モバP「プラネタリウムを2人と」 (82)



この話は、だいぶ前に書いた

モバP「天体観測を2人と」
モバP「天体観測を2人と」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1373271268/)
モバP「アニバーサリーパーティで2人と」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1388258913

などの設定を引き継いでおりますが、前作を読まずともたぶん大丈夫です


※一部、ロシア語を間違えているかもしれません。ご了承ください



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1436082068



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とある日・午後


テコテコ スタスタ コツコツ


アーニャ「……プロデューサー。荷物、重くないですか?」

モバP(以下P)「ん、大丈夫だよ。ありがとなー」ガサリ

のあ「……されど、3人分の食材と飲料。私たちで補うべきではないのかしら」

P「いえいえ、平気ですよ。こういう力仕事くらいは、俺に任せてください」

のあ「そう……分かったわ」

アーニャ「仕事……? プロデューサー、他にもたくさんお仕事してますよ?」

P「あー、確かにそうかもだけど……まぁ、荷物を持つのは男の仕事なんだ。女の子に辛いことさせられないって」

アーニャ「パニャートナ、なるほど……頼もしくて、素敵ですね。では、お願いします」ニコ

P「おう、任せてくれ。しかし……」




アーニャ「シト? どうしましたか?」

P「いや、2人とこうやって買い物して帰る……なんてしたこと無かったから、新鮮だなーって思ってさ」

のあ「共に行動する事はあれど、これはプライベート……機会が無かったわね」

アーニャ「ダー、3人で一緒に歩いて帰るの、初めてです。のあ、嬉しいですね?」

のあ「……ええ」

アーニャ「ハラショー。それに――」


アーニャ「――プロデューサーのおうち行くの、ワクワクします♪」


のあ「……そうね」



P「……」

P(……アーニャとのあさんと、一緒の帰り道。しかも目的地は俺の家)

P(どうして、どうしてこうなったんだっけかな……?)


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3週間前 事務所


のあ「……」

アーニャ「Тягачи……引っ越し?」

P「ああ。社長から頼まれて、つい最近してさ。他のプロデューサーさんも何人かしたらしい」

のあ「P。場所は、何処に?」

P「確か事務所の窓から……あっ、あのマンションです。事務所と提携している建物だそうですよ」

のあ「……社員を事務所の近辺に、ということかしら」

P「大体そんな理由らしいですね。提携しているから家賃が本当に格安で、なのに無駄に広くて……」




アーニャ「オー……すごくバリショーイ……大きいマンションです」ヒョコッ

のあ「……一人暮らしをするには、些か巨大な建物ね」

P「そうなんですよ……まぁ一部屋が無駄に広いおかげで、荷物の置く場所には全く困りませんでしたけども」

アーニャ「そういえば……私も、のあも、前のプロデューサーのおうち、入ったこと無かったです」

P「まぁ、来たところで大した物なんて無かったよ。今も昔も、家具とパソコンと、趣味に使う道具たちくらいしか置いてなかったし」

のあ「貴方の、趣味……」

アーニャ「Нас……アー、私たちと同じ、ですね」

P「そう、天体観測……というか、星を観ることかな。場所を選ぶ物だったから、今回の引っ越しは大助かりだったなぁ」




アーニャ「シト? 場所を選ぶ……どんな道具ですか? 大きい?」

P「ん、そんなに大きくないよ。都会じゃあまり星を観られないから、数年前に小型のプラネタリウム買っちゃってさ」

のあ「……」

アーニャ「!? プラネタリウム……ハラショー、すごいです!」キラキラ

P「へっ? あー、きっと想像してる物よりも遙かに小さいぞ? 流石に、ドームで観られるような物は買えないし置けないから!」

アーニャ「それでも、星を観たい気持ち、形にするのはプリクラースナ……素晴らしい事だと思います。尊敬です……!」キュッ

P「そ、そう? アーニャがそう言ってくれるだけでも、買った甲斐があった……かも?」




のあ「P、道具たちという事は、他にもあると?」

P「ええ、双眼鏡とかの手持ちサイズと……余裕も出来たので、数ヶ月前に思い切って天体望遠鏡も買っちゃいましたね」

アーニャ「望遠鏡……? プロデューサー、もしかして、あの時の望遠鏡は……」

P「ああ、家から持ってきたんだ。折角買ったんだから、使わなきゃと思ってさ」

アーニャ「アー、事務所のものと、思ってました。……使い方、合ってましたか?」

P「全く問題無し。アーニャが使ってくれて、望遠鏡も喜んでると思うぞ?」

アーニャ「スパシーバ、プロデューサー♪ 星、よく観えてクラスィーヴィ……美しかった」

のあ「……なるほど。昨年の話、ね」




[備考]昨年の天体観測
http://i.imgur.com/xZSVRdK.jpg





アーニャ「ダー。のあも、一緒に行ければ……とても、残念です」

のあ「悲観する事は無いわ。あらゆる者が須く、同じ光景を共有することは出来ない。人が歩む道とは、そういう物なのだから」

P「また日にちを調整して、3人で行きましょうね。ここ最近は忙しいですけど、そのうちきっと……」

のあ「……」

P「……のあさん?」

のあ「……いいえ、時間を置く必要は無いの。ましてや其れが、本当の天体観測であることも」

アーニャ「シト?」

P「へ? それは、どういう……?」




のあ「3週間後の土曜……私たちは午後に余暇を持ち、日曜は休日となっているわ」

P「えっ……あ、本当だ!? その週、土曜の午後と日曜、3人ともオフになってる……」ペラリ

アーニャ「あー、3人ともお仕事、綺麗にないです。……珍しい、ですね?」

P「ああ、凄い偶然だよ。最近は個人に合わせてオフとか決めてたから……全く気付かなかった」

のあ「皆が余暇を同日に収め、そして3週間後の未来は不確定のまま……そうでしょう?」

アーニャ「ダー、3週間、とても先の事です。私は予定、ありません」

P「そうですね。俺も予定とか全く考えて無いというか、ほぼ家で過ごす以外選択肢が無さそうな……」




アーニャ「家で……あっ! のあ、それはつまり……」

のあ「……ええ。貴女が望み、願う通り」

アーニャ「バリショイエ スパシーバ! のあ、さすがです♪」

P「アーニャ? え、どういうこと?」

のあ「……そう、この余暇が揃う事は、必然であった事。故に――」

のあ「――その日の午後は、彼女と私で、貴方の家へ赴くわ」

アーニャ「ダー♪ なので、よろしくお願いしますね、プロデューサー?」


P「…………え? ……えっ!?」


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アーニャ「――」

のあ「――」


P(それでその後、アーニャの提案でプラネタリウム観賞も兼ねてホームパーティをしようという話になって……今の帰路に至る、と)

