大井「あれ、あなたは」北上「んー?」(68)


※史実3割 こうだったら良かったなという願望が7割です

書き溜めしていないので長くなると思います


―――???

大井「(あ、れ…ここはどこ、だろう)」

??「ああ、目覚めたかい?」

大井「…あなたは、誰ですか?そもそも私は一体…」

??「まぁ、そう慌てなくても大丈夫だ。一から、ちゃんと説明するよ。とりあえず、司令室まで行こうか」

大井「はぁ」


―――司令室

??「さて、まずはどこから説明しようか」

大井「……」

??「はっはっは、そこまで警戒しないでくれ」

??「まずは君の事から説明しよう。君は所謂、艦娘…球磨型軽巡洋艦4番、大井だ」

大井「…は?」

??「そして、僕は君たちを遠征を始め、出撃を指示する、提督さ」

大井「…」

提督「うーむ、不満そうだね」

大井「私が艦娘であることには納得したわ、直感だけどね。でも、あなたが司令官である根拠はなにかあるのかしら」

提督「うーん…そうだね、この勲章が証拠ってことじゃダメかい?」

大井「勲章?」

提督「前回の作戦時に得た、勲章の中でも最も優れた証なんだ」

大井「ついさっき生まれたばかりの私には、価値が全く分からないわね」

提督「う、うーん…困ったなぁ」

大井「そもそも球磨型4番艦ってことは、他の艦娘もいるのかしら?」

提督「ああ、そうなるね。今は遠征に行かせてるが…」

??「もどったよー」

提督「っと…ずいぶんタイミングがいいな。それよりも…予定終了時刻より帰投が早いな。何か問題があったか?」

??「まぁ、それはいいじゃんよー。で、この娘だれ?」

大井「(何よこの人…いきなり)」

提督「この間言っていた球磨型の新作艦だよ」

??「おー、噂の大井っちか」

大井「お、大井っち?」

??「私は球磨型軽巡洋艦3番艦、北上だよー、よろしくね」

大井「(こ、この人が私のお姉さんなの!?)」

大井「よ、よろしく、お願いします」

北上「そんな畏まらなくてもいいよー」

大井「……」

大井「(少し頼りなさそうね…)」


提督「こほん、じゃあ、北上は燃料の補充を済ませたら再び第二艦隊へと戻ってもらえるか」

北上「はいよー」 バタンッ

大井「……私の姉に当たる人たちはみんなああいった雰囲気なのですか?」

提督「北上はその中でもマシなほうじゃないかな。他の上二人はクマーとかタマーとか言い出すし…」

大井「頭が痛くなってきたわね…」

提督「まぁとりあえずは気にしなくていい。今日は疲れているだろうし、ゆっくり休むといい。明日、また話をしよう」

大井「はい」


―――寝室

大井「ふぅ…何をしていたわけでもないけど、疲れたわね」

大井「(それにしても大丈夫なのかしら、この国は。頼りなさそうな司令官に、よくわからない雰囲気の姉達…)」

大井「(あの後色々調べてみたけれど、どうやら私の、軽巡洋艦という立ち位置はあまり高いものではない。気にするだけ無駄なのかしら…)」

大井「はぁ、もういいわ。今日は寝てしまいましょう」

―――北上 side

北上「ふんふふーん」

北上「大井っちかー、賑やかになりそうだね」


すみません、出かける用事が出来てしまいました
明日書き溜めして、明後日投稿させていただきます

少し時間が取れましたので
書き溜め分だけ投下しておきます

―――母港

提督「それじゃあ、今日は速力と雷撃の確認を行ってもらうね」

大井「……こんなにつけて走れっていうの?」

提督「今日はこれでも比較的少ないほうだよ」

