春香「むーん……」

真「むーん……」

P「お疲れ様でーす。……ん、なんだ。春香、真」

春香「あ、お疲れ様です、プロデューサーさん」

真「いやぁ。春香にスマホを触らせてもらって、ボクも欲しいなぁと思って。

　どうにか父さんに買ってもらえるように知恵を出し合ってたんです」

春香「softbankで新規契約はどう？」

真「それだと最低でも七千円はかかるだろ？　父さんそれじゃあ認めてくれないと思うんだよ」

P「ちなみにどういう見積もりでやった？」

真「こうです！！」

ホワイトプラン：1008円
S!ベーシックパック：324円
パケットし放題フラット：6156円
合計：7488円

P「うん、正しい」

真「うーん……プロデューサー、一緒に考えてくださいよぉ」

P「だな。スマホって言うけど、タブレットはどうだ。タブレットなら今のスマホとセットで2500円から持てるぞ」

真「タブレットだと大きいじゃないですか。せめて春香のスマホみたいな大きさが良いです」

P「春香はAQUOS CRYSTALだから5インチ液晶でそこそこデカい方だしな」

P「……なら、こいつはどうだ」

真「あ、これなら小さくて触りやすいですね。これなんてスマホですか？」

P「Xperia Z1fって言う、docomoの機種だ。それいらないからやるよ」

真「えぇ！？　さ、さすがにスマホ本体は貰えませんよ！」

P「むしろ回線の譲渡こそ法律に引っかかるんだけどな……

　いいんだよ。それは友人に貰って、試しに格安SIM運用してみようかと思って一応取っておいただけだからな」

真「格安シム……？　なんですか、それ」

ミス

×　P「だな。スマホって言うけど、タブレットはどうだ。タブレットなら今のスマホとセットで2500円から持てるぞ」

○　P「だな。スマホって言うけど、タブレットはどうだ。タブレットなら今のガラケーとセットで2500円から持てるぞ」

P「そっか。皆には3キャリアの説明しかしてなかったな……じゃあまあ教えておくか」

P「二人とも、SIMフリーって聞いた事ないか？」

春香「シムフリー……？」

真「えーっと、テレビで聞いた事はありますけど、あんまり詳しい事は。

　なんか、スマホの料金を安く持てる方法って聞いた事はありますけど」

P「実はそれが一番の勘違いなんだが、SIMフリー自体は、そう大したもんじゃない。

　料金を安く持つ方法は、その中に入れるSIMカードが関係しているんだ」

P「春香、SIMカードって何か知ってるか？」

春香「えっと、スマホの中に入ってるチップですよね。1センチくらいの小さいアレ」

真「microSDの事？」

P「違う。真の場合は今softbankのガラケーだから、多分3センチ位の奴だな」

P「いわゆる携帯電話で通話やネットを出来る様にする、電話番号やネット契約者情報が書き込まれているチップなんだ」

真「それが無いとどうなるんですか？」

P「ガラケーは抜け殻になり、スマホはwi-fi専用で使えるネットやアプリ専用機となる。

　通話はもちろん、携帯電話回線でネットも出来ない」

真「なんだ……じゃあ、この……えっと、エクスペリア？　この中にSIMカードは」

P「さすがに入ってない。

　機種は買っちまえばソイツのもんだから、それを譲渡しても大丈夫だが、電話回線はキャリアへの申告無しに譲渡はしちゃいけないんだ」

真「じゃあこのエクスペリアは、ワイファイって電波だけで使えるネット専用機ってわけですね。外に持ち出して使えないならなぁ……」

