範馬勇次郎「貴様は?」ゆり「あたしはゆり、死んだ世界戦線のリーダーよ」 (192)

範馬勇次郎「貴様は?」ゆり「あたしはゆり、死んだ世界戦線のリーダーよ」


徳川家十三代目当主、徳川光成には姉がいた
名前は徳川寒子、職業は霊媒師である
その彼女にミュージシャンを目指す、一人の少女が相談にやってきた
名前は岩沢まさみ、彼女には前世の記憶だけでなく、あの世での記憶もあるという
彼女の苦悩はあの世での記憶が真実か?否か?ではない、彼女はそれを真実だと確信している
確信しているからこそ、彼女は幼き頃から苦悩していた
それは、あの世で共に戦っていた仲間達を残してきてしまった事だった
寒子は自分だけでは手に負えぬと判断し、弟の光成に相談した


Angel Beats!(TVアニメ版)&刃牙のクロスSSです
キャラクターの口調、性格、行動に違和感を感じるかもしれませんが大目に見て下さい
特に勇次郎は違和感を感じると思います
一応クロスSSですが、ほぼAngel Beats!のSSです
現代の岩沢の名前も、前世と同じ『岩沢まさみ』にしています
野田の武器名は『ハルバート』と呼ぶ場合もあるそうですが
Angel Beats!のWikでは『ハルバード』となっていましたので『ハルバード』にします
SS作中の寒子の『あの世に関しての知識』『過去の人物の降ろし方』『魂を送り込む能力』は
このSSだけのオリジナルです
勇次郎と寒子は原作ではまだ出会った描写はありません
キャラクターによって、使用漢字を変えています 
例 『闘う』と『戦う』 『喰う』と『食う』 『理解る』と『分かる』
カタカナで『ワカる』『ッッ』は使っていません
内容には絶対に期待しないで下さい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435933160


光成「岩沢まさみさんじゃったな」

岩沢「はい」

光成「お嬢さんの話を姉から聞いたんじゃが、最初にプライバシーの件は謝罪しよう」

岩沢「寒子さんにはあたし…いえ、私から、よい意見をもらえる相手になら、話して下さって結構ですと言いました」

光成「それを聞いて、安心したわい」

光成「ワシの意見が役に立つといいがの」

岩沢「………」

光成「姉は言っていた、前世の記憶を持つ人間には幾人か出会ったが…」

光成「前世だけでなく、あの世の記憶を持つ人間に出会ったのは初めてだと」

光成「ワシもあの世について考えた事は幾度かある」

光成「姉が言うには人それぞれ、逝き着くあの世は異なるらしい」

光成「お嬢さんの逝き着いたあの世は学び舎じゃったそうじゃの」

光成「そこでは年も取らず、死にもしない」

光成「まさしく、死後の世界と呼ぶのに相応しいのう」

光成「死後の世界に逝き着いたお嬢さんは、死んだ世界戦線という名の組織に入った」

光成「その組織の目的は神の元に辿り着き、死後の世界を手に入れる」

岩沢「その為には天使を何とかしなければいけませんでした」

光成「常識では考えられん、特殊能力を使う天使の少女か…」

岩沢「私は陽動部隊で、戦うのは実行部隊ですが」

岩沢「実行部隊が戦いで天使に勝った事は一度もありません」

岩沢「戦況が変わらないまま、私は途中で消えてしまいましたが」

光成「その世界で満たされたら消えてしまうのじゃったな」

岩沢「戦線のみんなには申し訳ないと思っています」

光成「では、ここらでワシの意見を言わせてもらおうかの」

岩沢「お願いします」

光成「こちらから助っ人を送るというのはどうじゃ?」

岩沢「助っ人?」

光成「ワシの知る男達がこの話を聞けば、皆こう言うじゃろう」

光成「『神や天使と闘いたい!!』とな」

岩沢「えっ!?」

光成「ワシの姉になら、それを可能に出来る」

光成「さてと、まず誰を誘おうかの、新たなる強者との闘技場『死後の世界』に」

光成「というワケじゃ、勇次郎」

勇次郎「………」

光成「………」

寒子「………」

岩沢「………」

勇次郎「意外だな…」

光成「意外じゃと?」

勇次郎「まさか、最初に俺をあの世にご招待してくれるとはな」

光成「相手が不老不死で特殊能力を使う以上、おぬし以外におらんわい」 

光成(本当の理由は女を平気で殴れる男は、勇次郎しかおらんからなんじゃが…)

勇次郎「俺なら女を平気で殴れるからじゃねえのか?」

光成「………」

光成「ゴメン…」

岩沢「範馬さん、貴方も私の話を信じてくれるんですか?」

勇次郎「こんな面白れえ話、信じたくなるぜ」

勇次郎「仮に貴様の話が『猿の尻尾がついた宇宙人に出会った』でも信じるぜ」

勇次郎「本当だったら、楽しめるからな」

勇次郎「あの世に興味などなかったが、そこに神や天使がいるなら話は別だ」

勇次郎「俺をこれほど惹きつかせたのは久しくなかった」

勇次郎「神や天使とヤリにあの世へ出向いてやるぜ」

光成「では、おぬしは選択したのじゃな?『かの有名な剣豪』ではなく『神と天使』を」

勇次郎「『1億9000万年前の古の戦士』『クローン技術が蘇らせた剣豪』『神と天使』」

勇次郎「世界中に聞いてみな、この中で誰に会いたいか」

勇次郎「答えは『神と天使』だ」

勇次郎「俺の選択は意外でも何でもねえ、全世界共通の選択だ」

光成「た、確かに…」

光成「じゃが、お嬢さんのいた組織は神を見つけられなかったぞ、どうするつもりじゃ?」

勇次郎「あの世に着いたら、まずは天使の小娘をブン殴る」

勇次郎「ご自慢の天使がヤラれりゃあ、神の面子は丸潰れだ」

勇次郎「神が面子を潰されても何もしねえ、慈悲深いヤツじゃなけりゃあ、仕返しに来るだろうぜ」

勇次郎「神が現れたら、今度は面子だけでなく神自身を潰す」

寒子「頼もしいねえ」

岩沢「でも、寒子さん、私があの世界から消えてから、もう何年も経っています」

岩沢「今、あの世界がどうなっているか…」

寒子「心配ないよ、過去のあの世に勇次郎を送り込むからさ」

岩沢「過去のあの世?」

寒子「死んだ人間が転生するなら、大昔に死んだ戦国武将なんてのは、とっくに転生していると思わないかい?」

岩沢「そうですね、転生していると思います」

寒子「けど、私は大昔に死んだ戦国武将の霊を呼び寄せれる」

寒子「戦国武将が滞在した過去のあの世から呼び寄せているからね」

寒子「今回はそれの逆をやるだけさ、呼び寄せるんじゃなくて、こちらから送り込むのさ」

岩沢「………」

寒子「いきなり、こんな話をされても信じられないかい?」

岩沢「寒子さんは私の話を信じてくれました、ですから私も寒子さんを信じます」

寒子「いい子だね」

勇次郎「楽しい旅行になりそうだぜ」

寒子「勇次郎、約束しておくれ、この娘の所属する組織は潰さないと」

寒子「あくまで、アンタは助っ人なんだからね」

勇次郎「俺の邪魔をしねえ、条件付きになるぜ?」

寒子「範馬勇次郎の邪魔を出来るヤツなんて、この世にも、あの世にもいないよ」

寒子「それと、あの世に着いたら、その威圧感を抑えておくれ」

寒子「これからアンタが出向くあの世は、ほとんど学生ばかりなんだ」

寒子「そのままだったら、アンタに出会った途端にみんな逃げちまうよ」

勇次郎「普段は抑えておいてやる」

岩沢「あの、私も出来れば…」

寒子「すまないね、お嬢ちゃんを過去のあの世に送り込むワケにはいかない」

寒子「過去のあの世というのは、まだお嬢ちゃんがあの世にいた頃だ」

寒子「過去のお嬢ちゃんを目印にして、勇次郎をそこへ送り込むんだ」

岩沢「目印ですか?」

寒子「目印無しでも可能だけど、確実に勇次郎を過去のあの世に送り込む為さ」

寒子「だから、お嬢ちゃんを過去のあの世に送り込んだら、過去のお嬢ちゃんと鉢合わせになってしまう」

寒子「そうなったら何が起こるか予想出来ないのさ」

寒子「最悪の場合、どちらかが消えるかもしれないんだよ」

岩沢「そうですか…無理言ってすいません」

岩沢「………」

岩沢「範馬さん、もし過去の私に会ったら、あまり無理をするなと伝えていただけませんか?」

勇次郎「貴様は面白そうな話を持ってきた、伝えてやる」

岩沢「ありがとうございます」

光成「では、決まりじゃの」

光成「再び、この場所から始まるとはのう」

寒子「私がここに来るのは二度目だね」

岩沢「スカイツリーに地下があって、しかもこんな施設があるとは思いませんでした」

光成「ここは重要機密じゃから、内緒じゃぞ」

岩沢「はい、誰にも言いません」

光成「勇次郎にはここから死後の世界に出向いてもらうが…」

光成「安心せい、おぬしの抜け殻となった身体には、ここなら誰も手は出せん」

勇次郎「手を出したいなら、遠慮しなくてもいいんだぜ?」

光成「は、ははは…」

寒子「勇次郎、あの世から戻る方法は『戻りたいと願う』だよ」

勇次郎「随分とシンプルで覚え易い方法だな」

寒子「これなら、滞在期間を設けずにあの世にいられるからね」

寒子「それじゃあ、幽体離脱から始めるよ」

勇次郎「早くしろ」

岩沢「範馬さん、よろしくお願いします」

勇次郎「学園か、あの世ってのは随分と退屈そうな所じゃねえか」

勇次郎(あの世でも勤勉精神を心がけろという、神の方針か?)

ゆり「ねえ、貴方」

勇次郎「………」

勇次郎「貴様が天使か?」

ゆり「天使の事を知ってるの!?」

ゆり(この人、とても先生には見えないから、もしかしてと思って声をかけてみたけど…)

ゆり(天使を知っているなんて、一体何者よ…)

勇次郎「貴様が天使なら…」

ゆり「うっ…」

ゆり「違う、違う、あたしはゆり、死んだ世界戦線のリーダーよ」

ゆり(何なのよ…今、一瞬、物凄い恐怖を味わったわ…)

ゆり(この世界では死ぬハズがないのに死を覚悟させる恐怖を…)

勇次郎(死んだ世界戦線、あの女が所属していた組織の名前だったな)

ゆり「あたしは天使じゃないけど、天使の情報なら持っているわ」

ゆり「ここで話すのもなんだし、場所を変えて話さない?」

勇次郎「いいぜ、そこに連れて行け」

ゆり「遊佐さん、みんなを作戦本部に集めてちょうだい」

遊佐『分かりました』

日向「ゆりっぺ、どうし…えっ…」

高松「次のオペレーションが決まっ…なっ…」

勇次郎「………」

大山「こ、この大きい人、誰?」

松下「俺よりデカイな…」

TK「How tall he is…」

藤巻「この風貌、只者じゃないな…」

椎名「一体、何者?」

音無「ゆり、この人もこの世界に来た人か?」

ゆり「そうよ、名前は範馬勇次郎さんよ」

岩沢「もしかして、大人もこの世界に来るようになったの?」

ゆり「まだ、名前しか聞いてないわ、詳しい話はこれからよ」

勇次郎「俺の人生はまだ終わっちゃいねえぜ」

勇次郎「ただ、霊媒師をタクシー代わりにして、あの世へ出向いただけだ」

ゆり「タクシーって…」

大山「凄いんだね…霊媒師って…」

勇次郎「そこの女が霊媒師に相談を持ちかけたのが始まりだ」

岩沢「あたしが?」

勇次郎「来世の貴様から伝える言葉がある、『あまり無理をするな』だ」

岩沢「『あまり無理をするな』か、あたしなら言いそうね」

ゆり「ええっ!岩沢さん消えるの!?人間に転生するの!?」

勇次郎「満たされたら消えたと言っていやがったぜ」

ゆり「満たされたらって…歌を歌いまくったのかしら?」

岩沢「そうね、歌いまくったら、満たされそうね」

ゆり(やはり、そうだったのね、あたしの勘は正しかった)

大山「ねえ、岩沢さんが人間に転生したって事は僕達も転生したら人間に…」

日向「人間の当たりクジもちゃんとあるって分かっただけじゃねえか」

高松「そうですね、外れクジのアブラゼミやフジツボもあるでしょうね」

ゆり「それと、満たされたら消えるのが分かったのも大きいわ」

ゆり「学園生活を満喫、つまり真面目に授業を受ける受けないは消えるのに関係ないのね」

ゆり「もっとも、生前に学園生活をまともに送れなかった人は違うわ」

ゆり「この世界で学園生活を満喫すれば、満たされて消えてしまう」

ゆり「つまり生前に学園生活以外で心残りがあった人は学園生活を満喫しようが消えないのね」

高松「この世界には、まだまだ謎がありそうですね」

ゆり「だから、この世界を手に入れるの、そうすれば全ての謎が解けるかもしれない」

ゆり「その為にも天使を何とかしなければいけないわ」

勇次郎「俺は神や天使とヤリに来ただけだ、他はどうこうする気はねえ」

ゆり「ヤリにって…ああ、喧嘩を売りに来たって意味ね」

日向「あの世に出向いてまで喧嘩したいのかよ…」

高松「しかも、神と天使にですか…」

TK「I was very surprised…」

藤巻「なんて、おっさんだ…」

音無「凄い人が来たな…」

大山「でも、ちょっとカッコいいかも」

椎名(間違いない…この男の実力は私を遥かに凌駕している…)

松下(組み合わなくても分かる…この人には俺の柔道は通用しない…)

勇次郎「天使は何処にいる?」

ゆり「この時間なら教室でしょうね、今は授業中だから」

勇次郎「なら、今から天使とヤリに行く」

ゆり「えっ、今は授業中って言ったじゃない」

勇次郎「それがどうした?」

ゆり「い、いや、生徒じゃない範馬さんが校舎に入って見つかったら、大騒ぎになるわ」

勇次郎「勝手に騒がせておけ」

ゆり「あたし達は明日、とあるオペレーションを実行する手筈なの、その時に天使は必ず現れるわ」

ゆり「明日まで待ってもらえないかしら?」

勇次郎「この俺に待てだと…」

ゆり「ひっ…」

勇次郎「退屈なまま、明日まで大人しくしていろと…」

野田「だったら、その退屈を俺が何とかしてやろう!!」

ゆり「野田君?」

日向「アホ、参上」

高松「そう言えば、いませんでしたね」

野田「ゆりっぺを怖がらせて、ただで済むと思うなよ!」

藤巻「いつも通り、獲物を振り回してやがる」

音無「アイツ、ワンパターンだな」

岩沢「あたしの作曲もワンパターンにならないよう、気を付けないとね」

松下「やめろ!野田!!」

椎名「あさはかなり!!」

野田「明日の作戦まで、寝てるがいい!!」

ガシッ

野田「何だと!?」

藤巻「あれだけ動きまくってる獲物をあっさり掴んだぞ」

勇次郎「玩具など出しやがって、これで俺に遊べと言うのか?」

勇次郎「なら、遊ばせてもらおうじゃねえか」

ヒュッ

野田「し、しまった、獲物を奪われた!」

グニャ、グニャッ、グニャッ、グニャ

野田「な、何っ!?」

大山「ハルバードって、あんなに柔らかかったっけ?」

日向「んなワケあるか!」

高松「これは…何と言ったらいいんでしょうか…」

TK「dream…」

高松「そう、夢なんじゃないかと思ってしまいます…」

藤巻「ハルバードってのは、重くて使いこなせるヤツは限られているって聞いたがよ…」

藤巻「じゃあハルバードをあんなに曲げれるヤツは何人いるんだ?」

松下「いや、アレは曲げるなんてものじゃない…」

松下「範馬さんの両腕の動きに合わせて、ハルバードが一緒に動かされている…」

松下「ハルバードに社交ダンスを強要して一緒に踊っているかのように…」

椎名「本当に社交ダンスを踊っているつもりなのかもしれない…」

岩沢「この社交ダンスに似合う曲は思いつかないな…」

音無「何なんだよ、これは…」

ゆり(まさか、これほどとはね…)

野田「こんな事が…こんな事が…」

大山「あれが元々、ハルバードって言ったら、何人くらい信じるかな?」

藤巻「誰も信じねえよ…」

日向「あれだけ長かったハルバードが、すっかり短くなったぜ…」

高松「その分、横に広がりましたね…グチャグチャですが…」

勇次郎「欠伸が出そうなくらいつまらねえ、小僧、玩具を返してやるぜ」

ポイ

勇次郎「さあ、次の玩具は何だ?」

野田「お、俺の負けだ…完敗だ…」

大山(野田君、『完敗』って言葉、知ってたんだ…)

勇次郎「小僧、玩具で遊ぶのなら、遊び場は慎重に選択しろ」

勇次郎「遊び場に俺の目の前を選択するなど、最悪の選択ミスだ」

野田「………」

勇次郎「そろそろ、行くか」

ユイ「ちょっと待ったああああああ!!」

勇次郎「………」

日向「誰だ、アイツ?」

高松「さあ?見覚えありませんね」

TK「Who is it?」

大山「えっと、戦線にあんな子いたっけ?」

藤巻「初めて見るツラだな、誰かアイツ知ってるか?」

松下「いや、俺は知らないぞ」

椎名「私も知らないな」

音無「お前等、知らないのかよ!まあ俺も知らないが…」

岩沢「あの子、陽動部隊で見かけたような…」

ゆり「確か、ユイって名前だったわね」

ユイ「そうです!ユイです!」

ユイ「報告事項の書類を持って来ました!」

ゆり「そう、ご苦労様」

ユイ「いえいえ、これくらい、お安い御用って…」

ユイ「違いました、忘れる所でした」

ユイ「おい、おっさん!次は、あたしが相手じゃあああ!!」

日向「うわっ、アホがもう一人」

高松「アホですね」

大山「野田君以上のアホがいたなんて」

松下「おいおい、せめて身の程知らずと言ってやれ」

椎名「あさ…みのほどしらず」

藤巻「コイツ、脳みそも勝算もないだろ」

TK「You can not win an absolute」

音無「はははは…仲間に酷い言いようだな…」

岩沢「ゆり、止めないの?」

ゆり「もう少し様子を見ましょ」

ゆり(さあ、もう少し見せてもらいましょうか)