大井「めんどうなのね」

提督「…ははは、それじゃあ早速やってもらおうか」





大井「(ここで一気に加速して……対象に向けて、雷撃を…)」カチャ

北上「おー、やってるねー」

提督「北上か。全く…昨日は結局途中でサボったんだな」

北上「だって、最近駆逐艦の子守ばっかりでめんどうなんだもん」

提督「今は資材が枯渇してて辛い時期なんだ、もうちょっとは…」

北上「もうー、説教はいいよー。それより、あの子、大丈夫なの?」

提督「ん?まだ始まって間もないか……え?」

大井「はぁ…はぁ…」

北上「なんかもうぼろぼろだけど」

提督「………」

大井「……」

提督「……不器用だなぁ」

大井「う、うるさいわね!初めてなんだから仕方ないでしょ!」

提督「自分が撃った、雷撃の爆風に突っ込んでいった子はさすがに初めてだよ」ハハハ

大井「~~~~」

提督「ははは、すまない。入渠をしてきなさい、そうすれば疲れも取れるだろう」

―――入渠ドッグ

大井「(思っていたよりも、難しいのね)」

大井「(いたた…、全く、第一あの提督の指示が悪いのよ、そうよ、そうに違いないわ)」イライラ

大井「(…実践だったら、私はどうなってたのかしら)」

大井「……」

大井「やめましょ、考えるだけ無駄ね」

―――提督 side

提督「うーん、大井には少し困ったものだね」

北上「んー?まぁ初めてだししょうがないんじゃない」

提督「気難しい性格の子は幾らか見てきては来たけど、今回ばかりは少し扱いが難しそうだ」

提督「…それに」

北上「?」

提督「あくまで予備テストだったんだ、今日は。その雷撃で自分が中破するなんてことは想定外だな」

北上「私ぐらいの火力があるのかもね」

提督「ああ、軽巡洋艦の火力じゃない」

北上「それは嬉しいことじゃないの?」

提督「余裕がある時期に開発を進めたかったかな、今じゃなくね」

北上「どんだけかつかつなのさー」

提督「主に、北上のせいなんだけどな…」

―――寝室

大井「結局、あの後も上手くいかなかったわね」

大井「私、このままで大丈夫なのかしら」

??「おーい、起きてるー?」コンコン

大井「は、はい(誰かしら、こんな時間に)」

北上「やっほー」

大井「どうしたんですか?」

北上「いやー、どうしてるかなって、入ってもいい?」

大井「え、ええ…大丈夫ですけど」

北上「わー、なんか懐かしいなぁ」

大井「懐かしい、ですか」

北上「そうー、私着任してからずっと出っ放しでねー」

大井「…(え、自慢しにきたの?)」イラッ

北上「こうして部屋で休めることってあんまなかったんだよねー」

大井「はぁ」

北上「大井っちとはいいコンビが組めそうだなー」

大井「はい?(何よ、急に)」

北上「さっきの訓練の様子見てたけど私と同じか、それ以上の雷撃を撃てる子って初めて見たんだよね」

北上「今は未だ軽巡だけど、きっと近いうちに改造してもっと凄いことが出来そうな気がする」

大井「……」

北上「大井っちもそうなれるよう頑張ろ」ギュッ

大井「ちょ、ちょっと…」

北上「差し詰め今はスーパーズってところかな、ハイパーズ目指して頑張ろー」

大井「お、おー?」

北上「じゃあそういうことだから、じゃあね」バタン

大井「………」

大井「言いたいだけ言って帰ってったわね…」

大井「でも、なんでかしら…不思議と嫌じゃないわね」


1週間後

提督「うーん……」

大井「………」

提督「まだ、実戦では厳しそうだなぁ」