P「そこで格安SIMの出番ってわけだ。

　真、普通はスマホを持つのに、どれだけ料金がかかるってさっき言った？」

真「安くても大体七千円ですね。

　通話はしない事を想定しても、ちょっとどころかかなり手を出しにくい値段ですね」

P「格安SIMなら、安くて700円程度からLTE回線を使える」

春香「……え、700、円？」

P「例えば、U-mobileのダブルフィックスプランなら、680円で1GBのLTEが使えるし、それ以上使っても3GBまで900円から使える」

真「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ってくださいプロデューサー！

　え、ユーモバイル？　いつの間にそんな携帯電話会社出来たんですか？」

P「U-mobileは携帯電話会社じゃないぞ。

　普段はU-SENとかの配信サービスを主に行ってる会社が提供してる回線だ。おまけに携帯電話自体は開発していない」

P「格安SIMって言うのは、大手携帯電話会社の回線を一部借り受けて、

　その回線を使う事によって安くネット環境などを提供できる、新たな回線プランだ」

P「そのU-mobileって格安SIMは、docomoの回線を借り受けて、それを安く客に提供する事によって、利益を得ている」

真「いやでも安過ぎですよ！

　softbankでスマホのネットを使おうとすれば、通話プラン差し引いても3800円はかかりますよ！？」

P「例えば真は、携帯電話の調子が悪くなって、通話がちょっと遠くなったら、携帯電話ショップに行って相談するだろ？」

真「え？　まぁ、はい」

P「大手キャリアは、高い料金を払う事によって、その多大な恩恵を顧客に還元している。サポートだったり、新たな電波塔の設置だったりな」

P「そりゃ高杉ィ！　と感じる事はあるだろうが、少なくとも首都圏で通話に困った事はよほど無いはずだ」

真「ですね。イベント会場でちょっと通話が繋がりにくいと思ったくらいで、それも人が多すぎるせいだから、仕方ないかなって」

P「格安SIMは、その多大な恩恵を捨てて、質の低い回線を使う事を意味してる」

P「――いや、言葉が悪いな。

　道路で例えると、3キャリアは整備された四車線の道路、格安SIMは整備こそされているものの、一車線しかない道路、と考えればいい」

P「四車線あれば、込み合っていてもスピードはある程度あるだろう。だが、一車線しかないと、そのスピードは四車線より落ちる」

P「おまけにサポートはよほどの事が無い限り乱雑だ。スタッフの質が悪いとかじゃあなくて、もう無いと言ってもいい」

P「もう一つ追撃してデメリットを言うと、そのSIM対応のスマホを自分で用意しなけりゃならない」

P「メリット・デメリットをまとめよう。だがこれ以外にも様々なメリット・デメリットが存在する。

　それは自分で調べる力量が無ければ、格安SIM運用は難しいだろう」

メリット

・700円弱の料金から、高速通信『LTE』を使う事が出来る物が多い。（使用機種と使うSIMに依存する）
・無駄な機能が無い。

デメリット

・サポートが乱雑。無いと言ってもいい。
・各キャリアのような回線の安定性は無い。
・キャリアメールなどのキャリアが提供する機能が使えない。
・運用するSIMが対応している機種を自分で用意する必要がある。
・クレジットカードを持っていない場合、月額プランを利用できない場合が多い。