勇次郎「今は抑えているとはいえ」

勇次郎「先程の小僧といい、この小娘といい、大国の指導者ですら持ち合わせぬ、その威勢」

勇次郎「あの世ってのは、退屈どころか、おもしれえじゃねえか」

勇次郎「いいぜ、遊んでやるから、来な」

ユイ「遊びじゃねえ!喧嘩じゃあああ!!」

ユイ「あたしの殺人プロレス技!とくと見ろや!!」

勇次郎「………」

勇次郎「小娘、口を動かすのは、その辺にして、足を動かしたらどうだ?」

ユイ「あ、あれ…足が動かない…どうして…」

勇次郎「小娘、貴様はオツムより身体の方が賢かったってワケさ」

勇次郎「あの世で言うのも可笑しいが、貴様の身体はまだ生きていたいと望んでいるぜ」

ユイ「あたしの足!動けや!」

勇次郎「小娘、貴様が来ねえのなら、こっちから行くぜ」

ユイ(ち、近付いて来る…)

ユイ「えっ、あっ…」

日向「おい、どうしたんだ、アホが座り込んだぞ!」

大山「えっ、あれって、もしかして!?」

藤巻「おいおい、マジかよ!」

高松「このような場所で、こんな事が!?」

ユイ「は…ははは…も、漏らしちゃいました…あたしの負けでいいです…」

勇次郎「………」

勇次郎「小娘、試験の問いは間違えても、喧嘩を売る相手は間違えるな」

ユイ「はい…相手を間違えました…」

ユイ「うっうっ…漏らしてしまいました…」

ゆり「まさか、こんなモノを見せられるなんて思わなかったわ…」

岩沢「自業自得と思うけど、止めた方がよかったね…」

大山「この子、どうしよう?」

藤巻「まさか、喧嘩の最中に漏らすなんてよ…」

高松「何て、言ってあげればいいんでしょうか?」

松下「う~む、思いつかん、誰か思いつかないか?」

椎名「あさはかなり」

TK「ASAHAKANARI」

日向「仕方ねえ、俺がコイツを元気付けてやるか」

音無「元気付けるって…大丈夫か?」

日向「なあに、心配すんな、まかせろって」

日向「おい、ションベンタレ、元気出せよ」

日向「ションベン漏らしちまったのは、不幸な事故だったって思えよ」

日向「ただ、これからお前のあだ名がアホからションベンタレに変わるだけじゃないか」

日向「ションベンタレ、可愛くて女の子らしいあだ名じゃん」

ユイ「どこがじゃああああああ!!」

バコッ

日向「いっ、痛てえじゃねえか!」

ユイ「お前の脳みそ、留守なのか!」

日向「留守はお前だろ!しかも永遠に帰って来ねえじゃねえか!!」

ユイ「ぬわんだとう!ゴルゥラアアア!!」

音無「おい、早くパンツ替えて来いよ…」

ユイ「そうします…」

勇次郎「とんだ邪魔が入ったぜ」

ゆり「待って、明日のあたし達のオペレーションは天使エリアへの侵入作戦なの」

ゆり「これが成功すれば神へ通じる道が見つかるかもしれない」

勇次郎「………」

ゆり「だからそれまで、出来るだけ騒ぎは起こしたくないの」

ゆり「神や天使を警戒させてしまうかもしれないから」

ゆり「あたし達は天使エリアへの侵入作戦を成功させる為に、今までにない大規模な陽動作戦を実行する」

ゆり「だから、天使は必ず陽動に引っかかるわ」

ゆり「明日まで待ってくれたら、天使エリアで得た情報は全て貴方に提供するわ」

勇次郎「………」

ゆり「………」

勇次郎「待つのは明日までだ」

ゆり「ありがとう」

ゆり「じゃあ、範馬さんの使う部屋を用意するわ」

ゆり「流石に学生寮は使えないから、前にみんなに作らせたVIPルームを使ってもらうわ」

ゆり「安心して、食事もちゃんと持っていくから」

ゆり「それで範馬さん、あたし達は協力関係の間柄と認識していいのかしら?」

勇次郎「さあな、少なくとも、今は敵対する気はねえぜ」

ゆり「ええ、それでいいわ」

ゆり「じゃあ、範馬さん、これからよろしくね」

勇次郎「フン」

大山「ねえ、ゆりっぺはどうして範馬さんを戦線に誘わないのかな?」

大山「協力関係に留めてるし」

高松「そうですね、範馬さんが入隊して下されば、鬼に核ミサイルですね」

藤巻「それを言うなら、鬼に金棒だろ」

松下「いや、範馬さんを武器に例えるのなら、金棒ではあまりにも貧弱過ぎる」

日向「そうだな、核ミサイルで合ってるぜ」

椎名「あってるなり」

TK「Ultimate destruction weapons」

岩沢「う~ん、『Ultimate destruction weapons』は作詞に使える単語じゃないな」

音無「それで、ゆりは何で範馬さんを戦線に誘わないんだ?」

ゆり以外の戦線メンバー全員「………」

野田「ゆりっぺには何か考えがあるんだ」

大山「あっ、野田君が復活した」

野田「確かに、兄貴には戦線に入隊してもらいたいがな」

高松「兄貴…」

藤巻「コイツ、範馬さんの舎弟になったつもりでいやがる…」

日向「まあ、アレを見せられたら、舎弟になりたくなるかもな」

椎名「私は弟子にして欲しい」

松下「俺もだ」

TK「I want to learn the dance from him」

岩沢「音楽は教えてもらえそうにないね」

音無「凄い人気だな、範馬さん」

ゆり(範馬勇次郎さん…こんなにスカウトしたいと思った人材は、今までいなかった)

ゆり(でも、誘っても絶対に断られる、だからこれでいいわ)

松下「ぬ、ぬおおおおおお!」

勇次郎「………」

松下(俺では範馬さんを投げれないのは分かっていたが…)

松下(投げるどころか、全く動かせないとは…)

松下(俺が大木相手に投げの練習をした時でも、少しは木が揺れた、葉もわずかだが落ちた)

松下(だが範馬さんの身体をほんの数ミリですら揺らせられない)

松下(まるで地中に伸びている大木の根の様だ)

松下(範馬さんの足…いや身体全体が地中に伸びて固定されていると錯覚してしまいそうだ)

勇次郎「そろそろ、投げるぞ」

バシュウッ、ドンッ!!

松下「ぐおっ」

勇次郎「貴様に俺と立ち会う技量はまるでないが…」

勇次郎「松下五段」

松下「は、はい」

勇次郎「柔道は成人しなければ五段は取れねえが、貴様に五段に見合う技量は十分にある」

松下「!?」

勇次郎「貴様との稽古はこの辺で終わりだ、俺はアイツに聞かねばならん事がある」

松下「あ、ありがとうございました!!」

勇次郎「………」

椎名「………」

勇次郎「おい、いつになったら仕掛けて来るんだ?」

椎名「うっ…」

勇次郎「俺が貴様に、いつでも仕掛けて来いと言ってから2時間くらい経つが…」

勇次郎「何も仕掛けて来ねえから、忘れちまったと思ったぜ」

椎名「範馬さんから隙が生れるのを待っていたら、2時間経過していました…」

勇次郎「俺と松下五段の稽古中に生れた隙は無視したか?それとも気付かなかったか?」

椎名「あれで隙を見せていたつもりなら、あさはかなりです」

椎名「この二時間、範馬さんには、ほんの数秒すら隙は存在しませんでした」

勇次郎「そうだ、俺から隙など生れていない、生せもしない、その答えで正解だ」

勇次郎「標的の隙の有無、これを見分ける目はあるようだな」

勇次郎「松下五段同様に貴様との稽古もこの辺で終わりにするつもりだったが、貴様は少しは楽しめそうだ」

勇次郎「特別だ、実戦の稽古をしてやろう」

勇次郎「貴様の考え得る、全ての手段で俺に挑め!!」

椎名「はい!!」

ゆり「範馬さんは、どう?」

遊佐『作戦本部を出られてから、松下五段さんと椎名さんに稽古をせがまれ相手をされました』

ゆり「へえ、優しいのね」

遊佐『ご本人は退屈しのぎだと仰っていましたが』

ゆり「それで、稽古はどうだった?」

遊佐『松下五段さんと椎名さんってこんなに弱かったっけ?と思えてしまう内容でした』

ゆり「範馬さんスゲエ!!とは思えなかったの?」

遊佐『ウサギになってしまうんです』

ゆり「ウサギ?」

遊佐『範馬さんを動物で例えるならライオンです、たとえどんな状況になろうともライオンのままです』

遊佐『そして、松下五段さんを熊、椎名さんを狼と例えます』

遊佐『ですが、範馬さんと相対すれば、熊も狼も関係ありません』

遊佐『全てがライオンの捕食対象の弱々しいウサギになってしまうんです』

ゆり「なるほど、ライオンスゲエ!!なんて、当たり前過ぎたワケね」

ゆり(どんだけ強いのよ…)

遊佐『えっ、あっ』

ゆり「どうしたの?」

遊佐『範馬さんが、こっちに来ます』

ゆり(あの遊佐さんの気配を察知したとでもいうの?)

遊佐『範馬さん?えっ…はぁ…いいんですか?』

ゆり「遊佐さん!?」

遊佐『範馬さんが、貴様の気配の消し方は不完全だと…』

ゆり(遊佐さんのレベルで不完全ですって…)

遊佐『これから、退屈しのぎに気配の消し方を教えてくれるそうです』

遊佐『そういうワケですので、しばらく連絡出来ません、それでは』

ゆり「ち、ちょっと!」

ゆり「優しいのね…」

日向「範馬勇次郎さんか…」

音無「あんな人が存在していたなんてな…」

日向「あの野田がキャラ改変しちまうし」

音無「あれは、範馬さんに対してだけだろ」

日向「音無も記憶が戻ったら、実はスゲエ格闘家なんて事もあるかもしれないぜ」

音無「ないない、俺は天使の攻撃をかわせなかったんだから」

日向「範馬さんなら天使を勝てるかもな」

音無「それは俺も思った」

日向「戦線と範馬さんは協力関係になれたけどよ」

日向「ゆりっぺも心の中じゃあ、範馬さんを戦線に入隊させたいって思ってるぜ」

日向「範馬さんを入隊させる為のオペレーションを考えてるんじゃないのか?」

音無「何をやっても無駄な気がするんだが…」

岩沢「………」

ひさ子「岩沢、転生の事、考えてるのか?」

岩沢「まあね…」

関根「どうして暗い顔してるんですか?岩沢先輩は人間に転生出来るんですよ」

入江「岩沢先輩、何を悩んでいるんですか?」

岩沢「あたしだけが人間に転生しても意味はないさ」

岩沢「戦線メンバー全員が人間に転生出来ないとね」

ひさ子「岩沢、あたし達の事なんか、気にすんなって」

関根「岩沢先輩は来世も人間確定を素直に喜ぶべきですよ」

入江「戦線の皆さんも岩沢先輩の来世を応援してくれるハズですよ」

岩沢さん「簡単には割り切れないさ、ずっと一緒にやってきたんだから」

ひさ子「確か、この世界で満たされたら消えるんだったな?」

岩沢「ああ、そうらしい」

ひさ子「じゃあ、来世は置いといて、今はガルデモの活動に専念しな」

岩沢「ひさ子?」

ひさ子「これからも歌い続けて、満たされた気持ちになるまでさ」

ひさ子「岩沢は生きてる時は満足に音楽が出来なかったって言ってたよな?」

岩沢「それが心残りだったな…」

ひさ子「でも、ここから消えるって事は、この世界じゃあ満足出来る程やれたって証になるじゃないか」

ひさ子「戦線メンバー全員が人間に転生出来るとは限らない」

ひさ子「このまま転生せずに、ここに居続けるかもしれない」

ひさ子「でもね、だからこそ人間に転生出来るヤツには満足して来世を迎えてほしいんだよ」

ひさ子「あたし達の分まで新しい人生を歩んでいってほしいんだよ」

関根「岩沢先輩があたし達の分まで音楽をやってくれるなら、それでいいじゃないですか」

入江「そうですよ、岩沢先輩がガルデモの曲を来世でも伝えてくれるのなら、ガルデモは永遠ですよ」

岩沢「お前ら…」

岩沢「よし、それじゃあ、練習を始めるか!」

ひさ子「おう!」

関根「はい!」

入江「やりましょう!」

岩沢(ひさ子達には、ああ言ったけど…)

岩沢(出来れば、戦線メンバー全員が人間に転生するのを願わずにはいられない…)

岩沢(天使との戦いが終われば、新しい道が開けるのだろうか?)

岩沢(あの範馬さんなら天使との戦いを終わらせてくれるかもしれない…)

コンコン

勇次郎「入れ」

ガチャッ

高松「失礼します」

大山「範馬さん、お待たせ」

TK「Thank you for waiting」

藤巻「晩メシ、持って来たぜ」

野田「兄貴、夕食をお持ちしました!」

大山(野田君、敬語使えたんだ…)

勇次郎「………」

野田「兄貴?」

勇次郎「俺を兄貴などと呼ぶな、もしこのまま変わらぬようであれば…」

野田「す、すいません」

大山「野田君、フラれちゃったね」

TK「To pity」

高松「まあ、彼を舎弟にしたいなどという物好きな人はいないと思いますが」

藤巻「そいつは言えてるぜ」

高松「範馬さん、今回と明日の朝は私達が食事を運ばせていただきます」

藤巻「松下五段や椎名、それに遊佐も運びたいって言ってたけどよ」

野田「クジ引きで俺達が勝ちました」

TK「We are lucky」

大山「範馬さんの食事の選択も考えて五つも当たりがあるクジ引きだけどね」

野田「パンより定食の方がいいと思い、大食堂から運んで来ました」

高松「焼肉定食、トンカツ定食、豚生姜焼き定食、チキンカツ定食、唐揚げ定食、ハンバーグ定食の六つです」

高松「範馬さん、この六つのどれがよろしいですか?」

大山「この中から好きなの選んでよ」

TK「Please choose which one you like from these」

藤巻「範馬さんが選んだメシ以外を俺達が食うからよ」

勇次郎「肉系ばかりだな」

大山「えっと、オムレツ定食とかコロッケ定食の方がよかった?」

野田「くっ、この俺とした事が…」

勇次郎「いや、あの世の飯には興味がある」

勇次郎「豚生姜焼き定食だ」

高松「ほう、私は焼肉定食と予想していました」

野田「範馬さん、豚生姜焼き定食です、どうぞ」

大山「みんなの分、回ったみたいだね」

藤巻「よっしゃ!食うか!」

TK「I was waiting to eat」

大山「いただきま…」

勇次郎「………」

サッ

大山(えっ!?)

高松(これは…)

藤巻(マ、マジ…)

TK(That's very hard to believe…)

野田(範馬さんが豚生姜焼き定食に頭を下げた!)