大井「あなたの教え方が下手なだけなんじゃないかしら」ボソッ

提督「ん?何か言ったかい?」

大井「何も」ニコニコ

提督「しばらくは練習艦として運用することにしようか」

大井「練習艦?」

提督「ああ、遠洋航海で少し練度を積んでもらうことにしよう」

大井「……(つまりは、役立たずだからってことなのかしら)」

大井「……はぁ」

大井「(上手くいかないわね…何でかしら)」

海兵A「ほんっと面倒だよなぁ」

大井「ん…?」

海兵B「ああ、大井の件を押し付けられたんだろ?」

海兵A「そうなんだよ、あんな北上の劣化艦なんてどうやって運用しろっていうんだよ司令官は…」

海兵B「愚痴ってるとこ聞かれたら、また絞られるぞ」

海兵A「愚痴りたくもなるって本当。大体……あ」

大井「……」

海兵A「…そういやまだ演習残ってたよな」

海兵B「あ、ああそうだったな、行くか」

大井「……」

大井「(何よ…私だって、こんな不器用に生まれたくて生まれたわけじゃないのに、なんで)」ジワッ

北上「あれあれー大井っち?」

大井「き、北上さん?」

北上「こんなところで…って泣いてるじゃんどうしたのさ」

大井「い、いえ、何でもないですよ」ゴシゴシ

北上「………」

大井「…?」

北上「えいっ」ギュッ

大井「うええええ!!?ちょ、ちょっと!!?」

北上「何があったかは聞かないけど、そんな悲しい顔しちゃダメだよ」

大井「…それは」

北上「大井っちはもっとこうニコッって笑ったほうが可愛いと思うんだけどなぁ」

大井「こ、こうですか」

北上「そうそうー、ふふふ」

大井「!!」キュン

大井「(な、なにかしらこの何とも言えない感覚は…ま、まさか…いえありえない、ありえないわ!)」

北上「んー?どうしたの顔真っ赤にして」

大井「いえ、何でもないんです、何も!」

大井「…このところ、少し悩んでいたんです」

北上「悩み?」

大井「私が不器用なせいで、みんなに迷惑かけて、もしかしたら私って必要ないんじゃないかなって」

北上「……」

大井「実際、提督からも練習艦として扱うって言われちゃって…情けないですよね、本当に」

北上「難しい事とかはよくわかんないけど、でも」

北上「大井っちは不要だとは少なくとも私と提督はそう考えてるはずだよ」

大井「北上さん…」

北上「大井っちは知らされてないかもしれないけど、次の改造計画の対象はうちら二人だけなんだよ?」

大井「え?」

北上「練度が足りない大井っちを無理に戦闘に出すより、練習航海で練度を積ませようと、提督はしてたんじゃないかな」

大井「……」

大井「やけに、提督の肩を持つのですね」

北上「私もあんまり好きじゃないよー。駆逐艦の子守ばっかりだしね。でも、信頼はしてるかな」

大井「信頼…」

北上「だから、大井っちも負けずに頑張ってみなよ、そうすればきっと」

大井「…わかりました」

大井「提督を、というよりは北上さんを信じてみたいと思います」

北上「私かー、うん、それでもいいかもね」

今思うと、この時には既に、彼女に惹かれるものがあったのかもしれない
どうしようのない悲しみや怒りの捌け口を作ってくれた、彼女に

そうして数ヶ月のときを経た
練習艦として練度を積み上げ、誰も私の愚痴を言うことは無くなっていった
後に聞かされた話によると
そもそもの性能は軽巡洋艦の中でも高いものだったらしい
圧倒的な雷撃力は、北上さんに劣らず、むしろ勝っていたようだ
そんな私は、練習艦としての役目を終え
戦線へと出航するための、改造の時が近づいていた


