凛「図書室の迷い猫」 (29)

図書室で眠ってはいけない

黒猫に不思議な世界へ連れて行かれてしまうから


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絵里「ねえ、希。にこ知らない?」

希「にこっち?それならそこの掃除用具入れの中にいるよ」

掃除用具入れ「ガタンッ」

絵里「…」

がしゃ

にこ「…や、や~ん見つかっちゃったぁ~♪やっぱりにこの魅力は隠し切れないにこね~♪」

絵里「さ、行くわよ」ズルズル

にこ「いやーー!!は~な~し~て~!!」

絵里「ちょっと!暴れないでよ! …これもにこのためなんだから」

にこ「ちょっと希!見てないで助けなさいよー!!」

希「うーん…えりち、にこっちは今度は何をやらかしたん?」

にこ「信用ゼロ!?」

絵里「溜まりに溜まった宿題を見てあげるのよ」

希「あー…まあ、がんばってな?」

絵里「だそうよ?行きましょ?」

にこ「こっちはそんなの頼んでないでしょ!?いいから離しなさい!」

絵里「さ、図書室へレッツゴー♪」

にこ「に…にこ~…」ズリズリ

希「にこっちー!全部終わらせたら飴ちゃんあげるからなー!」

にこ「子ども扱いするなー!」

~♪~♪~

図書室

にこ「…」ムスッ

絵里「いつまでムスッとしてるのよ…」

にこ「…だったら帰らせてよね」

絵里「それは認められないわ」キッパリ

にこ「くっ…!一体どうすれば…ん?」

「にゃ~」

にこ「へっ!?ね、猫!?なんで図書室に!?」

絵里「なんでって…この図書室の司書さんでしょ?」

にこ「はぁ!?黒猫の司書?なにそれ、意味わかんない!」

絵里「にこ…逆に3年も通っててなんで知らないのよ…」

にこ「…うっ」

絵里「まあいいわ。ちなみにただの猫じゃなくてケットシーよ。ほら、尻尾が2本あるでしょ?」

にこ「あ、ほんとね。…ケットシーって確か猫の妖精か何かだったわよね?」

絵里「まあ大体そんな感じかしら。…100年以上生きた猫が魔力を持つとケットシーになると言われているわ」

にこ「へーなるほどね。それじゃあにこ達より全然年上なのね」

絵里「聞いた話だと、この図書室が出来た時からいるそうよ」

にこ「…それって何年前よ?」

絵里「200年以上前かしら」

にこ「へ、へぇ~…やるじゃない」

絵里「なんで上から目線なのよ…」

にこ「ふふ、それにしても200歳かぁ~…そんな風には見えないけどな~」ヨシヨシ

「にゃ~」

絵里「こう見えて200年もこの図書室にいるから司書としての腕もバッチリよ?この図書室の全部の本の場所を覚えているから案内もしてくれるのよ」ナデナデ

にこ「…この猫、わたしより頭いいんじゃないの~?」ウリウリ

えり「…」

にこ「ちょっと黙らないでよね!!」

絵里「まあ、実際私より頭いいんじゃないかしら?」

にこ「えっ…ほんとに?」

絵里「ええ。およそ人間の張り合えるレベルではないでしょうね」

にこ(わたしにその頭分けてくれないかしら…)

絵里「あ、でも記憶力だけなら真姫といい勝負かもしれないわね」

にこ「あー…確かに。一度勝負でもさせたいところね」

絵里「あはは、ちょっと面白そうね」

にこ「そうでしょそうでしょ?それでね勝負の方法は…」

絵里「さて、それじゃあそろそろこの子に負けないように勉強しないとね?」

にこ「うっ…せっかく話を逸らしたと思ったのに…」

絵里「ふっふっふ、甘いわよ、にこ」

にこ「くぅ~…どうにかして…」

にこ「ん? あそこにいるの凛じゃない?」

絵里「え…凛?どこどこ?」

にこ「! 隙ありっ!!」ダッ

絵里「あぁ!?ちょっとにこ!!待ちなさい!」

絵里「って、もう無理か…。ああなったにこは凛か穂乃果にしか捕まえられないし…」

凛「…zzz」

絵里「…にこの嘘に一本取られたと思ったけど、嘘ではなかったみたいね。やれやれだわ…」

絵里「凛を起こしてにこを捕まえさせようかしら?」

絵里「でも気持ちよさそうに寝ているし、起こすのは可哀想ね…」

凛「…むにゃ」

絵里「ふぁー…。なんだかつられて私まで眠くなってきちゃった…」ふわぁ~

絵里「…ちょっとくらいいいわよね」うとうと

~♪~♪~

ばたばた

絵里(うーん…って、いけない!今何時!?)ガバッ

「ねこさーん! この本はこっちでいいのー?」

目が覚めると私は薄暗い図書室で本の山に囲まれて眠っていた。
近くで慌ただしく山積みの本を持った凛が黒猫の司書の後を追って駆け回っている。
それにしても何かいつもの図書室と様子が違うわね。普段はもっと本は整頓されている。レイアウトも…なんか変。
それになんといっても、この図書室こんなに広かったかしら?


