忍「夢を諦めた少女」 (25)

きんいろモザイクSS


10年後設定
百合ではないので注意。




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私は大宮忍といいます。

通訳者になるのが夢です。

10年後の遠い未来、私の将来の夢は叶っているのでしょうか…



陽子の家

陽子「お。やっと来たか~」

綾「久しぶりね。しの、アリス。」

忍「はい、お久しぶりです。」

カレン「待ってたデスよ!」

アリス「手洗うからちょっと待ってね。」


・・・・・・

陽子「いや~この五人で顔合わせるのほんとに久しぶりだな~」

綾「みんなそれぞれ忙しかったからね…」

カレン「でもうまい具合に休み取れてよかったデスよ!」

忍「カレンが一番お仕事大変ですからね。本当に良かったです。」

アリス「そっか…」

陽子「お、どうした?」

アリス「いや、みんなもうあの頃とは違うんだねって。」

カレン「アリスは変わってないデスよ。」

アリス「え?」

カレン「身長が。」

アリス「もう、カレン!!」

陽子「あはは…」

忍「アリスは昔も今もちっちゃくて可愛い金髪少女ですよ!」

綾「もう少女でもなんでもない歳なんだけど…」

忍「見た目も心も少女のままです。」

アリス「それって子供っぽいってこと!?」

カレン「相変わらずデスね~」

陽子「いや、むしろさらに拍車がかかってないか?」


私は高校を卒業後、イギリスに留学しました。

いい機会だからという事で家族みんなでイギリスに移り住み、アリスの実家の近くに住んでいます。

英語での講義は大変でしたが、アリスと必死に勉強したお陰でなんとかついては来れました。
そう、なんとか。


お姉ちゃんはイギリスでモデル活動を続けた後に現地の人と結ばれ、子供が産まれました。
なんと、ハーフの金髪少女です!

もう本当に本当に可愛くて一日中ナデナデしたいぐらいですが、怖がっているという事であんまり触らせてくれません。


けちなお姉ちゃんです!


アリスはイギリスの大学で日本語教師となりました。

「マムやわたしのように日本に興味を持つ人達の助けになりたい」
という事です。


アリスは英語も日本語もペラペラ喋れるので、本当にいい職に就いたと思います。
優しく丁寧に教えてくれるため、生徒からの評判はいいようです。
すっかり社会人の一員になったように感じられます。

身長はほとんど変わってないですけど。


アリス「シノ…今何考えてる…?」


そして今の私は…


…やっぱり話すのは後にします。

陽子「そういやカレン、今度はどこに行くんだ?」

カレン「ん~今度はカナダデス!」

陽子「随分遠いところだな…」

カレン「でもその次は日本デスからまたヨーコとアヤヤに会いにいけるデスよ!」

綾「楽しみに待ってるわ。」

カレンはお父さんの知り合いの会社で営業担当として働いています。
海外出張がしょっちゅうだそうですが、多くの国に旅行した経験を生かし、どんな場所でもカレンらしく明るく頑張っているようです。
私達の中で一番忙しい仕事で、投げ出したくなるほど辛い事も何度もありましたが、それらを乗り越えてカレンは精神的に成長しました。

でも「いい旦那さんが見つからないデース」というのが最近の悩みのようです。


カレン「そうそう、ホノカもよろしくって言ってたデスよ!」

陽子「穂乃花にも会いたかったな~」

松原穂乃花ちゃん。
金髪同盟を結んだ私の旧友です。

実家のレストランを継ぐために海外で武者修行中でしたが、カレンとの縁でカレンの会社が経営しているホテルのシェフとして働く事になったそうです!
長期滞在するカレンに付いていく事もあるとか。

スイーツなども腕を上げ、カレンも「今まで料理を食べてきたどの店よりもホノカの料理が一番デス!」と大絶賛していました。

彼女もいい人と交際中で結婚したら実家に戻るそうです。
「日本で家庭持ちたいけどカレンちゃんと別れるのは寂しい!」と言ってました。

陽子「そういやカレン、今度はどこに行くんだ?」

カレン「ん~今度はカナダデス!」

陽子「随分遠いところだな…」

カレン「でもその次は日本デスからまたヨーコとアヤヤに会いにいけるデスよ!」

綾「楽しみに待ってるわ。」

カレンはお父さんの知り合いの会社で営業担当として働いています。
海外出張がしょっちゅうだそうですが、多くの国に旅行した経験を生かし、どんな場所でもカレンらしく明るく頑張っているようです。
私達の中で一番忙しい仕事で、投げ出したくなるほど辛い事も何度もありましたが、それらを乗り越えてカレンは精神的に成長しました。