提督「半年に渡る任務、よく務めてくれたね」

大井「あなたに言われたからじゃないわ、北上さんのおかげよ」

北上「いぇい」

提督「それで、改造の計画についてなんだが」

提督「二人には重雷装艦として機能してもらおうと考えている」

大井・北上「重雷装巡洋艦?」

北上「えー戦艦じゃないの」

大井「ほんとよ、そもそもあまり聞いたことのない名前ね」

提督「ああ、初の試みだからな」

提督「軽巡洋艦の機動力を生かせる練度、そして未だかつていない圧倒的な魚雷攻撃は二人が最も適している」

北上「ふーん、戦艦がよかったけどー」

大井「北上さんと一緒なら何も問題ないわね」

提督「よし、それじゃあ早速改装に取り掛かろう」

大井「だいぶ、急なのね」

提督「ああ、二人には申し訳ないが、何分急いでいるものでな」

北上「まぁ、かっこよくなるなら早いほうがいいし、じゃんじゃんやっちゃってー」

大井「……」

大井「(ようやく、私も活躍できる機会が与えられるのね)」

大井「(北上さんには感謝してもしきれないわ)」

北上「さ、早くいこ。大井っち」ニコッ

大井「はい!」

かくして二人は、後の戦争の主力となる重雷装艦として
生まれ変わることになった。
しかしそれ、同時に彼女らの別れの始まりだったのかもしれない


1ヵ月後


大井「きゃー!!北上さん素敵ですー!!」

北上「これが重雷装艦かぁ…かっこいいね」

大井「惚れ惚れしてしまいます」ウットリ

北上「大井っちもかっこいいよー」

大井「そ、そんな北上さんほどでは…」

北上「大井っち、改造してからなんか変わったね」


以上が書き溜め分です
続きはまた明日に
レスつけてくださった方、ありがとうございます


続きを記載していきます
ラストまで投稿させていただきます

大井「そんなことはないですよ!」

提督「やぁ、改造を終えたようだね」

大井「チッ(どうしたんですか提督?)」イライラ

提督「せめて本心は隠そうな…」

北上「どうよどうよー、この九十三式酸素魚雷は」

提督「ああ、二人にとても似合ういい装備だ」

大井「これで、どんなときでも瞬殺ね」

北上「ハイパーズにかかれば、負けは見えないね」ニコッ

大井「はあああああ!!北上さん可愛いですー!!!!」

提督「……大井は本当に大丈夫なのか?」

北上「わかんないけど、前よりはいいんじゃない」

提督「そうか…」

ようやく生まれ変われた私
北上さんと二人で戦線を引っ張っていける…
そんな存在に慣れている、そう思っていた


大井「ぐっ、また新たな敵が湧いたわね…これじゃ魚雷が撃てない…!」

北上「うぐっ、大丈夫、大井っち」

大井「私よりも北上さんが…!!」

北上「このぐらいへっちゃらだよ、ははは」

大井「もう、またそうやって無理して…」

北上「それにこうやってようやく大井っちと戦えてるのに、こんなのでくたばってたらもったいないよね」

大井「北上さん…」

北上「よーし、それじゃあバリバリいっちゃうよー」

大井「………」

改造を経て、戦力が増すと思われていたこの計画は
戦況が変わることもなく、悪化する一方であった
大幅な資材の消化や入渠ドッグを圧迫することも少なくなかった


提督「……」

少将「提督、このままでは悪化の一途をたどるだけです!!」

提督「…」

少将「提督があの二艦を信頼し、溺愛しているお気持ちはわかります。しかし、これは国のための戦争なのです!!どうか、ご英断を」

大井「輸送艦への……改装…?」

提督「ああ」

北上「それって、クビってことなの?」

提督「戦線には出てもらう。ただ役割が変わるだけだ」

北上「……そうなんだ、残念だな」

大井「………」

提督「お前たち二人の活躍は十分聞いている、それでも、今のこの状態を変えるにはこうするしかないんだ…」

大井「……る…け…ない」

提督「…」

大井「納得できるわけないじゃない!!!!!」

北上「大井っち…」

大井「ようやく最前線で戦えるようになったの!!北上さんと一緒に、戦えるようになったのよ!!!それなのに…それなのに!!!」

大井「すまないで済ませる気なの!!?ねぇ、答えなさいよ!!!!」

北上「大井っち…少し落ち着いて」

大井「はぁ……はぁ……」

提督「……」

提督「国のためなんだ…わかってくれ」

大井「う……うううっ」

北上「……」

大井、北上は高速輸送艦へと再び改造をされることとなった
1ヶ月足らずという短い期間を最前線で戦い戦果も得ていた
ただ、時代が追いついていなかっただけなのかもしれない