P「ちなみに音無さんは、この格安SIMとキャリア携帯の2台持ちで、月額利用料金を3000円で抑えている」

春香「う、内訳は！？」

P「消費税込みで出すぞ」

au グラティーナ
2376円　カケ放題プラン
▲900円　毎月割

合計　1476円

DMM SIM
918円　シングルプラン　データ3GB

合計　918円

総合計：2394円

P「たぶんこれだった筈。SMSの料金とかユニバーサルサービス料とかあるから、もうちょいかかってるかもしれないが、それ程大差は無いだろう」

春香「うわー……凄い」

P「機種はSIMフリースマホのZen fone5で、その機種にはメーカーサポート以外は無いが、SIMで分からない事があれば自分で調べる力量を持ってる」

P「だからこそ、音無さんはこれが出来る」

真「……自分で調べる力量が無ければ、運用は難しいって事ですか」

P「始める事は簡単で、おまけに言うほど速度も悪くは無い。

　だがその後に何か問題があったその時に、冷静に行動が出来るかどうかだ」

P「もし始めると言う事であれば、俺は真をサポートするけど、もし俺の手が届かない所で何かあった時は、真が自分で何とかしなけりゃならないんだ」

真「……わかりました！　ちょっと真剣に考えてみます！

　家のネットで、情報をいっぱい集めて、その上で父さんに相談してみます！」

P「そうか。偉いぞ真」

春香「うーん……」

真「どうしたのさ、春香」

春香「あの、プロデューサーさん。格安SIMって言うのが何かは分かりましたけど、結局SIMフリーってなんなんですか？」

P「二人はSIMロックって聞いた事あるか？」

春香「えーっと、SIMにはロックがかかってるんですよね。で、対応機種しか使えないって事ですよね」

P「逆だ。SIMにロックがかかってるんじゃない。機種の方にロックがかかってるんだ」

P「各キャリアが販売する機種は、一部機種を除いて、このSIMロックがかけられている。

で、そのロックされた機種に対応されたSIMしか使えないんだ」

春香「何でそんな事を？」

P「そりゃお前、携帯電話会社の利益は多くが機種の売り上げだぞ。

　その機種持ったまま他社に行かれたら堪ったもんじゃないだろ。機種を販売した会社も、機種を持ち込まれた会社もな」

P「例えば春香のAQUOS CRYSTARなんか、softbank独占機種だ。その機種を持ったまま他社に行かれたら、独占販売した理由が無くなる」

春香「そうですね、結局独占販売って、そのキャリアに依存させる為の宣伝でしかないですもんね」

真「でもテレビじゃあSIMフリー化、SIMフリーにすれば安くなる！　みたいなニュースを四月頃にはよく見ましたよ？」

P「それは番組側が一つの側面でしか見てない証拠だよ。現に今説明したけど、結局安くするにはデメリットがあるだろ？」

真「あ、そっか」

P「SIMフリーって言うのは、その名の通り、機種にSIMロックがかかっていない携帯電話の事だ」

P「正しいSIMフリー機種の使い方としては、主に海外に行く時とかだな」

P「SIMフリーなら、海外の安いSIMカードを刺して使う事が出来る。

　SIMロックがかかってる場合、キャリアに海外専用通信料金を払わなきゃならない。あれ高いんだぞ」

真「最近プロデューサーも、よく海外出張行きますもんね」

P「一年ハリウッドに行った時には、世話になったもんだ」

春香「じゃあ今ある、SIMフリー化法案って言うのは何なんですか？」

P「キャリアが、客からSIMフリーにしてくれって要望があった場合、それに応じるようにする法案だ」

真「最初からSIMフリーに出来るわけじゃあないんですね」

春香「じゃあ私のスマホも、SIMフリーに出来るんですか？」

P「少なくとも今はできない。

　SIMフリー化法案の対象機種は、五月以降に発売が開始された機種に限定される。

　softbankならgalaxy S6 edge以降の機種だな」

P「おまけに対象機種であっても、契約・購入後の六ヶ月以降で無ければ出来ない。

　これは転売や機種の購入のみを目的とした短期解約回避の措置だな」

P「docomoが今年の五月以前に販売開始したスマホは例外的に、何時購入したものであってもiPhoneを除きSIMフリーにする事は出来るがな」

P「docomoに関しては手数料以外は改悪だと言わざるを得ない」

P「後はSIMフリーにして問題になってるのは、

　さっき真の言ってたテレビに扇動された人が、格安SIMに乗り換えて、逆に使えなくなってる場合だ」

