店員「注文は?」最上静香「ええと……」 (33)


最上静香「すみません、ちょっと考えます」

店員「あいよ、ごゆっくりー」

静香「ありがとうございます」

ミリP(以下、P)「そんな直ぐに決まる訳ないのにな」

店員「何か言ったかい?」

P「いいや何も」


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静香「何にしよう」

P「今日は豪勢に頼んだらどうだ?天ぷら色々乗っけて」

静香「それもいいと思うんですけど……」

P「お前、うどん一つですごい顔になってるぞ」

静香「うどんだからこそです。プロデューサーは決まったんですか?」

P「俺は釜揚げうどんにかしわ天とかき揚げを付けよう」

店員「かしわ天売り切れだよー」

P「ええっ! ……店変えるか」

静香「何言ってるんですか」


P「俺はかしわ天を食べに来たんだよ」

静香「そんな一品ないだけで子どもみたいに」

P「じゃあお前、若しこの店のうどんが無かったらどうするんだよ」

店員「その時は休むよ」

P「ですよねー」

静香「静かにしてください」

P「静香に怒られた……」


静香「……よし。決めました」

P「決まったってー」

店員「そんな声出さなくても聞こえてるわ」

P「じゃあ俺は釜揚げにかき揚げえび天、それとさつまいも」

店員「うどんの量は」

P「いつもと一緒で」

店員「はいはい大ね。静香ちゃんは?」

静香「この明太釜玉うどんを並で、それから……いえ、やっぱりそれだけで」

店員「天ぷらはいいのかい?」

静香「はい」

店員「それじゃ、待っててね」

????「らぁめんを」
???ー「日本そばを」


P「しかし静香、えっと……明太釜玉うどん、期間限定のメニューか」

静香「女性に人気と書いてあったので、つい…」

P「たまにはいいんじゃない?」

静香「そう思います」

P「静香はここのメニュー全部食べたのか?」

静香「はい、メニューにあるものは」

P「ん?」

店員「はい水」

静香「ありがとうございます」

P「どもども」

店員「アンタは知らないんだね、隠しメニューのこと」

P「え、なにそれ?」


店員「あぁ、うちには一品、ひいきさんにしか出さないメニューがあるのさ」

P「ほーん」

店員「マ、出せたら出す位のもんさ」

P「ちなみに今日は?」

店員「残念、準備してない」

P「つーか何なの?」

店員「それは知ってる人だけのお楽しみさ」

P「ケチでやんの」

店員「アンタには一生出さないよ」

P「ケッ、うどん屋の隠しメニューなんてどーせ蕎麦とかだろ」

静香「あ、正解です」

P「えっ」


店員「あの人の趣味だからね」

P「へぇ珍しい。おやっさんはうどん一辺倒だとばかり思ってた」

店員「この歳になって遊び心が芽生えたんだよ、ようやく」

P「いいんじゃない?」

店員「まぁね。ラッキーだったらそのうち食べれるから、楽しみにしときな」

静香「音無さんから聞いたんですけど、うどんに引けを取らない美味しさらしいです」

P「あぁ、あの人は俺たちよりも常連だからなぁ」

静香「私たちはまだ一年しか来てないですからね」

P「一年くらいでも、長く感じるな」

静香「そうですね」

静香「私にとっては、子どもの頃からずっと、夢に見ていた、時間でした」


P「……なぁ、静香。お前の気持ちさえあれば、その時間を延ばすことだって出来る」

静香「プロデューサー」

P「まだ書類上はウチ所属のアイドルだし、それにお父さんも今の静香の実力なら」

静香「父との約束ではなく、私が、決めたことですから」

P「わーってるよ……でもな、俺はまだ見せたいんだよ。アイドルの、最上静香をさ」

P「……悪い。今する話じゃねーや。うどん食べに来たんだうどん」

静香「そう、ですね」


店員「ハイお待ち、明太釜玉うどん」

静香「ありがとうございます」

P「あっこれ美味そう。うどんに明太子とかどうかと思ったけど、これは合うわ」

店員「釜揚げはもうちょいかかるから」

P「うーっす。あ、俺待たなくてもいいぞ」

静香「待ちますよ」

P「麺が伸びるぞ?」

静香「少し伸びた位では、うどんの美味しさは変わりません」


P「そんなうずうずしてるなら、食べればいいのに」

静香「だ、大丈夫です」

店員「はい遅くなったね、釜揚げと天ぷら」

P「おお来た来た」

店員「ごゆっくりー」

P「それじゃ、いただきます」

静香「いただきます」


P「あーこの味この味。これくらい噛みごたえあるのが丁度いいんだよ」

静香「プロデューサー、固めのうどん好きですよね」

P「そうそう。柔いのはあんまうどん! って感じがしなくてな。静香は?」

静香「私も固いうどんが好みですね。勿論、やわらかいものも食べますが」