北上「あーあ、なんだか質素になっちゃたねぇ」

大井「私は未だに納得できません」

北上「んー、私も出来てるわけじゃないよー」

大井「え?」

北上「だってあんな大きな酸素魚雷撃ってて楽しくないわけがないよー。でも」

北上「なんだかさ、提督がすっごい辛そうに見えたんだよね」

大井「……」

北上「きっと、私たちにあのままでいてほしかったけど、仕方なくなのかもって、そう思っちゃってね」

大井「それ、勘違いですよ、きっと」

北上「あはは、そうかもね」

大井「(あの人がそんなこと考えてるわけ…)」

『国のためなんだ…わかってくれ…』

大井「…………」

北上「じゃあ、気分転換がてら間宮にでも行こうか」

大井「はい!北上さん!」

大井「(軍艦としての役割を完全に無くしたわけじゃないわ、そうよ、北上さんと一緒にいられる、それは変わらないことよね)」


それから間もなくして
最大の海戦となるミッドウェー海戦が幕を開けた
当時、MI作戦を発足していた日本軍であったが
この海戦により、日本が誇る正規空母
「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」を失うことになった
事実上の大敗北を喫し、MI作戦も中止せざるをえない状態に陥っていた

大井「どうなってしまうのでしょうか」

北上「あの一航戦の人たちでもダメだったなんて、なんか信じられないよね」

大井「動こうにも動けないこの状態で、あの人は一体何をしているのかしら…」

あの海戦以来、提督が鎮守府から姿を消していた
亡くなったという噂が流れ始めていた

北上「まぁでも、ふいにひょこっと帰って来るでしょ」

大井「私は、別に戻ってこなくても問題ないけど」

北上「相変わらずだねー」

大井「次の輸送作戦、司令書に順ずるなら、明日ですよね」

北上「まぁ、でもそんなに大きな任務でもないし、気負いすることは無いと思うけどなー」

大井「だと、いいのですけど」

ここ最近、妙な胸騒ぎが起きていた
気持ち悪い、頭が痛みで響く、そんな状態が続いていた

大井「(何かあったとしても、北上さんだけは私が…)」

北上「ほらーみてみてー大井っち」

大井「もう、本当に北上さんは魚雷が好きですねー」

この人の笑顔だけは、必ず

輸送作戦   前夜


大井「……」

大井「……」

大井「…なんか眠れないわね」

大井「少し外に出てみようかしら」


大井「夏だと言うのに、やけに涼しく感じるわね」

大井「暑苦しいよりはいいのだけれど」

ガサッ

大井「!!?」ビクッ

シーン

大井「な、なによ驚かせるんじゃないわよ…」

大井「野良猫か何かかしら?」

シーン

大井「やっぱり気のせ…」

提督「やぁ」

大井「……」

提督「どうした大井?」

大井「……」

提督「す、少しやりすぎたかな」



大井「最低ね、この変態」

提督「す、すまない…ここまで驚かれるとは思わなかったんだ」

大井「ふんっ」

提督「本当にすまなかったな」

大井「事例が多すぎてどれのことで謝られてるのかわからないわね」

提督「あはは…痛いところをつかれるな」

大井「…何してたのよ、今まで」

提督「国の偉い人達からの説教だよ」

大井「…この間の海戦の事?」

提督「ああ、国が誇る空母達を駆使してるのに何やってるんだってな」

大井「ほんとよ」

提督「想定外だった、と言い訳するしかないから困るんだよな」

大井「……」

提督「大井、北上はよくやってくれている」