凛「あ!絵里ちゃん、おはよー!お目覚めかにゃ?」

絵里「あ、おはよう、凛」

凛「絵里ちゃんが図書室でお昼寝なんて珍しいこともあるもんだにゃ。レアなシーンを目撃しちゃった♪」

絵里「もうっ凛ったら…///! …それにしてもやっぱりここは図書室よね?まだ寝ぼけているのかしら…」

凛「そうだよ。でもね、ただの図書室じゃないんだ」

絵里「どういうこと?」

凛「ここは旧図書室なんだよ!」

絵里「旧図書室?そんな場所この学校にあったかしら…。というか、私が居眠りしたのは確か普通の図書室だったはずだけど…」

凛「あー絵里ちゃんはここに来るの初めてなんだね。コホン…それじゃあ凛が説明してあげよう!」ドヤッ

絵里「ふふ…お願いするわ」

凛「うん!ここ旧図書室には特別な許可が下りた人しか見れない本がたくさんしょぞうされています!」

凛「だから、普段は生徒の立ち入りはできなくなっているんだけど、実は一つだけ隠された方法があってね!」

絵里「それが図書室で眠ること…かしら?」

凛「あー、それ凛が言いたかったのに~…」ムスッ

絵里「ご、ごめんね?凛」

凛「むぅ~…あ!でもただお昼寝するだけではここにくることはできなくって!その条件っていうのが、この黒猫さんも一緒にお昼寝することなんだよ!」ドヤッ

「にゃ~」

絵里「この猫…いえ、ケットシーの司書さんね」

凛「けっとし?そういう種類の猫さんなんだ。絵里ちゃんは物知りだね!」

絵里「ま、まあ後で詳しく教えてあげるわ」

凛「うん!…それでね、凛もあまり詳しくないんだけど、どうやら旧図書室が存在するのはこの猫さんの記憶の中ならしいんだ」

絵里「記憶の中…? ということは、ここは現実世界とは異なる場所ってこと?」

凛「う~…凛難しいことはよくわからないよ…。でも現実世界の図書室には凛たちの体はそのままになっているから、そういうことなのかな?」

絵里「この図書室ができたのは確か200年前…。旧図書室の本はそれ以前のものってことか…」

凛「凛が聞いた話によると、旧図書室は500年前からあるらしいよ!」

絵里「そうすると、新図書室が出来るまでの300年分の本の内容を全て記憶として閲覧できるのがこの空間というわけね」

絵里「なんというか…凄い秘密を知ってしまったわ」

凛「ふふふ…凛以外の人をここに連れ込むなんて、絵里ちゃんは猫さんに気に入られたのかにゃ?」

「にゃ?」

絵里「あら、それは光栄なことだわ。ありがとね?」ナデナデ

「にゃ~ん」

絵里「そういえば凛はここで一体何をしていたの?」

凛「ここの図書室ってめったに人が入らないから見ての通り凄い散らかっているの。凛はそれをお片付けするお手伝いをしていたんだよ!」

絵里「猫の手も借りたい…か」

凛「? 猫さんが手を使えないから凛が手伝っているんだよ。絵里ちゃんはおかしなこというにゃ」

絵里「ぷっ」

凛「あー!!その笑い方は凛をからかっているときの海未ちゃんにそっくり!!絵里ちゃんも遂にそっちの仲間に…!」

絵里「ふふ、ごめんなさい。ただ凛が可愛いなぁって♪」ナデナデ

凛「にゃ…/// って、やっぱりバカにされてる!?」

~♪~♪~

絵里「それじゃあ、この本をあっちの奥の棚にしまってくればいいのね?」

凛「うん!よろしくね!」

絵里ちゃんがお片付けのお手伝いをしてくれるといったのでお願いしました!
凛はいつも一人でお手伝いしていたから絵里ちゃんが一緒にいるだけでなんだかテンション上がるにゃ~!