P(ふむ、こんな感じだったな。まさかのあさん、3人のスケジュールも全て把握していたとは……)

P(どうやらのあさんは元々、その休日には3人で天体観測を、と考えていたらしい。なんというか、のあさん凄いとしか言い様がない……)

P(ちひろさんも『アーニャちゃんとのあさんなら問題はないと思いますから、交通事故とかにだけは気を付けて下さいね』って了承してくれたけど……うーむ)


アーニャ「――というの、どうでしょうか?」

のあ「ええ、何も問題は無い。……期待しているわ」

アーニャ「ダー♪」


P(プラネタリウムを観賞するため、2人が家に、か)

P(変な物置いてる訳じゃ無いけど、引っ越したばかりだし……なんか緊張するな)ソワソワ


アーニャ・のあ「「?」」




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事務所提携のマンション内 ○階・廊下


のあ「――ここが……」

P「はい、俺の部屋です。廊下の端っこにあるので、少し遠いんですよね……」

アーニャ「ホテルみたいな廊下……とても、高級でした」

P「そうだな、もしかしたら億ションなのかも……ウチの事務所って成功してる子多いからなぁ」

のあ「……」

P「のあさん? 扉に何かありましたか?」

のあ「○階の××号室……記憶したわ」

P「……セキュリティもありますし、勝手に来ちゃダメですよ?」

のあ「……そう」




アーニャ「あー、プロデューサーはおうちに、誰かをПригласить……招いたこと、ありましたか?」

P「いや、未だ誰も。この前も言ったけど、引っ越して間もないからそういう機会も無かったな」

のあ「つまり、私たちが初の来訪者ね」

アーニャ「ふふ、私たちが初めて、プロデューサーのおうちを見られる……特別な気分で、嬉しいです」

のあ「……悪くないわ」

P「そ、そんな風に言われると途端に恥ずかしく……と、とにかく、開けるんで入っちゃってください!」ピピッ ガチャッ




…ガチャン


アーニャ「オー……玄関、シローキィ……アー、広いです」

のあ「……靴棚、綺麗に整頓されているのね」

P「まぁ、一人暮らしですから……あ、靴はそのまま置いて大丈夫ですよ」

アーニャ「プロデューサー、いろんな靴、持っていますね? いつも革靴ですから、新鮮です」ジー

P「いつもスーツだから、自ずと革靴一択になっちゃうからなー。休日とかは、その靴とか履いたりするよ」

アーニャ「サイズ、大きい……男の人、です」ウンウン

のあ「……センスに長けているわ」

P「そ、そんなに見ても特に何も無いですって!」




テコテコ スタスタ トテテテッ


アーニャ「わぁ、Жизни……リビングも、とても広いです。言っていた通り、ですね」

P「あはは……そうだろ? 俺には勿体ない広さだよなぁ」ドサッ

アーニャ「Ох, 料理の食材はキッチンへ、ですか?」トテトテ

P「お、ありがと。キッチンに冷蔵庫があるから、その近くにどさーっと袋ごと置いといて貰えるか? 持ってるバッグとかはリビングでいいからさ」

アーニャ「ダー、わかりました」ボフンッ テコテコ…

P(アーニャの荷物、そういえば結構大きい……女の子って大変なんだなー)