大井「はぁ…?何よいきなり」

提督「これだけ、振り回してしまっているのに、よく働いてくれてるよ」

大井「ふん、当然じゃない。私たちを何だと思ってるのよ」

提督「ありがとう、本当に」

大井「………気持ち悪い」

提督「こらこら、聞こえてるからな」

大井「なんだか寒気がしてきたわ、部屋に戻ろうかしら」

提督「ははは…」

大井「でも」

大井「気が紛れたわ、ありがとう」

提督「…ああ」


大井「(私…なんであんなこと…。きっと変な虫にでもつかれたのね、そうに決まってるわ)」

輸送作戦  当日

北上「さーて、輸送作戦とはいえ、歯向かう奴はやっちゃうよー」

大井「今日も素敵です、北上さん!」

アナウンス「出撃許可、降りました。直ちに任務を遂行させてください」

大井「よーし、派手にいくわよ」





大井「って、何も起きないじゃない!!」

北上「まぁ、輸送任務だしねー」

大井「なんかこう、いないのかしら手ごろな駆逐艦でも…」

北上「あれ…」

大井「?どうしました北…」

北上「大井っち、後ろ!!」

大井「え?」

大井「きゃああああああああああああああああ!!!!」

海兵C「伝令!海上沖にて、高速輸送船、大井被弾!!!」

提督「なんだと!?他の艦を直ちに撤退させろ!!」

海兵C「それが…」



大井「いたたた…」

北上「大井っち!!」

大井「北上さん、あはは、ドジしちゃいました」

北上「…!あの戦艦…」

大井「ダメです!!雷装が落ちた今の私たちじゃとても…!!」

北上「でも、一発かましてやらないと気が…済まない!!」

大井「(何をやっているのよ、提督は!!!伝令が一向に入ってこない、一体何が)」

提督「無線信号の乗っ取りだと!?」

海兵C「はい、敵戦艦flagshipによる無線妨害かと思われていましたが、回線自体を乗っ取られたようでして…」

提督「くそっ…!!予想ルートを特定し、直ちに向かわせろ!!!」

海兵C「しかし、それは…」

提督「後の処罰の全責任は私が取る!!いいから、向かわせろ!!」

海兵C「は、はっ!!」

提督「無事でいてくれ……大井、北上っ…!」


大井「北上さん!!!それ以上はもう…」

北上「はぁ……はぁ……」

大井「(このままでは北上さんが轟沈してしまう、それだけは、それだけは…!!)」

大井「北上さん」

北上「何、わたしならまだ…」

大井「ダメです、今だけは私の言うことを聞いてください」

北上「…大井っち」

北上「うん、わかったよ」

大井「以前ここの海域に輸送任務をこなしたときに、無人の孤島があったはずです、いったんそこに避難しましょう」

北上「あはは、でも実はね」

大井「…!!」

大井「(燃料がほとんど空…私のほうもそこまで量があるわけじゃない、分け与えるには…)」

大井「(いえ、そうじゃないわね)」

大井「北上さん、私に捕まってください」

北上「え、でも大井っちも…」

大井「いいから、早く!!」

北上「う、うん」

大井「可能な限り飛ばしますので、絶対にこの手を離さないでください」

北上「うん、ははは…強引な大井っちってのもたまには悪くないね」

大井「こんなときに何を…」

北上「大井っち、私にわがままいったことなんてほとんどなかったからねー」

大井「これが最初のわがままですね」

北上「ははは、なんだか嬉しいなー」

大井「もう、またそんなことを」

大井「(ぐっ…これ以上スピードが出ない)」

北上「やっぱり私は置いていきなよ、そうすれば大井っちだけでも助かるからさ」