P「お前のロケついでに色々食べたけども、やっぱ何時も食べたいのはここのうどんだわ」

静香「もっと言ってあげれば、嬉しいと思いますよ」

P「おやっさんには言ってる」

静香「素直じゃないんですね」

P「あのばーさんとは気が合わないんだよ」


静香「明太子と麺の相性、すごくいいです…」

P「まぁ幸せそうな顔をするなぁ」

静香「至福の一時です」

P「そりゃようござんして」

静香「プロデューサーも嬉しそうですよ」

P「うどんを食べてる静香は、真正面から見れるからな」

P「舞台裏とか袖とかからは、顔がちゃんと見えない時が多い。まぁステージを見るのが、俺の仕事じゃないからな」

P「……何か言ってくれよ」

静香「そんなこと、言われても」


P「あ、天ぷら忘れてた」

静香「何時食べるのか迷いますよね」

P「大抵最初に食べるんだけどな……うわこのかき揚げどこ掴めばいいんだよ」

静香「サービスしてくれたのかも」

P「かもな。次は絶対かしわ天を頼む」

静香「まだ言いますか」

P「食べ物の恨みは恐ろしいからな」


静香「どうして釜揚げにしたんですか?」

P「一番量ありそうだから」

静香「ふぅん」

P「外で食べる時は大盛りにしないと、損した気がするんだよ」

静香「不思議ですね」

P「自分でそう思う」


P「静香は卵、取っとかないんだな」

静香「え、最初に卵を溶かさないんですか?」

P「昔誰かが、卵を取っといて、最後に飲み込むと超旨いって言ってた」

静香「面白い食べ方ですね。プロデューサーは、したことあるんですか?」

P「いいや、思い出す前に溶いてる」

静香「私もそうしそうです」


静香「ふぅ……ごちそうさまでした。急がなくても、いいですよ」

P「悪いな。所で今日はどうする? 帰り、送るけど」

静香「いえ、大丈夫です。会う約束があるので」

P「そっか」

P「……また、食べたくなったら呼んでくれ。奢るからさ」

静香「私、一人でもこういう場所入れますよ?」

P「そう?」

静香「はい」


静香「……プロデューサー、あ、聞いていて下さい」

静香「初めてここに来たのは、私がまだ見習いの頃でしたよね」

静香「まだプロデューサーを信じることができなくて、疑ってばかりでした」

静香「私の夢の邪魔にならないで、なんて、失礼ですよね……」

静香「ごめんなさい」

P「……謝ることじゃない。それだけ、必死だったってことだ」

静香「プロデューサーは私の夢を、現実にしてくれました」

静香「私はアイドルを、最後まで全うできました」

静香「私、プロデューサーに、本当に」

P「静香」

P「……俺は、そこまでの人間じゃない」


P「ごちそうさまでしたっ。水はもういいか?」

静香「はい」

P「じゃ、出ようか」

静香「そうですね」

P「静香は先に出ていいぞ」

静香「あ、ありがとうございます……」

P「お、丁度小銭足りた」

店員「まいどありー」

P「ほんじゃ次はかしわ天か蕎麦、無かった店変えるから」

店員「はいはい。静香ちゃん、またね」

静香「ごちそうさまでした、失礼します」


P「なぁ、静香」

静香「はい」

P「もう一度…………また今度、蕎麦食べに来ような」

静香「はい」

P「それじゃあ、ここで。また事務所に来てもらう事はあるだろうが」

静香「その時は連絡、お願いしますね」

P「あぁ」

静香「……プロデューサー」

P「なんだ?」

静香「私、貴方のこと」

P「静香」

P「じゃあな」

静香「……はい」

静香「お疲れ様、でした」




店員「あぁ静香ちゃん、いらっしゃい」

静香「……こんにちは」

店員「どしたの暗い顔してー、はい水」

静香「ありがとうございます」

店員「何時ものお相手は?」

静香「プロデューサーは……ええと」

店員「マ、別に顔見たかった訳じゃないんだけど。注文は?」

静香「ええと……」





店員「いらっしゃい」

P「どうも」

店員「なんだいその辛気臭い顔は」

P「雨のせいだよ」

店員「雨はもう上がってるよ」

P「まだ降ってんだよ」

店員「……そうかい。ほれ、注文は?」

P「そうだな……」






「「そばを、ください」」



以上になります。

最上静香という子が一年という短い時間で階段を駆け上って、きっと最上階の少し手前でガラスの靴を脱いだ後のお話、エピローグです。果たしてこの後静香は幸せになったか、Pとどうなったかは定かではありませんが、少なくともこの瞬間、顔を突き合わせて好きなものを食べれた時間は、幸せだったんだろうと思います。明太釜玉うどん、一度は食べてみたいものです。

それではこの良きうどんの日に、最上静香の幸せを願って。ありがとうございました。

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