高松(これは『いただきます』の会釈ですか…)

大山(お箸を手に取る前の行動なんて、無いと思ってたのに…)

藤巻(こいつぁ、驚いたぜ…)

TK( was quite surprised…)

野田(範馬さんに頭を下げさせるとは恐るべし、豚生姜焼き定食…)

勇次郎「………」

パッ、モシュ、モシッ

戦線メンバーの五人「………」

高松(これは、何と言っていいやら…)

大山(僕達より行儀よく食べてる…)

藤巻(戦線メンバーで、こんなに行儀よく食えるヤツはいねえんじゃねえか…)

TK(Good manners are part of her nature…)

野田(まさか範馬さんは豚生姜焼き定食に敬意を払われているのか…)

野田(豚生姜焼き定食、もし人間の言葉が話せるなら、一度は語り合いたいな…)

大山「ごちそうさま」

藤巻「食った、食った」

TK「This was really delicious」

高松「もう何度も食べているのに飽きない味です」

野田「この世界じゃ、他に食い物屋がないからな、飽きるワケにはいかない」

勇次郎「………」

サッ

大山(あっ、会釈)

TK「Nod」

高松(『ごちそうさま』の会釈ですね)

藤巻(そうだよな、『いただきます』があるなら『ごちそうさま』もあるよな)

野田(俺は豚生姜焼き定食になりたい…)

高松「範馬さん、豚生姜焼き定食のお味はどうでしたか?」

勇次郎「死人が喰うには贅沢過ぎる味だ」

大山「それって、美味しかったって事だね」

藤巻「あの大食堂のメシは美味いからな、食券を手に入れるのにもヤル気が出るぜ」

TK「I also opinion is the same」

野田「範馬さんの口に合ってよかったです」

勇次郎「ただ…」

大山「えっ?」

勇次郎「残念だ…」

高松「残念?」

勇次郎「少し冷めていた」

藤巻「それは…」

野田「す、すいません、次はもっと早く持ってきます」

TK「I try to do my very best」

勇次郎「………」

勇次郎「いや、違うな、そういう問題ではない」

勇次郎「料理の味も温度も、ささいな事だ」

勇次郎「貴様等は普段、大食堂とやらで飯を喰っているのか?」

高松「ほとんど、そうですね」

勇次郎「学生の本分たる授業を放棄している貴様らが、他者に気後れなどせず堂々としてか?」

TK「That's right」

野田「俺達は周りの先生も一般生徒も気にしてません」

藤巻「おうよ、常に堂々としてるぜ」

勇次郎「………」

勇次郎「この俺が堂々とせず、引きこもって飯を喰らうなどと…なんというザマだ…」

大山「ひっ」

野田「は、範馬さん!?」

高松(な、何という凄まじい威圧感…)

藤巻(この威圧感だけで、身体が押し潰されそうだぜ…)

TK(It is very frightening…)

勇次郎「貴様ら!!」

戦線メンバーの五人「は、はい!」

勇次郎「明日の朝!俺を職員室に案内しろ!!」

戦線メンバーの五人「分かりましたあああ!!」

勇次郎「………」

パッ、モシュ、モシュ、モシッ

大山(うっ…昨日より威圧感が大きくなってるよ…)

高松(紅鮭定食、美味しいですか?なんて聞けませんね…)

藤巻(なんか、物凄く怒ってねえか…)

野田(こ、怖い、マジで怖い…)

TK(Really is scary…)

勇次郎「………」

勇次郎「これも旨い」

大山「そ、そうでしょ…」

高松「よ、喜んでいただけて何よりです…」

藤巻「は、ははははっ…」

野田「さ、さば味噌定食なんてのもありますよ…」

TK「I also recommend it…」

勇次郎「次はそれにする」

戦線メンバーの五人(ふう…)

勇次郎「おい!」

戦線メンバーの五人「は、はい!何でしょう!?」

勇次郎「忘れてねえな」

勇次郎「これを喰ったら、俺を職員室に案内しろ」

高松「も、もちろんです、お任せ下さい」

大山「ちゃんと案内するから」

TK「I will show you」

勇次郎「クックククッ…」

野田(職員室で何をされるのだろうか…)

藤巻(スッゲエ、嫌な予感がするぜ…)

大山「範馬さん、あそこが職員室だよ」

高松「おそらく、朝礼の真っ最中でしょう」

TK「Morning assembly」

勇次郎「では、ご挨拶といこうじゃねえか」

大山「ええっ!」

藤巻「ご挨拶って、まだ朝礼中だぜ」

勇次郎「貴様等はもういい、帰りな」

野田「あの、範馬さん…この事はゆりっぺには…」

勇次郎「言いたければ、言え」

野田(どうしたらいいんだ…ゆりっぺに報告していいのだろうか…)

藤巻(信じられねえ、ゆりっぺ信者の野田が悩んでいるだと)

藤巻(いつもなら、真っ先にゆりっぺに報告しに行くハズなのによ)

藤巻(けど、分かる気がするぜ)

藤巻(範馬さんのとんでもない強さにはスゲエ憧れちまう)

藤巻(少なくとも、ここいる連中はみんなそうだ)

藤巻(それに範馬さんは松下五段や椎名を赤子扱いしたって、ゆりっぺが言っていやがった)

藤巻(マジでスゲエよ…)

ゆり「はぁ…それで全てが終わってから、報告しに来たのね…」

大山「だって、範馬さんの邪魔しちゃ悪いし…」

ゆり「範馬さんとは天使と戦うのを待ってもらう約束しかしてないから、これは仕方ないわね…」

ゆり「それで、どういう状況だったの?」

高松「範馬さんは殺気とも言える程の威圧感を出しながら、職員室に入りました」

松下「殺気とも言える程の威圧感…」

ゆり「それなら昨日、あたしも範馬さんに出会った時に感じたわ」

ゆり「この世界ではあたし達もNPC達も絶対に死ぬ事はないのに、死を覚悟させる恐怖をね…」

椎名「範馬さんは、普段は威圧感を抑えてくれている」

椎名「昨日、作戦本部で私達と会話をしている時も抑えてくれていた」

椎名「そのような威圧感の中で会話など不可能だからな」

椎名「しかし、一瞬だが、恐ろしい程の威圧感を感じた場面が3回あった」

日向「範馬さんがゆりっぺに待てと言われた時と、野田のハルバードの形を変えてる時と、ションベンタレに近付く時だな」

音無「一瞬だったがとんでもなく恐ろしかったな…」

日向「あの威圧感を最初から最後まで出していたら、野田もションベンタレも範馬さんに絡んだりはしなかったろうな」

野田「昨日の事は言うな!」

ゆり「それで、その後は?」

高松「朝礼で一箇所に集まっていた先生達は、範馬さんを見た瞬間、悲鳴を上げながら壁に向かって散らばりました」

藤巻「それで、壁に背中を付けるようして震えながら立ってたぜ」

日向「想像しただけで、恐ろしいぜ…」

岩沢「先生達、職員室から逃げなかったの?」

大山「逃げてないよ、範馬さんからは逃げられないって分かってたんじゃないかな」

高松「範馬さんは先生達に『俺は遠方から来た客だ!持て成せ!!』と物凄く大きな声で怒鳴りました」

TK「It was a very loud voice」

日向「おいおい、マジかよ…」

大山「先生達、声を合わせて叫んだよ『ようこそいらっしゃいましたああああああ!!』ってね」

高松「それから、範馬さんは校長先生、教頭先生、各学年主任と握手されました」

高松「この時、校長先生達は冷や汗流しまくりでした」

藤巻「握手が終わった校長達、ホッとした顔してたぜ」

大山「これで命が助かったって顔だったね」

ゆり「NPC達も死を覚悟させる恐怖を味わったのよ」

ゆり「範馬さんなら不老不死のあたし達に死を与える事が出来るかもしれない」

ゆり「何の根拠もない、ただ範馬さんだからというだけで納得してしまう」

ゆり「だから、範馬さんなら天使に必ず勝てる」

ゆり「あたしは期待せずにはいられないの」

ゆり以外の戦線メンバー「………」

高松「ちなみに、今までの話は範馬さんが職員室に入られてから、3分程度の出来事です」

ゆり「えっ?」

ゆり「………」

ゆり「は、範馬さんは…」

ゆり「たったの3分で、この学園を手に入れたのかああああああ!!」

高松「その通りです」

岩沢「凄いね…」

日向「な、何なんだよ、あの人は…」

音無「本当に凄い人が来たもんだ…」

校長先生「1限目の授業を取り止め、全校集会を急遽開いたのは、全校生徒の皆さんにご紹介したい方がいるからです」
     
校長先生「当学園にとって、とても大切なお客様をお迎えしました」

校長先生「範馬勇次郎さんです」

先生全員「おおっ!!」

パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ
パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ
パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ
パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ、パチィ

勇次郎「………」

生徒A(先生達、あんなに大きな拍手を…)

生徒B(あんなに大きな拍手、今まで聞いた事ない…)

校長先生「範馬さんは当学園のいかなる場所でも時間を問わず出入り自由です」

校長先生「もちろん、あらゆる施設の使用も自由です」

校長先生「みなさん、この意味を必ず理解して下さい」

校長先生「それほどまでに範馬さんは大切なお客様なのです」

校長先生「絶対に失礼のないようにお願いします!絶対にです!」

勇次郎「フン」

天使(範馬勇次郎…)

直井(お客様だと…)

ゆり「ねえ、これからどうするつもり?」

勇次郎「今日の昼は大食堂で、さば味噌定食を喰う」

ゆり「あのねえ…」

勇次郎「俺はこの学園の大切なお客様になっただけだ」

勇次郎「コレを見ろ」

ゆり「げえっ!何なのよ!その食券は!?」

勇次郎「校長からの贈り物、食券500枚だ」

ゆり「ご、500枚ですってえええ!!」

ゆり「あたし達がトルネードやって、苦労して手に入れてる食券をこんなにもあっさりと…」

ゆり「しかも、500枚も手に入れるなんて…」

勇次郎「知らねえな」

ゆり「少しは知っておいて…」

勇次郎「贈り物はコレ以外にもあるぜ」

ゆり「もう何があっても、驚かないわよ」

勇次郎「100万円だ」

ゆり「ぎぃええええええ!!」

ゆり「100万円で食券を買えばいいじゃない!どうして、食券500枚も渡すのよ!?」

勇次郎「校長からの贈り物は100万円が先だったが」

勇次郎「食券自販機周辺が混雑してたらどうするかを聞いたら、慌ててコレを渡しやがったぜ」

ゆり「間違いなく、この学園は範馬さんの所有物よ…」

勇次郎「それで、今夜の天使エリア進入作戦はどうする?」

ゆり「中止よ!中止!こんなんじゃ無理よ!!」

ゆり「神や天使を警戒させてしまったかもしれないから、少し時間を置くわ」

ゆり「今夜のオペレーションはトルネードに変更よ」

勇次郎「天使は現れるのか?」

ゆり「いつも現れてるわよ」

勇次郎「ゆり」

ゆり「な、何よ?」

勇次郎「天使との闘争、俺が今夜終わらせてやる」

ゆり「………」

ゆり「範馬さん、あたし達も銃を使えば、この学園を手に入れられるかもしれない」

ゆり「天使の目を盗んで職員室に入り、銃で先生達を脅す」

ゆり「後は天使にバレないように、裏から先生達を操れば、何とでもなる」

ゆり「口で言うのは簡単だけど、成功率は高くないでしょうし、時間も掛かるでしょうね」

ゆり「でも、範馬さんは職員室に入って、一言怒鳴っただけで、この学園を手に入れた」

ゆり「しかも、たったの3分で」

ゆり「こんな事、誰にも出来ないわ」

ゆり「だから、もっとあたし達に見せて欲しい、誰にも出来ない事…いえ、誰にも出来なかった事を」

ゆり「範馬さん、誰にも出来なかった事を見せてくれるのね?期待していいのね?」

勇次郎「今更過ぎるぞ、貴様は昨日から俺に期待してるじゃねえか」

ゆり「ふふっ、当たりよ、ちょっと言ってみたかっただけ」

竹山(今夜は天使エリア侵入作戦…)

竹山(ついに僕が表舞台に出る時が来たんだ…)

竹山(例え、どんなパスワードが必要だったとしても、解析してみせる)

竹山(パソコン閲覧にパスワードが必要なように、戦線は僕を必要としているんだ)

竹山(このクライストを)

遊佐「竹山さん、ゆりっぺさんからの伝言です」

竹山「僕の事はクライス…」

遊佐「今回の天使エリア進入作戦は中止、ですから作戦本部に来なくてもいいとの事です」

竹山「えっ?」

遊佐「それでは確かにお伝えしました」

竹山「………」

竹山「僕はクライストおおおおおお!!」

大山「ねえ範馬さん、さば味噌定食どう?」

TK「It is tasty?」

勇次郎「味も温度も問題はない」

勇次郎「なにより今までと違い、堂々と喰っている」

椎名「それはよかったです」

松下「定食もいいですが、肉うどんもいいですよ」

遊佐「一部の例外はありますが、ほとんどお勧めのメニューばかりです」

高松「人数がさらに増えましたね」

藤巻「もうクジ引きする必要もねえからな、好きに集まって食えるぜ」

野田「俺のクジ運の強さをもう見せれないのは残念だ」

大山「五つも当たりがあるクジ引きだったけどね」

遊佐「昨日、クジ引きで負けた時はとても悔しかったです」

椎名「私もだ、不運としかいいようがない」

松下「それは俺もだったが、もうクジ引きはしなくていいんだ、気持ちを切り替えよう」

大山「でも、遊佐さんが感情的になるなんて、今まで見た事がなかったよ」

高松「そうですね、遊佐さんはある意味、岩沢さん以上のクールビューティーと言えますからね」

遊佐「範馬さんの指導を受けたおかげで、私はさらなる高みに達しました」

遊佐「短時間の指導でしたが、とても多くの事を学ばせていただきました」

遊佐「今の私にとって、範馬さんは唯一尊敬の対象となる方です」

遊佐「一緒に食事を望むのは当然です」

野田「ほう、貴様、分かってるじゃないか」

大山(唯一って事は、ゆりっぺの事は尊敬してないんだね…)

高松「どうです?この機会に遊佐さんもお時間がある時は私達と交流しませんか?」

遊佐「えっ?」

松下「そうだな、もっと早くに声を掛けるべきだったな」

TK「We should get along」

藤巻「同じ戦線の仲間なんだからよ、もっと一緒に遊んだりしようぜ」

藤巻「俺が麻雀のやり方、教えてやるからよ」

遊佐「はあ…」

椎名「そうだ、コイツ等の言う通りだぞ」

大山「何言ってるの、椎名さんもだよ」

椎名「何!?」

高松「そうですね、椎名さんもですね」

椎名「あ、あさはかなり」

高松「椎名さんの言われる通り、私達はあさはかだったと思います」

高松「同じ戦線の仲間であるなら、私達はもっと馴れ合うべきでした」

松下「これは二人にとっては、余計なお節介にしかならないのかもしれん」

松下「前触れもなく、いきなりだからな」

遊佐「お節介なんて思っていませんが…」

椎名「いきなりで驚いているだけだ…」

勇次郎「遊佐、椎名、貴様等は俺の娘でもなんでもねえから、俺の好き嫌いを押し付ける気は起こらねえ」

勇次郎「よく理解らねえが、目の前にあるソレは容易く手に入れられるモノじゃないらしいぜ」

勇次郎「貴様等が手に入れたいのなら、手を伸ばして掴め、今を逃すな」

遊佐「先生…」

椎名「師匠…」

勇次郎「………」

勇次郎「そう呼ぶなと言ったハズだ」

遊佐と椎名「す、すいません…」

野田(俺は今、この二人に親近感を感じている…)

遊佐「皆さんにご迷惑をお掛けするかもしれませんが、私でよろしければ…」

椎名「その…よろしく頼む…」

高松「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

松下「よろしくな」

大山「これからは遊佐さんと椎名さんも一緒だね」

藤巻「おう、一緒に遊んだりしような」

TK「Let's have some fun」

野田「まあ、いいだろう」

高松「後、音無さんと、もっと話すべきですね」

大山「そうだね、話さないとね」

松下「同じ戦線の仲間なんだ、もっとお互いをよく知るべきだな」

藤巻「まあな、アイツに麻雀のやり方を教えてやらねえとな」

TK「I teach a dance」

野田(丁度いい、音無には聞かなければならない事があるからな)

岩沢「おや、アンタ達も来てたんだ」

ひさ子「よお」

関根「こんにちわ」

入江「どうも」

藤巻「おっ、お前等も来たか」

大山「岩沢さん達もお昼だね」

高松「今日は午前中も練習すると言われていましたが、終わられたようですね」

遊佐「皆さん、お疲れ様です」

勇次郎「………」

ひさ子(大山の隣に座ってる人、まるでプロレスラーみたいだ…)

関根(デ、デカイ…)

入江(凄く…大きいです…)