大井「そんなこと出来ません!!!北上さんを置いてなんてそんな……!!?」

大井「(あれは、艦載機…?)」

大井「(敵は空母まで、揃えていた…ということ、なのね)」

大井「(このままでは二人とも沈んでしまう…それなら、私に出来ることは)」

北上「大井っち…なんで泣いてるの?」

大井「え……?」

北上「なんで、泣いてるのさ」

大井「な、なんででしょう不思議ですね」

北上「ダメだよって言ったじゃん、悲しい顔しちゃダメだって」

大井「そう、ですね…」ニコッ

北上「そうそう、それだよ」

大井「北上さん…」

北上「なにー?」

大井「私は幸せ者ですね、本当に」

大井「北上さんに出会えて、あとまぁ一応提督も…最初は色々大変でしたけど、今ではとっても幸せな事だって気づけました」

北上「大井っち…?」

大井「私を満たしてくれてありがとう」

北上「大井っち何を言って…」

大井「さよう…なら」ドンッ

北上「…っぐ」

北上を突き飛ばした大井は
その場から逃げることもせずただ、ただただ立ち尽くしていた
自分が航海してきたこの海を噛み締めるように

大井「(幸せだった、本当に…そう、感じることが出来たありがとう……ありがとう、北上さん…そして)」

大井「提督…」

北上「大井っち!!!!!!!」






ああ、これが沈むってことなのね…
私、ちゃんと貢献できたわよね……?
ああ、光が差さなくっていく…
私、立派だったわよね?


ああ、幸せだったな…
ああ、大好きだったな…

き……た…か…み……さん

―――――北上side


北上「おお…い…っち……?」

北上「あれ…大井っち…?」

北上「あたしがバカなことを…したせいで…」

敷波「北上さん!!」

北上「…………」

敷波「大井さんは……」

北上「あたしの…」

敷波「…そんな…。……とりあえず避難しましょう、ここは危険です」

北上「ダメだよ、大井っちを置いてなんて」

敷波「北上さんまで沈んでしまったら悲しむのは大井さんですよ!!」

北上「…!」

敷波「ここは、いったん引きましょう」

北上「…うん」

海兵C「伝令!B海域にて輸送部隊を発見!帰還を始めます!」

提督「大井は!!?北上は無事なのか!?」

海兵C「北上は燃料切れと大破損傷を確認、大井…海域にて確認取れず…轟沈です」

提督「……そ、んな」



1944年6月19日 軽巡洋艦 「大井」 轟沈

北上「………」

提督「ここにいたか」

北上「なんだ、提督か」

提督「僕で悪かったな…隣、いいか?」

北上「好きにしてー」

提督「……大井のこと、考えてたのか」

北上「そうだね」

提督「あいつは立派な軍艦だった、誇りを持ち自身を高めることの出来る、立派な軍艦だ」

北上「……」

提督「仲間を守り、沈んでいった…誇れることだと俺は思う」

提督「その軍艦からお前は守られたんだ、そんな悲しい顔してると大井に笑われてしまうぞ」

北上「…!」

『笑ったほうがいいよ』

『こ、こうですか?』

北上「大井っち…」ジワッ

提督「……今だけは、泣くといい…それぐらいならきっと…」

『何勝手に許可出してんのよ』

提督「…ははは、どのみち怒られそうだ」

北上「うっ……ううう…おお、いっち…」

提督「……」


失ってしまったもの大きさは、
失ったときにしか気づけないもの
それを大井は教えてくれた
だからこそ、これからは失わない時代を築いていかなければならない
少なくとも私はそう思っている