真「な、なんですかそれ。怖いなぁ」

P「元々docomoのスマホを使ってた人が、スマホをSIMフリーにして格安SIM会社に乗り換えた」

春香「はい」

P「SIMフリーにして、格安SIMに乗り換えたは良いけど、最初に購入するSIMのサイズを間違えて、使えなかった」

春香「うわぁ……」

真「サイズにも気を付けないといけないんですね」

P「サイズを変えたは良いけど手数料を取られた」

真「踏んだり蹴ったりだ」

P「サイズ変えたはいいけど、ネットに接続する為の設定の仕方が分からなくて、数日間スマホを使えなかった」

春香「設定なんかもいるんですか！？」

P「そして何とか調べて解決したはいいけど、今度はデータ通信専用のSIMカードを買っていて、通話が出来なかった」

真「……なんかもう言葉が出ない」

P「まだあるぞ」

真「まだあんの！？　まだあんの！！？？」

P「SIMカードの変更で、新しいSIMが送られてくるまでスマホが使えなかった」

春香「それこの現代社会じゃあ死活問題ですよね！？」

P「電話も出来る契約になったはいいけど、かけ放題じゃなくて電話料金が結局取られて6000円弱の請求」

春香「も、もう無いですよね？」

P「いやぁまだまだ」

真「もう勘弁してくださいよ！」

P「さらに使用中のスマホが壊れてdocomoショップに行ったら、もう契約が切れてるものだから機種のサポートが受けれない」

春香「ま、まぁこれは当然ですよね……」

P「で、メーカーサポートに出したら修理代金がかなりかかる事が判明」

真「こ、これもしょうがない……」

P「仕方ないから最初からSIMフリーのスマホを代わりに購入したら、またSIMのサイズが変わった」

P「SIMカードのサイズ変更にまた時間も労力も取られるから、もう嫌だとその機種をdocomoに持ち込んで、SIMカードのみの契約をしようとする」

春香「あ、そういう事も出来るんですね」

真「もう安心だ」

P「機種代金のサポートとかキャンペーンとか適用出来ないから、

　結局満足に使用できる基本料金だけで9000円弱取られる事が判明」

真「」

春香「」

P「……これは、俺の友人（>>1）が実際に接客した一人の客がなった事案だそうだ」

P「……これ、手数料だけでどれだけ金が飛んで行ったかわかるか？」

真「い、いえ……」

P「……今ざっと計算したが、最低でも3回の手数料がかかってるから9000円はかかってるな」

P「SIMの種類を聞いていないから分からないが、契約変更でも手数料取られるSIMならもう一回はかかってる」

P「さらに追い打ちかけて悪いが、この上でデータ契約の月額料金と通話契約の料金、SIMが通話契約になってるからそっちの違約金、

　SIMフリースマホの本体代金、その後のキャリア契約の月額料金……一体いくら飛んで行ったんだろうな」

P「ろくに満足して使えなかっただろうになぁ……」

春香「……もう、私今のスマホでいいです。今の契約でいいです」

真「プロデューサーに相談して良かった……」

P「――とまぁ、考えられる最悪の状況でもこんな感じの事案がある」

P「決して、デメリットに目をつむってはいけない。

　安い＝デメリットがあると言う事を念頭に置いて、行動しなさい」

真「はい……肝に銘じます」

P「その後、真は一応格安SIMを運用し始めた」

P「だが、決して自分で情報を取得する事を怠りはしなかった」

P「常にデメリットに目を向けて、そのデメリットを回避する術を、常に念頭に置きながら行動している」


P「……今、格安SIMを運用しようと考えている人は、良く聞いてほしい」

P「携帯電話は、人々の生活を良くするツールでしかない」

P「だから皆は、そのツールに高い料金を払う事で、キャリアの手厚い保護を受けていると思っていい。それは政治の選挙権みたいなものだ」

P「高い金を払う事で、キャリアの手厚い保護を受けている。安心を買っているんだ」

P「文句があったら意見していい。解決されるかどうかは別として、その権利がある」

P「それに各キャリアに払う高い料金は、契約の仕方によっては安くすることが出来る」

P「MNPの機種特価だったり各種キャンペーンの適用によって」

P「一度格安SIMにする前に、各キャリアの店員に、相談をしてみよう」

P「携帯電話会社の店員も人間だ。安くする術を求めている客を、無下にする店員は居ない――と思いたい」

P「それでも解決が難しいその時……初めて格安SIMの運用を考えた方が良いだろう」

おわり