ひさ子「岩沢、もしかしてこの人が?」

岩沢「そうだ、この人が範馬勇次郎さんだ」

関根「この人がたった3分で、この学園を手に入れた人ですね」

入江「それって、本当に凄いですよね、ビックリしちゃいます」

ひさ子「岩沢からアンタの事は聞いてるよ、あたしはひさ子、よろしく」

関根「あたしは関根しおりです、影が薄いとか言われてますが、それは今だけです」

入江「あたしは入江みゆきです、よろしくお願いします」

大山「範馬さん、彼女達がガルデモのメンバーだよ」

勇次郎「範馬勇次郎だ」

ひさ子「岩沢が人間に転生するのを教えてくれて、ありがとな」

入江「よければ一度、練習を見学しに来て下さい」

関根「あたし達、いつも元気に演奏してますから」

高松「皆さん、ライブの練習はうまくいっていますか?」

岩沢「いい感じだ、これなら今夜のライブも成功するよ」

関根「あの、あたし思うんですけど」

ひさ子「関根、何だ?」

関根「範馬さんは学園のあらゆる施設が自由に使えるんですよね?」

岩沢「使えるというか、もう範馬さんの所有物だろ」

関根「もしあたし達が、範馬さんから体育館を借りれたら…」

入江「それって、まさか!?」

関根「ふふふ、陽動関係なしで体育館ライブをやりたいと思いませんか?」

関根「先生からも天使からも、誰にも邪魔されずにです」

関根「真面目に授業を受ける受けない、つまり校則を守る守らないは消えるのに関係ないみたいじゃないですか」

関根「満たされたら消えるそうですが、これくらいで満たされるとは思えません」

関根「あたし達はまだまだ活動を続けたいんですから」

関根「学園が体育館を貸してくれるなんてありえません、ですが範馬さんの所有物になった現在は問題なしです」

関根以外のガルデモメンバー「………」

岩沢「範馬さん!物凄く大事な話があるんだ!」

ひさ子「あたしも!」

入江「あたしもです!」

関根「ぜ、全員の目の色が変わったあああ!!」

野田「騒がしいぞ!貴様等!音痴バンドのつまらん話は後にしろ!!」

岩沢「何だって…」

ひさ子「てめえ…」

関根「この…」

入江「むう…」

野田「う…」

岩沢「音痴バンドだと!!」

ひさ子「あたし達のライブ会場の交渉がつまんねえ話だと!!」

関根「アホのくせに!!」

入江「酷いです!!」

野田「な、何だ、やろうってのか」

岩沢「野田、唐揚げ1個貰うよ」

ひさ子「あたしも貰うからな」

関根「とりゃあ!いただき!」

入江「貰っちゃいます」

野田「何だとおおお!!」

野田「お、俺の唐揚げ定食の唐揚げが全部なくなってしまった…」

高松「これは自業自得ですね」

大山「いくらなんでも、音痴バンドは酷すぎるよ」

TK「Legitimate retaliation」

遊佐「野田さん、最低です」

椎名「あさはかなり」

岩沢「なあ、あたし達、体育館ライブで目の色変えてしまったけどさ」

岩沢「今はよしておいた方がいいんじゃないか?」

ひさ子「そうだな、範馬さんはまだ食事中だし、邪魔しちゃ悪いよな」

関根「範馬さん、食事が終わったら、あたし達の話を聞いて下さい」

入江「出来ればお願いします」

勇次郎「聞いてやるが、長話にはするな」

野田「唐揚げ達よ…お前達の事は忘れないぞ…」

勇次郎「野田、くれてやる」

野田「こ、これは、唐揚げ定食の食券!」

野田「は、範馬さん、ありがとうございます!」

藤巻「野田のヤツ、スゲエ速さで買いに行きやがった…」

関根「範馬さん、アホを甘やかすと、アホはもっとアホになりますよ」

ひさ子「言えてる」

大山「えっ、野田君はもっとアホになる可能性を秘めているの?」

高松「彼の可能性は無限です」

藤巻「嫌な可能性だぜ」

勇次郎「間違えるな、ヤツのウジウジしたツラがうっとおしかっただけだ」

松下「みんな!アレを見ろ!」

入江「えっ、どうしたんです?」

関根「あ、あれって…」

岩沢「天使…」

遊佐「範馬さん、彼女が天使です」

高松「ちなみにこの学園の生徒会長です」

勇次郎「ヤツか…」

ひさ子「こんな所で会いたくはなかったね」

TK「I did not want to meet」

高松「ですが、今まで食事中に攻撃して来たケースはありません」

藤巻「ああ、メシ食ってるだけだからな」

椎名「そうだ、問題ない」

勇次郎「………」

大山「範馬さん、どこに行くの?」

勇次郎「生徒会長様に、ご挨拶だ」

戦線メンバー全員「ええええええっ!!」

勇次郎「邪魔するぜ」

天使「邪魔するなら、向こうに行って」

勇次郎「………」

天使「食事中よ」

天使「麻婆豆腐は熱いうちに食べるものよ」

天使「喋るより食べるのに集中してるの」

勇次郎「俺のさば味噌定食は、さばの味噌煮も味噌汁も白飯もまだ半分以上ある」

勇次郎「冷めても喰えないワケではないが喰うなら熱いうちにだろう」

天使「なら喋ってないで熱いうちに食べるべきよ」

勇次郎「元の席に戻る間に冷めちまうかもしれねえ、ここで喰わせてもらうぜ」

天使「どうぞ」

大山「範馬さんが天使の向かいの席に座った!」

高松「座られる前に何か話されていたようですが…」

藤巻「ここからじゃ聞こえなかったな」

TK「I cannot hear that at all」

遊佐「天使と何を話されたのでしょうか?」

松下「分からないが、世間話ではないのは確かだな」

椎名「天使に宣戦布告をされたのかもしれない

関根「『貴様が天使か?』とかじゃないんですか?」

ひさ子「それで天使が『あたしの正体を見破るとは只者じゃないわ』と言って」

入江「範馬さんが『ここでケリをつけるぜ』と言って」

岩沢「天使が『最後の晩餐を食べさせて』と言って」

ひさ子「範馬さんが『せいぜい、ゆっくりと味わいな』と言って、天使の向かいの席に座る」

高松「それです!それに間違いありません!」

藤巻「流石だぜ!範馬さん!」

TK「Very nice!」

勇次郎「………」

サッ

天使「行儀がいいのね、食べ終わってから会釈するなんて」

勇次郎「ここの連中はしないのか?」

天使「貴方以外で会釈する人を見た事がないわ」

勇次郎「いいのか?喰うのに集中せず、会話などと」

天使「目の前の光景に会話をせずにはいられなかったわ」

勇次郎「これくらいで集中力を欠けるとは、貴様が俺の娘ならただでは済まなかった」

天使「食事中の会話はこれくらいにしておくわ」

勇次郎「食後にすぐ動くのは身体によくないらしいからな、しばらくここにいるぜ」

天使「食べ終わるまで、もう喋らないわ」

勇次郎「せいぜい喰うのに集中しろ」

藤巻「範馬さん、食べ終わってから、また天使と話してたな」

高松「今度は何を話されたんでしょうか?」

大山「ここからじゃ、全然聞こえないけど、凄く気になるよ」

遊佐「でしたら、聞こえる位置まで近付きますか?」

椎名「いや、それは危険だ、天使に感づかれてしまう」

TK「I am extremely opposed to that」

藤巻「きっと、この世界についてじゃねえのか?」

松下「神についてかもしれん」

関根「『神は何処だ?』って聞いてるんですかね?」

ひさ子「それで天使が『貴方に教える義務はないわ』と言って」

入江「範馬さんが『俺が危険すぎるというのが、教えられない理由か?』と言って」

岩沢「天使が『そう、貴方が危険すぎるのがいけないの』と言って」

ひさ子「範馬さんが『俺を危険だと理解ってるなら、なおさら教えるべきだぜ』と言って、天使を睨らむ」

松下「あの天使に危険すぎると言わせるとは…」

大山「な、何て人なんだ…」

遊佐「今まで以上に尊敬します…」

椎名「やはり、天使に勝てるのは範馬さんしかいない…」

天使「ごちそうさま」

勇次郎「貴様も行儀がいい」

天使「貴方が会釈したのを見たら、あたしも何かしないといけないかと思って」

勇次郎「流石は生徒会長か、周りの見本になろうとしている」

天使「でも、麻婆豆腐を食べるのは見本にしないでほしいわ」

勇次郎「辛過ぎて、他の連中には荷が重すぎるか?」

天使「いいえ、みんなが麻婆豆腐を注文して、売り切れになったら、あたしが食べれないから」

勇次郎「エフッ、エフッ、エフッ」

天使「その気持ち悪い笑い方やめて」

勇次郎「俺を笑わせた貴様が悪い」

天使「………」

天使「食べ終わったから、もう行くわ」

勇次郎「食後にすぐ動くつもりか?」

天使「色々と忙しいから」

勇次郎「せいぜい、努力しろ」

天使「………」

松下「おい!天使が席を離れたぞ!」

高松「範馬さんは座ったままですね」

藤巻「でもよ、範馬さん笑ってたな」

遊佐「天使の前で笑えるなんて、私達には出来ないです」

TK「He is a wonderful man」

椎名「ここで戦いが始まるかと思ったが、天使は戦わずに何処かに行ったな」

大山「一体、天使と何があったんだろう?」

関根「範馬さんが『最後の晩餐も終わったな、なら貴様も終わりな』と言って」

ひさ子「天使が『出来れば、今は見逃してほしいわ』と言って」

入江「範馬さんが『天使が人に臆するのかい?』と言って」

岩沢「天使が『貴方の前では神すらも臆するわ』と言って」

ひさ子「範馬さんが『いいぜ、人が天使に慈悲を与えてやるぜ』と言って、天使を見逃す」

ガルデモ以外の戦線メンバー全員「………」

高松「私は今まで、こんなに心と身体が熱くなった事はなかったです」

大山「人が天使に慈悲を与える、こんな凄い事はないよ」

藤巻「範馬さんに出会えて本当によかったぜ」

松下「俺は範馬さんに稽古をつけてもらった時間を一生の宝にする」

椎名「いや、範馬さんと過した全ての時間を宝にするべきだ」

TK「I was able to make very wonderful memories」

遊佐「範馬さんは本当の強さと優しさを持ってるんですね」

岩沢「お、おい、どうするんだよ、これ…」

ひさ子「あたし達、適当に言ってただけなのに…」

関根「それにあたし達、範馬さんの事、よく知らないし…」

入江「皆さん、信じちゃってますね…」

野田「何当たり前の事を言ってるんだ?」

大山「あ、野田君が帰ってきた」

野田「範馬さんが最高にカッコいいと今頃気付くなんて、あまりにも遅すぎるぞ」

関根「あっ、唐揚げ定食買ってきたんですね、唐揚げ1個貰いますね」

野田「ぬおおおおおお!!」

入江「範馬さんが体育館を好きな時に使えと言ってくれました!」

関根「これで体育館ライブがいつでも出来ますよ!」

ひさ子「範馬さんのお墨付きだから先生も手が出せない!」

岩沢「校則違反も適用されないから天使も手が出せない!」

関根「いつもクールな岩沢先輩もホットですね!」

岩沢「ホットで悪いか?」

入江「ぜんぜん、悪くないです!」

関根「さっきから、あたし達、テンション上がりまくりです!」

ひさ子「上がっちゃ悪いか?」

入江「ぜんぜん、悪くないです!」

関根「範馬さんにはとても感謝しないといけません!」

ひさ子「そうだな!」

関根「ありがとおおお!範馬さん!!」

岩沢「この感謝の気持ちを歌にするぞおおお!!」

ひさ子「頼むぞ!岩沢!!」

岩沢「じゃあ、ゆりに陽動関係なしの学園公認…いや、範馬勇次郎公認体育館ライブの交渉に行くぞ!」

岩沢以外のガルデモメンバー全員「お~!!」

ゆり「は?ガルデモのライブはこれからも校則違反の大食堂ゲリラライブばっかりよ」

ガルデモメンバー全員「………」

関根「そ、そんなあ…」

入江「ううっ、あんまりです…」

ひさ子「バンドを苛める、悪役社長がいる…」

岩沢「この悲しみを歌にしよう…そしてみんなに聞いてもらおう…」

ゆり「なんてね、冗談よ」

ガルデモ全員「えっ?」

ゆり「天使との戦いは今夜終わるわ」

ゆり「だから、明日以降なら、範馬勇次郎公認体育館ライブをやっていいわ」

関根「やったああああああ!!」

入江「ありがとうございます!!」

ひさ子「誰だよ、悪役社長だなんていったのは?」

関根「ひさ子さんですよ…」

岩沢「ゆり、今夜で天使との戦いが終わるっていうのは?」

ゆり「範馬さんが今夜、天使との戦いを終わらせてくれるわ」

関根「範馬さんは天使に勝てるくらい強いんですか!?」

ひさ子「たしかに強そうだったけど、そこまで強かったなんて…」

入江「まさか、大食堂であたし達が適当に言っていた事は全て正解だったのかも…」

岩沢「範馬さんが今夜終わらせてくれる…」

ゆり「ガルデモには、いつものゲリラライブで天使をおびき寄せてもらわないといけないわ」

ひさ子「おう、任せろ!」

関根「思いっきり、やりますよ!」

入江「がんばります!」

岩沢「最高のライブにするよ!」

ゆり「みんな!今夜は頼んだわよ!」

岩沢「ああ!」

岩沢(今夜、一つの道が役目を終えるかもしれない…)

岩沢(あたし達の今まで歩んで来た道は、後戻りが出来ない一方通行の道だった…)

岩沢(道の果てに着いてしまえば、道はその役目を終える…)

岩沢(そして、あたし達は新しい道を歩んで行く…)

岩沢(あたし達に新しい道は開けるだろうか?開いた道は幸せに続いているだろうか?)

直井(立華さんと範馬勇次郎が一緒に食事をする場面に遭遇するとは…)

直井(一体、何を話していたんだ?)

直井(立華さんは食べ終わるとすぐに席を離れた)

直井(まるで逃げるかのように)

直井(あの立華さんを逃亡させるなんて、範馬勇次郎は只者じゃないな)

直井(なら神である僕が彼を操り、立華さんを排除させる)

直井(僕の催眠術こそ神の力だ)

直井(学園の大切なお客様でも構うものか、そんなもの神の遥か下の存在だ)

直井(そんな存在が、神の為に働けるなど、こんなに光栄な事はないんだ)

※立華さん 天使の事

※天使が席を離れたのは本当に忙しかったから

勇次郎「………」

椎名「範馬さん」

勇次郎「椎名、貴様は気付いたか」

大山「範馬さん、どうしたの?」

高松「何か問題でも?」

勇次郎「いや、身の程知らずなハエがうろついていやがるだけだ」

遊佐「えっ、ハエですか?」

TK「Fly?」

野田「どこです?そんなヤツは俺が叩き落します!」

藤巻「ハルバードで叩き落とす気かよ!」

遊佐「振り回さないで下さい、危ないです」

松下「範馬さんなら箸で掴める」

勇次郎「松下五段、理解ってるじゃねえか」

高松「ハエは見当たりませんね、もう別の場所に飛んで行ったのでしょう」

野田「チッ、逃げやがったか」

勇次郎「………」

大山「あれっ、範馬さん、何処に行くの?」

勇次郎「やる事が出来た」

椎名(ハエ退治ですね…)

野田「なら、俺もお手伝いします!」

大山「うん、僕もだよ!」

椎名「及ばずながら、私も助太刀します」

高松「やる事が何かは分かりませんが、この私にお任せください」

遊佐「私でよければ、何でも仰って下さい」

TK「We help with that!」

藤巻「そうだぜ、一緒にやろうぜ!」

松下「みんなでやりましょう!」

勇次郎「これは大勢でヤルもんじゃねえ、それにすぐに終わる」

勇次郎「貴様等は先に行け」

野田「そ、そうですか…」

松下「範馬さんがそう言われるのなら…」

高松「では、先に範馬さんの部屋に行かせていただきます」

藤巻「じゃあ、先に行って待ってるからよ」

大山「みんなで待ってるから、早く帰って来てね」

遊佐「部屋でお待ちしています」

TK「I'm waiting for you to come home」

松下「人手が必要になったら、呼んで下さい」

椎名「その時は私達もお手伝いします」

野田「範馬さんの部屋を散らかすヤツがいたら、俺が死なせます」

椎名「そんなあさはかなヤツはいない」

勇次郎「じゃあな」

直井(範馬勇次郎が一人になった)

直井(何処に行くつもりだ?)

直井(確か範馬勇次郎は学園のいかなる場所でも時間を問わず出入り自由、あらゆる施設の使用も自由)

直井(だから、何処にでも行けるんだったな)

直井(範馬勇次郎、一体何者だ?)

直井(考えてみれば、この学園に大切なお客様なんて初めての事だ)

直井(先生達のあの態度、まるで客を持て成しているんじゃなく、神を崇めているような態度だった)

直井(まさか、範馬勇次郎はこの世界の神なのか?)

直井(そんなハズはない、神はこの僕だ)

直井(人を操れる力、神の力を持つ僕だ)

直井(タイミングを見て、範馬勇次郎を催眠術で操ってやる)

日向「あっ、範馬さん、こんにちは」

音無「これから、何処に行くんですか?」

勇次郎「屋上だ」

日向「俺達も一緒に行ってもいいですか?」

勇次郎「来るな、やる事がある」

音無「やる事?」

日向「おっ、あれは」

日向「お~い!ションベンタレ~!ションベンタレ~!」

ユイ「ぬおおおおおお!」

ユイ「誰がションベンタレじゃあああ!!」

ボキッ

日向「ぐおっ」

音無「昨日と同じように元気だな…」

日向「いきなり蹴るな!ションベンタレ!!」

ユイ「大きい声で言うな!ゴルゥラアアア!!」

勇次郎「昨日の小娘か」

ユイ「あっ」

勇次郎「フン」

ユイ「………」

ユイ「あの、範馬さん…」

勇次郎「どうした?」

ユイ「あたし、人前で漏らしちゃって、もう完全に終わりです…」

勇次郎「貴様は俺に挑んだ時点で既に終わっていた、それが気付かねえ程のアホウとはな」

ユイ「あたしが喧嘩を売らなければ、こんな事にならなかったのは分かっています」

ユイ「でも辛くて悲しくて、どうしようもないんです」

勇次郎「日向に不名誉なあだ名で呼ばれりゃなあ」

日向「えっ、俺に原因が?」

音無「無いとは言えないだろ…」

勇次郎「もう嫁げないと考えているのか?」

ユイ「それは最初から無理です…」

ユイ「誰かと結婚して幸せになるなんて、あたしには無理なんです!」

勇次郎「………」

勇次郎「日向!」

日向「は、はい!」

勇次郎「この小娘と結婚してやれ!!」

日向「は!?」

ユイ「へっ?」

音無(な、何言い出すんだよ、この人…)

勇次郎「日向、よもや…」

日向「うっ、結婚したいです…」

音無(範馬さんに、イヤなんて言えるヤツはいないよな…)

勇次郎「そういうワケだ小娘、せいぜい幸せになりな」

音無(何て恐ろしい力づくの解決方法なんだ…)

音無(史上最強のお悩み相談員、範馬勇次郎…こんな重苦しい問題を一瞬で解決した…)

ユイ「………」

日向「し、幸せになろうぜ…」

ユイ「女の子を下品なあだ名で呼ぶヤツはお断りじゃああああああ!!」

日向「漏らしたヤツに、上品なあだ名が思いつくか!」

ユイ「考えて下さいよ!」

日向「じゃあ、オシッ子は?」

ユイ「おんどりゃああああああ!!」

勇次郎「さっそく、夫婦喧嘩してやがるぜ」

音無(おかしい…結婚のエピソードなのに感動が全く存在しない…)

音無(この場面を見て、涙を流せるヤツがいたら、俺はソイツを尊敬する…)

日向「じゃあ、何て呼べばいいんだよ!」

ユイ「ユイにゃんと呼んで下さい」

日向「ユイ尿の方が似合ってるぜ」

ユイ「うおりゃあああ!」

日向「ぬおりゃあああ!」

音無「プロレスに突入した…」

音無「でも、満たされたら消えるんじゃなかったですか?」

勇次郎「あれが満たされた顔に見えるか?」

音無「見えません…」

音無(まあ、さっきより元気になったみたいだけどな)

勇次郎「結婚生活に慣れりゃあ、あの小娘も満たされるだろうぜ」

勇次郎「満たされた後、消えるか消えないかは小娘次第だ」

音無「あっ、範馬さん」

日向「いけねえ、置いて行かれちまうぜ」

ユイ「範馬さん、待ってくださいよ」

直井(な、何なんだ…範馬勇次郎が一人になったと思ったら、三人やって来て…)

直井(その内の二人を結婚させた…)

直井(『パン買って来い』『書類を作成しろ』とはワケが違うんだぞ)

直井(僕の催眠術でも結婚させるなんて不可能だ)

直井(催眠術で操り、意思を持たない二人を結婚させても、それは結婚とは言えない)

直井(しかも、範馬勇次郎に力を使った様子はなかった)

直井(ただ『この小娘と結婚してやれ!!』と言っただけだ)

直井(あの二人は操られていない、意思を持って行動している)

直井(女の方はゴチャゴチャとほざいていたが、明らかに嬉しそうな顔をしていた)

直井(こんな事は絶対にありえない、もし出来るヤツがいるとしたら、紛れも無く神だ)

