ

平塚「よしよし……」ナデナデ

陽乃「うう……」モミモミ

平塚「おい」ベシッ

陽乃「いたっ」

平塚「それは違う」

陽乃「ちぇっ、ケチ」

陽乃「……ねぇ、静ちゃん」

平塚「なんだ」

陽乃「わたし、今でも静ちゃんのことが好き」

平塚「……」

陽乃「だから……わたしと付き合って欲しいな」

平塚(……二年前、卒業式の日に告白されたことを思い出す)

平塚(あの時も、陽乃は泣きながら私に告白してくれたんだったっけ)

平塚(しかし、私の答えも変わらない)

平塚「悪いが、君の告白は受け入れられない。私は教師で、君は教え子なのだからな」

陽乃「……そっか」

平塚「……君になら、いくらでもいい相手がいるだろうに」

陽乃「静ちゃん、それはわたしでも怒るよ」

陽乃「わたしのことを見つけてくれたのは、静ちゃんなんだから」

陽乃「雪乃ちゃんを見つけてあげられたのが、比企谷くんだったみたいにね」

平塚「なんだ、結局なんだかんだ言いながら陽乃も比企谷のことを認めているんじゃないか」ケラケラ

陽乃「む……その話は今はいいの」

平塚(ちっ、このまま話を逸らしたかったのに)

陽乃「わたし、諦めないよ。静ちゃんが……振り向いてくれるまで」ギューッ

平塚「……やれやれ、私が結婚出来る日は遠そうだなぁ」ナデナデ


翌朝


平塚(朝起きると、布団の中に陽乃の姿はなかった)

平塚(家の中を捜してもどこにもおらず)

平塚(代わりに、台所には朝食と手紙が置いてあった)

平塚「あいつ、わざわざ飯を作ってから帰ったのか……」

平塚「さて、この手紙には何を書いたんだ」パサッ





──結婚したくなったら、いつでも連絡ちょうだいね。



平塚「……アホ、女同士は結婚できないだろ……」

平塚「まったく、あいつは……」

平塚「……早く、結婚出来る日が来るといいなぁ」



完結です。
陽乃さんがいるからこそ、俺ガイルは俺ガイルらしいのかな、なんて思います。実質裏主人公。

現行スレ
八幡「俺ガイルRPG?」
八幡「俺ガイルRPG?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430984337/)
めぐり「比企谷くん、バレンタインデーって知ってる?」八幡「はい?」
めぐり「比企谷くん、バレンタインデーって知ってる?」八幡「はい?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433651798/)

過去作
結衣「一日一万回、感謝のやっはろー!」八幡「は?」
結衣「一日一万回、感謝のやっはろー!」八幡「は?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432456542/)
陽乃「静ちゃん、ひゃっはろー!」平塚「その呼び方はやめろ」
陽乃「静ちゃん、ひゃっはろー!」平塚「その呼び方はやめろ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433870619/)
etc...

他の作品もよろしくお願いします。

それではいい加減めぐりバレンタインとRPGの方も進めて行こうと思うので、そちらの方でまた。

・裏話
当初書く予定だったのは
陽乃「一日一万回、感謝のひゃっはろー!」
というものでしたが、
八幡「俺がすげぇっつてんのは、あの強化外骨格みてぇな体格だよ」
雪乃「あれは姉さんの自前の筋肉よ」
という出オチで詰まったので取りやめになりました。

はい、本当にこれで終わりです。

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