――――――another story


暗い、この感覚どこかで
薄暗い、怖い、一人は嫌……


??「ああ、目覚めたかい?」

??「…あなたは、誰ですか?そもそも私は一体…」

??「まぁ、そう慌てなくても大丈夫だ。一から、ちゃんと説明するよ。とりあえず、司令室まで行こうか」

??「はぁ」


??「さて、まずはどこから説明しようか」

??「……」

??「はっはっは、そこまで警戒しないでくれ」

??「まずは君の事から説明しよう。君は所謂、艦娘…いすず型護衛艦、おおいだ」

おおい「…は?」

??「そして、僕は君たちを遠征を始め、出撃を指示する、提督さ」

おおい「…」

おおい「(何故だろう、この人は全く知らない人だ…でも、この感じ、どこかで)」

提督「大丈夫かい?」

おおい「え、ええ、問題ないわ」

提督「それじゃあ、これからのことを……」




おおい「はぁ…」

おおい「(無駄に長ったらしい説明だったわね…もうちょっと簡略化できなかったのかしら)」

『姉妹艦を紹介するから、明日早朝に工廠へ来てくれ』

おおい「(要はそこだけでしょ)」ブツブツ

??「あいた」

おおい「キャッ!!」

??「いたたた…」

おおい「す、すみません」

??「ああー、大丈夫大丈夫ー」

おおい「お怪我はありませんか?」

??「大丈夫だってー、そっちこそ大丈夫だったー?」

おおい「ええ、大丈夫です」

??「そっかー、んー?」ジー

おおい「(え、え?なんでこんなに見つめられるのかしら)」

??「気のせいかなー、見たことないのに、あるっていうかー」

おおい「は、はぁ…何を…」

おおい「(あ、れ…でも私もこの人のことを…)」

おおい「きた……か…みさん」

??「あっれれー何で知ってんの?」

おおい「な、なんででしょう…」

おおい「(でもこの人から感じるどこか懐かしくて暖かい感じは…)」

きたかみ「ああっと、提督に呼ばれてたんだった」

きたかみ「じゃあね、おおいっち」

おおい「は、はい…」

おおい「……私、名前教えたかしら…?」

翌日


提督「よし、集まったな」

提督「今日は新たな顔を紹介しよう、4番艦にあたるおおいだ」

おおい「よ、よろしくお願いします」

きたかみ「わーわー」パチパチ

おおい「(あれ、あの人は昨日の…)」

提督「今日からきたかみと二人で組んでもらうことになるから、お姉さんらしくするんだぞ、きたかみ」

きたかみ「んー、ま、しょうがないよねー」

おおい「(大丈夫かしら…)」



きたかみ「というわけでよろしくおおいっち」

おおい「は、はい。よろしくお願いします」

きたかみ「私たちが組めばきっと無敵だよ」

おおい「無敵って…別に戦うわけではないですよね?」

きたかみ「まぁ細かいことは気にせずに…」

ギュッ

おおい「なっ!!?」

きたかみ「がんばろ、おおいっち」ニコッ

海兵「提督、何故あの二艦を組ませたのですか?運用するなら他の艦でも…」

提督「ああ、前々提督にあたる人物からの遺言が残されていたらしい」

海兵「遺言…ですか」

提督「時代が変わり、戦争のない時代になったときに元軽巡洋艦大井と北上を称し、再び生を与え、必ず二艦を組ませてほしいと」

海兵「何か思い入れがあったのですかね」

提督「さぁ、な。さすがに私もそこまではわからない。だが…」

提督「二人はきっといいコンビになれる、私もそう思えるよ」

おおい「ななななな!!?いきなり何をしてるんですか!!?」カァー

きたかみ「えー、手握っただけじゃんー」

おおい「初対面の人にそんな…」

きたかみ「あはは、おおいっちは可愛いなぁ」

おおい「もうー!からかわないでください!!」


こうして、いすず型護衛艦といて再び生まれ変わった彼女たちは
片時も離れることなく、生涯をともにした
最後の、その時まで


Fin


IDは変わりましたが>1です
すみません、少し雑な締めかたをしてしまいました
史実に沿うつもりはなかったのですが、オチまで史実通りでしたね…

あとがきですが
自分はss初投稿なうえ、艦これ自体も最近知りましたが
大井さんを気に入り史実を調べているとどうしても書きたくなって投稿しました

粗くはありますが、楽しんでいただけると嬉しいです


>23

北上「大井っちは不要だとは少なくとも私と提督はそう考えてるはずだよ」

すみません、タイプミスをしていたようなので訂正します
正しくは

北上「大井っちは必要な存在だと、少なくとも私と提督は…そう考えてるはずだよ」

です

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