直井(そうか…神なのか…範馬勇次郎はこの世界の神なのか…)

直井(天上学園は神を迎えたんだ…)

直井(大食堂で立華さんが逃げるように席を離れたのは、範馬勇次郎が神だったから)

直井(神の機嫌を損ねて、席にはいられなくなったのか)

直井(この世界は神を決める世界ではなかったんだ、神は既に存在していたんだ)

直井(なんという事だ、僕は神を操ろうとしたのか)

直井(いや、神相手に僕の催眠術は通じなかったハズだ)

直井(これからは神に必要な時はお手伝いさせていただこう、それが僕の神への償いだ)

勇次郎「………」

音無「範馬さん?」

日向「急に止まってどうしたんです?」

ユイ「やっぱり、着いて来たらダメでしたか?」

勇次郎(ハエがいなくなりやがった)

勇次郎(屋上に誘き寄せて遊んでやるつもりだったが、臆病風に敗れたか)

音無「すいません、来るなと言われたのに…」

勇次郎「もういい、必要なくなった」

日向「へっ?」

音無「屋上には行かないんですか?」

勇次郎「部屋に戻るぜ、俺を待っていやがる連中もいるしな」

ユイ「あのう、あたし達も部屋に行っていいですか?」

日向「お、おい」

勇次郎「勝手にしろ」

ユイ「ここが範馬さんの部屋ですね」

日向「こら!部屋主より先に入ろうとするな!」

ユイ「え~!」

音無「すっかり、仲いいな」

ガチャッ

勇次郎「帰ったぜ」

戦線メンバー八人「お帰りなさい!!」

高松「おや?日向さん達もご一緒でしたか」

大山「日向君達も範馬さんの部屋に遊びに来たんだね」

日向「まあな」

音無「いきなりで悪いとは思ったんだけどな」

TK「I welcome you guys」

野田「まあ、範馬さんの部屋に来たいという気持ちは分かるがな」

遊佐「お菓子と飲み物は余分にありますから問題ありません」

藤巻「お前は昨日のショ…」

ユイ「言うな!」

松下「範馬さんの部屋が広くて助かったな」

遊佐「ここは前にゆりっぺさんが作らせたVIPルームですから」

野田「ゆりっぺが作らせただけあって、いい部屋だ」

野田「まさしく、範馬さんに相応しい」

椎名「範馬さんのやる事は終わられたようですね」

勇次郎「ハエが臆病風に敗れた所為で始まりすらしなかったぜ」

椎名(やはり、ハエなど、範馬さんの敵ではなかったか)

遊佐「範馬さんが戻られたので、お菓子と飲み物を用意します」

遊佐「これだけの人数ですから、少し時間が掛かると思いますがお待ち下さい」

ユイ「じゃあ、あたしも手伝います!」

野田「おい、音無」

音無「何だよ?」

野田「貴様は範馬さんをどう思っている?」

音無「とんでもなく凄い人だよ…」

野田「では、ゆりっぺと比べたらどうだ?」

音無「範馬さん」

野田「即答か」

音無「怒らないのか?」

野田「貴様も俺を変だとは思わないのか?」

音無「それは前から思ってる」

野田「何だと!!」

音無「自分から言ったんだろ!」

野田「そうだった」

野田「変だというのは、ゆりっぺ一筋の俺が範馬さんに傾いているって事に対してだ」

野田「ここにいるヤツは、みんな範馬さんに憧れて慕っている」

野田「貴様も見ただろ?俺の獲物をあんな風に変えたのを」

音無「あれは驚いた、曲げるなんてレベルじゃなかったな」

野田「あのハルバードはそう簡単に曲がるモノじゃない、少し曲げるのにさえ時間が掛かるだろうな」

野田「それを、あんな風にするなど考えられん」

野田「しかも腕の動く早さだ」

野田「ハルバードを持って形を変えている時の腕の速さが、何も持たずに腕を動かしている時の速さと全く同じだぞ」

野田「こんな事は絶対にありえない、絶対にだ」

音無「でも、実際にあったんだ、夢じゃない」

野田「俺は今まで、こんな特大衝撃を味わった事などなかった」

音無「それが、範馬さんに傾いている理由か?」

野田「まだ理由はある、いや、ここからが本当の理由だな」

野田「俺が範馬さんにハルバードの形を変えられて、負けを認めたのは覚えてるか?」

音無「ああ、お前が素直に負けを認めて驚いた」

野田「あんなのを見せられて負けを認めないヤツがいると思うか?」

音無「いないな…」

野田「その後、負けを認めた俺を範馬さんは攻撃しなかった」

音無「いや、負けを認めたら、普通しないだろ?」

野田「俺はされると思ったんだ」

野田「範馬さんがハルバードの形を変えている最中に思ってしまった」

野田「ハルバードの次は俺が形を変えられるとな」

野田「俺は範馬さんに圧倒的な暴力と恐怖を感じ、もう終わりだと思った」

野田「負けを認めても見逃してもらえない、だが俺には負けを認める以外の事は出来なかったんだ」

野田「だが、負けを認めた俺を範馬さんは攻撃せず許してくれた」

野田「まさか、範馬さんが敵を許す寛大さを持っているなんて思いもしなかった」

野田「圧倒的な暴力と恐怖を感じさせる範馬さんが、敵を許す寛大さを持っている」

野田「俺はそんな範馬さんにどうしようもなく憧れてしまったんだ」

野田「最高にカッコいいと認めてしまったんだ」

音無(これはもしかして、アレだろうか?)

音無(不良が雨の日に捨て猫を拾ったら、実は物凄く良い人なんじゃないかと勘違いされて)

音無(急に周りから慕われるようになる、アレの究極版と考えたらいいのだろうか?)

音無「なんとなく、分かったよ」

音無「だったら、何で範馬さんに負けてから少しの間、行動不能になったんだ?」

野田「あれは行動不能になったんじゃない、考え事をしていただけだ」

野田「これから範馬さんの事を何と呼べばいいか考えていたんだ」

野田「考えた結果『兄貴』になったが、範馬さんに断られてしまった」

音無「そうなのか…」

音無「でも、どうして、こんな話を俺にしたんだ?」

野田「純粋に貴様が範馬さんをどう思っているか、聞きたかっただけだ」

野田「もっと沢山のヤツに範馬さんの凄さを知ってもらいたいからな」

野田「ゆりっぺはもちろんだが、範馬さんを凄さを認めているヤツとはうまくやっていける」

野田「範馬さんが認められているのが、まるで自分のように凄く嬉しいからな」

音無「じゃあ、俺とは?」

野田「範馬さんをとんでもなく凄いと認めている貴様とはうまくやっていけると確信した」

野田「音無、かなり遅いが俺も貴様を戦線の仲間と認めるぞ」

音無「野田…」

野田「音無、これからよろしくな!」

音無「こちらこそな」

遊佐「皆さん、お菓子と飲み物の用意が出来ました」

ユイ「お待たせしました!」

椎名「どうやら、来たようだ」

TK「It's finally ready!」

大山「うわあ、沢山あるね」

高松「まあ、余りはしないと思いますが」

藤巻「それじゃあ、食おうぜ」

松下「食うのは飲み物を配ってからだ」

日向「種類はコーラだけだから取り合いにはならねえな」

音無「種類が複数あったら、揉めたろうな」

野田「範馬さん、どうぞ」

勇次郎「ああ」

遊佐「先を越されてしまいました…」

椎名「不覚…」

野田「ほら、音無」

音無「おう、サンキュー」

日向「はあ、先を越されちまったぜ」

ユイ「いきなり、浮気か!」

高松「どうやら、飲み物は全員に回ったようですね、では始めましょう」

コンコン

TK「There was a knock at the door」

高松「ノックがしますね、誰でしょうか?」

藤巻「何だよ、これから始めるって時によ」

大山「僕が出るよ」

ガチャッ

大山「誰?」

岩沢「やっぱり、ここに集まってたんだ」

ひさ子「練習も一段落したから、遊びに来たぜ」

関根「ちゃんとお菓子と飲み物も持って来ましたよ」

入江「あのう、入ってもいいですか?」

大山「範馬さん、ガルデモのみんなが来たよ」

勇次郎「部屋に入れろ」

大山「みんな、入ってよ」

岩沢「すまないね」

入江「お邪魔します」

ひさ子「よお、みんな」

関根「へへっ、来ました」

ユイ「あっ、岩沢さん達!」

野田「音痴バンド!ここに何しに来た!」

ひさ子「てめえ!また言いやがったな!」

岩沢「音楽のテスト0点取りそうなヤツに言われたくないね!」

関根「頭殴って!さらにアホにするぞ!」

入江「君がさらにアホになるまで、殴るのやめない!」

ユイ「コラアアア!!ガルデモに何言っとんじゃあああ!!」

野田「人前で漏らして、社会的に終わったヤツは黙ってろ!」

大山(野田君、『社会的』って言葉、知ってたんだ…)

ユイ「終わっとらんわ!あたしの戦いはまだ始まったばかりじゃあああ!!」

日向「それ、打ち切りマンガの最終回で最終ページに出てくるセリフだからな」

岩沢「ユイ、ちょっと黙ってろ」

野田「貴様等に食われた唐揚げの恨み!忘れていないぞ!」

関根「唐揚げ1個食べただけじゃないですか!」

野田「貴様は2個食っただろうが!」

関根「むむむっ」

野田「ぬぬぬっ」

野田「次を見ているがいい、貴様等のハンバーグ定食のハンバーグを食ってやる」

ひさ子「な、何てヤツだ!皿の上にあるハンバーグは1個だけなんだぞ!」

ひさ子「それを食われたら、ハンバーグ定食とは言えなくなるじゃないか!」

野田「これは当然のリベンジだ!」

大山(野田君、『復讐』の英語を知ってたんだ…)

関根「じゃあ、あたし達がチャーハンを食べていたら、どうします?」

野田「えっ?」

入江「チャーハンにハンバーグは付いていませんよ」

野田「………」

野田「なら、チャーハンの具の卵だけを食ってやる」

ガルデモメンバー全員「………」

岩沢「や、やめてくれ、チャーハンの具の卵を食べないでくれ」

ひさ子「ソレを食われたら、チャーハンを食ってる気がしなくなる」

関根「何て、恐ろしい事をしようとするんです」

入江「この人怖いです!助けてア○パンマン!」

野田「はっははは、もう遅いぞ、俺を怒らせた貴様等が悪いんだ」

ガルデモメンバー全員「うううっ…」

岩沢(チャーハンの具の卵だけを奪って食べるなんて、無理に決まってるじゃないか)

ひさ子(チャーハンの中から卵を取り除く作業だけでも大変なのにさ)

関根(こんな事に気付かないなんて、やっぱりアホです)

入江(これくらい、バ○キンマンでも気付きますよ)

高松「もう、いいですか?」

野田「ああ、今はこれでいい、コイツ等のチャーハンの具の卵を食うのが楽しみだ」

ガルデモメンバー全員(無理だと分かった時の顔が楽しみだ)

高松(野田さん、その時は永遠に訪れません)

遊佐「ではガルデモの皆さんの飲み物を用意します」

入江「すいません、お願いします」

岩沢「ゆり以外は揃ってるね」

日向「ゆりっぺか、そういやいないな」

音無「今頃、気付いたのかよ…」

藤巻「そのうち、ひょっこり現れそうだぜ」

松下「そうだな」

関根「じゃあ、お菓子、ここに置きます」

入江「何だか、さらに増やしちゃいましたね」

ひさ子「余ったら、その時さ」

岩沢「その気になれば、コイツ等なら食べられるよ」

日向「おい、頑張って食えよ」

ユイ「何で、あたしに言うんですか!」

ひさ子「範馬さん、改めて礼を言わせてもらうよ」

関根「ありがとうございます」

入江「おかげで体育館ライブが出来ます」

岩沢「ゆりが体育館ライブは明日以降なら、いつでもやっていいんだってさ」

勇次郎「そうか」

高松「それはよかったですね!」

ユイ「おめでとうございます!」

岩沢「今度、お礼に範馬さんの為だけのライブを開くよ」

ひさ子「最高の曲を聞かせるから、楽しみにしといて」

関根「あたし達、感謝の気持ちを込めて、頑張りますから」

入江「お客さんが範馬さんだけのライブです、期待しておいて下さいね」

勇次郎「退屈な時に聴いてやる」

岩沢「ああ、それでいいよ」

高松「体育館ライブが明日以降という事は、今夜はいつものゲリラライブですか?」

岩沢「ああ、天使を誘き寄せる為にね」

音無「天使か…」

音無(あのトルネードの時、俺達は天使に時間稼ぎしか出来なかった)

音無(その後のギルド降下作戦の時、俺達は天使が原因でギルドを破棄せざるを得なかった)

音無(コイツ等は、あんなヤツと長い間戦っているんだ)

音無(その長い戦いが、もうすぐ終わるかもしれない)

音無(範馬さんが天使に勝てば終わるんだ)

コンコン

藤巻「また、誰か来たみたいだぜ」

音無「もしかして…」

ユリ「は~い!今度は私が出ます!」

ガチャッ

ユイ「誰ですか?」

ゆり「貴方は昨日のショ…」

ユイ「お願いですから忘れて下さい…」

ユイ「範馬さん、ゆりっぺ先輩が来ました!」

範馬「そうか、入れろ」

ユイ「ゆりっぺ先輩、入って下さい!」

ゆり「あら、全員いるのね」

野田「ゆりっぺか!」

藤巻「おっ、やっぱり来たな」

日向「待ってたぜ、ゆりっぺ」

音無「お前、ゆりがこの部屋にいないって気付かなかっただろ」

遊佐「ゆりっぺさんの飲み物も用意します」

ゆり「ありがとう」

高松「今回の作戦会議はこちらでされるのですか?」

ゆり「違うわよ、ただ遊びに来ただけよ」

ゆり「一人じゃ、つまんないしね」

ゆり「この部屋に何人かは来てると思ったけど、まさか全員いるとは思わなかったわ」

高松「いつの間にか、こうなっていました」

ゆり「範馬さん、このVIPルームはどう?」

勇次郎「まあまあな部屋だ」

ゆり「そう言ってる割りには機嫌は悪そうじゃないけど?」

勇次郎「フン」

野田「ゆりっぺ、今夜の…」

ゆり「待った!今はオペレーションの話はやめて楽しみましょ!」

ゆり「範馬さん、それでいいかしら?」

勇次郎「天使とヤルまでの退屈しのぎだ、余興に付き合ってやる」

ゆり「そうね、これだけメンバーが揃ってるなら、アレをやってもらおうかしら」

高松「アレとは何ですか?」

日向「いつもと同じで、悪い予感しかしねえぜ…」

ゆり「いきなりだけど、みんなにかくし芸を披露してもらうわよ!」

戦線メンバー全員「ええええええっ!!」

ゆり「クジ引きを作るから、ちょっと待っててね」

藤巻「ゆりっぺ、急がずにゆっくり作ってくれていいんだぜ」

松下「そうだぞ、その分、かくし芸を披露する時間が減るからな」

ゆり「それもそうね、なら…」

ゆり「スピードアップ!!」

日向「余計な事言うんじゃねえよ!スピードアップしたじゃねえか!」

TK「The situation gets worse and worse」

音無(かくし芸なんて、どうすりゃいいんだ…)

椎名「よい機会だ、私のとっておきのかくし芸を見せてやろう」

大山「いいよね…かくし芸持ってる人は…」

岩沢「この部屋に楽器や機材を運ぶのは、手間が掛かるから無理ね」

岩沢「よし、アカペラで1曲歌うか」

ひさ子「汚いぞ!岩沢!」

関根「ずるいですよ!岩沢先輩!」

入江「あたし達を見捨てるんですか!?」

ユイ「フフフ、あたしも歌いますよ」

ゆり「いい忘れたけど、音楽関係はかくし芸と認めないわよ」

岩沢とユイ「ええええええっ!!」

ひさ子「う、うわあああん…ド、ド○えもん…」

岩沢「どうした、の○太?音楽の授業でヘマでもしたのか?」

ひさ子「違うって…じゃなかった、違うよ、ジ○イアンが苛めるんだよ!」

岩沢「だったら、ジ○イアンを見返す為にあたしとバンド組まないか?」

ひさ子「組まねえよ!ド○えもんはそんなストーリーじゃねえよ!!」

岩沢「組まないのか、残念だな」

ひさ子「いつもみたいに秘密道具を出して、僕を助けてよ!」

岩沢「なあ、いつもみたいにって、流石にマンネリじゃないか?」

ひさ子「もう何年も同じ事やってんだ…じゃなかった、やってるんだよ、今更誰もマンネリなんて言わないよ」

岩沢「そうか?なら、タ○コプター!」

ひさ子「タ○コプターで僕のイジメ問題をどうやって解決するんだよ?」

岩沢「ダメか?じゃあ、ど○でもドア!」

ひさ子「それもダメだよ、他に何かないの?」

岩沢「ない」

ひさ子「へっ?」

ひさ子「………」

岩沢「………」

ひさ子「ふざけんなよ!どこの世界に所持秘密道具が二つだけのド○えもんがいるんだよ!!」

岩沢「だって、あたし、ド○えもんの秘密道具、この二つしか知らないから」

ひさ子「マ、マジ?」

岩沢「マジ」

ひさ子「もういいよ、僕の力でイジメ問題を解決するから」

岩沢「ギターならあるけど?」

ひさ子「いらねえよ!」

関根「おい、の○太、お前…」

ひさ子「誰に口聞いてんだ!ああん!」

関根「やっぱりですか!やっぱり、この展開ですか!」

関根「ひさ子先輩がの○太をやるのが決まった時から、何となく予想は出来ていたんですよ!」

入江「ひさ…違った、の、の○太…や、やめろよ…」

ひさ子「ス○夫は黙ってな!」

入江「はい…」

関根「スイマセン!スイマセン!もう苛めませんから、許して下さい!!」

ひさ子「このあたしが、いつお前に苛められたんだよ!」

ひさ子「あたしはそんなに弱くねえよ!」

関根「苛めてません!苛めてません!苛められてるのはあたしです!!」

ひさ子「いつあたしが苛めたんだよ!ああん!」

関根「ひよええええええ!!」

ユイ「あのう、いつになったら、あたしのお風呂シーンになるんですか?」

ユイ「もちろん、脱ぐ真似だけで実際には脱ぎませんけど」

岩沢「やっぱり、アドリブだけで劇をやるのは無理があったね」

ひさ子「岩沢が秘密道具を二つしか知らなかったのが、劇がおかしくなった原因だからな」

岩沢「なあ、ひさ子、の○太の口調と性格、おかしくなかったか?」

ひさ子「岩沢に言われたくねえよ!岩沢のアレのどこがド○えもんだよ!!」

ひさ子「クジには『岩沢まさみ』って書いてあったんだからな!」

ひさ子「『ガルデモ』って書いてたんじゃないんだから、あたし達もやる必要なんてなかったんだからな!」

岩沢「感謝してるよ、ありがとな」

勇次郎「………」

ゆり「結構よかったわよ、さっきの椎名さんの竹箒を指先の一点で…とかよりずっといいわ」

椎名「面目ない…」

ゆり「次は誰になるかしらね、かくし芸をするのは」

大山「ゆりっぺがまたクジを引こうとしている…」

高松「次の犠牲者は誰でしょうか…」

ゆり「次は…ええっと…」

ゆり「範馬勇次郎…」

戦線メンバー全員「………」

勇次郎「………」

ゆり「ご、ごめんなさい、うっかり、範馬さんのクジを作ってしまったわ」

ゆり(おそらく、あのスピードアップが原因ね…)

ゆり「もちろん範馬さんはやらなくていいわ」

勇次郎「いいぜ」

ゆり「えっ?」

勇次郎「この俺に未だかつてないド○えもんを楽しませた褒美だ」

勇次郎「俺の道化の真似事をその目に焼き付けるがいい」

戦線メンバー全員「ええええええっ!!」

野田(範馬さんがかくし芸!俺は期待ぜずにはいられない!)