のあ「この広さ……P、部屋の間取りは?」

P「えーと、1LDKにサービスルーム付き……だったかと。無駄に大きいベッドと、そこにあるソファが備え付けでした」

のあ「ソファでこの大きさ……ベッドは、どのくらいに?」

P「ベッドは外国サイズで、頑張れば4人くらい寝られるほど大きくて……なので、向こうの部屋に置いて寝室としてますね」

のあ「そう……確かに、1人では手に余す広さね」

P「本当、俺1人には勿体ないですよ……あ、ちょっとキッチンに行くので、のあさんは少し待っていて貰えますか?」

のあ「……ええ、分かったわ」

P「ありがとうございます。さて……アーニャー、荷物は大丈夫ー?」ステテテ…

のあ「……」




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P宅・キッチン


P「お、綺麗にまとまってる……ありがとな」ナデナデ

アーニャ「ん……キッチンも広くて、びっくりしました。それに、玄関と同じ……綺麗です」

P「広すぎるのは大変だって、引っ越して初めて知ったよ。あと、調理場は綺麗にしないと、衛生的にも良くないからさ」

アーニャ「Очистить……清潔、ですね。プロデューサーの綺麗な性格、とても出てると思います」

P「んぐっ、そ、そう急に褒めるのは無しで……!」

アーニャ「ニェート、褒める、ではないです。本当の事ですから、なにも間違ってませんよ?」

P「ぬ、ぬぅ……それを褒めてるって言うんだってば。照れるっての……!」




アーニャ「あ、プロデューサー。もう少しで、日が暮れてしまいます。料理、始めますか?」

P「ん、アーニャが作るのか?」

アーニャ「シト? プロデューサー、帰り道での話、聞いてない?」

P「あっ、ご、ゴメン。その時、ちょっと色々と考え事しちゃってたかも……」

アーニャ「では、ここで伝えますね。今日は料理、私が作ることになりました」

P「ほー……そっか、料理作れるって、デビューCDの時に言ってたもんな」




アーニャ「ダー、ロシア料理、グランマに教えて貰いました。ママとグランマと、3人で料理していたので、ばっちりです。ドヤァ、ですね?」ドヤァ…

P「おおー、頼もしい。15歳の時の俺なんか、料理なんてほとんど作れなかったのに……アーニャは良いお嫁さんになれそうだなー」

アーニャ「……もらって、くれる?」

P「ンゴフッ!?」

アーニャ「……冗談、です。ふふ、プロデューサーの驚く顔、とてもかわいいですね♪」

P「あ、アーニャっ! もー、そういう冗談、一体どこから覚えてくるんだ本当に……!」

アーニャ「みんな、たくさん教えてくれてプラガタールナ……感謝、です♪ ンー……最近はミズキから、たくさん日本語、教えて貰いました」




P「ミズキ……あ、川島さんか。もしかして、前にあったアルバム収録の慰安旅行の時?」

アーニャ「ダー、そうです。日本語の中でもトクベツな言葉、たくさん勉強になりました」

P「あの人、元アナウンサーだもんな……言葉に定評ありそう。どんな日本語を教えて貰ったんだ? 敬語の種類とか?」

アーニャ「ふふ、『ユイショタダシキ日本語』です。コホン、例えば……今の気持ちは、ちょべりぐー、ですね♪」

P「………………へ?」

アーニャ「それと、『ザギンでシースー』『ギロッポン』……ナオがロシア語と聞き間違えてしまうほど、古い言葉でした」

P(……ひ、一昔前の流行語と業界用語だー!?)



[備考]収録したアルバム
http://i.imgur.com/PKb49R8.png





アーニャ「? プロデューサー、複雑な顔してます……ちょべりば、ですか?」

P「あっ、案外使いこなしてる……アーニャ、川島さんから教えて貰った言葉、あまり使わないようにしないか?」

アーニャ「ヤー、間違えてましたか? カレンも、そう言ってました……」

P「うーん、間違いではないけど……今ではあまり使われない言葉だから、アーニャは今まで通りの話し方で良いって事かな」

アーニャ「……そう、ですか。プロデューサーは、今の私の話し方、通じてる?」

P「そりゃもちろん、今の話し方で意味も気持ちも十分伝わってるよ。むしろ、アーニャらしさがあって好きかも……なんて」

アーニャ「! ミズキの言葉、封をしておきますっ」グッ

P「切り替え早くない!? そんなわざわざ封までしなくて…………いや、やっぱりしておこっか。川島さんには悪いけど……うん、きっちりしておいて」




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アーニャ「あ、忘れてました。プロデューサー、料理の話ですが……」