でも「いい旦那さんが見つからないデース」というのが最近の悩みのようです。


カレン「そうそう、ホノカもよろしくって言ってたデスよ!」

陽子「穂乃花にも会いたかったな~」

松原穂乃花ちゃん。
金髪同盟を結んだ私の旧友です。

実家のレストランを継ぐために海外で武者修行中でしたが、カレンとの縁でカレンの会社が経営しているホテルのシェフとして働く事になったそうです!
長期滞在するカレンに付いていく事もあるとか。

スイーツなども腕を上げ、カレンも「今まで料理を食べてきたどの店よりもホノカの料理が一番デス!」と大絶賛していました。

彼女もいい人と交際中で結婚したら実家に戻るそうです。
「日本で家庭持ちたいけどカレンちゃんと別れるのは寂しい!」と言ってました。

>>7
二重になりました

綾「…この荷物…重い…」

陽子「あたし持つよ。」

綾「陽子はいいって。身重なんでしょ?」

陽子「そっか悪い悪い。」

陽子ちゃんは主婦兼近所のスーパーのパートとして絶賛子育て中だそうです。
今は、七ヶ月目の三人目がお腹にいます。


アリス「ヨーコの赤ちゃん、今度はどっちなの?」

陽子「あ~女の子らしい。」

カレン「名前もう決めたデスか?」

陽子「いや、まだ。 …お、お腹蹴った」

綾「きっと陽子に似て元気なのね。」

陽子「はははどーも。 …そうだ。綾、名付け親になってくれるか?」

綾「え!?何でいきなり!?」


綾ちゃんは一流企業に就職し、平日は仕事漬けのようです。
部下もできて楽しくなってきたそうです。

結婚とかはしないのか綾ちゃんに訊いてみたら「今は仕事が恋人なの!」との事です。

カレンに「アヤヤの恋人はヨーコじゃなかったんデスか?」と茶化されると
「そういうのはもう…卒業したの」とちょっと寂しそうな顔で呟いてました。

でも決して未練がある様子ではなかったようです。


ピンポーン

陽子「おっ、そろそろか。」

ガチャ

空太「姉貴~帰ったぞ。」

男の子「ママ~」

陽子「おお、いつもありがとさん。」

女の子「ママママあのね!おやつ食べたい!!」

陽子「はいはい。手洗ってからな。」

美月「全く誰に似たんだか。」

陽子「私だよ!!」


空太君と美月ちゃん。

10年も経てばすっかり大きくなって、私達の母校に通っている高校三年生です。
現在受験生で、将来の夢のために猛勉強中とのことです。


カレン「おお、誰かと思えばコータとミッキー!久し振りデース!」

美月「だからミッキーじゃないって…」

空太「お久し振りです。」

アリス「すごーい!すっかり大きくなったね!」

空太「お久し振りです、アリスさん。」

アリス「うん、偶然会えて良かったよ。」

アリス(アリス『さん』…わたしやっぱり大人だよね!!)

美月「アリスちゃん、身長ほとんど変わってないね。」

アリス「」


空太「あ、あの…」

カレン「何デス?」

空太「約束していた海外の写真、見せてもらってもいいですか?」

カレン「おお!アレデスね!ちょっと待っててくだサーイ!」

男の子「美月お姉ちゃん~この人達誰?」

美月「ママのお友達よ。久しぶりに話ができる時間が取れたみたいだから、邪魔しちゃだめよ。」

男の子「はーい。」

女の子「うわぁぁぁん!!プリン落ちちゃった~!!」

美月「はいはい。私のあげるから。」

女の子「ほんと!?ありがと!おねーちゃん!!」

美月「あなたももうすぐお姉ちゃんになるんだからしっかりしないとダメよ。」

女の子「うん…!」


二人は時間のある時に陽子ちゃんの子供の面倒を見たりしています。
空太君はジャーナリストを目指しているようです。


あ、そう言えば烏丸先生と久世橋先生も相変わらず私達の母校で教師をしていました。
昨日会いに行きましたが、元気そうでした。

結婚して子供が産まれてもやっぱり天職のようです。

アリスが教師になったと聞いて一番喜んだのが烏丸先生です。
アリスが教師になることを決めたのもきっと烏丸先生の影響かもしれませんね。

そういえば今のアリスはセミロングの髪を降ろして眼鏡をかけているのでちょっと烏丸先生に似ているかもしれません。
並ぶと姉妹に見えませんか?

カレン「それじゃあ私はここで~!」

綾「またいつかね!」

アリス「シノ、わたし達も帰ろう?」

忍「…はい。」

陽子「みんな、またな~!!」



皆、それぞれの人生を歩んでいます。
夢見ていた通りかどうかはわかりませんがすごく幸せな事は確かでしょう。









…でも私は



通訳者になるという夢を叶えられませんでした。

もちろん精一杯努力をして通訳者になりたいという一心で周りにも励まされながら勉強をしてきました。

それでもダメでした。

イギリスの大学での英語の授業は卒業のための単位を取る事がやっとで、アリスやカレンのいるような「バイリンガルの領域」には踏み込むことはできませんでした。



簡単な理由です。

『才能がなかった』から



愚かにも叶わぬ夢を金の卵のように抱いていた私が、
非情な現実を突き付けられ、
努力だけではどうにもならない物の存在を知り、
なお受け入れられずにいました。


お姉ちゃんは結婚し、幸せに辿りついたけれど、

私は今、幸せなのですか?