藤巻(範馬さんは一体どんな芸をやるんだ…全く予想が出来ねえぜ…)

勇次郎「たいしたモノじゃねえが、始めるぜ」

勇次郎「………」

ス…

大山「これって、まさか、パントタイム!?」

松下「範馬さんが料理をしているのがハッキリと分かる、いや、見える…」

高松「み、見えます、私には見えます、豆腐、ネギ、生姜、ニンニクがまな板の上で切られていくのが…」

野田「現実に料理をしているのと、パントタイムの区別がつかないぞ…」

TK「I have never seen something like that before…」

藤巻「まさか、こんなスゲエかくし芸だったなんてよ」

遊佐「これをかくし芸と呼ぶにはあまりにも失礼です」

椎名「そうだ、かくし芸ではなく、伝統芸能と呼ぶべきだ」

入江「鍋に油を大さじ一杯入れてから、ニンニク、生姜、豚ひき肉を鍋に入れて炒めていますね」

関根「豆板醤、甜面醤、鶏がらスープ、豆腐、ネギ、砂糖、醤油、こしょう、水溶き片栗粉、ゴマ油、これって麻婆豆腐…」

ひさ子「材料、鍋、炒める炎、全てが本当に存在しているかようだ…」

ユイ「それだけじゃなく、匂いまで漂っていますよ…」

岩沢「見るだけじゃ我慢できないな、この麻婆豆腐を食べてみたい」

ゆり「これを名付けるなら、エア麻婆豆腐」

ゆり「戦線創設から現在までの間で、これほど驚かされた事はなかったわ」

日向「ああ、ここが死後の世界だって事が、たいした事ないと思えるくらいにスゲエぜ」

音無「この範馬さんのかくし芸の後じゃあ、誰がどんなかくし芸をしても、見向きもされないぞ」

勇次郎「出来たぞ」

戦線メンバー全員「………」

ゆり「素晴らしかったわ!戦線メンバーも見習って欲しいくらいのかくし芸だったわ!!」

日向「見習っても、誰もあんなの出来ないって…」

ゆり「範馬さん、そのエア麻婆豆腐を食べたいんだけどいいかしら?」

藤巻「よくねえぜ!ゆりっぺ!」

遊佐「ゆりっぺさん、それは認められません」

ゆり「何よ、これはリーダーとして、当然の権利よ」

高松「これは明らかな職権乱用です!断固として抗議します!」

椎名「今世紀最大のあさはかなり!」

TK「That is too selfish of you」

松下「もしかしたら、俺の好物が変わるかもしれないんだ、これは譲れんぞ」

大山「僕も範馬さんのエア麻婆豆腐が食べたいよ」

野田「すまない、俺は初めて、ゆりっぺに逆らう、俺も範馬さんのエア麻婆豆腐を食べたいんだ」

岩沢「ゆりの返答次第で、ガルデモは無期のストライキに突入するよ」

岩沢以外のガルデモメンバー全員「その通り!!」

ユイ「あたしも食べたいんじゃあ!コオラアアア!!」

音無(コイツ等がゆりに逆らうなんて…だけど、気持ちは分かる…)

音無「ゆり、俺も他のヤツと一緒だ、そのエア麻婆豆腐を食べたい」

ゆり「………」

ゆり「先食必勝!」

日向「おい!」

コンコン

ゆり「誰よ、こんな時に!」

ゆり「日向君、見てきて」

日向「何で、俺が見に行かないといけないんだよ」

ゆり「だって、貴方は範馬さんのエア麻婆豆腐を食べたいとは言わなかったし」

日向「俺も食いたいさ、言おうとしたら、ゆりっぺが先食必勝なんて言い出すから」

ゆり「いいから、見てきて」

日向「チッ、分かったよ」

ガチャッ

天使「………」

日向「げええええええっ!!」

野田「どうした!誰が来たんだ!?」

大山「あああっ!!」

高松「て、天使!」

ゆり「何ですって!?どうしてここが分かったの!?」

ゆり(あっ…そう言えば、このVIPルームを作ってる時に天使が作業音が迷惑だと注意しに来たわね…)

天使「範馬勇次郎さんはここにいる?会いに来たの」

勇次郎「………」

勇次郎「入れ」

ゆり「は、範馬さん!?」

藤巻「天使を部屋に入れるのかよ!?」

遊佐「ここの部屋主は範馬さんです、私達がどうこう言うべきではありません」

天使「お邪魔するわ」

関根「天使が入って来た!どうしたらいいんですか!?」

岩沢「まさか、向こうから来るなんて、これは完全に意表を突かれたね」

ひさ子「天使のヤツ、何をやろうってんだ?」

入江「これから何が起こるのか、あたしには全く予想出来ないです」

ユイ「あたしはもう漏らしませんよ、多分…」

大山「もしかしたら、範馬さんと戦いに来たのかもしれないよ」

高松「範馬さんと戦うように神に命じられたのかもしれませんね」

野田「おのれ天使、範馬さんに慈悲を与えてもらったクセに」

日向「コレってヤバイんじゃないか」

TK「Situation is not good」

椎名「ここは範馬さんに任せよう、天使を部屋に入れたのも考えがあってのハズ」

松下「範馬さん!」

勇次郎「全員、座って静かにしていろ!」

音無(まさか、こんな状況になるなんて)

ゆり(一体、何しに来たのよ)

勇次郎「………」

天使「………」

勇次郎「俺に何か用か?」

天使「貴方の目的は何?」

勇次郎「校長に聞いて来いと言われたか?」

天使「いいえ、あたしの意志よ、誰かに言われて、ここに来たんじゃないわ」

勇次郎「………」

勇次郎「貴様とヤリに来た」

天使「………」

天使「貴方はロ○コンだったのね…」

勇次郎「間違えるな!アホウ!」

天使「違うの?」

勇次郎「貴様に喧嘩を売りに来た」

勇次郎「これは過去に類を見ないであろう押し売りだ、貴様に拒否する術はない」

天使「そう、それが貴方の望みなの」

天使「………」

天使「買うわ」

勇次郎「まいどありっ!」

天使「でも、すぐには買えないわ、貴方の喧嘩を買うには準備を整えないといけないわ」

天使「だから、今夜まで時間が欲しいわ」

勇次郎「今、この場でヤルつもりだったが、貴様がどのような準備を整えるのか興味が湧いてきた」

勇次郎「なら、今夜19時、第二連絡橋だ」

天使「分かったわ、今夜買いに行くわ」

勇次郎「貴様の準備を楽しみにしてるぜ」

天使「………」

勇次郎「どうした?準備を整えに行かなくていいのか?」

天使「それ、麻婆豆腐ね」

勇次郎「やはり、貴様にもコレが見えていたか」

天使「この部屋に入ってから、それが気になって仕方なかったわ」

天使「貴方の喧嘩を買うのだから、サービス(麻婆豆腐)が欲しいわ」

ゆり「ちょっと!何を勝手に!」

勇次郎「貴様とヤルのを今夜まで預ける行為が、俺からの最高級のサービスだ」

天使「追加サービスをお願いしたいわ、ダメかしら?」

勇次郎「………」

勇次郎「くれてやる、存分に味わえ」

ゆり「えええっ!?」

大山「範馬さん!いいの!?」

天使「いただきます」

パクッ

天使「………」

勇次郎「貴様の舌は満たされたか?」

天使「不味いわ」

勇次郎「………」

勇次郎「貴様の舌を満たすには、辛さが不足していたか?」

天使「辛さは関係ないわ」

野田「貴様!範馬さんのエア麻婆豆腐にケチを付けるのか!」

勇次郎「野田、静かにしていろと言ったハズだ」

野田「す、すいません」

勇次郎「何が気に入らねえか、教えてくれねえか?」

天使「この麻婆豆腐は…」

ゆり(一体、何が気に入らないのよ…)

天使「豆腐の水切りをしていないわ」

勇次郎「………」

戦線メンバー全員「………」

ゆり(そう言えば、豆腐の水切りをしていなかったわね…)

天使「麻婆豆腐は豆腐のお味噌汁とは違うわ」

天使「豆腐の水切りをしていないから、かなり水っぽい味付けになっているわ」

勇次郎「………」

天使「教えたけど?」

勇次郎「フフフ…」

高松「範馬さん?」

勇次郎「いっけねえ!俺とした事がうっかりしてたぜ!」

天使「これから、麻婆豆腐を作る時は気を付けて」

勇次郎「お返しに俺も貴様に教えてやる」

天使「何を教えてくれるの?」

勇次郎「麻婆豆腐にはうっかりしたが、貴様に売る喧嘩にはうっかりは一切ない」

天使「………」

天使「そう、教えてくれて、ありがとう」

天使「じゃあ帰るわ、準備を整えないといけないから」

勇次郎「見送りはなしだ」

天使(新しいスキルを開発しないといけないわ…)

ゆり(今夜終わる…長かった天使との戦いが…)

大山「まさか天使がやってくるとは思わなかったね」

野田「大食堂で範馬さんに戦いを挑まれたのに、その目的を理解出来ていなかったとはな」

高松「範馬さんが天使に喧嘩を売る以外に目的があると考えたのかもしれません」

遊佐「範馬さんの目的の再確認は十分考えられます」

TK「There is also the possibility of God's instruction」

松下「そういえば、範馬さんは大食堂で、天使に神の事を尋ねたんだったな」

高松「天使がそれを神に報告し、神から範馬さんを探るように命じられたというワケですね」

藤巻「範馬さんは天使に勝ったら、次は神に喧嘩を売るつもりだからな」

椎名「神が警戒しても不思議はないか」

野田「だが天使との戦いは今夜終わる」

遊佐「範馬さんが終わらせてくれるんですね」

椎名「それは確実だ、範馬さんなら天使に勝てる」

松下「今まで長かったな」

※この人達は大食堂でガルデモが適当に言った事を信じきっています

ゆり「みんな、範馬さんと天使の戦いまで、後1時間よ」

野田「ついに来たか!」

日向「いよいよだな!」

勇次郎「………」

高松「それで、陽動作戦は実行されるのですか?」

ゆり「そのつもりだったけど、今回は天使が第二連絡橋に現れるのが確定してるわ」

ゆり「それに、あの時間の第二連絡橋には、ほぼ人が来ない」

日向「という事はゆりっぺ」

ゆり「そう、今回のオペレーションは、範馬さんの戦いをここにいる全員で見届ける事よ」

ゆり「名付けて、『オペレーションエンジェルエンド』」

野田「素晴らしいオペレーションだ!ゆりっぺ!」

高松「戦線始まって以来の最高のオペレーションですね!」

藤巻「かなり、いいぜ!」

日向「名前も最後の対天使作戦に相応しいぜ!」

椎名「範馬さんの戦いをこの目で見届ける!」

大山「僕、ワクワクしてきたよ!」

松下「ああ、オペレーション前にこんな気持ちになるのは初めてだ」

TK「I can hardly wait for that!」

遊佐「普段、連絡員の私も見届けられるんですね」

音無(俺が入隊してから、一番まともなオペレーションじゃないか)

ゆり「本当にごめんなさい、ガルデモのライブは中止になったわ」

岩沢「いや、いいんだ、この戦いをあたし達も見届けたい」

ひさ子「そうだな、今夜で天使との戦いが終わるんだからな」

関根「ライブを開いても、範馬さんの戦いが気になって演奏に集中出来ませんからね」

入江「あたしも範馬さんの戦いをこの目で見届けたいですから、ライブはこの次でいいです」

ユイ「ガルデモのライブが中止なのは残念ですが、このオペレーションに腕が鳴ります」

日向「俺達は見るだけだからな、腕はどうでもいいからな」

ゆり「範馬さん、みんなに期待されてるわよ」

勇次郎「気にしちゃいねえ、俺は天使とヤルだけだ」

ゆり「そう、プレッシャーにならなくてよかったわ」

ゆり「では、オペレーション、スタート!!」

遊佐「現在19時30分です」

ゆり「天使来ないわね、何やってんのよ」

勇次郎「………」

岩沢「まさか、生徒会長が遅刻するとはね」

ひさ子「時間を守れないヤツはどこに行っても成功しないよ」

大山「もしかして、道に迷ったとか?」

松下「ここは天使と何度も戦った場所だ、迷うハズはない」

TK「I do not understand a reason not to come」

高松「19時と9時(21時)を聞き間違えているのでは?」

藤巻「それがマジだったら、俺達は後1時間半も待たされるのかよ」

日向「そりゃないぜ、1時間半もカンベンしてくれよ」

音無「まだ決まったワケじゃないだろ」

ユイ「怖気づいたんじゃないんですか?」

椎名「ありえるなり」

野田「範馬さんが相手だからな」

ゆり「来ないと困るのよ!今夜の戦いを天使との最終決戦にするんだから!!」

ゆり「後5分経っても来なかったら、天使エリアまで行って、天使を連れてくるのよ!!」

関根「ええっ!誰が天使を連れてくるんですか!?」

ゆり「ジャンケンで負けたヤツよ!!」

ひさ子「ジャンケンって…」

入江「あたし、このジャンケンだけは絶対に勝ちたいです」

ゆり「ちなみにリーダーのあたしと、天使と戦う範馬さんは除外ね」

日向「やっぱりかよ!」

高松「まあ、何となく分かっていましたが」

勇次郎「来たか…」

ゆり「えっ?」

天使「………」

大山「ホントだ!天使だよ!」

藤巻「天使のヤツ、ついに来やがったか!」

関根「て、天使が来たあああ!!」

入江「ほっ、これでジャンケンせずに済みました」

ゆり「コオラアアアアアア!!」

ゆり「貴方!仮にも生徒会長なんだから、時間は守りなさいよ!!」

ゆり「なに、遅刻してんのよ!!」

天使「ごめんなさい、準備に手間取ったわ」

ゆり「前もって、1週間前から準備しておきなさいよ!!」

日向「無茶苦茶言うなよ…」

勇次郎「下がれ」

ゆり「範馬さん?」

勇次郎「………」

ゆり「………」

ゆり「範馬さん!任せたわ!」

ゆり「みんな!範馬さんの邪魔にならないように下がるのよ!」

天使「来たわ」

勇次郎「巌流島でのアイツの真似事でもするのかと思ったぜ」

天使「………」

天使「勇次郎敗れたり!」

勇次郎「………」

音無(いきなり何を言い出すんだよ…)

野田「貴様!範馬さんに向かっ…」

松下「よせ!範馬さんの邪魔になる!」

椎名「あさはかなり」

勇次郎「そう言ったからには遅刻だけでなく勝利も真似てもらうぜ」

高松「こ、この威圧感は…」

藤巻「今までのが霞むくらい、スゲエ威圧感だぜ…」

TK「It can not be compared with the now…」

岩沢「す、凄い…」

ひさ子「並の相手なら、この威圧感だけで勝てるんじゃないか…」

ユイ「昨日、この威圧感で範馬さんはあたしに勝っています」

日向「お前、漏らしただけじゃねえか!」

野田(今朝までは、この威圧感がとても恐ろしかった)

野田(だが、今は違う)

野田(この威圧感が恐怖ではなく、まるで100頭のライオンに守られているような感覚にさせてくれる)

野田(おそらく、ここにいるヤツ全員が俺と同じなハズだ)

勇次郎「見せてもらうぜ、貴様の特殊能力ってヤツを」

天使「………」

天使「ガードスキル、ハンドソニック」

天使「ガードスキル、ディレイ」

高松「こ、これは!」

大山「いきなりスキルを二つも!」

藤巻「しかも、ハンドソニックは刃が両腕にある方だぜ!」

松下「ディレイは高速回避だったな!」

日向「いつものみたいにディストーションは使わないのか?」

椎名「おそらく天使は範馬さんの攻撃をディストーションでは防げないと気付いている」

遊佐「範馬さんの攻撃は素手ですが、天使にとっては銃弾以上の脅威ですね」

野田「範馬さんなら、俺達が出来なかった事を必ずやってくれる!」

TK「I wish you the best!」

ゆり「範馬さん!お願い!天使との戦いを終わらせて!!」

勇次郎「それが貴様の特殊能力か?だが俺のやる事は変わらねえ」

勇次郎「いつも通りの力づくだ」

勇次郎「………」

天使「………」

椎名(二人共動かない…)

椎名(おそらく、天使はこう考えている)

椎名(あたしと範馬は約5メートルの間合い)

椎名(でも、あたしの速さの前では間合いなんて意味はない)

椎名(その気になれば、範馬との間合いを一瞬で詰められる)

椎名(間合いを詰めたら、ハンドソニックの2本の刃で範馬を切る)

椎名(範馬があたしの速さに反応出来るワケがない)

椎名(範馬は2本の刃をかわせず、あたしに切られる)

椎名(範馬が先手を取ったとしても、ディレイの高速回避で動くあたしは捉えられない)

椎名(範馬はあたしには絶対に勝てない)

椎名(天使、あさはかなり)

天使「さっきのは冗談よ、ちょっと言ってみたかっただけ」

天使「貴方の為に新しいスキルを開発したわ」

天使「そのスキルの開発に思ったより時間が掛かった所為で、ここに来るのが遅れてしまったわ」

勇次郎「いいのか?そんな風に言われたら期待しちまうぜ?」

椎名(この時、天使は両腕を上げて2本の刃物を交差させた)

椎名(この動作の意味は、すぐに分かった)

天使「ガードスキル、ハウリング」

ビュガガガガガガーーーーーー!!