凛「これがそっちで…これは、こっちかにゃ?」

凛「よいしょ…っと。ふぅ~疲れた~…。ちょっと休憩~」

凛「あれ? そういえばもう結構時間が経つのに絵里ちゃんが戻ってこないや」

「…」

凛「猫さん?奥の方を見つめて…どうしたの?」

凛(!! そういえば、絵里ちゃんが行ったあの奥の棚がある場所って…!)

凛「絵里ちゃん!!」ダッ

旧図書室の一番奥。そこには鉄格子の扉が静かに佇んでいる。
その先は禁書が保管されているエリアで、中は迷路のように複雑に入り組んでおり、一度入ったものは二度と戻れないという。
扉の奥のどこまで続くかわからないほどの深い闇は地獄へと続く門さながらであった。
その入口に白いハンカチが一枚ぽつんと落ちていた。

凛(この扉って確か、禁書保管エリアに繋がっているって…)

凛(それにこのハンカチのこのマーク…。絵里ちゃんがいつも持っているのと一緒だ…)

凛(間違いない。絵里ちゃんはこの中に入った。凛がちゃんと説明しておけばこんなことには…)

凛(どうしよう…。だれか先生を呼んでこようかな)

凛(いや、まだ今ならそこまで奥には行っていないはず…!それに凛以上にこの図書室に詳しい人なんて他に居ない!)

ぎぃ…

かつんかつん

凛は冷たい鉄格子の向こう側に消えていった

~♪~♪~

凛「はぁ…はぁ…」

どれくらい走ったのかもうわからない。凛は体力に自信があるほうだから全力で走っても2時間は余裕だった。
そんな凛がもう走れないほど体力を使い切っちゃった。
そこで凛は気が付いた。

もう二度と帰ることができないかもしれない

背筋がぞっとした。そんなの絶対嫌だ!…でも絵里ちゃんは見つからないし、ここが一体どこなのかもわからない。
どうしよう…。すごく怖い。もうかよちんやμ'sのみんなに会えないかもしれない。
もしかしたら絵里ちゃんは自力で戻っているかもしれないし、とりあえず引き返そう。
そう思ったけど…あれ、引き返す?どっちへ?
前か後ろか、上か下かわからない。何も見えない。何も感じない。
凛はそのままその場に座り込み泣き出してしまった。

多分だけど1か月位経ったと思う。
時間の流れが外と違うからなんだと思う。この空間ではお腹も空かないし喉も乾かない。
それが逆につらかった。いっそのこと死んでしまった方が楽だと何度も思った。
そんな状態であてもなくふらふら彷徨っていると突然闇の向こうから声が聞こえた。

「お嬢ちゃん、こんにちは」

凛「誰?」

「わたし?そうねぇ…しばらく人と会わなかったから忘れてしまったよ。通りすがりの「魔女」といったところかしら?」

凛「魔女さん…。凛ね、ここで迷子になっちゃって…それでね…ぐすっ」

「そう。それはつらかったわね。でも、もう大丈夫。わたしについておいで」

凛「魔女さんはこんな真っ暗な中でも目が見えるんですか?」

「ええ。私の眼は人と違ってどんなわずかな光でもとらえることができるの。あ、そこ段差になっているから気を付けて」

凛「流石魔女さんですね! 帰り道がわかるのも魔法のお陰ですか?」

「ううん。それはただ記憶しているだけ。随分長いことここにいるからね」

凛「へぇ~どれくらいいるんですか?」

「1700万年位かしら。外の時間だと200年くらいしか経ってないけどね」

凛「あはは!…冗談ですよね?」

「……そうね。私のことばかりじゃなくて、お嬢ちゃんのことも教えてくれないかしら?」

凛「え~凛のことですか?そんなに面白い話ないですよ?」

「それでもいいの。聞かせて?」

凛「う~ん…それじゃあ、凛のお友達のお話をしますね!まずは、え~と…あぁぁああ!?」

「どうしたの?」

凛「絵里ちゃん!!絵里ちゃんっていう子がここに迷い込んできませんでしたか!?」

「絵里ちゃん?どんな子かしら」

凛「エルフのクォータで、金髪で青い目で肌がすっごく白いの」

「クォータかどうかはわからないけれど、私があなたの前に最後に会ったのはエルフの女の子だったわ」

凛「本当ですか!?間違いないです!よかった~絵里ちゃん無事だったんだ」

「…残念だけどそれはないわ。その子と会ったのは外の時間で60年前だから」

凛「そ…そんな…」

「あら、むしろ落ち込むことではないんじゃない? その絵里って子はここに迷い込んでいない。それだけのことよ」

凛「! なるほど。つまり絵里ちゃんは今も無事に外の世界にいるってこと?」

「その可能性が高いわね」

凛「よかった…。でもそれじゃあ全部凛の早とちりだったってことか…とほほ」

「…無事に帰ることができるだけで幸せなことよ」

~♪~♪~

「ほら、出口が見えてきた」

凛「あそこが…!やっと戻ってこれたんだね…ぐす」

出口に近づくにつれて光が大きくなってきた。久しぶりの光はすっごく眩しくてすっごく暖かくて…。
あれ?でも、明るくなってきたのに前を歩いているはずの魔女さんの姿が見えない!?
もしかして、幽霊!?