答えを出せずにいました。

『彼』と出会ったのは両親が家を留守にしていたそんなある日の事でした。

枯れはボロボロの服を着ていました。
今思えばどうしてあんな事をしたのかはわかりませんが、きっと彼に私と近い何かを感じ取ったのでしょう。
行き倒れていた彼を家に泊め、服を縫ってあげました。


彼は私の服飾の才能に驚いて、絶賛してくれました。

『あなたは素晴らしい才能を持っている』


「それでも私の欲しいのは違う才能なんです。」
私は言いました。


二人以外誰もいない家に沈黙が流れました。


しばらく経った後に彼が口を開きました。


彼は音楽が大好きで実家の喫茶店を離れ音楽の道で食べていく事を決めたそうです。

しかし、音楽で生計を立てるには至りませんでした。

現実を知り打ちひしがれて、どうすべきかを迷っていたところに私と出会ったそうです。

「この人も自分と同じなのだ」とお互い感じていたのでしょう。


彼は昼食を取った後、こう言いました。

「実家の喫茶店を継ぐ事にする」と


つまり、彼は夢を諦めたのです。


「自分のやりたい事を諦めるのですか」と私は尋ねました。

彼は言いました。

「今ない物を求めても手に入らなかったのなら潔く諦める事も大切だと思う。」

「精一杯頑張ったから、後悔はしていない。今度は今ある物を使って別の道で幸せを見つけてみせる。」

「だから、君も今あるもので幸せになってほしい」



彼は満足しきった表情をしていました。


彼は私にお礼を言い、実家(恐らく喫茶店でしょう)の地図を渡して去って行きました。



私には服飾の才能がありました。

私の目指す夢とは遠くかけ離れたものですが、高校時代も皆が褒めてくれました。

もしかしたらその時も私は幸せだったのかもしれません。

通訳者の夢に夢中になるあまり、見落としてきた幸せなのかもしれません。


それでも夢を諦めきれなかった私は、自分の中で踏ん切りをつけるため、ある事を始めました。

服飾の才能を積極的に役立てる事。

簡単は服や小物を作ってみたところ、近所の子供たちも大変喜ばれました。

皆の笑顔を見るのが私にとっても確かな楽しみとなっていました。

しかしこれだけでは「自分が本当に幸せ」なのかは分かりませんでした。


なのでもう一つ、彼の実家の喫茶店に通い、彼が本当に幸せなのか調べる事にしました。

私は何度も何度も通い彼ともいっぱい話もしました。

彼はとても活き活きと働いていました。

仕事が大変だと思う事もあるけど、続けていく事が出来ると彼は言っていました。


自分はようやく決心出来ました。

夢を諦めようと。



アリスには「わたしが代わりに通訳者になる!」と言われましたが、彼女の本当にやりたい事をしてもらうために、

「もういいんですよ、アリス。私はあるもので幸せになる道を選んだんです。」

「だからアリスは私の事は考えずに自分の夢を目指してください」

と言いました。


そういえばお姉ちゃんやお母さん、みんなにも「なんか変わったね」と言われましたね。




それから現在。

私は彼と結ばれました。

タキシードとウェディングドレスは私が自前で作りました。

大勢の人たちが私達を祝福してくれました。

今は私も彼の喫茶店で働いています。

私の服飾の才能も店の制服や備品に存分に発揮されています。


カータレット家とは今も家族ぐるみの交流を続けています。
素敵な出会いのきっかけになった私のお母さんとアリスのマムに感謝をしてもしきれませんね。

アリスも良い男性に巡り合い、来月式を挙げる予定です。

今はアリスのドレスを製作中です。

私もアリスも孫の顔を見せてくれるのを家族から楽しみにされています。


もしかしたら私の子供とアリスの子供が結ばれる未来が来る


…のかもしれません。


私は大宮忍といいます。

通訳者になるのが夢でした。

10年経った今、私の将来の夢は叶っていませんでした。

才能の無い事を知り、夢を諦めました。



ですが、もう一つの夢は叶いました。

心から幸せになるという夢です。
彼と共に喫茶店を経営し、自分の才能を活かし、アリスはもちろん、陽子ちゃん、綾ちゃん、カレンともこうしてたまに出会ってそれぞれの今や思い出の話に花を咲かせる事ができる…
それは心からの幸せだと今なら胸を張ってはっきりと言えます。

「夢を諦めた少女」は今幸せになっていました。




おわり

おわりやした

依頼出してきます。

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