日向「うわっ!」

ゆり「何よ、これ!」

椎名「くっ」

椎名(突然、私達を耳がおかしくなりそうな音波が襲った)

椎名(ここで私は耳を手で塞ぎ、目蓋を閉じてしまった)

椎名(おそらく、他のみんなも同じだろう)

椎名(この怪音波は約10秒続いた)

フゥッ

椎名(そして、怪音波が止んだ瞬間に…)

バシュッ!!

ボゴオオオッ!!

椎名(二つの音が順番に耳に入って来た)

椎名(この二つの音が耳に入って来れたのは、私の耳の塞ぎ方が完璧ではなかったからだろう)

椎名(私が目を開けたのは、それから約3秒後だった)

椎名「は、範馬さん?」

椎名(そこには、範馬さんだけが立っていた)

椎名(天使の姿は見当たらなかった)

ゆり「て、天使は?」

藤巻「お、おい、天使のヤツ、何処に行きやがったんだ?」

高松「一体、何があったのでしょうか?」

ユイ「アイツ、逃げやがったなあああ!!」

日向「黙ってろ!」

椎名「見ろ!あそこだ!」

大山「えっ?」

松下「天使が倒れている!?」

遊佐「ここから、15メートルは離れていますね」

入江「天使がどうして、あんな所に倒れているんでしょうか?」

TK「I don't really get it」

音無(ま、まさか…いや、そんなハズは…)

野田「は、範馬さん、天使は一体?」

勇次郎「俺はヤツをブン殴っただけだ」

戦線メンバー全員「ええええええっ!!」

ひさ子「ブン殴っただけって…」

関根「それだけで、あんなにブッ飛ぶんですか!?」

岩沢「何て言ったらいいか分からないね…」

勇次郎「あの音波に大層な自信があったみてえだが」

勇次郎「戦場での銃声や爆音に比較すれば、幼子のカスタネットを叩く音にすら劣る」

ゆり「アレが幼子のカスタネットを叩く音以下…」

椎名(天使の準備とは新しいスキルの開発だった)

椎名(おそらく、天使はあの怪音波を使って、範馬さんの隙を突こうと考えたのだろう)

椎名(怪音波で隙を突いて間合いを詰め、範馬さんを切る)

椎名(天使、あさはかなり)

椎名(天使に範馬さんの隙の有無を見分ける目などなかったのだ)

椎名(隙の有無を見分けられたのなら、攻撃はしなかったハズだ)

椎名(範馬さんに怪音波を使えば必ず怯む)

椎名(その怯んだ瞬間に攻撃すれば範馬さんは絶対にかわせない)

椎名(そう思い込んでいただけなのだ)

椎名(範馬さんと天使の身長差から、天使が範馬さんを切るには跳んで切らなければ届かない)

椎名(天使は駆けて間合い詰めたのではない、跳んで間合いを詰めたのだ)

椎名(天使は跳び蹴りならぬ跳び切りで範馬さんを切ろうとした)

椎名(だが、範馬さんに返り討ちのパンチをくらい、15メートルもブッ飛んだのだ)

椎名(あの二つの音の正体も理解出来た)

椎名(一つ目の音は天使が地を蹴って跳んだ時の音)

椎名(二つ目の音は範馬さんが天使をブン殴った時の音)

椎名(昨日、範馬さんに稽古をつけてもらっていた時に範馬さんはこう言っていた)

勇次郎『俺から隙など生れていない、生せもしない』

椎名(それは、相手が天使でも変わる事はなかったのだ)

日向「天使のヤツ、全然動かねえぞ」

大山「ここからだと分からないから、ちょっと近付いてみようか?」

ユイ「ええっ!天使に近付くんですか!?」

TK「That is dangerous」

ひさ子「でも、近付いた途端に動かれたら、かなり厄介だぜ」

松下「この戦い、もう決着は付いたんじゃないのか?」

入江「えっ、そうなんですか?」

岩沢「こういうのは、どうなったら決着なのか、あたしには分からないね」

遊佐「天使が動かない以上、決着は付いたと思います」

椎名「私も同じ意見だ、誰が見ても決着だろう」

ゆり「………」

ゆり「ボクシングでダウンしたら、何カウント数えるんだっけ?」

高松「10カウントです」

高松「それで立ち上がらなければ、KO負けです」

ゆり「ふっ」

ゆり「みんな!10カウント数えるわよ!」

関根「10カウントですか?」

ゆり「そうよ!10カウント数えて、天使が立ち上がらなかったら、範馬さんの勝ちよ!」

野田「よし!数えるぞ!!」

ゆり「10カウント数えるコツは早口言葉を言うようによ!」

藤巻「流石、ゆりっぺ!汚いぜ!」

ゆり「なんか、文句あるの?」

藤巻「あるワケねえだろ、とっとと数えようぜ!」

音無(おいおい、勝手にやっていいのかよ)

勇次郎「………」

ザッ、ザッ

ゆり「えっ、範馬さん?」

大山「範馬さんが天使に近付いていく…」

高松「一体、何をされるのでしょうか?」

松下「範馬さんにとっては、まだ決着ではないという事か」

TK「This Fight will continue」

野田「まさか天使のヤツ、死んだフリをしてるんじゃないだろうな」

遊佐「誰ですか、勝手に決着と言ったのは?」

椎名「まったくだ」

日向「それ、お前等だからな…」

藤巻「どうすんだよ、ゆりっぺ?」

ゆり「あたし達も行きましょう、距離を保ちながらね」

勇次郎「………」

天使「………」

勇次郎(ダメージの治癒速度から見て、起き上がるのは1時間後か)

スッ

藤巻「範馬さんが天使を抱き上げたぜ!」

松下「まさか、投げ技か!」

大山「それは違うと思うよ」

高松「抱き上げたまま、こちらに来られますね」

ゆり「どうなってるの?」

勇次郎「ゆり」

ゆり「は、はい」

勇次郎「コイツは後1時間は目を覚まさねえ」

ゆり「へっ?」

勇次郎「こうも簡単に決着が付くとは期待外れも甚だしい」

ゆり「決着…」

日向「て、事は…」

野田「範馬さんの勝ちだ!!」

TK「Win!!」

ゆり「よっしゃああああああ!!」

藤巻「やったぜ!範馬さん!!」

野田「最高にカッコいいです!!」

大山「範馬さん!ありがとう!本当にありがとう!!」

高松「範馬さん!私は今まで、こんなに喜びを感じた事はなかったです!!」

松下「範馬さん!俺はこの日を忘れません!!」

TK「I genuinely respect you!!」

遊佐「おめでとうございます、範馬さんの勝利を信じていました」

椎名「あの天使すらも赤子扱いされるとは、お見事としか言いようがありません」

ユイ「勝ちました!範馬さんが勝ちました!!」

日向「今まで、長かったぜ…範馬さんには感謝しないとな…」

音無(俺は短かったんだが、余計な事は言わないでおこう)

岩沢「ついに天使との戦いが終わったのか…」

ひさ子「おい岩沢!範馬さんに称賛を浴びせに行こう!」

岩沢「そうだな」

関根「さあ、行きましょう!」

入江「あたしも早く言いたいです!」

勇次郎「………」

ゆり「範馬さん、死んだ世界戦線のリーダーとしてお礼を言うわ」

ゆり「ありがとうございました」

ゆり「このご恩は、たとえ転生したとしても忘れません」

勇次郎「転生を拒む組織のリーダーの言葉とは思えねえな」

ゆり「ふふっ、そうかしら」

遊佐「そろそろ、1時間が過ぎます、天使が目を覚ます頃です」

日向「なあ、二人だけで大丈夫かよ?」

野田「貴様!ゆりっぺと範馬さんを信用してないのか!」

日向「そんなワケじゃねえよ!」

高松「範馬さんがいるんです、全く問題はないでしょう」

TK「There is no problem」

藤巻「それによ、範馬さんが言ってたじゃねえか」

藤巻「天使が妙な真似をしたら、今度は思いっきりブン殴るってな」

松下「範馬さんが思いっきりブン殴る、こんなに頼もしい言葉はないな」

音無「それはちょっと天使に同情するな…」

大山「ゆりっぺが天使を尋問するって言ってたけど、天使に黙秘権とか使われないかな?」

椎名「そんな度胸が天使にあるとは思えない」

ユイ「それで、何を聞くんでしょうか?」

岩沢「好みの曲とか?」

関根「絶対、違いますから!!」

ひさ子「あいかわらずだね、岩沢は」

岩沢「冗談だって」

関根「また~また~別に気にしなくてもいいんですよ」

ひさ子「岩沢が音楽キチだなんて、戦線メンバー全員が知ってるしな」

入江「冗談だなんて、恥ずかしがらなくてもいいんですよ」

岩沢(これからは、発言に気を付けるか…)

高松「話を戻していいですか?」

ひさ子「あ、わりい」

高松「おそらく、この世界の事でしょう」

高松「転生のしくみ、神の居場所、色々あるでしょうね」

日向「ついに、この世界の謎が分かるんだな」

天使「う、うっ…」

天使「あ…」

ゆり「目が覚めたようね」

勇次郎「わくわくしながら待ってたぜ」

天使「………」

ゆり「貴方、負けを認めるわね?」

ゆり「範馬さんの攻撃を受けて、1時間も気を失っていたのよ、誰が見ても負けよね」

勇次郎「負けを認めるか認めねえかは貴様次第だ、選びな」

天使「………」

天使「貴方はあたしとの喧嘩で満足したの?満たされたの?」

勇次郎「食事で例えるなら、料理に手を付けず、水しか飲んでねえ気分だぜ」

天使「そう…貴方はまだ満たされていないのね…」

天使「………」

天使「あたしは負けを認めないわ…」

ゆり「は!?」

勇次郎「………」

ゆり「ちょっと!何言ってんのよ!!」

ゆり「お前は敗北を知りたいとか言ってるクセに敗北を認めない死刑囚か!!」

天使「だって、その人はまだ満たされていないから…」

ゆり「え?」

天使「その人が満たされるまで、喧嘩の相手をしてあげたい…」

勇次郎「ハッハハハハハハッ!!」

ゆり「範馬さん!?」

勇次郎「この俺に『してあげたい』か、そんな上から目線のヤツは初めてだぜ!」

天使「そんなつもりはないわ…」

勇次郎「………」

勇次郎「貴様は勝てないと理解りながら、続けようとしている」

天使「そうね、あたしに勝ち目はないわ…」

勇次郎「何故続けようとする?」

天使「貴方に満たされた気持ちになって欲しいから…」

天使「満たされた気持ちになって、新しい人生を歩んで欲しいから…」

天使「だから、貴方が満たされるまで、喧嘩の相手を続ける…」

天使「何度倒れても、貴方が満たされるまで…」

勇次郎「それは神の命令か?神から人への慈悲のつもりか?」

勇次郎「貴様に言っておく、神のヤロウにも伝えるがいい」

勇次郎「他のヤツは知らねえが、俺にとっては慈悲ではなく侮辱だ」

天使「侮辱…」

勇次郎「俺は満たされるのに誰かの手は借りん」

勇次郎「俺を満たすと言いやがったが、水をいくら飲んでも俺は満たされねえぜ」

勇次郎「貴様では役不足だ」

天使「………」

天使「そう…あたしでは無理なのね…」

ゆり(この子、どうしてこんなに悲しそうな顔をするのかしら?)

勇次郎「もう一度聞く、貴様は負けを認めるか?」

天使「………」

天使「認めるわ…」

天使「ごめんなさい…貴方にとっては余計な事だったのね…」

勇次郎「………」

勇次郎「貴様は水だったが、それなりに旨かったぜ」

天使「そう、よかったわ…」

その頃の息子二人

刃牙「………」

ジャック「………」

梢江「刃牙君、ジャックさん、どうしたの?」

刃牙「今、妙な感覚を味わった…」

ジャック「俺モダ…」

刃牙「例えるなら、俺達のよく知っているヤツがとんでもない嘘を付いた…」

ジャック「ソノ嘘トハ『誰カノ手ハ借リン』ナドト言イナガラ、本当ハ借リテイル…」

刃牙「ソイツが手を借りてる所為で大勢の人達が大迷惑してるのに、よくそんな嘘が付けるなと…」

ジャック「呆レテモノガ言エナイト感ジタ時ノヨウナ感覚ダ…」

梢江「ごめんなさい、私にはよく理解らないわ」

刃牙「いや、いいんだ、たいした事じゃない」

ジャック「刃牙、梢江、肉ガ減ッテキタ、入レルゾ」

刃牙「ああ、兄さん、よろしく」

梢江「でも、ジャックさん、私もごちそうになっていいんですか?」

ジャック「気ニスルナ、梢江モ俺達ノ家族ノヨウナモノダ」

梢江「ありがとうございます」

刃牙「ありがとう、兄さん」

ジャック「スキヤキハ大勢デ喰ウモノラシイジャナイカ、肉モ10キロ買ッテキタ、好キナダケ喰ウガイイ」

刃牙「家族で喰う、すき焼きか、いいもんだな…」

梢江(刃牙君にとって、肉10キロは驚かない量なのね…)

刃牙(1年前、兄さんが俺にステーキをご馳走してくれた時に言ってくれた、あの言葉…)

ジャック『範馬勇次郎ヲ相手ニ、ヨクアソコマデ闘ッタナ、エライゾ』

ジャック『兄ナラ弟ノ偉業ヲ祝ッテヤルノガ当タリ前ダ、気ニスルナ』

刃牙(こんな、幸せな人間が何処にいる?)

刃牙(母に救われ、父に認められ、兄に褒められ、恋人は側にいる)

刃牙(家族全員揃って飯を喰うのは永遠に叶わなくても、梢江と兄さんがこうやって俺と飯を喰ってくれている)

刃牙(幸せな人間に会いたいなら、ここに来な!ここに世界一、幸せな人間がいるぜ!!)