P「ああ、アーニャが作ってくれるって話だよな。それなら、俺も手伝うよ」

アーニャ「シト……良い、ですか?」

P「もちろん。ロシア料理は出来なくても、手伝いくらいは出来ると思うからさ」

アーニャ「ヤー、私は嬉しいです。けど……」

P「そんな気にしなくて良いって。ほら、キッチンが無駄に広いんだ。俺もたまには誰かと料理がしたくて……な?」

アーニャ「プロデューサー……」

のあ「――その申し出、断る理由は無いのでしょう?」スッ

アーニャ「のあ?」

P「あ、のあさん。何かありましたか?」




のあ「貴方たちの会話を耳にして……一つ、明確にすべき事があるの。アーニャ、良いかしら」

アーニャ「シト?」

のあ「質問……推測の話よ。……貴女、私が料理をしないと、認識している?」

アーニャ「ダー、のあ、期待していると言ってました。……違いましたか?」

のあ「……御免なさい、齟齬が生じていたわ。その言葉、貴女へ全てを託す意味では無かったの」

P「というと、のあさんはロシア料理を……」

のあ「……心得があるわ。期待は、共に作業する彼女の技量に対して……」

P「あ、相変わらず凄いですね……」

アーニャ「ハラショー。のあ、何でも出来ます……!」パァァァ

のあ「……私の持つ技術が一致した。それだけよ」




P「えーと……つまり、アーニャとのあさんが料理を作る事になっていた訳か」

アーニャ「ダー、そうなりますね。のあの料理も、楽しみです」

のあ「……本場の技術、拝見するわ」

P「ふむ……邪魔になりそうだな。うん、それじゃあ俺は、あっちで先にプラネタリウムの用意を――」トテトテ

ガシッ ギュッ

P「――っぅぉ?」カクンッ

のあ「……貴方の有るべき場所は、不変よ」グッ

アーニャ「ダー、プロデューサーも一緒に、料理しましょう?」ギュッ

P「……いいの? 2人と違って、ロシア料理の知識とか皆無なんだけど……」

アーニャ「問題ないです。むしろ、プロデューサーと料理、したいです」

のあ「貴方の技量と料理にも……関心があるわ」




P「それなら……えっと、お邪魔してていい、かな?」

アーニャ「ダー♪」

のあ「此処は貴方の持つ世界。道具の場所を司るのも貴方だけ……円滑に進めるならば、常に傍にいるべきでしょう?」

P「あっ、確かに……」

アーニャ「Причина……アー、理由も、きちんと出来ました。さぁ、3人で、やりましょう?」

P「おう。あー、足手まといになるかもだけど……2人とも、よろしく」

アーニャ「よろしく、です♪」

のあ「……技量を尽くすわ」


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数時間後・リビング


P「えーっと、本体はいつもの場所に置いて……と」

のあ「……この黒幕は、窓に?」

P「あっ、ありがとうございます。結構裾が長いので、気を付けて下さいね」

アーニャ「のあ、私も持ちます」テコテコ

のあ「……感謝するわ」スタスタ

P「天井にも幕を取り付けてっと……うーん、角度はどれくらいにしようか……」ムムム




アーニャ「……のあ、のあ。プロデューサー、私たちの作ったボルシチ、美味しそうに食べてくれました」バサバサ

のあ「破顔するとは、言い得て妙ね。……彼の顔はまさしく、言葉通りだった」テキパキ

アーニャ「ダー、私も嬉しかったです。心、ぽかぽかしました……思い出しても、ぽかぽか、です」バサッ

のあ「そう……記憶に残っているのなら、思い出すのは容易ね」テキパキ

アーニャ「のあも、記憶……残ってますか?」

のあ「……目を閉じずとも、鮮明に」

アーニャ「ハラショー♪ それは、とても良いことですね」バサリ

のあ「……幕の留め具を。貴女は先端から順に、残りを此方で調整するわ」テキパキ

アーニャ「ダー、分かりました」ササッ




アーニャ「アー、それと……プロデューサーの料理、とても美味しかったです」パチン

のあ「彼は、確かにロシア料理の術は持ち得なかった。されど……驚嘆に値する腕だったわ」テキパキ

アーニャ「私たち、きっと素晴らしい相性です。だから、もっと一緒にいたい……эгоистичный、ワガママ、でしょうか?」パチ パチッ

のあ「……」テキパキ

アーニャ「……のあ?」

のあ「望むだけでは、願うだけでは、叶えられぬ事もある。故に……アーニャ」

アーニャ「シト?」

のあ「1つ、提案があるわ。この役割の終演まで、耳を傾けていて頂戴」テキパキ

アーニャ「……?」




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P「――これで、準備は出来たかな」

アーニャ「ダー、いよいよですね。楽しみです」

のあ「星の模倣芸術……興味深いわ」

P「では早速……ああ、そうだ。ブランケットとかも用意しておいたので、アーニャものあさんも好きな体勢で観てくれて良いですからね」

アーニャ「ダー。では、私の好きな体勢で楽しみます」テトテト ピトッ

P「んおっ……アーニャ、俺の傍に居てくれるのは、体勢って言わないからね? ソファかクッションに座ろう、な?」

アーニャ「ンー、残念です……」テコテコ ポフッ

のあ「……」ピトリ

P「ほゃっ!? の、のあさんも、ソファへお願いしますっ」

のあ「……そう」スタスタ ポフン




アーニャ「? プロデューサーは、どこに座りますか?」

P「んー、俺はクッションの有る方に行こうかな。部屋の電気もプラネタリウムも、今持ってるリモコンたちで操作できるし」スッ

のあ「……アーニャ、少し右に」

アーニャ「? こう、ですか?」ススッ

のあ「ええ、それで良い。……P」

P「はい?」

のあ「此処が、空いているわ」ポフッ




P「んなっ!? ……そ、そうですね。でも、ちょっとそこは……」

アーニャ「ダー、私が座っていたので、まだあたたかいですよ?」ポフポフ

P「そ、そうじゃなくて……嬉しいけど、単純に俺が照れちゃうというか」

のあ「……」ポフポフ

アーニャ「……」ワクワク

P「あー、その、えっと………………!」


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P「……前にも、こんなことがあった気がする」ソファ マンナカ

アーニャ「これでプロデューサーと星、一緒に観られます。前と同じ、ですね」ミギガワ

のあ「ええ、過去と同じ事。……さぁP、操作を」ヒダリガワ

P「2人ともブレないなぁ……ま、まずは、部屋の電気を消しますね」ピッ


…フッ




アーニャ「……本当に、真っ暗です」

P「そうだなー。部屋中に掛けた黒幕は遮光幕だから、外灯の光とか全く入らない状態になってるんだ」

のあ「……凝っているわね」

P「そりゃあもう。これでプラネタリウムが見えやすくなるなら、苦労は惜しみませんよ」

のあ「……そう」

アーニャ「プロデューサー、リモートコントロール、お願いします」ワクワク

P「おう、分かった。それじゃあ、スイッチ……オンっ」ピッ


キュイッ ウィィィィィ…――――




アーニャ「……!」

のあ「これは……」

P「……よし、きちんと動いてくれたな。角度も良い感じ、かな?」

アーニャ「……」

のあ「……」

P「……あれ? 2人とも、あんまり良くなかった……?」




アーニャ「ニ、ニェト、そうじゃないです。とても、びっくりしてます……」

のあ「……納めきれないほどの瞬く星、私には届いているわ」

P「ああ、良かった。これが我が家のプラネタリウムです。結構、しっかり映してくれるんですよ」

のあ「……確かに、数多の星を認識出来るわ」

アーニャ「クラスィーヴィ……! 家で観るプラネタリウム、こんなにキレイと、思いませんでした。ハラショー……すごい、すごいです……!」ポフンポフン

P「おお、お気に召してくれた?」

アーニャ「ダー♪ バリショイエ スパシーバ、プロデューサー♪」ムギュッ

P「わっ!? ちょ、アーニャ? ほ、星観よう、星!」

アーニャ「アー、このまま観れるので、平気です。それに……んー、あー、暗いですから、何かに掴まった方が安心しますね?」ギュー

P「たった今考えたよねその理由!?」




のあ「……」モゾ キュッ

P「みゃっ!? の、のあさん?」

のあ「前回星を観たとき、私たちは手を繋いでいた。ならば、今も繋ぐ事は間違いではないでしょう?」

アーニャ「ふふ、私も繋ぎます」キュッ

P「Oh……なんかもう、手を繋ぐことが当たり前になってる……いや、嬉しいけども……!」

アーニャ「手を繋ぐの、外ではほとんど出来ません。だから、出来るときに好きなだけ、しておきたいです」

のあ「外界から隔離された世界。――己に素直で有る事に、支障は無いわ」




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アーニャ「プロデューサー、このプラネタリウム……どのくらい、星を映せますか?」