「ふふ、なに青い顔してるの? 私はここよ」

ふと、足元を見ると…そこにいたのはしっぽが2本生えた真っ白な猫!

凛「こ…これは幽霊より驚きだにゃ…」

「ふふ、この反応はいつみても飽きないわ♪」

凛「夢じゃないよね…」ほっぺぎゅー

凛「痛い…」ひりひり

「あはは! お嬢ちゃんって本当に面白いわね。久しぶりに楽しませてもらったわ!」

凛「うう…またバカにされた…」

「それじゃあ、お嬢ちゃん。もう迷い込んじゃダメだからね!」

凛「ん? そういえば、まじょ…猫さんはどうしてずっとこんな暗いところにいたの?」

「わたしは…ここに迷いこんだ子の道案内することが仕事だから…」

凛「そんな…。そうだ!それじゃあ外の扉の前でずっと見張っていればいいよ!そしたら誰も迷子にならない!」

凛「ここよりは絶対楽しいし、凛も毎日会いに来られるし!」ひょい

「ちょっと!それはダメ!」

凛は白猫さんを抱き上げるとそのまま出口へダッシュ!
…だけど、出口の近くまで行くと白猫さんの体は小さな光の塊となって、やがて消えてしまった…。
そして、凛の体だけが光の中へと飛び出した。

絵里「凛! よかった…。この本なんだけれど、ここの棚で間違いなかったかしら?」

凛「…」

絵里「凛…?」

凛「絵里ちゃん…どうしよう…。凛、とんでもないことしちゃったかもしれない…」

その後、凛はめちゃくちゃ泣いた。涙と鼻水が止まらなかったのはアレルギーのせいだけではなかったと思う。
ぐしゃぐしゃになった凛の顔を絵里ちゃんがハンカチで拭いてくれた。

凛「あれ、そのハンカチ…」

絵里「このハンカチがどうかしたの?」

凛「凛、それと同じマークのハンカチをあの扉のところで見つけて…」

絵里「それ…よく見せて」

絵里「うん、間違いない。これは絢瀬家の家紋よ。いったい何でこれが…」

その時、凛は気付いちゃった。60年前あの秘密の図書室に迷い込んだのは…

凛「あのね、絵里ちゃん!」

~♪~♪~

凛「おはよう、絵里ちゃん」

絵里「ん~…おはよう…」

私たちが元の図書室に戻ってくると、黒猫の司書さんはいつも通り。
大きなあくびを一つかいて、奥の棚に消えていった。

凛「いつの間にか夕方だねー。ちょっと寝すぎちゃったかな?」

絵里「なんだかとっても疲れたわ…」

凛「いっぱいお手伝いしたもんね! …あ!!絵里ちゃん、あれみて!」

絵里「? うわぁ、大きな虹ね!!」

凛「すごいすごいすごーい!! あんな大きなの初めてみたにゃー!」

絵里「ハラショー!ロマンチックだわ!」

凛「あれ? あの虹の上…誰か歩いてない?」

絵里「え? そんなの見えないけど…というかよくあんな遠くのものが見えるわね」

凛「うん!今日の凛はなんだかよく見えるんだ!わずかな影も見逃さないよ!」

絵里「ふふ、まるで猫ね」

凛「う~ん、二人…かな? さすがに顔まではわからないや…」

絵里「虹の橋なんて素敵ね。もし本当ならぜひ渡ってみたいわ」

凛「あー、絵里ちゃん。もしかして凛のこと疑っているでしょ?」

絵里「うーん…今日はいくつも不思議な体験してるし、あながち間違いじゃないかも?」

凛「ふふん。よーし、それじゃあ絵里ちゃん!一緒に確かめにいっくにゃー!!」

絵里「え!? ちょ、ちょっと、凛!今から!?」

凛「もっちろん! 虹は待ってくれないよー!」

図書室で決して眠ってはいけない

白猫の不思議な世界へ連れて行かれてしまうから


一応終わりです
なかなかうまくキャラを引き出せない

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