その頃の息子二人のシーン終了

ゆり「範馬さん、あたしも天使に言いたい事があるの」

勇次郎「ゆり、死んだ世界戦線のリーダーとして、言うべき事を言うがいい」

ゆり「ありがとう、なら遠慮なく言わせてもらうわ」

ゆり「天使!貴方に言っておくわ!」

ゆり「あたし達も貴方の手は借りない!」

ゆり「この世界で満たされたら消えるのは知ってるわ!」

天使「貴方達、知っていたの?」

ゆり「いつ消えるかはあたし達が決める!あたし達にも余計な事はしないで!」

ゆり「そんなの慈悲じゃなくて、余計なお節介よ!」

天使「そうなの?」

ゆり「そうよ!!」

天使「どうしたら消えるのか分かっているのなら、あたしのしている事がお節介なら…」

天使「貴方達に任せるわ、もう余計な事はしないわ…」

ゆり「分かればいいのよ」

天使「………」

ゆり「それと、範馬さんは死んでこの世界に来たんじゃないわよ」

ゆり「霊媒師をタクシー代わりにして、この世界にやって来ただけだから」

天使「え?」

勇次郎「俺がそう容易く、くたばると思うか?」

天使「貴方は隕石にぶつかっても死なないと思う…」

勇次郎「大正解だぜ」

天使「貴方の目的を聞いたのは、それを聞けば貴方がどうすれば満たされるのか分かると思ったから…」

天使「でも、何の意味もなかったのね…」

ゆり(天使のヤツ、すっごく驚いてるわね、さらにもう1回勝った気分よ)

天使「あたしも言いたい事があるわ」

ゆり「何よ、気分がいいから聞いてあげるわ」

天使「あたしは天使じゃないわ」

ゆり「………」

勇次郎「………」

ゆり「は?」

天使「あたしは貴方達と同じ人間、死んだ後にこの世界に来たの」

ゆり「はあああっ!?」

天使「この世界に来た人達が満たされた気持ちになって、新しい人生を歩んで欲しいと願って動いていただけ」

ゆり「じゃあ、神は?」

天使「この世界に来て、一度も会った事はないわ」

天使「神っているの?」

ゆり「は、は、は、は…」

ゆり「じゃあ、今までの貴方との戦いは何だったのよ…」

天使「あたしに言われても困るわ」

ゆり「あたしが一番、困っとるわ!!」

ゆり「もう1回勝った気分が泡のように消え去ったわ…」

勇次郎「ゆり…」

ゆり「う、ううっ…」

勇次郎「アホウが…」

ゆり「すっごく、自覚してるわ…」

ゆり「それで生徒会長、えっと…名前は何だったっけ?」

天使「立華、立華かなで」←次から名前を『かなで』に変更

ゆり「そんな名前だったわね」

ゆり「立華さん、貴方に聞きたいんだけど?」

かなで「大食堂のメニューの中では麻婆豆腐がお気に入り」

ゆり「誰もそんなの聞いとらんわ!!」

ゆり「貴方、言ったわね?」

ゆり「この世界に来た人達が満たされた気持ちになって、新しい人生を歩んで欲しいと願って動いていたって」

かなで「ええ、言ったわ」

ゆり「もしかしたら、新しい人生は人間じゃなくて、アブラゼミやフジツボかもしれないのよ」

ゆり「貴方はこの世界に来た人達に来世はフジツボになって欲しいの?」

かなで「この世界に来た人達が消えたら、人間としての新しい人生が始まるから大丈夫よ」

ゆり「何を根拠にそんな事が言えるの?」

ゆり「確かに人間の当たりクジはあるみたいだけど」

かなで「人間の当たりクジ?」

ゆり「ここにいる範馬さんは、人間に転生した戦線メンバーから、この世界の事を聞いたんだから」

かなで「なら、それが根拠になるわ」

ゆり「どういう事よ!?」

かなで「みんな同じだから」

ゆり「同じ?」

かなで「この世界に来る人は青春時代をまともに過せなかった人」

かなで「この世界に来た人は満たされたら消える」

かなで「みんな同じなの、イレギュラーは一人もいなかったわ」

ゆり「まさか!?」

かなで「だから、この世界から消えた人が人間に転生したのなら、みんな同じように人間に転生するわ」

ゆり「………」

かなで「反論があったら、聞くわ」

ゆり「な…」

かなで「な?」

ゆり「無いわよおおお!!」

かなで「よかったわ」

ゆり「よくないわよ!!」

ゆり「どうして、範馬さんから『人間に転生した岩沢さん』『この世界から消える条件』を聞いた時に気付かなかったのよ…」

かなで「消える条件を知ってるから、人間に転生するのも知ってると思っていたわ」

ゆり「あたし達は…あたし達は…」

ゆり「アホばっかりよおおおおおお!!」

勇次郎「立華、この俺にそれなりの水を飲ませた褒美だ、くれてやる」

かなで「麻婆豆腐の食券が10枚も…」

勇次郎「喰いたい時に喰いな」

かなで「ありがとう、凄く嬉しいわ」

かなで「お礼に豆腐を最速で水切りする方法を教えるわ」

かなで「まず、豆腐をキッチンペーパーで包むの」

かなで「それを耐熱皿の上に置いて電子レンジへ」

かなで「加熱時間は豆腐1丁(300g~400g)で3~4分ほどが目安よ」

かなで「その後、取り出して冷ますと水気がさらに抜けるわ」

勇次郎「俺が知らぬ工夫、参考にさせてもらうぜ」

ゆり「あたしを無視して、絆を作るなああああああ!!」

岩沢「ゆり、あたし達に一通り説明し終わったら、すぐ部屋に戻って行ったね」

ひさ子「かなりショックだったんだろうな」

関根「あたし達はそんなにショックじゃなかったんですけどね」

入江「人間に転生確定なのが嬉しかったですからね」

岩沢「………」

ひさ子「岩沢、どうした?」

岩沢「いや、あたしは欲張りだと思ってね」

関根「欲張りですか?岩沢先輩はそんなキャラには見えませんよ」

入江「岩沢先輩は音楽キ…いえ、音楽に人一倍情熱があるだけじゃないですか」

岩沢「みんなが人間に転生出来るのが分かったら、別の願いが出来たんだ」

ひさ子「別の願い?」

岩沢「あたしさ、来世もこの四人でバンド活動がやれたらいいなって思ってさ」

岩沢「どうやら、来世のあたしはここでの記憶を持っているみたいじゃないか」

岩沢「なら、他のみんなも記憶持ちで転生する可能性は高いと思うんだ」

岩沢「来世であたし達が出会えるとは限らない、でも出会いたい」

岩沢「出会って、またガルデモとして四人でバンドがやりたい」

岩沢以外のガルデモメンバー全員「………」

ひさ子「なあんだ、岩沢もあたしと同じ事を考えてたのか」

関根「実はあたしも同じ事を考えていました」

入江「あの、あたしもです」

岩沢「お前等…」

ひさ子「ホント、あたし達はイキぴったりだな」

関根「イキぴったりなのもガルデモの魅力ですよ」

入江「この四人でバンド活動が出来てよかったです」

岩沢「ひさ子、関根、入江、来世でも音楽をやっていれば、きっとまた会えるよな」

ひさ子「ああ、絶対に会おうぜ、また四人でガルデモを結成するんだ」

関根「楽しみですね、ガルデモの来世進出」

入江「ガルデモの曲をもっと大勢の人に聴いてもらいたいです」

岩沢「………」

岩沢「あのさ、消える時は四人一緒に消えないか?」

岩沢「そうしたら、また来世で一緒にやれる気がするんだ」

ひさ子「ああ、そうしようぜ、消える時は四人一緒だ」

関根「でも、今はまだこの世界でやっていきましょう」

入江「そうですね、まだみんなとお別れしたくはないですね」

岩沢「あたし達が満たされて消えるのはまだ先のようだね」

ひさ子「そうさ、まだ先の話さ」

岩沢「これも範馬さんのお陰だね、体育館ライブの件以上に感謝しないとね」

ひさ子「そうだな、だからこそ、祝勝会をすぐにやりたかったんだよな」

関根「祝勝会と言っても、料理は大食堂のメニューですし、お菓子や飲み物もすぐに用意出来ましたよね」

入江「やろうと思えばすぐにやれましたよね」

ひさ子「きっと、高松達も同じ事を考えてるだろうな」

岩沢「だからさ、範馬さん主役の祝勝会をあたし達と高松達でやろう」

ひさ子「そいつはいいな、みんなでやるか」

関根「岩沢先輩、ナイスアイデアですよ」

入江「明日、高松先輩達と話さないといけませんね」

岩沢「ああ、アイツ等も賛成するさ」

岩沢(範馬さんのお陰で、新しい道が開けた)

岩沢(この道をみんなで歩んで行きたい、この道の果てまで、ずっと一緒に)

大山「範馬さん、おはよう」

野田「おはようございます!」

勇次郎「貴様等か」

遊佐「範馬さん、朝食をお召し上がりに大食堂に行かれる途中ですね?」

高松「私達は範馬さんをお迎えに行く途中でした、行き違いにならなくてよかったです」

勇次郎「朝っぱらから、どうした?」

椎名「私達も大食堂にご一緒してよろしいですか?」

藤巻「俺達、大食堂で一緒に朝メシ食うのを誘いに行く途中だったんだ」

松下「ご迷惑でなければ、是非お願いします」

大山「範馬さん、みんなで行こうよ」

TK「Let's go to eat together」

勇次郎「………」

勇次郎「行くぞ」

藤巻「おう!そうこなくっちゃな!」

野田「行きましょう、範馬さん!」

遊佐「範馬さん、昨日は本当にお疲れ様でした」

高松「長かった戦いを終わらせていただき、感謝致します」

勇次郎「俺にとっては水を飲んだ程度の事だ」

椎名「その水を飲むのが私達には出来ませんでした」

野田「範馬さんだから、あの水を飲めたんです」

高松「しかし驚きましたね、あの天使が私達と同じ人間だったとは」

藤巻「ゆりっぺから聞かされた時はスゲエ驚いたぜ」

TK「I was surprised to hear that」

大山「天使じゃなかったなんて、思いもしなかったね」

松下「お互いを誤解していただけだったとはな」

遊佐「私達は生徒会長を天使と誤解し、生徒会長は私達が満たされて消えるのが幸せだと誤解していました」

椎名「あさはかなり」

大山「僕達のしてきた事って、意味はなかったのかな?」

高松「そう考えるのはよしましょう」

藤巻「そうだぜ、みんなで集まって楽しかったじゃねえか」

野田「ゆりっぺや範馬さんに出会えただけで戦線の意味はあった」

大山「野田君がまともな事を言っている…」

高松「彼も進歩したのでしょう」

遊佐「でも、野田さんの言っている事は正しいです」

遊佐「『みんなに』という言葉が抜けていますが」

大山「そうだね、ゆりっぺや範馬さんやみんなに出会えてよかったよね」

TK「I'm really glad I could meet all of you」

藤巻「ああ、よかったぜ」

椎名「いい出会いだった」

勇次郎(出会い…刃牙も喰らうモノとの出会いに恵まれた…)

高松「それに転生しても人間の当たりクジしかないと分かりました」

藤巻「よかったぜ、外れクジのアブラゼミやフジツボがなくてよ」

遊佐「私もアブラゼミやフジツボはイヤでした」

松下「人間に転生出来ると分かって、本当によかった」

大山「これもみんな、範馬さんのお陰だね」

大山「範馬さんが立華さんに勝ってくれなかったら、分からないままだったよ」

遊佐「本来なら、昨日、祝勝会をやらなければいけなかったのですが…」

椎名「そうだな…」

大山「ごめんね、範馬さん」

野田「範馬さん、本当にすいません」

TK「I'm terribly sorry」

藤巻「ゆりっぺがすぐ部屋に帰りやがったからな…」

松下「ショックだった気持ちは分かるが、やりたかったな…」

勇次郎「別に祝勝会をやる程のモノでもねえ」

遊佐「そんな事言わないで下さい」

椎名「そうです、これは範馬さんへの感謝の気持ちです」

椎名「やらなくてどうするんです」

高松「その件で私から提案があります」

高松「今日、私達九人だけで、祝勝会をやりましょう!」

野田「そうだな、ゆりっぺ主催の祝勝会はいつになるか分からないからな」

野田「俺も賛成だ!」

大山「うん、やろう!」

椎名「異議なし!」

TK「I agree with that opinion!」

藤巻「いいじゃねえか!やろうぜ!」

松下「流石は戦線の参謀だ!」

遊佐「高松さん、素晴らしい提案です」

勇次郎「随分と物好きなヤツ等だ」

ゆり「そう言ってる割りには機嫌は悪そうじゃないけど?」

勇次郎「………」

野田「ゆりっぺ!」

ゆり「おはよう、貴方達もこれから朝食ね」

藤巻「そうだぜ、大食堂にな」

ゆり「範馬さん、昨日はごめんなさい、祝勝会をやれなくて」

ゆり「1日遅れだけど、今日、祝勝会を開催するわ」

大山「それ、本当!?」

ゆり「当然よ、これは戦線の勝利だけじゃなく、範馬さんへの感謝の気持ちでもあるんだから」

ゆり「これは戦線メンバー全員参加よ!参加しないヤツは考えるのをやめたくなる程の罰ゲームよ!!」

高松「ここにいるメンバーは全員参加です!」

大山「うん!」

野田「当たり前だ!ゆりっぺ!」

藤巻「出るに決まってるじゃねえか!」

TK「I will be happy to participate!」

松下「これは楽しくなりそうだな!」

椎名「参加しないヤツへの罰ゲームは私も協力しよう」

遊佐「私は参加しない人の恥ずかしい情報を入手した後、学園中にバラまきます」

ゆり「ここにいるメンバーは全員参加ですって、範馬さん」

勇次郎「別に何人でもかまわねえ」

ゆり「ふふっ、そう」

高松「ですが範馬さん、私達九人だけの祝勝会は明日にでも必ずやりましょう」

勇次郎「せっかくだ、物好きな貴様等に付き合ってやる」

岩沢「おはよう、アンタ達も大食堂に行く途中みたいだね」

ひさ子「昨日の戦線メンバーのほとんどが揃ってるな」

関根「夜はともかく、朝にこれだけの戦線メンバーが揃うも珍しいですね」

入江「おはようございます」

高松「おや、ガルデモの皆さん」

藤巻「よお、そっちもお揃いじゃねえか」

野田「貴様等はチャーハンを食うのか?」

岩沢「きつねうどん」

ひさ子「サンドイッチ」

関根「カレー」

入江「ナポリタン」

野田「チッ、命拾いしたな」

ガルデモメンバー全員(ダメだ、コイツ…)

大山「ねえねえ、ゆりっぺが今日、祝勝会を開催するんだって!」

関根「ホントですか!?」

入江「それはよかったです!」

ひさ子「あたし達も昨日、祝勝会がやれなくて、範馬さんに申し訳ないと思っていたからな」

関根「この祝勝会は範馬さんへの感謝の気持ちでもありますからね」

入江「昨日、祝勝会がやれなかったのは本当に残念でしたからね」

岩沢「昨日の分まで範馬さんに楽しんでもらったらいいさ」

ゆり「ガルデモには曲を披露してもらうわよ」

岩沢「任せろ、あたし達が20曲披露するから」

関根「ええっ!20曲もですか!?」

入江「それはちょっと多いんじゃないでしょうか…」

ひさ子「岩沢、気持ちは分かるけどさ、20曲は多いよ」

岩沢「そうか?」

岩沢(しまった…昨日、発言には気を付けるって決めた矢先にコレだ…)

ゆり「まあ、意気込みは買うわ、期待してるから頑張ってね」

岩沢「期待に答えれるように精一杯やるよ」

高松「ちなみに私達は明日、九人だけの祝勝会を行います」

関根「えっ、そうなんですか?」

岩沢「実はさ、あたし達もアンタ達を誘って、範馬さん主役の祝勝会をやるつもりだったんだ」

ひさ子「本来の祝勝会はいつになるか分からなかったからな」

入江「高松先輩達も同じ事を考えていたんですね」

岩沢「なあ、高松、その祝勝会にあたし達も参加していいか?」

ひさ子「そうだな、あたし達も混ぜてほしいな」

関根「祝勝会は音楽があった方が盛り上がりますよ」

入江「あたし達もその祝勝会にご一緒したいです」

高松「ガルデモの皆さんはこう言われていますが、範馬さんよろしいでしょうか?」

勇次郎「さっきも言ったぜ、別に何人でもかまわねえってな」

岩沢「ありがとう、これで今日だけじゃなく、明日も楽しみになってきたね」

藤巻「まあ、人数が多い方が祝勝会らしくていいからな」

野田「なら、ゆりっぺや音無も誘うか」

高松「それはいいですね、特に音無さんとは親睦を深めるいい機会です」

日向「よお、お前等も朝メシか?」

音無「おはよう」

ユイ「おはようございます」

ゆり「あら、貴方達」

野田「おう、貴様等も大食堂に行く途中だな」

音無「まあな」

野田「喜べ!昨日やれなかった祝勝会を今日やる事になった!」

音無「へえ、もう少し遅くなると思ってたんだけどな」

野田「それと明日も俺達だけで祝勝会をやる」

野田「今の所、参加するヤツは範馬さんを含めて十三人だが、音無も参加するか?」

音無「せっかく誘ってくれたんだ、参加させてもらうよ」

野田「音無、今日と明日の祝勝会を楽しみにしてろよ」

音無「ああ、楽しみにしてるよ」

日向(俺、もしかして忘れられてる?)

野田(ゆりっぺは、範馬さんと話し中だな、後で誘うか)

日向「これで戦線の主要メンバーは全員揃ったな」

ユイ「えっ?あたしも主要メンバーになれたんですか!?」

日向「………」

日向「スマン…」

ユイ「おい!コオラアアア!!」

ユイ「あたしを主要メンバーに推薦しろやあああ!!」

日向「気が向いたらな」

ユイ「今すぐ向けやあああ!!」

ゆり「はあ…やかましくなったわね…」

勇次郎「ゆり、引きこもりは一晩で卒業したのか?」

ゆり「引きこもりって…」

ゆり「ただ、部屋で考えていただけよ、これからの事をね」

ゆり「立華さんは天使じゃなかった」

ゆり「もしかしたら、立華さんが仕事をしていたから、本物の天使が出て来なかったのかもしれない」

ゆり「もちろん、神もね」

ゆり「これから、この世界に何らかの変化が訪れると思うの」

ゆり「だから、立華さんとの戦いは昨日で終わったけど、また新しい戦いが始まるわ」

勇次郎「貴様が満たされるのは、まだ先というワケか?」

ゆり「今はまだこの世界にいたい、みんなと一緒に戦線を続けたい」

ゆり「でも、満たされて消える戦線メンバーが現れても悲しまないわ」

ゆり「むしろ、その戦線メンバーの新しい人生を応援する」

ゆり「今までありがとう!次の人生は絶対に幸せになってね!」

ゆり「くすっ、こんな風にね」

勇次郎「………」

勇次郎「俺は貴様を少しだけ尊敬する」

ゆり「そう、嬉しいわ」

ゆり「それで、範馬さんはどうするの?」

勇次郎「俺は水しか飲んでねえからな、料理を喰ってねえ」

勇次郎「料理が出てくるのをしばらく待つ」

ゆり「じゃあ、まだこの世界に滞在するのね?あたし達の協力関係はまだ続くのね?」

勇次郎「そう思っておけ」

ゆり「ふふっ、思っておくわ」

ゆり「もうすぐ、大食堂だけど、範馬さんは何を食べるつもり?」

勇次郎「オムレツ定食だ」


範馬勇次郎「貴様は?」ゆり「あたしはゆり、死んだ世界戦線のリーダーよ」  完


ここまで読んでいただきありがとうございました
勇次郎が特定の組織と手を組むなど絶対にありえないと思っていますが
これは二次創作のSSだという事で容認して下さい
自分に裏表のない純粋な好意を向けている組織とは、それなりにやっていけるかもしれません
それを考えて勇次郎と戦線の人間関係を書いたら、ただの勇次郎マンセーSSになってしまいました
本来、考えていたラストは神を語る直井を、勇次郎が本物の神と勘違いしてボコボコにし
神のあまりの弱さに失望した勇次郎が現代に帰って終わりでした
ですが、これはあまりにも予想出来る展開だと考え、直井が勇次郎を神と勘違いする展開にしました
このSSのかなでは戦線から手を引いているので、これからの展開はTVアニメ版とかなり変わってくるでしょう
それでは、さようなら

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