P「ん、これは日本製だから、日本から観られる星は全部入ってるぞ。今も、リモコンのボタン一つで……ほいっ」ポチッ


カチッ ウィィィィィィ…――――


アーニャ「ワァ……!」

のあ「……冬から、夏の夜空、ね」

P「とまぁこんな感じで、いつでも観たい季節の星を観られるんだ。言ってくれれば、直ぐに切り替えるよ」

アーニャ「プリクラースナ、素晴らしい機能、ですね。心が、踊ります」

P「ああそれと、時間差で星の切り替えも出来るから、そこらも好きに言ってくれていいぞー」

アーニャ「ダー、分かりました。のあは星、どう観たいですか?」

のあ「……」ジッ

アーニャ「のあ?」キョトン





のあ「……そうね。貴女と、同じよ」

アーニャ「ヤー……私、と?」

のあ「『どう観るかは、彼に任せたい』……そう感じられた。そして、私も同調しているわ」

アーニャ「! ……のあ、本当に凄いです。Телепатия、アー、以心伝心……とても、嬉しい……♪」

のあ「……光栄ね。P、私たちの意思は、言葉の通りよ」

P「……ええ、分かりました。2人とも、本当に通じ合ってるんだなぁ……」

アーニャ「ダー♪ 私とのあ、プロデューサーのことならきっと、思うことは一緒、ですね♪」

のあ「……ふふ」




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アーニャ「……」ジッ

P「……ん? アーニャ、どうかした?」

アーニャ「ニェト……ただ、プロデューサーの目に映る星を、観ていました」ジー

P「お、おう!? なんかオシャレで格好いいけど、その、観られる方はちょっと照れるんだが……」

アーニャ「ふふっ、大丈夫です。一緒に、プロデューサーもたくさん見てます♪」

P「大丈夫の定義が分からなくなったんだけど!?」





のあ「……P」

P「あっ、すみませんのあさん。急に大声出しちゃって……」

のあ「いえ、そうではないの。貴方が動くと、貴方の瞳の星を納め難くなるわ」

P「なんでのあさんも同じ事してるんですか!?」

アーニャ「プロデューサーは星を観るとき、とても嬉しそうです。だから目に映る星も、とても綺麗になります」ジー

のあ「星を観る者の心は、目の輝きで伝わるわ。星の様に輝く瞳は、観衆の心をも輝かせる……」ジー

P「いやいや、今は星を観ましょうよ!? と、というか、2人の視線が恥ずかしいんで上の星を観てください……!」




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アーニャ「……」

のあ「……感情が、溢れているようね」

アーニャ「ダー。今……いつものプラネタリウムの時と、違う気持ちです」

P「いつもの……ああ、アーニャは休日にも、プラネタリウムを観に行ってるんだったよな」

アーニャ「ダー。メガネをかけて、маскировать……変装して、行きますね。今度みんなで、一緒に行きましょう」

のあ「……ええ」

P「ドームなら行きやすいし、それも良いなぁ。……ああ、それでアーニャ、いつもと違う気持ちってどういう……?」





アーニャ「アー、1人で観る星と、3人で観る星……どちらも楽しいけど、同じ楽しい気持ちとは、違いました」

アーニャ「プロデューサーが居て、のあが居て……3人で星を観る楽しさ、1人では、知れなかったです」

アーニャ「だから……スパシーバ、プロデューサー、のあ」

P「……そっか。なら、こっちも同じ気持ちだから、アーニャにもありがとうって伝えないとな」

のあ「……そうね」

アーニャ「アー、気持ちが通じ合うと、嬉しいですね♪ 今も――」

P「それじゃあ、今度はもっと大人数で星を観に行こうか? 他のプロデューサーさんに連絡すれば、きっとアイドルみんなも……」

アーニャ「…………」

P「……アーニャ?」

アーニャ「…………プロデューサー、優しいけど、分かってないです」プクー

P「えっ」

のあ「……惜しかった、とだけ伝えておくわ」

P「えっ、えっ!? そ、そういうことじゃなかったのか……あっれぇ……?」




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P「えーと、あの星が……」

アーニャ「ダー、うさぎ座、ですね」

P「お、早いなアーニャ。俺、未だに有名どころ以外の星って直ぐに出て来ないなー……」

アーニャ「ふふ、ではプロデューサーくん、問題です。うさぎ座の下にあるあの星は、何でしょうか?」

P「あれか? えーと、ちょっと待って見覚えが………………あっ! あれだ、はと座……だよな?」

アーニャ「ハラショー、正解です! よく、知っていましたね?」

P「ああ、ノアの方舟にちなんだ星座だって、前にどこかで聞いて記憶に残っててさ」

のあ「……」




アーニャ「ダー、その通りです。ということは、周りの星も、分かりますか?」

P「おう、周りの星もお話に出てくる物になってるんだったよな。確か……とも座、らしんばん座、ほ座、りゅうこつ座……舟のパーツなんだっけ」

のあ「……それらを総称し、アルゴ座とも呼ばれていたわ」

P「ほほー、そうなんですか? のあさんも星座、詳しそうですね」

のあ「各々の想像に……委ねるわ」





アーニャ「アー、それならプロデューサー、のあ。今日はたくさん星、覚えましょう?」

P「お、それ良さそうだな。日本の星は全部プラネタリウムに入ってるし……」

のあ「屋内は常温……身体に気を削ぐ必要も無い。……合理的ね」

アーニャ「ふふっ。では、ウチーニッツァ……アーニャ先生のウローク、授業を始めます。ふたりとも、良いですか?」

P「はーい」 のあ「……ええ」

アーニャ「良いお返事です♪ では、今の空から始めましょう。まず、あの星は――」


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P(アーニャのレッスンも一通り終わって、ゆっくり星を観ていようという事になってから……どのくらい経っただろうか)

P(ふむ、そろそろお開きかな。ええと、今の時間は……)モゾ


…ポフンッ


P(っ、腿に何か……?)

のあ「……?」

アーニャ「スー……スー……」

P「……アーニャ?」

アーニャ「クゥ……」

のあ「……寝てしまったのね」

P「みたい、ですね。夜目で見る限り、俺の腿を枕にしてるようで……」

アーニャ「ン……プロデュ……ニャフ……」モゾモゾ





P「アーニャも寝ちゃいましたし……そろそろお開きですかね。のあさんは、どうされますか?」

のあ「……もう暫し、この星々を観ていたい」

P「お……のあさんも、気に入ってくれたんですか?」

のあ「……貴方が、思う通りよ」

P「それなら、ありがとうございます、ですね。じゃあ、アーニャにブランケットかけて、と……」

のあ「ブランケットは……貴方にも、必要?」

P「いえ、大丈夫ですよ。では、プラネタリウムのタイマーをセットしますねー」ポチポチ

のあ「ええ」

アーニャ「スゥ……スゥ……」




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のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……こうして見ると、模倣の星も悪くないって思いませんか?」

のあ「……ええ。真の星と異なる輝きであれど……英知の輝きは、趣を見せるわ」

P「実際こんなに光ってないだろーって星もくっきり光らせているので、普段とは違う楽しみがありますよね」





のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……のあさんは、星を観るときって何か考えたりしてます?」

のあ「……時と場合に因るわ。星に想いを馳せる事、無の心で眼に星の輝きを納める事もある」

P「へぇ、星に想いを……。俺、ただただ綺麗だなぁとしか思ったこと無かったかも……うーむ」

のあ「どの様に星を観るかは、個々の自由よ。そこに隔たりなど、存在しないわ」





P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……星を観るときは、常に1人だった」

P「……え?」




のあ「孤独であり、孤高であり……その己の立場が、星に届く術と認識していた」

P「っ、それは――」

のあ「ええ、それは誤りだったわ。貴方たちとの過程を通じて、私は変化を起こしたの」

のあ「独りでは届かぬ輝きがある。その事実は、代えがたい大きなエッセンスであり……私の糧となった」

のあ「――貴方の、貴方たちの、功績よ」

P「…………いえ。のあさんも合わせて、3人の功績ですよ」

のあ「……そう、願うわ」

P「それ、アーニャにも伝えてあげてくださいね。きっと、凄く喜んでくれますから」

のあ「……ええ。…………」ナデリ

アーニャ「クゥ……ンン……」

のあ「……」





のあ「……以前から、疑問を抱いていたのだけれど、いいかしら」

P「? なんですか?」

のあ「貴方、彼女を初めはアナスタシア、後にアーニャと呼称を変化させていたわね」

P「そう、ですね。ニックネームで呼んで欲しいと言われたので、そうしてますけども」

のあ「……呼称の切っ掛けに、年齢という隔たりは関係している?」

P「んー、俺はあまりそういうのは気にしてないですよ。相手が望むのなら、といった感じで」

のあ「そう。…………それならば、私の人称も呼び捨てで構わないわ」

P「えっ」

のあ「加えて、態度も改めて頂戴。つまりは、私に対しての敬語は不要よ」

P「ええっ!?」




のあ「……相手が望むのなら、応えてくれるのでしょう?」

P「は、はい。のあさんが望まれるんでしたら、できる限り……応えたいんですけど」

のあ「貴方と彼女のように、相応の立場に私は……成り得ない?」

P「っ、それは違いますって! ただ、ずっとのあさん呼びだった事もあって、自分がとんでもなく照れるだけで……」

のあ「……P」

P「?」




のあ「……私が貴方を嘲笑することは、偶然にも起こりえないわ」

のあ「この場を共有し得るのは、今は私と貴方だけ。貴方の言葉は……誰とも言わず私にのみ届く」

のあ「それでも貴方は……己が言葉に羞恥を抱くのかしら」

P「あ……」

のあ「……話が長くなってしまったわ。簡潔に言うなれば……私は、貴方の言葉を欲しているの」

のあ「貴方の言葉を引き出す義務を持つ、アイドルとしてではなく……1人の、人間として」

P「……」





P「……そう、ですね。今はアーニャも寝ちゃってますし、俺の声が届くのはのあさんだけ」

のあ「……ええ」

P「うん、そりゃそうだよな…………分かりました。きちんと応えようと、思います」グッ

のあ「……」ジッ

P「のあさん、じゃなくて………よし………コホンッ!」


P「――のあ」


のあ「……」




P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……」

のあ「……」

P「……あ、あの、反応無いと、やっぱり恥ずかしさが出て来ちゃうんですけどっ……!」




のあ「……もう一度」

P「へ?」

のあ「もう一度、口にして貰えるかしら」

P「は、はい。ええと…………のあ?」

のあ「……」コクン

のあ「……そう、それで良い。……それを、求めていたの」ニコ

P「あ……!」

のあ「……無理強いはしないわ。今後は、貴方の時宜に見合う時、言葉にして頂戴」

P「……え、良いんですか?」

のあ「敬語が抜けていない辺り……やはり、慣れが必要なのでしょう?」

P「あ"っ!? そ、そうだったすみませ――」


カチッ シュゥゥゥゥゥン――




P「っと? あ、プラネタリウムが消えて……もう、そんな時間か」

のあ「……今度こそ、お開きのようね」

P「んー、最後はあまり観られてなかったですし、もう少し動かしますか?」

のあ「模倣の星以上に、得られる物があった……今宵は、それで十分よ」

P「……す、少しずつ、敬語を無くしていけるよう……頑張るよ」

のあ「……心から、待ち望むわ」





P「さて、と。それじゃあ、寮の管理人さんに連絡を……」

のあ「……何の連絡?」

P「ああ、アーニャの送迎です。寮の車庫を開けて貰おうかと……」

アーニャ「クゥ……クゥ……」

のあ「……彼女、今宵は共に宿泊すると言っていたのだけれど」

P「は!? えっ、それ本当…………のこと言ってる顔、ですね」

のあ「……」

P「もしかして、アーニャの荷物がやけに大きかったのって……」

のあ「……真実は、眠れる彼女のみぞ知るわ」

P「あー、聞くまでも無さそ…………ん?」

のあ「?」





P「……あの、もしかしてですけど、『今宵は共に』ってことは……のあ、も?」

のあ「……」コクン

P「Oh……あー……寝室のベッドの横に布団を1式用意するので、2人は寝室の方で……」

のあ「ベッドが大きいと、夕餉の前に聞いたわ。……3人で使えば良いでしょう?」

P「ブフッ!? さ、さすがにそれはしませんよ!?」

のあ「? 以前の天体観測の際、星を観るために3人で大地へ寝そべた事……記憶に無い?」

P「し、しましたけど、それとこれは話が違います、違いますからっ!」

のあ「……」

P「んぐっ……そ、そんな顔しても駄目ですからね? だ、駄目です、だから駄目ですって――!」

アーニャ「ニャム……プロデュ……サ……」スピー


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次の日 早朝・朝食後


アーニャ「わぁ……プロデューサーの私服、とても珍しいです」

のあ「革靴と同様、スーツ姿も長く眼に納めていた故に……目新しい」

P「まぁ、2人も既に着替えてるし、いつまでも寝間着で居るのもはしたないし……ね」

アーニャ「格好いいです、プロデューサー♪」

のあ「……やはり、美的センスを持ち合わせているわ」

P「ほ、褒めても何も出ないからっ! …………ふむ」





アーニャ「? どうしましたか、プロデューサー?」

P「ああいや、俺の家に朝から2人がいるって、信じられないなぁと」

のあ「……現実よ。この休日を経て、ようやく実現した……紛れもない事実」

アーニャ「ダー。のあとプロデューサーと、念願のお泊まり、やっと出来ました」

のあ「機会に恵まれぬ日が続いた……それも、この時の為だったと言えるわ」

P「ああ……アーニャものあも、場所に限らず前々から泊まる気満々だったのか……」




アーニャ「! プロデューサー、今、のあの名前を……?」

のあ「……」

P「あっ、そういや昨日、アーニャは寝ちゃってたもんな……今日、口にするのは初めてだったかも」

アーニャ「昨日……ヤー、気になります。私が寝てしまった後、何がありましたか?」

P「えーと……あの後、少しだけプラネタリウムを観てから、アーニャの呼び方の話になったんですよね?」チラ

のあ「……ええ。その際に、私への敬称と敬語は不要であると伝えた……という事よ」

アーニャ「オー、そんなことが……ンー? でもプロデューサー、敬語、無くなってないですよ?」

P「ウグッ……そうなんだよな。だから、徐々に無くしていこうと思っててさ」

アーニャ「パニャートナ、それは、良いことですね…………あっ♪」ティン

P「アーニャ?」





アーニャ「のあ、のあ。昨日の事、もう話しても良いですか?」クイクイ

のあ「……ええ。貴女に、一任するわ」

P「……昨日の?」

アーニャ「ダー。プロデューサー、聞いてください。敬語を無くすの、とっておきのプランがあります」

P「とっておき、か。確かに、なにかしら練習はしようと思ってたけど……そのプランって?」

のあ「……」

アーニャ「ふふっ、それは――」


アーニャ「――今から、アーニャのおうち、みんなで泊まりに行きましょう♪」ポンッ


P「……へ?」




P「あ、あの、アーニャさん? 何がどうなってそういう結論に……?」

アーニャ「お泊まりすれば、もっと一緒に居られますね? 敬語を無くす練習、一緒に出来ます」ドヤァ

P「割と直接的な理由だった!」

のあ「私たちは、常日頃アイドルとして奔走している……時間は待ってはくれないわ」

アーニャ「きっと練習する時間、多くは取れません。でも、練習しないと、敬語無くすの遅れてしまいます。それは、のあも私も悲しいです」シュン

P「ぬ、ぬぅ……確かに数日後には、仕事でまた忙しくなっちゃうんだよな……」

アーニャ「では、決まりですね? やりました、のあっ♪」グッ

のあ「……」グッ

P「……えっ、決まり!?」





アーニャ「ンー? プロデューサー、おうち行くの、何か問題ですか?」

P「ああいや、我が家に来ちゃってるし、今更行くことに問題は無いけど……今から北海道って、時間とか色々大丈夫なのか……?」

のあ「……航空機のチケットは、既にとっているわ」

P「なんで!? ま、まさか2人とも、今日の予定もばっちり決めてたの!?」

アーニャ「ダー、のあが、一晩でやってくれました」フンス

のあ「時間は止まらない。然れど、作ることは出来るわ。互いの願いが重なるのなら、答えは行動で示すものよ」

P「ふ、2人とも行動力凄いな……俺、何もしてなくて申し訳ない……」




アーニャ「ふふ、大丈夫です。プロデューサーにしか出来ないこと、きちんとあります」トテテッ

P「え?」

のあ「……」キュッ

アーニャ「……♪」ギュッ

P「っ!? ふ、2人とも……!?」

のあ「これが、私たちの望む事。……貴方にしか、出来ない事よ」

アーニャ「『一緒に、居てくれる』……それだけで、私ものあもシャースティエ……幸せ、ですね」




P「あ、あの、これ……出来ることって言うか……」

のあ「……嫌?」キュ

P「いや、むしろ、その……嬉しくて、ドキドキしっぱなしで……」

のあ「……」キュッ

アーニャ「ふふっ……同じ気持ちだと、嬉しくて、ぽかぽかです」

のあ「……ええ」

アーニャ「とっくのとうに、幸せでしたね、プロデューサー♪」

P「し、幸せだけど、心臓が持つ気がしないなこれ……!」




アーニャ「あ……そういえば、プロデューサーという呼び方、おかしいですか?」

P「……え? そうかな?」

のあ「プロデューサーとは役職であり、名前では無い。……この現状で違和感を抱くのも、致し方ないわ」

P「あー、言われてみれば確かに……でも、アーニャが呼びやすいなら何も問題ないぞ?」

アーニャ「ンー、『プロデューサー』は、とても呼びやすいです。でも…………アー、のあ?」

のあ「……なに?」

アーニャ「好きな人のことは、名前で呼ぶのが、一番良いですか?」

のあ「……それは、貴女が決める事よ。貴女の決めた呼称に、間違いは起こり得ないわ」

アーニャ「あ……スパシーバ。では、『プロデューサー』のままにします。ね、プロデューサー♪」ギュッ

P「~~~っ!」

アーニャ「……プロデューサー?」

P「い、今ちょっと顔真っ赤だから、ちょっと待って、待ってぇ……!」カァァァ





のあ「……P。今の段階で照れていては……今日の練習が儘ならなくなってしまうわ」

P「どういうこと!? け、敬語を無くす練習なんですよね? 儘ならなくなるって何、何するの……?」

アーニャ「アー、いつもよりたくさん、一緒に居ますよ?」

のあ「……ええ、共に居るわ」

P「お、おう……そう聞くと、いつもとそんなに変わらない気がするんだけど……?」





のあ「……考察する必要は無いわ。練習と言えど、ただの旅行と差し支えないのだから」

アーニャ「ダー。好きな人と、もっと仲良くなりたい。それだけです」

P「だ、だからドストレート過ぎるんだってば……! でも……まぁ、その……」

アーニャ「シトシト?」

のあ「……何かしら」

P「お、俺も……2人ともっと仲良くなりたいとは、思ってるからさ…………うん」

アーニャ「プロデューサー……!」パァァァ

のあ「……ふふ」




P「うぁ……こ、この話は終わりっ! じゃあ俺は、ぱぱっと1泊分の着替えとか準備してくるっ!」ダッ

アーニャ「プロデューサー、照れてますね? とても、かわいいです♪」

のあ「……ええ」

P「い、言わなくて良いから! そっとしておいて――!」タタタ…


アーニャ「……プロデューサー、私たちのこと、いつも大事に思ってくれてます」

のあ「……故に、貴女は此処に居るのでしょう?」

アーニャ「ダー、いつも一緒に居たいから……アー、私も、照れちゃいますね」

のあ「……無理もないわ」




アーニャ「ふぅ……プロデューサーが、私のおうちに……考えるだけで、ドキドキします」

のあ「……それは、緊張? それとも……」

アーニャ「ニェト、とても楽しみです。いつか、のあのおうちにも、遊びに行きたいですね?」

のあ「差し支えなければ……貴女だけでも、歓迎するのだけれど」

アーニャ「ホント、ですか? スパシーバ、では、よろしくお願いします♪」





のあ「私の家に何があるのか……事前に理解が及んでいれば、貴女も彼を持て成せるわ」

アーニャ「オー、確かにそうです。のあ、やっぱりさすがですね」

のあ「ふっ……貴女も、そして私も。為べき道は違えど……内包する想いは同じ」

アーニャ「あっ……私の言う、『プロデューサー』と同じ、ですか?」

のあ「……ええ」

アーニャ「ふふっ。それなら、これからは敬語が無くなって、もっと仲良くなれますね? 私も、嬉しいです」

のあ「親睦を深めるのは……勿論、貴女ともよ」

アーニャ「ダー♪」




トテテテ…

P「――2人とも、おまたせー……って、なんか嬉しそうだけど、何かあったのか?」

アーニャ「ダー。のあと、これからとても楽しみ、という話をしてました」

のあ「ええ。他愛の無いものだけれど……言葉にする意味があった」

P「ほー、なるほどなるほど……うん、俺もこれから楽しみだし、これからも楽しみだと思ってるよ」

アーニャ「……これから、も?」

のあ「……明くる日も、という事ね」

P「そう、明日も明後日も変わらず、2人と居られるから。そりゃあ、いつも楽しみに思えるわけで……そ、そういうことっ」

アーニャ「ハラショー♪ ヤー、私も、同じです。ザーフトラ……明日も、明後日も、とても楽しみです」ギュッ

のあ「快い感情は、共鳴する数ほど輝きを増す。そうね……私も、同じよ」キュッ

P「……ありがとな。それじゃあ、飛行機の時間もあるだろうし……そろそろ出かけようか!」





アーニャ「ダー♪ プロデューサーと旅行するの、お仕事以外だと初めてですね?」

P「ああ、今までは星を観に行くだけだったからなぁ。今度からは、旅行して天体観測も良さそう……?」

のあ「……妙案ね。プライベートの共有は、私たちの距離をより密接にする……大事なことよ」

アーニャ「ヤー、私も賛成です。3人で旅行すれば、もっともっと仲良くなれます」

P「ふむ、それなら今日の飛行機の中で、次の旅行先も考えておこうか。休みとかは……未定だけど」

のあ「計画は、早期に地盤を固めるが最たる手順……不確定の未来は、確定しうる時に見定めれば良いわ」

アーニャ「ふふっ。まずは3人で、行きたい場所、たくさん話し合いましょう?」

P「ああ、そうだな。いつ頃行けるかはまだ分からないが……それまで、3人で頑張っていこう」





アーニャ「ダー♪ アイドルも、プライベートも、両方ともスタラーッツァ……頑張ります」フンス

のあ「……どちらにも、最善を尽くすわ。それが、私の出来る事……成すべき役割なのだから」

P「うん、楽しみにしてる。俺も、仕事とか……その、敬語の方も、頑張っていくから」

のあ「待遇表現の壁は、既に綻びつつある。……楽しみにしているわ」

アーニャ「ヤー、私も、2人がもっと仲良くなれるよう、たくさんプラン、考えますね」

P「アイドルも、プライベートも。この先の未来がどうなっていくか分からないけど……2人とも、よろしくな」

のあ「……共に行きましょう。たとえ物語の結末が遠かれど……私たちは、立ち止まらずに進めるわ」

アーニャ「大丈夫です、プロデューサー。のあも、私も、ずっと前を見ていられます。……ね、のあ?」



のあ「……ええ、勿論。何故なら……そう、P――」
アーニャ「ダー♪ それは、プロデューサー――」





のあ・アーニャ「「――貴方と、一緒だから」」





お わ り





やっぱりこの2人が好きなので、つい
アーニャとのあさんの台詞は、本家のゲーム内とG4Uの台詞などを参考にさせて頂いております

総選挙でのあさんの人気が衰えていなかったため、ボイス付きも夢じゃないと思い始めました
アニメでアーニャの人気も上がっているようなので、今後アーニャのSSが増えてくれればと思っております

ここまで読んで頂き、ありがとうございました
また機会がありましたら、その際はよろしくお願いします



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